JP4430761B2 - 軟質ポリプロピレン組成物からなる層を含む積層体 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、軟質ポリプロピレン組成物からなる層を含む積層体に関し、さらに詳しくは、柔軟性および透明性に優れ、かつ積層体を構成する各層間の接着強度が高い積層体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリプロピレンは安価で機械的特性、衛生適合性、耐水蒸気透過性に優れ、成形品外観が良好である等の特長を有することから、中空成形品などの包装材料に広く使用されている。
【0003】
ところでポリプロピレンは成形性に優れるものの、その成形品の表面は耐傷付性、柔軟性に劣り、また成形品の透明性が低いため包装材料である場合に内容物の外観が実物に比べて劣って見える等の問題があり、その改良が望まれていた。
【0004】
例えばポリプロピレンからなる容器を多層構造とし、最外層を加硫ゴム等の軟質な組成物層とすることにより表面の柔軟性を増大させることが行われており、また内層を酢酸ビニル重合体層とすることにより、柔軟性やその他の特性を改良する試みがなされている。
【0005】
しかしながら、最外層を軟質な組成物層とするこの方法では、柔軟性は改善されるが、耐傷つき性、透明性の点では十分であるとは言い難く、またエチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物を積層した場合、接着層を設けても、充分な接着強度が発現しないなどの問題があった。
【0006】
【本発明の目的】
本発明は、上述したような問題点を解決しようとするものであって、耐傷つき性、透明性および柔軟性に優れ、かつ積層体を構成する各層間の接着強度が高い積層体を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係る積層体は、
(I)熱可塑性重合体からなる層(以下「熱可塑性重合体層」という。)と、
(II)下記軟質ポリプロピレン組成物からなる層(以下「軟質ポリプロピレン組成物層」という。)とを含むことを特徴としている;
軟質ポリプロピレン組成物:
(A)プロピレンから導かれる繰返し単位およびエチレンから導かれる繰返し単位、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位からなり、前記プロピレンから導かれる繰返し単位を90〜99モル%の割合で、エチレンから導かれる繰返し単位(b)を0.5〜9モル%の割合で、前記炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を0〜9.5モル%の割合で含み、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜6dl/gの範囲にあるプロピレン系ランダム共重合体と、
(B)炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を20モル%以上の割合で含み、示差走査型熱量計により測定した融解ピークが実質的に観測されず、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度Tgが10℃以下である非晶性α-オレフィン系共重合体とからなり、
上記プロピレン系ランダム共重合体(A)と上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との重量比{(A)/(B)}が90/10〜10/90の範囲にある。
【0008】
上記プロピレン系ランダム共重合体(A)は、示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが
70<Tm<155−5.5(100−P)
(式中、Pはプロピレン系ランダム共重合体(A)中のプロピレンから導かれる繰返し単位の含量(モル%)である。)
の範囲にあり、かつプロピレンのtriad連鎖でみたミクロアイソタクチシティーが0.8以上の共重合体であることが好ましい。
【0009】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、炭素原子数3〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位(U1)を50〜99モル%の割合で含み、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれ、前記繰返し単位とは異なる繰返し単位(U2)を1〜50モル%の割合で含む共重合体であることが好ましい。
【0010】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位を1〜50モル%の割合で含み、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を50〜99モル%の割合で含む共重合体であることも好ましい。
【0011】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位と、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位とを含む共重合体であることも好ましい。
【0012】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位を1〜50モル%の割合で含み、プロピレンから導かれる繰返し単位を50〜99モル%の割合で含み、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を1〜49モル%の割合で含む共重合体であることも好ましい。
【0013】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、
エチレンから導かれる繰返し単位と、
プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位と、
エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ブタジエン、イソプレン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエンおよび4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエンのから選ばれるポリエン系不飽和化合物から導かれる繰返し単位とを含む共重合体であることも好ましい。
【0014】
上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、
(a)下記一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b-1)上記遷移金属化合物(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物(以下「イオン化イオン性化合物(b-1)」という。)、
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物
とからなるメタロセン系触媒(1)を用いて製造されたものであることが好ましい;
【0015】
【化2】
【0016】
(式(1)、(2)中、Mは、Ti、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、Cp1 およびCp2 は、Mとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1 およびX2 は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、Yは、窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子またはこれらの原子を含有する基である。)。
【0017】
上記軟質ポリプロピレン組成物は、さらにエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)、水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(D)、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)、エチレン・スチレン系共重合体(F)、エチレン・ジエン共重合体(G)およびエチレン・トリエン共重合体(H)から選ばれる少なくとも1種の共重合体を含有していてもよい。
【0018】
上記熱可塑性重合体は、ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物から選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。また上記ポリオレフィンは、エチレン(共)重合体またはアイソタクティックプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る積層体は、少なくとも3層からなり、少なくとも一方の表面層が軟質ポリプロピレン組成物層(II)であることが好ましい。
本発明に係る積層体は、熱可塑性重合体層(I)と軟質ポリプロピレン組成物層(II)との間に接着性重合体からなる層が設けられていてもよい。
【0020】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る軟質ポリプロピレン組成物からなる層を含む積層体について具体的に説明する。
【0021】
本発明に係る積層体は、
(I)熱可塑性重合体層と、
(II)下記軟質ポリプロピレン組成物層とを含んでいる。
【0022】
(I)熱可塑性重合体層
本発明に係る積層体を構成する熱可塑性重合体層(I)は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物から選ばれる少なくとも1種の重合体から形成されており、中でもポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物から形成されることが好ましく、ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物から形成されることがさらに好ましい。
【0023】
ポリオレフィンのなかでは、エチレン系重合体が好ましい。
エチレン・酢酸ビニル共重合としてはエチレン含量が15〜60モル%、好ましくは25〜50モル%が好ましく、また190℃で測定されるメルトフローレートは0.1〜500g/10分の範囲にあり、好ましくは0.1〜400g/10分、さらに好ましくは0.1〜300g/10分である。
【0024】
またエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物はエチレン含有量が15〜60モル%、好ましくは25〜50モル%のエチレン・酢酸ビニル共重合体を、その鹸化度が50%以上、好ましくは90%以上になるように鹸化したものが用いられる。オレフィン含有量が上記のような範囲内にあると、熱分解しにくく、溶融成形が容易で、延伸性、耐水性に優れるとともに、耐ガス透過性に優れる。また、鹸化度が50%以上であると、耐ガス透過性に優れる。
【0025】
エチレン(共)重合体としては、例えば後述するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)が挙げられる。
( II )軟質ポリプロピレン組成物層
本発明に係る積層体を構成する軟質ポリプロピレン組成物層(II)は、
下記プロピレン系ランダム共重合体(A)と
下記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)とを含む組成物から形成されている。
【0026】
(A)プロピレン系ランダム共重合体
プロピレン系ランダム共重合体(A)は、プロピレンから導かれる繰返し単位(以下「プロピレン単位」という。)およびエチレンから導かれる繰返し単位(以下「エチレン単位」という。)、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位(以下「α−オレフィン単位」という。)からなる共重合体、すなわちプロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体であって、
プロピレン単位を90〜99モル%、好ましくは90〜98モル%、さらに好ましくは92〜98モル%の割合で、
エチレン単位を0.5〜9モル%、好ましくは0.5〜8モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%の割合で、
α-オレフィン単位を0〜9.5モル%、好ましくは0〜8.5モル%、さらに好ましくは0〜7モル%の割合で含んでいる。
【0027】
ここで炭素原子数4〜20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコサンなどが用いられ、このうち1-ブテンが好ましい。
【0028】
上記プロピレン系ランダム共重合体(A)は、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、0.5〜6dl/g、好ましくは1.0〜4dl/gの範囲にあることが望ましい。極限粘度がこのような範囲にあると、プロピレン系ランダム共重合体(A)は、良好な流動性を示し、他の成分と配合し易く、また得られた組成物から機械的強度に優れた成形品が得られる傾向がある。
【0029】
また上記プロピレン系ランダム共重合体(A)は、示差走査型熱量計によって測定される融点(Tm)が
70<Tm<155−5.5(100−P)
好ましくは
90<Tm<155−5.5(100−P)
(式中、Pはプロピレン系ランダム共重合体(A)中のプロピレンから導かれる繰返し単位の含量(モル%)である。)
の範囲にある。融点がこのような範囲にあると、プロピレン系ランダム共重合体(A)は、透明性、耐ブロッキング性に優れる傾向にある。
【0030】
さらにプロピレン系ランダム共重合体(A)は、プロピレン単位のtriad連鎖でみたミクロアイソタクチシティー(以下「mm分率」ということがある。)が0.8以上、好ましくは0.85以上の範囲にあることが望ましい。mm分率がこのような範囲にあると、結晶化速度が速く、加工性に優れる。
【0031】
このプロピレン系ランダム共重合体(A)のトリアドタクティシティは、該共重合体の13C−NMRスペクトルおよび下記式により、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の強度(面積)比として求められる。
【0032】
mm分率=PPP(mm)/{PPP(mm)+PPP(mr)+PPP(rr)}
(式中、PPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)は、それぞれ13C−NMRスペクトルの下記シフト領域で観察される頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の面積である。)
【0033】
【表1】
【0034】
このようなPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)は、それぞれ下記構造の頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖を示す。
【0035】
【化3】
【0036】
なおメチル炭素領域内(19〜23ppm)では、上記のような頭−尾結合プロピレン単位3連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基以外にも、下記のような他の連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基ピークが観測される。mm分率を求める際には、このようなプロピレン単位3連鎖に基づかないメチル基のピーク面積を下記のように補正する。なおPはプロピレン単位を示し、Eはエチレン単位を示す。
【0037】
▲1▼第2領域内では、プロピレン同士が頭−尾結合したPPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
