電子写真プロセスにおける定着工程は、転写材上のトナーが、加圧、加温されることにより転写材に定着される工程である。その過程において、トナーの定着に要する時間は数十ミリ秒程度と非常に短い。従って、定着性能を判断するためには、溶融速度を考慮する必要があり、低温定着においては低温にて溶融速度がある程度速いことが重要になり、耐ホットオフセット性については高温にて低温時と同等の溶融速度を保つ必要があると考えられる。
従来、トナーの定着性能を判断する指標としては、軟化点、溶融粘度、貯蔵弾性率及び損失弾性率が利用されてきた。しかしながら、これらの物性値は、時間の因子を十分に考慮したものではなかった。また、これらの物性値の測定方法は、熱量を十分に与えた状態から測定を開始する方法であるため、加熱の初期におけるトナーの溶融挙動を把握することは難しかった。
そこで、本発明者らは、熱と圧力を加えた初期段階においてトナーが動き出す速度をトナーの溶融速度と考えて、定荷重押し出し方式の細管式レオメータの測定条件を工夫することで、時間の因子を加味した測定試料であるトナーに用いられる材料(特に、樹脂)の溶融速度の測定を行った。本測定法について以下に説明する。なお、詳細な測定方法については後述する。
前記測定法は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、シリンダに充填した測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダ内部を加熱して測定試料を溶融し、シリンダ底部のダイ穴から溶融された測定試料を押し出し、この際の温度又は時間と、ピストン降下量(変位)との関係を示す流動曲線を得ることができる。
前記細管式レオメータにおける試験モードには、一般にトナー分野で多用されている一定の速度で昇温しながら測定を行う昇温法の他、一定の温度条件下にて測定を行う定温法があるが、本発明では定温法を利用する。通常の定温法では、目的の温度まで加熱されたシリンダに測定試料を投入した後、3分から5分程度の予熱を行う。この予熱によって、試料の溶融が十分進んだ状態で測定を開始して、時間とピストン降下量(変位)から流動曲線を得る。すなわち、この方法では、一定温度条件下における測定試料の溶融粘度を求められるものであって、測定前の予熱によって試料にすでに加熱された状態となっていることから、実際の定着工程の初期におけるトナーの挙動を十分に再現できるものではなかった。一方、本発明においては、予熱によるトナーへの影響をできるだけ抑えるため、試料投入後から測定開始までの時間を15秒とした。これにより、測定試料に熱が加わり、溶融が開始するまでの時間も含めた溶融速度の測定が可能となる。
すなわち、予熱を可能な限り短縮することで、実際の定着工程における短時間の加圧・加熱条件下におけるトナー挙動と相関するような物性値を測定することが可能となった。
本発明では、結着樹脂Aの溶融速度と、シェル相に含有される樹脂Bの溶融速度を制御することにより、低温定着性を有しながら、耐ホットオフセット性と、幅広い温度領域にわたり高く安定したグロスとを確保したトナーとなることを見出した。
すなわち、本発明は、結着樹脂A、着色剤及びワックスを含有するコアと、樹脂Bを含有するシェル相を有するトナー粒子を含有するトナーであって、前記トナーの示差走査熱量計(DSC)による測定において、吸熱ピークの吸熱量が30.0J/g以上125.0J/g以下であり、前記結着樹脂A及び樹脂Bはいずれも結晶性を有する樹脂を含有し、前記結着樹脂Aの示差走査熱量計(DSC)による測定において、最大吸熱ピークのピーク温度TpA(℃)が50℃以上85℃以下であり、試料を加圧するピストンの試料に対する加圧面の面積が1.0cm2、試料が押し出されるダイ穴の直径が1.0mmの定荷重押し出し方式の細管式レオメータによる、前記結着樹脂A及び樹脂Bの流動特性測定において、温度TpA+5℃でピストンによって圧力5.0MPaで試料に対して加圧した際、加圧開始からピストンの変位が2.0mmになるまでの時間を結着樹脂Aの場合はtA(TpA+5℃)、樹脂Bの場合はtB(TpA+5℃)としたとき、
10[s]≦tA(TpA+5℃)≦100[s] (1)
50[s]≦tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)≦2000[s] (2)
であることを特徴とするトナーである。
本発明における結着樹脂A及び樹脂Bは、ともに結晶性を有する樹脂(以降、単に結晶性樹脂とも称する)を含有する。
結晶性樹脂は、明確な融点ピークを有する樹脂であり、分子鎖が規則的に配列することにより、融点よりも低温においてはほとんど軟化しないといった性質を有する。また、融点を越えると結晶が急激に融解し、それに伴った急激な粘度の低下が起こる。従って、結着樹脂A及び樹脂Bともに結晶性を有する樹脂を含有することで、良好な低温定着性を示す。
また、本発明における結着樹脂Aは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、最大吸熱ピークのピーク温度TpA(℃)が50℃以上85℃以下である。前記TpAがこの範囲であることで、良好な低温定着性を有するトナーとなる。TpAが50℃よりも低いと、トナーの良好な耐熱保存性が得にくくなる。また、85℃よりも大きいと、良好な低温定着性が得にくくなる。
更に、本発明は、試料を加圧するピストンの試料に対する加圧面の面積が1.0cm2、試料が押し出されるダイ穴の直径が1.0mmの定荷重押し出し方式の細管式レオメータにおいて、ピストンによって圧力5.0MPaで試料に対して加圧した際、温度TpA+5℃で試料として前記結着樹脂Aおよび樹脂Bをそれぞれ用いて測定したとき、加圧開始からピストンの変位が2.0mmになるまでの時間を、それぞれtA(TpA+5℃)、tB(TpA+5℃)としたとき、以下の関係式を満たすことを特徴とする。
10[s]≦tA(TpA+5℃)≦100[s] (1)
50[s]≦{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}≦2000[s] (2)
tA(TpA+5℃)は温度TpA+5℃における結着樹脂Aの溶融速度を表している。また、tB(TpA+5℃)は温度TpA+5℃における樹脂Bの溶融速度を表している。ここで、tA(TpA+5℃)が上記式(1)の範囲内にあることで、結着樹脂Aの溶融速度が適正に保たれるため、良好な低温定着性を有するトナーとなる。tA(TpA+5℃)が10よりも小さいと、特に高温での結着樹脂Aの溶融速度が速くなりすぎるため、良好な耐ホットオフセット性が得にくくなる。また、tA(TpA+5℃)が100よりも大きいと、結着樹脂Aの溶融速度が遅くなりすぎるため、良好な低温定着性が得にくくなる。更に、定着時の粘度の低下が遅いため、定着時にトナーが適切に潰れなくなり、グロスが低下する。
また、{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}が上記式(2)の範囲内にあることで、低温定着性と耐ホットオフセット性、幅広い温度領域に渡って高く安定したグロスを有するトナーとなる。これは以下の理由によると推察される。すなわち、結着樹脂Aが上記式(1)の範囲内にあると、トナーの溶融速度は十分に早いが、高温での定着時には溶融速度が速くなりすぎるため、粘度が低下し、ホットオフセットが発生しやすくなる。しかしながら、結着樹脂Aよりも溶融速度が適度に遅い樹脂Bをシェル相に有することで、高温での定着においてもトナーの粘度が適度に保たれ、耐ホットオフセット性が向上すると考えられる。
{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}が50よりも小さいと、結着樹脂Aの溶融速度と樹脂Bの溶融速度がほぼ同じになってしまう。そのため、高温での定着時に樹脂Bの溶融速度が速くなりすぎ、良好な耐ホットオフセット性が得にくくなる。また、{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}が2000よりも大きいと、樹脂Bの溶融速度が遅くなりすぎ、結着樹脂Aの溶融による低温定着性を阻害してしまうため、良好な低温定着性が得にくくなる。また、定着時にトナーがつぶれにくくなるため、グロスが低下しやすくなる。{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}のより好ましい下限値は、100以上である。また、{tB(TpA+5℃)−tA(TpA+5℃)}の好ましい上限値は、1000以下である。
更に、本発明のトナーは、前記トナーの示差走査熱量計(DSC)による測定において、吸熱ピークの吸熱量が30.0J/g以上125.0J/g以下である。ここで、前記吸熱量は、前記トナーを測定した際に検出されるすべての吸熱ピークの総吸熱量である。
上述したように、結着樹脂Aおよび樹脂Bはそれぞれ結晶性を有する樹脂を含有し、DSCによる測定において明確な吸熱ピークを示す。従って、結晶性樹脂の結晶性が維持されたままトナーとなった場合には、トナーにおいても明確な吸熱ピークを示す。
