以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5を形成する(図2参照)。p+型半導体領域3は、中央部が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型半導体領域5は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μmである。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図6参照)。ここでは、図7に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bの全面にわたってピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bはピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図8に示されるように、不規則な凹凸10が第2主面1bの全面に形成される。不規則な凹凸10は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図8は、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10を観察したSEM画像である。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図9参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層11を形成する。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードPD1が完成する。
フォトダイオードPD1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5が形成されており、n−型半導体基板1とp+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。第2主面1bが光学的に露出しているとは、第2主面1bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
フォトダイオードPD1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
フォトダイオードPD1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD1を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
第2主面1bに規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
ここで、第1実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例1と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。n−型半導体基板1のサイズは、6.5mm×6.5mmに設定した。p+型半導体領域3、すなわち光感応領域のサイズは、5.8mm×5.8mmに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、0Vに設定した。
結果を図12に示す。図12において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、比較例1の分光感度特性は特性T2で示されている。また、図12において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
図12から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=25%)であるのに対して、実施例1では分光感度が0.6A/W(QE=72%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
また、実施例1及び比較例1における、分光感度の温度特性についても確認した。ここでは、雰囲気温度を25℃から60℃に上昇させて分光感度特性を調べ、25℃での分光感度に対する60℃での分光感度の割合(温度係数)を求めた。結果を図13に示す。図13において、実施例1の温度係数の特性はT3で示され、比較例1の温度係数の特性は特性T4で示されている。また、図13において、縦軸は温度係数(%/℃)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。
図13から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では温度係数が0.7%/℃であるのに対して、実施例1では温度係数が0.2%/℃となっており、温度依存性が低い。一般に、温度が上昇すると吸収係数の増大とバンドギャップエネルギーの減少により、分光感度が高くなる。実施例1では、室温の状態でも分光感度が十分に高いことから、温度上昇による分光感度の変化が比較例1に比して小さくなっている。
フォトダイオードPD1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD1の光検出感度を更に向上することができる。
第1実施形態では、アキュムレーション層11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、n−型半導体基板1の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
第1実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
第1実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
(第2実施形態)
図14〜図16を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図14〜図16は、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図14参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図15参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図16参照)。これにより、フォトダイオードPD2が完成する。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フォトダイオードPD2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
第2実施形態では、アキュムレーション層11の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層11を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層11が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層11による作用効果を確保することができる。
(第3実施形態)
図17〜図21を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図17〜図21は、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
第3実施形態の製造方法は、パッシベーション層9を形成するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。パッシベーション層9を形成した後、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する(図17参照)。n−型半導体基板1の薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。n−型半導体基板1の薄化された部分の厚みは、例えば100μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば300μm程度である。
次に、n−型半導体基板1の周辺部分の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図18参照)。所望の厚みは、例えば270μmである。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図19参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