このメチル基ピークの面積は、PPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(30.6ppm 付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
【0038】
▲2▼第3領域内では、EPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
このメチル基ピーク面積は、EPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(32.9ppm 付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
【0039】
▲3▼第2領域および第3領域内では、エチレン・エチレンランダム共重合体中に少量含まれる、下記部分構造(i)、(ii)および(iii)で示されるような位置不規則単位中のメチル基C〜E’に由来するピークが観察される。
【0040】
第2領域では、メチル基Cピーク、メチル基Dピークおよびメチル基D’ピークが観測され、
第3領域では、メチル基Eピークおよびメチル基E’ピークが観測される。
【0041】
なお位置不規則単位(i)〜(iii)中のメチル基中、メチル基Aピークおよびメチル基Bピークは、それぞれ17.3ppm、17.0ppmで観測され、第1〜3領域内では観測されない。
【0042】
【化4】
【0043】
メチル基Cのピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
メチル基Dのピーク面積は、構造(ii)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm 付近および34.5ppm 付近)のピーク面積の和の1/2より求めることができる。
【0044】
メチル基D’のピーク面積は、構造(iii)のメチル基E’に隣接するメチン基に基づくピーク(33.3ppm 付近)の面積より求めることができる。
メチル基Eのピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm 付近)のピーク面積より求めることができる。
【0045】
メチル基E’のピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm 付近)のピーク面積より求めることができる。
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖中の第2プロピレン単位の側鎖メチル基のピーク面積を求めることができる。
【0046】
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989) )を参考にして帰属することができる。
このようなプロピレン系ランダム共重合体(A)は、例えば触媒として公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、または下記メタロセン系触媒(2)を用いて製造することができる。
【0047】
プロピレン系ランダム共重合体(A)の製造に用いられるメタロセン系触媒(2)としては、
(a')下記一般式(3)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b-1')上記遷移金属化合物(a')中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物(以下「イオン化イオン性化合物(b-1')」という。)、
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン、アルモキサンともいう。)、
(b-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物
とから形成される触媒が挙げられる。
【0048】
【化5】
【0049】
式中、Mは周期表第4〜6族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンであり、好ましくはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特に好ましくはジルコニウムである。
【0050】
R1 およびR2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基である。
【0051】
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、
炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基;
ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;
ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;
フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニリル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられ、
ハロゲン化炭化水素基としては、上記炭素原子数1〜20の炭化水素基がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0052】
またメチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルフェニルなどのケイ素置換アリール基などのケイ素含有置換基;
ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などの酸素含有置換基;
前記含酸素化合物の酸素がイオウに置換したイオウ含有基;
アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などの窒素含有基;
ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などのリン含有基が挙げられる。
【0053】
R1 としては、これらのうちでも水素原子、メチル基、炭素原子数2〜6の炭化水素基、芳香族基などが好ましく、特にメチル基、炭素原子数2〜6の炭化水素基が好ましい。
【0054】
R2 としては、これらのうち水素原子、炭化水素基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
R3 は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、およびこの炭化水素基がハロゲン原子、ケイ素含有基で置換された基であり、中でも炭素原子数3〜20の2級もしくは3級アルキル基または芳香族基であることが望ましい。
【0055】
具体的には、2級もしくは3級アルキル基としては、i-プロピル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,3-ジメチルブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、iso-ヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられ、
芳香族基としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニリル、α-またはβ-ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルなどのアリール基、
ベンジル、フェニルエチル、フエニルプロピル、トリルメチルなどのアリールアルキル基などが挙げられ、これらは2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
【0056】
これらの基は、R1 で示したようなハロゲン原子、ケイ素含有基などで置換されていてもよい。
R4 は、水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基である。
【0057】
アルキル基として具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの鎖状アルキル基および環状アルキル基が挙げられる。
【0058】
これらの基は、R1 で示したようなハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよい。
X1 およびX2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基である。
【0059】
具体的には、ハロゲン原子、酸素含有基、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基は、前記R1 と同様である。
イオウ含有基としては、前記R1 で示された基とともにさらにメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどスルフィネート基が挙げられる。
【0060】
Yは、炭素数原子1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR5−、−P(R5)−、−P(O)(R5 )−、−BR5 −または−AlR5 −(ただしR5は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2-エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2-エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、
クロロメチレンなどの上記炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基、
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2-ジシリル、テトラフェニル-1,2- ジシリルなどのアルキルジシリル、アルキルアリールジシリル、アリールシリル基などの2価のケイ素含有基、
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基、
上記2価のケイ素含有基のケイ素をスズに置換した2価のスズ含有基置換基などであり、
R5 は、前記R1 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0061】
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基であることが好ましく、さらに2価のケイ素含有基であることが好ましく、このうち特にアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンであることが好ましい。
【0062】
以下に上記一般式(3)で表される遷移金属化合物(a')を具体的に例示する。
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-n-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-n-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-sec-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-n-ペンチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-n-ヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-シクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-メチルシクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-フェニルエチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-フェニルジクロルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-クロロメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-トリメチルシリレンメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-トリメチルシロキシメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(i-プロピル)シリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(n-ブチル)シリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(シクロヘキシル)シリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-i-プロピル-7-エチルインデニル)}ジルコニウムジブロミド
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピル-1-インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピル-1-インデニル)ジルコニウム-ビス{1-(トリフルオロメタンスルホナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピル-1-インデニル)ジルコニウム-ビス{1-(p-フェニルスルフィナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-フェニル-4-i-プロピル-7-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0063】
上記のような式(3)で示される遷移金属化合物(a')のうち、下記式(4)で示される遷移金属化合物を好ましく用いることができる。
【0064】
【化6】
【0065】
式中、M、X1 、X2 、R1 、R3 およびYは、上記一般式(3)中のM、X1 、X2 、R1 、R3 およびYと同義あり、好ましくはR1 は水素原子、メチル基または芳香族基である。
【0066】
このような一般式(4)で示される好ましい遷移金属化合物を以下に例示する。
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(1-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(2-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-フルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(ペンタフルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(m-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o,p-ジクロロフェニル)フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(m-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o,o'-ジメチルフェニル)-1-インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-エチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-i-プロピルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ベンジルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(m-ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-トリメチルシリレンフェニル) インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(m-トリメチルシリレンフェニル)-1-インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-フェニル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(i-プロピル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(n-ブチル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジシクロヘキシルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジブロミド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムクロリドSO2Me、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムクロリドOSO2Me、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}チタニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ハフニウムジクロリドなど。
