JP6740640B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、耐熱保管性、流動性、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び画像品質の向上した静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
近年、乾式トナー現像剤を採用した電子写真プロセスマシンにおいて、乾式トナー現像剤に対応するメディアの拡充、環境負荷低減、高画質化及びドキュメントオフセット等の画像品質、それら特性の安定性向上が求められている。
乾式トナー現像剤の、メディアへの対応性や環境負荷低減、ドキュメントオフセット性を達成する手段として、定着時により低熱エネルギーで溶融し、印字後に素早く固化する結晶性樹脂(結晶性ポリエステル等)を、静電荷像現像用トナーに含有される結着樹脂に用いる方法がある。
また、その他、非晶性ポリエステル樹脂や、スチレン−アクリル樹脂等を静電荷像現像用トナーに含有される結着樹脂として用いる方法がある。
中でも非晶性ポリエステル樹脂は、高いガラス転移温度(T)でありながら低い軟化点(Tsp)に設計が可能である。このため、非晶性ポリエステル樹脂は、トナーの耐熱保管性と低温定着性を両立する上で優位な材料として結着樹脂に使用するができる。
一方、スチレン−アクリル樹脂を結着樹脂として使用することで、原料のコストが低いトナーを合成可能となる。
これらの結着樹脂を含有するトナー母体粒子の製法として、溶融混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法等が挙げられる。これらの中でも、水系媒体中で各粒子を精密に凝集配置でき、粒子形状制御性等の優位性から乳化重合凝集法が特に好ましい。
一方で、一般的にポリエステル樹脂とスチレン−アクリル樹脂が非相溶の関係にある。このため、どの製法においてもポリエステル樹脂とスチレン−アクリル樹脂とを併用した場合、トナー内部や表層に樹脂が局在化しやすく、トナー構造や各添加剤の内部配置の制御が難しい。このため、例えばコア・シェル型構造を有するトナー粒子に、ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル樹脂とを適用しようとした場合に、上記制御が難しいことが起因となる問題が生じやすい。
例えば、特許文献1では、コア粒子にメタクリル酸メチルを含有するスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有させ、シェルにスチレン−アクリル樹脂で変性された非晶性ポリエステル樹脂を用いている。これにより、スチレン−アクリル樹脂の極性が非晶性ポリエステル樹脂に近づくことで相溶性を高められ、薄層シェルの形成が可能となり、この結果、定着性(低温定着、定着時分離性)と耐熱性の両立、さらには耐ドキュメントオフセット性を向上できる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、製造中に結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステルシェル樹脂と相溶し、場合によっては表面ブリードを起こすことで、耐熱保管性が不十分になったり、現像剤耐久時の物理ストレスによるトナーの軟凝集化が生じ画像欠陥を引き起したりする場合や、コア樹脂内部の着色剤等の分散が不均一化し、帯電性の低下、転写性の低下に伴う画像品質が低下するという問題に対し、改良の余地があった。
また、特許文献2では、コア粒子とシェルとの間にビニル樹脂による中間層を導入し、
より内部に結晶性ポリエステルを分散配置する方法が提案されている。しかしながら結晶性ポリエステル樹脂のほか、離型剤等の低極性物質をも内部に留めやすくなるため、定着分離性、耐ドキュメントオフセット性に改良の余地があった。
特開2012−255957号公報 特開2014−206610号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐熱保管性、流動性、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び画像品質の向上した静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、下記工程III〜工程Vに記載のような温度に調整しつつシェルを形成すれば、非晶性ポリエステル樹脂を用いてシェルを形成する過程において、非晶性ポリエステル樹脂の凝集/融着同時進行で生じる表層での非晶性ポリエステル樹脂のドメイン化及び結晶性ポリエステル樹脂の表層配向(非晶性ポリエステル樹脂との相溶化)を抑制でき、この結果、耐熱保管性、流動性、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び画像品質の向上した静電荷像現像用トナーの製造方法を提供できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むコア・シェル型トナー母体粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂が、少なくともスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含み、かつ、
少なくとも下記工程I〜工程Vを有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
(工程I):少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤とを含む分散混合液に、撹拌下で凝集剤を添加する工程
(工程II):前記工程Iにおいて前記凝集剤が添加された前記分散混合液に、前記結晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加し、加熱撹拌下で、少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤と前記結晶性ポリエステル樹脂とを凝集合一させ、コア粒子の分散液を得る工程
(工程III):前記工程IIにて得られた前記コア粒子の分散液を、少なくとも前記結晶性
ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)−15℃以下の温度まで冷却する工程
(工程IV):前記工程IIIにて冷却された前記コア粒子の分散液の温度を、
(1)少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度とし、
(2)前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)+5℃以上の温度とし、
(3)前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+3℃以下の温度とし、かつ
(4)Tgs<Tga<Tqcの関係を満たす温度とし、
当該コア粒子の分散液に、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液を添加し、前記
コア粒子の表面に前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子をシェル粒子として付着させコア・シェル粒子分散液を得る工程
(工程V):前記コア・シェル粒子分散液を、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+10℃以上、かつ前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度に調整し、前記コア粒子及び前記シェル粒子並びに前記シェル粒子同士を融着し、コア・シェル型トナー母体粒子分散液を得る工程
2.前記工程IVにおいて、前記コア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とコア粒子の分散液に添加する前の前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とが、下記式(a)〜(c)の関係を満たすことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
式(a) 3≦pH−pH
式(b) 7≦pH≦10
式(c) 2≦pH≦5
3.前記工程IVにおいて添加される前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液中の当該非晶性ポリエステル樹脂の粒子の体積平均粒径が、50〜300nmの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
4.前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)が、35〜50℃の範囲内であり、
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)が、53〜63℃の範囲内であり、
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)が、65〜80℃の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
5.前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂と化学結合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
本発明の上記手段により、耐熱保管性、流動性、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び画像品質の向上した静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
本発明の上記効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
コア粒子を作製する工程において、工程I、工程IIとすることで、コア粒子を構成するメインの樹脂(スチレン−アクリル樹脂)に対する、離型剤の分散状態を維持した状態で、結晶性ポリエステルがコア粒子中に分散性良く存在したコア粒子を得ることができると考える。
また、シェル粒子を付着させる工程において、工程III、工程IVに記載のように、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)−15℃以下の温度まで冷却した後、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下とし、工程IVの(1)〜(4)に記載のような特定の温度範囲にすることで、コア粒子内の離型剤、結晶性ポリエステルの分散状態を保持したまま(すなわち、結晶性ポリエステル樹脂の表層配向を抑制しつつ)、かつ、結晶性ポリエステルが結晶状態でシェル粒子(非晶性ポリエステル樹脂の粒子)をコア粒子の表面に付着/被覆させることができると考える。
工程Vに記載のように、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+10℃以上、かつ結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下で、スチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを融着させることにより、離型剤、結晶性ポリエステルの分散/結晶状態を維持した状態で、スチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂、及び非晶性ポリエステル樹脂間の融着を行え、表面の組成及び形状が均質なトナー母体粒子を得ることができると考える。
以上のように、本発明のトナーの製造方法によれば、結晶性ポリエステルが結晶状態で存在し、かつ、表面の組成及び形状が均質なトナー母体粒子を製造できるため、耐熱保管性と低温定着性に優れたトナーを製造できると推察する。また、離型剤等も分散性良く保持できるため、流動性に優れ、この結果、現像器内等での混合等によるストレス(現像剤耐久)にも強く、現像性/転写性に優れ、画像品質にも優れたトナーを製造できると考える。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むコア・シェル型トナー母体粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記結着樹脂が、少なくともスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含み、かつ、少なくとも上記工程I〜工程Vを有することを特徴とする。この特徴は請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、工程IVにおいて、前記コア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とコア粒子の分散液に添加する前の前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とが、上記式(a)〜(c)の関係を満たすことが、シェル粒子同士の凝集(ホモ凝集)を抑制しながらコア粒子への凝集を生じさせられることから好ましい。
本発明においては、工程IVにおいて添加される前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液中の、当該非晶性ポリエステル樹脂の粒子の体積平均粒径が、50〜300nmの範囲内であることが、より少ないシェル量で所望の被覆率を確保できるため好ましい。
本発明においては、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)が、35〜50℃の範囲内であり、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)が、53〜63℃の範囲内であり、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)が、65〜80℃の範囲内であることが、耐熱性と定着時の可塑化効果、耐熱保管性と低温定着性を良好にできるため好ましい。
