JP6562767B2 - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、静電荷潜像を顕在化するトナー及びその製造方法に関するものである。
近年、更なる高精細フルカラー画像を出力する手段が要望されている中、特に使用エネルギーを削減する付加価値(以下、省エネ性)を求める機運が高まっており、省エネ性がトナーの重要品質の一つとして認識されている。トナーの省エネ性を達成させ得る一手段として、如何に低い温度で定着させるかということが挙げられ、これに対してトナーの材料から様々なアプローチがされている。その中で、トナー中に結晶性材料を含有させる技術があり、トナーの低温定着化を達成するための有効な手段となっている。
例えば、特許文献1ではトナー中にスチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有させることにより、低温定着性や画像の光沢性及び耐フィルミング性に優れたトナーを提供する技術が開示されている。
また、例えば特許文献2では、結晶性樹脂(X)と非晶性樹脂(Y)とのハイブリッド樹脂と非晶性樹脂(Z)とを含むトナー用バインダー樹脂により、優れた低温定着性と耐オフセット性を両立させる技術が開示されている。
また、例えば特許文献3では、結晶性ポリエステルと無定形ビニル重合体とが化学的に結合したブロック共重合体又はグラフト共重合体をバインダーとすることによりトナーの流動性、耐ブロッキング性、低温定着性、耐オフセット性、更には耐久性に優れたトナーを提供できることが開示されている。
さらには、特許文献4では、水系媒体中で重合性単量体及び結晶性ポリエステル樹脂の存在下で過酸化物系重合開始剤を用いて重合することで製造されるトナーに関する技術が開示されている。これにより現像耐久性の向上、低温定着性及び耐オフセット性に優れたトナー、画像形成方法、並びに画像形成装置が得られることが記載されている。
特開2010−139659号公報 国際公開第06/135041号 特開平02−294659号公報 特開2009−63969号公報
しかしこれらの課題解決提案に対し、ユーザーは、トナーの省エネ性に加え、トナーの高帯電性、高耐久性、保存安定性といった多岐にわたる項目について更なる改良や改善を求めている。但し、このような要求は、トナー特性として互いにトレードオフの技術関係となり、両立させるためのハードルは非常に高いと言わざるを得ない。それでも、今後もこの傾向は益々加速していくと思われ、トナーに対し、省エネルギーを達成し得る低温定着性と高帯電性/高耐久性/保存安定性の向上といった多岐にわたる技術課題について更なる両立が求められており、更なる技術改良が求められている。
本願発明は、低温定着性と高帯電性に優れ、現像耐久性が良好であり保存安定性にも優れたトナーを提供することを課題とする。
トナー粒子中に結晶性樹脂を含有させることによる低温定着性の良化は、該結晶性樹脂
が定着温度領域にて速やかに溶融することによる。但し、結晶性樹脂のみが溶融するばかりではトナーの低温定着化には寄与しがたく、定着時において結晶性樹脂の溶融と同時にトナーの結着樹脂(以下、単に結着樹脂ともいう)全体を可塑させて溶融させることが必要である。その為には結晶性樹脂と、結着樹脂を構成する重合性単量体との親和性が重要であると考えられる。
一方、良好な高帯電性と現像耐久性を得るためには、結晶性樹脂をトナー表面に露出させないことが特に重要な因子であると考えられる。これは、結晶性樹脂がトナー帯電のリークサイトとして作用する場合があり、トナーの帯電性が阻害される恐れがあるからである。特に水系媒体で重合性単量体組成物の粒子を形成し、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることにより得られるトナー粒子を含有するトナーの場合においては、顕著である。それは、結晶性樹脂中に親水性の成分が含有していると、該成分がトナー表面に濃縮されることにより、トナーの帯電阻害がより顕著になるからである。
以上のことから、本発明者らはこれらの現象、つまりはトナー粒子中に含有される結晶性樹脂の結着樹脂に対する定着時における可塑効果、及び結晶性樹脂のトナー中への内包化といった観点に着目して鋭意検討を行った。
その結果、重合性単量体、グラフトポリマー及びポリエステル樹脂を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成し、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合させることにより得られるトナー粒子を含有するトナーにおいて、ビニル系モノマー、特定のグラフトポリマーとして結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位を有する特定のハイブリッド樹脂、及び特定のモノマーを一定量含有するポリエステル樹脂を重合性単量体組成物に用いることが最適であることを見出し、本発明に至った。
本発明は、ビニル系モノマーである重合性単量体の重合体、グラフトポリマー及びポリエステル樹脂Aを含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
トナー粒子が、該ポリエステル樹脂Aで形成されたシェルを有し
該グラフトポリマーは、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するハイブ
リッド樹脂であり、
該結晶性ポリエステル部位と該非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)が、60/40〜95/5であり、
該ポリエステル樹脂Aが、下記式(1)で示されるイソソルビドユニットを、該ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットのモル数を基準として、0.10mol%以上20.00mol%以下を含み、
該ポリエステル樹脂Aの含有量が、該重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であり、
スチレンに溶解させた該グラフトポリマー及び、スチレンに溶解させた該ポリエステル樹脂Aの懸滴法による水との界面張力をそれぞれ、XcP(mN/m)、XaP(mN/m)としたとき、下記式(2)の関係を満た
12.0≦XcP−XaP≦17.0 (2)
ことを特徴とするトナーに関する。
また、本発明は、該トナーの製造方法に関する。
Figure 0006562767
本発明により、低温定着性と高帯電性に優れ、現像耐久性が良好であり、更には保存安定性にも優れたトナーを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、上記条件を満たすトナーとすることで低温定着性と高帯電性に優れ、現像耐久性が良好であり、更には保存安定性にも優れたトナーを得ることができる。
上記条件を満たすことにより本発明の効果が得られることについての詳細な理由は明確ではないが、本発明者らは次のように考えている。
前述の低温定着性といった観点において、結着樹脂の溶融時における結晶性樹脂と、結着樹脂を構成する重合性単量体との親和性は高い方が好ましい。該親和性を高めるために、結晶性樹脂は結晶性ポリエステル部位と非晶性のビニル部位を有するハイブリッド樹脂であることが必須であるものと考えられる。
また、本発明に用いられる該ハイブリッド樹脂はグラフトポリマーであるため、結着樹脂との親和性がより高まるものと考えられ、その結果、トナーの低温定着性に対してより顕著な効果を発現するものと考えられる。
ここで、本発明のグラフトポリマーの結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)が60/40〜95/5である場合には、グラフトポリマーの溶融時に結着樹脂を構成する重合性単量体との親和性が良好である。それにより、トナー全体を速やかに溶融させることが可能となり低温定着性が向上する。また、本発明のようなトナーにおいては、グラフトポリマーのトナー中での結晶性が適度に良好であることにより現像耐久性が良好となる。質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)は、好ましくは、70/30〜95/5である。
