JP4011790B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の製造方法に関し、詳しくは特定の化合物を含有する感光層を有する電子写真感光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体に用いられる光導電材料としては、セレン、硫化カドミウム及び酸化亜鉛等の無機材料が知られていた。他方、有機材料であるポリビニルカルバゾール、フタロシアニン及びアゾ顔料等は高生産性や無公害性等の利点が注目され、無機材料と比較して光導電特性や耐久性等の点で劣る傾向にあるものの、広く用いられるようになってきた。
【0003】
これらの電子写真感光体は、電気的及び機械的特性の双方を満足するために、電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体として利用される場合が多い。一方当然のことながら、電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に繰り返し使用される感光体の表面には、帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニングといった様々な電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。
【0004】
具体的には、摺擦による表面の摩耗や傷の発生に対する耐久性、帯電による表面劣化、例えば転写効率や滑り性の低下、更には感度低下、電位低下等の電気特性の劣化に対する耐久性も要求される。
【0005】
一般に有機光導電材料を用いた電子写真感光体の表面層は、薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等が実用化されている。しかしながら、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に、更なる高耐久化を図る上では樹脂の硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層用の樹脂として用いた場合でも、繰り返し使用に伴って表面層が摩耗したり、傷が発生することがあった。
【0006】
また、近年の高感度化に対する要求から、電荷輸送物質等の低分子量化合物が比較的大量に添加される場合が多いが、この場合それら低分子量物質の可塑剤的な作用により膜強度が著しく低下するので、繰り返し使用時の表面層の摩耗や傷が一層顕著な問題となっている。また、電子写真感光体を保存している間に低分子量化合物が析出してしまうという問題も発生し易い。
【0007】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いることが、例えば特開平2−127652号公報等に開示されている。この件においては、電荷輸送層用の樹脂として硬化性樹脂を用い、電荷輸送層を硬化、架橋することによって、繰り返し使用時の耐削れ性及び耐傷性を大きく向上させている。
【0008】
しかしながら、硬化性樹脂を用いても、低分子量化合物はあくまでも結着樹脂中において可塑剤として作用するので、先に述べたような析出の問題は根本的には解決されていない。また、有機電荷輸送物質と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては、電荷輸送能は樹脂に大きく依存し、例えば硬度が十分に高い硬化性樹脂では、電荷輸送能が低くない易く、繰り返し使用時に残留電位が上昇し易い等、硬度と電子写真特性の両者を十二分に満足させるまでには至っていない。
【0009】
また、特開平5−216249号公報及び特開平7−72640号公報等においては、電荷輸送層に炭素−炭素二重結合を有するモノマーを含有させ、電荷輸送物質の炭素−炭素二重結合を熱あるいは光のエネルギーによって反応させて、電荷輸送層を形成した電子写真感光体が開示されている。しかしながら、電荷輸送物質はポリマーの主骨格にペンダント状に固定化されているだけであり、先の可塑的な作用を十分に排除できないため機械的強度が十分ではない。また電荷輸送能の向上のために電荷輸送物質の濃度を高くすると、架橋密度が低くなり十分な機械的強度を確保することができない。更には、重合時に必要とされる開始剤類の電子写真特性への影響も懸念される。
【0010】
また、別の解決手段として、例えば特開平8−248649号公報においては、主鎖中に電荷輸送能を有する基を導入した熱可塑性高分子を含有する電荷輸送層を有する電子写真感光体が開示されており、従来の分子分散型の電荷輸送層と比較して析出に対しては効果があり、機械的強度も向上するが、あくまでも熱可塑性樹脂であり、その機械的強度には限界があり、樹脂の溶解性等を含めたハンドリングや生産性の面でも十分であるとは言い難い。
【0011】
以上述べたように、より高いレベルで機械的強度と電荷輸送能を両立することが検討されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の電子写真感光体が有していた問題点を解決し、膜強度を高くすることによって耐摩耗性及び耐傷性を向上させ、かつ耐析出性が良好な電子写真感光体を製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、繰り返し使用時における残留電位の上昇等の感光体特性の変化や劣化が非常に少なく、繰り返し使用時も安定した性能を発揮することができる電子写真感光体を製造する方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、支持体上に感光層を形成する電子写真感光体の製造方法において、
該感光層を形成するにあたり、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の重合あるいは架橋を紫外線を用いて行うことにより該正孔輸送性化合物を硬化させる工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明における連鎖重合とは、高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、詳しくは例えば技報堂出版 三羽忠広著の「基礎合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)P.24に説明されているように、その形態が主にラジカルあるいはイオン等の中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合等のことをいう。
【0017】
連鎖重合性官能基とは、前述の反応形態が可能な官能基を意味するが、ここではその大半を占め応用範囲の広い不飽和重合あるいは開環重合性官能基の具体例を示す。
【0018】
