JP3769802B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置の製造方法に係り,特に,異種類の雰囲気条件の処理室を複数連結するための搬送室を備えた半導体製造装置、およびそれら搬送室内、処理室間での基板の搬送方法および搬送装置、並びに搬送装置を実現する運動伝達方法及び関節機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
サブミクロンオーダのパターンルールが要求される半導体デバイスの製造装置には、プロセス装置の低発塵化、コンタミネーション低減化及び小型(小容量)であることが要求される。この理由はデバイス欠陥の主な原因が装置及びその周辺から生じる塵埃であり、また製造装置はその建設及びその維持に多大な費用を要するクリーンルームに置かれることにある。このような背景から、異種類の雰囲気条件の処理室を複数連結した半導体製造装置の処理室間での基板の搬送機構技術に関する従来技術として,特開平3−19252号公報に記載されているように,搬送アームを内蔵した第1と第2の真空チャンバとそれぞれの真空チャンバを連通している処理チャンバ,および複数の真空処理チャンバとからなり,これらのチャンバ間に真空圧力勾配を形成するための真空排気手段を有する構造の真空隔離式処理装置内に設置された多段式の搬送機構技術がある。
【0003】
また,特開昭63−252439号公報に記載されているように,R−θ搬送アームを中央の搬送室内に有し,この搬送室に隣接して1軸の受取り搬送アームを有する複数の処理チャンバ内で,ガス化学エッチングやガス化学付着,物理的スパッタリング,急速な熱処理等のプロセスを別々のウエハに同時に行ったり,あるいは,同じウエハに種々のプロセスを順次行うことが可能な多処理チャンバシステムに設置された多段式の搬送機構技術がある。
【0004】
さらに,特開平4−87785号公報に記載されているように,マルチチャンバ方式の処理装置の中央の搬送アームとして,歯付ベルトとプーリを用いた多段積み重ね構造の搬送機構技術がある。
【0005】
さらに,特開昭63−28047号公報に記載されているように,移動可能な可搬チャンバを用いて,共通な仕様の移送口を互いに結合した状態で,アームの結合部を同軸で交差させ積み重ねた多段構造のアームを用いて,このアームを伸縮させることにより試料を搬送する搬送機構技術がある。
【0006】
さらに,多段構造の搬送用ハンドラとして,特開昭62−161608号公報や特開昭61−87351号公報に記載されているように,一対の同心軸の連結部とタイミングベルトで駆動する蛙足型アームの搬送機構技術がある。
【0007】
また,特開昭61−278149号公報に記載されているように,一対の同心軸の連結部を有しパンタグラフ状に伸縮する蛙足型アームの搬送機構技術がある。 さらに,特開昭60−183736号公報に記載されているように,一対の同心軸の連結部と歯車駆動アームを有するハンドラを用いた搬送機構技術がある。
【0008】
また,特開平4−294984号公報に記載されているように,帯状のばね材で形成された弾性アームを用いた摺動部のない搬送機構技術がある。
【0009】
また,特開平4−206547号公報に記載されているように,ガス圧力を制御可能な密封容器を,共通の接続口を介してプロセス装置に取り付け,その後にこの接続口のゲート弁を開閉することにより,密封容器内の雰囲気の密封状態を破ることなく装置から試料を搬入出する搬送機構技術がある。
【0010】
さらに,特開平6−15592号公報に記載されているように,一式のアームの先端に同軸の回転連結部を各々有して互いに反対方向に伸縮する構造で2枚の試料を搭載可能とした蛙足型アームの搬送機構技術がある。
【0011】
さらに,特開昭60−184678号公報に記載されているように,定置された処理専用真空容器と移動可能な搬送専用真空容器とからなり,処理専用真空容器に共通の開閉ゲートを介して互いに接続し,搬送専用真空容器を直線移動または回転移動させて試料を出し入れする真空処理装置用の搬送機構技術がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記の半導体製造装置等の処理室間等での基板の搬送には,伸縮により試料を搬送する搬送アームが用いられている。従来技術の搬送アームの構造は,アームの結合部を同軸にして積み重ねて交差させた多段の連結構造である。この多段にアームを積み重ねた構造のため,搬送アーム全体の総高さを低減できないという第1の技術課題があった。その結果,処理室や真空容器室内の高さを低減し半導体製造装置の小型化を図る上で限界があるという第2の技術課題があった。さらに,特殊雰囲気内で駆動する搬送アームの連結部の同軸の案内に用いるベアリングに適当な間隙すなわちバックラシュや耐特殊雰囲気用の潤滑が必要であり,そのため搬送アーム先端の位置決め精度が低下するという第3の技術課題や精密構造のベアリングの保守交換調整に時間を費やすため半導体製造装置のスループットが低下するという第4の技術課題があった。さらに,簡便な搬送システムがないため処理済み基板を種々の分子や原子汚染等無しにクリーンに処理室間で短時間に受け渡しができないことによる半導体装置の性能劣化に伴う歩留り低下という第5の技術課題も有していた。
【0013】
すなわち,従来技術は,図15に示す蛙足型の搬送アームのように駆動源106から駆動アーム102への回転駆動力を,一対の同心軸の連結部101を介して受動アーム103に伝えて,先端アーム104に載置した基板105を図15−aから図15−bに示すように移動し搬送するような構造を基本としている。図15−cに示すように,駆動アーム102と受動アーム103は,同心軸の連結部101を介する積み重ね構造となり,初段のアームの低部から最終段のアームの頂部までの総高さhが各アームの高さの累積と連結部の回転用の間隙との総和となる。仮に一つのアームの高さを全て同じtとして,連結部アーム間の隙間も同じくdとすると,総高さhは(2・t+d)となる。さらに,搬送のストロークを延ばすため,受動アームを複数,すなわちn段組み合わせる多段構造のマニュピュレータでは,全てのアームの高さが累積されることもあるので,その全体の総高さhは[n・t+(n−1)・d]となり,小型化を図ることがきわめて困難という上述の第1,第2の技術的課題があった。
【0014】
また,従来の多段式の真空処理装置としては,図16に示すように搬送アーム201を内蔵した搬送室202の周囲に複数のゲート弁203〜210を介して,処理室213ほか図示していない複数の処理室を配置したものがある。この搬送アームは一対の同心軸の連結部221を介して,駆動源226から駆動アーム222への回転駆動力を受動アーム223に伝え,先端アーム224に載置した基板225を図16−aから図16−bに示すように移動し搬送するような構造を基本としている。駆動アーム222と受動アーム223は,同心軸の連結部221を有するため積み重ね構造となり,初段のアームの低部から最終段のアームの頂部までの総高さhが各アームの高さの累積と連結部の回転用間隙との総和となる。仮に一つのアームの高さを全て同じtとして,連結部の隙間も同じくdとすると,総高さhは(2・t+d)となる。さらに,処理室内までのストロークL(ゲート弁幅を含む処理室ウエハ設置台までの連通路の長さで,概ねウエハ直径Dの3倍程度,すなわちL≧3・D)を得るために,各アームの長さは少なくともL/2以上(概ね≧3・D/2)が必要となる。その結果,折り畳んだアームやウエハが内壁に接触することなく旋回可能とするため,搬送室の半径はL/2以上の寸法となる(概ね搬送室の内径≧3・D)。このことは,大口径化するウエハや液晶基板を取り扱う半導体製造装置のフットプリント(床面積)を低減する上で,小型化を図ることが極めて困難という第6の技術課題を有していた。
【0015】
一方,このような多段のアーム構造を回避するため同心軸の連結部を有さない搬送アームとして,帯状のばね材で形成された弾性アームを用いた連結部のない搬送アームがあるが,これは,搬送ストロークを得るために,長さの長い帯状のばね材からなるアームのたわみ変形を低減する構造となり,帯状のばね材の幅を大きくすることが必要となる。この結果,帯状のばね材で構成されるアームの総高さを,同心軸の連結部を有する搬送アームのアームよりも低減できないため,半導体製造装置の小型化を図ることが極めて困難という第7の技術課題や,長寸法のばね材で支持する構造のため,横剛性が小さくなり搬送アーム先端の移動後の整定時間が長くなりスループットを低下させるという第8の技術課題を有していた。
【0016】
上述のように,従来の搬送アームでは,いずれも半導体製造装置の小型化が容易に図れないため処理室や搬送室の内容積が大きくなり,その結果ウエハや基板に種々のプロセス処理を反復するための真空や特殊雰囲気ガスの排気や処理雰囲気への再設定に時間を要してしまうのでスループットが低下するという第9の技術課題があった。さらに,同心軸の連結部に用いられる軸受けのバックラッシュによる位置決め精度低下や位置決め整定特性の不良という上述の第3の技術課題や,長寸法のベルト駆動による剛性低下による位置決め精度低下や位置決め整定特性の悪化や発塵による汚染という第10の技術課題が懸念されるた。その結果,信頼性を確保するための保守作業が頻繁に必要となり,この保守作業に時間を費やすしてしまい,半導体製造プロセスのスループットを上げることが困難であるという第11の技術課題も有していた。
【0017】
本発明は上述の種々の技術課題を解決するためになされたもので,互いに異なる雰囲気条件の搬送室と処理室との間を基板やウエハへの汚染を生じることなく,高スループットで基板を搬送して半導体装置を製造する方法、そのための半導体製造装置,および,それを実現する基板の搬送方法及び装置、並びに運動伝達方法及び関節機構,さらには,高性能な半導体装置を安価に提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために,本発明においては,
2個ないしは4個の円弧部のそれぞれの中心軸を互いに一致せず平行に配置し,第1の円弧部に第2の円弧部を外接させ,互いに接する該円弧部の中心軸に直角な方向に互いに引き合う拘束力を生じさせ,互いに接する円弧部が互いに逆方向に転動可能な運動伝達方法を有する。
【0019】
また,第1のアームの旋回運動を少なくとも一つの第2のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構であって、各アームの接続部が、同心円状に円弧部と円筒部より構成され、前記第1のアームの接続部の円弧部に少なくとも一つの前記第2のアームの接続部の円弧部を外接し,互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材を設け、前記第1のアームの接続部の中心軸回りの旋回運動を、前記巻部材を伝達の媒体として、前記互いに円弧部で接する第2のアームの逆方向の旋回運動に伝達する構造の関節機構を有する。
【0020】
