JP5808592B2 - 基準電圧決定方法及び推奨動作電圧決定方法 - Google Patents

基準電圧決定方法及び推奨動作電圧決定方法 Download PDF

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Description

本発明は、フォトダイオードアレイ、当該フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の推奨動作電圧を決定する推奨動作電圧決定方法、及び、当該推奨動作電圧を決定するための基準電圧を決定する基準電圧決定方法に関する。
ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このようなフォトダイオードアレイは、特許文献1にも記載されているように、フォトンカウンティング用光半導体素子「MPPC」(登録商標)に用いられる。
特開2011−003739号公報
「MPPC(登録商標) Multi-Pixel Photon Counter 技術資料(2009年5月)」、浜松ホトニクス株式会社、[online]、[平成23年05月09日検索]、インターネット<URL:http://jp.hamamatsu.com/resources/products/ssd/pdf/tech/mppc_technical_information.pdf>
非特許文献1にも記載されているように、上述したフォトダイオードアレイでは、所望のゲイン(増倍率)が得られるように、フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の推奨動作電圧が決定されている。一般に、推奨動作電圧の決定は、以下の手法により行われている。
上述したフォトダイオードアレイの増倍率は、フォトダイオードアレイがフォトンを検出したときの出力電荷量から算出できる。この増倍率は、フォトダイオードアレイに印加される逆バイアス電圧によって変化する。したがって、出力電荷量から算出される増倍率が所望の値となるときの逆バイアス電圧を求め、この逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定する。
ところで、増倍率は、次のようにして測定される。上述したフォトダイオードアレイに増幅器(たとえば、チャージアンプなど)を接続し、増幅器からの出力から、出力電荷量の度数分布を取る。出力電荷量の度数分布は、単位時間当たりの積算電荷量の分布をプロットすることにより得られる。出力電荷量の度数分布には、複数のピークが分離して現われ、隣り合うピークの間隔が、1フォトン検出分の出力電荷量に相当する。このため、隣り合うピークの間隔に基づいて、増倍率を算出することができる。
しかしながら、上述した増倍率の測定手法は、以下のような問題点を有している。
上述したフォトダイオードアレイは、固体素子であるため、熱的に発生した暗電流のキャリアによるノイズ(ダークノイズ)が発生する。特に、上述したフォトダイオードアレイでは、ダークノイズが増倍されると共にランダムに発生するため、ダークノイズとフォトンの検出信号とが区別し難い。すなわち、ダークノイズの発生頻度(ダークカウント)と所定数のフォトンを検出する頻度とを区別し難い。このため、出力電荷量の度数分布において、ピークが分離して現われ難くなり、増倍率そのものを算出することが困難となる。特に、フォトダイオードアレイの大面積化を図る場合、ダークカウントが増加するため、増倍率の測定が困難となる問題はより顕著となる。
フォトダイオードアレイに増幅器を接続し、フォトダイオードアレイからの出力を増幅しているため、測定結果が増幅器の特性ばらつきに大きく左右される。このため、増倍率を精度良く算出することは困難となる。
したがって、上述した推奨動作電圧の決定手法では、出力電荷量から算出される増倍率に基づいて推奨動作電圧を決定するため、推奨動作電圧を精度良く且つ容易に決定することが困難であった。
本発明は、フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の推奨動作電圧及び当該推奨動作電圧を決定するための基準電圧を容易に且つ精度良く決定することが可能な基準電圧決定方法及び推奨動作電圧決定方法、及び、推奨動作電圧に基づいて決まる増倍率が設定されたフォトダイオードアレイを提供することを目的とする。
本発明者らは、調査研究の結果、以下のような事実を新たに見出した。
ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードが配列されていると共に複数のアバランシェフォトダイオードそれぞれに一端が電気的に接続されたクエンチング抵抗を備えているフォトダイオードアレイに逆バイアス電圧を印加し、当該逆バイアス電圧を変化させた場合、電流−電圧特性は、次のように変化する。すなわち、逆バイアス電圧が降伏(ブレークダウン)電圧以上となった後にガイガー領域に入り、アバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行し始めると、電流の値が立ち上がる。そして、最も多くのアバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行する逆バイアス電圧で、逆バイアス電圧に対する電流の変化に変曲点が現われる。これらは、複数のアバランシェフォトダイオードが並列接続されている構成と、各アバランシェフォトダイオードにクエンチング抵抗が直列接続されている構成と、に起因する。したがって、この変曲点における逆バイアス電圧を基準電圧とし、当該基準電圧に基づいて推奨動作電圧を設定することにより、当該推奨動作電圧を容易に且つ精度良く決定することができる。
かかる事実を踏まえ、本発明は、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定するための基準電圧を決定する基準電圧決定方法であって、フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧を変化させて電流を測定し、測定した電流の変化における変曲点での逆バイアス電圧を基準電圧として決定することを特徴とする。
本発明に係る基準電圧決定方法では、測定された電流の変化における変曲点での逆バイアス電圧が、基準電圧として決定される。これにより、ダークノイズの影響を受け難く、基準電圧を精度良く決定することができる。また、本発明では、逆バイアス電圧を印加し、逆バイアス電圧の変化に対する電流の変化を測定することで、当該変化の変曲点を求めているため、基準電圧を容易に決定することができる。
測定した電流の一回微分がピークとなる逆バイアス電圧を基準電圧として決定してもよい。また、測定した電流の二回微分がゼロとなる逆バイアス電圧を基準電圧として決定してもよい。いずれの場合にも、電流の変化における変曲点を確実に求めることができる。
ところで、フォトダイオードアレイの増倍率Mは、下記関係式で表される。
M=C×ΔV
Cは、各アバランシェフォトダイオードの接合容量である。ΔVは、最も多くのアバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行する逆バイアス電圧、すなわち基準電圧からの電位差である。したがって、推奨動作電圧と基準電圧との差が決まれば、増倍率Mが一意的に決まることとなる。逆に、所望の増倍率Mを得るためには、基準電圧に上記関係式を満たすΔVを加えればよい。
本発明は、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定する推奨動作電圧決定方法であって、上記基準電圧決定方法にて決定された基準電圧に所定の値を加えて得た電圧を推奨動作電圧として決定することを特徴とする。
本発明に係る推奨動作電圧決定方法では、上記基準電圧決定方法にて決定された基準電圧に所定の値を加えて得られた電圧が、推奨動作電圧として決定される。これにより、ダークノイズの影響を受け難く、推奨動作電圧を精度良くに決定することができると共に、推奨動作電圧を容易に決定することができる。
本発明者らは、調査研究の結果、以下のような事実も新たに見出した。
電流−電圧特性において、最も多くのアバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行する逆バイアス電圧で、電流の変化に変曲点が現われるが、逆バイアス電圧を更に増大させていくと、電流がアフターパルスなどの影響により飛躍的に増大する領域が存在する。このとき、新たな変曲点が現われる。これらの変曲点は、逆バイアス電圧を増加させた際に、下に凸から上に凸に変わる変曲点である。したがって、逆バイアス電圧に対する電流の変化における、上記二つの変曲点の間の曲線部分における逆バイアス電圧を推奨動作電圧に設定することで、当該推奨動作電圧を容易に且つ精度良く決定することができる。