不飽和重合とは、ラジカル及びイオン等によって不飽和基、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡N等が重合する反応であるが、主にはC=Cである。不飽和重合性官能基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【外9】
【0020】
上記中、Rは置換基を有してもよいメチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基または水素原子等を示す。
【0021】
開環重合とは、炭素環、オクソ環及び窒素ヘテロ環等のひずみを有した不安定な環状構造が、触媒の作用で活性化され開環すると同時に重合を繰り返し鎖状高分子物を生成する反応であるが、この場合基本的にはイオンが活性種として作用するものが大部分である。開環重合官能基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【外10】
【0023】
上記中、R′は置換基を有してもよいメチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基または水素原子等を示す。
【0024】
上記で説明したような本発明に係る連鎖重合性官能基の中でも、下記の一般式(5)〜(7)で示されるものが好ましい。
【0025】
【外11】
【0026】
式(5)中、Eは水素原子、フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基及びフリル基等のアリール基、CN基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、−COOR7及びCONR8R9を示す。
【0027】
Wは置換基を有してもよい2価のフェニレン、ナフチレン及びアントラセニレン等のアリーレン基、置換基を有してもよいメチレン、エチレン及びブチレン等の2価のアルキレン基、−COO−、−CH2−、−O−、−OO−、−S−またはCONR10−で示される。
【0028】
R7、R8、R9及びR10は水素原子、フッ素、塩素及び臭素等のハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びアンスリル基等のアリール基を示し、R8とR9は互いに同一であっても異なってもよい。
【0029】
また、fは0または1を示す。
【0030】
E及びWが有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0031】
【外12】
【0032】
式(6)中、R11及びR12は水素原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基及びナフチル基等のアリール基を示し、gは1〜10の整数を示す。
【0033】
【外13】
【0034】
式(7)中、R13及びR14は水素原子、置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基及びナフチル基等のアリール基を示し、hは0〜10の整数を示す。
【0035】
上記一般式の(6)及び(7)のR11、R12、R13及びR14が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基及びフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0036】
また、上記一般式(5)〜(7)の中でも、更に特に好ましい連鎖重合性官能基としては、下記一般式(8)〜(14)で示されるものが挙げられる。
【0037】
【外14】
【0038】
更に、上記式(8)〜(14)の中でも、(8)のアクリロイルオキシ基及び(9)のメタクリロイルオキシ基が、重合特性等の点から特に好ましい。
【0039】
本発明における「同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物」とは、上記で説明した連鎖重合性官能基が正孔輸送性化合物に官能基として少なくとも二つ以上化学結合している化合物である。二つ以上の連鎖重合性官能基は、全て同一でも異なったものであってもよい。
【0040】
連鎖重合性官能基を二つ以上有する正孔輸送性化合物は、下記の一般式(1)で示されることが好ましい。
【0041】
【外15】
【0042】
P1及びP2は連鎖重合性官能基を示し、P1とP2は同一でも異なってもよい。Zは置換基を有してもよい有機残基を示し、Yは水素原子を示す。a、b及びdは、0または1以上の整数を示す。但し、a=0の場合はb+dは3以上の整数、bまたはdが0の場合はaは2以上の整数、その他の場合はa+b+dは3以上の整数を示す。また、aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく、dが2以上の場合P2は同一でも異なってもよく、またbが2以上の場合、Zは同一でも異なってもよい。
【0043】
ここで、「aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく」とは、それぞれ異なるn種類の連鎖重合性官能基をP11、P12、P13、P14、P15…plnと示した場合、例えばa=3の時に正孔輸送性化合物Aに直接結合する連鎖重合性官能基P1は3つとも同じものでも、二つ同じで一つは違うもの(例えば、P11とP11とP12とか)でも、それぞれ3つとも異なるもの(例えば、P12とP15とP17とか)でもよいということを意味するものである(「dが2以上の場合P2は同一でも異なってもよく」というのも、「bが2以上の場合、Zは同一でも異なってもよい」というのもこれを同様なことを意味するものである)。
【0044】
上記一般式(1)のAは正孔輸送性基を示し、正孔輸送性を示すものであればいずれのものでもよく、P1やZを水素原子に置き換えた水素付加化合物(正孔輸送性化合物)として示せば、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体及びN−フェニルカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0045】
更に、上記正孔輸送性化合物の中でも、下記一般式(4)で示されるものが好ましい。
【0046】
【外16】
【0047】
式(4)中、R4、R5及びR6は置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のC1〜C10のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基及び置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、ベンゾキノリル基、ガルバゾリル基、フェノチアジニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等のアリール基を示す。
