JPWO2009093703A1 - L−アミノ酸の製造法 - Google Patents

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Abstract

L-アミノ酸生産能を有する細菌を微細藻類の培養物の破砕物、該微細藻類が産生する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物等の、該細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進する、該微細藻類の処理物を含む培地、特に、スターチの糖化物、あるいは、油脂の加水分解物を該処理物として含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、該培養物からL-アミノ酸を採取することにより、L-アミノ酸を製造する。

Description

本発明は、微生物を用いたL-アミノ酸の製造法に関する。L-アミノ酸は、調味料、食品添加物、飼料添加物、化学製品、医薬品などの様々な分野に利用される。
L-スレオニン、L-リジン等のL-アミノ酸は、これらのL-アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌等のL-アミノ酸生産菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのL-アミノ酸生産菌としては、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株、遺伝子組換えによりL-アミノ酸生合成酵素が増強された組換え体等が用いられている。L-スレオニンの製造法としては、例えば、特許文献1〜4に記載された方法を挙げることができる。一方、L-リジンの製造法としては、例えば、特許文献5〜8に記載された方法を挙げることができる。
発酵法によるL-アミノ酸の工業生産においては、炭素源として糖類、すなわち、グルコース、フラクトース、スクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物等が使用されている。L-アミノ酸の発酵製造法に炭素源として、よく用いられるのはコーンやキャッサバ等の高等植物に由来するスターチの糖化物である。これらは水分含量が低くスターチ含量が高いことから工業的にスターチを得ることが容易である。これに対して、微細藻類に含まれるスターチは、乾燥重量当たりでは、コーンやキャッサバに匹敵する含量となるが、藻類の培養液当たりの乾燥藻体重量は、1%に満たない。藻体を分離し、脱水をして、細胞を破砕してスターチを取り出し、さらに精製する工程は煩雑かつ困難である。特許文献9〜10あるいは非特許文献1には、微細藻類のスターチを用いてエタノール発酵を実施することが記載されているが、エタノール発酵の結果は示されていない。また、微細藻類のスターチを糖化してアミノ酸生産に用いた例はこれまでに示されていない。
代表的なアミノ酸生産菌であるエシェリヒア・コリは、グリセロールを唯一の炭素源として生育することが可能であること(非特許文献2)、及び、炭素鎖12以上の長鎖脂肪酸を唯一の炭素源として生育可能であること(非特許文献3)が知られている。従って、エシェリヒア・コリは油脂の加水分解物である長鎖脂肪酸とグリセロールをいずれも資化が可能であるが、リパーゼ活性を有しておらず、油脂を直接資化することはできないことが非特許文献4に記載されている。さらに、一般的に長鎖脂肪酸の溶解度は極めて低いことが知られており、非特許文献5には、溶解度は、ラウリン酸では0.1g/L以上であるが、オレイン酸は0.0003g/L以下、パルミチン酸は、0.00000003g/L以下であるという測定結果が記載されている。従って、水溶性の高いグリセロールと脂肪酸を同時に資化させることは困難であり、長鎖脂肪酸とグリセロールの混合物である油脂の加水分解物を炭素源として用いた直接発酵法によるL-アミノ酸の生産については、これまで報告がない。
一般的に食用油脂として用いられる油糧植物である大豆の種子やアブラヤシ(oil palm)の果実は20%程度の油脂を含んでいる。これに対し、非特許文献6に報告されているように、微細藻類には油脂を生産するものが知られており、面積当たりの油脂の収量は油糧植物を大きく上回る。しかしながら、スターチ同様、藻体分離、脱水、細胞破砕、さらに精製の工程は煩雑かつ困難である。従って、藻類由来の油脂を炭素源として用いた直接発酵法によるL-アミノ酸の生産についても、これまでに報告はない。
特開平5-304969号公報 国際公開第98/04715号パンフレット 特開平05-227977号公報 米国特許出願公開第2002/0110876号明細書 特開平10-165180号公報 特開平11-192088号公報 特開2000-253879号公報 特開2001-057896号公報 米国特許出願公開第2006/135308号明細書 米国特許出願公開第2007/0202582号明細書 Matsumoto, M. et al. 2003. Appl. Biochem. Biotechnol. 105-108:247-254 Lin, E. C. C. 1996. p. 307-342. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C. Clark, D. P. and Cronan Jr., J. E. 1996. p. 343-357. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C. Brenner, D. J. and Farmer III, J. J. Family I. 2005. p.587-669. In: D.J. Brenner, N.R. Krieg and J.T. Staley, Editors, Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, Volume Two: The Proteobacteria Part B: The Gammaproteobacteria, Springer, New York Vorum, H. et al. 1992. Biochimica et Biophysica Acta, 1126:135-142. Chisti Y. 2007. Biotechnol. Adv. 25:294-306.
本発明は、より効率のよいL-アミノ酸の製造法を提供するものであり、特には、従来、主として高等植物由来の糖類を炭素源として行われてきた微生物を用いたL-アミノ酸の発酵製造法に対し、微細藻類由来の炭素源を使用することにより、より安価なL-アミノ酸の製造法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、L-アミノ酸生産能を有する細菌を微細藻類から得たスターチを酵素により加水分解処理して得られた糖化物、あるいは、微細藻類の藻体破砕物、又は油脂を含むその抽出物もしくは該抽出物の分画物を加水分解して得られる加水分解物を完全に精製することなく炭素源とする培地にて培養することにより、効率よくL-アミノ酸を生産できることを見出した。この知見に基づき本発明は完成された。
本発明の方法は、L-アミノ酸生産能を有する細菌を、微細藻類の処理物を含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、該培養物からL-アミノ酸を採取することを特徴とするL-アミノ酸の製造法であって、該処理物が、前記細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進するものである、L−アミノ酸の製造法である。該処理物は、例えば、(1)該微細藻類の培養物の破砕物、(2)該微細藻類に由来する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、(3)該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物である。
前記処理物は、好ましくは、スターチを産生する微細藻類の藻体破砕物、又はスターチを含むその抽出物もしくは該抽出物の分画物を加水分解して得られる糖化物である。前記糖化物は、好ましくは、微細藻類の藻体破砕物又はスターチを含むその分画物から、アミラーゼを用いた酵素反応により得られた反応産物である。前記アミラーゼは好ましくはグルコアミラーゼである。
また、前記処理物は、好ましくは、油脂を産生する微細藻類の藻体破砕物、又は油脂を含むその抽出物もしくは該抽出物の分画物を加水分解して得られる加水分解物である。前記加水分解物は、好ましくは、微細藻類の藻体破砕物又は油脂を含むその分画物から、リパーゼを用いた酵素反応により得られた反応産物である。前記加水分解物は、乳化処理を施されたものであってもよい。
前記破砕物の取得法は、高温処理、有機溶媒処理、煮沸処理、強アルカリ処理からなる群から選択される1以上の方法である。高温処理としては、例えば、150℃以上の温度にて処理することが挙げられる。
前記微細藻類は、好ましくは、緑藻綱、トレボキシア藻綱、又は珪藻綱に属する藻類であり、さらに好ましくは、緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類である。
前記細菌は、好ましくは、腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌であり、さらに好ましくは、エシェリヒア属に属する細菌である。
前記L-アミノ酸は、例えば、L-リジン、L-スレオニン、L-グルタミン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上のL-アミノ酸である。
前記L-アミノ酸がL-リジンである場合には、前記細菌がジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ、アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ、及び、スクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されている、及び/または、リジンデカルボキシラーゼの活性が弱化されていることが好ましい。
前記L-アミノ酸がL-スレオニンである場合には、前記細菌がアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、thrオペロンにコードされるアスパルトキナーゼI、ホモセリンキナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及び、スレオニンシンターゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されていることが好ましい。
前記L-アミノ酸がL-グルタミン酸である場合には、前記細菌がグルタメートデヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及び、メチルクエン酸シンターゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されている、及び/または、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの活性が弱化されていることが好ましい。
前記培地は前記処理物を炭素源として含むことが好ましい。
本発明は、また、L-アミノ酸の製造方法であって、以下の工程を含む方法も提供する。
(a)微細藻類を培地で培養し、該培養物を、破砕、抽出、分画及び加水分解から選ばれる1以上の方法により処理して、L-アミノ酸生産能を有する細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進する該微細藻類の処理物を調製し、
(b)該細菌を、該微細藻類の処理物を含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、
(c)該培養物からL-アミノ酸を採取することを特徴とするL-アミノ酸の製造法。
前記処理物は、例えば、(1)該微細藻類の培養物の破砕物、(2)該微細藻類に由来する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、(3)該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物である処理物である。
前記破砕の方法は、好ましくは、高温処理、有機溶媒処理、煮沸処理、強アルカリ処理からなる群から選択される1以上の方法である。
処理物調製工程は、スターチを産生する微細藻類を破砕及び/または抽出・分画し、その処理物を加水分解することによって糖化する工程を含むことが好ましい。前記糖化する工程は、アミラーゼを用いた酵素反応を施すことを含むことが好ましい。前記アミラーゼは好ましくはグルコアミラーゼである。
処理物調製工程は、油脂を産生する微細藻類を破砕及び/または抽出・分画し、その油処理物を加水分解する工程を含むことが好ましい。前記加水分解工程は、リパーゼを用いた酵素反応を施すことを含むことが好ましい。前記加水分解物は乳化処理を施されたものであってもよい。
前記微細藻類は、好ましくは、緑色植物門、不等毛植物門に属する藻類であり、さらに好ましくは、前記微細藻類は緑藻綱、トレボキシア藻綱、又は珪藻綱に属する藻類である。特に好ましくは、前記微細藻類は、緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類である。
前記細菌は、好ましくは、腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌であり、さらに好ましくは、エシェリヒア・コリである。
本発明によれば、L-アミノ酸をより効率よく製造でき、特に微細藻類由来の安価な炭素源を用いることにより、安価にL-アミノ酸を製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明で使用する微細藻類とその培養法
本発明における微細藻類(microalgae)は、どのようなものでも用いることが出来るが、スターチ及び/または油脂を藻体内に蓄積する微細藻類であることが好ましい。
藻類(algae)とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものを全て指す。藻類には、原核生物であるシアノバクテリア(藍藻)(cyanobacteria)から、真核生物である灰色植物門 (Glaucophyta)、紅色植物門(紅藻)(Rhodophyta)、緑色植物門 (Chlorophyta)、クリプト植物門(クリプト藻)(Cryptophyta)、ハプト植物門(ハプト藻)(Haptophyta)、不等毛植物門(Heterokontophyta)、渦鞭毛植物門(渦鞭毛藻)(Dinophyta)、ユーグレナ植物門(Euglenophyta)、 クロララクニオン植物門(Chlorarachniophyta)に分類される様々な単細胞生物及び多細胞生物が含まれる。微細藻類は、これら藻類から多細胞生物である海藻類を除いた微視的な構造を持つ藻類を指す(バイオディバーシティ・シリーズ(3)藻類の多様性と系統:千原光雄 編 裳華房(1999))。
藻類をはじめとする植物は、スターチを貯蔵多糖とすることが多い(Ball, S. G. and Morell, M. K. 2003. Annual Review of Plant Biology, 54: 207-233)。スターチを蓄積する藻類は多くのものが知られており、代表的な藻類としては、緑色植物門に属するプラシノ藻綱(Prasinophyceae)、緑藻綱(Chlorophyceae)、トレボキシア藻綱(Trebouxiophyceae)、アオサ藻綱(Ulvophyceae)、車軸藻綱(Charophyceae)などがある。中でも、緑藻綱(Chlorophyceae)及びトレボキシア藻綱(Trebouxiophyceae)に属する藻類はよく研究されており、緑藻綱に属する藻類としてはクラミドモナス(Chlamydomonas)属が、トレボキシア藻綱に属する藻類としてはクロレラ(Chlorella)属が挙げられる。具体的には、クラミドモナス属としては、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)(Ball, S.G. 1998. The Molecular Biology of Chloroplasts and Mitochondria in Chlamydomonas, pp. 549-567. Rochaix J.-D., Goldschmidt-Clermont M., and Merchant S. (Eds), Kluwer Academic Publishers)が、クロレラ属としては、クロレラ・ケッサレリ(Chlorella kessleri、旧称Chlorella vulgaris)(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)を挙げることが出来る。より具体的には、クラミドモナス・レインハルディとして、Chlamydomonas reinhardtii CC125株、クロレラ・ケッサレリとしては、Chlorella kessleri 11h株が挙げられる。これらの株は、例えば、テキサス大学藻類カルチャーコレクション(The University of Texas at Austin, The Culture Collection of Algae (UTEX), 1 University Station A6700, Austin, TX 78712-0183, USA)に、それぞれ、UTEX 2244とUTEX 263の受入番号で保存されており、UTEXより入手することができる。クロレラ・ケッサレリ 11h株は、東京大学分子細胞生物学研究所IAMカルチャーコレクションにC-531の保存番号で保存された後、独立行政法人 国立環境研究所微生物系統保存施設(NIES)に移管されている。また、同株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, 1,United States of America)にATCC11468の受入番号で保存されており、ATCCから分譲を受けることもできる。
さらに微細藻類には、油脂を貯蔵物質として蓄積するものがあることが知られている(Chisti, Y. 2007. Biotechnol Adv. 25: 294-306)。このような藻類としては、緑色植物門や不等毛植物門に属するものが、よく知られている。緑色植物門の中では、緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類が挙げられ、緑藻綱に属する藻類としては、ネオクロリス・オレオアバンダンス(Neochloris oleoabundans)(Tornabene, T.G. et al. 1983. Enzyme and Microb. Technol. 5: 435-440)ナノクロリス・エスピー(Nannochloris sp.)(Takagi, M. et al. 2000. Appl. Microbiol. Biotechnol. 54: 112-117)等を挙げることが出来る。不等毛植物門には黄金色藻綱(Chrysophyceae)、ディクチオカ藻綱(Dictyochophyceae)、ペラゴ藻綱(Pelagophyceae)、ラフィド藻綱(Rhaphidophyceae)、珪藻綱(Bacillariophyceae)、褐藻綱(Phaeophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)が分類されるが、よく用いられる珪藻綱に属する藻類としては、タラシオシラ・スードナナ(Thalassiosira pseudonana)(Tonon, T et al. 2002. Phytochemistry 61: 15-24)を挙げることが出来る。ネオクロリス・オレオアバンダンスとして、具体的には、Neochloris oleoabundans UTEX 1185株、ナノクロリス・エスピーとしては、Nannochloris sp. UTEX LB 1999株、タラシオシラ・スードナナとしては、Thalassiosira pseudonana UTEX LB FD2株が挙げられる。これらの菌株は、テキサス大学藻類カルチャーコレクション(The University of Texas at Austin, The Culture Collection of Algae (UTEX), 1 University Station A6700, Austin, TX 78712-0183, USA)より入手することができる。
微細藻類の培養については多くの知見があり、Chlorella属、Arthrospira属(Spirulina)、あるいは、Dunaliella salinaなどは、食用として大規模な工業的な培養が行われている(Spolaore, P. et al. 2006. J. Biosci. Bioeng. 101: 87-96)。クラミドモナス・レインハルディには、例えば、0.3×HSM培地(Oyama, Y. et al. 2006. Planta 224: 646-654)を用いることが出来るし、クロレラ・ケッサレリには、0.2×ガンボーグ培地(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)などを用いることが出来る。ネオクロリス・オレオアバンダンスやナノクロリス・エスピーは、modified NORO培地(Yamaberi, K. et al. 1998. J. Mar. Biotechnol. 6: 44-48; Takagi, M. et al. 2000. Appl. Microbiol. Biotechnol. 54: 112-117)やBold's Basal Medium(Tornabene, T. G. et al. 1983. Enzyme and Microb. Technol. 5: 435-440; Archibald, P. A. and Bold, H. C. 1970. Phytomorphology 20: 383-389)を用いて培養することが出来る。珪藻綱に属する藻類としては、タラシオシラ・スードナナには、F/2培地(Lie, C.-P. and Lin, L.-P. 2001. Bot. Bull. Acad. Sin. 42: 207-214)などを好適に用いることが出来る。また微細藻類の培養には、フォトバイオリアクターを用いることも出来る(WO2003/094598号パンフレット)。
培養は、本培養の体積に対し、1-50%の前培養液を添加して行うことが多い。初発のpHは7-9の中性付近が好ましく、培養中はpH調整を行わないことが多いが、必要に応じてすることもある。培養温度は、25-35℃が好ましく、特に28℃付近が一般的によく用いられる温度であるが、培養温度は、用いる藻類に適した温度であれば構わない。培養液には、空気を吹き込むことが多く、通気量としては、1分間の培養液体積当たりの通気量0.1-2vvm(volume per volume per minute)がよく用いられる。さらにCO2を吹き込むことも、生育を早めるために行われるが、通気量に対して、0.5-5%程度吹き込むのが好ましい。光の照射強度も微細藻類の種類によって、至適が異なるが、1,000-10,000 lux程度がよく用いられる。光源は、屋内では白色の蛍光灯を用いることが一般的であるが、これに制限されない。屋外にて太陽光で培養することも可能である。必要に応じて、培養液を適切な強度で撹拌、あるいは循環することもある。 また、藻類は、窒素源が枯渇すると油脂を藻体内に蓄積することが知られており(Thompson GA Jr. 1996. Biochim. Biophys. Acta 1302: 17-45)、窒素源の濃度をより制限した培地を本培養に用いることもできる。
本発明において微細藻類の培養物とは、藻体を含む培養液、培養液から回収した藻体を包含する。
藻体を培養液から回収する方法は、一般的な遠心分離や濾過、あるいは、凝集剤(flocculant)を用いた重力による沈降などの方法で可能である(Grima, E. M. et al. 2003. Biotechnol. Advances 20: 491-515)。
<2>微細藻類の処理方法と微細藻類の処理物
本発明において、微細藻類の処理物とは、破砕した微細藻類の細胞に由来する有機物の混合物を含む処理物であって、L-アミノ酸生産能を有する細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進するものを指し、具体的には、(1)該微細藻類の培養物の破砕物、(2)該微細藻類に由来する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、(3)該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物が挙げられる。
「L−アミノ酸の生産蓄積を促進する」とは、処理物に含まれる、破砕した微細藻類の細胞に由来する有機物の混合物が、細菌の増殖及びL-アミノ酸の製造において、菌体成分及びL-アミノ酸を構成する炭素の供給源として実質的に寄与することを意味し、このような寄与が出来る処理物であれば、本発明の「L-アミノ酸の生産蓄積量が促進する処理物」に含まれる。
処理物がL−アミノ酸の生産蓄積を促進するか否かは、処理物の有無の他は同条件で該細菌を培養し、培養物中におけるL-アミノ酸の生産蓄積量を比較することにより確認できる。
