一般的に、定着工程においては、トナーによる未定着画像が形成された紙が定着器を通過する際(特に通過する部分を以下、定着ニップと呼ぶ)、熱と圧力が与えられることにより、紙に対してトナーが定着される。定着器で熱を受けたメディアおよびトナーは、排紙部から排紙され、室温により冷却され始める。
定着時のトナーの溶融変形に着目すると、定着ニップ付近で紙などのメディアとともに100℃程度まで加熱されて溶融したトナーは、おおよそ80℃前後でマシンから排出され、その後室温まで冷却され、ゆるやかに固化していく。排紙後の冷却の前半ではメディアが十分に熱を有しているため、その熱によりトナーの溶融変形が起こり続ける。すなわち、低温定着性を向上するためには、定着ニップ通過時だけでなく、冷却の前半部分におけるトナーの粘弾性を低くすることが重要である。温度に関しては本発明者らが実際に印字しているときの紙の温度を実測したものである。マシンのプロセススピードや、定着器の温調は、マシンそれぞれにおいて異なるものの、使用環境も加味して、トナーの定着性が満足するように調整されている。本発明者らが調査した範囲においては、紙の温度はおおよそ上記の範囲であった。
続いて、画像の貼りつきに関わるトナー画像の状態に着目する。冷却の前半では、画像上のトナーは100℃程度の高温の状態にあり粘弾性が低く、トナー画像が液体のようにふるまうことにより表面張力が高い。このため、画像貼りつきは発生しづらい。冷却時の粘弾性を低下させることで低温定着性を向上したトナーは、冷却時にも低い温度まで溶融した状態を維持しやすい。したがって、排紙された画像の積層時にトナー画像の上面にある次のメディア上のトナー画像と接触すると、お互いのトナー画像が溶融した状態で接着してしまい、画像貼りつきが発生することがある。すなわち、冷却時の粘弾性が低いトナーは画像貼りつきが発生しやすく、低温定着性と画像貼りつきの抑制はトレードオフの関係にある。
しかしながら、本発明者らの詳細な検討により、冷却時の粘弾性が低いトナーにおいても、室温まで冷却されたトナー間の離型能力が高い場合、画像上のトナー同士の貼りつきが発生しにくいことを見出した。
本発明者らの検討によると、トナーが上記のごとき性状を有するためには、以下の条件を同時に満たすことが必要である。
すなわち、100℃のトナーの貯蔵弾性率G’が低く、さらに100℃から60℃までの冷却時のトナーの貯蔵弾性率G’の増加幅を低く制御し、かつ、100℃から室温まで冷却して測定するタッキング試験機の応力の積分値が一定値以下であることで、上記課題を同時に解決することを発見し、本発明に至った。
本発明では、
式(1) G’(100℃)≦3.6×106(Pa)
である。これにより、低温定着性を良好にするとともに、画像貼りつきを抑制しやすくなる。G’(100℃)>3.6×106(Pa)の場合、低温定着性および画像貼りつき抑制が悪化してしまい、好ましくない。G’(100℃)を上記範囲に制御するには、後述する使用するワックスや結晶性ポリエステルの種類や部数、結晶性材料のドメインの長径や個数など、多数の因子により制御できる。
加えて本発明では、
式(2) G’(60℃)/G’(100℃)≦7.0×102
ある。これにより、低温定着性を良好にすることが可能である。G’(60℃)/G’(100℃)>7.0×102の場合、低温定着性が悪化してしまい、好ましくない。
G’(100℃)とG’(60℃)の値を制御することにより、低温定着性向上と画像貼りつき抑制を達成できる理由を、本発明者らは次のように推測している。先述のように、冷却初期においてトナーは表面張力を保っているため、画像貼りつきが発生しにくい。定着ニップ通過時の温度であるG’(100℃)の値が低いとこにより、トナーが変形しやすく、かつ、表面張力が高くなるため、低温定着性を良好にするとともに、画像貼りつきを抑制しやすくなる。さらに、G’(60℃)に着目した理由であるが、メディアの冷却の際、60℃までにかかる時間が5分程度なのに対し、60℃から室温への時間は、10倍以上もの時間を要する。このように、急速に温度低下が起こる100℃から60℃の領域のG’の値の変化が少なく粘弾性が低い状態を保つことにより、格段に低温定着性を向上させることができたのではないかと本発明者らは考えている。
上述の各G’を所定の範囲に制御するために、好ましい形態について以下に述べる。
一般的に、トナーが熱を受けた際にトナーを溶融変形させるために、ワックスや結晶性ポリエステルなどの結晶性材料を利用する。本発明者らの検討によると、G’を式(1)と(2)に制御するために、ワックスおよび結晶性ポリエステルを併用し、それらの相互作用を利用することが好ましい。これらを併用する際、互いが相互作用しやすい部位を有することで、高温では結晶化が緩慢になりやすくなる。これにより、本発明の式(2)範囲に制御しやすくなる。
さらに本発明では、タッキング試験機を用いて測定される、プローブを該トナーのペレットに軽圧で接触させた状態で100℃から25℃に降温したときの応力の積分値が0.4N・s以下である。先述の冷却時のG’と同時に制御することにより、低温定着性を有し、かつ、画像の貼りつきを抑制したトナーを得ることができる。
なお、具体的なタッキング試験機の測定条件としては以下の条件で測定することが重要である。
初期押しつけ温度:100℃
押しつけ圧力:0.49N・s
引き上げ温度:25℃
上記条件で測定することにより画像貼りつきと相関性の強い応力の積分値の値が得られることを見出した。この詳細に関して、本発明者等は以下のように推測している。
まず、押しつけ温度に関しては、定着ニップ通過時のトナー温度と近い100℃としている。画像貼りつきの発生時にはトナーには紙とトナーの自重がかかるのみである。すなわち、軽圧下で画像同士が接触した状態で冷却されることで画像同士が接触したまま固化する現象である。そのため、タッキング試験機の押しつけ圧力としては比較的軽圧である0.49N・sとした。その状態で25℃まで冷却したあとのトナーペレットの応力の積分値を測定することで、画像貼りつき発生時に近い状態のトナー間付着力を測定することができる。トナー間付着力は同時にトナー間の離型能力を示しているため、画像貼りつきと相関性の強い結果が得られていると推測している。
冷却時のタッキング試験機の応力の積分値は、結晶性材料のドメインの存在状態や、トナーに外添するシリカ微粒子に含有されるシリコーンオイルの処理、トナー表面のシリカ微粒子の被覆率などによって制御することが可能である。
以上のように、冷却時のトナーの貯蔵弾性率G’とタッキング試験機の応力の積分値を同時に制御することにより、低温定着性が良好かつ画像貼りつきを抑制したトナーを得ることができる。
本発明は、透過型電子顕微鏡によるトナー粒子の断面観察において、前記トナーの長径をR(μm)、一つのトナー粒子断面あたりの前記結晶性材料のドメインの個数が、20個以上300個以下であり、
前記結晶性材料のドメインの長径の相加平均値をr(μm)、トナー粒子断面の長径の相加平均値をR(μm)としたとき、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3) 5.0×10-4≦r/R≦7.0×10-2
式(3)は、結晶性材料のドメインが非常に小さいこと意味する。定着される前のトナー中において、結晶性材料のドメインの長径rが上述の範囲にあることにより、定着時にトナーが迅速に溶融変形することができ、低温定着性が良好になるため好ましい。
また、上記結晶性材料のドメインの個数が上記範囲内にあることで、本発明の式(1)および式(2)の範囲に制御しやすく好ましい。
また、上記結晶性材料のドメインがワックスおよび結晶性ポリエステルを同時に含有し、ワックスを結晶性ポリエステルが覆う構造であることがさらに好ましい。これにより、トナーが熱を受けた際に、結晶性ポリエステルを分子量の小さいワックスが押し出すように拡散する。結晶性ポリエステルは、周囲の結着樹脂を可塑化しながらトナー内部に広がるが、このとき、溶融したワックスは結晶性ポリエステルが可塑化した部分を通ってトナー表面に染み出していく。こうした作用によって、結晶性ポリエステルとワックス両者の可塑性が十分発揮され、低温定着性が良好になる。さらに、ワックスが迅速かつ多量にトナー表面に染み出させることで、顕著な離型性能を発揮させることができ、画像貼りつき抑制が良化すると考えている。
ワックスのドメインを結晶性ポリエステルが覆うためには、結晶性ポリエステル及びワックスの種類を調整することによって達成することができる。
本発明における結晶性材料である結晶性ポリエステルとワックスの好適な例を示す。
本発明の結晶性ポリエステルは公知のものを使用出来る。更に、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、更に脂肪族モノカルボン酸の縮合物であることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸は分子量や水酸基価の調整がし易くなることに加えて、ワックスとの親和性を制御出来るため、好ましい形態である。さらに、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂を主成分とする場合、結晶性ポリエステルが結着樹脂の分子鎖にさらに分子レベルで可塑し易くなり、数m秒から数10m秒という非常に短い時間におけるシャープメルト性に優れるため、好ましい。下記には結晶性ポリエステルが脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族モノカルボン酸の縮合物であり、且つ飽和ポリエステルである場合について使用出来るモノマーを例示する。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)等が挙げられる。
また、本発明で使用する結晶性ポリエステルは、ラウリン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸から選ばれる酸モノマー由来の構造を末端に有するポリエステルであると、上述したワックスとの親和性が更に高まり好ましい。その結果、ワックスに対する結晶性ポリエステルの被覆率も高まる傾向であるため、本発明の式(2)の範囲に制御しやすくなり、好ましい。
結晶性ポリエステルの結晶性の点で、カルボン酸成分のうち、直鎖型脂肪族ジカルボン酸の含有量が80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。また、結晶性ポリエステルの結晶性の点で、ポリオール成分のうち、直鎖型脂肪族ジオールの含有量が80モル%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、100mol%であることがさらに好ましい。