また,一方のアームの旋回運動を少なくとも一つの他方のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構を、同心円状に円弧部と円筒部より構成された各アームの接続部と、互いに外接する一方のアームの接続部の円弧部と、少なくとも一つの他方のアームの接続部の円弧部と、互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材とにより構成し、第1アームおよび第2アームの各一端側を前記関節機構により互いに接続し、前記第1アームの他端側と第3アームの一端側とを前記関節機構により接続し、前記第2アームの他端側と第4アームの一端側とを前記関節機構により接続し、前記第3アームおよび第4アームの各他端側を前記関節機構により接続し、前記第3アームと第4アームの接続部に被搬送物載置用の先端アームを接続して搬送装置を構成し、前記第1アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸を駆動源により駆動し、前記第2アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸を回転自由にして、所定位置に保持し、前記駆動軸の回転により各アームを連動して、被搬送物を載置した先端アームを移動させることを特徴とする搬送方法を有する。
【0021】
また、一方のアームの旋回運動を少なくとも一つの他方のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構が、同心円状に円弧部と円筒部より構成された各アームの接続部と、一方のアームの接続部の円弧部に少なくとも一つの他方のアームの接続部の円弧部が外接され、互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材とにより構成され、複数の構成要素であるアームの間の接続が前記関節機構によりなされた搬送装置であって、互いに一端側を前記関節機構により接続された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび第2アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動源と、前記第1アームの他端側と、前記関節機構により一端側が接続された第3アームと、前記第2アームの他端側と、前記関節機構により一端側が接続された第4アームと、前記第3アームおよび第4アームの他端側が前記関節機構により接続され、該接続部に連結した被搬送物載置用の先端アームとにより構成されたことを特徴とする搬送装置を有する。
【0022】
また、一方のアームの旋回運動を少なくとも一つの他方のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構が、同心円状に円弧部と円筒部より構成された各アームの接続部と、一方のアームの接続部の円弧部に少なくとも一つの他方のアームの接続部の円弧部が外接され、互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材とにより構成され、複数の構成要素であるアームの間の接続が前記関節機構によりなされた搬送装置であって、互いに一端側を前記関節機構により接続された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび第2アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動源と、前記第1アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第3アームと、前記第2アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第4アームと、前記第3アームおよび第4アームの各他端側が前記関節機構により接続され、前記第3アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第5アームと、前記第4アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第6アームと、前記第5アームおよび第6アームの各一端側が前記関節機構により接続され、前記第5アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第7アームと、前記第6アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第8アームと、前記第7アームおよび第8アームの他端側が前記関節機構により接続され、該接続部に連結した被搬送物載置用の先端アームとにより構成されたことを特徴とする搬送装置を有する。
【0023】
また、半導体ウエハに処理を施す処理室とそれに連結可能な搬送室とを備え、前記搬送室を所望の前記処理室と外部雰囲気より隔離して連結し、前記搬送室内に設けられたベアリングレス関節を有する搬送ロボットアームを用いて、前記半導体ウエハを前記処理室へ搬入または前記処理室から搬出することを特徴とする半導体装置の製造方法を有する。
【0024】
また、半導体ウエハに処理を施す処理室とそれに連結された搬送室とを備え、前記搬送室内に移動可能なバッファ室を設け、前記バッファ室内にベアリングレスの関節により構成された搬送ロボットアームを設置し、前記バッファ室を所望の処理室へ移動し、対向位置決め後に、前記搬送ロボットアームを用いて前記半導体ウエハを前記処理室へ搬入または前記処理室から搬出することを特徴とする半導体装置の製造方法を有する。
【0025】
また、搬送室内に2個ないしは4個の円弧部のそれぞれの中心軸を互いに一致せず平行に配置し,第1の円弧部に第2の円弧部を外接させ,互いに接する該円弧部の中心軸に直角な方向に互いに引き合う拘束力を生じさせ,互いに接する円弧部が互いに逆方向に転動可能な運動伝達方法によって,基板を掲載した先端アーム部を移動して,該バッファ室と対向した処理室へ該基板を搬入し設置して,該基板に所定の処理を施し,また,該処理室で処理済みの基板を搬出し,別の処理室へ搬入し設置して該基板に所定の処理を施す工程を反復することにより,該基板を順次処理室から別の処理室へと搬送授受する工程の製造方法を有する。
【0026】
また,互いに隣接し,互いに異なる雰囲気条件の少なくとも一つ以上の処理室や搬送室を有する半導体製造装置において,それぞれの中心軸が互いに一致せず平行な2個ないしは4個の円弧部からなる円弧手段と,第1の円弧部に少なくとも第2の円弧部が外接する構造を有し,互いに接する該円弧部の中心軸に直角な方向に互いに引き合う拘束力を生じる拘束手段と,互いに接した円弧部が相互に逆方向に転動する構造の運動伝達機構を有する基板の搬送手段を少なくとも有する半導体製造装置を具備する。
【0027】
また,各処理室の雰囲気と搬送室の雰囲気とを互いに独立に維持した状態で基板を順次処理室から別の処理室へと,互いに接する円弧部の中心軸方向から見て,該円弧部と同心円状をなし,かつ該円弧部より半径の小さい円筒部の側面の一部に沿って接し,互いに反対方向に略対称なS字状をなす巻部材の互いに交差する交差点が,該円弧部の互いに接する外接部分と一致するするように,該円弧部を互いに逆方向に転動するように運動伝達し搬送して,半導体装置の機能を処理付加することを反復して製造する工程の製造方法を有する。
【0028】
また,プラズマクリーニング,シリコンナイトライド,アモルファスシリコン,ドープドアモルファスシリコン,二酸化シリコン,オキシナイトライドの成膜処理の少なくとも2つ以上の処理を,互いに接する円弧部の中心軸方向から見て,該円弧部と同心円状をなし,かつ該円弧部より半径の小さい円筒部の側面の一部に沿って接し,互いに反対方向に略対称なS字状をなす巻部材の互いに交差する交差点が,該円弧部の互いに接する外接部分と一致するするように,該円弧部を互いに逆方向に転動するように運動伝達し搬送して,基板に施すことによる薄膜トランジスタ形成工程を少なくとも含んで製造される液晶パネルを具備する。
【0029】
また,金属や樹脂等の少なくとも2種類以上の複合材料処理を,互いに接する円弧部の中心軸方向から見て,該円弧部と同心円状をなし,かつ該円弧部より半径の小さい円筒部の側面の一部に沿って接し,互いに反対方向に略対称なS字状をなす巻部材の互いに交差する交差点が,該円弧部の互いに接する外接部分と一致するするように,該円弧部を互いに逆方向に転動するように運動伝達し搬送して,材料に施すことにより材料特性勾配を付加する工程を少なくとも含んで製造されるエンジニアリング材料を有する。
【0030】
以上の課題を解決するための手段により以下の作用が得られる。
【0031】
2個ないしは4個の円弧部のそれぞれの中心軸を互いに一致せず平行に配置し,第1の円弧部に第2の円弧部を外接させ,互いに接する該円弧部の中心軸に直角な方向に互いに引き合う拘束力を生じさせ,互いに接する円弧部が互いに逆方向に転動可能な運動伝達方法を有するので,複数のアームを積み重ねることなく互いに連結させることが可能となり,全てのアームの総高さを一つのアームの高さと同じ値にできる。その結果,所望のストロークの移動可能な搬送アームを最小の高さで設計し実用化できる。
【0032】
また,複数のアームを連結させても全体の高さが増加しないので,短いアームを多数連結した構造で長い搬送ストロークを有する搬送アーム機構を実現できる。従って,搬送アームを内蔵する搬送室の内径を小型にすることが容易となる。
【0033】
さらに,中心軸に直角な方向に互いに引き合う拘束力で円弧部が互いに接して転動するので,アームの連結部にバックラッシュが生じない。その結果,搬送アームの位置決め精度が向上し,さらに,位置決め整定時間が短縮してスループットが向上する。
【0034】
また,円弧部が互いに引き合う拘束力を発生する巻部材の全長が短く,さらには,円筒部に巻く構造のため,アーム全体のたわみ変形に対する剛性が大きくなる。従って,アームの移動に伴う整定特性が向上して,アーム先端の位置決め制御特性が向上するので,高速移動と短時間整定によるスループット向上を容易に図ることができる。
【0035】
また,中心軸間に作用する拘束力で円弧部が互いに接してすべらず転動する構造なので,摺動摩耗等による発塵現象が生じることなく搬送システムの信頼性が向上し,保守までの間隔を長くできるので装置の稼働率が向上してスループットが上がる。さらに,円弧部が互いに接する拘束力の大きさ調整に際して,特に微妙な調整を必要としないため,保守が容易で保守に費やす時間も短時間で済むのでスループットが向上する。
【0036】
以上の結果,互いに異なる雰囲気条件の搬送室と処理室との間を基板やウエハに汚染を与えることなく,高いスループットで両室間に基板を搬送可能にする半導体製造装置,および,それを実現する基板の搬送方法,さらには,基板の汚染の無い高性能な半導体装置を安価で提供可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の一実施例を図を用いて説明する。なお,それぞれ図中において,同一の機能の部分には同一の番号を付した。
【0038】
図1は本発明の一実施例の装置の概略図であり,図1−aは搬送アームのアームを縮めた状態の鳥瞰図,図1−bはアームを伸ばした状態の鳥瞰図,図1−cはアームを伸ばした状態の側面図である。駆動源10と一対の駆動アーム2,受動アーム3および各々のアームを連結する円弧部11,12,13,14,ならびに先端アーム20とから主に構成され,ウエハ1を水平に搬送する構造である。
【0039】
