JP3878064B2 - 電子写真感光体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式によるプリンター、複写機、ファクシミリ等の画像出力装置に使用される電子写真感光体、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、小径にあって高い耐摩耗性を有し、表面に傷がつきにくく、クラックも発生せず、帯電性が良好で、光照射時の残留電位が小さく、繰り返し使用によっても帯電電位及び残留電位の変動が少なく、また画像ボケ等の異常画像を発生しにくく、高画質安定性と耐摩耗性を両立させた寿命の長い電子写真用感光体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。さらに、それらは高速化技術との融合によりフルカラー印刷が可能なレーザープリンターあるいはデジタル複写機へと応用されてきている。そのような背景から、要求される感光体の機能としては、高画質化と高耐久化を両立させることが特に重要な課題となっている。
【0003】
これらの電子写真方式のレーザープリンターやデジタル複写機等に使用される感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から一般に広く応用されている。有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダ−に代表される顔料分散型、そして電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られている。
【0004】
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され電荷を生成する。それによって発生した電荷が電荷発生層及び電荷輸送層の界面で電荷輸送層に注入され、さらに電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。
【0005】
しかし、有機系の感光体は、繰り返し使用によって膜削れが発生しやすく、感光層の膜削れが進むと、感光体の帯電電位の低下や光感度の劣化、感光体表面のキズなどによる地汚れ、画像濃度低下などの画質劣化が促進される傾向が強く、従来から感光体の耐摩耗性が大きな課題として挙げられていた。さらに、近年では電子写真装置の高速化あるいは装置の小型化に伴う感光体の小径化によって、感光体の高耐久化がより一層重要な課題となっている。また、感光体表面に異物が付着することで膜の結晶化やクラックが生じることがある。特に感光体に直接人が触れた場合、感光体表面に皮脂が付着し、それが引き金となってクラックを生じる場合がある。クラックは画像欠陥となり感光体寿命を縮める要因となっていた。
【0006】
感光体の高耐久化を実現する方法としては、感光体の最表面に保護層を設け、その保護層に潤滑性を付与したり、フィラーを含有させたり、硬化させたりする方法が知られている。
例えば特開平07−295248号公報、特開平07−301936号公報、特開平08−082940号公報等には、表面層にフッ素変性シリコンオイルを含有させることにより表面性を改善し、感光体表面の耐摩耗性を向上させる提案がある。しかし、このようなオイル成分を感光層に添加して摩擦係数を下げる方法は、表面に移行した成分が直ぐに除去されてしまう為に耐摩耗性の効果を持続することができていない。
【0007】
一方、無機フィラーや架橋樹脂粒子を感光体表面層に添加し、耐摩耗性を向上させる試みがある。これらの場合、耐摩耗性は向上するものの、帯電電位や残留電位への影響が大きく、特に繰り返し使用時の電位変動が大きいという欠点を有する。
【0008】
また、熱硬化性樹脂を用いる検討も種々行われている。特に、電荷輸送性を有する骨格を3次元架橋膜中に共架橋させた樹脂を使用するものが電子写真特性と耐摩耗性を両立させ得るとして注目されている。
例えば、電荷輸送剤に加水分解性基を有するケイ素を直接導入した有機ケイ素変性正孔輸送性化合物を電子写真感光体に用いるもの(特開平9−190004号公報)、シラノール基と縮合反応しうる水酸基やアミノ基やチオール基を有する電荷輸送性化合物をシロキサン3次元架橋膜中に導入した膜を用いるもの(特開2000−171990号公報)、連鎖重合性基を分子内に2個以上有する電荷輸送材料とアクリル化合物との3次元架橋膜を用いる(特開2000−206715公報)等が知られている。
【0009】
しかしながら、特開平9−190004号公報に記載のものの場合、使用される有機ケイ素変性正孔輸送性化合物の合成が困難で精製もしにくいことから膜強度の低下を引き起こしたり、電子写真特性の低下を引き起こしたりする問題がある。また、特開2000−171990号公報に記載のものの場合、反応性基を有する電荷輸送性化合物の使用に相溶性の点で制限があったり、共重合した架橋膜の強度が十分でないという問題がある。さらに特開2000−206715号公報に記載のものの場合、残留連鎖重合性基が耐ガス性に悪影響したり、機械的強度が十分でないという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の電子写真感光体の有する問題点を解決し、特に高い耐摩耗性を有し、表面に傷がつきにくく、クラックも発生せず、帯電性が良好で、光照射時の残留電位が小さく、繰り返し使用によっても帯電電位及び残留電位の変動が少なく、また画像ボケ等の異常画像を発生しにくく、高画質安定性と耐摩耗性を両立させた寿命の長い電子写真用感光体及びその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記(1)〜(9)の電子写真感光体、及び(10)〜(11)の電子写真感光体の製造方法が提供される。
