JP4507058B2 - 距離検出システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は距離検出システムに関し、無線通信を行う端末間の距離を検出する距離検出システムに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、距離検出システムにおいては、無線通信を行う端末間の距離を検出する手法として、例えば電波(放射電界)が距離rに線形に反比例して減衰することを利用して、受信側の端末において受信した信号の電界強度に基づいて送信側の端末との間における距離を検出する第1の手法(例えば非特許文献1〜非特許文献3参照)や、当該端末間のクロックを常に正確に同期させておき、受信側の端末において送信側の端末から送信されるパルス信号やM系列信号の位相シフト(遅れ成分)に応じて距離を検出する第2の手法(例えば非特許文献4参照)を用いるようになされた距離検出システムが提案されている。
【0003】
【非特許文献1】
GIDIN F(Silicon Graphics.,CA),PANTIC−TANNER Z(San Francisco State Univ.,CA):Analysis of the Measurement Uncertainty with 1/R Extapolation of Radiated Emission Measurements on an Open Area Test Site(OATS).,IEEE Int Symp Electromagn Compat,OL.1998,NO.Vol.1;PAGE.137-140;1998
【0004】
【非特許文献2】
HASHIOTO H,YAMAZAKI M(Tokai Univ.,Kanagawa,JPN):M系列バーコードを指標とした距離センサ,J Adv Sci,Vol.12,NO.1/2;PAGE.144-145;2000年
【0005】
【非特許文献3】
渋谷昭範,中津川征士,梅比良正弘(NTT未来ねっと研),久保田周治(NTT先端技術研):正規化した最小2乗法による高精度位置検出の検討,情報処理学会研究報告,VOL.2001,NO.83(MBL-18 ITS-6);PAGE.9-14;2001年
【0006】
【非特許文献4】
小山慎二、島田寛三、芝伸之、安田明生(東京商船大):GPS測位計算プログラムについて,電子情報通信学会技術研究報告,VOL.101,NO.33(SANE2001 1-11);PAGE.39-44;2001年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところがかかる第1の手法を用いて距離を検出する距離検出システムにおいては、電波の地表面反射による距離損、周波数、偏波、発射体の地表面高や送受アンテナの形状や方向などの様々な要因によって、受信側の端末において受信する信号の電界強度が大きく左右されるため、距離に線形に反比例する関係が成り立たなくなる結果、当該距離の検出精度が悪くなってしまうという問題があった。
【0008】
一方、第2の手法を用いて距離を検出する距離検出システムにおいては、送信側及び受信側の端末におけるクロックを常に正確に同期させておくために、例えばGPS(Grobal Positionong System) を用いる等、極めて煩雑な制御や、クロックを同期させるための装置が必要となるため、システム全体として複雑な構成を要するという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で距離の検出精度を向上し得る距離検出システム、簡易な構成で距離の検出精度を向上させるための電界形成装置、電界形成方法、電界受信装置及び電界受信方法を提案しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明は、電界形成装置と電界受信装置とによって構成される距離検出システムであって、電界形成装置は、界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、電界発生源とされる電極に与える印加手段と、各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう信号の出力を調整する調整手段とを有し、電界形成装置又は電界受信装置のいずれか一方は、電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、電界発生源からの距離を検出する距離検出手段を有する。
【0011】
本発明は、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界を、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして形成するので、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。
【0012】
また本発明は、電界形成装置であって、界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、電界発生源とされる電極に与える印加手段と、各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう信号の出力を調整する調整手段とを有する。
【0013】
本発明は、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界を、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして形成するので、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。
【0014】
また本発明は、電界形成方法であって、界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、電界発生源とされる電極に与える印加ステップと、各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう信号の出力を調整する調整ステップとを有する。
【0015】
本発明は、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界を、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして形成するので、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。
【0016】
また本発明は、電界受信装置であって、電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となる状態で電界発生源から形成される準静電界を受信する受信手段と、受信手段により受信される準静電界の周波数に基づいて、電界発生源からの距離を検出する距離検出手段とを有する。
【0017】
本発明は、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界として、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして形成される準静電界を受信するので、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。
【0018】
また本発明は、電界受信方法であって、電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となる状態で電界発生源から形成される準静電界を受信する受信ステップと、受信ステップで受信される準静電界の周波数に基づいて、電界発生源からの距離を検出する距離検出ステップとを有する。
【0019】
本発明は、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界として、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして形成される準静電界を受信するので、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の概要
本発明は、準静電界を用いた近傍通信(以下、これを近接場通信と呼ぶ)により、情報を送受信する。以下、この準静電界の性質との関係において本発明の概要を説明する。
【0021】
(1−1)準静電界
一般に、電気双極子(ダイポールアンテナ)に電流を流した場合、当該ダイポールアンテナから発生される電界は、マックスウェルと呼ばれる電界に関する方程式(以下、これをマックスウェル方程式と呼ぶ)に従って、次式
【0022】
【数1】
Figure 0004507058
【0023】