【0067】
上記のうちでもR1 がメチル基である化合物が好ましい。
また上記一般式(4)において、R1 が炭素原子数2〜6の炭化水素基であり、R3 が炭素原子数6〜16のアリール基である遷移金属化合物も好ましく用いられる。このような好ましい化合物を以下に例示する。
【0068】
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(o-メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(m-メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(p-メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,3-ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,4-ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,5-ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,4,6-トリメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(o-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(m-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(p-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,3-ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,6-ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(3,5-ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2-ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(3-ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-トリメチルシリレンフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(8-メチル-9-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ペンチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ペンチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(9-アントリル)インデル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(β-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-ネオペンチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-ネオペンチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ヘキシル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ヘキシル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-アントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-n-エチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなど。
【0069】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属をチタニウム金属、ハフニウム金属、バナジウム金属、ニオブ金属、タンタル金属、クロム金属、モリブデン金属、タングステン金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0070】
上記遷移金属化合物(a')は、通常ラセミ体がオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
上記のような遷移金属化合物(a')は、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63〜67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762 号明細書および実施例に準じて製造することができる。
【0071】
イオン化イオン性化合物(b-1')としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0072】
ルイス酸としては、BR3 (式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、MgCl2、Al2O3、SiO2-Al2O3などが挙げられる。
【0073】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、例えばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0074】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0075】
カルボラン化合物としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0076】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0077】
従来公知のアルミノキサンは、具体的には、下記一般式で表される。
【0078】
【化7】
【0079】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
mは2以上の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
【0080】
ここで、アルミノキサンは式(OAl(R1))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R1およびR2はRと同様の炭化水素基であり、R1およびR2は相異なる基を示す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0081】
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷あるいは水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0082】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解あるいはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0083】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0084】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
また、アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として、下記一般式で表されるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0085】
(i-C4H9)x Aly (C5 H10)z
(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)
上記のような有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いることができる。
【0086】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物(例えば、塩素化物、臭素化物など。)などの炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0087】
有機アルミニウム化合物(B-3)は、例えば下記一般式(5)で示される。
R9 n AlX3-n … (5)
(式中、R9 は炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
上記一般式(5)において、R9 は炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、トリルなどである。
【0088】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなど。
【0089】
また有機アルミニウム化合物は、下記一般式(6)で示されてもよい。
R9 n AlL3-n …(6)
(式中、R9 は上記と同様であり、Lは−OR10基、−OSiR11 3 基、−OAlR12 2 基、−NR13 2 基、−SiR14 3 基または−N(R15)AlR16 2 基であり、nは1〜2であり、R10、R11、R12およびR16はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R13は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R14 およびR15 はメチル基、エチル基などである。)
このような有機アルミニウム化合物のなかでは、
R9 n Al(OAlR12 2)3-n で表される化合物、例えば
Et2 AlOAlEt2 、(iso-Bu)2 AlOAl(iso-Bu)2 などが好ましい。
【0090】
上記一般式(5)または(6)で表される有機アルミニウム化合物の中では、一般式R9 3 Alで表される化合物が好ましく、特にR9 がイソアルキル基である化合物が好ましい。
【0091】
本発明で用いられるメタロセン系触媒(2)は、例えば上記のような遷移金属化合物(a')、有機アルミニウムオキシ化合物成分(b-2)(またはイオン化イオン性化合物(b-1'))および必要に応じて有機アルミニウム化合物(b-3)を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン溶媒中で混合することにより調製することができる。
【0092】
触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0093】
上記のような各成分から触媒を調製する際には、各成分を任意の順序で接触させることができるが、
成分(a')と成分(b-2)(または成分(b-1'))とを接触させるか、
成分(a')と成分(b-2)とを接触させ、次いで成分(b-3)を接触させるか、
成分(a')と成分(b-2)(または成分(b-1'))とを接触させ、次いで成分(b-3)を混合させるか、あるいは、
成分(a')と成分(b-3)とを接触させ、次いで成分(b-2)(または成分(b-1'))を接触させることが好ましい。
【0094】
上記各成分を接触させるに際して、遷移金属化合物(a')は、約10-8〜10-1モル/リットル(重合容積)、好ましくは10-7〜5×10-2モル/リットルの量で用いられる。
【0095】
イオン化イオン性化合物(b-1')は、遷移金属化合物(a')とイオン化イオン性化合物(b-1')とのモル比(遷移金属化合物/イオン化イオン性化合物)で、通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5の量で用いられる。
【0096】
有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、遷移金属化合物(a')中の遷移金属に対する原子比(Al/遷移金属)で、通常10〜10000、好ましくは20〜5000となる量で用いられる。
【0097】
有機アルミニウム化合物(b-3)は、該有機アルミニウム化合物(b-3)中のアルミニウム原子(Alb-3)と有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)中のアルミニウム原子(Alb-2)との原子比(Alb-3/Alb-2)で、通常0.02〜20、好ましくは0.2〜10の量で必要に応じて用いることができる。
【0098】
上記各触媒成分は、重合器中で混合して接触させてもよく、また予め混合接触させてから重合器に添加してもよい。
予め接触させる際には、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃で、1〜1000分間、好ましくは5〜600分間接触させる。また接触時には接触温度を変化させてもよい。
【0099】
上記のようなメタロセン系触媒(2)を調製する際には、上記遷移金属化合物(a')、イオン化イオン性化合物(b-1')および有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)のうち少なくとも一種を、顆粒状あるいは微粒子状の粒子状担体に、担持させて固体状触媒を形成してもよい。
【0100】
粒子状担体としては多孔質酸化物が好ましく、例えばSiO2、Al2O3 、B2O3、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、ZnO、SnO2、BaO、ThOなどの無機担体を用いることができる。またエチレン、プロピレン、1-ブテンなどのα-オレフィン、あるいはスチレンを主成分として生成される重合体または共重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることもできる。
【0101】
またメタロセン系触媒(2)は、プロピレン、エチレン、1-ブテンなどのオレフィンあるいはこれらと他のオレフィン類などが予備重合されていてもよい。
なおメタロセン系触媒(2)は、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分、例えば触媒成分としての水なども含むことができる。
【0102】
本発明で用いられるプロピレン系ランダム共重合体(A)は、例えば上記のようなメタロセン系触媒(2)の存在下に、プロピレンおよびエチレン、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンとを、最終的に上記のような特性を有するように共重合させることによって製造することができる。重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
【0103】
液相重合法では上述した触媒調製の際に用いた不活性炭化水素溶媒と同じものを用いることができ、プロピレンを溶媒として用いることもできる。