かかる事実を踏まえ、本発明は、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定する推奨動作電圧決定方法であって、フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧を変化させて電流を測定し、測定した電流の変化において、下に凸から上に凸に変わる二つの変曲点の間の曲線部分での逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定することを特徴とする。
本発明に係る推奨動作電圧決定方法では、測定した電流の変化において、下に凸から上に凸に変わる二つの変曲点の間の曲線部分での逆バイアス電圧が、推奨動作電圧として決定される。これにより、ダークノイズの影響を受け難く、推奨動作電圧を精度良くに決定することができると共に、推奨動作電圧を容易に決定することができる。
本発明は、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれのアバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイであって、上記推奨動作電圧決定方法にて決定された推奨動作電圧に基づいた増倍率が設定されていることを特徴とする。
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、精度良く決定された推奨動作電圧に基づいた増倍率が設定されているので、増倍率がばらつくのを抑制することができる。
本発明によれば、フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の推奨動作電圧及び当該推奨動作電圧を決定するための基準電圧を容易に且つ精度良く決定することが可能な基準電圧決定方法及び推奨動作電圧決定方法、及び、推奨動作電圧に基づいた増倍率が設定されたフォトダイオードアレイを提供することができる。
本実施形態に係るフォトダイオードアレイの斜視図である。 図1に示したフォトダイオードアレイのII−II矢印断面図(a)と、その回路図(b)である。 本実施形態に係るフォトダイオードアレイの全体の回路図である。 逆バイアス電圧に対する電流の変化を示す線図である。 図4に示された電流−電圧特性を電流について一回微分した結果を示す線図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、図1〜図3を参照して、本実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明する。図1は、フォトダイオードアレイの斜視図であり、図2は、図1に示したフォトダイオードアレイのII−II矢印断面図(a)と、その回路図(b)である。図3は、フォトダイオードアレイの全体の回路図である。
フォトダイオードアレイ10は、複数のフォトダイオードD1(図3参照)をN型(第1導電型)の半導体基板1Nに形成してなる。
個々のフォトダイオードD1は、半導体基板1Nの一方の表面側に形成されたP型(第2導電型)の第1半導体領域1PAと、第1半導体領域1PA内に形成されこの第1半導体領域1PAよりも高い不純物濃度を有するP型(第2導電型)の第2半導体領域1PBと、を有している。フォトダイオードD1は、半導体基板1Nに電気的に接続された第1電極E1と、第2半導体領域1PB上に形成された表面電極E3と、を有している。第1半導体領域1PAの平面形状は、四角形である。第2半導体領域1PBは、第1半導体領域の内側に位置し、平面形状は四角形である。第1半導体領域1PAの深さは、第2半導体領域1PBよりも深い。図1中の半導体基板1は、N型の半導体基板1Nと、P型の半導体領域1PA,1PBの双方を含んだものを示している。
フォトダイオードアレイ10は、個々のフォトダイオードD1毎に、第1半導体領域1PAの外側の半導体基板1N上に、絶縁層L(図2参照)を介して形成された金属層からなる第1反射体E2と、表面電極E3に、その一方端が連続し、第1半導体領域1PA上の絶縁層Lの表面に沿って延びた抵抗層(クエンチング抵抗)R1と、を備えている。図1では、構造の明確化のため、図2に示した絶縁層Lの記載を省略している。
