JP2018017786A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
低温定着性、耐熱保存性を同時に満たすための結着樹脂用の材料として、結晶性樹脂が近年用いられている。結晶性樹脂は樹脂を構成する高分子鎖が規則的に配列した構造を形成することが可能であり、融点(Tm)を持つことが知られている。そのため結晶の融点未満の温度領域では軟化しにくく、融点を境に結晶が融解して急激に粘度の低下を起こす性質(シャープメルト性)を有している。さらに結晶が融解した状態の結晶性樹脂は親和性の高い他の樹脂を可塑する効果を有している。
このことから、結晶性樹脂を非晶性の結着樹脂に添加して、トナーの低温定着性を向上させる検討が盛んに行われている。
特許文献1、特許文献2には、トナー粒子に結晶性ポリエステルを分散したトナーが提案されている。特許文献1では2種の結晶性樹脂がトナー中にそれぞれ小粒径で分散することで低温定着性に優れ且つ、定着画像の光沢ムラを抑制することが可能になるとしている。特許文献2ではトナー中に結晶性樹脂が針状に分散することで、離型性に優れ、低温定着性と耐オフセット性の両立を可能にするとしている。
特許文献3では、結晶性樹脂として結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを共重合した樹脂を用いてトナー中に分散したトナーが提案されている。この方法によると低温定着性を有し、定着後のトナーの弾性率の回復が早いことで耐擦性に優れた画像を形成できるとしている。
特許文献4では、非晶性樹脂のシェルを持ち結晶性ポリエステルが糸状に分散したトナーが提案されている。このトナーは、低温定着性に優れ、非晶性樹脂で覆われていることで、結晶性樹脂による帯電性の不安定化が起こりにくいとしている。
特許文献5では、結晶性樹脂を海部、非晶性樹脂が島部となる構造のトナーが提案されている。このトナーは結晶性樹脂を多量に含有することで、非晶性樹脂の影響を受けることなく、低温定着性に優れるとしている。
特許文献3に開示された手法に基づいて本発明者らが検討したところ、共重合体を結晶性樹脂として用いたトナーは、非晶性樹脂中で結晶性樹脂が粒子状に分散しやすく、非晶性樹脂が網目状に連続した構造を取り易いことが確認された。そのため、高速定着の場合に軽圧力部では十分に低温定着性が発揮されず、光沢ムラが発生しやすかった。
特許文献4に開示されたトナーでは、トナー中で結晶性樹脂が糸状に分散しているが、直鎖状であるがゆえに結晶同士が集合した状態を形成することがある。その結果、高速定着時に可塑効果が十分でなく、画像の光沢が低くなる可能性があった。
特許文献5に開示されたトナーは結晶性樹脂を主成分としており、非晶性樹脂の可塑効果は十分にあるが、非晶性樹脂の性質は発現しにくいために、高温でのオフセットが発生する場合があった。
本発明は、上述した従来の問題点を解決したトナー、すなわち高速定着時の低温定着性に優れ、定着した画像の光沢性に優れ且つ、光沢ムラがないトナーおよび製法を提供するものである。
前記結着樹脂が結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有し、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm3)1/2)と、前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm3)1/2)が以下の関係式(1)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面分析において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーに関する。
また本発明は、a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して、樹脂溶液を調製する工程、
b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程、
c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程
を有するトナーの製造方法であって、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm3)1/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm3)1/2)が以下の関係式(2)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(2)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状晶を形成していることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーである。
本発明において、結晶性樹脂Aとして結晶性ポリエステル、結晶性ビニル樹脂、結晶性ポリウレタン、及び結晶性ポリウレアを用いることができる。
本発明において、非晶性樹脂は特に限定されるものではなく、公知の樹脂を用いることができる。非晶性樹脂の具体例としては、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリウレタン樹脂、及び非晶性ビニル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、ウレタン、ウレア又はエポキシなどにより変性されていてもよい。
アルカジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン。
テルペン類、例えば、ピネン、リモネン、インデン。
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
SP値は、溶解度パラメータともいい、ある物質がある物質にどのくらい溶解するかを示す溶解性や親和性の指標として用いられる数値である。SP値が近いもの同士は溶解性や親和性が高く、SP値が離れているものは溶解性や親和性が低い。モノマーのSP値は、溶解度パラメータ計算ソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.03)により算出することができる。SP値の計算方法はハンセンの溶解度パラメータの理論に基づいて算出する。ハンセンの溶解度パラメータの理論では分子の蒸発のエネルギーを分散力によるエネルギー(分散項D)、双極子の相互作用によるエネルギー(分極項P)、水素結合によるエネルギー(水素結合項H)の3つに分け、それを3次元ベクトルとして扱う。SP値は、まず溶解度パラメータ計算ソフトウェアで分散項D、分極項P、水素結合項Hを算出し、その後各項を2乗した値の総和の平方根を取り、前記3次元ベクトルのスカラー量としたものである。ポリマーのSP値に関しては以下の方法で計算を行った。
