JP6768423B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
その手段としては、トナーの結着樹脂に迅速に相溶し、トナーの溶融変形を促す結晶性ポリエステルをトナーに使用することが、近年、幅広く検討されている。
低温定着性に効果の高い結晶性ポリエステルは、その融点付近において、結着樹脂に相溶しやすいという特性を持ち、定着時に、トナーが迅速に溶融変形しやすくなる。このため、結晶性ポリエステルを用いることで、トナーの低温定着性は向上する。
また、ワックスなどの離型剤を併用することで、トナーに定着器に対する離型性を付与することができ、さらなる定着性の向上も期待できる。
しかし、結晶性ポリエステルは、結着樹脂に相溶し易いという特性を持つがゆえに、トナーの表面に結晶性ポリエステルが存在しやすくなり、トナーの帯電性の低下を招きやすい。さらに加えて、通常より温度及び湿度の高い苛酷な環境で保管されることにより、結着樹脂に相溶している結晶性ポリエステルがその温度によりアニール処理され、結晶化してしまう問題が生じる。上記環境を、苛酷環境と呼び、その環境でトナーを放置することを、苛酷環境放置と呼ぶ。この問題が発生すると、トナーの表面組成が、苛酷環境の放置前後で変動し、例えば、カブリなどの性能が大幅に低下する。
この問題に対し、結晶性ポリエステルの結着樹脂への相溶量を減らす検討がされている。相溶量を減らすとは、即ち、結晶性ポリエステルの結晶化度が高い状態を達成することを意味する。特に、結晶性ポリエステルを結晶化させる狙いを有するトナーの製造方法が検討されている。
特許文献1では、冷却速度を制御することにより、結晶性ポリエステルの結晶化度を向上させている。また、特許文献2では、冷却中にアニール処理工程を設け、結晶化ポリエステルの結晶化度を向上させている。
しかし、トナー表面に結晶性ポリエステルが存在することによる帯電性の低下や、様々な物流などを想定した際の、苛酷環境放置への耐性という観点では、これら上記に文献に対して改良の余地がある。即ち、結晶性ポリエステルを、結晶化度を高めた状態でトナーに内包化するという技術に関しては、検討の余地がある。
化を進行させることが可能な条件を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
結着樹脂、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックスを含有するトナーの製造方法であって、
示差走査熱量計(DSC)で測定される該結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)のピーク温度をTp(℃)とし、該ワックスの結晶化ピーク(Pw)のピーク温度をTw(℃)としたとき、
該結晶性ポリエステルと該ワックスが下記式(1)の関係を満たし、
式(1):45<Tp+5<Tw<100
下記工程(i)、(ii)及び(iii)を有することを特徴とするトナーの製造方法。
(i)該結着樹脂、該着色剤、該結晶性ポリエステル及び該ワックスを含有する着色粒子が分散された水系媒体を該Tw以上の温度とする工程。
(ii)該Pwの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が70%以上となる温度領域において、該(i)の工程を経た該水系媒体を冷却速度5.0℃/分以上で冷却する工程。
(iii)該(ii)の工程を経た該水系媒体を、
(a)該Ppの領域内の温度において30分間以上保持する工程、又は、
(b)該Ppの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域において、冷却速度1.0℃/分以下で冷却する工程。
結着樹脂、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該結晶性ポリエステルと該ワックスが下記式(1)の関係を満たし、
式(1):45<Tp+5<Tw<100
(式(1)中、
Tp(℃)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される該結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)のピーク温度を示す。
Tw(℃)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される該ワックスの結晶化ピーク(Pw)のピーク温度を示す。)
該製造方法が、下記工程(i)、(ii)及び(iii)を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
(i)該結着樹脂、該着色剤、該結晶性ポリエステル及び該ワックスを含有する着色粒子が分散された水系媒体を該Tw以上の温度とする工程。
(ii)該Pwの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が70%以上となる温度領域において、該(i)の工程を経た該水系媒体を冷却速度5.0℃/分以上で
冷却する工程。
(iii)該(ii)の工程を経た該水系媒体を、
(a)該Ppの領域内の温度において30分間以上保持し、該トナー粒子を得る工程、又は、
(b)該Ppの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域において、冷却速度1.0℃/分以下で冷却し、該トナー粒子を得る工程。
また、トナーの表面に染み出していない場合であっても、結晶性ポリエステルが結着樹脂に相溶している場合、温度及び湿度などの影響を強く受ける苛酷環境に放置した場合、結晶性ポリエステルがアニール処理されて結晶化し、トナーの表面に染み出してしまう。
本発明者らの検討によれば、水系媒体中で結晶性ポリエステルを結晶化させた場合は、トナーに結晶性ポリエステルが内包化された状態で結晶化されやすい。
一方、空気中で結晶性ポリエステルを結晶化させた場合は、逆に、結晶性ポリエステルがトナーの表面に染み出しながら結晶化する。
このように、どの環境で結晶化するかによって、結晶性ポリエステルの存在状態が変わる現象は、結晶性ポリエステルとその周囲の環境の親水性・疎水性で説明することができる。
結晶性ポリエステルは疎水性である。一方、水系媒体は親水性、空気は疎水性である。つまり、水系媒体中で結晶性ポリエステルを結晶化させた場合、水と結晶性ポリエステルは親和性が低く、トナーの表面に結晶性ポリエステルは存在しにくい。逆に、苛酷環境のような空気中で結晶性ポリエステルを結晶化させた場合、空気と結晶性ポリエステルは親和性が高く、トナーの表面に結晶性ポリエステルが染み出しやすい。即ち、結晶性ポリエステルの染み出しという問題に対して、本発明者らの検討によると、水系媒体中で、トナー内部の結晶性ポリエステルを結晶化させることが特に重要である。
本発明者らの検討によると、上記の製造方法を用いてトナーを得ることにより、結晶性ポリエステルをトナーに内包化させた状態で結晶化度を高められることを見出した。
結晶性ポリエステルをトナーに内包化させた状態で結晶化度を高めるためには、以下の点が重要である。
(I)結着樹脂、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックスを含有する着色粒子を水系媒体中で下記処理工程(i)、(ii)及び(iii)を有する。
本発明では、ワックスを結晶核として結晶性ポリエステルの結晶を成長させるため、ワックスを併用しない場合は、結晶性ポリエステルの結晶化度が不十分となる。
(II)示差走査熱量計(DSC)で測定される該結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)のピーク温度をTp(℃)とし、示差走査熱量計で測定される該ワックスの結晶化ピーク(Pw)のピーク温度をTw(℃)としたとき、該Tpと該Twが下記式(1)の関係を満たす。
式(1):45<Tp+5<Tw<100
後述の冷却工程において、離型剤であるワックスをまず結晶化させて結晶核をトナー内部に形成させ、その後、結晶性ポリエステルの結晶を成長させるため、上記式(1)を満たす必要がある。
Tp及びTwの関係が上記式(1)を満たさない場合、結晶性ポリエステルの結晶化度が不十分となるか、冷却工程の温度の制御が困難となる。
TpとTwの好ましい範囲は、下記式(2)で示す範囲である。
式(2):45<Tp+15<Tw<100
これらの工程は全て、水系媒体中で行われる。水系媒体中で結晶性ポリエステルを結晶化させることにより、結晶性ポリエステルが結晶化した際に、トナーの内部で結晶化する。このため、結晶性ポリエステルの結晶化度を高めた状態で、トナー中に内包化することが可能である。水系媒体中ではなく、空気中などの高温環境において、同様の処理を行った場合、結晶性ポリエステルがトナー表面で結晶化するため、好ましくない。
このような効果を得るためには、下記工程(i)、(ii)及び(iii)を全て有する必要がある。一部の工程しか行わなかった場合、トナーの表面に結晶性ポリエステルが存在してしまうか、結晶化度が不十分となる。その結果、苛酷環境放置前後のカブリの発生を抑制できない。
