JP6750856B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法に用いられるトナーに関する。
低温定着性とトナーの保存安定性を両立するトナーとして、コアとなる樹脂の表面をシェル樹脂で被覆したコアシェル構造のトナー粒子がある。
さらに、トナーの環境安定性を改善させる方法として、トナー粒子表面を被覆するシェル樹脂に温度や湿度の影響を受けにくい疎水性の材料を用いる方法が考えられる。有機ポリシロキサンは、界面張力が低い材料として知られている。
したがって、有機ポリシロキサン構造をトナー粒子のシェル樹脂に導入することで、湿度に影響を受けない帯電性能の付与が可能になると期待される。
ところが、有機ポリシロキサンは、一般にガラス転移点(Tg)が室温より低いため、シェル樹脂中に多量に存在するとトナー粒子の表面が軟化し、耐久性が低下する。そのため、有機ポリシロキサンの導入量、存在状態を制御することが重要である。
特許文献1では、コア樹脂および、シェル樹脂中に有機ポリシロキサン化合物を含有するコアシェル構造のトナー粒子が提案されている。この開示に基づいて作製したトナーの評価を行ったところ、高温高湿下、および低温低湿下の環境による帯電性能の変動に対して抑制効果があることが確認された。
特許文献2では、樹脂微粒子が表面に固着、または皮膜化されてなるトナー粒子の製造方法が提案されている。この方法では、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体とし、前記樹脂微粒子と分散安定剤としてのジメチルポリシロキサン基を有する化合物を分散させた前記分散媒体中でトナー粒子を形成させることで、前記樹脂微粒子がトナー粒子の表面に固着したトナー粒子を得ている。
特許文献3では、樹脂微粒子が表面に付着されてなるトナー粒子の製造方法が提案されている。この方法では、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を分散媒体とし、シリコーン樹脂からなる樹脂微粒子を分散させた前記分散媒体中でトナー粒子を形成させることで、前記樹脂微粒子がトナー粒子表面に付着したトナーを得ている。
特許文献4では、前記有機ポリシロキサン構造を含む樹脂によるシェル層を形成したコアシェル構造のトナー粒子が提案されている。
このトナー粒子は、前記有機ポリシロキサン構造を含む樹脂を含有する樹脂微粒子を用い、特許文献3と同様の方法を用いることによって、作製されるが、トナー粒子表面における有機ポリシロキサン構造を有する部位の存在量を適正化することで、環境安定性と耐久性を両立することができる。
特開2006−91283号公報 特開2010−132851号公報 特開2010−168522号公報 特開2013−137495号公報
しかしながら、本発明者らが、特許文献1のトナーを検討したところ、低温定着性に課題があることが分かった。これは、コア樹脂中に前記有機ポリシロキサン化合物を含有しているため、定着時におけるワックスの染み出しも阻害されてしまい、コールドオフセットが発生しやすいことが原因であると推察された。さらに、コア樹脂100質量部に対して、使用するシェル樹脂がおよそ20乃至60質量部と多く、シェル層が厚い。そのためコア樹脂が定着時に熱ローラーから十分な熱を得ることが容易ではないことも原因として推察された。
また、特許文献2のトナーに関して、帯電性の評価に供したところ、湿度による影響を受けやすく、期待した環境安定性は、得ることができなかった。これは、有機ポリシロキサン構造を有する化合物が、トナー化される過程において、取り除かれたためだと推察された。
また、特許文献3のトナーを評価に供したところ、帯電性能において良好な環境安定性が得られたが、期待した耐久性が得られないことが分かった。これは、シリコーン樹脂における有機ポリシロキサン構造を有する部位が、シリコーン樹脂100質量部に対して、およそ40質量部と多く、柔らかいため、トナー粒子の表面が軟化しやすく、耐久性が得られないのではないかと推察された。
さらに、特許文献4のトナーを過酷環境下に長期間放置させたトナーを耐久性試験に供したところ、画像不良が発生することがあり、環境安定性の効果が必ずしも十分ではないことが分かった。
このように、有機ポリシロキサン構造を有する化合物を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、環境安定性と耐久性、低温定着性を両立するには、未だ課題を有していた。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、帯電安定性、環境安定性、および耐久性に優れるとともに、低温定着性、および保存安定性に優れたトナーを提供することである。
本発明は、コア樹脂、着色剤およびワックスを含有するコアと
前記コアの表面の、樹脂Aを含有するシェル層と
を有するコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂Aが、有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有し、
前記トナー粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される、前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量(atomic%)が、6.0以上10.0以下であり、
前記樹脂Aが、分子1個中に重合性不飽和基を2個以上含有する単量体aを含む単量体組成物の重合体であり、
前記単量体aが、
重合性不飽和基を含有するポリエステル、および、
下記式(III)で表される多官能単量体
Figure 0006750856
(式(III)中、mおよびnは重合度を示し、mおよびnの合計は2〜11である。)
であり、
前記単量体aが、下記式(1)を満た
(Xa−1.0)×Ya≧3.0×10-5 (1)
(式(1)中、Xaは、前記単量体aの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値を示す。Yaは、前記単量体組成物中に含まれる全単量体の合計質量に対する前記単量体aのモル数(mol/g)を示す。)
ことを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、帯電安定性、環境安定性、および耐久性に優れるとともに、低温定着性に優れたトナーを提供することができる。
本発明のトナー粒子の製造方法、製造装置の一例を示す図である。 ヒートサイクルのタイムチャートを示す図である。 トナーの帯電量を測定するための装置の一例を示す図である。
本発明のトナーは、コア樹脂、着色剤およびワックスを含有するコアと、コアの表面に樹脂Aを含有するシェル層とを有するコアシェル型(構造)を有するトナー粒子を有するトナーである。
さらに、前記樹脂Aは、有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有する。前記有機ポリシロキサン構造とは、下記式(I)に示すSi−O結合の繰返し単位を有し、各Si元素には二つのアルキル基が結合した構造を有している。
Figure 0006750856
上記式(I)においてR1はアルキル基である。また、nは重合度を示し、2以上の整数である。上述したように、前記有機ポリシロキサン構造を有する化合物は、低界面張力である。
したがって、前記有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有する樹脂Aがトナー粒子表面に存在することで、トナーの環境安定性、特に高温高湿環境下および、低温低湿環境下における帯電量の変化が抑制可能となる。
一方、前記有機ポリシロキサン構造を有する化合物は、ガラス転移温度(Tg)が室温よりも低く、室温では、粘性のある液状である。したがって、樹脂Aに含まれる有機ポリシロキサン構造を有する部位が多くなるとトナー粒子表面が軟化し、耐久性が低下しやすい。
したがって、環境安定性と耐久性を両立するためには、トナー粒子表面を被覆する樹脂A中の有機ポリシロキサン構造を有する部位の含有量を適正化し、軟化を抑制することが重要となる。
ところが、有機ポリシロキサン構造を有する部位の含有量を適正化した場合においても、より過酷な温度湿度環境下に長期間曝されると十分な効果が得られなくなることが分かった。その原因について調査した結果、トナー粒子に含まれるワックスやコア樹脂中の低分子量成分が表面に染み出し、耐久性を低下させていることが分かった。上述した染み出しを解決するためには、有機ポリシロキサン構造を有する部位を増やすことが有効な手段となるが、当然のことながら耐久性のさらなる低下を招くことになる。
そこで、本発明者らは、樹脂Aに有機ポリシロキサン構造を有する部位の導入量を増やすとともにと架橋構造を導入することを試みた。そして、得られた樹脂Aを用いてトナー粒子を作製し、トナー粒子表面における有機ポリシロキサン構造に由来するSi量とトナーの環境安定性との関係、および樹脂Aにおける単位質量当たりの架橋構造の数である架橋密度と耐久性との関係について詳細に検討を行った。
検討の結果、前記Si量と前記架橋密度を特定の範囲とすることで、より過酷な環境下に長期間放置されたトナーであっても、環境安定性と耐久性との両立が可能となることを見出し、本発明に至った。
本発明において、トナー粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される、有機ポリシロキサン構造に由来するSi量(atomic%)は、6.0以上10.0以下である。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子の表面組成の分析は、ESCAを用いて定量することができる。ESCAでは、試料の表面(深さ約10nmまでの領域)に存在する元素が検出される。また、ケミカルシフトによって、元素の結合状態も分離することが可能であり、前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi−O結合の場合、101eV以上103eV以下にピークが出現する。
Si量の値が6.0atomic%未満であると、樹脂Aに含まれる有機ポリシロキサン構造が少ないことを意味し、より過酷な環境下に長期間放置することによるワックスやコア樹脂中の低分子量成分に対する染み出し抑制の効果が得られない。
また、Si量の値が10.0atomic%より大きいと、樹脂Aに含まれる有機ポリシロキサン構造が多いことを意味し、トナー粒子の表面が軟化するため、耐久性に劣る。
より好ましくは、Si量の値は、7.0atomic%以上9.0atomic%以下である。
樹脂Aは、重合性不飽和基を分子1個中に2個以上含有する単量体aを含む単量体組成物の重合体である。
重合性不飽和基を分子1個中に2個以上含有する単量体aは、重合の際に架橋構造を形成することにより、有機ポリシロキサン構造を有する化合物による樹脂Aの軟化を抑制する役割を担う。
そして、樹脂Aに由来する単量体aは、下記式(1)を満たす。
(Xa−1.0)×Ya≧3.0×10-5 (1)
(式(1)中、Xaは、単量体aの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値を示す。Yaは、前記単量体組成物中に含まれる全単量体の合計質量に対する単量体aのモル数(mol/g)を示す。)
上記式(1)における[(Xa−1.0)×Ya]は、樹脂Aにおける架橋密度を表す。[(Xa−1.0)×Ya]の値が3.0×10-5未満であると、樹脂Aにおける架橋密度が低いことを示しており、トナー粒子の表面が軟化しやすくなるため、耐久性が低下する。したがって、[(Xa−1.0)×Ya]の値は、3.0×10-5以上である必要があり、5.0×10-5以上であることがより好ましい。
また、定着性を維持する観点から、[(Xa−1.0)×Ya]の値は、2.5×10-4以下であることが好ましく、2.0×10-4以下であることがより好ましく、1.5×10-4以下であることがさらに好ましい。
本発明のトナー粒子において、樹脂Aに由来する単量体aの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値Xaは、2.0以上4.0以下であることが好ましい。
