前述の通り、近年プリンタに求められている長寿命化と小型化の両立のためには、トナーとして、スペーサー粒子として機能する外添剤(特には、大粒径無機微粒子)の強固着化と高流動性の維持、および耐割れ欠け性の向上が重要である。本発明者らは、まず外添剤の強固着化について検討した。
外添剤の強固着化の達成手段として、従来より進められている技術は主として、外添混合処理装置内における、トナーと撹拌羽根、トナーとトナーとの衝撃力や剪断力を向上させることによるものである。
本発明者らが検討したところ、トナーと撹拌羽根、トナーとトナーとの衝突や剪断による固着は、同時にトナー表面からの外添剤の脱離を引き起こしていることが分かった。すなわち、トナー粒子表面への外添剤の固着は、固着と脱離を繰り返しながら進行していくことがわかった。
そこで、固着をさらに進めるべく、撹拌羽根との衝突機会を増やすために、外添混合時間を長くしたり、撹拌羽根を高速回転させる、および外部からの加熱手段を用いる検討を行った。
その結果、外添混合時間を長くする、および撹拌羽根を高速回転させても、固着と脱離が同時に起きていることは変わらなかった。そのため、トナー1粒子のある一部では埋め込みが著しく進行する一方で、ある一部では、脱離工程を経る分、埋め込みが不十分な部分が存在することが分かった。したがって結果的に、処理装置内トナー全体でみれば固着レベルは上がるが、埋め込まれることによって流動性が落ちたり、外添状態が不均一になりやすい場合があった。さらに、トナーと撹拌羽根との衝突回数や強度が増加することにより、トナー粒子内部に残留応力が蓄積してしまい、結果として耐割れ性が低下してしまうといった課題も併せて起きることが分かった。
一方で、外部からトナー粒子のガラス転移温度(Tg)付近の熱をかける手段を用いると、トナー粒子表面が軟化し、外添剤の固定化が進行することが分かった。ところが、局所的にはそれ以上の熱がかかることで、ある一部では埋め込みが大幅に促進されてしまい、流動性が低下するといった課題が起きた。
以上のことより、従来の外添剤を固着させる思想で外添混合槽内での外添剤の強固着化を進めようとすると、高流動性の維持と耐割れ欠け性の向上を両立させることは、これまで困難であった。
そこで、本発明者らは、外添剤を埋め込まずに強固着化させることで、高流動性を維持し、耐割れ欠け性を向上させることを達成するために、トナーの製造方法について鋭意検討を行った。その結果、以下の構成とすることで上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤と、を有するトナーの製造方法であって、
該外添剤が、無機微粒子、又は有機無機複合微粒子であり、
該トナー粒子と該外添剤とを有する混合物を処理する処理工程を有し、
該処理工程で用いる処理装置が、
回転体と、該回転体の表面に設けられている複数の撹拌羽根と、を有する撹拌部材、
該撹拌部材を収容している内周面が円筒状の容器、および
該回転体に回転駆動力を与えて該撹拌部材を該容器内において回転させるための駆動部、
を有し、
該複数の撹拌羽根が、それぞれ、該容器の内周面との間に間隙を有するように設けられており、
該複数の撹拌羽根が、該撹拌部材の回転によって、該容器内に投入された該混合物を、該回転体の軸方向の一方の向きに送るための第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向の他方の向きに送るための第二の撹拌羽根とを有し、
該処理工程における該撹拌部材を回転させるときの該複数の撹拌羽根の周速Vが、0.1m/秒以上7.0m/秒以下であり、
該処理工程は該混合物が加熱混合され、該加熱混合開始時の該混合物の品温をT1、該トナー粒子のガラス転移温度をT2としたとき、下記式(1)を満たし、
該加熱混合時の混合処理エネルギーをE(Wh/g)としたとき、下記式(2)を満たすことを特徴とする。
T2-10℃≦T1≦T2+10℃ ・・・(1)
1.0×10-4Wh/g≦E≦1.5×10-2Wh/g ・・・(2)
本発明で用いる混合処理装置を図1、図2を用いて説明する。なお、図1は、本発明で用いる混合処理装置の一例を示す模式図であり、図2は、上記混合処理装置に使用される撹拌部材の構成の一例を示す模式図である。
上記混合処理装置は、少なくとも複数の撹拌羽根33が表面に設置された回転体32を主要部とする撹拌部材31と、回転体を回転駆動する駆動部38と、撹拌羽根33と間隙を有して設けられた本体ケーシング30とを有する。
図2に示すように、複数の撹拌羽根33の少なくとも一部が、回転体32の回転に伴って、トナーを回転体の軸方向の一方向に送る送り用撹拌羽根(第一の撹拌羽根)33aとして形成される。また、複数の撹拌羽根33の少なくとも一部が、トナーを回転体32の回転に伴って、回転体の軸方向の他方向に戻す戻し用撹拌羽根(第二の撹拌羽根)33bとして形成されている。ここで、図1のように、原料投入口35と製品排出口36が本体ケーシングの両端部に設けられている場合には、原料投入口35から製品排出口36へ向かう方向(図1で右方向)を「送り方向」という。
すなわち、図2に示すように、第一の撹拌羽根33aの板面は送り方向43にトナーを送るように傾斜している。一方、第二の撹拌羽根33bの板面は戻り方向42にトナーを送るように傾斜している。
これにより、「送り方向」43への送りと、「戻り方向」42への送りとを繰り返し行いながら、外添混合処理を行う。また、撹拌羽根33aと33bは、回転体32の円周方向に間隔を置いて配置した複数枚の部材が一組となっている。図2に示す例では、撹拌羽根33a、33bが回転体32に互いに180度の間隔で2枚の部材が一組をなしているが、120度の間隔で3枚、あるいは90度の間隔で4枚、というように多数の部材を一組としてもよい。
以上のような構成を有することで、結果として、トナーに効率的に熱を加えると共に、トナーに均一に必要最低限のシェアを与え、外添剤を二次粒子から一次粒子へとほぐすことができる。結果として、トナー粒子の表面に外添剤を均一に固着させることが可能となる。
なお、「送り方向」と「戻り方向」の複数の撹拌羽根が存在しない、例えば、図3のような装置構成(図中、51、52の混合処理部を有する回転体53、邪魔板54)を考えた場合、残留応力をため込まないような低動力条件では、トナーの処理装置内における循環性を十分に確保することができず、トナーの均一性が不足し、高温高湿環境における画像濃度の低下を引き起こす。
こうした上記図1の装置構成において、上述した課題を解決するためには、該処理工程における該撹拌部材を回転させるときの該複数の撹拌羽根の周速Vが0.1m/秒以上7.0m/秒以下であって、該処理工程は加熱混合され、該加熱混合開始時の該混合物の品温をT1、該トナー粒子のガラス転移温度をT2としたとき、下記式(1)を満たし、該加熱混合時の混合処理エネルギーをE(Wh/g)としたとき、下記式(2)を満たすことが重要である。
T2-10℃≦T1≦T2+10℃ ・・・(1)
1.0×10-4Wh/g≦E≦1.5×10-2Wh/g ・・・(2)
上述した通り、トナーに対して高速で撹拌羽根が衝突すると、トナー粒子表面に外添剤が埋め込まれ、流動性が悪化するとともに不均一な外添状態を生じさせたり、トナー内部に残留応力をため込み、結果としてトナーの割れ欠けが促進されたりする。
本発明者らが鋭意検討したところ、該複数の撹拌羽根の周速が0.1m/秒以上7.0m/秒以下であると、混合処理装置内の循環性を確保しながら残留応力をため込まず、耐割れ欠け性が低下しないことが分かった。
該複数の撹拌羽根の周速Vが0.1m/秒よりも低いと、トナーの循環性が不十分となり、トナー粒子表面の外添状態の均一性が低下し、高温高湿環境での画像濃度の低下を招く。また、処理装置内での原料(トナー粒子と無機微粒子との混合物)に温度分布が生じ、外添剤の不均一な固着状態となりやすい。一方で、7.0m/秒を超えると、トナーに対する撹拌羽根の衝突によって残留応力をため込み、割れやすくなる。結果として、低温低湿(LL)環境における転写性が悪化する。なお、処理装置内の均一な温度分布とトナー1粒子表面の外添剤均一被覆性、より高い流動性を達成するには、撹拌羽根の周速Vが0.5m/秒以上2.0m/秒以下がより好ましい。
