JP6596204B2 - プロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、機械的特性に優れ、金型転写性に優れ、耐傷つき性や漆黒性にも優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物に関する。
プロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、その優れた機械物性、成形性、経済性により、自動車部品や家電部品など種々の分野で利用されている。
自動車部品分野では、ポリプロピレンを単体で用いるほか、ポリプロピレンにエチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)、エチレン−オクテン共重合体(EOR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリスチレン−エチレン/ブテン−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)等のゴム成分を添加して衝撃性を改善した材料(特許文献1〜3参照)、タルク、マイカ、ガラス繊維等の無機充填剤を添加し剛性を改善した材料、またゴム成分、無機充填剤を共に添加し優れた機械物性を付与したブレンドポリマーが使用されている。
一方、ポリプロピレン成形品は、一般に耐傷付性が低いことが知られている。ポリプロピレン成形品に生じる傷としては、鋭利な先端部によって成形品の表面が削られることにより生じる引っ掻き傷や、幅のある物体や面積の広い物体または柔らかい物体により成形品の表面が圧迫されたり擦られたりすることにより生じるテカリ傷などがある。
近年では得られた成形品の意匠面やデザイン上の観点から優れた漆黒性(深い透明感のある高光沢黒色のことであり、例えば、ピアノブラックとも称される)を有する外観が望まれ、そのニーズも高まってきた。しかし、ポリプロピレン成形品の表面は、前記のように耐傷付き性が不十分であることから、漆黒調表面外観を持つポリプロピレン成形体の用途は、表面に固い異物が接触することが有り得ない一部用途に制限されていた。
特開2006−307015号公報 特開2006−316103号公報 特開2014−132073号公報
本発明が解決しようとする課題は、金型転写性に優れ、引っ掻き傷やテカリ傷などが生じにくく、漆黒性にも優れ、さらに機械的特性に優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記のプロピレン系樹脂組成物を用いることで、金型転写性に優れ、引っ掻き傷やテカリ傷などが生じにくく、漆黒性にも優れ、さらに機械的特性に優れた成形品を製造することができ、このプロピレン系樹脂組成物が自動車内装部品を製造するのに好適であることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、
(A)ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、エチレン由来構造単位の含有比率が2〜9mol%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体
(B)プロピレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合して得られるプロピレン・α−オレフィン共重合体
(C)エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られ、ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜80g/10分である、エチレン・α−オレフィン共重合体
(D)繊維状フィラー
(E)滑剤
(F)変性ポリプロピレン
を含み、(A)〜(D)の含有量の合計を100重量部としたとき、(A)の含有量が20〜70重量部、(B)の含有量が5〜45重量部、(C)の含有量が5〜25重量部、(D)の含有量が10〜40重量部、(E)の含有量が0.01〜1.0重量部、(F)の含有量が0.1〜3重量部 であることを特徴としている。
本発明において、前記(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体に占めるエチレン由来構造単位の含有比率が3〜8mol%であることが好ましい。
本発明において、前記(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンに由来する構造単位を60〜90mol%、1−ブテンに由来する構造単位を10〜40mol%含有し、前記プロピレンから導かれる構造単位と前記1−ブテンから導かれる構造単位との合計が100モル%であることが好ましい。
本発明において、前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体に占めるα−オレフィン由来構造単位の含有比率が5〜60mol%であることが好ましい。
本発明において、前記(D)繊維状フィラーは、ガラス繊維であることが好ましい。
本発明において、前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィン由来の構造単位は、プロピレン、1−ブテン、1−へキセンおよび1−オクテン由来の構造単位から選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明において、前記(E)滑剤は、エルカ酸アミドであることが好ましい。
本発明において、前記(F)変性ポリプロピレンは、無水マレイン化変性ポリプロピレンであることが好ましい。
前記プロピレン系樹脂組成物から成形体、例えば自動車内外装部品および家電製品等を形成することができる。
本発明によれば、金型転写性に優れ、耐傷付き性、漆黒性および機械的特性、特に剛性と耐衝撃性に優れ、かつ当該物性を高度にバランスよく備えた成形品を製造することができるプロピレン系樹脂組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、下記特徴を有する(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体、(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体、(C)エチレン・α−オレフィン共重合体、(D)繊維状フィラー、(E)滑剤、および(F)変性ポリプロピレンを含んでなる。
