JP7330821B2 - トナー - Google Patents
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Description
トナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、使用する結着樹脂の軟化を目的としてガラス転移温度(Tg)を低くする方法が挙げられる。しかし、定着時の結着樹脂粘度を低下させて低温定着性を向上させる方法においては、定着部材との離型性不足によるオフセットの発生や、トナーの強度低下によってトナー粒子の割れや欠けが生じ、現像部材へのトナーの融着が起こりやすくなる。
例えば特許文献1では、トナー粒子中に無機微粒子を添加することで、従来のフィラー効果とは別に、帯電安定化させるとともに、トナー粒子表面へ露出した無機微粒子によって、高い流動性を付与し、外添剤の埋没を抑制する方法が開示されている。
また、特許文献2では、パールネックレス状のシリカを添加することによって、トナー強度を大きくする方法が開示されている。
また、特許文献2によれば、一般的なシリカに比べトナー強度を大きくすることができるが、十分な効果を得ることができる量を添加した場合には、やはり低温定着性が阻害されてしまうことがわかった。
本発明は、フィラーを添加することによる低温定着性の低下の抑制及びフィラーによる優れた割れ欠け抑制効果を両立できるトナーを提供する。
該有機ケイ素重合体は、有機ケイ素重合体粒子を含み、
該有機ケイ素重合体粒子は、下記式(1)で表される構造を含み、
R1-SiO3/2 (1)
式(1)中、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
透過型電子顕微鏡による該トナー粒子の断面観察において、
該トナー粒子の該断面の重心から該断面の輪郭までの距離Aのうち、重心から距離Aの80%以下の領域に、該式(1)で表される構造を含む該有機ケイ素重合体粒子が存在しており、
該有機ケイ素重合体粒子の粒径が、10nm以上200nm以下であることを特徴とするトナー。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
本発明のトナーは、結着樹脂及び有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、有機ケイ素重合体粒子を含み、
該有機ケイ素重合体粒子は、下記式(1)で表される構造を含み、
R1-SiO3/2 (1)
式(1)中、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
透過型電子顕微鏡による該トナー粒子の断面観察において、
該トナー粒子の該断面の重心から該断面の輪郭までの距離Aのうち、重心から距離Aの80%以下の領域に該有機ケイ素重合体粒子が存在しており、
該有機ケイ素重合体粒子の粒径が、10nm以上200nm以下であることを特徴とする。
これは、有機ケイ素重合体粒子の構造中のR1で示されるアルキル基に由来しているものと考えている。すなわち、アルキル基を有することでトナー粒子の結着樹脂と有機ケイ素重合体粒子との親和性が高まるため、低温定着性への影響が少なく、かつ高い割れ欠け抑制効果を発現できると推定している。
そのため、該有機ケイ素重合体粒子の構造中のR1の炭素数が1以上4以下である場合、少ない添加量にも関わらず、優れたフィラー効果による割れ欠け抑制効果が発現し、低温定着性への影響が極めて少ないトナー粒子を得ることができる。
距離Aの80%以下の領域に有機ケイ素重合体粒子が存在すると、十分にトナー粒子表面から離れているために、フィラーとしての効果がトナー粒子全体に寄与できる。
該重心から距離Aの80%以下の領域に有機ケイ素重合体粒子を存在させるためには、有機ケイ素重合体粒子を重合性単量体や顔料などと混合し、重合性単量体組成物を得る際の分散時間、分散強度、有機ケイ素重合体粒子の量などを調整することにより任意に存在位置を制御することができる。
該個数平均粒径は、好ましくは15nm~180nmであり、より好ましくは40nm~120nmである。
R1-SiO3/2 (1)
式中、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基である。
式(1)の構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はR1と、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。
炭素数が1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく例示できる。特に好ましくは、R1はメチル基である。
有機ケイ素重合体粒子(有機ケイ素重合体)は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を含む化合物の縮重合物であることが好ましい。
R1は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R2、R3及びR4は、反応基ともいう。
これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合して架橋構造を形成する。加水分解性が室温で穏やかであり、有機ケイ素重合体の析出性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。
また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間
、反応溶媒及びpHによって制御することができる。有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシランのような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
また、トナー粒子中の有機ケイ素重合体粒子の含有量は、0.05質量%以上1.50質量%以下であることが好ましい。
また、トナー粒子が表面に有機ケイ素重合体を有する場合、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体を除外したものをトナー母粒子としたとき、トナー母粒子中の該有機ケイ素重合体粒子の含有量は、0.05質量%以上1.50質量%以下であることが好ましい。
この範囲であればトナー母粒子として、特に優れた割れ欠け抑制効果が発現しつつも、きわめて優れた低温定着性が発現する。
