JP6512074B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

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本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法に関し、詳細には、高温高湿下においてもトナー性能が安定な静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置において、画像形成の高速化や環境負荷の低減等を目的として省エネルギー化を図るため、より低い温度で熱定着できる静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)が求められている。このような低温定着性のトナーとしては、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げるため、結晶性ポリエステル樹脂を可塑剤(定着助剤の1種)として含有するトナーが知られている。
例えば、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と塩化ビニル系樹脂を特定の割合で含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。トナー中に含有する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の相溶の程度を、それぞれの含有量の割合で調整することにより、結晶性ポリエステル樹脂がもたらす低温定着性を向上させている。
しかしながら、トナー中の結晶性ポリエステル樹脂は、高温高湿下において結晶性や分散状態が変動しやすく、トナー性能を変動させることがあった。
特開2014−119554号公報
本発明は上記問題及び状況に鑑みてなされ、その解決課題は、高温高湿下においてもトナー性能が安定な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、高温高湿下で結晶化しやすい結晶性ポリエステル樹脂を非晶性ポリエステル樹脂と特定の割合で混合した後に、スチレン−アクリル樹脂等の他の成分と凝集させてトナー粒子を形成することにより、高温高湿下においてもトナー性能が安定なトナーが得られることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段によって解決される。
1.トナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
(a)結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を、それぞれの合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が10〜75質量%の範囲内となるように、有機溶媒中に添加して油相液を得る工程と、
(b)前記油相液を塩基性材料により中和し、水系媒体を添加して転相乳化した後、前記有機溶媒を除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を得る工程と、
(c)水系媒体中で、少なくともスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させて、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を得る工程と、
(d)水系媒体中に、少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液、前記スチレン−アクリル系樹脂粒子の分散液及び着色剤粒子の分散液を添加し、前記結晶性ポリエステル樹脂粒子、前記非晶性ポリエステル樹脂粒子、前記スチレン−アクリル樹脂粒子及び前記着色剤粒子を凝集及び融着させて、前記トナー粒子を形成する工程と、
を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
2.前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記スチレン−アクリル樹脂の割合が30〜90質量%の範囲内となるように、前記スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を添加することを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
3.前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記結晶性ポリエステル樹脂の割合が5〜35質量%の範囲内となるように、前記結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加することを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
4.前記結晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
5.前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
6.前記ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの割合が、40質量%以下であることを特徴とする第4項又は第5項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
7.前記工程(b)において、前記転相乳化時の温度をTa(℃)、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点をTb(℃)と表すとき、Ta及びTbが下記式を満たすことを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
(式) Ta>(Tb−15)
本発明の上記手段により、高温高湿下においてもトナー性能が安定な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供できる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構は明確になっていないが、以下のように推察される。
結晶性ポリエステル樹脂を非晶性ポリエステル樹脂やスチレン-アクリル樹脂等と一度に添加して凝集させ、トナー粒子を形成するのではなく、凝集前に工程(a)によってあらかじめ結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を混合しておくことにより、工程(d)において形成したトナー粒子中において結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を隣接させることができる。結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖間に非晶性ポリエステル樹脂の分子鎖が介在し、高温高湿下における結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の規則的な配列を阻害するため、結晶ポリエステル樹脂の結晶の成長を抑制できると推察される。これにより、結晶化に起因する低温定着性の低下を抑えることができ、さらに非晶性ポリエステル樹脂によって耐熱性が向上するため、高温高湿下においてもトナー性能の変動を効果的に抑制して、安定したトナー性能を維持できると推察される。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、トナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、(a)結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を、それぞれの合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が10〜75質量%の範囲内となるように、有機溶媒中に添加して油相液を得る工程と、(b)前記油相液を塩基性材料により中和し、水系媒体を添加して転相乳化した後、前記有機溶媒を除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を得る工程と、(c)水系媒体中で、少なくともスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させて、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を得る工程と、(d)水系媒体中に、少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液、前記スチレン−アクリル系樹脂粒子の分散液及び着色剤粒子の分散液を添加し、前記結晶性ポリエステル樹脂粒子、前記非晶性ポリエステル樹脂粒子、前記スチレン−アクリル樹脂粒子及び前記着色剤粒子を凝集及び融着させて、前記トナー粒子を形成する工程と、を含むことを特徴とする。この特徴は各請求項に係る発明に共通の技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、トナーの耐熱性及び低温定着性を高める観点から、前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記スチレン−アクリル樹脂の割合が30〜90質量%の範囲内となるように、前記スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を添加することが好ましい。
