JP2004187684A - L−グルタミンの製造法及びl−グルタミン生産菌 - Google Patents

L−グルタミンの製造法及びl−グルタミン生産菌 Download PDF

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Abstract

【課題】 L−グルタミン分解能が低下し、L−グルタミン生産能が向上したコリネ型細菌、及びそれを用いたL−グルタミンの製造法を提供する。
【解決手段】 L−グルタミン生産能を有し、細胞内のグルタミナーゼ活性が低下し、好ましくはさらに細胞内のグルタミンシンテターゼ活性が増強するように改変されたコリネ型細菌を培地に培養し、該培地中にL−グルタミンを生成蓄積せしめ、これを採取することにより、L−グルタミンを製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コリネ型細菌のL−グルタミン生産菌およびL−グルタミンの製造法に関する。L−グルタミンは、調味料、肝機能促進薬、アミノ酸輸液、および総合アミノ酸製剤などの成分として、産業上有用なアミノ酸である。
発酵法によってL−アミノ酸を製造するには、微生物の育種改良法が多用されてきた。すなわち、野生株そのもののL−アミノ酸生産の生産能は極めて低い場合が多いので、突然変異により栄養要求性、アナログ耐性、もしくは代謝調節変異を付与したり、又はこれらを組み合わせる方法が知られている。L−グルタミンの場合も、上述の方法によれば、それなりの収量でL−グルタミンは得られるが、工業的に安価にL−グルタミンを製造する為には、さらに発酵収率を向上させることが不可欠である。
一方、組換えDNA技術によりL−アミノ酸の生産能を増加させる種々の技術が開示されている。例えば、L−アミノ酸生合成に関与する酵素の活性を増強したり、L−アミノ酸の分解に関与する酵素の活性を低下させる技術が知られている。L−グルタミンについては、例えばグルタミンシンテターゼが増強されたコリネ型細菌を用いてL−グルタミンを製造する方法(特許文献1)が開示されている。また、コリネ型細菌のグルタミン生合成および分解に関与する酵素及びその遺伝子として、グルタミンシンテターゼ(非特許文献1)、グルタミン・2−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(非特許文献2)をコードする遺伝子が既に報告されている。
コリネ型細菌では、上記の遺伝子以外にもL−グルタミンの分解に関与する酵素の存在が示唆されている(非特許文献3)。しかしながら、この酵素は、アンモニウムイオンおよび低pHにより阻害を受けるとされており、アンモニウムイオンを著量必要とするグルタミン発酵においてはほとんど機能していないと考えられてきた。
また、L−グルタミンを分解する酵素として、L−グルタミンを加水分解する酵素であるグルタミナーゼ(グルタミン アミドヒドロラーゼ(glutamine amidohydrolase))が知られている。グルタミナーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属細菌(非特許文献4)、アスペルギルス・オリゼ(非特許文献5、特許文献2)、リゾビウム・エツリ(Rhizobium etli)(非特許文献6)、ラット(非特許文献7)等で報告されている。さらに、エシェリヒア・コリでは、グルタミナーゼ活性の存在が報告されている(非特許文献8)。しかし、コリネ型細菌ではグルタミナーゼをコードする遺伝子は特定されておらず、その変異がグルタミンの生産に与える影響は知られていなかった。
ところで、遺伝子のプロモーター配列を改変することにより、遺伝子の発現を増強する方法が知られている(特許文献3)。また、コリネ型細菌のグルタミンシンテターゼをコードする遺伝子として、glnAが明らかにされている(非特許文献9)。さらに、同遺伝子の転写開始点は、プロモーター領域も含めて明らかにされている(非特許文献10)。しかし、グルタミンシンテターゼをコードする遺伝子については、プロモーター配列の改変により発現を増強させることは知られていない。
欧州特許公開第1229121号(EP 1 229 121 A2) 欧州特許公開第1077256号(EP 1 077 256 A1) 特開2000−818935 Genbank Accession No. Y13221 Genbank Accession No. AB024708 Amino Acids, 7, 73-77, 1963 FEMS Microbiol. lett. 178(2)327-335(1999) Appl. Microbiol.Biotechnol. 54, 59-68 (2000) Biochim. Biophys. Acta, 1444(3): 451-6, 1999 J.Biol.Chem. 266(28), 18792-18796 (1991) J.Biol.Chem. 243(5) 853-878(1968) FEMS Microbiology Letters 154, 81-88, 1997 FEMS Microbiology Letters, 205, 361-367, 2001
本発明は、コリネ型細菌のL−グルタミン分解能を低下させることによりL−グルタミン生産能を向上させ、当該特性を有する菌株を用いたL−グルタミンの製造法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、グルタミナーゼ遺伝子をコードする遺伝子を同定すると同時に、グルタミナーゼ活性が低下した菌株では、該活性が野生株並である菌株に比べて、L−グルタミン生産能において優れていることを見出した。また、グルタミナーゼ活性の弱化とグルタミンシンテターゼ活性の増強を組合みわせることにより、さらにL−グルタミンの生産能を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)L−グルタミン生産能を有し、かつ、細胞内のグルタミナーゼ活性が低下するように改変されたコリネ型細菌。
(2)染色体上のグルタミナーゼ遺伝子が破壊されたことにより、グルタミナーゼ活性が低下した(1)のコリネ型細菌。
(3)グルタミナーゼ活性が、0.1U/mg菌体タンパク質以下である(1)又は(2)の細菌。
(4)菌体タンパク質当たりのグルタミナーゼ活性がグルタミンシンテターゼ活性と同じか又はそれ以下である(1)〜(3)のいずれかの細菌。
(5)さらに細胞内のグルタミンシンテターゼ活性が増強するように改変された(1)〜(4)のいずれかの細菌。
(6)グルタミンシンテターゼ活性の増強が、グルタミンシンテターゼ遺伝子の発現量の増強によるものである(5)の細菌。
(7)グルタミンシンテターゼ遺伝子の発現量の増強が、グルタミンシンテターゼをコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は前記細菌細胞内のグルタミンシンテターゼをコードする遺伝子の発現が増強されるように同遺伝子の発現調節配列を改変することによるものである(6)の細菌。
(8)(1)〜(7)のいずれかの細菌を培地に培養し、該培地中にL−グルタミンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−グルタミンの製造法。
(9)コリネ型細菌のグルタミンシンテターゼ遺伝子であって、−35領域の配列がTTGCCAであり、−10領域の配列がTATAATであるグルタミンシンテターゼ遺伝子。
本発明により、コリネ型細菌のL−グルタミン生産性を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明のコリネ型細菌
