以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、検査対象として表面にパターンが形成された基板すなわちウエハを検査する半導体検査装置として説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の検査装置及び検査方法の例であって、これらに限定されるわけではない。
図1及び図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは図1及び図2Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図14に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図15に図示)と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
カセットホルダ
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類およびファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット612により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
ミニエンバイロメント装置
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
主ハウジング
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
ローダハウジング
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
ステージ装置
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダー
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナから前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
ウエハの搬送
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、そのプリアライナによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナ25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、
(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アームによりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアームによりウエハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。
このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同じ処理することもできる。
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図7に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図7に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
電子光学装置
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図8に概略図示するような、一次光源光学系(以下単に「1次光学系」という。)72と、二次電子光学系(以下単に「2次光学系」という。)74とを備える光学系と、検出系76とが設けられている。1次光学系72は、光線を検査対象であるウエハWの表面に照射する光学系で、光線を放出する光源10000と、光線の角度を変更するミラー10001とを備えている。この実施形態では、光源から出射される光線10000Aの光軸は、検査対象のウエハWから放出される光電子の光軸(ウエハWの表面に垂直)に対して斜めになっている。
検出系76は、レンズ系741の結像面に配置された検出器761及び画像処理部763を備えている。
光源(光線光源)
本実施形態においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いている。DUVレーザ光源10000からは、DUVレーザ光が出射される。なお、UV、DUV、EUVの光及びレーザ、そしてX線及びX線レーザ等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が放出される光源であれば他の光源を用いても良い。
1次光学系
光源10000より出射される光線によって一次光線を形成し、ウエハW面上に矩形、又は円形(楕円であってもよい)ビームを照射する部分で1次光学系と呼ぶ。光源10000より出射される光線は、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次光線として照射される。
2次光学系
ウエハW上に照射された光線により発生する光電子による二次元の画像を、ミラー10001に形成された穴を通り抜け、静電レンズ(トランスファーレンズ)10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ、後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。この結像投影光学系を2次光学系74と呼ぶ。
このとき、ウエハにはマイナスのバイアス電圧が印加されている。静電レンズ724(レンズ724−1及び724−2)とウエハ間の電位差で試料面上から発生した光電子を加速させ、色収差を低減させる効果を持つ。この対物レンズ光学系724における引き出し電界は、3kV/mm〜10kV/mmであり、高い電界になっている。引き出し電界を増加させると、収差の低減効果があり、分解能が向上するという関係にある。一方で、引き出し電界を増加させると、電圧勾配が大きくなり放電が発生しやすくなる。したがって、引き出し電界は、適切な値を選んで用いることが重要である。レンズ724(CL)によって規定倍率に拡大された電子はレンズ(TL1)10006により収束され、ニューメリカルアパーチャ10008(NA)上にクロスオーバ(CO)を形成する。また、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009の組み合わせにより、倍率のズームを行うことが可能である。その後レンズ(PL)741で拡大投影し、検出器761におけるMCP(Micro Channel Plate)上に結像させる。本光学系ではTL1−TL2間にNAを配置し、これを最適化することで軸外収差低減が可能な光学系を構成している。
検出器
2次光学系で結像されるウエハからの光電子画像は、まずマイクロチャンネルプレート(MCP)で増幅されたのち、蛍光スクリーンにあたり光の像に変換される。MCPの原理としては直径6〜25μm、長さ0.24〜1.0mmという非常に細い導電性のガラスキャピラリを数百万本束ね、薄い板状に整形したもので、所定の電圧印加を行うことで、一本一本のキャピラリが、独立した電子増幅器として働き、全体として電子増幅器を形成する。
この検出器により光に変換された画像は、真空透過窓を介して大気中に置かれたFOP(Fiber Optical Plate)系でTDI(Time Delay integration)−CCD(Charge Coupled Device)上に1対1で投影される。また、他の方法としては蛍光材のコートされたFOPがTDIセンサ面に接続されて真空中にて電子/光変換された信号がTDIセンサに導入される場合がある。このほうが、大気中に置かれた場合よりも、透過率やMTF(Modulation Transfer Function)の効率がよい。例えば透過率およびMTFにおいて×5〜×10の高い値が得られる。このとき、検出器としては、上述したように、MCP+TDIを用いることがあるが、その代わりに、EB(Electron Bombardment)−TDIまたは、EB−CCDを用いてもよい。EB−TDIを用いると、試料表面から発生し、2次元像を形成している光電子が、直接EB−TDIセンサ面に入射するので、分解能の劣化がなく像信号の形成ができる。例えば、MCP+TDIであると、MCPで電子増幅した後、蛍光材やシンチレータ等により電子/光変換が行われ、その光像の情報がTDIセンサに届けられることになる。それに対して、EB−TDI、EB−CCDでは、電子/光変換、光増情報の伝達部品/損失がないので、像の劣化がなく、センサに信号が届くのである。例えば、MCP+TDIを用いたときは、EB−TDIやEB−CCDを用いたときと比べて、MTFやコントラストが1/2〜1/3になる。
なお、この実施形態において、対物レンズ系724は、10ないし50kVの高電圧が印加され、ウエハWは設置されているものとする。
写像投影方式の主な機能の関係とその全体像の説明
図9に本実施の形態の全体構成図を示す。但し、一部構成を省略図示している。
図9において、検査装置は鏡筒71、光源筒7000およびチャンバ32を有している。光源筒7000内部には、光源10000が設けられており、光源10000から照射される光線(一次光線)の光軸上に1次光学系72が配置される。また、チャンバ32の内部には、ステージ装置50が設置され、ステージ装置50上にはウエハWが載置される。
一方、鏡筒71の内部には、ウエハWから放出される二次ビームの光軸上に、カソードレンズ724(724−1及び724−2)、トランスファーレンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008、レンズ741および検出器761が配置される。なお、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。
一方、検出器761の出力は、コントロールユニット780に入力され、コントロールユニット780の出力は、CPU781に入力される。CPU781の制御信号は、光源制御ユニット71a、鏡筒制御ユニット71bおよびステージ駆動機構56に入力される。光源制御ユニット71aは、光源10000の電源制御を行い、鏡筒制御ユニット71bは、カソードレンズ724、レンズ10006及び10009、レンズ741のレンズ電圧制御と、アライナ(図示せず)の電圧制御(偏向量制御)を行う。
また、ステージ駆動機構56は、ステージの位置情報をCPU781に伝達する。さらに、光源筒7000、鏡筒71、チャンバ32は、真空排系(図示せず)と繋がっており、真空排気系のターボポンプにより排気されて、内部は真空状態を維持している。また、ターボポンプの下流側には、通常ドライポンプまたはロータリーポンプによる粗引き真空排気装置系が設置されている。
一次光線が試料に照射されると、ウエハWの光線照射面からは、二次ビームとして光電子が発生する。
二次ビームは、カソードレンズ724、TLレンズ群10006と10009、レンズ(PL)741を通って検出器に導かれ結像する。
ところで、カソードレンズ724は、3枚の電極で構成されている。一番下の電極は、試料W側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に、指向性が小さい二次電子)を引き込み、効率よくレンズ内に導くように設計されている。そのため、カソードレンズは両テレセントリックとなっていると効果的である。カソードレンズによって結像した二次ビームは、ミラー10001の穴を通過する。
二次ビームを、カソードレンズ724が1段のみで結像させると、レンズ作用が強くなり収差が発生しやすい。そこで、2段のダブレッドレンズ系にして、1回の結像をおこなわせる。この場合、その中間結像位置は、レンズ(TL1)10006とカソードレンズ724の間である。また、このとき上述したように、両テレセントリックにすると収差低減に大変効果的である。二次ビームは、カソードレンズ724およびレンズ(TL1)レンズ10006により、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008上に収束されクロスオーバを形成する。レンズ724とレンズ(TL1)10006との間で一回結像し、その後、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009によって中間倍率が決まり、レンズ(PL)741で拡大されて検出器761に結像される。つまり、この例では合計3回結像する。
また、レンズ10006、10009、レンズ741はすべて、ユニポテンシャルレンズまたはアインツェルレンズとよばれる回転軸対称型のレンズである。各レンズは、3枚電極の構成で、通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧で、レンズ作用を行わせて制御する。また、このレンズ構造に限らず、レンズ724の1段目または2段目、または両方にフォーカス調整用電極を所持する構造、またはダイナミックにおこなうフォーカス調整用電極を備え、4極である場合や5極である場合がある。また、PLレンズ741についても、フィールドレンズ機能を付加して、軸外収差低減を行い、かつ、倍率拡大を行うために、4極または5極とすることも有効である。
二次ビームは、2次光学系により拡大投影され、検出器761の検出面に結像する。検出器761は、電子を増幅するMCPと、電子を光に変換する蛍光板と、真空系と外部との中継および光学像を伝達させるためのレンズやその他の光学素子と、撮像素子(CCD等)とから構成される。二次ビームは、MCP検出面で結像し、増幅され、蛍光板によって電子は光信号に変換され、撮像素子によって光電信号に変換される。
コントロールユニット780は、検出器761からウエハWの画像信号を読み出し、CPU781に伝達する。CPU781は、画像信号からテンプレートマッチング等によってパターンの欠陥検査を実施する。また、ステージ装置50は、ステージ駆動機構56により、XY方向に移動可能となっている。CPU781は、ステージ装置50の位置を読み取り、ステージ駆動機構56に駆動制御信号を出力し、ステージ装置50を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。
また、拡大倍率の変更は、レンズ10006及び10009のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野全面に均一な像が得られる。なお、本実施形態では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するために、2次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、単位ピクセルあたり放出される電子量を一定になるように1次光学系のレンズ条件を設定する。
プレチャージユニット
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板すなわちウエハに電子線を照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、光線の照射により生じる光電子の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射する光やレーザの波長やエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると光電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施形態では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に光やレーザを照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予め検出対象であるウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
図10は、本発明によるプレチャージユニットの一実施の形態の要部を示す。
荷電粒子818は荷電粒子照射線源819からウエハWへ、バイアス電源820で設定された電圧で加速されて照射される。被検査領域815は領域816とともに既に前処理の荷電粒子照射を行った場所を示し、領域817は荷電粒子照射を行っている場所を示す。この図では試料基板Wを図の矢印の方向に走査しているが、往復走査を行う場合は、図示点線で示すように、荷電粒子線源819をもう一台一次電子線源の反対側に設置し、試料基板Wの走査方向に同期して交互に荷電粒子線源819、819をオン、オフすれば良い。この場合、荷電粒子のエネルギが高すぎると試料基板Wの絶縁部からの二次電子収率が1を超えてしまい、表面が正に帯電し、またそれ以下でも二次電子が生成すると現象が複雑となり、照射効果が減少するので、二次電子の生成が激減する100eV以下(理想的には0eV以上で30eV以下)のランディング電圧に設定するのが効果的である。
図11は本実施形態におけるプレチャージユニットの第2の実施形態を示す。本図は荷電粒子線として電子線825を照射するタイプの照射線源を示す。照射線源は、熱フィラメント821、引きだし電極824、シールドケース826、フィラメント電源827、電子引き出し電源823から構成されている。引き出し電極824は厚さ0.1mmで、幅0.2mm、長さ1.0mmのスリットが設けられており、直径0.1mmのフィラメント821との位置関係は3電極電子銃の形態となっている。シールドケース826には幅1mm長さ2mmのスリットが設けられており、引出し出極824とは距離1mmの間隔とし、両者のスリットセンターが一致する様に組み上げられている。フィラメントの材質はタングステン(W)で2Aの電流を流し、引き出し電圧20V、バイアス電圧−30Vで数μAの電子電流が得られている。
ここに示した例は一つの例であり、例えば、フィラメント材質はTa、Ir、Re等の高融点金属や、トリアコートW、酸化物陰極等が使用でき、その材質、線径、長さによりフィラメント電流が変わることは言うまでもない。また、その他の種類の電子銃でも電子線照射領域、電子電流、エネルギが適当な値に設定できるものであれば使用する事が可能である。
図12は第3の実施例を示す。本荷電粒子線としてイオン829を照射するタイプの照射線源を示す。本照射線源はフィラメント821、フィラメント電源822、放電電源827、陽極シールドケース826から構成されており、陽極828とシールドケース826には1mm×2mmの同じサイズのスリットが明けられており、1mm間隔で両スリットの中心が一致する様に組み立てられている。シールドケース826内にパイプ831を介してArガス830を1Pa程度導入し、熱フィラメント821によるアーク放電タイプで動作させる。バイアス電圧は正の値に設定する。
図13は第4の実施例であるプラズマ照射方式の場合を示す。構造は図20と同様である。動作も上記と同様、熱フィラメント821によるアーク放電タイプで動作させるが、バイアス電位を0Vにすることにより、ガス圧によりプラズマ832がスリットからしみだし、試料基板に照射される。プラズマ照射の場合は他の方法に比べて正負両方の電荷を持つ粒子の集団のため試料基板表面の正負どちらの表面電位も0に近づけることが可能となる。
ウエハWに接近して配置された荷電粒子照射部819は、図10ないし図13に示す構造のものであり、ウエハWの酸化膜や窒化膜の表面構造の違いや、異なる工程後毎のそれぞれのウエハWに対して適当な条件により、荷電粒子818を照射するようになっており、ウエハWに対して最適な照射条件で照射を行った後、すなわち、ウエハWの表面の電位を平滑化、もしくは荷電粒子により飽和させた後に、照射する光、またはレーザ、または、電子線711と、二次荷電粒子712により画像を形成し、欠陥を検出するようになっている。
以上説明した通り、本実施形態においては、荷電粒子照射による測定の直前処理によって、帯電による測定画像歪みが生じないか、生じてもわずかであるので欠陥を正しく測定できる。
また、従来では使用が問題となっていた照射量の光、レーザ、または1次電子線を、大量に照射してステージを走査できるので、光電子、二次放出電子、ミラー電子等の二次荷電粒子も多量に検出され、S/N比の良い検出信号が得られ、欠陥検出の信頼性が向上する。
また、S/N比が大きいので、より早くステージを走査しても良好な画像データを作製でき、検査のスループットを大きくすることができる。
電位印加機構
図14において、電位印加機構83は、ウエハから放出される二次荷電粒子の発生率や2次系の透過率が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次荷電粒子の発生を制御するものである。また、1次系に電子線の照射を行う場合には、この電位印加機構により、照射電子が当初有しているエネルギを減速し、ウエハに0〜500eV程度の照射電子エネルギとするための用途も果たす。また、試料であるウエハの基準電圧を形成することになり、2次系を移動する電子のエネルギを決定することになる。
電位印加機構83は、図14に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニタ833と、モニタ833に接続されたオペレータ834と、オペレータ834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831に信号を供給するようになっている。
上記電位印加機構は、検査対象であるウエハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
検査試料の電気的欠陥を検査する方法としては、本来電気的に絶縁されている部分とその部分が通電状態にある場合では、その部分の電圧が異なることを利用することもできる。
それは、まず、試料に事前に電荷を付与することで、本来電気的に絶縁されている部分の電圧と、本来電気的に絶縁されている部分であるが、何らかの原因で通電状態にある部分の電圧とに電圧差を生じさせ、その後本発明のビームを照射することで、電圧差があるデータを取得し、この取得データを解析して、通電状態となっていることを検出する。
照射ビームキャリブレーション機構
図15において、照射ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル54上でウエハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851、852及び標準試料853を備えている。標準試料853は、パターンのないベタ面の部位と格子パターンの基準ピッチが形成されている格子パターン等を含んだものが用いられる。ベタ面は、導電性材料が用いられる。これらの部位に光やレーザを照射したとき、ビームの照射領域を計測できるように、低倍にて照射した部位から生じる光電子像を撮像して、その階調プロファイルより求めることができる。導電性であると表面電位が安定しているので安定した測定ができる。また、格子パターンがあるとピッチが分かっているので例えば2μmピッチ、照射部位の光電子像のプロファイルから照射部の大きさとピッチの関係から照射部位のサイズと強度のプロファイルを測定することができる。また、ファラデーカップを用いることもできる。ファラデーカップを用いる場合では、孔のある部位に光又はレーザを照射して、得られた照射領域の光電子像を取得する。そして、ファラデーカップの孔のサイズが分かっているのでそのサイズと照射領域のサイズを比較することにより照射領域のサイズと座標を測定することができる。また、照射ビームに電子ビームを用いた時は、本来のファラデーカップの使用が可能である。ファラデーカップに電子線が入射すると電子ビームの電流測定ができるのである。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)、ファラデーカップ852は太いビーム用(約φ30μm)の2種類がある。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブル54をステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し、太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベルになるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
アライメント制御装置
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウエハを、光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためには、光またはレーザ照射による光電子像を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハライメントを行う時に、光電子像によりアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。この時、光電子の代わりに、照射ビームとして電子線を用いることも可能である。
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能に設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(1次光学系72及び2次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図16に示されるようになる。ウエハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871により広視野でウエハを視認してそのウエハ上の観察すべき位置を、CCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施形態ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向及びY軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点を撮像して画像を記憶したり又は検出器761を介してモニタ765に表示させたりする。この時、1次系として光またはレーザビームを照射して、光電子像を利用することができる。また、1次系として、電子線を用いた場合には、2次放出電子やミラー電子像を得て、アライメントに利用できる。
このようにして電子光学系による高倍率でウエハの観察点をモニタに表した表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターンのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
真空排気系
真空排気系は真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、試料室、ロードロック室を所定のシーケンスに従い真空排気を行う。各部においては必要な真空度を達成するように真空バルブが制御される。常時、真空度のモニタを行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブ等の緊急制御を行い、真空度の確保をする。真空ポンプとしては主排気にターボ分子ポンプを用いることができる。
粗引き用としてルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は10−3〜10−5Pa、好ましくはその1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
制御系
制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入カ等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラヘのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(2次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系ヘフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
制御コントローラは主に1次光学系及び2次電子光学系の制御(光源またはレーザ光源、ミラー、光学系レンズ、電子光学系レンズ、アライナ、ウィーンフィルタ用などの高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の照射ビーム密度が保持されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。また、倍率が変わったときに、検出器が取得するPx当たりの電子数(電子数/Px)が一定になるように照射ビーム密度を変化させる制御を行うと効果的である。一定の輝度で倍率が異なる電子像が得ることができる。
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダの移動(±0.05μm程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±0.1秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
電極の清掃
本発明の電子ビーム装置が作動すると、近接相互作用(表面近くでの粒子の帯電)により標的物質が浮遊して高圧領域に引きつけられるので、電子ビームの形成や偏向に使用される様々な電極には有機物質が堆積する。表面の帯電により徐々に堆積していく絶縁体は電子ビームの形成や偏向機構に悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁体の周期的な除去は絶縁体の堆積する領域の近傍の電極を利用して真空中で水素や酸素あるいはフッ素及びそれらを含む化合物HF、O2、H2O、CMFN等のプラズマを作り出し、空間内のプラズマ電位を電極面にスパッタが生じる電位(数kV、例えば20V〜5kV)に維持することで、有機物質のみ酸化、水素化、フッ素化により除去する。
ステージ装置の変形例
図17は、本発明による検出装置におけるステージ装置の一変形例を示す。ステージ93のY方向可動部95の上面には+Y方向と−Y方向(図17[B]で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板914が取り付けられ、X方向可動部96の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部950が構成されるようになっている。また、X方向可動部96の上面にも同様の仕切り板912が±X方向(図17[A]で左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台97の上面との間に常に絞り部951が形成されるようになっている。ステージ台97は、ハウジング98内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
このため、試料台94がどの位置に移動しても常に絞り部950と951が形成されるので、可動部95及び96の移動時にガイド面96aや97aからガスが放出されても、絞り部950と951によって放出ガスの移動が妨げられるため、荷電ビームが照射される試料近傍の空間924の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
ステージの可動部95の側面及び下面並びに可動部96の下面には、静圧軸受け90の周囲に、図18に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部950、951が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間913や915の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間913や915を、差動排気溝917や918で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間913や915の圧力を下げることができ、試料近傍924の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路91−1と91−2とが設けられている。排気通路はステージ台97及びハウジング98を貫通してハウジング98の外部に通じている。また、排気通路91−2はX方向可動部96に形成されX方向可動部96の下面に開口している。
また、仕切り板912及び914を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にしたりして、その移動方向の端部を、仕切り板914の場合はX方向可動部96に、仕切り板912の場合はハウジング98の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
図19において、ステージ装置の第2の変形例が示されている。
この実施態様では、鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲に、試料Wの上との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り916が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部924は仕切り916で仕切られており真空配管710で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部924との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間924の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り916と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部72周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μmないし数mm程度が適当である。なお、仕切り916内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
また、荷電ビーム照射装置では、試料Wに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り916の材質をセラミックスまたは、ポリイミドコート(10〜50μm程度)の導電材料等の表面が絶縁物で構成すれば、試料Wと仕切り916との間で放電を起こすことがなくなる。
なお、試料W(ウエハ)の周囲に配置したリング部材94−1は試料台94に固定された板状の調整部品であり、ウエハのような試料の端部に荷電ビームを照射する場合であっても、仕切り916の先端部全周に亘って微小隙間952が形成されるように、ウエハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Wのどの位置に荷電ビームが照射しても、仕切り916の先端部には常に一定の微小隙間952が形成され、鏡筒先端部周囲の空間924の圧力を安定に保つことができる。
図20において、別の変形例が示されている。
鏡筒71の荷電ビーム照射部72の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り919が設けられている。仕切り919は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝920が形成され、その円周溝からは上方に排気通路921が延びている。その排気通路は内部空間922を経由して真空配管923に繋がれている。仕切り919の下端は試料Wの上面との間に数十μmないし数mm程度の微小隙間を形成している。
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部すなわち荷電ビーム照射部72にガスが流入しようとしても、仕切り919が試料Wとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝920から真空配管923へ排気されるため、荷電ビーム照射部72の周囲の空間924へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部72の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
図21において、さらに他の変形例が示されている。
チャンバCと荷電ビーム照射部72の周囲には仕切り926が設けられ、荷電ビーム照射部72をチャンバCから隔てている。この仕切り926は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材929を介して冷凍機930に連結されており、−100℃ないし−200℃程度に冷却されている。部材927は冷却されている仕切り926と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材928はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り926の下端に形成され試料Wと仕切り926が放電することを防ぐ役割を持っている。
このような構成により、チャンバC内から荷電ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り926で流入を阻害される上、流入しても仕切り926の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部924の圧力を低く保つことができる。このように、凍結ガス補修器やクライオパネルを用いて真空排気すると、局所排気に大変有効である。
なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
図22において、さらに他の変形例が示されている。
ステージ93の両可動部には、図17に示したのと同様に仕切り板912、914が設けられており、試料台94が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間913とチャンバC内とが絞り950、951を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部72の周りには図19に示したのと同様の仕切り916が形成されており、チャンバC内と荷電ビーム照射部72のある空間924が絞り952を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間913に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間924の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射空間924の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り916に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り919としたり(図20参照)、図21に示したように冷凍機で冷却された仕切り926としたりすることによって、空間924を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
これらの実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、荷電ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する荷電ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(B)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して荷電ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって荷電ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(C)荷電ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、荷電ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(D)真空チャンバ内が、荷電ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に荷電ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、荷電ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(E)ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(F)ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(G)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(H)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(I)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
なお、図17−22のステージ装置を図1のステージ装置50に適用できることは明らかである。
図23ないし図25を参照して本発明によるXYステージの他の実施形態を説明する。なお、この明細書中で「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
図23において、XYステージの他の実施態様が示されている。
荷電ビームを試料に向かって照射する鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72が真空チャンバCを画成するハウジング98に取り付けられている。鏡筒71の直下には、XYステージ93のX方向(図23において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Wが配置されるようになっている。この試料Wは高精度なXYステージ93によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に荷電ビームを照射させることができる。
XYステージ93の台座906はハウジング98の底壁に固定され、Y方向(図23において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル95が台座906の上に載っている。Yテーブル95の両側面(図23において左右側面)には、台座906に載置された一対のY方向ガイド907a及び907bのYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け911a、909a、911b、909b、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル95はY方向ガイド907a、907bに対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座906とYテーブル95との間には、公知の構造のリニアモータ932が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管934によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて上記静圧軸受け909aないし911a及び909bないし911bに対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図23において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
Yテーブル上にはXテーブル96がX方向(図23において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル95上にはYテーブル用のY方向ガイド907a、907bと同じ構造の一対のX方向ガイド908a、908b(908aのみ図示)がXテーブル96を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル96の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け911a、909a、910a、911b、909b、910bと同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル95とXテーブル96との間には、公知の構造のリニアモータ933が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。そして、Xテーブル96にはフレキシブル配管931によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル96がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管919、920a、920bによって排気されている。配管920a、920bの入口側(真空チャンバ内側)は台座906を貫通してその上面において、XYステージ93から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲には、差動排気機構925が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても荷電ビーム照射空間930の圧力が十分低くなるようにしてある。すなわち、荷電ビーム照射部72周囲に取り付けられた差動排気機構925の環状部材926は、その下面(試料W側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)940が形成されるように、ハウジング98に対して位置決めされており、その下面には環状溝927が形成されている。環状溝927は排気管928により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間940は環状溝927及び排気口928を介して排気され、真空チャンバCから環状部材926によって囲まれた空間930内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、荷電ビーム照射空間930内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。
この環状溝は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間930内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させたりしてしまうからである。また、工場での使用では、コストも大きな運用要因となるので、クリーンドライエアを用いることがある。この時、不純物を除去するために、各種化学フィルタを用いる、パーティクルを低減するために、超高精度フィルタを用いることがある。例えば、1μmフィルタと3nmフィルタを直列で用いてクリーンドライエアを導入する等がある。
なお、以上の説明において、試料Wは通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ93に対して微少な位置変更を行ったりするなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本実施例の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
以上に説明した荷電ビーム装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージに対して実現できる。
なお、以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。例えば、y方向がリニアモータでx方向が超音波モータの組合せ、y方向がリニアモータでx方向がエア駆動位置決めステージの組合せ、y方向がリニアモータでx方向がボールネジのパルスモータ駆動の組合せ等が適応できる。
次に差動排気機構の環状部材926及びそれに形成される環状溝の大きさの数値例を図24に示す。なお、この例では環状溝は927a及び927bの二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材926及び環状溝等の寸法を、図24に示されるようにすれば、荷電ビーム照射空間930内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
図25において、XYステージの他の実施態様が示されている。ハウジング98によって画成された真空チャンバCには、真空配管974、975を介してドライ真空ポンプ953が接続されている。また、差動排気機構925の環状溝927は排気口928に接続された真空配管970を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ951が接続されている。更に、鏡筒71の内部は、排気口710に接続された真空配管971を介して、ターボ分子ポンプ952が接続されている。これらのターボ分子ポンプ951、952は、真空配管972、973によってドライ真空ポンプ953に接続されている。(本図では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。)
XYステージ93の静圧軸受けには、フレキシブル配管921、922を通して高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口919、920a、920bを通してドライ真空ポンプ953によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝927或いは鏡筒71の先端部から吸引され、排気口928及び710を通ってターボ分子ポンプ951及び952によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ953によって排気される。
このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ953の排気口は、配管976を介して圧縮機954に接続され、圧縮機954の排気口は配管977、978、979及びレギュレータ961、962を介してフレキシブル配管931、932に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ953から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機954によって再び加圧されレギュレータ961、962で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
なお、静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管977の途中にコールドトラップやフィルタ等(960)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
なお、循環配管系には高純度不活性ガス供給系963が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管970〜975及び加圧側配管976〜980を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
また、ドライ真空ポンプ953に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ953と圧縮機954を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。
更に、鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
(実施形態2)
ここで、図26Aを参照する。図26Aは、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000、ミラー10002及び10004、レンズ光学系724(724−1及び724−2)、静電レンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ10008、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000には、UVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線及びそれらのレーザ等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
光源10000から2系統のレーザ光を発生させ、それぞれ、ミラー10002及び1004に入射し、それらの反射面で反射し、ステージ装置50上のウエハWFに向かって進行方向が曲げられる。ミラー10002及び10004の反射面で反射したレーザ光は、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次ビームとして照射される。ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する二次放出光電子による二次元画像を、ミラー10002及び10004の間を通り抜けさせ、静電レンズ10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。
図27Aは、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70の概略構成図である。本実施形態においては、一次レンズ系の構成が実施形態1とは異なる以外は、実施形態1と同様であり、実施形態1における図9の説明を参照すればよい。また、図26、27において、上述した例はレーザが2系統の導入の形態であるが、1系統の導入でもよい。例えば、図26B、図27Bにおいて光源10000から光またはレーザが発生し、1系統の光10000Aが2次光学系にあるミラー10002によって反射され、試料面に到達する(1000Bはなし)。このとき、例えば、2次光学系内に設置されたミラーが、2次光学系中心軸より離れた位置にあり、1〜10mm等、そのミラーによる反射位置も2次光学系軸中心から離れた位置になる。よって、試料への照射角度は垂直ではなく角度を持ったものとなる。2次光学系軸(z軸)に対する角度をθpとすると、この角度θpで照射光が試料面に照射される。この使用方法では、凹凸の片方のエッジに照射されるがもうひとつのエッジ部には陰になり照射されにくい。これにより、片方のエッジのコントラストを高くして凹凸パターンの撮像を行うことが可能となる。また、2系統に限らず多数系統も可能である。この場合は、多数系統の場合にすると角度θpの異なるレーザまたは光の導入画可能となるので、より均一性の高いビーム照射が行える。または、偏りの強いビーム照射が行える。レーザまたは光のビーム系統は例えば3〜20系統が可能であるが、もっと多くてもよい。2次光学系の中心軸対象の照射を行うと均一性がよくなり、均一性の高い光電子像が得られる。また、非対称的にレーザまたは光の複数ビーム系統を照射すると偏りの強いビーム照射となる。このとき、局所的に高いコントラストが得られる像となる。又、ミラーについては、図26Cに示すように、一つの構造体であって、1系統でも複数の系統でもミラーとして使用できるものを用いることが可能である。例えば、三角構造体であって中心部に穴が開いており、斜面がミラー機能有する構造となっている。このとき、表面は導電材料でコートされていることまたは、導電材料でできていることが重要である。中心部の穴は、試料表面からの光電子が通過する。よって、絶縁材料があるとチャージアップによる電位変化により軌道の変化や収差劣化等の悪影響が出るからである。穴は断面形状が円形状の場合が多いが角形状でもよい。軸対象の形状が好ましい。形状は、面がすべて角形状の5面体でもよいし、斜面と上面が平面であり、側面が曲面であってもよい。重要なのはミラー機能を有する斜面の面粗さ(例えば平均面粗さRa)が照射するレーザまたは光の波長のより小さいことである。1/2〜1/16程度が好ましい。波長より面粗度が大きいと散乱光の増加と反射率の低下がおこり、効率低下となる。また、このミラー構造では、図26、27、29の2系統のビーム照射や複数系統のビーム照射においても、部品はこのミラーひとつでよい。ミラー部10002とミラー部10004は一体のミラーでよいのである。具体的には、母材がガラスでミラー面と他の部位にアルミコートされたものを用いることができる。このとき、ミラー面の面粗さは上述したように、波長より小さい値である。また、Au、Ru、Os、カーボン、Pt、Ti、Crのいずれか、または、複数材料がミラー面のアルミコートの上に極薄膜状態にてコートされてもよい。
(実施形態3)
本実施形態においては、実施形態2に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系において、光源10000からの光を基板に照射するための光学系が異なる。その他の構成要素については、実施形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図28を参照する。図28は、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000、ファイバープレート11000A及び11000B、穴部11002、対物レンズ光学系724(724−1及び724−2)、静電レンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ10008、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000には、UVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
光源10000からレーザ光を発生させ、それぞれ、ファイバープレート11000A及び11000Bに入射する。ファイバープレート11000A及び11000Bに入射した光は、ステージ装置50上のウエハWFに向かって進行方向が曲げられ、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次ビームとして照射される。ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する光電子の二次元画像を、穴部11002を通り抜けさせ、静電レンズ10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。
(実施形態4)
本実施形態においては、実施形態2に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系において、ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する二次元の二次電子画像を検出器に導く光学系が異なる。その他の構成要素については、実施形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図29Aを参照する。図29Aは、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000、ミラー10002及び10004、対物レンズ光学系724、補正レンズ12000、ニューメリカルアパーチャ10008、フィールドレンズ12002、ズームレンズ12004、ズームレンズ12006、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、EUV光、X線等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
光源10000から2系統のレーザ光(1000A及び10000B)を発生させ、それぞれ、ミラー10002及び1004に入射し、それらの反射面で反射し、ステージ装置50上のウエハWFに向かって進行方向が曲げられる。ミラー10002及び10004の反射面で反射したレーザ光は、レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次ビームとして照射される。ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する二次放出光電子の二次元子画像を、ミラー10002及び10004の間を通り抜けさせ、補正レンズ12000によりニューメリカルアパーチャ(NA)10008位置に収束しクロスオーバを形成する、後段のフィールドレンズ12002、ズームレンズ12004、ズームレンズ12006、静電レンズ光学系741で拡大投影し、検出系76で検知する。フィールドレンズ12002で軸外収差の補正を行い、ズームレンズにより連続倍率設定を可能とし、静電レンズ741で検出器に結像して拡大投影する。なお、本実施形態においても、図29Bに示すように、レーザを1系統で導入しても良い。この場合の効果は、図26B、図27Bで説明した効果と同様である。
(実施形態5)
本実施形態においては、実施形態4に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系において、光源10000からの光を基板に照射するための光学系が異なる。その他の構成要素については、実施形態4と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図30を参照する。図30は、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000、ファイバープレート11000A及び11000B、穴部11002、レンズ光学系724(カソードレンズ724−1及び724−2(図示せず))、補正レンズ12000、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008、フィールドレンズ12002、ズームレンズ12004、ズームレンズ12006、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
光源10000から2系統のレーザ光を発生させ、それぞれ、ファイバープレート11000A及び11000Bに入射する。ファイバープレート11000A及び11000Bに入射した光は、レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次ビームとして照射される。ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する二次放出光電子の二次元画像を、補正レンズ12000により視野絞り位置で結像させ後段のフィールドレンズ12002、ズームレンズ12004、ズームレンズ12006、静電レンズ光学系741で拡大投影し、検出系76で検知する。
(実施形態6)