また、本発明者らの検討では、上記周速条件を満たしつつ、該処理工程における該加熱混合開始時の該混合物の品温をT1、該トナー粒子のガラス転移温度をT2としたとき、T1は、T2-10℃以上T2+10℃以下で混合処理されると、埋め込みを抑制しつつ強固着化を達成でき、それにより高流動性を維持したまま、耐割れ性の向上が確認された。
T1がT2-10℃を下回ると、トナー粒子表面の軟化が起きにくく、大粒径の外添剤が固定化されにくくなる。結果として、高温高湿環境での耐久において、現像ローラに外添剤が付着し、それを起点としてトナー融着が起き、画像に白ポチやスジとなって現れる。一方で、T1がT2+10℃を超えると、トナーのガラス転移温度を大きく超えることになるために、処理装置内に融着が発生する。さらには、トナー粒子への外添剤の埋め込みが顕著になり、流動性が低下する。結果として、高温高湿環境における画像濃度低下と白後のカブリが悪化する。
また、加熱混合終了後の混合物の品温をT3としたとき、製造安定性の観点で、T3がT1-5℃以上T1+5℃以下であると好ましく、T1-2℃以上T1+2℃以下であるとさらに好ましい。
なお、混合物の品温T1に係る「混合開始時」とは、「処理装置内の処理空間に原料(トナー粒子と外添剤との混合物)を原料投入口より投入した後に回転体と撹拌羽根を回転させた直後」の意であり、後述のように、原料投入口内部に設置された熱電対でモニターされた温度をT1とする。
また、本発明においては、混合処理装置内での処理動力、処理時間、および処理量から計算される処理エネルギーを制御することも上記課題を達成する上で、重要である。
処理エネルギーを1.0×10-4Wh/g以上1.5×10-2Wh/g以下とすることで、外添剤の強固着化と高流動性の維持の両立が達成される。
1.0×10-4Wh/gを下回ると、外添剤の固着が不十分となり、高温高湿環境における白ポチやスジが生じる。また、1.5×10-2Wh/gを超えると、トナーと撹拌羽根との衝突機会が増えることになり、残留応力を蓄積しトナーの割れ欠けが起きやすくなる。結果として低温低湿環境における転写性が低下する。
このとき、混合槽内におけるトナー粒子の充填率は40.0体積%以上80.0体積%以下であることが好ましい。40.0体積%以上であることで、耐割れ欠け性が促進されない程度にトナー同士の衝突が適度に行われる。結果として、外添剤の固着率と被覆率の向上が両立しやすくなり、転写性が良化する。一方で80.0体積%以下であることによって、低動力下での運転であっても混合性が良く、トナー間での外添剤での被覆性が均一になりやすく、流動性が向上しやすい。結果として、画像濃度や高温高湿環境でのカブリ抑制が向上しやすくなる。
また、加温時間は特に限定されないが、好ましくは、3分以上30分以下、より好ましくは3分以上10分以下である。
前述した通り、トナーの高流動性を維持した状態で、トナー粒子表面の外添剤の強固着化とトナーの耐割れ欠け性の向上の両立は技術的にハードルが高く、これまで達成することが困難であった。すなわち、外添剤の固着率を高めようとすると、トナー粒子表面へより強い力で外添剤を打ち付ける必要がある。そのような条件下でトナーを製造すると、トナーは残留応力(歪み)を内部に蓄積する。結果、トナーがカートリッジ内で機械的シェアを受けることで、その内部に蓄積した残留応力を起点に、トナーの割れが促進し易くなる。一方、トナーの機械的強度を高める為に、歪みを生じさせないように、弱い力で外添剤を打ち付けると、トナー強度は維持できるが、逆に高い固着率を達成することが困難である。また、トナーの機械的強度を上げるために有効な、分子量を上げる手段を用いても、同様に外添剤は固着しにくくなる方向であり、また定着性も悪化しやすい。
そのため、従来のトナーの製造方法においては、高流動性を維持した状態で、トナーの耐割れ欠け性の向上と外添剤の強固着を両立させようとする発想自体がほとんど見られなかった。
本発明の最大の特徴としては、従来発想の無かった「低動力運転条件下」での固着レベルの向上と外添状態の均一性さらには耐割れ性の向上の両立にある。これにより、低温低湿環境下において耐久を通じて転写性が良好であるトナーを提供することができる。さらに、高温高湿環境下において、良好な画像濃度とカブリ低減が達成でき、耐久を通じて現像担持体等の外添剤による汚染を抑制することが初めて可能となった。
次に本発明のトナーを達成する為の好ましい製造方法について、図1、図2を用いて説明する。
本装置は、本体ケーシング30の内周部の径が、回転体32の外周部の径の2倍以下である。図1において、本体ケーシング30の内周部の径が、回転体32の外周部の径(回転体32から撹拌部材33を除いた胴体部の径)の1.7倍である例を示す。本体ケーシング30の内周部の径が、回転体32の外周部の径の2倍以下であると、トナー粒子に力が作用する処理空間が適度に限定されるため、二次粒子となっている外添剤を十分に分散することが可能となる。
また、上記クリアランスは、本体ケーシングの大きさに応じて、調整することが重要である。本体ケーシング30の内周部の径の、1%以上5%以下程度とすることが、トナー粒子に効率的に熱を加えるという点で好ましい。具体的には、本体ケーシング30の内周部の径が130mm程度の場合は、クリアランスを2mm以上5mm以下程度とし、本体ケーシング30の内周部の径が800mm程度の場合は、10mm以上30mm以下程度とすればよい。
図2に示す例では、撹拌羽根33aと33bは等間隔で、計12枚形成されている。
さらに、図2において、Dは撹拌羽根の幅、dは撹拌羽根の重なり部分を示す間隔を示す。トナーを、送り方向と戻り方向に効率よく送る観点から、図2における回転体32の長さ(L)に対するD(D/L)は0.2以上0.3以下程度の幅であることが好ましい。図2においては、0.23(23%)である例を示す。さらに撹拌羽根33aと33bは撹拌羽根33aの端部位置から垂直方向に延長線を引いた場合、撹拌羽根33bと撹拌羽根33aの重なり部分dをある程度有することが好ましい。
これにより、トナー粒子表面の外添剤を効率的に分散させることが出来る。Dに対するd(d/D)は、0.05以上0.4以下であることがシェアをかける点で好ましい。より好ましくは、0.1以上0.3以下である。
なお、羽根の形状に関しては、図2に示すような形状以外にも、送り方向および戻り方向にトナー粒子を送ることができ、クリアランスを維持することができれば、曲面を有する形状や先端羽根部分が棒状アームで回転体32に結合されたパドル構造であってもよい。
以下、図1および図2に示す装置の模式図に従って、本発明をさらに詳細に説明する。
図1に示す装置は、少なくとも複数の撹拌羽根33が表面に設置された回転体32を主要部とする撹拌部材31と、回転体32を回転駆動する駆動部38と、撹拌羽根33と間隙を有して設けられた本体ケーシング30を有する。さらに、本体ケーシング30の内側および回転体端部側面310にあって、冷熱媒体を流すことのできるジャケット34を有している。
さらに、図1に示す装置は、本体ケーシング30の上部に形成された原料投入口35と、本体ケーシング30の下部に形成された製品排出口36とを有している。原料投入口35は、トナー粒子を導入するために使用され、製品排出口36は外添混合処理されたトナーを本体ケーシング30から外に排出するために使用される。
さらに、図1に示す装置は、原料投入口35内に、原料投入口用インナーピース316が挿入されており、製品排出口36内に、製品排出口用インナーピース317が挿入されている。
本発明においては、まず、原料投入口35から原料投入口用インナーピース316を取り出し、トナー粒子を原料投入口35より処理空間39に投入し、原料投入口用インナーピース316を挿入する。次に、駆動部38により回転体32を回転させ(41は回転方向を示す)、上記で投入した処理物を、回転体32の表面に複数設けられた撹拌羽根33により撹拌、混合しながら加熱混合処理する。
本発明においては、ジャケット34に所望の温度の温水を通水することで、加温を行う。温度は、原料投入口用インナーピース316内部に設置した熱電対でモニターする。本発明のトナーを安定的かつ求められるトナー性能を得る為には、原料投入口用インナーピース316の熱電対温度(T1)として、T2をトナー粒子のガラス転移温度としたときに、T2-10℃以上T2+10℃以下である。より好ましくは、T2-10℃以上T2+5℃である。