また、トナー粒子が表面に有機ケイ素重合体を有する場合、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体の含有量は、1.00質量%以上4.50質量%以下であることが好まく、1.50質量%以上3.50質量%以下であることがより好ましい。
R2-SiO3/2 (T3)
(式(T3)中、R2は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
[ST3]が0.60以上0.90以下であれば、有機ケイ素重合体の縮合度が十分であり、より優れた割れ欠け抑制効果が発現する。ST3は、有機ケイ素化合物を添加した後の、有機ケイ素化合物から有機ケイ素重合体を形成しする反応の時間と温度及びpHを調整することにより制御できる。
|SPb-SPs|≦1.0 (2)
式(2)を満たすことは、結着樹脂と有機ケイ素重合体粒子の親和性が高いことを表している。有機ケイ素重合体粒子の添加量が極少量であっても、フィラー効果が発現するため、優れた低温定着性との両立が容易になる。
SP値の単位は、(cal/cm3)1/2であるが、1(cal/cm3)1/2=2.046×103(J/m3)1/2によって(J/m3)1/2の単位に換算することができる。
スチレンアクリル系共重合体は、スチレン系単量体とアクリル系単量体(アクリル酸又はメタクリル酸及びそれらのアルキルエステル)との共重合体である。
ここで、スチレンアクリル系共重合体は、スチレンアクリル系共重合体のみから構成された状態で結着樹脂中に含有されていてもよいし、他の重合体などとのブロック共重合体、グラフト共重合体、又はそれらの混合物の状態で結着樹脂中に含有されていてもよい。
結着樹脂が、スチレンアクリル系共重合体を含有することで、トナーの現像特性及び耐久性が向上する。
なお、結着樹脂には、スチレンアクリル系共重合体以外に、トナーに用いられる公知の
樹脂又は重合体を用いることができる。
スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ジビニルベンゼンなど。
スチレン系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレートのようなメタクリル酸アルキルエステル類;
ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル酸ジエステル類;
アクリル酸、メタクリル酸など。
該アクリル系単量体は一種類で用いることもできるが、これらの中から選ばれる二種以上を組み合わせて用いることもできる。
具体的には、スチレン系単量体とアクリル系単量体との重合比率(スチレン系単量体:アクリル系単量体)は、質量基準で、65:35~100:0であることが好ましく、70:30~85:15であることがより好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、25℃以上65℃以下であることが好ましい。
有機系の過酸化物系重合開始剤としては、例えば、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられる。
具体例としては、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;
ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1-ジ-t-ヘキシルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;ジ-t-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてt-ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどが挙げられる。
なお、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメン
ヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどを用いることもできる。
また、アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などが例示される。
なお、必要に応じてこれら重合開始剤を2種以上同時に用いることもできる。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体100.0質量部に対して、0.10質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は、表面に下記式(3)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を有することが好ましい。
R3-SiO3/2 (3)
式(3)中、R3は炭素数1以上4以下のアルキル基である。炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。)
トナー粒子表面に、有機ケイ素重合体を有することで、割れ欠け抑制効果が極めて高くなり、大幅な長期安定性の向上が図れるために好ましい。
極性樹脂としては、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
極性樹脂としてポリエステル系樹脂を用いることで、当該樹脂がトナー粒子の表面に偏在してシェルを形成した際に、当該樹脂自身のもつ潤滑性が期待できる。
ポリエステル系樹脂としては、アルコールモノマーとカルボン酸モノマーとの縮重合体が挙げられる。
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン。
フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6~18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物。
ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルなどの多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物などの多価カルボン酸類。