本実施形態においては、実施形態2に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系において、異なる波長の複数の光を基板に照射するようにしている点で光学系が異なる。その他の構成要素については、実施形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図31を参照する。図31は、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000A(波長λ1)及び10000B(波長λ2)、ミラー10002及び10004、レンズ光学系724(カソードレンズ724−1及び724−2)、静電レンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ10008、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000A及び10000Bには、DUVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源10000A及び10000Bからの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
光源10000Aと光源10000Bからは、異なる波長のレーザ光A(波長λ1)及びB(λ2)が発生し、それぞれ、ミラー10002及び10004に入射し、それらの反射面で反射し、ステージ装置50上のウエハWFに向かって進行方向が曲げられる。ミラー10002及び10004の反射面で反射したレーザ光は、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWFに一次ビームとして照射される。この異なる波長のレーザ光A(波長λ1)及びB(λ2)は、ウエハWに同時に照射されるようにしてもよく、交互に照射されるようにしてもよい。ウエハ上に照射された一次ビームにより発生する二次元の二次電子画像を、ミラー10002及び10004の間を通り抜けさせ、静電レンズ10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。
なお、本実施形態においては、二つの異なる波長の光源を用いたが、二つ以上の異なる波長の光源を用いてもよい。
(実施形態7)
本実施形態においては、実施形態1に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系において、ウエハ基板に対する光源からの光の入射方向が異なる。その他の構成要素については、実施形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図32Aを参照する。図32Aは、本実施形態に係る本発明の検査装置1の電子光学装置70に用いる光学系の概略構成図である。本実施形態に係る電子光学装置70は、光源10000、レンズ光学系724(カソードレンズ724−1及び724−2)、静電レンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ10008、静電レンズ光学系741並びに検出系76を有している。本実施形態においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。なお、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付けている。
図32A(a)は、光源10000からレーザ10000Aが発生し、ステージ装置50上の試料Wの裏面に一次ビームとして照射される。一次ビームとして照射されるレーザ10000Aが試料Wに照射されると、ウエハ上のパターンに従う二次元の二次電子画像が発生し、その光電子の二次元画像を、カソードレンズ724−1とカソードレンズ724−2を通過し、静電レンズ10006で収束しニューメリカルアパーチャ(NA)10008位置付近でクロスオーバを形成し、かつ、静電レンズ10006と及び静電レンズ10009はズーム機能を有しており倍率制御可能となっている。その後、後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76に結像する。
図32A(b)は、ウエハWの表面P1及びP2から光電子が放出されている様子を示している。このとき、P1は光電子が発生しやすい材料であり、P2は光電子が出にくい材料であるとき、裏面からのレーザ照射によりP1は多くの光電子を発生するが、P2は少量しか光電子を発生しない。したがって、P1とP2で構成されるパターン形状について、光電子によるパターンのコントラストが大きく取得できるのである。
上述した図32Aに示す例はサンプルの裏面からのレーザまたは光の照射の例であるが、表面へのレーザまたは光の照射の実施形態の例を図32B、図32C、図32D、図32Eに述べる。用いるレーザや光は、DUVレーザ光源を用いているが、実施形態1と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いても良い。
図32B、図32Cは、前述した図8、9、26A、27A、29Aと同様の装置及び照射系及び2次光学系を有している。また、図32B、図32Cでは、試料が凹凸の時、凹部と凸部からでる光電子の量が異なり、それによるコントラストが形成されて高分解能の撮像が可能となる例である。試料の凹凸部の材質の差異、および、1次ビーム照射の波長により、凹部からの光電子量が凸部よりも多かったり、また逆の場合があったりする。詳細の例は後述するが、この様な光電子放出量の差異により高分解能を達成する例である。
また、図32D、図32Eは、凹凸を有する試料表面からの光電子量の差異による像形成が図32B、図32Cと同様の形態を示しており、1次ビームの照射系が異なる角度で照射される場合の例を示している。図32B、図32Cはほぼ試料面に対して垂直に近い角度の場合であるが、図32D、図32Eは、斜めの角度の場合の例である。この場合、レーザとミラー、レンズを用いて導入されることもあるが、ファイバ等を用いて、試料表面に照射することも可能である。UV、DUV、EUV、X線などの短い波長の場合、通常の石英ファイバでは、レーザや光の伝達効率が悪いことがある。中空ファイバや中空管を用いること効率よく伝達可能である。
また、上述したように、1次ビームの照射角度については、特にパターンのある試料において角度の影響を受ける場合があるので、そのような時に、照射する光やレーザの角度の最適化を行い、つまり、最も、パターンや欠陥のS/Nやコントラストが高い条件を選んで、照射する角度を選ぶことが可能であり、また、重要である。
(実施形態8)
光照射を用いる1次系に替る電子照射を用いる1次光学系を備えた電子光学装置
これまで述べてきたのは、試料表面に照射するのが光やレーザ等であり、それにより、試料表面からは光電子が発生する形態を述べてきた。ここでは、光を照射する代わりに、電子ビームを照射する1次系の形態について述べる。まず、一般的な電子銃を備える検査装置の例を図33に示す。図33(a)は、全体構成を示し、図33(b)は、電子銃部分の拡大模式図である。但し、一部構成を省略図示している。
図33(a)において、検査装置は一次コラム71−1、二次コラム71−2およびチャンバ32を有している。一次コラム71−1の内部には、電子銃721が設けられており、電子銃721から照射される電子ビーム(一次ビーム)の光軸上に1次光学系72が配置される。また、チャンバ32の内部には、ステージ装置50が設置され、ステージ装置50上には試料Wが載置される。一方、二次コラム71−2の内部には、試料W から発生する二次ビームの光軸上に、カソードレンズ724、ニューメリカルアパーチャNA−2、ウィーンフィルタ723、第2レンズ741−1、ニューメリカルアパーチャNA−3、第3 レンズ741−2、第4レンズ741−3および検出器761が配置される。なお、ニューメリカルアパーチャNA−3は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。そして、ニューメリカルアパーチャNA−2は開口部が一次ビームの集束位置およびカソードレンズ724の焦点位置になるように配置されている。したがって、カソードレンズ724とニューメリカルアパーチャNA−2とは、テレセントリックな電子光学系を構成している。特に、カソードレンズ724が2段のダブレットレンズで第1中間結像点がE×B中心付近に形成する両テレセントリックの電子光学系を構成している場合もある。これは、片テレセントリックやテレセントリックでない場合に比べて、収差を小さくすることができ広視野の2次元電子像の高分解能結像を達成することができる。つまり、収差1/2〜1/3を実現することができる。
一方、検出器761の出力は、コントロールユニット780に入力され、コントロールユニット780の出力は、CPU781に入力される。CPU781の制御信号は、一次コラム制御ユニット71a、二次コラム制御ユニット71bおよびステージ駆動機構56に入力される。一次コラム制御ユニット71aは、1次光学系72のレンズ電圧制御を行い、二次コラム制御ユニット71bは、カソードレンズ724、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3のレンズ電圧制御およびウィーンフィルタ723に印加する電磁界制御を行う。また、ステージ駆動機構56は、ステージの位置情報をCPU781に伝達する。さらに、一次コラム71−1、二次コラム71−2、チャンバ32は、真空排気系(図示せず)と繋がっており、真空排気系のターボ分子ポンプにより排気されて、内部は真空状態を維持している。
(一次ビーム)
電子銃721からの一次ビームは、1次光学系72によってレンズ作用を受けながら、ウィーンフィルタ723に入射する。ここでは、電子銃のチップとしては、矩形、円形フラット、曲面(例えばr=50μm程度)を有するものを利用でき、大電流を取り出すことができるLaB6を用いる。また、1次光学系72は、回転軸非対称の四重極または八重極の静電(または電磁)レンズを使用する。これは、いわゆるシリンドリカルズレンズと同様にX軸、Y軸各々で集束と発散とを引き起こすことができる。このレンズを2段、または、3段で構成し、各レンズ条件を最適化することによって、照射電子を損失することなく、試料面上のビーム照射領域を、任意の矩形状、または楕円形状に整形することができる。具体的には、静電レンズを用いた場合、4つの円柱ロッドを使用する。対向する電極同士を等電位にし、互いに逆の電圧特性を与える。なお、四重極レンズとして円柱形ではなく、静電偏向器で、通常使用される円形板を4分割した形状のレンズを用いてもよい。この場合レンズの小型化を図ることができる。
1次光学系72を通過した一次ビームは、ウィーンフィルタ723の偏向作用により軌道が曲げられる。ウィーンフィルタ723は、磁界と電界を直交させ、電界をE、磁界をB、荷電粒子の速度をvとした場合、E=vBのウィーン条件を満たす荷電粒子のみを直進させ、それ以外の荷電粒子の軌道を曲げる。一次ビームに対しては、磁界による力FBと電界による力FEとが発生し、ビーム軌道は曲げられる。一方、二次ビームに対しては、力FBと力FEとが逆方向に働くため、互いに相殺されるので二次ビームはそのまま直進する。1次光学系72のレンズ電圧は、一次ビームがニューメリカルアパーチャNA−2の開口部で結像するように、予め設定されている。このニューメリカルアパーチャNA−2は、装置内に散乱する余計な電子ビームが試料面に到達することを阻止し、試料Wのチャージアップや汚染を防いでいる。さらに、フィールドアパーチャNA−2とカソードレンズ724(図示しないが2段のダブレットレンズ)とは両テレセントリックな電子光学系を構成しているので、カソードレンズ724を透過した一次ビームは平行ビームになり、試料Wに均一かつ一様に照射する。すなわち、光学顕微鏡でいうケーラー照明が実現される。
(二次ビーム)
一次ビームが試料に照射されると、試料のビーム照射面からは、二次ビームとして、二次電子、反射電子または後方散乱電子が発生する。又は、照射エネルギによってはミラー電子が形成される。二次ビームは、カソードレンズ724によるレンズ作用を受けながら、レンズを透過する。ところで、カソードレンズ724は、3又は4枚の電極で構成されている。一番下の電極は、試料W 側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に、指向性が小さい2次放出電子及びミラー電子)を引き込み、効率よくレンズ内に導くように設計されている。また、レンズ作用は、カソードレンズ724の1番目、2番目の電極に電圧を印加し、3番目の電極をゼロ電位にすることで行われる。又は、1番目、2番目、3番目の電極に電圧を印加し、4番目の電極をゼロ電位にすることで行われる。4枚電極の時の第3電極はフォーカス調整に使用される。一方、ニューメリカルアパーチャNA−2は、カソードレンズ724の焦点位置、すなわち試料Wからのバックフォーカス位置に配置されている。したがって、視野中心外(軸外)から出た電子ビームの光束も、平行ビームとなって、このニューメリカルアパーチャNA−2の中心位置を、けられが生じることなく通過する。なお、ニューメリカルアパーチャNA−3は、二次ビームに対しては、カソードレンズ724、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3のレンズ収差を抑える役割を果たしている。ニューメリカルアパーチャNA−2を通過した二次ビームは、ウィーンフィルタ723の偏向作用を受けずに、そのまま直進して通過する。なお、ウィーンフィルタ723に印加する電磁界を変えることで、二次ビームから、特定のエネルギを持つ電子(例えば2次電子、又は反射電子、又は後方散乱電子)のみを検出器761に導くことができる。二次ビームを、カソードレンズ724は、試料表面から発生した2次放出電子の収差を決める重要なレンズとなる。そのため、あまり大きな倍率は期待できない。よって、収差を低減するために、2段のダブレットレンズ構造のカソードレンズとして、両テレセントリック構造にする。さらに、E×Bによって形成されるウィーンフィルタの発生する収差(非点収差等)を低減するため中間結像をこのE×B中間位置付近に設定する。これにより、収差の増大を抑える効果が大変大きい。そして、第2レンズ741−1によりビームを収束させ、ニューメリカルアパーチャNA−3付近にクロスオーバを形成する。また、第2レンズ741−1と第3レンズ741−2でズームレンズ機能を有しており、倍率制御が可能となる。この後段に、第4レンズ741−3があり、検出器面に拡大結像する。第4レンズは5段のレンズ構造であり、1、3、5段がGNDとなっている。2段と4段に正の高電圧が印加され高電圧が印加されレンズが形成される。この時、2段目はフィールドレンズ機能を有し、この付近に第2中間結像を行う。この時、このフィールドレンズ機能により、軸外収差の補正を行うことができる。そして、第4段目のレンズ機能により拡大結像がなされる。この様に、ここでは、合計3回結像する。なお、カソードレンズと第2レンズ741−1とを合わせて 検出面に結像(合計2回)させてもよい。また、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3はすべて、ユニポテンシャルレンズまたはアインツェルレンズとよばれる回転軸対称型のレンズでもよい。各レンズは、3枚電極の構成でもよい。通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧で、レンズ作用を行わせて制御する。また、中間の結像点には、フィールドアパーチャFA−2を配置してもよい(図示せず)。このフィールドアパーチャFA−2は、第4レンズ741−3が5段レンズのとき2段目付近に設置され、3段レンズの時は1段目付近に設置される。このフィールドアパーチャFA−2は、光学顕微鏡の視野絞りと同様に、視野を必要範囲に制限しているが、電子ビームの場合、余計なビームを遮断して、検出器761のチャージアップや汚染を防いでいる。二次ビームは、2次光学系により拡大投影され、検出器761の検出面に結像する。検出器761は、電子を増幅するMCPと、電子を光に変換する蛍光板と、真空系と外部との中継および光学像を伝達させるためのレンズやその他の光学素子と、撮像素子(CCD等)とから構成される。二次ビームは、MCP検出面で結像し、増幅され、蛍光板によって電子は光信号に変換され、撮像素子によって光電信号に変換される。コントロールユニット780は、検出器761から試料の画像信号を読み出し、CPU781に伝達する。CPU781は、画像信号からテンプレートマッチング等によってパターンの欠陥検査を実施する。また、ステージ装置50は、ステージ駆動機構56により、XY方向に移動可能となっている。CPU781は、ステージ装置50の位置を読み取り、ステージ駆動機構56に駆動制御信号を出力し、ステージ装置50を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。
このように、本実施形態の検査装置では、ニューメリカルアパーチャNA−2とカソードレンズ724とが、テレセントリックな電子光学系を構成しているので、一次ビームに対しては、ビームを試料に均一に照射させることができる。すなわち、ケーラー照明を容易に実現することができる。さらに、二次ビームに対しては、試料Wからの全ての主光線が、カソードレンズ724に垂直(レンズ光軸に平行)に入射し、ニューメリカルアパーチャNA−2を通過するので、周辺光もけられることがなく、試料周辺部の画像輝度が低下することがない。また、電子が有するエネルギのばらつきによって、結像する位置が異なる、いわゆる倍率色収差が起こる(特に、二次電子は、エネルギのばらつきが大きいため、倍率色収差が大きい)が、カソードレンズ724の焦点位置に、ニューメリカルアパーチャNA−2を配置することで、この倍率色収差を抑えることができる。
また、拡大倍率の変更は、ニューメリカルアパーチャNA−2の通過後に行われるので、第3レンズ741−2、第4レンズ741−3のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野全面に均一な像が得られる。なお、本実施形態では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するために、2次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、それに伴って決まる試料面上の有効視野と、試料面上に照射される電子ビームとを、同一の大きさになるように1次光学系のレンズ条件を設定する。
すなわち、倍率を上げていけば、それに伴って視野が狭くなるが、それと同時に電子ビームの照射エネルギ密度を上げていくことで、2次光学系で拡大投影されても、検出電子の信号密度は、常に一定に保たれ、像の明るさは低下しない。また、本実施形態の検査装置では、一次ビームの軌道を曲げて、二次ビームを直進させるウィーンフィルタ723を用いたが、それに限定されず、一次ビームの軌道を直進させ、二次ビームの軌道を曲げるウィーンフィルタを用いた構成の検査装置でもよい。また、本実施形態では、矩形陰極と四極子レンズとから矩形ビームを形成したが、それに限定されず、例えば円形ビームから矩形ビームや楕円形ビームを作り出してもよいし、円形ビームをスリットに通して矩形ビームを取り出してもよい。
この例では、ニューメリカルアパーチャNA−2とニューメリカルアパーチャNA−3の2つのニューメリカルアパーチャを設置している。これは、照射電子量に応じて使い分けることができるのである。試料に対する照射電子量が少ない場合例えば、0.1〜10nAでは、ニューメリカルアパーチャNA−2により、1次ビームと2次ビームの収差を低減するために、ビーム径を選択する適切な径例えばφ30〜φ300μmを用いる。しかし、照射電子量が増加すると、このニューメリカルアパーチャNA−2はコンタミ付着によりチャージアップが起こり逆に像質を劣化させてしまうことがある。この時は、比較的大きな穴径、例えばφ500〜φ3000μmのニューメリカルアパーチャNA−2として、周辺の迷走電子のカットに用いる。そして、ニューメリカルアパーチャNA−3により2次ビームの収差と透過率の規定と決めるために用いる。ニューメリカルアパーチャNA−3は1次ビームが照射されないためにコンタミ付着が少なく、チャージアップによる像劣化が無いのである。よって、照射電流量の大小により、ニューメリカルアパーチャ径を選択して用いると大変効率的である。
この様な形態の1次ビームに電子照射を行うとき、電子光学装置70の1次光学系72として電子銃を使用する半導体検査装置1においては、大きな照射電流を得ようとする場合に、電子のエネルギ幅が広がってしまうという問題がある。以下に図を用いながら詳細に説明する。図33(b)は、一般的な電子銃2300を備えた電子光学装置70の1次光学系72の模式図である。
電子銃2300においては、カソード2310に熱電子発生のための加熱電源2313より加熱電流を流す。また、カソード2310には加速電圧Vaccを加速電源2314により設定する。一方、カソード2310に対して、相対的に正電圧を有し、例えば3000〜5000Vの電圧差を有するようにアノード2311に電圧を印加する。カソード2310が−5000Vの場合、アノード2311は0Vでもよい。このときエミッションの量は、ウェネルト2312に印加する電圧により制御される。ウェネルト2312は加速電圧Vaccに重畳されている。例えば、重畳電圧:0〜−1000Vである。Vaccとの電圧差が大きいとエミッション量は小さくなり、小さいとエミッションは大きくなる。また、ウェネルト電圧により最初にできるクロスオーバ(ファーストクロスオーバ:1stCO)位置も軸方向にずれる。また、カソード中心とウェネルト、アノード中心がずれていれば、z軸に垂直なx、y方向にも位置ずれが起こる。放出されたエミッションは広がっている。この内、有効なビームを選択し、また、ビーム形状を決定するのがフィールドアパーチャFA2320である。そのときのエミッションに対する透過率は通常0.1〜0.5%である。例えば、エミッション5μAで照射電流5〜25nAである。よって、例えば、1μAの照射電流を得ようとすると、200μA〜1mAのエミッシンが必要となる。この時、エミッションが大きくなることにより、カソードからファーストクロスオーバ、ファーストクロスオーバからフィールドアパーチャFAに至る軌道において、ベルシュ効果により電子のエネルギ幅が広がってしまう。例えば、FA位置で1.2eVから10〜50eVに広がる。
エネルギ幅は特に低LE時に問題となる。試料表面近傍での電子の軌道がz方向の広がりが大きくなるからである。図を基に説明する。図34は、試料表面に照射される電子ビームの照射電流の強度(量)とエネルギの状態及び試料表面に照射されたビームの状態を示す図である。図34(a)は、試料表面に照射されるビームの照射電流の強度とエネルギの状態を示し、図34(b)は、試料表面に照射されるビームの状態を示す。試料に対して照射するビームの照射電流のエネルギが最適の場合のビームをビームcとし、ビームの照射電流のエネルギが低い場合のビームをビームa、ビームの照射電流が最大の場合のビームをビームbとする。また、ビームの照射電流のエネルギが高い場合のビームをビームdとする。電子ビームのエネルギと照射電流の強度(量)の関係は、LaB6などの熱電子形成方式では、マクセル分布に従い、図34(a)のような分布となる。このとき、上述のしたようにエネルギの高低による特徴有する電子ビームをビームa〜ビームdとした。
一例として、高いエネルギのビームdが試料表面に丁度衝突する場合を図34(b)に示す。このとき、ビームdは表面に衝突して反射しない(ミラー電子形成なし)。一方、ビームc、ビームb、ビームaはそれぞれ反射電位点において反射する。つまりミラー電子が形成される。そして、エネルギが異なるビームc、ビームb、ビームaが反射する軸方向位置、つまり、Z位置が異なる。このZ位置の差異ΔZが生じる。このΔZが大きいほど、2次光学系で結像される像のボケが大きくなる。つまり、同じ表面位置で形成されたミラー電子が結像面における位置ズレを起こすからである。特にミラー電子においては、エネルギずれが反射点のずれ・途中軌道のずれを起こすので影響が大きい。これらのことは、ミラー電子によって形成される像、または、ミラー電子+2次放出電子により形成される像において、同様のことが言える。また、照射する電子ビームのエネルギ幅が大きいとこのような悪影響が大きくなる(ΔZが大きくなる)。よって、エネルギ幅を狭くした状態で試料表面に照射できる1次ビームがあると大変有効となる。そのために発明したのが、以降にて説明する図35〜図41に示すような電子発生源と1次光学系である。これらは、従来型に比べ、電子ビームのエネルギ幅を狭くできるだけでなく、1次系のビームの透過率を飛躍的に高くすることが可能であるため、狭いエネルギ幅にて大電流を試料表面に照射することが可能となる。つまり、上述のΔZが小さくできるため、2次光学系における結像面における位置ずれが小さくなり、低収差、高解像度、大電流化、高スループットを実現することが可能となる。通常、LaB6などの熱電子方式の電子源(Gun)では、電子発生部で2eV程度のエネルギ幅を有する。そして、発生電流量を増加するにしたがって、クーロン反発などによるベルシュ効果等でエネルギ幅は更に増加する。例えば、電子源のエミッション電流を5μA→50μAにすると、エネルギ幅は、例えば0.6eV→8.7eVに広がる、つまり、電流値を10倍にするとエネルギ幅は15倍程度に広がるのである。更に、途中の1次光学系の通過中に空間電荷効果等のエネルギ幅は広がる。このような特徴に鑑み、狭いエネルギ幅の電子ビームを試料に到達させるためには、電子発生源でのエネルギ幅を小さくすること、及び、1次光学系の透過率を高くして電子発生源のエミッション電流を低減することがもっとも重要である。これまでそれを実現する手段がなかったが、本発明はそれらを実現するものである。これらについての効果・説明は、後ほど図35〜図41に示す実施例にて説明する。
また、電子ビームの強度(量が高い場合、ビームb)が撮像するのに最適であるとは限らない。例えば、マクセル分布に準じるエネルギ分布を有する場合、エネルギの低い部位にビーム強度(量)の最大がある場合が多い(ビームb)。このとき、ビームbよりも高いエネルギのビームが多くあるため、それらによって形成される像と異なる像質になる場合がある。つまり、ビームdは試料に衝突してしまいそれによる2次放出電子像を形成する場合、また、相対的にビームbはエネルギが低いので、試料表面の凹凸に影響が小さくミラー電子が形成されやすいため、つまり、表面の凹凸や電位差に影響が小さくミラー電子が形成され、像質として全体的にコントラストの低い像やぎらぎらした像になりやすいのである。経験的には、解像度の高い像は得にくい。特に、表面最上部に酸化膜がある場合は、表面に衝突する電子量の影響が大きくなるので、例えば、エミッション電流が小さい場合に比べ、エミッションが大きくなると(例えば10倍)、それによりエネルギ幅が10倍以上広がる。このとき、同一のランディングエネルギーLEで試料表面に電子ビームを照射すると、ビームbよりエネルギの高い部位、例えばビームdが試料表面に衝突する絶対量が増加し、そのために、酸化膜のチャージアップが大きくなる。そのチャージアップの影響にてミラー電子の軌道や結像条件が乱れて正常な撮像ができなくなる場合がある。このことが、照射電流を増加できない原因のひとつであった。このような状況では、ビームdが試料表面に衝突する量を低減して、酸化膜の電位変化を小さく抑えることができるエネルギのビームcを用いることができる(最適エネルギのビーム)。これにより、試料に衝突するビームの量を抑制して安定した像を得ることが可能となる。ただし、図34(a)より分かるように、ビームcはビームbよりも強度(量)が低い。最適エネルギのビームcを最大強度のビームbに近づけることができると、その分、像形成に寄与する電子量が増えて、スループットを増加することができる。そのためには、狭いエネルギ幅にして、試料表面に衝突する電子を低減することが重要である。本発明はそれを実現するものであり、図35〜図41にてその実施例を述べる。
また、図34(b)において、LEを徐々に高くしていくと、ビームdが試料表面に衝突して、次にビームcが衝突し、衝突する電子ビームが増加すると、それにより発生する2次放出電子が増加する。このような、ミラー電子と2次放出電子の混在する領域を遷移領域と呼ぶ。全ての1次ビームが試料表面に衝突するとミラー電子はなくなり2次放出電子のみとなる。また、衝突する電子がない場合、全てミラー電子となる。
さらに、ウェネルト電圧を変えてエミッションを変えるときにファーストクロスオーバ位置も変化してしまうので、その都度、下流にあるアライナやレンズ調整を行う必要もあった。
また、半導体の検査においては、新たな技術に対応して、EUVマスク検査(極端紫外線リソグラフィ用マスクの検査)やNIL検査(ナノインプリントリソグラフィ用マスク検査)等の10nmレベルの欠陥検査が必要とされている。このために、半導体検査装置には、収差を下げて分解能を上げることが求められている。
収差低減して分解能を上げるには、特に2次光学系の収差を下げることが必要であるが、写像系が劣化する要因は、いわゆるエネルギ収差(色収差ともいう。)及びクーロンブルアにある。そこで、2次光学系の収差をよくするために、短時間で加速エネルギを高くすることが求められている。
そこで、このような問題を解決するために、本発明者は、新たな光電子発生装置を備えた1次光学系及び該1次光学系を有する電子光学装置を発明した。この1次光学系は光源としてDUV光又はDUVレーザを用いる。但し光源はこれに限定されるものではなく、UV、EUV又はX線を用いてもよい。以下にその内容を、図35を基に説明する。
図35に示すように、本1次光学系2000は、概略、光源(図示せず)、フィールドアパーチャ(FA)2010、光電子発生装置2020、アライナ2030、E×B偏向器(ウィーンフィルタ)(図示せず)、アパーチャ2040、カソードレンズ(CL)2050を備える。
フィールドアパーチャ2010は、後述する光電子発生装置2020の光電子面2021と、光源との間に配置され、所定の形状を有する穴が設けられている。光源からフィールドアパーチャ2010に向けて照射された光又はレーザは、フィールドアパーチャ2010の穴を通過して、光電子面2021に穴の形状の光又はレーザとして照射される。すなわち、光源から照射された光又はレーザは、これによって、光電子面2021から穴形状と同様の形状の光電子が発生する。なお、光源としては光電子を発生する波長のDUV(深紫外線)、UV(紫外線)、EUV(極端紫外線)、X線等の光又はレーザを用いる。
光電子発生装置2020は、光電子面2021、3段の引き出しレンズである第1段レンズ2022、第2段レンズ2023、第3段レンズ2024で一つの引き出しレンズを構成している。また、ニューメリカルアパーチャ2025を備える。この引き出しレンズは、磁場レンズ又は静電レンズを用いるが、磁場レンズを用いる場合には、磁場補正器を、後述するニューメリカルアパーチャ2025付近に設ける。また、2次光学系のフィールドレンズ(図示せず)の下流付近や対物レンズ(図示せず)付近に設けることも有効である。像が磁場の影響で曲がってしまう場合があり、これを補正するためである。また、引き出しレンズの段数はこれに限定されるものではない。
光電子面2021は、クォーツ、石英ガラス、コルツガラス、フッ化マグネシウムガラス等の光透過部材からなる母材に、光電子材料をコーティングしたものであり、平面部を有する。光電子材料としては、ルテニウム、金等のワークファンクションの低いもの(光電子発生効率のよい材料)が好適に用いられる。本実施の形態においては、母材にルテニウム、金等の光電子材料を1〜10nmの厚さでコーティングしたものを用いた。光電子面2021の形状は、例えば10μm〜50mmの円形又は矩形を用いるがこれに限定されるものではない。光又はレーザは、母材のビューポートを透過して導入されて光電面に到達し、光電面では光電子が発生する。
第1段レンズ2022、第2段レンズ2023、第3段レンズ2024からなる引き出しレンズ(引き出し電極)は、光電子面2021から発生した光電子を、光源から反対方向に引き出し、また引き出された光電子を加速する作用を行う。これらの引き出しレンズには、静電レンズを用いる。そして、引き出しレンズ2022、2023及び2024にはウェネルトは用いず、引き出し電界は一定とする。なお、第1引き出し電極2022、第2引き出し電極2023、第3引き出し電極2024には、片側テレセントリック又は両テレ線トリック構成を用いると好適である。非常に均一な引き出し電界領域を形成でき、発生した光電子を低損失で輸送できるからである。
各引き出しレンズの印加電圧は、光電子面の電圧をV1、第1引き出し電極2022、第2引き出し電極2023、第3引き出し電極2024の電圧を、それぞれV2、V3、V4とするとき、一例として、V2及びV4は、V1+3000〜30000V、V3はV4+10000〜30000Vに設定する。ただしこれに限定されるものではない。
光電子発生装置2020の第3引き出し電極2024と後述するアライナ2030との間には、ニューメリカルアパーチャ2025が配置される。ニューメリカルアパーチャ2025は、クロスオーバの形成位置、ビーム量、収差等有効ビームの選択を行う。
アライナ2030は、第1アライナ2031、第2アライナ2032及び第3アライナ2033を有し、光軸条件の調整等に用いる。第1アライナ2031、第2アライナ2032は、静的な動作を行うアライナであり光軸条件を調整するときに用いるチルト、シフトの役割を果たす。一方、第3アライナ2033は、ダイナミック偏向器で高速動作を行うときに用いるアライナであり、例えば動的なブランキング動作等に用いる。
アライナ2030の下流(試料側。以下各部材との位置関係で光源側を上流、試料側を下流という。)にはアパーチャ2040が配置される。アパーチャ2040は、ブランキング時のビームを受け、迷走電子カット及びビーム中心出し等に用いられる。また、アパーチャ2040の吸収電流の測定により電子ビーム量測定が可能となる。
アパーチャ2040の下流には、2次光学系と交差する領域であるE×B領域があり、ここにE×B偏向器(ウィーンフィルタ)(図示せず)が設けられる。E×B偏向器は、一次電子ビームをその光軸が試料の面に垂直になるように偏向する。
E×B領域の下流にはカソードレンズ2050が設けられる。カソードレンズ2050は、1次光学系と2次光学系とが共存するレンズである。カソードレンズ2050は、第1カソードレンズ2051及び第2カソードレンズ2052の2段から構成されてもよいし、1枚で構成されてもよい。カソードレンズ2050を2段から構成する場合には、第1カソードレンズ2051と第2カソードレンズ2052の間にクロスオーバを形成し、カソードレンズ1枚の場合には、カソードレンズ2050と試料との間にクロスオーバを形成する。
なお、光電子量は、光電子面に照射される光又はレーザの強度により決定する。従って、本1次光学系2000には、更に光源又はレーザ光源の出力調整を行う方式を適用してもよい。また、図示はしていないが、光源又はレーザ光源と母材との間に出力調整機構、例えば、アッテネータやビーム分離器等を更に設けてもよい。
ここで、本発明に係る1次光学系2000のクロスオーバの形成について、図を用いて説明する。図36は本願発明に係る1次光学系2000のクロスオーバの形成の模式図である。図36においては、模式的に、光電子面で発生した光電子が試料に対して垂直に照射されているように表現されているが、実際には、E×B偏向器によって偏向されている。
図36に示すように、光源又はレーザ光源からフィールドアパーチャ2010を通して光電子面2021に光又はレーザ光が照射される。これによって光電子面2021で発生した光電子は、ニューメリカルアパーチャ2025の位置においてファーストクロスオーバが形成され、更にアパーチャ2040を経由して、E×B偏向器によって試料に垂直に偏向され、第1カソードレンズ2051と第2カソードレンズ2052の間においてクロスオーバが形成される。そしてこのクロスオーバを形成した光電子が、面ビームとして試料面に照射される。従って、光電子面2021の電子放出形状と試料面に照射する電子ビーム形状が共役となる。一方、一般的な電子銃を備えた1次光学系においては、図33(b)に示したように、カソード2310から発生された光電子は、カソード2310とアノード2311との間でファーストクロスオーバが形成され、アノード2311、フィールドアパーチャ2320を経由して試料面に照射される。従って、フィールドアパーチャ2320の形状と試料面に照射する電子ビーム形状が共役となる。
本願発明に係る1次光学系2000の印加電圧の設定について説明する。本願発明は一般的な電子銃と構成を異にし、光又はレーザを光電子面2021に照射し、発生した光電子を、後段の引き出しレンズで引き出して加速する。ウェネルトやサプレッサが無く均一な電界で加速するため、各構成要素に対する印加電圧の設定も一般的な電子銃と異なる。
以下、図35を基に説明する。各構成要素に対して印加する電圧を、それぞれ次のとおりとする。光電子面2021の電圧をV1、及び引き出しレンズを構成している電極の電圧をそれぞれ、第1引き出し電極2022の電圧をV2、第2引き出し電極2023の電圧をV3、第3引き出し電極の電圧2024をV4、ニューメリカルアパーチャ2025の電圧をV5、アパーチャ2040の電圧をV6とする。また、ウエハ表面電圧(リターディング電圧ともいう。)をRTDとする。本願発明の1次光学系2000においては、光電子面2021の電圧V1を基に記載すると、以下のように各構成要素に電圧を印加する。すなわち、低LEの場合、V1=RTD−10V〜RTD+5V。V2、V4=V1+3000〜30000V。V3=V4+10000〜30000V。V5、V6=基準電位。そして、本願発明に係る1次光学系の一実施形態においては、RTD=−5000V、V1=−5005V、V2、V4=GND、V3=+20000Vと設定した。以上のような電圧印加により、低LEで、高分解能で高いスループットを実現できる。ただし、これは一例であり、各構成要素に対する印加電圧はこれに限定されるものではない。
なお、基準電位をV0、検出器の電子が入る面の電圧をDVとして表すと、本願発明に係る1次光学系2000におけるRTDとの印加電圧関係は、次のような表1に表す設定が好適に用いられる。
以上のような構成を備える本願発明に係る1次光学系2000及び本願発明の1次光学系2000を備えた電子光学装置は、以下のような効果を得ることができる。
第1に、本願発明の1次光学系2000は、非常に高い透過率を実現することができる。透過率は5〜50%であり、一般的な電子銃を備えた1次光学系の透過率0.1〜0.5%に対して10〜100倍の透過率を確保できる。これは、第1に、平面カソード面と新たな引き出しレンズの構成により、非常に均一な引き出し電界領域を形成できるので、形成された光電子を低損失で輸送できるからである。発生光電子量の増減によっても引き出し電界分布は一定に保つことを実現している構成であり、それにより高透過率で安定した動作を実現している。一般的な電子銃の備えた1次光学系では、ウェネルトやサプレッサ機構が必要なため、発生電子量つまりエミッション量により電界分布が変わるため、均一な引き出し電界部が小さくなり有効ビーム領域が狭くなるため、透過率を高くすることが困難であるが、本願発明に係る1次光学系2000は、ウェネルトやサプレッサ機構を必要としないため、透過率を高くできるからである。また、第二に、本願発明に係る1次光学系2000は、ファーストクロスオーバ位置がレンズ下流にあるため、ニューメリカルアパーチャ等の設置が容易になるので、ビームの収差低減や、ベルシュ効果の低減が行い易い光学系が実現できるからである。一般的な電子銃の備えた1次光学系では、ファーストクロスオーバ位置がウェネルトの近傍にあるため、その位置にニューメリカルアパーチャ等を設置することが困難であり、また、エミッションにより位置がずれるので、たとえこの位置にニューメリカルアパーチャ等を設置できても有効に使用することが困難であった。本願発明に係る1次光学系2000は、ファーストクロスオーバの位置をレンズ下流に置くことができるので、この問題を解消できるからである。
第2に、本願発明に係る1次光学系2000は、高分解能で高スループットを実現できる。上述したように高い透過率が実現できるため、高いスループット、例えば1μAの電子照射量を得るのに、極めて少量のカソード放出電流量2〜10μAでよい。従ってベルシュ効果も非常に小さくてすむ。例えば、ニューメリカルアパーチャ位置において、エネルギ幅0.5〜1.2eVである。よって、小エネルギ幅で電子照射量を増加できるので、2次光学系で結像するビームの位置ずれが小さく、高い解像度を維持することができる。以上の結果、高分解能で高スループットを実現できるのである。
第3に、本願発明に係る1次光学系2000は、常に安定した状態の光学系を維持可能である。なぜなら、本願発明に係る1次光学系2000はファーストクロスオーバの位置ずれが生じないからである。
次に、本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置の効果について以下に詳述する。
第1に、上述した構成の1次光学系2000を用いるため、光電子面の電子放出形状に対して、試料面に照射する電子ビーム形状を倍率×10倍〜×0.1倍にすることが可能である。特に倍率×1以下の縮尺での使用が可能であるため、光電子面のサイズを小さくする必要がなく、発生する光電子密度を低く抑えることができる。これによって本願発明の1次光学系2000を備える電子光学装置は、ベルシュ効果を低減してエネルギ幅の広がりを抑制することが可能となる。
第2に、光電子面の電子発生部の軸中心について、引き出しレンズで形成される中心位置に光電子発生部を容易に形成することが可能となる。これは、光又はレーザをその軸中心位置に照射することにより達成できる。図35及び図36においては光源の位置を図示していないが、光源の位置に関わらず、レンズ及びミラー等を用いることで容易に達成できる。本願発明に係る1次光学系2000は、主ハウジングに固定された鏡筒内に配置されるが、光電子の発生に光又はレーザを用いるので、光源は必ずしも鏡筒内に配置する必要がなく、例えば鏡筒の外部に設置してミラーレンズ等で光電子面の電子発生部の軸中心に導くことができる。従って、大気側に配置することができる為、本願発明に係る1次光学系2000を用いた電子光学装置は、中心位置の調整が容易である。図33(b)に示した一般的な電子銃を用いた検査装置においては、カソード2310、ウェネルト2312、アノード2311及びフィールドアパーチャ2320の中心位置は、組立によりズレてしまう。また、大気開放を行った後に行うベーキングによる位置ずれ、つまり、温度変化による熱膨張と冷却の工程を受けることによる組立後の位置変動も生じる。これらのズレを補正するために、フィールドアパーチャ2320の上流に通常アライナを設け、このアライナで補正を行なっている。位置ずれがひどい場合には、分解、組立、調整、ベーキングを繰り返し行うことが必要になる。一方、本願発明に係る1次光学系2000を用いた電子光学装置では、光又はレーザをその軸中心位置に照射するだけで、静電レンズで形成される中心位置に光電子発生部を容易に形成することができるため、組立によるズレが生じても簡易に調整できる。また、光源を大気側に配置することができるので、組立後の位置変動を受けにくく、また組立後の位置変動が生じた際にも容易に調整ができる。従って、作業工程の大幅短縮と低コスト化が可能となる。更に、光電子面の電子発生形状を決めるフィールドアパーチャ2010を大気側に配置することもできるため、容易にフィールドアパーチャ2010の交換作業を行うことができ、この点でも作業工程の大幅短縮と低コスト化を図ることができる。真空側にフィールドアパーチャがある場合、交換には、真空破壊、コラムの分解、組立、調整、真空廃棄、ベーキング、光軸調整等の作業が必要になるが、この作業がなくなるためである。
第3に、本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置は、ビームサイズの自由度が向上する。光電子面の電子発生形状はフィールドアパーチャ2010によって決定されるので、円形や矩形に限らず、長方形や軸に非対称な形状も可能となる。本発明に係る1次光学系2000を備える検査装置では、一例として、光電子面でφ100μmの円形で、試料面上でφ50μm〜100μmの円形が可能であり、光電子面で100×100μmの矩形で、試料面上で50×50μm〜100×100μmの矩形が可能である。
第4に、本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置は、真空中にある部品点数を大幅に削減できる。一般的な電子銃を備える電子光学装置においては、カソード中心、ウェネルト、アノード及びフィールドアパーチャ中心のズレ補正のために、図33(b)で示したフィールドアパーチャ2320の前方にアライナが必要になる。また、フィールドアパーチャ2320で形成されたビーム形状を試料面上に結像するために1から3段のレンズが必要となる。本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置は、これらの部品を必要としないので、真空中にある部品点数を大幅に削減できる。
以上説明した本願発明に係る1次光学系を備える電子光学装置を、半導体検査装置に適用すれば、高分解能で高スループットを達成できるため、EUVマスク検査やNILマスク検査に好適である。また、低LE(ランディングエネルギー)の場合でも、高分解能を達成できる。
(実施形態9)
1次光学系の第2の実施形態
本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態について説明する。図37は、本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態を示す図である。本1次光学系2100は、概略、光源(図示せず)、フィールドアパーチャ(FA)2110、光電子発生装置2120、アライナ2130、E×B偏向器(ウィーンフィルタ)(図示せず)、アパーチャ2140、カソードレンズ(CL)2150、第一の管10071及びこれらの1次光学系を収容する第2の管(図示せず)を備える。本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態は、基準電位を高電圧とすることに特徴がある。以下、上述した本願発明に係る1次光学系との相違点を中心に説明する。
本実施形態は、第1の管10071と第2の管とを備える二重構造を有し、光電子発生装置2120は、光電子面2121、1枚の引き出しレンズ2122及びニューメリカルアパーチャ2125を備える。
第1の管10071は、基準電圧が高電圧の場合の、基準電圧を作るための管で、この第1の管に高電圧が印加される。第1の管10071は、引き出しレンズ2122、ニューメリカルアパーチャ2125及びアライナ2130のそれぞれに設けられた1次ビームを通過させる孔の内側に、孔に内接するように配置され、さらにアパーチャ2140の後段で径が大きく形成され、この径が大きく形成された箇所の内側にカソードレンズ2150が配設される。
第1の管10071の材質は、磁性体でなければ特に限定されないが、銅の肉薄の管又はチタンの肉薄の管、プラスチックに銅めっき又はチタンめっきしたものを好適に用いる。これによって、第1の管10071に高電圧を印加した場合に第1の管10071の内部に磁場が形成され、光又はレーザ光が照射された光電子面2121で発生した1次電子ビームが高加速される。
一方、図37に図示していないが、第2の管は、上述したフィールドアパーチャ(FA)2110、光電子発生装置2120、アライナ2130、E×B偏向器(ウィーンフィルタ)(図示せず)、アパーチャ2140、カソードレンズ(CL)2150、第一の管10071を覆い、GNDに設定される。これは、コラム装置の最外部構成となるので、この部位をGNDに保持して、他の装置部位との導体接続、及び人が触れたときの感電防止、等のために構成されている。
引き出しレンズは1枚で、本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態においては、電磁レンズを用いる。他の構成については、上述した一実施形態と同様であるので説明は省略する。
このような二重構造の管とすることで、本願発明に係る1次光学系2100は、試料表面電圧をGNDにし、二重管構造の内側の管である第1の管10071に高電圧を付加することにより、光電子面2121で発生した電子ビームを高加速させることができる。従って、本願発明に係る1次光学系は、高加速カラムということができる。
本願発明(図37参照)に係る1次光学系2100は、各構成要素に対して印加する電圧を、それぞれ次のとおりとする。光電子面2121の電圧をV1、第1の管10071の電圧をV2、ニューメリカルアパーチャNA2025の電圧をV5、アパーチャ2140の電圧をV6とする。また、ウエハ表面電圧(リターディング電圧ともいう。)をRTDとする。低LE条件では、V1=RTD−10V〜RTD+5V。V2、V5、V6は基準電位である。そして、本願発明の一実施例においては、RTD=0、V1=−5V、基準電位=40000Vと設定した。以上のような電圧印加により、低LEで、高分解能で高いスループットを実現できる。
このとき、磁場レンズを用いると、派生する立て磁場(光軸方向の残留磁場)によりビームの回転が起こる。よって、光電子面で形成した2次元の光電子発生形状が発生部と磁場レンズ通過後で回転してしまうことがある。これを補正するために、回転補正レンズをNA付近または磁場レンズの下流位置に設置して影響を補正する。磁場レンズ下流位置の補正レンズは、磁場レンズになるべく近い位置(直後)に設置して回転補正を行うとよい。
また、静電レンズの本願発明の1次光学系2000(図35参照)において、2重管構造の例は、光電子面2021電圧V1を基に記載すると、以下のように各構成要素に電圧を印加する。すなわち、低LEの場合、V1=RTD−10V〜RTD+5V。V2、V5、V6は基準電位、V3=基準電圧+10〜100kVである。そして、本願発明の一実施例においては、RTD=0、V1=−5V、V2=基準電位+40000V、V3=65000Vと設定した。また、基準電圧が基準空間電圧となるように、これらのレンズを内蔵する管1があり、図35のレンズ、アパーチャ、アライナはこの基準電圧が引火されている管1の中に内蔵される。そして、その外側に、GND電位を有する管2が設置されている。管1と管2の間は絶縁部品により固定されている。(管1と管2は図示せず)。以上のような電圧印加により、低LEで、高分解能で高いスループットを実現できる。
本願発明に係る1次光学系2100は、試料表面電圧RTDを0Vにしたままで検査できる効果が得られる。更に、本願発明に係る1次光学系2100は、上述した本願発明に係る1次光学系2000と同様の効果を得ることができる。また、本願発明に係る1次光学系を備える電子光学装置の効果も同様であるので、説明を省略する。
1次光学系における光電子発生装置の変形例
本願発明に係る1次光学系における光電子発生装置の他の例を示す。図38及び39は、1次系の途中位置から、コラム内に設置されたミラーにより、光電子面に光またはレーザが導かれるときの例である。
図38は、基準電圧が高電圧、例えば、40kV時の例である。即ち、本願発明に係る1次光学系2000の第2の実施形態に適用した例である。このとき基準電圧を形成するため高電圧が印加される管10071にV2=40kVの電圧が印加されている。管10071内は同一電圧空間である。よってこの例では、中心部に光電子の通る穴の開いたミラー、例えば三角ミラー2170を用いてDUV光または、UVレーザを、図示されない管100071に設けられた穴を通して導入し、この三角ミラー2170によって反射させて光電子面2121に照射する。そして、照射された面から光電子が発生し、この光電子がEXレンズ2120およびNA2125、そして、下流のアライナを通過して、試料面に照射される。このとき、発生した光電子が1次系の軌道を形成するために、光電子面2121には規定値の電圧が印加されている。LE=RTD電圧−V1で決まる。
一方、図39は、図38で示した例と同様に三角ミラー2070によって光電子を発生させる光又はレーザを光電子面に照射するものであり、基準電圧GNDの例である。即ち、本願発明に係る1次光学系2000の一実施形態に適用した例である。このとき、例えば、V2、V4とV5がGNDで、その付近が基準電圧空間とする。そして、図38と同様のミラーを設置して、光・レーザを導入することが可能となる。このとき、発生する光電子の量は、光またはレーザの照射強度にて決まるので、照射する強度の制御が行われる。これは前述した強度の制御方法が用いられる。この時、ミラーはミラー表面と構造体全体が導体または、導体でコートされている。そして、その電位は基準電位と同じ電位になっている。空間電位を乱さないように同電位となっているのである。また、1次ビームがミラーの影響を受けずに通過できるように、ミラーの光軸中心部には穴が開いており、その穴を1次ビームが通過する。この穴内部においても基準電圧と同電位となるように、導体材料または導体がコートされ基準電圧部に接続されている。
また、光電子発生の形状については2つの方法を示す。図39を用いて説明する。1つは、コラム内にあるミラーの入射前に、ビーム系状を規定するFAアパーチャ2010を用いる。フィールドアパーチャ(FA)2010の形状のビーム形成を行い、そのビームを光電面に照射して、その形状の光電子を発生させる。このとき、フィールドアパーチャ(FA)2010の投影サイズは、フィールドアパーチャ(FA)2010上流にあるレンズ位置により制御される。
もうひとつの方法は、光電子面にパターンのマスキング材をコーティングする方法である。図40は、光電子面にパターンのマスキング材をコーティングした例を本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態に係る1次光学系2100に用いる例を示す図である。図40に示すように、光電子面2121にマスキング材2122をコーティングする。このマスキング材2122はパターン形状の穴があり、この穴部分はマスキング材がコーティングされていない。このコーティングによりその部位からは光電子が発生しないで、マスキング材がない部位から光電子が発生する。つまり、DUV光が照射されたとき、マスキングされていないパターン状の光電面部位からパターン形状の光電子を発生する。このとき、マスキング材としては、光電子が発生しない材料をコーティングしておけばよい。ワークファンクションが大きな材料、または、発生効率が低い材料を用いればよい。例えば、カーボン、Pt、Cr等である。ただし、チャージアップすると電位不均一性を形成し、放出電子の軌道を曲げてしまう等悪影響を及ぼすので、導電性材料を用いる。
図41は、更に、効率を良くするため、透過した光またはレーザを反射させて、光電子面に再度照射する方法を示す図である。光電子面2121側から入射した光・レーザが反射面構造(反射面2123)を有する光・レーザ透過部材中で反射して光電子面2121に戻り再度照射が行われるのである。この方法だと、複数回光電子面2121に光またはレーザが照射されるので、効率が高くなる。例えば、光電子面2121の光/レーザの透過率が60%とすると、透過した60%の光/レーザを再度照射することにより照射回数に応じた光電子発生量の増加を得られる。この例に限らず、複数回照射する方法は有効である。特に、2〜5回までの照射がその有効性を得られる。それ以上では、光/レーザ強度が落ちてしまうので有効性は大きく低減する。このように、複数回照射が可能となると、入射する光・レーザの強度は、一回の場合の1/2〜1/5ですむ効果が期待できる。たとえば、照射光/レーザ強度が1W必要なときに、0.2〜0.5Wですむ。特に、大きな出力の光源を必要とする場合、光源自体がない場合やその運転管理コストが大きな場合がある。このとき、低出力光源が利用できるとそれらのコスト、効率、熱による影響、光導入系の素子劣化等の影響を低減できるので大変有効となる。
なお、図40及び図41に説明した例は、本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態に係る1次光学系2100に適用する例を示しているが、これに限定されるものではなく、他の実施形態に係る1次光学系2000に適用してもよい。
(実施形態10)
二重管構造鏡筒を有する半導体検査装置
上述したように、本願発明に係る1次光学系の第2の実施形態に示した1次光学系2100を備える電子光学装置70は、各構成要素に印加する電圧の設定が、一般的な電子銃とは異なる。すなわち、基準電位V2を高電圧(一例として、+40000V。)としている。そこで、本願発明に係る電子光学装置70を備える半導体検査装置1は、第1に二重管構造としている。
図42を用いて説明する。図42は、本発明の一実施形態に係る半導体検査装置の二重管構造を模式的に示す図である。図42においては、第1の管及び第2の管を強調して示しているが、実際の第1の管及び第2の管の断面はこれと異なる。図42に示すように、本願発明に係る1次光学系2000を備える電子光学装置70は、第1の管10071と第1の管10071の外部に設けられた第2の管10072の2つの管から構成される。言い換えれば、2重管構造としている。そして二重管構造の内部に、光源、1次光学系、2次光学系及び検出器が収容される。そして、第1の管10071に高電圧(一例として、+40000V。)を印加して、第2の管10072はGNDとする。第1の管10071にて高電圧の空間基準電位V0を確保し、第2管でGNDにして囲う。それにより、装置設置のGND接続の実現及び感電を防ぐ。管10071は絶縁部品により管10072に固定されている。この管10072はGNDであり、主ハウジング30に取り付けられる。第1の管10071の内部に1次光学系2000又、2次光学系及び検出系76等が配設される。
第1の管10071及び第2の管10072との、内部の隔壁は、ねじ等の部材に至るまで、磁場に影響を与えないように、非磁性材料で構成され、電子線に磁場が作用しないようにしている。なお図42において図示はしていないが、第2の管10072の側面には空間が設けられ、内部に、光源及び光電子発生部等1次光学系2000の一部が配設された突出部が接続される。同様に第1の管10071にも第2の管10072に設けられた空間と同様の空間が設けられ、光電子発生部で発生した光電子がこれらの空間を通して試料に照射される。なお、光源は、必ずしも第2の管10072の内部に設ける必要はなく、大気側に配置して、真空側の第2の管10072内に収容された光電子発生部に導入してもよい。しかし、1次光学系、2次光学系は、二重管構造の内部に必ず収容される。検出器は、第1の管10071内に設置される場合と第1と第2の管とは関係ない独立した電位にて設置される場合がある。これは、検出器の検出面の電位を任意に設定して、検出器に入射する電子のエネルギを適切な値に制御することを特徴としている。管1と管2にたいして絶縁部品により電位分離された状態において、検出器の検出センサ表面電位を任意の電圧を印加して動作可能とする。このとき、センサ表面電位VDとすると、センサ表面に入射するエネルギはVD−RTDで決まる。検出器にEB−CCDまたはEB−TDIを用いた場合、センサのダメージを低減して長期間使用するために、入射エネルギを1〜7keVで用いると有効である。
更に本願発明に係る電子光学装置70を備える半導体検査装置1の他の構成について説明する。図43は、本願発明の一実施形態に係る半導体検査装置1の全体構成を示す図である。図43に示すように、本願発明の一実施形態に係る半導体検査装置1は、第2に第2真空チャンバ900を有する。すなわち、半導体検査装置1に第2真空チャンバ900を配設し、第2真空チャンバ900内に高電圧を発生する電源910を配設するとともに、第1の管及び第2の管が収容された鏡筒71と第2真空チャンバ900とを接続管920で接続し、接続管920内に配線を配設している。これは、上述したように本願発明に係る電子光学装置70は、従来と異なり、基準電位V0を高電圧にするからである。基準電位V0を高電圧にするために、本願発明に係る電子光学装置70を備える半導体検査装置1は、管を二重管構造にしている。そして、内側の第1の管10071に高電圧を印加する。このような高電圧を印加する場合、大気と真空のフィードスルーは大気側の耐圧が低いために沿面耐圧を確保するために、大きなフィードスルーを要する。例えば、1kV/mm耐圧として、40kVでは、40mm以上の絶縁沿面距離を有する絶縁部品とそれに対する大きなコネクタが必要となる。このような大きなコネクタが多数あると鏡筒に設置部を設けることの占有部位が大きな割合をしめ、鏡筒サイズとそのコストが大きくなってしまう。そのため、本発明では、電源専用の真空チャンバを設ける。それにより出力からのフィードスルーが不要となるので、配線を電極まで接続すればよい。この時、電源からの発生ガスがコンタミ汚染要因となるので、配線途中で真空同通を切るために、絶縁部品に電源用真空チャンバと鏡筒とを真空絶縁すると有効である。また、高電圧の場合、配線が太くなる。半導体検査装置1においては、試料印加電圧を高くすると、太い配線がステージ周囲に多数設置する必要が生じる。ワーキングチャンバ内部にこのような径の大きな配線を配置すると、ステージ動作時に配線の移動を伴うため大きなトルクが必要となり、例えば、配線が壁面と擦れる力が大きくなりそれによるパーティクル発生が大きな問題になる。よって、試料電位をGNDにして、基準電圧を高電圧にする方式は大変有効である。この時、検出器表面の電圧を制御して、センサダメージを低減するとさらに有効である。試料電位と、基準空間電位と、センサ表面電位を異なる値にする。その時、例えば、試料電位はGND、基準電圧は10〜50kV、センサ表面電位は3〜7kVとすると、大変有効となる。また、上述したように第2の真空チャンバ900を配設して電源910を収容し、接続管920によって鏡筒等と接続し、接続管920内に配線を配設して真空配線を実現している。電源には外部から供給電源(AC100VまたはDC24V等)が導入され、通信は光通信方式が用いられる。この供給電源程度であれば小さなフィードスルーで済むので大気側からの接続は容易である。
また、上述したように、2重管構造を有するため、内側の管(管1)は高真空で、外側の管(管2)と内側の管(管1)の間は大気圧状態も可能である。このような時は、管1内に静電電極を設置することは、配線管1の壁で接続する数量が多いことと真空/大気のフィードスルーが大きくなることにより現実的ではないことが有る。このとき、レンズ、アライナ、補正器は磁場を使用したレンズ、アライナ、補正器が用いられる。これにより管1にフィードスルーを設置する必要が無くなり、高電圧の基準空間を形成する場合には有効である。この構造を用いることは、前述した実施形態の1〜9の形態に適用することも可能である。
以上のような鏡筒、電源用第2真空チャンバ及び鏡筒と第2真空チャンバを接続する真空配線用の接続管の構成をいずれも二重構造とすることにより、上述した本願発明に係る1次光学系2000を備える半導体検査装置1が提供される。ただし、これは一例であり、本願発明に係る1次光学系2000を備える半導体検査装置1は、これに限定されるものではない。また、これまで述べてきた実施形態、例えば実施形態1〜9で示された1次系及び2次系の実施形態についても、本実施形態の2重管構造を用いて行うことも可能である。
(実施形態11)
クロスオーバ位置におけるビーム測定方法及び該方法を用いた1次照射電子ビーム及びNA位置の調整方法並びに該調整方法を用いた半導体検査装置
上述した本願発明に係る1次光学系を備えた電子光学装置を用いた半導体検査方法について説明する。なお、以下の方法は、一般的な電子銃を備えた電子光学装置を用いた半導体検査装置にも適用できる。
本実施の形態では、写像投影型観察装置(写像投影光学系を有する電子線観察装置)を用いて試料が観察される。この種の電子線観察装置は、1次光学系及び2次光学系を備える。1次光学系2000は、光電子発生部から出射される電子ビームを試料に照射して、試料の構造等の情報を得た電子を生成する。2次光学系は、検出器を有し、電子ビームの照射により生成された電子の像を生成する。写像投影型観察装置では、大きな径の電子ビームが用いられ、広範囲の像が得られる。つまり、通常のSEMのように絞られたスポットのビームではなく、面ビームで照射を行う。