として表すことができる。この(1)式において、「cosωt」は電荷の振動、「A」は振動する2この電荷の電荷量と、当該2この電荷の距離とを含めた定数(出力に相当する係数)、「θ」はダイポールアンテナの中心からの角度、「r」はダイポールアンテナの中心からの距離(単位は[m] )、「ε」は誘電率、「j」は虚数、「k」は波数(単位は[1/m])としてそれぞれ定義している。
【0024】
そして(1)式によって表される電界のうち、距離に線形に反比例する成分(以下、これを放射電界と呼ぶ)E1r、E1θは、次式
【0025】
【数2】
Figure 0004507058
【0026】
として表すことができ、また距離の2乗に反比例する成分(以下、これを誘導電磁界と呼ぶ)は、次式
【0027】
【数3】
Figure 0004507058
【0028】
として表すことができ、さらに距離の3乗に反比例する成分(以下、これを準静電界と呼ぶ)E2r、E2θは、次式
【0029】
【数4】
Figure 0004507058
【0030】
として表すことができる。
【0031】
ここで、マックスウェル方程式をダイポールアンテナに適用したものについて、放射電界、誘導電磁界及び準静電界それぞれの相対的な強度と、距離との関係をグラフ化すると図1に示すような結果となる。但し、図1では、周波数1〔MHz〕における各電界それぞれの相対的な強度を指数(指数尺度)に置き換えて定性的に示している。
【0032】
図1からも明らかなように、放射電界、誘導電磁界及び準静電界それぞれの相対的な強度が等しくなる距離(以下、これを強度境界距離と呼ぶ)が存在しており、当該強度境界距離よりも遠方では放射電界が支配的となり、これに対して強度境界距離よりも近傍では準静電界が支配的となっていることが分かる。
【0033】
この強度境界距離は、マックスウェル方程式の電界強度に関して導かれる式によれば、次式
【0034】
【数5】
Figure 0004507058
【0035】
を充足するときの距離rである。
【0036】
この(5)式における波数kは、光速をc(c=3 ×108 [m/s] )、周波数をfとすると、次式
【0037】
【数6】
Figure 0004507058
【0038】
に示す関係にあり、(5)式と(6)式とを整理すると、次式
【0039】
【数7】
Figure 0004507058
【0040】
となる。
【0041】
この(7)式によれば、強度境界距離rは、図2からも明らかなように、周波数fに応じて一義的に決まる。
【0042】
従って、図3に示すように、ある送信端末TXから複数の強度境界距離r1〜rnを設定した場合に、当該各強度境界距離r1〜rnに応じて(7)式を充足するように周波数f1〜fnを選定すれば、当該各周波数f1〜fnで振動する複数の準静電界(図中破線で表わしている)を支配的となる空間としてそれぞれ形成することができる。
【0043】
ここで、例えば送信端末TXにおいて2種類の周波数(5[MHz] 及び50[MHz] )で振動する電界を同じ出力の基で形成させた場合に、所定のレベル以上の電界強度を受信できる受信端末RXが当該電界内を移動したことを想定すると、図4に示すような結果となる。但し、図4では、強度境界距離に応じた放射電界、誘導電磁界及び準静電界それぞれの相対的な強度を指数(指数尺度)に置き換えて定性的に示している。
【0044】
すなわちこの図4において、5[MHz] の周波数では、受信端末RXが受信できる所定のレベル以上の電界強度まで準静電界が支配的となるが、50[MHz] の周波数では、1[m] を超えると完全に放射電界が支配的となってしまうことが視覚的に分かる。
【0045】
一方、50[MHz] の周波数における電界強度が5[MHz] の周波数における電界強度と同じになるように、当該50[MHz] の周波数に対する出力を調整すると、図5に示すように、5[MHz] 及び50[MHz] のいずれの周波数でも、受信端末RXが受信できる所定のレベル以上の電界強度まで準静電界が支配的となることが視覚的に分かる。
【0046】
従って送信端末TX(図3)においては、各強度境界距離r1〜rnに応じて(7)式を充足するように選定した周波数f1〜fnのうち、最も小さい周波数fn(4.8[MHz] )における電界強度と同じになるように他の周波数f1〜f(n-1)(47.7[MHz] 、23.9[MHz] 、15.9[MHz] ……)に対する出力を調整することにより、当該各周波数f1〜fnで振動する複数の準静電界を確実に支配的となる空間としてそれぞれ形成することができる。この場合、受信端末RXにおいては、受信した準静電界の周波数に基づいて、送信端末TXと受信端末RXとの間の距離を検出することが可能となる。
【0047】
そして、かかる出力を調整については、当該出力を調整するための係数(以下、これを出力調整係数と呼ぶ)をAiとして定義すると、周波数fiに対応する強度境界距離riにおけるθ方向成分の電界強度Eθ及びr方向成分の電界強度Erの絶対値Eiは、次式
【0048】
【数8】
Figure 0004507058
【0049】
のように表すことができることから、この(8)式に基づいて、各周波数fiにそれぞれ対応する強度境界距離riにおいて電界強度Eiが所定のレベルEとなるような出力調整係数Aiを、次式
【0050】
【数9】
Figure 0004507058
【0051】
のように求めることができる。よって、送信端末TX(図3)では、この(9)式を用いて、周波数f1〜f(n-1)(47.7[MHz] 、23.9[MHz] 、15.9[MHz] ……)に対する出力を調整することができる。
【0052】
このようにして複数の準静電界を確実に支配的となる空間としてそれぞれ形成した場合、周波数f1〜fnに対応する各準静電界の強度は、距離の3乗に反比例するため、放射電界や誘導電磁界に比して極めて明瞭に強度境界距離r1〜rnに反映される特徴を有する。
【0053】
この特徴に着目すると、図6に示すように、ある送信端末TXの近傍に所定のレベルE以上の電界強度でなる信号(以下、これを電界強度信号と呼ぶ)を受信できる受信端末RXが存在する場合、この受信端末RXは、受信する周波数f1〜f3の数が多いほど、送信端末TXから近い距離に存在することが図表からも分かる。従って、受信端末RXは、受信する周波数f1〜f3の数に応じて、当該受信した時点での送信端末TXからの距離を高精度に判定することができる。
【0054】
このように本発明では、送信側において、各強度境界距離r1〜rnに応じて(7)式を充足するように選定した周波数f1〜fnのうち、最も小さい周波数fnにおける電界強度と同じになるように他の周波数f1〜f(n-1)に対する出力を調整して複数の準静電界を確実に支配的となる空間としてそれぞれ形成しておき、受信側において受信する周波数f1〜f3の数に応じて、当該受信した時点での送信端末TXからの距離を判定する。
【0055】
(1−2)準静電界と人体
ところで、人体に放射電界や誘導電磁界を発生させようとするならば当該人体に電流を流す必要があるが、人体はインピーダンスが非常に高いので、当該人体に電流を効率的に流すことは物理的に困難であり、また生理的にも好ましくない。しかしながら静電気については全く様相が異なってくる。
【0056】
すなわち、日常我々が静電気を体感するという経験的事実からも示唆されるように、人体は非常に良く帯電する。また動作に応じた人体表面の帯電により準静電界が発生することもよく知られていることから、人体へ準静電界を発生させる場合には当該人体に通電する必要はなく帯電させればよい。
【0057】
つまり、人体では極めて少ない電荷の移動により帯電し、当該帯電変化が瞬間的に人体表面周囲に伝わってその周囲からほぼ等方向へ準静電界の等電位面として形成されると共に、準静電界が支配的となる空間内では放射電界や誘導電磁界の影響も少ないのでアンテナとして効率的に機能する。このことは本出願人による実験結果により既に確認されている。
【0058】
本発明では、送信側において、所定の情報によって変調した信号に応じて人体を帯電させることによって当該人体近傍の周囲へ等方に情報を有する準静電界を形成させるようにして情報を送信(以下、この送信手法を適宜人体アンテナ送信と呼ぶ)し、受信側において、当該情報を有する準静電界の強度変化を検出するようにして受信(以下、この受信手法を適宜人体アンテナ受信と呼ぶ)して復調することにより情報を取得する。
【0059】
(1−3)準静電界と人体の歩行運動
既に述べたように、人体の動作に応じて人体表面が帯電するが、人体の動作における主な1つである歩行と帯電との関係をもう少し詳細に述べる。
【0060】
すなわち、人体の歩行運動による人体表面の帯電に伴って形成される準静電界(以下、これを歩行準静電界と呼ぶ)の強度の変位については、路面と足底面との間における電荷の移動のみならず、路面に対する足底面の剥離面積(又は接触面積)の変化、及び、当該路面と足底面との距離変化も密接に関与している。
【0061】
いいかえれば、歩行運動による人体表面の帯電変化においては、当該歩行運動による足の軌跡に応じた当該足と路面との間における静電容量変化及び電荷の変化によるものであり、左右足相互の動きの組合わさった、個人固有のパターンを反映している。
