以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を説明する概要図である。
画像形成装置100は、例えばカラー画像形成でタンデム方式と称される二次転写機構を有する電子写真方式の画像形成装置である。以下、画像形成装置100を例に説明する。
画像形成装置100は、中間転写ユニット(図示せず)を有する。中間転写ユニットは、無端ベルトの中間転写ベルト10を有する。中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ14乃至16に掛けられ、図1の場合、時計回りに回転する。
中間転写体クリーニングユニット17は、作像プロセスが行われた後、中間転写ベルト10の上に残留するトナーを除去する。
作像装置20は、クリーニングユニット13と、帯電ユニット18と、除電ユニット19と、現像ユニット29と、感光体ユニット40と、を有する。
画像形成装置100は、図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色(以下、適宜括弧内に示した記号で色を表す場合がある。)に対応して別々の作像装置20を有する。
作像装置20は、第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15の間に設置される。各色の作像装置20は、中間転写ベルト10の搬送方向に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の順で設置されている。
作像装置20は、画像形成装置100に対して脱着が可能である。
光ビーム走査装置21は、各色の感光体ユニット40の感光体ドラムに画像形成のための光ビームを照射する。
二次転写ユニット22は、2つのローラ23と、二次転写ベルト24と、を有する。
二次転写ベルト24は、無端ベルトであり、2つのローラ23に掛けられ、回転する。ローラ23及び二次転写ベルト24は、中間転写ベルト10を押し上げて、第3の支持ローラ16に押し当てるように設置される。
二次転写ベルト24は、中間転写ベルト10の上に形成された画像を、記録媒体へ転写する。記録媒体は、例えば紙、又はプラスチックシート等である。以下、記録媒体が紙の場合を例に説明する。
定着ユニット25は、定着のプロセスを行う。定着ユニット25には、トナー像が転写された記録媒体が送られる。定着ユニット25は、定着ベルト26、及び加圧ローラ27を有する。定着ベルト26は、無端ベルトである。定着ベルト26、及び加圧ローラ27は、定着ベルト26に、加圧ローラ27を押し当てるように設置される。定着ユニット25は、加熱を行う。
シート反転ユニット28は、送られてきた記録媒体の表面と裏面を反転させる。シート反転ユニット28は、表面に画像形成した後、裏面に画像形成する場合に用いられる。
自動給紙装置(ADF(Auto Document Feeder))400は、操作ユニット(図示せず)のスタートボタンが押され、かつ、給紙台30の上に記録媒体がある場合、記録媒体をコンタクトガラス32の上に搬送する。自動給紙装置400は、給紙台30の上に記録媒体がない場合、ユーザによって置かれたコンタクトガラス32の上の記録媒体を読み取るために、画像読み取りユニット300を起動させる。
画像読み取りユニット300は、第1のキャリッジ33と、第2のキャリッジ34と、結像レンズ35と、CCD(Charge Coupled Device)36と、光源(図示せず)と、を有する。
画像読み取りユニット300は、コンタクトガラス32の上の記録媒体を読み取るために、第1のキャリッジ33、及び第2のキャリッジ34を動作させる。
第1のキャリッジ33にある光源は、コンタクトガラス32に向かって発光する。第1のキャリッジ33にある光源からの光は、コンタクトガラス32の上の記録媒体で反射する。
反射した光は、第1のキャリッジ33にある第1のミラー(図示せず)で、第2のキャリッジ34に向かって反射する。第2のキャリッジ34に向かって反射した光は、結像レンズ35を通して、読み取りセンサであるCCD36に結像する。
画像形成装置100は、CCD36で得た情報に基づいてY、M、C、及びK等の各色に対応する画像データを作成する。
画像形成装置100は、操作ユニット(図示せず)のスタートボタンが押された場合、PC(Personal Computer)等の外部装置(図示せず)から画像形成の指示があった場合、中間転写ベルト10の回転を開始する。また、画像形成装置100は、ファクシミリの出力指示があった場合、中間転写ベルト10の回転を開始する。
中間転写ベルト10の回転が開始された場合、作像装置20は、作像プロセスを開始する。トナー画像が転写された記録媒体は、定着ユニット25に送られる。定着ユニット25は、定着のプロセスを行うことによって、記録媒体に画像が画像形成される。
給紙テーブル200は、給紙ローラ42と、給紙ユニット43と、分離ローラ45と、搬送コロユニット46と、を有する。給紙ユニット43は、複数の給紙トレイ44を有する場合がある。搬送コロユニット46は、搬送ローラ47を有する。
給紙テーブル200は、給紙ローラ42のうち1つを選択する。給紙テーブル200は、選択した給紙ローラ42を回転させる。
給紙ユニット43は、複数の給紙トレイ44のうち1つを選択し、給紙トレイ44から記録媒体を送る。送り出された記録媒体は、分離ローラ45によって1枚に分離され、搬送コロユニット46に入れられる。
搬送コロユニット46は、搬送ローラ47によって記録媒体を画像形成装置100に送る。
記録媒体は、搬送コロユニット48によってレジストローラ49に送られる。レジストローラ49に送られた記録媒体は、レジストローラ49に突き当てて止められる。記録媒体は、トナー画像が二次転写ユニット22に進入する際に、所定の位置に転写が行われるタイミングで二次転写ユニット22に搬送される。
記録媒体は、手差しトレイ51から送られてもよい。手差しトレイ51から記録媒体を送る場合、画像形成装置100は、給紙ローラ50、及び給紙ローラ52を回転させる。
給紙ローラ50及び給紙ローラ52は、手差しトレイ51上にある複数の記録媒体から1枚の記録媒体に分離させる。給紙ローラ50、及び給紙ローラ52は、分離させた記録媒体を給紙路53へ送る。給紙路53に送られた記録媒体は、レジストローラ49に送られる。記録媒体がレジストローラ49に送られた以降の処理は、給紙テーブル200から記録媒体を送る場合と同様である。
記録媒体は、定着ユニット25によって定着され、排出される。定着ユニット25から排出された記録媒体は、切換爪55によって排出ローラ56に送られる。排出ローラ56は、送られてきた記録媒体を排紙トレイ57に送る。
また、切換爪55は、定着ユニット25から排出された記録媒体をシート反転ユニット28に送ってもよい。シート反転ユニット28は、送られてきた記録媒体の表面と裏面を反転させる。反転させられた記録媒体は、表面と同様に裏面に画像形成、いわゆる両面印刷が行われ、排紙トレイ57へ送られる。
一方、中間転写ベルト10に残るトナーは、中間転写体クリーニングユニット17によって除去される。画像形成装置100は、中間転写ベルト10に残るトナーが除去されると、次の画像形成に備える。