電子ビームを試料に照射すると、複数の種類の電子が2次光学系で検出される。複数種類の電子とは、ミラー電子、2次電子、反射電子、後方散乱電子である。本実施の形態では、2次電子、反射電子及び後方散乱電子を、2次放出電子という。そして、ミラー電子と2次放出電子の特性を利用して、試料を観察する。ミラー電子とは、試料に衝突せず、試料の直前で跳ね返ってくる電子をいう。ミラー電子現象は、試料表面の電場の作用によって生じる。
上述したように、2次電子、反射電子及び後方散乱電子を、2次放出電子という。これら3種の電子が混在する場合も、2次放出電子という用語を用いる。2次放出電子のうちでは、2次電子が代表的である。そこで、2次電子が、2次放出電子の代表として説明されることがある。ミラー電子と2次放出電子の両者について、「試料から放出される」「試料から反射される」「電子ビーム照射により生成される」などの表現が用いられてよい。
図44は、試料に電子ビームを照射したときのランディングエネルギーLEと階調DNの関係を示す図である。ランディングエネルギーLEとは、試料に照射される電子ビームに付与されるエネルギである。電子銃に加速度電圧Vaccが印加され、試料にリターディング電Vrtdが印加されるとする。この場合、ランディングエネルギーLEは、加速電圧とリターディング電圧の差で表される。
また、図44において、縦軸の階調DNは、2次光学系の検出器で検出された電子から生成した画像における輝度を表す。すなわち、階調DNは、検出される電子の数を表す。多くの電子が検出されるほど、階調DNが大きくなる。
図44は、0[eV]付近の小さいエネルギ領域における階調特性を示している。図示のように、LEがLEBより大きい領域(LEB<LE)では、階調DNは、比較的小さい一定の値を示す。LEがLEB以下、LEA以上の領域(LEA≦LE≦LEB)では、LEが小さくなるほど、階調DNが増大する。LEがLEAより小さい領域(LE<LEA)では、階調DNが、比較的大きい一定の値を示す。
上記の階調特性は、検出される電子の種類と関係している。LEB<LEの領域では、検出される殆どすべての電子が、2次放出電子である。この領域は、2次放出電子領域ということができる。一方、LE<LEAの領域では、検出される殆どすべての電子が、ミラー電子である。この領域は、ミラー電子領域ということができる。図示のように、ミラー電子領域の階調は、2次放出電子領域の階調より大きい。これは、2次放出電子と比べて、ミラー電子の分布の範囲が小さいからである。分布範囲が小さいので、より多くの電子が検出器に到達でき、階調が大きくなる。
また、LEA≦LE≦LEBの領域は、2次放出電子領域からミラー電子領域(又はその逆)への遷移領域である。この領域は、ミラー電子と2次放出電子が混在する領域であり、混在領域ということもできる。遷移領域(混在領域)では、LEが小さくなるほど、ミラー電子の発生量が増大し、階調が増大する。
LEA及びLEBは、遷移領域の最低ランディングエネルギー及び最高ランディングエネルギーを意味している。LEA及びLEBの具体的な値を説明する。本発明者の研究結果では、LEAが−5[eV]以上であり、LEBは5[eV]以下である(すなわち、−5[eV]≦LEA≦LEB≦5[eV])。
遷移領域のメリットとしては次の通りである。ミラー電子領域(LE<LEA)では、ビーム照射により発生する全ての電子がミラー電子になる。そのため、試料の形状に関係なく、検出される電子が全てミラー電子になり、試料の凹部でも凸部でも階調の差が小さくなり、パターンや欠陥のS/N及びコントラストが小さくなってしまう。したがって、ミラー電子領域を検査に使用するのは難しい場合がある。これに対して、遷移領域では、形状のエッジ部の部位にて特徴的かつ特異的にミラー電子が生じ、他の部位では2次放出電子が生じる。したがって、エッジのS/N及びコントラストを高くすることができる。したがって、遷移領域は検査を行うときに大変有効である。以下、この点について詳細に説明する。
図45は、上記の遷移領域の現象を示している。図45は、遷移領域の現象を示す図である。図45において、ミラー電子領域(LE<LEA)では、総ての電子が、試料に衝突することなく、ミラー電子になる。これに対して、遷移領域では、一部の電子が試料に衝突し、試料が2次放出電子を放出する。LEが大きくなるほど、2次放出電子の割合が多くなる。そして、図示されないが、LEがLEBを超えると、2次放出電子のみ検出される。
本発明では、2次放出電子領域、遷移領域、ミラー電子領域を含めて、及び、凹凸構造を有するパターン、凹凸が無いパターン、を含めて、照射電子ビームと画像形成をする2次光学系の電子ビームの条件作成と調整方法を発明したものである。本発明により飛躍的に効率よく、高精度の調整と条件作成を達成できる。それを下記に示す。
本発明は、2次光学系の途中にあるクロスオーバ位置(以下、CO位置と記す。)に来ているビームの位置と形状を測定することが大きな特徴である。従来は、CO位置に来ているビームの測定を行わずに、NAを移動して、画像をとり、その画像のコントラストを評価していた。これでは、膨大な時間が掛かってしまう。従来の手順は次のとおりである。
a. CO位置と検出器の間にあるレンズで結像条件を形成する。
b. もし、NAが有る場合は、口径の大きなものにする。または、取り外す。
CO全体が観察できたほうがよい。例えば、φ1000〜φ5000μm
c. CO位置のビームを撮像する。
本発明では、この様な撮像及び調整を効率よく行うため、また、コンタミネーションによる劣化や交換・メンテナンス性の向上のため、機器の構成は後述するが、特徴的には、可動式ニューメリカルアパーチャ(NA)10008を備えている。これにより、LEに対するCO位置でのビーム形状の測定例を図46に示す。図46は、LEに対するCO位置でのビーム形状の測定例を示す図である。図46において、CO位置に来ているビームの形状を上段に示し、試料表面に照射されたビームのミラー領域、遷移領域、2次放出電子領域における現象を下段に示す。また、上段において、ミラー電子を黒点で示し、2次放出電子を円形で示している。LEに対して、ミラー電子領域では、ミラー電子のみが観察される。遷移領域では、ミラー電子と2次放出電子が観察される。2次放出電子領域では2次放出電子のみ観察され、ミラー電子は観察されない。この撮像により得られた像データを用いて、ミラー電子の位置、サイズ、強度、及び、2次放出電子のサイズ、強度を測定する。
また、この観察により、対象とする試料に照射電子ビームを当てた時に、3つの状態のうち、どの状態にあるのか即時に判断できるのである。従来は、照射条件と得られた像から、あいまいな予測を行っていた。この様な正確な状況判断ができなかった。また、電源設定精度による誤差、光軸条件による影響も正確に判断できなかった。これは、ミラー電子領域、遷移領域の形成が、LE、光軸条件に敏感であるため、それを制御する機器や条件の誤差にも影響を受けてしまうからである。例えば、電源の設定精度は一般に0.1%程度である。5000V設定電源の設定誤差は、5Vにもなるのである。5Vの変化が起こると、遷移領域→ミラー領域、や、遷移領域→2次放出電子領域になることも充分ある。その確認ができなかったために、設定値によりミラー電子領域であろう、または、遷移領域であろう等のあいまいな予測しかできなかった。
更に、本発明では、この測定を行う方法を用いて、1次照射電子ビームの調整と画像形成を行うNA位置の設定方法について述べる。マスク、ウエハなどの試料の方向が2次光学系(コラム)の座標と位置調整が済んでいるものとする。
図47は、本発明の一実施形態に係る検査方法の試料に対する1次ビームの入射角度を示す図である。図47に示すように、入射電子ビームの照射角度θと試料(または、コラム座標)に対する照射方向αとする。つまり、試料表面に対して垂直方向(Z方向、2次光学系の光軸方向と同じ)からの角度をθとする。例えば、θ=0のときは、試料面に対して垂直入射となる。θ=90度のときは、試料に対して水平入射となる。斜め方向であるθ=45度のときは、試料表面に対して45度入射となる。また、θはZ軸からの絶対値表示でよい。Z軸に対して右側でも左側でも同じ角度であればθは同じ値となる。通常、θは、0〜45度の範囲で用いられる。αの例としては、試料(または、コラム座標)においてX、Y方向をE×BのE方向をY方向、B方向をX方向とする。例えば、E×BのE+側(1次光学系がある方向)がY+、E−側がY−としている。この時、試料を検出器側からみてY+に対して右90度方向がX+となり、X−は左90度方向である。また、例えば、試料が縦ライン/スペース(L/S)と横ライン/スペース(L/S)のパターン量域があるとき縦ラインがY方向で、横ラインがX方向になるように設置されているとわかりよい。このとき、例えば図47(a)のように、X+方向を0度とする試料入射角度αと決めることができる。α=0のとき1次電子ビームの入射方向はX+方向となる。斜め方向の一例であるα=45度のときはX+、Y+の中間方向に斜め入射する45度となる、これは、縦L/Sと横L/Sにたいして同様の1次電子ビームの照射方向を形成することが可能となる、そして、同様のラインとスペースからの電子信号を形成し、同様のコントラストとS/Nを得ることが可能となる。上述のθとαの値を調整したとき、2次光学系のNAアパーチャがあるCO位置に来ているビーム観察を行うと、図48のようになる。図48は、CO位置のビーム観察の一例を示す図である。この例は、遷移領域での調整例である。
2次放出電子のビームは、CO位置で、円形となっている。これは、試料に電子ビームが衝突したことによる表面からの放出電子なので、表面からの放出方向が等方的であるため、CO位置では円形となる。それに対し、ミラーは前記θとαに影響された方向に表面近傍で反射するため、CO位置において、θとαを反映した位置にミラー電子が形成される。
例えば、試料に対する入射角度αのとき、CO位置では、2次放出電子の円形に対してαの角度方向に位置が形成される。そして、試料表面の垂直方向をZとし、検出器方向をZ+とすると、Zに対する入射角度をθとする。このθの大小により、CO位置のミラー位置が影響を受ける。つまり、図48にあるように、θ(絶対値)が大きいと2次放出電子のCO中心からの距離Lmが大きくなる。つまり、斜め入射のとき、入射角度θが大きいとミラー位置は2次放出電子のCO中心から離れた位置に形成されるのである。また、1次電子ビームを垂直入射させると、2次放出電子のCO中心位置にミラー位置が形成される。
図49にその例を記す。図49は、1次電子ビームの入射角度によるミラー位置を示す図である。X方向の電子ビーム照射の場合、ミラー電子位置は2次放出電子のCOに対して、X軸上に形成される。Y方向の電子ビーム照射の場合、ミラー電子位置は2次放出電子のCOに対して、Y軸上に形成される。斜め方向αからの照射の場合、2次放出電子のCOにたいして、α方向にミラー電子位置が形成される。よく用いられるαは、0度、30度、45度、60度、90度、120度、150度、180度、210度、240度、270度である。また、θは、0〜45度の範囲で用いられることが多い。また、高いコントラスト、S/Nがえられる凹凸表面を有するものでは、例えばEUVマスクやナノインプリントマスクや半導体ウエハでは、0〜20度の範囲で用いられることが多い。
この1次系の入射角度の制御について、1次系のビームアライナを用いて行うことができる。また、X方向は1次系のビームアライナ、Y方向はE×Bにより調整を行うことも可能である。また、Y方向においては、E×Bの代わりにビームアライナを用いてもよい。
本発明では、コントラスト、S/Nの高い電子画像条件を形成するため、NA位置の調整を行っている。これは、ミラー電子位置とNA位置との関係により、得られる画像情報が異なり、像質が大きく変化するからである。例えば、
a. ミラー電子の多く含んだ画像:ミラー電子位置付近にNAを設置
b. 凹凸パターンで、凹部にミラー電子が多い凹白/凸黒の画像
c. 凹凸パターンで、凹部にミラー電子が少ない凹黒/凸白の画像
d. コントラストが非対称な画像、縦/横パターン等
e. 凹凸のエッジ部にミラー電子を形成した画像等、である。
よって、要求する画像を得るためには、ミラー位置とNA位置の関係を求めて設定する必要がある。従来は、起こっている現象の理解が不足していたこと、及び、調整方法が分からなかったので、闇雲に、NAを移動させては画像を取得して条件を決めていた。本発明により、作業効率が上がり、大幅な時間・コスト削減が可能となった。このとき、NA位置を調整して設置するために、NA可動機構が必要である。また、二次元移動機構であるとさらに好適である。1次元移動では、MC(ミラー電子位置)が2次放出電子のCO中心に対して、斜め方向または、移動できない軸方向(例えばx方向移動しかできないと、y方向移動ができない)にあるときには、MCとCO中心位置の間にNAを設置することができないからである。
図50及び図51には、ミラー電子位置とNA位置の例を示している。図50及び図51は、ミラー電子位置とNA位置の例を示す図である。また、凹凸パターンを有する試料に限らず、平坦な表面試料においても同様の条件調整方法が適用できる。平坦な試料であっても、そこに電位の変化や材料の変化を捉えた画像の形成がしたい場合には、変化をとりやすい条件を本発明により求め、作成できるのである。例えば、平坦試料面にある微小異物、洗浄残り、コンタミネーション等の検出や、導電材料と絶縁材料の混在パターン検出等へ適用できるのである。この場合も、前述と同様に、欠陥やパターンのコントラスト、S/Nが高い条件を求めるために、上述の条件作成方法を用いることができる。そして、従来できなかった高感度の検出を実現できる。このような調整ができることにより、従来、画像を見ながら行っていた方法に比べ、コントラスト×1.2〜×2、S/N×1.5〜×5を得られる場合が確認され、また、調整時間Tcと再現性に大変有効であり、例えば、従来に比べTc=1/2〜1/10を得られるのである。
NA設置位置の分類としては、大きく分けて、ミラー電子位置の周囲に設置する場合と、離れた位置におく場合がある。離れた位置ほど、ミラー電子の影響が小さくなる。
以下に、像形成の例を示す。
1)凹凸パターンで凹部白/凸部黒信号の像
局所的にミラー形成が起こり、その部位の電子量増加により高コントラスト、高S/Nが得られる例である。
図52は、試料表面の凹凸構造のエッジ部におけるランディングエネルギーLEと階調DNの関係を示す図である。エッジ部は、凹部の両端に位置し、試料の高さが変化する部分である。図52において、点線がエッジ部の階調特性を示し、実線が他の部分の階調特性を示す。他の部分の特性は、図44の特性に対応する。
図52に示すように、エッジ部とその他の部分では、特性線が異なっている。エッジ部の特性線は、ランディングエネルギーが大きくなる方向にずれている。すなわち、エッジ部では、遷移領域の上下限が大きく、遷移領域の上限はLEB+5[eV]である。ここで、LEBは、エッジ以外の部位の遷移領域の上限である。このような特性線のシフトが生じるのは、形状、構造及び材料等がエッジ部と他の部分で異なるからである。そして、特性線のずれることにより、エッジ部と他の部分で階調差ΔDNが生じる。
次に、図52に示されるようにエッジ部の特性が他の部位と異なる理由について、そして階調差ΔDNが生じる理由について検討する。
図53は、試料の凹凸構造の例であり、微細なライン/スペース形状の断面を示す図である。例えば凸部がラインであり、凹部がスペースである。ライン幅及びスペース幅が100μ以下である。図53(a)の形状では、導体(Si)が凹凸形状を有している。そして、凸部の最上部に酸化膜(SiO2等)が形成されている。同様に図53(b)の形状では、凸部の最上部にTaBOが形成されている。
図54は、図53(a)の構造に電子ビームを照射したときに凹凸構造のエッジ部でミラー電子が生じる現象を示す図である。図54では、縦縞のパターンが形成されている。電子ビームが照射されると、照射電子が、凹部(溝)の一方のエッジの付近で軌道を変え、横方向に曲がり、溝の反対側のエッジに向かって進む。そして、照射電子は、反対側のエッジ付近で再び軌道を変え、上方に戻っていく。こうして、照射電子は、試料に衝突することなく、ミラー電子になる。このようにしてエッジで生じるミラー電子を、エッジミラー電子ということができる。エッジミラー電子は、両端のエッジから対称に生じる。図55も、図54と同様に、図53(a)の構造にて生じるエッジミラー電子を示す図である。図55では、横縞のパターンが形成されている。このとき、遷移領域で行っているので、エッジミラー発生部以外の電子は、表面に衝突して二次放出電子を発生する。そのため、例えばエッジ部のミラー電子と他の部位の二次放出電子によりパターンのコントラスト及びS/Nが決まる。ミラー電子の透過率が高いために高いコントラスト及びS/Nが得られる。また、パターン形状や2次光学系の性能によっては、エッジミラーを完全に分解して画像形成ができない場合がある。例えば、2次光学系の収差低減が不足するためエッジミラー電子が一体となって観察される。よって、スペース部がエッジミラーによる白信号、ライン部が二次放出電子による黒信号で観察される場合がある。また、1次電子ビームの入射方向によっては、エッジ部の1方向にのみエッジミラーが生じる場合がある。このときも、スペースがエッジミラーによる白信号、ライン部が二次放出電子による黒信号で観察される場合がある。
また、図56は、照射電子がエッジミラー電子に変化する電子軌道のもう一つの例を示す図である。この例では、照射電子が、凹部の一方のエッジに向って入射し、一方のエッジの近傍を通るカーブ軌道に沿って凹部内に侵入し、凹部の底部に衝突することなく進行方向を転換し、凹部の他方のエッジの近傍を通って、ミラー電子になる。このようなミラー電子も、エッジミラー電子である。エッジ構造では、各照射電子が、図54又は図56の軌道を通り、或いは図54及び図56の中間的な軌道を通り、エッジミラー電子になると考えられる。
次に、電子の軌道がエッジ付近で曲がりやすい理由について説明する。図53は、導体の凸部の表面に酸化膜が形成されている例を示す図である。図53の構造では、導体の凸部の表面に酸化膜が形成されている。この構造では、試料表面の酸化膜が負に帯電する。そして、凹部内の導体の電位が、酸化膜の電位よりも相対的に高くなる。エッジ付近で電位が変化するために、電子の軌道が上述のように曲がりやすく、その結果、エッジミラー電子が生じる。
本実施の形態では、プレチャージを行うことも好適である。プレチャージは、試料観察の前に行われる電子ビームの照射である。プレチャージにより、試料の絶縁領域が負に帯電する(図54等の例では、試料表面の酸化膜が負に帯電する)。プレチャージを行うことにより、絶縁領域の電位が安定する。これにより、エッジミラー電子が安定して発生し、図52の特性が安定して得られる。したがって、試料観察を良好に行うことができ、試料観察結果を用いる検査の精度も向上できる。
プレチャージの電子ビームは、試料観察のための電子光学系を用いて照射されてよい。あるいは、別の電子銃が、プレチャージのために設けられてよい。
図57は、試料の凹凸構造に関する別の例を示している。図57も、ライン/スペース形状の断面である。図57では、Si面に、酸化膜(SiO2等)の凸部が形成されている。このような構造では、凹部の両側のエッジにて、等電位面が屈曲する。等電位面の屈曲の影響で、照射電子の軌道が曲がる。その結果、図57の構造においても、照射電子は、図54〜図56に示された軌道を通り、エッジミラー電子になる。図57の構造でもプレチャージが好適に行われ、これにより、凸部の酸化膜の電位を安定させることができる。
また、導電材のみによって凹凸構造が形成されることがある。この場合も、凹凸に沿って等電位面が形成される。そして、凹部の両側のエッジでは等電位面が屈曲する。この等電位面の屈曲の影響で、照射電子の軌道が曲がる。その結果、照射電子は、上述したような軌道を通り、エッジミラー電子になる。また、図53bの構造においてTaBOがない場合の構造マスクでも同様に考えてよい。これは、EUVマスクの場合である。
また、導電材のみで凹凸面が形成されている場合でも、導電膜の表面には自然酸化膜が存在している。したがって、プレチャージを行うことが好適であり、これにより電位を安定させることができる。
以上に詳細に説明したように、試料の凹部では、電子が両端のエッジ付近を通ってUターンし、エッジミラー電子になる。そのため、エッジミラー電子は、通常の部位のミラー電子よりも発生しやすい。その結果、図52に示されるように、エッジ部では、エッジ以外の部分よりも、遷移領域が高いエネルギ側へと広がっている。
また、上記領域では、ミラー電子と2次放出電子が混在する。2次放出電子は、前述したように、2次電子、反射電子又は後方散乱電子である(あるいは、それらが混在している)。2次放出電子は、等方的に広がって放出される。そのため、検出器には、最大でも数%の電子しか到達しない。これに対して、エッジミラー電子は、照射電子がそのまま反射することにより生成される。したがって、エッジミラー電子については、透過率(検出器への到達率)がほぼ100%である。したがって、高い輝度(階調)が得られ、周囲との階調差ΔNが大きくなる。
上記のように、エッジ部では、ミラー電子が生じやすく、しかも、ミラー電子の透過率が大きい。その結果、図52に示されるように、ランディングエネルギーLEが大きい方へと、エッジ部の階調特性線がずれ、エッジ部と他の部位の間に階調差ΔDNが生じる。
本実施の形態は、上記の現象を利用して、解像度が高くコントラストも大きいパターン画像を生成する。上記で説明された凹構造は、本発明の凹パターンに相当する。本実施の形態では、凹パターンで効率よくエッジミラー電子が生じるように、ランディングエネルギーLEを設定する。ランディングエネルギーLEは、図示のように、従来一般の観察技術と比べて非常に低い値に設定されることになる。このようなエネルギ設定により、パターンと周囲の階調差ΔDNが大きくなり、高い解像度と高いコントラストの画像が得られる。
具体的には、LEA≦LE≦LEB、又は、LEA≦LE≦LEB+5[eV]になるように、ランディングエネルギーLEが設定される。これにより、ミラー電子と2次電子が混在する領域にランディングエネルギーLEが設定される。
前述したように、本発明の研究結果では、−5[eV]≦LEA≦LEB≦5[eV]である。例えば、LEA=−5[eV]、LEB=5[eV]であったとする。この場合、ランディングエネルギーLEは、−5[eV]≦LE≦5+5[eV]=10[eV]に設定される。さらに詳細には、ランディングエネルギーLEに依存してミラー電子と2次放出電子の混在の状況が変化し、階調差も変化する。ミラー電子の発生数が比較的小さい領域にランディングエネルギーLEを設定することで、大きな効果が得られると考えられる。
2)凹凸パターンで凹部黒/凸部白信号の像
局所的にミラー形成が起こり、そのミラーが検出器に届かないことにより黒信号となり、高コントラスト、高S/Nが得られる例である。
凹部で形成されたミラー電子が側壁等に衝突する。又は、軌道がずれて、上方のCO位置または、検出器位置まで届かないために、凹部の信号が減少し、黒信号として検出される。
この時、図52において、凹部の信号特性がbで、その他の部位がcである。凸部の信号は、ミラー電子の場合、ミラー電子+2次放出電子の場合、2次放出電子の場合がある。このとき、凹部のミラー電子が側壁面に衝突する場合、そこからは側面材料からの二次放出電子が発生する。そして、凸部のミラー電子が、到達電子量が多いため白信号として画像を形成する。このとき二次放出電子は黒信号を形成する。この凹黒信号、凸部白信号により凹凸パターン、つまりライン/スペース構造のコントラストおよびS/Nが高い条件を得ることができ、感度の高い欠陥検査が可能となる。また、凸部からはミラー電子と1次電子ビームの一部が試料表面に衝突することによる二次放出電子を含んでいる場合がある。このときも、凸部からの電子の検出器への到達電子量が多いため、凹部黒信号、凸部白信号により凹凸パターン、つまりライン/スペース構造のコントラストおよびS/Nが高い条件を得ることができ、感度の高い欠陥検査が可能となる。このとき、最表面層の材料の影響も受ける。SiO2やTaBOなどの酸化膜が側面の材料よりも二次放出電子量が多い場合がある。その時はさらに高いコントラストおよびS/Nを得ることが可能となる。また、このとき、凹部で形成されたミラー電子は大きく軌道がはずれ、またはNAを通過できない位置に軌道が外れるものや、側壁に衝突するものが多くある場合がある。そのときは、上述と同様に凹部からの電子は、凹部への入射1次ビームの1部が側壁に衝突して発生する二次放出電子となり、量的には少量となるため黒信号となる。それに対して、凸部は、ミラー電子、ミラー電子と二次放出電子の混在、または二次放出電子の場合があるが、いずれにせよ、入射1次ビームの全量が影響するため、凸部の電子量が相対的に凹部よりも多く取得できるので、高いコントラストおよびS/Nを得ることが可能となる。
この場合も、上述した、1次照射電子ビームの入射角度θとα及び2次光学系のミラー位置とNA位置の相対関係により大きく影響を受ける。NA位置の条件により凹部のミラー電子をカットすることも可能である。この様な調整を行い、凹凸パターンの高いコントラスト、S/Nを得る条件を求めて設定する。
(CO位置におけるビーム測定機構・・・第2検出器)
CO位置におけるビームの位置、形状を測定することにより多様なパターンに対して、電子ビームの条件作成と高精度の調整が可能となる。このような調整を行うために、可動式のニューメリカルアパーチャを備えると有効である。特に、2軸(x、y方向)方向に可動できるものが必要となる。また、レンズ条件によりz方向にCO位置が変化する場合があるので、x、y、zの3軸方向に移動できると更に好適である。
しかし、可動式のニューメリカルアパーチャを備えても、検出器が一個では、調整のたびに検出器を用いることになる。2次光学系で結像されるマスクやウエハからの電子画像は、検出器のマイクロチャンネルプレート(MCP)で増幅されたのち、蛍光スクリーンにあたり光の像に変換される。この検出器により光に変換された画像は、真空透過窓を介して大気中に置かれたFOP系でTDI−CCD上に1対1で投影される。調整のたびに頻繁に検出器を用いると、マイクロチャネルプレート(MCP)等の損傷が進行し、検出器の頻繁な交換が必要となる。これは、2次光学系の光軸調整や電子像の調整を行うときは、静止像を用いるため、静止像中の電子強度分布が長時間保持される。つまり、電子量が多い部位と少ない部位が一定時間以上保たれた状態で撮像されることになる。このとき、電子量が多い部位と少ない部位の素子劣化は異なるため、局所的にゲインの差が発生するため検出器事態のゲインのムラが生じてくる。これは、次の段階で検査を行うときに擬似欠陥量を増加する等検出性能を劣化させる要因となる。よって、静止像を撮像する場合はもうひとつの検出器を有すると好適である。検査時には、検出器はステージを動かしながら取得電子分布の異なる部位を短時間に変えながら連続して撮像する為、ゲインのムラによる劣化は少ない。
そこで、このような検出器の頻繁な交換を必要とせず、且つ、CO位置におけるビームの位置、形状を測定する手段、及光軸の調整を行うものとして、更にCO位置におけるビーム測定用の検出器として、検査用検出器の直前に第2検出器を設ける。図58は、本願発明に係る第2検出器の原理を示す図である。図58(a)は、本願発明の2次光学系を示す図であり、図58(b)は、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008位置における2次放出電子及びミラー電子の電子ビームを、レンズを通して第2検出器76−2に結像させることを示す図である。図58(b)に示すニューメリカルアパーチャ10008と検出系76との間に、本願発明の一実施形態に係る第2検出器76−2を設け、可動式のニューメリカルアパーチャ(NA)10008を移動させて、第2検出器でCO位置のビームの位置及び形状を撮像すればよい。ここで、CO位置(またはNA位置)のビーム形状・位置は、静止画を撮像できればよい。第2検出器76−2で撮像した情報を基に調整を繰り返し、調整後に検査を行う。
ニューメリカルアパーチャ(NA)10008を経由した二次放出電子やミラー電子は、検出器のセンサ面で結像する。この結像した2次元電子画像を第2検出器76−2で取得し、電気信号に変換して、画像処理ユニットに送る。CO位置の電子ビーム像が第2検出器76−2で撮像できるように、ニューメリカルアパーチャ10008と第2検出器76−2との間に、トランスファーレンズ又は、拡大投影用静電レンズを使用してもよい。
第2検出器76−2としては、EB−CCD又はC−MOS型EB−CCDを用いることができる。素子サイズは第1検出器(検出器761)であるEB−TDIの素子サイズの1/2から1/3の大きさでよい。これによって第1検出器よりも小さいPxサイズの撮像が可能となる。Pxサイズとは、素子サイズを光学倍率で割った値で、試料表面上の画像分割サイズのことである。例えば、素子サイズ10μm□で倍率1000倍のときPxサイズ=10μm/1000倍=10nmとなる。第1検出器よりも小さい素子サイズを有する第2検出器であれば、第1検出器よりも小さいPxサイズでの表面観察が可能となるのである。第1検出器のEB−TDI、第2検出器のEB−CCDまたはC−MOS型EB−CCDは、光電子変換機構及び光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面または、EB−CCDセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来のEB−CCDと比べるとC−MOS型のEB−CCDはバックグランドのノイズを著しく低減できるので、検出器起因のノイズ低減に大変効果があり、どう条件の撮像を行ったときに従来よりも、コントラスト向上、S/N向上を行うことができる。特に、取得電子数が少ないときに有効である。ノイズ低減において従来型EB−CCDの1/3〜1/20程度の効果がある。
ニューメリカルアパーチャ(NA)10008を通して検出器面で結像するビームを第2検出器76−2で検出し、検出したビームの位置及び形状によって、電子ビームの条件作成とニューメリカルアパーチャ(NA)10008等の位置を調整する。第2検出器76−2による検出結果によって各種の調整が行われた後、検出系76を用いた試料の検査を行う。従って、検出系76は検査時のみに使用する為、検出系76の交換頻度を抑制できる。また、第2検出器76−2は静止画のみを撮像するので、劣化が生じても検査には影響しない。このような、結像条件を達成するためには、例えば、第1検出器に電子像を結像する条件、第2検出器に結像する条件、CO位置のビームを観察するためにCO位置に来ているビーム形状を第2検出器に結像する条件等において、これらの調整は、図33(a)の例を参照するとトランスファーレンズ10009のレンズ強度を調整して第1検出器用と第2検出器用に最適な条件を求めてある結像条件を用いる場合がある。また、トランスファーレンズ10009の変わりにレンズ741を用いてもよい。レンズ中心−検出器間の距離が変わるので、それによりトランスファーレンズ10009とレンズ741を用いたときで倍率が変わるので、好適なレンズと倍率を選んで行えばよい。
上述した第2検出器76−2は、上述したCO位置におけるビームの位置、形状を測定して電子ビームの条件作成と高精度の調整を行う本願発明に係る調整方法と併せて用いることで効果が得られる。また、この第2検出器76−2は、本願発明に係る新たな光電子発生部を備える電子光学装置だけでなく、一般的な電子銃を備える電子光学装置に適用してもよい。本実施例は、上述の実施形態1〜実施形態11で述べてきた装置にも適用可能である。上記のビーム、NA位置の調整方法の例では、1次ビームが電子ビームの時の例を述べたが、照射系が光またはレーザのときにも適用できる。レーザまたは光を照射して光電子が試料表面から発生し、該光電子のクロスオーバサイズやその中心位置とNA設置位置との関係を適切に行うときに用いることができる。これにより、解像度のよい光電子像の形成が可能となるである。
また、他の例として、図58(c)に示すように、NA位置に、NAと連動してx、y方向に移動することができる第3検出器76−3を有することも可能である。例えば、NAの設置プレートに第3検出器76−3が一体に設置されていてよい。このとき、NA位置に来ているビームの形状・位置を観察するためにこのプレートを移動して、第3検出器76−3の中心が光軸中心に来る座標に移動して、きているビームを直接第3検出器76−3で観察することができる。これにより、後段のレンズ調整を行う必要はなくなる。
(実施形態12)
同一チャンバ内に光学顕微鏡及びSEMを備える検査装置
なお、上述した検出器で試料の検査を行った場合、更にSEMでの観察が必要になる場合がある。そこで、写像光学式検査装置とSEMが同一のチャンバに設置されていると大変有効である(図59参照)。たとえば、EUVマスク、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)マスクなどの微細なパターンの検査においては、写像光学方式のパターンとパターン欠陥の撮像条件を用いて高感度で超微小なパターンの検査を行うことが要求される。写像光学式検査装置とSEMが同一のチャンバに設置されている場合、同一のステージに試料が搭載されており、その試料に対して、写像方式とSEMの両方で観察及び検査が可能となる。このときの使用方法とそのときのメリットは次のようである。
第一に、同一のステージに搭載されているため、試料が写像方式との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まるため、同一部位の特定が高精度で容易にできる。分離された別々の装置にて試料の移動を行う場合、別のステージに設置を行うため試料のアライメントをそれぞれ行う必要があることと、それを行っても同一場所の特定誤差は5〜10μm以上となってしまう。現行の装置では、このような位置誤差のために、欠陥場所とずれた場所をレビューしてしまって、欠陥が無い部位を誤って撮像してしまい、欠陥判定がなしと誤って判断される場合が生じる。特に、パターンのない試料の場合は、位置基準が特定できないため、その誤差は更に大きくなる。パターンがある場合に比べ、2〜10倍程度である。
第二に、同一のチャンバとステージに設置されているため、写像方式とSEMの移動を行った場合でも、高精度で同一場所を特定できるので、高精度で場所の特定が可能となる。例えば1μm以下の精度が可能で、0.05〜1μmの範囲内に、観察したい異物や欠陥の位置を移動できる。このことにより、パターン及びパターン欠陥の検査を写像方式で行った場合、その検出した欠陥の特定及び詳細観察(レビュー)をSEMで行う場合大変有効となる。場所の特定ができるので、存在の有無(無ければ擬似検出)が判断できるだけでなく、欠陥の正確なサイズ・形状を高速に行うことが可能となる。別装置であるとパターン欠陥とその特定に多くの時間を費やす。
これまで述べてきた、写像光学方式のパターンとパターン欠陥の撮像条件を用いて高感度で超微小なパターンの検査を行うことと、このような写像光学方式とSEMが同一チャンバに搭載されている装置系を用いると、特に、100nm以下の超微小なパターンの検査とその判定・分類を大変効率よく、また、高速に可能とすることができる。以下に実施例について詳述する。
(実施例1)
これまで説明した光学顕微鏡、写像光学系、SEMがひとつのチャンバに設置されている場合、次の機能と機構を有することが特徴となる。
上記、光学顕微鏡、写像光学系、SEMのそれぞれの光学系の中心を求めておくこと、そしてそれら中心の座標関係をメモリ等に記憶しておくこと、及び、記憶されたそれらの光学系の中心座標に移動できることが重要であり、そのための機構を備えるとよい。一つのチャンバ内に、同じステージに設置された試料について、同一場所を観察するときに、該記憶された光学中心間をPCの制御画面よりボタンまたは、クリック操作により簡単に、移動できる。その精度は、同一のステージ上に設置されているために、高精度にて移動・位置静止が可能となる。例えば、0.05〜1μmの精度が可能となる。また、停止時の制御を工夫すれば、0.05〜0.1μmの精度が可能となる。その制御例として、複数回の停止許容値を用いて静止させることが挙げられる。例えば許容値A≦1μm、許容値B≦0.1μmの2種類の許容値を用いる。1番目の停止制御に許容値Aを用いて、その後に許容値Bを用いて停止させる。このように複数の許容値を用いて、かつ、段階的に許容値の小さい値を使用するとスムースに効率よく高精度で停止を行うことができる。
(アライメント手順)
このような、動作を可能とするために必要なことが、それぞれの光学系、つまり、光学顕微鏡、写像光学系、SEMにおける、試料のアライメントと写像光学系における検出器のセンサのアライメントとSEMの像形成におけるアライメントの関係である。これらをどのように決めておくかによって、作業工程、その時間や位置精度、擬似判定・欠陥種の分類の性能に影響を与える。本件では、効率的で高精度に行うために次の手順で行っている。
a)光学顕微鏡によって試料のアライメントを決定する(図60参照)。
これは、ステージの移動方向と試料の方向を一致させる作業を行い試料の方向を決定することである。例えば、回転ステージ等により、試料を回転させ、ステージの移動方向(y方向)に試料のy方向が一致するように試料の回転角θsを決定する。例えば、代表的なパターンのマークが試料のy方向上に2ヶ所以上ある場合、例えば、2箇所y方向で10〜300mm程度離れているパターンまたはマークを用いる。このとき、光学顕微鏡の光学中心上に該当する2つのパターンまたは、マークがくるように資料の回転角θs求めて、決定する。このとき、パターンマッチングなどの画像処理を行うことにより、アライメント精度は、1/10〜1/100Pxを得ることができる。
b)写像光学系の電子の画像を検出する検出器の回転角θtを決定する(図60、図61参照)。
この角度は、TDIセンサ(時間積分型CCD−TDIセンサ)、または、CCDセンサのy方向(y方向に各画素が並んでいる方向)をステージの移動方向に合致させるため、回転角θtを調整して決定する。具体例として、次の作業を行う。パターンまたは、マークを用いて、y方向の距離10〜300mm程度離れているものを用いる。上記a)により、ステージ移動方向と試料の回転θsが調整され、ステージ移動方向yと試料のy方向が高精度で調整されているため、例えば、1/1000〜1/100000rad、または、高精度調整により1/10000〜1/100000rad内に調整されている。この状態で、ステージをy方向に移動させ、それに同期させてTDI画像を取得し、パターン又は、マークのTDI画像の解像が最も良い状態、例えば、コントラストが最大となる回転角θtを求める。用いるパターンとしては、Y方向に1次元のL/Sパターン等が用いられる。回転角θtがずれているとL/Sパターンがボケて、コントラストが低くなる。回転角θtが適正値になるとコントラストが上昇し、最適値を求めることができる。この作業を行うことにより、ステージ移動方向yとTDIまたはCCDセンサのy方向のズレを、1/1000〜1/100000radにすることができる。また高精度に調整することにより、1/10000〜1/100000radにすることが可能となる。
c)次に、TDIの画像フレームの中心座標を求める(図62、図63参照)。
TDI画像は、2次元の連続像であるので、画像処理により、連続像をフレームに分割する。例えば、1000×1000Px、2000×2000Px、4000×4000Px等を1フレームにする。これらの各フレームの中心が目標位置となるように調整・決定されている。ここで、目標座標を決定する方法の例を挙げる。
A)例えば、特徴のあるパターン部やマーク部を用いる。これらの光学顕微鏡における光学中心位置に設置して、それらの座標値を記憶する。そして、これらのパターン部やマーク部がTDI像のフレーム中心になるように、TDI像の取得開始位置や終了位置を決定する。このy方向位置の調整は、画像処理上、つまりフレーム分割をする開始位置のパラメータ調整を行っても良い。フレームを分割する開始位置を1Px単位で調整できることにより容易に調整できる。例えば、1Px50nmであれば、50nmの精度で調整可能となる、通常、10〜500nm/Pxで用いられる。
B)x方向位置の調整は、センサのx方向中心位置に目標のパターンやマークがくるように、光学中心の座標位置関係を微調整する。又は、最終段の偏向器によって微調整を行うことができる。この場合、1/10Px〜10Pxの精度で調整が可能である、また、1/10〜1Pxでの調整がよく用いられる。
C)次に、SEM(走査型電子顕微鏡)の光学中心に目標のパターン又はマークがくることを確認する。ズレがある場合には、光学中心間の座標関係を修正する。つまり、目標パターン又はマークが、光学顕微鏡の中心と写像光学系のTDI像のフレーム中心とSEM画像の中心にあることを確認し、それが許容値以内であることを確認して決定する。目標のパターン又はマークが、光学顕微鏡、写像光学系のTDI像のフレーム、SEM像の中心から許容値以内に入っていることを確認し、各光学中心位置間の距離を決定してメモリ等に記憶する。許容値は1μm以下にすることが可能である。また、高精度の調整により、0.1μm以下の許容値にすることもできる。
D)その他、もし、写像光学系で用いる検出器がCCDや電子を直接センサ面に入射させて像を形成するEB−CCDの場合、ステージは静止状態にて画像を取得するので、その静止像の中心に光学中心がくるように調整・決定し、光学顕微鏡、写像光学系のEB−CCD像、SEM像の光学中心にパターン又はマークが許容値以内にくるように調整・決定される。その手順や許容値は上記と同様である。
上記の様に、A)光学顕微鏡でアライメントを行うステップと、B)写像光学系で検出器センサの方向(y方向:センサの積算方向)のアライメントを行うステップと、C)光学顕微鏡・写像光学系・SEMの光学中心を求め相関の座標を記憶するステップと、を有することが本発明の特徴である。また、写像光学系のTDI像を用いる場合では、TDI像のフレーム中心を求めるステップが、B)のステップ中に必要となる。
また、C)のステップの中で、SEM像に関しては、更に精度を求めるときに次のことを行うことが可能である。SEM像の像フレームを形成するx方向とy方向を調整し決定すること。目標の方向は上記A)、B)が終了している段階で、パターン又は、マークのSEM像取得を行い、x、y方向のズレを抽出して補正する。補正する手段は、xとyの偏向する方向を微少量ずつずらして一致させる。これを可能とするため、SEMの画像を形成するための、つまり走査するための偏向器は8極以上のもが用いられる。これにより、偏向角度の制御が1/1000〜1/100000radの角度調整が可能となる。この作業内容を、C)のステップ中で行うこともできる。
本発明の装置系の使用例では、上述の検査前作業ステップが済んだ後に、写像光学系にて、TDI像を用いて欠陥検査を行う。そして、該検査結果のパッチ画像と座標値が出力されメモリ等に記憶されている、次に、SEMでレビューを行う場合、TDI像で欠陥検出した部位をSEMでレビュー撮像して、欠陥又は擬似の判定を行う。
このとき、画像処理装置によりSEM像による欠陥判定と擬似判定を行うことができる。これに関して下記の方法がある。
第一に、SEM画像同士の比較 :SEMによるレファレンス部画像との比較。
第二に、SEM像とTDI像(パッチ像)との比較。パッチ像とは、検査途中で取得された欠陥画像でありTDIスキャン画像から検出した欠陥部付近を切り取ってメモリに保存したものである。通常、50〜200Px程度で行われる。この値が画像の長辺のとき、短辺は1〜1/3を用いると好適である。
特に、第二の方法では、SEM像のx、y方向がズレているとパターンマッチング等の画像処理がうまくいかないので、SEM像におけるx、y方向の調整・決定作業を行っておく必要がある。例えば、パターンの位置ズレによりパターン不整合が生じる。
また、SEM像のx、y方向のズレ補正においては、画像処理で行う方法もある。SEM像のx、y補正量を予め求めておき、TDI像との画像比較時に補正を行って比較する方法も可能である。
(実施例2)
本実施例では、SEMでレビューを行うときに付着するコンタミネーションをクリーニングすることが可能である。
SEM観察を行うとカーボンなどのコンタミネーションが付着することが知られている。SEMレビュー観察を行うとコンタミネーションが付着するのでそれ自体が欠陥として発生することがある。特に、ビーム走査の端部領域では、コンタミネーションが多く発生する。
このような問題を解決するために、本発明では、2つの方法を用いている。
第一に、SEM観察を行うときに、コンタミネーション反応ガスを導入して、SEM観察を行いながら試料表面のクリーニングを同時に行う方法である。
第二に、SEM観察後、写像光学系でクリーニングを行う方法である。コンタミネーションとの反応性のあるガスの導入がある場合とない場合が可能である。
上記の第一の方法では、酸素、酸素+Arなどの不活性ガス、SF6等のフッ素系ガス等を導入しながら、SEMレビュー観察を行うことを特徴とする。これにより、SEM観察中にコンタミネーションが発生するが、上述のガスを導入することにより、発生したコンタミネーションと反応して昇華等ガス状態にして除去することが可能となる。このとき、ガス導入量を調整してSEM画像の解像度に影響のない程度にすることが重要である。作用は次のようである。真空容器内の残留ガス粒子が電子ビームによって励起されCやHと重合してカーボンやDLCなどのコンタミネーションとなって表面に付着する。その量はビームの照射量や時間に比例した関係で成長する。このとき、コンタミネーションと反応性を有する酸素などの上記ガスを導入すると、電子線の照射により、該ガス粒子が励起され活性ガス粒子として酸素ラジカル等のコンタミネーションとの反応性ガス粒子が形成される。そして、該活性ガス粒子がコンタミネーションと反応して、例えば、CO、CO2等のガス粒子となって除去される。結果として、コンタミネーション付着の少ない状態でSEM観察が可能となる。
上記の第二の方法は、SEMレビュー観察を行った後に、高速にコンタミネーション除去を実現するクリーニング方法である。電子線照射としては面ビームを照射する写像光学系の照射ビームを用いる。この時、上記の反応性ガスを導入して、面ビームが該ガス粒子に照射されることにより活性ガス粒子として酸素ラジカルなどのガス粒子を形成し、コンタミネーションを除去する。コンタミネーション除去作用は上述と同様である。この面ビームを用いる利点は、高速に処理できる点である。面ビームとして例えば、200×200μmのビームで、速度30mm/sでステージ移動すると、約30分程度で100mm□の面積領域を照射してクリーニングすることが可能となる。SEM式の2〜3倍以上の高速でのコンタミネーション除去処理が可能となる。このとき、効率的にコンタミネーション除去を行うため、SEMレビューを行った境界部領域のコンタミネーション除去を行うと効率的である。該領域に、コンタミネーション発生が多いため、その領域のコンタミネーション除去を行うことにより、大幅に、コンタミネーションの欠陥を低減できるので、実用的にはその領域のクリーニングで充分な場合が多い。
以上の説明した、光学顕微鏡、写像光学系、SEMがひとつのチャンバに設置されている半導体検査装置の全体図が、すでに説明した図43である。すでに詳細の構成はそれぞれ説明しているので、説明は割愛するが、このような構成とすることにより、上述したように、高精度で場所の特定が可能となり、アライメント調整が簡易になる。また、100nm以下の超微小なパターンの検査とその判定・分類を大変効率よく、また、高速に可能とすることができる。なお、この実施形態は、前述した実施形態1〜11の装置形態にも適用できる。同様の写像光学系を有する装置に本実施形態のSEM及び光学顕微鏡を同じ装置系に有して検査、レビューを行うと大変有効である。
(実施形態13)
パーティクル対策
微細化技術に伴い、パーティクルの影響は大きくなるので付着しない防止策の要求が強くなる。本技術のように5〜30nmの異物やパターンサイズの欠陥検査を行う装置を実現するときに、パーティクルの付着防止も同レベルのサイズのパーティクル付着防止が必要となる。この点については従来のどの装置においても不十分であったが、本発明により実現可能となる。本発明の検査装置及び検査方法に用いるパーティクル対策について図64及び図65を参照しながら説明する。従来の対策からの変更点だけを記載する。
天井カバー取付
(効果)
天井から落下するパーティクルからの保護
天井カバーは試料がステージにより移動する領域をカバーするように取り付けられている。これにより、コラム上部から試料のあるメインチャンバに落ちてくるパーティクルが試料に付着しないようする効果が得られる。また、マスク等の試料表面の周囲には導体の導通カバーがありマスク表面と同電位となっている。そして、この導通カバーは先端部の厚みが10μm〜300μm程度であり、裏面が試料表面の導電膜がある領域に接触し導通している。導通カバー近傍におけるマスク表面電位の変化の影響がなるべく小さくなるように上述した厚みになっている。このとき導通カバーの幅は試料から外側方向に10〜30mm程度ある。このような構造のときに、導通カバーと天井カバーの距離を小さくすることで、この空間に入ってきたパーティクルが導通カバーと天井カバーに衝突・付着する確立を増加させて、試料表面にパーティクルが侵入するのを防ぐことができる。また、RTD電圧が掛かる試料表面をGND電位の天井カバーで覆うことにより、天井カバーより上方のパーティクルが電界により引き寄せられることを防ぐことができる。
集塵器
(効果)
RTD電圧の掛かる試料の周りに同じ電圧の掛かる電極を配置して、周りから寄って来るパーティクルを吸引・吸着することができる集塵器を備えている。この集塵器の例では、電極が1段の場合と複数段ある場合がある。例えば、2段の例では、内側・外側の電極で異なった電圧を与えて集塵効果を増加することも可能である。例えば、試料表面電位よりも高い電位と低い電位の電圧をどちらかに印加して、正電荷を有するパーティクルは印加電圧の低い集塵電極に吸着され、負電荷を有するパーティクルは印加電圧の高い集塵電極に吸着される。このようにして、試料表面にパーティクルが到達しないようにすることができる。
超音速モーターカバー
(特徴)
真空チャンバ内で用いている可動部品において、例えば、超音波モータ等、真空チャンバ内で発塵源となる部品をカバーで覆う。更にそのカバーに電圧を印加する事で積極的にカバーにてパーティクルを吸引・吸着する。
走行板可動部に走行板カバーを配置する事で走行板に付着したパーティクルを捕集することができる。
ステージケーブル
(特徴)
真空チャンバ内で稼動するステージケーブルを一体型のフラットケーブル(テフロン(登録商標))にする事でケーブル同士の擦れによるパーティクル発生を低減した。
フラットケーブル接触面はケーブルベース(テフロン(登録商標))を設け、ケーブルと金属との擦れを無くした。これは、通常のケーブルは断面が丸い芯線を樹脂が覆うものが多い。これが複数ある場合は、複数のケーブルを束ねてインシュロック等で束ねることになる。このとき、ステージ移動に伴い束ねたケーブルが移動・変形することにより、ケーブル同士が擦れてパーティクルの発生となる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜12の装置に適用することも可能である。
(実施形態14)
(光電子像特有の軸調)
本発明の検査装置及び検査方法における光電子像特有の軸調について説明する。
例としては、図26及び図27及びそれらの実施形態が適用でき、また参考となる。試料表面にDUVレーザを照射し、試料表面から光電子を発生して2次光学系で検出器に拡大結像し、2次元の光電子像を撮像する。この光電子像の結像条件の設定で2次光学系のRTD条件、例えば−4000Vに対し、光電子放出によって表面電位が正帯電する。この表面電位によって、RTD−4000Vからずれるので、そのずれ量をRTDの電位を変更することで補正する。
(波長の異なる光を同時照射する)
本発明の検査装置及び検査方法において波長の異なる光を試料Wに同時照射する例について説明する。
EUVマスクで、凹凸構造を有するパターンが有る試料の場合、凸部である最表面層がTaBOで、凹部がRuの場合、波長によってTaBOとRuのコントラストがTaBO>Ru(λ=266nm)であったり、TaBO<Ru(λ=244nm)であったりする。つまり、この二種類の波長を同時にTaBOとRuでパターンが構成される試料表面に照射した場合、パターンが消失し、パターンを構成する材料以外(たとえば異物)が検出されることになる。これは、パーティクルの検査や、またパターン凹部(Ru)の欠陥(異物)の検出感度を上げることができる。
波長の異なる光を同時に照射する場合、それぞれの量子効率が異なるので、TaBOとRuのコントラストが消えるよう、それぞれのDUV光強度またはDUVレーザ教度を調整する必要がある。このとき、レーザ照射の場合、偏光フィルタを用い、レーザの偏光面と偏光フィルタの偏光面との角度の調整により、試料表面へのレーザ照射強度を調整する。また、光の波長によって量子効率が異なるので、試料表面の材料によって、その表面電位の変化量が異なる。
先述のRTD−4000Vで検出器表面電位GNDの場合、光電子のエネルギは4000eVとなる。このときの2次光学系レンズ条件をRTDの調整で最適化するにあたり、予め白信号(相対的に光電子量発生が多い)として見たい材料にあわせ、他の材料はレンズ条件から大きく外すために、予め検査用に用いる波長とは異なる波長の光(Laser)を照射することで、コントラスト差を大きくし、信号強度を強くすることができる。図33(a)と図35〜図42が対象の例として、光電面チップにLaserを照射し、そこから発生した光電子を、1次光学系によって試料表面に誘導し、1次ビームとして光電子の照射を試料表面に行い、該試料表面からの2次放出電子が2次光学系によって検出器に拡大・結像される。この時、光電面チップに照射するLaserの波長は光電面を構成する材料の仕事関数より大きく、かつ、限り無く近いエネルギの光がよい。これは、そうする事によって、光電子の持つ運動エネルギの分散量を極めて小さくすることができる。つまり、1次電子ビームのエネルギ幅を従来式に比べて小さくすることができる。これによって、試料表面に1次ビーム(光電子)を照射して発生する2次放出電子またはミラー電子のエネルギ分散も小さくなり、その結像系において、収差の小さい鮮明が画質を得ることができる。光電面チップ構造は、レーザ透過性の良い母材の片方の表面に光電材料をコーティングしてある。例えば、Ru、Au、Ag、等。コーティング面の裏側よりレーザを照射して、コーティング面より光電子が発生し、レーザ照射とは反対方向に光電子が放出される。こうすることで、Laser照射軸と光電子の軸とに角度をつける必要がなく、Gunの構造をコンパクトにできる。
(実施形態15)
2重PODを搬送する大気搬送
本発明の検査装置及び検査方法における2重PODを搬送する大気搬送について図66を参照して説明する。
(動作・条件)
2重PODは、マスク等の試料を包む箱が2重構造となっているものである。インナーPODは隙間や穴があるのでロードロック中ではアウターPODがあいていればよい。このとき、インナーPODは下板と上板の構成になっている。下板に近接してEUVマスクパターン表面が設置されている。このとき、動作フローは、次の通りである。アウターPODオープナー⇒インナーPODオープナー⇒回転ユニット⇒反転ユニット⇒除電ユニット⇒パレット搭載ユニット⇒ロードロックチャンバ。
(作用・効果・メリット)
2重POD対応ではあるが、インナーPODオープナーでマスクを単体で取り出すこと動作フローなので、1重PODと2重PODを併用して用いることも可能である。なお、本実施形態は、実施形態1〜実施形態14にも適用可能である。
(実施形態16)
小型SEM関連
本発明の検査装置及び検査方法に用いる小型SEMについて図67を参照して説明する。
欠陥検出装置(写像型電子線検査装置)と同一チャンバ内で、検出した欠陥を走査電子顕微鏡(以下SEM)によって、より高い倍率でレビューすることを特徴とする。
(効果)
同一チャンバ内でレビューできるので、サンプルの装置間移動が無く、時間効率がよく、サンプルを汚すこともない。
上記SEMによるレビュー結果に基づいて、検出された欠陥が、実欠陥であるか擬似欠陥であるかの判定を行うことを特徴とする。
(効果)
レビューした画像データを用いて、自動欠陥分類(ADC)を行い欠陥検出結果の信頼性を高める。
上記、レビューを行うために使用するSEMは、全ての電子レンズが静電レンズによって構成されていることを特徴とする。
静電レンズによって構成されたSEMは、低倍の観察においても画像のゆがみが小さいので、このSEMをアライメントマークの観察にも用いることができる。
(効果)
電磁レンズの場合、低倍で低ひずみの画像を得るためには、ビームの走査形状を補正するためのシステムが必要であるが、静電レンズでは不要でありシステムが単純。また、電磁レンズではレンズ構成のコイルに電流を流して磁場を発生させレンズ場を形成する。そのため、装置立ち上げから温度安定、抵抗安定状態になるまで、つまり、安定したレンズ動作状態になるまで通常、1〜5時間程度かかる。これに対して、静電レンズは、定電圧電源を用いるため所定の電圧出力設定を行うと数分程度で安定状態となる。このように、条件安定性や変更の対応性が優れている。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜15に適用可能である。
(実施形態17)
レーザビーム調整方法
本発明の検査装置及び検査方法に用いるレーザビームの調整方法について説明する。図26〜図31及び関連する実施形態に適用可能で、それらが対象となる例である。
試料面から放出される光電子の解像度を高めるためには、2次系のレンズ等の電圧を最適な値に設定する、いわゆる光軸調整の作業が必要になる。光軸調整は最初低倍率の像を観察して大まかな軸調整をしておき、徐々に倍率を上げて高精度の軸調整を行うという手順を踏むのが通常である。
像観察に寄与する光電子の量は、倍率が高くなるほど少なくなる。つまり、光電子密度が一定であれば、倍率が高くなりPxサイズが小さくなると、1Px当たりの光電子量がPxサイズ縮小にしたがって減少するのである。したがって、パワーを変えずに低倍率から高倍率にすると、信号量が不足して暗い像しかえられなくなる。逆に高倍率で最適なレーザーパワーに保ったまま低倍率で観察すると、光電子数が多すぎて飽和し、必要なコントラストがとれなくなる。そのため、レーザ光のパワーを調整することが必要となるが、レーザ本体ではパワー調整が出来ない場合も多い。そのような場合は、可変ビームスプリッタ、アッテネータ、偏光素子、レンズ等の光学素子によって試料面に到達するレーザービームパワーを調整することができる。
可変ビームスプリッタは平板状の光学素子でレーザビームに対する角度を調整することにより透過光の割合が変化するものである。
アッテネータは可変ビームスプリッタ等の光学素子を複数組み込んで一体化し、取り扱いを容易にしたものである。
偏光素子はビームの偏光状態によって透過率を変えたり、位相をかえて偏光状態を変化させたりするものである。偏光板や波長板、偏光解消板などがあり、これらを組み合わせることによって特定の偏光状態のみを透過させ、光のパワーを制御することが可能である。
レンズについては、たとえば集光用平凸レンズの位置を変えることによって焦点距離が変化し、パワープロファイルを変化させることによって観察範囲の局所的なパワー密度を変化させ、光電子量の多/少を制御することができる。そのほか、レンズ、あるいは石英ガラス等の光透過物質の厚さや数を調整したり、ミラーの反射回数を増減してパワーを調整したりしても良い。
レーザのパワーを調整する方法は、上記のように素子を利用するもの以外にも下記の方法もある。たとえば、ミラーの角度を変えて、ビームの照射位置を変えると、観察面のパワー密度が変化する。パワー密度の高い部分を観察部分に照射すると多量の光電子が得られるし、パワー密度の低い部分を観察部分に照射すると少量の光電子が得られる。
パワーの異なる2種類以上の光源を使用する方法も考えられる。たとえば低倍率観察の場合は、紫外領域のパワーの少ない水銀キセノンランプを用いて、高倍率観察用の場合はYAG4倍波の固体レーザやArイオンレーザの2倍波のガスレーザを用いることができる。このとき、水銀キセノンランプはファイバで真空中に導き、ファイバ出口から直接、あるいはミラー等の光学素子を介して試料面に照射することができる。
レーザから射出されたレーザビームは第一ミラー、集光レンズ、第二ミラーによって合成石英製のビューポートを透過して真空チャンバ内に導かれる。ビューポートを透過後、コラムの軸中心付近に設置された三角ミラーで反射され、電子ビームの軸中心から約0.1〜30度ずれた角度で試料面に照射される。
三角ミラーは軸中心を電子ビームが通過できるように直径0.5〜5.0mmの穴が開いたミラーで、合成石英やりん青銅の表面にアルミニウムをコーティングしたものである。三角ミラーの穴を通過する電子ビームが電場によって曲げられないように、三角ミラーの電位はアース電位等の空間電位と同じにする。合成石英でミラーを製作する場合は、穴の中もアルミニウムでコーティングし、導電性を確保する必要がある。
レーザのパワーを調整するために、たとえばレンズの後段に偏光素子やビームスプリッタ、アッテネータ等を配置してもよい。
上記はミラーやレンズを大気側に配置する方法を説明したが、これらのレンズやミラーをすべて真空チャンバ内に配置しても良い。
(実施形態18)
ビームの試料面への入射角θ入射方向α制御する検査装置
本発明の検査装置及び検査方法に用いる1次電子ビームの試料面への入射角θ入射方向α制御する方法について説明する。
(従来技術との差)
写像投影型の電子ビーム装置において、電子ビームのLEをミラー電子と2次放出電子の双方を含む遷移領域とし、NA位置を最適化し、導電材料から放出される電子を取り出してラインアンドスペースパターンやコンタクトプラグを高コントラストで観察することが国際公開公報WO2009/125603に開示されている。
また、特願2010−091297の[0205]にNA面を検出器に結像させるレンズ条件でNA面での電子分布を観察しながらNA位置の最適化の方法が開示されている。本願では、1次ビームの入射角と試料面への入射方向を制御しさらに高コントラスト画像を得る方法を見出した。
特願2010−091297の図6(B)にNA面の観察模式図を示されている(図68)。
発明者らは、このNA結像光学条件におけるクロスオーバ(CO)像において1次ビームのLEを2次放出電子とミラー電子の遷移領域にしても、ecの分布の中に試料に当たった2次電子の分布(CO)とは別に試料に当たらず跳ね返されたミラー電子の分布(MC)が存在することを知見した(図69)。
上記NA結ぶ像条件出LEを変化させた像を特願2010−091297の図3の模式
図との対応で、NA結像の模式図を図70に示す。このとき、LEAより低いランディングエネルギーのときミラー電子領域、LEA≦LE≦LEBのとき、ミラー電子と2次放出電子の混在する遷移領域、LEB<LEのとき2次放出電子領域である。そして、一例として、LEA=0eVであるときの例で以下に説明する。1次ビームにエネルギ分布は例えばLaB6チップの場合に2eV程度存在するために、ランディングエネルギーLE=0eVの時に、負のLEの電子も少なからず存在する場合がある。例えば、図70で、COとMCが同時に発現するときがある。
図70にその例を示す。一番右の図が2次放出電子のCO断面で、左に移行するに従いミラー電子の放出量が増え2次放出電子が減るためにCOが小さくなり、MCが出現し徐々にその強度が増す。LEが負になると、MCのみが存在する。この電子分布の大きさはミラー電子または2次放出電子の放出角度分布を表している場合がある。
ミラー電子は、1次ビームは試料面の電位によって放物線を描いて反対方向に軌道を変えて、NA面でMCを形成する場合がある。つまり、ビームの入射角によって、MCの位置を制御できる。