着色粒子が分散された水系媒体をTw以上の温度とする工程(i)により、着色粒子中の結晶性ポリエステル及びワックスを、十分に結着樹脂に相溶させることができる。
この時、上述のTw以上の温度とする工程を有しない場合、トナーの表面に既に存在している結晶性ポリエステルを内包化することができず、好ましくない。
該着色粒子が分散された水系媒体の温度は、Tw+10℃以上であることが好ましく、より好ましくは、Tw+15℃以上である。なお、該水系媒体の温度の上限値は、その効果が飽和するTw+30℃程度である。
該水系媒体を冷却速度5.0℃/分以上で冷却するとは、比較的早い速度で冷却することを示し、急冷と呼ぶ。
比較的早い速度で冷却することにより、ワックスの結晶成長を抑制し、トナー中に、ワックスの微小な結晶核が多量に分散された状態が形成される。
上述の冷却速度を満たした温度領域の積分値が、Pwの全面積に対して70%未満である場合、ワックスの結晶成長が進み、後述の結晶性ポリエステルの結晶化度が向上しない。
また、冷却速度が5.0℃/分未満の場合、ワックスの結晶核が成長するため、後述の結晶性ポリエステルの結晶成長の基点が少なくなり、結晶性ポリエステルの結晶化度が向上しない。
上記冷却速度は、10.0℃/分以上であることが好ましく、より好ましくは、30.0℃/分以上であり、さらに好ましくは、50.0℃/分以上である。なお、該冷却速度の上限値は、その効果が飽和する3000℃/分程度である。
(a)Ppの領域内の温度において30分間以上保持する工程(iii)、又は、
(b)Ppの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域において、冷却速度1.0℃/分以下で冷却する工程(iii)を有する。
上記工程(i)及び工程(ii)の後、上記工程(iii)を行うことにより、上記(ii)の工程により形成したワックスを結晶核とし、結晶性ポリエステルの結晶成長が進み、結晶性ポリエステルの結晶化度を高めることが可能である。
結晶性ポリエステルの結晶成長を進めるために、(a)工程又は(b)工程を実施する。
(a)工程においては、結晶性ポリエステルの結晶化ピークの領域内の温度においてアニール処理を行う。これにより、結晶性ポリエステルの結晶化度を高めることが可能である。上記保持時間は、100分間以上であることが好ましく、180分間以上であることがより好ましい。なお、該保持時間の上限値は、その効果が飽和する1440分間程度で
ある。工程(a)では、ワックスの分散状態を維持する観点から、結晶性ポリエステルの結晶化ピーク領域の上端の温度が、ワックスの結晶化ピーク領域の下端の温度以下であることが好ましい。
(b)工程においては、結晶性ポリエステルの結晶化ピークの温度領域の全域又は一部において、冷却速度1.0℃/分以下という比較的遅い冷却速度にて、冷却を行う。
本発明において、冷却速度1.0℃/分以下の場合、緩やかな冷却と呼ぶ。これにより、アニール処理と同様な効果を得ることができ、結晶性ポリエステルの結晶化度を高めることが可能である。
上述の冷却速度を満たした温度領域の積分値が、Ppの全面積に対して50%未満である場合、結晶性ポリエステルの結晶化が不十分となり、好ましくない。
該冷却速度は、0.50℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは、0.01℃/分以下である。
図1は、結晶性ポリエステル単体の降温時の発熱曲線の一例を示す。発熱曲線のうち、発熱量が最大となる温度を、結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)のピーク温度をTp(℃)とする。また、発熱曲線のピークに対するベースラインを引き、ベースラインから発熱曲線がかい離する温度の内、高い温度及び低い温度を、それぞれ上端及び下端と呼ぶ。
上述の(a)工程において、Ppの領域内の温度において保持するとは、該上端と下端の間のいずれかの温度で、水系媒体の温度を保持することを意味する。
また、結晶化ピーク(Pp)の全面積は、該結晶化ピーク(Pp)に対するベースラインを引き、ベースラインとPpにより囲まれた面積である。
図2は、Ppの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が50%となる温度領域の一例を示す。該「全面積に対して積分値が50%となる温度領域」とは、ベースライン、Pp及び特定温度領域により囲まれた面積(すなわち、Ppの特定温度領域における積分値)が、該全面積に対して50%となる場合、該特定の温度領域を意味する。
この「全面積に対して積分値が50%となる温度領域」が意味することは、その温度領域における、結晶性ポリエステルの成分の存在量である。このため、「全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域」において、特定の冷却条件を適用することにより、結晶性ポリエステルのうち、50%以上の成分の結晶化を制御することができる。結晶性ポリエステルの50%以上を制御することにより、制御に関わらない温度領域の成分の結晶化も、追従して制御することが可能である。該「全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域」は、該上端と下端の間であれば、様々な温度領域を取ることができる。
ワックスに関する温度領域についても、結晶性ポリエステルと同様に、求めることができる。さらに、該全面積に対して積分値が70%以上となる温度領域についても同様に、様々な温度領域を取ることができる。
本発明において、ワックスは、一種類のワックスで構成されていてもよく、2種類以上のワックスで構成されていてもよい。
トナー中のワックスの含有量は、総量で、トナー100質量部に対して、2.5質量部以上35.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以上30.0質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以上25.0質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明に用いられるワックスの結晶化ピークのピーク温度は、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
エステルワックスの有するエステル結合と、結晶性ポリエステルの有するエステル結合の相互作用により、エステルワックスを結晶核として結晶性ポリエステルの結晶成長が進みやすい。そのため、結晶性ポリエステルの結晶化度を高めることが容易である。
また、本発明において、該エステルワックスは、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、及び、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物(以降、2官能のエステルワックスと称する場合がある)の少なくとも一方を含有することが好ましい。ここで、エステル化合物の1分子中にエステル結合が1つ存在する場合は、1官能と表現し、n個存在する場合は、n官能と表現する。
エステルワックス中のエステル結合の数が増えると、結着樹脂とエステルワックスの相溶性が向上し、結晶核の形成数を増やしやすくなる。一方、エステルワックス中のエステル結合の数が減少すると、結晶性ポリエステルとのエステル結合による相互作用の効果が向上し、結晶性ポリエステルの結晶成長が促進される。このため、結晶核の形成数及び結晶成長の促進の両立という観点で、2官能のエステルワックスが好ましい。
脂肪族モノアルコールの例としては、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコールが挙げられる。また、脂肪族モノカルボン酸の例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸が挙げられる。
2価のカルボン酸として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。
2価のアルコールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
なお、ここでは直鎖のカルボン酸、直鎖のアルコールを例示したが、分岐構造を有していても構わない。
中でも、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、特に1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが本発明の効果を奏しやすいため好ましい。
脂肪族モノアルコールの具体例として、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノールなどが挙げられる。中でも、ドコサノールは定着性や現像性の観点で好ましい。
脂肪族モノカルボン酸の具体例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸などが挙げられる。中でも、ベヘン酸は定着性や現像性の観点で好ましい。
