JP2017203070A - プロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】引っ掻き傷やテカリ傷などが生じにくく、さらに機械的特性に優れ、低反り変形性にも優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物を提供する。【解決手段】MFR5〜100g/10分、エチレン含量が3.5質量%を超え、5.0質量%以下のメタロセン触媒使用プロピレン−エチレンランダム共重合体 (A)45〜75部、MFR0.1〜30g/10分のエチレン-α-オレフィン(炭素原子数3-10)共重合体(B)5〜25部、平均繊維長0.1〜2mmの繊維状フィラー(C)20〜30部、滑剤(D)0.01〜1.0部、及び変性ポリプロピレン(E)0.1〜3部を含むプロピレン系樹脂組成物;並びにこの樹脂組成物から形成される自動車内外装部品、家電製品等の成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、機械的特性、耐傷付き性および低反り変形性に優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物に関する。
プロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、その優れた機械物性、成形性、経済性により、自動車部品や家電部品など種々の分野で利用されている。
自動車部品分野では、ポリプロピレンを単体で用いるほか、ポリプロピレンにエチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)、エチレン−オクテン共重合体(EOR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリスチレン−エチレン/ブテン−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)等のゴム成分を添加して衝撃性を改善した材料(特許文献1,2参照)、タルク、マイカ、ガラス繊維等の無機充填剤を添加し剛性を改善した材料、またゴム成分、無機充填剤を共に添加し優れた機械物性を付与したブレンドポリマーが使用されている。
一方、ポリプロピレン成形品は、一般に耐傷付き性が低いことが知られている。ポリプロピレン成形品に生じる傷としては、鋭利な先端部によって成形品の表面が削られることにより生じる引っ掻き傷や、幅のある物体や面積の広い物体または柔らかい物体により成形品の表面が圧迫されたり擦られたりすることにより生じるテカリ傷などがある。
また、近年においては環境負荷の低減が強く要請される中で、成形品の薄肉化による軽量化が追求される傾向が非常に強くなっている。しかし、薄肉成形品では厚肉成形品に比べて反り変形が生じやすいため、それを防止することが喫緊の課題となっている。プロピレン系樹脂は基本的には結晶性樹脂であるため、成形後に結晶成長に伴う成形品の収縮が生じることは原理的に避けがたい問題である。この収縮が大きい場合には、成形品の変形が生じやすくなる。特に、方向によって収縮の度合いが異なる場合、いわゆる収縮率に異方性がある場合には、成形品にいびつな収縮応力が作用する結果、成形品の反り変形が生じる。この課題の解消のためには、繊維状のフィラー成分を添加する技術などが用いられている(例えば、特許文献3参照)が、フィラー成分の添加により透明性が大きく損なわれてしまうという課題がある。なお特許文献4には、機械特性や耐傷つき性に優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物が開示されているが、反り変形の抑制という課題については検討されておらず、かつ具体的な使用触媒や成分(A)のエチレン含量などの構成が後述する本願発明とは相違する。
特開2006−307015号公報 特開2006−316103号公報 特開平5−17642号公報 国際公開第2015/005239号
本発明の目的は、引っ掻き傷やテカリ傷などが生じにくく、さらに機械的特性に優れ、低反り変形性にも優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記のプロピレン系樹脂組成物を用いることで、引っ掻き傷やテカリ傷などが生じにくく、さらに機械的特性に優れた低反り変形性の成形品を製造することができ、このプロピレン系樹脂組成物が自動車内外装部品等を製造するのに好適であることを見出し、発明を完成させた。
下記(A)〜(E)を含み、(A)〜(C)の含有量の合計を100質量部としたとき、(A)の含有量が45〜75質量部、(B)の含有量が5〜25質量部、(C)の含有量が20〜30質量部、(D)の含有量が0.01〜1.0質量部、(E)の含有量が0.1〜3質量部であるプロピレン系樹脂組成物。
(A)ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが5〜100g/10分であり、エチレン由来の構造単位の全構造単位に対する含有比率が3.5質量%を超え、5.0質量%以下である、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
(B)エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとの共重合体であって、ASTM D1238に準拠して測定した190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分である、エチレン−α−オレフィン共重合体
(C)平均繊維長が0.1〜2mmである繊維状フィラー
(D)滑剤
(E)変性ポリプロピレン
本発明において、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体におけるエチレン由来の構造単位の全構造単位に対する含有比率が、3.6質量%〜4.7質量%であることが好ましい。
