JP6053336B2 - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法に用いられるトナーに関する。詳しくは、本発明は、静電潜像担持体上にトナー画像を形成後、転写材上に転写させてトナー画像を形成し、熱圧力下にて定着して定着画像を得る、複写機、プリンター、ファックスに用いられるトナーに関する。
近年、複写機やプリンターの世界的な需要が高まるにつれて、さまざまな環境下での使用が可能な複写機、プリンターが望まれている。
ヘビーユーザーは、多数枚の複写またはプリントによっても画質低下のない高耐久性を要求している。一方で、スモールオフィスや家庭では、使用環境、特に温度、湿度の影響を受けずに安定して高画質の画像が得られることが必要とされている。
そのため、トナーには、高耐久性はもちろんのこと、湿度に依存しない帯電能を有することが求められている。
有機ポリシロキサンは、界面張力が低い材料として知られている。従って、有機ポリシロキサン構造をトナーの表面部に導入することで、湿度に依存しない帯電能を有することが期待され、これまでにもさまざまな検討が行われている。
一方で、有機ポリシロキサンは、一般にガラス転移点(Tg)が室温よりも低いため、トナーに大量に存在するとトナーが軟化し、耐久性が悪化しやすくなる。また溶融したトナーと紙との密着性が低下し、定着画像からトナーが剥離しやすくなる。そのため、有機ポリシロキサンの添加量、存在状態を制御することが重要である。
特許文献1では、有機ポリシロキサン化合物を結着樹脂として含有するコアシェル構造のトナーが提案されている。この技術においては、熱定着ロールとの剥離性に優れ、長期間安定した画質が得られるとしている。しかしながら、上記技術においては、有機ポリシロキサン化合物がシェルとしてだけでなく、コア材としても使用されているため、結果としてトナー中の有機ポリシロキサン構造の含有量が多くなりすぎ、定着画像上からトナーが剥離しやすいといった欠点があった。
また、特許文献2には、樹脂粒子作製において、非水系媒体である液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体とし、有機ポリシロキサン構造を有する化合物を分散安定剤として利用することで、樹脂粒子を得る例が提案されている。しかし、この技術は、有機ポリシロキサン構造を有する化合物を溶液として使用しているため、得られた樹脂粒子の表面に残存させられる構成ではなく、環境安定性の効果が得られないことがわかった。
更に、特許文献3には、上記分散媒体中での樹脂粒子作製において、有機ポリシロキサン構造を含有する化合物をトナーのシェル材として使用した例が記載されている。しかし、この技術においては、有機ポリシロキサン化合物における有機ポリシロキサン構造の割合が多いため、トナー表面が軟化しやすくなり、耐久性が低下しやすいことがわかった。
また、有機ポリシロキサン化合物をトナー粒子に外添する方法も考えられるが、その場合、画像を出力し続けることでトナー粒子からの遊離やトナー粒子への埋め込みが起こるため、長期にわたって安定した画像を得ることは難しい。
上述したとおり、有機ポリシロキサンを含有するトナーにおいて、環境安定性と耐久性、定着画像の安定性の更なる両立には未だ課題を有していた。
特開2006−091283号公報 特開2010−132851号公報 特開2010−168522号公報
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、環境安定性と、耐久性、及び定着画像の安定性とを両立したトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂、着色剤、およびワックスを含有するコアに、樹脂Aを含有するシェル相を形成したコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、前記樹脂Aが有機ポリシロキサン構造を分子構造に含む樹脂であり、前記トナー粒子のX線光電子分光分析(ESCA)により測定される前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量が、構成原子の総量に対して1.3atomic%以上、3.3atomic%以下であり、前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量が0.04質量%以上、1.30質量%以下であり、
前記樹脂Aが、下記式(3)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーと、その他のビニル系モノマーとの共重合体であることを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、環境安定性と、耐久性、及び定着画像の安定性とを両立したトナーを提供することができる。
本発明のトナーの、製造装置の一例を示す図 本発明のトナーの、帯電量測定装置の一例を示す図
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、およびワックスを含有するコアに、樹脂Aを含有するシェル相を形成したコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、前記樹脂Aが有機ポリシロキサン構造を分子構造に含む樹脂であり、前記トナー粒子のX線光電子分光分析(ESCA)により測定される前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量が、構成元素の総量に対して1.3atomic%以上、3.3atomic%以下であり、前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量が0.04質量%以上、1.30質量%以下であることを特徴とする。
本発明のトナー粒子は、結着樹脂、着色剤、およびワックスを含有するコアに、樹脂Aを含有するシェル相を形成したコアシェル構造をとる。
更に、前記樹脂Aは、有機ポリシロキサン構造を分子構造に含有する。有機ポリシロキサン構造とは、SiO結合の繰り返し単位を持ち、更に前記Siにアルキル基が二つ結合した構造である。
前記有機ポリシロキサン構造は、低界面張力であり、優れた環境安定性を有する。従って、前記有機ポリシロキサン構造がトナー粒子表面に存在することで、トナーの環境安定性、特に高温高湿環境下および低温低湿環境下における帯電量変化が抑制できる。
一方、前記有機ポリシロキサンは一般にガラス転移温度(Tg)が室温よりも低く、室温では粘性のある液状である。従って、前記樹脂A中の有機ポリシロキサン構造が多くなるにつれてトナー粒子表面が軟化してしまう。これにより、耐久性が悪化しやすくなる。
更に、前記有機ポリシロキサンは上述した界面張力の低さから、トナー粒子中に多く存在すると、溶融したトナーと紙との密着性が低下し、定着画像からトナーが剥離しやすくなる。従って、環境安定性と、耐久性、及び定着画像の安定性とを両立するためには、トナー粒子内部には前記有機ポリシロキサン構造は少なく、トナー粒子表面にてある程度存在していることが重要となる。
本発明で用いたX線光電子分光分析(ESCA)では、試料の表面(深さ約10nmま
での領域)に存在する元素が検出される。また、ケミカルシフトによって、元素の結合状態も分離可能であり、前記有機ポリシロキサン構造に由来するSiO結合は、101eV以上103eV以下にピークが存在する。
一方で、本発明で用いた蛍光X線分析(XRF)においては、試料の内部に渡って存在する元素が検出される。
従って、トナー粒子における、ESCAによる表面Si量と、XRFによるSi量を制御することで、環境安定性と、耐久性、及び定着画像の安定性との両立が可能となる。
前記ESCAによる有機ポリシロキサン構造に由来するSi量が構成元素の総量に対し1.3atomic%よりも小さいと、トナー粒子表面に存在する前記有機ポリシロキサン構造が少ないため、環境安定性の効果を得られない。また、3.3atomic%よりも大きいと、トナー粒子表面の前記有機ポリシロキサン構造が多くなりすぎ、トナー粒子表面が軟化するため、耐久性に劣る。
また、XRFによるSi量が、0.04質量%よりも小さい場合、シェル相における前記有機ポリシロキサン構造が少ないため、環境安定性の効果を得られない。一方、1.30質量%よりも大きいと、トナー粒子の表面には前記有機ポリシロキサン構造が存在するために、環境安定性は向上するが、内部にも前記有機ポリシロキサン構造が多く存在することになる。そのため、溶融したトナーと紙との密着性が悪化し、定着画像からのトナー剥離が起こる。
前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量は、0.08質量%以上、0.60質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明において、XRFによるSi量はすべて前記有機ポリシロキサン構造に由来するものとする。前記有機ポリシロキサン構造以外のSi成分がトナー粒子に含有されている場合は、それらを差し引き、純粋な前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量のみを考慮する。
ここで、前記トナー粒子のX線光電子分光分析(ESCA)により測定される前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量、及び、前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量は、トナー中におけるシェル相を形成する樹脂A中における有機ポリシロキサン構造の量、および樹脂Aの含有量を適宜調整することにより、上記範囲に調整することが可能である。