画像形成装置100は、図1の構成に限られない。画像形成装置100は、5色以上の色を用いて画像形成を行ってもよい。画像形成装置100が5色以上の色を用いる場合、画像形成装置100は、用いる色の数に合わせて作像装置20の有する数が変更される。以下、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の5色を用いて画像形成を行う作像装置20を例に説明する。
<画像形成プロセス>
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置による画像形成プロセスの一例を説明する概要図である。
画像形成装置100は、中間転写ベルト10と、各色に対応した作像装置20と、各色に対応した光ビーム走査装置21と、中間転写体クリーニングユニット17と、二次転写ユニット22と、を有する。
光ビーム走査装置21から、作像装置20に光ビームが入射される。作像装置20は、入射された光ビームに基づいて作像プロセスを行う。電子写真の画像形成のプロセスは、帯電、露光、現像、転写、及び定着の5つのプロセスが行われる。作像プロセスは、帯電、露光、現像、及び転写である。
作像装置20は、作像プロセスで、各色のトナー画像を中間転写ベルト10に形成する。各色の作像装置20が形成した各色のトナー画像を順に重ねて、5色のカラーのトナー画像が形成される。
作像装置20の感光体ユニット40には、画像データに基づいて変調された光ビームが入射される。
帯電ユニット18は、帯電のプロセスを行う。帯電のプロセスは、帯電ユニット18が感光体ユニット40の表面を帯電させるプロセスである。
帯電した感光体ユニット40は、光ビームにより露光のプロセスが行われる。露光のプロセスは、感光体ユニット40の表面に静電潜像を形成するプロセスである。
現像ユニット29は、現像のプロセスを行う。現像のプロセスは、感光体ユニット40に形成された静電潜像に対してトナーを付着させ、トナー画像を形成するプロセスである。現像ユニット29には、トナーボトル(図示せず)からトナーの供給が行われる。
トナー画像は、転写器62によって中間転写ベルト10の上に転写される。
作像された各色のトナー像は、中間転写ベルト10の上で重ねられ、1つのトナー画像として記録媒体に転写される。
転写の後、除電ユニット19は、感光体ユニット40の除電を行い、クリーニングユニット13は、トナー画像の除去を行う。
転写されたトナー画像が二次転写ユニット22に進入する際、媒体は、二次転写ユニット22に送られる。二次転写ユニット22に送られた記録媒体に、中間転写ベルト10の上のトナー画像が転写される。
二次転写ユニット22は、中間転写ベルト10に形成された5色のカラーのトナー画像を記録媒体に転写する。その後、定着ユニット25が定着のプロセスを行う。
中間転写体クリーニングユニット17は、転写プロセスの後、5色のカラーのトナー画像を除去する。
感光体は、例えば図2の感光体ユニット40である。感光体は、導電性支持体80を有する。感光体の表面である導電性支持体80には、凹凸形状が形成される。
凹凸形状の状態は、粗さ曲線(JIS B0601 2001)によって示される。粗さ曲線は、1次元データ配列である。導電性支持体80の表面は、例えばウェーブレット(Wavelet)変換による多重解像度解析で評価される。
図3は、本発明の一実施形態に係る感光体の表面粗さを評価するための評価システムの一例を説明する概要図である。
評価システム70は、治具71と、移動機構72と、表面粗さ・輪郭形状測定機73と、PC(Personal Computer)74と、を有する。
図中の導電性支持体80は、感光体に用いられる。
治具71は、導電性支持体80の表面粗さを測定するプローブ(probe)を有する治具である。
移動機構72は、治具71を測定対象である導電性支持体80に沿って移動させるための機構である。
表面粗さ・輪郭形状測定機73は、例えば東京精密社製Surfcom1400Dである。以下、表面粗さ・輪郭形状測定機73が東京精密社製Surfcom1400Dの場合を例に説明する。
PC74は、表面粗さ・輪郭形状測定機73とRS−232C(Recommended Standard 232)等のケーブルで接続し、表面粗さ・輪郭形状測定機73から表面粗さデータを取得する。PC74は、表面粗さデータに基づいて多重解像度解析を行う。
なお、評価システム70は、図3の構成に限られない。例えば評価システム70は、表面粗さ・輪郭形状測定機73が多重解像度解析を行う構成でもよい。
測定は、JISで定められる長さである8mm以上25mm以下の長さで行うが望ましい。また、測定のサンプリング間隔は、1μm以下がよく、0.2μm以上0.5μm以下が望ましい。例えば測定の長さが12mm、かつ、サンプリングの点数が30720点である場合、サンプリング間隔は、0.390625μmとする。
多重解像度解析は、表面粗さ・輪郭形状測定機73から取得した1次元データ配列をウェーブレット変換して複数の周波数成分に分離する(以下、1回目のウェーブレット変換という)。周波数成分は、例えば第1周波数成分HHH、第2周波数成分HHL、第3周波数成分HMH、第4周波数成分HML、第5周波数成分HLH、及び第6周波数成分HLLである。第1周波数成分HHH乃至第6周波数成分HLLは、第1周波数成分HHHが最も周波数が高く、第6周波数成分HLLが最も周波数が低い場合である。
多重解像度解析は、最も周波数が低い第6周波数成分HLLのデータを間引きする処理を行う。間引きは、データ配列の数を1/10から1/100にする処理である。例えば1回目のウェーブレット変換で算出された配列数が30000の場合、間引きによって1/10にすることによって配列数が3000となる。間引きは、目盛幅を拡げるため、データの周波数を上げることができる。
間引きの後段で、多重解像度解析は、間引きされた1次元のデータをウェーブレット変換し、複数の周波数成分に分離する(以下、2回目のウェーブレット変換という)。
間引きは、1/10より小さい場合、例えば1/5の場合、データの周波数が十分上がっていないため、2回目のウェーブレット変換を行う多重解像度解析であってもデータが十分に分離されない。
間引きは、1/100より大きい場合、例えば1/200の場合、データの周波数が上がり過ぎるため、データが高周波成分に集中するため、十分に分離されない。
間引きは、例えば100点のデータの平均値を算出し、以降の処理において算出された平均値を用いる方法等である。
2回目のウェーブレット変換で分離する周波数成分は、例えば第7周波数成分LHH、第8周波数成分LHL、第9周波数成分LMH、第10周波数成分LML、第11周波数成分LLH、及び第12周波数成分LLLである。
なお、各周波数成分は、周波数帯域が一部重複した分離の区分であってもよい。
多重解像度解析は、分離された各周波数成分の1次元のデータから算術平均粗さRa(JIS B0601 2001)を計算する。
ウェーブレット変換は、例えばMathWorks(登録商標)社製MATLAB(登録商標)等のソフトウェアによって実現される。
1回目のウェーブレット変換、及び2回目のウェーブレット変換のマザーウェーブレット関数は、各種のウェーブレット関数が使用できる。ウェーブレット関数は、例えばドビシー(Daubecies)関数、ハール(Haar)関数、メーヤ(Meyer)関数、シムレット(Symlet)関数、又はコイフレット(Coiflet)関数等である。ウェーブレット変換によって分離される周波数成分の数は、評価精度が高く、かつ、計算コストが少ない4以上8以下がよく、6が望ましい。
