JP2008283863A - L−アミノ酸生産菌及びl−アミノ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】L−グルタミン酸を効率よく製造する。
【解決手段】L−グルタミン酸生産能を有し、gluXが不活性化するように改変したコリネ型細菌を培地で培養して、L−グルタミン酸を該培地中又は菌体内に生成蓄積させ、該培地よりL−グルタミン酸を回収することを特徴とするL−グルタミン酸の製造法。
【選択図】図3
【解決手段】L−グルタミン酸生産能を有し、gluXが不活性化するように改変したコリネ型細菌を培地で培養して、L−グルタミン酸を該培地中又は菌体内に生成蓄積させ、該培地よりL−グルタミン酸を回収することを特徴とするL−グルタミン酸の製造法。
【選択図】図3
Description
本発明は、発酵工業に関し、コリネ型細菌を利用したL−グルタミン酸を効率よく製造する方法に関する。
従来、L−グルタミン酸は、L−グルタミン酸の生産能を有するブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属に属するコリネ型細菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのコリネ型細菌は、生産性を向上させるために、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株、また遺伝子組換えによる改変株が用いられている。
これまでに遺伝子組換え技術によりL−グルタミン酸生産能が向上したコリネ型細菌として、グルタミン酸デヒドロゲナ−ゼ活性、クエン酸シンタ−ゼ、ピルビン酸カルボキシラ−ゼ活性を向上させたコリネ型細菌(特許文献1)、またα−ケトグルタル酸デヒドロゲナ−ゼ、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナ−ゼとイソクエン酸リア−ゼの活性を低下させたコリネ型細菌等が開発されていた。(特許文献2 特許文献3 )
またこれまでに、コリネバクテリウム・グルタミカムの全塩基配列が決定されており(非特許文献1)、推定orf3099個のうち、約40%は他微生物の機能公知遺伝子と相同性の低い機能未知タンパクであり、コリネ型細菌において、機能未知タンパクをコ−ドする遺伝子を欠損することによるL−グルタミン酸生産への影響は知られていなかった。
国際公開パンフレットWO00/18935号明細書
国際公開パンフレットWO95/34672号明細書
特開平01−296994号公報
Appl. Microbiol. Biotechnol. 62 (2−3), 99−109 (2003)
本発明は、L−グルタミン酸を生産する能力が向上したコリネ型細菌を提供すること、及び該細菌を用いて上記L−グルタミン酸を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本研究者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、コリネ型細菌においてgluX遺伝子を不活性化させることにより、L−グルタミン酸の生産能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、以下のとおりである。
(1) L−グルタミン酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、gluX遺伝子が不活性化するように改変されたコリネ型細菌。
(2) 染色体上のgluX遺伝子またはその発現制御領域に変異が導入されたことによりgluXの発現量が低下するように改変された(1)に記載のコリネ型細菌。
(3) 染色体上のgluX遺伝子が破壊された(1)〜(2)に記載のコリネ型細菌。
(4) (1)〜(3)に記載のコリネ型細菌を培地中で培養し、L−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、該L−グルタミン酸を培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
(1) L−グルタミン酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、gluX遺伝子が不活性化するように改変されたコリネ型細菌。
(2) 染色体上のgluX遺伝子またはその発現制御領域に変異が導入されたことによりgluXの発現量が低下するように改変された(1)に記載のコリネ型細菌。
(3) 染色体上のgluX遺伝子が破壊された(1)〜(2)に記載のコリネ型細菌。
(4) (1)〜(3)に記載のコリネ型細菌を培地中で培養し、L−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、該L−グルタミン酸を培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
本発明によれば、コリネ型細菌を用いた発酵法によるL−グルタミン酸の生産法において、L−グルタミン酸の発酵収率を向上させることが出来る。また、本発明は、上記L−グルタミン酸の生産菌の育種に利用することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する
<1>本発明のコリネ型細菌
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類されている細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコ−ラ
コリネバクテリウム・サ−モアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシェンス)
コリネバクテリウム・ハ−キュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類されている細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコ−ラ
コリネバクテリウム・サ−モアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシェンス)
コリネバクテリウム・ハ−キュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060,ATCC13869
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067, AJ12418(FERM BP-2205)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム (コリネバクテリウム・グルタミカム)
ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060,ATCC13869
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067, AJ12418(FERM BP-2205)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム (コリネバクテリウム・グルタミカム)
ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲を受けることができる。すなわち、各菌株毎に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることができる。各菌株に対応する登録番号はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、AJ12340株は、1987年10月27日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター)(〒305-5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM BP-1539の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。また、AJ12418株は、1989年1月5日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-2205の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。
本発明において、「L−グルタミン酸生産能」とは、本発明のコリネ型細菌を培養したときに、培地中に上記L−グルタミン酸を蓄積する能力をいう。このL−グルタミン酸生産能は、コリネ型細菌の野生株の性質として有するものであってもよく、育種によって付与される性質であってもよい。さらに、後述するようにしてgluX遺伝子を不活性化するように改変することによって、L−グルタミン酸生産能が付与されたものであってもよい。