本発明では、結晶性ポリエステルの融点は、65.0℃以上85.0℃以下が好ましい。これにより低温定着性、保存性、画像貼りつきを両立しやすくなる。融点は、使用するカルボン酸成分、アルコール成分の組み合わせで決まるため、上記範囲に入るよう、適宜選択する。
結晶性ポリエステルの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることによって得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応の時には、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等の通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
前記触媒としてはチタン触媒を用いると望ましく、キレート型チタン触媒であると更に望ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、本発明において望ましい分子量分布のポリエステルが得られるためである。
結晶性ポリエステルは重量平均分子量(Mw)が10000以上60000以下であることが好ましく、20000以上60000以下であることがより好ましく、30000以上60000以下であることがさらに好ましい。Mwが上記範囲にあることで、結晶性ポリエステルの固化する速度が遅くなり、G’(60)/G’(100)を小さく制御しやすいため、低温定着性がさらに向上する。さらに、結晶性ポリエステルを結着樹脂と相分離させやすく、高温高湿などの過酷な環境に対する耐性も高まる
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、結晶性ポリエステルの種々の製造条件によって制御可能である。
次に、ワックスについて述べる。
本発明に用いるワックスの融点は、65.0℃以上85.0℃以下であることが好ましい。また、本発明に用いるワックスの重量平均分子量(Mw)は400以上4000以下であることが好ましく、500以上2500以下であることがより好ましい。ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明に使用できるワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明のトナーを製造する方法のひとつである懸濁重合法において、ワックスのドメインをトナー中に分散させるためには、結着樹脂に溶けやすいワックスを用い、後述の冷却工程を行うことが好ましい。
本発明においては、脂肪族炭化水素系ワックスと脂肪酸エステルを主成分とするワックス(以下、エステルワックス)とを併用すると、結晶性ポリエステルとの親和性を制御しやすく、好ましい。
以下に、本発明に好適に用いることのできるエステルワックスを挙げる。なお、以下で述べる官能数は、1分子中に含まれるエステル基の数を示している。例えば、ベヘン酸ベヘニルであれば1官能のエステルワックスであり、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネートであれば6官能のエステルワックス、と呼ぶ。
1官能のエステルワックスとしては、炭素数6以上12以下の脂肪族アルコールと長鎖カルボン酸の縮合物や、炭素数4以上10以下の脂肪族カルボン酸と長鎖アルコールの縮合物が使用できる。ここで、長鎖カルボン酸や長鎖アルコールは、任意のものが使用できる。
脂肪族アルコールの例としては、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコールが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸が挙げられる。
2官能のエステルワックスとしては、ジカルボン酸とモノアルコールの縮合物や、ジオールとモノカルボン酸の縮合物が使用できる。
ジカルボン酸としてアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が挙げられる。
ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
ジカルボン酸と縮合させるモノアルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましい。具体的には、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール等が挙げられる。中でも、ドコサノールは定着性や現像性の観点で好ましい。
ジオールと縮合させるモノカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸が好ましい。具体的には、脂肪酸としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸等が挙げられる。中でも、ベヘン酸は定着性や現像性の観点で好ましい。
なお、ここでは直鎖脂肪酸、直鎖アルコールを例示したが、分岐構造を有していても構わない。
3官能以上のエステルワックスも使用できる。ここでは、3官能以上のエステルワックスを得る場合の例を挙げる。
3官能のエスエルワックスとしては、グリセリン化合物と1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。4官能のエステルワックスとしては、ペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、ジグリセリンとカルボン酸の縮合物が挙げられる。5官能のエステルワックスとしては、トリグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。6官能のエステルワックスとしては、ジペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、テトラグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。
エステルワックスとしては、2官能以上6官能以下のものが結晶性ポリエステルに被覆されたドメイン形成がしやすいため、好ましい。
本発明においては、トナー中に含まれるワックスの含有量は、総量として、結着樹脂100質量部に対して、2.5質量部以上35.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以上30.0質量部以下であることがより好ましい。ワックスの含有量が35.0質量部以下であると、トナー表面にワックスが染み出しにくいため、トナーの凝集が起こりにくく、過酷な環境に対する保存性が良好になる。
本発明のトナー母粒子に対して、無機微粒子であるシリカ微粒子を外添混合してトナー母粒子の表面に付着させることが好ましい。本発明において、トナーは該シリカ微粒子をトナー母粒子100質量部あたり0.40質量部以上1.50質量部以下含有することが好ましい。さらに好ましくは、シリカ微粒子をトナー母粒子100質量部あたり0.50質量部以上1.30質量部以下含有する。
シリカ微粒子の含有量を上述範囲に制御することで、トナーの低温定着性および流動性を適正な状態に制御することができる。
本発明のトナーは、「シリカ微粒子の外添状態」を以下のように制御することが好ましい。
本発明のトナーは、X線光電子分光装置(ESCA)により求めた、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下であり、シリカ微粒子による理論被覆率をX2としたとき、下記式4で示される拡散指数が下記式5を満足することを特徴とすることが好ましい。
(式4) 拡散指数=X1/X2
(式5) 拡散指数≧−0.0042×X1+0.62
上記被覆率X1は、シリカ微粒子単体をESCAで測定した時のSi元素の検出強度に対して、トナーを測定した時のSi元素の検出強度の比から、算出することができる。この被覆率X1は、トナー粒子表面のうち、シリカ微粒子が実際に被覆している面積の割合を示す。
被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下の場合、耐久試験を通じて、トナーの流動性及び帯電性を良好な状態に制御できる。被覆率X1が40.0面積%以上の場合、先述のタッキング試験機の応力の積分値を低く制御しやすく、好ましい。被覆率X1が75.0面積%以下の場合、低温定着性が良好になり好ましい。
一方、シリカ微粒子による理論被覆率X2は、トナー母粒子100質量部あたりのシリカ微粒子の質量部数、及びシリカ微粒子の粒径等を用い、下記式6より算出される。これはトナー粒子表面を理論的に被覆できる面積の割合を示す。
(式6) 理論被覆率X2(面積%)=31/2/(2π)×(dt/da)×(ρt/ρa)×C×100
da:シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)
dt:トナーの重量平均粒径(D4)
ρa:シリカ微粒子の真比重
ρt:トナーの真比重
C:シリカ微粒子の質量/トナーの質量
(Cは後述するトナー中のシリカ微粒子の含有量を用いる。)
上記式4で示される拡散指数の物理的な意味合いを以下に示す。
拡散指数は、実測の被覆率X1と理論的な被覆率X2の乖離を示す。この乖離の程度は、トナー粒子表面から垂直方向に二層、三層と積層したシリカ微粒子の多さを示すと考えている。理想的には拡散指数は1になるが、これは、被覆率X1が理論被覆率X2と一致した場合であり、二層以上積層したシリカ微粒子が全く存在しない状態である。一方、シリカ微粒子が、凝集した二次粒子としてトナー表面に存在すると、実測の被覆率と理論的な被覆率の乖離が生じ、拡散指数が低くなる。つまり、拡散指数は、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量を示すと言い換えることもできる。
本発明において、拡散指数は、上記式5で示される範囲であることが重要であり、この範囲は従来の技術で製造されるトナーよりも大きいと考えている。拡散指数が大きいということは、トナー粒子表面のシリカ微粒子のうち二次粒子として存在している量が少なく、一次粒子として存在する量が多いことを示す。なお、上述した通り、拡散指数の上限は1である。
被覆率X1、及び、拡散指数が式5で示される範囲を同時に満たした場合、タッキング試験機による応力の積分値を特に低く制御しやすくなり、好ましい。
この理由として、本発明者らは以下のように推測している。
拡散指数を上記範囲に制御することにより、シリカ微粒子は一次粒子としてトナー粒子表面により均一に存在しており、シリカ微粒子に含まれるシリコーンオイルはトナー粒子となじみやすくなっている。そのため、後述のシリコーンオイルと結晶性材料との相乗効果により離型性が向上し、応力の積分値を低く制御しやすくなると推測している。
