本発明は、第1の結着樹脂および第1の着色剤を含む白色トナーによる白色トナー像と、第2の結着樹脂および第2の着色剤を含む白色以外の有色トナーによる有色トナー像と、をこの順に記録媒体上に積層して熱定着処理する、熱定着処理工程を有する画像形成方法であって、前記第2の結着樹脂が、ビニル樹脂とハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との両方を含み、前記白色トナーの90℃における貯蔵弾性率G1’と、前記白色以外の有色トナーの90℃における貯蔵弾性率G2’とが、以下の関係式(1)および(2)を満たす、画像形成方法である。
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」はXおよびYを含み「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。さらに、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルの総称である。
<トナー(静電潜像現像用トナー)>
本発明の画像形成方法においては、白色トナーと、白色以外の有色トナー(以下、単に「有色トナー」とも称する)と、を用いる。また、白色トナーの90℃における貯蔵弾性率G1’と、白色以外の有色トナーの90℃における貯蔵弾性率G2’と、が上記の関係式(1)および(2)を満たす。ここで、貯蔵弾性率は、材料の硬さの指標となり、値が小さいほど軟らかい材料であることを示す。また、90℃での貯蔵弾性率を規定する理由は、本発明者の鋭意研究により、90℃という温度が、トナーに用いられる結着樹脂の熱特性の観点から最も意味のある温度であることを見出したからである。白色トナーの90℃における貯蔵弾性率G1’は、有色トナーの90℃における貯蔵弾性率G2’よりも大きい(すなわち、上記の関係式(2)を満たす)ことは、形成された白色トナー層が、有色トナー層よりも定着時の溶融粘度が高いことを意味し、白色トナー像への有色トナー像のコンタミネーションを防止する効果が期待できる。G1’がG2’と同じ値であるか、またはG2’より小さい場合は、白色トナー像への有色トナー像のコンタミネーションを防止する効果が期待できない。
また、上記関係式(1)に示すように、有色トナーの90℃における貯蔵弾性率G2’の値は、1.0×103dyn/cm2よりも大きく、かつ1.0×105.5dyn/cm2よりも小さい。G2’が1.0×103dyn/cm2以下であると、定着温度によっては光沢が高くなりすぎる場合があり、またホットオフセット現象が起こる可能性がある一方、G2’が1.0×105.5dyn/cm2以上であると、光沢が低くなる。
さらに、本発明の効果をより発揮させるために、有色トナーの90℃における貯蔵弾性率G2’の値は、下記の関係式(3)を満たすことが好ましく、下記の関係式(4)を満たすことがより好ましい。
本発明において、白色トナーおよび有色トナーの貯蔵弾性率は、白色トナーおよび有色トナーの組成によって制御することができる。具体的には、例えば、第2の結着樹脂に用いられるビニル樹脂の比率を増やし、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の比率を減らすと、90℃における貯蔵弾性率の値が上がる。反対に、ビニル樹脂の比率を減らし、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の比率を増やすと、90℃における貯蔵弾性率の値が下がる。
また、白色トナーおよび有色トナーを所望の貯蔵弾性率を有するものとするためには、白色トナーおよび有色トナーにおいて、各々、構成材料の少なくとも1つとして融点を有する材料、すなわち結晶性材料を用いることが好ましい。特に、結着樹脂として、結晶性樹脂を用いることが好ましい。なお、貯蔵弾性率の測定方法としては、実施例で用いられる方法が採用できる。
本発明に係る白色トナーは、第1の結着樹脂および第1の着色剤を含み、本発明に係る有色トナーは、第2の結着樹脂および第2の着色剤を含む。なお、ここで、「第1の結着樹脂」と「第2の結着樹脂」とを記載しているのは、それぞれ白色トナーに用いられる結着樹脂と、有色トナーに用いられる結着樹脂とを区別するためである。同様に、「第1の着色剤」と「第2の着色剤」とを記載しているのは、それぞれ白色トナーに用いられる着色剤と、有色トナーに用いられる着色剤とを区別するためである。
[白色以外の有色トナー]
本発明において、白色以外の有色トナーは、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。本発明に係る有色トナーは、第2の結着樹脂および第2の着色剤を必須に含み、また、必要に応じて、例えば離型剤、荷電制御剤などの内添剤や、外添剤を含んでもよい。
〔第2の結着樹脂〕
有色トナーが有する第2の結着樹脂は、ビニル樹脂とハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とを含む。
通常、白色トナーには、例えば酸化チタンなどの無機顔料が高充填されており、その結果、結着樹脂の使用量が少ない。よって、形成された白色トナー層と白色以外の有色トナー層との界面において密着性が下がっていると推測される。かような界面での密着性を高めるために、白色以外の有色トナーにおいて側鎖の多いビニル樹脂を使用すれば、白色以外の有色トナー層と、白色トナー層と、の界面において強力な密着性を有すると考えていた。しかしながら、本発明者の鋭意研究の結果、ビニル樹脂とハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とを共存させることにより、上記界面での密着性が高まることが分かった。このメカニズムは明確には分かっていないが、白色以外の有色トナー層がハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、定着温度付近での流動性が上がり、その結果として、白色以外の有色トナー層が白色トナー層表面にある突起に絡みつくことができる。加えて、白色以外の有色トナー層に含まれるビニル樹脂が、白色トナー層表面に絡みつくことにより機械的強度がより向上し、さらに有色トナーの貯蔵弾性率G2’を上記関係式(1)に示す範囲とすることにより、折り定着性が向上すると推定している。よって、本発明の画像形成方法は、優れた折り定着性と高光沢化との両立を実現することができる。
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
<ビニル樹脂>
ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂のなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂(スチレンアクリル樹脂)が好ましい。したがって、以下では、ビニル樹脂としてのスチレンアクリル樹脂について説明する。
スチレンアクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレンアクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用される単量体は、下記に限定されるものではない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体等が挙げられる。これらのアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
スチレンアクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、60〜85質量%であることが好ましい。また、スチレンアクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、15〜40質量%であることが好ましい。
さらに、スチレンアクリル樹脂は、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物(両反応性単量体)が付加重合されてもよい。
スチレンアクリル樹脂中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂の全量に対し、0.1〜15質量%であることが好ましい。
さらに、単量体として多官能性ビニル類を使用し、ビニル樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
第2の結着樹脂中のビニル樹脂の含有量は、40〜97質量%であることが好ましいが、定着時に好適な流動性を付与するという観点から、当該ビニル樹脂が主成分であることがより好ましい。ここで、「主成分」とは、ビニル樹脂の含有量が第2の結着樹脂全体に対して50質量%を超えることである。すなわち、第2の結着樹脂中のビニル樹脂の含有量は、50質量%を超え97質量%以下であることがより好ましく、60〜95質量%であることがさらに好ましく、80〜95質量%であることが特に好ましい。
(ビニル樹脂の製造方法)
ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫酸塩、過硫化物、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜500000が好ましく、20000〜200000がより好ましい。
なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂>
第2の結着樹脂は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
上記において、結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとは、ポリエステル以外の非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
≪結晶性ポリエステル重合セグメント≫
結晶性ポリエステル重合セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する重合セグメントをいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、本明細書でいう結晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
