JP2010244002A - 電子写真感光体とその製造方法および画像形成装置と画像形成用プロセスカートリッジ - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、従来は粗面化の程度を評価するよい方法がなく、粗面化の程度を示すパタメーターの検討が行なわれている。それを以下に示す。
特許文献6の特開2008−122869号公報には、像担持体上の粉状の潤滑剤を静電的に除去するための潤滑剤除去手段を像担持体と非接触で配置することが記載されている。
(1) 導電性支持体上に感光層と架橋型樹脂表面層を有する電子写真用感光体において、少なくとも電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して最高周波数成分(HHH)から、次の高周波数成分(HHL)、3番目の高周波数成分(HMH)、4番目の高周波数成分(HML)、5番目の高周波数成分(HLH)及び最低周波数成分(HLL)に至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行い、更にここで得た最低周波成分(HLL)の一次元データ配列に対してデータ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、最高周波数成分(LHH)から、次の高周波数成分(LHL)、3番目の高周波数成分(LMH)、4番目の高周波数成分(LML)、5番目の高周波数成分(LLH)及び最低周波数成分(LLL)に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行うことで追加で得られる6個の各周波数成分との合計12個の各周波数成分の個々の中心線平均粗さ(WRa)が下記式(i)を満足することを特徴とする電子写真感光体。
(2) 電子写真感光体の架橋型樹脂表面層に少なくとも下記一般式(1)の硬化型電荷輸送物質の架橋体が5wt%以上60wt%未満の割合で含有されることを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体。
(4) 架橋型樹脂表面層用塗料をコーティングした直後の未硬化前のウェット膜に対して、水を散布した後、硬化されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5) 塗料の重量に対し、5重量%〜15重量%の水が含有される架橋型樹脂膜用塗料によって電子写真感光体の表面層が製膜されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6) 導電性支持体上に感光層と架橋型樹脂表面層を設ける電子写真用感光体の製造方法において、少なくとも電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して最高周波数成分(HHH)から、次の高周波数成分(HHL)、3番目の高周波数成分(HMH)、4番目の高周波数成分(HML)、5番目の高周波数成分(HLH)及び最低周波数成分(HLL)に至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行い、更にここで得た最低周波成分(HLL)の一次元データ配列に対してデータ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、最高周波数成分(LHH)から、次の高周波数成分(LHL)、3番目の高周波数成分(LMH)、4番目の高周波数成分(LML)、5番目の高周波数成分(LLH)及び最低周波数成分(LLL)に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行うことで追加で得られる6個の各周波数成分との合計12個の各周波数成分の個々の中心線平均粗さ(WRa)が上記式(i)を満足する架橋型樹脂表面層を設けることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(7) 少なくとも前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の一種以上の電子写真感光体と固体潤滑剤をブラシ状ローラで掻きとり電子写真感光体に塗布する手段および固体潤滑剤を感光体表面に広げる塗布ブレードとを有することを特徴とする画像形成装置。
(8) 前記電子写真感光体は、少なくとも前記HLL以外の周波数成分のWRaが0.06μm以上を有し、且つ、その帯域が前記LLLよりも高周波数成分の帯域であり、該電子写真感光体の周波数成分の帯域と各々のWRaの対数との関係を2次元のグラフにプロットしたときにLLH、LMH、およびLMLの何れか一つの帯域に屈曲点または極大点を持つものであり、且つ、感光体の凹凸が毎秒250個〜1000個の割合で塗布ブレードを通過する感光体線速条件を満足することを特徴とする前記第(7)項の画像形成装置。
(9) 少なくとも前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の一種以上の電子写真感光体と固体潤滑剤をブラシ状ローラで掻きとり該電子写真感光体に塗布する手段、および固体潤滑剤を該感光体表面に広げる塗布ブレードとを有することを特徴とする画像形成用プロセスカートリッジ。
(10) 前記電子写真感光体は、少なくとも前記HLL以外の周波数成分のWRaが0.06μm以上を有し、且つ、その帯域が前記LLLよりも高周波数成分の帯域であり、該電子写真感光体の前記周波数成分の帯域と各々のWRaの対数との関係を2次元のグラフにプロットしたときにLLH、LMH、およびLMLのいずれか一つの帯域に屈曲点または極大点を持つものであり、かつ、感光体の凹凸が毎秒250個〜1000個の割合で塗布ブレードを通過する感光体線速条件を満足することを特徴とする前記第(9)項の画像形成用プロセスカートリッジ。
