JP2015213775A - 患者に合わせてカスタマイズした治療レジメン - Google Patents

Abstract

【課題】患者に合わせてカスタマイズした治療レジメンを提供し、治療レジメンに従って、患者の処置を可能にする方法、システムを提供する。
【解決手段】患者のカスタマイズした治療レジメンに基づく物理的な医薬品製剤の調製および患者への送付をさらに含む。また、ある症候について患者を処置する方法を提供し、方法は、（ａ）患者への医療用組成物の投与に関する検証的データを取得すること：（ｂ）検証的データを評価し、治療レジメンの変更がいつ望ましいのかを判定すること；および（ｃ）変更が望ましいと判定した場合、前記治療レジメンを調節することを含む。
【選択図】図１

Description

（関連出願への相互参照）
米国特許法§１１９（ｅ）の下、本願は、２００６年５月２日に出願された米国仮特許出願第６０／７４６，２５０号の出願日の優先権を主張し、この仮出願の開示は、本明細書中に参考として援用される。

（導入部）
（発明の分野）
本発明は、全般的には医療に関し、特に治療レジメンに関する。さらに具体的には、本発明は、処置プロトコルの進行に伴い調整することができる、個々の患者に合わせてカスタマイズした治療レジメンに従い、患者を処置する方法およびシステムに関する。

（背景）
処方薬は、たとえば、指示に従って適切に服用すると、多くの患者にとって有効な治療薬である。しかしながら、大きな患者集団から得た臨床データを用いて策定される事前設定の服薬スケジュールに従って、処方薬を服用するのが一般的である。そのため、患者がある処方薬で効果が得られると医療従事者が判断する場合、その医療従事者は通常、１日１回の服用、１２時間おきに１日２回の服用など、標準的な投与プロトコルを患者に与える。

標準的な投与レジメンは、多数の患者から得られた臨床情報に基づいている一方で、各患者に特有であり、個々の患者への各医薬剤の作用に影響を与える可能性がある生理的な項目をまったく考慮に入れていない。たとえば、そうした標準的な服薬スケジュールは、患者が服用しているかもしれない他の任意の薬剤が、処方薬剤の作用に与える影響を考慮に入れていない。さらに、標準的な服薬スケジュールは、埋植医療装置、たとえば、患者に植え込まれて作動している可能性があるペースメーカーの状況もまったく考慮していない。さらに、標準的な服薬スケジュールは、服薬スケジュールに対するノンコンプライアンスが及ぼし得る影響もまったく考慮していない。標準的な服薬スケジュールに勘案されていないこれ以外のパラメータとして、患者の日常生活の予定、患者の主観的な感じ方などが挙げられる。

したがって、標準化された投与レジメンは、ある症候を処置する薬剤を処方された少なくとも一部の患者にとっては、最適な投与レジメンではない。最適でない投与レジメンに従って薬剤を服用すると、不十分な処置、不十分なコンプライアンス、有害な副作用、さらには死亡など、望ましくない様々な影響が生じる可能性がある。

故に、患者の治療レジメンを判定する優れた方法の開発が求められている。個々の患者に合わせて工夫が行われ、患者に合わせてカスタマイズする治療レジメンの判定方法の開発には、特に関心が集まっている。本発明は、こうしたニーズを始めとするニーズを満たすものである。

（要旨）
本発明は、個々の患者に合わせてカスタマイズする治療レジメンの開発を初めて可能にする。このレジメンでは、薬学的介入などの治療的介入の用量が、個々の患者に合わせて具体的に工夫され、患者が服用している他の薬剤の影響、患者の日常生活の予定および同種のものなど、様々な患者別の基準に基づき用量を決定することができる。本発明はまた、たとえば、前の処置に対する患者の反応の程度、前の服薬スケジュールに対する患者の遵守の程度など、個々の患者に特有の相違を勘案して、経時的に個々の治療レジメンを修正できるようにする。

本発明の実施形態は、コンプライアンスデータなどの用法用量に関するデータ（特に医療用組成物の投与に関する検証的データの形）を患者から取得する方法を含む。その後、取得したこの検証的データを、たとえば、自動決定ツールを用いて評価し、患者に処方した治療レジメンの変更が望ましいかどうかを判定する。この判定に基づき、決定ツールは、推奨を行う。変更が推奨された場合、何らかの方法で患者の治療レジメンを調節してもよい。ある実施形態では、この方法は、たとえば、変更した治療レジメンに従ってカスタマイズした物理的な投与量を調製物の形にして、それを患者へ送付するなど、変更した治療レジメンの実施をさらに含む。さらに、当該方法の様々なステップを実行するシステムおよびプログラミングも提供する。

（定義）
他に記載がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。しかしながら、具体的に参照しやすいように、以下に一部の要素を定義する。

「離れた場所」とは、引用した項目が存在する場所以外の場所をいい、たとえば、同じ都市で物理的に別の場所（たとえば、オフィス、研究室など）、異なる都市の別の場所、異なる州の別の場所、異なる国の別の場所など、患者から離れた場所をいう。このため、ある項目が別の項目から「離れている」という場合、その意味するところは、２つ項目が、別の部屋または別の建造物などにあるなど、少なくとも同じ部屋の別の区域にあり、少なくとも１マイル、１０マイルまたは少なくとも１００マイル離れていることもある。

情報を「通信する」とは、好適な通信チャネル（民間または公共ネットワークなど）、たとえば、広域ネットワーク（「ＷＡＮ：Ｗｉｄｅ Ａｒｅａ Ｎｅｔｗｏｒｋ」）、電話網、衛星ネットワーク、あるいは、インターネット、イントラネット等の他の任意の好適な通信チャネルを介して情報を信号（たとえば、電気信号、光信号、ラジオ信号など）として表現してデータを送信することをいう。コンピュータネットワークカード、コンピュータファクスカード、コンピュータファクス機、電話モデムまたは衛星モデムなど、使用する通信チャネルのタイプに好適な任意の簡便な通信モジュールを用いて通信を行ってもよい。

ある項目を「送付する」とは、その項目を物理的に輸送するか他の方法（可能な場合）であるかを問わず、任意の手段でその項目をある場所から次の場所に送ることをいい、少なくともデータの場合、データを伝える媒体を物理的に輸送する、あるいは、たとえば、上記の方法を介してデータを通信することを含む。

「システム」および「コンピュータベースシステム」という語は、本発明の態様の実施に用いるハードウェア手段、ソフトウェア手段およびデータ記憶手段（メモリなど）をいう。本発明のコンピュータベースシステムのハードウェアは、中央処理装置（ＣＰＵ：ｃｅｎｔｒａｌ ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ ｕｎｉｔ）、入力手段、出力手段およびデータ記憶手段（メモリなど）を最低限含む。当業者であれば、本発明に用いるのに好適な多くのコンピュータベースシステムが入手可能であることを容易に理解できる。データ記憶手段は、上記のような本情報の記録を含む任意の製造物またはそうした製造物へのアクセスを可能にするメモリアクセス手段を含んでもよい。

「プロセッサ」とは、プロセッサに求められる機能を果たす任意のハードウェアおよび／またはソフトウェアの組み合わせをいう。たとえば、本明細書の任意のプロセッサは、電子制御装置、メインフレーム、サーバまたはパーソナルコンピュータ（デスクトップまたはポータブル）として入手できるようなデジタルプログラマブルマイクロプロセッサであってもよい。プロセッサがプログラマブルである場合、好適なプログラミングを、離れた場所からプロセッサに通信してもよいし、あらかじめコンピュータプログラム製品（磁気装置ベースか、光学装置ベースか、ソリッドステート装置ベースかを問わず、コンピュータ読み取り可能なポータブルまたは固定記憶媒体など）に保存しておいてもよい。たとえば、磁気媒体または光ディスクについては、プログラミングを保存してもよく、対応する局で各プロセッサと通信する好適なリーダーで読み取ることができる。

「メモリ」、「メモリ素子」または「メモリユニット」とは、プロセッサにより後で検索できるように情報を格納できる任意の装置をいい、磁気または光学装置（ハードディスク、フロッピー（登録商標）ディスク、ＣＤまたはＤＶＤなど）またはソリッドステートメモリ装置（揮発性または不揮発性ＲＡＭ（ｒａｎｄｏｍ ａｃｃｅｓｓ ｍｅｍｏｒｙ）など）を含めても構わない。メモリまたはメモリユニットは、同一または異なるタイプの複数の物理メモリ装置を装備していてもよい（たとえば、メモリは、複数のハードドライブもしくは複数のソリッドステートメモリ装置またはハードドライブおよびソリッドステートメモリ装置の組み合わせなど、複数のメモリ装置を装備していてもよい）。

