本発明は、結着樹脂、着色剤、エステルワックス及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と、無機微粒子とを有するトナーであって、
該エステルワックスは、下記式(1)または(2)
式(1):R1−CO−O−(CH2)x−O−OC−R2
式(2):R3−O−OC−(CH2)x−CO−O−R4
(式(1)及び(2)において、R1乃至R4はアルキル基であり、xは8乃至10の整数である。)
で表される構造を有するエステル化合物で構成され、
該エステルワックスの組成分布において、存在割合が最も多いエステル化合物の該エステルワックス全量に対する割合が40質量%以上80質量%以下であり、
該エステルワックスを試料とする示差走査熱量測定を行った際の吸熱ピークのピークトップ温度が65℃以上80℃以下であり、
該トナーを試料とする示差走査熱量測定において、該トナーは、上記のワックス成分に由来する吸熱ピークを1つのみ有し、該トナーの上記のワックス成分に由来する吸熱ピークのピークトップ温度をTt(℃)とし、該エステルワックス及び該炭化水素ワックスをそれぞれ試料とする示差走査熱量測定を行った際の吸熱ピークのピークトップ温度のうち、より低温側のピークトップ温度をTw(℃)としたとき、
3.0≦(Tw−Tt)≦8.0
の関係を満たすことを特徴とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定のエステルワックスと炭化水素ワックスを用いることにより画像両末端の濃度薄は大幅に改善でき、さらには良好な定着性も得られ、本発明に至った。
まず、画像両末端の濃度薄について詳細に検討したところ、ワックス成分の揮発量を抑制すると共に、揮発したワックス成分が凝固する際の粒径を制御することが重要であった。具体的には、揮発したワックス成分は凝固するが、凝固した粒径が大きい方がスキャナーまで飛散し難く、その結果スキャナー内部へ取り込まれる量が減少し、画像両末端の濃度薄が抑制出来る。
これについて、種々の検討をおこなったところ、特定のエステルワックスと炭化水素ワックスを用い、示差走査熱量計(DSC)測定における上記のワックス成分に由来する吸熱ピークを1つのみ有し、該トナーの上記のワックス成分に由来する吸熱ピークのピークトップ温度をTt(℃)とし、該エステルワックス及び該炭化水素ワックスをそれぞれ試料とする示差走査熱量測定を行った際の吸熱ピークのピークトップ温度のうち、より低温側のピークトップ温度をTw(℃)としたとき、3.0≦(Tw−Tt)≦8.0を満たすことが重要であった。
2種以上のワックスを併用した場合、両者が相溶するか層分離することが一般的である。前者の場合、2種のワックスの混合割合に応じて2種のワックスの吸熱ピークの間にワックスの吸熱ピークが現れる。一方、後者の層分離状態の場合、2種のワックスを混合してもそれぞれのワックスのピークが観測される。
これに対し、本発明のトナーは両者のいずれかでもなく、本発明に用いたエステルワックス、炭化水素ワックスのより低温側の吸熱ピークよりも、3℃以上より低温側に吸熱ピークを有する。これは、2種のワックスを併用することによりワックスの融点降下が生じていることを示唆している。
このような融点降下が生じているワックスの組合せと、ワックス成分の揮発量について調べたところ、融点降下した系ではワックス成分の揮発量が減少していることが判明した。この理由についてであるが、本発明者らは以下のように考えている。
一般的に、系の自由エネルギー変化はギブスの自由エネルギーの式により、次式(3)のように表わされる。
ΔG=ΔH−TΔS (式3)
(ここで、Gは自由エネルギー、Hはエンタルピー、Tは温度、Sはエントロピーである。)
結晶が溶融する融点(Tm)ではΔG=0なので、式(3)より
Tm=ΔH/ΔS (式4)
と表わすことが出来る。
本発明では上述のように融点降下を生じているが、融点が下がると言うことは、式(4)よりΔHの低下か、ΔSの増大のどちらか、あるは両方が生じていることを示唆している。ΔHの低下はワックスの結晶化度の低下を意味しており、ΔSの増大はワックスの乱雑さが大きい状態を示しており、ここではワックスがドメインの中で微細な海島構造のような特殊な状態を取っていると考えられる。
また、2種のワックスが完全に相溶していない場合、一般にワックス同士の界面では互いに他に影響を及ぼすと言われており、微細な海島構造のような状態ではワックス界面付近の結晶化度は相対的に低いと思われる。
このようなワックスの存在状態のトナーは、定着時に定着器からの熱を受けた際、ワックスの溶融が極めて早く生じ、その結果、ワックスの樹脂への染み込み量が増加するために揮発するワックス成分の量が減少したものと考えられる。
次に、揮発したワックス成分の凝固について、本発明者らの考えを述べる。揮発したワックス成分は凝固する過程において最初に結晶核が生成し、その後、結晶は成長する。この過程について詳しく述べると、核生成の理論より核生成の活性化エネルギー(Gt)は下式(5)の通りであることが知られている。
(ここで、Rは臨界核半径、ΔGは自由エネルギー変化、γは定数。)
これをRで微分すると、Rは下式(6)のようになる。
凝固物(揮発したワックス成分が凝固したもの)の粒径について考えると、結晶核が大きく、ゆっくり核成長することで大きな結晶となり、凝固物の粒径が大きくなると考えられる。
そこで結晶核の大きさについて考えると、結晶核の大きさは臨界核半径に比例するので臨界核半径を大きくすることが凝固物の粒径アップに有効であると考えられる。
式(6)に戻ると、臨界核半径を大きくするためにはΔGを小さくすることが重要で、ΔGは前述のギブスの自由エネルギーである。
また、前述の如く、本発明では溶融時のΔSは大きい。融点は固体から液体への1次相転移であり、揮発したワックス成分の凝固についても気体⇒液体⇒固体への1次相転移が連続して生じていると考えられる。このため、本発明に係るワックスは1次相転移の際のΔSは大きいことが予想され、その結果、臨界核半径が大きくなると考えられる。
次に、本発明のトナーに用いられるエステルワックスの組成分布において、存在割合が最も多いエステル化合物の該エステルワックス全量に対する割合が40質量%以上80質量%以下であることが重要である。エステルワックスの存在割合が最も多いエステル化合物の該エステルワックス全量に対する割合が40質量%以上80質量%以下であると言うことは、エステルワックスに組成の分布が有ることを意味している。
一例として、表1に本発明のトナーに用いたエステルワックスの組成を示すが、表1に示すような種々の組成を有しており、その最多組成割合を制御することが重要である。
ここでエステルワックスの組成について考えると、組成が単一なものに比べ組成に分布があるものの方がエントロピーが大きくなる事は明らかであり、ここでも式(6)のΔGは小さくなる。エステルワックスの組成によるΔGへの寄与と、一次相転移の際のΔSが大きいことの相乗効果により、より臨界核半径が大きくなるものと推察される。
次に結晶成長過程に着目すると、一般には結晶化の速度が遅いものほど結晶が大きくなる。ここで、本発明における結晶成長過程を考えると、上述のように結晶成長の核となる結晶核は大きいと考えられる。一方、結晶成長においてワックス組成の分布は結晶成長を妨げる要因となるため、本発明の如く組成分布があるエステルワックスを用いた系においては結晶の成長速度も遅くなると考えられる。
これらのことから、エステルワックスの存在割合が最も多いエステル化合物の該エステルワックス全量に対する割合が80質量%よりも高い場合、上記のようなエントロピーに起因する効果が得られず、凝固物の粒径は小さくなってしまう。その結果、画像両末端の濃度薄が発生し、好ましくない。
また、エステルワックスの存在割合が最も多いエステル化合物の該エステルワックス全量に対する割合が40質量%よりも低い場合、かなりブロードな組成分布を有することになる。このため、上記の効果が得られやすい半面、トナー中でのワックスの結晶化度が低下し易く、保存性が悪化してしまい好ましくない。
