JP2018017786A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速定着時の低温定着性に優れ、定着した画像の光沢性に優れ且つ、光沢ムラがないこと。【解決手段】結着樹脂に結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有したトナーで、示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm3)1/2)と、前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm3)1/2)が、以下の関係式(1)を満たし、|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)前記トナーの透過型電子顕微鏡(TEM)による断面分析において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶で観察される。【選択図】なし

Description

本発明は電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
電子写真装置の分野において、省エネルギー化や高速印刷化が大きな技術的課題として挙がっており、この課題に対してトナーの改良が盛んに行われている。省エネルギー化のためには、一般的に定着工程における消費電力を削減することが効果的である。そのために、トナーはより低い温度で溶融する性質、いわゆる低温定着性が求められている。さらに、低温定着性を得ようとすると、耐熱保存性を失わせる場合があり、低温定着性と耐熱保存性との両立が求められる。また高速印刷化のためには、定着工程において定着速度を早くすることが必要であり、トナーはより素早く溶融することが求められている。
低温定着性、耐熱保存性を同時に満たすための結着樹脂用の材料として、結晶性樹脂が近年用いられている。結晶性樹脂は樹脂を構成する高分子鎖が規則的に配列した構造を形成することが可能であり、融点(Tm)を持つことが知られている。そのため結晶の融点未満の温度領域では軟化しにくく、融点を境に結晶が融解して急激に粘度の低下を起こす性質(シャープメルト性)を有している。さらに結晶が融解した状態の結晶性樹脂は親和性の高い他の樹脂を可塑する効果を有している。
このことから、結晶性樹脂を非晶性の結着樹脂に添加して、トナーの低温定着性を向上させる検討が盛んに行われている。
特許文献1、特許文献2には、トナー粒子に結晶性ポリエステルを分散したトナーが提案されている。特許文献1では2種の結晶性樹脂がトナー中にそれぞれ小粒径で分散することで低温定着性に優れ且つ、定着画像の光沢ムラを抑制することが可能になるとしている。特許文献2ではトナー中に結晶性樹脂が針状に分散することで、離型性に優れ、低温定着性と耐オフセット性の両立を可能にするとしている。
特許文献3では、結晶性樹脂として結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを共重合した樹脂を用いてトナー中に分散したトナーが提案されている。この方法によると低温定着性を有し、定着後のトナーの弾性率の回復が早いことで耐擦性に優れた画像を形成できるとしている。
特許文献4では、非晶性樹脂のシェルを持ち結晶性ポリエステルが糸状に分散したトナーが提案されている。このトナーは、低温定着性に優れ、非晶性樹脂で覆われていることで、結晶性樹脂による帯電性の不安定化が起こりにくいとしている。
特許文献5では、結晶性樹脂を海部、非晶性樹脂が島部となる構造のトナーが提案されている。このトナーは結晶性樹脂を多量に含有することで、非晶性樹脂の影響を受けることなく、低温定着性に優れるとしている。
特開2015−11054号公報 特開2015−121576号公報 特開2011−116976号公報 特開2012−18391号公報 特開2014−142632号公報
特許文献1、特許文献2に開示された非晶性樹脂のマトリクス中に結晶性ポリエステルが粒子状に分散させたトナーは、結晶性樹脂が非連続構造で、非晶性樹脂が網目状に連続した構造である。このような構造のトナーは定着時に非晶性樹脂の性質が発現しやすいため、高速定着の場合に軽圧力部では、光沢ムラがする可能性があった。
特許文献3に開示された手法に基づいて本発明者らが検討したところ、共重合体を結晶性樹脂として用いたトナーは、非晶性樹脂中で結晶性樹脂が粒子状に分散しやすく、非晶性樹脂が網目状に連続した構造を取り易いことが確認された。そのため、高速定着の場合に軽圧力部では十分に低温定着性が発揮されず、光沢ムラが発生しやすかった。
特許文献4に開示されたトナーでは、トナー中で結晶性樹脂が糸状に分散しているが、直鎖状であるがゆえに結晶同士が集合した状態を形成することがある。その結果、高速定着時に可塑効果が十分でなく、画像の光沢が低くなる可能性があった。
特許文献5に開示されたトナーは結晶性樹脂を主成分としており、非晶性樹脂の可塑効果は十分にあるが、非晶性樹脂の性質は発現しにくいために、高温でのオフセットが発生する場合があった。
本発明は、上述した従来の問題点を解決したトナー、すなわち高速定着時の低温定着性に優れ、定着した画像の光沢性に優れ且つ、光沢ムラがないトナーおよび製法を提供するものである。
本発明は、結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂が結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有し、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と、前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が以下の関係式(1)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面分析において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーに関する。
また本発明は、a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して、樹脂溶液を調製する工程、
b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程、
c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程
を有するトナーの製造方法であって、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が以下の関係式(2)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(2)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状晶を形成していることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明によれば高速定着時の低温定着性に優れ、定着した画像の光沢性に優れ且つ、光沢ムラがないトナーおよび製法を提供することができる。
本発明のトナーにおけるトナーの製造装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明するが、これらに限定されることはない。
本発明のトナーは、結晶性樹脂Aが樹枝状結晶として存在するトナーである。
一般的に結晶性樹脂は樹脂を構成する高分子鎖が規則的に配列した構造を形成している。結晶を構成する高分子鎖の状態は折りたたまれた状態や、伸びきった状態で別の高分子鎖と重なった状態、らせんを巻いた状態、それらが複合的に存在する状態が存在する。
これらの状態の高分子鎖の集合体である結晶も様々な形状のものが存在しており、結晶核からの積層の仕方によってひも状結晶、八面体の結晶や球状の結晶(球晶)を構築する。
中でも球晶は線状結晶とアモルファスが混在した複雑な構造となっている。球晶は結晶核から放射状に高分子鎖が折りたたまれて、ラメラ構造を構築しながら成長し、ひも状結晶とひも状結晶の間はアモルファス状態の高分子鎖が存在している。
一般的に球晶は多段階で結晶核から結晶化成長することが知られている。球晶の成長はまず、核となる細長い高分子鎖のひも状結晶の形成から始まる。さらにその細長いひも状結晶の両末端から放射状に二次的にひも状結晶の成長が発生する。ある程度、ひも状結晶の成長が進んだ段階で成長末端を結晶核として放射状に三次的にひも状結晶が成長し、分岐したひも状結晶が次々に形成されると考えられている。
さらに成長が続くとひも状結晶同士の立体障害により、ひも状結晶が折れ曲がり始め、丸みを帯びてくる。その結果結晶核の他の末端側から成長したひも状結晶と接触し、球状の結晶となると考えられている。
ここで本発明者らは、結晶性樹脂と親和性の高い非晶性樹脂の共存下で結晶化を試みた。その結果、ひも状結晶同士の間に非晶性樹脂が入り込み、ひも状結晶が球状にならず、放射状に伸びた結晶構造、つまり樹枝状結晶となることを見出した。この現象はひも状結晶同士の間に非晶性樹脂が入り込むことで、ひも状結晶の折れ曲がりが発生し難く、結晶核から放射状に伸び続けたためと考えている。非晶性樹脂のマトリクス内で結晶性樹脂が樹枝状結晶を形成した場合、微視的には結晶性樹脂と非晶性樹脂がともに連続的な構造をとり且つ、巨視的には均一に混合した状態となる。さらに本発明者らは、この構造をトナー中に形成することにより、結晶性樹脂による低温定着性の効果、非晶性樹脂による高温弾性効果を発揮すると共に、結晶性樹脂と非晶性樹脂の接触面積の多さに起因する高速定着性の良化を見いだし、本発明に至った。
