以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明する。
溶解懸濁法によるトナーとは、結着樹脂、着色剤、必要に応じて離型剤やその他の添加剤を有機溶媒に溶解又は分散させて得られた溶解物を含む油相を、分散安定剤の存在する水系媒体中に分散して、油滴を形成した後に該有機溶媒を除去することにより得られる粒子を有するトナーのことである。この方法では、結着樹脂として用いることのできる樹脂に汎用性が広く、特に定着性に優れたポリエステル樹脂を用いることができる点が優れている。
本発明は前記溶解懸濁法によるトナーの製造工程において、油滴を形成し、有機溶媒を除去した分散液中に含まれる粒子を芯粒子とする。
本発明者らは、前記芯粒子表面に存在する分散安定剤に着目し、該分散安定剤に対する極性が該芯粒子と同じ極性の樹脂微粒子を添加することで、分散安定剤との電気的相互作用により該樹脂微粒子を該芯粒子表面に分散安定剤を介して均一に付着させた。さらに、前記芯粒子表面に付着している樹脂微粒子を脱離させることなく前記分散安定剤を除去する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明において前記樹脂微粒子は前記結着樹脂よりも高いTgを有することが必要である。すなわち、前記樹脂微粒子が均一に付着した芯粒子の分散液を、該結着樹脂のTg以上、該樹脂微粒子のTg以下の温度範囲に保持しながら前記分散安定剤を除去することで、該芯粒子の分散状態は維持されたままその表面に樹脂微粒子が固定化する。
上記の手法により前記芯粒子の表面に均一で強固な樹脂微粒子層を形成させることができ、これにより該芯粒子の低温定着性を維持したまま、トナーとしての耐ブロッキング性を大幅に改善することが可能になった。
以下、本発明によるトナーの製造方法の一形態を工程に従って詳細に説明する。
本発明における造粒工程は、芯粒子を得る工程である。
具体的には、まず、芯粒子の主構成材料となる結着樹脂を、該結着樹脂を溶解可能な有機溶媒に溶解させ、少なくとも着色剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた混合物を調製する。
この場合、該有機溶媒中に該結着樹脂成分として該結着樹脂の粘度、溶解度により異なるが、40質量%から60質量%の範囲で配合することが好ましい。該結着樹脂の溶解時に該有機溶媒の沸点以下で加熱すると、該結着樹脂の該有機溶媒に対する溶解度が上がるため好ましい。
このとき、前記混合物中には、必要に応じて、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、さらに分散剤の如き添加剤を適宜加えることができる。
結着樹脂等を溶解させる有機溶媒として使用出来る溶剤としては、酢酸エチル、キシレン、ヘキサンの如き炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタンの如きハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルの如きエステル系溶剤、ジエチルエーテルの如きエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサンの如きケトン系溶剤が挙げられる。
次いで、上記混合物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて懸濁させ、溶解樹脂液滴の形成を行う。
回転羽根を有する撹拌装置としては、特に制約はなく、乳化機、分散機として汎用のものであれば使用可能である。
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)の如きバッチ式、若しくは連続両用乳化機が挙げられる。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定されないが、通常1000乃至30000rpm、好ましくは3000乃至20000rpmである。
分散時間としてはバッチ方式の場合は、通常0.1乃至5分である。分散時の温度としては、通常、10乃至150℃(加圧下)、好ましくは10乃至100℃である。
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することも出来る。混和可能な溶剤としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールの如きアルコール類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブの如きセルソルブ類、アセトン、メチルエチルケトンの如き低級ケトン類が挙げられる。また、本発明に用いる水系媒体中に、前記混合物として用いる有機溶媒を適量混ぜておくことも好ましい製造方法である。これは造粒中の液滴安定性を高めまた水系媒体と前記混合物とをより懸濁しやすくする効果があると考えられる。
このようにして得られた溶解樹脂液滴から該有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、該溶解樹脂液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。上記のようにして該溶解樹脂液滴から該有機溶媒を除去し芯粒子の水分散液を形成する。
本発明では分散安定剤の除去は行わず、水系媒体に分散させた状態で続く付着工程に使用する。
本発明における付着工程は、上記分散液中の芯粒子に樹脂微粒子を付着させる工程である。
この工程では前記分散液を撹拌しながら、該分散安定剤に対する極性が芯粒子と同じであり、かつ前記結着樹脂よりも高いTgを有する樹脂微粒子を水系媒体に分散させた状態で添加する。このようにして表面に該分散安定剤を吸着した状態の該芯粒子に、該樹脂微粒子を緻密かつ均一に付着させることが可能となる。
付着工程において、前記樹脂微粒子の単独凝集を防止し、より均一に付着させるため、該樹脂微粒子の水系分散体の添加はゆっくり行うことが好ましい。好適な添加速度は芯粒子の分散液の固形分100質量部に対し、樹脂微粒子固形分として0.1質量部/分乃至2.0質量部/分である。
さらに本発明における固着工程は、上記芯粒子の表面に分散安定剤を介して付着させた樹脂微粒子を固着させる工程である。本発明において固着とは、樹脂微粒子が容易に剥離、脱落を起こさない強度で芯粒子表面に固定化される状態をいう。
この工程ではまず上記分散液を、前記結着樹脂のTg以上、前記樹脂微粒子のTg以下の温度になるまで加熱する。このとき、該芯粒子は軟らかい状態にあるが、該樹脂微粒子が立体安定性を発現するために十分必要な硬さを維持しているため、分散状態を保つことができると考えられる。
次いで、このような状態を保持しつつ芯粒子と樹脂微粒子の間に存在する分散安定剤の除去を行うと、除去が完了するまでの間に該芯粒子表面に付着していた該樹脂微粒子は、その一部分が芯粒子表面に埋め込まれ、残りの部分が芯粒子表面に出ている状態になると考えられる。
すなわち、該樹脂微粒子は剥がれ落ちにくい状態で安定して芯粒子に固定化される。このようにして、従来よりも緻密で均一かつ強固な樹脂微粒子層を形成させることが可能になると本発明者らは考えている。
固着工程において、上記分散安定剤の除去は分散液のpHを制御することによって行うことが好ましい。
