JP2016208852A - 脂肪酸を生成する緑藻改変株 - Google Patents

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Abstract

【課題】生育や脂肪酸生成等の物質生産が向上した緑藻改変株およびその利用法を提供する。【解決手段】LC1株(FERM BP-22277)およびその誘導株からなる群より選択される緑藻改変株を培養し、得られた藻体を適宜処理することにより、脂肪酸、脂肪酸エステル、糖グリセロール、またはそれらの組み合わせを製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪酸を生成する緑藻改変株およびその利用に関する。
微細藻類による光合成での物質生産においては、培養液中の微細藻類は、クロロフィルアンテナを用いて光を吸収し、二酸化炭素固定に必要なエネルギーを得る必要がある。しかしながら、物質生産に用いられるような高光量且つ高藻体密度での培養条件においては、クロロフィルアンテナに過剰に光が吸収され、吸収された光の大部分は光合成に用いられることなく蛍光や熱として散失する。すなわち、そのような培養条件では、光は培養液表層で減衰し、培養液深部に透過する光が大きく減少することにより、培養液深部の微細藻類は必要な照射光を得ることができないと考えられる。
このような課題に対し、例えば緑藻では、培養時の光合成の光利用効率を向上させるためクロロフィルアンテナサイズを縮小させる取り組みがなされている(非特許文献1)。
具体的には、クラミドモナス・レインハルティ(Chlamydomonas reinhardtii)、クロレ
ラ・ピレノイドーサ(Chlorella pyrenoidosa)、およびデュナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)では、クロロフィルアンテナサイズが縮小した株で光合成における光利用効率や光合成の生産性が向上したという報告がある(非特許文献2,3,4)。また、クロレラ属藻類では、X線照射により得られた色素変異株で高光照射条件下の培養のある時期
に親株よりも増殖速度が高くなったことが示されている(特許文献1)。また、シュードコリシスチス属藻類では、クロロフィル含量が野生株よりも低下しクロロフィルa/b比が5である株でクロロフィル当たりの光合成活性が野生株よりも高いことが示されている(特許文献2)。
しかしながら、中温処理により脂肪酸を生成する緑藻において、そのような色素低減株は知られていない。
特開2000-078966号公報 特開2013-102715号公報
人工光合成(NTS、河野智謙監訳、p240-241) Planta. 2003 May;217(1):49-59. Epub 2003 Feb 12 Journal of Applied Phycology 1997, 9, 503-510 Journal of Applied Phycology 1999, 10, 515-525
本発明は、生育や脂肪酸生成等の物質生産が向上した緑藻改変株およびその利用法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、クロロフィル含有率が低下し、且つ、クロロフィルa/b比が増大した緑藻改変株において、生育と脂肪酸生成が
向上していることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
下記(A)〜(C)のいずれかの性質を有するように改変され、且つ、藻体を中温処理に供した際に脂肪酸を生成する、緑藻の改変株:
(A)クロロフィル含有率が非改変株と比較して低下している;
(B)クロロフィルa/b比が非改変株と比較して増大している;
(C)前記(A)と(B)の組み合わせ。
[2]
クロロフィル含有率が非改変株の30〜95%に低下している、前記改変株。
[3]
クロロフィルa/b比が非改変株の103%以上に増大している、前記改変株。
[4]
デスモデスムス(Desmodesmus)属に属する、前記改変株。
[5]
AJ7846株(FERM BP-22252)から誘導される、前記改変株。
[6]
前記非改変株がAJ7846株(FERM BP-22252)である、前記改変株。
[7]
LC1株(FERM BP-22277)およびその誘導株からなる群より選択される、緑藻の改変株。[8]
前記改変株を培地で培養すること、
前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、および
前記処理の処理物から脂肪酸を回収すること、
を含む、脂肪酸を製造する方法。
[9]
前記改変株を培地で培養すること、
前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、
前記中温処理の処理物をアルコールの存在下で中低温処理に供すること、および
前記中低温処理の処理物から脂肪酸エステルを回収すること、
を含む、脂肪酸エステルを製造する方法。
[10]
前記改変株を培地で培養すること、
前記培養により得られた藻体を中温処理および/または有機溶媒処理に供すること、および
前記処理の処理物から糖グリセロールを回収すること、
を含む、糖グリセロールを製造する方法。
[11]
前記改変株を培地で培養すること、
前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、
L−アミノ酸生産能を有する細菌を、前記処理の処理物を含有する培地で培養して、L−アミノ酸を該培地中又は該細菌の菌体内に生成蓄積すること、および
該培地又は菌体よりL−アミノ酸を採取すること、
を含む、L−アミノ酸を製造する方法。
[12]
前記処理物が、脂肪酸である、前記方法。
[13]
前記細菌が、脂肪酸資化能が高まるように改変されている、前記方法。
[14]
前記細菌が、腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌である、前記方法。
[15]
前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、またはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である、前記方法。
[16]
前記有機溶媒が、メタノールである、前記方法。
[17]
前記中低温処理が、5℃〜60℃であって、且つ、前記中温処理より低い温度で行われる、前記方法。
[18]
前記中温処理が、35℃〜70℃で行われる、前記方法。
[19]
前記中温処理が、pH3.0〜11.0で行われる、前記方法。
[20]
前記中温処理の後に、当該中温処理の処理物をアルカリ処理に供することを含み、当該アルカリ処理の処理物から脂肪酸が回収される、前記方法。
[21]
前記中温処理の前に、酸またはアルカリにより藻体を加水分解することを含む、前記方法。
本発明により、生育や脂肪酸生成等の物質生産が向上した緑藻改変株が提供される。当該緑藻類は、脂肪酸、脂肪酸エステル、糖グリセロール、またはそれらの組み合わせの製造等に利用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の藻類
本発明の藻類は、緑藻の改変株である。本発明の藻類は、具体的には、下記(A)〜(C)のいずれかの性質を有するように改変され、且つ、藻体を中温処理に供した際に脂肪酸を生成する、緑藻の改変株である。
(A)クロロフィル含有率が非改変株と比較して低下している;
(B)クロロフィルa/b比が非改変株と比較して増大している;
(C)前記(A)と(B)の組み合わせ。
「非改変株」とは、上記(A)〜(C)の性質を付与されていない対照株をいう。非改変株としては、親株や野生株が挙げられる。
「クロロフィル含有率が非改変株と比較して低下している」とは、本発明の藻類と非改変株を同一の条件で培養した場合に、本発明の藻類におけるクロロフィル含有率が、非改変株におけるクロロフィル含有率よりも小さいことをいう。「クロロフィル含有率」とは、藻体の単位乾燥重量当たりに含まれるクロロフィルの重量をいう。クロロフィル含有率の低下の程度は特に制限されないが、クロロフィル含有率は0(ゼロ)にはならないものとする。
本発明の藻類におけるクロロフィル含有率は、例えば、非改変株のクロロフィル含有率の、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、または75%以下であってもよく、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。本発明の藻類におけるクロロフィル含有率は、具体的には、
例えば、非改変株のクロロフィル含有率の、30%〜95%、40%〜90%、50%〜85%、または60%〜80%に低下していてもよい。
本発明の藻類におけるクロロフィル含有率は、例えば、非改変株のクロロフィル含有率と比較して、0.1%(w/w−DCW)以上、0.2%(w/w−DCW)以上、0.3%(w/w−DCW)以上、または0.4%(w/w−DCW)以上低下していてもよい。
本発明の藻類におけるクロロフィル含有率は、例えば、1.6%(w/w−DCW)以下、1.5%(w/w−DCW)以下、1.4%(w/w−DCW)以下、1.3%(w/w−DCW)以下であってもよく、0.5%(w/w−DCW)以上、0.7%(w/w−DCW)以上、または1.0%(w/w−DCW)以上であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。本発明の藻類におけるクロロフィル含有率は、具体的には、例えば、0.5〜1.6%(w/w−DCW)、0.7〜1.5%(w/w−DCW)、または1.0〜1.4%(w/w−DCW)であってもよい。
クロロフィル含有率が低下しているかは、本発明の藻類と非改変株を同一の条件で培養し、クロロフィル含有率を比較することにより確認できる。培養条件は、本発明の藻類と非改変株が十分に生育できるものであれば特に制限されない。そのような培養条件としては、後述する培養条件が挙げられる。また、そのような培養条件として、具体的には、実施例に記載の培養条件が挙げられる。クロロフィル含有率は、常法により測定できる。クロロフィル含有率は、例えば、実施例に記載の手法により測定できる。
「クロロフィルa/b比が非改変株と比較して増大する」とは、本発明の藻類と非改変株
を同一の条件で培養した場合に、本発明の藻類におけるクロロフィルa/b比が、非改変株
におけるクロロフィルa/b比よりも大きいことをいう。「クロロフィルa/b比」とは、藻体中に含まれる、クロロフィルbの重量に対するクロロフィルaの重量の比率をいう。「クロロフィルa/b比」を「クロロフィルa/クロロフィルb比」ともいう。クロロフィルa/b比の
増大の程度は特に制限されない。本発明の藻類は、クロロフィルbを有していてもよく、
クロロフィルbを有していなくてもよい。
本発明の藻類におけるクロロフィルa/b比は、例えば、非改変株のクロロフィルa/b比の、103%以上、106%以上、または109%以上であってもよく、1000%以下、500%以下、300%以下、または150%以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。
本発明の藻類におけるクロロフィルa/b比は、例えば、非改変株のクロロフィルa/b比と比較して、0.05以上、0.10以上、または0.15以上増大していてもよい。
本発明の藻類におけるクロロフィルa/b比は、例えば、1.85以上、1.9以上、ま
たは1.95以上であってもよく、20以下、10以下、5以下、または3以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。
クロロフィルa/b比が増大しているかは、本発明の藻類と非改変株を同一の条件で培養
し、クロロフィルa/b比を比較することにより確認できる。培養条件は、改変株と非改変
株が十分に生育できるものであれば特に制限されない。クロロフィルa/b比は、常法によ
り測定できる。クロロフィルa/b比は、例えば、実施例に記載の手法により測定できる。
本発明の藻類は、藻体を中温処理に供した際に脂肪酸を生成する性質を有する。当該性質を「脂肪酸生成能」ともいう。「脂肪酸を生成する」とは、具体的には、藻体内に脂肪
酸が蓄積することを意味する。「脂肪酸生成能を有する」とは、本発明の藻類を培養し、得られた藻体を中温処理に供した場合に、脂肪酸含有率が、例えば、1%(w/w−DCW)以上、3%(w/w−DCW)以上、5%(w/w−DCW)以上、10%(w/w−DCW)以上、15%(w/w−DCW)以上、20%(w/w−DCW)以上、または25%(w/w−DCW)以上となることを意味してよい。「脂肪酸含有率」とは、藻体の単位乾燥重量当たりに含まれる脂肪酸の重量をいう。培養条件は、本発明の藻類が十分に生育できるものであれば特に制限されない。中温処理条件は、本発明の藻類において十分に脂肪酸が生成するものであれば特に制限されない。そのような中温処理条件としては、後述する中温処理条件が挙げられる。また、そのような中温処理条件として、具体的には、実施例に記載の中温処理条件が挙げられる。脂肪酸含有率は、常法により測定できる。脂肪酸含有率は、例えば、実施例に記載の手法により測定できる。
本発明の藻類は、非改変株と比較して、物質生産が向上する。物質生産の向上としては、培養時の生育の向上や、藻体を目的物質生成処理に供した際の目的物質生成の向上が挙げられる。「目的物質」とは、脂肪酸、脂肪酸エステル、および糖グリセロールの総称である。
すなわち、本発明の藻類は、非改変株と比較して、脂肪酸生成能が向上していてよい。「脂肪酸生成能の向上」を「脂肪酸生成の向上」ともいう。「非改変株と比較して脂肪酸生成能が向上する」とは、本発明の藻類と非改変株を同一の条件で培養し、得られた藻体を同一の条件で中温処理に供した場合に、本発明の藻類における脂肪酸含有率が、非改変株における脂肪酸含有率よりも大きいことをいう。脂肪酸生成能の向上の程度は特に制限されない。本発明の藻類における脂肪酸含有率は、例えば、非改変株における脂肪酸含有率の、110%以上、120%以上、130%以上、または140%以上であってよい。培養条件は、本発明の藻類と非改変株が十分に生育できるものであれば特に制限されない。中温処理条件は、本発明の藻類と非改変株において十分に脂肪酸が生成するものであれば特に制限されない。そのような中温処理条件としては、後述する中温処理条件が挙げられる。また、そのような中温処理条件として、具体的には、実施例に記載の中温処理条件が挙げられる。脂肪酸生成の向上に関する記載は、他の目的物質の生成が向上する場合にも準用できる。
また、本発明の藻類は、非改変株と比較して、生育が向上していてよい。「非改変株と比較して生育が向上する」とは、本発明の藻類と非改変株を同一の条件で培養した場合に、本発明の藻類における藻体濃度が、非改変株における藻体濃度よりも大きいことをいう。「藻体濃度」とは、培養液の単位容積当たりに含まれる藻体の乾燥重量をいう。生育の向上の程度は特に制限されない。本発明の藻類における藻体濃度は、例えば、非改変株における藻体濃度の、105%以上、110%以上、115%以上、または120%以上であってよい。藻体の乾燥重量は、常法により測定できる。藻体の乾燥重量は、例えば、実施例に記載の手法により測定できる。
本発明の藻類は、脂肪酸生成能を有する緑藻を上記(A)〜(C)のいずれかの性質を有するように改変することにより、すなわち、脂肪酸生成能を有する緑藻に上記(A)〜(C)のいずれかの性質を付与することにより、得ることができる。
上記(A)〜(C)のいずれかの性質を緑藻に付与する手法は特に制限されない。上記(A)〜(C)のいずれかの性質は、例えば、突然変異処理により緑藻に付与することができる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。また、上記(A)〜(C)のいずれかの性質は、例えば、非改変株の使用の際に自然に付
与されてもよい。すなわち、本発明の藻類は、例えば、非改変株を培養する際に自然に生じた変異株であってもよい。
脂肪酸蓄積能を有する緑藻としては、デスモデスムス(Desmodesmus)属藻類が挙げら
れる。すなわち、本発明の藻類は、デスモデスムス(Desmodesmus)属に属していてよい
。Desmodesmus属藻類としては、デスモデスムス・アルマタス(Desmodesmus armatus)、デスモデスムス・コムニス(Desmodesmus communis)、デスモデスムス・ピルコレイ(Desmodesmus pirkollei)、デスモデスムス・コスタトグラニュラタス(Desmodesmus costatogranulatus)、デスモデスムス・パノニカス(Desmodesmus pannonicus)、デスモデスムス・ペルフォラタス(Desmodesmus perforatus)、デスモデスムス・インターミディウス(Desmodesmus intermedius)、デスモデスムス・ブラシリエンシス(Desmodesmus brasiliensis)、デスモデスムス・エレガンス(Desmodesmus elegans)、デスモデスムス・ヒストリクス(Desmodesmus hystrix)、デスモデスムス・クアドリカウダ(Desmodesmus
quadricauda)、デスモデスムス・シュードセラタス(Desmodesmus pseudoserratus)、デスモデスムス・マクシムス(Desmodesmus maximus)、およびデスモデスムス・ビセル
ラリス(Desmodesmus bicellularis)が挙げられる。
脂肪酸蓄積能を有する緑藻として、具体的には、例えば、AJ7846株(FERM BP-22252)
やAJ7847株(FERM BP-22253)が挙げられる。すなわち、本発明の藻類は、具体的には、
例えば、AJ7846株またはAJ7847株から誘導される株であってよい。この場合、本発明の藻類についての「非改変株」とは、AJ7846株またはAJ7847株を指す。
AJ7846株は、2013年5月14日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託セ
ンター(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-22252の下に寄託されている。
AJ7847株は、2013年5月14日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託セ
ンター(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-22253の下に寄託されている。
AJ7846株およびAJ7847株は、デスモデスムス・アルマタス(Desmodesmus armatus)や
デスモデスムス・コムニス(Desmodesmus communis)等のDesmodesmus属と類縁関係にあ
ると考えられる。
AJ7846株は、18S rDNAのBLAST解析によれば、Desmodesmus armatus var. subalternans
CCAP 276/4A株に対し99.71%、Desmodesmus communis CCAP 276/4B株に対し99.24%の相同性を示す。
AJ7847株は、18S rDNAのBLAST解析によれば、Desmodesmus armatus var. subalternans
CCAP 276/4A株に対し99.77%、Desmodesmus communis CCAP 276/4B株に対し99.31%の相同性を示す。
本発明の藻類として、具体的には、例えば、LC1株(FERM BP-22277)およびその誘導株から選択される株が挙げられる。
LC1株は、AJ7846株から得られた改変株である。LC1株は、2014年8月13日に、独立行政
法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-22277の下に寄託されている。
「LC1株の誘導株」とは、LC1株を親株(祖先株)として構築された株であって、且つ、
AJ7846株を非改変株として上記(A)〜(C)のいずれかの性質を有するものをいう。すなわち、「LC1株の誘導株」とは、LC1株を親株(祖先株)として構築された株であって、且つ、下記(A1)〜(C1)のいずれかの性質を有するものをいう。
(A1)クロロフィル含有率がAJ7846株と比較して低下している;
(B1)クロロフィルa/b比がAJ7846株と比較して増大している;
(C1)前記(A1)と(B1)の組み合わせ。
LC1株の誘導株は、例えば、人為的な改変により育種されたものであってよい。人為的
な改変としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。また、LC1株の誘導株は、例えば、親株(祖先株)の使用の際に自然に生じたものであ
ってもよい。そのような誘導株としては、例えば、LC1株を培養する際に自然に生じた変
異株が挙げられる。誘導株は、LC1株の1種の改変により構築されてもよく、2種または
それ以上の改変の組み合わせにより構築されてもよい。
<2>本発明の藻類の利用
本発明の藻類は、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、糖グリセロール、またはそれらの組み合わせの製造に利用できる。具体的には、本発明の藻類を培養し、得られた藻体を適宜処理することにより、脂肪酸、脂肪酸エステル、糖グリセロール、またはそれらの組み合わせが生成する。なお、脂肪酸、脂肪酸エステル、および糖グリセロールを総称して、「目的物質」ともいう。また、目的物質を生成するための処理を総称して、「目的物質生成処理」という場合がある。すなわち、本発明の方法は、本発明の藻類を培地で培養すること、前記培養により得られた藻体を目的物質生成処理に供すること、および前記処理の処理物から目的物質を回収すること、を含む、目的物質を製造する方法である。なお、本発明において、「藻体」とは、藻類を培地で培養して得られる藻類の細胞をいう。また、本発明において、対象物(藻体やその処理物)を特定の条件で「処理する/処理に供する」ことを、対象物を当該条件で「インキュベートする」と読み替えてもよい。
<2−1>培養方法
培養方法は、本発明の藻類が増殖できる限り、特に制限されない。培養条件は、当業者が適宜設定することができる。培養は、例えば、微細藻類の培養に用いられる通常の条件で行うことができる。微細藻類の培養については多くの知見があり、例えば、Chlorella
属藻類、Arthrospira属藻類(Spirulina)、およびDunaliella salina等の藻類は、食用
として、工業的に大規模な培養が行われている(Spolaore, P. et al. 2006. J. Biosci.