なお、多重解像度解析では、数段階のウェーブレット変換を行ってもよい。また、ウェーブレット変換を行って測定対象とする周波数帯域が複数の周波数帯域に分離してしまった場合、逆ウェーブレット変換によって復元する処理があってもよい。
図4は、本発明の一実施形態に係る多重解像度解析の各周波数成分についての計算結果の一例を示す図である。計算結果は、1回目のウェーブレット変換を行ったデータの最低周波数に対して1/40の間引きを行い、2回目のウェーブレット変換を行ったデータに基づいて算出する。図4は、1回目のウェーブレット変換を行ったデータから算術平均粗さRa、最大高さRz(JIS B0601 2001)、及び十点平均粗さRzJIS(JIS B0601 2001)を計算した結果である。
図4(A)は、多重解像度解析のための測定結果の一例を示す図である。以下、図4の測定結果が得られた場合を例に説明する。
図4(A)は、表面粗さ・輪郭形状測定機73で測定した測定結果である。測定結果は、粗さ曲線(JIS B0601 2001)である。図4(A)の測定結果は、測定長さが12mmの場合である。
図4(B)は、1回目のウェーブレット変換を行ったデータに基づく計算結果の一例である。図4(B)は、上から周波数の高い順に図示している。
第1周波数成分のグラフG1は、最も高い周波数成分である第1周波数成分HHHのグラフである。
第2周波数成分のグラフG2は、第1周波数成分HHHより1つ低い周波数成分である第2周波数成分HHLのグラフである。
第3周波数成分のグラフG3は、第1周波数成分HHHより2つ低い周波数成分である第3周波数成分HMHのグラフである。
第4周波数成分のグラフG4は、第1周波数成分HHHより3つ低い周波数成分である第4周波数成分HMLのグラフである。
第5周波数成分のグラフG5は、第1周波数成分HHHより4つ低い周波数成分である第5周波数成分HLHのグラフである。
第6周波数成分のグラフG6は、最も低い周波数成分である第6周波数成分HLLのグラフである。
図5は、本発明の一実施形態に係る多重解像度解析の各周波数成分の分離状態の一例を示す図である。横軸は、凹凸の形状が正弦波とした場合の長さ1mm当たりに出現する凹凸の数である。縦軸は、各帯域に分離された割合である。
第1周波数成分の帯域のグラフGF1は、第1周波数成分HHHの帯域を示すグラフである。
第2周波数成分の帯域のグラフGF2は、第2周波数成分HHLの帯域を示すグラフである。
第3周波数成分の帯域のグラフGF3は、第3周波数成分HMHの帯域を示すグラフである。
第4周波数成分の帯域のグラフGF4は、第4周波数成分HMLの帯域を示すグラフである。
第5周波数成分の帯域のグラフGF5は、第5周波数成分HLHの帯域を示すグラフである。
第6周波数成分の帯域のグラフGF6は、第6周波数成分HLLの帯域を示すグラフである。
図5では、1mm当たりの凹凸の数が20個以下の場合は、第6周波数成分の帯域のグラフGF6に出現する。例えば1mm当たりの凹凸の数が110個の場合は、第4周波数成分の帯域のグラフGF4に最も強く出現し、かつ、第4周波数成分のグラフG4に出現する。例えば1mm当たりの凹凸の数が220個の場合は、第3周波数成分の帯域のグラフGF3に最も強く出現し、かつ、第3周波数成分のグラフG3に出現する。例えば1mm当たりの凹凸の数が310個の場合は、第2周波数成分の帯域のグラフGF2、及び第3周波数成分の帯域のグラフGF3に出現し、かつ、第3周波数成分のグラフG3に出現する。
したがって、1mm当たりの凹凸の数、即ち表面粗さによって図4、及び図5のいずれかのグラフに表示されるかが決定する。細かなざらつき等は、高い周波数であるため、高い周波数成分で示される。うねり等は、低い周波数であるため、低い周波数成分で示される。各周波数帯域のグラフから算術平均粗さRa、最大高さRz、及び十点平均粗さRzJISが計算される。
2回目のウェーブレット変換を行うために、最も低い周波数成分である第6周波数成分HLLの第6周波数成分のグラフG6は、間引きが行われる。間引きによって、多重解像度解析の際、目的とする周波数は、帯域の中心になることが可能である。図6は、図4(A)の40個のデータから1個の割合でデータを取る1/40の間引きの場合である。
図6は、本発明の一実施形態に係る間引きの処理結果の一例を示す図である。縦軸は、表面の凹凸を示し、単位はμmである。横軸は、測定長さを示す。
多重解像度解析は、間引きの処理結果に対して2回目のウェーブレット変換を行う。
図4(C)は、2回目のウェーブレット変換を行ったデータに基づく計算結果の一例である。図4(C)は、上から周波数の高い順に図示している。
第7周波数成分のグラフG7は、2回目のウェーブレット変換で最も高い周波数成分である第7周波数成分LHHのグラフである。
第8周波数成分のグラフG8は、第7周波数成分LHHより1つ低い周波数成分である第8周波数成分LHLのグラフである。
第9周波数成分のグラフG9は、第7周波数成分LHHより2つ低い周波数成分である第9周波数成分LMHのグラフである。
第10周波数成分のグラフG10は、第7周波数成分LHHより3つ低い周波数成分である第10周波数成分LMLのグラフである。
第11周波数成分のグラフG11は、第7周波数成分LHHより4つ低い周波数成分である第11周波数成分LLHのグラフである。
第12周波数成分のグラフG12は、最も低い周波数成分である第12周波数成分LLLのグラフである。
図7は、本発明の一実施形態に係る多重解像度解析の2回目のウェーブレット変換を行ったデータの各周波数成分の分離状態の一例を示す図である。横軸は、凹凸の形状が正弦波とした場合の長さ1mm当たりに出現する凹凸の数である。縦軸は、各帯域に分離された割合である。
第7周波数成分の帯域のグラフGF7は、第7周波数成分LHHの帯域を示すグラフである。
第8周波数成分の帯域のグラフGF8は、第8周波数成分LHLの帯域を示すグラフである。
第9周波数成分の帯域のグラフGF9は、第9周波数成分LMHの帯域を示すグラフである。
第10周波数成分の帯域のグラフGF10は、第10周波数成分LMLの帯域を示すグラフである。
第11周波数成分の帯域のグラフGF11は、第11周波数成分LLHの帯域を示すグラフである。
第12周波数成分の帯域のグラフGF12は、第12周波数成分LLLの帯域を示すグラフである。
図7では、1mm当たりの凹凸の数が0.2個以下の場合は、第12周波数成分の帯域のグラフGF12に出現する。例えば1mm当たりの凹凸の数が11個の場合は、第8周波数成分の帯域のグラフGF8に最も強く出現し、かつ、第8周波数成分のグラフG8に出現する。
したがって、1mm当たりの凹凸の数、即ち表面粗さによって図4、及び図7のいずれかのグラフに表示されるかが決定する。細かなざらつき等は、高い周波数であるため、高い周波数成分で示される。うねり等は、低い周波数であるため、低い周波数成分で示される。各周波数帯域のグラフから算術平均粗さRa、最大高さRz、及び十点平均粗さRzJISが計算される。
図8は、本発明の一実施形態に係る多重解像度解析による計算結果の一例を示す表である。
多重解像度解析結果表T0は、各周波数帯域のグラフから計算された算術平均粗さRa、最大高さRz、及び十点平均粗さRzJISを示す。