本発明においては、前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂と化学結合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることが、定着時の離形効果及び定着後画像の強度を良好にできるため好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪静電荷像現像用トナーの製造方法の概要≫
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むコア・シェル型トナー母体粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記結着樹脂が、少なくともスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含み、かつ、少なくとも下記工程I〜工程Vを有することを特徴とする。
(工程I):少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤とを含む分散混合液に、撹拌下で凝集剤を添加する工程
(工程II):前記工程Iにおいて前記凝集剤が添加された前記分散混合液に、前記結晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加し、加熱撹拌下で、少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤と前記結晶性ポリエステル樹脂とを凝集合一させ、コア粒子の分散液を得る工程
(工程III):前記工程IIにて得られた前記コア粒子の分散液を、少なくとも前記結晶性
ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)−15℃以下の温度まで冷却する工程
(工程IV):前記工程IIIにて冷却された前記コア粒子の分散液の温度を、
(1)少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度とし、
(2)前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)+5℃以上の温度とし、
(3)前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+3℃以下の温度とし、かつ
(4)Tgs<Tga<Tqcの関係を満たす温度とし、
当該コア粒子の分散液に、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液を添加し、前記コア粒子の表面に前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子をシェル粒子として付着させコア・シェル粒子分散液を得る工程
(工程V):前記コア・シェル粒子分散液を、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+10℃以上、かつ前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度に調整し、前記コア粒子及び前記シェル粒子並びに前記シェル粒子同士を融着し、コア・シェル型トナー母体粒子分散液を得る工程
なお、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、上記工程I〜工程Vのほか、下記工程VIを更に有していてもよい。
(工程VI):前記工程Vで得られた前記コア・シェル型トナー母体粒子分散液を冷却後、当該コア・シェル型トナー母体粒子分散液から前記コア・シェル型トナー母体粒子を分離し、乾燥する工程
本発明の製造方法に係る結晶性ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)は下記のようにして計測される。なお、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)は、各樹脂を重合するためのモノマーの組成(配合量)や、各樹脂の分子量を調整することにより調節できる。
(結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)、結晶化ピーク温度(Tqc)の計測)
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)は、トナーの示差走査熱量測定を行うことにより求めることができる。示差走査熱量測定は、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いる。測定は、具体的には、昇降速度10℃/minで室温(25℃)から150℃まで昇温し、5分間150℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで150℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び、昇降速度10℃/minで0℃から150℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行えばよい。上記測定は、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行うことができる。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用すればよい。
上記測定において、1回目の昇温過程により得られる吸熱曲線から解析を行い、結晶性
ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークのトップ温度を結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)(℃)とする。また、冷却過程により得られる発熱曲線から解析を行い、結晶性ポリエステル樹脂由来の発熱ピークトップの温度を、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)(℃)とする。
(スチレン−アクリル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tgs、Tga)の計測)
ガラス転移温度は、上記DSC同装置において、測定条件として、測定温度0〜150℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点のガラス転移温度とした。
以下において、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によって製造される静電荷像現像用トナーに含有されるコア・シェル型トナー母体粒子について、その構成要素等の説明をした上で、工程I〜工程VIについて詳細に説明する。
[コア・シェル型トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、コア・シェル構造を有するコア・シェル型トナー母体粒子である。コア・シェル構造とは、コア粒子とこのコア粒子を覆うシェルを有する構造をいう。なお、このシェルは、大きな膜(以下、「シェル膜」ともいう。)によって形成されていてもよいし、数個の膜状のドメイン(以下、「膜状ドメイン」ともいう。)から構成されていてもよい。また、シェル膜及び膜状ドメインを特に区別する必要のない場合は、これらをまとめてシェルという。
また、トナー母体粒子には、必要に応じて外添剤が加えられる。この外添剤が加えられたトナー母体粒子をトナー粒子として使用してもよい。また、外添剤が加えられない場合、トナー母体粒子をそのままトナー粒子として使用してもよい。また、このトナー粒子が集合したものをトナーという。
<結着樹脂>
結着樹脂は、少なくともスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含む。
なお、結着樹脂には、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で、スチレン−アクリル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂や有機化合物など、ほかの材料が含まれていてもよい。
<スチレン−アクリル樹脂>
スチレン−アクリル樹脂とは、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーが重合した樹脂である。
スチレン−アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000〜60000の範囲内で、かつ数平均分子量(Mn)が、8000〜20000の範囲内であることが、低温性及び光沢度安定性の確保の観点から好ましい。
スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)は、低温定着性を得る観点から35〜50℃の範囲内が好ましく、より好ましくは38〜48℃の範囲内である。
スチレン−アクリル樹脂に用いられる重合性モノマーとしては、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであり、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものが好ましい。
例えば、芳香族系ビニルモノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−
クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、n−ブチルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でもスチレン系モノマーとアクリル酸エステル系モノマー又はメタクリル酸エステル系モノマーとを組み合わせて使用することが好ましい。
重合性モノマーとしては、第三のビニル系モノマーを使用することもできる。第三のビニル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸モノマー及びアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びブタジエン等が挙げられる。
重合性モノマーとしては、さらに多官能ビニル系モノマーを使用してもよい。多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のジアクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレート等が挙げられる。
本発明に係るスチレン−アクリル樹脂は、乳化重合法で作製されることが好ましい。乳化重合は、後述の水系媒体中にスチレン、アクリル酸エステルなどの重合性モノマーを分散し重合することによって得ることができる。水系媒体に重合性モノマーを分散するためには界面活性剤を用いることが好ましく、重合には重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
本発明に係る結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)は、65〜80℃の範囲内であることが好ましく、67〜78℃の範囲内であることがより好ましい。この範囲であることにより、耐熱性と定着時の可塑化効果を両立できる。
結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度(Tqc)は、50〜70℃の範囲にあることが好ましく、55〜65℃がより好ましい。この範囲であることにより、耐熱性と低温定着性を良好にできる。
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール
に由来する構造単位の主鎖の炭素数をCalcohol、結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸に由来する構造単位の主鎖の炭素数をCacidとしたとき、下記関係式(A)を満たすことが好ましい。
関係式(A):5≦|Cacid−Calcohol|≦12
トナー母体粒子中に、関係式(A)を満たすようなエステル結合を介して繰り返されるアルキル鎖の長さが不均一な結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、結晶性ポリエステル樹脂が凝集し難く、高温環境下においても結晶性ポリエステル樹脂の結晶ドメインが大きくなり難くなる。よって、高温状態での保管後においても、トナーの定着性が低下しにくいという効果を得ることができる。
また、同様の効果をより有効に発現させる観点から、結晶性ポリエステル樹脂が、下記関係式(B)を満たすことが好ましい。
関係式(B):6≦|Cacid−Calcohol|≦10
また、定着性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル樹脂が、下記関係式(C)を満たすことが好ましい。
関係式(C):Calcohol<Cacid
また、定着性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールに由来する構造単位の主鎖の炭素数Calcoholが、2〜12の範囲内であることが好ましく、多価カルボン酸に由来する構造単位の主鎖の炭素数Cacidが、6〜16の範囲内であることが好ましい。
多価カルボン酸成分として用いられるジカルボン酸成分には、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用しても良い。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いても良い。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、本発明の効果が得られやすいことから、炭素数6〜14の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸とともに用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成
モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保することができる。