前記Xaを上記の範囲内にすることで、前記樹脂Aにおける架橋密度を式(1)の範囲に制御することが容易になる。架橋構造を導入するために用いる重合性不飽和基を含有する単量体aは、2種類以上を併用してもよい。本発明の実施例においては、重合性不飽和基を含有する単量体aとして、重合性不飽和基を有するポリエステルと多官能単量体とを用いている。このように2種類以上の単量体aを用いる場合は、それぞれの単量体aにおいて、[(Xa−1.0)×Ya]の値を求め、その値を合計することによって、式(1)を満たすかどうかを判断する。
前記Xaが2.0以上であるとは、架橋構造にあずからない前記重合性不飽和基を含有する単量体が少ないことを意味している。そのため、トナー粒子表面においてシェル層を形成する前記樹脂Aへの架橋構造導入による耐久性を向上させる効果がより良好となる。
一方、前記Xaが4.0以下であると、重合性不飽和基を含有する単量体による架橋密度が高過ぎることが抑制される。そのため、シェル層を形成する前記樹脂Aの硬化が適度となり、低温定着性が良好となる。前記Xaのより好ましい範囲は、2.0以上3.5以下である。
トナー粒子中の前記樹脂Aの含有量は、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
樹脂Aの含有量を上記範囲とすることで、環境安定性と耐久性の改善効果をより有効に発現させることができる。樹脂Aの含有量が1.0質量%以上であると耐久性がより向上する。また、樹脂Aの含有量が10.0質量%以下であると低温定着性が良好となる。
トナー粒子中の前記樹脂Aの含有量は、2.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
本発明のトナー粒子は、コアとシェル層の間に、有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有する樹脂Bを含有する中間層を有することが好ましい。
過酷環境下において、ワックスやコア樹脂中の低分子量成分の染み出しを抑制するためには、シェル層が前記トナー粒子の表面に均一に存在し、密着していることが必要となる。コアとシェル層の間に樹脂Bを含む中間層を形成することで、トナー粒子表面におけるシェル層の密着性が向上し、ワックスやコア樹脂中の低分子成分の染み出しの抑制効果がさらに高くなる。
本発明のトナー粒子において、樹脂Aおよび樹脂Bが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Za>Zb (2)
(式(2)中、Zaは、樹脂Aの蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量を示す。Zbは、樹脂Bの蛍光X線分析(XRF)により測定されるSi量を示す。)
前記Zaの値が前記Zbの値に対して大きいと、トナー粒子の表面Si量が相対的に大きくなることになり、環境安定性を向上させる効果がより優れる。
樹脂Bは、重合性不飽和基を分子1個中に2個以上含有する単量体bを含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。重合性不飽和基を分子1個中に2個以上含有する単量体bによって、樹脂Bの重合の際に架橋構造を形成することで、トナーの耐久性をさらに向上させることができる。また、樹脂A、樹脂Bが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(Xa−1.0)×Ya≧(Xb−1.0)×Yb (3)
(式(3)中、Xa、およびYaは、前記式(1)中の前記Xa、前記Yaと同義である。Xbは、樹脂Bにおける前記単量体bの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値を示す。Ybは、樹脂Bにおける前記単量体組成物中に含まれる全単量体の全質量に対する前記単量体bのモル数(mol/g)を示す。)
[(Xa−1.0)×Ya]および[(Xb−1.0)×Yb]は、樹脂A、および樹脂Bにおける架橋密度を示している。
[(Xa−1.0)×Ya]の値が[(Xb−1.0)×Yb]の値以上であるということは、トナー粒子において、中間層を構成する樹脂Bの架橋密度よりもシェル層を構成する樹脂Aの架橋密度の方が高いことを示している。そのため、トナーの耐久性を向上させる効果がより優れる。
中間層を構成する樹脂Bに含まれる単量体bの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値Xbは、2.0以上4.0以下であることが好ましい。
前記Xbを上記の範囲内にすることで樹脂Aと樹脂Bの架橋密度の関係を上記式(3)の範囲に制御することが容易になる。
架橋構造を導入するために用いる前記重合性不飽和基を含有する単量体bには、2種類以上を併用してもよい。
前記Xbが2.0以上であるということは、架橋構造に関与しない前記重合性不飽和基を含有する単量体bが少ないことを意味している。そのため、コアとシェル層の間に中間層を形成する樹脂Bへの架橋構造導入による耐久性を向上させる効果が良好となる。
一方、前記Xbが4.0以下であると、重合性不飽和基を含有する単量体bによる架橋密度が高過ぎることが抑制される。そのため、中間層を形成する樹脂Bの硬化が適度に制御され、低温定着性が良好となる。前記Xbのより好ましい範囲は、2.0以上3.5以下である。
トナー粒子中の樹脂Bの含有量は、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
樹脂Bの含有量を上記範囲とすることで、中間層を形成する樹脂Bがコアやシェル層との密着性を、より有効に高めることができる。
樹脂Bの含有量が1.0質量%以上であると、十分な密着性が得られ、過酷環境下におけるワックスやコア樹脂中の低分子成分の染み出しを抑制する効果が十分に得られる。
また、樹脂Bの含有量が10.0質量%以下であると低温定着性が良好となる。さらには、3.0質量%以上7.0質量%以下であることがより好ましい。
トナー粒子に対する樹脂Aの含有量をMa(質量%)とし、トナー粒子に対する樹脂Bの含有量をMb(質量%)としたとき、前記Maおよび前記Mbが下記式(4)を満たすことが好ましい。
4.0≦Ma+Mb≦15.0 (4)
MaおよびMbは、トナー粒子におけるシェル層および中間層の量を示している。MaとMbの合計が4.0質量%以上15.0質量%以下であると、トナー粒子におけるシェル層および中間層の総量が適度に制御され、耐久性と低温定着性を向上させる効果が十分に得られる。
さらには、Ma+Mbは、5.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。
樹脂Aは、ビニル基を含有する有機ポリシロキサン化合物と、重合性不飽和基を有するポリエステルを含有する単量体aと、を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。樹脂Aが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
0.5≦Ea/Sa≦1.8 (5)
(式(5)中、Saは、樹脂Aの単量体組成物における前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の質量を示す。Eaは、樹脂Aの単量体組成物における前記重合性不飽和基を有するポリエステルの質量を示す。)
質量比(Ea/Sa)が0.5以上であると、トナー粒子の表面に存在する有機ポリシロキサン構造を有する部位が相対的に少なくなり、トナーの耐久性を向上させる効果がより得られやすくなる。
質量比(Ea/Sa)が1.8以下であると、トナー粒子の表面に存在する有機ポリシロキサン構造を有する部位が相対的に多くなり、トナーの帯電性能の環境安定性を向上させる効果が得られやすくなる。
特には、質量比(Ea/Sa)は、0.7以上1.4以下が好ましい。
樹脂Bは、ビニル基を含有する有機ポリシロキサン化合物と、重合性不飽和基を有するポリエステルを含有する単量体bと、を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。また、樹脂Bが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
1.0≦Eb/Sb≦2.3 (6)
(式(6)中、Sbは、樹脂Bの単量体組成物におけるビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の質量を示す。Ebは、樹脂Bの単量体組成物における重合性不飽和基を有するポリエステルの質量を示す。)
質量比(Eb/Sb)が1.0以上2.3以下であると、トナー粒子の中間層に存在する有機ポリシロキサン構造を有する部位が適度な割合で存在する。その結果、コアと中間層との密着性が向上し、過酷環境下におけるワックスやコア樹脂中の低分子量成分の染み出しを抑制する効果が十分に得られ、トナーの耐久性を向上させる効果がより優れる。
樹脂Aにおける前記Ea/Saと樹脂BにおけるEb/Sbが下記式(7)を満たすことが好ましい。
Ea/Sa<Eb/Sb (7)
上記関係を満足することで、コアと中間層、および中間層とシェル層における密着性のバランスを図ることができ、トナーの耐久性をより向上させることができる。
本発明のトナーにおいて、樹脂Aおよび樹脂Bの重合に用いるビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の構造の一例を式(II)に示す。式(II)において、R2、R3はアルキル基であり、R4はアルキレン基であり、R5は水素原子、若しくはメチル基である。nは重合度を示し、2以上の整数である。
Figure 0006750856
前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の合成方法としては、カルビノール変性ポリシロキサンと、アクリル酸クロライドもしくはメタクリル酸クロライドの脱塩酸反応による反応が挙げられる。
樹脂Aおよび樹脂Bの重合に用いる単量体aおよび単量体bである重合性不飽和基を含有するポリエステルの製造方法として、以下の方法が挙げられる。
(1)ジカルボン酸とジオールとの重縮合反応時に重合性不飽和基を導入する方法。前記重合性不飽和基を導入する方法としては、以下の手法が挙げられる。
(1−1)前記ジカルボン酸の一部に重合性不飽和基を有するジカルボン酸を使用する方法
(1−2)前記ジオールの一部に重合性不飽和基を有するジオールを使用する方法
(1−3)前記ジカルボン酸の一部と前記ジオールの一部にそれぞれ重合性不飽和基を有するジカルボン酸と重合性不飽和基を有するジオールを使用する方法
前記重合性不飽和基を有するポリエステルの不飽和度は、重合性不飽和基を有するジカルボン酸またはジオールの添加量によって調整することが可能である。
重合性不飽和基を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。また、重合性不飽和基を有する脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
前記重合性不飽和基を持たないジカルボン酸やジオールとしては、後述する通常のポリエステルの製造に使用するジカルボン酸やジオールを使用することができる。
(2)ジカルボン酸とジオールの重縮合により作製したポリエステルとビニル系化合物をカップリングさせる方法。前記カップリングでは、ポリエステルの末端官能基との反応が可能な官能基を含有するビニル系化合物を直接カップリングさせても良い。また、ポリエステルの末端を、ビニル系化合物が含有する官能基との反応が可能になるよう、結合剤を用いて修飾して、カップリングさせても良い。例えば以下の方法が挙げられる。
(2−1)末端にカルボキシル基を有するポリエステルとヒドロキシル基を含有するビニル系化合物を、縮合反応によってカップリングさせる方法。この場合、前記ポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジカルボン酸/ジオール)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
