JP2013195866A - 電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長寿命でプリントコストが低減された画像形成装置を実現するための感光体表面形状を形成することを可能とする電子写真感光体の製造方法の提供。
【解決手段】導電性支持体に感光層と表面層とを積層した電子写真感光体の製造方法であって、前記表面層を形成する塗料が、少なくとも金属酸化物フィラー、溶媒、結着剤成分を含む、金属酸化物フィラーの分散状態が異なる2種以上のミルベースを調合して得た表面層形成用塗料を感光層の表面に塗布することによって表面形状が制御された表面層を形成する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は複写機、ファクシミリ、レーザープリンター、ダイレクトデジタル製版機等の画像形成装置に関し、特に、長寿命でプリントコストが低減された画像形成装置に関する。
複写機やレーザープリンターなどに応用される電子写真感光体はかつて、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機材料系の電子写真感光体が主流であったが、現在では地球環境への負荷低減、低コスト化、及び設計自由度の高さで無機材料系の電子写真感光体よりも有利な有機材料系の電子写真感光体(OPC)が主流になっている。現在、有機材料系の電子写真感光体は電子写真感光体総生産量の100%に肉薄する割合で利用されている。この有機材料系の電子写真感光体は近年の地球環境保全の高まりを受けてサプライ製品(使い捨てされる製品)から機械部品への転換が求められている。
有機材料系の電子写真感光体の高耐久化は従来種々の試みがなされてきた。現在では架橋樹脂膜の電子写真感光体表面への成膜(例えば特許文献1)とゾル−ゲル硬化膜の電子写真感光体表面への成膜(例えば特許文献2)が特に有望視されている。前者は電荷輸送性成分を配合してもワレやクラックが生じにくく生産上歩留りが低減できるメリットを有する。なかでもラジカル重合性アクリル樹脂は強靱で感度特性の良好な電子写真感光体が得られやすく有利である。これらの架橋構造をとる二種の方策は複数の化学結合によって塗膜が形成されるため、塗膜がストレスを受けて化学結合の一部が切断しても直ちに摩耗へ進展することがない。
また、潤滑剤を電子写真感光体表面へ塗布する方法がとりわけ重合トナーのクリーニング性を高める方法として利用されている。この方法は電子写真感光体を帯電ハザードから保護する機能も担っており、少なからず装置寿命の延命に貢献している。
しかしながらこれらの技術を組み合わせても、現在、電子写真感光体は交換使用されている状態である。
これは電子写真感光体の表面物性が耐久使用により変質し、異常画像の生成やクリーニング性能が不調となるためである。これでは原材料の発掘から廃棄、リサイクル化に至る画像形成装置のライフサイクルが従来の枠組みから超越することはできない。
電子写真感光体の機械的強度の向上はほぼ頂点に至るほどの技術が重ねられている。更なる長寿命化を獲得するには従来の考えを超越する新しい技術が必要である。機械的強度に変わる感光体寿命を決める因子に感光体表面に生じる荒れやフィルミングがある。
これに対し、潤滑剤塗布は感光体表面の劣化防止について有利な方策と言えるが、現在、潤滑剤の物質量を入出力する制御まで十分にできていない。
潤滑剤の機能は感光体表面の摩擦低減化に伴う感光体の転写性を高めたり、クリーニングブレードとの摺擦安定を高めたりする機能がある。更に、帯電ハザードから感光体表面を保護する機能もある。
潤滑剤の入出力が不十分な場合、感光体の創傷や摩耗を促進させたり、トナー成分が感光体表面に蓄積したりする。また、潤滑剤の皮膜が不完全のまま粒形状の潤滑剤が感光体表面に蓄積することがある。このとき、電子写真感光体周囲が潤滑剤で汚染されるケースも多い。これが装置寿命の原因になっているのが現状である。
本発明は電子写真感光体の表面物性を耐摩耗性と同等以上に高安定化させる技術により、これを用いた長寿命でプリントコストが低減された画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
以上を実現するための感光体表面形状の制御方法とこの方法による表面形状を制御した電子写真感光体、及びこの電子写真感光体を搭載する画像形成用プロセスカートリッジと画像形成装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は具体的には下記(1)〜(10)に記載の技術的特徴を有する。
(1)導電性支持体に感光層と表面層とを積層した電子写真感光体の製造方法であって、前記表面層を形成する塗料が、少なくとも金属酸化物フィラー、溶媒、結着剤成分を含む、金属酸化物フィラーの分散状態が異なる2種以上のミルベースを調合して得た表面層形成用塗料を感光層の表面に塗布することによって表面形状が制御された表面層を形成する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(2)前記酸化物フィラーとして少なくともα−アルミナを含むことを特徴とする(1)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(3)前記α−アルミナの平均粒子径が0.2μm以上0.5μm以下であることを特徴とする(2)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(4)前記塗料が少なくともリン酸系湿潤分散剤が含有されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法によって製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
(6)前記表面層が、
(I)表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して一次元データ配列を作成し、
(II)該一次元データ配列を、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの6個の周波数成分に分離し、
(III)次いで、得られた6個の周波数成分の中で最低周波数成分の一次元データ配列に対して、データ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きして一次元データ配列を作成し、
(IV)更に、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの、追加の6個の周波数成分に分離して、
(V)前記(II)及び(IV)で得られた合計12個の周波数成分の個々の算術平均粗さWRa(LLL)からWRa(HHH)の対数を左から右に順に線で結ぶことで得られる曲線に対して、
少なくとも、LLLからLHLの帯域に屈曲点をもたず、
かつ、WRa(LLH)が0.04μm未満であり、
かつ、WRa(HLH)が0.004μm未満であることを特徴とする(5)に記載の電子写真感光体。
(7)前記表面層は、三次元架橋構造を有する樹脂を含むことを特徴とする(5)又は(6)に記載の電子写真感光体。
(8)帯電装置を用いて電子写真感光体に帯電を行い、
画像露光によって静電潜像を形成し、
現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、
転写装置により像担持体上のトナー像を転写材に転写し、
クリーニング装置により像担持体表面を清掃し、
帯電装置よりも上流側の像担持体面部分に当接するように配設する塗布装置により像担持体表面に皮膜を形成する
画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、
該電子写真感光体は(5)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であり、
該塗布装置は、像担持体に当接する塗布ブラシと塗布ブレードを有し、
像担持体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流側で、
更に1サイクル当たりの塗布量が清掃によって除去される量以下であり、
かつ、該像担持体は、皮膜欠陥が少なくとも平均10%未満であり、
かつ質量膜厚が1分子層以上3分子層未満である循環型表面層を有する画像形成装置用プロセスカートリッジ。
(9)帯電装置を用いて電子写真感光体に帯電を行い、
画像露光によって静電潜像を形成し、
現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、
転写装置により像担持体上のトナー像を転写材に転写し、
クリーニング装置により像担持体表面を清掃し、
帯電装置よりも上流側の像担持体面部分に当接するように配設する塗布装置により像担持体表面に皮膜を形成する
画像形成装置において、
該電子写真感光体は(5)〜(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であり、
該塗布装置は、像担持体に当接する塗布ブラシと塗布ブレードを有し、
像担持体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流側で、
更に1サイクル当たりの塗布量が清掃によって除去される量以下であり、
かつ、該像担持体は、皮膜欠陥が少なくとも平均10%未満であり、
かつ質量膜厚が1分子層以上3分子層未満である循環型表面層を有する画像形成装置。
本発明によれば、寿命の延命を獲得し、プリントコストの低減が達成された画像形成装置及び画像形成方法を提供することができる。
本発明に係わる画像形成装置の模式断面図を示す例である。 本発明に係わる画像形成装置の別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 本発明に係わる画像形成装置の更に別の例を示す模式断面図である。 電子写真感光体に循環材を供給する手段を示す模式断面図である。 本発明に係わる電子写真感光体の層構成を示す断面図である。 本発明に係わる電子写真感光体の別の層構成を示す断面図である。 表面粗さ・輪郭形状測定システムの構成図である。 ウェーブレット変換による多重解像度解析結果を表す図の一例である。 一回目の多重解像度解析における周波数帯域の分離の図である。 一回目の多重解像度解析での最低周波数データのグラフである。 二回目の多重解像度解析における周波数帯域の分離の図である。 図13の断面曲線について求めた表面粗さスペクトルである。 粗さスペクトルにおける屈曲点及び屈曲点における角度θを示す一例図 感光体1〜3の粗さスペクトルを示す図である。 感光体4〜7の粗さスペクトルを示す図である 感光体1〜5、感光体6、7の粗さスペクトルを対比して示した図である。 感光体11〜14の粗さスペクトルを示す図である。 感光体15〜18の粗さスペクトルを示す図である。 感光体19〜24の粗さスペクトルを対比して示した図である。 感光体25〜29の粗さスペクトルを示す図である。 感光体1〜7の粗さスペクトルミルベースA、B,Cの配合比率を示す三角図と対応させて示した図である。
本発明に係る感光体表面形状の製造方法は電子写真感光体の表面層に金属酸化物フィラーを含む2種以上の分散状態の異なるミルベースを調合することで電子写真感光体表面形状を製造することを特徴とする。
ここで、ミルベースとは顔料と分散媒が振動やミリングなどの方法で攪拌された混合物を表す。例えば、本発明では金属酸化物フィラーと有機溶剤、及び分散剤などの添加剤を攪拌混合して得られた混合物をミルベースと称する。
ミルベースの分散状態の違いは、ミルベース中の顔料の分散具合の違いを表す。この違いは顔料の粒度分布や分散剤による顔料の表面処理の度合いなどに反映される。顔料の表面処理の度合いは、簡単には顔料の濡れ性によって見積もることができる。濡れ性は極性ないし非極性溶媒の顔料に対する接触角を測定することで評価できる。
また、本発明に係る画像形成装置を図1に基づいて説明すると、画像形成装置は所定の方向に回転駆動されてなる電子写真感光体11と、該電子写真感光体11表面を一様に帯電させる帯電手段12と、前記電子写真感光体11を露光して静電潜像を形成する露光手段13と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段14と、前記トナー像を前記電子写真感光体11から転写材上に転写する転写手段16と、当該トナー像が転写された後の電子写真感光体11を清掃するクリーニング手段17と、前記電子写真感光体11の回転駆動方向に対して、前記クリーニング手段17の下流かつ前記帯電装置12の上流に配設されてなり、前記電子写真感光体11に当接し当該電子写真感光体11表面に循環材3Aの皮膜を塗布形成する塗布手段3と、を備える画像形成装置であって、前記塗布手段3は、塗布ブラシ3Bと、塗布ブレード3Cとを有し、前記電子写真感光体11は、前記循環材3Aの皮膜欠陥が10%未満であり、かつ、前記循環材3Aよりなり質量膜厚が1分子層以上3分子層未満である循環型表面層を有し、当該画像形成装置における画像形成サイクルの1サイクル当たりで、前記塗布手段3による前記循環材3Aの塗布量は、前記クリーニング手段17による清掃で除去される前記循環材の除去量以下であることを特徴とする。
循環材を用いる画像形成装置の一例として図8を用いて説明する。図8の装置では循環材(3A)は塗布ブラシ(3B)で電子写真感光体表面に入力され、次いで塗布ブレード(3C)でならされ、次にクリーニングブレード(17)で除去され、再び塗布ブラシ(3B)へ戻るサイクルを経る。電子写真感光体(11)表面には循環材(3A)の他にトナーの入出力があるため、循環材(3A)はトナーと混合される状態で存在する。
循環材(3A)のロス成分がゼロになる状態を想定すると、少なくとも帯電装置(12)、塗布ブラシ(3B)、塗布ブレード部(3C)、クリーニングブレード(17)の鏡面部分及び電子写真感光体(11)表面にはトナーと循環材(3A)との混合物の滞留は無い。また、循環材(3A)を処方に含まないトナーを用いるとき、現像器内部のトナーは循環材濃度がゼロとなる。すなわち、これらの滞留分と現像器内部の循環材成分が循環材のロス成分と見積もられる。なお、帯電装置(12)には帯電装置(12)をクリーニングする帯電装置クリーナ(12c)が当接して設けられてなる。
本発明の画像形成装置は画像形成装置内に電子写真感光体表面に皮膜をコーティングする塗布装置を内蔵するため、電子写真感光体は事実上摩耗することがない。
従来、電子写真感光体は消耗品として頻繁に交換して使用してきたが、本発明ではその必要がない。電子写真感光体は新たに製造することも回収することも不要であり、本発明の画像形成装置は省資源化による低環境負荷に対して極めて有利に働く。従来型の電子写真感光体である電子写真感光体を一度回収した後リサイクル使用する方法では本発明の形態に対してプリント一枚当たりのリサイクルコストの優位性に遠く及ぶことはできない。
本発明の画像形成装置は電子写真感光体の表面層上に循環型表面層を形成する材料(以下、循環材と称する)をコーティングする塗布量が、クリーニング装置による清掃で循環材を除去する量以下とする新規なプロセスである。これは電子写真感光体最表面に循環型表面層を設けることを成立させる重要な要件となる。循環材の除去量に応じて循環材をコーティングすることで、電子写真感光体を中心に出入りする循環材のマスバランスは等価性を得ることができる。