以下、それぞれの構成成分および任意で含んでいてもよい成分について詳説する。
<(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体>
本発明において、(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体は、プロピレンとエチレンを共重合して得られる。
(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体の、ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは1〜100g/10分、好ましくは、5〜100g/10分、より好ましくは5〜80g/10分である。メルトフローレートが1g/10minより小さいと、成形時の樹脂流動性が悪く、インパネやドアトリム等の大型成形品を成形した際、金型細部まで樹脂が充填されない可能性がある。また、メルトフローレートが100g/10minより大きいと、成形品に十分な衝撃性が出ない。ここでのメルトフローレートは、重合によって調整したものでも、例えばラジカル発生剤の存在下に溶融混練するデグラデーション法によって調整されたものでも良い。
(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体における、該共重合体の全構造単位に対するエチレン由来の構造単位の含有比率は、2〜9mol%、好ましくは、3〜8mol%、より好ましくは3〜7mol%である。共重合体中のエチレン由来の構造単位の含有比率は、赤外分光分析法(IR)あるいはNMRにて測定することができる。前記含有比率が2mol%未満の場合、成形品は、剛性が高くなり過ぎて、衝撃性が低下し、耐傷付き性も低下するおそれがある。また結晶化温度が高くなり、シボ転写性が悪くなり、グロスが上昇する傾向にある。また前記含有比率が9mol%を超えると、樹脂組成物は柔らかくなり過ぎてしまい、成形品の強度が低下する傾向にある。
本発明において、(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体は、公知のオレフィン重合用触媒の存在下に、共重合を行って調製することができる。オレフィン重合用触媒としては、具体的には、例えば、固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とを含む所謂チーグラーナッタ触媒や、メタロセン触媒を用いることができる。
本発明において、(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体は、プロピレン単独重合体に比べて、弾性回復性や柔軟性が高いため、当該重合体を含む成形品が外部からの力により傷ついても、その傷がある程度修復され目立たなくなる傾向にある。
<(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体>
本発明に用いられる(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンとを共重合して得られ、好ましくはプロピレンから導かれる単位を51〜95モル%の量で、炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンから導かれる単位を5〜49モル%の量で含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体(ただし、プロピレンから導かれる単位とα−オレフィンから導かれる単位との合計は100モル%である。)である。このようなプロピレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などを例示することができ、用途に合わせて適宜選択すればよいが、プロピレン・α―オレフィン共重合体の製造容易性、α−オレフィン種の入手容易性、および本発明の効果、すなわち金型転写性に優れ、成形体が引っ掻き傷やテカリ傷を生じにくい漆黒調外観を有し、さらに機械的特性に優れるという効果を効果的に発現させる観点から、プロピレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
プロピレン・1−ブテン共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位を60〜90モル%の量で含有し、1−ブテンから導かれる構成単位を10〜40モル%の量で含有し、かつ、プロピレンから導かれる単位と1−ブテンから導かれる単位との合計は100モル%であることが好ましい。より好ましい態様としては、プロピレンから導かれる構成単位を70〜90モル%の量で含有し、1−ブテンから導かれる構成単位を10〜30モル%の量で含有し、かつ、プロピレンから導かれる単位と1−ブテンから導かれる単位との合計は100モル%である。
このような条件を満たすプロピレン・1−ブテン共重合体を使用することで、本発明の効果、すなわち、金型転写性に優れ、成形体が引っ掻き傷やテカリ傷を生じにくい漆黒調外観を有し、さらに機械的特性に優れるという効果を効果的に発現させることが可能となる。
(B)プロピレン・1−ブテン共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことが好ましい。
より好ましくは、融点(Tm)が50〜110℃、より好ましくは60〜105℃、さらに好ましくは65〜100℃である。
なお、成分(B)の融点は、以下に示す方法にて測定することができる。
すなわち、セイコーインスツルメンツ社製DSCを用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、100℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/minで−150℃まで降温し、ついで10℃/minで200℃まで昇温した吸熱曲線より求めることができる。
(B)プロピレン・1−ブテン共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であること好ましく、より好ましくは2.0〜3.0であり、さらに好ましくは2.0〜2.5である。
Mw/Mnを上記範囲に設定することで、成分(B)における低分子量成分の含有量を制御できるので、本組成物から得られる成形体表面からブリードが起こりにくくなり、成形体の保管時における表層のべた付き、ブロッキングを抑制できる。