育種によってL−グルタミン酸生産能を付与するには、代謝制御変異株の取得、目的物質の生合成系酵素が増強された組換え株の創製等、従来、コリネ型細菌の育種に採用されてきた方法を適用することが出来る(アミノ酸発酵、(株)学会出版センタ−、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。これらの方法において、付与される代謝制御変異や目的物質生合成系酵素の増強等の性質は、単独でもよく、2種又は3種以上であってもよい。代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の増強が組み合わされてもよい。
以下、L−グルタミン酸の生産能を付与する方法について述べる。育種によってL−グルタミン酸生産能を付与するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸生合成に関与する酵素をコ−ドする遺伝子の活性が増強するように改変する方法を挙げることができる。L−グルタミン酸生合成に関与する酵素としては、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナ−ゼ、グルタミンシンテタ−ゼ、グルタミン酸シンタ−ゼ、イソクエン酸デヒドロゲナ−ゼ、アコニット酸ヒドラタ−ゼ、クエン酸シンタ−ゼ、ホスホエノ−ルピルビン酸カルボキシラ−ゼ、ピルビン酸カルボキシラ−ゼ、ピルビン酸デヒドロゲナ−ゼ、ピルビン酸キナ−ゼ、ホスホエノ−ルピルビン酸シンタ−ゼ、エノラ−ゼ、ホスホグリセルムタ−ゼ、ホスホグリセリン酸キナ−ゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナ−ゼ、トリオ−スリン酸イソメラ−ゼ、フルト−スビスリン酸アルドラ−ゼ、ホスホフルクトキナ−ゼ、グルコ−スリン酸イソメラ−ゼなどが挙げられる。
これらの遺伝子の活性を増強するための方法としては、これらの遺伝子を含むDNA断片を、適当なプラスミド、例えばコリネ型細菌内でプラスミドの複製増殖機能を司る遺伝子を少なくとも含むプラスミドベクタ−に導入した増幅プラスミドを導入すること、または、これらの遺伝子を染色体上で接合、転移等により多コピ−化すること、またこれらの遺伝子のプロモ−タ−領域に変異を導入することやプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成することもできる。(国際公開パンフレットWO00/18935号参照)
上記増幅プラスミドまたは染色体上で遺伝子を多コピ−化させる場合、これらの遺伝子を発現させるためのプロモ−タ−はコリネ型細菌において機能するものであればいかなるプロモ−タ−であっても良く、用いる遺伝子自身のプロモ−タ−であってもよい。またプロモ−タ−を適宜選択することによっても、遺伝子の発現量の調節が可能である。以上のような方法により、クエン酸シンタ−ゼ遺伝子、フォスフォエノ−ルピルベ−トカルボキシラ−ゼ遺伝子、及び/又はグルタミン酸デヒドロゲナ−ゼ遺伝子、イソクエン酸デヒドロゲナ−ゼの発現が増強するように改変されたコリネ型細菌としては、国際公開第WO00/18935号パンフレット、欧州特許出願公開1010755号明細書に記載された微生物が例示できる。
また、L−グルタミン酸生産能を付与するための改変は、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐して他の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下または欠損させることにより行ってもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、イソクエン酸リア−ゼ、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナ−ゼ、リン酸アセチルトランスフェラ−ゼ、酢酸キナ−ゼ、アセトヒドロキシ酸シンタ−ゼ、アセト乳酸シンタ−ゼ、ギ酸アセチルトランスフェラ−ゼ、乳酸デヒドロゲナ−ゼ、グルタミン酸デカルボキシラ−ゼ、1−ピロリンデヒドロゲナ−ゼなどが挙げられる。
上記のような酵素の活性を低下または欠損させるには、通常の変異処理法によって、染色体上の上記酵素の遺伝子に、細胞中の当該酵素の活性が低下または欠損するような変異を導入すればよい。例えば、遺伝子組換えによって、染色体上の酵素をコ−ドする遺伝子を欠損させたり、プロモ−タ−やシャインダルガルノ(SD)配列、オペレ−タ−、タ−ミネ−タ−、アテニュエ−タ−等の発現調節配列を改変したりすることなどによって達成される。また、染色体上の酵素をコ−ドする領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、また終始コドンを導入すること(ナンセンス変異)、一〜二塩基付加・欠失するフレ−ムシフト変異を導入すること、遺伝子の一部分あるいは全部分を欠失させることによっても達成出来る。(Journal of biological Chemistry 272:8611−8617(1997))また、コ−ド領域が欠失したような変異酵素をコ−ドする遺伝子を構築し、相同組換えなどによって、該遺伝子で染色体上の正常遺伝子を置換することによっても酵素活性を低下または欠損させることができる。 以上のような方法により、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナ−ゼ活性が低下したコリネ型細菌としては、特開平07−834672, 特開平06−237779、特開平01−296994号公報等に記載された下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムΔS株(国際公開95/34672号パンフレット)
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムAJ12821(FERMBP−4172;フランス特許公報9401748号明細書参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12822 (FERMBP−4173;フランス特許公報9401748号明細書参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ12823(FERMBP−4174;フランス特許公報9401748号明細書参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムΔS株(国際公開95/34672号パンフレット)
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムAJ12821(FERMBP−4172;フランス特許公報9401748号明細書参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12822 (FERMBP−4173;フランス特許公報9401748号明細書参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ12823(FERMBP−4174;フランス特許公報9401748号明細書参照)
L−グルタミン酸生産能を付与または増強する別の方法として、有機酸アナログや呼吸阻害剤などへの耐性を付与する方法や細胞壁合成阻害剤に対する感受性を付与する方法も挙げられる。例えば、ベンゾピロンまたはナフトキノン類に耐性を付与する方法(特開昭56−1889)、HOQNO耐性を付与する方法(特開昭56−140895)、α−ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭57−2689)、グアニジン耐性を付与する方法(特開昭56−35981)、ペニシリンに対する感受性を付与する方法(特開平4−88994)などが挙げられる。
このような耐性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11355(FERM P−5007;特開昭56−1889号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11368(FERM P− P−5020;特開昭56−1889号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P−4318;特開昭57−2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM−P4319;特開昭57−2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11564(FERM P−5472;特開昭56−140895公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11439(FERM P−5136;特開昭56−35981号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムH7684(FERM BP−3004;特開平04−88994号公報参照)