(1):前記溶解度パラメータ計算ソフトウェアを用いて、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレアの前駆体となる各モノマーに由来するユニットごとのハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量を計算する。
(3):上記モル体積比率と各ユニットのハンセンのSP値のD項を掛け合わせた値の総和をポリマーのハンセンのSP値のD項とした。P項、H項についても同様に計算する。
(4):前記(3)で計算したD項、P項、H項を二乗した総和について、平方根を取ってポリマーのSP値((J/cm3)1/2)とした。
(1)前記溶解度パラメータ計算ソフトウェアを用いて、ブロックポリマー中の各ポリマー成分に対して、下記式(E)のように前駆体となる各モノマーに由来するユニットが整数比となる最小ポリマーのハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量を計算し、各ポリマー成分のハンセンのSP値(D,P,H)、モル体積、分子量とした。
(3):上記モル体積比率と各ポリマー成分のハンセンのSP値のD項を掛け合わせた値の総和をブロックポリマーのハンセンのSP値のD項とした。P項、H項についても同様に計算した。
(4):前記(3)で計算したD項、P項、H項を二乗した総和について、平方根を取ってブロックポリマーのSP値((J/cm3)1/2)とした。
本発明のトナーにおいてワックスを含有することが好ましい。ワックスとしては、トナーのDSC測定において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が前記結晶性樹脂Aの最大吸熱ピークのピーク温度よりも高いことが好ましい。
本発明のトナーにおいて、着色力を付与するために着色剤を含有させることが好ましい。使用される着色剤としては、有機顔料、有機染料、無機顔料、及び黒色用着色剤としてのカーボンブラック、及び磁性粉体が挙げられ、従来トナー粒子に用いられている着色剤を用いることができる。
本発明にトナーにおいて、必要に応じて荷電制御剤を樹脂粒子に含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化し、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子表面に無機微粒子を外添して用いることも可能である。前記無機微粒子は、トナー粒子の流動性を向上させる機能、トナー粒子の帯電を均一化する機能を有する。
a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して、樹脂溶液を調製する工程。
b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程。
c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程。
本発明の製造方法において、前記a)の工程における、結着樹脂、着色剤および有機溶媒とを混合して樹脂溶解液を調製する方法は、樹脂と有機溶媒とが均一に混合されるのであれば、特に限定されるものではなく、一般的な混合装置を用いて行うことができる。一般的な混合装置として、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機が挙げられる。また、前記a)の工程においては、必要に応じて、ワックス、着色剤、及び荷電制御剤等を混合してもよい。
本発明の製造方法において、前記b)の工程で、前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶解液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成することが必要である。前記混合方法はいかなる方法を用いてもよいが、一例としては、二酸化炭素を含有する分散媒体を入れた容器に、トナー組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
本発明の製造方法において、前記c)の工程で、前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことが必要である。具体的には、液滴が分散された前記分散媒体にさらに高圧状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに高圧状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
本発明の製造方法において、必要に応じて分散剤を添加してもよい。添加方法としては前記a)の工程で分散剤を樹脂溶解液に添加する方法または、前記b)の工程で分散剤と前記二酸化炭素と混合した後に樹脂溶解液とする方法が挙げられる。
トナーは、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上7.0μm以下である。
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)、及び粗粉率は、以下のようにして算出する。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180°ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、樹脂粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散については、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いて樹脂粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)、及び粗粉率を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。粗粉率は「分析/体積統計値(算術平均)」画面の10.1μm以上の粒子の体積%の総和である。
結晶性樹脂又はワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC) Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
