JP7338011B2 - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真及び静電印刷等の画像形成装置に用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
トナーを使用する電子写真方式の代表機器としてレーザープリンターや複写機が挙げられる。近年は急激にカラー化が進み、一層の高画質化が求められている。トナーを使用する電子写真の課題として、転写性の改善が挙げられる。例えば、静電荷像担持体である感光体上に形成されたトナー像が転写工程で転写材に転写される際、感光体上にトナーが残る(転写残トナー)場合がある。
トナーの転写性を向上させるためには、静電荷像担持体に対するトナーの付着力を下げることが有効であると一般的に知られている。トナーの付着力を下げる手段として、外添剤をトナー粒子表面に付着させることが挙げられる。特に、大粒径の球状外添剤の添加によるスペーサー効果によって、トナーと静電荷像担持体との物理的な付着力を引き下げ、転写効率を向上させる手法があることが知られている。
しかし、これは転写効率を向上する方法として有効ではあるが、長期にわたる画像出力によって、球状大粒径外添剤が移動・脱離・埋没し、スペーサーとして機能できなくなる。そのため、期待された転写効率向上の効果が安定して得ることが難しかった。
そこで、大粒径外添剤を半埋没させて外添剤の移動・脱離を抑制する手法が提案されている。(特許文献1)
一方、半球形状の大粒径外添剤を用いることで、脱離・埋没を抑制する手法が提案されている。(特許文献2)
一方、外添以外の手法で転写性向上を達成するために、トナー粒子表面を有機ケイ素化合物で覆う手法について検討が重ねられている。
トナー粒子表面をケイ素化合物で覆う技術思想の例として、反応系にシランカップリング剤を添加することを特徴とする重合トナーの製造方法が開示されている(特許文献3)。
また、大粒径外添剤とシランカップリング剤を併用する手法が提案されている。(特許文献4)この手法により、シランカップリング剤により大粒径外添剤をトナー粒子表面に固定化しつつ、トナー粒子表面の粗さを制御することが可能となった。その結果、大粒径外添剤の移動・脱離・埋没を抑制することができ、長期に渡り高い転写性を発現させることができるようになった。
特開2009-36980号公報 特開2008-257217号公報 特開2001-75304号公報 特開2017-138462号公報
特許文献1の発明により、大粒径外添剤を半埋没させることで、大粒径外添剤の移動・脱離は抑制できるようになり、スペーサー効果が長期に渡って発現するようになった。しかし、半埋没させた結果、耐久後半での埋没が加速されることがわかった。
また、特許文献2によって半球形状の大粒径外添剤を用いることで、大粒径外添剤の移
動・埋没が抑制され、スペーサー効果が長期に渡って発現するようになった。しかし、この手法では均一のトナー粒子表面へ大粒径外添剤を固着させることが困難なため、さらなる長寿命化に対応した、転写効率向上の効果を維持することが困難であることが判った。
さらに、特許文献1及び2のいずれの場合も乾式外添であるため、大粒径外添剤の固着の均一性に課題を有することがわかった。すなわち、特許文献1の場合、移動・脱離が完全に抑制されておらず、脱離した大粒径外添剤による部材汚染が発生する場合がある。特許文献2においても半球形状の凸部がトナー粒子表面を向いている場合移動・脱離が起こりやすく部材汚染が発生する。
一方、特許文献3では、トナー粒子表面へのシラン化合物の析出量が不十分であることから、ケイ素化合物による被覆が十分でないため、高い転写性が得られなかった。
特許文献4では、使用する大粒径外添剤が球体であるため、トナーが受けた法線方向の荷重が大粒径外添剤の一点に集中してしまい、埋没に対する耐久性に課題を有することがわかった。そのため、さらなる長寿命化を得るためには十分ではない。
本発明は上記のような問題を解決することを目的とする。すなわち、高い転写性を発現し、かつ、長期に渡って使用してもトナーが変化しにくく、高い転写性を維持することが可能なトナーを提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、トナー粒子表面に凸部を形成し、該凸部の形状を制御することで上記課題を解決したトナーが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、トナー粒子を有するトナーであって、
該トナー粒子が、
トナー母粒子、及び
該トナー母粒子の表面における有機ケイ素重合体凸部
を有し、
該凸部は、該有機ケイ素重合体が析出したものであり、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察によって、トナー母粒子の表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さをwとし、該周に沿った線の法線方向において該凸部の最大長をDとし、該Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さをHとしたとき、
該Dと該Hが同じであり、
該Hが40nm以上300nm以下である該凸部における、
該wに対する該Dの比D/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察において、該水平画像の幅を周囲長Lとし、該水平画像に存在する該有機ケイ素重合体の該凸部のうち、該Hが40nm以上300nm以下となる該凸部の該wの合計をΣwとしたとき、
Σw/Lが、0.30以上0.90以下である
ことを特徴とするトナーに関する。
Figure 0007338011000001

(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
本発明によれば、高い転写性を発現し、かつ、長期に渡って使用してもトナーが変化しにくく、高い転写性を維持することが可能なトナーを提供することができる。
トナーのSTEMによる断面観察の模式図 トナーの凸形状の計測の仕方を表した模式図 トナーの凸形状の計測の仕方を表した模式図 トナーの凸形状の計測の仕方を表した模式図
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明のトナーは、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該トナー母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察によって、トナー母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとしたとき、