このような耐性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11355(FERM P−5007;特開昭56−1889号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11368(FERM P− P−5020;特開昭56−1889号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P−4318;特開昭57−2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM−P4319;特開昭57−2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11564(FERM P−5472;特開昭56−140895公報参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11439(FERM P−5136;特開昭56−35981号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムH7684(FERM BP−3004;特開平04−88994号公報参照)
尚、本発明のコリネ型細菌を取得する親株は、ビオチン制限、界面活性剤添加、ペニシリン添加等のL−グルタミン酸生産を誘導する条件(以下便宜的にL−グルタミン酸生産条件という)で、L−グルタミン酸を生産するコリネ型細菌でもよい。L−グルタミン酸生産条件とは、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する培地に、L−グルタミン酸生産を誘導する物質を添加したり、あるいはL−グルタミン酸生産を阻害する物質の培地中の量を制限した条件を意味し、L−グルタミン酸生産を誘導するために添加する物質には、ペニシリンG等の抗生物質やTween40、60等の飽和脂肪酸を含む界面活性剤が挙げられ、L−グルタミン生産を阻害するために制限する物質とはビオチンが挙げられる。(アミノ酸発酵 学会出版センタ− 1986年)
ここで、L−グルタミン酸生産条件でのこれらの物質の培地中の含有濃度は、ビオチンは、30μg/L以下、好ましくは、20μg/L以下、さらに好ましくは、10μg/L以下であり、培地中にビオチンを全く含まなくてもよい。ペニシリンの培地中の添加濃度は、0.1U/ml 以上、好ましくは、0.2U/ml以上、さらに好ましくは、0.4U/ml以上であり、界面活性剤の添加濃度は、0.5g/L以上、好ましくは、1g/L以上、さらに好ましくは、2g/L以上であるが、L−グルタミン酸生成が誘導される限り、いかなる添加濃度であってもよい。また培地中に抗生物質や界面活性剤を含む場合には、培地中に高濃度のビオチンを含んでいることが望ましく、培地中に50μg/L以上、好ましくは100μg/L以上、さらに好ましくは200μg/L以上含んでいることが望ましい。
例えば、本発明の親株に適しているものとしては、上述のコリネ型細菌の野生株、あるいは、以下のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P−4318;特開昭57−2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM−P4319;特開昭57−2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・ラクトフア−メンタムAJ11426(FERM−P5123 特開昭56−048890参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11440(FERM−P5137特開昭56−048890参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムAJ11796 (FERM−P6402 特開昭58−158192参照)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P−4318;特開昭57−2689号公報参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM−P4319;特開昭57−2689号公報参照)
ブレビバクテリウム・ラクトフア−メンタムAJ11426(FERM−P5123 特開昭56−048890参照)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11440(FERM−P5137特開昭56−048890参照)
ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタムAJ11796 (FERM−P6402 特開昭58−158192参照)
本発明のコリネ型細菌は、上記のようなL−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌であって、かつgluX遺伝子が不活性化するように改変されたコリネ型細菌である。本発明のコリネ型細菌は、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を、gluX遺伝子を不活性化するように改変することにより得ることができる。なお、本発明のコリネ型細菌の育種において、L−グルタミン酸生産能の付与とgluX遺伝子を不活性化させる改変は、どちらを先に行ってもよい。
「gluX遺伝子を不活性化するように改変された」とは、親株、あるいは野生株に対して細胞あたりのgluX遺伝子がコ−ドするGluXタンパク質の分子の数が減少した場合や、GluXタンパク質の分子当たりの活性が低下した場合、またGluXタンパク質分子が全く生成されなくなった場合等が該当する。例えば、非改変株あるいは野生株と比べてgluX遺伝子がコ−ドするタンパク質の量が低下したこと、gluX遺伝子の発現量が低下したこと、タンパク質の立体構造が改変され正常なGluXタンパク質を産生出来ないこと、コリネ型細菌の野生株、非改変株が産生可能なGluXタンパク質を全く生産出来ないことを意味する。また、比較対象となる野生型のコリネ型細菌とは、例えばコリネバクテリウム・グルタミカム(ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタム)ATCC13869やATCC13032である。
gluX遺伝子の発現量が低下したことの確認は、gluXのm−RNAの量を野生型、あるいは非改変株と比較することによって確認出来る。発現量の確認方法としては、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション、RT−PCRが挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press,Cold spring Harbor(USA),2001))。発現量については、野生株あるいは非改変株と比較して、低下していればいずれでもよいが、例えば野生株、非改変株と比べて少なくとも75%、50%、25%、10%以下に低下していることが望ましく、全く発現していなくてもよい。
gluX遺伝子がコ−ドするタンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって検出することが出来る。(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press,Cold spring Harbor(USA),2001))。生産量については、野生株あるいは非改変株と比較して、低下していればいずれでもよいが、例えば野生株、非改変株と比べて、野生株あるいは非改変株と比べて少なくとも75%、50%、25%、10%以下に減少するかあるいは完全に活性が消失していて、全くタンパク質を産生していない状態でもよい。