本発明におけるシェル相を形成する樹脂について述べる。
本発明のトナー粒子は、コアシェル構造をとり、コアの表面にシェル相が形成されている。シェル相は、コアの表面に均一に、かつ緻密に形成されていることが望ましいが、本発明の構成であればこの限りではない。
本発明のトナー粒子におけるシェル相は、前記樹脂Aを含有するが、その他の樹脂Bを含有することも可能である。前記樹脂Bに関しては後述する。
本発明における前記樹脂Aについて述べる。前記樹脂Aは有機ポリシロキサン構造を分子構造に含む樹脂である。前記樹脂Aに、有機ポリシロキサン構造を含有させる方法としては、公知の方法が挙げられる。例えばメタクリレート基、アクリレート基といったビニル基、カルビノール基、カルボキシル基、アミノ基、及びエポキシ基などの反応性基と有機ポリシロキサン構造を有するモノマーと、当該反応性基と反応する樹脂、あるいは樹脂を構成するモノマーとを反応させることで、前記樹脂Aに前記有機ポリシロキサン構造を含有させることが可能である。
一態様として、下記式(1)で示す部分構造及び下記式(2)で示す部分構造を有するビニル系モノマーを使用することが好適に例示できる。
他の一態様として、下記式(3)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーを使用することが好適に例示できる。
ビニル系モノマーの場合は、前記樹脂Aを構成するその他のビニル系モノマーと共重合させることで、前記樹脂Aに前記有機ポリシロキサン構造を含有させることができる。




式(3)中、R、Rはそれぞれ独立してアルキル基を表し、当該アルキル基の炭素数はそれぞれ1以上3以下であることが好ましく、Rの炭素数は1であることが更に好ましい。Rはアルキレン基であることが好ましく、炭素数は1以上3以下であることが更に好ましい。Rは水素またはメチル基を表す。また、nは重合度であり、当該重合度nが2以上、200以下の整数であることが好ましい。
前記有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーと共重合するその他のビニル系モノマーは、通常の樹脂材料のモノマーを用いることができる。以下に例示するが、この限りでない。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽
和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
更に、結晶構造をとりうるポリエステル部位を有するビニル系モノマーも好ましく用いられる。結晶構造をとりうるポリエステル部位とは、それ自体が多数集合すると、規則的に配列し結晶性を発現する部位であり、すなわち結晶性ポリエステル成分を意味する。
結晶性ポリエステル成分としては、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび多価カルボン酸を原料として用いるのが好ましい。さらに、前記脂肪族ジオールは直鎖型であることが望ましい。
本発明にて好適に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール。これらのうち、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールがより好ま
しい。
前記多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が望ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらのうち、セバシン酸、アジピン酸、1,10−デカンジカルボン酸あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
前記結晶性ポリエステル成分の製造方法としては、特に制限はなく、前記酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができる。例えば、直接重縮合、エステル交換法を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
前記結晶性ポリエステル成分の製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
前記結晶性ポリエステル成分の製造時に使用可能な触媒としては、例えば以下を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドのチタン触媒。ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドのスズ触媒。
前記結晶性ポリエステル成分の融点としては、50℃以上120℃以下が好ましく、定着温度での溶融を考慮すると、50℃以上90℃以下がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル成分を有するビニル系モノマーの製造方法としては、前記結晶性ポリエステル成分とヒドロキシル基含有ビニル系モノマーを、結合剤であるジイソシアネートとウレタン化反応させることにより、ポリエステル鎖にラジカル重合可能な不飽和基を導入しウレタン結合を有するモノマーを製造する方法が挙げられる。このため、前記結晶性ポリエステル成分はアルコール末端であることが好ましい。従って、前記結晶性ポリエステル成分の調製では酸成分とアルコール成分のモル比(アルコール成分/カルボン酸成分)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとして、ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテルが挙げられる。これらのうち、好ましいものはヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートである。
前記ジイソシネートとしては以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、炭素数8以上1
5以下の芳香族炭化水素ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)、並びにこれらの2種以上の混合物。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
前記芳香族炭化水素ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものは6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、炭素数8以上15以下の芳香族炭化水素ジイソシアネートであり、特に好ましいものはHDI及びIPDI、XDIである。
前記したジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
本発明において、前記樹脂Aは、前記式(1)で示す部分構造及び前記式(2)で示す部分構造を有するビニル系モノマー5.0質量%以上、20.0質量%以下と、その他のビニル系モノマー80.0質量%以上、95.0質量%以下とを共重合することにより得られるビニル系樹脂であることが好ましい。
他の一態様として、前記樹脂Aは、前記式(3)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマー5.0質量%以上、20.0質量%以下と、その他のビニル系モノマー80.0質量%以上、95.0質量%以下とを共重合することにより得られるビニル系樹脂であることが好ましい。
樹脂Aの組成を前記とすることで、前記樹脂A中の前記有機ポリシロキサン構造が適正な量になりやすく、トナーの環境安定性と耐久性、定着画像安定性が更に向上する。前記ビニル系モノマーが5.0質量%よりも少ないと、トナーの環境安定性が低下しやすい。一方、20.0質量%よりも大きいと、トナーの耐久性が低下しやすくなる。
前記式(1)又は前記式(3)における重合度nの値は、2以上133以下の整数であることが好ましく、2以上18以下の整数であることがより好ましい。重合度nが133よりも大きいと、前記樹脂Aが軟化しやすくなり、トナーの耐久性が悪化することがある。
また、樹脂Aの組成を前記とすることで、前記トナー粒子のX線光電子分光分析(ESCA)により測定される前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量を本発明が規定する数値範囲に制御することが容易になる。
本発明においてシェル相に含有される前記樹脂Bについて述べる。前記樹脂Bは、結晶性樹脂、及び非晶性樹脂のいずれも使用が可能である。また、これらを併用してもよい。前記結晶性樹脂としては、前記結晶性ポリエステルの他、結晶性アルキル樹脂も使用可能である。前記非晶性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂やポリスチレンといったビニル系樹脂が挙げられるが、その限りではない。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシの変性を行っても良い。
前記結晶性アルキル樹脂とは、結晶性を発現させるための炭素数12以上30以下のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートを重合させたビニル樹脂である。また、結晶性を損なわない程度に、上記ビニル系モノマーを共重合させた場合も、前記結晶性アルキル樹脂とみなせる。