本発明に用いられるグラフトポリマー中の上記結晶性ポリエステル部位は2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主成分とするポリエステルが、結晶化度が高く好ましい。結晶性ポリエステルは、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。なお、主成分とは、その含有量が50質量%以上であることをいう。
本発明においてグラフトポリマーは結晶性樹脂である。本発明における結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂であり、その測定は「ASTM D 3417−99」に準じて行う。
このようなグラフトポリマー中の結晶性ポリエステル部位を得るためのアルコール単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールその他が挙げられる。
上記結晶性ポリエステル部位を得るためのカルボン酸単量体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
特に好ましい結晶性ポリエステル部位としては飽和ポリエステルであると一層望ましい。
また、該結晶性部位には、ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸、あるいはステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコールを用いることもできる。脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族モノアルコールの含有量は、結晶性ポリエステル部位に用いる全モノマーを基準として、1.0mol%以上10.0mol%以下であることが好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステル部位は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることによって得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応の時には、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等の通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
該触媒としてはチタン触媒が好ましく、キレート型チタン触媒がより好ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、本発明において望ましい分子量分布のポリエステルが得られるためである。また、チタン触媒を用いて作製された結晶性ポリエステルの方が、作製中にポリエステル内部に取り込まれたチタン又はチタン触媒がトナーの帯電性の点で優れるためである。キレート型チタン触媒であるとそれらの効果が大きくなるため望ましい。
本発明のグラフトポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)において、60℃以上110℃以下の範囲に吸熱のピークトップ(以下、単に吸熱のピークトップともいう)を有することが好ましい。該グラフトポリマーの吸熱のピークトップが60℃以上で、トナーのブロッキングが生じにくくなり、保存性が向上する。一方、該グラフトポリマーの吸熱のピークトップが110℃以下で、低温定着性が良好になる。
また、本発明のグラフトポリマーの吸熱のピークトップが、60〜110℃であると、保存性、定着性が維持でき、かつ重合法によりトナー粒子を製造する場合に重合性単量体への溶解性が高くなり、好ましい。該グラフトポリマーの吸熱のピークトップは、示差走査熱量測定(DSC)を用い、測定することができる。また該グラフトポリマーの吸熱のピークトップは、使用するアルコール単量体やカルボン酸単量体の種類、重合度等によって調整することができる。
本発明のトナーにおいては、重合性単量体又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100.0質量部に対し、該グラフトポリマーを3.0質量部以上30.0質量部以下含有することが好ましく、3.0質量部以上25.0質量部以下含有することがより好ましく、3.0質量部以上20.0質量部以下含有することがさらに好ましい。該グラフトポリマーの含有量が3.0質量部以上では上述した本発明の効果が大きいため望ましい。また、本発明のグラフトポリマーは結晶性ポリエステル部位を有し、吸湿し易いため、その含有量が重合性単量体(又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂)に対して30.0質量部以下であると、トナーの帯電性が低下しにくくなり、カブリを抑制できる。特に20.0質量部以下であるとトナーの帯電性に関して望ましい。
また、本発明のトナーに用いられるグラフトポリマーは、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位を有するハイブリッド樹脂であるが、その様な樹脂は以下の方法で得ることができる。例えば、不飽和結合を有する結晶性ポリエステルの存在下、ビニルモノマーをラジカル重合させる方法。また例えば、酸価や水酸基価を有するビニル重合体の存在下、結晶性ポリエステル又は結晶性ポリエステルを構成する縮合重合系モノマーと縮合重合
させる方法である。なお、該ハイブリッド樹脂の結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比は、各々のモノマーの仕込み量を調整することにより制御することができる。
該ハイブリッド樹脂における非晶性ビニル部位を製造する際に用いる該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体又は多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアクリル系重合性単量体;前記アクリル系重合性単量体をメタクリレートに変えたメタクリル系重合性単量体:アクリル酸、メタクリル酸などのアクリル酸系重合性単量体が挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのアクリル系多官能性重合性単量体;前記アクリル系多官能性重合性単量体をメタクリレートに変えたメタクリル系多官能性重合性単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテルが挙げられる。
該ハイブリッド樹脂を製造する際に上記したビニル系重合性単量体を重合するために用いられる重合開始剤としては、本発明で用いられるもの以外にも本発明の効果を阻害しない範囲であれば油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤を適宜用いることが可能である。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、の如きアゾ化合物;t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、ジt−ブチルパーオキサイドの如き過酸化物が挙げられる。
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}、塩酸塩硫酸第一鉄又は過酸化水素が挙げられる。
特に、好ましくは、過酸化物であり、ポリエステル樹脂を水素引き抜き反応によりビニル変性させる場合は、10時間半減期温度が70℃以上170℃以下であることが好ましく、75℃以上130℃以下のものを用いると、適度な反応性を持つためより好ましい。
次に本発明に用いられるポリエステル樹脂Aについて説明する。