pH調整による分散安定剤の除去は極めて簡便な手法であり、例えば、水不溶性あるいは難水溶性無機化合物のコロイドを分散安定剤に用いた場合には、該分散安定剤が芯粒子と樹脂微粒子の間に存在する場合であっても、分散液のpH領域を酸性側に調整することで容易に溶解、除去することができる。pHの調整は通常、塩酸、硫酸を添加することで行うことができる。
このとき、芯粒子に付着した樹脂微粒子の状態を均一に保つため、酸の添加はゆっくり行うことが好ましい。好適な添加速度は、芯粒子の分散液の固形分100質量部に対し、0.05質量部/分乃至2.00質量部/分である。また添加する酸は、濃度0.1モル/リットル乃至0.5モル/リットルの水溶液として使用することが好適である。
この工程の後、公知の方法によって濾過し、洗浄及び乾燥することによってトナー粒子を得ることができる。
上記固着工程において、芯粒子の分散液を前記結着樹脂のTg以上、前記樹脂微粒子のTg以下にするだけでpHの制御を行わない場合には、樹脂微粒子と芯粒子の間に分散安定剤が存在しているため、該樹脂微粒子と該芯粒子の密着性が低く十分な強度が得られない。
また固着工程において、pH制御を行った後に分散液の温度を前記結着樹脂のTg以上、前記樹脂微粒子のTg以下にしたのでは、pH制御が完了した段階で既に分散安定剤が溶出してしまっているため、該樹脂微粒子は該芯粒子上に安定して存在することができない。したがって、予め分散安定剤を除去した芯粒子に樹脂微粒子を固着させる従来の方法と何ら変わりがない。
以上の通り、本発明は造粒工程で使用した分散安定剤を利用して樹脂微粒子を均一に付着させること、および分散安定剤の除去と樹脂微粒子の固着を同時に行うことによって成し得たものであり、上述したような従来の方法では、本発明の目的を達成することは到底不可能であった。
さらに本発明は、前記固着工程の後分散安定剤を再析出させることにより、樹脂微粒子が固着した粒子の表面は該分散安定剤により被覆され、該樹脂微粒子のTg以上に加熱処理しても粒子同士の凝集を抑制することができる。
前記樹脂微粒子のTg以上に加熱するため、該樹脂微粒子による層は平滑化され、より均質かつ緻密な層となる。この平滑化工程を経ることにより、さらに耐ブロッキング性が向上する。
また、平滑化工程では樹脂微粒子が固着した粒子の熱球形化が起こり、現像性の向上という別の効果が得られる。
平滑化工程において、前記分散安定剤を再析出させる際に、同じ分散安定剤を別途追加して添加してもよい。また少量の界面活性剤を添加することもできる。
上記平滑化工程の後は、上述したような酸により分散安定剤を除去し、公知の方法によってろ過し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得る。
本発明において、前記樹脂微粒子は、前記芯粒子の表面を90%以上被覆していることが好ましい。90%以下の被覆では、芯粒子の表面が露出し、耐ブロッキング性が損なわれる。
被覆率のより好ましい範囲は100%乃至150%の範囲である。本発明では被覆率が100%を超えることは樹脂微粒子層が多層になっていることを示す。
すなわち、前記樹脂微粒子は前記芯粒子を一層以上覆っていることがより好ましい。ただ、被覆率が150%を超えると、十分な固着強度が得られなくなるため好ましくない。
尚、被覆率は、個々のトナー断面の透過電子顕微鏡(TEM)による観察像から直接的に求めることもできるが、樹脂微粒子が該樹脂に固有の元素を含有する場合には(例えばスルホン酸基に由来するS)、蛍光X線分析装置(XRF)を用いてトナー中に含まれる該元素の定量分析を行い、計算によって求めることができる。
また本発明において、前記樹脂微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱法による粒度分布測定によって求められるメジアン径の値で、10乃至100nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは30乃至70nmの範囲で用いられる。平均粒子径が10nm未満であると、固着工程において微粒子が芯粒子に埋め込まれてしまう可能性があるため、制御が困難である。また平均粒子径が100nmを超える場合、十分な固着強度が得られにくくなる場合がある。したがって、いずれの場合も十分な耐ブロッキング性を有するトナーを得にくくなる。
尚、メジアン径とは、粒度分布の累積曲線の50%値(中央累積値)として定義される粒子径であり、例えば、堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−920)を用いて測定することができる。
本発明において、前記樹脂微粒子の好適な固着量は一義的に決まるものではなく、所望する被覆率および前記芯粒子と前記樹脂微粒子それぞれの粒子径に応じて適宜調整すればよい。本発明において固着量とは芯粒子表面に固着している量をいう。上述した被覆率および平均粒径の範囲にあっては、1.0乃至10.0質量%の範囲内であることが好ましい。樹脂微粒子の添加量が1.0%未満であると、付着工程において緻密な被覆が困難である場合がある。添加量が10.0%を超える場合は、いったん固着した樹脂微粒子が剥がれ落ちやすくなり、またトナーの定着性が低下する場合がある。
本発明において使用する樹脂微粒子は、酸性基を有する自己水分散性の樹脂微粒子からなることが好ましい。
自己水分散性の樹脂微粒子は、別途界面活性剤を添加する必要がなく、またpH調整で樹脂微粒子の分散能力を調整できるため、付着工程で遊離した樹脂微粒子が存在する場合にも、固着工程で芯粒子に固定化することができる。前記酸性基としては、カルボキシル基やスルホン酸基、リン酸基が挙げられるが、これらの中でもカルボキシル基、スルホン酸基あるいはこれらを併用して用いることが好ましく、少なくともスルホン酸基が含まれていることが、トナーに良好な帯電性を付与できる点で特に好ましい。
さらに前記樹脂微粒子のTgが、55乃至90℃であることが好ましい。Tgが55℃より低いと十分な耐ブロッキング性の改善効果が得にくくなる。一方、Tgが90℃より高いと低温定着性が損なわれるようになる。
さらに前記樹脂微粒子は、酸価が5.0乃至40.0mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、10.0乃至25.0mgKOH/gの範囲で用いられる。
酸価が5.0mgKOH/gよりも少ない場合は、十分な自己水分散性を有する微粒子を得ることができにくい。また、付着工程において、前記樹脂微粒子が芯粒子に付着しにくくなる。酸価が40.0mgKOH/gよりも高い場合は、トナー化したときの吸湿性が増し、帯電の安定性が損なわれることがあるため好ましくない。また該樹脂微粒子同士の電気的反発が大きくなり、付着工程において芯粒子表面に付着せず、水系媒体中に分散のままの樹脂微粒子が増加する傾向がある。
尚、ここでいう酸価とは、前記酸性基の含有量を表すもので、酸性基が塩の状態である場合には、酸の状態に戻したものとして算出した値を示す。樹脂微粒子の酸価は、樹脂1g中に含まれる官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量で表され、以下の方法によって求められる。
