JP2006340603A - L−グルタミン酸の製造法 - Google Patents

L−グルタミン酸の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】コリネ型細菌を用いたL−グルタミン酸の製造において、L−グルタミン酸生産性を向上させる新規な技術を提供する。
【解決手段】L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を培地に培養し、L−グルタミン酸を培養物中に生成蓄積させ、該培養物よりL−グルタミン酸を採取する、L−グルタミン酸の製造法において、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されたコリネ型細菌を用いる。(A)特定のアミノ酸配列を有するタンパク質。(B)該特定のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌に導入したときに、L−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵工業に関し、詳しくは、L−グルタミン酸の製造法及びそれに用いる細菌に関する。L−グルタミン酸は調味料原料等として広く用いられている。
【0002】
【従来の技術】
従来、L−グルタミン酸は、L−グルタミン酸生産能を有するブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属に属するコリネ型細菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのコリネ型細菌は、生産性を向上させるために、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株が用いられている。
【0003】
また、組換えDNA技術によりL−グルタミン酸の生合成酵素を増強することによって、L−グルタミン酸の生産能を増加させる種々の技術が開示されている。
さらに、酸性条件下でL−グルタミン酸生産能を有する微生物を培養液中に蓄積するL−グルタミン酸を析出させながら発酵を行う方法が開発されている。従来、通常のL−グルタミン酸生産菌は酸性条件下では生育できないため、L−グルタミン酸発酵は中性で行われていたが、酸性条件下でL−グルタミン酸生産能を有する微生物として見い出されたエンテロバクター・アグロメランスを、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整された液体培地で培養することによって、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることができる(特許文献1)。
【0004】
ところで、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の全ゲノム配列が決定され、公開されている(非特許文献1)。ORF1554と相同性の高い推定上のORFが知られているが(非特許文献2)、その機能は知られていない。
【0005】
【特許文献1】
欧州特許出願公開第1078989号明細書
【非特許文献1】
DDBJ/EMBL/GenBank accession # BA000036
【非特許文献2】
DDBJ/EMBL/GenBank accession # AP005277-302
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、コリネ型細菌を用いたL−グルタミン酸の製造において、L−グルタミン酸生産性を向上させる新規な技術を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、コリネ型細菌の耐酸性に関与する遺伝子に関する研究を行う過程で、それらのうちORF1554と名付けられた機能未知の遺伝子産物の活性を上昇させることにより、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0008】
(1)L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を培地に培養し、L−グルタミン酸を培養物中に生成蓄積させ、該培養物よりL−グルタミン酸を採取する、L−グルタミン酸の製造法において、前記細菌は、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されていることを特徴とする方法。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
(2)前記タンパク質が、下記(a)又は(b)に示すDNAによりコードされる(1)の方法。
(a)配列番号1の塩基番号749〜1414からなる塩基配列を有するDNA。
(b)配列番号1の塩基番号749〜1414からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(3)前記細菌は、前記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は前記細菌細胞内の前記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子の発現が増強するように同遺伝子の発現調節配列を改変することにより、細胞内の前記タンパク質の活性が上昇したことを特徴とする(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記タンパク質は、配列番号2の81位のグルタミン酸残基がグリシン残基に置換されたアミノ酸配列を有する(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記細菌は、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼを欠損していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されたコリネ型細菌。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<1>本発明のコリネ型細菌
本発明のコリネ型細菌は、L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されたコリネ型細菌である。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