本発明で述べているポリエステル樹脂Aとは、イソソルビドユニットを含有しているポリエステル樹脂のことであり、イソソルビドユニットの含有量は、該ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットのモル数を基準として、0.10mol%以上20.00mol%以下である。好ましくは1.00mol%以上15.00mol%以下である。ポリ
エステル樹脂にイソソルビドユニットを含有させるためには、モノマーとしてイソソルビドを用いればよい。なお、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
イソソルビドは、分子内にエーテル基を有した環状構造であることから、非常に高い親水特性を有する。本発明では、このイソソルビドの非常に高い親水特性を利用してそのユニット量を制御し、且つ後述する本発明のグラフトポリマーとの親水性の関係を制御することにより、該グラフトポリマーのトナーへの内包化を達成し、トナーの低温定着性と帯電性や現像耐久性を同時に良好なものとしている。該ポリエステル樹脂Aにおいて、イソソルビドユニットが上記範囲内であることで、本発明のグラフトポリマーが内包化され、トナーの現像耐久性が良好なものとなり、また、該ポリエステル樹脂Aの吸湿特性が抑制されることによりトナーの帯電性も良好なものとなる。
そして、該ポリエステル樹脂Aと本発明のグラフトポリマーの親水性の関係を特定の範囲にすることが本発明の作用効果を発現させる上で必須である。具体的には、スチレンに溶解させた該グラフトポリマー及び、スチレンに溶解させた該ポリエステル樹脂Aの懸滴法による水との界面張力をそれぞれ、XcP(mN/m)、XaP(mN/m)としたとき、下記式(2)の関係を満たすことが必須である。
12.0≦XcP−XaP≦17.0 (2)
上記懸滴法による界面張力の値は、その値が低いほど親水性が高いことを意味する。上記範囲の関係を有するグラフトポリマーとポリエステル樹脂Aを用いて本発明のトナーを製造した場合には、該グラフトポリマーのトナー粒子への内包化を最適化させることが可能となる。これによりトナーの帯電性や現像耐久性、あるいは定着性を向上させることができる。XcP−XaPは、好ましくは、13.0以上16.0以下である。
スチレンに溶解させた該ポリエステル樹脂A及び該グラフトポリマーの懸滴法による水との界面張力は、モノマー組成や酸価や水酸基価といった該ポリエステル樹脂A及び該グラフトポリマーの極性を調整することによって制御可能である。
本発明のポリエステル樹脂Aは、アルコール成分としてイソソルビドを用いるが、それ以外のアルコール成分としては下記のものも併用することができる。
二価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族系のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAなどのビスフェノールA類が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂を形成するために用いられる酸成分としては下記のものが挙げられる。
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸などの炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸の脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステル。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
本発明において、ポリエステル樹脂Aの含有量は、重合性単量体又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下である。好ましくは、1質量部以上10質量部以下である。
ポリエステル樹脂Aの含有量を上記質量部とすることで、本発明のグラフトポリマーをトナーへ内包化することができ現像耐久性が良好なものとなる、更には該ポリエステル樹脂Aの吸湿特性を抑制することができるためトナーの帯電性も良好なものとなる。
本発明において、ポリエステル樹脂Aと共に、従来公知のポリエステル樹脂を併用してもよい。
本発明に用いられる前記ポリエステル樹脂Aの酸価としては、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であることが好ましく、2mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、良好な現像耐久性及び良好な帯電性が得られやすい。該ポリエステル樹脂Aによる該グラフトポリマーの内包化と吸湿性による帯電性のバランスにより上記のような最適範囲が存在すると考えられる。なお、ポリエステル樹脂Aの酸価(mgKOH/g)は、重合時のモノマー組成比などによって制御可能である。
特に、後述する本発明の懸濁重合法によりトナー粒子を得る場合においては、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加したポリエステル樹脂Aがトナー粒子表面にシェルを形成する。これは、該ポリエステル樹脂Aの酸価を上記範囲とすることにより本発明の作用効果がより発現し易くなり好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂Aの酸価は、以下の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に属極性樹脂の酸価は以下の方法により測定した。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。極性樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得た。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1Lとした。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得た。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管した。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求めた。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いた。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した極性樹脂及び結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定した。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとした。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行った。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出した。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
また、前記ポリエステル樹脂Aは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)が、5000以上30000以下であることが好ましく、10000以上20000以下であることがより好ましい。分子量が上記範囲内であれば、良好な現像耐久性及び良好な低温定着性が得られやすい。該ポリエステル樹脂Aによる該グラフトポリマーの内包化と定着性を阻害しない程度の適度な分子量により上記のような最適範囲が存在すると考えられる。
特に、後述する本発明の懸濁重合法によりトナー粒子を得る場合においては、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加したポリエステル樹脂Aがトナー粒子表面にシェルを形成する。このことは、該ポリエステル樹脂Aの分子量を、定着性を阻害しない範囲で適度に高くすることで、重合反応が進む過程で適度に速く析出させ、本発明に用いられるグラフトポリマーの内包化をさせ易くなるものと考えられる。