【0062】
その一方で、右足(左足)の爪先が完全に路面から離れた瞬間時においては、歩行態様の特性上、当該歩行態様の差異に係わらず左足は(右足)は路面に完全に着いている状態となる。
【0063】
従って、かかる状態時には左右足相互間における帯電相互作用(干渉作用)が起こらず、当該状態時における歩行準静電界の強度の変位については最も大きい振幅のピークとして8±2[ Hz] の帯域内に特異的に出現する。
【0064】
本発明では、歩行運動による人体表面の帯電変化が特異的に出現する振幅のピーク(以下、これを8Hzピークと呼ぶ)を指標として人体の歩行速度を計測したり、当該8Hzピーク間に個人固有のパターンとして出現する強度変位に基づいて認証処理を行う。
【0065】
因みに、8Hzピークの詳細については、本出願人によって既に公開された特願2002−314920号(5頁[0024]〜12頁[0056])を参照されたい。
【0066】
以上のように、準静電界あるいは人体の性質を利用した本発明の概要を各項目ごとに分けて述べたが、以下、これら項目で述べた本発明を適用した一実施の形態について詳細に述べる。
【0067】
なお、以下の一実施の形態においては、自律分散型無線ネットワーク(いわゆるアドホックネットワーク)に関する問題点を解決するための1手法として有効となるものであると考える。
【0068】
(2)本発明の一実施の形態
(2−1)距離検出システム1の全体構成
図7において、1は全体として本実施の形態による距離検出システムを示し、固定型の無線通信装置(以下、これを固定局と呼ぶ)2と、可搬型の無線通信装置(以下、これを移動局と呼ぶ)3とによって構成される。
【0069】
この固定局2は、制御対象としてのパーソナルコンピュータ(以下、これをPCと呼ぶ)4に接続されている。一方、移動局3は、PC4を使用する人体(以下、これを利用者と呼ぶ)の例えば腕(着衣のポケット内や、所持する鞄の中等、要は利用者近傍であればよい)に配置されている。そして固定局2及び移動局3は、相互に近接場通信を行う。
【0070】
具体的に固定局2においては、例えば図8に示すように、移動局3との間で近接場通信を行うための距離として、当該固定局2から互いに異なる複数の強度境界距離r1〜rnを設定しており、これら距離r1〜rnに応じて(7)式を充足するように送信すべき信号の周波数f1〜fnを選定している。
【0071】
そして固定局2においては、図3〜図5について上述した場合と同様に、各信号の周波数f1〜fnのうち最も小さい周波数fnにおける電界強度Eと同じになるように、他の周波数f1〜f(n-1)の各信号に対する出力を(9)式を用いて調整することにより、当該各周波数f1〜fnで振動する複数の準静電界が確実に支配的となる空間としてそれぞれ形成するようになされている。
【0072】
例えば、固定局2は、図9(A)に示すような強度境界距離にそれぞれ対応させて周波数を選定しており、当該強度境界距離と、対応する周波数との関係において図9(B)に示すような強度を有する複数の準静電界を形成し得るようになされている。因みに、図9では、移動局3における受信感度として、準静電界を受信し得る最低強度と、放射電界を受信し得る最低強度との差が20[dB]であると仮定して、周波数を選定している。
【0073】
一方、移動局3は、複数の準静電界内に入ったことによって当該準静電界の周波数に応じて変化する利用者から準静電界の周波数を受信し、当該受信した準静電界の周波数に基づいて、図6について上述したようにして、固定局2までの距離(以下、これを送受間距離と呼ぶ)を検出する。このとき移動局3は、準静電界の周波数に応じて変化する利用者の帯電状態(強度の変化)に基づいて利用者の歩行速度(以下、これを利用者歩行速度と呼ぶ)を算出すると共に、所定の認証処理を実行する。
【0074】
そして移動局3においては、かかる認証処理の結果として、利用者が正規の利用者である結果を得たとき、予め内部メモリに記憶されたPC4のID及びパスワード(以下、これらを利用者IDと呼ぶ)と、利用者歩行速度と、送受間距離とを、現時点(帯電状態を検出した時点)での利用者の情報(以下、これを利用者情報と呼ぶ)として生成し、当該利用者情報を人体アンテナ送信する。
【0075】
この場合、固定局2は、移動局3から人体アンテナ送信された利用者情報を人体アンテナ受信した後に復調することにより取得し、当該取得した利用者情報に基づいて移動局2の移動状態を推定し、当該推定結果に基づいてPC4を制御する。
【0076】
このようにして距離検出システム1においては、PC4に接近する使用者の移動局3と、固定局2との間で利用者情報を相互に近接場通信し、当該移動局3(利用者)がPC4に到達するまでにPC4を起動した後、必要に応じてログインするようになされている。
【0077】
(2−2)固定局2の構成
図10に示すように、固定局2は、通信用電極10、送受切替スイッチ11、送信部20、受信部30及び制御部40によって構成される。
【0078】
送信部20は、それぞれ独立して動作する複数の送信処理部21A〜21Nを有し、当該送信処理部21A〜21Nには複数の発信機22A〜22Nが設けられている。
【0079】
この場合、予め設定された複数の強度境界距離r1〜rn にそれぞれ対応させて、(7)式を充足する周波数f1〜fnでなる搬送波信号CAa〜CAnを発生する発信機22A〜22Nが選定されている。
【0080】
送信処理部21A〜21Nは、搬送波信号CAa〜CAnを変調回路23A〜23Nを介して標識情報に応じて周波数変調した後に出力調整部24A〜24Nを介して出力調整し、当該調整結果を標識波信号MKa〜MKnとして選択スイッチ25A〜25Nを介して合成器26に送出する。
【0081】
この場合、最も小さい周波数fnでなる搬送波信号CAnに対応する出力調整部24N以外の出力調整部24A〜24(N−1)は、当該周波数fnにおける電界強度と同じになるように、搬送波信号CAa〜CA(n−1)に対する出力を(9)式に従って出力調整するようになされている。
【0082】
合成器26は、標識波信号MKa〜MKnを合成し、当該合成結果を合成標識波信号MKとして送受切替スイッチ11を介して通信用電極10に印加する。この結果、通信用電極10を介して、複数の周波数f1〜fnに応じて振動する複数の準静電界(図8)が形成される。
【0083】
このようにして送信部20においては、各標識波信号MKa〜MKnにそれぞれ対応する周波数f1〜fnで振動する複数の準静電界を確実に支配的となる空間としてそれぞれ形成する。これにより移動局3では、固定局2からの距離(即ち当該移動局3の存在位置)に応じた周波数fで振動する準静電界を受信することができるようになされている。
【0084】
受信部30は、かかる各準静電界内に利用者が入った結果、移動局3(3a〜3n)によって利用者近傍に形成される準静電界の強度変位を通信用電極10、送受切替スイッチ11及びFET31のゲートを順次介して検出(人体アンテナ受信)し、これをアンプ32を介して増幅した後に復調回路33を介して復調し、この結果得られる利用者情報D1(D1a〜D1n)を制御部40に送出する。
【0085】
制御部40は、図示しないCPU(Central Processing Unit) 、ワークメモリ及び情報格納用メモリを有し、当該CPUの制御の基、情報格納用メモリに記憶された所定の制御プログラムをワークメモリに読み出して制御処理を実行する。この情報格納用メモリには、制御プログラム以外にも各種情報が格納されている。
【0086】
ここで、この制御部40における制御処理の内容を機能的に分類すると、図11に示すように、受信部30から与えられる利用者情報D1を検出する受信データ解析部41と、受信データ解析部41により検出された利用者情報D1に基づいて送信部20の使用周波数(即ち送信部20から出力する標識波信号MKa〜MKnの周波数f1〜fnを決定する周波数決定部42と、当該利用者情報D1に基づいて移動局3の移動状態を算出する移動状態算出部43と、移動状態算出部43の算出結果に基づいてPC4を制御するPC制御部44とに分けることができる。以下、これら受信データ解析部41、周波数選択部42、移動状態算出部43及びPC制御部44の処理について説明する。
【0087】
(2−2−1)受信データ解析部41の処理
受信データ解析部41は、受信部30から与えられる利用者情報(利用者ID、利用者歩行速度及び送受間距離)D1を所定周期で検出するようになされており、当該検出結果が単数であった場合(即ち固定局2によって形成された複数の準静電界中に一台の移動局3のみ存在する場合)には、当該検出した利用者情報D1をそのまま周波数決定部42及び移動状態算出部43に送出する。
【0088】