本発明において、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体中、共重合体の全構造単位に対するα−オレフィン由来の構造単位の含有比率が5〜60mol%であることが好ましい。
本発明において、(C)繊維状フィラーが、ガラス繊維フィラーであることが好ましい。
本発明において、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィン由来の構造単位が、プロピレン、1−ブテン、1−へキセンおよび1−オクテン由来の構造単位から選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明において、(D)滑剤がエルカ酸アミドであることが好ましい。
本発明において、(E)変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物から成形体、例えば自動車内外装部品および家電製品等を形成することができる。
本発明によれば、耐傷付き性および機械的特性、特に剛性と耐衝撃性に優れ、かつ低反り変形性にも優れた成形品を製造することができるプロピレン系樹脂組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、下記特徴を有する(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体、(C)繊維状フィラー、(D)滑剤、および(E)変性ポリプロピレンを含んでなる。以下、それぞれの構成成分および任意に含んでいてもよい成分について詳説する。
<(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体>
本発明において、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレンとエチレンを共重合して得られる。
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体の、ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは5〜100g/10分、好ましくは、5〜75g/10分、より好ましくは5〜50g/10分である。メルトフローレートが5g/10分より小さいと、成形時の樹脂流動性が悪く、インパネやドアトリム等の大型成形品を成形した際、金型細部まで樹脂が充填されない可能性がある。また、メルトフローレートが100g/10分より大きいと、成形品に十分な衝撃性が発現しない。
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体における共重合体の全構造単位に対するエチレン由来の構造単位の含有比率は、3.5質量%超え、5.0質量%以下であり、好ましくは3.6〜4.7質量%、より好ましくは3.7〜4.5質量%、特に好ましくは3.7質量%以上、4.2質量%未満である。なお、共重合体中のエチレン由来の構造単位の含有比率は、赤外分光分析法あるいはNMRにて測定することができる。含有比率が5.0質量%を超えると、成形品の耐衝撃性と剛性のバランスが悪化する傾向にある。また、含有比率が3.5質量%以下であると、反り変形がやや増大する傾向にある。
本発明において、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン単独重合体は、公知のメタロセン触媒を用いて重合されたものである。
メタロセン触媒は、特に限定されないが、例えば国際公開第2001/27124号に記載されたものなどが挙げられる。好適なメタロセン系触媒としては、例えば、
(F)周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物、並びに
(G)(g−1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(g−2)架橋した前記メタロセン化合物(F)と反応してイオン対を形成する化合物、および、
(g−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種以上の化合物
からなるオレフィン重合用触媒を挙げることができる。
本発明において、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.6〜3.4、特に好ましくは1.8〜3.3である。この分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。
本発明において、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレン単独重合体に比べて、弾性回復性や柔軟性が高いため、当該重合体を含む成形品が外部からの力により傷ついても、その傷がある程度修復され目立たなくなる傾向にある。
<(B)エチレン−α−オレフィン共重合体>
本発明において、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られる。α−オレフィンは好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンから選ばれ、α−オレフィンは1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。これらのモノマーを用いるのが、弾性回復性、柔軟性および耐傷付き性の点から特に好ましい。
