JP3874328B2 - 電子写真用感光体と、それを用いた画像形成方法及び装置 - Google Patents

電子写真用感光体と、それを用いた画像形成方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体と、それを用いた画像形成方法及び装置(電子写真プロセスカートリッジ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
カールソンプロセスやその他種々の変形プロセスを用いた電子写真方法は、複写機やプリンターなどに広く使用されている。このような電子写真方法に用いられる感光体のなかでも、有機系の感光材料を用いたものが、安価、大量生産性、無公害性をメリットとして、近年使用されている。
感光体における静電潜像形成のメカニズムを示すと以下の通りである。感光体を帯電したのち光照射すると、光は電荷発生材料により吸収され、光を吸収した電荷発生材料は電荷担体を発生する。この電荷担体は電荷輸送材料に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層(ないしは感光層)中を移動し、感光体表面の電荷を中和する。これにより静電潜像が形成される。
有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニンーバインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の感光体が注目され実用化されている。
【0003】
従来から、種々の感光体用有機材料が開発されているが、これらを実用化できる優れた電子写真感光体にするには、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光特性に代表される電子写真特性、耐摩耗性等の機械的耐久性、熱、光、放電生成物等に対する化学的安定性等、種々の特性が要求される。とりわけ、電子写真システムの小型化が望まれるにいたって、感光体は小径化を余儀なくされ、露光−現像間プロセス時間が短くなり、感光体の高速応答性が重要となってきた。高感度特性は、適切な材料の選択がまず必要であるが、これに加えて処方面からの適切な設計が不可欠である。しかしながら、従来この高速応答性を条件とする処方設計は充分には為されておらず、高速応答性の評価手法も要求を満たすものは得られていなかった。さらに、重要な特性として耐摩耗性を主とする機械的耐久性が必要とされるようになり、従来の有機感光体構成及び電子写真プロセスでは、有機物の耐摩耗性の低さから充分な耐久性は得られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来にない安定な高速電子写真プロセスを実現可能な電子写真用感光体を提供することをその課題とする。すなわち、近年主流となってきたレーザを書き込み光源とするデジタル系高速電子写真プロセスに好適に利用できる電子写真感光体の提供をその課題とする。換言すれば、レーザ露光による極短時間のパルス露光においても充分な光減衰応答を有し、かつ前述の小径ドラム化による電子写真プロセス時間の短縮に対応できる高速応答性を達成せしめることをその主課題とするものである。
また、加えて出力画像の高精細化をねらいとする感光体の薄膜化において問題となる機械的耐久性に優れた感光体の提供をその課題とする。さらにまた、機械的耐久性に優れた画像形成方法、装置の提供をもその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、感光層厚あるいは電荷輸送層厚と感光層移動度あるいは電荷輸送層移動度との間に一定の関係を持たせることで、短時間のパルス光による光減衰においても良好な光減衰時間を有する感光体とすることでき、安定な高速電子写真プロセスに対応しうることを見出し、本発明を完成するに至った。また、感光体構成材料として潤滑剤を添加し、これを感光層の表層部に存在させることで、機械的耐久性にも優れた感光体が得られることを見出した。さらにまた、前記感光体を用いる画像形成装置として感光体の表面摩擦係数を制御する工程(手段)を具備させることにより、機械的耐久性にも優れた高耐久な画像形成装置(電子写真プロセス)が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明によれば、下記の感光体が提供される。
(1)導電性基体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる積層型電子写真感光体において、電荷輸送層電界強度が2.5×105〜5.5×105V/cmの範囲における電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度比が1.5×103V・s/m以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
(2)電荷輸送層が、電荷輸送材料及び潤滑剤を含有する上記(1)に記載した電子写真感光体。
(3)電荷輸送層に含有される電荷輸送材料が、高分子電荷輸送材料を含む上記(1)又は(2)に記載した電子写真用感光体。
(4)0.5以下の表面摩擦係数を維持する潤滑作用を有する潤滑剤を含有する上記(2)又は(3)に記載した電子写真用感光体。
【0007】
また、本発明によれば、下記の画像形成方法及び電子写真プロセスカートリッジが提供される。
(5)(i)帯電工程、(ii)画像露光工程、(iii)現像工程、(iv)転写工程及び(v)定着工程を含む一連の工程で画像形成を行う画像形成方法において、該画像形成に用いられる感光体として上記(1)〜(4)のいずれかに記載した感光体を用いるとともに、その感光体表面の摩擦係数を制御する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