図2に各アームの両端にある円弧部が互いに接する連結部分の一部を拡大した鳥瞰図の一例を示した。図2−aにおいて,アーム2の略一端側に中心軸35を有する円弧部12は,上側の円弧部31と下側の円弧部32,および,これらの二つの円弧部に挟まれた位置でしかも中心軸35を同一にして両円弧部より小さな半径の円筒部22とから主に構成される関節構造である。同様に,アーム3の他端側に中心軸36を有する円弧部13は,上側の円弧部33と下側の円弧部34とおよび両円弧部に挟まれた位置で中心軸36を同一にして両円弧部より小さな半径の円筒部23とから主に構成される構造である。図2−bに円筒部の主要部分を示したように,円筒部22と23との間には,帯状の巻部材41,42,43が略S字状をなすように互いに交互に巻つけてある。各々の巻部材の両端は固定治具51,52,53,54等(一部図示せず)または図示していない近傍のアーム部材の一部に,巻部材に張力を掛けた状態で固定してある。3本の巻部材への張力を掛ける一方法は,まず上下の巻部材41,43の両端を固定した後,逆方向に巻つける巻部材42の片側を固定した状態で,図2−bの矢印55方向に引張り力を加えるように固定治具を調整する。この結果,各々の巻部材に矢印56で示すような張力が働き,円弧部には矢印57で示すように,互いの円弧部の中心軸35と36とが引き合う方向に拘束力が作用して,円弧部31と円弧部33が外接部58で互いに接する。同時に円弧部32と円弧部34も図示していない外接部で互いに接する。この構造によりアーム2が例えば矢印59の方向に回転すれば,互いに接触した円弧部がすべらず転動するので,アーム3が矢印60の方向に回転する。これらの外接部の位置と巻部材41と42ないしは巻部材42と43との交差する位置とは,円弧部の中心軸方向からみた状態で略一致するように設計することが転動効率の観点から望まし。この状態の時に,巻部材に掛かる張力の転動に伴う変化を最小にできる。以上の構造の運動伝達方法により潤滑材の添加なしに滑らかにアームが回転移動する搬送アームが提供できるという本発明の第1の特徴が認められる。この結果,潤滑を必要とするベアリング等の運動伝達手段なしに搬送アームを連結できるので,真空やプロセスガス雰囲気等に対する信頼性が著しく向上するという本発明の第2の特徴が認められる。
【0040】
なお、潤滑等を必要とする従来の搬送機構の実用雰囲気圧として10E-6torrの真空が限界であったのに対し、本発明の関節機構は10E-8〜10E-10torrレベルの真空雰囲気圧で使用可能となるので、微細パターンを用いた高性能な半導体装置の製造上問題となる0.1μm以下の微粒子の量を1/100〜1/10000と低減できる特徴がある。
【0041】
図3に各アームの両端にある円弧部が互いに接する連結部分の側断面の一部を拡大した二つの例を示した。円筒部22,23に張力を負荷して巻つけた図示していない巻部材で発生する拘束力により,円弧部221と231および円弧部222と232は,それぞれ矢印57方向に拘束力が作用し外接部58で互いに接してすべらずに転動可能となる。互いに外接する円弧部の端面の転動面の断面形状は互いに凹凸の構造とすることにより,転動に際して円弧部の中心軸方向すなわち上下方向への位置ずれを防止でき,搬送アーム先端の位置決めを高精度に行うことが可能となるという本発明の第3の特徴がある。この凹凸の断面構造の一例として図3−aに半円弧状の凹部と凸部の構造の一例を示し,図3−bに半円弧状の凸部と面取り状の凹部との構造の一例を示した。なお,各々のアームの円弧部の断面構造と凹凸の組み合わせは図3−aのように上下逆でも,図3−bのように上下同一でも構わないが,外接部の位置の半径が同一となることが望ましい。
【0042】
一方,アーム2とアーム3の高さ方向の距離をtとすると,連結されたアームの底部と頂部の距離すなわち総高さhは,図1−cに示すようにtに等しくなる。この結果は図15−cに示した従来技術例の総高さh=(2・t+d)に比較して小さい。従って,二個の円弧部が連結する搬送アームの小型化が容易に図れる本発明の第4の特徴が認められる。
【0043】
なお,一対のアーム2同志が連結する一対の円弧部11および一対のアーム3同志が連結する一対の円弧部14の構造は,図2と図3に示したものと同一の構造が応用できる。
【0044】
図4は本発明の第2の実施例の装置の概略図である。1本のアームの長さを図1の第1の実施例の場合に比べて約1/2と短いアームを複数連結させて,搬送アームの横幅を約1/2と小型化し,しかも図1に示した第1の実施例と同等の搬送ストロークを達成する場合の一例である。図4−aは搬送アームのアームを縮めた状態の鳥瞰図,図4−bはアームを伸ばした状態の鳥瞰図,図4−cはアームを伸ばした状態の側面図である。駆動源10と一対の駆動アーム2,受動アーム3,さらにその動きを受ける受動アーム4,5および各々のアームを連結する円弧部11,12,13,14,15,16,17,18ならびに先端アーム20とから主に構成され,ウエハ1等を水平に搬送する構造である。すなわち,搬送アームの搬送ストロークを減らさず,また搬送アームの総高さを増さずに,先端アーム進行方向に対する横方向の占有幅を低減できるという本発明の第5の特徴が認められる。なお,一対のアームが連結する円弧部11,12,13,16,17,18の構造は,図2および図3に示した実施例と類似構造のものが利用できるが,二対のアーム3およびアーム4が連結する二対の円弧部14,15が接触する連結部分は図5に述べる構造とする。
【0045】
図5は本発明の四個の円弧部が連結する部分の一実施例の概略鳥瞰図である。図5−aに示したように,アーム3の一端の中心軸71を有する円弧部は,上側の円弧部75と下側の円弧部76と,これらの両円弧部と中心軸71を同一にして,両円弧部より小さな半径で,両円弧部に挟まれる位置にある円筒部95とからなる。同様に,他方のアーム3の一端側の中心軸72を有する円弧部は,上側の円弧部77と下側の円弧部78と,これらの両円弧部と中心軸72を同一にして,両円弧部より小さな半径で,両円弧部に挟まれる位置にある円筒部96とからなる。さらに,アーム4の一端側の中心軸73を有する円弧部は,上側の円弧部79と下側の円弧部80と,これらの両円弧部と中心軸73を同一にして,両円弧部より小さな半径で,両円弧部に挟まれる位置にある円筒部97とからなる。また,他方のアーム4の一端側の中心軸74を有する円弧部15は,上側の円弧部81と下側の円弧部82と,これらの両円弧部と中心軸74を同一にして,両円弧部より小さな半径で,両円弧部に挟まれる位置にある円筒部98とからなる。 図5−bに円筒部の主要部分を示したように,円筒部95と96との間には,帯状の巻部材83,84,85が略S字状をなすように互いに交互に巻つけられ,各々の巻部材の両端は固定治具により,巻きついている円筒部に対して張力を生じるように固定してある。同様に,円筒部96と97との間には,帯状の巻部材86,87,88が略S字状をなすように互いに交互に巻つけられ,各々の巻部材の両端は固定治具により,巻きついている円筒部に張力を生じるように固定してある。さらに,円筒部97と98との間には,帯状の巻部材89,90,91が略S字状をなすように互いに交互に巻つけられ,各々の巻部材の両端は固定治具により,巻きついている円筒部に張力を生じるように固定してある。また,円筒部98と95との間には,帯状の巻部材92,93,94が略S字状をなすように互いに交互に巻つけられ,各々の巻部材の両端は固定治具により,巻きついている円筒部に張力を生じるように固定してある。
【0046】
なお,円筒95において,巻部材83,93,85はそれぞれ巻部材92,84,94の内側に重ねて巻つけてある。同様に円筒96において,巻部材86,84,88はそれぞれ巻部材83,87,85の内側に重ねて巻つけてある。さらに,円筒97において,巻部材89,87,91はそれぞれ巻部材86,90,88の内側に重ねて巻つけてある。また,円筒98において,巻部材92,90,94はそれぞれ巻部材89,93,91の内側に重ねて巻つけてある。もちろん,重ねてある巻部材を重ねずに,各々中心軸方向に互いにずらして固定することも可能であるが,アームの高さを最小化するためには,図示した如く重ねて巻くことが有効である。
【0047】
また,巻部材へ張力を掛ける一方法は図2に示した巻部材の張力の調整方法と同様に,全ての巻部材に張力を負荷した状態で固定することにより,上側の円弧部75と77とを互いに接しせしめ,円弧部77と79とを互いに接しせしめ,円弧部79と81とを互いに接しせしめ,円弧部81と75とを互いに接しせしめ,さらに,下側の円弧部76と78とを互いに接しせしめ,円弧部78と80とを互いに接しせしめ,円弧部80と82とを互いに接しせしめ,円弧部82と76とを互いに接しせしめ,しかも,中心軸71と72とが互いに引き合う方向,および,中心軸72と73とが互いに引き合う方向,中心軸73と74とが互いに引き合う方向,中心軸74と71とが互いに引き合う方向とにそれぞれ拘束力を生じる状態で連結することができる。その結果,互いに接触した円弧部がすべらず転動するので,アーム3が矢印107の方向に回転すると,アーム4が矢印108の方向に円滑に回転する。また,円弧部が互いに接する外接部の位置と各々の円弧部の円筒に巻きつけた三つの巻部材が交差する位置とを,円弧部の中心軸方向からみた状態で略一致させることにより,巻部材に掛かる張力の転動に伴う変化を最小にできる。4ヵ所の各円弧部が互いに接する外接部分の構造は図3の場合と類似にできる。すなわち,互いに外接する円弧部の端面の転動面の断面形状は互いに凹状と凸状の構造とすることにより,転動に際して円弧部の中心軸方向すなわち上下方向への位置ずれを防ぎアームの移動操作を高精度行える特徴がある。
【0048】
一方,アーム2とアーム3およびアーム4とアーム5の高さ方向の厚みをtとすると,全てを連結したアームの底部と頂部の距離すなわち総高さhは,図4−cに示すようにtに等しくなる。このことは,図1の実施例の場合と同様に,本発明の搬送アーム機構がアームの連結数によらず総高さhを最小な一定値に保つことが可能であるので,4個の円弧部が連結する搬送アームの小型化に有効であるという本発明の第6の特徴が認められる。
【0049】
次に,直径200mmのウエハをストローク453mm搬送可能な搬送アームの一実施例を図6,図7,図8を用いて説明する。いずれの図も駆動アームを0度から88度まで22度刻みで回転させた時の,ウエハ1と各アームおよびその円弧部の軌跡を中心軸方向から見た平面図で描いたものである。ウエハの移動方向に対して線対称な配置の構成部品については片側のみに番号を付した。また,回転角度44度の時の状態を太い実線で強調して示した。いずれの場合も円弧部11,12,13,14と円弧部15,16,17,18,円弧部19,37,38,39の半径を15mmに設計し,各々の円弧部の取りついたアームの長さ(アーム両端の円弧部の中心軸間距離で表わす)を次述のような値で設計した一例である。
【0050】
図6における機構のすべての円弧部は図2の実施例と同様の2個の円弧部の連結構造をなし,アーム2とアーム3の長さはそれぞれ235mmで,駆動時の最大横幅Wは530mmである。
【0051】
図7における機構では,円弧部14と15が図5で示した実施例と同様の4個の円弧部の連結構造をなし,残りの円弧部11,12,13,16,17,18は図2で示した実施例と同様の2個の円弧部の連結構造をなしている。アーム2とアーム3の長さは118mm,アーム4とアーム5の長さは117mmで,駆動時の最大横幅Wは296mmである。
【0052】
図8における機構では,円弧部14と15および円弧部18と19が図5で示した実施例と同様の4個の円弧部の連結構造をなし,残りの円弧部11,12,13,16,17,37,38,39は図2で示した実施例と同様の2個の円弧部の連結構造をなしている。アーム2とアーム3の長さは87mm,アーム4とアーム5の長さは78mm,アーム6とアーム7の長さは70mmで,駆動時の最大横幅Wは234mmである。
【0053】
図6,7,8のいずれのアームもその総高さhは20mmと一定である。この3例から本発明の運動伝達方法を用いることにより,搬送アームのアーム全ての総高さhを増やすことなく,駆動時の最大横幅Wの小さい機構,すなわち,本発明により床面積の小さな搬送アーム機構が実現できる第7の特徴がわかる。
【0054】
また,円弧部11の二つの中心軸のうち一方の軸21(図1参照)を回転制御するだけで,他のガイド手段無しに搬送アームを直線移動させることが可能であるという本発明の第8の特徴を有している。なお,軸21は駆動源側に設けた公知の軸受けにより回転のみ自由に支持する構造である。