これは、エステルワックスが組成分布を有することを意味し、その組成分布の程度を示す。エステルワックスの結晶核を形成する上述の(ii)工程において、エステルワック
スの結晶核を多量にトナー内部に形成することが好ましい。そのためには、エステルワックスの結晶化度をある程度抑制することが好ましい。
エステルワックスが組成分布を有することにより、単一組成のエステルワックスと比較し、エステルワックスの結晶化速度が低下し、結晶核を多量に生成しやすくなる。
より好ましくは、下記式(A)で示される直鎖型脂肪族ジカルボン酸と下記式(B)で示される直鎖型脂肪族ジオールとの縮重合物である。
HOOC−(CH2)m−COOH 式(A)
[式(A)中、mは4以上14以下(好ましくは6以上12以下)の整数を示す。]
HO−(CH2)n−OH 式(B)
[式(B)中、nは4以上16以下(好ましくは6以上12以下)の整数を示す。]
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。本発明に用いられる結晶性ポリエステルの結晶化ピークのピーク温度は、45℃以上65℃以下であることが好ましい。
例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分のエステル化反応、又はエステル交換反応後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることによって得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応の時には、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒、又はエステル交換触媒を用いることができる。
また、縮重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
前記触媒としてはチタン触媒を用いることが好ましく、キレート型チタン触媒であることがより好ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、本発明において望ましい分子量分布のポリエステルが得られるためである。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、結晶性ポリエステルの種々の製造条件によって制御可能である。
一方、結晶性ポリエステルの酸価は、トナー内への分散性を考えた場合に低く制御して
おくことが好ましく、具体的には0.0mgKOH/g以上8.0mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは、0.0mgKOH/g以上5.0mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.0mgKOH/g以上3.5mgKOH/g以下である。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、並びに、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び、66。
マゼンタ系着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及び、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、及びC.I.ピグメントバイオレット19。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及び、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191、及び、194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、並びに、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤及びシアン系着色剤を用いて黒色に調色されたもの、が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。本発明に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及び、トナー粒子中の分散性の点から選択される。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄ネオジウム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)が挙げられる。
該磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2.0m2/g以上30.0m2/g以下であることが好ましく、3.0m2/g以上28.0m2/g以下であることがより好ましい。また、モース硬度が5以上7以下のものが好ましい。磁性体の形状としては、
多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形などの異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性体は、トナー中での均一分散性や色味の観点から、個数平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなる。
なお、磁性体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナーを十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させる。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍〜4万倍の拡大倍率で断面画像を撮影し、該断面画像中の100個の磁性体の粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定してもよい。
該磁性体は、単独で、又は2種類以上を組合せてもよい。
該磁性体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、20.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50.0質量部以上100.0質量部以下である。
なお、磁性体の含有量は、熱分析装置「装置名:TGA7、パーキンエルマー社製」を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。
窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性体量とする。
まず、第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製された水溶液のpHを7.0以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶を生成する。
次に、種晶を含むスラリーに、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。そして、得られた混合液のpHを5.0以上10.0以下に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性酸化鉄の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて混合液のpHは酸性側に移行していくが、混合液のpHは5.0未満にしない方が好ましい。
また、酸化反応終了後、珪酸ソーダなどの珪素源を添加し、混合液のpHを5.0以上8.0以下に調整し、磁性酸化鉄粒子表面に珪素の被覆層を形成してもよい。このようにして得られた磁性酸化鉄粒子を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性酸化鉄を得ることができる。
また、水系媒体中でトナーを製造する場合、磁性酸化鉄表面を疎水化処理することが好ましい。乾式法にて表面処理をする場合、洗浄、ろ過及び乾燥した磁性酸化鉄にカップリング剤を用いて処理を行うとよい。一方、湿式法にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、得られた磁性酸化鉄の乾燥物を別の水系媒体中に再分散する、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた磁性酸化鉄を乾燥させずに別の水系媒体中に再分散して、カップリング剤を用いて処理を行うとよい。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択できる。
RmSiYn 式(I)
[式(I)中、Rはアルコキシ基、又は、水酸基を示し、Yはアルキル基、フェニル基又はビニル基を示し、該アルキル基は、置換基として、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などを有してもよい。mは1以上3以下の整数を示し、nは1以上3以下の整数を示す。但し、m+n=4である。]