前記非晶性樹脂としてのポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート基を含有するジイソシアネート成分との反応物であり、ジオール成分、ジイソシアネート成分の調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。前記ジイソシアネート成分は上記ジイソシアネートが好適に用いられる。前記ジオール成分としては、例えば以下のものが挙げられる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール)、アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール)、ビスフェノール類(ビスフェノールA)、前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物。前記アルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
前記非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂に用いるモノマーとしては、例えば、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような2価または3価以上のカルボン酸と、2価または3価以上のアルコールが挙げられる。これらのモノマー成分の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。2価のカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸の脂肪族不飽和ジカルボン酸。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール。3価以上のアルコールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整の目的で、酢酸、安息香酸の如き1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールの如き1価のアルコールも使用することができる。
前記非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分を用いて従来公知の方法により合成することができる。
本発明の前記樹脂Bにおける前記非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上130℃以下であることが好ましい。より好ましくは、50℃以上100℃以下である。
本発明におけるシェル相を形成する樹脂中の前記樹脂Aの割合は、特に制限されないが、50.0質量%以上であることが好ましく、前記樹脂A以外の樹脂をシェル相として使用しないことが特に好ましい。前記樹脂Aが50.0質量%よりも少ないと、環境安定性の効果が発現しにくくなることがある。
本発明のトナー粒子は、前記樹脂Aを3.0質量%以上、15.0質量%以下含有することが好ましい。トナー粒子中の樹脂Aの含有量を前記とすることで、トナーの環境安定性の向上に加え、定着画像の安定性の向上も可能になる。前記樹脂Aの含有量が3.0質量%よりも少ないと、表面に存在する前記樹脂Aの量が十分でない場合があり、環境安定性が低下しやすい。また、15.0質量%よりも多いと、シェル相が厚くなり、溶融したトナーと紙との密着性が低下する傾向にあり、定着画像からのトナー剥離が起こりやすくなる。
また、トナー粒子中の前記樹脂Aの含有量を前記範囲とすることで、前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量を本発明が規定する数値範囲に制御することが容易になる。
本発明におけるシェル相は、コア表面を均一に被覆する観点から、トナー粒子に対して3.0質量%以上、30.0質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは3.0質量%以上20.0質量%以下である。
本発明におけるシェル相を形成する前記樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、20,000以上80,000以下であることが望ましい。この範囲であることで、シェル相が適度な硬度を持ち、耐久性が向上する。20,000よりも小さいと、耐久性が低下しやすくなり、80,000よりも大きいと、定着性が低下する場合がある。
本発明における結着樹脂について述べる。本発明における結着樹脂としては、結晶性樹脂、及び非晶性樹脂のいずれも使用が可能である。また、これらを混合して用いてもよい。中でも、結晶性樹脂を含有することが好ましい。上述したように、結晶性樹脂とは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂を意味している。従って、融点付近まではほとんど軟化せず、融点付近より融解が生じ急激に軟化する。このような樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、明瞭な融点ピークを示す。前記結晶性樹脂は、溶融後の粘性が低くなることで、紙の繊維の間に入り込みやすい。そのため、前記有機ポリシロキサン構造が存在することによって、定着画像からトナーが剥離しやすくなってしまう欠点を補完しやすくなる。従って、前記有機ポリシロキサン構造が有する環境安定性と定着画像の安定性を更に両立しやすくなる。とりわけ、結晶性樹脂は結晶性ポリエステルであることが好ましい。
本発明における結着樹脂に使用可能な結晶性ポリエステルについて述べる。
本発明における前記結晶性ポリエステルに用いられるモノマーは、上述した前記樹脂Aに使用可能な前記結晶性ポリエステル成分を構成するモノマーが好ましく用いられる。
また、脂肪族ジオールとして、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール。更に、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸が好ましい。
本発明に用いられる結着樹脂に含有される結晶性樹脂の融点は、50℃以上、90℃以下であることが好ましい。この範囲であると、定着時に低粘度になりやすく、紙の繊維の間に入り込みやすくなる。当該融点が50℃よりも小さいと、保存性が低下することがあり、90℃よりも大きいと、定着時の粘度が低下しにくくなり、定着画像の安定性が低下しやすくなる。
また、結着樹脂、およびシェル相を形成する樹脂がともに結晶性樹脂を含有する場合、結着樹脂の融点は、シェル相の融点と比べ、同じかあるいは低く設定することが望ましい。そうすることで、定着時に低粘度になった結着樹脂がより紙の繊維の間に入り込みやすくなり、定着画像の安定性がより向上しやすくなる。
次に、結着樹脂に使用可能な前記非晶性樹脂について述べる。非晶性樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂やポリスチレンといったビニル系樹脂が挙げられるが、その限りではない。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシの変性を行っても良い。なかでも、弾性維持の観点から、前記ポリエステル樹脂、前記ポリウレタン樹脂が好適に使用される。
前記非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂は、上述したシェル相としての前記樹脂Bに使用可能な樹脂が好ましく用いられる。前記非晶性樹脂としてのポリウレタン樹脂は、上述したシェル相としての前記樹脂Bに使用可能な樹脂が好ましく用いられる。
当該結着樹脂における非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上、130℃以下であることが好ましく、より好ましくは、50℃以上100℃以下である。この範囲であることで、定着領域における弾性が維持されやすい。
本発明において、結晶性樹脂を結着樹脂として使用する場合、結着樹脂中の前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂の割合は、任意に調整可能であるが、前記結晶性樹脂が30質量%以上、85質量%以下であることが好ましい。前記結晶性樹脂が30質量%よりも少ないと、トナー溶融時の粘性が低くなりにくく、その結果定着画像からのトナー剥離抑制効果が得られにくい。また、85質量%よりも多いと、トナー溶融後の弾性が維持されにくくなり、定着領域が狭くなりやすい。
更に、本発明においては、結晶構造をとりうる部位、すなわち結晶性樹脂成分と、結晶構造をとりえない部位、すなわち非晶性樹脂成分とを化学的に結合したブロックポリマーを使用することも好ましい形態のひとつである。
前記ブロックポリマーは、前記結晶性樹脂成分(A)と前記非晶性樹脂成分(B)とのAB型ジブロックポリマー、ABA型トリブロックポリマー、BAB型トリブロックポリマー、ABAB・・・・型マルチブロックポリマー、どの形態も使用可能である。
本発明において、前記ブロックポリマーを調製する方法としては、前記結晶性樹脂成分からなる結晶部を形成する成分と前記非晶性樹脂成分からなる非晶部を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)、結晶部を形成する成分、および非晶部を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)を用いることができる。