重合は、懸濁重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で行われることが望ましく、溶液重合法を実施する際には、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度で行われることが望ましい。また、気相重合法を実施する際には、重合は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の温度で行われることが望ましい。重合は、通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の圧力下で行われる。
【0104】
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるプロピレン系ランダム共重合体(A)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
【0105】
(B)非晶性α - オレフィン系共重合体
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位(以下「α−オレフィン単位」ということがある。)を20モル%以上、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは55〜99モル%の量(但し、該共重合体(B)中の全繰返し単位量を100モル%とする。)で含んでいる。このような量でα-オレフィン単位を含有する非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、プロピレン系ランダム共重合体(A)との相溶性が良好となり、得られる組成物は、充分な柔軟性、透明性、接着強度を発揮する傾向がある。
【0106】
炭素原子数が3〜20のα-オレフィンとして具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプタン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられ、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が3〜12のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0107】
この非晶性α-オレフィン系共重合体(B)中には、α-オレフィン単位以外に、エチレン単位、ポリエン系不飽和化合物から導かれる繰返し単位、アルコール、カルボン酸、アミン及びこれら誘導体等からなる繰返し単位等が含まれていてもよい。
【0108】
上記ポリエン系不飽和化合物は、2個以上の2重結合を有する化合物であり、例えばエチリデンノルボルネン(例:5-エチリデン-2-ノルボルネン)、5-ビニリデン-2-ノルボルネンなどの鎖状エチレン性不飽和結合基含有ノルボルネン類;ブタジエン、イソプレン、1,4-ヘキサジエン、4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエンなどの鎖状エチレン性不飽和化合物類;ジシクロペンタジエンなどの脂環族エチレン性不飽和化合物類などが挙げられる。
【0109】
このような非晶性α-オレフィン系共重合体(B)として好ましい態様としては、以下のようなものがある。
(1)炭素原子数3〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位(U1)を50〜99モル%の割合で含み、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれ、前記繰返し単位とは異なる繰返し単位(U2)を1〜50モル%の割合で含む非晶性α-オレフィンランダム共重合体。
(2)エチレン単位を1〜50モル%の割合で含み、α-オレフィン単位を50〜99モル%の割合で含む非晶性エチレン・α-オレフィンランダム共重合体。
(3)エチレン単位と、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位とからなる非晶性エチレン・α-オレフィンランダム共重合体。
(4)エチレン単位を1〜50モル%の割合で含み、プロピレン単位を50〜99モル%の割合で含み、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を1〜49モル%の割合で含む非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体または非晶性エチレン・プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体。
(5)エチレン単位と、
プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位と、
エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ブタジエン、イソプレン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエンおよび4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエンのから選ばれるポリエン系不飽和化合物から導かれる繰返し単位とからなる非晶性エチレン・α-オレフィン・ポリエン系不飽和化合物ランダム共重合体。
【0110】
この非晶性エチレン・α-オレフィン・ポリエン系不飽和化合物ランダム共重合体としては、
エチレン単位が50モル%以下、好ましくは1〜50モル%、さらに好ましくは1〜49モル%と、
α-オレフィン単位(例えばプロピレン単位)が20モル%以上、好ましくは50〜99モル%と、
ポリエン系不飽和化合物から導かれる繰返し単位が0〜30モル%、好ましくは0〜29モル%の割合(但し、該共重合体(B)中の全繰返し単位量を100モル%とする)で含有する共重合体が好ましい。このような割合で各繰返し単位が含まれた共重合体は、架橋効率が良好となり、該共重合体を含む軟質ポリプロピレン組成物の加硫成形体は、耐傷付性、耐油性が良好となる傾向がある。
【0111】
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した融解ピークが実質的に観測されない。なお明細書において、融解ピークが実質的に観測されないとは、吸熱曲線における最大ピークの融解熱量が0.7J/g以下であることを意味する。このような非晶性α-オレフィン系共重合体(B)を含む組成物は、柔軟性、透明性、耐衝撃性が良好となる傾向がある。
【0112】
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)のヨウ素価は、通常0〜150、好ましくは0〜100の範囲にあることが望ましい。非晶性α-オレフィン系共重合体(B)のヨウ素価が上記範囲内にあると、該非晶性α-オレフィン系共重合体(B)を架橋した場合に、該非晶性α-オレフィン系共重合体(B)の架橋速度が速く、得られる架橋物は低温特性に優れる。
【0113】
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。該非晶性α-オレフィン系共重合体(B)の極限粘度[η]が、上記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れた共重合体となる。
【0114】
この非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常10℃以下、好ましくは0℃以下の範囲にあることが望ましい。該非晶性α-オレフィン系共重合体(B)のガラス転移温度が前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
【0115】
また非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましい。
【0116】
本発明で用いられる非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、例えば触媒として公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒、または下記メタロセン系触媒(1)を用いて製造することができる。
【0117】
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)の製造に用いられるメタロセン系触媒(1)としては、
(a)下記一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b-1)イオン化イオン性化合物、
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物
とからなる触媒が挙げられる。:
【0118】
【化8】
【0119】
式(1)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuであり、好ましくはTi、ZrまたはHfである。
Cp1 およびCp2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基である。より具体的には、Cp1 およびCp2 は遷移金属に配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0120】
Zは、C、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子、またはこれらの原子を含有する基であり、好ましくは炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−CO−、−SO−、−SO2 −、−BRb −(ただしRbは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)などである。
【0121】
X1 およびX2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、好ましくは、炭素原子数が1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3Ra 、但し、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)、ハロゲン原子、水素原子などが挙げられる。
【0122】
このような一般式(1)で表される遷移金属化合物として具体的には、
シクロヘキシリデン-ビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
シクロヘキシリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4,7-ジメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,6-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(α-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(β-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(1-アントリル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0123】
また、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を例示することもできる。
【0124】
【化9】
【0125】
式(2)中、Mは、Ti、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、好ましくはTi、ZrまたはHfである。
Cp1は、上記一般式(1)中のCp1 と同義である。
【0126】
Zは、C、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子、またはこれらの原子を含有する基であり、好ましくはC、OまたはSi原子であり、これらはアルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよく、この置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0127】
Yは、N、O、PまたはS原子を含有する配位子である。
また、ZとYとで縮合環を形成してもよい。
X1およびX2は、互いに同一でも異なっていてもよく、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、好ましくは水素原子もしくはハロゲン原子であるか、または20個以下の炭素原子を含有する炭化水素基、20個以下のケイ素原子を含有するシリル基もしくは20個以下のゲルマニウム原子を含有するゲルミル基である。
【0128】
このような一般式(2)で示される遷移金属化合物としては、具体的に、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シリレン)チタンジクロリド、
((t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル)チタンジクロリド、
(ジメチル(フェニルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シリレン)チタンジクロリド、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シリレン)チタンジメチル、
(ジメチル(4-メチルフェニルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シリレン)チタンジクロリド、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)シリレン)チタンジクロリド、
(テトラメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジシリレン)チタンジクロリドなどが挙げられる。
【0129】
上記のような遷移金属化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
また上記のような遷移金属化合物は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。このような粒子状担体としては、上記メタロセン系触媒(2)に用いられるものと同様の無機担体、有機担体が挙げられる。
【0130】
メタロセン系触媒(1)を形成する、イオン化イオン性化合物(b-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)および有機アルミニウム化合物(b-3)としては、それぞれ上記メタロセン系触媒(2)を形成する、イオン化イオン性化合物(b-1')、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)および有機アルミニウム化合物(b-3)と同様の化合物が挙げられる。
【0131】
上記イオン化イオン性化合物(b-1)および/または有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、例えば上記触媒、好ましくはメタロセン系触媒(1)の存在下に、炭素原子数3〜20α-オレフィン、必要によりエチレン、ポリエン系不飽和化合物などを、最終的に上記のような特性を有するように共重合させることによって製造することができる。共重合は、通常液相で行われ、この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、前記α-オレフィンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0132】
メタロセン系触媒(1)を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内の遷移金属化合物(a)は、重合容積1リットル当り、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルとなる量で用いられる。
【0133】