(1)エポキシ基含有アミン化合物と、アミノ基含有シラノール化合物と、アミノ基を有さないシラノール化合物との反応物からなる架橋構造を含有する層を有することを特徴とする電子写真感光体。
(2)前記両方のシラノール化合物がアルコキシシラン化合物の加水分解により生成されたものであることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記エポキシ基含有アミン化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
【化4】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar1は少なくとも1個の3級アミノ基を有するアリール基、少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環基を表す。Ar2、Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。但し、Ar2とAr3は同一でも異なっていてもよい。nは0〜100の整数を表す。)
(4)前記エポキシ基含有アミン化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【化5】
(式中、R4〜R25は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは0〜100の整数を表す。)
(5)前記アミノ基を有さないシラノール化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【化6】
(R)n−Si−(Y)4−n (3)
(式中、Rはケイ素原子に炭素原子が直接結合した形の有機基を表し、nは0〜3の整数を表し、nが3の場合Yは水酸基を表し、nが0〜2の場合Yは水酸基又は加水分解性基を表し、少なくとも1個は水酸基である。)
(6)前記アミノ基を有さないシラノール化合物が2種以上の混合物からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(7)前記アミノ基を有さないシラノール化合物が少なくとも1個の芳香族基を有する化合物であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(8)導電性支持体上に感光層を設けてなる電子写真感光体において、表面層に前記(1)〜(7)のいずれかに記載の架橋構造を含有することを特徴とする電子写真感光体。
(9)導電性支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次積層した電子写真感光体において、保護層が主として前記(1)〜(7)のいずれかに記載の架橋構造を含有する層からなることを特徴とする電子写真感光体。
(10)エポキシ基含有アミン化合物、アミノ基含有アルコキシシラン化合物、アミノ基を有さないアルコキシシラン化合物を原料とする塗工液を作製し、塗布、乾燥硬化させることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
(11)前記乾燥硬化を80℃以上で行なうことを特徴とする前記(10)に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で言うシラノールの縮合反応により形成される架橋体とは、シロキサン結合が3次元的にしかも高架橋度で縮合した骨格で形成されるシリコーンレジンであり、オルガノシルセスキオキサンやシリケートやジオルガノシロキサンやトリオルガノシルヘミオキサンを構成基本単位とし、これらの構成単位を組み合わせて得られるシリコーンレジンである。また、エポキシ基とアミンの反応により形成される架橋体とは、エポキシ基と1級又は2級アミンとの付加反応により結合したエポキシ硬化レジンである。そして、本発明で言う架橋構造とは、シラノールの縮合反応とエポキシ基とアミンとの付加反応の両方を行うことができる構造体によって前記シリコーンレジン成分と前記エポキシ硬化レジン成分とが連結され、さらに、シラノール基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とシラノール基との縮合反応により、混然一体となって連結されたレジンを示す。この架橋構造は、機械的特性に優れ、感光体中に含有させることで、耐久性に優れる感光体が得られる。
【0013】
また、電子写真感光体に十分な光導電性を付与するためには、前記高次架橋体の構造の一部に従来感光体で使用されてきた電荷輸送性基を導入したものが好ましい。この際、エポキシ硬化レジン部へ電荷輸送性基を導入するのが、透明で均一な架橋構造を形成するのに好ましい。
このような架橋構造を形成する、より具体的な系としてエポキシ基含有アミン化合物とアミノ基含有シラノール化合物とアミノ基を有さないシラノール化合物との反応物を挙げることができる。
【0014】