(2−2)末端にヒドロキシル基を有するポリエステルと、イソシアネート基を有するビニル系化合物を、ウレタン化反応によってカップリングさせる方法
(2−3)末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとヒドロキシル基を有するビニル系化合物を、結合剤であるジイソシアネートを用いてウレタン化反応によってカップリングさせる方法
前記(2−2)と前記(2−3)の方法で使用するポリエステルの調製ではジカルボン酸とジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基を有するビニル系化合物としては、ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテルが挙げられる。これらのうち、好ましいものはヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートである。
前記イソシアネート基を有するビニル系化合物としては、以下のものが挙げられる。2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。これらの中でも、特に好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
前記ジイソシネートとしては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものはXDI及びHDI、IPDIである。
本発明のトナー粒子において、樹脂Aおよび樹脂Bの重合に用いる重合性不飽和基を分子1個中に2個以上含有する単量体a及び単量体bは、重合性不飽和基を含有するポリエステルに加えて、複数のビニル基を有する一般的な多官能単量体を用いることが可能である。
以下に使用可能なものを例示するが、この限りではない。
ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、両末端アクリル変性シリコーン、両末端メタクリル変性シリコーンが挙げられる。
また、分子1個中に2個以上の重合性不飽和基を含有するポリエステルを用いることもできる。
本発明のトナー粒子において、樹脂Aおよび樹脂Bを構成する樹脂には、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物および重合性不飽和基を有するポリエステル、多官能単量体に加え、他の単量体を重合させることも可能である。他の単量体としては、通常の樹脂材料の重合に用いる単量体が使用可能である。以下に例示するが、この限りでない。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート)。
本発明のトナー粒子において、コア樹脂としては、一般的にトナー粒子に用いられる樹脂である結晶性樹脂、非晶性樹脂のいずれも使用可能である。結晶性樹脂とは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂を意味する。したがって、融点より低い温度領域ではほとんど軟化せず、融点を越えると融解が生じ急激に軟化する。このような樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、明瞭な融点ピークを示す。したがって、結晶性樹脂は、溶融後の粘性が低くなることで、良好な低温定着性を発現しやすくなる。
結晶性樹脂の融点は、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
コア樹脂に使用可能な結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル、結晶性ポリビニル、結晶性ポリウレタン、結晶性ポリウレアが挙げられる。好ましくは結晶性ポリエステル、結晶性ポリビニルであり、特に好ましくは結晶性ポリエステルである。
結晶性ポリエステルは、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることが好ましく、炭素数2乃至20の脂肪族ジオールと炭素数2乃至20の脂肪族ジカルボン酸を反応して得られるものであることがより好ましい。
また、脂肪族ジオールは直鎖型であることが好ましい。直鎖型であることで、より結晶性の高いポリエステルが得られる。炭素数2乃至20の直鎖型脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオール。これらの中でも、融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオール。
また、脂肪族ジカルボン酸は結晶性の観点から、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。上記炭素数2乃至18の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸及び1,18−オクタデカンジカルボン酸、あるいはそれらの低級アルキルエステルや酸無水物。これらのうち、セバシン酸、アジピン酸及び1,10−デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
また芳香族ジカルボン酸を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを抑制するために好適に用いることができる。
このようなジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸及び3−オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。
結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、カルボン酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステルの重合法によって製造することができる。例えば、直接重縮合法又はエステル交換法を用い、単量体の種類によって使い分けて製造することができる。
結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。単量体が反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の有機溶剤を溶解補助剤として加え溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助剤を留去しながら行う。
結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、以下の化合物を挙げることができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドなどのチタン触媒、又は、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド及びジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒。
結晶性ポリビニルとしては直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニル系単量体を重合した樹脂が挙げられる。
直鎖型アルキル基を分子構造に含むビニル系単量体としては、アルキル基の炭素数が12以上であるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートが好ましく、例えば以下のものを挙げることができる。ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート。
結晶性ポリビニルの製造方法は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度で重合することが好ましい。
非晶性樹脂としては、示差走査熱量測定において、明確な最大吸熱ピークを示さないものである。非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、55℃以上110℃以下であることがより好ましい。
非晶性樹脂の具体例としては、非晶性のポリエステル、ポリウレタン、ポリビニル、ポリウレアが挙げられる。また、これらの樹脂は、ウレタン、ウレア又はエポキシにより変性されていてもよい。これらの中でも、弾性維持の観点から、非晶性のポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルが好適であり、非晶性のポリエステルが、特に好適である。
以下に、非晶性のポリエステルについて述べる。非晶性ポリエステルの製造に使用可能な単量体としては、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これら単量体の具体例としては、以下のものが挙げられる。
2価のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸などの二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸。
また、3価以上のカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。
アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
また、3価以上のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
尚、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸などの1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールなどの1価のアルコールも使用することができる。
非晶性のポリエステルの合成方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
次に、非晶性のポリウレタンについて述べる。ポリウレタンは、ジオールとジイソシアネート基を含有する化合物との反応物であり、ジオール及びジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつポリウレタンを得ることができる。
ジイソシネートとしては、前述した重合性不飽和基を有するポリエステルの製造に用いることができるジイソシアネートと同様のものを用いることができる。
また、ジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ジオールとしては、前述した非晶性ポリエステルの製造に用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
以下に、非晶性のポリビニルについて述べる。非晶性ポリビニルの製造に使用可能な単量体としては以下の化合物を挙げることができる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン);アルカジエン類(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン)。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類(シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン);テルペン類(ピネン、リモネン、インデン)。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン);およびビニルナフタレン。
カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル〔炭素数1以上11以下〕エステル(マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー)。
ビニルエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート)、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート)。
さらに、本発明においては、樹脂Aとして、結晶性樹脂成分と非晶性樹脂成分とを化学的に結合したブロックポリマーを使用することも好ましい形態のひとつである。
ブロックポリマーは、結晶性樹脂成分(X)と非晶性樹脂成分(Y)とのXY型ジブロックポリマー、XYX型トリブロックポリマー、YXY型トリブロックポリマー、XYXY・・・・型マルチブロックポリマーが挙げられ、どの形態も使用可能である。
ブロックポリマーを調製する方法としては、結晶性樹脂を形成する成分と非晶性樹脂を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)、結晶性樹脂を形成する成分、および非晶性樹脂を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)を用いることができる。
ブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して種々の方法より選択してブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分がともにポリエステルの場合は、各成分を別々に調製した後、必要に応じて結合剤を用いて結合することにより調製することができる。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合は、結合剤を用いることなく結合させることができる。このとき反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
結晶性樹脂成分がポリエステルであり、非晶性樹脂成分がポリウレタンの場合では、各成分を別々に調製した後、ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つポリエステルと、ポリウレタンを構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することによっても合成が可能である。ジオールおよびジイソシアネート濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタンとなり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタンのイソシアネート末端とポリエステルのアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、ブロックポリマーとすることができる。
結晶性樹脂成分、および非晶性樹脂成分ともにポリビニルの場合は、一方の成分を重合した後、そのビニルポリマーの末端から他成分を重合開始させることにより調製することができる。
ブロックポリマー中の結晶性樹脂成分の割合は50.0質量%以上であることが好ましく、70.0質量%以上であることがより好ましい。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子は、ワックスを含有することも好ましい形態のひとつである。前記ワックスとしては、特に限定はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスである。また、本発明に用いられるエステルワックスは、3官能以上のエステルワックスであることが好ましく、さらに好ましくは4官能以上のエステルワックス、特に好ましくは6官能以上のエステルワックスである。
3官能以上のエステルワックスは、例えば3価以上の酸と長鎖直鎖飽和アルコールの縮合、または3価以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸の合成によって得られる。
前記ワックスにて使用可能な3価以上のアルコールとしては以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、これらの縮合物として、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリン等のいわゆるポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリスペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエリスリトール、又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
前記長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式Cn2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
本発明にて使用可能な3価以上の酸としては以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸。
前記長鎖直鎖飽和アルコールはCn2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。場合によっては混合して用いることも可能である。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
前記トナー粒子中におけるワックスの添加量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは1.0質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以上15.0質量部以下である。
前記ワックスは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、60℃以上120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。
トナー粒子は、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粒子が挙げられ、そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来る。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー粒子中の分散性の点から選択される。
前記着色剤は、好ましくはトナー粒子100質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下添加して用いられる。着色剤として磁性粒子を用いる場合、その添加量はトナー粒子100質量部に対し、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子に必要に応じて荷電制御剤を含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
前記荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナー粒子を正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、4級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
前記荷電制御剤の好ましい配合量は、トナー粒子100質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子には流動性向上剤として、無機微粒子を添加することが好ましい。トナー粒子に添加する無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子またはそれらの複酸化物微粒子などの微粒子が挙げられる。該無機微粒子の中でもシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子が好ましい。
前記シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。なかでも、乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子であっても良い。
前記無機微粒子は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。また、前記無機微粒子を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上を達成することができる。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子の製造方法は特に限定されないが、例として、溶解懸濁法、懸濁重合法、乳化凝集法、粉砕法が挙げられる。これらの中でも、コアシェル構造を持ったトナー粒子を容易に調製できる溶解懸濁法が好ましく、非水系の分散媒体を用いる溶解懸濁法が特に好ましい。
非水系の分散媒体を用いる溶解懸濁法によるトナー粒子は、以下の工程に従って製造することができる。
a)コア樹脂及び前記コア樹脂を溶解しうる有機溶媒を混合し、樹脂溶液を調製する工程。
b)前記樹脂溶液、樹脂微粒子及び高圧状態の二酸化炭素を含む分散媒体を混合し、前記樹脂微粒子が表面に付着した前記樹脂溶液の液滴を形成する工程。
c)前記液滴に含まれる前記有機溶媒を除去して、前記コア樹脂を含有するコア表面に前記樹脂微粒子に由来するシェルを形成してトナー粒子を得る工程。
ここで、高圧状態の二酸化炭素とは、圧力1.5MPa以上の二酸化炭素であることが好ましい。また、液体、あるいは超臨界状態の二酸化炭素を単体で分散媒体として用いてもよく、他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。この場合、高圧状態の二酸化炭素と有機溶媒が均一相を形成することが好ましい。
以下に、本発明の製造方法に好適な、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を用いるトナー粒子の製造法を例示して説明する。
まず、a)の工程では、コア樹脂を溶解することのできる有機溶媒中に、着色剤、ワックスおよび必要に応じて他の添加物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機などの分散機によって均一に溶解または分散させる。
次に、b)の工程では、こうして得られた樹脂溶液と高圧状態の二酸化炭素とを混合し、前記樹脂溶液の液滴を形成する。
このとき、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中には、分散剤を分散させておく必要がある。分散剤としては、樹脂微粒子があげられる。
また、液体状態の分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤は、二酸化炭素に親和性の高い、前記有機ポリシロキサン構造やフッ素を含有する化合物や、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤といった各種界面活性剤が挙げられる。これらの分散安定剤は、後述する脱溶剤工程において二酸化炭素とともに系外に排出される。したがって、トナー粒子作製後にはトナー粒子に残存する量は極めて少量となる。
前記分散剤を高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させる方法は、例えば、前記分散剤と高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を仕込んだ容器に、前記分散剤を有機溶媒に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、本発明において、前記樹脂溶液を高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体中に分散させる方法は、例えば、前記分散剤を分散させた状態の高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を入れた容器に、前記樹脂溶液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、前記樹脂溶液を仕込んだ容器に、前記分散剤を分散させた状態の高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体を導入してもよい。