【0048】
但し、R4、R5及びR6のうち少なくとも二つはアリール基を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。更に、その中でもR4、R5及びR6のすべてがアリール基であるものが特に好ましい。また、上記一般式(4)のR4、R5及びR6のうちの任意の二つは、それぞれ直接もしくは結合基を介して結合してもよく、その結合基としてはメチル基、エチル基及びプロピレン基等のアルキレン基、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子及びCH=CH基等が挙げられる。
【0049】
また、上記一般式(1)中のZは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、CR1=CR2(R1及びR2はアルキル基、アリール基及び水素原子を示し、R1及びR2は同一でも異なってもよい。)、C=O、S=O、SO2、酸素原子及び硫黄原子より選ばれる一つあるいはこれらを任意に組み合わせた有機残基を示す。その中でも下記一般式(2)で示されるものが好ましく、下記一般式(3)で示されるものが特に好ましい。
【0050】
【外17】
【0051】
上記一般式(2)中、X1〜X3は置換基を有してもよいメチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のC1〜C20のアルキレン基、(CR1=CR2)m、C=O、S=O、SO2、酸素原子及び硫黄原子を示し、Ar1及びAr2は置換基を有してもよい2価のアリーレン基(フェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ベンゾチオフェン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン及びジベンゾチオフェン等より2個の水素原子をとった基)を示す。
【0052】
R1及びR2は、置換基を有してもよいメチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びチオフェニル基等のアリール基及び水素原子を示し、R1及びR2は同一でも異なってもよい。
【0053】
mは1〜5の整数、p〜tは0〜10の整数を示す(但し、p〜tは同時に0であることはない。)。
【0054】
上記一般式(3)中、X4及びX5は(CH2)m′、(CH=CR3)n′、C=O及び酸素原子を示し、Ar3は置換基を有してもよい2価のアリーレン基(フェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ベンゾチオフェン、ピリジン、キノリン、ベンゾキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン及びジベンゾチオフェン等より2個の水素原子をとった基)を示す。
【0055】
R3は置換基を有してもよいメチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基及びチオフェニル基等のアリール基及び水素原子を示す。m′は1〜10の整数、n′は1〜5の整数、u〜wは0〜10の整数を示す(u〜wは0〜5の整数であることが特に好ましい。但し、u〜wは同時に0であることはない。)。
【0056】
上記一般式(1)〜(4)のR1〜R6、Ar1〜Ar3、X1〜X5及びZがそれぞれ有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基及びチエニル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びピレニル基等のアリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基及びジ(p−トリル)アミノ基等の置換アミノ基及びスチリル基及びナフチルビニル基等のアリールビニル基等が挙げられる。
【0057】
本発明における同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、酸化電位が1.2(V)以下であることが好ましく、特には0.4〜1.2(V)であることが好ましい。
【0058】
酸化電位が1.2(V)を超えると電荷発生材料よりの電荷(正孔)の注入が起こり難くく、残留電位の上昇や感度悪化及び繰り返し使用時の電位変動が大きくなる等の問題が生じ易くなる。また、酸化電位が0.4(V)未満では、帯電能の低下等の問題の他に、化合物自体が容易に酸化されるために劣化し易く、それに起因した感度悪化、画像ボケ及び繰り返し使用時の電位変動が大きくなる等の問題が生じ易くなる。なお、酸化電位は、以下の方法によって測定される。
【0059】
(酸化電位の測定法)
飽和カロメル電極を参照電極とし、電解液に0.1N(n−Bu)4N+ClO4 −アセトニトリル溶液を用い、ポテンシャルスイーパによって作用電極(白金)に印加する電位をスイープし、得られた電流−電位曲線がピークを示した時の電位を酸化電位とした。
【0060】
詳しくは、サンプルを0.1N(n−Bu)4N+ClO4 −アセトニトリル溶液に5〜10mmol%程度の濃度になるように溶解する。そして、このサンプル溶液に作用電極によって電圧を加え、電圧を低電位(0V)から高電位(+1.5V)に直線的に変化させた時の電流変化を測定し、電流−電位曲線を得る。この電流−電位曲線において電流値がピーク(ピークが複数ある場合には最初のピーク)を示した時の電位を酸化電位とした。
【0061】
以下に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の好ましい例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
【表13】
【0075】
【表14】
【0076】
【表15】
【0077】
【表16】
【0078】
【表17】
【0079】
【表18】
【0080】
【表19】
【0081】
本発明に用いられる連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の代表的な合成例を以下に示す。
【0082】
(合成例1:化合物No.6の合成)
以下のルートに従い合成した。
【0083】
【外18】
【0084】
1(50g:0.47mol)、2(406g:1.4mol)、無水炭酸カリウム(193g)及び銅粉(445g)を1,2−ジクロロベンゼン1.2kgと共に180〜190℃で15時間加熱撹拌した。反応液を濾過後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い3を132gを得た。
【0085】