また、多価アルコール成分として用いられるジオール成分には、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させても良い。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、1種単独で用いても良いし、2種以上用いても良い。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、本発明の効果が得られやすいことから、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数4〜12の脂肪族ジオールがより好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオール、ビスフェノール骨格を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られるとともに最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、2.0/1.0〜1.0/2.0であると好ましく、1.5/1.0〜1.0/1.5であるとより好ましく、1.3/1.0〜1.0/1.3であると特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する。)ことにより結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な公知のエステル化触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズこれらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、
テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。更にアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしても良い。
なお、結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂そのものを含有しても良いし、後述するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有していても良い。以下、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂について簡単に説明する。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂>
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
(結晶性ポリエステル樹脂セグメント)
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、上記結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂セグメントをいう。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、本発明でいうハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成方法は特に制限されず、上述の結晶性ポリエステル樹脂の形成方法と同様に、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する。)ことにより当該セグメントを形成することができる。
更に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、多価カルボン酸及び多価アルコールのほか、非晶性樹脂セグメントに化学的に結合するための化合物もまた重縮合されてなると好ましい。
ここで、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントのほかに、後述のポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントを含む。
(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント)
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント(以下、単に「非晶性樹脂セグメント」ともいう。)は、結着樹脂を構成する非晶性樹脂と、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との親和性を制御するためのセグメントである。非晶性樹脂セグメントが存在することで、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との親和性が向上し、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、帯電均一性等を向上させることができ、好ましい。
非晶性樹脂セグメントは、結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中(更には、トナー中)に非晶性樹脂セグメントを含有することは、例えばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性樹脂セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(T)を有する樹脂セグメントである。このとき、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に40〜65℃の範囲内であることが好ましい。
非晶性樹脂セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性樹脂セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性樹脂セグメントを有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
非晶性樹脂セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(すなわち、コア粒子に含有される非晶性樹脂)と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂中に更に取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。
非晶性樹脂セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが挙げられる。中でも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂が好ましい。
ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−アクリル酸エステル樹脂(スチレン−アクリル樹脂)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂セグメントとしてのスチレン−アクリル樹脂セグメントについて説明する。
スチレン−アクリル樹脂セグメントは少なくとも、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン系モノマーは、CH=CH−Cの構造式で表されるスチレンのほかに、スチレン
構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物のほかに、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
スチレン−アクリル共重合体セグメントの形成が可能なスチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの具体例としては、「<スチレン−アクリル樹脂>」の項で挙げた芳香族系ビニルモノマーや、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを好適に使用できるが、本発明で使用されるスチレン−アクリル共重合体セグメントの形成に使用可能なものはこれらに限定されるものではない。
なお、非晶性樹脂セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して、2〜20質量%の範囲内であると好ましい。更に、上記含有量は、4質量%以上15質量%未満であるとより好ましく、5〜11質量%の範囲内であると更に好ましい。上記範囲内とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明に係るハイブリッド樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。例えば、ハイブリッド樹脂の製造方法として、後述の「(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製方法)」において、非晶性ポリエステルセグメントの代わりに結晶性ポリエステル樹脂セグメントを使用するほかは、同様にして製造することができる。また、この場合、スチレン−アクリル重合体セグメントの代わりにそのほかの非晶性樹脂セグメントを使用することとしてもよい。
<非晶性ポリエステル樹脂>
非晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られる吸熱曲線において、ガラス転移温度(T)を有するが、融点すなわち昇温時の明確な吸熱ピークがない非晶性を示すポリエステル樹脂とをいう。
非晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性ポリエステル樹脂そのものを含有しても良いし、後述するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有していても良い。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)は、53〜63℃の範囲内であることが好ましい。この範囲であることにより、耐熱保管性と低温定着性をより確保できる。
非晶性ポリエステル樹脂は、スチレン−アクリル樹脂と化学結合してなる非晶性ポリエステル樹脂(以下、「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂」ともいう。)であることが、コア粒子に含有されるメイン樹脂(スチレン−アクリル樹脂)との相溶性を良好にでき、ひいては、コア・シェルトナーの定着時の離形効果、及び定着後画像の強度を良好にすることができるため好ましい。
ここで、「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂」とは、非晶性のポリエステル分子鎖(以下、「非晶性ポリエステルセグメント」ともいう。)に、上述のスチレン−アクリル樹脂セグメントを分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂(ハイブリッド樹脂)のことである。すなわち、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、スチレン−アクリル樹脂セグメントが非晶性ポリエステルセグメントに分子結合した共重合体構造を有する樹脂である。
また、非晶性ポリエステル樹脂として用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、以下の点で前述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と明確に区別される。すなわち、非晶性のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を構成する非晶性ポリエステルセグメントは、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは異なり、明確な融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(T)を有する非晶性の分子鎖である。このようなことは、トナーについて示差走査熱量測定(DSC)を行うことによって確認できる。また、非晶性ポリエステルセグメントを構成する単量体(化学構造)は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを構成する単量体(化学構造)とは異なるため、例えば、NMR等の分析によっても区別することができる。
上記非晶性ポリエステルセグメントは、多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分によって形成される。
上記多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、帯電性やトナー強度の観点から、芳香族ジオール又はその誘導体であることが好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができる。
これらの中でも、特にトナーの帯電均一性を向上させるという観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらの多価アルコール成分は1種単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
上記多価アルコール成分と縮合させる多価カルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;フマル酸、無水マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アルケニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸類;及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、数平均分子量(Mn)は、2000〜10000の範囲内にあることが好ましい。
上記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(T)は、20〜70℃の範囲内にあることが好ましい。ガラス転移温度(T)は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)等を用いることができる。
非晶性ポリエステルセグメントの形成方法は特に制限されず、上述の結晶性ポリエステル樹脂の形成方法と同様に、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する。)ことにより非晶性ポリエステルセグメントを形成することができる。