前記吸熱量が30.0J/gよりも小さいと、トナー中の結晶性の割合が少ないことになる。これは、結着樹脂Aおよび樹脂B中の結晶性の割合が少ないか、もしくはトナーを製造する過程においてトナー組成物中に含有されていた結晶性樹脂の結晶性が失われたことを意味する。前者の場合、前記式(1)および式(2)を満足することが困難になり、十分な低温定着性が発揮されなくなる。また、後者の場合、結着樹脂Aおよび樹脂Bの効果を十分に発揮できないため、低温定着性及び/又は耐ホットオフセット性が低下する。また、前記吸熱量が125.0J/gを超えると、トナー中の結晶性の割合が大きくなりすぎ、良好な耐ホットオフセット性を得にくくなる。
本発明における結着樹脂Aについて述べる。
本発明における結着樹脂Aは、結着樹脂Aとしての結晶性を有する樹脂を含有する。上述したように、結晶性樹脂とは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂を意味している。従って、融点よりも低温ではほとんど軟化せず、融点を越えると融解が生じ急激に軟化する。とりわけ、結晶性樹脂は結晶性ポリエステルであることが好ましい。
本発明における結着樹脂Aとしての結晶性を有する樹脂として使用可能な結晶性ポリエステルについて述べる。
結晶性ポリエステルは、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび多価カルボン酸を原料として用いるのが好ましい。さらに、前記脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。
本発明にて好適に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール。これらのうち、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。
また、脂肪族ジオールとして、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール。
前記多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸が好ましく、特に直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらのうち、セバシン酸、アジピン酸、1,10−デカンジカルボン酸あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば以下を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
前記結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、前記酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができる。例えば、直接重縮合、エステル交換法を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
前記結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
前記結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、例えば以下を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドのチタン触媒。ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドのスズ触媒。
前記結晶性ポリエステルの融点としては、50℃以上85℃以下が好ましい。
本発明における結着樹脂Aは、結晶性を有する樹脂を含有するが、その他の樹脂として非晶性樹脂も含有していてもよい。
本発明における結着樹脂Aに使用可能な前記非晶性樹脂について述べる。非晶性樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂やポリスチレンといったビニル系樹脂が挙げられるが、その限りではない。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシの変性を行っても良い。なかでも、弾性維持の観点から、前記ポリエステル樹脂、前記ポリウレタン樹脂が好適に使用される。
前記非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂に用いるモノマーとしては、例えば、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような2価または3価以上のカルボン酸と、2価または3価以上のアルコールが挙げられる。これらのモノマー成分の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。2価のカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸の脂肪族不飽和ジカルボン酸。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール。3価以上のアルコールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整の目的で、酢酸、安息香酸の如き1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールの如き1価のアルコールも使用することができる。
前記非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分を用いて従来公知の方法により合成することができる。
前記非晶性樹脂としてのポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート基を含有するジイソシアネート成分との反応物であり、ジオール成分、ジイソシアネート成分の調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。
前記ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)が挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、12以下(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、15以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、炭素数6以上、15以下の芳香族ジイソシアネートが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、炭素数8以上15以下の芳香族炭化水素ジイソシアネートであり、特に好ましいものはHDI及びIPDI、XDIである。
前記したジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
前記ジオール成分としては、例えば以下のものが挙げられる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール)、アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール)、ビスフェノール類(ビスフェノールA)、前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物。前記アルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
当該結着樹脂Aにおける非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上、130℃以下であることが好ましく、より好ましくは、50℃以上100℃以下である。この範囲であることで、溶融速度が適正な範囲になりやすく、定着領域が広くなりやすい。
更に、本発明においては、結着樹脂Aとして、結晶構造をとりうる部位、すなわち結晶性樹脂成分と、結晶構造をとりえない部位、すなわち非晶性樹脂成分とが化学的に結合したブロックポリマーを使用することも好ましい形態のひとつである。
前記ブロックポリマーは、前記結晶性樹脂成分(A)と前記非晶性樹脂成分(B)とのAB型ジブロックポリマー、ABA型トリブロックポリマー、BAB型トリブロックポリマー、ABAB・・・・型マルチブロックポリマー、どの形態も使用可能である。
本発明において、前記ブロックポリマーを調製する方法としては、前記結晶性樹脂成分からなる結晶部を形成する成分と前記非晶性樹脂成分からなる非晶部を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)、結晶部を形成する成分、および非晶部を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)を用いることができる。
本発明における前記ブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択して前記ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分ともにポリエステル樹脂の場合は、各成分を別々に調製した後、結合剤を用いて結合することにより調製することが出来る。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合、反応がスムーズに進行する。反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することが出来る。
