以下、添付図面を参照して、好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードアレイ1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るフォトダイオードアレイ1の上面を概略的に示す図である。図2は、図1に示したフォトダイオードアレイ1のII−II矢印断面の一部を示す図である。
フォトダイオードアレイ1は、基板2上に複数の半導体層及び絶縁層が積層されてなる。図1に示すようにフォトダイオードアレイ1は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネル10がマトリクス状(本実施形態では4×4)に形成されてなるフォトンカウンティング用マルチチャンネルアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードアレイ1の上面側には、信号導線3、抵抗4、及び電極パッド5が設けられている。基板2は、例えば一辺が1mm程度の正方形状である。各光検出チャンネル10は、例えば、正方形状である。
信号導線3は、各光検出チャンネル10から出力された信号を運ぶ読み出し部3aと、各抵抗4と読み出し部3aとを接続する接続部3bと、各光検出チャンネル10の外周を囲むように配線されるチャンネル外周部3cとからなる。読み出し部3aは、当該読み出し部3aを挟んで隣接する2つの列に配置された光検出チャンネル10それぞれと接続されており、その一端において電極パッド5と接続されている。また、本実施形態ではフォトダイオードが4×4のマトリクス状に配置されているため、フォトダイオードアレイ1上には2本の読み出し部3aが配線されており、これらは電極パッド5に対して双方とも接続される。信号導線3は、例えばアルミニウム(Al)からなる。
抵抗4は、一方の端部4a及びチャンネル外周部3cを介して光検出チャンネル10ごとに設けられており、他方の端部4b及び接続部3bを介して読み出し部3aに接続される。同一の読み出し部3aに接続される複数(本実施形態では8つ)の抵抗4は、当該読み出し部3aに対して接続される。抵抗4は、例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる。
次に、図2を参照してフォトダイオードアレイ1の断面構成について説明する。図2に示すように、フォトダイオードアレイ1は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板2と、基板2上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp−型半導体層13と、p−型半導体層13上に形成された導電型がp型のp+型半導体層14と、保護膜16と、p−型半導体層13に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部20と、保護膜16上に形成された上記の信号導線3及び抵抗4とを備える。被検出光は、図2の上面側から入射される。
基板2は、基板部材Sと、基板部材S上に形成された絶縁膜11と、絶縁膜11上に形成されたn+型半導体層12とを有する。基板部材Sは、例えばSi(シリコン)からなる。絶縁膜11は、例えばSiO2(酸化シリコン)からなる。n+型半導体層12は、例えばSiからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。
p−型半導体層13は、不純物濃度が低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p−型半導体層13は、基板2との界面でpn接合を構成する。p−型半導体層13は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネル10に対応して複数有する。p−型半導体層13の厚さは、例えば3μm〜5μmである。p−型半導体層13は、例えばSiからなる。
p+型半導体層14は、各光検出チャンネル10の増倍領域AMに対応して、p−型半導体層13上に形成されている。すなわち、半導体層の積層方向(以下、単に積層方向という)でp+型半導体層14の下方に位置するp−型半導体層13の基板2との界面近傍の領域が増倍領域AMである。p+型半導体層14は、例えばSiからなる。
分離部20は、複数の光検出チャンネル10の間に形成され、各光検出チャンネル10を分離する。すなわち、分離部20は、各光検出チャンネル10と1対1に対応してp−型半導体層13に増倍領域AMが形成されるように形成される。分離部20は、各増倍領域AMの周囲を完全に囲うように基板2上において2次元格子状に形成される。分離部20は、積層方向でp−型半導体層13の上面側から下面側まで貫通して形成されている。分離部20の不純物は例えばPからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。なお、分離部20を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層12の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部20にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部20を形成してもよい。詳細は他の実施形態で説明するが、このトレンチ溝には、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収、又は反射する物質で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
p−型半導体層13、p+型半導体層14、及び分離部20は、フォトダイオードアレイ1の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜16が形成されている。保護膜16は、例えばSiO2からなる絶縁層によって形成される。
保護膜16上には、信号導線3及び抵抗4が形成されている。信号導線3の読み出し部3a及び抵抗4は、分離部20の上方に形成されている。
なお、信号導線3がアノードとして機能し、カソードとして、図示は省略するが基板2の下面側(絶縁層11を有していない側)の全面に透明電極層(例えばITO(Indium TinOxide)からなる層)を備えていてもよい。あるいは、カソードとして、電極部を表面側に引き出されるように形成してもよい。