また、本実施形態に使用される成分(B)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、0.1〜30g/10分とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜25g/10分、特に好ましくは1.0〜20g/10分である。
本実施形態に使用されるプロピレン・1−ブテン共重合体としては市販のものをそのまま使用しても良いし、プロピレンと1−ブテンとを、メタロセン化合物を含む触媒の存在下に共重合することによって調製してもよい。メタロセン化合物を含む触媒の存在下に共重合する方法としては、例えばWO2004/087775号パンフレットまたはWO01/27124号パンフレットに記載の方法を挙げることができる。
<(C)エチレン・α−オレフィン共重合体>
本発明において、(C)エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られる。α−オレフィンは好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンから選ばれ、α−オレフィンは1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。これらのモノマーを用いるのが、弾性回復性や柔軟性が高い、耐傷付き性の点から特に好ましい。
(C)エチレン・α−オレフィン共重合体のASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは0.1〜80g/10分、好ましくは0.5〜70g/10分、より好ましくは1〜70g/10分である。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合、樹脂流動性の低下や混練時の分散不良が起こり易く、成形品の耐衝撃性等の物性の低下や成形品表面外観の悪化に繋がる。一方、80g/10分を超えると成形品に十分な耐衝撃性が得られず、また、成形品シボ表面の光沢性上昇に繋がる。
(C)エチレン・α−オレフィン共重合体における、該共重合体の全構造単位に対するα−オレフィン由来の構造単位の含有比率は好ましくは5〜60mol%、より好ましくは7〜50mol%、さらに好ましくは10〜45mol%である。
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン共重合体が好ましい。
<(D)繊維状フィラー>
本発明において、(D)繊維状フィラーとしては、例えば、カーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、各種金属繊維、綿、セルロースナノファイバー等、絹、羊毛および麻等の天然繊維、レーヨンおよびキュプラなどの再生繊維、アセテートおよびプロミックスなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミドおよびポリオレフィンなどの合成繊維、さらにはそれらの表面および末端を化学修飾した変性繊維などが挙げられる。
これらのなかで、ナノセルロース繊維、TEMPO酸化ナノセルロース繊維などのセルロース類;ガラス繊維;カーボンファイバー;シングルウオールカーボンナノチューブ、マルチウオールカーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブが、本発明の樹脂組成物、および当該樹脂組成物からなる成形体において、成形外観、物性バランス、寸法安定性の付与(線膨張係数の低減化など)、寸法や物性などに要求される多様な性能への対応性などの向上効果が大きいなどの点から好ましい。
またさらにこれらの中でガラス繊維、カーボンファイバーおよびセルロースが、汎用性があり入手性も優れ、価格も安価であるので、最も好適に使用される。
本発明にかかるプロピレン系樹脂組成物中に含まれる(D)繊維状フィラーの平均繊維長は0.1〜2mmが好ましく、より好ましくは0.15〜1.5mmであり、さらに好ましくは0.2〜1.3mmである。
なお、上記平均繊維長は、プロピレン系樹脂組成物中に含まれた状態における繊維状フィラーの数値であるが、組成物に含有させる前の繊維状フィラーとしては、平均繊維長が約0.1〜10mm程度のものを例示できる。組成物の調製前にこれらのサイズを有する繊維状フィラーは、後述するプロピレン系樹脂組成物の調製中に割れることで、上記範囲内のサイズとなる。また、組成物に含有させる前の繊維状フィラーの平均繊維径は一般的に用いられる繊維状フィラーの繊維径であれば制限ないが、通常1〜25μmであり、好ましくは5〜17μmであり、より好ましくは8〜15μmである。また、組成物中の繊維状フィラーの平均繊維径は組成物に含有させる前の平均繊維径とほぼ同等である。また、断面が扁平形状等の異形断面繊維も使用することができる。
なお、平均繊維長は、次のように測定することができる。サンプルを電気炉に600℃で3時間処理して、灰化させ、灰化物を画像処理器(例えば、機器名:LUZEX−AP ニレコ製)にて画像処理することによって繊維の長さを計算し、その長さから算出される重量平均繊維長を平均繊維長とする。
(D)繊維状フィラーを供給するための原料としては、短繊維状、長繊維状、クロス状、紙のように抄造で固められたシート状、圧縮魂状、顆粒状など、各種処理を行った形態のものを用いてもよい。特に短繊維状、長繊維状、クロス状、抄造のシート状がハンドリングしやすくまた材料としての性能も上がりやすいので好適に用いられる。また一般にクロス状もしくは抄造のシート状のものは繊維同士の結合が期待できるので材料の強度の向上にきわめて有効であることからクロス状織布または抄造シートが好ましい。
また、これら繊維状フィラーとしては、結晶性樹脂である(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体との接着性あるいは樹脂組成物中での分散性を向上させるなどの目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理されたものを用いてもよい。あるいは表面を熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されたものでも問題ない。
なお、繊維状フィラーは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
<(E)滑剤>
