図1及び図2を参照して、本発明の実施例1について、検査対象として表面にパターンが形成された基板即ちウエハを検査する半導体検査装置として説明する。図1及び図2において、半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。実施例1の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、を備え、それらは図1及び図2に示されるような位置関係で配置されている。
半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図8に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図10に図示)と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。
このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2で鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2で実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
図3Bに示す別の実施の形態では、複数の300mmφ基板Wを、箱本体501に固定した溝型ポケット(図示しない)に収納し、搬送及び保管する。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部に対して反対側に位置されるフィルタ類、及びファンモータの着脱を行うための開閉部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示しない)と、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507により構成される。この事例では、基板Wは、ローダー60のロボット式の第1搬送ユニット612により出し入れされる。
カセットc内に収納される基板即ちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板即ちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
図1乃至図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板即ちウエハを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。
この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れ即ちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。
従って、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3乃至0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠き即ちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O1−O1の周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置即ち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。
この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口即ち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。
このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。従って、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。
また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。
更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁の載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述するマルチビーム型電子装置原理と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにウエハを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁301上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。
ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。
ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置や、X、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分即ち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。
アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてウエハを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM3)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。機械的にウエハを把持する場合は、ウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)又は裏面を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときだけである。従って、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を順を追って説明する。カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口223及び236を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。
シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線O0−O0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、処理済みのウエハAと未処理のウエハBがある場合、まずステージ装置50へ未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。この処理中に、処理済みのウエハAをアームによりステージ装置50からウエハラック47へ移動し、未処理のウエハCを同じくアームによりウエハラック47から抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47へ移動する。このようにすることで、ウエハラック47の中には、ウエハBを処理中に、処理済みのウエハAが未処理のウエハCに置き変えられる。
また検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に1つのウエハラック47からウエハを移動することにより複数枚のウエハを同様に処理することもできる。
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例がで示されている。図6[A]に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。従って、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図6[B]に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。
また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図6[B]に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置よって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
電子光学装置70(実施例1、図1)は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図7及び図8に概略図示するような、一次電子光学系(以下単に一次光学系)72と、二次電子光学系(以下単に二次光学系)74とを備える電子光学系と、検出系76とが設けられている。一次光学系72は、電子線を検査対象であるウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズ即ちコンデンサレンズ722と、コンデンサレンズ722の下方に配置されかつ複数の開口が形成されていて一次電子線を複数の一次電子ビーム即ちマルチビームに形成するマルチ開口板723と、一次電子ビームを縮小する静電レンズである縮小レンズ724と、ウイーンフィルタ即ちE×B分離器725と、対物レンズ726と、を備え、それらは、図7に示されるように電子銃721を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される一次電子線の光軸が検査対象Sの表面に鉛直になるように配置されている。
縮小レンズ724及び対物レンズ726の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板723に形成される複数(この実施形態では9個)の開口723aは、図8に示されるように光軸を中心とした円の円周上に形成され、しかもその開口のX軸上への投影像のX方向の間隔Lxが同じになるように配置されている。
二次光学系74は、E×B型偏向器724により一次光学系から分離された二次電子を通す2段の静電レンズである拡大レンズ741及び742と、マルチ開口検出板743を備えている。マルチ開口検出板743に形成される開口743aは、一次光学系のマルチ開口板723に形成されている開口723aと一対一で対応するようになっている。検出系76は、二次光学系74のマルチ開口検出板743の各開口743aに対応してそれに近接して配置された複数(この実施形態では9個)検出器761と、各検出器761にA/D変換器762を介して電気的に接続された画像処理部763とを備えている。
次に、上記構成の電子光学装置(実施例2、図7)の動作に付いて説明する。電子銃721から放出された一次電子線は、一次光学系72のコンデンサレンズ722によって集束されて点P1においてクロスオーバを形成する。一方、コンデンサレンズ722によって集束された一次電子線は、マルチ開口板の複数の開口723aを通して複数の一次電子ビームが形成され、縮小レンズ724によって縮小されて位置P2に投影される。位置P2で合焦した後、更に対物レンズ726によってウエハWの表面上に合焦される。一方、一次電子線ビームは縮小レンズ724と対物レンズ726との間に配置された偏向器727によってウエハWの表面上を走査するように偏向される。
合焦された複数(この実施形態では9本)の一次電子ビームによって試料Sは複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点からは二次電子が放出される。この二次電子は、対物レンズ726の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器725で偏向されて二次光学系74に投入される。二次電子による像は偏向器725に関して位置P2より近い位置P3において焦点を結ぶ。これは、一次電子ビームがウエハ面上で500eVのエネルギを有しているのに対して、二次電子が数eVのエネルギしか有していないためである。
位置P3で合焦された二次電子の像は2段の拡大レンズ741、742でマルチ開口検出板743の対応する開口743aに合焦され、その像を各開口743aに対応して配置された検出器761で検出する。検出器761は、検出した電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。このようにして変換された電気信号は、各検出器761から出力されてそれぞれA/D変換器762にデジタル信号に変換された後、画像処理部763に入力される。画像処理部763は入力されたデジタル信号を画像データに変換する。画像処理部763には、一次電子線を偏向させるための走査信号が供給されるようになっているので、画像処理部はウエハの面を表す画像を表示することになる。この画像を設定器(図示せず)に予め設定された標準パターンと、比較器(図示せず)において比較することによってウエハWの被検出(評価)パターンの良否を検出する。
更に、レジストレーションによウエハWの被測定パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンする事によって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハの表面に形成されたパターンの線幅を測定することができる。なお、一次光学系のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子ビームをウエハWの表面に合焦させ、ウエハから放出される二次電子を検出器761に結像させる際に、一次光学系で生じる歪み、軸上色収差及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。また、複数の一次電子ビーム間の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子ビーム間の間隔を二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板即ちウエハに電子線を走査して照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると二次電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。
そこで、本実施形態では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に検査電子を照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。また、このプレチャージユニットでは一次電子線をぼかして照射してもよい。
図9において、電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子情報(二次電子発生率)が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次電子の発生を制御するものである。また、この電位印加機構は、照射電子が当初有しているエネルギーを減速し、ウエハに100〜500eV程度の照射電子エネルギーとするための用途も果たす。
電位印加機構83は、図9に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニター833と、モニター833に接続されたオペレータ834と、オペレータ834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831並びに偏向器727に信号を供給するようになっている。上記電位印加機構は、検査対象であるウエハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
検査試料の電気的欠陥を検査する方法としては、本来電気的に絶縁されている部分とその部分が通電状態にある場合では、その部分の電圧が異なることを利用することもできる。それは、まず、試料に事前に電荷を付与することで、本来電気的に絶縁されている部分の電圧と、本来電気的に絶縁されている部分であるが、何らかの原因で通電状態にある部分の電圧とに電位差を生じさせ、その後、本発明のビームを照射することで、電位差があるデータを取得し、この取得データを解析して、通電状態となっていることを検出する。
図10において、電子ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル上でウエハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)で、ファラデーカップ852太いビーム用(約φ30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブルをステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベルになるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウエハを光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためであり、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハアライメントを行う時には電子線でアライメントマークを容易に検出することが必要であるからである。
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能な設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図11に示されるようになる。ウエハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871で広視野でウエハを視認してそのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離δx(この実施形態ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向に位置ずれしていてもよい)は予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
このようにして電子光学系により高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ、即ち電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
次に図12及び図13を参照して本発明による半導体デバイスの製造方法の実施例を説明する。図12は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の製造工程は以下の主工程を含んでいる:
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程
(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程
(5)できたチップを検査するチップ検査工程
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
これらの主工程中の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる:
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(B)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(D)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
図13は、図12のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む:
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程
(b)レジストを露光する工程
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
上記(G)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査も可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
本発明によれば、次のような効果を奏することが可能である:
(イ)複数の電子線即ちマルチビームを用いた検査装置の各構成機器を機能的に組み合わせることができたため、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(ロ)エンバイロメント空間内に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(ハ)プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