第1反射体E2は、平面形状がL字型の金属層からなる反射体E21からなる。半導体基板1N上に位置する第1反射体E21(E2)と、第1開口を有する環状の表面電極E3とは、電気的に隔離されている。すなわち、フォトダイオードD1のアノードとカソードには、それぞれ電極が設けられるが、一方の表面電極E3は、第1反射体E2から電気的に分離している。これにより、第1反射体E2は、表面電極E3とは明確に区別され、反射に適した箇所にこれを配置するための設計の自由度が増加している。個々のフォトダイオードD1に接続される抵抗層R1の他方端は、必要に応じて抵抗層R1に連続した配線電極を介して、共通の信号読出線TLに電気的に接続されている。
図1においては、列方向に隣接する一対のフォトダイオード(半導体領域1PAの直下の領域)は、共に、抵抗層R1を介して、行方向に延びる信号読出線TLに接続されている。1つの信号読出線TLには、複数対のフォトダイオードが、それぞれ抵抗層R1を介して接続されている。行方向に延びる信号線TLは、列方向に沿って複数本整列している。個々の信号線TLに対しても、同様に複数対のフォトダイオードが、それぞれ、抵抗層R1を介して接続されている。図1に示される各信号線TLは、最終的には全て接続され、回路的には1本の信号線TLとして、図3に示すような回路を構成する。
抵抗層R1は、これが接続される表面電極E3よりも抵抗率が高く、また、第1反射体E2よりも抵抗率が高い。具体的には、抵抗層R1は、ポリシリコンからなり、残りの電極及び反射体は全てアルミニウムなどの金属からなる。半導体基板1がSiからなる場合には、電極材料としては、アルミニウムの他に、AuGe/Niなどもよく用いられる。Siを用いた場合におけるP型不純物としてはBなどの3族元素が用いられ、N型不純物としては、N、P又はAsなどの5族元素が用いられる。半導体の導電型であるN型とP型は、互いに置換して素子を構成しても、当該素子を機能させることができる。これらの不純物の添加方法としては、拡散法やイオン注入法を用いることができる。
絶縁層Lの材料としては、SiO又はSiNを用いることができる。絶縁層Lの形成方法としては、これが例えばSiOからなる場合には、熱酸化法やスパッタ法を用いることができる。
上述の構造の場合、N型の半導体基板1NとP型の第1半導体領域1PAとの間に、PN接合が構成されることで、フォトダイオードD1が形成されている。半導体基板1Nは、基板裏面に形成された第1電極E1に電気的に接続され、第1半導体領域1PAは、第2半導体領域1PBを介して、表面電極E3に接続されている。抵抗層R1はフォトダイオードD1に対して直列に接続されている(図2の(b)参照)。
フォトダイオードアレイ10においては、個々のフォトダイオードD1をガイガーモードで動作させる。ガイガーモードでは、フォトダイオードD1のブレークダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)をフォトダイオードD1のアノード/カソード間に印加する。すなわち、アノードには(−)電位V1を、カソードには(+)電位V2を印加する。これらの電位の極性は相対的なものであり、一方の電位をグランド電位とすることも可能である。
アノードはP型の半導体領域1PAであり、カソードはN型の半導体基板1Nである。フォトダイオードD1は、アバランシェフォトダイオードとして機能する。フォトダイオードD1に光(フォトン)が入射すると、基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。図2の(a)に示されたP型半導体領域1PAのPN接合界面の近傍領域AVCにおいて、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は電極E1に向けて流れる。
第1反射体E2は、第2半導体領域1PBに対して、相対的に低不純物濃度の第1半導体領域1PAの外側の半導体基板1Nの表面上に設けられている。半導体基板1Nの露出面の領域は、光入射に対しては、殆ど検出に寄与しないデッドスペースである。第1反射体E2は、入射した光を反射し、第2反射体(たとえば、金属パッケージ内面など)に入射させる。第2反射体は、入射した光を再度反射させ、再反射された光を、有効にフォトダイオードD1に導く。
個々のフォトダイオードD1に接続された抵抗層R1の他方端は、半導体基板1Nの表面に沿って共通の信号読出線TLに電気的に接続されている。複数のフォトダイオードD1は、ガイガーモードで動作しており、各フォトダイオードD1は、共通の信号線TLに接続されている。このため、複数のフォトダイオードD1に同時にフォトンが入射した場合、複数のフォトダイオードD1の出力は全て共通の信号線TLに入力され、全体としては入射フォトン数に応じた高強度の信号として計測される。信号読出線TLには、信号読み出し用の電圧降下が生じる負荷抵抗を接続してもよい。