一方、試料に当たって放出される2次放出電子は、1次ビーム(電子)とは別であるために入射角の影響を受けない。
照射位置を変えずに、入射角のみを変える方法は、1次コラムに搭載された2段偏向器(BA1、2)を使用して実現できる(図71)。
X方向またはY方向の2段偏向器の電圧と入射角のデータを図72に示す。
高分解能化するためにNA径を小さくしようとした場合、COに対して、MC位置が重要になってきた。
高い分解能を得ようと、CO中心にNAを配置すると1次ビームが垂直入射の場合にはMCがNAを主に通過して像を形成する(図73)。MCは試料面の情報を有していないので良好な画像が得られない。
そこで1次ビームの入射角を変えて、MCを上下左右にオフセットし配置することで高分解能画像を得る工夫を検討した。
L&Sパターンを観察した場合には上下に配置した場合にMCの光の影響で横パターンの凸(ライン)部が光やすく、左右に配置した場合には縦パターンの凸(ライン)部の電子密度が高くなりやすい。また、縦と横パターンのコントラストが不均一になりやすい。ビーム入射角θをX、Yを同じ角度を動かして、入射方向45°方向にした場合には、MC位置もNA面内で45°方向となる。縦と横のパターンが同じコントラストの良好な画像が得られた。
図74の例では、入射方向はX+方向を0°とし、反時計廻りに角度を定義している。
電圧は図72において所望の入射角となる偏向器の電圧を設定すれば良い。図74にNA結像の模式図とミラー電子の軌道模式図を軌道Aで示した。
MCをNAに近づけると、パターンのSNは向上するがコントラストは劣化し、逆にNAから遠ざけるとSNは劣化するがコントラストは減少する場合がある。MCは中心からNA径の2〜3倍の距離に最適な位置関係が存在することが実験的に確かめられた。
MC位置の調整方法は、NA結像を観察しながら簡単で確実に実施できる。
一方、試料上のパーティクル観察の場合には、左右方向よりも(X方向)上下方向(X方向)で高い感度が得られる場合があることが実験的に確かめられた。
また、MCを左または右(X方向)に配置した場合には像の左右が明るくなってY方向にスキャン撮像する場合に左右どちらかが明るくなってしまう。この場合もMCをCO中心からNA径の2〜3倍ほど離して置くのが望ましい。
これらの観察、検査にEB−CCDまたはEB−TDIを用いる利点は国際公開公報WO2009/125603の[0403]、[0404]段落を参照。なお、本実施例は、先述した実施形態1〜17にも適用可能である。
(実施例1)
[第1ステップ]
試料:Cu/SiO2 配線パターン(図75参照)
加速電圧:−4005[V]
試料面電位:−4002.6[V]
LE=2.4[eV]
電流密度:1[mA/cm2]
2次光学系 NA結像 TL2−2;5550[V]
検出器にEB−CCDカメラを使用し、NA結像条件でMCとCOを観察した。
入射角θ=100[mrad]で試料面に対して照射方向α=45[°]から入射するように、アライナBA1,2の値を設定した(図76)。
[第2ステップ]
電子光学系の倍率設定 29nm□(ピクセル)
NA穴径30〜100umとして、ウエハ上の25nmL&Sパターンを観察した。
BA1,2とNA位置を微調整し、L&S(ライン・アンド・スペース)のパターンが縦横ともに同等になるようした。
[第3ステップ]
MC位置を試料面上45°とし、入射角を20〜200[mrad]の範囲で変化し、L&SパターンのコントラストとS/Nを測定した。S/NはコントラストをW面の平均諧調の標準偏差σで割った
もので定義した。
NA径に対するMCの相対位置を図77に示す。図77より、相対位置2.5辺りでコントラスト及びS/Nともに良好な画像が得られている。
MCの相対位置とコントラストS/Nの相関を図78に示す。
[第4ステップ]
ステージ速度:1〜20mm/s
データレート:50〜1000MPPS
TDIカメラを使用し、スキャンしながらウエハ上の検査動作を実施した所、25nm相当の欠陥検出が出来た。
(実施例2)
[第1ステップ]
試料 : φ30nmφWコンタクトプラグ/SiO2構造については特願2010−091297の図7を参照。
加速電圧:−4005 [eV]
試料面電位:−4002 [eV]
LE=2.4[eV]
電流密度:1[mA/cm2]
光学系 NA結像 TL2−2 ;5550[V]
EB−CCDカメラでNA結像でのミラー電子(MC)とクロスオーバー(CO)を確認し、2段の偏向器BA1,2を使用して以下のように配置する(図79参照)。
BA1,2の値を調整し、入射角100[mrad]試料面に対して0[°]Y方向から入射する(図80参照)。
[第2ステップ]
電子光学系の倍率設定 29nm□(ピクセル)
NA穴径 30〜100umとして、ウエハ上のWプラグを観察し、上記[第3ステップ]のコントラストとSNの相関を測定した。この場合も相対位置2.5辺りで最適な像が得られた。
[第3ステップ]
ステージ速度:1〜20mm/s
データレート:50〜1000MPPS
TDIカメラを使用し、スキャン撮像しながらウエハ上のプラグの検査を実施したところ、φ30nmのプラグ構造の欠陥検査が可能となった。特願2010−091297の図19のビームドーズや図22のコントラスト反転の原理を適用して、さらに高コントラスト検査することも可能である。
(実施例3)
[第1ステップ]
試料 :Si上のパーティクル
実施例2の[第1ステップ]と同様の条件で入射角の調整を行なった。
[第2ステップ]
電子光学系の倍率設定 100nm□(ピクセル)
NA穴径30〜100umとして、ウエハ上のパーティクルを観察し、上記[第3ステップ]のコントラストとSNの相関を測定した。この場合も相対位置2.5辺りで最適な像が得られた。
[第3ステップ]
ステージ速度:1〜20mm/s
データレート:50〜1000MPPS
この条件でTDIカメラを使用し、スキャン撮像しながらウエハ上のパーティクルの検査を実施したところ、φ10〜30nmサイズの検査が可能となった。
(実施形態19)
本発明の検査装置及び検査方法に用いる高圧電源を図81に示す。
図81(a)、図81(b)に重畳型の高電圧発生装置と応用例を示す。図81(a)の高電圧発生部について、高電圧発生部は20kHzの交流信号を高圧絶縁トランスで受け異なる電位の重畳を可能とする。絶縁トランスの出力側は整流回路で直流に変換される。20kHzの交流信号は過渡的なノイズの発生を防ぐ意味から正弦波や立ち上がりの急峻でない矩形波が望まれる。直流出力は高電圧出力を得るためのエネルギ源であり、これをインバーターにより交流信号に変換する。ここでも、前記のように過渡的なノイズの発生を防ぐ意味から正弦波や立ち上がりの急峻でない矩形波が望まれる。交流信号に変換された後、昇圧トランスにより数kVに変換され昇圧整流回路により目的の電圧に昇圧された直流電圧に変換される。昇圧整流回路はコッククロフト・ウォルトンの回路が一般的である。昇圧された直流高電圧出力は分圧され電圧制御機能のブロックの中で電圧指令値と比較され、比較値が最小にフィードバック制御され、出力電圧を一定に保つ。電圧指令値及びモニタ出力は光電変換され、光ファイバにより入力または出力される。光電変換の手段は、電圧値に比例した周波数に変換し、光の2値信号にして伝送し、受信側では逆変換して電圧値に戻す方法が旧来から行われているが、この方法は広義のA/D、D/A変換に属するため、ほかにも公知手段が適用可能である。
高圧電源をコラムと分離した場合、その接続には、高圧コネクタ、高圧ケーブル、高圧真空導入端子が必要となる。これらは大気中での耐電圧が必要となるため、十分な沿面距離を保つ必然性から、使用電圧に比例して大型化が必須となる。したがって装置の小型化の大きな阻害要因となる。ちなみに、通常の市販コネクタは30kV耐圧で長さ200mm直径50mm程度が必要となる。一方、1×10−4Pa以下の真空圧力においては、媒介となる気体分子の密度が疎になり、大気中と比較し空間の耐電圧が著しく向上する。本発明では、この利点を活かし、高電圧の発生ブロックを光学系に隣接する空間内に設け、高電圧の発生と供給を高真空の中で実現する。光学系はより高真空を要求されること、及び、コンタミの付着を極度に嫌うことから、光学系と高電圧発生部は隔壁で分離し、高電圧はこの隔壁を通過して供給され、それぞれ別の排気系で排気される。この高電圧発生ユニットに対しては、高圧発生用の大気側から低電圧の交流または直流電圧の供給と電圧の制御等を行う制御通信系の光または信号ケーブルの接続が必要となるが、電位的には著しく低くおよそ数十V以下であるため、小型の真空導入端子で問題なく、装置の小型化を図ることができる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜18にも適用可能である。
(実施形態20)
EO補正
本発明の検査装置及び検査方法におけるEO補正の例について説明する。
(概要)
試料の例としてウエハで説明する。ウエハに限らず露光マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク及びテンプレートも同様に用いることができる。
ウエハ上からのビームをTDIで撮像するにあたり、ウエハの位置は正確に位置決めされている必要があるが、実際にはウエハはX−Yステージ上に有り、機械的な位置決めがなされる事から、その精度は数100μmから数10nm、応答速度は数秒から数msが現実的な値である。
一方、デザインルールは数10nmに向かって微細化されていることから、上記機械的な位置決めのみを頼りに撮像する事は応答時間と位置決め精度のオーダがデザインルール及び撮像精度のオーダとかけ離れており正確な像を取得する上で著しい障害となる。
撮像のシーケンスはステップ(x軸)と定速度スキャン(y軸)の組み合わせで実行され、比較的動的な制御を行う(y軸)は、制御残差が一般的に大きく像のボケを防ぐ意味から、より高度な制御を要求される。
これらの項目に鑑み、高精度かつ応答性の優れたX−Yステージを有する事は勿論であるが、更に、ステージでまかなえない、撮像部に対するビームの制御精度、速度を実現する為、EO補正の機能を考案した。
基本的な方式は、ステージ上のウエハの位置はレーザ干渉計システムとx−yの軸上に設置されたバーミラーにより、サブnmのオーダで数マイクロ秒の時間遅れ以内にその位置を正確に認識し、自動制御ループにより機械的アクチェータを駆動し、目標位置に時間的な遅れと残差を伴いながら位置付けられる。この制御によって位置決めされた結果の制御残差は制御装置内部で発生される目標位置とレーザ干渉計システムによって得られた現在位置との差分により求められる。一方、ビームは数々の電極を経た後に、補正用偏向電極を経由して撮像装置に導かれる。補正用偏向電極は、ウエハ上の距離に換算しておおよそ数十μm程度の偏向が可能な感度を有し、これに電圧を印加する事で、二次元的に任意の位置にビームを偏向する事が可能である。制御残差は演算装置で演算を実行された後、D/Aコンバータによって電圧に変換され、残差を相殺する向きに補正用偏向電極の印加がなされる。以上の構成によりレーザ干渉計の分解能に近い補正を実行する事が可能となる。
他の方式としてx軸(ステップ方向)は上記手段を用い、Y軸(スキャン方向)は撮像素子であるTDIの転送クロックを、ステージの移動速度に同期させ転送する方式も考案した。
図82にEO補正の概念を示す。1から目標位置への指示が出力され、機械アクチェータを含む制御フィードバックループ2、4、5に付与される。この部分がステージに該当する。駆動され、位置変位が出た結果は5の位置検出器によりフィードバックがかかり、駆動系の位置変位は、位置指示からの目標位置に収斂してゆくが制御系の利得が有限の為、残差が発生する。現在位置を6の位置出力系(ここではレーザ干渉計を用いる)によりサブnmのオーダで検出し、1の位置指示装置との差分を残差検出器により検出し、7の高圧高速増幅器を使用して9.10の偏向電極に印加し、残差を相殺する向きに電圧を印加し本来この機能なき場合には13の如く発生する変動分を14の様に減ずる機能を有する。
図83に具体的な機器構成を提示する。
XYステージはX軸駆動用のサーボモータ2ならびに1のエンコーダによりX軸の駆動と大まかな位置、及び速度の検出を行い円滑なサーボ特性を実現する。本例では、サーボモータを用いているが、リニアモータ、超音波モータ等のアクチェータにおいても同様な構成が可能である。20はこのモータを駆動する電力増幅器である。X軸の精密な位置情報は7ミラー11干渉計12レシーバ13レーザ光源14干渉計ボードの組み合わせによりサブnmの分解能を有する位置検出機能を実現している。
Y軸も直行する同様の機能であり、10、22、4、5、6より構成されている。
19X−Yステージコントローラはこれらの機器を統括して制御する事により、二次元的にステージを動作可能とし、精度数100μから数10nm、応答速度数秒から数msの性能を実現する。一方19からはX基準値、Y基準値が23EO補正器に出力され14からの32ビットバイナリー形式で出力される位置情報を高速の15バッファボードを経由して現在位置を23EO補正器は受け取る。内部で演算を行った後25、24の高圧高速増幅器により電圧増幅した後、28、29、30、31からなる偏向電極に印加し、残差分を補正すべく偏向を行い、位置ズレを極少にした画像情報電子ビームを26TDI(撮像素子)へ導く。27は後述するが、26の転送速度を決定するタイミング信号を発生する部分である。
次に本装置におけるスキャン方向の目標位置の発生機能について述べる。
EO補正は目標位置と実際の位置の差分を求め、差分を相殺するように電子ビームを偏向して位置の補正を行う機能であるが、補正範囲はおおよそ数十μmの範囲に限定される。
これは電極感度、高圧高速増幅器のダイナミックレンジ、ノイズレベル、D/Aコンバータのビット数等により決定されている。ところが、スキャン時のステージの実際の位置は、制御ループのゲインが有限であることに起因して停止時と比較し、目標位置に対し、大幅なズレを生じる。20mm/sで走行した場合、目標位置との乖離は約400μm程度となり、そのまま差分を演算して出力しても補正範囲を大幅に超越して系が飽和してしまう。
この現象を防ぐ為に本装置では次のような手段を用い、この問題を回避している。
図84にこの概念を図示する。1はステージの目標位置でありスキャン時は等速運動である為、時間とともに直線的に増加する。一方実際の制御された結果のステージの機械的位置3は数ミクロンの機械的振動を含み約400μm程度の定常偏差2を有する。この定常偏差を除去する手段としては、フィルタを用いて、実走行時の位置情報を平滑化する事が考えられるが、この場合、フィルタの時定数により必ず、遅れが生じ、リプルを無視出来る程の時定数を持たせると、測定開始エリアが大幅に限定され、全体の計測時間の大幅な増加につながる欠点を有していた。そこで本案では、この定常偏差を検出する為に少なくとも前回にスキャンした時点での現在位置と目標位置との差分を少なくとも2の16乗程度積算し、これをサンプル回数で除する事で、目標位置と、現在位置との定常偏差の平均値5を求め今回のスキャン時には目標位置4から5を引いて合成された目標位置6として演算を行い図85の5に図示するような、ダイナミックレンジ範囲内でEO補正が可能な構成を実現した。
図86にブロック図を図示する。目標値1は現在位置2と引き算され、3のブロック内で前期の積算演算をスキャン時に実行する。一方3には前回同様にして求めた定常偏差の平均値が4より出力されている。5引き算器により1から4を引き合成目標位置6としこの値と干渉計からの現在位置7とを引き算して、応答の遅れやリプルのないEO補正データ8を実現している。
図87に図86における3のブロック差分平均検出の構造について図示する。3、4にて積算を実行し、6の累積カウンタの値により5のデータセレクタのワードを選択し割り算相等を実行し、定常偏差の平均値を出力する事を実現している。
図88にTDIの転送クロックの一例について記述する。TDIは光電素子をスキャン方向に多段に接続し、各撮像素子の電荷を後続する素子に伝送する事で感度の向上とランダムノイズの低減を目的とした撮像素子であるが、図88に示す如く、ステージ上の撮像対象と、TDI上の画素が一対一に対応している事が重要でこの関係が崩れると、像のボケを生じる。同期関係にある場合、1−1、1−2、2−1、2−2同期がずれた場合3−1、3−2、4−1、4−2TDIの転送は外部からのパルスに同期して次段への転送が実行されるため、ステージの移動が1画素分移動したところで、転送パルスを発生させればこれが実現できる。
しかしながら、現在主流のレーザ干渉計の位置情報出力は32ビットのバイナリー出力を10MHzの自己の内部クロックに同期して出力する形式である為、そのままでは容易に実現できない。また、分解能を数十nmとすると、転送パルスの精度も重要となり、高速高精度なデジタル処理を必要とする。本件で考案した方式をH−1に図示する。
図89の説明。レーザ干渉計の位置情報及び10Mの同期信号は1より本回路に導入される。2の10MCLOCKは4のPLLにより同期した100MHzのクロックを発生し、各回路に供給する。この同期信号10ステート毎に演算処理を実行する方式をとっている。22、に今回の位置情報が保持され、24に前回の値が保持されている。この両者の差分を26で演算し、10ステート毎の位置の差分を27から出力する。この差分値をパラレルシリアルコンバータ14にパラレル値としてロードし、100MHZのクロックに同期して差分を16よりシリアルパルスの個数として出力する。15も同様の機能であるが、11、12、13、6、7、8と組み合わせて、10ステート毎に休みなく、動作が可能な様構成してある。結果として10M毎に位置差分に応じたシリアルパルスが16の和回路より17カウンタに出力される。レーザ干渉計の分解能を0.6nm、1画素を48nmとすると18の比較器を80にセットしておけば、カウンタが1画素相等になったタイミングで19のパルスが出力される。この信号をTDIの外部からの転送パルスとする事で、ステージ速度の変動があった場合でもそれに同期した動作を可能とし、ボケ、ブレの防止を実現できた。
図90にタイミングチャートを図示する。
1は干渉計座標(位置)情報で数字は位置を例として示す。2はPLLにより作成された100MHZの同期信号である。バンクAはパラレルシリアルコンバータ(図89における14)系列の動作タイミングでバンクBは同じく図89における15のそれである。位置情報を記憶するラッチタイミング7の後差分演算タイミング8を実行しパラレルシリアルコンバータ(図89における14)に値をロードし次の10Mクロック3の1サイクルの時間を利用して4の出力を実行する。バンクBは10Mクロック3の1サイクル遅れたタイミングで同様の動作を実行し無理なく6のパルス発生を実現している。なお、本実施例は、前述の実施形態1〜19にも適用可能である。
(実施形態21)
本発明の検査装置及び検査方法に用いるパレットの例について図91を参照して説明する。
(構成、構造)
[ベース]アルミナorチタン製。静電チャック吸着面(平面度が必要)。RTDコンタクト部を設ける。マスクを支持するピンを設ける。
[ハンドリング部]アルミナorチタン製。大気及び真空ロボットでのハンドリング位置。
[額縁]リン青銅orチタン製。マスク上面を端から1.2mm程度覆う。
[印加ピン]リン青銅。マスク上面にRTDを印加する。ベースの印加部から配線にて印加ピンに引き回す。
(動作・条件)
パレット内にマスク設置時に別の駆動機構を使用することで額縁を上下させる。
(作用・効果・メリット)
マスク単体ではなく、パレットを使うと下記の効果が得られる。
本発明によるパレットを用いると、マスクの裏面の一部分の支持を行う。パターン形成部の接触はない。よって、静電チャックによるマスクへの傷及び異物付着防止が可能となる。つまり、直接マスクを静電チャック機構上に設置するとマスクの裏面にキズが付いたり、異物の付着する悪影響が生じたりする。特に、EUVマスクや、ナノインプリントマスクの場合、高精度の設置条件が求められるのでパーティクルサイズについても小さなサイズの付着防止が必要となる。例えば、EUVマスクの裏面で30〜50nmサイズ、ナノインプリントでは露光不良となるので3〜20nmの異物の防止が必要となる。
本発明のパレットは、額縁の内周部の一部にマスク表面に電圧印加を行うための接触機構を有している。そのため、額縁がマスク印加電圧と同電位にしてあるので、マスク端部での電位均一性を達成することができ、かつ、額縁設置により安定したマスク表面(表面の導電膜)への電圧印加が可能となる。つまり、安定したマスク上部からのRTD電圧を印加できる。
補正リングの効果を額縁に持たせる事で真空中での稼動部をなくした。つまり、パレット設置により真空中での移動となるのでマスクとその設置部材との移動はない。よって擦れることがないので、異物の付着防止に有効である。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜20にも適用可能である。
(実施形態22) 真空可動部への高電圧印加方法
本発明の検査装置及び検査方法に用いる真空可動部への高電圧印加方法について図92を参照して説明する。
印加
真空チャンバ内に試料を搬送し、その試料に電圧を印加することにより機能を果たす装置において、写像光学式電子線検査装置においては試料に印加する電圧は−4000[V]±5[V]、また、前述した図42の例において試料に印加する電圧は−20〜−50[kV]の高電圧電源を可動部に印加する場合がある。このとき、真空チャンバのステージ上、(例えばx、yステージ上)に、高電圧電源を設置して、可動ケーブルとして高電圧ラインを使用することをさけ、つまり可動しないケーブル配線で高電圧を試料に印加するようにする。さらに、大気側からの電気的な引き込み線を低圧信号ラインに限定することで、高電圧を容易に使用できるようにする。高電圧電源からの配線ケーブルは太くなるので、可動しないことによりパーティクル発生を低減するだけでなく、大きなフィードスルーが不要となり設計・製作の効率化が可能でコスト低減になる。
また、上述したように試料に印加する高電圧電源はステージ等の可動部上に設置されていて、高電圧の配線は可動部には存在しない。また、試料に印加する高電圧には外部より低電圧電源が重畳されるようになっており、ここで高電圧の電圧値の制御をできるものとする。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜21にも適用可能である。
(実施形態23)
欠陥検査装置における欠陥検出率向上化の手法
本発明の検査装置及び検査方法を用いた欠陥検査装置における欠陥検出率向上化の手法について図93及び94を参照して説明する。それぞれの図において、(a)は電子顕微鏡写真を示し、(b)はその模式図である。この電子顕微鏡写真は、写像投影方式においてNA位置におけるビームの形状を撮像したものである。それは、NAと検出器の間にあるレンズによりNA位置のビーム形状の像を検出器面に結像する条件を形成して撮像する。それにより、ビームの形状・プロファイル・中心位置等の情報を得て、所望のビーム位置(ミラー電子)を所望の位置に調整可能及びNAを最適な位置に設定可能となる。
写像投影方式による欠陥検査装置を二次放出電子とミラー電子の両方を使って画像を取得する条件において、垂直入射している一次電子ビームの入射角を変更することにより、欠陥検出感度を向上させる手法である。
上記装置において、垂直入射している一次電子ビームの入射角を変更することにより、実際の欠陥サイズより大きく検出器に投影させて欠陥検出感度を向上させる手法である。
ミラー電子のビーム中心であるミラーセンターの位置はNA結像画像を取得した際に、クロスオーバ中心に対してスキャン方向側に100〜800μmの範囲で位置調整する。
ミラーセンターの位置をクロスオーバ中心に合わせたときより、クロスオーバ中心からスキャン方向に遠ざける方向に調整すると、欠陥より出てくる高輝度の領域が拡大されていく。
欠陥のない部位では、2次放出電子が発生し、欠陥のある部位はミラー電子が形成される場合、上述の調整を行うとミラー電子の領域が拡大されることにより、高輝度の領域が広がることを活用して、微小欠陥の検出感度が向上する。
(実施形態24)
試料表面電位均一安定供給化試料表面電位均一安定供給化
本発明の検査装置及び検査方法における試料表面電位均一安定供給化の例について図95及び図96(A)、96(B)を参照して説明する。
写像投影方式による欠陥検査装置では、試料表面に電圧を印加する必要がある。
試料表面に与えられた電圧を変化させることで、表面状態の見え方・欠陥の見え方などを調整している。
即ち、試料表面の電圧分布が一様でないと、電圧分布の違いにより条件が変わり再現性などの問題になる。
そこで、試料表面の電圧分布が均一になるように印加方法を提案する。
現状はマスク表面に接触する部分を一ヶ所設け、それに高電圧電源からの出力をつなげることで高電圧を試料表面に印加する。
試料に接触している面積を広げる。
試料印加電極が取り付けられている部分を額縁とよび、これは上下に昇降させることで試料を内部に搬入できる。
額縁が降りた状態で、試料印加電極が試料表面に接触し、試料に均一に電圧を供給することができる(図96A参照)。
更に、別な額縁構造を用いると均一で安定印加に有効である。その例を図96(B)に示す。図96Bに示す額縁の下面図(図96B(b))と上面図(図96B(c))を参考にすると、上面は突起のない滑らかな仕上げ面の額縁構造である。例えば195×195mm□のチタンまたはりん青銅の板材であり、内部に146×146mmの穴があいている。そして、裏面に示すように3箇所に突起部がある。突起部は突起高さ10〜200μm程度である。この突起の先端は尖っていてもよい。この額縁(カバー)を用いてマスクの表面層に規定値の電圧印加を行う。本発明では、マスクがパレットに設置されている。パレットにマスク支持ピンがありその上にEUVマスクなどの露光用マスクが設置されている。マスク支持ピンはパーティクル発生が少ない部材が用いられる。金属部材にポリイミド、テフロン(登録商標)、フッ素樹などの脂樹脂がコートされたもの、また、部材自体が樹脂であるものなどが用いられる。この支持ピンのマスク設置位置はマスク内部の142×142mmよりも外側での接触がなされる。それより内部では露光装置などにマスクが設置されたときに、異物やパーティクルが付着するとマスクが斜めに傾いてしまう影響が出るので、その領域に異物やパーティクルの付着を防ぐためである。また、マスクの側面と下面との角部に支持ピンを接触させて固定することも可能である。その場合は接触部が規定角度の斜めになった面構造を有する。また、ステージ移動時のマスクの位置変動を防ぐために、位置固定用のマスク固定ガイドピンを設けて接触固定させることも可能である。
EUVマスクがこのように設置されているとする。通常EUVマスクは最表面に絶縁膜がありその下部に導電膜がある。よって、マスク表面への安定で均一な電圧印加を行うためには、最表面の絶縁膜を破って導電幕に引火する必要がある。そのとき、図96Bに示す突起部を有する額縁(カバー)が有効となる。額縁にはマスク表面に印加すべき規定の電圧が掛かっている。そして、図96Aのように、額縁をマスク上方から設置する。そのとき、この突起部が絶縁膜を破り下部の導電膜に達して安定した電圧印加を行うことができる。この突起部があるとその部位がマスクへの印加部となるため印加部位が特定できること、つまり場所を制御して印加できる。また、3点の接触になるので、マスク上面と額縁の平行度が制度よく設置できるメリットが得られる。2点での設置では、額縁が傾き、4点以上の設置ではどの突起が実際に絶縁膜を破り導電膜に印加しているのか特定するのが難しいからである。また、同様に、突起部がない場合は、どの部位にてマスクに接触しているのか特定が難しくなる。マスク交換のたびに異なった接触状態になる可能性があるのである。このとき、EUVマスクの絶縁膜厚さは、通常10〜20nmであるため、それを破るのに適した額縁重量にしておけばよい。
また、額縁が接触したときに、マスク面と額縁の段差を小さくする必要がある。段差による電界分布の不均一が生じるからである。マスク端部、つまり、額縁に近い部位で検査を行うときに、電界分布の不均一性によって、電子軌道がずれて、座標と電子画像の中心位置のずれが生じることがある。このため、額縁とマスク面の段差を最小限に小さくする必要があるのである。本発明では、10〜200μmに抑えた構造になっている。好ましくは、10〜100μmの段差にするのがよい。また、額縁のマスク接触面付近は板厚を薄くする手法も可能である。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜23にも適用可能である。
(実施形態25)
光/レーザ照射による光電子像形成
本発明の検査装置及び検査方法における光/レーザ照射による光電子像形成について説明する。対象になる試料としては、図53(a)、(b)、図57のような凹凸のある試料がある。これらは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク及びテンプレート、及び、半導体ウエハ等がある。
(フィードスルー+三角ミラーによる試料への照射)
参考となる図は、図26〜図32の形態が適用できる実施例である。
三角ミラーは真空中、他のミラーレンズは大気中の説明は上述している。光源以外は真空中に設置する形態もある。UV、DUV、EUV、X線等のエネルギの高い光を照射すると、その経路にある大気、チリ、ほこり等があると、光散乱やゆらぎが起こり照射系の不安定性を増加させる、また、レンズやミラー等の光学素子の表面の劣化を招く。つまり、素子表面の酸化膜形成、光が当たる部位の膜質劣化、ほこり、ちり付着による面劣化が起こる。真空中に工学部品を設置することにより、このような問題を大幅に低減できる方法、および装置である。この場合、メインコラムと接する別チャンバにし、大気中にて光軸調整が終わった後、光学系の真空排気を行う。光学系のみの別チャンバであれば、大気開放/真空排気が容易に可能となる。電子工学系のコラムと真空導通があると、メインコラム、メインチャンバも一緒に大気開放を行う必要があるため、関係ない部位の真空排気および大気開放を行わないといけなくなる。このことは大変なコストと時間の損失となる。
(大気側ミラー・レンズ系による光軸調整、レンズ位置による照射サイズ調整)
メインコラム外側のミラーレンズ系にてメインコラム内の光軸および光照射する位置・サイズの調整を行うことができる。メインコラムに光を導入する前に、2つ以上のミラーにて、光軸の調整、つまり、シフト、チルトを行う。それにより、試料の照射位置に照射光の中心が来るように調整を行う。そのとき、試料面の垂直方向に対する角度、つまり入射角の調整も行うことができる。
また、照射光のサイズの調整はレンズの位置を光軸方向に変えて設置することにより可能である。例えば、焦点距離f300mmであれば、レンズ位置から試料面の位置までの距離をfより短く、または、長くすることにより、照射する光のサイズを調整できる。φ5〜φ1000μm、レーザ出射光径の1/200〜×1倍程度。
(2次系倍率対応の光出力調整をアッテネータで行い、2次系光学調整)
メインコラムの光軸調整、つまり、光電子の軸調整において、光照射を行ってその光電子を用いるとき、メインコラムの光軸の倍率に応じて、光の照射量を制御する必要がある。これは、同一の光照射密度(量)であれば、低倍の場合、検出器に到達する電子量が多くなり、高倍率の場合は、電子量が少なくなるのである。高倍率にあわせた光密度照射を行うと、低倍においては、検出する電子量が多くなりすぎて、検出器で飽和することがある。そのため、照射する光の密度を変えるため、メインコラム外側の光学経路にアッテネータまたは、ビームスプリッタを設置して、照射する光のパワーを調整することが可能である。光源自体は安定動作のために、出力変化をさせないほうがよい。また、照射サイズを変えないで行うときに特に有効である。また、照射する光の密度を変えるために、光の照射サイズを変えることが可能である。低倍のときに、光照射の密度を低減させて調整を行い、高倍率において照射するサイズを小さくして光密度を高くして画像調整を行う。また、導入する光出力の調整と照射する光のサイズ制御を併用して像調整を行うことも可能である。
(λ<264nm:Ru白信号、TaBO黒信号、λ>264nm:Ru黒信号、TaBO白信号)
材料のワークファンクションWFは、その値のエネルギよりも大きなエネルギを照射すると光を放出する材料固有の値である。そのWFに対応する光波長をλWFとする。試料のWFより高いエネルギの波長を選択し光電子量を多く発生する撮像とWfより低いエネルギの波長を選択し光電子量が少ない状況で撮像する方法がある。
また、複数の材料が混在している試料において、つぎの特徴を有する撮像方法が本発明で可能となる。このとき、例えば2つの材料1と材料2がある場合、それぞれ、WF1、λWF1、WF2、λWF2とする。照射する光の波長λとする。
A : λ<λWF1<λWF2の場合
材料1と材料2で、光電子の放出効率が高いほうが白信号、低いほうが黒信号のコントラストで観察される。
B: λWF1<λ<λWF2の場合
材料1については、光エネルギ<WF1となるので、材料1からは光電子が大幅に減少する。よって、材料1は黒、材料2は白(相対的な電子量の多いほうを白、少ないほうを黒信号と呼ぶ)で観察される。
C: λWF1<λWF2<λの場合
光エネルギ<WF1、WF2となるので、材料1、材料2の両方の光電子量は大幅に減少する。よって、双方とも白、黒の判別が難しい状況になる。
このように、光の波長を選択して、複数材料のワークファンクションよりも高いエネルギの光、またはレーザを照射することにより、光電子量の差に起因するコントラストを得ることが可能となり、かつ、光電子のエネルギ幅は、2次電子等に比べ、小さいので(例えば、1/5〜1/20)、収差が小さく、高解像度を達成できるのである。
上記Aの場合、材料1に光電子放出効率が高く、材料2に光電子放出効率が低い材料を選ぶと、高コントラストでの撮像が可能となる(コントラスト0.5〜1.0)。
上記Bの場合、材料1はλWF1より低いエネルギの波長を与えるので、材料1の光電子量は低いが、材料2はWF2より高いエネルギの波長の光(またはレーザ)を照射するので、材料2は多くの光電子を発生する。よって、相対的に、材料2が白、材料1が黒信号で高いコントラストにて、パターンを撮像することが可能となる。
上記Cの場合、材料1も材料2のワークファンクションより低いエネルギの波長を照射するので、光電子は少ない状態である。このとき、ワークファンクション(仕事関数)の低い異物等の欠陥があると、その欠陥が光電子を発生し、検出できるのである。
このように、マスク、EUVマスク、半導体ウエハ、ナノインプリントマスク等、複数種の材料で構成されている試料に対して、各材料のワークファンクションに対して、照射する光または、レーザの波長を選択(レーザのエネルギを選択)して、光電子量を多く発生させる波長を選別して撮像すると大変効率的で有効であり、高解像度のパターン撮像および高感度の異物撮像を行うことができる。このとき、2種類の材料の場合は、相対的に光電子量の多/少を形成する方法を、用いると有効である。また、3種類以上であれば、1種類だけ光電子量が多い状態を形成すると有効である。このとき、上述のマスク、EUVマスク、半導体ウエハ、ナノインプリントマスク等の試料の場合では、凹凸構造を形成している場合が多い。そのときは特に有効である。それは、最上段のtop層だけ、光電子量が多い条件を形成して撮像または欠陥検査を行うことができる。このとき、パターン系状がクリアに撮像できるのでパターン欠陥撮像および検査に有効である。また、凹部の底面の材料の光電子量が多い条件を選択すると、凹部の欠陥の観察または検査に大変有効である。このとき、更に、パターンのサイズ、例えば、ライン/スペース、ハーフピッチ(hp)サイズ、または、穴形状のサイズが光の波長より小さいときに特に有効である。例えば、光検査装置であると、照射した光の散乱光を用いて、パターン等の欠陥を観察または検査するが、波長よりも小さなサイズでは、波長限界により分解能が大きく低下するので散乱光によるパターンの分解能が大きく低下して、パターンの観察または検査が困難となる。それに対して、本発明の光電子を用いる方式では、パターンサイズが波長より短い場合でも、高解像度にてパターンの観察または検査が可能となるのである。それは、上述したように、1)材料のワークファンクションに対して、波長を選択して、コントラストを高くすることができること、および、2)波長より小さいパターンにおいても、近接場の形成にて光電子発生が行えるので、パターン系状を反映した光電子の発生をすることができるので、高コントラストおよび高分解能を達成することができるのである。例えば、top層の光電子量だけが多い状態を形成すれば、topつまり、ライン部(凸部)が白いパターンを形成できるのである。また、凹の底面だけが光電子が多い条件を形成すれば、凹部(スペース部)が白信号にて、かつ、高解像度を達成して観察、または検査が行えるのである。これらの条件を形成するときに、上述のA、B、Cの方式を選択して行うのである。また、このとき、3種類以上の材料があるときは、例えば、top層、凹部、壁部があるとき、これらのときも、同様に、top層だけ光電子量が多い条件を形成すること。凹部(スペース部)だけが光電子量が多い状態を形成すること、および、壁部だけが、光電子量が多い状態を形成することが可能である。
また、これらの状態の撮像および検査を組み合わせて用いると更に有効である。例えば、top層(凸部)のみ光電子量が多い状態と凹部(スペース)だけが光電子が多い状態の観察または検査を行い、双方の結果から欠陥を夫々抽出すると、パターン形状欠陥も、凹部にある微小異物欠陥や膜異常等のパターン欠陥を検出できるので、もれなく観察または検査を行うことが可能となる。また、上述した、top層の光電子が多い状態と凹部の光電子が多い状態を同時に形成し、観察または検査を行うことが可能である。このとき、組合わされた画像になるので、パターンの解像は悪くなり、グレー(白・黒の中間職的な色調)状態となる。そして、欠陥がある部位がこの色調から大きくずれて、白くまたは黒くなり、異物やパターンの欠陥だけ検出をすることが用意となる。特に、パターン上にある異物の欠陥では、top層の上に乗っている異物であれば検出が容易であるが、凹凸パターンの凹部にある微小異物の場合に対して、大変有効となる。この微小異物のみ白くまたは黒くなり、高いコントラストにて検出ができるからである。それは、材料が異なる場合ではワークファンクションが異なることによる項電子量が異なる効果、また、同質の材料であれば、微小異物による凹部内の電位分布が変化して、光電子の軌道が変化して、到達する光電子が多い場合には、相対的に白信号で観察され、少ない場合には黒信号で観察される。また、この微小異物の光電子量が少ない場合では黒信号、多い場合では白信号で観察される。また、これらを利用して検査が行われる。
例えば、EUVマスクの場合、top層がTaBO、凹部がRuの構造がよく用いられている。そして、Ruのワークファンクションが4.7eVで相当波長が264nmとなる。
このとき、照射する光またはレーザの波長λを上述のA、B、Cの条件のように選択すること、または、組合せることにより、top層を白信号、凹部を白信号で観察または検査する場合を選んで形成することができるのである。
例えば、λ<264nmで、凹部のRuの光信号が多い状態つまり、白信号での観察または検査が可能である。また、λ>264nmの場合、top層のTaBOが白信号で観察および検査できる。
このとき、光または(および)レーザの照射において、多方向からの照射を行うことにより縦、横、斜め方向のあるライン/スペースパターン等において、対象性のある画像形成の形成が可能となる。このとき、4方向or8方向から照射等を行うことが可能となる。また、T/M方向を選択または、組み合わせて、光またはレーザの照射を行うと大変有効である。
これは、パターンの方向とそれに対する光またはレーザの照射方向と偏光方向によって、パターン面に形成される近接場(波長より小さいパターンサイズ領域にて伝達されるエネルギ場)の分布が大きく異なるため、高コントラストが得られる条件を選んで用いることができる。
つまり、top層で強い近接場が得られる条件や凹部で強い近接場が得られる条件を選んで観察または検査を行うことが可能となる。
このとき、単一波長のレーザを用いたときに、干渉や回折の影響を受けることがある。これらの影響により不要な白/黒パターンが形成されることがある。この影響を回避するために、波長幅を広くする。例えば、±1〜2nm。または、波長の異なるレーザを同時に照射する、等が有効である。
また、この問題については、偏光方向を単一ではなくマルチ方向にすると大変有効である。干渉や回折の影響を大幅に低減できる。また、連続的に偏光方向を変化させながらの撮像をすることも有効である。1フレームの撮像を行う時間内に、偏光方向を変化させることにより露光時間内でできる画像は積分された画像となり、回折・干渉の影響の小さい画像を得ることが可能となる。なお、本実施例は、前述した実施形態1〜24にも適用可能である。
EUV光照射による散乱光を用いた検査方法・装置
装置系について述べた図1〜図25と同様の方法及び装置を用いて、EUVマスクの検査を行うことが可能である。この例では、試料への照射はEUV光である。そして、EUVマスクの凹凸パターンから反射した光(またはEUV光)によるパターン形状をミラー系で結像し検出器で検出する。その後の信号処理にて欠陥の検出を行うことが可能である。検査はセル/セル、ダイ/ダイ、ダイ/データベース等が可能である。EUV露光では波長13.5nmが用いられている。これに限らず、軟X線領域での波長に対して同様の方法及び装置系を用いることができる。
EUVは波長が短いので大気中での伝達及び照射、検査像形成は損失が大きく、また、大気粒子のイオン形成によるコンタミやノイズ増加等、不効率である。よって、真空装置系での光伝達・照射・像形成が必要となる。このとき、本発明の真空装置系を適用することが可能となる。
EUV照射については、図8、9、図26〜図32に関連して述べた実施例と同様である。これまで述べた実施例と異なるのはEUVマスクからの反射または散乱される光またはEUV光によるパターンを1次光学系にて形成するところである。2次系はミラー電子や2次放出電子ではないので、電子用の静電レンズや電磁レンズの代わりに、EUV用の反射ミラーが用いられる拡大光学系であり、該光学系により検出器に結像して拡大投影される。光学倍率は500〜3000倍程度であり、そのとき、例えば、L/Sパターンについて3〜4Px/ラインが達成される。EUV光の照射の長所は凹凸パターンの凹部の反射率が高いことである。また、側壁部や凸部はEUV光に対して吸収層となっているので、凹部の反射光強度が高く、凸部の反射光強度が低いので、高いコントラストとS/Nを達成できるのである。このとき、検出器としては、EB−TDIやEB−CCDを用いることができる。EUV光はエネルギが高いので電子入射でなくても感度があるからである。また、EB−CCDにより光学系や像形成条件の調整を行うことができる。
また、検査では、EB−TDIを用いて連続した検査像を形成し、高速に検査を行うことができる。このとき、ステージとEB−TDIとは連携した動作が行われ、像の積算により取得光量を増加して高いS/Nの検査像取得と高速検査を行うことが可能となる。EB−TDI、EB−CCDは真空中にセンサ部が設置されている。これらの検出器に限らずセンサ部が真空中に設置することのできる検出器で、かつ、2次元像を形成することができる素子であれば適用可能である。例えば、シンチレータ+TDI等である。また、EUV反射光の光学系である1次光学系については、EUVによる反射や光電子発生によるノイズ低減のために、コラム表面や、ミラー以外の部材の表面にTaBNやカーボンの薄膜コートを行うことができる。
また、EUVマスクtop層に酸化膜がある場合、EUV光照射によるEUVマスク表面のチャージアップの抑制のために、図192にある試料付近に制御電極を設けて、試料表面の電位をコントロールすることができる。
例えば、EUVマスク自体は、GND接地されているとき、top層の酸化膜にEUV光が照射されると酸化膜から光電子が放出されて該酸化膜が正に帯電する。これを抑制するために、マスク方面付近にマイナス電界を発生させて、つまり、相対的にマスク方面が正電位となるようにする。それにより、発生した光電子がまた、酸化膜に戻ってきてチャージアップ抑制ができるのである。このほか、EUVマスク表面の電位を3〜10V程度、負電位に印加しておく方法も有効である。なお、本実施例は、前述した実施形態1〜25のうち、2次光学系以外に、同様に適用できる。
(治具による照射光の軸調整方法)
撮像または検査を行うときに用いる第1の形態の光またはレーザの照射機構と、それとは別に、調整用に用いる第2の形態の光またはレーザを用いることを特徴とする。この第2の形態の光またはレーザは、調整用にもちいられる。このとき、第2の形態の光は、レンズやコラムに組み込まれ、照射位置が固定されているものであり、予め、照射位置が測定されており、ほぼ、電子光学系の中心位置に照射光が位置するものである。また、導入機構の機械組立て精度により、その位置が例えば、±100μm以内にあるものを用いる。そのとき、光またはレーザのビームのサイズは、設置誤差よりも大きなものを用いる。例えば、組立て精度+200〜2000μm程度。用いた例では、φ1mm(楕円でもよい 1×1.5mmの楕円等)である。このとき、ファイバとレンズによる導入機構を用いることができる。それによると、設置する機械精度により照射位置が決まるので、取り扱いが容易、および、設置位置の再現性がよいのである。第2の形態の光導入系を調整に用いると大変効率的である。
調整1:電子光学系の光軸調整に用いる。光電子が試料表面から放出され、その光電子はII次電子光学系により検出器に導かれる。この場合、光またはレーザの面ビームが照射され、2次元の面状の光電子が放出されて2次電子光学系にて検出器に導かれるのである。面の光電子は、2次元の光電子による像が形成され、それが2次光学系により検出器に拡大投影される。このとき、第2の形態の光導入により、光電子の像を形成し、2次光学系の光軸中心条件を求めることができる。予め求めた光軸条件および対物レンズの中心位置(物面位置)を求めておく。それにより、その位置にマーク(特徴のあるパターン、ファラデーカップ等が用いられる)を設置する。それにより対物レンズ中心位置が決まる。次に、このマークの位置にビームが照射されるように第1の形態の光またはレーザの導入系の調整を行う。このときミラー、レンズ、光源による構成であり、2つ以上のミラーとレンズにより、照射位置とサイズの調整を行うのである。このとき、第1の形態にて求めた対物レンズ中心のマークがあるので、そこに第2の形態の光またはレーザの明射を行えばよい。このマークがあることにより大変効率的に第1の光またはレーザの導入系の光軸調整が可能となる。もし、第2の光学系がない場合、第1の光学系の組立て後第1の光導入系にて光軸調整を行わないといけないので、初期に、対物レンズ中心が不明な状態でその位置を探すことになる。つまり、ラフに、光電子像が見える状況を形成し、その状態にて、2次光学系の調整つまり、対物レンズ中心位置を求め、そこにマークを設置して、その後、第1の光導入系の光軸調整を行うことになる。そのため、ラフな状況からの対物レンズ中心だしと第1形態の光導入系のラフな光軸調整を行い、双方の軸調整を交互に行いながら、最終的な2次光学系の軸調整と第1形態の光導入系の軸調整を行う必要がある。よって、第2形態の光導入系により、常に、2次光学系の軸調整が済んでいる状況を形成しておくこととは大変効率的である。
また、治具を用いて第1の光導入系の軸調整を行うことも可能である。穴の開いたガイド板とその下にパワーメータを設置して、ガイド板の穴を通過した量が最大になるよう用に第1の光導入系の光軸調整を行う。このとき、予めガイド板の穴位置が対物レンズの中心位置に来る座標を求めておく。
(光+EB 照射式)
1次系を2種類有する場合の実施形態について述べる。
光またはレーザ照射による光電子像と電子ビーム照射による2次放出電子および/またはミラー電子(ミラー電子を有する場合とない場合とがある)の組合せによる像形成を行うことも大変有効である。ここで、2次放出電子とは、2次電子、反射電子、後方散乱電子の一部または混在した状態をいう。特に、低LE時には、それらの区別が難しい。
図7〜図9、図26〜図31の光またはレーザを試料に照射する形態と図33a〜図42の1次系に電子ビームで試料を照射する形態の融合を行った形態である。実施形態の例を図196、図197、図198に示す。試料が凹凸形状の場合の例を以下に述べる。
この例は、1次ビームとして、レーザ照射(または光)と電子ビーム照射を同時に行うときの例である。照射方式としては、同時、時間的に交互に照射等が可能である。このときのレーザ照射と電子ビーム照射を行ったときの特徴をそれぞれ述べ、融合したときに起こる効果・作用を述べる。
レーザ照射を行ったときtop層(凸部)の光電子量が多く白信号で、電子ビームが照射されたときにtop層の2次放出電子が多く白信号の場合、光電子像と2次放出電子像を組み合わせることで、top層の電子量を増加でき(光電子白+2次放出電子および/またはミラー電子白)、つまり、top層(凸部)が白、凹部が黒となる像が形成でき、コントラストおよびS/Nの増加が可能となる。
反対に、凹部の光電子が多く凹部が白信号で、2次放出電子の凹部の電子量が多く凹部が白信号で観察される場合、レーザ照射と電子ビーム照射を同時に行うと(組合せ)、凹部が白(光電子白+2次尾表出電子および/またはミラー電子白)、top層(凸部)黒で形成される像のコントラストおよびS/Nを増加することができる。このとき、白信号とは、他の部位に比べて検出される電子数が多く、相対的に輝度が高い、つまり、白で撮像可能であるということである。
図33(a)に示すように、電子ビームを用いる場合は2次ビームとの分離を行うため(2次ビームの直進を行うウィーンフィルタ条件等を用いる)、E×B等の電子ビーム分離器が必ず必要となる。そのため、電子ビームとレーザまたは光ビームを融合した形態にも、そのような電子ビーム分離器が必要となる。図196、図197、図198にはその例を示している。
図196、図197と図198の違いは、次の通りである。図196と図197は、E×Bよりも試料側にてレーザー(または光)の導入する機構を有している。そして、図198はE×Bよりも検出器側でレーザー(または光)を導入する機構を有しているのである。例えば、図196、図197では、カソードレンズにレーザ導入用の穴を設けて、チャンバ外部にてミラー等でアライメント調整された状態でレーザを試料に照射する方式や、ファイバ+レンズ等をカソードレンズに導入して、レーザ照射を行う等が可能である。また、図198は、図26で説明したのと同様のミラー部材を2次系のコラム中に設置して、コラム外部からレーザを導入して試料にレーザ(または光)を照射することが可能となる。図198は、レーザ照射と電子ビーム照射による凸部の電子量が多い(白信号)場合を示しているが、その反対の凹部の電子量が多い(白信号)場合も図196と同様に行うことが可能である。
また、1次系の電子ビームについては、図35〜図41に示すような実施形態で説明した電子ビームを用いるとより有効である。大電流で狭帯域エネルギの電子ビームを照射できるので、形成される2次放出電子やミラー電子のエネルギが狭帯域となり、収差とボケの少ない高解像度の像を実現できる。また、レーザ照射による光電子のエネルギは2次放出電子よりも狭帯域であるため、融合/組合せを行ってもエネルギの狭帯域状態を保持してできるため、電子量は増加するがエネルギ幅は広がらないですむというメリットがある。これは、スループットをあげるために照射するレーザや電子ビームを増加したときに、像質を劣化させないで実現できるので大変有効・有用である。
また、逆に光電子が白、2次放出電子が黒の場合の組合せも可能である。この場合、組み合わされた像はグレーつまり、白と黒の中間色となり、パターンの解像度、コントラストは低下する。このとき、欠陥だけが白信号が強くなる、または黒が強くなる観察を行うことが可能となる。このとき、例えば、光照射に感度の高い欠陥であれば、光電子量の増減により白または黒の信号形成が行える。また、電子照射による感度の高い欠陥であれば、2次放出電子の電子量の増減により、白または黒信号形成を行うことが可能となる。
また、光電子が黒、2次放出電子が白の場合の組合せも同様に可能である。EUVマスクの例では、top層のTaBOと凹部のRuに対して下記の組み合わせを行うことが可能となる。
(Ru白/TaBO黒の光電子像と2次放出電子および/またはミラー電子による像の組合せ・Ru黒/TaBO白の光電子像と2次放出電子および/またはミラー電子像の組合せ)
これにより、高いコントラストとS/Nを実現でき、感度の高いパターン欠陥の検査および異物の検査を行うことが可能となる。
低LE像に対して、酸化膜電位安定化を光照射で行う。電子照射エネルギ−5eV<LE<10eVである、低LEの像に対して、特に、top層の材質が酸化膜のときに大変有効である。top層が酸化膜のとき、低LE電子線照射により、酸化膜は負の電圧に帯電が起こる。その影響により像質劣化が起こる、また、電流密度を上げられないことが起こる。このとき、UV、DUV、EUV、X線等の光またはレーザの照射を行い、該酸化膜の電位を制御することができる。これらの光を照射すると光電子が発生することにより、正の帯電を起こすことが可能である。よって、低LEとこれらの光またはレーザの明射を同時または間欠的に行うことにより、酸化膜の電位を一定に制御することが可能となるのである。一定に保たれたことにより、像質が安定し、電流密度を増やしても安定した像形成が可能となるので、スループット向上が可能となる。
(光電子カソード1次系)
基準電圧がGNDではなく、高電圧の場合に用いられる例を図37に示す。この例では、基準電圧が+40000Vである。その基準電圧がコラム内で統一して電場が形成できるように、筒状の管ある。この管を管1とする。そして、40000V印加されており基準電圧を形成している。また、光電子面に近いところは、等電位線(分布)光電面と平行になっている。また、そのため、レンズは磁場レンズが用いられている。また、アライナは電磁アライナが用いられている。また、NAや他のアパーチャは基準電位であり、管構造に設置されている。この管1は、高電圧が印加されるため外側にもうひとつの管2がある。この管2がGNDになっており、装置としてGND接続が可能となっているのである。管1と管2は耐電圧のある絶縁物にて絶縁されており、必要な印加電圧が保持さえている。ここには記してないが、2次光学系の基準電圧が高電圧にするために、1次系の基準電圧を制御しているのである。したがって、2次光学系は、1次光学系と同様に、管が2重構造のコラムとなっている。内側の管に高電圧が印加され、外側の管がGNDになっている。その電圧差は1次系と同様に保持されている。また、管1が導体でありこの管1の外周部にポリイミドやエポキシなどの樹脂材料がコーティングされていてもよい。さらに、その樹脂材料の外周部に導電材料がコーティングされており、そのコーティングされた導電材料がGNDとなっていてもよい。それにより、該樹脂材料の内側が高電圧の基準電圧であり、外側がGNDとなっており、他のGND接続及びGND設置できる部品の組み立てが可能となる。また、この外側に導体のシールド管の管2があってもよい。この管2はパーマロイや純鉄の磁性体であり、外部磁場の遮断が可能となる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜25、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態26)
EO補正
本発明の検査装置及び検査方法に用いるEO補正の例について説明する。
A.概要
ウエハ上からのビームをTDIで撮像するにあたり、ウエハの位置は正確に位置決めされている必要があるが、実際にはウエハはX−Yステージ上に有り、機械的な位置決めがなされる事から、その精度は数100μから数10nm、応答速度は数秒から数msが現実的な値である。
一方、デザインルールは数10nmに向かって微細化されており、したがって、線幅が数10nmの配線や、直径数10nmのビアを検査し、それらの形状欠陥や電気的欠陥の検出及び直径数10nmのゴミの検出が必要となる。上記機械的な位置決めのみを頼りに撮像する事は応答時間と位置決め精度のオーダがデザインルール及び撮像精度のオーダとかけ離れており正確な像を取得する上で著しい障害となる。
撮像のシーケンスはステップ(x軸)と定速度スキャン(y軸)の組み合わせで実行され、比較的動的な制御を行う(y軸)は、制御残差が一般的に大きく像のボケを防ぐ意味から、より高度な制御を要求される。
これらの項目に鑑み、高精度かつ応答性の優れたX−Yステージを有する事は勿論であるが、更に、ステージでまかなえない、撮像部に対するビームの制御精度、速度を実現するため、EO補正の機能を備えている。
基本的な方式は、ステージ上のウエハの位置はレーザ干渉計システムとx−yの軸上に設置されたバーミラーにより、サブnmのオーダで数マイクロ秒の時間遅れ以内にその位置を正確に認識し、自動制御ループにより機械的アクチェータを駆動し、目標位置に時間的な遅れと残差を伴いながら位置付けられる。この制御によって位置決めされた結果の制御残差は制御装置内部で発生される目標位置とレーザ干渉計システムによって得られた現在位置との差分により求められる。一方、ビームは数々の電極を経た後に、補正用偏向電極を経由して撮像装置に導かれる。補正用偏向電極は、ウエハ上の距離に換算しておおよそ数百μm以下、好ましくは百μm以下、より好ましくは数十μm以下の偏向が可能な感度を有し、これに電圧を印加する事で、二次元的に任意の位置にビームを偏向する事が可能である。制御残差は演算装置で演算を実行された後、D/Aコンバータによって電圧に変換され、残差を相殺する向きに補正用偏向電極印加される。以上の構成によりレーザ干渉計の分解能に近い補正を実行する事が可能となる。
他の方式としてX軸(ステップ方向)は上記手段を用い、Y軸(スキャン方向)は撮像素子であるTDIの転送クロックを、ステージの移動速度に同期させ転送する方式も考案した。
図97にEO補正の概念を示す。目標位置への指示95・1が出力され、機械アクチェータを含む制御フィードバックループ95・2に付与される。この部分がステージに該当する。駆動され、位置変位が出た結果は位置検出器95・3によりフィードバックがかかり、駆動系の位置変位は、位置指示からの目標位置に収斂してゆくが、制御系の利得が有限の為、残差が発生する。現在位置を位置出力系95・4(ここではレーザ干渉計を用いる)によりサブnmのオーダで検出し、位置指示装置95・1との差分を残差検出器95・5により検出し、高圧高速増幅器95・6を使用して偏向電極95・7に印加し、残差を相殺する向きに電圧を印加し、本来この機能なき場合には95・8の如く発生する変動分を95・9の様に減ずる機能を有する。
図98に具体的な機器構成を提示する。XYステージ96・1はX軸駆動用のサーボモータ96・2ならびにエンコーダ96・3によりX軸の駆動と大まかな位置、及び速度の検出を行い円滑なサーボ特性を実現する。本例では、サーボモータを用いているが、リニアモータ、超音波モータ等のアクチェータにおいても同様な構成が可能である。96・6・はこのモータを駆動する電力増幅器である。X軸の精密な位置情報はミラー96・7、干渉計96・8、レシーバ96・9、レーザ光源96・10、干渉計ボード96・11の組み合わせによりサブnmの分解能を有する位置検出機能を実現している。
Y軸も直交するX軸と同様の機能であり、サーボモータ96・12、増幅器96・13、ミラー96・14、干渉形9・5、レシーバ96・16より構成されている。X−Yステージコントローラ96・17はこれらの機器を統括して制御する事により、ステージの二次元的な動作を可能とし、1000μm〜1nmの精度、好ましくは100μm〜2nmの精度、より好ましくは1μm〜2nmの精度、更に好ましくは0.1μm〜2nmの精度を達成しており、応答速度は数1000ms以下、好ましくは数10ms以下、より好ましくは数ms以下の性能を実現する。一方、X−Yステージコントローラ96・17からはX基準値、Y基準値がEO補正器96・18に出力され、干渉形96・11からの32ビットバイナリー形式で出力される位置情報を高速のバッファボード96・19を経由して現在位置をEO補正器96・18は受け取る。内部で演算を行った後、高圧高速増幅器96・20、96・21により電圧増幅した後、偏向電極96・22に印加し、残差分を補正すべく偏向を行い、位置ズレを極少にした画像情報電子ビームをTDI(撮像素子)96・23へ導く。96・24は後述するが、TDI96・23の転送速度を決定するタイミング信号を発生する部分である。
次に本装置におけるスキャン方向の目標位置の発生機能について述べる。EO補正は目標位置と実際の位置の差分を求め、差分を相殺するように電子ビームを偏向して位置の補正を行う機能であるが、補正範囲はおおよそ数十μmの範囲に限定される。これは電極感度、高圧高速増幅器のダイナミックレンジ、ノイズレベル、D/Aコンバータのビット数等により決定されている。ところが、スキャン時のステージの実際の位置は、制御ループのゲインが有限であることに起因して停止時と比較し、目標位置に対し、大幅なズレを生じる。20mm/sで走行した場合、目標位置との乖離は約400μm程度となり、そのまま差分を演算して出力しても補正範囲を大幅に超越して系が飽和してしまう。この現象を防ぐ為に本装置では次のような手段を用い、この問題を回避している。図99にこの概念を図示する。
97・1はステージの目標位置でありスキャン時は等速運動である為、時間とともに直線的に増加する。一方、実際の制御された結果のステージの機械的位置97・2は数ミクロンの機械的振動を含み約400μm程度の定常偏差97・3を有する。この定常偏差を除去する手段としては、フィルタを用いて、実走行時の位置情報を平滑化する事が考えられるが、この場合、フィルタの時定数により必ず、遅れが生じ、リプル(ノイズとなる電圧変動)を無視出来る程の時定数を持たせると、測定開始エリアが大幅に限定され、全体の計測時間の大幅な増加につながる欠点を有していた。そこで本案では、この定常偏差を検出するために、少なくとも前回にスキャンした時点での現在位置と目標位置との差分を本実施の形態においては少なくとも2の16乗程度積算し、これをサンプル回数で除する事で、目標位置と現在位置との定常偏差の平均値97・4を求め、今回のスキャン時には目標位置97・5から平均値97・4を引いて合成された目標位置97・6として演算を行い、図100の98・1に図示するような、ダイナミックレンジ範囲内でEO補正が可能な構成を実現した。なお、積算数は、目標精度が得られればよいので、この値に限られるものではなく、より少ない積算段数でもよい。
図101にブロック図を図示する。目標値99・1は現在位置99・2と引き算され、99・3のブロック内で前期の積算演算をスキャン時に実行する。一方、99・3には前回同様にして求めた定常偏差の平均値が99・4より出力されている。引き算器99・5により99・1から99・4を引き合成目標位置99・6とし、この値と干渉計からの現在位置99・7とを引き算して、応答の遅れやリプルのないEO補正データを実現している。
図102に図101における99・3のブロック差分平均検出の構造について図示する。100・1、100・2にて積算を実行し、累積カウンタ100・3の値によりデータセレクタ100・4のワードを選択し割り算相等を実行し、定常偏差の平均値を出力する事を実現している。
図103にTDIの転送クロックのアイデアについて記述する。TDIは光電素子をスキャン方向に多段に接続し、各撮像素子の電荷を後続する素子に伝送する事で感度の向上とランダムノイズの低減を目的とした撮像素子であるが、図101に示す如く、ステージ上の撮像対象と、TDI上の画素が一対一に対応している事が重要でこの関係が崩れると、像のボケを生じる。同期関係にある場合を1−1、1−2、2−1、2−2に示し、同期がずれた場合を3−1、3−2、4−1、4−2に示す。TDIの転送は外部からのパルスに同期して次段への転送が実行されるため、ステージの移動が1画素分移動したところで、転送パルスを発生させればこれが実現できる。