本発明は一見、既存の電子写真感光体へ潤滑剤を塗布する手段に類似するが、潤滑剤塗布はクリーニング性を持続するなどの電子写真感光体表面の潤滑機能を確保するために潤滑剤を電子写真感光体へ厚塗りする設計になっている。これまでの潤滑剤を電子写真感光体へ塗布する方式は本発明の電子写真感光体表面に循環型表面層を積層する思想はなく、例えば電子写真感光体表面の保護や、あるいは電子写真感光体表面の摩擦係数を所定以下とするために潤滑剤を電子写真感光体表面に外部供給してきたに過ぎない。
なお、本発明は図7に示すように中間転写体は用いずに電子写真感光体(11)の表面から転写装置(16)により直接転写材(18)に転写する画像形成方式であっても良い。
次に、本発明に係る画像形成装置について更に詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
本発明において循環材の清掃によって除去される量(除去量)の決定は次の手順による。
電子写真感光体表面にあらかじめ循環材を1分子層分のコーティングを行い、擬似的若しくは真の循環型表面層を電子写真感光体の最表面に設ける。これを複数用意し、画像形成装置内で循環材の消失速度を電子写真感光体の走行距離から求める。循環材の付着量は後述するICP(Inductively Coupled Plasma)分析又はXRF(X−ray Fluorescence)分析によってモニターすることができる。電子写真感光体の走行に際しては環境変動や画像濃度の異なるプリントを行う等の外乱を加えて循環材の消失速度を求めても良い。
次に、1サイクル当たりの循環材の塗布量が清掃によって除去される量以下にする決定方法について述べる。循環材の消費量は電子写真感光体に対する循環材の付着効率と画像形成プロセスによって生じる損失分の補償を掛け合わせた値として決定される。
電子写真感光体表面の循環材の付着効率は循環材の消費量に対する電子写真感光体表面の付着量を上記と類似の方法(ICP分析、XRF分析)で求めることができる。
種々の外乱を含む画像形成プロセスに並行して循環材をコーティングする場合、この付着効率はプロセスに起因する損失とコーティングする表面層の汚染具合に起因する損失分を補償する必要がある。外乱の有無による循環材の付着効率差から損失分が算出される。
ただし、循環型表面層が成立する画像形成装置の場合は単純に循環材の消費量を増減させて、循環型表面層の成立点を特定することができる。
本発明の画像形成装置は電子写真装置内で循環材を電子写真感光体の表面層上へコーティングすることを特徴としており、良質な製膜を確保するために、耐久使用をしても表面層の塗布面は清浄であることが望ましくかつ表面層を変質させない状態にすることが望ましい。前者は清浄を崩すトナーを最大限排除する方法として、循環型表面層の塗布装置を電子写真感光体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流に配置することが重要である。更に後者に対しては特に電子写真感光体と接触する部材間のなじみに変調を来す表面層の形状変化を防止する必要がある。このため、表面層が直接、帯電ハザードにさらされないようにするために、以上の塗布装置は電子写真感光体表面移動方向に対して帯電装置よりも上流に配置して循環型表面層をコーティングすることが重要である。
本発明の電子写真感光体の最表面層は循環型表面層であり、この皮膜の欠陥は少なくとも10%未満で、かつ、循環型表面層の質量膜厚が一分子層以上三分子未満である。質量膜厚はICP分析や簡易的なXRF分析によって算出できる。ICP分析は特許文献3に準じて得ることができ、XRF分析はICP分析結果による検量線から付着量を算出している。質量膜厚は非特許文献1に基づき算出している。
また、電子写真感光体の表面層上に被膜する循環型表面層の欠陥は100%から被覆率を引いた値として算出する。被覆率は特許文献3に記載の方法に準じてXPS分析法から求める値である。質量膜厚は非特許文献1に記載の面密度(g/cm)を密度(g/cm)で割ることで長さすなわち質量膜厚を得ている。本発明の実施例で扱うステアリン酸亜鉛は一分子の厚みを5nmとして重なる分子数を厚みの単位として用いている。この厚みは特許文献4の段落[0021]に基づいている。
皮膜欠陥の大きさは感光体の表面安定と相関があり、皮膜欠陥が10%以下に低減すると急激にフィルミングに対する耐性が強くなる。また、循環材は厚みに係わらずフィルミングの耐性に効果があるため、一分子層の厚みで十分である。付着量が3分子以上の場合、循環材の交換頻度が多くなったり、装置内が循環材で汚染されやすくなったりするため、分子の層厚としては3分子未満が好ましい。
電子写真感光体表面の循環型表面層は以上の通り定義するが、画像形成装置内あるいは画像形成プロセスの最中に循環型表面層を成立させることは容易ではない。なぜなら、画像形成プロセスでは電子写真感光体表面層の物性は絶えず履歴を蓄積していくためである。
画像形成プロセスの途上において、循環材を電子写真感光体の表面層にコーティングするのみならず、トナーによる画像形成を伴う。このように循環型表面層のコーティングと画像形成を同時に行う場合、循環材のコーティングが不十分なときには電子写真感光体の表面層は紙粉やトナー成分がフィルミングしたり、メダカ形状のフィルミングが生じたりする。これらのフィルミングは画像形成のサイクルを繰り返す度に循環材のコーティングを困難にしてしまう。また、循環材の被覆機能が弱く循環材の供給に対して皮膜形成が追いつかなくなると循環材のコーティング膜が粒だつことがある。また、電子写真感光体と接触する部材に循環材が滞留したりすり抜けたりして、電子写真感光体表面は砂利をまぶしたような付着状態になることがある。こうなると、電子写真感光体周りの部材(帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置)を汚染して寿命を縮めたり、現像器へ循環材が混入してトナーの帯電を不調にさせたりするなど、画像形成装置を耐久使用するときの問題になる。このような粒だちは必ずしも0%である必要はないが、問題が回避できる目安として、□2mm程度領域で電子写真感光体表面を観察したときに粒だちの面積比率が0.05%未満、より好ましくは0.03%未満がよい。粒だちの面積比率はimageJ(アメリカ国立衛生研究所製)やImageProplus(メディアサイバネティックス社製)等の画像解析ソフトで算定できる。
現在、画像形成装置内で一般的な潤滑剤を塗布する場合、潤滑剤の被覆率は85%程度である場合が多く、その付着量は二分子層から四分子層程度である場合が多い。粒だちはプリントパターンによって変わるが、0.1%から2.5%程度である場合が多い。このため、耐久使用時に異常画像を来したり、電子写真感光体の交換を要したりしており、循環型表面層を成立しているとは言えない状態である。
これに対し本発明は電子写真感光体表面層のフィルミングと部材汚染による寿命を克服し、電子写真感光体の寿命を寿命レスへ極める進歩性をもつ。
また、本発明の画像形成装置で用いる循環型表面層の塗布装置は既存の潤滑剤塗布手段を流用することが可能である。このため、本発明の画像形成装置は格別なコストアップを抑えることができる。
以上の画像形成装置が備える電子写真感光体の最表面である循環型表面層の成立に対して、循環材は電子写真感光体表面層から除去しやすく、かつコーティングしやすい材料が望ましい。循環型表面層を永続させるために一サイクルでコーティングする物質量と清掃によって除去する物質量が等価である必要がある。
また、循環材の消費率が過剰でないことも必要となる。循環材の消費率は画像形成プロセスで生じる電子写真感光体の走行距離に対する循環材投入量(mg/km)として定義する。
以上の要件に対して、循環材に用いられる材料として、ワックスないし高級脂肪酸金属塩が有利である。ワックスはハゼろう、ウルシろう、パームろう、カルナウバろう等の植物系ワックス、蜜ろう、鯨ろう、イボタろう、羊毛ろう等の動物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス等の鉱物系ワックスを利用できる。
特に従来、一般に使用されてきた高級脂肪酸金属塩の多くは材料の性質面から有利である。この代表的な化合物であるステアリン酸亜鉛はラメラ構造をとり得る化合物である。ラメラ構造とは分子が規則的に折りたたまれて成す層が積み重なって配列する構造である。
このラメラ構造は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れてはがしやすい。この作用は循環材の循環を成立させるのに有利である。ステアリン酸亜鉛がせん断力を受けて均一に電子写真感光体表面を覆っていくラメラ構造の特性は少量の循環材によって効果的に電子写真感光体表面を覆うことができる。
この方法で循環材を塗布する場合、その循環材の塗布状態を制御するには様々な方法がある。例えば、固形循環材と塗布ブラシとの接触圧力を高めたり、塗布ブラシの回転速度を制御したりする手段を考えることができる。また、画像形成情報に応じて、塗布ブラシの回転数を制御する試みもある。
循環剤はワックスや高級脂肪酸金属塩を単独で用いても良いが、これらをバインダーとして、電荷輸送物質や酸化防止剤など他の機能材料と混合して利用することができる。
このような循環材を用い、画像形成装置内で皮膜と除去がしやすい材料を特定するため、循環材の除去とコーティングの繰り返し工程に際して物質量の等価性を得やすい効果を享受することができる。このため、循環材の塗布と除去を担うモジュールを簡単にすることができる。また、循環型表面層を永らく形成可能にすることができる。更に、前述の表面層の形状との組合せにより、一サイクル当たりの被覆能力を格別に高めることが実現でき、循環剤の消費率の減量化を享受することができる。
さらに本発明における循環材としてはラメラ構造をとり得る脂肪酸金属塩として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸のうち少なくとも一種以上の脂肪酸を含有し、かつ、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムのうち少なくとも一種以上の金属を含有する脂肪酸金属塩が好ましい。
特に、ステアリン酸亜鉛は工業的規模で生産され、かつ多方面での使用実績があることから、コスト、品質、安定性、及び信頼性において最も好ましい材料である。
また、従来、潤滑剤の効率的な塗布方法として蓄積してきた豊富な塗布技術を応用しやすい有利性をもつ。
なお、一般に工業的に使われる高級脂肪酸金属塩はその名称の化合物単体組成ではなく、多かれ少なかれ類似の他の脂肪酸金属塩、金属酸化物、及び遊離脂肪酸を含むものであり、本発明の脂肪酸金属塩もこの慣例に従う。
このような循環材を用いることで、循環型表面層の成立に対して高信頼性と低コスト化を享受することができる。また、潤滑剤の塗布技術として蓄積のある塗布技術を応用しやすい装置開発の利便性を得ることができる。
以上の画像形成装置について、クリーニング装置までの清掃で循環材を除去する量よりも少ない塗布量で電子写真感光体の表面層へ循環材をコーティングすることにより、皮膜の欠陥が少なくとも10%未満で、かつ、循環型表面層の質量膜厚が一分子層以上三分子未満である循環型表面層を成立するには循環材を電子写真感光体の表面層全面へくまなく塗布できるかが鍵となる。
この塗布機能の強化は電子写真感光体と塗布ブレードとの摺擦状態の制御が必要である。より簡単に言えば、これらのなじみを良くするプロセスが必要となる。
本発明者は本発明と同じ構成の画像形成装置を耐久使用し、塗布ブレードの電子写真感光体との摺擦部分を観察すると、電子写真感光体の表面層の形状によって塗布ブレードの荒れ方が異なる特徴を知り得た。この観察ではブレード鏡面の真上から対物レンズが100倍の共焦点顕微鏡で□180μmの視野を観察している。また、塗布ブレードは電子写真感光体に対してトレーリング配置で使用している。塗布ブレードの荒れ具合は塗布ブレードのカット面エッジ部から垂直方向に90μm幅で、全長180μm領域の面粗さ(Ra)と、凹凸の局部山頂の平均間隔(Sm)から計量した。RaとSmの大きさについてマッピングした粗さ加減の分類分けを試みると、電子写真感光体の表面層の断面曲線について、低周波成分の凹凸が小さい方と、中周波成分の凹凸が適度に高い方が粗さは小さい特徴を得た。更に耐久使用後の塗布ブレードの粗さに応じて循環型表面層の粒だちが強くなる傾向を知り得た。塗布ブレードの粗さはレーザーテック社製共焦点顕微鏡OPTELICS H−1200による観察と付属するソフトウエアLMeyeを用いて面粗さRaを求めたところ、0.3μmから0.6μmに亘るサンプル差を得た。また、局部山頂の平均間隔(Sm)は2.5μmから5.5μmに亘るサンプル差を得た。耐久使用後の塗布ブレードの荒れ具合は電子写真感光体表面とのなじみを反映した記録であると考える。
そこで本発明では電子写真感光体が導電性支持体と、該導電性支持体上に順に積層されてなる感光層、表面層及び循環型表面層とを備え、塗布ブレードの荒れを小さくする電子写真感光体表面層の形状は(I)表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して一次元データ配列を作成し、(II)該一次元データ配列を、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの六個の周波数成分に分離し、(III)次いで、得られた六個の周波数成分の中で最低周波数成分の一次元データ配列に対して、データ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きして一次元データ配列を作成し、(IV)更に、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの、追加の6個の周波数成分に分離して、(V)前記(II)及び(IV)で得られた合計十二個の周波数成分の、個々の算術平均粗さWRa(LLL)からWRa(HHH)の対数を、左から右に順に線で結んで得られる曲線(便宜上、粗さスペクトルと称す)に対して、少なくとも、LLLからLHLの帯域に屈曲点をもたず、かつ、WRa(LLH)が0.04μm未満であり、かつ、WRa(HLH)が0.005μm未満であることを特徴とする。
ここで、電子写真感光体表面層のJIS−B0601:2001で定義される算術平均粗さ(略号;Ra)を、ウェーブレット変換により凹凸の一周期の長さについて周波数成分に分離した個々の帯域における算術平均粗さを以下のように表すものとする。
WRa(HHH):凹凸の一周期の長さが0.3μm〜3μmの帯域におけるRa
WRa(HHL):凹凸の一周期の長さが1μm〜6μmの帯域におけるRa
WRa(HMH):凹凸の一周期の長さが2μm〜13μmの帯域におけるRa
WRa(HML):凹凸の一周期の長さが4μm〜25μmの帯域におけるRa
WRa(HLH):凹凸の一周期の長さが10μm〜50μmの帯域におけるRa
WRa(HLL):凹凸の一周期の長さが24μm〜99μmの帯域におけるRa
WRa(LHH):凹凸の一周期の長さが26μm〜106μmの帯域におけるRa
WRa(LHL):凹凸の一周期の長さが53μm〜183μmの帯域におけるRa
WRa(LMH):凹凸の一周期の長さが106μm〜318μmの帯域におけるRa
WRa(LML):凹凸の一周期の長さが214μm〜551μmの帯域におけるRa
WRa(LLH):凹凸の一周期の長さが431μm〜954μmの帯域におけるRa
WRa(LLL):凹凸の一周期の長さが867μm〜1654μmの帯域におけるRa
また、屈曲点とは前記表面粗さスペクトルにおいて、曲率が急変する点を意味する。曲率が急変する点とは粗さスペクトルの横軸、縦軸のスケールでの表面粗さスペクトルにおいて、凸角の頂点が全くない状態(直線)を0°とした場合に、凸角があり、凸角の頂点が前記0°に対して20°以上の角度θを有する点をいう。(図33参照。)