図14Aは、本発明の実施例3の電子線装置1000の光学系の概略を示す図である。マルチエミッタ1001、1002、1003から放出された1次電子線は、コンデンサレンズ1004で像面1005に縮小投影され、更にレンズ1006、対物レンズ1008で縮小され、試料面1010に縮小投影される。マルチエミッタは、図14Aでは1列のみ示したが、図17Aに示すように複数列設けられる。図17Aは、3×3のエミッタであり、図17Bは図17Aの線17B−17Bにおける断面図である。図17A及び17Bにおいて、1021はSi基板、1022はMoエミッタ、1023はAu引出し電極、1024はSi3N4絶縁膜である。エミッタの数は適宜選択できる。レンズは、2〜10mm直径の開口を持つ2枚〜3枚の平面電極を光軸方向に2〜10mm間隔で配置し、各電極に異なる電圧を与えたもので、凸レンズ作用を示す。
マルチエミッタ1001、1002、1003から放出された1次電子線によって照射された試料面1010から放出された2次電子は、試料面1010と対物レンズ1008間に印加された加速電界によって加速され、大きい放出角で放出された2次電子も対物レンズ1008に入射するまでに細く絞られ、更に開口絞り1007を通過し、レンズ1006で1次ビームと同じ像面1005に結像する。
像面1005位置には、E×B分離器1009が設けられ、レンズ1006を通過した2次電子は、1次光学系から分離される。E×B分離器1009は、試料面1010の法線(紙面の上方向)に垂直な平面内において、電界と磁界とを直行させた構造となっており、電界、磁界、1次電子エネルギーの関係が、1次電子が直進するように設定されている。
分離された2次電子は、レンズ1011、1012で光学的に拡大され、検出面1013に複数の像を形成する。検出面1013には、マルチエミッタ1001、1002、1003からの1次電子線に対応する検出器1014、1015、1016が設けられ、それぞれの電子線によって照射された試料面から放出された2次電子を検出する。なお、マルチエミッタ1001、1002、1003は、1次光学系の像面湾曲を補正するため、Z軸方向に少しずつ位置をずらして配置される。即ち、光軸上のエミッタ1001は、最も試料から遠い位置に設けられ、光軸から離れたエミッタ1002は、像面湾曲の値だけエミッタ1001の位置より試料側に、更に光軸から離れたエミッタ1003は、更に試料に近い位置にずらされる。
試料の全面を照射するため、マルチエミッタからの1次電子線は、静電偏向器1017によって走査される。また、1次電子線の走査に連動して、2次光学系に設けた静電偏向器1018も走査され、2次電子が走査位置によらず常に所定の検出器1014、1015、1016に入射するように制御される。即ち、エミッタ1001、1002、1003からの1次電子線による2次電子は、それぞれ検出器1014、1015、1016に入射するように制御される。検出器等は、20kV程度の電圧が印加されたPINダイオードの前面に検出器の数の孔が設けられた曲面上の電極であり、この電極には1kV程度の電圧が印加される。孔から漏れる20kVの電圧による電界の凸レンズ作用によって、孔の近傍に来た2次電子はすべて孔を通り、検出器に入る。曲面の形状は、2次光学系の像面湾曲を補正する形状としている。
次に、複数の1次電子線の照射位置間隔と、2次光学系との関係について、説明する。図15は、2次光学系と開口角を示した図である。図15に示すように、受け入れ角度α1内の2次電子が、対物レンズ1008、絞り1007、レンズ1006を経て、像面1005に結像されるものとする。このとき、像面1005での開口半角は、αiであり、対物レンズ1008から見た見掛けの角度α0とαiは、2次光学系の拡大倍率をMとすると、αi/α0=1/Mとなる。また、角度α0とα1は、対物レンズ1008でのビームポテンシャルをV8、2次電子の初期エネルギーをViniとすると、(α1/α0)=V8/Viniとなる。
試料面1010での収差と開口半角αiとの関係を図16に示す。図16において、δSは、球面収差、δcomaは、コマ収差、δCは、色収差であり、δtotalは、それらの合計である。今、20μmの収差を許容すると、開口半角αiは、5.3mrad以下にする必要がある。また、検出すべき2次電子の初期エネルギーViniは、0.1eV〜10eVを考えれば十分であり、拡大倍率Mを5、対物レンズ1008でのビームポテンシャルV8を20kVとすると、α1=1185mrad=67.9°となる。
受け入れ角度0°から60°までで90%以上の2次電子を取り込める(例えば、米国特許第5,412,210号明細書Fig.6参照)ので、2次光学系の開口半角αi即ち分解能を5.3mrad程度とし、検出器の寸法を試料面換算で20μmの4倍程度とすれば、90%以上の2次電子をクロストークなしに集めることができる。また、マルチエミッタの間隔も100μm程度とすれば、エミッタ間のクロストークも問題とならない。2次電子を90%以上集める必要がなく、50%以上集めればS/N比を十分取れる場合は、45°より小さい角度で放出された2次電子を検出器に集めるようにすればよい。何故なら、2次電子の収率ηは、次のように表されるからである。
η=∫045°sinθcosθdθ/∫090°sinθcosθdθ=0.5
このようにして、1次電子線は、互いに二次光学系の距離分解能より離れた位置に照射される。図14Bは電子線照射面を上から見た拡大図であり、同図において、距離Nがレンズ1008、1011、1012を通した試料面換算の分解能である。図14Bにおいて、距離Nが、識別できる2点間の距離と等しいかそれ以上であることにより、クロストークのないマルチビームが得られ、高スループットを得ることができる。このように構成した電子線装置は、半導体デバイスの欠陥検査や微小距離の測定に利用することができる。
図12及び図13の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートのるチップ検査工程において、図14Aの電子線装置を利用すると、スループットよく検査ができ、全数検査も可能となり、製品の歩留向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。以上の説明から明らかなように、図14Aの電子線装置によれば、試料から放出される2次荷電粒子の大部分をクロストークを生じることなく検出できるので、S/N比の高い欠陥検査あるいはパターン線幅測定ができる。
また、2次光学系の収差を試料面で20μm程度としても、十分な検出結果が得られるので、2次光学系を高精度のものとする必要がないとともに、1次光学系を試料に対して垂直なものとしたので、複数の荷電粒子線の形成が簡単になる。更に、試料面と2次光学系の初段レンズ間には、1次光学系に対して減速電界が、2次光学系に対しては加速電界がかかっているため、1次荷電粒子線を絞りやすく、かつ広い角度範囲に放出された2次荷電粒子を初段レンズ位置で細い粒子束にでき、効率良く2次荷電粒子を検出できるのでS/N比の良い信号が得られ測定精度が向上する。
図18A及びBは、荷電ビーム装置の従来の真空チャンバ及びステージ(移動台)を示す断面図であり、図19は従来の排気機構の概略斜視図、図20A及びBは、本発明の実施例4の荷電ビーム装置(ステージ等)2000の概略断面図、図21は本発明の実施例5の荷電ビーム装置(ステージ等)2100の概略断面図、図22は本発明の実施例6の荷電ビーム装置(ステージ等)2200の概略断面図、図23は本発明の実施例7の荷電ビーム装置(ステージ等)2300の概略断面図、図24は本発明の実施例8の荷電ビーム装置(ステージ等)2400の概略断面図である。図18−図24において同様の構成部材は、同一の参照番号により指示される。
図20A、図20Bは、実施例4の荷電ビーム装置2000を示す。ステージ2003のY方向可動部2005の上面には+Y方向と−Y方向(図20Bで左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板2014が取り付けられ、X方向可動部2006の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部2050が構成されるようになっている。また、X方向可動部2006の上面にも同様の仕切り板2012が±X方向(図20Aで左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台2007の上面との間に常に絞り部2051が形成されるようになっている。ステージ台2007は、ハウジング2008内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
このため、試料台2004がどの位置に移動しても常に絞り部2050と2051が形成されるので、可動部2005及び2006の移動時にガイド面2006aや2007aからガスが放出されても、絞り部2050と2051によって放出ガスの移動が妨げられるため、荷電ビームが照射される試料近傍の空間2024の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
ステージの可動部2003の側面及び下面並びに可動部2006の下面には、静圧軸受け2009の周囲に、図19に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部2050、2051が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間2013や2015の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。従って、空間2013や2015を、差動排気溝2017や2018で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間2013や2015の圧力を下げることができ、試料近傍2024の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路2011−1と2011−2とが設けられている。排気通路はステージ台2007及びハウジング2008を貫通してハウジング2008の外部に通じている。また、排気通路2011−2はX方向可動部2006に形成されX方向可動部2006の下面に開口している。
また、仕切り板2012及び2014を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にして、その移動方向の端部を、仕切り板2014の場合はX方向可動部2006に、仕切り板2012の場合はハウジング2008の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
図21に本発明の実施例5の荷電ビーム装置2100が示される。実施例5では、鏡筒の先端部即ち荷電ビーム照射部2002の周囲に、試料Sの上面との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り2016が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部2024は仕切り2016で仕切られており真空配管2010で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部2024との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間2024の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り2016と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部2周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μm乃至数mm程度が適当である。なお、仕切り2016内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
また、荷電ビーム照射装置では、試料Sに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り2016の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、試料Sと仕切り2016との間で放電を起こすことがなくなる。試料S(ウエハ)の周囲に配置したリング部材2004−1は試料台2004に固定された板状の調整部品であり、ウエハのような試料の端部に荷電ビームを照射する場合であっても、仕切り2016の先端部全周に亘って微小隙間2052が形成されるように、ウエハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Sのどの位置に荷電ビームが照射しても、仕切り2016の先端部には常に一定の微小隙間2052が形成され、鏡筒先端部周囲の空間2024の圧力を安定に保つことができる。
図22に本発明の実施例6の荷電ビーム装置2200が示される。鏡筒2001の荷電ビーム照射部2002の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り2019が設けられている。仕切り2019は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝2020が形成され、その円周溝からは上方に排気通路2021が延びている。その排気通路は内部空間2022を経由して真空配管2023に繋がれている。仕切り2019の下端は試料Sの上面との間に数十μm乃至数mm程度の微小隙間を形成している。
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部即ち荷電ビーム照射部2002にガスが流入しようとしても、仕切り2019が試料Sとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝2020から真空配管2023へ排気されるため、荷電ビーム照射部2002の周囲の空間2024へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部2002の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
図23に本発明の実施例7の荷電ビーム装置2300が示される。チャンバCと荷電ビーム照射部2002の周囲には仕切り2026が設けられ、荷電ビーム照射部2002をチャンバCから隔てている。この仕切り2026は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材2029を介して冷凍機2030に連結されており、−100℃乃至200℃程度に冷却されている。部材2027は冷却されている仕切り2026と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材2028はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り2026の下端に形成され試料Sと仕切り2026が放電することを防ぐ役割を持っている。
このような構成により、チャンバC内から荷電ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り2026で流入を阻害される上、流入しても仕切り2026の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部2024の圧力を低く保つことができる。なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
図24に本発明の実施例8の荷電ビーム装置2400が示される。ステージ2003の両可動部には、図20に示したのと同様に仕切り板2012、2014が設けられており、試料台2004が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間2013とチャンバC内とが絞り2050、2051を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部2002の周りには図21に示したのと同様の仕切り2016が形成されており、チャンバC内と荷電ビーム照射部2002のある空間2024が絞り2052を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間2013に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間2024の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射空間2024の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り2016に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り2019としたり、図22に示したように冷凍機で冷却された仕切り2026とすることによって、空間2024を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
図25において、本実施の実施例9の荷電ビーム装置2500の光学系及び検出系が模式的に示されている。光学系は鏡筒内に設けられているがこの光学系及び検出器はあくまでも例示であり、必要に応じて任意の光学系、検出器を使用できる。荷電ビーム装置の光学系2060は、荷電ビームをステージ2003上に載置された試料Sに照射する一次光学系2061と、試料から放出された二次電子が投入される二次光学系2071と、を備えている。一次光学系2061は、荷電ビームを放出する電子銃2062と、電子銃2011から放出された荷電ビームを集束する2段の静電レンズからなるレンズ系2063、2064と、偏向器2065と、荷電ビームをその光軸が対象の面に垂直になるように偏向するウイーンフィルタ即ちE×B分離器2066と、2段の静電レンズからなるレンズ系2067、2068と、を備え、それらは、図18に示されるように電子銃2061を最上部にして順に、荷電ビームの光軸が試料Sの表面(試料面)に鉛直な線に対して傾斜して配置されている。E×B偏向器2066は電極2661及び磁石2662を備えている。
二次光学系2071は試料Sから放出された二次電子が投入される光学系で、一次光学系のE×B型偏向器2066の上側に配置された2段の静電レンズからなるレンズ系2072、2073を備えている。検出器2080は、二次光学系2071を介して送られた二次電子を検出する。上記光学系2060及び検出器2080の各構成要素の構造及び機能は従来のものと同じであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
電子銃2011から放出された荷電ビームは、電子銃の正方形開口で整形され、2段のレンズ系2063及び2064によって縮小され、偏光器2065で光軸を調整されてE×B偏向器2066の偏向中心面に一辺が1.25mmの正方形に結像される。E×B偏向器2066は、試料の法線に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造となっており、電界、磁界、電子のエネルギの関係が一定の条件を満たす時には電子を直進させ、それ以外の時にはこれら電界、磁界及び電界のエネルギの相互の関係により所定方向に偏向されるようになっている。図25においては、電子銃からの荷電ビームを試料Sに垂直に入射させ、また試料から放出された二次電子を検出器2080の方向に直進させるように設定されている。E×B偏光器で偏向された成形ビームはレンズ系2067、2068で1/5に縮小されて試料Sに投影される。試料Sから放出されたパターン画像の情報を持った二次電子はレンズ系2067、2068及び2072、2073で拡大され、検出器2080で二次電子画像を形成する。この4段の拡大レンズは、レンズ系2067及び2068が対称タブレットレンズを形成し、レンズ系2072及び2073もやはり対称タブレットレンズを形成しているので無歪みレンズとなっている。
図12及び図13の半導体デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートの(G)の検査工程又は(c)の露光工程に、本発明の実施例3乃至8に係る欠陥検査装置及び欠陥検査方法、露光装置及び露光方法を用いると、微細なパターンを高精度で安定して検査又は露光ができるので、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