しかしながら、現在主流のレーザ干渉計の位置情報出力は32ビットのバイナリー出力を10MHzの自己の内部クロックに同期して出力する形式である為、そのままでは容易に実現できない。また、分解能を数十nmとすると、転送パルスの精度も重要となり、高速高精度なデジタル処理を必要とする。本件で考案した方式を図104に図示する。同図において、干渉計の位置情報及び10MHzの同期信号はバッファ102・1より本回路に導入される。10MHzクロック102・2はPLL102・3により同期した100MHzのクロックを発生し、各回路に供給する。この同期信号102・4の10ステート毎に演算処理を実行する方式をとっている。102・5に今回の位置情報が保持され、102・6に前回の値が保持されている。この両者の差分を102・7で演算し、10ステート毎の位置の差分を102・8から出力する。この差分値をパラレルシリアルコンバータ102・9にパラレル値としてロードし、100MHzのクロックに同期して差分を102・10よりシリアルパルスの個数として出力する。102・11も同様の機能であるが、102・12、102・13、と組み合わせて、10ステート毎に休みなく、動作が可能な様構成してある。結果として10MHz毎に位置差分に応じたシリアルパルスが和回路102・10よりカウンタ102・14に出力される。レーザ干渉計の分解能を0.6nm、1画素を48nmとすると比較器102・15を80にセットしておけば、カウンタが1画素相等になったタイミングで19のパルスが出力される。この信号をTDIの外部からの転送パルスとする事で、ステージ速度の変動があった場合でもそれに同期した動作を可能とし、ボケ、ブレの防止を実現できた。
図105にタイミングチャートを図示する。1は干渉計座標(位置)情報で数字は位置を例として示す。2はPLLにより作成された100MHZの同期信号である。バンクAはパラレルシリアルコンバータ102・9の動作タイミングで、バンクBは同じく102・11のそれである。位置情報を記憶するラッチタイミング7の後、差分演算タイミング8を実行しパラレルシリアルコンバータ102・9に値をロードし次の10Mクロック3のサイクルの時間を利用して4の出力を実行する。バンクBは10Mクロック3の1サイクル遅れたタイミングで同様の動作を実行し無理なく6のパルス発生を実現している。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜26及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態27)
異物(パーティクル)付着防止方法及び電子線検査装置
本発明の検査装置及び検査方法における異物付着防止方法について説明する。
以下、図面(図106及び図107)を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の例では、試料として、表面層に導電性の薄膜、例えば、Si(ドープを含む)、Cr、TaN、TaBN、CrN、Ru、Ta、WまたはCu等の薄膜を有する矩形状のマスクまたは円形の半導体ウエハを使用し、試料表面にパーティクル等の異物が付着することを防止するようにしている。薄膜の最表面は、TaBO、TaOまたはSiO2等の絶縁膜であっても良い。マスクとしては、例えば、石英やクォーツ基板に薄膜が形成されているものや、SiウエハにLSI用の回路パターン膜構造が形成されているものが用いられる。なお、以下の各例において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
図106は、本発明の実施形態の電子線検査装置の要部概要を示す縦断正面図で、図107は、図106の横断平面図である。図106及び図107に示すように、電子線検査装置10には、真空排気可能な真空チャンバ12が備えられ、真空チャンバ12の内部には、X方向及びY方向に移動自在なX−Yステージ14が配置されている。そして、X−Yステージ14の上面に、この例では、矩形状のマスクからなる試料16を保持したホルダ18が静電チャック20を介して設置されている。
X−Yステージ14は、試料(マスク)16の有効領域の撮像や欠陥検査が可能なように、試料16の有効距離+助走距離(検査最高速度*速度安定化時間)のストロークの移動領域を有している。例えば、X方向及びY方向の試料16の有効距離300mmで、助走距離100mm/s×0.5s=50mmのとき、X−Yステージ14は、400mmのストロークの移動領域を有する。
X−Yステージ14上に設置された試料16と所定間隔離間して該試料16の全周囲を包囲する位置に、矩形枠状に連続して延びる、横断面矩形状の集塵電極22が配置されている。更に、X−Yステージ14に設置された試料(マスク)16及び集塵電極22の上方に位置して、中央に貫通孔24aを有する隙間制御板24が、真空チャンバ12の内周面と僅かな隙間を持って水平に配置されている。この貫通孔24a内には、電子線検査装置の光学系要素26が位置し、この光学系要素26を通して、X−Yステージ14上に設置された試料16の表面に電子線が照射される。この貫通孔24aの大きさは、光学系要素26の外形よりも僅かに大きな大きさに設定されている。
集塵電極22は、磁場による電子線の曲がりや軌道変化を除くため、リン青銅やTi等の非磁性材料で構成されている。電子線には、1次系の照射電子線、試料16から放出される2次放出電子線及び試料16の近傍で反射するミラー電子線等が含まれる。
隙間制御板24は、例えばリン青銅、TiまたはSUS材等の、例えば板厚が0.3〜5mmの平板で構成されている。電位を安定させたり汚染を防止したりするため、隙間制御板24として、Au、Pt、RuまたはOs等がコーティングされているものを用いても良い。そして、隙間制御板24は、X−Yステージ14がその移動領域内を移動しても、集塵電極22が隙間制御板21の外側に食み出さない領域をカバーする大きさに設定されている。これにより、X−Yステージ14が移動して、X−Yステージ14に設置された試料16が真空チャンバ12内の最も偏った位置に移動した時に電界分布が崩れてパーティクルの軌道が変化することを防止して、パーティクルが試料16まで飛んできて試料16の表面に付着することを防止することができる。なお、隙間制御板24は、必ずしも必要ではない。このことは、以下の各例においても同様である。
この例では、図107に示すように、矩形枠状に連続した集塵電極22を使用して、X−Yステージ14上に設置した試料16の全周囲を集塵電極22で一体に包囲し、これによって、集塵電極22の長さ方向に沿った位置に隙間が生じて電界の不均一な部位が生じ、いわゆる電界の隙間から、パーティクルが集塵電極22で包囲された内部に侵入してしまうことを防止するようにしている。
集塵電極22は、必ずしも試料16の全周囲を包囲する必要はなく、集塵電極22で形成される電界が試料16の周囲を包囲できれば良い。例えば、図108に示すように、直線状に延びる集塵電極22aを試料16の各辺のほぼ全長に亘って延びるように配置して、試料16のほぼ全外周を集塵電極22aで包囲するようにしても良く、また図示しないが、直線状に延びる集塵電極が途中で互いに分離されるようにしてもよい。この場合、互いに隣接する集塵電極の間に電界の歪みが発生するが、集塵電極によって必要な電位の分布が得られればよい。例えば、2次元で考えて、集塵電極の幅をD、集塵電極の電極間の距離をLとした時、D/L≧4であれば問題ない。このことは、以下の各例においても同様である。
上記の例では、試料16として矩形のマスクを使用している。円形の半導体ウエハを試料16aとして使用する時には、図109に示すように、X−Yステージ14上に円形のホルダ18aで保持した試料(半導体ウェハ)16aを設置し、試料16aの周囲に円形リング状に連続した集塵電極22bを配置することで、試料16aの全周囲を一体に包囲することができる。この場合、図110に示すように、半円状の一対の集塵電極22cを真円となるように互いに対峙させて配置して、X−Yステージ14上に設置した試料(半導体ウェハ)16aのほぼ全周囲を集塵電極22cで包囲するようにしても良く、また図示しないが、複数の集塵電極を円周方向に沿って延びるように互いに離間させて配置するようにしても良い。
図111は、試料16、集塵電極22及び隙間制御板24を拡大して示す図である。図111に示すように、試料16には、試料16の表面に所定の電圧を印加する第1電源28が接続され、集塵電極22には、集塵電極22に所定の電圧を印加する第2電源30が接続される。集塵電極22の厚さは、例えば0.1〜5mmである。集塵電極22の幅W1は、広ければ広い程良いが、広くなればなる程、真空チャンバ12内に占める集塵電極22のサイズが大きくなるため、一般には5〜50mmである。試料16と集塵電極22との距離L1は、集塵電極22の幅W1との関係で、例えば0.5L1<W1<5L1の関係を満たす範囲で好ましく用いられる。
この例では、第1電源28を通して、試料16の表面に、例えば−1〜−5kVの電圧が印加され、集塵電極22には、第2電源30を通して、試料16に印加される電圧と同じ極性で、試料16に印加される電圧よりも絶対値が、例えば0.5〜5kV大きな電圧が印加される。つまり、例えば試料16に−3kVの電圧が印加される時には、集塵電極22には、−3.5〜−8kV、例えば−5kVの電圧が印加される。
真空チャンバ12は、鉄材やアルミニウムなどの金属材料製でアース電位である。そして、真空チャンバ12の内部に存在するパーティクル等の異物が静電気等により帯電すると、試料16の電位が負の場合では、正に帯電したパーティクル等の異物が電界に引かれて試料16に向けて飛んでくる。
この例によれば、負の電位が印加される試料16の全周囲を集塵電極22で包囲し該集塵電極22に試料16に印加される電圧よりも負に大きな電圧を印加することにより、電界に引かれて飛んでくるパーティクル等の異物の大部分を集塵電極18で捕捉して、パーティクル等の異物が試料16に向けて飛んで行って該試料16の表面に付着する確率を大幅に低減できる。これによって、試料16の表面に異物が付着するのを防止することができる。
この例では、集塵電極22から離れた軌道を通って試料16の表面にパーティクル等の異物の付着を防止する隙間制御板24を備えている。このように、隙間制御板24を備えると、集塵電極22から離れた軌道を通るパーティクル等の異物に対する集塵電極22の吸引力が落ち、このため集塵電極22にパーティクル等の異物が捕捉される確率が距離に反比例して落ちる。このため、試料16に負の電圧を印加する時、試料16と集塵電極22との間の電界強度Aが負(A<0)となるようにすることで、集塵電極22の吸引力を上げて、集塵電極22にパーティクル等の異物が捕捉される確率を高めることができる。その上で、隙間制御板24と集塵電極22との間の電界強度(絶対値)Bが0.1≦B(絶対値)≦10kV/mmの関係を持つようにすることで、集塵電極22にパーティクル等の異物が捕捉される確率を更に高めることができる。
例えば、試料16に−1〜−5kVの負の電圧を印加し、集塵電極22に試料16に印加する負の電圧より−0.5〜−5kVだけ負に大きな−1.5〜−10kVの負の電圧を印加する。隙間制御板24がアース電位のとき、試料16と集塵電極22との距離L1=10mm、隙間制御板24と集塵電極22との距離Z1=8mmとすると、試料16と集塵電極22と間の電界強度Aは負(A<0)となり、隙間制御板24と集塵電極22との間の電界強度(絶対値)B=0.19〜1.25kV/mm(=1.5〜10kV/8mm)、特に、集塵電極22に−5kVの電圧を印加すると、電界強度(絶対値)B=0.625kV/mm(=5kV/8mm)となって、有効な条件となる。このとき、空間の耐電圧として、10kV/mmを超えないようにすることで、空間で放電が起きることを防止することができる。
図112は、X−Yステージ14の詳細を示す。図112に示すように、X−Yステージ14は、Xステージ32とYステージ34とを互いに積層して構成され、Xステージ32とYステージ34との間には超音波モータ36が介装されている。そして、X−Yステージ14の上面の集塵電極22の外方を包囲する位置には、上端が集塵電極22の上方に達する第1防塵カバー40が配置され、超音波モータ36の外側方には、該超音波モータ36の収納部の開口端を閉塞する第2防塵カバー42が配置されている。
このように第1防塵カバー40を設置することで、試料16の表面に向けてパーティクル等の異物が飛散して該表面に付着するのを防止することができる。また、パーティクルの発生源となる超音波モータ36の外側方に第2防塵カバー42を配置することで、超音波モータ36から飛散するパーティクル等の異物が真空チャンバ12の内部に飛散することを防止することができる。このように、パーティクル等の異物の発生源から真空チャンバ12の内部にパーティクル等の異物が飛散することを防止することは、ピエゾアクチュエータ等の壁面を擦って駆動するタイプのモータ等を使用する場合に特に有効である。
この例では、図113に詳細に示すように、真空チャンバ12の内部に密閉構造の配線ボックス50が配置されている。この配線ボックス50は、ケーブルの曲げや擦れによって該ケーブルから発生するパーティクル等の異物が真空チャンバ12の内部に飛散することを防止するためのものである。この例では、X−Yステージ14の移動等に伴うケーブル52の曲げが発生する部位が全て配線ボックス50の中に入っている。つまり、ケーブル52の一端は、X−Yステージ14に固定した固定板54に接続されている。そして、ケーブル52は、X−Yステージ14から配線ボックス50に向けて直線状に延び、配線ボックス50に設けたスリット50aを通過して配線ボックス50の内部に達し、しかる後、下方に向けて180°屈曲して反転している。そして、ケーブル52の他端は、配線ボックス50の内部に配置した端子台56に設置した移動板58に接続されている。これにより、X−Yステージ14がX方向に移動した時、ケーブル52の配線ボックス50内の屈曲部52aのみに曲げが生じるようになっている。
配線ボックス50の内部には、Y方向に沿って延びてケーブル52の案内となるガイドローラ60が配置されており、X−Yステージ14がY方向に移動した時に、移動板58がローラガイド60に沿ってY方向に移動し、これによって、移動板58までのケーブル52にY方向のストレスが掛からないようになっている。図示しないが、端子台56から延びるケーブルは、配線ボックス50に設けた配線孔を通過して、真空チャンバ12に設置されているフィードスルーに接続されている。
このように、ケーブル52の曲げ部が全て配線ボックス50内にあると、配線ボックス50の外部に通じる孔が小さいために、配線ボックス50内で発生したパーティクル等の異物が配線ボックス50の外に出る確率が大幅に減少して、その大部分が配線ボックス50の内壁に付着する。更にこの例では、配線ボックス50の内部に配線ボックス用集塵電極62を配置し、配線ボックス用集塵電極62にパーティクル等の異物捕捉用の電圧を印加することにより、配線ボックス50からパーティクル等の異物が外側に飛散する確率を大幅に低下させるようにしている。
なお、(1)ケーブルの長さを揃える、(2)ケーブルタイ(結束バンド)等でケーブルを固定して補正する、(3)ケーブルをフラットケーブルにする、といった対策を施すことで、複数のケーブルの擦れによるパーティクル発生を低減することができる。つまり、複数のケーブルの長さを揃えて固定すると、ケーブル束が一体となり、X−Yステージが移動したときにケーブルに曲がりが生じるが、そのときのケーブル相互の擦れを低減させて、パーティクル等の異物の発生を低減させることができる。また、ケーブルをフラットケーブルにすることにより、複数の配線を一つのケーブルにすることが可能となり、ケーブル相互の擦れが無くなる。なお、多数配線を有するフラットケーブルが直ぐに使用できないときには、上記(1)と(2)とを組合せることが有効となる。
上記の例では、横断面矩形状の集塵電極22を使用しているが、図114に示すように、横断面円形の集塵電極22dを使用してもよい。この集塵電極22dの直径Dは、試料16と集塵電極22dとの距離L2との関係で、例えば0.5L2<D<5L2の関係を満たす範囲で好ましく用いられる。集塵電極22dの直径Dをこれより小さくすると集塵電極22dの捕捉確率が低下し、これより大きくても集塵電極22dの捕捉確率は変わらず、むしろ、余計なパーティクル等の異物の捕捉を誘引することになる。
また、上記の例では、試料16と所定間隔離間した位置に集塵電極22を配置し、試料16に印加される電圧と同じ極性で試料16に印加される電圧よりも絶対値が大きな電圧を集塵電極22に印加するようにしているが、図115に示すように、試料16の外周縁部に内周縁部を接触させつつ、該試料16の全周囲を包囲するように、矩形枠状に連続した、横断面矩形状の集塵電極22eを配置し、第1電源28を通じて試料16に印加される電圧と同じ電圧を、第2電源を通じて集塵電極22eに印加するようにしても良い。この集塵電極22eの厚さは、例えば0.1〜5mmで、幅W2は、前述の集塵電極22と同様、例えば5〜50mmである。
この例では、試料16の外形よりも小さいな内形を有する集塵電極22eを使用し、集塵電極22eの内周縁部を試料16の外周縁部に接触させているが、図116に示すように、例えば矩形枠状で、内形を試料16の外形より僅かに大きくした集塵電極22fを使用し、試料16の全周囲を集塵電極22fが僅かな隙間Sを空けて包囲するように該集塵電極22fを配置するようにしても良い。この隙間Sは、例えば1〜500μmである。
この例では、第1電源28を通して、試料16に、例えば−1〜−5kVの負の電圧が印加され、集塵電極22eにも、第2電源30を通して、試料16に印加される電圧と同じ電圧、つまり、例えば試料16に−3kVの電圧が印加される時には、−3kVの電圧が印加される。
前述と同様に、試料16の電位が負の場合では、正に帯電したパーティクル等の異物が電界に引かれて試料16に向けて飛んでくる。この例によれば、試料16の電位と同電位の集塵電極22eが試料16の全周囲を包囲する位置に配置されているため、電界に引かれて飛んでくるパーティクル等の異物の大部分は、集塵電極22eで捕捉される。このように、試料16の周囲に配置した集塵電極22eでパーティクル等の異物の大部分を捕捉することで、試料16の表面に飛んできて該表面に付着するパーティクル等の異物を少なくし、これによって、試料16の表面に異物が付着するのを防止することができる。
この例では、集塵電極22eと隙間制御板24との距離をZ2とした時、集塵電極22eの幅W2との関係で、W2>4Z2の時に特に効果的である。また、集塵電極22eと隙間制御板24と間の電圧密度Bの大きさ(絶対値)を0.1kV/mmより大きくした時(B(絶対値)>0.1kV/mm)、更に有効になる。
図117は、前述の主に図111に示す例と、図115に示す例とを組合せた更に他の例を示す。この例では、試料16の外周縁部に内周縁部を接触させつつ、該試料16の全周囲を包囲するように、例えば矩形枠状に連続した、横断面矩形状の第1集塵電極70を配置し、第1集塵電極70と所定間隔離間した位置に、該第1集塵電極70の全周囲を包囲するように、例えば矩形枠状に連続した、横断面矩形状の第2集塵電極72を配置している。そして、第1集塵電極70には第2電源74を接続し、第2集塵電極72には第3電源76を接続している。
なお、前述と同様に、直線状に延びる第2集塵電極を第1集塵電極の各辺のほぼ全長に亘って延びるように配置して、第1集塵電極のほぼ全外周を第2集塵電極で包囲するようにしても良く、また直線状に延びる第2集塵電極が途中で互いに分離されるようにしてもよい。
この例では、前述と同様に、第1電源28を通して、試料16に、例えば−1〜−5kVの電圧が印加され、第1集塵電極70には、試料16に印加される電圧と同じ電圧、例えば試料16に−3eVが印加されるときには−3eVが印加される。更に、第2集塵電極72には、試料16に印加される電圧と同じ極性で試料16に印加される電圧よりも絶対値が、例えば0.5〜5kV大きな電圧が印加される。つまり、例えば試料16に−3kVの電圧が印加される時には、第2集塵電極72には、−3.5〜−8kV、例えば−5kVの電圧が印加される。
この例にあっても、前述の図111等に示す例とほぼ同様に、試料16に負の電圧を印加する時、試料16と第2集塵電極72との間の電界強度Aが負(A<0)となるようにすることで、第2集塵電極72の吸引力を上げて、第2集塵電極72にパーティクル等の異物が捕捉される確率を高めることができる。その上で、隙間制御板24と第2集塵電極72との間の電界強度(絶対値)Bが0.1≦B(絶対値)≦10kV/mmの関係を持つようにすることで、第2集塵電極72にパーティクル等の異物が捕捉される確率を更に高めることができる。
第1集塵電極70は、前述の図115に示す集塵電極22eと同様に、厚さは、例えば0.1〜5mmで、幅W3は、例えば5〜50mmである。また、第2集塵電極72は、前述の図111に示す集塵電極22と同様に、厚さは、例えば0.1〜50mmで、幅W4は、例えば5〜50mm程度である。
そして、例えば、試料16及び第1集塵電極70に、−1〜−5kVの負の電圧を印加し、第2集塵電極72に試料16及び第1集塵電極70に印加する負の電圧より−0.5〜−5kVだけ負に大きな−1.5〜−10kVの負の電圧を印加する。隙間制御板24がアース電位のとき、隙間制御板24と第2集塵電極72との距離Z8=8mmとすると、試料16と第2集塵電極72と間の電界強度Aは負(A<0)となり、隙間制御板24と第2集塵電極72との間の電界強度(絶対値)B=0.19〜1.25kV/mm(=1.5〜10kV/8mm)、特に、集塵電極22に−5kVの電圧を印加すると、電界強度(絶対値)B=0.625kV/mm(=5kV/8mm)となって、有効な条件となる。このとき、空間の耐電圧として、10kV/mmを超えないようにすることで、空間で放電が起きることを防止することができる。
図118は、電子線検査装置の他の実施形態を示す概要図である。この例は、試料16を設置したX−Yステージ16を内部に配置した真空チャンバ12に、写像式光学検査装置80、SEM式検査装置82及び光学顕微鏡84を設置して、真空チャンバ12内のX−Yステージ14に設置されている試料16に対して、写像光学式検査装置80とSEM式検査装置82の両方で観察及び検査ができるようにしている。
この例によれば、写像光学式検査装置80とSEM式検査装置82に共通するX−Yステージ14上に試料16が搭載されているため、試料16が写像光学式検査装置80とSEM式検査装置82との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まり、同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。
つまり、分離された別々の検査装置の間で試料の移動を行う場合、別々のステージに試料を設置する必要があるため、試料のアライメントを夫々行う必要があり、このように、試料のアライメントを行っても、同一場所の特定誤差は5〜10μm以上となってしまう。特に、パターンのない試料の場合は、位置基準が特定できないため、その誤差は更に大きくなる。
この例によれば、写像光学式検査装置80とSEM式検査装置82との間で試料16の移動を行った場合でも、高精度で同一場所を特定できるので、高精度で場所の特定が可能となり、例えば1μm以下の精度が可能となる。これにより、パターン及びパターン欠陥の検査を写像光学式検査装置80で行った場合、その検出した欠陥の特定及び詳細観察(レビュー)をSEM式検査装置82で行う場合に大変有効となる。つまり、場所の特定ができるので、存在の有無(無ければ擬似検出)が判断できるだけでなく、欠陥の正確なサイズや形状を高速に行うことが可能となる。別々の装置であるとパターン欠陥とその特定に多くの時間を費やす。
これまで述べてきたように、試料16の表面にパーティクル等の異物が付着することを防止しながら、写像光学式検査装置とSEM式検査装置が同一チャンバに搭載されている装置系を用いることにより、特に、100nm以下の超微小なパターンの検査とその判定及び分類を効率よく、また、高速に行うことができる。
図119に示すように、並行平板からなる電極間の平等電界中(q+=q−)では、絶縁物から成るパーティクルが存在しても、そのパーティクルは電界から静電誘導にて分極するが飛散することはない。しかし、電界が不平等電界の場合、誘電分極によって生じた電荷によってパーティクルは飛散してしまう。同様に、図120に示すように、一方を平板とした一対の電極間の不平等電界中(q+≠q−)では、絶縁物から成るパーティクルが存在すると、そのパーティクルは電界から静電誘導にて分極して飛散するが、図121に示すように、一方を平板とした一対の電極間の平等電界中(q+=q−)では、絶縁物から成るパーティクルが存在しても、そのパーティクルは電界から静電誘導にて分極するが飛散することはない。
つまり、図120及び図121に示すように、パーティクル等の異物が飛散する確率は、パーティクル等の異物が誘電分極する前に有している初期電荷q0に大きく支配されると考えられる。この残留物が有する初期電荷q0は、主に真空排気時の空気の流れによって生じる静電気で付与されると考える。
図122は、電子検査装置に備えられる他の真空チャンバ12aを示す。この真空チャンバ12aの内部には、試料16を設置したX−Yテーブル14が配置される。真空チャンバ12aには、2つの真空ポンプ90a、90bが接続され、この2つの真空ポンプ90a、90bには、共通のドライポンプ92が接続されている。そして、真空チャンバ12aの内部には、真空チャンバ12aの清掃によって除去できなかったパーティクル等の異物(残留物)を静電気で帯電させないために、軟X線やUV線を用いて気体を電離させ、その電離気体で電離気体中にある物体の表面の静電気を除去する除電装置94が設置されている。
この例よれば、真空チャンバ12a内の真空排気を開始するのと同時、若しくは真空排気を開始するより前に除電装置94を動作させ、また、真空チャンバ12a内の真空排気を行っている真空排気中も除電装置94を動作させ続ける。つまり、真空チャンバ12a内の空気の流れが無くなり、空気の流れによって静電気が発生しなくなるまで除電装置94を動作させ続ける。このようにして、真空チャンバ12a内のパーティクル等の異物(残留物)の帯電を防止し、その初期電荷q0=0(図121参照)とすることで、不平等電界による誘電分極が引き起こす飛散の確率を減らすことが出来る。
また、真空チャンバの清掃によって除去できずに真空チャンバ内に残留するパーティクル等の異物は、例え微小軽量であっても、重力の作業で、真空チャンバ内の平面構造の上面に沈殿する。
図123は、例えば図106等に示す真空チャンバ12や図122に示す真空チャンバ12aの平面構造を構成する壁の一例を示す斜視図で、図124は、図123の断面図である。図123及び図124に示すように、例えば真空チャンバ12または12a(図106及び図122等参照)の平面構造を構成する壁は、内面に多数の格子状の穴96aが設けられた壁体96で構成されている。このように、壁体96の内面に多数の格子状の穴96aを設けることで、この穴96の底部に真空チャンバ内に残留するパーティクル等の異物Pをその重力によって沈殿させる。格子状の穴96の静電シールド効果によって、格子状の穴96aの底までは電界が入り込まず、このため、格子状の穴96の底部に沈殿した異物(残留物)Pは、静電気による引力を受けることなく飛散することはない。これによって、例えば真空チャンバ12または12aの内部に配置された試料16の表面に真空チャンバ12または12a内に残留するパーティクル等の異物が付着することを防止することができる。
図125は、例えば図106等に示す真空チャンバ12または図122に示す真空チャンバ12aの平面構造を構成する壁の他の例を示す斜視図で、図126は、図125の断面図である。図125及び図126に示すように、真空チャンバ12または12a(図106及び図122等参照)の平面構造を構成する壁は、平板状の壁体98と該壁体98と所定間隔離間して平行に敷設されたメッシュ構造の平板100とから構成され、メッシュ構造の平板100は、独立した電源102に接続されている。
これにより、例えば真空チャンバ12または12a内に残留するパーティクル等の異物Pを、その重力によって、メッシュ構造の平板100を通過させて壁体98の表面に到達させる。壁体98は、メッシュ構造の平板100に覆われているため、電界は、メッシュ構造の平板100で遮られて壁体98の表面まで到達しない。このため、壁体98の表面に到達した異物(残留物)Pは、静電気による引力を受けることなく飛散することはない。これによって、例えば真空チャンバ12または12aの内部に配置された試料16の表面に真空チャンバ12または12a内に残留するパーティクル等の異物が付着することを防止することができる。
特に、このメッシュ構造の平板100に独立して電圧が印加できるようにすることで、真空チャンバ内に残留するパーティクル等の異物Pをメッシュ構造の平板100に積極的に誘引し、異物Pの重力の作用と相まって、該異物Pを、例えば真空チャンバ12または12aの平面構造を構成する壁体98の表面に沈殿させ且つ沈着させることができる。
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜27、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態28)
基板をトレイへ搭載する基板搭載装置及びトレイに対する基板の位置決め方法
本発明の検査装置及び検査方法において、基板をトレイへ搭載する基板搭載装置及びトレイに対する基板の位置決め方法について説明する。
以下、本発明の実施の形態の基板搭載装置について、図面を用いて説明する。
本実施の形態では、基板が、例えば、EUV露光装置で使用されるマスクである。そして、基板搭載装置が、例えば、マスク用の基板検査装置に備えられる。
図127及び図128は、基板搭載装置が備えられた検査装置を示している。基板搭載装置について詳細に説明する前に、検査装置の概要を説明する。
図127は、検査装置1を上方から見た図である。図127に示されるように、検査装置1は、大気搬送部3と真空搬送部5に大きく分けられる。大気搬送部3は基板を大気中で扱い、真空搬送部5は基板を真空中で扱う。大気搬送部3と真空搬送部5は、開閉可能な隔壁で仕切られている。
大気搬送部3は、ミニエンバイロメント室といわれる。大気搬送部3に隣接してスミフポッド7が設けられている。また大気搬送部3には、大気搬送ロボット9、基板回転反転ユニット11、基板搭載ユニット13、除電ユニット15及びファンフィルタユニット(FFU)が設けられている。
スミフポッド7は、検査前後の基板(マスク)を保持する構成である。大気搬送ロボット9は大気中で基板を搬送するロボットである。基板回転反転ユニット11は、大気搬送ロボット9から基板を受け取り、回転及び反転させることができる。基板搭載ユニット13は、トレイに基板を搭載する。基板搭載ユニット13が本実施の形態の基板搭載装置である。除電ユニット15は、検査前後に基板の除電処理を行う。ファンフィルタユニット(FFU)は、図示されないが、大気搬送部3のミニエンバイロメント室内の上部に設けられている。より詳細には、FFUは、大気搬送ロボット9、基板回転反転ユニット11、基板搭載ユニット13、除電ユニット15等の上方であって天井又はその付近に設けられている。
また、真空搬送部5にはロードロックチャンバ17、トランスファーチャンバ19、第1ターボ分子ポンプ21、メインチャンバ23、検査鏡筒25及び第2ターボ分子ポンプ27が設けられている。
ロードロックチャンバ17には、2つのCCDカメラ29が配置されている。CCDカメラ29は後述するように基板の位置決めに用いられる。トランスファーチャンバ19は、ロードロックチャンバ17からメインチャンバ23へ基板を搬送するためのチャンバである。トランスファーチャンバ19には真空搬送ロボット31が備えられている。真空搬送ロボット31は真空内で基板を搬送するロボットである。また、第1ターボ分子ポンプ21は、ロードロックチャンバ17及びトランスファーチャンバ19を真空にする。メインチャンバ23及び検査鏡筒25は、基板に荷電粒子ビームを照射して基板を検査する構成である。第2ターボ分子ポンプ27は、メインチャンバ23及び検査鏡筒25を真空にする。
図128は、メインチャンバ23及び検査鏡筒25を横方向から見た図である。メインチャンバ23はステージ33を備える。ステージ33には、基板を保持したトレイが載置される。ステージ33は、トレイを水平方向に移動する構成であり、X、Y、θ方向にトレイを移動する。X、Y方向は互いに直交する軸に沿った方向であり、θは回転軸周りの角度であり、すなわち回転移動も行われる。
検査鏡筒25は、メインチャンバ23の上側に接続されている。検査鏡筒25は、電子銃35、一次レンズ系37、二次レンズ系39及び検出器41を備える。電子銃35は荷電粒子ビーム源である。電子銃35及び一次レンズ系37は、電子ビーム照射系であり、基板へ電子ビームを照射する。電子ビームは、ウィーンフィルタ43で偏向され、対物レンズ系45を通り、基板に照射される。電子ビームが基板に照射されると、基板は、基板の情報を持つ信号を放出する。信号は、例えば、二次放出電子(二次電子、反射電子、後方散乱電子)又はミラー電子である。この信号が、対物レンズ系45、ウィーンフィルタ43、二次レンズ系39を通り、検出器41に到達し、検出器41で検出される。
検出器41は、画像処理部47に接続されており、検出された信号を画像処理部47に供給する。画像処理部47は、画像処理機能を持ったコンピュータで構成されており、欠陥検査の処理を行う。すなわち、画像処理部47は、検出器41で検出された信号から試料の像を形成し、さらに、試料の像を処理して欠陥の検出及び判定を行う。
また、図128に示されるように、検査装置1は制御部49を備える。制御部49はコンピュータで構成されており、検査装置1の全体を制御して検査を実行する構成である。制御部49は、図示のように、メインチャンバ23、検査鏡筒25及び画像処理部47を制御する。これにより、制御部49は、基板(トレー)を移動させ、基板に電子ビームを照射し、画像処理部47に基板の画像を生成させる。
制御部49は、検査条件を制御することができ、具体的には、電子ビームのビームエネルギー、倍率、ドーズ量などを制御する。ビームエネルギーは具体的には基板に電子ビームが照射されるときのランディングエネルギーである。
本実施の形態では、検査装置1が、写像投影式の検査装置である。写像投影式の検査装置では、電子ビームが、2次元画素群に対応するビームサイズ(ビーム径)を有しており、つまり、ある程度のサイズを有している。試料上の照射領域も、2次元画素群に応じた面積を有する。検出器41で検出される信号も、2次元画素群に対応する。そして、検出器41は、2次元画素群に対応する検知能力を有し、例えば、2次元の検知面を有するCCDで構成されている。
写像投影式の検査装置をSEM式の検査装置と比較する。SEMでは電子ビームが細く、1画素に対応する。SEMでは電子ビームが走査されて、1画素の計測が繰り返され、そして、計測値が集積されて、試料の像が得られる。SEM式の検査装置では電子ビームが1画素のビームサイズを有するのに対して、写像投影型の検査装置では電子ビームが複数画素群に対応するビームサイズを有する。写像投影型の検査装置は、微細な欠陥を検査できる。また、写像投影型の検査装置は、パターン欠陥に限られず、複数種類の検査を行うことができる。例えば、写像投影型の検査装置は、パーティクル等の異物検査にも使用可能であり、さらには、多層膜中欠陥検査にも使用可能である。
図127に戻り、検査装置1の全体的な動作を説明する。大気搬送ロボット9は、スミフポッド7から基板を取り出して、除電ユニット15に搬送する。除電ユニット15は基板の除電を行う。また、基板は大気搬送ロボット9により基板回転反転ユニット11に搬送され、基板の反転及び回転が必要に応じて行われる。さらに、大気搬送ロボット9が基板を基板搭載ユニット13に搬送する。基板搭載ユニット13では、予め用意されたトレイに基板が搭載される。
基板がトレイに搭載されると、大気搬送ロボット9は、トレイを保持してロードロックチャンバ17に搬送する。このとき、大気搬送部3と真空搬送部5の隔壁が開かれる。ロードロックチャンバ17では、CCDカメラ29が基板のマークを撮影する。これによりマーク位置が検出される。真空搬送ロボット31は、ロードロックチャンバ17からメインチャンバ23へトレイを搬送し、メインチャンバ23のステージ33にトレイを載置する。このとき、マーク検出結果に基づいて基板が位置決めされる。
基板は、トレイへ搭載されるときに、基板搭載ユニット13により位置決めされる。そして、更に、上記のようにステージ33へ搭載されるときに、CCDカメラ29の検出結果に基づき基板が位置決めされる。前者の位置決めを「仮位置決め」といい、後者の位置決めを「本位置決め」ということができる。実際の基板検査過程では、本位置決めの後に、光学顕微鏡を用いて更なる位置決めが行われてよい。光学顕微鏡は、電子線検査装置と共にメインチャンバ23に配置される。光学顕微鏡の光学像を用いて基板がトレイと共に位置決めされ、それから電子線を用いて基板が検査される。ここでは、例えば、光学顕微鏡で検出された欠陥位置へ電子線が照射されるように基板が位置決めされる。
メインチャンバ23では、図128を用いて説明したように、基板が電子ビーム照射により検査される。検査終了後の基板は、メインチャンバ23からトランスファーチャンバ19を通ってロードロックチャンバ17へと、真空搬送ロボット31により搬送される。
そして、大気搬送ロボット9が、ロードロックチャンバ17から基板搭載ユニット13へと基板を搬送する。基板搭載ユニット13にて基板がトレイから外される。基板は基板回転反転ユニット11に搬送され、必要に応じて回転及び反転される。続いて、基板が除電ユニット15に搬送されて、除電が行われる。そして、基板は大気搬送ロボット9によりスミフポッド7へと戻される。
以上に検査装置1の全体的な構成及び動作を説明した。上記構成は典型的なシステム構成例であり、また、上記動作は典型的な動作パターン例である。そのため、以上で説明した検査装置部を図9の1次ビームが光で、二次ビームが光電子を利用する検査装置に置き換えても良く、本発明の範囲で検査装置の構成及び動作は上記の例に限定されない。
「基板搭載装置」
次に、本実施の形態の基板搭載装置について詳細に説明する。基板搭載装置は、既に述べたように図127の基板搭載ユニット13に相当し、大気搬送ロボット9と共に機能して基板をトレイに搭載する。基板は、例えばマスクであり、より詳細には、例えば、一辺が6インチの正方形で厚さが6.35mmのガラス製マスクである。
図129〜図138は、本実施の形態の基板搭載装置を示している。図129〜図132は、トレイ無しの状態の基板搭載装置51を示し、図133〜図136は、トレイと共に基板搭載装置51を示している。図129は基板搭載装置51の平面図であり、図130は、図129の基板搭載装置51を矢印Aの方向から見た図であり、図131は、図129の基板搭載装置51を矢印Bの方向から見た図であり、図132は、図129の基板搭載装置51を矢印C方向から見た図であって、トレイT及び基板Sの対角線に沿って切断した図である。同様に、図133は基板搭載装置51の平面図であり、図134は、図133の基板搭載装置51を矢印Dの方向から見た図であり、図135は、図133の基板搭載装置51を矢印Eの方向から見た図であり、図136は、図133の基板搭載装置51を矢印Fの方向から見た図であって、トレイT及び基板Sの対角線に沿って切断した図である。また、図137及び図138は、説明のために基板搭載装置51を模式的に示す簡略図である。
基板搭載装置51は、トレイTに基板Sを搭載する装置である。基板搭載装置51は、概略的には、ステージ53、リフト機構55、クランプ機構57、トレイ保持機構59及び額縁ドロップ機構61で構成される。以下では、まずトレイTの構成を説明し、それから基板搭載装置51の各種構成について説明する。
「トレーT」
図133〜図138を参照し、トレイTの構成を説明する。図137等に示されるように、トレイTは、トレイ本体71と額縁73とで構成される。トレイTは例えばセラミック製である。
トレイ本体71は平板状であり、四角形の基板Sに対応して略四角形の形状を有する。トレイ本体71からは複数の基板搭載ピン75が突出しており、基板Sはこれら基板搭載ピン75に支持される。ピン本数は4である。このような構成により、基板Sは、基板搭載ピン75と小さい接触面積で接触し、そして、トレイ本体71に直接接触することなく浮いた状態で保持される。また、基板搭載ピン75は、基板Sが滑りにくい表面を有しており、これにより、搬送中の基板Sのずれが防止される。
額縁73は、トレイ本体71に支持されており、基板Sを取り囲む。額縁73は、検査時に基板Sの上面に電位を付与するための構成であり、端子部77を介して電位を付与する。また、額縁73が基板Sを取り囲むことによりダミーとして機能する。基板Sの端部での等電位面の屈曲が軽減され、端部付近の電位を均一にでき、その結果、端部を含む基板全体の電位を均一にでき、検査精度を向上できる。また、額縁73はトレイ本体71に対して昇降可能である。図137に示されるように、下降時は、額縁表面と基板表面が同じ高さにあり、額縁73が基板Sを取り囲む。図134及び図135に示されるように、額縁73が上昇すると、トレイ本体71と額縁73の間に、挿入口79が形成される。挿入口79は、トレイ本体71と額縁73の間の隙間又は開口であり、挿入隙間といってもよい。挿入口79は、基板Sの挿入及び抜取りを可能にし、また、基板Sへの位置決めのためのアクセスを可能にする。
額縁73のより詳細な構成を説明する。額縁73は、額縁本体81と、額縁本体81から下方に延びる複数の額縁脚部83を有する。
図133及び図138に示されるように、額縁本体81は、四角形の平板であり、四角形の開口85を有する。額縁本体81の材質は絶縁体でよく、例えばセラミックである。開口85は、基板Sに応じた大きさを有する。基板Sは開口85内に配置され、これにより基板Sが額縁73に取り囲まれる。額縁本体81と基板Sは直接接触しない。額縁本体81と基板Sが全周にわたってほぼ一定の隙間を形成する。
額縁73の上面には額縁カバー86が設置されている。図134を参照すると、額縁73の上端の幅が額縁本体83より少し広く、そして額縁73の上端部分が少し内側に突出しており、この上端部分が額縁カバー86に相当する。図143は額縁カバー86を模式的に示している。図143に示されるように、額縁カバー86は、薄い平板である。額縁カバー86は外側端部にてL字状に下向きに折れ曲がっており、そして、図示のように額縁本体81の側面にねじ等で固定されている(額縁カバー86は額縁本体81の上面等の他の場所に固定されてもよい)。額縁カバー86の材質は導電材であり、例えば銅である。額縁カバー86の外周形状は額縁本体81とほぼ同様である。しかし、額縁カバー86の開口は、額縁本体81の開口85より小さく、したがって、額縁カバー86は額縁本体81よりも内側に突出している。基板Sが搭載されたとき、額縁カバー86の内周縁は、基板Sの外周縁と重なり、接触する。このような重なりが生じるように、額縁カバー86の開口サイズが定められている。したがって、上方から見たときに、額縁カバー86は、額縁73(額縁本体81)と基板Sの隙間をカバーする。このような額縁カバー86を設けることにより、基板Sの縁部における等電位面の屈曲を軽減することができる。額縁カバー86は、図137、図138等の模式図では省略されている。
額縁本体81には、2つの端子部77が設けられている。端子部77は、開口85に突出している。そして、基板Sが開口85内に配置されたとき、端子部77が基板Sの上面に接する。上述したように、端子部77は、基板検査時に基板Sの上面に電位を付与するために用いられる。また、上述の額縁カバー86は、これら端子部77を除く額縁全周にて基板Sと額縁73の隙間を覆っている。
額縁脚部83の本数は4であり、これら4本の額縁脚部83が、額縁本体81の4隅の近くにそれぞれ配置されている。図137に示されるように、下降時は、額縁脚部83がトレイ本体71に支持され、額縁本体81がトレイ本体71の上方に位置し、そして、額縁上面が基板搭載ピン75上の基板Sの上面とほぼ同じ高さに位置する(図143に示されるように、詳細には、額縁本体81の上面が基板上面と同じ高さに位置する。額縁カバー86の上面は、基板上面とほぼ同じ高さに位置するが、詳細にはカバー厚さだけ基板上面よりも少し上にある。以下同じ)。額縁73が上昇すると、トレイ本体71と額縁本体81の間に挿入口79が形成され、基板Sの出し入れや、基板Sへのアクセスが可能になる。
また、図134及び図135に示されるように、額縁73の昇降動作をガイドするために、昇降ガイド87が設けられている。昇降ガイド87は、トレイ本体71から突出するガイド棒である。この昇降ガイド87が、額縁脚部83のガイド穴に挿入されている。これにより、額縁73は、トレイ平面に対して垂直方向にのみ移動できる。
また、図133等に示されるように、トレイ本体71は、複数の突出縁部89を有する。本実施の形態では、4つの突出縁部89が、トレイ本体71の4隅にそれぞれ設けられている。突出縁部89は、額縁73よりも外側へ突出する部分である。より詳細には、トレイ本体71の各隅に壁部が設けられ、壁部の上端から外側へ突出縁部89が突出している。突出縁部89は、後述するように、搬送ロボットによるトレイTの支持に用いられ、また、額縁73の上昇時にトレイ本体71を保持するために用いられる。
「ステージ」
ステージ53は、トレイTを保持する構成である。図129及び図130等に示されるように、ステージ53は、ステージベース91を有する。ステージベース91には複数のステージ柱93が立設されている。本実施の形態では、トレイTの4隅に対応する位置に、4本のステージ柱93が設けられている。そして、これら4本のステージ柱93によりトレイ本体71の4隅が支持される。トレイTは、水平方向に移動可能に保持されており、後述するクランプ機構57による位置決め時に移動可能である。
図129等に示されるように、ステージ53には、さらに、基板有無検知センサ95、トレイ有無検知センサ97、基板斜め置き検知センサ99及びトレイ斜め置き検知センサ101が設けられている。これらセンサはステージベース91に取り付けられている。
「リフト機構」
リフト機構55は、額縁73及び基板Sをトレイ平面に対して垂直方向に移動して、これら額縁73及び基板Sを昇降させる構成である。
図130、図134、図137等に示されるように、リフト機構55は、平板状のリフト部材であるリフトプレート111を有する。リフトプレート111は、リフト機構55のための昇降シリンダ113により駆動されて、トレイTより下の所定範囲で昇降する。
リフトプレート111からは、複数の額縁保持ピン115及び複数の基板保持ピン117が上向きに突出している。基板保持ピン117と額縁保持ピン115は、ほぼ同じ高さである。
額縁保持ピン115は、本発明の額縁保持部材に相当し、額縁73の下面に対応する位置に配置されており、リフトプレート111と共に昇降する。本実施の形態では、4本の額縁保持ピン115が、額縁73の4本の額縁脚部83にそれぞれ対応する位置に配置されている。図134及び図135に示されるように、リフト機構55の上昇時、額縁保持ピン115は、トレイ本体71の穴を通り抜け、額縁脚部83の下面に当接し、額縁73を持ち上げ、そして、トレイ本体71と額縁73の間に挿入口79を形成する。
また、基板保持ピン117は、本発明の基板保持部材に相当し、位置決め時の基板S3の下面に対応する位置に配置されており、リフトプレート111と共に昇降する。図133に示されるように、本実施の形態では、4本の基板保持ピン117が、トレイTの4本の基板搭載ピン75とずれて配置されている。また、図134及び図135に示されるように、リフト機構55の上昇時、基板保持ピン117も、額縁保持ピン115と同様に、トレイ本体71の穴を通り抜けて上昇する。基板保持ピン117の先端は、トレイTの基板搭載ピン75の先端よりも少し上に達する。これにより、基板Sは、基板搭載ピン75に搭載される前に、基板保持ピン117に保持される。
ここで、トレイTの基板搭載ピン75に搭載されるときの高さ方向の基板Sの位置を、基板搭載高さという。また、上記のリフト機構55の基板保持ピン117に保持されるときの高さ方向の基板Sの位置を、基板保持高さという。上記のように基板保持高さは基板搭載高さより上である。更に、基板保持高さは、上述の挿入口79に対応した高さにある。この基板保持高さへ基板保持ピン117が到達し、そして基板Sが、基板搭載ピン75に搭載される前に基板保持ピン117により基板保持高さに保持され、そして基板Sが後述のようにクランプされる。
また、基板保持ピン117は、滑りやすい材質、例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、登録商標)でできている。これにより、基板Sの位置決めが容易である。
また、図130等に示されるように、リフト機構55は、額縁保持ピン115の高さを調節する額縁保持高さ調節機構119及び基板保持ピン117の高さを調節する基板保持高さ調節機構121を有する。額縁保持高さ調節機構119はねじ構造を有する。額縁保持ピン115の外周に雄ねじが設けられ、この雄ねじがリフトプレート111の雌ねじに係合しており、額縁保持ピン115を回すことによりピン高さを調節できる。基板保持高さ調節機構121も同様のねじ構造を有する。このような構成により、額縁保持高さ調節機構119及び基板保持高さ調節機構121は、額縁保持ピン115及び基板保持ピン117の高さを独立して調節できる。
「クランプ機構」
クランプ機構57は、基板SをトレイTに対して位置決めするための構成である。本実施の形態では、クランプ機構57が、トレイ平面に平行な方向に移動し、そして、基板SとトレイTの両方を一度のクランプ動作でクランプする。以下にクランプ機構57の詳細を説明する。
図133、図136、図137及び図138等に示されるように、クランプ機構57は、複数のクランプ体で構成される。本実施の形態の例ではクランプ体の数が2つであり、固定側クランプ体131及び従動側クランプ体133が設けられている。固定側クランプ体131と従動側クランプ体133は、基板S及びトレイTの対角線に沿って向き合って配置されている。
固定側クランプ体131及び従動側クランプ体133は、固定側シリンダ135及び従動側シリンダ137にそれぞれ連結されている。固定側クランプ体131が固定側シリンダ135により直線状に駆動され、また、従動側クランプ体133が従動側シリンダ137により直線上に駆動され、これにより、クランプ機構57が開閉する。これら固定側シリンダ135及び従動側シリンダ137は、本発明のクランプ移動機構に相当する。
固定側クランプ体131は、固定側の2本のトレークランプアーム139及び2本の基板クランプアーム141を有する。トレークランプアーム139及び基板クランプアーム141は、トレイTへ向けて延びている。トレークランプアーム139の高さはトレイ本体71の高さと対応しており、基板クランプアーム141の高さは、リフト機構55の基板保持ピン117に支持されたときの基板保持高さと対応しており、したがって、基板クランプアーム141がトレークランプアーム139よりも上方に位置する。
2本のトレークランプアーム139は、図示のように水平方向に離れており、各トレークランプアーム139がトレークランプ部143を先端付近に有する。トレークランプ部143は、保持ピンで構成されており、位置決めのためのクランプ時にトレイTに接する部位である。クランプ機構57の移動方向が、トレイTの対角線に沿っており、したがって、接触面に対して斜めである。そこで、トレークランプ部143のピンは、トレークランプアーム139からトレイ対角線に向けて斜めに突き出している。
基板クランプアーム141もトレークランプアーム139と同様の構成を有している。すなわち、2本の基板クランプアーム141が水平方向に離れており、各基板クランプアーム141が基板クランプ部145を先端付近に有する。基板クランプ部145は、保持ピンで構成されており、位置決めのためのクランプ時に基板Sに接する部位である。クランプ機構57の移動方向が、基板Sの対角線に沿っており、したがって、接触面に対して斜めである。そこで、基板クランプ部145のピンは、基板クランプアーム141から基板対角線に向けて斜めに突き出している。
また、基板Sの外形はトレイTよりも小さい。そのため、図132に示されるように、基板クランプアーム141は、トレークランプアーム139よりも多く突き出している。
次に、従動側クランプ体133について説明する。固定側クランプ体131と比べると、従動側クランプ体133は、幅狭の形状を有している。
従動側クランプ体133は、固定側クランプ体131と同様に、トレイTへ向かって突出するトレークランプアーム147及び基板クランプアーム149を有しており、トレークランプアーム147の高さがトレイ本体71の高さと対応しており、基板クランプアーム149の高さが、リフト機構55の基板保持ピン117に支持されたときの基板Sの高さと対応している。トレークランプアーム147の本数は固定側と同様に2本である。一方、基板クランプアーム149の本数は固定側と異なり、1本のみである。
2本のトレークランプアーム147は、アーム間隔が狭い点と、アーム長が短い点を除き、固定側と同様の構成を有する。すなわち、2本のトレークランプアーム147は水平方向に離れており、各トレークランプアーム147がトレークランプ部151を先端付近に有する。トレークランプ部151は保持ピンで構成されており、クランプ時にトレイTに接する。トレークランプ部151のピンはトレイ対角線に向けて斜めに突き出している。
基板クランプアーム149は上述のように1本である。アーム先端に基板クランプ部153が設けられている。基板クランプ部153は、アーム先端を切り欠くことにより形成された凹部である。基板クランプ部153は、クランプ時に、凹部の両側の縁部にて、基板Sの端面の2箇所にそれぞれ当接する。
本実施の形態では、従動側のトレークランプ部151がトレイTに接触するより先に基板クランプ部153が基板Sに接触するように、トレークランプアーム147及び基板クランプアーム149が配置されている。また、図132に示されるように、基板クランプアーム149は、直動ガイド155上に配置されており、クランプ移動方向に沿って直線状に移動可能である。また、基板クランプアーム149の背後にはバネ式プッシャ157が配置されている。バネ式プッシャ157は本発明の付勢部に相当する。基板クランプアーム149とその基板クランプ部153はバネ式プッシャ157により基板Sへ向けて弾性的に付勢される。そして、基板Sのクランプの反力で基板クランプ部153が基板Sに押されたときに、基板クランプ部153は、基板Sへ向けて弾性的に付勢されつつ、従動側クランプ体133上で後退可能である。上記弾性構造の機能については後述する。
また、クランプ機構57では、固定側クランプ体131にトレークランプ位置調節機構159及び基板クランプ位置調節機構161が設けられている。
トレークランプ位置調節機構159は、各々のトレークランプ部143に設けられており、トレイTへ向けてのトレークランプ部143の突出量を調節する機構である。トレークランプ位置調節機構159はねじ構造を有する。トレークランプ部143の保持ピンの外周に雄ねじが設けられ、この雄ねじがトレークランプアーム139の雌ねじに係合しており、保持ピンを回すことによりピン高さを調節できる。基板クランプ位置調節機構161は、各々の基板クランプ部145に設けられており、基板Sへ向けての基板クランプ部145の突出量を調節する機構である。基板クランプ位置調節機構161もトレークランプ位置調節機構159と同様のねじ構造を有している。このような構成により、固定側クランプ体131のトレークランプ部143及び基板クランプ部145の突出量を独立して調節できる。
また、従動側クランプ体133も、固定側クランプ体131と同様に、トレークランプ位置調節機構163を有する。トレークランプ位置調節機構163は各々のトレークランプ部151に設けられており、固定側と同様のねじ構造を有する。
また、本実施の形態の例では、トレイTが4箇所でクランプされ、基板Sも4箇所でクランプされる。しかし、クランプ点の数は上記に限定されない。クランプ点の必要最小数は、トレイ及び基板の形状によって異なる。例えば、基板が円形である場合に、基板が3点でクランプされてもよい。
「トレイ保持機構」
図130、図131、図134及び図137等に示されるように、トレイ保持機構59は、トレイ平面に対して垂直方向の駆動機構である。トレイ保持機構59は、トレイ本体71へ向けて下降してトレイ本体71と当接する複数のトレイ保持ピン171を有する。トレイ保持ピン171は本発明のトレイ保持部材に相当する。図131に示されるように、トレイ保持ピン171は、ピン取付アーム173に取り付けられており、ピン取付アーム173がトレイ保持機構59用の昇降シリンダ175に連結されており、昇降シリンダ175によりトレイ保持ピン171が昇降される。
トレイ保持機構59は、額縁73の上昇時にトレイ本体71が上昇するのを防ぐ機能をもつ。すなわち、トレイ保持機構59は、リフト機構55が額縁73を持ち上げるときにトレイ保持ピン171を下降させてトレイ本体71に当接させ、これにより、トレイ本体71を拘束し、上昇を防ぐ。
本実施の形態では、トレイ保持ピン171の本数が4である。これら4本のトレイ保持ピン171は、トレイ本体71の4隅の突出縁部89にそれぞれ対応するように配置されており、下降時に突出縁部89に当接及び押圧する。このように、突出縁部89の上面は、トレイ保持ピン171の当接部位として機能する。さらに、突出縁部89の下面は、トレイ搬送時のロボットによる支持面としても機能する。
また、図131に示されるように、トレイ保持機構59は、トレイ保持ピン171の高さを調節する高さ調節機構177を有する。高さ調節機構177は、リフト機構55の調節機構と同様のねじ構造を有している。すなわち、トレイ保持ピン171の外周に雄ねじが設けられ、この雄ねじがピン取付アーム173の雌ねじに係合しており、トレイ保持ピン171を回すことによりピン高さを調節できる。
「額縁ドロップ機構」
図130、図131、図134及び図137等に示されるように、額縁ドロップ機構61は、トレイ平面に対して垂直方向の駆動機構である。額縁ドロップ機構61は、額縁73へ向けて下降して額縁73を押圧する複数の額縁ドロップピン181を有する。額縁ドロップピン181は、本発明の額縁ドロップ部材に相当する。図131に示されるように、額縁ドロップピン181は、ピン取付アーム183に取り付けられており、ピン取付アーム183が額縁ドロップ機構61用の昇降シリンダ185に連結されており、昇降シリンダ185により額縁ドロップピン181が昇降される。
本実施の形態では、額縁ドロップピン181の本数が4本であり、それぞれ額縁73の上方に配置されている。額縁ドロップ機構61は、クランプ機構57による位置決め終了後の額縁リフト解除時に額縁ドロップピン181を下降させて額縁73を押圧させ、額縁73をトレイ本体71に確実に着地させる。額縁73の着地が検出されてよく、これにより確実な下降動作が保証される。
また、図131に示されるように、額縁ドロップ機構61は、額縁ドロップピン181の高さを調節する高さ調節機構187を有する。高さ調節機構187も、リフト機構55の調節機構と同様のねじ構造を有している。すなわち、額縁ドロップピン181の外周に雄ねじが設けられ、この雄ねじがピン取付アーム183の雌ねじに係合しており、額縁ドロップピン181を回すことによりピン高さを調節できる。
以上に本実施の形態に係る基板搭載装置51の各部の構成について説明した。次に、基板搭載装置51の動作を説明する。
図139及び図140は、基板搭載装置51の動作の概要を模式的に示している。図139に示されるように、基板Sの搭載前、トレイTはステージ53に既に配置されている。額縁73は下降しており、額縁脚部83にてトレイ本体71に支持されている。
リフト機構55は下降しており、額縁保持ピン115及び基板保持ピン117も下方に位置している。クランプ機構57は開いており、固定側クランプ体131及び従動側クランプ体133は後退し、所定の退避位置にある。さらに、トレイ保持機構59及びドロップ機構61は上昇しており、トレイ保持ピン171及び額縁ドロップピン181はトレイTの上方に位置している。
搭載動作が開始すると、まず、トレイ保持機構59がトレイ保持ピン171を下降させる。トレイ保持ピン171は、トレイ本体71の突出縁部89に当接し、トレイ本体71を押さえつける。
そして、リフト機構55が額縁保持ピン115及び基板保持ピン117を上昇させる。額縁保持ピン115は、トレイ本体71の穴を通り抜けて、額縁脚部83の下面に当接し、額縁73を持ち上げる。このとき、額縁73は、額縁脚部83に設けられた直動タイプの昇降ガイド87(図135)に案内されて鉛直方向に上昇する。
また、基板保持ピン117も、額縁保持ピン115と同様に、トレイ本体71の穴を通り抜けて上昇する。基板保持ピン117の先端は、トレイTの基板搭載ピン75の先端よりも少し上に達する。
額縁保持ピン115が額縁73を持ち上げたことにより、トレイ本体71と額縁本体81との間に挿入口79が形成される。この挿入口79から、基板搬送部(基板搬送手段)であるロボットにより基板Sが挿入され、基板保持高さの基板保持ピン117上に置かれる。基板Sは、図133の矢印Dの方向から挿入される。基板保持ピン117がトレイTの基板搭載ピン75よりも突出しているので、基板Sは、基板搭載ピン75ではなく基板保持ピン117に保持される。上記ロボットは、図127の大気搬送ロボット9である。例えば、搬送ロボットがフォーク型のアームを有し、アーム先端で基板Sの下面を支持し、アームを伸ばして基板Sを挿入する。
ここで、本実施の形態では、額縁保持ピン115の先端の高さと基板保持ピン117の先端の高さはほぼ同じである。しかし、額縁脚部83の下面が基板Sの下面より下方に位置している。基板保持ピン117が基板Sの下面に当接するのよりも早く、額縁保持ピン115が額縁脚部83の下面に当接する。そして、リフト機構55は、額縁脚部83の高さの分だけ、額縁73を高く持ち上げることができる。その結果、額縁本体81は、基板保持ピン117の先端の基板保持高さより上に到達し、十分な大きさの挿入口79を形成できる。
次に、図140に示されるように、クランプ機構57が、トレイTに対して基板Sを位置決めする。本実施の形態では、クランプ機構57がトレイT及び基板Sを一度にクランプすることにより、基板Sを正確に位置決めする。
図141は、クランプ動作を説明する図である。図示のように、クランプ開始前は、固定側クランプ体131及び従動側クランプ体133は、トレイT及び基板Sから離れている。クランプ開始時(位置決め開始時)、まず、固定側クランプ体131が固定側シリンダ135(図136)に駆動されて、所定の固定側クランプ位置まで移動して停止する。
次に、従動側クランプ体133が従動側シリンダ137により駆動されて、トレイTの端部及び基板Sの端部に当接し、トレイT及び基板Sを固定側クランプ体131へ向けて押圧する。従動側のトレークランプ部151がトレイ本体71を固定側のトレークランプ部143に向けて押圧し、従動側の基板クランプ部153が基板Sを固定側の基板クランプ部145に向けて押圧する。
これにより、トレイ本体71と基板Sが一度のクランプ動作でクランプされる。トレイ本体71及び基板Sは、固定側クランプ体131に当接する位置にて位置決めされる。これにより、基板SとトレイTとの相対的位置関係が決まり、したがって基板SがトレイTに対して位置決めされる。
クランプが完了すると、従動側クランプ体133が後退して基板S及びトレイTから離れ、続いて、固定側クランプ体131が後退して基板S及びトレイTから離れ、こうしてクランプが解除される。