2価以上のカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びそれらの酸無水物、それらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
極性樹脂の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
有機ケイ素重合体粒子は、従来公知のゾルゲル法などによって製造することが可能である。
例えば、撹拌機を具備した温度制御可能な容器、pH調整された純水を温度制御しながら、前述した有機ケイ素化合物を添加し加水分解行う。次いで、縮重合に適した温度・pHに再調整することで縮重合反応が進行し、有機ケイ素化合物を析出させることで有機ケイ素重合体を得ることができる。
一方、加水分解を行う温度は、50℃以下が好ましく、縮重合する温度は所望の有機ケイ素重合体の温度によって調整する。温度が高いほど縮重合の速度が速いため、小さな粒子を得られる傾向があり、反対に温度が低い場合大きい粒子が得られる傾向がある。
トナー粒子の製造方法として、従来公知の製造方法を採用しうる。
特に、溶融混錬粉砕法、溶解懸濁法及び懸濁重合法が好ましい。これらの製造方法は製造工程において原材料を均一に混合し、トナー粒子を得る方法であるため、有機ケイ素重
合体粒子を均一に分散させることができるため好ましい。
懸濁重合法は、結着樹脂を形成し得る重合性単量体、及び有機ケイ素重合体、並びに必要に応じて着色剤などの添加剤を含有する重合性単量体組成物の粒子を該水系媒体中で形成する造粒工程、及び、該造粒工程後、該重合性単量体組成物の粒子に含有される該重合性単量体を重合させてトナー粒子を形成する重合工程を有する。
添加する有機ケイ素重合体として、有機ケイ素重合体粒子、表面に有機ケイ素重合体を有する樹脂粒子などがあげられる。
表面に式(3)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を得る場合、例えば以下の方法を用いることができる。
トナー母粒子を得た後、トナー母粒子を水系媒体中に投入して、水系媒体中でトナー母粒子に有機ケイ素重合体の表層を形成する方法が挙げられる。水系媒体中でトナー母粒子を製造した場合は、得られたトナー母粒子を含む水系媒体をそのまま用いてもよい。
有機ケイ素重合体の表層の形成は、公知の方法を採用でき、前述のように加水分解及び縮重合反応を行うことが好ましい。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。これらは単独で又は複数を混合して使用できる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部~20質量部であることが好ましい。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレ
ン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらは単独で又は複数を混合して使用できる。
メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部~15.000質量部である。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラ
デシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
<トナー粒子の体積基準のメディアン径(Dv50)、個数基準のメディアン径(Dn50)及び粒度分布の測定方法>
トナー粒子の体積基準のメディアン径(Dv50)、及び個数基準のメディアン径(Dn50)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、体積基準のメディアン径(Dv50)、及び個数基準のメディアン径(Dn50)を算出する。
粒度分布を示すDv50とDn50の比(Dv50/Dn50)は1.00に近いほど粒度分布がシャープである。
SP値は、Fedorsの式(4)を用いて求める。ここでのΔei、及びΔviの値は「コーティングの基礎科学」54~57頁、1986年(槇書店)の表3-9による原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)を参考にする。
δi=[Ev/V]1/2=[Δei/Δvi]1/2 式(4)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子又は原子団のモル体積
例えば、ヘキサンジオールは、原子団(-OH)×2+(-CH2)×6から構成され、計算SP値は下記式で求められる。
δi=[Δei/Δvi]1/2=[{(5220)×2+(1180)×6}/{(1
3)×2+(16.1)×6}]1/2
SP値(δi)は11.95となる。
なお、SP値の単位は、(cal/cm3)1/2である。
後述する、NMRによる有機ケイ素重合体の構造の確認の結果を用いて、当該方法により有機ケイ素重合体のSP値を算出できる。
トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを走査透過型電子顕微鏡(JEM2800 日本電子社製)(STEM)で1万~10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
トナーに用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いてもよい。
有機ケイ素重合体粒子の正確な存在位置については、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi-K端(99eV)のEFマッピング像を取得して、トナー粒子の断面の重心から断面の輪郭までの距離Aのうち、該重心から該距離Aの80%以下の領域に有機ケイ素重合体粒子が存在することを確認する。
また、有機ケイ素重合体粒子とシリカを区別するには、酸素についてもEFマッピング像を取得し、その輝度の差により区別を行う。
以下に示す各種計測については、市販の画像解析ソフトウェア、例えば、WinROOF(三谷商事株式会社製)を用いる。
有機ケイ素重合体粒子はトナー粒子中に3次元的に均一に分散していると考えられるため、有機ケイ素重合体がトナー粒子内部に含まれていても、各々の粒子についてランダムに切り出された断面において観察される確率は低い。上記を鑑みて、下記方法にて有機ケイ素重合体粒子の存在する範囲を求める。
