JP3896080B2 - 電子線装置及び該装置を用いた半導体デバイス製造方法 - Google Patents

電子線装置及び該装置を用いた半導体デバイス製造方法 Download PDF

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発明の技術分野
本発明は、複数の電子ビームを用いて、ウエハ等の試料の表面の性状を検査する技術に関する。より詳細には、本発明は、半導体製造工程におけるウエハの欠陥検出及び線幅測定等のように、電子ビームを試料に照射し、その表面の性状に応じて変化する二次電子を捕捉して画像データを形成し、該画像データに基づいて試料表面に形成されたパターン等を高スループットで評価するための電子線装置、並びに、該装置を用いた半導体デバイスの評価システム及び半導体デバイス製造方法に関する。なお、本明細書において、試料の「評価」とは、試料の欠陥検出及び線幅測定等の「検査」を含むものとする。
背景技術
半導体プロセスにおいて、デザインルールは100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。
そして、半導体デバイスの高集積化及びパターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウエハの欠陥を調べるためには、100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及び、コンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって電子ビームを用いた欠陥検査装置が、今後、主流になると予想される。但し、電子ビーム方式の欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。このため、高分解能、高スループット、且つ電気的欠陥検出が可能な電子ビーム方式の検査装置の開発が要求されている。
光方式での分解能は、使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では、0.2μm程度である。一方電子ビームを使用する方式では、通常、走査型電子ビーム方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(20cmウエハ)である。電子ビーム方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴である。しかし、上記したように、検査時間が非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。また、電子ビーム方式の検査装置は、高価でありまたスループットも他のプロセス装置に比べて低いことから、一般に、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜(銅メッキを含む)、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は、電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)これを走査してライン状にウエハを照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は、一般に数100μmである。細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)の照射により発生したウエハからの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度として得られる)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、あるいはCRT(ブラウン管)等のモニタ上に画像を出力する。以上がSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から、工程途中の半導体(通常はSi)ウエハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は、一次電子線の量(電流値)、ビーム径、検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)、一次電子線の電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが、現在の最高値であり、この場合で検査速度は、20cm径のウエハ1枚あたり約8時間と言われている。このように、検査速度が光に比べてきわめて遅い(1/20以下)ことが、大きな問題点(欠点)となっている。
また、高スループットにするためにビーム電流を大きくすると、絶縁膜が表面にあるウエハでは、帯電して良好なSEM画像が得られないという問題があった。
SEM方式の欠点である検査速度を向上する別の方法として、複数の電子線を用いたSEM(マルチビームSEM)方式及び装置が開示されている。この従来例の方式及び装置では、複数の電子線の本数分だけ検査速度を向上できるが、複数の一次電子線を斜め入射し、ウエハからの複数の二次電子線を斜め方向に取り出すため、ウエハから放出される二次電子も、斜めの方向に放出されたもののみを検出器が拾うことになる。また、画像に影ができてしまったり、さらに、複数の電子線からのそれぞれの二次電子を分離することが困難であって、二次電子が互いに混入してしまうという問題が生じている。
さらに、マルチビーム方式の電子線装置を用いた評価システムにおいて、電子線装置と他のサブシステムとの間の相互作用等については、今までほとんど提案されておらず、結局、高スループットの評価システムの完成された全体システムが提案されていない。更に、検査すべきウエハ等の大型化が図られてきており、サブシステムもウエハの大型化に対処できるようにする必要があるが、この点についても、提案されていない。
発明の開示
本発明は、このような従来例の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチビームを用いたSEM方式の電子線装置を用いた評価システムであって、検査処理のスループットを向上させることができる評価システムを提供することである。
本発明の別の目的は、マルチビームを用いたSEM方式の電子線装置であって、検査処理のスループットを向上させるとともに、検出精度を向上させることができる電子線装置を提供することである。
本発明の他の目的は、このような電子線装置又は評価システムを用いて、プロセス途中又はプロセス終了後の半導体ウエハの評価を行うことができる半導体デバイス製造方法を提供することである。
上記した目的を達成するために、本発明は、概略的に述べると、一次電子線を複数すなわちマルチビームとし、複数の電子線を一次元方向(X軸方向)に走査しながら、E×Bフィルタ(ウィーンフィルタ)を通して試料表面に電子線を垂直に入射させ、試料から放出された二次電子をE×Bフィルタにより一次電子線と分離して一次電子線の軸に対して斜め方向に取り出し、更に、レンズ系により検出系に結像あるいは集光させる。そして、一次電子線の走査方向(X軸方向)に対してステージを直角方向(Y軸方向)に移動させ、連続した画像を取得する。
一次電子線がE×Bフィルタを通過するときは、電子線が電界から受ける力と磁界から受ける強さが逆向きで等しくなる条件(ウィーン条件)に設定され、一次電子線は直進する。一方、二次電子は、一次電子線とは方向が逆向きのために二次電子に作用する電界及び磁界の力の方向が同じになるために、一次電子線の軸方向から曲げられる。この結果、一次電子線と二次電子線は分離される。E×Bフィルタを電子線が通過するとき、直進のときよりも曲げられた場合の収差が大きくなるため、高い精度が必要とされる一次電子線を直進させ、比較的高い精度が要求されない二次電子線を曲げるように光学系が設計されている。
検出系としては、複数の一次電子線の一本一本に対応した検出器が備えられており、対応する一次電子線からの二次電子は、結像系により必ず対応する検出器に入射するよう設定されている。このため、信号の混入すなわちクロストークを低減することが可能となる。検出器としては、シンチレータ+光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)を使用し、又は、PINダイオード(半導体検出器)等を使用することもできる。本発明の一実施例の電子線装置では、例えば、16本の一次電子線でそれぞれビーム径0.1μm、1本当たりのビーム電流20nAが得られており、16本の合計では、現在市販されている装置の3倍の電流値が得られている。
また、本発明に係る電子線装置に用いられる電子銃においては、電子線源として熱電子線源を使用している。電子放出(エミッタ)材は、Lである。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。複数の電子線を得るために、2通りの方法を用いている。一つは、一本のエミッタ(突起が一つ)から一本の電子線引き出し、複数の穴のあいた薄板(開口板)を通すことにより、複数の電子線を得る方法、もう一つの方法は、一本のエミッタに複数の突起を形成して、これら突起から直に複数の電子線を引き出す方法である。いずれの場合も、電子線が突起の先端から放出されやすい性質を利用している。他の方式の電子線源からの電子線、例えば熱電界放出型の電子線も、使用可能である。なお、熱電子線源は、電子放出材を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電界放出電子線源とは、電子放出材に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して、本発明に係る評価システムの実施形態について、検査試料として表面にパターンが形成された半導体基板すなわちウエハを評価する場合について、説明する。なお、ウエハ以外の試料の評価に適用可能であることは、勿論である。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る評価システム1の主要な構成要素を示す立面図及び平面図である。評価システム1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダ60と、主ハウジング30内に配置され、ウエハであるウエハWを載置して移動させるステージ装置50と、主ハウジング30に取り付けられた電子光学系70とを備え、それらは、図1及び図2に示したような位置関係で配置されている。評価システム1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図11に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図12に図示)と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
以下に、評価システム1の主要な要素(サブシステム)それぞれの構成について、詳細に説明する。
カセットホルダ10
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個のカセット)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送して自動的にカセットホルダ10に装填する場合には、それに適した構造のものを、また人手により装填する場合には、それに適したオープンカセット構造のものを、それぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備えている。カセットcは、昇降テーブル上に図2において鎖線で示した状態に自動的に装填可能であり、装填後、図2において実線で示した状態に自動的に回転され、ミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は、図1において鎖線で示した状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダは、いずれも既知の構造のものを適宜選択して使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は、ここでは省略する。
別の実施形態では、図3に示すように、複数の300mmウエハWを箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(不図示)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬送出入り口ドアの自動開閉装置とに連結されて、箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬送出入りドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、ウエハWを保持するための溝型ポケット507とから構成されている。この実施形態では、ローダー60のロボット式の搬送ユニット61により、ウエハを出し入れする。