3(120g:0.28mol)をメチルセルソルブ1.5kgに加え室温で撹拌しながらナトリウムメチラート(150g)をゆっくり添加した。添加終了後そのまま室温で1時間撹拌後、更に70〜80℃で10時間加熱撹拌を行った。反応液を水にあけ希塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を除去した。残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い4を78g得た。
【0086】
4(70g:0.2mol)及びトリエチルアミン(40g:0.4mol)を、乾燥テトラヒドロフラン(THF)400mlに加え0〜5℃に冷却後、塩化アクリロイル(55g:0.6mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後ゆっくり室温に戻し、室温でそのまま4時間撹拌を行った。反応液を水にあけ中和後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を除去した。残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い5(化合物No.6)を42g得た(酸化電位:0.83V)。
【0087】
(合成例2:化合物No.71の合成)
上記合成例1で得られた4(10g:29mmol)を乾燥THF50mlに加え0〜5℃に冷却後、油性水素化ナトリウム(約60%)3.5gをゆっくり添加した。添加終了後に室温に戻し1時間撹拌後、再び0〜5℃に冷却しアリルブロマイド(17.5g:145mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後そのまま1時間撹拌後、室温に戻し更に5時間撹拌を行った。反応液を水にあけ中和後、トルエンで抽出し有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去した。残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い、目的化合物(化合物No.71)を5.6g得た(酸化電位:0.81V)。
【0088】
(合成例3:化合物No.55の合成)
上記合成例2で得られた化合物No.71 3.0gをジクロロメタン20mlに溶解後0〜5℃に冷却し、m−クロロ過安息香酸(〜70%)5.2gをゆっくり添加しそのまま1時間撹拌後、室温に戻し12時間撹拌を行った。反応液を水にあけジクロロメタンで抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い、目的化合物(化合物No.55)を2.1g得た(酸化電位:0.81V)。
【0089】
(合成例4:化合物No.31の合成)
以下のルートに従い合成した。
【0090】
【外19】
【0091】
6(40g:0.24mol)、7(77g:0.35mol)、無水炭酸カリウム(48.8g)及び銅粉(75g)を1,2−ジクロロベンゼン250gと共に180〜190℃で10時間加熱撹拌した。反応液を濾過後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い8を49g得た。
【0092】
ジメチルホルムアミド(DMF)242.3gを0〜5℃に冷却後、オキシ塩化リン84.8gを10℃を超えないようにゆっくり滴下した。滴下終了後15分そのまま撹拌後、8(24g:0.093mol)/DMF(135g)溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後そのまま30分撹拌後、室温に戻し2時間撹拌し、更に80〜85℃に加熱し6時間撹拌を行った。反応液を約15%の酢酸ナトリウム水溶液2kgにあけ12時間撹拌を行った。それを中和後、トルエンを用い抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い9を16g得た。
【0093】
乾燥THF100mlに水素化リチウムアルミニウム1.85gを加え室温で撹拌しているところへ、9(15g:0.48mol)/乾燥THF(100ml)溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で4時間撹拌後、5%塩酸水溶液400mlをゆっくり滴下した。滴下終了後トルエンで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い10を13g得た。
【0094】
10(10g:0.03mol)及びトリエチルアミン(12g:0.12mol)を、乾燥THF150mlに加え0〜5℃に冷却後、塩化アクリロイル(8.5g:0.09mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後ゆっくり室温に戻し、室温でそのまま4時間撹拌を行った。反応液を水にあけ中和後、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去した。残留物をシリカゲルカラムを用いカラム精製を行い11(化合物No.31)を5.6g得た(酸化電位:0.93V)。
【0095】
本発明においては、前記同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合、架橋させることで、その感光層中において、正孔輸送能を有する化合物は少なくとも二つ以上の架橋点をもって3次元架橋構造の中に共有結合を介して取り込まれる。前記正孔輸送性化合物は、それのみを重合、架橋させる、あるいは他の連鎖重合性官能基を有する化合物と混合させることのいずれもが可能であり、その種類/比率は全て任意である。ここでいう他の連鎖重合性官能基を有する化合物とは、連鎖重合性官能基を有する単量体、オリゴマー及びポリマーのいずれもが含まれる。
【0096】
正孔輸送性化合物の官能基とその他の連鎖重合性化合物の官能基が、同一の基あるいは互いに重合可能な基である場合には、両者は共有結合を介した共重合3次元架橋構造をとることが可能である。両者の官能基が互いに重合しない官能基である場合には、感光層は少なくとも二つ以上の3次元硬化物の混合物あるいは主成分の3次元硬化物中に他の連鎖重合性化合物単量体、あるいはその硬化物を含んだものとして構成されるが、その配合比率/製膜方法をうまくコントロールすることで、IPN(Inter Penetrating Network)、即ち、相互進入網目構造を形成することも可能である。
【0097】
また、前記正孔輸送性化合物と連鎖重合性官能基を有しない単量体、オリゴマー及びポリマーや連鎖重合性以外の重合性官能基を有する単量体、オリゴマー及びポリマー等から感光層を形成してもよい。更に、場合によっては、3次元架橋構造に化学結合的に組み込まれない。即ち、連鎖重合性官能基を有しない正孔輸送性化合物を含有することも可能である。また、その他の各種添加剤、例えばフッ素原子含有樹脂微粒子等の滑剤等を含有してもよい。