トナー粒子の断面の重心から有機ケイ素重合体粒子を通るトナー粒子の断面の輪郭までの線分を引く。該線分における該重心から有機ケイ素重合体粒子までの長さLをすべて測定する。なお、一つの有機ケイ素重合体粒子のうち該重心に最も近い位置で長さLを測定するものとする。線分の長さ(距離A)に対する長さLの割合をX%とする。一つのトナー粒子の断面において、観察されるすべての有機ケイ素重合体粒子についてX%を計測する。
100粒子を観察し、計測された全てのX%のうち、最小値をXminとする。Xminが80以下であるとき、測定試料が、トナー粒子の断面の重心から該断面の輪郭までの距離Aのうち、該重心から該距離Aの80%以下の領域に有機ケイ素重合体粒子が存在するトナー粒子であると判断する。
なお、Xminは、例えば、0%~70%程度であることが好ましく、1%~50%程度であることがより好ましい。
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体粒子における、式(1)で表される構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のR1で表されるアルキル基の有無は、13C-NMRにより確認する。また、式(1)の詳細な構造は1H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認する。使用する装置及び測定条件を以下に示す。
「測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフランTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
当該方法にて、式(1)のR1で表されるアルキル基の有無を確認する。シグナルが確認できたら、式(1)の構造は“あり”とする。
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
「測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs@-1dB
コンタクト時間:1.75ms~10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子をサンプルとして使用する場合には、外添剤を取り除く。具体的な方法は、以下の通りである。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカー(いわき産業(株)製「KM Shaker」)にて
1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナー粒子が存在し、下層の水溶液側には外添剤が存在するため、最上層のトナー粒子のみを回収する。
なお、外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、必要に応じて遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、トナー液を乾燥しトナー粒子を採集する。
[T3構造、X1構造、X2構造、X3構造、X4構造の確認及び定量方法]
T3、X1、X2、X3及びX4の構造は、前述の<式(1)で表される構造の確認方法>に記載の1H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認できる。
トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMR測定後に、トナー粒子における置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて、下記一般式(X4)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が4.0であるX4構造、下記一般式(X3)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が3.0であるX3構造、下記一般式(X2)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が2.0であるX2構造、下記一般式(X1)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が1.0であるX1構造、式(T3)で表わされるT単位構造にピーク分離して、各ピークの面積の割合を算出する。
カーブフィティングは日本電子社製のJNM-EX400用ソフトのEXcalibur for Windows(登録商標) version 4.2(EX series)を用いる。メニューアイコンから「1D Pro」をクリックして測定データを読み込む。次に、メニューバーの「Command」から「Curve fitting functinon」を選択し、カーブフィティングを行う。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
X1構造の面積、X2構造の面積、X3構造の面積、X4構造の面積を求めて以下の式によりSX1、SX2、SX3、SX4を求める。
SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
ST3は、以下の式により求められる。
ST3={T3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
X1構造の一例(Ri=Rj=-OC2H5、Rk=-CH3):-47ppm、X2構造の一例(Rg=-OC2H5、Rh=-CH3):-56ppm、X3構造の一例(R=-CH3):-65ppm
また、X4構造がある場合のケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X4構造:-108ppm
蛍光X線でケイ素の量を測定することでトナー粒子又はトナー母粒子の有機ケイ素重合体量を測定できる。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球
のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。
また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中にトナー粒子又