なお、カセットc内に収納されるウエハは、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けたウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、検査のためにカセットc内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは、多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されており、カセット中の任意の位置のウエハを、後述する第1の搬送ユニットで保持できるようにするために、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
ミニエンバイロメント装置20
図4は、ミニエンバイロメント装置20を図1とは異なる方向から見た立面図である。この図4並びに先の図1及び図2に示したように、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気等の気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて試料であるウエハの粗位置決めを行うプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間21を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図4に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に下向きに取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。
この実施形態では、気体供給ユニット231は、供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて、ミニエンバイロメント空間21の雰囲気を清浄にするよう構成されている。しかしながら、この外部から取り入れられる気体の割合は、任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための既知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、これにより、搬送ユニットにより発生する恐れのある塵埃がウエハに付着するのを防止する。したがって、ダウンフローの噴出口は、必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって、清浄度を向上させることができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに、装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうち、カセットホルダ10に隣接する部分には、出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3〜0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニット231は、ミニエンバイロメント空間21内でなく、その外側に設けてもよい。
排出装置24は、後に説明する搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出し、それに基づいて、ウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を、約±1度の精度で予め位置決めする。プリアライナー25は、ウエハであるウエハの座標を決める機構の一部を構成し、ウエハの粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は既知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は、ここでは省略する。なお、図示しないが、プリアライナー25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナー25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
主ハウジング30
図1及び図2に示したように、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32は、フレーム構造体331上に配設固定されており、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備え、ワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みが発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の適宜の構造にしてもよい。この実施形態においては、ハウジング32本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを、防振装置37で阻止している。ハウジング32の周壁323の内、ローダハウジング40に隣接する周壁には、ウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のものでもよい。いずれも汎用の構造のものでよいので、その構造及び機能の説明を省略する。ワーキングチャンバ31は、汎用の真空装置(図示せず)により、真空雰囲気に保たれる。台フレーム36の下には、評価システム1全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
なお、評価システム1においては、主ハウジング30を含めて、種々のハウジングを真空排気しているが、そのための真空排気系は、真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、ウエハ室、ロードロック室等を、所定のシーケンスに従って真空排気を行う。各部においては、必要な真空度を達成するように、真空バルブが制御される。そして、常時、真空度の監視を行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブ等によるチャンバ間又はチャンバと排気系との間の遮断緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保をする。真空ポンプとしては、主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は、10−3〜10−5Pa、好ましくは、その1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
ローダハウジング40
図5は、図1とは別の方向から見たローダハウジング40の立面図を示している。図5並びに図1及び図2に示すように、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は、底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有しており、2つのローディングチャンバを外部から隔離している。仕切壁434には、2つのローディングチャンバ間でウエハWの受け渡しを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置20及び主ハウジング30に隣接した部分には、出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されて支持されている。したがって、このローダハウジング40にも、床の振動が伝達されない。
ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されているが、これら出入り口436、226の間には、ミニエンバイロメント空間21とローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271と、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。同様に、ローダハウジング40の出入り口437と主ハウジング30のハウジング本体32の出入り口325とは整合されているが、これら出入り口436、325の間には、ローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触し、それら側壁に固定されたシール材451、シール材451と協働して、出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461により開口を閉じて、第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき、各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は汎用のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。
なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジング40の支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40及び主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22とローダハウジング40との間に、出入り口の周囲を気密に囲む防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数枚(この実施形態では2枚)のウエハWを上下に隔てて水平に支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図6に示すように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472には、それぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上に、ウエハWの周縁を載せて保持する。このようにウエハWを載置下状態で、後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハWに接近させ、該アームによりウエハを把持させ、そしてウエハを搬送させる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、真空ポンプを含む汎用の真空排気装置(図示せず)によって、高真空状態(真空度としては、10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御される。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保つことにより、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような2つのローディングチャンバを備えたローディングハウジング構造を採用することによって、ウエハWをローディングチャンバからワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ構造を採用することによって、マルチビーム型の電子光学系と協働して欠陥等の検査のスループットを向上させ、更に、保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を、可能な限り高真空状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42にはそれぞれ、真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態において、不活性ガスベント(不活性ガスを注入して、不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)が達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は汎用の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
なお、電子線を使用する本発明の主ハウジング30において、後述する電子光学系70の電子源すなわち電子銃として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB)等は、一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要である。本発明においては、主ハウジング30の電子光学系70が配置されているワーキングチャンバにウエハWを搬入する前段階で、上記のような雰囲気制御を行うことにより、酸素に接触する可能性が低減されるため、電子源の寿命を縮めてしまう可能性が低くなる。
ステージ装置50