【0098】
本発明の製造方法で製造される電子写真感光体は、支持体上に感光層として電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を、この順に積層した構成あるいは逆に積層した構成、また電荷発生物質と電荷輸送物質を同一層中に分散した単層からなる構成のいずれの構成をとることも可能である。前者の積層型においては電荷輸送層が二層以上の構成、また後者の単層型においては電荷発生物質と電荷輸送物質を同一に含有する感光層上に更に電荷輸送層を構成してもよく、更には電荷発生層あるいは電荷輸送層上に保護層を形成することも可能である。
【0099】
これらいずれの場合においても、先の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物及び/あるいは前正孔輸送性化合物を重合、架橋したものを感光層が含有していればよい。但し、電子写真感光体としての特性、特に残留電位等の電気的特性及び耐久性の点より、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型感光体構成が好ましく、本発明の利点も電荷輸送能を低下させることなく表面層の高耐久化が可能になった点にある。
【0100】
電子写真感光体が有する支持体は、導電性を有するものであればよい。例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス等の金属や合金をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウム及び銅等の金属泊をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫等をプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙等が挙げられる。
【0101】
本発明においては、支持体と感光層の間にバリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、また感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
【0102】
下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ及びゼラチン等が挙げられる。下引き層は、これらの材料をそれぞれに適した溶剤に溶解した溶液を支持体上に塗布し、乾燥することによって形成される。膜厚は、0.1〜2μmであることが好ましい。
【0103】
上述のように、積層型の感光層は、電荷発生層及び電荷輸送層を有する。
【0104】
電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、また各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えば、α、β、γ、ε及びX型等の結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン及び特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコン等が挙げられる。
【0105】
電荷発生層は、前記電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アドライダー及びロールミル等の方法でよく分散し、得られた分散液を塗布し、乾燥することによって形成されるか、前記電荷発生物質の蒸着膜等、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることが好ましい。
【0106】
結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0107】
本発明における連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、前述した電荷発生層上に電荷輸送層として、もしくは電荷発生層上に電荷輸送物質と結着樹脂からなる電荷輸送層を形成した後に正孔輸送能力を有する表面保護層として用いることができる。この表面保護層は正孔輸送能力を有するので、感光層の定義の範囲内に含める。
【0108】
いずれの場合も、前記正孔輸送性化合物を含有する溶液を塗布後、重合/架橋反応させるのが好ましいが、前もって正孔輸送性化合物を含む溶液を反応させて硬化物を得た後に、再度溶剤中に分散あるいは溶解させたもの等を用いて、表面層を形成することも可能である。
【0109】
連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を電荷輸送層として用いた場合の正孔輸送性化合物の量は、硬化後の電荷輸送層の全重量に対して、正孔輸送性基(例えば一般式(1)中のA)の水素付加物が20重量%以上、好ましくは40重量%以上含有されていることが好ましい。20重量%に満たないと電荷輸送能が低下し、感度の低下及び残留電位の上昇等の問題点が生じ易くなる。電荷輸送層の膜厚は、1〜50μmであることが好ましく、特には3〜30μmであることが好ましい。
【0110】
正孔輸送性化合物を電荷発生層/電荷輸送層上の表面保護層として用いた場合、その下層に当たる電荷輸送層は適当な電荷輸送物質、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリスチリルアントラセン等の複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール及びカルバゾール等の複素環化合物、トリフェニルメタン等のトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体及びヒドラジン誘導体等の低分子化合物等を適当な結着樹脂(前述の電荷発生層用樹脂の中から選択できる)と共に溶剤に分散/溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0111】
この場合の電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量が30〜100であることが好ましく、特には50〜100であることが好ましい。電荷輸送物質の量が30に満たないと、電荷輸送能が低下し、感度の低下及び残留電位の上昇等の問題点が生じ易くなる。電荷輸送層の膜厚は、上層の表面保護層と合わせた総膜厚が1〜50μmとなることが好ましく、特には5〜30μmであることが好ましい。
【0112】
本発明においては上述のいずれの場合においても、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の硬化物を含有する感光層に、前記電荷輸送物質を含有することが可能である。
【0113】