処理物を添加していない培養物中のL−アミノ酸蓄積に比べ向上していればいずれでもよいが、好ましくは添加していない培養物に比べ10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上L-アミノ酸蓄積が向上していることが望ましい。
処理物を添加することによって、微生物の生育速度が向上すること、培地中の微生物の菌体量が増大することも本発明の「L-アミノ酸の生産蓄積を促進する」ことに含まれ、生育速度や菌体量が添加していない培養物に比べ10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上増大していることが望ましい。
また、処理物が炭素源を含む場合には、細菌の増殖及びL-アミノ酸の製造において、菌体成分及びL-アミノ酸を構成する炭素の供給源として実質的に寄与出来れば、本発明のL-アミノ酸の生産蓄積量が促進する処理物に含まれる。
従って、処理物を添加していない条件に比べ、L-アミノ酸の生産蓄積量が増大している場合も本発明の処理物に含まれるが、含まれる炭素源と同量の精製された物質からなる炭素源を加えた場合と比べてL-アミノ酸生産蓄積量が向上していることが好ましい。
また、精製された物質からなる炭素源を使用する場合に比べ、炭素源を精製する処理工程が短縮されている場合もL-アミノ酸生産蓄積が向上しているといえる。処理工程の短縮時間は、10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上短縮されていることが好ましい。
処理物としては、上記の例の他、L−アミノ酸の生産蓄積の促進を指標として、破砕、抽出、分画、加水分解、及び、これらの任意の組み合わせにより、目的の処理物を得ることができる。
培養物を破砕する方法は、藻体が十分に破砕される方法であれば、どのような方法でも構わないが、例えば、高温処理(例えば、100℃以上の温度(好ましくは150℃以上、さらに好ましくは175〜215℃)での処理)、有機溶媒処理(例えば、メタノール:クロロホルム混合溶媒による処理)、煮沸処理、強アルカリ処理、超音波処理やフレンチプレス等の方法及びこれらの任意の組合せが好適に用いられる。高温処理には、水熱反応と呼ばれるような条件での高温高圧反応も含まれる。また、藻体を乾燥させた後に、物理的な方法で破砕することも可能である。破砕した藻類由来の有機物溶液は、そのまま粗抽出物として使用することあるいは、加水分解反応に供することができるが、濾過や遠心分離などにより、細胞壁などの不溶物を除去したり、凍結乾燥などにより濃縮することもできる。さらに、ある程度の分画を行ったスターチを含む溶液を用いてもよい。藻体破砕物からのスターチの分画は、比重の違いに基づいて、例えば懸濁液からの沈降速度などで、タンパク画分を分離回収することができる。また、藻体破砕物から油脂を分画することもできる。藻体の破砕物、又は同破砕物を濃縮したものに、例えば80%メタノール又は80%アセトンを加え、これらに不溶性の油脂を、ヘキサンやクロロホルムなどの溶媒で抽出することにより、粗脂溶性画分として油脂を抽出することができる。
本発明の微細藻類に由来する有機物の混合物には、炭素源として利用できるものが含まれていることが好ましい。このような場合には、アミノ酸発酵のための培地に別途追加する炭素源を減らしたり無くしたりできる。炭素源として利用できるものとしてはスターチ及び/または油脂の加水分解物が挙げられる。
本発明の微細藻類に由来する有機物の混合物に、微細藻類が生産するスターチが含まれている場合には、この糖化物を炭素源として培地に添加することができる。スターチの糖化物は、例えば、微細藻類由来の有機物溶液又はスターチを含むその分画物から、酸加水分解などの化学的な方法やアミラーゼを用いた酵素反応により得ることができる。
スターチはグルコースがα-1,4-グルコシド結合によって直鎖状に結合したアミロースとα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合の両者の直鎖を枝に持つアミロペクチンとからなる高分子多糖類である。アミラーゼ (amylase) は、スターチなどのグルコシド結合を加水分解する酵素の総称である。作用する部位の違いによって、α-アミラーゼ (α-amylase EC3.2.1.1)、β-アミラーゼ (β-amylase EC3.2.1.2)、およびグルコアミラーゼ (glucoamylase EC3.2.1.3) に大別される。α-アミラーゼはスターチやグリコーゲンなどのα-1,4-グルコシド結合をランダムに切断するエンド型の酵素である。β-アミラーゼはスターチの非還元性末端からマルトース単位でα-1,4-グルコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素である。グルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼとも呼ばれる)はスターチの非還元性末端からグルコース単位でα-1,4-グルコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素で、アミロペクチンに含まれるα-1,6-結合も分解する。グルコアミラーゼは、スターチから直接グルコースを生成するため、グルコースの製造に広く用いられており、本発明においても好ましい酵素である。
穀物由来のスターチの糖化反応は、工業的にも実施されている多くの例がある(Robertson, G. H. et al. 2006. J. Agric. Food Chem. 54: 353-365)。このような例と同様にして、藻体から、酵素反応により糖化物を得ることが可能である。破砕した藻体を含む溶液を酵素処理する場合には、前処理として、煮沸、超音波処理、アルカリ処理などを組み合わせて用いることが好ましい(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)。
酵素反応の条件は、使用する酵素の性質に応じて適宜設定することが可能である。例えば、アミログルコシダーゼ(シグマ-アルドリッチ社A-9228)では、酵素濃度2〜20U/mL、温度40〜60℃、pH4〜6が好ましい。尚、pHの調製において、L-アミノ酸の製造に用いる細菌が資化し得る有機酸をバッファーとして用いると、スターチの糖化物と共に該有機酸を炭素源として用いることができる。例えば、酵素反応産物をそのまま培地に添加することができる。
本発明において、微細藻類により生産されるスターチの糖化物とは、上記のように、スターチを加水分解して、細菌が資化可能なマルトース又はグルコースのようなオリゴ糖又は単糖を生成させたものをいう。また、微細藻類により生産されるスターチの糖化物は、スターチの実質的にすべてが糖化されていてもよいが、一部が糖化されたものであってもよい。好ましくは、スターチの50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上がグルコースに変換されたものが好ましい。さらに、微細藻類により生産されるスターチの糖化物は、微細藻類が生産するスターチ以外の炭水化物又はその糖化物を含んでいてもよい。
本発明の微細藻類に由来する有機物の混合物に、微細藻類が生産する油脂が含まれている場合は、この加水分解物を炭素源として培地に添加することもできる。微細藻類の藻体を熱処理などにより破砕した粗抽出液をそのまま加水分解することも可能であるが、エタノール、メタノールとクロロホルムの混合物、又はアセトンなどの溶媒により抽出される有機物の混合溶液を加水分解することもできる。これら溶液は、そのまま使用することができるが、凍結乾燥、エバポレーションなどの処理により濃縮することもできる。この溶液は、アミノ酸などの有機窒素源として利用可能な成分、金属類などのアミノ酸生産能を有する細菌の生育に有効な成分を含んでおり、炭素源としてでない培地成分としても用いることが出来る。本発明においては、微細藻類の産生する油脂は、油脂の加水分解、好ましくは酵素による油脂の加水分解が可能な限りどのような形態であってもよいが、具体的には、藻体破砕物、油脂を含む菌体破砕物の抽出物、同抽出物から得られる油脂を含む分画物等が挙げられる。また、前記抽出物又は分画物は、油脂以外のアミノ酸発酵に有効な有機物を含むことが好ましい。
油脂は、脂肪酸とグリセロールのエステルであり、トリグリセリドとも呼ばれる。微細藻類が産生する油脂としては、加水分解により生じる脂肪酸種が、本発明の方法に使用する細菌が炭素源として資化できるものであることが好ましく、それらの含量が高いものであることがより好ましい。L-アミノ酸生産能を有する細菌が資化できる長鎖の脂肪酸種としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。また、一般的に生物は、油脂以外にも加水分解により脂肪酸を遊離する脂質(lipid)を含んでおり、脂質の加水分解により生じる脂肪酸を炭素源として用いることも出来る。脂質としては、単純脂質(Simple Lipid)である、蝋(wax)やセラミド(Ceramide)、あるいは、複合脂質としては、リン脂質 (Phospholipid)や糖脂質 (Glycolipid)などが挙げられる。
本発明において、油脂の加水分解物とは、上記微細藻類油脂を化学的方法又は酵素的方法等により加水分解して得られる加水分解物である。化学的な加水分解法としては、高温(250-260℃)、高圧(5-6MPa)下で油脂と水を向流接触させる連続高温加水分解法が一般的に行われている。また、強酸存在下や、酸触媒存在下で油脂の加水分解が起こることが知られている(米国特許第4,218,386号)。また、酵素を用いて低温(30℃前後)で反応を行うことも工業的に行われている(Jaeger, K. E. et al. 1994. FEMS Microbiol. Rev. 15: 29-63)。前記酵素としては、油脂の加水分解反応を触媒する酵素リパーゼを用いることが出来る。
具体的には例えば、油脂と水を同量仕込み、200℃で1時間程度、小型圧力容器中で加熱攪拌することで、70-80%程度の加水分解率を得ることが出来る。工業的には、高温(250-260℃)、高圧(5-6MPa)条件が用いられる。一方、酵素的方法は、よりマイルドな条件で加水分解を行うことが出来る。水と油脂を攪拌しつつ、リパーゼ反応に適した温度で酵素反応を行うことは、当業者であれば容易である。リパーゼは工業的に重要な酵素であり、様々な産業的利用がなされている(Hasan, F. et al. 2006. Enzyme and Microbiol. Technol. 39: 235-251)。使用する酵素は、1種でも2種以上であってもよい。
リパーゼは、油脂を脂肪酸とグリセロールに加水分解する酵素であり、トリアシルグリセロール リパーゼ(triacylglycerol lipase)、トリアシルグリセリド リパーゼ(triacylglyceride lipase)とも呼ばれる。
リパーゼは多様な生物から見いだされているが、上記の反応を触媒するリパーゼであれば、どのような種由来のリパーゼも用いることが可能である。近年、脂肪酸エステルであるバイオディーゼル燃料を、油脂とアルコールからリパーゼ酵素を用いて生産する様々な試みも行われている(Fukuda, H., Kondo, A., and Noda, H. 2001. J. Biosci. Bioeng. 92, 405-416)。
微生物由来の代表的なリパーゼとしては、Bacillus属、Burkholderia属、Pseudomonas属、Staphylococcus属由来のリパーゼが多数知られている(Jaeger, K. E., and Eggert, T. 2002. Curr. Opin. Biotechnol. 13: 390-397)。
例として、Bacillus subtilis由来 のLipA(GenBank Accession No. M74010)をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。
Burkholderia glumae由来のLipA(GenBank Accession No. X70354)をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。
Pseudomonas aeruginosa由来のLipA(GenBank Accession No. D50587)をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。
Staphylococcus aureus由来のリパーゼ(GenBank Accession No. M12715)の塩基配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。
また、酵母Candida antarctica由来リパーゼ(GenBank Accession No.Z30645)もよく利用されるリパーゼの一つである(Breivik, H., Haraldsson, G. G. and Kristinsson, B. 1997. J. Am. Oil Chem. Soc. 74: 1425-1429)。同リパーゼをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号9に、アミノ酸配列を配列番号10に示す。
さらに、酵母Candida rugosa(Candida cylindracea)には、別々の遺伝子にコードされる5つ以上のリパーゼの存在が知られている(Alberghina, L. and Lotti, M. 1997. Methods Enzymol. 284: 246-260)。主要なリパーゼとしてLIP1とLIP2が知られており、LIP1をコードするlip1(GenBank Accession No. X64703)の遺伝子の塩基配列を配列番号11に、アミノ酸配列を配列番号12に示す。LIP2をコードするlip2(GenBank Accession No. X64703)の遺伝子の塩基配列を配列番号13に、アミノ酸配列を配列番号14に示す。尚、Candida cylindracea等のCandida属酵母では、普遍コードではロイシンをコードするCTGコドンがセリンをコードしていることが知られている(Kawaguchi, Y. et al. 1989. Nature 341: 164-166; Ohama, T. et al. 1993. Nucleic Acids Res. 21: 4039-4045)。配列番号11〜14では、CTGに対応するアミノ酸を便宜上Leuと記載しているが、実際はSerである。
上記のリパーゼは、上記の微生物の菌体又は培養物から調製したものを用いることができるが、各リパーゼをコードする遺伝子を用いて、遺伝子工学技術を利用して他の宿主微生物で発現させることにより調製したものであってもよい。Candida rugosa(Candida cylindracea)等の、CTGコドンがセリンをコードしている酵母由来の遺伝子を他の宿主で発現させる場合は、CTGをセリンをコードする他の普遍コドンに変更する必要がある(Schmidt-Dannert, C. 1999. Bioorg. Med. Chem. 7: 2123-2130)。
リパーゼの配列上の特徴としては、lipase boxと呼ばれるGXSXGモチーフを活性中心のSer周辺に持つこと、リパーゼ、エステラーゼ、セリンプロテアーゼに共通してみられるcatalytic traid と呼ばれるSer、Asp、Hisの3つの残基の保存性が挙げられる。例えば、配列番号2に示したBacillus subtilis由来 のLipAのアミノ酸配列において、lipase boxは106位から110位に相当し、catalytic traid は108位のSer、164位のAsp、及び187位のHisの3つの残基が相当する。
油脂の加水分解物は、脂肪酸とグリセロールの混合物であり、一般的な油脂の加水分解物に含まれる脂肪酸に対するグリセロールの重量比は10%程度であることが知られている。加水分解物は、加水分解反応後の反応物そのものであってもよく、脂質に由来する脂肪酸やグリセロール等の細菌が資化可能な炭素源を含む限り、反応物を分画又は精製したものであってもよい。加水分解物が脂肪酸及びグリセロールを含む場合は、グリセロールの脂肪酸に対する重量比は、2〜50:100であることが好ましく、より好ましくは、5〜20:100であることが望ましい。
油脂の加水分解物は、室温付近の温度においては、グリセロールを含む下層(水相)と、脂肪酸を含む上層(油相)に分離しているのが一般的である。下層を採取すれば、主としてグリセロールを含む画分が得られる。また、上層を採取すれば、主として脂肪酸を含む画分が得られる。本発明においては、炭素源として、これらのいずれを使用してよいが、グリセロールと脂肪酸の両方を使用することが好ましい。加水分解物としてグリセロール及び脂肪酸の両方を含むものを用いる場合は、加水分解物を乳化処理することが好ましい。乳化処理としては、乳化促進剤添加、攪拌、ホモジナイズ、超音波処理等が挙げられる。乳化処理によって、細菌がグリセロール及び脂肪酸を資化しやすくなり、L-アミノ酸発酵がより有効になると考えられる。乳化処理は、L-アミノ酸生産能を有する細菌が、脂肪酸とグリセロールの混合物を資化しやすくする処理であれば、どのようなものでも構わない。例えば、乳化方法として、乳化促進剤や界面活性剤を加える等が考えられる。ここで乳化促進剤としては、リン脂質やステロールが挙げられる。また界面活性剤としては、非イオン界面活性剤では、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノオレイン酸エステル(Tween 80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、n-オクチルβ-D-グルコシドなどのアルキルグルコシド、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルベタインであるN,N-ジメチル-N-ドデシルグリシンベタインなどが挙げられる。これ以外にも、トライトンX-100(Triton X-100)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij-58)やノニルフェノールエトキシレート(Tergitol NP-40)等の一般的に生物学の分野で用いられる界面活性剤が利用可能である。
さらに、脂肪酸のような難溶解性物質の乳化や均一化を促進するための操作も有効である。この操作は、脂肪酸とグリセロールの混合物の乳化や均一化を促進する操作であれば、どのような操作でも構わない。具体的には、攪拌処理、ホモジナイザー処理、ホモミキサー処理、超音波処理、高圧処理、高温処理などが挙げられるが、攪拌処理、ホモジナイザー処理、超音波処理およびこれらの組合せがより好ましい。
上記乳化促進剤による処理と、攪拌処理、ホモジナイザー処理及び/または超音波処理を組み合わせることが特に好ましく、これらの処理は、脂肪酸がより安定なアルカリ条件下で行われることが望ましい。アルカリ条件としては、pH9以上が好ましく、pH10以上がより好ましい。
グリセロールの濃度はF-キット グリセロール(Roche Diagnostics社)のようなキットや様々なバイオセンサーによって測定が可能である。また、脂肪酸又は油脂の濃度は、ガスクロマトグラフィ(Hashimoto, K. et al. 1996. Biosci. Biotechnol. Biochem. 70: 22-30)やHPLC(Lin, J. T. et al. 1998. J. Chromatogr. A. 808: 43-49)により測定することが可能である。
<4>本発明で使用する細菌
本発明においては、L-アミノ酸生産能を有する細菌を使用する。細菌としては、微細藻類により生産される有機物、特に、スターチの糖化物あるいは油脂の加水分解物からL-アミノ酸を効率よく製造し得るものであれば特に制限されず、例えばエシェリヒア属、パントエア属、エンテロバクター属等の腸内細菌科に属する細菌、及び、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属に属するいわゆるコリネ型細菌等が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明におけるL-アミノ酸生産菌は、油脂の加水分解物の資化能力を高めるように改変されていても構わない。例えば、腸内細菌群に見出される脂肪酸代謝を調節するDNA結合能を有する転写因子FadRをコードする遺伝子の欠損などが挙げられる(DiRusso, C. C. et al. 1992. J. Biol. Chem. 267: 8685-8691; DiRusso, C. C. et al. 1993. Mol. Microbiol. 7: 311-322)。具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)のfadR遺伝子は、Genbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号1,234,161〜1,234,880に位置し、GenBank accession No. AAC74271にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。fadR遺伝子配列を配列番号15に示す。
本発明におけるL-アミノ酸生産菌は、グリセロール代謝に関与する遺伝子が改変されていてもよい。
グリセロール代謝に関与する遺伝子としては、グリセロールの資化性を高めるために、glpR遺伝子(EP1715056)の発現が弱化されているか、glpA、glpB、glpC、glpD、glpE、glpF、glpG、glpK、glpQ、glpT、glpX、tpiA、gldA、dhaK、dhaL、dhaM、dhaR、fsa及びtalC遺伝子等のグリセロール代謝遺伝子(EP1715055A)の発現が強化されていてもよい。
特にグリセロール資化性を高めるために、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子(gldA)とPEP依存型ジハイドロキシアセトンキナーゼ遺伝子(dhaKLM)遺伝子あるいはATP依存型ジハイドロキシアセトンキナーゼ遺伝子(dak)を組み合わせて強化することことが好ましい。さらには、フルクトース−6−リン酸アルドラーゼ(fsaB)の発現が強化されていてもよい(WO2008/102861)。
また、グリセロールキナーゼ(glpK)においては、フルクトース-1,6-リン酸によるフィードバック阻害が解除された脱感作型glpK遺伝子を用いることが好ましい。(WO2008/081959,WO2008/107277)
腸内細菌科は、エシェリヒア、エンテロバクター、エルビニア、クレブシエラ、パントエア、フォトルハブドゥス、プロビデンシア、サルモネラ、セラチア、シゲラ、モルガネラ、イェルシニア等の属に属する細菌を含む。特に、NCBI (National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌が好ましい。
本発明において使用することができるエシェリヒア属に属する細菌は、特に制限されないが、例えば、ナイトハルトらの著書(Neidhardt, F. C. Ed. 1996. Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology/Second Edition pp. 2477-2483. Table 1. American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に記述されている系統のものが含まれる。具体的には、プロトタイプの野生株K-12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
これらの菌株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 P.O. Box 1549 Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。以下のATCC番号が記載された菌株についても同様である。
パントエア属に属する細菌とは、当該細菌が微生物学の専門家に知られている分類により、パントエア属に分類されていることを意味する。エンテロバクター・アグロメランスのある種のものは、最近、16S rRNAの塩基配列分析等に基づき、パントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティス、パントエア・ステワルティイその他に再分類された(Int. J. Syst. Bacteriol. 1993. 43: 162-173)。本発明において、パントエア属に属する細菌には、このようにパントエア属に再分類された細菌も含まれる。
パントエア属細菌の代表的な菌株として、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)パントエア・アグロメランス、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。具体的には、下記の菌株が挙げられる。
パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP-6614)(欧州特許出願公開0952221号明細書)
パントエア・アナナティスAJ13356株(FERM BP-6615)(欧州特許出願公開0952221号明細書)