基本操作は、JISK−0070に基づく。この方法は、特にカルボン酸基の酸価を求める場合に好適である。
1)先ず、試料0.5乃至2.0gを300mlのビーカーに精秤し、このときの重量をWgとする。試料の官能基が塩の状態である場合には、予め酸の状態に戻したものを使用する。
2)これに、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加えて溶解する。
3)0.1mol/lのKOHエタノール溶液を用いて滴定する。滴定は、例えば、京都電子社製の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)と、ABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定を利用して行うことができる。
4)この時のKOH溶液の消費量をSmlとする。また、同時にブランクを測定して、この時のKOHの消費量をBmlとする。
5)次式により、酸価を計算する。尚、式中のfは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×0.1f×56.1}/W
また、樹脂微粒子中のスルホン酸基の酸価を求めるときは、例えば蛍光X線分析装置(XRF)を用いてS元素の定量分析を行い、樹脂1g中に含まれる官能基当量を水酸化カリウムの量に換算して求めることができる。
上記のような自己水分散性の樹脂微粒子を製造する方法としては、転相乳化法がある。
転相乳化法では、自己水分散性を有する樹脂、あるいは中和によって自己水分散性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、自己水分散性を有する樹脂とは、水系媒体中で自己分散が可能な官能基を分子内に含有する樹脂であって、具体的には酸性基もしくはその塩を含有する樹脂である。また、中和によって自己水分散性を発現し得る樹脂とは、中和によって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となり得る酸性基を、分子内に含有する樹脂である。
これらの樹脂を有機溶剤に溶解し、必要に応じて中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、前記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。前記有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧の如き方法を用いて除去する。
このように、転相乳化法によれば、前記酸性基の作用によって実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂微粒子の水系分散体を得ることができる。
こうして得られた樹脂微粒子は、そのまま水系分散体として芯粒子への付着工程に供することができる。また、前記水系分散体に酸を添加して樹脂中の酸性基を塩の状態から酸の状態に戻し、ろ過および洗浄を行った後、水に再分散させて使用してもよい。
前記樹脂の材質としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであれば良く、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂が用いられるが、中でもポリエステル樹脂は、シャープメルト性を有するため、芯粒子の低温定着性を阻害することが少なく好ましい。
本発明に用いられる分散安定剤としては、界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤を使用することができるが、これらの中でも上述したように水不溶性または難水溶性無機塩のコロイドを用いることが酸に対する溶解性の点で特に好ましい。
また無機塩は熱的安定性が高いため、高温下で溶解樹脂液滴から該有機溶媒を除去する場合でも液滴を安定に保つことができ、また固着工程においても、芯粒子に付着した樹脂微粒子の均一性を維持したまま固定化できるため好ましい。
こうした無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムが挙げられる。
さらに本発明では、平滑化工程において、分散安定剤を再析出して利用するため、pHに対して、可逆的であることが好ましい。
上述した無機分散剤の中でもリン酸三カルシウムは、pH3乃至5の領域で溶解と析出を可逆的に行うことができるため、特に好適に用いることができる。
これら分散安定剤は、結着樹脂100質量部に対して0.01乃至20質量部を使用することが好ましい。
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来電子写真用の結着樹脂として知られる各種の樹脂が用いられる。その中でも(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、及び(f)ポリエステル樹脂、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、ビニル系共重合体との混合物からなるグループから選択される樹脂を主成分とすることが好ましい。
本発明の結着樹脂に用いることができるモノマーとしては、具体的には、以下の化合物を用いることができる。
二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、下記式(I)
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基を示し、x,yはそれぞれ1以上の整数を示し、且つx+yの平均値は2乃至10を示す。)
で示されるビスフェノール誘導体、または下記式(II)
(式中、R’は−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、または−CH
2−C(CH
3)
2−である。)
で示される化合物が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸若しくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、トリメリット酸等が挙げられる。
それらの中でも、特に、前記一般式(II)で代表されるビスフェノール誘導体、及び、炭素数2乃至6のアルキルジオールをジオール成分とし、二価のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、炭素数4乃至10のアルキルジカルボン酸、及びこれらの化合物の酸無水物)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステルが、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
上記ポリエステルの製造方法としては、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付可反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応、エステル交換反応が挙げられる。触媒としては、エステル化反応に使う一般の酸性、アルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物などでよい。その後、再結晶法、蒸留法の如き製法により高純度化させてもよい。