同様の観点から、前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記結晶性ポリエステル樹脂の割合が5〜35質量%の範囲内となるように、前記結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加することが好ましい。
トナー粒子中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散性を高めて優れた低温定着性を得る観点からは、前記結晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることが好ましい。
トナー粒子中の非晶性ポエリステル樹脂粒子の分散性を高めて優れた耐熱性を得る観点からは、前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることが好ましい。
前記ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの割合が、40質量%以下であると、結晶性ポリエステル樹脂による低温定着性又は非晶性ポリエステル樹脂による耐熱性が高まり、好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合性を高める観点から、前記工程(b)において、前記転相乳化時の温度をTa(℃)、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点をTb(℃)と表すとき、Ta及びTbが下記式を満たすことが好ましい。
(式) Ta>(Tb−15)
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態について詳細な説明をする。
なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程(a)〜(d)を含み、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を形成する。
〔工程(a)〕
工程(a)では、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が10〜75質量%の範囲内となるように、有機溶媒中に添加して油相液を得る。
結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂をあらかじめ混合した後に、後述する工程(d)においてスチレン−アクリル樹脂等の他の成分と凝集させてトナー粒子を形成することにより、トナー粒子内部において、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を隣接させることができる。結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖間に介在する非晶性ポリエステル樹脂は、高温高湿下においても結晶性ポリエステル樹脂の規則的な配列を阻害するため、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を効果的に抑制することができる。
結晶性ポリエステル樹脂との合計質量に対して10質量%以上の非晶性ポリエステル樹脂を使用することにより、上述した結晶化の抑制作用が十分に得られるとともに、トナーの耐熱性が向上する。また、非晶性ポリエステル樹脂の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂との合計質量に対して75質量%以下であるので、結晶性ポリエステル樹脂の可塑剤としての作用を十分に発揮することができ、優れた低温定着性を得ることができる。
結晶性ポリエステル樹脂による低温定着性と、非晶性ポリエステル樹脂による耐熱性のバランスを維持し、安定したトナー性能を得る観点からは、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が、30〜55質量%の範囲内にあることが好ましい。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)モノマーと、2価以上のアルコール(多価アルコール)モノマーとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、結晶性を示すポリエステル樹脂であり、可塑剤の1種である。結晶性を示すとは、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により得られる吸熱曲線において、融点すなわち昇温時に明確な吸熱ピークを有することをいう。明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークをいう。
結晶性ポリエステル樹脂の合成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを重合する(エステル化する)ことにより、結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
多価カルボン酸モノマーは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
使用できる多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;これらカルボン酸化合物の無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールモノマーは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。
使用できる多価アルコールモノマーとしては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等の脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
使用可能なエステル化触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;アミン化合物等が挙げられる。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間の範囲内であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の融点(℃)は、十分な低温定着性が得られるという観点から、60〜90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70〜85℃である。
なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いてDSCによって測定することができる。
具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目と2回目の加熱時には、10℃/minの昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000〜15000であることがトナーの低温定着性及びトナーで形成した画像の光沢度の安定性を得る観点から好ましい。
樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定した分子量分布から求めることができる。
試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製する。GPC装置HLC−8120GPC(東ソー社製)及びカラムTSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ-m3連(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
工程(a)において使用できる有機溶媒としては、転相乳化後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、水への溶解性が低いものが好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内、好ましくは1〜100質量部の範囲内、さらに好ましくは25〜70質量部の範囲内である。
工程(a)において使用する結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂がスチレン−アクリル樹脂により変性されたとは、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル重合セグメントとが化学結合して、グラフト共重合体等の共重合体を形成していることをいう。
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、ハイブリッド樹脂のうち、結晶性ポエリステル樹脂に由来の構造を有する樹脂部分をいう。スチレン−アクリル重合セグメントとは、ハイブリッド樹脂のうち、スチレン−アクリル樹脂に由来する構造を有する樹脂部分をいう。
ハイブリッド樹脂である結晶性ポリエステル樹脂は、ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントが、工程(d)において結着樹脂として添加されるスチレン−アクリル樹脂との相溶性が高いため、トナー粒子中における結晶性ポリエステル樹脂の分散性が向上する。結晶性ポリエステルが可塑剤として均一に作用することができるため、低温定着性が向上する。
上記ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの質量の割合は、40質量%以下であると、結晶性ポリエステル樹脂の割合が増えて低温定着性が高まるため、好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
ハイブリッド樹脂中の各セグメントの割合は、例えばNMR測定、メチル化反応熱分解(Py:Pyrolysis)−GC/MS測定により特定することができる。