本発明における拡散指数の境界線は、被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下の範囲において、被覆率X1を変数とした関数である。この関数の算出は、シリカ微粒子、外添条件等を変化させて、被覆率X1と拡散指数を得た際、タッキング試験機による応力の積分値が低くなる現象から、経験的に得たものである。
図5は、3種の外添混合条件を用いて、添加するシリカ微粒子の量を変えて被覆率X1を任意に変化させたトナーを製造し、被覆率X1と拡散指数の関係をプロットしたグラフである。このグラフにプロットしたトナーのうち、式5を満足する領域にプロットされるトナーは、タッキング試験機による応力の積分値が十分に低くなることが分かった。
ここで、拡散指数が被覆率X1に依存する理由に関して、詳細は分かっていないが、本発明者らは次のように推測している。タッキング試験機による応力の積分値を低くするためには、二次粒子として存在しているシリカ微粒子の量が少ない方が良いが、被覆率X1の影響も少なからず受ける。被覆率X1が増加するにつれて、トナー粒子表面に存在しているシリカ微粒子の量が増えるため、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量の許容量が増えることになる。このように、拡散指数の境界線は、被覆率X1を変数とした関数になると考えている。すなわち、被覆率X1と拡散指数の間には相関関係があり、被覆率X1に応じて拡散指数を制御することが重要であることを、上記の如く実験的に求めた。
本発明のトナーは、「シリカ微粒子の表面性状」を以下のように制御することが好ましい。本発明のトナーにおいて、シリカ微粒子はシリコーンオイルによる処理が施されており、シリカ原体100質量部に対して15.0質量部以上30.0質量部以下のシリコーンオイルが固定化していることが好ましい。ここで、シリコーンオイルの固定化量は、シリカ原体表面に化学的に結合しているシリコーンオイル分子の量に対応する。さらに、シリカ原体表面に固定化しているシリコーンオイルに対する、シリカ原体表面から遊離しているシリコーンオイルの比率(質量比)が0.15以上0.50以下であることが好ましい。
本発明のトナーに好適に用いられるシリカ微粒子において、シリコーンオイルの存在状態を上記範囲に制御することで、本発明のトナーに存在する結晶性材料のドメインとの相互作用により、タッキング試験機で測定される応力の積分値を制御することができる。効果発現メカニズムの詳細は分かっていないが、本発明者らは以下のように推測している。
上記シリカ微粒子は、シリコーンオイルの遊離量、固定化量ともに比較的多いことが特徴である。ここで、定着から画像貼りつき発生までのプロセスを考える。シリカ原体から遊離しているシリコーンオイルはシリカ原体から別のものに移行しやすいため、熱を受けたときにトナー側に移行する。シリコーンオイルとワックスはともに疎水部位を有するため親和性が高く、トナー側に移行した遊離シリコーンオイルはトナー内部のワックスをともなって移動しやすいと考えられる。このとき、トナー表面のシリカには固定化したシリコーンオイルが存在する。シリカ原体から遊離してトナー側に移行したシリコーンオイルは、トナー表面に多量に存在する固定化シリコーンオイルの近傍に存在したがるため、ワックスをともなってトナー表面に広がりやすい。その結果、シリコーンオイルとワックスの離型効果が特に良好に現れるため、トナー間の離型性能は大幅に向上し、低温定着性と画像貼りつき抑制の両立がしやすくなる。
また、本発明のトナーはG’の制御により粘度が低いため、トナー内部からワックスが染み出やすい状態となっている。したがって、上記のシリコーンオイルのワックス誘因効果とも相乗し、ワックスの離型効果が効果的に発現するため、画像貼りつきを抑制することができる。このとき、結晶性材料のドメインの存在状態やシリカ微粒子の被覆率X1を先述の範囲に制御すると、さらに効果的に画像貼りつきを抑制することができる。
本発明において、シリカ原体から遊離しているシリコーンオイルの比率が0.50以下であることが好ましい。このようなシリカ微粒子は、シリカ微粒子同士の凝集性の悪化を軽減でき、トナーの凝集を抑えることができるため、高温高湿環境における保存性が良好になる。
本発明において、結着樹脂はスチレンアクリル系樹脂を主成分とすることが好ましい。主成分とは、その含有量が50質量%以上であることを示す。
結晶性ポリエステルは、結着樹脂に相溶し易いという特性を持つがために、トナー粒子の表面に結晶性ポリエステルが存在しやすくなる。特に、高温高湿の過酷な環境で使用されることにより、結着樹脂に相溶している結晶性ポリエステルがトナー粒子表面に染み出し、トナーが凝集しやすくなる。
スチレンアクリル系樹脂は結晶性ポリエステルと相溶しにくいため、結晶性ポリエステルの結晶化度を高め易い。そのため、結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂を主成分とすることが好ましい。
結着樹脂に対するスチレンアクリル系樹脂の好ましい含有量としては、80質量%以上100質量%以下である。
上記スチレンアクリル系樹脂を生成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンのようなスチレン系重合性単量体が挙げられる。
アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体が挙げられる。
メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレンアクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。また、結着樹脂はその他公知の樹脂を組み合わせて使用することもできる。
本発明のトナーは、トナーの樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)不溶分が、樹脂成分に対し10質量%以上50質量%以下である事が好ましい。これにより、トナーの粘弾特性の制御がしやすくなる。
本発明において、上記テトラヒドロフラン(THF)不溶分は、トナー粒子製造時の架橋剤の量、種類や重合条件により任意に調整が可能である。
また、本発明のトナーは、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定された分子量分布において、ピーク分子量(Mp)が12000以上28000以下であることが好ましい。より好ましくは、15000以上26000以下である。
ピーク分子量(Mp)が12000以上28000以下であることによって、トナーの粘弾特性の制御がしやすく好ましい。
本発明において、上記ピーク分子量(Mp)は、トナー粒子製造時の重合開始剤の量、種類や重合条件により任意に調整が可能である。
本発明に用いられる着色剤としては、以下の有機顔料、有機染料、及び、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、及び、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び、66。
マゼンタ系着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及び、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び、254。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及び、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191、及び、194。
黒色着色剤としては、カーボンブラックや、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、シアン系着色剤、及び磁性粉体を用いて黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及び、トナー粒子中の分散性の点から選択される。
また、本発明のトナーに関しては、上記の中でもトナーの熱伝導率を所望の範囲に調整し、低温定着性を向上させる観点で磁性粉体が好ましい。さらに、熱伝導率を制御する上で、本発明のトナーは、水系媒体中で製造することが好ましい。
本発明のトナーに着色剤として磁性粉体を用いる場合、磁性粉体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするもが好ましい。さらに、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2m2/g以上30m2/g以下であることが好ましく、3m2/g以上28m2/g以下であることがより好ましい。また、モース硬度が5以上7以下のものが好ましい。磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
着色剤の添加量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100質量部に対し、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。磁性粉体を用いる場合は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100質量部に対し、好ましくは20質量部以上200質量部以下、より好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
一般に磁性粉体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性粉体が凝集しやすくなるため、磁性粉体の個数平均粒径は0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。
なお、磁性粉体の個数平均粒径は、走査透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、走査透過型電子顕微鏡(STEM)において1万倍〜4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定する。そして、磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明のトナーに用いられる磁性粉体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5〜10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性粉体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性粉体を得ることができる。