一方で、結晶性樹脂成分が前記結晶性ポリエステルであり、非晶性樹脂成分が前記ポリウレタン樹脂の場合では、各成分を別々に調製した後、前記結晶性ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つ前記結晶性ポリエステルおよび前記ポリウレタン樹脂を構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することによっても合成が可能である。前記ジオールおよびジイソシアネート濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタン樹脂となり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタン樹脂のイソシアネート末端と結晶性ポリエステルのアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、前記ブロックポリマーとすることができる。
前記ブロックポリマーにおける、結晶性樹脂成分の割合は、30.0質量%以上、90.0質量%以下であることが好ましい。より好ましくは50.0質量%以上、90.0質量%以下である。
本発明において、結着樹脂A中の結晶性樹脂成分の割合は、50.0質量%以上、90.0質量%以下であることが好ましい。
次に、樹脂Bについて述べる。
前記樹脂Bは、シェル相に含有される。本発明において、シェル相はコアの表面に少なくとも存在していることが必要であり、好ましくはシェル相がコアの表面に均一に、かつ緻密に形成されていることである。
前記樹脂Bは、結晶性を有する樹脂を含有し、前記樹脂Bの示差走査熱量計(DSC)による測定において、最大吸熱ピークのピーク温度TpB(℃)が50℃以上85℃以下であることが好ましい。TpBが上記範囲内であることで、上記式(2)式を満たしやすくなる。
前記樹脂Bに含有される結晶性を有する樹脂に関して以下に述べる。
前記樹脂Bにおける結晶性を有する樹脂において、結晶構造を導入する形態は特に限定されないが、結晶構造をとり得る部位を有するビニル系モノマーと、他のビニル系モノマーb2を共重合させて得られるビニル系樹脂であることが好ましい。結晶構造をとり得る部位として、直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニルモノマー、ポリエステル部位を有するビニル系モノマーが挙げられる。中でも、結晶構造をとり得るポリエステル部位を有するビニルモノマーb1が好ましく用いられる。従って、前記樹脂Bは、結晶構造をとり得るポリエステル部位を有するビニルモノマーb1と、その他のビニル系モノマーb2とを共重合させて得られるビニル系樹脂であることが好ましい。
前記結晶構造をとりうるポリエステル部位とは、それ自体が多数集合すると、規則的に配列し結晶性を発現する部位であり、すなわち結晶性ポリエステル成分を意味する。
結晶性ポリエステル成分としては、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび多価カルボン酸を原料として用いるのが好ましい。さらに、前記脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。
本発明にて好適に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、上述した前記結着樹脂Aに使用可能な前記結晶性ポリエステルを構成するモノマーが好ましく用いられる。
上記結晶性ポリエステル成分を分子構造に含むビニルモノマーb1の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)ヒドロキシル基を有するビニルモノマー又はカルボキシル基を有するビニルモノマーと前記結晶性ポリエステル成分を、エステル化反応させる方法。
(2)イソシアネート基を有するビニルモノマーと前記結晶性ポリエステル成分を、ウレタン化反応させる方法。
(3)ヒドロキシル基を含有するビニルモノマーと前記結晶性ポリエステル成分を、結合剤であるジイソシアネートとそれぞれウレタン化反応させる方法。
ここで、結晶性ポリエステル成分の導入をカルボキシル基とのエステル化反応によって行う場合、あるいはイソシアネート基とのウレタン化反応によって行う場合、前記結晶性ポリエステル成分は、アルコール末端であることが好ましい。そのため、前記結晶性ポリエステル成分は、ジオールとジカルボン酸のモル比(ジオール/ジカルボン酸)が1.02以上、1.20以下であることが好ましい。一方、結晶性ポリエステル成分の導入をヒドロキシル基とのエステル化反応によって行う場合は酸末端であることが好ましく、ジオールとジカルボン酸のモル比はその逆であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基を含有するビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル。これらの中でも、特に好ましいものはヒドロキシエチルメタアクリレートである。
前記カルボキシル基を含有するビニルモノマーとしては、炭素数30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びその無水物が好ましく、例えば、以下のものが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、イサコン酸、ケイ皮酸、並びにその無水物。これらの中でも、特に好ましいものはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸である。
前記イソシアネート基を含有するビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。これらの中でも、特に好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
前記ジイソシアネートとしては、上述した前記結着樹脂Aに使用可能な前記ジイソシアネートが好ましく用いられる。
本発明において、樹脂Bの共重合に用いられる全モノマー量に対して、前記ビニル系モノマーb1の割合が20.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。この範囲であることで、上記した低温定着性と耐ホットオフセット性を更に両立しやすくなる。
前記樹脂Bにおける結晶性を有する樹脂において、前記結晶構造をとり得る部位を有するポリエステル部位を分子構造に含むビニル系モノマーb1と共重合するその他のビニル系モノマーb2は、通常の樹脂材料のモノマーを用いることができる。以下に例示するが、この限りでない。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
更に、前記樹脂Bにおける結晶性を有する樹脂は、下記化学式(1)で示す有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーを使用することも好ましい形態のひとつである。式中、R1はアルキル基を表し、R2、R3は特に限定されないが、それぞれアルキル基、アルキレン基であることが好ましい。当該アルキル基及びアルキレン基の炭素数はそれぞれ1以上3以下であることが好ましく、R1の炭素数は1であることが更に好ましい。また、nは重合度であり、2以上の整数である。好ましくは100以下、更に好ましくは15以下の整数である。
化学式(1)
中でも、樹脂Bにおける結晶性を有する樹脂は、結晶構造をとり得る部位を有するポリエステル部位を分子構造に含むビニル系モノマーb1と、スチレン、メタクリル酸、有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーb2とを共重合して得られるビニル系樹脂であることが好ましい。
また、前記樹脂Bにおける結晶性を有する樹脂において、結晶構造をとり得る部位として結晶性ポリエステル成分を分子構造に導入する方法として、以下の方法も挙げられる。
(a)ヒドロキシル基を有するビニルモノマーまたはカルボキシル基を有するビニルモノマーを用いて共重合体を作製した後、ヒドロキシル基と前記結晶性ポリエステル成分とをエステル化反応させる方法。
(b)イソシアネート基を有するビニルモノマーを用いて共重合体を作製した後、イソシアネート基と前記結晶性ポリエステル成分とをウレタン化反応させる方法。
本発明のトナー粒子における樹脂Bは、前記結晶性を有する樹脂の他に、非晶性樹脂を含有してもよい。前記非晶性樹脂は、上述した前記結着樹脂Aに使用可能な前記非晶性樹脂が好ましく用いられる。
本発明の前記樹脂Bにおける前記非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上130℃以下であることが好ましく、より好ましくは、50℃以上100℃以下である。
本発明における前記樹脂B中の前記樹脂Bとしての結晶性を有する樹脂の割合は、特に制限されないが、樹脂Bに対して70.0質量%以上であることが好ましく、前記樹脂Bとしての結晶性を有する樹脂以外の樹脂をシェル相として使用しないことが特に好ましい。結晶性を有する樹脂の割合が上記範囲内であることによって、耐ホットオフセット性と耐熱保存性がさらに良好となる。