処理時間としては、加温する温度にも依り、特に限定されないが、好ましくは、3分以上10分以下である。上記範囲に制御することで、高流動性と固着を両立し易くなる。なお、トナー粒子のガラス転移温度としては、保存性の観点から、45℃以上65℃以下が好ましい。
また、製造安定性の観点から、T3と処理時間を掛け合わせた値が、3000(℃・sec)以上100000(℃・sec)以下、さらには、8000(℃・sec)以上50000(℃・sec)以下であることが好ましい。このT3と処理時間を掛け合わせた値は、トナーにかかる熱量と同義であると本発明者らは考えている。この値を上記範囲内に制御することで、外添剤の強固着化と高流動性を両立しやすく、さらに品質安定性の高いトナーを得られやすい。
混合処理終了後、製品排出口36内の、製品排出口用インナーピース317を取り出し、駆動部38により回転体32を回転させ、製品排出口36からトナーを排出する。得られたトナーを、必要に応じて円形振動篩機などの篩機で粗粒などを分離し、トナーを得る。
本発明のトナーにおいては、外添工程以降に加温工程を設けることが好ましく、上記加熱混合処理条件を用いて、外添と加温処理を同時に実施しても良いし、外添工程を終了したトナーに対して、上記装置で加温処理しても良い。
本発明において特に好ましい処理方法としては、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような公知の混合機により混合外添した後に、上記加熱混合処理装置で加温することが好ましい。
混合機としては、以下のものが挙げられる。三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
本発明の外添剤は、無機微粒子、又は有機無機複合微粒子である。また、本発明に使用される無機微粒子は、個数平均粒径(D1)が、耐久を通じて性能を維持する上で、好ましくは40nm以上200nm以下であり、より好ましくは80nm以上150nm以下である。粒径が上記範囲の無機微粒子を用いて、本発明の強固着状態を達成することで、長期に渡り安定的かつ良好な転写性および、スリーブ融着により発生する白ポチやスジのない画像得ることが可能となる為好ましい。
また、個数平均粒径(D1)が、40nm以上200nm以下の無機微粒子とは、別により粒径の小さい別の無機微粒子と併用することがより好ましい。大小粒径の異なる無機微粒子を用いることで、帯電性と流動性を制御し易くなる為好ましい。無機微粒子を併用する際には、40nm以上200nm以下の無機微粒子Aと、個数平均粒径(D1)が40nm未満の無機微粒子Bを用いることが好ましい。
本発明で用いられる無機微粒子は、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、及びそれらの複合酸化物微粒子等の微粒子が挙げられるが、有機微粒子を含有した有機無機複合微粒子でもよい。
前記無機微粒子としては、これらの中でも、シリカ微粒子であることが好ましい。シリカ微粒子の製造方法としては、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法(すなわちヒュームドシリカの製造方法)、金属ケイ素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法、ケイ酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式法、ヒドロカルビルオキシシランなどのアルコキシシランの加水分解によって得られるゾルゲル法(いわゆるStoeber法)が挙げられる。
前記無機微粒子は、疎水化処理によって疎水化度を制御して用いることが好ましい。疎水化度を制御することにより、液滴と疎水性の分散媒体との界面に無機微粒子が偏在しやすくなり、液滴の分散安定性を向上させやすくなる。無機微粒子を疎水化処理する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、無機微粒子を疎水化処理剤で処理する方法が好ましい。
疎水化処理剤としては、具体的に、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のクロロシラン類;テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類;ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルのシリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類;脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸等の長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、ストレートシリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機無機複合微粒子であれば、無機材料としての良好な耐久性及び帯電性を維持しつつ、定着時においては、熱容量の低い有機材料の成分により、トナー粒子の合一を阻害し難く、定着阻害を生じ難い。その為、耐久性と定着性の両立を図りやすい。
有機無機複合微粒子の好ましい構成としては、有機成分である樹脂微粒子の表面に埋め込まれた無機微粒子で構成された複合微粒子である。より好ましくは、ビニル系樹脂粒子の表面に無機微粒子であるシリカ微粒子が露出している構造を有することである。更に好ましくは、該ビニル系樹脂粒子の表面に、該無機微粒子に由来する凸部を有する構造である。
また、上記シリカ微粒子に加えて、例えば、フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤;酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤等を用いても良い。
以降、本発明に係るトナー粒子の構成素材についてより詳細に説明する。
また、本発明のトナー粒子に使用される結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。中でも好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応したハイブリッド樹脂。
本発明に係るトナー粒子は、離型剤を含有しても良い。
離型剤としては、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;および脱酸カルナウバワックスなどのような脂肪酸エステル類から酸成分の一部または全部を脱酸したもの;植物性油脂の水素添加などによって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニルなどの飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリルなどの飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレートなどの飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪酸とのジエステル化物、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);炭素数12以上の長鎖アルキルアルコールまたは長鎖アルキルカルボン酸;などが挙げられる。
これらの離型剤の中では、飽和脂肪酸モノエステル類やジエステル化物などの1官能または2官能のエステルワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素ワックスが好ましい。
また、該離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピークのピーク温度で規定される融点は、60℃以上140℃以下であることが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下である。融点が60℃以上であると、本発明のトナーの保存性が向上する。一方、融点が140℃以下であると、低温定着性が向上しやすくなり好ましい。