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類された細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス
具体的には、下記のような菌株を例示することができる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム ATCC15806
コリネバクテリウム・アルカノリティカム ATCC21511
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13020, ATCC13032, ATCC13060
コリネバクテリウム・リリウム ATCC15990
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
コリネバクテリウム・ハーキュリス ATCC13868
ブレビバクテリウム・ディバリカタム ATCC14020
ブレビバクテリウム・フラバム ATCC13826, ATCC14067, AJ12418(FERM BP-2205)
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム ATCC14066
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6871、ATCC6872
ブレビバクテリウム・アルバム ATCC15111
ブレビバクテリウム・セリヌム ATCC15112
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラス ATCC15354
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲を受けることができる。すなわち、各菌株毎に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることができる。各菌株に対応する登録番号はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、AJ12340株は、1987年10月27日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター)(〒305-5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM BP-1539の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。また、AJ12418株は、1989年1月5日付けで通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-2205の受託番号でブダペスト条約に基づいて寄託されている。
本発明において、「L−グルタミン生産能」とは、本発明のコリネ型細菌を培養したときに、培地中にL−グルタミンを蓄積する能力をいう。このL−グルタミン生産能は、コリネ型細菌の野生株の性質として有するものであってもよく、育種によって付与または増強された性質であってもよい。
育種によってL−グルタミン生産能を付与または増強するには、6-ジアゾ-5-オキソ-ノルロイシン耐性を付与する方法(特開平3-232497)、プリンアナログ耐性および/またはメチオニンスルホキサイド耐性を付与する方法(特開昭61-202694)、α-ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭56-151495)、グルタミン酸を含有するペプチドに耐性を付与する方法(特開平2-186994)などが挙げられる。 L−グルタミン生産能を有するコリネ型細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11573(FERM P-5492) 特開昭56-151495公報参照ブレビバクテリウム・フラバムAJ12210(FERM P-8123) 特開昭61-202694公報参照ブレビバクテリウム・フラバムAJ12212(FERM P-8123) 特開昭61-202694公報参照ブレビバクテリウム・フラバムAJ12418(FERM-BP2205) 特開平2-186994公報参照ブレビバクテリウム・フラバムDH18(FERM P-11116) 特開平3-232497公報参照
コリネバクテリウム・メラセコラDH344(FERM P-11117) 特開平3-232497公報参照コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11574(FERM P-5493) 特開昭56-151495公報参照
本発明のコリネ型細菌は、上記のようなコリネ型細菌であって、細胞内のグルタミナーゼ活性が低下するように改変された細菌である。
「グルタミナーゼ活性(以下、「GLS活性」ともいう)」とは、L−グルタミンを基質として、L−グルタミン酸を生成する酵素活性のことをいう。GLS活性は、例えば以下の方法で測定することができる。
コリネ型細菌の粗酵素液を、Tris-HCl (pH8.0)100mM, L−グルタミン75mMを含む溶液に加えて30℃で30分または60分反応させた後、終濃度0.5%となるようにSDSを添加することで反応を停止し、生成するL−グルタミン酸を定量する。本発明においては、上記反応系にて1分間に1マイクロモルのグルタミン酸を生成するグルタミナーゼ活性を1Uと定義する。また粗酵素液のタンパク質量は、公知の方法、例えば牛血清アルブミンを標準試料としてProtein Assay(Bio-Rad)を用いて定量すればよい。以下、タンパク質1mg当たりのGLS活性を、「U/mg」として表記する。
前記粗酵素液は、例えば以下のようにして調製する。まず、菌体を調製する為に、グルコース30g、KH2PO4 1.5g、MgSO4・7H2O 0.4g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl100μg、ビオチン 3μg、大豆加水分解物200mg、尿素 1.5g、GD-113(消泡剤) 0.02mlを純水1Lに含む培地(NaOHでpH6.8に調整されている)20mlを500mlの坂口フラスコに張り込み、115℃で10分オートクレーブ滅菌した後に該菌株を接種し、31.5℃、115rpmにてしんとう培養する。糖を完全に消費する前に培養を終了し、培養液を瞬時に冷却する。培養液を冷却遠心分離にて菌体を分離し、Tris-HCl(pH8.0)100mMで洗浄後、超音波破砕し未破砕菌体を15000gで15分間遠心分離することにより除去し粗酵素液を調製する。粗酵素液は使用する直前まで氷上におく。
上記の方法によると、公知のL−グルタミン生産菌のGLS活性は、後述の表8に示すとおりである。
「細胞内のグルタミナーゼ活性が低下するように改変された」とは、細胞当たりのGLS活性がコリネ型細菌の野生株又は非改変株のそれよりも低くなるように改変されたことをいう。例えば、細胞当たりのGLS分子の数が減少した場合や、GLS分子当たりのGLS活性が低下した場合などが該当する。尚、「低下」には、完全に消失した場合も含まれる。また、比較対象となるコリネ型細菌の野生株又は非改変株としては、例えばブレビバクテリウム・フラバム ATCC14067が挙げられる。GLS活性が弱化された結果、培地中のL−グルタミン蓄積量が上昇するという効果や、L−グルタミン酸の副生が減少するという効果がある。