以上のように、ワックスの融点降下が生じていることによるワックスの揮発成分の減少、及び、ΔSが大きいことに起因し結晶核が大きくなること。さらには、エステルワックスの組成分布による結晶成長速度の低下の3点の相乗効果により、スキャナーへ届くワックス凝固物が大幅に減少し、画像両末端の濃度薄が解消できたと考えている。
本発明のトナーに用いられるエステルワックスは示差走査熱量計(DSC)測定において、吸熱ピークのピークトップ温度が65℃以上80℃以下であることが重要である。
吸熱ピークのピークトップ温度が65℃以上80℃以下であると、定着時に迅速に溶融すると共に結着樹脂に相溶する量も十分となる。さらに、揮発するワックス成分量が多くならず、これまで述べてきた効果を十分に得ることができる。
エステルワックスの吸熱ピークのピークトップ温度が65℃未満では、定着部材とワックスの融点の温度差が大きくなり過ぎてしまい、揮発量が増大してしまう。一方、吸熱ピークのピークトップ温度が80℃よりも高い場合、揮発するワックス成分量は減少するものの、揮発したワックス成分が凝固する際の結晶化速度が速くなり、凝固物の粒径が小さくなってしまい好ましくない。
本発明のトナーは示差走査熱量計(DSC)測定において、上記のワックス成分に由来する吸熱ピークを1つのみ有し、トナーの上記のワックス成分に由来する吸熱ピークのピークトップ温度をTt(℃)とし、該エステルワックス及び該炭化水素ワックスをそれぞれ試料とする示差走査熱量測定を行った際の吸熱ピークのピークトップ温度のうち、より低温側のピークトップ温度をTw(℃)としたとき、3.0≦(Tw−Tt)≦8.0を満たすことが重要である。
これまで述べてきたように、本発明ではワックスの融点降下は極めて重要である。このため、低下幅が3.0℃未満では融点降下の効果が不十分となり、好ましくない。また、融点降下の低下幅が8.0℃よりも大きな場合、ΔHが大きく低下していることが考えられる。これは、ワックスの結晶化度が大きく低下していることを意味し、長期使用における耐久性の劣化や保存性の悪化を引き起こしやすくなるため、好ましくない。
このため、本発明においては、融点降下の低下幅は3.0℃以上8.0℃以下であることが重要であり、好ましくは3.0℃以上6.0℃以下である。
なお、融点降下の低下幅は、用いるワックスの組合せやトナーの製造方法によって制御することが可能である。具体的には、組成分布を有する式(1)または(2)の構造を有するエステルワックスと炭化水素ワックスとの組み合わせである。また、トナーの製造方法としては、トナーを製造する際の熱のかかり方、あるいは、冷却時の冷却スピード等に制御することも出来る。
本発明のトナーは、特殊なワックスの存在状態を有していると考えられる。そのため、例えばワックスの融点以上の熱がかからなければワックス同士が相互作用を及ぼすこともない上、融点降下も生じない。一方、ワックスの融点以上の熱をかけた場合でも、冷却速度が早ければ層分離のような状態になり易く、融点降下は生じ難い。逆に、冷却速度が遅すぎると融点降下幅は大きくなり易く、上述のような弊害を生じてしまう。このため、本発明のトナーの製造においては、トナーの製造過程においてワックスの融点以上の温度に加熱し、その後の冷却過程において冷却速度を例えば0.3℃/min以上3℃/min以下とすることが好ましい。
本発明のトナーに用いるエステルワックスは、エステルワックス中の存在割合が最も多いエステル化合物の分子量をM1としたときに、0.8×M1≦M≦1.2×M1を満たす分子量Mを有するエステル化合物の合計の存在割合が、エステルワックス全量に対して90質量%以上であることが好ましい。これについても表1で説明すると、エステルワックス中の存在割合が最も多いエステル化合物の分子量M1は819.4である。これに対し、0.8×M1≦M≦1.2×M1を満たす成分は100質量%であることが分かる。
0.8×M1≦M≦1.2×M1を満たす成分がエステルワックス全量に対し、90質量%以上であると、凝固物の粒径が大きくなり好ましい。この理由についてであるが、本発明者らは以下のように考えている。
式(6)のR(臨界核半径)について考えると、一般的には臨界核半径よりも小さな核は安定なエネルギー準位を取れず、消滅すると言われている。一方で、臨界核半径よりも小さな核は準安定な結晶構造を取り、この準安定な結晶は臨界核半径を超えた大きな核を覆う構造を取ることも知られている。このような構造を取ることで臨界核半径は大きくなる。
ここで、0.8×M1≦M≦1.2×M1を満たす成分がエステルワックス全量に対し90質量%以上であると、上述の準安定状態の形成が非常にスムーズに進むと考えている。これは、適度に近似した物質が存在することで準安定状態が安定化し、その結果準安定状態の形成が進み、結晶核が大きくなるためであると考えている。
本発明において、エステルワックスの組成分布を制御する方法としては、多数の単組成のエステルワックスを混合する方法、あるいは、組成分布を有する原材料を用いてエステルワックスを合成し、それを用いる方法が挙げられる。
本発明のトナーに用いる炭化水素ワックスは、示差走査熱量計(DSC)測定において、吸熱ピークのピークトップ温度が70℃以上85℃以下であり、吸熱ピークの半値幅が5℃以下であることが好ましい。
吸熱ピークの半値幅が5℃以下であると言うことは、炭化水素ワックスの分子量分布がシャープであることを意味する。先に述べたように、本発明に用いるエステルワックスは組成に分布を有し、炭化水素ワックスと併用することで融点降下を生じることが非常に重要である。これに加え、炭化水素ワックスの分子量分布がシャープ(即ち、半値幅が5℃以下)であると、揮発したワックス成分が凝固する際に結晶が大きくなり易く、とても好ましい。これは、組成分布を有するエステルワックスと分子量分布がシャープな炭化水素ワックスを用いることで融点降下が生じており、ワックスのΔSが大きくなっているためであると本発明者らは考えている。
一方、組成分布の無いエステルワックスと分子量分布を有する炭化水素ワックスとの組み合わせも考えられるが、これは凝固物の粒径が小さく、画像両末端の濃度薄を改善出来なかった。これは、組成分布を有するエステルワックスのΔSへの寄与が大きい半面、分子量分布を有する炭化水素ワックスのΔSへの寄与が小さい為であると推察している。
本発明のトナーに用いることが出来る炭化水素ワックスとしては上記条件を満たす全ての炭化水素ワックスを用いることが可能である。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体等が挙げられる。
本発明のトナーは、結着樹脂100質量部に対しワックスを総量で5質量部以上40質量部以下含有していることが好ましく、より好ましくは10質量部以上30質量部以下である。ワックスの含有量が5質量部以上40質量部以下であると、良好な定着性を維持すると共に画像両末端の濃度薄も生じ難く、非常に好ましい。
また、本発明のトナーはエステルワックスと炭化水素ワックスを含有するが、エステルワックスと炭化水素ワックスの質量比率が1:1以上3:1以下であることが好ましい。この比率が1:1以上3:1以下の場合、揮発したワックス成分が凝固する際の結晶化速度が遅くなり、凝固物の粒径が大きくなり易く好ましい。
本発明のトナーに用いるエステルワックスは次式(1)または(2)で表わされる2官能エステルワックスであることが重要である。
式(1):R1−CO−O−(CH2)x−O−OC−R2
式(2):R3−O−OC−(CH2)x−CO−O−R4
(R1乃至R4はアルキル基であり、xは8乃至10の整数である。)
上記構造を有するエステルワックスであると、これまで述べてきたような効果が十分に得られ、画像両端部濃度薄が発生しない。この理由は不明であるが、モノエステルワックスに対して分子量が大きい事、そして、分子が伸びた長細い分子形状を有しており、排除体積が大きい為に結晶化速度が遅くなっているからであると推察している。
これに対し、モノエステルでは上記理由により凝固物の結晶が小さい為に好ましくない。また、3官能等のエステルワックス(例えば、グリセリンに直鎖脂肪酸を付加させたワックス)は、分子が球形に近い形状を有している。このため、排除体積が小さい為に式(1)または式(2)のエステルワックスに比べ結晶化速度が速くなってしまい、凝固物の粒径が小さくなってしまい好ましくない。