本発明による電子線装置の実施例3乃至8によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)実施例4及び5(図20、図21)によれば、ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、荷電ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。即ち、試料に対する荷電ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)実施例6(図22)によれば、静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して荷電ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって荷電ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)実施例7(図23)によれば、荷電ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、荷電ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)実施例8(図24)によれば、真空チャンバ内が、荷電ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に荷電ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、荷電ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)本発明の実施例5−7によれば、ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)本発明の実施例8(図24)によれば、ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)本発明の実施例5−8によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)本発明の実施例5−8によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)本発明の実施例5−8によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
次に図26−図33を参照して本発明の実施例9−10の欠陥検査装置を説明する。図26には、本発明の実施例10に係る欠陥検査装置3000の概略構成が示される。この欠陥検査装置3000は、いわゆる写像投影型の検査装置であり、一次電子線を放出する電子銃3001、放出された一次電子線を偏向、成形させる静電レンズ3002、成形された一次電子線を電場E及び磁場Bの直交する場で半導体ウェーハ3005に略垂直に当たるように偏向させるE×B偏向器3003、偏向された一次電子線をウェーハ3005上に結像させる対物レンズ3010、真空に排気可能な図示しない試料室内に設けられ、ウェーハ3005を載置した状態で水平面内を移動可能なステージ3004、一次電子線の照射によりウェーハ3005から放出された二次電子線及び/又は反射電子線を所定の倍率で写像投影して結像させる写像投影系の静電レンズ3006、結像された像をウェーハの二次電子画像として検出する検出器3007、及び装置全体を制御すると共に、検出器3007により検出された二次電子画像に基づいてウェーハ3005の欠陥を検出する処理を実行する制御部3016を含む。上記二次電子画像には、二次電子だけでなく散乱電子や反射電子による寄与も含まれているが、ここでは二次電子画像と称することにする。
対物レンズ3010とウェーハ3005との間には、一次電子線のウェーハ3005への入射角度を電場等によって偏向させる偏向電極3011が介在されている。この偏向電極3011には、該偏向電極の電場を制御する偏向制御器3012が接続されている。この偏向制御器3012は、制御部3016に接続され、制御部3016からの指令に応じた電場が偏向電極3011で生成されるように偏向電極を制御する。なお、偏向制御器3012は、偏向電極3011に与える電圧を制御する電圧制御装置として構成することができる。
検出器3007は、静電レンズ3006によって結像された二次電子画像を後処理可能な信号に変換することができる限り、任意の構成とすることができる。例えば、図31にその詳細を示すように、検出器3007は、マルチチャンネルプレート3050と、蛍光面3052と、リレー光学系3054と、多数のCCD素子からなる撮像センサ3056と、を含んで構成することができる。マルチチャンネルプレート3050は、プレート内に多数のチャンネルを備えており、静電レンズ3006によって結像された二次電子が該チャンネル内を通過する間に、更に多数の電子を生成させる。即ち、二次電子を増幅させる。蛍光面3052は、増幅された二次電子によって蛍光を発することにより二次電子を光に変換する。リレーレンズ3054がこの蛍光をCCD撮像センサ3056に導き、CCD撮像センサ3056は、ウェーハ3005表面上の二次電子の強度分布を素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換して制御部3016に出力する。
制御部3016は、図26に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体3014と、本体3014の処理結果を表示するCRT3015と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部3018と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部3016を構成してもよい。
制御部本体3014は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器7から受信した電気信号即ちウェーハ3005の二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域3008が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウェーハの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部3013が存在する。
ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域3008から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウェーハ3005の欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム3009が格納されている。この欠陥検出プログラム3009は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部3013から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT3015の表示部に二次電子画像3017を表示するようにしてもよい。
次に、実施例10に係る欠陥検査装置3000の作用を図28乃至図30のフローチャートを例にして説明する。先ず、図28のメインルーチンの流れに示すように、検査対象となるウェーハ3005をステージ3004の上にセットする(ステップ3300)。これは、図示しないローダーに多数格納されたウェーハを一枚毎に自動的にステージにセットする形態であってもよい。
次に、ウェーハ表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ3304)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図32に示すように、例えばウェーハ検査表面3034上に、参照番号3032a、3032b、...3032k、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウェーハの検査パターン3030の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図27に示されたように、16個の被検査領域の画像3032(被検査画像)が取得される。ここで、図27に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウェーハ上のパターンの画像部分に相当する。このステップ3304の詳細は図29のフローチャートで後述する。
次に、ステップ3034で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部3013に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図28のステップ3308)、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図30のフローチャートで後述する。
ステップ3308の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ3312肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ3318)。警告の方法として、例えば、CRT3015の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像3017を表示してもよい。このような欠陥ウェーハを直ちに試料室3から取り出し、欠陥の無いウェーハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ3319)。
ステップ3308の比較処理の結果、ウェーハ3005に欠陥が無いと判定された場合(ステップ3312否定判定)、現在検査対象となっているウェーハ3005について、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ3314)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ3314肯定判定)、ステージ4を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウェーハ3005を移動させる(ステップ3316)。その後、ステップ3302に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ3314否定判定)、或いは、欠陥ウェーハの抜き取り工程(ステップ3319)の後、現在検査対象となっているウェーハ3005が、最終のウェーハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウェーハが残っていないか否かが判定される(ステップ3320)。最終のウェーハでない場合(ステップ3320否定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウェーハをステージ3004にセットする(ステップ3322)。その後、ステップ3302に戻って当該ウェーハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウェーハであった場合(ステップ3320肯定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
次に、ステップ3304の処理の流れを図29のフローチャートに従って説明する。図29では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ3330)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ3332)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図32に示された被検査領域3332aの中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部3316のハードディスク上に記憶され、ステップ3332で読み出される。
次に、図26の偏向電極3011を通過する一次電子線がステップ3332で決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、偏向制御器3312が偏向電極3311に電位を加える(図29のステップ3334)。次に、電子銃3001から一次電子線を放出し、静電レンズ3002、E×B偏向器3003、対物レンズ3010及び偏向電極3011を通して、セットされたウェーハ3005表面上に照射する(ステップ3336)。このとき、一次電子線は、偏向電極3011の作り出す電場によって偏向され、ウェーハ検査表面3034上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って照射される。画像番号i=1の場合、被検査領域は3032aとなる。
一次電子線が照射された被検査領域からは二次電子及び/又は反射電子(以下、「二次電子」のみ称する)が放出される。そこで、発生した二次電子線を拡大投影系の静電レンズ3006により所定の倍率で検出器3007に結像させる。検出器3007は、結像された二次電子線を検出し、検出素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換出力する(ステップ3338)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域8に転送する(ステップ3340)。次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ3342)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ3344)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図27の上述した例では、「16」である。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ3344否定判定)、再びステップ3332に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図32の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域3032bとなる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、ウェーハ検査面3034のパターン3030が検出器3007の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
そして、ステップ3332乃至3342の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図32に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域3032kとなるように、ウェーハの検査面3034上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図27に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域3008に取得される。取得した複数の被検査領域の画像3032(被検査画像)は、図27に例示されたように、ウェーハ検査面3034上のパターン3030の画像3030aを部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ3344肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図28のメインルーチンの比較工程(ステップ3308)に移行する。なお、ステップ3340でメモリ転送された画像データは、検出器3007により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図28のステップ3308)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域3008に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なベタデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。
このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施例10でいう画像データとは、単なるべタデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
次に、ステップ3308の処理の流れを図30のフローチャートに従って説明する。先ず、制御部3016のCPUは、基準画像記憶部3013(図26)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ3350)。この基準画像は、図27では参照番号3036で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ3352)、記憶領域3008から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ3354)。
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Diを算出する(ステップ3356)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ3358)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ3358肯定判定)、当該ウェーハ3005の当該検査面3034には「欠陥無し」と判定し(ステップ3360)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図27の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ3358否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ3362)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ3364)。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ3364否定判定)、再びステップ3354に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ3364肯定判定)、当該ウェーハ3005の当該検査面3034には「欠陥有り」と判定し(ステップ3366)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。本発明の欠陥検査装置3000においては、上記した写像投影型の電子線装置のみならず、いわゆる走査型の電子線装置を利用することができる。これを実施例10として図33を用いて説明する。
図33は、本発明の実施例11の電子線装置3100を概略的に示す図で、同図において、電子銃3061から放出された電子線は、コンデンサレンズ3062によって集束されて点3064においてクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ3062の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板3063が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。第1のマルチ開口板3063によって形成された一次電子線の夫々は、縮小レンズ3065によって縮小されて点3075に投影される。点3075で合焦した後、対物レンズ3067によって試料3068に合焦される。第1のマルチ開口板3063から出た複数の一次電子線は、縮小レンズ3065と対物レンズ3067との間に配置された偏向器3080により、同時に試料3068の面上を走査するように偏向される。
縮小レンズ3065及び対物レンズ3067の像面湾曲収差が発生しないように、図33右上部分に示すように、マルチ開口板3063は、円周上に小開口が配置され、そのX方向へ投影したものは等間隔となる構造となっている。合焦された複数の一次電子線によって、試料3068の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から放出された二次電子線は、対物レンズ3067の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器3066で偏向され、二次光学系に投入される。二次電子像は、点3075より対物レンズ3067に近い点3076に焦点を結ぶ。これは、各一次電子線は試料面上で500eVのエネルギーを持っているのに対し、二次電子線は数eVのエネルギーしか持っていないためである。
二次光学系は、拡大レンズ3069、3070を有しており、これらの拡大レンズ3069、3070を通過した二次電子線は、第2マルチ開口板3071の複数の開口に結像する。そして、これらの開口を通って複数の検出器3072で検出される。図33右上部分に示すように、検出器3072の前に配置された第2のマルチ開口板3071に形成された複数の開口と、第1のマルチ開口板3063に形成された複数の開口とは一対一に対応している。
夫々の検出器3072は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号へ変換する。こうした各検出器から出力された電気信号は増幅器3073によって夫々増幅された後、画像処理部3074によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部3074には、一次電子線を偏向させるための走査信号が偏向器3080から更に供給されるので、画像処理部3074は試料3068の面を表す画像を表示する。この画像は、第1の実施形態で説明した位置の異なる複数の被検査画像(図27)のうち1つの画像に相当している。この画像を基準画像3036と比較することにより、試料3068の欠陥を検出することができる。また、レジストレーションにより試料3068上の被評価パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、試料3068上のパターンの線幅を測定することができる。