本発明のコリネ型細菌は、野生株又は非改変株よりもGLS活性が低下していればよいが、好ましくは、前述の測定系にてその活性を測定したときに、GLS活性が0.1U/mg以下、好ましくは0.02U/mg以下、より好ましくは0.01U/mg以下に弱化された株である。しかし、本発明の範囲を0.01U/mg以下に限定するものではない。
コリネ型細菌のGLSをコードする遺伝子は明らかにされていないが、本発明者らは、既に公開されているコリネバクテリウム・グルタミカムのゲノム配列から、リゾビウム属細菌のGLSをコードする遺伝子(Biochim Biophys Acta. 1999 Mar 19;1444(3):451-6)と相同性のある遺伝子を検索し、GLSをコードすると推定される遺伝子を見出した。その塩基配列に基づいて作製したプライマー、例えば配列番号5および6に示すプライマーを用いて、ブレビバクテリウム・フラバムの染色体DNAを鋳型とするPCR法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)参照)によって、gls遺伝子を取得することができる。他の微生物のGLSをコードする遺伝子も、同様にして取得され得る。こうして取得したブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株のGLS遺伝子を配列番号1に、そのアミノ酸配列を配列番号2に示す。
染色体DNAは、DNA供与体である細菌から、例えば、斎藤、三浦の方法(H. Saito
and K.Miura, Biochem.B iophys. Acta, 72, 619 (1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)等により調製することができる。
コリネ型細菌のGLS活性を低下させるには、例えば、コリネ型細菌を紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、GLS活性が低下した変異株を選択する方法が挙げられる。また、GLS活性が低下したコリネ型細菌は、変異処理の他に、GLSをコードする遺伝子(gls)の部分配列を欠失し、正常に機能するGLSを産生しないように改変したgls遺伝子(欠失型gls)を含むDNAでコリネ型細菌を形質転換し、欠失型glsと染色体上のglsとの間で組換えを起こさせることにより、染色体上のglsを破壊することができる。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、直鎖DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある。
GLS活性の弱化は、gls遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を微弱なものに置換することによっても達成される(特開2000−818935)。また、発現調節変異と上記のglsの破壊と組合みわせてもよい。
欠失型glsを、宿主染色体上のglsと置換するには、例えば以下のようにすればよい。温度感受性複製起点と欠失型glsとクロラムフェニコール等の薬剤に耐性を示すマーカー遺伝子とを挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAでコリネ型細菌を形質転換し、温度感受性複製起点が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。
上記のように調製した組換えDNAをコリネ型細菌に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、コリネ型細菌の形質転換は、電気パルス法(杉本ら、特開平2-207791号公報)によっても行うことができる。
コリネ型細菌の温度感受性プラスミドとしては、p48K及びpSFKT2(以上、特開2000-262288号公報参照)、pHSC4(フランス特許公開1992年2667875号公報、特開平5-7491号公報参照)等が挙げられる。これらのプラスミドは、コリネ型細菌中で少なくとも25℃では自律複製することができるが、37℃では自律複製できない。pHSC4を保持するエシェリヒア・コリAJ12571は、1990年10月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター)(〒305-5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-11763として寄託され、1991年8月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-3524の受託番号で寄託されている。また、後記実施例のようにコリネ型細菌内で自律複製できないプラスミドを用いてコリネ型細菌を形質転換し、該プラスミドを相同組換えによりコリネ型細菌の染色体に挿入することも可能である。
こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するgls配列との組換えを起こし、染色体glsと欠失型glsとの融合遺伝子2個が組換えDNAの他
の部分(ベクター部分、温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では正常なglsが優性であるので、形質転換株は正常なglsを発現する。
次に、染色体DNA上に欠失型glsのみを残すために、2個のglsの組換えにより1コピーのglsを、ベクター部分(温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカーを含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、正常なglsが染色体DNA上に残され、欠失型glsが切り出される場合と、反対に欠失型glsが染色体DNA上に残され、正常なglsが切り出される場合がある。いずれの場合も、温度感受性複製起点が機能する温度で培養すれば、切り出されたDNAはプラスミド状で細胞内に保持される。次に、温度感受性複製起点が機能しない温度で培養すると、プラスミド上のglsは、プラスミドとともに細胞から脱落する。そして、PCRまたはサザンハイブリダイゼーション等により、染色体上に欠失型glsが残った株を選択することによって、glsが破壊された株を取得することができる。
遺伝子破壊に用いる欠失型gls遺伝子は、目的とするコリネ型細菌の染色体DNA上のgls遺伝子と相同組換えを起こす程度の相同性を有していればよい。このような相同性は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA同士であれば、相同組換えは起こり得る。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
コリネ型細菌の細胞内において、L−グルタミンはグルタミンシンテターゼ(以下、「GS」ともいう)によって合成され、生成したL−グルタミンはGLSによって分解されることが推定される。すなわち、効率よくL−グルタミンを生産するには、GS活性を高く、反対にGLS活性は低く保つことが重要であると本発明者は考えた。しかしながら、コリネ型細菌の野生株においては、GS活性はGLS活性に比べて著しく低い。L−グルタミン生成時における細胞内のL−グルタミン生成と分解の平衡は、これら酵素の比活性のみではなく、酵素それぞれのKm値や、細胞内の基質濃度によって変化するが、比活性が重要な因子であることは言うまでもない。
