JP3890015B2 - 荷電粒子線による検査装置及びその検査装置を用いたデバイス製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、電子ビームを用いて検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置に関し、詳しくは、半導体製造工程におけるウエハの欠陥を検出する場合のように、電子ビームを検査対象に照射してその表面の性状に応じて変化する二次電子を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて検査対象の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査する検査装置、並びにそのような検査装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。より具体的には、面ビームを用いた写像投影方式による検出装置および該装置を用いたデバイス製造方法に関する。
また、半導体プロセスにおいて、デザインルールは100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。本発明は半導体プロセスにおける各工程後のウェーハの検査に用いられる装置に関し、電子ビームを用いた検査方法及び装置またはそれを用いたデバイス製造方法に関する。
従来の技術および発明が解決しようとする課題
半導体デバイスの高集積化、パターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウェーハ−基板の欠陥を調べるためには、100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及び、コンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって電子ビームを用いた欠陥検査装置が今後、検査装置の主流になると予想される。但し、電子ビーム方式欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。
このため、高分解能、高スループット、且つ電気的欠陥検出が可能な検査装置の開発が要求されている。光方式での分解能は使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では0.2μm程度である。
一方電子ビームを使用する方式では、通常走査型電子ビーム方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(20cmウェーハ)である。電子ビーム方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴である。しかし、検査時間は非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。
一般に検査装置は高価でありまたスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)これを走査してライン状に試料を照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は一般に数100μmである。前記細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)照射により発生した試料からの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプライヤー(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、あるいはCRT(ブラウン管)上に画像を出力する。以上はSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から工程途中の半導体(通常はSi)ウェーハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は一次電子線の量(電流値)、ビーム径、検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが現在の最高値で、この場合で検査速度は20cm径のウェーハ一枚あたり約8時間と言われている。この検査速度が光方式に比べてきわめて遅い(1/20以下)ことが大きな問題点(欠点)となっている。
また、本発明に関連する検査装置の従来技術については、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた装置が既に市販されている。この装置は細く絞った電子線を非常に間隔の小さいスキャン幅で走査を行い、走査に伴って検査対象から放出される二次電子を二次電子検出器で検出してSEM画像を形成し、そのSEM画像を異なるダイの同じ場所同志を比較して欠陥を抽出するものである。
また、従来においては電子線を使用した欠陥検査装置の全体的なシステムとして完成させた装置は未だ存在しなかった。
ところで、SEMを応用した欠陥検査装置では、欠陥検査に多くの時間を必要としていた。また、高スループットにするため、ビーム電流を大きくすると空間電位効果によりビームがボケ、また、絶縁物が表面にあるウエハでは帯電して良好なSEM像が得られない問題があった。
また、電子線を照射して検査する電子光学装置と、検査対象をその電子光学装置の照射位置までクリーンな状態で供給し、アライメントする他のサブシステムとの間の関連性を考慮した検査装置全体の構造については今までほとんど明らかにされていなかった。更に、検査対象となるウエハの大口径化が進められ、サブシステムもそれに対応可能にする要請もでてきた。
そこで、本発明が解決しようとする一つの課題は、電子線を用いた電子光学系を使用すると共に、その電子光学系と、検査装置を構成するその他の構成機器との調和を図ってスループットを向上した検査装置を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、検査対象を蓄えるカセットと電子光学系に関して検査対象を位置決めするステージ装置との間で検査対象を搬送するローダー及びそれと関連する装置を改善して検査対象を効率的にかつ精度良く検査可能な検査装置を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、SEMで問題のあった帯電の問題を解決して検査対象を精度良く検査可能な検査装置を提供することである。
本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記のような検査装置を用いてウエハ等の検査対象の検査を行うことにより歩留まりの良いデバイス製造方法を提供することである。
又,従来、半導体の高密度化や高集積化に伴い、半導体ウェーハのプロセス製造などにおける半導体ウェーハのパターン等の欠陥検査には、高感度の検査装置が必要となっている。そして、このような欠陥検査の為の検査装置として、特開平2−142045や特開平5−258703に記載されているような電子顕微鏡が使用されている。
例えば、特開平2−142045に記載された電子顕微鏡では、対物レンズによって電子銃からでた電子線を絞って試料に照射し、試料からでてくる二次電子を二次電子検出器で検出している。そして、この電子顕微鏡では、試料に負の電圧を印加し、更に、試料と二次電子検出器との間に電界と磁界を直交させたE×B型フィルタを配置している。
このような構成により、この電子顕微鏡は、試料に負の電圧を印加することにより、試料に照射される電子を減速させることにより高分解能としている。
また、試料に負の電圧を印加することにより、試料からでてくる二次電子を加速させ、更に、E×B型フィルタによって、加速された二次電子は二次電子検出器の方向に偏向されて、二次電子検出器は二次電子を効率的に検出することができる。
上記の様な従来の電子顕微鏡を用いた装置においては、電子銃からの電子線は、高電圧が印加された対物レンズ等のレンズ系によって、試料に照射される直前まで加速され高エネルギ化している。そして、試料に負の電圧を印加することにより、試料に照射される電子を低速化しつつ高分解能としている。
しかしながら、対物レンズには高電圧が印加され、更に、試料には負の電圧が印加されているので、対物レンズと試料との間において放電が生ずる恐れがあった。
また、従来の電子顕微鏡において、試料に負の電圧が印加されない場合であっても、対物レンズと試料との間の電位差が大きいと、対物レンズと試料との間において放電が生ずる恐れがある。
また、このような試料への放電に対処するために、対物レンズへの印加電圧を低くすると、電子に十分なエネルギが与えられず、分解能が低下してしまう。
また更に、試料が半導体ウェーハであって、この半導体ウェーハ表面にビア、即ち、半導体ウェーハの上層配線と下層配線とを電気的に接続し、且つ上下層配線面に対して略垂直な方向の配線パターンが存在する場合を説明する。
従来の電子顕微鏡を使用してビア付きの半導体ウェーハの欠陥等を検査すると、上記同様に対物レンズには高電圧、例えば10kVの電圧が印加される。またここでは、半導体ウェーハは接地されているものとする。よって、半導体ウェーハと対物レンズの間には電界が形成される。
このような状態であると、特に半導体ウェーハ表面のビア近傍に電界が集中し高電界となる。そして、ビアに電子線が照射されると、ビアから大量の2次電子が放出され、これら2次電子はビア近傍の高電界によって加速される。この加速された2次電子は、電子線が半導体ウェーハに照射された際に発生した残留ガスをイオン化するのに十分なエネルギ(>3eV)を持っている。よって、2次電子は残留ガスをイオン化するので、イオン化した荷電粒子が発生する。
そして、このイオン化した荷電粒子である正イオンは、ビア近傍の高電界によってビアの方向に加速され、ビアと衝突することによって、ビアから更に2次電子が放出される。この一連のポジティブフィードバックによって、ついには対物レンズと半導体ウェーハとの間に放電が生じ、この放電により半導体ウェーハのパターン等を破損してしまう問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は,被検査試料への放電を防止した電子銃装置と,この電子銃装置を用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
又,従来、上述したように,半導体デバイス製造用のマスクパターン、あるいは半導体ウエハに形成されたパターンの欠陥検査は、1次電子線で試料表面を照射したときにその試料から放出する2次電子を検出して試料のパターン画像を得、基準画像と比較することにより行っている。そして、このような欠陥検査装置には、1次電子と2次電子を分離するE×B分離器が設けられる。
図52にE×B分離器を有する写像投影型電子線検査装置の一例の概略構成を示す。電子銃721から放出された電子線は、成形開口(図示せず)で矩形に成形され、静電レンズ722で縮小され、E×B分離器723の中心に1.25mm角の成形ビームを形成する。成形ビームは、E×B分離器723で試料Wに垂直になるように偏向され、静電レンズ724で1/5に縮小されて試料Wを照射する。試料Wから放出される2次電子は、試料W上のパターン情報に対応した強度を有しており、静電レンズ724、741で拡大され、検出器761に入射する。検出器761では、入射した2次電子の強度に対応した画像信号を生成し、基準画像と比較することにより、試料の欠陥を検出する。
E×B分離器723は、試料W面の法線(紙面の上方向)に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造となっており、電界、磁界、電子のエネルギー及び速度の関係が、一定条件を満たすときには電子を直進させ、それ以外のときは偏向させるものである。図44の検査装置では、2次電子が直進するように設定される。
図53は、試料W面の1次電子が照射された矩形領域から放出される2次電子の動きをさらに詳細に示したものである。試料面から放出された2次電子は、静電レンズ724で拡大され、E×B分離器723の中心面723aに結像される。E×B分離器723の電界及び磁界が、2次電子が直進するような値に設定されているので、2次電子は、そのまま直進し、静電レンズ741−1、741−2、741−3で拡大され、検出器761内のターゲット761aに結像される。そして、MCP(Multi Channel Plate、図示せず)で増倍され、シンチレータ、CCD(Charge Coupled Device)等(図示せず)により像を形成する。732、733は、2次光学系に設けた開口絞りである。
従来のE×B分離器の概略構成及び発生される電界の分布を図54に示す。2個の平行平板電極723−1、723−2で電界を発生し、2個の磁極723−3、723−4で電界と直交する磁界を発生する。この構成では、磁極723−3、723−4は金属で構成されるため、アース電位となっており、電界がアース側に曲げられる。したがって、電界分布は、図54に示すようなものとなり、平行な電界は、中心の小領域でしか得られない。
このような構成のE×B分離器を、写像投影型電子線検査装置等の欠陥検査装置に用いた場合、精度のよい検査を行うためには電子線の照射領域を大きくできず、検査効率が悪いという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、電界も磁界も強度が一様で互いに直交する領域を、試料に平行な面で大きくでき、しかも、全体の外径を小さくできるE×B分離器を提供することを目的とする。また、このようなE×B分離器を欠陥検査装置に用いることにより、得られる検出画像の収差を減少させ、精度のよい欠陥検査を効率良く行うことを目的とする。
又,上述したように,従来、電子線を用いて半導体ウェーハやフォトマスクのパターン検査をおこなう場合に、半導体ウェーハやフォトマスク等の試料表面に電子線を送りスキャンし、または試料をスキャンし、その試料の表面から生じる二次荷電粒子等を検出し、その検出結果から画像データを作製し、セル毎またはダイ毎のデータを比較することによって欠陥を検査する装置が知られている。
しかしながら、上記従来の欠陥検査装置においては、電子線を照射することによって試料表面が帯電し、この帯電による電荷によって画像データが歪むため、欠陥を正しく検出できない問題があつた。また、このような画像データの歪みが問題になるので電荷による歪みが十分小さくなるようにビーム電流を小さくすると二次電子子信号のS/N比が悪くなり、誤検出の発生確率が増える欠点がある。また、S/N比を改善するため多数回走査して平均化処理等を行うとスループットが低下する問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、帯電による画像歪みを生じないようにするか、あるいは画像ひずみが生じてもそれが最小限となるようにし、それによって信頼性の高い欠陥検査が行える装置および該装置を用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
また、従来、基板の表面に荷電粒子ビームを照射して走査し、その基板の表面から発生する二次荷電粒子を検出してその検出結果から画像データを作成し、ダイ毎のデータと比較することよってその基板に形成された画像の欠陥等を検査する装置は、既に知られている。
しかしながら、上記公報に記載されたものを含め、従来のこの種の撮像装置では、検査対象である基板の表面の電位分布が必ずしも均一になっておらず、撮像した画像のコントラストが十分でなく、歪みを有する問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、スループットを低下させることなく欠陥検出の性能を向上した撮像装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、検査対象からの二次電子の検出により得られた画像のコントラストを向上して欠陥検出の性能を向上した撮像装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとする別の課題は、検査対象の表面の電位分布を均一化することによってその表面からの二次電子の検出により得られた画像のコントラストを向上して歪みを減少させ、欠陥検出の性能を向上した撮像装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記のような撮像装置を用いてプロセス途中の試料を評価するデバイスの製造方法を提供することである。
また、従来、半導体ウェーハ等の試料に一次電子を照射することにより発生した二次電子を検出することによって当該試料の欠陥を検査するための欠陥検査装置が、半導体製造プロセス等で利用されている。
例えば、特開平11−132975号には、試料に電子ビームを照射させる電子ビーム照射部、試料表面の形状、材質、電位の変化に応じて発生した二次電子及び反射電子の一次元像及び/又は二次元像を結像させる写像投影光学部、結像された像に基づいて検出信号を出力する電子ビーム検出部、検出信号を与えられて試料表面の電子画像を表示する画像表示部、電子ビーム照射部から照射された電子ビームの試料への入射角度と二次電子及び反射電子の写像投影光学部への取り込み角度を変化させる電子ビーム偏向部と、から構成された欠陥検査装置が開示されている。この欠陥検査装置によれば、実デバイスの試料ウェーハ表面の所定の矩形領域に二次電子ビームを照射する。
しかしながら、実デバイスの試料ウェーハの比較的広い領域に電子ビームを照射する場合、試料表面が二酸化けい素や、窒化けい素といった絶縁体で形成されているため、試料表面への電子ビーム照射と、それに伴う試料表面からの二次電子放出によって試料表面が正にチャージアップされ、この電位が作り出す電場によって二次電子線画像に様々な像障害が起るという問題点があった。
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、試料表面の正のチャージアップを低減し、このチャージアップに伴う像障害を解消することにより、より高精度に試料の欠陥を検査することを可能ならしめる、欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うことにより、デバイス製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止を図った半導体製造方法を提供することを別の目的とする。
又,従来,半導体ウエハ等の試料表面等に電子ビーム等の荷電ビームを照射することによって、その試料表面上を半導体回路等のパターンで露光し若しくは試料表面上に形成されたパターンを検査する装置、或いは荷電ビームを照射することによって試料に対して超精密加工を施す装置においては、試料を真空中で精度良く位置決めするステージが使用されている。
かかるステージに対して非常に高精度な位置決めが要求される場合には、ステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが直接真空チャンバに排気されないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成することによって、真空チャンバの真空度を維持している。
かかる従来技術によるステージの一例が図55に示されている。同図の構造において、真空チャンバCを構成するハウジング98に、荷電ビームを発生し試料に照射する荷電ビーム装置の鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72が取り付けられている。鏡筒内部は真空配管710によって真空排気されており、チャンバCは真空配管911によって真空排気されている。そして、荷電ビームは鏡筒71の先端部72から、その下に置かれたウエハ等の試料Wに対して照射される。
試料Wは試料台94に公知の方法により取り外し可能に保持されており、試料台94はXYステージ(以下単にステージ)93のY方向可動部95の上面に取り付けられている。上記Y方向可動部95には、ステージ93のX方向可動部96のガイド面96aと向かい合う面(図55[A]において左右両面及び下面)に静圧軸受け90が複数取り付けられており、この静圧軸受け90の作用によりガイド面との間に微小隙間を維持しながらY方向(図55[B]で左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受けの周りには、静圧軸受けに供給される高圧ガスが真空チャンバCの内部にリークしないように差動排気機構が設けられている。この様子を図56に示す。静圧軸受け90の周囲に二重に溝918と917が構成されており、これらの溝は図示されていない真空配管と真空ポンプにより常時真空排気されている。このような構造により、Y方向可動部95は真空中を非接触状態で支持されY方向に自在に移動することができるようになっている。これらの二重の溝918と917は可動部95の静圧軸受け90が設けられている面にその静圧軸受けを囲むようにして形成されている。なお、静圧軸受けの構造は公知のもので良いので、その詳細な説明は省略する。
このY方向可動部95を搭載しているX方向可動部96は、図55からも明らかなように、上方に開口している凹形の形状を有していて、そのX方向可動部96にもまったく同様の静圧軸受け及び溝が設けられていて、ステージ台97に対して非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
これらのY方向可動部95とX方向可動部96の移動を組み合わせることによって、試料Wを鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部72に関して水平方向任意の位置に移動させ、試料の所望の位置に荷電ビームを照射することができる。
上記の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、ステージが移動する際に、静圧軸受け90に対向するガイド面96aや97aは、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とチャンバ内の真空環境の間を往復運動する。この時ガイド面では、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、真空環境に露出されると吸着していたガスが放出されるという状態が繰り返される。このためステージが移動する度に、チャンバC内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した荷電ビームによる露光や検査や加工等の処理が安定に行えなかった、試料が汚染されてしまうという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、真空度の低下を防止して荷電ビームによる検査や加工等の処理を安定して行える荷電ビーム装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、静圧軸受けによる非接触支持機構と差動排気による真空シール機構を有し、荷電ビームの照射領域と静圧軸受けの支持部との間に圧力差を発生させるようにした荷電ビーム装置を提供することである。
本発明が解決しようとする別の課題は、静圧軸受けに面する部品表面から放出するガスを低減した荷電ビーム装置を提供することである。
さらに、本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記の荷電ビーム装置を用いて試料表面を検査する欠陥検査装置、或いは試料の表面にパターンを描画する露光装置を提供することである。
またさらに、本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記のような荷電ビーム装置を用いて半導体デバイスを製造する半導体製造方法を提供することである。
また、図55に示した上記従来の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、差動排気機構を設けたため、大気中で使用される静圧軸受け式ステージに比べて構造が複雑で大型になり、ステージとしての信頼性が低く、高コストになるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、XYステージの差動排気機構をなくして構造が簡単でコンパクト化が可能な荷電ビーム装置を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、XYステージを収容しているハウジング内を真空排気すると共に該試料面上の荷電ビームが照射される領域を排気する差動排気機構をもうけた荷電ビーム装置を提供することである。
本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記の荷電ビーム装置を用いて試料表面を検査する欠陥検査装置、或いは試料の表面にパターンを描画する露光装置を提供することである。
本発明が解決しようとする更に別の課題は、上記のような荷電ビーム装置を用いて半導体デバイスを製造する半導体製造方法を提供することである。