ある実施形態では、システムは、たとえば、複数のサーバの形のように１つまたは複数のプラットフォームの形をとるハードウェア構成要素を含む。そのため、システムの任意の機能要素、すなわち、システムの特定のタスク（情報の入力および出力の管理、情報の処理など）を実行するシステムの要素については、システムの代表的な１つまたは複数のプラットフォームを跨いでソフトウェアアプリケーションを実行して実行してもよい。当該システムに含まれる１つまたは複数のプラットフォームは、たとえば、サーバ、メインフレームコンピュータ、ワークステーションなど、都合のよい任意のタイプのコンピュータプラットフォームで構わない。複数のプラットフォームが存在する場合、たとえば、ネットワーク化あるいは別の方法で接続されているケーブルまたは無線システムのような他の通信システムなど、都合のよい任意のタイプの接続を介して、プラットフォームを接続すればよい。複数のプラットフォームが存在する場合、プラットフォームは、同じ場所に配置してもよいし、物理的に離れていてもよい。いずれのコンピュータプラットフォームも、様々なオペレーティングシステムを用いることができるが、代表的なオペレーティングシステムとして、Ｗｉｎｄｏｗｓ（登録商標）、Ｓｕｎ Ｓｏｌａｒｉｓ、Ｌｉｎｕｘ（登録商標）、ＯＳ／４００、Ｃｏｍｐａｑ Ｔｒｕ６４ Ｕｎｉｘ（登録商標）、ＳＧＩ ＩＲＩＸ、Ｓｉｅｍｅｎｓ Ｒｅｌｉａｎｔ Ｕｎｉｘ（登録商標）などが挙げられる。また、システムの機能要素を、当該技術分野において公知の種々のソフトウェアファシリテータおよびプラットフォームに従って実行しても構わない。
本発明は、例えば、以下を提供する。
（項目１）
ある症候について患者を処置する方法であって：
（ａ）上記患者への医療用組成物の投与に関する検証的データを取得すること：
（ｉ）上記患者は、上記症候を処置するための治療レジメンを受けており；
（ｉｉ）上記検証的データが、第１の装置により作成され、第２の装置に送信され、上記第１の装置および上記第２の装置はともに上記患者の身体に装着されている；
（ｂ）上記検証的データを評価し、上記治療レジメンの変更がいつ望ましいのかを判定すること；および
（ｃ）変更が望ましいと判定した場合、上記治療レジメンを調節することを含む、方法。
（項目２）
上記検証的データは、上記第２の装置によって記録される、項目１に記載の方法。
（項目３）
上記第１の装置および上記第２の装置は、上記身体に電気的に接続されている、項目１に記載の方法。
（項目４）
上記検証的データは、上記第１装置と上記第２の装置の間に電流を設けることで、上記第１の装置から上記第２の装置に送信される、項目１に記載の方法。
（項目５）
上記電流は、上記第１装置、上記第２の装置および上記身体の間に限定される、項目４に記載の方法。
（項目６）
上記電流は、上記第１装置と上記第２の装置との間に限定され、かつ、上記第１装置および上記第２の装置はそれぞれ、上記患者の外部の導体または接地用導体に容量結合されている、項目４に記載の方法。
（項目７）
上記検証的データは、自動的に取得される、項目１に記載の方法。
（項目８）
上記第１装置と上記第２の装置とは、異なるタイプの装置である、項目１に記載の方法。
（項目９）
上記第１の装置は、活性剤を含む、項目８に記載の方法。
（項目１０）
上記第２の装置は、活性剤を含まない、項目９に記載の方法。
（項目１１）
上記方法は、検証的データの第２のセットを第３の装置から上記第２の装置に送信することをさらに含む、項目１０に記載の方法。
（項目１２）
上記第３の装置は、活性剤を含む、項目１１に記載の方法
（項目１３）
上記医療用組成物は、薬物、ビタミン、生理食塩水、注入剤、透析液および制酸薬からなる群から選択される、項目１に記載の方法。
（項目１４）
上記第１の装置は、医薬組成物に取り付けられているアイデンティファイアを含み、上記アイデンティファイアは、上記患者の標的生理学的部位との接触時に上記検証的データを作成する、項目１に記載の方法。
（項目１５）
上記評価は、上記データを決定支援ツールに入力することと、上記治療レジメンの（ｉｓ）変更が望ましいかどうかに関する上記検証的データに基づいた推奨を上記決定支援ツールから取得することとを含む、項目１に記載の方法。
（項目１６）
上記評価は、上記患者から取得した生理学的データを検討することをさらに含む、項目１５に記載の方法。
（項目１７）
上記評価は、上記患者から取得した生活習慣情報を検討することをさらに含む、項目１５に記載の方法。
（項目１８）
上記方法は、上記患者から得た上記検証的データを第２の場所に送付することをさらに含む、項目１に記載の方法。
（項目１９）
上記第２の場所は、離れた場所である、項目１８に記載の方法。
（項目２０）
上記方法は、推奨を検討して上記治療レジメンの変更を行うべきかどうかを判定する医療従事者に上記推奨を提供することをさらに含む、項目１５に記載の方法。
（項目２１）
上記医療従事者は、上記推奨を踏まえて上記治療レジメンを調節し、調節した治療レジメンを上記患者に通信する、項目２０に記載の方法。
（項目２２）
上記調節した治療レジメンは、医薬品投与レジメンの変更を含む、項目２１に記載の方法。
（項目２３）
上記医薬品投与レジメンの上記変更は、医薬品の量の変更を含む、項目２２に記載の方法。
（項目２４）
上記医薬品投与レジメンの上記変更は、上記患者に投与される医薬品の少なくとも１つのタイプの変更を含む、項目２２に記載の方法。
（項目２５）
上記方法は、１種または複数種の活性剤を含む物理的な医薬品製剤を調製することと、上記物理的な医薬品製剤を上記患者に送付することとをさらに含む、項目２０に記載の方法。
（項目２６）
上記物理的な医薬品製剤は、２種以上の異なる組成物を含む、項目２５に記載の方法。
（項目２７）
上記物理的な医薬品製剤は、２種以上の活性剤を含む組成物を含む、項目２５に記載の方法。
（項目２８）
上記組成物は、上記治療レジメンの上記調節を踏まえて作製される、項目２７に記載の方法。
（項目２９）
上記物理的な医薬品製剤の上記組成物は、用法用量コンプライアンスのアイデンティファイアを含む、項目２５に記載の方法。
（項目３０）
ある症候について患者を処置するシステムであって：
（ａ）患者への医療用組成物の投与に関する検証的データを受け取る入力マネージャ；
（ｂ）受け取った検証的データに基づき治療レジメンを検討し、治療レジメンの変更が望ましいかどうかを判定し、上記判定に基づく推奨を提供するように構成された治療レジメン評価装置を含む処理モジュール；および
（ｃ）上記推奨をユーザに提供する出力マネージャを含む、システム。
（項目３１）
ある症候について患者を処置する方法であって：
上記患者から受け取った検証的データを項目３０に記載のシステムに入力すること；および
上記システムから推奨を取得し、上記推奨に従って上記患者を処置すること
を含む、方法。
（項目３２）
コンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品であって、上記コンピュータプログラムは、コンピュータ上にロードされると、上記コンピュータを以下：
（ａ）患者への医療用組成物の投与に関する検証的データを受け取る；
（ｂ）上記検証的データに照らして上記患者の治療レジメンを検討し、治療レジメンの変更が望ましいかどうかを判定し、上記判定に基づく推奨を提供する；そして
（ｃ）上記推奨をユーザに提供する
ように動作させる、コンピュータプログラム製品。

図１は、本発明の実施形態に従って患者別の治療レジメンを開発するプロセスを図示したフローチャートを示す。 図２は、図１に示すプロセスの変形例を図示したフローチャートを示す。この例では、修正した治療レジメンを、本発明の一実施形態に従って患者別に物理的な医薬品製剤を製造することで実施する。 図３は、本発明の特定の実施形態を図示したものである。 図４は、本発明の方法を実施するための本発明の実施形態によるシステムを示す。

詳細な説明
本発明は、たとえば、個々の患者に合わせて治療レジメンをカスタマイズすることを可能にする、臨床医にとって治療施設における重要な新しいツールを提供する。本発明は、実際の用法用量情報、すなわち、医療用組成物の患者への投与に関する検証的データに基づく治療レジメンの開発および修正を可能にする。そうした情報には、生活習慣情報などの投与量に関する追加情報を補足してもよい。このように、臨床医は、個々の患者に合わせてカスタマイズした最適な治療レジメンを処方することができる。たとえば、実際のコンプライアンスデータなど多くの因子に基づき、強心薬を最も適切な投与量に調節し、特に心筋の疲弊および反跳現象などの副作用を最低限にとどめ、１人１人の患者の投与量およびタイミングの両方を最適化することができる。