はトナー母粒子を約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー粒子中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO2)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナー粒子を、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。
有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって行う。SEM観察の方法は、以下の通り。日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影される画像を用いて行う。S-4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペースト(TED PELL
A,Inc、 Product No. 16053, PELCO Colloidal Graphite,Isopropanol base)を薄く塗り、その上に対象の試料
を吹き付ける。さらにエアブローして、余分な試料を試料台から除去した後、15mAで15秒間白金蒸着する。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを30mmに調節する。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[2.0kV]、エミッション電流を[10μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[下(L)]を選択し、反射電子像を観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[8.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定
する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。観察粒子の最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を100000(100k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。
得られたSEMの観察結果から、有機ケイ素重合体粒子を粒子数500の個数平均粒径(D1)の計算を画像処理ソフト(イメージJ)により行う。測定方法は以下の通りである。
・有機ケイ素重合体粒子の測定
計測コマンドの中から、選択された形状の最大長さを選択し、有機ケイ素重合体粒子の粒径を計測する。この操作を複数行い、500箇所の平均値を求めることで、有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径を算出する。
トナー中の有機ケイ素重合体粒子の個数平均粒径は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって求めることもできる。
試料は前述した走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、有機ケイ素重合体粒子の存在位置の測定方法と同様にして得ることができる。
例えば、STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。また、明視野像のDetectorControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、ImageControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、トナー粒子の断面中の有機ケイ素重合体粒子についてそれぞれ画像処理によって粒径を求める。
詳細には、得られた画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体粒子の長径をそれぞれ計測する。画像解析はSTEM画像30枚について行い、観察された長径の個数平均粒径を算出する。
25℃の水浴中に、撹拌機及び窒素菅を備えた容器を用意しpH3.0に調整した、塩酸水溶液800質量部を用意した。そこへ、メチルトリエトキシシランを100部添加し、120分間攪拌しメチルトリエトキシシランの加水分解溶液を得た。
一方、撹拌機を備えた容器に1620部の水を入れ温浴にて70℃に加熱したのち、1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを9.0に調整した。そこへ、上記加水分解溶液を1時間かけ添加し、70℃で保持して1時間縮重合を行った。その後、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を徐々に添加してpHを10.5にしたのち、70℃でさらに3時間縮重合して有機ケイ素重合体粒子1の分散液を得た。
得られた有機ケイ素重合体粒子1の分散液を遠心分離工程にて粗粒を除去したのち、ろ過、洗浄及び乾燥することで、有機ケイ素重合体粒子1を得た。
有機ケイ素重合体粒子1の個数平均粒径は40nmであった。また、[ST3]=0.81であった。
有機ケイ素重合体粒子1について表1に示す。
有機ケイ素重合体粒子1の製造例で、下記表1のように変更した以外は同様にして有機ケイ素重合体粒子2~7を得た。
(水系媒体1の調製工程)
撹拌機、温度計、還留管を具備した反応容器中にイオン交換水650.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
・スチレン :25.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :5.0部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。得られた顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:43.0部
・n-ブチルアクリレート:28.0部
・飽和ポリエステル樹脂:4.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=12,000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):8.0部
・有機ケイ素重合体粒子1:0.2部
これらを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。