上記離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、3質量部以上30質量部以下が好ましい。離型剤の含有量が3質量部以上であると、定着性が良化しやすくなる。一方、離型剤の含有量が30質量部以下であると、長期使用時にトナーの劣化が起こりにくくなり、画像安定性が向上しやすくなる。
本発明に係るトナー粒子は、荷電制御剤を含有することが好ましい。
負帯電用の荷電制御剤としては、有機金属錯化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯化合物;アセチルアセトン金属錯化合物;芳香族ハイドロキシカルボン酸または芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物などが例示される。市販品の具体例として、Spilon Black TRH、T-77、T-95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89(オリエント化学工業(株))が挙げられる。
これらの荷電制御剤は単独、あるいは二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらの荷電制御剤の使用量は、磁性トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部当たり0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下である。
本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、およびこれらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、マグネタイトが好ましく用いられ、その形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形などの異方性の少ないものが、画像濃度を高めるうえで好ましい。
磁性酸化鉄粒子は、体積平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が0.10μm以上であると、磁性酸化鉄粒子が凝集しにくくなり、トナー中での磁性酸化鉄粒子の均一分散性が向上する。また体積平均粒径が0.40μm以下ではトナーの着色力が向上するため好ましく用いられる。
なお、磁性酸化鉄粒子の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍~4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性酸化鉄粒子粒子径を測定する。そして、磁性酸化鉄粒子の投影面積に等しい円の相当径を基に、体積平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独或いは2以上のものを併用して用いる。
トナーの機械的強度の点では、着色剤として磁性酸化鉄粒子を用いる、磁性トナーの方が結着樹脂と磁性酸化鉄粒子の界面で、結合力が弱くなる為、不利になり易い。
本発明の効果は、磁性トナー、非磁性トナー、どちらにおいても効果は得られるが、特に機械強度が不利な磁性トナーにおいて、大きな効果を得やすい。
以下に、本発明に係るトナー粒子の製造方法について例示するが、特に製造方法に限定は無く、粉砕法によって製造することも可能であるが、分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法、乳化凝集法など、水系媒体中でトナー粒子を製造することが好ましく、特に懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしたトナー粒子が得られやすく非常に好ましい。
懸濁重合法では、先ず、重合性単量体中に、着色剤(さらに必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に、適当な撹拌器を用いて、得られた重合性単量体組成物を分散し、重合開始剤を用いて重合反応を行い、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。
この懸濁重合法で得られるトナー粒子(以後「重合トナー粒子」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、本発明に好適な物性要件を満たすトナー粒子が得られ易い。
重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用することがトナー構造を制御し、トナーの現像特性および耐久性を向上し易い点から好ましい。特に、スチレンとアクリル酸アルキルまたは、スチレンとメタクリル酸アルキルを主成分として使用することがより好ましい。
本発明に係るトナー粒子の重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5,000以上50,000以下の間に極大を有する重合体を得、トナー粒子に好ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
本発明においては、定着性と機械的強度の観点からピーク分子量Mpが10,000以上35,000以下が好ましく、より好ましくは15,000以上30,000以下が好ましい。
具体的な重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。この中でも、パーオキシジカーボネートタイプであるジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネートが先述したように低分子量かつ直鎖タイプの分子構造を有する結着樹脂を製造しやすいため好ましく用いられる。
本発明に係るトナー粒子を重合法により製造する際は、架橋剤を添加してもよく、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレートなどのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で、または2種以上の混合物として用いられる。
重合性単量体組成物には、極性樹脂を含有させることが好ましい。懸濁重合法では、水系媒体中で磁性トナー粒子を製造するため、極性樹脂を含有させることによって、トナー粒子の表面に極性樹脂の層を形成することができ、コア/シェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
コア/シェル構造を有していることで、コアおよびシェル設計の自由度が増す。例えば、シェルのガラス転移温度を高くすることで、外添剤の埋め込みなどの耐久劣化(長期使用時の劣化)を抑制できるようになる。またシェルに遮蔽効果を付与することで、シェルの組成が均一化させやすいため、均一帯電できるようになる。
シェル層用の極性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ポリエステル共重合体、ポリアクリレート-ポリエステル共重合体、ポリメタクリレート-ポリエステル共重合体、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂などがあり、これらを単独で、または2種以上を混合して使用することができる。また、これらポリマー中にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基などの官能基を導入してもよい。これらの樹脂の中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表されるビスフェノール誘導体;
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2以上10以下である。)
あるいは、式(A)の化合物の水添物、また、式(B)で示されるジオール;
あるいは、式(B)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、帯電特性、環境安定性が優れておりその他の電子写真特性においてバランスのとれた前記のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が特に好ましい。この化合物の場合には、定着性やトナーの耐久性の点においてアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2以上10以下が好ましい。
