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Description
特許文献1では、トナー表層および内部に、結晶性ポリエステルのラメラ結晶が球状に存在しているトナーが提案されている。
上記したトナーでは、トナー中の結晶性ポリエステルの結晶性を維持することで、耐熱保存性を極力維持しながら、定着時に結晶性ポリエステルが液状化することで、トナーが潰れやすくなり、結果としてトナーの低温定着性能が向上する。この効果により、上記したトレードオフ関係を解消している。しかし、特に高速定着時において、球状に存在する結晶性ポリエステルとトナーバインダーが均一に溶融せず、充分な低温定着性が得られないだけではなく、高温定着時に一部のトナーが定着ローラに融着する現象(高温オフセット現象)が生じる場合があった。
特許文献2では、結着樹脂として結晶性ポリエステルとスチレン‐アクリル系樹脂を含有するコア・シェル構造のトナーが提案されている。
上記したトナーでは、スチレン‐アクリル系樹脂の弾性を利用して、高温オフセット現象の改良を試みている。しかしながら、結晶性ポリエステルと、トナーバインダーであるスチレン‐アクリル系樹脂との相溶性という観点からの検討は充分になされていない。結果として、定着時にトナーが均一に溶融せず、充分な低温定着性が得られない場合があった。
特許文献3および特許文献4では結晶性ポリエステルと、実質的に非相溶とされる非晶性ポリマーを結合したブロックポリマーを用いたトナーが提案されている。
しかしながら該トナーでは、該ブロックポリマーを主成分として用いた場合には、結晶性ポリエステルがトナー表面に存在する確率が高くなり、現像システムの高速化への対応が困難であった。また、他の樹脂を主成分として該ブロックポリマーを添加した場合には、他の樹脂と該ブロックポリマーとの相溶性について充分に検討がなされておらず、充分な低温定着性が達成できない場合があった。
以上、結晶性樹脂を導入したトナーにおいて、結晶性樹脂の添加による定着性能を充分に活かしながら、保存性や現像性に対する弊害を抑えたトナーは未だ提案されていなかった。
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂および結晶性樹脂を含有してなり、
該結晶性樹脂は、結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率が、30:70〜90:10であるブロックポリマーまたはグラフトポリマーであり、
該結着樹脂の温度変調型示差走査熱量計(MDSC)により測定したトータルヒートフローにおいて、
吸熱ピークのピーク温度が55.0℃以上90.0℃以下であり、
該トータルヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量に対する、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が0.0%以上35.0%以下であることを特徴とするトナーである。
温度変調型示差走査熱量計(MDSC)による測定とは、通常の昇温に一定周波数の昇温/降温(モジュレーション波形)を重ね合わせた昇温を行ったときの熱量を測定する示差走査熱量測定手法である。本発明に用いた昇温波形を図1に示す。
本発明の結晶性樹脂およびスチレンアクリル樹脂を用いた場合のMDSC測定結果を図2に示す。なお、該測定結果はトータルヒートフローに解析する前のシグナルであり、解析ソフト(TAインスルメンツ社 ユニバーサルアナリシス2000)上ではモジュレーテッドヒートフローシグナルと称される。該測定結果から、昇温波形の形状と、該結晶性樹脂の吸熱波形の形状が大幅に異なることが分かり、解析を行うとリバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が非常に低くなることがわかった。一方、従来の結晶性樹脂を用いた場合の測定結果を図3に示す。該測定結果から、昇温波形の形状と、該結晶性樹脂の吸熱波形の形状が同じになり、解析の結果、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が非常に高くなることが分かった。すなわち、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率は、結晶性樹脂の物性変化における、モジュレーション波形に対する追従性を表わしていることがわかる。そして、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が低いほど、温度に対する追従性が低くなることを示している。
なお、本発明で用いた昇温波形は、図1で示した通りモジュレーション波形によって冷
却工程が生じないように設定してあるため、上記結晶性樹脂の物性変化は、主に結晶性樹脂の溶融に伴うものと考えられる。
すなわち、本発明の結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂を組み合わせた場合には、結晶性樹脂が単に溶融するだけでなく、スチレンアクリル樹脂に相溶し、スチレンアクリル樹脂を可塑化させていると考えた。
該可塑化現象はポリマー同士の相溶現象であるため、発熱を生じる場合が多い(参考文献 ポリマーブレンド シーエムシー出版 18p、122p)。また、相溶現象は、結晶性樹脂の溶融ほど速やかには生じず、時間依存性が高いと予想できる。該相溶現象による発熱反応が、結晶性樹脂の溶融と同時に生じる為に、本発明に特有のモジュレーテッドヒートフローシグナルを示すと考えられる。具体的には、図4の模式図に示す通り、昇温に伴って結晶性樹脂が溶融して吸熱が生じるが、モジュレーション波形によって昇温速度が低くなったときに、相溶現象による発熱の影響を受けた波形になり、結果としてリバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が低くなると考えた。
さらに具体的に説明すると、本発明の結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂を組み合わせた場合には、前述のとおり、トータルヒートフローの吸熱量に占める、リバーシングヒートフローの吸熱量比率が低い。該リバーシングヒートフロー比率が低いという事は、DSCの分析上、モジュレーション波形に対して吸熱ピークの追従性が低く、正規分布波形からのずれが大きいことを意味する。本発明においては、結晶性樹脂の溶融と同時に前述した相溶現象が生じるため、該相溶現象の発熱によって、吸熱波形が正規分布からずれたと考えている(図4の模式図)。すなわち、本発明の結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂を組み合わせた場合には、溶融時の相溶性が高く、結晶性樹脂による可塑化効果が充分に得られている事を意味する。