【0011】
以下、前記(A)又は(B)のタンパク質を「ORF1554産物」、同タンパク質をコードするDNAを「ORF1554」ということがある。また、ORF1554に加え、同ORFに隣接するプロモーター等の発現調節配列を含めて、便宜上「ORF1554」と呼ぶことがある。
【0012】
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類された細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
【0013】
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
【0014】
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067, AJ12418(FERM BP-2205)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス ATCC15354
【0015】
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲を受けることができる。すなわち、各菌株毎に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることができる。各菌株に対応する登録番号はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、AJ12340株は、1987年10月27日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター)(〒305-5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM BP-1539の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。また、AJ12418株は、1989年1月5日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-2205の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。
【0016】
本発明において、「L−グルタミン生産能」とは、本発明のコリネ型細菌を培養したときに、培地中にL−グルタミンを蓄積する能力をいう。このL−グルタミン生産能は、コリネ型細菌の野生株の性質として有するものであってもよく、育種によって付与または増強された性質であってもよい。
【0017】
育種によってL−グルタミン生産能を付与または増強するには、6-ジアゾ-5-オキソ-ノルロイシン耐性を付与する方法(特開平3-232497)、プリンアナログ耐性および/またはメチオニンスルホキサイド耐性を付与する方法(特開昭61-202694)、α-ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭56-151495)、グルタミン酸を含有するペプチドに耐性を付与する方法(特開平2-186994)などが挙げられる。
【0018】
L−グルタミン生産能を有するコリネ型細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11573(FERM P-5492) 特開昭56-151495公報参照
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12210(FERM P-8123) 特開昭61-202694公報参照
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12212(FERM P-8123) 特開昭61-202694公報参照
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12418(FERM-BP2205) 特開平2-186994公報参照
ブレビバクテリウム・フラバムDH18(FERM P-11116) 特開平3-232497公報参照
コリネバクテリウム・メラセコラDH344(FERM P-11117) 特開平3-232497公報参照
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11574(FERM P-5493) 特開昭56-151495公報参照
【0019】
「細胞内のORF1554産物の活性が上昇するように改変された」とは、細胞当たりの前記活性が非改変株、例えば野生型のコリネ型細菌のそれよりも高くなったことをいう。例えば、細胞当たりのORF1554産物分子の数が増加した場合や、ORF1554産物分子当たりの活性が上昇した場合などが該当する。また、比較対象となる野生型のコリネ型細菌とは、例えばブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869である。コリネ型細菌のORF1554産物の活性が上昇すると、同コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能が向上する。本発明において、「コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性」とは、このようなORF1554産物が持つ活性をいう。具体的には、ORF1554産物を野生株又は非改変株よりも過剰に発現するように改変されたコリネ型細菌の菌株を培地で培養したときに、野生株又は非改変株よりも、L−グルタミン酸の培地中の蓄積量が多いか、又は、L−グルタミン酸の生産速度が高ければ、前記改変株はL−グルタミン酸生産能が向上しているといえる。
【0020】
コリネ型細菌細胞内のORF1554産物活性の増強は、ORF1554の発現を増強することによって達成される。同遺伝子の発現量の増強は、ORF1554のコピー数を高めることによって達成される。例えば、ORF1554断片を、該細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これをL−グルタミン生産能を有する宿主に導入して形質転換すればよい。また、野生型のコリネ型細菌に上記組換えDNAを導入して形質転換株を得、その後当該形質転換株にL−グルタミン生産能を付与してもよい。