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000〜100000の範囲であると好ましく、7000〜50000であるとより好ましく、8000〜40000の範囲であると特に好ましい。
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を100000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を5000以上とすることにより、保管時におけるハイブリッド樹脂とトナー粒子中の非晶性樹脂との過剰な相溶を抑制し、トナー粒子同士の融着による画像不良を効果的に抑制して長期保管性を得ることができる。
上記ハイブリッド樹脂の合成方法としては、例えば下記合成方法(1)〜(3)が挙げられる。
(1)あらかじめ用意した結晶性ポリエステル樹脂に両反応性モノマーを反応させた後、スチレン−アクリル樹脂の原料であるスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを反応させて、結晶性ポリエステル重合セグメントにスチレン−アクリル重合セグメントを化学結合させる方法
(2)あらかじめ用意したスチレン−アクリル重合セグメントに両反応性モノマーを反応させた後、結晶性ポリエステル樹脂の原料である多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーを反応させて、スチレン−アクリル重合セグメントに結晶性ポリエステル重合セグメントを化学結合させる方法
(3)あらかじめ用意した結晶性ポリエステル重合セグメント及びスチレン−アクリル重合セグメントに両反応性モノマーを反応させて、それぞれのセグメントを化学結合させる方法
両反応性モノマーとは、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル重合セグメントの両方と反応し得る置換基と、重合性不飽和基とを有するモノマーである。
両反応性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等を使用できる。
また、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーは、後述する工程(c)で使用するスチレン−アクリル樹脂の原料と同様のモノマーを使用することができる。
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)モノマーと、2価以上のアルコール(多価アルコール)モノマーとの重合反応によって得られるポリエステル樹脂のうち、非晶性を示す樹脂をいう。非晶性を示すとは、DSCにより得られる吸熱曲線において、ガラス転移点(Tg)を有するが、融点すなわち昇温時の明確な吸熱ピークがないことをいう。明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内の吸熱ピークをいう。
非晶性ポリエステル樹脂の原料である多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーとしては、結晶性ポリエステル樹脂と同様のものを使用することができる。
多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基(OH)と多価カルボン酸モノマーのカルボキシ基(COOH)との当量比(OH)/(COOH)が、1.5/1〜1/1.5の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。
上記非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000〜10000の範囲内にあることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は、7000〜40000の範囲内にあることが好ましい。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様にしてGPCにより測定した分子量分布から求めることができる。
上記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、20〜70℃の範囲内にあることが好ましい。
ガラス転移点(Tg)は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)等を用いることができる。
非晶性ポリエステル樹脂についても、トナー粒子中における分散性を高める観点から、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂がスチレン−アクリル樹脂により変性されたとは、非晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル重合セグメントが化学結合して、グラフト共重合体等の共重合体を形成していることをいう。
非晶性ポリエステル重合セグメントとは、ハイブリッド樹脂のうち、非晶性ポエリステル樹脂に由来の構造を有する樹脂部分をいう。スチレン−アクリル重合セグメントとは、ハイブリッド樹脂のうち、スチレン−アクリル樹脂に由来の構造を有する樹脂部分をいう。
非晶性ポリエステル樹脂を変性させたハイブリッド樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を変性させたハイブリッド樹脂と同様にして合成することができる。
上記ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの質量の割合は、40質量%以下であると、非晶性ポリエステル樹脂の割合が増え、非晶性ポリエステル樹脂による結晶化の阻害能及び耐熱性が高まるため、好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
ハイブリッド樹脂中の各セグメントの割合は、例えばNMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定により特定することができる。
なかでも、多価カルボン酸モノマーとして不飽和脂肪族ジカルボン酸を使用し、ハイブリッド樹脂中の非晶性ポリエステル重合セグメントが、不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位を含有することが好ましい。不飽和脂肪族ジカルボン酸は、分子内にビニレン基を有する鎖状のジカルボン酸である。
非晶性ポリエステル重合セグメントが不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位を有するハイブリッド樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントの主鎖のエステル基に由来するシャープメルト性をトナー粒子に付与することができ、低温定着性が高まる。
非晶性ポリエステル重合セグメントを構成するカルボン酸モノマーに由来の構造単位のうち、不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位の割合は、5〜85モル%の範囲内であることが好ましく、25〜83モル%の範囲内であることがより好ましく、40〜80モル%の範囲内にあることがさらに好ましい。
この範囲内であれば、ハイブリッド樹脂の非晶性ポリエステル重合セグメントと、結着樹脂として工程(d)において添加されるスチレン−アクリル樹脂との親和性を適切に抑制し、スチレン−アクリル樹脂中にハイブリッド樹脂を良好に分散させることができる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の両方がハイブリッド樹脂であると、それぞれのスチレン−アクリル重合セグメント同士の相溶性が高い。各ハイブリッド樹脂中の結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性ポリエステル重合セグメントをより隣接させやすくなり、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を阻害しやすくなる。
〔工程(b)〕
工程(a)により得られた油相液を塩基性材料により中和し、水系媒体を添加して転相乳化した後、有機溶媒を除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を得る。
転相乳化時の温度をTa(℃)、結晶性ポリエステル樹脂の融点をTb(℃)と表すとき、Ta及びTbが下記式を満たすことが好ましい。
(式) Ta>(Tb−15)
転相乳化時の温度Taを(Tb−15)より高くすることにより、油相液において結晶性ポリエステル樹脂が溶融しやすくなる。これにより、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を良く混合することができ、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖間に非晶性ポリエステル樹脂の分子鎖を均一に介在させることができる。
より溶融しやすくする観点からは、Ta及びTbが下記式を満たすことがより好ましい。
(式) Ta>(Tb−5)
塩基性材料としては、一般的なものを使用することができ、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、アンモニア水等が挙げられる。
水系媒体とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。後述する工程(c)及び(d)で使用する水系媒体も同様である。
水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が好ましい。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。
(界面活性剤)