本発明に使用されるエポキシ基含有アミン化合物としては、通常電子写真感光体の電荷輸送物質として使用されるオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、フェニルヒドラゾン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体等の電荷輸送性化合物の骨格を有し、その置換基としてエポキシ基を1個以上有する化合物が挙げられる。このようなエポキシ基含有アミン化合物は架橋構造中で電荷輸送性を担う為、通常20%重量以上含有されるのが好ましいが、多量に膜中に添加されるため架橋度に対する影響が大きい。従って、架橋度の高い強靱な膜を作製するためには、エポキシ基を一分子中に2個以上有するものが好ましい。
【0015】
それらの中で、優れた電荷輸送特性を有する化合物として下記一般式(1)、さらに(2)で表されるエポキシ基含有アミン化合物が好適に使用される。
尚、これら一般式(1)及び(2)で表されるエポキシ基含有アミン化合物は新規化合物であり、対応するジヒドロキシ化合物とグリシジル化剤とを反応させることにより製造することができる。
【0016】
【化7】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar1は少なくとも1個の3級アミノ基を有するアリール基、少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環基を表す。Ar2、Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。但し、Ar2とAr3は同一でも異なっていてもよい。nは0〜100の整数を表す。)
【0017】
【化8】
(式中、R4〜R25は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは0〜100の整数を表す。)
【0018】
前記一般式(1)及び(2)で表されるエポキシ基含有アミン化合物において、R1、R4〜R25の置換もしくは無置換のアルキル基とは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、ハロゲン原子やフェニル基で置換されていてもよく、該フェニル基は、さらにハロゲン原子や炭素数1〜5のアルキル基などで置換されていてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0019】
また、R1の置換もしくは無置換のアリール基の該アリール基として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基等が挙げられ、これらのアリール基にはハロゲン原子や前述のアルキル基フェニル基等が置換していてもよい。また、下記一般式(4)で表される基も挙げることができる。
【化9】
〔式中、Xは−O−、−S−、−SO−、−S02−、−CO−及び以下の2価基を表す。
【化10】
【化11】
(ここで、R26、R27は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、aは1〜12の整数、bは1〜3の整数を表す。)〕
尚、前記一般式(4)中のR26、R27の置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のアリール基は前記R1、R4〜R25と、その定義及び具体例は、同様である。
【0020】
また前記一般式(1)で表されるエポキシ基含有アミン化合物において、Ar1の少なくとも1個の3級アミノ基を有するアリール基の該アリール基としては、前記R1の説明において挙げたものと同様のものを挙げることができる。
さらに該3級アミノ基としては、前記R16〜R25で表される置換基を有するフェニルが2個結合した窒素原子を有する基が挙げられる。
【0021】
また前記一般式(1)で表されるエポキシ基含有アミン化合物にいおいて、Ar2、Ar3の置換もしくは無置換のアリーレン基としては、前記Ar1の説明(即ちR1の説明)において挙げたアリール基から誘導される2価の基が挙げられる。
さらに該アリーレン基の置換基としては、前記R4〜R11の説明において挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0022】
またAr1が少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環基としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等が挙げられ、これらの複素環基は前述のR1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基で置換されていても良い。
さらに該3級アミノ基としては、前記Ar1の説明において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0023】
さらにまた前記各基におけるハロゲン原子の具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0024】
本発明で使用されるエポキシ基を有さないシラノール化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることできる。
【化12】
(R)n−Si−(Y)4−n (3)
(式中、Rはケイ素原子に炭素原子が直接結合した形の有機基を表し、nは0〜3の整数を表し、nが3の場合Yは水酸基を表し、nが0〜2の場合はYは少なくとも1つが水酸基で残りが水酸基又は加水分解性基を表す。)
