JP6316079B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、分散媒体として液状又は超臨界状態の二酸化炭素を用いる樹脂粒子の製造方法が提案されている。この方法では、樹脂溶液による液滴を含む分散体を形成した後、さらに液体又は超臨界状態の二酸化炭素を導入して有機溶剤を抽出することで脱溶剤を行い、粒子を得る。この方法によれば、粒子の作製後に脱圧することで容易に粒子から分散媒体を分離することが可能であり、洗浄工程、乾燥工程を必要とせず、低エネルギーでの製造が可能となる。
また近年、電子写真装置においても省エネルギー化が大きな技術的課題として考えられ、定着装置にかかる熱量の大幅な削減が求められている。従って、トナーにおいては、より低エネルギーでの定着が可能であること、いわゆる「低温定着性」のニーズが高まっている。
低温での定着を可能にするための手法としては、トナー中の結着樹脂のガラス転移点(Tg)を低下させることが挙げられる。しかしながら、Tgを低下させることは、トナーの耐熱保存性を失わせることに繋がるため、この手法ではトナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは困難であるとされている。
この低温定着性と耐熱保存性を両立させるための結着樹脂用の材料として、結晶性樹脂が近年特に注目されている。結晶性樹脂は樹脂を構成する高分子鎖が規則的に配列した構造を形成することが可能であり、融点(Tm)を持つことが知られている。そのため結晶の融点未満の温度領域では軟化しにくく、融点を境に結晶が融解して急激に粘度の低下を起こす性質(シャープメルト性)を有している。
特許文献2では、二酸化炭素を用いた溶解懸濁法による樹脂粒子の製造において、結晶性樹脂を結着樹脂に用いて低温定着を達成する方法が提案されている。また、特許文献2では、前記樹脂溶液による液滴を含む分散体から有機溶剤を除去する際に、前記分散体の温度を前記樹脂溶液の示差走査熱量測定(DSC)における降温時の発熱ピーク温度以下に冷却することも提案されている。この方法によれば、前記樹脂の前記有機溶剤への溶解性が低下して、前記液滴中の有機溶剤が分散媒体側に吐き出されることによって効率的に脱溶剤を行うことができ、さらに低エネルギーでの製造が可能になるとされている。
結晶性樹脂を含む樹脂溶液を冷却すると、ある温度以下では前記結晶性樹脂による結晶析出を生じる。粒子の異形化による円形度の低下は、脱溶剤を行う際に冷却したことで、液滴中で結晶性樹脂の不均一な析出が起こったことによるものと推察される。
また粒度分布のブロード化は、温度低下に伴って液滴が収縮して、安定性を保てなくなり、液滴同士の合一が生じたことによって起こったものと考えられる。
本発明は、上述した従来の問題点を解決したトナーの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、結晶性樹脂を結着樹脂に用いたトナーの製造において、結晶性樹脂が溶解した状態から効率的に脱溶剤を行うことで、粒度分布がシャープで、円形度が高く、形状の均一なトナーを簡便かつ効率的に得ることのできる製造方法を提供するものである。
a)結晶構造を取り得る部位を有する樹脂Aを含有する結着樹脂と、前記結着樹脂を溶解し得る有機溶剤とを、下記式(1)で示される温度T1(℃)で混合して、前記有機溶剤に前記結着樹脂を溶解し、樹脂組成物を調製する工程、
b)前記樹脂組成物及び二酸化炭素を容器に投入し、前記容器内を下記式(2)で示されるゲージ圧力P1(MPa)、及び下記式(3)で示される温度T2(℃)に、下記温度−圧力線を越えないように調節し、前記樹脂組成物を分散することにより、前記樹脂組成物による液滴を調製する工程、及び、
c)前記容器内を、下記式(4)で示されるゲージ圧力P2(MPa)、及び下記式(5)で示される温度T3(℃)に調節し、前記条件を保持しながら二酸化炭素を流通させ、前記液滴に含まれる前記有機溶剤を除去し、前記容器から排出してトナー粒子を得る工程。
Tp0<T1 ・・・(1)
1.0≦P1≦8.0 ・・・(2)
Tp1<T2≦Tp0 ・・・(3)
P1≦P2 ・・・(4)
(T2−5)≦T3≦(T2+5)・・・(5)
T3<Tp2 ・・・(6)
ここで、Tp0(℃)は、前記樹脂Aを前記有機溶剤に溶解した樹脂溶液を入れた容器を、絶対圧力0.1MPaの条件下で、前記有機溶剤の沸点Tb(℃)より5℃低い温度から、0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度を示す。
また、Tp1(℃)は、前記樹脂溶液を入れた容器内を、前記Tp0(℃)より10℃高い温度に調整し、二酸化炭素を導入してゲージ圧力1.0MPa以上15.0MPa以下の範囲で1.0MPa刻みに加圧した後に容器を密閉し、各圧力条件において0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度と、その時の圧力とをプロットした温度−圧力図において、各プロットを結んで得られる低温側に凸となる温度−圧力線上の圧力P1(MPa)における温度を示す。
本発明のトナーの製造方法に使用する結着樹脂は、結晶構造を取り得る部位を有する樹脂Aを含有する。結晶構造を取り得る部位を有する樹脂とは、その樹脂を構成する高分子鎖が多数集合したときに規則的に配列することによって結晶性を発現する樹脂である。以下、結晶構造を取り得る部位を有する樹脂を、単に結晶性樹脂ともいう。
この結晶性樹脂を、二酸化炭素を用いた溶解懸濁法に適用する場合、前記結晶性樹脂は有機溶剤に溶解した樹脂溶液の状態で前記二酸化炭素を含有する媒体中に分散させ、前記樹脂溶液による液滴を作る。
ところが、前記樹脂溶液は、大気圧下(絶対圧力0.1MPa)においてある温度以下に冷やされると、前記結晶性樹脂が結晶化を起こし、析出することがあるため、温度管理には注意が必要である。
本発明者らは、前記二酸化炭素によって圧力を大気圧より高くした環境下で、前記樹脂溶液を冷却する場合、前記結晶性樹脂の結晶化に伴う析出温度が大気圧における析出温度よりも低くなる圧力域が存在することを見出した。
したがって、上記圧力域においては、通常の大気圧下では結晶性樹脂が析出を生じるような低温度条件でも、溶解した状態を保ったまま液滴を形成することが可能となる。
二酸化炭素を用いた溶解懸濁法によるトナーの製造方法において、前記圧力域においてより低温で分散を行い、極力温度変化をさせずに脱溶剤工程へと繋げることで、従来の温度変化を伴う脱溶剤工程を有するトナーの製造方法に比べ、粒子形状が均一な球体であり、粒径がそろったトナー粒子を得ることを明らかにし、本発明に至った。
a)結晶構造を取り得る部位を有する樹脂Aを含有する結着樹脂と、前記結着樹脂を溶解し得る有機溶剤とを、下記式(1)で示される温度T1(℃)で混合して、前記有機溶剤に前記結着樹脂を溶解し、樹脂組成物を調製する工程、
b)前記樹脂組成物及び二酸化炭素を容器に投入し、前記容器内を下記式(2)で示されるゲージ圧力P1(MPa)、及び下記式(3)で示される温度T2(℃)に、下記温度−圧力線を越えないように調節し、前記樹脂組成物を分散することにより、前記樹脂組成物による液滴を調製する工程、及び、
c)前記容器内を、下記式(4)で示されるゲージ圧力P2(MPa)、及び下記式(5)で示される温度T3(℃)に調節し、前記条件を保持しながら二酸化炭素を流通させ、前記液滴に含まれる前記有機溶剤を除去し、前記容器から排出してトナー粒子を得る工程。