(6)感光体表面摩擦係数を、0.5以下を維持するように制御する上記(5)に記載した画像形成方法。
(7)(i)帯電工程、(ii)画像露光工程、(iii)現像工程、(iv)転写工程及び(v)定着工程を含む一連の工程で画像形成を行う画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、上記(1)〜(4)のいずれかに記載した感光体を具備してなる電子写真プロセスカートリッジ。
(8)感光体の表面摩擦係数を制御する手段を具備してなる上記(7)に記載した電子写真プロセスカートリッジ。
【0008】
高速な電子写真用感光体としては、例えば特開平8−6450号、特開平8−62862号各公報等により、有機電荷輸送材料の移動度を特定の範囲とするものが公知であるが、本発明のように電荷輸送層厚と電荷輸送層移動度との間に一定の関係を有する感光体とすることで、安定な高速電子写真プロセスに対応しうることは見出されていなかった。また、例えば特開平4−287052号、特開平5−165384号各公報に記載されているように感光体の表層に摩擦係数を低下させる成分を含有させるものが、さらに特開平6−342236号、特開平9−81001号各報に記載されているように感光体の表層に摩擦係数を低下させる成分を外添させるものが提案されているが、これらの感光体は、高速電子写真プロセスとして対応しうる感光体に適用されることはなかった。
さらに、特開平8−272198号公報において、感光層移動度、感光層厚、感光体に対向配置される像担持体移動速度、及び感光層電界強度の間に一定の関係を持たせることで潜像の乱れによる画像流れを防止し、均一な画像形成を可能とする画像形成装置が開示されているが、この画像形成装置は、その構成上、更なる高速化には不利なものであり、しかも、この装置は、感光層と像担持体との時間的なタイミングのズレによる画像流れ対策を目的とするものであり、本発明とは異なるものである。
本発明は、感光層厚と感光層移動度あるいは電荷輸送層厚と電荷輸送移動度との間に一定の関係を有する感光体を作り、この感光体を用いることで、安定な高速電子写真プロセスに対応することを可能とするものであるが、この場合、感光層厚あるいは電荷輸送層厚が出力画像の高精細化に特に影響が大きい。例えば、積層型負帯電OPCの場合、露光入射光により電荷発生層で生成した正負のキャリアのうち電子は基体に吸収されるが、ホールは電荷輸送層を移動して感光体表面の電子と再結合して消滅する。この対消滅により、ホールを感光体表面に引き上げる電界は次第に弱くなり、光の当たっていない領域に向けてホールは移動するようになる。これは、キャリアの感光体表面方向への拡散現象といわれていて、露光入射光に忠実な潜像の形成を妨げ解像度の低下という画像劣化を招く要因となる。この拡散現象において電荷輸送厚はその影響が大きく、その層厚を薄くすることは解像度の維持に対して非常に効果的である。さらに、近年主流となってきたレーザ露光においてその露光は従来のハロゲンランプ等の露光とは異なり、露光に関する入射フォトン流束は、ハロゲンランプの場合に比べ、約107倍大きい。そのため、生成するキャリア密度が極めて大きくなり電荷輸送層に流れ出た電荷により電荷発生層の電界が弱められ、キャリア移動速度に影響しレーザビーム中心近くに生成したキャリアの感光体表面への到達が遅延することにもなる。このようにして生じる空間電荷分布は感光体表面に平行方向のキャリア拡散を生じやすくし解像度低下に影響がより大きくなる。なお、移動度の高い電荷輸送材料を用いることがキャリアの感光体表面に平行方向への拡散を抑制することに効果的であることは加えて重要である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、図面を用いて本発明を詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明の積層型感光体の説明断面図であり、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層17と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層19とが、積層された構成をとっている。
【0010】
導電性支持体11としては、体積抵抗1010Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フイルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを素管化後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等を使用することができる。
【0011】
電荷発生層17は、電荷発生材料を主成分とする層である。
電荷発生材料には、無機及び有機材料が用いられ、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素合金、アモルファス・シリコン等が挙げられる。
電荷発生材料は、単独であるいは、2種以上混合して用いられる。
【0012】
電荷発生層17は、電荷発生材料を適宜バインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2−ブタノン、ジクロルエタン等の適当な溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を塗布することにより形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。適宜用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。適宜用いられるバインダー樹脂の量は、電荷発生材料1重量部に対し0〜2重量部が適当である。