また、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、上述のとおり本発明の効果が得られやすいことから、炭素数6〜14の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、tert−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、tert−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とすることが好ましく、70構成モル%以上とすることがより好ましく、80構成モル%以上とすることがさらに好ましく、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量を50構成モル%以上とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールまたは多価アルコールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、上述のとおり本発明の効果が得られやすいことから、炭素数2〜14の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数4〜14の脂肪族ジオールがより好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールまたは多価アルコールとしては、二重結合を有するジオール、3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールの例としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの結晶性を確保することができ、最終的に得られるトナーに優れた低温定着性をもたらす。
上記のジカルボン酸成分とジオール成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]において、1.5/1〜1/1.5とすることが好ましく、1.2/1〜1/1.2とすることがより好ましい。ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、結晶性ポリエステルの酸価および分子量を制御することがより容易になる。
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記ジカルボン酸成分およびジオール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより当該重合セグメントを形成することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O−n−Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して50〜99.9質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましく、80〜95質量%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができ、また、最終的に得られるトナーが良好な低温定着性を維持しつつ、帯電均一性、耐熱保管性、およびHH転写性が共に向上したものとなる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の各重合セグメントの構成成分および含有割合は、例えば、NMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定により特定することができる。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントの他に、以下で詳述するポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを含む。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントおよびポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であることが好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
さらに、上記観点からは、結晶性ポリエステル重合セグメントが、結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。このような形態とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向をより高め、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシル基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント中であってもよい。
≪ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント≫
ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント(本明細書中、単に「非晶性重合セグメント」とも称する場合がある)は、非晶性樹脂とハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との親和性を制御する重合セグメントである。
非晶性重合セグメントは、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中(さらには、トナー中)に非晶性重合セグメントを含有することは、例えば、NMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性重合セグメントは、当該重合セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。このとき、当該重合セグメントと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について、ガラス転移温度(Tg)が、30〜70℃であることが好ましく、特に35〜65℃であることが好ましい。
非晶性重合セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性重合セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本明細書でいう非晶性重合セグメントを有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
非晶性重合セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル重合セグメント、ウレタン重合セグメント、ウレア重合セグメントなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル重合セグメントが好ましい。
ビニル重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン−アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン・酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル重合セグメントのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル重合セグメント(スチレンアクリル重合セグメント)が好ましい。したがって、以下では、非晶性重合セグメントとしてのスチレンアクリル重合セグメントについて説明する。
スチレンアクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例は、上記ビニル樹脂の項で説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
非晶性重合セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性重合セグメントの全量に対し、60〜85質量%であることが好ましい。また、非晶性重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性重合セグメントの全量に対し、10〜35質量%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
さらに、非晶性重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物もまた付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシル基[−OH]または多価カルボン酸由来のカルボキシル基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、非晶性重合セグメントは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシル基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
かような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
非晶性重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、非晶性重合セグメントの全量に対し、0.1〜15質量%であることが好ましい。
非晶性重合セグメント(好ましくはスチレンアクリル重合セグメント)の形成方法は、特に制限されず、上記(ビニル樹脂の製造方法)で説明した方法と同様の方法が挙げられる。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶ポリエステル性樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
≪ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法≫
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントと、を化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(1)非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
(2)結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