電子写真感光体表面層の形状は以上の関係を満たすと、循環材が効率よくコーティングできる性状を得た。この原因は現時点で明らかにしていないが、次の通り考える。
循環材を塗布ブレードで電子写真感光体の表面層にコーティングして循環型表面層を形成する際に、塗布ブレードが循環材を完全にせき止めてしまうとコーティングができなくなる。そこで適度な厚みのコーティング膜を形成するには循環材を塗布ブレードからすり抜けさせて薄膜化するような塗布ブレードと表面層との間で動的なギャップを形成する必要がある。例えば、ゴム板の塗布ブレードを電子写真感光体に当接させて循環材をコーティングしようとするとき、塗布ブレードを一般のクリーニングブレードのように当接してしまっては上述の通り循環材をせき止めてしまい、コーティングがおぼつかない。循環材のコーティングを目的とする場合、動的なギャップ形成には電子写真感光体表面と塗布ブレード間の当接状態の制御だけでは不十分であり、当接状態の制御に加えて、電子写真感光体表面と塗布ブレードとの摺擦状態の制御が必要である。ここで、当接状態とは電子写真感光体表面と塗布ブレードとの当たり方を表し、摺擦状態は塗布ブレードと電子写真感光体のこすれ方を表す。
一般的なドクターブレード法により均質な製膜を獲得する場合を列記すると、第一にウエット膜厚を均一にするブレードと塗布面間のギャップが常時均一であること、第二にブレードがビビリなどの振動を抑えること、第三に塗工速度が一定であること、第四に塗布面が清浄であること、第五に塗料が均質であること等を挙げることができる。循環材の製膜に対しても同じ事が言える。電子写真感光体表面の形状を前述した特徴的な粗面にすることで良質なコーティングに対して有利に作用していると考える。このことは塗布ブレードがゴムである特殊性も影響していると思われる。
そこで、上述の電子写真感光体表面層の形状とすることで、循環材の塗布性を飛躍的に向上させる効果を享受することができる。また、クリーニング装置までの清掃で循環材を除去する量よりも少ない塗布量で電子写真感光体表面へ循環材をコーティングすることにより、皮膜の欠陥が少なくとも10%未満で、かつ、循環型表面層の質量膜厚が一分子層以上三分子未満である循環型表面層の成立を可能にする効果を享受することができる。
更に、循環材の効率的なコーティングを実現するため、循環材の消費量を低減できる効果が得られる。
また、本発明は循環材の循環効率を高めるため、循環材が電子写真感光体表面に入力されるときの付着性、循環材がスプレッドされるならし性、そして適時循環材が電子写真感光体から系外へ排出される除去性の個々の性状を高めることを想定している。循環材のならしは循環材をスプレッドする塗布ブレードを用いる場合が多い。また、循環材の排出はクリーニングブレードが負うケースが多い。それぞれのブレードは電子写真感光体との摺擦状態を安定化させることが極めて重要である。
塗布ブレードの摺擦状態を安定化させる電子写真感光体表面層の形状は前述の粗さスペクトルに対して、少なくとも、LLLからLHLの帯域に屈曲点をもたず、かつ、LHLからHMHの帯域に屈曲点を有し、かつ、WRa(LLH)が0.04μm未満であり、かつ、WRa(HLH)が0.005μm未満にするとブレードの荒れを抑えることが可能であり、重要である。
ここで、電子写真感光体断面曲線の多重解像度解析について説明する。
本発明でははじめに画像形成装置用部品の表面の状態についてJIS B0601に定める断面曲線を求め、その断面曲線である一次元データ配列を得る。
この断面曲線である一次元のデータ配列は表面粗さ・輪郭形状測定機からデジタル信号として得てもよく、あるいは表面粗さ・輪郭形状測定機のアナログ出力をA/D変換して得てもよい。
本発明において、一次元データ配列を得るための断面曲線の測定長さはJIS規格に定める測定長さであることが好ましく、8mm以上、25mm以下が好ましい。
また、サンプリング間隔は1μm以下がよく、好ましくは0.2μm以上、0.5μm以下がよい。例えば、測定長12mmをサンプリング点数30720点で測定する場合、サンプリング間隔は0.390625μmとなり、本発明を実施するのに好適である。
前記のように、この一次元データ配列を、ウェーブレット変換(MRA−1)して高周波数成分(HHH)から低周波数成分(HLL)に至る複数の周波数成分(例えば(HHH)(HHL)(HMH)(HML)(HLH)(HLL)の6成分)に分離する多重解像度解析を行う。更に、ここで得た最低周波数成分(HLL)を間引きした一次元データ配列を作り、この間引きされた一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換(MRA−2)を行って、高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分(例えば(LHH)、(LHL)(LMH)(LML)(LLH)(LLL)の6成分)に分離する多重解像度解析を行い、得た各周波数成分(12成分)に対して、中心線平均粗さ(WRa)を求めたが、一般のRaと区別するために、本明細書ではこの粗さをWRaと称することとする。そして、本発明では前記のように、少なくともWRa(LML)とWRa(LHH)に屈曲点(肩)又は極大点をもつようにする。
ここで、各周波数成分の個々の中心線平均粗さ(WRa)は電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至る周波数成分に分離する前記多重解像度解析(MRA−1)、(MRA−2)を行って得られた一次元データ配列の中心線平均粗さを表す。本発明においては実際のウェーブレット変換はソフトウエアMATLABを使用している。帯域幅の定義はソフトウエア上の制約であって、この定義する範囲に格別の意味はない。また、WRaは上記の理由(帯域幅の定義の理由)に因るため、帯域幅が変わればそれに応じて係数は変化する。
そして、HML成分とHLH成分、LHL成分とLMH成分、LMH成分とLML成分、LML成分とLLH成分、LLH成分とLLL成分の個々の帯域は周波数帯域がオーバーラップしているが、オーバーラップの理由は次のとおりである。
すなわち、ウェーブレット変換では元の信号を一回目のウェーブレット変換(Level 1)でL(Low−pass Components)とH(High−pass Components)に分解し、更に、このLに関して、ウェーブレット変換を施すことでLLとHLに分解する。ここで、元の信号に含まれる周波数成分 f が、分離する周波数 F と一致した場合はf はちょうど分離の境界になるので、分離後はLとHの両方の、それぞれに分離される。この現象は多重解像度解析では不可避な現象である。そこで、観察したい周波数帯域がこのようにウェーブレット変換の際に分離されてしまわないように、元の信号に含まれる周波数を設定することも重要である。また、数段階のウェーブレット変換を行った後に、任意の段階で逆ウェーブレット変換を行って、複数の帯域に分離されてしまった信号を、復号する(元に戻す)ことも有効である。
[ウェーブレット変換(多重解像度解析)、各周波数波の記号]
本発明では2回のウェーブレット変換を行うが、最初のウェーブレット変換を第一回目のウェーブレット変換(便宜上、MRA−1と記すことがある)、その後のウェーブレット変換を第二回目のウェーブレット変換(便宜上、MRA−2と記すことがある)と呼ぶことにする。一回目と二回目の変換を区別するため、便宜上、各周波数帯域の略号に接頭語として、H(一回目)とL(二回目)を付ける。
ここで、第一回目、及び第二回目のウェーブレット変換に使用するマザーウェーブレット関数としては各種のウェーブレット関数が使用可能であり、例えば、ドビッシー(Daubecies)関数、ハール(haar)関数、メーヤー(Meyer)関数、シムレット(Symlet)関数、そしてコイフレット(Coiflet)関数等が使用可能である。ここでDaubeciesはドベシィ又はドブシーと表記することがある。本発明ではハール関数を用いているが、必ずしもこれに制約される必要はない。
また、ウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行う場合、その成分数は4以上、8以下がよく、好ましくは6がよい。
本発明において、第一回目のウェーブレット変換を行って、複数の周波数成分に分離し、ここで得た最低周波数成分を間引きしつつ取り出(サンプリング)して最低周波数成分データを反映した一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して第二回目のウェーブレット変換を行って、高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行う。
ここで、第一回目のウェーブレット変換(MRA−1)結果で得た最低周波数成分(HLL)に対して行う間引きはデータ配列数を、1/10から1/100にすることが特徴である。
ここで、データ間引きはデータの周波数を上げる(横軸の対数目盛り幅を広げる)効果があり、例えば、第一回目のウェーブレット変換結果で得た一次元配列の配列数が30000であった場合、1/10の間引きを行うと、配列数が3000になる。
この場合、間引きが1/10より小さいと、例えば、1/5であると、データの周波数を上げる効果が少なく、第2回のウェーブレット変換を行い、多重解像度解析を行ってもデータはよく分離されない。
また、間引きが1/100より大きいと、例えば、1/200であると、データの周波数が高くなりすぎ、第2回のウェーブレット変換を行い、多重解像度解析を行ってもデータは高周波成分に集中してよく分離されない。
間引きの仕方は例えば、間引きを1/100とする場合、100個のデータの平均値を求め、その平均値を代表の1点としている。
図12は本発明に適用した、電子写真感光体の表面粗さ評価装置の一構成例を模式的に示す構成図である。図12中(41)は電子写真感光体であり、(42)は表面粗さを測定するプローブを取り付けた治具、(43)は上記治具(42)を測定対象に沿って移動させる機構、(44)は表面粗さ・輪郭形状測定機、(45)は信号解析を行うパーソナルコンピューターである。この図12において、パーソナルコンピューター(45)によって上記の多重解像度解析の計算が行われる。電子写真感光体がシリンダー形状の場合、電子写真感光体の表面粗さ測定は周方向でも長手方向でも適当な方向について計測することができる。
この図12は一例として示したものであり、構成は他の構成によってもかまわない。例えば、多重解像度解析はパーソナルコンピューターではなく、専用の数値計算プロセッサで行ってもよい。また、この処理を表面粗さ・輪郭形状測定機自体で行ってもよい。結果の表示は各種の方法が使用可能であり、CRTや液晶画面に表示してもよく、あるいは印字出力を行ったりしてもよい。また、他の装置に電気信号として送信してもよく、USBメモリやMOディスクに保存してもよい。
本発明者等の測定では表面粗さ・輪郭形状測定機は東京精密社製Surfcom 1400Dを使用し、パーソナルコンピューターはIBM社製パーソナルコンピューターを使用し、Surfcom 1400DとIBM製パーソナルコンピューターの間はRS−232−Cケーブルで接続した。Surfcom 1400Dからパーソナルコンピューターに送られた表面粗さデータの処理とその多重解像度解析計算は本発明者等がC言語で作成したソフトウエアで行った。
次に、電子写真感光体表面形状の多重解像度解析の手順について具体例によって説明する。
はじめに、電子写真感光体の表面形状を東京精密製Surfcom 1400Dで測定した。
ここで、一回の測定長は12mmであり、総サンプリング点数は30720であった。一度の測定ではこれを四カ所測定した。測定した結果はパーソナルコンピューターに取り込み、これを本発明者等の作成したプログラムにより第一回目のウェーブレット変換と、そこで得た最低周波数成分に対する1/40の間引き処理、そして、第二回目のウェーブレット変換を行った。
このようにして得た第一回目、及び第二回目の多重解像度解析結果に対し、中心線平均粗さWRa、最大高さRmax、十点平均粗さRzを求めた。演算結果の一例を図13に示す。
図13において、図13(a)のグラフはSurfcom 1400Dで測定して得た元のデータであり、粗さ曲線、あるいは断面曲線と呼ぶ場合もある。
図13には14個のグラフがあるが、縦軸は表面形状の変位であり単位はμmである。また横軸は長さであり、目盛りは付けていないが測定長は12mmである。
従来の表面粗さ測定では図13(a)から中心線平均粗さRa、最大高さRmax、Rz等を求めていた。
また、図13(b)の6個のグラフは第一回目の多重解像度解析(MRA−1)結果であり、最も上にあるのが最高周波成分(HHH)のグラフ、最も下にあるのが、最低周波数成分(HLL)のグラフである。
ここで、図13(b)において最も上にあるグラフ(101)は一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分であり、本発明ではこれをHHHと呼ぶ。
・グラフ(102)は一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHHLと呼ぶ。
・グラフ(103)は一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHMHと呼ぶ。
・グラフ(104)は一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHMLと呼ぶ。
・グラフ(105)は一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分であり、本発明ではこれをHLHと呼ぶ。
・グラフ(106)は一回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分であり、本発明ではこれをHLLと呼ぶ。
本発明において、図13(a)のグラフはその周波数によって、図13(b)の6個のグラフに分離するが、その周波数分離の状態を図14に示す。
図14において、横軸は凹凸の形状が正弦波とした場合の、長さ1mm当たりに出現する凹凸数である。また、縦軸は各帯域に分離された場合の割合を示すものである。
図14において、(121)は一回目の多重解像度解析(MRA−1)における最高周波成分(HHH)の帯域、(122)は一回目の多重解像度解析における最高周波成分より1つ低い周波数成分(HHL)の帯域、(123)は一回目の多重解像度解析における最高周波成分より2つ低い周波数成分(HMH)の帯域、(124)は一回目の多重解像度解析における最高周波成分より3つ低い周波数成分(HML)の帯域、(125)は一回目の多重解像度解析における最高周波成分より4つ低い周波数成分(HLH)の帯域、(126)は一回目の多重解像度解析における最低周波数成分(HLL)の帯域である。
図14をより詳細に説明すると、1mm当たりの凹凸数が20個以下の場合はすべてグラフ(126)に出現することを示す。例えば、凹凸数が1mm当たり110個の場合、グラフ(124)に最も強く出現し、これは図13(b)においてはHMLに出現する。また、凹凸数が1mm当たり220個の場合、グラフ(123)に最も強く出現し、これは図13(b)においてはHMHに出現することを示している。また、凹凸数が1mm当たり310個の場合、グラフ(122)と(123)に出現し、これは図13(b)においてはHHLとHMHの両方に出現することを示している。したがって、表面粗さの周波数によって、図13(b)の6本のグラフでどこに現れるか決まってくる。言い換えると、表面粗さにおいて、細かなザラツキは図13(b)において上の方のグラフに出現し、大きな表面うねりは図13(b)において下の方のグラフに出現する。