【0055】
さらに,アームの高さを増やさずに被搬送物等の負荷容量を増すためには,巻部材の張力を大きくすることが必要である。その際,材料の繰り返し曲げの加わる条件下での降伏応力を考慮して円筒部の半径を大きくすることにより,巻部材の板厚を増加させる設計が可能である。なお,目安としては巻部材の板厚の400〜500倍以上の直径の円筒部に設計することが望ましい。
【0056】
なお,ここに示した連結構造の形態やアームや円弧部等の各寸法値は,被搬送物の重量や必要な搬送ストローク,許容可能な床面積等に応じて適宜最適な値に設計変更できることは明らかである。
【0057】
図9は本発明の第3の実施例である多段式真空処理装置の概略図である。直径200mmのウエハを枚葉処理するクラスタ型の真空処理装置の一例である。図8で示した実施例と同様の搬送アーム機構322を内蔵した搬送室302の周囲に複数のゲート弁303〜310を介して,処理室313ほか図示していない複数の処理室を配置してある。この搬送アームは,駆動源326から駆動アームへの回転駆動力を受動アームに伝え,先端アームに載置した基板325を図9−aから図9−bに示すように移動し搬送する構造である。なお,複数の処理室に向かって回転移動する場合には駆動源326全体を図示していない回転機構で回転させることで行う。搬送室302の内径は560mm以上あれば十分である。同じストロークを搬送する図16に示す従来技術の搬送室の内径が670mm以上を必要としていたのに比べて,本発明の運動伝達方法の搬送機構を用いることにより,複数の処理室を周囲に備えた搬送室を中心とする半導体製造装置の床面積を著しく小さくできる第9の特徴がわかる。
【0058】
図10は本発明の円弧部の連結部分の一実施例の概略図である。4個の円弧部の接する連結部分と2個の円弧部の接する連結部分を示してある。図10−aは円弧部の中心軸方向から見た円筒部とアームと巻部材との位置関係を示す概略平面図であり,図10−b,c,dはそのAA断面図である。
【0059】
まず,4個の円筒部155,156,157,158の連結部分の構造に関して説明する。この構造は,図5の実施例に示した一例と類似の構造である。すなわち,アーム171,174を図5のアーム4と対応させ,アーム172,175を図5のアーム3と対応させると,巻部材111,112,113,114,115,116,117,118は,各々図5の巻部材86,89,90,87,84,83,92,93に対応する。また,円弧部151と152や円弧部153と154等の外接部分の構造は図3の実施例と類似の構造を応用する。
【0060】
巻部材111と112の一端はアーム171の固定部195で固定し,巻部材111の他端はアーム172の固定部195に固定し,巻部材112の他端はアーム174の固定部195に固定してある。巻部材116と117の一端はアーム175の固定部195で固定し,巻部材116の他端はアーム172の固定部195に固定し,巻部材117の他端はアーム174の固定部195に固定してある。
【0061】
巻部材114と115の一端はアーム172の固定部195で固定し,巻部材114の他端はアーム171の張力調整部190に固定し,巻部材115の他端はアーム175の張力調整部190に固定してある。巻部材113と118の一端はアーム174の固定部195で固定し,巻部材113の他端はアーム171の張力調整部190に固定し,巻部材118の他端はアーム175の張力調整部190に固定してある。
【0062】
黒実線で示した上下の巻部材111,112,116,117等をアームの厚肉部の貫通孔に通してから,固定部195でアーム部材に固定する。その後,灰色実線で示した巻部材を張力調整部190でそれぞれに引張り力が生じるように調整して固定する。この調整により,4個の円筒部の中心軸が互いに引き合う方向に力が発生し,その結果それぞれのアームの円弧部が精度良く互いに外接し滑らかに転動可能な構造となる。
【0063】
つぎに,2個の円弧部の連結部分に関して,円筒部165と166近傍の部位の構造で説明する。この構造は,図2の実施例に示した一例と類似の構造である。アーム172,173を図2のアーム3,2と対応させると,巻部材131,132は各々図2の巻部材41,42に対応する。また,円弧部161と162や円弧部163と164等の外接部分の構造は図3の実施例に類似な構造を応用する。
【0064】
巻部材131と132の一端はアーム173の固定部195で固定し,巻部材131の他端はアーム172の固定部195に固定し,巻部材132の他端はアーム172の張力調整部191に固定してある。
【0065】
黒実線で示した上下の巻部材131,133等をアームの厚肉部の貫通孔に通してから,それぞれの固定部195でアームに対して固定する。その後,灰色実線で示した巻部材132の張力調整部191で引張り力が生じるように調整し固定する。この調整により,2個の円筒部の中心軸が互いに引き合う方向に力が発生し,その結果それぞれのアームの円弧部が精度良く互いに外接し滑らかに転動可能な構造となる。
【0066】
以上述べたように,本発明の構造は,図10−aに示すように一対で平行に配置されたアームの外側から(図面上の上下方向から)張力調整部を調整することが可能な構造であるため,搬送アームの組み立てや保守の際の調整が極めて容易であるという第10の特徴がある。
【0067】
なお,本実施例の円弧部は半径15mm,円筒部は半径12mm,高さ17mm,帯状の巻部材はステンレス鋼で板厚0.06mm,幅5mm,アームは高さt20mmの構造で,張力は50kg与えた。なお,巻部材の引っ張り強度や被搬送物の重量,許容搬送空間の寸法等に応じてこれらの寸法値は適宜変更可能である。また,巻つけ方向が同一の二つの巻部材の幅を他の一つの巻部材の幅よりそれぞれ小さく設計したり,重力による曲げモーメント荷重が比較的大きく加わる上側の巻部材の幅を大きめに設計するなどの工夫も小型化の点で有効である。
【0068】
図11は本発明の搬送アームの一実施例の概略平面図である。搬送アームが縮んだ時の投影面積が,直径300mmのウエハの投影面積内に収まる大きさの構造の一例である。図8の実施例の類似の一応用例である。図11−aは駆動アーム2を0度から88度まで22度刻みで回転させた時のウエハ1とアーム,円弧部のそれぞれの軌跡を中心軸方向から見た平面図で描いたものである。ウエハの移動方向に線対称な配置の要素部品は一方のみに番号を付した。図11−bは回転角度0度の時の状態を示し,図11−cは回転角度44度の時の状態を示し,図11−dは回転角度88度の時の状態を示してある。円弧部11,12,13,14,15,16,17,18,19,37,38,39の半径を15mmに設計して,各円弧部からのアームの長さ(アーム両端の円弧部の中心軸間距離で表わす)として,アーム2,3およびアーム6,7を93mm,アーム4,5を120mmと設計した結果,搬送ストローク590mmを得た。従って,本発明により大口径な基板の下側で,その投影面積とほぼ同じ領域に収まる小型な搬送アーム機構が実現可能であるという第11の特徴が認められる。
【0069】
図12は本発明の第4の実施例の処理装置の概略図である。特に,搬送アームを内蔵した小型搬送容器の一例の該略図を示した。小型搬送容器は,搬送容器内の雰囲気を外気から隔離して,ウエハを常に洗浄な所定の雰囲気下に維持した状態で,別置の処理装置まで運び,結合した後にウエハを搬入出することができる。図12−aは小型搬送容器350と別置の処理装置の処理室351とを接近させた状態の容器内を透視した側面概略図である。小型搬送容器350内には小型の搬送アームが内蔵され,その先端アーム20上に直径200mmのウエハ1が設置されている。小型の搬送アームは図11の実施例と類似の一例である。円弧部11,12,13,14,15,16,17,18,19,37,38,39の半径を15mmとして,各々の円弧部の取りついたアームの長さ(アーム両端の円弧部の中心軸間距離で表わす)をアーム2,3およびアーム6,7の長さを43mm,アーム4,5の長さを70mmと設計して,搬送ストローク301mmを得た。図12−aは駆動アーム2を駆動制御手段357により回転角度88度だけ回転させて縮めて引込めた状態である。図12−bは駆動アーム2を回転角度44度だけ回転させた状態である。図12−cは駆動アーム2の回転角度0度でアームを伸ばした状態である。図12−dは図12−cの状態を側面から見た透視の該略図である。図12−aに示すように,小型搬送容器350はゲート弁353を閉じることにより,ガス吸蔵合金や小型真空ポンプさらには不活性ガスポット等の図示していない雰囲気維持手段により,小型搬送容器内を真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に維持できる。別置の処理室351内はゲート弁354を閉じた状態で,図示していない真空ポンプやガス供給配管等の雰囲気維持手段により,処理室内を真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に維持できる。図12−bに示すように,小型搬送容器350を処理室351の入口にある結合手段352に位置決め固定して,両方のゲート弁と結合手段に囲まれた空間を洗浄し,真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に設定した後,ゲート弁353と354を開閉手段358と359を用いて開けてウエハを処理室に搬入する。図12−cと図12−dに示すように,処理室内には上下に移動するサセプタ355があり,搬送アームの先端アーム7が所定の位置まで搬入された時点で,サセプタ355を上下駆動制御手段356により移動させて,ウエハ1を授受する。搬送アームの総高さhは15mmで,小型搬送容器の高さは約50mmで外形は約250mmの矩形で内容積約3lの構造である。本発明によれば,小型搬送容器内にウエハの保持と搬送を兼ねた極めて小型な搬送アームを内蔵可能となるため,相手の処理装置や検査装置に対してウエハの搬入出手段を必要とせずに,ウエハの授受操作が汚染なく短時間に容易に行える小型搬送容器を実現できるという第12の特徴が認められる。
【0070】
図13は本発明の第5の実施例の概略図である。一対の駆動アームの駆動源側の一端の円弧部の中心軸を同一にする場合の一実施例の概略図である。
【0071】
図13−aは駆動アームを0度から88度まで22度刻みで回転させた時のウエハ1と各アームおよび円弧部の軌跡を中心軸方向から見た平面図で描いたものであり,駆動アーム702の回転角度が44度の時の状態を太い実線で強調して示してある。ウエハの移動方向に線対称な配置の要素部品は片方のみに番号を付した。
【0072】
図13−bは,回転角度α1=45度,β1=45度の時の円弧部712と713との接する連結部近傍を拡大した平面図である。図13−cおよび図13−dは回転角度β2=65度およびβ3=85度の時の円弧部712と713との接する連結部を拡大した平面図である。なお,円弧部714の半径は15mm,アーム703の長さ(アーム両端の円弧部の中心軸間距離で表わす)は235mmである。
【0073】