該凸高さHが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径Dの比D/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であることを特徴とするトナーに関する。
Figure 0007338011000002

(Rは炭素数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基である。)
以下、上記各要件について、詳細に説明する。
本発明のトナーは、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を有する。該凸部は、トナー母粒子表面に面接触している。面接触することにより、該凸部の移動・脱離・埋没に対する抑制効果が顕著に期待できる。面接触の程度を表すために、トナーのSTEMによる断面観察を行った。図1~4にトナー粒子の該凸部の模式図を示す。
図1に示す1がSTEM像であり、トナー粒子の約1/4程度が分かる像であり、2はトナー母粒子、3はトナー母粒子表面、4が凸部である。
トナーの断面画像を観察し、トナー母粒子表面の周に沿った線を描く。その周に沿った線を基準に水平画像へ変換を行う。該水平画像において、該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。また、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径Dとし、該凸径Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さHとする。
図2及び図4においては凸径Dと凸高さHは同じであり、図3において凸径Dは凸高さHより大きくなる。
また、図4は、中空粒子を潰す・割るなどして得られた、半球粒子の中心部が凹んだ、ボウル形状の粒子に類する粒子の固着状態を模式的に表したものである。図4において、凸幅wはトナー母粒子表面と接している有機ケイ素化合物の長さの合計とする。すなわち、図4における凸幅wはW1とW2の合計となる。
上記条件に基づき、有機ケイ素化合物の凸部において、該凸幅wに対する該凸径Dの比D/wが、0.33以上0.80以下の凸形状であれば、凸部が移動・脱離・埋没しにくいことを見出した。すなわち、該凸高さHが40nm以上300nm以下である凸部において、該比D/wが0.33以上0.80以下の凸部の個数割合P(D/w)が70個数%以上であれば、長寿命化に耐えうる優れた転写性を発現することを見出した。
40nm以上の凸部によって、トナー母粒子表面との転写部材との間にスペーサー効果が生じることで、転写性が良化しているものと考えられる。一方、300nm以下の凸部によって、耐久評価を通じて、移動・脱離・埋没への抑制効果が著しく発現していると考えられる。
40nm以上300nm以下の凸部の割合として、個数割合P(D/w)が70個数%以上であれば、耐久を通じて転写性を維持しつつ、さらに高い部材汚染抑制効果が発現することが判った。P(D/w)は、75個数%以上であることが好ましく、80個数%以上であることがより好ましい。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは99個数%以下であり、より好ましくは98個数%以下である。
また、走査透過型電子顕微鏡STEMによるトナーの断面観察において、上記水平画像の幅(トナー母粒子表面の周に沿った線の長さ)を周囲長Lとし、上記水平画像に存在する有機ケイ素重合体の凸部のうち、凸高さHが40nm以上300nm以下となる凸部の凸幅wの合計をΣwとしたとき、Σw/Lが0.30以上0.90以下であることが好ましい。
Σw/Lが0.30以上であれば転写性と部材汚染の抑制効果がより良好になり、Σw/Lが0.90以下であると転写性がより優れる。Σw/Lは、0.45以上0.80以下であればより好ましい。
さらに、トナーの有機ケイ素重合体の固着率が80質量%以上であることが好ましい。固着率が80質量%以上であれば、転写性及び部材汚染の抑制効果が耐久使用を通じてより持続させやすい。該固着率は、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。該固着率を制御する方法の一例として、有機ケイ素化合物を添加し重合する際の、有機ケイ素重合体の添加速度、反応温度、反応時間、反応時のpH及びpH調整のタイミングなどが挙げられる。
また、転写性をより良好にする観点から、該凸高さHが40nm以上300nm以下である凸部において、該凸高さHの累積分布をとり、該凸高さHの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをH80としたとき、該H80は65nm以上であることが好ましい。より好ましくは75nm以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
走査型電子顕微鏡SEMよるトナーの観察において、有機ケイ素重合体の凸部の最大径を凸径Rとしたときに、該凸径Rの個数平均径が20nm以上80nm以下であることが好ましい。より好ましくは、35nm以上60nm以下である。上記範囲であると、部材汚染が発生しにくくなる。
トナーは、下記式(1)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を含む。
Figure 0007338011000003
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
式(1)の構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、
多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO)と類似の性質を有することが考えられる。
式(1)で表される部分構造において、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。
炭素数が1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく例示できる。さらに好ましくは、Rはメチル基である。
有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