上記アミノ基を有さないシラノール化合物は下記一般式(5)で表されるアミノ基を有さないアルコキシシラン化合物を加水分解することにより得られる。加水分解は、部分的な加水分解でも良く、架橋反応と同時進行的に行われても良い。これら、アルコキシシラン化合物からシラノール化を経てシリコーンレジンを得る方法については従来知られているゾル−ゲル法を適用できる。
【0025】
本発明で使用されるアミノ基を有さないアルコキシシラン化合物とは、下記一般式(5)で示される化合物を示す。
【化13】
(R)n−Si−(X)4−n (5)
(式中、Rはケイ素原子に炭素原子が直接結合した形の有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表し、少なくとも1個はアルコキシ基であり、nは0〜3の整数を表す。)
【0026】
前記一般式(3)及び(5)において、Rで表されるケイ素原子に炭素原子が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ基、シアノ置換アルキル基を挙げることができる。またXの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。特に炭素数6以下のアルコキシ基が好ましい。
一般式(3)及び(5)で表される化合物は、1種単独でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0027】
又一般式(3)及び(5)で表される有機ケイ素化合物の具体的化合物で、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていても良い。同様に、nが2以下の場合、複数のX及びYは同一でも異なっていても良い。又、一般式(3)及び/又は(5)で表される有機ケイ素化合物を2種以上を用いるとき、R及びX、Yはそれぞれの化合物間で同一でも良く、異なっていても良い。
【0028】
エポキシ基含有アミンとの相溶性を上げて均一な透明膜を得るためには、Rに少なくとも1個の芳香族基を有するアミノ基を有さないアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物を用いることが好ましく、芳香族基を有しないアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物との混合で使用することがさらに好ましい。フェニルトリアルコキシシラン誘導体やメチルトリアルコキシシラン誘導体の組み合わせ等が好ましく使用される。
【0029】
また、一般式(3)及び(5)において、加水分解性基及び/又は水酸基の数が2以上(n=2以下)の場合にシラン化合物が縮合してオルガノポリシロキサン樹脂が得られるが、該数が3(n=1)の場合に3次元に架橋可能な架橋性オルガノポリシロキサン樹脂が得られるため、n=1の3官能シランモノマーを原料として含むことが必須である。そして3官能シランモノマーに他の2官能シランモノマー(n=2)成分や4官能シランモノマー(n=0)成分を適宜加えることにより、樹脂の性質(安定性、塗膜強度等)を調整することができる。
【0030】
本発明で使用されるアミノ基含有アルコキシシラン化合物、及びアミノ基含有シラノール化合物とは、上記一般式(3)及び(5)中のRの内少なくとも1つがさらに第1級アミノ基、第2級アミノ基を置換基として有する化合物およびそれらの類似構造体を示す。
例えば、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、尿素プロピルトリメトキシシラン等およびこれらの類似構造体が挙げられる。
【0031】
本発明におけるエポキシ基含有アミン化合物とアミノ基含有シラノール化合物またはアミノ基含有アルコキシ化合物とアミノ基を有しないシラノール化合物またはアミノ基を有さないアルコキシ化合物との反応物とは、主としてシラノール基またはアルコキシ基が加水分解して生成したシラノール基同士の縮合反応、及びエポキシ基含有アミン化合物のエポキシ基と前記シラノール基との付加反応、及びエポキシ基含有アミン化合物のエポキシ基とアミノ基含有シラノール化合物またはアミノ基含有アルコキシシラン化合物のアミノ基との付加反応により一体となって結合したレジンを言う。また、厳密には、さらに加えてエポキシ基がシラノール基と開環付加反応した後に生成したヒドロキシ基と前記シラノール基の縮合反応、アミノ基とシラノール基による縮合反応を含んで3〜5種の反応様式で複雑に結合された架橋レジンを表す。
【0032】
これら3成分の配合割合は、それぞれの構造や狙いの電子写真特性によって調整されるが、通常は下記の範囲が好ましい。
エポキシ基含有アミン化合物は10重量%から80重量%が適当であり、さらに好ましくは、20重量%から60重量%である。少なすぎる場合は電荷輸送能が低下し、高感度な電子写真感光体が得られなくなったり、残留電荷が大きくなって繰り返し画像安定性が悪くなる。多すぎる場合は、シリコーンレジン部の割合が減少し、レジンの機械的特性が悪くなる。
アミノ基含有シラノール化合物及び/又はアミノ基含有アルコキシシラン化合物は、エポキシ基含有アミン化合物の反応当量以上入れることは好ましくない。例えばアミノ基が1級アミン1個の場合、2官能として働くのでエポキシ基を2個含有するアミン化合物と等モル量以下にするのが好ましい。
