以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明の一実施形態は、結晶性樹脂(C)、非晶性樹脂(A)、離型剤(W)および着色剤(P)を含む静電潜像現像用トナーであって、
トナーの示差走査熱量測定(DSC)での1回目の昇温時の吸熱ピーク(1st)のうちΔHが0.5J/g以上となる吸熱ピークが1つであり、前記ΔHが0.5J/g以上となる吸熱ピークの半値幅hT1、結晶性樹脂の2回目の昇温での吸熱ピークの半値幅hC2が、上記の式(1)、(2)の関係を満たすことを特徴とする静電潜像現像用トナーである。かかる構成を有することで、上記した発明の効果を有効に発現し得るものである。
なお、本明細書中、「静電潜像現像用トナー」を単に「トナー」とも称する場合がある。
本発明に係るトナーは、上記のように、トナーを構成する結晶性材料として結晶性樹脂と離型剤とを含むものであって、この結晶性材料(特に結晶性樹脂、離型剤)が特定の熱的特性を有するものである。
詳しくは、トナーが定着=加熱される際、結晶性材料(結晶性樹脂、離型剤)が融解しトナー全体の溶融粘度が下がることが定着性に大きく影響する。上記特許文献1のように、結着樹脂に定着助剤として結晶性樹脂を入れた場合、離型剤との融点差が大きいと融点が低い方に定着エネルギーが選択的に供給されるため、定着性(低温定着性、定着分離性)の悪化が起こっていた。また、結晶化度が高く融点上昇した結晶性樹脂も定着性悪化の原因となっていた。故に、本発明では、結晶性樹脂と離型剤とがほぼ同時に溶け出し、効果的に定着に寄与するためには、結晶性樹脂と離型剤との融点の関係および結晶性樹脂の結晶化度が重要であることを見出したものである。
即ち、本発明では、での1回目の昇温時の吸熱ピーク(1st)のうち、当該吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上となる吸熱ピークが1つであることを特徴の1つとする。これは、加熱時に吸熱反応を起こす結晶性樹脂、離型剤いずれも含むトナーにおいて、トナーの1回目の昇温時の吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであることは結晶性樹脂および離型剤がほぼ同時に融解することを示す。トナーの上記吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が2つ以上(1+Sを含む)の場合は結晶性樹脂ないし離型剤に前後して(結晶性樹脂と離型剤の溶融のタイミングが大きく異なって)エネルギーが供給され定着される。そのため、高温側にピークを持つ結晶性樹脂ないし離型剤にはエネルギー供給が不十分になるため、それぞれの結晶性材料がもつ定着性、例えば低温定着性や定着分離性が同時に効果を発揮できないため定着性が悪化する。ここで、トナーの吸熱ピークが1+Sであるとは、吸熱ピークが1つ検出され、吸熱波形にショルダーが存在する場合を指す(図1参照)。
本発明では、さらに、結晶性材料の結晶化度が低すぎず高すぎない適正な範囲になることによって、その効果が有効に発揮されることを見出した。
式(1)は、トナー中の結晶性材料の結晶化度の指標である。
式(2)は、結晶性材料における結晶性樹脂の結晶化度の指標としている。
まず、式(1)のDSCの吸熱ピークによる半値幅で結晶化度を比較することで、その最適な範囲が以下のメカニズム(発現機構ないし作用機構)により規定し得るものと推測する。結晶化度が高くなると吸熱ピークはシャープになり半値幅が狭くなる。結晶化度が低くなると吸熱ピークはブロードになり、半値幅が広がる。結晶化度が高すぎる半値幅1.2未満の場合には、融解時のシャープメルト性は高まるが、離型剤と結晶性樹脂とが存在する系では分子量が低い離型剤にエネルギー供給が優先され高分子量の結晶性樹脂の溶け出しが阻害されると推測している。一方、結晶化度が低く半値幅が5より高くなる場合には、結晶性材料のもつシャープメルト性の効果が低くなり、低温定着性の観点で好ましくない。複写機での定着時など、供給されるエネルギーが限定される場合に、複数の結晶性材料の融解が選択的に起こると推測している。一方、トナー中の結晶性材料の結晶化度が低すぎず高すぎない適正な範囲=式(1)の関係を満足することで、上記問題点を解消され、その効果が有効に発揮される。
次に、式(2)の昇温1回目のトナーの半値幅、昇温2回目の結晶性樹脂の半値幅の変化量にて結晶性樹脂の結晶化度を比較することで、その最適な範囲が以下のメカニズム(発現機構ないし作用機構)により規定し得るものと推測する。0.35>(hT1/hC2)となる場合、トナー中の結晶性材料、特に結晶性樹脂の結晶化度が高すぎるときには、離型剤の融解と結晶性樹脂の融解とがほぼ同時に起こらず、低温定着性を悪化させる。また、(hT1/hC2)>1.75の範囲、特に結晶性樹脂の結晶化度が低くシャープメルト性が低下している場合も高速出力に悪影響を及ぼしてしまう。さらに高温でのポリエステル樹脂(結晶性に因らず)の弾性が(スチレンアクリル系よりも)低いことから定着分離性が低下(悪化)する。また、組成が似た構造をもつ結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルは親和性が高く(スチレンアクリルと結晶性ポリエステルよりも)、結着樹脂である非晶性ポリエステルが可塑化されやすいため耐熱性(耐熱保管性)が低下(悪化)する。一方、結晶性材料における結晶性樹脂の結晶化度が低すぎず高すぎない適正な範囲=式(2)の関係を満足することで、上記問題点を解消され、その効果が有効に発揮される。
なお、上記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明について説明する。
本発明に係る静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう)は、以下で詳説する結晶性樹脂(C)、非晶性樹脂(A)、離型剤(W)および着色剤(P)を必須に含む。そして、本発明のトナーは、トナーの示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry;DSC)での1回目の昇温時におけるトナーの吸熱ピークのうち、吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上となる吸熱ピークが1つであり、以下の式(1)〜(2)の関係を満たす。
このとき、上記ΔHは、前記トナーのDSCでの1回目の昇温時のおける吸熱ピークに基づく吸熱量(J/g)である(例えば、ASTM D3418−82等に準じて測定することができるが、他の様々な標準規格(ISO規格やDIN規格等であっても、同様の結果が得られるものであれば適用可能である。)。
上記hT1は、前記トナーのDSCでの1回目の昇温時のおけるトナーの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)の半値幅(℃)である(例えば、ASTM D3418−82等に準じて測定することができるが、他の様々な標準規格(ISO規格やDIN規格等であっても、同様の結果が得られるものであれば適用可能である。)。
上記hC2は、前記トナーのDSCでの結晶性樹脂由来の2回目の昇温での吸熱ピークの半値幅(℃)である(例えば、ASTM D3418−82等に準じて測定することができるが、他の様々な標準規格(ISO規格やDIN規格等であっても、同様の結果が得られるものであれば適用可能である。)。ここで、ピークが分離できるものに関しては、吸熱ピークの高低は1回目(1st)と同じ関係になるため、それを使用する。ピークが分離できないショルダーを有するものに関しては、分離せず1つの吸熱ピークとして扱うものとする。
なお、上記ΔH、hT1およびhC2に係る定義は上記の通りであるが、より具体的には、下記実施例に記載の方法によって測定された値を採用するものとする。
(トナーのDSCでの1回目の昇温時の吸熱ピークのうち、吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上となる吸熱ピーク(1st)の数)
本発明のトナーでは、トナーのDSCでの1回目の昇温時の吸熱ピークのうち、当該吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上となる吸熱ピークが1つであることを特徴とする。上記吸熱ピークの数は定着中に起こる吸熱反応がいくつあるかを示しており、トナー中の結晶性材料(結晶性樹脂及び離型剤)が定着時にほぼ同時に融解した場合には、上記吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上の吸熱ピークが1つ現れる。この吸熱ピークが2つ以上(1+Sを含む)の場合には定着時に吸熱反応が異なる温度で2回以上起こっていることを示す。ここで、トナーの吸熱ピークが1+Sであるとは、吸熱ピークが1つ検出され、吸熱波形にショルダーが存在する場合を指す(図1参照)。この場合も、定着時に吸熱反応が異なる温度で2回、即ち、吸熱ピークで1回とショルダー部で1回の合計2回、起こっているため、本発明の要件を満足しないものである。上記吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上の吸熱ピークが1つである本発明のトナーでは、結晶性材料である離型剤(W)および結晶性樹脂(C)がほぼ同時に融解することで、定着性(低温定着性、定着分離性)が効果的に発揮される点で優れている。
(上記式(1)の関係を満足する、DSCでの1回目の昇温時におけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1)
本発明のトナーでは、上記式(1)に示される、DSCでの1回目の昇温時におけるトナーの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)の半値幅hT1の値が1.2℃以上5℃以下であることを特徴とする。吸熱反応のシャープさを示すのが上記半値幅hT1である。よって、DSCでの1回目の昇温時におけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1が低い方が低温定着性の立ち上がりがよいことから、当該半値幅hT1の値は5以下であり、好ましくは3.5℃以下であり、より好ましくは3.0℃以下であり、更に好ましくは2.5℃以下である。一方、結晶性樹脂(C)の結晶化度が高くなりすぎると離型剤(W)と結晶性樹脂(C)との溶け出しが不均一になるため好ましくない。かかる観点から、DSCでの1回目の昇温時におけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1が1.2℃以上になるような結晶化度においては、離型剤(W)と結晶性樹脂(C)との溶け出しがほぼ同時に起こることから、定着性(低温定着性、定着分離性)が効果的に発揮される点で優れている。
上記吸熱ピークの半値幅hT1が上記式(1)の関係を満足する上で、結晶性樹脂(C)は、ジカルボン酸および多価アルコールに由来する構成単位を含む結晶性ポリエステル樹脂(ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応生成物からなる結晶性ポリエステル樹脂)(ここでは、当該結晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド樹脂を含む)が好ましい。これは、ジカルボン酸および多価アルコールに由来する構成単位に含む結晶性ポリエステル樹脂は、上記吸熱ピークの半値幅(上記式(1)等)の関係を満足するように制御し易く、当該結晶性樹脂(C)と離型剤(W)とがほぼ同時に融解し、低温定着性を確保できるためである。
(上記式(1)の関係を満足する、DSCでの結晶性樹脂の2回目の昇温での吸熱ピークの半値幅hC2に対する1回目の昇温時のおけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1の比(hT1/hC2))
本発明のトナーでは、上記式(2)に示されるDSCでの結晶性樹脂の2回目の昇温での吸熱ピークの半値幅hC2に対する1回目の昇温時のおけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1の比(hT1/hC2)の値が0.35以上1.75以下であることを特徴とする。複数の結晶性材料(離型剤(W)、結晶性樹脂(C)等)が含有されるトナーを加熱したときの各結晶性材料の融解においては、その分子量、結晶化度、構造等が融解する順番に影響を与えると考えられる。DSCにおいて、上記半値幅の比(hT1/hC2)が0.35未満となる場合、トナー中の結晶性材料である結晶性樹脂(C)の結晶化度が高いときには、離型剤(W)と結晶性樹脂(C)との融解がほぼ同時に起こらず、低温定着性を悪化させる。また上記半値幅の比(hT1/hC2)が1.75を超える場合、トナー中の結晶性材料である結晶性樹脂(C)の結晶化度が低く、シャープメルト性が低下し、高速出力に悪影響を及ぼす。さらに定着分離性や耐熱保管性が低下する場合もある。以上の観点から、上記半値幅の比(hT1/hC2)の値は、好ましくは0.50以上1.70以下であり、より好ましくは0.70以上1.55以下である。
(DSCでの、1回目の昇温時の吸熱ピークの吸熱量(ΔH)、該吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上の吸熱ピークの数、該吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)の半値幅hT1および結晶性樹脂の2回目の昇温での吸熱ピークのhC2の測定方法)
トナーの示差走査熱量測定(DSC)による上記吸熱量(ΔH)、吸熱ピークの数、半値幅hT1およびhC2は、具体的に、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)として、例えば「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)などを用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程(1回目の昇温時)、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程(2回目の昇温時)をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定されるものである。
上記測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程(1回目の昇温時)におけるトナーの吸熱ピークから単位重量当たりの熱量を算出することによって吸熱量ΔH(J/g)が得られる。
第1昇温過程(1回目の昇温時)における吸熱ピーク(1st)のうち、上記算出により得られた吸熱量ΔHが0.5J/g以上となる吸熱ピークの数が求められる。ここで、第1昇温過程(1回目の昇温時)のおけるトナーの吸熱ピーク(吸熱量ΔHが0.5J/g以上)として、1つの吸熱ピーク(吸熱波形)が検出された場合、この吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hT1が得られる。また、第2昇温過程(2回目の昇温)での結晶性樹脂に由来の吸熱ピークから、当該吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hC2が得られる。ここで、1回目の昇温時のトナーの吸熱ピークのベースライン、および2回目の昇温時の結晶性樹脂に由来の吸熱ピークのベースラインは、ショルダーのベースラインの考え方と同様、チャートの変曲点(ピークのはじまりと終わり)を結んだものが吸熱ピークのベースラインである。なお、トナーの示差走査熱量測定(DSC)による上記吸熱量(ΔH)、吸熱ピークの数、半値幅hT1およびhC2は、実施例に記載の方法で測定することができる。
測定手順としては、トナー1.0mg〜3.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。またリファレンスとしては空のアルミニウム製パンを使用する。
このような示差走査熱量計(DSC)を用いた測定によって得られるDSC曲線において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークとは、離型剤に由来の吸熱ピークを除いた結晶性樹脂のみに由来する吸熱ピークによるものであり、吸熱ピークとベースラインとで区切られた吸熱波形として示されるものである。また、このような示差走査熱量計(DSC)を用いた測定によって得られるDSC曲線において、トナーの吸熱ピークに基づく吸熱量ΔH(J/g)とは、トナーの吸熱ピークによるものであり、吸熱ピークとベースラインとで区切られた吸熱波形の面積により算出されたエネルギー量ΔH(J/g)として示されるものである。