本発明において、前記トナー粒子が、前記コア100質量部に対して、前記樹脂Bを2.0質量部以上、15.0質量部以下含有することが好ましい。トナー粒子中の前記樹脂Bの含有量を上記とすることで、樹脂Bの耐ホットオフセット性の効果を発揮しやすくなり、低温定着性と耐ホットオフセット性を更に両立しやすくなる。
本発明におけるシェル相を形成する前記樹脂Bのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、20,000以上100,000以下であることが好ましい。前記重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であることで、シェル相が適度な硬度を持ち、耐久性が向上する。
本発明のトナーに用いられるトナー粒子は、ワックスを含有する。前記ワックスとしては、特に限定はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスである。また、本発明に用いられるエステルワックスは、3官能以上のエステルワックスであることが好ましく、更に好ましくは4官能以上のエステルワックス、特に好ましくは6官能以上のエステルワックスである。
3官能以上のエステルワックスは、例えば3官能以上の酸と長鎖直鎖飽和アルコールの縮合、または3官能以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸の合成によって得られる。
本発明にて使用可能な3官能以上のアルコールとしては以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、これらの縮合物として、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリン等のいわゆるポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリスペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエルスリトール、又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
本発明にて使用可能な長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式CnH2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
本発明にて使用可能な3官能以上の酸としては以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸。
本発明にて使用可能な長鎖直鎖飽和アルコールはCnH2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
本発明において、トナー中におけるワックスの含有量は、好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上15.0質量%である。ワックスの含有量が上記範囲内であることによって、トナーの離型性が向上し、かつ、耐熱保存性も良好となる。
本発明においてワックスは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であることによって、耐熱保存性、低温定着性、耐オフセット性がさらに良好となる。
本発明のトナーは、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体が挙げられ、そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来る。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくはトナーに対し、1質量%以上20質量%以下添加して用いられる。着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量はトナーに対し、40質量%以上、150質量%以下であることが好ましい。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
前記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
前記荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
本発明のトナー粒子の製造方法は、コアシェル構造を形成する種々の方法が挙げられる。前記シェル相の形成は、前記コアの形成工程と同時であっても良いし、前記コアを形成した後に行っても良い。より簡便という点から、コアの製造工程とシェル相の形成工程を同時に行うことが好ましい。
シェル相を形成する方法は、何ら制限を受けるものではなく、例えば前記コアの形成後に前記シェル相を設ける場合には、前記コア及び前記シェル相を形成する樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、その後前記コア表面に樹脂微粒子を凝集、吸着させる方法がある。
また、前記コアの形成工程と同時に前記シェル相を形成する場合には、シェル相を形成する樹脂微粒子を分散させた分散媒体に、コアを形成する結着樹脂を有機媒体に溶解させて得た樹脂組成物を分散させたのちに、前記有機媒体を除去してトナー粒子を得る溶解懸濁法が好ましく用いられる。
本発明のトナー粒子は、非水系の媒体中で製造されたものであることが特に好ましい。従って、本発明のトナー粒子の製造においては、分散媒体として高圧状態の二酸化炭素を用いる溶解懸濁法が特に好適である。
すなわち、本発明においては、トナー粒子が、(I)結着樹脂及び着色剤を、有機溶媒を含有する媒体中に溶解または分散させた樹脂組成物を得る工程、(II)前記樹脂組成物を、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子と高圧状態の二酸化炭素とを有する分散媒体中に分散させ、分散体を得る工程、(III)前記分散体から有機溶媒を除去する工程を経ることによって形成したトナー粒子であることが好ましい。
ここで、高圧状態の二酸化炭素とは、圧力1.0MPa以上20.0MPa以下の二酸化炭素を示す。また、液体、あるいは超臨界状態の二酸化炭素を単体で分散媒体として用いてもよく、他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。この場合、高圧状態の二酸化炭素と有機溶媒が均一相を形成することが好ましい。また、本発明に用いる二酸化炭素の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
以下に、本発明のトナー粒子を得る上で好適な、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を用いるトナー粒子の製造法を例示して説明する。
まず、結着樹脂を溶解することのできる有機溶媒中に、着色剤、ワックスおよび必要に応じて他の添加物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させる。次に、こうして得られた溶解あるいは分散液(以下、単に樹脂組成物という)を、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させて油滴を形成する。
このとき、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中には、分散剤を分散させておく必要がある。分散剤としては、シェル相を形成するための樹脂Bを含有する樹脂微粒子があげられるが、他成分を分散剤として混合してもよい。例えば、無機微粒子分散剤、有機微粒子分散剤、それらの混合物のいずれでもよく、目的に応じて2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子分散剤としては、例えばアルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの無機粒子が挙げられる。
前記有機微粒子分散剤としては、樹脂Bの他、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロースおよびこれらの混合物が挙げられる。これらは、架橋構造が形成されていてもよい。
前記分散剤は、そのまま用いてもよいが、造粒時における前記油滴表面への吸着性を向上させるため、各種処理によって表面改質したものを用いてもよい。具体的には、シラン系、チタネート系、アルミネート系のカップリング剤による表面処理や、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理が挙げられる。油滴の表面に吸着した分散剤としての有機微粒子は、トナー粒子形成後もそのまま残留するため、分散剤として用いた樹脂Bおよび他の樹脂は、トナー粒子のシェル相を形成する。