実際に相溶現象が生じているかを確認するために、本発明の結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂を用いたトナーの溶融状態を確認したところ、分離することなく均一に溶融する様子が確認された。また、従来の結晶性樹脂を用いた場合には、溶融時に結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂が分離することが確認された。
上記した通り、MDSC測定におけるリバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が低いことが溶融時の相溶性を示しており、優れた定着性能に繋がる物性であることがわかった。これは、種々のサンプルについて様々な条件における物性測定を繰り返した結果、見出されたものであり、従来技術や従来の観点では到底到達できるものではなかった。
該結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂を主成分として含有することが好ましい。
また、該結晶性樹脂は結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率が、30:70〜90:10であるブロックポリマーまたはグラフトポリマーである。
これは、上記したトナーの溶融時の相溶性を充分に活かすために、トナー中における結晶性樹脂を微分散させる為に必要である。上記した範囲よりも結晶性部位が少ない場合には、トナーに添加した際に結晶性樹脂の結晶状態を保持することが困難となり、耐熱性お
よび現像性が低下する。また、上記した範囲よりも結晶性部位が多くなると、トナー中における結晶性樹脂が充分に微分散されず、溶融時の相溶が充分に行われない。
該結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率が、40:60〜80:20であることが好ましく、40:60〜70:30であることがより好ましい。
該結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率は、結晶性樹脂を製造する際の材料比や重合条件によって制御可能である。該結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率の測定方法については後述する。
また、スチレンアクリル樹脂は帯電性や流動性の観点から、トナーの結着樹脂として用いるのに好ましい。しかし、例えば、結晶性ポリエステルに対しては相溶性が低い場合が多く、本発明によってそれらが両立可能となったと言える。
なお、一般的なブロックポリマーの定義としては、線状に連結した複数のブロックで構成されたポリマー(高分子学会 国際純正応用化学連合高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集)とあり、本発明もその定義に従う。
また、一般的なグラフトポリマーの定義としては、ある高分子中に側鎖として主鎖に結合した1種または数種のブロックがあり、しかもこれらの側鎖が主鎖とは異なる構成(化学構造)上または配置上の特徴をもつポリマー(同用語集)とあり、本発明もその定義に従う。
該吸熱ピークのピーク温度が、55.0℃以上であれば、トナーの耐熱性が低下しにくい。一方、該吸熱ピークのピーク温度が、90.0℃以下であれば、定着工程において結晶性樹脂の溶融が充分に行われ、低温定着性が低下しにくい。
該吸熱ピークのピーク温度は、結晶性樹脂に用いる単量体の組成、結晶性樹脂における結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率、結晶性樹脂の分子量の物性で制御することができる。
該比率の好ましい範囲は、0.0%以上30.0%以下である。
該リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率は、結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂の組成によって制御可能であるが、その中でも結晶性樹脂の結晶性部位の組成、結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率で制御するのが簡便である。
該結晶性樹脂と該スチレンアクリル樹脂の混合方法、該スチレンアクリル樹脂の製造方法、該MDSC測定の方法については後述する。
ニルポリマーであるブロックポリマーであることが好ましい。
結晶性部位がポリエステルであることで、スチレンアクリル樹脂に対する相溶性と、トナー添加時の結晶性維持を両立する設計が容易になる。さらに、トナーに離型剤を用いた場合、離型剤と結晶性樹脂との相分離も同時に達成しやすいため、トナーの離型性がより向上する。
また、非晶性部位がビニルポリマーであることで、スチレンアクリル樹脂中において結晶性樹脂を微分散した状態に保持しやすくなる。また、ブロックポリマーであることで、スチレンアクリル樹脂中での結晶性樹脂をミセル状に微分散させることが可能であり、低温定着性がより向上する。また、ブロックポリマーであると、結晶性部位と非晶性部位とが主鎖で繋がる形態をとるため、3次元的な構造をとらないためスチレンアクリル樹脂に対する相溶速度が速くなると考えられる。また、結晶性部位の折り畳みが非晶性部位に阻害されにくいため、再結晶化速度が速く、より好ましい。
HOOC−(CH2)m−COOH 式(A)
[式中、mは、6以上14以下(好ましくは7以上10以下)の整数を示す]
HO−(CH2)n−OH 式(B)
[式中、nは、6以上16以下(好ましくは6以上12以下)の整数を示す]
上記ジカルボン酸は、ポリエステル部位に同じ部分骨格を生成するものであれば、カルボキシル基が(好ましくは炭素数1以上4以下の)アルキルエステル化した化合物または酸無水物化した化合物等を用いてもよい。