(B)エチレン・α−オレフィン共重合体のASTM D1238に準拠して測定した190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートは0.1〜30g/10分、好ましくは1〜20g/10分、より好ましくは1〜10g/10分である。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合、樹脂流動性の低下や混練時の分散不良が起こり易く、成形品の耐衝撃性等の物性の低下や成形品表面外観の悪化に繋がる。一方、30g/10分を超えると成形品に十分な耐衝撃性が得られない場合があるので好ましくない。
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体における、共重合体の全構造単位に対するα−オレフィン由来の構造単位の含有比率は、好ましくは5〜60mol%、より好ましくは7〜50mol%、特に好ましくは10〜45mol%である。
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。
<(C)繊維状フィラー>
本発明において、(C)繊維状フィラーとしては、例えば、カーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、各種金属繊維、綿、セルロース類、絹、羊毛および麻などの天然繊維、レーヨンおよびキュプラなどの再生繊維、アセテートおよびプロミックスなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミドおよびポリオレフィンなどの合成繊維、さらにはそれらの表面および末端を化学修飾した変性繊維などが挙げられる。
これらのなかで、ナノセルロース、TEMPO酸化ナノセルロースなどのセルロース類;ガラス繊維;カーボンファイバー;シングルウオールカーボンナノチューブ、マルチウオールカーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブが、本発明の樹脂組成物、および樹脂組成物からなる成形体において、成形外観、物性バランス、寸法安定性の付与(線膨張係数の低減化など)、寸法や物性などに要求される多様な性能への対応性などの点から好ましい。
さらに、これらの中でガラス繊維、カーボンファイバーおよびセルロースが、汎用性があり入手性も優れ、価格も安価であるので、最も好適に使用される。
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に含まれる(C)繊維状フィラーの平均繊維長は0.1〜2mmであり、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.3mmである。
(C)繊維状フィラーの平均繊維長は、プロピレン系樹脂組成物中に含まれた状態における繊維状フィラーの数値であるが、組成物に含有させる前の繊維状フィラーとしては、平均繊維長が約0.1〜10mm程度のものを例示できる。組成物の調製前にこれらのサイズを有する繊維状フィラーは、後述するプロピレン系樹脂組成物の調製中に割れることで、上記範囲内のサイズとなる。また、組成物に含有させる前の繊維状フィラーの平均繊維径は一般的に用いられる繊維状フィラーの繊維径であれば制限ないが、通常1〜25μmであり、好ましくは5〜17μm、より好ましくは8〜15μmである。また、組成物中の繊維状フィラーの平均繊維径は組成物に含有させる前の平均繊維径とほぼ同等である。
(C)繊維状フィラーの平均繊維長は、次のように測定することができる。サンプルを電気炉に600℃で3時間処理して、灰化させ、灰化物を画像処理器(例えば、LUZEX(登録商標)−AP、ニレコ社製)にて画像処理することによって繊維の長さを計算し、その長さから算出される重量平均繊維長を平均繊維長とする。
(C)繊維状フィラーを供給するための原料の形態は、短繊維状、長繊維状、クロス状、紙のように抄造で固められたシート状、圧縮魂状、顆粒状など、各種処理を行った形態のものを用いてもよい。特に短繊維状、長繊維状、クロス状、抄造のシート状がハンドリングしやすくまた材料としての性能も上がりやすいので好適に用いられる。また一般にクロス状もしくは抄造のシート状のものは、繊維同士の結合が期待できるので材料の強度の向上にきわめて有効であることから好ましい。
(C)繊維状フィラーとしては、結晶性樹脂である(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン単独重合体との接着性あるいは樹脂組成物中での分散性を向上させるなどの目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理されたものを用いてもよい。あるいは表面を熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されたものでも問題ない。
なお、(C)繊維状フィラーは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
<(D)滑剤>
本発明において、(D)滑剤としては、脂肪酸アミド等が挙げられる。脂肪酸アミドの脂肪酸残基としては、炭素数15〜30程度の飽和および不飽和脂肪酸由来の残基が挙げられる。脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、n−オレイルパルミトアミド、n−オレイルエルカアミド、およびそれらの2量体などが挙げられる。これらの滑材は、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体を用いる場合に特有な使用上のベタツキ感を改良する上で好ましく、中でも、エルカ酸アミドが好ましい。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
<(E)変性ポリプロピレン>
本発明において、(E)変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンを酸変性することにより得られる。ポリプロピレンの変性方法としては、グラフト変性や共重合化がある。