本発明において、(E)滑剤としては、脂肪酸アミド等が挙げられる。脂肪酸アミドの脂肪酸残基としては、炭素数15〜30程度の飽和および不飽和脂肪酸由来の残基が挙げられる。脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、n−オレイルパルミトアミド、n−オレイルエルカアミド、およびそれらの2量体などが挙げられる。これらの滑材は、ランダムポリプロピレン系重合体を用いる場合に特有な使用上のベタツキ感を改良する上で好ましく、中でも、エルカ酸アミドが好ましい。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
<(F)変性ポリプロピレン>
本発明において、(F)変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンを酸変性することにより得られる。ポリプロピレンの変性方法としては、グラフト変性や共重合化がある。
変性に用いる変性剤には不飽和カルボン酸およびその誘導体などがある。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、フタル酸等が挙げられる。また、その誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等がある。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、アクリル酸メチル、メタクル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸および無水フタル酸が好適である。
溶融混練過程で酸変性する場合は、ポリプロピレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体を、有機過酸化物と共に押出機中で混練することにより、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト共重合し、変性する。
上記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に含まれる成分の1つであるガラス繊維とプロピレン系樹脂との親和性の改良に有効であり、特に剛性を上げる点で効果的な場合があり、その観点から(E)変性ポリプロピレンとして無水脂肪酸変性ポリプロピレンが好ましく、特に無水マレイン化変性ポリプロピレンが好ましい。
(F)変性ポリプロピレンとして無水マレイン化変性ポリプロピレンを使用する場合、無水マレイン化変性ポリプロピレンの使用量は、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対してマレイン酸変性基含有量(M値)が0.5〜5.0重量部、さらには0.8〜2.5重量部となる量であることが好ましい。使用量がこの範囲より低い場合は無水マレイン化変性ポリプロピレンによる成形品に対する耐傷付性改良効果が認められず、高い場合は成形品の機械物性における衝撃強度が低下する場合がある。
(F)変性ポリプロピレンを構成するベースとなるポリプロピレンの、135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]は、通常0.2〜2.0dl/g、より好ましくは0.4〜1.0dl/gの範囲にある。
上記無水マレイン化変性ポリプロピレンとしては、具体的に、三井化学アドマー、三洋化成ユーメックス、デュポン社製MZシリーズ、Exxon社製Exxelor、ケムチュラジャパン株式会社製ポリボンドPB3200等の市販品を使用することができる。
<その他成分>
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)と、必要に応じてその他の添加剤とを配合することにより製造することができる。これらの各成分は、任意の順序で配合することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物では、組成物全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上70g/10分以下であることが好ましく、特に、10g/10分以上45g/10分以下であることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物中の上記各成分の配合割合は、成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量部とした場合に、(A):20〜70重量部、(B)5〜45重量部、(C):5〜25重量部、(D):10〜40重量部、(E):0.01〜1.0重量部、(F):0.1〜3重量部である。
成分(A)の配合量として好ましくは25〜65重量部、より好ましくは30〜60重量部である。
成分(B)の配合量として好ましくは5〜40重量部、より好ましくは5〜35重量部である。成分(B)の配合量が5重量部未満であると、成形品の漆黒性が十分発現しない。また、成分(B)の配合量が45重量部を超えると、成形品の剛性が低下する。
成分(C)の配合量として好ましくは7〜25重量部、より好ましくは8〜23重量部である。成分(C)の配合量が5重量部未満であると、成形品は十分な耐衝撃性が得られない。また、成分(C)の配合量が25重量部より大きい場合、成形品の剛性(引張弾性率)が低下してしまう。
成分(D)の配合量として好ましくは10〜30重量部、より好ましくは20〜30重量部である。成分(D)の配合量が10重量部未満であると、成形品の剛性(引張弾性率)の低下がみられる。また、成分(D)の配合量が40重量部より大きい場合、成形品の表面外観が悪化する可能性があり、また成分(D)は繊維状フィラーであるため、成形品のMD方向とTD方向に収縮率の異方性が出易くなり、成形品の反り等が発生する可能性がある。
成分(E)の配合量として好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。成分(E)の配合量が、0.01重量部未満であると、成形品に十分な耐傷付き性能が得られないことがある。また、成分(E)の配合量が1.0重量部より大きい場合、フォギング性が悪化してしまう可能性がある。