本発明における前記ブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択して前記ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分ともにポリエステル樹脂の場合は、各成分を別々に調製した後、結合剤を用いて結合することにより調製することが出来る。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合、反応がスムーズに進行する。反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することが出来る。
一方で、結晶性樹脂成分が前記結晶性ポリエステルであり、非晶性樹脂成分が前記ポリウレタン樹脂の場合では、各成分を別々に調製した後、前記結晶性ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つ前記結晶性ポリエステルおよび前記ポリウレタン樹脂を構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することによっても合成が可能である。前記ジオールおよびジイソシアネート濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタン樹脂となり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタン樹脂のイソシアネート末端と結晶性ポリエステルのアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、前記ブロックポリマーとすることができる。
本発明のトナーに用いられるトナー粒子は、ワックスを含有する。本発明に用いられるワックスとしては、例えば、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスである。
本発明においてエステルワックスとは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。合成エステルワックスとしては、例えば、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式C2n+1COOHで表され、n=5以上28以下のものが好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールはC2n+1OHで表され、n=5以上28以下のものが好ましく用いられる。
また、天然エステルワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスおよびその誘導体が挙げられる。
上記のうち、より好ましいワックスとしては、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールとによる合成エステルワックスもしくは、上記エステルを主成分とする天然ワックスである。
本発明において、トナー中におけるワックスの含有量は、好ましくは2質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上15質量%以下である。2質量%より少ないと、トナーの離型性を保ちにくくなり、定着体が低温になった場合に、転写紙の巻きつきが起こりやすくなる。20質量%より多い場合は、トナー表面にワックスが露出し易くなり、耐熱保存性の低下を招く恐れがある。更に、カブリや融着といった弊害を生じやすくなる。
本発明においてワックスは、示差走査熱量測定(DSC)において、60℃以上、120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上、90℃以下である。
本発明のトナーは、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体が挙げられ、そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来る。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくはトナーに対し、1質量%以上20質量%以下添加して用いられる。着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量はトナーに対し、40質量%以上、150質量%以下であることが好ましい。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一
定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
前記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。前記荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
本発明のトナー粒子の製造方法は、コアシェル構造を形成する種々の方法が挙げられる。前記シェル相の形成は、前記コアの形成工程と同時であっても良いし、前記コアを形成した後に行っても良い。より簡便という点から、コアの製造工程とシェル相の形成工程を同時に行うことが好ましい。
シェル相を形成する方法は、何ら制限を受けるものではなく、例えば前記コアの形成後に前記シェル相を設ける場合には、前記コア及び前記シェル相を形成する樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、その後前記コア表面に樹脂微粒子を凝集、吸着させる方法がある。また、前記コアの形成工程と同時に前記シェル相を形成する場合には、シェル相を形成する樹脂微粒子を分散させた分散媒体に、コアを形成する結着樹脂を有機媒体に溶解させて得た樹脂組成物を分散させたのちに、前記有機媒体を除去してトナー粒子を得る溶解懸濁法が好ましく用いられる。
本発明のトナー粒子は、非水系の媒体中で製造されたものであることが特に好ましい。非水系であることで、前記樹脂Aの有機ポリシロキサン構造がより表面に配向しやすくなり、より環境安定性が向上しやすくなる。従って、本発明のトナー粒子の製造においては、分散媒体として高圧状態の二酸化炭素を用いる溶解懸濁法が特に好適である。
すなわち、本発明においては、トナー粒子が、結着樹脂、着色剤、およびワックスを、有機溶媒を含有する媒体中に溶解または分散させた樹脂組成物を、樹脂Aを含有する樹脂微粒子を含有する、高圧状態の二酸化炭素を有する分散媒体に分散させ、得られた分散体から有機溶媒を除去することによって形成したトナー粒子であることが好ましい。本発明において好適に用いられる高圧状態の二酸化炭素とは、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素である。ここで、液体状態の二酸化炭素とは、二酸化炭素の相図上における三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、および固液境界線に囲まれた部分の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。また、超臨界状態の二酸化炭素とは、上記二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。尚、高圧状態の二酸化炭素が分散媒体の主成分(50質量%以上)であることが好ましい。
本発明において、分散媒体中には他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。この場合、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成することが好ましい。
以下に、本発明のトナー粒子を得る上で好適な、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素を分散媒体として用いるトナー粒子の製造法を例示して説明する。
まず、結着樹脂を溶解することのできる有機溶媒中に、着色剤、ワックスおよび必要に応じて他の添加物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させる。次に、こうして得られた溶解あるいは分散液(以下、単に樹脂組成物という)を、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素中に分散させて油滴を形成する。
このとき、分散媒体としての超臨界状態または液体状態の二酸化炭素中には、分散剤を分散させておく必要がある。分散剤としては、シェル相を形成するための樹脂Aを含有する樹脂微粒子があげられるが、他成分を分散剤として混合してもよい。例えば、無機微粒子分散剤、有機微粒子分散剤、それらの混合物のいずれでもよく、目的に応じて2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子分散剤としては、例えばアルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの無機粒子が挙げられる。
前記有機微粒子分散剤としては、樹脂Aの他、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロースおよびこれらの混合物が挙げられる。これらは、架橋構造が形成されていてもよい。