転相乳化時には、分散した液滴の凝集を防ぎ、分散状態を安定させる観点から、界面活性剤を分散安定剤として添加することができる。
界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等のカチオン性界面活性剤、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル等のアニオン性界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のノニオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤を使用できる。
乳化は機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等を使用できる。具体的な例としてはTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)等を挙げることができる。
乳化により液中に分散する油滴の体積基準のメジアン径は、60〜1000nmの範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmの範囲内である。
体積基準のメジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750(株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。この油滴の体積基準のメジアン径は、乳化時の機械的エネルギーの大きさにより制御することができる。
転相乳化後、有機溶媒を除去して得られた分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子及び非晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で50〜500nmの範囲内にあることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂粒子及び非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、マイクロトラックUPA−150(日機装社製)を用いて測定される値である。
〔工程(c)〕
工程(c)では、水系媒体中で、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させて、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を得る。
(スチレン−アクリル樹脂)
スチレン−アクリル樹脂は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを重合反応させて得られる重合体であり、結着樹脂の1種である。スチレン−アクリル樹脂は、高温で弾性が高いという特性を有する樹脂であるため、定着分離性と高温オフセット性が向上する。
スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーの重合反応を多段階で行うこともできる。例えば、3段階で重合反応させる場合、第1段重合によりスチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液中にさらにモノマーと重合開始剤を添加して、第2段重合させる。第2段重合により調製した分散液中にさらにモノマーと重合開始剤を添加して第3段重合させる。第2段及び第3段の重合時には、先の重合により生成された分散液中の樹脂粒子をシード(種)として、この樹脂粒子に新たに添加したモノマーをさらに重合させることができ、樹脂粒子の粒径の均一化等、粒子形成の制御が容易になる。
上記スチレン−アクリル樹脂の合成に使用できるスチレン系モノマーは、スチレン構造を含み、かつラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。
スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、これらの誘導体等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−アクリル樹脂の合成に使用できる(メタ)アクリル酸系モノマーは、(メタ)アクリル基を含有し、かつラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。
具体的には、アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル等が挙げられ、メタクリル酸系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−アクリル樹脂の合成には他の重合性モノマーを使用することもできる。
使用できる他の重合性モノマーとしては、例えば単官能ビニル系モノマー、多官能ビニル系モノマー等が挙げられる。
単官能ビニル系モノマーとしては、例えば無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
多官能ビニル系モノマーとしては、例えばブタジエン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のジアクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート、トリメタクリレート等が挙げられる。
重合性モノマーの全量に対する多官能ビニル系モノマーの共重合比は、通常、0.001〜5質量%の範囲内であり、好ましくは0.003〜2質量%の範囲内、より好ましくは0.01〜1質量%の範囲内である。多官能ビニル系モノマーの使用により、テトラヒドロフランに不溶のゲル成分が生成するが、重合物全体においてゲル成分の占める割合は通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
スチレン−アクリル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が25000〜60000の範囲内にあり、かつ数平均分子量(Mn)が8000〜15000の範囲内にあることが、低温定着性及びトナーで形成した画像の光沢度の安定性の確保の観点から好ましい。
また、スチレン−アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、35〜80℃の範囲内にあることが好ましい。
水系媒体には、スチレン系モノマー等の重合性モノマーの分散性を高めるため、上記工程(b)と同様に界面活性剤を添加することができる。また、重合反応には重合開始剤、連鎖移動剤等を使用することができる。
(重合開始剤)
重合開始剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。使用できる重合開始剤としては、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチル等の過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、使用する重合性モノマーの全量に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
(連鎖移動剤)
重合反応時には、重合体の分子量を制御する観点から、重合性モノマーとともに連鎖移動剤を添加することができる。
上記スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させる重合工程においては、スチレン−アクリル樹脂の分子量を調整することを目的として、例えばn−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステル等の一般的な連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性モノマーの全量に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
〔工程(d)〕
工程(d)では、水系媒体中に、少なくとも、工程(a)で得られた結晶性ポリスエステル樹脂粒子及び非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液、工程(c)で得られたスチレン−アクリル系樹脂粒子の分散液及び着色剤粒子の分散液を添加し、ポリスエステル樹脂粒子、スチレン−アクリル系樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集及び融着させて、トナー粒子を形成する。
工程(d)においては、トナー粒子が含有する樹脂中のスチレン−アクリル樹脂の割合が30〜90質量%の範囲内となるように、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を添加することが好ましく、60〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。
スチレンーアクリル樹脂の割合が、30質量%以上であればトナーの耐熱性が向上し、90質量%以内であれば、結晶性ポリエステル樹脂の割合が増え、トナーの低温定着性が向上する。
また、工程(d)においては、トナー粒子が含有する樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂の割合が5〜35質量%の範囲内となるように、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加することが好ましく、10〜18質量%の範囲内であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の割合が、5質量%以上であればトナーの低温定着性が向上し、35質量%以下であれば、スチレン−アクリル樹脂の割合が増えるため、トナーの耐熱性が向上する。