【0021】
ORF1554は、コリネ型細菌由来の遺伝子およびエシェリヒア属細菌等の他の生物由来の遺伝子のいずれも使用することができる。このうち、発現の容易さの観点からは、コリネ型細菌由来の遺伝子が好ましい。
【0022】
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのORF1554の配列は、本発明によって明らかになっており(配列番号1)、コリネバクテリウム・グルタミカムのORF1554のホモログと推定される遺伝子も、既に配列が明らかにされているので(DDBJ/EMBL/GenBank accession # AP005277-302)、それらの塩基配列に基づいて作製したプライマー、例えば配列番号9及び10に示すプライマーを用いて、コリネ型細菌の染色体DNAを鋳型とするPCR法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)参照)によって、ORF1554とその隣接領域を取得することができる。他の微生物のORF1554のホモログも、同様にして取得され得る。
【0023】
染色体DNAは、DNA供与体である細菌から、例えば、斎藤、三浦の方法(H. Saito and K.Miura, Biochem.B iophys. Acta, 72, 619 (1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)等により調製することができる。
【0024】
PCR法により増幅されたORF1554は、エシェリヒア・コリ及び/またはコリネ型細菌の細胞内において自律複製可能なベクターDNAに接続して組換えDNAを調製し、これをエシェリヒア・コリに導入しておくと、後の操作がしやすくなる。エシェリヒア・コリ細胞内において自律複製可能なベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, RSF1010, pBR322, pACYC184, pMW219等が挙げられる。
【0025】
コリネ型細菌で機能するベクターとは、例えばコリネ型細菌で自律複製できるプラスミドである。具体的に例示すれば、以下のものが挙げられる。
pAM330 特開昭58-67699号公報参照
pHM1519 特開昭58-77895号公報参照
【0026】
また、これらのベクターからコリネ型細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力を持つDNA断片を取り出し、前記エシェリヒア・コリ用のベクターに挿入すると、エシェリヒア・コリ及びコリネ型細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。
【0027】
このようなシャトルベクターとしては、以下のものが挙げられる。尚、それぞれのベクターを保持する微生物及び国際寄託機関の受託番号をかっこ内に示した。
pAJ655 エシェリヒア・コリAJ11882(FERM BP-136)
コリネバクテリウム・グルタミクムSR8201(ATCC39135)
pAJ1844 エシェリヒア・コリAJ11883(FERM BP-137)
コリネバクテリウム・グルタミクムSR8202(ATCC39136)
pAJ611 エシェリヒア・コリAJ11884(FERM BP-138)
pAJ3148 コリネバクテリウム・グルタミクムSR8203(ATCC39137)
pAJ440 バチルス・ズブチリスAJ11901(FERM BP-140)
pHC4 エシェリヒア・コリAJ12617(FERM BP-3532)
【0028】
これらのベクターは、寄託微生物から次のようにして得られる。対数増殖期に集められた細胞をリゾチーム及びSDSを用いて溶菌し、30000×gで遠心分離して溶解物から得た上澄液にポリエチレングリコールを添加し、セシウムクロライド−エチジウムブロマイド平衡密度勾配遠心分離により分別精製する。
【0029】
また、後記実施例に示すプラスミドpSFK6(特開2000-262288号公報、米国特許第6,303,383号)及びpSAC4(米国特許第5,846,790号)も、シャトルベクターとして用いることができる。
【0030】
ORF1554とコリネ型細菌で機能するベクターを連結して組換えDNAを調製するには、ORF1554の末端に合うような制限酵素でベクターを切断する。連結はT4DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて行うのが普通である。
【0031】
上記のように調製した組換えDNAをコリネ型細菌に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、電気パルス法(特開平2-207791号公報)によっても、コリネ型細菌の形質転換を行うことができる。
【0032】
ORF1554のコピー数を高めることは、ORF1554をコリネ型細菌の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。コリネ型細菌の染色体DNA上にORF1554を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、ORF1554をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
【0033】
ORF1554産物活性の増強は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上またはプラスミド上のORF1554のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、国際公開WO00/18935に開示されているように、ORF1554のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換または改変によりORF1554の発現が強化され、ORF1554産物活性が増強される。これら発現調節配列の改変は、ORF1554のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
【0034】