例えば実施例4に記載にしたように、GLS活性低下変異株では、そのGLS残存活性がGS活性の6割程度に抑制されることにより収率の向上が認められる。
GS活性は、例えば下記のようにして測定することができる。
コリネ型細菌の粗酵素液を、イミダゾール-HCl(pH7.0)100mM, KCl 90mM, NH4Cl 0.1mM,
MnCl2 1mM, ホスホエノールピルビン酸1mM, NADH 0.3mM, ラクテートデヒドロゲナーゼ10U, ピルビン酸キナーゼ25U, ATP 1mM、MSG(グルタミン酸ナトリウム) 10mMを含む溶液に加え、30℃における340nMの吸光度変化を測定することによってGSの反応を定量できる。ブランクの測定には、上記反応液よりMSGを除いたものを用いる。粗酵素液のタンパク質濃度は、牛血清アルブミンを標準試料として、Protein Assay(Bio-Rad)を用いて定量する。本発明においては、上記反応系にて1分間に1マイクロモルのNADを生成する酵素量を1Uと定義する。以下、タンパク質1mg当たりのGS活性を、「U/mg」として表記する。
前記粗酵素液は、例えば以下のようにして調製する。培養液より遠心分離により菌体を分離し、イミダゾール-HCl(pH7.0)100mM(KCl 90mMを含む溶液)で洗浄後、超音波破砕し、未破砕菌体を遠心分離で除去し、さらに超遠心分離により不溶性画分を除くことにより粗酵素液を調製する。
本発明のコリネ型細菌を用いてL−グルタミンを効率よく生産するには、GLS活性の弱化と同時にグルタミンシンテターゼ活性が高められた菌株を用いるのが好ましい。
「グルタミンシンテターゼ活性が増強された」とは、細胞当たりのGS活性が野生型のコリネ型細菌のそれよりも高くなったことをいう。例えば、細胞当たりのGS分子の数が増加した場合や、GS分子当たりのGS活性が上昇した場合などが該当する。また、比較対象となる野生型のコリネ型細菌とは、例えばブレビバクテリウム・フラバム ATCC14067である。GS活性が増強された結果、培地中のL−グルタミン蓄積量が上昇するという効果や、L−グルタミン酸の副生が減少するという効果がある。
本発明のコリネ型細菌は、野生株又は非改変株よりもGLS活性が低下し、かつ、GS活性が増強されていればよいが、好ましくは、菌体タンパク質当たりのGLS活性がGS活性と同じか又はそれ以下、より好ましくはGLS活性がGS活性の1/2以下の細菌である。本発明において、菌体タンパク質当たりのGLS活性及びGS活性とは、前記の測定法及び定義による活性を意味する。
コリネ型細菌細胞内のGS活性の増強は、GSをコードする遺伝子のコピー数を高めることによって達成される。例えば、GSをコードする遺伝子断片を、該細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これをL−グルタミン生産能を有する宿主に導入して形質転換すればよい。また、野生型のコリネ型細菌に上記組換えDNAを導入して形質転換株を得、その後当該形質転換株にL−グルタミン生産能を付与してもよい。
GS遺伝子は、コリネ型細菌由来の遺伝子およびエシェリヒア属細菌等の他の生物由来の遺伝子のいずれも使用することができる。このうち、発現の容易さの観点からは、コリネ型細菌由来の遺伝子が好ましい。
コリネ型細菌のGSをコードする遺伝子として、既にglnAが明らかにされている(FEMS Microbiology Letters, 154, 81-88, 1997)ので、その塩基配列に基づいて作製したプライマー、例えば配列番号19および20に示すプライマーを用いて、コリネ型細菌の染色体DNAを鋳型とするPCR法によって、GS遺伝子を取得することができる。他の微生物のGSをコードする遺伝子も、同様にして取得され得る。ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株のglnA遺伝子の塩基配列を配列番号3に、そのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
GSをコードする遺伝子としては、野生型glnA遺伝子の他に、L−グルタミン酸とアンモニウムイオンからL−グルタミンを生成する反応を触媒する活性を実質的に損なわないような1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列をコードするものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、好ましくは2から30個、より好ましくは2から20個、特に好ましくは2から10個である。
上記のようなGSと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号3の塩基番号874〜2307からなる塩基配列又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGSと同様の活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーション
の洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
コリネ型細菌で機能するベクターとは、例えばコリネ型細菌で自律複製できるプラスミドである。具体的に例示すれば、以下のものが挙げられる。
pAM330 特開昭58-67699号公報参照
pHM1519 特開昭58-77895号公報参照
pSFK6 特開2000-262288号公報参照
また、これらのベクターからコリネ型細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力を持つDNA断片を取り出し、前記エシェリヒア・コリ用のベクターに挿入すると、エシェリヒア・コリ及びコリネ型細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。
このようなシャトルベクターとしては、以下のものが挙げられる。尚、それぞれのベクターを保持する微生物及び国際寄託機関の受託番号をかっこ内に示した。
pAJ655 エシェリヒア・コリAJ11882(FERM BP-136)
コリネハ゛クテリウム・ク゛ルタミクムSR8201(ATCC39135)
pAJ1844 エシェリヒア・コリAJ11883(FERM BP-137)
コリネハ゛クテリウム・ク゛ルタミクムSR8202(ATCC39136)
pAJ611 エシェリヒア・コリAJ11884(FERM BP-138)
pAJ3148 コリネハ゛クテリウム・ク゛ルタミクムSR8203(ATCC39137)
pAJ440 ハ゛チルス・ス゛フ゛チリスAJ11901(FERM BP-140)
pHC4 エシェリヒア・コリAJ12617(FERM BP-3532)
これらのベクターは、寄託微生物から次のようにして得られる。対数増殖期に集められた細胞をリゾチーム及びSDSを用いて溶菌し、30000×gで遠心分離して溶解物から得た上澄液にポリエチレングリコールを添加し、セシウムクロライド−エチジウムブロマイド平衡密度勾配遠心分離により分別精製する。
GS遺伝子のコピー数を高めることは、GS遺伝子をコリネ型細菌の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。コリネ型細菌の染色体DNA上にGS遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、GS遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