前記分散剤は、そのまま用いてもよいが、造粒時における前記油滴表面への吸着性を向上させるため、各種処理によって表面改質したものを用いてもよい。具体的には、シラン系、チタネート系、アルミネート系のカップリング剤による表面処理や、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理が挙げられる。油滴の表面に吸着した分散剤としての有機微粒子は、トナー粒子形成後もそのまま残留するため、分散剤として用いた樹脂Aおよび他の樹脂は、トナー粒子のシェル相を形成する。
本発明において、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子の粒径は、個数平均粒子径で30nm以上、300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上、200nm以下である。樹脂微粒子の粒径が小さ過ぎる場合、造粒時の油滴の安定性が低下する傾向にある。大き過ぎる場合は、油滴の粒径を所望の大きさに制御することが困難になる。
また、前記樹脂微粒子の配合量は、油滴の形成に使用する前記樹脂溶解液中の固形分量に対して1.0質量部以上、35.0質量部以下であることが好ましく、油滴の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
本発明において、前記分散剤を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、前記分散剤と液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を仕込んだ容器に、前記分散剤を有機溶媒に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、本発明において、前記樹脂組成物を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、前記分散剤を分散させた状態の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を入れた容器に、前記樹脂組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、前記樹脂組成物を仕込んだ容器に、前記分散剤を分散させた状態の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を導入してもよい。
本発明において、前記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体は、単一相であることが重要である。前記樹脂組成物を液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、油滴中の有機溶媒の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素の相と有機溶媒の相が分離した状態で存在することは、油滴の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。したがって、前記分散媒体の温度や圧力、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素に対する前記樹脂組成物の量は、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、前記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(油滴形成のし易さ)や前記樹脂組成物中の構成成分の前記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、前記樹脂組成物中の結着樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、前記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど前記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した油滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、前記成分が前記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。したがって、本発明のトナー粒子の製造において、前記分散媒体の温度は10℃以上、40℃以下の温度範囲であることが好ましい。
また、前記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1.0MPa以上、20.0MPa以下であることが好ましく、2.0MPa以上、15.0MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
また、本発明における分散媒体中に占める二酸化炭素の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
こうして造粒が完了した後、油滴中に残留している有機溶媒を、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体を介して除去する。具体的には、油滴が分散された前記分散媒体にさらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
前記分散媒体と前記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素の混合は、前記分散媒体に、これよりも高圧の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を加えてもよく、また、前記分散媒体を、これよりも低圧の液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
前記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、前記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、前記液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素の量は、前記分散媒体の体積に対して1倍以上、100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上、50倍以下、最も好ましくは1倍以上、30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、本発明において使用する有機溶媒や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
本発明において、前記トナー粒子には流動性向上剤として、無機微粉体を添加することが好ましい。トナー粒子に添加する無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。該無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNaO、SO 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。また、無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることがより好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これ
らの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
前記無機微体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上、8.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、5.0μm以上、7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナーを用いることは、ハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。
更に、本発明のトナーの重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1は1.25以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以下である。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、数平均分子量(Mn)が8,000以上40,000以下、重量平均分子量(Mw)が15,000以上60,000以下であることが好ましい。この範囲であることで、トナーに適度な粘弾性を付与することが可能である。Mnが8,000、Mwが15,000よりも小さいと、トナーが軟らかくなりすぎ、耐熱保存性が低下する傾向にある。さらに、定着画像からトナーが剥離しやすくなる。Mnが40,000、Mwが60,000よりも大きいと、トナーが硬くなりすぎ、定着性を低下させやすくなる傾向にある。Mnのより好ましい範囲は、10,000以上20,000以下、Mwのより好ましい範囲は、20,000以上50,000以下である。さらに、Mw/Mnは6以下であることが望ましい。Mw/Mnのより好ましい範囲は、3以下である。
本発明のトナーおよびトナー材料の各種物性についての測定方法を以下に記す。
<X線光電子分光分析(ESCA)による有機ポリシロキサン構造に由来するSi量の測定方法>