(3)結晶性ポリエステル重合セグメントを予め形成しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントに非晶性重合セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成し易いことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(1)の方法は、非晶性重合セグメントを予め形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた耐熱保管性を得るという観点から、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、7,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5,000以上であれば、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。一方、100,000以下であれば、低温定着性をより向上させることができる。当該樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,500〜25,000であることが低温定着性等の観点から好ましい。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、十分な低温定着性が得られるという観点から、60〜90℃の範囲であることが好ましく、70〜85℃の範囲であることがより好ましい。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂の組成によって制御することができる。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点は、実施例に記載の方法により測定することができる。
第2の結着樹脂中のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、3質量%以上50質量%未満であることがより好ましく、5〜40質量%であることがさらに好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であれば、得られる有色トナーの粒度分布が狭くなり、印刷時のトナー飛散等を防止することができ、また低温定着性も良好なものとなる。
第2の結着樹脂は、上記のビニル樹脂およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂以外の他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等の結晶性樹脂、非晶性ウレタン樹脂、非晶性ウレア樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等の非晶性樹脂が挙げられる。なかでも、低温定着性を付与する観点から、第2の結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。以下では、非晶性ポリエステル樹脂について説明する。
(非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂であって、DSCにおいて、明確な吸熱ピークが認められないポリエステル樹脂をいう。
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。これら多価カルボン酸は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどが挙げられる。これら多価アルコール成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコールが好ましい。
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]において、1.5/1〜1/1.5とすることが好ましく、1.2/1〜1/1.2とすることがより好ましい。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、非晶性ポリエステル樹脂の酸価および分子量を制御することがより容易となる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより調製することができる。
非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明した触媒と同様であるため、ここでは説明を省略する。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30〜80℃であることが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性が両立して得られる。なお、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される値である。測定手順としては、測定試料(非晶性樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度とする。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂>
非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、スチレン由来の構成単位を有するビニル重合セグメントと、が化学的に結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。より詳細には、非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、スチレン由来の構成単位を有するビニル重合セグメントと、が化学的に結合したグラフト共重合体構造を有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。かようなハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、トナー製造時にビニル樹脂との適度な相溶を起こすため、トナーの耐破砕性が向上する。
非晶性ポリエステル重合セグメントは、上記した非晶性ポリエステル樹脂と同様の多価カルボン酸成分および多価アルコール成分との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。非晶性ポリエステル重合セグメントを構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の具体例については、上記非晶性ポリエステル樹脂と同様であるため、ここでは説明を省略する。
非晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の全量に対して70〜98質量%であることが好ましく、75〜95質量%であることがより好ましい。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各セグメントの構成成分および含有割合は、たとえば、NMR測定、メチル化反応Py−GC/MS測定により特定することができる。
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、上記非晶性ポリエステル重合セグメントの他に、スチレン由来の構成単位を含むビニル重合セグメントを含む。ビニル重合セグメントとしては、スチレン由来の構成単位を含むものであれば特に制限されないが、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル重合セグメント(スチレンアクリル重合セグメント)が好ましい。
スチレンアクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレンと、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。スチレンアクリル重合セグメントの形成が可能な単量体の具体例としては、上記スチレンアクリル樹脂で説明した単量体と同様のものが挙げられるため、ここでは説明を省略する。
ビニル重合セグメント中のスチレン由来の構成単位の含有量は、ビニル重合セグメントの全量に対し、40〜95質量%であると好ましい。また、ビニル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、ビニル重合セグメントの全量に対し、5〜60質量%が好ましい。
さらに、ビニル重合セグメントは、上記スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシ基[−OH]または多価カルボン酸成分由来のカルボキシル基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、ビニル重合セグメントは、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシル基[−COOH]またはヒドロキシ基[−OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
かような化合物は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明した化合物と同様である。
ビニル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、ビニル重合セグメントの全量に対し、0.5〜20質量%が好ましい。
ビニル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。重合開始剤の具体例は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明したものと同様である。
ビニル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中、2〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(1)ビニル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
(2)非晶性ポリエステル重合セグメントおよびビニル重合セグメントをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下でビニル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量)
非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、5,000〜100,000の範囲であることが好ましく、5,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5,000以上であれば、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100,000以下であれば、低温定着性をより向上させることができる。また、非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、1,500〜25,000の範囲であることが好ましい。