以下に、本発明で用いられるその他の材料について説明する。
本発明のトナー粒子を製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系モノマーが用いられる。前記ビニル系モノマーとしては、単官能性モノマー又は多官能性モノマーを使用することができる。
単官能性モノマーとしては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ
酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。本発明に用いる重合性単量体は、上記の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を含むことが好ましい。
多官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明においては、前記した単官能性モノマーを単独で、若しくは2種以上組み合わせて、又は前記した単官能性モノマーと多官能性モノマーを組み合わせて使用する。多官能性モノマーは架橋剤として使用することも可能である。
本発明に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5〜30時間のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5〜20質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナー粒子を得ることができるため好ましい。
重合開始剤としては、以下の、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤等が例示できる。
本発明においては、重合性単量体の重合度を制御する為に、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
本発明のトナー粒子の製造方法において、重合性単量体組成物にはエステルワックス、又はその他のワックスを含有させてもよい。具体的には以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックス及びその誘導体等。誘導体としては酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物などが挙げられる。
さらには、以下のものが挙げられる。高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチ
ン酸などの脂肪酸;酸アミドワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス等。この中で特に、離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。更には、トータルの炭素数が同一の化合物が50〜95質量%ワックスに含有されているものが、ワックス純度が高く現像性の観点で好ましい。
ワックスの含有量は、重合性単量体又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100質量部に対し、1.0質量部以上30.0質量部以下が好ましい。
以下に本発明のトナーの製造方法について述べる。
本発明のトナーに含有されるトナー粒子は、懸濁重合法により製造される。この懸濁重合法においては、
(1)結着樹脂を生成する重合性単量体
(2)グラフトポリマー
(3)ポリエステル樹脂A
(4)必要に応じて着色剤、非晶質ポリエステル、架橋剤、帯電制御剤、その他添加剤を均一に溶解又は分散せしめて重合性単量体組成物を調製する。その後、該重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機を用いて分散させ、該重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成する。そして、必要に応じて重合開始剤を添加し、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合し、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子に対し重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。
この懸濁重合法でトナー粒子を製造する場合には、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布が均一となる。また外添剤への依存度が少ない高い転写性を維持するトナーが得られやすい。
本発明には着色剤を用いてもよい。着色剤としては、黒色着色剤、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤等が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック,磁性体,以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い各色に調色されたものが利用される。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214等が例示できる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー粒子中への分散性の点から選択される。該着色剤は、重合性単量体又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹
脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上20質量部以下用いられる。
さらに本発明の方法に係るトナー粒子は、着色剤として磁性材料を含有させ磁性トナー粒子とすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどの金属、又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物等が例示できる。
上記磁性体は、より好ましくは、表面改質された磁性体が好ましい。重合法により磁性トナーを調整する場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
これらの磁性体は個数平均粒径が2μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmのものがより好ましい。トナー粒子中に含有させる量としては重合性単量体又は重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100質量部に対し、好ましくは20質量部以上200質量部以下、より好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
本発明の方法において、トナー粒子には、帯電特性を安定化するために帯電制御剤を配合してもよい。帯電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる帯電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法にて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない帯電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、負帯電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体、ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。正帯電制御剤として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの帯電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー粒子製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内添する場合は、好ましくは重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下の範囲で用いられる。
