JP4158097B2 - 認証システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は認証システムに関し、例えば電界を介して情報を送受信する認証システムに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、通信システムは、例えば携帯電話機間において放射電界(電波)を用いて情報を送受信したり、例えば駅の改札機に設けられたデータ読出書込器内のコイルと、ICカード内のコイルとの間における電磁誘導により情報を送受信するようになされている。
【0003】
近年、例えば下記の表1に示すように、人体表皮に当接された状態で装着される人体側通信機と、当該人体の近傍に機器側通信機とを設け、当該人体側通信機の電極を介して人体に交流電圧を印加し、その結果、人体側通信機及び機器側通信機における各電極間に介在する人体を媒質としたコンデンサの作用により、当該機器側通信機の電極で生ずる静電誘導現象を用いて情報を送受信するようになされた通信システムが提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
【表1】
Figure 0004158097
【0005】
また、表1に示した場合の他にも、送受信用の電極間に介在する人体を媒質としたコンデンサの作用により、受信用の電極に生じる静電誘導現象を用いて情報を送受信するようになされた通信システムが数多く提案されている(特許文献1〜9、非特許文献2〜5参照)。
【0006】
【特許文献1】
特表平11−509380号
【0007】
【特許文献2】
特許第3074644号
【0008】
【特許文献3】
特開平10−228524号
【0009】
【特許文献4】
特開平10−229357号
【0010】
【特許文献5】
特開2001−308803号
【0011】
【特許文献6】
特開2000−224083号
【0012】
【特許文献7】
特開2001−223649号
【0013】
【特許文献8】
特開2001−308803号
【0014】
【特許文献9】
特開2002−9710号
【0015】
【非特許文献1】
インターネット<URL:http://www.mew.co.jp/press/0103/0103-7.htm> [平成15年1月20日検索]
【0016】
【非特許文献2】
2002.3.1、蜂須賀啓介、中田杏理、柴健次、佐々木健、保坂寛、板生清(東大)「人体を伝送路とした情報通信デバイスの開発」マイクロメカトロニクス学術講演会講演論文集 VOL,2002,春季;PP.27−28
【0017】
【非特許文献3】
2002 中田杏理、蜂須賀啓介、柴健次、佐々木健、保坂寛、板生清(東大)「生体内通信システムの開発」精密工学会大会学術講演開講演論文集 春季;PAGE.640
【0018】
【非特許文献4】
2002.3.1 藤井勝之(千葉大)、伊達公一(千葉大)、田島茂(ソニーコンピュータサイエンス研)「人体を伝送路として利用した通信システムのモデル化に関する検討」社団法人映像メディア学会技術報告 Vol.26,No.20,pp.13〜18
【0019】
【非特許文献5】
2002.3.18 蜂須賀啓介、中田杏理、武田健人、佐々木健、保坂寛、板 生清(東大 大学院新領域創世科学研究科)、柴健次(東京理大 理工)「人体を伝送路とした情報通信デバイスの開発」マイクロメカトロニクス Vol.46,NO.2;PP.53−64
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところでかかる構成の通信システムにおいては、送受信用の電極間に介在させる人体を媒質としたコンデンサの作用を物理的作用の前提としていることにより、当該電極間で通信する際の通信強度が電極面積に依存してしまう。
【0021】
また、送受信用の電極間に介在させる人体を媒質としたコンデンサの作用を物理的作用の前提としていることにより、例えば、送信用の電極を人体の右手首に装着した場合には当該右手首から指先方向以外への通信については物理的に不可能となり、一方、送信用の電極を人体の胸近傍に装着した場合には当該胸から前面方向以外への通信については物理的に不可能となる。
【0022】
このように通信システムにおいては、送受信用の電極間に介在させる人体を媒質としたコンデンサの作用を物理的作用の前提としていることにより、人体に装着する電極位置に応じて通信方向が制約されるのみならず、当該通信の強度が電極面積に依存する結果、通信の際における自由度が乏しいという問題があった。
【0023】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、通信の際における自由度を向上し得る通信システム、通信方法及び通信装置を提案しようとするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、準静電界を介して情報を送受信する送信装置と受信装置とによって構成される認証システムにおいて、送信装置では、人体固有の生体情報を検出し、当該生体情報に応じて変調した準静電界を発生することにより人体を帯電させ、受信装置では、人体の帯電状態の変化に基づいて生体情報を復調し、当該生体情報に基づいて人体を識別するようにする。
【0025】
従って認証システムは、利用者近傍において方向性の制約もなく秘匿性を確保した状態で、かつ利用者に所定の動作を強要もせずに情報の送受信を実現することができると共に、人体固有の情報に基づいて装置と人体との関係をも識別することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の概要
本発明は、電界を用いて情報を送受信する。以下、電界との関係において本発明の概要を述べる。
【0027】
(1−1)電界
一般に、電気双極子(ダイポールアンテナ)に電流を流した場合、当該アンテナからの距離rに従って発生する電界Eは、次式
【0028】
【数1】
Figure 0004158097
【0029】
のように簡略化して表すことができる。
【0030】
(1)式に示されるように、電界Eは、距離rの3乗に反比例する成分(以下、これを準静電界と呼ぶ)と、距離rの2乗に反比例する成分(以下、これを誘導電磁界と呼ぶ)と、距離rに線形に反比例する成分(以下、これを放射電界と呼ぶ)とに大別される。
【0031】
放射電界は、距離rに線形に反比例するだけである分、当該距離rが長い場合であっても急速に減衰しない伝搬性に優れた成分であるため、従来における情報通信の分野では一般的な情報伝送媒体として用いられている。
【0032】
誘導電磁界は、距離rが長くなるとその2乗に反比例して減衰する伝搬性に乏しい成分であるが、近年における一部の情報通信の分野では情報伝送媒体として用いられている。
【0033】
準静電界は、距離rの3乗に反比例して急速に減衰するので伝搬性はなく、単に振動として振動源のごく近傍に現れるだけの成分であるため、放射電界や誘導電磁界を前提とした情報通信の分野では利用されていない。
【0034】
本発明は、電界のうち準静電界を用いた近傍通信(以下、これを近接場通信と呼ぶ)手法により、ごく近傍の通信範囲内で情報を送受信するようになされている。
【0035】
(1−2)準静電界
かかる準静電界について更に詳しく述べる。まず、上述の(1)式に表した電界Eを、図1に示すように、原点から所定間隔だけ離れた位置P(r,θ,φ)における電界として表してみる。
【0036】
このとき距離δだけ離れて電荷qと、電荷−qとが存在し、時刻tで電荷qが「Qcosωt」と変化すると仮定した場合に、電荷qの位置を原点とすると、位置P(r,θ,φ)における各電界Er、Eθ及びEφは、次式
【0037】
【数2】
Figure 0004158097
【0038】
と表すことができる。
【0039】
因みに、(2)式において電界Eφが「0」となるが、これは位置P(図1)からφ方向には電界が発生しないことを意味している。
【0040】
ここで、(2)式に表される電界Er及びEθから、距離rに線形に反比例する成分(即ち放射電界)を分離すると、位置P(r,θ,φ)における放射電界E1r及びE1θは、次式
【0041】
【数3】
Figure 0004158097
【0042】
と表すことができ、また(2)式に表される電界Er及びEθから、距離rの2乗に反比例する成分(即ち誘導電磁界)を分離すると、位置P(r,θ,φ)における誘導電磁界E2r及びE2θは、次式
【0043】
【数4】
Figure 0004158097
【0044】
と表すことができ、さらに(2)式に表される電界Er及びEθから、距離rの3乗に反比例する成分(即ち準静電界)を分離すると、位置P(r,θ,φ)における準静電界E3r及びE3θは、次式
【0045】
【数5】
Figure 0004158097
【0046】
と表すことができる。
【0047】