具体的には、結晶性ポリエステル樹脂粒子及び非晶性ポリスエステル樹脂粒子の分散液、スチレン−アクリル系樹脂粒子の分散液と、着色剤粒子の分散液と、水系媒体とを混合し、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加して加熱する。これにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子、非晶性ポリスエステル樹脂粒子、スチレン−アクリル系樹脂粒子及び着色剤粒子を凝集、融着させる。融着温度は、例えば70〜95℃の範囲内であることが好ましい。
(着色剤)
着色剤粒子の分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより、得ることができる。
この分散液中の着色剤粒子は、体積基準のメジアン径が10〜300nmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100〜200nmの範囲内であり、さらに好ましくは100〜150nmの範囲内である。
着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定することができる。
着色剤としては、公知の種々の顔料や染料を用いることができる。
カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられ、黒色酸化鉄としては、例えばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄等が挙げられる。
染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられる。
顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等が挙げられる。
各色のトナーを得るため、各色について、これら着色剤を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
トナー粒子中の着色剤の含有量は、1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、2〜8質量%の範囲内にあることがより好ましい。この範囲であれば、トナーに十分な着色力を付与することができ、さらに着色剤の遊離やキャリアへの付着等による帯電性への影響を抑えることができる。
(凝集剤)
使用できる凝集剤としては、特に限定されず、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等の1価の金属塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、硫酸マグネシウム等の2価の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。なかでも、より少量で凝集させることができることから、2価の金属塩が好ましい。
なお、結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂以外の他の樹脂も使用することができる。スチレン−アクリル樹脂以外の他の樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を併用することができ、工程(c)及び(d)のいずれかで添加すればよい。
また、可塑剤についても、結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂を使用することができる。結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等の結晶性樹脂を使用できる。これら他の樹脂は、2種以上を併用することができ、工程(d)において添加することができる。
また、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等のトナー粒子を構成する他の成分も添加することができる。他の成分は、工程(c)及び(d)のいずれかにおいても添加することができる。
(離型剤)
離型剤は、トナーで画像が形成された用紙を定着部材により加熱及び加圧して定着処理する際に、トナーと定着部材の分離を容易にする。
離型剤としては、公知のワックス、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックス等を使用することができる。
なかでも、低温定着時の離型性を向上させる観点から、融点が低い、具体的には融点が40〜90℃の範囲内のワックスが好ましい。
離型剤の含有量は、着色剤を除いたトナー粒子全量に対して、5〜20質量%であることが好ましい。これにより、離型剤の添加による耐熱性及び耐久性の低下を抑制しつつ、定着分離性を向上できる、という効果が得られる。
離型剤の平均粒径は、特に限られないが、例えば体積基準のメジアン径で3μm以下であることが好ましい。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。
トナー粒子中の荷電制御剤の含有量は、0〜5質量%の範囲内とすることができ、好ましくは0〜0.5質量%の範囲内である。
〔熟成工程〕
上記工程(d)の後、熟成工程を経て、上記工程(d)によって得られたトナー粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させることが好ましい。
熟成工程では、トナー粒子が分散された系を加熱及び撹拌し、トナー粒子の形状が所望の円形度となるように、加熱温度、撹拌速度、加熱時間等を調整する。
〔シェル化工程〕
上記工程(d)又は熟成工程により単層構造のトナー粒子が得られるが、シェル化工程をさらに経て、当該トナー粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー粒子を形成することもできる。シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤等を含有し、ガラス転移点(Tg)が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点(Tg)が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することができる。
コア・シェル構造のトナー粒子を形成する場合、シェル層を構成する樹脂を水系媒体中に分散させて、シェル層の樹脂粒子の分散液を調製し、上記工程(d)又は熟成工程により得られたトナー粒子の分散液に添加して、トナー粒子の表面にシェル層の樹脂粒子を凝集、融着させる。これにより、コア・シェル構造を有するトナー粒子の分散液を得ることができる。
コア粒子にシェル層の樹脂粒子をより強固に凝集、融着させるため、シェル化工程に続いて加熱処理を行うことができる。加熱処理は、目的の円形度のトナー粒子が得られるまで行えばよい。
上記工程(d)によりトナー粒子を形成後、冷却工程、ろ過及び洗浄工程、乾燥工程等を経て、静電荷像現像用トナーを得ることができる。また、外添剤の添加工程を経ることにより、外添剤により処理されたトナー粒子を静電荷像現像用トナーとして得ることもできる。
〔冷却工程〕
冷却工程における冷却条件としては、1〜20℃/minの範囲内の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等が挙げられる。
〔ろ過及び洗浄工程〕
ろ過及び洗浄工程では、冷却されたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ケーキ状に成形したウェット状態のトナー粒子の集合物)から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレス等を使用して行うろ過法等を用いることができる。また、洗浄においては、ろ液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
〔乾燥工程〕
乾燥工程では、ろ過及び洗浄工程により得られたトナーケーキを、一般的な乾燥方法により乾燥することができる。
乾燥に使用できる乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することが好ましい。
乾燥後のトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。なお、乾燥後のトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
〔外添剤の添加工程〕
上記乾燥工程により得られたトナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するため、外添剤の添加工程において流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤で処理したトナー粒子を得てもよい。
(外添剤)
外添剤としては、無機粒子、有機粒子等の微粒子、滑材等を使用することができ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
無機粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム等の粒子を使用することができ、有機粒子としては、スチレン、メチルメタクリレート等の有機粒子を使用することができる。無機粒子は、疎水化処理が施されていてもよい。
滑材は、クリーニング性又は転写性の向上のために添加することができる。滑材としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸等の金属塩が挙げられ、金属塩の金属としては亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等が挙げられる。
〔静電荷像現像用トナーの特性〕
(ガラス転移点)