本発明において、トナー粒子表面に存在する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量は、X線光電子分光分析(ESCA)による表面組成分析を行い算出する。ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック−ファイ社製 Quantum 2000
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al−Kα
X線条件:100μ25W15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
以上の条件より測定を行い、炭素1s軌道のC−C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上103eV以下にピークトップが検出されるケイ素2p軌道のSiO結合のピーク面積から、アルバック−ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量を算出する。なお、Si2p軌道の他ピーク(SiO:103eVより大きく、105eV以下)が検出される場合は、SiO結合のピークに対し波形分離を行うことで、SiO結合のピーク面積を算出する。
<蛍光X線分析装置(XRF)によるSi量の測定方法>
本発明において、トナー粒子のSiの含有量は、蛍光X線分析装置で求める。波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を用いてHe雰囲気下、FP法にてトナー粒子におけるNaからUまでの元素を直接測定する。検出された元素の総質量を100%として、ソフトウエアUniQuant5(ver.5.49)にて総質量に対するSiの含有量(質量%)を求める。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
本発明において、トナー等のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量(Mn、Mw)は、GPCにより、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をTHFに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作製した分子量校正曲線を使用する。
<着色剤粒子、ワックス粒子、シェル用樹脂微粒子の粒子径の測定方法>
樹脂微粒子等の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、個数平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈溶媒としては水を選択した。
<結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点、並びに、結晶性ポリエステルの吸熱量、及び半値幅の測定方法>
結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行った。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:200℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定する。測定は、一度200℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。結晶性ポリエステルおよびブロックポリマーの場合は1度目の昇温過程において、ワックスの場合は2度目の昇温過程において、温度20℃から200℃の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点とする。前記最大吸熱ピークとは、ピークが複数存在する場合には、最も吸熱量の大きいピークをいう。更に、結晶性ポリエステルにおいて、吸熱ピークの吸熱開始温度から吸熱終了温度までの吸熱量をΔH(J/g)とし、前記最大吸熱ピークのピーク高さの半値の温度幅を半値幅(℃)とする。
<非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
本発明におけるTgの測定方法は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を用いて以下の条件にて測定を行った。
・モジュレーションモード
・昇温速度:0.5℃/分
・モジュレーション温度振幅:±1.0℃/分
・測定開始温度:25℃
・測定終了温度:130℃
昇温は1度のみ行い、「Reversing Heat Frow」を縦軸にとることでDSCカーブを得、オンセット値を本発明におけるガラス転移温度(Tg)とした。
<トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10m
gを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)[μm]および個数平均粒径(D1)[μm]を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 136.2質量部
・1,4−ブタンジオール 63.8質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル2および3の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを表1のように変更する以外はすべて同様にして、結晶性ポリエステル2および3を得た。結晶性ポリエステル2および3の物性を表1に示す。
<非晶性樹脂1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
33.0質量部
・テレフタル酸 21.0質量部
・無水トリメリット酸 1.0質量部
・フマル酸 3.0質量部
・ドデセニルコハク酸 12.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、215℃にて5時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂1を合成した。非晶性樹脂1のMnは7,200、Mwが43,000、Tgは63℃であった。
<ブロックポリマーの合成>
・結晶性ポリエステル1 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
攪拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、修飾剤であるサリチル酸 3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマーを得た。ブロックポリマーのMnは14,600、Mwが33,100、融点が58℃であった。
<ブロックポリマー溶液の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0質量部、ブロックポリマー500.0質量部を投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、ブロックポリマー溶液を調製した。
<結晶性ポリエステル溶液の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、THF500.0質量部、結晶性ポリエステル2を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、結晶性ポリエステル溶液を調製した。
<非晶性樹脂溶液の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0質量部、非晶性樹脂1を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、非晶性樹脂溶液を調製した。
<ブロックポリマー分散液の調製>
ブロックポリマー 50.0質量部を酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発することで、ブロックポリマー分散液を調製した。
<非晶性樹脂分散液の調製>
非晶性樹脂1 50.0質量部を酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発することで、非晶性樹脂分散液を調製した。
<ビニル変性ポリエステル単量体の合成>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 59.0質量部
を仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート41.0質量部を滴下し、55℃で4時間反応させて、ビニル変性単量体中間体を得た。
次に撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、
・結晶性ポリエステル3 83.0質量部
・THF 100.0質量部
を仕込み、50℃で溶解させた。その後、前記ビニル変性単量体中間体を10.0質量部滴下し、50℃で4時間反応させ、ビニル変性ポリエステル単量体溶液を得た。溶媒であるTHFを留去することで、ビニル変性ポリエステル単量体を得た。
<シェル用樹脂分散液1の調製>
・ビニル変性有機ポリシロキサン1 15.0質量部
(X−22−2475:n=3、信越化学工業社製)
・ビニル変性ポリエステル単量体 20.0質量部
・スチレン(St) 55.0質量部
・メタクリル酸(MAA) 10.0質量部
・アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル 0.3質量部