因みに(3)式において放射電界E1rのみ「0」となるが、これは位置P(図1)から接線方向には放射電界が発生しないことを意味している。
【0048】
次に、距離rに関する放射電界、誘導電磁界及び準静電界における成分別電界強度を表すために、かかる(3)式〜(5)式のうちの放射電界E1θ、誘導電磁界E2θ及び準静電界E3θについてもう少し整理してみる。
【0049】
すなわち、波数k〔m−1〕は、角周波数をωとし、光速をcとすると、次式
【0050】
【数6】
Figure 0004158097
【0051】
に示す関係にあるので、当該波数kを(6)式に置き換え、また距離rによる周期的な電界強度変化に相当する「j・exp(-jkr)」については議論の本質とはならないので取り除き、さらに電荷qと電荷−qとの時間的変化の最大時を扱うため「cosωt」を1とすると、次式
【0052】
【数7】
Figure 0004158097
【0053】
となり、次いで、(7)式について距離δを1とし、電荷q(=Q)を0.001〔C〕とし、θをπ/2として整理すると、次式
【0054】
【数8】
Figure 0004158097
【0055】
となる。
【0056】
かかる(8)式に基づいて放射電界E1θ、誘導電磁界E2θ及び準静電界E3θにおける成分別電界強度を定性的にプロットした結果を図2及び図3に示す。
【0057】
但し、図2及び図3においては、周波数1〔MHz〕における成分別電界強度を示し、また図3においては、図2に示した成分別電界強度を指数(指数尺度)に置き換えて示している。
【0058】
特に図3から明らかなように、放射電界E1θ、誘導電磁界E2θ及び準静電界E3θにおける成分別電界強度の等しくなる距離r(以下、これを境界点と呼ぶ)が存在しており、当該境界点よりも遠方では放射電界E1θが支配的となり、これに対して境界点から近傍では準静電界E3θが支配的となっていることが分かる。
【0059】
ところで境界点においては、上述の(8)式よれば、次式
【0060】
【数9】
Figure 0004158097
【0061】
となるときであり、光速cは波長をλとし、周波数をfとすると、次式
【0062】
【数10】
Figure 0004158097
【0063】
に示す関係にあり、一方、角周波数ωは次式
【0064】
【数11】
Figure 0004158097
【0065】
に示す関係にあるので、(10)式と(11)式とを(9)式に代入して整理すると、次式
【0066】
【数12】
Figure 0004158097
【0067】
となる。
【0068】
(12)式によれば、原点から境界点までの距離rについては波長λによって異なり、図4に示すように、波長λが長いほど準静電界E3θが支配的となる範囲(原点から境界点までの距離r)は広くなる。
【0069】
以上に述べたことをまとめてみると、空気の比誘電率εを1とし、空気中の波長をλとして仮定した場合、原点からの距離rが「r<λ/2π」である範囲内では、準静電界E3θは支配的となる。
【0070】
本発明は、近接場通信手法により情報を送受信する際に、かかる(12)式を充足する範囲を選定することにより、準静電界E3θが支配的となる空間上で当該情報を送受信するようになされている。
【0071】
(1−3)準静電界と人体
ところで、人体に放射電界や誘導電磁界を発生させようとするならば当該人体に電流を流す必要があるが、人体はインピーダンスが非常に高いので、当該人体に電流を効率的に流すことは物理的に困難であり、また生理的にも好ましくない。しかしながら静電気については全く様相が異なってくる。
【0072】
すなわち、日常我々が静電気を体感するという経験的事実からも示唆されるように、人体は非常に良く帯電する。また動作に応じた人体表面の帯電により準静電界が発生することも知られていることから、人体へ準静電界を発生させる場合には当該人体に通電する必要はなく帯電させればよい。
【0073】
つまり、人体では極めて少ない電荷の移動(電流)により帯電し、当該帯電変化が瞬間的に人体表面周囲に伝わってその周囲からほぼ等方向へ準静電界の等電位面として形成されると共に、準静電界が支配的となる上述の(12)式を充足する範囲内では放射電界や誘導電磁界の影響も少ないのでアンテナとして効率的に機能する。このことは本出願人による実験結果により既に確認されている。
【0074】
本発明は、近接場通信手法として、所定の情報に応じて人体を帯電させることにより当該人体近傍の周囲へ等方に形成される準静電界を変調し、その結果人体近傍に情報を有する準静電界を形成させて当該情報を送受信するようになされている。
【0075】
(1−4)準静電界と人体の歩行運動
既に述べたように、人体の動作に応じて人体表面が帯電するが、人体の動作における主な1つである歩行と帯電との関係をもう少し詳細に述べる。因みに、かかる関係については本出願人によって既に特願2002−314920号で公開されている。
【0076】
すなわち、人体の歩行運動による人体表面の帯電に伴って形成される準静電界(以下、これを歩行準静電界と呼ぶ)の強度の変位については、路面と足底面との間における電荷の移動のみならず、路面に対する足底面の剥離面積(又は接触面積)の変化、及び、当該路面と足底面との距離変化も密接に関与している。
【0077】
いいかえれば、人体の歩行運動による人体表面の帯電変化においては、当該歩行運動による足の軌跡に応じた当該足と路面との間における静電容量変化及び電荷の変化によるものであり、左右足相互の動きの組合わさった、個人固有のパターンを反映している。よって、人体の歩行運動による人体表面の帯電変化パターンは生体(人体)の特徴を反映することになるので高い認証精度が期待できる。
【0078】
そこで本発明は、人体の歩行運動による人体表面の帯電変化パターンに基づいて、人体固有の歩行パターンを表す生体識別情報を生成し、当該生体識別情報を用いて所定の認証処理を実行するようになされている。
【0079】
一方、右足(左足)の爪先が完全に路面から離れた瞬間時においては、歩行態様の特性上、当該歩行態様の差異に係わらず左足は(右足)は路面に完全に着いている状態となる。
【0080】
従って、かかる状態時には左右足相互間における帯電相互作用(干渉作用)が起こらず、当該状態時における歩行準静電界の強度の変位については最も大きい振幅のピークとして8Hz±2Hzの帯域内に特異的に出現する。
【0081】
なお、8Hz±2Hzの帯域内に出現する振幅のピーク(以下、これを8Hzピークと呼ぶ)の詳細事項については、本出願人によって既に公開された特願2002−314920号(5頁・段落番号[0024]〜12頁・段落番号[0056])を参照されたい。但し、かかる発明でいう歩行運動とは、特にスピードを意識することなくほぼ平坦な路面を歩いている動きをいう。
【0082】
このように歩行運動に伴って人体近傍に形成される歩行準静電界には最も大きい強度で8Hzピークが出現するため、当該出現時に近接場通信の目的で人体を帯電させて当該人体近傍に情報を有する準静電界を形成しようとすると、当該8Hzピークによって情報が破壊されてしまう可能性がある。
【0083】
そこで本発明は、かかる8Hzピークが出現するタイミングを避けながら人体を情報に応じて帯電させることにより、当該8Hzピークによる情報の破壊を未然に回避するようになされている。
【0084】
(1−5)準静電界と人体の組織構造
ところで、人体の表皮下の組織構造としては、図5に示すように、扁平上皮細胞で構成される表皮層SLや真皮層BLを有し、当該真皮層BLには構造タンパク質に分類されるコラーゲンや、輸送タンパク質に分類されるヘモグロビン等の各種タンパク質が含まれている。かかる表皮下における組織構造のパターンが個人固有の情報であるといえることは本出願人によって既に確認されている。
【0085】
かかる表皮下における組織のパターンの検出手法としては例えば2つの手法が考えられ、まず第1の手法においては、面状に形成された複数の微小電極を表皮表面にとりつけた人体が準静電界内に入ることによって帯電する当該人体の電位を、各微小電極で相対電位差として検出するものである。
【0086】
第2の手法においては、上述したように人体の歩行運動により当該人体が帯電することを利用するものであって、面状に形成された複数の微小電極を表皮表面にとりつけた人体が歩行を行なった際に帯電する当該人体の電位を、各微小電極で相対電位差として検出するものである。
【0087】
上述の2つの手法については、いずれも、各微小電極下の構造と微小電極間の静電容量の違いを検出したものであり、各微小電極下の組織構造、すなわち個人識別用の情報となる組織のパターンを検出していることにほかならない。また、かかる2つの手法については外部から皮膚に検出用の高周波信号を直接に印加しないので、当該検出の際に人体に生理的負担を与えないと考えられる。
【0088】