円弧部700は中心軸を同一として,一対の円弧部は各々独立に回転運動可能な構造である。この一対の各円弧部から一対の駆動アーム702がそれぞれ伸びる構造である。なお,駆動アーム702とその一端の円弧部700と他端の円弧部712および受動アーム703の一端の円弧部713以外の構造は,図6の実施例等と同様な構造である。駆動アーム702の一端の円弧部700と他端の円弧部712との中心間距離は,図6の実施例とは異なって,受動アームの一端の円弧部713と他端の円弧部714との中心間距離より長い構造である。従って,アーム703の他端の一対の円弧部714が常に互いに外接した状態で,駆動アームをスムーズに駆動するために,円弧部712と713は所定の曲線形状の略円弧状の構造となっている。すなわち,円弧部712と713は,その互いの中心間距離は一定のままで,回転角度に応じて,中心軸と外接部との距離が漸次変化する略円弧状の曲線形状をなしている。例えば,図13−bにおいて,中心間隔はr1=15mm,r2=15mm,a=16.3mm,b=13.7mm,回転角度α1=45度であり,図13−cにおいて,中心間隔はr1=15.3mm,r2=14.7mm,回転角度α2=63度であり,図13−dにおいて,中心間隔はr1=15.5mm,r2=14.5mm,回転角度α3=81度と設計した。なお,これらの数値は上記の値に限定されるものでなく,使用目的に応じて変更できることは明らかである。
【0074】
図13−aの矢印701方向に独立に分離して回転可能な一対の円弧部700を介して,二つの駆動アーム702を互いに同一方向に等しい回転角度だけ回すことにより,搬送アーム全体を矢印704の円周方向に回転移動できる。また,矢印701方向に円弧部700を介して,二つの駆動アーム702を互いに反対方向に等しい回転角度だけ回すことにより,搬送アーム全体を矢印705の半径方向に伸縮移動できる。本発明では,円弧部712,713を上述したような略円弧状の形状にすることにより,回転中心を合致させた駆動アーム系が構成できるので,一つの軸まわりの回転動作のみで2次元平面内の任意の位置に,先端アームを高精度かつ高速に位置決め操作できるという搬送アームの第13の特徴が認められる。なお,円弧部700からの一対の駆動アームを各々独立または同時に駆動する手段としては,同心円状の磁気カップリングを用いた回転導入機等や図16の従来技術の駆動アーム222の駆動源226の応用等が考えられる。
【0075】
図24は本発明の第6の実施例の多段式真空処理装置の概略図である。図9に示した第3の実施例の搬送室内の搬送アーム機構として,図13に示した第5の実施例と同様に駆動側の円弧部の中心軸を同一にした構造の搬送アーム機構を搭載した一例である。直径200mmのウエハを枚葉処理する多段式の真空処理装置の一例で,搬送室302の周囲に複数のゲート弁303〜310を介して,処理室313ほか図示していない複数の処理室を配置したものである。この搬送アームは,駆動源326から同一の中心軸を有する円弧部700を介して1対の駆動アーム702を互いに反対方向に回転制御して,略円弧状の円弧部712と713を介して回転駆動力を受動アーム703に伝える。先端アームに載置した基板325を図24−aから図24−bに示すように移動し搬送する構造である。なお,複数の処理室向かって回転移動する場合には,1対の駆動アーム702を互いに同じ方向に回転制御することで行う。本実施例の搬送室302の内径は560mm以上あれば十分である。同じストロークを搬送する図16に示す従来技術の搬送室の内径が670mm以上を必要としていたのに比べて,本発明の運動伝達方法の搬送機構を用いることにより,搬送室の内径を小さくすることが容易となるため半導体製造装置の床面積を小さくできるという第14の特徴が認められる。
【0076】
図14は本発明の第7の実施例の処理装置の概略図である。図14−aは,五角形状の搬送室571と処理室572とバッファ室580,基板581,搬送アーム582とから主に構成される装置の平面図である。図14−bは搬送アームを処理室572側へ移動させた時のバッファ室580と搬送アーム586および基板581の位置関係を示す平面図である。図14−cは処理装置の側断面の概略図である。処理室572はゲート弁573を介して搬送室571に接続し,他のゲート弁574,575,576,577を介して図示していない各種の処理室がこの搬送室に接続している。なお,接続可能な処理室の数は本発明の一例に特定されるものではなく,接続すべき処理室の必要数に応じて搬送室等の形状を設計することが出来る。本実施例の場合,基板の直径は200mm,搬送室571の内径は600mm,処理室内の奥行きは450mm,搬送室571の高さは200mm,バッファ室580内の高さは30mmである。
【0077】
搬送アーム582は,図8に示した実施例と類似な構造で,アームの総高さhを13mmにして,バッファ室580内の上下に2式設けてあり,一方に未処理ウエハを載せ,他方で処理室内の処理済みウエハを取り出す操作を行う。搬送アーム582は,処理室内のサセプタ手段510上に既に存在する処理済みウエハを受け取り,未処理ウエハをサセプタ手段510上に渡す。搬送アーム582は駆動手段583で上側の搬送アームを移動制御し,駆動手段584で下側の搬送アーム585を移動制御する。
【0078】
バッファ室580内は,開口587からコンダクタンス弁588とゲート弁589を介して排気手段590により排気する。また,搬送室571内はゲート弁591を介して,排気手段590によりバッファ室580内とは独立に排気する。バッファ室580は搬送室571内で所望の処理室に対向するため,図示していない駆動手段により矢印592のように回転移動できる。バッファ室580は,磁性流体シールを用いた案内手段593により外気と搬送室内とを遮断した状態で,任意の処理室に対向するように回転移動可能である。なお,処理室572内はウエハの搬入出の操作を行わない時にはゲート弁573の遮蔽により搬送室内から隔離される。
【0079】
処理室572内はゲート弁594を介して排気手段595により排気可能な構造である。また,バッファ室580内を処理室と同じガス雰囲気に設定した後に,バッファ室内を排気するために,ゲート弁596を介して排気手段595で排気可能な構造となっている。また,処理室572内とバッファ室580内には,それぞれ所望の処理雰囲気を維持させるため,所定のガス供給手段597から流量制御手段599,500を介して,それぞれ所望のガスが所望の流量で供給可能な構造となっている。さらに,バッファ室580内の洗浄操作等のため,不活性ガス供給手段598から流量制御手段501を介してガスが供給可能な構造となっている。不活性ガス供給手段598からの加圧制御した高純度な窒素ガスをバッファ室の上流側の搬送室の開口部の上部天井に設けた噴出孔手段502から,バッファ室内に噴出させ,下流の排気手段へつながる開口587に向かって乱流を形成することにより,バッファ室内の壁面や搬送アームの表面等に付着した塵埃を物理的に除去して排除することが可能である。また,あらかじめ,CF4やCHF3,SF4等のフッ素系ガス等を用いて,バッファ室内を化学的に洗浄できる構造にもなっている。その際,脱ガス促進のためバッファ室壁面等を加熱制御することも可能である。
【0080】
また,排気により負圧となったバッファ室に,相対的に高くなった圧力差を利用して種々のガスを噴出させて,噴出流れによる物理的および化学的なバッファ室内洗浄を行い,長期間清浄な状態を効率良く保つことが可能である。
【0081】
バッファ室内では,高い圧力でガスを小容積の室内に噴出し,異物を流れに載せて排出する洗浄工程を随時行えるので,本発明の搬送アームやバッファ室内に異物が蓄積しないという第15の特徴がある。
【0082】
なお,バッファ室内でのガスのプラズマ化や光励起,または抵抗加熱や輻射加熱等の併用により,室内の壁面や搬送アームの外壁等に付着したガス成分や微粒子を表面から離脱させ,気体分子のブラウン運動作用や静電的作用,さらには電気泳動作用により,固体壁面近傍の遅い流れの境界層から,ガス流れの主流中へ微粒子を導くことができるので,バッファ室内の洗浄効果をさらに高めることが可能であり,しかも,流れを利用したこれらの工程は,バッファ室内の容積が小さいため短時間で,少ないガス流量で行えるという第16の特徴を有している。
【0083】
これらの洗浄工程の制御は,バッファ室下流の排気孔部に設けた図示していないパーティクルモニタで微粒子の粒径分布を把握したり,質量分析管でガス分圧を把握することにより,噴出ガス量や流速,排気速度を最適に制御できる。さらには,洗浄工程の必要となる時期を適確に把握できる。その結果,過剰な洗浄という無駄時間や装置類の損傷を防止でき半導体製造装置の稼働率を向上できるという第17の特徴がある。この結果,本発明の小型な搬送アームを内臓したバッファ室を有する処理装置により,高性能な半導体装置の製造が容易なるという第18の特徴を有している。
【0084】
また,搬送アームの原点センサからの信号を基準として,駆動手段のパルスモータを制御することにより,特別なフィードバック系無しに,シンプルで信頼性の高い駆動制御機構を構成できるので,搬送アームで高精度にウエハの搬入出することが可能である。もちろん,必要に応じて,適当なフィードバック制御系を組むことにより,移動速度の加減速の最適化が可能となり,搬送時間のさらなる短縮が図れる。
【0085】
搬送アームによるウエハの搬送に際して,通常は,ウエハの機能付加面を上に向けて搬送するが,処理室等の関係でウエハの機能付加面を裏返して下向きで搬送したり,垂直に立てて搬送する方法も考えられる。
【0086】
特に大口径のウエハを枚葉で扱う場合には,垂直に立てて搬送処理等を行うシステムとすることにより,装置の床面積を低減できる効果がある。
【0087】
次に,図17と図18を用いて図14に示した第7の実施例の特徴の補足説明を行う。図17は図14に示した実施例の処理装置の搬送室と処理室,バッファ室内の圧力特性の測定結果の一例である。処理室内圧力(平均50torr)と搬送室内圧力(平均10E−6torr),バッファ室内圧力の時間変化を求めた結果の一例である。横軸に時間,縦軸に対数表示の圧力を示す。反復する処理の前後にウエハの搬入出を行い,それに伴いバッファ室内の圧力を制御する。その結果,処理室内や搬送室内の圧力が許容値内で微変動している。特に処理に関係する雰囲気圧力変動は処理室内の平均圧力の2%以下と小さく,処理室内の雰囲気状態を10ppb 以下のクロスコンタミで高精度に維持できるという本発明の第19の特徴が認められる。
【0088】
比較のため,図18に従来技術の室内圧力特性の一測定例を示した。搬送室内圧力(平均10E−6torr)と処理室内圧力を示した。横軸に時間,縦軸に対数表示の圧力を示す。反復する処理の前後に処理室内の排気と雰囲気圧力設定の時間を含むウエハの搬入出を行い,それに伴い処理室内の圧力が大きく変化している。図17と図18とを比較して見ると,同じ処理をウエハに施すためのウエハ搬入出時間が本発明の場合小さいという特徴と,処理室内の雰囲気圧力の変動が本発明の場合極めて小さく安定しているという特徴が認められる。
【0089】
図19は図14に示した第7の実施例の処理装置で高温処理を行う場合の特性の測定結果の一例である。処理済みウエハ表面に自然酸化膜が形成される現象をを除去して,耐酸化性に優れた極薄のシリコン窒化膜を形成する工程での一例である。温度950℃で雰囲気圧力50torrでのH2処理801,900℃で10torrでの熱窒化処理802,850℃で1.5torrでのSiH4,NH3処理803,720℃で5torrでのSiH4処理804,830℃で2torrでのSiH4処理805をそれぞれ独立した処理室に設定し,各処理室へはウエハ搬入出811,812,813,814,815,816を行うことにより,計5分30秒でこの工程を終える。
【0090】