第2の結着樹脂中の非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、7〜15質量%であることがより好ましい。
〔第2の着色剤〕
本発明に係る有色トナーに用いられる第2の着色剤としては、下記に例示するような有機または無機の各種、各色の顔料を使用することができる。
具体的には、ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどを使用することができる。カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
イエロートナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162など、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
マゼンタトナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122など、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同269などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
シアントナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95など、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76、同15:3などを使用することができ、これらの混合物も使用することができる。
第2の着色剤の含有量は、有色トナー中、0.5〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
〔離型剤〕
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
離型剤としては、低温定着性および離型性を確実に得る観点から、その融点が50〜95℃であるものを用いることが好ましい。
離型剤の含有量は、有色トナー中、2〜20質量%であることが好ましく、3〜18質量%であることがより好ましく、4〜15質量%であることがさらに好ましい。
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、有色トナー中、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
(外添剤)
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子や、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
また、外添剤としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機粒子を用いることもできる。このような有機粒子としては、具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体からなる粒子を使用することができる。
外添剤の含有量は、有色トナー100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
[白色トナー]
本発明において、白色トナーは、第1の結着樹脂および第1の着色剤を含有し、必要に応じて、例えば、離型剤、荷電制御剤などの内添剤や、外添剤を含んでもよい。
〔第1の結着樹脂〕
第1の結着樹脂としては、ビニル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。なかでも、ビニル樹脂単独である場合と比べて、ポリマー鎖の相互作用が強くなり、結果として画像の耐摩擦性の向上が期待できるという観点から、第1の結着樹脂は、ビニル樹脂および非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
ビニル樹脂および非晶性ポリエステル樹脂の好ましい形態等は、上記で説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
〔第1の着色剤〕
本発明にかかる第1の着色剤は、白色着色剤である。
白色着色剤とは、具体的には、例えば、無機顔料(例えば、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。また、中空構造を有する顔料、例えば中空樹脂粒子、中空シリカ等も挙げられる。これらの中でも、下地の色を隠蔽する能力に優れている酸化チタンがより好ましい。酸化チタンは、ルチル型でもよいしアナターゼ型でもよい。
第1の着色剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
白色トナー中の第1の着色剤の含有量は、1〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。含有量が1質量%以上であると下地の色の隠蔽力に優れ、一方、50質量%以下であると、帯電性が良好となり優れた現像性を得ることができる。
白色トナーに用いることができる、離型剤、荷電制御剤、外添剤の種類やその含有量は、上記有色トナーで説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
[トナーの形態]
本発明に係る白色トナーおよび有色トナーは、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コアシェル構造(コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。コアシェル構造は、着色剤や離型剤等を含有したガラス転移温度が比較的低い樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高いガラス転移温度を有する樹脂領域(シェル層)を有する形態であると好ましい。なお、コアシェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
上述のトナーの形態(コアシェル構造の断面構造など)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
≪トナーの平均円形度≫
低温定着性を向上させるという観点から、トナー(トナー粒子)の平均円形度は0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。ここで、上記平均円形度は「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数4000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で計算される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
≪トナーの粒子径≫
トナー(トナー粒子)の粒子径について、体積基準のメジアン径(D50)が3〜10μmであると好ましい。体積基準のメジアン径を上記範囲とすることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナー流動性も確保できる。ここで、トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
トナーの体積基準のメジアン径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
[トナーの製造方法]
以下、本発明において用いられる各色のトナー(静電潜像現像用トナー)の製造方法について説明する。
本発明において用いられるトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、懸濁重合法、乳化凝集法が好ましく、粒子径の均一性、形状の制御性、コア−シェル構造形成の容易性等の観点からは、乳化凝集法を採用することがより好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
≪乳化凝集法≫
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう)の分散液を、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望の粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
乳化凝集法により静電潜像現像用トナーを製造する場合、好ましい実施形態による製造方法は、
(a)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液および離型剤粒子分散液を調製する工程(以下、調製工程とも称する)
(b)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液および離型剤粒子分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程とも称する)
を含む。
以下、工程(a)〜(b)、およびこれらの工程以外に任意で行われる工程(c)〜(g)について詳述する。
(a)調製工程
工程(a)は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程、非晶性樹脂粒子分散液調製工程、着色剤粒子分散液調製工程および離型剤粒子分散液調製工程を含む。
(a−1)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程は、第2の結着樹脂を構成するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を合成し、このハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を水性媒体中に微粒子状に分散させてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)の製造方法は上記記載したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液は、たとえば、溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、あるいはハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う方法などが挙げられる。