・ノルマルヘキサン 80.0質量部
ビーカーに、上記を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製し、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下ろうとに導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン276質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下ろうとを取り付け、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびノルマルヘキサン20.0質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却することで、シェル用樹脂1からなるシェル用樹脂分散液1を得た。シェル用樹脂分散液1の物性を表2に示す。また、ビニル変性有機ポリシロキサン1は、下記式(3)で示す構造である。

<シェル用樹脂分散液2乃至14の調製>
シェル用樹脂分散液1の調製において、ビニル変性有機ポリシロキサン、ビニル変性ポリエステル単量体、およびその他単量体の添加量を表2に示すものに変更し、シェル用樹脂2乃至14からなるシェル用樹脂分散液2乃至14を得た。シェル用樹脂分散液2乃至
14の物性を表2に示す。なお、使用したビニル変性有機ポリシロキサンについては表3に示す。
<シェル用樹脂分散液15の調製>
シェル用樹脂分散液1の調製において、ビニル変性有機ポリシロキサン、およびその他単量体の添加量を表2に示すものに変更し、溶媒を留去、乾燥を行い、シェル用樹脂15を得た。得られたシェル用樹脂15、50.0質量部を、酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることで、シェル用樹脂分散液15を調製した。シェル用樹脂分散液15の物性を表2に示す。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、個数平均粒径が200nm、固形分量が40質量%の着色剤分散液1を得た。
<着色剤分散液2の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 50.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き個数平均粒径が220nm、固形分量が20質量%の着色剤分散液2を得た。
<ワックス分散液1の調製>
・パラフィンワックスHNP10(融点:75℃、日本精蝋社製) 16.0質量部・ニトリル基含有スチレンアクリル樹脂 8.0質量部(スチレン60質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル10質量部を共重合した共重合体、ピーク分子量8500)
・アセトン 76.0質量部
上記を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を70℃に加熱することでパラフィンワックスをアセトンに溶解させた。
ついで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間の分散を行い、個数平均粒径が270nm、固形分量16質量%のワックス分散液1を得た。
<ワックス分散液2の調製>
・パラフィンワックスHNP10(融点:75℃、日本精蝋社製) 30.0質量部・カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部・イオン交換水 270.0質量部
以上を混合し95℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、個数平均粒径が200nm、固形分量が10質量%のワックス分散液2を得た。
<実施例1>
(トナー粒子1の製造)
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、および圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1にシェル用樹脂微粒子分散液1の32.0質量部を仕込み、内部温度を15℃に調整した。次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を耐圧容器T1に導入し、内部圧力が4.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。一方、樹脂溶解液タンクT2にブロックポリマー溶液、ワックス分散液1、着色剤分散液1、アセトンを仕込み、内部温度を15℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を1000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶解液タンクT2の内容物を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は7.0MPaとなった。
尚、T2への材料仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶液 150.0質量部
・ワックス分散液1 30.0質量部
・着色剤分散液1 15.0質量部
・アセトン 35.0質量部
・二酸化炭素 200.0質量部
導入した二酸化炭素の質量は、二酸化炭素の温度(15℃)、および圧力(7MPa)から、二酸化炭素の密度を文献(Journal of Physical and Chemical Reference data、vol.25、P.1509〜1596)に記載の状態式より算出し、これに造粒タンクT1の体積を乗じることにより算出した。
樹脂溶解液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、1000rpmで3分間撹拌して造粒を行った。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を10MPaに設定し、造粒タンクT1の内部圧力を10MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶剤回収タンクT3に排出し、有機溶媒と二酸化炭素を分離した。
造粒タンクT1内への二酸化炭素の導入は、最初に造粒タンクT1に導入した二酸化炭素質量の15倍量に到達した時点で停止した。この時点で、有機溶媒を含む二酸化炭素を、有機溶媒を含まない二酸化炭素で置換する操作は完了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
(トナー1の調製工程)
上記トナー粒子1の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明のトナー1を得た。トナー1の特性を表5に示す。
<トナーの評価方法>
〈耐久性〉
市販のキヤノン製プリンターLBP5300を使用し、耐久性の評価を行った。LBP5300は、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを160g充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
15℃、10%RHの低温低湿環境下にて、印字率が1%の画像を連続して出力した。1,000枚出力する毎にべた画像、ハーフトーン画像を出力し、規制部材へのトナー融着に起因する縦スジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。最終的に15,000枚の画像出力を行った。評価結果を表6に示す。
[評価基準]
A:15000枚でも発生なし
B:13000より大きく15000枚以下で発生
C:11000枚より大きく13000枚以下で発生
D:11000枚以下で発生
〈環境安定性〉
低温低湿(LL)環境および高温高湿(HH)環境における帯電量の差を、以下の方法により評価した。
(サンプル準備)
トナーおよび所定のキャリア(日本画像学会標準キャリア:フェライトコアを表面処理した球形キャリアN−01)をふた付きのプラスチックボトルにそれぞれ、1.0g、1
9.0g入れ、温度15℃、相対湿度10%のLL環境および温度32.0℃、相対湿度85%のHH環境に5日放置する。
(帯電量測定)
上記キャリア、上記トナーを入れたプラスチックボトルのふたを閉め、振とう機(YS−LD、(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、トナーとキャリアからなる現像剤を帯電させる。次に、図2に示す摩擦帯電量を測定する装置において摩擦帯電量を測定する。図2において、底に目開き20μmのスクリーン3のある金属製の測定容器2に、該現像剤0.5g以上1.5g以下を入れ、金属製のフタ4をする。この時の測定容器2全体の質量を精秤し、W1(g)とする。次に吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を2.5kPaとする。この状態で2分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。この時の電位計9の電位をV(V)とする。ここで、8はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を精秤し、W2(g)とする。この試料の摩擦帯電量Q(mC/kg)は下式の如く算出される。
試料の摩擦帯電量Q(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