GS活性の増強は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上またはプラスミド上のGS遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、国際公開WO00/18935に開示されているように、GS遺伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換または改変によりGS遺伝子の発現が強化され、GS活性が増強される。これら発現調節配列の改変は、GS遺伝子のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
例えば、GS遺伝子として、コリネ型細菌のglnA遺伝子の転写開始点はAntonらによってプロモーター領域も含めて明らかにされている(FEMS Microbiogy Letters, 205, 361-367, 2001)。例えば、この報文の図3Cに明らかにされている-10領域の配列をTATAATに、
-35領域の配列をTTGCCAに置換することにより、GS活性が増強される。ただし、本発明におけるGS遺伝子の-35領域とは、前述の報文に記されている-35領域よりも3bp下流側すなわち転写開始点側に位置している領域(配列番号3の塩基番号727〜732)のことであり、-10領域とは前述の報文に記されている部位と同一の領域(配列番号3の塩基番号751〜756)のことをいう。上記のようなGS遺伝子の-35領域及び-10領域の改変は、例えば部位特異的変異法により行うことができる。
-10領域及び-35領域の配列を改変するGS遺伝子としては、コリネ型細菌のglnA遺伝子、例えば配列番号3の配列を有する遺伝子が挙げられる。尚、コードされるタンパク質は、L−グルタミン酸とアンモニウムイオンからL−グルタミンを生成する反応を触媒する活性を実質的に損なわないような1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有するものであってもよい。
GS活性の増強は、上記のようなGS遺伝子の発現量を増強する以外に、細胞内のGSのアデニリル化による活性調節が解除されることによっても達成される(EP1229121A2)。
また、本発明のコリネ型細菌は、GLS活性の低下およびGS活性の増強以外に、L−グルタミン生合成を触媒する酵素の活性が増強されていてもよい。例えばグルタミン生合成を触媒する酵素としては、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ等がある。
さらに、L−グルタミンの生合成経路から分岐してL−グルタミン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または欠損していてもよい。このような反応を触媒する酵素としては、イソクエン酸リアーゼ、α-ケトグルタル酸デヒロゲナーゼ、グルタミン酸シンターゼ等が挙げられる。
(2)本発明の微生物を用いたL−グルタミンの生産
上記のようにして得られるコリネ型細菌を培地で培養し、該培地中にL−グルタミンを生成蓄積せしめ、該培地からL−グルタミンを採取することにより、L−グルタミンを効率よく製造することができ、かつ、L−グルタミン酸の副生を抑制することができる。
本発明のコリネ型細菌を用いてL−グルタミンを生産するには、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いて常法により行うことができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用される炭素源および窒素源は培養する菌株の利用可能であるものならばいずれの種類を用いてもよい。
炭素源としては、グルコース、グリセロール、フラクトース、スクロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が使用され、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノール等のアルコール類も単独あるいは他の炭素源と併用して用いられる。
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用される。
有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク分解物等が使用され、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添する
ことが好ましい。
無機塩類としては、りん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用される。
培養は、発酵温度20〜45℃、pHを5〜9に制御し、通気培養を行う。培養中にpHが下がる場合には、炭酸カルシウムを加えるか、アンモニアガス等のアルカリで中和する。かくして10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のL−グルタミンが蓄積される。
培養終了後の培養液からL−グルタミンを採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から菌体を除去した後に、濃縮晶析することによって採取される。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<実施例1>gls増幅株の構築
(1)コリネ型細菌のグルタミナーゼ活性の測定
コリネ型細菌では、L−グルタミンを分解してL−グルタミン酸を生成する酵素グルタミナーゼの存在は明確に知られていなかった。そこで本発明者らは、コリネ型細菌にグルタミナーゼ活性が存在するかを検証した。
ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株をグルコース30g、KH2PO4 1.5g、MgSO4・7H2O 0.4g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl100μg、ビオチン 3μg、大豆加水分解物200mg、尿素 1.5g、GD-113 0.02mlを純水1Lに含む培地(KOHでpH7.0に調整されている)に接種し、31.5℃にてしんとう培養した。培養液より遠心分離にて菌体を分離し、100mM Tris-HCl(pH8.0)で洗浄後、超音波破砕し、未破砕菌体を遠心分離で除去することにより粗酵素液を調製した。粗酵素液のタンパク質濃度は牛血清アルブミンを標準試料として、Protein Assay(Bio-Rad)を用いて定量した。
グルタミナーゼ活性は、Tris-HCl (pH8.0)100mM,L−グルタミン75mMを含む溶液に粗酵素液を加えて30℃で30分または60分反応させ、終濃度0.5%となるようにSDSを添加することで反応を停止した後に、L−グルタミン酸生成量を定量することによって測定した。その結果、表1に示すように、ブレビバクテリウム・フラバムではグルタミナーゼ活性を示す酵素が存在することが示された。
Figure 2004187684
(2)グルタミナーゼ遺伝子のクローニング
L−グルタミンは、核酸、アミノ酸などの生合成において、NH3の供与体となることが知られており、例えばカルバモイルリン酸合成酵素のスモールサブユニットはグルタミナ