(11) 少なくとも重合トナーを用いて現像することを特徴とする前記第(7)項または第(8)項に記載の画像形成装置。
(12) 少なくとも2色以上の現像ステーションを有し、かつ、タンデム方式であって更に重合トナーを用いて現像することを特徴とする前記第(7)項または第(8)項に記載の画像形成装置。
この方法で潤滑剤を塗布する場合、その潤滑剤の塗布状態を制御するには様々な方法がある。例えば、固形潤滑剤と塗布ブラシとの接触圧力を高めたり、塗布ブラシの回転速度を制御したりする手段が考えられる。また、画像形成情報に応じて、塗布ブラシの回転数を制御する試みもある。
このような固体潤滑剤の塗布機構において、電子写真感光体は固体潤滑剤の入力に対して、感度よく付着されることが求められる。この固体潤滑の付着に関する感度は少なくとも、感光体(1)と固体潤滑剤との付着力や塗布ブレード(2)による固体潤滑剤の被膜化のしやすさが影響すると考えられる。
本来、固体潤滑剤は付着性が弱く、種々の表面調整剤を感光体表面に含有させても両者の接着力は大きく変えることができなかった。そこで、発明者は別のファクターρとして、接触面積から考案された感光体表面の粗面化効果について考えた。
以下に、感光体断面曲線の多重解像度解析について説明する。
この断面曲線である一次元のデータ配列は、表面粗さ・輪郭形状測定機からデジタル信号として得てもよく、あるいは表面粗さ・輪郭形状測定機のアナログ出力をA/D変換して得てもよい。
また、サンプリング間隔は、1μm以下がよく、好ましくは0.2μm以上、0.5μm以下がよい。例えば、測定長12mmをサンプリング点数30720点で測定する場合、サンプリング間隔は0.390625μmとなり、本発明を実施するのに好適である。
そして、各調波項には、順に、17、55、79,84,95,238,597の数値がそれぞれ乗されているが、各調波項の該係数「17、55、79,84,95,238,597」は、本発明における実験から最適値として得られたものであるので、値を変えると固体潤滑剤の付着性と感光体の表面粗さとの相関性が悪くなる。また、上式(i)中のHML、HLH、LHL、LMH、LML、LLH、LLLは順に、凹凸の一周期の長さが、4〜25、10〜50、53〜183、106〜318、214〜551、431〜954、867〜1654(単位は全てμm)の周波数成分に分離した個々の帯域を表わすが、本発明においては、実際のウェーブレット変換はMATLABという数値解析ソフトウエアを使用している。帯域幅の定義はソフト上の制約で定義する範囲に格別の意味はない。また、係数は上記の理由に因るため、帯域幅が変わればそれに応じて係数は変化する。そして、HML成分とHLH成分、LHL成分とLMH成分、LMH成分とLML成分、LML成分とLLH成分、LLH成分とLLL成分の個々の帯域は、周波数帯域がオーバーラップしているが、オーバーラップの理由は、次のとおりである。すなわち、ウェーブレット変換では、元の信号を1回目のウェーブレット変換(Level 1)でL(Low−pass Components)とH(High−pass Components)に分解し、更に、このLに関して、ウェーブレット変換を施すことでLLとHLに分解する。ここで、元の信号に含まれる周波数成分 f が、分離する周波数 F と一致した場合は、f は丁度分離の境界になるので、分離後は、LとHの両方の、それぞれに分離される。この現象は、多重解像度解析では不可避な現象である。そこで、観察したい周波数帯域がこのようにウェーブレット変換の際に分離されてしまわないように、元の信号に含まれる周波数を設定することも重要である。また、数段階のウェーブレット変換を行った後に、任意の段階で逆ウェーブレット変換を行って、複数の帯域に分離されてしまった信号を、復号する(元に戻す)ことも有効である。
本発明では2回のウェーブレット変換を行なうが、最初のウェーブレット変換を第1回目のウェーブレット変換(便宜上、MRA−1と記すことがある)、その後のウェーブレット変換を第2回目のウェーブレット変換(便宜上、MRA−2と記すことがある)と呼ぶことにする。一回目と二回目の変換を区別するため、便宜上、各周波数帯域の略号に接頭語として、H(一回目)とL(二回目)を付ける。
ここで、第1回目、及び第2回目のウェーブレット変換に使用するマザーウェーブレット関数としては各種のウェーブレット関数が使用可能であり、例えば、ドビッシー(Daubecies)関数、ハール(haar)関数、メーヤー(Meyer)関数、シムレット(Symlet)関数、そしてコイフレット(Coiflet)関数等が使用可能である。ここでDaubeciesはドベシィまたはドブシーと表記することがある。
ここで、データ間引きは、データの周波数を上げる(横軸の対数目盛幅を拡げる)効果があり、例えば、第1回目のウェーブレット変換結果で得た一次元配列の配列数が30000であった場合、1/10の間引きを行なうと、配列数が3000になる。
この場合、間引きが1/10より小さいと、例えば、1/5であると、データの周波数を上げる効果が少なく、第2回のウェーブレット変換を行ない、多重解像度解析を行なってもデータはよく分離されない。
はじめに、写真感光体の表面形状を東京精密製Surfcom 1400Dで測定した。
図19には14個のグラフがあるが、縦軸は表面形状の変位であり単位はμmである。また横軸は長さであり、目盛は付けていないが測定長は12mmである。
従来の表面粗さ測定ではこのデータのみから中心線平均粗さRa、最大高さRmax、Rz等を求めていた。
