JP7313931B2 - トナー - Google Patents
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Description
トナーの低温定着性を向上するために、ワックスや結晶性ポリエステルなどの結晶性材料が用いられる。結晶性材料は、その材料の持つ融点で溶融し、トナーの結着樹脂を可塑化し、トナーの溶融変形を促す。特許文献1では、結晶性ポリエステルを用いることによる低温可塑性の向上について述べられている。これにより、トナーが十分に溶融しないことが原因で、定着ニップ通過時にトナーが定着フィルム上に付着し、そのまま一周した後に紙上に定着されるコールドオフセットを抑制することができると説明している。
また、そうした結晶性材料を微小なドメインとしてトナー内に分散させることで、シャープメルト性を向上できる。特許文献2では、結晶性ポリエステルと低融点ワックスのドメインを制御することにより、シャープメルト性による低温定着性と高温における保存性を両立できることが述べられている。
さらに、特許文献3では、結着樹脂中の架橋剤成分の含有率、ならびに、所定の化合物および該化合物の誘導体の含有率を制御したトナーが、定着温度において低温域から高温域にわたって優れた定着性を示すことが開示されている。
これに対し、特許文献3に記載の手法を適用することが検討されている。しかしながら、特許文献3に記載の手法を適用すると、低温における可塑性やシャープメルト性も抑制されてしまう。そのため、低温定着性が低下したり、低温において紙の凹部においてトナーが融けにくく、凸部との定着ムラができてしまうために起きる定着ムラ(以下、「低温定着ムラ」ともいう。)とトレードオフになったりする傾向がある。そのため、低温定着性および低温定着ムラ抑制と、高温定着ムラ抑制と、の両立には大きな課題があった。
結着樹脂および結晶性材料を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
前記トナーの粉体動的粘弾性測定において、
20℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(A)℃、
20℃/minで昇温した際に得られる、100℃のときの貯蔵弾性率をEA’(100)Pa、
5℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(B)℃としたとき、
下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする。
T(A)-T(B)≦3.0℃ (1)
45.0℃≦T(A)≦70.0℃ (2)
4.0×109Pa≦EA’(100)≦6.5×109Pa (3)
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
結着樹脂および結晶性材料を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該結晶性材料がエステルワックスを含有し、
該エステルワックスが、エチレングリコールジベヘネート又はエチレングリコールジステアレートを含み、
該結着樹脂が、エーテル構造を有するビニル樹脂を含有し、
該ビニル樹脂が、下記式(4)で示される構造を有する架橋剤で架橋されたビニル樹脂であり、
(式中、m+nは2以上の整数であり、R 1 、R 4 はそれぞれ独立してHまたはCH 3 であり、R 2 、R 3 が、それぞれ独立して、分岐を有する炭素数2~12の炭化水素基である。)
該トナーの粉体動的粘弾性測定において、
20℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(A)℃、
20℃/minで昇温した際に得られる、100℃のときの貯蔵弾性率をEA’(100)Pa、
5℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(B)℃としたとき、
下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする。
T(A)-T(B)≦3.0℃ (1)
45.0℃≦T(A)≦70.0℃ (2)
4.0×109Pa≦EA’(100)≦6.5×109Pa (3)
ち定着ムラが少ないと考えたためである。
本発明では、トナーの融け始めの温度が昇温速度に依存しにくくしたことで、熱のかかりにくい紙の凹部においてもトナーが十分に溶融し、紙の凹凸部における定着ムラが抑制されたと考える。T(A)-T(B)≦3.0℃であるとき、融け始めすなわち低温時においても定着ムラを十分に抑制できる。
T(A)-T(B)は、好ましくは2.0℃以下であり、より好ましくは1.5℃以下である。T(A)-T(B)の下限は特に制限されないが、好ましくは0.5℃以上である。該数値範囲は、任意に組み合わせることができる。
また、T(A)-T(B)は、融点が低い結晶性材料を使用すること、結着樹脂との相溶性が高い結晶性材料を使用すること、結晶性材料をトナー粒子中に分散・固定することなどにより、制御することができる。
45.0℃≦T(A)であるとホットオフセットを抑制しやすくなり、T(A)≦70.0℃であると十分な低温定着性を得られる。
T(A)は、好ましくは45.0℃~65.0℃であり、より好ましくは50.0℃~60.0℃である。T(A)は、融点が低い結晶性材料を使用すること、結着樹脂との相溶性が高い結晶性材料を使用すること、並びに、結着樹脂の構造を制御することなどにより、制御することができる。
4.0×109Pa≦EA’(100)であれば高温時における過度な融け広がりを十分に抑制でき、EA’(100)≦6.5×109Paであれば融け広がりを阻害しない。
EA’(100)は、好ましくは4.5×109Pa~6.0×109Paである。
EA’(100)は、結着樹脂を形成し得る重合性単量体を適宜変更して該結着樹脂の構造を調整することなどにより、制御することができる。
T(B)は、好ましくは45.0℃~65.0℃であり、より好ましくは50.0℃~60.0℃である。T(B)は、融点が低い結晶性材料を使用すること、並びに結着樹脂の構造を制御することなどにより、制御することができる。