本発明のトナーに用いることが出来るエステルワックスは、式(1)または(2)で表わされる2官能エステルワックスであり、xは8乃至10の整数である。
これまで述べてきたように、本発明ではワックスが揮発し、ワックスの融点降下を引き起こし、さらには凝固過程での結晶化速度の制御が非常に重要である。この観点で本発明者らが鋭意検討した結果、xは8乃至10の整数であることが重要であった。xが8乃至10であると、融点降下が生じ、凝固の際の結晶化速度も抑制されるので必須である。
これに対しxが7以下の整数の場合、融点降下が生じ難くなることに加え、凝固物の粒径が小さくなってしまう。これは、中心骨格の炭素鎖長が短いものほど結晶化し易く、さらに、炭化水素ワックスと相溶し易いためである。また、xが11以上の整数の場合も融点降下が生じない。これは、中心骨格の炭素鎖長が長いことにより、炭化水素ワックスとのなじみが悪くなるためである。同様に、テレフタル酸等の芳香族化合物を分子内に有するエステルワックスも炭化水素ワックスと層分離してしまうので好ましくない。
具体的には、ジカルボン酸としてデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられ、ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが挙げられる。なお、ここでは直鎖脂肪酸、直鎖アルコールを例示したが、分岐構造を有していても構わない。
本発明に用いることが出来るエステルワックスは、式(1)または(2)で表わされる2官能エステルワックスのR1乃至R4は炭素数13乃至26のアルキル基であることが好ましい。
R1からR4の炭素数が13以上26以下であると、炭化水素ワックスとの組み合わせにおいて融点降下を生じやすく、さらには、ワックスの融点も比較的高めであるために保存性等に影響を及ぼし難いので好ましい。具体的には、脂肪酸としてミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸等が挙げられる。脂肪族アルコールとしてテトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール等が挙げられる。
本発明のトナーは、高画質化を達成すべくより微小な潜像ドットを忠実に現像するために、トナーの重量平均粒径(D4)は3μm以上12μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以上9μm以下である。重量平均粒径(D4)が3μm未満の場合、粉体としての流動性及び撹拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に帯電させることが困難となる。一方、重量平均粒径(D4)が12μmよりも大きいとカブリ抑制は良化する反面、ドット再現性が低下するので好ましくない。
本発明のトナーは平均円形度が0.950以上であることが好ましい。トナーの平均円形度が0.950以上ではトナーの形状は球形又はこれに近い形になり、流動性に優れ均一な摩擦帯電性を得られやすく、好ましい。
本発明のトナーは、トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布において、分子量8000から30000の範囲にメインピークのピークットップを有することが好ましい。ピークトップが8000未満であると、トナーの保存安定性に問題が生じたり、長期使用においてトナーの劣化が著しくなったりする。一方、ピークトップが30000を超える場合には、低温定着性が悪化する。
本発明のトナーは樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)不溶分を有し、樹脂成分に対しテトラヒドロフラン不溶分は5.0質量%以上65.0質量%以下であることが好ましい。トナー中にテトラヒドロフラン不溶分が存在することによりトナーの強度が増し、長期使用においてトナー劣化が生じ難く、長期使用においても高精彩な画像を得ることができる。
また、定着時にトナーは定着器から受けた熱により溶融するが、テトラヒドロフラン不溶分を5.0質量%以上65.0質量%以下有することで溶融時でも適度な粘弾性を有することが可能となる。このため、定着時においても定着部材(例えばフィルム)へのトナー付着が生じにくくなり好ましい。
トナーの樹脂成分のTHF不溶分は、用いる開始剤、架橋剤の種類、量等の組み合わせにより、任意に変えることが可能である。また、連鎖移動剤等を使用しても調整可能である。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は40℃以上70℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満では保存安定性が低下すると共に、長期使用においてトナー劣化しやすく、70℃よりも高いと定着性が悪化する。よって、定着性と保存安定性、そして現像性のバランスを考えるとトナーのガラス転移温度は40℃以上70℃以下であることが好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。この中でも特にスチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
本発明のトナーには、帯電特性向上のために必要に応じて荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、帯電スピードが速く、且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が特に好ましい。更に、トナーを後述するような重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。荷電制御剤のうち、ネガ系荷電制御剤として具体的な化合物として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合によりトナーの製造を行う場合には、造粒前に重合性単量体組成物中に荷電制御剤を添加する方法が一般的である。また、水中で油液滴を形成し重合を行っている最中、又は重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加えることによりシード重合を行い、トナー表面を均一に覆うことも可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を添加し、シェアをかけ混合・撹拌することにより導入することも可能である。
これらの荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるものであり一義的に限定されるものではない。しかし、トナー粒子に内部添加する場合、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下の範囲で用いられる。また、トナー粒子に外部添加する場合、トナー100質量部に対し好ましくは0.005質量部以上1.0質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上0.3質量部以下である。
本発明のトナーは目的の色味に合わせた着色剤を含有する。本発明のトナーに用いられる着色剤としては公知の有機顔料又は染料、カーボンブラック、磁性粉体等のいずれも用いることができる。