Bioeng. 101: 87-96)。培養は、例えば、このような知見を参照して実施してよい。
培養は、光合成を利用し有機化合物を利用しない独立栄養培養(autotrophic culture
)、光合成を利用せず有機化合物を利用する従属栄養培養(heterotrophic culture)、
または光合成と有機化合物の両方を利用する混合栄養培養(mixotrophic culture)によ
り実施することができる。培養は、通常は、独立栄養培養(autotrophic culture)によ
り実施してよい。
培養は、解放系で行われてもよく、閉鎖系で行われてもよい。例えば、オープンポンドと呼ばれる解放培養系で培養を行うことができる。また、例えば、クローズドフォトバイオリアクターと呼ばれる閉鎖培養系で培養を行うことができる。
培養に用いられる培地は、本発明の藻類が増殖できる限り、特に制限されない。培地は、例えば、窒素源や各種無機塩を含有していてよい。また、培地は、例えば、必要に応じて炭素源等の他の成分を含有していてもよい。培地成分の種類や濃度は、当業者が適宜設定することができる。培地としては、例えば、微細藻類の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。そのような培地として、具体的には、例えば、0.3×HSM培地(Oyam
a, Y. et al. 2006. Planta 224: 646-654)、0.2×ガンボーグ培地(Izumo, A. et al. 2007. Plant Science 172: 1138-1147)、modified NORO培地(Yamaberi, K. et al. 1998. J. Mar. Biotechnol. 6: 44-48; Takagi, M. et al. 2000. Appl. Microbiol. Biotechnol. 54: 112-117)、Bold's Basal Medium(Tornabene, T. G. et al. 1983. Enzyme and Microb. Technol. 5: 435-440; Archibald, P. A. and Bold, H. C. 1970. Phytomorphology 20: 383-389)、F/2培地(Lie, C.-P. and Lin, L.-P. 2001. Bot. Bull. Acad. Sin. 42: 207-214)、TAP培地が挙げられる。また、藻類は、窒素源が枯渇すると油脂を
藻体内に蓄積することが知られている(Thompson GA Jr. 1996. Biochim. Biophys. Acta
1302: 17-45)。本発明においては、窒素源の濃度を制限した培地を本発明の藻類の培養に用いてもよい。
培養は、液体培地を用いて行うことができる。培養温度は、例えば、20〜40℃、好ましくは25℃〜35℃、より好ましくは30℃付近であってよい。培地の初発pHは、例えば、中性付近であってよい。中性付近とは、例えば、pH 6〜9であってよい。培養中はpH調整を行
ってもよく、行わなくともよい。pH調整には、適当な無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質を使用することができる。培養は、通気しながら行ってよい。通気量は、例えば、培養液単位体積当たりの1分間の通気量として、0.1〜2 vvm(volume per volume per minute)であってよい。培養液には、さらにCO2を供給してもよい。CO2の供給量は、
例えば、通気量に対して、0.5〜5%(v/v)であってよい。CO2と空気は、別個に培養液に供給してもよく、混合して培養液に供給してもよい。光合成を利用する場合、培養系に光を供給する。光は、適当な光源を利用して供給することができる。光源としては、例えば、白色蛍光灯、白色発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、太陽光が挙げられる。これらの光源は、適宜組み合わせて利用してもよい。光の照度は、例えば、1,000〜10,000 luxであってよい。培養液は、適宜、撹拌または循環させてよい。光の供給、空気の供給、CO2の供給、撹拌、循環等の各種操作は、連続的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。各種操作の条件は、培養を通じて一定であってもよく、そうでなくてもよい。培養期間は、例えば、1〜40日間であってよい。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせ
により実施することができる。また、培養は、種培養と本培養とに分けて行われてもよい。本培養は、例えば、本培養の培地に、種培養液を1〜50%(v/v)植菌することにより行ってよい。種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、種培養と本培養を、共に回分培養で行ってもよい。また、例えば、種培養を回分培養で行い、本培養を流加培養または連続培養で行ってもよい。
このようにして本発明の藻類を培養することにより、培地に本発明の藻類の藻体が生成する。
藻体は、培地に含まれたまま目的物質生成処理に供してもよく、培地から回収してから目的物質生成処理に供してもよい。また、藻体は、適宜前処理を行ってから目的物質生成処理に供してもよい。前処理としては、例えば、希釈、濃縮、凍結、融解、乾燥等が挙げられる。これらの前処理は、適宜組み合わせて行ってもよい。前処理は、目的物質生成処理の種類等の諸条件に応じて適宜選択することができる。
藻体を培地から回収する手法は特に制限されず、例えば公知の手法(Grima, E. M. et al. 2003. Biotechnol. Advances 20: 491-515)を利用できる。具体的には、例えば、自然沈降、遠心分離、濾過等の手法により、藻体を培地から回収することができる。また、その際、凝集剤(flocculant)を利用してもよい。回収した藻体は、適当な媒体を用いて適宜洗浄することができる。また、回収した藻体は、適当な媒体を用いて適宜再懸濁することができる。洗浄や懸濁に利用できる媒体としては、例えば、水や水性緩衝液等の水性媒体(水性溶媒)、メタノール等の有機媒体(有機溶媒)、およびそれらの混合物が挙げ
られる。媒体は、目的物質生成処理の種類等の諸条件に応じて適宜選択することができる。
藻体は、例えば、所望の程度に希釈または濃縮してから目的物質生成処理に供してよい。藻体は、懸濁液中の藻体濃度が、乾燥重量に換算して、例えば、25 g/L以上、または250 g/L以上となるように、希釈または濃縮してから目的物質生成処理に供してよい。藻体
の希釈は、上述したような適当な媒体を用いて行うことができる。藻体の濃縮は、例えば、藻体を沈殿させ、上清を適宜除くことにより、行うことができる。また、藻体の濃縮は、例えば、凍結乾燥やエバポレーションにより行うこともできる。
藻体は、例えば、一旦凍結させてから目的物質生成処理に供してよい。凍結温度は、例えば、0℃以下、-20℃以下、または-50℃以下であってよく、-80℃以上であってもよい。凍結時間は、例えば、1時間以上であってよく、24時間以下であってもよい。また、凍結
融解を繰り返してもよい。
目的物質生成処理の前には、反応系のpHを弱酸性あるいは弱アルカリ性に調整してもよい。弱酸性とは、例えば、pH 3.0〜7.0、pH 4.0〜6.0、またはpH 4.5〜6.0であってよい
。弱アルカリ性とは、例えば、pH 7.5〜12.0、pH 9.0〜11.0、またはpH 9.0〜10.5であってよい。pHの調整は、例えば、塩酸等の酸性物質や、NaOHやKOH等のアルカリ性物質を用
いて行うことができる。当該pH調整により、藻体が加水分解されてもよく、されなくてもよい。
<2−2>中温処理による脂肪酸生成
培養により得られた藻体を中温処理に供することにより、脂肪酸を生成できる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の藻類を培地で培養すること、前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、および前記処理の処理物から脂肪酸を回収すること、を含む、脂肪酸を製造する方法である。本発明においては、1種の脂肪酸のみが製造されてもよく、2種またはそれ以上の脂肪酸が製造されてもよい。
<中温処理>
「中温処理」とは、中温度での処理をいう。中温処理としては、例えば、WO2011/013707に記載の中温度での処理を参照できる。藻体は、上述したような適当な媒体に懸濁した
状態で中温処理に供することができる。「中温度」は、脂肪酸が生成する温度であれば特に制限されない。中温度は、処理時間等の諸条件に応じて適宜設定できる。中温度は、例えば、35℃以上、40℃以上、45℃以上、または50℃以上であってよい。また、中温度は、例えば、70℃以下、65℃以下、または60℃以下であってよい。中温処理の時間は、処理温度等の諸条件に応じて適宜設定できる。中温処理の時間は、例えば、1時間以上、または5時間以上であってよい。また、中温処理の時間は、例えば、48時間以下、または24時間以下であってよい。中温処理のpHは、中温処理により脂肪酸が生成する限り特に制限されない。中温処理のpHは、例えば、pH 3.0〜11.0であってよい。中温処理のpHは、例えば、弱酸性であってもよく、中性付近であってもよく、弱アルカリ性であってもよい。弱酸性とは、上記のような弱酸性の範囲、例えば、pH 4.5〜6.0であってよい。中性付近とは、例
えば、pH 7.0〜9.0であってよい。弱アルカリ性とは、上記のような弱アルカリ性の範囲
、例えば、pH 9.0〜10.5であってよい。また、例えば、本発明の藻類がAJ7846株から誘導される株である場合、中温処理のpHは、pH 4.5〜9.5が好ましく、pH 4.5〜6.5がより好ましいことがあり得る。また、例えば、本発明の藻類がAJ7847株から誘導される株である場合、中温処理のpHは、pH 4.5〜9.5が好ましく、pH 5.5〜7.5がより好ましいことがあり得る。中温処理は、静置で行ってもよく、撹拌や振とうしながら行ってもよい。
中温処理は、連続的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。処理温度等の反応条
件は、中温処理を通じて一定であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、藻体は、例えば、連続で同じ温度で処理(以下、「連続中温処理」ともいう)してもよく、途中で温度を変動させて処理してもよい。連続中温処理は、例えば、上記例示した中温度の範囲および上記例示した中温処理の時間の範囲で行われてよい。途中で温度を変動させる態様としては、例えば、途中で温度を低下させる態様が挙げられる。途中で温度を低下させる態様としては、例えば、第一段中温処理として、一旦中温度で処理した後に、第二段中温処理として、第一段中温処理の温度を下回る温度で処理する態様が挙げられる。第一段中温処理の温度は、例えば、上記例示した中温度の範囲であってよい。第二段中温処理の温度は、例えば、30℃以上、35℃以上、または40℃以上であってよい。また、第二段中温処理の温度は、例えば、55℃以下、50℃以下、または45℃以下であってよい。第一段中温処理の時間は、例えば、1分以上、5分以上、10分以上、または20分以上であってよい。第一段中温処理の時間は、例えば、120分以下、または60分以下であってよい。第二段中温処
理の時間は、例えば、1時間以上、2時間以上、または4時間以上であってよい。第二段中
温処理の時間は、例えば、20時間以下、または15時間以下であってよい。
中温処理による処理物からは、脂肪酸を回収することができる。なお、通常、脂肪酸は、処理物中の藻体内に多く含まれ得る。よって、中温処理後の藻体から脂肪酸を抽出し、脂肪酸を回収するのが好ましい。
脂肪酸を抽出する手法は特に制限されず、例えば公知の手法を利用できる。例えば、一般的な藻類から油脂を抽出する手法を利用できる。そのような手法としては、例えば、有機溶剤処理、超音波処理、ビーズ破砕処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、水熱処理、超臨界処理、マイクロ波処理、電磁場処理、圧搾処理が挙げられる。
中温処理による処理物は、そのまま脂肪酸の抽出に供してもよく、適宜、濃縮、希釈、乾燥等の処理を行ってから脂肪酸の抽出に供してもよい。例えば、中温処理による処理物を、遠心分離等により、沈殿物(藻体)と上清に分離してもよい。その場合、沈殿物から脂肪酸を抽出することができる。中温処理による処理物は、沈殿物濃度が、乾燥重量に換算して、例えば、250 g/L以下、または125 g/L以下となるように、希釈または濃縮してから脂肪酸の抽出に供してよい。具体的には、例えば、アルカリ処理の場合は、沈殿物濃度が125 g/L以下の処理物を処理することが好ましい。また、例えば、有機溶剤処理の場合
は、沈殿物を上清液から分離して処理することが好ましい。有機溶剤処理は、中温処理による処理物を乾燥してから行ってもよく、そうでなくてもよい。
有機溶剤処理に用いられる有機溶剤は、中温処理による処理物から脂肪酸を抽出できるものであれば特に制限されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、n−ヘキサン等のアルカン類、クロロホルムが挙げられる。有機溶剤としては、1種の有機溶剤を用いてもよく、2種またはそれ以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ処理のpHは、中温処理による処理物から脂肪酸を抽出できるpHであれば特に制限されない。アルカリ処理のpHは、通常にはpH 8.5以上、好ましくはpH 10.5以上、さら
に好ましくはpH 11.5以上であってよく、pH 14以下であってよい。アルカリ処理の温度は、通常には30℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上であってよい。アルカリ処理の温度は、好ましくは120℃以下であってよい。アルカリ処理の時間は、通常
には10分以上、好ましくは30分以上、さらに好ましくは50分以上であってよい。アルカリ処理の時間は、好ましくは150分以下であってよい。アルカリ処理には、NaOHやKOH等のアルカリ性物質を利用することができる。
溶出した脂肪酸の回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法や膜処理法が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。
回収された脂肪酸は、脂肪酸以外に、藻体、培地成分、水分、各種処理に用いられた成分、本発明の藻類の代謝副産物等の成分を含んでいてよい。脂肪酸は、所望の程度に精製されていてよい。脂肪酸の純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
<2−3>二段階反応による脂肪酸エステル生成
培養により得られた藻体を、中温処理およびアルコール存在下での中低温処理の二段階反応に供することにより、脂肪酸エステルを生成できる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の藻類を培地で培養すること、前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、前記中温処理の処理物をアルコールの存在下で中低温処理に供すること、および前記中低温処理の処理物から脂肪酸エステルを回収すること、を含む、脂肪酸エステルを製造する方法である。本発明においては、1種の脂肪酸エステルのみが製造されてもよく、2種またはそれ以上の脂肪酸エステルが製造されてもよい。
二段階反応としては、例えば、WO2012/099172に記載の二段階反応を参照できる。二段
階反応は、一段目の処理である中温処理と、二段目の処理であるアルコール存在下での中低温処理、を含む。二段目の処理は、脂肪酸エステルを生成するための処理である。一段目の処理は、二段目の処理における脂肪酸エステルの生成を促進するよう、本発明の藻類の藻体の状態を変化させる処理である。
「中温処理」とは、中温度での処理をいう。「中低温処理」とは、中低温での処理をいう。「中低温」とは、中温度よりも低い温度をいう。「中温度」および「中低温」は、二段階反応により脂肪酸エステルが生成する温度であれば特に制限されない。「中温度」および「中低温」は、処理時間等の諸条件に応じて適宜設定できる。
一段目の処理の温度(中温度)は、例えば、35℃以上、40℃以上、45℃以上、または50℃以上であってよい。また、一段目の処理の温度(中温度)は、例えば、70℃以下、65℃以下、または60℃以下であってよい。一段目の処理の時間は、例えば、1分以上、5分以上、10分以上、または20分以上であってよい。また、一段目の処理の時間は、例えば、120
分以下、または60分以下であってよい。
二段目の処理の温度(中低温)は、例えば、5℃以上、20℃以上、または30℃以上であ
ってよい。また、二段目の処理の温度(中低温)は、例えば、60℃以下、50℃以下、または45℃以下であってよい。二段目の処理の時間は、例えば、10分以上、30分以上、1時間
以上、または2時間以上であってよい。また、二段目の処理の時間は、例えば、15時間以
下、10時間以下、または5時間以下であってよい。
二段階反応のpHは、二段階反応により脂肪酸エステルが生成する限り特に制限されない。中温処理のpHは、例えば、pH 3.0〜11.0であってよい。二段階反応のpHは、例えば、弱酸性であってもよく、中性付近であってもよく、弱アルカリ性であってもよい。
一段目の処理および二段目の処理は、それぞれ、静置で行ってもよく、撹拌や振とうしながら行ってもよい。処理温度等の反応条件は、一段目の処理を通じて一定であってもよく、そうでなくてもよい。処理温度等の反応条件は、二段目の処理を通じて一定であってもよく、そうでなくてもよい。
一段目の処理後に、反応系の温度を低下させ、アルコールの存在下で二段目の処理を行う。一段目の処理の処理物は、そのまま二段目の処理に供してもよく、適宜、濃縮、希釈等の処理を行ってから二段目の処理に供してもよい。アルコールは、一段目の処理の処理物と接触するように反応系に存在させればよい。例えば、一段目の処理の処理物にアルコールを添加してもよく、アルコールに一段目の処理の処理物を添加してもよい。また、例えば、一段目の処理の処理物から藻体を分離し、分離した藻体を、アルコールを含む二段目の処理用の反応液と混合してもよい。
二段目の処理における反応系でのアルコールの濃度は、通常には5%(v/v)以上、好ま
しくは10%(v/v)以上、さらに好ましくは20%(v/v)以上であってよい。また、二段目の処理における反応系でのアルコールの濃度は、通常には70%(v/v)以下、好ましくは60%
(v/v)以下、さらに好ましくは50%(v/v)以下であってよい。
二段目の処理に用いられるアルコールは、二段階反応により脂肪酸エステルが生成するものであれば特に制限されない。二段目の処理に用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール等の炭素数5以下の低級アルコールや、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール等の炭素数6以上の高級アルコールが挙げられる。