次に、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図20参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理した後、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去して、電極13,15を形成する(図21参照)。これにより、フォトダイオードPD3が完成する。
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、フォトダイオードPD3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
第3実施形態では、不規則な凹凸10を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD3を得ることができる。
(第4実施形態)
図22〜図24を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図22〜図24は、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
第4実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を薄化するまでは、第3実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図22参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図23参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図24参照)。これにより、フォトダイオードPD4が完成する。
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、フォトダイオードPD4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
第4実施形態では、アキュムレーション層11を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD4を得ることができる。
(第5実施形態)
図25を参照して、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1について説明する。図25は、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
フォトダイオードアレイPDA1は、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、複数のp+型半導体領域3が形成されており、n−型半導体基板1と各p+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。フォトダイオードアレイPDA1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
第5実施形態においても、第1〜第4実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
フォトダイオードアレイPDA1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度を更に向上することができる。
フォトダイオードアレイPDA1では、第2主面1bにおけるp+型半導体領域3(pn接合)の間の領域に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。このため、p+型半導体領域3の間の領域に入射した光は、第2主面1bにおけるp+型半導体領域3の間の領域に対向している領域に形成されている不規則な凹凸10にて、反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1で確実に吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、p+型半導体領域3の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
(第6実施形態)
図26〜図27を参照して、第6実施形態に係る固体撮像素子SI1について説明する。図26は、第6実施形態に係る固体撮像素子を示す斜視図である。図27は、第6実施形態に係る固体撮像素子の断面構成を説明するための図である。
固体撮像素子SI1は、図26に示されるように、裏面入射型固体撮像素子であって、半導体基板SSの裏面側をKOH水溶液などでエッチングして薄化したBT−CCD(電荷結合素子)である。エッチングされた半導体基板SSの中央領域には凹部TDが形成され、凹部TDの周囲には厚い枠部が存在している。凹部TDの側面は、底面BFに対して鈍角を成して傾斜している。半導体基板SSの薄化された中央領域は光感応領域(撮像領域)であり、この光感応領域に光Lが、Z軸の負方向に沿って入射する。半導体基板SSの凹部TDの底面BFは、光入射面を構成している。なお、この枠部は、エッチングによって除去し、全領域が薄化された裏面入射型固体撮像素子とすることも可能である。
固体撮像素子SI1は、上記半導体基板SSとしてのp型半導体基板21を備えている。p型半導体基板21は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面21a及び第2主面21bを有している。p型半導体基板21は、その厚みが画素ピッチP以下に設定されている。本実施形態では、画素ピッチPは10〜48μm程度であり、p型半導体基板21の厚みは10〜30μm程度である。本実施形態では、2相クロック駆動の例を示しており、各転送電極の下には、電荷の一方向転送を確実にするために不純物濃度を異ならせた領域(不図示)が存在している。
p型半導体基板21の第1主面21a側には、電荷転送部としてのn型半導体層23が形成されており、p型半導体基板21とn型半導体層23との間にはpn接合が形成されている。p型半導体基板21の第1主面21a上には、絶縁層27を介して、転送電極部としての複数の電荷転送電極25が設けられている。p型半導体基板21の第1主面21a側には、図示は省略するが、n型半導体層23を垂直CCD毎に電気的に分離するアイソレーション領域も形成されている。n型半導体層23の厚みは、0.5μm程度である。
p型半導体基板21の第2主面21bにおける光感応領域29全体には、不規則な凹凸10が形成されている。p型半導体基板21の第2主面21b側には、アキュムレーション層31が形成されており、第2主面21bは光学的に露出している。第2主面21bが光学的に露出しているとは、第2主面21bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面21b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。固体撮像素子SI1が、全領域が薄化された裏面入射型固体撮像素子である場合には、p型半導体基板21の第2主面21b全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されていてもよい。固体撮像素子SI1が、光感応領域29付近だけ薄化された裏面入射型固体撮像素子である場合には、p型半導体基板21の薄化されていない周辺の枠部や、枠部にいたる傾斜面も含んだ第2主面21b全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されていてもよい。
続いて、本実施形態の固体撮像素子SI1の製造方法について説明する。
まず、p型半導体基板21を用意し、p型半導体基板21の第1主面21a側に、n型半導体層23を形成する。n型半導体層23は、p型半導体基板21内において第1主面21a側からn型不純物を拡散させることにより形成する。
次に、p型半導体基板21の第2主面21b側に、アキュムレーション層31を形成する。アキュムレーション層31は、上述した実施形態と同様に、p型半導体基板21内において第2主面21b側からp型不純物をp型半導体基板21よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、形成される。アキュムレーション層31の厚みは、例えば0.5μm程度である。アキュムレーション層31は、不規則な凹凸10を形成する前に形成してもよく、また、不規則な凹凸10を形成した後に形成してもよい。