尚、これらの菌株は、欧州特許出願公開0952221号明細書にはエンテロバクター・アグロメランスとして記載されているが、現在では、上記のとおり、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティスに再分類されている。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。具体的には、欧州特許出願公開952221号明細書に例示された菌株を使用することが出来る。エンテロバクター属の代表的な株として、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。
エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ、エルビニア・カロトボーラが挙げられ、クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラが挙げられる。具体的には、下記の菌株が挙げられる。
エルビニア・アミロボーラ ATCC15580株
エルビニア・カロトボーラ ATCC15713株
クレブシエラ・プランティコーラAJ13399株(FERM BP-6600)(欧州特許出願公開955368号明細書)
クレブシエラ・プランティコーラAJ13410株(FERM BP-6617)(欧州特許出願公開955368号明細書)
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類された細菌も含み(Liebl, W. et al. 1991. Int. J. Syst. Bacteriol., 41:255-260)、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス (コリネバクテリウム・エフィシエンス)
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869(コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869)
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354
本発明において、アミノ酸生産能を有する細菌とは、培地に培養したとき、L-アミノ酸を生産し、培地中に分泌する能力を有する細菌をいう。また、好ましくは、目的とするL-アミノ酸を好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上の量を培地に蓄積させることができる細菌をいう。L-アミノ酸は、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン及びL-バリンを含む。特に、L-スレオニン、L-リジン及びL-グルタミン酸が好ましい。
以下、前記のような細菌にL-アミノ酸生産能を付与する方法、又は前記のような細菌にL-アミノ酸生産能を増強する方法について述べる。
L-アミノ酸生産能を付与するには、栄養要求性変異株、L-アミノ酸のアナログ耐性株又は代謝制御変異株の取得や、L-アミノ酸の生合成系酵素の発現が増強された組換え株の創製等、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法を適用することができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。ここで、L-アミノ酸生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独でもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、発現が増強されるL-アミノ酸生合成系酵素も、単独であっても、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の増強が組み合わされてもよい。
L-アミノ酸生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、又は代謝制御変異株を取得するには、親株又は野生株を通常の変異処理、すなわちX線や紫外線の照射、またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン等の変異剤処理などによって処理し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、かつL-アミノ酸生産能を有するものを選択することによって得ることができる。
また、L-アミノ酸生産能の付与又は増強は、遺伝子組換えによって、酵素活性を増強することによっても行うことが出来る。酵素活性の増強は、例えば、L-アミノ酸の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように細菌を改変する方法を挙げることができる。遺伝子の発現を増強するための方法としては、遺伝子を含むDNA断片を、適当なプラスミド、例えば微生物内でプラスミドの複製増殖機能を司る遺伝子を少なくとも含むプラスミドベクターに導入した増幅プラスミドを導入すること、または、これらの遺伝子を染色体上で接合、転移等により多コピー化すること、またこれらの遺伝子のプロモーター領域に変異を導入することにより達成することもできる(国際公開パンフレット第95/34672号参照)。
上記増幅プラスミドまたは染色体上に目的遺伝子を導入する場合、これらの遺伝子を発現させるためのプロモーターはコリネ型細菌において機能するものであればいかなるプロモーターであっても良く、用いる遺伝子自身のプロモーターであってもよいし、改変したものでもよい。コリネ型細菌で強力に機能するプロモーターを適宜選択することや、プロモーターの-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることによっても遺伝子の発現量の調節が可能である。以上のような、酵素遺伝子の発現を増強する方法は、国際公開第00/18935号パンフレット、欧州特許出願公開1010755号明細書等に記載されている。
以下、細菌にL-アミノ酸生産能を付与する方法、及びL-アミノ酸生産能が付与された細菌について例示する。
L-スレオニン生産菌
L-スレオニン生産能を有する微生物として好ましいものは、L-スレオニン生合成系酵素の1種又は2種以上の活性が増強された細菌が挙げられる。L-スレオニン生合成系酵素としては、アスパルトキナーゼIII(lysC)、アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)、thrオペロンにコードされるアスパルトキナーゼI(thrA)、ホモセリンキナーゼ(thrB)、スレオニンシンターゼ(thrC)、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(アスパルテートトランスアミナーゼ)(aspC)が挙げられる。カッコ内は、その遺伝子の略記号である(以下の記載においても同様)。これらの酵素の中では、アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アスパルトキナーゼI、ホモセリンキナーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、及びスレオニンシンターゼが特に好ましい。L-スレオニン生合成系遺伝子は、スレオニン分解が抑制されたエシェリヒア属細菌に導入してもよい。スレオニン分解が抑制されたエシェリヒア属細菌としては、例えば、スレオニンデヒドロゲナーゼ活性が欠損したTDH6株(特開2001-346578号)等が挙げられる。
L-スレオニン生合成系酵素は、最終産物のL-スレオニンによって酵素活性が抑制される。従って、L-スレオニン生産菌を構築するためには、L-スレオニンによるフィードバック阻害を受けないようにL-スレオニン生合成系遺伝子を改変することが望ましい。また、上記thrA、thrB、thrC遺伝子は、スレオニンオペロンを構成しているが、スレオニンオペロンは、アテニュエーター構造を形成しており、スレオニンオペロンの発現は、培養液中のイソロイシン、スレオニンに阻害を受け、アテニュエーションにより発現が抑制される。この改変は、アテニュエーション領域のリーダー配列あるいは、アテニュエーターを除去することにより達成出来る(Lynn, S. P. et al. 1987. J. Mol. Biol. 194:59-69; 国際公開第02/26993号パンフレット; 国際公開第2005/049808号パンフレット参照)。
スレオニンオペロンの上流には、固有のプロモーターが存在するが、非天然のプロモーターに置換してもよいし(国際公開第98/04715号パンフレット参照)、スレオニン生合成関与遺伝子の発現がラムダファージのリプレッサーおよびプロモーターにより支配されるようなスレオニンオペロンを構築してもよい。(欧州特許第0593792号明細書参照)また、L-スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように細菌を改変するために、α-amino-β-hydroxyvaleric acid (AHV)に耐性な菌株を選抜することも可能である。
このようにL-スレオニンによるフィ-ドバック阻害を受けないように改変されたスレオニンオペロンは、宿主内でコピー数が上昇しているか、あるいは強力なプロモーターに連結し、発現量が向上していることが好ましい。コピー数の上昇は、プラスミドによる増幅の他、トランスポゾン、Mu-ファージ等でゲノム上にスレオニンオペロンを転移させることによっても達成出来る。
L-スレオニン生合成系酵素以外にも、解糖系、TCA回路、呼吸鎖に関する遺伝子や遺伝子の発現を制御する遺伝子、糖の取り込み遺伝子を強化することも好適である。これらのL-スレオニン生産に効果がある遺伝子としては、トランスヒドロナーゼ(pntAB)遺伝子(欧州特許733712号明細書)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(pepC)(国際公開第95/06114号パンフレット)、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ遺伝子(pps)(欧州特許第877090号明細書)、コリネ型細菌あるいはバチルス属細菌のピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(国際公開第99/18228号パンフレット、欧州出願公開第1092776号明細書)が挙げられる。
また、L-スレオニンに耐性を付与する遺伝子、L-ホモセリンに耐性を付与する遺伝子の発現を強化することや、宿主にL-スレオニン耐性、L-ホモセリン耐性を付与することも好適である。耐性を付与する遺伝子としては、rhtA遺伝子(Livshits, V. A. et al. 2003. Res. Microbiol. 154:123-135)、rhtB遺伝子(欧州特許出願公開第0994190号明細書)、rhtC遺伝子(欧州特許出願公開第1013765号明細書)、yfiK、yeaS遺伝子(欧州特許出願公開第1016710号明細書)が挙げられる。また宿主にL-スレオニン耐性を付与する方法は、欧州特許出願公開第0994190号明細書や、国際公開第90/04636号パンフレット記載の方法を参照出来る。
L-スレオニン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、E. coli TDH-6/pVIC40 (VKPM B-3996) (米国特許第5,175,107号、米国特許第5,705,371号)、E. coli 472T23/pYN7 (ATCC 98081) (米国特許第5,631,157号)、E. coli NRRL-21593 (米国特許第5,939,307号)、E. coli FERM BP-3756 (米国特許第5,474,918号)、E. coli FERM BP-3519及びFERM BP-3520 (米国特許第5,376,538号)、E. coli MG442 (Gusyatiner et al., 1978. Genetika (in Russian), 14: 947-956)、E. coli VL643及びVL2055 (欧州特許出願公開第1149911号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
TDH-6株はthrC遺伝子を欠損し、スクロース資化性であり、また、そのilvA遺伝子がリーキー(leaky)変異を有する。この株はまた、rhtA遺伝子に、高濃度のスレオニンまたはホモセリンに対する耐性を付与する変異を有する。B-3996株は、RSF1010由来ベクターに、変異thrA遺伝子を含むthrA*BCオペロンを挿入したプラスミドpVIC40を保持する。この変異thrA遺伝子は、スレオニンによるフィードバック阻害が実質的に解除されたアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする。B-3996株は、1987年11月19日、オールユニオン・サイエンティフィック・センター・オブ・アンチビオティクス(Nagatinskaya Street 3-A, 117105 Moscow, Russia)に、受託番号RIA 1867で寄託されている。この株は、また、1987年4月7日、ロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) に、受託番号B-3996で寄託されている。
E. coli VKPM B-5318 (EP 0593792B)も、L-スレオニン生産菌又はそれを誘導するための親株として使用できる。B-5318株は、イソロイシン非要求性であり、プラスミドpVIC40中のスレオニンオペロンの制御領域が、温度感受性ラムダファージC1リプレッサー及びPRプロモーターにより置換されている。VKPM B-5318は、1990年5月3日、ロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM)(1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) に、受託番号VKPM B-5318で国際寄託されている。
エシェリヒア・コリのアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードするthrA遺伝子はGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号337〜2,799に位置し、GenBank accession No. AAC73113にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。エシェリヒア・コリのホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子はGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号2,801〜3,733に位置し、GenBank accession No. AAC73114にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。エシェリヒア・コリのスレオニンシンターゼをコードするthrC遺伝子はGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号3,734〜5,020に位置し、GenBank accession No. AAC73115にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。これら3つの遺伝子は、リーダーペプチドをコードするthrL遺伝子の下流に、thrLABCからなるスレオニンオペロンとしてコードされている。スレオニンオペロンの発現を増大させるには、転写に影響するアテニュエーター領域を、好ましくは、オペロンから除去することが有効である(国際公開第2005/049808号、国際公開第2003/097839号)。
スレオニンによるフィードバック阻害に耐性のアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異thrA遺伝子、ならびに、thrB遺伝子及びthrC遺伝子は、スレオニン生産株E. coli VKPM B-3996に存在する周知のプラスミドpVIC40から一つのオペロンとして取得できる。プラスミドpVIC40の詳細は、米国特許第5,705,371号に記載されている。
rhtA遺伝子は、ホモセリン及びスレオニンに耐性を与える遺伝子(rht: resistant to threonine/homoserine)として取得されたGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号848,433〜849,320(相補鎖)に位置し、GenBank accession No. AAC73900にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。また、rthAの発現を向上させるrhtA23変異が、ATG開始コドンに対して-1位のG→A置換であることが判明している(Livshits, V. A. et al. 2003. Res Microbiol. 154:123-135、欧州特許出願公開第1013765号)。
エシェリヒア・コリのasd遺伝子はGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号3,571,798〜 3,572,901(相補鎖)に位置し、GenBank accession No. AAC76458にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子である。遺伝子の塩基配列に基づいて作製されたプライマーを用いるPCRにより得ることができる(White, T. J. et al. 1989. Trends Genet. 5: 185-189.参照)。他の微生物のasd遺伝子も同様に得ることができる。
また、エシェリヒア・コリのaspC遺伝子はGenbank Accession No. U00096で登録されているエシェリヒア・コリMG1655株のゲノム配列上の塩基番号983,742〜984,932(相補鎖)に位置し、GenBank accession No. AAC74014にて登録されているタンパク質をコードする遺伝子であり、PCRにより得ることができる。他の微生物のaspC遺伝子も同様に得ることができる。
L-リジン生産菌
以下、L−リジン生産菌及びその構築方法を例として示す。
例えば、L−リジン生産能を有する株としては、L−リジンアナログ耐性株又は代謝制御変異株が挙げられる。L−リジンアナログの例としては、オキサリジン、リジンヒドロキサメート、S−(2−アミノエチル)−L−システイン(以下、「AEC」と略記することがある。)、γ−メチルリジン、α−クロロカプロラクタムなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのリジンアナログに対して耐性を有する変異株は、腸内細菌科に属する細菌やコリネ型細菌を通常の人工変異処理に付すことによって得ることができる。L−リジン生産菌として具体的には、エシェリヒア・コリAJ11442株(FERM BP-1543、NRRL B-12185;特開昭56-18596号公報及び米国特許第4346170号明細書参照)、エシェリヒア・コリ VL611株(特開2000-189180号公報)等が挙げられる。また、エシェリヒア・コリのL−リジン生産菌として、WC196株(国際公開第96/17930号パンフレット参照)を用いることも出来る。
また、L−リジン生合成系の酵素活性を上昇させることによっても、L−リジン生産菌を構築することが出来る。これらの酵素活性の上昇は、酵素をコードする遺伝子のコピー数を細胞内で上昇させること、または発現調節配列を改変することによって達成できる。
遺伝子の発現を増強するための改変は、例えば、遺伝子組換え技術を利用して、細胞中の遺伝子のコピー数を高めることによって行うことができる。例えばgapA遺伝子を含むDNA断片を、宿主細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを細菌に導入して形質転換すればよい。
遺伝子のコピー数を高めることは、上述のような遺伝子を細菌のゲノムDNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。細菌のゲノムDNA上に遺伝子を多コピーで導入するには、ゲノムDNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。ゲノムDNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。また、ゲノム上に存在するgapA遺伝子の横に、それぞれの遺伝子をタンデムに連結させてもよいし、ゲノム上の不要な遺伝子上に重複して組み込んでもよい。これらの遺伝子導入は、温度感受性ベクターを用いて、あるいはintegrationベクターを用いて達成することが出来る。
あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させてゲノムDNA上に多コピー導入することも可能である。ゲノム上に遺伝子が転移したことの確認は、遺伝子の一部をプローブとして、サザンハイブリダイゼーションを行うことによって確認出来る。
さらに、遺伝子の発現の増強は、上記した遺伝子コピー数の増幅以外に、国際公開00/18935号パンフレットに記載した方法で、ゲノムDNA上またはプラスミド上の遺伝子の各々のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することや、各遺伝子の−35、−10領域をコンセンサス配列に近づけること、遺伝子の発現を上昇させるようなレギュレーターを増幅すること、又は、遺伝子の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化させることによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、araBAプロモーター、ラムダファージのPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、T7プロモーター、φ10プロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、gapA遺伝子のプロモーター領域、SD領域に塩基置換等を導入し、より強力なものに改変することも可能である。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev. 1995. 1:105-128)等に記載されている。さらに、リボソーム結合部位(RBS)と開始コドンとの間のスペーサー、特に開始コドンのすぐ上流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することも可能である。遺伝子のプロモーター等の発現調節領域は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することも出来る。これらのプロモーター置換または改変により遺伝子の発現が強化される。発現調節配列の置換は、例えば温度感受性プラスミドを用いた方法や、Redドリブンインテグレーション法(WO2005/010175)を使用することが出来る。
L−リジン生合成系酵素をコードする遺伝子としては、ジヒドロジピコリン酸合成酵素遺伝子(dapA)、アスパルトキナーゼ遺伝子(lysC)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ遺伝子(dapB)、ジアミノピメリン酸脱炭酸酵素遺伝子(lysA)、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ddh)(以上、国際公開第96/40934号パンフレット)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc) (特開昭60-87788号公報)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子(aspC)(特公平6-102028号公報)、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ遺伝子(dapF)(特開2003-135066号公報)、アスパラギン酸セミアルデヒド脱水素酵素遺伝子(asd)(国際公開第00/61723号パンフレット)等のジアミノピメリン酸経路の酵素の遺伝子、あるいはホモアコニット酸ヒドラターゼ遺伝子(特開2000-157276号公報)等のアミノアジピン酸経路の酵素等の遺伝子が挙げられる。また、親株は、エネルギー効率に関与する遺伝子(cyo) (EP 1170376 A)、ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(pntAB) (米国特許第5,830,716号)、L−リジン排出活性を有するタンパク質をコードするybjE遺伝子(WO2005/073390)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(gdhA)( Valle F. et al. 1983. Gene 23:199-209)、または、これらの任意の組み合わせの遺伝子の発現レベルが増大していてもよい。カッコ内は、それらの遺伝子の略記号である。