上記式において、mおよびnが上記範囲にあることで、スチレンアクリル樹脂への溶融時の相溶性をより高めることができる。また、トナーに添加した際の結晶性を維持しやすくなるため、より優れた低温定着性と耐熱性、耐久性の両立が可能である。
上記した各種SP値については、樹脂製造に用いる単量体の組成によって制御可能である。SP値の計算手法については後述する。
結晶性樹脂、および、結晶性樹脂の非晶性部位の重量平均分子量(Mw)は、結晶性樹脂製造時の合成温度や合成時間によって制御することが可能である。なお、結晶性樹脂、
および、結晶性樹脂の非晶性部位の重量平均分子量(Mw)の測定方法については後述する。
本発明のトナー粒子の製造方法は、どのような製造方法であっても構わないが、最も好ましい手法である懸濁重合法を用いた製造方法について以下に説明する。
スチレンアクリル樹脂を形成する重合性単量体および結晶性樹脂を混合し、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機のような分散機を用いて、これらを均一に、溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて、着色剤、離型剤、極性樹脂、多官能性単量体、顔料分散剤、荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、さらに他の添加剤(例えば、連鎖移動剤)を適宜加えることができる。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を用いて懸濁し、造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行い、完結させ、必要に応じて脱溶剤処理を行うことでトナー粒子の水分散液が形成される。
その後、必要に応じて洗浄を行い、公知の方法によって乾燥、分級、外添処理を行うことでトナーを得ることができる。
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、および、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体類;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、および、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単
量体類;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、および、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体類;
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、および、ジビニルエーテルが挙げられる。
上記単量体に関して、単官能性重合性単量体を単独で、あるいは二種以上組み合わせて、または、単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体とを組み合わせて、または、多官能性重合性単量体を単独で、あるいは、二種以上を組み合わせて使用できる。
該ポリエステル樹脂としては、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。なお、ポリエステル樹脂を結晶性樹脂として用いる場合は、下記に挙げる単量体のうち、ポリマー化した際のDSC測定において、明確な吸熱ピークを有するものに限る。
このようなポリエステル樹脂を得るためのアルコール単量体としては公知のアルコール単量体が使用できる。具体的には、例えば以下のものが使用できる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールのようなアルコール単量体;ポリオキシエチレン化ビスフェノールAのような2価の芳香族アルコール;1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンのような芳香族アルコール、ペンタエリスリトールのような多価のアルコール。
ポリエステル樹脂を得るためのカルボン酸単量体としては公知のカルボン酸単量体が使用できる。具体的には、例えば以下のものが使用できる。シュウ酸、セバシン酸のようなジカルボン酸およびこれらの酸の無水物または低級アルキルエステル;トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンのような3価以上の多価カルボン酸成分およびこれらの酸無水物または低級アルキルエステルなどの誘導体。
本発明において、上記結晶性部位および非晶性部位としてのビニルポリマーに使用でき
る単量体についても、上記スチレンアクリル樹脂に使用可能なものを用いることができる。なお、ビニルポリマーを結晶性樹脂として用いる場合は、明細書中に記載の単量体のうち、ポリマー化した際のDSC測定において、明確な吸熱ピークを有するものに限る。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、または以下に示すイエロー、マゼンタ、およびシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー用の着色剤として、例えば、以下に示す着色剤を用いることができる。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
該着色剤は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下用いることが好ましい。
離型剤は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上30.0質量部以下使用するのが好ましい。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物およびその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、あるいは、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂は好ましく用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
無機微粒子の総添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して1.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