Figure 0007338011000004
(式(Z)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
1は炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基である
ことがより好ましい。
、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成する。
加水分解性が室温で穏やかであり、トナー母粒子の表面への析出性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。
また、R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のRを除く一分子中に3つの反応基(R、R及びR)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
上記式(Z)で表される化合物としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシランのような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシ
シラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
また、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
上記特定の凸形状をトナー粒子表面に形成する好ましい手法として、水系媒体にトナー母粒子を分散しトナー母粒子分散液を得たところへ、有機ケイ素化合物を添加し凸形状を形成させトナー粒子分散液を得る方法が挙げられる。
トナー母粒子分散液は固形分濃度を25質量%以上50質量%以下に調整することが好ましい。そして、トナー母粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、該トナー母粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは物質によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換水やRO水などイオン分を除去した水40質量部以上500質量部以下が好ましく、100質量部以上400質量部以下がより好ましい。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2~7、温度が15~80℃、時間が30~600分である。
得られた加水分解液とトナー母粒子分散液とを混合して、縮合に適したpH(好ましくは6~12、又は1~3、より好ましくは8~12)に調整する。加水分解液の量はトナー母粒子100質量部に対して有機ケイ素化合物5.0質量部以上30.0質量部以下に調整することで、凸形状を形成しやすくする。凸形状の形成と縮合の温度と時間は、35℃~99℃で、60分~72時間保持して行うことが好ましい。
また、トナー粒子の表面の凸形状を制御するにあたって、pHを2段階に分けて調整することが好ましい。pHを調整する前の保持時間及び、二段階目にpH調整する前の保持時間を適宜調整し有機ケイ素化合物を縮合することで、トナー粒子表面における凸形状を
制御できる。例えばpH4.0~6.0で0.5時間~1.5時間保持した後に、pH8.0~11.0で3.0時間~5.0時間保持することが好ましい。また、有機化合物の縮合温度を35℃~80℃の範囲で調整することによっても凸形状が制御できる。
例えば、凸幅wは、有機ケイ素化合物の添加量、反応温度及び一段階目の反応pHや反応時間などにより制御できる。例えば、一段回目の反応時間が長くなると凸幅が大きくなる傾向がある。
また、凸径D及び凸高さHは、有機ケイ素重合体の添加量、反応温度及び二段階目のpHなどにより制御できる。例えば、二段階目の反応pHが高いと凸径D及び凸高さHが大きくなる傾向がある。
以下、トナーの具体的な製造方法について説明するが、これらに限定されるわけではない。
トナー母粒子を水系媒体中で製造し、トナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を形成することが好ましい。
トナー母粒子の製造方法として、懸濁重合法・溶解懸濁法・乳化凝集法が好ましく、中でも懸濁重合法がより好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー母粒子の表面に均一に析出し易く、有機ケイ素重合体の接着性に優れ、環境安定性、帯電量反転成分抑制効果、及びそれらの耐久持続性が良好になる。以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
懸濁重合法は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて着色剤などの添加剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、該重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体を重合することにより、トナー母粒子を得る方法である。
重合性単量体組成物には、必要に応じて離型剤、その他の樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、公知の方法で、生成した粒子を洗浄、濾過により回収することができる。なお、上記重合工程の後半に昇温してもよい。さらに未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
このようにして得られたトナー母粒子を用い、上記方法により有機ケイ素重合体の凸部を形成させることが好ましい。
トナーには離型剤を用いてもよい。離型剤としては、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその酸アミド、エステル、又はケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ-ン樹脂。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。離型剤は単独で用いてもよいし複数を混合し使用してもよい。
離型剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100質量部に対して2.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