本発明ではこのように、表面粗さをその周波数によって分解する。これをグラフとしたものが図13(b)であるが、この周波数帯域ごとグラフからそれぞれの周波数帯域での表面粗さを求める。ここで、表面粗さとしては中心線平均粗さWRa、最大高さ Rmax、十点平均粗さRzを計算することが可能である。
このようにして、図13(b)ではそれぞれのグラフに、中心線平均粗さWRa、最大高さ Rmax、十点平均粗さRzを数値で示している。
本発明ではこのように表面粗さ・輪郭形状測定機で測定したデータその周波数によって複数のデータに分離するので、各周波数帯域における凹凸変化量を測定できる。
さらに本発明ではこのように周波数によって図13(b)のように分離したデータから、最も低い周波数、すなわちHLLのデータを間引きする。
本発明は間引きをどのようにするか、すなわち何個のデータから取り出すか実験によって決めればよく、間引き数を最適にすることによって図14に示す多重解像度解析における周波数帯域分離を最適化することが可能となり、目的とする周波数をその帯域の中心にとることが可能になる。
図13では40個から1個のデータを取る間引きを行った。
間引きした結果を図15に示す。図15では縦軸は表面凹凸であり、単位はμmである。また横軸に目盛りは付けていないが、長さ12mmである。
本発明では図15のデータを更に多重解像度解析する。すなわち二回目の多重解像度解析(MRA−2)を行う。
図13(c)の6個のグラフは第二回目の多重解像度解析(MRA−2)結果であり、最も上にあるグラフ(107)は二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分であり、これをLHHと呼ぶ。
・グラフ(108)は二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より1つ低い周波数成分であり、これをLHLと呼ぶ。
・グラフ(109)は二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より2つ低い周波数成分であり、これをLMHと呼ぶ。
・グラフ(110)は二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より3つ低い周波数成分であり、これをLMLと呼ぶ。
・グラフ(111)は二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より4つ低い周波数成分であり、これをLLHと呼ぶ。
・グラフ(112)は二回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分であり、これをLLLと呼ぶ。
本発明において、図13(c)ではその周波数によって、6個のグラフに分離しているが、その周波数分離の状態を図16に示す。
図16において、横軸は凹凸の形状が正弦波とした場合の、長さ1mm当たりに出現する凹凸数である。また、縦軸は各帯域に分離された場合の割合を示すものである。
図16において、(127)は二回目の多重解像度解析における最高周波成分(LHH)の帯域、(128)は二回目の多重解像度解析における最高周波成分より1つ低い周波数成分(LHL)の帯域、(129)は二回目の多重解像度解析における最高周波成分より2つ低い周波数成分(LMH)の帯域、(130)は二回目の多重解像度解析における最高周波成分より3つ低い周波数成分(LML)の帯域、(131)は二回目の多重解像度解析における最高周波成分より4つ低い周波数成分(LLH)の帯域、(132)は二回目の多重解像度解析における最低周波数成分(LLL)の帯域である。
図16をより詳細に説明すると、1mm当たりの凹凸数が0.2個以下の場合はすべてグラフ(132)に出現することを示す。
例えば、凹凸数が1mm当たり11個の場合、グラフ(128)が最も高くなっているが、これは二回目の多重解像度解析における最高周波成分より1つ低い周波数成分の帯域に最も強く出現することを示しており、図13(c)においてはLMLに出現することを示している。
したがって、表面粗さの周波数によって、図13(c)の6本のグラフでどこに現れるか決まってくる。
言い換えると、表面粗さにおいて、細かなザラツキは図13(c)において上の方のグラフに出現し、大きな表面うねりは図13(c)において下の方のグラフに出現する。
本発明ではこのように、表面粗さをその周波数によって分解する。これをグラフとしたものが図13(c)であるが、この周波数帯域ごとグラフからそれぞれの周波数帯域での表面粗さを求める。ここで、表面粗さとしては中心線平均粗さRa(WRa)、最大高さRmax(WRmax)、十点平均粗さRz(WRz)を計算することが可能である。
このようにして電子写真感光体表面の凹凸形状を表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して得た一次元データ配列を、ウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行い、更に、ここで得た最低周波数成分を間引きした一次元データ配列を作り、この一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、高周波数成分から低周波数成分に至る複数の周波数成分に分離する多重解像度解析を行い、得た各周波数成分に対して、中心線平均粗さRa(WRa)、最大高さRmax(WRmax)、十点平均粗さRz(WRz)を求めた結果を表1に示す。
Figure 2013195866
先の図13の断面曲線について、本発明の多重解像度解析結果から求めた中心線平均荒さ(WRa)を各信号順にプロットして線で結ぶと、図17のプロファイルを得る。ここで、HLL成分は算術上、突き出した値になるため、この帯域の多重解像度解析結果から求めた表面粗さを省略している。本発明ではこのプロファイルを表面粗さスペクトル又は粗さスペクトルと称する。
前述の電子写真感光体表面層の新規な表面形状により、循環材の塗布性を飛躍的に向上させる効果を享受することができる。この効果を永続するには感光体表面層の形状の強度を高めることが有利である。電子写真プロセスによる画像形成で電子写真感光体が摩耗する場合、表面形状が変化する。その様子は表面粗さの変化からみることができ、本発明者は実験的に電子写真感光体の摩耗の進行とともに表面粗さが増加する傾向を確認している。
はじめに、前述の新規な形状の造形にはウエットプロセスによる製膜が有利である。これはミクロンからミリスケールにわたる表面形状を制御するもので機械的な加工よりも技術面とコスト面で有利であるためである。ウエットプロセスによる製膜では塗料の粘度は低粘度の方が形状制御の範囲を広くすることができる。具体的には0.9mPa・sから10mPa・s程度が良い。塗料の粘度の下限は溶媒粘度に漸近する値から決定しており、上限は形状制御がしにくくなる理由から決めている。塗料の粘度は低く、かつ、製膜後の表面層が実用上十分な強度を得るには塗料に三次元架橋構造をとる反応タイプの樹脂モノマーを主成分に選ぶと良い。
電子写真感光体の表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いることで耐摩耗性に優れる表面層を得ることができる。この理由は耐久劣化により、樹脂膜を形成する化学結合の一部が破断しても別の部位の化学結合が残存していれば直接摩耗に至らないためと考える。優れた耐摩耗性は表面形状の安定化に直接寄与する。その結果、表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いると、循環材の塗布性を安定化することができる。
三次元架橋構造をもつ樹脂の中でもアクリル樹脂はポリカーボネートと電荷輸送物質との固溶体と比較して誘電率が大きいため、静電特性面の凹凸形状の影響が小さいメリットを奏する。
以上の通り、表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いることで、循環型表面層の表面層の造形を容易にする効果があり、循環材の塗布性を容易に改良できる。また、表面層の特別な表面形状の変化を抑え、循環材の塗布性を安定化させる効果を享受することができる。
循環材のコーティングが万一、不十分な事態に陥った場合、電子写真感光体の表面層に紙粉やトナー成分がフィルミングしたり、メダカ形状のフィルミングが生じたりする。このとき、表面層のぬれ性が変質して循環材の所期の循環プロセスがはたんしてしまいかねない。これに対し、電子写真感光体の表面層へ六方稠密格子のα−アルミナ微粒子を添加すると、以上のフィルミングを大幅に低減できることが実験的に得られており、有効である。
この理由は今のところ明らかにしていないが、α−アルミナの高い硬度が表面層への創傷予防に効果があり、この効果がフィルミングの機会を与えにくくしていることや、循環剤が不足してもα−アルミナの凹凸が電子写真感光体と塗布ブレードないしクリーニングブレードとの摺擦状態をある程度安定でいられる効果をもつためと考えている。
略球形のα−アルミナのフィラー粒径は多くの場合、0.2μm以上2μm以下、より好ましくは0.2μm以上0.5μm以下の場合、製膜時にトゲの様な極端な凹凸形成が抑制できるため、前記(17)に合致する形状を形成しやすく有利である。
表面層の造形に対して、比較的低粘度の塗料を基に、フィラーを添加すると凹凸形状を付与しやすい。フィラーの凝集状態を制御することで多様な凹凸形状が得られる。電子写真感光体の最表層に三次元架橋構造をもつ樹脂を利用し、更にフィラーを配合する技術は過去にも知られていたが、ねらいが機械的強度に主眼を置くものが多く、意外にもフィラーの分散剤を併用する技術は多く見ることがなかった。フィラーの中でも、配合するフィラーは金属酸化物フィラーで1次粒径がナノオーダーのものが好ましく、α−アルミナ、酸化スズ、チタニア、シリカ、セリアなどの金属酸化物のフィラーが有用である。
有機微粒子、無機微粒子などのフィラーの一部に、分散が困難で、表面粗さがミクロンオーダー以上しか得られないものやトゲ状の突起が多く、塗布ブレードやクリーニングブレードの刃こぼれを生じるものがあるが、金属酸化物フィラーはこのような不具合を生じない材料が多い。特にα−アルミナが優れ、更に本発明の実施例に選ぶ六方稠密格子のα−アルミナが優れる。同じ理由から金属酸化物の含有量は表面層の1wt%以上20wt%以下が良い。金属酸化物含有量の下限と上限は表面層の形状制御が困難になる理由から規定している。
また、金属酸化物の併用により、機械的な強度が向上する効果は本発明においても同様に享受することができる。
表面層へフィラーを添加すると微細な凹凸形状を付与することができる。これにより、循環材の循環効率を高める効果が得られやすい。
以上の感光体の表面形状と循環材による欠陥が所定以下の皮膜を感光体表面に形成する画像形成用プロセスカートリッジ及び画像形成装置の実現には感光体表面層の形状を任意に制御する必要がある。これは画像形成装置の特徴に応じて感光体表面形状を微調整する必要が生じるためである。
これに対し、本発明は表面層用塗料に含有する金属酸化物フィラーを2種以上、より好ましくは3種以上の分散状態の異なるミルベースを種々の割合で調合することで、あたかも色材を混ぜて多様な色をつくるのと同様に多様な表面形状が形成可能であることを確かめた。従来、フィラーを2種以上混合させたり、粒径違いのフィラーを混合させたりする技術が開示されているが、それらの技術では形状制御が相加平均的で直線的な変化しか得られないため不十分であった。
本発明における電子写真感光体の表面形状を制御する目的で複数のミルベースを用いる事例は従来技術で見いだすことができず、新規な方策と考える。表面形状制御に係わらず、電子写真感光体の表面に複数の分散剤あるいは表面処理剤を用いる従来技術として、例えば特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8にはシリカ粒子を複数回表面処理する方策が開示されている。これはフィラーに起因する画像ボケの原因を隠ぺいする目的でフィラーの表面処理を完全にするためのものであり、形状制御に関する示唆は見あたらない。更にフィラーの分散に関しては特許文献9の段落[0059]や特許文献10の段落[0041]では無機フィラーの分散に際して、分散剤は一種の表面処理剤で処理することが推奨されており、複数の分散剤を用いる方策は容易に想到しえないと考える。
特許文献11ではα−アルミナが含有される感光体表面層について、粒径の異なるフィラーを混合する技術が開示されている。この公報における表面形状制御は、単なる平滑化にすぎず、本発明の趣旨と異なる。
また、特許文献12では感光体表面層に架橋型樹脂を用い、かつ、ケイ素含有微粒子を配合する技術が開示されている。ケイ素含有微粒子が凝集するドメインサイズを特定化することで画像形成装置におけるステアリン酸亜鉛の付着率の向上とクリーニング性を高めようとする技術である。ケイ素含有微粒子のドメインサイズと感光体の表面形状には何かしら相関が見受けられる。しかし、その制御範囲は不十分である。すなわち、特許文献12の図4にはシリカ微粒子の含有率に対して感光体断面曲線のうねり(Sm)と十点平均粗さ(Rz)との相関性が見いだせているが、どの様な周波数帯の凹凸が強いのかは不明であり、表面形状の制御手段としては更なる発展が望まれる。
金属酸化物フィラーの分散剤は金属酸化物と塗料溶媒、及び結着成分との親和性を制御する機能をもつ。前者の塗料溶媒との親和性は沈降を防止するために必須となる。これは金属酸化物フィラーが沈降したりしなかったりするような状態では表面形状の再現性が保証できないためである。この必須条件に加え、分散剤とビヒクルとの親和性は分散剤とビヒクルとの物理化学的な親和性や立体障害によって多様に調節可能である。ただし、先の理由から分散剤は金属酸化物フィラーを十分に表面処理する必要ある。この表面処理は分散剤種の選択、分散剤の仕込量の調整や分散時間の調整、分散方式の選択、および分散強度の調整によって制御できる。特に、金属酸化物にα−アルミナを選ぶとき、表面処理と塗料中におけるα−アルミナの沈降防止にリン酸系湿潤分散剤が良好であった。
以下、図面を参照しつつ本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
図10は本発明の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)上に電荷発生層(25)と電荷輸送層(26)と表面層(28)が設けられている。
図11は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と電荷発生層(25)の間に下引き層(24)が設けられ、電荷発生層(25)の上に電荷輸送層(26)と表面層(28)が設けられている。
−導電性支持体−
導電性支持体(21)としては体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理した管等を使用することができる。
−下引き層(24)−
本発明に用いられる電子写真感光体には導電性支持体と感光層(前記電荷発生層25と前記電荷輸送層26とが積層したもの)との間に下引き層(24)を設けることができる。下引き層は接着性の向上、モアレの防止、上層の塗工性の改良、導電性支持体からの電荷注入の防止等の目的で設けられる。