本発明において、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子の粒径は、体積平均粒子径で30nm以上、300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上、200nm以下である。樹脂微粒子の粒径が小さ過ぎる場合、造粒時の油滴の安定性が低下する傾向にある。大き過ぎる場合は、油滴の粒径を所望の大きさに制御することが困難になる。
本発明において、前記分散剤を高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、前記分散剤と高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を仕込んだ容器に、前記分散剤を有機溶媒に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、本発明において、前記樹脂組成物を高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、前記分散剤を分散させた状態の高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を入れた容器に、前記樹脂組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、前記樹脂組成物を仕込んだ容器に、前記分散剤を分散させた状態の高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体に導入してもよい。
本発明において、前記高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体は、単一相であることが重要である。前記樹脂組成物を高圧状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、油滴中の有機溶媒の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素の相と有機溶媒の相が分離した状態で存在することは、油滴の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。したがって、前記分散媒体の温度や圧力、高圧状態の二酸化炭素に対する前記樹脂組成物の量は、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、前記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(油滴形成のし易さ)や前記樹脂組成物中の構成成分の前記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、前記樹脂組成物中の結着樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、前記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど前記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した油滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、前記成分が前記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。したがって、本発明のトナー粒子の製造において、前記分散媒体の温度は10℃以上、40℃以下の温度範囲であることが好ましい。
また、前記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1.0MPa以上、20.0MPa以下であることが好ましく、2.0MPa以上、15.0MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
こうして造粒が完了した後、油滴中に残留している有機溶媒を、高圧状態の二酸化炭素を介して除去することができる。具体的には、油滴が分散された前記分散媒体にさらに高圧状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに高圧状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
前記分散媒体と前記高圧状態の二酸化炭素の混合は、前記分散媒体に、この分散媒体よりも高圧の二酸化炭素を加えてもよく、また、前記分散媒体を、これよりも低圧の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに高圧状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、高圧状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
前記高圧状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、前記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、前記高圧状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる高圧状態の二酸化炭素の量は、前記分散媒体の体積に対して1倍以上、100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上、50倍以下、最も好ましくは1倍以上、30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した高圧状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、本発明において使用する有機溶媒や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
本発明において、前記トナー粒子には流動性向上剤として、無機微粉体を添加することが好ましい。トナー粒子に添加する無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。該無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。また、無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることがより好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
前記無機微体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上、8.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、5.0μm以上、7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナーを用いることは、ハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。
更に、本発明のトナーの重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1は1.25以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以下である。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、数平均分子量(Mn)が8,000以上40,000以下、重量平均分子量(Mw)が15,000以上60,000以下であることが好ましい。この範囲であることで、トナーに適度な粘弾性を付与することが可能である。Mnが8,000、Mwが15,000よりも小さいと、トナーが軟らかくなりすぎ、耐熱保存性が低下する傾向にある。さらに、定着画像からトナーが剥離しやすくなる。Mnが40,000、Mwが60,000よりも大きいと、トナーが硬くなりすぎ、定着性を低下させやすくなる傾向にある。Mnのより好ましい範囲は、10,000以上20,000以下、Mwのより好ましい範囲は、20,000以上50,000以下である。さらに、Mw/Mnは6以下であることが好ましい。Mw/Mnのより好ましい範囲は、3以下である。
本発明のトナーおよびトナー材料の各種物性についての測定方法を以下に記す。
<結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、シェル樹脂、及びワックスの融点、並びに、結晶性ポリエステルの吸熱量及び半値幅、トナーの吸熱量の測定方法>
結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、シェル樹脂、及びワックスの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行った。
・昇温速度:10℃/min
・測定開始温度:20℃