その他の樹脂として、例えば、以下の樹脂を用いることができる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル
共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合し用いてもよい。
重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチル、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
これらのビニル重合体の中でも、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体が好ましい。
また、重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビス-(2,4-ジバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部~30.0質量部の添加が好ましく、単独で用いても複数を併用してもよい。
また、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量
体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対し0.001質量部~15.000質量部である。
一方、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。例えば、以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。
好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部~15.000質量部である。
上記懸濁重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として以下のものを使用することができる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
トナーには着色剤を用いてもよく、特に限定されず公知のものを使用することができる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成しうる重合性単量体100質量部に対して3.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。
トナー製造時に荷電制御剤を用いることができ、公知のものが使用できる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部~10.00質量部であることが好ましい。
トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよいし、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添してもよい。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
トナーの流動性の改良及びトナーの帯電均一化のために有機又は無機微粉体の表面処理を行ってもよい。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で用いてもよいし複数を併用してもよい。
以下、本発明に関係する各種測定方法を述べる。
<走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナーの断面の観察方法>
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、トナーの断面の作製手順を説明する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。また、明視野像のDetectorControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、ImageControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、図1のようにトナー1粒子中の断面の周のうち4分の1から2分の1程度収まるように画像取得を行う。
得られた画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部を計測する。画像解析はSTEM画像30枚について行う。
まず、ライン描画ツール(StraghtタブのSegmented lineを選択)にてトナー母粒子の周に沿った線を描く。有機ケイ素重合体の凸部がトナー母粒子に埋没しているような部分は、その埋没はないものとして滑らかに線をつなぐ。
その線を基準に水平画像へ変換(EditタブのSelection選択し、propertiesにてline widthを500pixelに変更後、EditタブのS
electionを選択しStraghtener行う)を行う。該水平画像について、有機ケイ素重合体を含む凸部一箇所ずつ、前述した方法により凸幅w、凸径D及び凸高さHを計測する。STEM画像30枚測定した結果から、P(D/w)を算出する。また、凸高さHの累積分布をとり、H80を算出する。
また、画像解析に用いた水平画像に存在する凸高さHが40nm以上300nm以下となる凸部の凸幅wの合計値をΣwとし、画像解析に用いた水平画像の幅を周囲長Lとする。当該水平画像の幅が、STEM画像中のトナー母粒子表面の長さに相当する。一枚の画像からΣw/Lを算出し、STEM画像30枚の相加平均値を採用する。
詳細な凸部の計測に関しては、前述の説明や図2~4のとおりである。
計測はImage Jにて、画像上のスケールをStraightタブのStraight Lineで重ね、AnalyzeタブのSet Scaleにて、画像上のスケールの長さを設定したのち行う。凸幅wまたは凸高さHに相当する線分をStraightタブのStraight Lineで描き、AnalyzeタブのMeasureにて計測ができる。
<走査型電子顕微鏡(SEM)における凸部の平均粒径の算出方法>
SEM観察の方法は、以下の通り。日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影される画像を用いて行う。S-4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペースト(TED PELL
A,Inc、 Product No.16053, PELCO Colloidal G
