JP2016126331A - 樹脂微粒子、前記樹脂微粒子を用いた樹脂粒子の製造方法、前記樹脂微粒子を用いたトナーの製造方法 - Google Patents

樹脂微粒子、前記樹脂微粒子を用いた樹脂粒子の製造方法、前記樹脂微粒子を用いたトナーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストであり、粒度分布がシャープな高円形度の樹脂粒子およびトナーを得るための樹脂微粒子を提供する。更に、前記樹脂微粒子を用いた樹脂粒子およびトナーの製造方法を提供するものである。【解決手段】樹脂R、着色剤および有機溶媒を含有する樹脂溶液、固有元素αを含有する樹脂Sを含有する樹脂微粒子、及び二酸化炭素を混合し、表面を樹脂微粒子で覆われた液滴を形成する工程、液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、液滴に含まれる有機溶媒を抽出する工程、抽出した有機溶媒を、二酸化炭素とともに除くことでトナー粒子を得る工程、を有するトナーの製造方法において、樹脂微粒子を液体状態の二酸化炭素で処理したとき、樹脂微粒子の表面における固有元素αの処理前後における変化量が特定の範囲内にあることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂微粒子、樹脂微粒子を用いた樹脂粒子の製造方法に関し、特に電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナーの製造方法に関する。
樹脂粒子は、高い機能を有する粉体として幅広い分野で利用され、その機能を制御するために粒度分布が狭い、単分散な樹脂粒子を要求されることが多くなっている。特に、電子写真の分野において、画像の高画質化に重要な影響を与えるため、画像を形成するトナーには、粒子間で均一な性能を有していることが必要となる。そのためには、トナー粒子の粒径を均等にして、粒度分布をシャープにすると共に円形度の低い異形粒子の発生を抑制することが有効である。
トナー粒子の粒度分布のシャープ化と、高円形度化を容易に達成することができる製造方法として、「溶解懸濁法」が知られている。溶解懸濁法とは、あらかじめ有機溶媒に樹脂を溶解させた樹脂溶液を分散媒体中に分散させ、樹脂溶液の液滴を形成した後、有機溶媒を除去してトナー粒子を得る方法である。
溶解懸濁法においては、分散媒体として水系媒体を使用することが一般的であるが、水系媒体を用いた場合、粒子形成後の洗浄工程、乾燥工程に多大なエネルギーと時間を必要とする。そのため、近年、分散媒体として二酸化炭素を用いるトナーの製造方法が提案されている。
この方法では、液状または超臨界状態の二酸化炭素中にて樹脂溶液による液滴の分散体を形成する液滴形成工程の後、さらに二酸化炭素を導入し、液滴中の有機溶媒を抽出して除去する脱溶剤工程を行い、トナー粒子を得る。この方法によれば、脱溶剤工程後に脱圧することで、得られたトナー粒子を分散媒体である二酸化炭素から容易に分離することが可能であり、洗浄工程、乾燥工程を必要とせず、省エネルギーかつ低コストでの製造が可能である。
二酸化炭素を分散媒体に用いる溶解懸濁法によるトナーの製造において、粒度分布のシャープ化および高円形度化を達成するためには、液滴形成工程において分散剤を用いる必要がある。分散剤は、樹脂溶液の液滴表面を覆うことで、液滴同士の凝集や沈降を抑制して安定に分散させ、脱溶剤工程を経るまで分散状態を維持させる役割を担う。したがって、分散剤の選定は、極めて重要である。
特許文献1および特許文献2には、液状または超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体として利用し、樹脂微粒子を分散剤に用いた樹脂粒子の製造方法が提案されている。特許文献1では、ベヘニルアクリレートとメタクリル変性シリコーンからなる樹脂微粒子が使用されている。
特許文献2には、ポリエステルやベヘニルアクリレート共重合体等の結晶性樹脂微粒子が使用されている。
特許文献3には、有機ポリシロキサン構造を有する部位と脂肪族ポリエステル構造を有する部位で構成される櫛型構造の樹脂を含有する樹脂微粒子を用い、二酸化炭素を含有する分散媒体中で作製したトナーが提案されている。
この方法では、樹脂微粒子が二酸化炭素と樹脂溶液の両方に親和性を有する構造となっているため、25℃程度の低温度下では、良好な粒度分布のトナー粒子を得ることができる。
特開2009−052005号公報 特開2010−132851号公報 特開2013−137535号公報
しかしながら、特許文献1に基づいて本発明者らがトナーの製作を検討したところ、必ずしも良好な粒度分布の樹脂粒子が得られないことが分かった。この原因について検討したところ、この手法で使用した樹脂微粒子は、樹脂溶液との親和性が弱く、分散安定性が維持できないため、良好な粒度分布が得られないのではないかと考えられる。
また、特許文献2に基づいて本発明者らがトナーの製作を検討したところ、必ずしも良好な粒度分布のトナー粒子が得られないことが分かった。この原因について検討したところ、この手法で使用した樹脂微粒子は、分散媒体である二酸化炭素に対する親和性が弱く、分散安定性が維持できずに良好な粒度分布が得られなかったのではないかと考えられる。
また、特許文献3を参考にし、更に粒度分布を向上させる目的で樹脂溶液を加熱し、粘度を下げて液滴形成を行ったところ、むしろ良好な粒度分布のトナー粒子が得られなくなることが分かった。この原因について検討した結果、使用した樹脂微粒子は、高温度の有機溶媒に対する耐溶剤性が不足していることが分かった。
このように、樹脂微粒子を分散剤として用い、二酸化炭素を分散媒体として用いる樹脂粒子の製造方法において、シャープな粒度分布と高円形度を有するトナーを得るにはいまだ課題を有していた。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、低コストであり、粒度分布がシャープな高円形度の樹脂粒子およびトナーを得るために使用する樹脂微粒子を提供することである。更に、前記樹脂微粒子を用いた樹脂粒子およびトナーの製造方法を提供することである。
本発明は、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、前記製造方法が、
e)樹脂R、着色剤、および有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程、
f)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液を含有する液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散されている分散体を形成する工程、
g)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程、および
h)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことでトナー粒子を得る工程、
前記樹脂微粒子が、固有元素αを含有する樹脂Sを含有し、前記樹脂微粒子が下記式1および式2を満たすことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
式1:3.0≦A≦6.0
式2:1.10≦B/A≦1.55
(式1および2中、
Aは、前記樹脂微粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。
Bは、前記樹脂微粒子を前記有機溶媒に分散させた分散体を耐圧容器に入れ、前記耐圧容器内に二酸化炭素を導入し、25℃の温度下、内部圧力6.5MPaを維持させた状態で二酸化炭素を流通させて、前記分散体から前記有機溶媒を除去して得られた処理後樹脂微粒子のX線光電子分光分析により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。)
また、本発明は、樹脂粒子の製造方法であって、前記製造方法が、
a)樹脂Rおよび、有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程、
b)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を、耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液の液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散されている分散体を形成する工程、
c)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程、
d)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことで樹脂粒子を得る工程、
を有し、
前記樹脂微粒子が、固有元素αを含有する樹脂Sを含有し、
前記樹脂微粒子が上記式1および式2を満たすことを特徴とする樹脂粒子の製造方法に関する。
さらに、本発明は、固有元素αを含有する樹脂Sを含有する樹脂微粒子であって、
前記樹脂微粒子が上記式1および式2を満たすことを特徴とする樹脂微粒子に関する。
本発明によれば、低コストであり、粒度分布のシャープな高円形度の樹脂粒子およびトナーを得るための樹脂微粒子を提供することができる。更に、前記樹脂微粒子を用いた前記樹脂粒子および前記トナーの製造方法を提供することができる。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造に使用する製造装置の一例を示す図である。
本発明の特徴である二酸化炭素を分散媒体として用いる溶解懸濁法による樹脂粒子の製造は、以下のa)からd)の工程に従って行う。
a)樹脂Rおよび、有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程。
b)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を、耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液の液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する工程。
c)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程。
d)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことで樹脂粒子を得る工程。
本発明の樹脂粒子の製造方法に用いる分散媒体としての二酸化炭素は、液状、あるいは超臨界状態の二酸化炭素である。前記二酸化炭素は単体で用いてもよく、他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。
以下に、本発明の製造方法における前記a)乃至d)の各工程について、詳細を例示して説明する。