また、本発明において水系媒体中でトナーを製造する場合、磁性粉体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択できる。
本発明における磁性粉体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。本発明においては、一般式(I)のYがアルキル基であるものが好ましく用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数3以上6以下のアルキル基であり、特に好ましくは3又は4である。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、又は複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性粉体100質量部に対して0.9質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、磁性粉体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明のトナーは、トナーの帯電性を環境によらず安定に保つために、荷電制御剤を用いてもよい。
負荷電性の荷電制御剤としては、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
正荷電性の荷電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートのようなジオルガノスズボレート類;樹脂系帯電制御剤が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上10.0質量部以下である。
本発明によって製造されるトナーの個数平均径(D1)は4.0μm以上12.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上10.0μm以下である。個数平均径(D1)が4.0μm以上12.0μm以下であると良好な流動性が得られ、潜像に忠実に現像することが出来る。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能であるが、本発明のトナーは結晶性ポリエステルやワックスの存在状態を制御する上でも水系媒体中でトナーを製造することが好ましい。ただし、乳化凝集法の場合、樹脂粒子の大きさは1.0μm以下で安定化することが多いため、例えば、一度粉として取り出し、湿式分級等で上記粒径の粒子を取り出して再度製造工程に戻す等の工夫が必要である。一方、懸濁重合法は結晶性材料の分散状態の制御や数nmオーダーのドメインの形成に関する制御を行いやすく、好ましい。
以下に、懸濁重合法について述べる。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンを単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5から30時間であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5から20質量部の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5,000から50,000の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
具体的な重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明のトナーを重合法により製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明のトナーを製造する場合には、分散剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下を使用することが望ましい。また、上記分散剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般には50から90℃の温度に設定される。
本発明に好適なワックスおよび結晶性ポリエステルのドメインの存在状態および制御について、好ましい製造方法を述べる。例えば粉砕法や懸濁重合、乳化重合によってトナーを製造する場合、一度結晶性ポリエステルやエステルワックスが融解するような温度まで昇温し、その後常温まで冷却する工程を含むことが多い。その際の冷却工程において、下記の工程を経ることにより、本発明に好適な存在状態に制御しやすくなる。
本発明に好適なワックスおよび結晶性ポリエステルのドメインの存在状態および制御については、例えば下記の(i)、(ii)工程を用いることによって制御することができる。該(i)、(ii)工程は、トナー粒子の製造後に行うことが好ましい。例えば、懸濁重合法の場合は、重合性単量体の重合反応を行った後に該(i)、(ii)工程を行うことが好ましい。
(i)工程は、該トナー粒子が分散された水系媒体を、結晶性材料の結晶化温度Tc(℃)及びトナーのガラス転移温度Tg(℃)のいずれかのうち高い温度より高い温度(Tc(℃)及びTg(℃)より高い温度)から該Tg(℃)以下の温度へ冷却速度5.00℃/分以上で冷却する工程である。
後述する懸濁重合法において、重合性単量体を重合する際の重合温度が、(i)工程における、結晶性材料の結晶化温度Tc(℃)及びトナーのガラス転移温度Tg(℃)より高い温度(冷却開始温度T1)である場合、さらに水系媒体を加熱する等の操作は必要がない。一方、上記重合温度が、冷却開始温度T1に満たない場合、水系媒体の温度を上げることが好ましい。
(i)工程においては、まず、結着樹脂と結晶性材料を共に十分に溶融させるために、30分以上600分以下、水系媒体の温度が、結晶性材料の結晶化温度Tc(℃)及びトナーのガラス転移温度Tg(℃)より高い温度を満たすように、温度を維持することが好ましい。
続いて、トナーのガラス転移温度Tg(℃)以下へ、水系媒体の温度を冷却速度5.00℃/分以上の速度で急速に冷却する。ここで、冷却開始温度T1は、水系媒体の温度が結晶性材料の結晶化温度Tc(℃)及びトナーのガラス転移温度Tg(℃)より高い温度であり、急速に冷却する直前の温度である。続いて、冷却停止温度T2は、急速に冷却する操作を終了した際の水系媒体の温度である。(i)工程における水系媒体の冷却速度1は、下記式により求める。
冷却速度1=(T2(℃)−T1(℃))/冷却に要した時間(分)
水系媒体の温度を急速に冷却する手段としては、例えば冷水や氷を混合する操作や、冷風により水系媒体をバブリングする操作、熱交換器を用いて水系媒体の熱を除去する操作等を用いる事が可能である。
(i)工程において、5.00℃/分以上の速度で急速に冷却することで、好適な結晶性材料の存在状態を制御できる。好ましい冷却速度の範囲は、50.00℃/分以上であり、さらに好ましい範囲は、95.00℃/分以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは1000℃/分以下である。
冷却工程について考えると、昇温によって液化した結晶性ポリエステルは温度が下がるにつれて分子運動が鈍くなり、結晶化温度付近に到達すると結晶化が始まる。更に冷却すると結晶化が進み、常温では完全に固化する。本発明者らの検討によると、冷却速度によって結晶性ポリエステルが最終的に結晶化する量が異なることが分かった。具体的には、結晶性ポリエステルの融点以上の温度から50℃±5℃まで5.0℃/分以上の速度で冷却すると結晶性材料のドメインが小さくなるとともに、結晶量が高まる傾向であった。さらに、50℃付近の温度で保持することにより、ワックスの周囲に結晶性ポリエステルが成長を促すことができ、本発明の効果をさらに高めることができる被覆率を向上させることができ、好ましい。本発明における好ましい被覆率の範囲は70%以上であり、さらに好ましい範囲は90%以上である。冷却速度の好ましい範囲は30.0℃/分以上であり、さらに好ましい範囲は50.0℃/分以上である。冷却速度を早くすることにより、結晶性材料のドメインの大きさを小さくしやすくなるとともに、ドメインの個数を多く制御しやすくなる。また、好ましい保持時間は、1時間以上である。
得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
本発明のトナーは上述したような製造方法によって得たトナー母粒子に対して、必要に応じて無機微粒子であるシリカ微粒子等を外添混合してトナー母粒子の表面に付着させることが好ましい。
また、製造工程(無機微粒子の混合前)に分級工程を入れ、トナー母粒子中に含まれる粗粉や微粉を除去することも可能である。
本発明のトナーには、上記シリカ微粒子に加えて、一次粒子の個数平均粒径(D1)が80nm以上、3μm以下の粒子を添加してもよい。例えば、フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;シリカ等のスペーサー粒子を本発明の効果に影響を与えない程度に少量用いることもできる。
上記シリカ微粒子を外添混合する混合処理装置としては、公知の混合処理装置を用いることができるが、被覆率X1及び拡散指数を容易に制御できる点で図3に示すような装置が好ましい。
図3は、本発明に用いられるシリカ微粒子を外添混合する際に、用いることができる混合処理装置の一例を示す模式図である。
当該混合処理装置は、トナー母粒子とシリカ微粒子に対して、狭いクリアランス部において、シェアがかかる構成になっているために、シリカ微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー母粒子表面に付着することができる。
さらに、後述するように、回転体の軸方向において、トナー母粒子とシリカ微粒子が循環しやすく、固着が進む前に十分に均一混合されやすい点で、被覆率X1及び拡散指数を本発明において好ましい範囲に制御しやすい。
一方、図4は、上記混合処理装置に使用される撹拌部材の構成の一例を示す模式図である。
以下、上記シリカ微粒子の外添混合工程について図3及び図4を用いて説明する。
上記シリカ微粒子を外添混合する混合処理装置は、少なくとも複数の撹拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体を回転駆動する駆動部8と、撹拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1とを有する。
本体ケーシング1の内周部と、撹拌部材3との間隙(クリアランス)は、トナー母粒子に均一にシェアを与え、シリカ微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー母粒子表面に付着しやすくするために、一定かつ微小に保つことが重要である。