なお、本発明では、非晶性ポリエステル樹脂の粒子を用いてシェルを形成するが、このシェルにおいて、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂と共に含有させることのできる樹脂としては、例えばスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
シェルにおけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合は、シェルを構成する樹脂100質量%中において70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
シェルにおけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合が70質量%以上であれば、コア粒子とシェルとの十分な親和性を得られ、所望のシェルを形成することができ、耐熱保管性、帯電性及び耐破砕性を十分に得られないおそれを回避できる。
そして、本発明においては、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂におけるスチレン−アクリル重合体セグメントの含有割合(以下、「スチレン−アクリル変性量」ともいう。)が5〜30質量%の範囲内とされており、特に、5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、コア粒子に含有されるメイン樹脂(スチレン−アクリル樹脂)との相溶性をより良好にでき、この結果、コア・シェルトナーの定着時の離形効果、及び定着後画像の強度を更に良好にすることができる。
スチレン−アクリル変性量は、具体的には、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、非晶性ポリエステルセグメントとなる未変性のポリエステル樹脂を構成するモノマーと、スチレン−アクリル重合体セグメントとなる芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、これらを結合させるための両反応性モノマーを合計した全質量に対する、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量の割合をいう。
スチレン−アクリル変性量が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御される。これにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との界面の融着状態と、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂同士の融着状態と、を適度に釣り合わせることができる。この結果、耐熱性と定着性に優れたシェル膜又は膜状ドメインを形成することができ、さらには、トナー母粒子の表面が平滑なものとなる。
一方、スチレン−アクリル変性量が5質量%以上である場合は、シェル膜又は膜状ドメインを好適に形成でき、この結果、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との界面の融着が不十分とならず、ひいては、定着時に溶融しても十分にトナーが融着しないという問題を回避できる。このため、スチレン−アクリル変性量が5質量%以上である場合は、低温定着性及び耐ドキュメントオフセット性を十分に得ることができ、好ましい。
また、スチレン−アクリル変性量が30質量%以下である場合は、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が軟化点の高くなりすぎることを回避でき、トナー粒子全体として十分な低温定着性を得ることができ、好ましい。
ポリエステル主鎖に対して、スチレン−アクリル樹脂セグメントは末端に結合されていてもよいし、側鎖としてグラフト結合していてもよい。ただし、スチレン−アクリル樹脂ユニットがポリエステル樹脂の末端に結合しているスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の方がポリエステル樹脂ユニットとスチレン−アクリル樹脂ユニットのそれぞれのドメインを形成しやすい。そのため、凝集・融着工程にてトナー表層には非晶性ポリエステルセグメントが配向しやすく、スチレン−アクリル樹脂を含有するコア部にはスチレン−アクリル樹脂セグメントが配向しやすいため、より緻密なコア・シェル構造を形成することができる。
シェルを構成するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、低温定着性及び定着分離性などの定着性、並びに、耐熱保管性及び耐ブロッキング性などの耐熱性を確実に得る観点から、ガラス転移温度が50〜70℃であることが好ましく、より好ましくは53〜
63℃の範囲内であり、かつ、軟化点が80〜120℃であることが好ましく、より好ましくは90〜110℃である。スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
結着樹脂における非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が過度に低い場合は、十分な耐熱保管性が得られないおそれがあり、また、結着樹脂における非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が過度に高い場合は、十分な低温定着性が得られないおそれがある。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製方法)
以上のようなシェルに含有されるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の四つが挙げられるが、中でも、下記(A)の方法が最も好ましい。
(A)非晶性ポリエステルセグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性ポリエステルセグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを反応させることにより、スチレン−アクリル重合セグメントを形成する方法。
(B)スチレン−アクリル重合体セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン−アクリル重合体セグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを反応させることにより、非晶性ポリエステルセグメントを形成する方法。
(C)非晶性ポリエステルセグメント及びスチレン−アクリル重合体セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性モノマーを反応させることにより、両者を結合させる方法。
(D)非晶性ポリエステルセグメントをあらかじめ重合し、その非晶性ポリエステルセグメントの重合性不飽和基にスチレン−アクリル重合性モノマーを付加重合し両者を結合する方法。
なお、(C)に記載の両反応性モノマーとは、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と、重合性不飽和基とを有するモノマーである。
(A)の方法としては、具体的には、例えば、
(1)未変性のポリエステル樹脂と、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、両反応性モノマーとを混合する混合工程と、
(2)芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程と、
を経ることが挙げられる。これにより、非晶性ポリエステルセグメントにスチレン−アクリル重合体セグメントを結合させることができる。
上記(1)の混合工程及び(2)の重合工程を経る場合、非晶性ポリエステルセグメントの末端のヒドロキシ基と両反応性モノマーのカルボキシ基とがエステル結合を形成し、両反応性モノマーのビニル基が芳香族系ビニルモノマー又は(メタ)アクリル酸系モノマーのビニル基と結合することによってスチレン−アクリル重合体セグメントが結合される。
上記(1)の混合工程においては、加熱することが好ましい。加熱温度としては、未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び量反応性モノマーを混合させることができる範囲であればよく、良好な混合が得ら
れるとともに、重合制御が容易となることから、例えば80〜120℃とすることができ、より好ましくは85〜115℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーのうち、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用割合は、用いられる樹脂材料の全質量、すなわち前記の4者の全質量を100質量%としたときの芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の割合が5〜30質量%の範囲内とされ、特に、5〜20質量%の範囲内とされることが好ましい。
用いられる樹脂材料の全質量に対する芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の割合が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御され、良好なシェルを形成することができ、ひいては、定着時の離形効果及び定着後画像の強度を良好にできるため好ましい。
また、当該割合が5質量%以上である場合は、得られるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、良好なシェルを形成することができ、過度にコア粒子が露出してしまうことを回避できる結果、得られるトナーに十分な耐熱保管性及び帯電性が得られる。
また、当該割合が30質量%以内である場合は、得られるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の軟化点が高くなりすぎることがなく、この結果、得られるトナーが、全体として十分な低温定着性を実現できる。
また、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの相対的な割合は、下記式(ア)で表されるFOX式で算出されるガラス転移温度(T)が35〜80℃、好ましくは40〜60℃の範囲となるような割合とされることが好ましい。
式(ア):1/T=Σ(Wx/Tgx
(式(ア)において、Wxはモノマーxの質量分率、Tgxはモノマーxの単独重合体のガラス転移温度である。)
なお、本明細書においては、両反応性モノマーはガラス転移温度の計算に用いないものとする。
未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーのうち、両反応性モノマーの使用割合は、用いられる樹脂材料の全質量、すなわち前記の4者の全質量を100質量%としたときの両反応性モノマーの割合が0.1質量%以上10.0質量%以下とされ、特に、0.5質量%以上3.0質量%以下とされることが好ましい。
(芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものである。
芳香族系ビニルモノマーとしては、上述の「<スチレン−アクリル樹脂>」に記載のものを使用できる。
これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、上述の「<スチレン−アクリル樹脂>」に記載のものを使用できる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種
単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、優れた帯電性、画質特性などを得る観点から、スチレン又はその誘導体を多く用いることが好ましい。具体的には、スチレン又はその誘導体の使用量が、スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するために用いられる全モノマー(芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)中の50質量%以上であることが好ましい。
(両反応性モノマー)
スチレン−アクリル重合体セグメントを形成するための両反応性モノマーとしては、非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有するモノマーであればよく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などを用いることができる。本発明においては両反応性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂作製用のポリエステル樹脂)
本発明に係るスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を作製するために用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えば、上述の「<結晶性ポリエステル樹脂>」に記載の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、特開2012−255957号公報の段落0086、0087に記載のものを使用できる。
多価アルコールモノマーとしては、例えば、上述の「<結晶性ポリエステル樹脂>」に記載の脂肪族ジオールや、特開2012−255957号公報の段落0091に記載のものを使用できる。
上記の多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を得るための未変性のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が40〜70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50〜65℃の範囲内である。未変性のポリエステル樹脂のガラス転移温度が40℃以上であることにより、当該ポリエステル樹脂について高温領域における凝集力が適切なものとなり、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、未変性のポリエステル樹脂のガラス転移温度が70℃以下であることにより、定着の際に十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができる。