また、外添する場合、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.005質量部以上1.0質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上0.3質量部以下である。
上記水系媒体には、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤として使用する無機化合物としては以下の、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が例示できる。
有機化合物としては以下の、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が例示できる。これらの分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下を使用することが好ましい。
分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いてもよい。例えばリン酸カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合するとよい。
本発明において、トナー粒子の流動性を向上させる目的で、流動性向上剤をトナー粒子に添加してもよい。流動性向上剤としては、以下の、フッ化ビニリデン微粉未、ポリテトラフルオロエチレン微粉末などのフッ素系樹脂粉末;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛などの脂肪酸金属塩;酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末などの金属酸化物又は、上記金属酸化物を疎水化処理した粉末;及び湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどのシリカ微粉末、又はそれらシリカにシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粉末等が例示できる。
流動性向上剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下使用することが好ましい。
本発明に係るトナー粒子は、例えば、無機微粒子を外添混合することで、トナーとして用いることができる。外添混合の方法は公知であり、例えば、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用いて混合処理を行う方法が挙げられる。
無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましい。添加量が前記の範囲内であれば、定着性の低下を抑制しつつ、十分な流動性の向上効果が得られる。前記無機微粒子は、個数平均一次粒径が4〜80nmであることが好ましく、4〜60nmであることがより好ましい。
無機微粒子としては、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末などの金属酸化物;湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどのシリカ微粒子が挙げられる。その中でもシリカ微粒子が好ましい。また、前記金属酸化物やシリカ微粒子をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理してもよい。更には、アルミドープシリカ、チタン酸ストロンチウム、ハイドロタルサイトが挙げられる。その他にも、外添剤として、フッ化ビニリデン微粉未、ポリテトラフルオロエチレン微粉末などのフッ素系樹脂粉末;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等などの脂肪酸金属塩を添加することもできる。
以下に本発明の物性値の測定方法について説明する。
<ポリエステル樹脂A及びグラフトポリマーの懸滴法による水との界面張力の測定>
本発明における界面張力は、以下に述べる懸滴法により測定した。具体的には温度25℃の環境下にて協和界面科学(株)製のFACE 固液界面解析装置 Drop Master700を用い、レンズ部の視野としてWIDE1にて測定した。まず、逆張りを用いた鉛直方向上向きの内径0.4mmの細管の先端部分を脱気したイオン交換水に入れる。
次に細管はシリンジ部に接続する。シリンジ部にはスチレン又はサンプルのスチレン溶液を入れる。なお、本発明の測定方法においては、スチレンに溶解させるサンプル濃度は0.99質量%で実施した。次にシリンジ部を協和界面科学(株)製 AUTO DISPENSER AD−31に接続してスチレン又はサンプルのスチレン溶液を細管から押し出すことにより、イオン交換水内で細管先端部に液滴を作成することができる。そして、この液滴の形状から水との界面張力を計算する。液滴を作成する上での制御や計算方法については協和界面科学(株)製の測定解析システムを用いて行った。なお、計算に必要な水とスチレン溶液の密度差は水とスチレンの密度差である0.1g/cmとして行った。最終的な界面張力の測定結果は10回の測定値の平均値とした。
<グラフトポリマーの示差走査熱量測定(DSC)における吸熱のピークトップの測定>
グラフトポリマーの吸熱のピークトップの測定は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、グラフトポリマー約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜120℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度120℃まで昇温させ、続いて30℃まで10℃/min降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜120℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のグラフトポリマーのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。
なお、トナー中の結晶性樹脂に由来する吸熱ピークは本手法を用いて対応する吸熱ピーク温度から観察することができる。
<ポリエステル樹脂A及びグラフトポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリエステル樹脂AのTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、ポリエステル樹脂Aをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<グラフトポリマーの結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)の測定>
グラフトポリマーの結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)の測定は核磁気共鳴分光分析(H−NMR)[40
0MHz、CDCl、室温(25℃)]を用いて行った。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
得られたスペクトルの積分値から結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)を算出した。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。本実施例においては特に断りがないかぎり、全て質量基準である。