ここで、例えば、人体の表面に配置したある微小電極をEN(i)、当該微小電極EN(i)の下にある真皮層BLの最下位層までの距離をmd(i)、表皮層STの比誘電率をε、真空の誘電率をε0とすると、当該距離md(i)における微小電極EN(i)と、当該微小電極EN(i)の下にある真皮層BLの最下位層との間における静電容量C(i)は、次式
【0089】
【数13】
Figure 0004158097
【0090】
であり、人体が電荷Qに帯電しているときは、微小電極EN(i)が検出する電位はV(i)は、次式
【0091】
【数14】
Figure 0004158097
【0092】
である。実際には、微小電極EN(i)から真皮層BLの最下位層までの距離md(i)だけでなく、皮静脈等の存在によっても検出電位は影響を受ける。
【0093】
従って、真皮層BLに含まれる例えば血管にのみ限定して正確に距離md(i)を求めることは困難で、表皮下の血管の存在も同時に測定値に反映されてしまう。表皮下の組織構造が個人固有の特徴を示し、かつ恒久性をもつことは指紋などで知られているが、静脈パターンも同様である。よって、各微小電極別の電位差パターンは当該電極下における表皮下組織と静脈を含めた生体組織の特徴を反映することになるので高い認証精度が期待できる。
【0094】
そこで本発明は、かかる生体組織の特徴となる電位差パターンに基づいて、人体固有の組織パターンを表す生体識別情報を生成し、当該生体識別情報を用いて所定の認証処理を実行するようになされている。
【0095】
このように本発明は、準静電界の性質と人体の性質とを利用するものであって、本発明の概要をまとめると、準静電界が支配的となる範囲内において、送信側では人体の歩行運動による人体表面の帯電変化に基づいて得られる歩行パターンと、生体組織パターンとを表す生体識別情報を生成した後、8Hzピークの出現するタイミングを避けながら、近接場通信の目的で人体を帯電させることによりアンテナとして作用させ、その結果人体近傍に生体識別情報の有する準静電界を形成する。
【0096】
一方、受信側では、人体近傍に形成される準静電界を介して生体識別情報を検出した後に、予め登録しておいた登録者情報を用いて所定の認証処理を実行するようにしたものであり、以下、本発明を適用した一実施の形態について述べる。
【0097】
(2)本発明の一実施の形態
(2−1)認証システムの全体構成
図6において、1は全体として本発明を適用した認証システムの全体構成を示し、例えば会社の出入り口に設けられた認証装置2と、当該会社を利用する人体(以下、これを利用者と呼ぶ)における腕の所定位置へ装脱着可能に設けられた可搬型装置(以下、これをカード装置と呼ぶ)3とによって構成される。
【0098】
認証装置2は、入出場用として設置された入出用通路部4と、当該入出用通路部4の出口側へ開閉自在に設けられた出口扉5とを有し、当該入出用通路部4を通過しようとする利用者に設けられたカード装置3との間で近接場通信し、必要に応じて閉鎖状態の出口扉5を開放するようになされている。
【0099】
(2−2)カード装置の構成
図7に示すように、カード装置3は、電界検出部10、送信部20及び帯電誘導部30によって構成される。
【0100】
電界検出部10においては、電界効果トランジスタ(以下、これをFETと呼ぶ)11を有し、当該FET11のゲートは検出電極12及び誘電体13を順次介して検出対象の利用者表皮OSに接続され、当該FET11のソース及びドレインはアンプ14に接続される。
【0101】
かかる電界検出部10においては、入出用通路部4に近づいてくる利用者表面における帯電に伴って、当該利用者近傍に形成される歩行準静電界HSE(図7)の強度変化を、誘電体13及び検出電極12を順次介して検出し、これをアンプ14を介して増幅歩行帯電変化信号S1として送信部20に送出するようになされている。
【0102】
この場合、電界検出部10においては、利用者の歩行運動に伴って形成される歩行準静電界HSEの強度変化が超低周波帯に現れるため、ハムノイズ等のノイズの影響を殆ど受けることなく当該強度変化を精度よく検出し得るようになされている。
【0103】
また電界検出部10は、利用者表皮OSに誘電体13を直接当接することにより歩行準静電界HSEの強度変化を感度よく検出し得、さらに誘電体13を誘電率の高い例えば軟質塩ビで形成することにより当該強度変化を一段と感度よく検出し得るようになされている。
【0104】
かかる構成に加えて、電界検出部10は、FET11とは電気的に分離した状態で当該FET11の周囲を覆う導体の筐体15を設けており、これにより利用者の歩行準静電界HSEの強度変化以外の検出を極力回避し得るようになされている。
【0105】
さらに、電界検出部10においては、例えば図8に示すように、検出電極12における利用者表皮OSに対向する電極面12aがほぼ同形同大でなる複数の微小電極として分割されており、当該分割された各微小電極には対応するFET及びアンプ(図示せず)が検出電極12のFET11及びアンプ14と同一の接続状態で、かつFET11への経路とは別経路で接続されている。
【0106】
従つて電界検出部10(図7)においては、利用者の歩行運動に伴って当該利用者表皮に形成される歩行準静電界HSEの強度変化を検出電極12の各微小電極を介して増幅歩行帯電変化信号S1としてローパスフィルタ(以下、これをLPFと呼ぶ)22に送出すると共に、当該強度変化を検出電極12の各微小電極を介して局所的な増幅歩行帯電変化信号A1〜Anとして組織情報生成部21に送出するようになされている。
【0107】
ここで、この一実施の形態における歩行運動とは、特にスピードを意識することなくほぼ平坦な路面を歩いている動きをいう。
【0108】
送信部20は、組織情報生成部21、LPF22、波形処理部23及び変調回路24によって構成されており、電界検出部10から与えられる増幅歩行帯電変化信号S1及び増幅歩行帯電変化信号A1〜Anのうち、当該増幅歩行帯電変化信号A1〜Anを組織情報生成部21に入力すると共に当該増幅歩行帯電変化信号S1をLPF22に入力する。
【0109】
因みに、増幅歩行帯電変化信号A1〜Anは、図5について上述したように、各微小電極おいて人体の電位を相対電位差として検出されたものであって、検出電極12下にある表皮下組織と静脈を含めた生体組織の特徴を表す電位差パターンとなっている。
【0110】
組織情報生成部21は、増幅歩行帯電変化信号A1〜Anに基づいてアナログディジタル変換処理を実行してディジタル化し、当該ディジタル化された各増幅歩行帯電変化データに基づいて、検出電極12下における表皮下の組織パターンを2次元で表す組織情報D5として生成し、これを変調回路24に送出する。
【0111】
LPF22は、アンプ14から与えられる増幅歩行帯電変化信号S1のうち例えば20Hz以下における低周波数成分を抽出し、これを歩行帯電変化信号S2として波形処理部23に送出する。
【0112】
波形処理部23は、図9に示すように、A/D(Analog/Digital)変換部41、ピーク検出部42、ピーク予測部43、マスキング時間決定部44及び歩行情報生成部45によって構成されており、LPF22から与えられる歩行帯電変化信号S2をA/D変換部41によりディジタル化し、その結果得られる歩行帯電変化データD1をピーク検出部42及び歩行情報生成部45に送出する。
【0113】
ピーク検出部42は、図10(A)に示すように、A/D変換部41から与えられる歩行帯電変化データD1における帯電変化波形のうち8Hz±2Hzの帯域を監視するようになされており、当該帯域に出現する8HzピークPxを検出する。
【0114】
このときピーク検出部42は、カード装置3内のクロックに基づいて8HzピークPxを検出した時刻(以下、これを現時刻と呼ぶ)t(n) を現時刻データD2として生成し、これをピーク予測部43に送出する。
【0115】
ピーク予測部43は、現時刻t(n) に出現した8HzピークPxよりも1つ前に出現した過去の8HzピークPxの時刻(以下、これを過去時刻と呼ぶ)t(n-1) を内部メモリ(図示せず)に記憶しており、当該現時刻t(n) と過去時刻t(n-1) とに基づいて、当該現時刻t(n) に出現した8HzピークPxの次に出現するであろう未来の8HzピークPxの時刻(以下、これを未来時刻と呼ぶ)t(n+1) について、次式
【0116】
【数15】
Figure 0004158097
【0117】
のように現在時刻t(n) と過去時刻t(n-1) との差分を、当該現在時刻t(n) に加算することにより予測する。
【0118】
そしてピーク予測部43は、未来時刻t(n+1) を予測時刻データD3として生成した後、当該予測時刻データD3及び現在時刻データD2をマスキング時間決定部44に送出する。
【0119】
マスキング時間決定部44は、図10(B)に示すように、後段の変調回路24(図7)で変調する時間帯(以下、これをマスキング時間帯と呼ぶ)MTZを、当該マスキング時間帯MTZの開始時刻ST(n) と終了時刻FT(n) とを算出することにより決定する。