二段階反応の処理物からは、脂肪酸エステルを回収することができる。なお、通常、生成した脂肪酸エステルは、処理物中の藻体内に多く含まれ得る。よって、二段階反応後の藻体から脂肪酸エステルを抽出し、脂肪酸エステルを回収するのが好ましい。
二段階反応の処理物からの脂肪酸エステルの抽出や回収については、<2−2>の中温処理による処理物からの脂肪酸の抽出や回収に関する記載を準用できる。
二段階反応による脂肪酸エステル生成は、触媒の添加を必要としない。その理由は、一段目の処理により、本発明の藻類がもともと有するリパーゼが脂質に作用しやすい状態になり、そのリパーゼによって、脂質、例えば、油脂、セラミド(Ceramide)、リン脂質(Phospholipid)、糖脂質(Glycolipid)等、と外部より添加したアルコールとの間でエステル交換反応が起こるためであると考えられる。
リパーゼによるエステル交換反応は、一般的に、アルコール類以外の有機溶剤の存在下で促進される。よって、例えば、二段目の処理の際に、エステル交換反応を促進させるのに有効な量の有機溶剤を反応系に添加してもよい。そのような有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、クロロホルム、酢酸エチル、石油エーテルが挙げられる。
回収された脂肪酸エステルは、そのまま、あるいは医薬品、化粧品、飲食品等に配合して利用できる。脂肪酸エステルの配合量は、脂肪酸エステルの機能が発揮される限り、特に制限されない。脂肪酸エステルの配合量は、特に制限されないが、例えば、1 ppm(w/w)以上、100 ppm(w/w)以上、または1%(w/w)以上であってよい。また、脂肪酸エステルの配合量は、特に制限されないが、例えば、100%(w/w)以下、10%(w/w)以下、ま
たは1%(w/w)以下であってよい。
<2−4>中温処理および/または有機溶媒処理による糖グリセロール生成
培養により得られた藻体を中温処理および/または有機溶媒処理に供することにより、糖グリセロールを生成できる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の藻類を培地
で培養すること、前記培養により得られた藻体を中温処理および/または有機溶媒処理に供すること、および前記処理の処理物から糖グリセロールを回収すること、を含む、糖グリセロールを製造する方法である。なお、糖グリセロールの生成に利用される中温処理および有機溶媒処理を総称して、糖グリセロール生成処理という場合がある。
「糖グリセロール」とは、グリセロールの水酸基に糖がグリコシド結合した構造を有する化合物をいう。糖は、グリセロールのいずれの水酸基に結合していてもよい。糖は、グリセロールの3つの水酸基の内、1つの水酸基のみに結合していてもよく、2つまたは3つの水酸基に結合していてもよい。本発明においては、1種の糖グリセロールのみが製造されてもよく、2種またはそれ以上の糖グリセロールが製造されてもよい。
糖の種類は特に制限されない。糖は、単糖、多糖、またはそれらの誘導体であってよい。
単糖として、具体的には、例えば、グルコースやガラクトースが挙げられる。
「多糖」とは、2分子またはそれ以上の単糖で構成される糖をいう。すなわち、ここでいう多糖には、二糖やオリゴ糖も含まれる。多糖は、直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。多糖は、1種の単糖で構成されていてもよく、2種またはそれ以上の単糖で構成されていてもよい。多糖の重合度は、特に制限されないが、例えば、2〜50、2〜10、または2〜5であってよい。多糖としては、例えば、ガラクトースを構成糖として含む多糖が挙げられる。ガラクトースを構成糖として含む多糖として、具体的には、例えば、ジガラクトースが挙げられる。
「糖の誘導体」とは、原子や官能基等の構成要素が導入、置換、または除去された糖をいう。以下、構成要素の導入、置換、および除去を総称して「改変」ともいう。改変を受ける箇所は特に制限されず、例えば、炭素原子上であってもよく、酸素原子上であってもよく、それ以外の箇所であってもよい。改変を受ける箇所は、1ヶ所であってよく、2ヶ所またはそれ以上であってもよい。改変の種類は、1種であってもよく、2種またはそれ以上であってもよい。糖の誘導体としては、例えば、デオキシ糖、アミノ糖、糖酸、糖アルコールが挙げられる。また、導入される官能基としては、例えば、アセチル基、アミノ基、アルキル基、スルホニル基(−SO3−R)が挙げられる。スルホニル基(−SO3−R)の「R」は、特に制限されないが、例えば、水素原子(H)やアルキル基であってよい。スルホニル基(−SO3−R)は、例えば、スルホ基(−SO3H)であってよい(R=Hの場合)。糖の誘導体としては、例えば、グルコース誘導体やガラクトース誘導体が挙げられる。グルコース誘導体として、具体的には、例えば、キノボースやスルホニルキノボースが挙げられる。スルホニルキノボースは、例えば、スルホキノボースであってよい(R=Hの場合)。ガラクトース誘導体として、具体的には、例えば、フコースやスルホニルフコースが挙げられる。スルホニルフコースは、例えば、スルホフコースであってよい(R=Hの場合)。
糖グリセロールとして、具体的には、例えば、ガラクトシルグリセロール、ジガラクトシルグリセロール、およびスルホキノボシルグリセロールが挙げられる。ガラクトシルグリセロールは、グリセロールのいずれか1つの炭素の水酸基にガラクトースが結合した糖グリセロールである。ジガラクトシルグリセロールは、グリセロールのいずれか1つの炭素の水酸基にジガラクトースが結合した糖グリセロールである。スルホキノボシルグリセロールは、グリセロールのいずれか1つの炭素の水酸基にスルホキノボースが結合した糖グリセロールである。ガラクトシルグリセロール、ジガラクトシルグリセロール、およびスルホキノボシルグリセロールは、特記しない限り、いずれも、グリセロールの1位の炭素の水酸基に糖が結合したもの、グリセロールの2位の炭素の水酸基に糖が結合したもの
、グリセロールの3位の炭素の水酸基に糖が結合したもの、またはそれらの混合物であってよい。
<中温処理>
中温処理については、上記<2−2>の中温処理に関する記載を準用できる。
<有機溶媒処理>
「有機溶媒処理」とは、有機溶媒による処理をいう。有機溶媒処理の条件は、有機溶媒処理により糖グリセロールが生成する限り特に制限されない。有機溶媒処理は、藻体と有機溶媒を接触させることにより行うことができる。例えば、回収した藻体を有機溶媒で懸濁してもよいし、藻体の懸濁物に有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、n−ヘキサン等のアルカン類、ベンゼン、フェノール、クロロホルムが挙げられる。有機溶媒としては、水溶性のものが好ましい。有機溶媒としては、アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。有機溶媒としては、1種の有機溶媒を用いてもよく、2種またはそれ以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、純品であってもよく、他の成分との混合物であってもよい。他の成分としては、例えば、水や水性緩衝液等の水性媒体(水性溶媒)が挙げられる。すなわち、例えば、有機溶媒処理には、有機溶媒の水溶液を利用することができる。混合物中の有機溶媒濃度は、例えば、10%(v/v)以上、ま
たは20%(v/v)以上であってよく、90%(v/v)以下、70%(v/v)以下、または50%(v/v)以下であってよい。また、有機溶媒処理を行う反応液中の有機溶媒濃度は、例えば、10%(v/v)以上、または20%(v/v)以上であってよく、90%(v/v)以下、70%(v/v)以下、または50%(v/v)以下であってよい。有機溶媒処理の時間は、例えば、10分以上
、30分以上、または1時間以上であってよい。また、有機溶媒処理の時間は、例えば、10
時間以下、5時間以下、または3時間以下であってよい。有機溶媒処理の温度は、制御されてもよく、制御されなくてもよい。有機溶媒処理の温度は、例えば、10〜70℃であってよく、室温であってもよい。有機溶媒処理は、静置で行ってもよく、撹拌や振とうしながら行ってもよい。
このようにして藻体を糖グリセロール生成処理に供することにより、反応上清中および/または藻体内に、糖グリセロールが生成する。
糖グリセロールが生成したことは、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、HPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。
生成した糖グリセロールの回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法や膜処理法が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。藻体内に糖グリセロールが蓄積する場合には、例えば、藻体を超音波等の手段により破砕し、遠心分離等の手段により藻体を除去して得られる上清から、糖グリセロールを回収すればよい。
回収された糖グリセロールは、糖グリセロール以外に、藻体、培地成分、水分、各種処理に用いられた成分、本発明の藻類の代謝副産物等の成分を含んでいてよい。糖グリセロールは、所望の程度に精製されていてよい。糖グリセロールの純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以
上であってよい。
回収された糖グリセロールは、そのまま、あるいは医薬品、化粧品、飲食品等に配合して利用できる。糖グリセロールの配合量は、糖グリセロールの機能が発揮される限り、特に制限されない。糖グリセロールの配合量は、特に制限されないが、例えば、1 ppm(w/w)以上、100 ppm(w/w)以上、または1%(w/w)以上であってよい。また、糖グリセロールの配合量は、特に制限されないが、例えば、100%(w/w)以下、10%(w/w)以下、ま
たは1%(w/w)以下であってよい。糖グリセロールは、例えば、プレバイオティクス、α−アミラーゼ活性化、保湿、または細胞賦活等の機能を有し得る。
<3>中温処理の処理物を利用したL−アミノ酸発酵
上記<2−2>に記載の中温処理による処理物(中温処理物)は、例えば、L−アミノ酸発酵の炭素源として利用できる(WO2011/013707)。すなわち、本発明は、(A)本発
明の藻類を培地で培養すること、(B)前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、(C)L−アミノ酸生産能を有する細菌を、前記処理の処理物を含有する培地で培養して、L−アミノ酸を該培地中又は該細菌の菌体内に生成蓄積すること、および(D)該培地又は菌体よりL−アミノ酸を採取すること、を含む、L−アミノ酸を製造する方法、を提供する。同方法に用いられる細菌を、「本発明の細菌」ともいう。
L−アミノ酸発酵は、中温処理物を含有する培地を用いること以外は、細菌を用いた通常のL−アミノ酸発酵と同様に実施してよい。
<3−1>L−アミノ酸発酵に用いられる処理物
L−アミノ酸発酵に用いられる中温処理物は、中温処理による処理物そのものであってもよく、中温処理による処理物を適宜、濃縮、希釈、乾燥、抽出、遠心分離等の処理に供したものであってもよく、中温処理による処理物から回収された脂肪酸等の成分であってもよい。
例えば、L−アミノ酸発酵に用いられる処理物は、脂肪酸であってよい。脂肪酸は、脂肪酸以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。脂肪酸は、所望の程度に精製されていてよい。
脂肪酸は、フリー体もしくはその塩、またはそれらの混合物であってよい。塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。脂肪酸のアルカリ金属塩は、水溶性が高く、また、ミセル化して水中に保持されるため、本発明の細菌により効率的に利用され得る。
また、本発明の細菌が脂肪酸をより効率的に利用できるよう、脂肪酸の均一化を促進する処理を行い、脂肪酸の溶解度を高めるのが好ましい。
均一化を促進する処理としては、例えば、乳化が挙げられる。乳化は、例えば、乳化促進剤や界面活性剤を添加することにより実施できる。乳化促進剤としては、例えば、リン脂質やステロールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、一般的に生物学の分野で用いられる界面活性剤が利用できる。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤では、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(Tween 80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、n-オクチルβ-D-グルコシドなどのアルキルグ
ルコシド、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、トライトンX-100(Triton X-100)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij-58)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol NP-40)が挙げられる。また、界面活性剤としては、両性イオン界面活性剤では、例えば、N,N-ジメチル-N-ドデシルグリシンベタインなどのアルキルベタイン
が挙げられる。
また、均一化を促進する処理としては、例えば、ホモジナイザー処理、ホモミキサー処理、超音波処理、高圧処理、高温処理が挙げられる。これらの中では、ホモジナイザー処理および/または超音波処理が好ましい。また、ホモジナイザー処理および/または超音波処理と、界面活性剤による処理を、組み合わせて用いるのがより好ましい。
均一化を促進する処理は、脂肪酸が安定に存在できるアルカリ条件下で行われるのが好ましい。アルカリ条件とは、好ましくはpH9以上、より好ましくはpH10以上であってよい。
また、中温処理の処理物を遠心分離して得られた沈殿物には、油脂が残存し得る。油脂は、加水分解により、脂肪酸とグリセロールを生じる。そのようにして得られる脂肪酸および/またはグリセロールは、そのまま、あるいは適宜精製等して、L−アミノ酸発酵の炭素源として利用してよい。油脂の加水分解は、例えば、リパーゼを利用して酵素的に行うことができる(WO2011/013707)。また、油脂の加水分解は、化学的に行ってもよい。
化学的な加水分解法としては、例えば、高温(250-260℃)、高圧(5-6MPa)下で油脂と
水を向流接触させる連続高温加水分解法が挙げられる。
また、中温処理の処理物を遠心分離して得られた上清には、グリセロール、グルコース、スターチの断片化物等の化合物が含まれ得る。これらの化合物は、そのまま、あるいは適宜精製等して、L−アミノ酸発酵の炭素源として利用してよい。なお、スターチの断片化物は、加水分解により、グルコースを生じる。そのようにして得られるグルコースは、そのまま、あるいは適宜精製等して、L−アミノ酸発酵の炭素源として利用してよい。例えば、そのようにして得られるグルコース濃度が高められた上清を利用してもよい。スターチの断片化物の加水分解は、例えば、アミラーゼを利用して酵素的に行うことができる(WO2011/013707)。
<3−2>L−アミノ酸発酵に用いられる細菌
本発明の細菌は、L−アミノ酸生産能を有する細菌である。本発明において、「L−アミノ酸生産能を有する細菌」とは、培地で培養したときに、目的とするL−アミノ酸を生成し、回収できる程度に培地中または菌体内に蓄積する能力を有する細菌をいう。L−アミノ酸生産能を有する細菌は、非改変株よりも多い量の目的とするL−アミノ酸を培地に蓄積することができる細菌であってよい。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。また、L−アミノ酸生産能を有する細菌は、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上の量の目的とするL−アミノ酸を培地に蓄積することができる細菌であってもよい。
L−アミノ酸としては、L−リジン、L−オルニチン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−シトルリン等の塩基性アミノ酸、L−イソロイシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、グリシン等の脂肪族アミノ酸、L−スレオニン、L−セリン等のヒドロキシモノアミノカルボン酸であるアミノ酸、L−プロリン等の環式アミノ酸、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン等の芳香族アミノ酸、L−システイン、L−シスチン、L−メチオニン等の含硫アミノ酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、L−グルタミン、L−アスパラギン等の側鎖にアミド基を持つアミノ酸が挙げられる。本発明の細菌は、1種のL−アミノ酸の生産能のみを有していてもよく、2種またはそれ以上のL−アミノ酸の生産能を有していてもよい。
本発明において、「アミノ酸」という用語は、特記しない限り、L−アミノ酸を意味してよい。生産されるL−アミノ酸は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であって
よい。すなわち、本発明において、「L−アミノ酸」という用語は、特記しない限り、フリー体のL−アミノ酸、その塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩の例については後述する。
細菌としては、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌やコリネ型細菌が挙げられる。
腸内細菌科に属する細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクタ
ー(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セ
ラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属
、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)等の属に属する細菌が挙げられる。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を用いることができる。
エシェリヒア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエシェリヒア属に分類されている細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、Neidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes
of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.