信号名「HHH」は、周期の長さが0.3μm〜3μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「HHL」は、周期の長さが1μm〜6μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「HMH」は、周期の長さが2μm〜13μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「HML」は、周期の長さが4μm〜25mの周波数帯域の計算結果である。
信号名「HLH」は、周期の長さが10μm〜50μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「HLL」は、周期の長さが24μm〜99μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LHH」は、周期の長さが26μm〜106μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LHL」は、周期の長さが53μm〜183μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LMH」は、周期の長さが106μm〜318μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LML」は、周期の長さが214μm〜551μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LLH」は、周期の長さが431μm〜954μmの周波数帯域の計算結果である。
信号名「LLL」は、周期の長さが867μm〜1654μmの周波数帯域の計算結果である。
粗面化を施した導電性支持体を用いた感光体による画像形成の際のモアレと、多重解像度解析による計算結果と、の関係は、多変量解析によって示せる。多変量解析は、例えば統計ソフトウェアJMP Ver.5.01a(SAS Institute社製)等で実現される。多変量解析によって、モアレの発生は、周期の長さが26μm〜106μmの周波数帯域での算術平均粗さRaである、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaと相関が強いと言える。
モアレの発生と相関の強い周期の長さが26μm〜106μmの周波数帯域での第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaを指定した導電性支持体によってモアレの発生を少なくすることができる。
また、周期の長さが26μm〜106μmの周波数帯域での第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaを指定した導電性支持体を用いた感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置によってモアレの発生を少なくした画像形成ができる。
図9は、本発明の一実施形態に係る感光体の構成の一例を示す図である。図9は、感光体表面の断面図である。
図9(A)は、感光体が、導電性支持体80と、電荷輸送層81と、電荷発生層82と、を有する構成の一例を示す図である。
図9(B)は、感光体が、導電性支持体80と、電荷輸送層81と、電荷発生層82と、下引き層83と、を有する構成の一例を示す図である。
導電性支持体80は、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性の材料を有する。材料は、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属、酸化スズ、又は酸化インジウム等の酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、又は紙等に被覆した物質である。材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板である。材料は、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、又は切削法等の工法により導電性支持体化後、切削、超仕上げ、及び研磨等により表面処理した管等を使用する。
電子写真感光体には、導電性支持体80と、感光層と、の間に下引き層83を設ける構成が好ましい。下引き層83を設ける構成は、接着性の向上、モアレの減少、上層の塗工性の改良、導電性支持体80からの電荷注入の減少等ができる構成である。下引き層83を設ける構成は、導電性支持体からの電荷注入を減少させることによって、画像の黒ポチ、又はチリの低減させることができる構成である。
下引き層83は、樹脂を主成分とする材料で構成する。下引き層83の上に感光層を塗布する場合、下引き層83に用いる樹脂は、有機溶剤に難溶である熱硬化性樹脂が望ましい。
下引き層83に用いる樹脂は、ポリウレタン、メラミン樹脂、又はアルキッド−メラミン樹脂である。樹脂は、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、又はブタノン等の溶媒を用いて適度に希釈した塗料とすることができる。
下引き層83は、伝導度の調節、及びモアレを減少させるために、金属、又は金属酸化物等の微粒子が加えられてもよい。微粒子は、酸化チタンが好ましい。微粒子は、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、又はブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、又はサンドミル等により分散し、分散液と樹脂成分を混合した塗料に含まれる。
下引き層83は、上述した塗料を浸漬塗工法、スプレーコート法、又はビードコート法等によって支持体上に成膜される。下引き層83は、加熱硬化することで形成されてもよい。
下引き層83の膜厚は、1〜5μm程度が望ましい。電子写真感光体の残留電位の蓄積が大きくなる場合、下引き層の膜厚は、3μm未満が望ましい。
感光層は、電荷輸送層81と、電荷発生層82と、を単層にする構成でもよい。感光層は、順次積層させた積層型感光層が望ましい。以下、積層型感光層を例に説明する。
電荷輸送層81は、積層型感光層の一部であり、露光によって電荷を発生する。
電荷輸送層81に含有される化合物は、電荷発生物質を主成分とする。電荷輸送層81は、バインダー樹脂を用いてもよい。電荷発生物質は、無機系材料と有機系材料を用いる。
無機系材料は、例えば結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、又はアモルファスシリコン等である。アモルファスシリコンは、ダングリングボンドを水素原子、又はハロゲン原子でターミネートした物質等である。アモルファスシリコンは、ホウ素原子、又はリン原子等をドープした物質等である。
有機系材料は、例えばチタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、又はペリレン系顔料等である。
金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料およびペリレン系顔料を用いることによって、電荷発生の量子効率が高くできる。
電荷発生物質は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。
バインダー樹脂は、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、又はポリアクリルアミド等である。また、後述する高分子電荷輸送物質を用いてもよい。このうち、ポリビニルブチラールが望ましい。