変性に用いる変性剤には不飽和カルボン酸およびその誘導体などがある。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、フタル酸等が挙げられる。また、その誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等がある。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸および無水フタル酸が好適である。
溶融混練過程で酸変性する場合は、ポリプロピレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体を、有機過酸化物と共に押出機中で混練することにより、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト共重合し変性する。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等を挙げることができる。
本発明は、例えばガラス繊維とプロピレン系樹脂との親和性の改良に有効であり、特に剛性を上げる点で効果的な場合があり、その観点から(E)変性ポリプロピレンとして無水脂肪酸変性ポリプロピレンが好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
(E)変性ポリプロピレンとして無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用する場合、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの使用量は、プロピレン系樹脂組成物100質量部に対してマレイン酸変性基含有量(M値)が0.5〜5.0質量部、さらには0.8〜2.5質量部となる量であることが好ましい。使用量がこの範囲より低い場合は成形品に対する耐傷付き性改良効果が認められず、高い場合は成形品の機械物性における衝撃強度が低下する場合がある。
(E)変性ポリプロピレンを構成するベースとなるポリプロピレンの、135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]は、通常0.2〜2.0dl/g、より好ましくは0.4〜1.0dl/gである。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、具体的には、三井化学社製アドマー(登録商標)、三洋化成工業社製ユーメックス(登録商標)、デュポン社製MZシリーズ、Exxon社製Exxelor(登録商標)、ケムチュラジャパン株式会社製ポリボンドPB3200等の市販品を使用することができる。
<その他成分>
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)と、必要に応じてその他の添加剤とを配合することにより製造することができる。これらの各成分は、任意の順序で配合することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物では、組成物全体のASTM D1238に準拠して測定したメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上70g/10分以下であることが好ましく、特に、10g/10分以上45g/10分以下であることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物中の上記各成分の配合割合は、成分(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とした場合に、(A):45〜75質量部、(B)5〜25質量部、(C):20〜30質量部、(D):0.01〜1.0質量部、(E):0.1〜3質量部である。
成分(A)の配合量は、好ましくは45〜75質量部、より好ましくは55〜75質量部である。成分(A)の配合量が45質量部未満であると、成形品のテカリ傷等の耐傷付き性が低下する。また、成分(A)の配合量が75質量部より大きいと、成形品の剛性が低下する。
成分(B)の配合量は、好ましくは7〜25質量部、より好ましくは8〜23質量部である。成分(B)の配合量が5質量部未満であると、成形品は十分な耐衝撃性が得られない。また、成分(B)の配合量が25質量部より大きい場合、成形品の剛性(引張弾性率)が低下してしまう。
成分(C)の配合量は、好ましくは20〜30質量部である。成分(C)の配合量が20質量部未満であると、成形品の剛性(引張弾性率)の低下がみられる。また、成分(C)の配合量が30質量部を超える場合、成形品の表面外観が悪化する可能性があり、また繊維状フィラーであるため、成形品のMD方向とTD方向に収縮率の異方性が出易くなり、成形品の反り等が発生する可能性がある。
成分(D)の配合量は、好ましくは0.05〜0.7質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。成分(D)の配合量が、0.01質量部未満であると、成形品に十分な耐傷付き性能が得られないことがある。また、成分(D)の配合量が1.0質量部より大きい場合、フォギング性が悪化してしまう可能性がある。
成分(E)の配合量は、好ましくは0.5〜2質量部、より好ましくは0.5〜1.5質量部である。成分(E)の配合量が、0.1質量部未満であると、繊維状フィラーの分散性が低下し、成形品の衝撃性や剛性などの機械物性に悪影響を与えることがある。また、成分(E)の配合量が3質量部より大きい場合、成形品の衝撃性が低下する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体を必須の構成成分として含む。成分(A)は比較的柔軟な材料であるため、当該重合体を含む成形品は、他の物体によって傷を付けても弾性回復するので、成形品基材表面の変化が少ないことを確認している。この特徴により、耐傷付き性が良好になると考えられる。