比較のため,図20に従来技術の高温処理特性の一例を示した。図19に示したのと同じ処理を行うものとした結果である。温度950℃で雰囲気圧力50torrでのH2処理901,900℃で10torrでの熱窒化処理902,850℃で1.5torrでのSiH4,NH3処理903,720℃で5torrでのSiH4処理904,830℃で2torrでのSiH4処理905を二つの処理室で行った。処理901,902,903は同一処理室で行い,処理904,905は別の処理室で行った。同一処理室内では温度とガス等の雰囲気条件設定912,913,916の反復を必要とし,さらに,異なる処理室への搬入出に際しては,雰囲気条件設定911,914,915,917に長時間を要している。その結果,この工程を終えるのに計8分20秒を必要とした。
【0091】
図19と図20の高温処理を行う工程の特性例の比較から,温度やガス雰囲気条件の異なる処理を連続して行う上で,本発明を用いることによって作業時間を短縮する点での効果が著しいという第20の特徴があることが認められた。
【0092】
緻密で高性能な薄膜形成等を大きな温度差の雰囲気下での処理行程の反復で製造する場合,従来技術では試料台の熱容量の大きさや処理室の排気および圧力設定等に時間を要することから,急激な温度変化を短時間で基板に付与する処理は不可能であった。しかし,本発明により,処理室の温度や雰囲気を保ったままで,基板をバッファ室に取り出し,別の温度と雰囲気に設定された処理室へ短時間で搬送し処理が行えるため,より高精度でウエハの界面を制御して,高性能な半導体機能を基板に再現性良く容易に施すことが初めて可能となる第21の特徴を有している。
【0093】
図21は本発明の先端アームの一実施例の概略鳥瞰図である。一対の受動アーム3の他端の円弧部14の外周部に沿って帯状のばね部材730,731の一部を固定し,各々の他端が先端アーム20に固定する構造である。受動アーム3が矢印732,733の方向に回転して,搬送アームが矢印735の半径方向に移動すると,ばね部材730,731が円弧部14の外周に沿って巻き込まれて先端アーム20は矢印734の半径方向に微動して,円弧部14に近接する。この近接動作により比較的板厚の薄いばね材を用いても,高い剛性で先端アームを支持可能となる。この構造を用いると,先端アームを受動アームより上側に突出させることのない構造が可能である。従って,ウエハを載せた先端アームをアーム総高さ以内に収まるように設計することも容易であり,先端アームを受動アームより上側に突出させることのない構造により,搬送アームをさらに小型化できるという本発明の第22の特徴が認められる。
【0094】
また,ばね部材730,731として,矢印732,733の方向に巻き込み力を発生するようにカール曲げ処理等を施した材料を用いることにより,蛙足型アーム機構が縮んだ時のジャックナイフ現象の発生を防止できるという本発明の第23の特徴を実現できる。すなわち,搬送アーム機構が縮むにしたがってアーム3の間の角度が広がってばね部材730,731の戻し力が蓄えられる。その結果,矢印735方向の分力が搬送アーム機構に発生して,逆方向に進行させる不安定なジャックナイフ現象を防ぐことが容易に可能となる。
【0095】
図22は本発明の円弧部の連結部分の一実施例の概略鳥瞰図である。高さtの駆動アーム2の円弧部と,これに外接した円弧部13を一端に持つ受動アーム3の他端の円弧部の高さをt−Δtと小さくした構造の連結部の一例である。円弧部14に接続するアーム4の高さはt−Δtと薄くなる構造である。本実施例を応用することにより,駆動源側のアームの高さを高くして搬送アーム機構のうち駆動源側により大きく加わる荷重を受けとめ,次第に負荷の小さくなるアームの先に行くほど,高さの低いアーム機構を設計することが可能である。この場合も,搬送アームの総高さは駆動アーム高さt内に収まるように設計できることは明らかである。本発明によれば,搬送ロボットのアームの先端に行くほど質量を小さくする系を組み立てることが可能となるため,小型で高い剛性の搬送アーム機構を容易に構成できるので,高速かつ高精度な搬送アームが実現できるという第24の特徴が認められる。
【0096】
図25に本発明の第7の実施例の多段式真空処理装置の概略図を示す。二つの先端アーム650,651を備えて,搬送室内で一度に2枚の基板652,653を搬送可能な搬送アーム機構の一例である。二つの駆動アーム654で二つの先端アームを異なる方向にそれぞれ移動することを可能とする機能がある。そのために,駆動アーム654の他端から,先端アーム650を移動させる受動アーム658が同軸のベアリング659を介して繋がり,また,先端アーム651を移動させる受動アーム660が同軸のベアリング661を介して繋がっている。受動アーム658,660から続く先端アームまでの複数のアームと連結部の構成や構造は図7や図24に示した実施例と同じである。本実施例では,直径200mmのウエハを枚葉処理する多段式の真空処理装置の一例で,搬送室662の周囲に複数のゲート弁663〜670を介して,処理室656ほか図示していない複数の処理室を配置したものである。図25−aは駆動アーム654の開き角度が180度,すなわち中心線671上に位置した状態の平面図,図25−bは駆動アーム654の開き角度が116度で,基板653が処理室656側に接近している状態の平面図,図25−cは駆動アーム654の開き角度が54度で,基板653が処理室656内に位置している状態の平面図である。
【0097】
駆動アームの一端の円弧部は,その中心軸を駆動源と同一にする構造である。また,ベアリング659では駆動アーム654と受動アーム658が共通の回転軸を介して重なる状態で連結し,ベアリング661でも駆動アーム654と受動アーム660が共通の回転軸を介して重なる状態で連結する構造である。
【0098】
駆動アーム654の開き角度が180度(図25−a)の状態の時,駆動アーム654を同じ方向に同じ角度回転させることにより,搬送アーム全体を回転させる駆動軸回りに回転移動できるので,任意の処理室に対向して位置決めできる。従って,一方の先端アームで処理室内の処理済み基板を図25−cから図25−bのように取り出して,図25−aの状態で180度回転させた後,未処理基板を図25−bから図25−cのように処理室内に設置することができる。本実施例の搬送室662の内径は560mm以上あれば十分である。同じストロークを搬送する図16に示す従来技術の搬送室の内径が670mm以上を必要としていたのに比べて,本発明の搬送アーム機構を用いることにより,搬送室の内径を小さくした上でさらに処理済みと未処理基板のつかみ替えが効率的となるため,スループットがさらに向上できるという第25の特徴が認められる。
【0099】
図26に本発明の第8の実施例の処理装置の概略図を示す。二つの先端アーム361,362を備えた小型搬送容器360が処理装置の処理室367に接続した状態を示す一例である。図26−bは小型搬送容器360と処理室367との容器内を透視した側面概略図である。小型搬送容器360内には小型の搬送アームが内蔵され,その先端アーム361,362上にはそれぞれ直径300mmのウエハ363,364が設置されている。小型の搬送アームは図25の実施例と類似の応用例であり,搬送ストローク450mmを得た。図26−aは駆動アーム365の開き角度が180度,すなわち中心線366上に位置した状態の平面図,図26−cは駆動アーム365の開き角度が約110度で,ウエハ364が処理室367内に入りかかっている状態の平面図,図26−dは駆動アーム365の開き角度が約90度で,ウエハ364が処理室367内に位置し,サセプタ368にウエハを授受している状態の平面図である。小型搬送容器360はゲート弁369を閉じることにより,ガス吸蔵合金や小型真空ポンプさらには不活性ガスポット等の図示していない雰囲気維持手段により,小型搬送容器内を真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に維持できる。別置の処理室367内はゲート弁370を閉じた状態で,図示していない真空ポンプやガス供給配管等の雰囲気維持手段により,処理室内を真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に維持できる。両方のゲート弁と結合手段371に囲まれた空間を洗浄し,真空や不活性ガス等の所定の雰囲気に設定した後,ゲート弁369と370を開閉手段372,373とを用いて開けてウエハを処理室に搬入する。処理室内のサセプタ368は上下に移動して先端アームからウエハを授受する。図26−bに示すように,先端アーム361は先端アーム360より高い位置になるように設計することにより,駆動アームの開き角度が180度の時に,先端アームとウエハ等とが互いに接触することがない構造である。搬送アームの総高さhは約15mmで,先端アームの最大高さは約15mmで,小型搬送容器の高さは約65mmで外形は約400mm×450mmの構造である。駆動アーム365の開き角度が180度(図26−a)の状態の時,駆動アーム365を同じ方向に同じ角度回転させることにより,搬送アーム全体を回転させる駆動軸回りに回転移動できるので,処理済み基板と未処理基板のつかみ替えと収納が可能な小型搬送容器を実現できるという第26の特徴が認められる。
【0100】
本発明の半導体装置の製造方法による半導体装置の一実施例を,文献 月刊Semiconductor World 増刊号 「’94最新半導体プロセス技術」の23頁〜31頁に記載されているDRAM(Dynamic Random Access Memory)のスタック型DRAMの工程を参考にして述べる。
【0101】
通常,ウエハ段差形成,ウェル形成,アイソレーション,トランジスタ形成,ビット線形成,キャパシタ形成,配線形成を反復することにより,DRAM等の半導体装置の機能が形成される。これらのプロセスはリソグラフィ処理,エッチング処理,熱処理(酸化,アニール,拡散),イオン注入処理,薄膜形成処理(CVD,スパッタリング,蒸着),洗浄処理(レジスト除去,溶液による洗浄),検査処理等を適宜組み合わせて構成される。
【0102】
図23は本発明の半導体装置の製造方法の一実施例の断面概略図である。特に,DRAMの製造プロセスのうち,ビット線形成とキャパシタ形成の一例を示した。特に,素子構造が変化する工程での断面構造の概略図を示した。各図の左側にメモリセル部の断面構造を示し,右側に周辺CMOS部の断面構造を示した。製造プロセスは図23−aから図23−gへと進行する。
【0103】
主な処理内容は次の25処理である。
【0104】
すなわち,第1処理;SiO2堆積,第2処理;リソグラフィ,第3処理;エッチング(図23−a),第4処理;SiO2堆積,第5処理;ポリサイド堆積,第6処理;リソグラフィ(ビット線),第7処理;エッチング(図23−b),第8処理;SiO2堆積,第9処理;Si3N4堆積,第10処理;SiO2堆積(図23−c),第11処理;リソグラフィ,第12処理;エッチング,第13処理;poly−Si(蓄積電極)形成,第14処理;SiO2堆積,第15処理;エッチング(図23−d),第16処理;poly−Si(蓄積電極)形成(図23−e),第17処理;SiO2堆積,第18処理;エッチング,第19処理;poly−Siエッチング,第20処理;SiO2エッチング,第21処理;Si3N4エッチング,第22処理;Ta2O5形成(キャパシタ絶縁膜),第23処理;W(poly−Si)形成(図23−g),第24処理;リソグラフィ(プレート),第25処理;エッチングの各処理からなる。
【0105】
また,図23に示した各構成材料は次の通りである。すなわち,ウエハ601,レジスト602,SiO2(パッシベーション膜)603,Si3N4604,n+層605,p+層606,poly−Si(ポリサイド)607,SiO2608,Si3N4609,SiO2610,poly−Si611,SiO2612,poly−Si613,614,Ta2O5615,W(poly−Si)616である。
【0106】