次に、p型半導体基板21を、上述したように薄化する。不規則な凹凸10を形成した後にアキュムレーション層31を形成する場合には、不規則な凹凸10を形成した後に、p型半導体基板21を薄化し、その後、アキュムレーション層31を形成する。
次に、p型半導体基板21を、熱処理して、アキュムレーション層31を活性化させる。熱処理は、例えば、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって行なう。このとき、p型半導体基板21の結晶性も回復することとなる。
次に、p型半導体基板21の第2主面21b側に、不規則な凹凸10を形成する。不規則な凹凸10は、上述した実施形態と同様に、p型半導体基板21の第2主面21bにパルスレーザ光を照射することにより、形成される。
次に、p型半導体基板21を、熱処理する。熱処理は、例えば、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって行なう。熱処理により、p型半導体基板21における結晶損傷の回復及び再結晶化が図れ、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。なお、アキュムレーション層31の形成後の熱処理を省略し、不規則な凹凸10の形成後の熱処理のみとしてもよい。
次に、絶縁層27及び電荷転送電極25を形成する。絶縁層27及び電荷転送電極25を形成する工程は既知であり、説明を省略する。電荷転送電極25は、例えばポリシリコン又は金属からなる。絶縁層27は、例えばSiO2からなる。絶縁層27及び電荷転送電極25を覆うように、更に、保護膜を形成してもよい。保護膜は、例えば、BPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)からなる。これにより、固体撮像素子SI1が完成する。
固体撮像素子SI1では、光入射面(第2主面21b)から光が入射すると、第2主面21bに不規則な凹凸10が形成されているために、入射した光は、凹凸10により散乱され、p型半導体基板21内を様々な方向に進む。第1主面21a等に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面21a等に到達した光成分が第1主面21aにて全反射する可能性は極めて高い。第1主面21a等にて全反射した光成分は、異なる面での全反射や第2主面21bでの反射、散乱、又は拡散を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、固体撮像素子SI1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、p型半導体基板21内を長い距離進む。そして、固体撮像素子SI1に入射した光は、p型半導体基板21の内部を長い距離進むうちに、p型半導体基板21で吸収され、光により生じたキャリアがn型半導体層23の画素ごとの電荷となり、転送されて検出されることとなる。検出されることとなる。したがって、固体撮像素子SI1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
固体撮像素子SI1では、凹凸10による反射、散乱、又は拡散により、画素間でのクロストークが発生し、解像度が低下する懼れがある。しかしながら、p型半導体基板21の厚みが画素ピッチP以下に設定されているので、固体撮像素子SI1では、画素間でのクロストークの発生を抑制することができる。
固体撮像素子SI1では、p型半導体基板21の第2主面21b側にアキュムレーション層31が形成されている。これにより、第2主面21b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。アキュムレーション層31は、第2主面21b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面21bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、固体撮像素子SI1の光検出感度を更に向上することができる。
第6実施形態では、アキュムレーション層31を形成した後に、p型半導体基板21を熱処理している。これにより、p型半導体基板21の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
第6実施形態では、p型半導体基板21を熱処理した後に、電荷転送電極25を形成している。これにより、電荷転送電極25に比較的融点の低い材料を用いる場合でも、熱処理により電荷転送電極25が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電荷転送電極25を適切に形成することができる。
第6実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
ところで、固体撮像素子といった半導体光検出素子において、シリコンからなる半導体基板を厚く設定することにより(例えば、200μm程度)、近赤外の波長帯域に分光感度特性を有する半導体光検出素子を実現することは可能である。しかしながら、上記半導体基板の厚みを大きくした場合、良好な解像度を得るためには、数十ボルト程度の高いバイアス電圧を印加し、半導体基板を完全空乏化する必要がある。完全空乏化されることなく、半導体基板に中性領域が部分的に残っていると、中性領域にて発生したキャリアが拡散して、解像度が劣化するのを防ぐためである。
また、半導体基板が厚いと、暗電流も増加する。このため、半導体基板を冷却し(例えば、−70〜−100℃)、暗電流の増加を抑制する必要もある。
しかしながら、第6実施形態に係る固体撮像素子SI1では、上述したように、第2主面21bに不規則な凹凸10が形成されていることにより、固体撮像素子SI1に入射した光の走行距離が長くされる。このため、半導体基板(p型半導体基板21)、特に光感応領域29に対応する部分を厚くすることなく、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有する半導体光検出素子を実現することができる。したがって、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域に分光感度特性を有する半導体光検出素子よりも、上記固体撮像素子SI1は、極めて低いバイアス電圧の印加又はバイアス電圧の無印加で、良好な解像度を得ることができる。また、用途によっては、半導体基板の冷却も不要となる。
半導体基板、特に光感応領域に対応する部分が薄化されている場合、エタロン現象が生じる懼れがある。エタロン現象は、裏面から入射した披検出光と、入射した被検出光が表面で反射した光との間で干渉する現象であり、近赤外の波長帯域での検出特性に影響を及ぼす。しかしながら、固体撮像素子SI1では、第2主面21bに不規則な凹凸10が形成されていることにより、入射光の位相に対して、凹凸10で反射される光が、分散した位相差を有するので、これらの光同士が相殺され、エタロン現象が抑制される。
第6実施形態では、p型半導体基板21が第2主面21b側より薄化されている。これにより、p型半導体基板21の第1主面21a及び第2主面21b側をそれぞれ光入射面とした半導体光検出素子を得ることができる。すなわち、固体撮像素子SI1は、裏面入射型固体撮像素子だけでなく、表面入射型固体撮像素子としても用いることができる。
アキュムレーション層31を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成する場合、アキュムレーション層31の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きく設定することが好ましい。この場合、パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層31が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層31による作用効果を確保することができる。
(第7実施形態)
図28を参照して、第7実施形態に係るフォトダイオードPD5について説明する。図28は、第7実施形態に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