また、当該未変性のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1500以上60000以下であることが好ましく、より好ましくは3000〜40000の範囲内である。重量平均分子量が1500以上であることにより、結着樹脂全体として好適な凝集力が得られ、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、重量平均分子量が60000以下であることにより、十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができながら、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。
当該未変性のポリエステル樹脂は、用いる多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーとして、カルボン酸価数又はアルコール価数を選択することなどによって、一部枝分かれ構造や架橋構造などが形成されていてもよい。
(重合開始剤)
芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましく、ラジカル重合開始剤の添加の時期は特に制限されないが、ラジカル重合の制御が容易であるという点で、混合工程の後で添加することが好ましい。
重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、ジ−t−ブチルペルオキシド、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
(連鎖移動剤)
また、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、スチレン−アクリル重合体セグメントの分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アルキルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン;n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸、メルカプト脂肪酸エステル及びスチレンダイマーなどを用いることができる。これらは1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤の添加量は、所望するスチレン−アクリル重合体セグメントの分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、並びに両反応性モノマーの合計量に対して、0.1〜5質量%の範囲内で添加することが好ましい。
芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合
工程における重合温度は、特に限定されず、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー間の重合及びポリエステル樹脂への結合が進行する範囲において適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、85〜125の範囲内であることが好ましく、90〜120℃の範囲内であることがより好ましく、95〜115℃の範囲内であることがさらに好ましい。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製においては、重合工程後の残留モノマー量など乳化物からの揮発性有機物質が、1000ppm以下に抑制されることが実用上好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。
<離型剤(ワックス)>
本発明に係る離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の融点は、好ましくは40〜160℃であり、より好ましくは50〜120℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保管性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中の離型剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
<着色剤>
本発明に係る着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズなどのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
また、オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、
同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
更に、グリーン又はシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独又は二つ以上を選択して併用することも可能である。
着色剤の添加量はトナー全体に対して好ましくは1〜30質量%の範囲内、より好ましくは2〜20質量%の範囲内で、これらの混合物も用いることができる。かような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒径で、例えば10〜1000nmの範囲内、好ましくは50〜500nmの範囲内、更に好ましくは80〜300nmの範囲内である。
[その他の成分]
本発明のトナー母体粒子中には、上記構成要素のほか、必要に応じて、荷電制御剤などの内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていても良い。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩など、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー母体粒子中における結着樹脂100質量%に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%となる量とされる。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で例えば10〜1000nm、好ましくは50〜500nmの範囲内、更に好ましくは80〜300nmの範囲内である。
(外添剤)
トナーとしての帯電性能や流動性、又はクリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていても良い。
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
滑材は、クリーニング性や転写性を更に向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなど
の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用しても良い。
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量%に対して0.1〜10.0質量%であることが好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
《工程I〜工程VI》
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法における工程I〜工程VIについて説明する。
<工程I>
工程Iでは、少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤とを含む分散混合液に、撹拌下で凝集剤を添加する。
前記分散混合液は、スチレン−アクリル樹脂の微粒子を含有するスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液と、着色剤の微粒子を含有する着色剤微粒子分散液とを水系媒体中で混合する方法で調製されることが好ましい。
なお、スチレン−アクリル樹脂微粒子が離型剤を含有していない場合、離型剤微粒子分散液を更に混合することが好ましい。
また、トナー母体粒子中に、離型剤のほか、その他の内添剤等を含有させる場合は、非晶性ポリエステル樹脂の微粒子に内添剤を含有させることとしても良い。また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子分散液を、凝集剤を添加する前に添加してもよいし、後に添加してもよい。なお、凝集剤を添加する後に添加する場合、工程IIにおける結晶性ポリエステル樹脂の分散液の添加が完了する前であることが好ましい。
スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液、着色剤微粒子分散液及び離型剤微粒子分散液は、次のように調製する。
(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)
スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製は、スチレン−アクリル樹脂を合成し、このスチレン−アクリル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて行う。
スチレン−アクリル樹脂の製造方法は上記したとおりであるため、詳細な説明を省略する。なお、スチレン−アクリル樹脂微粒子に離型剤を含有させる場合、スチレン−アクリル樹脂を重合する際に離型剤を添加すればよい。この場合、重合方法にはミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
スチレン−アクリル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、スチレン−アクリル樹脂を得るためのモノマーからスチレン−アクリル樹脂微粒子を形成し、当該スチレン−アクリル樹脂微粒子の水系分散液を調製する方法(i)や、スチレン−アクリル樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(ii)などが挙げられる。
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノ
ール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体としてイオン交換水などの水のみを使用する。
方法(i)では、まず、スチレン−アクリル樹脂を得るためのモノマーを重合開始剤とともに水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。次に、当該基礎粒子が分散している分散液中に、スチレン−アクリル樹脂を得るためのラジカル重合性モノマー及び重合開始剤を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性モノマーをシード重合する手法を用いることが好ましい。
このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
また、スチレン−アクリル樹脂微粒子を得るためのシード重合反応系には、スチレン−アクリル樹脂の分子量を調整することを目的として、上述の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤は、上記の混合工程において樹脂材料とともに混合させておくことが好ましい。
方法(ii)において、油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合はその合計使用量)は、スチレン−アクリル樹脂100質量部に対して、通常10〜500質量部の範囲内、好ましくは100〜450質量部の範囲内、更に好ましくは200〜400質量部の範囲内である。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲内とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていても良く、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていても良い。
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、又は環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
また、このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、スチレン−アクリル樹脂微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。又は、エバポレーター等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
上記方法(i)又は(ii)によって準備されたスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液におけるスチレン−アクリル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmの範囲内とされることが好ましく、更に好ましくは80〜500nmの範囲内である。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。
また、スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液におけるスチレン−アクリル樹脂微粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%の範囲内である。このような範囲内であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(着色剤微粒子分散液の調製)
着色剤微粒子分散液の調製は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて行う。
当該水系媒体は上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項で説明したとおりであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていても良い。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項において説明したものを用いることができる。