非晶性樹脂のガラス転移温度は、前記融点の示差走査熱量測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、リバーシングヒートフロー曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(℃)である。
樹脂およびその材料の数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
試料とテトラヒドロフラン(THF)とを5.0mg/mLの濃度で混合し、室温にて5〜6時間放置した後、充分に振とうし、THFと試料を、試料の合一体がなくなるまで良く混ぜる。さらに、室温にて12時間以上静置する。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が72時間以上となるようにし、試料のテトラヒドロフラン(THF)可溶分を得る。
得られた試料溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置 LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:Shodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807(昭和電工社製)の7連
移動相:THF
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μL
検出器:RI(屈折率)検出器
樹脂中の結晶性樹脂の含有割合(質量%)は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、有機溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製したもの。
上記の測定条件によって測定された1H−NMRチャートより、結晶性樹脂の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。同様に、非晶性樹脂の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択しこのピークの積分値S2を算出する。結晶性樹脂の含有割合は、上記積分値S1及び積分値S2を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2は着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
結晶性樹脂の含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
本発明において、各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈有機溶媒としては水を選択する。
トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察および結晶性樹脂の評価は以下のようにして行う。トナー粒子を可視光硬化性包埋樹脂(D−800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRu染色を行った。その後、透過型電子顕微鏡(H7500、日立社製)により加速電圧120kVで観察を行った。観察するトナー断面は、重量平均粒子径から±2.0μm以内のものを5個選んで撮影を行った。非晶性樹脂に比べ、結晶性材料の結晶部はRuによる染色が進まず、TEM画像では白く見える。樹枝状結晶の分岐点は白い結晶が枝分かれしている部分を数え、トナー5個の平均から求める。ただし分岐点が100を超えるものについては「100以上」と一元化する。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 123.7質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.3質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は6200、重量平均分子量(Mw)は13100、融点は66.0℃であった。
結晶性ポリエステル1において、ジカルボン酸成分、ジオール成分を表1のように変更した以外は同様にして結晶性ポリエステル2〜4の合成を行った。得られた結晶性ポリエステル2〜4の物性を表2に示す。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 49.9質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 35.9質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 100.0質量部
50.0℃まで加熱し、10時間かけてウレタン化反応を施した。その後、200.0質量部の結晶性ポリエステル1をTHF220.0質量部に溶解させた溶液を徐々に添加し、さらに50.0℃にて5時間撹拌を行った。その後、室温まで冷却し、有機溶媒であるTHFを留去することで、複合樹脂1を合成した。複合樹脂1の数平均分子量(Mn)は18000、重量平均分子量(Mw)は39500、融点は59.0℃であった。SP値は計算の結果18.5((J/cm3)1/2)であり、複合樹脂1中の結晶性樹脂成分の含有割合は計算の結果70.0質量%であった。得られた複合樹脂1の物性を表4に示す。
複合樹脂1の合成において表3のように変更した以外は同様にして複合樹脂2〜4の合成を行った。得られた複合樹脂2〜4の物性を表4に示す。
・スチレン 50.0質量部
・メタクリル酸 20.0質量部
・ベへニルアクリレート 30.0質量部
・トルエン 150.0質量部
・重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.16質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。65℃まで加熱した後、5時間かけて重合を行った。室温まで冷却した後、溶媒であるトルエンを留去し、複合樹脂5を得た。得られた複合樹脂5の物性を表4に示す。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 187.0質量部
・エチレングリコール 26.0質量部
・テレフタル酸 103.3質量部