その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、スラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い未反応の重合性単量体を留去し、トナー粒子1のトナー母粒子分散液を得た。
トナー粒子1のトナー母粒子分散液を一部ろ過・洗浄・乾燥し、有機ケイ素重合体の含有量及びトナー母粒子のTHF不溶分中の有機ケイ素重合体粒子の[ST3]を確認したところ、有機ケイ素重合体の含有量は0.17質量%であり、[ST3]0.81であった。
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時
間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
得られた着色剤粒子分散液の温度を55℃に冷却したのち、有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま15分保持した後に、3.0質量%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、60分間保持したのち、3.0質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、更に240分保持してトナー粒子分散液を得た。
重合工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行い、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の、有機ケイ素重合体の含有量は3.66質量%であり、[ST3]=0.78であった。
また、トナー粒子1の断面の重心から輪郭までの距離の1%~100%の範囲に有機ケイ素重合体粒子の存在を確認した。また、トナー粒子1の表面に有機ケイ素重合体が存在することも確認した。なお、有機ケイ素重合体粒子の存在を示す1%~100%の数値は、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体も含めた結果である。
トナー粒子1に関して表2に示す。
トナー粒子1の製造方法において表2のように変更して、トナー粒子2~4を製造した。物性などを表2に示す。
トナー粒子1の製造方法で、トナー粒子表面の有機ケイ素化合物の重合を行わなかったこと以外は表2のように変更してトナー粒子5~9を製造した。物性などを表2に示す。
結着樹脂
・スチレンアクリル樹脂1 :44.0部
(スチレン:n-ブチルアクリレート=75:25の共重合体、重量平均分子量:30,000、SPs=9.81)
・スチレンアクリル樹脂2 :32.0部
(スチレン:n-ブチルアクリレート:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート=75:25:0.3の共重合体、重量平均分子量:98,000、SPs=9.81)
・飽和ポリエステル樹脂 :4.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=12,000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・C.I.ピグメントブルー15:3 :5.0部
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) :8.0部
・有機ケイ素重合体粒子3 :0.5部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサーでよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて2mm以下に粗粉砕し、粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、ホソカワミクロン社製ACM10を用いて、重量平均粒径100
μmに中粉砕し、得られた中粉砕物を機械式粉砕機(ターボ工業社製;ターボミルT250-RS型)を用いて微粉砕した。その後、得られた微粉砕物を、ホソカワミクロン社製ターボプレックス100ATPを用いて粗粒分級を行い、トナー粒子10を得た。トナー粒子10について表2に示す。
トナー粒子10の製造方法において表2のように変更して、トナー粒子11~17及び比較用トナー粒子1を製造した。物性などを表2に示す。
トナー粒子10の製造方法で、有機ケイ素重合体粒子1の代わりにパールネックレス状シリカ(スノーテックスPS:日産化学社製)を表2の通りに用いた他は同様にして比較用トナー粒子2~4の製造を行った。物性など表2に示す。
(スチレンアクリル樹脂1分散液の調整)
・スチレンアクリル樹脂1 44部
・イオン交換水 56部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザ-(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部とイオン交換水119部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでスチレンアクリル樹脂1分散液を得た。
このスチレンアクリル樹脂1分散液の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-950)を用いて測定したところ、個数平均粒径は0.22μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
・スチレンアクリル樹脂3 44部
(スチレン:n-ブチルアクリレート:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート=75:25:0.3の共重合体、重量平均分子量:38,000、SPs=9.81)
・イオン交換水 56部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザ-(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部とイオン交換水119部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでスチレンアクリル樹脂3分散液を得た。
このスチレンアクリル樹脂3分散液の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-950)を用いて測定したところ、個数平均粒径は0.29μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