又,上述したように,従来、半導体ウェーハ等の試料に一次電子を照射することにより発生した二次電子を検出することによって当該試料の欠陥を検査するための欠陥検査装置が、半導体製造プロセス等で利用されている。
このような欠陥検査装置には、画像認識技術を応用して欠陥検査の自動化及び効率化を図った技術がある。この技術では、二次電子を検出することによって取得した試料表面の被検査領域のパターン画像データと、予め記憶した試料表面の基準画像データとをコンピュータによってマッチング演算し、その演算結果に基づいて、試料の欠陥の有無を自動的に判定する。
昨今では、特に半導体製造分野においては、パターンの高精細化が進み、微細な欠陥を検出する必要が高まってきている。このような状況下では、上記のような画像認識技術を応用した欠陥検査装置においても、認識精度の更なる向上が求められている。
しかしながら、上記従来技術では、一次電子線を試料表面の被検査領域に照射して取得した二次電子線の画像と、予め用意された基準画像との間に位置ずれが発生し、欠陥検出の精度を低下させるという問題があった。この位置ずれは、一次電子線の照射領域がウェーハに対してずれ、検査パターンの一部が二次電子線の検出画像内から欠落するとき、特に大きな問題となり、単にマッチング領域を検出画像内で最適化する技術だけでは対処できない。これは、特に、高精細パターンの検査では致命的欠点となり得る。
そこで、本発明が解決しようとする他の課題は、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止した欠陥検査装置を提供することを目的とする。
更に、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うことにより、デバイス製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止を図った半導体製造方法を提供することを別の目的とする。
発明の概要
本発明は、基本的にSEM方式の欠点である検査速度を向上する方法として、電子線を用いた写像投影方式と呼ばれる方式を利用したものである。以下にその写像投影方式について説明をする。
写像投影方式は試料の観察領域を一次電子線で一括して照射(走査は行わず一定の面積を照射する)、照射された領域からの二次電子をレンズ系により、一括して検出器(マイクロチャンネルプレート+蛍光板)上に電子線の画像として結像させる。それを二次元CCD(固体撮像素子)又はTDI−CCD(ラインイメージセンサー、)により、画像情報を電気信号に変換し、CRT上に出力し又は記憶装置に蓄積する。この画像情報から試料ウェーハ(工程途中の半導体(Si)ウェーハ)の欠陥を検出する。CCDの場合、ステージの移動方向は短軸方向であり(長軸方向でもかまわない)、移動はステップアンドリピート方式である。TDI−CCDの場合のステージ移動は、積算方向に連続移動をする。TDI−CCDでは画像を連続的に取得できるので、欠陥検査を連続で行う場合はTDI−CCDを使用する。分解能は結像光学系(二次光学系)の倍率と精度等できまり、実施例では0.05μmの分解能が得られている。この例において、分解能が0.1μm、電子線照射条件が200μm×50μmの領域に1.6μAのとき、検査時間は20cmのウェーハ1枚当たり1時間程度であり、SEM方式の8倍が得られている。ここで使われているTDI−CCDの仕様は2048画素(ピクセル)×512段でラインレートが3.3μs(ライン周波数300kHz)である。
この例の照射面積はTDI−CCDの仕様に合わせているが、照射対象物によって、照射面積を変更することもある。
この写像方式の課題は▲1▼電子線を一括照射するために、試料表面上でチャージアップしやすいこと、▲2▼本方式で得られる電子線電流に限界が有り(1.6μA程度)検査速度向上の妨げとなっていること、である。
しかして、上記従来の課題を解決するため、本願の第一の発明は、荷電粒子又は電磁波のいづれか一つを検査対象に照射して該検査対象を検査する検査装置において、真空雰囲気に制御可能な、検査対象を検査するワーキングチャンバと、荷電粒子又は電磁波のいづれか一つをビームとして発生させるビーム発生手段と、該ビームを前記ワーキングチャンバ内に保持した検査対象に導き照射し、検査対象から発生する二次荷電粒子を検出し、画像処理系へ導く電子光学系と、該二次荷電粒子により画像を形成する画像処理系と、該画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示及び/又は記憶する情報処理系と、前記ビームに対し相対移動可能に検査対象を保持するステージ装置とを具備することを特徴とする。
本願第二の発明は、第一の発明の検出装置において、検査対象を保全し、前記ワーキングチャンバに搬出入する搬出入機構を具備することを特徴とする。
本願の第三の発明は,本願第二の発明の検査装置において、前記搬出入機構は、
清浄気体を前記検査対象に流して前記検査対象への塵埃の付着を阻止するミニエンバイロメント装置と、前記ミニエンバイロメント装置と前記ワーキングチャンバとの間に配置されていて、それぞれ独立して真空雰囲気に制御可能になっている少なくとも二つのローディングチャンバと、前記ミニエンバイロメント装置と前記ローディングチャンバとの間で前記検査対象を移送可能な搬送ユニット及び前記一つのローディングチャンバ内と前記ステージ装置上との間で前記検査対象を移送可能な別の搬送ユニットを有するローダーと、を備え、
前記ワーキングチャンバとローディングチャンバが振動遮断装置を介して支持されていることを特徴とする。
本願の第四の発明は,本願第一の発明の検査装置において、
前記ワーキングチャンバ内の前記ステージ装置上に前記検査対象を供給するローダーと、
前記ワーキングチャンバ内に配置された前記検査対象に荷電粒子を照射して前記検査対象の帯電むらを減少するプレチャージユニット及び前記検査対象に電位を印加する電位印加機構とを備えていることを特徴とする。
本願の第五の発明は,第三の発明の検査装置において、前記ローダーが、それぞれが独立して雰囲気制御可能になっている第1のローディングチャンバ及び第2のローディングチャンバと、前記検査対象を第1のローディングチャンバ内とその外部との間で搬送する第1の搬送ユニットと、前記第2のローディングチャンバに設けられていて前記検査対象を前記第1のローディングチャンバ内と前記ステージ装置上との間で搬送する第2の搬送ユニットとを備えていることを特徴とする。
本願の第六の発明は,第一、第二又は第三の検査装置において、更に、前記電子光学系に対する前記検査対象の位置決めのために前記検査対象の表面を観察してアライメントを制御するアライメント制御装置と、前記ステージ装置上の前記検査対象の座標を検出するレーザ干渉測距装置とを備え、前記アライメント制御装置により検査対象に存在するパターンとを利用して検査対象の座標を決めることを特徴とする。
本願の第七の発明は,第一、第二又は第三の発明の検査装置において、前記検査対象の位置合わせは、前記ミニエンバイロメント空間内で行われる粗位置合わせと、前記ステージ装置上で行われるXY方向の位置合わせ及び回転方向の位置合わせとを含むことを特徴とする。
本願の第八の発明は,第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,前記電子光学系が,
電界と磁界が直交する場により前記2次荷電粒子を前記検出器方向に偏向するE×B偏向器と、
前記減速電界型対物レンズと前記被検査試料との間に配置され、前記ビームの照射光軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記電子線の照射面における電界強度を制御する電極を備えたことを特徴とする。
本願の第九の発明は,第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,該装置が,荷電粒子と、荷電粒子とは略反対方向に進む二次荷電粒子とが入射され、前記荷電粒子又は二次荷電粒子を選択的に偏向させるE×B分離器であって、電界を発生させるための電極が、3対以上の非磁性導電体電極で構成され、ほぼ円筒を構成するように配置されるE×B分離器を含むことを特徴とする。
本願の第十の発明は,第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,該装置が、検査直前の被検査領域をあらかじめ荷電粒子により照射する荷電粒子照射部を備えたことを特徴とする。
本願第十一の発明は、第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,該装置が、前記検査対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する手段を有することを特徴とする。
本願第十二の発明は、第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,前記装置が,少なくとも前記検出手段が前記二次荷電粒子像を検出する期間内に、前記荷電粒子より低エネルギーを有する電子を前記試料に供給することを特徴とする。
本願第十三の発明は、第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,前記ステージがXYステージであり、該XYステージはワーキングチャンバ内に収容されかつ静圧軸受けによりワーキングチャンバに対して非接触で支持されており、
該ステージが収容されたワーキングチャンバは真空排気され、
該荷電粒子ビーム装置の該試料面上に荷電粒子ビームを照射する部分の周囲には、試料面上の該荷電粒子ビームが照射される領域を排気する差動排気機構が設けられたことを特徴とする。
本願の第十四の発明は,第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,前記装置が,XYステージに試料を載置し、該試料を真空中で任意の位置に移動して試料面に荷電粒子ビームを照射する装置を有し、
該XYステージには、静圧軸受けによる非接触支持機構と差動排気による真空シール機構とを設け、
該試料面上の荷電粒子ビームが照射される箇所と、該XYステージの静圧軸受け支持部との間にコンダクタンスが小さくなる仕切りを設け、
荷電粒子ビーム照射領域と静圧軸受け支持部との間に圧力差が生じるようにしたことを特徴とする。
本願の第十五の発明は,第一、第二、第三の発明のいずれかによる検査装置であって,
前記試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する画像取得手段と、
基準画像を記憶する記憶手段と、
前記画像取得手段により取得された複数の被検査領域の画像と、前記記憶手段に記憶された前記基準画像とを比較することによって前記試料の欠陥を判断する欠陥判断手段と、
を含むことを特徴とする。
本願の第十六の発明は,デバイス製造方法において第一乃至第十五発明の検査装置を用いてプロセス途中又はその後のウエハの欠陥を検出することを特徴とする。
本願第1−16の発明によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)荷電粒子を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(ロ)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(ハ)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
(ニ)プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
本願の第十七の発明は,荷電粒子を被検査試料に照射するビーム発生装置と、
前記荷電粒子を減速させると共に前記荷電粒子が前記被検査試料に照射することにより発生する2次荷電粒子を加速させる減速電界型対物レンズと、
前記2次荷電粒子を検出する検出器と、
電界と磁界が直交する場により前記2次荷電粒子を前記検出器方向に偏向するE×B偏向器と、
前記減速電界型対物レンズと前記被検査試料との間に配置され、前記荷電粒子の照射光軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記荷電粒子の照射面における電界強度を制御する電極を備えたことを特徴とする。
本願の第十八の発明は,第十七の発明の検査装置において,前記被検査試料の種類によって、前記電界強度を制御する為に前記電極に与える電圧を制御することを特徴とする。
本願の第十九の発明は,第十七の発明の検査装置において,前記被検査試料は半導体ウェーハであり、前記電界強度を制御する為に前記電極に与える電圧は、前記半導体ウェーハのビアの有無によって制御することを特徴とする。
本願の第二十の発明は,第十七乃至第十九の発明のいずれかの検査装置を用いたデバイス製造方法であって、
デバイス製造途中において前記検査装置を用いて前記被検査試料であるところの半導体ウェーハの欠陥を検査することを特徴とする。
本願第17−20の発明によれば次の作用効果が得られる。
被検査試料と対物レンズとの間に、荷電粒子の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記荷電粒子の照射面における電界強度を制御する電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の電界を制御することができる。
また、被検査試料と対物レンズとの間に、荷電粒子の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記荷電粒子の照射面における電界強度を弱くする電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の放電を無くすることができる。
また、対物レンズへの印加電圧を低下させる等変更していないので、2次荷電粒子を効率的に対物レンズを通過させられるので、検出効率を向上させ、S/N比の良い信号を得ることができる。
また、被検査試料の種類によって、被検査試料の荷電粒子の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を制御することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極の電圧を変化させ、被検査試料の荷電粒子の照射面における電界強度をより弱くすることで、放電を防止できる。
また、半導体ウェーハのビアの有無によって、電極に与える電圧を変更する、即ち、半導体ウェーハの電子線の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を変更することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極による電界を変化させ、被検査試料の荷電粒子の照射面における電界強度をより弱くすることで、特にビアやビア周辺における放電を防止できる。
また、ビアと対物レンズとの間での放電が防止できるので、半導体ウェーハのパターン等を放電破損することはない。
また、電極に与える電位を被検査試料に与える電荷よりも低くしたので、被検査試料の荷電粒子の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。
また、電極に与える電位を負電位とし、被検査試料は接地したので、被検査試料の荷電粒子の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。
本願の第二十一の発明は,第1の荷電粒子線と、第1の荷電粒子線とは略反対方向に進む第2の荷電粒子線とが入射され、前記第1の荷電粒子線又は第2の荷電粒子線を選択的に偏向させるE×B分離器であって、
電界を発生させるための電極が、3対以上の非磁性導電体電極で構成され、ほぼ円筒を構成するように配置されることを特徴とする。
本願の第二十二の発明は,第二十一の発明のE×B分離器であって、
磁界を発生させる平行平板磁極を、前記3対以上の非磁性導電体電極が構成する円筒の外側に配置し、かつ前記平行平板電極の対向面周辺部に突起を形成したことを特徴とする。
本願の第二十三の発明は,第二十二の発明のE×B分離器であって、
発生した磁界の磁力線の通路のうち、前記平行平板磁極間以外の通路の大部分は、前記3対以上の非磁性導電体電極が構成する円筒と同軸の円筒形状であることを特徴とする。
本願の第二十四の発明は,第二十二又は第二十三の発明のE×B分離器であって、
前記平行平板磁極は、永久磁石であることを特徴とする。
本願の第二十五の発明は,第二十一乃至第二十四の発明のいずれかのE×B分離器を用いた検査装置であって、
前記第1の荷電粒子線又は第2の荷電粒子線の一方が、被検査試料に照射する1次荷電粒子線であり、他方が、前記1次荷電粒子線の照射により前記試料から発生する2次荷電粒子線であることを特徴とする。
本願第21−25発明によれば次の作用効果が得られる。
光軸の回りに電界、磁界がともに一様な領域を大きくとることができ、荷電粒子の照射範囲を広げても、E×B分離器を通した像の収差を問題のない値にすることができる。
また、磁界を形成する磁極の周辺部に突起を設けるとともに、この磁極を電界発生用電極の外側に設けたので、一様な磁界が発生できるとともに、磁極による電界の歪を小さくできる。また、永久磁石を用いて磁界を発生させているので、E×B分離器全体を真空中に収めることができる。さらに、電界発生用電極及び磁路形成用磁気回路を、光軸を中心軸とする同軸の円筒形状とすることにより、E×B分離器全体を小型化できる。
本願の第二十六の発明は,荷電粒子照射部、レンズ系、偏向器、EXBフィルタ(ウィーンフィルタ)、二次荷電粒子検出器を有し、前記荷電粒子照射部から荷電粒子を前記レンズ系、偏向器、EXBフィルタを介して試料の被検査領域に照射し、試料から生成する二次荷電粒子を前記二次荷電粒子検出器に前記レンズ系、偏向器、EXBフィルタにより結像させ、その電気信号を画像として検査する写像投影型電子線検査装置において、検査直前の被検査領域をあらかじめ荷電粒子により照射する荷電粒子照射部を備えたことを特徴とする。
本願の第二十七の発明は,第二十六の発明の装置において,前記荷電粒子が電子、正または負のイオン、またはプラズマであることを特徴とする。
本願の第二十八の発明は,第二十六または第二十七の発明の装置において,前記荷電粒子のエネルギーが100eV以下であることを特徴とする。
本願の第二十九の発明は,第二十六または第二十七の発明の装置において,前記荷電粒子のエネルギーが30eV以下であることを特徴とする。
本願の第三十の発明は,デバイス製造方法において,第二十六乃至第二十九の発明のいずれかによる検査装置を使用してデバイス製造プロセス途中のパターン検査をおこなうことを特徴とする。
本願第26−30の発明によれば次の作用効果が得られる。
荷電粒子照射による測定の直前処理によって、帯電による測定画像歪みが生じないか、生じてもわずかであるので欠陥を正しく測定できる。
また、従来では使用が問題となつていた量の大電流を流してステージを走査できるので、二次電子も多量に検出され、S/N比の良い検出信号が得られ、欠陥検出の信頼性が向上する。
また、S/N比が大きいので、より早くステージを走査しても良好な画像データを作製でき、検査のスループットを大きくすることができる。
本願の第三十一の発明は、ビーム発生装置から放出された荷電粒子を対象に照射し、対象から放出された二次荷電粒子を検出器を用いて検出し、前記対象の画像情報の収集、対象の欠陥の検査等を行う撮像装置において、前記対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する手段を有することを特徴とする。
本願の第三十二の発明は、第三十一の発明の撮像装置において、前記手段が、前記ビーム発生装置と前記対象との間に配置されていて、前記帯電した電荷を制御可能な電極を備えることを特徴とする。
本願の第三十三の発明は、第三十一の発明の撮像装置において、前記手段は計測タイミングの空き時間に動作するようになされていることを特徴とする。
本願の第三十四の発明は、第三十一の発明の撮像装置において、複数の荷電粒子ビームを前記対象に照射する少なくとも1以上の一次光学系と、前記対象から放出された電子を少なくとも1以上の検出器に導く少なくとも1以上の二次光学系とを有し、前記複数の一次荷電粒子ビームは、互いに前記二次光学系の距離分解能より離れた位置に照射されることを特徴とする。
本願の第三十五の発明は、デバイス製造方法において、第三十一ないし第三十四の発明の撮像装置を用いてプロセス途中または終了後ののウエハの欠陥を検出する工程を含むことを特徴とする。
本願第31−35の発明によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)帯電によって発生する画像の歪みを検査対象の性状によらず低減することができる。
(ロ)従来の計測タイミングの空き時間を利用して帯電の均一化、相殺を実行するため、スループットに何ら影響を及ぼすことがない。
(ハ)リアルタイムで処理が可能であるため、事後処理の時間、メモリー等を必要としない。
(ニ)高速で精度の高い画像の観測、欠陥検出が可能である。
本願の第三十六の発明は、一次荷電粒子を試料に照射可能な荷電粒子照射手段と、一次荷電粒子の照射により試料から放出された二次荷電粒子を写像投影して結像させる写像投影手段と、写像投影手段により結像された像を試料の電子画像として検出する検出手段と、検出手段により検出された電子画像に基づいて、試料の欠陥を判断する欠陥判断手段と、を含み、少なくとも検出手段が電子画像を検出する期間内に、照射した一次荷電粒子より低エネルギーを有する電子を試料に供給することを特徴とする。
第三十七発明では、荷電粒子照射手段が試料に一次荷電粒子を照射し、写像投影手段が一次荷電粒子の照射により試料から放出された二次荷電粒子を写像投影して検出手段に結像させる。二次荷電粒子を放出した試料は、正電位にチャージアップする。検出手段は、結像された像を試料の電子画像として検出し、欠陥判断手段は、検出された電子画像に基づいて当該試料の欠陥を判断する。この場合において、少なくとも検出手段が電子画像を検出する期間内に、照射した一次荷電粒子より低エネルギーを有する電子を試料に供給する。この低エネルギーの電子は、二次荷電粒子の放出によって正にチャージアップした試料を電気的に中和させる。かくして、二次荷電粒子は、試料の正電位により実質的な影響を受けることなく結像され、検出手段は、像障害の軽減された電子画像を検出することができる。
一次荷電粒子より低エネルギーの電子として、例えばUV光電子を使用するのが好ましい。UV光電子とは、紫外線(UV)を含む光線が金属等の物質に照射されることによって光電効果に従い放出された電子をいう。また、荷電粒子照射手段とは別個の低エネルギー電子の生成手段、例えば電子銃等で一次荷電粒子より低エネルギーの電子を生成してもよい。
なお、一次荷電粒子の照射により試料から放出される電子の中には、一次荷電粒子の衝突により試料内部の電子が表面から放出されて生じる二次荷電粒子の他、一次荷電粒子が試料表面から反射されて生じる反射電子も含まれている。当然、本発明の検出手段で検出される電子画像には、このような反射電子による寄与も含まれている。
本願の第三十七の発明は、一次荷電粒子を試料に照射可能な荷電粒子照射手段と、一次荷電粒子の照射により試料から放出された二次荷電粒子を写像投影して結像させる写像投影手段と、写像投影手段により結像された像を試料の電子画像として検出する検出手段と、検出手段により検出された電子画像に基づいて、試料の欠陥を判断する欠陥判断手段と、当該試料にUV光電子を供給可能なUV光電子供給手段を更に含むことを特徴とする。
第三十七の発明では、UV光電子供給手段が(又はUV光電子供給において)、本発明の像障害の軽減という効果を奏することができる限り、任意のタイミング、任意の期間内で低エネルギー電子を試料に供給する。例えば、一次荷電粒子照射の実行前若しくは二次荷電粒子結像の実行前、更には、二次荷電粒子結像後で電子画像検出前のいずれかのタイミングでUV光電子の供給を開始してもよい。また、図24の態様のように、少なくとも二次荷電粒子検出の期間内はUV光電子供給を継続してもよいが、電子画像検出前若しくは検出中であっても十分に試料が電気的に中和されれば、UV光電子を停止してもよい。
本願の第三十八の発明は、試料の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、一次荷電粒子を前記試料に照射する工程と、前記一次荷電粒子の照射により前記試料から放出された二次荷電粒子を写像投影して結像させる写像投影工程と、前記写像投影工程で結像された像を前記試料の電子画像として検出する検出工程と、前記検出工程で検出された前記電子画像に基づいて、前記試料の欠陥を判断する欠陥判断工程と、を含み、少なくとも前記検出工程で前記電子画像を検出する期間内に、前記一次荷電粒子より低エネルギーを有する電子を前記試料に供給することを特徴とする。
本願の第三十九の発明は、試料の欠陥を検査する検査方法であって、
一次荷電粒子を試料に照射する荷電粒子照射工程と、前記一次荷電粒子の照射により前記試料から放出された二次荷電粒子を写像投影して結像させる写像投影工程と、前記写像投影工程で結像された像を前記試料の電子画像として検出する検出工程と、前記検出工程で検出された電子画像に基づいて、前記試料の欠陥を判断する欠陥判断工程と、を含み、前記試料にUV光電子を供給するUV光電子供給工程を更に含むことを特徴とする。