イオン化イオン性化合物(b-1)は、遷移金属化合物(a)に対するイオン化イオン性化合物(b-1)のモル比(イオン化イオン性化合物/遷移金属化合物)で、0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0134】
有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、遷移金属化合物(a)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。
【0135】
また有機アルミニウム化合物(b-3)が用いられる場合には、重合容積1リットル当り、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0136】
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて80kg/cm2、好ましくは0を超えて50kg/cm2の範囲の条件下に行なわれる。
【0137】
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
【0138】
上記α-オレフィン、エチレン、ポリエン系不飽和化合物などの共重合用モノマーは、上述のような特定組成の非晶性α-オレフィン系共重合体(B)が得られるような量でそれぞれ重合系に供給される。なお共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0139】
上記のようにして共重合させると、非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、非晶性α-オレフィン系共重合体(B)が得られる。
【0140】
軟質ポリプロピレン組成物
軟質ポリプロピレン組成物は、上記プロピレン系ランダム共重合体(A)と上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)とからなり、
上記プロピレン系ランダム共重合体(A)と、上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との重量比{(A)/(B)}が90/10〜10/90、好ましくは90/10〜20/80であることが望ましい。
【0141】
上記のような組成でプロピレン系ランダム共重合体(A)および上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)を含むと、組成物は、柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れる傾向がある。
【0142】
軟質ポリプロピレン組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、荷重2.16kg)が、通常0.0001〜1000g/10分、好ましくは0.0001〜900g/10分、さらに好ましくは0.0001〜800g/10分の範囲にあり、135℃のデカヒドロナフタレン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gの範囲にある。
【0143】
また、軟質ポリプロピレン組成物のメルトテンション(MT)は、通常0.5〜10g、好ましくは1〜10gであることが好ましい。軟質ポリプロピレン組成物のメルトテンションが上記の範囲にあると、フィルム成形性等の成形性に優れている。なお、このメルトテンション(MT)は、メルトテンションテスター((株)東洋精機製作所製)により、測定温度200℃、押出速度15mm/分の条件下で押し出されるストランドを一定速度(10m/分)で引き取る際にフィラメントにかかる張力として求める。
【0144】
軟質ポリプロピレン組成物は、各成分を上記のような比率で用い、種々公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0145】
この軟質ポリプロピレン組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、発錆防止剤、核剤、下記に詳述する「その他の共重合体」等を、本発明の目的を損わない範囲で配合することもできる。
【0146】
「その他の共重合体」としては、後述するようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)、水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(D)、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)、エチレン・スチレン系共重合体(F)、エチレン・ジエン共重合体(G)およびエチレン・トリエン共重合体(H)等が挙げられる。これらの共重合体は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0147】
これらの「その他の共重合体」は、軟質ポリプロピレン組成物中のプロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して、通常0〜40重量部、好ましくは通常0〜30重量部の量で含まれていてもよい。その他の共重合体を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた組成物が得られる。
【0148】
エチレン・α - オレフィンランダム共重合体(C)
本発明で必要に応じて用いられるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、α−オレフィン重合体(B)として用いられたものとは異なるものであって、密度が0.860g/cm3 以上0.895g/cm3 未満、好ましくは0.860〜0.890g/cm3 であって、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が0.5〜30g/10分、好ましくは1〜20g/10分である軟質エチレン・α-オレフィン共重合体が望ましい。
【0149】
α-オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数3〜20のα-オレフィンが挙げられる。これらの内でも、炭素原子数3〜10のα-オレフィンが好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0150】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、エチレンから導かれる繰返し単位を60〜90モル%の割合で、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を10〜40モル%の割合で含有していることが望ましい。
【0151】
また、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、これらの繰返し単位の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の重合性モノマーから導かれる繰返し単位を含有していてもよい。
【0152】
このような他の重合性モノマーとしては、例えばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニル化合物類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。
【0153】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、このような他の重合性モノマーから導かれる単位を、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下の割合で含有していてもよい。
【0154】
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)として具体的には、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体などが挙げられる。これらのうちでも、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体などが特に好ましく用いられる。これらの共重合体は、2種以上併用してもよい。
【0155】
また、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、さらに好ましくは0〜35%である。
【0156】
上記のようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造することができる。
【0157】
水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(D)
本発明で必要に応じて用いられる水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(D)は、芳香族ビニルから導かれるブロック重合単位(X)と、共役ジエンから導かれるブロック重合単位(Y)とからなる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)およびその水添物(D2)である。
【0158】
このような構成の芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)の形態は、例えばX(YX)n または(XY)n (nは1以上の整数)で示される。
このうち、X(YX)n 、特にX−Y−Xの形態をとるブロック共重合体が好ましく、具体的には、ポリスチレン−ポリブタジエン(またはポリイソプレンまたはポリイソプレン・ブタジエン)−ポリスチレンの形態をとるスチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0159】
このような芳香族炭化水素系ブロック共重合体では、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック重合単位(X)が、共役ジエンブロック重合単位(Y)の橋かけ点として存在し物理架橋(ドメイン)を形成している。この芳香族ビニルブロック重合単位(X)間に存在する共役ジエンブロック重合単位(Y)は、ソフトセグメントであってゴム弾性を有している。
【0160】
上記のような芳香族ビニルブロック重合単位(X)を形成する芳香族ビニルとしては、具体的には、スチレンのほか、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。これらのうちでは、スチレンが好ましい。
【0161】
また、共役ジエンブロック重合単位(Y)を形成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンおよびこれらの組合せなどが挙げられる。これらのうち、ブタジエンまたはイソプレンまたはブタジエンとイソプレンとの組合せが好ましい。
【0162】
この共役ジエンブロック重合単位(Y)がブタジエンとイソプレンとから導かれる場合には、イソプレンから導かれる単位を40モル%以上の量で含有していることが好ましい。
【0163】
また、このようにブタジエン・イソプレン共重合単位からなる共役ジエンブロック重合単位(Y)は、ブタジエンとイソプレンとのランダム共重合単位、ブロック共重合単位またはテーパード共重合単位のいずれであってもよい。
【0164】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)は、芳香族ビニルブロック重合単位(X)含有量が22重量%以下であり、好ましくは5〜22重量%である。この芳香族ビニル重合単位の含有量は、赤外線分光法、NMR分光法などの常法によって測定することができる。
【0165】
また、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、200℃、荷重2.16kg)は、通常5g/10分以上であり、好ましくは5〜100g/10分である。
【0166】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)の製造方法としては、種々の方法が挙げられ、例えば、
(1)n-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物を開始剤として、芳香族ビニル化合物、次いで共役ジエンを逐次重合させる方法、
(2)芳香族ビニル化合物次いで共役ジエンを重合させ、これをカップリング剤によりカップリングさせる方法、
(3)リチウム化合物を開始剤として、共役ジエン、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などを挙げることができる。
【0167】
また、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(D2)は、上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(D1)を公知の方法により水添することにより得ることができる。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(D2)は、通常、水添率が90%以上である。
【0168】
この水添率は、共役ジエンブロック重合単位(Y)中の炭素−炭素二重結合の全量を100%としたときの値である。
このような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(D2)としては、具体的には、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水添物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS;ポリスチレン・ポリエチレン/プロピレン・ポリスチレンブロック共重合体)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水添物(SEBS;ポリスチレン・ポリエチレン/ブチレン・ポリスチレンブロック共重合体)などが挙げられ、より具体的には、HYBRAR(クラレ(株)製)、クレイトン(シェル化学(株)製)、キャリフレックスTR(シェル化学(株)製)、ソルプレン(フィリップスペトロリファム社製)、ユーロプレンSOLT(アニッチ社製)、タフプレン(旭化成工業(株)製)、ソルプレン−T(日本エラストマー社製)、JSR−TR(日本合成ゴム(株)製)、電化STR(電気化学工業(株)製)、クインタック(日本ゼオン(株)製)、クレイトンG(シェル化学(株)製)、タフテック(旭化成工業(株)製)(以上商品名)などが挙げられる。
【0169】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(D2)としては、これらのうちでもSEBS、SEPSが好ましく用いられる。
エチレン・α - オレフィンブロック共重合体(E)
本発明で必要に応じて用いられるエチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)は、
炭素原子数3〜10のα−オレフィンから導かれる繰返し単位0〜20モル%と、エチレンから導かれる繰返し単位100〜80モル%とからなる結晶性ポリエチレン部と、
炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる繰返し単位を2種以上含む、低結晶性共重合体部または非晶性共重合体部とからなる。
【0170】
エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)としては、エチレンから導かれる繰返し単位を30〜95モル%の割合で含有し、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を70〜5モル%の割合で含有する共重合体が好ましい。特にエチレンから導かれる繰返し単位を60〜90モル%の割合で含有し、炭素原子数3〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位を40〜10モル%の割合で含有する共重合体が好ましい。
【0171】
ここで、炭素原子数3〜20のオレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0172】