着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲内とすることがより好ましい。このような範囲内であると、色再現性確保の効果がある。
(離型剤微粒子分散液の調製)
離型剤微粒子分散液の調製は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて行う。
当該水系媒体は上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項で説明したとおりであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていても良い。
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項において説明したものを用いることができる。
離型剤微粒子分散液における離型剤微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲内とすることがより好ましい。このような範囲内であると、ホットオフセット防止及び分離性確保の効果が得られる。
(凝集剤)
凝集剤としては、特に制限されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これら凝集剤は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
工程Iにおいては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、工程Iにて凝集剤を添加した後、工程IIをできるだけ速やかに開始し、結晶性ポリエステル樹脂の融点及びスチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー母体粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生したりするおそれがあるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。凝集剤を添加する温度はスチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度以下が好ましく、室温であることがより好ましい。
<工程II>
工程IIでは、工程Iにおいて凝集剤が添加された前記分散混合液に、結晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加し、加熱撹拌下で、少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤と前記結晶性ポリエステル樹脂とを凝集合一させ、コア粒子の分散液を得る。
上記したように、工程Iにて凝集剤を添加した後、速やかに工程IIを行うことが好ましい。工程IIにおける昇温速度としては0.8℃/min以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/min以下とすることが好ましい。工程Iで調製した混合液が、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度以上であって、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂の融点に対して−10〜+10℃の温度範囲内である凝集温度となるまで当該混合液を昇温させる。これにより、昇温に伴ってスチレン−アクリル樹脂微粒子及び着色剤微粒子が凝集していき、凝集体が形成される。
凝集合一は、結晶性ポリエステル樹脂の分散液が添加された分散混合液の撹拌速度を低下させるなど、撹拌数を適宜調節して行うことが好ましい。これにより、粒子同士の衝突による反発を抑制することができ、粒子同士を好適に接触させ、粒子の凝集を進行させることができる。このときの温度としては、結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度であることが好ましい。混合液の温度を保持しながら撹拌速度を低下させるなど、撹拌数を適宜調節することにより、結晶性ポリエステル樹脂微粒子、スチレン−アクリル樹脂微粒子及び着色剤微粒子の凝集を進行させ、その凝集粒子の粒径が所望の値に到達したら、後述の工程IIIにて冷却したのち、凝集停止剤として塩化ナトリウム水溶液等の塩を添加して凝集を停止させる。このときの凝集粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径が4.5〜7.0μmの範囲内であることが好ましい。凝集粒子の体積基準のメジアン径は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて体積基準のメジアン径を測定することにより得ることができる。
(結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製)
結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製は、結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶
性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて行う。このため、以下において、結晶性ポリエステル樹脂分散液を結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液ともいう。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は上記したとおりであるため、詳細な説明を省略する。また、結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分の炭素数Calcohol及び多価カルボン酸成分の炭素数Cacidについては、上記関係式(A)を満たすものであることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液は、例えば溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、又は、結晶性ポリエステル樹脂を酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、沸点100℃未満の汎用アルコールなどの溶剤に膨潤溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う方法などが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂はカルボキシ基を含有する場合がある。このような場合、結晶性ポリエステル樹脂に含油されるカルボキシ基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加しても良い。
更に、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていても良く、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていても良い。分散安定剤、界面活性剤及び樹脂微粒子としては、上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項で説明したものを用いることができる。
上記分散処理は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、上記「(スチレン−アクリル樹脂微粒子分散液の調製)」の項で説明したものを用いることができる。
このように準備された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、50〜1000nmの範囲内とされることが好ましく、より好ましくは50〜500nmの範囲内、更に好ましくは80〜500nmの範囲内である。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子の含有量は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲内がより好ましい。このような範囲内であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
<工程III>
工程IIIは、工程IIにて得られた前記コア粒子の分散液を、少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)−15℃以下の温度まで冷却する。
上記温度を工程IIIにおける冷却の上限にすることで、ポリエステル樹脂の結晶化が十分なものとなるので、コア粒子内構造が適度に固定化される。これにより、工程IV〜工程Vでシェル粒子を添加凝集した後に合一する過程を経ても、シェル粒子である非晶性ポリエステル樹脂への配向が限りなく生じず、この結果、前述したシェル膜又はシェルの膜状ドメインを形成できると考える。
なお、工程IIIにおける冷却温度の下限は、例えば、30℃以下でも構わないが、さらに低温化しても以後の工程に大きな影響は及ぼさない上、過剰に熱量交換をすることになるため、製造効率の面から30℃以上とすることが好ましい。
冷却する速度は、特に制限されないが、0.2〜20℃/分の範囲内が好ましく、1.
0〜10℃/分がより好ましい。前記の冷却速度範囲であれば前記コア粒子内の結晶性ポリエステル樹脂の結晶化に伴うコア粒子の内部構造、及びコア粒子形状を適切にできると考える。
0.2℃/分以上であれば、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化過程でコア粒子形状が異型化することを回避でき、所望のトナー形状を得ることができる。
20℃/分以下であれば、結晶性ポリエステル樹脂が十分に結晶化する。このため、後述する工程Vでシェルの合一化工程において、非晶性ポリエステル樹脂との相溶部位が増加しすぎることを回避でき、この結果、シェル膜又は膜上ドメインを好適に形成できる。冷却する方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を使用できる。
<工程IV>
工程IIIにて冷却された前記コア粒子の分散液の温度を、
(1)少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度とし、
(2)前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)+5℃以上の温度とし、
(3)前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+3℃以下の温度とし、かつ
(4)Tgs<Tga<Tqcの関係を満たす温度とし、
当該コア粒子の分散液に、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液を添加し、前記コア粒子の表面に前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子をシェル粒子として付着させコア・シェル粒子分散液を得る。
なお、上述のように、
(5)スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)が、35〜50℃の範囲内であり、
(6)前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)が、53〜63℃の範囲内であり、
(7)前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)が、65〜80℃の範囲内である
ことが好ましい。
このような温度の範囲内であることで、低温定着性、耐熱保管性、耐熱性と定着時の可塑化効果をより良好にすることができ、好ましい。
また、工程IVにおいて、前記コア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とコア粒子の分散液に添加する前の前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とが、下記式(a)〜(c)の関係を満たすことが好ましい。
式(a) 3≦pH−pH
式(b) 7≦pH≦10
式(c) 2≦pH≦5
pH条件を上記式(a)〜式(c)に記載の範囲で行うことで、シェル粒子(非晶性ポリエステル樹脂の粒子)の均一凝集を促進でき、コア粒子表面を被覆できる。シェル粒子の粒径とコア粒子の粒径差からシェル粒子の方が凝集性が高いため、コア粒子分散液のpH(pH)を高めに調整することで、コア粒子表面のカルボキシ基の解離を促し、凝集性を上げておき、シェル粒子のpH(pH)を低めに調整することで、シェル粒子同士の凝集(ホモ凝集)を抑制しながらコア粒子への凝集を生じさせられる。
なお、添加後のシェル粒子のコア粒子への凝集速度をコントロールする場合には、撹拌数の調整、前述した(1)〜(7)に記載の温度内での昇温/降温操作、前述したpH条件を上記式(a)〜(c)に記載の範囲とするために用いることのできるpH調整剤をさ
らに添加しても良い。
このようなpH調整剤とは、特に限定されず、酸及びアルカリ共に水に溶けるものであればよい。具体的には、例えば、下記のものが挙げられる。
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基及びアンモニア等が挙げられる。
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸酢酸、クエン酸、ギ酸等のカルボン酸が挙げられる。
また、工程IVにおいて添加される前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液中の当該非晶性ポリエステル樹脂の粒子の体積平均粒径は、50〜300nmの範囲内であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の粒子の体積平均粒径は、50〜300nmの範囲内であれば、シェルの付着状態を均一にでき、より少ないシェル量で被覆率を確保できる。また、50nm以上であれば、シェル粒子同士の凝集が生じることを回避でき、300nm以下であれば、十分に被覆できるため、コア粒子が過度に露出するなど十分な被覆率を得られないおそれを回避できる。
(pH測定)