ーゼ活性を示すことが知られている。一方で、核酸・アミノ酸生合成とは無関係にグルタミナーゼ活性を示す遺伝子として、近年Rhizobium etliでグルタミナーゼをコードする遺伝子glsAがクローニングされている(Biochim. Biophys. Acta, 1444(3): 451-6, 1999)。そこで、本発明者らはglsAの相同遺伝子をコリネバクテリウム・グルタミカムの遺伝子群より検索した結果、GLSをコードすると考えられる遺伝子を見出した。この遺伝子の塩基配列に基づいて、ブレビバクテリウム・フラバムからこの遺伝子の相同遺伝子を増幅してクローニングし、そこで、コリネ型細菌中でこの遺伝子を増幅し、グルタミナーゼ活性の向上が認められるかを検証した。クローニングされた遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す(以下、配列番号1の塩基配列を有する遺伝子を「gls」とする)。
配列番号5および6に示すプライマーを合成し、ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株の染色体DNAを鋳型にして、PCR法により目的配列を増幅した。なお、配列番号5、6はそれぞれ配列番号1の塩基番号1〜20, 2100〜2081に該当する。ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株の染色体DNAの調製は、Bacterial Genome DNA Purification Kit(Advanced Genetic Technologies Corp.)を用いて行った。また、PCR反応は、Pyrobest
DNA Polymerase(宝酒造)を用い、変性94℃ 30秒、会合55℃ 15秒、伸長72℃ 3分の条件で30サイクル行った。
生成したPCR産物を常法により精製後、ブランティングキット(宝酒造)を用いて平滑末端化した。平滑末端化したPCR産物は、コリネ型細菌とエシェリヒア・コリのシャトルベクターであるpHMK2をSmaI処理した断片とライゲーションキット(宝酒造)を用いて連結した後、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝酒造)を用いて形質転換を行い、IPTG 10μg/ml, X-Gal 40μg/mlおよびカナマイシン25μg/mlを含むL培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現した白色のコロニーを釣り上げ、単コロニー分離し、形質転換体を得た。
形質転換体からアルカリ法によりプラスミドを調製した後、ベクターに目的のPCR断片が挿入されているプラスミドをpHMKGLS5と名付けた。なお、pHMK2は、E.coliのクローニングベクターpK1(特開2000-262288)のBsaAI部位に、コリネ型細菌で自律複製可能なプラスミドpHM1519(Agric.Biol.Chem.,48,2901-2903(1984))由来の複製起点を持つプラスミドpHK4(特開平5-7491公報参照)を制限酵素BamHIおよびSmaIで消化して、複製起点を含む遺伝子断片を取得し、得られた断片をDNA平滑末端化キット(宝酒造)を用い平滑末端化した後に、挿入したプラスミドである。pHMKGLS5の構築過程を図1に示した。
(3)glsの過剰発現株の構築
上記(2)で取得したpHMGLS5をコリネ型細菌に導入し、gls増幅株を取得した。具体的には、ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株を電気パルス法(特開平2-207791号公報参照)によりpHMGLS5を用いて形質転換し、カナマイシン25μg/mlを含むCM2G培地(ポリペプトン10g/L, イーストエクストラクト10g/L, NaCl 5g/L, グルコース 1g/L pH7.0(KOH))に塗布し、31.5℃にて2晩培養し、出現したコロニーを単離して形質転換体とし、2247/pHMKGLS5と名付けた。また、併行してpHMK2の導入株も構築し、得られた形質転換体を2247/pHMK2とした。これらの菌株を(1)記載の方法で培養し、GLS活性を測定した。その結果、pHMGLS5導入株ではグルタミナーゼ活性が上昇していることが確認された(表2)。なお、形質転換株のプラスミド保持率は100%であった。
Figure 2004187684
<実施例2>gls欠損株の構築
(1)gls破壊用プラスミドの構築
コリネ型細菌のグルタミナーゼをコードする遺伝子が、gls遺伝子の他にも存在しているか確認する為に、gls欠損株を構築した。具体的な方法を下記に記す。
まずブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株の染色体DNAを鋳型として、配列番号5と7の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、gls遺伝子N末端側の増幅産物を得た。一方、gls遺伝子C末端側の増幅産物を得るために、ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株の染色体DNAを鋳型として、配列番号6と8の合成DNAをプライマーとしてPCRを行った。配列番号7と8は部分的に相補的である。なお、配列番号7、8、9、10はそれぞれ配列番号1の塩基番号1245〜985, 983〜1245, 414〜438, 1869〜1845に該当し、かつ配列番号7、8はいずれも配列番号1の塩基番号1003〜1230の塩基を欠失している。PCR反応は、Z-Taq(宝酒造)を用い、変性94℃ 30秒、会合55℃ 15秒、伸長72℃ 30秒の条件で30サイクル行った。
次に、内部配列を欠失したgls遺伝子断片を得るために、上記gls N末側およびC末側の遺伝子産物をそれぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列番号9と10の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、変異導入されたgls遺伝子増幅産物を得た。PCR反応は、Z-Taq(宝酒造)を用い、変性94℃ 30秒、会合55℃ 15秒、伸長72℃ 30秒の条件で30サイクル行った。このgls遺伝子産物は、配列番号2のアミノ酸配列において、110から185番目のアミノ酸を欠失することとなる。
生成したPCR産物を常法により精製後SmaIで消化し、pNELのSmaI部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリDH5αのコンピテントセル(宝酒造)を形質転換し、X-Gal 40μg/mlおよびカナマイシン25μg/mlを含むL培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現した青色のコロニーを釣り上げ、単コロニー分離し、形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpNELΔglsとした。なお、pNELは、pNEOL(WO 00/18935参照)を鋳型として、配列番号11、12に示す合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、SmaI処理後にセルフライゲーションして得られたプラスミドであり、コリネ型細菌の細胞内で自律複製可能とする領域を含まない。PCR反応は、Pyrobest DNA Polymerase(宝酒造)を用い、変性98℃ 20秒、会合・伸長68℃ 6分の条件で30サイクル行っている。pNELの構築過程を図2に、pNELΔglsの構築過程を図3に示した。