上述の構造は、表面入射型のフォトダイオードアレイの構造であるが、裏面入射型のフォトダイオードアレイの構造を採用してもよい。この場合には、半導体基板1Nの厚みを薄くして、裏面側の電極E1を透明電極とすればよい。また、裏面側の電極E1を、半導体基板1Nの別の位置(例えば基板表面側)に配置してもよい。
次に、図4〜図5を参照して、フォトダイオードアレイ10の基準電圧決定方法、推奨動作電圧決定方法、及び増倍率設定方法について説明する。図4は、逆バイアス電圧に対する電流の変化を示す線図である。図5は、図4に示された電流−電圧特性を電流について一回微分した結果を示す線図である。
まず、フォトダイオードアレイ10に、逆バイアス電圧を印加する。そして、逆バイアス電圧を変化させて、出力電流を測定する。すなわち、フォトダイオードアレイ10の電流−電圧特性を測定する。このとき、必ずしも、チャージアンプなどの増幅器をフォトダイオードアレイ10に接続する必要はない。増幅器の特性ばらつきの影響を無くすためには、フォトダイオードアレイ10に増幅器を接続しないことが好ましい。また、出力電流の代わりに、フォトダイオードアレイ10への入力電流を測定してもよい。
フォトダイオードアレイ10において、ガイガー領域に入る逆バイアス電圧は予め予測できる。したがって、逆バイアス電圧を変化させる際の下限値は、ゼロに設定する必要はなく、ガイガー領域に入る逆バイアス電圧より所定の値だけ低い電圧に設定すればよい。これにより、フォトダイオードアレイ10の出力電流を測定する時間の短縮化を図ることができる。
測定結果の一例を図4に示す。図4では、五体のフォトダイオードアレイ10の測定結果が示されている。図4から分かるように、各フォトダイオードアレイ10で、電流−電圧特性IV1〜IV5が異なる。したがって、個々のフォトダイオードアレイ10に対して、増倍率を設定する必要がある。
図4に示された各電流−電圧特性IV1〜IV5から分かるように、フォトダイオードアレイ10それぞれにおいて、逆バイアス電圧が降伏電圧以上となった後にガイガー領域に入り、フォトダイオードD1がガイガーモードに移行し始めると、出力電流の値が立ち上がる(図4中、矢印1で示される部分)。出力電流が立ち上がる逆バイアス電圧の値は、フォトダイオードアレイ10毎で異なる。
逆バイアス電圧が高くなるにしたがって、ガイガーモードに移行するフォトダイオードD1の数が増えて、出力電流が増加する。そして、各電流−電圧特性IV1〜IV5には、ガイガーモードに移行するフォトダイオードD1の数が最も多い逆バイアス電圧で、出力電流の変化に変曲点が現われる(図4中、矢印2で示される部分)。したがって、各電流−電圧特性IV1〜IV5の変曲点での逆バイアス電圧を基準電圧とし、当該基準電圧に基づいて推奨動作電圧を設定することにより、当該推奨動作電圧を容易に且つ精度良く決定することができる。
逆バイアス電圧に対する出力電流の変化における変曲点を求めるために、図4に示された各電流−電圧特性IV1〜IV5を出力電流について微分する。結果を図5に示す。ここでは、各電流−電圧特性IV1〜IV5を出力電流について一回微分している。また、規格化のために、一回微分した値を出力電流で除している。
図5に示された微分特性Div1〜Div5から分かるように、逆バイアス電圧に対する出力電流の変化における変曲点は、出力電流の一回微分がピークとなって表される(図5中、矢印3で示される部分)。変曲点での逆バイアス電圧が、最も多くのフォトダイオードD1がガイガーモードに移行する逆バイアス電圧である。したがって、最も多くのフォトダイオードD1がガイガーモードに移行する逆バイアス電圧を、推奨動作電圧を決定するための基準電圧とする。基準電圧は、フォトダイオードアレイ10毎で異なる。
図5に示された微分特性Div1〜Div5では、出力電流の一回微分が、一度ピークを迎えた後に、再度ピークを迎えている(図5中、矢印4で示される部分)。これは、逆バイアス電圧を増加させるにしたがって、アフターパルスなどが飛躍的に増大した結果である。すなわち、逆バイアス電圧に対する出力電流の変化には、最も多くのフォトダイオードD1がガイガーモードに移行することにより生じる変曲点とは別に、アフターパルスなどの影響により出力電流が飛躍的に増大することにより生じる変曲点が現われる。これらの変曲点は、逆バイアス電圧を増加させた際に、下に凸から上に凸に変わる変曲点である。したがって、推奨動作電圧は、最も多くのフォトダイオードD1がガイガーモードに移行する逆バイアス電圧(基準電圧)以上で且つアフターパルスなどが飛躍的に増大する逆バイアス電圧未満の範囲、すなわち上述した二つの変曲点間となる逆バイアス電圧に設定することが好ましい。