コア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)、コア粒子の分散液に添加する前の非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)は下記のようにして測定した。
ガラス電極式水素イオン濃度指示計;HM−20P(東亞DKK社製)にて、比較電極内部液;RE−4をフタル酸標準液(pH4.01、25℃)、中性リン酸塩標準液(pH6.86、25℃)、ホウ酸塩標準液(pH9.18、25℃)の3点校正を行った後に、コア粒子の分散液の25℃におけるpH及びコア粒子の分散液に添加する前の非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液のpHを測定した。
<工程V>
工程Vは、前記コア・シェル粒子分散液を、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+10℃以上、かつ前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度に調整し、前記コア粒子及び前記シェル粒子並びに前記シェル粒子同士を融着し、コア・シェル型トナー母体粒子分散液を得る。
<工程VI>
工程VIでは、工程Vで得られた前記コア・シェル型トナー母体粒子分散液を冷却後、当該コア・シェル型トナー母体粒子分散液から前記コア・シェル型トナー母体粒子を分離し、乾燥する。
分離の方法は、コア・シェル型トナー母体粒子分散液から前記コア・シェル型トナー母体粒子を分離できるものであれば、特に限定されず、公知の方法を使用できる。
具体的には、例えば、濾過することによって、分離(濾別)してもよい。濾過の方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などがあるが、特に限定されるものではない。
次いで、また、必要により、分離されたコア・シェル型トナー母体粒子は、洗浄されてもよい。例えば、濾別されたコア・シェル型トナー母体粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を、洗浄により除去することとしてもよい。洗浄は、濾液の電気伝導度が、例えば1〜10μS/cmの範囲内のレベルになるまで水洗処理を行うことが好ましい。
乾燥は、分離又は洗浄されたコア・シェル型トナー母体粒子に施される。この乾燥する方法としては、特に限定されず、例えば、乾燥機を用いる方法であってもよい。乾燥機としては、具体的に、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理されたトナー母体粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥されたコア・シェル型トナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、解砕処理を行っても良い。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(外添剤の添加)
必要により、本発明に係るコア・シェル型トナー母体粒子は、外添剤が添加されていてもよい。外添剤は、乾燥処理したコア・シェル型トナー母体粒子の表面へ必要に応じて添加、混合することでトナーを作製することができる。外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。
《現像剤》
本発明のトナーの製造方法で製造されたトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmの範囲内のものが好ましく、25〜60μmの範囲内のものがより好ましい。
キャリアとしては、更に樹脂により被覆されているもの、又は樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、シクロヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エステル樹脂又はフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
《定着方法》
本発明のトナーを使用する好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、更には熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発
明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
<スチレン−アクリル樹脂粒子分散液(StAc樹脂)の調製>
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部(重合開始剤)をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、下記組成からなるモノマー混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x1)を調製した。
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液(x1)260質量部と、下記組成からなるモノマー及び離型剤を90℃にて溶解させた溶液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
スチレン 284質量部
n−ブチルアクリレート( 92質量部
メタクリル酸 13質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 3.0質量部
離型剤:ベヘン酸ベヘネート(融点73℃) 190質量部
次いで、この乳化粒子(油滴)を含む分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x2)を調製した。
(3)第3段重合
更に、樹脂微粒子の分散液(x2)にイオン交換水400質量部を添加し、良く混合した後、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなるモノマー混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン−アクリル樹脂)からなるスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液(X1)を調製した。
スチレン(St) 350質量部
n−ブチルアクリレート(BA) 215質量部
メタクリル酸(AA) 20質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
得られたスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液(X1)について物性を測定したところ
、スチレン−アクリル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径が210nm、乾固物のガラス転移温度(T)が40℃、重量平均分子量(Mw)が32000であった。
<着色剤分散液の調製>
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、カーボンブラック粒子〔Bk〕が分散されてなる「カーボンブラック粒子分散液」を調製した。この分散液におけるカーボンブラック粒子〔Bk〕の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で115nmであった。
<結晶性ポリエステル樹脂(c1)の合成>
1,14−テトラデカンジカルボン酸、306質量部及び1,6−ヘキサンジオール283質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.1質量部添加し、窒素ガス気流下、約180℃で8時間撹拌反応を行った。更に、Ti(OBu)を0.2質量部添加し、温度を約220℃に上げ6時間撹拌反応を行った後、反応容器内を1333.2Paまで減圧し、減圧下で反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂(c1)の数平均分子量(Mn)は5500、体積平均分子量(Mw)は18000、融点(Tc)は74℃であった。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C1)の調製>
上記結晶性ポリエステル樹脂(c1)を30質量部溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂(c1)の移送と同時に、当該乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂(c1)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C1)を調製した。このとき、当該結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C1)に含まれる粒子の体積基準のメジアン径は200nmであった。
<結晶性ポリエステル樹脂(c2)の合成>
1,14−テトラデカンジカルボン酸を281質量部及び1,6−ヘキサンジオール259質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.1質量部添加し、窒素ガス気流下、約180℃で溶解後、約8時間撹拌反応を行った。
また、上記と別で両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン−アクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 34質量部
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂(StAc)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した
。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂である結晶性ポリエステル樹脂(c2)を得た。結晶性ポリエステル樹脂(c2)は、その全量に対してCPEs以外の樹脂(StAc)ユニットを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(c2)の数平均分子量(Mn)は4500、融点(Tc)は72℃であった。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C2)の調製>
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C1)の調製において、結晶性ポリエステル樹脂(c1)から結晶性ポリエステル樹脂(c2)に変更した以外は同様にして結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C2)を調製した。このとき、当該結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C2)に含まれる粒子の体積基準のメジアン径は230nmであった。
<非晶性ポリエステル樹脂s1の合成>
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン−アクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルペルオキシド) 16質量部
また、下記の重縮合系樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物 255.5質量部
ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物 30.2質量部
テレフタル酸 56.3質量部
フマル酸 35.0質量部
アジピン酸 22.0質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行った。次いで、脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂としての非晶性ポリエステル樹脂s1(以下、「シェル用樹脂(s1)」ともいう。)を得た。得られたシェル用樹脂(s1)について、ガラス転移温度(Tga)は60℃、重量平均分子量(Mw)は27000であった。この際の軟化点は109℃であった。
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S1)の調製>
得られたシェル用樹脂(s1)100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精
機製作所製)でV−LEVEL 300μAで30分間超音波分散後した後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%のシェル用の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S1)を調製した。このとき、上記分散液(S1)に含まれる粒子は、体積平均粒径が140nmであった。
<非晶性ポリエステル樹脂s2の合成>
シェル用樹脂(s1)の合成において、軟化点が105.6℃に達した際に反応を停止させた以外は同様にして非晶性ポリエステル樹脂s2(以下、「シェル用樹脂(s2)」ともいう。)の合成を行った。得られたシェル用樹脂(s2)のガラス転移温度は58℃、重量平均分子量(Mw)は16000であった。
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S2)の調製>
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S1)の調製において、シェル用樹脂(s1)をシェル用樹脂(s2)に変更したほかは同様の方法で調製した。なお、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S2)に含まれる粒子は、体積平均粒形が162nmであった。
<トナー母体粒子1の製造>
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、固形分換算で200質量部のスチレン−アクリル樹脂微粒子分散液(X1)、着色剤固形分換算で20質量部の着色剤分散液、及びイオン交換水2000質量部を投入し、次いで上記反応容器に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液をさらに添加して、上記反応容器中の混合液のpHを10に調整した。次いで、凝集剤として塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、25℃において10分間かけて上記混合液に添加した(工程I)。