また、成分(A)は結晶化温度が低い材料であるため、成形品表面にシボ形状を形成する場合に、形状が十分転写するまで組成物が固化しないので、シボ転写性が良好になり、成形品表面のグロスが低下し、テカリ傷を抑えることが可能になると考えられる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)に加えて、(C)繊維状フィラーを含むことにより、成分(A)の柔軟性を補い、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた材料に仕上がる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の各成分と、必要に応じて配合するその他の添加剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に射出成形に好適に用いられる。本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品は、優れた機械的特性を有するとともに、引っ掻き傷やテカリ傷などの傷に対する耐性及び反り変形に対する耐性を有する。
このような本発明のプロピレン系樹脂組成物は、自動車内外装部品、家電部品などの種々の分野に好適に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各成分および本発明のプロピレン系樹脂組成物の特性の測定、並びに本発明のプロピレン系樹脂組成物および成形品の評価は、以下のようにして行った。
(1)メルトフローレートの測定
メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠し、試験荷重が2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
(2)変性基含有量の測定
酸変性樹脂2gを採取し、500mlの沸騰p−キシレンに完全に加熱溶解した。冷却後、1200mlのアセトンに投入し、析出物を濾過、乾燥してポリマー精製物を得た。ポリマー精製物を熱プレスして厚さ20μmのフィルムを作製した。この作製したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、変性に用いた酸の特有の吸収から、変性に用いた酸の含有量を測定した。尚、変性に用いた酸の特有の吸収は、無水マレイン酸であれば、1780cm-1付近である。
(3)分子量分布(Mw/Mn)の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を求めた。
(4)常温シャルピー衝撃強度(kJ/m2)の測定
ISO 179に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量4Jの条件で常温シャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(5)引張弾性率の測定
ISO 527に準拠し、引張速度1mm/minの条件で引張弾性率の測定を実施した。
(6)シボグロスの測定
キャビティサイズが長さ130mm,幅120mm,厚み2mmtでキャビティ表面を皮シボ(深さ90μm)加工した金型を40℃に設定し、樹脂温度210℃に設定し射出成形して得られた成形品のシボ面をグロスメーター(コニカミノルタ(株)製UNIGLOSS60)により光源照射角度60°でシボグロスを測定した。
(7)反り変形評価(平均反り)
140×150×2mmの平板を用いて評価した。成形は、シリンダ温度:210℃、金型温度:40℃で実施した。定盤上で平板成形品の側端を基盤に固定し、エンド側端の最も基盤と離れた高さを測定した。
以下の実施例および比較例において、使用した各成分は、次の通りである。
<(A)プロピレン・エチレンランダム共重合体>
(A−1)メタロセン触媒を用いて調製したプロピレン・エチレンランダム共重合体。MFR:60g/10min、エチレン量由来の構造単位含有量:4.1質量%、分子量分布:2.4
(A−2)メタロセン触媒を用いて調製したプロピレン・エチレンランダム共重合体。MFR:60g/10min、エチレン量由来の構造単位含有量:2.2質量%、分子量分布:2.4
(A−3)メタロセン触媒を用いて調製したプロピレン・エチレンランダム共重合体。
MFR:60g/10min、エチレン量由来の構造単位含有量:1.0質量%、分子量分布:2.7
<(B)エチレン・α−オレフィン共重合体>
(B−1)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A4050S、以下の説明では、TF−1と略記する場合がある)
MFR (190℃):3.6g/10min、
(B−2)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A1050S、以下の説明では、TF−2と略記する場合がある)
MFR (190℃):1.2g/10min、
(B−3)エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A0250S、以下の説明では、TF−3と略記する場合がある)
MFR(190℃):0.24g/10min、
<(C)繊維状フィラー>
ガラス繊維フィラー(日本電気硝子工業株式会社製 製品名:T−480,平均繊維長3mm、平均繊維径13μm)
<(D)滑剤>
エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロン(登録商標)S)
<(E)変性ポリプロピレン>
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ケムチュラジャパン株式会社製 製品名:ポリボンドPB3200)、酸変性基含有量:0.4質量%