上記のようにして、本実施の形態によれば、トレイTと基板Sが一度のクランプ動作で同時に位置決めされる。固定側クランプ体131は、トレークランプ部143と基板クランプ部145が一体的に設けられた構成を有し、これらの位置関係が固定されている。このような固定側クランプ体131にトレイT及び基板Sが押圧される。その結果、トレイT及び基板Sのそれぞれの位置、そしてトレイTに対する基板Sの位置が、トレークランプ部143と基板クランプ部145の位置関係に対応して決定される。したがって、高い位置決め精度が得られる。
また、本実施の形態では、上記のように固定側クランプ体131が前進し、その後で従動側クランプ体133が前進する。このようにクランプ機構57を構成することにより、トレイ移動量を少なくできるという利点も得ることができる。
また、クランプ動作では、固定側のクランプ力よりも従動側のクランプ力が小さくなるように、固定側シリンダ135及び従動側シリンダ137が制御される。固定側クランプ力は、固定側シリンダ135が固定側クランプ体131を固定する力であり、従動側クランプ力は、従動側シリンダ137が従動側クランプ体133を移動する力である。このようなクランプ力の設定により、固定側クランプ体131のずれを防ぎ、高い位置決め精度が得られる。
また、本実施の形態では、既に説明したように基板保持ピン117がトレイTの基板搭載ピン75よりも上に突出する。したがって、図140に示されるように、位置決め時は、基板Sが基板搭載ピン75ではなく基板保持ピン117に保持されている。基板搭載ピン75は後段の搬送を考慮して滑りにくい表面を有しているのに対して、基板保持ピン117は滑りやすい表面を有している。したがって、基板Sは水平方向に動きやすい状態におかれている。これにより、位置決め時の基板Sの損傷を防ぐことができる。また、基板Sが適正位置へ確実に移動するので、位置決め精度も向上できる。
また、前述したように、本実施の形態では、従動側クランプ体133が、基板クランプアーム149を直動ガイド155上に有しており、かつ、基板クランプアーム149の後ろ側にバネ式プッシャ157が配置されている。この構成はクランプ時に下記のように機能する。
図142を参照すると、本実施の形態では、従動側のトレークランプ部151がトレイTに接触するより先に基板クランプ部153が基板Sに接触するように、トレークランプアーム147及び基板クランプアーム149が配置されている。
したがって、従動側クランプ体133が移動していくと、最初に基板クランプ部153が基板Sに当接し、押圧する。基板Sの反対側が固定側クランプ体131に当接し、基板Sからの反力でバネ式プッシャ157が縮み、基板クランプアーム149は直動ガイド155上で後退する。この時点で、基板Sはバネ式プッシャ157のバネ力でクランプされる。続いてトレークランプ部151がトレイTに当接し、押圧する。そして、基板SとトレイTの両方がクランプされ、位置決めされる。
ここで、仮に直動ガイド155及びバネ式プッシャ157が設けられていないとする。この場合、寸法誤差によりトレークランプ部151と基板クランプ部153の一方が対象物に当接できず、そのため、位置決め精度が低下する。本実施の形態では、上記構成により、トレークランプ部151と基板クランプ部153が確実にトレイT及び基板Sに当接でき、位置決め精度を向上できる。
また、本実施の形態は、トレイTではなく基板Sに弾性構造を適用している。基板SはトレイTと比べて重要が小さく、更に、基板Sは位置決め時にリフト機構55の基板保持ピン117に保持されている。したがって、基板Sは動きやすく、そして、バネ等を介して押圧された場合でも、より確実に位置決めのために移動できる。これにより、更に位置決め精度を向上できる。
図140に戻ると、位置決めが完了し、クランプが解除された後、リフト機構55が下降し、額縁保持ピン115及び基板保持ピン117も下降する。額縁73が下降し、額縁脚部83がトレイ本体71に支持され、額縁73は元の位置に戻る。また、基板Sが下降し、基板搭載ピン75に支持される。基板Sの上面と額縁73の上面は同じ高さになる(前述のように、詳細には額縁本体81の上面が基板上面と同じ高さに位置し、額縁カバー86の上面は基板上面より少し高い位置にある)。額縁73の端子部77は、基板Sの上面に接する。また、額縁カバー86は、基板Sの全周(2つの端子部77の部分を除く)に渡って、額縁73と基板Sの隙間を覆う。
リフト機構55が下降するとき、額縁ドロップ機構61が額縁ドロップピン181を下降させる。額縁ドロップピン181は、額縁73の上面に当接し、押圧する。これにより、額縁ドロップ機構61は額縁73の下降を補助する。額縁73は、自重に加えて、額縁ドロップピン181の作用を受け、確実に元の位置まで下降する。
次に、額縁ドロップ機構61が額縁ドロップピン181を上昇させ、トレイ保持機構59がトレイ保持ピン171を上昇させる。これにより、一連の搭載動作が完了する。搭載動作が完了すると、ロボットが、基板Sが搭載されたトレイTを搬送する。ロボットはアームを有し、アームでトレイ本体71の突出縁部89の下面を支持する。このロボットは、前述した通り、図127の大気搬送ロボット9であり、トレイTをロードロックチャンバ17へと搬送する。
以上に、基板SをトレイTに位置決めしながら搭載する動作を説明した。次に、トレイTから基板Sを取り外すときの動作を説明する。
本実施の形態では、基板搭載装置51が検査装置に備えられている。検査が終了すると、トレイSがロボットにより搬送され、基板搭載装置51のステージ53に載せられる。このとき、基板搭載装置51は、上記の搭載完了時と同じ状態にある。すなわち、基板搭載装置51では、リフト機構55が下降しており、額縁保持ピン115及び基板保持ピン117も下方に位置している。クランプ機構57は開いており、固定側クランプ体131及び従動側クランプ体133は後退し、所定の退避位置にある。また、トレイ保持機構59及びドロップ機構61は上昇しており、トレイ保持ピン171及び額縁ドロップピン181はトレイTの上方に位置している。
まず、トレイ保持機構59がトレイ保持ピン171を下降させ、トレイ本体71を押さえつける。続いて、リフト機構55が額縁保持ピン115及び基板保持ピン117を上昇させる。額縁73は上昇し、トレイ本体71と額縁本体81の間に挿入口79が形成される。額縁73の端子部77は基板Sの上面から離れる。額縁カバー86も基板Sの上方へ移動する。また、基板Sはリフト機構55の基板保持ピン117により持ち上げられる。これにより、基板Sは、トレイ上の基板搭載ピン75から離れて浮き上がる。
続いて、ロボットがアームを伸ばし、挿入口79から基板Sにアクセスし、基板Sの下面を支持し、基板Sを挿入口79から取り出す。基板Sは、図133の矢印Dと反対方向に取り出される。
ここで、上記の基板取出動作の前に、再度位置決めが実行されてよい。具体的には、額縁が上昇した後、クランプ機構57により位置決めが行われる。位置決め動作は、基板搭載過程の位置決めと同様でよい。それからロボットにより基板Sが取り出される。このように再度位置決めを行うことにより、搬送の確実性を増すことができる。
基板Sが取り出されると、リフト機構55が下降し、額縁73が元の位置に戻る。このとき、額縁ドロップ機構61が額縁ドロップピン181を下降させ、額縁73の下降を補助する。続いて、額縁ドロップ機構61が額縁ドロップピン181を上昇させ、トレイ保持機構59がトレイ保持ピン171を上昇させる。これにより、一連の基板取外しの動作が完了する。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態に適用できる。
「その他の実施の形態」
上述では本発明の基板搭載装置について説明した。本発明のその他の実施の形態は、例えば下記の通りである。
上記の基板搭載装置又は方法を用いてトレイに搭載されたマスクに荷電粒子ビームを照射してマスクを検査するマスク検査装置又は方法。
上記の基板搭載装置又は方法を用いてトレイに搭載されたマスクに荷電粒子ビームを照射して、マスク製作工程の検査を行うマスク製造装置又は方法。
上記のマスク検査装置又は方法により検査されたマスク。上記のマスク製造装置又は方法により製造されたマスク。
上記のマスクを用いて半導体装置を製造する半導体製造装置又は方法。
上記のマスクを用いて製造された半導体装置。上記の半導体製造装置又は方法により製造された半導体装置。
マスクの種類としては、例えばCrマスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスクが挙げられる。Crマスクは光露光に用いられ、EUVマスクはEUV露光に用いられ、ナノインプリントマスクは、ナノインプリントによるレジストパターン形成に用いられる。これらのマスクの各々について、パターンが形成されたマスクが検査の対象であってよい。また、パターン形成前の膜が形成された状態のマスク(ブランクス)が検査の対象であってよい。
以下、上記実施の形態により得られたマスクを適用可能な半導体装置の製造方法を述べる。この製造方法は、下記の工程(1)〜(5)を含む。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程
(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にするチップ組立工程(5)チップを検査するチップ検査工程
上記(3)のウエハプロセッシング工程では、設計された回路パターンがウエハ上に順次積層され、メモリ、MPU等として動作する多数のチップが形成される。このウエハプロセッシング工程は、以下の複数の工程を含む。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜、配線部及び電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVD、スパッタリング等を用いる)
(B)薄膜層及びウエハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層及びウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レクチル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(D)レジストパターンに従って薄膜層及び基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウエハを検査する工程
ウエハプロセッシング工程は、必要な層数だけ繰り返し行われる。(C)のリソグラフィー工程は、下記の通りである。
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程
(b)レジストを露光する工程
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程
以上に本発明の好適な実施の形態について説明した。上述したように、本発明によれば、クランプ機構がトレイ及び基板の両方を一度のクランプ動作でクランプする。このクランプ動作は、複数のクランプ片で異なる方向からトレイ及び基板を押圧する動作である。基板平面に平行に移動するクランプ機構を用いるので、基板を傾斜させることなく位置決めできる。また、トレークランプ部と基板クランプ部を一体に備えたクランプ体でトレイと基板を一度にクランプするので、トレークランプ部と基板クランプ部の位置関係に応じてトレイ対して基板が位置決めされ、トレイと基板の位置関係が正確に定まる。したがって、トレイに対して基板を高精度に位置決めできる。
また、本発明によれば、上述のように基板とトレイを一度の動作でクランプするので、基板だけでなくトレイの位置決めも同時に行えるという利点も得られる。
また、本発明によれば、クランプで基板に接するので、基板への接触をなるべく避けられる。位置決め完了後にクランプを解除することが好適であり、接触時間を低減できる。したがって、本発明によれば、基板になるべく接触せずに、位置決めを好適に行うことができる。
特に、上記の実施の形態の例では、基板がマスクであり、基板搭載装置が、荷電粒子型の検査装置(特に写像投影型の検査装置)に設けられている。この場合、マスクの両面を順次検査することがあり、マスクの両面への接触を極力避ける必要がある。したがって、基板搭載も、マスクの位置決めも、マスクになるべく接することなく高精度に行うことが求められる。本発明によれば、このようなマスク検査の要求に好適に応えることができる。
また、本発明に適用されるマスクは、例えば、一辺が6インチの正方形で、厚さが6.35mmのガラス製マスクであり、ウエハと比べて重量が大きいが、このようなマスクも上述の基板搭載装置によれば好適に位置決めできる。
また、本発明が適用される検査装置は、例えば上述の実施の形態で示されたように真空チャンバ中でマスク検査を行うが、このような場合にも本発明は好適にマスクを位置決めできる。
また、上記の実施の形態の例において、検査装置全体から見ると、基板搭載装置は、基板の仮位置決めを行っている。本位置決めは後段で行われる。すなわち、ロードロックチャンバでCCDカメラにより基板のマークが検出され、マーク位置に基づきメインチャンバでのトレーセット位置が制御され、これにより本位置決めが行われる。この本位置決めの精度は、仮位置決めの精度の影響を受ける。例えば、仮位置決め精度が低いためにCCDカメラの視野を広げると、CCDカメラの倍率が下がり、本位置決め精度が低下する。本発明によれば、このような本位置決め精度の低下も防ぐことができ、検査精度を向上できる。
本発明のその他の利点を説明する。本発明によれば、複数のクランプ体として、固定側クランプ体と従動側クランプ体が設けられてよい。まず、固定側クランプ体が所定の固定側クランプ位置に配置されてよく、それから、従動側クランプ体が移動してトレイ及び基板を固定側クランプ体へ向けて押圧してよい。固定側クランプ体のトレークランプ部と基板クランプ部の位置関係がクランプ時に固定されていてよい。これにより、固定側クランプ体と従動側クランプ体が連携し、固定側クランプ体のトレークランプ部と基板クランプ部の位置関係により規定される所定の位置へと基板を正確に位置決めできる。また、固定側クランプ体が前進してから従動側クランプ体が前進するので、位置決め過程でのトレイ移動量を少なくできるという利点も得ることができる。
また、従動側クランプ体では、トレークランプ部がトレイに接触するより先に基板クランプ部が基板に接触するようにトレークランプ部及び基板クランプ部が配置されてよく、クランプ時に基板クランプ部を基板へ向けて弾性的に付勢する付勢部が設けられてよい。付勢部は、基板のクランプの反力で従動側の基板クランプ部が基板から押圧されたときに基板クランプ部を後退可能にしてよい。付勢部は例えば弾性部材であり、従動側の基板クランプ部の背後に配置されてよい。弾性部材は例えばバネである。このような構成により、トレークランプ部と基板クランプ部の寸法誤差による位置決め精度の低下を防ぎ、高精度で基板を位置決めできる。また、トレイと比べて重量が小さくて動きやすい基板に弾性構造を適用することにより、さらに位置決め精度を向上できる。
また、本発明によれば、クランプ体は、トレークランプ部のトレイへ向けての突出量を調節するトレークランプ位置調節機構と、基板クランプ部の基板へ向けての突出量を調節する基板クランプ位置調節機構とを有してよい。トレークランプ部の突出量と基板クランプ部の突出量は独立して調節されてよい。このような構成により、クランプ体のトレークランプ部及び基板クランプ部の突出量を調節でき、更に位置決め精度を向上できる。
また、本発明によれば、基板搭載装置が、位置決め時の基板に対応する位置に配置されており昇降可能な複数の基板保持部材を有してよい。基板が複数の基板保持部材によりトレイの基板搭載高さより上の基板保持高さに保持された状態でクランプ機構が基板をクランプしてよい。これにより、基板がトレイから離れた状態で基板がクランプされるので、位置決め時のトレイと基板の摺動を回避できる。したがって、基板になるべく接触せずに位置決めを行うことができ、また、摺動による位置決め精度低下を防ぐことができ、更に、摺動による基板損傷を防ぐこともできる。
また、本発明によれば、トレイが、トレイ本体と、トレイ本体から上昇可能であり基板を取り囲む額縁を含んでよい。基板搭載装置が、額縁に対応する位置に配置されており昇降可能な複数の額縁保持部材を有してよい。額縁保持部材が額縁を持ち上げることにより、基板の挿入及びクランプ体の挿入のための挿入口を額縁とトレイ本体の間に形成してよい。これにより、基板周囲の額縁から基板上面に電位を付与できる。また、額縁で基板を取り囲むことで、基板縁部付近の電位を均一にできる。額縁が基板縁部に適当に接することが好適であり、これにより電位を好適に均一化できる。上記の実施の形態では、額縁と基板の隙間を覆うように額縁カバーが設けられ、額縁カバーが基板縁部に接する。さらに、本発明では額縁を持ち上げるので、基板上面に電位を付与するために額縁を設けた場合でも、クランプ機構と額縁との干渉を防ぎ、クランプによる位置決めを好適に行うことができる。
より具体的には、上記の実施の形態で説明したようにリフト機構が設けられてよい。リフト機構は、額縁に対応する位置に配置された複数の額縁保持部材と、基板に対応する位置に配置された複数の基板保持部材とを有してよく、複数の額縁保持部材及び複数の基板保持部材を連動して昇降させてよい。そして、リフト機構は、額縁保持部材を上昇させて額縁を持ち上げることにより、基板の挿入及びクランプ体の挿入のための挿入口を額縁とトレイ本体の間に形成してよい。更に、リフト機構は、基板保持部材を上昇させてトレイの基板搭載高さよりも上であって挿入口に応じた高さである基板保持高さへ基板保持部材を突出させてよい。基板は、挿入口を通して挿入可能になり、基板保持高さで基板保持部材に保持される。クランプ体も挿入口を通して干渉無しに挿入可能である。
このような構成により、挿入口の形成のために額縁を適切に持ち上げることができる。また、位置決め時にトレイから離れた上方の位置に基板を適切に保持することができる。したがって上述した本発明の利点が好適に得られる。更に、額縁保持部材と基板保持部材を共通のリフト機構に設けることにより構成を簡単にできる。
また、本発明によれば、額縁が、基板を取り囲む額縁本体と、額縁本体から下方に延びる額縁脚部とを有してよい。額縁脚部の下面が基板の下面より下方に位置してよい。額縁保持部材が額縁脚部に対応する位置に配置されてよく、額縁脚部を支持することにより、基板保持部材による基板保持高さよりも上に額縁本体を位置させて、挿入口を形成してよい。この構成により、基板保持部材と額縁保持部材が同時に同じ距離だけ上昇した場合でも、基板保持高さより高い位置へ額縁本体を持ち上げることができ、額縁本体とトレイ本体の間に基板及びクランプの挿入口を好適に形成できる。したがって、リフト機構の構成を簡単にできる。
また、本発明によれば、基板搭載装置が、額縁保持部材の高さを調節する額縁保持高さ調節機構と、基板保持部材の高さを調節する基板保持高さ調節機構とを有してよい。額縁保持部材の高さと基板保持部材の高さは独立して調節されてよい。この構成により、額縁保持部材の高さ及び基板保持部材の高さを調節でき、額縁と基板の位置関係を好適に調節できる。
また、本発明によれば、トレイ保持機構が設けられてよい。トレイ保持機構は、トレイ本体に対応する位置に配置されたトレイ保持部材を有してよく、トレイ保持部材を昇降させてよい。リフト機構が額縁を持ち上げるときにトレイ保持機構がトレイ保持部材を下降させてトレイ本体に当接させ、トレイ本体の上昇を防いでよい。この構成により、額縁上昇に伴ってトレイ本体が上昇するのを防ぎ、トレイと基板の同時クランプによる位置決めを好適に行える。
また、本発明によれば、トレイ本体が、額縁よりも外側に突出する突出縁部を有してよく、突出縁部の上面がトレイ保持部材の当接面であってよく、突出縁部の下面がトレイを搬送する搬送ロボットの支持面であってよい。この構成により、トレイ本体の突出縁部を、基板搭載時のトレイ保持と搭載完了後のトレイ搬送の両方に用いることができる。これら2つの機能を簡素な構成で実現できる。
また、本発明によれば、額縁ドロップ機構が設けられてよい。額縁ドロップ機構は、額縁に対応する位置に配置された額縁ドロップ部材を有してよく、額縁ドロップ部材を昇降させてよい。額縁リフト解除時に額縁ドロップ機構が額縁ドロップ部材を下降させて額縁を押圧させてよい。この構成により、基板及びクランプとの干渉防止のために持ち上げられた額縁を、基板を取り囲む位置へ確実に戻すことができる。
また、本発明では、基板が、半導体製造用のマスクでよい。また、基板が四角形でよい。従来は円形基板の位置決め機構が一般的に用いられているが、四角形のマスクの位置決めには適用できない。本発明によれば四角形のマスクの位置決めを好適に行える。ただし、本発明の範囲内で、基板はマスクに限定されず、ウエハでもよい。また、基板形状も四角形に限定されず、円形でもよい。図144は、基板形状が円形である場合の基板搭載装置の例を示している。円形基板は例えばウエハである。図示のように、基板に合わせてトレイ形状も円形に変更されている。基板及びトレイの形状変更に適合するための変更を除き、図144の基板搭載装置201は上述の実施の形態と概ね同様の構成を有してよい。図144の基板搭載装置201は、上述した本発明の各種構成、すなわちステージ、リフト機構、クランプ機構、トレイ保持機構、ドロップ機構等を同様に備えてよい。横方向から見た構成(断面の構成を含む)も上述した四角形基板についての実施の形態と概ね同様でよい。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
以上のように、本発明は、トレイに対して基板を高精度に位置決めできる基板搭載技術として有用である。
(実施形態29)
試料観察方法及び装置、並びにそれらを用いた検査方法及び装置
本発明の検査装置及び検査方法における試料観察方法及び装置の例について説明する。
[第1の観点]
第1の観点は、異物の観察に関し、特に、異物を検査する技術に関する。
本発明の目的は、試料表面の異物を、高速かつ確実に検出することができる電子線検査方法及び電子線検査装置を提供することにある。
本発明に係る電子線検査方法は、試料表面に所定の照射領域を有する撮像電子ビームを照射し、反射した電子を検出器により検出することにより、前記試料表面及び前記試料表面上の異物の画像を取得する電子線検査方法であって、帯電用電子ビームの照射により前記異物を帯電させ、前記異物周辺に前記試料表面とは異なる電位分布を形成する異物帯電ステップと、前記撮像電子ビームの照射により前記異物から反射され、前記電位分布の作用により曲がった軌道を通って前記検出器に到達する前記電子を検出し、前記試料表面の倍率よりも前記異物の倍率が増大されている前記異物の拡大像を取得する拡大像取得ステップと、を有する。
これにより、所定の照射領域を有する電子ビームを用いて電子線検査を行うので、広い面積を高速で検査できる。また、異物が周囲の試料表面よりも拡大された拡大像を取得できるので、確実に異物を検出することができる。
また、本発明において、前記異物帯電ステップは、前記帯電用電子ビームの照射により前記異物を負極性にチャージアップさせてよく、前記拡大像取得ステップは、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーを10eV以下としてよく、前記異物の直前で反射するミラー電子を検出して前記異物の前記拡大像を取得してよい。
これにより、低ランディングエネルギー帯で発生し易いミラー電子を用いて、異物の拡大像を確実に検出することができる。
また、本発明において、前記異物帯電ステップは、前記帯電用電子ビームの照射により前記異物の電位の絶対値を上げてよい。
これにより、背景となる試料表面と異物との電位差を大きくし、異物の拡大像のコントラストを高くし、電子線検査を容易にすることができる。
また、本発明において、前記帯電用電子ビームのランディングエネルギーは、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーよりも大きくてよい。
これにより、高いランディングエネルギーの帯電用電子ビームの照射により、異物の負電位の絶対値を高くすることができる。したがって、撮像電子ビームの照射時にミラー電子を発生し易くすることができる。
また、本発明において、前記帯電用電子ビームのランディングエネルギーは、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーよりも小さくてよい。
この構成は、適切な撮像電子ビームのランディングエネルギーが既知の場合に適している。上記構成により、撮像電子ビームを用いて異物の拡大像を取得するときに、異物表面の電位シフトが大きくなることを防ぐことができる。したがって、確実に拡大像を検出することができる。
また、本発明において、前記帯電用電子ビームと前記撮像電子ビームとでは、ランディングエネルギーが等しく、ドーズ量が異なってよい。
これにより、電子ビームのランディングエネルギーを変化させることなく、ドーズ量により異物の帯電を制御することができる。したがって、容易な制御でもって異物の拡大像を検出できる。
また、本発明の方法は、前記撮像電子ビームを前記試料表面に対して非垂直に入射させてよい。
これにより、撮像電子ビームの入射角度を適切に調整し、より解像度の高い異物の拡大像を取得することができる。
また、本発明において、前記拡大像取得ステップは、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーを10eV以上とし、前記異物から放出されて反射した二次放出電子を検出し、前記異物の拡大像を取得してよい。
これにより、異物から二次放出電子を発生させ、二次放出電子に基づいて異物の拡大像を取得し、電子線検査を行うことができる。
また、本発明において、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーは、前記試料表面から反射される電子が総てミラー電子となる最高ランディングエネルギー以上であり、前記試料表面から反射される電子が総て二次放出電子となる最低ランディングエネルギーに5eVを加えた値以下のランディングエネルギーであってよい。
言い換えれば、本発明において、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーLEは、LEA≦LE≦(LEB+5eV)に設定されてよい。ここで、LEAは、前記試料表面から反射される電子が総てミラー電子となる最高ランディングエネルギーであり、LEBは、前記試料表面から反射される電子が総て二次放出電子となる最低ランディングエネルギーである。
これにより、異物と周囲の試料表面との階調差が大きいランデシィングエネルギー帯を用いて電子線検査を行うことができる。したがって、コントラストの大きい画像取得により電子線検査を容易かつ確実に行うことができる。ここで、階調は画像の輝度を表し、階調差は輝度差を表す。
また、本発明において、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーは、前記試料表面から反射される電子がミラー電子と二次放出電子との混合又は二次放出電子のみであるランディングエネルギー帯の中であって、かつ、前記異物から反射される電子がミラー電子と二次放出電子の混合であるランディングエネルギー帯の中であって、かつ、前記試料表面の像と前記異物の拡大像との階調差が最大となるランディングエネルギーに設定されてよい。
これにより、周囲の背景と異物との最も階調差が大きくなる。したがって、異物を検出し易い状態で、異物の検出を行うことができる。
本発明に係る電子線検査装置は、試料を載置するステージと、所定の照射領域を有する電子ビームを生成し、該電子ビームを前記試料に向けて照射する1次光学系と、前記試料から反射された電子を検出する検出器を有し、前記試料の所定の視野領域の画像を取得する2次光学系と、を備え、前記1次光学系は、帯電用電子ビームの照射により前記異物を帯電させて前記異物の電位分布を試料表面と異ならせ、次に撮像電子ビームを前記試料に照射し、前記2次光学系は、前記異物から反射され、前記電位分布の作用を受けて曲がった軌道を通って前記検出器に到達する電子を検出し、前記試料表面の倍率よりも前記異物の倍率が増大されている前記異物の拡大像を取得する。
これにより、所定の大きさの照射領域を有する電子ビームにより、試料表面全体を高速に検査することができる。また、異物の像を周囲の像よりも拡大し、異物の検出を確実に行うことができる。
また、本発明において、前記1次光学系は、前記帯電用電子ビームの照射により前記異物をチャージアップさせ、次にランディングエネルギーが10eV以下の前記撮像電子ビームを前記試料に照射してよく、前記2次光学系は、前記異物の直前で反射したミラー電子を前記検出器により検出し、前記異物の拡大像を取得してよい。
これにより、低ランディングエネルギーを用いて、異物を、ミラー電子が発生し易い状態にできる。ミラー電子を用いることにより、異物の拡大像を取得し易くなる。したがって、異物の検出をより確実にすることができる。
また、本発明では、前記ステージ上に、ファラデーカップ、基準試料チップ及びEB−CCDの少なくとも1つが載置されてよい。
これにより、電子ビームのプロファイルを直接的に検出することができ、電子ビームの調整を適切に行うことができる。
また、本発明において、前記ステージ上には、基準試料チップが載置されてよく、前記基準試料チップは、円形状、十字形状又は矩形状のいずれかの形状パターンを有してよい。
これにより、ミラー電子が好適に発生するように電子ビームのビームプロファイルの調整を行うことができる。ミラー電子は異物の拡大像の検出に適しており、上記構成はミラー電子を適切に発生させることができる。
また、本発明において、前記1次光学系は、前記撮像電子ビームのランディングエネルギーを10eV以上にしてよく、前記2次光学系は、前記異物から放出されて前記検出器に到達する二次放出電子を検出して、前記異物の拡大像を取得してよい。
これにより、異物から二次放出電子を発生させることによっても、異物の検出を行うことができる。
また、本発明において、前記2次光学系は、NAアパーチャと交換可能なEB−CCDを有してよい。
これにより、2次光学系を通過する2次電子ビームについて、直接的にプロファイルを測定できる。したがって、適切な調整を行うことができる。
また、本発明において、前記2次光学系は、NAアパーチャを有してよく、該NAアパーチャは、前記ミラー電子の強度中心がアパーチャ中心位置に一致するように配置されてよい。
これにより、NAアパーチャの位置を適切に配置して、ミラー電子信号を良好に検出できるとともに、二次放出電子の検出量を相対的に小さくできる。したがって、高コントラストの画像を取得することができる。
また、本発明において、前記2次光学系は、NAアパーチャを有してよく、該NAアパーチャ形状は、前記ミラー電子の強度分布の長手方向に応じた方向に長軸を有する楕円形状であってよい。
これにより、ミラー電子の強度分布に合わせた楕円形状のアパーチャが用いられる。したがって、より多くのミラー電子信号を検出することができ、高コントラストの画像を取得することができる。
また、本発明において、前記2次光学系は、複数のアパーチャを有するNAアパーチャを有してよく、該NAアパーチャは、前記複数のアパーチャが前記ミラー電子の強度中心の周辺に位置するように配置されてよい。
ここでは、NAアパーチャが、アパーチャ部材であり、複数のアパーチャが、アパーチャ部材に設けられた複数の開口である。上記構成により、ミラー電子の散乱方向に合わせてアパーチャの配置を行うことができる。そして、用途や性質に応じた適切なミラー電子の検出を行うことができる。
また、本発明において、前記2次光学系は、複数のアパーチャを有するNAアパーチャを備えてよく、該NAアパーチャは、前記複数のアパーチャのうちのいずれかが前記ミラー電子の強度中心と一致するように配置されてよい。
ここでは、NAアパーチャが、アパーチャ部材であり、複数のアパーチャが、アパーチャ部材に設けられた複数の開口である。上記構成により、散乱方向に特徴のある異物に対して有効な検査を行うことができる。異物の分類に役立つ検査を行うことも可能となる。
また、本発明において、前記2次光学系は、前記NAアパーチャを移動させる移動機構を更に備えてよい。
これにより、NAアパーチャの位置調整を、移動機構を用いて容易に行うことができる。
また、本発明において、前記1次光学系及び前記2次光学系は、前記試料上に散布されたサイズが既知の微小球体を用いて感度校正が行われた光学系であってよい。
これにより、高精度の感度校正を行うことができる。したがって、良好な条件で画像取得を行うことができる。
また、本発明の電子線検査装置は、前記ステージを収容するチャンバと、該チャンバに備えられたSEM式検査装置とを有してよく、前記検出器が取得した前記異物の拡大像の位置情報に基づいて、前記ステージを移動させ、前記SEM式検査装置で前記異物を詳細検査してよい。
これにより、迅速かつ高精度に異物のレビュー検査を行うことができ、異物検査を高速かつ高精度に行うことができる。
「発明の効果」
以上に説明したように、本発明によれば、異物検査を迅速に行うことができるとともに、異物の検出を確実かつ容易に行うことができる。
「発明の実施の形態」
以下に本発明の詳細な説明を述べる。以下の詳細な説明と添付の図面は発明を限定するものではない。代わりに、発明の範囲は添付の請求の範囲により規定される。
図145Aは、本実施の形態に係る電子線検査方法によって得られる画像を示している。図145を参照して本発明の概略的な原理を説明する。
図145Aは、本実施の形態に係る写像投影法により得られた異物10の画像80を示している。異物サイズは40〔nm〕である。図145Aの画像において、異物10の大きさは、ピクセルサイズ2×2〔μm〕の領域をおおよそ満たす程度である。ここで、ピクセルサイズとは、検出器の1画素に対応する試料上の実際のサイズである。ピクセルサイズは、観察可能な試料のサイズの最小単位のことを意味する。従って、図145Aにおいては、実際の異物サイズは40〔nm〕であるにも関わらず、表示された画像80は、2×2〔μm〕の大きさに近い程度に拡大されている。このことは、ピクセルサイズが例えば1〔μm〕、1.5〔μm〕程度の大きさであっても、40〔nm〕程度の異物10を発見できることを意味する。
図145Aにおいて、撮像用の電子ビームのランディングエネルギーは、1〔eV〕である。ピクセルサイズは100〔nm〕である。従来、異物の実際のサイズが40〔nm〕である場合には、ピクセルサイズが40〔nm〕より小さいことが必要とされる。これに対して、本実施の形態は、光学倍率よりも拡大された異物10の拡大像を取得することができる。
図145Bは、従来のSEM(Scanning Electron Microscope)型の異物検査装置で得られる異物10の画像280を示している。異物サイズは40〔nm〕である。図145Bにおいて、ピクセルサイズは、図145Aと同様に2×2〔μm〕である。しかし、図145Aと比較して、図145Bでは、異物10の画像のサイズが相当に小さくなっていることが分かる。
このように、本実施の形態に係る電子線検査方法は、従来のSEM方式と比較して、異物10のサイズが大幅に増大した画像を取得できる。つまり、異物10からの検出信号が、光学倍率よりも拡大される。超微小サイズの異物に対しても高い感度を実現できる。更に、それだけでなく、実際の異物よりも大きなピクセルサイズを用いて異物を検出することができる。
図145Cは、試料20上に異物10が存在している状態を示した側面図である。図145Cにおいて、異物10の表面は球面状である。そのため、表面から反射される電子は、垂直な軌道を通らず、広がるように軌道を変える。これは以下の理由による。異物10が球面の表面形状を有するので、異物10の電位分布は、試料表面21とは異なる状態にある。そのため、マクロ的に試料表面21を見ると、異物10の存在する部分の電位分布が歪んでいる。そのために電子の軌道が変わる。この点、詳細は後述する。
図146A及び図146Bは、比較のため、従来の電子線検査方法を示している。図146Aは、従来の光方式による電子線検査方法を示している。光方式においては、いわゆる暗視野・散乱方式により異物10が検出される。すなわち、試料20の試料表面21に光、レーザが照射され、散乱光が検出器170により検出される。ところが、従来の光方式では、異物10のサイズが50〜100〔nm〕以下の超微小な異物や、有機物の付着等については、検出感度が低下する。そのため、適用が困難となってきた。感度低下の大きな要因は、光の波長よりも異物10が小さくなり、S/Nが低下することであると考えられる。
図146Bは、従来のSEM方式による電子線検査方法を示している。SEM方式では、電子ビームを絞ってピクセルサイズを小さくすることにより、超微小なパターン欠陥22等を検出できる。例えば、対象異物サイズよりも小さいピクセルサイズを用いることができるので、高分解能で異物10の検査を行うことができる。しかし、ピクセルサイズが小さいため、検査時間が膨大となり、現実的な時間での検査が困難であり、実用的ではない。
このように、従来は、超微小サイズ50〜100〔nm〕以下の異物の検査について、高感度、高速及び高スループットを実現する異物検査方法及び異物検査装置が存在しなかった。
図147A及び図147Bは、異物検査方法により取得される異物10の拡大像80と、拡大像の断面階調の一例を示している。ここで、階調は、画像の輝度を表し、階調差は輝度差である。階調が大きいほど輝度も大きい。図147Aが、拡大像80の一例であり、より詳細には、中央の白領域が異物10の拡大像81であり、黒領域が、試料20の表面像82を示している。ここで、異物サイズ(直径)は40〔nm〕であり、光学倍率は300倍である。このとき、従来の異物検査方法によれば、異物10の像のサイズは、40〔nm〕×光学倍率300=12〔μm〕である。図147Aの本実施の形態では、異物10の拡大像81のサイズは、190〔μm〕となる。また、検出器のピクセルサイズは、15〔μm〕である。
図147Bは、ピクセル位置における断面階調を示している。横軸がピクセル位置座標であり、縦軸が断面階調である。図147Bにおいて、三角形マーク(△)は、山形状(凸形状)の部分を示している。この部分は、階調が高くなっている領域であり、図147Aの白い拡大像81の部分に対応する。つまり、画像80上の拡大像81の横幅(三角形マーク△)は、190〔μm〕である。
ここで、検出器65のピクセルサイズが15〔μm〕である。そのため、従来の方法によれば、異物サイズは画像80上では12〔μm〕で表示される。よって、異物10の画像は、1ピクセル以下の信号となってしまう。1ピクセルでは、異物10を正確に表現することはできない。
一方、本実施の形態に係る異物検査方法によれば、異物10の拡大像81は、ピクセル数=12.7の像として検出可能である。よって、更に低倍率の大きなピクセルサイズで撮像可能である。大きなピクセルサイズで撮像が可能であれば、試料表面21全体を高速で検査することが可能となる。したがって、高速かつ高スループットの異物検査が可能となる。例えば、異物サイズ10〜30〔nm〕のとき、ピクセルサイズが100〜1000〔nm〕でよい。このように異物サイズより大きいピクセルサイズの使用が可能となり、高速の異物検査が可能となる。
本実施の形態に係る電子線検査方法に適用される電子線検査装置は、写像投影方式の電子線コラム(1次光学系)を有している。SEM方式では、電子ビームが絞られる。電子ビームのスポットサイズが、1ピクセル分のピクセルサイズとなる。一方、写像投影方式においては、電子ビームが、複数ピクセルを含む所定の面積領域を有する。このような電子ビームが試料20に照射される。検出器は、複数ピクセルに対応する電子を同時に検出する。複数ピクセル分の像が形成され、画像信号として取得される。このように、写像投影光学系は、電子を試料表面21に照射する電子照射系と、試料表面21から反射された電子の像を拡大倍率にて形成する光学系と、検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置系とを有している。
図148Aは、試料に照射される電子ビームのランディングエネルギーと、試料から放出される電子との関係を示している。より詳細には、図148Aは、ランディングエネルギーを変化させながら電子ビームを試料20に照射したときの、二次放出電子の発生量を示している。
図148Aにおいて、横軸はランディングエネルギーLE〔keV〕を示し、縦軸は、入射電子の量に対する二次放出電子の発生量の比を示している。
図148Aにおいて、二次放出電子発生量が1より大きい場合は、打ち込まれる電子量よりも、放出される電子量の方が多い。したがって、試料は正に帯電する。図148Aにおいては、正帯電領域は、ランディングエネルギーLEが10〔eV〕以上、1.5〔keV〕以下の領域である。
逆に、二次電子放出量が1より小さい領域では、試料20に打ち込まれる電子量の方が、試料20から放出される電子量よりも多い。したがって、試料20は負帯電となる。図148Aにおいては、負帯電領域は、ランディングエネルギーLEが10〔eV〕以下の領域と、ランディングエネルギーLEが1.5〔keV〕以上の領域である。
図148Bは、ミラー電子を示している。図148Bにおいて、試料表面21上に異物10が存在し、異物10が負極性に帯電している。一定条件下で電子ビームが試料20に照射されると、電子ビームの電子は異物10に衝突せず、直前で向きを変えて反射する。このように、照射対象と衝突せず、直前で跳ね返ってくる電子を、ミラー電子という。照射される電子がミラー電子になるか否かは、異物10の電位分布(電荷状態)と、異物10に照射される電子ビームのランデシィングエネルギーとに依存する。例えば、異物10が負極性にチャージアップした状態にあり、かつ、ランディングエネルギーがあまり高くなければ、電子ビームは、異物10が有する負電界に跳ね返され、異物10に衝突せずに反射し、ミラー電子になる。
図148Cは、二次放出電子を示している。図148Cにおいては、電子ビームが試料20に照射され、試料表面21に衝突し、その結果、試料から二次放出電子が放出されている。異物10においても同様であり、電子ビームが異物10に衝突し、異物10から二次放出電子が放出される。
本実施の形態に係る電子線検査方法は、ミラー電子及び二次放出電子を用いて試料表面21上に存在する異物10を検出する。
図149A及び図149Bは、試料20及び異物10に照射される電子ビームのランディングエネルギーLEと、試料20から反射される電子の信号強度/平均階調との関係の例を示している。ここで、「反射する」とは、電子ビームの照射により、試料20又は異物10から、電子ビームと略反対向きの電子が返ってくることを意味する。したがって、「反射する」は、試料20又は異物10に衝突せずに反射する電子と、試料20又は異物10に衝突してから放出されて反射する二次放出電子の双方を含む。さらに、「放出する」、「生成する」も同様である。
図149Aは、照射される電子ビームのランディングエネルギーLEと、反射する電子の信号強度/平均階調との関係の一例である。図149Aにおいて、横軸が電子ビームのランディングエネルギーLEを示し、縦軸が信号強度/平均階調を示している。平均階調は、画像の輝度を表しており、信号強度と対応する。図149は、ランディングエネルギーLEが0[eV]付近の特性であり、図148よりも遙かに低いエネルギ帯の特性を示している。図149Aにおいて、ランディングエネルギーLE=10〔eV〕以下の領域が、ミラー電子による信号(白)が取得される領域である。一方、ランディングエネルギーLE=10〔eV〕以上の領域が、二次放出電子による信号(黒)が取得される領域である。ミラー電子の領域においては、ランディングエネルギーLEが下がる程、信号強度が増加していることが分かる。
図149Bは、図149Aと異なる例を示しており、図149Bも、照射される電子ビームのランディングエネルギーと、反射する電子の信号強度/平均階調との関係を示す。図149Bにおいては、ランディングエネルギーLE=5〔eV〕以下の領域が、ミラー電子による信号(白)が取得される領域であり、ランディングエネルギーLE=5〔eV〕以上の領域が、二次放出電子による信号(黒)が取得される領域である。
図149Bの特性線は、図149Aの特性線とは、ミラー電子の信号と二次放出電子の信号の境界のランディングエネルギーLEが5〔eV〕である点で異なっている。ミラー電子と二次放出電子とのランディングエネルギーLEの境界は、試料20の特性や電子ビームのプロファイル等によって変化し、種々の値を取り得る。以後、本実施の形態に係る電子線検査方法及び電子線検査装置においては、図149Aの例(境界のランディングエネルギーLEが10〔eV〕である例)について説明する。しかし、本発明が、これに限定される訳ではない。図149Bに示したように、本発明は、境界のランディングエネルギーが10〔eV〕以下の場合にも適用されてよく、例えば境界のランディングエネルギーが5〔eV〕でよい。
また、図149A及び図149Bにおいて、ランディングエネルギーが境界以下の領域は、本発明の遷移領域に相当し、ミラー電子と2次放出電子が混在する。また、ランディングエネルギーが境界以上の領域が、本発明の2次放出電子領域に相当する。上述したように、境界ランディングエネルギーは、図149Aの例では10[eV]であり、図149Bの例では5[eV]である。
図150は、試料20の試料表面21に異物10が存在する状態を示す。図示のように、電子ビームの照射によって、電子が発生する。ランディングエネルギーLE≦10〔eV〕のときには、異物10が負にチャージアップする。異物10に電子ビームが入射すると、電子ビームの電子が、ミラー電子meとなる。したがって、電子は、異物10の衝突することなく反射して検出器70に到達する。一方、異物10の存在しない正常部位(試料表面21)では、1次電子ビームの照射により二次放出電子seが発生する。
ここで、「二次放出電子se」とは、二次電子、反射電子、後方散乱電子のいずれかを意味する。それらが混在する場合も、「二次放出電子se」に該当する。
このような二次放出電子に関しては、通常、放出率ηが小さい。特に、ランディングエネルギーLEが約50〔eV〕以下の場合には、放出率η<1.0である。ランディングエネルギーLEが0に近付くほど放出率が低下し、ランディングエネルギーLE=0では放出率がほぼ0になる。
また、電子の放出角度も分布を持っている。例えば、二次電子は、コサイン則に従って分布する。そのため、検出器70に到達する電子の透過率は、写像光学投影系では数%以下である。
一方、ミラー電子meは、入射電子が異物10に衝突する手前で反射することにより生じる。ミラー電子meは、入射した1次電子ビームの角度とほぼ対称な角度で、異物10から反射して2次系のレンズ系へ入射する。したがって、散乱や放射分布が小さく、ミラー電子meは、ほぼ100%の透過率で検出器70に到達する。
図151Aは、ランディングエネルギーLEが10〔eV〕以下のときに取得される試料表面21上の異物10の画像80を示し、図151Bは、画像80の階調値を示している。
図151Aを参照すると、試料表面21及び異物10の画像では、異物10の拡大像81が、白領域で示され、試料表面21の表面像82が、黒領域で示されている。この場合、ミラー電子meが得られた部位では、輝度(階調)が非常に高い。
図151Bは、検出器70の画像80上の方向断面位置と、階調値との関係の一例である。y方向の範囲には、異物10の拡大像81が含まれる。図151Bに示すように、例えば、ミラー電子meが得られていない部位に比べて、ミラー電子部分の階調は、3倍程度高くなる。したがって、高輝度及び高S/Nを実現できる。
図151Bの例では、ミラー電子meが得られている部位が、得られていない部位と比べて、3倍程度高い階調値DNを示している。しかし、階調値の関係は、条件等により異なる。ミラー電子部分の階調値は、2〜10倍程度の値を取り得る。
図152は、異物10への電子ビームの照射によって、異物10からミラー電子meが発生した状態を示している。異物10の形状により、ミラー電子meの反射点のずれやチャージアップ電圧の不均一性が生じる。そのため、ミラー電子meは、軌道及びエネルギに弱いずれを生じる。その結果、ミラー電子meが2次系のレンズ、ビームフィルタ等を通過すると、信号領域のサイズが大きくなる。
図152においては、異物10の表面電位の影響により、ミラー電子meの反射方向が、放射状に広がる。その結果、検出器10に到達した異物10の信号においては、信号サイズが電子光学系の光学倍率よりも拡大される。拡大率は、例えば5〜50倍である。
例えば、光学倍率100倍の2次系があるとする。異物10からの二次電子については、検出器70での信号サイズは、理想的な計算によれば、100倍×0.1〔μm〕=10〔μm〕である。
一方、異物10のミラー電子meの信号サイズは、例えば、30倍に拡大される。したがって、検出器70に入射する信号のサイズは、300〔μm〕になる。この現象は、単純に100〔nm〕(0.1〔μm〕)を300〔μm〕に拡大する拡大光学系と等価である。すなわち3000倍の拡大光学系が達成される。このことは、異物10より大きなピクセルサイズを使用可能であることを意味する。異物10が100〔nm〕であれば、ピクセルサイズが100〔nm〕より大きくてよい。300〜1000〔nm〕のピクセルサイズを用いることが可能となる。
対象異物よりも大きなピクセルサイズを用いることにより、試料20の試料表面21の大きな領域を一度に検査できる。したがって、高速検査の点で大変効果的である。例えば、ピクセルサイズが100〔nm〕の場合に比べて、ピクセルサイズ300〔nm〕の検査速度は、9倍にできる。ピクセルサイズ500〔nm〕では、検査速度を25倍にできる。つまり、従来は一つの検査に25時間掛かっていたとすると、本実施の形態では検査が1時間で済む。これに対して、SEM方式は、異物サイズより小さいピクセルサイズで撮像を行わなければならない。これは、SEM方式は高精度な形状画像を形成して、正常部との画像比較により異物を検出する方式だからである。
このように、写像投影光学系は、ミラー電子meと二次放出電子seとの輝度差(コントラスト)を大きくできるだけでなく、高速化をも実現することができる。
また、ランディングエネルギーLE≦10〔eV〕の場合、プレチャージを好適に使用可能である。プレチャージは、撮像前に帯電用電子ビームを照射することによって実現される。
プレチャージは、異物10のチャージアップ電圧を高くするために行われてよい。又は、プレチャージは、撮像時の異物10の電位変化を小さくするために行われてよい。本異物検査方法では、帯電用ビームのランディングエネルギーLE1により、チャージアップ電圧の変動量が制御される。例えば、種々のサイズ、種々の容量を有する異物10が存在する。この場合に、あるチャージアップ電圧以下に帯電した異物10が、ミラー電子を用いることにより検出される。又、周囲の試料電圧とチャージアップ電圧の差異により、ミラー電子の軌道が適切になり、これにより、ミラー電子の透過率が高い状態を形成できる。この点について後述にて詳細に説明する。
次に、プレチャージの方法について説明する。プレチャージには、3つの方法がある。
〔プレチャージ−1〕
図153A及び図153Bは、第1のプレチャージモード(プレチャージ−1)を説明するための図である。ここでは、帯電用電子ビームのランデシィングエネルギーをLE1、撮像電子ビームのランディングエネルギーをLE2とする。プレチャージ−1は、ランディングエネルギーをLE2<LE1に設定し、これにより、ミラー電子を発生し易くする。
図153Aでは、試料表面21上に異物10が存在しており、ランディングエネルギーLE1の帯電用電子ビームが照射され、これによりプレチャージが行われる。プレチャージのランディングエネルギーLE1は撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2よりも大きい。これにより、異物10のチャージアップ電圧が大きくなり、撮像時に電子がミラー電子になり易くなる。つまり、異物10の負電位の絶対値を大きくすることにより、異物10の手前にチャージアップによる電界分布の反射点が形成される。したがって、入射する撮像電子ビームは、異物10に衝突する前にミラー電子meとなって反射する。
図153Bでは、試料表面21の異物10に、撮像電子ビームが照射された状態を示している。図153Bにおいて、異物10は、負にチャージアップされ、負電圧の電位分布を有している。撮像電子ビームは上記のようにランディングエネルギーLE2を有する。入射電子は、異物10の表面電位の作用を受けて、異物10の衝突することなく、手前でミラー電子meとなり反射する。一方、試料表面21からは、二次放出電子seが放出される。
このように、図153A及び図153Bに示した構成によれば、帯電用電子ビームのランディングエネルギーLE1が撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2よりも大きく設定される。これにより、異物10に照射された撮像電子ビームからミラー電子meが好適に生成され、異物10の拡大像81を取得することができる。
〔プレチャージ−2〕
図154は、第2のプレチャージモード(プレチャージ−2)について説明するための図である。プレチャージ−2では、帯電用電子ビームのランディングエネルギーLE1よりも撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2が大きく設定される。本異物検査方法においては、撮像時に適切な電位変動を起こしながら、撮像を行うことができる。
図154において、横軸は、電子ビームのランディングエネルギーであり、縦軸は、異物10の表面電位を示している。帯電用電子ビームのランディングエネルギーLE1は、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2よりも小さい。異物10の表面電位は、LE1とLE2との間で変化する。電位差ΔVは図示のように小さい。
図154のプレチャージ−2は、撮像に適切な撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2が予め分かっている場合に適している。単純に適切なランディングエネルギーLE2の撮像電子ビームで撮像を行うと、撮像中に異物10の表面電位が変動してしまい、正確な拡大像81が得られない可能性がある。このような事態がプレチャージ−2におり回避される。プレチャージ−2の構成は、プリチャージにより異物10の表面電位を制御して、最適点の近くの値まで持って行く。これにより、撮像時には、異物10の表面電位の電位変化△Vを小さできる。
〔プレチャージ−3〕
図155は、第3のプレチャージモード(プレチャージ−3)について説明するための図である。プレチャージ−3では、帯電用電子ビームのランディングエネルギーLE1が、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2と等しく設定される。そして、帯電用電子ビームと撮像電子ビームでは、ドーズ量を異ならせる。図155において、横軸はドーズ量であり、縦軸は異物10の表面電位を示している。
プレチャージ−3は、異物10のチャージアップ電圧を安定させ、安定した撮像及び感度を実現するために有効である。図155においては、ドーズ量の変化により、異物10の表面電位が変動する。必要なドーズ量に近いドーズD1を与えるように、プレチャージが行われる。その後、ドーズD2が与えられて、撮像が行われる。このような構成が効果的であり、これにより、ドーズD2の撮像中における異物表面の電位変動ΔVを小さく抑えることができる。したがって、安定した像質(形状、フォーカス等)を実現できる。
図153〜図155の3種のプレチャージにおいて、プレチャージの帯電用電子ビームのビーム源は、撮像電子ビームのビーム源と同一でよく、上記のプレチャージを行うようにビーム源の条件が制御されてよい。また、プレチャージ用のプレチャージユニットが、独立して設けられてよい。これにより、スループットを向上させることができる。
プレチャージユニットは、例えば、LaB6、Wフィラメント、ホローカソード、カーボンナノチューブ等で構成されたカソードを用いてよい。プレチャージユニットは、電子ビームを引き出すためのウェルネルトや、引き出し電極、照射領域を制御するためのレンズを用いてもよい。プレチャージユニットのビームサイズは、コラム系で通常照射されるビームサイズと同等か、多少大きめでよい。電子ビームのランディングエネルギーは、カソードと試料との電圧差で決まる。例えば、試料20に負電圧−3000〔V〕印加されているとする。また、電子ビームのランディングエネルギーが10〔eV〕に設定されたとする。この場合、カソード電圧−3010〔V〕がカソードに印加されて、電子ビームが生成される。
「別の検査方法(LE>10〔eV〕の場合)」
図156は、電子ビームのランディングエネルギーLEが10〔eV〕より大きいときの、検出器70で取得された画像80aを示している。図156において、異物10の拡大像81aは、黒信号で表され、試料20の表面像82aは、白信号で表されている。
図157A〜図157Cは、撮像電子ビームの照射により、異物10から二次放出電子seが放出される様子を示している。
図157Aは、異物10がチャージアップし、異物10と周囲の試料表面21との電位差が大きくなっている状態における、二次放出電子seの挙動を示している。図157Aでは、異物10が負にチャージアップしており、異物10からの二次放出電子seの軌道が曲がっている。そのため、透過率(検出器70に到達する電子の割合)が極端に低下する。その結果、観察像では、異物部分の輝度が、周囲に比べ低下する。つまり、異物10は、黒信号として検出される。
図157Bは、異物10と周囲の試料表面21の電位差が小さい状態における、二次放出電子seの挙動を示している。図157Bでは、異物10と周囲の電位差が小さいので、異物10からも試料表面21からも略同様に電子が発生する。そのため、異物10が周囲と区別し難い。つまり、取得された画像からは、異物10を検出し難い。このような事態を回避することが望まれる。そこで、異物10から二次放出電子seを検出する場合であっても、異物10を帯電用電子ビームの照射によりチャージアップさせることが好適である。チャージアップ後に撮像電子ビームすることにより、前述のように異物10の検出が容易になる。
図157Cは、正帯電領域における二次放出電子seの挙動を示している。正帯電領域においては、二次放出電子seが、一旦異物10に引き寄せられ、それから上に上昇する軌道を辿る。図示のように、異物10の電位分布による影響を受けて、二次放出電子seの軌道が曲がり、検出器70に到達する電子数が低下する。この現象は、図157Aと同様である。したがって、正帯電の場合にも、同様の現象が観察され、異物10の拡大像81aは、黒信号の像として得られる。
また、本実施の形態に係る異物検査方法及び異物検査装置においては、スループットをより高くするために、電子線写像投影方式が用いられている。写像光学系を用いることにより、試料表面21からの二次放出電子se又はミラー電子meを用いて、高速及び高スループットにて、ウエハ、マスク等の異物検出を行うことが可能になり、例えば試料洗浄後の異物検出が好適に行われる。上述したように、異物10からの検出信号が光学倍率よりも拡大されるので、大きなピクセルサイズで超微小の異物10の信号を得ることができ、これにより高速、高スループットが実現される。
例えば、異物信号のサイズを、実サイズの5〜50倍に拡大できる。検出対象の異物サイズの3倍以上のピクセルサイズを適用することができる。このことは、特に、サイズが50〜100〔nm〕以下の異物10に対して有効である。このサイズの異物10は、光方式では検出が困難である。また、SEM方式は、異物サイズより小さいピクセルサイズを用いる必要がある。そのため、小さい異物を検出しようとすると、スループットが著しく低下する。本実施の形態に係る電子線検査方法によれば、プロセス途中のウエハ上の異物10を、写像投影方式を用いることにより高速に検出できる。また、拡大像81、81aを得ることにより、確実に異物10を検出することができる。
「電子検査装置」
図158は、本発明を適用した電子線検査装置の構成を示した図である。上述においては、異物検査方法の原理的な部分について主に説明した。ここでは、上述の異物検査方法を実行するのに適用される異物検査装置について説明する。従って、上述のすべての異物検査方法は、下記の異物検査装置に適用することができる。
電子線検査装置の検査対象は試料20である。試料20は、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料20の表面上の異物10の存在を検出する。異物10は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物10の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この例では、写像投影式検査装置に本発明が適用される。
写像投影方式の電子線検査装置は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20と、試料を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡110と、レビュー用のSEM120とを備える。検出器70は、本発明では2次光学系60に含まれてよい。また、画像処理装置90は本発明の画像処理部に含まれてよい。
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
1次光学系40は、電子ビームを試料20へ照射する。前述したように、1次光学系40は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、異物10と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物10の上方の位置(検出器70により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。本発明は、このLE1とLE2との差異が望ましくは5〜20〔eV〕であることを見い出した。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
また、写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料20に対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
図159では、試料表面21上に存在する異物10に対して1次系電子ビームが照射されている。電子ビームの傾き角は、θである。角度θは例えば、±0.05〜10°の範囲であってよく、また好ましくは、±0.1〜±3°の範囲であってよい。
このように、異物10に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物10からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物10をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
図158に戻る。ステージ30は、試料20を載置する手段であり、x−yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられていてもよい。
ステージ30上には試料20があり、試料20の上に異物10がある。1次系光学系40は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕で試料表面21に電子ビームを照射する。異物10がチャージアップされ、1次光学系40の入射電子が異物10に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系60により検出器70に導かれる。このとき、二次放出電子は、試料表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物10で形成される。したがって、異物10の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