前記a)の工程では、まず、前記樹脂Rと前記樹脂Rを溶解することのできる有機溶媒を混合する。そして、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機のような分散機によって均一に溶解させて、樹脂溶液を調製する。
前記有機溶媒としては、例えば以下のものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンの如きケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテートの如きエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブの如きエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素系溶剤。
前記b)の工程では、前記樹脂溶液と分散剤としての樹脂微粒子、分散媒体としての二酸化炭素を、撹拌手段を設えた耐圧容器内に投入し、前記撹拌手段を用いて前記耐圧容器内を撹拌し、これらの材料を混合する。こうすることによって、表面を前記樹脂微粒子で覆われた、前記樹脂溶液の液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散した分散体を形成する。
前記液滴の分散体を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)前記樹脂溶液と前記樹脂微粒子を予め混合したものを前記耐圧容器内に投入した後、前記撹拌手段を用いて撹拌した状態で、前記二酸化炭素を加える方法。
(2)前記樹脂溶液を前記耐圧容器内に投入した後、前記撹拌手段を用いて撹拌した状態で、前記樹脂微粒子を前記二酸化炭素に予め分散させたものを加える方法。
(3)前記二酸化炭素を前記耐圧容器内に投入した後、前記撹拌手段を用いて撹拌した状態で、前記樹脂溶液と前記樹脂微粒子を予め混合したものを加える方法。
(4)前記樹脂微粒子を前記二酸化炭素に予め分散させたものを前記耐圧容器内に投入した後、前記撹拌手段を用いて撹拌した状態で、前記樹脂溶液を加える方法。
上記(3)および(4)の方法のように、前記耐圧容器内に先に二酸化炭素を投入する方法においては、前記樹脂溶液もしくは前記樹脂溶液と前記樹脂微粒子の混合物は、高圧ポンプを用いて導入することができる。
前記b)の工程では、樹脂溶液の液滴による分散相と、分散媒体としての二酸化炭素による連続相が形成される。このとき、前記液滴中の有機溶媒の一部は前記二酸化炭素に抽出されるため、分散媒体は前記二酸化炭素と前記有機溶媒とで構成されることになる。そして、前記分散媒体の組成は、導入する二酸化炭素の量、すなわち、耐圧容器内の圧力に影響される。
前記液滴を安定に形成するためには、前記耐圧容器内の圧力は、1.5MPa以上6.0MPa以下であることが好ましい。圧力の制御は、二酸化炭素の導入量の調整により行うことが可能である。前記耐圧容器内の圧力が1.5MPa以上であると、前記分散相と前記連続相との相分離が起こりやすく、液滴がより形成されやすい。一方、6.0MPa以下であると、前記樹脂溶液中から前記分散媒体側に抽出される有機溶媒の量が多くなりすぎることが抑制され、より均一な液滴の形成ができる。
前記c)の工程では、前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧する。こうすることで、前記液滴に含まれる前記有機溶媒が前記分散媒体に抽出される。
前記耐圧容器内の圧力は、前記b)の工程における圧力よりも高くすれば良いが、前記液滴中の有機溶媒を効率的に前記分散媒体に抽出するため、前記b)の工程に対し1.0MPa以上高くすることが好ましい。一方、上限については特に制限はないが、工業的な観点から20.0MPa以下とすることが好ましく、15.0MPa以下とすることがより好ましい。前記圧力は、前記液体状態の二酸化炭素の導入量により制御することが可能であり、前記二酸化炭素の導入は、高圧ポンプを用いて行うことができる。
前記d)の工程では、前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記耐圧容器から除去する、いわゆる脱溶剤を行うことで樹脂粒子を得る。
前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を除去する方法は、以下の方法が挙げられる。
(1)前記耐圧容器内を前記液体状態の二酸化炭素で加圧した後、前記耐圧容器内の圧力一定に保ちながら、さらに二酸化炭素を流通させて置換する方法。
(2)前記耐圧容器内を前記液体状態の二酸化炭素で加圧した後、前記耐圧容器を一旦開放して脱圧し、さらに前記加圧と脱圧の操作を繰り返し行うことで置換する方法。
二酸化炭素による置換が十分でなく、前記分散体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られた樹脂粒子を回収する際、前記樹脂粒子が再溶解したり、樹脂粒子同士が合一したりする場合がある。
したがって、二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行うことが好ましい。使用する二酸化炭素の量は、分散体の体積に対して1倍以上100倍以下が好ましく、より好ましくは1倍以上50倍以下、さらに好ましくは1倍以上30倍以下である。
前記分散体から樹脂粒子を取り出す際には、前記耐圧容器内を脱圧すれば良い。この際、一気に常温、常圧まで脱圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に脱圧してもよい。脱圧速度は、樹脂粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。尚、本発明において使用する有機溶媒や二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
本発明の特徴である二酸化炭素を分散媒体として用いる溶解懸濁法によるトナーの製造は、以下のe)からh)の工程に従って行う。
e)樹脂R、着色剤、および有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程。
f)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を、耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液を含有する液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散されている分散体を形成する工程。
g)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程。
h)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことでトナー粒子を得る工程。
本発明のトナーの製造方法に用いる分散媒体としての二酸化炭素は、液状、あるいは超臨界状態の二酸化炭素である。前記二酸化炭素は単体で用いてもよく、他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。以下に、本発明の製造方法における前記e)の工程について、詳細を例示して説明する。
前記e)の工程では、まず、前記樹脂R及び着色剤と前記樹脂Rを溶解することのできる有機溶媒、並びに、必要に応じてワックス及び他の添加物を混合する。そして、前記a)の工程と同様にして、樹脂溶液を調製する。
前記有機溶媒としては、前記a)の工程と同様のものが挙げられる。
前記f)の工程、前記g)の工程、前記h)の工程については、それぞれ前記b)の工程、前記c)の工程、前記d)の工程と同様に行う。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造方法における前記c)および前記g)の工程は、前記d)および前記h)の工程における脱溶剤を効率よく行うために、前記耐圧容器内にさらに二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴中に含まれる有機溶媒の前記分散媒体への抽出を積極的に行う工程である。したがって、前記c)および前記g)以降の工程では、前記b)および前記f)の工程に対して、分散相と連続相の組成がともに変動することになる。
このような、液滴形成工程と脱溶剤工程の間における分散相および連続相の変動は、終始大気圧付近で製造を行う従来の水系媒体を分散媒体に用いる溶解懸濁法では、特に考慮する必要がなかった大きな相違点である。
本発明者らは、この点に着目し、各工程間における分散相、連続相それぞれの組成の変化について、詳細に検討を行った。その結果、とりわけ連続相の溶解度パラメータ(SP値)が大きく変動することが明らかになった。
そして、この知見に基づいて、前述した二酸化炭素を分散媒体に用いた溶解懸濁法による樹脂粒子およびトナーの製造における課題について改めて考察を行った。その結果、単に従来の水系媒体による溶解懸濁法に使用していた樹脂微粒子の樹脂組成を適宜調整して、二酸化炭素を分散媒体とする溶解懸濁法に適用しただけでは、必ずしもシャープな粒度分布を有する樹脂粒子およびトナーを得ることはできないという結論に至った。
例えば、液滴形成工程において樹脂微粒子が分散相と連続相の界面に配置されるように、樹脂微粒子を構成する樹脂の組成(SP値)を設計したとする。にもかかわらず、脱溶剤工程においては、連続相のSP値変動に伴って前記樹脂微粒子が分散相側に埋没したり、連続相側に遊離したりする可能性がある。そのような場合、液滴の分散安定性が損なわれて液滴同士の凝集を招き、得られる樹脂粒子およびトナー粒子の粒度分布が低下すると考えられる。
したがって、二酸化炭素を分散媒体とする溶解懸濁法に使用する樹脂微粒子には、連続相のSP値変動に対しても液滴の分散安定性を持続できるような高度な設計が必要となる。
そこで、本発明者らは、樹脂微粒子を構成する樹脂に連続相に対して親和性を有する部位を導入し、さらに、この部位に分子運動性を保持させることを考えた。そうすることで、連続相のSP値変動に追従して樹脂微粒子の表面組成が変化する機能を付与することができれば、前述した課題の解決が可能になると考えた。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造方法においては、連続相に対して親和性を有する部位として、固有元素αを含有する樹脂Sを含有する樹脂微粒子を使用する。
前記樹脂微粒子の表面組成の分析は、X線光電子分光分析(ESCA)を用いて前記樹脂Sに含まれる固有元素αの量を定量することによって行うことができる。
例えば、二酸化炭素を含有する分散媒体による連続相に対して親和性を有する部位としては、好ましくは、有機ポリシロキサン構造を有する部位(以下、有機ポリシロキサン基ともいう)を挙げることができる。
有機ポリシロキサン基は、下記式(11)に示すSi−O結合の繰返し単位を有し、各Si元素には二つのアルキル基が結合した構造を有する、低極性の基である。
Figure 2016126331
すなわち、前記有機ポリシロキサン基は、固有元素αとしてSiを含有する。上記式(11)においてR1はアルキル基であり、nは重合度を示し、2以上の整数である。