成分(F)の配合量として好ましくは0.5〜2重量部、より好ましくは0.5〜1.5重量部である。成分(F)の配合量が、0.1重量部未満であると、繊維状フィラーの分散性が低下し、成形品の衝撃性低下や剛性低下などの機械物性に悪影響を与えることがある。また、成分(F)の配合量が3重量部より大きい場合、成形品の衝撃性が低下する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体を必須の構成成分として含む。成分(A)は比較的柔軟な材料であるため、当該重合体を含む成形品は、他の物体によって傷を付けても弾性回復するので、成形品基材表面の変化が少ないことを確認している。この特徴により、耐傷付き性が良好になると考えている。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)に加えて、(D)繊維状フィラーを含むことにより、成分(A)の柔軟性を補い、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた材料に仕上がる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前記成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)の各成分と、必要に応じて配合するその他の添加剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に射出成形に好適に用いられる。本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品は、優れた機械的特性、金型転写性を有するとともに、引っ掻き傷やテカリ傷などの傷に対する耐性を有する漆黒調外観を与える。
このような本発明のプロピレン系樹脂組成物は、自動車内外装部品、家電製品などの種々の分野に好適に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各成分および本発明のプロピレン系樹脂組成物の特性の測定、並びに本発明のプロピレン系樹脂組成物および成形品の評価は、以下のようにして行った。
(1)メルトフローレート(MFR)の測定
メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠し、試験荷重が2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
(2)酸変性基含有量の測定
酸変性樹脂2gを採取し、500mlの沸騰p−キシレンに完全に加熱溶解した。冷却後、1200mlのアセトンに投入し、析出物を濾過、乾燥してポリマー精製物を得た。ポリマー精製物を熱プレスして厚さ20μmのフィルムを作製した。この作製したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、変性に用いた酸の特有の吸収から、変性に用いた酸の含有量を測定した。尚、変性に用いた酸の特有の吸収は、無水マレイン酸であれば、1780cm-1付近である。
(3)常温シャルピー衝撃強度(kJ/m2)の測定
ISO 179に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量4Jの条件で常温シャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(4)引張弾性率の測定
ISO 527に準拠し、引張速度1mm/minの条件で引張弾性率の測定を実施した。
(5)シボグロスの測定
キャビティサイズが長さ130mm,幅120mm,厚み2mmtでキャビティ表面を皮シボ(深さ90μm)加工した金型を40℃に設定し、樹脂温度210℃に設定し射出成形して得られた成形品のシボ面をグロスメーター(日本電色工業(株)製NDH−300)により光源照射角度60°でシボグロスを測定した。シボグロスが低いということは金型転写性に優れることを意味する。
(6)鏡面グロスの測定
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み2mmtで、成形品表面を鏡面仕上げした成形角板を用い、グロスメーター(日本電色工業(株)製NDH−300)により光源照射角度60°で鏡面グロスを測定した。鏡面グロスが高いということは金型転写性に優れることを意味する。
(7)耐引っ掻き傷性の評価
キャビティサイズが長さ130mm,幅120mm,厚み2mmでキャビティ表面を皮シボ(深さ90μm)加工した金型を40℃に設定し、樹脂温度210℃に設定し射出成形して得られた成形品のシボ面に対しFord 5−Finger Test (針先端R:1.0mm)の試験を実施した後、目視にて白化が認められない最大荷重(N)(白化開始荷重)を評価した。試験を行う荷重は、0.6、2、3、5、7、10、15、20Nとした。白化開始荷重が大きいほど耐引っ掻き傷性が高いと評価される。
(8)漆黒性評価
漆黒性の評価は、得られた角板にLED光源のライト(GEMTOS社製GTR−32T、明るさ26.6ルーメン)を照射し(角板とLED光源のライトの距離は10cm)、目視にて漆黒性の程度を評価した。漆黒性を下記基準の3段階で定め、5人で評価し、5人の点数の合計を漆黒性の評価点とした。
A(3点):LED光源を照射しても、黒く光り、白っぽく見えない。
B(2点):LED光源を照射すると、黒く光るが、若干白っぽく見える。
C(1点):LED光源を照射すると、白っぽく光る。
以下の実施例および比較例において、使用した各成分は、次の通りである。
<(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体>
(A−1)プロピレン・エチレンランダム共重合体
MFR:7g/10min、エチレン由来の構造単位含有量:5.4wt%
(A−2)プロピレン・エチレンランダム共重合体
MFR:10g/10min、エチレン由来の構造単位含有量:5.2wt%
<(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体>
(B−1)プロピレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製 製品名:XM7070)
MFR:7g/10min、プロピレン由来の構造単位含有量:74mol%、
(B−2)プロピレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製 製品名:XM7080)
MFR:7g/10min、プロピレン由来の構造単位含有量:80mol%、
(B−3)プロピレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製 製品名:XM7090)
MFR:7g/10min、プロピレン由来の構造単位含有量:85mol%、
(B−4)プロピレン・エチレン共重合体(MFR(エクソンモービル社製 製品名:Vistamaxx3980) MFR:8g/10分、エチレン由来の骨格含有量:9wt%
<(C)エチレン・α−オレフィン共重合体>