本発明の製造方法により得られた静電荷像現像用トナーは、ガラス転移点(Tg)が50〜70℃の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは55〜65℃の範囲内である。
ガラス転移点が上記範囲内にあれば、十分な低温定着性が得られる。また、トナーの耐熱性(熱的強度)を維持することができ、十分な耐熱性及び耐ホットオフセット性を得ることができる。よって、十分な低温定着性及び耐熱性を両立させることができる。
ガラス転移点(Tg)は、上記非晶性ビニル樹脂と同様にして測定することができる。
(融点)
本発明の製造方法により得られた静電荷像現像用トナーは、融点(Tm)が60〜90℃の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは65〜80℃の範囲内である。
融点が上記範囲内にあれば、十分な低温定着性が得られる。また、トナーの良好な耐熱性(熱的強度)も維持することができ、十分な耐熱性を得ることができる。よって、十分な低温定着性及び耐熱性を両立させることができる。
融点(Tm)は、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様にして測定することができる。
(トナー粒子の粒径)
本発明の製造方法により得られた静電荷像現像用トナーは、トナー粒子の体積基準のメジアン径が3〜8μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは5〜8μmの範囲内である。
体積基準のメジアン径が上記範囲内にあれば、1200dpiレベルの高解像度のドットを正確に再現することができる。
なお、体積基準のメジアン径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
上記体積基準のメジアン径は、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定することができる。
具体的には、試料(トナー)0.02gを、20mLの界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、1分間の超音波分散処理を行い、トナーの分散液を調製する。このトナーの分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。
そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径として求める。
(トナー粒子の平均円形度)
本発明の製造方法により得られる静電荷像現像用トナーは、トナー粒子の平均円形度が、0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内にあれば、トナー粒子の破砕を抑えることができ、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができる。また、トナーにより形成される画像が高画質となる。
上記平均円形度は、次のようにして測定することができる。
メジアン径を測定する場合と同様にして、トナーの分散液を調製する。FPIA−2100、FPIA−3000(いずれもSysmex社製)等によって、HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度範囲でトナーの分散液の撮影を行い、個々のトナー粒子の円形度を下記式(y)によって算出する。各トナー粒子の円形度を加算し、円形度の和を各トナー粒子の数で除することにより、平均円形度を算出する。HPF検出数が上記適正濃度範囲であれば、十分な再現性が得られる。
式(y)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
〔現像剤〕
本発明の製造方法により得られる静電荷像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面をシリコーン樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリア等用いてもよい。
キャリアの平均粒径は、体積基準のメジアン径で20〜100μmの範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは25〜80μmの範囲内である。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置HELOS(SYMPATEC社製)により測定することができる。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示が用いられるが、特に断りが無い限り「質量部」又は「質量%」を表す。
〔結晶性ポリエステル樹脂(a1)〕
両反応性モノマーを含む、下記スチレン−アクリル樹脂の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 43質量部
・n−ブチルアクリレート 15質量部
・アクリル酸 6質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド(ラジカル重合開始剤) 7質量部
また、下記結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・セバシン酸 281質量部
・1,12−ドデカンジオール 283質量部
撹拌下で、上記滴下ロートに入れたスチレン−アクリル樹脂の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を90分かけて上記四つ口フラスコに滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の重合性モノマーを除去した。この時、除去されたモノマー量は、上記原料モノマー量と比してごく微量であった。
さらに、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂(a1)を得た。
結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル重合セグメントとが結合したハイブリッド樹脂である。結晶性ポリエステル樹脂(a1)中のスチレン−アクリル重合セグメントの質量の割合Scを、各セグメントの原料モノマーの添加量から計算したところ、10質量%であった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(a1)の数平均分子量(Mn)は9000であり、融点Tbは76℃であった。
数平均分子量(Mn)は、GPCによって次のようにして測定した分子量分布から求めた。
試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製した。GPC装置HLC−8120GPC(東ソー社製)及びカラムTSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ-m3連(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流した。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
融点Tbは、DSCにより測定した。具体的には、結晶性樹脂の試料をアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させた。1回目と2回目の加熱時には、10℃/minの昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持した。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点Tbとして測定した。
〔結晶性ポリエステル樹脂(a2)〜(a6)〕
上記結晶性ポリエステル樹脂(a1)の合成において、原料モノマーと重合開始剤の添加量を下記表1に示すように変更したこと以外は、結晶性ポリエステル樹脂(a1)と同様にして、各結晶性ポリエステル樹脂(a2)〜(a6)の合成を行った。
なお、下記表1において、CPEs及びStAcは、それぞれ結晶性ポリエステル及びスチレン−アクリルを表す。スチレンモノマー、アクリルモノマー1及び2は、それぞれスチレン、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を表す。カルボン酸モノマー及びアルコールモノマーは、それぞれセバシン酸及び1,12−ドデカンジオールを表す。重合開始剤は、すべてジ−t−ブチルパーオキサイドである。
下記表1中のハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの割合Sc及び数平均分子量(Mn)は、結晶性ポリエステル樹脂(a1)と同様にして求めた。
Figure 0006512074
(非結晶性ポリエステル樹脂(b1))
両反応性モノマーを含む、下記スチレン−アクリル樹脂の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 80質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・アクリル酸 10質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド(ラジカル重合開始剤) 16質量部
また、下記非結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・テレフタル酸 66.9質量部
・フマル酸 47.4質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
撹拌下で、上記滴下ロートに入れたスチレン−アクリル樹脂の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を90分かけて、上記四つ口フラスコに滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の重合性モノマーを除去した。この時、除去されたモノマー量は、上記原料モノマー量と比してごく微量であった。