また、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)は、炭素原子数4〜20のジエン化合物から導かれる繰返し単位を5モル%以下の割合で含有していてもよい。
【0173】
このようなジエン化合物として具体的には、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6- ノナジエン、6-エチル-1,6- ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、イソプレン、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0174】
このようなエチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が通常0.0001〜500g/10分、好ましくは0.0001〜300g/10分、さらに好ましくは0.0001〜200g/10分の範囲にあり、密度(ASTMD 1505)は、0.85〜0.90g/cm3 、好ましくは0.85〜0.89g/cm3 、さらに好ましくは0.86〜0.89g/cm3 であることが望ましい。
【0175】
このエチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)における沸騰ヘプタン不溶成分のX線回折法により測定した結晶化度は、通常0〜30%、好ましくは0〜28%、さらに好ましくは0〜25%である。
【0176】
エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)の沸騰ヘプタン不溶成分は、以下のようにして調製される。すなわち、撹拌装置付1リットルのフラスコに、重合体試料3g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール20mg、n-デカン500mlを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、約8時間かけて室温まで冷却し、続いて23℃の水浴上で8時間保持する。析出した重合体(23℃デカン不溶成分)を含むn-デカン懸濁液をG−4(またはG−2)のグラスフィルターで濾過分離し、減圧乾燥した後、重合体1.5gを6時間以上ヘプタンを用いてソックスレー抽出して沸騰ヘプタン不溶成分を得る。
【0177】
結晶化度は、上記のようにして得られた沸騰ヘプタン不溶成分を試料として用い、次のようにして測定される。すなわち、試料を180℃の加圧成形機にて厚さ1mmの角板に成形した後、直ちに水冷して得たプレスシートを用い、理学電機(株)製ローターフレックス RU300測定装置を用いて測定することにより決定される(出力50kV、250mA)。この際の測定法としては、透過法を用い、またサンプルを回転させながら測定を行なう。
【0178】
エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)の沸騰ヘプタン不溶成分の密度は、通常0.86g/cm3 以上、好ましくは0.87g/cm3 以上である。
【0179】
また、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)の23℃ n-デカン可溶成分量は、0.1〜99%、好ましくは0.5〜99%、さらに好ましくは1〜99%の範囲にある。
【0180】
エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)の23℃ n-デカン可溶成分量は、次のようにして測定される。すなわち、撹拌装置付1リットルのフラスコに、重合体試料3g、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール20mg、n-デカン500mlを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、約8時間かけて室温まで冷却し、続いて23℃の水浴上で8時間保持する。析出した重合体と、溶解ポリマーを含むn-デカン溶液とをG−4(またはG−2)のグラスフィルターで濾過分離する。このようにして得られた溶液を10mmHg、150℃の条件で加熱してn-デカン溶液に溶解していたポリマーを定量になるまで乾燥し、その重量を23℃デカン可溶成分量とし、重合体試料の重量に対する百分率として算出する。
【0181】
このようなエチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)は、従来公知の方法により調製することができる。
エチレン・スチレン系共重合体(F)
本発明で必要に応じて用いられるエチレン・スチレン系共重合体(F)は、エチレンとスチレンまたはその誘導体とのランダム共重合体である。
【0182】
スチレンの誘導体として具体的には、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4- ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。スチレンまたはその誘導体としては、スチレンが好ましい。
【0183】
エチレン・スチレン系共重合体(F)は、エチレンから導かれる繰返し単位を5〜99モル%の量で、スチレンおよび/またはスチレン誘導体から導かれる繰返し単位を1〜95モル%の量で含有していることが望ましい。エチレン・スチレン系共重合体(F)は、スチレンまたはその誘導体から導かれる繰返し単位を1種または2種以上有していてもよい。
【0184】
エチレン・スチレン系共重合体(F)は、密度が0.85〜1.02g/cm3 、好ましくは0.86〜1.02g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、190℃、荷重2.16kg)が0.001〜500g/10分、好ましくは0.001〜300g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0185】
また、エチレン・スチレン系共重合体(F)のX線回折法により測定される結晶化度は、通常80%以下、好ましくは0〜75%、さらに好ましくは0〜70%である。
【0186】
上記のようなエチレン・スチレン系共重合体(F)は、従来公知の方法により調製することができる。
エチレン・ジエン共重合体(G)
本発明で必要に応じて用いられるエチレン・ジエン共重合体(G)は、エチレンとジエンとのランダム共重合体である。
【0187】
ジエンとして具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等の非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。これらの内では、ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらのジエンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0188】
エチレン・ジエン共重合体(G)において、ジエンから導かれる繰返し単位の含有割合は、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜15モル%の範囲内にあることが望ましい。ヨウ素価は、通常1〜150、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50であることが望ましい。また、エチレン・ジエン共重合体(G)の135℃のデカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gの範囲内にあることが望ましい。このようなエチレン・ジエン共重合体(G)は、従来公知の方法により調製することができる。
【0189】
エチレン・トリエン共重合体(H)
本発明で必要に応じて用いられるエチレン・トリエン共重合体(H)は、エチレンとトリエンとのランダム共重合体である。
【0190】
エチレンと共重合させるトリエンとしては、具体的には、
6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、
4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、
5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、
6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、
6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、
6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、
4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
7-メチル-4-エチリデン-1,6- オクタジエン、
4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)、
7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
4-エチリデン-1,6-デカジエン、
7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、
7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
4-エチリデン-1,7-ノナジエン、
8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、
4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の非共役トリエン;
1,3,5-ヘキサトリエン等の共役トリエンなどが挙げられる。これらのトリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0191】
上記のようなトリエンは、例えばEP0691354A1公報、WO96/20150号公報に記載されているような従来公知の方法によって調製することができる。
【0192】
エチレン・トリエン共重合体(H)は、トリエンから導かれる繰返し単位の含有割合が、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜15モル%の範囲内にあることが望ましい。ヨウ素価は、通常1〜200、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50であることが望ましい。
【0193】
また、エチレン・トリエン共重合体(H)の135℃のデカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gの範囲内にあることが望ましい。
【0194】
上記のようなエチレン・トリエン共重合体(H)は、従来公知の方法により調製することができる。
本発明で用いられる軟質ポリプロピレン系組成物は架橋物であってもよい。軟質ポリプロピレン系組成物を架橋物とする場合は、プロピレン系ランダム共重合体(A)および非晶性α-オレフィン系共重合体(B)に加えて、架橋剤、充填剤、架橋促進剤、架橋助剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤、発泡剤、加工助剤、密着性付与剤、上記した「その他の共重合体」、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、ブルーミング防止剤などを添加して、架橋剤含有未架橋組成物を一旦調製し、次にこの架橋剤含有未架橋組成物を所望の形状に成形した後に加熱などして架橋を行なえばよい。
【0195】
架橋剤としては、イオウ、イオウ化合物および有機過酸化物などが挙げられる。
イオウとして具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
【0196】
イオウ化合物として具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、架橋温度で活性イオウを放出して架橋するイオウ化合物、例えばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。なお、架橋剤としてイオウまたはイオウ化合物を用いる場合には、架橋促進剤を併用することが好ましい。
【0197】
有機過酸化物として、具体的には、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0198】
これらのうちでは、1分半減期温度が130℃〜200℃である有機過酸化物が好ましく、具体的にジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサンなどが好ましい。なお、架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、架橋助剤を併用することが好ましい。
【0199】
上記のような各種架橋剤のうち、イオウまたはイオウ系化合物、特にイオウを用いると優れた特性の架橋物を得ることができるため好ましいが、有機過酸化物が、特に架橋効率に優れているためより好ましい。
【0200】
架橋剤がイオウまたはイオウ系化合物である場合には、これら架橋剤は、上記プロピレン系ランダム共重合体(A)、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の合計量100重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜9重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部の割合で用いられる。なお、架橋剤などは、その他の架橋性の共重合体例えば、上記エチレン・トリエン共重合体(H)などが配合される場合には、その分増量すればよく、架橋剤は、上記プロピレン系ランダム共重合体(A)、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)およびその他の共重合体の合計100重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜9重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部の割合で用いられる。架橋時に使用される他の成分例えば、架橋助剤、架橋促進剤等においても同様である。
【0201】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、該架橋剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)100重量部に対して、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部の量で用いられる。また該架橋剤は、上記(A)、(B)の合計量100グラムに対して、1×10-5〜1×10-1モル好ましくは1×10-5〜1×10-2モルの量で用いられる。
【0202】
これらの架橋剤の配合量が上記範囲にあると、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の架橋が適度に行われ、得られる架橋物は、歪み回復、反撥弾性等のゴム的性質や機械的強度に優れ、押出シート成形した場合にもその表面荒れがなく良好な外観を呈し、しかも組成物中のプロピレン系ランダム共重合体(A)の分子量の低下もほとんどなく、組成物(成形体)の機械的強度が優れる傾向がある。
【0203】
充填剤には、補強性のある充填剤と補強性のない充填剤とがある。
補強性のある充填剤は、加橋物の引張り強さ、引裂き強さ、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このような充填剤として具体的には、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラック、これらカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理したもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルクなどが挙げられる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合、通常ゴムに使用されるカーボンブラックならばその種類は問わず全て用いることができる。