本発明のgluX遺伝子がコ−ドするタンパク(GluXタンパク)とは、染色体上のgluX遺伝子を不活性化することにより、L−グルタミン酸の生産量を向上させる機能を有するタンパク質である。ここで、コリネ型細菌のGluXタンパク質としては、コリネバクテリウム・グルタミカム(ブレビバクテリウム・ラクトファ−メンタム)ATCC13869や、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のgluX遺伝子(配列番号16の塩基番号1001〜1279)がコ−ドするタンパク質(配列番号17)が挙げられる。また、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のgluX遺伝子は、Genbank Accession No. NC_003450として登録されているゲノム配列中の2475838−2476119にコ−ドされており、NCgl2252として登録されている。また、コリネ型細菌の種や菌株によってgluXをコードする遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、gluX遺伝子は配列番号16の塩基番号1001〜1279番目からなる塩基配列のバリアントであってもよい。gluX遺伝子のバリアントは、配列番号16の塩基番号1001〜1279番目からなる塩基配列の配列を参考にして、BLAST等によって検索出来る(http://blast.genome.jp/)。また、gluX遺伝子のバリアントは、gluX遺伝子ホモログ、例えばコリネ型細菌の染色体を鋳型にして例えば配列番号13、14の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRで増幅可能な遺伝子を含む。
GluXタンパク質としては、配列番号17のアミノ酸配列を有するもの挙げられるが、コリネ型細菌の種や菌株によって使用コドンが異なり、gluXをコードする遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、GluXタンパク質の機能が変わらない限り、これらのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列をコードしている場合がある。ここで、数個とは、例えば、2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個を意味する。上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、GluXタンパク質産生が正常に行われる保存的変異である。保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe,Trp,Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu,Ile,Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln,Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys,Arg,His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp,Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser,Thr間でお互いに置換する変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換であり、保存的置換とみなされる置換としては、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからAsn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。
gluX遺伝子のバリアントは、配列番号16の遺伝子だけでなく、配列番号16の塩基番号1001〜1279番目からなる塩基配列または同塩基配列から調製され得るプロ−ブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80,90,95,97%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼ−ションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSさらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度、温度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。プロ−ブの長さは、ハイブリダイゼ−ションの条件により適宜選択されるが、通常には、100bp〜1Kbpである。
「gluX遺伝子が不活性化するように改変した」とは、gluXタンパク質が正常に機能しないように改変したことを意味し、薬剤等によりタンパク質に変異を導入し、GluXタンパク質が正常に機能しないように改変したものや、遺伝子工学等によりgluX遺伝子に変異を導入することにより、GluXタンパク質の量が低下した場合や、GluXタンパク質を形成しなくなった菌を育種することによって得られる。
具体的には、染色体上のgluX遺伝子を欠損させたり、プロモ−タ−やシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変したりすることなどによって達成される。また、染色体上のgluXのコ−ドする領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、また終始コドンを導入すること(ナンセンス変異)、一〜二塩基付加・欠失するフレ−ムシフト変異を導入すること、遺伝子の一部分、あるいは全領域を欠失させることによっても達成出来る。(Journal of Biological Chemistry 272:8611−8617(1997) Proceedings of the National Academy of Sciences,USA 95 5511−5515(1998), Journal of Biological Chemistry 266,20833−20839(1991))欠失させる領域は、正常に機能しないgluXタンパク質が生産されるのであれば、N末端側、C末端側いずれの領域を欠失させていてもよい。また、gluX遺伝子を不活性化するためには、gluXのコ−ド領域内に抗生物質耐性遺伝子やL-グルタミン酸生産に有用な遺伝子を搭載したトランスポゾンを導入することによっても達成出来る。
gluX遺伝子に上述のような変異を導入するためには、例えば、gluXの部分配列を欠失し、正常に機能するGluXタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該遺伝子を含むDNAでコリネ型細菌を形質転換し、欠失型遺伝子と染色体上の遺伝子で相同組換えを起こさせることにより、染色体上のgluX遺伝子を破壊することによって達成できる。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、DatsenkoとWannerによって開発された「Redドリブンインテグレ−ション(Red−driven integration)」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640−6645)の直鎖状DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある(米国特許第6303383号明細書、または特開平05−007491号公報)。また、上述のような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は、宿主で複製能力を持たないプラスミドや、コリネ型細菌に接合伝達可能なプラスミドを用いて行うことが出来る。
例えば、コリネ型細菌で温度感受性を示すプラスミドとしては、コリネ型細菌の温度感受性プラスミドとしては、p48K及びpSFKT2(以上、特開2000-262288号公報参照)、pHSC4(フランス特許公開1992年2667875号公報、特開平5-7491号公報参照)等が挙げられる。これらのプラスミドは、コリネ型細菌中で少なくとも25℃では自律複製することができるが、37℃では自律複製できない。pHSC4を保持するエシェリヒア・コリAJ12571は、1990年10月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生寄託センター)(〒305-5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-11763として寄託され、1991年8月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-3524の受託番号で寄託されている
コリネ型細菌内で複製能を持たないプラスミドは、エシェリヒア・コリで複製能力を持つプラスミドが好ましく、例えば、pHSG299(宝バイオ社製) pHSG399( 宝バイオ社製)等が挙げられる。また接合伝達可能なプラスミドとしては、pK19mobsacB(J.Bacteriology 174:5462-65(1992))が挙げられる。GluXタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子とは、配列番号16の全領域あるいは一部の領域を欠失した遺伝子、ミスセンス変異を導入した遺伝子、トランスポゾンやマ−カ−遺伝子を挿入した遺伝子、ナンセンス変異を導入した遺伝子、フレ−ムシフト変異を導入した遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。