よって、本発明のトナーは、結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂が結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有し、前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と、前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が、以下の関係式(1)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーである。
(結晶性樹脂A)
本発明において、結晶性樹脂Aとして結晶性ポリエステル、結晶性ビニル樹脂、結晶性ポリウレタン、及び結晶性ポリウレアを用いることができる。
結晶性ビニル樹脂としては、直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニルモノマーを重合することによって得られる樹脂が挙げられる。
直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートが好ましい。具体的には、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート等が挙げられる。
結晶性ビニル樹脂は、40℃以上、一般的には、50℃以上90℃以下の温度で重合することにより製造することが好ましい。
前記結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を前駆体とし、縮合させて得られるものであることが好ましい。より好ましくは、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオールと炭素数2以上20以下の脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものである。
また、脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。直鎖型であることで、より結晶性の高いポリエステルが得られる。
炭素数2以上20以下の直鎖型脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。
1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−イコサンジオール。
これらの中でも、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、及び1,10−デカンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
また、脂肪族ジカルボン酸は結晶性の観点から、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数2以上20以下の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸及び1,18−オクタデカンジカルボン酸。これら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物も使用できる。
これらのうち、セバシン酸、アジピン酸及び1,10−デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、芳香族カルボン酸を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸。これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを抑制するために好適に用いることができる。
このようなジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。
結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させる一般的なポリエステルの重合法によって製造することができる。例えば、直接重縮合法又はエステル交換法を用い、単量体の種類によって使い分けて製造することができる。
結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。
結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、以下の化合物を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドのようなチタン触媒、又は、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド及びジフェニルスズオキシドのようなスズ触媒。
さらに、本発明において、前記結晶性樹脂Aが結晶性樹脂成分と非晶性樹脂成分とを化学的に結合している複合樹脂であることが好ましい。前記複合樹脂を含有するトナーは、結晶性樹脂成分によって低温定着性を発揮し、非晶性樹脂による弾性も付与されるために、耐久性にも優れる。また複合樹脂はトナー中で樹枝状結晶を形成しやすいことが考えられる。
また前記結晶性樹脂成分は、上述した前記結晶性樹脂Aの前駆体として使用するモノマーを用いて合成することができる。結晶性樹脂成分としては結晶性ポリエステル及び結晶性ビニル樹脂が好ましく、結晶性ポリエステルがより好ましい。
また前記非晶性樹脂成分は、後述する前記非晶性樹脂Bの前駆体として使用するモノマーを用いて合成することができる。
また本発明において、前記複合樹脂はブロックポリマーを使用することが好ましい。ブロックポリマーを用いることで、前記結晶性樹脂成分と前記非晶性樹脂成分の機能が互いに阻害することなく発揮され、前記トナーの低温定着性と耐久性の向上がより望める。
ブロックポリマーを構成する結晶性樹脂は前述した結晶性ポリエステル、結晶性ビニル樹脂、結晶性ポリウレタン、及び結晶性ポリウレアを用いることができる。また非晶性樹脂としては後述する非晶性樹脂Bに用いる非晶性樹脂を用いることができる。
ブロックポリマーは、結晶性樹脂(X)と非晶性樹脂(Y)とのXY型ジブロックポリマー、XYX型トリブロックポリマー、YXY型トリブロックポリマー、XYXY・・・・型マルチブロックポリマーが挙げられ、どの形態も使用可能である。
本発明において、ブロックポリマーを調製する方法としては、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)や、結晶性樹脂を構成するモノマー、及び非晶性樹脂を構成するモノマーを同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)などを用いることができる。
前記ブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択してブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂、及び非晶性樹脂がともにポリエステル樹脂の場合は、各樹脂を別々に調製した後、必要に応じて結合剤を用いて結合することにより調製することができる。特に片方のポリエステル樹脂の酸価が高く、もう一方のポリエステル樹脂の水酸基価が高い場合は、結合剤を用いることなく結合させることができる。このとき反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、及び多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
一方で、結晶性樹脂がポリエステル樹脂であり、非晶性樹脂がポリウレタン樹脂の場合では、各樹脂を別々に調製した後、ポリエステル樹脂のアルコール末端とポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つポリエステル樹脂と、ポリウレタン樹脂を構成するジオール、ジイソシアネート基を含有する化合物を混合し、加熱することによっても合成が可能である。
ジオール及びジイソシアネート基を含有する化合物の濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネート基を含有する化合物が選択的に反応してポリウレタン樹脂となり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とポリエステル樹脂のアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂、及び非晶性樹脂ともにビニル樹脂の場合は、一方の樹脂を重合した後、そのビニルポリマーの末端から他の樹脂を重合開始させることにより調製することができる。
前記ブロックポリマー中または複合樹脂中の結晶性樹脂成分の含有割合は50.0質量%以上85.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上80.0質量%以下であることがより好ましい。
(非晶性樹脂B)
本発明において、非晶性樹脂は特に限定されるものではなく、公知の樹脂を用いることができる。非晶性樹脂の具体例としては、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリウレタン樹脂、及び非晶性ビニル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、ウレタン、ウレア又はエポキシなどにより変性されていてもよい。