本願の第四十の発明は、半導体製造方法において、第三十六又は第三十七の発明の検査装置を用いて、半導体デバイスの製造に必要となる試料の欠陥を検査する工程を含むことを特徴とする。
本願第36−40の発明によれば次の作用効果が得られる。
一次荷電粒子より低エネルギーを有する電子を試料に供給するようにしたので、二次荷電粒子放出に伴う試料表面の正のチャージアップが低減され、ひいては、チャージアップに伴う二次荷電粒子の像障害を解消することができ、より高精度に試料の欠陥を検査することが可能となる、という優れた効果が得られる。
更にデバイス製造方法に、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行えば、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
本願の第四十一の発明は,XYステージに試料を載置し、該試料を真空中で任意の位置に移動して試料面に荷電粒子ビームを照射する装置において、
該XYステージには、静圧軸受けによる非接触支持機構と差動排気による真空シール機構とを設け、
該試料面上の荷電粒子ビームが照射される箇所と、該XYステージの静圧軸受け支持部との間にコンダクタンスが小さくなる仕切りを設け、
荷電粒子ビーム照射領域と静圧軸受け支持部との間に圧力差が生じるようにしたことを特徴とする。
本願の第四十二の発明は,第四十一の発明の荷電粒子ビーム装置において、前記仕切りが差動排気構造を内蔵していることを特徴とする。
本願の第四十三の発明は,第四十一又は第四十二の発明の荷電粒子ビーム装置において、前記仕切りがコールドトラップ機能を有していることを特徴とする。
本願の第四十四の発明は,第四十一乃至第四十三の発明のいずれかの荷電粒子ビーム装置において、前記仕切りが、荷電粒子ビーム照射位置の近傍と、静圧軸受け近傍の2カ所に設けられていることを特徴とする。
本願の第四十五の発明は,第四十一乃至第四十四の発明のいずれかの荷電粒子ビーム装置において、前記XYステージの静圧軸受けに供給されるガスが、窒素もしくは不活性ガスであることを特徴とする。
本願の第四十六の発明は,第四十一乃至第四十五の発明のいずれかの荷電粒子ビーム装置において、前記XYステージの、少なくとも静圧軸受けに面する部品表面に放出ガスを低減するための表面処理を施したことを特徴とする。
本願の第四十七の発明は,第四十一乃至第四十六の発明のいずれかの装置を用いて、半導体ウエハ表面の欠陥を検査するウエハ欠陥検査装置を構成したことを特徴とする。
本願の第四十八の発明は,第四十一乃至第四十六の発明のいずれかの装置を用いて、半導体ウエハ表面又はレチクルに半導体デバイスの回路パターンを描画する露光装置を構成したことを特徴とする。
本願の第四十九の発明は,半導体製造方法において,第四十一乃至第四十八の発明の装置を用いて半導体を製造することを特徴とする。
本願第41−49の発明によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、荷電粒子ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する荷電粒子ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して荷電粒子ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって荷電粒子ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)荷電粒子ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、荷電粒子ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)真空チャンバ内が、荷電粒子ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に荷電ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、荷電粒子ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
本願の第五十の発明は,試料の欠陥を検査する検査装置および方法であって、
前記試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する画像取得手段と、
基準画像を記憶する記憶手段と、
前記画像取得手段により取得された複数の被検査領域の画像と、前記記憶手段に記憶された前記基準画像とを比較することによって前記試料の欠陥を判断する欠陥判断手段と、
を含む、ことを特徴とする。
本願の第五十一の発明は,第五十の発明の検査装置および方法において,一次荷電粒子線を前記複数の被検査領域に各々照射し、前記試料から二次荷電粒子線を放出させる荷電粒子照射手段を更に含み、
前記画像取得手段は、前記複数の被検査領域から放出された二次荷電粒子線を検出することによって該複数の被検査領域の画像を順次取得することを特徴とする。
本願の第五十二の発明は,第五十一の発明の検査装置および方法において,前記荷電粒子照射手段は、
一次荷電粒子を放出する粒子源と、一次荷電粒子を偏向させる偏向手段とを備え、
前記粒子源から放出された一次荷電粒子を前記偏向手段で偏向させることによって、該一次荷電粒子を前記複数の被検査領域に順次照射することを特徴とする。
本願の第五十三の発明は,第五十乃至第五十二の発明の検査装置および方法において,一次荷電粒子線を試料に照射する1次光学系と、
二次荷電粒子を検出器に導く2次光学系とを有することを特徴とする。
本願の第五十四の発明は,半導体製造方法において,第五十乃至第五十三の発明のいずれかの検査装置を用いて、加工中又は完成品のウェーハの欠陥を検査する工程を含むことを特徴とする。
本願第50−54の発明によれば、次の作用効果を奏することができる。
試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
更に本発明のデバイス製造方法によれば、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うようにしたので、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
本願の第五十五の発明は、XYステージ上に載置された試料に荷電粒子ビームを照射する装置において、該XYステージはハウジング内に収容されかつ静圧軸受けによりハウジングに対して非接触で支持されており、該ステージが収容されたハウジングは真空排気され、該荷電粒子ビーム装置の該試料面上に荷電粒子ビームを照射する部分の周囲には、試料面上の該荷電ビームが照射される領域を排気する差動排気機構が設けられたことを特徴とする。
この発明によれば、真空チャンバ内に漏れ出た静圧軸受け用の高圧ガスは、まず真空チャンバに接続された真空排気用配管によって排気される。そして荷電粒子ビームが照射される領域を排気する差動排気機構を荷電粒子ビームを照射する部分の周囲に設けることによって、荷電粒子ビーム照射領域の圧力を真空チャンバ内の圧力より大幅に減少させ、荷電粒子ビームによる試料への処理が問題なく実施できる真空度を安定して達成することができる。すなわち、大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して荷電粒子ビームによる処理を安定に行うことができる。
本願の第五十六の発明は、第五十五の発明の荷電粒子ビーム装置において、前記XYステージの静圧軸受けに供給されるガスは窒素もしくは不活性ガスであり、該窒素もしくは不活性ガスは、該ステージを収納するハウジングから排気された後加圧され、再び前記静圧軸受けに供給されることを特徴とする。
この発明によれば、真空のハウジング内の残留ガス成分は高純度の不活性ガスとなるので、試料表面やハウジングにより形成される真空チャンバ内の構造物の表面を水分や油分等で汚染する恐れがない上に、試料表面に不活性ガス分子が吸着しても、差動排気機構或いは荷電粒子ビーム照射領域の高真空部に晒されれば速やかに試料表面から離脱するので、荷電粒子ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、荷電粒子ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
本願の第五十七の発明は、第五十五又は第五十六の発明の装置を用いて、半導体ウエハ表面の欠陥を検査するウエハ欠陥検査装置にある。
これにより、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
本願の五十八の発明は、第五十五又は第五十六の発明の装置を用いて、半導体ウエハ表面又はレチクルに半導体デバイスの回路パターンを描画する露光装置にある。
これにより、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
本願の第五十九の発明は、第五十五ないし第五十八の発明の装置を用いて半導体を製造する半導体製造方法にある。
ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。本願第55−59の発明によれば、次の作用効果を奏することができる。
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して荷電粒子ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)荷電粒子ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、荷電粒子ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電粒子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
本願第六十の発明は、荷電粒子又は電磁波のいづれか一つを検査対象に照射して該検査対象を検査する検査方法において、
真空雰囲気に制御可能な、検査対象を検査するワーキングチャンバと、
荷電粒子又は電磁波のいづれか一つをビームとして発生させるビーム発生手段と、
該ビームを前記ワーキングチャンバ内に保持した検査対象に導き照射し、検査対象から発生する二次荷電粒子を検出し、画像処理系へ導く電子光学系と、
該二次荷電粒子により画像を形成する画像処理系と、
該画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示および/又は記憶する情報処理系と、
前記ビームに対し相対移動可能に検査対象を保持するステージ装置とを備え、
検査対象の位置を測定することで、前記ビームを検査対象上に正確に位置付け、
測定された前記検査対象の所望の位置に前記ビームを偏向させ、
前記検査対象表面の前記所望位置を前記ビームで照射し、
前記検査対象から生じる二次荷電粒子を検出し、
前記二次荷電粒子により画像を形成し、
前記画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示および/又は記憶することを特徴とする。
発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して、本発明好ましい実施形態について、検査対象として表面にパターンが形成された基板すなわちウエハを検査する半導体検査装置として説明する。
図1及び図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、を備え、それらは図1及び図2Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図29に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図30に図示)と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
カセットホルダ
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類およびファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット612により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
ミニエンバイロメント装置
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
主ハウジング
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
ローダハウジング
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述するマルチビーム型電子装置原理と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
なお、電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにウエハを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
ステージ装置
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダー
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてウエハを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
ウエハの搬送
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウェーハラック47に、既に処理済のウェーハAと未処理のウェーハBがある場合、
▲1▼ まず、ステージ装置50に未処理のウェーハBを移動し、処理を開始する。
▲2▼ この処理中に、処理済ウェーハAを、アームによりステージ装置50からウェーハラック47に移動し、未処理のウェーハCを同じくアームによりウェーハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウェーハラック47に移動する。
このようにすることで、ウェーハラック47の中は、ウェーハBを処理中に、処理済のウェーハAが未処理のウェーハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウェーハラック47からウェーハを移動することで、複数枚のウェーハを同じ処理することもできる。
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例がで示されている。図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図7に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図7に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(ロ)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(ハ)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
電子光学装置
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図8に概略図示するような、一次電子光学系(以下単に一次光学系)72と、二次電子光学系(以下単に二次光学系)74とを備える電子光学系と、検出系76とが設けられている。一次光学系72は、電子線を検査対象であるウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズからなるレンズ系722と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器723と、対物レンズ系724と、を備え、それらは、図8に示されるように電子銃721を最上部にして順に配置されている。この実施形態の対物レンズ系724を構成するレンズは減速電界型対物レンズである。この実施形態では、電子銃721から放出される一次電子線の光軸は、検査対象であるウエハWに照射される照射光軸(ウエハの表面に垂直になっている)に関して斜めになっている。対物レンズ系724と検査対象であるウエハWとの間には電極725が配置されている。この電極725は一次電子線の照射光軸に関して軸対称の形状になっていて、電源726によって電圧制御されるようになっている。
二次光学系74は、E×B型偏向器724により一次光学系から分離された二次電子を通す静電レンズから成るレンズ系741を備えている。このレンズ系741は二次電子像を拡大する拡大レンズとして機能する。
検出系76は、レンズ系741の結像面に配置された検出器761及び画像処理部763を備えている。
電子銃(電子線源)
電子線源として熱電子線源を使用している。電子放出(エミッタ)材はLaB6である。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。先端を円錐形状にしたもの又は円錐の先端を切り落とした円錐台形状のものを使用している。円錐台先端の直径は100μm程度である。他の方式としては電界放出型の電子線源あるいは熱電界放出型のものが使用されているが、本発明の場合のように比較的広い領域(例えば100×25〜400×100μm2)を大きな電流(1μA程度)で照射する場合はLaB6を用いた熱電子源が最適である。(SEM方式では一般に熱電界電子線源が使用されている)。尚、熱電子線源は電子放出材を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電界放出電子線源とは、電子放出材に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
一次電子光学系
電子銃より照射される電子ビームを形成し、ウエハ面上に矩形、又は円形(楕円)電子ビームを照射する部分で一次電子光学系と呼ぶ。一次電子光学系のレンズ条件を制御する事によりビームサイズや電流密度を制御できる。また、一次/二次電子光学系連結部のE×B(ウィーンフィルター)フィルターにより、一次電子ビームはウエハに垂直に入射される。
LaB6カソードから放出した熱電子を、ウェーネルト、トリプルアノードレンズでガン絞り上にクロスオーバー像として結像させる。照明視野絞りでレンズへの入射角を適正化した電子ビームを一次系静電レンズを制御することによって、回転非対称の形でNA絞り上に結像させ、その後ウエハ面上に面照射する。一次系静電レンズの後段は3段4極子(QL)と、1段の開口収差補正用電極で構成されている。4極子レンズはアライメント精度が厳しいといった制約はあるが、回転対称レンズに比べ強い収束作用を持つ特徴があり、回転対称レンズの球面収差に相当する開口収差を開口収差補正電極に適切な電圧を印加するとで補正を行うことができる。これにより、所定の領域に均一な面ビームを照射出来る。
二次電子光学系
ウエハ上に照射された電子ビームにより発生する二次元の二次電子画像を、対物レンズに相当する静電レンズ(CL、TL)により視野絞り位置で結像させ後段のレンズ(PL)で拡大投影する。この結像投影光学系を二次電子光学系と呼ぶ。
このとき、ウエハにはマイナスのバイアス電圧(減速電界電圧)が印加されている。減速電界は照射ビームに対して減速の効果を持ち、試料のダメージを低減させるとともに、CLとウエハ間の電位差で試料面上から発生した二次電子を加速させ、色収差を低減させる効果を持つ。CLによって収束した電子はTLでFA上に結像させ、その像をPLで拡大投影し、二次電子検出器(MCP)上に結像させる。本光学系ではCL−TL間にNAを配置し、これを最適化することで軸外収差低減が可能な光学系を構成している。
また、電子光学系の製造上の誤差や、E×Bフィルター(ウィーンフィルター)を通過することによって発生する像の非点収差や異方性倍率を補正するため、静電8極子(STIG)を配置し補正を行い、軸ズレに対しては各レンズ間に配置した偏向器(OP)で補正を行う。これにより視野内における均一な分解能での写像光学系が達成できる。
E×Bユニット(ウィーンフィルター)
電極と磁極を直交方向に配置し、電界と磁界を直交させた電磁プリズム光学系のユニットである。電磁界を選択的に与えると、一方向からその場に入射する電子ビームは偏向させ、ぞの反対方向から入射する電子ビームは、電界から受ける力と磁界から受ける力の影響が相殺される条件(ウィーン条件)を作ることが可能で、これにより一次電子ビームは偏向され、ウエハ上に垂直に照射し、二次電子ビームは検出器に向け直進することができる。
電子ビーム偏向部723の詳細な構造について、図9、及び図9のA−A線に沿う縦断面を示した図10を用いて説明する。図9に示すように、電子ビーム偏向部の場は、上記写像投影光学部の光軸に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造、即ちE×B構造とする。
ここで、電界は凹免状の曲面を持つ電極723−1及び723−2により発生させる。電極723−1及び723−2が発生する電界は、それぞれ制御部723a及び723dにより制御される。一方、電界発生用の電極723−1及び723−2と直交するように、電磁コイル723−1a及び723−2aを配置させることにより、磁界を発生させている。尚、電解発生用の電極723−1、723−2は点対象である。(同心円でも構わない。)
この場合は磁界の均一性を向上させるために、平行平板形状を有するポールピースを持たせて、磁路42を形成している。A−A線に沿う縦断面における電子ビームの挙動は、図10に示されるようである。照射された電子ビーム711a及び711bは、電極723−1及び723−2が発生する電界と、電磁コイル723−1a及び723−2aが発生する磁界とによって偏向された後、試料面上に対して垂直方向に入射する。
ここで、照射電子ビーム711a及び711bの電子ビーム偏向部723への入射位置及び角度は、電子のエネルギーが決定されると一義的に決定される。さらに、二次電子712a及び712bが直進するように、電界及び磁界の条件、即ちvB=Eとなるように電極723−1及び723−2が発生する電界と、電磁コイル723−1a及び723−2aが発生する磁界とを、それぞれの制御部723a及び723d、723c及び723bが制御することで、二次電子は電子ビーム偏向部723を直進して、上記写像投影光学部に入射する。ここで、Vは電子712の速度(m/s)、Bは磁場(T)、eは電荷量(C)、Eは電界(V/m)である。
検出器
二次光学系で結像されるウエハからの二次電子画像は、まずマイクロチャンネルプレート(MCP)で増幅されたのち、蛍光スクリーンにあたり光の像に変換される。MCPの原理としては直径6〜25μm、長さ0.24〜1.0mmという非常に細い導電性のガラスキャピラリを数百万本束ね、薄い板状に整形したもので、所定の電圧印加を行うことで、一本一本のキャピラリが、独立した二次電子増幅器として働き、全体として二次電子増幅器を形成する。
この検出器により光に変換された画像は、真空透過窓を介して大気中に置かれたFOP系でTDI−CCD上に1対1で投影される。
次に、上記構成の電子光学装置70の動作に付いて説明する。
図8に示すように、電子銃721から放出された一次電子線は、レンズ系722によって集束される。収束された一次電子線はE×B型偏向器723に入射され、ウエハWの表面に垂直に照射されるように偏向され、対物レンズ系724によってウエハWの表面上に結像される。
一次電子線の照射によってウエハから放出された二次電子は、対物レンズ系724によって加速され、E×B型偏向器723に入射し、その偏向器を直進して二次光学系のレンズ系741により検出器761に導かれる。そして、その検出器761によって検出され、その検出信号が画像処理部763に送られる。
なお、この実施形態において、対物レンズ系724は、10ないし20kVの高電圧が印加され、ウエハは設置されているものとする。
ここで、ウエハWにビアbがある場合に、電極725に与える電圧を−200Vとすると、ウエハの電子線照射面の電界は、0〜−0.1V/mm(−はウエハW側が高電位であることを示す)となった。この状態で、対物レンズ系724とウエハWとの間に放電は発生せずに、ウエハWの欠陥検査は行えたが、二次電子の検出効率が若干下がってしまう。したがって、電子線を照射し二次電子を検出する一連の動作を、例えば4回行い、得られた4回分の検出結果を累積加算や平均化等の処理を施して所定の検出感度を得た。
また、ウエハにビアbがない場合に、電極725に与える電圧を+350Vとしても、対物レンズ系724とウエハとの間に放電は発生せずに、ウエハWの欠陥検査は行えた。この場合、電極725に与えた電圧によって二次電子が集束され、対物レンズ724によっても更に集束されるので、検出器761における二次電子の検出効率は向上した。よって、ウエハ欠陥装置としての処理も高速となり、高いスループットで検査が行えた。