フォトダイオードPD5は、波長領域が可視〜近赤外領域にある低エネルギー光を検出するためのアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードPD5は、p−型半導体基板40を備えている。p−型半導体基板40は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面40a及び第2主面40bを有している。p−型半導体基板40は、光感応領域41を含んでいる。
光感応領域41は、平面視で第1主面40aの中央部に設けられている。光感応領域41は、第1主面40aから内側に厚みを有する。光感応領域41は、n+型不純物領域43と、p+型不純物領域45と、p−型半導体基板40においてバイアス電圧を印加した際に空乏化する領域と、からなる。n+型不純物領域43は、第1主面40aからp−型半導体基板40の内側に厚みを有する。n+型不純物領域43は、n+型ガードリング43aを有する。n+型ガードリング43aは、n+型不純物領域43の周端に設けられている。p+型不純物領域45は、n+型不純物領域43から更にp−型半導体基板40の内側に厚みを有する。p−型半導体基板40は、p+型拡散遮蔽領域47を有する。p+型拡散遮蔽領域47は、平面視で第1主面40aの周端にあって第1主面40aから内側に厚みを有する。p+型拡散遮蔽領域47は、光感応領域41を囲むように設けられている。
p−型半導体基板40は、例えば硼素(B)等のp型不純物が添加されたシリコン基板である。p+型不純物領域45は、p−型半導体基板40よりもp型不純物が高濃度に添加された領域である。p+型拡散遮蔽領域47は、p+型不純物領域45よりもp型不純物が高濃度で添加された領域である。n+型不純物領域43は、例えばアンチモン(Sb)等のn型不純物が添加された領域である。n+型不純物領域43(n+型ガードリング43aを含む)及びp+型不純物領域45は、p−型半導体基板40内においてpn接合を構成している。
フォトダイオードPD5は、第1主面40a上に積層されたパッシベーション膜49を有する。フォトダイオードPD5は、パッシベーション膜49上に設けられた電極51及び電極53を有する。パッシベーション膜49には、n+型不純物領域43上にコンタクトホールH11が設けられていると共に、p+型拡散遮蔽領域47上にコンタクトホールH12が設けられている。電極51は、コンタクトホールH11を介してn+型不純物領域43に電気的に接触且つ接続されている。電極53は、コンタクトホールH12を介してp+型拡散遮蔽領域47に電気的に接触且つ接続されている。パッシベーション膜49の素材は、例えば酸化シリコン等である。
フォトダイオードPD5は、第2主面40b側に形成された凹部55を有する。凹部55は、p−型半導体基板40が第2主面40b側から薄化されることにより形成され、凹部55の周囲には厚い枠部が存在している。凹部55の側面は、凹部55の底面に対して鈍角を成して傾斜している。凹部55は、平面視で光感応領域41に重なるように形成されている。凹部55の底面と第1主面40aとの間の厚みは比較的小さく、例えば100〜200μm程度であり、150μm程度が好ましい。このように、第1主面40aと凹部55の底面との間の厚みが比較的小さいため、応答速度が高速化されると共に、フォトダイオードPD5に印加するバイアス電圧が低減される。
p−型半導体基板40の第2主面40b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。p−型半導体基板40の第2主面40b側には、アキュムレーション層57が形成されており、アキュムレーション層57における、凹部55の底面に対応する領域、すなわちアバランシェフォトダイオードを構成している光感応領域41に対向している領域は光学的に露出している。第2主面40bが光学的に露出しているとは、第2主面40bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面40b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、凹部55の底面のみ、すなわちアバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域41に対向している領域のみに形成されていてもよい。
フォトダイオードPD5は、電極59を有する。電極59は、アキュムレーション層57上に設けられており、アキュムレーション層57に電気的に接触且つ接続されている。アキュムレーション層57における電極59が形成された領域は、光学的に露出していない。
上記構成を有するフォトダイオードPD5は、電極51と電極59とに対し逆バイアス電圧(ブレークダウン電圧)が印加されている場合、光感応領域41に入射する光量に応じたキャリアが光感応領域41で生成される。p+型拡散遮蔽領域47の近傍で生成されたキャリアはp+型拡散遮蔽領域47に流れ込む。このため、電極51からの出力信号に生じる裾引きは、p+型拡散遮蔽領域47により低減される。
続いて、第7実施形態に係るフォトダイオードPD5の製造方法について説明する。
まず、p−型半導体基板40を準備する。p−型半導体基板40の厚みは300μm程度である。
次に、p−型半導体基板40の第1主面40a側に、p+型不純物領域45及びp+型拡散遮蔽領域47を形成する。p+型不純物領域45は、中央部が開口したマスクなどを用い、p−型半導体基板40内において第1主面40a側からp型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。p+型拡散遮蔽領域47は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p−型半導体基板40内において第1主面40a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。
次に、p−型半導体基板40の第1主面40a側に、n+型ガードリング43a及びn+型不純物領域43を形成する。n+型ガードリング43aは、リング状に開口したマスクなどを用い、p−型半導体基板40内において第1主面40a側からn型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型不純物領域43は、中央部が開口した別のマスクなどを用い、p−型半導体基板40内において第1主面40a側からn型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。
次に、p−型半導体基板40の第2主面40bの表面を研磨することにより平坦化する。その後、p−型半導体基板40におけるp+型不純物領域45に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する。p−型半導体基板40の薄化は、例えばKOH水溶液やTMAHなどを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。p−型半導体基板40の薄化された部分の厚みは、例えば150μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば200μm程度である。
次に、p−型半導体基板40の第2主面40b側に、アキュムレーション層57を形成する。ここでは、p−型半導体基板40内において第2主面40b側からp型不純物をp−型半導体基板40よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入することにより、アキュムレーション層57を形成する。アキュムレーション層57の厚みは、例えば1.5μm程度である。
次に、p−型半導体基板40を熱処理(アニール)して、アキュムレーション層57を活性化させる。ここでは、p−型半導体基板40を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって加熱する。
次に、p−型半導体基板40の第2主面40bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する。不規則な凹凸10は、上述した実施形態と同様に、p型半導体基板40の第2主面40bにパルスレーザ光を照射することにより、形成される。
次に、p−型半導体基板40を熱処理(アニール)する。ここでは、p−型半導体基板40を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって加熱する。熱処理により、p型半導体基板40における結晶損傷の回復及び再結晶化が図れ、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