アミノ基が未反応で残留した場合は、残留電位が大きくなる問題を生じる。
アミノ基含有シラノール化合物及び/又はアミノ基含有アルコキシ化合物とアミノ基を有さないシラノール化合物及び/又はアミノ基を有さないアルコキシ化合物の合計は20重量%から90重量%、好ましくは40重量%から80重量%が適当である。
【0033】
本発明の電子写真感光体は、前記架橋構造、又はエポキシ基含有アミン化合物とアミノ基含有シラノール化合物とアミノ基を有しないシラノール化合物との反応物を含有するものであるが、好ましい構成としては、これらが感光体表面に含有されるものであり、さらに好ましくは、感光体表面が主としてこれらのレジンで形成されたものであり、さらに好ましくは、保護層としてこれらのレジンが感光体表面に形成されたものである。
代表的な電子写真感光体の層構成としては、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を順に積層した積層型感光体において電荷輸送層上にさらに保護層を設けた構成が上げられる。この場合、導電性支持体と電荷発生層の間には、下引き層が形成される場合が多く、本発明においても、適用される。
【0034】
本発明は、電荷輸送能を有し、且つ極めて機械的強度の高いレジン及びレジン層を提供するものであり、上記積層感光体ばかりでなく、単層型感光体や逆層型積層感光体やそれらの保護層としても使用することができる。
【0035】
以下、本発明の前記高次架橋体、又は前記3成分の反応物を保護層として使用する場合を例に挙げて、さらに詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体用塗布液は、前記一般式(3)及び/又は(5)で表される化合物等のケイ素含有モノマーを加水分解するのに必要な水を添加し、酸性条件下〜塩基性条件下で加水分解して用いてもよい。
【0036】
前記保護層塗布液に用いられる溶媒は、ケトン系、エステル系、エーテル系あるいは芳香族系溶媒から選ばれる1種以上の溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒が好ましい。
ケトン系溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等が、エステル系溶媒としては酢酸エチル、酢酸t−ブチル等が、エーテル系溶媒としてはメチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等が、芳香族系溶媒としてはトルエン、キシレン等が挙げられる。また、アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。
これらの内、エポキシ基含有アミン化合物、アルコキシシラン化合物及びシラノール化合物を溶解させるものが使用される。
【0037】
前記保護層塗布液中の固形分濃度は前記シラノール化合物、アルコキシシラン化合物、エポキシ基含有アミン化合物の構造や塗布方法等により最適なものが選ばれるが、通常10〜50質量%が好ましい。
【0038】
また、前記保護層塗布液には架橋反応を促進する触媒として有機カルボン酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸及びチオシアン酸の各アルカリ金属塩、有機アミン塩(水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムアセテート)、スズ有機酸塩(スタンナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマリエート等)、アルミニウム、亜鉛のオクテン酸、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯化合物等を使用しても良い。触媒の量としては前記シラノール化合物、アルコキシシラン化合物100重量部に対し0.1〜10重量部を用いることが好ましい。
【0039】
さらに前記保護層塗布液は、さらにコロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の金属酸化物のコロイドを加えて作製しても良い。コロイダルシリカは水性またはアルコール性のゾルで、粒径が100nm以下のものが好ましく、50nm以下のものが特に好ましい。
コロイダルシリカ等の添加量はとくに制限は無いが乾燥後の前記硬化性樹脂層中に1〜30質量%含有させることが好ましい。
【0040】
また、前記保護層塗布液には、この他、電子写真用の素材として公知の様々な素材、例えばヒンダードアミン、ヒンダードフェノールなどの酸化防止剤、シリコンオイルなどの平滑剤、アミン化合物などの正孔輸送剤、キノン類などの電子輸送剤を添加してもよい。
【0041】
塗膜の乾燥温度としては使用する溶媒種、触媒有無によって異なるが、およそ60〜160℃の範囲で10分〜5時間の加熱が好ましく、より好ましくは90〜130℃の範囲で30分〜2時間の加熱が好ましい。
該保護層の膜厚は、通常0.1〜15μm、好ましくは0.2〜7μm、より好ましくは0.5〜5μmである。
【0042】
先に述べたように、代表的な感光体構成としてはアルミニウムのような導電性支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次形成したものである。
以下保護層以外について説明する。