具体的には、シアン系着色剤として、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1,C.I.ピグメントブルー7,C.I.ピグメントブルー15,C.I.ピグメントブルー15:1,C.I.ピグメントブルー15:2,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:4,C.I.ピグメントブルー60,C.I.ピグメントブルー62,C.I.ピグメントブルー66等が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2,C.I.ピグメントレッド3,C.I.ピグメントレッド5,C.I.ピグメントレッド6,C.I.ピグメントレッド7,C.I.ピグメントバイオレット19,C.I.ピグメントレッド23,C.I.ピグメントレッド48:2,C.I.ピグメントレッド48:3,C.I.ピグメントレッド48:4,C.I.ピグメントレッド57:1,C.I.ピグメントレッド81:1,C.I.ピグメントレッド122,C.I.ピグメントレッド144,C.I.ピグメントレッド146,C.I.ピグメントレッド166,C.I.ピグメントレッド169,C.I.ピグメントレッド177,C.I.ピグメントレッド184,C.I.ピグメントレッド185,C.I.ピグメントレッド202,C.I.ピグメントレッド206,C.I.ピグメントレッド220,C.I.ピグメントレッド221,C.I.ピルメントレッド254等が挙げられる。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アントラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12,C.I.ピグメントイエロー13,C.I.ピグメントイエロー14,C.I.ピグメントイエロー15,C.I.ピグメントイエロー17,C.I.ピグメントイエロー62,C.I.ピグメントイエロー74,C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー93,C.I.ピグメントイエロー94,C.I.ピグメントイエロー95,C.I.ピグメントイエロー97,C.I.ピグメントイエロー109,C.I.ピグメントイエロー110,C.I.ピグメントイエロー111,C.I.ピグメントイエロー120,C.I.ピグメントイエロー127,C.I.ピグメントイエロー128,C.I.ピグメントイエロー129,C.I.ピグメントイエロー147,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154,C.I.ピグメントイエロー168,C.I.ピグメントイエロー174,C.I.ピグメントイエロー175,C.I.ピグメントイエロー176,C.I.ピグメントイエロー180,C.I.ピグメントイエロー181,C.I.ピグメントイエロー191,C.I.ピグメントイエロー194等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独で又は2種以上を混合し、更には固溶体の状態でも用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角,彩度,明度,耐光性,OHP透明性,トナーへの分散性の点から適宜選択される。また、着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下が好ましい。
また、黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性粉体、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用いて黒色に調色されたものが利用される。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いた場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下用いることが好ましい。
また、本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合、着色剤として磁性粉体を用いることも可能である。黒色着色剤として磁性粉体を用いた場合、磁性粉体は結着樹脂100質量部に対して20質量部以上150質量部以下を用いることが好ましい。磁性粉体の添加量が20質量部未満であると定着性は良好になるもののトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、150質量部を超えると、定着性が悪化すると共にトナー担持体の磁力による保持力が強まって現像性が低下してしまうことがあり、好ましくない。
なお、トナー中の磁性粉体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性粉体量とする。
本発明において重合法を用いてトナーを製造する場合、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。そこで、着色剤は、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施しておいたほうが良い。特に、染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有するものが多いので使用の際に注意を要する。カーボンブラックについては、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサン等で処理を行っても良い。
本発明のトナーに磁性粉体を用いる場合、磁性粉体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2m2/g以上30m2/g以下であることが好ましく、3m2/g以上28m2/g以下であることがより好ましい。また、モース硬度が5から7のものが好ましい。磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性粉体は、体積平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。一般に磁性粉体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性粉体が凝集しやすくなり、トナー中での磁性粉体の均一分散性が劣るものとなり好ましくない。また、体積平均粒径が0.10μm未満では磁性粉体自身が赤味を帯びた黒となるために、特にハーフトーン画像において赤味の目立つ画像となり、高品位な画像とは言えず好ましくない。一方、体積平均粒径が0.40μmを超えるとトナーの着色力が不足すると共に、本発明の好適なトナーの製造方法である懸濁重合法(後述)においては均一分散が難しくなり好ましくない。
なお、磁性粉体の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定する。そして、磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径を基に、体積平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明のトナーに用いられる磁性粉体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5から10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性粉体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性粉体を得ることができる。
また、本発明において重合法にてトナーを製造する場合、磁性粉体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。具体的には、再分散液を十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、或いは、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することでカップリング処理を行う。この中でも、均一な表面処理を行うという観点から、酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリー化し、表面処理を行うことが好ましい。