これに対して受信データ解析部41は、検出結果が複数であった場合(即ち固定局2によって形成された複数の準静電界中に複数の移動局3a〜3nが存在する場合)には、当該検出した複数の利用者情報D1a〜D1nそれぞれの送受間距離を比較することにより、最小値の送受信距離を示す利用者情報D1(D1a、D1b、……、又はD1n)を、固定局2に最も近い移動局3から人体アンテナ送信された利用者情報D1として特定し、これを周波数決定部42及び移動状態算出部43に送出する。
【0089】
この場合、受信データ解析部41は、固定局2からの強度境界距離r1〜rnに応じて一義的な関係にある周波数f1〜fnのうち、移動局3の存在する位置で受信された周波数fに基づく送受間距離を比較対象としているため、当該送受信距離を比較する簡易な処理で、固定局2に最も近い移動局3から人体アンテナ送信された利用者情報D1を精度良く特定することができるようになされている。
【0090】
(2−2−2)周波数選択部42の処理
周波数選択部42は、強度境界距離r1〜rnと、周波数f1〜fnとを対応付けたテーブル(以下、これを周波数距離変換テーブルと呼ぶ)として情報格納用メモリに予め格納しており、当該周波数距離変換テーブルと、受信データ解析部41から与えられる利用者情報D1の送受間距離とに基づいて使用周波数を選択する。
【0091】
具体的に周波数選択部42は、図6に示した図表と同様に、利用者情報D1の送受間距離をdとすると、次式
【0092】
【数10】
Figure 0004507058
【0093】
となるk(k=2、3、……、n)を求め、周波数f1〜fkを選択する。
【0094】
そして周波数選択部42は、上述のようにして選択した例えば周波数f1〜f3に対応する例えば標識波信号MK1〜MKcだけを出力させるための出力制御データD2を生成し、これを送信部20に送出する。
【0095】
この場合、送信部20では、出力制御データD2により、標識波信号MK1〜MKcに対応する選択スイッチ25A〜25C以外の選択スイッチ25D〜25Nが開放され、この結果、標識波信号MK1〜MKcにそれぞれ対応する周波数f1〜f3で振動する各準静電界だけが形成されることとなる。
【0096】
このようにして周波数選択部42においては、利用者情報D1の送受間距離(即ち移動局2の存在位置)に基づいて送信部20から出力すべき標識波信号MKa〜MKnの周波数f1〜fnを選択することができるようになされている。
【0097】
これにより周波数選択部42は、移動局2の存在位置に応じて適宜不必要な周波数で振動する準静電界の伝搬を回避できるため、当該固定局における電力消費を低減できると共に、利用者に対して不必要な電力の印加を抑制できるようになされている。
【0098】
この実施の形態の場合では、周波数選択部42は、(10)式に基づいて選択した周波数f1〜fkに代えて、利用者情報D1の送受間距離(即ち移動局2の存在位置)よりも遠い距離を含むように、周波数f1〜f(k+1)を選択するようになされている。
【0099】
これにより周波数選択部42は、固定局2から遠ざかる方向への利用者(移動局3)の急な移動によって通信が途絶えてしまうという事態を回避することができるようになされている。
【0100】
(2−2−3)移動状態算出部43の処理
移動状態算出部43は、受信データ解析部41から利用者情報D1を受けると、当該受けた時点の時刻を時刻情報として生成し、これを対応する利用者情報D1と共に情報格納用メモリに記憶又は更新する。
【0101】
このとき移動状態算出部43は、利用者情報D1の送受間距離及び利用者歩行速度に基づいて、固定局2を中心とした場合における移動局3の速度(以下、これを接近速度と呼ぶ)Va[cm/s]と、利用者歩行速度のベクトルと接近速度のベクトルとがなす角度(以下、これを移動角度と呼ぶ)ψとを移動状態として算出する。
【0102】
具体的に移動状態算出部43は、まず、接近速度Vaについて、利用者情報D1を受けた現時刻をNt、当該利用者情報D1の送受間距離をNd、情報格納用メモリに記憶された過去の利用者情報D1を受けた時点の時刻をPt、当該過去の利用者情報D1の送受信間距離をPd、利用者情報D1の利用者IDをIDz(但し、z=1、2、……、n)とすると、次式
【0103】
【数11】
Figure 0004507058
【0104】
のように、ある移動局3の単位時間における距離変化に従って算出する。
【0105】
この接近速度Vaは、プラスとして得られた場合には、移動局3が固定局2に接近していることを表しており、これに対してマイナスとして得られた場合には、移動局3が固定局2から接近していない(離隔している)ことを表している。
【0106】
次いで移動状態算出部43は、移動角度ψについて、コサインの逆関数をarccosとし、利用者情報D1に示される利用者歩行速度をVwalkとすると、次式
【0107】
【数12】
Figure 0004507058
【0108】
に従って算出する。
【0109】
この移動角度ψは、利用者歩行速度Vwalkと、接近速度Vaとのベクトルがなす角度であるから、図12に示すように、「0°」に近いほど、移動局3が固定局2に対して直線的に移動していることを表している。
【0110】
このようにして移動状態算出部43は、受信データ解析部41から利用者情報D1を受けるごとに、固定局2に対する移動局3の接近速度Vaと、移動局3と固定局2との間を結ぶ直線を基準とした移動局3の移動角度ψとを移動局3の移動状態として算出し、当該算出結果を移動状態情報D3として利用者情報D1と共にPC制御部44に送出する。
【0111】
(2−2−4)PC制御部44の処理
PC制御部44は、移動状態算出部43から与えられる利用者情報D1及び移動状態情報D3に基づいてPC4を制御する。具体的にPC制御部44は、移動状態情報D2の接近速度Vaがマイナスであった場合には、移動局3が固定局2から離隔しているため、所定の制御データD4を介してPC4を停止させる。
【0112】
これに対してPC制御部44は、移動状態情報D2の接近速度Vaがプラスであった場合、移動局3(利用者)が停滞しているとする所定の閾値(以下、これを閾速度と呼ぶ)よりも接近速度Vaが大きく、かつ、単に横切っているだけとする所定の角度(以下、これを閾角度と呼ぶ)よりも移動状態情報D3の移動角度ψが小さければ移動局3が固定局2に接近しているため、制御データD4を介してPC4を起動させる。
【0113】
このときPC制御部44は、利用者情報D1の送受間距離が例えば固定局2から30[cm]等、当該固定局2に到達する直前となる所定の距離(以下、これを閾距離と呼ぶ)以内であった場合には、当該利用者情報D1の利用者IDを用いてPC4にログインする。
【0114】
このようにしてPC制御部44は、移動状態算出部43から利用者情報D1及び移動状態情報D3が与えられるごとに、当該利用者情報D1及び移動状態情報D3に基づいてPC4を制御することにより、利用者が接近又は離隔するだけで自動的にPC4を起動、停止及びログインをすることができるようになされている。
【0115】
ここで、図13において、従来の手動によるPC4の制御と、本発明の自動によるPC4の制御との時間差を示す。図13からも明らかなように、本発明では、固定局2に対する利用者の存在位置に応じてPC4を自動的に制御することができる分だけ、PC4を起動及びログインして操作可能になるまでの時間を従来に比して大幅に短縮することができる。
【0116】
(2−2−5)制御処理手順
実際上、制御部40は、図14に示す制御処理手順RT1に従って上述のような各種処理を実行する。
【0117】
すなわち制御部40は、例えば固定局2の電源が投入されると、制御処理手順RT1をステップSP0において開始し、続くステップSP1において利用者情報D1を受信するまで待ち受ける。
【0118】
ここで肯定結果が得られると、このことは通信用電極10を介して形成される複数の準静電界内にに移動局3(利用者)が存在することを表しており、このとき制御部40は、続くステップSP2に移る。
【0119】
ステップSP2において、制御部40は、複数の利用者情報D1a〜D1nを受信したか否かを判定し、否定結果を得た場合にはステップSP5に移り、これに対して肯定結果を得た場合にはステップSP3に移る。
【0120】
ステップSP3において制御部40は、複数の利用者情報D1a〜D1nそれぞれの送受間距離を比較することにより、最小値の送受信距離を示す利用者情報D1(D1a、D1b、……、又はD1n)を、固定局2に最も近い移動局3から人体アンテナ送信された利用者情報D1として特定し、続くステップSP4に移る。
【0121】
ステップSP4において制御部40は、ステップSP1で受信し又はステップSP3で特定した利用者情報D1の送受間距離を用いて、上述の(10)式に基づいて使用すべき周波数f1〜fkを選択し、当該選択した周波数f1〜fkに対応する準静電界だけを形成させるようにして使用周波数を制限した後、続くステップSP5に移る。
【0122】
ステップSP5において制御部40は、利用者情報D1の送受間距離と、予め情報格納用メモリに記憶しておいた過去の利用者情報D1の送受間距離とを用いて、上述の(11)式に従って固定局2に対する移動局3の接近速度Vaを算出し、続くステップSP6に移る。