その多くが重篤で有害である場合がある、処置に関する明確な臨床結果を待つことなく、本発明により、様々な代替薬の評価が可能になる。たとえば、予測の難しい因子で不明瞭になる前に、有益な効果を迅速に確認できると考えられる。血圧の変化などの負の反応は、薬物関連または薬物と無関係のバックグラウンドを超える生理的変動としてはっきりと明らかになるであろう。一臨床分野では、本発明は、たとえば、本出願の譲受人が開発し所有する装置など、他の検出器と協調して代替薬に対する心反応の測定および評価を可能にする。そうした同時に用いる検出器は、特に以下に列挙する検出器であってもよい。本発明者らの一部が開発した他の検出技法を用いれば、心臓の健康および心臓の効率の測定が可能になる。本発明の方法およびシステムと協調してこうしたツールを用いれば、臨床医は、投与した医薬品に対する心臓および身体の反応を比較検討し、個々の患者に合わせてカスタマイズして治療レジメンの修正を行い、患者別に最適な治療レジメンを得ることができる。

より詳細に本発明を改めて記載するに当たり、まず、方法について、より詳細に検討する。次に、方法を実施するシステムについて記載する。最後に、この方法を用いる代表的な用途について検討する。

方法
一面において、本発明は、ある症候について患者を処置する方法であって、その症候が、何らかの医療用組成物を患者に投与する薬学的介入、栄養学的／ビタミン介入、液体による介入（透析など）など、ある種の医療介入で効果が得られる症候である、方法を提供する。「医療用組成物」という語については広義に用いており、何らかの形での患者の健康の改善を最終目標として患者に投与してもよい種々様々なタイプの組成物を指す。医療用組成物の例として、医薬品または薬物（たとえば、処方箋または店頭で入手できるもの）、ビタミン剤および栄養補助剤、たとえば、生理食塩水、透析液などの注入剤のような治療液、制酸薬などがあるが、これに限定されるものではない。次に、説明の都合上、主に医薬品組成物の観点から、本発明をさらに記載する。しかしながら、本発明をそれに限定するものではない。

本発明の方法を実施する際の最初のステップは、患者から用法用量に関するデータ（すなわち、患者への医療用組成物の投与に関する検証的データ）を取得することであり、ある実施形態では、患者は、治療レジメンを受けている。「治療レジメンを受けている」とは、患者に治療プロトコルが指示されていることをいい、プロトコルにおいて患者は、自己投与、または、医療従事者もしくは別の個人（あるいは患者自身）の手で、たとえば、数時間おき、１日１回、２日に１回、週に１回などの服薬スケジュールに従って、医療用組成物を投与される。

ある実施形態では、患者には、たとえば、糖尿病治療装置、薬物投与装置等の心血管装置など、医療用組成物の投与に関係する埋め込み型医療装置が埋め込まれている。

この方法のこのステップで得られる用法用量に関するデータは、（自己投与でまたは別の人により）患者が、たとえば、埋め込み型装置の活性、医薬品製剤など、規定の治療発明品を投与されているか否か、あるいは、いつ投与されているかに関する情報である。用法用量に関するデータは、患者への医療用組成物の投与に関する検証的データである。データは検証的であるため、特定の組成物が実際に患者に投与されていることを伝えるデータである。ある実施形態では、検証的データは、医療用組成物が実際に患者と接触した場合に限り得られるデータであり、したがって、たとえば、患者による投与の記録に頼る方法またはシステム、医療用組成物のスマートパッケージングに依存する方法またはシステムなど、そうした接触の代替指標を用いる方法／システムから得られるコンプライアンスデータと区別することができる。そのため、本発明の方法に用いる用法用量または検証的データは、医薬品コンプライアンスデータを含んでもよい。このコンプライアンスデータは、時期を含め、患者に特定の医薬品製剤が投与されたかどうかに関する情報を含む。

ある実施形態では、検証的データは、第１の装置が作成し、第２の装置に送信されるデータであり、該第１の装置および第２の装置はともに該患者の身体に装着されている。こうした状況において、医療用組成物が患者に投与されると、身体に装着されている第１の装置は、信号（ビットなど個々のデータ要素の集合体であってもよい）を発生または生成する。次いで、信号を受信し、記録することができる第２の装置に送信する。さらに、第２の装置も、身体に装着されている。身体に装着されているとは、第１の装置および第２の装置が、第１の装置および第２の装置の個々の性質に応じて、たとえば、摂取される、埋植されるなど、局所的にまたは体内で身体と接触していることをいう。

第１の装置および第２の装置が患者の身体に装着されている例として、第１の装置および第２の装置が患者の身体に電気的に接続されている場合がある。装置が患者の身体に電気的に接続されていると、第１の装置と第２の装置の間に電流を設定することで、検証的データを第１の装置から第２の装置に送信することができる。この場合、身体が電流の流れる導電媒体としての役割を果たすため、第１の装置と第２の装置の間に「クローン力」通信を与える。こうした実施形態は、高周波（ＲＦ：ｒａｄｉｏ ｆｒｅｑｕｅｎｃｙ）により相互に通信する装置とは異なる。

第１の装置および第２の装置の性質に応じて、電流は、第１の装置、第２の装置および患者の身体の間に限定された電流であってもよい。たとえば、第１の装置はファルマインフォマティクス対応医薬品製剤（以下により詳細に記載する）であり、第２の装置は患者の体内に埋め込まれたまたは局所に存在する健康管理コンパニオンであり、データの伝達時に設定する電流を、第１の装置、第２の装置および患者の間に限定することができる。あるいは、電流は、第１の装置と第２の装置の間に限定された電流であってもよく、この場合、第１の装置および第２の装置を患者の体外の導体または接地用導体と容量結合する。たとえば、第１の装置が、たとえば、下記のようなスマート非経口送達装置であり、第２の装置が患者の体表面に存在する健康管理コンパニオンである場合、第１の装置および第２の装置を患者の体外の接地用導体と容量結合し、患者の身体に電流を設定して検証的データを第１の装置から第２の装置に送信する。

第１の装置および第２の装置のシステムについては、たとえば、第１の装置から患者に薬剤を投与している間に第１の装置から電子信号を送り；たとえば、患者を通して第１の装置から該患者に装着されている受信機、たとえば、患者に埋め込まれたまたは患者に局所付着された健康管理コンパニオン装置に検証的信号を伝導し；第２の装置で検証的信号を記録することで、検証的データを作成するシステムと見なしてもよい。

本発明の態様のすべてで実施する必要はないが、信頼性を高めるため、検証的データの作成、送信、受信および記録を自動的に行える第１の装置および第２の装置のシステムを用いて検証的データを取得してもよい。「自動的に」という語句は、最初の設定以外は、検証的データの取得に人的介在を必要としない状況をいう。

ある実施形態では、検証的データを作成する上記システムにおいて記載した第１の装置として、個別に検出可能なスマート薬剤を用いてもよい。こうしたスマート薬剤の例として、米国特許第５，０７９，００６号および国際公開第２００７／０２７６６０号；国際公開第２００７／０２１４９６号；国際公開第２００７／０１４０８４号；国際公開第２００７／０１３９５２号；国際公開第２００７／００１７４２号；国際公開第２００７／００１７２４号；国際公開第２００６／１２７３５５号；国際公開第２００６／１０４８４３号；国際公開第２００６／０５５８９２号；国際公開第２００１／０４７４６６号；および国際公開第２００５／０２００２３号に記載のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの公報およびそれに対応する米国における公報（優先出願など）の監視装置および方法に関する開示については、参照によって個々に本明細書に援用する。

ある種の実施形態で特に関心を集めているのは、標的身体部位（胃など）との接触時に活性化する「スマート」薬剤を用いることである。スマート剤は、たとえば、電源の完了により活性化が起こる。こうした薬剤（ｄｏｓａｇｅ）は、医薬組成物に取り付けられているアイデンティファイアを含み、（たとえば、胃など標的の生理学的部位との接触時に信号を出すことで）患者にその薬剤を実際に投与した時期に関する情報（すなわち、検証的データ）を提供することができる。そのため、得られた情報は、用法用量の代替指標ではなく、薬剤の実際の投与という事実に結び付いている。このタイプのスマート薬剤は、２００６年４月２８日に出願され、２００６年１１月２日に国際公開第２００６／１１６７１８号として公開された「Ｐｈａｒｍａ Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｃｓ Ｓｙｓｔｅｍ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００６／０１６３７０号に記載されているスマート薬剤；ならびに米国特許仮出願第６０／８６６，５８１号；同第６０／８２９，８３２号；同第６０／８８７，７８０号；同第６０／８８９，８６８号；同第６０／８８９，８７０号；同第６０／８８９，８７１号；同第６０／８９４，１７１号および同第６０／８９４，１６７号に記載されているようなスマート薬剤の追加の実施形態を含む。上記の出願の開示については、参照によって本明細書に援用する。こうした薬剤をファルマインフォマティクス対応薬剤と見なしてもよい。