但し、導電性支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層については従来公知の感光体構成物を適用できるものであり、下記説明によって限定されるものではない。
【0043】
本発明の電子写真感光体の感光層に用いられる電荷発生物質としては公知のどのようなものでも使用できる。
例えば、A型、B型及びY型のチタニルフタロシアニン、X型及びτ型の無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、またこれら2種のフタロシアニンの混晶、アゾ化合物、ピリリウム化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、スクアリウム化合物、多環キノン化合物等が挙げられる。これら電荷発生物質は単独で又は適当なバインダー樹脂中に分散して層形成が行われる。
【0044】
また本発明の電子写真感光体の感光層に用いられる電荷輸送物質としては公知のどのようなものでも使用できる。
例えば正孔輸送物質の代表的なものとして、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イミダゾール等に代表される含窒素複素環核、及びその縮合環核を有する化合物、ポリアリールアルカン型の化合物、ヒドラゾン系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアリールアミン系化合物、スチリル系化合物、ポリス(ビス)スチリル系化合物、スチリルトリフェニルアミン系化合物、β−フェニルスチリルトリフェニルアミン系化合物、ブタジエン系化合物、ヘキサトリエン化合物、カルバゾール系化合物、縮合多環系化合物等が挙げられ、電子輸送物質の代表的なものとしては、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、チオピラノン、フルオレノン、インデノン、インダンジオン系化合物等が挙げられる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0045】
電荷発生物質、電荷輸送物質の分散、溶解の使用される溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンクロライド、1,2−ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のアルコール類及びこの誘導体;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;ピリジンやジエチルアミン等のアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;その他脂肪酸及びフェノール類;二硫化炭素や燐酸トリエチル等の硫黄、燐化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
本発明の電子写真感光体感光層の中で前記ケイ素含有反応物層以外の感光層には、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂ならびにこれらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が使用できる。また、これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が使用できる。
【0047】
本発明の電子写真感光体の感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対し50〜600重量部が好ましい。またバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対し10〜100重量部が好ましい。
【0048】
本発明の電子写真感光体の感光層の膜厚は、電荷発生層は0.1〜10μm、電荷輸送層は5〜30μmが好ましい。また感光層が単層構成の場合は5〜40μmが好ましい。
【0049】
本発明の電子写真感光体の感光層を支持する導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケルなどの金属板・金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックフィルム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックフィルム・ドラムを使用することができる。
【0050】
本発明の電子写真感光体の下引き層に用いられる材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂ならびに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。またシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂化合物が挙げられる。
下引き層の膜厚は、0.01〜15μmが好ましい。
【0051】
また本発明の電子写真感光体には、その他、感色性補正の染料や感光層に酸化防止剤等の添加剤を添加しても良い。