Tp0<T1 ・・・(1)
1.0≦P1≦8.0 ・・・(2)
Tp1<T2≦Tp0 ・・・(3)
P1≦P2 ・・・(4)
(T2−5)≦T3≦(T2+5)・・・(5)
Tp0(℃)は、前記樹脂Aを前記有機溶剤に溶解した樹脂溶液を入れた容器を、絶対圧力0.1MPaの条件下で、前記有機溶剤の沸点Tb(℃)より5℃低い温度から、0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度を示す。
また、Tp1(℃)は、前記樹脂溶液を入れた容器内を、前記Tp0(℃)より10℃高い温度に調整し、二酸化炭素を導入してゲージ圧力1.0MPa以上15.0MPa以下の範囲で1.0MPa刻みに加圧した後に容器を密閉し、各圧力条件において0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度と、その時の圧力とをプロットした温度−圧力図において、各プロットを結んで得られる低温側に凸となる温度−圧力線上の圧力P1(MPa)における温度を示す。
二酸化炭素と樹脂溶液の間では溶剤の移行が常に起きているが、ある圧力以上で析出温度が上昇に転じるのは、二酸化炭素の増加、すなわち圧力の上昇に伴い、有機溶剤の二酸化炭素側への移行が優勢になり、樹脂溶液中の固形分濃度が上昇することによるものと考えている。
また、前記温度−圧力線は、前記樹脂溶液の組成を変えること(例えば、前記樹脂溶液中の前記樹脂Aの濃度や他物質の添加、有機溶剤の種類)で変化する場合がある。
したがって、温度−圧力線を求める際には、これらの条件を、実際にトナー粒子を作製するときの条件に合わせることが好ましい。
式:Tp0<T1・・・(1)
これにより、樹脂Aを有機溶剤に完全に溶解させることができ、粒度分布がシャープで高円形度のトナー粒子を得ることができる。
式:1.0≦P1≦8.0・・・(2)
ここで、分散媒体である二酸化炭素は、本発明の効果を損なわない程度に公知の分散媒体を含有してもよい。
1.0MPa以上で分散を行うことで、二酸化炭素を含有する分散媒体中で前記液滴を形成することが可能となる。P1が1.0MPa未満の場合、二酸化炭素の容器内への導入量が少なく、二酸化炭素を含有する分散媒体が形成されない均一一相状態となるため、分散が困難となる。十分な量の二酸化炭素を含有する分散媒体中で液滴を形成させるためには、1.5MPa以上であることが好ましい。一方、前記P1の上限に関しては、8.0MPa以下である、これにより均一な、樹脂組成物による液滴を含む分散体を形成する
ことが可能となる。
前記P1が8.0MPaを越える場合、二酸化炭素の容器内への導入量が多く、有機溶剤の二酸化炭素を含有する分散媒体側への溶け出しが多くなるため、前記分散体の粘度が高くなり過ぎ、結果として粒子形状、粒径、粒度分布の悪化を招く。より均一な分散体を形成させるためには、有機溶剤の分散媒体側への溶け出しが過剰とならない6.0MPa以下であることが好ましい。
式:Tp1<T2≦Tp0・・・(3)
Tp1(℃)より高い温度で樹脂組成物の分散を行うことで、樹脂Aが析出することなく樹脂組成物を分散し、樹脂Aが析出していない状態の樹脂組成物による液滴の形成が可能となる。そのために、P1(MPa)及びT2(℃)への調節に際しては、前記温度−圧力線を越えて低温にならないようにする。その結果、最終的なトナー粒子の形状が均一な球体にすることができる。
T2(℃)がTp1(℃)以下の温度の場合、樹脂溶液中の樹脂Aが結晶化し析出するため、脱溶剤工程において均一に有機溶剤が抜けず、粒子形状がいびつになり易い。
また、T2(℃)は、温度制御の観点から、Tp1+5(℃)以上Tp0(℃)未満の温度であることが好ましい。
一方、T2(℃)は、Tp0(℃)以下の温度であることにより、c)の工程におけるT3との温度差を小さくすることができ、結果として均一な球状のトナー粒子を得ることが可能となる。
T2(℃)がTp0(℃)を超える場合、樹脂組成物による液滴を含む分散体を形成させる上で特に問題は生じないが、脱溶剤を効率良く行うためには、分散体の調製後に冷却が必要となり、温度低下に伴う収縮が発生する可能性がある。その結果、トナー粒子の形状がいびつになる恐れがある。一方で冷却を経ずに脱溶剤を行う場合は、溶剤の抽出効率が低く効率のよい脱溶剤が難しくなる。
なお、本発明の製造方法のb)の工程において、前記圧力P1(MPa)、及び前記温度T2(℃)に調節した後、容器を密閉することが、有機溶剤の容器外への流出を防止する観点より好ましい。
式:P1≦P2・・・(4)
P1(MPa)以上のゲージ圧力で有機溶剤の除去及び排出を行うことで、液滴から二酸化炭素を含有する分散媒体中への、有機溶剤の抽出速度が速くなり、効率的な有機溶剤の除去及び排出が可能となる。P1未満のゲージ圧力で有機溶剤の除去及び排出を行う場合、一旦減圧することとなり、有機溶剤を含む液滴が膨張することによって粒度が乱れる。
容器からの効率的な有機溶剤の除去及び排出において、二酸化炭素の密度が高いことが好ましいことから、P2は6.0MPa以上であることが好ましい。P2の上限は技術的意義としては特に定めないが、装置の設計、圧力設定に要する時間など工業的観点から15.0MPa以下であることが好ましい。
本発明の製造方法のc)の工程において、液滴に含まれる有機溶剤の除去、及び有機溶剤の容器からの排出は下記式(5)で示される温度T3(℃)の条件を保持しながら二酸化炭素を流通させて行う。
式:(T2−5)≦T3≦(T2+5)・・・(5)
T3(℃)をT2(℃)から±5℃の範囲内で維持しておくことで、液滴の収縮を防ぐ
ことができ、均一な粒子形状のトナー粒子を得ることが可能となる。
T3(℃)がT2−5℃未満の場合、樹脂組成物による液滴を含む分散体の温度低下に伴う液滴の収縮が発生しやすくなる。その結果、液滴の安定性が損なわれ、合一を起こし、粒度分布が悪化する。
一方、T3(℃)がT2+5℃を越える場合は、粒子形状や粒度に対する問題は生じないが、効率的な脱溶剤を行うためにはより低温で行うことが好ましく、意図的に温度をT2から5℃を越えた温度に上げることに技術的意義はない。
容器からの効率的な有機溶剤の除去及び排出には、液滴に含有される樹脂Aが析出した状態であることがより好ましく、ゲージ圧力P2(MPa)における前記温度−圧力線上の温度をTp2(℃)としたとき、T3(℃)が、T3<Tp2の関係を満たすことが好ましい。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンのようなケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテートのようなエステル系有機溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブのようなエーテル系有機溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系有機溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族炭化水素系有機溶剤。
二酸化炭素を含有する分散媒体中には、分散剤を分散させておくことが好ましい。分散剤としては、無機微粒子分散剤、又は有機微粒子分散剤が挙げられ、目的に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