また本装置は、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下である。図3において、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径(回転体2から撹拌部材3を除いた胴体部の径)の1.7倍である例を示す。本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下であると、トナー母粒子に力が作用する処理空間が適度に限定されるため、二次粒子となっているシリカ微粒子に十分に衝撃力が加わるようになる。
また、上記クリアランスは、本体ケーシングの大きさに応じて、調整することが重要である。本体ケーシング1の内周部の径の、1%以上5%以下程度とすることが、シリカ微粒子に十分なシェアをかけるという点で重要である。具体的には、本体ケーシング1の内周部の径が130mm程度の場合は、クリアランスを2mm以上5mm以下程度とし、本体ケーシング1の内周部の径が800mm程度の場合は、10mm以上30mm以下程度とすればよい。
本発明におけるシリカ微粒子の外添混合工程は、混合処理装置を用い、駆動部8によって回転体2を回転させ、混合処理装置中に投入されたトナー母粒子及びシリカ微粒子を撹拌、混合することで、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子を外添混合処理する。
図4に示すように、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、回転体2の回転に伴って、トナー母粒子及びシリカ微粒子を回転体の軸方向の一方向に送る送り用撹拌部材3aとして形成される。また、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、トナー母粒子及びシリカ微粒子を、回転体2の回転に伴って、回転体の軸方向の他方向に戻す戻し用撹拌部材3bとして形成されている。
ここで、図3のように、原料投入口5と製品排出口6が本体ケーシング1の両端部に設けられている場合には、原料投入口5から製品排出口6へ向かう方向(図3で右方向)を「送り方向」という。
すなわち、図4に示すように、送り用撹拌部材3aの板面は送り方向(13)にトナー母粒子を送るように傾斜している。一方、撹拌部材3bの板面は戻り方向(12)にトナー母粒子及びシリカ微粒子を送るように傾斜している。
これにより、「送り方向」への送り(13)と、「戻り方向」への送り(12)とを繰り返し行いながら、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子の外添混合処理を行う。
また、撹拌部材3aと3bは、回転体2の円周方向に間隔を置いて配置した複数枚の部材が一組となっている。図4に示す例では、撹拌部材3a、3bが回転体2に互いに180度の間隔で2枚の部材が一組をなしているが、120度の間隔で3枚、あるいは90度の間隔で4枚、というように多数の部材を一組としてもよい。
図4に示す例では、撹拌部材3aと3bは等間隔で、計12枚形成されている。
さらに、図4において、Dは撹拌部材の幅、dは撹拌部材の重なり部分を示す間隔を示す。トナー母粒子及びシリカ微粒子を、送り方向と戻り方向に効率よく送る観点から、図4における回転体2の長さに対して、Dは20%以上30%程度の幅であることが好ましい。図4においては、23%である例を示す。さらに撹拌部材3aと3bは撹拌部材3aの端部位置から垂直方向に延長線を引いた場合、撹拌部材3bと撹拌部材の重なり部分dをある程度有することが好ましい。これにより、二次粒子となっているシリカ微粒子に効率的にシェアをかけることが可能である。Dに対するdは、10%以上30%以下であることがシェアをかける点で好ましい。
なお、羽根の形状に関しては、図4に示すような形状以外にも、送り方向及び戻り方向にトナー粒子を送ることができ、クリアランスを維持することができれば、曲面を有する形状や先端羽根部分が棒状アームで回転体2に結合されたパドル構造であってもよい。
以下、図3及び図4に示す装置の模式図に従って、本発明を更に詳細に説明する。
図3に示す装置は、少なくとも複数の撹拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体2を回転駆動する駆動部8と、撹拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1と、本体ケーシング1の内側及び回転体端部側面10にあって、冷熱媒体を流すことのできるジャケット4を有している。
更に、図3に示す装置は、トナー粒子及びシリカ微粒子を導入するために、本体ケーシング1上部に形成された原料投入口5、外添混合処理されたトナーを本体ケーシング1から外に排出するために、本体ケーシング1下部に形成された製品排出口6を有している。
更に、図3に示す装置は、原料投入口5内に、原料投入口用インナーピース16が挿入されており、製品排出口6内に、製品排出口用インナーピース17が挿入されている。
本発明においては、まず、原料投入口5から原料投入口用インナーピース16を取り出し、トナー粒子を原料投入口5より処理空間9に投入する。次にシリカ微粒子を原料投入口5より処理空間9に投入し、原料投入口用インナーピース16を挿入する。次に、駆動部8により回転体2を回転させ(11は回転方向を示す)、上記で投入した処理物を、回転体2表面に複数設けられた撹拌部材3により撹拌、混合しながら外添混合処理する。
尚、投入する順序は、先にシリカ微粒子を原料投入口5より投入し、次に、トナー母粒子を原料投入口5より投入しても構わない。また、ヘンシェルミキサーのような混合機で予め、トナー母粒子とシリカ微粒子を混合した後、混合物を、図3に示す装置の原料投入口5より投入しても構わない。
より具体的には、外添混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.2W/g以上2.0W/g以下に制御することが、本発明で好ましい被覆率X1及び拡散指数を得るうえで好ましい。また、駆動部8の動力を、0.6W/g以上1.6W/g以下に制御することが、より好ましい。
0.2W/gより動力が低い場合には、被覆率X1が高くなりにくく、拡散指数が低くなりすぎる傾向にある。一方、2.0W/gより高い場合には、拡散指数が高くなるが、シリカ微粒子が埋め込まれすぎてしまう傾向にある。
処理時間としては、特に限定されないが、好ましくは3分以上10分以下である。処理時間が3分より短い場合には、被覆率X1及び拡散指数が低くなる傾向にある。
外添混合時の撹拌部材の回転数については特に限定されないが、図3に示す装置の処理空間9の容積が2.0×10-3m3の装置において、撹拌部材3の形状を図4のものとしたときの撹拌部材の回転数としては、800rpm以上3000rpm以下であることが好ましい。800rpm以上3000rpm以下であることで本発明で好ましい範囲の被覆率X1及び拡散指数を得やすくなる。
さらに、本発明において、特に好ましい処理方法は、外添混合処理操作の前に、プレ混合工程を持たせることである。プレ混合工程を入れることにより、シリカ微粒子がトナー粒子表面上で高度に均一分散されることで、被覆率X1が高くなりやすく、さらに拡散指数を高くしやすい。
より具体的には、プレ混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.06W/g以上0.20W/g以下とし、処理時間を0.5分以上1.5分以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.09W/g以上0.15W/g以下である。プレ混合処理条件として、0.06W/gより負荷動力が低い、或いは処理時間が0.5分より短い場合には、プレ混合として十分な均一混合がなされにくい。一方、プレ混合処理条件として、0.20W/gより負荷動力が高い、或いは処理時間1.5分より長い場合には、十分な均一混合がなされる前に、トナー粒子表面にシリカ微粒子が固着されてしまう場合がある。
プレ混合処理の撹拌部材の回転数については、図3に示す装置の処理空間9の容積が2.0×10-3m3の装置において、撹拌部材3の形状を図4のものとしたときの撹拌部材の回転数としては、50rpm以上500rpm以下であることが好ましい。50rpm以上500rpm以下であることで本発明で規定する被覆率X1及び拡散指数を得やすくなる。
外添混合処理終了後、製品排出口6内の、製品排出口用インナーピース17を取り出し、駆動部8により回転体2を回転させ、製品排出口6からトナーを排出する。得られたトナーを、必要に応じて円形振動篩機等の篩機で粗粒等を分離し、トナーを得る。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラー117、現像スリーブ102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。感光ドラム100は一次帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
次に、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
<結晶性材料の融点の測定>
結晶性ポリエステル及びワックスの融点はDSCにて測定した際の、吸熱ピークのピークトップ温度として求めることが出来る。測定はASTM D 3417−99に準じて行う。これらの測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
<トナー(粒子)の重量平均径(D4)及び個数平均径(D1)の測定>
トナー(粒子)の重量平均径(D4)及び個数平均径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「UltrAsonic Dispersion System TetorA150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均径(D1)である。
<結晶性ポリエステルの分子量の測定方法>
結晶性ポリエステル分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で結晶性ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ルテニウム染色処理された走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナー断面の観察方法>
トナー粒子の走査透過型電子顕微鏡(STEM)による断面観察は以下のようにして実施することができる。