ここで、図3を参照して、各光検出チャンネル10と信号導線3及び抵抗4との接続関係を説明する。図3は、各光検出チャンネル10と信号導線3及び抵抗4との接続関係を概略的に説明するための図である。図3に示されるように、各光検出チャンネル10のp+型半導体層14と信号導線3(チャンネル外周部3c)とは直接接続されている。これにより、信号導線3(チャンネル外周部3c)とp−型半導体層13とは電気的に接続される。また、p−型半導体層13と抵抗4の一端部4aとは、信号導線3(チャンネル外周部3c)を介して接続され、抵抗4は他の一端部4bがそれぞれ接続部3bを介して読み出し部3aに対して接続される。
このように構成されたフォトダイオードアレイ1をフォトンカウンティングに用いる場合、ガイガーモードと呼ばれる動作条件下で動作させる。このガイガーモード動作時には、各光検出チャンネル10にブレークダウン電圧よりも高い逆電圧(例えば50V以上)が印加される。この状態で上面側から各光検出チャンネル10に被検出光が入射すると、被検出光が各光検出チャンネル10において吸収されてキャリアが発生する。発生したキャリアは各光検出チャンネル10内の電界に従って加速しながら移動し、各増倍領域AMで増倍される。そして、増倍されたキャリアは抵抗4を介して信号導線3により外部へと取り出され、その出力信号の波高値に基づいて検出される。フォトンを検出したチャンネルからは何れも同量の出力が得られるので、全チャンネルからの総出力を検出することでフォトダイオードアレイ1のうちのいくつの光検出チャンネル10から出力があったかがカウントされる。したがって、フォトダイオードアレイ1では、被検出光の一回の照射によって、フォトンカウンティングがなされる。
フォトダイオードアレイ1では、pn接合は、基板2のn+型半導体層12と当該基板2のn+型半導体層12上に形成されたエピタキシャル半導体層であるp−型半導体層13とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているp−型半導体層13に形成され、各増倍領域AMの各光検出チャンネル10への対応は光検出チャンネル10間に形成された分離部20によって実現されている。pn接合面は、n+型半導体層12とp−型半導体層13との界面と、分離部20とp−型半導体層13との界面とから構成されており、高濃度不純物領域が凸となり電界が高くなる領域が存在しなくなっている。したがって、フォトダイオードアレイ1は、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイ1では各光検出チャンネル10のpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイ1はその開口率を格段に高くすることが可能となる。
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイ1では検出効率を大きくすることも可能となる。
また、各光検出チャンネル10間は分離部20によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
また、ガイガーモードで動作させ、フォトンが入射された光検出チャンネルと入射しないチャンネルとの間で電圧差が大きくなった場合にも、光検出チャンネル10間には分離層20が形成されているため、十分にチャンネル間を分離することができる。
フォトダイオードアレイ1では、信号導線3の読み出し部3aが分離部20の上方に形成されている。そのため、信号導線3が増倍領域AM上方、すなわち光検出面上を横切ることが抑制されるため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。また、フォトダイオードアレイ1では、抵抗4も分離部20の上方に形成されているため、開口率はさらにより一層向上される。
また、n型の半導体基板を用い、その上にp型のエピタキシャル半導体層を形成した場合、n型の半導体基板で発生したホールの一部が遅れて増倍領域に入りアフターパルスとなってしまうという問題が発生することを本願発明者はアフターパルスの波長依存性から見出した。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイ1では、例えばSiO2からなる絶縁膜11を基板部材Sとn+型半導体層12との間に有することで、基板部材Sとn+型半導体層12とを完全に分離することができるため、アフターパルスを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態における分離部20には種々の変形を適用することができる。図4は、本実施形態に係るフォトダイオードアレイ1の第1変形例の断面図である。第1変形例に係るフォトダイオードアレイでは、複数(本変形例では2つ)の分離部20が光検出チャンネル10の間に形成されている。
図5は、本実施形態に係るフォトダイオードアレイ1の第2変形例の断面図である。第2変形例に係るフォトダイオードアレイでは、分離部20が、積層方向でp−型半導体層13の上面側から下面側まで貫通することなく上面(被検出光入射面)近傍にのみ形成されている。
また、上記実施形態では、エピタキシャル半導体層を第2導電型としたが、エピタキシャル半導体層を第1導電型として、当該半導体層中に第2導電型の拡散領域を設けて、第1導電型のエピタキシャル半導体層と第2導電型の拡散領域とでpn接合を構成してもよい。
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードアレイ30の構成について説明する。図6は、第2実施形態に係るフォトダイオードアレイ30の断面図である。第2実施形態に係るフォトダイオードアレイ30は、分離部20が遮光部を有している点で第1実施形態に係るフォトダイオードアレイ1と異なる。