該一般式(I)で示されるシラン化合物又はシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、及びこれらの加水分解物などを挙げることができる。本発明においては、一般式(I)のYがアルキル基であるものが好ましく用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数3以上6以下のアルキル基であり、特に好ましくは3又は4のアルキル基である。
上記シラン化合物又はシランカップリング剤を用いる場合、単独で、又は複数の種類を併用することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総量は、磁性体100質量部に対して、0.9質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。磁性体の表面積、カップリング剤の反応性などに応じてカップリング剤の量を調整するとよい。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体などのスチレンアクリル系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スチレン−アクリル酸ブチルに代表されるスチレンアクリル系樹脂が現像特性、定着性などの点で好ましい。
本発明において、結着樹脂は、スチレンアクリル系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有することが好ましく、80質量%以上100質量%以下含有することがより好ましい。スチレンアクリル系樹脂は結晶性ポリエステルと相溶しにくいため、結晶性ポリエステルの結晶化度を高め易い。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどが挙げられる。
アクリル系またはメタクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらの重合性単量体は単独で、又は混合して使用できる。
また、該重合性単量体中、スチレン系単量体の含有量が、60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量が、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
なお、スチレンアクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。また、本発明において、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂を含有する場合、該スチレンアクリル系樹脂以外に、本発明の効果に影響を与えない程度に、トナーの結着樹脂に用いられる公知の樹脂を含むことができる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できるものが好ましい。
負荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸、それらの金属塩、無水物、及びエステル類、ビスフェノールなどのフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系荷電制御剤が挙げられる。
正荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩などによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、並びに、これらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートのようなジオルガノスズボレート類;樹脂系荷電制御剤が挙げられる。
これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
中でも、樹脂系荷電制御剤以外では、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、その金属がアルミニウム又はジルコニウムのものがより好ましく、サリチル酸アルミニウム化合物
がさらに好ましい。
樹脂系荷電制御剤としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基、サリチル酸部位、及び安息香酸部位を有する重合体又は共重合体が好ましい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上10.0質量部以下である。
本発明において、該着色粒子の製造方法は、公知のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、粉砕法により製造する場合は、結着樹脂、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックス、並びに、必要に応じてその他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して各種材料を分散又は溶解し、冷却固化工程、粉砕工程、分級工程、必要に応じて表面処理工程を経て着色粒子を得る。
粉砕工程では、機械衝撃式、ジェット式などの公知の粉砕装置を用いるとよい。また、さらに熱をかけた粉砕処理、補助的に機械的衝撃力を加える処理を行ってもよい。また、微粉砕(必要に応じて分級)された着色粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる処理などを行ってもよい。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば、川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミルなどの機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムなどの装置のように、高速回転する羽根により着色粒子をケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力などの力により着色粒子に機械的衝撃力を加えてもよい。
該粉砕法のように乾式で着色粒子を製造した場合、着色粒子を得た後に、該着色粒子を水系媒体中に分散し、上記(i)、(ii)及び(iii)工程を行うとよい。
懸濁重合法を用いた着色粒子の製造方法は、以下の通りである。
まず、結着樹脂を構成する重合性単量体、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックス、並びに、必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、及びその他の添加剤を均一に溶解又は分散して重合性単量体組成物を得る。
次いで、該重合性単量体組成物を、分散剤を含有する連続相(例えば水系媒体)中に適当な撹拌器を用いて分散し、該水系媒体中で該重合性単量体組成物の粒子を形成する。
次いで、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる該重合性単量体を重合し、所望の粒径を有する着色粒子を得る。
上記撹拌器の撹拌強度は、材料分散性、及び生産性などを考慮した強度を選択するとよ
い。
重合開始剤の添加時期は、重合性単量体と他の添加剤を添加する時に同時に加えてもよいし、水系媒体中に重合性単量体組成物を分散する直前に混合してもよい。また、重合性単量体組成物の粒子を形成した直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
上記重合性単量体を重合する場合、重合温度は40℃以上、一般には、50℃以上90℃以下の温度に設定するとよい。
上記重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5000から50000の間に極大を有する重合体を得ることができる。
具体的な重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
上記架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
中でも無機分散剤は、超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易であるので好ましい。該無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどの燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。該無機分散剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。また、上記分散剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、0.1質量部以上10.0質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。