下引き層は通常、樹脂を主成分とする。通常、下引き層の上に感光層を塗布するため、下引き層に用いる樹脂は有機溶剤に難溶である熱硬化性樹脂が好ましい。特に、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂は以上の目的を十分に満たすものが多く、特に好ましい材料である。樹脂はテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いて適度に希釈したものを塗料とすることができる。
また、下引き層には伝導度の調節やモアレを防止するために、金属、又は金属酸化物等の微粒子を加えてもよく、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
微粒子はテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液と樹脂成分を混合した塗料とする。
下引き層は以上の塗料を浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等で導電性支持体上に成膜する。必要な場合、加熱硬化することで形成される。
下引き層の膜厚は2〜5μm程度が適当になるケースが多い。電子写真感光体の残留電位の蓄積が大きくなる場合、3μm未満にするとよい。
本発明における感光層は電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型感光層が好適である。ただし、本発明における感光層は電荷発生能と電荷輸送能とを兼ね備えた単層型感光層であってもよい。
−電荷発生層(25)−
積層型電子写真感光体における各層のうち、電荷発生層(25)について説明する。
電荷発生層は積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能(電荷発生能)をもつ。この層は含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。電荷発生層は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいてはダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが好ましく用いられる。
一方、有機系材料としては公知の材料を用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる。このうち、金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料及びペリレン系顔料は電荷発生の量子効率が軒並み高く、本発明に用いる材料として好適である。これらの電荷発生物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。また、後述する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。このうちポリビニルブチラールが使用されることが多く、有用である。これらのバインダー樹脂は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
電荷発生層を形成する方法としては大きく分けて真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法がある。
前者の方法には真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法等があり、上述した無機系材料や有機系材料からなる層が良好に形成できる。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには上述した無機系又は有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布すればよい。このうちの溶媒として、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。塗布は浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等により行うことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は通常、0.01〜5μm程度が適当である。
残留電位の低減や高感度化が必要となる場合、電荷発生層は厚膜化するとこれらの特性が改良されることが多い。反面、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成等帯電性の劣化を来すことも多い。これらのバランスから電荷発生層の膜厚は0.05〜2μmの範囲がより好ましい。
また、必要により、電荷発生層中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1〜20phr、好ましくは0.1〜10phr、レベリング剤の使用量は0.001〜0.1phr程度が適当である。
−電荷輸送層(26)−
電荷輸送層は電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた電子写真感光体の表面電荷を中和する機能(電荷輸送能)を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分ということができる。
電荷輸送物質に用いることのできる材料としては低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質が挙げられる。
電子輸送物質としては例えば非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
正孔輸送物質としては電子供与性物質が好ましく用いられる。その例としてはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾ−ル環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開2001−330973号公報の一般式(1)〜一般式(6)に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。特に特開2001−330973号公報の例示化合物は静電特性面の性能が良好であり有用である。
高分子電荷輸送物質は表面層を積層する際、低分子型の電荷輸送物質と比べて、表面層へ電荷輸送層を構成する成分のしみだしが少なく、表面層の硬化不良を防止するのに適当な材料である。また、電荷輸送物質の高分子量化により耐熱性にも優れる性状から表面層を成膜する際の硬化熱による劣化が少なく有利である。
電荷輸送層のバインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。このうち、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートは電荷輸送成分のバインダー成分として用いる場合、電荷移動特性が良好な性能を示すものが多く、有用である。また、電荷輸送層はこの上層に表面層が積層されるため、電荷輸送層は従来型の電荷輸送層に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレン等、透明性が高いものの機械強度が多少低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、電荷輸送層のバインダー成分として有効に利用することができる。
これらの高分子化合物は単独又は二種以上の混合物として、あるいはそれらの原料モノマー二種以上からなる共重合体として、さらに、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
電荷輸送層の改質に際して電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合にはフルオレン等のかさ高い骨格をもつカルドポリマー型のポリエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、C型ポリカーボネートのようなビスフェノール型のポリカーボネートに対してフェノール成分の3,3’部位がアルキル置換されたポリカーボネート、ビスフェノールAのジェミナルメチル基が炭素数2以上の長鎖のアルキル基で置換されたポリカーボネート、ビフェニル又はビフェニルエーテル骨格をもつポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンの様な長鎖アルキル骨格を有するポリカーボネート(例えば、特開平7−292095号公報に記載)やアクリル樹脂、ポリスチレン、水素化ブタジエンが有効である。
ここで電気的に不活性な高分子化合物と、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は電荷輸送層の全固形分に対して50wt%以下とすることが好ましい。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、その使用量は40〜200phr、好ましくは70〜100phr程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100質量部に対して樹脂成分が0〜200質量部、好ましくは80〜150質量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
また電荷輸送層に二種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差を0.10eV以下とすることにより、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。
このイオン化ポテンシャルの関係は電荷輸送層に含有する電荷輸送物質と後述する硬化性電荷輸送物質との関係についても同様にこれらの差は0.10eVにするとよい。なお、本発明における電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル値は理研計器社製大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1により一般的な方法で計測して得られた数値である。
高感度化を満足させるには電荷輸送成分の配合量を70phr以上とすることが好ましい。また、電荷輸送物質としてα−フェニルスチルベン化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物の単量体、二量体及びこれらの構造を主鎖又は側鎖に有する高分子電荷輸送物質は電荷移動度の高い材料が多く有用である。
電荷輸送層塗料を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
電荷輸送層は電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
電荷輸送層の上層には表面層が積層されているため、この構成における電荷輸送層の膜厚は実使用上の摩耗を考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要である。電荷輸送層の膜厚は実用上、必要とされる感度と帯電能を確保する都合、10〜40μm程度が適当であり、より好ましくは15〜30μm程度が適当である。
また、必要により、電荷輸送層中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1〜20phr、好ましくは0.1〜10phr、レベリング剤の使用量は0.001〜0.1phr程度が適当である。
−表面層(28)−
表面層は電子写真感光体表面に製膜する保護層を指す。この保護層は樹脂(モノマー)成分を含有する塗料がコーティングされた後、重縮合反応によって架橋構造の樹脂を製膜する。樹脂膜が架橋構造をもつため電子写真感光体各層のなかで最も耐摩耗性が強靱である。また、架橋の電荷輸送性の構造単位が含まれるため電荷輸送層と類似の電荷輸送性を示す。
(粗面化)
本発明では電子写真感光体表面の粗さスペクトルが少なくとも、LLLからLHLの帯域に屈曲点をもたず、かつ、WRa(LLH)が0.04μm未満であり、かつ、WRa(HLH)が0.005μm未満であることが重要である。更に好ましくは、後述する実施例で実証された通り、WRa(LLH)が0.023μm以上0.029μm以下、WRa(LLL)が0.072μm以上0.09μm以下が良い。
このための電子写真感光体表面の特別な粗面化が必要となる。この具体的な方策として、少なくとも2種以上、更に好ましくは三種以上の分散状態の異なるミルベースを調合することで以上の表面形状は容易に造形可能となる。
製膜条件のコントロールによって、多少の凹凸を変えることも可能であるが偶発性が高く生産に不向きである。以上の表面形状に合わせこむ手段の一つとして、六方稠密構造のα−アルミナとリン酸系の分散剤を用いることで実現できた。六方稠密構造のα−アルミナは住友化学社からスミコランダムの商号で上市されているものが利用できるがこれに限らない。分散剤はビックケミー社のDisperBYKシリーズ、BYKシリーズ、楠本化成社のDISPERLONシリーズ、楠本化成社(キングインダストリー社)のHIPLAADシリーズ、共栄社化学社のポリフローシリーズ、竹本油脂社のスーパーダインシリーズ等が利用できる。
特に、リン酸系分散剤ないしリン酸系湿潤分散剤は塗料中での沈降防止が特に優れており、安定した感光体表面形状の造形に極めて有利に作用する。
(ラジカル重合性材料成分)
本発明では電子写真感光体表面の耐摩耗性の強化にも優れる3官能以上のアクリルモノマーが有利であり、具体的にはトリメチロールプロパントリアクリレートを用いると良い。
他に、3官能以上のバインダー成分はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートないしジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有させるとよい。これにより架橋膜自体の耐摩耗性が向上したり、強靱性が増大したりすることが多い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーはトリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
これらは東京化成社等の試薬メーカー、日本化薬社KAYARD DPCAシリーズ、同DPHAシリーズ等を入手することができる。
また、硬化を促進させたり、安定化させたりするためにチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社イルガキュア184等の開始剤を全固形分に対して5〜10wt%程度加えてもよい。
架橋性の電荷輸送材料としてはアクリロイルオキシ基やスチレン基を有する連鎖重合系の化合物、水酸基やアルコキシシリル基、イソシアネート基を有する逐次重合系の化合物が挙げられ、電荷輸送構造を含み(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有する化合物が利用できる。また、電荷輸送構造を含まない(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有するモノマーやオリゴマーと併用した組成の構成にしても良い。少なくとも塗工液中にこのような化合物を含有させて表面層を形成し、熱、光、あるいは電子線、γ線等の放射線によるエネルギーを与えて架橋し硬化させることで表面層を形成できる。架橋性の電荷輸送材料としては例えば、以下の一般式1にある電荷輸送性化合物が挙げられる。
Figure 2013195866