・グラフ(102)は、1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHHLと呼ぶ。
・グラフ(103)は、1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHMHと呼ぶ。
・グラフ(104)は、1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHMLと呼ぶ。
・グラフ(105)は、1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHLHと呼ぶ。
・グラフ(106)は、1回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分であり、本発明ではこれをHLLと呼ぶ。
このようにして、図19(b)では、それぞれのグラフに、中心線平均粗さRa、最大高さ Rmax、十点平均粗さRzを数値で示している。
・グラフ(108)は、2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分であり、これをLHLと呼ぶ。
・グラフ(109)は、2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分であり、これをLMHと呼ぶ。
・グラフ(110)は、2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分であり、これをLMLと呼ぶ。
・グラフ(111)は、2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分であり、これをLLHと呼ぶ。
・グラフ(112)は、2回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分であり、これをLLLと呼ぶ。
従って、表面粗さの周波数によって、図19(c)の6本のグラフでどこに現われるか決まってくる。
(1)導電性支持体上に感光層と架橋型樹脂表面層をする電子写真用感光体において、少なくとも電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至る6個の周波数成分((HHH)(HHL)(HMH)(HML)(HLH)(HLL))に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行ない、さらにここで得た最低周波成分(HLL)の一次元データ配列に対してデータ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対してさらにウェーブレット変換を行なって、高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−2)を行なうことで追加で得られる6個の各周波数成分((LHH)(LHL)(LMH)(LML)(LLH)(LLL))との合計12個の各周波数成分の個々の中心線平均粗さWRaが下記式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体。
(式中、d、e、fはそれぞれ0または1の整数、13は水素原子、メチル基を表し、R14、R15は水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。g、hは0〜3の整数を表わす。Zは単結合、メチレン基、エチ
レン基、下記式を表わす。)
請求項1の関係式1の左辺を電子写真感光体の固体潤滑剤塗布性の形状因子と定義し、形状因子と実際の固体潤滑剤塗布性との関係を図24に示す。形状因子が0以上の感光体は、固体潤滑剤塗布性が優れていると認識される従来品と比較して直線的に固体潤滑剤塗布性が高くなることがわかる。また、形状因子が固体潤滑剤塗布性に強く相関していることも理解される。
電子写真感光体表面形状の一次元配列をウェーブレット変換して得られるWRaを周波数成分毎に順に並べたとき、図25または図26のような屈曲点または極大点がみられるケースがある。これらの屈曲点や極大点は以上の実効的な高さを有する最も支配的な周波数成分になる。
導電性支持体(21)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理した管等を使用することができる。
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層との間に下引き層(24)を設けることができる。下引き層は、接着性の向上、モアレの防止、上層の塗工性の改良、導電性支持体からの電荷注入の防止等の目的で設けられる。
積層型感光体における各層のうち、電荷発生層(25)について説明する。電荷発生層は、積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能をもつ。この層は含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。電荷発生層は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
電荷輸送層は電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた感光体の表面電荷を中和する機能を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分ということができる。