【0123】
ステップSP6において制御部40は、ステップSP5で算出した接近速度Vaと、利用者情報D1の利用者歩行速度とを用いて、上述の(12)式に従って移動局3と固定局2との間を結ぶ直線を基準とした移動局3の移動角度ψを算出した後、図15に示すPC制御処理ルーチンSRT1に移る。
【0124】
制御部40は、PC制御処理ルーチンSRT1をステップSP10において開始し、続くステップSP11において移動状態情報D2の接近速度Vaがマイナスであるか否かを判定する。
【0125】
ここで肯定結果が得られると、このことは移動局3(利用者)が固定局2から離隔していることを表しており、このとき制御部40は、ステップSP12に移って、PC4が起動されている場合には停止させた後、ステップSP7(図14)に移る。
【0126】
これに対してステップSP11において否定結果が得られると、制御部40は、ステップSP13に移って、ステップSP5(図14)で算出した接近速度Vaが閾速度よりも大きく、かつ、ステップSP6(図14)で算出した移動角度ψが閾角度よりも小さいか否かを判定する。
【0127】
ここで否定結果が得られると、このことは移動局3(利用者)が接近しているものの停滞しているにほぼ等しいことを表しており、このとき制御部40は、ステップSP15に移る。
【0128】
これに対して肯定結果が得られると、このことは移動局3(利用者)が固定局2に接近していることを表しており、このとき制御部40は、続くステップSP14に移って、PC4が停止している場合には起動させた後、続くステップSP15に移る。
【0129】
ステップSP15において制御部40は、ステップSP1で受信し又はステップSP3で特定した利用者情報D1の送受間距離が閾距離以内であった場合にのみ、続くステップSP16に移って、未だPC4にログインしていない場合に当該利用者情報D1の利用者IDを用いてPC4にログインした後、続くステップSP7(図14)に移る。
【0130】
ステップSP7において制御部40は、ステップSP1で受信し又はステップSP3で特定した利用者情報D1を情報格納用メモリに記憶又は更新し、ステップSP1に戻る。
【0131】
このようにして制御部40は、図14に示す制御処理手順RT1に従って各種処理を実行することができるようになされている。なお、制御部40は、図14に示す制御処理手順RT1における各種処理の順序を適宜変更することもできる。
(2−3)移動局の構成
図16に示すように、移動局3は、一対の通信用電極60A及び60B、歩行検出用電極61、送受切替スイッチ62、受信部70、歩行検出部80、送信部90及び制御部100によって構成される。
【0132】
受信部70においては、固定局2によって形成された複数の準静電界内に利用者が入ったことにより、当該当該準静電界内に存在する位置での1又は2以上の周波数fに応じて変化する利用者の帯電状態(強度の変化)を、通信用電極60A、送受切替スイッチ62及びFET71のゲートを順次介して受信し、当該受信結果を、アンプ72を介して増幅しリミッタ73を介して所定レベル以下の電界強度信号を除去した後に復調回路33を介して受信周波数信号S10として制御部100に送出する。
【0133】
この受信周波数信号S10は、固定局2によって形成された複数の準静電界内の最も外側に利用者が存在すれば周波数fn(図8)として表され、これに対して最も内側に存在すれば周波数f1〜fn(図8)として表される。
【0134】
一方、歩行検出部80においては、利用者と静電結合された歩行検出用電極61を介して、当該利用者の歩行運動による人体表面の帯電変化をFET81のゲートを介して検出し、これをアンプ82を介して増幅しローパスフィルタ83を介して高周波成分を除去し、この結果得られる歩行波形信号S11を制御部100に送出する。
【0135】
この歩行波形信号S12は、上述したように、利用者の歩行運動による足の軌跡に応じた当該足と路面との間における静電容量変化及び電荷の変化に応じて、当該利用者固有のパターンとして表される。
【0136】
送信部90においては、発信機91から発生される搬送波信号を、変調回路92を介して利用者情報D1に応じて周波数変調した後に出力制御部93を介して出力制御し、当該制御結果を送受切替スイッチ62及び通信用電極60Aを順次介して人体アンテナ送信する。
【0137】
このとき、送信部90においては、制御部100の制御に従って、受信周波数信号S10に基づいて検出した送受間距離まで準静電界が形成されるように出力制御するようになされている。
【0138】
制御部100は、図示しないCPU(Central Processing Unit) 、ワークメモリ及び情報格納用メモリを有し、当該CPUの制御の基、情報格納用メモリに記憶された所定の制御プログラムをワークメモリに読み出して波形処理を実行する。この情報格納用メモリには、制御プログラム以外にも各種情報が格納されている。
【0139】
ここで、この制御部100における制御処理の内容を機能的に分類すると、図17に示すように、受信部70から与えられる受信周波数信号S10に基づいて固定局2までの送受間距離に変換する距離検出部101と、歩行検出部80から与えられる歩行波形信号S12に基づいて利用者の歩行速度を推定する歩行速度推定部102と、当該歩行波形信号S12に基づいて利用者が正規の利用者であるか否かを識別する個人識別部103と、距離検出部101、歩行速度推定部102及び個人識別部103の各処理結果に基づいて利用者情報D1を生成する情報生成部104とに分けることができる。以下、これら距離検出部101、歩行速度推定部102、個人識別部103及び情報生成部104の処理について説明する。
【0140】
(2−3−1)距離検出部101の処理
距離検出部101は、周波数選択部42(図10)と同じ周波数距離変換テーブルを情報格納用メモリに予め格納しており、当該周波数選択用テーブルを参照することにより、図6に示した図表あるいは固定局2の場合と同様にして、受信部70から与えられる受信周波数信号S10に表される周波数f1〜fkに基づいて送受間距離を検出し、当該検出した送受間距離を情報生成部104に送出する。
【0141】
(2−3−2)歩行速度推定部102の処理
歩行速度推定部102は、歩行検出部80から与えられる歩行波形信号S12を所定時間分だけディジタル化し、当該ディジタル化された歩行波形を一時的に情報格納用メモリに記憶すると共に、図18に示すように、当該歩行波形のうち8±2[Hz]の帯域に出現する8Hzピークを順次検出し、当該検出結果に基づいて利用者の歩幅を推定する。
【0142】
ここで、歩行周波数と歩幅との関係をグラフ化した結果を図19に示す。図19からも明らかなように、任意の被験者A〜Cのいずれも、歩行周波数が高くなるほど(歩行速度が速くなるほど)歩幅が大きくなる関係にある。この図19において、太い波線で示す直線は、歩行周波数と歩幅との平均的な関係を表しており、次式
【0143】
【数13】
Figure 0004507058
【0144】
のように、傾きを「50」とし、縦軸切片「−20」として表すことにより、歩行周波数に基づいて精度よく歩幅を推定することができる。
【0145】
従って、歩行速度推定部102は、現時点で検出した8Hzピーク(以下、これを現8Hzピークと呼ぶ)をtp1とし、当該現8Hzピークtp1よりも1つだけ前に検出された8Hzピーク(以下、これを前8Hzピークと呼ぶ)をtp2とすると、次式
【0146】
【数14】
Figure 0004507058
【0147】
により歩幅STを推定することができる。
【0148】
そして(14)式において、αとして(13)式の傾きに相当する「50」を選定し、βとして(10)式の縦軸切片に相当する「−20」を選定することにより、歩行速度推定部102は、実際の歩幅に近似した歩幅STを推定することができるようになされている。
【0149】
次いで歩行速度推定部102は、(14)式によって推定した歩幅STを用いて、次式
【0150】
【数15】
Figure 0004507058
【0151】
に従って利用者歩行速度Vwalkを推定する。
【0152】
このようにして歩行速度推定部102は、歩行運動による人体表面の帯電変化として特異的に出現する8Hzピークを指標とすることにより、高精度に利用者歩行速度Vwalkを推定することができ、当該推定結果を情報生成部104に送出する。
【0153】
(2−3−3)個人識別部103の処理
個人識別部103は、情報格納用メモリに一時的に記憶された歩行波形のうち8±2[Hz]の帯域に出現する8Hzピークを全て検出した後、当該検出した8HzピークPx(図20)におけるピーク間隔PSのうち、予め情報格納用メモリに記憶されているピーク間隔の平均幅情報に比して所定の許容範囲外となるピーク間幅PSを除去する。
【0154】
この場合、個人識別部103は、歩行運動の態様に係わらず特異的に出現する8HzピークPxを指標としていることにより、定常歩行運動部分に相当するピーク間幅PSだけを的確に残し得るようになされている。