(C−1)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A35070S) MFR:65g/10min
(C−2)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0550S) MFR:1g/10min
<(D)繊維状フィラー>
(D−1)ガラス繊維(日本電気硝子工業株式会社製 製品名:T−480,平均繊維長3mm、平均繊維径13μm)
<(E)滑剤>
(E−1)エルカ酸アミド(ニュートロンS:日本精化製)
<(F)変性ポリプロピレン>
(F−1)無水マレイン化変性ポリプロピレン(ケムチュラジャパン株式会社製 製品名:ポリボンドPB3200)、酸変性基含有量:0.4wt%
<(G)分解剤>
(G−1)パーヘキサ25B−40:日油株式会社製
上記(A−1)および(A−2)のランダム共重合体は以下の方法により製造した。
<(A−1)プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造方法>
(1)マグネシウム化合物の調製
攪拌機付き反応槽(内容積500リットル)を窒素ガスで充分に置換し、エタノール97.2kg、ヨウ素640g、および金属マグネシウム6.4kgを投入し、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応性生物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(2)固体触媒成分の調製
窒素ガスで充分に置換した攪拌機付き反応槽(内容積500リットル)に、前記マグネシウム化合物(粉砕していないもの)30kg、精製ヘプタン(n−ヘプタン)150リットル、四塩化ケイ素4.5リットル、およびフタル酸ジ−n−ブチル5.4リットルを加えた。系内を90℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン144リットルを投入して110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、固体成分に四塩化チタン228リットルを加え、110℃で2時間反応させた後、固体成分を精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
(3)前処理
内容積500リットルの攪拌機付き反応槽に精製ヘプタン230リットルを投入し、前記の固体触媒成分を25kg、トリエチルアルミニウムを固体触媒成分中のチタン原子1.0molに対して1.0mol、ジシクロペンチルジメトキシシランを固体触媒成分中のチタン原子1.0molに対して1.8molの割合で供給した。その後、プロピレンをプロピレン分圧で0.03MPa/Gになるまで導入し、25℃で4時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、固体触媒成分を精製ヘプタンで数回洗浄した後、更に二酸化炭素を供給し24時間攪拌した。
(4)重合
内容量200リットルの攪拌機付き重合装置に、前記処理済の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/hrで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.4mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度80℃、重合圧力2.8MPa/Gでプロピレンとエチレンを反応させた。この時、重合装置内のエチレン濃度を4.0mol%、水素濃度を8.8mol%とした。
その結果、エチレン由来の構造単位含有量5.4wt%、MFR7g/10minのプロピレン・エチレンランダム共重合体(A−1)を得た。
<(A−2)プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造方法>
(1)固体触媒担体の製造
SiO2(富士シリシア製)1600gをトルエン13Lでスラリー化し、常温にて内容量70Lの攪拌機付き反応槽に仕込み、さらにトルエン22Lを入れて液量を調整し攪拌を行った。次に、攪拌しながら槽内温度を47℃まで昇温させた後にトリイソブチルアルミニウムトルエン溶液をトリイソブチルアルミニウム量として300g装入した。次に、槽内温度を50℃に保ち、MAO−トルエン溶液(20wt%溶液)8.4Lを約30分かけて装入した。その後、45分間で槽内温度を95〜98℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却した。冷却後攪拌を停止し、20分間静置して固体成分を沈降させた後、上澄みトルエンを抜き出し、トルエンによる固体成分の洗浄を1回行った。洗浄後、固体成分をトルエンスラリーとし、室温まで冷却した。
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
内容量14Lの攪拌機付き反応槽に(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー3.5L(固体成分として980g)を入れ、攪拌しながら温度を33〜37℃まで昇温した。界面活性剤(ADEKA製アデカプルロニックL−71)7.0gをヘプタン2.0Lで希釈後、反応槽に加え、45分間攪拌し担持を行った。担持終了後攪拌を停止し、70分間静置して固体成分を沈降させ、上澄み液を除去し、ヘプタンによる固体成分の洗浄を2回行った。
グローブボックス内にて、1Lフラスコにジフェニルメチレン(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレン−9−イル)(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエン−1−イル)ジルコニウムジクロライドを20.6g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン2.0Lを加えて上記触媒成分を希釈した後、33〜37℃に保持された前記反応槽に加え、60分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレン−9−イル)(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエン−1−イル)ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーは、室温まで冷却した。