無機微粒子分散剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの微粒子が挙げられる。
有機微粒子分散剤としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロースの微粒子及びこれらの混合物が挙げられる。
分散剤として樹脂微粒子を用いる場合、非晶性樹脂の微粒子を使用すると、二酸化炭素が非晶性樹脂中に浸透して可塑化させ、非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)を低下させるため、トナー粒子同士が凝集しやすくなる。したがって、樹脂微粒子には結晶性樹脂を使用することが好ましく、非晶性樹脂を用いる場合には、架橋構造を導入することが好ましい。また、非晶性樹脂微粒子を結晶性樹脂で被覆した微粒子であってもよい。
液滴の表面に吸着した分散剤はトナー粒子形成後もそのまま残留するため、例えば、分散剤として樹脂(以下、樹脂Bともいう)を含有する樹脂微粒子を用いた場合には、樹脂Bを含有する樹脂微粒子を、シェル相としてトナー粒子表面に被覆することができる。
本発明において、樹脂Bを含有する樹脂微粒子の粒径は、体積平均粒子径で30nm以上300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上200nm以下である。樹脂微粒子の粒径が上記範囲より小さい場合、造粒時に液滴の安定性が低下する傾向にある。一方、上記範囲より大きい場合は、液滴の粒径を所望の大きさに制御しにくくなる。
本発明において、上記微粒子の配合量は、前記樹脂組成物中に含まれる固形分100質量部に対して、3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、液滴の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
また、本発明において、樹脂組成物を、二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、分散剤を分散させた状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を入れた容器に、樹脂組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、樹脂組成物を仕込んだ容器に、分散剤を分散させた状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を導入してもよい。
液滴を含む分散体と二酸化炭素の混合は、本発明の条件を保持していれば特に限定されないが、分散体に、これよりも高圧の二酸化炭素を加えてもよく、また、分散体を、これよりも低圧の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶剤を含む二酸化炭素をさらに二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
二酸化炭素による置換が十分でなく、分散体中に有機溶剤が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、分散体中に溶解した有機溶剤が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりする場合がある。したがって、二酸化炭素による置換は、有機溶剤が完全に除去されるまで行うことが好ましい。
本発明において、流通させる二酸化炭素の量は、分散体の体積に対して1倍以上100倍以下が好ましく、より好ましくは1倍以上50倍以下、さらに好ましくは1倍以上30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。なお、本発明において使用する有機溶剤や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
前記樹脂Aの結晶構造を取り得る部位の含有量は、結着樹脂中に50.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
結晶構造を取り得る部位の含有量が、結着樹脂中に50.0質量%以上であることで、定着時のシャープメルト性が十分に発揮され、低温定着性が向上する。より高い低温定着効果を得るためには、結晶構造を取り得る部位の含有量が、結着樹脂中に70.0質量%以上であることがより好ましい。
前記樹脂Aの結晶構造を取り得る部位の形態は特に限定されないが、ポリマー化したときに結晶構造を取り得るモノマーを重合したポリエステルやビニル樹脂が挙げられる。中でも、結晶構造を取り得る部位がポリエステル(すなわち、結晶構造を取り得るポリエステル)であることが好ましい。
この結晶構造を取り得るポリエステル(以下、結晶性ポリエステルと呼ぶ)とは、示差走査熱量測定(DSC)により明瞭な融点ピークを示すポリエステルを意味する。
該結晶性ポリエステルは、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることが好ましく、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオールと、炭素数2以上20以下の脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることがより好ましい。
また、脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。直鎖型であることで、より結晶性の高いポリエステルが得られる。
炭素数2以上20以下の直鎖型脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。
1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール。
これらの中でも、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、及び1,10−デカンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
上記炭素数2以上20以下の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸及び1,18−オクタデカンジカルボン酸、又はそれらの低級アルキルエステルや酸無水物。
これらのうち、セバシン酸、アジピン酸及び1,10−デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また芳香族カルボン酸を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。
このようなジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。
することができる。