例えば、異物10のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く手段である。2次光学系60は、レンズ61、63と、NAアパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、レンズ61、NAアパーチャ62、レンズ63を通過して電子が集められる。電子はアライナ64で整えられて、検出器70に検出される。
NAアパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物10からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物10からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ62が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAア
パーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
異物10は、任意の種類の材料で構成されてよく、例えば半導体、絶縁物、金属等でよい。図160A及び図160Bは、試料表面21上にある金属材料の異物10aを示している。図160Bは、金属材料の異物10aの拡大図である。図160Bにおいて、異物10aは、金属又は半導体等でよく、又はそれらが混在してもよい。図示のように、異物表面に自然酸化膜11等が形成されるので、異物10は絶縁材料で覆われる。よって、異物10の材料が金属であっても、酸化膜11にてチャージアップが発生する。このチャージアップが本発明に好適に利用される。
図158に戻る。検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する手段である。検出器70は、その表面に複数のピクセルを有する。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge Coupled Device)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
ここでは、検出器70にEB−TDIを適用した例について説明する。EB−TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物10の検出が不安定であった。これに対して、EB−TDIを用いると、小さい異物10の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。
また、EB−TDIの他に、EB−CCDが備えられてよい。EB−TDIとEB−CCDが交換可能であり、任意に切り替えられてよい。このような構成を用いることも有効である。例えば、図161に示すような使用方法が適用される。
図161は、EB−TDI72と、EB−CCD71を切り替え可能な検出器70を示す。2つのセンサは用途に応じて交換可能であり、両方のセンサを使うことができる。
図161において、検出器70は、真空容器75に設置されたEB−CCD71及びEB−TDI72を備える。EB−CCD71及びEB−TDI72は、電子ビームを受け取る電子センサである。電子ビームeは検出面に直接に入射される。この構成においては、EB−CCD71は、電子ビームの光軸調整を行うために使用され、また、画像撮像条件の調整と最適化を行うために使用される。一方、EB−TDI72を使用する場合には、EB−CCD71が移動機構Mによって光軸から離れた位置に移動される。それから、EB−CCD71を使用することにより求められた条件を使用し、又は参考にして、EB−TDI72により撮像が行われる。画像を用いて、評価又は測定が行われる。なお、移動機構Mは、EB−CCD71を移動させる方向(X方向)だけでなく、3軸(例えばX、Y、Z方向)に移動可能に構成し、EB−CCD71の中心を電子光学系の光軸中心に対して微調整できるように構成してもよい。
この検出器70においては、EB−CCD71を使用することにより求められた電子光学条件を用いて又は参考にして、EB−TDI72による半導体ウエハの異物検出を行うことができる。
EB−TDI72による異物検査の後に、EB−CCD71を使用してレビュー撮像が行われてよく、異物種や異物サイズ等の欠陥評価が行われてよい。EB−CCD71では、画像の積算が可能である。積算によりノイズを低減可能である。したがって、高いS/Nで欠陥検出部位のレビュー撮像を行うことが可能である。更に、EB−TDI72の画素に比べてEB−CCD71の画素が小さいことが有効である。つまり、写像投影光学系で拡大された信号のサイズに対して、撮像素子のピクセル数を多くすることができる。したがって、より高い分解能を有する画像を得ることができる。この画像は、検査や欠陥の種類等の分類・判定のために用いられる。
EB−TDI72は、画素を二次元的に配列した構成を有し、例えば矩形形状を有している。これにより、EB−TDI172は、電子ビームeを直接受け取って電子像を形成可能である。画素サイズは、例えば12〜16〔μm〕である。一方、EB−CCD71の画素サイズは、例えば6〜8〔μm〕である。
また、EB−TDI72は、パッケージの形に形成される。パッケージ自体が、フィードスルーFTの役目を果たす。パッケージのピン73は、大気側にてカメラ74に接続される。
図161に示す構成は、種々の欠点を解消できる。解消される欠点は、FOP、ハーメチック用の光学ガラス、光学レンズ等による光変換損失、光伝達時の収差及び歪み、それによる画像分解能劣化、検出不良、高コスト、大型化等である。
図162A及び図162Bは、電子ビーム軌道の条件を効率よく決定する方法に関する説明図であり、この方法は、ミラー電子像を得るときに有効である。電子ビーム軌道の条件は、1次光学系40、2次光学系60のレンズ42、45、47、49、50、61、63のレンズ条件及びアライナ64のアライナ条件である。
図162Aは、シリコン基板の試料20の試料表面21上に、ポリシリコン層23及び二酸化ケイ素膜24の積層構造が設けられた構成を示している。積層構造の切れ目に凹溝25が形成されている。図162Bでは、シリコン基板の試料20の試料表面21上に、二酸化ケイ素層24aが形成されている。層の切れ目には、凹溝25aが形成されている。
図162Aは、ミラー電子meの信号強度の分布図mesを示している。ミラー電子meが発生する領域にランディングエネルギーが設定されると、入射電子の軌道が曲がりやすくなり、パターンのエッジ部26にてミラー電子meの発生が起こりやすくなり、凹溝25のエッジ部26の信号強度が高くなる。
図162Bは、電子ビームEBが入射し、ミラー電子meが反射する軌道を示している。電子は、試料20に入射し、一方のエッジ部26aで反射して略水平に進み、凹溝25aの反対側に移動し、反対側のエッジ部26aで反射して上昇する。こうして、凹溝25aのエッジ部でミラー電子が発生し易くなっている。
このような現象は、特に、凹状の対称構造で顕著である。対称構造は、例えば、ファラデーカップや十字溝構造等である。このとき、エッジ部26、26aで発生するミラー電子の対称性が画像の解像度に影響する。画像において両エッジの階調差が±5%以下になるように、階調の対称性を達成することが望まれる。階調は画像の輝度であり、階調差は輝度差である。このような対称性が得られるようにレンズ条件及びアライナ条件を調整すると、ミラー電子でのレンズ及びアライナ条件を最適化できる。そして、解像度の良いミラー電子像を実現することが可能となる。この調整方法を用いない場合に比べて、S/Nを10〜30%向上でき、かつ調整時間を10〜50%程度短縮可能となる。
図163は、ファラデーカップ31を示した側断面図である。ファラデーカップ31は、導体の開口32と、カップ状の金属電極33を備える。ファラデーカップ31は、開口32を通過した電子量を、電流計34により測定する。開口32は、例えば、直径30〔μm〕程度の大きさであってよい。ファラデーカップ31は凹溝形状を有するので、上述したようにエッジ部でミラー電子が発生し易い。したがって、調整を行うのにファラデーカップ31を役立てることができる。
次に、本発明に係る異物検査方法を、図158の異物検査装置に適用する例について説明する。
前出の図148Aは、“2次電子イールド”−“ランディングエネルギーLE”の相関を示している。この相関は、LE>10〔eV〕の電子ビームを使用して異物10を検出するメカニズムを示している。異物10に照射されるランディングエネルギーLEに応じて、二次電子放出率が異なる。そのため、負帯電状態と正帯電状態が形成される。例えば、絶縁物がSiO2である場合、下記の帯電状態が見られる。
50〔eV〕≧LE:負帯電
50<LE≦1500〔eV〕:正帯電
1500〔eV〕<LE:負帯電
いずれの場合も、異物10がチャージアップして、異物とその周囲の電位が異なる値になり、異物周辺の電位分布がひずんだ状態になる。この歪んだ電界が、異物10からの二次電子の軌道を大きく曲げ、透過率を低下させる。従って、異物から検出器に到達する電子の数が、異物の周囲と比較して極端に少なくなる。よって、異物の輝度が周囲より小さく(黒信号)なり、高いコントラストで異物10を検出することが可能となる。異物の黒信号のサイズは、光学倍率よりも拡大される。5〜20倍の拡大された異物の信号を捕らえることが可能である。この現象と検出は、上記の3つのエネルギ領域で同様に実現可能である。
次に、電子ビームを用いた写像投影方式の電子線コラム系の例を示す。試料20は、ウエハ、露光用マスク、記録メディア等でよい。ウエハの場合、8〜12インチのシリコンウエハに、LSI製造途中の回路パターンが形成されてよい。又は、ウエハにはパターンが無くてもよい。ウエハは、成膜された後のパターンがない状態にあってもよい。また、ウエハは、成膜後、研磨やCMP等の平坦化処理された状態でもよい。また、ウエハは、成膜等の処理がなされる前の状態のSi基板などでもよい。
この試料20は、x、y、θの制御ステージ30に設置されている。電子ビームは電子銃41から出射される。レンズ42、アパーチャ43、44、4重極レンズ45、E×Bフィルタ46等によりビーム照射領域と照射エネルギが制御されて、試料表面に電子ビームが照射される。例えば、ビーム径が、φ300[μm](又は、270×80〔μm〕程度の楕円)である。写像光学系は、試料表面21からの放出電子の像を、拡大倍率50〜500倍にて、検出器70に結像する。試料20には負の電圧が印加されている。1次光学系40の第一レンズ50主面の電位は、正である。従って、試料20近傍では、正の電界が形成されている。例えば、正電界は、1〜3〔kV/mm〕であってよい。検出器70は、MCP(Micro Channel Plate)、蛍光板、FOP(Fiber Optical Plate)、TDIで構成されている(内部構成は例えば図219参照)。MCPが検出電子量の増倍を行い、蛍光板が電子を光信号に変換する。この2次元の光信号が、FOPにより伝達されて、TDIセンサにて像が形成され、信号が検出される。TDIを用いる場合、試料を連続的に移動しながら、2次元画像信号が取得される。したがって、画像信号取得を高速で行うことができる。画像処理機構が、TDIからの信号を処理し、電子像形成及び異物検出、異物分類判別を行う。
このような電子線コラム系を用いて、試料20上の異物10の検査を行う例を述べる。試料20に照射される1次系電子ビームのランディングエネルギーLEが、2〔eV〕に設定される。ランディングエネルギーLEは、1次光学系40の電子銃41のカソード電圧と試料の電圧(印加電圧)との差である。この電子ビームの照射により、異物10がチャージアップする。そして、異物10に照射されるビームだけが、ミラー電子となる。ミラー電子は、2次光学系60によって検出器70に導かれる。異物10のない正常部では、ビーム照射による2次放出電子が検出器70に導かれる。2次放出電子は、2次電子、反射電子又は後方散乱電子である。これら電子が混在してもよい。
ここで、LEが0に近いほど、2次放出電子の放出率ηが低下する。更に、表面からの放出方向は、発散分布を示す(例えば、2次電子の分布は、コサイン則に従う)。そのため、2次光学系60にて検出器70に到達する2次放出電子についての設計計算を行った場合、2次放出電子の到達率が、数%程度になる。このように、ミラー電子の到達率が高く、周囲部位の電子の到達率及び放出率が低い。そのため、相対的に大きな電子数の比、つまり輝度の差が発生する。したがって、大きなコントラスト及びS/Nを得ることが可能となる。例えば、ピクセルサイズが100〔nm〕であり、異物10の径がφ=20〔nm〕である場合に、S/Nが5〜10になる。通常、S/N≧3で、検出及び検査が十分に可能である。したがって、本発明によれば、上記例のようなごく微小の異物10の検査を、異物サイズより大きなピクセルサイズにて実現することが可能となる。
上述した装置系で、プレチャージの帯電用電子ビームを用いた例について説明する。
LE1は、プレチャージの帯電用電子ビームのランディングエネルギーであり、LE2は、撮像及び検査時の電子ビームのランディングエネルギーである。LE1=14〔eV〕、LE2=1〔eV〕の条件にて、絶縁物の異物10を効率よく検査できる。Si、SiO2膜、金属膜、SOI、ガラスマスク等の面上の異物10を検査可能である。この工程では、検査領域全面に、LE1=14〔eV〕で、帯電用電子ビームが照射される。次に、LE2=1〔eV〕で、撮像電子ビームが照射されて、異物10の撮像及び検査が行われる。この工程の実施は、プレチャージ効果がどの程度の時間維持できるかに依存する。通常、除電処理等を施さなければ、10〜30時間程度、場合によっては150時間以上、プレチャージ効果を維持可能である。
この様なプレチャージを行った場合、プレチャージを行わない場合と比較して、ミラー電子形成の効果を大きくできる。そして、S/Nを3〜10倍程度向上することが可能である。
ランディングエネルギーが、LE≦10〔eV〕であって、特に、LE≦0〔eV〕の領域にある場合、正常部でミラー電子が形成され得る。この条件が設定されたとしても、本発明は、異物10からのミラー電子が検出器70に到達して、正常部のミラー電子が検知器70に到達しない状況を形成することができ、異物10の検査を高いS/Nで行うことが可能である。より詳細には、試料表面21が平坦であり、電子ビームがほぼ垂直に入射される。正常部の入射ビームは、試料表面21で減速される。そのため、電子の軌道が曲がり、2次光学系60の中心から外れる。結果として、この現象が、正常部から検出器70に導かれる電子数を低下させる。一方、異物10からのミラー電子は、異物10の曲面、または、斜面から上昇し、2次光学系60の中心付近の軌道を通って、検出器70に導かれる。よって、異物10からのミラー電子信号は、高い透過率で検出器に導かれる。そして、高いS/Nを達成することが可能となる。この点について、図164を用いて詳細に説明する。
図164は、異物10及び周辺の正常部からミラー電子が出る場合のフィルタリングを説明するための図である。図164では、異物10が試料20上に存在した状態で電子ビームが照射され、異物10及び試料表面21の双方からミラー電子が反射している。このような場合において、本発明は、異物10から反射されたミラー電子は検出器70に到達し、正常部の試料表面21からはミラー電子が検出器70に到達しないという現象を起こす。つまり、異物10がチャージアップし、異物と周囲の正常部(試料表面21)との間に電位差が生じる。これにより、異物10からのミラー電子と周囲の正常部の試料表面21からのミラー電子とを分離することができる。
例えば、図159において説明したように、1次電子ビームの入射角度が、垂直から少し傾けられ、中心からずらされる。これにより、ミラー電子の軌道が2次光学系60の中心付近を通る条件を作ることが可能である。平坦な正常部では、ミラー電子の軌道がずれる。正常部からのミラー電子の軌道は、2次光学系60の中心部からずれてしまい、その結果、検出器70に到達する電子の数量、確率が低下する。または、正常部からのミラー電子は、2次光学系60のコラムとの衝突によって迷走電子等になってしまう。よって、異物10と周囲の試料表面21との間で、検出器70に到達する電子数量又は電子密度の差が発生する。これにより、大きな階調差、つまりコントラストを形成することが可能となる。
このとき、軌道のずれに影響を与える要素は、レンズ47、49、50、61、63の強度、フォーカスであり、また、E×Bフィルタ46及びNAアパーチャ62である。レンズ47、49、50、61、63については、異物10からのミラー電子軌道が2次光学系60の中心を通るような条件を得るように、フォーカス及び強度が調整されている。周囲の正常部(試料表面21)からのミラー電子と、異物10からのミラー電子とでは、レンズ入射角度及びフォーカスが異なる。そのため、正常部からのミラー電子は、2次光学系60の中心からずれた軌道を通ることになる。また、NAアパーチャ62は、中心からずれた軌道を通るミラー電子を遮断し、検出器70への到達量及び到達確率を低減する。更に、ミラー電子がE×Bフィルタ46を通過するときに、異物10からのミラー電子が後段のNAアパーチャ62及び検出器70に到達する軌道を通るように、E×Bフィルタ46が調整されている。これにより、ミラー電子はE×Bフィルタ46の通過時に適当に調整される。異物10からのミラー電子と周囲の正常部(試料表面21)からのミラー電子では、E×Bフィルタ46への入射角度及び軸方向(Z軸方向)のエネルギが異なる。よって、正常部の試料表面21から反射されたミラー電子は、後段のNAアパーチャ62、レンズ61、63の中心から外れる。したがって、検出器70に入射する確率が低下する。
通常、有効に使用できるLE領域は、−30〜0〔eV〕である。但し、2次光学系60の光軸と試料面の角度が垂直からずれている場合、LEが0〔eV〕以上でもミラー電子形成がなされる場合がある。また、パターンがあるウエハなどのように表面の微小凹凸がある試料においても、LEが0〔eV〕以上でもミラー電子形成がなされる場合がある。例えば、−30〜10〔eV〕のLE領域で、この様な状況が形成される可能性がある。
また、プレチャージを効果的に用いることにより、SEMにも本発明に係る電子線検査方法を適用することが可能である。例えば、SEMにおいても、以下のような条件でプレチャージを行ってから撮像及び検査を行うことにより、異物検査が可能である。
プレチャージLE1:0〜30〔eV〕
撮像LE2:−5〜20〔eV〕
例えば、プレチャージLE1=25〔eV〕、撮像LE2=5〔eV〕の条件で撮像が行われる。そうすると、異物(絶縁物、又は絶縁物を含む物体)がチャージアップして、表面電位が負に帯電する(例えば−7V)。次に、撮像電子ビーム(LE2=5〔eV〕)が照射される。これにより、異物のチャージアップしている部位だけでミラー電子が形成され、検出器70にてミラー電子が取得される。異物10のない正常部位は、2次放出電子を生じる(2次放出電子は、二次電子、反射電子、後方散乱電子のいずれかであり、又は、これらが混在してもよい)。2次放出電子の放出率が低いので、正常部の輝度が低い。異物10のミラー電子と正常部の2次放出電子の輝度差(コントラスト)は大きく、したがって高い感度で異物10を検出することが可能でとなる。
プレチャージを効率的に行うために、プレチャージ装置を撮像部の前に設けても良い。
また、SEM方式にてプレチャージが行われない場合は、次の欠点が考えられる。通常、SEM式では、パターンや異物10の画像形成及び形状認識を適切に行うために、電子ビームのスポットサイズが、検出したいパターン欠陥や異物サイズ等の対象物サイズより小さく設定される。従って、ビームのスポットサイズと異物サイズの差異に起因して、異物10の局所的及び時間的チャージアップの電位変化が起こる。そのため、安定した信号が得られない。または、安定したミラー電子を得ることが困難となる。よって、プレチャージにより異物10の表面電位状態を安定させ、または、異物10のチャージアップ状態及び電位を安定させ、その後、撮像を行うことが重要である。
また、従来のSEM式では、ビームスキャンが行われるので、試料20に対するビーム入射角度が、スキャン位置に応じて大きく変化する。ミラー電子のビームが形成される場合、入射角度に応じてビームの反射角度が異なる。その結果、検出器70に入る電子の確率が、スキャン位置に応じて大きく異なるという欠点がある。そのため、均一で精度の良い像を取得することが難しい。この欠点を克服するためには、試料に対する電子ビームの入射角度がほぼ垂直になるように、アライナ及びレンズ電圧の調整が連携して好適に行われる。
このように、本発明に係る電子線検査方法は、条件を適切にすることにより、SEM式にも適用可能である。
図165は、本発明が適用された電子線検査装置を示す。ここでは、全体的なシステム構成の例について説明する。
図165において、異物検査装置は、試料キャリア190と、ミニエンバイロメント180と、ロードロック162と、トランスファーチャンバ161と、メインチャンバ160と、電子線コラム系100と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント180には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ161には、真空中の搬送ロボットが設けられる。常に真空状態のトランスファーチャンバ161にロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
メインチャンバ160には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するステージ30が設けられ、ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料20そのものが設置される。または、試料20は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
メインチャンバ160は、真空制御系150により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ160、トランスファーチャンバ161及びロードロック162は、除振台170上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ160には電子コラム100が設置されている。この電子コラム100は、1次光学系40及び2次光学系60のコラムと、試料20からの2次放出電子またはミラー電子等を検出する検出器70を備えている。検出器70からの信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置90で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ160には、光学顕微鏡110や、SEM式検査装置120が備えられていてもよい。
図166は、同一のメインチャンバ160に、写像光学式検査装置の電子コラム100と、SEM式検査装置120とを設置する場合の構成の一例を示している。図166に示すように、写像光学式検査装置と、SEM式検査装置120が同一のチャンバ160に設置されていると、大変有利である。同一のステージ30に試料20が搭載されており、試料20に対して、写像方式とSEM方式の両方での観察又は検査が可能となる。この構成の使用方法と利点は、以下の通りである。
まず、試料20が同一のステージ30に搭載されているので、試料20が写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まる。したがって、異物の検出箇所等を特定するときに、2つの検査装置が同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。
上記構成が適用されなかったとする。例えば、写像式光学検査装置とSEM式検査装置120が別々の装置として分離して構成される。そして、分離された別々の装置間で、試料20が移動される。この場合、別々のステージ30に試料20の設置を行う必要があるので、2つの装置が試料20のアライメントを別個に行う必要がある。また、試料20のアライメントが別々に行われる場合、同一位置の特定誤差は、5〜10〔μm〕となってしまう。特に、パターンのない試料20の場合には、位置基準が特定できないので、その誤差は更に大きくなる。
一方、本実施の形態では、図166に示すように、2種類の検査において、同一のチャンバ160のステージ30に試料20が設置される。写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間でステージ30が移動した場合でも、高精度で同一位置を特定可能である。よって、パターンのない試料20の場合でも、高精度で位置の特定が可能となる。例えば、1〔μm〕以下の精度での位置の特定が可能である。
このような高精度の特定は、以下の場合に大変有利である。まず、パターンの無い試料20の異物検査が写像方式で行われる。それから、検出した異物10の特定及び詳細観察(レビュー)が、SEM式検査装置120で行われる。正確な位置の特定ができるので、異物10の存在の有無(無ければ疑似検出)が判断できるだけでなく、異物10のサイズや形状の詳細観察を高速に行うことが可能となる。
前述したように、異物検出用の電子コラム100と、レビュー用のSEM式検査装置120が別々に設けられると、異物10の特定に多くの時間を費やしてしまう。また、パターンのない試料の場合は、その困難度合いが高まる。このような問題が本実施の形態により解決される。
以上に説明したように、本実施の形態では、写像光学方式による異物10の撮像条件を用いて、超微小な異物10が高感度で検査される。さらに、写像光学方式の電子コラム100とSEM式検査装置120が同一チャンバ160に搭載される。これにより、特に、30〔nm〕以下の超微小な異物10の検査と、異物10の判定及び分類を、大変効率良く、高速に行うことができる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
次に、写像投影型検査装置とSEMの両方を用いる検査の別の例について説明する。
上述では、写像投影型検査装置が異物を検出し、SEMがレビュー検査を行う。しかし、本発明はこれに限定されない。2つの検査装置が別の検査方法に適用されてよい。それぞれの検査装置の特徴を組み合わせることにより、効果的な検査が可能となる。別の検査方法は、例えば、以下の通りである。
この検査方法では、写像投影型検査装置とSEMが、異なる領域の検査を行う。更に、写像投影型検査装置に「セルtoセル(cell to cell)」検査が適用され、SEMに「ダイtoダイ(die to die)」検査が適用され、全体として効率よく高精度の検査を実現される。
より詳細には、写像投影型検査装置が、ダイの中で繰返しパターンが多い領域に対して、「セルtoセル」の検査を行う。そして、SEMが、繰返しパターンが少ない領域に対して、「ダイtoダイ」の検査を行う。それら両方の検査結果が合成されて、1つの検査結果が得られる。「ダイtoダイ」は、順次得られる2つのダイの画像を比較する検査である。「セルtoセル」は、順次得られる2つのセルの画像を比較する検査であり、セルは、ダイの中の一部である。
上記の検査方法は、繰返しパターン部分では、写像投影方式を用いて高速な検査を実行し、一方、繰返しパターンが少ない領域では、高精度で疑似が少ないSEMで検査を実行する。SEMは高速な検査に向かない。しかし、繰返しパターンが少ない領域は比較的狭いので、SEMの検査時間が長くなりすぎずにすむ。したがって、全体の検査時間を少なく抑えられる。こうして、この検査方法は、2つの検査方式のメリットを最大に活かし、高精度な検査を短い検査時間で行うことができる。
次に、図165に戻り、試料20の搬送機構について説明する。
ウエハ、マスクなどの試料20は、ロードポートより、ミニエンバイロメント180中に搬送され、その中でアライメント作業がおこなわれる。試料20は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック162に搬送される。ロードロック162は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ161に配置された真空中の搬送ロボットにより、ロードロック162からメインチャンバ160に、試料20が搬送される。そして、ステージ30上の静電チャック機構上に試料20が設置される。
図167は、メインチャンバ160内と、メインチャンバ160の上部に設置された電子コラム系100を示している。図158と同様の構成要素については、図158と同様の参照符号を付し、その説明を省略する。
試料20は、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ30に設置される。ステージ30と光学顕微鏡110により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料20の異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料20上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系60aにおいてフォーカス制御が行われる。試料20の2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度の良い安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
ここで、2次光学系60aが、NAアパーチャ62、検出器70に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ62の位置にEB−CCDが設置できるように構成れている。このような構成は大変有利であり、効率的である。図167では、NAアパーチャ62とEB−CCD65が、開口67、68を有する一体の保持部材66に設置されている。そして、NAアパーチャ62の電流吸収とEB−CCD65の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系60aが備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ62、EB−CCD65は、真空中で動作するX、Yステージ66に設置されている。したがって、NAアパーチャ62及びEB−CCD65についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ66には開口67、68が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ62又はEB−CCD65を通過可能である。
このような構成の2次光学系60aの動作を説明する。まず、EB−CCD65が、2次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ61、63及びアライナ64の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ62の孔中心を配置するように、NAアパーチャ62の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ62の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャの高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
また、異物10の検査では、異物10からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ62の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、試料表面から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ62の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料表面での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ62に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ62の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ62の中心位置を配置することが、大変有利であり、重要である。
このような適切な位置へのNAアパーチャ62の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ62が、電子コラム100の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ62を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ62の中心が設置される。
信号強度の計測には、EB−CCD65が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器70に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
あるいは、NAアパーチャ62の位置と検出器70の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、アパーチャと検出器の間にあるレンズ63の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ62の位置のビームの像を、検出器70の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ62の位置におけるビームプロファイルを、検出器70を用いて観察することができる。
また、NAアパーチャ62のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10〜100〔%〕大きいサイズである。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物10のコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物10の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物10のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
上述のように、ミラー電子は、NAサイズと形状に非常に敏感である。よって、NAサイズと形状と適切に選択することは、高いS/Nを得るために大変重要である。以下、そのような適切なNAサイズと形状の選択を行うための構成の例を説明する。ここでは、NAアパーチャ62のアパーチャ(孔)の形状についても説明する。
ここで、NAパーチャ62は、孔を有する部材(部品)である。一般に、部材がアパーチャと呼ばれることもあり、孔がアパーチャと呼ばれることもある。以下のアパーチャ関連の説明において、図168〜図172を参照するときは、部材(部品)とその孔を区別するため、部材をNAアパーチャと呼ぶ。そして、部材の孔を、アパーチャという。以下の説明において、符合62、62a〜62dは、NAアパーチャである。符号169、69、69a、69bは、アパーチャ(孔)である。アパーチャ形状は、一般に、孔の形状を意味する。
図168は、参考例であり、従来のアパーチャ169を示している。図168に示すように、従来は、円形のアパーチャ169が固定位置に設置されていた。よって、上述のような適切なNAサイズと形状の選択はできなかった。
一方、本実施の形態に係る試料検査装置は、NAアパーチャ62の位置を2次元的又は3次元的に移動し、位置設定を行えるように構成されている。NAアパーチャ62の移動は、図167において説明したX−Yステージ66を用いて行われてよい。そして、複数のアパーチャから適当なアパーチャが適宜選択されてよく、そして、位置決めが行われてよい。また、一つのNAアパーチャ62に複数のアパーチャ孔69が設けられてよい。そして、それらの一つを選択するためにNAアパーチャ62が移動されてよい(この構成も、複数のアパーチャからの選択に相当する)。また、他の移動機構が用いられてよい。例えば、X−Yステージ66の代わりに、NAアパーチャ62がリニアモータにより移動されてよい。また、回転支持部材でNAアパーチャ62が支持されてよく、通常の回転式のモータがNAアパーチャ62の位置移動を行ってよい。以下、NAアパーチャ62の孔の形状に関する具体例について説明する。
図169は、アパーチャ69の形状の一例を示している。図169において、アパーチャ69は、楕円形の孔形状を有している。この孔形状は、ミラー電子信号の強度分布に合うように設定されている。この例では、アパーチャにおけるミラー電子の強度分布の測定結果において、強度分布がy方向に長い楕円形状である。ここで、y方向とは、E×Bフィルタ46で偏向される方向である。y方向は、1次電子ビームの光軸の方向と一致する。つまり、y方向の楕円形状の原因は、E×Bフィルタ46での偏向成分であると考えられる。よって、効率よくミラー電子を捕捉するためには、y方向に長軸を有するアパーチャ形状が大変有利である。これにより、従来よりもミラー電子の収率を高め、より高いS/N(例えば、×2以上)を得ることが可能となる。例えば、2次放出電子ビームの強度分布が、y方向に100〔μm〕、x方向に50〔μm〕とする(これらの値は、半値全幅である)。楕円形のアパーチャ69は、2次放出電子ビーム径に対して、プラス10〜100〔%〕の範囲で選択される。例えば、アパーチャサイズがy方向に150〔μm〕、x方向に75〔μm〕になるように、アパーチャが選択されてよい。
次に、図170乃至図173を用いて、複数のアパーチャ69を有するNAアパーチャ62の構成について説明する。ここでは、NAアパーチャ62a〜62cがアパーチャ部材であり、アパーチャ69aが、アパーチャ部材に設けられた開口である。
図170は、複数のアパーチャ69aを有するNAアパーチャ62aの構成の一例を示している。図170において、NAアパーチャ62aは、2つの円形のアパーチャ69aを有する。この例では、ミラー電子の強度中心を基準に、2つの孔が±y方向にずらした位置に配置される。ずれ量は、例えば、50〔μm〕程度である。この構成は、異物10から散乱された+y側と−y側のミラー電子の双方を捕捉できる。したがって、この構成は、散乱したミラー電子の信号と、バックグラウンドの2次放出電子との信号量の差を大きくでき、高いS/Nを得ることが可能となる。この理由を説明すると、2次放出電子の場合、散乱方向に飛散する量が少量に限られる。そのため、バックグラウンドが低減し、相対的にS/Nを向上させることができる。
図171は、4つのアパーチャ69aを有するNAアパーチャ62aの構成の一例を示している。図171において、4個の円形のアパーチャ69aが、x軸及びy軸に対称に配置されている。すなわち、2つのアパーチャ69aがx軸上に配置され、2つのアパーチャ69aがy軸上に配置され、4つのアパーチャ69aが中心(原点)から等距離に位置している。別の言い方では、4つのアパーチャ69aは、原点の回りに等間隔に配置されている。さらに簡単にいうと、4つのアパーチャ69aが菱形状に配置されている。これにより、異物10からx方向とy方向の双方に散乱されたミラー電子が存在する場合にも、高S/Nで電子を取得することができる。
図172は、4つのアパーチャ69aを有するNAアパーチャ62cを示している。図172の構成は、図171の構成と異なる一例である。図172においては、4個の円形のアパーチャ69aが、xy平面における第1象限から第4象限にそれぞれ配置されている。この例でも、4つのアパーチャ69aは、x軸及びy軸に対称に配置されており、中心(原点)から等距離に配置されている。別の言い方では、4つのアパーチャ69aは、原点の回りに等間隔に配置されている。このような形状のNAアパーチャ62cにおいても、ミラー電子の信号強度が高くなる位置にアパーチャ69aを設けることができ、高S/Nの信号を取得することができる。
図171及び図172に示すように、アパーチャ69aの数が同じであって、それらの配置が異なってよい。これにより、用途に応じた適切なNAアパーチャ62b、62cを用いることができる。これにより、各々の用途について、高いS/Nを取得することが可能となる。
図173は、8つのアパーチャ69bを有するNAアパーチャ62dの構成の一例を示した図である。図173に示すように、アパーチャ69dの数は、4つよりも更に多くてもよい。図173に示したNAアパーチャ62dにおいては、ミラー電子の強度中心の回りの円周上に、複数のアパーチャ69bが等間隔に配置されている。この構成は、円周上のどこかのアパーチャ69bの位置に特異的に強い散乱をするミラー電子がある場合に有利である。そのようなミラー電子の適切な捕捉が可能となる。
また、図170乃至図173では、ミラー電子の信号の強度中心とアパーチャ69a、69bとの関係については、アパーチャ位置が強度中心とずれている。しかし、本発明はこれに限定されず、アパーチャ位置が強度中心と一致してよい。すなわち、一つのアパーチャ69a、69bが、ミラー電子強度中心と一致するように設置されてよい。この場合、他のアパーチャ69a、69bは、散乱したミラー電子の捕捉を行う。それらが強度中心のミラー電子とともに電子像に含まれる。このような合成像が検出器70で得られる。このようにして、強いミラー電子と特異的に散乱されたミラー電子との合成像を取得することができる。したがって、高いS/Nを得ることができるとともに、散乱方向に特徴がある異物10を効果的に検出できる。また、散乱方向の特徴を、異物10の分類に役立てることも可能となる。
更に、本実施の形態によれば、使用するランディングエネルギーLEに対して、適切な形状のアパーチャ69、69a、69bを選択することもできる。この選択も大変に有利な効果を提供する。ランディングエネルギーLEによりミラー電子の強度分布が変化する。そこで、本実施の形態の検査装置は、使用するランディングエネルギーLEに応じたサイズ及び形状を有するアパーチャ69、69a、69bを用いるように構成されてよい。これにより強度分布に応じてアパーチャを調整でき、大変有利である。例えば、ミラー電子が、y方向に長い楕円形状の強度分布を有する場合を考える。このとき、異なった2つの条件で撮像又は検査が行われるとする。例えば、1番目の撮像・検査条件では、ランディングエネルギーが第1の値すなわちLE=3〔eV〕であるとする。第2番目の撮像・検査条件では、ランディングエネルギーが第2の値すなわちLE=2〔eV〕とする。ここで、ランディングエネルギーLEが小さくなると、NAアパーチャ62、62a〜62dの位置ではミラー電子強度分布が大きくなる。このような分布変化に適合するように、NAアパーチャ62、62a〜62dが好適に選択される。例えば、第1のランディングエネルギーが用いられるときは、y方向に100〔μm〕、x方向に50〔μm〕の楕円のアパーチャ69が選択されてよい。第2のランディングエネルギーが用いられるときは、ミラー電子強度分布が2倍程度大きく。そこで、y方向に200〔μm〕、x方向に100〔μm〕の楕円形状のアパーチャ69が用いられてよい。このようにアパーチャを選択することにより、大変効果的にミラー電子を検出できる。
また、図162において説明したファラデーカップ等の構成について再度説明する。これら構成は、図167の電子線検査装置に設置されてよい。
図174は、図167のステージ30を示している。ステージ30上には、ファラデーカップ31と、凹溝25、25aを有する基準試料チップ26と、EB−CCD37が設置されている。これにより、1次電子ビームの均一性及び照射位置を高い精度で監視(モニタ)でき、また、時間による1次電子ビームの変動を高い精度で監視できる。
この点に関し、従来は、1次電子ビームを直接監視する手段がなかった。そのために、従来は、定期的に、同一試料20上の複数の点にファラデーカップ31が載置され、ファラデーカップ31により電子ビーム照射の像が取得される。この像が、ビームの評価及び調整に用いられていた。しかし、従来技術では、1次光学系40と2次光学系60aの変動が重畳された画像しか得られない。それら2つの光学系の要因を分離し、評価及び調整することが煩雑であり、精度も悪かった。本実施の形態は、このような問題を解決できる。
また、本実施の形態によれば、1次電子ビームの電流密度分布も高精度で測定可能となる。1次光学系のレンズ42、45、アライナ、電子銃41の電子放出制御系に対し、精度の良いフィードバックを行える。したがって、より均一なビームプロファイルの形成が可能となる。例えば、従来の電流密度分布の測定では、直系φ30〔μm〕程度のファラデーカップが用いられる。そして、30〔μm〕のピッチで、5点程度が測定される。このような測定では、ファラデーカップ31の孔サイズによって分解能が制限される。また、一点ずつの測定が行われるので、時間が掛かる。そのため、電子ビームが照射された瞬間の分布を測定することができなかった。
本実施の形態に係る異物検査装置によれば、1次電子ビームのビームプロファイルを直接的に測定できる。そして、測定結果に基づいて、1次電子ビームを適切に調整することができる。
また、このような1次電子ビームの調整において、異物10のサイズと信号強度又はS/Nとの関係を求めるために、本実施の形態は規格化されたサンプルを製作して用いてよい。このようなサンプルの使用により、大きな利点が得られる。例えば、試料の単一膜上に、サイズの分かっている規格化された微小球体が散布される。このような試料を用いて、感度校正を行うことが好適である。
図175は、サンプル15が散布された試料20を示している。サンプル15は、異物10を模式的に代替する。そこで、異物10に近いサイズを有し、異物10に近い材質からなるサンプルを用いることが好ましい。例えば、サンプル15は規格化された微小球体であり、材料はPSL(ポリスチレンラテックス)である。超微粒子が用いられてもよい。試料20は、Si等の半導体ウエハでよい。半導体ウエハ上に膜が成膜されていてよい。試料20は、膜が形成されたガラス基板でもよい。試料20上の膜は、導電膜、絶縁膜のどちらであってもよい。例えば、半導体ウエハ上の膜は、SiO2、Ta、Cu、Al、W等の膜でよい。また、ガラス基板上の膜は、例えば、Cr、CrN、Ta、TaN、TaBN、TaBO、Si、Al、Mo等の膜でよい。
図175において、サンプル15の大きさが既知である。したがって、サンプル15の画像を取得することにより、サンプル15のサイズと、信号強度又はS/Nとの関係を求めることができる。
図176は、図175に示されるサンプル15の画像を取得したときに得られる測定結果を示している。図176は、サンプル15と信号強度の関係の一例である。図176において、横軸はサンプル15のサイズであり、縦軸は信号強度である。縦軸は、S/Nであってもよい。サンプル15のサイズを種々変化させることにより、サンプルサイズに対応する信号強度が求まる。信号強度から、図176で示したように、グラフが作成される。これにより、異物10のサイズと信号強度又はS/Nの関係を把握することができる。
上記では、サンプル15として微小球体が用いられる。適当な球体のサイズは、特に、100〔nm〕以下である。つまり、φ1〜φ100〔nm〕の微小球体が、有利に用いられる。
これまで説明してきたように、本実施の形態に係る電子線検査装置及び電子線検査方法は、ナノオーダーの超微小な異物10に対しても感度を有する。上記のような微小なサンプル15は、微小な異物10の検査のために特に有利に用いられる。
この点に関し、従来の光式の異物検査方式では、光の波長によって分解能が制約されるため、100〔nm〕より小さいサイズの異物10の検出が困難であった。本実施の形態に係る電子線検査装置及び電子線検査方法によれば、十分な感度が得られ、微小な異物10を検出することができる。
次に、図177を参照し、ランディングエネルギーの適切な設定を実現する実施の形態について、更なる説明を行う。
図177は、本実施の形態に係る電子線検査方法におけるビームランディングエネルギーに対する階調特性を示している。この異物検査方法は、ベタ面またはパターン面を有する試料20に対して適用されてよい(ベタ面は、パターンが無い面である。以下同じ)。本実施の形態は、図177に示す特性を取得し、図177の特性を用いてランディングエネルギーLEの領域を選択することに特徴を有する。階調特性(ランディングエネルギーLEに対する階調値の変化)は、検出される電子の種類と関係する。以下に電子の種類を示す。
LE<LEA: ミラー電子
LEA≦LE≦LEB 二次放出電子とミラー電子の混在した状態
LEB≦LE 二次放出電子
ここで、LEA≦LE≦LEB+5〔eV〕の領域にLEを設定することにより、高いS/Nの像を取得することが可能となり、高感度の欠陥検査及び異物検査が可能となる。この設定の理由について説明する。例えば、SiやWなどのベタ面の上に異物10があったとする。本実施の形態では、異物10がチャージアップしてミラー電子を形成する。このとき、バックグラウンドであるベタ面(パターンが無い面)の階調が小さいことが望まれる。S/Nが高くなるからである。ベタ面の階調を小さくするためには、二次放出電子領域及び混在領域のエネルギ条件が適当である。混在領域は、ミラー電子と二次放出電子が混在する領域である。混在領域は、2次放出電子領域とミラー電子領域の間にあり、遷移領域に相当する。
混在領域は、図177のLEA≦LE≦LEBである。この領域では、異物10からはミラー電子が発生し、バックグラウンドの試料20からは2次放出電子が発生していると考えられる。LE<LEAのミラー電子領域では、バックグラウンドからもミラー電子が発生する。したがって、バックグラウンドの階調が高くなり、異物10の階調とバックグランドの階調との差異が小さくなる。つまりS/Nが小さくなる。また、LEBよりもLEがずっと大きいエネルギ領域では、異物10からも2次放出電子が発生してしまう。この場合も、S/Nが小さくなってしまう。
異物10の検出を容易にするためには、異物10の拡大像81と、バックグラウンドの試料表面21の表面像82との階調差を最も大きくすることが好ましい。階調差は、図177に示したランディングエネルギーLEに対する階調特性に依存する。また、図177においては、一本の特性曲線が示されている。これに対して、本実施の形態は、例えば、異物10の特性曲線と、純粋な試料20の特性曲線との2本の特性曲線を好適に用いる。本実施の形態は、それらの2つの特性を比較し、最も階調差が大きい範囲のランディングエネルギーLEを用いてよい。これにより、ランディングエネルギーを適切に定めることができる。
上記に関し、異物10の特性曲線と、試料表面21の特性曲線との組み合わせに依存して、階調差が大きいエネルギ帯域が変化する。そこで、検査対象の特性曲線を用いてランディングエネルギーが好適に設定される。
また、これまでの実験的経験により、LEA≦LE≦LEB+5〔eV〕の領域のLEが、大変有利に用いられ、大きな効果が得られる。このエネルギ領域を適用する方法及び構成は、これまで説明された任意の方法及び構成に対し、可能な範囲で適用されてよい。これにより、高いS/Nを取得することが可能となり、高感度、高速の欠陥検査及び異物検査が可能となる。
次に、図178を用いて、異物10の検出又は検査において効率的な1次系電子ビームのランディングエネルギーLEについて更に詳細に説明する。図178は、1次系の電子ビームのランディングエネルギーLEと、画像の階調との関係を示している。図178には、試料20と異物10との関係として、試料20の階調特性と異物10の階調特性が示されている。
図177の説明で言及したように、LEAよりランデシィングエネルギーLEが小さい領域は、ミラー電子領域を示している。ミラー電子領域とは、試料20上に異物10の存在しない正常部からほぼ総てミラー電子のみが検出されるエネルギ領域である。
また、ランディングエネルギーLEが、LEBより大きい領域は、2次放出電子領域を示している。2次放出電子領域は、試料20の正常部からほぼ総て2次電子のみが検出される領域である。2次放出電子は、既に述べたように、2次電子、反射電子及び後方散乱電子を含む。
また、ランディングエネルギーLEが、LEA以上LEB以下の領域は、混在領域である。混在領域は、試料20の正常部から、ミラー電子と2次放出電子の双方が検出される混在領域を示している。混在領域は、ミラー電子領域と2次放出電子領域の間の遷移領域である。
上述のように、照射する1次系の電子ビームのランディングエネルギーLEは、LEA≦LE≦LEB、又は、LEA≦LE≦LEB+5〔eV〕のエネルギ領域に設定されるのが好ましい。このことについて、図178を用いて、更に詳細に説明を行う。
図178は、異物10と、試料20上の正常部との各々について、1次系電子ビームのランディングエネルギーLEに対する階調DNの変化を示している。階調DN(Digital Number)は、検出器70で検出される電子数に対応する。異物10と試料20との接触抵抗が高い場合、又は、異物10が帯電した場合、異物10は、周囲の正常部と異なる階調変化を示す。これは、異物10の電位変化が発生し、ミラー電子が発生しやすくなるからである。発明者等の発見によれば、LEA〜LEBの範囲が−5〔eV〕〜+5〔eV〕である場合が、多く確認されている。そして、上述したように、正常部と比較して、異物10は、1次系電子ビームのランディングエネルギーLEが高い状態でもミラー電子を生じさせる(ここで、ミラー電子は2次放出電子と混在してよい)。したがって、異物10の撮像又は検査を行うときに、LEA〜LEB+5〔eV〕が、使用するランディングエネルギーLE領域として適している。例えば、LEA〜LEBが−5〔eV〕〜+5〔eV〕であるとする。この場合、ランディングエネルギーLE領域は、大変好ましくは、−5〔eV〕〜+10(=5+5)〔eV〕である。
また、ランディングエネルギー範囲“LEA〜LEB+5〔eV〕”は、基板の材料に関わらず、総ての種類の基板に対して有効である。例えば、ランディングエネルギー範囲“LEA〜LEB+5〔eV〕”は、パターン等の形成された基板に対しても、異物が表面に存在する基板等に対しても有効である。このLE範囲は、更に、基板や異物の材料を問わず有効である。例えば、ガラス基板の観察においても、ランディングエネルギー範囲“LEA〜LEB+5〔eV〕”が好適に適用される。これにより、良好な画像を得ることができる。
ここで、異物10が高いコントラストで撮像できる理由は、図178から明らかである。図178に示すように、異物10と周囲の正常部では、輝度変化が異なる。そして、正常部と比べて、異物10では、高ランディングエネルギーLE(=LEB+5〔eV〕)にて、ミラー電子が発生する。そのため、図示のように、異物10と正常部の階調差ΔDNを大きく取ることができる。例えば、正常部の階調DNが50DNであり、正常部の輝度変動(ノイズ)が3DNであるとする。また、異物10の階調DNが100DNであるとする。この場合、階調差ΔDN=50DN(=100DN−50DN)である。そして、S/Nは、50/3=16.7である。このようにして、高いS/N値を得ることができる。これは、まさに上述したLEA〜LEB+5〔eV〕のランディングエネルギーLE領域で発生する現象である。この現象を利用することによって、高いコントラストでの撮像又は検査が可能となる。他のランディングエネルギーLE領域では、異物10のみをミラー電子発生状態にすることができず、したがって、上記のように異物10と周囲の正常部とのコントラストを高くすることもできない。よって、異物10の検出においては、LEA≦LE≦LEB+5〔eV〕の範囲で検出を行うことが好ましい。また、この実施例で述べてきたことに関して、図45〜図50に関する実施形態で述べてきた調整方法、つまり、NAアパーチャ位置における2次放出電子のクロスオーバの中心位置に対してミラー電子(ミラーセンターMC)とNAアパーチャ位置(x、y方向)の相対関係位置を調整・制御して決定する方法を用いる。それにより、効率的・効果的に高いコントラスト、及び欠陥のS/Nを得ることができる。
以上に現時点で考えられる本発明の好適な実施の形態を説明したが、本実施の形態に対して多様な変形が可能なことが理解され、そして、本発明の真実の精神と範囲内にあるそのようなすべての変形を添付の請求の範囲が含むことが意図されている。
本発明は、電子線を用いて半導体ウエハ等の試料上の異物の存在の有無を検査し、又、欠陥の有無等を検査する電子線検査装置に利用することができる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態30)
プラットフォーム
本発明の検査装置及び検査方法におけるプラットフォームの例について説明する。
本実施形態においては、本発明の検査装置及び検査方法をマスク(EUVマスク、NIL)用に用いた例について、上述の実施形態においてウエハ用に用いた本発明の検査装置及び検査方法と異なる部分(反転、回転ユニット、パレット搭載ユニット、除電ユニット)を中心に説明する。
図179及び180を参照する。SMIF等のカセットにあるマスクは、大気搬送ロボットにより搬送される。マスクの表面、裏面のどちらかを検査する。また、ステージに設置する方向を選んで検査する。カセットにおいてある状態と同じであれば、反転は不要である。マスクの方向を90度、180度等変えて、検査を行う場合には、回転ユニットにて方向を選んで、設置する。カセットにある方向と同じであれば、作業不要である。その後、ロボットによりパレット搭載ユニットに設置される。マスクがパレットに搭載されて、パレットごと搬送される。パレット搭載時には、位置決め機構があり、例えば、対角上の角に設置する方向を決める方向アダプタ等を用いる。これにより、ラフな方向を決める。例えば、±1〜10mrad(ラジアン)である。除電ユニットは、マスクの帯電を解除するために行う。静電気や前工程のプロセスや検査において、光や電子等電気的な影響を受けることがあると、表面にチャージアップが残っている。これを解除して、いつも、均質な表面電位状態を保ち、安定した検査を行うために、大気搬送部で除電を行う。除電は、X線照射型、UV照射型、イオン照射型等が用いられる。その後、LLチャンバに搬送される。LLチャンバでは、真空排気され、真空状態にする。この時、スロー排気を初期に行いその後排気速度を上げることで、付着パーティクルの低減と真空形成時間の短縮化を行う。LLチャンバでは、マスクのアライメント補正量を求めるため、CCDカメラが設置されている。これにより、どの程度の回転方向のズレレがあるか、測定し、ステージ上の回転ステージでの補正量を割り出す。もし、補正量を超える量であれば、再度、パレット搭載ユニットに戻して、マスクの設置をやり直す。真空搬送ロボットはトタンスファーチャンバにある。常に真空状態のチャンバに設置することにより、ロボットに付着するパーティクルを防ぐこと及びロボットからの発塵を防ぐ。LLが規定の真空度になると、ゲートバルブを開にして、パレット及びマスクを真空搬送ロボットが搬送する。そして、メインチャンバにあるステージ上に設置する。ステージはX、Y、θの3軸制御ができる。精度を保つため、θステージの回転角は小さく最大±1〜3度である。これは、プリアライメントで達成できる範囲内でよい。そのことにより、θステージの精度、剛性を高めることができる。回転角が大きいと大きなクリアランスが必要となり、角度制御精度と剛性が劣化するのである。ステージ上に設置されたパレットは静電チャックにより、設置固定される。ステージ上には、ファラデーカップ、校正試料、標準試料がある。ステージ位置検出は、ウエハの場合と同様、レーザ干渉計による位置検出と制御が行われる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜29、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態31)
本発明の検査装置及び検査方法における異物検査における別の例について説明する。
(EO調整方法)
上述のパターンのEO調整方法にて述べたように、異物検査に用いるEO条件も、NA位置に来ているビームの分布測定を行い、また、ミラー電子の位置制御を行うことで、高感度の異物検査を実現できる。パターン検査の実施例で、NA位置でのビーム観察、及び入射角度θ、αを調整して決めることができる図181参照する。異物検査の場合、パターンのないベタ面の場合が多い。よって、αに対しては、あまり精度を要求しない。但し、検出欠陥の座標合わせができることが必要である。この時、NAとの相関もパターン検査と同様に決めることが可能である。
特に、サイズ5〜30nmの微小な異物に対する感度を上げるため、ミラー電子位置を、2次放出電子のCO中心から離れた距離にすると効果的である。つまり、入射電子角度θを大きくすると効果的である。(試料から垂直軸をz軸、0度とする)。それは、垂直入射よりも大きな角度で入射すると、表面の電位の不均一の影響を受け易いからである。つまり、z方向におけるエネルギに対する表面の電位差が影響するが、垂直入射よりも水平入射に近いほど、z方向の速度成分に影響を受け易く、よって周辺の正常部の電子軌道との差が大きく出るのである。もう一つの要因は、異物のチャージアップの不均一性を発生させ易いことである。簡単に言うと、ビーム明射の影ができ易く、照射された部位とされない部位の電位差がおおきくなり、急激な電位分布変化が異物近傍で形成される、よってその影響を受け、軌道が変化し易いことが挙げられる。この様な作用により、感度が向上するのである。その概念図を図182に示す。サイズ5〜30nmの微小な異物の検出に高感度で検査する時は、入射角度10〜30度程度が効果的であることが試験結果より得られている。又、この時、正常部位からのミラー電子信号をなるべく取得しないようにする。異物からのミラーだけを取得するように、NA位置を決定する。具体的には、2次放出電子のCO中心とMC位置の中間にNAを設置する。そして、好ましくは、MC位置(ミラー電子位置)にかからない程度のぎりぎりの位置にNAを設置する。また、更に好ましくは、MC端部とNA端部との距離が1〜100μm、好ましくは10〜50μmがよい。これは、大きな面積の検査を行うと、いろんな要因により、MC位置の変動が起こることがあるので、そのような時に安定して、高S/Nで異物検出を達成するために、上述の距離を保つことが重要である。また、MCの方向はどの方向でもよいが、その方向に信号が出易い。つまり、球状の異物である場合、その方向に楕円信号として得られる。これは、信号が拡大されて得られることを意味している。つまり、異物サイズよりも大きなサイズで信号が得られるため、異物よりも大きなPxサイズでの検査が可能となる。これは、特に微小な異物検査のスループットに大変有効である。例えば、異物サイズ10nmのとき、本発明では、100nmPxにても検出が可能である。それは、10nmPxを使用する場合に比べて、×100倍のスループット差が生じるのである。本発明では、およそ、検出したい最小異物サイズの×5〜50倍のPxサイズを用いることが可能である。また、特に、難しい超微小異物:5〜30nmサイズの場合、×2〜×10を用いると有効である。これは、SEM式では、異物検出の場合、異物の1/3〜1/10のPxサイズが必要になるため、本発明との差は、Pxサイズだけでも、×6〜×100の差異が生じ、膨大なスループットの差がある。また、光式では、1/2波長サイズほど度の異物検出が限界であるため、もはや、本発明で対象としている微小異物の検出はできない。
また、方向に関しては、Y方向、又はX方向にMCとNAを設置するとx、y軸に対して対称てきな信号をえられ、斜めでは、非対称になる。これらは、対象の試料や異物により、感度の高いほうを選んで使い分けを行う。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜30、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態32)