写像投影方式の主な機能の関係とその全体像の説明
図11に本実施の形態の全体構成図を示す。但し、一部構成を省略図示している。
図11において、検査装置は一次コラム71−1、二次コラム71−2およびチャンバー32を有している。一次コラム71−1の内部には、電子銃721が設けられており、電子銃721から照射される電子ビーム(一次ビーム)の光軸上に一次光学系72が配置される。また、チャンバー32の内部には、ステージ50が設置され、ステージ50上には試料Wが載置される。
一方、二次コラム71−2の内部には、試料Wから発生する二次ビームの光軸上に、カソードレンズ724、ニューメニカルアパーチャNA−2、ウィーンフィルタ723、第2レンズ741−1、フィールドアパーチャNA−3、第3レンズ741−2、第4レンズ741−3および検出器761が配置される。なお、ニューメニカルアパーチャNA−2は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。そして、開口部が一次ビームの集束位置およびカソードレンズ724の焦点位置になるように配置されている。したがって、カソードレンズ724とニューメニカルアパーチャNA−2とは、テレセントリックな電子光学系を構成している。
一方、検出器761の出力は、コントロールユニット780に入力され、コントロールユニット780の出力は、CPU781に入力される。CPU781の制御信号は、一次コラム制御ユニット71a、二次コラム制御ユニット71bおよびステージ駆動機構56に入力される。一次コラム制御ユニット71aは、一次光学系72のレンズ電圧制御を行い、二次コラム制御ユニット71bは、カソードレンズ724、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3のレンズ電圧制御およびウィーンフィルタ723に印加する電磁界制御を行う。
また、ステージ駆動機構56は、ステージの位置情報をCPU781に伝達する。さらに、一次コラム71−1、二次コラム71−2、チャンバー32は、真空排気系(不図示)と繋がっており、真空排気系のターボポンプにより排気されて、内部は真空状態を維持している。
(一次ビーム)電子銃721からの一次ビームは、一次光学系72によってレンズ作用を受けながら、ウィーンフィルタ723に入射する。ここでは、電子銃のチップとしては、矩形陰極で大電流を取り出すことができるLaB6を用いる。また、一次光学系72は、回転軸非対称の四重極または八重極の静電(または電磁)レンズを使用する。これは、いわゆるシリンドリカルズレンズと同様にX軸、Y軸各々で集束と発散とを引き起こすことができる。このレンズを2段、3段で構成し、各レンズ条件を最適化することによって、照射電子を損失することなく、試料面上のビーム照射領域を、任意の矩形状、または楕円形状に整形することができる。
具体的には、静電レンズを用いた場合、4つの円柱ロッドを使用する。対向する電極同士を等電位にし、互いに逆の電圧特性を与える。
なお、四重極レンズとして円柱形ではなく、静電偏向器で、通常使用される円形板を4分割した形状のレンズを用いてもよい。この場合レンズの小型化を図ることができる。一次光学系72を通過した一次ビームは、ウィーンフィルタ723の偏向作用により軌道が曲げられる。ウィーンフィルタ723は、磁界と電界を直交させ、電界をE、磁界をB、荷電粒子の速度をvとした場合、E=vBのウィーン条件を満たす荷電粒子のみを直進させ、それ以外の荷電粒子の軌道を曲げる。一次ビームに対しては、磁界による力FBと電界による力FEとが発生し、ビーム軌道は曲げられる。一方、二次ビームに対しては、力FBと力FEとが逆方向に働くため、互いに相殺されるので二次ビームはそのまま直進する。
一次光学系72のレンズ電圧は、一次ビームがニューメニカルアパーチャNA−2の開口部で結像するように、予め設定されている。このニューメニカルアパーチャNA−2は、装置内に散乱する余計な電子ビームが試料面に到達することを阻止し、試料Wのチャージアップや汚染を防いでいる。さらに、ニューメニカルアパーチャNA−2とカソードレンズ724とはテレセントリックな電子光学系を構成しているので、カソードレンズ724を透過した一次ビームは平行ビームになり、試料Wに均一かつ一様に照射する。すなわち、光学顕微鏡でいうケーラー照明が実現される。
(二次ビーム)一次ビームが試料に照射されると、試料のビーム照射面からは、二次ビームとして、二次電子、反射電子または後方散乱電子が発生する。
二次ビームは、カソードレンズ724によるレンズ作用を受けながら、レンズを透過する。
ところで、カソードレンズ724は、3枚の電極で構成されている。一番下の電極は、試料W側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に、指向性が小さい二次電子)を引き込み、効率よくレンズ内に導くように設計されている。
また、レンズ作用は、カソードレンズ724の1番目、2番目の電極に電圧を印加し、3番目の電極をゼロ電位にすることで行われる。一方、ニューメニカルアパーチャNA−2は、カソードレンズ724の焦点位置、すなわち試料Wからのバックフォーカス位置に配置されている。したがって、視野中心外(軸外)から出た電子ビームの光束も、平行ビームとなって、このニューメニカルアパーチャNA−2の中心位置を、けられが生じることなく通過する。
なお、ニューメニカルアパーチャNA−2は、二次ビームに対しては、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3のレンズ収差を抑える役割を果たしている。ニューメニカルアパーチャNA−2を通過した二次ビームは、ウィーンフィルタ723の偏向作用を受けずに、そのまま直進して通過する。なお、ウィーンフィルタ723に印加する電磁界を変えることで、二次ビームから、特定のエネルギーを持つ電子(例えば2次電子、又は反射電子、又は後方散乱電子)のみを検出器761に導くことができる。
二次ビームを、カソードレンズ724のみで結像させると、レンズ作用が強くなり収差が発生しやすい。そこで、第2レンズ741−1と合わせて、1回の結像を行わせる。二次ビームは、カソードレンズ724および第2レンズ741−1により、フィールドアパーチャNA−3上で中間結像を得る。この場合、通常、二次光学系として必要な拡大倍率が、不足することが多いため、中間像を拡大するためのレンズとして、第3レンズ741−2、第4レンズ741−3を加えた構成にする。二次ビームは、第3レンズ741−2、第4レンズ741−3各々により拡大結像し、ここでは、合計3回結像する。なお、第3レンズ741−2と第4レンズ741−3とを合わせて1回(合計2回)結像させてもよい。
また、第2レンズ741−1〜第4レンズ741−3はすべて、ユニポテンシャルレンズまたはアインツェルレンズとよばれる回転軸対称型のレンズである。各レンズは、3枚電極の構成で、通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧で、レンズ作用を行わせて制御する。また、中間の結像点には、フィールドアパーチャNA−3が配置されている。フィールドアパーチャNA−3は光学顕微鏡の視野絞りと同様に、視野を必要範囲に制限しているが、電子ビームの場合、余計なビームを、後段の第3レンズ741−2および第4レンズ741−3と共に遮断して、検出器761のチャージアップや汚染を防いでいる。なお、拡大倍率は、この第3レンズ741−2および第4レンズ741−3のレンズ条件(焦点距離)を変えることで設定される。
二次ビームは、二次光学系により拡大投影され、検出器761の検出面に結像する。検出器761は、電子を増幅するMCPと、電子を光に変換する蛍光板と、真空系と外部との中継および光学像を伝達させるためのレンズやその他の光学素子と、撮像素子(CCD等)とから構成される。二次ビームは、MCP検出面で結像し、増幅され、蛍光板によって電子は光信号に変換され、撮像素子によって光電信号に変換される。
コントロールユニット780は、検出器761から試料の画像信号を読み出し、CPU781に伝達する。CPU781は、画像信号からテンプレートマッチング等によってパターンの欠陥検査を実施する。また、ステージ50は、ステージ駆動機構56により、XY方向に移動可能となっている。CPU781は、ステージ50の位置を読み取り、ステージ駆動機構56に駆動制御信号を出力し、ステージ50を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。
このように、本実施形態の検査装置では、ニューメニカルアパーチャNA−2とカソードレンズ724とが、テレセントリックな電子光学系を構成しているので、一次ビームに対しては、ビームを試料に均一に照射させることができる。すなわち、ケーラー照明を容易に実現することができる。
さらに、二次ビームに対しては、試料Wからの全ての主光線が、カソードレンズ724に垂直(レンズ光軸に平行)に入射し、ニューメニカルアパーチャNA−2を通過するので、周辺光もけられることがなく、試料周辺部の画像輝度が低下することがない。また、電子が有するエネルギーのばらつきによって、結像する位置が異なる、いわゆる倍率色収差が起こる(特に、二次電子は、エネルギーのばらつきが大きいため、倍率色収差が大きい)が、カソードレンズ724の焦点位置に、ニューメニカルアパーチャNA−2を配置することで、この倍率色収差を抑えることができる。
また、拡大倍率の変更は、ニューメニカルアパーチャNA−2の通過後に行われるので、第3レンズ741−2、第4レンズ741−3のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野全面に均一な像が得られる。なお、本実施形態では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するために、二次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、それに伴って決まる試料面上の有効視野と、試料面上に照射される電子ビームとを、同一の大きさになるように一次光学系のレンズ条件を設定する。
すなわち、倍率を上げていけば、それに伴って視野が狭くなるが、それと同時に電子ビームの照射エネルギー密度を上げていくことで、二次光学系で拡大投影されても、検出電子の信号密度は、常に一定に保たれ、像の明るさは低下しない。
また、本実施形態の検査装置では、一次ビームの軌道を曲げて、二次ビームを直進させるウィーンフィルタ723を用いたが、それに限定されず、一次ビームの軌道を直進させ、二次ビームの軌道を曲げるウィーンフィルタを用いた構成の検査装置でもよい。また、本実施形態では、矩形陰極と四極子レンズとから矩形ビームを形成したが、それに限定されず、例えば円形ビームから矩形ビームや楕円形ビームを作り出してもよいし、円形ビームをスリットに通して矩形ビームを取り出してもよい。
電極
対物レンズ724とウェーハWとの間には、電子線の照射光軸に対して略軸対称である形状の電極725が配置されている。電極725の形状の一例を図12,13に示す。
図12,13は、電極725の斜視図であり、図12は、電極725が軸対称に円筒形状である場合を示す斜視図であり、図13は、電極725が軸対称に円盤形状である場合を示す斜視図である。
本実施形態では、図12に示すように電極725が円筒形状として説明するが、電子線の照射光軸に対して略軸対称であれば、図13に示すような円盤形状であってもよい。
更に、電極725には、対物レンズ724とウェーハWとの間における放電を防止する電界を発生する為に、ウェーハWへの印加電圧(本実施形態では接地されているので、電位は0V)よりも低い所定の電圧(負電位)が電源726によって印加されている。この時のウェーハWと対物レンズ724との間の電位分布を図14を参照して説明する。
図14は、ウェーハWと対物レンズ724との間の電圧分布を示すグラフである。
図14において、電子線の照射光軸における位置を横軸として、ウェーハWから対物レンズ724の位置までの電圧分布を示している。
電極725が無かった従来の電子線装置においては、対物レンズ724からウェーハWまでの電圧分布は、対物レンズ724に印加した電圧を最大値として、接地しているウェーハWまでなだらかに変化している。(図14の細線)
一方、本実施形態の電子線装置においては、対物レンズ724とウェーハWとの間に電極725が配置され、且つ電極725には、ウェーハWへの印加電圧よりも低い所定の電圧(負電位)が電源726によって印加されているので、ウェーハWの電界が弱められる。(図14の太線)
よって、本実施形態の電子線装置においては、ウェーハWにおけるビアb近傍に電界が集中せずに高電界とはならない。そして、ビアbに電子線が照射されて2次電子が放出されても、この放出された2次電子は、残留ガスをイオン化する程には加速されないので、対物レンズ724とウェーハWとの間に放電が防止できる。
また、対物レンズ724とビアbとの間での放電が防止できるので、ウェーハWのパターン等を放電破損することはない。
また、上記実施形態においては、対物レンズ724とビアbのあるウェーハWとの間の放電が防止できるが、電極725に負電位を印加しているので、負電位の大きさによっては、検出器761による2次電子の検出感度が低下する場合もある。よって検出感度が低下した場合は、上述したように,電子線を照射し2次電子を検出する一連の動作を複数回に渡って行い、得られた複数の検出結果を累積加算や平均化等の処理を施して所定の検出感度(信号のS/N比)を得るようにすればよい。
本実施形態では、一例として、検出感度を信号対雑音比(S/N比)として説明している。
ここで、上記の2次電子検出動作について、図15を参照して説明する。
図15は、電子線装置の2次電子検出動作を示すフローチャートである。
まず、検出器761によって被検査試料からの2次電子を検出する(ステップ1)。次に、信号対雑音比(S/N比)が所定の値以上であるかの判断を行う(ステップ2)。ステップ2において、信号対雑音比が所定値以上である場合は、検出器761による2次電子の検出は十分であるので、2次電子検出動作は完了する。
一方、ステップ2において、信号対雑音比が所定値未満である場合は、電子線を照射し2次電子を検出する一連の動作を4N回行い、平均化処理を行う(ステップ3)。ここで、Nの初期値は「1」に設定されているので、ステップ3において初回は、2次電子の検出動作が4回行われる。
次に、Nに「1」を加算してカウントアップして(ステップ4)、ステップ2において再度、信号対雑音比が所定の値以上であるかの判断を行う。ここで、信号対雑音比が所定値未満である場合は、再度ステップ3に進み、今度は2次電子の検出動作を8回行う。そして、Nをカウントアップして、信号対雑音比が所定値以上となるまで、ステップ2〜4を繰り返す。
また、本実施形態では、電極725にウェーハWへの印加電圧よりも低い所定の電圧(負電位)を印加することにより、ビアbのあるウェーハWに対する放電防止について述べたが、2次電子の検出効率が低下する場合がある。
よって、被検査試料がビアの無いウェーハ等、対物レンズ724との間で放電が生じにくい種類の被検査試料であった場合は、検出器761における2次電子の検出効率が高くなるように、電極725に印加する電圧を制御することができる。
具体的には、被試験試料が接地されている場合であっても、電極725に印加する電圧を、被試験試料への印加電圧よりも高い所定の電圧にする、例えば、+10Vとする。また、この時、電極725と被検査試料との距離は、電極725と被検査試料との間に放電が生じない距離に配置する。
この場合、被検査試料への電子線の照射によって発生した2次電子は、電極725に印加された電圧によって発生した電界によって、電子線源721側に加速される。そして、対物レンズ724に印加された電圧によって発生した電界によって、更に、電子線源721側に加速されて収束作用を受けるので、検出器761に多くの2次電子が入射し検出効率を高くすることができる。
また更に、電極725は軸対称であるので、被検査試料に照射する電子線を収束するレンズ作用も持つ。従って、電極725に印加する電圧によって、1次電子線をより細く絞ることもできる。また、電極725によって1次電子線を細く絞ることもできるので、対物レンズ724との組み合わせにより、より低収差の対物レンズ系を構成することもできる。このようなレンズ作用が可能な程度に、電極725は略軸対称であればよい。
上記実施例の電子線装置によれば、被検査試料と対物レンズとの間に、電子線の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記電子線の照射面における電界強度を制御する電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の電界を制御することができる。
また、被検査試料と対物レンズとの間に、電子線の照射軸に対して略軸対称の形状であり、前記被検査試料の前記電子線の照射面における電界強度を弱くする電極を備えたので、被検査試料と対物レンズとの間の放電を無くすることができる。
また、対物レンズへの印加電圧を低下させる等変更していないので、2次電子を効率的に対物レンズを通過させられるので、検出効率を向上させ、S/N比の良い信号を得ることができる。
また、被検査試料の種類によって、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を制御することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極の電圧を変化させ、被検査試料の電子線の照射面における電界強度をより弱くすることで、放電を防止できる。
また、半導体ウェーハのビアの有無によって、電極に与える電圧を変更する、即ち、半導体ウェーハの電子線の照射面における電界強度を弱くする為の電圧を変更することができる。
例えば、被検査試料が、対物レンズとの間で放電し易い種類の被検査試料である場合は、電極による電界を変化させ、被検査試料の電子線の照射面における電界強度をより弱くすることで、特にビアやビア周辺における放電を防止できる。
また、ビアと対物レンズとの間での放電が防止できるので、半導体ウェーハのパターン等を放電破損することはない。
また、電極に与える電位を被検査試料に与える電荷よりも低くしたので、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。
また、電極に与える電位を負電位とし、被検査試料は接地したので、被検査試料の電子線の照射面における電界強度を弱くすることができ、被検査試料への放電が防止できる。
EXB分離器の変形例
図16は、本発明の実施の形態のE×B分離器を示す。図16は、光軸に垂直な面で切った断面図である。電界を発生させるための4対の電極701と708、702と707、703と706、704と705は、非磁性導電体で形成され、全体としてほぼ円筒形状であり、絶縁材料で形成された電極支持用円筒713の内面にネジ(図示せず)等により固定される。電極支持用円筒713の軸及び電極が形成する円筒の軸は、光軸716に一致させる。各電極701、702、703、704、705、706、707、708の間の電極支持用円筒713内面には、光軸716と平行の溝714が設けられる。そして、その内面の領域は、導電体715でコーティングされ、アース電位に設定される。
電界を発生させる際に、電極702、703に「cosθ1」、電極706、707に「−cosθ1」、電極701、704に「cosθ2」、電極705、708に「−cosθ2」に比例する電圧を与えると、電極の内径の60%程度の領域でほぼ一様な平行電界が得られる。図17に電界分布のシミュレーション結果を示す。なお、この例では、4対の電極を用いたが、3対でも内径の40%程度の領域で一様な平行電界が得られる。
磁界の発生は、電極支持用円筒713の外側に2つの矩形状の白金合金永久磁石709、710を平行に配置することによって行う。永久磁石709、710の光軸716側の面の周辺には、磁性材料で構成される突起712が設けられる。この突起712は、光軸716側の磁力線が外側に凸に歪むのを補償するものであり。その大きさ及び形状は、シミュレーション解析によって定めることができる。
永久磁石709、710の外側は、永久磁石709、710による磁力線の光軸716と反対側の通路が、電極支持用円筒713と同軸の円筒となるように、強磁性体材料で構成される磁気回路711が設けられる。
図16に示したようなE×B分離器は、図8に示すような写像投影型電子線検査装置だけでなく、走査型電子線検査装置にも適用することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施例によれば、光軸の回りに電界、磁界がともに一様な領域を大きくとることができ、1次電子線の照射範囲を広げても、E×B分離器を通した像の収差を問題のない値にすることができる。
また、磁界を形成する磁極の周辺部に突起を設けるとともに、この磁極を電界発生用電極の外側に設けたので、一様な磁界が発生できるとともに、磁極による電界の歪を小さくできる。また、永久磁石を用いて磁界を発生させているので、E×B分離器全体を真空中に収めることができる。さらに、電界発生用電極及び磁路形成用磁気回路を、光軸を中心軸とする同軸の円筒形状とすることにより、E×B分離器全体を小型化できる。
プレチャージユニット
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板すなわちウエハに電子線を照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると二次電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施形態では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に検査電子を照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予め検出対称であるウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
また、このプレチャージユニットでは一次電子線をぼかして照射してもよい。
図18は、本発明によるプレチャージユニットの一実施の形態の要部を示す。
荷電粒子818は荷電粒子照射線源819から試料基板Wへ、バイアス電源820で設定された電圧で加速されて照射される。被検査領域815は領域816とともに既に前処理の荷電粒子照射を行った場所を示し、領域817は荷電粒子照射を行っている場所を示す。この図では試料基板Wを図の矢印の方向に走査しているが、往復走査を行う場合は、図示点線で示すように、荷電粒子線源819をもう一台一次電子線源の反対側に設置し、試料基板Wの走査方向に同期して交互に荷電粒子線源819、819をオン、オフすれば良い。この場合、荷電粒子のエネルギーが高すぎると試料基板Wの絶縁部からの二次電子収率が1を超えてしまい、表面が正に帯電し、またそれ以下でも二次電子が生成すると現象が複雑となり、照射効果が減少するので、二次電子の生成が激減する100eV以下(理想的には0eV以上で30eV以下)のランディング電圧に設定するのが効果的である。
図19は本発明によるプレチャージユニットの第2の実施形態を示す。本図は荷電粒子線として電子線825を照射するタイプの照射線源を示す。照射線源は、熱フィラメント821、引きだし電極824、シールドケース826、フィラメント電源827、電子引き出し電源823から構成されている。引き出し電極824は厚さ0.1mmで、幅0.2mm、長さ1.0mmのスリットが設けられており、直径0.1mmのフィラメント821との位置関係は3電極電子銃の形態となっている。シールドケース826には幅1mm長さ2mmのスリットが設けられており、引出し出極824とは距離1mmの間隔とし、両者のスリットセンターが一致する様に組み上げられている。フィラメントの材質はタングステン(W)で2Aの電流を流し、引き出し電圧20V、バイアス電圧−30Vで数μAの電子電流が得られている。
ここに示した例は一つの例であり、例えば、フィラメント材質はTa、Ir、Re等の高融点金属や、トリアコートW、酸化物陰極等が使用でき、その材質、線径、長さによりフィラメント電流が変わることは言うまでもない。また、その他の種類の電子銃でも電子線照射領域、電子電流、エネルギーが適当な値に設定できるものであれば使用する事が可能である。
図20は第3の実施例を示す。本荷電粒子線としてイオン829を照射するタイプの照射線源を示す。本照射線源はフィラメント821、フィラメント電源822、放電電源827、陽極シールドケース826から構成されており、陽極828とシールドケース826には1mm×2mmの同じサイズのスリットが明けられており、1mm間隔で両スリットの中心が一致する様に組み立てられている。シールドケース826内にパイプ831を介してArガス830を1Pa程度導入し、熱フィラメント821によるアーク放電タイプで動作させる。バイアス電圧は正の値に設定する。