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂がその構造中にカルボキシル基を含む場合、当該カルボキシル基をイオン解離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。さらに、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、たとえば、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。また、分散安定性の向上のための樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子などが挙げられる。
このような上記分散処理は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、乳化分散機などが挙げられる。
分散の際には、溶液を加熱することが好ましい。加熱条件は特に限定されるものではないが、通常60〜200℃程度である。
このように準備されたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、60〜1000nmが好ましく、80〜500nmであることがより好ましい。なお、このメジアン径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによって制御することができる。
また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液におけるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の含有量は、分散液全体に対して10〜50質量%の範囲が好ましく、15〜40質量%の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−2)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂粒子分散液調製工程では、非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)の水系分散液および/またはビニル樹脂の水系分散液を準備する。ここで、非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)の水系分散液の調製方法は上記の(a−1)と同様の方法が用いられるため、ここでは詳細な説明を省略し、以下では、ビニル樹脂粒子分散液の調製方法(調製工程)を説明する。
ビニル樹脂粒子分散液の調製工程では、ビニル樹脂の水系分散液を準備する。水系媒体中でたとえば乳化重合を行い、ビニル樹脂を得た場合には、重合反応後の液をそのままビニル樹脂粒子分散液として用いることができる。
または、単離したビニル樹脂を必要に応じて粉砕した後、界面活性剤の存在下、超音波分散機などを用いて水系媒体中にビニル樹脂を分散させる方法を用いることもできる。前記水系媒体および前記界面活性剤の具体例は、上記(a−1)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
ビニル樹脂粒子分散液中のビニル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、60〜1000nmが好ましく、80〜500nmの範囲内にあることが好ましい。なお、このメジアン径は、重合時の機械的エネルギーの大きさなどによってコントロールすることができる。
ビニル樹脂粒子分散液におけるビニル樹脂粒子の含有量は、分散液全体に対して10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a−3)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水性媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記(a−1)で説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用した分散機で行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a−1)において説明したものを用いることができる。
着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、10〜300nmの範囲内であることが好ましい。
着色剤粒子分散液における着色剤の含有量は、分散液全体に対して5〜45質量%の範囲とすることが好ましく、10〜30質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
(a−4)離型剤粒子分散液調製工程
離型剤粒子分散液調製工程は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記(a−1)で説明したとおりであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a−1)において説明したものを用いることができる。
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、10〜300nmの範囲であることが好ましい。
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、分散液全体に対して5〜45質量%の範囲とすることが好ましく、8〜30質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、ホットオフセット防止および分離性確保の効果が得られる。
(b)凝集・融着工程
この凝集・融着工程は、水系媒体中で、前述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子、非晶性樹脂粒子、着色剤粒子、および離型剤粒子を凝集させると同時に融着させる工程である。
この工程では、まず、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、および離型剤粒子分散液を混合し、水性媒体中にこれら粒子を分散させる。
次に、凝集剤を添加した後、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩や第2族の金属の塩などの金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価または三価の金属塩を用いることが特に好ましい。これら凝集剤は単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。
前記凝集剤の使用量は、特に制限されないが、トナー粒子を構成する結着樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.05℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液が所望の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が4.5〜7.0μmになるまで保持して、融着を継続させることが肝要である。
なお、コアシェル構造を有するトナーを製造する場合は、コア粒子用樹脂(例として、ビニル樹脂およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)粒子を凝集させてコア粒子を形成した後、次いで、シェル層用樹脂(例として、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)粒子の分散液を添加し、コア粒子表面にシェル層用樹脂粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル層を被覆させる方法が採用されうる。
(c)熟成工程
この工程は、必要に応じて行われるものであって、当該熟成工程においては、凝集・融着工程によって得られた会合粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させてトナー粒子を形成させる熟成処理が行われる。
熟成処理は、具体的には、会合粒子が分散された系を加熱攪拌し、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、攪拌速度、加熱時間などを調整することにより、行われる。
(d)冷却工程
この工程は、トナー粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理の条件としては、1〜20℃/分の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法などを例示することができる。
(e)濾過・洗浄工程
この工程は、冷却されたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などを用いることができる。
(f)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナー粒子の製造方法における乾燥工程に従って行うことができる。
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
(g)外添剤の添加工程
この工程は、トナー粒子に対して外添剤を添加する場合に必要に応じて行う工程である。外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、サンプルミルなどの機械式の混合装置を使用することができる。
〔現像剤〕
本発明に用いられる白色トナーおよび有色トナーは、各々、磁性または非磁性の1成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。
本発明に用いられる白色トナーおよび有色トナーを2成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダー型キャリアなど用いてもよい。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、バインダー型キャリアを構成するバインダー樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、第1の結着樹脂および第1の着色剤を含む白色トナーからなる白色トナー像と、第2の結着樹脂および第2の着色剤を含む白色以外の有色トナーからなる有色トナー像と、をこの順に記録媒体上に積層して熱定着させる、熱定着処理工程を有する。この際、白色トナーを記録媒体上に転写して得られる白色トナー像を熱定着した後に、有色トナーを記録媒体上に転写して得られる有色トナー像を熱定着する方法、白色トナーを記録媒体上に転写して得られる白色トナー像および有色トナーを記録媒体上に転写して得られる有色トナー像を同時に熱定着する方法が挙げられる。しかしながら、本発明の効果がより効率的に得られ、また画像形成が速いことから、白色トナー像と有色トナー像とは、記録媒体上で重ね合わせてかつ同時に熱定着させて画像を形成することが好ましい。