【0120】
具体的にマスキング時間決定部44は、8HzピークPxの出現時から所定の振幅レベルとなるまでの期間(以下、これをピーク逓減予測期間と呼ぶ)Δt1を予め設定しており、マスキング時間帯MTZの開始時刻ST(n) について、次式
【0121】
【数16】
Figure 0004158097
【0122】
に従って算出する。
【0123】
またマスキング時間決定部44は、所定の振幅レベルから8HzピークPxに達するまでの期間(以下、これをピーク逓増予測期間と呼ぶ)Δt2を予め設定しており、マスキング時間帯MTZの終了時刻FT(n) について、次式
【0124】
【数17】
Figure 0004158097
【0125】
に従って算出する。
【0126】
このようにマスキング時間決定部44は、8HzピークPxと、その次に出現する8HzピークPxとの間(以下、これを8Hzピーク間隔と呼ぶ)PSから、予め設定されたピーク逓減予測期間Δt1及びピーク逓増予測期間Δt2を省くことにより当該8HzピークPxを避けたマスキング時間帯MTZを決定し、これをマスキング時間データD4として変調回路24(図7)に送出するようになされている。
【0127】
一方、歩行情報生成部45は、A/D変換部41から与えられる歩行帯電変化データD1を所定時間だけ取り込み、当該所定時間分の歩行帯電変化データD1における帯電変化波形に出現する8HzピークPx(図10(A))を全て認識し、当該認識した8HzピークPxの8Hzピーク間隔PS(図10(B))のうち予め内部メモリに記憶されているピーク間隔の平均幅情報に比して所定の許容範囲外となる8Hzピーク間幅PSを除去する。
【0128】
この場合、歩行情報生成部45は、8HzピークPxを指標としていることにより、定常歩行運動部分に相当する8Hzピーク間幅PSだけを的確に残し得るようになされている。
【0129】
次に、歩行情報生成部45は、図11に示すように、8HzピークPxの中心位置から当該8HzピークPxの前後にそれぞれ存在する8HzピークPxの中間位置までを1歩波形THとして切り出す。
【0130】
この場合も、歩行情報生成部45は、8HzピークPxを指標としていることにより、歩行運動における実際の1歩に相当する1歩波形THとして的確に切り出し得るようになされている。
【0131】
そして歩行情報生成部45は、1歩波形THを時間軸方向にほぼ等間隔でなる例えば21個の細分区間CSU1〜CSU21に分割し、当該分割した細分区間CSU1〜CSU21に係る振幅値(帯電変化強度の値)をそれぞれ積分及び正規化し、その結果得られる21つの積分値を、1歩波形THにおける部分毎の特徴(歩行パターン)を表わす歩行情報D7として生成し、これを変調回路24(図7)に送出する。
【0132】
変調回路24は、カード装置3の製造時等に予め当該カード装置3内のメモリ(図示せず)に格納されたID(IDentifier)情報 D6についてデータ変調処理を実行した後に、組織情報生成部21から与えられる組織情報D5についてデータ変調処理を実行し、最後に歩行情報生成部45から与えられる歩行情報D7についてデータ変調処理を実行する。因みに、変調回路24は、かかるデータ変調処理を実行するデータ順番については所定の設定操作により適宜変更し得るようになされている。
【0133】
具体的に変調回路24は、ID情報D6(組織情報D5又は歩行情報D7)について所定の変調方式によりデータ変調処理を実行することにより高周波でなる変調信号HSを生成し、マスキング時間決定部44から与えられるマスキング時間データD4におけるマスキング時間帯MTZのみ変調信号HSを帯電誘導電極31に印加する。
【0134】
帯電誘導電極31は、変調回路24からマスキング時間帯MTZだけ与えられる変調信号HSの周波数に応じて振動し、当該振動に応じて準静電界(変調信号HS)が帯電誘導電極31から発生する。
【0135】
かかる準静電界(変調信号HS)により利用者は、帯電誘導電極31の振動(変調信号HS)に応じてマスキング時間帯MTZだけ帯電することによりアンテナとして作用し、図10(C)に示すように、利用者表面周囲にはほぼ等方へ当該振動に応じた準静電界(以下、これを情報伝送準静電界と呼ぶ)DSE(図6)が広がる。
【0136】
このようにして送信部20においては、利用者の帯電状態を変化させることにより当該利用者をアンテナとして作用させ、その結果、ID情報D6(組織情報D5又は歩行情報D7)の重畳された情報伝送準静電界とDSEを形成し得るようになされている。
【0137】
その際、送信部20においては、歩行準静電界HSEにおける強度変化のうち最も大きい強度で出現する8HzピークPxを避けたマスキング時間帯MTZ(図10)に利用者を帯電させることにより、当該8HzピークPxによって情報伝送準静電界DSEに重畳されるID情報D6が破壊されてしまうことを未然に回避し得るようになされている。
【0138】
ここで、送信部20においては、空気の比誘電率εを1とし、空気中の波長をλとし、カード装置3と認証装置2との間で通信する際の最大距離をrとし、帯電誘導電極31に与える変調信号HSの周波数をfとして上述の(12)式に(10)式を代入して整理すると、次式
【0139】
【数18】
Figure 0004158097
【0140】
を充足する周波数fに応じて振動する準静電界を帯電誘導電極31から利用者に伝え得るようになされている。
【0141】
従って送信部20は、入出用通路部4上を通過しようとする利用者をアンテナとして作用させて近接場通信する際には、図3及び図4について上述したように、当該通信空間を常に非伝搬性の情報伝送準静電界DSE(図6)が支配的となる空間(実質的に閉じた空間)として形成することができ、その結果、当該通信空間外に通信内容が伝わらない程度に通信出力を弱めることができ、通信内容の秘匿性を一段と確保することができるようになされている。
【0142】
ところで、送信部20は、実際には図示しない制御部により、所定の送信プログラムに従って組織情報生成部21、LPF22、波形処理部23及び変調回路24における送信処理をソフトウェア的に実行するようになされており、当該送信処理の手順について以下のフローチャートを用いて述べる。
【0143】
図12に示すように、送信部20は、ルーチンRT1の開始ステップから次のステップSP1へ移り、電界検出部10から与えられる増幅歩行帯電変化信号S1における低周波数成分を抽出して歩行帯電変化信号S2を生成し、次のステップSP2へ移る。
【0144】
ステップSP2において送信部20は、歩行帯電変化信号S2に基づいてアナログディジタル変換を実行することにより歩行帯電変化データD1を生成し、次のマスキング時間決定処理ルーチンSRT1へ移る。
【0145】
図13に示すように、ステップSP11において送信部20は、ステップSP2(図12)で生成した歩行帯電変化データD1に基づいて8HzピークPx(図10(A))を検出し、その現時刻t(n) を認識した後、次のステップSP12へ移る。
【0146】
ステップSP12において送信部20は、ステップSP11で検出した8HzピークPxの次に検出されるであろう8HzピークPxの未来時刻t(n+1) を上述の(15)式により予測し、次のステップSP13へ移る。
【0147】
ステップSP13において送信部20は、ステツプSP11で認識した現時刻t(n) と、ステツプSP12で予測した未来時刻t(n+1) に基づいて、上述の(16)式及び(17)式により開始時刻ST(n) と終了時刻FT(n)とを算出することによりマスキング時間帯MTZを決定し、次の歩行情報生成処理ルーチンSRT2(図12)へ移る。
【0148】
図14に示すように、ステップSP21において送信部20は、ステップSP2(図12)で生成した歩行帯電変化データD1を所定時間分だけ取り込み、次のステップSP22へ移る。
【0149】
ステップSP22において送信部20は、ステップSP21で取り込んだ所定時間分の歩行帯電変化データD1に出現する8HzピークPx(図10(A))を全て認識した後、次のステップSP23へ移る。
【0150】
ステップSP23において送信部20は、ステップSP22で認識した8HzピークPxの8Hzピーク間隔PS(図10(B))のうち、歩き始めや歩き終わりの際の歩行運動あるいは立ち止まり時等の定常歩行運動以外に相当する8Hzピーク間隔PSを除去し、次のステップSP24へ移る。
【0151】
ステップSP24において送信部20は、ステップSP23で定常歩行運動部分に相当する歩行帯電変化データD1における波形のうち1歩波形TH(図11)を切り出し、次のステップSP25へ移る。
【0152】
ステップSP25において送信部20は、ステップSP24で切り出した1歩波形THについて例えば21個の細分区間CSU1〜CSU21に分割し、当該細分区間CSU1〜CSU21に係る振幅値を積分及び正規化することにより歩行情報D7を生成し、次のステップSP3(図12)へ移る。