以下、本発明の電子写真用トナーにつき、結着樹脂である結晶性樹脂(C)、非晶性樹脂(A)、更に内添剤である離型剤(W)および着色剤(P)を含む各構成成分につき、説明する。
<結着樹脂>
本発明に係るトナーを構成する結着樹脂は、結晶性樹脂(C)と、非晶性樹脂(A)とを含む。得られるトナーが、上記DSCでのΔH=0.5J/g以上の吸熱ピーク(1st)が1つであり、かつ上記式(1)〜(2)の関係を満たす限り、結着樹脂を構成する結晶性樹脂および非晶性樹脂の種類、含有比等は特に制限されない。
上記吸熱ピークが1つであり、かつ上記式(1)〜(2)の物性を満たすための結着樹脂が得られやすいという観点から、結晶性樹脂の含有量は、トナー全量(100質量%とする)に対して、2質量%以上20質量%以下であると好ましい。結晶性樹脂が溶融し周囲の樹脂とともに軟化することで紙への定着が起こるが、結晶性樹脂は融解に熱量を必要とする。結晶性樹脂は融点付近で瞬時に融解が起こり、トナーが素早く軟化(=シャープメルト)する。よって、結晶性樹脂の含有量が2質量%以上の場合には、トナーのシャープメルト性に優れ、低温定着性が改善(向上)する点で好ましい。一方、結晶性樹脂の含有量が20質量%以下の場合には、結晶性樹脂を溶解するのに必要な熱量が過剰になることもなく、低温定着性、高速出力を改善(向上)し得る点で好ましい。さらに、低温定着性の観点から、上記結晶性樹脂の含有量は、トナー全量に対して、6質量%以上16質量%以下であるとより好ましい。なお、結晶性樹脂として2種以上の樹脂を含む場合は、これらの合計量が、トナー全量に対して、上記含有量の範囲内であると好ましい。なお、結晶性樹脂には、後述するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)も含まれる。よって、結晶性樹脂の含有量を算出する場合には、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)全量が結晶性樹脂の対象となるものとする。
一方、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(A)の含有量も特に制限されるものではないが、画像強度の観点から、トナー全量(100質量%とする)に対して、20〜99質量%であると好ましい。さらに非晶性樹脂の含有量は、トナー全量に対して30〜95質量%であるとより好ましく、40〜90質量%であると特に好ましい。なお、非晶性樹脂として2種以上の樹脂を含む場合は、これらの合計量が、トナー全量に対して、上記含有量の範囲内であると好ましい。なお、実施例に示すように、離型剤を含有する非晶性樹脂(微粒子)を用いた場合でも、離型剤を含有する非晶性樹脂中の離型剤は、トナーを構成する離型剤(W)の含有量に含めるものとする。離型剤を含有する非晶性樹脂中の非晶性樹脂は、トナーを構成する非晶性樹脂(A)の含有量に含まれるものである。
また、前記非晶性樹脂(A)は、ビニル重合セグメントを含む樹脂(ビニル重合性樹脂S)を含有することが好ましい。非晶性樹脂(A)がビニル重合性樹脂Sを含むことで、結晶性樹脂(C)の結晶性を制御することができる点で優れている。非晶性樹脂(A)が、ビニル重合性樹脂(S)を含む場合、トナー中の前記ビニル重合性樹脂(S)の含有量は、トナー全量に対して、3質量%以上90質量%以下であるのが好ましい。トナー製造時にトナー中の結着樹脂が周囲の構成材料と相互作用し、相溶したり結晶化が妨げられる懸念がある。しかし組成や分子構造の異なる結晶性樹脂と非晶性樹脂との組み合わせでは相溶や結晶化抑制は起こりづらく、ビニル重合性樹脂(S)の添加によって結晶性樹脂の結晶化度を制御することができる。離型剤も結晶性材料であるが、一般的には低分子量のものが汎用的であり、その結晶化度は周囲の環境に影響されづらい。具体的にはDSCにおけるΔHや融点の1st(1回目の昇温時;第1昇温過程)と2nd(2回目の昇温時;第2昇温過程)での変化によって、結晶性樹脂(および離型剤)の結晶化度を確認することができる。結晶性樹脂と組成の異なる樹脂の中で、画像の強度や溶融粘度の観点でビニル重合性樹脂が好適である。さらにその含有量が上記範囲内(3質量%以上90質量%以下)のときに好ましい結晶性を確保することができる点で優れている。以上の点から、トナー中のビニル重合性樹脂(S)の含有量は、トナー全量に対して、より好ましくは40質量%以上75質量%以下である。
さらに、前記非晶性樹脂(A)が、非晶性ポリエステル樹脂を含む場合、トナー中の前記非晶性ポリエステルの含有量が、トナー全量に対して、(0質量%を超えて)40質量%以下であるのが好ましい。これは、トナー中で結晶性樹脂、非晶性樹脂、離型剤がドメイン、層を形成するが、結晶性樹脂の結晶化度には周囲の樹脂組成と各々の比率が影響を及ぼす。そこで、非晶性樹脂(A)が、非晶性ポリエステル樹脂を含み、かつトナー中の非晶性ポリエステル樹脂の含有量が40質量%以下である場合、結晶性樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との親和性が高まるのを抑制し、結晶性樹脂の結晶化度が低下するのを抑制し得るため、低温定着性の改善(向上)が図られる点で好ましい。かかる低温定着性の改善の観点から、トナー中の非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー全量に対して、5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
トナーからの結晶性樹脂および非晶性樹脂の単離・抽出方法としては、例えば特許第3869968号等に記載の方法(ソックスレー抽出器を用いた方法)を採用することができ、これにより含有割合を特定することができる。
各樹脂の含有量を上記の範囲とすることにより、結着樹脂中、結晶性樹脂は分散相(ドメイン)を形成し、非晶性樹脂は連続相(マトリックス)を形成する相分離構造(海島構造)を形成しやすくなる。かような構造を有する結着樹脂において、結晶性樹脂は、非晶性樹脂中に取り込まれやすくなることから、トナー表面への露出が抑制される。その結果、加熱定着時にトナー粒子表面の樹脂の可塑化が生じにくくなり、耐ホットオフセット性が良好になる。
また、結晶性樹脂がトナー表面に露出することに起因するトナーの帯電性の悪化を抑制することができ、帯電均一性もまた向上させる効果があると推測される。
なお、結着樹脂が上記のような特定の相分離構造を有していることは、例えば、トナーを必要に応じて四酸化オスミウム等で着色して、走査型電子顕微鏡(SEM)観察や、透過型電子顕微鏡(TEM)観察などを行うことによって確認できる。
また、結着樹脂中に含まれる樹脂は、上記結晶性樹脂および非晶性樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、上記DSCでのΔH=0.5J/g以上の吸熱ピーク(1st)が1つであり、かつ上記式(1)〜(2)の関係を満たすための結着樹脂を得やすいという理由から、結着樹脂は、結晶性樹脂および非晶性樹脂からなる形態であると好ましい。
(結晶性樹脂(C))
トナーを構成する結晶性樹脂(C)については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂が用いられうるが、なかでも結晶性樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。以下、「結晶性樹脂、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂」であることを、単に「結晶性(ポリエステル)樹脂」とも記す。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性樹脂として好適な結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。同様に、結晶性樹脂は、トナーのDSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいうものである。本発明においては、結晶性(ポリエステル)樹脂は、上記の熱的特性を示す樹脂であれば、未変性ポリエステル樹脂でもよく、変性ポリエステル樹脂でもよく、ハイブリッドポリエステル樹脂であってもよい。かかるポリエステル樹脂は、結晶性の高い構造をとりやすい点で優れている。
結晶性(ポリエステル)樹脂の融点Tmcは特に制限されないが、55℃≦Tmc≦90℃であることが好ましい。これは、結晶性(ポリエステル)樹脂の融点Tmcが上記範囲であることにより、十分な低温定着性が得られるためである。さらに出力速度の高速化、十分な低温定着性を確保する観点から、結晶性(ポリエステル)樹脂の融点Tmcが65℃≦Tmc≦85℃であるのがより好ましく、70℃≦Tmc≦80℃であるのがさらに好ましい。なお、結晶性(ポリエステル)樹脂の融点mcは、樹脂組成によって制御することができる。
さらに、結晶性樹脂(C)の融点Tmc(℃)とトナーを構成する離型剤(W)の融点Tmw(℃)とが式(A);|Tmc−Tmw|≦10(℃)の関係を満たすことが好ましい。これは、結晶性樹脂の融点Tmcと離型剤の融点Tmwとが離れすぎていると融解がほぼ同時に起こらないため、式(A);−10℃≦(Tmc−Tmw)≦10℃の関係を満たすことが好ましいといえる。上記観点から、結晶性樹脂の融点Tmcと離型剤の融点Tmwとが、式;−7℃≦(Tmc−Tmw)≦7℃の関係を満たすことがより好ましい。
また、結晶性樹脂(C)の融点Tmc(℃)と離型剤(W)の融点Tmw(℃)とが式(A’);0℃≦(Tmc−Tmw)≦10℃の関係を満たすことが、以下の観点から、より好ましいといえる。すなわち、結晶性樹脂(C)の融点Tmcが離型剤(W)の融点Tmwより高いと、トナーの高温環境下での保管性(耐熱保管性)に優れる点でより好ましいものである。結晶性樹脂(C)の融点Tmcと離型剤(W)の融点Tmwとが上記式(A)の範囲であれば一般的な環境下での保管性は確保することができるが、結晶性樹脂(C)は周囲の構成材料との相互作用によって結晶化度が下がると融点Tmcが降下するためトナーの耐熱性が不利になる。そのため、結晶性樹脂(C)の融点Tmcが高い方が耐熱性には有利である点で優れている。
また、結晶性樹脂(C)の融点Tmc(℃)と離型剤(W)の融点Tmw(℃)とが式(A”);0℃>(Tmc−Tmw)≧−10℃の関係を満たす場合には、以下の観点から、より好ましいといえる。すなわち、離型剤(W)の融点Tmwが結晶性樹脂(C)の融点Tmcより高いとき、もしくはTmwとTmcが同じであると光沢がより均一な画像が得られ好ましいものである。定着部の温度は出力速度や紙種によって適宜設定されるが、出力数や印字率によって高温側にオーバーシュートすることがある。離型剤(W)は定着の際に溶融して画像と定着部との間に存在することで分離効果が発揮される。溶融粘度が低すぎると定着部側へ離型剤(W)が移行し、それに伴って画像表面に荒れが発生しやすくなり、画像の光沢が変わる懸念がある。ゆえに、離型剤(W)の融点Tmwが高い方が高温で定着された場合でも溶融粘度の過度な低下を抑制することができ、光沢の再現性が向上する点で優れている(有利である)。
前記結晶性樹脂(C)は、ジカルボン酸成分(多価カルボン酸成分の価数2)および多価アルコール成分(好ましくは価数2〜3)を構成単位に含む結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。これは、結晶性樹脂(C)の結晶化度と比較した場合、ジカルボン酸成分および多価アルコール成分を構成単位に含む結晶性ポリエステル樹脂において、上記式(1)、(更には式(2))の関係を十分に満足できることから、結晶性樹脂(C)と離型剤(W)とがほぼ同時に融解し、低温定着性を確保できる点で優れているためである。具体的には、結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、価数がそれぞれ2である場合、すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、一種類のものに限定されるものではなく、二種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、本発明の効果が得られやすいことから、炭素数6〜14の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸であるとより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなども用いうる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールネオペンチルグリコール、などが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数3〜8の脂肪族ジオールがより好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、1,4−ブテンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。また、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られると共に最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた耐熱保管性を確実に両立して得るという観点から、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜30,000であると特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜20,000であると特に好ましい。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、2.0/1.0〜1.0/2.0であると好ましく、1.5/1.0〜1.0/1.5であるとより好ましく、1.2/1.0〜1.0/1.2であると特に好ましい。上記範囲とすることにより、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)、(2)の関係を満たすように調整することが容易となる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより製造することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(OBu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂))
本発明のトナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとが化学的に結合した樹脂(本明細書中、「ハイブリッド樹脂」または「ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂」とも称する場合がある)であることが好ましい。このような形態の樹脂を用いることにより、結着樹脂において、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とがなじみやすくなり、相溶性が高くなる結果、トナーの低温定着性が良好に維持される。また、このようなハイブリッド樹脂を用いることにより、上記の結着樹脂を相分離構造としたことによる効果も得られやすくなる。相分離構造をもつことから、トナー溶融時において結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とが相溶しても、結晶性ポリエステル樹脂が過度にトナー表面へ露出することがなく、ホットオフセット性が良好となる。
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
ハイブリッド樹脂の結合形態は、特に限定されない。例えば、ハイブリッド樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントを有するブロック共重合した形態(ブロック共重合体)であってもよいし、結晶性ポリエステル重合セグメントによる側鎖が、非晶性重合セグメントによる主鎖に結合した形態(グラフト共重合体)であってもよいし、また、その逆であってもよい。なかでも、ハイブリッド樹脂は、主鎖が非晶性重合セグメントであり、側鎖が結晶性ポリエステル重合セグメントであるグラフト共重合体であると好ましい。すなわち、ハイブリッド樹脂は、非晶性重合セグメントを幹とし、また、結晶性ポリエステル重合セグメントを枝とした櫛形構造をとるグラフト共重合体であると好ましい。
このようなグラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が一方向に揃いやすくなると共に、結晶性ポリエステル重合セグメントが密に配向しやすくなるため、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。その結果、トナー中の結着樹脂の結晶性が向上する。したがって、本発明に係るトナーは、優れた低温定着性を示す。また、上記の上記形態のグラフト共重合体とすることにより、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)(更には式(2))の関係を満たすように制御しやすくなる。
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた耐熱保管性を確実に両立して得るという観点から、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜30,000であると特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜20,000であると特に好ましい。
なお、結着樹脂に含まれるハイブリッド樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシル基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント中であってもよい。
≪結晶性ポリエステル重合セグメント≫
結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記した結晶性ポリエステル樹脂と同様であり、同様の多価カルボン酸と、多価アルコールとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、そのトナーは、本発明でいう結晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド樹脂を含有すると言える。
結晶性ポリエステル重合セグメントを構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分については、上記の結晶性ポリエステル樹脂と同様であるため、説明を省略する。
結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量(100質量%とする)に対して65質量%を超えて95質量%以下であると好ましい。さらに、上記含有量は、70質量%を超えて95質量%以下であるとより好ましく、80質量%を超えて95質量%以下であると特に好ましい。
上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができ、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)(更には式(2))の関係を満たすための結着樹脂が得られやすくなる。トナーのDSCでの吸熱ピークや式(1)(更には式(2))は、結着樹脂中におけるハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との含有比率や、結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントの化学構造等に依存するものであるが、特に、ハイブリッド樹脂中の結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量を上記範囲内とすることにより、上記式(1)(更には式(2))の関係を満たすための結着樹脂を容易に得ることができる。
なお、ハイブリッド樹脂中の各セグメントの構成成分および含有割合は、たとえばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定により特定することができる。
さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記多価カルボン酸および多価アルコールの他、非晶性重合セグメントに化学的に結合するための化合物が重縮合されていてもよい。以下で詳説するように、非晶性重合セグメントは、ビニル重合セグメントであると好ましいが、このような重合セグメントに対して付加重合する化合物を用いると好ましい。したがって、結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記多価カルボン酸および多価アルコールに対して重縮合可能であり、かつ、不飽和結合(好ましくは二重結合)を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。かような化合物としては、例えば、メチレンコハク酸、アクリル酸等の二重結合を有する多価カルボン酸;二重結合を有する多価アルコールが挙げられる。
結晶性ポリエステル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、結晶性ポリエステル重合セグメントの全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。かような化合物としては、例えば、メチレンコハク酸等の二重結合を有する多価カルボン酸;二重結合を有する多価アルコールが挙げられる。
なお、ハイブリッド樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシル基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入個所は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント中であってもよい。なお、ハイブリッド化されていない結晶性ポリエステル樹脂に上記のような置換基を導入したものは、本発明のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には含まれない。
≪ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント≫
ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント(なお、本明細書中、単に「非晶性重合セグメント」とも称する場合がある)は、結着樹脂を構成する非晶性樹脂とハイブリッド樹脂との親和性の向上に寄与する。非晶性重合セグメントが存在することで、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性が向上し、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶性を制御しやすくなる。
非晶性重合セグメントは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド樹脂中(さらには、トナー中)に非晶性重合セグメントを含有することは、たとえばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性重合セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。このとき、当該セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃であることが好ましく、特に40〜65℃であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg1)は、実施例に記載の方法で測定することができる。
非晶性重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂であって、この樹脂が上記のような非晶性重合セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性重合セグメントを有するハイブリッド樹脂に該当する。
非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量(100質量%とする)に対して、5質量%以上35質量%未満であると好ましい。さらに、上記含有量は、10質量%以上30質量%未満であるとより好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができ、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)(更には式(2))の関係を満たすための結着樹脂が得られやすくなる。なお、トナーのDSCでの吸熱ピークや式(1)(更には式(2))は、結着樹脂中における結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)と非晶性樹脂との含有比率や、結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントの化学構造等に依存するものであるが、ハイブリッド樹脂中の非晶性重合セグメントの含有量比を上記範囲内とすることにより、上記式(1)(更には式(2))を満たすための結着樹脂を容易に得ることができる。
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(すなわち、結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)以外の樹脂)と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中にさらに取り込まれやすくなり、相溶性を制御しやすくなるほか、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)の数や上記式(1)(更には式(2))の関係を制御しやくなる。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニルおよびその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレートおよびメタクリル酸によって形成される樹脂(または重合セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。
非晶性重合セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル重合セグメント、ウレタン重合セグメント、ウレア重合セグメントなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル重合セグメントが特に好ましい。さらに本形態では、上記理由の他に、結晶性樹脂の構造、構成モノマーは、結晶性樹脂の結晶化度や融解熱量に影響を与えることに鑑み、結晶化度が定着に好ましい範囲に制御し易いとの理由からも、ビニル重合セグメントが特に好ましい。即ち、結晶性樹脂は、ビニル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるハイブリッド樹脂が好ましい。
ビニル重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン−アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン−酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル重合セグメントのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル重合セグメント(スチレン−アクリル重合セグメント)が好ましい。したがって、以下では、非晶性重合セグメントとしてのスチレンアクリル重合セグメントについて説明する。
スチレンアクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレンアクリル重合セグメントの形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレンアクリル重合セグメントの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」を総称したもので、たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」を総称したものである。
これらのアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
非晶性重合セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性重合セグメントの全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、非晶性重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性重合セグメントの全量に対し、10〜80質量%であると好ましい。このような範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
さらに、非晶性重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物もまた付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシル基[−OH]または多価カルボン酸由来のカルボキシル基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、非晶性重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシル基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
かような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
非晶性重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、非晶性重合セグメントの全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。
スチレンアクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等が挙げられる。
≪ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)の製造方法≫
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(a)非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、先ず、上述した非晶性重合セグメントを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を反応させて非晶性重合セグメントを形成する。次に、非晶性重合セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させると共に、非晶性重合セグメントに対し、多価カルボン酸または多価アルコールを反応させることにより、ハイブリッド樹脂が形成される。
上記(a)の方法において、結晶性ポリエステル重合セグメントまたは非晶性重合セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性重合セグメントの形成時、非晶性重合セグメントを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル重合セグメントに残存するカルボキシ基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]と反応可能な部位および非晶性重合セグメントと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル重合セグメント中のカルボキシ基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]と反応することにより、結晶性ポリエステル重合セグメントは非晶性重合セグメントと化学的に結合することができる。