前記Si−O結合は、C−C結合に比べて結合間距離が長いことから、柔軟性に富む。そのため、樹脂微粒子を構成する前記樹脂Sに有機ポリシロキサン基を導入した場合、前記樹脂微粒子の表面に存在する有機ポリシロキサン基が連続相側に配向する。これにより、分散相である樹脂溶液の液滴同士の衝突による凝集を阻害する、いわゆる「排除体積効果」を発現させることができる。
本発明者らは、有機ポリシロキサン基を導入した樹脂Sを用いて樹脂微粒子を作製した。そして、その樹脂微粒子に対して液体状態の二酸化炭素への暴露処理を施し、処理前後の前記樹脂微粒子の表面組成の変化について検討を行った。
ここで、前記暴露処理とは、具体的には、以下の要領に従って行う処理である。
(1)前記樹脂微粒子を前記有機溶媒に分散させた分散体を調製する。
(2)前記分散体を耐圧容器に投入し、25℃の温度下、内部圧力が6.5MPaに到達するまで二酸化炭素を導入する。
(3)前記耐圧容器内を温度25℃、内部圧力6.5MPaに維持させた状態で二酸化炭素を流通させて、前記分散体から前記有機溶媒を除去する。
前記ESCAでは、試料の表面(深さ約10nmまでの領域)に存在する元素が検出される。また、ケミカルシフトによって、元素の結合状態も分離することが可能であり、前記有機ポリシロキサン基に由来するSi−O結合の場合、101eV以上103eV以下にピークが出現する。
検討の結果、前記有機ポリシロキサン基の導入形態や分子鎖長の調整によって、前記暴露処理前後の前記樹脂微粒子の表面組成の変化度を制御することができることを見出した。
さらに、前記表面組成の変化度を特定の範囲とすることで、連続相のSP値変動に対する追従性を付与することができ、それによって、得られる樹脂粒子およびトナー粒子の粒度分布シャープ化と高円形度を達成することが可能になることを見出し、本発明に至った。
以下に、前記樹脂微粒子が、連続相のSP変動に対する追従性を発揮するために必要な表面組成の変化度と、これを達成するための要件について詳細を説明する。
前記樹脂微粒子のESCAにより測定される前記固有元素αの量をA(atomic%)としたとき、αの量Aは、下記式1を満たす。
式1:3.0≦A≦6.0
Aの値が3.0atomic%より小さいということは、樹脂微粒子の表面において分散媒体である二酸化炭素に対する親和基として機能する固有元素αを含有する部位が不足していることを意味している。そして、分散剤としての機能が低下するため、液滴の分散安定性が低下する。また、αの量Aの値が6.0atomic%より大きいということは、樹脂微粒子表面に存在する固有元素αを含有する部位が多すぎることを意味しており、樹脂溶液の液滴に対する親和性が低下するため、液滴の分散安定性が低下する。
従って、Aの値は、3.5atomic%以上5.5atomic%以下であることが好ましい。
また、前記樹脂微粒子に前述した液体状態の二酸化炭素への暴露処理を行って得られた処理後樹脂微粒子をESCAにより測定される前記固有元素αの量をB(atomic%)とする。そのとき、前記暴露処理による表面組成の変化度は、前記αの量Aと前記αの量Bとの比B/Aで表され、以下の式2を満たす。
式2:1.10≦B/A≦1.55
B/Aの値が1.10よりも小さいということは、連続相のSP値変動に対する追従性が低いことを示しており、液滴の分散安定性を持続させることが困難である。また、B/Aの値が1.55よりも大きいということは、連続相のSP値変動に対する追従性の点では本来有利であるが、新たな問題として樹脂としての耐溶剤性が低下してしまう。その結果、特に高い温度で液滴形成を行う場合には、液滴の分散安定性が低下する。
したがって、B/Aの値は、1.15以上1.45以下であることが好ましい。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造方法に使用する前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sは、有機ポリシロキサン構造を有する部位を側鎖に有する分子構造の樹脂であることが好ましい。
前記有機ポリシロキサン構造を有する部位は、前記c)および前記g)の工程以降における連続相の組成変化に追従して配向状態を変えて、排除体積効果を維持する必要がある。有機ポリシロキサン構造を有する部位の柔軟性は、両末端が結合した構造に比べて片末端が結合した構造の方が高くなる。したがって、片末端で結合する側鎖構造を有する分子構造をとることが好ましい。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造方法における前記有機ポリシロキサン構造を有する部位の重量平均分子量(Mw)は、400以上2000以下であることが好ましい。
ここで、前記有機ポリシロキサン構造を有する部位のMwとは、前記側鎖の長さを表している。前記Mwの値が上記範囲に有ることで、前記c)および前記g)以降の工程における液滴の分散安定性が向上し、樹脂粒子およびトナー粒子の粒度分布シャープ化および高円形度化が可能となる。
前記Mwの値が400以上であると、有機ポリシロキサン構造を有する側鎖が連続相側に配向したときの広がりが大きくなり、十分な排除体積効果が得られやすい。さらに連続相のSP値変動に対する追従性が向上し、特に前記c)および前記g)以降の工程において液滴の分散安定性が向上する。また、Mwの値が2000以下であると、有機ポリシロキサン構造を有する側鎖が長くなりすぎず、樹脂としての耐溶剤性が向上し、液滴の安定性がより高くなる。
本発明の樹脂粒子およびトナーの製造方法に使用する前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sは、架橋構造を有する樹脂であることが好ましい。
前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sに架橋構造を導入することで、前述した前記樹脂微粒子に対して二酸化炭素による暴露処理を行ったときの表面Si組成の変化度であるB/Aの値を容易に上記式2の範囲とすることが可能になる。
架橋構造を導入することで、前記有機ポリシロキサン構造を有する側鎖を長くした場合でも、高い温度下において耐溶剤性が低下することがより抑制され、その結果、液滴の分散安定性が向上する。
前記樹脂微粒子の粒径は、個数平均粒子径で30nm以上300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上250nm以下である。樹脂微粒子の粒径が30nm以上であると、前記b)および前記f)の工程における液滴の安定性が向上する傾向にある。300nm以下であると、液滴の粒径を所望の大きさに制御しやすくなる。前記樹脂微粒子の配合量は、前記樹脂溶液中に含まれる固形分量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、前記液滴の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
本発明のトナーの製造方法において、前記樹脂Rは、一般的にトナーに用いられる樹脂である結晶性樹脂、非晶性樹脂のいずれも使用可能であるが、特に、ポリエステルを主成分とする樹脂を用いることが好ましい。結晶性樹脂とは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂を意味する。従って、融点より低い温度領域ではほとんど軟化せず、融点を越えると融解が生じ急激に軟化する。このような樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、明瞭な融点ピークを示す。従って、結晶性樹脂は、溶融後の粘性が低くなることで、良好な低温定着性を発現しやすくなる。
前記結晶性樹脂の融点は、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
前記樹脂Rに使用可能な結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリビニル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂が挙げられる。好ましくは結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリビニル樹脂であり、特に好ましくは結晶性ポリエステルである。
前記結晶性ポリエステル樹脂は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることが好ましく、炭素数2乃至20の脂肪族ジオールと炭素数2乃至18の脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることがより好ましい。
また、脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。直鎖型であることで、より結晶性の高いポリエステルが得られる。
炭素数2乃至20の直鎖型脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。
1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール。
これらの中でも、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
また、脂肪族ジカルボン酸は結晶性の観点から、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。
上記炭素数2乃至18の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。
蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸及び1,18−オクタデカンジカルボン酸、あるいはそれらの低級アルキルエステルや酸無水物。
これらのうち、セバシン酸、アジピン酸及び1,10−デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また芳香族カルボン酸を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。
このようなジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、カルボン酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル樹脂の重合法によって製造することができる。例えば、直接重縮合法又はエステル交換法を用い、単量体の種類によって使い分けて製造することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。単量体が反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の有機溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助有機溶剤を留去しながら行う。重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、以下の化合物を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドの如きチタン触媒、又は、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド及びジフェニルスズオキシドの如きスズ触媒。