本実施形態においては、本発明の検査装置及び検査方法に用いるNA(ニューメリカルアパーチャ)の例について説明する。
(NA形状)
パターン検査および異物検査においては、通常よく用いられる円形の穴のNAに比べ、図183及び図184に示すような系所のNAを用いるとより効果的である。高いコントラスト、S/N、および電子量を得られ、感度向上、スループット増大ができる。
パターン検査では、y方向とx方向で縦横パターンのコントラストが異なる場合がある。そのようなときに十字穴形状を用いると縦のコントラストが強い電子信号と横のコントラストの強い電子信号の情報を合成することができ、高いコントラストで電子量を増加でき、高いS/Nを得ることができる。
スリットでは、より縦信号の情報を強く取得する、または横方向の情報を多く取得する等の方向による特徴を有する電子情報を取得するときに有効である。パターンの場合では、例えば、E×B等によりxとy方向のクロスオーバ点(COx、COy)がz方向にずれることがある。そのようなときに、x方向のCOxにy方向に長い穴が開いているスリットを用いて、y方向の電子情報の量と収差の規定を行い、y方向のCOyにx方向に長い穴のスリットを用いて、x方向の電子情報の量と収差を規定する。このようにして、電子量と収差の制御を行い、高いコントラストおよびS/Nが得られ、また、電子量を増加できるので、円形穴に比べ感度向上、スループット向上ができる。
上記のNAにより、感度向上×1.4〜×5、電子量増加×1.5〜×10が可能となり大変有効である。
また、図184に示すNA形状は、特に、異物検査のときに有効である。凹局部を有する形状Aとスリット型である。異物検査のときに、ミラー電子にかからない位置にNAを設置することが有効であるが、そのミラー電子の強度が高いMC位置に近い位置に設置すると高い異物信号のS/Nが得られる場合がある。そのとき、図184に示すようなNAを用いると大変有効である。円形穴では、凸形状穴であるので、MC付近の電子情報が多く取得できないこと、および、MCの位置変動があるとすぐにその影響を受けやすい問題がある。その問題を解決する方法として、図184に示す形状がある。スリットおよび凹曲部を有する形状であれば、MCに近づけることが容易で、MC付近の電子情報を多く得ることができる。また、MC位置の変動に対しても、MC形状に沿った凹曲形状、または、スリット(線状)の穴形状が、MCに接近する側にあるので、MC位置の変動に対しても、その影響を受けない距離に設置しても。凸形状穴の円形よりも多くの周辺電子情報を得ることができる。これは、異物のミラー電子信号と周囲正常部位の2次放出電子信号の混在した電子情報の中で、異物だけがミラー電子で輝度が高くなることを利用している。このとき、MCの電子情報が混入すると、ミラー電子が画像全域に加わるので、異物と周囲との諧調差(輝度差、電子量差も同じ意味)が低下し、S/Nが低下するのである。
図184の下方に示すのは、そのような状態を示した概念図で、MCとNA設置状態の例を示している。MCは通常、円形である、このとき、各NAがMC端部から同じ距離L1に穴端部がくるように設置する。また、穴の幅、直径(L2)は同じとする。このとき、円形状に比べ、凹曲型とスリット型は面積が大きいことおよびMCに近い位置での面積が大きい事により、MCに近い電子信号の取得が可能となる。
また、図185及び図186は、MCとNAを設置する位置関係の例である。このような設置の位置関係を用いて、パターン検査、異物検査に用いることが可能である。また、照射する電子ビームの条件やプリチャージ条件等については、前述の実施形態29の使用形態を用いることが可能であり、大変有効である。
(実施形態33)
本実施形態においては、図8に示す本発明の検査装置における変形実施形態について説明する。電極725を更に備えている以外は、図8に示す本発明の検査装置と同様であるので、繰り返しの説明は省略している。図187に示すように、ウエハWにビアbがある場合に、電極725に与える電圧を4000V〜−400Vとすると、ウエハの電子線照射面の電界は、2.0kV〜−0.2kV/mm(−はウエハW側が高電位であることを示す)にすることができる。この様に試料表面の電界強度(表面から垂直方向 Z軸方向)を高くしたり低くしたりできる。つまり、放電しやすい試料の場合は電界強度を低くして放電の起こさないようにすることが可能となる。この状態で、対物レンズ系724とウエハWとの間に放電は発生せずに、ウエハWの欠陥検査は行えたが、光電子の検出効率が若干下がってしまう。したがって、光線を照射し光電子を検出する一連の動作を、例えば4回行い、得られた4回分の検出結果を累積加算や平均化等の処理を施して所定の検出感度を得る。
また、ウエハにビアbがない場合には、比較的高い電界強度を用いることができる。電極725に与える電圧を+3000Vとしても、対物レンズ系724とウエハとの間に放電は発生せずに、ウエハWの欠陥検査は行える。この場合、電極725に与えた電圧によって引き上げ電界が増加し、対物レンズの収差を低減できるため、分解能が向上し、高いコントラスト及びS/Nを達成できる。よって、高感度及び高いスループットで検査が行える。
(電極)
対物レンズ724とウエハWとの間には、電子線の照射光軸に対して略軸対称である形状の電極725が配置されている。電極725の形状の一例を図188及び図189に示す。
図188及び図189は、電極725の斜視図であり、図188は、電極725が軸対称に円筒形状である場合を示す斜視図であり、図189は、電極725が軸対称に円盤形状である場合を示す斜視図である。
本実施形態では、図188に示すように電極725が円筒形状として説明するが、電子線の照射光軸に対して略軸対称であれば、図189に示すような円盤形状であってもよい。
更に、電極725には、対物レンズ724とウエハWとの間における放電を防止する電界を発生する為に、ウエハWへの印加電圧(本実施形態では接地されているので、電位は0V)よりも低い所定の電圧(負電位)が電源726によって印加されている。この時のウエハWと対物レンズ724との間の電位分布について図190を参照して説明する。
図190は、ウエハWと対物レンズ724との間の電圧分布を示すグラフである。
図190において、電子線の照射光軸における位置を横軸として、ウエハWから対物レンズ724の位置までの電圧分布を示している。
電極725が無かった従来の電子線装置においては、対物レンズ724からウエハWまでの電圧分布は、対物レンズ724に印加した電圧を最大値として、接地しているウエハWまでなだらかに変化している。(図190に示す「従来」)
一方、本実施形態の電子線装置においては、対物レンズ724とウエハWとの間に電極725が配置され、且つ電極725には、ウエハWへの印加電圧よりも低い所定の電圧(負電位)が電源726によって印加されているので、ウエハWの電界が弱められる。(図190に示す「電極有り」)
よって、本実施形態の電子線装置においては、ウエハWにおけるビアb近傍に電界が集中せずに高電界とはならない。そして、ビアbに電子線が照射されて2次電子が放出されても、この放出された2次電子は、残留ガスをイオン化する程には加速されないので、対物レンズ724とウエハWとの間に放電が防止できる。
また、対物レンズ724とビアbとの間での放電が防止できるので、ウエハWのパターン等を放電破損することはない。
また、上記実施形態においては、対物レンズ724とビアbのあるウエハWとの間の放電が防止できるが、電極725に負電位を印加しているので、負電位の大きさによっては、検出器761による2次電子の検出感度が低下する場合もある。よって検出感度が低下した場合は、上述したように、電子線を照射し2次電子を検出する一連の動作を複数回に渡って行い、得られた複数の検出結果を累積加算や平均化等の処理を施して所定の検出感度(信号のS/N比)を得るようにすればよい。
本実施形態では、一例として、検出感度を信号対雑音比(S/N比)として説明している。
ここで、上記の2次電子検出動作について、図191を参照して説明する。
図191は、電子線装置の2次電子検出動作を示すフローチャートである。
まず、検出器761によって被検査試料からの2次電子を検出する(ステップ1)。次に、信号対雑音比(S/N比)が所定の値以上であるかの判断を行う(ステップ2)。ステップ2において、信号対雑音比が所定値以上である場合は、検出器761による2次電子の検出は十分であるので、2次電子検出動作は完了する。
一方、ステップ2において、信号対雑音比が所定値未満である場合は、電子線を照射し2次電子を検出する一連の動作を4N回行い、平均化処理を行う(ステップ3)。ここで、Nの初期値は「1」に設定されているので、ステップ3において初回は、2次電子の検出動作が4回行われる。
次に、Nに「1」を加算してカウントアップして(ステップ4)、ステップ2において再度、信号対雑音比が所定の値以上であるかの判断を行う。ここで、信号対雑音比が所定値未満である場合は、再度ステップ3に進み、今度は2次電子の検出動作を8回行う。そして、Nをカウントアップして、信号対雑音比が所定値以上となるまで、ステップ2〜4を繰り返す。
また、本実施形態では、電極725にウエハWへの印加電圧よりも低い所定の電圧(負電位)を印加することにより、ビアbのあるウエハWに対する放電防止について述べたが、2次電子の検出効率が低下する場合がある。
よって、被検査試料がビアの無いウエハ等、対物レンズ724との間で放電が生じにくい種類の被検査試料であった場合は、検出器761における2次電子の検出効率が高くなるように、電極725に印加する電圧を制御することができる。
具体的には、被試験試料が接地されている場合であっても、電極725に印加する電圧を、被試験試料への印加電圧よりも高い所定の電圧にする、例えば、+10Vとする。また、この時、電極725と被検査試料との距離は、電極725と被検査試料との間に放電が生じない距離に配置する。
この場合、被検査試料への電子線の照射によって発生した2次電子は、電極725に印加された電圧によって発生した電界によって、電子線源721側に加速される。そして、対物レンズ724に印加された電圧によって発生した電界によって、更に、電子線源721側に加速されて収束作用を受けるので、検出器761に多くの2次電子が入射し検出効率を高くすることができる。
また更に、電極725は軸対称であるので、被検査試料に照射する電子線を収束するレンズ作用も持つ。従って、電極725に印加する電圧によって、1次電子線をより細く絞ることもできる。また、電極725によって1次電子線を細く絞ることもできるので、対物レンズ724との組み合わせにより、より低収差の対物レンズ系を構成することもできる。このようなレンズ作用が可能な程度に、電極725は略軸対称であればよい。
上記実施例の電子線装置によれば、被検査試料と対物レンズとの間に、電子線の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記電子線の照射面における電界強度を制御する電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の電界を制御することができる。
また、被検査試料と対物レンズとの間に、電子線の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記電子線の照射面における電界強度を弱くする電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の放電を無くすることができる。
また、対物レンズへの印加電圧を低下させる等変更していないので、2次電子を、効率的に対物レンズを通過させられるので、検出効率を向上させ、S/N比の良い信号を得ることができる。
また、被検査試料の種類によって、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を制御することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極の電圧を変化させ、被検査試料の電子線の照射面における電界強度をより弱くすることで、放電を防止できる。
また、半導体ウエハのビアの有無によって、電極に与える電圧を変更する、即ち、半導体ウエハの電子線の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を変更することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極による電界を変化させ、被検査試料の電子線の照射面における電界強度をより弱くすることで、特にビアやビア周辺における放電を防止できる。
また、ビアと対物レンズとの間での放電が防止できるので、半導体ウエハのパターン等を放電破損することはない。
また、電極に与える電位を被検査試料に与える電荷よりも低くしたので、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。
また、電極に与える電位を負電位とし、被検査試料は接地したので、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜33、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態34)
本実施形態においては、図8に示す本発明の検査装置における変形実施形態について説明する。図192において、本実施の形態によるプレチャージユニットを備えた撮像装置が模式的に示されている。この撮像装置は、1次光学系72と、2次光学系74と、検出系76と、対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する電荷制御手段840とを備えている。本実施形態においては、上述の実施形態1と同様の構成については、説明を省略する。
対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する電荷制御手段840は、この実施例では、対象Wとその対象Wに最も近接した1次光学系72の静電レンズ724との間で対象Wに接近させて配置された電極841と、電極841に電気的に接続された切換スイッチ842と、その切換スイッチ842の一方の端子843に電気的に接続された電圧発生器844と、切換スイッチ842の他方の端子845に電気的に接続された電荷検出器846とを備えている。電荷検出器846は高いインピーダンスを有している。タイミングジェネレータ849が、検出系76のCCD762及び画像処理部763、電荷低減手段840の切換スイッチ842、電圧発生器844並びに電荷検出器846及び848に動作タイミングを指令するようになっている。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜33、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態35)
デバイス製造方法
次に図193及び図194を参照して本発明による半導体デバイスの製造方法の実施形態を説明する。
図193は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の製造工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)(ステップ1400)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)(ステップ1401)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程(ステップ1402)
(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程(ステップ1403)
(5)できたチップを検査するチップ検査工程(ステップ1404)
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
これらの主工程中の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する
薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(B)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(D)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
図194Aは、図193のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程(ステップ1500)
(b)レジストを露光する工程(ステップ1501)
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程(ステップ1502)
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程(ステップ1503)
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
上記(G)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査も可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
検査手順
上記(G)の検査工程における検査手順について述べる。
一般に電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用されている。
検査されるウエハは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密X−Yステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、(図194B)の手順に従って欠陥検査等が行われる。はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡はこの他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次にウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行ないながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリへ記憶を行なう。欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり、欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行ったりすることも出来る。電気的欠陥の検出はコントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子線照射手段とは、通常検査用の電子線照射手段以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた低電位(エネルギー)の電子線発生手段(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位(エネルギー)の電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、仕様によっては、別途低電位の電子線発生手段を設ける必要はない。また、ウエハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出が出来る。線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。
上述したプロセスにおいて必要となる検査及び検査プロセスを行うときに、これまで述べてきた、全ての実施例が適用可能である。また、装置系として述べてきた図1〜図25の機能・機構・特徴を有する全ての装置系への適用が可能である。それにより、大変効率的な検査が、ウエハやマスクの製造プロセス工程で実施できるのである。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜34、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態36)
HDD用基板、ヘッド素子の検査
本発明では、ウエハ、露光用マスクに限らず、HDD用基板の検査にも適用できる。以下に適用例を述べるが、効果・作用は半導体ウエハやマスクに対するものと同様である。
例えば、HDD用基板では、ガラスやアルミの基板に磁性層top層が磁性体でその上に薄い潤滑層があるのが通常である。この基板に対しては、2種類の検査が実施可能である。一つは、基板製造時の異物、パーティクル付着とキズの検査。もう一つは表面形成の膜質異常の検査である。
アルミやガラス基板自体にキズがあったり、製造や洗浄後に異物・パーティクルが付着したりしていると、上部に形成される磁性膜等が正常に成膜できなくなる。平坦度が悪くなり凹凸ができるのである。近年の高密度媒体では、基板とヘッドの浮上量が5nm前後になっているので、凹凸はそれより小さいことが必要である。つまり、異物もサイズ≧5nmの付着を防止する必要がある。キズの凹凸も同様である。よって、本発明の検査装置によりそれらの異物やキズの検査に適用でき、高速、高感度での検査が可能となる。その原理・効果・作用は前述した内容と同様である。
また、基板形成時に不良が生じたとき、例えば、保護膜のピンホールや磁性膜の成分不均一等があると、膜上の電位分布の負均一性が生じる場合がある。例えば、損傷のない程度で一定の電荷を基板表面に与えてやると均質であれば均一な表面電位となるが、保護膜にピンホールがあったり、磁性層の不均質があったりすると、表面電位が不均一になる。そのとき、分解能(Pxサイズを小さくして)を高めて検査を行うことにより、表面電位に対応したミラー電子及び2次放出電子の分量比を観察・測定することができる。つまり、セル/セル検査を適用して均一であれば部位による電子信号の分量比の変化は小さいが、不均一であれば分量比に差異が生じるので、それを欠陥として検出することができる。
方式・手段についてはこれに限らないが、本発明の方法および装置を用いて、HDD用基板の欠陥検査が可能となるのである。これは、従来の技術に比べて高速で高感度で行うことができる。それは、対象欠陥が超微小になってきたために、光学式検査装置では感度不足であり、分解能の高いSEMでは膨大な時間がかかるからである。
また、同様に磁気ヘッドの製造プロセスにおける欠陥検査も可能である。磁気ヘッドの製造プロセスでは、半導体ウエハの製造プロセスと同様の工程プロセスが行われているので、形状欠陥及び膜質不良について、上述したように効率的に欠陥検査が可能である。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜35、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態37)
ステージ装置
本発明の検査装置及び検査方法に用いるステージ装置について説明する。
図195A、図195Bにステージ装置の構成を示す。
図195A、図195Bに示すように、本発明の検査装置のステージ装置1は、ハウジング4の底壁上に配置されたY軸ベース盤2と、該2の上にY軸方向に平行に配置するガイドレール3の案内によってY軸方向に移動するYステージ5と、該5の上にY軸方向と垂直方向のX軸方向に平行に配置するXガイドレール6の案内によってX軸方向に移動するXステージ7によって、XY軸方向に移動自在な該7に搭載したマスクプレート8とを備えている。本ステージ装置1の主な機能は、マスクプレート8に搭載されたマスク22の検査を目的として、電子光学系装置のコラム21から照射される電子ビーム検査光26に対し、該22をXステージ7によるX軸方向のスキャン移動とYステージ5によるY軸方向のステップ移動との繰り返し動作によって規定領域内を移動させることにある。Xステージ7は規定の移動方向を伴う速度と移動距離に従いX軸方向にスキャン移動させ、Yステージ5は規定の移動方向と移動距離に従いY軸方向にステップ移動させている。ここで、マスク22はパレット(図示省略)上に固定されており、該パレットをマスクプレート8に施した静電チャック(図示省略)によって固定されている。また、本ステージ装置1を配置するハウジング4は、除振台23の4箇所によって支持された定盤24の面上に設置することで床25からの外乱振動の影響が低減されている。また、本ステージ装置1は、ハウジング4によって覆われ10−4Pa程度の真空度の周囲雰囲気で運用される。従って、発ガス、発熱あるいは発塵を極力防止するため、駆動系のXサーボモータ9、Yサーボモータ11はハウジング4の外側に配置されている。Xステージ7、Yステージ5は、該4の側壁と真空シールを施したX動力伝達シャフト10、Y動力伝達シャフト12を介して駆動され、該9の制御管理にはエンコーダ27が、同様に該11の制御管理にはエンコーダ28が用いられている。また、マスク22を搭載するマスクプレート8の位置計測には、該8のX軸側に配置したXステージミラー19とXインターフェロメータ13と、該13を支持するXインターフェロメータ台15と、Y軸側に配置したYステージミラー20とYインターフェロメータ14と、該14を支持するYインターフェロメータ台16と、その他、レーザーヘッド等光学部品(図示省略)及び光電信号変換するAXISボード(図示省略)とで構成したレーザ干渉計システムを備え、X測長光17とY測長光18の計測によりXステージ7、Yステージ5の各位置を高精度に計測をしている。ステージ制御系(図示省略)は、駆動系のXサーボモータ9、Yサーボモータ11に対し、前記のレーザ干渉計システムで得たXY軸方向の位置信号によって各軸をフィードバック制御することで、サブミクロン程度の高精度なステージの位置決め制御を行っている。
本実施例では、マスク検査のスキャン移動をX軸方向、ステップ移動をY軸方向としたが、マスク検査方向に合わせスキャン移動をY軸方向、とステップ移動をX軸方向としても良い。また、ステージ装置1の駆動系は、電子ビーム検査光を扱うことから高非磁性を考慮した空気圧駆動機構あるいは真空雰囲気を保持する差動排気方式によってステージガイドレールを気体静圧軸受とし各ステージを非接触式にするステージ装置1としても良い。
(実施形態38)
レーザ照射位置制御
例えば、図35に示す構成において、光電子面2021の所定位置にレーザのスポット中心を照射することが必要である。これは、該スポット位置から電子(光電子)が発生するので、その位置が電子発生位置となるからである。その位置から出た電子(光電子)は1次系の中を通って試料面に照射される。このとき、電子(光電子)が直近のレンズに入射するときは、レンズの中心位置を通る必要がある。レンズ中心からずれると、電子(光電子)の軌道が曲がってしまうからである。この軌道の曲がりが大きいと、電子(光電子)がコラム壁にぶつかったり、アライナ(偏向器)による軌道修正範囲を超えて軌道修正ができなくなったりする場合がある。レンズと光電子発生部の間に、アライナがない場合では、光電子発生部の位置によりレンズ内の通過する軌道が決まる。つまり、ずれた位置にレーザを照射し、ずれた位置から光電子が発生すると、レンズ中心を電子ビームが通らない。
本実施形態においては、この問題を解決するため、図35に示す光電子面2021の所定位置にレーザのスポット中心を照射することができる構成の例について、図199を用いて説明する。図199(a)の光電子面2021における断面の模式図に示すように、光電子面2021は、母材20211、光電子材料20212、導電材料20213、保持部材20214、およびレーザ照射用アパーチャ20215を備えている。母材20211は、クォーツ、石英ガラス、コルツガラス、フッ化マグネシウムガラス等の光透過部材である。光電子材料20212は、ルテニウム、金等のワークファンクションの低いもの(光電子発生効率のよい材料)が好適に用いられ、母材20211にコーティングされている。導電材料20213は、クロム等の導電性の低いものが好適に用いられる。保持部材20214は、導電性の材料で構成され、母材20211等を保持する。図199(a)に示すように、光電子材料20212、導電材料20213、および保持部材20214は電気的に接続されている。これらにレーザ照射用アパーチャ20215が電気的に接続されていてもよい。
レーザ照射用アパーチャ20215は、モリブデン、タンタルなどの反射材料が好適に用いられ、母材20211のレーザの入射側に設けられている。レーザ照射用アパーチャ20215の表面は、レーザの反射強度を光電子材料20212よりも強く(高く)するために面粗度の良いものを用いることが望ましく、例えば、鏡面研磨、または面粗度Ra1μm以下であることが望ましい。また、この例では、図199(b)のレーザ照射用アパーチャ20215の上面図に示すように、レーザ照射用アパーチャ20215は、直径d1(3〜5mm程度)の円盤状部材の中心部に直径d2の内径領域20216が設けられている。照射されたレーザがレーザ照射用アパーチャ20215で反射されると、その反射光の反射強度は、次に述べる光電子材料20212で反射される反射光の反射強度よりも強くなる。一方、レーザが内径領域20216を通過して光電子材料20212で反射されると、その反射光の反射強度は、レーザ照射用アパーチャ20215で反射された場合より弱くなる。なお、反射光強度は、反射光の光路上に設置した光量計などにより測定すればよい。
レーザはDUVレーザで、たとえば、波長266nmや244nmの波長のレーザを用いることが可能である。固体レーザやガスレーザを使用することができる。レーザに限らず、波長270nm以下の波長を発するランプ光の使用も可能である。固体レーザでは、例えば、YAGレーザの4倍波や5倍波などの高調波のレーザを用いることができる。また、ガスレーザでは、Arイオンレーザやエキシマレーザを用いることができる。
レーザは、レーザ照射用アパーチャ20215の内径領域20216を通過すると、光電子材料20212に到達し、光電子を発生させる。レーザの照射位置が内径領域20216にある状態(例えば、まずは、レーザの照射位置を適当に変え、下記に示す反射光強度の変化から、レーザの照射位置が内径領域20216となる位置を求める。)から、ミラー等の光学系を制御系によって制御して照射位置を+X方向に移動させる。レーザの照射位置が内径領域20216の端部(レーザ照射用アパーチャ20215の内径側端部)に到達すると、図199(c)に示すように、光量計などにより測定された反射光強度が上昇する。この端部の位置(x1,y1)が制御系によって記録される。ミラー等の光学系を制御系によって制御して照射位置を−X方向に移動させる。レーザの照射位置が内径領域20216の反対側の端部(レーザ照射用アパーチャ20215の内径側端部)に到達すると、光量計などにより測定された反射光強度が上昇する。この端部の位置(x2,y2)が制御系によって記録される。この動作により(x1、y1)から(x2、y2)に移動したときのミラー角度移動量が制御系によって記録される。図199(c)に示す例では、(x1、y1)はPL、(x2、y2)はPRに対応する。ミラー移動調整の最小メモリ(最小調整量もしくは制御量)当りの座標移動量が制御系によって算出される。x方向はΔx、y方向はΔy。例えば、最小調整量(メモリ)当り、5μm等。
このとき、レーザ照射用アパーチャ20215の内径側の端部4箇所の座標が制御系の制御によって記録される。例えば、上下左右位置(PL、PR、PU、PD)などの座標が記録される。これにより、内径領域20216の中心C(0,0)が定まる。なお、PL、PR、PU、PDの座標でなくとも、x方向に照射位置を移動させたときの端部2箇所、y方向に照射位置を移動させたときの端部2箇所の座標が求まれば、中心C(0,0)が定まる。x方向の2箇所の座標を(xa,y0)、(xb,y0)とし、y方向の2箇所の座標を(x0,ya)、(x0,yb)としたときには、中心Cは((xa+xb)/2,(ya+yb)/2)として決めることができる。
この後、内径領域20216内、つまり、これらの4つの座標内の位置において、電子ビームがレンズ中心を通過するレーザ照射位置、すなわち、レンズ中心軸上の光電子材料20212の位置P(x,y)の座標を、制御系が認識可能となる。このようにして、制御系は、レーザ照射位置の把握を行い、つまり、照射位置の座標を求めて記録する。このことにより、レーザ、ミラー、レンズ(光電発生装置2020)の位置関係が変わったときでも、制御系は、位置P(x,y)に再度レーザを照射することが可能となる。このレーザ照射位置制御は、試料を検査する前に行う。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜37、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
また、光電子面2021は、別の構成例として、図200に示す構成であってもよい。図199(a)に示す母材20211の光電子材料20212が位置する側は、保持部材20214により保持されるための段差を有する形状あったが、本実施形態における図200の例では、平面になっている。また、保持部材20214は、ネジ等の部材20217により、母材20211等を両側から挟み込むようにして保持する。
(実施形態39)
1次系の軸調整
前述の実施形態38で述べたように、レーザ照射位置を位置P(x,y)に調整するときに、電子ビームの軌道がレンズ中心を通るように設定する方法を説明する。例えば、図35に示す光電発生装置2020において、電子ビームの軌道がレンズ中心を通る場合には、図201のEB1に示すように、レンズ2022、2023、2024のパワー(レンズパワー)を変えても、レンズ通過後の電子ビームの軌道は変わらない。一方、電子ビームの軌道がレンズ中心からずれた位置を通る場合には、レンズパワーを変えると、図201のEB2、EB3に示すように、レンズ通過後の電子ビームの軌道が変わる。本実施形態における構成は、この特性を利用している。
図201に示す本実施形態の光電発生装置2020は、図35と同じ形態である。計測用にアパーチャ2040とアライナ2030を用いて測定する。アライナ2030のうち一式、例えば、2031を用いればよい。2032、2033を用いてもよい(このとき、ニューメリカルアパーチャ2025は、測定に問題のない大きなサイズを用いても良い、例えばφ500~φ2000μm)。測定用アパーチャ2040は、電子ビームが照射された結果生じる吸収電流が測定可能に構成されている。
アライナ2030(図35では例えば2031)を用いて電子ビームの軌道が測定アパーチャ2040の穴の端部から反対側の端部となる偏向量(例えば偏向電圧や偏向に必要な電流等)を求めるように、制御系が制御する。つまり、図201に示すように、アライナ2030の偏向電圧を変えて、電子ビームの軌道が測定用アパーチャ2040に当たる(電子ビームが測定用アパーチャ2040の穴を通過しない)状態(EB3)→電子ビームの軌道が測定用アパーチャ2040の穴を通過する状態(EB1,EB2)→電子ビームの軌道が再び測定用アパーチャ2040に当たる状態(EB4)になるように、電子ビームの軌道をずらしていき、アライナ2030の偏向電圧に対する測定用アパーチャ2040の吸収電流を測定する。この測定を行うと、図202に示すように、測定用アパーチャ2040での吸収電流が測定され、「電子ビーム全量吸収(吸収電流大)」→「穴通過による電子ビーム吸収減少(吸収電流小)」→「電子ビーム全量吸収(吸収電流大)」となる。レンズパワー(GLパワー)を複数変えてこれを行う。
図202(a)に示すように、GLパワー大、小において、吸収電流が最も減少した偏向量(吸収電流が最小となるBA電圧(偏向電圧、以下同じ。))が同じであれば、電子ビームが測定用アパーチャ2040の穴の中心を通過する軌道であることになる。一方、図202(b)に示すように、GLパワー大、小において、吸収電流が最小となるBA電圧が異なっている場合には、レンズ中心からずれた軌道であることになる。制御系は、レーザを照射する位置を変えながら、GLパワー大、小において吸収電流が最小となるBA電圧が同じ電圧となる位置、すなわち、電子ビームの軌道がレンズ中心を通るレーザ照射位置を求め、その座標を電子ビームがレンズ中心を通過するレーザ照射位置P(x,y)として記録する。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜38、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態40)
レーザ照射サイズ制御
前述の実施形態38、39で述べたように、光電子面2021に照射されるレーザの照射位置の制御に加えて、レーザの照射サイズ(スポット径)は、試料に照射される電子ビームのサイズに影響するため重要なパラメータである。スポット径の調整において、光源から出力されたレーザをレンズ、ミラーを用いるだけでは所望のサイズに調整できない場合がある。スポット径2ω0は、2ω0=(4λ/π)(F/D)で表される。ここで、λは光の波長、Fはレンズの焦点距離、Dはレンズ位置でのレーザの直径を示している。この式からわかるように、スポット径は、焦点距離に比例し、レンズの位置でのレーザの直径に反比例する。したがって、スポット径を小さくするためには、光源からのレーザをビームエキスパンダにより直径を大きくしてレンズに入射する方法、および短焦点レンズを用いる方法がある。スポット径を小さくするための方法は、前述のレーザ照射位置の制御方法と組み合わせて、レーザの照射位置、スポット径を適切に調整することに有効である。
ビームエキスパンダを用いる場合の例を、図203を用いて説明する。図203に示すように、光源10000から出力される直径Φd1のレーザは、ビームエキスパンダ810においてA倍に拡大されて直径Φd2のレーザとなって、レンズ焦点F1のレンズ820に入射する。レーザは、ミラー830で反射し、真空を維持するための真空容器850に設けられた透明窓840を通過して、レンズ焦点F1に対応する位置に設置された光電子材料20212に到達する。このとき、光電子材料20212におけるレーザのスポット径は、最小で2ω0=(4λ/π)(F1/Φd2)となる。この例では、レーザは、λ=266nmのCW(Continuous wave)であるものとする。なお、実施形態38におけるレーザ照射位置の調整は、このミラー830の角度を変更するなどして調整されればよい。また、レンズ820をレーザの光軸に沿って移動させる移動機構825が設けられていてもよい。この移動機構825によってレンズ820が移動することにより、光電子材料20212におけるレーザのスポット径を変化させることもできる。
この例において、ビームエキスパンダが有る場合または無い場合について、レンズの焦点距離と最小スポット径との関係を図204に示す。図204に示すように、レンズ焦点距離が長くなるほどスポット径が大きくなり、ビームエキスパンダが有る場合には、無い場合に比べてスポット径が小さくなる。
続いて、ミラー830と真空容器850の間に短焦点レンズを用いる場合の例を、図205を用いて説明する。図205に示すように、光源10000から出力される直径Φd1のレーザは、ミラー830で反射し、レンズ焦点F2のレンズ821に入射する。レーザは、真空を維持するための真空容器850に設けられた透明窓840を通過して、レンズ焦点F2に対応する位置に設置された光電子材料20212に到達する。
なお、レンズ821をレーザの光軸に沿って移動させる移動機構825が設けられていてもよい。この移動機構825によってレンズ821が移動することにより、光電子材料20212におけるレーザのスポット径を変化させることもできる。また、このレンズ821は、短焦点レンズであるため、ミラー830より光電子材料20212側に位置している。そのため、ミラー830によってレーザ照射位置が調整されると、レーザがレンズ821の中心からずれることがある。したがって、このずれを補正するために、移動機構825は、光軸を法線とする面内でレンズ821を移動させるようにしてもよい。なお、また、図203で説明したビームエキスパンダ810(図205では図示せず)が併用されてもよい。
また、レンズ821よりも短焦点のレンズ焦点F3のレンズ822を用いることもできる。レンズ820、821は、真空容器850の外側の大気側に設置されていたが、この場合には、図206に示すように、真空容器850の内部にレンズ822が設置されればよい。このレンズ822に対しても前述のとおり移動機構825が設けられていてもよい。この場合であっても、図203で説明したビームエキスパンダ810(図205では図示せず)が併用されてもよい。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜39、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態41)
図35に示す光電発生装置2020において、レンズ群2022、2023、2024の後段にアライナ2060を追加した構成を、図207を用いて説明する。本実施形態においては、図35に示す構成と同様の構成については、説明を省略する。アライナ2060は、第1アライナ2061および第2アライナ2062を有する。第1アライナ2061、第2アライナ2062は、第3段レンズ2024とニューメリカルアパーチャ2025の間に設置され、第1アライナ2031、第2アライナ2032と同様に静的な動作を行うアライナである。ただし、前述したとおり、第1アライナ2031、第2アライナ2032は、試料への電子ビームの照射位置を制御するために用いられる一方、第1アライナ2061、第2アライナ2062は、ニューメリカルアパーチャ2025の穴の中心を電子ビームが通過するように制御するために用いられる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜40、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態42)
ズーム機能付き光電面1次系
図35、図207などに示す構成において、試料に照射する電子ビームのサイズの制御を行うズーム機能を有するようにすることもできる。ここでは、実施形態41で述べた図207の構成にズーム機能を有するようにした場合について、図208を用いて説明する。本実施形態においては、図207に示す構成と同様の構成については、説明を省略する。
図208に示す構成は、図207に示す構成に加えて、ニューメリカルアパーチャ2025と第1アライナ2031との間に、レンズ群2091、2092、2093が設置されている(3枚の電極により1つのレンズを構成)。図35、図207、図208においても、電極2022、2023、2024はこれらの構成により1群のレンズを構成する。図208の、この実施形態では、レンズ2022、2023、2024をEL1(EL:Electrostatic Lensの略、以下同じ。)といい、レンズ2091、2092、2093をEL2といい、アライナ2060をアライナ1といい、アライナ2030をアライナ2という。なお、さらに、ニューメリカルアパーチャがレンズ2093と第1アライナ2031との間に設置されていてもよい。この場合、1次光学系2000は、2つのニューメリカルアパーチャを有することになる。
本実施形態のズームレンズ構成にすることにより、試料に照射される電子ビームのサイズの制御を行うことが可能となる。これは、光電子面2021に照射されるレーザの照射サイズが同一条件で、EL1およびEL2によるズーム機能により、試料に照射する電子ビームのサイズを制御することが可能となる。例えば、光電子面2021に照射するレーザのサイズに対して×0.1〜×30程度の制御が可能となる。
試料面上での電子ビームのサイズを変更する必要は、2次系(試料の電子像を形成する光学系)の倍率に対応して必要となる。2次系の倍率が変動すると、試料面上の視野(検出器で電子像として撮像される領域)サイズが変化する。そのため、倍率の変動に対応して電子ビームのサイズを変更する必要が生じる。例えば、視野を30×15μmから200×100μmに変更したとき、電子ビームのサイズもそれをカバーするサイズに変更する必要があり、例えば、60×30μmの楕円や矩形で照射された電子ビームを、300×150μmの楕円や矩形の電子ビームに変更する必要が生じる。
このとき、光電子面2021におけるレーザの照射サイズの変更にて対応することも可能であるが、レーザの照射サイズの変更を行うためには、レーザ光学系を交換、調整する必要があり時間がかかること、また、小さい視野に対応した小さいレーザのスポット径を形成すると、レーザ密度が変化して光電子量の変化が生じる。また、光電子量に不安定性が生じる場合もある。このとき、前述した1次系のズーム機能を用いると、同一のレーザの照射サイズであっても、試料面上の電子ビームの照射領域の制御を行うことができる。したがって、このズーム機能を有する構成は非常に有効である。
この実施形態における構成は、アライナ1およびアライナ2の2つのアライナを設けた例である。アライナ1は、電子ビームの軌道が、ニューメリカルアパーチャ2025およびEL2の中心を通過させるために用いられる。レンズ中心に対しては、2次系にあるアライナと併用して使用することもある。
図208に示す各構成要素に対して印加する電圧の例を示す。光電子面2021の電圧をV1、及び引き出しレンズを構成している電極の電圧をそれぞれ、第1引き出し電極2022の電圧をV2、第2引き出し電極2023の電圧をV3、第3引き出し電極の電圧2024をV4、(ここで、電極2022,2023,2024の構成にて1つの静電レンズを形成する)、ニューメリカルアパーチャ2025の電圧をV5、第3アライナ2033の電圧をV6、レンズ電極2091の電圧をV6、レンズ電極2092の電圧をV7、レンズ電極2093の電圧をV8、アパーチャ2040の電圧をV9とする。また、ウエハ表面電圧(リターディング電圧ともいう。)をRTDとする。本実施形態の1次光学系2000においては、光電子面2021の電圧V1を基に記載すると、以下のように各構成要素に電圧を印加する。すなわち、低LEの場合、V1=RTD−10V〜RTD+5V。V2、V4、V6、V8=V1+3000〜30000V。V3、V7=V4+10000〜30000V。V5、V9=基準電位。そして、本実施形態に係る1次光学系の一例としては、RTD=−5000V、V1=−5005V、V2、V4、V6、V8=GND、V3=+20000V、V7=+17000Vと設定した。以上のような電圧印加により、低LEで、高分解能で高いスループットを実現できる。ただし、これは一例であり、各構成要素に対する印加電圧はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜41、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態43)
放電防止スペーサ形状
レンズ724などの各レンズの引き出し電極は、電極間距離が限られている。そのため、電極間に挟み込まれる絶縁体のスペーサの壁面が平面状(断面が直線状)である場合には、沿面耐圧が不足する場合がある。この場合には、図209に示す構成を用いることが有効である。図209に示す例では、電極7241、7242の間に設けられるスペーサ7245は、コマ状のスペーサが3個連なった構成であり、表面が波状になっている。また、スペーサ7245は、表面抵抗が108〜1012Ω・cmセラミック等の絶縁体で構成され、微量のリーク電流が流れることでチャージアップを低減している。なお、コマ上のスペーサは3個に限らず、更に多くても少なくてもよく、4個〜12個程度で用いる場合もある。
沿面耐圧が不足する場合、1kV/mm以上の値(例えば電極7241、7242の電位差が20kV、D=20mm以下となる場合)となるとき、図209(a)の形状のスペーサ7245を用いる。これは、側面が凹凸形状となっており、沿面距離での電界が1kV/mm以下となっている。このとき、接続する電極7241、7242の面と、凹部で接続するのが図209(a)に示すスペーサ7245であり、凸部で接続するのが図209(b)に示すスペーサ7246である。
このとき、電極と凹部で接続するスペーサ7245と、凸部で接続する接続するスペーサ7246とでは、対放電性が大きく異なる。優良なのは、図209(a)に示すスペーサ7245である。例えば、a点で放電が起こったときに、L/dが大きいと、凹部で放電が収束し、外側との放電が発生する確率が下がってくる。これは、凹部では、電界変動が小さいので、つまり同じような電位空間であるため、外部に電子が飛散しにくいからである。よって、電極間の放電が発生しにくい状態で安定する。それに対し、図209(b)に示すスペーサ7246では、凸部で電極7241、7242と接続するので、b点で放電が発生すると、スペーサ7246外部との放電を引き起こしやすい。これは、スペーサ7246外部の空間がすぐそばにあるので、そちらへ電子が飛散する確立が、図209(a)に示すスペーサ7245と比べ増加するからである。また、b点から近傍に放電が起こったとしても、そこから発生する電子が周囲に飛散しさらに放電を引き起こす等、2次的要因も大きくなる。通常、電位の変動が大きい部位、この場合a点、b点で放電が起こる可能性が高い。図209(a)に示すスペーサ7245の場合、特に、L/dが大きい方が好ましい。例えば、L/d≧4、更に、耐放電性を高くして、かつ、製造上可能性を満足するには、L/d≧4〜10程度でもちいると好適である。
このスペーサ7245を用いたレンズは、例えば、図209(c)に示す構成で用いられる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜42、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態44)
汚染防止
前述した実施形態13、27のように、パーティクルを防止するための構成は、他の構成も取り得る。例えば、図210に示すように、レンズ724の周囲には、放電防止のためのギャップGを挟み電圧シールドバリアVBが設置されることもある。図210(a)はレンズ724の中心軸を通る面での断面を模式的に示した図であり、図210(b)は試料Wからレンズ724の方向を見た場合の各構成を示す図である。この図210の構成では、レンズ724に高圧電圧が印加されると、ギャップGの部分に対応する試料Wの表面(汚染領域CA)に異物が堆積して汚染される場合がある。
この汚染を防止する方法として、本実施形態では二種類の構成(図211、図212)を説明する。図211(a)、図212(a)はレンズ724の中心軸を通る面での断面を模式的に示した図であり、図211(b)、図212(b)は試料Wからレンズ724の方向を見た場合の各構成を示す図である。
第1の構成の例は、図211に示すように、ギャップGを中心が開口した円盤状の絶縁体シールドIS1により塞ぐ構成である。絶縁体IS1は、セラミック、SiO2等で構成され、電圧シールドバリアVBに取り付けられることでギャップGを塞ぐように構成される。この例では、絶縁体IS1を電圧シールドバリアVBの試料W側に取り付けている。なお、ギャップを絶縁体IS1で完全に塞がずに、ギャップと絶縁体IS1の間に隙間を設け、ギャップGを狭くしてもよい。このように、ギャップGを塞ぐ、または狭くするように、絶縁体シールドIS1を設けることで、試料Wの汚染領域CAにおける異物の堆積をなくす、または低減することができる。
第2の構成の例は、図212に示すように、レンズ724の側面を囲むようにした筒状の絶縁体シールドIS2を設置する構成である。絶縁体シールドIS2は、セラミック、SiO2等で構成され、レンズ724に固定されている。絶縁体シールドIS2とレンズ724とは、熱膨張率が異なっている。この熱膨張率の違いを利用して、レンズを冷やしてから絶縁体シールドIS2に挿入して常温に戻るときに固定されるような冷やしばめ(cooling fit)を用いて絶縁体シールドIS2とレンズ724とが固定される。ネジ等で固定すると公差の存在により位置決め精度の低下を招くが、本実施形態のように密着して固定することで、レンズの中心軸の位置合わせが行い易くなる。
この構成によれば、レンズ724からの電界の影響により異物が試料Wへ到達するのを、絶縁体シールドIS2の存在により電気的に抑制するため、試料Wの汚染領域CAにおける異物の堆積をなくす、または低減することができる。なお、絶縁体シールドIS1、IS2ともに、表面抵抗が108〜1012Ω・cmとなることで表面に微量なリーク電流が流れ、チャージアップを低減することができる。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜43、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態45)
放電防止
前述したステージ装置50の位置制御が、レーザ干渉測距装置を用いて行われる場合は、図213に示す構成により行われる。レンズ724とステージ装置50の各構成との位置関係について、側面方向から見た場合を図213(a)に示し、上面方向から見た場合を図213(b)に示す。ステージ装置50には、x軸方向の位置制御を行うためのレーザ干渉計用ミラー510xとy軸方向の位置制御を行うためのレーザ干渉計用ミラー510yが設置されている。レーザ干渉計用ミラー510xには、レーザ干渉計511xからレーザが照射される。レーザ干渉計用ミラー510yには、レーザ干渉計511yからレーザが照射される。
レーザ干渉計用ミラー510x、510yは、試料Wと同じ高さ(試料Wの表面の位置)でレーザを反射するようになっていることが望ましい。これは、アッベの原理から示されるように、試料Wの高さと異なるほど、測定位置の誤差が大きくなるためである。図214に示すように、レーザ干渉計用ミラー510xがΦ傾いていた場合、レーザbの位置での誤差は、レーザbの高さHbと試料Wの高さHwとの差(Hb−Hw)×tanΦとなる。Φが非常に小さければtanΦ≒Φ。そのため、誤差は、レーザbの高さHbと試料Wの高さHwとの差(Hb−Hw)が大きいほど、誤差が大きくなる。したがって、レーザbの高さHbと試料Wの高さHwとの差(Hb−Hw)=0、すなわち、レーザaは、試料Wの高さでレーザ干渉計用ミラー510xに照射されることが望ましい。
そのため、レーザ干渉計用ミラー510x、510yは、試料Wの高さHwよりも高い必要がある。なぜならば、特に、組立精度を向上させるために、レーザ干渉計用ミラー510x、510yにセラミックを使用する場合には、セラミック表面を鏡面仕上げとしてミラーを形成している。この場合、加工時の要請により上端部から数mm(例えば3mm程度)は仕様外のエリアが必要となる。図215に示すように、レーザ干渉計用ミラー510x、510yの高さHrは、レーザが照射される高さHw(試料Wの高さ(試料Wの表面の位置))よりも、例えば3mm長くする必要がある。また、試料Wの表面と鏡筒最下部電極72Dとの距離は、光学設計時に決められた距離であり、本実施形態では4mmである。したがって、本実施形態では鏡筒最下部電極72Dとレーザ干渉計用ミラー510x、510yとの距離は1mmとなる。そのため、ステージ装置50の位置によっては、レーザ干渉計用ミラー510x、510yの上端部が、高圧電圧が印加されているレンズ724に近づきすぎて放電してしまう場合がある。したがって、この放電が発生しないようにステージ装置50の位置が決められる必要がある。
図216の側面から見た模式図に示すように、鏡筒最下部電極72Dは、高圧電圧(この例では20kV)が印加されるレンズ724とは絶縁体ISを介して固定され、接地(GND)されている。本実施形態では絶縁耐圧の設計値は4kV/mmとしている。そのため、図216に示すように20kVの電圧が印加されているレンズ724の下端部から5mmの範囲には、ステージ装置50、試料W、レーザ干渉計用ミラー510x、510y等(特にレーザ干渉計用ミラー)が入らないようにする必要がある。
そこで、図217の上面から見た模式図に示すように、レンズ724の下端部からレーザ干渉計用ミラー510x、510yまでは、水平方向のギャップGdが4.58mm以上離れた状態としておかないと、4kV/mm以上の電界が発生する状況が生じてしまう。そのため、このギャップGdが4.58mm以上となる範囲でステージ装置50の可動範囲が制限され、ステージ装置50は、その可動範囲で制御系によって位置が制御される。図217に示す例は、ギャップGdが4.58mm以上となる範囲で、レーザ干渉計511x、511yにステージ装置50を最も近づけた状態である。つまり、ローディングチャンバ40から主ハウジング30内にあるステージ装置50に試料Wを受け渡す時、又は、主ハウジング30内にあるステージ装置50からローディングチャンバ40に試料を受け渡す時、レーザ干渉計の上部がレンズによって放電しない位置(前記可動範囲となる位置)に、ステージ装置50を移動するように位置制御する。図217に示すステージ装置50の位置(主ハウジング30の、レーザ干渉計511x又は、511yが設置されている壁側と対向する壁側)で試料Wの受け渡しを行う必要があるため、ローディングチャンバ40との出入り口となるシャッタ装置45は、図217に示す2ヶ所のいずれか(主ハウジング30の、レーザ干渉計511x又は、511yが設置されている壁側と対向する壁側)に設置する必要がある。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜44、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態46)
光電子面2021に照射される光の光源10000の種類については前述しているが、さらに他の光源であってもよい。例えば、FUVランプ、エキシマランプ、重水素ランプ、キセノンランプ等である。また、LD(Laser Diode)を集光してスポットプラズマを形成し、その励起光を光源とするLD励起光源ランプを用いてもよい。この励起光は、レンズおよびミラーの少なくとも一方を用いて光電子面2021に導入されてもよい。また、この励起光は、レンズおよびミラーの少なくとも一方で光ファイバに導入し、その光ファイバから光電子面2021に導入されてもよい。また、磁場を用いてプラズマの制御をしてもよい。なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜45、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
(実施形態47)
図161における説明では、検出系70においてEB−TDIを用いた例を説明したが、TDIを用いた場合の他の構成例について説明する。本実施形態においては、上述の図161に示す構成と同様の構成については、説明を省略する。
まず、図161に示す検出系70は、EB−TDI72を使用する場合には、EB−CCD71が移動機構Mによって光軸から離れた位置に移動される構成であったが、第1の例として、図218に示すように、移動機構Mには回転シャフトSが連結されていてもよい。図218(a)において、必要な回路や基板等を内蔵する平板状のEB−CCD71の一端に回転シャフトSの一端が連結され、回転シャフトSの他端は移動機構Mに連結される。図218(b)、(c)は、図218(a)に示す構成を移動機構Mの方から見た図である。EB−CCD73を用いる場合には、図218(b)に示すように、EB−CCD73に電子ビームeが入射するよう、EB−CCD73のセンサ面が電子ビームeに垂直になるよう移動される。一方、EB−TDI72を使用する場合には、図218(c)に示すように、移動機構Mによって回転シャフト21を回転させてEB−CCD73を電子光学系の光軸に平行になるよう移動させる。したがって、電子ビームeはEB−CCD73に入射せず、EB−TDI72に入射する。
図218に示す回転を利用する移動機構Mは、図161で説明した1軸方向の移動を利用する移動機構に比べ、サイズ及び重量を例えば1/2〜1/10まで低減することができるという利点がある。
第2の例として、検出系70は、EB−TDI72ではなく、図219に示すように、1つのパッケージに形成されたTDIセンサ721、FOP722、蛍光板723及びMCP724が用いられる構成であってもよい。TDIセンサ721の出力ピンはワイヤボンディングその他の接続手段でフィードスルーFTのピン73に接続される。この場合には前述したとおり、MCP724が検出電子量の増倍を行い、蛍光板723が電子を光信号に変換する。この2次元の光信号が、FOP722により伝達されて、TDIセンサ721にて像が形成され、信号が検出される。図219においては、移動機構Mについては、EB−CCD71を回転させる場合aおよび電子ビームの光軸から離れた位置に移動させる場合bを併記したが、いずれか一方が採用されればよい。図219(b)、(c)は、EB−CCD71を回転させる移動機構Mが採用された場合の図219(a)に示す構成を移動機構Mの方から見た図である。なお、電子増幅が不要である場合には、図220に示すように、検出系70にはMCP724が用いられなくてもよい。
また、検出系70は、図221(a)に示すEB−TDI72が用いられる構成と、図221(b)に示すEB−CCD71が用いられる構成とが、切り替えて使用できる構成であってもよい。このとき、検出系70は、図221(a)に示すEB−TDI72が用いられる構成に代えて、図222(a)に示す構成、または図222(b)に示す構成としてもよい。
続いて、EB−TDI72の動作説明をする。図223は、EB−TDI72のセンサ面72Sにおける画素P11〜Pijを示す平面図である。同図において、矢印T1はセンサ面72Sの積算方向を示し、T2は積算方向T1と垂直な方向、すなわち、ステージ装置50の連続移動方向を示す。本実施形態では、EB−TDI72の画素P11〜Pijは、積算方向T1に500段(積算段数i=500)、ステージ装置50の連続移動方向T2に4000個(j=4000)配置される。
図224はEB−TDI72と二次荷電粒子との位置関係を概略的に示す図である。図224において、試料Wから放出された二次荷電粒子EBが或る時間だけ試料Wの同一個所から放出されるとき、二次荷電粒子EBは、ステージ装置50の連続移動に伴って、写像投影型光学系MO上の一連の場所a、b、c、d、e、・・・、iに対してaからiの順に順次入射する。写像投影型光学系MOへ入射された二次荷電粒子EBは写像投影型光学系MO上の一連の場所A、B、C、D、E、・・・、Iから順次放出される。このとき、EB−TDI72の積算方向T1へのチャージ積算移動をステージ装置50の連続移動と同期させると、写像投影型光学系MOの場所A、B、C、D、E、・・・、Iから放出される二次荷電粒子EBはセンサ面72Sの同一個所へ順次入射され、積算段数iだけチャージを積算することが可能である。このようにして、センサ面72Sの各画素P11〜Pijはより多くの放射電子の信号を取得することができ、それにより、高いS/N比を実現し、且つ、二次元電子像を高速で得ることができる。写像投影型光学系MOは例えば300倍の倍率を有する。
前述したEB−CCD、EB−TDIについては、以下のような特徴を有している。
(A)電子の入射エネルギによりゲインが一義的に決まる。
(B)電子の入射エネルギが高くなるとセンサゲインが上昇する。
(C)電子の入射エネルギ帯域に対して、有効なセンサの厚み(電子を蓄積しやすい厚み)が形成されている。厚みが薄すぎると電子の蓄積量が少なくなり、厚すぎると電子が蓄積されにくい。
(D)電子が直接入射できるセンサである。
(E)表面照射型だけでなく背面(裏面)照射型のセンサを用いることも可能である。
(F)センサ表面に電圧(GNDまたは一定電圧)が印加可能である。
(G)センサ周囲にノイズカットカバーを有していてもよい。
(H)センサおよびカメラの少なくとも一方の電圧をフローティングにすることができる(基準電位を外部より制御可能な構成とすることができる)。
(I)センサゲイン=最大蓄積電荷量/最大取得電子数
なお、本実施形態は、前述の実施形態1〜46、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。