gluX遺伝子の不活性化は以下のような方法で行う。gluX遺伝子の欠失型遺伝子は以下の方法によって取得出来る。gluX遺伝子は、コリネ型細菌から例えば、斎藤、三浦の方法(H. Saito and K.Miura, Biochem.B iophys. Acta, 72, 619 (1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)で染色体DNAをし、Genbank等、公知のデ−タベ−スを用いて構築されたオリゴヌクレオチドを使用したPCR法によって取得出来、配列番号13、14に記載の合成オリゴヌクレオチドを用いてクローニングできる。欠失型遺伝子は、gluX遺伝子の全長をPCRで増幅したあと内部を切断する制限酵素でPCR産物を消化することによって取得でき、また、gluX遺伝子のコード領域の一部分をPCRにて増幅することによって取得できる。
次に欠失型遺伝子をコリネ型細菌で温度感受性を示すプラスミドやコリネ型細菌で複製できないプラスミドに導入し、組換えプラスミドでコリネ型細菌を形質転換する。形質転換は、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリK−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増加させる方法(Mandel,M.and Higa,A., J.Mol.Biol.,53 ,159 (1970) )があり、バチルス・ズブチルスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調整しDNAを導入する方法(Dancan,C.H., Wilson,G.A and Young,F.E , Gene ,1,153(1977) )がある。あるいは、バチルス・ズブチルス、放線菌類及び酵母について知られているようなDNA受容菌の細胞を組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang.S. and Choen,S.N., Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979); Bibb,M.J., Ward,J.M. and Hopwood,O.A., Nature, 274, 398 (1978); Hinnen,A., Hicks,J.B. and Fink,G.R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、コリネ型細菌の形質転換は、電気パルス法(杉本ら、特開平2−207791号公報)によっても行うことができる。
上記のようにして得られた形質転換体は、コリネ型細菌で複製能を持たないプラスミドで形質転換した場合には、プラスミド上のgluX遺伝子と染色体上のgluX遺伝子と組換えを起こしている。また、温度感受性プラスミドを用いた場合には、形質転換体を温度感受性複製起点が機能しない温度(25℃)で培養し、プラスミドを導入した株を取得する。プラスミド導入株を高温で培養し、温度感受性プラスミドを脱落させ、抗生物質を含有するプレ−トに本菌株を塗布する。温度感受性プラスミドは高温で複製できないので、プラスミドが脱落した菌株は、抗生物質を含有したプレ−トでは生育出来ないが、ごくわずかの頻度であるが、プラスミド上のgluX遺伝子と染色体上のgluX遺伝子と組換えを起こした菌株が出現する。
こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するgluX遺伝子配列との組換えを起こし、染色体のgluX遺伝子と欠失型のgluX遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクタ−部分、温度感受性複製起点及び薬剤耐性マ−カ−)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。
次に、染色体DNA上に欠失型のgluX遺伝子のみを残すために、ベクタ−部分(温度感受性複製起点及び薬剤耐性マ−カ−を含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、正常なgluX遺伝子が染色体DNA上に残され、欠失型gluX遺伝子が切り出される場合と、反対に欠失型gluX遺伝子が染色体DNA上に残され、正常なgluX遺伝子が切り出される場合がある。PCRまたはサザンハイブリダイゼ−ション等により、染色体上に欠失型gluX遺伝子が残った株を選択することによって、gluX遺伝子が破壊された株を取得することができる。
またコリネ型細菌で致死的に機能するレバンシュ−クラ−ゼをコードするsacB遺伝子を相同組換えのマーカーとして用いてもよい。(Schafer,A.et al.Gene 145 (1994)69−73)。すなわち、コリネ型細菌では、レバンシュ−クラ−ゼを発現させると、シュ−クロ−スを資化することによって生成したレバンが致死的に働き、生育することが出来ない。従って、レバンシュ−クラ−ゼを搭載したベクタ−が染色体上に残ったままの菌株をシュ−クロ−ス含有プレ−トで培養すると生育できず、ベクタ−が脱落した菌株のみシュ−クロ−ス含有プレ−トで選択することが出来る。
sacB遺伝子又はその相同遺伝子は、以下のような配列の遺伝子を用いることが出来る。
バチルス・ズブチルス:sacB GenBank Accession Number X02730 (配列番号7)
バチルス・アミロリキュファシエンス:sacB GenBank Accession Number X52988
ザイモモナス・モビリス:sacB GenBank Accession Number L33402
バチルス・ステアロサ−モフィラス:surB GenBank Accession Number U34874
ラクトバチルス・サンフランシセンシス:frfA GenBank Accession Number AJ508391
アセトバクタ−・キシリナス:lsxA GenBank Accession Number AB034152
グルコンアセトバクタ−・ジアゾトロフィカス:lsdA GenBank Accession Number L41732
バチルス・ズブチルス:sacB GenBank Accession Number X02730 (配列番号7)
バチルス・アミロリキュファシエンス:sacB GenBank Accession Number X52988
ザイモモナス・モビリス:sacB GenBank Accession Number L33402
バチルス・ステアロサ−モフィラス:surB GenBank Accession Number U34874
ラクトバチルス・サンフランシセンシス:frfA GenBank Accession Number AJ508391
アセトバクタ−・キシリナス:lsxA GenBank Accession Number AB034152
グルコンアセトバクタ−・ジアゾトロフィカス:lsdA GenBank Accession Number L41732
gluXを不活性化させることは、上述の染色体上のgluXをコ−ドする遺伝子を欠損させる以外に、プロモ−タ−やシャインダルガルノ(SD)配列、オペレ−タ−、タ−ミネ−タ−、アテニュエ−タ−等の発現調節配列を改変したりすることなどによりgluXを不活性化させる変異を発現制御領域に導入することにより達成される。染色体上の発現調節配列の確認は、Genetix等の遺伝子解析ソフトや、プロモ−タ−検索ベクタ−等の発現解析用ベクタ−、またGenbank等の公知の情報により確認出来る。例えば、gluXを不活性化させる変異とは、例えば、gluXのプロモ−タ−領域をより発現量の弱いプロモ−タ−に置換する変異や、コンセンサス配列から遠ざけるような変異が該当する。これらの変異導入は、上記同様、温度感受性プラスミドや、宿主で複製能を持たないプラスミドを使用することによって導入できる。
また、gluXを不活性化させる方法としては、上述の遺伝子操作法以外に、例えば、コリネ型細菌を紫外線照射または、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、gluXを不活性化した菌株を選択する方法が挙げられる。またエラ−プロ−ンPCR 、DNA shuffling, StEP−PCRによって、遺伝子組換えにより人工的にgluXに変異を導入して不活性化したgluX遺伝子を取得することも出来る。(Firth AE, Patrick WM;Bioinformatics. 2005 Jun 2; Statistics of protein library construction.)