磁性粉体の表面処理を湿式で、すなわち水系媒体中において磁性粉体をカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性粉体を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根等で撹拌する。次いで上記分散液に任意量のカップリグ剤を投入し、カップリング剤を加水分解しながら表面処理するが、この時も撹拌を行いつつピンミル、ラインミルなどの装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ表面処理を行うことがより好ましい。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1質量%以上5.0質量%以下添加することが好ましい。pH調整剤としては、塩酸等の無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
本発明における磁性粉体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
この中で、高い疎水性を磁性粉体に付与するという観点では、下記一般式(II)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3 (II)
[式中、pは2から20の整数を示し、qは1から3の整数を示す。]
上記式におけるpが2より小さいと、磁性粉体に疎水性を十分に付与することが困難であり、またpが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性粉体同士の合一が多くなり好ましくない。更に、qが3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなるため、式中のpが2から20の整数(より好ましくは、3から15の整数)を示し、qが1から3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが好ましい。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性粉体100質量部に対して0.9質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、磁性粉体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明では、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
本発明のトナーはコアシェル構造を有し、コア層はスチレンアクリル樹脂を含有してなり、シェル層は非晶質ポリエステル樹脂を含有してなることが好ましい。本発明において、コアシェル構造を有するとは、シェル層がコア層の表面を被覆している構造をいう。ここで、「被覆」とは、コア層の表面をシェル層でかぶせ包むことを意味する。
トナーをコアシェル構造とし、コア層がスチレンアクリル樹脂を含有してなり、シェル層に非晶質ポリエステル樹脂を用いる事でトナーの帯電の立ち上がりが良好になると共に、耐久性が向上し好ましい。
一般的に、トナーが含有する着色剤や離型剤はトナーの帯電性を妨げる傾向にある。このため、シェル層を設ける事によりこれらの露出が防がれ、帯電の立ち上がりが良好となる。さらに、コア層にスチレンアクリル樹脂、シェル層に非晶質のポリエステル樹脂を用いると、スチレンアクリル樹脂とポリエステル樹脂が相分離し易く、シェル層が均一にコア層を覆い易くなる。このため、上記の効果が顕著となり好ましい。
さらに、コアシェル構造を有することでワックスはコア部に存在するようになり、ワックスを多量に含有させても定着時にワックスが染み出す前にスチレンアクリル樹脂を可塑させることが可能となる。この結果、ワックスの樹脂への染み込み量(相溶量)が増大し、ワックス成分の揮発量が減少するので非常に好ましい。
本発明において、前記非晶質ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸とを重縮合することにより得られた非晶質のポリエステル樹脂であれば特に限定されない。しかし、後述の理由より、前記非晶質ポリエステル樹脂が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上含有したアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合することにより得られたものであり、プロピレンオキサイド付加物の平均付加モル数が1.8以上2.3以下であることがより好ましい。
上述のようにシェル層が均一にコアを覆うことにより、ワックス成分の揮発量が低減できる、このため、シェル層で均一にコアを覆うことが好ましい。
そこで本発明者らが鋭意検討したところ、非晶質ポリエステル樹脂のアルコール成分を上述のようにすることでシェル層である非晶質ポリエステル樹脂が、少量であってもコア層をより均一に被覆することが可能となった。
この理由についてであるが、上記非晶質ポリエステル樹脂はポリエステルの構造としては比較的シンプルなものであると言える。そのため、複雑な構造の他のポリエステルに比して組成が均一になり易く、少量で均一にコア層を覆うことが可能になったと考えている。
また、このような非晶質ポリエステル樹脂はガラス転移温度(Tg)が高くなるため、トナーの耐久劣化を抑制し易く好ましい。さらに、シェル層のガラス転移温度が高くなることで、定着時の表層樹脂の溶融粘度が相対的に高くなり、ワックス成分の揮発量を抑制出来るために非常に好ましい。
本発明において、上記非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は75℃以上90℃以下であることが好ましい。非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が75℃以上であると、トナー劣化を抑制できるために耐久性が向上する。これにより耐久後であっても高い現像効率を維持でき、十分な画像濃度を得ることが出来る。
本発明のトナーに使用される非晶質ポリエステル樹脂は、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用される非晶質ポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、下記式(1−1)で表されるビスフェノール誘導体、下記式(1−1)の水添物、下記式(1−2)で示されるジオール類が挙げられる。
[式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2から10である。]
上述のように本発明における非晶質ポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上(より好ましくは90モル%以上)含有したアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合することにより得られた非晶質ポリエステル樹脂であり、該プロピレンオキサイド付加物の平均付加モル数が1.8以上2.3以下であることが好ましい。
一方、非晶質ポリエステル樹脂を構成する2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。さらには、炭素数6から18のアルキル基またはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
本発明に用いられる非晶質ポリエステル樹脂において、全成分中45モル%から55モル%がアルコール成分であり、55モル%から45モル%が酸成分であることが好ましい。
上記非晶質ポリエステル樹脂は、通常用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物など、いずれの触媒を用いても製造することができる。これら触媒の中でも特に、チタン系の触媒を用いて重縮合した非晶質ポリエステル樹脂が好ましい。