エシェリヒア・コリ由来の野生型ジヒドロジピコリン酸合成酵素はL−リジンによるフィードバック阻害を受けることが知られており、エシェリヒア・コリ由来の野生型アスパルトキナーゼはL−リジンによる抑制及びフィードバック阻害を受けることが知られている。したがって、dapA遺伝子及びlysC遺伝子を用いる場合、これらの遺伝子は、L−リジンによるフィードバック阻害を受けない変異型遺伝子であることが好ましい。
L−リジンによるフィードバック阻害を受けない変異型ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードするDNAとしては、118位のヒスチジン残基がチロシン残基に置換された配列を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。また、L−リジンによるフィードバック阻害を受けない変異型アスパルトキナーゼをコードするDNAとしては、352位のスレオニン残基がイソロイシン残基に置換、323位のグリシン残基がアスパラギン残基に置換、318位のメチオニンがイソロイシンに置換された配列を有するAKIIIをコードするDNAが挙げられる(これらの変異体については米国特許第5661012号及び第6040160号明細書参照)。変異型DNAはPCRなどによる部位特異的変異法により取得することができる。
なお、変異型変異型ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする変異型dapA及び変異型アスパルトキナーゼをコードする変異型lysCを含むプラスミドとして、広宿主域プラスミドRSFD80、pCAB1、pCABD2が知られている(米国特許第6040160号明細書)。同プラスミドで形質転換されたエシェリヒア・コリ JM109株(米国特許第6040160号明細書)は、AJ12396と命名され、同株は1993年10月28日に通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P-13936として寄託され、1994年11月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-4859の受託番号のもとで寄託されている。RSFD80は、AJ12396株から、公知の方法によって取得することができる。
L−リジン生産において、このような酵素としては、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、リジンデカルボキシラーゼ(cadA, ldcC)、マリックエンザイム等があり、該酵素の活性が低下または欠損した株は国際公開第WO95/23864号、第WO96/17930号パンフレット、第WO2005/010175号パンフレットなどに記載されている。
リジンデカルボキシラーゼ活性を低下または欠損させるためには、リジンデカルボキシラーゼをコードするcadA遺伝子とldcC遺伝子の両方の発現を低下させることが好ましい。両遺伝子の発現低下は、WO2006/078039号パンフレットに記載の方法に従って行うことができる。
これらの酵素活性を低下あるいは欠損させる方法としては、通常の変異処理法又は遺伝子組換え技術によって、ゲノム上の上記酵素の遺伝子に、細胞中の当該酵素の活性が低下または欠損するような変異を導入すればよい。このような変異の導入は、例えば、遺伝子組換えによって、ゲノム上の酵素をコードする遺伝子を欠損させたり、プロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変したりすることなどによって達成される。また、ゲノム上の酵素をコードする領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、また終始コドンを導入すること(ナンセンス変異)、一〜二塩基付加・欠失するフレームシフト変異を導入すること、遺伝子の一部分、あるいは全領域を欠失させることによっても達成出来る(Wang, J. P. et al. 2006. J. Agric. Food Chem. 54: 9405-9410; Winkler, W. C. 2005. Curr. Opin. Chem. Biol. 9: 594-602; Qiu, Z. and Goodman, M. F. 1997. J. Biol. Chem. 272: 8611-8617; Wente, S. R. and Schachman, H. K. 1991. J. Biol. Chem. 266: 20833-20839)。また、コード領域の全体又は一部が欠失したような変異酵素をコードする遺伝子を構築し、相同組換えなどによって、該遺伝子でゲノム上の正常遺伝子を置換すること、又はトランスポゾン、IS因子を該遺伝子に導入することによっても酵素活性を低下または欠損させることができる。
例えば、上記の酵素の活性を低下または欠損させるような変異を遺伝子組換えにより導入する為には、以下のような方法が用いられる。目的遺伝子の部分配列を改変し、正常に機能する酵素を産生しないようにした変異型遺伝子を作製し、該遺伝子を含むDNAで腸内細菌科に属する細菌に形質転換し、変異型遺伝子とゲノム上の遺伝子で組換えを起こさせることにより、ゲノム上の目的遺伝子を変異型に置換することが出来る。このような相同組換えを利用した遺伝子置換は、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645)、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. 2002. Bacteriol. 184: 5200-5203)とを組合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある(米国特許第6303383号; 特開平05-007491号公報)。また、上述のような相同組換えを利用した遺伝子置換による部位特異的変異導入は、宿主上で複製能力を持たないプラスミドを用いても行うことが出来る。
好ましいL−リジン生産菌として、エシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2が挙げられる(WO2006/078039)。この菌株は、WC196株より、リジンデカルボキシラーゼをコードするcadA及びldcC遺伝子を破壊し、リジン生合成系遺伝子を含むプラスミドpCABD2(米国特許第6,040,160号)を導入することにより構築した株である。WC196株は、E.coli K-12に由来するW3110株から取得された株で、352位のスレオニンをイソロイシンに置換することによりL−リジンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子(米国特許第5,661,012号)でW3110株の染色体上の野生型lysC遺伝子を置き換えた後、AEC耐性を付与することにより育種された(米国特許第5,827,698号)。WC196株は、Escherichia coli AJ13069と命名され、1994年12月6日、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-14690として寄託され、1995年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている(米国特許第5,827,698号)。WC196ΔcadAΔldcC自体も、好ましいL−リジン生産菌である。WC196ΔcadAΔldcCは、AJ110692と命名され、2008年10月7日、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託され、受託番号FERM BP-11027が付与されている。
pCABD2は、L−リジンによるフィードバック阻害が解除された変異を有するエシェリヒア・コリ由来のジヒドロジピコリン酸合成酵素(DDPS)をコードする変異型dapA遺伝子と、L−リジンによるフィードバック阻害が解除された変異を有するエシェリヒア・コリ由来のアスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子と、エシェリヒア・コリ由来のジヒドロジピコリン酸レダクターゼをコードするdapB遺伝子と、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードするddh遺伝子を含んでいる(国際公開第WO95/16042、WO01/53459号パンフレット)。
上記のようなL-リジン生合成に関与する酵素の遺伝子発現を増強する手法、酵素活性を低下させる方法は、その他のL-アミノ酸生合成酵素をコードする遺伝子についても同様に適用することができる。
L-リジン生産能を有するコリネ型細菌としては、AEC耐性変異株(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11082(NRRL B-11470)株など:特公昭56-1914号公報、特公昭56-1915号公報、特公昭57-14157号公報、特公昭57-14158号公報、特公昭57-30474号公報、特公昭58-10075号公報、特公昭59-4993号公報、特公昭61-35840号公報、特公昭62-24074号公報、特公昭62-36673号公報、特公平5-11958号公報、特公平7-112437号公報、特公平7-112438号公報参照);その生育にL-ホモセリン等のアミノ酸を必要とする変異株(特公昭48-28078号公報、特公昭56-6499号公報参照);AECに耐性を示し、更にL-ロイシン、L-ホモセリン、L-プロリン、L-セリン、L-アルギニン、L-アラニン、L-バリン等のアミノ酸を要求する変異株(米国特許第3708395号及び第3825472号明細書参照);DL-α-アミノ-ε-カプロラクタム、α-アミノ-ラウリルラクタム、アスパラギン酸-アナログ、スルファ剤、キノイド、N-ラウロイルロイシンに耐性を示すL-リジン生産変異株;オキザロ酢酸脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ)または呼吸系酵素阻害剤の耐性を示すL-リジン生産変異株(特開昭50-53588号公報、特開昭50-31093号公報、特開昭52-102498号公報、特開昭53-9394号公報、特開昭53-86089号公報、特開昭55-9783号公報、特開昭55-9759号公報、特開昭56-32995号公報、特開昭56-39778号公報、特公昭53-43591号公報、特公昭53-1833号公報);イノシトールまたは酢酸を要求するL-リジン生産変異株(特開昭55-9784号公報、特開昭56-8692号公報);フルオロピルビン酸または34℃以上の温度に対して感受性を示すL-リジン生産変異株(特開昭55-9783号公報、特開昭53-86090号公報);エチレングリコールに耐性を示し、L-リジンを生産するブレビバクテリウム属またはコリネバクテリウム属の生産変異株(米国特許第4411997号明細書)などが挙げられる。
L-システイン生産菌
L-システイン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、フィードバック阻害耐性のセリンアセチルトランスフェラーゼをコードする異なるcysEアレルで形質転換されたE. coli JM15(米国特許第6,218,168号、ロシア特許出願第2003121601号)、細胞に毒性の物質を排出するのに適したタンパク質をコードする過剰発現遺伝子を有するE. coli W3110 (米国特許第5,972,663号)、システインデスルフォヒドラーゼ活性が低下したE. coli株 (特開平11-155571号)、cysB遺伝子によりコードされる正のシステインレギュロンの転写制御因子の活性が上昇したE. coli W3110 (国際公開第0127307号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
L-ロイシン生産菌
L-ロイシン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、ロイシン耐性のE. coil株 (例えば、57株 (VKPM B-7386, 米国特許第6,124,121号))またはβ-2-チエニルアラニン、3-ヒドロキシロイシン、4-アザロイシン、5,5,5-トリフルオロロイシンなどのロイシンアナログ耐性のE. coli株(特公昭62-34397号及び特開平8-70879号)、国際公開第96/06926号に記載された遺伝子工学的方法で得られたE. coli株、E. coli H-9068 (特開平8-70879号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に用いる細菌は、L-ロイシン生合成に関与する遺伝子の1種以上の発現が増大されることにより改良されていてもよい。このような遺伝子の例としては、好ましくはL-ロイシンによるフィードバック阻害が解除されたイソプロピルマレートシンターゼをコードする変異leuA遺伝子(米国特許第6,403,342号)に代表される、leuABCDオペロンの遺伝子が挙げられる。さらに、本発明に用いる細菌は、細菌の細胞からL-アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子の1種以上の発現が増大されることにより改良されていてもよい。このような遺伝子の例としては、b2682遺伝子及びb2683遺伝子(ygaZH遺伝子) (欧州特許出願公開第1239041号)が挙げられる。
コリネ型細菌のL-イソロイシン生産菌としては、分岐鎖アミノ酸排出タンパク質をコードするbrnE遺伝子を増幅したコリネ型細菌(特開2001-169788)、L-リジン生産菌とのプロトプラスト融合によりL-イソロイシン生産能を付与したコリネ型細菌(特開昭62-74293)、ホモセリンデヒドロゲナーゼを強化したコリネ型細菌(特開昭62-91193)、スレオニンハイドロキサメート耐性株(特開昭62-195293)、α-ケトマロン耐性株(特開昭61-15695)、メチルリジン耐性株(特開昭61-15696)が挙げられる。
L-ヒスチジン生産菌
L-ヒスチジン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、E. coli 24株 (VKPM B-5945、ロシア特許第2003677号)、E. coli 80株 (VKPM B-7270、ロシア特許第2119536号)、E. coli NRRL B-12116 - B12121 (米国特許第4,388,405号)、E. coli H-9342 (FERM BP-6675)及びH-9343 (FERM BP-6676) (米国特許第6,344,347号)、E. coli H-9341 (FERM BP-6674) (欧州特許出願公開第1085087号)、E. coli AI80/pFM201 (米国特許第6,258,554号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
L-ヒスチジン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、L-ヒスチジン生合成系酵素をコードする遺伝子の1種以上の発現が増大した株も挙げられる。かかる遺伝子の例としては、ATPフォスフォリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(hisG)、フォスフォリボシルAMPサイクロヒドロラーゼ遺伝子(hisI)、フォスフォリボシル-ATPピロフォスフォヒドロラーゼ遺伝子(hisI)、フォスフォリボシルフォルミミノ-5-アミノイミダゾールカルボキサミドリボタイドイソメラーゼ遺伝子(hisA)、アミドトランスフェラーゼ遺伝子(hisH)、ヒスチジノールフォスフェイトアミノトランスフェラーゼ遺伝子(hisC)、ヒスチジノールフォスファターゼ遺伝子(hisB)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(hisD)などが挙げられる。
hisG及びhisBHAFIにコードされるL-ヒスチジン生合成系酵素はL-ヒスチジンにより阻害されることが知られており、従って、L-ヒスチジン生産能は、ATPフォスフォリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(hisG)にフィードバック阻害への耐性を付与する変異を導入することにより効率的に増大させることができる(ロシア特許第2003677号及び第2119536号)。
L-ヒスチジン生産能を有する株の具体例としては、L-ヒスチジン生合成系酵素をコードするDNAを保持するベクターを導入したE. coli FERM-P 5038及び5048 (特開昭56-005099号)、アミノ酸輸送の遺伝子を導入したE. coli株(欧州特許出願公開第1016710号)、スルファグアニジン、DL-1,2,4-トリアゾール-3-アラニン及びストレプトマイシンに対する耐性を付与したE. coli 80株(VKPM B-7270, ロシア特許第2119536号)などが挙げられる。
L-グルタミン酸生産菌
L-グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、E. coli VL334thrC+ (EP 1172433)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。E. coli VL334 (VKPM B-1641)は、thrC遺伝子及びilvA遺伝子に変異を有するL-イソロイシン及びL-スレオニン要求性株である(米国特許第4,278,765号)。thrC遺伝子の野生型アレルは、野生型E. coli K-12株 (VKPM B-7)の細胞で増殖したバクテリオファージP1を用いる一般的形質導入法により導入された。この結果、L-イソロイシン要求性のL-グルタミン酸生産菌VL334thrC+ (VKPM B-8961) が得られた。
L-グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、L-グルタミン酸生合成系酵素1種又は2種以上の活性が増強された株が挙げられるが、これらに限定されない。かかる遺伝子の例としては、グルタメートデヒドロゲナーゼ(gdhA)、グルタミンシンテターゼ(glnA)、グルタメートシンテターゼ(gltAB)、イソシトレートデヒドロゲナーゼ(icdA)、アコニテートヒドラターゼ(acnA, acnB)、クエン酸シンターゼ(gltA)、メチルクエン酸シンターゼ(prpC)、フォスフォエノールピルベートカルボシラーゼ(ppc)、ピルベートデヒドロゲナーゼ(aceEF, lpdA)、ピルベートキナーゼ(pykA, pykF)、フォスフォエノールピルベートシンターゼ(ppsA)、エノラーゼ(eno)、フォスフォグリセロムターゼ(pgmA, pgmI)、フォスフォグリセレートキナーゼ(pgk)、グリセルアルデヒド-3-フォスフェートデヒドロゲナーゼ(gapA)、トリオースフォスフェートイソメラーゼ(tpiA)、フルクトースビスフォスフェートアルドラーゼ(fbp)、フォスフォフルクトキナーゼ(pfkA, pfkB)、グルコースフォスフェートイソメラーゼ(pgi)などが挙げられる。これらの酵素の中では、グルタメートデヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ、及びメチルクエン酸シンターゼが好ましい。
シトレートシンテターゼ遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ遺伝子、及び/またはグルタメートデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が増大するように改変された株の例としては、欧州特許出願公開第1078989号、欧州特許出願公開第955368号及び欧州特許出願公開第952221号に開示されたものが挙げられる。
L-グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、L-グルタミン酸の生合成経路から分岐してL-グルタミン酸以外の化合物の合成を触媒する酵素の活性が低下または欠損している株も挙げられる。このような酵素の例としては、イソシトレートリアーゼ(aceA)、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ(sucA)、フォスフォトランスアセチラーゼ(pta)、アセテートキナーゼ(ack)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(ilvG)、アセトラクテートシンターゼ(ilvI)、フォルメートアセチルトランスフェラーゼ(pfl)、ラクテートデヒドロゲナーゼ(ldh)、グルタメートデカルボキシラーゼ(gadAB)などが挙げられる。α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ活性が欠損した、または、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ活性が低下したエシェリヒア属に属する細菌、及び、それらの取得方法は米国特許第5,378,616 号及び第5,573,945号に記載されている。
具体例としては下記のものが挙げられる。
E. coli W3110sucA::Kmr
E. coli AJ12624 (FERM BP-3853)
E. coli AJ12628 (FERM BP-3854)
E. coli AJ12949 (FERM BP-4881)
E. coli W3110sucA::Kmr は、E. coli W3110のα-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、「sucA遺伝子」ともいう)を破壊することにより得られた株である。この株は、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼを完全に欠損している。
また、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ活性が低下したコリネ型細菌としては、例えば、以下の株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL30-2株(特開2006-340603号明細書)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムΔS株(国際公開95/34672号パンフレット)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12821(FERM BP-4172;フランス特許公報9401748号明細書参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12822 (FERM BP-4173;フランス特許公報9401748号明細書)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ12823(FERM BP-4174;フランス特許公報9401748号明細書)
コリネバクテリウム・グルタミカムL30-2株(特開2006-340603号)
L-グルタミン酸生産菌の他の例としては、エシェリヒア属に属し、アスパラギン酸代謝拮抗物質に耐性を有するものが挙げられる。これらの株は、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼを欠損していてもよく、例えば、E. coli AJ13199 (FERM BP-5807) (米国特許第5,908,768号)、さらにL-グルタミン酸分解能が低下したFFRM P-12379(米国特許第5,393,671号); AJ13138 (FERM BP-5565) (米国特許第6,110,714号)などが挙げられる。
パントエア・アナナティスのL-グルタミン酸生産菌の例としては、パントエア・アナナティスAJ13355株が挙げられる。同株は、静岡県磐田市の土壌から、低pHでL-グルタミン酸及び炭素源を含む培地で増殖できる株として分離された株である。パントエア・アナナティスAJ13355は、1998年2月19日に、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所 〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受託番号FERM P-16644として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6614が付与されている。尚、同株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)と同定され、エンテロバクター・アグロメランスAJ13355として寄託されたが、近年16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)に再分類されている。