~300nmの前記結晶性材料のドメインの平均個数が、50個~500個であることが好ましい。該ドメインの平均個数が50個以上であることで、結晶性材料と結着樹脂との相溶速度が高くなり、低温の定着ムラ抑制により優れる。一方、該ドメインの平均個数が500個以下であることで、過度な結晶性材料の染み出しを抑制し、ホットオフセット抑制により優れると考えている。さらに、該ドメインの個数は、100個~400個であることがより好ましい。
該ドメインの個数は、例えば後述する懸濁重合法を用いたトナーの製造方法における、トナー粒子の重合工程後に行う冷却工程およびアニール工程を好ましい条件で行うことで、より適切に制御することができる。これは前記工程により、結晶性材料の結晶化速度、結晶化度を制御できることによると考えている。
該ピーク温度は、融点が低い結晶性材料を使用すること、並びに結着樹脂の構造を制御することなどにより制御することができる。
該THF不溶分の含有量は、該結着樹脂を形成し得る重合性単量体の種類および量を変更したり、架橋剤の種類および量を変更するなどして結着樹脂の構造を制御することなどにより制御することができる。
これは弾性が高いことで、連続印刷時にカートリッジ内でのトナー同士の衝突による反発力が高まるため凝集が抑制され、また衝突してもゲル自体は柔軟な化学構造の集合体であるためトナーへの衝撃は軽減できるためと考える。そのため本発明のように結晶性材料においてコア部分が柔らかいトナーにおいても、トナーの流動性と耐久性が高まり、高速印刷においても画像安定性に優れる。
式中、m+nは2以上の整数であり、R1、R4はそれぞれ独立してHまたはCH3であり、R2、R3はそれぞれ独立して直鎖または分岐を有する炭素数2~12の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)である。
m+nは、より好ましくは3以上の整数である。また、m+nの上限は特に制限されないが、好ましくは15以下の整数である。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
R2、R3は、それぞれ独立して、分岐を有する炭素数2~12の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)であることがより好ましい。R2、R3は、それぞれ独立して、直鎖または分岐を有する炭素数2~8の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)であることもより好ましい。さらに好ましくは、R2、R3は、それぞれ独立して、分岐を有する炭素数2~8の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)である
トナー粒子は、公知の乾式法、乳化重合法、溶解懸濁法、懸濁重合法など、いずれの製造方法でも製造可能である。トナー粒子は、乾式法においては熱球形化処理などの表面改質処理が、重合法においては懸濁重合法が好ましく、特に好ましくは懸濁重合法である。懸濁重合法では、水系媒体中で重合性単量体組成物を造粒し、重合性単量体組成物の粒子を形成することにより、トナー粒子が製造される。
該単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンなどのスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンなどのビニルケトンが挙げられる。
重合性単量体は、上記の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を含むことが好ましい。
上記の単官能性モノマーを1種単独もしくは2種以上を組み合わせて、又は上記の単官能性モノマーと多官能性モノマーを組み合わせて使用してもよい。
ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(A200)、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(A400)、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(A600)、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート(A1000);ジプロピレングリコールジアクリレート(APG100)、トリプロピレングリコールジアクリレート(APG200)、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG400)、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート(APG700)、ポリテトラプロピレングリコール#650ジアクリレート(A-PTMG-65)(いずれも新中村化学社製)。
その中でも上記式(4)で示される構造を有するものがより好ましい。具体的には、トリプロピレングリコールジアクリレート(APG200)、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG400)、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート(APG700)がより好ましいが、これらに限定されるものではない。
架橋剤の添加量は、結着樹脂を生成し得る重合性単量体又は結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部~5.00質量部が好ましく、0.10質量部~3.00質量部がより好ましい。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
該ポリエステル樹脂の構成成分には以下のようなものが挙げられる。
2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物もしくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物もしくはその低級アルキルエステル;n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類又はその無水物もしくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物もしくはその低級アルキルエステル。