(グラフトポリマー1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,12−ドデカンジオールと1,6−ヘキサンジオール、及びカルボン酸モノマー
としてドデカン二酸とステアリン酸を表1に示す量を投入した。そして、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させて結晶性ポリエステル部位を得た。
次に、窒素雰囲気下で、滴下ロート、リービッヒ冷却管及び撹拌機を備えた耐圧反応機に上記により得られた結晶性ポリエステル部位を表1に示す量、及びキシレン70質量部を入れて200℃まで昇温させた。これに、表1に示す量のスチレン、アクリル酸及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド1部の混合物を滴下ロートに仕込んだものを2時間かけて加圧下(0.31MPa)で滴下した。滴下後、さらに200℃で3時間反応を行い、重合を完了させて、75℃で加熱しながら減圧してキシレンを除去し、さらに、シクロヘキサンで洗浄してグラフトポリマー1を得た。得られたグラフトポリマーの物性を表1に示す。
(グラフトポリマー2〜9の製造)
グラフトポリマー1の製造において、表1に示すように、アルコールモノマー及び酸モノマーの種類及び量を変更し、更にはスチレン及びアクリル酸の量を変更すること以外は同様の方法によりグラフトポリマー2〜9を得た。得られたグラフトポリマーの物性を表1に示す。
Figure 0006562767
<ポリエステル樹脂A−1の製造>
無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを表2に示した仕込み量で混合した混合物100質量部と触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52質量部を窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した6リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて重縮合反応させた。更に210℃にて無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて反応を行い、重量平均分子量(Mw)が13000になるまで反応を続けた。得られたポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂A−1とする。該樹脂の組成分析を行った結果を表2に示す。また、得られた樹脂の酸価、分子量は表2のようになった。
なお、表中のイソソルビドとは、下記式(1)の構造を持つ化合物である。
Figure 0006562767
また、ポリエステル樹脂Aの組成分析はH−NMRにより行った。具体的な測定方法は下記の通りである。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて測定試料を調製する。当該測定試料を用いて上記条件にて測定した。
<ポリエステル樹脂A−2〜A−15の製造>
酸成分とアルコール成分の仕込み量を表2のように変更し、各々の所望の重量平均分子量(Mw)になるまで反応を続けることを除いて、ポリエステル樹脂A−1の製造と同様にして、ポリエステル樹脂A−2〜15を製造した。ポリエステル樹脂A−2〜15の物性を表2に示す。
Figure 0006562767
※樹脂組成の表記はアルコール成分のトータルモル数を100とした時のモル比を示す。TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:無水トリメリット酸
BPA(PO):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物
BPA(EO):ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物
(トナー1の製造)
60℃に加温したイオン交換水900質量部にリン酸三カルシウム2.3質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて10,000rpmにて攪拌し、水系媒体を得た。また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで均一に溶解混合して樹脂含有単量体を調製した。
・スチレン 45質量部・n−ブチルアクリレート 25質量部・グラフトポリマー1 10質量部・ポリエステル樹脂A−1 4質量部
また、下記の材料をアトライターで分散し、微粒状着色剤含有単量体を得た。
・スチレン 30質量部・C.I.ピグメントブルー15:3 7.4質量部・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製) 1.0質量部・ワックス HNP−9(日本精鑞社製) 6.0質量部
次に、該微粒状着色剤含有単量体と該樹脂含有単量体を均一に混合して重合性単量体組成物を得た後、該重合性単量体組成物を60℃に加温し、次いで、該重合性単量体組成物
を上記水系媒体中に投入して、重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成した。そして、これに重合開始剤tert−ブチルパーオキシピバレート10.0質量部を加えて10分間造粒を継続させた。
その後、プロペラ式攪拌装置に移して100r/minで攪拌しつつ、75℃で5時間反応させた後、85℃まで昇温し、更に5時間反応を行い、重合反応を行った。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを室温(25℃)まで冷却し、該懸濁液に塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過・水洗を行い、湿潤着色粒子を得た。そして、上記着色粒子を温度40℃にて72時間乾燥しトナー粒子1を得た。
100質量部のトナー粒子1と、BET値が300m/gであり、一次粒径が8nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合してトナー1を得た。トナー1の物性を表3に示す。なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
(トナー2〜4の製造)
トナー1の製造において、C.I.ピグメントブルー15:3をC.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントレッド269、カーボンブラックに変更する以外は同様の方法により、それぞれトナー2〜4を得た。各トナーの物性を表3に示す。なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
(トナー5〜19の製造例)
トナー1の製造において、グラフトポリマー、ポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂Aの添加量を、表3に記載のように変更する以外は同様の方法によりトナー5〜19を得た。物性を表3に示す。なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
(比較トナー1の製造)
・スチレン・n−ブチルアクリレート共重合体
(ピーク分子量(Mp);25000、重量平均分子量(Mw)=30000、ガラス転移温度(Tg);50℃) 100質量部
・グラフトポリマー1 10質量部
・ポリエステル樹脂A−1 4質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7.4質量部
・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製) 1.0質量部
・ワックス HNP−9(日本精鑞社製) 6.0質量部