好適には、像担持体上に静電的に形成された静電潜像を、現像装置において現像剤を摩擦帯電部材によって帯電させることにより顕在化させてトナー像を得て、このトナー像を記録媒体上に転写し、その後、記録媒体上に転写されたトナー像を接触加熱方式の定着処理によって記録媒体に定着させる方法が挙げられる。
好適な定着方法としては、接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ロール定着方式および固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
熱ロール定着方式の定着方法においては、通常、表面にフッ素樹脂などが被覆された鉄やアルミニウムなどからなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラーと、シリコーンゴムなどで形成された下ローラーとから構成された定着装置が用いられる。
熱源としては、線状のヒータが用いられ、このヒータによって上ローラーの表面温度が120〜200℃程度に加熱される。上ローラーおよび下ローラー間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラーが変形されることにより、この変形部にいわゆるニップが形成される。ニップの幅は好ましくは1〜15mm、より好ましくは1.5〜13mmである。定着線速は40〜600mm/secであることが好ましい。
〔記録媒体〕
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体としては、特に制限されない。例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、合成紙、フィルムおよび布などの種々のものを用いることができる。これらのうちでは、合成紙およびフィルムが好ましい。
ここに、合成紙の具体例としては、例えばポリプロピレン合成紙が挙げられる。また、フィルムの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリイミドフィルムなどが挙げられる。
また、記録媒体の色は、視認性の観点から白色の背景(ベース層)が必要とされる色、具体的には無色透明および白色以外の色であることが好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
<各種物性の測定方法>
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)の測定〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、DSCにより測定した。具体的には、結晶性樹脂の試料をアルミニウム製パンKITNo.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させた。1回目と2回目の加熱時には、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して150℃を5分間保ち、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保った。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を、融点(Tm)とした。
〔ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定〕
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定した。測定には、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いた。
〔樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定〕
樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
試料(樹脂)を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製した。GPC装置HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)およびカラムTSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−m3連(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/分で流した。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の作製>
両反応性単量体を含む、下記のスチレンアクリル重合セグメント(StAc)の原料単量体およびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 43.5質量部
n−ブチルアクリレート 16質量部
アクリル酸 3.5質量部
重合開始剤(ジ−tert−ブチルパーオキサイド) 8質量部。
また、下記の結晶性ポリエステル重合セグメント(CPEs)の原料単量体を、窒素導入管、脱水管、攪拌機および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
テトラデカン二酸 440質量部
1,4−ブタンジオール 135質量部。
次いで、攪拌下でStAcの原料単量体を90分間かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。なお、このとき除去された単量体量は、上記の樹脂の原料単量体に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(O−n−Bu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、その全量に対してCPEsセグメント以外の樹脂(StAc)セグメントを10質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は9,500、融点(Tm)は72℃であった。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液の調製>
上記で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂 82質量部をメチルエチルケトン82質量部に添加し、70℃で30分間攪拌し、溶解させた。次に、この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液 2.5質量部(中和度50%相当)を添加した。この溶解液を、攪拌機を有する反応容器に入れ、攪拌しながら、70℃に温めた水236質量部を70分間に亘って滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。この乳化液の油滴の粒子径をレーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(株式会社堀場製作所製)」にて測定した結果、体積平均粒子径は123nmであった。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間攪拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の粒子が分散された「ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液」(固形分25質量%)を調製した。上記粒度分布測定器にて測定した結果、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子水系分散液中の、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は75nmであった。
<着色剤分散液の調製>
(ブラック着色剤粒子分散液〔Bk〕の調製)
・ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
・カーボンブラック「リーガル(登録商標)330R」(キャボット社製) 200質量部
・イオン交換水 1600質量部
上記の成分を混合した溶液をウルトラタラックス(登録商標、以下同じ)T50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することによりブラック着色剤粒子分散液〔Bk〕を調製した。
得られたブラック着色剤粒子分散液〔Bk〕について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
(イエロー着色剤粒子分散液〔Ye〕の調製)
・ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
・C.I.ピグメントイエロー74 200質量部
・イオン交換水 1600質量部
上記の成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することによりイエロー着色剤粒子分散液〔Ye〕を調製した。
得られたイエロー着色剤粒子分散液〔Ye〕について、イエロー着色剤粒子の体積基準のメジアン径は240nmであった。
(マゼンタ着色剤粒子分散液〔Ma〕の調製)
・ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
・C.I.ピグメントレッド269 200質量部
・イオン交換水 1600質量部
上記の成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することによりマゼンタ着色剤粒子分散液〔Ma〕を調製した。
得られたマゼンタ着色剤粒子分散液〔Ma〕について、マゼンタ着色剤粒子の体積基準のメジアン径は200nmであった。
(シアン着色剤粒子分散液〔Cy〕の調製)
・ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 200質量部
・イオン交換水 1600質量部
上記の成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することによりシアン着色剤粒子分散液〔Cy〕を調製した。
得られたシアン着色剤粒子分散液〔Cy〕について、シアン着色剤粒子の体積基準のメジアン径は180nmであった。
<離型剤粒子分散液(W1)の調製>
・ベヘン酸ベヘニル(離型剤、融点73℃) 100質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、ネオゲン(登録商標)RK)
10質量部
・イオン交換水 400質量部