単層型感光層の場合は、正孔輸送性化合物と電荷発生物質の両方を含有する溶液を重合/架橋することによって形成するか、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する単層型感光層上に正孔輸送性化合物を含有する溶液を塗布後、重合/架橋することによって形成する。
【0114】
本発明における感光層には、各種添加剤を添加することができる。添加剤とは酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂微粒子等の潤滑剤その他である。
【0115】
上記各層用の溶液を塗布する方法としては、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法等が挙げられるが、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。また、蒸着、プラズマ、その他の公知の製膜方法が適宜選択できる。
【0116】
本発明においては、紫外線を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行う。
【0117】
紫外線を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行う場合は、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。
【0118】
この場合の重合開始剤とは、主には波長400nm以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成し、重合を開始させるものを指すが、それらの具体例はアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン及びチオキサンソン系等のラジカル重合開始剤、またジアゾニウム化合物、スルフォニウム化合物、ヨードニウム化合物及び金属錯体化合物等のイオン重合開始剤等である。開始剤の添加量は連鎖重合性官能基を有する化合物100重量部に対して0.01〜50重量部程度である。
【0119】
なお、本発明においては、上述した光重合開始剤を併用することも可能である。
【0120】
図1に本発明の製造方法で製造される電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図1において、1はドラム状の本発明の製造方法で製造される電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いでスリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されて行く。
【0121】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0122】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0123】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも一つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0124】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいはセンサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0125】
本発明の製造方法で製造される電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0126】
【実施例】
以下、実施例に従って説明する。実施例中、「部」は重量部を表す。
【0127】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料をφ30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0128】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥して、0.6μmの中間層を形成した。
【0129】
次に下記構造式(A)のビスアゾ顔料5部、ポリビニルブチラール樹脂2部及びシクロヘキサノン60部を、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で24時間分散し、更にテトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用塗料とした。この塗料を前記の中間層の上に浸漬コーティング法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0130】
【外20】
【0131】
次いで、化合物例No.6の正孔輸送性化合物60部及び下記構造式(B)の光重合開始剤0.6部
【0132】
【外21】
をモノクロロベンゼン30部/ジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記電荷発生層上にコーティングし、メタルハライドランプを用いて500mW/cm2の光強度で30秒間硬化させることによって、膜厚15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0133】
作製した電子写真感光体について、経時析出性、電子写真特性及び耐久性を評価した。経時析出性については、複写機用のウレタンゴム製のクリーニングブレードを感光体表面に圧接し、75℃で保存し析出性に対する加速試験を行った。評価は14日後に感光体表面を顕微鏡により観察し析出の有無を判定した。析出のない場合は、更に30日後まで試験を継続した。
【0134】
電子写真特性及び耐久性は、この感光体をキヤノン(株)製LBP−SXに装着して評価した。初期の感光体特性〔暗部電位Vd、光減衰感度(暗部電位−700V設定で−150Vに光減衰させるために必要な光量)及び残留電位Vsl(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射した時の電位)〕を測定し、更に10000枚の通紙耐久試験を行い、目視による画像欠陥の発生の有無の観察、感光体の削れ量及び耐久後の前記感光体特性を測定し、各々の変化値ΔVd、ΔVl(初期のVlと、初期にVlを−150Vにするのに必要な光量と同量の光量を耐久後に照射した時のVlとの差)及びΔVslを求めた。
【0135】
結果を第1表に示すが、本発明の製造方法で製造される電子写真感光体では析出は発生せず、また感光体特性が良好であり、耐久での削れ量が少なく、かつ耐久においても感光体特性にはほとんど変化が見られないというように、非常に安定した良好な特性を示している。
【0136】
(実施例2〜11)