【0153】
ステップSP3において送信部20は、電界検出部10から与えられる増幅歩行帯電変化信号A1〜Anに基づいて組織情報D5を生成し、次のステップSP4へ移る。
【0154】
ステツプSP4において送信部20は、カード装置3内のメモリから供給されるID情報D6、ステップSP3で生成した組織情報D5又は歩行情報生成処理ルーチンSRT2で生成した歩行情報D7についてデータ変調処理を実行することにより変調信号HSを生成し、次のステップSP5へ移る。
【0155】
ステップSP5において送信部20は、変調時間決定処理ルーチンSRT1で決定したマスキング時間帯MTZの際に、ステップSP4で生成した変調信号HSを帯電誘導電極31に印加して利用者の帯電状態を変化させることにより、当該利用者の近傍に形成される歩行準静電界HSE(図6)を変調し(図10(C))、次のステップSP6へ移る。
【0156】
この場合、利用者表面周囲に等方へ形成された情報伝送準静電界DSE(図6)は、認証装置2によって取り込まれるようになされている。
【0157】
ステップSP6において送信部20は、ステップSP4でデータ変調処理を実行し終わったか否かを判定する。ここで否定結果が得られた場合、送信部20は、ステップSP4に戻って再びデータ変調処理を実行し、これに対して肯定結果が得られた場合、送信部20は、次のステップSP7へ移って送信処理を終了する。
【0158】
このように送信部20においては、歩行準静電界HSEにおける強度変化のうち最も大きい強度で出現する8HzピークPxを避けたマスキング時間帯MTZ(図10)にのみ利用者の帯電状態を変化させることにより当該利用者をアンテナとして作用させ、当該8HzピークPxによって変調信号HSが破壊されることを回避した状態で、情報伝送準静電界DSE(図6)を利用者近傍に形成し得るようになされている。
【0159】
(2−3)認証装置の構成
図15に示すように、認証装置2は、電界検出部50及び認証処理部60によって構成される。
【0160】
電界検出部50は、例えば入出用通路部4の入口側の内側面に設けられており、カード装置3側の電界検出部10(図7)における検出電極12に代えて、図8で上述したような微小電極のない(電極面が分割されていない)検出電極52を有し、その他の構成については当該電界検出部10と同一構成でなる。
【0161】
認証処理部60は、カード装置3側の送信部20(図7)と同一のLPF22と、歩行情報生成部45(図9)を除いた波形処理部23と同一構成の波形処理部61と、認証部62とによって構成される。
【0162】
認証装置2は、入出用通路部4を通過しようとして近づいてくる利用者近傍に形成される情報伝送準静電界DSE(歩行準静電界HSE)における強度変化を、カード装置3とほぼ同時期に電界検出部50及びアンプ14を順次介して増幅帯電変化信号S11として検出し、これをLPF22により低周波成分のみを抽出して帯電変化信号S12として波形処理部61及び認証部62に送出する。
【0163】
この場合、波形処理部61は、帯電変化信号S12に基づいて図13について上述した場合と同様の各処理をカード装置3側と同時進行で実行することにより、当該カード装置3側と同じ時間帯でなるマスキング時間帯MTZを決定した後、これをマスキング時間データD14として認証部62に送出する。
【0164】
認証部62は、波形処理部61から供給されるマスキング時間データD14と、LPF22から供給される帯電変化信号S12とに基づいて、予め内部メモリ(図示せず)に格納されたIDリストと、所定の登録処理によって内部メモリに予め登録された登録者組織情報及び登録者歩行情報とを用いて所定の認証処理を実行するようになされている。
【0165】
ここで、かかる登録処理においては、例えば、カード装置3を利用者に支給する際に、当該支給するカード装置3における検出電極12(図7)を利用者の腕に当接しようとする位置と同一位置に、所定の登録装置における検出電極(図示せず)を当接した利用者が歩行運動している状態で実行される。
【0166】
この場合、登録装置は、カード装置3と同様にして検出電極下における表皮下の組織パターンを2次元で表す登録者組織情報を生成して認証装置2の内部メモリに登録し、またカード装置3と同様にして例えば図16に示すように、5歩分の1歩波形THをそれぞれ21位個の細分区間CSU1〜CSU21(図11)に分割した後に、積分及び正規化した結果得られる当該各細分区間CSU1〜CSU21それぞれに係る5つの積分値の組(以下、これを登録パラメータ群と呼ぶ)GR1〜GR21における分布状態を、登録者であることを部分毎に証明するための範囲を表わす登録者歩行情報として認証装置2の内部メモリに登録するようになされている。
【0167】
認証部62は、認証処理として、まず、マスキング時間帯データD14におけるマスキング時間帯MTZのみ、LPF22から与えられる帯電変化信号S12に対して所定の復調方式により復調処理を施し、当該帯電変化信号S12(情報伝送準静電界DSE)に重畳されたID情報D6、組織情報D5又は歩行情報D7を抽出する。
【0168】
次に、認証部62は、第1段階として、内部メモリに格納されたIDリストとID情報D6とを照合し、当該IDリスト中にID情報D6と一致する情報があった場合にのみ第2段階として、内部メモリに記憶されている登録者組織情報と組織情報D5とを照合し、当該組織情報D5と一致する登録者組織情報があった場合にのみ第3段階として、内部メモリに記憶されている登録者歩行情報と歩行情報D7とを照合し、当該歩行情報D7と一致する登録者歩行情報があった場合にのみ入出用通路部4(図7)の出口扉5を開放するようになされている。
【0169】
ところで、認証処理部60は、実際には図示しない制御部により、所定の認証プログラムに従ってLPF22、波形処理部61及び認証部62における認証処理をソフトウェア的に実行するするようになされており、当該認証処理の手順について以下のフローチャートを用いて述べる。
【0170】
図17に示すように認証処理部60は、ルーチンRT2の開始ステップから次のステップSP31へ移り、カード装置3と同時期に電界検出部50によって検出され、供給される増幅帯電変化信号S11について、当該カード装置3と同一でなる上述のステップSP1及びSP2(図12)の各処理を実行することにより帯電変化データを生成し、次のマスキング時間決定処理ルーチンSRT11へ移る。
【0171】
変調時間決定処理ルーチンSRT11において認証処理部60は、ステップSP31で生成した帯電変化データについて、カード装置3と同一でなる上述のマスキング時間決定処理ルーチンSRT1(図13)の各処理を実行することによりマスキング時間帯MTZを決定し、次のステップSP32へ移る。
【0172】
ステップSP32において認証処理部60は、マスキング時間決定処理ルーチンSRT11で決定したマスキング時間帯MTZの際に、ステップSP31で生成した帯電変化データについてデータ復調処理を実行することにより、当該帯電変化データに重畳されたID情報D6、組織情報D5又は歩行情報D7を抽出し、次のステップSP33へ移る。
【0173】
ステップSP33において認証処理部60は、ステップSP32で抽出したID情報D6と、予め内部メモリに格納されたIDリストとを照合し、当該IDリスト中にID情報D6と一致する情報があるか否かを判定する。
【0174】
ここで否定結果が得られると、このことは会社側で支給したカード装置3ではない偽造等の装置であることを表わしており、このとき認証処理部60は、次のステップSP36に移って認証処理を終了する。
【0175】
これに対して肯定結果が得られると、このことは会社側で支給したカード装置3であることを表わしており、このとき認証処理部60は、次のステップSP34へ移る。
【0176】
ステップSP34において認証処理部60は、ステップSP32で抽出した組織情報D5と、予め内部メモリに登録された登録者組織情報とを照合し、当該組織情報D5と一致する登録者組織情報があるか否かを判定する。
【0177】
ここで否定結果が得られると、このことはカード装置3を有する利用者が会社関係者ではないことを表しており、このとき認証処理部60は、次のステップSP36へ移って認証処理を終了する。
【0178】
これに対して肯定結果が得られると、このことはカード装置3を有する利用者が会社関係者である可能性が高いことを表しており、このとき認証処理部60は、次の歩行照合処理ルーチンSRT13へ移る。
【0179】
図18に示すように、認証処理部60は、ステップSP41において図19に示すように、ステップSP32で抽出した歩行情報D7における細分区間CSU1の積分値CPと、予め内部メモリに登録された例えば3人分の登録者歩行情報のうち、当該細分区間CSU1に対応する3人分の登録パラメータ群GR1a〜GR1cの各重心位置とのマハラノビス距離を求める。