電荷発生層17は、また公知の真空薄膜作製法にても設けることができる。
電荷発生層17の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0013】
電荷輸送層19は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。 電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、正孔輸送材料と電子輸送材料とがある。
【0014】
電子輸送材料としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送材料は、単独又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0015】
正孔輸送材料としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いらにる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(P−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘草体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送材料は、単独又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0016】
また、電荷輸送材料として、高分子電荷輸送材料を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥して電荷輸送層を形成してもよい。高分子電荷輸送材料は、前述の低分子電荷輸送材料に記述された電荷輸送性置換基を主鎖あるいは側鎖に有する公知の材料を用いることができる。また、必要により高分子電荷輸送材料以外に適当なバインダー樹脂、低分子電荷輸送材料、可塑剤やレベリング剤、潤滑剤等を適量添加することもできる。
【0017】
電荷輸送材料とともに電荷輸送層19に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2−ブタノン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレンなどが用いられる。
電荷輸送層19の厚さは、5〜30μmの範囲で所望の感光体特性に応じて適宜形成すればよい。
【0018】
本発明において、電荷輸送層19中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として度用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量はバインダー樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
【0019】
本発明においては、感光層に含有される電荷輸送材料の含有量は、電荷輸送層の40重量%以上とするのが好ましい。好ましくは45〜50%である。40重量%未満では、感光体への5μs以下のパルス光露光において高速電子写真プロセスで使用される光量では十分な光減衰時間が達成不可能である。
本発明の感光体における電荷輸送層移動度は、2.5×105〜5.5×105V/cmの範囲の電荷輸送層電界強度の条件下で、3×10-5cm2/V・s以上であることが好ましく、7×10-5cm2/V・s以上であることがより好ましい。この移動度は、各使用条件下でこれを達成するように構成を適宜調整できる。この移動度は、従来公知のTOF法により求めればよく、測定用の試料は別途、同様の組成で半透明アルミニウム電極を有するポリエステルフィルム上に約7.5μmで成膜し、その上に約250Åの金電極を形成し試料とする。移動度の測定は、光源として窒素パルスレーザを用い、アルミニウム電極側から光照射し、過渡光電流波形から移動度を算出する。測定は室温(25℃)で行う。
また、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体に対してゼログラフィックタイムオブフライト法により電荷輸送層の移動度を求めることができる。この場合、感光体を帯電させキセノンフラッシュランプによるパルス光(パルス半値幅≦5μs)を照射し、そのときの表面電位変化を高速表面電位計(TREK 362A)により計測する。光パルス照射直後の表面電位減衰特性から、移動度を算出する。
本発明の感光体における電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度比は、1.5×103V・s/m以下、好ましくは1.0×103V・s/m以下である。
なお、電荷輸送材料が高分子電荷輸送材料である場合は、電荷輸送機能を有する置換基がそれぞれ電荷輸送層の40重量%以上とするのが好ましい。
【0020】
本発明の電子写真用感光体には、導電性支持体11と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0021】
また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
さらに、本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、本発明の下引き層にはAl23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO,SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0022】