正孔輸送性化合物No.6を下表に示した化合物に変えた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0137】
(実施例12〜14)
正孔輸送性化合物No.6を下表に示した化合物に変え、構造式(B)の光重合開始剤を下記構造式(C)の光重合開始剤とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0138】
【外22】
【0139】
【表20】
【0140】
(実施例15)
正孔輸送性化合物No.6を正孔輸送性化合物No.117に変え、構造式(B)の光重合開始剤の量を0.3部とし、更に構造式(C)の光重合開始剤を0.3部用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0141】
(参考例16)
実施例1において構造式(B)の光重合開始剤を下記構造式(D)の熱重合開始剤とし、紫外線硬化の代りに140℃で1時間の熱硬化とした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0142】
【外23】
【0143】
(参考例17)
正孔輸送性化合物No.6を正孔輸送性化合物No.71とした以外は、参考例16と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0144】
(参考例18)
正孔輸送性化合物No.6を正孔輸送性化合物No.112とした以外は、参考例16と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0145】
(実施例19)
正孔輸送性化合物No.6の量を48部とし、更に下記構造式(E)のアクリルモノマーを12部添加した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0146】
【外24】
【0147】
(実施例20)
正孔輸送性化合物No.55の量を48部とし、更に下記構造式(F)のエポキシモノマーを12部添加した以外は、実施例12と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0148】
【外25】
【0149】
(実施例21)
正孔輸送性化合物No.6の量を48部とし、更に下記構造式(G)のアクリルオリゴマー(数平均分子量約2000)を12部添加した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0150】
【外26】
【0151】
(参考例22)
正孔輸送性化合物No.6の量を48部とし、構造式(E)のアクリルモノマーを12部添加した以外は、参考例16と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0152】
(実施例23)
実施例1と同様にして電荷発生層を形成した後、下記構造式(H)のスチリル化合物20部、
【0153】
【外27】
及び下記構造式(I)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(数平均分子量20000)10部
【0154】
【外28】
をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。この時の電荷輸送層の膜厚は10μmであった。
【0155】
次いで、正孔輸送性化合物No.6を60部及び構造式(B)の光重合開始剤0.6部を、モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層用塗料を調製した。
【0156】
この塗料をスプレーコーティング法により先の電荷輸送層上に塗布し、メタルハライドランプを用いて500mW/cm2の光強度で30秒間硬化させることによって、膜厚5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。この感光体を実施例1と同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0157】
(実施例24)
正孔輸送性化合物No.6の代りに正孔輸送性化合物No.55を、構造式(B)の光重合開始剤の代りに構造式(C)の光重合開始剤を用いた以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0158】
(実施例25)
正孔輸送性化合物No.6の量を30部とし、更に構造式(E)のアクリルモノマー30部を添加した以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0159】
(実施例26)
正孔輸送性化合物No.55の量を30部とし、構造式(F)のエポキシモノマー30部を添加した以外は、実施例24と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0160】
(実施例27)
構造式(E)のアクリルモノマーの代りに構造式(G)のアクリルオリゴマーを用いた以外は、実施例25と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を第1表に示す。
【0161】
【表21】
【0162】
(比較例1)
実施例1と同様にして電荷発生層まで形成した。
【0163】
次いで、構造式(H)のスチリル化合物15部及び下記構造式(J)の繰り返し単位を有するポリメチルメタクリレート樹脂(数平均分子量40000)15部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。この時の電荷輸送層の膜厚は15μmであった。
【0164】
【外29】
【0165】
この電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した結果、14日後に析出が見られた。一方、初期の電子写真特性は良好であったが、耐久での表面層の削れ量が多く、かぶり、傷等の画像欠陥が発生している。更に8000枚以降は削れによって電荷輸送層の膜厚が薄くなり、帯電不良が発生し、画像形成が不可能となった。結果を第2表に示す。
【0166】
(比較例2)
構造式(J)で示されるポリメチルメタクリレート樹脂のかわりに構造式(I)で示されるポリカーボネート樹脂(数平均分子量20000)を用いた以外は、比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。その結果、30日後に析出が観察された。また、ポリメチルメタクリレート樹脂の場合に比べて、耐久性は若干向上したものの十分ではなく、やはり耐久後の画像欠陥は発生した。結果を第2表に示す。
【0167】
(比較例3)