バインダー樹脂は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。
電荷発生層82を形成する方法は、例えば真空薄膜作製法、又は溶液分散系からのキャスティング法である。
真空薄膜作製法は、無機系材料、及び有機系材料の層を生成するため、例えば真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、又はCVD(化学気相成長)法等である。
キャスティング法で電荷発生層82を設けるために、上述した無機系、又は有機系電荷発生物質を、バインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、又はブタノン等の溶媒を用いる。キャスティング法で電荷発生層82を設けるために、ボールミル、アトライター、又はサンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布してよい。メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン、及びキシレンと比較して環境負荷の程度を低くすることができる。塗布は、例えば浸漬塗工法、スプレーコート法、又はビードコート法等により行われる。
電荷発生層82の膜厚は、0.01〜5μm程度が望ましい。電荷発生層82の膜厚は、残留電位の低減、又は高感度化のため、厚膜化させてもよい。厚膜化は、帯電電荷の保持性、又は空間電荷の形成等帯電性の劣化となる場合がある。したがって、電荷発生層82の膜厚は、0.05〜2μmがより望ましい。
電荷発生層82は、後述する酸化防止剤、可塑剤、滑剤、又は紫外線吸収剤等の低分子化合物、及びレベリング剤が添加されてもよい。低分子化合物は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。
低分子化合物、及びレベリング剤を併用すると感度劣化となる場合があるため、低分子化合物の使用量は、0.1〜20phr、好ましくは、0.1〜10phr、かつ、レベリング剤の使用量は、0.001〜0.1phr程度が望ましい。
電荷輸送層81は、電荷発生層82で生成した電荷を注入、及び輸送し、帯電によって設けられた感光体の表面電荷を中和する。電荷輸送層81は、積層型感光層の一部である。電荷輸送層81の主成分は、電荷輸送成分と、これを結着するバインダー成分である。
電荷輸送物質は、例えば低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質、及び高分子電荷輸送物質である。電子輸送物質は、例えば非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、又はナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質である。電子輸送物質は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。正孔輸送物質は、電子供与性物質が望ましい。正孔輸送物質は、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体である。正孔輸送物質は、例えば9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン等である。正孔輸送物質は、例えばスチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体等である。正孔輸送物質は、例えばアクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等である。正孔輸送物質は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。
また、正孔輸送物質は、高分子電荷輸送物質でもよい。高分子電荷輸送物質は、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に記載のヒドラゾン構造を有する重合体等である。高分子電荷輸送物質は、例えば特開昭63−285552号公報等に記載のポリシリレン重合体、又は特開2001−330973号公報等に記載の芳香族ポリカーボネート等である。高分子電荷輸送物質は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。高分子電荷輸送物質は、静電特性が良好であるため、特開2001−330973号公報等に記載の芳香族ポリカーボネート等が望ましい。
高分子電荷輸送物質は、架橋型樹脂表面層を積層する場合、低分子型の電荷輸送物質の場合と比較して架橋型樹脂表面層へ電荷輸送層81を構成する成分の滲み出しが少ないため、架橋型樹脂表面層の硬化不良を少なくできる。また、高分子電荷輸送物質は、高分子量化によって耐熱性があるため、架橋型樹脂表面層を成膜する際、硬化熱による劣化を少なくすることができる。
電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、例えばポリスチレン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂等である。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、例えばフッソ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等である。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、熱可塑性、又は熱硬化性樹脂である。
電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物には、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、又はポリカーボネートが電荷移動特性が良好のため、望ましい。また、電荷輸送層81の上に架橋型樹脂表面層が積層されるので電荷輸送層81に機械強度が必要とされないため、電荷輸送層81のバインダー成分は、ポリスチレン等の透明性が高く、機械強度が比較的ない材料であってもよい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、単独、又は2種以上の混合物のモノマー2種以上からなる共重合体であってもよい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、電荷輸送物質と共重合化してもよい。