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。該ホルダ55のウエハ載置面551上にウエハWを解放可能に保持する。ホルダ55は、ウエハWを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる汎用の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記した複数のテーブル52〜54を動作させることにより、載置面551上でホルダ55に保持されたウエハWを電子光学系70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更には、ウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に、高い精度で位置決めすることができる。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ55上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置をフィードバック回路(不図示)によって制御したり、それと共に或いはそれに代えて、ウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定して、ウエハの電子ビームに対する平面位置及び回転位置を検知し、回転テーブル54を微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ホルダ55を設けずに、回転テーブル54上にウエハWを直接載置してもよい。ワーキングチャンバ31内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている汎用構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記したレーザ干渉測距装置も汎用構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハWの回転位置やX−Y座標位置を、後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することによって、信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダ55に設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に印加するよう構成され、ウエハWの外周部の3点(好ましくは、周方向に等隔に隔てられた3点)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるよう構成され、かつ電圧印加用の導通部を構成している。
なお、この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダ60
ローダ60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O−Oの回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとして任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた汎用構造の駆動機構(図示せず)により、回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O−Oの回りで回動可能であると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O−Oに関して半径方向に伸縮可能である。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、汎用構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハ把持用の把持装置616が設けられている。駆動部611は、汎用構造の昇降機構615により上下方向に移動可能である。
この第1の搬送ユニット61において、カセットホルダ10中に保持された二つのカセットcの内のいずれか一方の方向M1又はM2(図2)に向かって、アーム612が伸び、そして、カセットc内に収容されたウエハWをアームの上に載せるか又はアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後、アームが縮み(図2に示した状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転して、その位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハWをプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にしてウエハを受け取った後、アームは更に回転し、第1のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第1のローディングチャンバ41内のウエハ受け47に、ウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合には、ウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これは、ウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、周縁部以外の部分を把持すると、デバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も、第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハWの搬送を、ウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送を、ウエハをほぼ水平状態に保ったままで行う。そして、搬送ユニット61、63のアームが上下動するのは、単に、カセットcからのウエハの取り出し及びそれへの挿入、ウエハラックへのウエハの載置及びそこからの取り出し、並びに、ステージ装置50へのウエハの載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、例えば直径30cm等の大型のウエハであっても、その移動をスムースに行うことができる。
ここで、上記構成を有する評価システム1において、カセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下され、カセットcが出入り口225に整合される。カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(不図示)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメント装置20の出入り口225との間には、筒状の覆いが配置されて、カセット及びミニエンバイロメント空間21を、外部から遮断する。これらの構造は汎用のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合には、そのシャッタ装置が動作して、出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は、方向M1又はM2ののいずれかに向いた状態(この説明では、M1の方向)で停止しており、出入り口225が開くと、アームが伸びてその先端でカセットcに収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では、第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブルの上下動によって行っても、或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、該アームは縮み、シャッタ装置が動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次に、アーム612は軸線O−Oの回りで回動し、方向M3に向けて伸長できる状態となる。そして、アームが伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、該プリアライナによって、ウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を、所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると、第1の搬送ユニット61は、アーム612の先端にプリアライナ25からウエハを受け取った後にアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。すると、シャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、シャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435は、シャッタ装置46の扉461により気密状態に閉じられている。
上記した第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング本体22に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では、供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は、排出装置24の吸入ダクト241から吸引されて、ハウジング外に排出される。残りの空気は、ハウジング本体22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され、再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41を密閉する。すると、該ローディングチャンバ41内には空気が追い出されて不活性ガスが充填された後、その不活性ガスも排出されて、ローディングチャンバ41内は真空雰囲気となる。ローディングチャンバ41の真空雰囲気は、低真空度でよい。ローディングチャンバ41の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して、扉461で密閉していた出入り口434を開き、次いで、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461により出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前に、アーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のように、シャッタ装置46が開く前に、シャッタ装置45の扉452により出入り口437、325を閉じて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を阻止しており、かつ、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームは、ワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X−Xが第2の搬送ユニット63の回動軸線O−Oを通るX軸線X−Xとほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53が図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びて、ウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そして、ステージ装置50の載置面551上にウエハWを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハWをステージ装置50の載置面551上に搬送載置するまでの動作に付いて説明した。検査処理が完了したウエハWをステージ装置50からカセットcに戻すには、前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しているため、第2の搬送ユニット63がウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行っている間に、第1の搬送ユニットがカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができる。したがって、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、既に処理済みのウエハAと未処理のウエハBとがある場合、▲1▼まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。そして、▲2▼この処理中に、処理済みウエハAを、アームによりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理の別のウエハCを同じくアームによりウエハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。このようにすることにより、ウエハラック47の中では、ウエハBの処理中に、処理済みのウエハAを未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、各ステージ装置に1つのウエハラック47からウエハを移動することにより、複数枚のウエハを同じに処理することができる。