次に、p−型半導体基板40の第1主面40a側にパッシベーション膜49を形成する。そして、パッシベーション膜49にコンタクトホールH11,H12を形成し、電極51,53を形成する。電極51は、コンタクトホールH11内に形成され、電極53は、コンタクトホールH12内に形成される。また、p−型半導体基板40の薄化された部分の周辺部分におけるアキュムレーション層57上に電極59を形成する。電極51,53は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、電極59は、金(Au)などからなる。これにより、フォトダイオードPD5が完成する。
フォトダイオードPD5では、第2主面40bに不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードPD5に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、p−型半導体基板40内を長い距離進む。
フォトダイオードPD5では、光入射面(第1主面40a)に垂直な方向から光が入射した場合、第2主面40bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、p−型半導体基板40内部で吸収される光成分もあれば、第1主面40aや側面に到達する光成分もある。
第1主面40aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面40aや側面に到達した光成分が第1主面40aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面40aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD5に入射した光は、p−型半導体基板40の内部を長い距離進むうちに、p−型半導体基板40で吸収され、光電流として検出されることとなる。
このように、フォトダイオードPD5に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD5を透過することなく、走行距離が長くされて、p−型半導体基板40で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD5では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
フォトダイオードPD5では、p−型半導体基板40の第2主面40b側にアキュムレーション層57が形成されている。これにより、第2主面40b側で発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層57は、第2主面40b付近で発生したキャリアが当該第2主面40bでトラップされるのを抑制する。このため、発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD5の光検出感度を更に向上することができる。
第7実施形態では、アキュムレーション層57を形成した後に、p−型半導体基板40を熱処理している。これにより、p−型半導体基板40の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
アキュムレーション層57は、不規則な凹凸10を形成した後に、形成されてもよい。アキュムレーション層57を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成する場合、アキュムレーション層57の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きく設定することが好ましい。この場合、パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層57が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層57による作用効果を確保することができる。
第7実施形態では、p−型半導体基板40を熱処理した後に、電極51,53,59を形成している。これにより、電極51,53,59に比較的融点の低い材料を用いる場合でも、熱処理により電極51,53,59が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極51,53,59を適切に形成することができる。
第7実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
第7実施形態では、p−型半導体基板40が第2主面40b側より薄化されている。これにより、p−型半導体基板40の第1主面40a及び第2主面40b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。すなわち、フォトダイオードPD5は、表面入射型フォトダイオードだけでなく、裏面入射型フォトダイオードとして用いることができる。
ところで、アバランシェフォトダイオードにおいて、シリコンからなる半導体基板を厚く設定することにより(例えば、数百μm〜2mm程度)、近赤外の波長帯域に実用上十分な分光感度特性を有する半導体光検出素子を実現することは可能である。しかしながら、アバランシェフォトダイオードでは、空乏化のためのバイアス電圧とアバランシェ増倍のためのバイアス電圧が必要となることから、上記半導体基板の厚みを大きくした場合、極めて高いバイアス電圧を印加する必要がある。また、半導体基板が厚いと、暗電流も増加する。
しかしながら、第7実施形態に係るフォトダイオードPD5では、上述したように、第2主面40bに不規則な凹凸10が形成されていることにより、フォトダイオードPD5に入射した光の走行距離が長くされる。このため、半導体基板(p−型半導体基板40)、特に光感応領域41に対応する部分を厚くすることなく、近赤外の波長帯域に実用上十分な分光感度特性を有するフォトダイオードを実現することができる。したがって、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域に分光感度特性を有するフォトダイオードよりも、上記フォトダイオードPD5は、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードPD5の検出精度が向上する。更に、p−型半導体基板40の厚みが薄いことから、フォトダイオードPD5の応答速度が向上する。
第7実施形態に係るフォトダイオードPD5では、第2主面40b側の全領域が薄化されていてもよい。
(第8実施形態)
図29を参照して、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2について説明する。図29は、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
フォトダイオードアレイPDA2は、p−型半導体基板40を備え、p−型半導体基板40には、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域41が複数配置されている。
p−型半導体基板40の第2主面40b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。すなわち、フォトダイオードアレイPDA2は、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域41に対向している領域だけでなく、光感応領域41間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。
第8実施形態においても、第7実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2は、第7実施形態と同様に、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域に分光感度特性を有するフォトダイオードアレイよりも、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードアレイPDA2の検出精度が向上する。更に、p−型半導体基板40の厚みが薄いことから、フォトダイオードアレイPDA2の応答速度が向上する。