なお、前記(A−1)〜(A−3)のプロピレン単独重合体は、本出願人によって出願され国際公開第2010/5239号として公開されている明細書に記載された処方を基本として、ジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドとメチルアルミノキサンを組み合わせたメタロセン触媒の存在下で、プロピレンとエチレンを共重合させることによって得た重合体である。
[実施例1〜3および比較例1〜4]
表1に配合割合(質量部)を示す各成分と、さらに酸化防止剤として(株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のIRGANOX(登録商標)1010を0.1質量部、同じく酸化防止剤として(株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のIRGAFOS168を0.1質量部、耐光安定剤として(株)ADEKA製のLA−402AFを0.15質量部、耐光安定剤としてBASF製のTinuvin(登録商標)を0.10質量部配合して、ヘンシェルミキサーでドライブレンドし、二軸押出機(ナカタニ機械(株)製NR−II、同方向回転2軸押出機)により、バレル温度(混練温度)210℃、スクリュー回転速度200rpm、押出し量20kg/hrの条件で混練および押出しを行い、実施例1〜3および比較例1〜4のプロピレン系樹脂組成物を得た。
次いで、各樹脂組成物を用いて、射出成形機にて成形温度200℃、金型温度40℃にてシャルピー衝撃強度および引張弾性率測定用テストピースを成形し、また、成形温度220℃、金型温度40℃にて角板を成形した。得られたテストピースを用いて樹脂物性を、角板を用いて成形体の外観特性を評価した。表1に実施例1〜3、比較例1〜4の結果をそれぞれ示す。
Figure 2017203070
実施例1〜3と比較例1、3および4との対比により、成分(A)のエチレン由来構造単位の含有量が3.5質量%未満であると、平均反りが悪化することが分かる。
実施例2と比較例2との対比により、成分(A)のエチレン由来構造単位の含有量が3.5質量%超えている場合であっても、成分(C)の含有量が20質量%に満たない場合は、平均反りが悪化してしまうことも分かる(ただし、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100質量%とする)。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、インパネ、コンソールボックスなどの自動車内外装部品、家電部品等、種々の分野のシボ模様付き成形品材料として好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記(A)〜(E)を含み、(A)〜(C)の含有量の合計を100質量部としたとき、(A)の含有量が45〜75質量部、(B)の含有量が5〜25質量部、(C)の含有量が20〜30質量部、(D)の含有量が0.01〜1.0質量部、(E)の含有量が0.1〜3質量部であるプロピレン系樹脂組成物。
    (A)ASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが5〜100g/10分であり、エチレン由来の構造単位の全構造単位に対する含有比率が3.5質量%を超え、5.0質量%以下である、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
    (B)エチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとの共重合体であって、ASTM D1238に準拠して測定した190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分である、エチレン−α−オレフィン共重合体
    (C)平均繊維長が0.1〜2mmである繊維状フィラー
    (D)滑剤
    (E)変性ポリプロピレン
  2. (A)プロピレン−エチレンランダム共重合体におけるエチレン由来の構造単位の全構造単位に対する含有比率が、3.6質量%〜4.7質量%である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  3. (B)エチレン−α−オレフィン共重合体中、共重合体の全構造単位に対するα−オレフィン由来の構造単位の含有比率が5〜60mol%である請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. (C)繊維状フィラーが、ガラス繊維フィラーである請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. (B)エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィン由来の構造単位が、プロピレン、1−ブテン、1−へキセンおよび1−オクテン由来の構造単位から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  6. (D)滑剤が、エルカ酸アミドである請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  7. (E)変性ポリプロピレンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物から形成される成形体。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物から形成される自動車内外装部品。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物から形成される家電製品。

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