SiO2堆積,poly−Si堆積,Si3N4堆積,poly−Siエッチング,SiO2エッチング,Si3N4エッチング,Ta2O5形成,W形成等の各処理を適宜配置した本発明の半導体製造装置を用いることにより,上記25処理のうち,第3処理〜第5処理,第7処理〜第10処理,第13処理〜第23処理は,大気下にウエハを暴露することなく連続的に行うことが可能という本発明の第27の特徴が認められる。その結果,界面制御,すなわち,自然酸化膜や汚染を除去し,清浄な表面へのそれぞれの処理を再現性良く,しかも高いスループットで実現できるので,高性能で高信頼性を特徴とする半導体装置を容易に提供可能とする本発明の第28の特徴が認められる。
【0107】
別の半導体製造プロセスへの本発明の応用実施例の一例として,ウエハ面への自然酸化膜や水分ならびに種々の汚染を防止しできるので,洗浄な表面への各処理である界面制御を必要とし,表面の化学的違いを利用する選択W成膜,低抵抗コンタクトのAlやCuの成膜に適用できる。
【0108】
さらには,poly−Si,酸化膜,Al,W,トレンチ,多層レジスト,レジストアッシング等の処理室を備えた本発明の半導体製造装置で,ポリサイドのエッチングと酸化膜エッチングを連続的に行うことが容易になり,高性能で高信頼性なフラッシュメモリを高歩留まりで生産可能となるという本発明の第29の特徴が認められる。
【0109】
本発明は半導体装置の製造に限定されるものでなく,薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いた液晶パネルの生産ラインに適用することもできる特徴がある。
【0110】
ロードロック室より挿入された液晶基板を,それぞれ所定の加熱温度(〜400℃)で所定ガスを供給や放電条件を制御した雰囲気に設定制御維持したプラズマCVD処理室内に搬入出させ,プラズマクリーニング,シリコンナイトライド,アモルファスシリコン,ドープドアモルファスシリコン,二酸化シリコン,オキシナイトライド等の成膜処理を行う処理室を備えた本発明の半導体製造装置を用いることにより,自然酸化膜,水分や汚染を除去した環境下での生産が容易となり,高性能で高信頼性な液晶パネルを高スループットで生産することが可能となるという本発明の第30の特徴が認められた。
【0111】
本発明を用いると,種々の処理室の雰囲気を維持制御したまま基板を搬入出して,処理を行うことができ,処理中あるいは処理後の基板の計測検査のデータを中央制御システムに転送して,基板や処理室の履歴管理や記録を行うことができるので,各処理室や製造装置の自己診断を行い適切な指示を出力するシステムを構築することができる。従って,本発明により種々の処理室の雰囲気を維持制御したまま基板の計測検査が行えるので,半導体製造装置や工程の信頼性を格段に向上できるという第31の特徴もある。
【0112】
本発明を用いると,バッファ室内の雰囲気条件を処理室の雰囲気条件と同じにして,基板を搬送できるため,基板表面の原子層レベルでの処理を行い,基板表面からの分子や原子の脱離させることなく処理室から次の処理室へ基板を搬送することが可能である。従来の装置では,基板の搬送に際して,必ず,真空排気を必要としていたため,極微量の原子等が基板表面から脱離してしまい,新しい機能の素子を安定に製造することが困難であった。従って,本発明により基板表面からの分子や原子の脱離させることなく処理室から次の処理室へ基板を搬送することが可能という第32の特徴もある。
【0113】
なお,バッファ室内に搬送室内とは異なる雰囲気ガスを封じて,搬送室内で回転移動させる場合には,図14に示したシール機構520の非接触間隙を数μm以下と小さく設計し,コンダクタンスを小さくしてバッファ室内の雰囲気圧を搬送室内より数十torr以上大きく保ったり,バッファ室の開口側に簡単な遮蔽弁を設けたりすることが容易に行えることは明らかである。
【0114】
また,塩素系や臭素系のガスを用いるエッチング処理の場合には,基板表面に処理ガスが吸着しやすいので,単に次の処理室に基板を搬入すると,基板に吸着していたガス成分によるクロスコンタミが生じる。このようなクロスコンタミ現象を防ぐため,バッファ室内の圧力を超高真空にして吸着ガスを離脱促進させたり,中和ガスをバッファ室内に送気して不要なガス成分を不活性化したり,バッファ室内でガス洗浄除去したり,バッファ室内でプラズマアッシング除去することも本発明では容易に行える特徴がある。このように,クロスコンタミ除去作業を搬送中のバッファ室内で短時間で行うことが可能という本発明の第33の特徴もある。
【0115】
これらの利点は,小型搬送アーム機構を内蔵してしかも雰囲気を独立に制御できる小容積の可動なバッファ室を実現した本発明の特徴に基づくものである。
【0116】
さらに,本発明はマルチ処理装置に用いて,金属や樹脂等界面を制御して,ゆらぎを押さえ,所望の材料特性勾配を有する新規なエンジニアリング材料を特殊環境下で製造できるという第34の特徴もある。
【0117】
本発明の第9の実施例の概略図を図27に示す。図13に示した第5の実施例と類似して,一対の駆動アームの一端の回転中心を同一とする場合の別の例である。駆動アーム921と受動アーム922の連結部分として、ベアリングレスの関節構造を用いた一例である。
【0118】
駆動アームの回転角度が10度,40度,93度の状態を図示し,回転角度40度以外の部品は透視図として示してある。図27−aは円弧部926と927の半径が等しく17.5mmの場合の一例である。図27−bに示した鳥瞰図のように,円弧部926を駆動アーム921の一端に載せ固定する構造とすることにより,駆動アームが90度以上の鈍角まで回転可能な関節構造となっている。この構造により,ウエハ924の中心を駆動軸の中心とほぼ一致させて保持することが可能になるので,駆動アームを同一方向に同期回転して,搬入出の軸方向を変えるための旋回時にウエハに遠心力が及ぶのを防止できる。従って,アーム機構の高速旋回が可能となり,搬送時間を短縮できるという第35の特徴を有している。
【0119】
さらに,一対の駆動アームが互いに反対方向かつ,各々の回転角度が鈍角になるまで移動する際には,回転角度が90度の状態(一対の駆動アームの互いのなす開き角度が180度の状態)で停止せず移動速度を保持したままアームを移動させる制御方法を用いる。この制御方法により蛙足型アーム機構のいわゆるジャックナイフ現象の発生を防止して,円滑な搬送制御が行えるという第36の特徴も有している。
【0120】
図27−cは円弧部926の半径が10mm,円弧部927の半径が25mmの場合の一例である。両円弧部の半径を異ならせることにより,駆動アームの逆方向への回転する際の両円弧部の中心軸を結ぶ線の傾きを任意に設定することができる。本例の場合には,駆動アームの逆方向への回転角度が小さい状態で移動ストロークを増加させることが可能となる。図27−aと図27−cとも円弧部928および先端アーム923の寸法を同じ値に設計した。円弧部928の半径は17.5mmである。円弧部928の中心とウエハ中心間距離を175mmと設計した。この時、駆動アームの回転中心から775mmのストロークを得る構造を実現する一例として、アーム921,922の長さおよび一対の駆動アームの逆方向回転角度が90度の時に形成される最大幅が,図27−aの場合に328mm,275.5mmおよび691mmに対して,図27−cでは318mm,265.5mmおよび656mmとなり,最大幅が35mm低減する。従って,円弧部926と927の半径を異ならせることにより,アーム機構の駆動アームの最大幅で規定される旋回直径を低減できるので,半導体製造装置のフットプリントを低減(本実施例の場合は面積10%低減)できるという第37の特徴を有している。
【0121】
本発明の第10の実施例の概略図を図28に示す。図27−aに示した第9の実施例の先端アームの代りに2枚のウエハを同時に載せることが可能な構造の先端アーム933を有している関節機構の一実施例である。図示していない第一の処理室内にある処理済みウエハ941を搬出してから,未処理ウエハ951を第一の処理室内に搬送設置し,先の処理済みウエハを図示していない第二の処理室内に搬送設置する手順の一例を模式図的に図28−aから図28−gに示した。直線移動や旋回移動中のウエハや先端アーム等に矢印を付した。また,1枚の処理済みウエハ941の移動位置を番号941〜947で示し,1枚の未処理ウエハ951の移動位置を番号951〜955で示した。
【0122】
次に搬送手順の概要を述べる。図示していないロードロック室から未処理ウエハ951を2枚載置可能な先端アーム933の一方に載せた後,駆動アーム931を互いに逆方向に回転させて先端アーム933を矢印方向に移動させて,図示しない第1の処理室内のサセプタ上にある処理済みウエハ941の下側に先端アームを挿入する(図27−a)。図示しないサセプタを降下させて,処理済みウエハ942を先端アームに載せる(図27−b)。第1の処理室から処理済みウエハ943を矢印方向に移動して図示していない搬送室内に搬出する(図27−c)。先端アーム上の未処理ウエハを第1の処理室に対向させるため,搬送室内で駆動アームを互いに同じ方向に回転させて,アーム機構全体を矢印方向に旋回させる(図27−d)。なお,一対の駆動アームの互いのなす開き角度が180度の状態を通過させてから停止させた後,旋回制御することがジャックナイフ現象を生じることなく、スムーズにウエハを移動させる上で大切である。すなわち,図27−d示すように、次に半径方向に移動する側へ(ここでは未処理ウエハ954側へ)若干片寄るように先端アームを搬送停止維持した状態で旋回制御することが望ましい。第1の処理室へ未処理ウエハを対向させた後,駆動アームを互いに逆方向に回転させて第1の処理室内のサセプタ上に未処理ウエハ955を移し替えて,先端アームを矢印方向に移動させ搬送室内に先端アームを戻す(図27−e)。次に,先端アーム上の処理済みウエハ946を図示していない第2の処理室に対向させるため搬送室内で駆動アームを互いに同じ方向に回転させて,アーム機構全体を矢印方向に旋回させる(図27−f)。第2の処理室へ処理済みウエハを対向させた後,駆動アームを互いに逆方向に回転制御させて、第2の処理室内のサセプタ上に処理済みウエハ947を移し替えて,先端アームを矢印方向に移動させ搬送室内に先端アームを戻す(図27−g)。以上の手順を随時反復することで,複数の処理室を備えた半導体製造装置において,一対の駆動アームと受動アームとから構成される本発明のシンプルな構造の関節機構により,処理済みウエハと未処理ウエハとの載せ替えが可能となるという第38の特徴を有している。
【0123】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明に係る半導体装置の製造方法により以下の著しい効果を得る。
【0124】
互いに異なる中心軸の円弧部からなる連結部を滑らかに転動する運動伝達方法を用いて,潤滑を必要とする回転ベアリング等の案内機構なしの搬送アーム機構を構成することにより、真空やプロセスガス雰囲気等に対する信頼性を著しく向上するという効果,
高さを増さずに所定の搬送ストロークを確保できる小型の搬送アーム機構を実用化する効果,
巻部材による拘束力により円弧部を外接させ運動伝達支持する簡素な連結部の構造により,搬送アーム機構の信頼性を向上させる効果,
簡単で強靭な構造体を容易に組み立て調整可能な構造体により,小型搬送アーム機構を用いた半導体製造装置等の保守間隔を延ばし保守時間を低減する効果,簡単で強靭な構造体を容易に組み立て調整可能な構造体により,半導体製造装置のコストを下げる効果,
小型搬送アーム機構による半導体製造装置の小床面積化により,限られた面積のクリーンルーム等のプロセスエリアを有効活用できる効果,