チタン系の触媒を用いて重縮合した非晶質ポリエステル樹脂は、均質なポリエステル樹脂になりやすいため、トナー粒子間でのばらつきも少なくなる。このため、特に本発明のトナーの好ましい製造方法である懸濁重合法においては、トナー粒子のシェル層を均一に構成することが可能となるため非常に好ましい。
本発明において、結着樹脂100質量部に対する上記非晶質ポリエステル樹脂の含有量は1質量部以上10質量部以下である事が好ましく、より好ましくは2質量部以上8質量部以下である。
該非晶質ポリエステル樹脂によりシェル層を形成させる具体的手法としては、コア粒子にシェル用の微粒子を埋め込むことでも可能である。
また、本発明に好適な製造方法である水系媒体中でトナーを製造する場合は、コア粒子にシェル用の超微粒子を付着させ、乾燥させることによりシェル層を形成させることが可能である。さらには、溶解懸濁法、懸濁重合法においてはシェル用の非晶質ポリエステル樹脂の酸価、及び親水性を利用し、水との界面、即ち、トナー表面近傍に非晶質ポリエステル樹脂を偏在せしめ、シェル層を形成することが可能である。
本発明のトナーにおいて、コア層を構成するスチレンアクリル樹脂は、スチレンと(メタ)アクリル酸又はその誘導体を共重合することにより得られる樹脂であり、スチレンアクリル樹脂と称される公知のものを意味する。
上記スチレンアクリル樹脂を形成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンの如きスチレン系重合性単量体が挙げられる。
アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体が挙げられる。
メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレンアクリル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。結着樹脂全量に対するスチレンアクリル樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
また、結着樹脂は、上記非晶質ポリエステル樹脂及び上記スチレンアクリル樹脂以外に、本発明の効果に影響を与えない程度に、トナーの結着樹脂に用いられる公知の樹脂を含むことができる。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能であるが、分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法等、水系媒体中でトナーを製造することが好ましく、特に懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしやすく非常に好ましい。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.950以上という本発明に好適な物性要件を満たすトナーが得られやすい。更にこういったトナーは帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5から30時間であるものが好ましい。また、重合性単量体に対して0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5,000から50,000の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
具体的な重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明のトナーを重合法により製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量%以上15質量%以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明のトナーを製造する場合には、分散剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下を使用することが望ましい。また、上記分散剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は50℃以上90℃以下温度に設定される。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき低融点物質が相分離により析出して内包化がより完全となる。重合反応終了後、WAXの相溶状態を制御するためにワックスの融点以上の温度に加熱し、その後の冷却過程において冷却速度を例えば0.3℃/min以上3℃/min以下とする事が好ましい。
その後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
本発明においてトナーは、流動化剤として一次粒子の個数平均粒径が4から80nm、より好ましくは6から40nmの無機微粉体がトナー粒子に添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
無機微粉体の一次粒子の個数平均粒径が80nmよりも大きい場合、又は80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く好ましくない。一方、無機微粉体の一次粒子の個数平均粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易くなってしまう。このため、凝集体が現像されてしまったり、凝集体により像担持体又はトナー担持体等を傷つけたりすることにより画像欠陥を生じ易くなり好ましくない。
本発明において、無機微粉体の一次粒子の個数平均粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。シリカ微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。しかし、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
一次粒子の個数平均粒径が4から80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1から3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%超では定着性が悪くなる。無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において無機微粉体は疎水化処理されたものであることが、トナーの環境安定性を向上させることができるため好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。無機微粉体の疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記処理剤の中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時に又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものがより好ましい。このような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行いシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合する方法や、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。或いは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散させた後、無機微粉体を加えて混合し、溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧する方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1質量部以上40質量部以下、好ましくは3質量部以上35質量部以下が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる傾向がある。