【0180】
また認証処理部60は、残りの各細分区間CSU2〜CSU21の積分値についても同様にしてマハラノビス距離を求め、次のステップSP42へ移る。
【0181】
ステップSP42において認証処理部60は、ステップSP41で細分区間CSU1〜CSU21ごとに求めたマハラノビス距離を登録者毎に合計し、当該合計した登録者毎のマハラノビス距離(以下、これを合計マハラノビス距離と呼ぶ)に基づいて、カード装置3を有する利用者が登録者本人である可能性がどの程度であるかを表す登録者識別率をそれぞれ算出し、次のステップSP43へ移る。
【0182】
実際上、認証処理部60は、合計マハラノビス距離が小さいほど高い登録者識別率を算出し、これに対して合計マハラノビス距離が大きいほど低い登録者識別率を算出するようになされている。
【0183】
ステップSP43て認証処理部60は、ステップSP42で算出された複数の登録者識別率のいずれかが90%以上であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは利用者の1歩と、内部メモリに既に登録された登録者の1歩との一致率が悪い、即ち利用者が登録者本人ではないことを表しており、このとき認証処理部60は、利用者が登録者ではないと識別し、次のステップSP36へ移って認証処理を終了する。
【0184】
これに対して肯定結果が得られると、このことは利用者が登録者本人であることを表しており、このとき認証処理部60は、利用者が会社関係者であると認識し、次のステップSP35(図17)へ移る。
【0185】
ステップSP35において認証処理部60は、入出用通路部4の出口扉5(図6)を開放した後、次のステップSP36へ移って認証処理を終了する。
【0186】
このように認証処理部60は、ID情報D6に基づいてカード装置3自体の識別性を判定するのみならず、組織情報D5(生体組織パターン)や歩行情報D7(歩行パターン)に基づいて利用者の識別性をも判定することにより、当該情報D5〜D7に対する暗号化処理等の特別な処理をカード装置3側で施すこともなくカード装置3と利用者との関係を確実に識別することができ、従って、カード装置3を盗用した第三者があたかも利用者(会社関係者)に成り代わって入出用通路部4を通過することさえも規制し得るようになされている。
【0187】
(2−4)近接場通信における補助手段
かかる構成に加えて認証システム1においては、図20に示すように、入出用通路部4の床面(以下、これを経路床面と呼ぶ)Y1をアース(以下、これを建物床面と呼ぶ)Y2へ接地せずに、当該建物床面Y2から所定の空間dx(空隙)だけ隔てた状態で、経路床面Y1を設けるようになされている。
【0188】
この場合、経路床面Y1と建物床面Y2との間における空間dxの分だけ利用者の足と建物床面Y2との間の静電容量を、当該利用者と側面電極7との間の静電容量よりも小さくすることができ、当該利用者足元から建物床面Y2への情報伝送準静電界DSE(歩行準静電界HSE)の漏洩を抑制し得るようになされている。
【0189】
これに加えて例えば建物床面Y2における鉄骨同士の接合面の隙間や、当該鉄骨の錆による電気的に不安定な状態から生じる放電ノイズ等、建物床面Y2の不整合により生じるノイズ(以下、これを環境ノイズと呼ぶ)KNが、経路床面Y1から利用者へ誘導されることをも回避し得るようになる。
【0190】
従って通信システムでは、利用者を帯電させた際に、当該帯電変化が瞬間的に利用者表面周囲に伝わってその周囲からほぼ等方向へ形成される情報伝送準静電界DSE(歩行準静電界HSE)の等電位面を、一段と安定した状態で形成させることができ、かくして、近接場通信の安定化を図り得るようになされている。
【0191】
このことは人体が理想的なダイポールアンテナとして機能した際の準静電界の等電位面を示す図21と、本実施の形態による実験結果を示す図22とを比較すれば視覚的にも分かる。
【0192】
さらに、通信システム1の認証装置2は、図23に示すように、検出電極52からFET11及びアンプ14を順次介して認証処理部60までにわたる経路の途中での信号の漏洩を抑制するようになされており、具体的には第1にFET11とは電気的に分離した状態で導体の筐体15を分離し、第2に当該受信経路における接地を認証処理部60だけにする。
【0193】
また認証装置2は、かかる漏洩を抑制する手段として、第3にFET11と接地との間における静電容量SC1を、当該FET11から認証処理部60を介して接地するまでの間における静電容量SC2に比して低減するようになされており、例えばFET11と接地との間隔(高さ)を大きくする。
【0194】
これにより認証装置2は、検出電極52により検出された情報伝送準静電界DSE(歩行準静電界HSE)をFET11を介して認証処理部60にまで効率よく誘導することができ、かくして、利用者に形成される情報伝送準静電界DSEを感度良く受信することができるようになされている。
【0195】
(2−5)動作及び効果
以上の構成において、認証システム1においては、入出用通路部4(図6)を通過するために必須の動作である利用者の歩行運動の最中に、当該利用者近傍に形成される歩行準静電界HSEに基づいて、利用者固有パターンの生体識別情報としての組織情報D5及び歩行情報D7を検出電極52からFET11を介して検出するようにした。
【0196】
従って認証システム1では、利用者に何ら動作を規制することなく、暗号化等の特別な処理を施すこともなく利用者固有となる識別性の高い情報を得ることができる。
【0197】
また認証システム1では、かかる組織情報D5及び歩行情報D7 を同一の検出電極52から得るようにしたことより、その分小型化を図り得ると共に、人体に対する装着面積を低減する分だけ利用者への違和感を取り除くことができる。
【0198】
この状態において認証システム1は、カード装置3では利用者固有の組織情報D5及び歩行情報D7(ID情報D6)に応じて変調した準静電界を帯電誘導電極31から発生することにより利用者を帯電させ、当該利用者近傍へ等方に形成される秘匿性のある情報伝送準静電界DSEを介して送信する。
【0199】
その際、認証システム1においては、準静電界の性質と利用者(人体)の性質とを利用し、利用者固有である歩行のパターンのうち人体に共通する8HzピークPxを、送信側のカード装置3と受信側の認証装置2とが同時に検出しながら同一の処理を実行することによりマスキング時間幅MTZを決定するようにした。
【0200】
このように認証システム1においては、入出用通路部4(図7)を通過するために必須の動作である利用者の歩行運動の最中に、利用者の帯電又は歩行により発生する準静電界を用いて、送受信間で同期を取るのみならず、固有の組織情報D5及び歩行情報D7をも取得し、さらには利用者に発生する準静電界をアンテナとして組織情報D5及び歩行情報D7を送受信することにより、通信の際の効率性を格段に向上することができる。
【0201】
一方、認証システム1においては、カード装置3自体の識別性を判定するのみならず、利用者固有の組織情報D5(生体組織パターン)や歩行情報D7(歩行パターン)の識別性をも判定することにより、当該情報D5〜D7に対する暗号化処理等の特別な処理をカード装置3側で施すこともなくカード装置3と利用者との関係までをも確実に識別することができる。
【0202】
以上の構成によれば、準静電界を用いて、送受信間で同期を取るのみならず、固有の組織情報D5及び歩行情報D7をも取得し、さらには利用者に発生する準静電界をアンテナとして組織情報D5及び歩行情報D7を送受信することにより、準静電界を介して利用者近傍において方向性の制約もなく秘匿性を確保した状態で、かつ利用者に所定の動作を強要もせずに情報の送受信を実現することができると共に、人体固有の情報に基づいて装置と人体との関係をも識別することができ、かくして、準静電界を用いた通信の際における自由度を向上することができる。
【0203】
(3)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、人体固有の生体情報を生成する生体情報生成手段として、電界検出部10の検出電極12を介して供給される増幅歩行帯電変化信号A1〜Anに基づいて組織情報D5を生成する組織情報生成部21、又は当該検出電極12を介して供給される増幅歩行帯電変化信号S1に基づいて歩行情報D7を生成する歩行情報生成部45を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、指紋や細胞等のこの他種々の生体に関する生体情報を生成するこの他種々の生体情報生成手段を幅広く適用することができる。
【0204】