<結晶性樹脂の結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率(C/A比)の測定方法>
結晶性樹脂の結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率(C/A比)は核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)[400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて行った。測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
得られたスペクトルの積分値から結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率(C/A比)を算出した。
トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、得られた可溶分から溶媒を減圧留去して、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶成分を得る。
得られたトナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶成分をクロロホルムに溶解し、濃度25mg/mlの試料溶液を調製する。
得られた試料溶液3.5mlを、下記装置に注入し、下記条件で、分子量2000未満の離型剤由来の低分子量成分と、分子量2000以上の結着樹脂由来の高分子量成分とを分取する。
分取GPC装置:日本分析工業(株)製 分取HPLC LC−980型
分取用カラム:JAIGEL 3H、JAIGEL 5H(日本分析工業(株)社製)
溶離液:クロロホルム
流速:3.5ml/min
結着樹脂由来の高分子量成分を分取した後、溶媒を減圧留去し、さらに90℃雰囲気中、減圧下で24時間乾燥する。該結着樹脂成分が100mg程度得られるまで上記操作を繰り返す。
上記作業で得られた結着樹脂100mgにアセトン500mlを加え、70℃に加熱し完全に溶解させた後、徐々に25℃まで冷却して結晶性樹脂を再結晶させる。結晶性樹脂を吸引ろ過して、結晶性樹脂とろ液に分離する。
次いで、分離したろ液をメタノール500mlへ徐々に加えて、スチレンアクリル樹脂を再沈殿させる。その後、吸引ろ過器でスチレンアクリル樹脂を取り出す。
得られたスチレンアクリル樹脂および結晶性樹脂を40℃で24時間減圧乾燥する。
示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定する。また、解析には解析ソフト(TAインスルメンツ社 ユニバーサルアナリシス2000)を用いる。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、上記した手法によりトナーから分取した結着樹脂(サンプル)2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から120℃の間で、昇温速度1℃/min、周期30s、振幅温度幅±0.080℃の設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度0℃から120℃の範囲において比熱変化が得られる。
該条件は、結晶性樹脂の溶融と、溶融時の結晶性樹脂とスチレンアクリル樹脂の相溶現象を切り分ける為の条件となっている。また、測定中に結晶性樹脂の再結晶化が生じないよう、モジュレーションによって冷却が生じない条件となっている。また、周期は30sとする。30sよりも短いと、一部の結晶性樹脂について、結晶性樹脂そのものの溶融が追従できず、相溶現象との切り分けが困難になる。30sよりも長いと、上記相溶現象についても追従可能になる場合があるため、同様に切り分けが困難となる。
一方、測定結果のトータルヒートフローシグナルにおける、結晶性樹脂に由来する吸熱曲線の頂点の温度を吸熱ピークのピーク温度(℃)[Tm]とし、該吸熱ピークの吸熱量
(J/g)をトータルヒートフローでの吸熱量(J/g)とする。また、測定結果のリバーシングヒートフローシグナルにおいて、トータルヒートフローシグナルで解析した温度範囲と同じ温度範囲で、吸熱量(J/g)を解析し、これをリバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量(J/g)とする。該リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量(J/g)を該トータルヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量(J/g)で割った値に100をかけることで、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率(%)[リバーシングヒートフロー比率(%)]を算出する。
トナー粒子のガラス転移温度(Tg)は、トナー粒子について上記した測定を行い、可逆比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線が交わる点の温度とする。なお、トナーから上記測定値を得る場合には、前述したように結着樹脂と離型剤の分離処理を行った後の、結着樹脂を用いて測定することで、可能となる。
本発明におけるSP値は、Fedorsの式(1)を用いて求めた。ここでのΔei、およびΔviの値は著「コーティングの基礎科学」54〜57頁、1986年(槇書店)の表3〜9による原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)」を参照にした。
式(1):δi=[Ev/V]^(1/2)=[Δei/Δvi]^(1/2)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子または原子団のモル体積
例えば、ヘキサンジオールは、原子団(−OH)×2+(−CH2−)×6から構成され、計算SP値は下記式で求められる。
δi=[Δei/Δvi]^(1/2)=[{(5220)×2+(1180)×6}/{(13)×2+(16.1)×6}]^(1/2)
SP値(δi)は11.95となる。