図6に示すように、分離部20は、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域(可視から近赤外)の光を吸収する物質からなる遮光部22を含む。遮光部22は、p−型半導体層13の上面側から下面側に向かって伸びる芯のように分離部20内に埋め込まれて形成されている。遮光部22は、例えばホトレジスト内に黒色の染料や絶縁処理したカーボンブラック等の顔料を混入させた黒色ホトレジストやタングステン等の金属からなる。ただし、遮光部22を構成する物質が絶縁物質でない場合(例えば、タングステン等の金属)には、SiO2等の絶縁膜で当該遮光部22を被膜する必要がある。なお、第1実施形態でも述べているが、分離部20を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層12の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離層20にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部20を形成してもよい。図6において示すように、不純物拡散を行った後は、n+型半導体層12と分離部20がつながった形となる。残るトレンチ溝には、上述のように光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収する物質(後述するように、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を反射する物質でもよい)で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
フォトダイオードアレイ30でも、フォトダイオード1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイ30でも各光検出チャンネル10のpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイ30はその開口率を高くすることが可能となる。
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイ30では検出効率を大きくすることも可能となる。
また、各光検出チャンネル10間は分離部20によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
フォトダイオードアレイ30でも、信号導線3の読み出し部3aが分離部20の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
さらに、フォトダイオードアレイ30でも、絶縁膜11を基板部材Sとn+型半導体層12との間に有するため、アフターパルスを抑制することが可能となる。
また、各分離部20は、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収する物質からなる遮光部22を含む。したがって、被検出光は遮光部で吸収されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部22は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネル10に影響を与えないように、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
なお、遮光部22は、可視から近赤外の光を吸収する物質に限らず、可視から近赤外の光を反射する物質であってもよい。この場合であっても、被検出光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部22は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネル10に影響を与えないように、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を反射する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
また、遮光部22は、可視から近赤外の光を吸収又は反射する物質に限らず、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収又は反射する物質であればよい。ただし、遮光部22は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネル10に影響を与えないように、光検出チャンネル10によって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収又は反射する物質からなることが好ましい。
なお、遮光部22は、分離部20よりも低い屈折率の物質からなっていてもよい。これらの場合であっても、光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。
(第3実施形態)
図7を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードアレイ40の構成について説明する。図7は、第3実施形態に係るフォトダイオードアレイ40の断面構造を概略的に説明するための図である。第3実施形態に係るフォトダイオードアレイ40は、信号導線3が窒化シリコン膜上に形成されている点で第1実施形態に係るフォトダイオードアレイ1と異なる。
図7に示すように、フォトダイオードアレイ40は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板2と、基板2上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp型半導体層15と、p型半導体層15上に形成された導電型がp型のp+型半導体層14と、保護膜16a、16bと、p型半導体層15に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部20と、アルミニウムからなる信号導線3と、例えばPoly−Siからなる抵抗4とを備える。被検出光は、図7の上側から入射される。
基板2は、n+型の基板部材Sと、基板部材S上に形成されたn型半導体層12とを有する。
p型半導体層15は、不純物濃度がp+型半導体層14より低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p型半導体層15は、基板2のn型半導体層12との界面でpn接合を構成する。p型半導体層15は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネル10に対応して複数有する。p型半導体層15は、例えばSiからなる。
p型半導体層15、p+型半導体層14、及び分離部20は、フォトダイオードアレイ40の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜16a、16bが形成されている。保護膜16aは酸化シリコン膜(SiO2膜)からなる絶縁膜によって、保護膜16bは窒化シリコン(SiN膜あるいはSi3N4膜)からなる絶縁膜によってそれぞれ形成される。