上述の実施の形態においては、歩行情報生成手段としての歩行情報生成部45により、人体の歩行運動に伴って当該人体に形成される歩行準静電界HSEの強度変位のうち8HzピークPxを検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば早歩き運動、階段の昇降運動又は足踏み運動等、要は、一方の足底面全体が着地し、かつ他方の爪先が離地した直後の状態を含むこの他種々の2足歩行運動に伴って当該人体に形成される電界変位のピークを検出するようにしても良い。
【0205】
この場合、右足(左足)が完全着地状態から、当該右足(左足)の爪先が離地した直後に至るまでの移動速度に応じて歩行波形における振幅のピークが可変するので、8Hzピークに代えて、検出対象とすべき2足歩行運動時における右足(左足)が完全着地状態から当該右足(左足)の爪先が離地した直後に至るまでの移動速度に応じた周波数帯域に出現する振幅のピークを指標として検知すれば、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0206】
さらにこの場合、マスキング時間決定部44では、検出対象とすべき2足歩行運動時における右足(左足)が完全着地状態から当該右足(左足)の爪先が離地した直後に至るまでの移動速度に応じた周波数帯域に対応させてピーク逓減予測期間Δt1及びピーク逓増予測期間Δt2を変更するようにすれば、一段と安定した状態で近接場通信することができる。
【0207】
また上述の実施の形態においては、送信装置としてのカード装置3を利用者の腕の所定位置に当接するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばピアス内に組み込む等、利用者への表皮であればこの他種々の位置へ当接することができる。
【0208】
さらに上述の実施の形態においては、カード装置3をカード形状とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の形状にすることができ、要は可搬型に構成されていれば良い。
【0209】
さらに上述の実施の形態においては、建物床面Y2(図20)から所定の空間dxだけ隔てて経路床面Y1を入出用通路部4に設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該空間dxに比誘電率の低い部材を充填するようにしても良い。
【0210】
この場合、経路床面Y1と建物床面Y2との間に充填される部材の比誘電率をεとし、当該経路床面Y1と建物床面Y2との間における隙間をdxとし、真空の誘電率をε0 とし、利用者の足裏面積をS とすると、利用者の足と建物床面Y2との間の静電容量CY2は、次式
【0211】
【数19】
Figure 0004158097
【0212】
の関係に近似するので、かかる関係を考慮してゲート床面Y1と接地面Y2との間における距離dxと、ゲート床面Y1と接地面Y2との間に充填する部材との比誘電率をεを選定すれば、利用者と検出電極52との間の静電容量よりも利用者の足と接地面Y2との間の静電容量CY2を確実に小さくすることができ、かくして、当該利用者足元から接地面Y2への情報伝送準静電界DSE(歩行準静電界HSE)の漏洩を一段と抑制して近接場通信の安定化をより一層図ることができる。
【0213】
さらに上述の実施の形態においては、利用者とアースとの電気的結合を抑制する結合抑制手段として、建物床面Y2(図20)から所定の空間dxだけ隔てて経路床面Y1を入出用通路部4に設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図24に示すように、経路床面Y1に敷設され、当該建物床面Y2に接地されたノイズ吸収接地ライン80を設けるようにしても良い。
【0214】
この場合、上述の実施の形態と同様に、建物床面Y2の不整合により生じるノイズ(以下、これを環境ノイズと呼ぶ)KNが、経路床面Y1から利用者へ誘導されることをも回避でき、近接場通信の安定化を図ることができる。また経路床面Y1と建物床面Y2との間に空間dxを設けると共にノイズ吸収接地ライン80を設けるようにすれば、近接場通信の安定化を一段と図ることができる。
【0215】
さらに上述の実施の形態においては、FET11(微小電極に接続されたFET)により利用者の帯電変化(情報伝送準静電界DSE又は歩行準静電界HSE)を増幅帯電変化信号S1(A1〜An)として検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば誘導電圧に誘起された電圧を測定する誘導電極型電界強度計や、誘導電極から得られる直流信号をチョッパ回路や振動容量等を用いて交流変換する誘導電極型変調増幅方式電界強度計や、電気光学効果を有する物質に電界を加えることにより当該物質内に生じる光伝播特性の変化を測定する電気光学効果型電界強度計、またカード装置3に限ってはエレクトロメータ、シャント抵抗型電界強度計又は集電型電界強度計等、この他種々の検出手段によって利用者の帯電変化を検出するようにしても良い。
【0216】
さらに上述の実施の形態においては、帯電誘導手段を変調回路24及び帯電誘導部30によって実現するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成により帯電誘導手段を実現するようにしても良い。
【0217】
さらに上述の実施の形態においては、復調手段を電界検出部50、LPF22及び認証部62によって実現するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成により復調手段を実現するようにしても良い。
【0218】
さらに上述の実施の形態においては、識別手段としての認証部62により、生体情報としての組織情報D5及び歩行情報D7に基づいて利用者を識別するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、組織情報D5又は歩行情報D7のいづれか一方に基づいて利用者を識別するようにしても良く、あるいは組織情報D5及び歩行情報D7に加えて例えば指紋等の生体情報も組み合わせることにより利用者を識別するようにしても良い。
【0219】
さらに上述の実施の形態においては、利用者の近傍に設けられた可搬型でなる送信装置としてのカード装置3と、所定の制御対象物に設けられた受信装置としての認証装置2とが1人の利用者を経由して近接場通信するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該複数人の利用者を経由して近接場通信するようにしても良い。このようにしても上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0220】
さらに上述の実施の形態においては、通信経路としての入出用通路部4への入出場の際に必要に応じて出口扉5を開放する通信システム1に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えば机の近傍を通信経路とし当該机に近づいた際に必要に応じて机の扉を開放する通信システム、パーソナルコンピュータの近傍を通信経路とし当該パーソナルコンピュータに近づいた際に必要に応じて電源をオン状態にする通信システム、所定の識別対象物を搬送する搬送路を通信経路とし所定の位置へ当該識別対象物が搬送された際に必要に応じて搬送路を切り換える通信システム等、要は、送信側では人体固有の生体情報に応じて当該人体を帯電させてアンテナとして作用させ、受信側では当該人体近傍に形成される準静電界から識別情報を取得して認証する認証システムであれば、この他種々の用途でなる認証システムに本発明を幅広く適用することができる。
【0221】
この場合、本発明においては、受信装置としての認証装置2を、例えばビデオテープレコーダ、テレビジョン装置、携帯電話機又はパーソナルコンピュータ等の電子機器や、医療機器、車、机……その他の制御を目的とする制御対象物又はその近傍に設けられたこの他種々の装置に幅広く適用することができる。この場合、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0222】
さらに上述の実施の形態においては、送信部20又は認証処理部60における各処理をプログラムによって実現する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該各処理の一部又は全部をそれぞれ専用の集積回路等のハードウェア手段によって実現するようにしても良い。
【0223】
さらに上述の実施の形態においては、予め内部メモリに格納されたプログラムに従って上述の送信処理(図12)又は認証処理(図17)を実行する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該プログラムが格納されたプログラム格納媒体を情報処理装置にインストールすることにより送信処理又は認証処理を実行するようにしても良い。