該無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合
して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
懸濁重合法又は溶解懸濁法を用いて着色粒子を製造した場合、着色粒子が水系媒体中に分散された状態で得られるので、引き続き、下記(i)、(ii)及び(iii)工程を行うとよい。
上記重合性単量体を重合して着色粒子を得た後、着色粒子が分散された水系媒体を、Tw(℃)以上の温度まで昇温する。ここで、重合温度がTw(℃)を超えている場合、この操作は必要ない。
その後、ワックス及び結晶性ポリエステルを結着樹脂に相溶させる目的で、一定の時間以上、水系媒体をTw以上の温度で保持する。該保持時間は30分間以上が好ましく、60分間以上がより好ましく、100分間以上がさらに好ましい。一方、該保持時間の上限値は、その効果が飽和する1440分間程度である。
(ii)工程
続いて、Pwの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が70%以上となる温度領域において、水系媒体を冷却速度5.0℃/分以上で冷却する。
(iii)工程
続いて、次の(a)又は(b)の工程を行う。
(a)水系媒体を、Ppの領域内の温度において30分間以上保持し、トナー粒子を得る。
(b)Ppの全面積を100%としたとき、該全面積に対して積分値が50%以上となる温度領域において、水系媒体を冷却速度1.0℃/分以下で冷却し、トナー粒子を得る。
該トナー粒子は、必要により外添剤などを添加混合し表面に付着させることで、トナーとしてもよい。外添剤の混合は、公知の手法を用いることができる。ヘンシェルミキサーを用いた混合が挙げられる。
また、該外添剤の添加前に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
外添剤として、一次粒子の個数平均粒径が4nm以上80nm以下(より好ましくは6nm以上40nm以下)の無機微粒子が好ましい。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行うとよい。
無機微粒子は、トナーの流動性改良及びトナーの帯電性の均一化のために添加されるが、無機微粒子を疎水化処理することでトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上などの機能を付与することも可能である。疎水化処理に用いられる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物などの処理剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子などが挙げられる。シリカ微粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ微粒子、及び、水ガラスなどから製造された、いわゆる湿式シリカ微粒子の両者が使用可能である。
また、乾式シリカ微粒子においては、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、それらも包含する。
無機微粒子の添加量は、トナーに対して0.1質量%以上3.0質量%以下であること
が好ましい。
感光体100は帯電ローラー117によって、例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光体100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写帯電ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125などにより定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー容器116によりクリーニングされる。なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電
気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
結晶性ポリエステルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で結晶性ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム :LF−604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液 :THF
流速 :0.6mL/min
オーブン温度:4.00℃
試料注入量 :0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
エステルワックスの組成分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定し、その領域をGC(ガスクロマトグラフィー)又はMALDITOF MASSを用いて測定することで得る。なお、GPCの分析条件は以下の通りである。
(GPC測定条件)
カラム:GMH−HT(30cm)2連[東ソー(株)社製]
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0mL/min
試料 :0.15%の試料を0.4mL注入
上記条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き
出される換算式でポリエチレン換算することによって算出する。
該GPCにより得られたピークを解析し、エステルワックスの分子量分布の最大値と最小値を算出する。下記のようにGC−MASSやMALDI TOFF MASSで分析する際、このGPCで得られた最大値と最小値に挟まれた領域を、「エステルワックスの分子量分布の範囲」と見なす。本発明のエステルワックスは、GC−MASS及びMALDI TOF MASSのいずれの方法によっても測定できるが、ガス化が困難な場合はMALDI TOF MASSを、マトリックスとピークが重なってしまう場合はGC−MASSを、といったように適宜選択する。両方の測定方法を述べる。
エステルワックスの組成分布をGC−MASSで測定する場合の具体的な条件を述べる。
ガスクロマトグラフィー(GC)として、GC−17A(島津製作所製)を用いる。
試料10mgをトルエン1mLに加え、80℃の恒温層にて20分加熱及び溶解する。次いで、この溶解液1μLを、オンカラムインジェクターを備えたGC装置に注入する。カラムは、0.5mm径×10m長のUltra Alloy−1(HT)(フロンティア・ラボ(株)製)を用いる。カラムは初め40℃から40℃/minの昇温スピードで200℃まで昇温させ、さらに15℃/minで350℃まで昇温させ、次に7℃/minの昇温スピードで450℃まで昇温させる。キャリアガスは、Heガスを50kPaの圧力条件で流す。
ここで、ガス化成分をマススペクトロメーター(質量分析計)に導入し、GCにて得られる複数のピークの分子量を得ることで、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピーク群を見出す。それらピーク群を解析し、ピーク面積の総和を算出する。また、GCで得たピークのうち、ピーク面積が最大のピークをエステルワックスにおける含有割合が最も多いエステル化合物に由来するピーク(最多成分に由来するピーク)とする。
該含有割合が最も多いエステル化合物のピーク面積の全ピーク面積の総和に対する比を取ることで、含有割合が最も多いエステル化合物のエステルワックス総量に対する含有割合(最多成分の割合;質量%)を得る。
エステル化合物の同定は、別途構造が既知のエステル化合物を注入し同一の流出時間同士を比較することや、ガス化成分をマススペクトロメーターに導入し、スペクトル解析することにより行う。
エステルワックスの組成分布をMALDI TOF MASSで測定する場合について述べる。選択するマトリックスは材料種によって最適なものを選び、マトリックスのピークと材料由来のピークが重ならないように配慮する。
MALDI TOF MASSで得られたピークのうち、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピークを見出し、各ピーク強度の総和を算出する。
それらピークの中で強度が最大のものをエステルワックスにおける含有割合が最も多いエステル化合物に由来するピーク(最多成分に由来するピーク)とする。
エステルワックスにおける含有割合が最も多いエステル化合物のエステルワックス総量に対する含有割合(質量%)は、含有割合が最も多いエステル化合物に由来するピーク強度の上記ピーク強度の総和に対する比として算出する。
エステル化合物の同定は、別途構造が既知のエステルワックスをMALDI TOF MASSで得られたスペクトルを解析することで行う。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた、トナー表面の結晶性ポリエステルの染み出し率は、以下の手順で算出する。