raphite,Isopropanol base)を薄く塗り、その上にトナーを吹
き付ける。さらにエアブローして、余分な該微粒子を試料台から除去した後、15mAで15秒間白金蒸着する。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを30mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[2.0kV]、エミッション電流を[10μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[下(L)]を選択し、反射電子像を観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[8.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。観察粒子の最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。
得られたSEM画像から、トナー粒子表面に存在する、20nm以上の該凸部500箇所の個数平均径(D1)の計算を画像処理ソフト(イメージJ)により行った。測定方法は以下の通りである。
・有機ケイ素重合体の凸部の個数平均径の測定
粒子解析により、画像中の凸部とトナー母粒子を二値化により、色分けする。次に、計測コマンドの中から、選択された形状の最大長さを選択し、凸部1箇所の凸径R(最大径)を計測する。この操作を複数行い、500箇所の相加平均値を求めることで、凸径Rの個数平均径を算出する。
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定する。水洗後のトナーと初期のトナーの測定対象の元素量比から固着率(%)を計算する。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウ
ンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナーと初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。上記方法により算出した初期のトナーの元素量に対して、水洗後のトナーの元素量の比率を求め固着率(%)とする。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中及び比較例中の各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
[トナー1の製造例]
(水系媒体1の調製工程)
撹拌機、温度計、還留管を具備した反応容器中にイオン交換水650.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:20.0部
・n-ブチルアクリレート:20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン):0.3部
・飽和ポリエステル樹脂:5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合・蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。
その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、スラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い未反応の重合性単量体を留去し、トナー母粒子分散液を得た。
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
得られたトナー母粒子分散液の温度を55℃に冷却したのち、有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま15分保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、60分間保持したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、更に240分保持してトナー粒子分散液を得た。
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行い、トナー粒子1を得た。表1にトナー粒子1の製造の条件を示す。
Figure 0007338011000005

表中、時間の単位はhである。「添加量」は有機ケイ素化合物の重合工程における有機ケイ素化合物の添加量(部)である。
[トナー粒子2~12の製造方法]
表1に示す条件に変更した以外は、トナー粒子1と同様にしてトナー粒子2~12を得た。
[比較用トナー粒子1の製造方法]
有機ケイ素化合物の重合に関して、下記に示すように変更した以外はトナー粒子1と同様にして、比較用トナー粒子1を得た。
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
得られたトナー母粒子分散液の温度を70℃に冷却したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを9.5に調整した。70℃で撹拌を継続したまま、コロイダルシリカ(スノーテックスST-ZL:固形分40%)5.0部と有機ケイ素化合物の加水分解液を12.5部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま300分保持しトナー粒子分散液を得た。
[比較用トナー粒子2の製造方法]
有機ケイ素化合物の重合に関して、下記に示すように変更した以外はトナー粒子1と同様にして、比較用トナー粒子2を得た。
(有機ケイ素化合物の重合)
ポリビニルアルコール1.0部をエタノール/水=1:1(質量比)の混合溶液20部に溶解した混合溶媒をトナー母粒子分散液に分散させて、次いで、ケイ素化合物として3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン30部を溶解させ、さらに5時間の攪拌を行なって、トナー粒子内に3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランを膨潤させて内在させた。
次いで、温度を70℃にしたのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを9.5に調整した。10時間室温にて攪拌することによって、トナー粒子表面でゾルゲル反応を進行させて、比較用トナー粒子2を得た。