電荷輸送層81の改質するため電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合、電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、フルオレン等の嵩高い骨格をもつカルドポリマー型のポリエステル、又はポリエチレンテレフタレート等が望ましい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、又はC型ポリカーボネート等のビスフェノール型のポリカーボネートに対してフェノール成分3,3'部位がアルキル置換されたポリカーボネート等が望ましい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、ビスフェノールAのジェミナルメチル基が炭素数2以上の長鎖のアルキル基で置換されたポリカーボネート等が望ましい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、ビフェニル、又はビフェニルエーテル骨格をもつポリカーボネート等が望ましい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、ポリカプロラクトン、又はポリカプロラクトン等の長鎖アルキル骨格をもつポリカーボネート(例えば特開平7−292095号公報等に記載)等が望ましい。電荷輸送層81のバインダー成分に用いる高分子化合物は、アクリル樹脂、ポリスチレン、又は水素ブタジエン等が望ましい。
電気的に不活性な高分子化合物は、トリアリールアミン構造等の光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物である。これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、添加量は、電荷輸送層81の全固形分に対して50wtパーセントとすることが望ましい。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、使用量は、40〜200phr、好ましくは70〜100phr程度が望ましい。また、高分子型の電荷輸送物質を用いる場合、材料は、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは80〜150重量部程度の割合で共重合された材料が望ましい。
また、電荷輸送層81に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、電荷輸送物質間のイオン化ポテンシャル差は、低い方が望ましい。具体的には、イオン化ポテンシャル差は、0.10eV以下が望ましく、イオン化ポテンシャル差を低くすることによって、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップになるのを少なくすることができる。
イオン化ポテンシャル差は、電荷輸送物質に含有される電荷輸送物質と、硬化性電荷輸送物質と、の間についても同様に0.10eV以下が望ましい。
なお、イオン化ポテンシャルの値は、理研計器社製大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1によって計測された値で示している。
電荷輸送成分の配合量は、高感度化を実現するため、70phrが望ましい。また、電荷輸送物質は、α−フェニルスチルベン化合物、ベンジジン化合物、又はブタジエン化合物の単量体、二量体、及びこれらの構造を主鎖、又は側鎖に有する高分子電荷輸送物質等の電荷移動度の高い材料が望ましい。
電荷輸送層塗料を調製する際に使用する分散溶媒は、例えばメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン等である。分散溶媒は、例えばエチルセロソルブ等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン類、酢酸エチル酢酸ブチル等のエステル類等である。分散溶媒は、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン、及びキシレン等と比較して環境負荷の低いメチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、又はシクロヘキサノンが望ましい。分散溶媒は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。
電荷輸送層81は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物、又は共重合体を溶剤に溶解、又は分散し、これを塗布、及び乾燥することで形成される。塗工方法は、例えば浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、又はスクリーン印刷法等である。
電荷輸送層81の膜厚は、必要とされる感度、及び帯電能を確保するため、10〜40μm程度がよく、15〜30μmがより好ましい。
電荷輸送層81は、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、及び紫外線吸収剤等の低分子化合物、及びレベリング剤が添加されてもよい。低分子化合物、及びレベリング剤は、単独、又は2種以上の混合物であってもよい。低分子化合物、及びレベリング剤の併用によって感度劣化が起こるのを少なくするため、低分子化合物の使用量は、0.1〜20phr、好ましくは0.1〜10phr、かつ、レベリング剤の使用量は、0.001〜0.1phrが望ましい。
<粗面化>
導電性支持体80を粗面化することによって、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaを所定の値とすることができる。具体的には、粗面化は、導電性支持体80の切削条件の設定によって実現される。
回転ドラム状の電子写真感光体用の導電性支持体は、電子写真複写機、デジタルコピー機、レーザプリンタ等の電子写真装置に広く使用される。
感光体は、導電性支持体80の上に、感光層を設けて構成される。導電性支持体80は、低コスト、軽量、及び加工容易性等の利点から、アルミニウム系の材料が用いられるのが望ましい。アルミニウム系の材料による回転ドラム状の導電性支持体は、管状素材の表面を切削加工して仕上げられることが多い。
円筒体の表面の切削加工は、導電性支持体80を回転させ、バイト、刃物を導電性支持体80の軸方向に移動させる方法等で実現する。具体的には、加工方法は、コロナ社刊精密工学講座11切削工学において普通旋盤として紹介されている方法等である。加工方法は、特許公報第3215829、特許公報第2795357、特開平7−77814、及び特開平8−276301等で記載されている方法等である。
円筒体の表面の切削加工は、導電性支持体80を固定し、バイト、刃物が導電性支持体80の周辺を回転する方法等で実現する。具体的には、加工方法は、特開平6−328301、及び特開平6−32830等で記載されている方法等である。
旋盤は、加工が行われる物体を回転させる主軸台と、主軸台に相対して被加工物の他端を支える心押台と、バイトを取り付けて送りを行う往復台と、を有する工作機によって実現される。旋盤を行う際、被加工物を加工するためのバイト各部の角度、切削速度、及び送り等の切削条件を設定することによって、粗面化は、実現される。
<評価結果>
以下、アルミニウム合金JIS規格A6063材をポートホール押出し法により外径φ24.2mm、内径φ23.5のパイプ状に押出し、長さ254mmにカットした材料を例に説明する。試料1乃至試料10は、材料をそれぞれ異なる切削条件で加工した試料である。本発明の一実施形態に係る試料1乃至試料10を例として説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る切削条件の一例を示す表である。