服用コンプライアンスデータについては、スマート治療システムにより取得してもよい。たとえば、このシステムは、シリンジ、吸入器、注入器、透析器または薬を投与する他の装置を用いて、有益な薬品または他の方法により体内に摂取された有益な薬品を特異的に識別し検出する。スマート治療システムは、チップの付いた有益な薬品を含んでもよい。チップには、患者に投与する有益な薬品のタイプに関する情報を含ませても構わない。たとえば、バイアルなどの保持容器から有益な薬品を取り出す際、バイアルからシリンジ内のチップに信号を送ることができる。送られた信号により、バイアルから取り出された有益な薬品のタイプが分かる。患者への注入時に、その情報をシリンジから、たとえば、健康管理コンパニオン装置のような患者の体内、体表面または周辺にある情報管理データベースに送ることができる。さらに、このシステムは、透析など、患者が受けている任意の治療についても受信機に伝えることができる。この場合、透析器またはその時点の透析器に加えた付加モジュールを用いて、実施中の透析と透析中に患者を出入りする血液のパラメータとに関するデータを収集し送信してもよい。受信機は、送信された信号の検出および復号化に成功後、投与した薬剤または治療剤に関する情報の受信に成功したことを看護師または他の担当者および／または患者に発報することができる。こうしたシステムは、２００６年７月７日に出願された米国特許仮出願第６０／８１９，７５０号および２００７年２月２７日に出願された同第６０／８９１，８８３号に開示されており、その開示については、参照によって本明細書に援用する。

前述のとおり、第２の装置は、身体を介して第１の装置から送信されたデータを受信する（必要に応じて、データの記録および送信を行う）ように構成された装置であってもよい。この場合、第２の装置は、たとえば、その開示を参照によって本明細書に援用する「Ｓｉｇｎａｌ Ｒｅｃｅｉｖｅｒｓ ｆｏｒ Ｐｈａｒｍａ−Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｃｓ Ｓｙｓｔｅｍｓ」を発明の名称とする係属中の米国特許仮出願第６０／８８７，７８０号に記載されているようなファルマインフォマティクス対応投与製剤のアイデンティファイアが出す信号により、用法用量を検出するように構成された健康管理コンパニオン装置であっても構わない。上記のように、健康管理コンパニオンについては、患者に埋め込むおよびまたは局所付着するように適合させることができる。そのように装置を適合させれば、患者に装着し患者に何らかの不快感があったとしても、大きな不快感を与えずに、たとえば、数日、数週、数ヶ月、数年またはそれ以上など、長時間にわたり装着することができる。

上記の実施形態の一部では、第１の装置と第２の装置とは、タイプが異なる装置であり、たとえば、第１の装置は、スマート薬剤のように活性剤が取り付けられているが、第２の装置には、活性剤が取り付けられていない。

ある実施形態では、この方法は、一定の期間において２つ以上の検証的なセットを患者から取得することを含んでいた。たとえば、患者の個々のレジメンに応じて１日間、１週間、１ヶ月間、１年間などで２つ以上の検証的データのセットを取得した。この２つ以上の検証的データのセットを、同じ第１の装置から得てもよい。一方、ある実施形態では、第１の装置が、たとえば、上記のスマート薬剤のようなファルマインフォマティクス対応薬剤であり、第１の装置および第２の装置は、別々のピルのように異なる薬剤になる。そのため、この方法の実施形態は、少なくとも第３の装置から追加の検証的データのセットを取得することを含む。たとえば、第２の医薬品製剤が第１の医薬品製剤から分離し、追加でいくら多くの第１、第３などの装置を用いても、同じ第２の装置を用いることになる。

患者からは、用法用量に関するデータばかりでなく、必要に応じて追加データを取得することもできる。取得可能な追加の患者データのタイプには、たとえば、本出願の譲受人の本発明者らの一部が開発し、共有の出願および特許に記載の以下に言及するセンサおよびシステムなど、任意の簡便な検出器を用いて取得できるような生理学的パラメータデータ；患者の既往歴に関する情報などの生活習慣データ（たとえば、患者の日常生活、患者がどのように感じていたかなど）；患者の生活の予定（たとえば、患者が運動を行う予定の有無、患者の体調が良好か否かなど）；および同種のものがあるが、これに限定されるものではない。

患者の用法用量（すなわち、検証的）データの取得後、たとえば、患者は離れた場所に居ることもあれば、そうでない場合もあるため、データの取得には、第１の場所から第２の場所へのデータの送信（たとえば、インターネット経由）が含まれる。次いで、たとえば、以下で検討するようなシステムを用いてデータを評価し、治療レジメンの変更がいつ望ましいのかを判定し、その判定に基づき推奨を提供する。この方法のこのステップは、（たとえば、適切なシステムの）決定支援ツールへのデータの入力と、治療レジメンの変更（ｃｈａｎｇｅ ｉｓ）が望ましかどうかに関する検証的データに基づく推奨を決定支援ツールから取得することとを含んでも構わない。用法用量に関するデータを検討し、コンプライアンスデータ、生理学的パラメータおよび生活習慣データなど、患者から得た情報に基づき、治療レジメンに対して修正を行うべきどうかを見極め、何らかの形で患者の治療レジメンを最適化する。データについては、たとえば、手作業、あるいは、任意の簡便な決定ツールを用いて医療従事者が評価してもよい。決定ツールには、たとえば、データベース、アルゴリズム、実用的なインターフェース（グラフィカルユーザインターフェース（ＧＵＩ：ｇｒａｐｈｉｃａｌ ｕｓｅｒ ｉｎｔｅｒｆａｃｅ）形式など）、結果指標などを含んでもよい以下に記載のシステムなどがある。

次いで、たとえば、医療専門家は、この評価ステップに基づいて得られた推奨を用い、何らかの形で治療レジメンを調節すべきかどうかを判定することができる。その後、その判定を、たとえば、医療従事者が患者に通信する。判定は、治療レジメンの変更を行うべきでない、あるいは、治療レジメンの変更を行うべきである旨を示唆する所見の形でもよい。したがって、医療従事者は、治療レジメンの変更を行わず、前に示した治療レジメンを引き続き遵守すべきである旨を患者に伝えてもよい。あるいは、医療従事者は、評価ステップから得られた推奨を踏まえて、たとえば、患者に前に示したレジメンの変更方法に関する説明書の形で修正治療レジメンを患者に送付してもよい。

治療レジメンを調節する場合、多種多様なフォーマットをとってもよい。たとえば、調節は、服用する活性剤の量および／または服用する活性剤の様々なタイプの変更など、医薬品投与レジメンの変更の形をとっても構わない。また、調節は、埋植医療装置の活性の変更の形をとっても構わない。さらなるレジメンの修正として、生活習慣の変更の推奨、たとえば、運動を控える指示、運動を行う指示、食生活の是正指示などが挙げられる。

ある実施形態では、この方法は、治療レジメンの変更の実施をさらに含む。こうした実施については、非常に多様なやり方で行うことができる。たとえば、修正された治療レジメンで使用する１種または複数種の実際の物理的な医薬品製剤を調製する形で、これを実施しても構わない。「物理的な医薬品製剤」という語句は、たとえば、規定の投与イベントで実際に投与する１種または複数種のピルなど、その時々に投与する実際の医薬組成物（単数または複数）をいう。実施の一形態では、修正治療レジメンは、選抜された様々な活性剤を一定量で含むもので、これを、たとえば、活性剤の様々な組成物（ピルなど）を集めてセットにして、そのセットを患者に送付することで実施する。実施の別の形態では、上記のような治療レジメンが指定する量で２種以上の活性剤を組み合わせて単一の組成物とし、次いで、その組成物を患者に送付する。たとえば、上記のように決定したある修正治療レジメンでは、医薬品Ｘを第１の量で、医薬品Ｙを第２の量で、医薬品Ｚを第３の量で投与する必要がある場合がある。以下でより詳細に検討するように、単一組成物については、たとえば、３種類の医薬品を指定の量ですべて含ませるシステムからの指示を踏まえて、医薬組成物の製造者が作製する。３種類の量については、不活性キャリアの異なる区画に存在し、望ましいようにカプセルなどにまとめてもよい。こうした実施形態の組成物に関しては、たとえば、医薬品（ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃａｌ ａｇｅｎｔ）の製造者レベル、卸業者レベル、小売（薬局など）レベル、さらには、たとえば、カスタマイズされた製剤を保存成分から調製する家庭用装置を用いて顧客レベルなど、所定のサプライチェーンに従って任意の時点で製造することができる。さらに、実施には、たとえば、心臓装置、神経刺激装置などの埋め込まれた装置の活性を望ましいように調節することも含まれる。