)に記載されたものが挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。エシェリヒア・コリとして、具体的には、例えば、プロトタイプの野生株K12由来のエシェリヒア・コリW3110(ATCC 27325)やエシェリヒア・コリMG1655(ATCC 47076)が挙げられる。
エンテロバクター属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエンテロバクター属に分類されている細菌が挙げられる。エンテロバクター属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスとして、具体的には、例えば、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。エンテロバクター・アエロゲネスとして、具体的
には、例えば、エンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株、NBRC12010株(Biotechonol Bioeng. 2007 Mar 27; 98(2) 340-348)、AJ110637株(FERM BP-10955)が挙げられる
。また、エンテロバクター属細菌としては、例えば、欧州特許出願公開EP0952221号明細
書に記載されたものが挙げられる。なお、Enterobacter agglomeransには、Pantoea agglomeransと分類されているものも存在する。
パントエア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりパントエア属に分類されている細菌が挙げられる。パントエア属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。パントエア・アナナティスとして、具体的には、例えば、パントエア・アナナティスLMG20103株、AJ13355株(FERM BP-6614
)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、SC17株(FERM BP-11091
)、及びSC17(0)株(VKPM B-9246)が挙げられる。なお、エンテロバクター・アグロメランスのある種のものは、最近、16S rRNAの塩基配列分析等に基づき、パントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティス、パントエア・ステワルティイ等に再分類された(Int. J. Syst. Bacteriol., 43, 162-173 (1993))。本発明において、パントエア属細菌
には、このようにパントエア属に再分類された細菌も含まれる。
エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、エル
ビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられる。クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラ(Klebsiella planticola)が挙げられる。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリ
ウム(Brevibacterium)属、およびミクロバクテリウム(Microbacterium)属等の属に属する細菌が挙げられる。
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium
flavum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060,ATCC 13869,FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium efficiens (Corynebacterium thermoaminogenes) AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium divaricatum) ATCC 14020
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418(FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354
なお、コリネバクテリウム属細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))も含まれる。また、コリネバクテリウム・スタティオニスには、従来コリネバクテ
リウム・アンモニアゲネスに分類されていたが、16S rRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニスに再分類された細菌も含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。
これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する
登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
本発明の細菌は、本来的にL−アミノ酸生産能を有するものであってもよく、L−アミノ酸生産能を有するように改変されたものであってもよい。L−アミノ酸生産能を有する細菌は、例えば、上記のような細菌にL−アミノ酸生産能を付与することにより、または、上記のような細菌のL−アミノ酸生産能を増強することにより、取得できる。
L−アミノ酸生産能の付与または増強は、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法により行うことができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。そのよ
うな方法としては、例えば、栄養要求性変異株の取得、L−アミノ酸のアナログ耐性株の取得、代謝制御変異株の取得、L−アミノ酸の生合成系酵素の活性が増強された組換え株の創製が挙げられる。L−アミノ酸生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、L−アミノ酸生産菌の育種において、活性が増強されるL−アミノ酸生合成系酵素も、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の活性の増強が組み合わされてもよい。
L−アミノ酸生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、又は代謝制御変異株は、親株又は野生株を通常の変異処理に供し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、且つL−アミノ酸生産能を有するものを選択することによって取得できる。通常の変異処理としては、X線や紫外線の照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
また、L−アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL−アミノ酸の生合成に関与する酵素の活性を増強することによっても行うことができる。酵素活性の増強は、例えば、同酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように細菌を改変することにより達成できる。遺伝子の発現を増強する方法としては、遺伝子のコピー数を増加させることや、遺伝子の転写や翻訳を増大させることが挙げられる。遺伝子のコピー数を増加させることは、例えば、同遺伝子を搭載したベクターを宿主に導入することや、遺伝子を宿主の染色体上に導入することにより達成できる。遺伝子の転写や翻訳を増大させることは、例えば、プロモーター、SD配列(RBS)、またはRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域(例えば開始コドンのすぐ上流の配列(5'-UTR))等の発現調節領域を改変することにより達成できる。遺伝子の発現を増強する方法は、WO00/18935号パンフレット、欧州特許出願公開1010755号明細書等に記載されている。
また、L−アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL−アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL−アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下させることによっても行うことができる。なお、ここでいう「目的のL−アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL−アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素」には、目的のアミノ酸の分解に関与する酵素も含まれる。酵素活性の低下は、例えば、同酵素をコードする遺伝子の発現が低下するように細菌を改変することや、同遺伝子を破壊することにより達成できる。遺伝子の発現を低下させることは、例えば、プロモーター、SD配列(RBS)、またはRBSと開始コドンとの間のスペーサー領域(例えば開始コドンのすぐ上流の配列(5'-UTR))等の発現調節領域を改変することにより達成できる。遺伝子を破壊することは、例えば、同遺伝子の一部または全体を欠失させることにより達成できる。
以下、L−アミノ酸生産菌、およびL−アミノ酸生産能を付与または増強する方法について具体的に例示する。なお、以下に例示するようなL−アミノ酸生産菌が有する性質およびL−アミノ酸生産能を付与または増強するための改変は、いずれも、単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。
<L−グルタミン酸生産菌>
L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdhA)、グルタミンシンテターゼ(glnA)、グルタミン酸シンターゼ(gltBD)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icdA)、アコニテートヒドラターゼ(acnA, acnB)、クエン酸シンターゼ(gltA)、メチルクエン酸シンターゼ(prpC)、ピル
ビン酸カルボキシラーゼ(pyc)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(aceEF, lpdA)、ピルベートキナーゼ(pykA, pykF)、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ(ppsA)、エノラーゼ(eno)、ホスホグリセロムターゼ(pgmA, pgmI)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(pgk)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gapA)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpiA)、フルクトースビスリン酸アルドラーゼ(fbp)、グルコースリン酸イ
ソメラーゼ(pgi)、6−ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)、2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコン酸アルドラーゼ(eda)、トランスヒドロゲナーゼが挙げられ
る。なお、カッコ内は、その酵素をコードする遺伝子の略記号の一例である(以下の記載においても同様)。これらの酵素の中では、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及びメチルクエン酸シンターゼから選択される1またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。
クエン酸シンターゼ遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子、および/またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が増大するように改変された腸内
細菌科に属する株としては、EP1078989A、EP955368A、及びEP952221Aに開示されたものが挙げられる。また、エントナー・ドゥドロフ経路の遺伝子(edd, eda)の発現が増大するように改変された腸内細菌科に属する株としては、EP1352966Bに開示されたものが挙げられる。また、グルタミン酸シンテターゼ遺伝子(gltBD)の発現が増大するように改変さ
れたコリネ型細菌としては、WO99/07853に開示されたものが挙げられる。
また、L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、イソクエン酸リアーゼ(aceA)、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(sucA, odhA)、アセト乳酸シンターゼ(ilvI)、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ(pfl)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)、アルコールデヒドロゲナーゼ(adh)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(gadAB)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(sdhABCD)が挙げられる。これらの酵素の中では、例えば、
α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下又は欠損させることが好ましい。
α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下または欠損したエシェリヒア属細菌、及びそれらの取得方法は、米国特許第5,378,616号及び第5,573,945号に記載されている。また、パントエア属細菌、エンテロバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、エルビニア属細菌等の腸内細菌においてα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下または欠損させる方法は、米国特許6,197,559号公報、米国特許6,682,912号公報、米国特許6,331,419
号公報、米国特許8,129,151号公報、およびWO2008/075483に開示されている。α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下または欠損したエシェリヒア属細菌として、具体的には、例えば、下記の株が挙げられる。
E. coli W3110sucA::Kmr
E. coli AJ12624 (FERM BP-3853)
E. coli AJ12628 (FERM BP-3854)
E. coli AJ12949 (FERM BP-4881)
E. coli W3110sucA::Kmr は、E. coli W3110のα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼをコードするsucA遺伝子を破壊することにより得られた株である。この株は、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を完全に欠損している。
α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下または欠損したコリネ型細菌、及びそれらの取得方法は、WO2008/075483に記載されている。α−ケトグルタレートデヒドロゲ
ナーゼ活性が低下または欠損したコリネ型細菌として、具体的には、例えば、下記の株が挙げられる。
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) L30-2株 (特開2006-340603号明細書)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) ΔS株 (国際公開95/34672号パンフレット)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ12821 (FERM BP-4172;フランス特許公報9401748号明細書参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ12822 (FERM BP-4173;フランス特許公報9401748号明細書)
Corynebacterium glutamicum AJ12823 (FERM BP-4174;フランス特許公報9401748号明細
書)
Corynebacterium glutamicum L30-2株 (特開2006-340603号)
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、Pantoea anan
atis AJ13355株(FERM BP-6614)、Pantoea ananatis SC17株(FERM BP-11091)、Pantoea ananatis SC17(0)株(VKPM B-9246)等のパントエア属細菌も挙げられる。AJ13355株は、静岡県磐田市の土壌から、低pHでL−グルタミン酸及び炭素源を含む培地で増殖できる株として分離された株である。SC17株は、AJ13355株から、粘液質低生産変異株として選
択された株である(米国特許第6,596,517号)。SC17株は、2009年2月4日に、独立行政法
人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構
特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託され、受託番号FERM BP-11091が付与されている。AJ13355株は、1998年2月19日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM P-16644として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6614が付与されている。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下または欠損したパントエア属細菌も挙げられる。そのような株としては、AJ13355株のα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼのE1サブユニット
遺伝子(sucA)欠損株であるAJ13356株(米国特許第6,331,419号)、及びSC17株のsucA遺伝子欠損株であるSC17sucA株(米国特許第6,596,517号)が挙げられる。AJ13356株は、1998年2月19日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術基
盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-16645として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6616が付与されている。また、SC17sucA株は、ブライベートナンバーAJ417が付与され、2004年2月26日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM BP-8646として寄託されている。
尚、AJ13355株は、分離された当時はEnterobacter agglomeransと同定されたが、近年
、16S rRNAの塩基配列解析などにより、Pantoea ananatisに再分類されている。よって、AJ13355株及びAJ13356株は、上記寄託機関にEnterobacter agglomeransとして寄託されているが、本明細書ではPantoea ananatisとして記載する。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、Pantoea ananatis SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株、Pantoea ananatis AJ13601株、Pantoea ananatis NP106株、及びPantoea ananatis NA1株等のパントエア属細菌も挙げられる。SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株は、SC17sucA株に、エシェリヒア・コリ由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc)、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gdhA)を含むプラスミドRSFCPG、並びに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)を含むプラスミドpSTVCBを導入して得られた株である。AJ13601株は、このSC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株から低pH下
で高濃度のL−グルタミン酸に耐性を示す株として選択された株である。また、NP106株
は、AJ13601株からプラスミドRSFCPG+pSTVCBを脱落させた株である。AJ13601株は、1999
年8月18日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術基盤
機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-17516として寄託され、2000年7月6日にブダペス
ト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-7207が付与されている。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(sucA)活性およびコハク酸デヒドロゲナーゼ(sdh)活性の両
方が低下または欠損した株も挙げられる(特開2010-041920号)。そのような株として、
具体的には、例えば、Pantoea ananatis NA1のsucAsdhA二重欠損株やCorynebacterium glutamicum ATCC14067のodhAsdhA二重欠損株(Corynebacterium glutamicum 8L3GΔSDH株)が挙げられる(特開2010-041920号)。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、栄養要求性変異株も挙げられる。栄養要求性変異株として、具体的には、例えば、E. coli VL334thrC+
(VKPM B-8961) (EP 1172433) が挙げられる。E. coli VL334 (VKPM B-1641) は、thrC遺伝子及びilvA遺伝子に変異を有するL−イソロイシン及びL−スレオニン要求性株である
(米国特許第4,278,765号)。E. coli VL334thrC+は、thrC遺伝子の野生型アレルをVL334
に導入することにより得られた、L−イソロイシン要求性のL−グルタミン酸生産菌である。thrC遺伝子の野生型アレルは、野生型E. coli K12株 (VKPM B-7) の細胞で増殖した
バクテリオファージP1を用いる一般的形質導入法により導入された。
また、L−グルタミン酸生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アスパラギン酸アナログに耐性を有する株も挙げられる。これらの株は、例えば、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損していてもよい。アスパラギン酸アナログに耐性を有し、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損した株として、具体的には、例えば、E. coli AJ13199 (FERM BP-5807) (米国特許第5,908,768号)、さらにL−グルタミン酸分解能が低下したE. coli FFRM P-12379 (米国特許第5,393,671号)、E. coli AJ13138 (FERM BP-5565) (米国特許第6,110,714号) が挙げられる。
また、L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、D−キシルロース−5−リン酸−ホスホケトラーゼ及び/又はフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼの活性が増大するように細菌を改変する方法も挙げられる(特表2008-509661)。D−キシルロース−5−リン酸−ホスホケトラーゼ活性及びフルクトース−6−リ
ン酸ホスホケトラーゼ活性はいずれか一方を増強してもよいし、両方を増強してもよい。なお、本明細書ではD−キシルロース−5−リン酸−ホスホケトラーゼとフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼをまとめてホスホケトラーゼと呼ぶことがある。
D−キシルロース−5−リン酸−ホスホケトラーゼ活性とは、リン酸を消費して、キシルロース−5−リン酸をグリセルアルデヒド−3−リン酸とアセチルリン酸に変換し、一分子のH2Oを放出する活性を意味する。この活性は、Goldberg, M.らの文献 (Methods Enzymol., 9,515-520 (1966)) またはL.Meileの文献 (J.Bacteriol. (2001) 183; 2929-2936) に記載の方法によって測定することができる。
また、フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ活性とは、リン酸を消費して、フルクトース6−リン酸をエリスロース−4−リン酸とアセチルリン酸に変換し、一分子のH2Oを放出する活性を意味する。この活性は、Racker, Eの文献 (Methods Enzymol., 5, 276-280 (1962)) またはL.Meileの文献 (J.Bacteriol. (2001) 183; 2929-2936) に記載の方法によって測定することができる。
また、L−グルタミン酸生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸排出遺伝子であるyhfK遺伝子(WO2005/085419)やybjL遺伝子(WO2008/133161)の発現を増強することも挙げられる。
また、コリネ型細菌について、L−グルタミン酸生産能を付与または増強する方法としては、有機酸アナログや呼吸阻害剤などへの耐性を付与する方法や、細胞壁合成阻害剤に対する感受性を付与する方法も挙げられる。そのような方法として、具体的には、例えば、モノフルオロ酢酸耐性を付与する方法(特開昭50-113209)、アデニン耐性またはチミ
ン耐性を付与する方法(特開昭57-065198)、ウレアーゼを弱化させる方法(特開昭52-03
8088)、マロン酸耐性を付与する方法(特開昭52-038088)、ベンゾピロン類またはナフ
トキノン類への耐性を付与する方法(特開昭56-1889)、HOQNO耐性を付与する方法(特開昭56-140895)、α-ケトマロン酸耐性を付与する方法(特開昭57-2689)、グアニジン耐
性を付与する方法(特開昭56-35981)、ペニシリンに対する感受性を付与する方法(特開平4-88994)などが挙げられる。
このような耐性菌または感受性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ3949 (FERM BP-2632;特開昭50-113209参照)
Corynebacterium glutamicum AJ11628 (FERM P-5736;特開昭57-065198参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11355 (FERM P-5007;特開昭56-1889号公報参照)
Corynebacterium glutamicum AJ11368 (FERM P-5020;特開昭56-1889号公報参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11217 (FERM P-4318;特開昭57-2689号公報参照)
Corynebacterium glutamicum AJ11218 (FERM P-4319;特開昭57-2689号公報参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11564 (FERM P-5472;特開昭56-140895公報参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11439 (FERM P-5136;特開昭56-35981号公報参照)
Corynebacterium glutamicum H7684 (FERM BP-3004;特開平04-88994号公報参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ11426(FERM P-5123
;特開平56-048890号公報参照)
Corynebacterium glutamicum AJ11440(FERM P-5137;特開平56-048890号公報参照)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ11796(FERM P-6402
;特開平58-158192号公報参照)
また、コリネ型細菌について、L−グルタミン酸生産能を付与または増強する方法としては、yggB遺伝子の発現を増強する方法やコード領域内に変異を導入した変異型yggB遺伝子を導入する方法も挙げられる(WO2006/070944)。yggB遺伝子は、メカノセンシティブ
チャンネル(mechanosensitive channel)をコードする遺伝子である。Corynebacterium glutamicum ATCC13032のyggB遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank Accession No. NC_003450で登録されているゲノム配列中、1,336,091〜1,337,692の配列の相補配列に相
当し、NCgl1221とも呼ばれる。Corynebacterium glutamicum ATCC13032のyggB遺伝子にコードされるYggBタンパク質は、GenBank accession No. NP_600492として登録されている
<L−グルタミン生産菌>
L−グルタミン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdhA)やグルタミンシンセターゼ(glnA)が挙げられる。なお、グルタミンシンセターゼの活性は、グルタミンアデニリルトランスフェラーゼ遺伝子(glnE)の破壊やPII制御タンパク質遺伝子(glnB)の破壊によって増強してもよい(EP1229121)。
また、L−グルタミン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−グルタミンの生合成経路から分岐してL−グルタミン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、グルタミナーゼが挙げ
られる。
L−グルタミン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdhA)および/またはグルタミンシンセターゼ(glnA)の活性を増強したコリネ型細菌(EP1229121, EP1424398)やグルタミナーゼ活性が低下したコリネ型細菌(特開2004-187684)が挙げられる。また、L−グルタミン生産菌又はそれを誘導するための親
株としては、グルタミンシンセターゼの397位のチロシン残基が他のアミノ酸残基に置換
された変異型グルタミンシンセターゼを有するエシェリヒア属に属する株が挙げられる(米国特許出願公開第2003-0148474号明細書)。
また、コリネ型細菌について、L−グルタミン生産能を付与または増強する方法としては、6-ジアゾ-5-オキソ-ノルロイシン耐性を付与する方法 (特開平3-232497)、プリンア
ナログ耐性及びメチオニンスルホキシド耐性を付与する方法 (特開昭61-202694)、α-ケ
トマレイン酸耐性を付与する方法 (特開昭56-151495)が挙げられる。L−グルタミン生産能を有するコリネ型細菌として、具体的には、例えば、以下の株が挙げられる。
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11573 (FERM P-5492;特開昭56-161495)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11576 (FERM BP-10381;特開
昭56-161495)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ12212 (FERM P-8123;特開昭61-202694)
<L−プロリン生産菌>
L−プロリン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−プロリン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、グルタミン酸−5−キナーゼ(proB)、γ‐グルタミル−リン酸レダクターゼ、ピロリン−5−カルボキシレートレダクターゼ(putA)が挙げられる。酵素活性の増強には、例えば、L−プロリンによるフィードバック阻害が解除されたグルタミン酸−5−キナーゼをコードするproB遺伝子(ドイツ特許第3127361号)が好適に利用できる。
また、L−プロリン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−プロリン分解に関与する酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、プロリンデヒドロゲナーゼやオルニチンアミノトランスフェラーゼが挙げられる。
L−プロリン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E. coli NRRL B-12403及びNRRL B-12404 (英国特許第2075056号)、E. coli VKPM B-8012 (ロ
シア特許出願2000124295)、ドイツ特許第3127361号に記載のE. coliプラスミド変異体、Bloom F.R. et al (The 15th Miami winter symposium, 1983, p.34)に記載のE. coliプラスミド変異体、3,4−デヒドロキシプロリンおよびアザチジン−2−カルボキシレートに耐性のE. coli 702株(VKPMB-8011)、702株のilvA遺伝子欠損株であるE. coli 702ilvA株(VKPM B-8012) (EP 1172433) が挙げられる。
<L−スレオニン生産菌>
L−スレオニン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−スレオニン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、アスパルトキナーゼIII(lysC)、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)、アスパルトキナーゼI(thrA)、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase)(thrB)、スレオニン
シンターゼ(threonine synthase)(thrC)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(アスパラギン酸トランスアミナーゼ)(aspC)が挙げられる。これらの酵素の中では、アスパルトキナーゼIII、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アスパルト
キナーゼI、ホモセリンキナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及びスレ
オニンシンターゼから選択される1またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。L−スレオニン生合成系遺伝子は、スレオニン分解が抑制された株に導入してもよい。スレオニン分解が抑制された株としては、例えば、スレオニンデヒドロゲナーゼ活性が欠損したE. coli TDH6株(特開2001-346578号)が挙げられる。
L−スレオニン生合成系酵素の活性は、最終産物のL−スレオニンによって阻害される。従って、L−スレオニン生産菌を構築するためには、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないようにL−スレオニン生合成系遺伝子を改変するのが好ましい。上記thrA、thrB、thrC遺伝子は、スレオニンオペロンを構成しており、スレオニンオペロンは、アテニュエーター構造を形成している。スレオニンオペロンの発現は、培養液中のイソロイシン、スレオニンに阻害を受け、アテニュエーションにより抑制される。スレオニンオペロンの発現の増強は、アテニュエーション領域のリーダー配列あるいはアテニュエーターを除去することにより達成できる(Lynn, S. P., Burton, W. S., Donohue, T. J., Gould, R. M., Gumport, R. I., and Gardner, J. F. J. Mol. Biol. 194:59-69 (1987);
WO02/26993; WO2005/049808; WO2003/097839参照)。
スレオニンオペロンの上流には固有のプロモーターが存在するが、同プロモーターを非天然のプロモーターに置換してもよい(WO98/04715号パンフレット参照)。また、スレオニン生合成関与遺伝子がラムダファ−ジのリプレッサーおよびプロモーターの制御下で発現するようにスレオニンオペロンを構築してもよい(欧州特許第0593792号明細書参照)
。また、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変された細菌は、L−スレオニンアナログであるα-amino-β-hydroxyvaleric acid(AHV)に耐性な菌株を選抜することによっても取得できる。
このようにL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変されたスレオニンオペロンは、コピー数の上昇により、あるいは強力なプロモーターに連結されることにより、宿主内での発現量が向上しているのが好ましい。コピー数の上昇は、スレオニンオペロンを含むプラスミドを宿主に導入することにより達成できる。また、コピー数の上昇は、トランスポゾン、Muファ−ジ等を利用して、宿主のゲノム上にスレオニンオペロンを転移させることによっても達成できる。
また、L−スレオニン生産能を付与または増強する方法としては、宿主にL−スレオニン耐性を付与する方法やL−ホモセリン耐性を付与する方法も挙げられる。耐性の付与は、例えば、L−スレオニンに耐性を付与する遺伝子、L−ホモセリンに耐性を付与する遺伝子の発現を強化することにより達成できる。耐性を付与する遺伝子としては、rhtA遺伝子(Res. Microbiol. 154:123−135 (2003))、rhtB遺伝子(欧州特許出願公開第0994190号明細書)、rhtC遺伝子(欧州特許出願公開第1013765号明細書)、yfiK遺伝子、yeaS遺
伝子(欧州特許出願公開第1016710号明細書)が挙げられる。また、宿主にL−スレオニ
ン耐性を付与する方法は、欧州特許出願公開第0994190号明細書や国際公開第90/04636号
パンフレットに記載の方法を参照出来る。
L−スレオニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E.