【0224】
この場合、送信処理又は認証処理を実行するためのプログラムを情報処理装置にインストールして実行可能な状態にするためのプログラム格納媒体としては、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc)等のパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に記憶される半導体メモリや磁気ディスク等で実現しても良い。またこれらプログラム格納媒体に解析プログラム記憶する手段として、ローカルエリアネットワークやインターネット、ディジタル衛星放送等の有線又は無線通信媒体を利用しても良く、ルータやモデム等の各種通信インターフェースを介して格納するようにしても良い。
【0225】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、準静電界を介して情報を送受信する送信装置と受信装置とによって構成される認証システムにおいて、 送信装置では、人体固有の生体情報を検出し、当該生体情報に応じて変調した準静電界を発生することにより人体を帯電させ、一方、受信装置では、人体の帯電状態の変化に基づいて生体情報を復調し、当該生体情報に基づいて人体を識別するようにしたことにより、利用者近傍において方向性の制約もなく秘匿性を確保した状態で、かつ利用者に所定の動作を強要もせずに情報の送受信を実現することができると共に、人体固有の情報に基づいて装置と人体との関係をも識別することができ、かくして、準静電界を用いた通信の際における自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】極座標系の説明に供する略線図である。
【図2】距離に対する各電界それぞれの相対的な強度の変化(1)を示すグラフである。
【図3】距離に対する各電界それぞれの相対的な強度の変化(2)を示すグラフである。
【図4】波長と距離との関係を示すグラフである。
【図5】人体の組織の説明に供する略線図である。
【図6】本発明を適用した認証システムの全体構成を示す略線図である。
【図7】カード装置の構成を示す略線的ブロック図である。
【図8】微小電極の構成を示す略線図である。
【図9】波形処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】歩行波形の説明に供する略線図である。
【図11】波形の切り出し及び分割の説明に供する略線図である。
【図12】送信処理手順を示すフローチャートである。
【図13】マスキング時間決定処理手順を示すフローチャートである。
【図14】歩行情報生成処理手順を示すフローチャートである。
【図15】認証装置の構成を示す略線的ブロック図である。
【図16】細分区間における積分値の説明に供するグラフである。
【図17】認証処理手順を示すフローチャートである。
【図18】歩行波形照合処理手順を示すフローチャートである。
【図19】マハラノビス距離の算出例の説明に供する略線図である。
【図20】認証装置の床面の説明に供する略線図である。
【図21】の等電位面を示す略線図である。
【図22】本実施の形態により形成された準静電界の等電位面を示す略線図である。
【図23】電気的漏洩の抑制の説明に供する略線図である。
【図24】ノイズ吸収接地ラインの構成を示す略線図である。
【符号の説明】
1……認証システム、2……認証装置、3……カード装置、10、50……電界検出部、12……検出電極、21……組織情報生成部、23、61……波形処理部、24……変調回路、42……ピーク検出部、43……ピーク予測部、44……マスキング時間決定部、45……歩行情報生成部、60……認証処理部、62……認証部。

Claims (11)

  1. 準静電界を介して情報を送受信する送信装置と受信装置とによって構成される認証システムにおいて、
    上記送信装置は、
    人体固有の生体情報を生成する生体情報生成手段と、
    上記生体情報に応じて変調した準静電界を発生することにより上記人体を帯電させる帯電誘導手段とを具え、
    上記受信装置は、
    上記人体の帯電状態の変化に基づいて上記生体情報を復調する復調手段と、
    上記生体情報に基づいて上記人体を識別する識別手段と
    を具えることを特徴とする認証システム。
  2. 上記生体情報生成手段は、
    上記人体の表皮に当接され、当該当接面における上記人体表面の電位変化を検出する検出電極と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記当接面に対向する上記人体の表皮下の組織パターンを表す組織情報を上記生体情報として生成する組織情報生成手段と
    を具えることを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
  3. 上記検出電極は、それぞれ電気的に独立した複数の微小電極からなり、
    上記組織情報生成手段は、各上記微小電極により検出された上記電位変化における相対電位差に基づいて上記組織情報を生成する
    ことを特徴とする請求項2に記載の認証システム。
  4. 上記生体情報生成手段は、
    上記人体の表皮に当接され、上記人体の2足歩行運動に伴う当該当接面における上記人体表面の電位変化を検出する検出電極と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記人体の歩行パターンを表す歩行情報を上記生体情報として生成する歩行情報生成手段と
    を具えることを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
  5. 上記歩行情報生成手段は、
    上記電位変化のうち、所定の周波数帯に出現する振幅のピークを指標として上記歩行情報を生成する
    ことを特徴とする請求項4に記載の認証システム。
  6. 上記生体情報生成手段は、
    上記人体の表皮に当接され、上記人体の2足歩行運動に伴う当該当接面における上記人体表面の電位変化を検出する検出電極と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記人体の歩行パターンを表す歩行情報を上記生体情報として生成する歩行情報生成手段と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記当接面に対向する上記人体の表皮下の組織パターンを表す組織情報を上記生体情報として生成する組織情報生成手段と
    を具えることを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
  7. 準静電界を介して情報を送受信する通信方法において、
    送信側では、
    人体固有の生体情報を生成する生体情報生成ステップと、
    上記生体情報に応じて変調した準静電界を発生することにより上記人体を帯電させる帯電誘導ステップとを具え、
    受信側では、
    上記人体の帯電状態の変化に基づいて上記生体情報を復調する復調ステップと、
    上記生体情報に基づいて上記人体を識別する識別ステップと
    を具えることを特徴とする認証方法。
  8. 準静電界を介して情報を送信する送信装置において、
    人体固有の生体情報を生成する生体情報生成手段と、
    上記生体情報に応じて変調した準静電界を発生することにより上記人体を帯電させる帯電誘導手段と
    を具えることを特徴とする送信装置。
  9. 上記生体情報生成手段は、
    上記人体の表皮に当接され、当該当接面における上記人体表面の電位変化を検出する検出電極と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記当接面に対向する上記人体の表皮下の組織パターンを表す組織情報を上記生体情報として生成する組織情報生成手段と
    を具えることを特徴とする請求項8に記載の送信装置。
  10. 上記生体情報生成手段は、
    上記人体の表皮に当接され、上記人体の2足歩行運動に伴う当該当接面における上記人体表面の電位変化を検出する検出電極と、
    上記検出用電極により検出された上記電位変化に基づいて、上記人体の歩行パターンを表す歩行情報を上記生体情報として生成する歩行情報生成手段と
    を具えることを特徴とする請求項8に記載の送信装置。
  11. 準静電界を介して情報を受信する受信装置において、
    人体固有の生体情報に応じて変調された準静電界により帯電させられた当該人体の帯電状態の変化に基づいて、上記生体情報を復調する復調手段と、
    上記生体情報に基づいて上記人体を識別する識別手段と
    を具えることを特徴とする受信装置。
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