【0155】
次いで個人識別部103は、対象の8HzピークPxの中心位置から当該対象の8HzピークPxに対して前後の8HzピークPxの中間位置までを1歩波形THとして切り出す。
【0156】
この場合も、個人識別部103は、右足(左足)が完全に着いているときに出現する8HzピークPxを指標としていることにより、歩行運動における実際の1歩に相当する1歩波形THとして的確に切り出し得るようになされている。
【0157】
そして歩行情報生成部45は、右足(左足)が完全に着いているときに出現する1歩波形THを時間軸方向にほぼ等間隔でなる例えば21個の細分区間CSU1〜CSU21に分割し、当該分割した細分区間CSU1〜CSU21に係る振幅値(帯電変化強度の値)をそれぞれ積分及び正規化し、その結果得られる21つの積分値を、1歩波形THにおける部分毎の特徴(歩行パターン)を表わす歩行情報として生成する。
【0158】
ここで、個人識別部103は、この歩行情報と、例えば移動局3を利用者に支給する際に当該歩行情報を生成する場合と同様にして予め情報格納用メモリに登録しておいた登録歩行情報とを比較し、当該比較結果が所定の一致率以上であった場合には正規の利用者であると判定し、当該判定結果を情報生成部104に送出する。
【0159】
このようにして個人識別部103は、歩行運動による個人固有のパターンとして出現する1歩波形THにおける強度変位に基づいて認証処理を行うことにより、正規の利用者を精度良く識別することができるのみならず、移動局3を盗用した第三者があたかも利用者に成りすますといったことをも防止することができるようになされている。
【0160】
(2−3−4)情報生成部104の処理
情報生成部104は、個人識別部103における判別結果が正規の利用者であると判定された場合にのみ、距離検出部101によって変換された送受間距離と、歩行速度推定部102によって推定さ利用者歩行速度と、予め情報格納用メモリに格納された利用者IDとを利用者情報D1として生成し、これを変調回路92に送出する。
【0161】
(2−3−5)波形処理手順
実際上、制御部100は、図21に示す波形処理手順RT2に従って上述のような各種処理を実行する。
【0162】
すなわち制御部100は、例えば移動局3の電源が投入されると、波形処理手順RT2をステップSP20において開始し、続くステップSP21において受信部70から与えられる受信周波数信号S10を待ち受け、当該受信周波数信号S10を受けると、続くステップSP22に移る。
【0163】
ステップSP22において制御部100は、受信周波数信号S10に表される周波数fj〜fnを送受間距離に変換し、続く図22に示す歩行速度推定処理ルーチンSRT2に移る。
【0164】
制御部100は、歩行速度推定処理ルーチンSRT2をステップSP30において開始し、続くステップSP31において歩行検出部80から与えられる歩行波形信号S12を順次ディジタル化し、続くステップSP32において当該ディジタル化された歩行波形のうち8±2[Hz]の帯域に出現する現8Hzピークtp1を検出したか否かを判定する。
【0165】
ここで、肯定結果が得られると、制御部100は、続くステップSP33において、ステップSP32で検出した現8Hzピークtp1と、予め情報格納用メモリに一旦記憶しておいた前現8Hzピークtp2とを用いて、上述の(15)式に従って歩幅STを推定し、続くステップSP34に移る。
【0166】
ステップSP34において制御部100は、ステップSP33で推定した歩幅STと、現8Hzピークtp1及び前現8Hzピークtp2を用いて、上述の(16)式に従って利用者歩行速度Vwalkを推定し、続く図23に示す個人識別処理ルーチンSRT3に移る。
【0167】
制御部100は、個人識別処理ルーチンSRT3をステップSP40において開始し、続くステップSP41において情報格納用メモリに一時的に記憶された歩行波形のうち8±2[Hz]の帯域に出現する8Hzピークを全て検出し、当該検出した8HzピークPxにおけるピーク間隔PSのうち所定の許容範囲外となるピーク間幅PSを除去し、1歩波形TH(図20)を切り出した後、続くステップSP42に移る。
【0168】
ステップSP42において制御部100は、ステップSP41で切り出した1歩波形THを時間軸方向にほぼ等間隔でなる細分区間CSU1〜CSU21に分割し、当該分割した細分区間CSU1〜CSU21に係る振幅値(帯電変化強度の値)をそれぞれ積分及び正規化することにより、当該1歩波形THにおける部分毎の特徴(歩行パターン)を表わす歩行情報を生成した後、続くステップSP43に移る。
【0169】
ステップSP43において制御部100は、ステップSP42で生成した歩行情報と、予め情報格納用メモリに格納しておいた登録歩行情報とを比較することにより正規の利用者であるか否かを判定し、続くステップSP23(図21)に移る。
【0170】
ステップSP23において制御部100は、ステップSP43で正規の利用者である判定結果が得られた場合にのみ、ステップSP22で変換した送受間距離と、ステップSP34で推定した利用者歩行速度と、予め情報格納用メモリに格納された利用者IDとを利用者情報D1として生成し、続くステップSP24に移る。
【0171】
ステップSP24において制御部100は、ステップSP23で生成した利用者情報D1を変調回路92に送出すると共に、ステップSP22で判定した送受間距離まで準静電界が形成されるように出力制御部93を制御した後、ステップSP21に戻る。
【0172】
この場合、移動局3から固定局2を含むような準静電界が利用者を介して形成され、この結果、利用者情報D1が移動局3から人体アンテナ送信される。
【0173】
このようにして制御部100は、図21に示す波形処理手順RT2に従って各種処理を実行することができるようになされている。なお、制御部100は、図21に示す波形処理手順RT2における各種処理の順序を適宜変更することもできる。
【0174】
(3)作用及び効果
以上の構成において、この距離検出システム1の固定局2は、図6等に示したように、複数の周波数f1〜fnにそれぞれ対応する各強度境界距離r1〜rnにおいて一定の強度Eiが得られるように複数の準静電界を形成した。
【0175】
従って、固定局2では、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界を、複数の周波数にそれぞれ対応する各距離において所定の強度が得られるように形成しているため、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、移動局3において受信される準静電界の周波数に基づく距離の検出精度を向上させることができる。これに加えて、固定局2では、強度が距離の3乗に反比例する準静電界を形成しているため、第三者の移動局等による傍受を防止することもできる。
【0176】
また、この固定局2は、準静電界を形成する前に当該準静電界が支配的となるように出力を制御するようにしたことにより、当該出力を制御する分だけ省電力化を図ることができると共に、放射電界や誘導電磁界によって抑制されることなく、移動局3に対して準静電界の周波数を確実に受信させることができる。この結果、移動局3において受信される準静電界の周波数に基づく距離の検出精度をより向上させることができる。
【0177】
さらに、この固定局2は、準静電界における強度の検出結果に基づいて、各周波数f1〜fnのうち使用周波数を選択するようにしたことにより、不要な電力消費を抑えると共に、不要な電界の伝搬を防止することができる。
【0178】
さらに、この固定局2は、準静電界における強度の検出結果に応じて、PC4に対する制御内容として起動、停止又はログインを切り替えるようにしたことにより、当該検出位置に応じてPC4を自動的に制御することができると共に、自動化する分だけ操作を簡略化できるのみならず、PC4を起動及びログインして操作可能になるまでの時間を従来に比して大幅に短縮することができる。
【0179】
さらにこの場合、当該強度に基づく距離を高精度(高い分解能)で検出することができるため、検出位置に応じてPC4を自動的に制御する際の誤動作を低減することができる。
【0180】
以上の構成によれば、複数の周波数f1〜fnにそれぞれ対応する各強度境界距離r1〜rnにおいて一定の強度Eiが得られるように、極めて明瞭に距離が強度に反映される複数の準静電界を形成したことにより、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、当該強度に基づく距離を高精度で検出することができ、かくして、簡易な構成で距離の検出精度を向上することができる。
【0181】
(4)他の実施の形態
【0182】
なお上述の実施の形態においては、図9において示したように強度境界距離を基準として対応する周波数を選定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図24に示すように、周波数を基準として対応する強度境界距離を選定するようにしても良い。