coli TDH-6/pVIC40 (VKPM B-3996) (米国特許第5,175,107号、米国特許第5,705,371号)
、E. coli 472T23/pYN7 (ATCC 98081) (米国特許第5,631,157号)、E. coli NRRL−21593
(米国特許第5,939,307号)、E. coli FERM BP-3756 (米国特許第5,474,918号)、E. coli FERM BP-3519及びFERM BP-3520 (米国特許第5,376,538号)、E. coli MG442 (Gusyatiner
et al., Genetika (in Russian), 14, 947-956 (1978))、E. coli VL643及びVL2055 (EP 1149911 A)、ならびにE. coli VKPM B-5318 (EP 0593792 B) が挙げられる。
VKPM B-3996株は、TDH-6株に、プラスミドpVIC40を導入した株である。TDH-6株は、ス
クロース資化性であり、thrC遺伝子を欠損し、ilvA遺伝子にリーキー(leaky)変異を有
する。また、VKPM B-3996株は、rhtA遺伝子に、高濃度のスレオニンまたはホモセリンに
対する耐性を付与する変異を有する。プラスミドpVIC40は、RSF1010由来ベクターに、ス
レオニンによるフィードバック阻害に耐性のアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異型thrA遺伝子と野生型thrBC遺伝子を含むthrA*BCオペロンが挿入されたプラスミドである(米国特許第5,705,371号)。この変異型thrA遺伝子は、スレオ
ニンによるフィードバック阻害が実質的に解除されたアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする。B-3996株は、1987年11月19日、オールユニオン・サイエンティフィック・センター・オブ・アンチビオティクス(Nagatinskaya Street 3-A, 117105 Moscow, Russia)に、受託番号RIA 1867で寄託されている。この株は、また、1987年4
月7日、ルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオル
ガニズムズ (VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) に、受託番号VKPM
B-3996で寄託されている。
VKPM B-5318株は、イソロイシン非要求性であり、プラスミドpVIC40中のスレオニンオ
ペロンの制御領域を温度感受性ラムダファージC1リプレッサー及びPRプロモーターにより置換したプラスミドpPRT614を保持する。VKPM B-5318は、1990年5月3日、ルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ (VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) に、受託番号VKPM B-5318で国際寄託され
ている。
E. coliのアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードするthrA遺伝子
は明らかにされている(ヌクレオチド番号337〜2799, GenBank accession NC_000913.2, gi: 49175990)。thrA遺伝子は、E. coli K-12の染色体において、thrL遺伝子とthrB遺伝子との間に位置する。Escherichia coliのホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子は明らかにされている(ヌクレオチド番号2801〜3733, GenBank accession NC_000913.2, gi: 49175990)。thrB遺伝子は、E. coli K-12の染色体において、thrA遺伝子とthrC遺伝子と
の間に位置する。E. coliのスレオニンシンターゼをコードするthrC遺伝子は明らかにさ
れている(ヌクレオチド番号3734〜5020, GenBank accession NC_000913.2, gi: 49175990)。thrC遺伝子は、E. coli K-12の染色体において、thrB遺伝子とyaaXオープンリーディ
ングフレームとの間に位置する。また、スレオニンによるフィードバック阻害に耐性のアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異型thrA遺伝子と野生型thrBC遺伝子を含むthrA*BCオペロンは、スレオニン生産株E. coli VKPM B-3996に存在す
る周知のプラスミドpVIC40(米国特許第5,705,371号)から取得できる。
E. coliのrhtA遺伝子は、グルタミン輸送系の要素をコードするglnHPQ オペロンに近いE. coli染色体の18分に存在する。rhtA遺伝子は、ORF1 (ybiF遺伝子, ヌクレオチド番号764〜1651, GenBank accession number AAA218541, gi:440181)と同一であり、pexB遺伝子とompX遺伝子との間に位置する。ORF1によりコードされるタンパク質を発現するユニットは、rhtA遺伝子と呼ばれている(rht: resistant to homoserine and threonine(ホモセ
リン及びスレオニンに耐性))。また、高濃度のスレオニン又はホモセリンへの耐性を付
与するrhtA23変異が、ATG開始コドンに対して-1位のG→A置換であることが判明している(ABSTRACTS of the 17th International Congress of Biochemistry and Molecular Biology in conjugation with Annual Meeting of the American Society for Biochemistry and Molecular Biology, San Francisco, California August 24-29, 1997, abstract No.
457, EP 1013765 A)。
E. coliのasd遺伝子は既に明らかにされており(ヌクレオチド番号3572511〜3571408, GenBank accession NC_000913.1, gi:16131307)、その遺伝子の塩基配列に基づいて作製されたプライマーを用いるPCRにより取得できる(White, T.J. et al., Trends Genet., 5, 185 (1989)参照)。他の微生物のasd遺伝子も同様に得ることができる。
また、E. coliのaspC遺伝子も既に明らかにされており(ヌクレオチド番号983742〜984932, GenBank accession NC_000913.1, gi:16128895)、その遺伝子の塩基配列に基づいて
作製されたプライマーを用いるPCRにより得ることができる。他の微生物のaspC遺伝子も
同様に得ることができる。
また、L−スレオニン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、Corynebacterium acetoacidophilum AJ12318 (FERM BP-1172) (米国特許第5,188,949号参照) が挙げられる。
<L−リジン生産菌>
L−リジン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−リジン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ(dihydrodipicolinate synthase)(dapA)、アスパルトキナーゼIII(aspartokinase III)(lysC)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ(dihydrodipicolinate reductase)(dapB)、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ(diaminopimelate decarboxylase)(lysA)、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ(diaminopimelate dehydrogenase)(ddh)(米国特許第6,040,160号)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
(phosphoenolpyruvate carboxylase)(ppc)、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate semialdehyde dehydrogenase)(asd)、アスパラギン酸アミノト
ランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase))(aspC)、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ(diaminopimelate epimerase)(dapF)、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ(tetrahydrodipicolinate succinylase)(dapD)、スクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼ(succinyl-diaminopimelate deacylase)(dapE)、及びアスパルターゼ(aspartase)(aspA)(EP 1253195 A)が挙げられる。これらの酵素の中では、例えば、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ、及びスクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼから選択される1またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。また、L−リジン生産菌又はそれを誘導するための親株では、エネルギー効率に関与する遺伝子(cyo)(EP 1170376 A)、ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ(nicotinamide nucleotide transhydrogenase)をコードする遺伝子(pntAB)(米国特許第5,830,716号)、ybjE遺伝子(WO2005/073390)、またはこれらの組み合わせの発現レベルが増大していてもよい。アスパルトキナーゼIII(lysC)はL−リジンによるフィードバ
ック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、L−リジンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子を利用してもよ
い(米国特許5,932,453号明細書)。また、ジヒドロジピコリン酸合成酵素(dapA)L−
リジンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、L−リジンによるフィードバック阻害が解除されたジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする変異型dapA遺伝子を利用してもよい。
また、コリネ型細菌について、L−リジン生産能を付与又は増強するための方法として
は、例えば、リジン排出系(lysE)の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる(WO97/23597)。Corynebacterium glutamicum ATCC 13032のlysE遺伝子は、NCBIデ
ータベースにGenBank accession NC_006958 (VERSION NC_006958.1 GI:62388892)として登録されているゲノム配列中、1329712〜1330413位の配列の相補配列に相当する。Corynebacterium glutamicum ATCC13032のLysEタンパク質は、GenBank accession YP_225551 (YP_225551.1 GI:62390149)として登録されている。
また、L−リジン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−リジンの生合成経路から分岐してL−リジン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserine dehydrogenase)、リジンデカルボキシラーゼ(lysine decarboxylase)(米国特許第5,827,698号)、及びリンゴ酸酵素(malic enzyme)(WO2005/010175)が挙げられる。
また、L−リジン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、L−リジンアナログに耐性を有する変異株が挙げられる。L−リジンアナログは腸内細菌科の細菌やコリネ型細菌等の細菌の生育を阻害するが、この阻害は、L−リジンが培地に共存するときには完全にまたは部分的に解除される。L−リジンアナログとしては、特に制限されないが、オキサリジン、リジンヒドロキサメート、S−(2−アミノエチル)−L−システイン(AEC)、γ−メチルリジン、α−クロロカプロラクタムが挙げられる。これらのリジンアナ
ログに対して耐性を有する変異株は、細菌を通常の人工変異処理に付すことによって得ることができる。
L−リジン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E. coli AJ11442(FERM BP-1543, NRRL B-12185; 米国特許第4,346,170号参照)及びE. coli VL611が挙げられる。これらの株では、アスパルトキナーゼのL−リジンによるフィードバ
ック阻害が解除されている。
L−リジン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、E. coli WC196
株も挙げられる。WC196株は、E. coli K-12に由来するW3110株にAEC耐性を付与すること
により育種された(米国特許第5,827,698号)。WC196株は、E. coli AJ13069と命名され
、1994年12月6日、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術
基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-14690として寄託され、1995年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている(米国特許第5,827,698号)。
好ましいL−リジン生産菌として、E. coli WC196ΔcadAΔldcやE. coli WC196ΔcadA
Δldc/pCABD2が挙げられる(WO2010/061890)。WC196ΔcadAΔldcは、WC196株より、リジンデカルボキシラーゼをコードするcadA及びldcC遺伝子を破壊することにより構築した株である。WC196ΔcadAΔldc/pCABD2は、WC196ΔcadAΔldcに、リジン生合成系遺伝子を含
むプラスミドpCABD2(米国特許第6,040,160号)を導入することにより構築した株である
。WC196ΔcadAΔldcは、AJ110692と命名され、2008年10月7日、独立行政法人産業技術総
合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号
室)に受託番号FERM BP-11027として寄託された。pCABD2は、L−リジンによるフィード
バック阻害が解除された変異を有するエシェリヒア・コリ由来のジヒドロジピコリン酸合成酵素(DDPS)をコードする変異型dapA遺伝子と、L−リジンによるフィードバック阻害が解除された変異を有するエシェリヒア・コリ由来のアスパルトキナーゼIIIをコードす
る変異型lysC遺伝子と、エシェリヒア・コリ由来のジヒドロジピコリン酸レダクターゼをコードするdapB遺伝子と、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードするddh遺伝子を含んでいる。
好ましいL−リジン生産菌として、E. coli AJIK01株(NITE BP-01520)も挙げられる
。AJIK01株は、E. coli AJ111046と命名され、2013年1月29日に、独立行政法人製品評価
技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託され、2014年5月15日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号NITE BP-01520が付与されている。
また、L−リジン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、AEC耐性変異株(Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ11082(NRRL B-11470)
株など;特公昭56-1914号公報、特公昭56-1915号公報、特公昭57-14157号公報、特公昭57-14158号公報、特公昭57-30474号公報、特公昭58-10075号公報、特公昭59-4993号公報、
特公昭61-35840号公報、特公昭62-24074号公報、特公昭62-36673号公報、特公平5-11958
号公報、特公平7-112437号公報、特公平7-112438号公報参照);その生育にL−ホモセリン等のアミノ酸を必要とする変異株(特公昭48-28078号公報、特公昭56-6499号公報参照
);AECに耐性を示し、更にL−ロイシン、L−ホモセリン、L−プロリン、L−セリン
、L−アルギニン、L−アラニン、L−バリン等のアミノ酸を要求する変異株(米国特許第3708395号及び第3825472号明細書参照);DL−α−アミノ−ε−カプロラクタム、α−アミノ−ラウリルラクタム、アスパラギン酸アナログ、スルファ剤、キノイド、N−ラウロイルロイシンに耐性を示す変異株;オキザロ酢酸デカルボキシラーゼ阻害剤または呼吸系酵素阻害剤に対する耐性を示す変異株(特開昭50-53588号公報、特開昭50-31093号公報、特開昭52-102498号公報、特開昭53-9394号公報、特開昭53-86089号公報、特開昭55-9783号公報、特開昭55-9759号公報、特開昭56-32995号公報、特開昭56-39778号公報、特公昭53-43591号公報、特公昭53-1833号公報);イノシトールまたは酢酸を要求する変異株
(特開昭55-9784号公報、特開昭56-8692号公報);フルオロピルビン酸または34℃以上の温度に対して感受性を示す変異株(特開昭55-9783号公報、特開昭53-86090号公報);エ
チレングリコールに耐性を示す変異株(米国特許第4411997号明細書)が挙げられる。
<L−アルギニン生産菌>
L−アルギニン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−アルギニン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF)、アルギニノコハク酸シンターゼ(argG)、アルギニノコハク酸リアーゼ(argH)、カルバモイルリン酸シンターゼ(carAB)が挙げられる。N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)遺伝子
としては、例えば、野生型の15位〜19位に相当するアミノ酸残基が置換され、L−アルギニンによるフィードバック阻害が解除された変異型N−アセチルグルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子を用いると好適である(欧州出願公開1170361号明細書)。
L−アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E.
coli 237株 (VKPM B-7925) (米国特許出願公開2002/058315 A1)、変異型N−アセチルグルタミン酸シンターゼをコードするargA遺伝子が導入されたその誘導株 (ロシア特許出願第2001112869号, EP1170361A1)、237株由来の酢酸資化能が向上した株であるE. coli 382株 (VKPM B-7926) (EP1170358A1)、及び382株にE. coli K-12株由来の野生型ilvA遺伝子
が導入された株であるE. coli 382ilvA+株が挙げられる。E. coli 237株は、2000年4月10
日にルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ (VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) にVKPM B-7925の受託
番号で寄託され、2001年5月18日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管された。E. coli 382株は、2000年4月10日にルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダスト
リアル・マイクロオルガニズムズ (VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia) にVKPM B-7926の受託番号で寄託されている。
また、L−アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アミノ酸アナログ等への耐性を有する株も挙げられる。そのような株としては、例えば、α−メチルメチオニン、p−フルオロフェニルアラニン、D−アルギニン、アルギニンヒドロキサム酸、S−(2−アミノエチル)−システイン、α−メチルセリン、β−2−チエニルアラニン、またはスルファグアニジンに耐性を有するエシェリヒア・コリ変異株(特開昭56-106598号公報参照)が挙げられる。
また、L−アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アルギニンリプレッサーであるArgRを欠損した株(米国特許出願公開2002-0045223号)や細胞内のグルタミンシンテターゼ活性を上昇させた株(米国特許出願公開2005-0014236号公報)等のコリネ型細菌も挙げられる。
また、L−アルギニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アミノ酸アナログなどへの耐性を有するコリネ型細菌の変異株も挙げられる。そのような株としては、例えば、2−チアゾールアラニン耐性に加えて、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−メチオニン、またはL−トリプトファン要求性を有する株(特開昭54-44096号公報);ケトマロン酸、フルオロマロン酸、又はモノフルオロ酢酸に耐性を有する株(特開昭57-18989号公報);アルギニノールに耐性を有する株(特公昭62-24075号公報);X−グアニジン(Xは脂肪鎖又はその誘導体)に耐性を有する株(特開平2-186995号公報);アルギニンヒドロキサメート及び6−アザウラシルに耐性を有する株(特開昭57-150381号公報)が挙げられる。L−アルギニン生産能を有するコリネ型
細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11169(FERM BP-6892)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ12092(FERM BP-6906)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11336(FERM BP-6893)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ11345(FERM BP-6894)
Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ12430(FERM BP-2228)
<L−シトルリン生産菌およびL−オルニチン生産菌>
L−シトルリンおよびL−オルニチンは、L−アルギニンと生合成経路が共通している。よって、N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、および/またはアセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)の酵素活性を上昇させることによって、L−シトルリンおよび/またはL−オルニチンの生産能を付与または増強することができる(国際公開2006-35831号パンフレット)。
<L−ヒスチジン生産菌>
L−ヒスチジン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−ヒスチジン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、ATPホスホ
リボシルトランスフェラーゼ(hisG)、ホスホリボシル−AMPサイクロヒドロラーゼ(hisI)、ホスホリボシル−ATPピロホスホヒドロラーゼ(hisI)、ホスホリボシルフォルミミノ−5−アミノイミダゾールカルボキサミドリボタイドイソメラーゼ(hisA)、アミドトランスフェラーゼ(hisH)、ヒスチジノールフォスフェイトアミノトランスフェラーゼ(hisC)、ヒスチジノールフォスファターゼ(hisB)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(hisD)が挙げられる。
これらの内、hisG及びhisBHAFIにコードされるL−ヒスチジン生合成系酵素は、L−ヒスチジンにより阻害されることが知られている。従って、L−ヒスチジン生産能は、例えば、ATPホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(hisG)にフィードバック阻害への耐性を付与する変異を導入することにより、付与または増強させることができる(ロシア
特許第2003677号及び第2119536号)。
L−ヒスチジン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E.