(一般式1中、d、e、fはそれぞれ0又は1の整数、g、hはそれぞれ0〜3の整数を表す。R13は水素原子又はメチル基を表し、R14、R15はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、又は下記式(2)〜(4)に示す2価基のいずれかを表す。)
Figure 2013195866
Figure 2013195866
Figure 2013195866
具体的な化合物として以下に示す構造式No.1ないしNo.26のものが挙げられる。
Figure 2013195866
Figure 2013195866
Figure 2013195866
表面層塗料を調製する際に使用する分散溶媒はモノマーを十分に溶解するものが好ましく、上述のエーテル類、芳香族類、ハロゲン類、エステル類の他、エトキシエタノールのようなセロソルブ類、1−メトキシ−2−プロパノールのようなプロピレングリコール類を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノールはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
表面層塗料のコーティングとして、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。多くの場合、塗料はポットライフが長くないため、少量の塗料で必要な分量のコーティングができる手段が環境への配慮とコスト面で有利となる。このうちスプレー塗工法とリングコート法が好適である。更に本発明の特別な形状を付与するためにインクジェット方式を用いると良い。
表面層を製膜する際、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できる。また、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋型電荷輸送層表面に局部的なしわが発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生じたりする。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜はがれの原因となる。
必要により、表面層中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤、また電荷輸送層で記載した高分子化合物を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して塗料総固形分中の0.1〜20wt%、好ましくは0.1〜10wt%、レベリング剤の使用量は0.1〜5wt%程度が適当である。
表面層の膜厚は3〜15μm程度が適当である。下限は製膜コストに対する効果度合いから算定される値であり、上限は帯電安定性や光減衰感度等の静電特性と膜質の均質性から設定される。
(画像形成装置の形態)
以下、図面に沿って本発明で用いられる画像形成装置を説明する。本発明の画像形成装置には後述する循環材を電子写真感光体表面に入力する手段が取り付けられる。簡単のため、この手段は画像形成装置の説明の後に別に説明する。
図1は本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範ちゅうに属するものである。
図1において、電子写真感光体(11)は表面層を積層する電子写真感光体である。電子写真感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電装置(12)は電子写真感光体(11)の表面を一様に帯電させる手段であり、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラをはじめとする公知の手段が用いられる。帯電装置は消費電力の低減の観点から、電子写真感光体に対し接触若しくは近接配置したものが良好に用いられる。なかでも、帯電装置への汚染を防止するため、電子写真感光体と帯電装置表面の間に適度なすきまを有する電子写真感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写装置(16)には一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
露光装置(13)、また他の形態で示す除電装置(1A)等に用いられる光源には蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
現像装置(14)により電子写真感光体上に現像されたトナー(15)は印刷用紙やOHP用スライド等の印刷メディア(18)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、電子写真感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーはクリーニング装置(17)により、電子写真感光体より除去される。クリーニング装置はゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
電子写真感光体に帯電装置(12)によって正(負)帯電を施し、露光装置(13)によって画像露光を行うと、電子写真感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを現像装置(14)によって負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像装置には公知の方法が適用され、また、除電装置にも公知の方法が用いられる。印刷メディア(18)上に現像されたトナー画像は電子写真感光体(11)と転写装置(16)との対向位置から定着装置(19)に搬送され、この定着装置(19)により印刷メディア(18)に定着される。
循環材(3A)及び循環材を塗布する塗布ブレード(3C)は電子写真感光体移動方向に対して図に示される通りクリーニング装置(17)と帯電装置(12)の間に配置される。
すなわち、循環材(3A)及び塗布ブレード(3C)は電子写真感光体(11)の移動方向において、クリーニング装置(17)の下流、かつ、帯電装置(12)の上流に配置されてなる。これらの配置関係については以下に示す他の実施の形態においても同様である。
図2には本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。図2において、電子写真感光体(11)は表面層を積層する電子写真感光体である。電子写真感光体(11)はベルト状の形状を示しているが、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。電子写真感光体(11)は駆動手段(1C)により駆動され、帯電装置(12)による帯電、露光装置(13)による像露光、現像(図示せず)、転写装置(16)による転写、クリーニング前露光装置(1B)によるクリーニング前露光、クリーニング装置(17)によるクリーニング、除電装置(1A)による除電が繰り返し行われる。循環材(3A)及び循環材を塗布する塗布ブレード(3C)は電子写真感光体移動方向に対して図に示される通りクリーニング装置(17)と帯電装置(12)の間に配置される。
図2においては電子写真感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行われる。
以上の電子写真プロセスは本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、電子写真感光体に光照射を行うこともできる。
また、以上に示すような画像形成手段は複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジの形状は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。電子写真感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
図4には本発明による画像形成装置の別の例を示す。この画像形成装置では電子写真感光体(11)の周囲に帯電装置(12)、露光装置(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の色ごとの現像装置(14Bk、14C、14M、14Y)、中間転写体である中間転写ベルト(1F)、クリーニング装置(17)が順に配置されている。ここで、図4中に示す(Bk、C、M、Y)の添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。電子写真感光体(11)は表面層を積層する電子写真感光体である。各色の現像装置(14Bk、14C、14M、14Y)は各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像装置のみが駆動される。電子写真感光体(11)上に形成されたトナー像は中間転写ベルト(1F)の内側に配置された第1の転写装置(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写装置(1D)は電子写真感光体(11)に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)を電子写真感光体(11)に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト(1F)上で重ね合わされたトナー像は第2の転写装置(1E)により、印刷メディア(18)に一括転写された後、定着装置(19)により定着されて画像が形成される。第2の転写装置(1E)も中間転写ベルト(1F)に対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト(1F)に当接する。
転写ドラム方式の画像形成装置では転写ドラムに静電吸着させた印刷メディアに各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという印刷メディアの制限があるのに対し、図4に示すような中間転写方式の画像形成装置では中間転写体(1F)上で各色のトナー像を重ね合わせるため、印刷メディアの制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図4に示す装置に限らず前述の図1、図2、図3及び後述する図5(具体例を図6に記す。)に記すような画像形成装置に適用することができる。
循環材(3A)及び循環材を塗布する塗布ブレード(3C)は電子写真感光体移動方向に対して図に示される通りクリーニング装置(11)と帯電装置(12)の間に配置される。
図5には本発明による画像形成装置の別の例を示す。この画像形成装置はトナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、色ごとに画像形成部が配設されている。また、各色の電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)が設けられている。この画像形成装置に用いられる電子写真感光体11は表面層を積層する電子写真感光体である。各電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)の周りには帯電装置(12)、露光装置(13)、現像装置(14)、クリーニング装置(17)等が配設されている。また、直線上に配設された各電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)の各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト(1G)が駆動手段(1C)にて掛け渡されている。この搬送転写ベルト(1G)を挟んで各電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)に対向する転写位置には転写装置(16)が配設されている。循環材(3A)及び循環材を塗布する塗布ブレード(3C)は電子写真感光体移動方向に対してクリーニング装置(11)と帯電装置(12)の間に配置される(図示せず)。
図5の形態のようなタンデム方式の画像形成装置は色ごとに電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)をもち、各色のトナー像を搬送転写ベルト(1G)に保持された印刷メディア(18)に順次転写するため、電子写真感光体を一つしかもたないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。転写材としての印刷メディア(18)上に現像されたトナー画像は電子写真感光体(11Bk)と転写装置(16Bk)との対向位置から定着装置(19)に搬送され、この定着装置(19)により印刷メディア(18)に定着される。
なお、本発明は図5に示される実施の形態における構成に限らず、例えば図6に示されるような実施の形態における構成であってもよい。
すなわち、図5に示される搬送転写ベルト(1G)を用いた直接転写方式にかえて、図6に示される中間転写ベルト(1F)を用いる構成とすることができる。
図6に示す例では色ごとに電子写真感光体(11Y、11M、11C、11Bk)をもち、これらに形成された各色のトナー像を、ローラ(1C)により駆動張架されてなる中間転写ベルト(1F)上に1次転写手段(1D)により順次転写して積層し、フルカラー画像を形成する。次いで、中間転写ベルト(1F)はさらに駆動され、これに担持されてなるフルカラー画像は2次転写手段(1E)と2次転写手段(1E)に対向して配置されてなるローラ(1C)との対向位置まで搬送される。そして、2次転写手段(1E)により転写材(18)に2次転写され、転写材上に所望の画像が形成される。
(循環材供給)
本発明では図9に示すように循環材(3A)を電子写真感光体表面に供給するための循環材供給手段として、循環材塗布装置(3)を上記の画像形成装置のすべてについて設けている。この循環材塗布装置(3)は塗布部材としてのファーブラシ(3B)、循環材(3A)、循環材をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ(不図示)、及び循環材(3A)を規制あるいはならして塗布するための塗布ブレード(3C)を有している。このときの循環材(3A)はバー状に成型された循環材である。ファーブラシ(3B)は電子写真感光体表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって循環材(3A)をいったんブラシにくみあげ、電子写真感光体表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して電子写真感光体表面に塗布する。
また、経時で循環材(3A)がファーブラシ(3B)にかき削られて減少してもファーブラシ(3B)に接触しなくならないように、加圧バネ(不図示)によって所定の圧力で循環材(3A)がファーブラシ(3B)側に押圧されている。これによって、微量の循環材(3A)でも常に均一にファーブラシ(3B)にくみあげられる。
また、電子写真感光体表面に循環材をコーティングする循環材供給装置を設けてもよい。この手段はクリーニングブレードのような板をトレーリング方式又はカウンター方式で電子写真感光体に押し合てる手段がある。
循環材(3A)は例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−オキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。特にラメラ構造をとる材料は循環効率が高く、更にステアリン酸亜鉛がコスト面で有利である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1は本発明に基づき、予め3種のミルベースを用意し、これらを種々の条件で混合することで感光体表面の形状制御が容易に実現し、優れた表面性を発揮する感光体が製造できる事例を記す。