(3)前重合触媒の製造
内容量270Lの攪拌機付き反応槽にあらかじめn−ヘプタン66Lを入れ、室温にてトリイソブチルアルミニウム210gをトルエン1.0Lで希釈し反応槽に加えた後、攪拌しながら温度を33〜37℃まで昇温させた。前記の(2)で調製した固体触媒成分980gを反応槽に移液し、n−ヘプタンにて反応槽内の液量を82Lに調整した。調整後、反応槽内を脱圧し、温度を33〜37℃に保ちながらエチレンを210g/hで60分間、420g/hで60分間、640g/hで240分間、合計で3190g装入し、360分間攪拌しながら反応させた。重合終了後攪拌を停止し、40分間静置して固体成分を沈降させ、上澄み液を除去し、ヘプタンによる固体成分の洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で34g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行い、触媒スラリーを得た。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
(4)本重合
内容量70Lの攪拌機付きベッセル重合器にプロピレンを125kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が0.2mol%になるように供給した。(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として2.5g/時間、トリエチルアルミニウムを8.7ml/時間で連続的に供給した。重合温度は63℃、圧力は2.6MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が0.36mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.6mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを5kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が0.34mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.6mol%になるように供給した。重合温度57℃、圧力2.5MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを12kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が0.35mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.7mol%になるように供給した。重合温度56℃、圧力2.4MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを13kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が0.35mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.8mol%になるように供給した。重合温度55℃、圧力2.4MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーから液相を気化させた後、気固分離を行い、固相を80℃で真空乾燥してプロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。その結果、エチレン由来の構造単位含有量5.2wt%、MFR10g/10minのプロピレン・エチレンランダム共重合体(A−2)を73kg/hで得ることができた。
[実施例1〜7および比較例1〜6]
表1および2に配合割合(重量部)を示す各成分と、さらに酸化防止剤としてIRGANOX1010((株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.1重量部、同じく酸化防止剤としてIRGAFOS168((株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.1重量部、耐光安定剤としてLA−52((株)ADEKA製)0.2重量部、顔料としてMB PPCM 909Y−28((株)東京インキ製)3.5重量部とを配合して、ヘンシェルミキサーでドライブレンドし、二軸押出機(ナカタニ機械(株)製:NR−II、同方向回転2軸押出機)により、バレル温度(混練温度)210℃、スクリュー回転速度200rpm、押出し量20kg/hの条件で混練および押出しを行い、実施例1〜7および比較例1〜6のプロピレン系樹脂組成物を得た。
次いで、各樹脂組成物を用いて、射出成形機にて成形温度200℃、金型温度40℃にてシャルピー衝撃強度および引張弾性率測定用テストピースを成形し、また、成形温度220℃、金型温度40℃にて角板を成形した。得られたテストピースを用いて樹脂物性を、角板を用いて成形体の外観特性を評価した。表1に実施例1〜7の結果、表2に比較例1〜6の結果をそれぞれ示す(両表において、NDは未測定であることを示す)。
Figure 0006596204
Figure 0006596204
実施例1〜実施例6と比較例1〜比較例3との対比より、プロピレン系樹脂組成物中に、(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体と(C)エチレン・α−オレフィン共重合体を共に特定量含有させることは、この組成物から得られる成形体のシボグロスの改善(シボグロス値の低下)と鏡面グロスの改善(鏡面グロス値の向上)のみならず漆黒性の発現につながることが明瞭である。
実施例1と実施例7との対比により、(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体については、チーグラーナッタ触媒により合成されたものでもメタロセン触媒により合成されたものでも、成形体に対しほぼ同等の外観特性を与えることがわかる。
本願発明の必須構成成分である(C)プロピレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素原子数は4〜10)の代わりにプロピレン・エチレン共重合体を用いた比較例4〜6で得られた成形体については、明らかな表面ムラが発生していたか、さもなくばシボグロスが満足できるレベルに達していなかった。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、インパネ、コンソールボックスなどの自動車内外装部品、家電製品等、種々の分野の成形品材料として好適に用いることができる。