【0204】
また、補強性のない充填剤は、物性にあまり影響を与えることなく、ゴム製品の硬さを高めたり、コストを引き下げることを目的として使用される。このような充填剤としては、具体的には、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0205】
架橋促進剤剤として具体的には、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBZ)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;亜鉛華等の化合物などを挙げることができる。これらの架橋促進剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)、非晶性α-オレフィン系共重合体(B)の合計100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の量で用いられる。
【0206】
架橋助剤は、有機過酸化物架橋の際に用いられ、該架橋助剤として具体的には、イオウ;p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム系化合物;および多官能性モノマー、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物;N,N'-m-フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら架橋助剤は、有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル、好ましくはほぼ等モルの量で用いることが好ましい。架橋助剤が上記量を超えて多いと、架橋反応が過度に進行して組成物の流動性が低下し、成形性が低下し、組成物中に残留する未反応モノマー多くなる場合がある。
【0207】
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用いられ、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質を挙げることができる。なかでも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。軟化剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して、200重量部以下、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の量で用いられる。
【0208】
発泡剤としては、一般的にゴムを発泡成形する際に用いられる発泡剤を広く使用することができ、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジドなどのアジド化合物が挙げられる。これらのうちでは、ニトロソ化合物、アゾ化合物、アジド化合物が好ましい。発泡剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して、0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の量で用いられる。このような量で発泡剤を含有する軟質ポリプロピレン組成物からは、見掛け比重が0.03〜0.8g/cm3の発泡体を製造することができる。
【0209】
また発泡剤とともに発泡助剤を用いることもでき、発泡助剤を併用すると、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの効果がある。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。発泡助剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の量で用いられる。
【0210】
加工助剤としては、一般的に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの酸、これら高級脂肪酸の塩例えばステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類などが挙げられる。
【0211】
加工助剤は、プロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の量で適宜用いられる。
【0212】
密着性付与剤は、架橋物と塗膜などの加飾層との密着性を改良するものであり、例えば有機スズ化合物、第3級アミン化合物、水酸基含有(共)重合体、金属水酸化物などが挙げられる。
【0213】
軟質ポリプロピレン組成物から架橋物を製造する方法としては、特に限定されないが、通常一般のゴムを架橋するときと同様に、架橋剤含有未架橋組成物を一旦調製し、次にこの組成物を所望の形状に成形した後に加熱などして架橋を行なえばよい。具体的には例えば以下のような方法が採用される。すなわち、プロピレン系ランダム共重合体(A)および非晶性α-オレフィン系共重合体(B)、必要に応じて充填剤、液状軟化剤、他のゴム配合剤、他の共重合体などを、バンバリーミキサーなどのミキサーを用いて、80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロールを用い、架橋剤、必要に応じて架橋促進剤などを追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の架橋剤含有未架橋組成物を調製する。なお上記のミキサー類での混練温度が低い場合には、架橋剤、架橋促進剤、発泡剤などを同時に添加し混練することもできる。
【0214】
このようにして調製された架橋剤含有未架橋組成物を、押出成形機、カレンダーロール、またはプレスにより所望の形状に成形し、成形と同時に150〜270℃の温度で1〜30分間加熱するか、または成形物を架橋槽内に導入し、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することにより架橋物を得ることができる。架橋は金型内で行ってもよく、また金型を用いないで行ってもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0215】
また架橋方法として、電子線を照射する方法を採用する場合は、バンバリーミキサーなどのミキサーを用いプロピレン系ランダム共重合体(A)および非晶性α-オレフィン系共重合体(B)、必要に応じて充填剤、他のゴム配合剤、他の共重合体などを80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロール類を用い、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の架橋剤含有未架橋組成物を調製する。このようにして調製された架橋剤含有未架橋組成物は押出成形機、カレンダーロール、またはプレスにより所望の形状に成形し、電子線を照射することにより架橋物が得られる。電子線の照射は、0.1〜10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子を、吸収線量が0.5〜35Mrad(メガラッド)、好ましくは0.5〜10Mradになるように行うことが望ましい。
【0216】
このような架橋により、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)が架橋されるが、プロピレン系ランダム共重合体(A)が架橋されてもよい。
架橋処理した組成物は、通常の溶融混練のみで得られた組成物に比べて、引張強度、引裂強度に優れ、表面硬度が低く永久伸びが小さいゴム的性質を示し、エラストマーとしての物性バランスに優れる。
【0217】
なお、組成物が架橋されているか否かは、軟質ポリプロピレン組成物を沸騰キシレン中で4時間以上煮沸した後400メッシュの金網で濾過した残渣が本組成物100重量部に対して10重量部以上であるか否かで判断される。
【0218】
さらに、軟質ポリプロピレン系組成物は発泡体であってもよく、発泡体を製造する場合には、通常ゴムに使用される上記発泡剤、および必要に応じて発泡助剤を配合し発泡させることにより製造できる。これらの発泡剤はプロピレン系ランダム共重合体(A)と非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との合計100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の量で用いられる。得られる発泡体のみかけ比重は、通常0.03〜0.7の範囲である。得られた発泡体は、断熱材、断熱材、クッション材、シーリング材、ホースなどの用途に用いることができる。
【0219】
積層体
本発明に係る積層体は、上記熱可塑性重合体層(I)と、上記軟質ポリプロピレン組成物層(II)とから構成され、通常2〜10の層を含んでいる。
【0220】
本発明に係る積層体は、上記熱可塑性重合体層(I)と、上記軟質ポリプロピレン組成物層(II)とを含んでいればその層構成は特に限定されないが、少なくとも3層からなり、少なくとも一方、好ましくは両方の表面層が軟質ポリプロピレン組成物層(II)からなることが好ましい。表面層が軟質ポリプロピレン組成物層(II)からなると、積層体は耐傷付き性に優れる。
【0221】
熱可塑性重合体層(I)と軟質ポリプロピレン組成物層(II)とからなる積層体の層構成としては、例えば
本発明の積層体は、熱可塑性重合体層(I)と軟質ポリプロピレン組成物層(II)との間に、例えば無水マレイン酸をグラフト共重合したエチレン系重合体やプロピレン系重合体などからなる接着性重合体からなる層(III)を介在させてもよい。
【0222】
このような接着性重合体からなる層(III)を有する積層体の層構成としては、例えば
(I)/(III)/(II)、
(II)/(III)/(I)/(III)/(II)、
(I)/(III)/(II)/(III)/(I)、
(II)/(III)/(I)/(III)/(II)/(III)/(I)などがある。
【0223】
本発明に係る積層体の形態としては、シート、フィルム、チューブ、ブロー容器などが挙げられる。
本発明に係る積層体、例えば(I)/(III)/(II)の層構成を有する3層の積層体を製造するには、熱可塑性重合体、接着性重合体および軟質ポリプロピレン組成物を、それぞれ別個の押出機で溶融後、三層構造のダイに供給し、接着性重合体が中間層となるように共押し成形する共押出し成形法、あるいは予め、熱可塑性重合体層(I)および軟質ポリプロピレン層(II)を成形し、これらの両層間に接着性重合体を溶融押出しするサンドイッチラミネート法などが採用できる。これらのうち層間接着力の点で、共押出し成形法が好ましい。共押出し成形法としてはフラット・ダイを用いるT−ダイ法とサーキュラー・ダイを用いるインフレーション法とがある。フラット・ダイはブラック・ボックスを使用したシングル・マニフォールド形式あるいはマルチ・マニフォールド形式のいずれを用いても良い。インフレーション法に用いるダイについてもいずれも公知のダイを用いることができる。
【0224】
このような積層体の各層の厚さは、用途に応じて適宜決定され得るが、通常、積層体がシートまたはフィルムとして得る場合には、熱可塑性重合体層(I)は0.01〜1mm、接着性重合体層(III)は0.01〜1mm、軟質ポリプロピレン層は0.01〜5mm程度であることが好ましい。
【0225】
【発明の効果】
本発明に係る軟質ポリプロピレン組成物層を含む積層体は、透明性、柔軟性および接着強度に優れており、包装材料として好適に用いられる。
【0226】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0227】
以下、物性試験条件等を記す。
1.引張り弾性率;
JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引張り速度:30mm/minで23℃にて測定した。
2.ヘイズ(%);
厚さ1mmの試験片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計NDH−20Dにて測定した。
3.接着強度;
23℃、剥離速度300mm/分でT型剥離し求めた。
4.融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとする。
【0228】
測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち、100℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
5.極限粘度[η];
135℃、デカリン中で測定した。
6.Mw/Mn;
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
【0229】
【合成例1】
(プロピレン系ランダム共重合体の合成)
充分に窒素置換した200リットルの撹拌翼のついた重合器に、ヘキサンを80リットル、トリイソブチルアルミニウムを80ミリモル、水素0.25リットル、エチレン9kg、プロピレン0.3kgを仕込み、70℃に昇温した後、メチルアルミノキサン18ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.06ミリモル加えプロピレンとエチレンをそれぞれ13.7kg、0.5kgをフィードした。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、80℃で10時間減圧乾燥した。
【0230】
得られたポリマーは7.0kgであり、重合活性は117kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。またこのポリマーのMw/Mnは2.0であり、エチレン含量は4.7モル%であり、極限粘度は、2.7dl/gであり、融点は123℃であった。
【0231】
【合成例2】
(シンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを750ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウム(以下、「TIBA」と略す。)の1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、攪拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)挿入し、昇温を開始し30℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.5kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液(0.0002mM/ml)を3.75ml、(トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート)のトルエン溶液(0.002mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドが0.001ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.004ミリモル/リットルであった。
【0232】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.5kg/cm2Gに保持した。重合を開始して30分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強攪拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0233】
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体の収量は50gであり、極限粘度は2.4dl/gであり、Tgは−28℃であり、エチレン含量は24.0モル%でありMw/Mnは2.9であった。また、前述のDSC測定条件では融解ピークは、実質的に観測されなかった。