・無水トリメリット酸 8.3質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステル1(非晶性樹脂1)を合成した。非晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は4300、重量平均分子量(Mw)は9500、Tgは56.0℃であった。SP値は計算の結果20.0((J/cm3)1/2)であった。
非晶性ポリエステル1において、ジカルボン酸成分、ジオール成分を表5のように変更した以外は同様にして非晶性ポリエステル2、3(非晶性樹脂2、3)の合成を行った。得られた非晶性ポリエステル2、3の物性を表6に示す。
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを100.0質量部、複合樹脂1を15.0質量部、非晶性樹脂1を85.0質量部投入し、温度50.0℃に加熱して完全に溶解するまで撹拌を続け、樹脂溶解液1を調製した。得られた樹脂溶解液1は、内部温度40.0℃の保管庫にて保管した。
前記樹脂溶解液1の調製において表7のように変更した以外は同様にして樹脂溶解液2〜14の調製を行った。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 93.0質量部
・フマル酸 3.9質量部
・1,12−ドデカンジオール 103.1質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1を合成した。重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は12200、重量平均分子量(Mw)は24600、融点は83.0℃であった。
本発明においては、市販の片末端型ビニル変性有機ポリシロキサンを用意し、有機ポリシロキサン化合物1として使用した。有機ポリシロキサン化合物1の構造は、下記式(F)で表され、R2〜R5の詳細及び重合度nの値は、表8に示した。
本発明においては、市販の多官能モノマー(APG−400 新中村化学工業)を用意し、多官能モノマー1として使用した。多官能モノマー1の構造は、下記式(G)で表され、重合度m、nの合計は7、分子量は536である。
撹拌装置のついたビーカーに、ドデシル硫酸ナトリウム2.0質量部と、イオン交換水1600.0質量部を投入し、25.0℃にて完全に溶解するまで撹拌を続け、水系媒体1を調製した。
・重合性不飽和基を有する結晶性ポリエステル1 40.0質量部
・有機ポリシロキサン化合物1 25.0質量部
・スチレン 25.0質量部
・メタクリル酸 10.0質量部
・多官能モノマー1 2.0質量部
上記のモノマー溶液1を25.0℃まで降温した後、重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシピバレートを6.0質量部混合し、上記の水系媒体1に投入し、高出力超音波ホモジナイザー(VCX−750)で超音波を13分間照射(1秒間欠、25.0℃保持)することで、上記のモノマー溶液1の乳化液を調製した。
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 17.0質量部
・ワックス分散剤 8.0質量部
(ポリエチレン15.0質量部の存在下で、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、及びアクリロニトリル10.0質量部を共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体)
・アセトン 75.0質量部
上記材料を、撹拌羽根を備えたガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱して、ワックスをアセトンに溶解させた。次いで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25.0℃にまで冷却させることにより、乳白色の溶液を得た。得られた溶液を1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間の分散を行い、ワックス分散液1を得た。ワックスの体積平均粒子径は150nm、融点は72.0℃であった。また、ワックス分散液1の固形分濃度は25.0質量%であった。
・C.I.ピグメントブルー15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。着色剤分散液1の固形分濃度は40.0質量%であった。
ビーカーに、
・樹脂溶解液1(固形分50.0質量%) 173.0質量部
・ワックス分散液1(固形分25.0質量%) 30.0質量部
・着色剤分散液1(固形分40.0質量%) 15.0質量部
を投入し、30.0℃に温調した後、TKホモディスパー(特殊機化社製)を用いて、3000rpmで1分間撹拌することにより混合液1を得た。
前記混合液1の調製において樹脂溶解液1を樹脂溶解液2〜14に変更した以外は同様にして混合液2〜14の調製を行った。
<トナー粒子1の製造>
図1に示す装置において、内部温度を予め30.0℃に調整した耐圧容器t2に、混合液1を218.0質量部仕込み、バルブV2を閉じて、混合液1を30.0℃に温調した。
前記トナー粒子1の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(一次粒子の個数平均径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(一次粒子の個数平均径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、トナー1を得た。
キヤノン製プリンターLBP5800を使用し、低温定着性の評価を行った。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価するトナーを充填したものを使用した。
ΔDL(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100
A:ΔDLが、3.0%未満
B:ΔDLが、3.0%以上5.0%未満
C:ΔDLが、5.0%以上8.0%未満
D:ΔDLが、8.0%以上
低温定着性の評価においてプロセススピードを300mm/sに変更して、前記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像を14.7kPa(150g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で10往復摺擦したときに、下記式で示される摺擦前後の濃度低下率ΔDH(%)を計算して高速定着性の指標とした。評価結果を表10に示す。画像濃度は、X−rite社製 反射濃度計(500 Series Spectrodensitometer)を用いて評価した。評価結果を表10に示す。本発明においてはAランクからCランクまでが、良好な画像定着性を持つと判断した。