これに対し、比較例1は感光体表面に含ませるフィラーの粒径を変えることで感光体表面の形状制御を試みる事例を記す。同じく、比較例2、3、4はそれぞれ、感光体の表面層に含む分散剤の濃度、フィラー含有量およびフィラーの混合によって感光体表面の形状制御を試みた事例を記す。全ての比較例は感光体表面の形状制御に対し、制約の強い範囲内での製造方法であることが理解される。
これらの実施例と比較例は本発明の製造方法について進歩性を検証するために行ったものである。実施例1では種々の条件で製造された7種の感光体を用意している。条件によって2種以上のミルベースを用いないものも含まれているが、これは本発明に矛盾を生じさせるものではない。本発明は感光体を製造する方法として、2種以上のミルベースを用いて特定の形状を特定し、製造する方法が重要である。この方法によって、最善の感光体がミルベース1種しか用いられない場合も可能性としてあり得る。
<画像形成装置の作製>
−感光体1の作製−
肉厚1mm、長さ352mm、外径φ40mmのアルミニウムドラムに、下記組成の下引き層用塗料、電荷発生層用塗料、電荷輸送層用塗料を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。その上に表面層用塗料をスプレーで塗工した。スプレー塗工はスプレーガンにオリンポス社 PC−WIDE308を使用し、2.5kgf/cmの霧化圧力でスプレーガンのノズル先端と電子写真感光体間の距離が50mmとなる位置で行った。吐出量は約3ccだった。
結果、3μmから4μmの表面層が形成された電子写真感光体を得た。
また、表面層用塗料は金属酸化物、分散剤、及び有機溶剤からなる固形分濃度が10重量%からなるミルベースに固形分濃度が16質量部のビヒクルを注いで調製した。最終的に得られる表面層塗料は下記の表面層用塗料の項に記す組成である。ミルベースは50ml用UMサンプルびんに分散メディアとしてφ5mmのYTZボール(ニッカトー社製)50gと、固形分濃度を10質量部にする金属酸化物と分散剤及びテトラヒドロフランを仕込み、イカ社バイブレーションシェーカーで2時間分散を行った。分散強度は1600rpmにした。
〔下引き層用塗料〕
・アルキッド樹脂溶液 12質量部
(ベッコライト M6401−50、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 8.0質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
〔電荷発生層用塗料〕
・下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5.0質量部
Figure 2013195866
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.0質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
〔電荷輸送層用塗料〕
・Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成社製) 10質量部
・下記構造の電荷輸送物質 7.0質量部
Figure 2013195866
・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1質量部
〔表面層用塗料〕
・下記構造の架橋型電荷輸送物質 43質量部
Figure 2013195866
・トリメチロールプロパントリアクリレート 21質量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 21質量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと
プロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物 0.1質量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・α−アルミナ
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 10質量部
・リン酸系湿潤分散剤(ED151、楠本化成社)(固形分50重量%) 2.0質量部
・テトラヒドロフラン 566質量部
−感光体2〜7の作製−
感光体1の作製において、表面層用塗料に用いるα−アルミナのミルベースの分散条件を表2の通りに変えた以外は電子写真感光体1と同様にして感光体2〜7を作製した。
表面層用塗料はミルベースA、ミルベースB、及びミルベースCを表3の割合で調合した後、直ちに16重量%のビヒクルを加えることで調製した。
Figure 2013195866
Figure 2013195866
−感光体11〜14の作製−
電子写真感光体3の作製において、表面層用塗料のα−アルミナを表4の通りに変え、分散剤を2質量部のBYK社製BYK−P104(固形分重量比50%)に変えた以外は感光体3と同様にして電子写真感光体11〜14を作製した。
Figure 2013195866
−感光体15〜18の作製−
感光体3の作製において、表面層用塗料に用いた2質量部の分散剤(ED151)を共栄社化学社製の分散剤であるフローレンWK−13E(固形分40重量%)に変更した。分散剤の添加量は表5の通りに変えた。これ以外は感光体3と同様にして電子写真感光体15〜18を作製した。
Figure 2013195866
−感光体19〜21の作製−
感光体3の作製において、表面層用塗料に用いたα−アルミナの含有量を表6の通りに変え、2質量部の分散剤(ED151)を2質量部のBYK社BYK−P104(固形分50重量%)に変えた以外は感光体3と同様にして電子写真感光体19〜21を作製した。
Figure 2013195866
−感光体22〜24の作製−
感光体3の作製において、表面層用塗料に用いたα−アルミナを表7に記す割合となる2種のシリカ微粒子混合物に変え、かつ、分散剤を除いた以外は電子写真感光体3と同様にして感光体22〜24を作製した。
Figure 2013195866
−感光体25〜29の作製−
感光体1の作製において、表面層用塗料に用いるα−アルミナのミルベースの分散条件を表8および表9の通りに変えた以外は感光体1と同様にして感光体25〜29を作製した。
表面層用塗料はミルベースA、ミルベースB、及びミルベースCを表3の割合で調合した後、直ちに16重量%のビヒクルを加えることで調製した。
Figure 2013195866
Figure 2013195866
―循環材―
ステアリン酸亜鉛(日本油脂製、ジンクステアレートGF200)をフタの付いたガラス製容器に入れ、160℃から250℃に温度制御したホットスターラーにより、攪拌しつつ溶融した。
あらかじめ150℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、かくはん溶融した該循環材を流し込み、木製の台の上で40℃まで放冷後、固形物を型から外し、反り防止のため重しを乗せ室温まで冷却した。
冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して6mm×6mm×322mmの角柱形状の循環材バーを作製した。
循環材バーの底面に両面テープをはり付け金属製支持体に固定した。
−循環材塗布装置−
循環材塗布装置は循環材を電子写真感光体に供給する手段と電子写真感光体に供給された循環材をコーティングする手段を併せて画像形成装置に取り付けた。
循環材の供給手段は支持体に保持されるように角柱状に成形した固形状のステアリン酸亜鉛を所定の消費量となるようなバネ定数の加圧スプリングで塗布ブラシに加圧し、塗布ブラシが回転することよりステアリン酸亜鉛を削って電子写真感光体上に削り粉を設ける装置を取り付けた。加圧バネはバネ定数と循環材の消費量との関係から適当なものを選んだ。支持体の両サイドに一点支持の可動式のフィンを取付け、これに引張ばねをまわすことで、ばねの引っ張り応力によって塗布ブラシと循環材との接触圧を調整した。
塗布ブラシは金属シャフトにファーブラシをはり合わせた純正品をそのまま用いた。この塗布ブラシは電子写真感光体面移動方向に対してカウンター方向に回転するようにした。
塗布ブレードは鋼板のブレードホルダーに前記電子写真感光体に:19°で当接する方向に支持されたポリウレタンゴム(ShoreA硬さ;84、反発弾性;52%、厚さ;1.3mm)を用いた。
前記電子写真感光体と前記循環材供給手段を、図8に示すレイアウトでimagio MP C4500(リコー社製)のシアン現像ステーションに搭載し画像形成装置を得た。前記循環材供給手段はimagio MP C4500専用の電子写真感光体カートリッジ内に本来設置されている循環材塗布手段に取り替えて設置した。
<測定・評価>
(1)電子写真感光体表面形状の測定
電子写真感光体の表面形状の測定は表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密社、Surfcom 1400D)を用い、ピックアップ:E−DT−S02Aを取付け、測定長さ;12mm、総サンプリング点数;30,720、測定速度;0.06mm/sの条件で行った。
測定により取得した電子写真感光体の表面形状の一次元データ配列をウェーブレット変換して、HHHからHLLに至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−1)を行った。更にここで得たHLLの一次元データ配列に対してデータ配列数が1/40に減少するように間引きした一次元データ配列を作り、該間引きした一次元データ配列に対して更にウェーブレット変換を行って、LHHからLLLに至る6個の周波数成分に分離する多重解像度解析(MRA−2)を行った。そして、得られた合計12個の各周波数成分について算術平均粗さを計算した。
前記表面形状の測定を一つの電子写真感光体につき70mm間隔で4箇所行い、それぞれの箇所に対して前記各周波数成分についての算術平均粗さの計算を行った。
なお、ウェーブレット変換にはMATLAB(The MathWorks社製)のWavelet Toolboxをそのまま利用した。上述の通り、本発明では2度に分けてウェーブレット変換を行った。
各周波数成分(4箇所)の算術平均粗さの平均値を測定結果の各周波数成分の算術平均粗さ(WRa)とした。
(2)電子写真感光体表面の循環性試験
全ベタパターンで1000枚の連続プリント試験を行った後、電子写真感光体を画像形成装置から取り出した。試験において、電子写真感光体の帯電条件はDCバイアス成分を−760V、AC成分はVppを2.6kV、AC帯電電流条件を1.58mAに設定し、皮膜に与える帯電によるダメージを加速した。
取り出した電子写真感光体の試験終了時における塗布ブレード下流かつ、現像部上流部分の循環型表面層の皮膜欠陥と層厚をそれぞれXPS分析とXRF分析から求めた。XPS分析はPHI製 Quantera SXMを用い、□10mmのエリアを任意10点について分析を行った。XRF分析はあらかじめ、ICP−AES分析で得られる亜鉛分析値とXRF分析値との検量線データを用意し、XRF分析で得られる強度をICP−AES分析値に対比して付着量を求めた。付着量は皮膜欠陥が多い場合、見かけ上、層厚が薄くなり、皮膜部分の厚みが推定できない。そこで、XRFから算出される質量膜厚をXPSから算出される被覆率で割った値を平均的な層厚として算出した。
ICP−AES分析は硫酸と硝酸で分解した検液に対して島津製作所製ICPS−7500を用いて分析した。XRF分析はリガク社製ZSX−100eを用い、□34mmのサイズで電子写真感光体表面からはくりしたフィルムを対象に分析を行った。
更に、共焦点顕微鏡で電子写真感光体の上と同じ部分の表面を観察した。共焦点顕微鏡はレーザーテック社製OPTELICS H1200を用い、10倍、20倍及び、100倍の対物レンズに変えて画像データを収集した。このうち、10倍の対物レンズによって得られる□1.776mmの観察で識別される電子写真感光体表面の異物(フィルミング)の面積比率を画像解析ソフトimage J(アメリカ国立衛生研究所製)のAnalyze Particlesコマンドで算出した。
(3) 画像評価
(1)と(2)に供する画像形成装置とは別に、これと同じ構成の画像形成装置をもう1機用意し、プリント試験を行った。プリント試験はコピー用紙の通紙方向に対して平行となる幅34mm、長さ210mmの帯と幅34mm長さ105mmの帯が並ぶパターン画像を連続10万枚プリントした。試験はシアン現像ステーションで行った。
10万枚のプリント試験を行った後、画素密度が600dpi×600dpiで8×8のマトリクス中に4ドット×4ドットを描いたハーフトーンパターンと白紙パターンを交互に連続5枚ずつ印刷し、白紙パターンの地肌汚れを目視により、以下の基準で評価した。
〔基準〕
5; 極めて優れている
4; 優れている
3; 問題なし
2; わずかにくすんだ感触を受けるが実際の使用では問題ない
1; くすんだ感触を受ける
(実施例1)
電子写真感光体表面の形状制御を、電子写真感光体の表面層用塗料の調製で用いるミルベースの配合条件を変更することで実施した。
図19のA−1〜A−3は電子写真感光体1〜3の表面層に含有する三種のミルベースのうち、個々のミルベースを単独で用いた時に形成される表面形状のウェーブレット解析結果である。それぞれ特徴的な表面形状が形成されている。
これに対し、電子写真感光体4〜7のように、上に記した三種のミルベースの配合比率を変えると、配合比率に応じた表面形状が形成されている。この関係は図20のA−4〜A−7に示す。
更に、図26に感光体1〜7の粗さスペクトルをミルベースA、B、Cの配合割合を示す三角図に重ねて示した図を示す。
また、図21は感光体1〜5、感光体6、7の粗さスペクトルを対比して示した図である。
図26では製造直後と静置保管した塗料による感光体表面形状の差を示す。静置保管した塗料でも製造直後の塗料と同様に、ミルベースの混合比に応じた特徴的な表面形状が造形されていることが分かる。
ミルベースに分散剤を用いない場合やフィラーの沈降防止が発現できない分散剤を併用した場合、経時における塗料中でのフィラーの沈降が著しく、特徴的な表面形状を安定して造形することは困難である。α−アルミナを用いる場合、このような造形の安定化に対してリン酸系の分散剤が有利に作用する。
また、統計解析ソフトウエアJMPver5.0(SAS institute社)のABCD配合計画から、感光体表面形状のウェーブレット解析から得られる各周波数帯のWRaと分散剤の配合比率の関係を簡単に求めることができる。
同ソフトウエアの予測プロファイルから任意の満足関数を最大化する条件が求められるため、例えば、LMLのWRaを大きくし、LHLとHLHのWRaを抑える分散剤の配合比率を統計的手法から算定可能である。実際、本発明では、感光体21と感光体22はこの方法から狙いの表面形状が得られている。
フルカラープリンターでは色の表現を三原色の重ね合わせで実現している。本発明は表面形状制御を三原色に相当する三種のミルベースの調合によって実現していると考えられる。金属酸化物の分散工程は金属酸化物を分散剤で表面処理していることととらえられる。すなわち、分散剤の分岐の割合や鎖長の大きさで金属酸化物微粒子は多様な表面を持つと考えられる。このため、色の重ね合わせに似た形状の加成性が得られたと考えられる。
(比較例1)