・測定終了温度:200℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料2mgを精秤し、アルミ製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミ製のパンを用い、測定する。測定は、一度200℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。結晶性ポリエステルおよびブロックポリマーの場合は1度目の昇温過程において、ワックスの場合は2度目の昇温過程において、温度20℃から200℃の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点とする。前記最大吸熱ピークとは、ピークが複数存在する場合には、最も吸熱量の大きいピークをいう。更に、結晶性ポリエステルにおいて、吸熱ピークの吸熱開始温度から吸熱終了温度までの吸熱量をΔH(J/g)とし、前記最大吸熱ピークのピーク高さの半値の温度幅を半値幅(℃)とする。
トナーの吸熱量とは、トナーを前記測定法により測定したときの1度目の昇温過程において、温度20℃から200℃の範囲におけるDSC曲線から得られたすべての吸熱ピークの吸熱量の総和を示す。
<定荷重押し出し方式の細管式レオメータにおけるtA(TpA+5℃)、tB(TpA+5℃)の測定方法>
tA(TpA+5℃)、およびtB(TpA+5℃)の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、シリンダに充填した測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダ内部を加熱して測定試料を溶融し、シリンダ底部のダイ穴から溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量(変位)と時間との関係を示す流動曲線を得ることができる。
測定試料は、0.22gのサンプルを、25℃の環境下において、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて12MPaにて、60秒間圧縮成型し、底面積1.0cm2(直径11.3mm)、厚さ2.2mmの円柱状としたものを用いる。
tA(TpA+5℃)およびtB(TpA+5℃)を測定するときのCFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
・試験モード:定温法
・測定温度:TpA+5℃
・ピストンの底面積(測定加圧面の面積):1.0cm2
・試験荷重(ピストン荷重):5.0MPa
・予熱時間:0秒
・ダイの穴の直径:1.0mm
・ダイの長さ:1.0mm
・測定開始:シリンダに前記測定試料を投入し、ピストンをセットしてから15秒後に測定(加圧)を開始する。
前記測定により作製された流動曲線から、変位が2.0mmに到達する時間を読み取り、これをtA(TpA+5℃)およびtB(TpA+5℃)とする。
なお、測定サンプルが複数の樹脂である場合、例えば結着樹脂Aが結晶性を有する樹脂と非晶性樹脂の混合物の場合、事前に溶融混合し、凍結粉砕後のサンプルを使用する。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
本発明において、トナー等のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量(Mn、Mw)は、GPCにより、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をTHFに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
・カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0ml/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作製した分子量校正曲線を使用する。
<着色剤粒子、ワックス粒子、シェル用樹脂微粒子の粒子径の測定方法>
樹脂微粒子等の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定にて測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈溶媒としては水を選択した。
<非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
本発明におけるTgの測定方法は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を用いて以下の条件にて測定を行った。
・モジュレーションモード
・昇温速度:0.5℃/分
・モジュレーション温度振幅:±1.0℃/分
・測定開始温度:25℃
・測定終了温度:130℃
昇温は1度のみ行い、「Reversing Heat Frow」を縦軸にとることでDSCカーブを得、オンセット値を本発明におけるガラス転移温度(Tg)とした。
<トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 124.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の物性を表1−2に示す。
<結晶性ポリエステル2乃至14の合成>
結晶性ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを表1−1のように変更する以外はすべて同様にして、結晶性ポリエステル2乃至14を得た。結晶性ポリエステル2乃至14の物性を表1−2に示す。
<非晶性樹脂1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 117.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 83.0質量部
・アセトン 200.0質量部
50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるアセトンを留去し、非晶性樹脂1を得た。得られた非晶性樹脂1は、Mnが4,400、Mwが20,000、Tgが120℃であった。
<非晶性樹脂2の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
33.0質量部
・テレフタル酸 21.0質量部
・無水トリメリット酸 1.0質量部
・フマル酸 3.0質量部
・ドデセニルコハク酸 12.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、215℃にて5時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂2を合成した。非晶性樹脂2のMnは7,200、Mwが43,000、Tgは63℃であった。
<非晶性樹脂3の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・スチレン 74.0質量部
・ブチルアクリレート 6.0質量部
・アクリル酸 3.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 80.0質量部
・アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル 0.3質量部
ビーカーに、上記を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製し、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下ろうとに導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、THF80.0質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下ろうとを取り付け、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびTHF10.0質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、溶媒であるTHFを留去することで、非晶性樹脂3を合成した。非晶性樹脂3のMnは5300、Mwは15,000、Tgは59℃であった。
<ブロックポリマー1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 48.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 27.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 80.0質量部
50℃まで加熱し、10時間かけてウレタン化反応を施した。その後、結晶性ポリエステル1、225.0質量部をTHF220.0質量部に溶解させた溶液を徐々に添加し、更に50℃にて5時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、溶媒であるTHFを留去することで、ブロックポリマー1を合成した。ブロックポリマー1の物性を表2に示す。
<ブロックポリマー2乃至12の合成>
ブロックポリマー1の合成において、各種材料の仕込みを表2のように変更する以外はすべて同様にして、ブロックポリマー2乃至12を得た。ブロックポリマー2乃至12の物性を表2に示す。