図21は第4の実施例であるプラズマ照射方式の場合を示す。構造は図20と同様である。動作も上記と同様、熱フィラメント821によるアーク放電タイプで動作させるが、バイアス電位を0Vにすることにより、ガス圧によりプラズマ832がスリットからしみだし、試料基板に照射される。プラズマ照射の場合は他の方法に比べて正負両方の電荷を持つ粒子の集団のため試料基板表面の正負どちらの表面電位も0に近づけることが可能となる。
試料基板Wに接近して配置された荷電粒子照射部819は、図18ないし図21に示す構造のものであり、試料基板Wの酸化膜や窒化膜の表面構造の違いや、異なる工程後毎のそれぞれの試料基板に対して適当な条件により、荷電粒子818を照射するようになっており、試料基板に対して最適な照射条件で照射を行つた後、すなわち、試料基板Wの表面の電位を平滑化、もしくは荷電粒子により飽和させた後に、電子線711,712により画像を形成し、欠陥を検出するようになっている。
以上説明した通り、本実施例においては、荷電粒子照射による測定の直前処理によって、帯電による測定画像歪みが生じないか、生じてもわずかであるので欠陥を正しく測定できる。
また、従来では使用が問題となっていた量の大電流を流してステージを走査できるので、二次電子も多量に検出され、S/N比の良い検出信号が得られ、欠陥検出の信頼性が向上する。
また、S/N比が大きいので、より早くステージを走査しても良好な画像データを作製でき、検査のスループットを大きくすることができる。
図22において、本実施の形態によるプレチャージユニットを備えた撮像装置が模式的に示されている。この撮像装置は、一次光学系72と、二次光学系74と、検出系76と、対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する電荷制御手段840とを備えている。一次光学系72は、電子線を検査対象(以下対象)Wの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子ビーム711を偏向する静電レンズ722と、一次電子ビームをその光軸が対象の面に垂直になるように偏向するウイーンフィルタすなわちE×B偏光器723と、電子線を偏向する静電レンズ724と、を備え、それらは、図22に示されるように電子銃721を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される一次電子線711の光軸が対象Wの表面(試料面)に鉛直な線に対して傾斜して配置されている。E×B偏向器723は電極723−1及び磁石723−2を備えている。
二次光学系74は一次光学系のE×B型偏向器723の上側に配置された静電レンズ741を備えている。検出系76は、二次電子712を光信号に変換するシンチレータ及びマイクロチャンネルプレート(MCP)の組み合わせ751と、光信号を電気信号に変換するCCD762と、画像処理装置763とを備えている。上記一次光学系72、二次光学系74及び検出系76の各構成要素の構造及び機能は従来のものと同じであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
対象に帯電した電荷を均一化若しくは低減化する電荷制御手段840は、この実施例では、対象Wとその対象Wに最も近接した一次光学系72の静電偏向レンズ724との間で対象Wに接近させて配置された電極841と、電極841に電気的に接続された切換スイッチ842と、その切換スイッチ842の一方の端子843に電気的に接続された電圧発生器844と、切換スイッチ842の他方の端子845に電気的に接続された電荷検出器846とを備えている。電荷検出器846は高いインピーダンスを有している。電荷低減手段840は、更に、一次光学系72の電子銃721と静電レンズ722との間に配置されたグリッド847と、グリッド847に電気的に接続されている電圧発生器848とを備えている。タイミングジェネレータ849が、検出系76のCCD762及び画像処理装置763、電荷低減手段840の切換スイッチ842、電圧発生器844並びに電荷検出器846及び848に動作タイミングを指令するようになっている。
次に、上記構成の電子線装置の動作に付いて説明する。
電子銃721から放出された一次電子ビーム711は、一次光学系72の静電レンズ722を経てE×B偏光器723に達し、そのE×B偏光器723により対象Wの面に対して鉛直になるように偏向され、更に静電偏光器724を介して対象Wの表面(対象面)WFを照射される。対象Wの表面WFからは対象の性状に応じて二次電子712が放出される。この二次電子712は二次光学系74の静電レンズ741を介して検出系76のシンチレータ及びMCPの組み合わせ751に送られ、そのシンチレータにより光に変換され、その光はCCD762により光電変換され、その変換された電気信号により画像処理装置763が二次元画像(階調を有する)を形成する。なお、通常のこの種の検査装置と同様に、対象に照射される一次電子ビームは、一次電子ビームを公知の偏向手段(図示せず)により走査させることによって、又は、対象を支持するテーブルTをX、Yの二次元方向に移動させることにより、或いは、それらの組合せにより、対象面WF上の必要箇所全体を照射させてその対象面のデータを収集できるようになっている。
対象Wに照射された一次電子線711により対象Wの表面近傍には電荷が生じ、正に帯電する。その結果、対象Wの表面WFから発生する二次電子712は、この電荷とのクーロン力により、電荷の状況に応じて軌道が変化する。その結果、画像処理装置763に形成される画像に歪みが発生することになる。対象面WFの帯電は、対象Wの性状により変化するため、対象としてウエハを用いた場合、同一ウエハでも必ずしも同一ではないし、時間的にも変化する。従って、ウエハ上の2カ所のパターンを比較する場合に誤検出が発生する虞がある。
そこで、本発明によるこの実施の形態では、検出系76のCCD762が画像を1走査分捕捉した後の空き時間を利用して、高インピーダンスを有する電荷検出器846により、対象Wの近傍に配置された電極841の帯電量を計測する。そして計測した帯電量に応じた電子を照射させる電圧を電圧発生器844で発生させ、計測後に切換スイッチ842を動作させて電極841を電圧発生器844に接続し、電圧発生器により発生された電圧を電極841に印加することにより帯電した電化を相殺する。これにより画像処理装置763に形成される画像に歪みが発生しないようになっている。具体的には、電極841に通常の電圧が与えられている時は集束した電子線を対象Wに照射するが、電極841に別の電圧を与えると合焦条件が大きくずれ、帯電が予想される広い領域に小さい電流密度で照射が行われ、正に帯電した対象の正電荷を中和させることで、帯電が予想される広い領域の電圧を特定の正(負)電圧に均一化したり、均一化かつ低減化することでより低い正(負)電圧(ゼロボルトも含む)にできる。上記のような相殺の動作は走査毎に実施される。
ウェーネルト電極すなわちグリッド847は、空き時間のタイミング中に電子銃721から照射される電子ビームを停止させ、帯電量の計測及び帯電の相殺動作を安定に実行する機能を有する。上記動作のタイミングは、タイミングジェネレータ849によって指令され、例えば、図23のタイミングチャートに示されるようなタイミングである。なお、帯電量は対象としてウエハを使用した場合、その位置によって異なるため、CCDの走査方向に電極841、切換スイッチ842、電圧発生器844及び電荷検出器846を複数組設けて細分化し、より精度の高い制御を行うことも可能である。
本実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)帯電によって発生する画像の歪みを検査対象の性状によらず低減することができる。
(ロ)従来の計測タイミングの空き時間を利用して帯電の均一化、相殺を実行するため、スループットに何ら影響を及ぼすことがない。
(ハ)リアルタイムで処理が可能であるため、事後処理の時間、メモリー等を必要としない。
(ニ)高速で精度の高い画像の観測、欠陥検出が可能である。
図24には、本発明の他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成が示されている。この欠陥検査装置は、一次電子線を放出する電子銃721、放出された一次電子線を偏向、成形させる静電レンズ722、図示しないポンプにより真空に排気可能な試料室32、該試料室内に配置され、半導体ウェーハWなどの試料を載置した状態で水平面内を移動可能なステージ50、一次電子線の照射によりウェーハWから放出された二次電子線及び/又は反射電子線を所定の倍率で写像投影して結像させる写像投影系の静電レンズ741、結像された像をウェーハの二次電子画像として検出する検出器770、及び、装置全体を制御すると共に、検出器770により検出された二次電子画像に基づいてウェーハWの欠陥を検出する処理を実行する制御部1016を含んで構成される。なお、上記二次電子画像には、二次電子だけでなく反射電子による寄与も含まれているが、ここでは二次電子画像と称することにする。
また、試料室32内には、ウェーハWの上方に、紫外光を含む波長域の光線を発するUVランプ1111が設置されている。このUVランプ1111のガラス表面には、UVランプ1111から放射された光線によって光電効果に起因する光電子e−を発する光電子放出材1110がコーティングされている。このUVランプ1111は、光電子放出材1110から光電子を放出させる能力を持つ波長域の光線を放射する光源であれば任意のものから選択することができる。一般には、254nmの紫外線を放射する低圧水銀ランプを用いるのがコスト的に有利である。また、光電子放出材1110は、光電子を放出させる能力がある限り任意の金属から選択することができ、例えばAuなどが好ましい。
上述した光電子は、一次電子線より低エネルギーである。ここで、低エネルギーとは、数eV〜数十eVのオーダー、好ましくは0〜10eVのことを意味する。本発明は、このような低エネルギーの電子を生成する任意の手段を用いることができる。例えば、UVランプ1111を代用して図示しない低エネルギー電子銃を備えることでも達成できる。
更に、本実施形態の欠陥検査装置は、電源1113を備えている。この電源1113の負極は光電子放出材1110に接続され、その正極はステージ50に接続されている。従って、光電子放出材1110は、ステージ50即ちウェーハWの電圧に対して負の電圧がかけられた状態となる。
検出器770は、静電レンズ741によって結像された二次電子画像を後処理可能な信号に変換することができる限り、任意の構成とすることができる。例えば、図46にその詳細を示すように、検出器770は、マルチチャンネルプレート771と、蛍光面772と、リレー光学系773と、多数のCCD素子からなる撮像センサ774と、を含んで構成することができる。マルチチャンネルプレート771は、プレート内に多数のチャンネルを備えており、静電レンズ741によって結像された二次電子が該チャンネル内を通過する間に、更に多数の電子を生成させる。即ち、二次電子を増幅させる。蛍光面772は、増幅された二次電子によって蛍光を発することにより二次電子を光に変換する。リレーレンズ773がこの蛍光をCCD撮像センサ774に導き、CCD撮像センサ774は、ウェーハW表面上の二次電子の強度分布を素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換して制御部1016に出力する。
制御部1016は、図24に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体1014と、本体1014の処理結果を表示するCRT1015と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部1018と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部1016を構成してもよい。
制御部本体1014は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器770から受信した電気信号即ちウェーハWの二次電子画像のデジタル画像データを記憶する二次電子画像記憶領域8が割り当てられている。また、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域1008から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウェーハWの欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム1009が格納されている。この欠陥検出プログラム1009は、例えば、ウェーハWの当該検査箇所と、別の検査箇所とを比較し、他の大部分の箇所のパターンと相違したパターンを欠陥としてオペレータに警告表示する機能を有する。更に、CRT1015の表示部に二次電子画像1017を表示し、オペレータの目視によってウェーハWの欠陥を検出するようにしてもよい。
次に、図24実施形態に係る電子線装置の作用を図27のフローチャートを例にして説明する。
先ず、検査対象となるウェーハWをステージ50の上にセットする(ステップ1200)。これは、図示しないローダーに多数格納されたウェーハWを一枚毎に自動的にステージ50にセットする形態であってもよい。次に、電子銃721から一次電子線を放出し、静電レンズ722を通して、セットされたウェーハW表面上の所定の検査領域に照射する(ステップ1202)。一次電子線が照射されたウェーハWからは二次電子及び/又は反射電子(以下、「二次電子」のみ称する)が放出され、その結果、ウェーハWは正電位にチャージアップする。次に、発生した二次電子線を拡大投影系の静電レンズ741により所定の倍率で検出器770に結像させる(ステップ1204)。このとき、光電子放出材1110にステージ50より負の電圧をかけた状態で、UVランプ1111を発光させる(ステップ1206)。その結果、UVランプ1111から発せられた振動数νの紫外線がそのエネルギー量子hν(hはプランク定数)によって光電子放出材1110から光電子を放出させる。これらの光電子e−は、負に帯電した光電子放出材1110から正にチャージアップしたウェーハWに向かって照射され、当該ウェーハWを電気的に中和させる。かくして、二次電子線は、ウェーハWの正電位により実質的な影響を受けることなく、検出器770上に結像される。
このように電気的に中和されたウェーハWから放出された像障害の軽減された二次電子線の画像を検出器770が検出し、デジタル画像データに変換出力する(ステップ1208)。次に、制御部1016が、欠陥検出プログラム1009に従って、検出された画像データに基づきウェーハWの欠陥検出処理を実行する(ステップ1210)。この欠陥検出処理では、制御部1016は、同じダイを多数有するウェーハの場合、前述のように、検出されたダイ同士の検出画像を比較することによって欠陥部分を抽出する。メモリに予め蓄えられていた欠陥の存在しないウェーハの基準二次電子線画像と、実際に検出された二次電子線画像とを比較照合して、欠陥部分を自動的に検出してもよい。このとき、検出画像をCRT1015に表示すると共に欠陥部分と判定された部分をマーク表示してもよく、これによって、オペレータは、ウェーハWが実際に欠陥を持つか否かを最終的に確認、評価することができる。この欠陥検出方法の具体例については更に後述する。
ステップ1210の欠陥検出処理の結果、ウェーハWに欠陥有りと判定された場合(ステップ1212肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ1218)。警告の方法として、例えば、CRT1015の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像1017を表示してもよい。このような欠陥ウェーハを直ちに試料室32から取り出し、欠陥の無いウェーハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ1219)。
ステップ1210の欠陥検出処理の結果、ウェーハWに欠陥が無いと判定された場合(ステップ1212否定判定)、現在検査対象となっているウェーハWについて、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ1214)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ1214肯定判定)、ステージ50を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウェーハWを移動させる(ステップ1216)。その後、ステップ1202に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ1214否定判定)、或いは、欠陥ウェーハの抜き取り工程(ステップ1219)の後、現在検査対象となっているウェーハWが、最終のウェーハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウェーハが残っていないか否かが判定される(ステップ1220)。最終のウェーハでない場合(ステップ1220否定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウェーハをステージ50にセットする(ステップ1222)。その後、ステップ1202に戻って当該ウェーハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウェーハであった場合(ステップ1220肯定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
UV光電子照射(ステップ1206)は、ウェーハWの正のチャージアップが回避され、像障害が軽減された状態で二次電子画像検出(ステップ1206)ができれば、任意のタイミング、任意の期間内で行うことができる。図27の処理が継続されている間、常時UVランプ1111を点灯した状態にしてもよいが、1枚のウェーハ毎に期間を定めて発光、消灯を繰り返してもよい。後者の場合、発光のタイミングとして、図27に示したタイミングの他、二次電子線結像(ステップ1204)の実行前、更には、一次電子線照射(ステップ1202)の実行前から開始してもよい。少なくとも二次電子検出の期間内はUV光電子照射を継続することが好ましいが、二次電子画像検出前若しくは検出中であっても十分にウェーハが電気的に中和されれば、UV光電子の照射を停止してもよい。
ステップ1210の欠陥検出方法の具体例を図28(a)〜(c)に示す。まず、図28(a)には、1番目に検出されたダイの画像1231及び2番目に検出された他のダイの画像1232が示されている。3番目に検出された別のダイの画像が1番目の画像1231と同じか又は類似と判断されれば、2番目のダイ画像1232の1233の部分が欠陥を有すると判定され、欠陥部分を検出できる。
図28(b)には、ウェーハ上に形成されたパターンの線幅を測定する例が示されている。ウェーハ上の実際のパターン1234を1235の方向に走査したときの実際の二次電子の強度信号が1236であり、この信号が予め較正して定められたスレッショールドレベル1237を連続的に超える部分の幅1238をパターン1234の線幅として測定することができる。このように測定された線幅が所定の範囲内にない場合、当該パターンが欠陥を有すると判定することができる。
図28(c)には、ウェーハ上に形成されたパターンの電位コントラストを測定する例が示されている。図24に示す構成において、ウェーハWの上方に軸対称の電極1239を設け、例えばウェーハ電位0Vに対して−10Vの電位を与えておく。このときの−2Vの等電位面は1240で示されるような形状とする。ここで、ウェーハに形成されたパターン1241及び1242は、夫々−4Vと0Vの電位であるとする。この場合、パターン1241から放出された二次電子は−2V等電位面1240で2eVの運動エネルギーに相当する上向きの速度を持っているので、このポテンシャル障壁1240を越え、軌道1243に示すように電極1239から脱出し、検出器770で検出される。一方、パターン1242から放出された二次電子は−2Vの電位障壁を越えられず、軌道1244に示すようにウェーハ面に追い戻されるので、検出されない。従って、パターン1241の検出画像は明るく、パターン1242の検出画像は暗くなる。かくして、電位コントラストが得られる。検出画像の明るさと電位とを予め較正しておけば、検出画像からパターンの電位を測定することができる。そして、この電位分布からパターンの欠陥部分を評価することができる。
本発明の他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成を図25に示す。なお、図24の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を附して詳細な説明を省略する。
この実施形態では、図25に示すように、UVランプ1111のガラス表面に光電子放出材がコーティングされていない。その代わりに、光電子放出プレート1110bが試料室322内でウェーハWの上方に配置され、UVランプ1111は、放射した紫外線が光電子放出プレート1110bに照射される位置に配置される。光電子放出プレート1110bには、電源13の負極が接続され、ステージ50には電源の正極が接続されている。この光電子放出プレート1110bは、Au等の金属で作られ、或いは、そのような金属がコーティングされたプレートとして作られてもよい。
図25の実施形態の作用は図24の実施形態と同様である。この図25の実施形態においても光電子をウェーハWの表面上に適時照射することが可能なので、図24の実施形態と同様の効果を奏する。
本発明のさらに他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成を図26に示す。なお、図24及び図25の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を附して詳細な説明を省略する。
図26の実施形態では、図26に示すように、試料室32の側面壁に透明な窓材1112を設け、UVランプ1111から放射された紫外線がこの窓材1112を通して試料室32内でウェーハWの上方に配置された光電子放出プレート1110bに照射されるように、UVランプ1111が試料室32の外部に配置されている。図26の実施形態では、真空となる試料室32の外部にUVランプ1111を配置したので、UVランプ1111の耐真空性能を考慮する必要がなくなり、図24及び図25の実施形態と比較してUVランプ1111の選択肢を広げることができる。
図26の実施形態の他の作用は図24及び図25の実施形態と同様である。図26の実施形態においても光電子をウェーハWの表面上に適時照射することが可能なので、図24及び図25の実施形態と同様の効果を奏する。
以上が上記各実施形態であるが、本発明によるプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置は、上記例にのみ限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内で任意好適に変更可能である。
例えば、被検査試料として半導体ウェーハWを例に掲げたが、本発明の被検査試料はこれに限定されず、電子線によって欠陥を検出することができる任意のものが選択可能である。例えばウェーハへの露光用パターンが形成されたマスク等を検査対象とすることもできる。
また、欠陥検査用の電子線装置として、図24乃至図26の構成を示したが、電子光学系等は任意好適に変更可能である。例えば、図示された欠陥検査装置の電子線照射手段(721,722)は、ウェーハWの表面に対して斜め上方から一次電子線を入射させる形式であるが、静電レンズ741の下方に一次電子線の偏向手段を設け、一次電子線をウェーハWの表面に垂直に入射させるようにしてもよい。このような偏向手段として、例えば電場と磁場の直交する場E×Bによって一次電子線を偏向させるウィーンフィルターなどがある。
更に、光電子を放射する手段として、図24乃至図26に示した、UVランプ1111及び光電子放出部材1110若しくは光電子放出プレート1110bの組み合わせ以外の任意手段を採用することができることは勿論である。
また、図27のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ1212で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料の全検査領域をカバーできれば、ステップ1214及びステップ1216を省略することができる。
更に、図27では、ステップ1212でウェーハに欠陥有りと判定した場合、ステップ1218で直ちにオペレータに欠陥の存在を警告し事後処理(ステップ1219)したが、欠陥情報を記録しておいてバッチ処理終了後(ステップ1220肯定判定の後)、欠陥を持つウェーハの欠陥情報を報告するように処理の流れを変更してもよい。
以上詳細に説明したように、図24ないし図26の実施例による欠陥検査装置及び欠陥検査方法によれば、一次電子線より低エネルギーを有する電子を試料に供給するようにしたので、二次電子放出に伴う試料表面の正のチャージアップが低減され、ひいては、チャージアップに伴う二次電子線の像障害を解消することができ、より高精度に試料の欠陥を検査することが可能となる、という優れた効果が得られる。