電子写真感光体表面の形状制御を、電子写真感光体の表面層に含むα−アルミナの平均粒径を変更することで実施した。
感光体11〜感光体14は感光体表面層に含むα−アルミナの平均粒径を段階的に変えたものである。この関係を図22のA−11〜A14に示す。図から、その表面形状は各周波数帯においてWRaの強度が異なる類似の形状であった。本発明による実施例1と比較すると、感光体表面形状が制御できているとは言い難い。
(比較例2)
電子写真感光体表面の形状制御を、電子写真感光体の表面層に含む分散剤の配合条件を変更することで実施した。
感光体15〜感光体18は分散剤の含有率を変えて表面形状を制御しようとするものである。感光体15〜感光体18の表面形状のウェーブレット解析結果を図23のA−15〜A18に示す。分散剤の含有量を少なくすると金属酸化物の分散が不十分となる結果、感光体表面の形状は変化する。しかしながら、この手法は制御範囲が狭く特定の表面形状を安定して製造することもままならない。時々刻々と金属酸化物の凝集が変化してしまうためである。
(比較例3)
電子写真感光体表面の形状制御を、電子写真感光体の表面層に含むα−アルミナの含有量を変更することで実施した。
感光体19〜21はα−アルミナの含有率を変えて表面形状を制御しようとするものである。感光体19〜感光体21の表面形状のウェーブレット解析結果を図24のA−19〜A−21に示す。α−アルミナの含有量を少なくすると凹凸が小さくなる特徴が見られるものの、形状の特徴は維持されてしまう。このため、この手法は制御範囲が極めて狭く、単に、応答の度合いのみ調整可能な方法とみなされる。
(比較例4)
電子写真感光体表面の形状制御を、電子写真感光体の表面層に含む金属酸化物に2種の異なるシリカ微粒子を混合することで実施した。
感光体22〜24は異なる2種のシリカの配合比を変えて表面形状を制御しようとするものである。感光体22〜感光体24の表面形状のウェーブレット解析結果を図25のA−22〜A−24に示した。この手法も形状の変化量が小さく、形状制御が可能とは言いがたい。
以上の通り、実施例1では三種のミルベースを配合することで、この配合比率に応じた表面形状が感光体表面に形成できることが理解される。これは色の三原色を重ね合わせることで多様な色を発色できることに似ている。図26に感光体1〜7の粗さスペクトルをミルベースA、B、Cの配合割合を示す三角図に重ねて示した図を示す。この図は以上の関係が表れている。
一方、比較例1の感光体間の粗さスペクトル(図22のA−11〜A−14)は中周波数帯の大きさが異なる特徴が表れており、違いを色に例えると制御範囲は濃淡差だけと言える。比較例2の図23のA−15〜A−18を比較した場合、粗さスペクトルの違いが微小であり、限られた微調整しかできないと理解される。比較例3の図24A19〜A−21を比較すると、比較例1と同じ特徴を呈する。また、比較例4の図24A−22〜A−24は比較例2と同じ特徴を呈することが理解される。
(実施例2)
感光体25〜29のそれぞれに対して、前記循環材、循環材塗布装置を図8に示すレイアウトでimagio MP C4500(リコー社製)のシアン現像ステーションに搭載し画像形成装置を得た。前記循環材供給手段はimagio MP C4500専用の電子写真感光体カートリッジ内に本来設置されている循環材塗布手段に取り替えて設置した。循環材の除去量はサンプルの種類によらず、いずれも20mg/kmだった。そこで、循環材に取り付ける加圧用バネを適度な荷重のものを用意し、いずれも感光体表面の循環材の付着量が20mg/kmとなるようにした。
これは感光体表面の循環材付着量に対する塗布回数依存性が消失する加圧バネ条件を選定した。測定部位は機械停止時におけるクリーニングブレード直前部位をサンプリングした。ただし、常時一定にできたのは感光体25と感光体27だけだった。他の感光体は付着量の経時変化が最も抑制された条件で試験を行った。
次に、全ベタパターンで1000枚の連続プリント試験を行った後、電子写真感光体を画像形成装置から取り出した。試験において、電子写真感光体の帯電条件はDCバイアス成分を−760V、AC成分はVppを2.6kV、AC帯電電流条件を1.58mAに設定し、皮膜に与える帯電によるダメージを加速した。
取り出した電子写真感光体の試験終了時における塗布ブレード下流かつ、現像部上流部分の循環型表面層の皮膜欠陥と層厚をそれぞれXPS分析とXRF分析から求めた。XPS分析はPHI製 Quantera SXMを用い、□10mmのエリアを任意10点について分析を行った。
XRF分析はあらかじめ、ICP−AES分析で得られる亜鉛分析値とXRF分析値との検量線データを用意し、XRF分析で得られる強度をICP−AES分析値に対比して付着量を求めた。付着量は皮膜欠陥が多い場合、見かけ上、層厚が薄くなり、皮膜部分の厚みが推定できない。そこで、XRFから算出される質量膜厚をXPSから算出される被覆率で割った値を平均的な層厚として算出した。
ICP−AES分析は硫酸と硝酸で分解した検液に対して島津製作所製ICPS−7500を用いて分析した。XRF分析はリガク社製ZSX−100eを用い、□34mmのサイズで電子写真感光体表面からはくりしたフィルムを対象に分析を行った。
更に、共焦点顕微鏡で電子写真感光体の上と同じ部分の表面を観察した。共焦点顕微鏡はレーザーテック社製OPTELICS H1200を用い、10倍、20倍及び、100倍の対物レンズに変えて画像データを収集した。このうち、10倍の対物レンズによって得られる□1.776mmの観察で識別される電子写真感光体表面の異物(フィルミング)の面積比率を画像解析ソフトimage J(アメリカ国立衛生研究所製)のAnalyze Particlesコマンドで算出した。
測定結果を表10に示す。
Figure 2013195866
分散が表面層に三種含有する表9に挙げる電子写真感光体の皮膜欠陥は表面形状で異なる。このうち、感光体25と感光体26が循環材の皮膜に有利な形状である。
これに応じ、プリント画質も良質である。
循環材のコーティングは塗布ブレードが用いられている。以上の感光体と塗布ブレードはコーティングに有利ななじみが生じていると考えられる。なじみはプロセス条件によって変化すると予想されるが、本発明によれば、プロセスの変化に応じて最適な表面形状を形成することが容易となる。
また、感光体27と感光体28は皮膜欠陥が多いだけでなく、感光体表面に激しい傷が生じていた。感光体表面に強い摩擦力が生じたためと考えられる。
<図1〜6について>
11 電子写真感光体
12 帯電装置
13 露光装置
14 現像装置
15 トナー
16 転写装置
17 クリーニング装置
18 印刷メディア(印刷用紙、OHP用スライド)
19 定着装置
1A 除電装置
1B クリーニング前露光装置
1C 駆動手段
1D 第1の転写装置
1E 第2の転写装置
1F 中間転写体
1G 搬送転写ベルト
<図8について>
1F 中間転写体
3A 固体循環材
3B 塗布ブラシ
11 電子写真感光体
12 帯電装置
13 露光装置
14 現像装置
17 クリーニング装置
3C 塗布ブレード
<図9について>
3 循環材塗布装置
3A 循環材
3B 塗布ブラシ
3C 塗布ブレード
<図1110、図1211について>
21 導電性支持体
24 下引き層
25 電荷発生層
26 電荷輸送層
28 表面層
<図12について>
41 測定対象である電子写真感光体
42 表面粗さを測定するプローブを取り付けた治具
43 上記治具を測定対象に沿って移動させる機構
44 表面粗さ計
45 信号解析を行うパーソナルコンピューター
<図13について>
101 一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分
102 一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より一つ低い周波数成分
103 一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より二つ低い周波数成分
104 一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より三つ低い周波数成分
105 一回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より四つ低い周波数成分
106 一回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分
107 二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分
108 二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より一つ低い周波数成分
109 二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より二つ低い周波数成分
110 二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より三つ低い周波数成分
111 二回目の多重解像度解析結果の最高周波数成分より四つ低い周波数成分
112 二回目の多重解像度解析結果の最低周波数成分
<図14について>
121 一回目の多重解像度解析における最高周波成分の帯域
122 一回目の多重解像度解析における最高周波成分より一つ低い周波数成分の帯域
123 一回目の多重解像度解析における最高周波成分より二つ低い周波数成分の帯域
124 一回目の多重解像度解析における最高周波成分より三つ低い周波数成分の帯域
125 一回目の多重解像度解析における最高周波成分より四つ低い周波数成分の帯域
126 一回目の多重解像度解析における最低周波数成分の帯域
<図16について>
127 二回目の多重解像度解析における最高周波成分の帯域
128 二回目の多重解像度解析における最高周波成分より一つ低い周波数成分の帯域
129 二回目の多重解像度解析における最高周波成分より二つ低い周波数成分の帯域
130 二回目の多重解像度解析における最高周波成分より三つ低い周波数成分の帯域
131 二回目の多重解像度解析における最高周波成分より四つ低い周波数成分の帯域
132 二回目の多重解像度解析における最低周波数成分の帯域
特開2000−66424号公報 特開2000−171990号公報 特開2008−122870号公報 特開2006−91047号公報 特開2002−357913号公報 特開2004−354591号公報 特開2006−301247号公報 特開2006−301322号公報 特開2002−268257号公報 特開2004−286887号公報 特開2003−322984号公報 特開2009−223302号公報
中井泉編、蛍光X線分析の実際、154−161、朝倉書店、2005

Claims (9)

  1. 導電性支持体に感光層と表面層とを積層した電子写真感光体の製造方法であって、前記表面層を形成する塗料が、少なくとも金属酸化物フィラー、溶媒、結着剤成分を含む、金属酸化物フィラーの分散状態が異なる2種以上のミルベースを調合して得た表面層形成用塗料を感光層の表面に塗布することによって表面形状が制御された表面層を形成する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記酸化物フィラーとして少なくともα−アルミナを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記α−アルミナの平均粒子径が0.2μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記塗料が少なくともリン酸系湿潤分散剤が含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法によって製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
  6. 前記表面層が、
    (I)表面粗さ・輪郭形状測定機により測定して一次元データ配列を作成し、
    (II)該一次元データ配列を、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの6個の周波数成分に分離し、
    (III)次いで、得られた6個の周波数成分の中で最低周波数成分の一次元データ配列に対して、データ配列数が1/10〜1/100に減少するように間引きして一次元データ配列を作成し、
    (IV)更に、多重解像度解析によってウェーブレット変換して高周波数成分から低周波数成分に至るまでの、追加の6個の周波数成分に分離して、
    (V)前記(II)及び(IV)で得られた合計12個の周波数成分の個々の算術平均粗さWRa(LLL)からWRa(HHH)の対数を左から右に順に線で結ぶことで得られる曲線に対して、
    少なくとも、LLLからLHLの帯域に屈曲点をもたず、
    かつ、WRa(LLH)が0.04μm未満であり、
    かつ、WRa(HLH)が0.004μm未満であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 前記表面層は、三次元架橋構造を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真感光体。
  8. 帯電装置を用いて電子写真感光体に帯電を行い、
    画像露光によって静電潜像を形成し、
    現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、
    転写装置により像担持体上のトナー像を転写材に転写し、
    クリーニング装置により像担持体表面を清掃し、
    帯電装置よりも上流側の像担持体面部分に当接するように配設する塗布装置により像担持体表面に皮膜を形成する
    画像形成装置用プロセスカートリッジにおいて、
    該電子写真感光体は請求項5〜7のいずれかに記載の電子写真感光体であり、
    該塗布装置は、像担持体に当接する塗布ブラシと塗布ブレードを有し、
    像担持体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流側で、
    更に1サイクル当たりの塗布量が清掃によって除去される量以下であり、
    かつ、該像担持体は、皮膜欠陥が少なくとも平均10%未満であり、
    かつ質量膜厚が1分子層以上3分子層未満である循環型表面層を有する画像形成装置用プロセスカートリッジ。
  9. 帯電装置を用いて電子写真感光体に帯電を行い、
    画像露光によって静電潜像を形成し、
    現像剤によって静電潜像を現像してトナー像化した後、
    転写装置により像担持体上のトナー像を転写材に転写し、
    クリーニング装置により像担持体表面を清掃し、
    帯電装置よりも上流側の像担持体面部分に当接するように配設する塗布装置により像担持体表面に皮膜を形成する
    画像形成装置において、
    該電子写真感光体は請求項5〜7のいずれかに記載の電子写真感光体であり、
    該塗布装置は、像担持体に当接する塗布ブラシと塗布ブレードを有し、
    像担持体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流側で、
    更に1サイクル当たりの塗布量が清掃によって除去される量以下であり、
    かつ、該像担持体は、皮膜欠陥が少なくとも平均10%未満であり、
    かつ質量膜厚が1分子層以上3分子層未満である循環型表面層を有する画像形成装置。
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