図7の[A]及び[B]は、主ハウジング30の支持方法の変形例を示している。図7[A]に示した変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その銅板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、図1の実施形態の底壁に比較して、薄い構造になっている。図7[B]に示した変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊下状態で支持している。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持している。そして、防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40も、フレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。図7[B]に示した変形例では、吊り下げ式に支えているので、主ハウジング30b及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。主ハウジング及びローダハウジングをつり下げて支持する方法によれば、床からの振動がこれらに伝わらないため、好適である。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがハウジング支持装置によって下から支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で、床上に配置される。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置される。
電子光学系70
電子線装置に具備される電子光学系70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、該鏡筒中には、一次電子光学系(以下、「一次光学系」)及び二次電子光学系(以下、「二次光学系」)と検出系とが配置されている。
図8は、このような電子光学系70の実施形態を示した概略図であり、図において、72は一次光学系、74は二次光学系、76は検出系である。なお、図8においては、ウエハWを載置した状態のステージ装置50、及び制御装置の一部である走査信号発生回路764も示している。一次光学系72は、電子線を試料であるウエハWの表面に照射する光学系であり、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズすなわちコンデンサレンズ722と、該コンデンサレンズ722の下方に配置されかつ複数の開口が形成されていて、一次電子線を複数の一次電子ビームすなわちマルチビームに形成するマルチ開口板723と、一次電子ビームを縮小する静電レンズである縮小レンズ724と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器725と、対物レンズ726とを備えている。それらは、図8に示すように、電子銃721を最上部にして順に配置され、しかも、電子銃から放出される一次電子線の光軸がウエハWの表面に直交して照射されるように設定される。
縮小レンズ724及び対物レンズ726の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板723に形成される複数(この実施形態では9個)の開口723aが、図9の[A]に示されるように、光軸を中心とした円の円周上に形成され、しかも、その開口のX軸上への投影像のX方向の間隔Lxが同一となるように配置されている。
二次光学系74は、E×B分離器725により一次光学系から分離された二次電子を通す2段の静電レンズである拡大レンズ741及び742と、マルチ開口検出板743とを備えている。マルチ開口検出板743に形成される開口743aは、図9の[A]に示すように、一次光学系のマルチ開口板723に形成されている開口723aと一対一に対応するように配置されている。
検出系76は、二次光学系74のマルチ開口検出板743の複数の開口743aに対応し、かつこれらに近接して配置された複数(この実施形態では9個)の検出器761と、各検出器761にA/D変換器762を介して電気的に接続された画像処理部763とを備えている。画像処理部763は、電子光学系70内に物理的に位置する必要がない。
次に、上記構成の電子光学系70の動作を説明する。電子銃721から放出された一次電子線は、一次光学系72のコンデンサレンズ722によって集束されて点P1においてクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ722によって集束された一次電子線がマルチ開口板723の複数の開口723aを通過することにより、複数の一次電子線が形成され、これらの一次電子線は、縮小レンズ724によって縮小されて、位置P2に投影される。位置P2で合焦した後、更に対物レンズ726によってウエハWの表面上に合焦される。このとき、一次電子線は、縮小レンズ724と対物レンズ726との間に配置された偏向器727によって、ウエハWの表面上を走査するように偏向される。偏向器727には、走査信号が印加され、該信号に基づいて、一次電子線の偏向走査が実行される。
一次光学系72による一次電子線の照射方法を、図9の[B]を用いて説明する。なお、この図の例では、説明を簡単にするために、4本の一次電子線101、102、103、104を用いる例について説明する。それぞれの電子線は、50μm幅をスキャンするものとする。電子線101を例にとると、まず、電子線101は左端から右方向にスキャンし、右端に到着後、すみやかに左端にもどり、改めて、右方向にスキャンする。このように、4つの電子線により、同時にウエハ表面を走査しているので、スループットが向上する。
合焦された複数(図8の実施形態では9本)の一次電子線によってウエハW上の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から二次電子が放出される。この二次電子は、対物レンズ726の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器725によって偏向されて、二次光学系74に投入される。二次電子による像は、E×B分離器725からみて、位置P2より近い位置P3において焦点を結ぶ。これは、一次電子ビームがウエハ面上で500eV程度のエネルギを有しているのに対して、二次電子が数ev程度のエネルギしか有していないためである。
ここで、図10を参照してE×B分離器725について説明する。図10[A]は、本発明の電子光学系70に使用可能なE×B分離器の一例を示している。この分離器は、静電偏向器と電磁偏向器とにより構成されており、図10においては、光軸OA(図面に垂直な軸)に直交するX−Y平面上の断面として示されている。X軸方向及びY軸方向は互いに直交している。
静電偏向器は、真空容器中に設けられた一対の電極(静電偏向電極)7251を備え、X軸方向に電界を生成する。これら静電偏向電極7251は、絶縁スペーサ7252を介して真空容器の真空壁7253に取り付けられており、これらの電極間距離Dpは、静電偏向電極7251のY軸方向の長さ2Lpよりも小さく設定されている。このような設定により、Z軸すなわち光軸OAの回りの形成される電界強度が一様な範囲を比較的大きくすることができるが、理想的には、Dp<Lpであれば、電界強度が一様な範囲をより大きくすることができる。
すなわち、電極の端部からDp/2の範囲は、電界強度が一様でないため、電界強度がほぼ一様な領域は、一様でない端部領域を除いた中心部の2Lp−Dpの領域となる。このため、電界強度が一様な領域が存在するためには、2Lp>Dpとする必要があり、更に、Lp>Dpと設定することにより、電界強度が一様な領域がより大きくなる。
真空壁7253の外側には、Y軸方向に磁界を生成するための電磁偏向器が設けられている。この電磁偏向器は、電磁コイル7254及び電磁コイル7255を備え、これらコイルはそれぞれ、X軸方向及びY軸方向に磁界を生成する。なお、コイル7255だけでもY軸方向の磁界を生成できるが、電界と磁界との直交度を向上させるために、X軸方向に磁界を生成するコイル7254を設けている。すなわち、コイル7254によって生成された−X軸方向の磁界成分によって、コイル7255によって生成された+X軸方向を打ち消すことによって、電界と磁界との直交度を良好にすることができる。
これら磁界生成用のコイル7254及び7255は、真空容器の外に設けるため、それぞれを二分割して構成し、真空壁7253の両側から取り付け、部分7257においてねじ止め等によって締め付けて一体化すればよい。
E×B分離器の最外層7256は、パーマロイ或いはフェライト製のヨークとして構成する。この最外層7256は、コイル7254及び7255と同様に、2分割して両側からコイル7255の外周に取り付けて、部分7257においてねじ止め等により一体化してもよい。
図10の[B]は、本発明の電子光学系70に適用可能なE×B分離器の他の例を、光軸に直交する断面図として示している。このE×B分離器においては、静電偏向電極7251は6極設けられている点が、図10の[A]に示した形態と異なっている。図10の[B]において、図10[A]に示されたE×B分離器の構成要素に対応する構成要素は同じ参照番号に「′」(ダッシュ)を付して示し、それらの説明は省略する。これらの静電偏向電極7251′には、それぞれの電極の中央と光軸とを結んだ線と、電界の方向(X軸方向)との角度θ(i=0、1、2、3、4、5)としたときに、cosθに比例する電圧k・cosθ(kは定数)が供給される。ただし、θは、任意の角度である。
図10の[B]に示したE×B分離器においても、[A]のE×B分離器と同様に、X軸方向の電界しか作れないので、X軸及びY軸方向の磁界を生成するコイル7254′及び7255′を設け、直交度の修正を行う。
図10の[B]に示したE×B分離器によれば、図10の[A]に示したE×B分離器に比べて、電界強度が一様な領域を更に大きくすることができる。
なお、図10の[A]及び[B]に示したE×B分離器において、磁界を生成するためのコイルはサドル型に形成しているが、トロイダル型のコイルを用いてもよい。また、図10に示したE×B分離器の構成は、図8に示した電子線装置の電子光学系70だけでなく、以降で説明する他の実施形態の電子線装置の電子光学系に適用可能である。
位置P3で合焦された二次電子の像は、2段の拡大レンズ741、742でマルチ開口検出板743の対応する開口743aに合焦され、各開口743aに対応して配置された検出器761で検出する。検出器761は、検出した電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。各検出器761から出力された電気信号は、A/D変換器762でデジタル信号に変換された後、画像処理部763に入力される。検出器761として、例えば電子線強度を直接検出するPN接合ダイオード、或いは、電子により発光する蛍光板を介して発光強度を検出するPMT(光電子増倍管)などを用いることができる。
画像処理部763は、入力されたデジタル信号を画像データに変換する。画像処理部763には、一次電子線を偏向させるための走査信号が制御装置2(図1)から供給されており、したがって、画像処理部は、ウエハ表面上を走査される一次電子ビームの照射点の画像に対応する電気信号を受け取ることになり、よって、ウエハ表面を表すを表す画像を得ることができる。このようにして得られた画像を、予め設定された標準パターンと比較することによって、ウエハWの被評価パターンの良否を判定することができる。
更に、レジストレーションによりウエハWの被評価パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハの表面に形成されたパターンの線幅を測定することができる。
なお、従来の電子線装置では、一次電子線をウエハに照射した時発生する二次電子を一次電子と共通の二段のレンズで集束させ、この集束位置にE×B分離器を設けて二次電子を一次電子より分離し、その後はレンズ無しでマルチ検出器に結像させる方式が用いられている。このため、一次及び二次光学系に共通の二段のレンズは、一次光学系のレンズ条件を優先して調節される必要があるので、二次光学系の合焦条件や拡大率の調整を行うことができないことから、これらの合焦条件や拡大率が設計値からズレた場合に、調整できないという欠点があった。
しかしながら、二次電子をE×B分離器725で分離後、これを二次光学系のレンズで拡大するようにしたので、一次光学系のレンズ条件とは独立して、二次光学系の合焦条件や拡大率を調整することができる。
また、一次光学系のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子ビームをウエハWの表面に合焦させ、ウエハから放出される二次電子を検出器761に結像させる際に、一次光学系で生じる歪み、軸上色収差及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。