更に図24ないし図26の欠陥検査装置を用いたデバイス製造方法によれば、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うようにしたので、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
電位印加機構
図29において、電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子情報(二次電子発生率)が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次電子の発生を制御するものである。また、この電位印加機構は、照射電子が当初有しているエネルギーを減速し、ウエハに100〜500eV程度の照射電子エネルギーとするための用途も果たす。
電位印加機構83は、図29に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニター833と、モニター833に接続されたオペレータ834と、オベレータ834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831に信号を供給するようになっている。
上記電位印加機構は、検査対象であるウエハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
検査試料の電気的欠陥を検査する方法としては、本来電気的に絶縁されている部分とその部分が通電状態にある場合では、その部分の電圧が異なることを利用することもできる。
それは、まず、試料に事前に電荷を付与することで、本来電気的に絶縁されている部分の電圧と、本来電気的に絶縁されている部分であるが、何らかの原因で通電状態にある部分の電圧とに電圧差を生じさせ、その後本発明のビームを照射することで、電圧差があるデータを取得し、この取得データを解析して、通電状態となっていることを検出する。
電子ビームキャリブレーション機構
図30において、電子ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル54上でウエハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)で、ファラデーカップ852は太いビーム用(約φ30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブル54をステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベルになるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
アライメント制御装置
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウエハを光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためには、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハアライメントを行う時に、電子線によりアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能な設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図31に示されるようになる。ウエハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871で広視野でウエハを視認してそのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施形態ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向及びY軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり又はCCD761を介してモニタ765に表示させる。
このようにして電子光学系による高倍率でウエハの観察点をモニタに表した表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
真空排気系
真空排気系は真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、試料室、ロードロック室を所定のシーケンスに従い真空排気を行う。各部においては必要な真空度を達成するように真空バルブが制御される。常時、真空度のモニターを行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブ等の緊急制御を行い、真空度の確保をする。真空ポンプとしては主排気にターボ分子ポンプ、
粗引き用としてルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は10−3〜10−5Pa、好ましくはその1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
制御系
制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウェーハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラへのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系へフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
制御コントローラは主に電子線光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルター用などの高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
電極の清掃
本発明の電子ビーム装置が作動すると、近接相互作用(表面近くでの粒子の帯電)により標的物質が浮遊して高圧領域に引きつけられるので、電子ビームの形成や偏向に使用される様々な電極には有機物質が堆積する。表面の帯電により徐々に堆積していく絶縁体は電子ビームの形成や偏向機構に悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁体の周期的な除去は絶縁体の堆積する領域の近傍の電極を利用して真空中で水素や酸素あるいはフッ素及びそれらを含む化合物HF,O2,H2O,CMFN等のプラズマを作り出し、空間内のプラズマ電位を電極面にスパッタが生じる電位(数kV、例えば20V〜5kV)に維持することで、有機物質のみ酸化、水素化、フッ素化により除去する。
ステージ装置の変形例
図32は,本発明による検出装置におけるステージ装置の一変形例を示す。
ステージ93のY方向可動部95の上面には+Y方向と−Y方向(図32[B]で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板914が取り付けられ、X方向可動部96の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部950が構成されるようになっている。また、X方向可動部96の上面にも同様の仕切り板912が±X方向(図32[A]で左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台97の上面との間に常に絞り部951が形成されるようになっている。ステージ台97は、ハウジング98内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
このため、試料台94がどの位置に移動しても常に絞り部950と951が形成されるので、可動部95及び96の移動時にガイド面96aや97aからガスが放出されても、絞り部950と951によって放出ガスの移動が妨げられるため、荷電ビームが照射される試料近傍の空間924の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
ステージの可動部95の側面及び下面並びに可動部96の下面には、静圧軸受け90の周囲に、図56に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部950、951が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間913や915の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間913や915を、差動排気溝917や918で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間913や915の圧力を下げることができ、試料近傍924の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路91−1と91−2とが設けられている。排気通路はステージ台97及びハウジング98を貫通してハウジング98の外部に通じている。また、排気通路91−2はX方向可動部96に形成されX方向可動部96の下面に開口している。
また、仕切り板912及び914を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にして、その移動方向の端部を、仕切り板914の場合はX方向可動部96に、仕切り板912の場合はハウジング98の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
図33において、ステージ装置の第2の変形例が示されている。
この実施態様では、鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲に、試料Wの上面との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り916が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部924は仕切り916で仕切られており真空配管910で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部924との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間924の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り916と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部72周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μmないし数mm程度が適当である。なお、仕切り916内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
また、荷電ビーム照射装置では、試料Wに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り916の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、試料Wと仕切り916との間で放電を起こすことがなくなる。
なお、試料W(ウエハ)の周囲に配置したリング部材94−1は試料台94に固定された板状の調整部品であり、ウエハのような試料の端部に荷電ビームを照射する場合であっても、仕切り916の先端部全周に亘って微小隙間952が形成されるように、ウエハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Wのどの位置に荷電ビームが照射しても、仕切り916の先端部には常に一定の微小隙間952が形成され、鏡筒先端部周囲の空間924の圧力を安定に保つことができる。
図34において、別の変形例が示されている。
鏡筒71の荷電ビーム照射部72の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り919が設けられている。仕切り919は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝920が形成され、その円周溝からは上方に排気通路921が延びている。その排気通路は内部空間922を経由して真空配管923に繋がれている。仕切り919の下端は試料Wの上面との間に数十μmないし数mm程度の微小隙間を形成している。
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部すなわち荷電ビーム照射部72にガスが流入しようとしても、仕切り919が試料Wとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝920から真空配管923へ排気されるため、荷電ビーム照射部72の周囲の空間924へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部72の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
図35において、さらに他の変形例が示されている。
チャンバCと荷電ビーム照射部72の周囲には仕切り926が設けられ、荷電ビーム照射部72をチャンバCから隔てている。この仕切り926は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材929を介して冷凍機930に連結されており、−100℃ないし−200℃程度に冷却されている。部材927は冷却されている仕切り926と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材928はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り926の下端に形成され試料Wと仕切り926が放電することを防ぐ役割を持っている。
このような構成により、チャンバC内から荷電ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り926で流入を阻害される上、流入しても仕切り926の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部924の圧力を低く保つことができる。
なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
図36において、さらに他の変形例が示されている。
ステージ93の両可動部には、図32に示したのと同様に仕切り板912、914が設けられており、試料台94が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間913とチャンバC内とが絞り950、951を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部72の周りには図33に示したのと同様の仕切り916が形成されており、チャンバC内と荷電ビーム照射部72のある空間924が絞り952を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間913に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間924の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射空間924の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り916に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り919としたり、図34に示したように冷凍機で冷却された仕切り926とすることによって、空間924を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
これらの実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、荷電ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する荷電ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して荷電ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって荷電ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)荷電ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、荷電ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)真空チャンバ内が、荷電ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に荷電ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、荷電ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
なお,図32−36のステージ装置を図1のステージ50に適用できることは明らかである。
図37ないし図39を参照して本発明によるXYステージの他の実施形態を説明する。なお、図55の従来例及び実施形態において共通する構成部材を示す参照番号は同じになっている。なお、この明細書中で「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
図37において、XYステージの他の実施態様が示されている。
荷電ビームを試料に向かって照射する鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72が真空チャンバCを画成するハウジング98に取り付けられている。鏡筒71の直下には、XYステージ93のX方向(図37において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Wが配置されるようになっている。この試料Wは高精度なXYステージ93によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に荷電ビームを照射させることができる。
XYステージ93の台座906はハウジング98の底壁に固定され、Y方向(図37において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル95が台座906の上に載っている。Yテーブル95の両側面(図37において左右側面)には、台座906に載置された一対のY方向ガイド907a及び907bのYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け911a、909a、911b、909b、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル95はY方向ガイド907a、907bに対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座906とYテーブル95との間には、公知の構造のリニアモータ932が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管934によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて上記静圧軸受け909aないし911a及び909bないし911bに対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図37において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
Yテーブル上にはXテーブル96がX方向(図37において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル95上にはYテーブル用のY方向ガイド907a、907bと同じ構造の一対のX方向ガイド908a、908b(908aのみ図示)がXテーブル96を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル96の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け911a、909a、910a、911b、909b、910bと同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル95とXテーブル96との間には、公知の構造のリニアモータ933が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。そして、Xテーブル96にはフレキシブル配管931によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル96がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管919、920a、920bによって排気されている。配管920a、920bの入口側(真空チャンバ内側)は台座906を貫通してその上面において、XYステージ93から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲には、差動排気機構925が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても荷電ビーム照射空間930の圧力が十分低くなるようにしてある。すなわち、荷電ビーム照射部72周囲に取り付けられた差動排気機構925の環状部材926は、その下面(試料W側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)940が形成されるように、ハウジング98に対して位置決めされており、その下面には環状溝927が形成されている。環状溝927は排気管928により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間940は環状溝927及び排気口928を介して排気され、真空チャンバCから環状部材926によって囲まれた空間930内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、荷電ビーム照射空間930内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。
この環状溝は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間930内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまうからである。
なお、以上の説明において、試料Wは通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ93に対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本実施例の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
以上に説明した荷電ビーム装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージに対して実現できる。
なお、以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。
次に差動排気機構の環状部材926及びそれに形成される環状溝の大きさの数値例を図38に示す。なお、この例では環状溝は927a及び927bの二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材926及び環状溝等の寸法を、図38に示されるようにすれば、荷電ビーム照射空間930内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
図39において、XYステージの他の実施態様が示されている。ハウジング98によって画成された真空チャンバCには、真空配管974、975を介してドライ真空ポンプ953が接続されている。また、差動排気機構925の環状溝927は排気口928に接続された真空配管970を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ951が接続されている。更に、鏡筒71の内部は、排気口710に接続された真空配管971を介して、ターボ分子ポンプ952が接続されている。これらのターボ分子ポンプ951、952は、真空配管972、973によってドライ真空ポンプ953に接続されている。(本図では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。)