もしくは、結晶性ポリエステル重合セグメントの形成時、多価アルコールまたは多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性重合セグメントと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性重合セグメントに結晶性ポリエステル重合セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(b)結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、先ず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する。また、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する反応系とは別に、上述した非晶性重合セグメントを構成する単量体を重合させて非晶性重合セグメントを形成する。このとき、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
上記(a)および(b)の形成方法の中でも、(a)の方法は非晶性重合セグメントに結晶性ポリエステル重合セグメントをグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を形成し易いことや生産工程を簡素化できるため好ましい。加えて、(a)の方法は、非晶性重合セグメントを予め形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
(非晶性樹脂)
トナーの構成成分(結着樹脂)の1つである非晶性樹脂は、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂が用いられうる。
非晶性樹脂(A)は、上記結晶性樹脂(ハイブリッド樹脂)(C)と共に結着樹脂を構成する。非晶性樹脂は、特に限定されるものではないが、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。なお、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg1としたとき、上記非晶性樹脂のTg1が、35〜80℃であることが好ましく、特に45〜65℃であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg1)は、実施例に記載の方法で測定することができる。
非晶性樹脂は、可塑性を制御するという観点から、重量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000未満であると好ましく、10,000〜80,000であるとより好ましく、15,000〜60,000であると特に好ましい。
非晶性樹脂は、上記≪ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント≫の項に記載のセグメントを構成する樹脂成分を含んでいると好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などであると好ましく、ビニル樹脂(ビニル重合セグメントを含む樹脂;ビニル重合性樹脂)であると特に好ましい。非晶性樹脂がビニル重合セグメントを含む樹脂(ビニル重合性樹脂S)を含むことで、結晶性樹脂の結晶性を制御することができる。非晶性樹脂(A)がビニル重合セグメントを含む樹脂(ビニル重合性樹脂S)を含むことで、結晶性樹脂(C)の結晶性を制御することができる点で優れている。
ビニル樹脂は、特に結晶性ポリエステル樹脂としてのハイブリッド樹脂の非晶性重合セグメントが、ビニル重合セグメントである場合において、ハイブリッド樹脂との相溶性を制御しやすく、また、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)の数や上記式(1)(更には式(2))の関係を制御しやすいという点で好適である。したがって、以下では、ビニル樹脂について説明する。
≪ビニル樹脂≫
非晶性樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂のなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル樹脂(スチレンアクリル樹脂)が好ましい。
スチレンアクリル樹脂を構成する単量体としては、上記≪ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント≫の項において、スチレンアクリル重合セグメントを構成する単量体として挙げた化合物と同様のものが使用できる。
よって、詳細な説明を省略するが、スチレン単量体としてはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン;(メタ)アクリル酸エステル単量体としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを用いると好ましい。これらスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、他の単量体が重合されていてもよく、その例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレンアクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、スチレンアクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。このような範囲とすることにより、非晶性樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
スチレンアクリル樹脂中の上記他の単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、0.5〜30質量%であると好ましい。
スチレンアクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記≪ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント≫の項において説明した、スチレンアクリル重合セグメントの形成方法と同様の方法によって製造することができる。非晶性樹脂がスチレンアクリル樹脂である場合には、後述の連鎖移動剤の添加量等によって、重量平均分子量を制御することができる。
(結着樹脂の形態)
本発明のトナーに含まれる結着樹脂は、結晶性樹脂(ハイブリッド樹脂を含む)(C)と、非晶性樹脂(A)とを含んでいれば、その形態(樹脂粒子の形態)は如何なるものであってもよい。
たとえば、結着樹脂により構成される樹脂粒子(結着樹脂粒子)は、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コア−シェル構造(コア粒子の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。
<その他の成分>
本発明のトナー中には、上記結晶性樹脂(ハイブリッド樹脂を含む)(C)及び非晶性樹脂(A)の結着樹脂に加え、下記の離型剤(W)及び着色剤(P)の内添剤を必須成分とし、更に必要に応じて、荷電制御剤などの他の内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。
(離型剤(ワックス)(W))
トナーを構成する離型剤(W)としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、脂肪酸ポリグリセリンエステルなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の融点は、好ましくは40〜160℃であり、より好ましくは50〜120℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保管性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中の離型剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
<着色剤(P)>
トナーを構成しうる着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
また、オレンジまたはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
さらに、グリーンまたはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは二つ以上を選択併用することも可能である。
着色剤の添加量はトナー全体に対して好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。かような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒径で、10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩など、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量%に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%となる量とされる。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
<外添剤>
トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、トナー粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。これらの無機微粒子は、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の疎水化処理有り又は無しの無機微粒子を用いるのが好ましい。
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜10.0質量部であることが好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
[静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう)]
本発明のトナーの平均粒径、平均円形度に関しては、トナー粒子の平均粒径、平均円形度を用いるものとする。製造過程では、実施例に示すように、トナー粒子を製造後に、その平均粒径、平均円形度を測定すればよい。またトナー(製品)については、実施例で測定したトナー粒子の平均粒径、平均円形度と、外添剤(滑剤を除く)を加えたトナーの平均粒径、平均円形度(例えば、平均粒径は、μmの小数点以下2桁目を四捨五入した値、平均円形度は、小数点以下4桁目を四捨五入した値)が、同じ値を示すことから、いずれを用いてもよく、外添剤を除去することなく、そのまま測定してもよい。すなわち、本発明のトナーの平均粒径としては、トナー粒子の体積平均粒径が3.0〜8.0μm、好ましくは4.0〜7.5μmである。上記の範囲であることにより、定着時において飛翔して加熱部材に付着し定着オフセットを発生させる付着力の大きいトナー粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。また、トナー流動性も確保できる。
トナーの平均粒径(詳しくはトナー粒子の体積平均粒径)は、トナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには結着樹脂の組成によって制御することができる。
本発明の静電潜像現像用トナーは、転写効率の向上の観点から、下記数式1で示されるトナー粒子の平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。
なお、トナー粒子の平均円形度は、例えば、平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。粒子投影像は、トナー粒子を指す。円相当径は、トナー粒子についての円相当径を指す。
<本発明のトナーの製造方法>
本発明のトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性、コア−シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
(乳化凝集法)
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の微粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、着色剤の微粒子などのトナー粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
ここで、樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂微粒子に内添剤(例えば、離型剤、着色剤等)を含有させる場合には、ミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子が内添剤(例えば、離型剤、着色剤等)を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤(例えば、離型剤、着色剤等)のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を、樹脂微粒子を凝集させる際に、共に凝集させてもよい。
また、乳化凝集法によってはコア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤とを凝集(、融着)させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル部用の結着樹脂微粒子を添加して、コア粒子表面にシェル部用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル部を形成することにより得ることができる。
乳化凝集法によりトナーを製造する場合、好ましい実施形態によるトナーの製造方法は、上記において説明した静電潜像現像用トナーの製造方法であって、水系媒体に結晶性(ポリエステル)樹脂と、非晶性樹脂とを分散させ、分散液を調製する工程と、前記分散液中で結晶性(ポリエステル)樹脂と、前記非晶性樹脂とを凝集および融着させる工程と、を含む、製造方法である。
より好ましい実施形態によるトナーの製造方法は、水系媒体に結晶性(ポリエステル)樹脂の微粒子と非晶性樹脂の微粒子とを水系媒体に分散させて分散液を調製する工程(以下、「分散液調製工程」とも称する)(a)と、得られた結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液および非晶性樹脂微粒子分散液を混合し、上記樹脂微粒子を凝集・融着させる工程(以下、「凝集・融着工程」とも称する)(b)と、を含む。
以下、各工程(a)および(b)、ならびにこれらの工程以外に任意で行われる各工程(c)〜(e)について詳述する。
(a)分散液調製工程
工程(a)は、結晶性(ポリエステル)樹脂の微粒子と、非晶性樹脂の微粒子とを水系媒体に分散させる工程を含み、また、必要に応じて、着色剤分散液調製工程や離型剤微粒子分散液調製工程などを含む。
結晶性(ポリエステル)樹脂の微粒子と、非晶性樹脂の微粒子とを水系媒体に分散させる工程は、結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液を調製する工程と、非晶性樹脂微粒子分散液を調製する工程とを先に行い、これらの分散液を混合することによって行われると好ましい。
以下、各分散液を調製する工程を説明する。
(a−1)結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液を調製する工程
結晶性(ポリエステル)樹脂(好ましくはハイブリッド樹脂)微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結晶性(ポリエステル)樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
結晶性(ポリエステル)樹脂の製造方法は上記記載したとおりであるため、詳細を割愛するが、得られるトナーが、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)〜(2)の関係を満たすために、樹脂の組成や質量比を、上記の好ましい形態とするとよい。特に結晶性(ポリエステル)樹脂としてハイブリッド樹脂を用いる場合は、結晶性ポリエステル重合セグメントおよび非晶性重合セグメントの含有比率を、上記の好ましい範囲とするとよい。