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
さらに、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルを例示することができ、3価以上の酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物などを例示することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分との合計を100モル%としたとき、45モル%以上55モル%以下がアルコール成分であることが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂は、スズ系触媒、アンチモン系触媒、チタン系触媒などいずれの触媒を用いて製造することができるが、チタン系触媒を用いることが好ましい。
また、シェル用の極性樹脂は、現像性、耐ブロッキング性、耐久性の観点から、数平均分子量が2500以上25000以下であることが好ましい。なお、数平均分子量はGPCにより測定できる。
シェル用の極性樹脂は、酸価が1.0mgKOH/g以上15mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは酸価が2mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である。酸価を上記範囲に制御することで、均一なシェルを形成しやすい。
シェル層用の極性樹脂は、シェル層による効果を十分に得るという観点から、結着樹脂100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下含有されることが好ましい。
重合性単量体組成物が分散される水系媒体には分散安定剤が含有されるが、分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好ましく使用できる。
こうした無機分散剤の例としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどのリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下を使用することが好ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。
例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。このとき、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生しにくくなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度に設定される。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤が相分離により析出して内包化がより完全となる。その後、50℃以上90℃以下程度の反応温度から冷却し、重合反応工程を終了させる冷却工程がある。その際に、離型剤と結着樹脂の相溶状態を保つように徐々に冷却することが好ましい。
上記重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、シリカ微粒子等の無機微粒子を前述のごとく混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
次に、本発明に関わる各物性の測定方法に関して記載する。
<外添剤の固着率の測定方法>
シリカ微粒子を例に説明する。
50mL容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液20gを秤量し、トナー1gと混合する。
いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、speedを50に設定して30秒間振とうする。これにより、シリカ微粒子の固着状態に依っては、シリカ微粒子がトナー粒子表面から、分散液側へ移行する。
その後、磁性トナーの場合は、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束した状態で、上澄み液を分離させ、沈殿しているトナーを真空乾燥(40℃/1日)することで乾固させて、サンプルとする。
なお、非磁性トナーの場合は、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)(1000rpmにて5分間)にて、トナーと移行したシリカ微粒子とを分離する。
上記処理を施す前後のサンプルに関して、下記に示す波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Siの強度を使用することにより、シリカ微粒子の定量を行う。そして、上記処理によって上澄み側へ移行せずにトナー粒子表面に残るシリカ微粒子の量を下記式から求め、固着率とする。サンプル100個の相加平均値を採用する。
(i)使用装置の例
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
(ii)サンプル調製
サンプルの調製は、試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を使用する。アルミリング(型番:3481E1)にトナー0.5gを入れて5.0トンの荷重に設定し1minプレスし、ペレット化させる。
(iii)測定条件
測定径:10φ
測定電位、電圧 50kV、50~70mA
2θ角度 25.12°
結晶板 LiF
測定時間 60秒
(iii)シリカ微粒子の固着率の算出方法について
[式]シリカ微粒子の固着率(%)=(処理後トナーSi強度/処理前トナーSi強度)×100
<外添剤の一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーから外添剤の一次粒子の個数平均粒径を求める方法としては、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー粒子の表面の外添剤画像から算出される。S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
外添剤の一次粒子の個数平均粒径の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べて外添剤のチャージアップが少ないため、外添剤の粒径を精度良く測定することができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。
フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。
同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)外添剤の個数平均粒径(D1)(理論被覆率を算出する際に用いる“da”)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を1つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー粒子の表面上の粒径が30nm以上の少なくとも300個の外添剤について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、外添剤は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、外添剤の一次粒子の個数平均粒径(D1)を得る。
なお、複数種の外添剤を用いる場合は、予めエネルギー分散型X線分析装置(EDAX)による元素分析を行い、トナー表面における外添剤の種類を特定した上で、各々の外添剤の一次粒子の個数平均粒径を求めた。