さらに、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて非晶性ポリエステル樹脂の軟化点に達するまで反応を行った後、有機溶媒を除去して、非結晶性ポリエステル樹脂(b1)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(b1)は、非晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル重合セグメントとが結合したハイブリッド樹脂である。得られた非晶性ポリエステル樹脂(b1)のガラス転移温度(Tg)は60℃であり、重量平均分子量(Mw)は30000であった。
ガラス転移点(Tg)は、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。具体的には、試料1.5mgをアルミニウム製パンに封入し、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させた。1回目と2回目の加熱時には、10℃/minの昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して、150℃を5分間保持した。冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して、0℃の温度を5分間保持した。2回目の加熱時に得られた測定曲線においてベースラインのシフトを観察し、シフトする前のベースラインの延長線と、シフトするベースラインの最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点(Tg)とした。リファレンスとして、空のアルミニウム製パンを用いた。
重量平均分子量(Mw)は、上述した数平均分子量(Mn)と同様にしてGPCにより得られた分子量分布から求めた。
〔非晶性ポリエステル樹脂(b2)〜(b6)〕
上記非晶性ポリエステル樹脂(b1)の合成において、原料モノマー及び重合開始剤の添加量を下記表2に示すように変更したこと以外は、非晶性ポリエステル樹脂(b1)と同様にして、ハイブリッド樹脂である非晶性ポリエステル樹脂(b2)〜(b6)の合成を行った。
得られた非晶性ポリエステル樹脂(b2)〜(b6)について、ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの割合Sa及び重量平均分子量(Mw)を、非晶性ポリエステル樹脂(b1)と同様にして求めた。
なお、下記表1において、APEs及びStAcは、それぞれ非晶性ポリエステルスチレン−アクリルを表す。スチレンモノマー、アクリルモノマー1及び2は、それぞれスチレン、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を表す。カルボン酸モノマー1、2及びアルコールモノマーは、それぞれテレフタル酸、フマル酸及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物を表す。重合開始剤は、すべてジ−t−ブチルパーオキサイドである。
Figure 0006512074
〔ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1))
上記結晶性ポリエステル樹脂(a1)64.8質量部と、上記非晶性ポリエステル樹脂(b1)7.2質量部とを、72質量部のメチルエチルケトン中に添加し、66℃で30分撹拌して溶解させた。この油相液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加して、撹拌器を有する反応容器に入れた。油相液を撹拌しながら、66℃に温めた水252質量部を70分間にわたって滴下し、混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後、均一な乳化状態の乳化液を得た。この乳化液中の油滴の粒径をレーザー回折式粒度分布測定器LA−750(HORIBA製)にて測定した結果、体積基準のメジアン径は123nmであった。
この乳化液を66℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプV−700(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、固形分量が13.5質量%のポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)を調製した。ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)は、結晶性ポリエステル樹脂(a1)と非晶性ポリエステル樹脂(b1)の各樹脂粒子の分散液であり、上記粒度分布測定器にて分散液(A1)中の各樹脂粒子の体積基準のメジアン粒径を測定したところ、その平均粒径は123nmであった。
〔ポリエステル樹脂粒子の分散液(A2)〜(A20)〕
上記ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)の調製において、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の種類と添加量を下記表3に示すように変更したこと以外は、ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)と同様にして、各ポリエステル樹脂粒子の分散液(A2)〜(A20)を調製した。
なお、下記表3において、CPEs及びAPEsは、それぞれ結晶性ポリエステル及び非晶性ポリエステルを表す。StAcは、スチレン−アクリルを表す。
Figure 0006512074
〔離型剤とスチレン−アクリル樹脂を含む樹脂粒子(B)の分散液〕
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8g及びイオン交換水3Lを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加した後、再度液温80℃とし、下記原料モノマーの混合液を1時間かけて滴下した。その後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を調製した。
・スチレン(St) 480g
・n−ブチルアクリレート(BA) 250g
・メタクリル酸(MAA) 68g
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込んだ。溶液を98℃に加熱後、上記第1重合で得られたスチレン−アクリル樹脂粒子の分散液280gと、下記原料モノマーと離型剤を90℃にて溶解させた溶液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
・スチレン(St) 256g
・n−ブチルアクリレート(BA) 115g
・メタクリル酸(MAA) 21g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5g
・マイクロクリスタリンワックス(融点73℃の離型剤) 124g
調製した分散液に、過硫酸カリウム6gをイオン交換水200mLに溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、離型剤とスチレン−アクリル樹脂を含む樹脂粒子の分散液を調製した。
(第3段重合)
第2段重合により得られた離型剤とスチレン−アクリル樹脂粒子の分散液にイオン交換水400mLを添加してよく混合した後、過硫酸カリウム11gをイオン交換水400mLに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下において、下記原料モノマーの混合液を1時間かけて滴下した。
・スチレン(St) 435g
・n−ブチルアクリレート(BA) 157g
・メタクリル酸(MAA) 41g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 13g
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、離型剤とスチレン−アクリル樹脂を含む樹脂粒子(B)の分散液を調製した。
分散液中の樹脂粒子(B)の体積基準のメジアン径は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)が55℃であり、重量平均分子量(Mw)が38000であった。
〔着色剤微粒子の分散液(Bk)〕
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに撹拌溶解した。得られた溶液を撹拌しながら、リーガル330R(キャボット社製のカーボンブラック)420gを徐々に添加し、撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(Bk)を調製した。
着色剤粒子の分散液(Bk)中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
〔トナー(1)及び現像剤(1)〕
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、樹脂粒子(B)の分散液147質量部(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤粒子の分散液(Bk)40質量部(固形分換算)を投入し、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。この系を50分間かけて70℃まで昇温し、ポリエステル樹脂粒子の分散液(A1)98質量部(固形分換算)を10分間かけて添加後、20分かけて83℃まで昇温した。この状態でコールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、測定装置FPIA−2100(Sysmex社製)を用いて、HPF検出数を4000個として測定したトナーの平均円形度が0.945になった時点で、2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