上記の材料を混合し80℃に加熱して、IKA社製のウルトラタラックスT50にて十分に分散した。その後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理した後、分散液にイオン交換水を加えて固形分量を15%に調整して離型剤粒子分散液(W1)を調製した。この分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径を、レーザー回折式粒度分布測定器LA−750(株式会社堀場製作所製)にて測定したところ、220nmであった。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の作製>
下記ビニル樹脂の単量体、非晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂とのいずれとも反応する置換基を有する単量体、および重合開始剤の混合液を滴下ロートに入れた。
スチレン 80.0質量部
n−ブチルアクリレート 20.0質量部
アクリル酸 10.0質量部
ジ−tert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤) 16.0質量部。
また、下記非晶性ポリエステル樹脂の単量体を、窒素導入管、脱水管、攪拌機および熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 59.1質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 281.7質量部
テレフタル酸 63.9質量部
コハク酸 48.4質量部。
攪拌下で、滴下ロートに入れた混合液を四つ口フラスコへ90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。その後、エステル化触媒としてTi(O−n−Bu)4を0.4質量部投入し、235℃まで昇温して、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。
次いで200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った後、脱溶剤を行い、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が24,000、酸価が16.2mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が60℃であった。
<ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
次に、上記で得られた100質量部のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、あらかじめ調製しておいた0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合した。混合液を攪拌しながら、超音波ホモジナイザーUS−150T(株式会社日本精機製作所製)によりV−LEVEL 400μAで30分間の超音波分散処理を行った。その後、40℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプV−700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。分散液中のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂粒子1は、体積基準のメジアン径が98nmであった。
<ビニル樹脂粒子分散液の調製>
(第1段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部およびイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記単量体の混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン(St) 480.0質量部
n−ブチルアクリレート(BA) 250.0質量部
メタクリル酸(MAA) 68.0質量部。
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、攪拌することにより単量体の重合を行い、ビニル樹脂粒子分散液(1−a)を調製した。
(第2段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、イオン交換水1100質量部と、上記第1段重合により調製したビニル樹脂粒子分散液(1−a)を固形分換算で55質量部とを仕込み、87℃に加熱した。別途、下記単量体、連鎖移動剤および離型剤を80℃にて溶解させ、得られた混合液を循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)により、10分間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
スチレン(St) 256.0質量部
2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA) 95.0質量部
メタクリル酸(MAA) 30.0質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 3.9質量部
ベヘン酸ベヘニル(離型剤、融点73℃) 136.8質量部
マイクロクリスタリンワックス(離型剤、融点80℃) 7.2質量部。
この分散液を上記5Lの反応容器に追加し、過硫酸カリウム5.5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を87℃にて1時間にわたり加熱攪拌することにより重合を行って、ビニル樹脂粒子分散液(1−b)を調製した。
(第3段重合)
上記第2段重合により得られたビニル樹脂粒子分散液(1−b)に、さらに過硫酸カリウム8質量部をイオン交換水140質量部に溶解させた溶液を添加した。その後、84℃の温度条件下で、下記単量体および連鎖移動剤の混合液を90分かけて滴下した。
スチレン(St) 367.2質量部
nーブチルアクリレート(BA) 165.0質量部
メタクリル酸(MAA) 34.3質量部
メチルメタクリレート(MMA) 52.5質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8.0質量部。
滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂粒子分散液を調製した。得られた分散液に含まれるビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、34,000であった。
<シアントナー1およびシアン現像剤1の製造>
(シアントナー1の製造)
攪拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル樹脂粒子分散液 298質量部(固形分換算)、およびイオン交換水 2000質量部を投入した。室温(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。さらに、シアン着色剤粒子分散液〔Cy〕 7質量部(固形分換算)を投入し、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解させた溶液を、攪拌下、30℃において10分間かけて添加した。3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、80℃に到達後、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 37.2質量部(固形分換算)を20分かけて投入し、粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように攪拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。
次いで、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂分散液 37.2質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。次いで、昇温して80℃の状態で攪拌し、トナー粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させ、その後冷却し30℃以下まで液温を下げた。
その後、攪拌しつつ30分間かけて50℃まで昇温し、3時間の熱処理工程を行った。さらに冷却し、30℃以下まで液温を下げた。次いで、固液分離を行い、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。洗浄後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ粒子(個数平均一次粒子径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部、疎水性酸化チタン粒子(個数平均一次粒子径:20nm、疎水化度:63)1.0質量部およびゾルゲルシリカ(個数平均一次粒子径=110nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去し、体積基準のメジアン径が6.1μmであるシアントナー1を得た。最終的な樹脂比率は、ビニル樹脂:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂:ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂=80:10:10(質量比)であった。
(シアン現像剤1の製造)
シアントナー1に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積基準のメジアン径が30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、シアン現像剤1を得た。
<マゼンタトナー1およびマゼンタ現像剤1の製造>
(マゼンタトナー1の製造)
上述したシアントナー1の製造において、シアン着色剤粒子分散液〔Cy〕の代わりにマゼンタ着色剤粒子分散液〔Ma〕を用いた以外はシアントナー1と同じ製法を用いて、マゼンタトナー1を得た。
(マゼンタ現像剤1の製造)
マゼンタトナー1に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、マゼンタト現像剤1を得た。
<イエロートナー1およびイエロー現像剤1の製造>
(イエロートナー1の製造)
上述したシアントナー1の製造において、シアン着色剤粒子分散液の代わりにイエロー着色剤粒子分散液〔Ye〕を用いた以外はシアントナー1と同じ製法を用いて、イエロートナー1を得た。