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-
ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、ビスフェノール及びその誘導体。
1価のカルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、p-メチル安息香酸などの炭素数30以下の芳香族カルボン酸や、ステアリン酸、ベヘン酸などの炭素数30以下の脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
また、1価のアルコール化合物としては、ベンジルアルコールなどの炭素数30以下の芳香族アルコールや、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベへニルアルコールなどの炭素数30以下の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどが挙げられる。
該ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるもではなく、公知の方法を用いることができる。
ポリエステル樹脂の添加量または含有量は、結着樹脂を生成し得る重合性単量体または結着樹脂100.0質量部に対して0.05質量部~20.0質量部が好ましい。
エステルワックスの添加量または含有量は、結着樹脂を生成し得る重合性単量体または結着樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部~50.0質量部であることが好ましく、10.0質量部~35.0質量部であることがより好ましい。
また、該結晶性材料中の該エステルワックスの含有量は、50.0質量%を超え、100.0質量%以下であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは75.0質量%~100.0質量%である。
さらに、該エステルワックスの融点は、60℃~90℃であることが好ましい。なお、エステルワックスの融点は、該エステルワックスの示差走査熱量測定において、最大吸熱ピークのピーク温度である。
ビスコール(登録商標)330-P、550-P、660-P、TS-200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP-1、HNP-3、HNP-9、HNP-10、HNP-11、HNP-12、HNP-51(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋アドレ株式会社)。
炭化水素ワックスの添加量または含有量は、結着樹脂を生成し得る重合性単量体または結着樹脂100.0質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、1
.0質量部~10質量部であることがより好ましい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用してもよく、固溶体の状態で使用してもよい。
磁性体は、個数平均粒径が0.10μm~0.40μmであることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなるため、上記範囲が着色力と凝集性のバランスの観点で好ましい。
なお、磁性体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍~4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5~10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、水系媒体中でトナー粒子を製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが好ましい。乾式にて磁性体の表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤処理を行ってもよい。湿式にて磁性体の表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行ってもよい。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択出来る。
RmSiYn (5)
式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1~3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1~3の整数を示す。但し、m+n=4である。
上記式(5)中のYはアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、Yが炭素数3~16のアルキル基であり、より好ましくは3~10である。
上記シランカップリング剤を用いる場合、1種単独で処理する、または複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は、磁性体100.0質量部に対して0.9質量部~3.0質量部であることが好ましい。カップリング剤の使用量は、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性などに応じて適宜調整することができる。
前述した効果を高める観点から、該冷却工程と、該保持(アニール)工程を有することが好ましい。
反応工程終了時の温度から冷却後の温度に下げるまでの冷却速度を高めることが好ましい。具体的には、冷却速度が50℃/min~350℃/minであることが好ましく、100℃/min~300℃/minであることがより好ましい。
また、冷却工程の冷却開始温度は、70℃~100℃であることが好ましい。さらに、保持(アニール)工程のアニール温度は、45℃~65℃であることが好ましい。
無機微粉体としては、公知のものが使用可能である。好ましくは、チタニア微粒子;湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどのシリカ微粒子;該シリカにシランカップリング剤、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイル等により表面処理を施した無機微粉体である。表面処理を施した無機微粉体は、メタノール滴定試験によって滴定される疎水化度が30~98であることが好ましい。