<ブロックポリマー溶液1乃至12の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0質量部、ブロックポリマー1乃至12、500.0質量部を投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、ブロックポリマー溶液1乃至12を調製した。
<結晶性樹脂溶液の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、THF500.0質量部、結晶性ポリエステル14を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、結晶性樹脂溶液を調製した。
<非晶性樹脂溶液の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0質量部、非晶性樹脂1を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、非晶性樹脂溶液を調製した。
<結晶性樹脂分散液1の調製>
・結晶性ポリエステル6 50.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 245.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径が200nm、固形分量が20質量%の結晶性樹脂分散液1を得た。
<結晶性樹脂分散液2の調製>
・結晶性ポリエステル7 50.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 245.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径が210nm、固形分量が20質量%の結晶性樹脂分散液2を得た。
<非晶性樹脂分散液の調製>
非晶性樹脂2、50.0質量部を酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることにより、非晶性樹脂分散液を調製した。
<ビニル変性ポリエステル単量体1の合成>
・結晶性ポリエステル10 100.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 100.0質量部
攪拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記材料を仕込み40℃にて溶解させた。
2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製 カレンズMOI)を6.2質量部滴下し、40℃にて2時間反応させ、ビニル変性ポリエステル単量体1溶液を得た。続いて、ロータリーエバポレーターによりTHFを40℃にて5時間減圧除去を行い、ビニル変性ポリエステル単量体1を得た。
<ビニル変性ポリエステル単量体2乃至4の合成>
ビニル変性ポリエステル単量体1の合成において、結晶性ポリエステル10を結晶性ポリエステル11乃至13に変更し、ビニル変性ポリエステル単量体2乃至4を得た。
<シェル用樹脂分散液1の調製>
・ビニル変性有機ポリシロキサン 15.0質量部
(X−22−2475、信越化学工業社製)
・ビニル変性ポリエステル単量体1 40.0質量部
・スチレン(St) 37.5質量部
・メタクリル酸(MAA) 7.5質量部
・アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル 0.3質量部
・ノルマルヘキサン 80.0質量部
ビーカーに、上記を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製し、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下ろうとに導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン400質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下ろうとを取り付け、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびノルマルヘキサン20.0質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却することにより、シェル用樹脂1からなるシェル用樹脂分散液1を得た。シェル用樹脂分散液1の物性を表3に示す。また、シェル用樹脂分散液1の溶媒を留去し、シェル用樹脂1の物性を測定した。結果を表3に示す。
なお、ビニル変性有機ポリシロキサン(X−22−2475)の構造は、化学式(1)においてR1、R2およびR4はメチル基、R3はプロピレン基、重合度nは3である。
<シェル用樹脂分散液2乃至17の調製>
シェル用樹脂分散液1の調製において、ビニル変性有機ポリシロキサン、ビニル変性ポリエステル単量体、およびその他単量体の添加量を表3に示すものに変更し、シェル用樹脂2乃至17からなるシェル用樹脂分散液2乃至17を得た。シェル用樹脂分散液2乃至17の物性、およびシェル用樹脂2乃至17の物性を表3に示す。
<シェル用樹脂分散液18の調製>
・結晶性ポリエステル6 50.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 245.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理を2時間行い、シェル用樹脂分散液18を得た。
<シェル用樹脂分散液19の調製>
非晶性樹脂2、50.0質量部を酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることにより、シェル用樹脂分散液19を調製した。
<シェル用樹脂分散液20の調製>
非晶性樹脂3、50.0質量部を酢酸エチル200.0質量部に溶解させ、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)3.0質量部をイオン交換水200.0質量部とともに加えた。40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて8000rpmにて10分攪拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることにより、シェル用樹脂分散液20を調製した。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が200nm、固形分量が40質量%の着色剤分散液1を得た。
<着色剤分散液2の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 50.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き体積平均粒径が220nm、固形分量が20質量%の着色剤分散液2を得た。
<ワックス分散液1の調製>
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 16.0質量部
・ワックス分散剤(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体) 8.0質量部
・アセトン 76.0質量部
上記を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することによりワックスをアセトンに溶解させた。
ついで、系内を50rpmの条件にて緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間の分散を行った後、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が270nm、固形分量24質量%のワックス分散液1を得た。
<ワックス分散液2の調製>
・パラフィンワックスHNP10(融点:75℃、日本精蝋社製) 30.0質量部
・カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 270.0質量部
以上を混合し95℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分量が10質量%のワックス分散液2を得た。
<実施例1>
(トナー粒子1の製造)
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、および圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1にシェル用樹脂微粒子分散液1の29.0質量部を仕込み、内部温度を25℃に調整した。次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を耐圧容器T1に導入し、内部圧力が3.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。一方、樹脂溶解液タンクT2にブロックポリマー溶液、ワックス分散液1、着色剤分散液1、アセトンを仕込み、内部温度を25℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を1000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶解液タンクT2の内容物を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は5.0MPaとなった。