トナー粒子断面の観察は、トナー粒子断面をルテニウム染色することによって行う。本発明のトナーに含有される結晶性材料は、結着樹脂のような非晶樹脂よりもルテニウムで染色されるため、コントラストが明瞭になり、観察が容易となる。染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分は、これらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス 正方形 No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(重量平均径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー粒子の断面を出す。次に、膜厚250nmとなるように切削し、トナー粒子断面の薄片サンプルを作製した。このような手法で切削することで、トナー粒子中心部の断面を得ることができる。
得られた薄片サンプルを真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)のSTEM機能を用いてSTEM観察を行った。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得した。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得した。
<結晶性材料のドメインの同定>
トナー粒子の断面のSTEM画像をもとに、結晶性材料のドメインの同定を、以下の手順により行う。
結晶性材料を原材料として入手できる場合、それらの結晶構造を、上述のルテニウム染色処理された走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナー粒子断面の観察方法と同様にして、観察し、原材料それぞれの結晶のラメラ構造の画像を得る。それらと、トナー粒子の断面におけるドメインのラメラ構造を比較し、ラメラの層間隔が誤差10%以下であった場合、トナー粒子の断面におけるドメインを形成している原材料を特定することができる。
<結晶性材料の単離>
結晶性材料の原材料を入手できない場合、次のように単離作業を行う。まず、トナーに対する貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、結晶性材料の融点を超える温度まで、昇温させる。この時、必要に応じて、加圧してもよい。この時点で、融点を超えた結晶性材料が溶融している。その後、固液分離することにより、トナーから、結晶性材料の混合物を採取できる。この混合物を、分子量毎に分種することにより、結晶性材料の単離が可能である。
<結晶性材料のドメインの長径の平均径rおよび個数の測定>
本発明において、結晶性材料のドメインの長径の平均径rおよび個数は以下のように測定する。なお、結晶性材料のドメインとして、上述したようにワックスを結晶性ポリエステルが覆う構造が好ましいものとして含まれ、このような複合化されたドメイン(複合ドメイン)も一つのドメインとしてカウントし、長径を測定する。
ルテニウム染色処理された走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナー粒子断面の観察により得られたSTEM画像をもとに、結晶性材料のドメインの最長径を長径とする。測定に用いるトナー粒子断面は、重量平均径(D4)に対して、0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たす長径R(μm)を呈する断面とする。
上記のように選択したトナー粒子断面において、トナーの長径Rを測定し、100個の断面の相加平均値をトナーの長径Rとする。
上述の結晶性材料のドメインの同定を実施した後、各ドメインの長径を算出することができる。100個のトナーの相加平均値により、ドメインの個数およびドメインの長径の平均径rを算出する。
<結晶性材料のドメインにおける結晶性ポリエステルのワックスに対する被覆率の測定>
被覆率はTEM画像を用いて、下記のように算出した。まず、上述したようなTEM観察において、結晶性材料のドメインのうち、ワックスと結晶性ポリエステルをコントラストの差により判別する。続いて、ワックスの周囲長を測定するとともに、結晶性ポリエステルとワックスの界面に沿っての周囲長をフリーハンドで測定した。これらの比から、被覆率を算出することができる。同様の計算を0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たすトナー100個以上について行い、相加平均値により、本発明におけるワックスに対する結晶性ポリエステルの被覆率とした。
<結晶性ポリエステルの末端構造の同定>
樹脂サンプルを2mg精秤し、クロロホルム2mlを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶性ポリエステルを用いるが、結晶性ポリエステルを含有するトナーをサンプルとして代用することも可能である。次に、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mlを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。また、トリフルオロ酢酸NA(NATFA)3mgを精秤した後、アセトンを1ml添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μl、マトリックス溶液50μl、イオン化助剤溶液5μlを混合して、MALDI分析用のサンプルプレート上に滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker DAltonics製 ReflexIII)を用い、マススペクトルを得る。得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子末端にモノカルボン酸が結合した構造に対応するピークが存在するか否かを確認する。
<結晶性ポリエステルおよびワックスの構造の同定>
ワックスは分子量が低く、結晶性ポリエステルはそれよりも高い。このことを利用して、トナーからワックスと結晶性ポリエステルを分離する。
具体的には、トナー100mgをクロロホルム3mlに溶解する。次いで、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えば、マイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などを使用)を取り付けたシリンジで吸引ろ過することで不溶分を除去する。分取HPLC(装置:日本分析工業社製 LC−9130 NEXT 分取カラム[60cm]排除限界:20000、70000 2本連結)に可溶分を導入しクロロホルム溶離液を送液する。得られるクロマトグラフの表示でピークが確認できたら、単分散ポリスチレン標準試料で分子量5000となるリテンションタイム前後を分取する。
分取した溶液をエバポレーターによって、溶媒を除去した後に24時間真空乾燥させて分子量5000以下(X成分)と5000以上(Y成分)のサンプルを得る。
その後、X成分を熱分解装置JPS−700(日本分析工業社製)を用い、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下で590℃まで加熱し、メチル化しながら熱分解する。
その後、GC−MASS(Thermo Fisher Scientific社製 ISQ Focus GC、HP−5MS[30m])によってエステル化合物由来のアルコール成分、カルボン酸成分のそれぞれについてのピークを得る。一般的に結晶性ポリエステルやワックスを熱分解した際にはメチル化物が得られる。得られたピークを解析し、結晶性ポリエステルおよびワックスの構造を推測および同定することができる。
<トナーの冷却時の動的粘弾性測定>
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。
測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、トナーを直径7.9mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、パラレルプレートを室温(25℃)から50℃へ昇温する。その後100℃に4℃/分の速度で昇温して、100℃で5分間保持する。その後、測定をスタートする。測定条件は、100℃から60℃まで4℃/分の速度で冷却する。このようにして、G’(100℃)、G’(60℃)を得る。
一連の操作の際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットすることが、重要である。また、以下に述べるように、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルできる。
測定は、以下の条件で行う。
(1)直径7.9mmのパラレルプレートを用いる。
(2)周波数(Frequency)は1.0Hzとする。
(3)印加歪初期値(Strain)を0.1%に設定する。
(4)50〜100℃の間を、昇温速度(Ramp Rate)4.0℃/minで昇温を行う。続いて、100℃で5分間保持する。さらに測定においては、100℃〜50℃の間を、冷却速度(Ramp Rate)4.0℃/minで測定を行う。
尚、一連の作業の際、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
(5)最大歪(Max Applied Strain)を20.0%に設定する。
(6)最大トルク(Max Allowed Torque)200.0g・cmとし、最低トルク(Min Allowed Torque)0.2g・cmと設定する。
(7)歪み調整(Strain Adjustment)を 20.0% of Current Strain と設定する。測定においては、自動テンション調整モード(Auto Tension)を採用する。
(8)自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をコンプレッション(Compression)と設定する。
(9)初期スタティックフォース(Initial Static Force)を10.0g、自動テンションセンシティビティ(Auto Tension Sensitivity)を40.0gと設定する。
(10)自動テンション(Auto Tension)の作動条件は、サンプルモデュラス(Sample Modulus)が1.0×103(Pa)以上である。
<トナーの応力の積分値の測定方法>
(1)トナーぺレットの作製
トナー約3gを(試料の比重により可変する。)、内径27mm測定用の塩化ビニル製リングに入れ、例えば、試料プレス成型機「MAEKAWA Testing Machine」(MFG Co,LTD製)を用いて、200kNで60秒プレスし、試料を成型することで、トナーペレットを作製する。