ここで、第1のマルチ開口板3063の開口を通過した一次電子線を試料3068の面上に合焦させ、試料3068から放出された二次電子線を検出器3072に結像させる際、一次光学系及び二次光学系で生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう配慮した方がよい。
次に、複数の一次電子線の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
図33の走査型電子線装置3100においても、図28及び図29のフローチャートに従って、試料3068の検査を行う。この場合、図29のステップ3332の画像位置(Xi,Yi)は、マルチビームを走査して得られる複数のライン画像を合成した2次元画像の中心位置に対応する。この画像位置(Xi,Yi)は、後の工程で順次、変更されるが、これは、例えば偏向器3080のオフセット電圧を変更することによって行う。偏向器3080は、設定されたオフセット電圧の回りに電圧を変化させることによって、通常のライン走査を行う。勿論、偏向器3080とは別体の偏向手段を設け、これにより画像位置(Xi,Yi)の変更を行ってもよい。
上述の実施例10及び11の装置を図12及び図13の半導体デバイス製造工程におけるウェーハの評価に適用することができる。図12及び図13のフローチャートは、ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェハを準備する準備工程)、露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)、ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程、ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程、組み立てられたチップを検査するチップ検査工程を含む。
これらの工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす工程がウェーハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウェーハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウェーハプロセッシング工程は以下の各工程を含む:
(1) 絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(2) 形成された薄膜層やウェーハ基板を酸化する酸化工程
(3) 薄膜層やウェーハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程
(4) レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(5) イオン・不純物注入拡散工程
(6) レジスト剥離工程
(7) 加工されたウェーハを検査する検査工程
なお、ウェーハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
上記ウェーハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を図13のフローチャートに示す。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む:
(1) 前段の工程で回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程、
(2) レジストを露光する露光工程、
(3) 露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程、
(4) 現像されたパターンを安定化させるためのアニール工程、
以上の半導体デバイス製造工程、ウェーハプロセッシング工程、リソグラフィー工程には周知の工程が適用される。
上記(7)のウェーハ検査工程において、本発明の上記各実施形態に係る欠陥検査装置3000を用いた場合、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、二次電子画像の像障害が無い状態で高精度に欠陥を検査できるので、製品の歩留向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内で任意好適に変更可能である。例えば、被検査試料として半導体ウェーハ3005を例に掲げたが、本発明の被検査試料はこれに限定されず、電子線によって欠陥を検出することができる任意のものが選択可能である。例えばウェーハへの露光用パターンが形成されたマスク等を検査対象とすることもできる。
また、本発明は、電子以外の荷電粒子線を用いて欠陥検出を行う装置にも適用できるばかりでなく、試料の欠陥を検査可能な画像を取得できる任意の装置にも適用可能である。更に、偏向電極3011は、対物レンズ3010とウェーハ3005との間のみならず、一次電子線の照射領域を変更できる限り任意の位置に置くことができる。例えば、E×B偏向器3003と対物レンズ3010との間、電子銃3001とE×B偏向器3003との間などがある。更には、E×B偏向器3003が生成する場を制御することによって、その偏向方向を制御するようにしてもよい。即ち、E×B偏向器3003に偏向電極3011の機能を兼用させてもよい。
また、上記実施例10及び11では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
また、本発明の実施例10及び11では、被検査画像の位置ずれを一次電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することができるので、欠陥検出の精度を向上させることができる。
更に、欠陥検査用の電子線装置として、図26及び図33の構成を示したが、電子光学系等は任意好適に変更可能である。例えば、図26に示された欠陥検査装置の電子線照射手段(3001、3002、3003)は、ウェーハ3005の表面に対して垂直上方から一次電子線を入射させる形式であるが、E×B偏向器3003を省略し、一次電子線をウェーハ3005の表面に斜めに入射させるようにしてもよい。。
また、図28のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ3312で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ3314及びステップ3316を省略することができる。以上詳細に説明したように本発明の実施例10及び11の欠陥検査装置によれば、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
更に本発明の実施例10及び11を用いるデバイス製造方法によれば、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うようにしたので、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
図34は本発明の実施例12の電子線装置4000を示す配置図である。この電子線装置4000は、試料Tに1次電子線を照射するための電子銃4001と、試料Tからの2次電子線を検出する2次電子検出器4011とを有する。図34において、4020は軸対称電極である。電子銃4001から放出された電子線はコンデンサレンズ4002で集束されNA(ニューメリカルアパーチャー)を決める開口4004にクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ4002の下には開口板4003が設けられ、該開口板には、図35Aに示すように、合計8個の開口4014が設けられる。この開口4014は縮小レンズ4005でE×B分離器4006の偏向主面に結像し、更に対物レンズ7で試料面Tに縮小投影され、1次電子線照射点E(図36)を形成する。試料面Tの各1次電子線照射点Eから放出された2次電子はE×B分離器4006で図34の右方へ偏向され、2次光学系4009で拡大され、検出器穴群4010に結像される。試料Tは、移動ステージ(図示せず)上に支持されており、図34の紙面に対して垂直な方向(y方向)で移動される。
図35Aに示すように、開口板4003の開口4014は、3行3列とされるが、電子銃から放出される電子の輝度(電子密度)がある程度以上大きい、所定直径内にのみ開口4014が設けられることが好ましく、従って、図示の例では、3行3列目は設けられていない。また、2行目及び3行目の開口は、それぞれ1行目及び2行目に対して、図35Aで見て右方へ、列間の間隔D1の1/3だけずれている。更に、これら開口4014間の間隔D1、D2は、試料上での1次電子線の照射点Eの間隔が十分離れるようなものとする。これは、2次光学系は検出効率を良くするため開口角を大きくしているので収差が大きく、検出器穴群4010上で2次電子像が各ビーム間でクロストークを起す可能性があり、これを防ぐためである。
図34B及びCは、それぞれ円周上に開口を配置される開口板4050、4060の平面図である。図34Bの開口板4050の開口4051、4052・・のx軸線上への投影点は、等間隔Lxとされ、同様に図34Cの開口板4060の開口4061、4062・・のx軸線上への投影点は、等間隔Lxとされる。本発明の実施例の電子線装置4000において、試料面上に2次元的に配置される隣接する1次電子線同士の距離の最大値が最小となるように1次電子線が配置される。
図34Bの開口板4050の隣接する2つの開口間の距離50a、50b、50e、50fは、それぞれ47mm、63mm、63mm、41mmであり、図34Cの開口板4060の隣接する2つの開口間の距離60a、60b、60fは、それぞれ56mm、57mm、41mmである。これら2つの開口板を比較すると開口板4060は、隣接する1次電子線同士の距離の最大値が57mmであり、開口板4050の50b(63mm)より小であるから、図34Cの開口板4060の開口の配置がより適切であるということができる。
このような要件を備える開口板を使用する利点は、実際の隣接する1次電子線の間隔がほぼ等しくなり、対称性が良くなること、非点収差が発生し難くなること、1次電子線が互いに離れるので空間電荷効果による1次電子線のボケが小さくなること、試料上で対称な位置の近くへ照射が行われるので、試料の帯電による影響が緩和されること等である。
1次電子線は、これら小開口4014によって複数に分離され、縮小レンズ4005によってE×B分離器4066の偏向主面に結像し、更に対物レンズ4007によって試料面Tに縮小投影され、図36に示すように、1次電子線の照射点Eを形成する。試料面Tの各照射点Eから放出された2次電子は、対物レンズ4007と試料面との間に印加された電界で加速・集束し、対物レンズ4007と電子銃側レンズとの間に設けたE×B分離器4006によって、図34の右側に偏向され、2次光学系のレンズ4009によって拡大され、複数の開口を設けた検出用開口板4010に結像され、2次電子検出器4011において検出される。試料Tは、ステージ(図示せず)上に支持されており、該ステージの移動により、図34の紙面に対して垂直な方向(y方向)に移動する。
更に、これら小開口4014間の間隔D1、D2は、試料T上での1次電子線の照射点Eの間隔が十分離れるように設定されている。照射点Eの間隔が一定でない場合には、その間隔の最も小さい値が問題になるので、その間隔の最小値をできるだけ大きくする必要がある。これは、2次光学系は検出効率を高くするため開口角を大きくしているので収差が大きく、検出用開口板4010上で2次電子像が2次電子線間でクロストークを生じる可能性があり、これを防ぐためである。
電子線走査用の偏向器4012、4013は、試料T上の1次電子線の照射点Eを、図36で見て左から右の方向(x方向)に走査するように構成され、その走査距離Sは、照射点Eの列間の間隔Hの約1/3(S=H/3+α)に設定される。試料Tをy方向での検出すべき領域の長さ分だけ移動させた後、ステージをx方向にステップ移動させて試料をx方向に400μmだけ移動し、その後、上記と同様に、ステージを−y方向に連続移動させつつラスタスキャン(x方向に400μm+α)を行う。これを繰り返すことにより、検出すべき領域すべての画像データを得ることができる。
この電子線装置において試料面Tの検査を行う場合には、移動ステージ4020が、試料をy方向に連続的に移動する。その間、走査用偏向器4012,4014は、上述の如く、各1次電子線照射点Eをx方向にH/3+αだけ走査させるので、例えば、1次電子線照射点Eの間隔Hが150μmとすると、各1次電子線照射点Eは、(150μm×1/3)+αの幅の走査を行い、全体として、(150μm×1/3)×8(個)(=400μ+α)の範囲で画像データが得られる。試料を、試料面のy方向での長さだけ移動すると、移動ステージは、試料をx方向で400μmだけ移動し、上記と同様のy方向での折返し移動による走査が行われる。
この画像データを、所定のパターンデータから得られる画像と比較することにより所要の検査が行える。処理速度は、図示の例では、信号取り込みが8チャンネルとなり、しかも折返し時間以外は、連続的な検査が行えるので、従来のものに比べて格段に早くなる。尚、折返し回数は、試料面の検査領域幅(x方向幅)を200mmとした場合、200mm/0.4mm=500回であり、各折返しに0.5秒の時間を要するとしても、1枚の試料全体を検査するときに折返し走査に要する時間は、約4分であり、極めて少ない。
線幅測定を行う場合には、走査用偏向器4012、4013をオクタポールとしてy方向にも走査可能にし、x方向に偏向することにより被測定パターン位置にビームを移動し、y方向に走査すればよい。x方向のパターン線幅を測定する場合にステージ位置とy方向偏向により被測定パターン位置にビームを移動し、x方向に走査し従来の方法と同様の信号処理を行えばよい。合せ精度測定の場合は、合せ精度が評価可能な様なパターンを作製しておき、線幅測定と同様の走査を行えばよい。
実施例12(図34)においては、1つの電子銃4001による1つの電子線照射系を有するものを示したが、複数の電子銃及びそれに対応する開口板、及び、2次電子検査器等からなる、複数の電子線照射系を、相互に、上記の例では、x方向で隣接して並べ、一度のy方向での試料の移動において、400μm×(電子線照射系の数)だけの幅を検査できるようにすることができる。本発明の実施例12(図34)によれば、複数の1次電子線により広い走査幅(400μm幅)をカバーした状態で、その走査幅と直角方向に試料を連続的に移動させることにより試料面の検査を行うようにしたので、当該試料面全面の走査時間を大幅に短縮することができる。また、複数の1次電子線を用いたので、各電子線の走査幅を狭くすることができ、従って、色収差を抑えて試料面に対する照射点Eを小さいものとすることができ、しかも電子線間を十分離すことができる。従って、2次光学系におけるクロストークを抑えることができる。
試料は連続的に移動されるので、従来の試料を静止し、微小領域を走査した後に、試料を移動して他の微小領域を走査するような電子線装置に比べて、試料移動のために使う無駄な時間を大幅に減少することができる。更に、電子銃を複数とし、複数の電子線照射系を設定することにより、より効率の良い検査を行うことが可能となる。本発明の実施例12(図34)によれば、複数の1次電子線の照射点を2次元的に配置するので、照射間の距離を大きくすることができる。しかも1軸(x軸)上への投影した照射点間の距離はすべて等しいので、すき間なく試料面を走査することができる。またE×Bを使うため1次電子線を垂直入射できるので、電子線を細く絞ることができる。
図37は本発明の実施例13の電子線装置4100の概略構成図である。図37において、4101は検査用の電子線を放出する一体のカソードを有する単一の電子銃、4103はコンデンサレンズ、4105はコンデンサレンズからの電子ビームより複数の電子ビームを形成するマルチ開口板、4107はコンデンサレンズが作る電子線源の拡大像位置に設けられたNA用開口板、4109、4111はマルチ開口板で形成された複数の電子ビームを一定の縮小率で縮小した後検査対象である試料4113面に結像させるレンズ、4115はレンズを通過した二次電子を一次電子より分離させるE×B分離器である。ここで一体のカソードとは、単結晶LaBb等のカソード材料の先端を種々の形状に加工したものをいう。
E×B分離器4115は、試料面の法線(紙面の上方向)に垂直な平面内で電界と磁界とを直交させた構造となっており、電界、磁界、一次電子エネルギーの関係が一次電子を直進させるように設定されている。4117はマルチ開口板4105で形成された複数の電子ビームを同時に偏向させ試料4113上の検査領域を走査する偏向器、4119は二次光学系の拡大レンズ、4121は一次光学系の偏向器4117と同期作動され試料の走査に拘わらずマルチ開口板4105の開口4105a,4105b,4105c,4105dからの各ビームの入射点からの二次電子を対応する検出器に入射させるための偏向器、4123は一次光学系のマルチ開口板に対応した開口4123a,4123b,4123c,4123dを有する二次光学系のマルチ開口板、4125はマルチ開口板の背後に配置された検出器群である。検出器群4125は入射した電子量に応じた検出信号を発生する電子増倍管などで構成される。
図37の電子線装置4100において、電子銃4101から放出された電子線はコンデンサレンズ4103で収束され、マルチビームを形成する開口板4105のマルチ開口4105a−4105dを照射する。各開口4105a,4105b,4105c,4105dを通過した電子線は一次光学系の開口数を決めるNA開口板4107の開口位置にクロスオーバーを結ぶ。クロスオーバーを通過した電子線はコンデンサレンズ4109で対物レンズ4111の主面にクロスオーバー像を形成する。ここでNAとは、開口数(Numerical Aperture)の略である。マルチ開口板4105の各開口の開口像はコンデンサレンズ4109でE×B分離器4115の主面に結像してから対物レンズ4111により試料4113表面に結像される。
一方、試料から放出された二次電子は、E×B分離器4115で一次電子から分離されて二次光学系の方向に偏向され、二次光学系の拡大レンズ4119で拡大されマルチ開口板4123の開口を経て該マルチ開口板の裏面側に配置された検出器群4125により検出される。ここで、電子銃4101から放出される電子線の電流密度は、マルチ開口板4105の中心開口4105dへの値が最大で、4105c,4105b,4105aと光軸から離れるに従って減少し、このため試料4113面上でのビーム電流が異なる。これを解決するため、一つの実施例では、マルチ開口板4105の開口4105a−4105dの大きさを、光軸付近で小さく、光軸より離れるに従って漸次大きくなるように微調整し、試料4113面上で各開口を通ったビーム電流が全てのビームについてほぼ等しくなるようにする。このため、試料4113面上に各ビーム電流を検出する検出器群を置き各ビームの電流を検出する。
また、上記問題を解決する他の方法としては、上記一次光学系の開口度を決めるNA開口板4107の光軸方向位置を、一次光学系のレンズが作る電子線源の拡大像のガウス像面(近軸光線の焦点位置)から電子銃1側にずらした位置に設ける。即ち、コンデンサレンズ4103が作るクロスオーバー位置は、レンズの球面収差によってマルチ開口板4105の各開口を通ったビームのクロスオーバー位置(光軸方向位置)がビームごとに異なる。例えば、開口4105aからのビームが作るクロスオーバー位置は4108aの位置であり、開口4105cからのビームが作るクロスオーバー位置は4108cである。即ち、一次光学系のレンズが作る電子線源のガウス像面は最もNA開口板4107より遠方にある。
従って、NA開口板4107をガウス像面位置より電子銃1側にずらし、マルチ開口板4105の最外側開口4105aが作るクロスオーバー位置に置くことにより、該開口位置では、開口4107を通るビームの電流密度が大きく、かつビームの通過が制限されず、一方光軸付近の開口4105cを通ったビームの電流密度は低く、かつビームの通過量が制限されることにより、試料4113面における輝度即ちビーム電流のばらつきを縮小することがができる。なお、この場合も、先の実施例と同様に、各ビーム電流を検出する検出器群を試料面位置に配置することより各開口を通ったビームの電流を検出する。
更に、上記問題は、マルチ開口板4105の開口寸法の上記調整と、NA開口板4107の光軸方向位置の上記調整とを組み合わせることによっても解決することができる。上記事例は、いれも試料4113面に入射するビーム電流を均一にすることを目的としたが、実際には二次光学系の二次電子の検出率が光軸付近と光軸から離れた位置とで異なる問題がある。そこで、本発明の更に他の事例では、パターンの無い試料を試料位置に置き、該パターンの無い試料面からの二次電子を検出器群4125にて検出し、各検出器の出力の差が最小となるようにNA用開口板4107の光軸方向位置を決定することにより、二次光学系の二次電子の検出率のばらつきを修正することができる。この開口板をずらす量は、開口板から試料への縮小率をM、光学形の像面湾曲のz方向距離をδmmとすると、ずらす量=δ/(2M)となり、通常1〜10mmである。