表面観察法による個数平均粒子径の算出が困難な場合は、あらかじめ測定したそれぞれの外添剤の個数平均粒径を採用してもよい。その場合は、外添剤単独を透過電子顕微鏡で観察し、100個の粒子の長径を測定して個数平均粒子径を求める。
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)ultisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナー粒子の平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。
さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス(株)製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本発明においては、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用する。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
フロー式粒子像測定装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローセルに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。
フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200~1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
<外添剤の被覆率の測定方法>
トナー粒子の表面の外添剤による被覆率(X1とする)は、以下のようにして算出する。
下記装置を下記条件にて使用し、トナー表面の元素分析を行う。
・測定装置:Quantum2000(商品名、アルバックファイ(株)製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300μm×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:1.25eV
・解析ソフト:Multipak(PHI社)
例えばシリカ微粒子の被覆率を求める場合は、C 1c(B.E.280~295eV)、O1s(B.E.525~540eV)及びSi 2p(B.E.95~113eV)のピークを使用してSi原子の定量値を算出する。ここで得られたSi原子の定量値をY1とする。
次いで、上述のトナーの表面の元素分析と同様にして、シリカ微粒子単体の元素分析を行い、ここで得られたSi原子の定量値をY2とする。
トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、上記Y1及びY2を用いて下式のように定義される。
X1(面積%)=(Y1/Y2)×100
測定は同一のサンプルで100回測定し、それらの相加平均値を採用する。
また、外添剤を複数種用いる場合は、それぞれの外添剤について上記被覆率X1を求め、それらを足し合わせた値をX1とする。
定量値Y2を求めるに際して、外添に使用された外添剤を入手できれば、それを用いて測定を行えばよい。
また、トナー粒子の表面から分離した外添剤を測定試料とする場合、外添剤のトナー粒子からの分離は以下の手順で行う。
1)磁性トナーの場合
まず、イオン交換水100mLに、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6mL入れ分散媒を作製する。この分散媒に、トナー5gを添加し、超音波分散機(アズワン(株)VS-150)で5分間分散させる。その後、いわき産業(株)製「KM Shaker」(model:V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。
その後、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束し、上澄みを採取する。この上澄みを乾燥させることにより、外添剤を採集する。十分な量の外添剤を採集することができない場合には、この作業を繰り返して行う。
複数種の外添剤を用いる場合、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、外添剤を選別すればよい。
2)非磁性トナーの場合
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを上記シェイカーにて1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナーが存在し、下層の水溶液側には外添剤が存在する。下層の水溶液を採取して、遠心分離を行い、ショ糖と外添剤とを分離し、外添剤を採集する。必要に応じて、遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、外添剤を採集する。
磁性トナーの場合と同様に、複数種の外添剤を用いる場合、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、外添剤を選別する。
<トナー粒子及び外添剤の真密度の測定方法>
トナー粒子の真密度は、島津製作所製の乾式自動密度計「アキュピック1330」を用い、当該機器の操作マニュアルに従い測定する。
<トナー粒子のTgの測定>
トナー粒子のTgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度40℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、トナー粒子のガラス転移温度Tgとする。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部である。実施例23は参考例である。
<処理磁性体の製造例>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の水酸化ナトリウム溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。該水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(水酸化ナトリウムのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。
得られたスラリー液を濾過、洗浄した後、この含水スラリーを一旦取り出した。この時、含水スラリーを少量採取し、含水量を計っておいた。
次に、この含水スラリーを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整した。
そして、撹拌しながらn-ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し1.6部(磁性酸化鉄の量は含水スラリーから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの処理磁性体を得た。
<外添剤1の製造例>
撹拌機付きオートクレーブに、シリカ原体(一次粒子の個数平均粒径=12nmのヒュームドシリカ)を投入し、撹拌による流動化状態において、200℃に加熱した。
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、シリカ原体100部に対し、25部のヘキサメチルジシラザンを内部に噴霧し、シリカの流動化状態でシラン化合物処理を行った。この反応を60分間継続した後、反応を終了した。反応終了後、オートクレーブを脱圧し、窒素ガス気流による洗浄を行い、疎水性シリカから過剰のヘキサメチルジシラザン及び副生物を除去した。
さらに、反応槽内の疎水性シリカを撹拌しながら、シリカ原体100部に対し、10部のジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/秒)を噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら300℃まで昇温させてさらに2時間撹拌した。その後、取り出し解砕処理を実施し、シリカ微粒子である外添剤1を得た。物性を表1に示す。
<外添剤2の製造例>