このイオン化ポテンシャルの関係は電荷輸送層に含有する電荷輸送物質と後述する硬化性電荷輸送物質との関係についても同様にこれらの差は0.10eVにするとよい。なお、本発明における電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル値は理研計器社製大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1により一般的な方法で計測して得られた数値である。
架橋型樹脂表面層は感光体表面に製膜される保護層を指す。この保護層は塗料がコーティングされた後、重縮合反応によって架橋構造の樹脂が製膜される。樹脂膜が架橋構造をもつため感光体各層の中で最も耐摩耗性が強靱である。また、架橋性の電荷輸送材料が配合されるため電荷輸送層と類似の電荷輸送性を示す。
本発明では感光体表面にシリカ微粒子を用いることに起因する画像流れを解消する目的で特にトリメチロールプロパントリアクリレートを用いることが必須となる。トリメチロールプロパンの利用は他に感光体表面の耐摩耗性の強化にも優れる。
これらは東京化成社等の試薬メーカー、日本化薬社KAYARD DPCAシリーズ、同DPHAシリーズ等を入手することができる。
また、硬化を促進させたり、安定化させたりするためにチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社イルガキュア184等の開始剤を全固形分に対して5〜10wt%程度加えてもよい。
本発明では上述の式(1)を満足することが重要である。このために感光体表面の粗面化が必要となる。この具体的な方策として、表面形状の制御が期待される試薬類の添加として、架橋型樹脂表面層へのフィラーの配合、ゾル−ゲル系塗料の配合や種々ガラス転移点の異なる樹脂のポリマーブレンド、有機微粒子の添加、発泡剤の添加、シリコーンオイルの大量添加が挙げられる。また、表面層の製膜条件の制御として、塗料中に多量の水分を加えたり、種々沸点の異なる液体試薬を添加したりする手段が挙げられる。また、架橋型樹脂表面層用塗料をコーティングした直後の未硬化前のウェット膜に対して、有機溶剤や水を散布する手段も考えられる。他に、架橋型樹脂膜を硬化した後、追加工として、サンドブラスト処理やラッピングフィルム等の研磨紙で表面研磨する手段も考えられる。
これらに限られる訳ではないが、例えば、架橋型樹脂表面層用塗料をコーティングした直後の未硬化前のウェット膜に対して、水を散布した後、硬化することにより、比較的簡単かつ確実に上述の式(1)を満足する感光体を製作することができる。
または、塗料の重量に対し、5重量%〜15重量%の水が含有される架橋型樹脂膜用塗料によって電子写真感光体の表面層を製膜することにより、比較的簡単かつ確実に上述の式(1)を満足する感光体を製作することができる。
感光体の粗面化は表面層塗料へフィラーなどの形状制御が可能な薬品を加えたり、製造条件を工夫したり、機械加工を施すなどの種々の方策によって達成できる。しかしながら、これらの方策の諸条件で如何なる表面形状が得られるかは従来からおよそ明らかにされていない。例えば、図41は表面層塗料にフィラーが配合する場合の感光体表面形状であるが、形状因子は−0.09と小さく、必ずしも固体潤滑剤付着性に優れる形状とは言えない。
発明者は、既存の有機感光体に対して、種々の粗面化を試みたところ、例えば、上の二つの方策によって、固体潤滑剤に優れる特別な表面形状が得られている。例えば、図42の形状はウェット膜に対して水を散布することで得られた形状で、滑らかな曲線であるもののミリ単位の凹凸が見られる。材料と工法の複数の条件によってはじめて得られ表面形状である。この断面曲線のウェーブレット変換によって得られる形状因子は3.47と非常に高い。また、図43の形状は架橋型樹脂表面層用塗料の中にイオン交換水を添加した場合に得られた形状である。同じく、この断面曲線のウェーブレット変換によって得られる形状因子は1.69と従来品と比較して高い。このような高い形状因子を有する感光体は従来見いだされていない。また、形状も特異となる。
以下、図面に沿って本発明で用いられる画像形成装置を説明する。本発明の画像形成装置には後述する固体潤滑剤を感光体表面に入力する手段が取り付けられる。簡単のため、この手段は画像形成装置の説明の後に別に説明する。
本発明では、図10に示すように潤滑剤(3A)を感光体表面に供給するための潤滑剤供給手段として、潤滑剤塗布装置(3C)を上記の画像形成装置の全てについて設けている。この潤滑剤塗布装置は、塗布部材としてのファーブラシ(3B)、固体潤滑剤(3A)、潤滑剤をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ(3D)を有している。このときの固体潤滑剤(3A)はバー状に成型された固体潤滑剤である。ファーブラシ(3B)は感光体表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって固体潤滑剤(3A)を一端ブラシに汲み上げ、感光体表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して感光体表面に塗布する。ここで、本発明では、良質な固体潤滑剤塗布性を発現する条件として、支配的な周波数成分における電子写真感光体の凹凸が毎秒250個〜1000個の割合で塗布ブレードを通過する感光体線速条件を満足することが重要な条件となる。
表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密社、Surfcom 1400D)にて、電子写真感光体表面をピックアップ:E−DT−S02Aを取り付けて、測定長さ12mm、測定速度;0.06mm/sの条件で1つの感光体につき4箇所測定した。都度、感光体断面曲線のテキストデータを収録し、ウェーブレット変換による多重解像度解析を行なった。これから得られる表面粗さパラメーター4箇所分の平均値を各周波数成分のWRaとした。