<3>本発明のコリネ型細菌を用いたL−グルタミン酸の生産
上記のようにして得られるコリネ型細菌を培地で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積させ、該培地から該L−グルタミン酸を採取することにより、L−グルタミン酸を効率よく製造することができる。
上記のようにして得られるコリネ型細菌を培地で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積させ、該培地から該L−グルタミン酸を採取することにより、L−グルタミン酸を効率よく製造することができる。
本発明のコリネ型細菌を用いてL−グルタミン酸を生産するには、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いて常法により行うことができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用される炭素源および窒素源は培養する菌株の利用可能であるものならばいずれの種類を用いてもよい。
炭素源としては、グルコ−ス、グリセロ−ル、フラクト−ス、スクロ−ス、マルト−ス、マンノ−ス、ガラクト−ス、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が使用され、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノ−ル等のアルコ−ル類も単独あるいは他の炭素源と併用して用いられる。
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用される。
有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク分解物等が使用され、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。
無機塩類としては、りん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用される。培養は、発酵温度20〜45℃、pHを5〜9に制御し、通気培養を行う。培養中にpHが下がる場合には、炭酸カルシウムを加えるか、アンモニアガス等のアルカリで中和する。かくして10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−グルタミン酸が蓄積される。
また、本発明に用いるコリネ型細菌がビオチン制限、界面活性剤添加、ペニシリン添加等のL−グルタミン酸生産を誘導する条件で、L−グルタミン酸を生産するコリネ型細菌である場合は、培地をL-グルタミン酸生産条件になるように調整したほうがよい。これらの物質の培地中の含有濃度は、ビオチンは、30μg/L以下、好ましくは、20μg/L以下、さらに好ましくは、10μg/L以下であり、培地中にビオチンを全く含まなくてもよい。ペニシリンの培地中の添加濃度は、0.1U/ml 以上、好ましくは、0.2U/ml以上、さらに好ましくは、0.4U/ml以上であり、界面活性剤の添加濃度は、0.5g/L以上、好ましくは、1g/L以上、さらに好ましくは、2g/L以上であるが、L−グルタミン酸生成が誘導される限り、いかなる添加濃度であってもよい。界面活性剤、ペニシリンを添加する際には、培地中にビオチンは充分量含んでいたほうが望ましく、培地中に50μg/L以上、好ましくは100μg/L以上、さらに好ましくは200μg/L以上含んでいることが望ましい。
また、L−グルタミン酸が析出するような条件に調整された液体培地を用いて、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら培養を行うことも出来る。L−グルタミン酸が析出する条件としては、例えば、pH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくはpH4.0を挙げることができる。
培養終了後の培養液からL−グルタミン酸を採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から菌体を除去した後に濃縮晶析する方法あるいはイオン交換クロマトグラフィ−等によって採取される。L−グルタミン酸が析出するような条件下で培養した場合、培養液中に析出したL−グルタミン酸は、遠心分離又は濾過等により採取することができる。この場合、培地中に溶解しているL−グルタミン酸を晶析した後に、併せて単離してもよい。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
<sacB搭載遺伝子破壊用ベクタ−の構築>
(A)pBS3の構築
sacB遺伝子(配列番号7)をバチルス・ズブチリスの染色体DNAを鋳型として配列番号1と2をプライマ−として用いて、PCRにより取得した。PCR反応は、LA taq(TaKaRa)を用い、94 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性94℃ 30秒、会合49℃ 30秒、伸長72℃ 2分からなるサイクルを25回繰り返した。生成したPCR産物を常法により精製後BglIIとBamHIで消化し、平滑化した。この断片をpHSG299のAvaIIで消化後、平滑化した部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、カナマイシン(以下、Kmと略す)25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現したコロニ−を釣り上げ、単コロニ−を分離し形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS3と命名した。pBS3の構築図を図1に示す。
(A)pBS3の構築
sacB遺伝子(配列番号7)をバチルス・ズブチリスの染色体DNAを鋳型として配列番号1と2をプライマ−として用いて、PCRにより取得した。PCR反応は、LA taq(TaKaRa)を用い、94 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性94℃ 30秒、会合49℃ 30秒、伸長72℃ 2分からなるサイクルを25回繰り返した。生成したPCR産物を常法により精製後BglIIとBamHIで消化し、平滑化した。この断片をpHSG299のAvaIIで消化後、平滑化した部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、カナマイシン(以下、Kmと略す)25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現したコロニ−を釣り上げ、単コロニ−を分離し形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS3と命名した。pBS3の構築図を図1に示す。
(B)pBS4Sの構築