ある実施形態では、本発明の方法およびシステムと一緒に、個々の薬剤または薬剤の集合体を監視または追跡調査する追加の方法およびシステムを用いてもよい。たとえば、「スマート」パッケージ装置（すなわち、医薬品コンプライアンスパッケージ）を用いても構わない。この装置は、患者がパッケージから薬剤を取り出した時期を記録することで患者への薬剤の投与を示す代替指標を提供するものである。こうした「スマート」パッケージング装置および方法の例は、その開示を参照によって本明細書に援用する米国特許第４，３６０，１２５号；同第４，７６８，１７６号；同第４，７６８，１７７号；同第５，２００，８９１号；同第５，６４２，７３１号；同第５，７５２，２３５号および同第５，９５４，６４１号に開示されているようなスマート薬物ディスペンサーに見られるが、これに限定されるものではない。あるいはまたはさらに、ＲＦＩＤ（ｒａｄｉｏ ｆｒｅｑｕｅｎｃｙ ｉｄｅｎｔｉｆｉｃａｔｉｏｎ）／バーコードアプローチを用いて、医薬品製剤の供給源と患者との間の確認または追跡調査の追加情報を得てもよい。

服用コンプライアンスデータの他の供給源として、たとえば、コンプライアンス記録プログラムへの入力による患者データの記録などがあるが、これに限定されるものではない。また、用法用量に関するデータには、ペースメーカー活性のデータなどの埋め込み型医療装置の活性データも含まれるが、こうした活性については、その開示を参照によって本明細書に援用する、「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ｚｅｒｏ−Ｗｉｒｅ Ｃｏｍｍｕｎｉｃａｔｉｏｎｓ Ｓｙｓｔｅｍ」を発明の名称とする国際公開第２００７／０２８０３５号に記載のシステムなど、任意の簡便なシステムを用いて監視してもよい。

必要に応じて、こうした情報の追加供給源を発明の方法と一緒に用いてもよい。

図１および図２は、上述の方法の２つの実施形態のフローチャートを示す。図１に例示した方法の第１のステップ１１０では、上で検討したように、医薬品コンプライアンスデータなど、用法用量に関するデータを取得する。次のステップ１２０では、取得した用法用量に関するデータを、たとえば、以下により詳細に記載するような治療レジメン評価装置に入力する。ステップ１２０に続きステップ１３０では、評価装置で入力データを判定し、治療レジメンの変更が望ましいかどうかを決定する。決定ボックス１４０では、レジメンの変更が推奨されない場合、ステップ１５０に示すように、現行の治療レジメンを継続する指示を患者に送付する。一方、決定ボックス１４０でレジメンの変更が推奨された場合、ステップ１６０では、たとえば、医薬品投与レジメンおよび／または埋植医療装置活性レジメンを変更する形で、修正治療レジメンを開発する。次のステップ１７０では、開発した調節後医薬品投与レジメンを患者に送付する。最後に、ステップ１８０に示すように、患者は、引き続き従来の治療レジメンに従うか、あるいは、修正レジメンを採用してレジメンを受ける。

図２は、図１に示すプロトコルの修正版を示し、この方法は、修正治療レジメンの実施を含む。図２に例示した方法の第１のステップ２１０では、上で検討したように、医薬品コンプライアンスデータなど、用法用量に関するデータを取得する。次のステップ２２０では、取得した用法用量に関するデータを、たとえば、以下により詳細に記載するような治療レジメン評価装置に入力する。ステップ２２０に続きステップ２３０では、評価装置で入力データを判定し、治療レジメンの変更が望ましいかどうかを決定する。決定ボックス２４０では、レジメンの変更が推奨されない場合、ステップ２５０に示すように、現行の治療レジメンを継続する指示を患者に送付する。ステップ２５０では、たとえば、同じ投与スケジュールに従って同じ医薬組成物を服用することなどで、従来の治療レジメンの実施を継続する指示も患者に送る。一方、決定ボックス２４０でレジメンの変更が推奨された場合、ステップ２６０では、たとえば、医薬品投与レジメンおよび／または埋植医療装置活性レジメンを変更する形で、修正治療レジメンを開発する。ステップ２７０では、たとえば、（上記のような）物理的な医薬品製剤を作製して、得られた修正治療レジメンを望ましいように実施する。次のステップ２７５では、開発した調節後医薬品投与レジメンおよびその実施物を患者に送付する。最後に、ステップ２８０に示すように、患者は、引き続き従来の治療レジメンに従うか、あるいは、その実施物とともに修正レジメンを採用して実施する。

システム
さらに、当該発明は、たとえば、上記のようなデータ評価ステップなど、この方法の態様の１つ（ｏｎ）または複数の実施に用いることができるシステムを提供する。ある実施形態では、システムは、たとえば、データベースにアクセスし、適切なアルゴリズムを実行するプロセッサの形態の決定ツールを含む。決定ツールは、入力データを検討し、変更が望ましいか否かの推奨を提供する治療レジメン評価装置として機能するデータ評価モジュールの形態をとっても構わない。

図１に模式的に示したプロセスでは、データ評価モジュールを治療レジメン評価装置として用いて入力データを検討し、レジメンを変更すべきか否かの推奨を作成する。したがって、データ評価モジュールは、入力情報の受け取りおよびそれを踏まえてのレジメンの推奨情報の作成機能を果たす。

当該方法に用いたデータ評価モジュールは、データベースなど、メモリに格納された用法用量に関するデータ（コンプライアンスデータなど）要素およびレジメンの推奨に関連するデータ要素の集合を含んでもよい。モジュールのデータ要素については、任意の簡便な方法で体系化できる。データ評価モジュールの内容も、任意の簡便なプロトコルを用いて制御することができる。ある実施形態では、その内容を単一のエンティティで維持してもよく、たとえば、エンティティは最初に内容を作成してから、内容を定期的に更新する。モジュールの実施形態は、更新されたモジュールを含み、モジュールの内容は、たとえば、２回以上、５回以上、１０回以上、５０回以上、１００回以上、１０００回以上など、製造後１回または複数回更新されている。更新される内容は、種々様々なタイプの情報のいずれであっても構わない。

図３にデータ評価モジュールを含むシステムの実施形態を示す。図３では、システム３００が、通信モジュール３２０および処理モジュール３３０を含み、各モジュールは、当該技術分野において公知のように、サーバなど、同一プラットフォーム上にあっても、異なるプラットフォーム上にあってもよい。通信モジュールは、入力マネージャ３２２機能要素および出力マネージャ３２４機能要素を含む。入力マネージャ３２２は、たとえば、近くまたは離れた場所から（たとえば、インターネットで）サンプルのアイデンティファイア情報のような情報をユーザから受け取る。入力マネージャ３２２は、この情報を処理し、処理モジュール３３０に送付する。出力マネージャ３２４は、たとえば、修正治療レジメンのような処理モジュール３３０でアセンブルされた情報をユーザに提供する。通信モジュール３２０については、通信要素３１５によりユーザコンピュータ３１０に動作可能に接続されていてもよい。この通信要素は、ユーザがシステム３００と情報のやりとりを行うための伝達手段である。図３に示すユーザコンピュータ３１０は、特別に設計されていて、多くの異なるアプリケーションのいずれをも支持し実行するように構成されたコンピューティング装置であってもよい。さらに、コンピュータ３１０は、パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバ、ワークステーションまたは今後開発される他のコンピュータプラットフォームなど、様々なタイプの汎用コンピュータのいずれであっても構わない。