本発明において、前記高圧状態の二酸化炭素を含有する分散媒体は、単一相であることが重要である。前記樹脂溶液を高圧状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、液滴中の有機溶媒の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素の相と有機溶媒の相が分離した状態で存在することは、液滴の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。
したがって、前記分散媒体の温度や圧力、高圧状態の二酸化炭素に対する前記樹脂溶液の量は、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、前記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(液滴形成のし易さ)や前記樹脂溶液中の構成成分の前記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、前記樹脂溶液中のコア樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、前記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど前記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した液滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、前記成分が前記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。したがって、トナー粒子の製造において、前記分散媒体の温度は10℃以上40℃以下の温度範囲であることが好ましい。
また、前記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1.5MPa以上20.0MPa以下であることが好ましく、2.0MPa以上15.0MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
こうして液滴形成が完了した後、c)の工程では、液滴中に残留している有機溶媒を、高圧状態の二酸化炭素による分散媒体を介して除去する。具体的には、液滴が分散された前記分散媒体にさらに高圧状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに高圧状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
前記分散媒体と前記高圧状態の二酸化炭素の混合は、前記分散媒体に、これよりも高圧の二酸化炭素を加えてもよく、また、前記分散媒体を、これよりも低圧の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに高圧状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、高圧状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
前記高圧状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、前記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、前記高圧状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる高圧状態の二酸化炭素の量は、前記分散媒体の体積に対して1倍以上100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上50倍以下、最も好ましくは1倍以上30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した高圧状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、上述した製法において使用する有機溶媒や、二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
水系の分散媒体を用いる溶解懸濁法によるトナー粒子は、以下の工程に従って製造することができる。
d)コア樹脂及び前記コア樹脂を溶解しうる有機溶媒を混合し、樹脂溶液を調製する工程。
e)樹脂微粒子を分散させた水系媒体に前記樹脂溶液を混合、分散させ、前記樹脂微粒子が表面に付着した前記樹脂溶液の液滴を形成する工程。
f)前記液滴に含まれる前記有機溶媒を除去して、前記コア樹脂を含有するコア表面に前記樹脂微粒子に由来するシェルを形成してトナー粒子を得る工程。
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することも出来る。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ)、低級ケトン類(アセトン、1−ブタノン)が挙げられる。
また、上記水系媒体には分散剤を添加する。分散剤としては、上記した樹脂微粒子だけでなく、公知の界面活性剤、高分子分散剤、無機微粒子を用いることができる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられ、トナー粒子形成の際の極性に併せる形で任意に選択可能なものである。
アニオン界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは3級アミン塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
そして、非イオン界面活性剤としては、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインが挙げられる。
また分散剤として、高分子分散剤を用いてもよい。高分子分散剤としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類の重合体が挙げられる。或いは例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの水酸基を含有するアクリル系単量体或いはメタクリル系単量体の重合体が挙げられる。また、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのビニルアルコール、又はビニルアルコールとのエ一テル類の重合体が挙げられる。さらに、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類の重合体が挙げられる。さらにまた、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類の重合体が挙げられる。そしてさらに、例えば、ピニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンの窒素原子、又はその複素環を有するホモポリマー又は共重合体があげられる。
そして、その他の高分子分散剤としては、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系化合物が挙げられる。また、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類も、高分子分散剤として使用出来る。
分散剤が、無機微粒子の場合は、分散後に粒子表面上に付着した状態でトナー粒子が造粒されるので溶媒と親和性がない酸によって除去が出来るものが好ましく、例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ヒドロキシアパタイト、三リン酸カルシウムが使用出来る。
樹脂微粒子以外の分散剤を使用した場合には、前記分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることも出来るが、洗浄除去する方がトナー粒子の帯電面から好ましい。
また本発明においては、コア樹脂中のポリエステルのカルボン酸残基を解離させて界面活性効果を発現させることも好ましい。具体的には、アミン類を前記した油相または水相に存在させることでポリエステルのカルボン酸を解離させることができる。この時用いることのできるアミン類としては、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの比較的低分子のアミン類が好ましい。
前記樹脂溶液の分散媒体中への分散方法に用いる装置は特に制約されず、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの汎用装置が使用可能であるが、高速せん断式が好ましく、乳化機、分散機として汎用のものであれば使用可能である。
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)のバッチ式、若しくは連続両用乳化機が挙げられる。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定されないが、通常1000rpm以上30000rpm以下、好ましくは3000rpm以上20000rpm以下である。分散時間としてはバッチ方式の場合は、通常0.1分以上5分以下である。分散時の温度としては、通常、10℃以上55℃以下、好ましくは10℃以上40℃以下である。
中間層を形成する場合、前記中間層は、前記b)の工程および前記e)の工程において、種類の異なる複数の樹脂微粒子を分散媒体中に混合しておくことによって形成することができる。
本発明において、中間層の形成は、前記b)の工程および前記e)の工程において、樹脂微粒子に覆われた樹脂溶液の液滴が分散した分散液を調製した後に、前記樹脂微粒子とは異なる他の樹脂微粒子を添加することによって形成することが好ましい。また、この場合、他の樹脂微粒子の添加は、前記b)の工程と前記c)の工程の間、および前記e)の工程と前記f)の工程の間に行ってもよく、前記c)の工程および、前記f)の工程において、有機溶媒を除去する途中に行ってもよいし、除去した後に行ってもよい。
本発明において、トナー粒子に形成される層構成は以下のものがある。
(i)コアとシェル層による単層型
(ii)コアと中間層、シェル層による二層型
(iii)コアと複数の中間層、シェル層による多層型
前記(i)の場合においては、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子がシェル層を単層で形成する。したがって、前記b)の工程、および前記e)の工程で使用する樹脂微粒子には、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子を使用する。
前記(ii)の場合においては、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子がシェル層、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子が中間層を形成する。したがって、前記b)の工程、および前記e)の工程では、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子を使用し、後から添加する樹脂微粒子には、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子を使用する。