pBS3上に存在するカナマイシン耐性遺伝子配列には、制限酵素SmaIの認識部位が存在するので、SmaI部位をアミノ基置換を伴わない塩基置換を伴うことによって破壊したカナマイシン耐性遺伝子を搭載するプラスミドをクロスオ−バ−PCRで取得した。まず、pBS3を鋳型として配列表配列番号3,4の合成DNAをプライマ−としてPCRを行い、カナマイシン耐性遺伝子のN末端側の増幅産物を得る。一方Km耐性遺伝子のC末端側の増幅産物を得るためにpBS3を鋳型として配列表配列番号5,6の合成DNAを鋳型としてPCRを行った。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社製)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。配列表配列番号4と5は部分的に相補的であり、またこの配列内に存在するSmaI部位はアミノ酸置換を伴わない塩基置換を施すことにより破壊されている。次にSmaI部位が破壊された変異型カナマイシン耐性遺伝子断片を得るために、上記カナマイシン耐性遺伝子N末端側及びC末端側の遺伝子産物を、それぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列表配列番号3,6の合成DNAをプライマ−としてPCRを行い変異導入されたKm耐性遺伝子増幅産物を得た。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1.5分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。
pBS3上に存在するカナマイシン耐性遺伝子配列には、制限酵素SmaIの認識部位が存在するので、SmaI部位をアミノ基置換を伴わない塩基置換を伴うことによって破壊したカナマイシン耐性遺伝子を搭載するプラスミドをクロスオ−バ−PCRで取得した。まず、pBS3を鋳型として配列表配列番号3,4の合成DNAをプライマ−としてPCRを行い、カナマイシン耐性遺伝子のN末端側の増幅産物を得る。一方Km耐性遺伝子のC末端側の増幅産物を得るためにpBS3を鋳型として配列表配列番号5,6の合成DNAを鋳型としてPCRを行った。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社製)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。配列表配列番号4と5は部分的に相補的であり、またこの配列内に存在するSmaI部位はアミノ酸置換を伴わない塩基置換を施すことにより破壊されている。次にSmaI部位が破壊された変異型カナマイシン耐性遺伝子断片を得るために、上記カナマイシン耐性遺伝子N末端側及びC末端側の遺伝子産物を、それぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列表配列番号3,6の合成DNAをプライマ−としてPCRを行い変異導入されたKm耐性遺伝子増幅産物を得た。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1.5分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。
PCR産物を常法により精製後BanIIで消化し、上記のpBS3のBanII部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、カナマイシン25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現したコロニ−を釣り上げ、単コロニ−分離し、形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS4Sと命名した。pBS4Sの構築図を図2に示す。
<C.glutamicum ATCC13869からのgluX欠損株の作製>
遺伝子gluXを欠損させるためのプラスミドを作製した。C.glutamicum ATCC13869からBacterial Genomic DNA Purif.Kit((株)エムエステクノシステムズ製)を用いて染色体を抽出し、この染色体を鋳型として配列番号9、10記載の組み合わせプライマ−及び配列番号11、12記載の組み合わせプライマ−を用いたPCRを行い(反応条件は、Ex Taq(タカラバイオ製)を用いて、変性94℃ 30秒、会合55℃ 10秒、伸長反応72℃ 1分の条件で25サイクル)、各々約650bpの断片を増幅した。なお、配列番号9、10のプライマ−は、配列番号16に記載の塩基番号401−1040の領域が、配列番号11、12のプライマ−は塩基番号1241−1920の領域がそれぞれ増幅されるように設計している。次にこの2つの断片を混合した溶液を鋳型にし、配列番号13、14記載のプライマ−を用いたPCR反応を行い(反応条件は、Ex Taq(タカラバイオ製)を用いて、変性94℃ 30秒、会合55℃ 10秒、伸長反応72℃ 1.5分の条件で25サイクル)、約1.3kbの断片を増幅した。なお、配列番号13、14のプライマ−は5’端にBamHI配列を付加し、配列番号16の塩基番号441−1870の領域(但し、塩基番号1041−1240の部分は欠失している)が増幅されるように設計している。増幅した断片をBamHIによる完全分解を行い、同じくBamHIによって完全分解した実施例1に記載のpBS4Sベクタ−と連結反応を行い(Ligation kit Ver.2(タカラバイオ製)を使用)、gluX破壊用ベクタ−pBSGXDを構築した。構築図は図3に示す。
遺伝子gluXを欠損させるためのプラスミドを作製した。C.glutamicum ATCC13869からBacterial Genomic DNA Purif.Kit((株)エムエステクノシステムズ製)を用いて染色体を抽出し、この染色体を鋳型として配列番号9、10記載の組み合わせプライマ−及び配列番号11、12記載の組み合わせプライマ−を用いたPCRを行い(反応条件は、Ex Taq(タカラバイオ製)を用いて、変性94℃ 30秒、会合55℃ 10秒、伸長反応72℃ 1分の条件で25サイクル)、各々約650bpの断片を増幅した。なお、配列番号9、10のプライマ−は、配列番号16に記載の塩基番号401−1040の領域が、配列番号11、12のプライマ−は塩基番号1241−1920の領域がそれぞれ増幅されるように設計している。次にこの2つの断片を混合した溶液を鋳型にし、配列番号13、14記載のプライマ−を用いたPCR反応を行い(反応条件は、Ex Taq(タカラバイオ製)を用いて、変性94℃ 30秒、会合55℃ 10秒、伸長反応72℃ 1.5分の条件で25サイクル)、約1.3kbの断片を増幅した。なお、配列番号13、14のプライマ−は5’端にBamHI配列を付加し、配列番号16の塩基番号441−1870の領域(但し、塩基番号1041−1240の部分は欠失している)が増幅されるように設計している。増幅した断片をBamHIによる完全分解を行い、同じくBamHIによって完全分解した実施例1に記載のpBS4Sベクタ−と連結反応を行い(Ligation kit Ver.2(タカラバイオ製)を使用)、gluX破壊用ベクタ−pBSGXDを構築した。構築図は図3に示す。