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20m2/g以上350m2/g以下のものが好ましく、25m2/g以上300m2/g以下のものがより好ましい。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出される。
本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、一次粒子の個数平均粒径が30nmを超える、より好ましくは一次粒子の個数平均粒径が50nm以上の無機又は有機の球状に近い微粒子を、更にトナー粒子に添加することも好ましい形態のひとつである。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
本発明のトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤;または逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤の表面を疎水化処理して用いることも可能である。
次に、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
(1)エステルワックス、炭化水素ワックス、トナーの吸熱ピークトップ温度
エステルワックス、炭化水素ワックス、トナーの吸熱ピークトップ温度はDSCにて測定した際の、吸熱ピークのピークトップとする。吸熱ピークのピークトップの測定はASTM D 3417−99に準じて行う。これらの測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
(2)トナーの平均粒径及び粒度分布
本発明のトナーの重量平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA−II型又はコールターマルチサイザー(コールター社製)等を用いた種々の方法で測定可能である。本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、これに個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続する。電解液としては1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いる。このような電解液として、例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定手順は以下の通りである。上記電解液100から150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1から5mlを加え、更に測定試料を2から20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1から3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の個数を測定して個数分布を算出する。それを基に重量平均粒径を求める。
(3)エステルワックスの組成分布、分子量
エステルワックスの組成分布は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて各成分のピーク面積を求め、総ピーク面積に対する比率を求める事で算出する。
具体的にはガスクロマトグラフィー(GC)として、GC−17A(島津製作所製)を用いる。試料10mgをトルエン1mlに加え、80℃の恒温層にて20分加熱・溶解する。次いで、この溶解液1μlをオンカラムインジェクターを備えたGC装置に注入する。カラムは、0.5mm径×10m長のUltra Alloy−1(HT)を用いる。カラムは初め40℃から40℃/minの昇温スピードで200℃迄昇温させ、更に15℃/minで350℃迄昇温させ、次に7℃/minの昇温スピードで450℃迄昇温させる。キャリアガスは、Heガスを50kPaの圧力条件で流す。
化合物の同定は、別途構造が既知のエステルワックスを注入し同一の流出時間同士を比較することや、ガス化成分をマススペクトロメーター(質量分析計)に導入し、スペクトル解析する事により化合物を同定する事が出来る。
また、エステルワックスの分子量は、上記手法により決定した構造より計算により分子量を求める事が出来る。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラー117、現像スリーブ102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。感光ドラム100は一次帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、本発明のトナーはトナーであっても非トナーであってもよく、一成分現像方式又は二成分現像現像方式のいずれに用いられるトナーであってもよい。更には、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部を示す。
<エステルワックス1の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)200モル部、ドデカン二酸100モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物D−22を得た。
同様に、ドコサノールをエイコサノールに変更し、エステル化合物D−20を得た。
さらに、ドコサノールをオクタデカノールに変更し、エステル化合物D−18を得た。
これらD−18、D−20、D−22を表1に記載の割合で溶融混合し、冷却した後に解砕し、エステルワックス1を得た。表1にガスクロマトグラフィー(GC)で測定した組成割合も合せて示す。
<エステルワックス2から16、19から21、24、25の製造>
エステルワックス1の製造において、ドコサノール、ドデカン二酸を表2に示す化合物に変更したこと以外は、エステルワックス1の製造と同様にエステルワックス2から16、19から21、24、25を製造した。各エステルワックスの物性を表2に示す。
<エステルワックス17の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)200モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)200モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステルワックス17(ベヘン酸ベヘニル)を得た。得られたエステルワックス17の物性を表2に示す。
<エステルワックス18の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)200モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)200モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステルワックス17を得た。
同様に、ドコサノールをエイコサノールに変更し、ドコサン酸をイコサン酸(アラキジン酸)に変更し、エステル化合物C−20を得た。
さらに、ドコサノールをオクタデカノールに変更し、コドサン酸をオクタデカン酸(ステアリン酸)に変更し、エステル化合物C−18を得た。
これらエステルワックス17、C−20、C−22を表3に記載の割合で溶融混合し、冷却した後に解砕し、エステルワックス18を得た。表2にガスクロマトグラフィー(GC)で測定した組成割合も合せて示す。
<エステルワックス22の製造>
エステルワックス1の製造において、ドデカン2酸をテレフタル酸に変更したこと以外はエステルワックス1の製造と同様にしてエステルワックス22を製造した。エステルワックス22の組成を表3に、物性を表2に示す。
<エステルワックス23の製造>