動的粘弾性測定装置DMA8000(パーキンエルマー社製)を用いて測定を行う。
測定治具:マテリアルポケット(P/N:N533-0322)
トナー80mgをマテリアルポケットに挟み、シングルカンチレバーに取り付け、トルクレンチでねじを締めて固定する。
測定は専用ソフト「DMA Control Software」(パーキンエルマー社製)を用いる。測定条件は、以下の条件で行う。
オーブン:Stnadard Air Oven
測定タイプ:温度スキャン
DMA条件:シングル周波数/ひずみ(G)
周波数:1Hz
ひずみ:0.05mm
開始温度:25℃
終了温度:180℃
走査速度:20℃/min もしくは 5℃/min
変形モード:シングルカンチレバー(B)
断面:直方体(R)
試験片サイズ(長さ):17.5mm
試験片サイズ(幅):7.5mm
試験片サイズ(厚さ):1.5mm
測定によって得られる貯蔵弾性率E’の曲線から、オンセット温度T(A)およびT(B)(単位はいずれも℃)を計算する。T(A)およびT(B)は、E’の曲線の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、E’の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点に対応する温度である。
また、走査速度20℃/minで測定した時の100℃における貯蔵弾性率E’をEA’(100)とする。
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー断面は以下のようにして作製する。
トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルト
ラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりルテニウム染色を行う。
その後、透過型電子顕微鏡(H7500、株式会社日立ハイテクノロジー製)を用い、加速電圧120kVで、得られたトナーの断面観察を行う。
観察するトナーの断面は、トナーの個数平均粒径から±2.0μm以内のものを無作為に100個選んで撮影を行い、断面画像を得る。
トナーをルテニウム染色すると、結晶性材料は染色されにくいため、TEM観察をしたときに、結晶性材料のドメインは白く見える。このようにして該断面画像における結晶性材料のドメインを識別する。該ドメインの個数および長径の算出においては、該断面画像における全てのドメインについて長径を計測し、該長径が20nm~300nmの範囲内であるドメインの個数を算出する。
断面画像を撮影した100個のトナー全てについて、長径が20nm~300nmの範囲内であるドメインの個数を算出し、その平均値を本発明における、長径が20nm~300nmの結晶性材料のドメインの個数とする。
トナーおよびエステルワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)にて測定する。測定には、TAインストルメント社製Q2000を用いる。測定条件は以下の通りである。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナーまたはエステルワックス5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、一回測定を行う。対照用にアルミニウム製の空パンをセットし測定する。
トナー粒子の断面のTEM画像をもとに、結晶性材料のドメインの同定を、以下の手順により行う。
結晶性材料を原材料として入手できる場合、それらの結晶構造を、上述のルテニウム染色処理された透過型電子顕微鏡(TEM)におけるトナー粒子断面の観察方法と同様にして、観察し、原材料それぞれの結晶のラメラ構造の画像を得る。それらと、トナー粒子の断面におけるドメインのラメラ構造を比較し、ラメラの層間隔が誤差10%以下であった場合、トナー粒子の断面におけるドメインを形成している原材料を特定することができる。
結晶性材料の原材料を入手できない場合、次のように単離作業を行う。
まず、トナーに対する貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、結晶性材料の融点を超える温度まで昇温させる。この時、必要に応じて、加圧してもよい。この時点で、融点を超えた結晶性材料が溶融している。
その後、固液分離することにより、トナーから、結晶性材料の混合物を採取できる。この混合物を、分子量毎に分取することにより、結晶性材料の単離が可能である。
結晶性材料の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で結晶性材料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」
(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定を行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、具体的には「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)を用いる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定」ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm~60μmに設定する。
1.Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
2.ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
3.発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
4.前記2.のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
5.前記4.のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃~40℃となるように適宜調節する。