上で検討したように、このシステムは、１人または複数のユーザによりシステムにもたらされた情報を受けて、プラットフォーム上で個々のタスクを実行する種々の機能要素を含む。図３では、要素３３２、３３４および３３６は、処理モジュール３３０の３つの異なる機能要素を示す。処理モジュール３３０の機能要素３３２のうち少なくとも１つは、用法用量データを検討し、治療投与レジメンの変更が望ましいかどうかについて決定を行うファンクショナリティであり、本明細書では、便宜上、治療レジメン評価装置と呼んでいる。存在してもよい他の機能要素として、修正治療レジメンを判定する要素などがあるが、これに限定されるものではない。ある実施形態では、このシステムは、治療（電気刺激など）および／またはセンサ活性を有してもよい１つまたは複数の埋め込み型装置を含む。そうしたセンサおよびシステムには、本出願の譲受人に譲渡された種々の出願に記載されたものがあるが、これに限定されるものではない。かかる出願には、「Ｍｅｔｈｏｄ Ａｎｄ Ｓｙｓｔｅｍ Ｆｏｒ Ｍｏｎｉｔｏｒｉｎｇ Ａｎｄ Ｔｒｅａｔｉｎｇ Ｈｅｍｏｄｙｎａｍｉｃ Ｐａｒａｍｅｔｅｒｓ」という発明の名称で米国特許出願公開第２００４／０１９３０２１号として公開された米国特許出願第１０／７３４４９０号；「Ｍｅｔｈｏｄｓ Ａｎｄ Ａｐｐａｒａｔｕｓ Ｆｏｒ Ｔｉｓｓｕｅ Ａｃｔｉｖａｔｉｏｎ Ａｎｄ Ｍｏｎｉｔｏｒｉｎｇ」という発明の名称で米国特許出願公開第２００６／００５８５８８号として公開された米国特許出願第１１／２１９，３０５号；「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ａｄｄｒｅｓｓａｂｌｅ Ｓｅｇｍｅｎｔｅｄ Ｅｌｅｃｔｒｏｄｅｓ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００５／０４６８１５号；「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ａｃｃｅｌｅｒｏｍｅｔｅｒ−Ｂａｓｅｄ Ｃａｒｄｉａｃ Ｗａｌｌ Ｐｏｓｉｔｉｏｎ Ｄｅｔｅｃｔｏｒ」を発明の名称とする米国特許出願第１１／３２４，１９６号；「Ｍｅｔｈｏｄ ａｎｄ Ａｐｐａｒａｔｕｓ ｆｏｒ Ｅｎｈａｎｃｉｎｇ Ｃａｒｄｉａｃ Ｐａｃｉｎｇ」を発明の名称とする米国特許出願第１０／７６４，４２９号、「Ｍｅｔｈｏｄｓ ａｎｄ Ｓｙｓｔｅｍｓ ｆｏｒ Ｍｅａｓｕｒｉｎｇ Ｃａｒｄｉａｃ Ｐａｒａｍｅｔｅｒｓ」を発明の名称とする米国特許出願第１０／７６４，１２７号、「Ｍｅｔｈｏｄ ａｎｄ Ｓｙｓｔｅｍ ｆｏｒ Ｒｅｍｏｔｅ Ｈｅｍｏｄｙｎａｍｉｃ Ｍｏｎｉｔｏｒｉｎｇ」を発明の名称とする米国特許出願第１０／７６４，１２５号；「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ｈｅｒｍｅｔｉｃａｌｌｙ Ｓｅａｌｅｄ Ｓｔｒｕｃｔｕｒｅｓ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００５／０４６８１５号；「Ｆｉｂｅｒｏｐｔｉｃ Ｔｉｓｓｕｅ Ｍｏｔｉｏｎ Ｓｅｎｓｏｒ」を発明の名称とする米国特許出願第１１／３６８，２５９号；「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ｐｒｅｓｓｕｒｅ Ｓｅｎｓｏｒｓ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００４／０４１４３０号；「Ｉｍｐｌａｎｔａｂｌｅ Ｄｏｐｐｌｅｒ Ｔｏｍｏｇｒａｐｈｙ Ｓｙｓｔｅｍ」を発明の名称とし、米国特許仮出願第６０／６１７，６１８号に対する優先権を主張する米国特許出願第１１／２４９，１５２号；「Ｃａｒｄｉａｃ Ｍｏｔｉｏｎ Ｃｈａｒａｃｔｅｒｉｚａｔｉｏｎ ｂｙ Ｓｔｒａｉｎ Ｇａｕｇｅ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ０５／３９５３５号があるが、これに限定されるものではない。これらの出願については、参照によってその全体を本明細書に援用する。

代表的な実施形態
図４に、特定の病状の患者の管理に用いることができる上記の方法およびシステムの具体的で代表的な実施形態を示す。患者４１０は、たとえば、心不全、高血圧など、種々の循環器の病状に悩んでいるかもしれない循環器患者である。患者４１０には、心血管医療装置４２０が埋め込まれている。４２０は、電気治療要素、センサ要素（以下に記載のセンサに限定されるものではない）および監視要素の１つまたは複数を含んでもよい。ある実施形態では、監視要素は、実際の用法用量情報を、アイデンティファイアを組み込んだ医薬組成物から取得し、格納し、送付するように構成されている。そうした組成物は、たとえば、２００６年４月２８日に出願され、２００６年１１月２日に国際公開第２００６／１１６７１８号として公開された「Ｐｈａｒｍａ Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｃｓ Ｓｙｓｔｅｍ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００６／０１６３７０号；さらには米国特許仮出願第６０／８６６，５８１号；同第６０／８２９，８３２号；同第６０／８８７，７８０号；同第６０／８８９，８６８号；同第６０／８８９，８７０号；同第６０／８８９，８７１号；同第６０／８９４，１７１号および同第６０／８９４，１６７号に記載されているようなスマート薬剤の追加の実施形態に記載されている。これらの出願の開示については、参照によって本明細書に援用する。さらに、患者４１０は、処方された医薬品投与レジメンに従って複数の異なる医薬品４３０を服用している。医薬品４３０は、アイデンティファイアを組み込んだ医薬品であり、たとえば、標的生理学的部位に接触すると信号を発する識別ＩＣ（ｉｎｔｅｇｒａｔｅｄ ｃｉｒｃｕｉｔ）チップを含む。そうした医薬品は、２００６年４月２８日に出願され、２００６年１１月２日に国際公開第２００６／１１６７１８号として公開された「Ｐｈａｒｍａ Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｃｓ Ｓｙｓｔｅｍ」を発明の名称とする国際出願ＰＣＴ／ＵＳ２００６／０１６３７０号；さらには米国特許仮出願第６０／８６６，５８１号；同第６０／８２９，８３２号；同第６０／８８７，７８０号；同第６０／８８９，８６８号；同第６０／８８９，８７０号；同第６０／８８９，８７１号；同第６０／８９４，１７１号および同第６０／８９４，１６７号に記載されているようなスマート薬剤の追加の実施形態に記載されている。これらの出願の開示については、参照によって本明細書に援用する。また、図４に示すモデム４４０は、取得した投与情報を、たとえば、診療所のような患者４１０から離れた場所にリレーする役割を果たす。モデル４４０は、たとえば、ベッドサイドなど自宅内の場所にあって、たとえば、無線接続によりインターネットに接続されていてもよい。そのため、たとえば、患者がベッドで就寝していると予想される午前３時など、患者がモデムの近くにいると予想される事前に設定した日常の時間に、モデムによりデータをインターネットおよびその指定アドレスに自動的にアップロードすることができる。言うまでもなく、モデム４４０の代わりにネットワーク中継局など任意の簡便な通信要素を用いても構わない。注目すべき実施形態では、たとえば、ファルマインフォマティクス対応投与製剤のアイデンティファイアが発する信号により用法用量を検出するように構成された埋め込み型または局所的信号受信機要素（健康管理コンパニオン装置など）を介して４３０、４２０および４４０の各要素が通信を行う。かかる信号受信器要素は、「Ｓｉｇｎａｌ Ｒｅｃｅｉｖｅｒｓ ｆｏｒ Ｐｈａｒｍａ−Ｉｎｆｏｒｍａｔｉｃｓ Ｓｙｓｔｅｍｓ」を発明の名称とする係属中の米国特許仮出願第６０／８８７，７８０号に記載されており、その開示については、参照によって本明細書に援用する。