発現調節配列の置換は、例えば、温度感受性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様にして行うことができる。コリネ型酸菌の温度感受性プラスミドとしては、p48K及びpSFKT2(以上、特開2000-262288号公報参照)、pHSC4(フランス特許公開1992年2667875号公報、特開平5-7491号公報参照)等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いるORF1554は、コードされるタンパク質のORF1554産物活性が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むORF1554産物をコードするものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には2から30個、好ましくは、2から20個、より好ましくは2から10個である。
上記のようなアミノ酸の置換を有するORF1554産物として具体的には、例えば、配列番号2の81位のグルタミン酸残基がグリシン残基に置換されたアミノ酸配列を有するORF1554産物が挙げられる。
【0036】
上記のようなORF1554産物と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むように、ORF1554の塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、変異処理前のDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び変異処理前のDNAを保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
【0037】
上記のような変異を有するDNAを、適当な細胞で発現させ、発現産物の活性を調べることにより、ORF1554産物と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。また、変異を有するORF1554産物をコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち塩基番号749〜1414からなる塩基配列又はその一部を有するプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ORF1554産物活性を有するタンパク質をコードするDNAが得られる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
【0038】
プローブとして、配列番号1の塩基配列の一部の配列を用いることもできる。そのようなプローブは、配列番号1の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、配列番号1の塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。プローブとして、300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられる。
【0039】
ORF1554産物と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAとして具体的には、配列番号2に示すアミノ酸配列と、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%、特に好ましくは90%以上の相同性を有し、かつORF1554産物活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
【0040】
また、本発明のコリネ型細菌は、ORF1554産物の活性が上昇するように改変されたこと以外に、L−グルタミン酸生合成を触媒する酵素の活性が増強されていてもよい。L−グルタミン酸生合成を触媒する酵素としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、エノラーゼ、ホスホグリセロムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ等がある。
【0041】
さらに、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または欠損していてもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、α−ケトグルタール酸デヒドロゲナーゼ(αKGDH)、イソクエン酸リアーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼ、等がある。これらの酵素の中では、αKGDHが好ましい。
【0042】
前記αKGDHは、sucA遺伝子によってコードされている。sucA遺伝子を破壊されたコリネ型細菌は、WO95/34672号国際公開パンフレット、及び特開平7-834672号公報に詳述されている。
尚、sucA遺伝子破壊株は、親株に比べて生育が悪くなる場合があるので、適当な培地を用いて生育が良好な株を選択することが好ましい。前記培地としては、例えば、CM2Bプレート(10g/Lポリペプトン、10g/Lイーストエキストラクト、5g/L NaCl、10μg/Lビオチン、20g/L寒天、pH7.0)が挙げられる。
【0043】
<2>L−グルタミン酸の製造法
上記のようにして得られるコリネ型細菌を培地で培養し、該培地中にL−グルタミンを生成蓄積せしめ、該培地からL−グルタミンを採取することにより、L−グルタミンを効率よく製造することができる。
【0044】
本発明のコリネ型細菌を用いてL−グルタミンを生産するには、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いて常法により行うことができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用される炭素源および窒素源は培養する菌株の利用可能であるものならばいずれの種類を用いてもよい。
【0045】
炭素源としては、グルコース、グリセロール、フラクトース、スクロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が使用され、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノール等のアルコール類も単独あるいは他の炭素源と併用して用いられる。