ΔDH(%)={(C1−C2)/(C1)}×100
C1:プロセススピード200mm/sにおける摺擦後の画像濃度
C2:プロセススピード300mm/sにおける摺擦後の画像濃度
A:ΔDHが、10.0%未満
B:ΔDHが、10.0%以上20.0%未満
C:ΔDHが、20.0%以上30.0%未満
D:ΔDHが、30.0%以上
上記プロセススピード300mm/sにおける摺擦前の画像について、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件にて各画像の任意の点10カ所を測定し、グロス値の変動係数を求めることで光沢ムラを評価した。評価結果を表10に示す。本発明においてはAランクからCランクまでが、良好な画像定着性を持つと判断した。
A:グロス値の標準偏差が2.0未満
B:グロス値の変動係数が2.0以上3.0未満
C:グロス値の変動係数が3.0以上4.0未満
D:グロス値の変動係数が4.0以上
市販のキヤノン製プリンターLBP9200Cを使用し、耐久性の評価を行った。LBP9200Cは、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを260g充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
A:20,000枚でも発生なし
B:18,000枚より大きく20,000枚以下で発生
C:15,000枚より大きく18,000枚以下で発生
D:15,000枚以下で発生
<トナー粒子2〜11の製造>
前記トナー粒子1の製造において混合液1を混合液2〜11に変更した以外は同様にしてトナー粒子2〜11の製造を行った。
ノルマルヘキサン400.0質量部と86.5質量部の樹脂微粒子分散液1を容器にて混合し、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて5000rpmで5分撹拌した。その容器に混合液1を218.0質量部投入し、TKホモミキサーの回転数を10000rpmまで上げて10分間撹拌を続け、造粒を行った。
前記トナー1の調製において、トナー粒子1をトナー粒子2〜12に変更した以外は同様にしてトナー2〜12の調製を行った。得られたトナー2〜12について、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を測定し、トナー粒子のTEM断面の観察を行った。測定結果を表9に示す。また、トナー2〜12の低温定着性、高速定着性、光沢ムラ、耐久性の評価結果を表10に示す。
<トナー粒子13〜15の製造>
前記トナー粒子1の製造において混合液1を混合液12〜14に変更した以外は同様にしてトナー粒子13〜15の製造を行った。
前記トナー1の調製において、トナー粒子1をトナー粒子13〜15に変更した以外は同様にしてトナー13〜15の調製を行った。得られたトナー13〜15について、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を測定し、トナーのTEM断面の観察を行った。測定結果を表9に示す。また、トナー13〜15の低温定着性、高速定着性、光沢ムラ、耐久性の評価結果を表10に示す。
Claims (9)
- 結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
結着樹脂が結晶性樹脂Aと非晶性樹脂Bを含有し、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm3)1/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm3)1/2)が下記式(1)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナー。 - 前記結晶性樹脂Aが、結晶性樹脂成分と非晶性樹脂成分とを化学的に結合している複合樹脂である請求項1に記載のトナー。
- 前記複合樹脂が、結晶性樹脂成分を50.0質量%以上85.0質量%以下含有する請求項2に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂成分が、結晶性ポリエステルである請求項2又は3に記載のトナー。
- 前記複合樹脂が、ブロックポリマーである請求項2〜4のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記トナーの断面において、前記樹枝状結晶の平均太さが40nm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記トナーの断面において、分岐点を3つ以上有する樹枝状結晶が存在する請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂Aの結着樹脂に対する割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
- a)結晶性樹脂Aおよび非晶性樹脂Bを含有する結着樹脂、着色剤および有機溶媒を混合して、樹脂溶液を調製する工程、
b)前記樹脂溶液及び二酸化炭素を容器に投入し、前記樹脂溶液の液滴が前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程、
c)前記容器に二酸化炭素を流通させ、前記液滴および前記分散媒体に含まれる前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記容器から除くことでトナー粒子を得る工程
を有するトナーの製造方法であって、
前記トナーの示差走査熱量計による測定において、前記結晶性樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が1.0J/g以上20.0J/g以下であり、
前記結晶性樹脂AのSP値SPa((J/cm3)1/2)と前記非晶性樹脂BのSP値SPb((J/cm3)1/2)が以下の関係式(1)を満たし、
|SPa−SPb|≦2.0 ・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面において、前記結晶性樹脂Aが樹枝状結晶を形成していることを特徴とするトナーの製造方法。
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