・飽和ポリエステル樹脂 44部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=12,000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・イオン交換水 56部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザ-(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部とイオン交換水119部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することで飽和ポリエステル樹脂分散液を得た。
この飽和ポリエステル樹脂分散液の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-950)を用いて測定したところ、個数平均粒径は0.25μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) 44部
・イオン交換水 56部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザ-(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部とイオン交換水119部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することで離型剤粒子分散液1を得た。
この離型剤粒子分散液の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-950)を用いて測定したところ、個数平均粒径は0.23μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
・C.I.ピグメントブルー15:3 44部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 3部
・イオン交換水 393部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-950)を用いて測定したところ、個数平均粒径は0.28μmであり、1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
・有機ケイ素重合体粒子1 10部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2部
・イオン交換水 88部
以上を混合し、ボールミルにて0.2mmジルコニアビーズ200部投入した容器へ投入し、6時間分散して、有機ケイ素重合体粒子1分散液を調整した。
・スチレンアクリル樹脂1分散液 120部
・スチレンアクリル樹脂3分散液 120部
・離型剤粒子分散液 20部
・着色剤粒子分散液 25部
・有機ケイ素重合体粒子1分散液 15部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)に上記材料を投入し均一に混合し、混合分散液を得る。得られた混合分散液を温浴で60℃に昇温したのち温度を保持する。0.5質量%-硫酸アルミニウム水溶液を徐々に滴下しながら粒径を測定し、個数平均粒径が5.0~5.5μmになるところまで滴下し、トナー粒子18を得るための第一凝集体分散液を得た。得られたトナー粒子18の第一凝集体分散液の個数平均粒径は5.4μmであった。
・スチレンアクリル樹脂1分散液 120部
・スチレンアクリル樹脂3分散液 120部
・離型剤粒子分散液 20部
・着色剤粒子分散液 25部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
上記材料を、500mLビーカーに入れ撹拌機にてよく攪拌し均一にして混合分散液を得た。この混合分散液を上記、トナー粒子18の第一凝集体分散液に加え、再び0.5質量%-硫酸アルミニウム水溶液を徐々に滴下しながら粒径を測定した。個数平均粒径が6.5~7.0μmになるところまで滴下し、トナー粒子18を得るための第二凝集体分散液を得た。得られたトナー粒子18の第二凝集体分散液の個数平均粒径は6.8μmであった。
トナー粒子18の第二凝集体分散液に、飽和ポリエステル樹脂分散液20部を添加しよく攪拌したのち、再び0.5質量%-硫酸アルミニウム水溶液10.0部を徐々に滴下して、トナー粒子18の第三凝集体分散液を得た。トナー粒子18の第三凝集体分散液の個数平均粒径は7.0μmであった。
(融合・熟成工程)
トナー粒子18の第三凝集体分散液の入った容器について、窒素を用いて系内を置換し、60℃にて1時間保持した。その後、0.5℃/minにて昇温し、90℃にて30分保持した。その後、63℃まで降温したのち3時間保持した。このときの反応は窒素雰囲気下で行った。所定時間終了後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、イオン交換水を加圧濾過器に満水になるまで加え、0.4Mpaの圧力で洗浄した。さらに同様に洗浄して、計3回洗浄した。
これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナー粒子18の個数平均粒径は7.0μmであった。
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行い、トナー粒子18を得た。
得られたトナー粒子18の、有機ケイ素重合体の含有量は1.20質量%であり、[ST3]=0.81であった。
また、トナー粒子18の断面の重心から輪郭までの距離の1%~75%の範囲に有機ケイ素重合体の存在を確認した。
トナー粒子18に関して表2に示す。
各分散液の調整はトナー粒子18の製造例と同様にした。
また、第一凝集工程及び第二凝集工程で用いる材料を次のように変更した以外は、トナー粒子18と同様にして比較用トナー粒子5を得た。
(第一凝集工程)
・スチレンアクリル樹脂1分散液 144部
・スチレンアクリル樹脂3分散液 144部
・離型剤粒子分散液 24部
・着色剤粒子分散液 30部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
・スチレンアクリル樹脂1分散液 96部