【0046】
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用される。
【0047】
有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆たん白分解物等が使用され、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。
【0048】
無機塩類としてはりん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用される。
培養は、発酵温度20〜45℃、pHを5〜9に制御し、通気培養を行う。培養中にpHが下がる場合には、炭酸カルシウムを加えるか、アンモニアガス等のアルカリで中和する。かくして10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のL−グルタミンが蓄積される。
【0049】
培養終了後の培養液からL−グルタミンを採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から菌体を除去した後に、濃縮晶析することによって採取される。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0051】
【実施例1】ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株からの耐酸性変異株の取得
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの野生株ATCC13869株を、以下の方法で変異剤N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いて変異処理した。ATCC13869株を、CM2B培地(10g/Lポリペプトン、10g/Lイーストエキストラクト、5g/L NaCl、10μg/Lビオチン、pH7.0)8mlを入れた4ml試験管2本で、660nmにおける吸光度(OD660)が約0.7になるまで振とう培養した。培養後の菌体を、50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で2回洗浄後、500μlの50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁した。この菌体懸濁液に、最終濃度が0.5μg/μlとなるようにNTGを添加し、31.5℃で10分間インキュベート後、50mM リン酸緩衝液(pH7.0)3回で洗浄、200μlの50mM リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁した。この菌体を、8ml CM2B培地に接種し、31.5℃で一晩培養し、変異処理菌体を調製した。
【0052】
上記の変異処理菌体から、耐酸性変異株を濃縮するため、S型ジャーファーメンターを用いて、酸性条件下での連続培養を行った。方法は、以下のとおりである。300mlの培地(60g/Lグルコース、1.4g/L H3PO4、750mg/L MgSO4・7H2O、15mg/L FeSO4・7H2O、1.35g/L(N量として)大豆加水分解物(「豆濃」(mameno)(味の素(株))、450μg/L ビタミンB1-HCl、450μg/Lビオチン、3μg/LビタミンB12、7.5mg/L PABA(パラアミノ安息香酸)、7.5mg/LビタミンC、500mg/L DL-メチオニン、1ml/L 消泡剤AZ-20R(日本油脂社製))に、上記の変異処理菌体を接種して31.5℃で培養した。グルコースが完全消費された後からは、フィード液(上記培地と同じ培地)を添加し、培地の液量が450mlで一定に保たれるように培養液の引き抜きをフィードと同時に行い、6日間の連続培養を行った。pH7.0で培養を開始し、6日間培養を行った。培地のpHは、培養時間の経過とともに自然に徐々に低下し、pH4.9になるまで培養した。
【0053】
上記の連続培養菌体から、耐酸性変異株のスクリーニングを行った。スクリーニングの方法は以下のとおりである。連続培養菌体を、pH5.7(KOHで調整)のMM/MES培地(20g/Lグルコース、10g/L (NH4)2SO4、1g/L KH2PO4、0.4g/L MgSO4・7H2O、10mg/L FeSO4・7H2O、10mg/L MnSO4・4-5H2O、200μg/L ビタミンB1-HCl、50μg/Lビオチン、5mg/Lニコチンアミド、1g/L NaCl、1g/Lカザミノ酸、50mg/L L−トリプトファン、30mg/L L−システイン、100mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、20g/L寒天)に、1プレートあたり約104個細胞の菌体密度となるように均一に塗り広げ、31.5℃、6日間の培養の後形成されたコロニーを取得した。野生株はpH5.7ではコロニー形成ができないため、この操作によって取得される株は、酸性下でコロニー形成が可能な耐酸性変異株と考えられる。こうして、耐酸性変異株16-1株及び16-20株を取得した。また、pH5.9の培地を使用したことと、3日間の培養を行ったこと以外は、全て同じ方法によって、耐酸性変異株15-11株を取得した。
【0054】
【実施例2】 ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム16-1株、16-20株、及び15-11株に特有の遺伝子の単離
<1>ゲノムライブラリーの作製
上記のようにして取得したブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム16-1株、16-20株、及び15-11株の各菌株から染色体DNAを調製し、制限酵素Sau3AIにより部分分解し、4〜6kbpのDNA断片を精製した。これらのDNA断片を、エシェリヒア・コリとコリネバクテリウム属細菌の双方の菌体内で自律複製可能なプラスミドベクター(pSFK6)のBamHIサイトに挿入した。16-1株では約14000クローン、16-20株では約7000クローン、15-11株では約14000クローンからなるゲノムライブラリーを得た。
【0055】