(イエロー現像剤1の製造)
イエロートナー1に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、イエロー現像剤1を得た。
<ブラックトナー1およびブラック現像剤1の製造>
(ブラックトナー1の製造)
上述したシアントナー1の製造において、シアン着色剤粒子分散液の代わりにブラック着色剤粒子分散液〔Bk〕を用いた以外はシアントナー1と同じ製法を用いて、ブラックトナー1を得た。
(ブラック現像剤1の製造)
ブラックトナー1に対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、ブラック現像剤1を得た。
<シアントナー2〜5およびシアン現像剤2〜5の製造>
(シアントナー2〜5の製造)
表1−1に示す通りに、シアントナー1から各樹脂の使用量を変更したこと以外は、シアントナー1と同じ製法に従い、シアントナー2〜5をそれぞれ製造した。
(シアン現像剤2〜5の製造)
シアントナー2〜5のそれぞれに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、各トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、シアン現像剤2〜5をそれぞれ製造した。
<マゼンタトナー2〜5およびマゼンタ現像剤2〜5の製造>
(マゼンタトナー2〜5の製造)
表1−2に示す通りに、マゼンタトナー1から各樹脂の使用量を変更したこと以外は、マゼンタトナー1と同じ製法に従い、マゼンタトナー2〜5をそれぞれ製造した。
(マゼンタ現像剤2〜5の製造)
マゼンタトナー2〜5のそれぞれに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、各トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、マゼンタ現像剤2〜5をそれぞれ製造した。
<イエロートナー2〜5およびイエロー現像剤2〜5の製造>
(イエロートナー2〜5の製造)
表1−3に示す通りに、イエロートナー1から各樹脂の使用量を変更したこと以外は、イエロートナー1と同じ製法に従い、イエロートナー2〜5をそれぞれ製造した。
(イエロー現像剤2〜5の製造)
イエロートナー2〜5のそれぞれに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、各トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、イエロー現像剤2〜5をそれぞれ製造した。
<ブラックトナー2〜5およびブラック現像剤2〜5の製造>
(ブラックトナー2〜5の製造)
表1−4に示す通りに、ブラックトナー1から各樹脂の使用量を変更したこと以外は、ブラックトナー1と同じ製法に従い、ブラックトナー2〜5をそれぞれ製造した。
(ブラック現像剤2〜5の製造)
ブラックトナー2〜5のそれぞれに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、各トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、ブラック現像剤2〜5をそれぞれ製造した。
なお、上述の白色以外の有色トナーの90℃における貯蔵弾性率は、表1−1〜1−4に示される。貯蔵弾性率は以下のようにして測定した。
(貯蔵弾性率の測定)
測定サンプルとしては、外添剤のついたトナーを0.2g計量し、圧縮成形機で25MPaの圧力を印加して加圧成型を行い、直径10mmの円柱状ペレットを作製した。
レオメーター(TA instrument製:ARES G2)を使用し、上に直径8mmのパラレルプレートを下に直径20mmのパラレルプレートのセットで用いて、周波数1Hzの条件で降温測定を行った。サンプルセットを100℃にて行い、Gapを一度1.4mmにセットした後に、プレート間からはみ出したサンプルのかきとりを行い、1.2mmにGapをセットし、Axial forceをかけつつ任意の温度まで降温し3hr静置した。その後、測定開始温度の30℃まで降温しAxial forceを止め、30℃から150℃まで昇温速度3℃/minで、貯蔵弾性率(G’)の昇温測定を行った。以下に詳細な測定条件を示す。
[測定条件]
・Frequency:1Hz
・Ramp rate:3℃/min
・Axicial force:0g、sensitivity:10g
・Initial strain:3.0%、Strain adjust:30.0%,Minimum strain:0.01%、Maximum strain:10.0%
・Minimum torque:1g・cm、 Maximum torque:80g・cm
・Sampling interval:1.0℃/pt。
<白色トナー1の製造>
70℃に加温したイオン交換水900質量部にリン酸三カルシウム3質量部を添加し、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて10,000rpmにて攪拌し、水系媒体を得た。
スチレン 80.0質量部
n−ブチルアクリレート 20.0質量部
ジビニルベンゼン 1.0質量部
非晶性ポリエステル樹脂 4.5質量部
(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物とイソフタル酸との重縮合物、ガラス転移温度(Tg)=65℃、数平均分子量(Mn)=17000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.4)
サリチル酸アルミニウム化合物 1.0質量部
(ボントロンE−88、オリエント化学工業株式会社製)
酸化チタン 6.0質量部。
上記材料を、アトライター(日本コークス工業株式会社製)を用いて均一に分散混合して、重合性単量体組成物を調製した。得られた重合性単量体組成物を63℃に加温し、そこにステアリン酸ステアリルを主体とするエステルワックス 9質量部を添加し、混合溶解して、これに重合開始剤である2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル 3質量部を加えて溶解し、重合性単量体混合物を調製した。
水系媒体中に上記で得られた重合性単量体混合物を投入し、63℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで7分間攪拌し、造粒した。その後パドル攪拌翼で攪拌しつつ、63℃で6時間反応させた。その後液温を80℃とし、さらに4時間攪拌を続けた。反応終了後、冷却を行い、室温(25℃)まで冷却された懸濁液に塩酸を加えてリン酸カルシウム塩を溶解し、濾過し水洗を行い、湿潤しているトナー粒子を得た。
次に、上記トナー粒子を40℃にて12時間乾燥して、体積基準のメジアン径が7.6μmであり、平均円形度が0.971であるトナー粒子を得た。
このトナー粒子 100質量部と、BET値が200m2/gであり平均一次粒子径が12nmである、シリコーンオイルで処理した疎水性シリカ微粉体 0.7質量部とをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合して、白色トナー1を得た。白色トナー1の90℃における貯蔵弾性率G1’は、8.30×105dyn/cm2であった。
<白色トナー2の製造>
上記の白色トナー1の製造において、ジビニルベンゼンの使用量を0.5質量部に変更したこと以外は、白色トナー1と同様の製造方法により白色トナー2を得た。90℃における貯蔵弾性率G1’は、5.83×102dyn/cm2であった。
<白色現像剤1および2の製造>
白色トナー1および2のそれぞれに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(単量体質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、各トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、白色現像剤1および2をそれぞれ得た。
<実施例1〜4および比較例1〜4>
下記表2に示すような白色トナーと白色以外の有色トナーとを組み合わせた実施例1〜4および比較例1〜4について、下記のように折り定着性および光沢性を評価した。
<折り定着性評価>
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub(登録商標)C754」(コニカミノルタ株式会社製)を、定着上ローラーおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、また、上記で作製した各色の現像剤を用いて評価を行った。OHPシート(3M CG3700_5mil(厚さ125μm))の上に、付着量10.0g/m2の白色トナー1のベタ画像を付着させ、さらにその上にシアントナー1を付着量2.5g/m2で、マゼンタトナー1を付着量2.5g/m2で、イエロートナー1を付着量2.5g/m2で、ブラックトナー1を付着量2.5g/m2で、それぞれ付着させ、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、システムスピード230mm/sec、定着温度150℃の条件で熱定着させた。つまり、白色トナー以外の有色トナーと白色トナーとが同時に熱定着されたことになる。そのプリント物を、折り機でベタ画像に荷重をかけるように折り、ここに0.35MPaの圧縮空気を吹き付け、折り目を下記の評価基準に示す5段階にランク付けした。ランク4以上を合格とした。この評価に用いた試料No.を1とし、上記表2に示すように使用するトナーの組み合わせを変化させて同様の評価を実施した。評価結果を下記表3に示す。
−評価基準−
ランク5:全く折れ目なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あるが実用上問題なし
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:大きな剥離あり。
<光沢性評価>
折り定着性評価に用いたプリント物を、折り機で折る前に光沢性について目視により判断し、下記の評価基準に示す5段階にランク付けした。ランク4以上を合格とした。評価結果を下記表3に示す。
−評価基準−
ランク5:好ましい高光沢であり、光沢ムラもない
ランク4:光沢性はランク5と同等であるが、やや光沢ムラが見られるが許容レベル
ランク3:光沢がやや低い。光沢ムラもランク4より多く、許容できない
ランク2:ところどころに無光沢の部分が見られ、許容できない
ランク1:ほぼ無光沢であり問題外である。許容できない。
上記表3の結果から明らかなように、実施例の画像形成方法によれば、優れた折り定着性と高光沢化との両立が実現できることが分かった。