トナーをルテニウム染色した場合、トナーに含有される結晶性ポリエステルはコントラストが大きく観察が容易となる。ルテニウム染色を用いた場合、染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分はこれらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。つまり、結晶性ポリエステルは、非晶性樹脂よりも強く染色されるため、コントラストが明瞭になり、観察が容易となる。
本発明において、結晶性ポリエステルの染み出し率は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)により解析して算出する。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。トナーを、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色する。
(2)S−4800の観察条件の設定
結晶性ポリエステルの染み出し率の算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べて無機微粒子のチャージアップが少ないため、結晶性ポリエステルの染み出し率を精度良く測定することができる。
S−4800の筐体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PC−SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800筐体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)トナーの個数平均粒径(D1)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー300個について粒径を測定して個数平均粒径(D1)を求める。なお、個々の粒子の粒径は、トナーの粒子を観察した際の最大径とする。
(4)焦点調整
(3)で得た、個数平均粒径(D1)の±0.1μmの粒子について、最大径の中点を
測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を5000(5k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(5)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー30粒子以上についてSEM画像を得る。
(6)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで結晶性ポリエステルの染み出し率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。ただし、分割区画内に、粒径が50nm以上の無機微粒子が入る場合はその区画では結晶性ポリエステルの染み出し率の算出を行わないこととする。
画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0の解析手順は以下の通りである。
SEM画像を上記画像解析ソフトで取り込み、3×3ピクセルのフィルタリング処理を行う。続いて、トナーの輪郭より、トナー一粒の面積Aを求める。さらに、トナーの輪郭内において、2値化処理を行う。その際、2値化の閾値として、自動処理によって算出される閾値を使用する。結晶性ポリエステルは、例えば、図5に示されるように、黒に識別される。続いて、黒に識別された面積Bを得る。結晶性ポリエステルの染み出し率は、以下の式を用いて算出される。
結晶性ポリエステルの染み出し率(%)=面積B/面積A×100
上述したように、結晶性ポリエステルの染み出し率の計算をトナー30粒子以上について行う。得られた全データの平均値を結晶性ポリエステルの染み出し率とする。
結晶性ポリエステル又はワックスの結晶化ピークのピーク温度及び発熱曲線は、示差走査熱量分析計(DSC)であるQ1000(TAインストルメント社製)を用いて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料1.00mg秤量し、アルミニウム製のパンにいれ、対照用に空のアルミニウム製パンを用い、下記の条件で測定する。
測定モードはStandardを用い、20℃から100℃まで昇温速度10℃/minで昇温した後に、100℃から20℃まで降温速度10℃/minで降温する。
得られた結果をもとに、温度―Heat Flowのグラフを作成し、降温時の結果より、結晶性ポリエステル又はワックスの発熱曲線を得る。
得られた発熱曲線において、結晶性ポリエステルに関する発熱ピークを結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)とし、該結晶化ピーク(Pp)のピーク温度をTp(℃)と
する。
一方、ワックスに関する発熱ピークをワックスの結晶化ピーク(Pw)とし、該結晶化ピーク(Pw)のピーク温度をTw(℃)とする。
得られた発熱ピークに対してベースラインを引き、ベースラインから発熱曲線がかい離する温度の内、高い温度及び低い温度を、それぞれ、上端及び下端と呼ぶ。
また、結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)及びワックスの結晶化ピーク(Pw)の全面積をそれぞれ求める。結晶化ピークの全面積は、該結晶化ピークに対するベースラインを引き、ベースラインと結晶化ピークにより囲まれた面積である。
また、水系媒体の冷却工程において、特定の温度領域を急冷又は緩やかな冷却を行った場合、結晶化ピーク、ベースライン及び特定の温度領域により囲まれた面積(すなわち、結晶化ピークの特定の温度領域における積分値)を求める。
後述の実施例において、「急冷を行ったワックスの積分値」は、ワックスの結晶化ピーク(Pw)の全面積を100%としたときに、Pwの該特定の温度領域における積分値の割合(%)として示している。
一方、「緩やかな冷却を行った結晶性ポリエステルの積分値」は、結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)の全面積を100%としたときに、Ppの該特定の温度領域における積分値の割合(%)として示している。
なお、トナーから、結晶性ポリエステル又はワックスの結晶化ピークのピーク温度及び発熱曲線を得ることも可能である。該手順としては、トナーから結晶性ポリエステル又はワックスを単離し、それぞれについて上記分析を実施すればよい。
トナーをテトラヒドロフランによって抽出して、大部分の樹脂成分を除去する。
ここで、磁性体や外添剤など、樹脂成分以外のものは比重差を利用して遠心分離で除去しておく。残った樹脂成分は、結晶性ポリエステルとワックスなどの混合物であるため、分取型LCを用いて結晶性ポリエステル及びワックスをそれぞれ単離し、核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)などを用いて構造解析するとよい。
また、トナー内の含有量に関して以下のようにする。
例えば、結晶性ポリエステルの含有量を得るには、トナーと分取後の結晶性ポリエステルそれぞれの核磁気共鳴分光分析結果を見比べ、結晶性ポリエステル特有のピークの面積比を取ることで得られる。エステルワックスに関しても同様で、核磁気共鳴分光分析結果のピーク面積比によって含有量を得ることができる。
酸価は、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明における酸価は、JIS K0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した水酸化カリウム溶液の量から求める。0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(
2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50Lに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55Lを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過及び洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散して、再分散液を得た。
この再分散液に、コア粒子100部あたりケイ素換算で0.20部となるケイ酸ソーダを添加し、再分散液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素が豊富な表面を有する磁性酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにて、ろ過及び洗浄した後、さらにイオン交換水に再分散して再分散液を得た。
この再分散液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにて、ろ過及び洗浄し、乾燥及び解砕して1次粒子の個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