【0052】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、各層形成用の塗布液をディップ塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等が用いることできる。特に感光層の保護層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、また均一塗布加工を達成するためにスプレー塗布、円形量規制型塗布(円形スライドホッパーがその代表例である)を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については特開平3−90250号公報、特開平3−269238号公報にその記載があり、前記円形量規制型塗布については特開昭58−189061号公報に詳細が記載されている。
【0053】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0054】
合成例
<エポキシ基含有アミン化合物の合成>
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗およびエピクロルヒドリンと水との共沸混合物を凝縮分離して下層のエピクロルヒドリン層を戻すための装置をつけた反応容器に、4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル−ビス(4−メチルフェニル)アミン19.34g(40.0mmol)とエピクロルヒドリン37.01g(400.0mmol)を入れ、窒素気流下、110℃で加熱攪拌した。これに反応系内の温度が100℃〜120℃を維持するように、20wt%水酸化ナトリウム水溶液19.20g(96.0mmol)を3時間かけて滴下した。反応中に留去された水とエピクロルヒドリンはエピクロルヒドリンのみ反応容器に戻し、水酸化ナトリウム水溶液の滴下終了後、110℃でさらに1時間反応させた。これを室温まで放冷し、過剰のエピクロルヒドリンを減圧回収した後、トルエンを加えて有機層を水洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下でトルエン溶媒を留去して、黄色の粗生成物20.75g(収率87.1%)、融点111.0〜116.0℃を得た。これをシリカゲルでカラムクロマト精製(溶離液:トルエン/酢酸エチル=20/1vol.)した後、酢酸エチルとエタノールから再結晶を行って淡黄色針状結晶15.85g(収率66.5%)を得た。融点は128.0〜129.0℃であった。
赤外線吸収スペクトル(NaCl液膜法)を図1に示す。
元素分析結果を以下に示す。
【0055】
実施例1
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、26μmの電荷輸送層を形成した。
<下引き層塗工液>
二酸化チタン粉末: 400部
メラミン樹脂: 40部
アルキッド樹脂: 60部
2−ブタノン: 500部
<電荷発生層塗工液>
下記構造式で表されるビスアゾ顔料: 12部
【化14】
ポリビニルブチラール: 5部
2−ブタノン: 200部
シクロヘキサノン: 400部
<電荷輸送層塗工液>
ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製): 10部
下記構造式で表される電荷輸送物質: 10部
【化15】
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業製)テトラヒドロフラン溶液 1部
次いで電荷輸送層上にさらに、下記組成の保護層塗工液をスプレー塗工法によって約3μmの保護層を形成し、その後、130℃で2時間加熱乾燥し、実施例1の電子写真感光体を作製した。
<保護層塗工液>
合成例により得られた下記構造式
で表されるエポキシ基含有アミノ化合物: 35部
【化16】
3−アミノプロピルトリエトキシシラン: 13部
メチルトリメトキシシラン: 45部
フェニルトリエトキシシラン: 32部
1%酢酸水溶液: 37.6部
テトラヒドロフラン: 248.4部
n−ブタノール: 27.6部
【0056】
実施例2
実施例1において保護層塗工を以下のように行うこと以外は例実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
予め下記組成の処方液を作製し、60℃で2時間撹拌し、アルコキシシランをシラノール化した。
<保護層塗工液の予備処方液>
3−アミノプロピルトリエトキシシラン: 13部
メチルトリメトキシシラン: 45部
フェニルトリエトキシシラン: 32部
1%酢酸水溶液: 37.6部
テトラヒドロフラン: 248.4部
n−ブタノール: 27.6部
その後、実施例1で使用したエポキシ基含有アミノ化合物35部を添加し、塗工液を作製した。この塗工液を用いて実施例1と同様にして保護層を作製した。
【0057】
比較例1
実施例1においてエポキシ基含有アミノ化合物の代わりに下記構造式で表されるヒドロキシ基含有アミン化合物を使用する以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化17】
【0058】
比較例2
保護層塗工液として下記のものを用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<保護層塗工液>
下記構造式で表されるヒドロキシ基含有アミノ化合物: 7部
【化18】
メチルトリメトキシシラン: 18部
1%酢酸水溶液: 10部
n−ブタノール: 55.1部
【0059】
比較例3