[比較用トナー粒子3の製造方法]
トナー粒子1の製造例で有機ケイ素化合物の重合を行わないことで、比較用トナー粒子3を得た。
(実施例1)
トナー粒子1をそのままトナー1として、転写性及び部材汚染の下記耐久評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007338011000006
<耐久評価の方法>
市販のキヤノン製レーザービームプリンタLBP7700Cの改造機を用いた。改造点は、評価機本体及びソフトウェアを変更することにより、現像ローラーの回転速度が360mm/secとなるようにした。
LBP7700Cのトナーカートリッジにトナーを装填し、そのトナーカートリッジを常温常湿NN(25℃/50%RH)の環境下で24時間放置した。当該環境下で24時間放置後のトナーカートリッジを上記に取り付けた。
転写性及び部材汚染の評価においては、NN環境で左右に余白を50mmずつとり中央部に、5.0%の印字率の画像をA4用紙横方向で7500枚までプリントアウトして、初期画像と7500枚出力後に評価を行った。
<転写性評価>
転写性(転写残濃度)の評価は次のようにして行った。ベタ画像を出力し、ベタ画像形成時の感光体上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープを用いてテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差を算出した。濃度測定は5箇所行い、平均値を求めた。そして、その濃度差の値から、以下のようにして判定した。
なお、濃度はX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite500Series)で測定した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:濃度差が0.030未満
B:濃度差が0.030以上0.050未満
C:濃度差が0.050以上0.100未満
D:濃度差が0.100以上
<部材汚染評価>
部材汚染(ベタ/ハーフトーンの諧調安定性)の評価は次のようにして行った。
まず、画像チェック用のドラムユニットを用意した。次に、画像チェック用のドラムユニットへトナー評価用帯電ローラーを取り付け、画像出力を行った。画像は全面にハーフトーンが印字された画像を作製した。ハーフトーン画像中の耐久画像で作成した左右30mmの余白部と中央部の濃度をそれぞれ測定し、余白部と中央部の濃度差から評価を行った。
なお、帯電部材が汚染されている場合には、感光体上に帯電ムラが生じ、ハーフトーン画像の濃度ムラが生じることが知られている。
また、濃度はX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite500Series)で測定した。C以上を良好と判断した。
(評価基準)
A:7500枚出力後のハーフトーンの濃度差が0.030未満
B:7500枚出力後のハーフトーンの濃度差が0.030以上0.050未満
C:7500枚出力後のハーフトーンの濃度差が0.050以上0.100未満
D:7500枚出力後のハーフトーンの濃度差が0.100以上
トナー1を耐久評価した結果を表3に示す。
Figure 0007338011000007
<トナー2~12及び比較トナー1~4の評価>
トナー粒子2~12、比較トナー粒子1及び2はそのままトナー2~12、比較トナー1及び2として用いて評価した。
比較トナー3及び4は、比較トナー粒子3に対して下記条件にて外添を行い、トナーを作製して評価した。尚、実施例9は参考例として評価を行った。

・比較トナー3の作製
まず下記に示すように有機ケイ素微粒子Aを合成した。
反応容器にイオン交換水500gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.2gを添加して水溶液とした。この水溶液にメチルトリメトキシラン65g及びテトラエトキシラン50gを添加し、温度を13~15℃に保ちながら1時間加水分解反応を行ない、更に20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2.5gを添加し、同温度で3時間加水分解反応を行なった。約4時間でシラノール化合物を含有する透明な反応物を得た。
次いで、得られた反応物の温度を70℃に保持しながら5時間縮合反応を行なって、有機ケイ素化合物からなる微粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液をメンブランフィルターで濾過し、通過液状部を遠心分離機に供して白色微粒子を分離した。分離し
た白色微粒子を水洗し、150℃で5時間、熱風乾燥を行なって有機ケイ素微粒子Aを得た。
有機ケイ素微粒子Aについて走査型電子顕微鏡による観察を行なったところ、この有機ケイ素微粒子Aは中空半球状体であり、画像解析を行い半球の長径及び短径の個数平均粒子径(μm)を算出すると、長径180nm及び短径80nmであった。
比較トナー粒子3に100部に、有機ケイ素微粒子Aを3.0部添加しヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し、そののち個数平均粒子径12nmのヘキサメチルジシラザン処理された疎水性シリカ1.5部をヘンシェルミキサーにて攪拌翼の周速が20m/sで混合し比較トナー3を作製した。
・比較トナー4の作製
比較トナー3の作製で、有機ケイ素微粒子Aを疎水性ゾルゲルシリカ(日本アエロジル社製:個数平均径80nm)に変更し、ヘンシェルミキサー撹拌翼の周速を20m/sから40m/sに変更した以外は同様にして比較トナー4を作製した。
各トナーの分析の結果を表2及び耐久評価の結果を表3に示す。
1:STEM画像、2:トナー母粒子、3:トナー母粒子表面、4:有機ケイ素化合物の凸部、5:凸幅w、6:凸径D、7:凸高さH

Claims (18)

  1. トナー粒子を有するトナーであって、
    該トナー粒子が、
    トナー母粒子、及び
    該トナー母粒子の表面における有機ケイ素重合体凸部
    を有し、
    該凸部は、該有機ケイ素重合体が析出したものであり、
    該有機ケイ素重合体は、下記式(1)
    Figure 0007338011000008

    (式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
    で表される構造を有し、