【0183】
また上述の実施の形態においては、複数の周波数にそれぞれ対応する各距離において所定の強度が得られるように準静電界を形成する準静電界形成手段として、複数の周波数f1〜fnにそれぞれ対応する各強度境界距離r1〜rnにおいて一定の強度Eiが得られるように準静電界を形成する送信処理部21A〜21Nを適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、必ずしも一定の強度が得られるように準静電界を形成しなくても良く、また必ずしも準静電界が常に支配的となる空間として形成しなくても良く、要は各距離において基準(例えば移動局3が受信できる最低レベルの電界強度)となる感度以上となるような所定の強度が得られるように準静電界を形成する準静電界形成手段を適用することができる。
【0184】
さらに上述の実施の形態においては、移動対象に設けられた移動局3において受信された準静電界の周波数に基づいて距離を検出する距離検出手段としての距離検出部101(制御部100)を移動局3に設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、固定局2に設けるようにしても良い。この場合、移動局3では、受信結果(準静電界の周波数の数)を固定局2に人体アンテナ送信すれば、固定局2において準静電界の周波数に基づいて距離を検出することができる。
【0185】
さらに上述の実施の形態においては、複数の周波数にそれぞれ対応する各距離において所定の強度が得られるように形成された準静電界を受信する受信手段として、FET71を用いて受信する受信部70(図16)を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば誘導電圧に誘起された電圧をトランジスタやFETで構成されるものによって測定する誘導電極型電界強度計や、誘導電極から得られる直流信号をチョッパ回路や振動容量等を用いて交流変換する誘導電極型変調増幅方式電界強度計や、電気光学効果を有する物質に電界を加えることにより当該物質内に生じる光伝播特性の変化を測定する電気光学効果型電界強度計等、この他種々の受信手段を本発明に適用することができる。
【0186】
さらに上述の実施の形態においては、準静電界が支配的な空間となるように出力を制御する出力制御手段としての出力調整部24A〜24Nにより、最も小さい周波数fnにおける電界強度と同じになるように他の周波数f1〜f(n-1)に対する出力を(9)式に従って調整するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば2番目に小さい周波数fnにおける電界強度と同じになるように他の周波数f1〜f(n-1)対する出力を調整したり、(9)式以外の手法を用いずにフィルタ等を用いることによって出力を調整したり等、この他種々の手法により出力を調整するようにしても良い。
【0187】
さらに上述の実施の形態においては、移動対象に設けられた移動局3において受信された準静電界の周波数に基づいて使用すべき周波数を選択する選択手段として、移動局3において受信された準静電界の周波数の数に応じた送受間距離に基づいて使用周波数を選択する周波数選択部42(制御部100)を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該送受間距離に加えて利用者歩行速度も用いて使用周波数を選択するようにしても良い。
【0188】
この場合、具体的には周波数選択部42は、2回前の測定データ(距離の情報)を保持することができるようにしておく。この場合、時刻tm−2での、移動局3(利用者)と固定局2との間の距離をr(tm−2)とし、時刻tm−1での、移動体3(利用者)と固定局2との間の距離をr(tm−1)とし、時刻tm−1での、移動体3(利用者)と固定局2の方向での接近速度v(tm-1)は、次式
【0189】
【数16】
Figure 0004507058
【0190】
のように表すことができる。従って周波数選択部42は、時刻tmの距離(即ちこれから測定する距離)r(t)を、次式、
【0191】
【数17】
Figure 0004507058
【0192】
により予測し、当該予測された距離r(t)についてrk−1<r(t)<rとなるkを求め、使用周波数f〜fを選択する。このようにすれば、利用者(移動局3)が固定局2から即座に遠ざかった場合であっても通信を途絶え難くすることができる。
これに加えて、周波数選択部42は、(17)式により予測された距離r(t)についての予測が外れたときのことを考慮して、出力周波数としてのマージンを含めた周波数f〜fk+Mを選択するようにしても良く、この場合には周波数fk+M+1〜fは不要な周波数なので、出力を省くことができ電力消費量の低減することもできる。
【0193】
さらに上述の実施の形態においては、移動対象の速度を推定する速度推定手段としての歩行速度推定部102により、利用者の歩行速度を推定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、動物や搬送物等、接近速度の算出手法を移動対象に応じて変更することによりこの他種々の移動対象の速度を推定することができる。
【0194】
さらに上述の実施の形態においては、移動対象の速度を通知する通知手段としての送信部90により、人体アンテナ送信するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の通知手段を本発明に適用することができる。
【0195】
さらに上述の実施の形態においては、移動対象の移動状態に応じて、所定の制御対象に対する制御内容を切り替える制御手段として、利用者の移動状態に応じて、PC4に対する制御内容として起動、停止又はログインを切り替えるPC制御部4を本発明に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該制御内容としてインターネットに接続したり、メールサーバにログインする等、予め設定されたアプリケーションを立ち上げるような処理に切り替えるようにしても良く、あるいは、例えば制御対象が車で合った場合に、利用者の移動状態に応じて、車に対する制御内容としてエンジンをかける又はドアの鍵を開けるといった処理を切り替える等、要は、この他種々の制御対象に対する、当該制御対象に係る制御内容を利用者の移動状態に応じて切り替える制御手段を本発明に適用することができる。
【0196】
また、この場合、利用者の移動状態に応じて制御内容を切り替えるようにしたが、本発明は利用者に限らず、上述したように動物や搬送物等、この他種々の移動対象を適用することができる。
【0197】
さらに上述の実施の形態においては、固定局2と、当該固定局2に近づこうとする移動局3との間の距離を検出する距離検出システム1に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、移動局同士の距離検出システムにも本発明を適用することができる。またこの場合、固定局2に利用者に設けられた移動局2が近づくに応じてPC4を制御するような用途に本発明を用いたが、要は距離を検出(計測)するのであれば、この他種々の用途でなる距離検出システムに本発明を幅広く適用することができる。
【0198】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、極めて明瞭に距離が強度に反映される準静電界に関し、電界発生源を基準とするいずれの空間においても、該電界発生源から発生される合成電界のなかで準静電界の強度を受信側で受信可能なレベル以上の強度にまで優位なものとして準静電界を形成・受信するようにしたことにより、煩雑な制御や特別な装置を必要とすることなく、準静電界の受信周波数に基づく距離の検出精度を向上することができる。かくして、簡易な構成で距離の検出精度を向上し得る距離検出システム、電界形成装置、電界形成方法、電界受信装置及び電界受信方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】距離における各電界それぞれの相対的な強度の変化を示すグラフである。
【図2】強度境界距離と、周波数との関係を示すグラフである。
【図3】各周波数で振動する準静電界を示す略線図である。
【図4】強度境界距離に応じた各電界の相対的な強度(1)を示すグラフである。
【図5】強度境界距離に応じた各電界の相対的な強度(2)を示すグラフである。
【図6】受信状態と距離との関係を示す略線図及び図表である。
【図7】距離検出システムの全体構成を示す略線図である。
【図8】固定局によって形成された準静電界を示す略線図である。
【図9】強度境界距離と周波数との関係を示す図表である。
【図10】固定局の構成を示す略線的ブロック図である。
【図11】固定局における制御部の処理を示す機能ブロック図である。