(2)gls欠損株の構築
上記(1)で得られたpNELΔGLSは、コリネ型細菌の細胞内で自律複製可能とする領域を含まないため、本プラスミドでコリネ型細菌を形質転換した場合、極めて低頻度であるが本プラスミドが相同組換えにより染色体に組み込まれた株が形質転換体として出現する。ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067を電気パルス法により高濃度のプラスミドpNE
LΔglsを用いて形質転換し、カナマイシン25μg/mlを含むCM2G培地(ポリペプトン10g/L,
イーストエクストラクト10g/L, NaCl 5g/L, グルコース 1g/L pH7.0(KOH))に塗布し、31.5℃にて2晩培養し、出現したコロニーを単離して形質転換体とした。この形質転換体は、X-Gal 40μg/mlを含むCM2Gプレート上で青色のコロニーを形成する。次に、これらの形質転換体をカナマイシンを含まないCM2G培地にて継代培養し適当に希釈した後、X-Gal 40μg/mlを含むCM2Gプレートに塗布した。出現した多数のコロニーの中から、白色のコロニーを選択し、かつカナマイシン(Km)感受性を示す株を選択した。
これらKm感受性株の染色体DNAを鋳型として、配列番号5と6の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、ATCC14067の染色体DNAを鋳型にしたものよりもPCR産物の大きさが小さいものをgls欠損株として以降の実験に使用した(以下、2247Δglsと略す)。
(3)2247Δglsへのglsプラスミドの導入
上記(2)で得られた2247Δgls株に、実施例1(2)記載のプラスミドpGLS5を電気パルス法にて導入し、カナマイシン耐性を指標に形質転換体を取得した。得られた形質転換体を2247Δgls/pGLS5と名付けた。また、併行してpHMK2の導入も実施し、得られた形質転換体を2247Δgls/pHMK2とした。
(4)gls欠損株のGLS活性測定
ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067、2247Δgls、およびそのpHMK2, pHMKGLS導入株を実施例1(1)記載の方法でGLS活性を測定した結果を表3に示す。2247ΔglsではL−グルタミンの分解活性がほとんど消失していることが確認できた。また、分解活性の消失は、pHMKGLS5の導入で相補された。したがって、コリネ型細菌のグルタミナーゼ活性を担っている主要な遺伝子はglsであると推定された。
Figure 2004187684
<実施例3>gls欠損株によるL−グルタミンの生産
(1)gls欠損株の培養評価
ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株および2247Δgls株を用いてL−グルタミン生産のための培養を以下のように行った。CM2Gプレート培地にて培養して得たATCC14067株および2247Δgls株の菌体を、グルコース100g、(NH4)2SO4 60gまたは40g、KH2PO4 2.5g、MgSO4・7H2O 0.4g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl350μg、ビオチン 4μg、大豆加水分解物200mg、CaCO3 50gを純水1Lに含む培地(NaOHでpH6.8に調整されている)に接種し、31.5℃にて培地中の糖が消費されるまでしんとう培養した。
培養終了後、培養液中のL−グルタミン蓄積量は、培養液を適当に希釈した後、液体クロマトグラフィーにより分析した。カラムはCAPCELL PAK C18(資生堂)を用い、サンプルは0.095%りん酸、3.3mMヘプタンスルホン酸、5%アセトニトリルを蒸留水1Lに含む溶離液で溶出し、210nMの吸光度の変化によりL−グルタミン蓄積量を分析した。また、L−グルタミン酸の蓄積量は、培養液を適当に希釈後、バイオテックアナライザーAS210(
旭化成)にて分析した。このときの結果を表4(硫安60g/L)、表5(硫安40g/L)に示した。
2247Δgls株では、いずれの条件においても、その親株のATCC14067株に比べて、収率で約3%の向上が認められた。これらの結果から、L−グルタミンの生産においてGLS活性の消失または低下が有効であることが示された。
Figure 2004187684
Figure 2004187684
<実施例4>gls欠損・GS活性増強株の構築
(1)発現が増強されたGS遺伝子を持つプラスミドの構築
コリネ型細菌のGS遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている(Genbank Accession No. Y13221)。この配列を参考に、発現が増強されたGS遺伝子(強化型GS遺伝子)を構築した。具体的な方法を以下に示す。まず、ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株の染色体DNAを鋳型とし、配列番号13、18のDNAをプライマーとしてN末端側の一次PCRを行い、配列番号15、17のDNAをプライマーとしてC末端側の一次PCRを行った。なお、配列番号13、14、15、16、17、18は、それぞれGenbank Accession No. Y13221の塩基番号487〜507, 523〜549, 1798〜1775, 1770〜1745, 1118〜1169, 1169〜1118に該当する。配列番号17と18は相補的である。PCR反応は、Pyrobest DNA polymerase(宝酒造)を用い、変性94℃ 30秒、会合55℃ 15秒、伸長72℃ 1分の条件で30サイクル行った。
次に、強化型GS遺伝子断片を得るために、上記 GS遺伝子の上流側および下流側の増幅産物をそれぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列番号14と16の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、目的の変異が導入されたGS遺伝子増幅産物を得た。PCR反応は、Pyrobest DNA polymerase(宝酒造)を用い、変性94℃ 30秒、会合55℃ 15
秒、伸長72℃ 2分の条件で30サイクル行った。
次にPCR産物を常法により精製後SmaIで消化し、pNELのSmaI部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリDH5αのコンピテントセル(宝酒造)を形質転換し、X-Gal 40μg/mlおよびカナマイシン25μg/mlを含むL培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現した青色のコロニーを釣り上げ、単コロニー分離し、形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、glnA発現制御領域の配列決定し、目的の変異が導入されていたものをpNELglnA14とした。pNELglnA14の構築過程を図4に示した。こうして得られたpNELglnA14にクローニングされているglnA遺伝子断片は、FEMS Microbiogy Letters 205(2001)361-367に記載されているGS遺伝子の-35領域よりも3bp下流の領域の配列(ATTATA)がTATAATに、および-10領域の配列(TTTTGA)がTTGCCAに置換されている。
(2)GS活性増強株の構築