フォトダイオードアレイPDA2では、p−型半導体基板40の第2主面40bにおける光感応領域41間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。このため、光感応領域41間に入射した光は、第2主面40bにおける光感応領域41間に対向している領域に形成されている不規則な凹凸10にて、反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光感応領域41で吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDA2では、光感応領域41間において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
フォトダイオードアレイPDA2も、第7実施形態に係るフォトダイオードPD5と同じく、YAGレーザー光の検出素子として用いることができる。
フォトダイオードアレイPDA2は、第2主面40b側の全領域が薄化されていてもよい。また、フォトダイオードアレイPDA2は、表面入射型及び裏面入射型のいずれのフォトダイオードアレイとして用いることができる。
(第9実施形態)
図30及び図31を参照して、第9実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3の構成について説明する。図30は、第9実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3を概略的に示す平面図である。図31は、図30に示したフォトダイオードアレイPDA3のXXXI−XXXI線に沿った断面構成を示す図である。
フォトダイオードアレイPDA3は、基板62上に複数の半導体層及び絶縁層が積層されてなる。図30に示すようにフォトダイオードアレイPDA3は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHがマトリクス状(本実施形態では4×4)に形成されてなるフォトンカウンティング用マルチチャンネルアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードアレイPDA3の上面側には、信号導線63、抵抗64、及び電極パッド65が設けられている。基板62は、例えば一辺が1mm程度の正方形状である。各光検出チャンネルCHは、例えば、正方形状である。
信号導線63は、各光検出チャンネルCHから出力された信号を運ぶ読み出し部63aと、各抵抗64と読み出し部63aとを接続する接続部63bと、各光検出チャンネルCHの外周を囲むように配線されるチャンネル外周部63cとからなる。読み出し部63aは、当該読み出し部63aを挟んで隣接する2つの列に配置された光検出チャンネルCHそれぞれと接続されており、その一端において電極パッド65と接続されている。また、本実施形態ではフォトダイオードが4×4のマトリクス状に配置されているため、フォトダイオードアレイPDA3上には2本の読み出し部63aが配線されており、これらは電極パッド65に対して双方とも接続される。信号導線63は、例えばアルミニウム(Al)からなる。
抵抗64は、一方の端部64a及びチャンネル外周部63cを介して光検出チャンネルCHごとに設けられており、他方の端部64b及び接続部63bを介して読み出し部63aに接続される。同一の読み出し部63aに接続される複数(本実施形態では8つ)の抵抗64は、当該読み出し部63aに対して接続される。抵抗64は、例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる。
次に、図31を参照してフォトダイオードアレイPDA3の断面構成について説明する。図31に示すように、フォトダイオードアレイPDA3は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板62と、基板62上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp−型半導体層73、とp−型半導体層73上に形成された導電型がp型のp+型半導体領域74と、保護膜76と、p−型半導体層73に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部80と、保護膜76上に形成された上記の信号導線63及び抵抗64とを備える。被検出光は、図31の上面側から又は下面側から入射される。
基板62は、基板部材SMと、基板部材SM上に形成された絶縁膜61と、絶縁膜61上に形成されたn+型半導体層72とを有する。基板部材SMは、Si(シリコン)からなる。絶縁膜61は、例えばSiO2(酸化シリコン)からなる。n+型半導体層72は、Siからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。n+型半導体層72の厚さは、例えば1μm〜12μmである。
p−型半導体層73は、不純物濃度が低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p−型半導体層73は、基板62との界面でpn接合を構成する。p−型半導体層73は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネルCHに対応して複数有する。p−型半導体層73の厚さは、例えば3μm〜5μmである。p−型半導体層73は、Siからなる。したがって、n+型半導体層72とp−型半導体層73とは、シリコン基板を構成している。
p+型半導体領域74は、各光検出チャンネルCHの増倍領域AMに対応して、p−型半導体層73上に形成されている。すなわち、半導体層の積層方向(以下、単に積層方向という)でp+型半導体領域74の下方に位置するp−型半導体層73の基板62との界面近傍の領域が増倍領域AMである。p+型半導体領域74は、Siからなる。
分離部80は、複数の光検出チャンネルCHの間に形成され、各光検出チャンネルCHを分離する。すなわち、分離部80は、各光検出チャンネルCHと1対1に対応してp−型半導体層73に増倍領域AMが形成されるように形成される。分離部80は、各増倍領域AMの周囲を完全に囲うように基板62上において2次元格子状に形成される。分離部80は、積層方向でp−型半導体層73の上面側から下面側まで貫通して形成されている。分離部80の不純物は例えばPからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。分離部80を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層72の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部80にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部80を形成してもよい。トレンチ溝には、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収、又は反射する物質で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
p−型半導体層73、p+型半導体領域74、及び分離部80は、フォトダイオードアレイPDA3の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜76が形成されている。保護膜76は、例えばSiO2からなる絶縁層によって形成される。
保護膜76上には、信号導線63及び抵抗64が形成されている。信号導線63の読み出し部63a及び抵抗64は、分離部80の上方に形成されている。
なお、信号導線63がアノードとして機能し、カソードとして、図示は省略するが基板62の下面側(絶縁膜61を有していない側)の全面に透明電極層(例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる層)を備えていてもよい。あるいは、カソードとして、電極部を表面側に引き出されるように形成してもよい。
ここで、図32を参照して、各光検出チャンネルCHと信号導線63及び抵抗64との接続関係を説明する。図32は、各光検出チャンネルCHと信号導線63及び抵抗64との接続関係を概略的に説明するための図である。図32に示されるように、各光検出チャンネルCHのp+型半導体領域74と信号導線63(チャンネル外周部63c)とは直接接続されている。これにより、信号導線63(チャンネル外周部63c)とp−型半導体層73とは電気的に接続される。また、p−型半導体層73と抵抗64の一端部64aとは、信号導線63(チャンネル外周部63c)を介して接続され、抵抗64は他の一端部64bがそれぞれ接続部63bを介して読み出し部63aに対して接続される。