また、二次光学系の二次電子の検出率のばらつきは、上記と同様にパターンの無い試料を試料位置に置き、該パターンの無い試料面からの二次電子を検出器群4125にて検出し、各検出器の出力の差が最小となるように、一次光学系のマルチ開口板4105の開口寸法を光軸付近で小さく、光軸より離れるにつれて漸次大きくなるように微調整することによっても修正することができる。
更に、二次光学系の二次電子の検出率のばらつきは、上記と同様にパターンの無い試料を試料位置に置き、該パターンの無い試料面からの二次電子を検出器群4125にて検出し、各検出器の出力の差が最小となるように、二次光学系のマルチ開口板4123の開口寸法を光軸付近で小さく、かつ光軸より離れるにつれて漸次大きくなるように微調整することによっても修正することができる。更に、この問題は、マルチ開口板4105の開口寸法の上記調整、NA開口板4107の光軸方向調整、二次光学系のマルチ開口板4123の開口寸法の上記調整を組み合わせることによっても解決することができる。ここで図示しない制御、計算方法によって各検出器4125の出力差を最小とする調整方法を用いるものである。
なお、図37の実施例13において、各ビーム間の評価は偏向器4117によって全ビームを同時に偏向させ、試料4113上で全ビームを走査させ、その時の信号を検出器で検出するようにした。また、ビームを走査したときも各ビームの入射点からの二次電子が対応するマルチ開口板4123の穴に確実に入射するよう偏向器4111の走査に同期して偏向器4121により二次電子を走査した。図12のフローチャートのウェーハを検査する検査工程に、本発明の実施例13の電子線装置4100を用いることによって、より高精度、高スループットの検査、測定を行うことができる。
本発明の実施例13の電子線装置4100は、フォトマスクやレクチル、ウェーハ等(試料)の欠陥検査や、線幅測定、合わせ精度測定、電位コントラスト測定等の各種検査や測定に適用できる。本発明の実施例13の電子線装置4100によれば、一体のカソードあるいは単一の電子銃から複数のビームを作るので、複数のエミッタを用いる場合に比べて電子銃が故障する確率が著しく改善され、装置の信頼性が向上する。またマルチビームの各ビームの電流を均一化できるのでより精度の高い高スループットの検査、測定が可能となる。実施例13の電子線装置4100は熱電界放出電子銃のような狭い方向へのみ電子放出する電子銃をも使用することができる。実施例13の電子線装置4100は、各ビームの電流を均一化できるので、マルチビームのビーム数を増大することができ、マルチビームをより広い範囲に照射することができる。従って、高スループットの検査、測定ができる。またビーム間の信号強度をほぼ等しくすることができる。
図38〜図41を参照し、本発明の実施例14の電子線装置4200を詳述する。図38の電子線装置4200において、電子銃4201から放出された電子線は、コンデンサ・レンズ4202によって集束されて点COにおいてクロスオーバを形成する。このクロスオーバ点COに、NAを決める開口4204を有する絞り4204が配置される。
コンデンサ・レンズ4202の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板4203が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。第1のマルチ開口板4203によって形成された一次電子線のそれぞれは、縮小レンズ4205によって縮小されてE×B分離器4206の偏向主面4215に投影され、点4215で一度結像した後、対物レンズ4207によって試料4208に合焦される。
縮小レンズ4205及び対物レンズ4207の像面湾曲収差を補正するため、図38に示すように、マルチ開口板4203は、中央から周囲へ向かうにつれてコンデンサレンズ4202からの距離が大きくなるように段が付けられた構造となっている。
合焦された複数の一次電子線によって照射された試料4208の複数の点から放出された二次電子線は、対物レンズ4207の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器4206の手前の点4216、即ち、E×B分離器4206の偏向主面に関して試料側の点4216に焦点を結ぶ。これは、各一次電子線は試料面上で500eVにエネルギを持っているのに対して、二次電子線は数evのエネルギしか持っていないためである。試料4208から放出された複数の二次電子線はE×B分離器4206により、電子銃4201と試料4208とを結ぶ軸の外方へ偏向されて一次電子線から分離され、二次光学系へ入射する。
二次光学系は、拡大レンズ4209、4210を有しており、これらの拡大レンズ4209、4210を通過した二次電子線は第2のマルチ開口板4211の複数の開口を通って複数の検出器4212に結像する。なお、検出器4212の前に配置された第2のマルチ開口板4211に形成された複数の開口と、第1のマルチ開口板4203に形成された複数の開口とは一対一に対応している。
各検出器4212は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号へ変換する。こうして各検出器から出力された電気信号は増幅器4213によってそれぞれ増幅された後、画像処理部4214によって受信され、画像データへ変換される。この画像データが試料の欠陥や線幅の測定に供される。即ち、画像処理部4214には、一次電子線を偏向させるための走査信号が更に供給されるので、画像処理部4214は試料4208の面を表す画像を表示する。
この画像を標準パターンと比較することにより、試料4208の欠陥を検出することができ、また、レジストレーションにより試料4208を一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、試料4208上のパターンの線幅を測定することができる。ここで、第1のマルチ開口板4203の開口を通過した一次電子線を試料4208の面上に合焦させ、試料4208から放出された二次電子線を検出器4212に結像させる際、一次光学系及び二次光学系で生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。以下、このために本発明の実施例14において採用した手段について、図39〜図41を用いて説明する。
図39〜図41においては、第1のマルチ開口板4203及び第2のマルチ開口板4211に形成された開口の大きさ、形状、ずれの量などは理解を容易にするため強調されており、実際のものとは相違する。図39は、本発明における電子線装置に使用する第1のマルチ開口板4203の第1の例を示しており、この例のマルチ開口板4203は、試料面上に糸巻き型(ピンクッション型)の歪み収差が生じたときに使用され、糸巻き型の歪み収差を補正するため、第1のマルチ開口板4203にタル型に位置ずれした複数の開口が形成される。即ち、第1のマルチ開口板4203の中心X、即ち電子銃4201と試料4208とを結ぶ線と第1のマルチ開口板4203との交点を中心とする正方形4220の4隅のそれぞれ1個の開口4221〜4224が形成される。
図39における縦、横の実線は該正方形の相対向する2辺に平行に仮想的に引かれた線であって、複数の開口が第1のマルチ開口板4203に均一に分布する場合には、開口はこれらの実線の交点に配置されることになる。実際には、一次光学系における歪み収差を最小にするため、各開口は、第1のマルチ開口板4203の中心からの距離に依存して、実線の交点から第1のマルチ開口板4203の中心の方へずれた位置に配置されるよう設計される。
図40は、本発明における電子線装置に使用する第2のマルチ開口板4211の一例を示しており、二次光学系に存在する歪みに起因して生じ得る糸巻き型(ピンクッション型)の歪みによる影響を最小にするために使用される。図40においても、第2のマルチ開口板4211のそれぞれの開口は、中心Yからの距離に応じて、開口を均一に分布させた理想的な位置から外方へずらされている。このずれの量は、対物レンズ4207及び拡大レンズ4209、4210とE×B分離器4206を含む系においてシミュレーションを行って算出された。最も外側の開口は大きすぎてもクロストークを生じないので、充分大きい開口としてもよい。また、図39、図40のマルチ開口板4203、4211は、1枚の板に複数の開口を設けた実施の形態を記載しているが、装置設計上、マルチ開口板は2枚以上の複数枚で構成してもよい。
像面湾曲については、前記のとおり、第1のマルチ開口板4203の断面形状を段付きとすることにより、一次光学系により発生する像面湾曲を補正することができる。二次光学系によっても像面湾曲が生じるが、検出器4212の前面に配置される第2のマルチ開口板4211の開口が大きいので、実際は、二次光学系による像面湾曲は無視し得る。視野非点収差は、レンズの屈折率がレンズの放射方向と周方向とで異なるために発生する。図41A及び図41Bは、この視野非点収差を緩和するため、この発明に係る電子線装置に使用する第1のマルチ開口板4203の第2の例を示しており、図41Aに示す第1のマルチ開口板4203においては、それぞれの開口は第1のマルチ開口板4203の中心からの距離に依存して、該中心に関して放射方向に細長い形状とされている。また、図41Bにおいては、第1のマルチ開口板4203の中心に中心を置く仮想円の半径方向と周方向とで大きさが異なるよう、それぞれの開口の形状が設定されている。
図38における参照数字4217はブランキング偏向器を示しており、このブランキング偏向器4217に幅の狭いパルスを印加することにより、パルス幅の狭い電子線を形成することができる。これによって形成された幅の狭いパルスを用いると、試料4208に形成されたパターンの電位を高時間分解能で測定することが可能となるので、電子線装置に対していわゆるストロボSEM(走査型電子顕微鏡)の機能を付加することができる。図38における参照数字4218は軸対称電極を示しており、この軸対称電極4218に試料4208より数10ボルト低い電位を与えると、試料4208から放出される二次電子を、試料4208のパターンの有する電位に依存して、対物レンズ4207の方へ流し又は試料側へ追い戻すことができる。これによって試料4208上の電位コントラストを測定することができる。
図38〜図40に示す本発明の実施例14に係る電子線装置4200は、欠陥検査装置、線幅測定装置、合わせ精度測定装置、電位コントラスト測定装置、欠陥レビュー装置又はストロボSEM装置に適用することが可能である。また、本発明の実施例14の電子線装置4200は、図12、図13に示す半導体デバイスの製造工程のウエハの評価を行うために使用することができる。
図12のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程は、前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコーティングするレジスト工程、レジストを露光する露光工程、露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程、及び、現像されたレジストのパターンを安定化するためのアニール工程(図13)を含む。本発明の実施例14の電子線装置4200は、更に加工されたウエハを検査する図12のウエハ検査工程において使用することができる。
本発明は上述の実施例に限定されない。例えば、試料4201の異なる位置を同時に照射できるよう、電子銃4201、第1のマルチ開口板4203、一次光学系、二次光学系、第2のマルチ開口板4211及び検出器4212からなる電子線照射・検出系を複数系統設け、複数の電子銃から出た複数の一次電子線で試料を照射し、試料から放出された複数の二次電子線を複数の検出器で受け取るようにしてもよい。これにより、検査や測定に要する時間を大幅に短縮することができる。
以上の説明から理解されるであろうように、この発明の実施例14の電子線装置4200は、次の効果を奏する:
1.一次光学系による歪み収差を補正し、合せて、視野非点収差も緩和することができるので、広い領域を複数のビームで照射して走査することができ、試料の欠陥検査等を高いスループットで行うことが可能になる。
2.二次光学系による歪みを補正することができるので、複数の一次電子線を狭い間隔で試料に投影、走査してもクロストークが無く、しかも、二次電子の透過率を大きくすることができ、結果的にS/N比の大きい信号を得ることができるので、信頼性の高い線幅測定等を行うことができる。
3.一次光学系をE×B分離器6の偏向主面に結像させることができるので、一次電子線の色収差を小さくすることができ、一次電子線をマルチビームとするときにもマルチビームを細く絞ることが可能になる。
図42を参照して本発明の実施例15の電子線装置4300を説明する。図42の電子線装置4301は、一次光学系4310と、二次光学系4330と、検出装置4340とを備える。一次光学系4310は、電子線を試料Sの表面(試料面)に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃4311と、電子銃から放出された電子線を偏向する静電レンズ4312と、二次元的に配列された複数の小孔(ただし、図42では4313a乃至4313eのみ図示する)が形成された開口板4313と、静電偏向器4314と、開口アパーチャ4315と、開口板を通過した電子ビームを偏向する静電中間レンズ4316と、第一のE×B分離器4317と、電子ビームを偏向する静電中間レンズ4318と、静電偏向器4319と、第二のE×B分離器4320と、静電対物レンズ4321と静電偏向器4322とを備える。それらは、図42に示すように電子銃4311を最上部にして順に、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料の表面SFに垂直になるように配置されている。従って、静電対物レンズ4321と試料S間を軸対象の構造とすることができ、電子ビームを細く絞ることができる。
二次光学系4330は、一次光学系4310の第二のE×B分離器4320の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って配置された静電拡大レンズ4331と、二次元的に配列された複数の小孔(図では4332a乃至4332eのみ図示する)が形成された開口板4332とを備えている。検出装置4340は開口板4332の各開口毎に検出器4341を備えている。なお、開口板4332の開口(4332a乃至4332e)の数は一次光学系の開口板4313に形成される小孔(4313a乃至4313e)の数及び配列に合わせた数及び配列となっている。上記各構成要素は公知のものであってもよく、それらの構造の詳細説明は省略する。
次に上記構成の電子線装置4300の動作について説明する。単一の電子銃4311から放出された電子線Cは静電レンズ4312で収束され、開口板4313を照射する。電子線Cは開口板4313に形成された複数の小孔(4313a乃至4313e)を通過して複数の電子ビームにされる。これら複数の電子ビームは開口部を有する開口アパーチャ4315でクロスオーバーC1を形成する。クロスオーバーした電子ビームは試料Sに向かって進み、途中に設けられた静電中間レンズ4316及び静電中間レンズ4318により収束され、静電対物レンズ4321の主面に結像されて、ケラー照明条件を満足する。一方、開口板4313の各小孔の像を形成する電子ビームDは静電中間レンズ4316により収束されて第一のE×B分離器4317の偏向主面FP1に結像し、更に静電中間レンズ4318により収束されて第二のE×B分離器4320の偏向主面FP2に結像し、最終的に試料面SFに結像する。
試料面SFから放出された二次電子は、静電対物レンズ4321と試料面SFとの間に印加された、二次電子に対する加速電界で加速、収束され、静電対物レンズ4321を通過し、第二のE×B分離器4320の偏向主面FP2の少し手前でクロスオーバーを結像する。この結像した二次電子は第二のE×B分離器4320により光軸Bに沿って移動するように偏向されて静電拡大レンズ4331に入射する。二次電子は次に静電拡大レンズ4331により拡大され、開口板4332の小孔(4332a乃至4332e)において拡大結像される。
試料面SFと開口板4332は二次電子強度の2eVの値に対して光学的共役関係にあり、開口板4313の小孔4313aを通った電子ビームにより試料面SFで放出された二次電子は開口板4332の小孔4332aを通して、小孔4313bを通った電子ビームにより試料面SFで放出された二次電子は開口板4332の小孔4332bを通して、小孔4313cを通った電子ビームにより試料面SFで放出された二次電子は開口板4332の小孔4332cを通して、と言ったように、電子ビームにより試料面で放出された二次電子は開口板4313の各小孔に対応する開口板4332の各小孔を通って検出器4341に入射する。
上記複数の電子ビームとそれに隣接する電子ビームの間は、静電偏向器4319と第二のE×B分離器4320とを用いて符号Eで示されている主光線軌道になるように電子ビームを偏向走査して、各電子ビームの間の走査を行うことができる。第二のE×B分離器で偏向走査を行うには、第二のE×B分離器4320のウィーンフィルター条件を満足し、電子ビームを直進させる電圧をVw、磁場をBwとすると、Vwの直流電圧を中心にしてその電圧に走査電圧が重畳するような電圧波形を与えればよく、第二のE×B分離器4320の電界を与える電極を8極の静電偏向器とすると二次元の走査が可能となる。従って、静電対物レンズ4321の上部に偏向器を新たに設ける必要がなく、しかもE×B分離器も静電偏向器も最適の位置に配置することができる。
次に、従来技術において単一のE×B分離器を使用することにより色収差が生じていわゆるビームボケが生じる問題点と、その解決策について説明する。一般的に、E×B分離器を使用する電子線装置においては、電子ビームに対して開口の像の位置とE×B分離器の偏向主面とが一致した時に収差が最も小さい。しかもE×B分離器の偏向主面と試料面は共役になっている。そのため、エネルギー幅のある電子ビームがE×B分離器に入射したとき、低いエネルギーの電子ビームが電界により偏向される量はエネルギーに逆比例して大きくなるが、磁場により偏向される量はエネルギーの1/2乗に逆比例してしか大きくならない。
一方、高いエネルギーの電子ビームの場合は、電界により偏向される方向に電子ビームが偏向される量よりも磁場により偏向される方向に偏向される量の方が大きくなる。この場合、E×B分離器の下側に静電レンズが設けられかつそのレンズが無収差であればビームボケは生じないが、現実的にはレンズに収差があるためビームボケが生じる。従って、単一のE×B分離器を使用するのみでは電子ビームのエネルギーに幅がある場合には色収差によりビームボケが生じることは回避できない。
本発明では、第一と第二の二つのE×B分離器4317及び4320を備え、第一のE×B分離器4317と第二のE×B分離器4320との電界による偏向方向が試料面上で見て相互に逆方向になり、かつ偏向の大きさの絶対値が等しくなるように、各E×B分離器の電界を調整している。従って、電子ビームのエネルギーに幅がある場合でも、E×B分離器による色収差は、第一及び第二のE×B分離器4317及び4320により相互に相殺される。
上記構成の電子線装置4300を使用して試料面の欠陥検査、試料面に形成されたパターンの線幅の測定等を行うには、検査すべき試料をセットし、電子線装置1を上述のように動作させる。この場合、静電偏向器4319及び第二のE×B分離器4320に与える走査信号波形と、二次電子の検出器4341の出力信号とで画像データを作成し、その画像データと、別途得られたパターンデータから作成した画像データとを比較することにより欠陥検査を行うことができる。
また、静電偏向器4319及び第二のE×B分離器4320により、測定したパターンをその直角方向に走査し、そのとき得られた二次電子の信号波形からパターンの線幅の測定が行える。更に、一層目のリソグラフィで形成されるパターンの近傍に二層目のリソグラフィで形成されるパターンを形成し、これら二本のパターンを電子線装置4300の複数の電子ビームのビーム間隔と略等しい間隔で形成しておき、これら二本のパターン間隔を測定し、その測定値を設計値と比較することにより、合わせ精度を評価することができる。また、二次電子の検出器4341の一部又は全部にCRTモニターを接続し、走査信号波形と共に入力することにより走査型電子顕微鏡(SEM)像をCRTモニター上に形成することができる。検査人はこのSEM像を見ながら欠陥の種類等を観察できる。
図42において、静電対物レンズ4321と試料面SFとの間に同軸状の電極4322を設け、この電極4322に負の電圧を与えることにより電位コントラストを測定することができる。また、図42において、電子ビームをブランキングするため、短時間だけ電子ビームを偏向させず残りは電子ビームを偏向させるような電圧を静電偏向器4314に与え、偏向された電子ビームは開口アパーチャ4315で除去するようにすることにより、短パルスの電子ビームが得られる。この短パルスの電子ビームを試料面SFに入射させ、試料面上のデバイスを作動状態にして、パターンの電位測定を良好な時間分解能で測定すれば、デバイスの動作解析が行える。