結晶性樹脂および結晶性樹脂の非晶性部位などの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で、結晶性樹脂および結晶性樹脂の非晶性部位をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
なお、結晶性樹脂のビニルポリマー部位の分子量の測定は、結晶性樹脂のポリエステル部位を加水分解させて測定を行う。
具体的な方法は、結晶性樹脂30mgにジオキサン5ml、10質量%の水酸化カリウム水溶液1mlを加え、温度70℃で6時間振とうさせてポリエステル部位を加水分解させる。その後、溶液を乾燥させて、ビニルポリマー部位の分子量の測定用試料を作成する。その後の操作は、結晶性樹脂と同様に行う。
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。
測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、結晶性樹脂を直径7.9mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、室温(25℃)から100℃に15分間で昇温して、試料の形を整えた後、10分間保持した後に、測定を開始する。測定条件は、温度100℃、周波数1.0Hz、歪み1.0%で行う。
結晶性樹脂の含有量は、結着樹脂および結晶性樹脂各々の核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)スペクトルを基にトナーの核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)スペクトルの積分値から算出する。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
スチレンアクリル樹脂および結晶性樹脂の構造は核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)[400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて特定する。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、および、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸100.0部および、1,9−ノナンジオール83.0部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド0.7部を加えた後、温度160℃に昇温し、縮重合する。その後、温度180℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させてポリエステル(1)を得た。前述の方法に従って測定したポリエステル(1)の重量平均分子量(Mw)は19000、融点(Tm)は73℃であった。
該ポリエステル(1)の一部を取り出したものを結晶性樹脂19として用いた。
次いで、撹拌機、温度計、および、窒素導入管を備えた反応容器にポリエステル(1)100.0部、脱水クロロホルム440.0部を添加して完全に溶解させた後、トリエチルアミン5.0部を加え、氷冷させながら、2−ブロモイソブチリルブロミド15.0部
を徐々に加えた。その後、室温(25℃)で一昼夜撹拌した。
メタノール550.0部を入れた容器に、上記樹脂溶解液を徐々に滴下して樹脂分を再沈殿させた後、濾過、精製、乾燥させてポリエステル(2)を得た。
次いで、撹拌機、温度計、および、窒素導入管を備えた反応容器に上記で得られたポリエステル(2)100.0部、スチレン100.0部、臭化銅(I)3.5部、および、ペンタメチルジエチレントリアミン8.5部を添加して撹拌しながら、温度110℃で重合反応を行った。所望の分子量となったところで反応を停止して、メタノール250.0部で再沈殿、濾過、精製し、未反応のスチレンおよび触媒を除去した。その後、50℃に設定した真空乾燥機で乾燥して結晶性樹脂1を得た。
表1に示すような原料に変更すること以外は結晶性樹脂1および結晶性樹脂19の製造方法と同様にして結晶性樹脂2〜20および25〜27を得た。
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、および、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸100.0部および、1,9−ノナンジオール83.0部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。チタン(IV)イソプロポキシド0.7部を加えた後、温度150℃に昇温し5時間かけて縮重合した。その後、アクリル酸15.0部、スチレン80.0部を1時間かけて滴下した。150℃に保持したまま1時間攪拌を続けた後、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂成分の単量体の除去を行った。その後、190℃に昇温し、所望の分子量になるまで反応を行い、結晶性樹脂21を得た。
アクリル酸の添加部数を15.0部から3.0部に、スチレンの添加部数を80.0部
から20.0部に変更した以外は、結晶性樹脂21の製造方法と同様にして結晶性樹脂22を得た。
ベヘニルアクリレート100.0部、メチルエチルケトン64.0部、臭化銅(I)0.4部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.5部、2−ブロモイソ酪酸エチル1.0部をフラスコに入れ、1時間、常温常圧下で窒素置換を行った。その後、65℃に昇温し、所望の分子量となるまで反応させてポリベヘニルアクリレートを得た。
次いで、室温に冷却したのちに、上記ポリベヘニルアクリレート100.0部をクロロホルム200.0部に溶解させ、エタノール800.0部で再沈殿、ろ過、精製した。前述の方法に従って測定したポリベヘニルアクリレートの重量平均分子量(Mw)は11000、融点(Tm)は65℃であった。
次いで、精製後のポリベヘニルアクリレート100.0部、スチレン100.0部、臭化銅(I)1.1部、ペンタメチルジエチレントリアミン1.3部をフラスコに入れ、1時間、常温常圧下で窒素置換を行った。その後、100℃に昇温し、所望の分子量となったところで反応を停止し、ポリベヘニルアクリレート‐ポリスチレンブロック共重合体を得た。室温に冷却したのちに、上記ポリベヘニルアクリレート‐ポリスチレンブロック共重合体100.0部をクロロホルム200.0部に溶解させ、メタノール800.0部で再沈殿、ろ過、精製し、未反応の単量体および触媒、溶媒を除去した。その後、50℃に設定した真空乾燥機で乾燥して結晶性樹脂23を得た。