結着樹脂の好ましい製造方法としては、脱水縮合反応、エステル交換反応が挙げられる。
さらに前記結着樹脂のTgが20乃至50℃であることが好ましい。Tgが20℃より低いとトナー画像を定着した複写物またはプリントの保存安定性が損なわれるようになる。Tgが50℃より高いと、固着工程において、芯粒子表面に固着させる樹脂微粒子と芯粒子のTg差が小さくなるため、固着が不十分になり樹脂微粒子の剥離・脱離が起こりやすくなる。
本発明のトナーにおいて使用される着色剤としては、公知のものが使用でき、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体、また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対して40乃至150質量部であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部である。
また、磁性粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄等の酸化鉄を主成分とするものであり、一般に親水性を有しているため、分散媒としての水との相互作用によって磁性粉体が粒子表面に偏在しやすく、得られるトナー粒子は表面に露出した磁性粉体のために流動性および摩擦帯電の均一性に劣るものとなる。したがって、磁性粉体はカップリング剤によって表面を均一に疎水化処理することが好ましい。使用できるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられ、特にシランカップリング剤が好適に用いられる。
本発明のトナーは、定着性向上のために離型剤を内包させることが好ましい。使用可能な離型剤としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス、天然ワックスおよびその誘導体等が挙げられる。誘導体には、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物等が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。これらの離型剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの離型剤の中でも、示差走差熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に40乃至130℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには45乃至120℃の領域に有するものがより好ましい。このような離型剤を用いることにより、低温定着性に大きく寄与しつつ、離型性をも効果的に発現することができる。最大吸熱ピークが40℃未満であると離型剤成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が悪化する。
尚、ここでいう高温オフセットとは、定着時に溶融したトナーが上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象である。
また、定着時以外での離型剤の染み出しが生じやすくなり、トナーの帯電量が低下するとともに、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、最大吸熱ピークが130℃を超えると定着温度が高くなり、低温オフセットが発生しやすくなるため好ましくない。尚、ここでいう低温オフセットとは、定着時に十分溶融していないトナーが上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象である。さらに、最大吸熱ピーク温度が高過ぎると造粒中に離型剤成分が析出する等の不具合を生じ、離型剤の分散性が低下するため好ましくない。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し1乃至30質量部であることが好ましく、3乃至20質量部であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部未満では、十分な添加効果が得られず、オフセット抑制効果も不十分である。一方、30質量部を超えると、長期間の保存性が低下するとともに、着色剤等他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の低下や画像特性の低下を招く。また、定着時以外にも離型剤成分の染み出しが生じるようになり、高温高湿下での耐久性に劣るものとなる。
また、本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10.0質量部、より好ましくは0.1乃至5.0質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100質量部に対して0.005乃至1.000質量部、より好ましくは0.01乃至0.30質量部である。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は、10乃至100μmであることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は、2乃至15質量%であることが好ましい。
ここで、本発明において、結着樹脂及び樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は、例えば、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計(Q1000)を用い、以下のようにして求めることができる。
まず、試料約6mgをアルミパンに精秤し、空のアルミパンをリファレンスパンとして用意し、窒素雰囲気下、測定温度範囲20乃至150℃で、昇温速度2℃/分、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1回/分の条件で測定を行う。
測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、これをガラス転移温度とする。
芯粒子及びトナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、芯粒子またはトナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
本発明によって得られるトナーの平均円形度は、0.970以上であることが好ましい。平均円形度とは、トナー粒子の凹凸度合いを表す指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど小さな値となる。すなわち、平均円形度が0.970以上であるということは、トナー形状が実質的に球形であることを意味している。このような形状を有するトナーは、帯電が均一になりやすく、カブリやスリーブゴーストの抑制に効果的である。また、トナー担持体上に形成されるトナーの穂が均一であるため、現像部での制御が容易となり、現像安定性能が向上する。