6.サンプルスタンド内に設置した前記1.の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記5.の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
7.測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「算術径」が個数平均粒径(D1)である。専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」が重量平均粒径(D4)である。
トナー1.5gを精秤し、予め精秤した円筒濾紙(商品名:No.86R、サイズ28×100mm、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。
溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mLを用いて20時間抽出し、その際に溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。
抽出終了後、円筒濾紙を取り出して風乾した後、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を含む円筒濾紙の質量を秤量し、円筒濾紙の質量を差し引くことにより、抽出残分の質量W1(g)を算出する。
次に、樹脂成分以外の成分の含有量W2(g)を以下の手順で求める。
予め秤量した30mLの磁性るつぼに1.5gのトナーを精秤する。
磁性るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分を算出し、これをW2(g)とする。
これらの値から、下記式により結着樹脂由来のTHF不溶分の含有量を求める。
結着樹脂由来のTHF不溶分の含有量(質量%)
=(W1-W2)/(1.5-W2)×100
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、ステアリン酸100部と、エチレングリコール10部とを加え、窒素気流下、180℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。この反応によって得られたエステル化粗生成物100部に対して、トルエン20部と、エタノール4部とを加え、攪拌後30分間静置した後、エステル相から分離した水相(下層)を除去することによって、エステル化粗生成物を水洗した。水相のpHが7になるまで、上記水洗を4回繰り返した。その後、170℃、5kPaの減圧条件下で、水洗されたエステル相から溶媒を留去し、WAX1を得た。WAX1の融点は76℃であった。
酸モノマーをステアリン酸からベヘン酸に変更した以外はWAX1の製造と同様の操作
を行い、WAX2を得た。WAX2の融点は83℃であった。
アルコールモノマーをエチレングリコールからべへニルアルコールに変更した以外はWAX1の製造と同様の操作を行い、WAX3を得た。WAX3の融点は74℃であった。
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、酸モノマー1としてセバシン酸100.0部、酸モノマー2としてステアリン酸1.6部、アルコールモノマーとして1,9-ノナンジオール89.3部を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。
次いで、ジオクチル酸スズを0.57部加えた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル樹脂1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂1を分析したところ、重量平均分子量は38000であった。
結晶性ポリエステル樹脂1の製造において、アルコールモノマーを1,12-ドデカンジオールにした以外は、同様の工程で製造を行い、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂2を分析したところ、重量平均分子量は40000であった。
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100部あたりケイ素換算で0.20質量%となるケイ酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。
このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物の製造>
iso-ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有する水溶液を得た。
<磁性体1の製造>
上記磁性酸化鉄100部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS-2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、上記シラン化合物を含有する水溶液8.0部を2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体1を得た。
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、テレフタル酸40mol%、トリメリット酸10mol%、ビスフェノールA-プロピレンオキシド2mol付加物50mol%を入れた後、モノマー総量100部に対して1.5部のジブチル錫を触媒として添加した。
次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、非晶性ポリエステル樹脂1を得た。その際、得られる非晶性ポリエステル樹脂1の軟化点が120℃となるように重合時間を調整した。
下記の手順によってトナー粒子、トナーを製造した。
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
(重合性単量体組成物の調整)
・スチレン 72.0部
・n-ブチルアクリレート 28.0部
・ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG400) 2.0部
・磁性体1 65.0部