本発明の電子写真用感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。 これに使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン〜ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、AS樹脂、AB樹脂、BS樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的で、ポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂及びこれら樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては、通常の塗布法が採用される。なお、保護層の厚さは、0.5〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作製法にて形成したi−C,a−SiCなど公知の材料も保護層として用いることができる。
【0023】
本発明においては、感光層と保護層との間に別の中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
中間層の形成法としては、前述のごとく通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0024】
本発明の前記第二、第三または第四の電子写真用感光体においては、導電性基体より最も離れた表面側から少なくとも1層に、電荷輸送物質とともに含有され、感光体最表面の摩擦係数、撥水性、離型性を改善する潤滑剤が用いられる。
その潤滑剤としては例えばフッ素オイルがあり、フッ素オイルとしては例えば直鎖構造を有するパーフルオロポリエーテルオイルが挙げられ、平均分子量として2000〜9000のものを用いることができ、それらの中から1種あるいはそれ以上が適宜選択される。フッ素オイルを用いる場合その添加量は、電荷輸送物質とともに含有される場合の感光体表面層中への拘束力を良好に保持可能なこと及び膜形成性を妨げないことから、0.1〜5重量%が好ましい。その他の潤滑剤としては、シリコーンオイル、金属石鹸類、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0025】
また、本発明者らは電子写真プロセスのさらなる高耐久性の実現の為に検討した結果、少なくとも、(i)帯電工程(手段)、(ii)画像露光工程(手段)、(iii)現像工程(手段)、(iv)転写工程(手段)及び(v)定着工程(手段)を含む一連の工程(手段)で画像形成を行うプロセス(装置)において、さらに電子写真用感光体の基体より最も離れた感光体表面に、表面摩擦係数を制御する工程を付設することにより、感光体摩耗量の低減を達成することが可能であることが判明した。この場合、感光体の基体よりも最も離れた表面は、外部より供給、転移した潤滑剤よりなる薄層であることができる。
【0026】
ところで、感光層の膜削れが発生すると、感光体の電気特性(帯電性能や光減衰性能等)が変化し、所定の作像プロセスが行えなくなり、最終アウトプットとなるハードコピーの品質を維持することが困難になる。
この膜削れは電子写真プロセスにおいて、感光体と他の作像ユニットが接触する部位で全て発生するが、一番問題となるユニットは感光体に残留するトナーを力学的に除去するクリーニングユニット(ブレード又はブラシ)である。他のユニットによる摩耗はあるものの、実質寿命に影響するほどではない。
クリーニングユニットで発生する摩耗は、主に二つの形態に分けられる。一つは、感光体とブレード(ブラシ)に発生する剪断力による摩耗、もう一つは、トナーがブレード(ブラシ)と感光体に挟まれて、砥石のような働きをし、摩耗するざらつき摩耗である。
【0027】
これらを決定する要因として、感光体の構造上の強さ、クリーニングブレード(ブラシ)の当接圧、トナー粒子の組成、感光体の表面摩擦係数(μ)などがある。特に、感光体とクリーニングブレード(ブラシ)との接触部における剪断力と感光体表面摩擦係数及びその摩耗量には大きな相関があり、感光体表面摩擦係数を低く維持することにより、摩耗を小さく抑制することができることが判明した。
【0028】
本発明において、感光体表面の摩擦係数を制御するための方法(手段)としては、従来公知の方法及び手段を用いることができる。この場合、その感光体表面へ潤滑剤を供給することが好ましい。この潤滑剤を均一に供給するためには、接触帯電あるいは転写部材としてあるいは単に表面摩擦係数制御のために物質を供給する部材として、ブラシ状ローラー、弾性ローラー、弾性ブレード、ブラシ、ベルト等を用いることができる。
【0029】
感光体表面特性の表面摩擦係数を制御する目的で、接触帯電あるいは転写部材等を介して感光体表面に供給される潤滑剤には、液体、固体、粉体等の各種潤滑作用を有する材料を用いることができ、固体の場合にはそれ自身が機能部材となりうる。
即ち、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE・PFA・PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性固体や粉体等を適切な方法にて感光体表面に供給することにより目的が達成される。
【0030】
次に、感光体摩擦係数のコントロール方式とその必要性について説明する。
上記の様な方法で感光体が低摩擦係数化されると、感光体摩耗量を小さくすることができることは既に述べたが、感光体表面摩擦係数がオイラーベルト法による測定で0.5以下に維持されているときにその効果が顕著である。一方、摩擦係数が必要以上に低下したときには、不具合として、現像ユニットにより、潜像を顕像化するとき、トナーと感光体との付着力が低下し、トナーが感光体上に意図するように転移できなくなるという現象が発生する。これらは特に2成分現像など現像剤が感光体上に接触しながら現像するシステムに生じることがある。即ち、2成分現像の特徴である現像剤の穂が、感光体表層に接触した場合、接触時にその穂による力学的な力が生じ、感光体に転移された、トナーを再度掻き落としてしまったり、像が正規位置からずれてしまうなどの現象がこの不具合の原因となっている。