上記(1)で得られたpNELglnA14はコリネ型細菌の細胞内で自律複製可能とする領域を含まないため、本プラスミドでコリネ型細菌を形質転換した場合、極めて低頻度であるが本プラスミドが相同組換えにより染色体に組み込まれた株が形質転換体として出現する。ブレビバクテリウム・フラバム2247Δgls株を電気パルス法により高濃度のプラスミドpNELΔglnA14を用いて形質転換し、カナマイシン25μg/mlを含むCM2G培地(ポリペプトン10g/L, イーストエクストラクト10g/L, NaCl 5g/L, グルコース 1g/L pH7.0(KOH))に塗布し、31.5℃にて2晩培養し、出現したコロニーを単離して形質転換体とした。この形質転換体は、X-Gal 40μg/mlを含むCM2Gプレート上で青色のコロニーを形成する。次に、これらの形質転換体をカナマイシン(Km)を含まないCM2G培地にて継代培養し適当に希釈した後、X-Gal 40μg/mlを含むCM2Gプレートに塗布した。出現した多数のコロニーの中から、白色のコロニーを選択し、かつカナマイシン感受性を示す株を選択した。
これらKm感受性株の染色体DNAを鋳型として、配列番号14と16の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、発現制御領域の配列を決定した。Km感受性株のうち、発現制御領域に目的の変異が導入されていたものを、2247Δgls glnA14として以降の実験に使用した。
(3)GS活性の測定
ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株を、グルコース30g、KH2PO4 1.5g、MgSO4・7H2O 0.4g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl100μg、ビオチン 3μg、大豆加水分解物350mg、尿素 3.0g、GD-113 0.02mlを純水1Lに含む培地(KOHでpH7.0に調整されている)に接種し、31.5℃にてしんとう培養した。GS活性は、Journal of Fermentation and Bioengineering, Vol.70, No.3, 182-184, 1990に記載の方法を参考とし、イミダゾール-HCl(pH7.0)100mM, KCl 90mM, NH4Cl 0.1mM, MnCl2 1mM, ホスホエノールピルビン酸1mM, NADH 0.3mM, ラクテートデヒドロゲナーゼ10U, ピルビン酸キナーゼ25U, ATP 1mM, MSG 10mMを含む溶液に、粗酵素液を加え、30℃における340nmの吸光度変化を測定することによって測定した。ブランクの測定には、上記反応液よりMSGを除いたものを用いた。粗酵素液のタンパク質濃度は、牛血清アルブミンを標準試料として、Protein Assay(Bio-Rad)を用いて定量した。GS活性増強株では、約3倍にGS活性が向上していることが証明された。
Figure 2004187684
(4)GLS活性低下・GS活性増強株の培養評価
ブレビバクテリウム・フラバムATCC14067株、2247Δgls株および2247Δgls glnA14株を用いてL−グルタミン生産のための培養を以下のように行った。CM2Gプレート培地にて培養して得たATCC14067株および2247Δgls株の菌体を、グルコース100g、(NH4)2SO4 60g、KH2PO4 2.5g、MgSO4・7H2O 0.4g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl 350μg、ビオチン 4μg、大豆加水分解物200mg、CaCO3 50gを純水1Lに含む培地(NaOHでpH6.8に調整されている)に接種し、31.5℃にて培地中の糖が消費されるまでしんとう培養した。
培養終了後、培養液中のL−グルタミン蓄積量は、培養液を適当に希釈した後、液体クロマトグラフィーにより分析した。また、L−グルタミン酸の蓄積量は、培養液を適当に希釈後、バイオテックアナライザーAS210(旭化成)にて分析した。このときの結果を表7に示した。
2247Δgls glnA14株では、2247Δgls株に比べてさらに収率の向上が認められた。これらの結果から、L−グルタミンの生産においてGLS活性の消失または低下に加えて、GS活性の増強が有効であることが示された。
Figure 2004187684
<参考例>
(1)公知のL−グルタミン生産菌及び2247Δgls glnA14株のグルタミナーゼ活性の測定
公知のL−グルタミン生産菌としては、ビタミンP活性物質に対する耐性株として得られたAJ11576, AJ11577(特開昭56-164792)、α-ケトマロン酸耐性株として得られたAJ11573, AJ11574(特開昭56-151495)、グルタミン酸を含有するペプチドに対する耐性株として得られたAJ12418, AJ12419(特開平2-186994)などがある。そこで、これらL−グルタミン生産菌及び実施例4で得られた2247Δgls glnA14株のGLS活性を、実施例1記載の方法で測定した。その結果を表8に示す。これら公知のL−グルタミン生産株では、いず
れも有意なGLS活性を保持していた。
Figure 2004187684
グルタミナーゼ遺伝子を含むプラスミドpHMKGLS5の構築過程を示す図。 コリネ型細菌で自律複製可能な領域を含まないプラスミドpNELの構築過程を示す図。 gls破壊用プラスミドpNELΔglsの構築過程を示す図。 発現が増強されたGS遺伝子を持つプラスミドpNELglnA14の構築過程を示す図。

Claims (9)

  1. L−グルタミン生産能を有し、かつ、細胞内のグルタミナーゼ活性が低下するように改変されたコリネ型細菌。
  2. 染色体上のグルタミナーゼ遺伝子が破壊されたことにより、グルタミナーゼ活性が低下した請求項1に記載のコリネ型細菌。
  3. グルタミナーゼ活性が、0.1U/mg菌体タンパク質以下である請求項1又は2に記載の細菌。
  4. 菌体タンパク質当たりのグルタミナーゼ活性がグルタミンシンテターゼ活性と同じか又はそれ以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の細菌。
  5. さらに細胞内のグルタミンシンテターゼ活性が増強するように改変された請求項1〜4のいずれか一項に記載の細菌。
  6. グルタミンシンテターゼ活性の増強が、グルタミンシンテターゼ遺伝子の発現量の増強によるものである請求項5に記載の細菌。
  7. グルタミンシンテターゼ遺伝子の発現量の増強が、グルタミンシンテターゼをコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は前記細菌細胞内のグルタミンシンテターゼをコードする遺伝子の発現が増強されるように同遺伝子の発現調節配列を改変することによるものである請求項6に記載の細菌。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の細菌を培地に培養し、該培地中にL−グルタミンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−グルタミンの製造法。
  9. コリネ型細菌のグルタミンシンテターゼ遺伝子であって、−35領域の配列がTTGCCAであり、−10領域の配列がTATAATであるグルタミンシンテターゼ遺伝子。
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