続いて、所望の増倍率を得るための推奨動作電圧を決定する。フォトダイオードアレイ10の増倍率Mは、上述したように、M=C×ΔVで表される。Cは、フォトダイオードD1の接合容量であるため、既知である。したがって、ΔVが決まることにより、増倍率Mが一意に決定されることとなる。すなわち、基準電圧にΔVを加えた逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定することにより、所望の増倍率Mが得られることとなる。
たとえば、図5に示された各微分特性Div1〜Div5でおいてピークとなる逆バイアス電圧(基準電圧)から所定の値を加えて、各微分特性Div1〜Div5における下に凸の曲線部分の底となる逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定する。具体例として、図5には、微分特性Div1に関し、ピークとなる基準電圧Vrefと、基準電圧Vrefに所定の値ΔVを加えて得られる推奨動作電圧Vopと、が示されている。推奨動作電圧は、フォトダイオードアレイ10毎で異なる。しかしながら、各フォトダイオードアレイ10において、推奨動作電圧と基準電圧との差ΔVが同じであるため、各フォトダイオードアレイ10の増倍率Mの同じである。
推奨動作電圧を、図5に示された各微分特性Div1〜Div5における下に凸の曲線部分の底となる逆バイアス電圧よりも高く設定する場合、増倍率Mが高くなり、検出効率(PDE:Photon Detection Efficiency)が高く、時間分解能が向上するメリットがある。反面、ダークカウント、クロストーク、及びアフターパルスが増加するデメリットがある。推奨動作電圧を、図5に示された微分特性Div1〜Div5における下に凸の曲線部分の底となる逆バイアス電圧よりも低く設定する場合、増倍率Mが低くなり、ダークカウント、クロストーク、及びアフターパルスが減少するメリットがある。反面、検出効率が低く、時間分解能が悪化するデメリットがある。したがって、基準電圧に加える上記所定の値は、フォトダイオードアレイ10に求める特性を考慮して、決定される。
以上のように、本実施形態では、測定された出力電流の変化における変曲点での逆バイアス電圧が、基準電圧として決定され、当該基準電圧に所定の値を加えて得られた電圧が、推奨動作電圧として決定されている。これにより、ダークノイズの影響を受け難く、基準電圧及び推奨動作電圧を精度良く決定することができる。また、本実施形態では、逆バイアス電圧を印加し、逆バイアス電圧の変化に対する出力電流の変化を測定することで、当該変化の変曲点を求めているため、基準電圧及び推奨動作電圧を容易に決定することができる。
そして、本実施形態では、精度良く決定された推奨動作電圧に基づいた増倍率Mが設定されているので、増倍率Mがフォトダイオードアレイ10毎でばらつくのを抑制することができる。
本実施形態では、測定した出力電流の一回微分がピークとなる逆バイアス電圧を基準電圧として決定している。これにより、出力電流の変化における変曲点を確実に求めることができる。
上述した従来の推奨動作電圧の決定手法では、光源からの光を適切に検出する必要がある。このため、暗箱内にフォトダイオードアレイを配置するなど、フォトダイオードアレイに光源からの光以外の光(外乱光)が入射しない構成を採用する必要がある。しかしながら、本実施形態の基準電圧及び推奨動作電圧の決定方法では、外乱光がフォトダイオードアレイ10に入射した場合でも、フォトダイオードアレイ10が外乱光を検出し、出力電流として出力する。すなわち、外乱光も出力電流に反映されることから、外乱光が入射しない構成を採用する必要はない。もちろん、本実施形態においても、外乱光が入射しない構成を採用してもよい。
上述した従来の推奨動作電圧の決定手法では、度数分布を得るために、測定を数千回繰り返す必要があり、測定時間が長くならざるを得なかった。しかしながら、本実施形態では、フォトダイオードアレイ10の逆バイアス電圧に対する出力電流の変化(電流−電圧特性)を測定すればよく、測定時間が極めて短い。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