基板62は、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域が基板部材SM側から薄化されて、基板部材SMにおける複数の光検出チャンネルCHが形成された領域に対応する部分が除去されている。薄化された領域の周囲には、基板部材SMが枠部として存在している。なお、上記枠部も除去され、基板62は、全領域が薄化された、すなわち基板部材SM全体が除去された構成を有していてもよい。基板部材SMの除去は、エッチング(例えば、ドライエッチングなど)や、研磨などにより行うことができる。ドライエッチングにより基板部材SMを除去する場合、絶縁膜61はエッチングストップ層としても機能する。基板部材SMが除去されることにより露出する絶縁膜61は、後述するようにして除去される。
n+型半導体層72の表面には、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されている。n+型半導体層72の表面における不規則な凹凸10が形成された領域は、光学的に露出している。n+型半導体層72の表面が光学的に露出しているとは、n+型半導体層72の表面が空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、n+型半導体層72の表面上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、各光検出チャンネルCHに対向している領域のみに形成されていてもよい。
不規則な凹凸10は、基板部材SMが除去されることにより露出している絶縁膜61に、上述した実施形態と同様に、パルスレーザ光を照射することにより形成される。すなわち、露出している絶縁膜61にパルスレーザ光が照射されると、絶縁膜61が除去されると共に、n+型半導体層72の表面がパルスレーザ光に荒らされ、不規則な凹凸10が形成される。
パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成した後に、基板62を熱処理(アニール)することが好ましい。例えば、基板62を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって加熱する。上記熱処理により、n+型半導体層72における結晶損傷の回復及び再結晶化が図れ、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
このように構成されたフォトダイオードアレイPDA3をフォトンカウンティングに用いる場合、ガイガーモードと呼ばれる動作条件下で動作させる。このガイガーモード動作時には、各光検出チャンネルCHにブレークダウン電圧よりも高い逆電圧(例えば50V以上)が印加される。この状態で上面側から各光検出チャンネルCHに被検出光が入射すると、被検出光が各光検出チャンネルCHにおいて吸収されてキャリアが発生する。発生したキャリアは各光検出チャンネルCH内の電界に従って加速しながら移動し、各増倍領域AMで増倍される。そして、増倍されたキャリアは抵抗64を介して信号導線63により外部へと取り出され、その出力信号の波高値に基づいて検出される。フォトンを検出したチャンネルからは何れも同量の出力が得られるので、全チャンネルからの総出力を検出することでフォトダイオードアレイPDA3のうちのいくつの光検出チャンネルCHから出力があったかがカウントされる。したがって、フォトダイオードアレイPDA3では、被検出光の一回の照射によって、フォトンカウンティングがなされる。
ところで、フォトダイオードアレイPDA3では、n+型半導体層72の表面に不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA3内を長い距離進む。
例えば、フォトダイオードアレイPDA3を表面入射型フォトダイオードアレイとして用い、保護膜76側からフォトダイオードアレイPDA3に光が入射した場合、n+型半導体層72の表面に形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、各光検出チャンネルCHで吸収される光成分もあれば、保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面に到達する光成分もある。
保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面に到達した光成分が保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光は、フォトダイオードアレイPDA3の内部を長い距離進むうちに、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
フォトダイオードアレイPDA3を裏面入射型フォトダイオードアレイとして用い、n+型半導体層72の表面側からフォトダイオードアレイPDA3に光が入射した場合、入射した光は、凹凸10により散乱され、フォトダイオードアレイPDA3内を様々な方向に進む。保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面に到達した光成分が各面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜76側の表面やn+型半導体層72の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射や凹凸10での反射、散乱、又は拡散を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA3内を長い距離進み、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
このように、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードアレイPDA3を透過することなく、走行距離が長くされて、各光検出チャンネルCHで吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードアレイPDA3では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
第9実施形態では、n+型半導体層72の表面に不規則な凹凸10が形成されている。このため、不規則な凹凸10が形成された上記表面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、n+型半導体層72は、アキュムレーション層として機能し、n+型半導体層72の上記表面付近で光により発生したキャリアが該表面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、増倍領域AMへ効率的に移動し、フォトダイオードアレイPDA3の光検出感度を向上することができる。
第9実施形態では、n+型半導体層72における複数の光検出チャンネルCHの間に対応する表面も、不規則な凹凸10が形成されていると共に、光学的に露出している。このため、複数の光検出チャンネルCHの間に入射した光も、不規則な凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光検出チャンネルCHで吸収される。したがって、光検出チャンネルCHの間において検出感度が低下することはなく、フォトダイオードアレイPDA3の光検出感度がより一層向上する。
第9実施形態では、n+型半導体層72の厚みが、不規則な凹凸10の高低差よりも大きい。このため、n+型半導体層72によるアキュムレーション層としての作用効果を確実に確保することができる。
また、第9実施形態では、フォトダイオードアレイPDA3では、pn接合は、基板62のn+型半導体層72と当該基板62のn+型半導体層72上に形成されたエピタキシャル半導体層であるp−型半導体層73とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているp−型半導体層73に形成され、各増倍領域AMの各光検出チャンネルCHへの対応は光検出チャンネルCH間に形成された分離部80によって実現されている。pn接合面は、n+型半導体層72とp−型半導体層73との界面と、分離部80とp−型半導体層73との界面とから構成されており、高濃度不純物領域が凸となり電界が高くなる領域が存在しなくなっている。したがって、フォトダイオードアレイPDA3は、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA3では各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA3はその開口率を格段に高くすることが可能となる。