図7に示されるように、分離部20上に、保護膜16a、抵抗4、保護膜16b、及び信号導線3がこの順で積層されている。具体的には、分離部20上に保護膜16aが積層されている。保護膜16a上には、抵抗4が積層されている。保護膜16a及び抵抗4上には、保護膜16bが各抵抗4の一部を除いて積層されている。保護膜16b及び保護膜16bがその上に積層されていない抵抗4の一部の上には、信号導線3が電気的接続のため、積層されている。具体的には、抵抗4間には信号導線3の読み出し部3aが、抵抗4上には電気的接続のため、接続部3b又はチャンネル外周部3cへの電気的接続としての信号導線3がそれぞれ積層される。
さらに、図7に示されるように、p+型半導体層14上には一部を除いて保護膜16bが積層されている。保護膜16bが積層されていないp+型半導体層14の当該一部の上及びp+型半導体層14上に積層された保護膜16bの一部の上には、電気的接続のために信号導線3のチャンネル外周部3cが積層されている。
フォトダイオードアレイ40でも、フォトダイオード1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイ40でも各光検出チャンネル10のpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイ40はその開口率を高くすることが可能となる。
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイ40では検出効率を大きくすることも可能となる。
また、光検出チャンネル10間は分離部20によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
フォトダイオードアレイ40でも、信号導線3の読み出し部3aが分離部20の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
信号導線3は、アルミニウムからなるため、例えば酸化膜上に形成された場合、高電圧の印加によってアルミニウムがその下の膜に染みこんでしまうという問題が発生する。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイ40では、信号導線3は窒化シリコン膜からなる保護膜16b上に形成されている。そのため、フォトダイオードアレイ40に高電圧を印加したとしても、アルミニウムがその下の膜(保護膜16b)に染みこむことが抑制される。
加えて、信号導線3の読み出し部3aの下には、保護膜16bと保護膜16aもしくは抵抗4が積層されている。そのため、高電圧の印加によってアルミニウムが分離部20及びp型半導体層15に染みこむことが良好に抑制されている。
このように、フォトダイオードアレイ40では、高電圧を印加した場合であっても、アルミニウムが光検出チャンネル10及び分離部20に侵入することが好適に抑制される。
例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる抵抗4は保護膜16a上に形成されるとともに、当該抵抗4上には保護膜16b及び信号導線3が形成されている。
なお、n型半導体層12の代わりにp型の半導体層を用いてもよい。この場合、当該p型の半導体層とn+型の基板部材S(基板2)との間でpn接合が構成され、このp型の半導体層において増倍部AMが形成されることとなる。
(第4実施形態)
図8を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードアレイ50の構成について説明する。図8は、第4実施形態に係るフォトダイオードアレイ50の断面図である。第4実施形態に係るフォトダイオードアレイ50は、分離部20を備えていない点で第1実施形態に係るフォトダイオードアレイ1と異なる。
図8に示すように、p−型半導体層13は複数の増倍領域AMを、各増倍領域AMと各光検出チャンネル10とが互いに対応するように有する。各光検出チャンネル10間には、信号導線3及び抵抗4が形成されている。
フォトダイオードアレイ50でも、フォトダイオード1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイ50でも各光検出チャンネル10のpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイ50はその開口率を高くすることが可能となる。さらに、フォトダイオードアレイ50は、分離部を有さないことにより、より一層高い開口率を示すことができる。
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイ50では検出効率を大きくすることも可能となる。
フォトダイオードアレイ50では、信号導線3の読み出し部3aが各光検出チャンネル10間に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
さらに、フォトダイオードアレイ50でも、絶縁膜12を基板部材Sとn+型半導体層12との間に有するため、アフターパルスを抑制することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、フォトダイオードアレイに形成される光検出チャンネルの数は、上記実施形態における数(4×4)に限定されない。光検出チャンネル10間に形成される分離部20の数も、上記実施形態及び変形例で示した数に限られず、例えば3つ以上であってもよい。また、信号導線3は、分離部20の上方に形成されていなくてもよい。抵抗4も分離部20の上方に形成されていなくてもよい。また、各層等は、上記実施形態及び変形例で例示したものに限られない。
また、n型半導体層12の下にn型の半導体からなるバッファ層を用いてもよい。また、n型半導体層12の代わりにp型の半導体層を用い、この下にn型の半導体からなるバッファ層を用いても良い。この場合、当該p型の半導体層とn型のバッファ層との間でpn接合が構成され、このp型の半導体層において増倍部AMが形成されることとなる。更に、第3実施形態のように絶縁膜11の無い場合には、n型半導体層12の代わりにp型の半導体層を用い、この下にp型の半導体からなるバッファ層を用いても良い。この場合、当該p型のバッファ層とn+型の基板部材S(基板2)の間でpn接合が構成され、このp型のバッファ層において増倍部AMが形成されることとなる。