Claims (16)

  1. 下記(A)〜(F)を含み、(A)〜(D)の含有量の合計を100重量部としたとき、(A)の含有量が20〜70重量部、(B)の含有量が5〜45重量部、(C)の含有量が5〜25重量部、(D)の含有量が10〜40重量部、(E)の含有量が0.01〜1.0重量部、(F)の含有量が0.1〜3重量部 であるプロピレン系樹脂組成物から形成される自動車内外装部品
    (A)ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、エチレン由来構造単位の含有比率が2〜9mol%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体
    (B)プロピレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合して得られるプロピレン・α−オレフィン共重合体
    (C)エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られ、ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜80g/10分である、エチレン・α−オレフィン共重合体
    (D)繊維状フィラー
    (E)滑剤
    (F)変性ポリプロピレン
  2. 前記(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体に占めるエチレン由来構造単位の含有比率が3〜8mol%である、請求項1に記載の自動車内外装部品
  3. 前記(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンに由来する構造単位を60〜90mol%、1−ブテンに由来する構造単位を10〜40mol%含有し、前記プロピレンから導かれる単位と前記1−ブテンから導かれる単位との合計が100モル%である、請求項2に記載の自動車内外装部品
  4. 前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体に占めるα−オレフィン由来構造単位の含有比率が5〜60mol%である請求項1〜3のいずれかに記載の自動車内外装部品
  5. 前記(D)繊維状フィラーがガラス繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車内外装部品
  6. 前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィン由来構造単位が、プロピレン、1−ブテン、1−へキセンおよび1−オクテン由来の構造単位から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車内外装部品
  7. 前記(E)滑剤がエルカ酸アミドである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車内外装部品
  8. 前記(F)変性ポリプロピレンが無水マレイン化変性ポリプロピレンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車内外装部品
  9. 下記(A)〜(F)を含み、(A)〜(D)の含有量の合計を100重量部としたとき、(A)の含有量が20〜70重量部、(B)の含有量が5〜45重量部、(C)の含有量が5〜25重量部、(D)の含有量が10〜40重量部、(E)の含有量が0.01〜1.0重量部、(F)の含有量が0.1〜3重量部 であるプロピレン系樹脂組成物から形成される家電製品。
    (A)ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが1〜100g/10分であり、エチレン由来構造単位の含有比率が2〜9mol%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体
    (B)プロピレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合して得られるプロピレン・α−オレフィン共重合体
    (C)エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られ、ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜80g/10分である、エチレン・α−オレフィン共重合体
    (D)繊維状フィラー
    (E)滑剤
    (F)変性ポリプロピレン
  10. 前記(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体に占めるエチレン由来構造単位の含有比率が3〜8mol%である、請求項9に記載の家電製品。
  11. 前記(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンに由来する構造単位を60〜90mol%、1−ブテンに由来する構造単位を10〜40mol%含有し、前記プロピレンから導かれる単位と前記1−ブテンから導かれる単位との合計が100モル%である、請求項10に記載の家電製品。
  12. 前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体に占めるα−オレフィン由来構造単位の含有比率が5〜60mol%である請求項9〜11のいずれかに記載の家電製品。
  13. 前記(D)繊維状フィラーがガラス繊維である、請求項9〜12のいずれかに記載の家電製品。
  14. 前記(C)エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィン由来構造単位が、プロピレン、1−ブテン、1−へキセンおよび1−オクテン由来の構造単位から選ばれる1種以上である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の家電製品。
  15. 前記(E)滑剤がエルカ酸アミドである、請求項9〜14のいずれか1項に記載の家電製品。
  16. 前記(F)変性ポリプロピレンが無水マレイン化変性ポリプロピレンである、請求項9〜15のいずれか1項に記載の家電製品。
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