尚、T2への材料仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶液1 154.0質量部
・ワックス分散液1 29.0質量部
・着色剤分散液1 15.0質量部
・アセトン 35.0質量部
・二酸化炭素 250.0質量部
なお、導入した二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定した。
樹脂溶解液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、1000rpmで10分間撹拌して造粒を行った。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を10.0MPaに設定し、造粒タンクT1の内部圧力を10.0MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶剤回収タンクT3に排出し、有機溶媒と二酸化炭素を分離した。
造粒タンクT1内への二酸化炭素の導入は、最初に造粒タンクT1に導入した二酸化炭素質量の15倍量に到達した時点で停止した。この時点で、有機溶媒を含む二酸化炭素を、有機溶媒を含まない二酸化炭素で置換する操作は完了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
(トナー1の調製工程)
上記トナー粒子1の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(一次粒子の個数平均径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(一次粒子の個数平均径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明のトナー1を得た。トナー1の特性を表5に示す。
<トナーの評価方法>
〈定着性の評価方法〉
市販のキヤノン製プリンターLBP5300を使用し、低温定着性の評価を行った。LBP5300は、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを160g充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
厚紙A4用紙(「プローバーボンド紙」:105g/m2、フォックスリバー社製)上に縦2.0cm、横15.0cmの未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から2.0cmの部分に形成した。
定着試験は、上記カラーレーザープリンターから取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行った。具体的な評価方法は、以下のとおりである。
常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、プロセススピードを260mm/sに設定し、温度を130℃から180℃の範囲にて5℃刻みに上昇させながら、上記未定着画像の各温度における定着画像を得た。得られた定着画像に対し、低温定着性、耐ホットオフセット性、グロス性能の評価を行った。
(低温定着性)
上記定着画像のうち、130℃にて定着した画像を用いて低温定着性の評価を行った。
14.7kPa(150g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で10往復摺擦したときに、下記式で示される摺擦前後の濃度低下率ΔD(%)を定着性の指標とした。評価結果を表5に示す。画像濃度は、X−rite社製 反射濃度計(500 Series Spectrodensitemeter)を用いて評価した。評価結果を表6に示す。
ΔD(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100
[評価基準]
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上10%未満
D:10%以上
(耐ホットオフセット性)
上記定着画像にて、ホットオフセット(以下、H.O.とも称する)を目視にて評価し、耐ホットオフセット性を評価した。評価結果を表6に示す。
[評価基準]
A:180℃においてもホットオフセット発生なし
B:170℃以上180℃未満においてホットオフセット発生
C:160℃以上170℃未満においてホットオフセット発生
D:160℃未満においてホットオフセット発生
(グロス性能の評価〉
上記定着画像のうち、ホットオフセットが発生しなかった画像について、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件にて各画像の任意の点3カ所の平均値を測定し、各温度のグロス値とした。グロス値は、最高値、およびグロス値の差が5以内の温度領域を評価した。評価結果を表6に示す。
[評価基準(最高値)]
A:グロス値の最高値が25以上
B:グロス値の最高値が20以上25未満
C:グロス値の最高値が15以上20未満
D:グロス値の最高値が15未満
[評価基準(グロス値の差が5以内の温度領域)]
A:グロス値の差が5以内の温度領域が50℃以上
B:グロス値の差が5以内の温度領域が40℃以上50℃未満
C:グロス値の差が5以内の温度領域が20℃以上40℃未満
D:グロス値の差が5以内の温度領域が20℃未満
〈耐熱保存性の評価方法〉
10gのトナーを100mlの絶縁性の樹脂製カップに入れ、50℃にて30日放置した後、目視で評価した。評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:まったく凝集物は確認されず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップを軽く5回振る程度で崩れる状態であり、特に問題とならない。
C:凝集気味であるが、指でほぐすと簡単にほぐれる状態であり、実使用に耐えうる。
D:凝集が激しく発生。
E:固形化しており、使用できない。
<実施例2乃至20>
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明のトナー2乃至20を得た。得られたトナー2乃至20の特性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較例1乃至3、6乃至10>
実施例1において、トナー粒子1の製造工程におけるアセトン、二酸化炭素を除く各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較用トナー1乃至3、および6乃至10を得た。得られた比較用トナー1乃至3、および6乃至10の特性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較例4>
(比較用トナー粒子4の製造工程)
・結晶性樹脂分散液1 60.0質量部
・非晶性樹脂分散液 240.0質量部
・着色剤分散液2 28.8質量部
・ワックス分散液2 45.0質量部
・10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液 1.5質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中に混合し、IKA社製ウルトラタラックスT50にて混合分散した後、攪拌しながら45℃にて60分間保持した。その後、シェル用樹脂分散液18、10.5質量部、およびシェル用樹脂分散液19、3.3質量部を緩やかに添加し、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱した。昇温までの間、適宜水酸化ナトリウム水溶液を追加し、pHが5.5よりも低くならないようにした。その後、96℃にて5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更にイオン交換水3Lに再分散し、300rpmで15分間攪拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.0になったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続し、比較用トナー粒子4を得た。
(比較用トナー4の製造工程)
上記比較用トナー粒子4の100質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粒子1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粒子0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明の比較用トナー4を得た。比較用トナー4の特性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較例5>
比較例4において、比較用トナー粒子4の製造工程における各種材料の仕込み量を表4に示すものに変更した以外は、比較例4と同様にして、本発明の比較用トナー5を得た。比較用トナー5の特性を表5に、評価結果を表6に示す。