【0031】
これらの現象は感光体表層の摩擦係数が高い時点ではほとんど生じることが無く、表面摩擦係数がオイラーベルト法による測定で0.1より小さい値、例えば0.05程度になると顕著に発生するようになる。この不具合はハードコピー品質において致命的な問題であり、発生を防ぐため、感光体表層の摩擦係数を必要以上に低下させないよう添加剤の塗布をコントロールしなければならない。
【0032】
本発明で、感光体表面摩擦係数の定量化方法として採用しているオイラーベルト法を以下に説明する。
円筒形の感光体表面の外周1/4部分に、中厚上質紙を紙すき方向が長手方向になるように切断したベルト状測定部材を接触させ、その一方(下端)に荷重(100g)をかけ、もう一方にフォースゲージをつないだ後、このフォースゲージを一定速度で移動させ、ベルトが移動開始した際のフォースゲージの値を読みとり、次の式により算出する。
μs=2/π×1n(F/W)
ただしμS:静止摩擦係数
F:フォースゲージ読み値(g)
W:荷重(100g)
【0033】
以上、感光体摩擦係数のコントロールの必要性を述べた。本発明によれば、低摩耗感光体システムが提供され、長期的に異常画像を押さえ、その画像を正常に保つことが可能となる。
以上に説明した感光体及び画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。この場合、感光体は、ドラム状導電性支持体上に少なくとも感光層を有してなるものである。
【0034】
【実施例】
次に実施例を示すが、実施例は本発明を詳しく説明するものであり、本発明が実施例によって制約されるものではない。
まず、感光体としての高速応答性を確認するために、短パルス露光に対する光減衰応答の測定方法について説明する。パルス露光に対する光減衰応答の測定は、たとえば川口電機EPA8200に露光光源として浜松ホトニクスキセノンフラッシュランプモジュールC5604(露光パルス半値幅:3μs)を装着して測定することができる。なお、このとき各試料で光減衰量を調節するためにNDフィルタを使用し光量を変化させる。試料を約−500Vにコロナ帯電させ約−100Vに光減衰するパルス露光を与え、そのときの応答をストレージスコープに取り込むことにより測定を行うことができる。
以下の実施例において、上記測定法における光減衰半減時間をパルス露光応答時間として示した。
また、電荷輸送層の層厚は、sloan DEKTAKIIAを用い、基準面からの段差として測定する。電荷輸送層電界強度は電子写真プロセスでの帯電電位とこの層厚より算出する。
【0035】
実施例1
アルミニウム基体上に、下記構造式(a)で示される電荷発生材料とポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL)が10:4重量比からなる電荷発生層0.16μmを形成した。この上に下記構造式(b)で示される電荷輸送材料とビスフェノールAポリカーボネート(帝人化成社製、パンライトK−1300)が1:1重量比からなる電荷輸送層10μmを形成し積層感光体を作製した。
【0036】
【化1】
Figure 0003874328
【化2】
Figure 0003874328
【0037】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は0.08msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を、直径60mmのアルミ基体上に作製し、この感光体を株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。該複写機の画像露光〜現像工程間に要する時間は、約100msであった。
出力画像における解像度は良好であり、解像度7.1本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×105V/cmでの移動度は、1×10-4cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=1×103V・s/mであった。
【0038】
実施例2
アルミニウム基体上に、実施例1で用いた電荷発生材料(a)と下記構造式(c)で示される電荷輸送材料が1:1重量比からなる電荷発生層0.21μmを形成した。その上に同じく下記構造式(c)で示される電荷輸送材料からなる電荷輸送層11μmを形成し積層感光体を作製した。
【0039】
【化3】
Figure 0003874328
【0040】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は0.03msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。
出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.0×105V/cmでの移動度は、5×10-4cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=2.2×102V・s/mであった。
【0041】
実施例3
アルミニウム基体上に、実施例1と同様の電荷発生層0.16μmを形成した。その上に実施例1で用いた電荷輸送材料(b)と実施例2で用いた電荷輸送材料(c)が1:1重量比からなる電荷輸送層9μmを形成し、積層感光体を作製した。