XYステージ93の静圧軸受けには、フレキシブル配管921、922を通して高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口919、920a、920bを通してドライ真空ポンプ953によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝927或いは鏡筒71の先端部から吸引され、排気口928及び710を通ってターボ分子ポンプ951及び952によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ953によって排気される。
このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ953の排気口は、配管976を介して圧縮機954に接続され、圧縮機954の排気口は配管977、978、979及びレギュレータ961、962を介してフレキシブル配管931、932に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ953から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機954によって再び加圧されレギュレータ961、962で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
なお、静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管977の途中にコールドトラップやフィルタ等(960)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
なお、循環配管系には高純度不活性ガス供給系963が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管970〜975及び加圧側配管976〜980を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
また、ドライ真空ポンプ953に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ953と圧縮機954を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。
更に、鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、
この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
図40において、本実施の形態による荷電ビーム装置の光学系及び検出器が模式的に示されている。光学系は鏡筒71内に設けられているがこの光学系及び検出器はあくまでも例示であり、必要に応じて任意の光学系、検出器を使用できる。荷電ビーム装置の光学系760は、荷電ビームをステージ50上に載置された試料Wに照射する一次光学系72と、試料から放出された二次電子が投入される二次光学系74と、を備えている。一次光学系72は、荷電ビームを放出する電子銃721と、電子銃721から放出された荷電ビームを集束する2段の静電レンズからなるレンズ系722と、偏向器730と、荷電ビームをその光軸が対象の面に垂直になるように偏向するウイーンフィルタすなわちE×B分離器723と、2段の静電レンズからなるレンズ系724と、を備え、それらは、図40に示されるように電子銃721を最上部にして順に、荷電ビームの光軸が試料Wの表面(試料面)に鉛直な線に対して傾斜して配置されている。E×B偏向器723は電極723−1及び磁石723−2を備えている。
二次光学系74は試料Wから放出された二次電子が投入される光学系で、一次光学系のE×B型偏向器723の上側に配置された2段の静電レンズからなるレンズ系741を備えている。検出器761は、二次光学系74を介して送られた二次電子を検出する。上記光学系760及び検出器761の各構成要素の構造及び機能は従来のものと同じであるから、それらについての詳細な説明は省略する。
電子銃721から放出された荷電ビームは、電子銃の正方形開口で整形され、2段のレンズ系722によって縮小され、偏光器730で光軸を調整されてE×B偏向器723の偏向中心面に一辺が1.925mmの正方形に結像される。E×B偏向器723は、試料の法線に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造となっており、電界、磁界、電子のエネルギの関係が一定の条件を満たす時には電子を直進させ、それ以外の時にはこれら電界、磁界及び電界のエネルギの相互の関係により所定方向に偏向されるようになっている。図40においては、電子銃からの荷電ビームを試料Wに垂直に入射させ、また試料から放出された二次電子を検出器761の方向に直進させるように設定されている。E×B偏光器で偏向された成形ビームはレンズ系724で1/5に縮小されて試料Wに投影される。試料Wから放出されたパターン画像の情報を持った二次電子はレンズ系724及び741で拡大され、検出器761で二次電子画像を形成する。この4段の拡大レンズは、レンズ系724が対称タブレットレンズを形成し、レンズ系741もやはり対称タブレットレンズを形成しているので無歪みレンズとなっている。
本実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して荷電ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)荷電ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、荷電ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
検査装置の変形例
図41は、本発明の変形例による欠陥検査装置の概略構成を示す。
この欠陥検査装置は、上述した写像投影型の検査装置で、一次電子線を放出する電子銃721、放出された一次電子線を偏向、成形させる静電レンズ722、成形された一次電子線を電場E及び磁場Bの直交する場で半導体ウェーハWに略垂直に当たるように偏向させるE×B偏向器723、偏向された一次電子線をウェーハW上に結像させる対物レンズ724、真空に排気可能な図示しない試料室内に設けられ、ウェーハWを載置した状態で水平面内を移動可能なステージ50、一次電子線の照射によりウェーハWから放出された二次電子線及び/又は反射電子線を所定の倍率で写像投影して結像させる写像投影系の静電レンズ741、結像された像をウェーハの二次電子画像として検出する検出器770、及び、装置全体を制御すると共に、検出器770により検出された二次電子画像に基づいてウェーハWの欠陥を検出する処理を実行する制御部1016を含んで構成される。なお、上記二次電子画像には、二次電子だけでなく散乱電子や反射電子による寄与も含まれているが、ここでは二次電子画像と称することにする。
また、対物レンズ724とウェーハWとの間には、一次電子線のウェーハWへの入射角度を電場等によって偏向させる偏向電極1011が介在されている。この偏向電極1011には、該偏向電極の電場を制御する偏向制御器1012が接続されている。この偏向制御器1012は、制御部1016に接続され、制御部1016からの指令に応じた電場が偏向電極1011で生成されるように該偏向電極を制御する。なお、偏向制御器1012は、偏向電極1011に与える電圧を制御する電圧制御装置として構成することができる。
検出器770は、静電レンズ741によって結像された二次電子画像を後処理可能な信号に変換することができる限り、任意の構成とすることができる。例えば、図46にその詳細を示すように、検出器770は、マルチチャンネルプレート771と、蛍光面772と、リレー光学系773と、多数のCCD素子からなる撮像センサ56と、を含んで構成することができる。マルチチャンネルプレート771は、プレート内に多数のチャンネルを備えており、静電レンズ741によって結像された二次電子が該チャンネル内を通過する間に、更に多数の電子を生成させる。即ち、二次電子を増幅させる。蛍光面772は、増幅された二次電子によって蛍光を発することにより二次電子を光に変換する。リレーレンズ773がこの蛍光をCCD撮像センサ774に導き、CCD撮像センサ774は、ウェーハW表面上の二次電子の強度分布を素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換して制御部1016に出力する。
制御部1016は、図41に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体1014と、本体1014の処理結果を表示するCRT1015と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部1018と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部1016を構成してもよい。
制御部本体1014は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器770から受信した電気信号即ちウェーハWの二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域1008が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウェーハの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部1013が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域1008から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウェーハWの欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム1009が格納されている。この欠陥検出プログラム1009は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部1013から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT1015の表示部に二次電子画像1017を表示するようにしてもよい。
次に、該実施例による欠陥検査装置の作用を図43乃至図45のフローチャートを例にして説明する。
先ず、図43のメインルーチンの流れに示すように、検査対象となるウェーハWをステージ50の上にセットする(ステップ1300)。これは、前述したようにローダーに多数格納されたウェーハ全てを一枚毎に自動的にステージ50にセットする形態であってもよい。
次に、ウェーハW表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ1304)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図47に示すように、例えばウェーハ検査表面1034上に、参照番号1032a、1032b、...1032k、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウェーハの検査パターン1030の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図42に示されたように、16個の被検査領域の画像1032(被検査画像)が取得される。ここで、図42に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウェーハW上のパターンの画像部分に相当する。このステップ1304の詳細は図44のフローチャートで後述する。
次に、ステップ1304で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部1013に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図43のステップ1308)、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図45のフローチャートで後述する。
ステップ1308の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ1312肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ1318)。警告の方法として、例えば、CRT1015の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像1017を表示してもよい。このような欠陥ウェーハを直ちに試料室31から取り出し、欠陥の無いウェーハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ1319)。
ステップ1308の比較処理の結果、ウェーハWに欠陥が無いと判定された場合(ステップ1312否定判定)、現在検査対象となっているウェーハWについて、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ1314)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ1314肯定判定)、ステージ50を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウェーハWを移動させる(ステップ1316)。その後、ステップ1302に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ1314否定判定)、或いは、欠陥ウェーハの抜き取り工程(ステップ1319)の後、現在検査対象となっているウェーハWが、最終のウェーハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウェーハが残っていないか否かが判定される(ステップ320)。最終のウェーハでない場合(ステップ1320否定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウェーハをステージ50にセットする(ステップ1322)。その後、ステップ1302に戻って当該ウェーハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウェーハであった場合(ステップ1320肯定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
次に、ステップ1304の処理の流れを図44のフローチャートに従って説明する。
図44では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ1330)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ1332)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図47に示された被検査領域1032aの中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部1016のハードディスク上に記憶され、ステップ1332で読み出される。
次に、図41の偏向電極1011を通過する一次電子線がステップ1332で決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、偏向制御器1012が偏向電極1011に電位を加える(図44のステップ1334)。
次に、電子銃721から一次電子線を放出し、静電レンズ722、E×B偏向器723、対物レンズ724及び偏向電極1011を通して、セットされたウェーハW表面上に照射する(ステップ1336)。このとき、一次電子線は、偏向電極1011の作り出す電場によって偏向され、ウェーハ検査表面1034上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って照射される。画像番号i=1の場合、被検査領域は1032aとなる。
一次電子線が照射された被検査領域からは二次電子及び/又は反射電子(以下、「二次電子」のみ称する)が放出される。そこで、発生した二次電子線を拡大投影系の静電レンズ741により所定の倍率で検出器770に結像させる。検出器770は、結像された二次電子線を検出し、検出素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換出力する(ステップ1338)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域8に転送する(ステップ1340)。
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ1342)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ1344)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図42の上述した例では、「16」である。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ1344否定判定)、再びステップ1332に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図41の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域1032bとなる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、ウェーハ検査面1034のパターン1030が検出器770の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
そして、ステップ1332乃至1342の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図47に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域1032kとなるように、ウェーハの検査面1034上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図42に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域1008に取得される。取得した複数の被検査領城の画像1032(被検査画像)は、図42に例示されたように、ウェーハ検査面1034上のパターン1030の画像1030aを部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ1344肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図37のメインルーチンの比較工程(ステップ308)に移行する。
なお、ステップ1340でメモリ転送された画像データは、検出器770により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図37のステップ1308)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域1008に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なベタデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施形態でいう画像データとは、単なるベタデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
次に、ステップ1308の処理の流れを図45のフローチャートに従って説明する。
先ず、制御部1016のCPUは、基準画像記憶部1013(図41)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ1350)。この基準画像は、図42では参照番号1036で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ1352)、記憶領域1008から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ1354)。
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値D1を算出する(ステップ1356)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ1358)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。
距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ1358肯定判定)、当該ウェーハWの当該検査面1034には「欠陥無し」と判定し(ステップ1360)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図42の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ1358否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ1362)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ1364)。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ1364否定判定)、再びステップ1354に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ1364肯定判定)、当該ウェーハWの当該検査面1034には「欠陥有り」と判定し(ステップ1366)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
以上がステージ装置の各実施形態であるが、本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内で任意好適に変更可能である。
例えば、被検査試料として半導体ウェーハWを例に掲げたが、本発明の被検査試料はこれに限定されず、電子線によって欠陥を検出することができる任意のものが選択可能である。例えばウェーハへの露光用パターンが形成されたマスク等を検査対象とすることもできる。
また、本発明は、電子以外の荷電粒子線を用いて欠陥検出を行う装置にも適用できるばかりでなく、試料の欠陥を検査可能な画像を取得できる任意の装置にも適用可能である。
更に、偏向電極1011は、対物レンズ724とウェーハWとの間のみならず、一次電子線の照射領域を変更できる限り任意の位置に置くことができる。例えば、E×B偏向器723と対物レンズ724との間、電子銃721とE×B偏向器723との間などがある。更には、E×B偏向器723が生成する場を制御することによって、その偏向方向を制御するようにしてもよい。即ち、E×B偏向器723に偏向電極1011の機能を兼用させてもよい。
また、上記実施形態では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
また、本発明の実施形態では、被検査画像の位置ずれを一次電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することができるので、欠陥検出の精度を向上させることができる。
更に、欠陥検査用の電子線装置として、図41の構成を示したが、電子光学系等は任意好適に変更可能である。例えば、図41に示された欠陥検査装置の電子線照射手段(721、722、723)は、ウェーハWの表面に対して垂直上方から一次電子線を入射させる形式であるが、E×B偏向器723を省略し、一次電子線をウェーハWの表面に斜めに入射させるようにしてもよい。
また、図43のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ1312で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ1314及びステップ1316を省略することができる。
以上詳細に説明したように本実施例の欠陥検査装置によれば、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
更に本発明のデバイス製造方法によれば、上記のような欠陥検査装置を用いて試料の欠陥検査を行うようにしたので、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
電子線装置の他の実施の形態