coli 24株 (VKPM B-5945, RU2003677)、E. coli NRRL B-12116〜B-12121 (米国特許第4,388,405号)、E. coli H-9342 (FERM BP-6675)及びH-9343 (FERM BP-6676) (米国特許第6,344,347号)、E. coli H-9341 (FERM BP-6674) (EP1085087)、E. coli AI80/pFM201 (米国特許第6,258,554号)、L−ヒスチジン生合成系酵素をコードするDNAを保持するベクター
を導入したE. coli FERM P-5038及び5048 (特開昭56-005099号)、アミノ酸輸送の遺伝子
を導入したE. coli株(EP1016710A)、スルファグアニジン、DL−1,2,4−トリアゾ
ール−3−アラニン、及びストレプトマイシンに対する耐性を付与したE. coli 80株(VKPM B-7270, ロシア特許第2119536号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられる。
<L−システイン生産菌>
L−システイン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−システイン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、セリンアセチルトランスフェラーゼ(cysE)や3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(serA)が挙げられる。セリンアセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば、システインによるフィードバック阻害に耐性の変異型セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする変異型cysE遺伝子を細菌に導入することにより増強できる。変異型セリンアセチルトランスフェラーゼは、例えば、特開平11-155571や米国特許公開第20050112731に開示されている。また、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ活性は、例えば、セリンによるフィードバック阻害に耐性の変異型3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼをコードする変異型serA遺伝子を細菌に導入することにより増強できる。変異型3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼは、例えば、米国特許第6,180,373号に開示されている。
また、L−システイン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−システインの生合成経路から分岐してL−システイン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、例えば、L−システインの分解に関与する酵素が挙げられる。L−システインの分解に関与する酵素としては、特に制限されないが、シスタチオニン−β−リアーゼ(metC)(特開平11-155571号、Chandra et. al., Biochemistry, 21 (1982) 3064-3069))、トリプトファナーゼ(tnaA)(特開2003-169668、Austin Newton et. al., J. Biol. Chem. 240 (1965) 1211-1218)、O−アセチルセリンスルフヒドリラーゼB(cysM)(特開2005-245311)、malY遺伝子産物(特開2005-245311)、Pantoea ananatisのd0191遺伝子産物(特開2009-232844)、システインデスルフヒドラーゼ(aecD)(特開2002-233384)が挙げられる。
また、L−システイン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−シ
ステイン排出系を増強することや硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系を増強することも挙げられる。L−システイン排出系のタンパク質としては、ydeD遺伝子にコードされるタンパク質(特開2002-233384)、yfiK遺伝子にコードされるタンパク質(特開2004-49237)、emrAB、emrKY、yojIH、acrEF、bcr、およびcusAの各遺伝子にコードされる各タンパク質(特開2005-287333)、yeaS遺伝子にコードされるタンパク質(特開2010-187552)が挙げられる。硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系のタンパク質としては、cysPTWAM遺伝子クラスターにコードされるタンパク質が挙げられる。
L−システイン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、フィードバック阻害耐性の変異型セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする種々のcysEアレルで形質転換されたE. coli JM15 (米国特許第6,218,168号、ロシア特許出願第2003121601号)、細胞に毒性の物質を排出するのに適したタンパク質をコードする過剰発現遺伝子を有するE. coli W3110 (米国特許第5,972,663号)、システインデスルフヒドラーゼ
活性が低下したE. coli株 (JP11155571A2)、cysB遺伝子によりコードされる正のシステインレギュロンの転写制御因子の活性が上昇したE. coli W3110 (WO01/27307A1)が挙げられる。
また、L−システイン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、L−システインによるフィードバック阻害が低減されたセリンアセチルトランスフェラーゼを保持することにより、細胞内のセリンアセチルトランスフェラーゼ活性が上昇したコリネ型細菌(特開2002-233384)が挙げられる。
<L−セリン生産菌>
L−セリン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−セリン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる(特開平11-253187)。そのような酵素としては、特に制限されないが、
3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(serA)、ホスホセリントランスアミナーゼ(serC)、ホスホセリンホスファターゼ(serB)が挙げられる(特開平11-253187)。3−
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ活性は、例えば、セリンによるフィードバック阻害に耐性の変異型3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼをコードする変異型serA遺伝子を細菌に導入することにより増強できる。変異型3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼは、例えば、米国特許第6,180,373号に開示されている。
L−セリン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、例えば、アザセリンまたはβ−(2−チエニル)−DL−アラニンに耐性を示し、かつL−セリン分解能を欠失したコリネ型細菌が挙げられる(特開平10-248588)。そのようなコリネ型細菌として、具体
的には、例えば、アザセリンに耐性を示し、かつL−セリン分解能を欠失したCorynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ13324 (FERM P-16128) や、β−(2−チエニル)−DL−アラニンに耐性を示し、かつL−セリンの分解能を欠失したCorynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ13325 (FERM P-16129) が挙げられる(特開平10-248588)。
<L−メチオニン生産菌>
L−メチオニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、L−スレオニン要求株や、ノルロイシンに耐性を有する変異株が挙げられる(特開2000-139471)。また、L−
メチオニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、L−メチオニンによるフィードバック阻害に対して耐性をもつ変異型ホモセリントランスサクシニラーゼを保持する株も挙げられる(特開2000-139471、US20090029424)。なお、L−メチオニンはL−システインを中間体として生合成されるため、L−システインの生産能の向上によりL−メチオニンの生産能も向上させることができる(特開2000-139471、US20080311632)。
L−メチオニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、E.
coli AJ11539 (NRRL B-12399)、E. coli AJ11540 (NRRL B-12400)、E. coli AJ11541 (NRRL B-12401)、E. coli AJ11542 (NRRL B-12402) (英国特許第2075055号)、L−メチオニンのアナログであるノルロイシン耐性を有するE. coli 218株 (VKPM B-8125)(ロシア特許第2209248号)や73株 (VKPM B-8126) (ロシア特許第2215782号)、E. coli AJ13425 (FERM P-16808)(特開2000-139471)が挙げられる。AJ13425株は、メチオニンリプレッサーを欠損し、細胞内のS−アデノシルメチオニンシンセターゼ活性が弱化し、細胞内のホモセリントランスサクシニラーゼ活性、シスタチオニンγ−シンターゼ活性、及びアスパルトキナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼII活性が増強された、E. coli W3110由来のL−ス
レオニン要求株である。
<L−ロイシン生産菌>
L−ロイシン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−ロイシン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、leuABCDオペロン
の遺伝子にコードされる酵素が挙げられる。また、酵素活性の増強には、例えば、L−ロイシンによるフィードバック阻害が解除されたイソプロピルマレートシンターゼをコードする変異leuA遺伝子(米国特許第6,403,342号)が好適に利用できる。
L−ロイシン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、ロイシン耐性のE. coli株 (例えば、57株 (VKPM B-7386, 米国特許第6,124,121号))、β−2
−チエニルアラニン、3−ヒドロキシロイシン、4−アザロイシン、5,5,5−トリフルオロロイシンなどのロイシンアナログ耐性のE. coli株(特公昭62-34397号及び特開平8-70879号)、WO96/06926に記載された遺伝子工学的方法で得られたE. coli株、E. coli H-9068 (特開平8-70879号)などのエシェリヒア属に属する株が挙げられる。
L−ロイシン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、2−チアゾールアラニン及びβ−ハイドロキシロイシンに耐性で、且つイソロイシン及びメチオニン要求性である、Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ3718(FERM P-2516)が挙げられる。
<L−イソロイシン生産菌>
L−イソロイシン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−イソロイシン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、スレオニンデアミナーゼやアセトヒドロキシ酸シンターゼが挙げられる(特開平2-458号, FR 0356739, 及び米国特許第5,998,178号)。
L−イソロイシン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、6−ジメチルアミノプリンに耐性を有する変異株(特開平5-304969号)、チアイソロイシン、イソロイシンヒドロキサメートなどのイソロイシンアナログに耐性を有する変異株、イソロイシンアナログに加えてDL−エチオニン及び/またはアルギニンヒドロキサメートに耐性を有する変異株(特開平5-130882号)等のエシェリヒア属細菌が挙げられる。
L−イソロイシン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、分岐鎖アミノ酸排出タンパク質をコードするbrnE遺伝子を増幅したコリネ型細菌(特開2001-169788)、L−
リジン生産菌とのプロトプラスト融合によりL−イソロイシン生産能を付与したコリネ型細菌(特開昭62-74293)、ホモセリンデヒドロゲナーゼを強化したコリネ型細菌(特開昭62-91193)、スレオニンハイドロキサメート耐性株(特開昭62-195293)、α-ケトマロン
耐性株(特開昭61-15695)、メチルリジン耐性株(特開昭61-15696)、Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium flavum) AJ12149(FERM BP-759)(米国特許第4,656,135号)が挙げられる。
<L−バリン生産菌>
L−バリン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−バリン生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、ilvGMEDAオペロンやilvBNCオペロンの遺伝子にコードされる酵素が挙げられる。ilvBNはアセトヒドロキシ酸シ
ンターゼを、ilvCはイソメロリダクターゼ(国際公開00/50624号)を、それぞれコードする。なお、ilvGMEDAオペロンおよびilvBNCオペロンは、L−バリン、L−イソロイシン、および/またはL−ロイシンによる発現抑制(アテニュエーション)を受ける。よって、酵素活性の増強のためには、アテニュエーションに必要な領域を除去または改変し、生成するL−バリンによる発現抑制を解除するのが好ましい。また、ilvA遺伝子がコードするスレオニンデアミナーゼは、L−イソロイシン生合成系の律速段階であるL−スレオニンから2−ケト酪酸への脱アミノ化反応を触媒する酵素である。よって、L−バリン生産のためには、ilvA遺伝子が破壊等され、スレオニンデアミナーゼ活性が減少しているのが好ましい。
また、L−バリン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−バリンの生合成経路から分岐してL−バリン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が低下するように細菌を改変する方法も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、L−ロイシン合成に関与するスレオニンデヒドラターゼやD−パントテン酸合成に関与する酵素が挙げられる(国際公開00/50624号)。
L−バリン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、ilvGMEDAオペロンを過剰発現するように改変されたE. coli株(米国特許第5,998,178号) が挙げ
られる。
また、L−バリン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アミノアシルt-RNA
シンテターゼに変異を有する株(米国特許第5,658,766号)も挙げられる。そのような株
としては、例えば、イソロイシンtRNAシンテターゼをコードするileS遺伝子に変異を有するE. coli VL1970が挙げられる。E. coli VL1970は、1988年6月24日、ルシアン・ナショ
ナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ (VKPM) (1 Dorozhny proezd., 1 Moscow 117545, Russia)に、受託番号VKPM B-4411で寄託されている。また、L−バリン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、生育にリポ酸を要求する、および/または、H+-ATPaseを欠失している変異株(WO96/06926)も挙げられる。
また、L−バリン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、アミノ酸アナログなどへの耐性を有する株も挙げられる。そのような株としては、例えば、L−イソロイシンおよびL−メチオニン要求性、ならびにD−リボース、プリンリボヌクレオシド、またはピリミジンリボヌクレオシドに耐性を有し、且つL−バリン生産能を有するコリネ型細菌株(FERM P-1841、FERM P-29、特公昭53-025034)、ポリケトイド類に耐性を有するコリ
ネ型細菌株(FERM P-1763、FERM P-1764、特公平06-065314)、酢酸を唯一の炭素源とす
る培地でL−バリン耐性を示し、且つグルコースを唯一の炭素源とする培地でピルビン酸アナログ(フルオロピルビン酸等)に感受性を有するコリネ型細菌株(FERM BP-3006、FERM
BP-3007、特許3006929号)が挙げられる。
<L−アラニン生産菌>
L−アラニン生産菌又はそれを誘導するための親株としては、H+-ATPaseを欠失してい
るコリネ型細菌(Appl Microbiol Biotechnol. 2001 Nov;57(4):534-40)やアスパラギン酸β−デカルボキシラーゼ活性が増強されたコリネ型細菌(特開平07-163383)が挙げら
れる。
<L−トリプトファン生産菌、L−フェニルアラニン生産菌、L−チロシン生産菌>
L−トリプトファン生産能、L−フェニルアラニン生産能、および/またはL−チロシン生産能を付与又は増強するための方法としては、例えば、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、および/またはL−チロシンの生合成系酵素から選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。
これらの芳香族アミノ酸に共通する生合成系酵素としては、特に制限されないが、3−デオキシ−D−アラビノヘプツロン酸−7−リン酸シンターゼ(aroG)、3−デヒドロキネートシンターゼ(aroB)、シキミ酸デヒドロゲナーゼ(aroE)、シキミ酸キナーゼ(aroL)、5−エノール酸ピルビルシキミ酸3−リン酸シンターゼ(aroA)、コリスミ酸シンターゼ(aroC)が挙げられる(欧州特許763127号)。これらの酵素をコードする遺伝子の発現はチロシンリプレッサー(tyrR)によって制御されており、tyrR遺伝子を欠損させることによって、これらの酵素の活性を増強してもよい(欧州特許763127号)。
L−トリプトファン生合成系酵素としては、特に制限されないが、アントラニル酸シンターゼ(trpE)、トリプトファンシンターゼ(trpAB)、及びホスホグリセリン酸デヒド
ロゲナーゼ(serA)が挙げられる。例えば、トリプトファンオペロンを含むDNAを導入することにより、L−トリプトファン生産能を付与又は増強できる。トリプトファンシンターゼは、それぞれtrpA及びtrpB遺伝子によりコードされるα及びβサブユニットからなる。アントラニル酸シンターゼはL−トリプトファンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、フィードバック阻害を解除する変異を導入した同酵素をコードする遺伝子を利用してもよい。ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼはL−セリンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、フィードバック阻害を解除する変異を導入した同酵素をコードする遺伝子を利用してもよい。さらに、マレートシンターゼ(aceB)、イソクエン酸リアーゼ(aceA)、およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/フォスファターゼ(aceK)からなるオペロン(aceオペロン)
の発現を増大させることによりL−トリプトファン生産能を付与または増強してもよい(WO2005/103275)。
L−フェニルアラニン生合成系酵素としては、特に制限されないが、コリスミ酸ムターゼ及びプレフェン酸デヒドラターゼが挙げられる。コリスミ酸ムターゼ及びプレフェン酸デヒドラターゼは、2機能酵素としてpheA遺伝子によってコードされている。コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼはL−フェニルアラニンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、フィードバック阻害を解除する変異を導入した同酵素をコードする遺伝子を利用してもよい。
L−チロシン生合成系酵素としては、特に制限されないが、コリスミ酸ムターゼ及びプレフェン酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。コリスミ酸ムターゼ及びプレフェン酸デヒドロゲナーゼは、2機能酵素としてtyrA遺伝子によってコードされている。コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドロゲナーゼはL−チロシンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、フィードバック阻害を解除する変異を導入した同酵素をコードする遺伝子を利用してもよい。
L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、および/またはL−チロシンの生産菌は、目的の芳香族アミノ酸以外の芳香族アミノ酸の生合成が低下するように改変されていて
もよい。また、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、および/またはL−チロシンの生産菌は、副生物の取り込み系が増強されるように改変されていてもよい。副生物としては、目的の芳香族アミノ酸以外の芳香族アミノ酸が挙げられる。副生物の取り込み系をコードする遺伝子としては、例えば、L−トリプトファンの取り込み系をコードする遺伝子であるtnaBやmtr、L−フェニルアラニンの取り込み系をコードする遺伝子であるpheP、L−チロシンの取り込み系をコードする遺伝子であるtyrPが挙げられる(EP1484410)。
L−トリプトファン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、部分的に不活化されたトリプトファニル-tRNAシンテターゼをコードする変異型trpS遺
伝子を保持するE. coli JP4735/pMU3028 (DSM10122)及びJP6015/pMU91 (DSM10123) (米国特許第5,756,345号)、トリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニル酸シンターゼをコードするtrpEアレルを有するE. coli SV164、セリンによるフィードバ
ック阻害を受けないホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼをコードするserAアレル及びトリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニル酸シンターゼをコードするtrpEアレルを有するE. coli SV164 (pGH5) (米国特許第6,180,373号)、トリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニル酸シンターゼをコードするtrpEアレルを含むトリプトファンオペロンが導入された株 (特開昭57-71397号, 特開昭62-244382号,
米国特許第4,371,614号)、トリプトファナーゼが欠損したE. coli AGX17 (pGX44) (NRRL
B-12263)及びAGX6(pGX50)aroP (NRRL B-12264) (米国特許第4,371,614号)、ホスホエノ
ールピルビン酸生産能が増大したE. coli AGX17/pGX50,pACKG4-pps (WO9708333, 米国特
許第6,319,696号)、yedA遺伝子またはyddG遺伝子にコードされるタンパク質の活性が増大したエシェリヒア属に属する株 (米国特許出願公開2003/0148473 A1及び2003/0157667 A1) が挙げられる。
L−トリプトファン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、サルファグアニジンに耐性のCorynebacterium glutamicum AJ12118(FERM BP-478 特許01681002号)、トリプトファンオペロンが導入された株(特開昭63240794号公報)、コリネ型細菌由来のシキミ酸キナーゼをコードする遺伝子が導入された株(特開01994749号公報)が挙げられる。