前記pSFK6は、エシェリヒア・コリ用のベクターpHSG399(S. Takeshita et al : Gene 61,63-74(1987)参照、宝酒造(株)から購入できる)とストレプトコッカス・フェカリスのカナマイシン耐性遺伝子から作製されたプラスミドpK1と、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869より抽出したプラスミドpAM330(米国特許第4,427,773号、特開昭58-67699号公報参照)から構築されたプラスミドである(特開2000-262288号公報、米国特許第6,303,383号)。
【0056】
<2>耐酸性変異株特有の遺伝子の取得
16-1株、16-20株、及び15-11株の各々のゲノムライブラリーを、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869に導入した。プラスミドの導入には、電気パルス法(特開平2-207791)を用いた。形質転換体をpH5.7のMM/MESプレートに蒔き、31.5℃、7〜9日間の培養の後、コロニーを形成したクローンを取得した。各変異株ゲノムライブラリーについて数十万クローンの検索を行った。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869は、pH5.7以下のMM/MESプレートでのコロニー形成ができないことから、取得されたクローンはプラスミド上の遺伝子によって耐酸性が付与されたものであると考えられる。このようなクローンが4種類(クローン#D5、クローン#F1、クローン#F2、クローン#H87)取得された。
【0057】
上記各クローン#D5、#F1、#F2、及び#H87が持つプラスミド上のゲノムDNA断片の塩基配列の一部を、各々順に配列番号1、3、5、7に示す。これらの配列中には、各々オープンリーディングフレーム(ORF)(ORF1554:配列番号1の塩基番号749〜1414、ORF1249:配列番号3の塩基番号250〜2748、ORF39:配列番号5の塩基番号55〜1212、ORF1059:配列7の塩基番号595〜1644)が含まれている。各ORFがコードするアミノ酸配列を、配列番号2、4、6及び8に示す。尚、配列番号1の塩基番号1449〜1455、配列番号3の塩基番号3317〜3326、配列番号5の塩基番号1〜7は、pHSG399に由来する配列である。
【0058】
配列番号1、3、5及び7の配列を、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869のゲノム配列上の相当する配列と比較したところ、ORF1249、ORF39、ORF1059には耐酸性変異株特有の変異点は認められなかったが、ORF1554には、耐酸性変異株16-1に特有の変異点が認められた。配列番号1に示す変異型ORF1554では、990位の塩基が「A」であるのに対し、野生型では「G」である。その結果、変異型ORF1554産物の予想アミノ酸配列では、配列番号2の81位がGluであるのに対し、野生型ではGlyである。以下、両者を区別するために、野生型をORF1554、変異型をORF1554*と表記することがある。
【0059】
<3>ORF1554、ORF1249、ORF39、ORF1059のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株への導入
配列番号1に示す塩基配列を有するDNA断片(両末端にXbaI認識配列を有している)を、エシェリヒア・コリとコリネバクテリウム属細菌の双方の菌体内で自律複製可能なプラスミドベクターpSAC4のXbaIサイトに挿入し、プラスミドpD5-2Aを作製した。なおpSAC4は、コリネ型細菌で自律複製可能なプラスミドpHM1519(Miwa, k. et al., Agric. Biol. Chem., 48 (1984) 2901-2903)を制限酵素BamHIおよびKpnIで消化して得られる複製起点(特開平5-7491号公報)を、平滑末端化した後、SalIリンカー(宝酒造(株)製)を用いて、エシェリヒア・コリ用ベクターpHSG399のSalIサイトに挿入することにより得られたプラスミドである。
【0060】
配列番号2に示す塩基配列を有するDNA断片(3’末端にBglII、5’末端にKpnIの認識配列を有している)を、pSAC4のBamHIサイトとKpnIサイトに連結し、プラスミドpF1-1Bを作製した。
【0061】
配列番号3に示す塩基配列を有するDNA断片(両末端にXbaI認識配列を有している)を、pSAC4のXbaIサイトに挿入し、プラスミドpF2-2Aを作製した。
配列番号4に示す塩基配列を有するDNA断片(両末端にNaeI認識配列を有している)を、pSAC4のSmaIサイトに挿入し、プラスミドpH87-4Aを作製した。
【0062】
以上の4種のプラスミドを、各々ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869に導入した。各形質転換株を、酸性pHに調整したMM/MESプレートで、31.5℃、5日間培養し、コロニー形成を調べた。結果を表1に示す。その結果、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869にpSAC4を導入したATCC13869/pSAC4株(対照株)では、pH5.7ではコロニー形成ができないが、上記プラスミドpD5-2A、pF1-1B、pF2-2Aがそれぞれ導入されたATCC13869/pD5-2A株、ATCC13869/pF1-1B株、ATCC13869/pF2-2A株では、コロニー形成が可能であった。また、pH6.0においては、ATCC13869/pSAC4株(対照株)に比べATCC13869/pH87-4Aで大きなコロニーを形成した。このように、ORF1554、ORF1249、ORF39、ORF1059を導入することで、耐酸性を付与することができることがわかった。
【0063】
また、野生型ORF1554を搭載したプラスミドpD5WT-1(後述する)を、ATCC13869に導入した場合にも、ORF1554*とほぼ同等の耐酸性を示した(表1)。
【0064】
【表1】
Figure 2006340603
【0065】
<4>野生型ORF1554を搭載したプラスミドの作製