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA3では検出効率を大きくすることも可能となる。
また、各光検出チャンネルCH間は分離部80によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
また、ガイガーモードで動作させ、フォトンが入射された光検出チャンネルと入射しないチャンネルとの間で電圧差が大きくなった場合にも、光検出チャンネルCH間には分離部80が形成されているため、十分にチャンネル間を分離することができる。
フォトダイオードアレイPDA3では、信号導線63の読み出し部63aが分離部80の上方に形成されている。そのため、信号導線63が増倍領域AM上方、すなわち光検出面上を横切ることが抑制されるため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。また、フォトダイオードアレイPDA3では、抵抗64も分離部80の上方に形成されているため、開口率はさらにより一層向上される。
また、n型の半導体基板を用い、その上にp型のエピタキシャル半導体層を形成した場合、n型の半導体基板で発生したホールの一部が遅れて増倍領域に入りアフターパルスとなってしまうという問題が発生することを本願発明者はアフターパルスの波長依存性から見出した。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイPDA3では、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域において、基板部材SMが除去されているので、アフターパルスを抑制することが可能となる。
第9実施形態において、フォトダイオードアレイに形成される光検出チャンネルの数は、上記実施形態における数(4×4)に限定されない。光検出チャンネルCH間に形成される分離部80の数も、上記実施形態及び変形例で示した数に限られず、例えば3つ以上であってもよい。また、信号導線63は、分離部40の上方に形成されていなくてもよい。抵抗64も分離部80の上方に形成されていなくてもよい。また、各層等は、上記実施形態で例示したものに限られない。
(第10実施形態)
図33を参照して、第10実施形態に係るMOSイメージセンサMI1について説明する。図33は、第10実施形態に係るMOSイメージセンサを概略的に示す平面図である。図34は、図33に示されたMOSイメージセンサのXXXIV−XXXIV線に沿った断面構成を示す図である。
MOSイメージセンサMI1は、シリコンからなる第1導電型の半導体基板90を備えている。半導体基板90には、受光部91、行を選択するための垂直シフトレジスタ92、及び、列を選択するための水平シフトレジスタ93が形成されている。受光部91は、図34(a)に示されるように、半導体基板90の第1主面90a側に配置されている。受光部91には、複数の画素(不図示)が2次元状に配置されている。垂直シフトレジスタ92は、受光部91の側方(図33中、左側)に配置されている。水平シフトレジスタ93も受光部91の側方(図33中、下側)に配置されている。
半導体基板90の第2主面90bにおける受光部91に対応する領域には、図34(a)に示されるように、不規則な凹凸10が形成されている。半導体基板90の第2主面90b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面90bは光学的に露出している。不規則な凹凸10は、図34(b)に示されるように、半導体基板90の第2主面90bの全体にわたって形成されていてもよい。
続いて、図35及び図36を参照して、MOSイメージセンサMI1の受光部91に配置された各画素PXの構成について説明する。図35は、第10実施形態に係るMOSイメージセンサにおける一つの画素を拡大して示す平面図である。図36は、図35におけるXXXVI−XXXVI線に沿った断面構成を示す図である。
各画素PXは、図35に示されるように、受光領域101と付随回路102とで構成される。MOSイメージセンサMI1がPPS(Passive Pixel Sensor)である場合、付随回路102は、読み出し用FETにより構成される。MOSイメージセンサMI1がAPS(Active Pixel Sensor)の場合、付随回路102は、4つのトランジスタ等を含む増幅回路により構成される。
受光領域101は、図36(a)に示されるように、半導体基板90と第2導電型の半導体領域111とで構成されるpn接合からなるフォトダイオードである。付随回路102は、第2導電型の半導体領域111の側方(図36(a)中、左側)に配置されている。半導体基板90の第2主面90bには、画素PX全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されている。不規則な凹凸10は、図36(b)に示されるように、半導体基板90の第2主面90bにおける受光領域101(第2導電型の半導体領域111)に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
第10実施形態においても、他の実施形態と同じようにMOSイメージセンサMI1に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
第10実施形態では、半導体基板90の第1主面90a側の加工プロセスを終了した後、半導体基板90を薄化してもよい。この場合、半導体基板90の第1主面90a及び第2主面90b側をそれぞれ光入射面としたMOSイメージセンサを得ることができる。
第10実施形態にて示した態様は、MOSイメージセンサのみに適用されるものではない。第10実施形態にて示した態様は、近赤外の波長帯域での光を検出する、CMOSイメージセンサ、フォトIC、又はCMOSフォトIC等に適用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
第1〜第5実施形態では、第2主面1bの全面にわたって、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しているが、これに限られない。例えば、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。
第1〜第5実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層11に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、第2主面1bに形成されている不規則な凹凸10が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。
本実施形態に係るフォトダイオードPD1〜PD5、フォトダイオードアレイPDA1〜3、固体撮像素子SI1、及びMOSイメージセンサMI1におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
ところで、先行技術の一つに特表2008−515196号公報に開示された「硫黄がドープされたレーザーによってミクロ構造化された表面層を有するシリコンベースの検出器製造方法」が存在する。特表2008−515196号公報では、シリコン基板の表面の複数の位置の各々を一つ以上のフェムト秒レーザーパルスで照射すると同時に、上記表面を、硫黄を含有する物質に露出して、基板の表面層に複数の硫黄含有物を形成している。このように、特表2008−515196号公報では、シリコンのバンドギャップ中に不純物順位を形成することにより、赤外線感度を向上させている。したがって、半導体光検出素子に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する本実施形態に係る各半導体光検出素子と、特表2008−515196号公報に開示された光検出器と、は相違する。また、特表2008−515196号公報に開示された光検出器は、光電効果により光を検出しており、本実施形態に係る各半導体光検出素子と相違する。
従来、波長1000nm以上の実用的な分光感度を有する半導体受光素子は、化合物半導体を用いた半導体受光素子しか存在しなかった。しかしながら、本発明によれば、原料も加工コストも安く且つ加工も容易なシリコンを用いて波長1000nm以上の近赤外光を検出し得る半導体受光素子を実現できるということは、産業上大きなメリットとなる。