図43は、上述の構成を有する電子線装置の一次光学系と二次光学系の組を試料S上で複数組配置した状態の平面図を示しており、この実施形態では、6組の一次光学系4310と二次光学系4330とが2行3列に配列されている。実線で描かれた円4310a乃至4310fは一次光学系の最大外径を示し、一点鎖線で描かれた円4330a乃至4330fは二次光学系の最大外径を示す。また、本実施例では、一次光学系4310の開口板4313の小孔は3行3列に配列されており、二次光学系4330の開口板4332の小孔も同様に3行3列に配列されている。複数の各光学系の組は、各々が互いに干渉しないように、各二次光学系4330の光軸Bが行の並び方向に沿って試料の外側に向かうように配置されている。列の数は、好ましくは3,4列程度であるが、これ以下の2列、或いは4列以上であってもよい。
本発明の実施例15の電子線装置4300は、更に加工されたウエハを検査する図12のウエハ検査工程において使用することができる。即ち検査工程に本発明の実施例15の欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
本発明の実施例15の電子線装置4300(図42)は、次の効果を奏する:
(1)複数の電子ビームを使うのでスループットが向上する。
(2)複数のE×B分離器を備え、開口板の小孔の像の位置とE×B分離器のそれぞれの位置とを一致させ、かつそれぞれのE×B分離器の電界で偏向される電子ビームの方向が試料面上で見て相互に逆方向となるようにしたことにより、E×B分離器により生じる色収差を補正することが可能となり、電子ビームを細く絞ることが可能となったため、高い検査精度を確保することができる。
(3)第二のE×B分離器の電界に走査電圧を重畳させて電子ビームの偏向動作をさせるようにしたことにより、第二のE×B分離器と静電偏向器とを兼用させることができ、静電対物レンズ21の上部に新たに静電偏向器を設ける必要性がなく、しかもE×B分離器と静電偏向器の両者を最適の位置に配置することができる。それにより、二次電子の検出効率を向上させることと偏向収差を低減することが同時に可能となり、更に、二次光学系の光路を大幅に短くすることも可能となる。
(4)電子線装置の一次光学系と二次光学系の組を試料上で複数組配置したので、一時に複数の試料を検査することが可能となり、スループットが更に向上する。
(5)静電対物レンズ4321と試料面SFとの間に同軸状に静電偏向器4322を設け、この静電偏向器4322に負の電圧を与えることにより、電位コントラストを評価することが可能になる。
(6)電子ビームをブランキングする機能を設けて静電偏向器4314の電圧を制御して短パルスの電子ビームを形成し、試料面上のデバイスを作動状態にして、パターンの電位測定を良好な時間分解能で測定すれば、デバイスの動作解析が可能となる。
図44Aは、本発明の実施例16の電子線装置4400の概略配置図であり、図44Aにおいて、電子銃4401から放出された電子線は、コンデンサ・レンズ4402によって集束されて、点4404においてクロスオーバを形成する。コンデンサ・レンズ4402の下方には、複数の小開口を有する第1のマルチ開口板4403が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。第1のマルチ開口板4403によって形成された一次電子線のそれぞれは、縮小レンズ4405によって縮小されて、点4415に投影される。一次電子線は、点4415で合焦した後、対物レンズ4407によって試料4408に合焦される。第1のマルチ開口板4403から出た複数の一次電子線は、縮小レンズ4405と対物レンズ4407との間に配置された偏向器4419により偏向されて、x−yステージ4420上に載置された試料4408の面上を同時に走査する。
縮小レンズ4405及び対物レンズ4407の像面湾曲収差の影響を無くすため、図44Bに示すように、第1のマルチ開口板4403は、円周上に小開口4433が配置され、これらのx軸上に投影した点は、等間隔Lxとなるように設定される。合焦された複数の一次電子線によって、試料4408の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から放出される二次電子線は、対物レンズ4407の電界に引かれて細く集束され、EXB分離器4406で偏向され、2次光学系に投入される。2次電子像は、点4415より対物レンズ4407に近い点4416に焦点を結ぶ。これは、各一次電子線が試料面上で500eVのエネルギーを持っているのに対して、二次電子線が数eVのエネルギーしか持っていないためである。
二次光学系は、拡大レンズ4409、4410を有しており、これらの拡大レンズを通過した二次電子線は、第2のマルチ開口板4411の複数の開口4443を通って、複数の電子検出器4412に結像する。図44Bに示すように、検出器4412の前に配置された第2のマルチ開口板4411に形成された複数の開口4443と、第1のマルチ開口板4403に形成された複数の開口4433とは、1対1に対応する。複数の検出器4412は、それぞれ第2のマルチ開口板4411の複数の開口に対向して配置される。
検出器4412は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号へ変換する。各検出器4412から出力された電気信号は、増幅器13によってそれぞれ増幅された後、画像処理部14によって画像データヘ変換される。画像処理部14には、一次電子線を偏向させるための走査信号SSが更に供給されるので、画像処理部4414は、試料4408の面を表す画像を生成することができる。この画像を標準パターンと比較することにより、試料4408の欠陥を検出することができる。立上がり幅検出部4430は、プロセス中は切り離されるが、初期焦点合わせのための励起電圧を決定する段階で動作する。その動作は、後述する。
また、レジストレーションにより、試料4408の被測定パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、試料4408上のパターンの線幅を測定することができる。ここで、第1のマルチ開口板4403の開口4433を通過した一次電子線を試料4408の面上に合焦させ、試料4408から放出された二次電子線を検出器4412に結像させる際、一次光学系で生じる歪み、軸上色収差、及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう、特に配慮する必要がある。また、複数の一次電子線の間隔と二次光学系との関係については、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば、複数の電子線間のクロストークを無くすことができる。
対物レンズ4407は、図44Cに示すように、ユニポテンシャル・レンズであり、一次電子線を試料4408の表面に集束させるため、対物レンズ4407の中央電極には電源4428から正の高電圧V0ボルトが印加され、対物レンズ4407の上側電極及び下側電極には、電源4429からアース電位に近い小電圧である励起電圧±△V0が印加される。
電子銃4401、軸合わせ用偏向器4417、第1の開口板4403、コンデンサ・レンズ4402、偏向器4419、ウィーン・フィルタ即ちEXB分離器4406、対物レンズ4407、軸対称電極4423、及び二次電子検出器4412は、適宜のサイズの鏡筒4426内に収納されて、一つの電子線走査・検出系を構成する。なお、電子線走査・検出系の初期焦点合わせは、励起電圧±△V0を例えば−10ボルトに固定しておき、正電圧V0を変化させることによって、実行することができる。
上で説明したように、鏡筒4426内の電子線走査・検出系は、試料上のチップパターンを走査し、走査の結果として試料から放出された二次電子線を検出して、その強度を表す電気信号を出力する。実際には、試料の表面に複数のチップパターンが形成されているので、図44Aに示した電子線走査・検出系と同様の構成の電子線走査・検出系(図示せず)が複数、並列する形態で、相互の距離が試料上のチップ寸法の整数倍の距離になるよう配置される。
電子線走査・検出系について更に説明すると、電子検出器4412から出力された電気信号は、画像処理部4414において、2値化情報へ変換され、この2値化情報を画像データに変換する。この結果、試料の表面に形成された回路パターンの画像データが得られ、得られた画像データは、適宜の記憶手段に蓄積されると共に、基準の回路パターンと比較される。これにより、試料上に形成された回路パターンの欠陥等を検出することができる。
試料上の回路パターンを表す画像データとの比較のための基準回路パターンは、種々のものを使用することができる。例えば、当該画像データを生じる走査が行われた回路パターンを作製したCADデータから得られた画像データを用いることもできる。
図44Aに示す電子線装置において、対物レンズ4407の上側電極又は下側電極に印加すべき励起電圧±△V0の値は、CPU等の制御装置(不図示)の制御下で、以下のようにして決定される。まず、試料4408の表面に形成された任意の一つの回路パターン上に、第1の方向に平行なパターン・エッジと、この第1の方向に直交する第2の方向に平行なパターン・エッジとが存在する場所を、例えばパターン・データから読み出して特定する。
次いで、偏向器4419及びE×B分離器4406を用いて、一次電子線により、第1の方向に平行なパターン・エッジを第2の方向に走査し、その結果放出された二次電子線の強度を表す電気信号を電子検出器4412から取り出し、立上がり幅検出部4430において、該電気信号の立上がり幅p(単位:μm)を測定する。同様に、第2の方向に平行なパターン・エッジについても、偏向器4419及びEXB分離器4406を用いて、一次電子線により第1の方向に走査し、その結果放出された二次電子線の強度を表す電気信号を電子検出器442から取り出し、立上がり検出部4430において、その電気信号の立上がり幅pを測定する。この操作を、電圧±△V0を変更して、少なくとも3つの電圧値について行う。
制御装置(図示せず)は、立上がり幅検出部4430からのデータに基づいて、図45Aの曲線A及びBを作成する。曲線Aは、第1の方向に平行なパターン・エッジに関しての、±△V0それぞれに対する立上がり幅pμmの関係を示す。曲線Bは、第2の方向に平行なパターン・エッジに関しての、±△V0それぞれに対する立上がり幅pμmの関係を示す。電気信号の「立上がり幅R」は、図45Bのグラフに示すように、励起電圧±△V0(及び高電圧V0)を固定した状態で、第1の方向(又は、第2の方向)に平行なパターン・エッジを第2の方向(又は、第1の方向)に走査したときに測定される電気信号が、その最大値の12%から88%まで変化するのに要する走査距離R(単位:μm)として表したものである。
図45Aの曲線Aは、励起電圧±△V0が−△V0(x)のときに立上がり幅pが最小であり、従って、このときに立上りがもっとも鋭いことを示す。同様に、曲線Bは、励起電圧±△V0が+△V0(y)のときに立上がり上がり幅が最小であり、立上りが最も鋭いことを示している。従って、対物レンズ7の焦点条件、即ち、上側電極及び下側電極に印加する電圧±△V0の値は、{−△V0(x)+△V0(y)}/2に設定することが好ましい。励起電圧±△V0は0〜±20Vの範囲でしか変化しないので、上記のようにして対物レンズ4407の整定を実際に行ったところ、10マイクロ秒という高速で対物レンズ4412の整定を行うことができ、図45Aの曲線A及びBを取得するのに、150マイクロ秒しか要しなかった。
また、曲線A及びBを得るために、多数の±△V0について測定を行う必要はなく、図45Aに示すように、±△V0の3つの電圧値として、−△V(1)、+△V(2)、+△V(3)を設定して立上がり幅pを測定し、双曲線近似により曲線A及びBを求め、立上り幅pの最小値−△V0(x)及び+△V0(y)を求めればよい。その場合には、45マイクロ秒程度で測定を行うことができる。
上記したように、図45Aの曲線A及びBは、2次曲線即ち双曲線に近似している。立ち上がり幅をp(μm)、対物レンズ電圧±△V0をq(ボルト)とすると、グラフA及びBは、a、b及びcを定数として、
(p2/a2)−(q−c)2/B2=1
と表せる。そこで、3つのq(電圧±△V0)の値q1、q2、q3と、それらに対応するp(立上がり幅)の値p1、p2、p3を上記式に代入すると、次の3つの式(1)〜(3)が得られる。
(p12/a2)−(q1−c)2/b2=1 (1)
(p22/a2)−(q2−c)2/b2=1 (2)
(p32/a2)−(q3−c)2/b2=1 (3)
これらの式(1)〜(3)から、a、b及びcの値が算出され、q=cのとき、最小値となる。
以上のようにして、立ち上がり幅pが最小となる、第1の方向に平行なパターン・エッジに関する対物レンズへの励起電圧△V0(x)を、3つのレンズ条件で求めることができる。全く同様にして、第2の方向に平行なパターン・エッジに関する対物レンズ電圧△V0(y)を求めることができる。
図45Aの曲線A及びBに示したように、第1の方向に延存するパターン・エッジを第2の方向に走査したときと、第2の方向に延在するパターン・エッジを第1の方向に走査したときとで、立上がり幅が異なることが一般的である。このような場合には、例えば、8極の非点補正レンズ4421(図44)を設けて、該レンズ4421に印加する電圧を調整することにより、パターン・エッジを第1の方向及び第2の方向に走査したときの電子検出器4415からの電気信号の立上りが更に小さくなるように、非点補正を行うことが必要である。非点収差がほとんどない場合は、△V0(x)あるいは△V0(y)のどちらかを求めればよいので、曲線A又はBのいずれかのみを求めてもよい。
以上説明したように、電子線走査・検出系における焦点合わせを行い、その後、試料8の評価を行うプロセスに移行する。本方法では、光学的なZセンサではなく、電子光学的な手段で合焦条件を求めているため、試料が帯電している場合にも、正しい合焦条件が求められるという利点がある。
電子線走査・検出系を含んだ鏡筒4426と同様の構成の鏡筒(図示せず)を、鏡筒4426と並列する形で、互いの距離が試料4408上のチップ・サイズの整数倍の距離になるよう配置した場合、それぞれの鏡筒において一次電子線が試料上に合焦するよう焦点合わせを行う必要がある。しかしながら、こうした焦点合わせは、ほぼ同時に行うことが可能であるので、スループット・バジェットは、僅かな値でしかない。
次に、本発明の半導体デバイス製造方法について説明する。本発明の半導体デバイス製造方法は、上記した電子線装置を用いて、前述の図12及び図13に示す半導体デバイス製造方法において実行されるものである。
本発明の半導体デバイス製造方法においては、図44を参照して説明した電子線装置を用いて、加工途中の工程(ウエハ検査工程)のみならず、完成したチップを検査するチップ検査工程(図12)において用いることにより、微細なパターンを有する半導体デバイスであっても、歪み、ぼけ等が低減された画像を得ることができるので、ウエハの欠陥を確実に検出することができる。
図12のウエハ検査工程及びチップ検査工程において、本発明に係る電子線装置を用いることにより、微細なパターンを有する半導体デバイスをも、高スループットで検査することができるので、全数検査が可能となり、製品の歩留りの向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
本発明の実施例16の電子線装置4400は、次の作用効果を奏する。
(1)試料面の高さを測定するための光学式センサを使用する必要がないので、対物レンズと試料との間を電子光学系のみで最適設計することが可能になる。
(2)電子線走査・検出系の焦点合わせは低電圧の調整のみで可能であるので、整定時間を短縮することができる、.即ち、短時間で焦点合わせを行うことができる。
(3)必要に応じて、焦点合わせの操作の中で、非点補正をも短時間で行うことが可能である。
(4)プロセス途中の試料を短時間で評価することができることになるので、デバイス製造の歩留まりを向上させることができる。
図46及び47を参照して本発明の実施例18の電子線装置4500を説明する。図46は、実施例18の電子線装置4501を模式的に示す。この電子線装置4500は、一次光学系4510と、二次光学系4530と、検出装置4540とを備える。一次光学系4510は、電子線を試料Sの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃4511と、電子銃から放出された電子線を縮小する静電レンズ4513と、二次元的に配列された複数の小孔(ただし、図46では4514a乃至4514iのみ図示する)が形成された第一の開口板14と、開口アパーチャ4515と、第一の開口板を通過した電子ビームを縮小する静電レンズ4516と、静電偏向器4517と、E×B分離器4518と、静電対物レンズ4519とを備え、それらは、図46に示すように電子銃4511を最上部にして順に、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料Sに垂直になるように配置される。
電子銃4501の内部には単結晶のLaB6カソードを多数の突起を有する形状に研磨して形成された突起部4512が形成されている。静電レンズ4513、4516及び静電対物レンズ4519の像面湾曲収差の影響を無くすため、図47に示すように、第一の開口板4514には円周上に小孔が配置されそのX方向への投影したものは等間隔Lxとされる。
二次光学系4530は、E×B分離器4518の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って順に配置された、第一の静電拡大レンズ4531と、開口アパーチャ4532と、第二の静電拡大レンズ4533と、二次元的に配列された複数の小孔(図では4534a乃至4534iのみ図示する)が形成された第二の開口板4534とを備える。
検出装置4540は第二の開口板4534の各開口毎に検出器4541を備えている。なお、第二の開口板4534の小孔(図2において破線で示されている)4534a乃至4534eの数及び配列は、第一の開口板4513に形成される小孔(図47において実線で示されている)4514a乃至4514eの数及び配列に一致されている。上記各構成要素は公知のものであってもよく、それらの構造の詳細説明は省略する。
次に、上記構成の電子線装置4500における標準モードについて説明する。単一の電子銃4511の多数の突起部4512から放出された電子線Cは静電レンズ4513で収束され、第一の開口板4514を照射する。電子線Cは第一の開口板4514に形成された複数の小孔(4514a乃至4514e)を通過してマルチビームにされる。これらマルチビームは開口アパーチャ4515でクロスオーバー像C1を形成する。クロスオーバーしたマルチビームは、試料Sに向かって進み、途中に設けられた静電中間レンズ4516により収束され、静電対物レンズ4519の主面に結像されて、ケラー照明条件を満足する。該結像されたマルチビームは試料上に縮小像を結像し、また、静電偏向器4517とE×B分離器4518の偏向器により試料上を走査される。
試料Sから放出された二次電子は、静電対物レンズ4519と試料Sとの間に印加された、二次電子に対する加速電界で加速、収束され、静電対物レンズ4519を通過し、E×B分離器4518により光軸Bに沿って移動するように偏向されて静電拡大レンズ4531に入射する。二次電子は次に静電拡大レンズ4531により拡大され、開口アパーチャ4532にクロスオーバー像C2を形成する。これら結像した二次電子は、次に、静電拡大レンズ4533により拡大されて第二の開口板4534の小孔(4534a乃至4534e)において結像される。二次光学系の拡大率は2つの静電拡大レンズ4531及び4533で決定することができる。
図47に示すように、第一の開口板4514の小孔4514aを通った電子ビームにより試料Sで放出された二次電子は第二の開口板4534の小孔4534aを通して、小孔4514bを通った電子ビームにより試料Sで放出された二次電子は小孔4534bを通して、小孔4514cを通った電子ビームにより試料Sで放出された二次電子は小孔4534cを通して、と言ったように、電子ビームにより試料面で放出された二次電子は第一の開口板4514の各小孔に対応する第二の開口板4534の各小孔を通って検出器4541に入射する。
上記標準モードから高解像度モードに変更するには走査幅を変更し、かつ画像倍率を変更する必要がある。走査幅を変更することは、静電偏向器4517及びE×B分離器4518の偏向器のビット当たりの偏向感度を調整することにより可能である。しかしながら、走査幅を標準モードから狭くすると、マルチビームのそれぞれのビームの間に走査の隙間ができることとなる。また、二次光学系においてビーム像間隔が検出器の間隔と一致しなくなる。
ビームの間に走査の隙間ができることについては、第一の開口板4514から試料Sへの縮小率を静電レンズ4516と静電対物レンズ4519とをズーム動作させることにより、画素寸法の変化に対応して変化させることで解決できる。クロスオーバー像C1を対物レンズ4519の主面に結像させるケーラ照明条件は、標準モードでのみ満たすようにし、高解像度モードでは満たさないものとする。