特に、一次電子線と二次電子線が光路を共有する場合、共通の光路に一次電子流と二次電子流が流れるので、ほぼ2倍のビーム電流が流れ、その結果、空間電荷効果による一次電子線のボケや合焦条件の狂いがほぼ2倍になる。また、共通の光路では、一次電子線と二次電子線の軸合わせが困難である。一次電子線の軸合わせを行うと、二次電子線の軸が狂い易く、逆に二次電子線の軸合わせを行うと、一次電子線の軸が狂い易い。また、共通の光路では、レンズを一次電子線の合焦条件に合わせると、二次電子線の合焦条件が外れ易く、逆に二次電子線の合焦条件に合わせると、一次電子線の合焦条件が外れ易い。
したがって、共通の光路はできるだけ短くする必要があるが、そのために対物レンズ726の下方にE×B分離器725を設けると、対物レンズの像面距離が長くなり、収差が大きくなる問題を生ずる。そこで、本発明においては、対物レンズ726から見て電子銃721側にE×B分離器725を設けており、その結果、一次光学系と二次光学系とは、一つのレンズのみを共有する構成となっている。
また、複数の一次電子ビーム間の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子ビーム間の間隔を二次光学系の収差(この場合は、対物レンズの二次電子に対する収差)よりも大きい距離だけ離すことにより、複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
さらに、静電偏向器727の偏向角度を、E×B分離器725のうち電磁偏向器による電磁偏向角度の−1/2倍に近い値にすることが好ましく、これによって、偏向の色収差を小さくできるので、E×B分離器を通してもビーム径があまり大きくならないようにすることができる。
プレチャージユニット81
プレチャージユニット81は、図1に示したように、ワーキングチャンバ31内で電子光学系70の鏡筒71に隣接して配設されている。本発明の評価システム1では、ウエハに電子線を走査して照射することによってウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるため、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によって、ウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。そして、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報としているが、ウエハ表面の帯電量にむらがあると、二次電子の情報もむらを含み、正確な画像を得ることができない。そこで、この実施形態では、帯電むらを防止するために、プレチャージユニット81が設けられている。該プレチャージユニット81は荷電粒子照射部811を含み、ウエハ上に検査のために一次電子を照射する前に、荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射することにより、帯電むらを無くす。なお、ウエハ表面の帯電状態は、電子光学系70を用いて予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出することができ、そして、検出された帯電状態に基づいて、荷電粒子照射部811からの荷電粒子の照射を制御する。プレチャージユニット81では、一次電子線をぼかして照射してもよい。
また、ウエハの電気的欠陥を検査する方法としては、本来電気的に絶縁されている部分とその部分が通電状態にある場合では、その部分の電圧が異なることを利用することもできる。それは、まず、ウエハに事前に電荷を付与することで、本来電気的に絶縁されている部分の電圧と、本来電気的に絶縁されている部分ではあるが、何らかの原因で通電状態にある部分の電圧とに電圧差を生じさせ、その後、電子ビームを照射することにより、電圧差のデータを取得し、この取得データを解析して、通電状態となっていることを検出することができる。
このような電気的欠陥の検出方法において、予めウエハに事前に電荷をチャージさせるために、プレチャージユニット81を用いることもできる。
電圧印加機構83
図11は、電圧印加機構83の構成を示すブロック図である。電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子発生率が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより、二次電子の発生が最適化するよう制御するものである。また、この電位印加機構83は、照射される一次電子が当初有しているエネルギを減速し、ウエハ上の電子エネルギを100〜500eV程度に制御するためにも用いられる。
電位印加機構83は、図11に示されるように、ステージ装置50の載置面551と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下、「調査及び決定システム」)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学系70の検出系76の画像処理部763に電気的に接続されたモニタ833と、モニタ833に接続されたオペレーション入力部834と、該オペレーション入力部834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、制御装置2(図1)に含まれ、電圧印加装置831に電圧調整信号を供給する。なお、CPU835はさらに、電子光学系70の偏向器727(図8)に走査信号を供給する等、種々構成要素に制御信号を供給する。電位印加機構83は、画像処理部763によって形成された画像をモニタ833に表示し、オペレーション入力部834及びCPU835によって、ウエハが帯電し難い電位を探し、得られた電位を、電圧印加装置831からステージ装置50のホルダ55に印加する。
電子ビームキャリブレーション機構85
電子ビームキャリブレーション機構85は、図12の[A]及び[B]に示すように、回転テーブル54上でウエハ載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用の複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(φ=約2μm)で、ファラデーカップ852は太いビーム用(φ=約30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では、回転テーブル54をステップS送りすることにより、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852では、ビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベルになるように配置される。このようにして、電子銃から放出される一次電子線を常時監視し、ウエハ表面に照射される電子線の強度がほぼ一定となるように、電子銃への電力供給を制御する。電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、経年変化等によりその放出量が変化するため、このような機構により、電子線強度を較正する。
アライメント制御装置87
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学系70に対して位置決めさせる装置である。アライメント制御装置87は、光学顕微鏡871(図1)を用いた広視野観察によるウエハの概略位置合わせである低倍率合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い位置合わせ)、電子光学系70の電子光学系を用いたウエハの高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。なお、このように低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためには、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハアライメントを行うときに、電子線によるアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
光学顕微鏡871は、主ハウジング30内に設けられているが、主ハウジング30内で移動可能に設けられていてもよい。光学顕微鏡871を動作させるための光源(不図示)も主ハウジング30内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は、電子光学系70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。
アライメント制御装置87の構成を概略図示すれば、図13に示すようになる。ウエハW上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ又はYステージを動かすことによって、ウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871を用いて広視野でウエハを視認し、そのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置すなわち被観察点の位置を、おおよそ決定する。この場合、光学顕微鏡871の倍率を低倍率から高倍率に徐々に変化させていってもよい。
次に、ステージ装置50を電子光学系70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させることにより、光学顕微鏡871を用いて予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学系70の視野位置に移動させる。この場合、電子光学系70の軸線O−Oと光学顕微鏡871の光軸O−Oとの間の距離(この実施形態では、X軸方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているので、その値δxだけ移動させれば、被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学系70の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
このようにして、電子光学系によって高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法により、ステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ、すなわち電子光学系の光軸O−Oに対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学系70に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そして、その検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ、或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいて、ステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
制御装置2
制御装置2の制御系は、主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
メインコントローラには、マンーマシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作は、ここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時等の必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハの搬送、位置合わせの制御、制御コントローラやステージコントローラへのコマンドの伝達や情報の受け取り等も、メインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、ウエハ観察位置のZ軸方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系へフィードバツクし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージ装置からの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
制御コントローラは、主に電子光学系の制御、すなわち、電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルタ用等の高精度電源の制御等を担う。具体的には、照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるように電源を制御すること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへ自動的に電圧を設定すること等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