結晶性ポリビニル樹脂としては直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニル系単量体を重合した樹脂が挙げられる。
直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニル系単量体としては、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートが好ましく、例えば以下のものを挙げることができる。ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート。
結晶性ポリビニル樹脂の製造方法は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度で重合することが好ましい。
前記非晶性樹脂としては、示差走査熱量測定において、明確な最大吸熱ピークを示さないものである。ただし、非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、55℃以上110℃以下であることがより好ましい。
非晶性樹脂の具体例としては、非晶性のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリウレア樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂は、ウレタン、ウレア又はエポキシにより変性されていてもよい。これらの中でも、弾性維持の観点から、非晶性のポリエステル樹脂及びポリビニル樹脂、およびポリウレタン樹脂が好適であり、非晶性のポリエステル樹脂が、特に好適である。
以下に、非晶性のポリエステル樹脂について述べる。非晶性ポリエステル樹脂の製造に使用可能な単量体としては、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これら単量体の具体例としては、以下のものが挙げられる。
2価のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸の如き二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸の如き脂肪族不飽和ジカルボン酸。
また、3価以上のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
また、3価以上のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
尚、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸の如き1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールの如き1価のアルコールも使用することができる。
非晶性のポリエステル樹脂の合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
次に、非晶性のポリウレタン樹脂について述べる。ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する化合物との反応物であり、ジオール及びジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。
ジイソシアネートとしては、重合性不飽和基を有するポリエステルの製造に用いることができるジイソシアネートと同様のものを用いることができる。
また、ジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ジオールとしては、前述した非晶性ポリエステルの製造に用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
以下に、非晶性のビニル樹脂について述べる。非晶性ビニル樹脂の製造に使用可能な単量体としては以下の化合物を挙げることができる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン);アルカジエン類(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン)。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類(シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン);テルペン類(ピネン、リモネン、インデン)。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン);およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル〔炭素数1以上11以下〕エステル(マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー)。
ビニルエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート)、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
更に、本発明においては、前記樹脂Rとして、結晶性樹脂成分と、非晶性樹脂成分とを化学的に結合したブロックポリマーを使用することも好ましい形態のひとつである。
ブロックポリマーは、結晶性樹脂成分(X)と非晶性樹脂成分(Y)とのXY型ジブロックポリマー、XYX型トリブロックポリマー、YXY型トリブロックポリマー、XYXY・・・・型マルチブロックポリマーが挙げられ、どの形態も使用可能である。
前記ブロックポリマーを調製する方法としては、結晶性樹脂成分からなる結晶部を形成する成分と非晶性樹脂成分からなる非晶部を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)、結晶部を形成する成分、および非晶部を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)を用いることができる。
前記ブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択してブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分がともにポリエステル樹脂の場合は、各成分を別々に調製した後、必要に応じて結合剤を用いて結合することにより調製することができる。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合は、結合剤を用いることなく結合させることができる。このとき反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
一方で、結晶性樹脂成分がポリエステル樹脂であり、非晶性樹脂成分がポリウレタン樹脂の場合では、各成分を別々に調製した後、ポリエステル樹脂のアルコール末端とポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つポリエステル樹脂と、ポリウレタン樹脂を構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することによっても合成が可能である。ジオールおよびジイソシアネート濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタン樹脂となり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタン樹脂のイソシアネート末端とポリエステル樹脂のアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分ともにビニル樹脂の場合は、一方の成分を重合した後、そのビニルポリマーの末端から他成分を重合開始させることにより調製することができる。
前記ブロックポリマー中の結晶性樹脂成分の割合は50.0質量%以上であることが好ましく、70.0質量%以上であることがより好ましい。
本発明のトナーの製造方法における前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sは、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物と重合性不飽和基を有するポリエステルを含有する単量体組成物の重合物であることが好ましい。
ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物は、分散媒体である二酸化炭素に高い親和性を示し、排除体積効果を発揮することが可能である。一方で重合性不飽和基を有するポリエステルは、ポリエステルを含有する樹脂Rに対する親和性が高いため、前記樹脂溶液の液滴に吸着する成分として働く。また、一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均が、1.0を超える場合には、前述した架橋構造を形成する役割も担うことができる。
したがって、前記有機ポリシロキサン化合物と前記重合性不飽和基を有するポリエステルとを重合させて得られた前記樹脂微粒子を分散剤として使用することで、液滴の安定性をより向上させることが可能となる。また、トナー粒子のさらなる粒度分布シャープ化および高円形度が可能となる。
前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの重合に用いる前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の構造の一例を式(12)に示す。式(12)において、R2、R3はアルキル基であり、R4はアルキレン基であり、R5は水素原子もくしはメチル基である。nは重合度を示し、2以上の整数である。
Figure 2016126331
前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の合成方法としては、カルビノール変性ポリシロキサンと、アクリル酸クロライドもしくはメタクリル酸クロライドの脱塩酸反応による反応が挙げられる。
前記重合性不飽和基を有するポリエステルは、ポリエステル一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均が1.0以上3.0以下であることが好ましい。