上記材料をブレンダーにて混合し、110℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で微粉砕後、風力分級して粒径と粒度分布を調整し着色粒子を得た。次いで該着色粒子を窒素雰囲気下、スプレードライヤーを用いて80℃で1時間加熱球形化処理を行い、その後、冷却して着色粒子を得た。
100質量部の着色粒子と、BET値が300m/gであり、一次粒径が8nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して比較トナー1を得た。物性を表3に示す。
なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
(比較トナー2の製造)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物704質量部、イソフタル酸296質量部及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧で230℃、8時間反応させた後、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させた。これを160℃まで冷却して、30質量部の無水フタル酸を加え2時間反応させた。さらに、これを80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシ
アネート188質量部と2時間反応を行い、イソシアネート含有プレポリマー(2)を得た。次にこのプレポリマー(2)267質量部とイソホロンジアミン14質量部を50℃で2時間反応させ、重量平均分子量66000のウレア変性ポリエステル(2)を得た。ガラス転移温度(Tg)は66℃であった。
得られたウレア変性ポリエステル(2)100質量部を酢酸エチル/エチルメチルケトン(MEK)(1/1)混合溶剤200質量部に溶解、混合した。
この溶解液に、ベヘン酸ベヘニルを主体とするエステルワックス12質量部、シアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を7質量部、ポリエステル樹脂A−1を4質量部、グラフトポリマー1を10質量部入れてトナー材料液を得、該材料液の液温を60℃に加温し、混合・溶解を行なった。
一方、ビーカー内にイオン交換水706質量部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を入れ均一に溶解した。ついで73℃に昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに攪拌しながら、上記トナー材料液を投入し10分間攪拌して混合液を得た。ついで該混合液を攪拌棒及び温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、体積平均粒径が6.0μmのトナー粒子を得た。
このトナー粒子100質量部と、シリコーンオイルで処理したBET値が200m/gであり、一次粒径が12nmの疎水性シリカ微粉体1.6質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して比較トナー2を得た。物性を表3に示す。
なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
(比較トナー3〜10の製造)
トナー1の製造において、グラフトポリマー、ポリエステル樹脂A、及びポリエステル樹脂Aの添加量を、表3に記載のように変更する以外は同様の方法により比較トナー3〜10を得た。物性を表3に示す。
なお、上記トナーのDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
Figure 0006562767
表中、『グラフトポリマーの結晶部/非晶部』は、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)を示す。
<実施例1>
トナー1を下記評価項目について評価した。評価結果を表4に示す。
<保存性試験>
(1)保存性試験
保存時の安定性を評価するために耐ブロッキング性の評価を実施した。約5gのトナーを100mlのポリカップに入れ、温度55℃、湿度5%環境下で3日放置した後、トナーの凝集度を以下のようにして測定し、下記の基準にて評価を行った。
測定装置としては、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)の振動台側面部分に、デジタル表示式振動計「デジバイブロ MODEL 1332A」(昭和測器社製)を接続したものを用いた。そして、パウダーテスターの振動台上に下から、目開き38μm(400メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き150μm(100メッシュ)の篩の順に重ねてセットした。測定は、23℃、60%RH環境下で
、以下の様にして行った。
(1) デジタル表示式振動計の変位の値を0.60mm(peak−to−peak)になるように振動台の振動幅を予め調整した。
(2) 上記のように3日放置したトナーを、予め23℃、60%RH環境下において24時間放置し、そのうちトナー5gを精秤し、最上段の目開き150μmの篩上に静かにのせた。
(3) 篩を15秒間振動させた後、各篩上に残ったトナーの質量を測定して、下式にもとづき凝集度を算出した。
凝集度(%)={(目開き150μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100
+{(目開き75μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.6
+{(目開き38μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.2
評価基準は下記の通り。
A:凝集度が20%未満。
B:凝集度が20%以上25%未満。
C:凝集度が25%以上30%未満。
D:凝集度が30%以上35%未満。
E:凝集度が35%以上。
上記評価のうち、A〜Cであれば実用上問題はない。
<耐久試験>
トナー1を非磁性一成分系現像剤とし、画像形成装置としてLBP−7700C(キヤノン製)の改造機を用い、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度60%)で画像評価を行った。記録媒体には、A4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m)を用いた。なお、LBP−7700Cは以下の点を改造した。
・評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが297mm/secとなるようにした。
・評価に用いるカートリッジはシアンカートリッジを用いた。すなわち、市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナー1を200g充填した。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、及びブラックカートリッジを挿入した。
・定着ユニットを、手動で定着温度が設定できるようにした。
上記の条件で、0.1%の印字比率の画像を30000枚まで間歇モード(1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)で耐久試験を行った。
なお、下記評価項目については各環境下、初期(10枚目)と耐久使用後に行った。
〔評価実施項目〕
(1)画像濃度
トナーの現像性の指標として画像濃度の測定を行った。A4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m2)を転写材として用いて、ベタ画像を出力し、その濃度を
測定(右上、右下、中心、左上、左下の5点平均)することにより評価した。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
A;画像濃度が1.50以上。
B;画像濃度が1.35以上1.50未満。