配列番号1の塩基配列を参考に、配列番号9及び10に示すプライマーを設計し、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869から、野生型ORF1554の上流約750bpと下流約30bpを含む領域を、PCRにより取得した。PCRは、pyrobest DNA polymerase(宝酒造(株))を用い、94℃ 5分の後、98℃ 5秒、65℃ 10秒、72℃ 60秒を30サイクル行った。取得した約1.5kbのPCR産物を、両プライマー上に設計しておいたXbaIサイトで切断し、プラスミドベクターpSAC4のXbaIサイトに挿入し、pD5WT-1を作製した。
【0066】
<5>ORF1554、ORF1554*遺伝子増幅株によるL−グルタミン酸生産
ORF1554、ORF1554*について、遺伝子増幅によるL−グルタミン酸生産への効果を調べるため、プラスミドpD5WT-1(ORF1554)及びpD5-2A(ORF1554*)をブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869由来のsucA遺伝子欠損株L30-2株に導入し、ORF1554の増幅株L30-2/pD5WT-1株、及びORF1554*の増幅株L30-2/pD5-2A株を作製した。プラスミドの導入は電気パルス法(特開平2-207791号公報)によって行った。なお、L30-2株は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869のsucA遺伝子欠損株ΔS株(WO95/34672号国際公開パンフレット)から、CM2Bプレート(10g/Lポリペプトン、10g/Lイーストエキストラクト、5g/L NaCl、10μg/Lビオチン、20g/L寒天、pH7.0)上で良好なコロニー形成をする株として単離した。
【0067】
取得したORF1554、ORF1554*増幅株をCMDXプレート(5g/Lグルコース、10g/Lペプトン、10g/Lイーストエキストラクト、1g/L KH2PO4、0.4g/L MgSO4・7H2O、10mg/L FeSO4・7H2O、10mg/L MnSO4・4-5H2O、3g/L尿素、2g/L(N量として)「豆濃」、20g/L寒天、5μg/Lクロラムフェニコール、pH7.5)で30℃、一晩培養後、1/6プレート分の菌体を20mlの培地(30g/Lグルコース、15g/L (NH4)2SO4、0.4g/L MgSO4・7H2O、1mg/L FeSO4・7H2O、1mg/L MnSO4・4-5H2O、200μg/LビタミンB1、200μg/Lビオチン、0.48g/L(N量として)「豆濃」、1g/フラスコ CaCO3、5μg/Lクロラムフェニコール、pH8.0)の入ったフラスコに接種し、30℃、20時間の振とう培養の後、バイオテックアナライザー(サクラ精機)を使用して、培地中のグルコース及びL−グルタミン酸の濃度を測定した。図1に、消費グルコースに対するL−グルタミン酸の収率と最終OD(620nm、培養液を51倍に希釈して測定)を示した。ORF1554及びORF1554*の増幅は、いずれもブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのグルタミン酸収率を約4%向上させることがわかった。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのL−グルタミン酸生産能を向上させることができる。
【0069】
【配列表】
Figure 2006340603
Figure 2006340603
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Figure 2006340603
Figure 2006340603

【図面の簡単な説明】
【図1】 ORF1554及びORF1554*を増幅したブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムsucA欠損株の生育とL−グルタミン酸収率を示す図。

Claims (6)

  1. L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を培地に培養し、L−グルタミン酸を培養物中に生成蓄積させ、該培養物よりL−グルタミン酸を採取する、L−グルタミン酸の製造法において、前記細菌は、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されていることを特徴とする方法。
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
  2. 前記タンパク質が、下記(a)又は(b)に示すDNAによりコードされる請求項1に記載の方法。
    (a)配列番号1の塩基番号749〜1414からなる塩基配列を有するDNA。
    (b)配列番号1の塩基番号749〜1414からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  3. 前記細菌は、前記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は前記細菌細胞内の前記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子の発現が増強するように同遺伝子の発現調節配列を改変することにより、細胞内の前記タンパク質の活性が上昇したことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記タンパク質は、配列番号2の81位のグルタミン酸残基がグリシン残基に置換されたアミノ酸配列を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記細菌は、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼを欠損していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、下記(A)又は(B)に示すタンパク質の活性が上昇するように改変されたコリネ型細菌。
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、コリネ型細菌のL−グルタミン酸生産能を向上させる活性を有するタンパク質。
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