前記(iii)の場合においては、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子がシェル層、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子がコアに最も近い層を形成する。その間に形成される多数の層には、数の制限はなく、使用する樹脂微粒子は、前記樹脂Bを含有した樹脂微粒子でもよいし、前記樹脂Aを含有した樹脂微粒子でもよいし、それ以外の樹脂微粒子を使用してもよい。ただし、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子および前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子以外の樹脂微粒子を用いる場合は、樹脂微粒子中に含まれる樹脂のXRFにより測定されるSi量が前記Za以下、前記Zb以上になるように調整する必要がある。また、この場合、前記b)の工程、および前記e)の工程では、前記樹脂Bを含有する樹脂微粒子を使用する。後から添加する樹脂微粒子は、数回に分けて添加すればよく、少なくとも最後に添加する樹脂微粒子に前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子を用いればよい。
本発明のトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナー粒子を用いることは、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は、1.30未満であることが好ましい。
以下に、本発明で規定する各物性値の測定方法を記載する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は、特開2012−042939号公報に記載された方法でトナー粒子の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を測定する。
<単量体aおよび単量体bである重合性不飽和基を有するポリエステルの、分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均Xaの測定方法>
単量体aおよび単量体bである重合性不飽和基を有するポリエステルに含まれる重合性不飽和基の数の平均の測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
測定温度:30.0℃
試料は、重合性不飽和基を有するポリエステル50.0mgを内径5.0mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40.0℃の恒温槽内で溶解させることにより調製する。
上記試料の1H−NMRを測定し、以下のユニットに帰属されるピーク情報を得る。
(1)重合性不飽和基を含む化合物に由来するユニットY1
(2)重合性不飽和基を含まないジオールに由来するユニットY2
(3)重合性不飽和基を含まないジカルボン酸に由来するユニットY3
上記重合性不飽和基を含む化合物は、上述した重合性不飽和基を有するジオールや重合性不飽和基を有するジカルボン酸、ヒドロキシル基を有するビニル系化合物、イソシアネート基を有するビニル系化合物が含まれる。
前記ユニットY1に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP1を選択し、選択したピークP1の積分値S1を算出する。
前記ユニットY2に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP2を選択し、選択したピークP2の積分値S2を算出する。
前記ユニットY3に帰属されるピークの中から、他のユニットと一致しない固有のピークP3を選択し、選択したピークP3の積分値S3を算出する。
前記重合性不飽和基を有するポリエステル分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均Xaは、上記積分値S1、積分値S2、積分値S3を用いて、以下のようにして求める。
Xa=
{Mp×(S1/n1)}/{M1×(S1/n1)+M2×(S2/n2)+M3×(S3/n3)}
尚、n1、n2、n3は、それぞれ上記ユニットY1、Y2、Y3における水素の数であり、M1、M2、M3は、それぞれ上記ユニットY1、Y2、Y3の分子量である。Mpは、重合性不飽和基を有するポリエステルの分子量である。
<蛍光X線分析装置(XRF)を用いた樹脂Aおよび樹脂Bに含有されるSi量の測定>
樹脂A、および樹脂Bに含有されるSi量は、蛍光X線分析装置(XRF)により、以下のようにして測定する。前記樹脂A、および前記樹脂Bをペレット状に固化し、波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を用いてHe雰囲気下、FP法にてNaからUまでの元素を直接測定する。検出された元素の総質量を100%として、ソフトウェアUniQuant5(ver.5.49)にて総質量に対するSiの含有量(質量%)を求める。
<X線光電子分光分析(ESCA)による有機ポリシロキサン構造に由来するSi量の測定方法>
本発明では、トナー粒子表面に存在する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量をESCAによる表面組成分析で算出する。ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック−ファイ社製 Quantum 2000
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al−Kα
X線条件:100μm、25W、15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
以上の条件により測定を行い、炭素1s軌道のC−C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上103eV以下にピークトップが検出されるケイ素2p軌道のSiO結合のピーク面積から、アルバック−ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量を算出する。なお、Si2p軌道の他ピーク(SiO2:103eVより大きく、105eV以下)が検出される場合は、SiO結合のピークに対し波形分離を行うことで、SiO結合のピーク面積を算出する。
<結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点の測定方法>
結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点は、DSC Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、アルミ製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミ製の空パンを用いる。測定は、一度200℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。結晶性ポリエステル及びブロックポリマーの場合は1度目の昇温過程において、ワックスの場合は2度目の昇温過程において、温度20℃から200℃の範囲におけるDSC曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を結晶性ポリエステル、ブロックポリマー、及びワックスの融点とする。なお、昇温速度および降温速度は、10℃/minとする。
<数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)の測定方法>
各種樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量(Mn、Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をTHFに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作製した分子量校正曲線を使用する。
<ワックス微粒子及び着色剤微粒子の粒子径の測定方法>
本発明において、各微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm又はnm)として測定する。尚、希釈溶媒としては水を選択する。
<樹脂微粒子の個数平均径の測定方法>
樹脂微粒子の個数平均径はゼータサイザーNano−ZS(MALVERN社製)を用いて測定する。まず、サンプルは測定対象の樹脂微粒子の有機溶媒分散液を固液比が0.10質量%(±0.02質量%)となるように希釈して調整し、石英セルに採取して測定部に入れる。測定条件として、樹脂微粒子の屈折率、分散溶媒の屈折率及び粘度を入力し、測定する。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
<重合性不飽和基を有するポリエステル(E1)の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 128.0質量部
・フマル酸 2.6質量部
・1,6−ヘキサンジオール 78.5質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、重合性不飽和基を有するポリエステル(E1)を合成した。このE1の融点は56℃、Mnは19,000、Mwは44,000であった。分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均は2.0であった。
<重合性不飽和基を有するポリエステル(E2)〜(E4)の合成>
重合性不飽和基を有するポリエステル(E1)の合成において、使用する原料の添加量を表1のように変えた以外は全て同様にして、重合性不飽和基を有するポリエステル(E2)〜(E4)をそれぞれ合成した。
Figure 0006750856
<ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(S1)の準備>
市販の片末端型ビニル変性有機ポリシロキサンを用意し、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(S1)として使用した。ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(S1)の構造は、下記式(II)で表され、R2乃至R5の詳細及び重合度nの値は、表2に示した。
Figure 0006750856
Figure 0006750856
<多官能単量体(z1)〜(z4)の準備>
市販の多官能単量体を用意し、多官能単量体(z1)〜(z4)として使用した。多官能単量体(z1)〜(z4)の構造は、下記式(III)で表され、重合度m、nの合計は、表3に示した。多官能単量体は、単量体aおよび単量体bに該当し、分子1個中に含まれる重合性不飽和基の数は、2個である。
Figure 0006750856
Figure 0006750856
<樹脂微粒子分散液1の調製>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の樹脂を構成する原料とトルエン800.0質量部を仕込み、70℃に加熱して完全に溶解して単量体組成物1を調製した。
・重合性不飽和基を有するポリエステル(E1) 40.0質量部
・ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物(S1) 45.0質量部
・スチレン(St) 5.0質量部
・メタクリル酸(MAA) 10.0質量部
・多官能単量体(z1) 5.0質量部
上記単量体組成物1を250rpmで撹拌しながら25℃まで降温し、30分間窒素バブリングした後、重合開始剤としてアゾビスメトキシジメチルバレロニトリルを0.6質量部混合した。その後、75℃で加熱し、6時間反応させ、さらに80℃に加熱し、1時間反応を行った。その後、空冷し、粒子状の樹脂の分散体を得た。
得られた粗粒子状の樹脂の分散体を、温度調節可能な撹拌タンクに投入し、ポンプを用いてクレアSS5(エム・テクニック社製)に35g/minの流量で移送して処理することにより、微粒子状の樹脂の分散体を得た。クレアSS5による前記分散体の処理条件は、クレアSS5の回転するリング状ディスクの最外周部の周速を15.7m/sとし、回転するリング状ディスクと固定されたリング状ディスクの間隙を1.6μmとした。また、撹拌タンクの温度は、クレアSS5で処理後の液温が40℃以下となるように調節した。