結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の有機溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助有機溶剤を留去しながら行う。重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、特に制限されないが、以下の化合物を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドのようなチタン触媒、又は、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド及びジフェニルスズオキシドのようなスズ触媒。
直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートが好ましく、例えば以下のものを挙げることができる。ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート。
結晶性ビニル樹脂の製造方法は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度で重合することが好ましい。
非晶性樹脂としては、示差走査熱量測定において、明確な最大吸熱ピークを示さないものであれば特に限定されるものではなく、トナー用樹脂として一般的に用いられる非晶性樹脂と同様のものを使用することができる。ただし、非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上130℃以下であることがより好ましい。
非晶性樹脂の具体例としては、非晶性のポリエステル、ポリウレタン、ビニル樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂は、ウレタン、ウレア又はエポキシにより変性されていてもよい。これらの中でも、弾性維持の観点から、非晶性のポリエステル及びポリウレタンが好適に例示できる。
2価のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸。
また、3価以上のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
また、3価以上のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも使用することができる。
非晶性のポリエステルの合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
ジイソシネートとしては、以下のものが挙げられる。
炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物。
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらの中でも好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものは、XDI、IPDI及びHDIである。
また、ジイソシアネート成分に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ポリウレタンに用いることのできるジオール成分としては、前述した非晶性のポリエステルに用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン);アルカジエン類(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、
1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン)。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−又はジ−シクロアルケン及びアルカジエン類(シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン);テルペン類(ピネン、リモネン、インデン)。
芳香族ビニル炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン);及びビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びそのモノアルキル〔炭素数1以上11以下〕エステル(マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー)。
ビニルエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート)。
炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖又は分岐)を有するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖若しくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)。
ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)。
ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレート及びポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
ブロックポリマーは、結晶性樹脂成分(X)と非晶性樹脂成分(Y)とのXY型ジブロックポリマー、XYX型トリブロックポリマー、YXY型トリブロックポリマー、XYXY・・・・型マルチブロックポリマーが挙げられ、どの形態も使用可能である。
本発明において、ブロックポリマーを調製する方法としては、結晶性樹脂成分からなる結晶部を形成する成分と非晶性樹脂成分からなる非晶部を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)や、結晶部を形成する成分、及び非晶部を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)などを用いることができる。
本発明におけるブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択してブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、及び非晶性樹脂成分がともにポリエステル樹脂の場合は、各成分を別々に調製した後、必要に応じて結合剤を用いて結合することにより調製することができる。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合は、結合剤を用いることなく結合させることができる。このとき反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
一方で、結晶性樹脂成分がポリエステル樹脂であり、非晶性樹脂成分がポリウレタン樹脂の場合では、各成分を別々に調製した後、ポリエステル樹脂のアルコール末端とポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つポリエステル樹脂と、ポリウレタン樹脂を構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することによっても合成が可能である。ジオール及びジイソシアネート濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタン樹脂となり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とポリエステル樹脂のアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、及び非晶性樹脂成分ともにビニル樹脂の場合は、一方の成分を重合した後、そのビニルポリマーの末端から他成分を重合開始させることにより調製することができる。