本実施形態では、逆バイアス電圧に対する電流の変化(電流−電圧特性)における変曲点を一回微分により求めているが、これに限られない。変曲点は、数学的には、二回微分によっても求めることができる。したがって、測定した電流の二回微分がゼロとなる逆バイアス電圧を基準電圧として決定してもよい。
本実施形態では、基準電圧を決定した後に、当該基準電圧に基づいて推奨動作電圧を決定しているが、これに限られない。たとえば、基準電圧を決定することなく、逆バイアス電圧に対する電流の変化から直接的に推奨動作電圧を決定してもよい。
上述したように、推奨動作電圧は、逆バイアス電圧に対する電流の変化において、最も多くのフォトダイオードD1がガイガーモードに移行することにより生じる変曲点と、アフターパルスなどが飛躍的に増大することにより生じる変曲点の間となる逆バイアス電圧に設定することが好ましい。したがって、図4に示されるような電流−電圧特性IV1〜IV5を得た後に、当該電流−電圧特性IV1〜IV5において、逆バイアス電圧を増加させた際に、下に凸から上に凸に変わる二つの変曲点の間の曲線部分での逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定してもよい。これによっても、推奨動作電圧を精度良く且つ容易に決定することができる。この場合にも、変曲点は、一回微分又は二回微分のいずれかにより求めることができる。
10…フォトダイオードアレイ、D1…フォトダイオード(アバランシェフォトダイオード)、R1…抵抗層(クエンチング抵抗)。

Claims (5)

  1. ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定するための基準電圧を決定する基準電圧決定方法であって、
    前記フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧を変化させて電流を測定し、測定した電流の変化における、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち最も多くのアバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行することにより生じる変曲点での逆バイアス電圧を前記基準電圧として決定することを特徴とする基準電圧決定方法。
  2. 測定した電流の一回微分がピークとなる逆バイアス電圧を前記基準電圧として決定することを特徴とする請求項1に記載の基準電圧決定方法。
  3. 測定した電流の二回微分がゼロとなる逆バイアス電圧を前記基準電圧として決定することを特徴とする請求項1に記載の基準電圧決定方法。
  4. ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定する推奨動作電圧決定方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の基準電圧決定方法にて決定された基準電圧に所定の値を加えて得た電圧を前記推奨動作電圧として決定することを特徴とする推奨動作電圧決定方法。
  5. ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、それぞれの前記アバランシェフォトダイオードに対して直列に接続されたクエンチング抵抗と、を備えているフォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧の、推奨動作電圧を決定する推奨動作電圧決定方法であって、
    前記フォトダイオードアレイに印加する逆バイアス電圧を変化させて電流を測定し、測定した電流の変化において、下に凸から上に凸に変わる、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち最も多くのアバランシェフォトダイオードがガイガーモードに移行することにより生じる変曲点と逆バイアス電圧を増加に伴いアフターパルスが増加することにより生じる変曲点との間の曲線部分での逆バイアス電圧を推奨動作電圧として決定することを特徴とする推奨動作電圧決定方法。
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