結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液は、例えば溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性(ポリエステル)樹脂を酢酸エチルなどの溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う方法などが挙げられる。これらのうち、工程の簡素化という観点からは、前者の方法が好ましい。
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
結晶性(ポリエステル)樹脂はカルボキシル基を含む場合がある。よって、当該カルボキシル基をイオン解離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
さらに、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
このような上記分散処理は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
このように準備された結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液における結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積基準のメジアン径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。
また、結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子分散液における結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子の含有量は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−2)非晶性樹脂微粒子分散液調製工程
非晶性樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
非晶性樹脂の製造方法は上記記載したとおりであるため、詳細を割愛する。
非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、非晶性樹脂を得るための単量体から非晶性樹脂微粒子を形成し、当該非晶性樹脂微粒子の水系分散液を調製する方法(I)や、非晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(II)が挙げられる。これらのうち、工程の簡素化という観点からは、方法(I)が好ましい。よって、以下では、方法(I)について説明する。
本方法においては、まず、非晶性樹脂を得るための単量体を重合開始剤と共に水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。当該水系媒体は上記(a−1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
次に、当該樹脂微粒子が分散している分散液中に、非晶性樹脂を得るためのラジカル重合性単量体および重合開始剤を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性単量体をシード重合する手法を用いることが好ましい。
このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
また、非晶性樹脂微粒子を得るためのシード重合反応系には、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン;n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸;およびスチレンダイマーなどを用いることができる。これらは一種単独であるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
なお、方法(I)では、非晶性樹脂を得るための単量体から非晶性樹脂微粒子を形成する際に、前記単量体とともに離型剤を分散させることにより、非晶性樹脂微粒子中に離型剤を含有させてもよい。また、上記シード重合反応をさらに行い、多段階の重合反応により非晶性樹脂微粒子の分散液を調製してもよい。
以上、シード重合法を例示して説明したが、非晶性樹脂の種類に応じて、乳化重合法、分散重合法を採用してもよい。
上記方法によって準備された非晶性樹脂微粒子分散液における非晶性樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積基準のメジアン径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、非晶性樹脂微粒子分散液における非晶性樹脂微粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−3)着色剤分散液調製工程/離型剤微粒子分散液調製工程
着色剤分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の分散液を調製する工程である。また、離型剤微粒子分散液調製工程は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤微粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記(a−1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
着色剤/離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a−1)において説明したものを用いることができる。
着色剤分散液における着色剤の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。また、離型剤微粒子分散液における離型剤微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、ホットオフセット防止および分離性確保の効果が得られる。
(b)凝集・融着工程
この凝集・融着工程は、水系媒体中で前述の結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子および非晶性樹脂微粒子と、着色剤粒子と、更に必要に応じて離型剤微粒子(離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子を用いる場合には、離型剤微粒子は必要に応じて用いればよい)とを凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させて結着樹脂を得る工程である。
この工程では、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)〜(2)の関係を満たすように、分散液を混合する。ここで、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)、(2)の関係を満たすために、結晶性材料である結晶性(ポリエステル)樹脂および離型剤の含有割合を調節し、上記の好ましい範囲となるように各分散液量を調節すると好適である。この際に、さらに結着樹脂中の結晶性(ポリエステル)樹脂および非晶性樹脂の含有割合も調節するのが好適である。
この工程では、まず、トナーのDSCでの吸熱ピーク(ΔHが0.5J/g以上)が1つであり、上記式(1)、(2)の関係を満たす結晶性材料(結晶性(ポリエステル)樹脂および離型剤)が得られるように、結着樹脂である結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子および非晶性樹脂微粒子と、内添剤である着色剤粒子と離型剤微粒子とを混合し、水系媒体中にこれら粒子を分散させる。ここで、離型剤微粒子は、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子を用いる場合には、必要に応じて用いればよい(以下、同様である)。
次に、アルカリ金属塩や第2族元素を含む塩等を凝集剤として添加した後、結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子および非晶性樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
具体的には、前述の手順で作製した、結着樹脂である結晶性(ポリエステル)樹脂の分散液および非晶性樹脂の分散液と、内添剤である着色剤粒子分散液と離型剤微粒子分散液とを混合し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、結着樹脂である結晶性ポリエステル樹脂微粒子および非晶性樹脂微粒子と、内添剤である着色剤粒子と離型剤微粒子とを凝集させると同時に粒子同士が融着して結着樹脂が形成される。なお、離型剤微粒子分散液は、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液を用いる場合には、必要に応じて用いればよい。そして、凝集した粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
本工程で用いられる凝集剤は、特に制限されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。凝集剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
凝集工程においては、凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が4.5〜7.0μmになるまで保持(熟成)することにより、融着を継続させることが肝要である。また、熟成中の粒子の平均円形度を測定し、好ましくは0.920〜1.000になるまで熟成工程を行うことが好ましい。
上記熟成工程では、トナーが水系媒体に分散している状態で結晶性樹脂の結晶化温度周辺で一定時間保持(熟成)することにより、結晶化を制御することで本発明の半値幅(式(1)、(2)の関係)を満たすように調整することができる。かかる観点から、熟成条件としては、実施例に示すように、(1)フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定でトナー粒子の円形度が0.950に達した時点で、2〜6℃/分の条件で40〜65℃にまで冷却して0.5〜5時間保持(熟成)する方法が挙げられる。その後1〜6℃/分で15〜35℃まで冷却して反応を停止させればよい。或いは(2)0.5〜6℃/分で15〜35℃まで冷却した後に再度1〜3℃/分の条件で昇温して40〜65℃で0.5〜5時間保持でも良い。その後0.5〜6℃/分で15〜35℃まで冷却して反応を停止させればよい。
これにより、粒子の成長(結晶性(ポリエステル)樹脂微粒子、非晶性樹脂微粒子、着色剤粒子、離型剤微粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
(c)冷却工程
この冷却工程は、上記のトナー粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理における冷却速度は、特に制限されないが、0.2〜20℃/分が好ましい。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(d)濾過、洗浄、乾燥工程
濾過工程では、トナー粒子の分散液からトナー粒子を濾別する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
次いで、洗浄工程で洗浄することにより濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜20μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理されたトナー粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、解砕処理を行ってもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(e)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理したトナー粒子表面へ必要に応じて外添剤を添加、混合してトナーを作製する工程である。外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。
<現像剤>
以上のようなトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、または樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、シクロヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、エステル樹脂あるいはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
<定着方法>
本発明のトナーを使用する好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ロール定着方式および固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
<分析・測定方法>
(DSCでの、1回目の昇温時の吸熱ピークの吸熱量(ΔH)、該吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上の吸熱ピークの数、1回目の昇温時のおけるトナーの吸熱ピークの半値幅hT1および結晶性樹脂の2回目の昇温での吸熱ピークのhC2の測定方法)
示差走査熱量測定(DSC)による上記吸熱量(ΔH)、吸熱ピークの数、半値幅hT1およびhC2は、具体的に、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)として、例えば「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)などを用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程(1回目の昇温時)、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程(2回目の昇温時)をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行った。
上記測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程(1回目の昇温時)におけるトナーの吸熱ピークから単位重量当たりの熱量を算出することによって吸熱量ΔH(J/g)を求めた。第1昇温過程(1回目の昇温時)における吸熱ピーク(1st)のうち、上記算出により得られた吸熱量ΔHが0.5J/g以上となる吸熱ピークの数を求める。ここで、第1昇温過程(1回目の昇温時)のおけるトナーの吸熱ピークとして、1つの吸熱ピーク(吸熱波形)が検出された場合、この吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hT1を求めた。また、第2昇温過程(2回目の昇温)での結晶性樹脂に由来の吸熱ピークから、当該吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hC2を求めた。なお、半値幅の求め方は分野を問わず一般的かつ同一であるため、詳細な記載は不要といえるが、一般的な記載は以下のとおりである。半値幅は、ピークの高さの1/2でのピーク幅をいう。また、ベースラインの考え方は、上記した1回目の昇温時のトナーの吸熱ピークのベースライン、および2回目の昇温時の結晶性樹脂に由来の吸熱ピークのベースラインに記載の通りであり、同じである。すなわち、1回目の昇温時のトナーの吸熱ピークのベースライン、および2回目の昇温時の結晶性樹脂に由来の吸熱ピークのベースラインは、ショルダーのベースラインの考え方と同様、チャートの変曲点(ピークのはじまりと終わり)を結んだものが吸熱ピークのベースラインである。
測定手順としては、トナー1.0mg〜3.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットした。またリファレンスとしては空のアルミニウム製パンを使用した。