iso−ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。得られた水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散して、iso−ブチルトリメトキシシランの加水分解を行った。
その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させ、シラン化合物を含有する水溶液を得た。
100部の磁性酸化鉄をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、8.0部のシラン化合物を含有する水溶液を2分間かけて滴下した。その後、5分間混合及び撹拌した。
次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。
その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して着色剤1を得た。
着色剤2は市販のカーボンブラックを着色剤2として用いた。
用いたカーボンブラックの一次粒子の個数平均粒径は31nm、DPB吸油量は40mL/100g、仕事関数は4.71eVであった。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,9−ノナンジオール185.5部、及び、カルボン酸モノマーとしてセバシン酸230.3部を投入した。そして、触媒としてオクチル酸スズ(II)をモノマー総量100部に対して1部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。
次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させて結晶性ポリエステル1を得た。
得られた結晶性ポリエステル1の酸価は2.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は20000、融点(Tm)は74℃、結晶化ピークのピーク温度(Tp)は55℃、結晶化ピークの下端は51℃、上端は59℃であった。得られた結晶性ポリエステル1の物性を、表1に記載する。
結晶性ポリエステル1の製造において、アルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを表1の通りに変更したこと以外は同様にして、結晶性ポリエステル2及び3を製造した。得られた結晶性ポリエステル2及び3の物性は、表1に記載の通りである。
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、アルコールモノマーとしてエイコサノール200モル部、カルボン酸モノマーとしてデカン二酸(セバシン酸)100モル部を仕込んだ。さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流した後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後、炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥してベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物1を得た。
エステル化合物1の製造において、表2に記載のカルボン酸モノマー及びアルコールモノマーを使用すること以外は同様にして、エステル化合物2〜5を得た。
エステル化合物1、エステル化合物2及びエステル化合物3を、表3に記載の配合比で溶融混合し、冷却した後に解砕し、ワックス1を得た。表3にGS−MASS又はMALDI TOF MASSで測定した、含有割合が最も多いエステル化合物のエステルワックス総量に対する含有割合(表中、最多成分の割合と表記)、結晶化ピークのピーク温度(Tw;℃)を示す。
ワックス1の製造例において、各成分の配合比を表3に記載の通りに変更すること以外は同様にして、ワックス2〜6を得た。得られたワックス2〜6の物性を表3に示す。
ワックス7〜9は、エステル化合物2、エステル化合物4、及びエステル化合物5をそれぞれ溶融混錬せずに、そのまま用いた。ワックス7〜9の物性を表3に示す。
市販のパラフィンワックス「HNP−51(製造元:日本精蝋)」を精製して、結晶化ピークのピーク温度が異なるワックス10〜13を得た。ワックス10〜13の物性を表3に示す。
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 79.0部
・n−ブチルアクリレート 21.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・着色剤1 90.0部
上記処方を、アトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して重合性単量体組成物を得た。この重合性単量体組成物を63℃に加温し、そこに結晶性ポリエステル1を10部、及び、エステルワックスとして表3に記載のワックス1 10部を添加混合し、溶解した。その後、重合開始剤tert−ブチルパーオキシピバレート9.0部を溶解した。
上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてTK式ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、重合
性単量体組成物の粒子を形成した。
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で4時間重合反応を実施した。反応終了後、得られた着色粒子が分散する水系媒体を90℃まで昇温して(冷却工程前の水系媒体の温度)、30分間保持した。
その後、冷却工程1として、水系媒体に5℃の水を投入し、50.00℃/分という冷却速度で、90℃から59℃へ急冷した。
さらに、冷却工程2として、59℃から20℃へ、冷却速度0.01℃/分という冷却速度で、緩やかに冷却した。その後、水系媒体に、塩酸を加えて洗浄した後に濾過及び乾燥してトナー粒子1を得た。
用いたワックスの結晶化ピーク(Pw)の全面積を100%としたとき、冷却速度5.00℃/分以上で冷却した温度領域における積分値の割合は、100%であった(すなわち、表4中の「急冷を行ったワックスの積分値」が100%となる)。また、用いた結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)の全面積を100%としたとき、冷却速度1.00℃/分以下の緩やかな冷却を行った温度領域における積分値の割合は、100%であった(すなわち、表4中の「緩やかな冷却を行った結晶性ポリエステルの積分値」が100%となる)。
その後、100部のトナー粒子1と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合してトナー1を得た。得られたトナー1における、結着樹脂中のスチレンアクリル系樹脂の含有量は、100質量%であった。トナー1の物性等を表4に示す。
トナー1の製造例において、結晶性ポリエステルの種類、ワックスの種類、着色剤の種類、非晶質ポリエステル樹脂の添加量、冷却工程前の水系媒体の温度、冷却工程を表4に記載の通りに変更した以外は同様にして、トナー2〜19、21〜26及び比較トナー1〜8を製造した。得られたトナーの物性等を表4に示す。
なお、一部のトナーにおいては、表4に記載のように、非晶性ポリエステル樹脂を所定の部数、使用している。使用した非晶性ポリエステルは、組成がビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸(モル比率が50:50)の縮合反応により得られる飽和ポリエステル樹脂、重量平均分子量(Mw)が20000、酸価が0.1mgKOH/gである。また、結晶性ポリエステルと同時に、重合性単量体組成物に添加した。
トナー7の製造例においては、結晶性ポリエステルとして、結晶性ポリエステル1及び2を、各10部ずつ使用した。
トナー8の製造例においては、ワックスとして、ワックス1及び13を、各10部ずつ使用した。
表4の記載において、冷却速度が記載されていない温度領域は、全て2.00℃/分という冷却速度で、冷却を進めた。また、全ての水系媒体は、20℃まで冷却を行った。
表4の「急冷を行ったワックスの積分値(D欄)」とは、使用したワックスの結晶化ピーク(Pw)の全面積を100%としたとき、冷却速度5.00℃/分以上で冷却した温度領域における積分値の割合を意味し、「急冷」は、冷却速度5.00℃/分以上の冷却
速度を行った場合にのみ、適用している。
表4の「緩やかな冷却を行った結晶性ポリエステルの積分値(E欄)」とは、使用した結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)の全面積を100%としたとき、冷却速度1.00℃/分以下の緩やかな冷却を行った温度領域における積分値の割合を意味し、冷却速度1.00℃/分以下の冷却速度を行った場合に、適用している。
下記の手順に従って、溶解懸濁法によってトナーを製造した。