前記ブロックポリマー中の結晶性樹脂成分(すなわち、結晶構造を取り得る部位)の割合は50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上
90.0質量%以下であることがより好ましい。
前記結着樹脂には前記樹脂Aに加えて、他の非晶性樹脂を混合してもよい。非晶性樹脂としては、上述した樹脂Aの構成成分として含有させうるものと同様のものを用いることができる。また、結着樹脂中の樹脂Aの含有量は70.0質量%以上であることが好ましく、90.0質量%以上であることがより好ましい。
ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート及びセルロース、並びに、これらの混合物が挙げられる。
またシェル相を形成する樹脂Bは、樹脂Aと同様に結晶構造を取り得る部位を有する樹脂であってもよい。この場合、トナー粒子のDSC測定において、樹脂Bの最大吸熱ピークのピーク温度が前記樹脂Aの最大吸熱ピークのピーク温度以上であることが好ましい。
樹脂(A)の最大吸熱ピークのピーク温度よりも高温であることが好ましい。ワックスとして、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、溶解懸濁法においては、ワックス分散液の作製のしやすさ、作製したトナー粒子中への取り込まれやすさ、定着時におけるトナーからの染み出し性、離型性から、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスが好ましい。本発明においてエステルワックスとは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。
合成エステルワックスとしては、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式CnH2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールはCnH2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。また、天然エステルワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス及びそれらの誘導体が挙げられる。
上記のうち、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールとによる合成エステルワックス又は、上記エステルを主成分とする天然ワックスが好ましい。さらに、本発明においては上記した直鎖構造に加えてエステルがモノエステルであることがより好ましい。また、本発明においては、炭化水素系ワックスを使用することも好ましい形態の一つである。
本発明において、トナー中におけるワックスの含有量は、好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上15.0質量%以下である。ワックスの含有量を上記の範囲に調整することによって、トナーの離型性をさらに向上させることができ、定着体が低温になった場合であっても転写紙の巻きつきが起こりにくくなる。さらに、トナー表面のワックスの露出を適切な状態にすることができるため、耐熱保存性をさらに向上させることができる。
本発明においてワックスは、DSC測定において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。最大吸熱ピークを上記範囲に調整することによって、トナー表面のワックスの露出を適切な状態にすることができるため、耐熱保存性をさらに向上させることができる。一方、定着時に適切にワックスが溶融されやすくなるため、低温定着性や耐オフセット性をさらに向上させることができる。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168及び180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロ
ピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、並びに、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。また、使用する着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性及びトナー組成物中での分散性の点から選択される。
着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。黒色用着色剤としてカーボンブラックを用いる場合も同様に、結着樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物及びキレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物及びイミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤の配合量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
上記無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体又はそれらの複合酸化物微粉体のような微粉体が挙げられる。これらの無機微粉体の中でも、シリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であってもよい。
また、無機微粉体としては、無機微粉体自体が疎水化処理されることによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体がより好ましい。トナーに外添された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる傾向にある。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリ
コーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物及び有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で又は併用して用いられてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
上記無機微粉体の添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
本発明において、トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電