【0042】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は0.03msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。
出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×105V/cmでの移動度は、2×10-4cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=4.5×102V・s/mであった。
【0043】
比較例1
アルミニウム基体上に、下記構造式(d)で示される電荷発生材料とポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL)が3:1重量比からなる電荷発生層0.2μmを形成した。
この上に実施例2で用いた電荷輸送材料(c)とビスフェノールAポリカーボネート(帝人化成社製、パンライトK−1300)が1:1重量比からなる電荷輸送層20μmを形成し、積層感光体を作製した。
【0044】
【化4】
Figure 0003874328
【0045】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は1.2msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、応答速度が不足し、この線速に対応不可能であることがわかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×105V/cmでの移動度は、3×10-5cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=6.7×103V・s/mであった。
【0046】
比較例2
実施例1の電荷輸送層を、構造式(b)で示される電荷輸送材料とビスフェノールAポリカーボネート(帝人化成社製、パンライトK−1300)が3:7重量比からなる電荷輸送層19μmとした以外は、実施例1と同様にして積層感光体を作製した。
【0047】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は2.5msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、応答速度が不足し、この線速に対応不可能であることがわかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×105V/cmでの移動度は、2×10-5cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=9.5×103V・s/mであった。
【0048】
実施例4
アルミニウム基体上に、オキソチタニウムフタロシアニン顔料からなる電荷発生材料とポリビニルブチラール(UCC社製:XYHL)が10:1重量比からなる電荷発生層0.2μmを形成した。この上に下記構造式(e)で示される高分子電荷輸送材料からなる電荷輸送層11μmを形成し、積層感光体を作製した。
【0049】
【化5】
Figure 0003874328
【0050】
以上のようにして作製した感光体のパルス露光応答時間は0.7msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550に装着して複写試験を実施した。
出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。
なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×105V/cmでの移動度は、1×10-4cm2/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=1.1×103V・s/mであった。
【0051】
実施例5
実施例1において、さらに電荷輸送層にフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル:デムナムS−100/ダイキン工業社製)を0.2重量%含有させたこと以外は、実施例1と同様にして積層感光体を作製した。
【0052】
得られた感光体パルス露光応答時間は0.25msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0053】
実施例6
実施例2において、さらに電荷輸送層にフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル:デムナムS−100/ダイキン工業社製)を0.2重量%含有させたこと以外は、実施例2と同様にして積層感光体を作製した。
【0054】
得られた感光体のパルス露光応答時間は0.19msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0055】
実施例7
実施例3において、さらに電荷輸送層にステアリン酸亜鉛を0.3重量%含有させたこと以外は、実施例3と同様にして積層感光体を作製した。
【0056】
得られた感光体のパルス露光応答時間は0.22msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0057】
比較例3
比較例1と同様の構成の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での100枚相当の複写負荷を与えた後での紙に対する摩擦係数は0.6以上であった。
【0058】
比較例4
比較例2と同様の構成の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での100枚相当の複写負荷を与えた後での紙に対する摩擦係数は0.6以上であった。
【0059】
実施例8