上述のフォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオード(検出チャネル10のpn接合からなる)を二次元状に配列してなり、アバランシェフォトダイオードは、結晶性の高いエピタキシャル半導体層13を含んでいる。上述のフォトダイオードアレイは、アバランシェフォトダイオードの一端(アノード)が電気的に接続され、アバランシェフォトダイオードの光入射面上に配置された抵抗4と、抵抗4の他端に接続された信号導線3と、を備えており、隣接するアバランシェフォトダイオード間にはガードリングが介在していない。この構造では、ガードリングを備えていないので、検出チャネルの開口面積を大きくすることができる。
図9は図2に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図、図10は図4に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図、図11は図5に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図、図12は図6に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図、図13は図7に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図、図14は図8に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面図である。これらの基本的な平面構成と接続関係は、図1に示したものと同一である。
上述のように、図9から図14に示した構造では、図2、図4、図5、図6、図7、図8のp型半導体層13又はp型半導体層15に代えて、n型半導体層R13又はR15を用いている。この場合、pn接合は、低濃度のn型半導体層R13(又はR15)とp型半導体層14との界面に形成され、pn接合から空乏層がn型半導体層R13(又はR15)に向けて広がり、空乏層に対応して増倍領域AMがpn接合界面からn型半導体層R13(又はR15)に向かって形成されている。他の構造と作用は、上述のものと同一である。
これらのフォトダイオードアレイ1は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネル10がn型半導体層12を有するn型の基板2に形成されてなる。被検出光を入射させる複数の光検出チャンネル10が、第1導電型のn+型である半導体層12(S)を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板2と、基板2の第1導電型の半導体層12上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域AMを当該各増倍領域AMと各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のn−型であるエピタキシャル半導体層R13(又はR15)と、第1導電型のエピタキシャル半導体層R13(又はR15)中に形成され、当該エピタキシャル半導体層R13(又はR15)との界面でpn接合を構成する第2導電型のP+型である拡散領域14と、2つの端部を有し、光検出チャンネル10ごとに設けられ、一方の端部4aを介してエピタキシャル半導体層R13(又はR15)中の第2導電型の拡散領域14と電気的に接続されると共に他方の端部4bを介して信号導線3に接続される複数の抵抗4とを備えている。
抵抗4は、図1に示したように、一方の端部4a及びチャンネル外周部3cを介して光検出チャンネル10ごとに設けられており、他方の端部4b及び接続部3bを介して読み出し部3aに接続される。同一の読み出し部3aに接続される複数の抵抗4は、当該読み出し部3aに対して接続される。
これらのフォトダイオードアレイでは、pn接合は、基板上の第1導電型のエピタキシャル半導体層R13(又はR15)と当該エピタキシャル半導体層R13(又はR15)中に形成された第2導電型のエピタキシャル半導体層14とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層R13(又はR15)に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域AMはこのエピタキシャル半導体層R13(又はR15)にある。
図15は半導体層12の上に設けられるバッファ層12Xを示す断面図である。バッファ層12Xは、n型の半導体層からなる。n型半導体層12の上にn型の半導体からなるバッファ層12Xを用いてもよい。また、n型半導体層12の上に、p型の半導体からなるバッファ層12Xを用いても良い。この場合、当該n型の半導体層12とp型のバッファ層12Xとの間でpn接合が構成され、このp型のバッファ層において増倍部AMが形成されることとなる。更に、第3実施形態のように絶縁膜11の無い場合には、n型半導体層12の代わりにp型の半導体層を用い、この上にp型の半導体からなるバッファ層を用いても良い。この場合、当該p型の半導体層とn+型の基板部材S(基板2)の間でpn接合が構成され、このp型の半導体層において増倍部AMが形成されることとなる。
以上の説明は以下の通りである。
従来から各増倍領域は、微弱な光を良好に検出するため、ガイガーモードと呼ばれる動作条件下で動作させられる。すなわち、各増倍領域にはブレークダウン電圧よりも高い逆電圧が印加され、入射したフォトンによって発生したキャリアがなだれ式に増倍される現象が利用される。各光検出チャンネルには増倍領域からの出力信号を取り出すための抵抗が接続され、各抵抗は互いに並列接続されている。各光検出チャンネルに入射したフォトンは、各抵抗を介して外部に取り出された出力信号の波高値に基づいて検出される。
ここで、フォトダイオードアレイをフォトンカウンティングに用いる場合には、良好な検出結果を得る上で、被検出光に対する開口率を高めて検出効率を大きくすることが重要となっている。