前記分散体中の樹脂微粒子とトルエンを遠心分離機により分離した。以下に遠心分離の条件を示した。
・遠心分離機:H−9R(KOKUSAN社製)
・ローター:BN1ロ―タ(KOKUSAN社製)
・装置内設定温度:4℃
・回転数:16500rpm
・時間:2.5時間
その後、上澄みを除去することで、濃縮された微粒子状の樹脂の分散体を得た。
撹拌装置のついたビーカーに、前記濃縮された微粒子状の樹脂の分散体とアセトンを投入し、高出力ホモジナイザー(VCX−750)を用いて、前記微粒子状の樹脂をアセトンに分散させた後、さらにアセトンを添加して、固形分濃度が10.0質量%の樹脂微粒子分散液1を調製した。このようにして調製した樹脂微粒子分散液1中に含まれる樹脂微粒子の個数平均粒径は、0.11μmであった。また、上記の樹脂微粒子分散液1の一部を取り出し乾固させ、得られた樹脂に含まれる蛍光X線分析(XRF)により測定したSi量Zは、43.3質量%であった。また、計算により求めた樹脂の架橋密度[(X−1.0)×Y]は、1.0×10-4(mol/g)、および前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の質量Sと前記重合性不飽和基を有するポリエステルの質量Eの比E/Sは、0.9であった。
<樹脂微粒子分散液2〜25の調製>
樹脂微粒子分散液1の調製において、重合性不飽和基を有するポリエステル、ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物、多官能単量体、およびその他の単量体の添加量を表4に示すものに変更し、樹脂微粒子分散液2〜25を得た。得られた樹脂微粒子分散液2〜25中に含まれる樹脂微粒子の個数平均粒径、および樹脂に含まれる蛍光X線分析(XRF)により測定したSi量Z、計算により求めた樹脂の架橋密度[(X−1.0)×Y]、および前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の質量Sと前記重合性不飽和基を有するポリエステルの質量Eの比E/Sを表4に示す。
Figure 0006750856
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 123.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 76.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の融点は73℃、Mnは5,800、Mwは11,800であった。
<ブロックポリマー1の合成>
・結晶性ポリエステル1 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマー1を得た。ブロックポリマー1の融点は65℃、Mnは16,500、Mwが33,500であった。
<ブロックポリマー溶解液1の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、有機溶媒としてのアセトンを128.0質量部、ブロックポリマー1を72.0質量部投入し、50℃に加熱して完全に溶解するまで撹拌を続け、固形分量36.0質量%のブロックポリマー溶解液1を調製した。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が200nm、固形分量が40.0質量%の着色剤分散液1を得た。
<ワックス分散液1の調製>
・ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス 16.0質量部
・ワックス分散剤 8.0質量部
(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体)
・アセトン 76.0質量部
上記を撹拌羽根付きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することによりワックスをアセトンに溶解させた。
ついで、系内を50rpmの条件にて緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間の分散を行った後、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、体積平均粒径が270nm、固形分量24.0質量%のワックス分散液1を得た。
(コアと中間層、シェル層による二層型のトナー粒子の製造)
〔実施例1〕
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、V3及び圧力調整バルブV4を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1に18.0質量部の樹脂Bを含有する中間層を形成するための樹脂微粒子分散液16を仕込み、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力が2.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶液タンクT3にブロックポリマー溶解液1、着色剤分散液1、ワックス分散液1を仕込んで樹脂溶液を調製した後、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV3を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP3を用いて樹脂溶液タンクT3の樹脂溶液を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂溶液をすべて導入し終えたところでバルブV3を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.0MPaとなった。導入した全二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定し、280.0質量部であった。
なお、樹脂溶解液タンクT3への材料仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶解液1 100.0質量部
・ワックス分散液1 10.0質量部
・着色剤分散液1 6.0質量部
樹脂溶液タンクT3の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで3分間撹拌して前記樹脂溶液の液滴による分散体の形成を行った。
次に、樹脂微粒子分散液タンクT2に10.8質量部の樹脂Aを含有するシェル層を形成するための樹脂微粒子分散液1を仕込んだ後、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂微粒子分散液タンクT2の樹脂微粒子分散液1を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂微粒子分散液1をすべて導入し終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.1MPaとなった。
次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入し、内部圧力が10.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。こうして前記分散体中の液滴に含まれるアセトンの分散媒体への抽出を行った。
その後、バルブV1及び圧力調整バルブV4を開き、造粒タンクT1の内部圧力を10.0MPaに保持しながら、さらにポンプP1を用いて二酸化炭素を流通させた。この操作により、抽出された有機溶媒としてのアセトンを含む二酸化炭素を、有機溶媒回収タンクT4に排出し、アセトンと二酸化炭素を分離した。
また、二酸化炭素を有機溶媒回収タンクT4へ排出し始めてから5分ごとに有機溶媒回収タンクT4内のアセトンを取りだした。この作業をアセトンが有機溶媒回収タンクT4に溜まらなくなり、取り出せなくなるまで続けた。アセトンが取り出されなくなった時点で脱溶媒終了とし、バルブV1及び圧力調整バルブV4を閉じて、二酸化炭素の流通を終了した。
さらに、圧力調整バルブV4を開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで脱圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。
〔実施例2〜27、比較例1〜3〕
実施例1において、中間層を形成するための樹脂微粒子分散液1、およびシェル層を形成するための樹脂微粒子分散液16に代えて、樹脂微粒子分散液2〜25を使用した以外は、実施例1とすべて同様にしてトナー粒子2〜27、30〜32を得た。得られたトナー粒子2〜27、及び30〜32の物性を表5に示す。
(コアと複数の中間層、シェル層による多層型のトナー粒子の製造)
〔実施例28〕
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、V3及び圧力調整バルブV4を閉じた。そして、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1に18.0質量部の樹脂Bを含有する第一の中間層を形成するための樹脂微粒子分散液16を仕込み、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力が2.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶液タンクT3にブロックポリマー溶解液1、着色剤分散液1、ワックス分散液1を仕込んで樹脂溶液を調製した後、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV3を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP3を用いて樹脂溶液タンクT3の樹脂溶液を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂溶液をすべて導入し終えたところでバルブV3を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.0MPaとなった。導入した全二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定し、280.0質量部であった。
なお、樹脂溶解液タンクT3への材料仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶解液1 100.0質量部
・ワックス分散液1 10.0質量部
・着色剤分散液1 6.0質量部
次に、樹脂微粒子分散液タンクT2に10.8質量部の第二の中間層を形成するための樹脂微粒子分散液20を仕込んだ後、内部温度を40℃に調整した。バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂微粒子分散液タンクT2の樹脂微粒子分散液20を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂微粒子分散液20をすべて導入し終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.1MPaとなった。
次に、樹脂微粒子分散液タンクT2に10.8質量部の樹脂Aを含有するシェル層を形成するための樹脂微粒子分散液1を仕込んだ後、内部温度を40℃に調整した。バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂微粒子分散液タンクT2の樹脂微粒子分散液1を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂微粒子分散液1をすべて導入し終えたところでバルブV2を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.2MPaとなった。