感光体の固体潤滑剤受容性評価は、カラープリンター(リコー社製 IPSiO SP C811)を改造して行なった。固体潤滑剤はステアリン酸亜鉛を用いた。カラー複写機の改造は感光体周りを図9の構成となるように一部のユニットを取り除いた。
試験条件を一定にする目的で、感光体ユニット−現像器複合ユニット(簡単のためPDユニットと称する。)に固体潤滑剤のステアリン酸亜鉛バー、ステアリン酸亜鉛の塗布ブラシ、およびステアリン酸亜鉛の塗布ブレード(未使用、純正品)を取り付けた。塗布ブラシはステアリン酸亜鉛の含浸具合を揃えるため、30分間、カラー複写機内にPDユニットを装着した状態でフリーランを行なった。また、現像器ユニット内の現像剤は完全に除去した。
画素密度が600dpi×600dpiで8×8のマトリクス中に4ドット×4ドットを描いたハーフトーンパターンと白紙パターンを交互に連続5枚ずつ印刷し、白紙パターンの地肌汚れを目視により、以下の基準で評価した。
4; 優れている
3; 問題なし
2; 僅かにくすんだ感触を受けるが実際の使用では問題ない
1; くすんだ感触を受ける。
・アルキッド樹脂溶液 12重量部
(ベッコライト M6401−50,大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 8.0重量部
・酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
・メチルエチルケトン 200重量部
・下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5.0重量部
・シクロヘキサノン 200重量部
・メチルエチルケトン 80重量部
・Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成社製) 10重量部
・下記構造の低分子電荷輸送物質 7.0重量部
・ 下記構造の架橋型電荷輸送物質 6.0重量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの50%THF希釈液 6重量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとプロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物の5%THF希釈液 0.24重量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.6重量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル) ホスファイト 0.12重量部
・テトラヒドロフラン 68.92重量部
・アルキッド樹脂溶液 12重量部
(ベッコライト M6401−50,大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 8.0重量部
(スーパーベッカミン G−821−60,大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
・メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗料〕
・下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5.0重量部
・シクロヘキサノン 200重量部
・メチルエチルケトン 80重量部
・Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成社製) 10重量部
・下記構造の低分子電荷輸送物質 7.0重量部
・下記構造の架橋型電荷輸送物質 6.0重量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの50%THF希釈液 6.0重量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとプロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物の5%THF希釈液 0.24重量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.60重量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル) ホスファイト 0.12重量部
・テトラヒドロフラン 68.9重量部
・イオン交換水 4.2重量部
実施例6の架橋型樹脂表面層塗料を次のものに変更した以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を得た。
・下記構造の架橋型電荷輸送物質 6.0重量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの50%THF希釈液 6.0重量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとプロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物の5%THF希釈液 0.24重量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.60重量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル) ホスファイト
0.12重量部
・テトラヒドロフラン 68.9重量部