このような示差走査熱量計(DSC)を用いた測定によって得られるDSC曲線において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークとは、離型剤に由来の吸熱ピークを除いた結晶性樹脂のみに由来する吸熱ピークによるものであり、吸熱ピークとベースラインとで区切られた吸熱波形として示されるものである。また、このような示差走査熱量計(DSC)を用いた測定によって得られるDSC曲線において、トナーの吸熱ピークに基づく吸熱量ΔH(J/g)とは、トナーの吸熱ピークによるものであり、吸熱ピークとベースラインとで区切られた吸熱波形の面積により算出されたエネルギー量ΔH(J/g)として示されるものである。
トナーの吸熱ピークに基づく吸熱量の算出に際して、トナーの吸熱ピークが単独で存在して明確である場合、当該吸熱ピークの吸熱量(ΔH)を算出し、0.5J/g以上であれば、当該吸熱ピークは1つ(下記表4のトナーDSCのピーク数=1)とした。また、この吸熱ピークとベースラインとで区切られた吸熱波形から、その半値幅hT1を求めた。
一方、結晶性樹脂に由来の吸熱ピークと離型剤に由来の吸熱ピークが重なる場合には、下記の方法で吸熱量を算出し、これらの吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hT1を求めた。
(i)複数の吸熱ピーク(吸熱波形)が検出された場合
重なり合う谷部分の極小値よりベースラインに垂線を下ろした直線により、吸熱波形、すなわち、吸熱量を切り分けるものとする。また、切り分けられた2以上の吸熱波形から、各半値幅を求め、これらの合計量を半値幅hT1とした。
(ii)吸熱ピークが1つ検出され、その吸熱ピークの吸熱波形にショルダーが存在する場合
図1は、トナーのDSCでの1回目の昇温時の吸熱ピークのうち、当該吸熱量(ΔH)が0.5J/g以上となる吸熱ピークが1つ検出され、その吸熱ピークの吸熱波形にショルダーが存在してなる場合を模式的に表した図面である。図1に示すように、吸熱波形の二次微分次数から与えられるピークの曲率からショルダーを検出した。曲率がゼロになる点を変曲点として、ショルダーの変曲点a,bを直線で結び、吸熱波形とこのa−bで囲まれた面積をショルダーの吸熱量として算出した。この吸熱ピークとショルダーの吸熱波形から、ピークが分離できないショルダーを有するものに関しては、分離せず1つの吸熱ピークとして扱うものとし、半値幅hT1を求めた。
さらに上記測定において、第2昇温過程(2回目の昇温時)における結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピーク(融解ピーク)に基づく吸熱量ΔH2(J/g)を求め、当該吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形から、その半値幅hC2を求めた。
(各樹脂の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg1))
トナーを構成する各樹脂(結晶性樹脂、離型剤等)の融点(Tmc、Tmw等)および各樹脂(非晶性樹脂等)のガラス転移温度は、各樹脂について示差走査熱量測定を行うことにより求めた。示差走査熱量測定は、上記と同様のものを用いた。測定は、上記測定条件(昇温・冷却条件)と同様にして行った。上記測定は、各樹脂3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行った。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用した。
上記測定において、1回目の昇温時における樹脂の融解ピーク(その半値幅が15℃以内である吸熱ピーク)のトップ温度を、その樹脂の融点(Tm)とした。
また、非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg1)については、ASTM D3418−8に準拠した示差走査熱量測定によってDSC曲線を測定した。上記測定において昇降速度10℃/minを20℃/minに変更した以外は同様に測定し、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線より求められるオンセット温度をガラス転移温度Tg1(℃)とした。
(重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定)
測定対象となる樹脂を、濃度1mg/mLとなるようにTHFに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、得られた溶液をGPC測定用のサンプルとして用いた。GPC測定条件は、下記に示すGPC分析条件を採用し、サンプル中に含まれる樹脂の重量平均分子量を測定した。
−GPC測定条件−
GPC装置として「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー株式会社製)」を用い、カラムとして「TSKgel、SuperHM−H(東ソー株式会社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHFを用いた。分析は、流速0.6mL/min、サンプル注入量10μL、測定温度40℃、RI検出器を用いて行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
(樹脂粒子、着色剤粒子等の平均粒径)
樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径(体積基準のメジアン径)は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)で測定した。
〔合成例1;結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)(C−iv)の作製〕
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、ジカルボン酸としてテトラデカン二酸180質量部、多価アルコールとしてブタンジオール110質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。その後、触媒としてTi(OBu)4を0.3質量部投入し、更に、生成される水を留去しながら反応系の温度を190℃から6時間かけて240℃に上昇させた。更に、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合(重縮合)反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(C−iv)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−iv)は、重量平均分子量(Mw)が17000、融点(mp)が78℃であった。
〔合成例2;結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)(C−vii)の作製〕
合成例1において、ジカルボン酸としてテトラデカン二酸をセバシン酸154質量部、多価アルコールとしてブタンジオールをヘキサンジオール139質量部に変え、脱水縮合反応の反応時間6時間を3時間にした他は、合成例1と同様して、結晶性ポリエステル樹脂(C−vii)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−vii)は、重量平均分子量(Mw)が6000、融点(mp)が64℃であった。
〔合成例3;結晶性樹脂((ビニル変性)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)(C−i)の作製〕
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤からなる原料モノマー組成物を滴下ロートに入れた。
スチレン 40質量部
n−ブチルアクリレート 11質量部
アクリル酸 6質量部
重合開始剤(ジーt−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
さらに、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)(ポリエステル重合セグメント)の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
テトラデカン二酸 359質量部
ブタンジオール 154質量部。
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂の原料モノマー組成物を90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー量に対してごく微量であった。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次に200℃まで冷却した後、減圧下(20KPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)を得た。得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)は、重量平均分子量(Mw)が25000、融点(mp)が76℃であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)は、その全量に対して結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)以外の樹脂(StAc)セグメントを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。
〔合成例4;結晶性樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)(C−ii)の作製〕
合成例3において、テトラデカン二酸をセバシン酸231量部、ブタンジオールを41質量部、加えてドデカンジオール291質量部とした他は、合成例3と同様して、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−ii)を得た。得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−ii)は、重量平均分子量(Mw)が16000、融点(mp)が69℃であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−ii)は、その全量に対して結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)以外の樹脂(StAc)セグメントを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。
〔合成例5;結晶性樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)(C−iii)の作製〕
合成例3において、テトラデカン二酸をドデカン二酸402量部、ブタンジオールをエチレングリコール108質量部に変えた他は、合成例3と同様して、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−iii)を得た。ハイブリッド得られた結晶性ポリエステル樹脂(C−iii)は、重量平均分子量(Mw)が21000、融点(mp)が83℃であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−iii)は、その全量に対して結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)以外の樹脂(StAc)セグメントを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。
〔合成例6;結晶性樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)(C−v)の作製〕
合成例3において、テトラデカン二酸をドデカン二酸277量部、ブタンジオールをノナンジオール311質量部に変えた他は、合成例3と同様して、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−v)を得た。得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−v)は、重量平均分子量(Mw)が22000、融点(mp)が79℃であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−v)は、その全量に対して結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)以外の樹脂(StAc)セグメントを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。
〔合成例7;結晶性樹脂(非ポリエステル系結晶性樹脂)(C−vi)の作製〕
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器(重合器)に、n−ヘキサン200質量部を仕込み、イソプロピルデンジルコニウムジクロリドと修飾メチルアルミノキサンとトリイソブチルアルミニウムの混合ヘキサン溶液22質量部を30分かけて滴下投入した。同時に反応容器(重合器)の別の供給口より、1−ブテン240質量部、プロピレン25質量部を1時間かけて添加し、水素を連続的に供給しながら重合温度53℃、全圧0.8MPaGの条件下で3時間保持し重合反応を完結させることにより、非ポリエステル系結晶性樹脂(C−vi)を得た。得られた非ポリエステル系結晶性樹脂(C−vi)は、重量平均分子量(Mw)が18,200、融点(mp)が82℃であった。
〔製造例1;結晶性樹脂(C−i)の分散液[c1]の作製〕
上記合成例4で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)30質量部を溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水60質量部をイオン交換水で希釈した濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が250nm、固形分量が20質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c1])を調製した。
〔製造例2;結晶性樹脂(C−ii)の分散液[c2]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)をハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−ii)に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が340nm、固形分量が20質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c2])を調製した。
〔製造例3;結晶性樹脂(C−iii)の分散液[c3]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)をハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−iii)に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が170nm、固形分量が20質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c3])を調製した。
〔製造例4;結晶性樹脂(C−iv)の分散液[c4]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)を結晶性ポリエステル樹脂(C−iv)に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が230nm、固形分量が20質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c4])を調製した。
〔製造例5;結晶性樹脂(C−v)の分散液[c5]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)をハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−v)に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が400nm、固形分量が20質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c5])を調製した。