【図12】移動角度の算出の説明に供する略線図である。
【図13】従来のPC制御と、本発明によるPC制御との比較の説明に供する略線図である。
【図14】固定局における制御処理手順を示すフローチャートである。
【図15】PC制御処理手順を示すフローチャートである。
【図16】移動局の構成を示す略線的ブロック図である。
【図17】移動局における制御部の処理を示す機能ブロック図である。
【図18】歩行に伴う帯電変化波形を示す略線図である。
【図19】歩行周波数と歩幅の関係を示すグラフである。
【図20】波形の切りだし及び分割の説明に供する略線図である。
【図21】移動局における制御処理手順を示すフローチャートである。
【図22】歩行速度推定処理手順を示すフローチャートである。
【図23】個人識別処理手順を示すフローチャートである。
【図24】他の実施の形態における強度境界距離と周波数との関係を示す図表である。
【符号の説明】
1……距離検出システム、2……固定局、3……移動局、4……PC、20、90……送信部、22A〜22N、91……発信機、24A〜24N……出力調整部、40、100……制御部、41……受信データ解析部、42……周波数選択部、43……移動状態算出部、44……PC制御部、70……受信部、80……歩行検出部、101……距離検出部、102……歩行速度推定部、103……個人識別部、104……情報生成部。

Claims (19)

  1. 電界形成装置と電界受信装置とによって構成される距離検出システムであって、
    上記電界形成装置は、
    電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と上記電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、上記電界発生源とされる電極に与える印加手段と、
    各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう上記信号の出力を調整する調整手段と
    を有し、
    上記電界形成装置又は上記電界受信装置のいずれか一方は、
    上記電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、上記電界発生源からの距離を検出する距離検出手段
    を有する距離検出システム。
  2. 上記電界受信装置は、移動対象に設けられ、
    上記移動対象の移動速度を推定する速度推定手段と、
    上記速度推定手段により推定される移動速度を通知する通知手段を有し、
    上記電界形成装置は、
    上記距離検出手段により検出される距離と、上記通知手段によって通知される移動速度とに基づいて上記移動対象の移動状態を推定する移動状態推定手段を有する
    請求項1に記載の距離検出システム。
  3. 上記電界形成装置は、所定の制御対象に接続され、
    上記移動状態推定手段により推定される移動状態に応じて上記制御対象に対する制御内容を切り替える制御手段
    を有する請求項2に記載の距離検出システム。
  4. 界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と上記電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、上記電界発生源とされる電極に与える印加手段と、
    各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう上記信号の出力を調整する調整手段と
    を有する電界形成装置。
  5. 上記印加手段は、
    電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して、放射電界、誘導電磁界及び準静電界の強度が等しくなる強度境界距離に対応する周波数よりも低い周波数として割り当てられる信号を、上記電界発生源とされる電極に与え
    上記調整手段は、
    各段階の距離に割り当てられる周波数に対応する上記強度境界距離における準静電界の強度が一定となるよう上記信号の出力を調整する
    請求項4に記載の電界形成装置。
  6. 移動対象に設けられた電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、上記印加手段で使用すべき周波数を選択する選択手段
    をさらに有する請求項4に記載の電界形成装置。
  7. 移動対象に設けられた電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、上記電界発生源からの距離を検出する距離検出手段
    をさらに有する請求項4に記載の電界形成装置。
  8. 上記電界受信装置において推定される移動対象の移動速度と、上記距離検出手段により検出される距離とに基づいて、上記移動対象の移動状態を推定する移動状態推定手段
    をさらに有する請求項7に記載の電界形成装置。
  9. 上記移動状態推定手段により推定される移動状態に応じて、所定の制御対象に対する制御内容を切り替える制御手段
    をさらに有する請求項8に記載の電界形成装置。
  10. 界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と上記電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数の信号を、上記電界発生源とされる電極に与える印加ステップと、
    各段階の距離に割り当てられる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となるよう上記信号の出力を調整する調整ステップと
    を有する電界形成方法。
  11. 上記印加ステップでは、
    電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して、放射電界、誘導電磁界及び準静電界の強度が等しくなる強度境界距離に対応する周波数よりも低い周波数として割り当てられる信号を、上記電界発生源とされる電極に与え
    上記調整ステップでは、
    各段階の距離に割り当てられる周波数に対応する上記強度境界距離における準静電界の強度が一定となるよう上記信号の出力を調整する
    請求項10に記載の電界形成方法。
  12. 移動対象に設けられた電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、上記印加ステップで使用すべき周波数を選択する選択ステップ
    をさらに有する請求項10に記載の電界形成方法。
  13. 移動対象に設けられた電界受信装置において受信される準静電界の周波数に基づいて、上記電界発生源からの距離を検出する距離検出ステップ
    をさらに有する請求項10に記載の電界形成方法。
  14. 上記電界受信装置において推定される移動対象の移動速度と、上記距離検出ステップで検出される距離とに基づいて、上記移動対象の移動状態を推定する移動状態推定ステップ
    をさらに有する請求項13に記載の電界形成方法。
  15. 上記移動状態推定ステップで推定される移動状態に応じて、所定の制御対象に対する制御内容を切り替える制御ステップ
    をさらに有する請求項14に記載の電界形成方法。
  16. 電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と上記電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となる状態で上記電界発生源から形成される準静電界を受信する受信手段と、
    上記受信手段により受信される準静電界の周波数に基づいて、上記電界発生源からの距離を検出する距離検出手段と
    を有する電界受信装置。
  17. 動速度を推定する速度推定手段と、
    上記速度推定手段により推定される移動速度を通知する通知手段と
    をさらに有する請求項16に記載の電界受信装置。
  18. 電界発生源から段階ごとに設定される距離に対して割り当てられ、当該距離と上記電界発生源との間誘導電磁界よりも準静電界が大きい強度とる周波数のうち、基準とすべき周波数以外の周波数にそれぞれ対応する各距離における準静電界の強度が、該基準とすべき周波数に対応する距離における準静電界の強度となる状態で上記電界発生源から形成される準静電界を受信する受信ステップと、
    上記受信ステップで受信される準静電界の周波数に基づいて、上記電界発生源からの距離を検出する距離検出ステップと
    を有する電界受信方法。
  19. 動速度を推定する速度推定ステップと、
    上記速度推定ステップで推定される移動速度を通知する通知ステップと
    をさらに有する請求項18に記載の電界受信方法。
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