また、パントエア・アナナティスのL-グルタミン酸生産菌として、α-ケトグルタレートデヒドロゲナーゼ(αKGDH)活性が欠損した、または、αKGDH活性が低下したパントエア属に属する細菌が挙げられる。このような株としては、AJ13355株のαKGDH-E1サブユニット遺伝子(sucA)を欠損させたAJ13356(米国特許第6,331,419号)、及びAJ13355株から粘液質低生産変異株として選択されたSC17株由来のsucA遺伝子欠損株であるSC17sucA(米国特許第6,596,517号)がある。AJ13356は、1998年2月19日、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-16645として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6616が付与されている。AJ13355及びAJ13356は、上記寄託機関にEnterobacter agglomeransとして寄託されているが、本明細書では、Pantoea ananatisとして記載する。また、SC17sucA株は、ブライベートナンバーAJ417が付与され、2004年2月26日に上記の産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP-08646として寄託されている。
さらに、パントエア・アナナティスのL-グルタミン酸生産菌として、SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株、AJ13601株、NP106株、及びNA1株が挙げられる。SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株は、SC17sucA株に、エシェリヒア・コリ由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppsA)、およびグルタメートデヒドロゲナーゼ遺伝子(gdhA)を含むプラスミドRSFCPG、並びに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)を含むプラスミドpSTVCBを導入して得た株である。AJ13601株は、このSC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株から低pH下で高濃度のL-グルタミン酸に耐性を示す株として選択された株である。また、NP106株は、AJ13601株からプラスミドRSFCPG+pSTVCBを脱落させた株である。AJ13601株は、1999年8月18日に、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-17516として寄託され、2000年7月6日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-7207が付与されている。
さらにコリネ型細菌にL-グルタミン酸生産能を付与する方法として、メカノセンシティブチャンネル(mechanosensitive channel)をコードするyggB遺伝子を増幅する方法(国際公開WO2006/070944号)、コード領域内に変異を導入した変異型yggB遺伝子を導入する方法を用いることも可能である。yggB遺伝子は、Genbank Accession No. NC_003450で登録されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC 13032株のゲノム配列上の塩基番号1,337,692〜1,336,091(相補鎖)に位置し、NCgl1221とも呼ばれるGenBank accession No. NP_600492にて登録されている膜タンパク質をコードする遺伝子である。
L-グルタミン酸生産能を付与または増強する別の方法として、有機酸アナログや呼吸阻害剤などへの耐性を付与する方法や細胞壁合成阻害剤に対する感受性を付与する方法も挙げられる。例えば、モノフルオロ酢酸耐性を付与する方法(特開昭50-113209)、アデニン耐性またはチミン耐性を付与する方法(特開昭57-065198)、ウレアーゼを弱化させる方法(特開昭52-038088)、マロン酸耐性を付与する方法(特開昭52-038088)、ベンゾピロンまたはナフトキノン類への耐性を付与する方法(特開昭56-1889)、HOQNO耐性を付与する方法(特開昭56-140895)、α-ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭57-2689)、グアニジン耐性を付与する方法(特開昭56-35981)、ペニシリンに対する感受性を付与する方法(特開平4-88994)などが挙げられる。
このような耐性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ3949 (FERM BP-2632:特開昭50-113209参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11628 (FERM P-5736;特開昭57-065198参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11355(FERM P-5007;特開昭56-1889号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11368(FERM P-5020;特開昭56-1889号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P-4318;特開昭57-2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM P-4319;特開昭57-2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11564(FERM P-5472;特開昭56-140895公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11439(FERM P-5136;特開昭56-35981号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムH7684(FERM BP-3004;特開平04-88994号公報参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11426(FERM P-5123;特開平56-048890号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11440(FERM P-5137;特開平56-048890号公報参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11796(FERM P-6402;特開平58-158192号公報参照)
L-フェニルアラニン生産菌
L-フェニルアラニン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、コリスミ酸ムターゼ-プレフェン酸デヒドロゲナーゼ及びチロシンリプレッサーを欠損したE. coli AJ12739 (tyrA::Tn10, tyrR) (VKPM B-8197)(国際公開03/044191号)、フィードバック阻害が解除されたコリスミ酸ムターゼ-プレフェン酸デヒドラターゼをコードする変異型pheA34遺伝子を保持するE. coli HW1089 (ATCC 55371) (米国特許第 5,354,672号)、E. coli MWEC101-b (KR8903681)、E. coli NRRL B-12141, NRRL B-12145, NRRL B-12146及びNRRL B-12147 (米国特許第4,407,952号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。また、親株として、フィードバック阻害が解除されたコリスミ酸ムターゼ-プレフェン酸デヒドラターゼをコードする遺伝子を保持するE. coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHAB] (FERM BP-3566)、E. coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHAD] (FERM BP-12659)、E. coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHATerm] (FERM BP-12662)及びAJ 12604と命名されたE. coli K-12 [W3110 (tyrA)/pBR-aroG4, pACMAB] (FERM BP-3579)も使用できる(EP 488424 B1)。さらに、yedA遺伝子またはyddG遺伝子にコードされるタンパク質の活性が増大したエシェリヒア属に属するL-フェニルアラニン生産菌も使用できる(米国特許出願公開2003/0148473号及び2003/0157667、国際公開03/044192号)。
コリネ型細菌のフェニルアラニン生産菌としては、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼまたはピルビン酸キナーゼ活性が低下したコリネバクテリウム・グルタミカBPS-13株 (FERM BP-1777, K77 (FERM BP-2062) 及び K78 (FERM BP-2063)(欧州特許公開公報331145号、特開平 02-303495号)、チロシン要求性株(特開平05-049489)等を使用することができる。
また、フェニルアラニン生産菌としては、副生物を細胞内に取り込むように改変すること、例えば、L-トリプトファンの取り込み遺伝子tnaB, mtrや、L-チロシンの取り込み遺伝子であるtyrPの発現量を向上させることによっても、効率よくL-フェニルアラニンを生産する菌株を取得することができる(EP1484410)。
L-トリプトファン生産菌
L-トリプトファン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、変異trpS遺伝子によりコードされるトリプトファニル-tRNAシンテターゼが欠損したE. coli JP4735/pMU3028 (DSM10122)及びJP6015/pMU91 (DSM10123) (米国特許第5,756,345号)、セリンによるフィードバック阻害を受けないフォスフォグリセリレートデヒドロゲナーゼをコードするserAアレル及びトリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニレートシンターゼをコードするtrpEアレルを有するE. coli SV164 (pGH5) (米国特許第6,180,373号)、トリプトファナーゼが欠損したE. coli AGX17 (pGX44) (NRRL B-12263)及びAGX6(pGX50)aroP (NRRL B-12264) (米国特許第4,371,614号)、フォスフォエノールピルビン酸生産能が増大したE. coli AGX17/pGX50,pACKG4-pps (WO9708333, 米国特許第6,319,696号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。yedA遺伝子またはyddG遺伝子にコードされるタンパク質の活性が増大したエシェリヒア属に属するL-トリプトファン生産菌も使用できる(米国特許出願公開2003/0148473及び2003/0157667)。
L-トリプトファン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、アントラニレートシンターゼ(trpE)、フォスフォグリセレートデヒドロゲナーゼ(serA)、3-デオキシ-D-アラビノヘプツロン酸-7-リン酸シンターゼ(aroG)、3-デヒドロキネートシンターゼ(aroB)、シキミ酸デヒドロゲナーゼ(aroE)、シキミ酸キナーゼ(aroL)、5-エノール酸ピルビルシキミ酸3-リン酸シンターゼ(aroA)、コリスミ酸シンターゼ(aroC)、プレフェン酸デヒドラターゼ、コリスミ酸ムターゼ及び、トリプトファンシンターゼ(trpAB)から選ばれる1種又は2種以上の酵素の活性が増強された株も挙げられる。プレフェン酸デヒドラターゼ及びコリスミ酸ムターゼは、2機能酵素(chorismate mutase/prephenate dehydrogenase (CM/PDH) )としてpheA遺伝子によってコードされている。これらの酵素の中では、フォスフォグリセレートデヒドロゲナーゼ、3-デオキシ-D-アラビノヘプツロン酸-7-リン酸シンターゼ、3-デヒドロキネートシンターゼ、シキミ酸デヒドラターゼ、シキミ酸キナーゼ、5-エノール酸ピルビルシキミ酸3-リン酸シンターゼ、コリスミ酸シンターゼ、プレフェン酸デヒドラターゼ、コリスミン酸ムターゼ-プレフェン酸デヒドロゲナーゼが特に好ましい。アントラニレートシンターゼ及びフォスフォグリセレートデヒドロゲナーゼは共にL-トリプトファン及びL-セリンによるフィードバック阻害を受けるので、フィードバック阻害を解除する変異をこれらの酵素に導入してもよい。このような変異を有する株の具体例としては、脱感作型アントラニレートシンターゼを保持するE. coli SV164、及び、フィードバック阻害が解除されたフォスフォグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異serA遺伝子を含むプラスミドpGH5 (国際公開94/08031号)をE. coli SV164に導入することにより得られた形質転換株が挙げられる。
L-トリプトファン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、阻害解除型アントラニレートシンターゼをコードする遺伝子を含むトリプトファンオペロンが導入された株(特開昭57-71397号, 特開昭62-244382号, 米国特許第4,371,614号)も挙げられる。さらに、トリプトファンオペロン(trpBA)中のトリプトファンシンターゼをコードする遺伝子の発現を増大させることによりL-トリプトファン生産能を付与してもよい。トリプトファンシンターゼは、それぞれtrpA及びtrpB遺伝子によりコードされるα及びβサブユニットからなる。さらに、イソシトレートリアーゼ-マレートシンターゼオペロンの発現を増大させることによりL-トリプトファン生産能を改良してもよい(国際公開2005/103275号)。
コリネ型細菌としてはサルフアグアニジンに耐性株であるコリネバクテリウム・グルタミクムAJ12118(FERM BP-478 特許01681002号)、トリプトファンオペロンが導入されたコリネ型細菌(特開昭63240794号公報)、コリネ型細菌由来のシキミ酸キナーゼをコードする遺伝子を導入したコリネ型細菌(特開01994749号公報)を用いることができる。
L-プロリン生産菌
L-プロリン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、ilvA遺伝子が欠損し、L-プロリンを生産できるE. coli 702ilvA (VKPM B-8012) (欧州特許公開公報1,172,433号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に用いる細菌は、L-プロリン生合成に関与する遺伝子の一種以上の発現を増大することにより改良してもよい。L-プロリン生産菌に好ましい遺伝子の例としては、L-プロリンによるフィードバック阻害が解除されたグルタメートキナーゼをコードするproB遺伝子(ドイツ特許第3127361号)が挙げられる。さらに、本発明に用いる細菌は、細菌の細胞からL-アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子の一種以上の発現が増大することにより改良してもよい。このような遺伝子としては、b2682 遺伝子及びb2683遺伝子(ygaZH遺伝子) (欧州特許公開公報1,239,041号)が挙げられる。
L-プロリン生産能を有するエシェリヒア属に属する細菌の例としては、NRRL B-12403及びNRRL B-12404 (英国特許第2075056号)、VKPM B-8012 (ロシア特許出願2000124295)、ドイツ特許第3127361号に記載のプラスミド変異体、Bloom F.R. et al (The 15th Miami winter symposium, 1983, p.34)に記載のプラスミド変異体などのE. coli 株が挙げられる。
L-アルギニン生産菌
L-アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、E. coli 237株 (VKPM B-7925) (米国特許出願公開2002/058315号)、及び、変異N-アセチルグルタメートシンターゼを保持するその誘導株(ロシア特許出願第2,001,112,869号)、E. coli 382株 (VKPM B-7926) (欧州特許公開公報1,170,358号)、N-アセチルグルタメートシンテターゼをコードするargA遺伝子が導入されたアルギニン生産株(欧州特許公開公報1,170,361号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられるが、これらに限定されない。
L-アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、L-アルギニン生合成系酵素をコードする遺伝子の1種以上の発現が増大した株も挙げられる。かかる遺伝子の例としては、N-アセチルグルタミルフォスフェートレダクターゼ遺伝子(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(argJ)、N-アセチルグルタメートキナーゼ遺伝子(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ遺伝子(argD)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子(argF)、アルギノコハク酸シンテターゼ遺伝子(argG)、アルギ
ノコハク酸リアーゼ遺伝子(argH)、カルバモイルフォスフェートシンテターゼ遺伝子(carAB)が挙げられる。
L-バリン生産菌
L-バリン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、ilvGMEDAオペロンを過剰発現するように改変された株(米国特許第5,998,178号)が挙げられるが、これらに限定されない。アテニュエーションに必要なilvGMEDAオペロンの領域を除去し、生産されるL-バリンによりオペロンの発現が減衰しないようにすることが好ましい。さらに、オペロンのilvA遺伝子が破壊され、スレオニンデアミナーゼ活性が減少することが好ましい。
L-バリン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、アミノアシルt-RNAシンテターゼの変異を有する変異株(米国特許第5,658,766号)も挙げられる。例えば、イソロイシンtRNAシンテターゼをコードするileS 遺伝子に変異を有するE. coli VL1970が使用できる。E. coli VL1970は、1988年6月24日、ロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia)に、受託番号VKPM B-4411で寄託されている。
さらに、生育にリポ酸を要求する、及び/または、H+-ATPaseを欠失している変異株(国際公開96/06926号)を親株として用いることができる。
コリネ型細菌のL-バリン生産菌としては、例えば、L-バリン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように改変した菌株を挙げることができる。L-バリン酸生合成に関与する酵素としては、例えば、ilvBNCオペロンによりコードされる酵素、すなわちilvBNによりコードされるアセトヒドロキシ酸シンターゼやivlCによりコードされるイソメロリダクターゼ(国際公開00/50624号)が挙げられる。尚、ilvBNCオペロンは、L-バリン及び/又はL-イソロイシン及び/又はL-ロイシンによるオペロンの発現調節を受けるので、生成するL-バリンによる発現抑制を解除するためにアテニュエーションを解除することが望ましい。
L-バリン生産能を有するコリネ型細菌としては、L-バリン産生を減少させる物質代謝経路に関与する、少なくとも1種の酵素の活性を低下あるいは欠損させることにより行ってもよい。例えば、L-ロイシン合成に関与するスレオニンデヒドラターゼやD-パントセナート合成に関与する酵素の活性を低下させることが考えられる(国際公開00/50624号)。
L-バリン生産能を付与する別の方法として、アミノ酸アナログなどへの耐性を付与する方法も挙げられる。
例えば、L-イソロイシンおよびL-メチオニン要求性,ならびにD-リボ-ス,プリンリボヌクレオシドまたはピリミジンリボヌクレオシドに耐性を有し,かつL-バリン生産能を有する変異株(FERM P-1841、FERM P-29、特公昭53-025034) や、ポリケトイド類に耐性を有する変異株(FERM P-1763、FERM P-1764、特公平06-065314) 、更には酢酸を唯一の炭素源とする培地でL-バリン耐性を示し、且つグルコースを唯一の炭素源とする培地でピルビン酸アナログ(フルオロピルビン酸等)に感受性を有する変異株(FERM BP-3006、FERM BP-3007、特許3006929号)が挙げられる。
L-イソロイシン生産菌
L-イソロイシン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、6-ジメチルアミノプリンに耐性を有する変異株(特開平5-304969号)、チアイソロイシン、イソロイシンヒドロキサメートなどのイソロイシンアナログに耐性を有する変異株、さらにDL-エチオニン及び/またはアルギニンヒドロキサメートに耐性を有する変異株(特開平5-130882号).が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、スレオニンデアミナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼなどのL-イソロイシン生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子で形質転換された組換え株もまた親株として使用できる(特開平2-458号, FR 0356739, 及び米国特許第5,998,178号)。
コリネ型細菌のL-イソロイシン生産菌としては、分岐鎖アミノ酸排出タンパク質をコードするbrnE遺伝子を増幅したコリネ型細菌(特開2001-169788)、L-リジン生産菌とのプロトプラスト融合によりL-イソロイシン生産能を付与したコリネ型細菌(特開昭62-74293)、ホモセリンデヒドロゲナーゼを強化したコリネ型細菌(特開昭62-91193)、スレオニンハイドロキサメート耐性株(特開昭62-195293)、α-ケトマロン耐性株(特開昭61-15695)、メチルリジン耐性株(特開昭61-15696)が挙げられる。
L-メチオニン生産菌
L-メチオニン生産菌又はそれを誘導するための親株の例としては、L-スレオニン要求株、ノルロイシンに耐性を有する変異株が挙げられるが、これらに限定されない(特開2000-139471号)。さらに、メチオニンリプレッサーを欠損した株や、ホモセリントランスサクシニラーゼ、シスタチオニンγ-シンテースなどのL-メチオニン生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子で形質転換された組換え株もまた親株として使用できる(特開2000-139471号)。
遺伝子組換えにより、上記のL-アミノ酸生産菌を育種する場合、使用する遺伝子は、上述した遺伝子情報を持つ遺伝子や、公知の配列を有する遺伝子に限られず、コードされるタンパク質の機能が損なわれない限り、その遺伝子のホモログや人為的な改変体等、保存的変異を有する遺伝子も使用することができる。すなわち、公知のタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加等を含む配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
ここで、「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。また、保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換であり、保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。このような遺伝子は、例えば、部位特異的変異法によって、コードされるタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加を含むように公知の遺伝子の塩基配列を改変することによって取得することができる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、コードされるアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有し、かつ、野生型タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
また、遺伝子の配列におけるそれぞれのコドンは、遺伝子が導入される宿主で使用しやすいコドンに置換したものでもよい。
保存的変異を有する遺伝子は、変異剤処理等、通常変異処理に用いられる方法によって取得されたものであってもよい。