また、二次光学系においてビーム像間隔が検出器の検出器間の寸法と一致しなくなる対策として、二次光学系の開口アパーチャ4532の位置及び大きさは固定とし静電拡大レンズ4533の励起電圧を変えることにより試料の各ビームから放出された二次電子の主光線が対応する第二の開口板の小孔に入射するようにしている。即ち、二次光学系の静電拡大レンズ4533により、拡大倍率と開口アパーチャ4532でのクロスオーバーの合焦条件とを合わせるようにしている。また、マルチビームの縮小率を静電レンズ4516と静電対物レンズ4519とをズーム動作させると共に、ズーム動作に関係付けて二次光学系の静電拡大レンズ4531、4533で拡大率を変更することにより、二種類の画像寸法で試料の評価を行うことができる。
このような一次光学系でのマルチビームの縮小率と二次光学系の静電レンズでの拡大率との関係は、具体的には、図46で開口間の寸法(例えば4514aと4514bの間隔)が1mmであり、一次光学系でのマルチビームの縮小率が1/100とすると、開口4514aと4514bを出たビームの間隔は、10μmとなる。そして二次光学系の拡大率を500倍とすると、開口4534aと4534bの間隔は、5mmである。
一次光学系でのマルチビームの縮小率を1/200に変えたとき、二次光学系の拡大率を500×2=1000倍とすることにより、開口4534aと4534bの間隔は5mmとなるから、開口4534aと4534bの間隔を変えることなく、2次電子の検出を行うことができる。この特徴の利点は、一次光学系でのマルチビームの縮小率を変えることによってビーム寸法、ビーム電流、又は走査幅を変えることができることである。そしてスループットは悪くなるが、高解像度の評価を行ったり、分解能は悪いが高スループットの評価をしたりすることが可能となる。
更に、クロスオーバ像を、スループットは、大きいが解像度が比較的低いモードにおいて対物レンズの主面に形成する。具体的には、例えば、解像度が50nm、スループットが8.8分/cm2のモードと、解像度が100nm、スループットが33秒/cm2のモードとを持つ装置において、前者のモードの場合に、クロスオーバ像を対物レンズの主面に置いた。
本発明の実施例17(図46)の電子線装置4500は、図12及び図13の半導体デバイスの製造方法に好適に使用される。即ち、この製造方法における検査工程に本発明の実施例18の欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
本発明の実施例17(図46)の電子線装置4500は、次の効果を奏する:
(1)任意の倍率の画像を走査の隙間なく形成することができるので、標準モード及び高解像度モードで使用することができる。
(2)倍率を変更した場合でも、画像寸法とビーム寸法とを略対応させることができる。
(3)標準モードでは一次光学系のケーラ照明条件を満足することができる。一方、高解像度モードの場合での一次光学系のケーラ照明条件からのズレは少なく、収差はそれ程増大しない。
(4)試料面に対して垂直方向に放出された試料からの二次電子が二次光学系の光軸と交差する位置に開口アパーチャを設けているため、モードを変更した場合でも、マルチビームの間に強度差の無い二次電子検出ができる。
図48及び図49を参照して本発明の実施例19の電子線装置5000について説明する。図48の電子線装置5000は、一次電子光学系(以下「一次光学系」という。)5010と、二次電子光学系(以下「二次光学系」という。)5020と、検出系5030とを備える。一次光学系5010は、電子ビームをウエハ等の評価対象(以下「試料」という)Sの表面に照射する光学系で、電子線即ち電子ビームを放出する電子銃5011と、電子銃5011から放出された一次電子ビームを集束するコンデンサレンズ5012と、複数の開口が形成された第1のマルチ開口板5013と、縮小レンズ5014と、E×B分離器5015と、対物レンズ5016とを備え、それらは、図48に示されるように電子銃5011を最上部にして順に配置されている。なお、5017、5018は一次電子ビームを走査する偏向器であり、5019は軸対称電極である。
二次光学系5020は一次光学系の光軸に関して傾斜した光軸に沿って配置された拡大レンズ5021及び5022並びに第2のマルチ開口板5023を備えている。検出系5030は、第2のマルチ開口板5023の各開口5231毎に配置された検出器5031と、各検出器にそれぞれ増幅器5032を介して接続された画像形成部5033とを備えている。上記一次光学系5010、二次光学系5020及び検出系5030の各構成要素の構造及び機能は従来のものと同じであるから、それらについての詳細な説明は省略する。第1のマルチ開口板5013の開口5131と第2のマルチ開口板5023の開口5231とは対応して形成され、開口5131は、図49で実線で示されるように、破線で示される開口5231より小さくなっている。
試料Sは、ステージ装置5040のホルダ5041により公知の方法により着脱可能に支持され、そのホルダ5041は、XYステージ5042により直交方向に移動可能に支持されている。電子線装置1は、更に、ホルダ5041と電気的に接続されたリターディング電圧印加装置(以下印加装置)5050と、チャージアップ調査及びリターディング電圧決定システム(以下調査及び決定システム)5060とを備えている。調査及び決定システム5060は、画像形成部5033に電気的に接続されたモニター5061と、モニター5061に接続されたオペレータ5062と、オペレータ5062に接続されたCPU5063とを備えている。CPU5063は、前記印加装置5050並びに偏向器5017に信号を供給するようになっている。
次に、上記実施例18の電子線装置5000の動作に付いて説明する。電子銃5011から放出された一次電子線は、コンデンサレンズ5012によって集束され、点P1においてクロスオーバを形成する。第1のマルチ開口板5013の開口5131を通過した電子線はその複数の開口5131により複数の一次電子ビームに形成される。第1のマルチ開口板5013によって形成された一次電子ビームは縮小レンズ5014により縮小され、点P2に投影される。点P2で合焦した後、対物レンズ5016によって試料Sの上表面上で合焦される。
複数の一次電子ビームは縮小レンズ5014と対物レンズ5016との間に配置された偏向器5018により、同時に試料の上面を走査するように偏向される。縮小レンズ5014及び対物レンズ5016の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板5013、5023の複数の開口5131及び5231は、各光学系の光軸を中心とする円の円周上に配置され、そのX方向の投影した場合の隣接間距離Lxは、図49に示されるように等間隔になるように形成されている。
合焦された複数の一次電子ビームによって、試料S上の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から放出された二次電子は、対物レンズ5016の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器5015で偏向され、二次光学系5020に投入される。二次電子像は点P2より対物レンズに近い点P3に焦点を結ぶ。これは、各一次電子ビームが試料面上で500eVのエネルギを持っているのに対して、二次電子線は数eVのエネルギしか持っていないからである。
この二次電子像は拡大レンズ5021及び5022により第2のマルチ開口板5023の複数の開口5231を通して各開口毎に設けられた検出器5031に結像する。この二次電子像をそれぞれの検出器5031により検出する。それぞれの検出器5031は、検出した二次電子像をその強度を表す電気信号に変換する。こうして各検出器から出力された電気信号は対応する増幅器5032により増幅された後、画像形成部5033に入力され、この画像形成部で画像データに変換される。画像形成部5033には、一次電子ビームを偏向させるための走査信号が更に供給されるので、画像形成部は試料Sの面を表す画像を表示する。この画像を基準パターンと比較することにより、試料Sの欠陥を検出することができる。
また、レジストレーションにより試料Sを一次光学系5010の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャン即ち走査することによって試料の上表面に形成されたパターンの線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、パターンの線幅を測定することができる。ここで、第1のマルチ開口板5013の開口を通過した一次電子ビームを試料Sの上面上に合焦させ、試料Sから放出された二次電子線を検出器5031に結像させる際に、一次光学系で生じる歪み、軸上色収差及び視野非点という三つの収差による影響を最小にするように特に配慮する必要がある。また、試料に照射される一次電子ビーム間の間隔と二次光学系との関係に付いては、複数の一次電子ビーム間の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば、複数のビーム間のクロストークをなくすことができる。
画像形成部5033で変換された画像データは、調査及び決定装置5060の表示装置5061により画像として表示され、オペレータ5062により画像を評価する。オペレータ5062はこの実施形態ではチャージアップ調査装置を構成する。またオペレータ5062は画像に基づいてチャージアップ状態を調査することができる。そして、その結果をCPU5063に入力し、リターディング電圧を最適な値に設定する。CPUは、この実施形態では、リターディング電圧決定装置を構成する。
図50Aはチャージアップの評価場所と評価方法を説明する図である。チップ5100のメモリーセル境界5102の外周部は、周辺回路部で低密度領域である。その内側はメモリーセル部で高密度領域である。従ってA1、A2は境界領域の画像となり、A3、A4はメモリーセル部の画像である。図50A中の2点鎖線や破線は、密度が大きく変化する境界を示す。
より具体的には、被評価試料のチャージアップの影響を受け易い場所即ち図50Aに示されるように、試料としてのウエハの表面に形成されたチップ5100のメモリーセル5101のコーナ部を評価した。即ち、(1)コーナ部でのメモリーセル境界5102のパターン歪み量5103、5104を測定するか、或いは、(2)メモリーセルのコーナ部においてパターンを横切るように(矢印A1及びA2で示すように)走査した時に得た信号強度のコントラストを、図50Bにおいて実線5105及び5107で表示して、チップの中心部においてパターンを矢印A3、A4に走査したときに得た信号強度のコントラスト5106及び5108(いずれも図50Bにおいて破線図示)と比較してもよい。
リターディング電圧印加装置5050に複数の値の電圧を与え、その都度、歪み量5103及び5104或いはコントラスト5105、5107及び5106、5108を測定し、歪み量5103及び5104が小さい方がチャージアップの影響は小さいと評価した。また、コーナ部でのコントラストの値5105、5107が中心部でのコントラストの値に近い方がチャージアップの影響が小さいと評価した。
チャージアップの状態の良好なリターディング電圧が見出されたら、その値をCPU5063を介して印加装置5050に与え、その値で試料即ちウエハの評価を行うようにした。また、ビーム電流を小さくするとチャージアップが減少する試料の場合は、ビーム電流を小さくしてもよい。このように、試料のパターン密度が大きく変化する境界付近の画像形成を行うことは、帯電の効果が大きく出ることから、帯電していることを評価し易く、帯電し難いリーディング電圧を見つけ易い。
本発明の実施例19(図48)の電子線装置5000は、図12及び図13の半導体デバイスの製造方法に好適に使用される。即ち、この製造方法における検査工程に本発明の実施例19の電子線装置5000を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
本発明実施例19(図48)の電子線装置5000は、次の効果を奏する:
(イ)スループットが電子ビームの数に比例した倍数に近い値がえられ、数倍に向上できる。
(ロ)チャージアップ状態が最も少ない状態でウエハの評価が行われるので、信頼性の高い評価ができる。
(ハ)チャージアップ性能を、各種の電流を測定して行うのでなく、実際の画像で評価しているので、より正しい評価結果が得られる。
図51は、本発明の実施例20のE×B分離器6020を示す。E×B分離器6020は、静電偏向器と電磁偏向器とにより構成されており、図51においては、光軸(図面に垂直な軸:z軸)に直交するx−y平面上の断面図として示されている。x軸方向及びy軸方向も直交している。静電偏向器は、真空容器中に設けられた一対の電極(静電偏向電極)6001を備え、x軸方向に電界Eを生成する。これら静電偏向電極6001は、絶縁スペーサ6002を介して真空容器の真空壁6003に取り付けられており、これらの電極間距離Dは、静電偏向電極6001のy軸方向の長さ2Lよりも小さく設定されている。このような設定により、z軸の周りの形成される電界強度が一様な範囲を比較的大きくすることができるが、理想的には、D<Lであれば、電界強度が一様な範囲をより大きくすることができる。
即ち、電極の端縁からD/2の範囲は、電界強度が一様ではないため、電界強度がほぼ一様な領域は、一様ではない端部領域を除いた中心部の2L−Dの領域となる。このため、電界強度が一様な領域が存在するためには、2L>Dとする必要があり、さらに、L>Dと設定することにより、電界強度が一様な領域がより大きくなる。
真空壁6003の外側には、y軸方向に磁界Mを生成するための電磁偏向器が設けられている。電磁偏向器は、電磁コイル6004及び電磁コイル6005を備え、これらコイルはそれぞれ、x軸方向及びy軸方向に磁界を生成する。なお、コイル6005だけでもy軸方向の磁界Mを生成できるが、電界Eと磁界Mとの直交度を向上させるために、x軸方向に磁界を生成するコイル4を設けている。即ち、コイル6004によって生成された−x軸方向の磁界成分によって、コイル6005によって生成された+x軸方向を打ち消すことによって、電界と磁界との直交度を良好にすることができる。これら磁界生成用のコイル6004及び6005は、真空容器の外に設けるため、それぞれを2分割して構成し、真空壁6003の両側から取り付け、部分6007においてネジ止め等により締め付けて一体化すればよい。
E×B分離器の最外層6006は、パーマロイあるいはフェライト製のヨークとして構成する。最外層6006は、コイル6004及び6005と同様に、2分割して両側からコイル6005の外周に取り付けて、部分6007においてネジ止め等により一体化してもよい。
図52は、本発明の実施例20のE×B分離器6040の光軸(z軸)に直交する断面を示す。図52のE×B分離器6040は、静電偏向電極6001が6極設けられている点が、図51に示した実施例20のE×B分離器と相違している。これら静電偏向電極6001には、それぞれの電極の中央と光軸(z軸)とを結んだ線と電界の方向(x軸方向)との角度をθi(i=0,1,2,3,4,5)としたときに、cosθiに比例する電圧k・cosθi(kは定数)が供給される。ただし、θiは、任意の角度である。
図52に示した実施例20においても、実施例19と同様に、x軸方向の電界Eしか作れないので、x及びy軸方向の磁界を生成するコイル6004及び6005を設け、直交度の修正を行う。実施例20によれば、図51に示した実施例20に比べて、電界強度が一様な領域をさらに大きくすることができる。図51及び図52に示した実施例19及び20のE×B分離器においては、磁界を生成するためのコイルをサドル型に形成しているが、トロイダル型のコイルを用いてもよい。
図53Aは、実施例20及び21のE×B分離器を1次電子ビームと2次電子ビームとを分離するために採用可能な本発明の実施例21の電子線装置6000(欠陥検査装置)の概略図である。図53Aにおいて、電子銃6021から放出された電子ビームは、コンデンサ・レンズ6022によって集束されて、点6024においてクロスオーバを形成する。
コンデンサ・レンズ6022の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板6023が配置され、これによって複数の1次電子ビームが形成される。形成された複数の1次電子ビームはそれぞれ、縮小レンズ6025によって縮小されて6035に投影される。そして、点6035で合焦した後、対物レンズ6027によってで試料であるウエハ6028に合焦される。第1のマルチ開口板6023からの複数の1次電子ビームは、縮小レンズ6025と対物レンズ6027との間に配置された偏向器6039により、同時にウエハ6028面上を走査するよう偏向される。
縮小レンズ6025と対物レンズ6027の像面湾曲収差が発生しないようにするために、第1のマルチ開口板6023は、図53Bに示すように、円周上に小さな開口が複数配置され、そのx軸上へ投影した点は、等間隔となる構造となっている。合焦された複数の1次電子ビームによって、ウエハ6028の複数の点が照射され、該照射された複数の点から放出された2次電子ビームは、対物レンズ6027の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器6026で偏向され、2次光学系に投入される。2次電子ビームによる像は、点6035より対物レンズ6027に近い点6036に焦点を結ぶ。これは、複数の1次電子ビームがそれぞれウエハ6028面上で約500eVのエネルギを有しているのに対して、2次電子ビームは数eVのエネルギしか有していないためである。
2次光学系は、拡大レンズ6029、6030を有しており、これら拡大レンズを通過した2次電子ビームは、第2のマルチ開口板6031の複数の開口に結像する。そして、これら開口を通過して、複数の検出器6032で検出される。なお、検出器6032の前に配置された第2のマルチ開口板6031の複数の開口と、第1のマルチ開口板6023の複数の開口とは、図53Bに示すように、1対1に対応している。
検出器6032はそれぞれ、受け取った2次電子ビームを、その強度を表す電気信号へ変換する。各検出器6032からの電気信号は増幅器6033で増幅された後、画像処理装置6034において画像データに変換される。画像処理装置6034には、偏向器6039からの1次電子ビームを偏向させるための走査信号も供給されており、これにより、画像処理装置6034は、ウエハ6028の表面の画像を表す画像データを得る。
得られた画像データを標準パターンと比較することにより、ウエハ6028の欠陥を検出することができ、また、レジストレーションによってウエハ6028上の被評価パターンを1次光学系の光軸近傍に移動させ、ライン走査することによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハ6028上のパターンの線幅を測定することができる。
第1のマルチ開口板6023の開口を通過した1次電子ビームをウエハ6028の面上に合焦させて、ウエハ6028から放出された2次電子ビーム検出用のマルチ開口板6031に結像させる際、1次光学系及び2次光学系により生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするように、配慮した方がよい。複数の1次電子ビームの照射位置間隔の最小値を、2次光学系の収差よりも大きい距離だけ離間させれば、複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
本発明の実施例19のE×B分離器6020においては、電界を生成する静電偏向器の一対の電極として、電極間の間隔よりも光軸に直角な方向の大きさが長く形成された平行平板型電極を用いているので、光軸の周りに一様強度で平行な電界が生成される領域が広くなる。また、実施例19及び実施例20のE×B分離器においては、電磁偏向器にサドル型コイルを用い、かつ光軸からコイルを見込む角度を片側で2π/3に設定しているので3θ成分が生成せず、これにより、光軸の周りに一様強度で平行な磁界が生成される領域が広くなる。さらにまた、磁界を電磁コイルによって生成しているので、コイルに偏向電流を重畳することができ、これにより、走査機能を持たせることができる。
実施例19及び実施例20のE×B分離器は、静電偏向器と電磁偏向器との組み合わせとして構成されているので、静電偏向器及びレンズ系の収差を計算し、これとは別に電磁偏向器及びレンズ系の収差を計算し、これら収差を合計することにより、光学系の収差を得ることができる。
図55及び図56を参照して本発明の実施例22の荷電ビーム装置7000を説明する。本実施例において「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空である。図55の荷電ビーム装置7000において、荷電ビームを試料に向かって照射する鏡筒7001の先端部即ち荷電ビーム照射部7002が真空チャンバCを画成するハウジング7014に取り付けられている。鏡筒7001の直下には、XYステージ7003のX方向(図55において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Sが配置される。この試料Sは高精度なXYステージ7003によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に荷電ビームを照射させることができる。
XYステージ7003の台座7006はハウジング7014の底壁に固定され、Y方向(図55において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル7005が台座7006の上に載っている。Yテーブル7005の両側面(図55において左右側面)には、台座7006に載置された一対のY方向ガイド7007a及び7007bのYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。
凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け7011a、7009a、7011b、7009b、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル5はY方向ガイド7007a、7007bに対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座7006とYテーブル7005との間には、公知の構造のリニアモータ7012が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管7022によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて静圧軸受け7009a乃至7011a及び7009b乃至11bに対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図55において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
Yテーブル上にはXテーブル4がX方向(図55において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル5上にはYテーブル用のY方向ガイド7007a、7007bと同じ構造の一対のX方向ガイド7008a、7008b(7008aのみ図示)がXテーブル7004を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル7004の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け7011a、7009a、7010a、7011b、7009b、7010bと同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル7005とXテーブル7004との間には、公知の構造のリニアモータ7013が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。
Xテーブル7004にはフレキシブル配管7021によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル7004がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管7019、7020a、7020bによって排気されている。配管7020a、7020bの入口側(真空チャンバ内側)は台座7006を貫通してその上面において、XYステージ7003から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
鏡筒7001の先端部即ち荷電ビーム照射部7002の周囲には、差動排気機構7025が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても荷電ビーム照射空間7030の圧力が十分低くなるようにしてある。即ち、荷電ビーム照射部7002周囲に取り付けられた差動排気機構7025の環状部材7026は、その下面(試料S側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)7040が形成されるように、ハウジング7014に対して位置決めされており、その下面には環状溝7027が形成されている。
環状溝7027は、排気管7028により図示しない真空ポンプ等に接続されている。従って、微少隙間7040は環状溝7027及び排気口7028を介して排気され、真空チャンバCから環状部材7026によって囲まれた空間7030内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、荷電ビーム照射空間7030内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。この環状溝は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間7030内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまうからである。試料Sは、通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ7003に対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
荷電ビーム装置7000では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージに対して実現できる。以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。
図56は、差動排気機部7025の環状部材7026に形成される環状溝の大きさの数値例を示す。図56の環状部材7026は、半径方向に隔てられた二重構造の環状溝7027a及び7027bを有し、それぞれ排気TMP、DPを排出する。静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構部の環状部材7026及び環状溝等の寸法を、図56に示すようにすれば、荷電ビーム照射空間7030内の圧力を10-4Pa(10-6Torr)にすることができる。
図57は、本発明の実施例23の荷電ビーム装置7000を示す。ハウジング7014によって画成された真空チャンバCには、真空配管7074、7075を介してドライ真空ポンプ7053が接続されている。また、差動排気機構7025の環状溝7027は排気口7028に接続された真空配管7070を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ7051が接続される。更に、鏡筒7001の内部は、排気口7018に接続された真空配管7071を介して、ターボ分子ポンプ7052が接続される。これらのターボ分子ポンプ7051、7052は、真空配管7072、7073によってドライ真空ポンプ7053に接続される。
図57の荷電ビーム装置7000は、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用するが、代わりにXYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。
XYステージ7003の静圧軸受けには、フレキシブル配管7021、7022を通して高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口7019、7020a、7020bを通してドライ真空ポンプ7053によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝7027或いは鏡筒7001の先端部から吸引され、排気口7028及び7018を通ってターボ分子ポンプ7051及び7052によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ7053によって排気される。このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ7053の排気口は、配管7076を介して圧縮機7054に接続され、圧縮機7054の排気口は配管7077、7078、7079及びレギュレータ7061、7062を介してフレキシブル配管7021、7022に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ7053から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機7054によって再び加圧されレギュレータ7061、7062で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管7077の途中にコールドトラップやフィルタ7060等を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
循環配管系には高純度不活性ガス供給源7063が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管7070〜7075及び加圧側配管7076〜7080を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。また、ドライ真空ポンプ7053に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ7053と圧縮機7054を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することも可能である。
図58は、本発明の実施例23の荷電ビーム装置7100を示す。荷電ビーム装置7100は、図57の荷電ビーム装置7000に使用可能な光学系7160及び検出器7180を含む。光学系7160は、荷電ビームをステージ7003上に載置された試料Sに照射する一次光学系7161と、試料から放出された二次電子が投入される二次光学系7171と、を備える。
図58の一次光学系7161は、荷電ビームを放出する電子銃7162と、電子銃7162から放出された荷電ビームを集束する2段の静電レンズからなるレンズ系7163、7164と、偏向器7165と、荷電ビームをその光軸が対象の面に垂直になるように偏向するウイーンフィルタ即ちE×B分離器7166と、2段の静電レンズからなるレンズ系7167、7168と、を備え、それらは、図58に示されるように電子銃7161を最上部にして順に、荷電ビームの光軸が試料Sの表面(試料面)に鉛直な線に対して傾斜して配置されている。E×B偏向器7166は、電極7661及び磁石7662を備える。
二次光学系7171は、試料Sから放出された二次電子が投入される光学系であり、一次光学系のE×B型偏向器7166の上側に配置された2段の静電レンズからなるレンズ系7172、7173を備える。検出器7180は、二次光学系7171を介して送られた二次電子を検出する。上記光学系7160及び検出器7180の各構成要素の構造及び機能は従来のものと同じであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
電子銃7162から放出された荷電ビームは、電子銃の正方形開口で整形され、2段のレンズ系7163及び7164によって縮小され、偏光器7165で光軸を調整されてE×B偏向器7166の偏向中心面に一辺が1.25mmの正方形に結像される。E×B偏向器7166は、試料の法線に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造となっており、電界、磁界、電子のエネルギの関係が一定の条件を満たす時には電子を直進させ、それ以外の時にはこれら電界、磁界及び電界のエネルギの相互の関係により所定方向に偏向されるようになっている。電子銃からの荷電ビームを曲げて試料Sに垂直に入射させ、また試料から放出された二次電子を検出器7180の方向に直進させるように設定される。E×B偏光器で偏向された成形ビームはレンズ系7167、7168で1/5に縮小されて試料Sに投影される。
試料Sから放出されたパターン画像の情報を持った二次電子は、レンズ系7167、7168及び7172、7173で拡大され、検出器7180で二次電子画像を形成する。この4段の拡大レンズは、レンズ系7167及び7168が対称タブレットレンズを形成し、レンズ系7172及び7173もやはり対称タブレットレンズを形成しているので無歪みレンズとなっている。
図55乃至図58の荷電ビーム装置7000は、図12及び図13に示す半導体デバイスの製造方法に使用可能である。即ち、図12のウエハ検査工程又は図13の露光工程に、荷電ビーム装置7000を用いると、微細なパターンを高精度で安定して検査又は露光ができるので、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
図55乃至図58の荷電ビーム装置7000は、次の効果を奏する:
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して荷電ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)荷電ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、荷電ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
図59は、本発明の実施例25の電子線装置8000の概略的配置図であり、同図において、電子銃8001から放出された電子線は、コンデンサレンズ8002によって集束されて点8004においてクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ8002の下方には、複数の開口8003’を有する第1のマルチ開口板8003が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。第1のマルチ開口板によって形成された一次電子線のそれぞれは、縮小レンズ8005によって縮小されて点8015で合焦され後、更に、対物レンズ8007によって試料8008に合焦される。第1のマルチ開口板8003から出た複数の一次電子線は、縮小レンズ8005と対物レンズ8007との間に配置された偏向器により、試料8008の面上の異なる位置を同時に走査するよう偏向される。
縮小レンズ8005及び対物レンズ8007の像面湾曲収差の影響を無くすため、図60に示すように、マルチ開口板8003は、その複数の開口8003’がマルチ開口板3上の同一円周上に配置され、その中心をx軸へ投影すると等間隔となるようにされている。図59の実施例25の電子線装置8000において、複数の一次電子線によって照射された試料8008上の複数の点からは、それぞれ二次電子線が放出され、対物レンズ8007の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器8006で偏向され、二次光学系に投入される。二次電子像は点8015より対物レンズ8007に近い点8016に焦点を結ぶ。これは、各一次電子線は試料面上で500eVにエネルギーを持っているのに対して、二次電子線は数evのエネルギーしか持っていないためである。
二次光学系は、拡大レンズ8009、8010を有しており、これらの拡大レンズ8009、8010を通過した二次電子線は第2マルチ開口板8011の複数の開口を通って複数の検出器8012に結像する。なお、検出器8012の前に配置された第2のマルチ開口板8011の複数の開口と、第1のマルチ開口板8003の複数の開口8003’とは位置関係が一対一に対応している。
各検出器8012は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号へ変換する。こうした各検出器から出力された電気信号は増幅器8013によってそれぞれ増幅された後、画像処理部8014によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部8014には、一次電子線を偏向させるための走査信号が更に供給されるので、画像処理部8014は試料8008の面を表す画像を表示する。この画像を標準パターンと比較することにより、試料8008の欠陥を検出することができ、また、レジストレーションにより試料8008の被測定パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、試料8008上のパターンの線幅を測定することができる。
ここで、第1のマルチ開口板8003の開口を通過した一次電子線を試料8008の面上に合焦させ、試料から放出された二次電子線を検出器8012に結像させる際、一次光学系で生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。次に、複数の一次電子線の間隔と二次光学系との関係については、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストロークを無くすことができる。上記光学系では、単一の電子銃からの電子線をマルチ開口を通すことによってマルチビームとした場合について述べたが、電子銃を複数設けたり、電子銃は1個であるがカソードのエミッション領域を複数個とすることもできる。
図61は図59の対物レンズ8007に関するシュミレーションモデルである。符号8021は光軸、8022は対物レンズ8007の上部電極で0V(ボルト)、8023は高電圧が印加される対物レンズの中央電極、24はアース電圧とされる対物レンズの下部電極であり、試料面25は、−4000Vとした。8026、8027、8028は、電極を保持する絶縁物スペーサを示す。縮小レンズ8005が作るクロスオーバの位置を種々変化させるとともに、対物レンズの中央電極を変化させて、z=0mmにあるマルチビームの像を試料面8025に合焦させ、そのときに生じる収差を計算した。
図62は、上記シミュレーションの結果を示グラフである。図62は、変化させたクロスオーバ位置(mm)を横軸とし、それに対応して生じた収差の値を縦軸に示す。中央電極8023(図61)の上面は、z=144mmとした。またマルチビームのr位置は50μm、開口半角は5mradとした。図62のグラフにおいて、曲線8031はコマ収差、8032は倍率色収差、8033は非点収差、8034は軸上色収差、8035は像面湾曲、8036は歪、8037はボケである。マルチビームが光軸を中心とする円周上にある場合は、像面湾曲8035は0であるからボケ8037は、実質的に倍率色収差8032と軸上色収差8034で決る。ここで電子銃のエネルギー幅は5eVとした。クロスオーバ位置を140mmとした時、倍率色収差8032はほぼ問題ない値に小さくなっている。即ち、このシミュレーションによれば、前段レンズが作るクロスオーバ位置を、対物レンズ中央電極位置(144mm)よりも電子銃側に形成する様にすれば良いことがわかる。
図59の実施例25の電子線装置8000は、図12及び図13の半導体デバイス製造工程のウエハの評価を行うために使用可能である。図12のウエハ検査工程において、図59〜図62の電子線装置を用いた場合、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループットよく検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
図59の実施例25の電子線装置8000は、次の作用効果を奏する:
(1)マルチビームを使うことにより電子線によるウエハ等の評価を高スループット化できる。
(2)マルチビームを配置する半径を大きくした時に問題となる倍率の色収差を問題ないレベル迄小さくする事ができる。
図64は、本発明の電子線装置に使用可能な電子ビーム偏向器90の詳細な構造を示す水平断面図である。図65は図64のA−A線に沿う側面図である。図64に示すように、電子ビーム偏向器90は、写像投影光学部の光軸に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造、即ちE×B構造である。ここで電界Eは、凹面状の曲面を持つ電極90a、90bにより発生される。電極90a、90bが発生する電界は、それぞれ制御部93a及び93bにより制御される。一方、電界発生用の電極90a及び90bと直交するように、電磁コイル91a及び91bを配置させ、磁界を発生させる。電界発生用の電極90a及び90bは、点対称(同心円型)である。
磁界の均一性を向上させるために、平行平板形状を有するポールピースを持たせて磁路を形成する。A−A線に沿う縦断面における電子ビームの挙動は、図65に示される。照射された電子ビーム91a及び91bは、電極90a及び90bが発生する電界と、電磁コイル91a及び91bが発生する磁界とによって偏向された後、試料表面に対し垂直方向に入射する。
電子ビーム91a及び91bの電子ビーム偏向部90への入射位置及び角度は、電子のエネルギーが決定されると一義的に決定される。更に二次電子92a及び92bが直進するように、電界及び磁界の条件、即ちevB=eEとなるように、電極90a及び90bが発生する電界と、電磁コイル91a及び91bが発生する磁界とを、それぞれの制御部93a及び93b並びに94a及び94bが制御することで、二次電子は、電子ビーム偏向部27を直進して、写像投影光学部へ入射する。ここで、vは電子の速度(m/s)、Bは磁場(T)、eは電荷量(C)、Eは電界(V/m)である。
図66は、本発明における一次電子線の照射方法を説明するための平面図である。図66において1次電子線100は、4本の電子線101、102、103、104により形成される。それぞれの電子線は、50μm幅を走査する。1次電子線101を例に取ると、1次電子線101は、当初は左端にあり、パターン107を有する基板W(試料)上を右端へ走査され、右端へ到達後、すみやかに左端へもどり、その後、改めて右方向へ走査される。基板Wを載置するステージの移動方向は、一次電子線の走査方向に対しほぼ垂直である。