(2)応力の積分値の測定
トナーの応力の積分値はタッキング試験機「TAC−1000」(レスカ社製)を用いて、装置の操作マニュアルに従い、測定を行った。該タッキング試験機の模式図を図2に示す。具体的な測定方法としては、サンプル押さえ板205の上に前記トナーペレットを載せ、プローブユニット202を用いてプローブ先端203を100℃にする。
次に、ヘッド部200を調整することにより、プローブ先端がトナーペレット204を加圧できる手前まで、プローブ先端を降下させる。
次に、以下の条件でトナーペレットを加圧した状態でプローブ先端203を25℃まで冷却し、プローブ先端を引き上げるときの応力値を荷重センサ201で検出する。
・押しつけ時プローブ温度 100℃
・押しつけ速度 5mm/sec
・押しつけ荷重 0.49N
・引き上げ時プローブ温度 25℃
・引き上げ速度 15mm/sec
荷重センサで検出した応力値を積分することで応力の積分値を算出する。具体的には、センサがペレットから引き離す力がかかる瞬間の点(応力値が0Nとなる点)からセンサがペレットから離れきった点までの時間にかかる応力値を積分することで算出することができる。
<シリカ微粒子の定量方法>
(1)トナー中のシリカ微粒子の含有量の定量(標準添加法)
トナー3gを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製する。そして、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、珪素(Si)の強度を求める(Si強度−1)。なお、測定条件は使用するXRF装置で最適化されたものであれば良いが、一連の強度測定はすべて同一条件で行うこととする。トナーに、一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子を、トナーに対して1.0質量%添加して、コーヒーミルにより混合する。
混合後、上記と同様にペレット化したのちに、上記同様にSiの強度を求める(Si強度−2)。同様の操作を、シリカ微粒子を、トナーに対して2.0質量%、3.0質量%添加混合したサンプルにおいても、Siの強度を求める(Si強度−3,Si強度−4)。Si強度−1乃至4を用いて、標準添加法によりトナー中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(2)トナーからシリカ微粒子の分離
トナーが磁性体を含有する場合、次の工程を経て、シリカ微粒子の定量を行う。
トナー5gを、精密天秤を用いて200mlの蓋付きポリカップに秤量し、メタノールを100ml加え、超音波分散機で5分間分散させる。ネオジム磁石によりトナーを引き付け、上澄み液を捨てる。メタノールによる分散と上澄みを捨てる操作を3回繰り返したのち、10%NaOHを100mlと、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加え、軽く混合したのち、24時間静置する。その後、再びネオジム磁石を用いて分離する。なお、この際にNaOHが残留しないように繰り返し蒸留水ですすぐ。回収された粒子を真空乾燥機により十分に乾燥させ、粒子Aを得る。上記操作により、外添されたシリカ微粒子は溶解、除去される。
(3)粒子A中のSi強度測定
3gの粒子Aを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製し、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Siの強度を求める(Si強度−5)。Si強度−5とトナー中のシリカ含有量の定量で使用したSi強度−1乃至4を利用して、粒子A中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(4)トナーから磁性体の分離
5gの粒子Aに対して、100mlのテトラヒドロフランを加え、良く混合した後に超音波分散を10分間行う。磁石により磁性粒子を引き付け、上澄み液を捨てる。この作業を5回繰り返し、粒子Bを得る。この操作で、磁性体以外の樹脂等の有機成分はほぼ取り除くことができる。ただし、樹脂中のテトラヒドロフラン不溶解分が残存する可能性があるため、上記操作で得られた粒子Bを800℃まで加熱して残存する有機成分を燃焼させることが好ましく、加熱後に得られた粒子Cを、トナーに含有されていた磁性体と近似することができる。
粒子Cの質量を測定することにより、磁性トナー中の磁性体含有量W(質量%)とすることができる。この際、磁性体の酸化増量分を補正するために、粒子Cの質量に0.9666(Fe2O3→Fe3O4)を乗じる。
各定量値を以下の式に代入することにより、外添されたシリカ微粒子量を算出する。
外添されたシリカ微粒子量(質量%)=トナー中のシリカ含有量(質量%)−粒子A中のシリカ含有量(質量%)
<被覆率X1の測定方法>
トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、以下のようにして算出する。
下記装置を下記条件にて使用し、トナー表面の元素分析を行う。
・測定装置:Quantum2000(商品名、アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、Si原子の定量値の算出には、C 1c(B.E.280〜295eV)、O 1s(B.E.525〜540eV)及びSi 2p(B.E.95〜113eV)のピークを使用した。ここで得られたSi元素の定量値をY1とする。
次いで、シリカ微粒子単体の測定を行う。トナーからシリカ微粒子単体を得る方法としては、上述の「トナーからシリカ微粒子を分離」に記載した手法を用いる。ここで得たシリカ微粒子を用いて、上述のトナー表面の元素分析と同様にして、シリカ微粒子単体の元素分析を行い、ここで得られたSi元素の定量値をY2とする。
本発明において、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1を次のように定義する。
被覆率X1(面積%)=Y1/Y2×100
尚、本測定の精度を向上させるために、Y1及びY2の測定を、2回以上行うことが好ましい。
<シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー表面のシリカ微粒子画像から算出される。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S−4800観察条件設定
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べてシリカ微粒子のチャージアップが少ないため、シリカ微粒子の粒径を精度良く測定することが出来る。
S−4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PCSTEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)(前記da)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー表面上の少なくとも300個のシリカ微粒子について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、シリカ微粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)(da)を得る。
<シリカ微粒子の見掛け密度の測定方法>
シリカ微粒子の見掛け密度の測定は、100mlのメスシリンダーに、紙の上にのせた測定試料をゆっくり加えて100mlになるようにし、試料を加える前と後のメスシリンダーの質量差を求め次式によって算出する。なお、試料をメスシリンダーに加える場合、紙を叩いたりしないよう注意する。
見掛け密度(g/L)=(100ml投入した時点の質量(g))/0.1
<トナー及びシリカ微粒子の真比重の測定方法>
トナー及びシリカ微粒子の真比重は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記の通りである。
セル:SMセル(10ml)
サンプル量:約2.0g(トナー)、0.05g(シリカ微粒子)
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真比重を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<シリカ微粒子における、シリコーンオイルの遊離部数および固定化部数の測定方法>
(遊離シリコーンオイルの抽出)
(1)ビーカーにシリカ微粒子0.50g、クロロホルム40mlを入れ、2時間撹拌する。
(2)撹拌を止めて、12時間静置する。
(3)サンプルをろ過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
(炭素量測定)
酸素気流下、1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中の炭素量を測定する。シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイルの炭素量基準の遊離部数および固定化部数を下記の通り計算する。
(1)試料0.40gを円筒金型に入れプレスする。
(2)プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA−110で測定する。
(3)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×[シリカ原体に処理されたシリコーンオイル部数]、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化部数とする。
なお、シラン化合物等で疎水処理後にシリコーンオイルによる表面処理を行っている場合は、シラン化合物等で疎水処理後に試料中の炭素量を測定し、シリコーンオイル処理後に、シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化部数を下記の通り計算する。
(4)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[(シリコーンオイル抽出前の炭素量−シラン化合物等で疎水処理後の炭素量)]×[シリカ原体に処理されたシリコーンオイル部数]、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化部数とする。
一方、シリコーンオイルによる表面処理後にシラン化合物等で疎水処理を行っている場合は、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化部数を下記の通り計算する。