セバシン酸100.0部、1,9−ノナンジオール80.0部、ジブチルスズオキシド0.1部を、窒素置換したフラスコに入れ、170℃で4時間、さらに減圧下210℃で所望の分子量になるまで反応させ、結晶性ポリエステルを得た。前述の方法に従って測定した結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は19000、融点(Tm)は65℃であった。
次いで、テレフタル酸40.0部、イソフタル酸22.0部、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物40.0部、エチレングリコール20.0部、ジブチルスズオキシド0.1部を、窒素置換したフラスコに入れ、150℃で4時間、さらに減圧下200℃で所望の分子量になるまで反応させ、非晶性ポリエステルを得た。前述の方法に従って測定した非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は8000、ガラス転移温度(Tg)は63℃であった。
上記結晶性ポリエステル200部と、上記非晶性ポリエステル200部を、フラスコ中窒素気流下、200℃で減圧下、所望の分子量になるまで反応させ、結晶性樹脂24を得た。
得られた結晶性樹脂1〜27の物性を表2に示す。
下記の材料をビーカーに入れ、プロペラ式攪拌装置にて撹拌速度100rpmで撹拌しながら、混合して混合液を調製した。
・スチレン 52.5部
・n−ブチルアクリレート 17.5部
・ピグメントブルー15:3 6.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
・極性樹脂 5.0部
(スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、酸価10mgKOH/g、Tg=80℃、Mw=15000)
・離型剤(パラフィンワックス) 7.0部
(HNP−9:日本精鑞製、融点75℃)
・結晶性樹脂1 30.0部
その後、混合液を65℃に加温し、重合性単量体組成物を得た。
次いで、高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えた容器に、イオン交換水800部とリン酸三カルシウム15.5部を添加し、回転数を15000回転/分に調整し、70℃に加温して水系媒体を調製した。
その後、水系媒体の温度を70℃、撹拌装置の回転数を15000回転/分に保ちながら、該水系媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート4.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ20分間の造粒工程を行った。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150回転/分で攪拌しながら80℃を保持して6.0時間重合を行い、100℃に昇温して4時間加熱することで、溶剤および未反応モノマーの除去を行った。
重合反応終了後、該スラリーを冷却し、冷却されたスラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。上記トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、シリカ微粒子に対して20質量%
のジメチルシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粒子(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.5部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用い、撹拌速度3000rpmで15分間混合して、トナー1を得た。
表3に示すような原料および配合量に変更すること以外はトナー1の製造方法と同様にしてトナー2〜26、29〜41を得た。
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・キシレン 100.0部
・スチレン 80.0部
・n−ブチルアクリレート 20.0部
・t−ブチルパーオキシピバレート 3.0部
前記容器内を毎分200回転で撹拌し、70℃に加熱して10時間撹拌した。さらに、100℃に加熱して6時間溶媒を留去させてスチレンアクリル樹脂を得た。次いで、
・スチレンアクリル樹脂 70.0部
・結晶性樹脂1 30.0部
・離型剤 パラフィンワックス 7.0部
(HNP−9:日本精鑞製、融点75℃)
・ピグメントブルー15:3 6.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
・酢酸エチル 200.0部
上記成分をボールミルにて10時間混合分散させ、得られた分散液を、リン酸三カルシウム3.5質量%を含むイオン交換水2000部に投入し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーにて回転数を15000回転/分で10分間造粒を行った。その後、スリーワンモーターにて150回転/分で撹拌しながらウォーターバス中において75℃に4時間保持し、脱溶剤を行った。該スラリーを冷却し、冷却されたスラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。上記トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、シリカ微粒子に対して20質量%のジメチルシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粒子(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.5部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用い、撹拌速度3000rpmで15分間混合して、トナー27を得た。
(樹脂分散液の調製)