実施例6の架橋型樹脂表面層塗料を次のものに変更した以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を得た。
・ 下記構造の架橋型電荷輸送物質 6.0重量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの50%THF希釈液 6.0重量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとプロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物の5%THF希釈液 0.24重量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.60重量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル) ホスファイト 0.12重量部
・フィラー(日本触媒社、エポスターS6、平均粒径0.3μm) 0.67重量部
・テトラヒドロフラン 68.9重量部
比較例1の架橋型樹脂表面層塗料に含まれるフィラー含有量を1.4重量部に変更した以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を得た。
比較例1の架橋型樹脂表面層塗料に含まれるフィラー含有量を3.2重量部に変更した以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を得た。
実施例6における架橋型樹脂表面層塗料を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
・Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成社製) 10重量部
・下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
(住友化学社、スミコランダム AA−03)
・分散剤(ビックケミー社、BYK−P104) 0.014重量部
・テトラヒドロフラン 280重量部 シクロヘキサノン 80重量部
11 電子写真感光体
12 帯電手段
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 印刷メディア(印刷用紙、OHP用スライド)
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写体
<図7、図8について>
21 導電性支持体
24 下引き層
25 電荷発生層
26 電荷輸送層
28 架橋型樹脂表面層
<図9について>
31 感光体
37 固体潤滑剤
38 帯電ローラ
39 塗布ブレード
3A 固体潤滑剤
3B 塗布ブラシ
<図10について>
3C 潤滑剤供給手段
<図11について>
3D 塗布ブレードのエッジ部分
<図18について>
41 測定対象である電子写真感光体
42 表面粗さを測定するプローブを取り付けた治具
43 上記治具を測定対象に沿って移動させる機構
44 表面粗さ計
45 信号解析を行なうパーソナルコンピューター
<図19について>
101 1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分
102 1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分
103 1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分
104 1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分
105 1回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分
106 1回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分
107 2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分
108 2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分
109 2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分
110 2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分
111 2回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分
112 2回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分
<図20について>
121 1回目の多重解像度解析における最高周波成分の帯域
122 1回目の多重解像度解析における最高周波成分より1つ低い周波数成分の帯域
123 1回目の多重解像度解析における最高周波成分より2つ低い周波数成分の帯域
124 1回目の多重解像度解析における最高周波成分より3つ低い周波数成分の帯域
125 1回目の多重解像度解析における最高周波成分より4つ低い周波数成分の帯域
126 1回目の多重解像度解析における最低周波成分の帯域
<図21について>
127 2回目の多重解像度解析における最高周波成分の帯域
128 2回目の多重解像度解析における最高周波成分より1つ低い周波数成分の帯域
129 2回目の多重解像度解析における最高周波成分より2つ低い周波数成分の帯域
130 2回目の多重解像度解析における最高周波成分より3つ低い周波数成分の帯域
131 2回目の多重解像度解析における最高周波成分より4つ低い周波数成分の帯域