    走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察によって、トナー母粒子の表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
    該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さをwとし、該周に沿った線の法線方向において該凸部の最大長をDとし、該Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さをHとしたとき、
    該Dと該Hが同じであり、
    該Hが40nm以上300nm以下である該凸部における、
    該wに対する該Dの比D/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
    走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察において、該水平画像の幅を周囲長Lとし、該水平画像に存在する該有機ケイ素重合体の該凸部のうち、該Hが40nm以上300nm以下となる該凸部の該wの合計をΣwとしたとき、
    Σw/Lが、0.30以上0.90以下である
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記トナーの前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記Hが40nm以上300nm以下である前記凸部において、前記Hの累積分布をとり、前記Hの小さい方から積算して80個数%にあたる前記HをH80としたとき、該H80が65nm以上である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 前記トナー母粒子が、結着樹脂を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記結着樹脂が、重合性単量体の重合体である請求項5に記載のトナー。
  7. 前記重合体が、ビニル系重合性単量体の重合体である請求項6に記載のトナー。
  8. 前記ビニル系重合性単量体が、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体からなる群より選択される少なくとも一である請求項7に記載のトナー。
  9. 前記トナーの前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上99質量%以下である請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
  10. トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
    該トナー粒子が、
    トナー母粒子、及び
    該トナー母粒子の表面に有機ケイ素重合体が析出してなる凸部
    を有し、
    該トナーの製造方法は、
    水系媒体に該トナー母粒子を分散しトナー母粒子分散液を得て、該トナー母粒子分散液に有機ケイ素化合物を添加し重合させて該凸部を形成させトナー粒子分散液を得る工程を有し、
    該有機ケイ素重合体は、下記式(1)
    Figure 0007338011000009

    (式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
    で表される構造を有し、
    走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察によって、トナー母粒子の表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
    該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さをwとし、該周に沿った線の法線方向において該凸部の最大長をDとし、該Dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さをHとしたとき、
    該Dと該Hが同じであり、
    該Hが40nm以上300nm以下である該凸部における、
    該wに対する該Dの比D/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
    走査透過型電子顕微鏡STEMによる該トナーの断面観察において、該水平画像の幅を周囲長Lとし、該水平画像に存在する該有機ケイ素重合体の該凸部のうち、該Hが40nm以上300nm以下となる該凸部の該wの合計をΣwとしたとき、
    Σw/Lが、0.30以上0.90以下である
    ことを特徴とするトナーの製造方法
  11. 前記トナーの前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上である請求項10に記載のトナーの製造方法
  12. 前記Hが40nm以上300nm以下である前記凸部において、前記Hの累積分布をとり、前記Hの小さい方から積算して80個数%にあたる前記HをH80としたとき、該H80が65nm以上である請求項10又は11に記載のトナーの製造方法
  13. 前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基である請求項1012のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
  14. 前記トナー母粒子が、結着樹脂を含有する請求項1013のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
  15. 前記結着樹脂が、重合性単量体の重合体である請求項14に記載のトナーの製造方法
  16. 前記重合体が、ビニル系重合性単量体の重合体である請求項15に記載のトナーの製造方法
  17. 前記ビニル系重合性単量体が、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体からなる群より選択される少なくとも一である請求項16に記載のトナーの製造方法
  18. 前記トナーの前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上99質量%以下である請求項1017のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
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