前記重合性不飽和基の数の平均とは、前記重合性不飽和基を有するポリエステルの不飽和度を表している。前記重合性不飽和基を有するポリエステルの不飽和度を適宜調整することにより前記樹脂微粒子の架橋密度が決定される。重合性不飽和基の数の平均を上記の範囲とすることで、前述したB/Aの値を容易に上記式2の範囲とすることが可能になる。
前記重合性不飽和基の数の平均が3.0以下であると、前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの架橋が過度になり過ぎず、前記有機ポリシロキサン構造を有する側鎖の分子運動性が向上し、B/Aの値を適正な範囲に調整し易くなる。
前記重合性不飽和基の数の平均を3.0より小さくしていくと、側鎖の分子運動性は向上するが、1.0に近づくとともに分散媒体への耐溶剤性が低下する傾向を示す。前記重合性不飽和基の数の平均が1.0以上であると架橋構造が形成され、B/Aの値を適正な値に調整し易くなる。
さらに、前記重合性不飽和基の数の平均は、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。
前記重合性不飽和基を有するポリエステルの製造方法として、以下の方法が挙げられる。
(1)ジカルボン酸とジオールとの重縮合反応時に重合性不飽和基を導入する方法
前記重合性不飽和基を導入する方法としては、以下の手法が挙げられる。
(1−1)前記ジカルボン酸の一部に重合性不飽和基を有するジカルボン酸を使用する方法
(1−2)前記ジオールの一部に重合性不飽和基を有するジオールを使用する方法
(1−3)前記ジカルボン酸の一部と前記ジオールの一部にそれぞれ重合性不飽和基を有するジカルボン酸と重合性不飽和基を有するジオールを使用する方法
前記重合性不飽和基を有するポリエステルの不飽和度は、重合性不飽和基を有するジカルボン酸またはジオールの添加量によって調整することが可能である。
重合性不飽和基を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。また、重合性不飽和基を有する脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
前記重合性不飽和基を持たないジカルボン酸やジオールとしては、後述する通常のポリエステルの製造に使用するジカルボン酸やジオールを使用することができる。
(2)ジカルボン酸とジオールの重縮合により作製したポリエステルとビニル系化合物をカップリングさせる方法
前記カップリングでは、ポリエステルの末端官能基との反応が可能な官能基を含有するビニル系化合物を直接カップリングさせても良い。また、ポリエステルの末端を、ビニル系化合物が含有する官能基との反応が可能になるよう、結合剤を用いて修飾して、カップリングさせても良い。例えば以下の方法が挙げられる。
(2−1)末端にカルボキシル基を有するポリエステルとヒドロキシル基を含有するビニル系化合物を、縮合反応によってカップリングさせる方法
この場合、前記ポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジカルボン酸/ジオール)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
(2−2)末端にヒドロキシル基を有するポリエステルと、イソシアネート基を有するビニル系化合物を、ウレタン化反応によってカップリングさせる方法
(2−3)末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとヒドロキシル基を有するビニル系化合物を、結合剤であるジイソシアネートを用いてウレタン化反応によってカップリングさせる方法
前記(2−2)と前記(2−3)の方法で使用するポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基を有するビニル系化合物としては、ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテルが挙げられる。これらのうち、好ましいものはヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートである。
前記イソシアネート基を有するビニル系化合物としては、以下のものが挙げられる。2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。これらの中でも、特に好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
前記ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものはXDI及びHDI、IPDIである。
本発明のトナーの製造方法における前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの重合において、前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(X)と前記重合性不飽和基を有するポリエステル(Y)の質量比(Y/X)は、1.0以上2.3以下であることが好ましい。
質量比(Y/X)が1.0以上であると、前記f)の工程において、樹脂微粒子表面に存在する前記有機ポリシロキサン構造を有する部位が多過ぎず、前記樹脂溶液の液滴に対する親和性が向上し、液滴の分散安定性がより向上する。
質量比(Y/X)が2.3以下であると、前記f)の工程において、前記樹脂微粒子表面に存在する有機ポリシロキサン構造を有する部位が過度に少なくならずに、分散媒体である二酸化炭素に対する親和性が十分に得られる。その結果、樹脂微粒子が分散剤としての機能が十分に得られ、液滴の分散安定性が向上する。
本発明のトナーの製造方法における前記有機ポリシロキサン化合物と前記重合性不飽和基を有するポリエステルの合計は、前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの単量体の総量に対して45.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。
前記有機ポリシロキサン化合物と前記重合性不飽和基を有するポリエステルの合計が45.0質量%以上であると、前記分散媒体である二酸化炭素と前記樹脂溶液の液滴の両者に対する親和性が向上し、液滴の分散安定性が向上する。
80.0質量%以下であると、樹脂の骨格を形成するために必要となる他の単量体の割合がある程度存在することで、樹脂としての安定性が得られる。
本発明のトナーの製造方法における前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの重合において、前記単量体組成物には、前記有機ポリシロキサン化合物及び前記重合性不飽和基を有するポリエステルに加え、重量平均分子量(Mw)が200以上2000以下の重合性不飽和基を2つ以上有する単量体(以下、多官能単量体とも称する)を含有することが好ましい。
前記多官能単量体の重量平均分子量は、前記樹脂微粒子における架橋点間の距離を表している。上記範囲のMwを有する多官能単量体を使用することで、前述したB/Aの値をさらに容易に上記式2の範囲とすることが可能になる。
前記多官能単量体のMwが200以上であると架橋点間の距離が短くなり過ぎず、前記樹脂微粒子の表面に存在する前記有機ポリシロキサン構造を有する側鎖の分子運動性が向上する。それにより、前記g)以降の工程において排除体積効果を十分に維持し、液滴の分散安定性がより向上する。
前記多官能単量体のMwが2000以下であると、架橋点間の距離が長くなり、前記樹脂微粒子における側鎖の分子運動性が適度に増すことになる。さらに、耐溶剤性が確保され、液滴の分散安定性が向上する。
前記多官能単量体の量は、前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの合成に用いる単量体の総量に対して1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
前記多官能単量体の量によって、前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sにおける架橋点の数を制御することができる。前記多官能単量体の量を上記の範囲とすることで、前述したB/Aの値を容易に上記式2の範囲とすることが可能になる。
前記多官能単量体の量が1.0質量%以上であると架橋点の数が十分に存在し、前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの耐溶剤性が向上し、液滴の分散安定性がより向上する。
5.0質量%以下であると、架橋が過度になり過ぎず、前記樹脂微粒子における側鎖の分子運動性が向上する。その結果、前記g)の工程以降における排除体積効果が維持され、液滴の分散安定性がより向上する。
さらには、前記多官能単量体の量は、2.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。
本発明のトナーの製造方法において前記樹脂微粒子に架橋構造の導入に使用する架橋剤は、複数のビニル基を有する一般的な架橋剤を用いることが可能である。
以下に使用可能な架橋剤を例示するが、この限りではない。
ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル、両末端アクリル変性シリコーン、両末端メタクリル変性シリコーンが挙げられる。
本発明のトナーの製造方法における前記樹脂微粒子を構成する樹脂Sの重合には、前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物および重合性不飽和基を有するポリエステルに加え、他の単量体を重合させることも可能である。他の単量体としては、通常の樹脂材料の重合に用いる単量体が使用可能である。以下に例示するが、この限りでない。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
本発明のトナーの製造方法におけるトナー粒子は、ワックスを含有することも好ましい形態のひとつである。前記ワックスとしては、特に限定はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明のトナーの製造方法において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスである。また、本発明に用いられるエステルワックスは、3官能以上のエステルワックスであることが好ましく、更に好ましくは4官能以上のエステルワックス、特に好ましくは6官能以上のエステルワックスである。
3官能以上のエステルワックスは、例えば3価以上の酸と長鎖直鎖飽和アルコールの縮合、または3価以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸の合成によって得られる。