L−フェニルアラニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドロゲナーゼ及びチロシンリプレッサーを欠損したE. coli AJ12739 (tyrA::Tn10, tyrR) (VKPM B-8197)(WO03/044191)、フィードバ
ック阻害が解除されたコリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼをコードする変異型pheA34遺伝子を保持するE. coli HW1089 (ATCC 55371) (米国特許第 5,354,672号)、E. coli MWEC101-b (KR8903681)、E. coli NRRL B-12141、NRRL B-12145、NRRL B-12146
、NRRL B-12147 (米国特許第4,407,952号)が挙げられる。また、L−フェニルアラニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、フィードバック阻害が解除されたコリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼをコードする遺伝子を保持するE. coli K-12 <W3110 (tyrA)/pPHAB> (FERM BP-3566)、E. coli K-12 <W3110 (tyrA)/pPHAD> (FERM BP-12659)、E. coli K-12 <W3110 (tyrA)/pPHATerm> (FERM BP-12662)、E. coli K-12 AJ 12604 <W3110 (tyrA)/pBR-aroG4, pACMAB> (FERM BP-3579)も挙げられる(EP 488424 B1)。また、L−フェニルアラニン生産菌又はそれを誘導するための親株として、具体的には、例えば、yedA遺伝子またはyddG遺伝子にコードされるタンパク質の活性が増大したエシェリヒア属に属する株も挙げられる(US2003/0148473、US2003/0157667、WO03/044192)。
L−フェニルアラニン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼまたはピルビン酸キナーゼ活性が低下したCorynebacterium glutamicum BPS-13株 (FERM BP-1777)、Corynebacterium glutamicum K77 (FERM BP-2062
)、Corynebacterium glutamicum K78 (FERM BP-2063)(欧州特許公開公報331145号、特開平 02-303495号)、チロシン要求性株(特開平05-049489)が挙げられる。
L−チロシン生産能を有するコリネ型細菌としては、例えば、Corynebacterium glutamicum AJ11655 (FERM P-5836)(特公平2-6517)、Corynebacterium glutamicum (Brevibacterium lactofermentum) AJ12081 (FERM P-7249)(特開昭60-70093)が挙げられる。
また、L−アミノ酸生産能を付与または増強する方法としては、例えば、細菌の細胞からL−アミノ酸を排出する活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。L−アミノ酸を排出する活性は、例えば、L−アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。各種アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子としては、例えば、b2682遺伝子(ygaZ)、b2683遺伝子(ygaH)、b1242遺伝子(ychE)、b3434遺伝子(yhgN)が挙げられる(特開2002-300874号
公報)。
また、L−アミノ酸生産能を付与または増強する方法としては、例えば、糖代謝に関与するタンパク質やエネルギー代謝に関与するタンパク質の活性が増大するように細菌を改変する方法が挙げられる。
糖代謝に関与するタンパク質としては、糖の取り込みに関与するタンパク質や解糖系酵素が挙げられる。糖代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子としては、グルコース6−リン酸イソメラーゼ遺伝子(pgi;国際公開第01/02542号パンフレット)、ピルビン
酸カルボキシラーゼ遺伝子(pyc;国際公開99/18228号パンフレット、欧州出願公開1092776号明細書)、ホスホグルコムターゼ遺伝子(pgm;国際公開03/04598号パンフレット)
、フルクトース二リン酸アルドラーゼ遺伝子(pfkB, fbp;国際公開03/04664号パンフレ
ット)、トランスアルドラーゼ遺伝子(talB;国際公開03/008611号パンフレット)、フ
マラーゼ遺伝子(fum;国際公開01/02545号パンフレット)、non-PTSスクロース取り込み遺伝子(csc;欧州出願公開149911号パンフレット)、スクロース資化性遺伝子(scrABオペロン;国際公開第90/04636号パンフレット)が挙げられる。
エネルギー代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子としては、トランスヒドロゲナーゼ遺伝子(pntAB;米国特許 5,830,716号明細書)、チトクロムbo型オキシダーゼ(cytochromoe bo type oxidase)遺伝子(cyoB;欧州特許出願公開1070376号明細書)が挙げ
られる。
また、本発明の細菌は、例えば、脂肪酸資化能が高まるように改変されていてもよい。そのような改変としては、fadR遺伝子の発現を弱化すること、fadL、fadE、fadD、fadB、及びfadA遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現を増強すること、cyoABCDEオペロンの発現を増強すること、およびそれらの組み合わせが挙げられる(特開2011-167071)。
fadR遺伝子は、fadレギュロンの負の転写因子をコードする(DiRusso, C. C. et al. 1992. J. Biol. Chem. 267: 8685-8691; DiRusso, C. C. et al. 1993. Mol. Microbiol. 7: 311-322)。fadレギュロンには、fadL、fadE、fadD、fadB、及びfadA遺伝子が含まれ
、これらの遺伝子は脂肪酸代謝に関与するタンパク質をコードする。fadR遺伝子およびfadレギュロンは、例えば、腸内細菌科に属する細菌に見出される。エシェリヒア・コリK12
MG1655株のfadR遺伝子は、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)における1234161〜1234880位の配列に相当する。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のFadRタンパク質は、GenBank accession No. NP_415705で登録されている。
fadL遺伝子は、長鎖脂肪酸の取り込み能を有する外膜のトランスポーターをコードする(Kumar, G. B. and Black, P. N. 1993. J. Biol. Chem. 268: 15469-15476; Stenberg,
F. et al. 2005. J. Biol. Chem. 280: 34409-34419)。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のfadL遺伝子は、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)における2459328〜2460668位の配列に相当する。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のFadLタンパク質
は、GenBank accession No. NP_416846で登録されている。
fadD遺伝子は、長鎖脂肪酸から脂肪酸アシルCoA(fatty acyl-CoA)を生成する反応を触媒するとともに(脂肪酸アシルCoA合成酵素(fatty acyl-CoA synthetase)活性
)、内膜を通して取り込むタンパク質をコードする(Dirusso, C. C. and Black, P. N. 2004. J. Biol. Chem. 279: 49563-49566; Schmelter, T. et al. 2004. J. Biol. Chem.
279: 24163-24170)。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のfadD遺伝子は、同株のゲノム
配列(GenBank accession No. NC_000913)における1886085〜1887770位の配列の相補配
列に相当する。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のFadDタンパク質は、GenBank accession No. NP_416319で登録されている。
fadE遺伝子は、脂肪酸アシルCoAを酸化する反応を触媒するアシルCoAデヒドロゲナーゼ(acyl-CoA dehydrogenase)活性を有するタンパク質をコードする(O'Brien, W. J. and Frerman, F. E. 1977. J. Bacteriol. 132: 532-540; Campbell, J. W. and Cronan, J. E. 2002. J. Bacteriol. 184: 3759-3764)。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のfadE遺伝子は、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)における240859
〜243303位の配列の相補配列に相当する。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のFadEタンパク質は、GenBank accession No. NP_414756で登録されている。
fadB遺伝子は、脂肪酸酸化複合体(fatty acid oxidation complex)のαサブユニットをコードする。αサブユニットは、エノイルCoAヒドラターゼ(enoyl-CoA hydratase
)、3−ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ(3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase
)、3−ヒドロキシアシルCoAエピメラーゼ(3-hydroxyacyl-CoA epimerase)、Δ3
−シス−Δ2−トランス−エノイルCoAイソメラーゼ(Δ3-cis-Δ2-trans-enoyl-CoA isomerase)の4つの活性を有する(Pramanik, A. et al. 1979. J. Bacteriol. 137: 469-473; Yang, S. Y. and Schulz, H. 1983. J. Biol. Chem. 258: 9780-9785)。エシェ
リヒア・コリK12 MG1655株のfadB遺伝子は、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)における4026805〜4028994位の配列の相補配列に相当する。エシェリヒア・
コリK12 MG1655株のFadBタンパク質は、GenBank accession No. NP_418288で登録されて
いる。
fadA遺伝子は、脂肪酸酸化複合体(fatty acid oxidation complex)のβサブユニットをコードする。βサブユニットは、3−ケトアシルCoAチオラーゼ(3-ketoacyl-CoA thiolase)活性を有する(Pramanik, A. et al. 1979. J. Bacteriol. 137: 469-473)。
エシェリヒア・コリK12 MG1655株のfadA遺伝子は、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)における4025632〜4026795位の配列の相補配列に相当する。エシェリ
ヒア・コリK12 MG1655株のFadAタンパク質は、GenBank accession No. YP_026272で登録
されている。
fadAおよびfadB遺伝子は、fadBAオペロンを形成している(Yang, S. Y. et al. 1990. J. Biol. Chem. 265: 10424-10429)。よって、例えば、fadBAオペロン全体の発現を増強してもよい。
cyoABCDEオペロン(cyoオペロン)は、末端酸化酵素の一つであるシトクロムbo型酸化
酵素複合体(cytochrome bo terminal oxidase complex)をコードする。具体的には、cy
oB遺伝子がサブユニットIを、cyoA遺伝子がサブユニットIIを、cyoC遺伝子がサブユニッ
トIIIを、cyoC遺伝子がサブユニットIVを、cyoE遺伝子がヘムOシンターゼ(heme O synthase)活性を有するタンパク質をコードする(Gennis, R. B. and Stewart, V. 1996. p.
217-261. In F. D.Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C; Chepuri et al. 1990. J. Biol. Chem. 265: 11185-11192)。cyoオペロン
は、例えば、腸内細菌科に属する細菌に見出される。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のcyoABCDE遺伝子は、それぞれ、同株のゲノム配列(GenBank accession No. NC_000913)
における449887〜450834、447874〜449865、447270〜447884、446941〜447270、446039〜446929位の配列の相補配列に相当する。エシェリヒア・コリK12 MG1655株のCyoABCDEタンパク質は、それぞれ、GenBank accession No. NP_414966、NP_414965、NP_414964、NP_414963、NP_414962で登録されている。
なお、細菌の育種に使用される遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限り、上記例示した遺伝子や公知の塩基配列を有する遺伝子に限られず、そのバリアントであってもよい。バリアントは、例えば、上記例示した遺伝子や公知の塩基配列を有する遺伝子のホモログや人為的な改変体であってよい。
例えば、使用される遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限りにおいて、公知のタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。この場合、タンパク質の機能は、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加される前のタンパク質に対して、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上が維持され得る。なお上記「1又は数個」とは、アミノ
酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、
置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場
合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミ
ノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入
、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、公知のタンパク質のアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましく
は97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ、元の機能が維持されたタンパ
ク質をコードする遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、使用される遺伝子は、公知の遺伝子配列から調製され得るプローブ、例えば公知の遺伝子配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、元の機能が維持されたタンパク質をコードするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低
いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用い
る場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
また、使用される遺伝子は、元の機能が維持されたタンパク質をコードする限り、任意のコドンがそれと等価のコドンに置換されたものであってもよい。例えば、使用される遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されたものであってもよい。
<3−3>L−アミノ酸発酵
L−アミノ酸発酵に使用する培地は、中温処理物を含有し、本発明の細菌が増殖でき、L−アミノ酸が生産される限り、特に制限されない。培地としては、例えば、細菌等の微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。培地は、中温処理物に加えて、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有してよい。培地成分の種類や濃度は、使用する細菌の種類や製造するL−アミノ酸の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
L−アミノ酸発酵においては、中温処理物は、唯一炭素源(sole carbon source)として利用されてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、L−アミノ酸発酵においては、中温処理物に加えて、他の炭素源を併用してもよい。他の炭素源は、本発明の細菌が資化してL−アミノ酸を生成し得るものであれば、特に限定されない。他の炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。他の炭素源を用いる場合には、総炭素源中の中温処理物に由来する炭素源の比率は、例えば、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上であってよい。他の炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解
物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。pH調整に用いられるアンモニアガスやアンモニア水を窒素源として利用してもよい。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビ
タミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
また、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。例えば、L−リジン生産菌は、L−リジン生合成経路が強化され、L−リジン分解能が弱化されている場合が多い。よって、そのようなL−リジン生産菌を培養する場合には、例えば、L−スレオニン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、L−メチオニンから選ばれる1またはそれ以上のアミノ酸を培地に補添するのが好ましい。
また、例えば、コリネ型細菌によりL−グルタミン酸を製造する場合は、培地中のビオチン量を制限することや、培地に界面活性剤またはペニシリンを添加することが好ましい。また、培養時の発泡を抑えるために、培地には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
培養条件は、本発明の細菌が増殖でき、L−アミノ酸が生産される限り、特に制限されない。培養は、例えば、細菌等の微生物の培養に用いられる通常の条件で行うことができる。培養条件は、使用する細菌の種類や製造するL−アミノ酸の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
培養は、液体培地を用いて行うことができる。培養の際には、本発明の細菌を寒天培地等の固体培地で培養したものを直接液体培地に接種してもよく、本発明の細菌を液体培地で種培養したものを本培養用の液体培地に接種してもよい。すなわち、培養は、種培養と本培養とに分けて行われてもよい。その場合、種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。培養開始時に培地に含有される本発明の細菌の量は特に制限されない。例えば、OD660=4〜8の種培養液を、培養開始時に、本培養用の培地に対して0.1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、添加してよい。
培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。なお、培養開始時の培地を、「初発培地」ともいう。また、流加培養または連続培養において培養
系(発酵槽)に供給する培地を、「流加培地」ともいう。また、流加培養または連続培養において培養系に流加培地を供給することを、「流加」ともいう。なお、培養が種培養と本培養とに分けて行われる場合、例えば、種培養と本培養を、共に回分培養で行ってもよい。また、例えば、種培養を回分培養で行い、本培養を流加培養または連続培養で行ってもよい。
本発明において、各培地成分は、初発培地、流加培地、またはその両方に含有されていてよい。初発培地に含有される成分の種類は、流加培地に含有される成分の種類と、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、初発培地に含有される各成分の濃度は、流加培地に含有される各成分の濃度と、同一であってもよく、そうでなくてもよい。また、含有する成分の種類および/または濃度の異なる2種またはそれ以上の流加培地を用いてもよい。例えば、複数回の流加が間欠的に行われる場合、各流加培地に含有される成分の種類および/または濃度は、同一であってもよく、そうでなくてもよい。
L−アミノ酸発酵において、培地中の中温処理物濃度は、本発明の細菌が中温処理物を炭素源として利用できる限り、特に制限されない。中温処理物は、例えば、培地中の脂肪酸濃度が、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下、より好ましくは2w/v%以下となるように、培地に含有されてよい。また、中温処理物は、例えば、培地中の脂肪酸濃度が、0.2w/v%以上、好ましくは0.5w/v%以上、より好ましくは1.0w/v%以上となるように、培地に含有されてよい。中温処理物は、初発培地、流加培地、またはその両方に、上記例示した濃度範囲で含有されていてよい。
また、中温処理物が流加培地に含有される場合、中温処理物は、例えば、流加後の培地中の脂肪酸濃度が、5w/v%以下、好ましくは2w/v%以下、より好ましくは1w/v%以下となるように、流加培地に含有されてもよい。また、中温処理物が流加培地に含有される場合、中温処理物は、例えば、流加後の培地中の脂肪酸濃度が、0.01w/v%以上、好ましくは0.02w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上となるように、流加培地に含有されてもよい。
中温処理物は、唯一炭素源として利用される場合に、上記例示した濃度範囲で含有されていてよい。また、中温処理物は、他の炭素源を併用する場合に、上記例示した濃度範囲で含有されてもよい。また、中温処理物は、他の炭素源を併用する場合に、例えば、総炭素源中の中温処理物に由来する炭素源の比率等に応じて、上記例示した濃度範囲を適宜修正した濃度範囲で含有されてもよい。なお、上記脂肪酸の濃度に関する記載は、中温処理物中の脂肪酸以外の成分を利用する場合に準用してもよい。
中温処理物は、培養の全期間において一定の濃度範囲で培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。例えば、一部の期間、中温処理物が不足していてもよい。「不足する」とは、要求量を満たさないことをいい、例えば、培地中の濃度がゼロとなることであってよい。「一部の期間」とは、例えば、培養の全期間の内の、1%以下の期間、5%以下の期間、10%以下の期間、20%以下の期間、30%以下の期間、または50%以下の期間であってよい。なお、「培養の全期間」とは、培養が種培養と本培養とに分けて行われる場合には、本培養の全期間を意味してよい。中温処理物が不足する期間には、他の炭素源が充足されているのが好ましい。このように、一部の期間、中温処理物が不足していても、中温処理物を含有する培地での培養期間が存在する限り、「中温処理物を含有する培地中で細菌を培養する」ことに含まれる。
脂肪酸等の各種成分の濃度は、ガスクロマトグラフィー(Hashimoto, K. et al. 1996.