さらに、球形であるが故に流動性も良好であり、現像器内でのストレスを受けにくいため、高湿度下での長期の使用においても帯電性が低下しにくい。そして、定着時においても熱や圧力がトナー全体に均一にかかりやすいため、定着性の向上にも寄与する。
なお、本発明における平均円形度は、シスメックス社製のフロー式粒子像分析装置(FPIA−3000型)を用いて測定を行った。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば、ヴェルヴォクリーア社製のVS−150等)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像測定装置を用い、シース液にはシスメックス社製のパーティクルシース(PSE−900A)を使用する。前記手順に従って調整した分散液を前記フロー式粒子像測定装置に導入し、トータルカウントモードで3000個のトナー粒子を計測して、解析粒子径を円相当径3.00μm以上、200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈したもの)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用し、解析粒子径を円相当径3.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
本発明のトナーは、示差走査熱量計(DSC)による最大吸熱ピークを60乃至140℃に有することが好ましい。該吸熱ピークは、トナーに含有される離型剤の融点に由来するが、定着工程におけるトナーの溶融変形は、画像部に存在するトナーが離型剤の融点以上に加熱された時点から著しく促進される。このため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着工程における離型剤の融解挙動の影響を受けやすい。また、定着工程において、オイル塗布機構を有さないか、僅かな量のオイルしか塗布しない定着プロセスを用いる場合において、紙上のトナー量を低減して画像を形成すると、紙上に存在するトナーが少ないため、画像を構成するトナー層に含有される離型剤も少なくなる。このため、同じ画像データに対し、通常のトナーを用いた場合より少ない量で画像を形成しようとした場合、低温オフセット及び高温オフセットが特に発生しやすくなる。前記最大吸熱ピークの温度が60℃未満であると、定着工程において離型剤が溶融する際、結着樹脂に多く溶け込みやすく、トナーの溶融粘度が低下しやすい。また、定着工程において離型剤が溶融した際、該離型剤の一部が結着樹脂に溶け込み、トナーの離型性能が低下しやすい。このため、トナー消費量を低減して使用する場合に、高温オフセットが著しく発生しやすくなる。一方、最大吸熱ピークが140℃を超える場合には、定着工程において離型剤が溶融する際、結着樹脂に溶け込む量が著しく小さく、離型剤による可塑効果が得られにくい。また、最大吸熱ピークが140℃を超えるような離型剤は結晶性が大きいため、紙上のトナー量を小さくした場合、定着画像中に混入する離型剤結晶の影響が大きく、表現できる画像の色域が低下しやすくなる。このため、前記最大吸熱ピークは、60乃至95℃に有することがより好ましく、更には、65℃乃至90℃に有することが好ましい。
上記と同様の理由により、本発明のトナーが有する最大吸熱ピークは、その半値幅が0.5乃至20.0℃にあることが好ましい。加えて、紙上のトナー量を小さくした場合、該半値幅が20.0℃を超えると、通紙方向の前半部と後半部とで画像にグロスむらや濃度むらが発生しやすくなる。該半値幅が0.5℃未満である場合、通紙方向の後半部にオフセットが発生しやすくなる。このため、該半値幅は、1.0乃至15.0℃にあることがより好ましく、2.0乃至10.0℃にあることが特に好ましい。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
[合成例1:樹脂微粒子分散液(a)]
(ポリエステル樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、210℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:49.2質量部
エチレングリコール:8.9質量部
テレフタル酸:21.7質量部
イソフタル酸:14.4質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:5.8質量部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とメチルエチルケトン45.0質量部、テトラヒドロフラン45.0質量部を仕込み、80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、80℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(a)とした。
[合成例2:樹脂微粒子分散液(b)]
(ポリエステル樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:49.9質量部
エチレングリコール:9.0質量部
テレフタル酸:20.5質量部
イソフタル酸:13.7質量部
次いで、無水トリメリット酸7.0質量部を加え、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とブチルセロソルブ75.0質量部を仕込み、90℃に加熱して溶解した後、70℃まで冷却した。
次いで、1モル/リットルのアンモニア水溶液18.0質量部を加え、上記温度を保持しながら30分間撹拌を行った後、70℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた。得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(b)とした。
[合成例3乃至4:樹脂微粒子分散液(c)乃至(d)]
合成例1において、撹拌時間およびイオン交換水の添加条件を適宜変更し、平均粒径の異なる2種類のポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(c)および(d)とした。
[合成例5:樹脂微粒子分散液(e)]
合成例1において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(e)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 : 50.0質量部
エチレングリコール:9.0質量部
テレフタル酸:23.5質量部
イソフタル酸:15.6質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:2.0質量部
[合成例6:樹脂微粒子分散液(f)]
合成例1において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(f)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:46.5質量部
エチレングリコール:8.4質量部
テレフタル酸:15.1質量部