切削条件表T1は、試料1乃至試料10を加工した切削条件を示す表である。切削条件表T1では、切削条件は、主軸回転数と、削り速度と、である。試料9、及び試料10については、切削条件の削り速度が荒削り工程と、仕上げ工程と、の場合で異なる。
試料1は、主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.3mm/revで加工した試料である。
試料2は、主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.2mm/revで加工した試料である。
試料3は、主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.3mm/revで加工した試料である。
試料4は、主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.2mm/revで加工した試料である。
試料5は、主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.5mm/revで加工した試料である。
試料6は、主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.4mm/revで加工した試料である。
試料7は、主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.1mm/revで加工した試料である。
試料8は、主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.1mm/revで加工した試料である。
試料9は、荒削り工程を主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.3mm/rev、及び仕上げ工程を主軸回転数3000rpm、かつ、削り速度0.3mm/revで加工した試料である。
試料10は、荒削り工程を主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.3mm/rev、及び仕上げ工程を主軸回転数5000rpm、かつ、削り速度0.2mm/revで加工した試料である。
評価は、各試料を測定し、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaで行う。
図11は、本発明の一実施形態に係る導電性支持体のウェーブレット変換結果の一例を示す図である。図11は、試料1についてのウェーブレット変換結果の一例である。
図11で示すように、ウェーブレット変換による解析によって各周波数帯の算術平均粗さRaを算出し、モアレに対して影響の強い、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaで評価する。
図12は、本発明の一実施形態に係る導電性支持体の評価結果の一例を示す表である。
評価結果表T2は、図10の切削条件表T1で示した各導電性支持体の評価結果である。
評価結果表T2は、各導電性支持体である感光体表面を表面粗さ・輪郭形状測定機73(東京精密社製Surfcom1400D)で測定した測定結果に基づく評価値である。感光体表面は、表面粗さ・輪郭形状測定機73に取り付けられたピックアップ(E−DT−S02A)によって測定される。測定は、測定長さ12mm、測定速度0.06mm/s、及び各感光体につき4か所の測定箇所の条件で測定する。4か所の測定結果の平均値を測定結果として示す。評価結果表T2は、測定結果をウェーブレット変換して算出した値である。
試料1の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、図11より、0.1231μmである。試料2の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.1026μmである。試料3の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0932μmである。試料4の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0816μmである。試料5の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.1473μmである。試料6の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.1320μmである。試料7の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0599μmである。試料8の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0543μmである。試料9の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0500μmである。試料10の第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaは、0.0180μmである。
図13は、本発明の一実施形態に係る導電性支持体を用いた感光体の評価結果の一例を示す表である。
図13は、図12で示した試料1乃至試料10を用いた感光体である実施例1乃至実施例8、及び比較例1乃至比較例12の評価結果である。
総合評価結果表T3で示す各実施例、及び比較例に用いる導電性支持体、及び工法等を以下に示す。
実施例1の感光体は、アルミニウム製導電性支持体(外径φ24mm)が、X線回折スペクトル測定としてCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°を有する。さらに、実施例1の感光体は、7.4〜9.4°の範囲にピークを有さず、かつ、26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン顔料を分散させて電荷発生層塗工液に浸漬塗工して形成される。実施例1の感光体は、膜厚0.2μmの電荷発生層を有する。実施例1の感光体は、例えば上述のX線回折をもつチタニルフタロシアニン顔料15g、ポリビニルブチラール(エスレックBX−1、積水化学社製)8g、及びメチルエチルケトン500gを用いて形成する。実施例1の感光体は、ビーズミリング分散により顔料の平均粒径が0.2μmになるように調製して形成する。
実施例1の感光体は、電荷発生層の上に電荷輸送層用塗工液を浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層が形成される。電荷輸送層用塗工液は、ビスフェーノルZ型ポリカーボネート等である。ビスフェーノルZ型ポリカーボネートは、10部下記(化学式1)構造の低分子電荷輸送物質、10部テトラヒドロフラン、80部1パーセントシリコーンオイルのテトラヒドロフラン液、及び0.2部KF50−100CS(信越化学工業製)等から生成する。
実施例2の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料2に対して適用した感光体である。
実施例3の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料3に対して適用した感光体である。
実施例4の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料4に対して適用した感光体である。