中央プロセッサ４５０は、たとえば、患者データベース、集団に関する情報、サブ集団に関する情報、患者別の情報など、多くの異なる情報源を含むサーバ、あるいは、それにアクセスできるサーバを含む。このデータセットまたはプロセス４５０に存在する各セットは、生データセットでも、あるいは、たとえば、データのカテゴリのように部分集合または集団を作成するために何らかの形で処理したものでもよい。たとえば、一定期間にわたり個々の患者から得たコンプライアンスデータを、他の個人から得たデータと組み合わせても構わない。組み合わせたデータを処理して、類似の服用コンプライアンスおよび／または他のパラメータ（たとえば、健康、年齢、病気など）に基づき同じように反応する個人の傾向またはサブ集団を特定することができる。傾向またはサブ集団については、たとえば、事前に設定した規則に従ってデータを自動的に処理し、傾向またはサブ集団を特定できるデータ処理アルゴリズムを用いるなど、任意の簡便なプロトコルを用いて生データから特定してもよい。その後、種々様々なやり方で望ましいように特定した傾向／サブ集団を用いることができる。たとえば、医療専門家は、一定の集団または集団の群に関する情報を用いれば、患者それぞれのコンプライアンスデータも考慮に入れ、各患者を処置する最良の方法を開業医に知らせやすくなる可能性がある。たとえば、４７０および／または医師４９０が、患者４１０から得た特定のコンプライアンスデータを解釈する際に、医薬情報担当者が入手可能な、データセット４５０から特定された患者の各サブ集団を参照できるようにする。そうすることで、医薬情報担当者などの医療専門家は、看護師４７０および／または医師４９０による情報に基づいた患者４１０の治療処置レジメンの決定に貢献することができる。このように、看護師４７０および／または医師４９０は、患者４１０に対して各処置治療レジメンの決定を下す際、販売代理人およびデータセット４５０から販売代理人に提供される知識を積極的に利用する。

ラップトップ型コンピュータ４６０は、図３に示したシステム３００の実施形態であり、上で検討した治療レジメン評価装置などの決定支援ツールを含む。決定支援ツールは、要素４５０として例示したデータベースに提供される情報、患者記録のような診療所にある情報など、種々様々なタイプの情報にアクセスすることができる。ある実施形態では、決定支援ツール４６０は、データに基づき処方箋を完成させるおよび／または電子メールにより警告を発することができる。ある実施形態では、決定支援ツール４６０は、より広範な医療情報システムにリンクしている。

図４に示す看護師４５０は、患者に関する警告および各ウェブページの検討、患者またはその介護者への連絡、たとえば、決定支援ツールが作成する推奨に基づく電話４８０による助言の提供および／または通院の予約を行うことがある。

図４の医師４９０は、たとえば、患者日誌の検討、電気治療の調整、プロフィールの作成、代替薬の選択、服薬の調整、現行のレジメンの有効性の確認などの作業の１種または複数種を行う。図４に示す実施形態にあっては、医師が投与レジメンを調整すると、その情報が製造者５００に送付される。図４には主要な製造業者を示してあるが、投薬調整の指示については、たとえば、病院または小規模薬局のような任意の都合のよい製剤施設、さらには在宅製剤装置に送付してもよい。製造者５００は、たとえば、４８時間周期以内で医師４９０から提供される投薬情報を踏まえ、患者４１０に合わせて特別に工夫された医師４９０指定の薬物を受注製造する。その後、たとえば、要素５１０に示すような速達便で、製造された物理的な薬剤を患者に向けて送付する。

プログラミング
さらに、本発明は、たとえば、コンピュータプログラム製品の形で、この方法の実施に使用するプログラミングも提供する。本発明によるプログラミングを、コンピュータ読み取り可能な媒体、たとえば、コンピュータによる読み取りおよび直接アクセスが可能な任意の媒体に記録してもよい。そうした媒体として、フロッピー（登録商標）ディスク、ハードディスク記憶媒体および磁気テープなどの磁気記憶媒体；ＣＤ−ＲＯＭなどの光学記憶媒体；ＲＡＭ、ＲＯＭ、フラッシュドライブ、マイクロドライブなどの電気記憶媒体；および磁気／光学記憶媒体などのこれらのカテゴリの複合型があるが、これに限定されるものではない。当業者であれば、任意のコンピュータ読み取り可能な媒体を用いて、上記の方法を実施するための本プログラミング／アルゴリズムの記録を含む製造物を製造する方法を容易に理解するであろう。

有用性
本発明は、治療施設における重要な新規のツールを臨床医に提供する。すなわち、個々の患者に合わせて治療レジメンをカスタマイズすることが可能になる。本発明により、実際の用法用量情報に基づいた治療レジメンの開発および修正が可能になる。そうした用量用法情報には、追加の生理学的パラメータ、生活習慣情報などの投与量に関する追加情報を補足することができる。こうして、臨床医は、個々の患者に合わせてカスタマイズした最適な治療レジメンを処方することができる。本発明の実施による多くの利点として、たとえば、ばらつきのあるコンプライアンス環境において標準化された治療レジメンの使用に起因し得るような医療ミスの減少；ミスの減少に伴う負担の軽減；その他のうち１つまたは複数が挙げられるが、これに限定されるものではない。

当該組成物およびシステムを用いる用途の１つとして、処方した治療レジメンに対する患者コンプライアンスの監視がある。患者コンプライアンスの監視とは、患者が実際に処方されたように薬剤を服用したかどうかを追跡調査することをいう。したがって、本発明は、いつどのようなピルが服用されたかについて正確なデータを提供する。このため、特定の時点にどのピルが服用されたか的確に判定することができる。そうした監視能力があれば、患者が処方した薬剤を正しく服用していることを確認できる。この情報により、実際には服用されない薬剤の過剰処方が行われる可能性が抑制される。たとえば、鎮痛剤を患者に投与しようとする場合、本発明により、患者が実際に鎮痛剤を一定期間にわたり服用したことを確認することができる。こうした知識は、服用されていない薬物を意図していない人に違法に販売することを制限するうえで重要なツールである。心血管ピルの場合、臨床医または介護者は、服用した薬物量がほぼ正しい時点に服用されていることを確認することができる。したがって、薬物の真の有効性を正確に評価することができる。適切な投与および患者コンプライアンスは、アルツハイマー病治療薬、精神治療薬および抗酒薬において、さらに介護施設入居者の処置においても特に重要である。偶発的および他の過量投与の場合にあっては、介在する臨床医は、摂取の進行度およびピルの量を判断することができるであろう。

本発明のより複雑な実施形態では、正確でタイムリーな薬物摂取が行われれば、自動的に処方箋の調剤信号が発せられ、それが薬局のデータシステムに送付され、場合によっては、調剤薬が自動的に患者の自宅に直接配達されるか、または、一定期間後に患者の自宅の装置から放出される。こうした特色は、知的能力障害の患者および／または身体的可動性が限られている患者にとりわけ役立つ。

本発明は、複数の医薬品を服用していて混乱が生じる可能性が高いときなど、複雑な投与レジメンに特に有用である。本発明のピルは、正しい投与量でのみ医薬品成分の溶解および吸収が行われるように複数の外層を有していてもよい。また、医薬品に反応する心臓の電気伝導速度または血液中の電界レベルなど、特定の指標を調節することもできる。

ある実施形態では、患者が規定の処置レジメンを何らかの形で遵守しない場合、患者に注意を喚起してもよい。たとえば、薬理学的レジメンを正しく遵守していない場合、音声合図、視覚合図またはコンピュータ合図により、合図を送る。その合図に正確な応答がない場合、このシステムは、家族、介護者または臨床医に対して注意を喚起し、処置または過量投与の欠陥を是正することができる。さらに、装置も、自動的にレジメンの投与量およびタイミングを修正し、以前の非標準的な服薬を補うことができる。

当該組成物およびシステムを用いる用途の１つは、患者コンプライアンスに基づき治療レジメンを工夫することである。そうした用途では、患者が特定の投与量を服用しているか否かに関する取得データを用いて、今後の投与量および／またはその投与量のタイミングを判定する。ある実施形態では、患者コンプライアンスに関するデータを、たとえば、検知された生理学的データのような追加データと併用し、個々の治療レジメンにカスタマイズした変更または修正を行う。たとえば、本発明により取得した服用コンプライアンスに関するデータを他の医療検出器と合わせて用いると、薬物送達、バッチおよび投与量間の相関性と、生理反応が相関関係にあることがある。こうして、臨床医は、最適な医薬品治療レジメンを処方することができる。たとえば、強心薬を最も適切な投与量に調節し、心筋の疲弊、とりわけ反跳現象などの副作用を最小限にとどめ、１人１人の患者の投与量およびタイミングの両方を最適化することができる。

本発明は、様々な代替薬の評価を可能にし、処置に関する明確な臨床結果を待つ必要がない。そうした結果の多くは、重篤で有害である可能性がある。たとえば、有益な効果を、予測の難しい因子で不明瞭になる前にすぐに確認できる。血圧の変化などの有益でない反応が、薬物関連あるいは無関係のバックグラウンドを超える生理的変動としてはっきりと明らかになるであろう。

一臨床分野では、本発明は、本発明者らの一部が開発した他の検出器と協調して、薬剤に対する心反応の測定および評価を可能にする。そうした同時に用いる検出器は、特に以下に列挙する検出器であってもよい。たとえば、本発明者らの一部が開発した上記のような他の検出技法を用いれば、心臓の健康および心臓の効率の測定が可能になる。本発明の装置と協調してこうしたツールを用いれば、臨床医は、投与した医薬品に対する心臓および身体の反応を比較検討することができるであろう。本発明が提供するデータは、任意に経時的に記録してもよい。記録システムでは、心臓組織を通過する信号の同期性または伝導速度およびそれに対して特定の薬剤の存在が関与する程度が記録される。本発明により、こうした独特のデータが可能になる。