ステージコントローラは、主にステージの移動に関する制御を行い、精密なX軸方向およびY軸方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の許容誤差)を可能にしている。また、ステージの移動制御では、誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
上記した本発明に係るこのような評価システムによれば、マルチビームを用いた電子線装置を評価システムの各構成機器を機能的に組み合わせることができたため、高いスループットで検査対象を処理することができる。また、エンバイロメント空間内に清浄度を観察するセンサを設けることにより、その空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。さらに、プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
次に、本発明に係る評価システム1に具備される電子線装置のステージ装置50と電子光学系70の荷電ビーム照射部との組合せについて、種々の実施形態を説明する。
半導体ウエハ等のように、超精密加工が施された試料を検査する場合には、ウエハを真空のワーキングチャンバ31中で精度良く位置決め可能なステージ装置50を使用する必要がある。このように非常に高精度な位置決めが要求される場合のステージ装置として、XYステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが直接真空チャンバすなわちワーキングチャンバ31に排出されないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成することによって、ワーキングチャンバ31の真空度を維持している。なお、本明細書において、「真空」とは、等技術分野において呼ばれる真空状態であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
このようなステージ装置50と電子光学系70との組合せの従来例を、図14に示している。図14において、[A]は正面図、[B]は側面図である。この従来例において、真空チャンバ31を構成する主ハウジング30に、荷電ビームを発生しウエハWに照射する電子光学系装置の鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72が取り付けられている。鏡筒71の内部は、真空配管10−1によって真空排気されており、真空チャンバ31は真空配管11−1aによって真空排気されている。そして、荷電ビームは、鏡筒71の先端部7から、その下に置かれたウエハW等のウエハに対して照射される。
ウエハWは、ウエハ載置台すなわちホルダ55に公知の方法により取り外し可能に保持されており、ホルダ55は、XYステージを構成するYテーブル52の上面に取り付けられている。Yテーブル52には、Xテーブル53のガイド面53a−1と向かい合う面(図14の[A]において、左右両面及び下面)に、静圧軸受け9−1が複数取り付けられており、この静圧軸受け9−1の作用により、ガイド面との間に微小隙間を維持しながら、Y方向(図12の[B]において、左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受け9−1の周りには、静圧軸受け9−1に供給される高圧ガスが真空チャンバ31の内部にリークしないように、差動排気機構が設けられている。この様子を図15に示す。
図15に示すように、静圧軸受け9−1の周囲には、二重に溝18−1と17−1とが構成されており、これらの溝は、図示していない真空配管と真空ポンプにより、常時真空排気されている。このような構造により、Yテーブル52は、真空中を非接触状態で支持され、Y方向に自在に移動することが可能である。二重の溝18−1と17−1は、Yテーブル52の静圧軸受け9−1が設けられている面に、その静圧軸受けを囲むように形成される。なお、静圧軸受け9−1の構造は公知のもので良いので、その詳細な説明は省略する。
Yテーブル52を搭載しているXテーブル53は、図14に示すように、上方に開口している凹形の形状を有し、そして、Xテーブル53にも、上記と同様の静圧軸受け及び溝が設けられている。これにより、ステージ台すなわち固定テーブル51に対して、非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
これらのYテーブル52及びYテーブル53の移動を組み合わせることによって、ウエハWを鏡筒71の先端部72すなわち荷電ビーム照射部に関して水平方向任意の位置に移動させ、ウエハWの所望の位置に荷電ビームを照射することができる。
図14に示したステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せも、本発明の評価システム1に用いることができるものの、以下の問題点がある。
上記した静圧軸受け9−1と差動排気機構を組み合わせた従来例では、XYステージが移動する際に、静圧軸受け9−1に対向するガイド面53a及び51aは、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とワーキングチャンバ31内の真空環境の間を往復運動することになる。この時、これらガイド面には、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、その後真空環境に露出されると吸着していたガスが放出される、という状態が繰り返される。このため、XYステージが移動する度に、ワーキングチャンバ31内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した荷電ビームによる露光や検査や加工等の処理を安定して行うことができなかったり、ウエハが汚染されてしまうという問題がある。
したがって、真空度の低下を防止し、かつ荷電ビームによる検査や加工の処理を安定して行うことができる装置が必要となる。図16は、このような作用効果を奏することができるステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の実施形態を示している。なお、図16において、[A]は正面図、[B]は側面図である。
図16に示すように、この実施形態でのステージ装置50は、Yテーブル52の上面に、±Y軸方向(図16の[B]で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板14−1が取り付けられ、Xテーブル53の上面との間に、コンダクタンスが常時小さい絞り部50−1が生じるよう構成されている。また、Xテーブル53の上面にも、同様の仕切り板12−1が±X軸方向(図14の[A]で左右方向)に張り出すよう取り付けられており、固定テーブル51の上面との間に常に絞り部51−1が形成されるよう構成されている。固定テーブル51は、主ハウジング30内において、底壁の上に公知の方法で固定されている。
これにより、ウエハ台すなわちホルダ55がどの位置に移動しても、常に絞り部50−1及び51−1が形成されるので、Yテーブル52及びXテーブル53の移動時にガイド面53a及び51aからガスが放出されても、絞り部50−1及び51−1によって放出ガスの移動が妨げられる。したがって、荷電ビームが照射されるウエハ近傍の空間24−1の圧力上昇も、極めて低く押さえることができる。
ステージ装置50の可動部であるYテーブル52の側面及び下面、並びにXテーブル53の下面には、静圧軸受け9−1の周囲に、図15に示した差動排気用の溝が形成され、この溝によって真空排気されるため、絞り部50−1、51−1が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ装置50内部の空間13−1及び15−1の圧力は、ワーキングチャンバ31内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間13−1及び15−1を差動排気溝17−1や18−1で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設けることにより、これら空間の圧力を下げることができ、ウエハWの近傍24−1の圧力上昇を、更に小さくすることができる。このための排気通路11−1b及び11−1cが設けられている。排気通路11−1bは、固定テーブル51及び主ハウジング30を貫通し、主ハウジング30の外部に通じている。また、排気通路11−1cは、Xテーブル53に形成され、該Xテーブルの下面に開口している。
また、仕切り板12−1及び14−1を設置すると、ワーキングチャンバ31とこれら仕切り板が干渉しないように、ワーキングチャンバ31を大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによって、この点を改善することが可能である。この改善例として、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状に構成し、その移動方向の端部を、仕切り板14−1の場合はXテーブル53に固定し、仕切り板12−1の場合はハウジング8の内壁に固定することが好適である。
図17は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の別の実施形態を示している。この実施態様では、鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲に、試料であるウエハWの上面との間に絞り部ができるように、円筒状の仕切り16−1が構成されている。この構成によれば、XYステージからガスが放出されてワーキングチャンバ31内の圧力が上昇しても、仕切りの内部24−1は仕切り16−1で仕切られておりかつ真空配管10−1により排気されているので、ワーキングチャンバ31内と仕切りの内部24−1との間に圧力差が生じ、仕切り内部24−1の圧力上昇を低く抑えることができる。仕切り16−1とウエハW面との隙間は、ワーキングチャンバ31内とビーム照射部72周辺の圧力をどの程度に維持するかによって調整すべきであるが、数十μm〜数mm程度が適当である。なお、仕切り16−1内と真空配管10−1とは公知の方法により連通されている。
また、電子光学系70においては、ウエハWに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料をウエハの近傍に設置すると、放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り16−1の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、ウエハWと仕切り16−1との間で放電を起こすことがない。
なお、ウエハWの周囲に配置したリング部材4−1は、ウエハ台すなわちホルダ55に固定された板状の調整部品である。このリング部材4−1は、仕切り16−1の先端部全周に亘って微小隙間52−1が形成されるように、ウエハWと同一の高さに設定されている。これによって、ウエハの端部を含む任意の位置に荷電ビームを照射しても、仕切り16−1の先端部には常に一定の微小隙間52−1が形成され、鏡筒71の先端部周囲の仕切り内部空間24−1の圧力を、安定に保つことができる。
図18は、ステージ装置50及び電子線装置の荷電ビーム照射部72の組合せの他の実施態様を示している。この実施形態においては、鏡筒71の荷電ビーム照射部2の周囲に、差動排気構造を内蔵した仕切り19−1が設けられている。仕切り19−1は円筒形状をしており、その内部に円周溝20−1が形成され、その円周溝から上方に排気通路21−1が延びている。該排気通路は、内部空間22−1を経由して、真空配管23−1に繋がれている。仕切り19−1は、その下端とウエハWの上面との間に数10μm〜数mm程度の微小隙間を形成するよう配置される。
図18の構成によれば、XYステージの移動に伴ってステージ装置50からガスが放出され、ワーキングチャンバ31内の圧力が上昇して荷電ビーム照射部72にガスが流入しようとしても、仕切り19−1がウエハWとの隙間を絞ってコンダクタンスを極めて小さくしているため、ガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝20−1から真空配管23−1へ排気されるため、荷電ビーム照射部72の周囲の空間24−1へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部72の圧力を、所望の高真空のまま維持することができる。