実施例4において、さらに電荷輸送層にステアリン酸鉛を0.2重量%含有させたこと以外は、実施例4と同様にして積層感光体を作製した。
【0060】
得られた感光体のパルス露光応答時間は0.83msであった。また、本構成の感光体を内作の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることがわかった。
さらに、同様の感光体を内作の摩耗試験機を用いてその特性を調べたところ、複写機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0061】
実施例9
実施例1と同様の構成の感光体ドラムを作製し、内作の複写試験機に搭載した。なお、この複写試験機には感光体に常時接するように、クリーニング−帯電間に摩擦係数低減部材を設置した。摩擦係数低減部材としては、ステンレス支持体上にイノアック社製ウレタンフォームLE20を介してニチアス社製PTFEシートT/#9001を貼り付けた構成とした。この複写試験機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0062】
実施例10
実施例2と同様の構成の感光体ドラムを作製し、実施例9と同じ複写試験機を用いてその特性を調べたところ、複写試験機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0063】
実施例11
実施例3と同様の構成の感光体ドラムを作製し、実施例9と同じ複写試験機を用いてその特性を調べた。なお、この場合、摩擦係数低減部材としてはクリーニングブラシを流用しそれにダイキン社製PTFE粉末ルブロンL2を供給しながら実施例9と同様の部位に感光体と逆方向に回転して接触させた。この場合も複写試験機での10万枚相当の複写負荷を与えた後での紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0064】
実施例12
実施例4と同様の構成の感光体ドラムを作製し、実施例11と同じ複写試験機を用いてその特性を調べたところ、複写試験機での10万枚相当の複写負荷を与えた後でも、紙に対する摩擦係数は0.5以下であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明の電子写真用感光体は、電荷輸送層厚と電荷輸送層移動度との間に一定の関係を持たせることで、短時間のパルス光による光減衰においても良好な光減衰時間を有する感光体としたもので、安定な高速電子写真プロセスに対応しうる高感度電子写真用感光体として好適のものである。
【0066】
さらに、本発明によれば、感光体表層中に潤滑剤を含有させることで、出力画像の高精細化をねらいとする感光体の薄膜化において問題となる機械的耐久性、耐摩耗性にも優れた高耐久な電子写真用感光体を提供することができる。
【0067】
本発明の画像形成装置によれば、前記感光体を用い、さらに感光体の表面摩擦係数を制御する工程を付設することにより、機械的耐久性にも富んだ高耐久な画像形成方法、装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子写真用感光体の層構成の一例を表わす模式断面図である。
【図2】本発明の積層型電子写真用感光体の層構成の他の例を表わす模式断面図である。
【図3】電子写真プロセスカートリッジの説明図を示す。
【符号の説明】
11 導電性支持体
15 単層感光層
17 電荷発生層
19 電荷輸送層
101 感光体ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
108 除電ランプ
109 定着装置

Claims (8)

  1. 導電性基体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる積層型電子写真感光体において、電荷輸送層電界強度が2.5×105〜5.5×105V/cmの範囲における電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度比が1.5×103V・s/m以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
  2. 電荷輸送層が、電荷輸送材料及び潤滑剤を含有する請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 電荷輸送層に含有される電荷輸送材料が、高分子電荷輸送材料を含む請求項1又は2記載の電子写真用感光体。
  4. 0.5以下の表面摩擦係数を維持する潤滑作用を有する潤滑剤を含有する請求項2又は3記載の電子写真用感光体。
  5. (i)帯電工程、(ii)画像露光工程、(iii)現像工程、(iv)転写工程及び(v)定着工程を含む一連の工程で画像形成を行う画像形成方法において、該画像形成に用いられる感光体として請求項1〜4のいずれかに記載の感光体を用いるとともに、その感光体表面の摩擦係数を制御する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
  6. 感光体表面摩擦係数を、0.5以下を維持するように制御する請求項5記載の画像形成方法。
  7. (i)帯電工程、(ii)画像露光工程、(iii)現像工程、(iv)転写工程及び(v)定着工程を含む一連の工程で画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、請求項1〜4記載のいずれかの感光体を具備してなる電子写真プロセスカートリッジ。
  8. 感光体の表面摩擦係数を制御する手段を具備してなる請求項7の電子写真プロセスカートリッジ。
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