気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
トナー粒子の円形度の変動係数は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。該手順に従い調製した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナー粒子の平均円形度と標準偏差は、円相当径1.985μm以上、200.00μm以下のトナー粒子について求め、平均円形度と標準偏差の値から変動係数を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、200.00μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
樹脂A、及びワックスの融点は、DSC Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。そのときの最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
非晶性樹脂のガラス転移点は、前記DSC測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、最大吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、その点の温度をガラス転移点とする。
本発明において、樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
(1)測定試料の作製
樹脂(試料)とTHFとを約0.5〜5.0mg/ml(例えば約5mg/ml)の濃度で混合し、室温にて数時間(例えば5〜6時間)放置した後、充分に振とうし、THFと試料を試料の合一体がなくなるまで良く混ぜた。さらに、室温にて12時間以上(例えば24時間)静置した。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となるようにした。
その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.50μm、マイショリディスクH−25−2[東ソー社製]、エキクロディスク25CR[ゲルマン サイエンスジャパン社製]が好ましく利用できる。)を通過させたものをGPCの試料とした。
(2)試料の測定
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度に於けるカラムに、有機溶剤としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.5〜5.0mg/mlに調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定した。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure ChemicalCo.製又は東洋ソーダ工業社製の、分子量が6.0×102、2.1×103、4.0×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2.0×106、4.48×106のものを用いた。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
なお、カラムとしては、1×103〜2×106の分子量領域を適確に測定する為に、市販のポリスチレンゲルカラムを下記のように複数組み合わせて用いた。本発明における、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
装置:LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:ショウデックスKF801、802、803、804、805、806、807(昭和電工株式会社製)の7連
カラム温度:40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
結着樹脂中の結晶構造を取り得る部位の割合(質量%)の測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :樹脂50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、有機溶剤として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製したもの。
上記の測定条件によって測定された1H−NMRチャートより、結晶構造を取り得る部位の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。同様に、非晶性部位の構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択しこのピークの積分値S2を算出する。結晶構造を取り得る部位の割合は、上記積分値S1及び積分値S2を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2は着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
結晶構造を取り得る部位の割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
こうして得られた結晶構造を取り得る部位の割合(モル%)は、各成分の分子量により質量%に換算する。
本発明において、各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。なお、希釈有機溶剤としては水を選択する。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 123.9質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.1質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の数平均分子量(Mn)は5500、重量平均分子量(Mw)は12300、融点は67℃であった。
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 80.0質量部
50℃まで加熱し、10時間かけてウレタン化反応を施した。その後、210.0質量部の結晶性ポリエステル1をTHF220.0質量部に溶解させた溶液を徐々に添加し、さらに50℃にて5時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、有機溶剤であるTHFを留去することで、ブロックポリマー1を合成した。ブロックポリマー1の数平均分子量(Mn)は16800、重量平均分子量(Mw)は35500、融点は56℃であった。
・テレフタル酸 49.4質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 76.6質量部
上記モノマーとチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)0.2質量部を冷却管、攪拌機、及び、窒素導入管のついた反応槽中に添加し、窒素気流下、220℃に加熱し、10時間反応させた。