・スチレンアクリル樹脂3分散液 96部
・離型剤粒子分散液 16部
・着色剤粒子分散液 20部
・有機ケイ素重合体粒子1分散液 15部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
得られた比較用トナー粒子5の第一凝集体分散液の個数平均粒径は5.7μm、比較用トナー粒子5の第二凝集体分散液の個数平均粒径は6.8μm、比較用トナー粒子5の第三凝集体分散液の個数平均粒径は7.1μm及び比較用トナー粒子5の個数平均粒径は7.0μmであった。
得られた比較用トナー粒子5の、有機ケイ素重合体の含有量は1.21質量%であり、[ST3]=0.81であった。
また、比較トナー粒子5の断面の重心から輪郭までの距離の85%~95%の範囲に有機ケイ素重合体の存在を確認した。
比較用トナー粒子5に関して表2に示す。
表中、「有機ケイ素重合体の存在範囲」は、トナー粒子の断面の重心から該断面の輪郭までの距離Aのうち、有機ケイ素重合体が存在する範囲を示す。「有機ケイ素重合体量」及び「有機ケイ素重合体粒子量」は、質量%である。
トナー粒子1~4は、それぞれそのまま実施例1~4のトナーとして用いた。トナー粒子5~18及び比較用トナー粒子1~5は、それぞれトナー粒子100.0部に対して一次粒子の個数平均粒径が40nmのシリカ微粒子1.0部を加え、FMミキサ(日本コークス工業製)を用いて混合し、実施例5~18及び比較例1~5のトナーとした。
[低温定着性の評価]
トナー200gを、15℃/相対湿度10%の環境下に24時間放置した後、画像形成装置としてLBP-7700C(キヤノン製)を用い、温度15℃、相対湿度10%で画像評価を行った。
定着ユニットを外したカラーレーザープリンタ(HP Color LaserJet
3525dn、HP社製)を準備し、シアンカートリッジからトナーを取り出し、代わりに評価するトナーを充填した。
次いで、受像紙(HP Laser Jet90、HP社製、90g/m2)上に、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(トナーの載り量:0.9mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。
次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃/相対湿度60%)、プロセススピードを280m/sに設定し、初期温度を120℃として設定温度を2℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。
低温側定着開始点とは、低温オフセット現象(トナーの一部が定着器に付着してしまう現象)が観察されない下限温度のことである。
(評価基準)
A:低温側定着開始点が155℃未満
B:低温側定着開始点が155℃以上165℃未満
C:低温側定着開始点が165℃以上175℃未満
D:低温側定着開始点が175℃以上
新たなシアンカートリッジからトナーを取り出し、さらに現像ローラーを取り出した。そこへ低温定着評価で用いたカートリッジから、取り出した現像ローラーを取りつけた。
さらに、トナーが充填されていなくても画像出力が可能なようにLBP本体を改造した。
これにより、現像ローラー上にコートされたトナーが、現像ブレードによって摺擦を繰りかえす状態を作った。
このカートリッジで、印刷枚数が100枚相当の現像部材上のトナー摺擦を行った後、現像部材を取り出してエアブローを行い、現像部材上のトナーを除去した。この現像ローラーにテーピングを行い、A4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m2)に、張り付けた。
このテープの濃度を5箇所測色し、その平均値を部材汚染の程度の指標とした。測色は、画像濃度は「504分光濃度計」(エックスライト社製)を用いて、現像ローラーのテーピングを行わないものを0.00の基準として評価を行った。
(評価基準)
A:基準との濃度差が0.050未満
B:基準との濃度差が0.050以上0.100未満
C:基準との濃度差が0.100以上0.200未満
D:基準との濃度差が0.200以上
トナー評価の結果を表3に示す。
Claims (6)
- 結着樹脂及び有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、有機ケイ素重合体粒子を含み、
該有機ケイ素重合体粒子は、下記式(1)で表される構造を含み、
R1-SiO3/2 (1)
式(1)中、R1は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
透過型電子顕微鏡による該トナー粒子の断面観察において、
該トナー粒子の該断面の重心から該断面の輪郭までの距離Aのうち、重心から距離Aの80%以下の領域に、該式(1)で表される構造を含む該有機ケイ素重合体粒子が存在しており、
該有機ケイ素重合体粒子の粒径が、10nm以上200nm以下であり、
該トナー粒子は、該有機ケイ素重合体の表層を有することを特徴とするトナー。 - 前記トナー粒子中の前記有機ケイ素重合体の含有量が、0.05質量%以上5.00質量%以下である請求項1に記載のトナー。
- 前記トナー粒子のテトラヒドロフランTHF不溶分の29Si-NMRの測定において、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される構造のピーク面積の割合ST3が、0.60以上0.90以下であり、
前記有機ケイ素重合体は前記THF不溶分に含まれる、請求項1又は2に記載のトナー。
R2-SiO3/2 (T3)
(式(T3)中、R2は炭素数1~4のアルキル基を表す。) - 前記結着樹脂のSP値をSPb、前記有機ケイ素重合体粒子のSP値をSPsとしたとき、下記式(2)を満たす請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
|SPb-SPs|≦1.0 (2) - 前記トナー粒子中の、前記有機ケイ素重合体粒子の含有量が、0.05質量%以上1.50質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記式(1)中、R1は炭素数1又は2のアルキル基である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
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