非晶性ビニル樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、具体的に以下のモノマーが挙げられる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;
アルカジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−若しくはジ−シクロアルケン及びアルカジエン類、例えば、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;
テルペン類、例えば、ピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;及びビニルナフタレン。
カルボキシ基含有ビニル系単量体及びその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシ基含有ビニル系単量体。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖若しくは分岐)を有するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖若しくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖若しくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系単量体(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレート及びポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
中でも、スチレン、ブチルアクリレートが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
2価のカルボン酸としては、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
また、3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物等が挙げられる。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は、直鎖であっても分岐であってもよい。本発明においては、分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
また、3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール及びベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
非晶性ポリエステル樹脂の合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を、単独で又は組み合わせて用いることができる。
次に、非晶性ポリウレタン樹脂について述べる。
ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する化合物との反応物である。種々のジオール及びジイソシアネート基を含有する化合物を組み合わせることにより、各種機能性を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。
ジイソシアネート基を含有する化合物としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、XDI、IPDI及びHDIがより好ましい。また、上記ジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
非晶性ポリウレタン樹脂に用いることのできるジオールとしては、前述した非晶性ポリエステルに用いることのできる2価のアルコールと同様のものを例示することができる。
本発明において、前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であることが必要となる。吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であることにより、トナー中で結晶性樹脂Aが結晶として存在している量が適度になり、定着時に非晶性樹脂Bを可塑する効果を得ることができる。吸熱量が1.0J/gに満たない場合、定着時に非晶性樹脂Bを可塑する効果が十分でなく、定着性が悪化してしまう。また定着時に吸熱量が20.0J/gを超える場合、結晶構造の割合が多くなり、一部で球晶又は、非常に結晶密度の高いドメインが発生してしまう。この場合、却って非晶性樹脂Bと結晶性樹脂Aの界面が小さくなり、非晶性樹脂Bの可塑効果が薄れてしまい、特に高速定着時の低温定着性が悪化してしまう。定着性の観点から3.0J/g以上15.0J/g以下であることが好ましい。
前記結晶性樹脂Aの融点は、低温定着性を達成するために50℃以上90℃以下であることが好ましい。
前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下であることで、低温定着性と耐久性の両立が可能となる。前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、1.0質量%以上であると、定着時に非晶性樹脂Bを可塑する効果が十分で、定着性が良化する。また前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、20.0質量%以下であると、結晶構造の割合が多くならず、球晶又は非常に結晶密度の高いドメインの発生が生じない。この場合、非晶性樹脂Bとの接触面積が保たれ、非晶性樹脂Bの可塑効果が得られて、特に高速定着時の低温定着性が良化する。定着性の観点から3.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
本発明において、前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と、前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が以下の関係式(1)を満たす。
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
SP値は、溶解度パラメータともいい、ある物質がある物質にどのくらい溶解するかを示す溶解性や親和性の指標として用いられる数値である。SP値が近いもの同士は溶解性や親和性が高く、SP値が離れているものは溶解性や親和性が低い。モノマーのSP値は、溶解度パラメータ計算ソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.03)により算出することができる。SP値の計算方法はハンセンの溶解度パラメータの理論に基づいて算出する。ハンセンの溶解度パラメータの理論では分子の蒸発のエネルギーを分散力によるエネルギー(分散項D)、双極子の相互作用によるエネルギー(分極項P)、水素結合によるエネルギー(水素結合項H)の3つに分け、それを3次元ベクトルとして扱う。SP値は、まず溶解度パラメータ計算ソフトウェアで分散項D、分極項P、水素結合項Hを算出し、その後各項を2乗した値の総和の平方根を取り、前記3次元ベクトルのスカラー量としたものである。ポリマーのSP値に関しては以下の方法で計算を行った。
(ホモポリマー、ランダムコポリマー)
(1):前記溶解度パラメータ計算ソフトウェアを用いて、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレアの前駆体となる各モノマーに由来するユニットごとのハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量を計算する。
ビニル樹脂に使用するモノマー:下記式(A)のように重合で開裂する二重結合に、計算結果に影響しない未知のハロゲンX2を付加した状態で計算する。
Figure 2018017786
ポリエステルに使用するモノマー:下記式(B)のように、縮合反応するモノマー中の官能基の内、1つを[−C(=O)O−X]または、[XC(=O)−O−]に変更し、もう1つの官能基をXに置換した状態で計算する。
Figure 2018017786
ポリウレタンに使用するモノマー:下記式(C)のように、縮合反応するモノマー中の官能基の内、1つを[−C(=O)N(−H)−X]または、[−N(−H)C(=O)−X]、もう一つの官能基をXに置換した状態で計算する。
Figure 2018017786
ポリウレアに使用するモノマー:下記式(D)のように、縮合反応するモノマー中の官能基の内、1つを[−N(−H)C(=O)N(−H)−X]、もう一つの官能基をXに置換した状態で計算する。
Figure 2018017786
(2):ポリマー中での各モノマーに由来するユニットのモル比率と、各ユニットのモル体積から各モノマーに由来するユニットのモル体積比率を計算する。
(3):上記モル体積比率と各ユニットのハンセンのSP値のD項を掛け合わせた値の総和をポリマーのハンセンのSP値のD項とした。P項、H項についても同様に計算する。
(4):前記(3)で計算したD項、P項、H項を二乗した総和について、平方根を取ってポリマーのSP値((J/cm31/2)とした。
(ブロックポリマー)
(1)前記溶解度パラメータ計算ソフトウェアを用いて、ブロックポリマー中の各ポリマー成分に対して、下記式(E)のように前駆体となる各モノマーに由来するユニットが整数比となる最小ポリマーのハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量を計算し、各ポリマー成分のハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量とした。