132 2回目の多重解像度解析における最低周波成分の帯域
Claims (12)
- 導電性支持体上に感光層と架橋型樹脂表面層を有する電子写真用感光体において、少なくとも電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して最高周波数成分(HHH)から、次の高周波数成分(HHL)、3番目の高周波数成分(HMH)、4番目の高周波数成分(HML)、5番目の高周波数成分(HLH)及び最低周波数成分(HLL)に至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行い、更にここで得た最低周波成分(HLL)の一次元データ配列に対してデータ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、最高周波数成分(LHH)から、次の高周波数成分(LHL)、3番目の高周波数成分(LMH)、4番目の高周波数成分(LML)、5番目の高周波数成分(LLH)及び最低周波数成分(LLL)に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行うことで追加で得られる6個の各周波数成分との合計12個の各周波数成分の個々の中心線平均粗さ(WRa)が下記式(i)を満足することを特徴とする電子写真感光体。
- 電子写真感光体の架橋型樹脂表面層に少なくともトリメチロールプロパントリアクリレートの架橋体が10wt%以上50wt%未満の割合で含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 架橋型樹脂表面層用塗料をコーティングした直後の未硬化前のウェット膜に対して、水を散布した後、硬化すされたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 塗料の重量に対し、5重量%〜15重量%の水が含有される架橋型樹脂膜用塗料によって電子写真感光体の表面層が製膜されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層と架橋型樹脂表面層を設ける電子写真用感光体の製造方法において、少なくとも電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して最高周波数成分(HHH)から、次の高周波数成分(HHL)、3番目の高周波数成分(HMH)、4番目の高周波数成分(HML)、5番目の高周波数成分(HLH)及び最低周波数成分(HLL)に至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行い、更にここで得た最低周波成分(HLL)の一次元データ配列に対してデータ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、最高周波数成分(LHH)から、次の高周波数成分(LHL)、3番目の高周波数成分(LMH)、4番目の高周波数成分(LML)、5番目の高周波数成分(LLH)及び最低周波数成分(LLL)に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行うことで追加で得られる6個の各周波数成分との合計12個の各周波数成分の個々の中心線平均粗さ(WRa)が上記式(i)を満足する架橋型樹脂表面層を設けることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 少なくとも請求項1乃至5のいずれかに記載の一種以上の電子写真感光体と固体潤滑剤をブラシ状ローラで掻きとり電子写真感光体に塗布する手段および固体潤滑剤を感光体表面に広げる塗布ブレードとを有することを特徴とする画像形成装置。
- 前記電子写真感光体は、少なくとも前記HLL以外の周波数成分のWRaが0.06μm以上を有し、且つ、その帯域が前記LLLよりも高周波数成分の帯域であり、該電子写真感光体の周波数成分の帯域と各々のWRaの対数との関係を2次元のグラフにプロットしたときにLLH、LMH、およびLMLの何れか一つの帯域に屈曲点または極大点を持つものであり、且つ、感光体の凹凸が毎秒250個〜1000個の割合で塗布ブレードを通過する感光体線速条件を満足することを特徴とする請求項7の画像形成装置。
- 少なくとも請求項1乃至5のいずれかに記載の一種以上の電子写真感光体と固体潤滑剤をブラシ状ローラで掻きとり該電子写真感光体に塗布する手段、および固体潤滑剤を該感光体表面に広げる塗布ブレードとを有することを特徴とする画像形成用プロセスカートリッジ。
- 前記電子写真感光体は、少なくとも前記HLL以外の周波数成分のWRaが0.06μm以上を有し、且つ、その帯域が前記LLLよりも高周波数成分の帯域であり、該電子写真感光体の前記周波数成分の帯域と各々のWRaの対数との関係を2次元のグラフにプロットしたときにLLH、LMH、およびLMLのいずれか一つの帯域に屈曲点または極大点を持つものであり、かつ、感光体の凹凸が毎秒250個〜1000個の割合で塗布ブレードを通過する感光体線速条件を満足することを特徴とする請求項9の画像形成用プロセスカートリッジ。
- 少なくとも重合トナーを用いて現像することを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
- 少なくとも2色以上の現像ステーションを有し、かつ、タンデム方式であって更に重合トナーを用いて現像することを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
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