実施例5の感光体は、試料1に対して導電性支持体の乾燥後の膜厚が1.25μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した感光体である。下引き層用の塗工液は、アルキッド樹脂6部ベッコゾール1307−60−EL(大日本インキ化学工業製)、メラニン樹脂4部スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業製)、酸化チタン40部CR−EL(石原産業製)、及びメチルエチルケトン50部等から生成される。実施例5の感光体は、実施例1の感光体と同様のX線回折ピークをもつフタロシアニン顔料を含む電荷発生層塗工液の浸漬塗工で形成される。実施例5の感光体は、膜厚0.2μmの電荷発生層を有する。電荷発生層の上で上記(化学式1)構造の低分子電荷輸送物質によって浸漬塗工、及び加熱乾燥することで、膜厚22μmの実施例5の感光体が形成される。
実施例6の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料2に対して適用した感光体である。
実施例7の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料3に対して適用した感光体である。
実施例8の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料4に対して適用した感光体である。
比較例1の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料5に対して適用した感光体である。
比較例2の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料6に対して適用した感光体である。
比較例3の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料7に対して適用した感光体である。
比較例4の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料8に対して適用した感光体である。
比較例5の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料9に対して適用した感光体である。
比較例6の感光体は、実施例1で説明した工法、及び材料を試料10に対して適用した感光体である。
比較例7の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料5に対して適用した感光体である。
比較例8の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料6に対して適用した感光体である。
比較例9の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料7に対して適用した感光体である。
比較例10の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料8に対して適用した感光体である。
比較例11の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料9に対して適用した感光体である。
比較例12の感光体は、実施例5で説明した工法、及び材料を試料10に対して適用した感光体である。
総合評価結果表T3の「モアレの評価結果」は、各実施例、及び各比較例の感光体を図14に示す画像形成装置101を用いて評価した結果の一例である。
図14は、本発明の一実施形態に係る導電性支持体を用いた感光体のモアレ評価に用いた画像形成装置の一例を示す図である。
図示するように画像形成装置101は、各実施例、及び各比較例の感光体である感光体ユニット40が備えられる。画像形成装置101は、図1の画像形成装置100と同様に、感光体ユニット40の周辺に画像形成プロセスに用いる帯電ユニット18等が備えられている。画像形成装置101は、一成分現像方式で書込光源が波長780nmの画像形成装置である。画像形成装置101は、例えばIPSIO(登録商標) SP C220(リコー社製)である。「モアレの評価結果」は、画像形成装置101で記録媒体上にハーフ濃度パターンを印字し、ドラム周期で発生する干渉模様を評価した結果である。「モアレの評価結果」は、「○」で「ドラム周期で干渉する模様なし」、「△」で「干渉する模様が一部発生」、及び「×」で「ドラム周期で干渉する模様あり」を示す。
「黒ポチの評価結果」は、「モアレの評価結果」と同様に感光体ユニット40を備えた画像形成装置101で、A4サイズPPC用紙を縦方向送りで3000枚について通紙試験した結果である。「黒ポチの評価結果」は、白色画像を画像形成した際、記録媒体上のいわゆる黒ポチである黒色の点となって画像形成される欠陥画像の数をデジタルマイクロスコープVHX−200(キーエンス社製)で数えた評価結果である。「黒ポチの評価結果」は、1cm2の範囲について直径30μm以上の黒ポチを数えた評価結果である。黒ポチは、例えば感光体ドラム40に対する帯電がリーク電流等の影響で均一に行われなかった場合等に発生する。
総合評価結果表T3の「黒ポチの評価結果」は、「○」で「黒ポチが5個以下」、「△」で「黒ポチが6〜10個以下」、及び「×」で「黒ポチが11個以上」を示す。
総合評価結果表T3で示すように、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaが、0.08μ以上0.13μm以下である試料1乃至試料4を用いた実施例1乃至実施例8の場合は、モアレを少なくし、画質向上を図ることができる。また、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaが0.13μm以下であるため、ブレード摩耗を少なくし、クリーニング不良を少なくすることによって、画質向上を図ることができる。総合評価結果表T3で示すように、第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaを粗面化によって指定することでモアレを少なくし、画質向上を図ることができる。
総合評価結果表T3で示すように、下引き層を有する感光体である実施例5乃至実施例8の場合は、黒ポチを減らすことができ、画質向上を図ることができる。
画像形成に用いられる導電性支持体について、図8の計算結果等から周期の長さが26μm〜106μmの周波数帯域での第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaがモアレの発生と相関が強いとわかる。したがって、周期の長さ26μm〜106μmでの導電性支持体の表面の凹凸を指定することでモアレの発生を少なくすることができる。図13の評価結果から、導電性支持体の周期の長さ26μm〜106μmの周波数帯域での第7周波数成分LHHの算術平均粗さWRaを0.08マイクロメートル以上0.13マイクロメートル以下とすると、モアレを少なく、かつ、クリーニング不良が少なくなるため、画質向上を図ることができる。
下引き層がある場合、図13の評価結果から、「黒ポチ」を減らし、画質向上を図ることができる。
上述の記載において「部」は、重量部を示す表現である。
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。