Figure 2018017786
(2):ブロックポリマー中の各ポリマー成分のモル比率とモル体積から、各ポリマー成分のモル体積比率を計算する。
(3):上記モル体積比率と各ポリマー成分のハンセンのSP値のD項を掛け合わせた値の総和をブロックポリマーのハンセンのSP値のD項とした。P項、H項についても同様に計算した。
(4):前記(3)で計算したD項、P項、H項を二乗した総和について、平方根を取ってブロックポリマーのSP値((J/cm31/2)とした。
前記結晶性樹脂A及び前記非晶性樹脂Bが前記式(1)を満たすことで、前記結晶性樹脂Aと前記非晶性樹脂Bの親和性を高くすることができる。その結果トナー中で前記結晶性樹脂Aが前記非晶性樹脂Bと均一に混合でき、連続的な樹枝状結晶を形成することが可能となる。|SPa−SPb|が2.0を超える場合、前記結晶性樹脂Aと前記非晶性樹脂Bの親和性が低く、マクロな相分離構造を形成しやすくなる。その結果、前記非晶性樹脂Bと前記結晶性樹脂Aの接触面積が低下する上、親和性が低いことによって前記結晶性樹脂Aによる前記非晶性樹脂Bの可塑効果も低くなり、低温定着性が悪化してしまう。低温定着性の観点から|SPa−SPb|≦1.5であることがより好ましい。
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶で観察されることが必要となる。前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶としてトナー中に存在することで、微視的には前記結晶性樹脂Aと前記非晶性樹脂Bがともに連続的な構造であり且つ、巨視的には均一に混合した状態となる。このような状態がトナー中に存在することで前記結晶性樹脂Aと前記非晶性樹脂Bの接触面積が多くなり、高速定着に瞬時にトナー全体が可塑して低温定着性が向上する。また前記非晶性樹脂も連続的な構造となるため、トナーの弾性も損なわれない。その結果、低温定着性と耐久性の両立が可能となる。前記結晶性樹脂Aがドット状のように連続構造でない場合、前記結晶性樹脂Aによる前記非晶性樹脂Bの可塑効果が低くなり、高速定着時に瞬時に組成変形が起きなくなることにより、低温定着性が損なわれてしまう。
また前記トナーの断面において、前記樹枝状結晶の平均太さが40nm以下であることが好ましい。ここで前記平均太さとは、トナー5個の断面において前記樹枝状結晶中の前記樹枝状結晶の枝の結晶成長方向と垂直方向の長さ、つまり枝の太さを任意で100点測定し、その平均値である。
前記平均太さが40nm以下であることで、前記結晶性樹脂Aの比表面積が大きくなり、効率的に前記非晶性樹脂Bの可塑が起きる。その結果、トナーの低温定着性が向上する。
前記トナーの断面において、分岐点を3つ以上有する樹枝状結晶が存在することが好ましい。トナーの断面に存在する分岐点の数はトナー切片の厚みから考えて、おおよそ1/60である。断面中に分岐点が3つ以上あることで、トナー粒子中にはおおよそ180個の分岐点が存在することとなる。断面に存在する分岐点を有する樹脂状結晶は、加熱時に結晶性が崩れやすくなると考えられる。そのため、前記分岐点を3つ以上有する樹枝状結晶を有するトナーは樹枝状結晶を高速定着時に可塑しやすく、低温定着性に優れる。さらに前記分岐点を10以上有することがより好ましい。
(ワックス)
本発明のトナーにおいてワックスを含有することが好ましい。ワックスとしては、トナーのDSC測定において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が前記結晶性樹脂Aの最大吸熱ピークのピーク温度よりも高いことが好ましい。
ワックスとして、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは定着時におけるトナー粒子からの染み出し性、及び離型性の観点から、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスが好ましい。
前記エステルワックスとは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、及び合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。
合成エステルワックスとしては、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。
長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式Cn2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールはCn2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
また、天然エステルワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス及びそれらの誘導体が挙げられる。
上記のうち、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールとによる合成エステルワックス、又は、天然エステルワックスが好ましい。さらに、本発明においては上記した直鎖構造に加えてエステルがモノエステルであることがより好ましい。また、本発明においては、炭化水素系ワックスを使用することも好ましい形態の一つである。
本発明の製造方法において、トナー中におけるワックスの含有量は、トナー中の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上15.0質量部以下である。
ワックスの含有量を上記の範囲に調整することによって、トナー粒子の離型性をさらに向上させることができ、定着部材が低温になった場合であっても転写紙の巻きつきが起こりにくくなる。さらに、トナー粒子表面のワックスの露出を適切な状態にすることができるため、耐熱保存性をさらに向上させることができる。
本発明においてワックスは、示差走査熱量測定(DSC)において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピークのピーク温度を有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。
(着色剤)
本発明のトナーにおいて、着色力を付与するために着色剤を含有させることが好ましい。使用される着色剤としては、有機顔料、有機染料、無機顔料、及び黒色用着色剤としてのカーボンブラック、及び磁性粉体が挙げられ、従来トナー粒子に用いられている着色剤を用いることができる。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168及び180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、並びに、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。また、使用する着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性及びトナー組成物中での分散性の点から選択される。
着色剤の含有量は、樹脂成分100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。黒色用着色剤としてカーボンブラックを用いる場合も同様に、樹脂成分100.0質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
(荷電制御剤)
本発明にトナーにおいて、必要に応じて荷電制御剤を樹脂粒子に含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化し、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、樹脂を負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物及びキレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナー粒子を正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物及びイミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、樹脂成分100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
(外添剤)
本発明のトナーにおいて、トナー粒子表面に無機微粒子を外添して用いることも可能である。前記無機微粒子は、トナー粒子の流動性を向上させる機能、トナー粒子の帯電を均一化する機能を有する。
前記無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子又はそれらの複合酸化物微粒子のような微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子の中でも、シリカ微粒子及び酸化チタン微粒子が好ましい。
シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粒子としては、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、及び塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子であってもよい。