実施例1において保護層を設けない以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0060】
得られた電子写真感光体をリコー製imagioMF2200(655nmLD光源使用改造機)にセットし、1万枚の通紙ランニングを行った後の摩耗量(膜厚変化)測定と感光体表面の顕微鏡観察と、機内電位の暗部電位(VD)、明部電位(VL)の電位変動測定を行った。また、テストチャートの出力画像から目視による画質評価を行った。表面観察では、微細な線状傷のみの場合○、一部粒状のへこみを生じる場合△、粒状のへこみが全面に出たり、膜の脱落が見られる場合×とした。画質では、目立った画質低下のない場合○、一部、地汚れ、白抜け、解像度低下等の異常画像を生じる場合△、全面に渡って濃度低下や異常画像の発生する場合×とした。その結果を下記に示す。また、感光体の表面に指紋を付着させ、48時間放置後のクラック発生の有無を調べた。クラックの発生しない場合○、一部発生する場合△、全面に発生する場合×とした。結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
以上のように本発明の電子写真感光体は耐摩耗性が極めて高く、繰り返し使用時の電位変動が小さく、耐クラック性も良く、高画質安定性と耐摩耗性を両立させた寿命の長い電子写真用感光体を提供しうることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
従来、ポリオルガノシロキサン架橋膜に電荷輸送能を付与するため、縮合反応のみで架橋させており、反応時に膜の収縮が大きくなり、膜中の内部応力が増加し、内部欠陥が発生したり、膜の微少な剥がれが生じたりして、機械的に十分な強度が得られなかった。また、多官能な電荷輸送性化合物の合成が容易ではなく、これらを反応させた膜の架橋密度が低下し、十分硬い膜の作製が困難であった。
本発明では、電子写真感光体の表面層や保護層を、主としてシラノールの縮合反応により形成される架橋体とエポキシ基とアミンの反応により形成される架橋体が両方の反応をし得る構造体により一体となって連結された架橋構造、例えばエポキシ基含有アミン化合物とアミノ基含有シラノール化合物とアミノ基を有さないシラノール化合物との反応物で構成することにより、エポキシ基とアミノ基との開環を伴う付加反応によって電荷輸送性基を導入するので膜の収縮が小さくなり歪みの少ない膜が得られると共に、エポキシ基の開環によって生じたヒドロキシ基も架橋反応に寄与でき、少ない官能基数で多官能体と同じ働きができるため、架橋密度も高く、硬くて傷のつきにくい膜の作製が可能になる。
このように本発明では、シロキサン結合とエポキシ基−アミノ基反応結合の2種類の架橋反応を使用して機械的特性に優れる高度な3次元マトリックス架橋体を形成することにより、耐摩耗性と電子写真特性の両立した高寿命な電子写真感光体を提供しうるものである。
また、本発明では、エポキシ基含有アミン化合物として、ホール移動度の高い一般式(1)及び(2)で表される化合物を用いた場合、電荷輸送性化合物を架橋膜中に導入可能となるため、電荷移動に優れ、優れた電子写真特性を示し、しかも高耐久な電子写真感光体の提供が可能になる。
また、該電荷輸送層化合物の電荷輸送性基が前述のように多重に架橋されているため、遊離体が発生しにくく、クラック等にも強い電子写真感光体となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例で得られたエポキシ基含有アミン化合物の赤外線吸収スペクトル図(NaCl液膜法)。
Claims (11)
- エポキシ基含有アミン化合物と、アミノ基含有シラノール化合物と、アミノ基を有さないシラノール化合物との反応物からなる架橋構造を含有する層を有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記両方のシラノール化合物がアルコキシシラン化合物の加水分解により生成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記アミノ基を有さないシラノール化合物が2種以上の混合物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記アミノ基を有さないシラノール化合物が少なくとも1個の芳香族基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層を設けてなる電子写真感光体において、表面層に 請求項1〜7のいずれかに記載の架橋構造を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次積層した電子写真感光体において、保護層が主として請求項1〜7のいずれかに記載の架橋構造を含有する層からなることを特徴とする電子写真感光体。
- エポキシ基含有アミン化合物、アミノ基含有アルコキシシラン化合物、アミノ基を有さないアルコキシシラン化合物を原料とする塗工液を作製し、塗布、乾燥硬化させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記乾燥硬化を80℃以上で行なうことを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の製造方法。
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