次いで、得られた混合液を90分間かけて78℃まで昇温し、次いで、当該混合液に、固形分換算で20質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(C1)を20分間かけて添加し、撹拌数を適宜調整し、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、当該会合粒子の体積基準のメジアン径が5.5μmまで、粒子の凝集合一を行いコア粒子分散液を得た(工程II)。
得られたコア粒子分散液を、45℃まで冷却した(工程III)。
冷却されたコア粒子分散液に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃での換算値でpH8(pH)とした。その後、コア粒子分散液を63℃(表1に記載の「シェル付着温度T」)へ昇温した。昇温されたコア粒子分散液に、pH2((pH、25℃での換算値)に調整した非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(S1)を20分かけて添加した。コア粒子表面にシェル粒子を凝集させ、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加した(工程IV)。
次いで、得られた分散液の昇温を行い、72℃(表1に記載の「融着温度T」)にて撹拌することにより、粒子の融着を進行させた(工程V)。
分散液中の当該粒子の平均円形度を測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個として)測定し、当該平均円形度が0.958になった時点で上記分散液を35℃まで冷却し、上記粒子の融着を停止させた。こうして、トナー母体粒子1を含有するトナー分散液1を得た。
得られたトナー分散液1からトナー母体粒子1を分離、洗浄後、含水率1%未満となるまで乾燥し、トナー母体粒子1を得た(工程VI)。
<トナー母体粒子2〜19の製造>
トナー母体粒子1の製造から、工程III〜工程Vにおける温度並びにコア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)及び非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)を変更し、トナー母体粒子2〜19を製造した。
具体的に変更した条件は、表1に示す。その他は、トナー母体粒子1と同様に製造した。
Figure 0006740640
[静電荷像現像用トナー1の製造]
得られたトナー母体粒子1を100質量部、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、静電荷像現像用トナー1を製造した。
[静電荷像現像用トナー2〜19の製造]
静電荷像現像用トナー1の製造において、トナー母体粒子1をトナー母体粒子2〜19に変更した以外は静電荷像現像用トナー1と同様に製造した。
[評価方法]
静電荷像現像用トナー1〜19について、下記のようにして現像剤1〜19を作製した。
この現像剤1〜19を市販のカラー複合機「bizhub PRO C1060」(コニカミノルタ社製)の現像装置に装填してテスト画像を形成し、静電荷像現像用トナー1〜19について、下記評価をした。結果は表2に示す。なお、下記評価は、いずれも評価基準も◎、○及び△を合格とする。
<現像剤の製造>
(1)キャリアの作製
フェライト芯材粒子100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂微粒子5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライト芯材粒子の表面に樹脂コート層を形成させることにより、体積基準のメジアン径が35μmであるキャリアを得た。
キャリアの体積基準のメジアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定した。
(2)トナーとキャリアの混合
静電荷像現像用トナー1〜19の各々に対して、上記のキャリアをトナー濃度が6.5質量%となるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器械株式会社)によって回転速度45rpmで30分間混合することにより、現像剤1〜19を作製し、これを静電荷像現像用トナー1〜19の評価に用いた。
<低温定着性(アンダーオフセット性)>
アンダーオフセットとは、定着機を通過する際に与えられた熱によるトナー層の溶融が不十分であるために記録紙等の転写材から剥離してしまう画像欠陥をいう。
画像評価は、上述した現像装置に、上記で作製したトナーと現像剤を順次装填して評価を行った。なお、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙としてNPI 128g/m(日本製紙製)を用い、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を定着速度300mm/secで定着上ベルトの温度を100〜200℃、定着下ローラーの温度を100℃に設定し5℃毎の水準で定着させたときに、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を評価し、低温定着性の指標とした。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れており、145℃未満を合格とした。
◎:定着下限温度が120℃未満
○:定着下限温度が120℃以上135℃未満
△:定着下限温度が135℃以上145℃未満
×:定着下限温度が145℃以上
<耐熱保管性>
トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で57.5℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)をトナー凝集率として測定した。
トナー凝集率は下記式により算出される値である。
トナー凝集率(質量%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
下記に記載の基準によりトナーのトナー凝集率評価を行い、耐熱保管性の指標とした。
◎:トナー凝集率が10質量%未満(トナーの耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が10質量%以上15質量%未満(トナーの耐熱保管性が良好)
△:トナー凝集率が15質量%以上20質量%未満(トナーの耐熱保管性やや劣るが許容レベル)
×:トナー凝集率が20質量%以上(トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可)。
<耐ドキュメントオフセット性>
上述したマシンにてPOD128(王子製紙)上に付着量10.0g/mのベタパッチを、光沢が60〜70になるよう定着条件を変更し、定着画像を出力した。なお、光沢はガードナー社製マイクログロス75°により測定を行った。また、白紙のPOD128紙を同定着条件で通紙したものを用意し、画像部と画像部、画像部と非画像部を貼り合わせたものに、温度と圧力を印加した。温度と圧力の条件は、60℃で10g/m及び50℃で80g/mの2水準である。それらのサンプルを1週間曝露した後、ゆっくりと剥がし、片面への移行度合いを目視により下記ランクで耐ドキュメントオフセット性(表2には、「DO」と記載。)を評価した。
◎:片面への移行がなく問題ないレベル
○:画像の片面への移行はなく、光沢ムラがある
△:画像の片面への移行が少しあるが、許容レベル
×:離面が難しく、画像の片面への移行が大いにある
<転写性>
高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)下で、10cm角のベタ画像をテスト画像としてプリントし、感光体上に現像されて付着したトナーの質量(W転写前)と、転写紙上に転写されて付着したトナーの質量(W転写後)を測定し、下記式(イ)で定義される転写率を算出した。結果を表2に示す。なお、転写率が85%以上である場合を合格とする。
式(イ):転写率(%)=(W転写後/W転写前)×100
○:90%以上
△:85%以上90%未満
×:85%未満
<GI値>
現像剤1〜19について、市販の複合プリンターのフルカラー複写機「bizhub PRO C1060」(コニカミノルタ社製)において、定着装置を定着用ヒートローラの表面温度を100〜200℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、定着用ヒートローラの表面温度を、上記の低温オフセット温度及び下限定着温度のうちの高い方の温度(最低定着温度)に設定した状態で、厚さ250g/mのアートコート
紙上に、トナー付着量10mg/cmのベタ画像(100%画像)、及び50%平網画像を形成し、該50%平網画像部分のGI値を、画像解析システム「GI−es−8500AAC」(NATIONAL INSTRUMENT社製)を用いて測定した。GI値が0.22未満であれば、画像のザラツキ感が少なく、実用に耐えうる画像品質と判断される。
○:0.20未満
△:0.20以上0.22未満
×:0.22以上
Figure 0006740640
表2に示すように、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、耐熱保管性、流動性、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び画像品質の向上した静電荷像現像用トナーを製造できることがわかる。

Claims (5)

  1. 少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むコア・シェル型トナー母体粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    前記結着樹脂が、少なくともスチレン−アクリル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含み、かつ、
    少なくとも下記工程I〜工程Vを有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
    (工程I):少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤とを含む分散混合液に、撹拌下で凝集剤を添加する工程
    (工程II):前記工程Iにおいて前記凝集剤が添加された前記分散混合液に、前記結晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加し、加熱撹拌下で、少なくとも前記スチレン−アクリル樹脂と前記離型剤と前記結晶性ポリエステル樹脂とを凝集合一させ、コア粒子の分散液を得る工程
    (工程III):前記工程IIにて得られた前記コア粒子の分散液を、少なくとも前記結晶性
    ポリエステル樹脂の結晶化ピーク温度(Tqc)−15℃以下の温度まで冷却する工程
    (工程IV):前記工程IIIにて冷却された前記コア粒子の分散液の温度を、
    (1)少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度とし、
    (2)前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)+5℃以上の温度とし、
    (3)前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+3℃以下の温度とし、かつ
    (4)Tgs<Tga<Tqcの関係を満たす温度とし、
    当該コア粒子の分散液に、前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液を添加し、前記コア粒子の表面に前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子をシェル粒子として付着させコア・シェル粒子分散液を得る工程
    (工程V):前記コア・シェル粒子分散液を、前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)+10℃以上、かつ前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)以下の温度に調整し、前記コア粒子及び前記シェル粒子並びに前記シェル粒子同士を融着し、コア・シェル型トナー母体粒子分散液を得る工程
  2. 前記工程IVにおいて、前記コア粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とコア粒
    子の分散液に添加する前の前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液の25℃におけるpH(pH)とが、下記式(a)〜(c)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    式(a) 3≦pH−pH
    式(b) 7≦pH≦10
    式(c) 2≦pH≦5
  3. 前記工程IVにおいて添加される前記非晶性ポリエステル樹脂の粒子の分散液中の当該非晶性ポリエステル樹脂の粒子の体積平均粒径が、50〜300nmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tgs)が、35〜50℃の範囲内であり、
    前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tga)が、53〜63℃の範囲内であり、
    前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tmc)が、65〜80℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂と化学結合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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