また、無機微粒子としては、無機微粒子自体が疎水化処理されることによって、トナー粒子の帯電量の調整、環境安定性の向上、及び高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粒子がより好ましい。トナー粒子に外添された無機微粒子が吸湿すると、トナー粒子としての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる傾向にある。
無機微粒子の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物及び有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いられてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粒子が好ましい。より好ましくは、無機微粒子をシランカップリング剤で疎水化処理すると同時又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粒子が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
上記無機微粒子の添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
本発明のトナーの製造方法は以下の工程を必要とするものである。
a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して、樹脂溶液を調製する工程。
b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程。
c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程。
(a)の工程)
本発明の製造方法において、前記a)の工程における、結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して樹脂溶解液を調製する方法は、樹脂と有機溶媒とが均一に混合されるのであれば、特に限定されるものではなく、一般的な混合装置を用いて行うことができる。一般的な混合装置として、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機が挙げられる。また、前記a)の工程においては、必要に応じて、ワックス、着色剤、及び荷電制御剤等を混合してもよい。
ここで、前記有機溶媒は、前記結着樹脂を溶解しうる一般的な有機溶媒を使用することが可能であり、以下のものが挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジ−n−ブチルケトンのようなケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、及びメトキシブチルアセテートのようなエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチルセロソルブ、及びブチルセロソルブのようなエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒。
これらの内、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒がより好ましい。
また、有機溶媒の添加量は、トナー粒子を構成する樹脂由来の固形分量100.0質量部に対して、50.0質量部以上1000.0質量部以下であることが好ましく、100.0質量部以上800.0質量部以下であることがより好ましい。
(b)の工程)
本発明の製造方法において、前記b)の工程で、前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶解液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成することが必要である。前記混合方法はいかなる方法を用いてもよいが、一例としては、二酸化炭素を含有する分散媒体を入れた容器に、トナー組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
前記分散体を形成する方法は、如何なる方法を用いてもよい。一例としては、図1の装置を用いて、所望の粒径を有する液滴が形成できるように、撹拌速度および撹拌時間を設定する。撹拌速度および撹拌時間は使用する樹脂、樹脂溶液の粘度、二酸化炭素の導入量、撹拌装置の構造等に応じて適宜設定される。
また前記分散体を形成する際の前記容器の内部圧力は0.5MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。0.5MPa以上であることにより、安定した相分離状態を形成することが可能となる。
また、上記分散媒体の添加量は、トナー粒子を構成する樹脂由来の固形分量100.0質量部に対して、50.0質量部以上であることが好ましく、100.0質量部以上であることがより好ましい。
(c)の工程)
本発明の製造方法において、前記c)の工程で、前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことが必要である。具体的には、液滴が分散された前記分散媒体にさらに高圧状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに高圧状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
前記分散媒体と前記高圧状態の二酸化炭素の混合は、前記分散媒体に、これよりも高圧の二酸化炭素を加えてもよく、また、前記分散媒体を、これよりも低圧の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに高圧状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、高圧状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
前記高圧状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、前記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、前記高圧状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる高圧状態の二酸化炭素の量は、前記分散媒体の体積に対して1倍以上100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上50倍以下、最も好ましくは1倍以上30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した高圧状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、上述した製法において使用する有機溶媒や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
(分散剤)
本発明の製造方法において、必要に応じて分散剤を添加してもよい。添加方法としては前記a)の工程で分散剤を樹脂溶解液に添加する方法または、前記b)の工程で分散剤と前記二酸化炭素と混合した後に樹脂溶解液とする方法が挙げられる。
(粒径)
トナーは、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上7.0μm以下である。
トナーの重量平均粒径(D4)を上記範囲とすることで、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足することができる。
また、トナーの重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は、1.25未満であることが好ましい。
以下に、本発明に係る各物性値の測定方法を記載する。
<トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)、及び粗粉率の測定方法>
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)、及び粗粉率は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数25000にて行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180°ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、樹脂粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散については、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いて樹脂粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)、及び粗粉率を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。粗粉率は「分析/体積統計値(算術平均)」画面の10.1μm以上の粒子の体積%の総和である。
<融点の測定方法>
結晶性樹脂又はワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC) Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミニウム製の空パンを用いる。そのときの最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