〔製造例6;結晶性樹脂(C−vi)の分散液[c6]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)を非ポリエステル系結晶性樹脂(C−vi)に変え、試薬アンモニア水60質量部を20質量部に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が170nm、固形分量が20質量部の非ポリエステル系結晶性樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c6])を調製した。
〔製造例7;結晶性樹脂(C−vii)の分散液[c7]の作製〕
製造例1において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(C−i)を結晶性ポリエステル樹脂(C−vii)に変えた他は、製造例1と同様して、体積基準のメジアン径が300nm、固形分量が20質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(結晶性樹脂微粒子分散液[c7])を調製した。
〔作製例1;非晶性樹脂A(スチレンアクリル樹脂:StAc系樹脂)微粒子S2の分散液〔s2〕の作製〕
<作製法(ア)>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。その後、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、下記の単量体混合液を1時間かけて滴下した。
(単量体混合液)
スチレン 483g
n−ブチルアクリレート 245g
メタクリル酸 72g。
上記単量体混合液を滴下後、80℃で2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子〔a1〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A1〕を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水2000mlに溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子〔A1〕320gを加えた。
さらに
スチレン 175g
n−ブチルアクリレート 83g
メタクリル酸 23g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 3.9g
離型剤:ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 118g
を80℃で溶解、混合させた単量体溶液を、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX」(エム・テクニック社製)により15分混合分散させて、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。得られた分散液を反応容器に添加した。
次いで、上記反応容器に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子〔b1〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔B1〕を調製した。
(第3段重合)
上記の樹脂微粒子分散液〔B1〕に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、下記の単量体混合液を90分かけて滴下した。
(単量体混合液)
スチレン 298g
n−ブチルアクリレート 120g
メタクリル酸 37g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 7.4g。
上記単量体混合液を滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、これにより、ビニル単量体由来の構成成分を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S2の分散液〔s2〕を調製した。
この分散液〔s2〕について、非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S2の体積基準のメジアン径を測定したところ、208nmであった。また、当該非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S2を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が54,000であった。
〔作製例2;非晶性樹脂A(スチレンアクリル樹脂:StAc系樹脂)微粒子S1の分散液〔s1〕の作製〕
<作製法(イ)>
(第1段重合)
作製例1の(第1段重合)と同様にして、樹脂微粒子〔a1〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A1〕を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水2000mlに溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子〔A1〕325gを加えた。
さらに
スチレン 190g
n−ブチルアクリレート 85g
メタクリル酸 25g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 3.9g
離型剤:ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 140g
を反応容器に添加した他は、作製例1の(第2段重合)と同様にして重合を行い、樹脂微粒子〔b2〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔B2〕を調製した。
(第3段重合)
上記の樹脂微粒子分散液〔B2〕に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、下記の単量体混合液を90分かけて滴下した。
(単量体混合液)
スチレン 310g
n−ブチルアクリレート 120g
メタクリル酸 35g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8g。
上記単量体混合液を滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、これにより、ビニル単量体由来の構成成分を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S1の分散液〔s1〕を調製した。
この分散液〔s1〕について、非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S1の体積基準のメジアン径を測定したところ、215nmであった。また、当該非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S1を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が68,000であった。
〔作製例3;非晶性樹脂A(スチレンアクリル樹脂:StAc系樹脂)微粒子S3の分散液〔s3〕の作製(作製法(ア))〕
作製例1において、(第2段重合)の離型剤のベヘン酸ベヘニル(ドコサン酸ドコシル;融点73℃)を脂肪酸ポリグリセリンエステル(日油株式会社製、品名ニッサンエレクトール、融点68℃)に変えた他は、作製例1と同様して、ビニル単量体由来の構成成分を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S3の分散液〔s3〕を調製した。
この分散液〔s3〕について、非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S3の体積基準のメジアン径を測定したところ、205nmであった。また、当該非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S3を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が49,000であった。
〔作製例4;非晶性樹脂A(スチレンアクリル樹脂:StAc系樹脂)微粒子S4の分散液〔s4〕の作製(作製法(ア))〕
作製例1において、(第2段重合)の離型剤として、ベヘン酸ベヘニル(融点73℃)を石油由来のワックスであるマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製、品名HNP−0190、融点80℃)に変えた他は、作製例1と同様して、ビニル単量体由来の構成成分を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S4の分散液〔s6〕を調製した。
この分散液〔s4〕について、非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S4の体積基準のメジアン径を測定したところ、240nmであった。また、当該非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S4を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が52,000であった。
〔作製例5;非晶性樹脂A(スチレンアクリル樹脂:StAc系樹脂)微粒子S5の分散液〔s5〕の作製(作製法(イ))〕
作製例2において、(第2段重合)の離型剤として、ベヘン酸ベヘニル(融点73℃)を炭化水素系合成ワックスであるフィッシャートロプシュワックス(日本精蝋株式会社製、品名FNP−0090、融点88℃)に変えた他は、作製例2と同様して、ビニル単量体由来の構成成分を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S5の分散液〔s7〕を調製した。
この分散液〔s5〕について、非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S5の体積基準のメジアン径を測定したところ、220nmであった。また、当該非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子S5を構成する樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が54,000であった。
〔作製例6;非晶性樹脂A’(非晶性ポリエステル樹脂:APES系樹脂)微粒子AP1の分散液〔ap1〕の作製〕
テレフタル酸123質量部、トリメリット酸9質量部、フマル酸30質量部、ドデセニルコハク酸無水物120質量部、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物570質量部、ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物93質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド0.2質量部を添加し、窒素ガス気流下において180℃で撹拌しながら8時間重合反応を行った。さらにチタンテトラブトキサイド0.3質量部を添加し、温度を220℃に上げて撹拌しながら6時間重合反応を行った後、反応容器内を10mmHgまで減圧し、減圧下で反応を行うことにより、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(a2)を得た。この非晶性ポリエステル樹脂(a2)のガラス転移点(Tg)は56℃、重量平均分子量(Mw)は17,500であった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、メチルエチルケトン600質量部を投入し、撹拌しながら、上記で作製した非晶性ポリエステル樹脂(a2)600質量部を徐々に投入した後、40℃に加熱し、完全に溶解させ油相を得た。油相に15%NH4OH水溶液10質量部を滴下し、さらにイオン交換水を滴下して転相乳化させた。ついでエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶性ポリエステル樹脂粒子AP1の分散液を得た。この非晶性ポリエステル樹脂による微粒子AP1の体積基準のメジアン径は200nmであった。これにイオン交換水を用いて分散液濃度を調整し、固形分濃度20質量%の非晶性ポリエステル樹脂微粒子AP1の分散液〔ap1〕を調製した。
〔離型剤微粒子分散液の調製〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、ベヘン酸ベヘニル(融点73℃)60質量部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、品名ネオゲンRK)5質量部、イオン交換水240質量部を投入、混合して95℃に加熱し、ホモジナイザを用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザで分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤微粒子W1の分散液〔w1〕を調製した。分散液中の離型剤微粒子W1は、体積平均粒径(体積基準のメジアン径)が280μmであった。
〔着色剤微粒子分散液の調製〕
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)240質量部を徐々に添加した。撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子P1の分散液〔p1〕を調製した。分散液中の着色剤微粒子P1は、体積基準のメジアン径が105nmであった。
(実施例1)
〔トナー〔1〕の作製〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、
・イオン交換水 750質量部
・着色剤微粒子分散液〔p1〕 56質量部(固形分換算)
・離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液〔s1〕 520質量部(固形分換算)
を仕込み、液温を25℃に調製した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調製した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物80質量部をイオン交換水80質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、
・結晶性樹脂微粒子分散液[c1] 56質量部(固形分換算)
・非晶性樹脂微粒子分散液[ap1] 69質量部(固形分換算)
を添加した。なお、本実施例では上記の手順で添加を行ったが、分散液〔s1〕と、着色剤分散液〔p1〕と、塩化マグネシウムと、の添加順番は特には制限されない。さらに、結晶性樹脂微粒子分散液[c1]や非晶性樹脂微粒子分散液[ap1]においては添加順序、および添加時の温度も制限されない。以下、同様である。
さらに系の温度を85℃にまで昇温することによって各樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集反応を開始した。
この凝集反応の開始後、定期的にサンプリングを行い、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて粒子の体積基準のメジアン径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで撹拌を継続しながら凝集させた。
その後、塩化ナトリウム120質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液を添加し、系の温度を80℃として4時間撹拌を継続し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定で円形度が0.950に達した時点で、6℃/分の条件で50℃にまで冷却して2時間保持(熟成)した。その後4℃/分で30℃まで冷却して反応を停止させ、トナー粒子の分散液を得た。なお、本実施例では上記の手順でトナー粒子の分散液の調製を行ったが、トナーが水系媒体に分散している状態で結晶性樹脂の結晶化温度周辺で一定時間保持することにより、結晶化を制御することにより本発明の半値幅(式(1)、(2)の関係)を満たすことができる。上記保持する工程(熟成工程)は6℃/分で30℃まで冷却した後に再度昇温して50℃で2時間保持でも良い。