構造式(H)のスチリル化合物を10部、構造式(I)のポリカーボネート樹脂を15部とした以外は、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。その結果、比較例2に比べて耐久性は向上したものの、電荷輸送物質間の距離が広がったことによって電荷輸送能が低下し、感度低下及び残留電位の上昇が見られた。その結果、画像においてはゴーストの発生が見られた。結果を第2表に示す。
【0168】
(比較例4)
実施例23と同様にして電荷輸送層まで形成した。
【0169】
次いで、構造式(H)で示されるスチリル化合物10部及び構造式(I)で示されるポリカーボネート樹脂15部をモノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層用塗料を調製した。この塗料をスプレーコーティング法により先の電荷輸送層上に塗布し、120℃で1時間乾燥し、5μmの表面保護層を形成した。
【0170】
この感光体を実施例23と同様にして評価した結果、電荷輸送能の高い電荷輸送層が下層にあるために感度低下、残留電位上昇は見られず画像ゴーストの発生もなかったが、耐久後の画像にはまだ傷/かぶりが発生しており、十分な耐久性は確保できなかった。結果を第2表に示す。
【0171】
(比較例5)
正孔輸送性化合物No.6の代りに、特開平5−216249号公報に開示されている下記構造式(K)の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。その結果、初期の電子写真特性は良好であったが、実施例1に比較して耐久性が大幅に低下した。結果を第2表に示す。
【0172】
【外30】
【0173】
(比較例6)
正孔輸送性化合物No.6のかわりに、構造式(K)の化合物を用いた以外は、実施例19と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。その結果、初期の電子写真特性は良好であったが、実施例19と比較して耐久性が大幅に低下した。結果を第2表に示す。
【0174】
(比較例7)
実施例1と同様にして電荷発生層までを形成した。
【0175】
次いで、特開平8−248649号公報のP10〜11に記載されている製造法に従って合成した下記構造式(L)のポリカーボネート樹脂(数平均分子量20000)20部をテトラヒドロフラン80部に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。
【0176】
この電荷輸送層の膜厚は15μmであった。この電子写真感光体を実施例1と同様に評価した結果、比較例1及び2に比較して機械的強度は向上したものの、十分な耐久性が確保できなかった。結果を第2表に示す。
【0177】
【外31】
【0178】
【表22】
【0179】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製造方法で製造される電子写真感光体は耐析出性、耐摩耗性及び耐傷性に優れた効果を有する。更に、感度や残留電位等の電子写真特性も非常に良好であり、また繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる。
【0180】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法で製造される電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (12)
- 支持体上に感光層を形成する電子写真感光体の製造方法において、
該感光層を形成するにあたり、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の重合あるいは架橋を紫外線を用いて行うことにより該正孔輸送性化合物を硬化させる工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記正孔輸送性化合物が、下記一般式(1)で示される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【外1】
(式(1)中、Aは正孔輸送性基を示す。P1及びP2は連鎖重合性官能基を示す。P1とP2は同一でも異なってもよい。Zは置換基を有してもよい有機残基を示し、Yは水素原子を示す。a、b及びdは、0または1以上の整数を示す。但し、a=0の場合はb+dは3以上の整数、bまたはdが0の場合はaは2以上の整数、その他の場合はa+b+dは3以上の整数を示す。また、aが2以上の場合P1は同一でも異なってもよく、dが2以上の場合P2は同一でも異なってもよく、またbが2以上の場合、Zは同一でも異なってもよい。) - 前記Zが、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、CR1=CR2(R1及びR2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基及び水素原子より選ばれる一つの基を示し、R1及びR2は同一でも異なってもよい。)、C=O、S=O、SO2、酸素原子及び硫黄原子より選ばれる一つの基あるいはこれらを任意に組み合わせた有機残基を示す請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記R4、R5及びR6の全てが、置換基を有してもよいアリール基である請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記P1及びP2の少なくとも一方が、下記一般式(5)で示される不飽和重合性官能基である請求項2〜7のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【外5】
(式(5)中、Eは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基及び置換基を有してもよいアリール基より選ばれる一つの基)及びCONR8R9(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基及び置換基を有してもよいアリール基より選ばれる一つの基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)より選ばれる一つの基を示し、Wは置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルキレン基、−COO−、−C−、−O−、−OO−、−S−及び−CONR10−(R10は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基及び置換基を有してもよいアリール基より選ばれる一つの基)より選ばれる一つの基を示す。fは0または1を示す。) - 前記P1及びP2の少なくとも一方が、前記式(8)及び(9)のいずれかで示される基である請求項11に記載の電子写真感光体の製造方法。
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