前記ワックスにて使用可能な3価以上のアルコールとしては以下を挙げることが出来る。グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、これらの縮合物として、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリン等のいわゆるポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリスペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエリスリトール、又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
前記長鎖直鎖飽和脂肪酸は、例えば以下を挙げることが出来る。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
本発明にて使用可能な3価以上の酸としては以下を挙げることが出来る。トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸。
前記長鎖直鎖飽和アルコールは、例えば以下を挙げることが出来る。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
前記トナー粒子中におけるワックスの添加量は、トナー粒子100.0質量部に対し、好ましくは1.0質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上15.0質量部である。
前記ワックスは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。
本発明のトナーの製造方法において、前記トナーは、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粒子が挙げられ、そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来る。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーの製造方法に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
前記着色剤は、好ましくはトナー粒子100.0質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下添加して用いられる。着色剤として磁性粒子を用いる場合、その添加量はトナー粒子100.0質量部に対し、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーの製造方法においては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
前記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
前記荷電制御剤の好ましい配合量は、トナー粒子100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
本発明のトナーの製造方法において、前記トナー粒子には流動性向上剤として、無機微粒子を添加することが好ましい。トナー粒子に添加する無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子またはそれらの複酸化物微粒子の如き微粒子が挙げられる。該無機微粒子の中でもシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子が好ましい。
前記シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。なかでも、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンの如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子であっても良い。
前記無機微粒子は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。また、前記無機微粒子を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるため、疎水化処理された無機微粒子を用いることがより好ましい。トナーに添加された前記無機微粒子が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
本発明の製造方法によるトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナー粒子を用いることは、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は、1.25未満であることが好ましい。
また、本発明の製造方法によるトナー粒子は、平均円形度が0.97以上であることが好ましい。平均円形度は、トナー粒子表面の凹凸を示す指標であり、値が1.00に近いほど凹凸が少なく表面が均一となり、トナー粒子に帯電性を付与させる機能を持つ様々な外添剤をトナー粒子表面に均一に外添することが可能となる。
さらに、本発明の製造方法によるトナー粒子は、円形度の変動係数が、4.00未満であることが好ましい。円形度の変動係数は、円形度の分布を示す指標であり、値が小さいほど形状が均一であり、実用時にクリーニング不良などを起こしにくい。
以下に、本発明で規定する各物性値の測定方法を記載する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<トナー粒子の平均円形度及び円形度の変動係数の測定方法>
トナー粒子の平均円形度及び円形度の変動係数は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。該手順に従い調製した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナー粒子の平均円形度と標準偏差は、円相当径1.985μm以上200.00μm以下のトナー粒子について求め、平均円形度と標準偏差の値から変動係数を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、200.00μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<樹脂微粒子の個数平均径の測定方法>
本発明において、樹脂微粒子の一次粒子の個数平均径は、ゼータサイザーNano−ZS(MALVERN社製)を用いて測定する。測定条件として、樹脂微粒子の屈折率、分散溶媒の屈折率および粘度を入力する。また、サンプルは、測定対象の樹脂微粒子の水および有機溶媒分散液を固液比が0.10質量%(±0.02質量%)となるように希釈して調整し、石英セルに採取して測定部に入れる。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、およびピーク分子量(Mp)の測定方法>
各種樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量(Mn、Mw、Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をTHFに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作製した分子量校正曲線を使用する。
<重合性不飽和基を有するポリエステルの、一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均の測定方法>
重合性不飽和基を有するポリエステルに含まれる重合性不飽和基の数の平均の測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30.0℃
試料は、重合性不飽和基を有するポリエステル50.0mgを内径5.0mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40.0℃の恒温槽内で溶解させることにより調製する。
上記試料の1H−NMRを測定し、以下のユニットに帰属されるピーク情報を得る。
(1)重合性不飽和基を含む化合物に由来するユニットY1
(2)重合性不飽和基を含まないジオールに由来するユニットY2
(3)重合性不飽和基を含まないジカルボン酸に由来するユニットY3
上記重合性不飽和基を含む化合物は、上述した重合性不飽和基を有するジオールや重合性不飽和基を有するジカルボン酸、ヒドロキシル基を有するビニル系化合物、イソシアネート基を有するビニル系化合物が含まれる。
前記ユニットY1に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP1を選択し、選択したピークP1の積分値S1を算出する。
前記ユニットY2に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP2を選択し、選択したピークP2の積分値S2を算出する。
前記ユニットY3に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP3を選択し、選択したピークP3の積分値S3を算出する。
前記重合性不飽和基を有するポリエステル一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均は、上記積分値S1、積分値S2、積分値S3を用いて、以下のようにして求める。
重合性不飽和基ポリエステル1分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均=
{Mp×(S1/n1)}/{M1×(S1/n1)+M2×(S2/n2)+M3×(S3/n3)}
尚、n1、n2、n3は、それぞれ上記ユニットY1、Y2、Y3における水素原子の数であり、M1、M2、M3は、それぞれ上記ユニットY1、Y2、Y3の分子量である。Mpは、重合性不飽和基を有するポリエステルの分子量である。
<結晶性ポリエステル樹脂、ブロックポリマー、及びワックスの融点の測定方法>
結晶性ポリエステル樹脂、ブロックポリマー、及びワックスの融点は、DSC Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、アルミ製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミ製の空パンを用いる。測定は、一度200℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。結晶性ポリエステル及びブロックポリマーの場合は1度目の昇温過程において、ワックスの場合は2度目の昇温過程において、温度20℃から200℃の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点とする。
<非晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ビニル樹脂のガラス転移点(Tg)の測定方法>
非晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ビニル樹脂のガラス転移点は、前記DSC測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、最大吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、その点の温度をガラス転移点とする。
<ワックス微粒子及び着色剤微粒子の粒子径の測定方法>
本発明において、各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。尚、希釈溶媒としては水を選択する。
<X線光電子分光分析(ESCA)による有機ポリシロキサン構造に由来するSi量の測定方法>
本発明では、樹脂微粒子に対して液体状態の二酸化炭素への暴露処理を施した処理後の樹脂微粒子と、暴露処理前の樹脂微粒子の表面に存在する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量をX線光電子分光分析(ESCA)による表面組成分析で算出する。
ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック−ファイ社製 Quantum 2000
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al−Kα
X線条件:100μm25W15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
以上の条件により測定を行い、炭素1s軌道のC−C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上103eV以下にピークトップが検出されるケイ素2p軌道のSiO結合のピーク面積から、アルバック−ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量を算出する。なお、Si2p軌道の他ピーク(SiO2:103eVより大きく、105eV以下)が検出される場合は、SiO結合のピークに対し波形分離を行うことで、SiO結合のピーク面積を算出する。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
<重合性不飽和基を有するポリエステル(y1)の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 128.0質量部
・フマル酸 2.6質量部
・1,6−ヘキサンジオール 78.5質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、重合性不飽和基を有するポリエステル(y1)を合成した。重合性不飽和基を有するポリエステル(y1)の融点は56℃、Mnは19,000、Mwは44,000であった。一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均は2.0であった。
<重合性不飽和基を有するポリエステル(y2)乃至(y7)の合成>
重合性不飽和基を有するポリエステル(y1)の合成において、使用する原料の添加量を表1のように変えた以外は全て同様にして、重合性不飽和基を有するポリエステル(y2)乃至(y7)をそれぞれ合成した。
Figure 2016126331
<ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x1)乃至(x3)の準備>
本発明においては、表2に示す市販の片末端型ビニル変性有機ポリシロキサンを用意し、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x1)乃至(x3)として使用した。ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x1)乃至(x3)の構造は、下記式(12)で表され、R2乃至R5の詳細及び重合度nの値は、表2に示した。
Figure 2016126331
Figure 2016126331
<ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x4)の準備>
本発明においては、表3に示す市販の両末端型ビニル変性有機ポリシロキサンを用意し、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x4)として使用した。ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x4)の構造は、下記式(13)で表わされ、R6、R8がメチル基であり、R7がプロピレン基であり、重合度nが2である。
Figure 2016126331
Figure 2016126331
<多官能単量体(z1)乃至(z4)の準備>
本発明においては、表4に示す市販の多官能単量体(重合性不飽和基を2つ以上有する単量体)を用意し、多官能単量体(z1)乃至(z4)として使用した。多官能単量体(z1)乃至(z4)の構造は、下記式(14)で表され、重合度m、nの合計は、表4に示した。
Figure 2016126331
Figure 2016126331
<樹脂微粒子分散液1の調製>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料とトルエン800.0質量部を仕込み、70℃に加熱して完全に溶解して単量体組成物1を調製した。
・重合性不飽和基を有するポリエステル(y1) 40.0質量部
・ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(x1) 25.0質量部
・スチレン(St) 25.0質量部
・メタクリル酸(MAA) 10.0質量部
・多官能単量体(z1) 2.0質量部
上記単量体組成物1を250rpmで撹拌しながら25℃まで降温し、30分間窒素バブリングした後、重合開始剤としてアゾビスメトキシジメチルバレロニトリルを0.6質量部混合した。その後、75℃で加熱し、6時間反応させ、さらに80℃に加熱し、1時間反応を行った。その後、空冷し、粗粒子状の樹脂の分散体を得た。
得られた粗粒子状の樹脂の分散体を、温度調節可能な撹拌タンクに投入し、ポンプを用いてクレアSS5(エム・テクニック社製)に35g/minの流量で移送して処理することにより、微粒子状の樹脂の分散体を得た。クレアSS5による前記分散体の処理条件は、クレアSS5の回転するリング状ディスクの最外周部の周速を15.7m/sとし、回転するリング状ディスクと固定されたリング状ディスクの間隙を1.6μmとした。また、撹拌タンクの温度は、クレアSS5で処理後の液温が40℃以下となるように調節した。
前記分散体中の樹脂微粒子とトルエンを遠心分離機により分離した。以下に遠心分離の条件を示した。
・遠心分離機:H−9R(KOKUSAN社製)
・ローター:BN1ロ―タ(KOKUSAN社製)
・装置内設定温度:4℃
・回転数:16500rpm
・時間:2.5時間
その後、上澄みを除去することで、濃縮された微粒子状の樹脂の分散体を得た。
撹拌装置のついたビーカーに、前記濃縮された微粒子状の樹脂の分散体とアセトンを投入し、高出力ホモジナイザー(VCX−750)を用いて、前記微粒子状の樹脂をアセトンに分散させた後、さらにアセトンを添加して、固形分濃度が10.0質量%の樹脂微粒子分散液1を調製した。このようにして調製した樹脂微粒子分散液1中に含まれる樹脂微粒子の個数平均粒径は、0.14μmであった。また、樹脂微粒子分散液1の一部をろ過、乾燥し、樹脂微粒子を採取した。前記樹脂微粒子のESCAにより測定されるSi量Aは、5.1atomic%であり、前記樹脂微粒子に前述した液体状態の二酸化炭素を暴露処理させた後におけるSi量Bは、7.1atomic%であった。暴露処理前後における表面組成の変化度B/Aは、1.40であった。ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(X)と重合性不飽和基を有するポリエステル(Y)の質量比(Y/X)、および合計(X+Y)を表5−2に示す。
<樹脂微粒子分散液2乃至37の調製>
樹脂微粒子分散液1の調製において、重合性不飽和基を有するポリエステル、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物、多官能単量体、およびその他の単量体の添加量を表5−1に示すものに変更し、樹脂微粒子分散液2乃至37を得た。得られた樹脂微粒子分散液2乃至37中に含まれる樹脂微粒子の個数平均粒径、およびESCAにより測定されるSi量A、液体状態の二酸化炭素を暴露処理させた前後における表面組成の変化度B/Aを表5−2に示す。
Figure 2016126331
Figure 2016126331
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 123.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の融点は73℃、Mnは5,800、Mwは11,800であった。
<ブロックポリマー1の合成>
・結晶性ポリエステル1 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマー1を得た。ブロックポリマー1の融点は65℃、Mnは16,500、Mwが33,500であった。
<ブロックポリマー溶解液1の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、有機溶媒としてのアセトンを128.0質量部、ブロックポリマー1を72.0質量部投入し、50℃に加熱して完全に溶解するまで撹拌を続け、ブロックポリマー溶解液1を調製した。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が200nm、固形分量が40.0質量%の着色剤分散液1を得た。
<ワックス分散液1の調製>
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 16.0質量部
・ワックス分散剤 8.0質量部
(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体)
・アセトン 76.0質量部
上記を撹拌羽根付きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することによりワックスをアセトンに溶解させた。
ついで、系内を50rpmの条件にて緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間の分散を行った後、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が270nm、固形分量24.0質量%のワックス分散液1を得た。
<実施例1>
(トナー粒子1の製造)