電気パルス法(特開平2−207791)にてC.glutamicum ATCC13869へpBSGXDを導入し、カナマイシン25μg/mlを含むCM−Dex寒天培地(グルコ−ス5g/l、ポリペプトン10g/l、酵母エキス10g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.4g/l、FeSO4・7H2O 0.01g/l、MnSO4・4−5H2O 0.01g/l、尿素3g/l、大豆蛋白加水分解液1.2g/l、寒天20g/l、NaOHを用いてpH7.5に調整)上に塗布した。31.5℃にて培養後、生育してきた株を、PCRを用いて染色体上に相同組換えによってpBSGXDが組み込まれた1回組換え株であることを確認した。なお1回組換え株であることの確認は、候補株の染色体を鋳型にし、pBS4S上の特異的配列(配列番号15)と染色体上の配列(配列番号9)をプライマ−にしたPCRを行うことによって、容易に確認することが出来る。非組換え株の染色体上にはpBS4Sの配列が存在していないため、PCRによって増幅される断片が出現しないことから判別可能となる。
取得した1回組換え株をカナマイシン25μg/mlを含むCM−Dex液体培地にて31.5℃、一昼夜培養し、この培養液を適宜希釈してS10プレ−ト(上記記載のCM−Dex培地のグルコ−ス5g/lをシュ−クロ−ス100g/lに変更した組成)に塗布した。S10プレ−ト上で生育し、且つカナマイシン感受性を示す株を数株選択後、これら株の染色体を鋳型にし、配列番号13、14をプライマ−にしたPCRを行うことにより、目的とするgluX欠損株であることを確認した。欠損株は遺伝子番号1041−1240領域を欠失しているために増幅断片が非欠損株より短くなることから判別可能となる。このようにして取得した欠損株をATCC13869ΔgluXと命名した。
<ATCC13869ΔgluX株のグルタミン酸生成量の測定>
ATCC13869ΔgluX株のグルタミン酸生産能を、坂口フラスコを用いた培養を行うことにより検証した。ATCC13869、ATCC13869ΔgluX株をCM−2B寒天培地(ポリペプトン10g/l、酵母エキス5g/l、NaCl 5g/l、ビオチン10μg/l、寒天20g/l、KOHを用いてpH7.0に調整)で31.5℃で一昼夜培養を行い、シ−ド培地(グルコ−ス50g/l、硫安30g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.4g/l、FeSO4・7H2O 0.01g/l、MnSO4・4−5H2O 0.01g/l、ビタミンB1 200μg/l、大豆蛋白加水分解液0.48g/l、ビオチン300μg/l、KOHを用いてpH8.0に調整)20mlに接種し、予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウム1gを添加した後、31.5℃、速度115rpmで振とう培養を行った。完全に糖を消費し尽くしたことを確認後、次にメイン培地(グルコ−ス50g/l、硫安30g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.4g/l、FeSO4・7H2O 0.01g/l、MnSO4・4−5H2O 0.01g/l、ビタミンB1 200μg/l、大豆蛋白加水分解液0.48g/l、ビオチン300μg/l、KOHを用いてpH8.0に調整)20mlにシ−ド培養液を1ml接種し予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウム1gを添加した後、31.5℃、速度115rpmで振とう培養を行った。培養開始2.5時間後にTween40(Sigma製)4g/l添加し、17.5時間目の菌体量(620nmの吸収を測定)、グルタミン酸蓄積量、残糖量を表3に示した。ATCC13869ΔgluX株はATCC13869と比較しグルタミン酸蓄積量が増大し、gluX遺伝子を欠失させることがグルタミン酸生成向上に効果があることを確認した。
ATCC13869ΔgluX株のグルタミン酸生産能を、坂口フラスコを用いた培養を行うことにより検証した。ATCC13869、ATCC13869ΔgluX株をCM−2B寒天培地(ポリペプトン10g/l、酵母エキス5g/l、NaCl 5g/l、ビオチン10μg/l、寒天20g/l、KOHを用いてpH7.0に調整)で31.5℃で一昼夜培養を行い、シ−ド培地(グルコ−ス50g/l、硫安30g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.4g/l、FeSO4・7H2O 0.01g/l、MnSO4・4−5H2O 0.01g/l、ビタミンB1 200μg/l、大豆蛋白加水分解液0.48g/l、ビオチン300μg/l、KOHを用いてpH8.0に調整)20mlに接種し、予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウム1gを添加した後、31.5℃、速度115rpmで振とう培養を行った。完全に糖を消費し尽くしたことを確認後、次にメイン培地(グルコ−ス50g/l、硫安30g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.4g/l、FeSO4・7H2O 0.01g/l、MnSO4・4−5H2O 0.01g/l、ビタミンB1 200μg/l、大豆蛋白加水分解液0.48g/l、ビオチン300μg/l、KOHを用いてpH8.0に調整)20mlにシ−ド培養液を1ml接種し予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウム1gを添加した後、31.5℃、速度115rpmで振とう培養を行った。培養開始2.5時間後にTween40(Sigma製)4g/l添加し、17.5時間目の菌体量(620nmの吸収を測定)、グルタミン酸蓄積量、残糖量を表3に示した。ATCC13869ΔgluX株はATCC13869と比較しグルタミン酸蓄積量が増大し、gluX遺伝子を欠失させることがグルタミン酸生成向上に効果があることを確認した。
Claims (4)
- L−グルタミン酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、gluX遺伝子が不活性化するように改変されたコリネ型細菌。
- 染色体上のgluX遺伝子またはその発現制御領域に変異が導入されたことによりgluXの発現量が低下するように改変された請求項1のコリネ型細菌。
- 染色体上のgluX遺伝子が破壊された請求項1〜2のいずれか一項に記載のコリネ型細菌。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のコリネ型細菌を培地中で培養し、L−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、該L−グルタミン酸を培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
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