・非晶性ポリエステル樹脂1 4.0部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した後、60℃に加温し、そこにエステルワックスとしてWAX1を20.0部、炭化水素ワックスとしてパラフィンワックス(日本精蝋社製、HNP-51)3.0部を添加混合し、溶解して重合性単量体組成物を得た。
反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間保持した。その後、冷却工程として、懸濁液に0℃の水を投入し、200℃/分の速度で懸濁液を98℃から30℃まで冷却した後、55℃で3時間保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その際の冷却速度は、2℃/分であった。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して重量平均粒径が7.3μmのトナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の100部に対して、下記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製FM-10型)で混合して、トナー1を得た。
・ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径20nmの疎水性シリカ微粒子 0.5部
・ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの疎水性シリカ微粒子 0.5部
得られたトナー1の物性を表1に記載した。
トナー1の製造例において、スチレン(表2でStと表記)、n-ブチルアクリレート(表2でBAと表記)、エステルワックス、架橋剤および反応終了後の冷却速度について表2に示すような材料構成および製造条件にした以外は、トナー1の製造例と同様にして
、トナー2~15を得た(なお表2において、St/BA=72/28はStを72.0部、BAを28.0部使用したことを示す)。得られたトナーの物性を表1に示す。
トナー1の製造例において、スチレン、n-ブチルアクリレート、エステルワックス、炭化水素ワックス、結晶性ポリエステル1、および架橋剤を表2に示すような材料構成および製造条件にした以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー16~19を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
下記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させ、顔料マスターバッチを得た。・スチレン 60.0部
・カーボンブラック(Orion Engineerred Carbons社製、商品名「Printex35」) 7.0部
・荷電制御剤(オリエント社製:ボントロンE-89) 0.10部
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
(重合性単量体組成物の調整)
・スチレン 12.0部
・n-ブチルアクリレート 28.0部
・ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG400) 2.0部
・顔料マスターバッチ 67.1部
・非晶性ポリエステル樹脂1 4.0部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した。
その後の工程はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー20を得た。
得られたトナーの物性を表1に示す。
トナー20の製造例において、表2に示すような材料構成および製造条件にした以外は、トナー20の製造例と同様にして、トナー21を得た。得られたトナーの物性を表1に示す。
なお画像形成装置としては、トナー1~19に対しては市販のLBP―3100(キヤノン製)、トナー20および21についてはHP LaserJet Enterprise M653xを用いた。画出し評価は、いずれの画像形成装置についても印字速度を40枚/分に改造した改造機を使用した。
トナー1を用いて、前述の画出し評価機を用いて以下の評価を行った。
(評価1) 耐擦り性(低温定着性)
耐擦り性の評価は、低温定着性の評価に厳しい環境である、低温低湿環境(温度15℃、相対湿度10%)にて行った。
定着メディアとしてはA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、70g/m2)を用いた。
評価手順は、定着器全体が室温となっている状態から、170℃の設定温度で画像濃度(マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定した。)が0.75~0.80となるようにハーフトーン画像の濃度を調整し、10枚の画出しを行った。
その後、150℃の設定温度で画出しを行い、5.4kPaの加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦した。摺擦前後の画像濃度より、下記式を用いて、150℃における濃度低下率を算出した。
濃度低下率(%)
=(摺擦前の画像濃度―摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
同様に、定着温度を5℃ずつ増加させ、200℃まで濃度低下率を算出した。
一連の作業により得られた、定着温度と濃度低下率の評価結果から、二次の多項式近似を行い、定着温度と濃度低下率の関係式を得た。その関係式を用いて、濃度低下率が15%となる温度を算出し、その温度を低温定着性が良好である閾値を示す定着温度とした。
定着温度が低いほど、低温定着性が良好であることを示す。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A.定着温度が180℃未満である。
B.定着温度が180℃以上190℃未満である。
C.定着温度が190℃以上200℃未満である。
D.定着温度が200℃以上である。
低温の定着ムラは、評価に厳しい環境と考えられる、低温低湿環境(温度15℃、相対湿度10%)にて行った。メディアとしてはA4の厚紙(キヤノン製、GF-C209、200g/m2)を用いた。画像はベタ画像を10枚連続で印字し、最も温度がかかりにくい1枚目を用い、定着温度は170℃の設定温度で行った。