さらに、無水トリメリット酸6.1質量部を加え、180℃に加熱し、2時間反応させ非晶性ポリエステル樹脂1を得た。非晶性ポリエステル樹脂1の数平均分子量(Mn)は6000、重量平均分子量(Mw)は10300であった。
・結晶性ポリエステル樹脂1 140.0質量部
・非晶性ポリエステル樹脂1 60.0質量部
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。200℃まで加熱し、5時間かけてエステル反応を施すことで、ブロックポリマー2を得た。ブロックポリマー2の数平均分子量(Mn)は13100、重量平均分子量(Mw)は32200、融点は55℃であった。
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを50.0質量部、ブロックポリマー1を50.0質量部投入し、アセトンの沸点より5℃低い温度52℃に加熱して完全に溶解するまで撹拌を続け、樹脂溶液1を調製した。
樹脂溶液1において原料の仕込み量、有機溶剤の種類、溶解温度を表1のように変えた以外は全て同様にして、樹脂溶液2〜4をそれぞれ調製した。
図1に示す装置において、内部に攪拌装置と熱電対を備え、側面に温度調節用のジャケットを備えた耐圧のタンクTa1に、大気圧下で前記樹脂溶液1を100.0質量部仕込み、バルブV1、V2を閉じ、回転速度200rpmで攪拌しながら内部温度をアセトンの沸点より5℃低い温度52℃に調整した。次にバルブV2を開き、内部が大気圧になるのを確認した後、ジャケットの温度を0.5℃/分の降温速度で冷却しながら、熱電対で前記樹脂溶液1の温度変化を測定した。その結果、前記樹脂溶液1の温度が25℃まで低
下したところで、ジャケットの温度低下速度との間のズレが生じるのが観測された。この温度をブロックポリマー1の析出に伴う発熱が最初に観測される温度と判断した。
つまり、大気圧(絶対圧力0.1MPa)下における樹脂溶液1のTp0は25℃であった。
樹脂溶液1のTp0の測定において降温開始時の温度を表2のように変えた以外は同様にして、樹脂溶液2〜4のTp0の測定を行った。
1)図1に示す装置において、タンクTa1に、前記樹脂溶液1を100.0質量部仕込み、バルブV1、V2を閉じ、回転速度200rpmで攪拌しながら内部温度を先に求めたTp0よりも10℃高い温度35℃に調整した。
2)次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)をタンクTa1に導入し、内部圧力がゲージ圧1.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
3)次にジャケットの温度を0.5℃/分の降温速度で冷却を開始し、熱電対で前記樹脂溶液1の温度変化を測定した。その結果、20℃まで低下したところでブロックポリマー1の析出に伴う発熱が最初に観測された。そのときの内部圧力はゲージ圧力0.9MPaであった。
4)前記2)の工程において内部圧力をゲージ圧力2.0MPa以上15.0MPa以下に調節した以外は同様の方法で各圧力から降温した場合のブロックポリマー1の析出に伴う発熱が最初に観測される温度と、その時の圧力の測定を行った。測定結果を表3に示す。
5)求めた発熱が最初に観測される温度と発熱が最初に観測される圧力を温度−圧力図にプロットし、各プロットを直線で結んで温度−圧力線を作成した。なお、0.0MPaにおける発熱が最初に観測される温度は前記Tp0を採用した。得られた温度−圧力は図2に示すように低温側に凸となる形状を描いた。
前記樹脂溶液1の温度−圧力線の作成において樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液2〜4の温度−圧力線の作成を行った。
ビーカーに原料及び有機溶剤として、
・スチレン 70.0質量部
・メタクリル酸 15.0質量部
・ビニル変性有機ポリシロキサン 15.0質量部
(X−22−2475:信越化学工業社製)
・ノルマルヘキサン 80.0質量部
を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製し、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下漏斗に導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン740.0質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下漏斗を取り付け、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部及びノルマルヘキサン80.0質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。これにより樹脂微粒子分散液1を得た。樹脂微粒子分散液1の固形分濃度は10.0質量%、体積平均粒子径は90nmであった。
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 17.0質量部
・ワックス分散剤 8.0質量部
(ポリエチレン15.0質量部の存在下で、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部を共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体)
・アセトン 75.0質量部
上記材料を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することでワックスをアセトンに溶解させた。
ついで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間の分散を行い、ワックス分散液1を得た。
ワックスの体積平均粒子径は150nm、融点は72℃であった。
<ワックス分散液2の調製>
ワックス分散液1の調製においてアセトンを2−ブタノンに変更した以外は同様にして、ワックス分散液2を調製した。
・C.I.ピグメントブルー15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。固形分濃度は40.0質量%であった。
<着色剤分散液2の調製>
着色剤分散液1の調製においてアセトンを2−ブタノンに変更した以外は同様にして、着色剤分散液2を調製した。
図3に示す装置においてまず、タンクTa2に、
・樹脂溶液1 173.0質量部
・ワックス分散液1 30.0質量部
・着色剤分散液1 15.0質量部
・アセトン 15.0質量部
を仕込み、バルブV3、V4、V5を閉じ、内部温度を52℃(T1)に調整した。次に、タンクTa2の内部を回転速度300rpmで撹拌しながら、バルブV3を開き、ボンベB2から二酸化炭素(純度99.99%)をタンクTa2に導入し、内部圧力が3.0MPaに到達したところでバルブV3を閉じた。
次に、バルブV4を開き、ボンベB2から二酸化炭素を造粒タンクTa3に導入し、内部圧力が1.0MPaに到達したところでバルブV4を閉じた。