・スチレン 78.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5部およびアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.2部をイオン交換水120.0部に溶解したものに、分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに重合開始剤として過硫酸アンモニウム1.5部を溶解したイオン交換水10.0部を投入した。さらに、窒素置換を行った後、撹拌しながら内容物が温度70℃になるまで加熱し、4時間そのまま乳化重合を継続した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、平均粒径が0.29μmである樹脂を分散させてなる樹脂分散液を調製した。
・結晶性樹脂1 50.0部
・アニオン性界面活性剤 7.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200.0部
以上を温度95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、結晶性樹脂1を分散させてなる結晶性樹脂分散液を調製した。
(着色剤分散液の調製)
・シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 20.0部
・アニオン性界面活性剤 3.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、この着色剤分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤の平均粒径は、0.20μmであり、また1.00μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
(離型剤分散液の調製)
・炭化水素ワックス 50.0部
(HNP−9:日本精鑞製、融点75℃)
・アニオン性界面活性剤 7.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200.0部
以上を温度95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、平均粒径が0.50μmであるワックスを分散させてなるワックス粒子分散液を調製した。
(荷電制御粒子分散液の調製)
・ジ−アルキル−サリチル酸の金属化合物 5.0部
(負荷電性制御剤、ボントロンE−84、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 3.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。その後、固形分濃度が5.0質量%になるようイオン交換水の量を調整した。
・樹脂分散液 70.0部
・結晶性樹脂分散液 30.0部
・着色剤分散液 6.0部
・離型剤分散液 7.0部
以上を、撹拌装置、冷却管、温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1モル/L−水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
この混合液に凝集剤として、8.0質量%塩化ナトリウム水溶液120.0部を滴下し、撹拌しながら温度55℃まで加熱した。この温度の時、荷電制御粒子分散液2.0部を加えた。温度55℃で2時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が3.3μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3.0部を追加した後、撹拌を継続しながら温度95℃まで加熱し、4.5時間保持した。該スラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。
上記トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、シリカ微粒子に対して20質量%のジメチルシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粒子(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.5部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用い、撹拌速度3000rpmで15分間混合して、トナー28を得た。
得られたトナー1〜41の物性をまとめて表3に示す。
前述の方法に従って、トナー1〜41の結着樹脂についてMDSC測定を行った。その結果をまとめて表4に示す。
[耐熱保存性(耐熱性)]
各トナー5gを50ccポリカップに取り、温度50℃/湿度10%RHで3日間放置し、凝集塊の有無を調べ評価した。
(評価基準)
A:凝集塊発生せず(耐熱性に特に優れる)
B:軽微な凝集塊が発生、軽い振とうで解れる(耐熱性に優れる)
C:軽微な凝集塊が発生、軽く指で押すと解れる(耐熱性に問題はない)
D:凝集塊が発生、軽く指で押しても崩れない(耐熱性にやや劣り、使用上問題がある)E:完全に凝集(耐熱性に劣り、使用上問題がある)
市販のカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造して評価を行った。このカラーレーザープリンターに搭載されていたシアンカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、代わりに評価するトナー(300g)を充填した。常温常湿下(23℃、60%RH)、受像紙として、キヤノン製オフィスプランナー(64g/m2)を用い、印字率2%チャートを500枚連続して画出しした。画出し後、さらにハーフトーン画像を出力し、該ハーフトーン画像における画像スジの有無、および現像ローラ上の融着物の有無について観察し、以下のように現像性を評価した。
(評価基準)
A:現像ローラ上にも、ハーフトーン部の画像上にも現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。(現像性に特に優れる)
B:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1〜4本あるものの、ハーフトーン部の画像上に現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。(現像性に優れる)
C:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1〜4本あり、ハーフトーン部の画像上にも細かい現像スジが数本見られる。(現像性に問題はない)
D:現像ローラの両端に周方向の細いスジが5本以上あり、ハーフトーン部の画像上にも、細かい現像スジが5本以上見られる。(現像性にやや劣り、使用上問題がある)
E:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に多数本の顕著な現像スジが見られる。(現像性に劣り、使用上問題がある)
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを250mm/s、定着線圧27.4kgfに設定し、初期温度を100℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。なお、MDSC測定用に作製した、離型剤を添加していないトナーについては、定着ローラにシリコーンオイル(粘度200cps)を滴量塗布し、評価を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点とは、画像の中央部分を縦方向に折り曲げ、4.9kPa(50g/cm2)の荷重で折り目を付け、該折り目と垂直方向に同様に折り目を付け、折り目の交点を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙(ダスパー K−3)で0.2m/秒の速度で5回摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率が10%以下となる最低温度のことである。
(評価基準)
A:低温側定着開始点が115℃以下(低温定着性が特に優れている)
B:低温側定着開始点が120℃あるいは125℃(低温定着性に優れている)
C:低温側定着開始点が130℃あるいは135℃(低温定着性に問題はない)
D:低温側定着開始点が140℃あるいは145℃(低温定着性にやや劣り、使用上問題
がある)
E:低温側定着開始点が150℃以上(低温定着性に劣り、使用上問題がある)
A:高温オフセットが発生しない最高温度が、低温側定着開始点の温度+50℃以上である(耐高温オフセット性能が特に優れている)
B:高温オフセットが発生しない最高温度が、低温側定着開始点の温度+40℃以上+50℃未満である(耐高温オフセット性能が良好である)
C:高温オフセットが発生しない最高温度が、低温側定着開始点の温度+30℃以上+40℃未満である(耐高温オフセット性能が問題ないレベルである)
D:高温オフセットが発生しない最高温度が、低温側定着開始点の温度+20℃以上+30℃未満である(耐高温オフセット性能がやや劣る)
E:低温側定着開始点の温度+20℃未満の温度領域で高温オフセットが発生する(耐高温オフセット性能が劣る)
(評価基準)
A:画像部の光沢度が20以上である(画像の光沢度が特に優れている)
B:画像部の光沢度が15以上20未満である(画像の光沢度が優れている)
C:画像部の光沢度が10以上15未満である(画像の光沢度が問題ないレベルである)D:画像部の光沢度が5以上10未満である(画像の光沢度がやや劣る)
E:画像部の光沢度が5未満である(画像の光沢度が劣る)
実施例1〜32では、トナーとして、トナー1〜29および39〜41をそれぞれ用いて上記評価を行った。その評価結果を表5に示す。
比較例1〜9では、トナーとしてトナー30〜38をそれぞれ用いて上記評価を行った。その評価結果を表5に示す。
Claims (12)
- 結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂および結晶性樹脂を含有してなり、
該結晶性樹脂は、結晶性部位と非晶性部位の質量基準の比率が、30:70〜90:10であるブロックポリマーまたはグラフトポリマーであり、
該結着樹脂の温度変調型示差走査熱量計(MDSC)により測定したトータルヒートフローにおいて、
吸熱ピークのピーク温度が55.0℃以上90.0℃以下であり、
該トータルヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量に対する、リバーシングヒートフローにおける吸熱ピークの吸熱量の比率が0.0%以上35.0%以下であることを特徴とするトナー。 - 前記結晶性樹脂は、前記結晶性部位がポリエステルであり、前記非晶性部位がビニルポリマーであるブロックポリマーである請求項1に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂における前記結晶性部位と前記非晶性部位の質量基準の比率が、40:60〜80:20である請求項1または2に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂における前記結晶性部位と前記非晶性部位の質量基準の比率が、40:60〜70:30である請求項3に記載のトナー。
- 前記スチレンアクリル樹脂と前記結晶性樹脂の前記結晶性部位のソルビリティパラメータ(SP)値の差の絶対値(ΔSP値)が、0.00以上0.35以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記スチレンアクリル樹脂と前記結晶性樹脂の前記非晶性部位のソルビリティパラメータ(SP)値の差の絶対値(ΔSP値)が、0.00以上0.35以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記結着樹脂中の前記結晶性樹脂の含有量が、2.0質量%以上50.0質量%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記結着樹脂中の前記結晶性樹脂の含有量が、6.0質量%以上50.0質量%以下である請求項8に記載のトナー。
- 前記トナー粒子が、懸濁重合トナー粒子である請求項1〜9のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、15000以上45000以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、20000以上45000以下である請求項11に記載のトナー。
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