Biosci. Biotechnol. Biochem. 70:22-30)やHPLC(Lin, J. T. et al. 1998. J. Chromatogr. A. 808: 43-49)により測定することができる。
培養は、例えば、好気的に行うことができる。例えば、培養は、通気培養または振盪培養で行うことができる。酸素濃度は、例えば、飽和酸素濃度の5〜50%、好ましくは10%
程度に制御されてよい。培地のpHは、例えば、pH 3〜10、好ましくはpH 4.0〜9.5であっ
てよい。培養中、必要に応じて培地のpHを調整することができる。培地のpHは、アンモニアガス、アンモニア水、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の各種アルカリ性または酸性物質を用いて調整することができる。培養温度は、例えば、20〜45℃、好ましくは25℃〜37℃であってよい。培養期間は、例えば、1時間以上、4時間以上、10時間以上、または15時間以上であってよく、168時間以下、120時間以下、90時間、または72時間以下であってよい。培養期間は、具体的には、例えば、10時間〜120時間
であってよい。培養は、例えば、培地中の炭素源が消費されるまで、あるいは本発明の細菌の活性がなくなるまで、継続してもよい。このような条件下で本発明の細菌を培養することにより、菌体内および/または培地中にL−アミノ酸が蓄積する。
流加培養または連続培養においては、流加は、培養の全期間を通じて継続されてもよく、培養の一部の期間においてのみ継続されてもよい。また、流加培養または連続培養においては、複数回の流加が間欠的に行われてもよい。
複数回の流加が間欠的に行われる場合、1回当たりの流加の継続時間が、複数回の流加の合計時間の、例えば30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下となるように、流加の開始と停止を繰り返してもよい。
また、複数回の流加が間欠的に行われる場合、2回目以降の流加を、その直前の流加停止期において発酵培地中の炭素源が枯渇したときに開始されるように制御することにより、発酵培地中の炭素源濃度を自動的に低レベルに維持することもできる(米国特許5,912,113号明細書)。炭素源の枯渇は、例えば、pHの上昇または溶存酸素濃度の上昇により検
出できる。
連続培養においては、培養液の引き抜きは、培養の全期間を通じて継続されてもよく、培養の一部の期間においてのみ継続されてもよい。また、連続培養においては、複数回の培養液の引き抜きが間欠的に行われてもよい。培養液の引き抜きと流加は、同時に行われてもよく、そうでなくてもよい。例えば、培養液の引き抜きを行った後で流加を行ってもよく、流加を行った後で培養液の引き抜きを行ってもよい。引き抜く培養液量は、流加させる培地量と同量であるのが好ましい。ここで、「同量」とは、例えば、流加させる培地量に対して93〜107%の量であってよい。
培養液を連続的に引き抜く場合には、流加と同時に、または流加の開始後に、引き抜きを開始するのが好ましい。例えば、流加の開始後5時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内に、引き抜きを開始してよい。
培養液を間欠的に引き抜く場合には、予定したL−アミノ酸濃度に到達したときに、培養液を一部引き抜いてL−アミノ酸を回収し、新たに培地を流加して培養を継続するのが好ましい。
また、引き抜かれた培養液から、L−アミノ酸を回収し、菌体を含むろ過残留物を発酵槽中に再循環させることにより、菌体を再利用することもできる(フランス特許2669935
号明細書)。
また、L−グルタミン酸を製造する場合、L−グルタミン酸が析出する条件に調整され
た液体培地を用いて、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら培養を行うことも出来る。L−グルタミン酸が析出する条件としては、例えば、pH5.0〜3.0、好ましくはpH4.9〜3.5、さらに好ましくはpH4.9〜4.0、特に好ましくはpH4.7付近の条件が挙げられる(欧州特許出願公開第1078989号明細書)。尚、培養は、その
全期間において上記pHで行われてもよく、一部の期間のみ上記pHで行われてもよい。「一部の期間」とは、例えば、培養の全期間の50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の期間であってよい。
また、L−リジン等の塩基性アミノ酸を製造する場合、重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンを塩基性アミノ酸の主なカウンタイオンとして利用して塩基性アミノ酸を発酵生産する方法を利用してもよい(特開2002-65287、US2002-0025564A、EP1813677A)。これらの
方法によれば、塩基性アミノ酸のカウンタイオンとして従来利用されていた硫酸イオン及び/又は塩化物イオンの使用量を削減しつつ、塩基性アミノ酸を製造することができる。
L−アミノ酸が生成したことは、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、HPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。
生成したL−アミノ酸の回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法、膜処理法、沈殿法、および晶析法が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。なお、菌体内にL−アミノ酸が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から、イオン交換樹脂法などによってL−アミノ酸を回収することができる。回収されるL−アミノ酸は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。塩としては、例えば、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。例えば、L−リジンは、フリー体のL−リジン、L−リジン硫酸塩、L−リジン塩酸塩、L−リジン炭酸塩、またはそれらの混合物であってもよい。また、例えば、L−グルタミン酸は、フリー体のL−グルタミン酸、L―グルタミン酸ナトリウム(monosodium L-glutamate;MSG)、L−グルタミン酸アンモニウム塩(monoammonium L-glutamate)、またはそれらの混合物であってもよい。例えば、L−グルタミン酸の場合、発酵液中のL−グルタミン酸アンモニウムを酸を加えて晶析させ、結晶に等モルの水酸化ナトリウムを添加することでL−グルタミン酸ナトリウム(MSG)が得られる。なお、晶析前後に活性炭を加えて脱色してもよい(グルタミン酸ナトリウムの工業晶析 日本海水学会誌 56巻 5号 川喜田哲哉参照)。
また、L−アミノ酸が培地中に析出する場合は、遠心分離又は濾過等により回収することができる。また、培地中に析出したL−アミノ酸は、培地中に溶解しているL−アミノ酸を晶析した後に、併せて単離してもよい。
尚、回収されるL−アミノ酸は、L−アミノ酸以外に、例えば、細菌菌体、培地成分、水分、及び細菌の代謝副産物等の成分を含んでいてもよい。回収されたL−アミノ酸の純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<実施例1>緑藻AJ7846株(FERM BP-22252)の色素低減変異株の単離
緑藻AJ7846株(FERM BP-22252)を0.2×Gamborg's B5平板培地上に植菌し、植物インキュベータCLE-303(トミー精工)内で培養した。尚、培養条件としては、ポータブルガス
混合装置PMG-1(コフロック)を使用し、空気及びCO2の混合ガスを植物インキュベータ内に通気することで、インキュベータ内部のCO2濃度が3%程度になるよう調整した。温度は30℃に設定し、白色蛍光灯を光源として光量60 μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間で繰り返す日照条件において、7日間静置培養した。本条件で培養したAJ7846株は平板培
地表面にコロニーを形成し、コロニーには、直径10 μm程度の球形の単細胞形状を呈した細胞と、2細胞または4細胞からなる長径8〜15 μm程度の舟形の定数群体の細胞形状を呈
した細胞が混在していた。
平板培地上のコロニーを白金耳で10 μl程度かき取ったものを、500 mL容三角フラスコに分注した0.2×Gamborg's B5培地100 mLに懸濁し、CO2濃度を3%に保持した空気-CO2混合ガスで満たされた植物インキュベータCLE-303内で培養した。植物インキュベータ内は、
温度30℃、白色蛍光灯を光源として光量80 μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間で
繰り返す日照条件において、1昼夜60 rpmでの振盪培養を行った。
得られた培養液を、0.2×Gamborg's B5培地を用いて細胞数が約2×106 cells/mLとなるよう希釈した。ついで希釈した培養液25 mLをシャーレに分注し、UVランプTUV15W G15T8 (Philips) を用いて、UV照度80〜90 μW/cm2の紫外線を90秒間照射したのち、0.2×Gamborg's B5培地を用いて再度希釈し、約2000 cellを0.2×Gamborg's B5平板培地に播種した
。平板培地は、アルミ箔で覆って遮光し、CO2濃度を3%に保持した空気-CO2混合ガスで満
たされた植物インキュベータCLE-303を用いて温度30℃で一昼夜培養した後、アルミ箔を
外して温度30℃、光量80 μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間繰り返す日照条件に
おいてさらに7日間培養した。形成されたコロニーの中から、目視で緑色が薄いコロニー
を選び、0.2×Gamborg's B5平板培地にてコロニーを純化し、単離した株をLC1株(AJ7850株, FERM BP-22277)とした。
尚、Gamborg's B5培地の組成は以下の通りである。
<1×Gamborg's B5培地(日本製薬)の組成>
KNO3 2500 mg
MgSO4・7H2O 250 mg
NaH2PO4・H2O 150 mg
CaCl2・2H2O 150 mg
(NH4)2SO4 134 mg
Na2・EDTA 37.3 mg
FeSO4・7H2O 27.8 mg
MnSO4・H2O 10 mg
H3BO3 3 mg
ZnSO4・7H2O 2 mg
KI 0.75 mg
Na2MoO4・2H2O 0.25 mg
CuSO4・5H2O 0.025 mg
CoCl2・6H2O 0.025 mg
蒸留水 1000 mL
<0.2×Gamborg's B5平板培地>
0.2×Gamborg's B5培地に終濃度1.5 %になるようアガロースを添加し、オートクレーブ滅菌(120℃, 15分)した後に、シャーレ一枚あたりに30 mLずつ分注し、0.2×Gamborg'sB5培地の平板培地を作製した。作製した平板培地は使用まで4℃で保管した。
<実施例2>LC1株の培養評価
(1)LC1株の培養
LC1株を0.2×Gamborg's B5平板培地で培養した。平板培地上のコロニーを白金耳でかき取ったものを、50 mL容三角フラスコに入れた0.2×Gamborg's B5培地 10 mLに植種し、CO2濃度を3%に保持した空気-CO2混合ガスで満たされた植物インキュベータCLE-303を用いて温度30℃、光量80 μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間繰り返す日照条件において7日間培養を行った。得られた培養液2 mLを、500 mL容三角フラスコに入れた新鮮な0.2×Gamborg's B5培地100 mLに植種し、同一の培養条件でさらに7日間培養を行った。得られた培養液を、2 L容ジャーファーメンターに張り込んだ0.2×Gamborg's B5培地1.5 Lに植種
直後の波長750 nmにおける濁度が0.25となるよう植種した後、白色環形蛍光灯4本の内周
部に設置して照明し、光量550 μm/m2s、温度30℃、CO2濃度3%のCO2と空気の混合ガスを0.3 vvm通気し、60 rpmで攪拌を行いながら15日間培養した。また、対照として、AJ7846株を同様に培養した。
(2)藻体乾燥重量の測定
1.5 mL容チューブに培養液1 mLを分注し、遠心分離(12,000 rpm、5分)して上清を除
去した後、50℃で2日間乾燥し、藻体乾燥重量(DCW)を測定した。
(3)藻体の中温処理
培養液1 mLを1.5 mL容チューブに分注し、凍結処理(-80℃、30分)後、50℃で20時間
インキュベートした。インキュベート後の培養液を遠心分離(12,000 rpm、5分)し、得
られた藻体を中温処理藻体とした。一方、培養液1 mLを1.5 mL容チューブに分注し、遠心分離(12,000 rpm、5分)し、得られた藻体を中温処理未処理藻体とした。
(4)脂肪酸量測定
中温処理藻体にメタノール500 μlとクロロホルム250 μlを加え懸濁した後、実験室用ミキサー(ボルテックス)で10分撹拌した。次にクロロホルム250 μlと1% NaCl水溶液250 μlを加え再度10分撹拌した。得られた撹拌物を遠心分離(12,000 rpm、5分)すると下層(クロロホルム層)、中層(抽出残渣層)、上層(水及びメタノール層)に分離した。この下層全量を回収し、遠心濃縮器(トミー精工)を用いて乾固するまで溶媒を除去した。得られた乾固物を2-プロパノールを用いて適切な濃度となるまで溶解および希釈し、脂肪酸比色定量キット(和光純薬, LabAssayTM NEFA)を用いて脂肪酸量を測定した。測定
においてはキットの添付プロトコルに従い96穴マイクロプレートと吸光プレートリーダーを用いて吸光度を測定して定量した。尚、中温処理未処理藻体中に含まれる脂肪酸量を同様に測定したところ、LC1株およびAJ7846株のいずれについても脂肪酸は検出されなかっ
た。
(5)クロロフィル量測定
1.5 mL容チューブに培養液0.1 mLを分注し、-80℃で凍結した。次にメタノール0.9 mL
を培養液に添加し、ヒートブロックを用いて95℃、1時間加熱を行った。得られた加熱物
を遠心分離(12,000 rpm、5分)して上清(抽出液)を回収し、分光光度計を用いて300〜850 nmの範囲の吸光度を測定した。吸光度測定におけるブランクとしては、90%(v/v)メタノール水溶液を用いた。抽出液中のクロロフィル濃度(クロロフィルa濃度およびクロロ
フィルb濃度の総和)は以下の式に従い計算した。
クロロフィル濃度 = (4.0 x 665 nm吸光度) + (25.5 x 650 nm吸光度)
抽出液中のクロロフィル濃度から培養液中のクロロフィル濃度を算出し、さらに培養液中のDCWで除することで、クロロフィル含有率(藻体の単位乾燥重量当たりに含まれるク
ロロフィルの重量)を算出した。
結果を表1に示す。LC1株のクロロフィル含有率はAJ7846株の73.9%まで低下しており、
LC1株が色素低減変異株であることが確認された。また、LC1株は、DCWがAJ7846株の120%
、中温処理後の脂肪酸量がAJ7846株の170.8%まで増大しており、LC1株では光合成による
生育や脂肪酸生産量が増大していることが確認された。
Figure 2016208852
<実施例3>LC1株のクロロフィルa/クロロフィルb比測定
(1)LC1株の培養
LC1株を0.2×Gamborg's B5平板培地で培養した。平板培地上のコロニーを白金耳でかき取ったものを、6ウェルプレートに分注した0.2×Gamborg's B5培地 5 mLに植種し、CO2濃度を3%に保持した空気-CO2混合ガスで満たされた植物インキュベータCLE-303を用い、温
度30℃、光量80 μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間繰り返す日照条件において7日間培養を行った。得られた培養液を、50 mL容三角フラスコに入れた新鮮な0.2×Gamborg's B5培地10 mLに植種直後の波長750 nmにおける濁度が0.25となるよう植種した後、60μE/m2sを12時間、光量0 μE/m2sを12時間繰り返す日照条件にてさらに14日間培養を行った
。また、対照として、AJ7846株を同様に培養した。
(2)クロロフィルa/クロロフィルb比測定
1.5 mL容チューブに培養液0.1 mLを分注し、-80℃で凍結した。次にメタノール0.9 mL
を培養液に添加し、ヒートブロックを用いて95℃、1時間加熱を行った。得られた加熱物
を遠心分離(12,000 rpm、5分)して上清(抽出液)を回収し、分光光度計を用いて300〜850 nmの範囲の吸光度を測定した。吸光度測定におけるブランクとしては、90%(v/v)メタノール水溶液を用いた。抽出液中のクロロフィルaおよびクロロフィルbの濃度を以下の式に従い計算し、それらの濃度からクロロフィルa/クロロフィルb比を算出した。
クロロフィル a = (16.5 x A665) - (8.3 x A650)
クロロフィル b = (33.8 x A650) - (12.5 x A665)
結果を表2に示す。LC1株はクロロフィルa/クロロフィルb比がAJ7846株に対し増大していた。すなわち、LC1株においては、集光アンテナタンパク質が減少している(クロロフ
ィルアンテナサイズが縮小している)ことが示唆された。
Figure 2016208852

Claims (21)

  1. 下記(A)〜(C)のいずれかの性質を有するように改変され、且つ、藻体を中温処理に供した際に脂肪酸を生成する、緑藻の改変株:
    (A)クロロフィル含有率が非改変株と比較して低下している;
    (B)クロロフィルa/b比が非改変株と比較して増大している;
    (C)前記(A)と(B)の組み合わせ。
  2. クロロフィル含有率が非改変株の30〜95%に低下している、請求項1に記載の改変株。
  3. クロロフィルa/b比が非改変株の103%以上に増大している、請求項1または2に記
    載の改変株。
  4. デスモデスムス(Desmodesmus)属に属する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改
    変株。
  5. AJ7846株(FERM BP-22252)から誘導される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改
    変株。
  6. 前記非改変株がAJ7846株(FERM BP-22252)である、請求項1〜5のいずれか1項に記
    載の改変株。
  7. LC1株(FERM BP-22277)およびその誘導株からなる群より選択される、緑藻の改変株。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の改変株を培地で培養すること、
    前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、および
    前記処理の処理物から脂肪酸を回収すること、
    を含む、脂肪酸を製造する方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の改変株を培地で培養すること、
    前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、
    前記中温処理の処理物をアルコールの存在下で中低温処理に供すること、および
    前記中低温処理の処理物から脂肪酸エステルを回収すること、
    を含む、脂肪酸エステルを製造する方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の改変株を培地で培養すること、
    前記培養により得られた藻体を中温処理および/または有機溶媒処理に供すること、および
    前記処理の処理物から糖グリセロールを回収すること、
    を含む、糖グリセロールを製造する方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の改変株を培地で培養すること、
    前記培養により得られた藻体を中温処理に供すること、
    L−アミノ酸生産能を有する細菌を、前記処理の処理物を含有する培地で培養して、L−アミノ酸を該培地中又は該細菌の菌体内に生成蓄積すること、および
    該培地又は菌体よりL−アミノ酸を採取すること、
    を含む、L−アミノ酸を製造する方法。
  12. 前記処理物が、脂肪酸である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記細菌が、脂肪酸資化能が高まるように改変されている、請求項11または12に記載の方法。
  14. 前記細菌が、腸内細菌科に属する細菌またはコリネ型細菌である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、またはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である、請求項14に記載の方法。
  16. 前記有機溶媒が、メタノールである、請求項10に記載の方法。
  17. 前記中低温処理が、5℃〜60℃であって、且つ、前記中温処理より低い温度で行われる、請求項9に記載の方法。
  18. 前記中温処理が、35℃〜70℃で行われる、請求項8〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記中温処理が、pH3.0〜11.0で行われる、請求項8〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記中温処理の後に、当該中温処理の処理物をアルカリ処理に供することを含み、当該アルカリ処理の処理物から脂肪酸が回収される、請求項8、18、または19に記載の方法。
  21. 前記中温処理の前に、酸またはアルカリにより藻体を加水分解することを含む、請求項8〜20のいずれか1項に記載の方法。
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