(5)[(シリコーンオイル抽出後の炭素量−シラン化合物等で疎水処理後の炭素量)]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×[シリカ原体に処理されたシリコーンオイル部数]、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化部数とする。
シリコーンオイルの遊離部数は、[シリカ原体に処理されたシリコーンオイル部数]−[シリコーンオイルの炭素量基準の固定化部数]によって計算される。
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部を示す。
<結晶性ポリエステル1の製造>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、酸モノマー1としてセバシン酸100.0部、酸モノマー2としてステアリン酸1.6部、アルコールモノマーとして1,9−ノナンジオール89.3部、を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、ジオクチル酸スズを0.57部加えた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル2〜5の製造>
結晶性ポリエステル1の製造において、アルコールモノマーと酸モノマー1及び2を表1のように変更し、反応時間及び温度を所望の物性になるように調整したこと以外は同様にして、結晶性ポリエステル2〜5を得た。得られた結晶性ポリエステルの物性を表1に示す。なお、結晶性ポリエステル1〜5は、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有していた。
<磁性酸化鉄の製造例>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100部あたり珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物の製造>
iso−ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有する水溶液を得た。
<磁性体1の製造>
磁性酸化鉄の100部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物を含有する水溶液8.0部を2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体を得た。
本実施例、及び比較例で使用したワックスについて、表2に示す。
<トナー母粒子1の製造>
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 75.0部
・n−ブチルアクリレート 25.0部
・ジビニルベンゼン 0.2部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性体1 90.0部
・非晶性飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とテレフタル酸との縮重合反応により得られる飽和ポリエステル樹脂;数平均分子量(Mn)=5000、酸価=6mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)=68℃)
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこに結晶性ポリエステル1を10.0部、離型剤としてワックス1を10.0部、ワックス2を10.0部混合し、溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート5.0部を投入し、70℃に昇温して4時間反応させた。反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間保持した。その後、冷却工程として、懸濁液に常温の水を投入し、135℃/分の速度で懸濁液を100℃から50℃まで冷却した後、50℃で60分保持し、常温(以下、トナーの製造において、25℃を常温とする)まで放冷した。その際の冷却速度は、2℃/分であった。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散剤を溶解させ、濾過・乾燥してトナー母粒子1を得た。
<トナー母粒子2〜11の製造例>
トナー母粒子1の製造において、表3の記載の材料の種類、部数、冷却条件を変更した以外は同様にして、トナー母粒子2〜11を製造した。
<トナー1の製造例>
トナー母粒子1に対して、図3に示す装置を用いて、外添混合処理を行った。
本実施例においては、図3に示す装置で、本体ケーシング1の内周部の径が130mmであり、処理空間9の容積が2.0×10-3m3の装置を用い、駆動部8の定格動力を5.5kWとし、撹拌部材3の形状を図4のものとした。そして、図4における撹拌部材3aと撹拌部材3bの重なり幅dを撹拌部材3の最大幅Dに対して0.25Dとし、撹拌部材3と本体ケーシング1内周とのクリアランスを3.0mmとした。
上記した装置構成で、トナー母粒子1の100部と、表4に示すシリカ微粒子1(シリカ原体の一次粒子の個数平均粒径:7nm、BET比表面積:300m2/g、シリコーンオイルの粘度50cs、シリコーンオイル固定化部数20部、シリコーンオイル遊離部数20部、見掛け密度25g/L、処理後のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径:8nm)の0.60部とを、図3に示す装置に投入した。
トナー母粒子とシリカ微粒子を投入後、トナー母粒子とシリカ微粒子を均一に混合するために、プレ混合を実施した。プレ混合の条件は、駆動部8の動力を0.10W/g(駆動部8の回転数150rpm)とし、処理時間を1分間とした。
プレ混合終了後、外添混合処理を行った。外添混合処理条件は、駆動部8の動力を0.60W/g(駆動部8の回転数1400rpm)で一定となるように、撹拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を5分間とした。
外添混合処理後、直径500mm、目開き75μmのスクリーンを設置した円形振動篩機で粗粒等を除去し、トナー1を得た。トナー1を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、8nmであった。トナー1の外添処方を表5に、物性を表6に示す。
<トナー2〜17、および比較用トナー1〜6の製造例>
トナー1の製造例において、表4、表5に示す、シリカ微粒子の種類及び添加部数、トナー母粒子、外添装置、外添条件等へ変更した以外は同様にして、トナー2〜17、および比較用トナー1〜6を製造した。得られたトナー2〜17、および比較用トナー1〜6の外添条件を表5に、物性を表6に示す。
ここで、外添装置としてヘンシェルミキサーを使用する場合、ヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機(株))を用いた。また、一部の製造例においては、プレ混合工程を行わなかった。
〔実施例1〕
トナー1を用いて、以下の評価を行った。
マシンを使用した評価は、23℃、50%RHの環境で実施した。定着メディアにはA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、70g/m2)を用いた。本メディアは比較的薄く、低温定着性に対しては良好な結果が得られやすい。一方、トナーが溶融しやすいために、画像の貼りつきが発生しやすく、厳しく評価することが可能である。画像形成装置としては、市販のLBP−3100(キヤノン製)を用い、印字速度を16枚/分を32枚/分に改造した改造機を使用した。この条件は、排紙部から排紙されたメディアが積層される間隔が短くなるため、メディアの熱が下がりにくい条件である。このため、画像の貼りつきが発生しやすく、トナーに対して厳しく評価することが可能である。
<低温定着性の評価>
まず、上述の条件で低温定着性の温度の評価を実施した。
評価手順は、定着器全体が室温に冷えた状態から、170℃の設定温度で画像濃度(マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定した。)が0.75以上0.80以下となるようにハーフトーン画像の濃度を調整し画出しを行った。
その後、55g/cm2(5.4kPa)の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦した。摺擦前後の画像濃度より、下記式を用いて、170℃における濃度低下率を算出した。
濃度低下率(%)=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
同様に、定着温度を5℃ずつ増加させ、200℃まで同様に濃度低下率を算出した。
一連の作業により得られた、定着温度と濃度低下率の評価結果から、2次の多項式近似を行い、定着温度と濃度低下率の関係式を得た。その関係式を用いて、濃度低下率が20%となる温度を算出し、その温度を低温定着性が良好である閾値を示す定着温度とした。定着温度が低いほど、低温定着性が良好であることを示す。得られた定着温度を下記のようにランク付けし、表7に示す。
A:180℃未満
B:180℃以上190℃未満
C:190℃以上200℃未満
D:200℃以上
<画像貼りつきの評価>
低温定着性の評価で用いたマシンを使用し、上述の評価で得られた低温定着性の温度設定で、ベタ黒画像を連続で100枚、両面印刷で画出しを行った。排紙部から排紙された紙束は、積層部で30分以上放置し、室温まで冷却させた。その後、紙1枚1枚に分け、その際のベタ黒画像の中で白く抜けた箇所の個数により、画像の貼りつきの評価をした。画像の貼りつきが良好な場合、ベタ黒画像の白く抜けた箇所の個数が少ない。一方、貼りつきが悪い場合、ベタ黒画像が上層の紙に貼りついてしまう。紙束を引きはがすことによって、ベタ黒画像が白く抜け、その箇所の個数が増大する。得られた個数によって下記のようにランク付けし、結果を表7に示す。
A:抜けなし
B:抜け個数1個以上5個以下
C:抜け個数6個以上19個以下
D:抜け個数20個以上
<耐ブロッキング性>
10gのトナー1を100mlのポリカップに入れ、55℃で3日間放置した時の凝集具合を目視で判断した。得られた結果を表7に示す。
A:凝集物は見られない。
B:凝集物は見られるが、容易に崩れる。
C:凝集物は見られるが、振れば崩れる。
D:凝集物をつかむことができ、容易に崩れない。
〔実施例2〜17、比較例1〜6〕
トナーを変更すること以外は同様にして、実施例2〜17、比較例1〜6を評価した。評価した結果を表7に示す。