イソフタル酸:10.0質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:20.0質量部
[合成例7:樹脂微粒子分散液(g)]
合成例1において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(g)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:62.4質量部
エチレングリコール:7.5質量部
テレフタル酸:12.4質量部
イソフタル酸:12.3質量部
フマル酸:8.8質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:5.4質量部
[合成例8:樹脂微粒子分散液(h)]
(スチレン/アクリル系樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、イオン交換水350.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、90℃に昇温して、2%過酸化水素水溶液8質量部、および2%アスコルビン酸水溶液8質量部を添加した。
次いで、下記の単量体混合物と乳化剤水溶液および重合開始剤水溶液を、撹拌しながら5時間かけて滴下した。
(単量体)
スチレン:94.0質量部
メタクリル酸:3.3質量部
メチルメタクリレート:2.6質量部
t−ドデシルメルカプタン:0.05質量部
(乳化剤)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.3質量部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:0.01質量部
イオン交換水:20.0質量部
(重合開始剤)
2%過酸化水素水溶液:40.0質量部
2%アスコルビン酸水溶液:40.0質量部
滴下後、上記温度を保持しながら、さらに2時間重合反応を行い、冷却してスチレン/アクリル系樹脂の水分散体を得た。
得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(h)とした。
こうして得られた樹脂微粒子分散液(a)乃至(h)について、各分散液中の微粒子の平均粒径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した。また、各分散液に使用した樹脂の酸価、ガラス転移温度をそれぞれ測定した。樹脂微粒子分散液(h)については、分散液の一部を洗浄して乾燥し、固形分として取り出したものを測定した。尚、スルホン酸基を有する樹脂微粒子分散液(a)および(c)乃至(h)の酸価は、各樹脂中のS元素量を蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定し、計算によって求めたものである。結果を、それぞれ表1にまとめて示した。
〔実施例1〕
(結着樹脂溶液の製造例)
撹拌機、コンデンサー、温度計、冷却管、窒素導入管および撹拌機のついた反応容器中に、下記を投入した。
・1,2−プロパンジオール:847質量部
・テレフタル酸ジメチルエステル:861質量部
・1,6−ヘキサン二酸:212質量部
・テトラブトキシチタネート(縮合触媒):3質量部
170℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら7時間反応させた。ついで240℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら5時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて反応させた後、取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、ポリエステル樹脂1(結着樹脂1)を得た。ポリエステル樹脂1のTgは44℃であった。
次に、撹拌羽つきの密閉性容器に酢酸エチルを50質量部投入し、100rpmで撹拌しているところに、上記ポリエステル樹脂1を50質量部を入れ室温で3日撹拌することで結着樹脂溶液1を調製した。
(離型剤分散液の製造例)
・カルナウバワックス(融点83℃):18質量部
・酢酸エチル:82質量部
上記を撹拌羽根突きの容器内に投入し、系内を70℃に加熱することでカルナウバワックスを酢酸エチルに溶解させた。
ついで、系内を100rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、2時間かけて30℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液1を得た。
(着色剤分散液の製造例)
・結着樹脂1:20質量部
・Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3):20質量部
・酢酸エチル:60質量部
上記材料を容器中で十分プレミクスした後、これを20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて約4時間均一に分散混合し、着色剤分散液1を得た。
<造粒工程>
・油相の調製
ワックス分散液1:50質量部
(カルナウバWAX固形分:18%)
着色剤分散液1:25質量部
(顔料固形分:20%、樹脂固形分:20%)
結着樹脂溶液1:160質量部
(樹脂固形分:50%)
酢酸エチル:15質量部
上記溶液を容器内に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)社製)で2000rpmで5分間撹拌・分散することにより油相を調製した。
・水相の調製
イオン交換水1152.0質量部に0.1モル/リットル−リン酸ナトリウム(Na3PO4)水溶液390.0質量部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、60℃に加温した。その後、1.0モル/リットル−塩化カルシウム(CaCl2)水溶液58.0質量部を添加してさらに撹拌を続け、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)からなる分散安定剤を製造し、さらに酢酸エチル100質量部を投入して水系媒体を調製した。
・乳化および脱溶媒
前記油相を前記水相中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで1分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で150回転/分の回転速度で撹拌しつつ、60℃にてかつ500mgHgに減圧した状態で5時間かけて脱溶媒を行い、芯粒子の分散液を得た。
得られた芯粒子の分散液を冷却し、上澄み液を除き分散液中の芯粒子濃度が20%になるように調整した。これを、芯粒子分散液(A)とした。
なお、上記分散液(A)の一部を取り出し、希塩酸を加えろ過、洗浄、乾燥して、得られた芯粒子の重量平均粒子径(D4)の測定に用いた。
この芯粒子の重量平均粒子径(D4)は6.3μmであった。
<付着工程>
造粒工程を経て得られた芯粒子分散液(A)500.0質量部(固形分:100.0質量部)に、合成例1で得られた樹脂微粒子分散液(a)20.0質量部(固形分:4.0質量部)を1.0質量部/分の滴下速度で添加した。