また、遺伝子は、公知の遺伝子配列の相補配列又はその相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、公知の遺伝子産物と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
プローブとしては、遺伝子の相補配列の一部を用いることもできる。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗浄の条件は、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
上記の遺伝子のホモログ及び保存的変異に関する記載は、前述のリパーゼ遺伝子についても同様に適用される。
<3>L-アミノ酸の製造法
本発明のL-アミノ酸の製造法においては、微細藻類の前記処理物を含む培地で、L-アミノ酸生産能を有する細菌を培養して、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、該培養物からL-アミノ酸を採取する。あるいは、(a)微細藻類を培地で培養し、該培養物を、破砕、抽出、分画及び加水分解から選ばれる1以上の方法により処理して、L-アミノ酸生産能を有する細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進する該微細藻類の処理物を調製し、(b)該細菌を、該微細藻類の処理物を含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、(c)該培養物からL-アミノ酸を採取する。前記処理物は炭素源として含まれることが好ましく、この場合には、特にスターチの糖化物あるいは油脂の加水分解物を含む処理物であることが好ましい。
前記「炭素源として」とは、細菌の増殖及びL-アミノ酸の製造において、菌体成分及びL-アミノ酸を構成する炭素の供給源として実質的に寄与し得ることを意味する。微細藻類により生産される有機物を加えない培地に比べて、加水分解物を加えた培地で培養したときの方が細菌の生育あるいはL-アミノ酸の生成蓄積が良好であれば、前記加水分解物は炭素源であると評価される。尚、培地は微細藻類により生産される有機物のみを炭素源として含んでいてもよいし、他の炭素源を含んでいてもよい。
本発明の方法は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養法(continuous culture)のいずれも用いることができ、培地中の油脂の加水分解物は初発培地に含まれていてもよいし、流加培地に含まれていてもよいし、これらの両方に含まれていてもよい。
流加培養とは、培養容器に培地を連続的または間欠的に流加し、培養終了時までその培地を容器から抜き取らない培養方法をいう。また連続培養とは、培養容器に培地を連続的または間欠的に流加するとともに容器から培地(通常、流加する培地と等量)を抜き取る方法をいう。また、初発培地とは、流加培養または連続培養において流加培地を流加させる前の回分培養(batch培養)に用いる培地(培養開始時の培地)のことを意味し、流加培地とは流加培養または連続培養を行う際に発酵槽に供給する培地を意味する。また、回分培養(batch培養)とは、一回毎に新たな培地を用意し、そこへ株を植えて収穫まで培地を加えない方法を意味する。
使用する微細藻類により生産される有機物は、L-アミノ酸を製造するのに適した濃度であればどのような濃度で用いてもかまわない。スターチの糖化物であるグルコース濃度としては、好ましくは0.05w/v%〜50w/v%程度、より好ましくは0.1w/v%〜40w/v%程度、特に好ましくは0.2w/v%〜20w/v%程度培地に含有させる。油脂の加水分解物であるグリセロール及び脂肪酸の量としては、0.01〜10w/v%、好ましくは0.02〜5w/v%、さらに好ましくは0.05〜2w/v%程度培地に含有させることが望ましい。微細藻類により生産される有機物は、単独で用いることも出来るし、グルコース、フラクトース、スクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物などの他の炭素源と組み合わせて用いることも出来る。この場合、微細藻類により生産される有機物と他の炭素源は任意の比率で混合することが可能であるが、炭素源中の微細藻類により生産される有機物の比率は、10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%であることが望ましい。他の炭素源として好ましいのは、グルコース、フラクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、廃糖蜜、澱粉加水分解物やバイオマスの加水分解により得られた糖液などの糖類、エタノール、グリセロールなどのアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類である。
また、スターチの酵素的加水分解を、バッファーとして有機酸の存在下で行った場合、該有機酸を糖化物とともに炭素源として培地に添加してもよい。炭素源中のスターチの糖化物と有機酸の比率は任意でよいが、1:1〜1:3が好ましい。有機酸としては、用いる細菌が資化し得るものであればいずれでもよいが、例えば、酢酸、クエン酸、コハク酸、フマール酸等が挙げられ、特に酢酸が好ましい。
培養開始時の微細藻類により生産されるスターチの糖化物と油脂の加水分解物の好ましい初発濃度は上記のとおりであるが、培養中の微細藻類により生産されるスターチの糖化物と油脂の加水分解物の消費に応じて、微細藻類により生産される有機物の混合物を添加してもよい。
なお、本発明において、藻類由来の有機物は、培養の全工程において一定濃度含まれてもよいし、流加培地のみあるいは初発培地のみに添加されていてもよく、その他の炭素源が充足していれば、一定時間油脂の加水分解物が不足している期間があってもよい。一時的とは、例えば発酵全体の時間のうち10%以内、又は20%以内、最大で30%以内の時間で油脂の加水分解物が不足していてもよい。このように一時的に油脂の加水分解物の濃度が0になることがあっても、藻類により生産される有機物を含む培地での培養期間が存在する場合は、本発明の「培地は藻類により生産される有機物を炭素源として含み」との文言に含まれる。
使用する培地は、藻類により生産される有機物を含むこと以外は、微生物を用いたL-アミノ酸の発酵生産において従来より用いられてきた培地を用いることができる。すなわち、炭素源に加えて、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。ここで、窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ウレア等の無機アンモニウム塩または硝酸塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。また、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、大豆加水分解物等も利用できる。培地中にこれらの窒素源が1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含んでいてもよい。これらの窒素源は、初発培地にも流加培地にも用いることができる。また、初発培地、流加培地とも、同じ窒素源を用いてもよいし、流加培地の窒素源を初発培地と異なるものを使用してもよい。
本発明の培地には、炭素源、窒素源の他にリン酸源、硫黄源が含まれていることが好ましい。リン酸源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム、ピロリン酸などのリン酸ポリマー等が利用出来る。また、硫黄源とは、硫黄原子を含んでいるものであればいずれでもよいが、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の硫酸塩、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が望ましく、なかでも硫酸アンモニウムが望ましい。
また、培地には、上記成分の他に、増殖促進因子(増殖促進効果を持つ栄養素)が含まれていてもよい。増殖促進因子とは、微量金属類、アミノ酸、ビタミン、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆たん白分解物等が使用できる。微量金属類としては、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、ビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等が挙げられる。これらの増殖促進因子は初発培地に含まれていてもよいし、流加培地に含まれていてもよい。
また、培地には、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。特に本発明に用いることができるL-リジン生産菌は、後述のようにL-リジン生合成経路が強化されており、L-リジン分解能が弱化されているものが多いので、L-スレオニン、L-ホモセリン、L-イソロイシン、L-メチオニンから選ばれる1種又は2種以上を添加することが望ましい。初発培地と流加培地は、培地組成が同じであってもよく、異なっていてもよい。また、初発培地と流加培地は、硫黄濃度が同じであってもよく、異なっていてもよい。さらには、流加培地の流加が多段階で行われる場合、各々の流加培地の組成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、本発明で用いる培地は、炭素源、窒素源、及び必要に応じてその他の成分を含む培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
藻類により生産される有機物は炭素源以外に、アミノ酸に用いられる成分を含んでいる。本発明で用いる培地は、必要に応じて、窒素源及びその他の成分を通常の培地よりも減らすことが可能である。
培養は好気的条件下で1〜7日間実施するのがよく、培養温度は20℃〜45℃、好ましくは24℃〜45℃、特に好ましくは33〜42℃で培養することが好ましい。培養は通気培養が好ましく、酸素濃度は、飽和濃度に対して5〜50%に、望ましくは10%程度に調節して行うことが好ましい。また、培養中のpHは5〜9が好ましい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、例えば炭酸カルシウム、アンモニアガス、アンモニア水等を使用することができる。
上記のような条件下で、好ましくは10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のL-アミノ酸が蓄積される。蓄積されるL-アミノ酸の濃度は培地又は菌体から採取、回収できる濃度であればいずれでもよいが、好ましくは1g/L以上、より好ましくは50g/L以上、さらに好ましくは100g/L以上である。
また、L−リジン等の塩基性アミノ酸を製造する際には、培養中のpHが6.5〜9.0、培養終了時の培地のpHが7.2〜9.0となるように制御し、発酵中の発酵槽内圧力が正となるように制御する、あるいは、炭酸ガスもしくは炭酸ガスを含む混合ガスを培地に供給して、培地中の重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンが少なくとも2g/L20mM以上存在する培養期があるようにし、前記重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンを塩基性アミノ酸を主とするカチオンのカウンタイオンとする方法で発酵し、目的の塩基性アミノ酸を回収する方法で製造を行ってもよい(特開2002-65287、US2002-0025564A、EP 1813677A)。
また、L-グルタミン酸発酵においては、L-グルタミン酸が析出するような条件に調整された液体培地を用いて、培地中にL-グルタミン酸を析出させながら培養を行うことも出来る。L-グルタミン酸が析出する条件としては、例えば、pH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくはpH4.0を挙げることができる。(欧州特許出願公開第1078989号明細書)
培養液からのL-アミノ酸の回収は通常イオン交換樹脂法、沈殿法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。なお、菌体内にL-アミノ酸が蓄積する場合には、例えば菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清からイオン交換樹脂法などによって、L-アミノ酸を回収することができる。回収されるL-アミノ酸は、フリー体のL-アミノ酸であっても、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩を含む塩であってもよい。
また、本発明において採取されるL-アミノ酸は、目的とするL-アミノ酸以外に微生物菌体、培地成分、水分、及び微生物の代謝副産物を含んでいてもよい。採取されたL-アミノ酸の純度は、50%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは95%以上である (US5,431,933, JP1214636B, US4,956,471, US4,777,051, US4946654, US5,840358, US6,238,714, US2005/0025878)。
以下、実施例にて、本発明を更に具体的に説明する。本実施例には、テキサス大学藻類カルチャーコレクション(The University of Texas at Austin, The Culture Collection of Algae (UTEX), 1 University Station A6700, Austin, TX 78712-0183, USA)より入手したChlorella kessleri 11h株(UTEX 263)、Neochloris oleoabundans UTEX 1185株、Nannochloris sp. UTEX LB 1999株及びThalassiosira pseudonana UTEX LB FD2株を用いた。
〔実施例1(1)〕微細藻類 Chlorella kessleriの培養
Chlorella kessleri を、100 mLの0.2×ガンボーグB5培地(日本製薬)を入れた500 mL容三角フラスコにて30℃、光強度10,000 lux(TOMY社製培養装置CL-301)で6日間振とう培養し、これを前培養液とした。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。0.2×ガンボーグB5 培地800 mLを入れた1L容メディウムビンに、前培養液16 mLを添加し、培養温度30℃、光強度10,000 luxにて、500 mL/minで、CO2濃度が3%となるように空気とCO2の混合ガスを吹き込みながら、12日間培養を行った。
(0.2×ガンボーグB5培地)
KNO3 500 mg/L
MgSO4・7H2O 50 mg/L
NaH2PO4・H2O 30 mg/L
CaCl2・2H2O 30 mg/L
(NH4)2SO4 26.8 mg/L
Na2-EDTA 7.46 mg/L
FeSO4・7H2O 5.56 mg/L
MnSO4・H2O 2 mg/L
H3BO3 0.6 mg/L
ZnSO4・7H2O 0.4 mg/L
KI 0.15 mg/L
Na2MoO2・2H2O 0.05 mg/L
CuSO4・5H2O 0.005 mg/L
CoCl2・6H2O 0.005 mg/L
120℃ 15分 オートクレーブ殺菌
〔実施例1(2)〕Chlorella kessleriからのスターチ糖化液の調製
実施例1(1)の培養液1 L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、その沈殿物に80 mLのエタノールを加え、藻体を懸濁させた後に30分煮沸した。その懸濁液を遠心分離し、藻体を沈殿させた後に、80 mLのエタノールで2回洗浄した後、デシケーター内で乾燥させた。その乾燥藻体に40 mLの0.2 M KOHを加え、30分煮沸し、さらに超音波装置(Kubota社INSONATOR 201MA)により15,000W、10分の処理を行い、細胞を破砕した。その破砕液に8 mLの1 M酢酸溶液、250 Uのアミログルコシダーゼ(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社A-9228)を加え、55℃にて18時間反応させた。反応終了後、反応物中のグルコースをバイオテックアナライザーAS210(サクラ精機)にて定量した。酵素濃度を2倍にしても、生成するグルコース量はほとんど変化がなかったことから、スターチのうち、大部分がグルコースに変換されていると推定された。藻体破砕物(残渣)を遠心分離によって除去し、その上清をアミノ酸発酵の炭素源として用いた。
〔実施例1(3)〕Chlorella kessleri由来のスターチ糖化液を炭素源としたL-リジン生産培養
L-リジン生産菌として国際公開第2006/078039号パンフレットに記載されているエシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2を用いた。WC196ΔcadAΔldcC/pCABD2をストレプトマイシン硫酸塩20mg/Lを含有するLB寒天培地(Tryptone 10 g/L、Yeast extract 5 g/L、NaCl 10g /L、寒天15g/L)にて37℃で20時間培養した。寒天培地上の細胞を掻き取り、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含有するL-リジン生産培地40 mLを入れた500 mL容三角フラスコに植菌し、培養温度37℃にて、24時間培養を行った。本培養においては、Chlorella kessleriが生産するスターチから調製した実施例1(2)の糖化液(グルコース量として2.75 g/L)とその調製の際に、バッファーとして利用した酢酸4.8 g/Lを炭素源とした。対照として、同濃度のグルコース、又は酢酸の一方を含む培地と、グルコースと酢酸の両方を炭素源として含む培地にて培養を実施した。
(L-リジン生産培地組成)
(A区)
炭素源
グルコース 2.75 g/L
酢酸 4.8 g/L
(B区)
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1 g/L
Yeast Extract 2 g/L
FeSO4・7H2O 10 mg/L
MnSO4・4H2O 10 mg/L
(C区)
炭酸カルシウム 15 g/L
A区、B区は115℃にて10分間、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。室温に冷却後3者を混合して、MgSO4・7H2O溶液を終濃度1 g/Lとなるように加えた。
培養終了後、グルコースの消費をバイオテックアナライザーAS210(サクラ精機)にて確認し、生育度を生菌数のカウントにより、L-リジン量はBF-5(王子計測機器)により測定した。フラスコ二本ずつ行った培養の結果の平均値を表1に示す。
試薬グルコースと酢酸をそれぞれ単独の炭素源とした場合、それぞれ、1.1 g/L、0.3 g/LのL-リジンを蓄積した。試薬グルコースと酢酸を混合して炭素源とした場合には、各炭素源単独でのL-リジン蓄積量の合計に相当する1.4 g/LのL-リジンを蓄積した。これと同濃度の藻類の生産したスターチ由来のグルコース及び酢酸からは、同等以上の1.8 g/LのL-リジンの蓄積を認め、有効な炭素源であることが示された。
Figure 2009093703
〔実施例2(1)〕Chlorella kessleriからのスターチを含まない有機物液の調製
実施例1(1)の培養液3.6 L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、その沈殿物に100 mLのエタノールを加え、藻体を懸濁させた後、室温で24 時間静置した。その後、濾過を行って濾液を回収し、藻体残渣を100 mLのエタノールで2回抽出操作を行い、計300 mLのエタノール抽出液とした。そのエタノール抽出液をロータリーエバポレーターによりエタノール除去した後、滅菌水に溶解し、水酸化カリウム水溶液でpH7.0に合わせ、藻体由来の有機物液45 mLを調製した。その有機物液を、115℃にて10分間オートクレーブ滅菌した後、L-リジン発酵の培地成分の代替として用いた。本有機物液はスターチを含んでいないため、アミノ酸生産菌に利用できる炭素源は、含まれていない。
〔実施例2(2)〕Chlorella kessleri由来のスターチを含まない有機物液を炭素源以外の培地成分として用いたL-リジン生産培養
L-リジン生産菌であるエシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2を、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含有するLB寒天培地にて37℃で20時間培養した。寒天培地上の細胞を掻き取り、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含有するL-リジン生産培地4 mLを入れた太試験管に植菌し、培養温度37℃にて、24時間培養を行った。本培養においては、L-リジン生産培地中のB区の成分を半減した培地(以下、本培地を「L-リジン生産培地(半量B区)」と呼ぶ)にChlorella kessleri藻体から抽出した実施例2(1)の有機物液75 μL(培養液に換算すると、6 mL分に相当)を加えて、培養を実施した。対照としては、L-リジン生産培地、L-リジン生産培地(半量B区)、及びグルコースが入っていないL-リジン生産培地(半量B区)培地に有機物液75 μLを添加した条件にて、培養を行った。
[L-リジン生産培地組成]
(A区)
グルコース 20 g/L
(B区)
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1 g/L
Yeast Extract 2 g/L
FeSO4・7H2O 10 mg/L
MnSO4・4H2O 10 mg/L
(C区)
炭酸カルシウム 30 g/L
A区、B区は115℃にて10分間、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。
室温に冷却後、3者を混合して、MgSO4・7H2O溶液を終濃度1 g/Lとなるように加えた。
培養終了後、グルコースの消費をバイオテックアナライザーAS210(サクラ精機)にて確認し、生育度を生菌数のカウントにより、L-リジン量はBF-5(王子計測機器)により測定した。太試験管二本ずつ行った培養の結果の平均値を表2に示す。
L-リジン生産培地、L-リジン生産培地(半量B区)で培養した場合、それぞれ、8.09 g/L、7.89 g/LのL-リジンを蓄積した。また、グルコースが入っていないL-リジン生産培地(半量B区)に藻体抽出の有機物液を添加した場合、L-リジン蓄積量は0.14 g/Lであり、炭素源としてはほとんど用いられていない。一方、L-リジン生産培地(半量B区)に藻体抽出有機物液を添加し培養した場合、8.34 g/LのL-リジンを蓄積し、L-リジン生産培地でのL-リジン蓄積量を上回る結果から、藻体抽出有機物液が炭素源以外の培地成分の代替として有効であることが示された。
Figure 2009093703
〔実施例3(1)〕Chlorella kessleriのジャーファーメンターによる培養
Chlorella kessleri を、0.2×ガンボーグB5培地(日本製薬)500 mLを入れた2 L容ジャーファーメンター(ABLE社製)にて30℃、光強度20,000 luxで7日間攪拌培養し、これを前培養液とした。尚、本ジャーファーメンターは、光源として、白色光を発する環形蛍光灯がガラスベッセルの周りを取り囲む光照射型のジャーファーメンターである。0.2×ガンボーグB5 培地1.5 Lを入れた2 L容ミニジャーファーメンターに、前培養液30 mLを添加し、培養温度30℃、光強度20,000 luxにて、500 mL/minでCO2濃度を3%に保ちながら空気-CO2混合ガスを吹き込み、14日間培養を行った。
〔実施例3(2)〕Chlorella kessleriからの高温処理によるスターチを含む有機物の混合溶液とアミラーゼによる糖化液の調製
実施例3(1)の藻類培養液300 mLを高温反応装置内の反応容器に投入し、攪拌しつつ60分間かけて175℃もしくは215℃まで昇温させた後、それぞれの温度で5分間保持させた。
175℃の高温処理した藻体破砕液200 mLを、3N HClを用いてpH 5.5に調整した後、500 Uのアミログルコシダーゼ(シグマ-アルドリッチ社 A-9228)を加え、55℃で攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、濾過を行って濾液を回収し、ロータリーエバポレーター(EYELA社製)を用いて10 mLまで濃縮した。その濃縮液を、1N KOHを用いてpH 7.8に調整し、15 mLにメスアップした後、115℃、10分の条件にて、オートクレーブ処理を行った。
〔実施例3(3)〕Chlorella kessleri由来の高温処理によるスターチを含む有機物の混合溶液のアミラーゼ処理による糖化液を炭素源としたL-グルタミン酸生産培養