より標準的な臨床環境にあっては、この独特のデータがあれば、慎重な投与薬物の選択および用量調節が可能になるため、禁忌、有効性および最適な投与量レベルを確認するために身体症状が顕著になるのを待つことはない。本発明は、患者が病院に入院する際、救急室の技師または医師用の記録を提供するため、患者の状態を正確に確認できる。入院の１時間前または１日前の服薬イベントおよび最終薬剤の識別情報を直ちに入手することができる。したがって、患者の薬物薬剤歴の正確な記録に基づき今後の治療レジメンを作成することができる。

外部の報告器具の患者監視能力は、本発明の装置が提供できる重要な機能である。この装置は、内部または外部の生理学的な検知データと協調させると、薬剤摂取に対する患者の生理反応を読み取り、次いで、この情報を臨床医に返信することができる。その後、臨床医は、修正治療法などを反映した新規のデータが示す最適な有効性が得られるように治療法を修正することができる。

本発明のより精巧な実施形態では、一定のパラメータ内であれば、器具の知能回路が、投与量の調整機能を果たしてもよい。たとえば、血圧剤の場合、患者は、その血圧ピルを服用する。２０分後、埋め込み型装置の体内の監視回路が血圧の降下を登録する。回路は、この降下を定量し、それをベッドサイドにあるこの器具に送信する。次いで、器具は、ピルを患者の処置に最適な投与量に調整することができる。同様に、患者がＩＶ（ｉｎｔｒａｖｅｎｏｕｓ ｄｒｉｐ）に接続されている場合、投与量をＩＶ輸液に直接加えてもよい。ある実施形態では、完全埋め込み型装置として閉ループシステムを提供する。

薬物処置の最適化については、現在の臨床の現場では、本発明の装置の使用により得られるものよりも大きな制約を受ける。血圧剤による処置の場合、１日当たり非常に多くのピルで設定するのが現状である。そうした手間のかかる投与方法では、フィードバックループが極めて遅いため、適切に最適化するには長い時間がかかる。対照的に、本発明の場合、医薬品製剤に対する生理的反応のフィードバックループがとても速く非常に効率的である。さらには、本発明は、活性の変化、患者の生理的状態の変化および他の投与量パラメータを勘案して、毎日あるいはさらに細かく薬物投与量を調整することができる。

本発明のより精巧な実施形態では、個々の投与量に対する生理反応および時間間隔も継続的に監視することになるであろう。いくつかの実施形態では、薬物代謝における個別の変動および時間帯別の変動を考慮して血流中の薬物レベルを監視する。

本発明のこの態様は、制御物質の過小投与または過量投与を効率的に最小限にとどめ、場合によっては、患者または臨床医の目に明らかな外的症状が現れる前にこうした変化に対処する。薬物投与量を自動的に調節して、たとえば、疼痛に伴う不安、疼痛に対する他の生理反応を抑えるのに、あるいは、薬物の血中濃度を着実にまたは徐々に低下させるのに適切な最低レベルで加えることができる。本発明のこの特徴により、自動的かつ適宜段階的に薬物からの離脱が可能になり、重篤な依存症または重度の有害な離脱反応の起こる機会が減少する。

キット
また、当該方法を実施するためのキットを提供する。キットは、たとえば、スマートパッケージ薬剤、スマート医薬組成物、受信機およびモデム、コンピュータプログラミングなど、上記のようなシステムの１つまたは複数の構成要素を含んでもよい。

また、当該キットは、キットの構成要素を用いて当該方法を実施する方法の説明書を含んでも構わない。説明書については、好適な記憶媒体または基盤に記録してもよい。たとえば、説明書を、紙またはプラスチックなどの基盤にプリントしてもよい。そのため、説明書については、添付文書、キットの容器またはその構成要素のラベル表示（すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに貼付されている）などの形で、キットに含ませても構わない。他の実施形態では、説明書は、たとえば、ＣＤ−ＲＯＭ、ディスケットなどの好適なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態にあっては、キットに実際の説明書が含まれていないが、遠隔のソースから説明書を取得する手段（たとえば、インターネット経由）を提供する。この実施形態の例として、説明書の閲覧および／または説明書のダウンロードが可能なウェブアドレスを含むキットがある。説明書の場合と同様に、説明書を取得するこうした手段を好適な基盤に記録する。

当該キットの構成要素の一部または全部は、無菌性を維持するため好適なパッケージングにパッケージされていてもよい。当該キットの多くの実施形態では、キットの構成要素を、扱いやすい単一のユニットを形成するキット封じ込め要素でパッケージする。たとえば、箱または類似の構造のような封じ込め要素は、気密な容器であることもあれば、そうでない場合もあるが、たとえば、キットの構成要素の一部または全部の無菌性の維持を促進する。

本発明は、記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、変化し得ることを理解すべきである。さらに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書に使用する用語については、個々の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。

また、ある範囲の値を記載する場合、その範囲の上限と下限の間にある各値およびその記載範囲の他の任意の記載値または間にある値は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、１０分の１まで本発明の範囲内にあることが理解されよう。これらのより小さい範囲の上限および下限については独立に、より小さな範囲に含めてもよく、やはり本発明の範囲内に包含される。ただし、記載範囲において明確に除外される限界がある場合、それに従う。記載の範囲に限界の一方または両方を含める場合、それら限界の一方または両方を除外する範囲もやはり、本発明に含まれる。

本明細書では、一定の範囲を「約（ａｂｏｕｔ）」という語を前置した数値で示す。本明細書では、「約」という語を、約の後ろの具体的な数字ならびに約の後ろの数字の近似の数字または概算の数字という意味で用いる。ある数字が具体的に記載した数字の近似の数字または概算の数字であるかどうかを判断する際、記載されていない近似の数字または概算の数字は、その文脈において、具体的に記載した数字と実質的に等価な数字であってもよい。

他に記載がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に用いてもよいが、説明に役立つ代表的な方法および材料については、ここに記載してある。

本出願に引用する刊行物および特許についてはすべて、参照によって援用するために１つ１つの刊行物または特許を具体的に個々に示したかのように参照によって本明細書に援用し、引用した刊行物に関連する方法および／または材料を開示し記載するために参照によって本明細書に援用する。引用した刊行物はいずれも、本出願の出願日前に開示されたものであり、本発明が、先行発明によるかかる刊行物に先行する権利を有していないことを承認するものと解釈してはならない。さらに、記載した刊行日は、実際の刊行日と異なっている場合があり、個別に確認する必要があるかもしれない。

注意する点として、単数形「ａ」、「ａｎ」および「ｔｈｅ」は、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数についての指示対象を含む。特許請求の範囲については、任意選択の要素を除外するように作成してもよい点もさらに注意する必要がある。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素に関する記載に関連して「単独で（ｓｏｌｅｌｙ）」、「のみ（ｏｎｌｙ）」および同種のもののような限定的な用語を使用すること、あるいは、「否定的な」限定を使用することの根拠になるものである。

この開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載または説明する１つ１つの実施形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離したり、組み合わせたりできる個々の構成要素および特徴を含む。記載した任意の方法については、記載の順序に従って、あるいは、論理的に可能な他の任意の順序に従って実施することができる。

前述の発明について理解しやすいように図面および実施例によりある程度詳細に記載してきたが、当業者であれば、本発明の教示内容に照らして、添付の特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、ある種の変更形態および修正形態をなし得ることが容易に明らかになるであろう。

したがって、上の説明は、本発明の原理の説明にとどまる。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または図示していないものの、本発明の原理の実施であり、その精神および範囲内に含まれる種々の構成を発明することが可能であることを理解するであろう。さらに、本明細書に引用するすべての実施例および条件付きの用語については主に、本発明の原理および当該技術分野の発展に寄与した本発明者らの概念に対する読者の理解を助けるものであり、かかる具体的に記載した実施例および条件に限定されるものではないと解釈すべきである。さらに、本明細書では、本発明の原理、態様および実施形態ならびにその具体的な実施例を記載する記述はすべて、その構造的および機能的等価物をともに包含するものである。さらに、かかる等価物は、現在分かっている等価物と、今後開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を発揮するように開発される任意の要素とをともに含むものである。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載した例示的な実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲および精神はむしろ、添付の特許請求の範囲によって実施される。

Claims (1)

1. 明細書に記載された発明。