非晶性樹脂のガラス転移温度は、前記融点の示差走査熱量測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、リバーシングヒートフロー曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(℃)である。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂およびその材料の数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
(1)測定試料の作製
試料とテトラヒドロフラン(THF)とを5.0mg/mLの濃度で混合し、室温にて5〜6時間放置した後、充分に振とうし、THFと試料を、試料の合一体がなくなるまで良く混ぜる。さらに、室温にて12時間以上静置する。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が72時間以上となるようにし、試料のテトラヒドロフラン(THF)可溶分を得る。
その後、耐溶剤性メンブランフィルター(ポアサイズ0.45〜0.50μm、マイショリディスクH−25−2[東ソー社製])でろ過して試料溶液を得る。
(2)試料の測定
得られた試料溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置 LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:Shodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807(昭和電工社製)の7連
移動相:THF
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μL
検出器:RI(屈折率)検出器
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure ChemicalCo.製又は東洋ソーダ工業社製の、分子量が6.0×102、2.1×103、4.0×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2.0×106、4.48×106のものを用いる。
<結晶性樹脂の含有割合(質量%)の算出>
樹脂中の結晶性樹脂の含有割合(質量%)は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、有機溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製したもの。
<結晶性樹脂の含有割合(質量%)>
上記の測定条件によって測定された1H−NMRチャートより、結晶性樹脂の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。同様に、非晶性樹脂の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択しこのピークの積分値S2を算出する。結晶性樹脂の含有割合は、上記積分値S1及び積分値S2を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2は着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
結晶性樹脂の含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
こうして得られた結晶性樹脂の含有割合(モル%)は、各成分の分子量により質量%に換算する。
<樹脂微粒子、ワックス微粒子及び着色剤微粒子の粒子径の測定方法>
本発明において、各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈有機溶媒としては水を選択する。
<TEM観察による結晶性樹脂の結晶状態の評価>
トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察および結晶性樹脂の評価は以下のようにして行う。トナー粒子を可視光硬化性包埋樹脂(D−800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRu染色を行った。その後、透過型電子顕微鏡(H7500、日立社製)により加速電圧120kVで観察を行った。観察するトナー断面は、重量平均粒子径から±2.0μm以内のものを5個選んで撮影を行った。非晶性樹脂に比べ、結晶性材料の結晶部はRuによる染色が進まず、TEM画像では白く見える。樹枝状結晶の分岐点は白い結晶が枝分かれしている部分を数え、トナー5個の平均から求める。ただし分岐点が100を超えるものについては「100以上」と一元化する。
樹脂状結晶の太さはTEM画像に画像処理ソフト(Photoshop 5.0、Adobe製)を用い、1個のトナー中で、樹枝状結晶の太さを非晶性樹脂と結晶性樹脂の界面が明確な点について無作為に100点計測し、その平均値とする。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 123.7質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.3質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は6200、重量平均分子量(Mw)は13100、融点は66.0℃であった。
<結晶性ポリエステル2〜4の合成>
結晶性ポリエステル1において、ジカルボン酸成分、ジオール成分を表1のように変更した以外は同様にして結晶性ポリエステル2〜4の合成を行った。得られた結晶性ポリエステル2〜4の物性を表2に示す。
Figure 2018017786
Figure 2018017786
<複合樹脂1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 49.9質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 35.9質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 100.0質量部
50.0℃まで加熱し、10時間かけてウレタン化反応を施した。その後、200.0質量部の結晶性ポリエステル1をTHF220.0質量部に溶解させた溶液を徐々に添加し、さらに50.0℃にて5時間撹拌を行った。その後、室温まで冷却し、有機溶媒であるTHFを留去することで、複合樹脂1を合成した。複合樹脂1の数平均分子量(Mn)は18000、重量平均分子量(Mw)は39500、融点は59.0℃であった。SP値は計算の結果18.5((J/cm31/2)であり、複合樹脂1中の結晶性樹脂成分の含有割合は計算の結果70.0質量%であった。得られた複合樹脂1の物性を表4に示す。
<複合樹脂2〜4の合成>
複合樹脂1の合成において表3のように変更した以外は同様にして複合樹脂2〜4の合成を行った。得られた複合樹脂2〜4の物性を表4に示す。
<複合樹脂5の合成>
・スチレン 50.0質量部
・メタクリル酸 20.0質量部
・ベへニルアクリレート 30.0質量部
・トルエン 150.0質量部
・重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.16質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。65℃まで加熱した後、5時間かけて重合を行った。室温まで冷却した後、溶媒であるトルエンを留去し、複合樹脂5を得た。得られた複合樹脂5の物性を表4に示す。
Figure 2018017786
Figure 2018017786
<非晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 187.0質量部
・エチレングリコール 26.0質量部
・テレフタル酸 103.3質量部
・無水トリメリット酸 8.3質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステル1(非晶性樹脂1)を合成した。非晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は4300、重量平均分子量(Mw)は9500、Tgは56.0℃であった。SP値は計算の結果20.0((J/cm31/2)であった。
<非晶性ポリエステル2、3の合成>
非晶性ポリエステル1において、ジカルボン酸成分、ジオール成分を表5のように変更した以外は同様にして非晶性ポリエステル2、3(非晶性樹脂2、3)の合成を行った。得られた非晶性ポリエステル2、3の物性を表6に示す。
Figure 2018017786
Figure 2018017786
<樹脂溶解液1の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを100.0質量部、複合樹脂1を15.0質量部、非晶性樹脂1を85.0質量部投入し、温度50.0℃に加熱して完全に溶解するまで撹拌を続け、樹脂溶解液1を調製した。得られた樹脂溶解液1は、内部温度40.0℃の保管庫にて保管した。
<樹脂溶解液2〜14の調製>
前記樹脂溶解液1の調製において表7のように変更した以外は同様にして樹脂溶解液2〜14の調製を行った。
Figure 2018017786
<重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 93.0質量部
・フマル酸 3.9質量部