その後、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、また固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラック色のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度:63)1.0質量部を添加した。次に、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー(1)を製造した。
トナー(1)に対して、シリコーン樹脂で被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)を製造した。
〔トナー(2)〜(20)及び現像剤(2)〜(20)〕
上記トナー(1)及び現像剤(1)の製造において、ポリエステル樹脂粒子の分散液の種類と添加量及び樹脂粒子(B)の分散液の添加量を、下記表4に示すように変更したこと以外は、トナー(1)と同様にして、各トナー(2)〜(20)とその現像剤(2)〜(20)を製造した。
なお、下記表4において、PEsはポリエステルを表す。
Figure 0006512074
〔トナー(21)及び現像剤(21)〕
トナー(8)において、結晶性ポリエステル樹脂(a3)と非晶性ポリエステル樹脂(b1)を個別に転相乳化して、結晶性ポリエステル樹脂粒子(a3)の分散液と非晶性ポリエステル樹脂粒子(b1)の分散液をそれぞれ調製し、各分散液を樹脂粒子(B)の分散液等と凝集させたこと以外は、トナー(8)と同様にしてトナー(21)を製造した。また、トナー(21)を用いて現像剤(8)と同様にして、現像剤(21)を製造した。
〔評価〕
製造した各トナー(1)〜(21)の現像剤(1)〜(21)を用いて、各トナー(1)〜(21)の低温定着性と耐熱性をトナー性能として評価した。
(低温定着性)
複写機bizhub PRO C6501(コニカミノルタ社製)において、定着用ヒートローラの表面温度を100〜210℃の範囲で変更することができるように、定着装置を改造した。この改造機に現像剤(1)〜(21)をそれぞれ装填して、A4サイズの普通紙(坪量80g/m)上に、トナー付着量が11mg/10cmのベタ画像を形成して定着処理する定着実験を、設定する定着温度を85℃から130℃まで5℃ずつ昇温させながら繰り返し行った。
各定着温度の定着実験後の用紙を、用紙上のベタ画像に荷重をかけるように折り機で折り、0.35MPaの圧縮空気を吹き付けた。この用紙の折り目部分のベタ画像を下記評価基準により5段階のランク1〜5で評価した。
(評価基準)
ランク5:全く折れ目なし
ランク4:折れ目に従った部分的な剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:折れ目に大きな剥離あり
評価結果がランク3となった各定着実験の定着温度のうち、最も低い定着温度を、下限定着温度として下記のようにランク評価した。下限定着温度は低いほど、低温定着性に優れ、○及び◎ランクであれば実用上問題なく、合格と判断した。
◎:下限定着温度が110℃以下であり、低温定着性が非常に高い
○:下限定着温度が110℃より高く120℃以下であり、低温定着性が高い
×:下限定着温度が120℃より高く、低温定着性が低い
(低温定着性の安定性)
上記低温定着性の定着実験に用いた現像剤(1)〜(21)を、温度50℃、湿度85%の高温高湿環境に24時間置く環境負荷試験を行った後、上記と同様にして定着実験を行った。環境負荷試験前後の下限定着温度の変化量を、低温定着性の安定性として下記のようにランク評価した。◎及び○ランクであれば実用上問題なく使用できる合格レベルと判断した。
◎:環境負荷試験前後の下限定着温度の変化量が3℃以内であり、低温定着性の安定性が非常に高い
○:環境負荷試験前後の下限定着温度の変化量が3℃より大きく5℃以内であり、低温定着性の安定性が高い
×:環境負荷試験前後の下限定着温度の変化量が5℃より大きく、低温定着性の安定性が低い
(耐熱性)
トナー0.5gを、内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)のふるい上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定して、送り幅1mmの振動強度で10秒間振動を加えた後、ふるい上に残存したトナー量を測定した。
測定したトナー量から、トナー凝集率(%)を下記式により算出した。
トナー凝集率(%)=ふるい上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
このトナー凝集率(%)から下記基準によりトナーの耐熱性を評価し、◎及び○が実用上問題なく使用できる合格レベルと判断した。
◎:トナー凝集率が15質量%未満であり、耐熱性が非常に高い
○:トナー凝集率が15質量%以上20質量%以下であり、耐熱性が高い
×:トナー凝集率が20%を超え、耐熱性が低く、使用不可
(耐熱性の安定性)
上記の耐熱性の試験に用いたトナーを、温度50℃、湿度85%の高温高湿環境に24時間置く環境負荷試験を行った後、同様の試験を行った。環境負荷試験前後のトナー凝集率の変化量を、耐熱性の安定性として下記のようにランク評価した。◎及び○ランクであれば実用上問題なく使用できる合格レベルと判断した。
◎:トナー凝集率の変動量が3%以内であり、耐熱性の安定性が非常に高い
○:トナー凝集率の変動量が3%より大きく5%以内であり、耐熱性の安定性が高い
×:トナー凝集率の変動量が5%より大きく、耐熱性の安定性が低い
下記表5は、評価結果を示している。
Figure 0006512074
上記表5に示すように、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を、その合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が10〜75質量%の範囲内となるように、凝集前にあらかじめ混合しておくことにより、高温高湿下においても低温定着性及び耐熱性が安定なトナーが得られることが分かる。

Claims (7)

  1. トナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    (a)結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を、それぞれの合計質量に対する非晶性ポリエステル樹脂の質量の割合が10〜75質量%の範囲内となるように、有機溶媒中に添加して油相液を得る工程と、
    (b)前記油相液を塩基性材料により中和し、水系媒体を添加して転相乳化した後、前記有機溶媒を除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を得る工程と、
    (c)水系媒体中で、少なくともスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させて、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を得る工程と、
    (d)水系媒体中に、少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液、前記スチレン−アクリル系樹脂粒子の分散液及び着色剤粒子の分散液を添加し、前記結晶性ポリエステル樹脂粒子、前記非晶性ポリエステル樹脂粒子、前記スチレン−アクリル樹脂粒子及び前記着色剤粒子を凝集及び融着させて、前記トナー粒子を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記スチレン−アクリル樹脂の割合が30〜90質量%の範囲内となるように、前記スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を添加することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記工程(d)において、前記トナー粒子が含有する樹脂中の前記結晶性ポリエステル樹脂の割合が5〜35質量%の範囲内となるように、前記結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の分散液を添加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記結晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 前記非晶性ポリエステル樹脂が、スチレン−アクリル樹脂により変性されたハイブリッド樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 前記ハイブリッド樹脂中のスチレン−アクリル重合セグメントの割合が、40質量%以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  7. 前記工程(b)において、前記転相乳化時の温度をTa(℃)、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点をTb(℃)と表すとき、Ta及びTbが下記式を満たすことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    (式) Ta>(Tb−15)
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