光沢の測定は、ハンディ型グロスメーターPG-1(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。測定としては、投光角度、受光角度をそれぞれ75°に合わせた。画像光沢度は、出力した画像上10点の光沢度(グロス)を測定し、その内の最高のグロスと最低のグロスとの差で光沢ムラの評価を行った。評価基準は下記のように行った。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A:グロス差が3%未満である。
B:グロス差が3%以上5%未満である。
C:グロス差が5%以上10%未満である。
D:グロス差が10%以上である。
高温の定着ムラは、評価に厳しい環境と考えられる、高温高湿環境(温度32℃、相対湿度80%)にて行った。メディアとしてはA4の厚紙(キヤノン製、GF-C209、200g/m2)を用いた。比較的厚い紙を用いることで、紙が定着器から奪う熱量が大きくなる。そのため、高温時に紙側でトナーが融け広がる際のムラが大きくなりやすく、より厳しい条件の評価を行えると考えた。画像はベタ画像を10枚連続で印字し、最も温度がかかりやすい10枚目を用い、定着温度は210℃の設定温度で行った。
光沢の測定および評価基準は評価2と同様にして行った。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A:グロス差が3%未満である。
B:グロス差が3%以上5%未満である。
C:グロス差が5%以上10%未満である。
D:グロス差が10%以上である。
ホットオフセットは、評価に厳しい環境と考えられる、高温高湿環境(温度32℃、相対湿度80%)にて行った。メディアにB5のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、40g/m2)を用いた。メディアの面積を小さくすることにより、定着器が過剰に熱を保持しやすくなり、また、薄い紙を用いることで、紙が定着器から奪う熱量が小さくなる。このような検討を行うことによって、トナーが過剰に熱を受けやすくなり、耐ホットオフセット性の評価に厳しい方法となる。
評価手順は、定着器全体が室温となっている状態から、200℃の設定温度で上述の定着メディアにベタ画像を10枚連続で印字した。最もホットオフセットが発生しやすい10枚目に、ホットオフセットに由来する画像の白抜けが発生しているかを確認した。
同様に、1℃ずつ設定温度を増加していき、白抜けが発生した温度をホットオフセット温度とした。この温度が高いほど、耐ホットオフセット性が良好であることを示す。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
A.220℃で発生なし。
B.210℃以上220℃未満で発生。
C.200℃以上210℃未満で発生。
D:200℃未満で発生。
画像安定性は、常温常湿環境(温度23℃、相対湿度50%)にて行った。メディアとしてはA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、70g/m2)を用いた。初期のベタ画像濃度と、印字率1%の横線画像を間欠モードで20000枚印刷した後のベタ画像濃度を測定し、その濃度差を確認した(マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定した)。濃度差が小さいほど画像安定性が高いことを示す。評価結果を表3に示す。(評価基準)
A:濃度差が0.05未満である。
B:濃度差が0.05以上0.10未満である。
C:濃度差が0.10以上である。
表3に示したようにトナーを変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
表4に示したようにトナーを変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
Claims (5)
- 結着樹脂および結晶性材料を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該結晶性材料がエステルワックスを含有し、
該エステルワックスが、エチレングリコールジベヘネート又はエチレングリコールジステアレートを含み、
該結着樹脂が、エーテル構造を有するビニル樹脂を含有し、
該ビニル樹脂が、下記式(4)で示される構造を有する架橋剤で架橋されたビニル樹脂であり、
(式中、m+nは2以上の整数であり、R 1 、R 4 はそれぞれ独立してHまたはCH 3 であり、R 2 、R 3 が、それぞれ独立して、分岐を有する炭素数2~12の炭化水素基である。)
該トナーの粉体動的粘弾性測定において、
20℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(A)℃、
20℃/minで昇温した際に得られる、100℃のときの貯蔵弾性率をEA’(100)Pa、
5℃/minで昇温した際に得られる、貯蔵弾性率E’のオンセット温度をT(B)℃としたとき、
下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とするトナー。
T(A)-T(B)≦3.0℃ (1)
45.0℃≦T(A)≦70.0℃ (2)
4.0×109Pa≦EA’(100)≦6.5×109Pa (3) - 透過型電子顕微鏡で観察される前記トナーの断面において、長径が20nm~300nmの前記結晶性材料のドメインの平均個数が、50個~500個である、請求項1に記載のトナー。
- 前記結晶性材料中の前記エステルワックスの含有量が、50.0質量%を超え、100.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
- 前記トナーの示差走査熱量測定において、最大吸熱ピークのピーク温度が60.0℃~90.0℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記m+nが3以上の整数である、請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
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