・1,12−ドデカンジオール 103.1質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1を合成した。重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は12200、重量平均分子量(Mw)は24600、融点は83.0℃であった。
<有機ポリシロキサン化合物1の準備>
本発明においては、市販の片末端型ビニル変性有機ポリシロキサンを用意し、有機ポリシロキサン化合物1として使用した。有機ポリシロキサン化合物1の構造は、下記式(F)で表され、R2〜R5の詳細及び重合度nの値は、表8に示した。
Figure 2018017786
Figure 2018017786
<多官能モノマー1の準備>
本発明においては、市販の多官能モノマー(APG−400 新中村化学工業)を用意し、多官能モノマー1として使用した。多官能モノマー1の構造は、下記式(G)で表され、重合度m、nの合計は7、分子量は536である。
Figure 2018017786
<樹脂微粒子分散液1の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、ドデシル硫酸ナトリウム2.0質量部と、イオン交換水1600.0質量部を投入し、25.0℃にて完全に溶解するまで撹拌を続け、水系媒体1を調製した。
ついで、密閉容器に、以下の原料とトルエン160.0質量部を仕込み、70.0℃に加熱して完全に溶解し、モノマー溶液1を調製した。
・重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1 40.0質量部
・有機ポリシロキサン化合物1 25.0質量部
・スチレン 25.0質量部
・メタクリル酸 10.0質量部
・多官能モノマー1 2.0質量部
上記のモノマー溶液1を25.0℃まで降温した後、重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシピバレートを6.0質量部混合し、上記の水系媒体1に投入し、高出力超音波ホモジナイザー(VCX−750)で超音波を13分間照射(1秒間欠、25.0℃保持)することで、上記のモノマー溶液1の乳化液を調製した。
加熱乾燥した四口フラスコに、前記乳化液を仕込んだ。該乳化液を200rpmで撹拌しながら30分間窒素をバブリングした後、75.0℃にて6時間撹拌を行った。その後、上記乳化液を撹拌させた状態で空冷し、反応を停止させ、粗粒子状の樹脂の分散体を得た。
得られた粗粒子状の樹脂の分散体を、温度調節可能な撹拌タンクに投入し、ポンプを用いてクレアSS5(エム・テクニック社製)に35g/minの流量で移送して処理することにより、微粒子状の樹脂の分散体を得た。クレアSS5による前記分散体の処理条件は、クレアSS5の回転するリング状ディスクの最外周部の周速を15.7m/sとし、回転するリング状ディスクと固定されたリング状ディスクの間隙を1.6μmとした。また、撹拌タンクの温度は、クレアSS5で処理後の液温が40℃以下となるように調節した。
前記分散体中の微粒子状の樹脂とトルエンを16500rpmで2.5時間遠心分離機により分離した。その後、上澄みを除去することで、濃縮された樹脂微粒子の分散体を得た。
その後、撹拌装置のついたビーカーに、前記濃縮された樹脂微粒子の分散体を、高出力超音波ホモジナイザー(VCX−750)を用いて、アセトンに分散させることで、固形分濃度10.0質量%の樹脂微粒子分散液1を調製した。
<ワックス分散液1の調製>
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 17.0質量部
・ワックス分散剤 8.0質量部
(ポリエチレン15.0質量部の存在下で、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、及びアクリロニトリル10.0質量部を共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体)
・アセトン 75.0質量部
上記材料を、撹拌羽根を備えたガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱して、ワックスをアセトンに溶解させた。次いで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25.0℃にまで冷却させることにより、乳白色の溶液を得た。得られた溶液を1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間の分散を行い、ワックス分散液1を得た。ワックスの体積平均粒子径は150nm、融点は72.0℃であった。また、ワックス分散液1の固形分濃度は25.0質量%であった。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.ピグメントブルー15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。着色剤分散液1の固形分濃度は40.0質量%であった。
<混合液1の調製>
ビーカーに、
・樹脂溶解液1(固形分50.0質量%) 173.0質量部
・ワックス分散液1(固形分25.0質量%) 30.0質量部
・着色剤分散液1(固形分40.0質量%) 15.0質量部
を投入し、30.0℃に温調した後、TKホモディスパー(特殊機化社製)を用いて、3000rpmで1分間撹拌することにより混合液1を得た。
<混合液2〜14の調製>
前記混合液1の調製において樹脂溶解液1を樹脂溶解液2〜14に変更した以外は同様にして混合液2〜14の調製を行った。
[実施例1]
<トナー粒子1の製造>
図1に示す装置において、内部温度を予め30.0℃に調整した耐圧容器t2に、混合液1を218.0質量部仕込み、バルブV2を閉じて、混合液1を30.0℃に温調した。
次に内部温度を予め30.0℃に調整した耐圧容器t1に、樹脂微粒子分散液1(固形分10.0質量%)を86.5質量部仕込み、バルブV1、圧力調整バルブV3を閉じて、内部温度を30.0℃に調整した。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1から二酸化炭素を耐圧容器t1に導入し、内部圧力が4.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
次に、バルブV2を開き、ポンプp2を用いて耐圧容器t2内の混合液1を耐圧容器t1内に導入した。ここまでに導入した二酸化炭素の量は、質量流量計を用いて測定したところ、150.0質量部であった。
次に、耐圧容器t1内の温度が30.0℃であることを確認し、回転速度1000rpmで10分間撹拌して造粒を行い、分散体を調製した。次に、回転速度を300rpmまで落とし、0.5℃/分の降温速度で25.0℃まで冷却した。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプp1を用いて二酸化炭素を耐圧容器t1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を調節し、耐圧容器t1の内部圧力(ゲージ圧)を8.0MPaに、耐圧容器t1の内部温度を25.0℃に保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶媒回収容器t3に排出し、耐圧容器t1内から有機溶媒と二酸化炭素を除去した。
1時間後にポンプp1を停止し、バルブV1を閉じ、圧力調整バルブV3を少しずつ開いて、耐圧容器t1の内部圧力を大気圧まで減圧することにより、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
<トナー1の調製>
前記トナー粒子1の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(一次粒子の個数平均径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(一次粒子の個数平均径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、トナー1を得た。
得られたトナー1について、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を測定し、トナーのTEM断面の観察を行った。測定結果を表9に示す。表9には、結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量と|SPa−SPb|の値も示す。また、トナー1の低温定着性、高速定着性、光沢ムラ、耐久性の評価結果を表10に示す。なお、各評価における評価基準は以下のとおりである。
(低温定着性)
キヤノン製プリンターLBP5800を使用し、低温定着性の評価を行った。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価するトナーを充填したものを使用した。
上記カートリッジを常温常湿環境下(23℃、60%RH)に24時間放置した後、LBP5800のシアンステーションに装着し、その他のステーションにはダミーカートリッジを装着した。次いで転写紙(XEROX社製、75g/m2、A4サイズ紙)上に未定着のトナー画像を単色モードで、先端余白5mm、幅100mm、長さ28mmのベタ画像(単位面積あたりのトナー載り量0.6mg/cm2)を形成した。
定着試験は、上記カラーレーザプリンタから取り外し、定着温度、プロセススピードが調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行った。具体的な評価方法は、以下のとおりである。