外添剤2の製造には、燃焼炉は、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物が導入される。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成する。可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等が調整される。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させる。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによって得られる。原料の珪素化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカ微粒子を製造し、得られたシリカ微粒子99.6質量%に、ヘキサメチルジシラザン0.4質量%で表面処理した。物性を表1に示す。
<外添剤3の製造例>
撹拌機、滴下ろうとおよび温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、メタノール687.9g、純水42.0gおよび28質量%アンモニア水47.1gを入れて混合した。得られた溶液を35℃となるように調整し、撹拌しながらテトラメトキシシラン1100.0g(7.23mol)および5.4質量%アンモニア水395.2gを同時に添加し始めた。テトラメトキシシランは5時間かけて、アンモニア水は4時間かけて、それぞれを滴下した。
滴下が終了した後も、さらに0.2時間撹拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状ゾルゲルシリカ微粒子のメタノール-水分散液を得た。次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前記分散液を65℃に加熱してメタノールを留去した。その後、留去したメタノールと同量の純水を添加した。この分散液を80℃、減圧下で十分乾燥させた。得られたシリカ粒子を、恒温槽にて400℃で10分間加熱した。上記工程を20回実施し、得られたシリカ微粒子を、パルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)にて解砕処理を行った。
その後、シリカ粒子500gを内容積1000mLのポリテトラフルオロエチレン内筒式ステンレスオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブ内を窒素ガスで置換した後、オートクレーブ付属の撹拌羽を400rpmで回転させながら、0.5gのHMDS(ヘキサメチルジシラザン)および0.1gの水を、二流体ノズルにて霧状にしてシリカ粉末に均一に吹き付けた。30分間撹拌した後、オートクレーブを密閉し、200℃で2時間加熱した。続いて、加熱したまま系中を減圧して脱アンモニアを行い、外添剤3を得た。物性を表1に示す。
<外添剤4の製造例>
外添剤4として、WO 2013/063291の実施例1に従って製造したものを用意した。物性を表1に示す。
<外添剤5の製造例>
外添剤5は、市販のチタン酸ストロンチウム(富士チタン工業株式会社製)を用いた。物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル1の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、原料モノマーとして、カルボン酸成分とアルコール成分を表2に示すように調整し、入れた後、エステル化触媒(オクチル酸スズ)をモノマー総量100部に対して1.5部添加した。
次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。
210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、非晶性ポリエステル1を得た。
なお、非晶性ポリエステル1のピーク分子量は表2の値となるように重合時間を調整した物性を表1に示す。
<非晶性ポリエステル2の製造例>
原料モノマー及び使用量を表2の記載に変更した以外は、非晶性ポリエステル1と同様にして非晶性ポリエステル2を得た。物性を表2に示す。
<トナー粒子1の製造例>
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・非晶性ポリエステル1 10.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T-77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・処理磁性体 65.0部
上記処方をアトライタ(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点78℃)15.0部を添加混合し、溶解した。その後、重合開始剤tert-ブチルパーオキシピバレート6.0部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で4時間反応させた。反応終了後、ここで得られた水系媒体中には、着色樹脂粒子が分散しており、該着色樹脂粒子表面には無機分散剤として、リン酸カルシウムが付着していることを確認した。
続いて、着色樹脂粒子が分散された水系媒体を100℃まで昇温させ、120分間保持した。その後、毎分3℃で室温まで冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1の物性を表3に示す。
<トナー粒子2の製造例>
イオン交換水720部に0.1モル/L-Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L-CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 74.0部
・n-ブチルアクリレート 26.0部
・非晶性ポリエステル2 10.0部
・ジビニルベンゼン 0.4部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T-77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・カーボンブラック(MA100:三菱化学社製) 7.0部
上記処方をアトライタ(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこにパラフィンワックス(融点78℃)10.0部とエステルワックス(融点72℃)を5.0部添加混合し、溶解した。その後、重合開始剤tert-ブチルパーオキシピバレート6.0部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で4時間反応させた。反応終了後、ここで得られた水系媒体中には、着色樹脂粒子が分散しており、該着色樹脂粒子表面には無機分散剤として、リン酸カルシウムが付着していることを確認した。
続いて、着色樹脂粒子が分散された水系媒体を100℃まで昇温させ、120分間保持した。その後、毎分3℃で室温まで冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子2を得た。得られたトナー粒子2の物性を表3に示す。
<トナー粒子3の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン71.0部、テレフタル酸28.0部、無水トリメリット酸1.0部及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内に置く。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応せしめてポリエステル樹脂1-1を得る。このポリエステル樹脂1-1の物性は、重量平均分子量(Mw)80000、数平均分子量(Mn)3500、ピーク分子量(Mp)5700である。