冷却後のトナー粒子の粒径は5.9μm、円形度は0.950であった。このようにして得られたトナー粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARK III 型式番号60×40」(松本機械(株)製)を用いて固液分離し、ウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が15μS/cmになるまで洗浄と固液分離を繰り返し、その後、「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)を用い、温度40℃および湿度20%RHの気流を吹き付けることによって水分量が0.5質量%となるまで乾燥処理し、24℃に冷却することにより、トナー粒子〔1X〕を得た。
得られたトナー粒子〔1X〕(100質量部)に対して、疎水性シリカ粒子(数平均二次粒径:30μm、数平均一次粒径:50〜200nm)1質量部と疎水性酸化チタン粒子(数平均二次粒径:20μm、数平均一次粒径:50〜200nm)1.2質量部とを添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用い、回転翼の周速24m/sの条件で20分間かけて混合し、さらに400メッシュの篩を通過させることによって外添剤を添加し、トナー〔1〕を得た。
(実施例2〜6、8〜9、比較例1、4〜6)
〔トナー〔2〕〜〔6〕、〔8〕〜〔10〕、〔13〕〜〔15〕の作製〕
実施例1において、結晶性樹脂C、離型剤、非晶性樹脂A,非晶性樹脂A’及び着色剤を下記表1に示す添加量の各分散液を用いた他は、実施例1と同様の作製方法により、トナー〔2〕〜〔6〕、〔8〕〜〔10〕、〔13〕〜〔15〕をそれぞれ得た。
(実施例7)
〔トナー〔7〕の作製〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、
・イオン交換水 750質量部
・着色剤微粒子分散液〔p1〕 56質量部(固形分換算)
・離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液〔s1〕 265質量部(固形分換算)
を仕込み、液温を25℃に調製した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調製した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物80質量部をイオン交換水80質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、
・結晶性樹脂微粒子分散液[c1] 84質量部(固形分換算)
・非晶性樹脂微粒子分散液[ap1] 252質量部(固形分換算)
・離型剤微粒子分散液[w1] 47質量部(固形分換算)
を添加した。その後の作製方法は、実施例1と同様にして、トナー〔7〕を得た。
(比較例2)
〔トナー〔11〕の作製方法〕
実施例1において、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液〔s1〕の添加量を560質量部(固形分換算)に、離型剤微粒子分散液[ap1]の添加量を86質量部(固形分換算)に変え、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液〔s1〕を用いなかった他は、実施例1と同様の作製方法により、トナー〔11〕を得た。
(比較例3)
〔トナー〔12〕の作製〕
実施例7において、結晶性樹脂微粒子分散液[c1]の添加量を56質量部(固形分換算)に、離型剤微粒子分散液[w1]の添加量を77質量部(固形分換算)に、離型剤微粒子分散液[ap1]の添加量を512質量部(固形分換算)に変え、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液〔s1〕を用いなかった他は、実施例7と同様の作製方法により、トナー〔12〕を得た。
なお、実施例1以外の他の実施例および比較例において、トナー粒子の粒径、円形度、トナーの粒径は、いずれも実施例1と同じであった。
表1中の結晶性樹脂Cの欄には、(1)結晶性樹脂微粒子の分散液cの種類(c1〜c7)、(2)結晶性樹脂微粒子の形成に用いられた結晶性樹脂の種類(C−i〜C−vii;表1では、単にi〜viiで表記)、(3)分散液c中の結晶性樹脂の含有量(固形分換算量;質量部)を示している。表2は、上記(2)の結晶性樹脂の種類(樹脂種)のうち、結晶性ポリエステル樹脂のC−i〜C−v、C−viiにつき、その構成単位(単量体成分)であるジカルボン酸と多価アルコールの種類と分子中の炭素数をまとめたものである。
表1中の非晶性樹脂Aの欄には、(1)離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液sの作製法、(2)分散液sの種類(s1〜s5)、(3)非晶性樹脂微粒子中に含有される離型剤の種類(丸数字の1〜4)、(4)分散液s中の非晶性樹脂の含有量(固形分換算量;質量部)を示している。表3は、上記(3)の非晶性樹脂微粒子中に含有される離型剤の種類(丸数字の1〜4)を示す。
また、表1中の離型剤の欄には、(1)離型剤微粒子の分散液wの種類(w1)、(2)分散液w中の離型剤の含有量(固形分換算量;質量部)を示している。
表1中の非晶性樹脂A’の欄には、(1)非晶性樹脂微粒子の分散液apの種類(ap1)、(2)分散液ap中の非晶性樹脂の含有量(固形分換算量;質量部)を示している。
表1中の着色剤Pの欄には、(1)着色剤微粒子分散液p1中の着色剤の含有量(固形分換算量;質量部)を示している。
(二成分現像剤の作製)
さらに、各実施例及び比較例のトナー〔1〕〜〔15〕に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合した。こうして、各実施例及び比較例の二成分現像剤〔1〕〜〔15〕を製造した。
[評価]
〔定着温度(低温定着性の評価)〕
各実施例及び比較例の二成分現像剤〔1〕〜〔15〕につき、市販の複合機「bizhub PRESS C1100」(コニカミノルタ社製)を改造したものを用いて、坪量128gのA4上質紙(NPI)に2.5×4cmのベタパッチが出力方向に対して中央と左右、合せて3カ所に付着量11g/m2で印字されるよう調整し、上ローラー温度を外部モニターで確認しながら画像を出力した。設定温度125℃から2℃刻みでローラー温度を上昇させ、3カ所のベタパッチの全てにオフセットがなく定着されたときの温度を定着温度とした。得られた定着温度に基づく定着性、特に低温定着性につき、以下のように評価した。得られた定着温度及び下記評価基準に基づく結果を表4に示す。
(定着温度に基づく低温定着性の評価基準)
○:定着温度が125℃〜134℃の場合、低温定着性は良好である;
△:定着温度が134℃を超えて139℃未満の場合、低温定着性はやや良好である。実用上問題なし;
×:定着温度が139℃以上の場合、低温定着性は不良である。実用上問題あり。
〔耐熱保管性〕
各実施例及び比較例のシアン系のトナー〔1〕〜〔15〕につき、その耐熱保管性を次のようにして評価した。
常温常湿(温度20℃、湿度40%RH)の環境下にて、トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に封入し、タップデンサーKYT−2000(株式会社セイシン企業製)で600回振とうした後、蓋を開放した状態で温度59℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上にのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし送り幅1mmの振動強度で10秒間振動を加えた。ふるい上に残存したトナー量からトナー凝集率(%)を下記式により算出した。
得られたトナー凝集率に基づき、耐熱保管性(表4中は、保管性と表記した)につき、以下のように評価した。下記評価基準に基づく結果を表4に示す。
(トナー凝集率に基づく耐熱保管性の評価基準)
○:トナー凝集率(%)が40%未満の場合、耐熱保管性は良好であり合格とする
△:トナー凝集率(%)が40%超から50%未満の場合、耐熱保管性はやや良好であり合格とする
NG:トナー凝集率(%)が50%を超えた場合は、耐熱保管性は不良であり、不合格とする。
〔定着分離性〕
各実施例及び比較例のシアン系のトナー〔1〕〜〔15〕につき、前述の定着温度の評価と同様の方法で紙種をmondi Color Copy 80に変えて定着温度を求めた。この定着温度に30℃加算した温度を上ローラー温度に設定し(例えば定着温度が130℃の場合は160℃に設定する)、同じくmondi Color Copy 80へ全面10g/m2の付着量になるよう調整した画像を、紙の先端余白を1mmずつ変えて出力した。
定着分離性の評価とは、画像と定着ローラーとの離形性・剥離性の評価である。定着ローラーが高温のとき、溶融トナーの弾性が大きく低下しローラーとの離形性が悪化する。さらに先端余白が狭い場合、画像の離形性に不利である。離形性が保たれない場合、画像不良や画像が機外へ排出されないといった不具合が生じる。そこで、画像の定着器への巻き付きによる排紙不良が発生しない最短の先端余白を分離可能先端余白として、定着分離性(表4中は、分離性と表記した)につき、以下のように評価した。
(定着分離性の評価基準)
○:分離可能先端余白が5mm以下であり、定着分離性は良好であり、実用上十分なレベルである;
△:分離可能先端余白が6mm以上7mm以下であり、定着分離性はやや不良であるが、実用上問題のないレベルである;
NG:分離可能先端余白が8mm以上であり、定着分離性は不良であり、出力不可(実用上問題のあるレベル)である。出力不可とは、定着部で画像が剥離されず機外に排出されなかった場合や、機外に排出されたもののシワや折り、ブリスター、光沢ムラが生じるといった画像不良を示す。
表4中のCの欄において、(1)「種」は、トナー中の結晶性樹脂の種類(C−i〜C−vii;表4では、単にi〜viiで表記;詳しくは表2参照)を示す。(2)「HB%」は、トナー中の結晶性樹脂がハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の場合に、その全量に対して結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)以外の樹脂(StAc)セグメントの割合(質量%)を示す。(3)「wt%」は、トナー中の結晶性樹脂の割合(質量%)を示す。
表4中のWの欄において、(1)「種」は、トナー中の離型剤の種類(丸数字の1〜4;詳しくは表3参照)を示す。ここで実施例1〜6、8〜9、比較例1〜2、4〜6は、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液s由来の離型剤である。実施例7は、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子の分散液s由来の離型剤と、離型剤微粒子の分散液w由来の離型剤の2種(いずれも丸数字の1を使用)である。比較例3は、離型剤微粒子の分散液w由来の離型剤(丸数字の1を使用)である。(2)「wt%」は、トナー中の離型剤の割合(質量%)を示す。この場合、分散液s由来の離型剤と分散液w由来の離型剤の合計量である。
表4中のAの欄において、(1)「StAc wt%」は、トナー中の、離型剤を含有する非晶性樹脂(StAc系樹脂)微粒子の分散液s由来の非晶性樹脂(StAc系樹脂)の割合(質量%)を示す。(2)「APES wt%」は、トナー中の、非晶性樹脂(APES系樹脂)微粒子の分散液ap由来の非晶性樹脂(APES系樹脂)の割合(質量%)を示す。(3)「wt%」は、トナー中の離型剤の割合(質量%)を示す。この場合、分散液s由来の離型剤と分散液w由来の離型剤の合計量である。
表4中のトナーDSCの欄において、「ピーク数」は、トナーの示差走査熱量測定(DSC)での吸熱ピーク(1st)のうちΔHが0.5J/g以上となるピーク(ここでは、単に吸熱ピークともいう)の数を言う。なお、「ピーク数」の欄にある「1+S」は、吸熱ピークが1つ検出され、吸熱波形にショルダーが存在する場合を指し、本発明に規定する上記吸熱ピークが1つとの要件からは外れるものである。
表4中のhT1、hT1/hC2、hC2、Tmc及びTmwは、本明細書中に規定した通りである。また、ΔTc−wは、Tmc−Tmwを指す。
表1〜4の結果から、本実施例1〜9のトナー〔1〕〜〔9〕は、比較例1〜6のトナー〔10〕〜〔15〕に比べて、(1)定着温度に基づく低温定着性、(2)定着分離性、及び(3)トナー凝集率に基づく耐熱保管性の全てにおいて優れた性能を発揮することが確認できた。
一方、比較例1、4〜5のトナー〔10〕、〔13〕〜〔14〕は、ピーク数が2つ(1+Sを含む)であり、0.35≦(hT1/hC2)≦1.75を満足しないことから、結晶性樹脂ないし離型剤に前後してエネルギーが供給され定着される。そのため、高温側にピークを持つ結晶性樹脂ないし離型剤にはエネルギー供給が不十分になり、それぞれの結晶性材料がもつ定着性、特に上記(1)の低温定着性の効果を発揮できないため、定着温度が高くなり、低温定着性が大きく低下する(評価:×である)ことがわかった。
また、比較例2のトナー〔11〕は、結晶性樹脂を含まないため、結晶性材料である結晶性樹脂(C)の効果を発揮できず、定着温度が高くなり、低温定着性が大きく低下する(評価:×である)ことがわかった。
さらに、比較例3のトナー〔12〕は、非晶性樹脂がAPES系樹脂のみであり、0.35≦(hT1/hC2)≦1.75を満足しないことから、シャープメルト性が低下し高速出力に悪影響を及ぼすなど、定着分離性が低下し(評価:△であり)、さらに耐熱保管性が大幅に低下する(評価:NGである)ことが確認できた。
さらに比較例6のトナー〔15〕は、ピーク数が1+Sであり、さらにTmcが65(℃)≦Tmc≦85(℃)の関係を満足しないことから、上記したように定着温度が高くなり、低温定着性が低下する(評価:△である)ほか、さらに定着分離性が低下し(評価:△であり)、耐熱保管性も大きく低下する(評価:NGである)ことが確認できた。
また、実施例同士で比較した場合において、実施例1〜3のトナー〔1〕〜〔3〕で見た場合、ΔTc−wの好適な範囲である−7℃≦(Tmc−Tmw)≦7℃より高い+8℃である実施例3に対し、ΔTc−wが上記した好適な範囲の+3℃である実施例1、2(ベストモード)では、定着温度が低く、低温定着性に優れることがわかった。
実施例1、2、4、5のトナー〔1〕、〔2〕、〔4〕、〔5〕で見た場合、65(℃)≦Tmc≦85(℃)の範囲のほぼ真ん中(76℃)であり、耐熱保管性が良好(評価:〇)である実施例1、2(ベストモード)に対し、Tmcの好適な範囲である70℃≦Tmc≦80℃よりも低い69℃である実施例4は、耐熱保管性がやや良好である(評価:△である)ことが確認できた。また、実施例1、2(ベストモード)に対し、65(℃)≦Tmc≦85(℃)の範囲の高め(83℃)である実施例5は、定着温度が若干高く、低温定着性が僅かに低下する(評価:〇である)ことがわかった。
実施例1、2、6のトナー〔1〕、〔2〕、〔6〕で見た場合、耐熱保管性が良好(評価:〇)である実施例1、2(ベストモード)に対し、結晶性樹脂(C)の含有量が、好適な範囲である6質量%以上16質量%以下の範囲より多い18質量%である実施例6は、耐熱保管性がやや良好である(評価:△である)ことが確認できた。なお、実施例6は、実施例1、2(ベストモード)よりも定着温度がより低く、低温定着性がより向上する利点を有していることも分かった。
実施例1、2、7のトナー〔1〕、〔2〕、〔7〕で見た場合、耐熱保管性が良好(評価:〇)である実施例1、2(ベストモード)に対し、トナー中のビニル重合性樹脂(StAc)の含有量が、好適な範囲である40質量%以上75質量%以下の範囲より少ない32質量%である実施例7は、耐熱保管性がやや良好である(評価:△である)ことが確認できた。なお、実施例7は、実施例1、2(ベストモード)よりも定着温度がより低く、低温定着性がより向上する利点を有していることも分かった。
実施例1、2、8のトナー〔1〕、〔2〕、〔8〕で見た場合、実施例1、2(ベストモード)に対し、ΔTc−w<0である実施例8は、定着温度がやや高く、低温定着性がやや低下する(評価:〇である)ことがわかった。
実施例1、2、9のトナー〔1〕、〔2〕、〔9〕で見た場合、実施例1、2(ベストモード)に対し、ハイブリッドでない結晶性樹脂である実施例9は、定着温度が若干高く、低温定着性が僅かに低下する(評価:〇である)ことがわかった。