さらに、この写像投影方式の課題解決を考慮した、もう1つの方式として一次電子線を複数とし、前記複数の電子線を二次元(X−Y方向)に走査しながら(ラスタースキャン)試料表面の観察領域を照射するものであり、二次電子光学系は写像投影方式を採用した方式がある。この方式は、前述の写像投影方式の利点を持つとともに、この写像方式の課題である▲1▼電子線を一括照射するために、試料表面上でチャージアップしやすいこと、▲2▼本方式で得られる電子線電流に限界が有り(1.6μA程度)検査速度向上の妨げとなっていること、については複数の電子線を走査することにより解決できる。即ち、電子線照射点が移動するので電荷が逃げやすく、チャージアップが減少する。また、複数の電子線の本数を増やすことにより、容易に電流値を増加できる。実施例においては4本の電子線を使う場合、一本の電子線電流が500nA(電子線の径10μm)で合計2μAが得られている。16本程度には容易に電子線の数を増やすことが可能であり、この場合で8μAを得ることが原理的に可能である。複数の電子線の走査は複数の電子線による照射量が、照射領域に均一になるように照射されれば良いので、前記のようにラスタスキャンに限らず、リサージュ図形などの他の形状の走査形状でも良い。従って、ステージの走査方向は複数の電子線の走査方向に垂直である必要は無い。
電子銃(電子線源)
この実施例で用いられる電子線源として熱電子線源を使用している。電子放出(エミッタ)材はLaB6である。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。複数の電子線を得るために、2通りの方法を用いている。一つは一本のエミッタ(突起が一つ)から一本の電子線引き出し、複数の穴のあいた薄板(開口板)を通すことにより、複数の電子線を得る方法、もう一つの方法は一本のエミッタに複数の突起を形成してそこから直に複数の電子線を引き出す方法である。いずれの場合も電子線は突起の先端から放出されやすい性質を利用している。他の方式の電子線源例えば熱電界放出型の電子線も使用可能である。
尚、熱電子線源は電子放出材を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電解放出電子線源とは、電子放出材に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
図48Aは、該他の実施の形態による電子線装置の概略図である。一方、図48Bは、複数の一次電子線で試料を走査する態様を示す概略平面図である。空間電荷制限条件で作動可能な電子銃721は、図48Bに符号711で示すようなマルチビームを形成する。マルチビーム711は、円周上に配置された8個の円形ビームである一次電子線711aから構成される。
電子銃721で発生した複数の一次電子線711aは、レンズ722−1および722−2を用いて集束され、電極723−1および磁石723−2からなるE×B分離器723によって試料Wに対して直角に入射するようになされている。これらの要素711、722−1、722−2、723とレンズ724−1および対物レンズ724−2とを含む一次光学系によって試料W上に集束された複数の一次電磁線711aからなるマルチビーム711は、レンズ722−2の下流側に設けた2段偏向器(図示せず。一次光学系に含まれる。)により試料W上の走査に用いられる。
試料Wの走査は、対物レンズ724−2の主面を偏向中心として、x軸方向に行われる。図48Bに示すように、マルチビーム711のそれぞれの一次電子線711aは、円周上に互いに離れて配置されており、走査方向であるx方向に直交するy軸上に投影したとき、互いに隣接する一次電子線711a間の距離(各一次電子線の中心で計測する。)が等間隔になるように設計されている。このとき、互いに隣接する一次電子線711aどうしは、離れていても、接していても、一部が重なり合っていてもよい。
図48Bに示すように、マルチビーム711を構成するそれぞれの一次電子線711aが、互いに離れて配置されていることにより、個々の一次電子線711aの電流密度限界値すなわち試料Wに帯電を生じさせない限界の電流密度値は、単一の円形ビームを使用した場合と同等に維持することができ、それにより、S/N比の低下を防止することができる。また、各一次電子線711aが互いに離れているので、空間電荷効果も小さい。
その一方で、マルチビーム711は、一回の走査で試料Wを視野713の全面に亘って一様な密度で走査することができる。これにより、高スループットで画像形成ができ、検査時間の短縮を図ることができる。図48Bにおいて、符号711が走査の始点にあるマルチビームを示すとすると、符号711aは走査の終点にあるマルチビームを示す。
試料Wは試料台(図示せず)に載せられる。この台は、x方向への走査時(例えば200μm幅で走査)に、走査方向xに直交する方向yに沿って連続移動せしめられる。これにより、ラスタ走査が行われる。試料を載せた台を移動させるための駆動装置(図示せず)が設けられる。
走査時に試料Wから発生し色々な方向に放出された二次電子は、対物レンズ724−2で光軸方向に加速され、その結果、各点から色々な方向に放出された二次電子はそれぞれが細く集束され、レンズ724−1,741−1,741−2で像の間隔が拡大される。これらのレンズ724−1,724−2,741−1,741−2を含む二次光学系を経て形成された二次電子線712は、検出器761の受光面に投影され、視野の拡大像を結像させる。
光光学系に含まれる検出器761は、MCP(マイクロチャンネルプレート)で二次電子線を増倍し、シンチレータで光信号に変換し、CCD検出器で電気信号に変換する。CCDからの電気信号により、試料Wの二次元画像を形成することができる。それぞれの一次電子線711aは、CCD画素の少なくとも2画素以上の寸法を有するものとする。
電子銃721を空間電荷制限条件で動作させることにより、一次電子線711aのショット雑音は、温度制限条件で動作させた場合より約1桁少なくすることができる。したがって、二次電子信号のショット雑音も1桁小さくできるので、S/N比の良い信号を得ることができる。
本実施例の電子線装置によれば、試料に帯電を生じさせない一次電子線の電流密度限界値を、単一の円形ビームを使用した場合と同等に維持することによりS/N比の低下を防止しつつ、高スループットで画像形成することにより検査時間を短縮できる。
また本実施例によるデバイス製造方法は、かかる電子線装置を用いて各ウェーハプロセスの終了後にウェーハの評価を行うことによって、歩留まり向上を図ることができる。
図49Aは図48Aの実施の形態による電子線装置の詳細を示す図である。電子銃721から放出された4本の電子線711(711−1、711−2、711−3、711−4)は開口絞りNA−1で整形され、2段のレンズ722−1、722−2でウィーンフィルタ723の偏向中心面に10μm×12μmの楕円状に結像され、図の紙面垂直方向に偏向器730によりラスタースキャンされ、4本の電子線全体として1mm×0.25mmの矩形領域を均一にカバーするように結像される。EXB723で偏向された複数の電子線はNA絞りでクロスオーバーを結び、レンズ724、で1/5に縮小され試料Wに200μ×50μmをカバーし、かつ試料面に垂直になるように照射、投影される(ケーラー照明と呼ばれる)。試料から放出されたパターン画像(試料像F)の情報を持った4本の2次電子線712はレンズ724、741−1、741−2で拡大され、MCP767上に全体として4本の電子線712で合成された矩形画像(拡大投影像F‘)として結像する。この二次電手線712による拡大投影像F’は、MCP767で1万倍に増感され、蛍光部767により光に変換され、TDI−CCD762で試料の連続移動速度に同期された電気信号となり、画像表示部765で連続した画像として取得され、CRT上等に出力した。
電子線照射部は試料表面をできるだけ均一に、かつ照射むらを少なくして、矩形または楕円状に電子線で照射する必要があり、また、スループットをあげるためにはより大きな電流で照射領域を電子線照射する必要がある。従来の電子線照射むらは±10%程度であり画像のコントラストむらが大きく、また、電子線照射電流は照射領域において500nA程度と少ないために、高いスループットが得られないという問題があった。また、走査型電子線顕微鏡(SEM)方式に比べて、本方式は広い画像観察領域を一括して電子線照射するためにチャージアップによる結像障害が生じやすいという問題があった。
本実施例の一次電子線照射方法を図49Bにより示す。一次電子線711は4本の電子線711−1、711−2、711−3、711−4で構成され、それぞれのビームは2μm×2.4μmの楕円状しており、それぞれ1本当り200μm×12.5μmの矩形領域をラスタースキャンし、それらが重なり合わないように足し合わせて全体として200μ×50μmの矩形領域を照射する。711−1のビームは711−1’へ有限の時間で到達し次にビームスポット径分(10μm)ずれた711−1の直下(202方向)にほとんど時間損失なしに戻り、再度前記と同じ有限の時間で711−1〜711−1’に平行に711−1’の直下(711−2’方向)に移動し、これを繰り返して図の点線で示す矩形の照射領域の1/4(200μm×12.5μm)を走査した後はじめの点711−1に戻りこれを高速に繰り返す。他の電子線711−2〜711−4も電子線711−1と同様に同じ速度で走査を繰り返し、全体として図の矩形の照射領域(200μ×50μm)を均一に高速に照射する。均一に照射できれば、前記のラスタースキャンでなくても良い。例えばリサージュ形を描くように走査しても良い。従って、ステージの移動方向は図に示す方向Aである必要は無い。即ち、スキャン方向(図の横方向の高速走査方向)に垂直である必要は無い。本実施例では電子線照射むらは±3%程度で照射できた。照射電流は1本の電子線当たり250nAで試料表面で全体として、4本の電子ビームで1.0μAを得ることができた(従来の2倍)。電子線の本数を増やすことにより、電流を増加でき、高スループットを得ることができる。また、照射点が従来に比べて小さく(面積で約1/80)また移動しているのでチャージアップは従来の1/20以下に抑えることができた。
図中には示していないが、本装置には、レンズの他に、制限視野絞り、電子線の軸調整のための4極またはそれ以上の極数を有する偏向器(アライナー)、非点収差補正器(スティグメータ)、さらにビーム形状を整形する複数の4重極レンズ(4極子レンズ)等電子線の照明、結像に必要なユニットを備えている。
デバイス製造方法
次に図50及び図51を参照して本発明による半導体デバイスの製造方法の実施例を説明する。
図50は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の製造工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)(ステップ1400)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)(ステップ1401)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程(ステップ1402)
(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程(ステップ1403)
(5)できたチップを検査するチップ検査工程(ステップ1404)
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
これらの主工程中の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(B)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(D)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
図51Aは、図50のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程(ステップ1500)
(b)レジストを露光する工程(ステップ1501)
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程(ステップ1502)
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程(ステップ1503)
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
上記(G)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査も可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能と成る。
検査手順
上記(G)の検査工程における検査手順について述べる。
一般に電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用されている。
検査されるウェーハは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密X−Yステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、(図51B)の手順に従って欠陥検査等が行われる。はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡はこの他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次にウェーハの種類(どの工程後か、ウェーハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行ないながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うことも出来る。電気的欠陥の検出はコントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子線照射手段とは、通常検査用の電子線照射手段以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた低電位(エネルギー)の電子線発生手段(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位(エネルギー)の電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、仕様によっては、別途低電位の電子線発生手段を設ける必要はない。また、ウェーハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出が出来る。線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図2の線A−Aに沿って見た図である。
図2Aは、図1に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。
図2Bは、本発明にける基板搬入装置の他の実施例を示す概略断面図である。
図3は、図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
図4は、図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。
図5は、ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図で、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。
図6は、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
図7は、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
図8は、図1の検査装置の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
図9は、EXB分離器の電子ビーム偏向部の構造を示す断面図である。
図10は、図9のA−A線に沿う断面図である。
図11は、本発明の実施例装置を説明するための全体構成図である。
図12は、電極の斜視図であり、電極が軸対称に円筒形状である場合を示す斜視図である。
図13は、電極の斜視図であり、電極が軸対称に円盤形状である場合を示す斜視図である。
図14は、ウェーハと対物レンズとの間の電圧分布を示すグラフである。
図15は、電子線装置の2次電子検出動作を示すフローチャートである。
図16は、本発明のE×B分離器の断面図である。
図17は、本発明のE×B分離器の電界分布を示す図である。
図18は、本発明によるプレチャージユニットの一実施の形態の要部を示す概略構成図である。
図19は、プレチャージユニットの他の実施の形態を示す概略構成図である。
図20は、プレチャージユニットのさらに他の実施の形態を示す概略構成図である。
図21は、プレチャージユニットのさらに他の実施の形態を示す概略構成図である。
図22は、本発明による撮像装置の一つの実施形態の模式図である。
図23は、図22の撮像装置の対象に帯電した電荷を均一化又は低減かする動作タイミングを示す図である。
図24は、本発明の他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成図である。
図25は、本発明の他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成図である。
図26は、本発明のさらに他の実施形態に係るプレチャージユニットを備えた欠陥検査装置の概略構成図である。
図27は、図24乃至図26の実施形態に係る欠陥検査装置のウェーハ検査の流れを示すフローチャートである。
図28は、図24乃至図26の実施形態に係る欠陥検査装置におけるウェーハの欠陥検出方法の具体例を説明するための図であって、(a)はパターン欠陥検出、(b)は線幅測定、(c)は電位コントラスト測定を夫々示す。
図29は、電位印加機構を示す図である。
図30は、電子ビームキャリブレーション機構を説明する図であって、[A]は側面図であり、[B]は平面図である。
図31は、ウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。
図32は、本発明の荷電ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図であって、[A]が正面図で[B]が側面図である。
図33は、本発明の荷電ビーム装置の他の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
図34は、本発明の荷電ビーム装置の別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
図35は、本発明の荷電ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
図36は、本発明の荷電ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
図37は、本発明の荷電ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
図38は、図37に示された装置に設けられた作動排気機構の一例を示す図である。
図39は、図37に示された装置のガスの循環配管系を示す図である。
図40は、鏡筒に設けられる光学系及び検出系の一例を示す概略図である。
図41は、本発明の変形例による欠陥検査装置の概略構成図である。
図42は、図41の欠陥検査装置で取得される複数の被検査画像及び基準画像の例を示す図である。
図43は、図41の欠陥検査装置におけるウェーハ検査のメインルーチンの流れを示すフローチャートである。
図44は、図43における複数の被検査画像データ取得工程(ステップ1304)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
図45は、図43における比較工程(ステップ1308)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
図46は、図41の欠陥検査装置の検出器の具体的構成例を示す図である。
図47は、半導体ウェーハの表面上で部分的に重なり合いながら互いから位置がずらされた複数の被検査領域を概念的に示す図である。
図48Aは、本発明の他の実施の形態による電子線装置の概略図である。
図48Bは、図48Aの実施の形態における複数の一次電子線で試料を走査する態様を示す概略平面図である。
図49Aは、図48Aの実施の形態のより詳細な説明図である。
図49Bは、同実施の形態における一次電子線の照射方法を説明するための図である。
図50は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
図51は、図50のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。
図52は、写像投影型電子線検査装置の一例の概略構成である。
図53は、矩形領域から放出される2次電子の動きを示す図である。
図54は、従来のE×B分離器の電界分布を示す図である。
図55は、従来の荷電ビーム装置の真空チャンバ及びXYステージを示す図であって、[A]が正面図で[B]が側面図である。
図56は、図1のXYステージに使用されている静圧軸受と差動排気機構との関係を示す図である。
Claims (5)
- 荷電粒子又は電磁波のいづれか一つを検査対象に照射して該検査対象を検査する検査装置において、
真空雰囲気に制御可能な、検査対象を検査するワーキングチャンバと、
荷電粒子又は電磁波のいづれか一つをビームとして発生させるビーム発生手段と、
該ビームを前記ワーキングチャンバ内に保持した検査対象に導き照射し、検査対象から発生する二次荷電粒子を検出し、画像処理系へ導く電子光学系と、
該二次荷電粒子により画像を形成する画像処理系と、
該画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示及び/又は記憶する情報処理系と、
前記ビームに対し相対移動可能に検査対象を保持するステージ装置とを具備し、
前記ステージ装置は、該ステージ装置に保持された検査対象の近傍に電極を配置し、さらに該電極の帯電量に応じて該電極へ電圧を印可する電圧発生器を備えることを特徴とする検査装置。 - 請求項1に記載の検出装置において、検査対象を保全し、前記ワーキングチャンバに搬出入する搬出入機構を具備し、
前記搬出入機構には、
清浄気体を前記検査対象に流して前記検査対象への塵埃の付着を阻止するミニエンバイロメント装置と、
前記ミニエンバイロメント装置と前記ワーキングチャンバとの間に配置されていて、それぞれ独立して真空雰囲気に制御可能になっている少なくとも二つのローディングチャンバと、
前記ミニエンバイロメント装置と前記ローディングチャンバとの間で前記検査対象を移送可能な搬送ユニット及び前記一つのローディングチャンバ内と前記ステージ装置上との間で前記検査対象を移送可能な別の搬送ユニットを有するローダーと、を備え、
前記ワーキングチャンバとローディングチャンバが振動遮断装置を介して支持されていることを特徴とする検査装置。 - 請求項2に記載の検査装置において、前記ローダーが、それぞれが独立して雰囲気制御可能になっている第1のローディングチャンバ及び第2のローディングチャンバと、前記検査対象を第1のローディングチャンバ内とその外部との間で搬送する第1の搬送ユニットと、前記第2のローディングチャンバに設けられていて前記検査対象を前記第1のローディングチャンバ内と前記ステージ装置上との間で搬送する第2の搬送ユニットとを備えていることを特徴とする検査装置。
- 請求項1に記載の検査装置において、前記電極の帯電量の計測は、2次荷電粒子の検出が1走査分捕捉された後の空き時間に行なわれることを特徴とする検査装置。
- 荷電粒子又は電磁波のいづれか一つを検査対象に照射して該検査対象を検査する検査方法において、
真空雰囲気に制御可能な、検査対象を検査するワーキングチャンバと、
荷電粒子又は電磁波のいづれか一つをビームとして発生させるビーム発生手段と、
該ビームを前記ワーキングチャンバ内に保持した検査対象に導き照射し、検査対象から発生する二次荷電粒子を検出し、画像処理系へ導く電子光学系と、
該二次荷電粒子により画像を形成する画像処理系と、
該画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示および/又は記憶する情報処理系と、
前記ビームに対し相対移動可能に検査対象を保持するステージ装置とを備え、
検査対象の位置を測定することで、前記ビームを検査対象上に正確に位置付け、
測定された前記検査対象の所望の位置に前記ビームを偏向させ、
前記検査対象表面の前記所望位置を前記ビームで照射し、
前記検査対象から生じる二次荷電粒子を検出し、
前記二次荷電粒子により画像を形成し、
前記画像処理系の出力に基づき、検査対象の状態情報を表示および/又は記憶し、
前記2次荷電粒子の検出後の空き時間中に前記ステージ装置に保持された検査対象の近傍の帯電量を計測し、該帯電量を相殺する電圧を印可することを特徴とする検査方法。
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