【0234】
【合成例3】
(アタクチックプロピレン・エチレン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを750ml加え、続いてTIBAの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、攪拌下にプロピレンを30リットル(25℃、1気圧)挿入し、昇温を開始し60℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.9kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成した(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタンのトルエン溶液(0.0001mM/ml)を3.75ml、(トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート)のトルエン溶液(0.001mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対して(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロ-ペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタンが0.0005ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.002ミリモル/リットルであった。
【0235】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.9kg/cm2Gに保持した。重合を開始して15分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強攪拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0236】
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体の収量は29gであり、活性は310kg/ミリモルZr・hrであり、極限粘度は3.2dl/gであり、Tgは−22℃であり、エチレン含量は16.0モル%(エチレン:11.3重量%)であり、Mw/Mnは2.6であった。また、DSCにより測定した融解ピークは、実質的に観測されなかった。
【0237】
【合成例4】
(非晶性プロピレン・ブテン・エチレン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを675ml加え、続いてTIBAの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、攪拌下にプロピレンを28.5リットル(25℃、1気圧)、1-ブテンを10リットル(25℃、1気圧)挿入し、昇温を開始し60℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.9kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成した公知の方法で合成した(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタンのトルエン溶液(0.0001mM/ml)を5.6ml、(トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート)のトルエン溶液(0.001mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンと1-ブテンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対して(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロ-ペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタンが0.00075ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.0027ミリモル/リットルであった。
【0238】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.9kg/cm2Gに保持した。重合を開始して15分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強攪拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0239】
以上のようにして得られたプロピレン・ブテン・エチレン共重合体の収量は110gであり、極限粘度は1.3dl/gであり、Tgは−29℃であり、エチレン含量は30モル%であり、ブテン含量は11モルであり、Mw/Mnは2.9であった。また、前述のDSC測定条件では融解ピークは、実質的に観測されなかった。
【0240】
【実施例1】
合成例1で製造したプロピレン系ランダム共重合体60重量部と合成例2で得られたシンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体40重量部を200℃にて異方向2軸押出機を用いて溶融混練を行った。
【0241】
得られた軟質ポリプロピレン組成物(A−1)と、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(MFR;1.3g/10分、密度;1.19g/cm3 、エチレン含有量;32モル%、商品名 クラレエバール EP−F(株)クラレ製、以下「EVOH」という)および接着性重合体としてマレイン化ポリエチレン(商品名アドマー、HX-2102021L、三井化学(株)製、以下「M−PE」という)を用いて、下記条件で下記構成の5層シートを成形した。
【0242】
得られた5層シートのEVOH層とM−PE層との界面接着強度(FEVOH)は610g/15mmであり、A−1層と、M−PE層との界面接着強度(FA−1)は770g/15mmであった。また5層シートのヘイズは4.8%であり、引っ張り弾性率は290Mpaであった。
【0243】
【実施例2】
合成例1で製造したプロピレン系ランダム共重合体70重量部と合成例3で得られたシンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体30重量部を200℃にて異方向2軸押出機を用いて溶融混練を行った。
【0244】
得られた軟質ポリプロピレン組成物(A−2)と、EVOHおよび接着性重合体としてM−PEエチレンを用いて、下記製造条件で下記構成の5層シートを成形した。
【0245】
得られた5層シートのEVOH層とM−PE層との界面接着強度(FEVOH)は640g/15mm、A−2層と、M−PE層との界面接着強度(FA−1)は700g/15mmであった。また5層シートのヘイズは4.5%、引っ張り弾性率は285Mpaであった。
【0246】
【実施例3】
合成例1で製造したプロピレン系ランダム共重合体40重量部と合成例4で得られた非晶性プロピレン・ブテン・エチレン共重合体60重量部を200℃にて異方向2軸押出機を用いて溶融混練を行った。
【0247】
得られた軟質ポリプロピレン組成物(A−3)と、EVOH及び接着樹脂としてM−PEエチレンを用いて、下記性状条件で下記構成の5層シートを成形した。
【0248】
得られた5層シートのEVOH層とM−PE層との界面接着強度(FEVOH)は640g/15mmであり、A−3層と、M−PE層との界面接着強度(FA−1)は790g/15mmであった。また5層シートのヘイズは4.0%であり、引っ張り弾性率は245Mpaであった。
【0249】
【実施例4】
実施例1において、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)に代えて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR;2.5g/10分、酢酸ビニル含有量25重量%、以下「EVA」という)を用い、接着性重合体M−PEを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして3層シートを製造した。
【0250】
得られた3層シートのEVA層とA−1層との界面接着強度(FEVA)は460g/15mmであった。3層シートのヘイズは4.2%、引張り弾性率は205Mpaであった。
【0251】
【比較例1】
実施例1において、合成例2で得られたシンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体に代えて、アイソタクティクプロピレン・エチレンランダム共重合体(三井化学(株)製、S4020、C2=40モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして軟質ポリプロピレン組成物(B−1)を製造し、実施例1と同様にして5層シートを製造した。
【0252】
得られた5層シートのEVOH層とM−PE層との界面接着強度(FEVOH)は620g/15mmであり、B−1層と、M−PE層との界面接着強度(FA−1)は570g/15mmであった。また5層シートのヘイズは5.8%であり、引張り弾性率は300Mpaであった。
【0253】
【比較例2】
実施例4において、シンジオタクティックプロピレン系樹脂組成物(A-1)に代えて上記B−1を用いたこと以外は実施例4と同様にして3層シートを製造した。
【0254】
得られた3層シートのEVA層とB−1層との界面接着強度(FEVA)は160g/15mmであった。また3層シートのヘイズは4.6%であり、引張り弾性率は245Mpaであった。
Claims (11)
- (I)エチレン・酢酸ビニル共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物からなる層と、
(II)下記軟質ポリプロピレン組成物からなる層とを含むことを特徴とする積層体;
軟質ポリプロピレン組成物:
(A)プロピレンから導かれる繰返し単位およびエチレンから導かれる繰返し単位、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位からなり、前記プロピレンから導かれる繰返し単位を90〜99モル%の割合で、前記エチレンから導かれる繰返し単位を0.5〜9モル%の割合で、前記炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を0〜9.5モル%の割合で含み、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜6dl/gの範囲にあるプロピレン系ランダム共重合体と、(B)炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を20モル%以上の割合で含み、示差走査型熱量計により測定した融解ピークが実質的に観測されず、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度Tgが10℃以下である非晶性α-オレフィン系共重合体とからなり、
上記プロピレン系ランダム共重合体(A)と上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)との重量比{(A)/(B)}が90/10〜10/90の範囲にある。 - 上記プロピレン系ランダム共重合体(A)は、示差走査型熱量計によって測定される融点(Tm)が
70<Tm<155−5.5(100−P)
(式中、Pはプロピレン系ランダム共重合体(A)中のプロピレンから導かれる繰返し単位の含量(モル%)である。)
の範囲にあり、かつプロピレン単位のtriad連鎖でみたミクロアイソタクチシティーが0.8以上である共重合体である請求項1に記載の積層体。 - 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、炭素原子数3〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位(U1)を50〜99モル%の割合で含み、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれ、前記繰返し単位(U1)とは異なる繰返し単位(U2)を1〜50モル%の割合で含む共重合体である請求項1または2に記載の積層体。
- 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位を1〜50モル%の割合で含み、炭素原子数3〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を50〜99モル%の割合で含む共重合体である請求項1または2に記載の積層体。
- 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位と、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位とからなる共重合体である請求項1または2に記載の積層体。
- 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、エチレンから導かれる繰返し単位を1〜50モル%の割合で含み、プロピレンから導かれる繰返し単位を50〜99モル%の割合で含み、必要に応じて炭素原子数4〜20のα-オレフィンから導かれる繰返し単位を1〜49モル%の割合で含む共重合体である請求項1または2に記載の積層体。
- 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)は、
エチレンから導かれる繰返し単位と、
プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰返し単位と、
エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ブタジエン、イソプレン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエンおよび4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエンから選ばれるポ
リエン系不飽和化合物から導かれる繰返し単位とからなる共重合体である請求項1または2に記載の積層体。 - 上記非晶性α-オレフィン系共重合体(B)が、
(a)下記一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b-1)上記遷移金属化合物(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物
とからなるメタロセン系触媒(1)を用いて製造されたものである請求項1ないし7のいずれかに記載の積層体;
- 上記軟質ポリプロピレン組成物は、さらにエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)、水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(D)、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体(E)、エチレン・スチレン系共重合体(F)、エチレン・ジエン共重合体(G)およびエチレン・トリエン共重合体(H)から選ばれる少なくとも1種の共重合体を含有する請求項1ないし8のいずれかに記載の積層体。
- 少なくとも3層からなり、少なくとも一方の表面層が軟質ポリプロピレン組成物からなる層(II)である請求項1ないし9のいずれかに記載の積層体。
- エチレン・酢酸ビニル共重合体および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物からなる層(I)と軟質ポリプロピレン組成物からなる層(II)との間に接着性重合体からなる層が設けられている請求項1ないし10のいずれかに記載の積層体。
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