まず、以下の手順に従って、水系媒体と溶解液の調製を行い、トナーを作製した。
水660部、48.5質量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液25部を混合撹拌し、TK式ホモミキサーを用いて、10000r/minにて撹拌して水系媒体を調製した。
また、下記の材料を酢酸エチル500部へ投入し、プロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレンとn−ブチルアクリレート共重合体 100.0部
(共重合質量比:スチレン:n−ブチルアクリレート=75:25、Mp=17000)・着色剤2 90.0部
・上述の非晶性ポリエステル 67.0部
・結晶性ポリエステル1 10.0部
・ワックス10 10.0部
次に水系媒体150部を容器に入れ、TK式ホモミキサーを用い、回転数12000rpmで攪拌し、これに上記溶解液100部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを調製した。
その後、脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分間で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤した。その後、着色粒子を含むスラリーを含む水系媒体を90℃に加熱し、30分保持した後、表4に記載の条件で、冷却工程を進めた。
続いて、水系媒体を減圧濾過し、得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、洗浄した。得られた濾過ケーキを乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩いトナー粒子20を得た。
その後、トナー1の製造例と同様に100部のトナー粒子20に、疎水性シリカ微粒子0.8部を混合してトナー20を得た。得られたトナー20における、結着樹脂中のスチレンアクリル系樹脂の含有量は、60質量%であった。トナー20の物性等を表4に示す。
表4−1及び4−2において、A、B、C、D、及びEは以下の内容である。
A:非晶性ポリエステル樹脂の添加量(部数)
B:スチレンアクリル系樹脂の含有量(質量%)
C:冷却工程前の水系媒体の温度(℃)
D:急冷を行ったワックスの積分値(%)
E:緩やかな冷却を行った結晶性ポリエステルの積分値(%)
(現像性の評価)
トナー1を用いて以下の評価を行った。
画像形成装置としては、市販のLBP―3100(キヤノン製)を用い、印字速度を16枚/分を32枚/分に改造した。これにより、トナーの現像性が低下し、より厳しい評価を行うことができる。使用した紙種はA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いた。
印字の手順としては、ベタ画像を10枚連続で出力した。得られたベタ画像10枚の画像濃度を、マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定し、その平均値をベタ濃度とした。ベタ濃度が高いほど、現像性が良好であることを示す。
なお、現像性の判断基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:1.40以上 非常に良好
B:1.30以上1.40未満 良好
C:1.20以上1.30未満 普通
D:1.20未満 悪い
トナー1を用いて、以下の評価を行った。
白画像を上述の紙に出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETERMODEL TC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−白画像の反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:1.0%未満 非常に良好
B:1.0%以上2.0%未満 良好
C:2.0%以上4.0%未満 普通
D:4.0%以上 悪い
上述したトナー表面の結晶性ポリエステルの染み出し率の算出方法を用いて、結晶性ポリエステルの染み出し率を測定した。
結晶性ポリエステルがトナー表面に多量に染み出すことにより、カブリの発生が顕著になるとともに、潜在的な電子写真特性の低下を引き起こす恐れがある。
なお、結晶性ポリエステルの染み出し率の判断基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:5.0%未満 非常に良好
B:5.0%以上15.0%未満 良好
C:15.0%以上30.0%未満 普通
D:30.0%以上 悪い
温度21℃、相対湿度90%に調整された恒温槽に5gのトナー1を置き、24時間エージング処理を行う。その後、1時間当り12℃のペースで昇温させ、3時間かけて、温度57℃、相対湿度90%に調整する。その状態で、3時間保持した後、1時間当り12℃のペースで降温させ、温度21℃、相対湿度90%に戻す。そして、3時間保持した後に、再び昇温させる。このようにして、温度21℃、相対湿度90%と温度57℃、相対湿度90%の温度と湿度で、図4のように、7回の昇温と降温を繰り返した。
このモードを用いることで、急激な熱変動をトナーに付与し、高温、低温を何度も繰り返すことにより、トナー内部の物質移動を促し、結晶性ポリエステルをトナー表面に染み出させやすくする。苛酷環境放置に係る評価の中ではトナーに対して厳しいものである。
上記苛酷環境放置を実施したトナー1について、上述の手法で現像性、カブリ、及び結晶性ポリエステルの染み出し率の測定を行い、上記評価基準で評価した。評価結果を表5に示す。
上記全ての評価を行ったところ、実施例1は良好な結果を得られた。
トナー2〜26、及び、比較用トナー1〜8を用いて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
ザー、124:ピックアップローラー、125:搬送ベルト、126:定着器、140:現像器、141:撹拌部材、201:結晶化ピークの下端の温度(℃)、202:結晶化ピークの上端の温度(℃)、301:特定の温度領域における積分値の割合が50%となる一例、302:全面積に対して積分値が50%となる温度領域の一例
Claims (6)
- 結着樹脂、着色剤、結晶性ポリエステル及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該結晶性ポリエステルと該ワックスが下記式(1)の関係を満たし、
式(1):45<Tp+5<Tw<100
(式(1)中、
Tp(℃)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される該結晶性ポリエステルの結晶化ピーク(Pp)のピーク温度を示す。
Tw(℃)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される該ワックスの結晶化ピーク(Pw)のピーク温度を示す。)
該製造方法が、下記工程(i)、(ii)及び(iii)を有することを特徴とするトナーの製造方法。
(i)該結着樹脂、該着色剤、該結晶性ポリエステル及び該ワックスを含有する着色粒子が分散された水系媒体を該Tw以上の温度とする工程。
(ii)該Pwの全面積に対する積分値が70%以上となる温度領域において、該(i)の工程を経た該水系媒体を冷却速度5.0℃/分以上で冷却する工程。
(iii)該(ii)の工程を経た該水系媒体を、
(a)該Ppの領域内の温度において30分間以上保持し、該トナー粒子を得る工程、又は、
(b)該Ppの全面積に対する積分値が50%以上となる温度領域において、冷却速度1.0℃/分以下で冷却し、該トナー粒子を得る工程。 - 前記着色粒子が、懸濁重合法又は溶解懸濁法で製造された着色粒子である、請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記結着樹脂が、スチレンアクリル系樹脂を50質量%以上100質量%以下含有する、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
- 前記ワックスが、エステルワックスを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
- 前記エステルワックスがエステル化合物を含有し、
該エステルワックスのGC−MASS又はMALDI TOF MASSで測定された組成分布において、含有割合が最も多い該エステル化合物の該エステルワックス総量に対する含有割合が、40%質量以上80%質量以下である、請求項4に記載のトナーの製造方法。 - 前記エステルワックスが、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、及び、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物の少なくとも一方を含有する、請求項4又は5に記載のトナーの製造方法。
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