また、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン70.0部、テレフタル酸20.0部、イソフタル酸3.0部、無水トリメリット酸7.0部及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内におく。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、220℃の温度で撹拌しつつ、6時間反応せしめてポリエステル樹脂1-2を得る。このポリエステル樹脂1-2の物性は、重量平均分子量(Mw)120000、数平均分子量(Mn)4000、ピーク分子量(Mp)7800である。
上記ポリエステル樹脂1-1:70部、ポリエステル樹脂1-2:30部を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で予備混合し、溶融混練機(PCM-30型、池貝鉄工(株)製)にて回転数3.3s-1、混練樹脂温度100℃の条件で溶融ブレンドし、結着樹脂1を得た。
次に、
・低密度ポリエチレン
(Mw1400、Mn850、DSCによる最大吸熱ピークが100℃) 20.0部
・スチレン 64.0部
・n-ブチルアクリレート 13.5部
・アクリロニトリル 2.5部
以上をオートクレーブに仕込み、系内をN2置換後、昇温撹拌しながら180℃に保持する。系内に、2質量%のt-ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50部を5時間連続的に滴下し、冷却後、溶媒を分離除去し、重合体Aを得る。重合体Aの分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が7000、数平均分子量(Mn)が3000であった。
次に、
・結着樹脂1 100部
・重合体A 5部
・フィッシャートロプシュワックス 5部
(最大吸熱ピークのピーク温度78℃)
・C.I.Pigment Blue 15:3:大日精化社製 8部
・負荷電性制御剤(3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
0.5部
上記処方を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、池貝鉄工(株)製)にて混練する。この混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得る。得られる粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて粉砕する。さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機により分級を行い、樹脂粒子を得る。
こうして得られた樹脂粒子を機械式の分級同時球形化処理装置(ファカルティ、ホソカワミクロン社製)に通し、分級ローター回転数120s-1で微粒子を除去しながら、分散ローター回転数100s-1(回転周速を130m/sec)で60秒間表面処理を行い、トナー粒子3を得た。得られたトナー粒子3の物性を表3に示す。
<トナー1の製造例>
トナー粒子1 100部、外添剤1 0.3部、外添剤2 1.5部、外添剤5 0.3部を、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、周速42m/secで5分間混合した(1段目;表4-1)。その後、図1に示す装置を用いて、加熱混合処理を行った(2段目;表4-2)。
図1に示す装置は、本体ケーシング30の内周部の径が130mmのものを用い、さらに表4-2に示す装置構成条件とした。原料投入口用インナーピース316内部の温度(T1)が55℃となるように、ジャケット内に温水を通水した。
上記構成とした図1に示す装置に、上記外添トナーを投入後、表4-2に示す実効運転動力で一定となるように、撹拌羽根33の最外端部周速(1.0m/sec)を調整しながら、10分間加熱処理した。
加熱処理終了後、目開き75μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の諸物性を表5に示す。
<トナー2乃至トナー37の製造例>
トナー1の製造例において、表4-1および4-2に示す処方、及び製造条件にすること以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2乃至トナー37を得た。得られたトナー2乃至トナー37の諸物性を表5に示す。
〔実施例1〕
<画像形成装置>
HP製プリンタ(LaserJet Pro M203dw)用カートリッジ(CF230X)にトナー1を150g充填し、高温高湿環境と低温低湿環境それぞれで下記評価を実施した。
まず、上記本体とカートリッジを高温高湿環境下(32.5℃ 80%RH)に5日間放置する。放置後、下記評価を実施する。
<画像濃度>
画像濃度は、高温高湿環境(32.5℃ 80%RH)において全面ベタ黒画像を形成し、このベタ画像の濃度をマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。評価タイミングは、カートリッジにトナーを投入直後に実施した。結果を表6に示す。なお、判断基準は以下の通りである。C以上を良好と判断する。
A:1.45以上
B:1.40以上1.45未満
C:1.35以上1.40未満
D:1.35未満
<Dr上白後カブリ>
カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定する。フィルターは、グリーンフィルターを用いる。黒後ドラム上カブリはベタ黒画像を出力した直後の白画像について、ドラム(静電潜像担持体)上をマイラーテープでテーピングし、紙上にマイラーテープを貼ったものの反射率から、直接紙上に貼ったマイラーテープのマクベス濃度を差し引いて算出し、以下のような判断基準で評価した。
カブリ(反射率)(%)=ドラム上をテーピングしたテープの反射率(%)―直接紙に貼ったテープの反射率(%)
なお、評価タイミングは、上記画像濃度評価を実施した直後である。結果を表6に示す。判断基準は以下の通りである。C以上を良好と判断する。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上15%未満
D:15%以上
<スリーブ融着>
繰り返し使用試験終了後、スリーブ表面を目視で観察し、トナー汚染の程度を下記の基準で評価した。C以上を良好と判断する。
A:汚染は観察されない
B:軽微な汚染が観察される
C:部分的に汚染が観察される
D:著しい汚染が観察される。
続いて低温低湿環境下での評価を行う。改めてトナーをカートリッジに投入後本体とカートリッジを低温低湿環境(15.0℃、 10.0%RH)に5日間放置する。放置後、繰り返し使用試験を実施する。繰り返し使用試験としては、上記高温高湿環境下での評価と同様、印字率が1%の横線画像を、2枚間欠通紙にて1日1000枚、計5000枚(5日)印字した。なお、繰り返し使用試験に用いる評価紙として坪量が75g/m2のVitality(Xerox社製)を用いて行う。
なお、将来の高速化を想定し、本体のプロセススピードを変更する改造を施し、30枚/分から33枚/分へと高速化させた。
<転写性の評価>
低温低湿環境(15.0℃、10.0%RH)において、トナーをカートリッジに投入した直後と5000枚印字後それぞれで、転写電流を8.0μAに調整したときのベタ画像形成時の静電潜像担持体上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープ(商品名:ポリエステルテープ No.5511、供給先:ニチバン社)によりテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度を、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度から差し引いた濃度差をそれぞれ算出した。
濃度の測定には、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。
A:濃度差が5.0未満で非常に良好である
B:濃度差が5.0以上10.0未満で良好である
C:濃度差が10.0以上15.0未満である
D:濃度差が15.0以上である
〔実施例2乃至30、比較例1乃至7〕
表6に示すトナーに対して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。