図19は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72のさらに別の実施態様を示している。この実施形態においては、ワーキングチャンバ31内の荷電ビーム照射部72の周囲には仕切り26−1が設けられ、これにより、荷電ビーム照射部72をワーキングチャンバ31から隔てている。仕切り26−1は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材29−1を介して冷凍機30−1に連結されており、−100℃〜−200℃程度に冷却される。部材27−1は、冷却されている仕切り26−1と鏡筒71との間の熱伝導を遮断するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料で形成されている。また、部材28−1は、セラミックス等の非絶縁体からなり、仕切り26−1の下端に形成され、ウエハWと仕切り26−1との間で放電が生じることを防止するためのものである。
図19の構成によれば、ワーキングチャンバ31内から荷電ビーム照射部72に流入しようとするガス分子は、仕切り26−1で流入を阻害されるとともに、流入しても仕切り26−1の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部72の圧力を低く保つことができる。
なお、冷凍機30−1として、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様々な冷凍機を使用することができる。
図20は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せのさらに他の実施態様を示している。XYステージの両可動部すなわちYテーブル52及びXテーブル53には、図16の構成と同様に、仕切り板12−1、14−1が設けられており、ウエハ台すなわちホルダ55が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによって、ステージ装置内の空間13−1とワーキングチャンバ31内とが絞り50−1、51−1を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部72の周りには、図17の構成と同様に仕切り16−1が形成されており、ワーキングチャンバ31内と荷電ビーム照射部72のある空間24−1とが絞り52−1を介して仕切られている。このため、XYステージの移動時に、該ステージに吸着しているガスが空間13−1に放出されて該空間の圧力を上昇させたとしても、ワーキングチャンバ31の圧力上昇は低く抑えられ、空間24−1の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射部72の空間24−1の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り16−1を、差動排気機構を内蔵した仕切り19−1としたり、図18に示したように冷凍機で冷却された仕切り26−1とすることによって、空間24−1を更に低い圧力で安定に維持することができる。
上記した荷電ビーム照射部の構造によれば、ステージ装置を真空のワーキングチャンバ内で高精度に位置決めすることができ、また、照射部の圧力が上昇しにくいため、高精度の画像データを得ることができる。
図21は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せの他の実施形態を示している。この実施形態においては、電子光学系70の先端部すなわち荷電ビーム照射部72がワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30に取り付けられている。ステージ装置50におけるXYステージの台座すなわち固定テーブル51は、主ハウジング30の底壁に固定され、Yテーブル52が固定テーブル51の上に載っている。Yテーブル52の両側面(図19において左右側面)には、固定テーブル51に載置された一対のY方向ガイド7a−2及び7b−2のYテーブル52に面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝は、Y方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向(図面と直交する方向)に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には、公知の構造の静圧軸受け11a−2、9a−2、11b−2、9b−2がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル52は、Y方向ガイド7a−2、7b−2に対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、固定テーブル51とYテーブル52との間には、Y方向の駆動を行うための公知の構造のリニアモータ12−2が配置されている。Yテーブル52には、高圧ガス供給用のフレキシブル配管22−2によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて、静圧軸受け9a−2〜11a−2及び9b−2〜11b−2に対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出して、Yテーブル52を案内面に対してX方向及びZ方向(図21において、図面の上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
Yテーブル52上にはXテーブル53がX方向(図21において、図面の左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル52上には、Yテーブル用のY方向ガイド7a−2、7b−2と同じ構造の一対のX方向ガイド8a−2、8b−2(8a−2のみ図示)が、Xテーブル53を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブル53に面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には、該凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝は、X方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル53の突部の上、下面及び側面には、先に説明した静圧軸受け11a−2、9a−2、10a−2、11b−2、9b−2、10b−2と同様の静圧軸受け(図示せず)が、同様の配置で設けられている。Yテーブル52とXテーブル53との間には、Xテーブル53の駆動を行うための公知の構造のリニアモータ13−2が配置されている。Xテーブル53にはフレキシブル配管21−2によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給する。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル53がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空のワーキングチャンバ31は、公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管19−2、20a−2、20b−2によって排気される。配管20a−2、20b−2の入口側(ワーキングチャンバ内側)は、固定テーブル51を貫通してその上面において、XYステージから高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、ワーキングチャンバ31内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
荷電ビーム照射部72の周囲には、差動排気機構25−2が設けられ、ワーキングチャンバ31内の圧力が高くても、荷電ビーム照射空間30−2の圧力が十分低くなるように構成されている。すなわち、荷電ビーム照射部72の周囲に取り付けられた差動排気機構25−2の環状部材26−2は、その下面(ウエハW側の面)とウエハとの間で微少隙間(数ミクロン〜数百ミクロン)40−2が形成されるように、主ハウジング30に対して位置決めされており、その下面には、環状溝27−2が形成されている。環状溝27−2は排気管28−2により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間40−2は、環状溝27−2及び排気口28−2を介して排気され、ワーキングチャンバ31から環状部材26−2によって囲まれた荷電ビーム照射空間30−2内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、空間30内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。
環状溝27−2は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間30内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般に、ドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が主ハウジング30の内面やステージ装置50の構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、ウエハ表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまうからである。
なお、試料であるウエハWは、通常、Xテーブル53上に直接載置されるのでなく、ウエハを取り外し可能に保持したりXYステージに対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせたウエハ台すなわちホルダの上に載置されているが、ホルダの有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、上記説明においては、説明を簡素化するために省略している。
以上に説明した荷電ビーム装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージとして実現できる。
以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータであるならば、任意のものを適用可能である。
図22は、差動排気機構の環状部材26−2及び該部材に形成される環状溝27−2の大きさの数値例を示している。この例では、環状溝は、2つの環状溝27−2a及び27−2bの二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常、約20L/min(大気圧換算)程度である。ワーキングチャンバ31を、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、該チャンバ31内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材26−2及び環状溝等の寸法を、図22に示したように設定することにより、荷電ビーム照射空間30−2内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
図23は、図21に示した実施形態におけるワーキングチャンバ31に対する排気機構を示している。ワーキングチャンバ31には、真空配管74−2、75−2を介して、ドライ真空ポンプ53−2が接続されている。また、差動排気機構25−2の環状溝27−2は、排気口28−2に接続された真空配管70−2を介して、超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ51−2に接続されている。更に、鏡筒71の内部は、排気口18−2に接続された真空配管71−2を介して、ターボ分子ポンプ52−2に接続されている。これらのターボ分子ポンプ51−2、52−2は、真空配管72−2、73−2によって、ドライ真空ポンプ53−2に接続されている。(図23では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合もある。)
XYステージの静圧軸受けには、フレキシブル配管21−2、22−2を通して、高純度の不活性ガス(Nガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は、ワーキングチャンバ31内に拡散し、排気口19−2、20a−2、20b−2を通して、ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は、環状溝27−2或いは鏡筒71の先端部から吸引され、排気口28−2、18−2を通って、ターボ分子ポンプ51−2、52−2によって排気され、そしてその後、ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。このようにして、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスは、ドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ53−2の排気口は、配管76−2を介して圧縮機54−2に接続され、圧縮機54−2の排気口は、配管77−2、78−2、79−2及びレギュレータ61−2、62−2を介して、フレキシブル配管21−2、22−2に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ53−2から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機54−2によって再び加圧され、レギュレータ61−2、62−2で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