L-グルタミン酸生産菌としては、特開2006-340603号に記載のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL30-2株を用いた。L30-2株をCM-Dexプレート培地に播種し31.5℃で24時間培養した。そのプレート培地上の細胞を1白金耳分掻き取り、L-グルタミン酸生産培地4 mLを入れた太試験管に植菌し、培養温度31.5℃にて、13時間培養を行った。本培養における炭素源として、Chlorella kessleriの藻類スターチ分解物から調製した実施例3(2)の糖化液(グルコース量として1.0 g/L)、ならびに対照として同濃度の試薬グルコースを用いた。また、L-グルタミン酸生産培地、およびL-グルタミン酸生産培地中のB区の成分を半減した培地(以下、本培地を「L-グルタミン酸生産培地(半量B区)」と呼ぶ)の2種類の培地成分にて、培養を実施した。
[CM-Dex培地]
グルコース 5 g/L
ポリペプトン 10 g/L
酵母エキス 10 g/L
KH2PO4 1 g/L
MgSO4・7H2O 0.4 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・7H2O 0.01 g/L
尿素 3 g/L
大豆加水分解物 1.2 g/L
ビオチン 10 μg/L
NaOHを用いて、pH7.5に調整。120℃にて20分間オートクレーブ殺菌条件。
[L-グルタミン酸生産培地組成]
(A区)
炭素源
藻類由来のスターチ分解物 1.0 g/L(グルコース)
(B区)
(NH4)2SO4 15 g/L
KH2PO4 1 g/L
MgSO4・7H2O 0.4 g/L
FeSO4・7H2O 10 mg/L
MnSO4・4H2O 10 mg/L
VB1・HCl 200 μg/L
Biotin 300 μg/L
大豆加水分解物 0.48 g/L
(C区)
炭酸カルシウム 50 g/L
A区、B区は、KOHを用いて各々pH 7.8、pH 8.0に調整し115℃にて10分、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。それぞれが室温に冷却後、3者を混合した。
培養終了後、L-グルタミン酸の蓄積量はBF-5(王子計測機器)により測定した。また、L-グルタミン酸生産培地ならびにL-グルタミン酸生産培地(半量B区)には、大豆加水分解物由来のL-グルタミン酸が、元々0.45 g/L、0.24 g/L含まれているため、測定値から培地成分中の大豆加水分解物分のL-グルタミン酸量を引いた値を表3に示す。
試薬グルコースを炭素源として、L-グルタミン酸生産培地、L-グルタミン酸生産培地(半量B区)で培養した場合、それぞれ、0.74 g/L、0.57 g/LのL-グルタミン酸を蓄積した。一方、藻類由来のスターチ分解物(藻類由来グルコース)を炭素源とした場合では、L-グルタミン酸の蓄積量は0.84 g/L、0.70 g/Lとなり、試薬グルコースを用いた場合よりもL-グルタミン酸の蓄積量が向上することが分かった。この結果より、藻類由来のスターチ分解物は、L-グルタミン酸培養の炭素源として有用であることが示された。
Figure 2009093703
〔実施例4(1)〕Chlorella kessleriからの高温処理によるスターチを含む有機物の混合溶液のアミラーゼとリパーゼによる分解物の調製
実施例3(2)にて調製した215℃の高温処理した藻体破砕液80 mLのpHを1N HClを用いて6.0に調整した後、400 Uのアミログルコシダーゼ単独(シグマ-アルドリッチ社A-9228)もしくは同量のアミログルコシダーゼと1000Uのリパーゼ(シグマ-アルドリッチ社 L1754)両酵素 を加え、50℃にて24時間反応させた。反応終了後の各反応液を10 mLまで濃縮した後、アミログルコシダーゼ単独処理液中の残渣を遠心分離で取り除き、その上清のpHを1N NaOHを用いて7.0に調整し、15mlにメスアップした後、120℃にて20分の条件にて、オートクレーブ処理した。一方、両酵素の処理液は、1.13mLの10%Tween80水溶液を加え、60℃に加温した後、ボルテックスにて攪拌した。次に、その両酵素の処理液中の残渣を遠心分離で取り除き、その上清のpHを1N NaOHを用いて7.0に調整し、15 mLにメスアップした後、120℃、20分の条件にて、オートクレーブ処理した。各炭素源中のグルコースと脂肪酸の量を測定し、培養評価に用いた。
〔実施例4(2)〕fadRを欠損したエシェリヒア・コリL-リジン生産菌の構築
エシェリヒア・コリの脂肪酸代謝を調節する転写因子FadRはfadR遺伝子(配列番号15)によってコードされている(DiRusso, C. C. et al. 1992. J. Biol. Chem. 267: 8685-8691)。本遺伝子破壊の親株は、エシェリヒア・コリのL-リジン生産株として、国際特許公報WO2006/078039に記載のWC196ΔcadAΔldcC株を用いた。
脂肪酸代謝を調節する転写因子をコードするfadR遺伝子の欠失は、DatsenkoとWannerによって最初に開発された「Red-driven integration」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A. and Wanner, B. L. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97: 6640-6645)とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., and Gardner, J. F. 2002. J. Bacteriol. 184: 5200-5203)によって行った。「Red-driven integration」によれば、目的とする遺伝子の一部を合成オリゴヌクレオチドの5'側に、抗生物質耐性遺伝子の一部を3'側にデザインした合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて得られたPCR産物を用いて、一段階で遺伝子破壊株を構築することができる。さらにλファージ由来の切り出しシステムを組み合わせることにより、遺伝子破壊株に組み込んだ抗生物質耐性遺伝子を除去することが出来る(特開2005-058227、WO2005/010175)。
PCRの鋳型として、プラスミドpMW118-attL-kan-attR(特開2005-058227、WO2005/010175)を使用した。pMW118-attL-kan-attRは、pMW118(宝バイオ社製)にλファージのアタッチメントサイトであるattL及びattR遺伝子と抗生物質耐性遺伝子であるkan遺伝子を挿入したプラスミドであり、attL-kan-attRの順で挿入されている。
このattLとattRの両端に対応する配列をプライマーの3'末端に、目的遺伝子であるfadR遺伝子の一部に対応するプライマーの5'末端に有する配列番号16及び17に示す合成オリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行った。
増幅したPCR産物をアガロースゲルで精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC株にエレクトロポレーションにより導入した。プラスミドpKD46(Datsenko, K. A. and Wanner, B. L. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 97: 6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムのRed レコンビナーゼをコードする遺伝子(γ、β、exo遺伝子)を含むλファージの合計2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459、第31088番目〜33241番目)を含む。プラスミドpKD46はPCR産物をWC196ΔcadAΔldcC株の染色体に組み込むために必要である。
エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。すなわち、100 mg/Lのアンピシリンを含んだLB培地(トリプトン10 g/L、Yeast extract 5 g/L、NaCl 10 g/L)中で30℃、一晩培養したエシェリヒア・コリWC196株を、アンピシリン(100 mg/L)とL-アラビノース(1 mM)を含んだ5 mLのLB培地で100倍希釈した。得られた希釈物を30℃で通気しながらOD600が約0.6になるまで生育させた後、100倍に濃縮し、10%グリセロールで3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できるようにした。エレクトロポレーションは70μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いて行った。エレクトロポレーション後のセルは1 mLのSOC培地(Sambrook, J. and Russell, D.W. 2001. Molecular Cloning A Laboratory Manual/Third Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)を加えて37℃で1時間培養した後、37℃でKm(カナマイシン)(40 mg/L)を含むLB寒天培地上で平板培養し、Km耐性組換え体を選択した。次に、pKD46プラスミドを除去するために、Kmを含むLB寒天培地上、42℃で2回継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性を試験し、pKD46が脱落しているアンピシリン感受性株を取得した。
カナマイシン耐性遺伝子によって識別できた変異体のfadR遺伝子の欠失を、PCRによって確認した。得られたfadR欠損株をWC196ΔcadAΔldcCΔfadR::att-kan株と名づけた。
次に、fadR遺伝子内に導入されたatt-kan遺伝子を除去するために、ヘルパープラスミド上述のpMW-intxis-ts(特開2005-058227、WO2005/010175)を使用した。pMW-intxis-tsは、λファージのインテグラーゼ(Int)をコードする遺伝子、エクシジョナーゼ(Xis)をコードする遺伝子を搭載し、温度感受性の複製能を有するプラスミドである。
上記で得られたWC196ΔcadAΔldcCΔfadR::att-kan株のコンピテントセルを常法に従って作製し、ヘルパープラスミドpMW-intxis-tsにて形質転換し、30℃で100 mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地上にて平板培養し、アンピシリン耐性株を選択した。
次に、pMW-intxis-tsプラスミドを除去するために、LB寒天培地上、42℃で2回継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性、及びカナマイシン耐性を試験し、att-kan及びpMW-intxis-tsが脱落しているfadR破壊株であるカナマイシン、アンピシリン感受性株を取得した。この株をWC196ΔcadAΔldcCΔfadR株と名づけた。
WC196LCΔfadR株をdapA、dapB、lysC及びddh遺伝子を搭載したリジン生産用プラスミドpCABD2(WO95/16042)で常法に従い形質転換し、WC196ΔcadAΔldcCΔfadR/pCABD2株を得た。
上記で作製した株を25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLB培地にてOD600が約0.6となるまで37℃にて培養した後、培養液と等量の40%グリセロール溶液を加えて攪拌した後、適当量ずつ分注、-80℃に保存し、グリセロールストックとした。
〔実施例4(3)〕Chlorella kessleri由来の高温処理によるスターチを含む有機物の混合溶液のアミラーゼとリパーゼによる分解物を炭素源としたL-リジン生産培養
L-リジン生産菌であるエシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcCΔfadR/pCABD22を、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含有するLB寒天培地にて37℃で20時間培養した。寒天培地上の細胞を掻き取り、ストレプトマイシン硫酸塩20mg/Lを含有するL-リジン生産培地4 mLを入れた太試験管に植菌し、培養温度37℃にて、24時間培養を行った。本培養においては、Chlorella kessleriが生産するスターチから調製した実施例4(1)の糖化液(グルコース量として1.33 g/L)とスターチと油脂から調製した実施例4(1)の加水分解液を炭素源とした。対照として、同濃度のグルコースを炭素源として含む培地にて培養を実施した。
(L-リジン生産培地組成)
(A区)
炭素源
藻類由来のスターチ分解物 1.33 g/L(グルコース)
(B区)
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1 g/L
Yeast Extract 2 g/L
FeSO4・7H2O 10 mg/L
MnSO4・4H2O 10 mg/L
(C区)
炭酸カルシウム 15 g/L
A区、B区は115℃にて10分間、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。室温に冷却後3者を混合して、MgSO4・7H2O溶液を終濃度1 g/Lとなるように加えた。
培養終了後、グルコースの消費をBF-5(王子計測機器)にて確認し、生育度を生菌数のカウントにより、L-リジン量は(サクラ精機)により測定した。試験管二本ずつ行った培養の結果の平均値を表4に示す。
試薬グルコースを炭素源とした場合、0.6 g/LのL-リジンを蓄積した。これと同濃度の藻類の生産したスターチ由来のグルコースからは、同等以上の0.8 g/LのL-リジンの蓄積を認め、有効な炭素源であることが示された。また、藻類の生産したスターチの糖化物をさらに油脂分解処理をすることにより1.0 g/LのL-リジンの蓄積を認めた。油脂を分解し、脂肪酸とグリセロールとすることにより利用を可能にすることで、L-リジン生産菌の炭素源の利用が向上し、L-リジン蓄積の向上が確認された。
Figure 2009093703
〔実施例5(1)〕微細藻類Neochloris oleoabundansの培養
Neochloris oleoabundans UTEX 1185株を、100 mLのModified NORO培地を入れた500 mL容三角フラスコにて30℃、光強度10,000 lux(TOMY社製培養装置CL-301)で6日間振とう培養し、これを前培養液とした。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。Modified NORO培地800 mLを入れたL容メディウムビンに、前培養液32 mLを添加し、培養温度30℃、光強度10,000 luxにて、500 mL/minでCO2濃度が3%となるように空気とCO2の混合ガスを吹き込みながら、14日間培養を行った。
[Modified NORO培地]
NaCl 29.22 g/L
KNO3 1.0 g/L
MgCl2・6H2O 1.5 g/L
MgSO4・7H2O 0.5 g/L
KCl 0.2 g/L
CaCl2・2H2O 0.2 g/L
K2HPO4 0.045 g/L
Tris(hydroxymethyl)aminomethane 2.45 g/L
Na2-EDTA 1.89 mg/L
ZnSO4・7H2O 0.087 mg/L
H3BO3 0.61 mg/L
CoCl2・6H2O 0.015 mg/L
CuSO4・5H2O 0.06 mg/L
MnCl2 0.23 mg/L
(NH4)6Mo7O24・4H2O 0.38 mg/L
Fe(III)・EDTA 3.64 mg/L
Vitamin B1 0.1 mg/L
Vitamin B12 0.5 mg/L
Biotin 0.5 mg/L
pHを1N HClにて8.0に調整後、120℃にて10分間オートクレーブ殺菌
〔実施例5(2)〕Neochloris oleoabundansからの油脂の抽出と加水分解物の調製
実施例5(1)の培養液3.6 L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、得られた藻体を用いて、下記の抽出操作を3回繰り返した。まず、藻体を100 mLのメタノール:クロロホルム=2:1に懸濁させた後に、超音波装置(Kubota社INSONATOR 201MA)により15,000W、10 分の処理を行い、細胞を破砕した。その破砕液を一晩、静置抽出した後、濾過により固形物を取り除き、抽出液を回収した。
上記で、得られた抽出液を等量に分け、それぞれの抽出液を濃縮したものを粗抽出物とした。粗抽出物を80%メタノール100 mLに懸濁させ、その懸濁液とヘキサン100mLを加えた分液ロート内で液々分配を3回行い、油脂を含むヘキサン層(油脂画分と呼ぶ)と水溶性有機物を多く含む80%メタノール層(水溶性画分と呼ぶ)を得た。粗抽出物と油脂画分を予め加温した45 mLの熱水と混合した後に、リパーゼ (シグマ-アルドリッチ社 L1754、Candida rugosa由来type VII)500Uを加え、42℃にて20時間反応させた。粗抽出物と油脂画分の反応液と水溶性画分の脂肪酸濃度とグリセロール濃度を測定し、それぞれアミノ酸発酵の炭素源として用いた。
〔実施例5(3)〕Neochloris oleoabundans由来の油脂加水分解物を炭素源としたL-リジン生産培養
L-リジン生産菌であるエシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2株のグリセロールストックを融解し、各100 μLを、25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLプレートに均一に塗布し、37℃にて20時間培養した。得られたプレートのおよそ1/8量の菌体を、25 mg/Lのストレプトマイシンを含む以下に記載の発酵培地20 mLを入れた坂口フラスコに接種し、往復振とう培養装置で37℃において24時間培養した。実施例5(2)の藻類由来の各サンプルを、蒸留水に懸濁させた後、1%濃度になるようにTween80を加え、pHを3N KOHを用いて7.0に調整し、120℃にて20分オートクレーブを行ったものを炭素源溶液として用いた。培養に用いた培地組成(終濃度)を以下に示す。藻類由来の粗抽出物の加水分解物、藻類由来の油脂画分の加水分解物、あるいは、藻類由来の水溶性画分を炭素源として用いた。それぞれの炭素源について、測定された脂肪酸濃度とグリセロール濃度の和が記載されている。また、対照として、試薬脂肪酸と試薬グリセロールを混合し、同濃度になるように調整した炭素源を用いた。微細藻類Neochloris oleoabundansより抽出した油脂の加水分解物の脂肪酸とグリセロールの分析を行い、主要な脂肪酸として含まれていたオレイン酸(純正化学社製一級)、リノール酸(ナカライテスク社製)及びパルミチン酸(ナカライテスク社製特級)を重量組成比4.2 : 3.8 : 1.0で含み、脂肪酸とグリセロールの重量組成比が11.4:1となるように調整した。
[エシェリヒア属細菌 L-リジン生産培地]
炭素源として
試薬脂肪酸+試薬グリセロール 1.09 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
藻類由来の粗抽出物の加水分解物 1.09 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
藻類由来の油脂画分の加水分解物 1.19 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
藻類由来の水溶性画分 0.04 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
のいずれか
MgSO4・7H2O 1.0 g/L
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1.0 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・7H2O 0.01 g/L
Yeast Extract 2.0 g/L
炭酸カルシウム 30 g/L
KOHでpH7.0に調整し、115℃にて10分オートクレーブを行なった。但し、炭素源、MgSO4・7H2Oは、それぞれ別殺菌した後、混合した。炭酸カルシウムは、180℃にて3時間、乾熱滅菌し別添加。
24時間後に、培養上清のL-リジンの量をバイオテックアナライザーAS310(サクラ精機)により測定した。本培地では生育度は、生菌数を計数することにより行った。フラスコ2本ずつ行った培養の結果の平均値を表5に示す。対象とした界面活性剤0.5% Tween80溶液のみを炭素源としたときのL-リジン濃度は培地由来のL-リジンであり、L-リジン生産は認められなかったが、藻類由来の粗抽出物の酵素加水分解物を用いた場合は、良好なL-リジン生産を認めた。藻類由来の粗抽出物から抽出した油脂画分の加水分解物を用いた場合は、試薬脂肪酸と試薬グリセロールの対照炭素源と同等以上のL-リジン生産を認め、さらに、脂肪酸を炭素源としてほとんど含まない粗抽出物由来の水溶性画分を用いた場合も、L-リジン生産を認めた。このことから、微細藻類の藻体から抽出された油脂画分の加水分解物のみならず、水溶性の有機物からもL-リジン生産が可能であり、藻体の粗抽出物の加水分解物から試薬脂肪酸と試薬グリセロールの対照炭素源を大きく上回るL-リジン生産が可能であることが示された。
Figure 2009093703
〔実施例6(1)〕Neochloris oleoabundansの培養
Neochloris oleoabundans UTEX 1185株を、100 mLのModified NORO培地を入れた500mL容三角フラスコにて30℃、光強度5,000 lux(TOMY社製培養装置CL-301)で6日間振とう培養し、これを前培養液とした。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。Modified NORO培地800mLを入れたL容メディウムビンに、前培養液32mLを添加し、培養温度30℃、光強度5,000 luxにて、500 mL/minにてCO2濃度が3%となるように空気とCO2の混合ガスを吹き込みながら、14日間培養を行った。
[Modified NORO培地]
NaCl 29.22 g/L
KNO3 1.0 g/L
MgCl2・6H2O 1.5 g/L
MgSO4・7H2O 0.5 g/L
KCl 0.2 g/L
CaCl2・2H2O 0.2 g/L
K2HPO4 0.045 g/L
Tris(hydroxymethyl)aminomethane 2.45 g/L
Na2-EDTA 1.89 mg/L
ZnSO4・7H2O 0.087 mg/L
H3BO3 0.61 mg/L
CoCl2・6H2O 0.015 mg/L
CuSO4・5H2O 0.06 mg/L
MnCl2 0.23 mg/L
(NH4)6Mo7O24・4H2O 0.38 mg/L
Fe(III)・EDTA 3.64 mg/L
Vitamin B1 0.1 mg/L
Vitamin B12 0.5 μg/L
Biotin 0.5 μg/L
1N HClにてpH8.0に調整後、120℃にて10分 オートクレーブ殺菌
〔実施例6(2)〕Neochloris oleoabundansからの脂質の抽出と加水分解物の調製
実施例6(1)の培養液1.8L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、その沈殿物に50 mLのメタノール:クロロホルム=2:1を加え、下記の抽出操作を3回繰り返した。まず、藻体を50 mLのメタノール:クロロホルム=2:1に懸濁させ、一晩、静置抽出した後、濾過により固形物を取り除き、抽出液を回収した。
得られた粗抽出物を80%メタノール80 mLに懸濁させ、その懸濁液とヘキサン100 mLを加えた分液ロート内で液々分配を3回行い、脂質類を含むヘキサン層(脂質画分と呼ぶ)を得た。脂質画分を予め加温した50 mLの熱水と混合した後に、リパーゼ (シグマ-アルドリッチ L1754)700Uを加え、42℃にて18時間反応させた。反応終了後、その溶液を30 mLまで濃縮し、それを15mLずつに分け、そのうちの1つを油脂加水分解物とした。更に、もう1つの油脂分解物中の糖脂質やリン脂質を加水分解するために、以下の方法によってアルカリ加水分解を行った。まず、油脂分解物の溶液が終モル濃度0.1N NaOHとなるように調製し、その溶液をホットプレート上で、95℃に加温しながら、90分間攪拌し、アルカリ加水分解処理を行った。このリパーゼ処理後、アルカリ加水分解した溶液を全脂質類加水分解物とした。
〔実施例6(3)〕Neochloris oleoabundans由来の脂質加水分解物を炭素源としたL-リジン生産培養
エシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2株のグリセロールストックを融解し、各100 μLを、25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLプレートに均一に塗布し、37℃にて20時間培養した。得られたプレートのおよそ1/40量の菌体を、太試験管の、25 mg/Lのストレプトマイシンを含む以下に記載の発酵培地の4 mLに接種し、往復振とう培養装置で37℃において24時間培養した。炭素源となる実施例6(2)の藻類由来の各サンプルは、加水分解後の溶液に、2%濃度になるようにTween80を加え、pHを3N KOHを用いて7.0に調整し、120℃にて20分オートクレーブを行ったものを炭素源溶液として用いた。培養に用いた培地組成を以下に示す。A区は炭素源であり、測定された脂肪酸濃度とグリセロール濃度の和が記載されている。
[エシェリヒア属細菌 L-リジン生産培地]
(A区)
藻類由来の油脂加水分解物 1.22 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
藻類由来の全脂質類の加水分解物 2.14 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
のいずれか
(B区)
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1.0 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・7H2O 0.01 g/L
Yeast Extract 2.0 g/L
(C区)
炭酸カルシウム 30 g/L
A区、B区は115℃ 10分、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。室温に冷却後A区、B区とC区を混合後、MgSO4・7H2O溶液を終濃度1 g/Lとなるように加えた。
藻類由来の油脂分解物は、リパーゼ単独処理であることから、脂質類中の糖脂質やリン脂質などはほとんど分解されず、油脂のみが分解された炭素源である。その一方で、藻類由来の全脂質類分解物は、リパーゼ処理後、さらにアルカリ加水分解処理を行っていることから、油脂のみならず、糖脂質やリン脂質も分解されている。それらの炭素源中の脂肪酸とグリセロール量の和を比較すると、油脂加水分解物が1.22g/Lであるのに対して、全脂質類分解物では、油脂に加え、糖脂質やリン脂質も分解され、その炭素源の量が2.14 g/Lに増加していることが確認された。これらの加水分解物を炭素源として用いて、培養を行い、24時間後の培養上清のL-リジンの量をバイオテックアナライザーAS310(サクラ精機)により測定した。本培地では生育度は、生菌数を計数することにより行った。2本ずつ行った培養の結果の平均値を表6に示す。対照とした界面活性剤0.5%Tween80溶液のみを炭素源としたときのL-リジン濃度は培地由来のL-リジンであり、L-リジン生産は認められなかったが、藻類由来の油脂分解物からは、L-リジンの生産が認めた。藻類由来の全脂質類分解物からは、良好なL-リジンの生産が認められた。このことから、微細藻類の藻体から抽出された油脂のみならず、糖脂質やリン脂質からもL-リジン生産が可能であり、藻体の全脂質類からもL-リジン生産が可能であることが示された。
Figure 2009093703
〔実施例7(1)〕微細藻類Nannochloris sp.の培養
Nannochloris sp. UTEX LB 1999株を、100 mLのModified NORO培地を入れた500 mL容三角フラスコにて30℃、光強度10,000 lux(TOMY社製培養装置CL-301)で6日間振とう培養し、これを前培養液とした。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。Modified NORO培地800 mLを入れた1L容メディウムビンに、前培養液32mLを添加し、培養温度30℃、光強度10,000 luxにて、500 mL/minでCO2濃度が3%となるように空気とCO2の混合ガスを吹き込みながら、14日間培養を行った。
〔実施例7(2)〕Nannochloris sp.からの油脂の抽出と加水分解物の調製
実施例7(2)の培養液3.6 L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、得られた藻体を用いて、下記の抽出操作を3回繰り返した。まず、藻体を100 mLのメタノール:クロロホルム=2:1に懸濁させた後に、超音波装置(Kubota社INSONATOR 201MA)により15,000Wにて10分間処理を行い、細胞を破砕した。その破砕液を一晩静置抽出した後、濾過により固形物を取り除き、抽出液を回収した。得られた抽出液を濃縮した後、80%メタノール100 mLに懸濁させ、その懸濁液とヘキサン100 mLを加えた分液ロート内で液々分配を3回行い、油脂を含むヘキサン層(油脂画分)と水溶性有機物を多く含む80%メタノール層(水溶性画分)を得た。次に、油脂画分を予め加温した40 mLの熱水に懸濁させた後に、500Uのリパーゼ (シグマ L1754)を加え、42℃にて20時間反応させた。その反応液と水溶性画分の脂肪酸濃度とグリセロール濃度を測定し、それぞれをアミノ酸発酵の炭素源として用いた。
〔実施例7(3)〕Nannochloris sp.由来の油脂加水分解物を炭素源としたL-リジン生産培養
エシェリヒア・コリWC196ΔcadAΔldcC/pCABD2株のグリセロールストックを融解し、各100 μLを、25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLプレートに均一に塗布し、37℃にて20時間培養した。得られたプレートのおよそ1/8量の菌体を、25 mg/Lのストレプトマイシンを含む以下に記載の発酵培地20 mLを入れた坂口フラスコに接種し、往復振とう培養装置で37℃において16もしくは20時間培養した。実施例7(2)の藻類由来の各サンプルを、蒸留水に懸濁させた後、1%濃度になるようにTween80を加え、pHを3N KOHを用いて7.0に調整し、120℃にて20分オートクレーブを行ったものを炭素源溶液として用いた。培養に用いた培地組成を以下に示す。藻類由来の油脂画分加水分解物あるいは藻類由来の水溶性画分を炭素源として用いた。それぞれの炭素源について測定された脂肪酸濃度とグリセロール濃度の和が記載されている。
[エシェリヒア属細菌 L-リジン生産培地]
炭素源として
藻類由来の油脂画分の加水分解物 1.06 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
藻類由来の水溶性画分 0.00 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
のいずれか
MgSO4・7H2O 1.0 g/L
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1.0 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・7H2O 0.01 g/L
Yeast Extract 2.0 g/L
炭酸カルシウム 30 g/L
KOHでpH7.0に調整し、115℃にて10分間オートクレーブを行なった。但し、炭素源、MgSO4・7H2Oは、それぞれ別殺菌した後、混合した。炭酸カルシウムは、180℃ 3時間、乾熱滅菌し別添加。
培養終了後に、培養上清のL-リジンの量をバイオテックアナライザーAS310(サクラ精機)により測定した。本培地では生育度は、生菌数を計数することにより行った。フラスコ2本ずつ行った培養の結果の平均値を表7に示す。対象とした界面活性剤0.5% Tween80溶液のみを炭素源としたときのL-リジン濃度は培地由来のL-リジンであり、L-リジン生産は認められなかったが、Nannochloris sp.由来の油脂画分の加水分解物を用いた場合は、良好なL-リジン生産を認めた。また、脂肪酸を炭素源として含まない水溶性有機物を用いた場合も、L-リジン生産を認めた。
Figure 2009093703
〔実施例8(1)〕Nannochloris sp.からの粗有機物の抽出と油脂の加水分解物の調製
実施例7(1)と同様にして培養したNannochloris sp. UTEX LB 1999株の培養液1.2L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、得られた藻体を用いて、下記の抽出操作を3回繰り返した。まず、藻体を100mLのメタノール:クロロホルム=2:1に懸濁させた後に、超音波装置(Kubota社INSONATOR 201MA)により15,000Wにて10分間処理を行い、細胞を破砕した。その破砕液を一晩静置抽出した後、濾過により固形物を取り除き、抽出液を回収し、濃縮した。次に、予め加温した40 mLの熱水に懸濁した後、リパーゼ (シグマ-アルドリッチ社 L1754)500Uを加え、42℃にて20時間反応させた。その反応液の脂肪酸濃度とグリセロール濃度を測定し、それぞれをアミノ酸発酵の炭素源として用いた。
〔実施例8(2)〕Nannochloris sp.由来の粗有機物を炭素源としたL-リジン生産培養
エシェリヒア・コリWC196LC/pCABD2株のグリセロールストックを融解し、各100μLを、25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLプレートに均一に塗布し、37℃にて20時間培養した。得られたプレートのおよそ1/8量の菌体を、25 mg/Lのストレプトマイシンを含む以下に記載の発酵培地20 mLを入れた坂口フラスコに接種し、往復振とう培養装置で37℃において16もしくは20時間培養した。炭素源となる実施例8(1)の藻類由来の各サンプルは、蒸留水に懸濁させた後、1%濃度になるようにTween80を加え、pHを3N KOHを用いて7.0に調整し、120℃にて20分オートクレーブを行ったものを炭素源溶液として用いた。培養に用いた培地組成を以下に示す。炭素源として用いた藻類由来の粗抽出物の加水分解物について測定された脂肪酸濃度とグリセロール濃度の和が記載されている。
[エシェリヒア属細菌 L-リジン生産培地]
藻類由来の粗抽出物の加水分解物 0.37 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
MgSO4・7H2O 1.0 g/L
(NH4)2SO4 24 g/L
KH2PO4 1.0 g/L
FeSO4・7H2O 0.01 g/L
MnSO4・7H2O 0.01 g/L
Yeast Extract 2.0 g/L
炭酸カルシウム 30 g/L
KOHでpH7.0に調整し、115℃にて10分オートクレーブを行なった。但し、炭素源、MgSO4・7H2Oは、それぞれ別殺菌した後、混合した。炭酸カルシウムは、180℃ にて3時間、乾熱滅菌し別添加。
培養終了後に、培養上清のL-リジンの量をバイオテックアナライザーAS310(サクラ精機)により測定した。本培地では生育度は、生菌数を計数することにより行った。フラスコ2本ずつ行った培養の結果の平均値を表8に示す。対象とした界面活性剤0.5% Tween80溶液のみを炭素源としたときのL-リジン濃度は培地由来のL-リジンであり、L-リジン生産は認められなかったが、Nannochloris sp.由来の粗抽出物の加水分解物から、L-リジン生産を認めた。
Figure 2009093703
〔実施例9(1)〕珪藻Thalassiosira pseudonana UTEX LB FD2株の培養
Thalassiosira pseudonana UTEX LB FD2株を、500 mLのF/2培地を入れた1L容メディウムビンにて、培養温度25℃、光強度7,000 luxにて、200 mL/minでCO2濃度が1%となるように空気とCO2の混合ガスを吹き込みながら、3日間培養し、これを前培養液とした。F/2培地の海水成分としては、人工海水であるアクアマリンS(八洲薬品 社(YASHIMA PURE CHEMICALS)製)を用いた。F/2培地800 mLを入れた1L容メディウムビンに、前培養液32mLを添加し、培養温度25℃、光強度7,000 luxにて、200 mL/minでCO2濃度が1%となるように空気との混合ガスを吹き込みながら、7日間培養を行った。尚、光源には、蛍光灯からの白色光を用いた。
(F/2培地)
NaNO3 75 mg/L
NaH2PO4・H2O 5 mg/L
Na2SiO3・9H2O 20 mg/L
FeCl3・6H2O 6.4 mg/L
MnSO4・H2O 0.304 mg/L
ZnSO4・7H2O 0.046 mg/L
Na2MoO4・2H2O 14.6 μg/L
CuCl2・2H2O 13.6 μg/L
Na2EDTA・2H2O 8.8 mg/L
CoCl2・6H2O 23.8 μg/L
Vitamin B12 0.135 mg/L
Biotin 0.025 mg/L
Vitamin B1 1.1 mg/L
アクアマリンS(人工海水) 40 g/L
120℃にて10分 オートクレーブ殺菌
〔実施例9(2)〕Thalassiosira pseudonanaからの粗有機物の抽出と加水分解物の調製
実施例9(1)の培養液1.8L分の藻体を遠心分離にて沈殿させ、その沈殿物に50 mLのメタノール:クロロホルム=2:1を加え、下記の抽出操作を3回繰り返した。まず、藻体を50mLのメタノール:クロロホルム=2:1に懸濁させ、一晩、静置抽出した後、濾過により固形物を取り除き、抽出液を回収した。
得られた抽出液を濃縮した後、40 mLの熱水に懸濁させた後に、リパーゼ (シグマ L1754)500Uを加え、42℃にて18時間反応させた。その反応液の脂肪酸濃度とグリセロール濃度を測定し、それぞれをアミノ酸発酵の炭素源として用いた。
〔実施例9(3)〕Thalassiosira pseudonana由来の油脂加水分解物を炭素源としたL−リジン生産培養
エシェリヒア・コリWC196LC/pCABD2株のグリセロールストックを融解し、各100 μLを、25 mg/Lのストレプトマイシンを含むLプレートに均一に塗布し、37℃にて20時間培養した。得られたプレートのおよそ1/40量の菌体を、太試験管の、25 mg/Lのストレプトマイシンを含む以下に記載の発酵培地の4 mLに接種し、往復振とう培養装置で37℃において24時間培養した。炭素源となる実施例9(2)の藻類由来の各サンプルは、加水分解後の溶液に、2%濃度になるようにTween80を加え、pHを3N KOHを用いて7.0に調整し、120℃、20分オートクレーブを行ったものを炭素源溶液として用いた。培養に用いた培地組成を以下に示す。A区は炭素源であり、測定された脂肪酸濃度とグリセロール濃度の和が記載されている。
[エシェリヒア属細菌 L-リジン生産培地]
[A区]
藻類由来の粗抽出物の加水分解物 1.09 g/L(脂肪酸濃度+グリセロール濃度)
[B区]
(NH4)2SO4 24g/L
KH2PO4 1.0g/L
FeSO4・7H2O 0.01g/L
MnSO4・7H2O 0.01g/L
Yeast Extract 2.0g/L
[C区]
炭酸カルシウム 30g/L
A区、B区は115℃にて10分、オートクレーブ殺菌し、C区は180℃にて3時間、乾熱滅菌した。室温に冷却後A区、B区とC区を混合後、MgSO4・7H2O溶液を終濃度1 g/Lとなるように加えた。
培養終了後に、培養上清のL-リジンの量をバイオテックアナライザーAS310(サクラ精機)により測定した。本培地では生育度は、生菌数を計数することにより行った。2本ずつ行った培養の結果の平均値を表9に示す。対照とした界面活性剤0.5% Tween80溶液のみを炭素源としたときのL-リジン濃度は培地由来のL-リジンであり、L-リジン生産は認められなかったが、Thalassiosira pseudonana由来の粗抽出物の加水分解物から、良好なL-リジン生産を認めた。
Figure 2009093703
〔配列表の説明〕
配列番号1:Bacillus subtilis由来 LipA遺伝子の塩基配列
配列番号2:Bacillus subtilis由来 LipAのアミノ酸配列
配列番号3:Burkholderia glumae由来LipA遺伝子の塩基配列
配列番号4:Burkholderia glumae由来LipAのアミノ酸配列
配列番号5:Pseudomonas aeruginosa 由来LipA遺伝子の塩基配列
配列番号6:Pseudomonas aeruginosa 由来LipAのアミノ酸配列
配列番号7:Staphylococcus aureus由来リパーゼ遺伝子の塩基配列
配列番号8:Staphylococcus aureus由来リパーゼのアミノ酸配列
配列番号9:Candida antarctica由来リパーゼ遺伝子の塩基配列
配列番号10:Candida antarctica由来リパーゼのアミノ酸配列
配列番号11:Candida rugosa由来リパーゼ遺伝子lip1の塩基配列
配列番号12:Candida rugosa由来リパーゼLIP1のアミノ酸配列
配列番号13:Candida rugosa由来リパーゼ遺伝子lip2の塩基配列
配列番号14:Candida rugosa由来リパーゼLIP2のアミノ酸配列
配列番号15:Eschrichia coli転写因子遺伝子fadRの塩基配列
配列番号16:fadR増幅用プライマー
配列番号17:fadR増幅用プライマー
産業上の利用の可能性
効率よくL-アミノ酸を製造できる。特に、微細藻類由来の炭素源を使用することにより、より安価にL-アミノ酸を製造できる。

Claims (34)

  1. L-アミノ酸生産能を有する細菌を、微細藻類の処理物を含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、該培養物からL-アミノ酸を採取することを特徴とするL-アミノ酸の製造法であって、該処理物が、前記細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進するものである、L−アミノ酸の製造法。
  2. 前記処理物が、(1)該微細藻類の培養物の破砕物、(2)該微細藻類に由来する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、(3)該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物である請求項1記載の方法。
  3. 前記処理物が、スターチを産生する微細藻類の藻体破砕物、又はスターチを含むその抽出物もしくは該抽出物の分画物を加水分解して得られる糖化物である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記糖化物が、微細藻類の藻体破砕物又はスターチを含むその分画物から、アミラーゼを用いた酵素反応により得られた反応産物である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記アミラーゼがグルコアミラーゼである請求項4に記載の方法。
  6. 前記処理物が、油脂を産生する微細藻類の藻体破砕物、又は油脂を含むその抽出物もしくは該抽出物の分画物を加水分解して得られる加水分解物である、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 前記加水分解物が、微細藻類の藻体破砕物又は油脂を含むその分画物から、リパーゼを用いた酵素反応により得られた反応産物である、請求項6記載の方法。
  8. 前記加水分解物が乳化処理を施されたものであることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記微細藻類の破砕法が高温処理であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記微細藻類の破砕法が100℃以上の温度にて処理することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記微細藻類が緑色植物門、不等毛植物門に属する藻類である請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記微細藻類が緑藻綱、トレボキシア藻綱、又は珪藻綱に属する藻類である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記微細藻類が緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記細菌が腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記腸内細菌科に属する細菌がエシェリヒア・コリである請求項14に記載の方法。
  16. 前記L-アミノ酸がL-リジン、L-スレオニン、L-グルタミン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上のL-アミノ酸である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記L-アミノ酸がL-リジンであり、前記細菌がジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ、アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ、及び、スクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されている、及び/または、リジンデカルボキシラーゼの活性が弱化されている、請求項15に記載の方法。
  18. 前記L-アミノ酸がL-スレオニンであり、前記細菌がアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、thrオペロンにコードされるアスパルトキナーゼI、ホモセリンキナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及び、スレオニンシンターゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されている請求項15に記載の方法。
  19. 前記L-アミノ酸がL-グルタミン酸であり、前記細菌がグルタメートデヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及び、メチルクエン酸シンターゼからなる群より選択される1種または2種以上の酵素の活性が増強されている、及び/または、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの活性が弱化されている請求項15に記載の方法。
  20. 前記培地が前記処理物を炭素源として含む請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. L-アミノ酸の製造方法であって、
    (a)微細藻類を培地で培養し、該培養物を、破砕、抽出、分画及び加水分解から選ばれる1以上の方法により処理して、L-アミノ酸生産能を有する細菌によるL−アミノ酸の生産蓄積を促進する該微細藻類の処理物を調製し、
    (b)該細菌を、該微細藻類の処理物を含む培地に培養し、培養物中にL-アミノ酸を生産蓄積させ、
    (c)該培養物からL-アミノ酸を採取することを特徴とするL-アミノ酸の製造法。
  22. 前記処理物が、(1)該微細藻類の培養物の破砕物、(2)該微細藻類に由来する有機物の混合物を含む、該破砕物の抽出物もしくは分画物、又は、(3)該破砕物、該抽出物もしくは該分画物の加水分解物である請求項21記載の方法。
  23. 前記破砕が、高温処理、有機溶媒処理、煮沸処理、強アルカリ処理からなる群から選択される1以上の方法によって行われる請求項21記載の方法。
  24. 前記処理物調製工程が、スターチを産生する微細藻類を破砕及び/または抽出・分画し、その処理物を加水分解することによって糖化する工程を含む請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記糖化する工程が、アミラーゼを用いた酵素反応を施すことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  26. 前記アミラーゼがグルコアミラーゼである請求項25に記載の方法。
  27. 前記処理物調製工程が、油脂を産生する微細藻類を破砕及び/または抽出・分画し、その油処理物を加水分解する工程を含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記加水分解工程が、リパーゼを用いた酵素反応を施すことを特徴とする、請求項27記載の方法。
  29. 前記加水分解物が乳化処理を施されたものであることを特徴とする請求項27または28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記微細藻類が緑色植物門、不等毛植物門に属する藻類である請求項21〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記微細藻類が緑藻綱、トレボキシア藻綱、又は珪藻綱に属する藻類である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記微細藻類が緑藻綱(Chlorophyceae)に属する藻類である、請求項31に記載の方法。
  33. 前記細菌が腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌である請求項21〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記腸内細菌科に属する細菌がエシェリヒア・コリである請求項33に記載の方法。
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