次に、バルブV5を開き、造粒タンクTa3の内部を回転速度1000rpmで撹拌しながら、ポンプP3を用いてTa2の内容物を造粒タンクTa3内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV5を閉じた。その後、造粒タンクTa3の内部温度を20.0℃に調整した(T2)。調整後の、造粒タンクTa3の内部圧力(ゲージ圧)は2.5MPaとなった(P1)。導入した二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定したところ、240.0質量部であった。
タンクTa2の内容物の造粒タンクTa3への導入を終えた後、さらに、回転速度2000rpmで10分間撹拌して分散及び造粒(液滴調製)を行った。
また、二酸化炭素を有機溶剤回収タンクTa4へ排出し始めてから5分ごとにタンクT
a4内の有機溶剤を取りだした。この作業を有機溶剤が有機溶剤回収タンクに溜まらなくなり、取り出せなくなるまで続けた。その結果30分時点で有機溶剤が取り出されなくなった。有機溶剤が取り出されなくなった時点で脱溶剤終了とし、バルブV4を閉じて、二酸化炭素の流通を終了した。
さらに、圧力調整バルブV6を少しずつ開き、造粒タンクTa3の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。なお、上記製造条件を表5に示す。
トナー粒子の製造例1において、トナー粒子1の製造工程における二酸化炭素、樹脂微粒子分散液1を除く各種材料の仕込みを表4に示すものに変更し、樹脂組成物を調製する工程のT1(℃)を除く製造条件を表5に示すものに変更した以外は、製造例1と同様にして、トナー粒子2〜20を得た。
得られたトナー粒子1〜20の粒度分布の評価結果を表6に示す。また、円形度の変動係数の評価結果を表7、脱溶剤に要した時間を表8に示す。
なお、トナー粒子14は脱溶剤後に凝集体となっていることが確認されたため、粒度分布、円形度の変動係数の評価を行なかった。また、実施例2,3,5,6,9,10および13は、それぞれ参考例2,3,5,6,9,10および13とする。
粒度分布の評価については下記の基準に基づいて判断を行った。
A:D4/D1値が1.15未満(非常に良好なレベル)
B:D4/D1値が1.15以上1.20未満(良好なレベル)
C:D4/D1値が1.20以上1.25未満(問題ないレベル)
D:D4/D1値が1.25以上1.30未満(問題の発生が懸念されるレベル)
E:D4/D1値が1.30以上(悪いレベル)
なお、下記A、B、Cは問題なし。下記D、Eは実用上問題を生じる。
A:円形度の変動係数が3.00未満(非常に良好なレベル)
B:円形度の変動係数が3.00以上3.50未満(良好なレベル)
C:円形度の変動係数が3.50以上4.00未満(問題ないレベル)
D:円形度の変動係数が4.00以上4.50未満(問題の発生が懸念されるレベル)
E:円形度の変動係数が4.50以上(悪いレベル)
なお、下記A、B、Cは問題なし。下記D、Eは実用上問題を生じる。
てから5分ごとにタンクTa4内の有機溶剤を取り出した。有機溶剤が有機溶剤回収タンクに溜まらなくなり、取り出せなくなるまでにかかった時間を脱溶剤所要時間として、下記の基準に基づいて判断を行った。評価結果を表8に示す。
A:脱溶剤所要時間が40分未満
B:脱溶剤所要時間が40分以上80分未満
C:脱溶剤所要時間が80分以上120分未満
D:脱溶剤所要時間が120分以上160分未満
E:脱溶剤所要時間が160分以上
Claims (9)
- 以下のa)〜c)の工程を有し、下記ゲージ圧力P2(MPa)における下記温度−圧力線上の温度をTp2(℃)としたとき、下記温度T3(℃)が、下記式(6)の関係を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
a)結晶構造を取り得る部位を有する樹脂Aを含有する結着樹脂と、前記結着樹脂を溶解し得る有機溶剤とを、下記式(1)で示される温度T1(℃)で混合して、前記有機溶剤に前記結着樹脂を溶解し、樹脂組成物を調製する工程、
b)前記樹脂組成物及び二酸化炭素を容器に投入し、前記容器内を下記式(2)で示されるゲージ圧力P1(MPa)、及び下記式(3)で示される温度T2(℃)に、下記温度−圧力線を越えて低温にならないように調節し、前記樹脂組成物を分散することにより、前記樹脂組成物による液滴を調製する工程、及び、
c)前記容器内を、下記式(4)で示されるゲージ圧力P2(MPa)、及び下記式(5)で示される温度T3(℃)に調節し、前記条件を保持しながら二酸化炭素を流通させ、前記液滴に含まれる前記有機溶剤を除去し、前記容器から排出してトナー粒子を得る工程。
Tp0<T1 ・・・(1)
1.0≦P1≦8.0 ・・・(2)
Tp1<T2≦Tp0 ・・・(3)
P1≦P2 ・・・(4)
(T2−5)≦T3≦(T2+5)・・・(5)
T3<Tp2 ・・・(6)
[前記Tp0(℃)は、前記樹脂Aを前記有機溶剤に溶解した樹脂溶液を入れた容器を、絶対圧力0.1MPaの条件下で、前記有機溶剤の沸点Tb(℃)より5℃低い温度から、0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度を示し、
前記Tp1(℃)は、前記樹脂溶液を入れた容器内を、前記Tp0(℃)より10℃高い温度に調整し、二酸化炭素を導入してゲージ圧力1.0MPa以上15.0MPa以下の範囲で1.0MPa刻みに加圧した後に容器を密閉し、各圧力条件において0.5℃/分の降温速度で冷却したとき、前記樹脂溶液中に含まれる前記樹脂Aの析出に伴う発熱が最初に観測される温度と、その時の圧力とをプロットした温度−圧力図において、各プロットを結んで得られる低温側に凸となる温度−圧力線上の圧力P1(MPa)における温
度を示す。] - 前記b)の工程において、前記ゲージ圧力P1(MPa)、及び前記温度T2(℃)に調節した後、容器を密閉する請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記温度T2(℃)が、下記式(7)の範囲である請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
Tp1+5≦T2<Tp0・・・(7) - 前記ゲージ圧力P2(MPa)が、下記式(8)の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
6.0≦P2≦15.0 ・・・ (8) - 前記樹脂Aの結晶構造を取り得る部位が、ポリエステルである請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
- 前記ポリエステルが、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られるものである請求項5に記載のトナーの製造方法。
- 前記樹脂Aが、結晶構造を取り得る部位と結晶構造を取り得ない部位とを化学的に結合したブロックポリマーである請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
- 前記結晶構造を取り得ない部位が、ジオールとジイソシアネートを反応させて得られるポリウレタンである請求項7に記載のトナーの製造方法。
- 前記結晶構造を取り得る部位の含有量が、前記結着樹脂中に50.0質量%以上90.0質量%以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
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