LL環境における振とう直後の試料の摩擦帯電量をQl(mC/kg)、HH環境における上記摩擦帯電量をQh(mC/kg)とした時、Qh/Qlを環境安定性の指標とした。
更に、上記プリンターにて画像を10000枚出力した後、カートリッジから抜き取ったトナーにおいても、同様の評価を行い、耐久後の環境安定性を評価した。評価結果を表6に示す。
[評価基準]
A:0.90以上
B:0.80以上0.90未満
C:0.70以上0.80未満
D:0.70未満
なお、10000枚出力後の環境安定性評価においてCランクとなったトナーについては、更に5000枚出力を行い、長期耐久後の環境安定性として評価した。評価結果を表7に示す。
〈定着画像の安定性〉
上記プリンターLBP5300を使用し、定着画像の安定性の評価を行った。評価用カートリッジは、上記カートリッジを使用し、常温常湿環境下(23℃、60%RH)に24時間放置した後、LBP5300のシアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着した。次いでラフ紙(ゼロックス4025:75g/m)上に未定着のトナー画像(単位面積あたりのトナー載り量0.6mg/cm)を形成した。定着試験は、上記カラーレーザープリンターから取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行った。具体的な評価方法は、以下のとおりである。常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、プロセススピードを190mm/sに、温度を110℃に設定し、上記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像を14.7kPa(150g/cm)の荷重をかけたシルボン紙で10往復摺擦したときに、下記式で示される摺擦前後の濃度低下率ΔD(%)を定着性の指標とした。評価結果を表6に示す。画像濃度は、X−rite社製 反射濃度計(500 Series Spectrodensitemeter)を用いて評価した。
ΔD(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100[評価基準]
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上10%未満
D:10%以上
<実施例2乃至13>
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明のト
ナー2乃至13を得た。得られたトナー2乃至13の特性を表5に、評価結果を表6に示す。10000枚出力後の環境安定性評価においてCランクとなったトナーについては、更に5000枚出力を行い、長期耐久後の環境安定性として評価した。評価結果を表7に示す。
なお、実施例13を参考例1とする。
<比較例1>
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較用トナー1を得た。得られた比較用トナー1の特性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較例2>
・非晶性樹脂分散液 80.0質量部
・シェル用樹脂分散液15 280.0質量部
・着色剤分散液2 28.0質量部
・ワックス分散液2 31.0質量部
・10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液 1.5質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中に混合し、IKA社製ウルトラタラックスT50にて混合分散した後、攪拌しながら45℃にて60分間保持した。その後、シェル用樹脂分散液15 40.0質量部を緩やかに添加し、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱した。昇温までの間、適宜水酸化ナトリウム水溶液を追加し、pHが5.5よりも低くならないようにした。その後、96℃にて5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更にイオン交換水3Lに再分散し、300rpmで15分間攪拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.0になったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続し、比較用トナー粒子2を得た。
(比較用トナー2の製造工程)
上記比較用トナー粒子2の100質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粒子1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粒子0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明の比較用トナー2を得た。比較用トナー2の特性を表5に、評価結果を表6および表7に示す。
<比較例3>
(比較用トナー粒子3の製造工程)
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更し、比較用トナー粒子3を得た。
(比較用トナー3の調製工程)
上記比較用トナー粒子3の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)、真球状シリコーン樹脂微粒子XC99−A8808(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)3.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明の比較用トナー3を得た。比較用トナー3の特性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較例4乃至12>
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較用トナー4乃至12を得た。得られた比較用トナー4乃至12の特性を表5に、評価結果を表6および表7に示す。
1:吸引機(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)、2:金属製の測定容器、3:スクリーン、4:金属製のフタ、5:真空計、6:風量調節弁、7:吸引口、8:コンデンサー、9:電位計、T1:造粒タンク、T2:樹脂溶解液タンク、T3:溶剤回収タンク、B1:二酸化炭素ボンベ、P1、P2:ポンプ、V1、V2:バルブ、V3:圧力
調整バルブ

Claims (8)

  1. 結着樹脂、着色剤、およびワックスを含有するコアに、樹脂Aを含有するシェル相を形成したコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、
    前記樹脂Aが有機ポリシロキサン構造を分子構造に含む樹脂であり、
    前記トナー粒子のX線光電子分光分析(ESCA)により測定される前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量が、構成元素の総量に対して1.3atomic%以上、3.3atomic%以下であり、
    前記トナー粒子の蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量が、0.04質量%以上、1.30質量%以下であり、
    前記樹脂Aが、下記式(3)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーと、その他のビニル系モノマーとの共重合体であることを特徴とするトナー。
  2. 前記樹脂Aが、前記式(3)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマー5.0質量%以上、20.0質量%以下と、その他のビニル系モノマー80.0質量%以上、95.0質量%以下と共重合である請求項に記載のトナー。
  3. その他のビニル系モノマーが、結晶構造をとりうるポリエステル部位を有するビニル系モノマーである請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 前記トナー粒子が、前記樹脂Aを3.0質量%以上、15.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記トナー粒子が、前記樹脂Aを4.0質量%以上、33.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 記式(3)において、重合度nが2以上、18以下の整数であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、
    前記結着樹脂、前記着色剤、および前記ワックスを、有機溶媒を含有する媒体中に溶解または分散させた樹脂組成物を調製する工程
    前記樹脂組成物を、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子を含有する、超臨界状態または液体状態の二酸化炭素を有する分散媒体に分散させ、分散体を調製する工程、および
    前記分散体から前記有機溶媒を除去することによってトナー粒子を得る工程、
    を有することを特徴とするトナーの製造方法
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