エステルワックス1の製造において、ドコサノール200モル部をグリセリン100モル部、ドデカン二酸100モル部、をドコサン酸300モル部に変更したこと以外はエステルワックス1の製造と同様にしてエステルワックス23を製造した。エステルワックス23の組成を表3に、物性を表2に示す。
本発明に用いた炭化水素ワックスの物性を表4に示す。
<非晶質ポリエステル樹脂の製造1>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表5に示す、無水トリメリット酸以外のモノマー成分を、表5に示すモル比で入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。この際、触媒としては、チタン系触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))を、酸及びアルコールのモノマー総量100部に対して、0.25部添加した。
次いで20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が0.5(mgKOH/g)以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸を表5に示すモル比で添加し、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕して非晶質ポリエステル樹脂1を得た。得られた非晶質ポリエステル樹脂1の物性を表5に示す。
<非晶質ポリエステル樹脂の製造例2から7>
表5に示すようなモノマー成分及び配合に変更したこと以外は、非晶質ポリエステル樹脂の製造例1と同様にして、非晶質ポリエステル樹脂2から7を得た。得られた非晶質ポリエステル樹脂2から7の組成及び物性を表5に示す。
なお、表中の数字はモル比を示す。
<磁性粉体の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.12質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.55質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを7.5とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.1当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整する。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランを磁性酸化鉄100部に対し1.5部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行うと共にスラリーを循環させながらピンミルにて分散を行い、分散液のpHを8.6にして疎水化処理を行った。得られた疎水性磁性粉体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径(D3)が0.21μmの磁性粉体1を得た。
<トナー1の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・ジビニルベンゼン 0.48部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性粉体1 90.0部
・ポリエステル樹脂1 5.0部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス1を10部、炭化水素ワックス1を10部添加混合し、溶解した後に重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.5部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で5時間反応させた。その後、懸濁液を100℃まで昇温し、1時間保持した後に1.5℃/minの速度で40℃まで降温し、反応を終了した。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥してトナー粒子1を得た。
このトナー粒子1を100部と、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ0.8部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径(D4)が7.8μmのトナー1を得た。トナー1の物性を表6に示す。
<トナー2から48の製造>
トナー1の製造において、表6に示すようなエステルワックス、炭化水素ワックス、ポリエステル樹脂の配合に変更し、さらに、100℃で1時間保持した後の降温速度も表6に示す速度に変更したこと以外は、トナー1の製造と同様にしてトナー2から48を得た。トナー2から48の組成、物性を表6に示す。
<実施例1>
(画像形成装置)
画像形成装置としてLaser Jet P1006(HP製)を用い、トナー1を使用し、常温常湿環境下(23℃/60%RH)にて印字率が4%の横線を連続モードで2000枚画出し試験を行った。なお、画出し耐久中は厚紙モードにて画出し試験を行った。厚紙モードは定着器の温度を高く設定しているモードであり、ワックス成分の揮発には厳しい評価モードである。
画出し試験終了後、画像両端の濃度低下が生じていないかを確認するため、画像中央部の反射濃度が0.6となるようハーフトーン画像を出し、画像中央部と端部の濃度差を確認した(1回目)。さらに、新たなカートリッジに交換し、同様の画出し試験を行い、最後に画像中央部と端部の濃度差を確認した(2回目)。
なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。その結果、耐久試験前後画像両端部の濃度低下は生じておらず、高濃度の画像を得ることができた。評価結果を表7に示す。
また、定着試験を以下の条件で行った。
メディアとしてはExtra80g紙を用い、ハーフトーン画像の画像濃度が0.60乃至0.65となるように現像バイアスを設定した。次いで、定着器を室温まで冷却し、定着器のヒーター温度を設定し(以後、定着温度と呼ぶ)、通電したのち8秒後に画像を通紙し、定着させた。その後、50g/cm2(0.49N/cm2)の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%となる温度を定着温度とした。その結果、トナー1の定着温度は180℃であった。
本発明の実施例及び比較例で行った各評価の評価方法とその判断基準について以下に述べる。
<画像濃度>
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
<画像両端部濃度>
画像両端部の濃度低下については、画像両末端部の平均濃度と画像中央部の濃度差を以下の基準で評価を行った。
A:濃度差が0.05未満であり非常に良好
B:濃度差が0.05以上0.10未満であり良好
C:濃度差が0.10以上0.15未満であり、実用上問題の無いレベル
D:濃度差が0.15以上であり、好ましくないレベル
<保存性>
保存性はトナー10gをポリカップに入れ、50℃にて5日間保温した後、以下の基準で評価を行った。
A:トナーの凝集は生じておらず、非常に良好なレベル
B:若干トナーの凝集は生じているが、良好なレベル
C:トナーの凝集は生じているが、実養生問題のないレベル
D:トナーの凝集が生じており、実用に適さないレベル
<実施例2から26>
実施例1にて、トナー1をトナー2から26に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーにおいても耐久試験前後で画像濃度が高く、画像両末端の濃度低下、定着性、保存性は問題ないレベルであった。評価結果を表7に示す。
<比較例1から22>
実施例1にて、トナーをトナー27から48に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーにおいても耐久試験前後で画像濃度が高かったが、画像両末端の濃度低下、定着性、保存性のいずれかで実用に適さないレベルであった。評価結果を表7に示す。