一軸の回転制御だけで,搬送アームを直線移動可能な簡単な小型搬送アーム機構を実用化する効果,
大口径な基板の下側のわずかな空間を利用した小型搬送アーム機構により,汚染なく短時間で基板を枚葉で搬入出可能な小型搬送容器を実用化する効果,
略円弧の形状の連結部により中心軸を合致させた一対の駆動アームを構成して,一軸の回転制御のみで2次元平面移動可能な小型搬送アーム機構を実用化する効果,
耐ベーキング,耐腐食性等の耐雰囲気条件の高い構造の運動伝達機構により,種々の雰囲気条件にさらされるバッファ室に内臓可能な信頼性の高い小型搬送アーム機構を実用化する効果,
小型バッファ室を搬送室に有する多段式処理装置により,高性能な半導体装置の製造を可能とする効果,
数百に渡る各種の半導体装置製造工程において処理雰囲気時間等の再設定時間等を低減することにより,ウエハの短時間処理や枚葉処理を可能とする効果,
ポリサイドのエッチングと酸化膜エッチングを連続的に行う製造工程を可能とすることにより,高性能で高信頼性なフラッシュメモリを高歩留まりで生産可能とする効果,
自然酸化膜,水分や汚染を除去した環境下での製造工程を可能とすることにより,高性能で高信頼性な液晶パネルを高スループットで生産可能する効果,
小型搬送アーム機構を用いた半導体装置製造用の多段式プロセス装置や小型搬送容器や各種処理装置により,製造工程中での半導体装置の汚染等を防止して製造歩留りを向上させる効果,
小型搬送アーム機構による半導体製造装置等を用いて半導体装置の製造工程の短縮を図ることにより、製造プロセスのスループットが向上する効果,
複数の処理室の雰囲気条件を一定に維持したままで基板を搬入出して,基板表面の界面を原子レベルで制御することを短時間に容易かつ高精度に行うことにより,高性能な半導体装置を高スループットで生産可能とする効果,
高性能で高信頼性を特徴とする半導体装置等を高いスループットで提供可能とすることにより,高性能な半導体装置や液晶表示板や、エンジニアリング材料を安価に提供可能とする効果がある。
【0125】
また,駆動アームが90度以上の鈍角まで回転可能な関節構造で,ウエハの中心を駆動軸の中心とほぼ一致させてアーム機構を高速旋回させることにより,搬送時間を短縮できるという効果,
回転角度が90度の状態で停止せず移動速度を保持したままアームを移動させる制御方法により、ジャックナイフ現象を生じることなしに円滑な搬送制御が行える効果,
複数の処理室を備えた半導体製造装置において,一対の駆動アームと受動アームと2枚搭載用の先端アームとで構成される関節機構により,処理済みウエハと未処理ウエハとの載せ替えが短時間で可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の装置の概略図である。
【図2】本発明の円弧部の連結部分の一実施例の概略鳥瞰図である。
【図3】本発明の円弧部の連結部分の一実施例の側面の概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例の装置の概略図である。
【図5】本発明の円弧部の連結部分の一実施例の概略鳥瞰図である。
【図6】本発明の搬送アームの一実施例の概略平面図である。
【図7】本発明の搬送アームの一実施例の概略平面図である。
【図8】本発明の搬送アームの一実施例の概略平面図である。
【図9】本発明の第3の実施例の多段式真空処理装置の概略図である。
【図10】本発明の円弧部の連結部分の一実施例の概略図である。
【図11】本発明の搬送アームの一実施例の概略平面図である。
【図12】本発明の第4の実施例の処理装置の概略図である。
【図13】本発明の第5の実施例の処理装置の概略図である。
【図14】本発明の第7の実施例の処理装置の概略図である。
【図15】従来の搬送アームの概略鳥瞰図である。
【図16】従来の多段式真空処理装置の平面概略図である。
【図17】本発明の一実施例の処理装置の室内圧力特性の概略図である。
【図18】従来の半導体製造装置の室内圧力特性の概略図である。
【図19】本発明の一実施例の処理装置の処理特性の概略図である。
【図20】従来の処理装置の処理特性の概略図である。
【図21】本発明の先端アームの一実施例の概略鳥瞰図である。
【図22】本発明の円弧部の連結部の一実施例の概略鳥瞰図である。
【図23】本発明の半導体装置の製造方法の一実施例の断面概略図である。
【図24】本発明の第6の実施例の多段式真空処理装置の概略図である。
【図25】本発明の第7の実施例の多段式真空処理装置の概略図である。
【図26】本発明の第8の実施例の処理装置の概略図である。
【図27】本発明の第9の実施例の概略図である。
【図28】本発明の第10の実施例の概略図である。
【符号の説明】
1…ウエハ,2…駆動アーム,3…受動アーム,4〜7…アーム,10…駆動源,11〜19…円弧部,20…先端アーム,21…軸,22,23…円筒部,31〜34…円弧部,35,36…中心軸,37〜39…円弧部,41〜43…巻部材,51〜54…固定治具,55,56…矢印,58…外接部,59,60…矢印,71〜74…中心軸,75〜82…円弧部,83〜94…巻部材,95〜98…円筒部,101…連結部,102…駆動アーム,103…受動アーム,104…先端アーム,105…基板,106…駆動源,107,108…矢印,111〜118…巻部材,131〜133…巻部材,155〜158…円筒部,161〜166…円筒部,171〜175…アーム,190,191…張力調整部,195…固定部,201…搬送アーム,203〜210…ゲート弁,213…処理室,221…連結部,222…駆動アーム,223…受動アーム,224…先端アーム,225…基板,226…駆動源,302…搬送室,303〜310…ゲート弁,313…処理室,322…搬送アーム機構,325…基板,326…駆動源,350…小型搬送容器,351…処理室,352…結合手段,353,354…ゲート弁,355…サセプタ,356…上下駆動手段,357…駆動制御手段,358,359…開閉手段,360…小型搬送容器,361,362…先端アーム,363,364…ウエハ,365…駆動アーム,366…中心線,367…処理室,368…サセプタ,369,370…ゲート弁,371…結合手段,500,501…流量制御手段,502…噴出孔手段,571…搬送室,572…処理室,573,574,575,576,577…ゲート弁,580…バッファ室,581…基板,582…搬送アーム,583…駆動手段,584…駆動手段,585…搬送アーム,587…開口,588…コンダクタンス弁,589…ゲート弁,590…排気手段,592…矢印,593…案内手段,597…ガス供給手段,598…不活性ガス供給手段,599…流量制御手段,601…基板,602…レジスト,603…SiO2,604…Si3N4,605…n+層,606…p+層,607…poly−Si,608…SiO2,609…Si3N4,610…SiO2,611…poly−Si,612…SiO2,613,614…poly−Si,615…Ta2O5,616…W,650,651…先端アーム,652,653…基板,654…駆動アーム,656…処理室,658…受動アーム,659…ベアリング,660…受動アーム,661…ベアリング,662…搬送室,663〜670…ゲート弁700…円弧部,701…矢印,702…円弧部,703…受動アーム,704,705…矢印,712〜714…円弧部,730,731…ばね部材,732,733…矢印,801…処理,802…熱窒化処理,803…NH3処理,804,805…SiH4処理,811〜816…ウエハ搬入出,901…H2処理,902…熱窒化処理,903…NH3処理,904,905…SiH4処理,911〜,917…雰囲気条件設定,921…駆動アーム,922…受動アーム,924…ウエハ,923…先端アーム,926〜928…円弧部,931…駆動アーム,932…受動アーム,933…先端アーム,941〜947…処理済みウエハ,951〜955…未処理ウエハ。

Claims (2)

  1. 一方のアームの旋回運動を少なくとも一つの他方のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構が、同心円状に円弧部と円筒部より構成された各アームの接続部と、一方のアームの接続部の円弧部に少なくとも一つの他方のアームの接続部の円弧部が外接され、互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材とにより構成され、複数の構成要素であるアームの間の接続が前記関節機構によりなされた搬送装置であって、
    互いに一端側を前記関節機構により接続された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび第2アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動源と、前記第1アームの他端側と、前記関節機構により一端側が接続された第3アームと、前記第2アームの他端側と、前記関節機構により一端側が接続された第4アームと、前記第3アームおよび第4アームの他端側が前記関節機構により接続され、該接続部に連結した被搬送物載置用の先端アームとにより構成されたことを特徴とする搬送装置を使用して、
    半導体ウエハを処理室と搬送室との間を搬送することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 一方のアームの旋回運動を少なくとも一つの他方のアームの旋回運動に伝達し、かつ各アームの接続部の旋回中心軸を平行に保持する関節機構が、同心円状に円弧部と円筒部より構成された各アームの接続部と、一方のアームの接続部の円弧部に少なくとも一つの他方のアームの接続部の円弧部が外接され、互いに該円弧部で接する前記複数のアームの接続部の円筒部の間に、各円筒部に十字掛け状に接する接線方向に渡され、かつ各接触位置より各円筒部に巻きついて固定された巻部材とにより構成され、複数の構成要素であるアームの間の接続が前記関節機構によりなされた搬送装置であって、
    互いに一端側を前記関節機構により接続された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび第2アームの一端側の接続部の中心に設けられた駆動軸と、前記駆動軸を駆動する駆動源と、前記第1アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第3アームと、前記第2アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第4アームと、前記第3アームおよび第4アームの各他端側が前記関節機構により接続され、前記第3アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第5アームと、前記第4アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第6アームと、前記第5アームおよび第6アームの各一端側が前記関節機構により接続され、前記第5アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第7アームと、前記第6アームの他端側と前記関節機構により一端側が接続された第8アームと、前記第7アームおよび第8アームの他端側が前記関節機構により接続され、該接続部に連結した被搬送物載置用の先端アームとにより構成されたことを特徴とする搬送装置を使用して、
    半導体ウエハを処理室と搬送室との間を搬送することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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