次いで、200回転/分で30分間撹拌を行った。
上記分散液の一部を取り出し、ろ過、洗浄、乾燥したものを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、表面が樹脂微粒子で均一に覆われていることが確認された。
こうして芯粒子表面に樹脂微粒子が付着した分散液(B)を得た。
<固着工程>
付着工程を経て得られた、樹脂微粒子が付着した分散液(B)を200回転/分で撹拌しながら60℃に加熱した。
続いて前記分散液(B)に0.2モル/リットルの希塩酸を1.0質量部/分の滴下速度で滴下し、前記分散液(B)のpHが1.2になるまで希塩酸の滴下を続けた。さらに2時間撹拌を続け、樹脂微粒子が固着した分散液(C)を得た。
<平滑化工程>
固着工程を経て得られた、樹脂微粒子が固着した分散液(C)を200回転/分で撹拌しながら、前記分散液(C)に1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部/分の滴下速度で滴下し、該分散液(C)のpHを7.1にした。
この状態で30分間撹拌することで一度溶解させたリン酸三カルシウムを樹脂微粒子が固着した芯粒子上に再析出させた。
この分散液を樹脂微粒子のTg以上の温度である70℃に加熱し、さらに1時間撹拌した。
上記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えろ過、洗浄、乾燥してトナー粒子1を得た。
<外添工程>
上記トナー粒子1:100.0質量部にn−C4H9Si(OCH3)3で処理した疎水性酸化チタン(BET比表面積:110m2/g):0.9質量部とヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した疎水性シリカ(BET比表面積が150m2/g):0.7質量部を加えヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を得た。
〔実施例2〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例2で得られた樹脂微粒子分散液(b)20.0質量部(固形分:4.0質量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー2を得た。
〔実施例3〕
実施例1において、平滑化工程を省き、固着工程終了時に、樹脂微粒子が固着した分散液を20℃まで冷却して、ろ過、洗浄、乾燥した以外は実施例1と同様にしてトナー3を得た。
〔実施例4〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a)の添加量を20.0質量部(固形分:4.0質量部)から10.0質量部(固形分:2.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にしてトナー4を得た。
〔実施例5〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a)の添加量を20.0質量部(固形分:4.0質量部)から40.0質量部(固形分:8.0質量部)添加に変えた以外は実施例1と同様にしてトナー5を得た。
〔実施例6〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例3で得られた樹脂微粒子分散液(c):30.0質量部(固形分:6.0質量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー6を得た。
〔実施例7〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例4で得られた樹脂微粒子分散液(d):50.0質量部(固形分:10.0質量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー7を得た。
〔実施例8〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例5で得られた樹脂微粒子分散液(e):15.0質量部(固形分:3.0質量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー8を得た。
〔実施例9〕
実施例1において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例6で得られた樹脂微粒子分散液(f):25.0質量部(固形分:5.0質量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー9を得た。
〔実施例10〕
実施例3において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例7で得られた樹脂微粒子分散液(g):20.0質量部(固形分:4.0質量部)を用いたこと、固着工程で加熱温度を60℃から50℃に変えたこと、平滑化工程で加熱温度を70℃から55℃に変えたこと以外は実施例3と同様にしてトナー10を得た。
〔実施例11〕
実施例3において、付着工程で樹脂微粒子分散液(a):20.0質量部(固形分:4.0質量部)に代えて合成例8で得られた樹脂微粒子分散液(h):55.0質量部(固形分:11.0質量部)を用いたこと、平滑化工程で加熱温度を70℃から100℃に変えたこと以外は実施例3と同様にしてトナー11を得た。
〔実施例12〕
実施例7において、造粒工程で結着樹脂溶液1:160質量部に代えて、以下に記載する結着樹脂溶液2:160質量部を用いたこと以外は実施例7と同様にしてトナー12を得た。
(結着樹脂溶液の製造例)
冷却管、窒素導入管および撹拌機のついた反応容器中に、下記を投入した。
・1,3−ブタンジオール 1036質量部
・テレフタル酸ジメチルエステル 892質量部
・1,6−ヘキサン二酸 205質量部
・テトラブトキシチタネート(縮合触媒) 3質量部
170℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら7時間反応させた。ついで240℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら5時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて反応させた後、取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、ポリエステル樹脂2(結着樹脂2)を得た。ポリエステル樹脂2のTgは38℃であった。
次に、撹拌羽つきの密閉性容器に酢酸エチルを50質量部投入し、100rpmで撹拌しているところに、上記ポリエステル樹脂2を50質量部入れ室温で3日撹拌することで結着樹脂溶液2を調製した。
〔比較例1〕
実施例3において、固着工程で加熱温度を60℃から40℃に変えたこと以外は実施例3と同様にしてトナー13を得た。
〔比較例2〕
実施例3において、固着工程で加熱温度を60℃から80℃に変えたこと以外は実施例3と同様にしてトナー14を得た。
上記実施例1乃至12および比較1、2における固着工程と平滑化工程の基本条件を表2にまとめて示した。