上記の工程以降は、トナー粒子1の作成方法と同様に、脱溶媒および脱圧し、トナー粒子28を回収した。
(コアとシェル層による単層型のトナー粒子の製造)
〔実施例29〕
図1に示す装置において、まず、バルブV1、V2、V3及び圧力調整バルブV4を閉じた。そして、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌装置とを備えた耐圧の造粒タンクT1に18.0質量部の樹脂Aを含有するシェル層を形成するための樹脂微粒子分散液12を仕込み、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV1を開き、二酸化炭素ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力が2.0MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶液タンクT3にブロックポリマー溶解液1、着色剤分散液1、ワックス分散液1を仕込んで樹脂溶液を調製した後、内部温度を40℃に調整した。次に、バルブV3を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP3を用いて樹脂溶液タンクT3の樹脂溶液を造粒タンクT1内に導入した。そして、樹脂溶液をすべて導入し終えたところでバルブV3を閉じた。導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は3.0MPaとなった。導入した全二酸化炭素の質量は、質量流量計を用いて測定し、280.0質量部であった。
なお、樹脂溶解液タンクT3への材料仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・ブロックポリマー溶解液1 100.0質量部
・ワックス分散液1 10.0質量部
・着色剤分散液1 6.0質量部
樹脂溶液タンクT3の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで3分間撹拌して前記樹脂溶液の液滴による分散体の形成を行った。
上記の工程以降は、トナー粒子1の作成方法と同様に、脱溶媒および脱圧し、トナー粒子29を回収した。
〔比較例4〕
実施例29において、樹脂Aを含有するシェル層を形成するための樹脂微粒子分散液16に代えて、樹脂微粒子分散液25を使用した以外は、実施例29とすべて同様にしてトナー粒子33を回収した。
<トナー1〜33の調製>
トナー粒子1の100質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)にて5分間乾式混合して、トナー1を得た。トナー粒子2〜33について上記トナー粒子1と同様の操作を行い、トナー2乃至33を得た。
[トナーの評価]
<過酷環境の長期放置>
得られたトナー1〜33について、各々約100gを1000mlのポリカップに入れ、低温低湿の環境下(15℃、10%RH)に12時間放置後12時間かけて高温高湿の環境下(55℃、95%RH)に変化させた。この環境下に12時間放置後、12時間かけて再び低温低湿の環境(15℃、10%RH)に変化させた。以上の操作を3サイクル繰り返したトナーを取り出し、環境安定性、および耐久性の評価に用いた。ヒートサイクルのタイムチャートを図2に示す。
<耐久性>
市販のキヤノン製プリンターLBP9200Cを使用し、耐久性の評価を行った。LBP9200Cは、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを260g充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着することで評価を実施した。
15℃、10%RHの低温低湿環境下にて、印字率が1%の画像を連続して出力した。1,000枚出力する毎にべた画像、ハーフトーン画像を出力し、トナー規制部材へのトナー融着に起因する縦スジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。最終的に20,000枚の画像出力を行った。評価結果を表6に示す。
[評価基準]
A:20,000枚でも現像スジ発生なし
B:18,000枚より大きく20,000枚以下で現像スジ発生
C:15,000枚より大きく18,000枚以下で現像スジ発生
D:15,000枚以下で現像スジ発生
尚、本発明においてはCランクまでを良好な耐久性と判断した。
<環境安定性>
低温低湿(LL)環境、および高温高湿(HH)環境における帯電量の差を、以下の方法により評価した。
(サンプル準備)
トナー1.0gおよび所定のキャリア(日本画像学会標準キャリア:フェライトコアを表面処理した球形キャリアN−01)19.0gをふた付きのプラスチックボトルに入れ、温度15℃、相対湿度10%のLL環境、および、温度32.0℃、相対湿度85%のHH環境に5日放置する。
(帯電量測定)
上記キャリア、上記トナーを入れたプラスチックボトルのふたを閉め、振とう機(YS−LD、(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、トナーとキャリアからなる現像剤を帯電させる。次に、図3に示す摩擦帯電量を測定する装置において摩擦帯電量を測定する。図3において、底に目開き20μmのスクリーン3のある金属製の測定容器2に、該現像剤0.5g以上1.5g以下を入れ、金属製のフタ4をする。この時の測定容器2全体の質量を精秤し、W1(g)とする。次に吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を2.5kPaとする。この状態で2分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。この時の電位計9の電位をV(V)とする。ここで、8はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を精秤し、W2(g)とする。この試料の摩擦帯電量Q(mC/kg)は下式の如く算出される。
試料の摩擦帯電量Q(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
LL環境における振とう直後の試料の摩擦帯電量をQl(mC/kg)、HH環境における上記摩擦帯電量をQh(mC/kg)とした時、Qh/Qlを環境安定性の指標とした。
さらに、上述した耐久性の評価で使用したプリンターLBP9200Cにて画像を20,000枚出力した後、カートリッジから抜き取ったトナーにおいても、同様の評価を行い、耐久後の環境安定性を評価した。評価結果を表6に示す。
[評価基準]
A:0.95以上
B:0.90以上0.95未満
C:0.80以上0.90未満
D:0.80未満
尚、本発明においてはCランクまでを良好な環境安定性と判断した。
<低温定着性の評価>
低温定着性の評価には、過酷環境の長期放置を行っていないフレッシュなトナーを用いた。
上記トナー1〜33を8.0質量部と上記キャリア92.0質量部を混合してなる二成分現像剤1〜33を調製した。評価には上記二成分現像剤1〜33、カラーレーザー複写機CLC5000(キヤノン社製)を改良した評価機を用いた。CLC5000紙上のトナー載り量を1.2mg/cm2になるように上記複写機の現像コントラストを調整し、単色モードで、先端余白5mm、幅100mm、長さ280mmの、「べた」の未定着画像を常温常湿度環境下(23℃、60%RH)で作成した。紙は、厚紙A4用紙(「プローバーボンド紙」:105g/m2、フォックスリバー社製)を用いた。
次に、LBP5900(キヤノン社製)の定着器を手動で定着温度設定が可能となるように改造し、定着器の回転速度を270mm/s、ニップ内圧力:120kPaに変更した。該改造定着器を用い、常温常湿度環境下(23℃、60%RH)で、80℃から180℃の範囲で10℃ずつ定着温度を上昇させながら、上記「べた」の未定着画像の各温度における定着画像を得た。
得られた定着画像の画像領域に、柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)を被せ、該薄紙の上から4.9kPaの荷重をかけつつ5往復、該画像領域を摺擦した。摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下記式により画像濃度の低下率ΔD(%)を算出した。このΔD(%)が10%未満のときの温度を定着開始温度とし、以下のような評価基準で低温定着性を評価した。
尚、画像濃度はカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A:製造元 X−Rite社製)で測定した。
(式):ΔD(%)=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
(評価基準)
A:定着開始温度が100℃以下
B:定着開始温度が110℃
C:定着開始温度が120℃
D:定着開始温度が130℃
E:定着開始温度が140℃以上
尚、本発明においてはCランクまでを良好な低温定着性と判断した。
Figure 0006750856
Figure 0006750856
T1:造粒タンク、T2:樹脂微粒子分散液タンク、T3:樹脂溶液タンク、T4:溶媒回収タンク、B1:二酸化炭素ボンベ、P1、P2、P3:ポンプ、V1、V2、V3、:バルブ、V4:圧力調整バルブ

Claims (6)

  1. コア樹脂、着色剤およびワックスを含有するコアと
    前記コアの表面の、樹脂Aを含有するシェル層と
    を有するコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、
    前記樹脂Aが、有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有し、
    前記トナー粒子の、X線光電子分光分析(ESCA)により測定される、前記有機ポリシロキサン構造に由来するSi量(atomic%)が、6.0以上10.0以下であり、
    前記樹脂Aが、分子1個中に重合性不飽和基を2個以上含有する単量体aを含む単量体組成物の重合体であり、
    前記単量体aが、
    重合性不飽和基を含有するポリエステル、および、
    下記式(III)で表される多官能単量体
    Figure 0006750856
    (式(III)中、mおよびnは重合度を示し、mおよびnの合計は2〜11である。)
    であり、
    前記単量体aが、下記式(1)を満た
    (Xa−1.0)×Ya≧3.0×10-5 (1)
    (式(1)中、Xaは、前記単量体aの分子1個中に含まれる重合性不飽和基の個数の平均値を示す。Yaは、前記単量体組成物中に含まれる全単量体の合計質量に対する前記単量体aのモル数(mol/g)を示す。)
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記Xaが、2.0以上4.0以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記トナー粒子における前記樹脂Aの含有量が、1.0質量%以上10.0質量%以下である請求項1または2に記載のトナー。
  4. 前記単量体組成物がさらに、ビニル基を含有する有機ポリシロキサン化合物を含む請求項1〜3のいずれか項に記載のトナー。
  5. 前記ビニル基を含有する有機ポリシロキサン化合物が、下記式(II)で表される有機ポリシロキサン化合物である請求項4に記載のトナー。
    Figure 0006750856
    (式(II)中、R 2 およびR 3 はアルキル基であり、R 4 はアルキレン基であり、R 5 は水素原子またはメチル基である。nは重合度を示し、2以上の整数である。)
  6. 記樹脂Aが、下記式(5)を満たす請求項4または5に記載のトナー。
    0.5≦Ea/Sa≦1.8 (5)
    (式(5)中、Saは、前記単量体組成物における前記ビニル基を有する有機ポリシロキサン化合物の質量を示す。Eaは、前記単量体組成物における前記単量体aの質量を示す。)
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