常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、プロセススピードを200mm/sに、定着温度を130℃に設定し、上記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像を14.7kPa(150g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で10往復摺擦したときに、下記式で示される摺擦前後の濃度低下率ΔDL(%)を計算して定着性の指標とした。評価結果を表6に示す。画像濃度は、X−rite社製 反射濃度計(500 Series Spectrodensitometer)を用いて評価した。評価結果を表10に示す。本発明においてはAランクからCランクまでが、良好な画像定着性を持つと判断した。
ΔDL(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100
(評価基準)
A:ΔDLが、3.0%未満
B:ΔDLが、3.0%以上5.0%未満
C:ΔDLが、5.0%以上8.0%未満
D:ΔDLが、8.0%以上
(高速定着性)
低温定着性の評価においてプロセススピードを300mm/sに変更して、前記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像を14.7kPa(150g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で10往復摺擦したときに、下記式で示される摺擦前後の濃度低下率ΔDH(%)を計算して高速定着性の指標とした。評価結果を表10に示す。画像濃度は、X−rite社製 反射濃度計(500 Series Spectrodensitometer)を用いて評価した。評価結果を表10に示す。本発明においてはAランクからCランクまでが、良好な画像定着性を持つと判断した。
ΔDH(%)={(C1−C2)/(C1)}×100
1:プロセススピード200mm/sにおける摺擦後の画像濃度
2:プロセススピード300mm/sにおける摺擦後の画像濃度
(評価基準)
A:ΔDHが、10.0%未満
B:ΔDHが、10.0%以上20.0%未満
C:ΔDHが、20.0%以上30.0%未満
D:ΔDHが、30.0%以上
(光沢ムラ〉
上記プロセススピード300mm/sにおける摺擦前の画像について、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件にて各画像の任意の点10カ所を測定し、グロス値の変動係数を求めることで光沢ムラを評価した。評価結果を表10に示す。本発明においてはAランクからCランクまでが、良好な画像定着性を持つと判断した。
[評価基準(グロス値の変動係数)]
A:グロス値の標準偏差が2.0未満
B:グロス値の変動係数が2.0以上3.0未満
C:グロス値の変動係数が3.0以上4.0未満
D:グロス値の変動係数が4.0以上
(耐久性)
市販のキヤノン製プリンターLBP9200Cを使用し、耐久性の評価を行った。LBP9200Cは、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを260g充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
15℃、10%RHの低温低湿環境下にて、印字率が1%の画像を連続して出力した。1,00枚出力する毎にハーフトーン画像を出力し、規制部材へのトナー融着に起因する縦スジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。最終的に20,000枚の画像出力を行った。評価結果を表10に示す。
[評価基準]
A:20,000枚でも発生なし
B:18,000枚より大きく20,000枚以下で発生
C:15,000枚より大きく18,000枚以下で発生
D:15,000枚以下で発生
尚、本発明においてはCランクまでを良好な耐久性と判断した。
[実施例2〜12]
<トナー粒子2〜11の製造>
前記トナー粒子1の製造において混合液1を混合液2〜11に変更した以外は同様にしてトナー粒子2〜11の製造を行った。
<トナー粒子12の製造>
ノルマルヘキサン400.0質量部と86.5質量部の樹脂微粒子分散液1を容器にて混合し、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて5000rpmで5分撹拌した。その容器に混合液1を218.0質量部投入し、TKホモミキサーの回転数を10000rpmまで上げて10分間撹拌を続け、造粒を行った。
ついで、回転数を500rpmまで下げると同時に、ノルマルヘキサン2000.0質量部を投入し、5分間撹拌を続けた後、分散液を濾過し、ろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキをノルマルヘキサン2000.0質量部に再分散し、500rpmで5分間撹拌を続けた後、分散液を濾過した。この操作を2回繰り返して、得られたろ過ケーキを真空乾燥して、トナー粒子12を得た。
<トナー2〜12の調製>
前記トナー1の調製において、トナー粒子1をトナー粒子2〜12に変更した以外は同様にしてトナー2〜12の調製を行った。得られたトナー2〜12について、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を測定し、トナー粒子のTEM断面の観察を行った。測定結果を表9に示す。また、トナー2〜12の低温定着性、高速定着性、光沢ムラ、耐久性の評価結果を表10に示す。
[比較例1〜3]
<トナー粒子13〜15の製造>
前記トナー粒子1の製造において混合液1を混合液12〜14に変更した以外は同様にしてトナー粒子13〜15の製造を行った。
<トナー13〜15の調製>
前記トナー1の調製において、トナー粒子1をトナー粒子13〜15に変更した以外は同様にしてトナー13〜15の調製を行った。得られたトナー13〜15について、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を測定し、トナーのTEM断面の観察を行った。測定結果を表9に示す。また、トナー13〜15の低温定着性、高速定着性、光沢ムラ、耐久性の評価結果を表10に示す。
Figure 2018017786
Figure 2018017786
t1:耐圧容器、t2:耐圧容器、t3:溶媒回収容器、B1:ボンベ、p1:ポンプ、p2:ポンプ、V1:バルブ、V2:バルブ、V3:圧力調整バルブ

Claims (9)

  1. 結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
    結着樹脂が結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有し、
    前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
    前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が下記式(1)を満たし、
    |SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
    透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナー。
  2. 前記結晶性樹脂Aが、結晶性樹脂成分と非晶性樹脂成分とを化学的に結合している複合樹脂である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記複合樹脂が、結晶性樹脂成分を50.0質量%以上85.0質量%以下含有する請求項2に記載のトナー。
  4. 前記結晶性樹脂成分が、結晶性ポリエステルである請求項2又は3に記載のトナー。
  5. 前記複合樹脂が、ブロックポリマーである請求項2〜4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記トナーの断面において、前記樹枝状結晶の平均太さが40nm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記トナーの断面において、分岐点を3つ以上有する樹枝状結晶が存在する請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒を混合して、樹脂溶液を調製する工程、
    b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程、
    c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程
    を有するトナーの製造方法であって、
    前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
    前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm31/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm31/2)が以下の関係式(1)を満たし、
    |SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
    透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーの製造方法。
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