〔比較例3〕
(芯粒子の作製)
実施例1の造粒工程で得られた芯粒子分散液(A)に希塩酸を加え分散液(A)をpH1.2にした後ろ過、洗浄、乾燥して芯粒子を得た。
(トナー粒子の作製)
イオン交換水400.0質量部に、表1に示す樹脂微粒子分散液h:65.0質量部(固形分:13.0質量部)を加え、撹拌しながら、上記芯粒子100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
ここに、ステアリルアミン酢酸塩1質量%水溶液を撹拌下で徐々に滴下し、その後さらに1時間撹拌した。
次いで、得られた分散液をろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で外添をして、トナー15を得た。
〔比較例4〕
(芯粒子の作製)
実施例1の造粒工程で得られた芯粒子分散液(A)に希塩酸を加え分散液(A)をpH1.2にした後ろ過、洗浄、乾燥して芯粒子を得た。
(トナー粒子の作製)
イオン交換水400.0質量部に、表1に示す樹脂微粒子分散液h:65.0質量部(固形分:13.0質量部)を加え、撹拌しながら、上記芯粒子100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
これに、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを1.3に調整し、1時間撹拌した後、分散液の温度を60℃に昇温して、さらに2時間撹拌を行い分散液を得た。
次いで、得られた分散液を冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で外添をして、トナー16を得た。
〔比較例5〕
実施例3において、固着工程を以下のように行ったこと以外は実施例3と同様にしてトナー17を得た。
<固着工程>
付着工程を経て得られた、樹脂微粒子が付着した分散液(B)を200回転/分で撹拌しながら60℃に加熱した。さらに2時間撹拌を続け、前記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加え、ろ過、洗浄、乾燥してトナー粒子17を得た。
実施例1乃至12および比較例1乃至5で得られた各トナーについて、製造安定性評価として微粉量(FPIA−3000で測定したときの0.6μm以上2.0μm以下の粒子率を微粉量とする)と、重量平均粒径(D4)の測定を行った。また、平均円形度の測定、低温定着性、および耐ブロッキング性の評価を、以下に述べる要領にしたがって行った。結果を表3にまとめて示した。
−製造安定性評価−
・微粉量の評価基準
FPIA−3000で芯粒子を測定した時の0.6μm以上2.0μm以下の粒子率(X)とFPIA−3000で各トナー粒子を測定した時の0.6μm以上2.0μm以下の粒子率(Y)の比(Y/X)をとるとき、
A:Y/Xが1.25未満である。(微粉量の増加が特に少ない)
B:Y/Xが1.25以上1.50未満である。(微粉量の増加が少ない)
C:Y/Xが1.50以上1.75未満である。(微粉量がやや増加する)
D:Y/Xが1.75以上である。(微粉量が増加する)
・重量平均粒子径(D4)の評価基準
芯粒子の重量平均粒子径(D4a)とトナー粒子の重量平均粒子径(D4b)との比(D4b/D4a)をとる。判定基準は以下の通りである。
A:D4b/D4aが1.05未満である。(トナー粒子は凝集しない)
B:D4b/D4aが1.05以上1.10未満である。(トナー粒子はほぼ凝集しない)
C:D4b/D4aが1.10以上1.20未満である。(トナー粒子がやや凝集する)
D:D4b/D4aが1.20以上1.40未満である。(トナー粒子が凝集する)
E:D4b/D4aが1.40以上である。(トナー粒子が著しく凝集する)
・平均円形度の評価基準
判定基準は以下の通りである。
A:平均円形度が0.980以上である。
B:平均円形度が0.970以上0.980未満である。
C:平均円形度が0.960以上0.970未満である。
D:平均円形度が0.950以上0.960未満である。
E:平均円形度が0.950未満である。
−定着性試験方法−
トナーと、シリコーン樹脂で表面コートしたフェライトキャリア(平均粒径42μm)とを、トナー濃度が6質量%になるようにそれぞれ混合し、二成分現像剤を調製した。市販のフルカラーデジタル複写機(CLC5000,キヤノン製)の改造機を使用し、受像紙(80g/m2)上に未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を形成した。上記複写機から取り外した定着ユニットを定着温度が調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。常温常湿下(22℃,60%RH)、プロセススピードを250mm/sに設定し、設定温度を140℃から5℃おきに変化させながら、各温度で上記トナー画像の定着を行った。
本発明において、低温定着性は、低温オフセットが観察ない温度を低温側開始点とした。低温定着性能の評価基準は以下の通りである。
A:低温側開始点が140℃以下(低温定着性能が特に優れている)
B:低温側開始点が145℃ (低温定着性能が良好である)
C:低温側開始点が150℃ (低温定着性能が問題ないレベルである)
D:低温側開始点が155℃ (低温定着性能がやや劣る)
E:低温側開始点が160℃以上(低温定着性能が劣る)
−耐ブロッキング性試験方法−
トナー10gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度50℃の恒温槽に入れて8日間放置する。その後、ポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。評価基準は以下の通りである。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:凝集体がやや多く、ほぐれにくい
D:凝集体が多く、容易にはほぐれない
E:全くほぐれない
上記表より実施例1のトナー1は低温定着性に優れたものであり、また耐ブロッキング性にも優れていた。トナー中の微粉量は極めて少なく、かつトナーの凝集も抑えられており、安定してトナーが製造できていた。
実施例1と実施例3を比較すると、平滑化工程を経ることで、平均円形度が高くなり、また耐ブロッキング性が向上することがわかる。
また、実施例1と実施例4の結果より、外殻に用いる樹脂微粒子の量が少なくなると、耐ブロッキング性が低下することがわかる。各トナーの断面を透過電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、実施例4のトナーは、外殻で覆われていない欠損部が僅かに認められたが、実施例1のトナーは、見かけ上、完全に被覆されていることが確認された。
比較例1のように芯粒子のTg以下で固着した場合には、芯粒子に樹脂微粒子が固着されないため、微粉量が増加し、著しく耐ブロッキング性は低下する。
比較例2のように樹脂微粒子のTg以上で固着した場合には、芯粒子は分散状態が維持できず凝集が起こる。
比較例3,4,5のように、本発明と異なる工程で樹脂微粒子を付着および固着させた
場合には、均一かつ緻密な樹脂微粒子層は形成できなにくいため、本発明によるトナーと比べ種々の性能で劣る。