C;画像濃度が1.20以上1.35未満。
D;画像濃度が1.05以上1.20未満。
E;画像濃度が1.05未満。
評価上、Aが最もよくトナーの現像性が高く、Eが最も悪く現像性に劣ることを意味す
る。
(2)カブリ
トナーの帯電性の指標とし画像上カブリの測定をおこなった。カブリの測定では、東京電色社製の反射濃度計、REFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用した。標準紙及びプリントアウト画像の非画像部の反射率を測定し、測定結果から下記の式よりカブリを算出し、以下の基準で評価した。なお、測定で用いられるフィルターには、シアントナーの場合にはアンバーフィルター、イエロートナーの場合はブルーフィルター、マゼンタトナー及びブラックトナーの場合はグリーンフィルターを用いた。
カブリ(反射率:%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
A:カブリが0.3%未満。
B:カブリが0.3%以上0.5%未満。
C:カブリが0.5%以上1.0%未満。
D:カブリが1.0%以上3.0%未満。
E:カブリが3.0%以上。
評価上、Aが最もよくEが最も悪いことを意味する。
(3)スジ
トナーの耐久性の指標としてスジの評価を行った。スジはベタ画像(トナー載り量0.45mg/cm)及び現像ローラーを目視で観察し、下記基準に従い評価した。
A:現像ローラ上にも、ベタ画像上にも現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
B:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1〜5本あるものの、ベタ画像上に現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
C:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1〜5本あり、ベタ画像上にも上記に対応した1〜5本の細かい現像スジが見られる。しかし、画像処理で消せるレベルである。
D:現像ローラ上とベタ画像上に1〜5本の太いスジが見られ、画像処理でも消せない。E:現像ローラ上とベタ画像上に6本以上の現像スジが見られ、画像処理でも消せない。評価上、Aが最もよくEが最も悪いことを意味する。
<定着試験>
(1)低温定着性
定着性として定着こすり試験を実施した。A4の複写機用普通紙(105g/m)に単位面積あたりのトナー質量が0.6mg/cmになるように調整し、濃度測定用の10mm×10mmの3ドット3スペース(600dpi)画像を多数有する画像を出力し、得られた定着画像を、50g/cmの加重をかけたシルボン紙で5回摺擦し、摺擦後の画像濃度の低下率を以下に基づいて評価した。なお画像を出力する際には、評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが330mm/secとなるようにし、定着温度の設定は160℃とした。また、評価するトナーは、放置する前のトナーを用いた。
また、画像濃度の測定には、マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。そして、摺擦後の画像濃度の低下率を算出し、以下の基準で評価した。
A:2.0%未満
B:2.0%以上5.0%未満
C:5.0%以上10.0%未満
D:10.0%以上15.0%未満
E:15.0%以上
評価上、Aが最もよくEが最も悪いことを意味する。
<実施例2〜19>
実施例1と同様にしてトナー2〜19を評価した。評価結果を表4に示す。
<比較例1〜10>
実施例1と同様にして比較トナー1〜10を評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 0006562767

Claims (6)

  1. ビニル系モノマーである重合性単量体の重合体、グラフトポリマー及びポリエステル樹脂Aを含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
    該トナー粒子が、該ポリエステル樹脂Aで形成されたシェルを有し、
    該グラフトポリマーは、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するハイブリッド樹脂であり、
    該結晶性ポリエステル部位と該非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)が、60/40〜95/5であり、
    該ポリエステル樹脂Aが、下記式(1)で示されるイソソルビドユニットを、該ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットのモル数を基準として、0.10mol%以上20.00mol%以下を含み、
    Figure 0006562767

    該ポリエステル樹脂Aの含有量が、該重合性単量体が重合することにより生じる結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であり、
    スチレンに溶解させた該グラフトポリマー及び、スチレンに溶解させた該ポリエステル樹脂Aの懸滴法による水との界面張力をそれぞれ、XcP(mN/m)、XaP(mN/m)としたとき、下記式(2)の関係を満たす
    12.0≦XcP−XaP≦17.0 (2)
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記ポリエステル樹脂Aの酸価が、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)が、5000以上30000以下である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. ビニル系モノマーである重合性単量体、グラフトポリマー及びポリエステル樹脂Aを含有する重合性単量体組成物を調製する工程、
    該重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成する工程、及び
    該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る工程
    を有するトナーの製造方法であって、
    該グラフトポリマーは、結晶性ポリエステル部位と非晶性ビニル部位とを有するハイブリッド樹脂であり、
    該結晶性ポリエステル部位と該非晶性ビニル部位の質量比(結晶性ポリエステル部位/非晶性ビニル部位)が、60/40〜95/5であり、
    該ポリエステル樹脂Aが、下記式(1)で示されるイソソルビドユニットを、該ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットのモル数を基準として、0.10mol%以上20.00mol%以下を含み、
    Figure 0006562767

    該ポリエステル樹脂Aの含有量が、該重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であり、
    スチレンに溶解させた該グラフトポリマー及び、スチレンに溶解させた該ポリエステル樹脂Aの懸滴法による水との界面張力をそれぞれ、XcP(mN/m)、XaP(mN/m)としたとき、下記式(2)の関係を満たす
    12.0≦XcP−XaP≦17.0 (2)
    ことを特徴とするトナーの製造方法。
  5. 前記ポリエステル樹脂Aの酸価が、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下である請求項に記載のトナーの製造方法。
  6. 前記ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)が、5000以上30000以下である請求項又はに記載のトナーの製造方法。
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