しかしながら、例えば非特許文献1及び2に記載されたリーチスルー型のフォトダイオードアレイでは、各フォトダイオードのpn接合が、各光検出チャンネルごとに表面に形成された半導体層によって実現されている。そのため、pn接合を実現する各フォトダイオードの半導体層外周縁部にはエッジブレークダウンを防ぐためのガードリングが必要となり、その結果被検出光に対する開口率が低く抑えられてしまう。また、このように開口率が低く抑えられたフォトダイオードアレイでは、検出感度特性を向上させることは困難である。また、なだれ増倍によって光が発生するので、これが隣の光検出チャンネルに吸収されることでクロストークが生じることも問題になる。
上述のフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板と、基板の第1導電型の半導体層上に形成され、当該半導体層との界面でpn接合を構成するとともに、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備えることを特徴とする。
上記フォトダイオードアレイでは、pn接合は、基板の第1導電型の半導体層と当該半導体層上に形成されたエピタキシャル半導体層とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さず、ガードリングを設ける必要がない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
上述のフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板と、基板の第1導電型の半導体層上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のエピタキシャル半導体層と、第1導電型のエピタキシャル半導体層中に形成され、当該エピタキシャル半導体層との界面でpn接合を構成する第2導電型の拡散領域と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層中の第2導電型の拡散領域と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備えることを特徴とする。
上記フォトダイオードアレイでは、pn接合は、基板上の第1導電型のエピタキシャル半導体層と当該半導体層中に形成された第2導電型のエピタキシャル半導体層とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガードリングを設けていない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
エピタキシャル半導体層の各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように、複数の光検出チャンネルの間に形成される第1導電型の分離部をさらに備えることが好ましい。すなわち、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板と、基板の第1導電型の半導体層上に形成され、基板との界面でpn接合を構成するとともに、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる増倍領域を有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、エピタキシャル半導体層と一方の端部を介して電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、エピタキシャル半導体層の増倍領域が各光検出チャンネルに対応して複数形成されるように、複数の光検出チャンネルの間に形成される第1導電型の分離部と、を備えることが好ましい。
この場合、各チャンネル間に形成された分離部によって各増倍領域と各光検出チャンネルとの対応が具現化されている。そのため、やはりガードリングを設ける必要がなく、開口率を高くすることが可能である。また、光検出チャンネル間に分離部が形成されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
分離部は、光検出チャンネルによって検出される波長帯域の光を吸収又は反射する物質からなる遮光部を含むことが好ましい。これらの場合、光が遮光部で吸収あるいは反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部は、なだれ増倍によって発生する光が、隣接する光検出チャンネルに影響を与えないように、光検出チャンネルによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収または反射する物質からなることが好ましい。これにより、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
信号導線は、分離部の上方に形成されていることが好ましい。この場合、信号導線が光検出面上を横切ることが抑制されるため、開口率はより一層向上する。
信号導線は、アルミニウムからなり、窒化シリコン膜上に形成されていることが好ましい。この場合、フォトダイオードアレイに高電圧を印加したとしても、アルミニウムがその下の膜に染みこむことが抑制される。尚、ここで言う「染み込む」とは拡散・侵入するという意味であり、以後も同じ意味で使っている。また、この場合、抵抗は例えばポリシリコンからなり、抵抗は酸化シリコン膜上に形成されるとともに、当該抵抗上には窒化シリコン膜及び信号導線が形成されていることが好ましい。
以上、説明したように、上述のフォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオード(光検出チャンネル10)を配列してなるフォトダイオードアレイにおいて、アバランシェフォトダイオードが形成された基板と、基板上に形成された絶縁膜16(保護膜)と、絶縁膜16上に設けられた複数の信号導線3(3a)と、基板の光入射面上に、絶縁膜16を介して、個々の信号導線3(3a)に対応して配置され、それぞれのアバランシェフォトダイオードと信号導線3(3a)とを接続する複数の抵抗4と、を備え、それぞれのアバランシェフォトダイオードの光検出チャンネル10は、マトリクス状に配置されており、複数の信号導線3(3a)は、第1信号導線と、第2信号導線と、を備え、第1信号導線は、隣接する光検出チャンネル10間に位置し、これらの双方に接続され、第2信号導線は、隣接する別の光検出チャンネル10間に位置し、これらの双方に接続されている。
また、上記フォトダイオードアレイにおいて、基板は、基板部材Sと、基板部材Sとアバランシェフォトダイオードのpn接合との間に設けられアフターパルスを抑制するための別の絶縁膜11とを備えている。