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、及び圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1に18.0質量部の樹脂微粒子分散液1を仕込み、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力が2.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。一方、樹脂溶液タンクT2にブロックポリマー溶解液1、着色剤分散液1、ワックス分散液1を仕込んで樹脂溶液を調製した後、内部温度を40℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶液タンクT2の樹脂溶液を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.0MPaとなった。導入した全二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定し、280.0質量部であった。
なお、樹脂溶解液タンクT2への材料仕込み量(比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶解液1 100.0質量部
・ワックス分散液1 10.0質量部
・着色剤分散液1 6.0質量部
樹脂溶液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで3分間撹拌して前記樹脂溶液の液滴による分散体の形成を行った。
次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入し、内部圧力が10.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。こうして前記分散体中の液滴に含まれるアセトンの分散媒体への抽出を行った。
その後、圧力調整バルブV3を10.0MPaに設定してバルブV1を開き、造粒タンクT1の内部圧力を10.0MPaに保持しながら、さらにポンプP1を用いて二酸化炭素を流通させた。この操作により、抽出された有機溶媒としてのアセトンを含む二酸化炭素を、溶媒回収タンクT3に排出し、アセトンと二酸化炭素を分離した。
また、二酸化炭素を有機溶媒回収タンクT3へ排出し始めてから5分ごとにタンクT3内のアセトンを取りだした。この作業をアセトンが有機溶媒回収タンクに溜まらなくなり、取り出せなくなるまで続けた。アセトンが取り出されなくなった時点で脱溶媒終了とし、バルブV1を閉じて、二酸化炭素の流通を終了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで脱圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
得られたトナー粒子1について、粒度分布、円形度の評価を行った。D1は5.6μm、D4は6.2μm、D4/D1は1.10、平均円形度は0.99、円形度の変動係数は2.73であった。
尚、粒度分布の評価については下記の基準に基づいて判断を行った。
A:D4/D1値が1.15未満
B:D4/D1値が1.15以上1.20未満
C:D4/D1値が1.20以上1.25未満
D:D4/D1値が1.25以上1.30未満
E:D4/D1値が1.30以上
また、円形度の変動係数の評価については、下記の基準に基づいて判断を行った。
A:円形度の変動係数が3.00未満
B:円形度の変動係数が3.00以上3.50未満
C:円形度の変動係数が3.50以上4.00未満
D:円形度の変動係数が4.00以上4.50未満
E:円形度の変動係数が4.50以上
<実施例2乃至23、比較例1乃至14>
実施例1において、樹脂微粒子分散液1に代えて、樹脂微粒子分散液2乃至37を使用した以外は、実施例1とすべて同様にしてトナー粒子2乃至23および比較用トナー粒子1乃至14を得た。得られたトナー粒子2乃至23および比較用トナー粒子1乃至14の評価結果を表6に示す。
Figure 2016126331

Claims (13)

  1. トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、前記製造方法が、
    e)樹脂R、着色剤、および有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程、
    f)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液を含有する液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散されている分散体を形成する工程、
    g)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程、および
    h)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことでトナー粒子を得る工程、
    を有し、
    前記樹脂微粒子が、固有元素αを含有する樹脂Sを含有し、
    前記樹脂微粒子が下記式1および式2を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
    式1:3.0≦A≦6.0
    式2:1.10≦B/A≦1.55
    (式1および2中、
    Aは、前記樹脂微粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。
    Bは、前記樹脂微粒子を前記有機溶媒に分散させた分散体を耐圧容器内に入れ、前記耐圧容器内に二酸化炭素を導入し、25℃の温度下、内部圧力6.5MPaを維持させた状態で二酸化炭素を流通させて、前記分散体から前記有機溶媒を除去して得られた処理後樹脂微粒子のX線光電子分光分析により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。)
  2. 前記固有元素αがSiである請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記Siが、有機ポリシロキサン構造に由来するSi元素である請求項2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記樹脂Sは、有機ポリシロキサン構造を有する部位を側鎖に有する樹脂であり、前記有機ポリシロキサン構造を有する部位の重量平均分子量(Mw)が、400以上2000以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
  5. 前記樹脂Sは、架橋構造を有する樹脂である請求項1から4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
  6. 前記樹脂Rは、ポリエステルを主成分とする樹脂である請求項1から5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  7. 前記樹脂Sは、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物と重合性不飽和基を有するポリエステルを含有する単量体組成物の重合物である請求項1から6のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
  8. 前記重合性不飽和基を有するポリエステルは、ポリエステル一分子中に含まれる重合性不飽和基の数の平均が1.0以上3.0以下である請求項7に記載のトナーの製造方法。
  9. 前記単量体組成物における、前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(X)と前記重合性不飽和基を有するポリエステル(Y)の質量比(Y/X)が1.0以上2.3以下であり、
    前記有機ポリシロキサン化合物と前記重合性不飽和基を有するポリエステルの合計が、前記樹脂Sの単量体の総量に対して45.0質量%以上80.0質量%以下である請求項7または8に記載のトナーの製造方法。
  10. 前記単量体組成物が、前記重合性不飽和基を有するポリエステルに加え、さらに、重量平均分子量(Mw)が200以上2000以下の重合性不飽和基を2つ以上有する単量体を含有する請求項7から9のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
  11. 前記重合性不飽和基を2つ以上有する単量体の量が、前記樹脂Sの単量体の総量に対して1.0質量%以上5.0質量%以下である請求項10に記載のトナーの製造方法。
  12. 樹脂粒子の製造方法であって、前記製造方法が、
    a)樹脂R、および有機溶媒を混合して樹脂溶液を調製する工程、
    b)前記樹脂溶液、樹脂微粒子、及び二酸化炭素を耐圧容器に混合し、表面を前記樹脂微粒子で覆われた前記樹脂溶液の液滴が、前記二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散されている分散体を形成する工程、
    c)前記耐圧容器内に液体状態の二酸化炭素を導入して加圧し、前記液滴に含まれる前記有機溶媒を前記分散媒体に抽出する工程、および
    d)前記分散媒体に抽出した前記有機溶媒を、前記二酸化炭素とともに前記耐圧容器内から除くことで樹脂粒子を得る工程、
    を有し、
    前記樹脂微粒子が、固有元素αを含有する樹脂Sを含有し、
    前記樹脂微粒子が下記式1および式2を満たすことを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
    式1:3.0≦A≦6.0
    式2:1.10≦B/A≦1.55
    (式1および2中、
    Aは、前記樹脂微粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。
    Bは、前記樹脂微粒子を前記有機溶媒に分散させた分散体を耐圧容器に入れ、前記耐圧容器内に二酸化炭素を導入し、25℃の温度下、内部圧力6.5MPaを維持させた状態で二酸化炭素を流通させて、前記分散体から前記有機溶媒を除去して得られた処理後樹脂微粒子のX線光電子分光分析により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。)
  13. 固有元素αを含有する樹脂Sを含有する樹脂微粒子であって、
    前記樹脂微粒子が下記式1および式2を満たすことを特徴とする樹脂微粒子。
    式1:3.0≦A≦6.0
    式2:1.10≦B/A≦1.55
    (式1および2中、
    Aは、前記樹脂微粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。
    Bは、前記樹脂微粒子を前記有機溶媒に分散させた分散体を耐圧容器に入れ、前記耐圧容器内に二酸化炭素を導入し、25℃の温度下、内部圧力6.5MPaを維持させた状態で二酸化炭素を流通させて、前記分散体から前記有機溶媒を除去して得られた処理後樹脂微粒子のX線光電子分光分析により測定される固有元素αの量(atomic%)を示す。)
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