なお、静圧軸受けに供給されるガスは、上述したように、できるだけ高純度でかつ水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管77−2の途中にコールドトラップやフィルタ等(60−2)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして、静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
循環配管系には高純度不活性ガス供給系63−2が接続されており、該不活性ガス供給系は、ガスの循環を始める際に、ワーキングチャンバ31や真空配管70−2〜75−2及び加圧側配管76−2〜80−2を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
また、ドライ真空ポンプ53−2に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ53−2と圧縮機54−2を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。更に、鏡筒72の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
上記した荷電ビーム照射部の構造及び排気機構によれば、ステージ装置を真空のワーキングチャンバ内で高精度に位置決めすることができ、また、照射部の圧力が上昇しにくいため、高精度の画像データを得ることができる。また、これらの構造は、図8に示した電子線装置の実施形態だけではなく、以下に説明する実施形態及びそれらの変形にも適用できることは勿論である。
次に、本発明に係る電子線装置の、図8に示した実施形態以外の種々の実施形態について説明する。
図24は、本発明に係る電子線装置に提要可能な電子光学系70の実施形態を示している。この実施形態においては、電子銃がマルチビームを発生するために複数のエミッタ1−3、2−3、3−3、すなわちマルチエミッタを備えた構造であり、しかも、これらエミッタの1つが故障した場合でも、所望の検査を行うことができるようにしたものである。各エミッタから放出された電子線は、コンデンサレンズ4−3、6−3で集束され、クロスオーバを開口9−3に形成する。そして、マルチビームである一次電子線の像は、さらに対物レンズ8−3を介してウエハWの面上に結像される。
ウエハWから放出された二次電子線は、対物レンズ8−3が作る加速電界でそれぞれが細く集束され、E×B分離器10−3で偏向されて一次光学系から分離される。そして、拡大レンズ11−3、12−3によって拡大されて、同一円上に開口が設けられたマルチ開口板13−3を通過し、検出器14−3、15−3、16−3で検出され、電気信号が生成される。生成された電気信号は、画像処理部(不図示)において処理される。
図25〜図27を参照して、電子銃のエミッタチップすなわち電子線放出源32−3の配列を説明する。
図25に示す例では、これらエミッタチップ32−3は、Y軸方向に直線的に並べられて複数のエミッタチップ群33−3を形成している。該エミッタチップ群33−3は、光軸C−3を中心とした同一円31−3上に配置されており、光軸C−3と直交するX軸方向(一次電子線がウエハW上で走査される方向)の線に投影したときに、その投影されたエミッタチップ群のX方向間隔がほぼ等間隔をなすように設定されている。この配置関係は、図9の[A]を参照して説明した場合と同様である。図示しないが、これらエミッタチップ群33−3のエミッタチップ32−3は、それぞれ電源に並列に接続されており、1つのエミッタチップを任意に選択して該チップのみに電圧を印加することにより、選択されたエミッタチップのみから電子線を放出できる。エミッタチップ群33−3は、相互の間隔が上記の通りであるので、各エミッタチップ群の上記選択されたエミッタチップから放出される電子線のX軸方向での間隔は等しくなり、従って、これら電子線をX軸方向に、当該電子線のウエハ面上での照射スポット間の間隔だけ走査することにより、(スポット間の間隔)×(エミッタチップの数)だけの幅の走査が行われることになる。各エミッタチップは、好ましくは、円錐、四角錐等の形状である。
図26の例では、エミッタチップ群33−3は、同一円周31−3上に配置された複数エミッタチップチップ32−3から構成されており、図26の場合と同様に、各エミッタチップ群の任意の1つのエミッタチップに電圧を印加することができるようになっている。エミッタチップの選択によっては、電圧が印加されるエミッタチップのX軸方向での間隔が少々ばらつくので、走査幅は、図25に関して述べたスポット間の間隔よりも余裕を持たせて大きくする必要がある。
図27に示す別の例では、エミッタチップチップ群33−3は3×3のマトリックス状に配置されたエミッタチップで構成されている。このようにすると、図26のエミッタチップの配列に比べて、走査幅の余裕はあまり必要ではなく、像面湾曲も最小限にできる。
図24〜図27を参照して説明した電子光学系70においては、電子銃が複数のエミッタチップ群を備え、かつ各エミッタチップ群から任意に選択された1つのエミッタチップに電圧を印加して電子線を発生するよう構成されているので、のいずれかのエミッタチップに故障が生じても、同一群の他のエミッタチップを用いて電子線を発生させることができる。したがって、エミッタチップの故障によるトラブルを回避することができる。
図28は、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系70のさらに別の実施形態を示している。この実施形態においては、一次電子ビームをマルチビーム化し、かつ、一次電子ビームの収差の内、最も大きい収差である像面湾曲収差を抑圧できるようにしたものである。該電子光学系70においては、電子銃1−4の中心にはLaB単結晶がマルチビームエミッタとなるよう加工されたカソード2−4が配置されている。カソードから放出された電子線はコンデンサレンズ3−4で集束され、クロスオーバを形成する。レンズ3−4とクロスオーバの間に第1のマルチ開口板4−4が設けられ、カソード2−4からの各ビームの強度が強い場所に、開口がほぼ一致するように配置されている。マルチ開口板を通過したビームは、2段の縮小レンズ5−4、7−4で縮小され、さらに対物レンズ10−4で縮小されて、ウエハWに結像される。図28において、6−4及び8−4は、第1及び第2の縮小像を示している。
ウエハWから放出された電子線は、対物レンズ10−4が作る加速電界で細く集束され、E×B分離器9−4で偏向されて一次光学系から分離され、拡大レンズ12−4、13−4で拡大されて、同一円上に開口が設けられた第2のマルチ開口板14−4を通過して検出器15−4で検出され、電気信号に変換される。得られた電気信号は、画像処理部(不図示)において信号処理される。
電子銃1−4は、熱電子放出型のLaB単結晶カソードで構成され、該カソード2−4の詳細な先端形状を、図29(正面図)、及び、図30(側面図)に示している。該カソードは、全体的には2mmφの円柱形のLaB単結晶から作られており、図示のように、その先端を45°の角度22−4に削り、さらに先端面24−4にその周縁に沿った三角形状断面の環状突起23−4を残し、そして、該環状突起を切削して45°の斜面26−4を有する四角錐をなす突起すなわちエミッタ領域25−4を複数形成している。これらエミッタ領域は、先端面24−4の中心線(一次電子光学系の光軸に一致する)と直交するX軸方向(一次電子線がウエハ上で走査される方向)の線に投影したときに、その投影されたエミッタ領域のX軸方向間隔がほぼ等間隔をなすように設定されている。この配置関係は、図9の[A]を参照して説明した場合と同様である。各エミッタ領域間の領域及びエミッタ領域より内側の先端面24−4から電子が放出されないように、エミッタ領域先端とこれら領域との間の高さの差を十分にとってある。
図29及び30に示したカソード構造を有する電子銃は、図28に示した第3の実施形態の電子光学系の電子銃として用いることができるだけでなく、図8に示した第1の実施形態の電子光学系の電子銃として用いることができ、さらには、以下に説明する電子光学系70の他の実施形態の電子銃として用いることができる。
図28〜図30を参照して説明した電子線装置の電子光学系においては、単一の電子銃によってマルチビームを適正に発生させることができる。また、像面湾曲をほぼ補正することができるので同一収差で多くのビームを発生でき、検査装置のスループットを大幅に向上させることができる。
図31〜図33は、本発明に係る電子線装置の電子光学系70に適用可能な電子銃の別の実施形態を示した平面図及び側面図(一部断面図)であり、これら図においては、電子銃の電子線放出領域を構成するカソード及びウェーネルト近傍を拡大して示している。この実施形態の電子銃もまた、本発明に係る電子線装置の実施形態の電子銃として使用することができる。この実施形態の電子銃は、高性能のマルチビームを生成することができ、しかも、電子銃のカソードと制御電極との位置合わせを容易に行うことができるものである。
図31及び図32に示すように、この実施形態の電子銃1−5は、円柱形のカソード本体2−5と、そのカソード本体2−5の先端部を囲むように配置された制御電極すなわちウェーネルト5−5とを備えている。円柱状カソード2−5の先端には複数(本実施形態では6個)の電子線放出領域を形成するエミッタ3−5が形成されている。これらのエミッタ3−5は、カソード2−5の先端をテーパー状(角錐状)に加工して尖らせた尖端4−5を有し、該先端から電子線を放出する。エミッタ3−5のカソード先端上の位置は、各エミッタの尖端4−5をX軸上に投影した位置の、互いに隣接する位置間の距離Lxが全て等しくなるように予め決められている。この関係は、図9の「A]を参照して説明した場合と同様である。また、全てのエミッタ3−5の尖端は、図32に示すように、同一平面P1−P1上に位置するように形成されている。二次元的なビーム間距離、すなわちエミッタ3−5の尖端間の二次元的な距離を互いに等しくすることはできないが、図31に示すように、一つのエミッタ3a−5の尖端と電子銃1−5の光軸を成すカソード2−5の軸線0−0とを結ぶ線とX軸との成す角度θを最適に選ぶことによって、エミッタ3a−5の尖端と隣接するエミッタ3b−5及び3f−5の尖端との間の周方向の距離d1及びd2を互いに等しくすることができる。制御電極すなわちウェーネルト電極5−5は、図32から明らかなように、一端が端壁6−5により閉鎖された筒状になっており、その端壁6−5には、貫通する穴すなわち開口7−5が各エミッタ3に対応して形成されている。ウェーネルト電極の開口は、全てのエミッタを囲むような寸法の1個の開口であってもよい。
カソードの先端に形成する電子線放出領域すなわちエミッタの数は、2個以上の任意の複数にすることができる。また、エミッタの形状は、図31及び図32に示された角錐形状に限られず、尖端から電子線を放出できる形状であれば、例えば円錐形等の任意形状でよい。カソード及びウェーネルトは、従来の電子銃のそれらと同じ材料で形成することができる。更に、ウェーネルトに形成される開口7の大きさは、適宜決定可能である。
エミッタ3−5に関して穴7−5を正確に位置決めする必要があるが、該位置決めは、図33に示した位置合わせ機構により実行される。図33において、ウェーネルト電極5−5は、円筒状の支持体8−5の先端に取り付けられている。この支持体8−5内には、位置合わせ機構を構成するベースプレート11−5が配置されている。ベースプレート11−5は、絶縁材料でつくられていて、支持体8−5の底板9−5に螺合された複数(この実施形態では、X、Y軸線上にそれぞれ2個ずつ配置されて4個であるが、X軸線上の2個のみ図示)の調整ねじ12a−5、12b−5の上に載せられている。ベースプレート11−5と支持体8−5に固定されたばね受け15−5との間には、ばね(この実施形態では、板ばね)14−5が配置され、ベースプレート11−5は、そのばねにより、常時調整ねじ12a−5、12b−5側に押圧されている。このばね及びばね受けは、調整ねじ12a−5、12b−5に対応した位置に配置されていることが好ましい。支持体8−5には、複数個(この実施形態では、X、Y軸線上にそれぞれ2個ずつ配置され4個であるが、X軸線上の2個のみを図示)の調整ねじ13a−5−8b−5が螺合されている。調整ねじ12a−5、12b−5はベースプレート11−5の上下方向の位置を調整し、調整ねじ13a−5、13b−5はベースプレート11−5のX、Y軸方向位置を調整する。カソード2−5は、ベースプレート11−5の上に複数の取り付け部材17−5を介して固定されている。18−5は、カソードを加熱するための加熱用のパイロリックグラファイトである。
なお、この実施形態では、ばねとして板ばねを採用しているが、コイルばねでも或いは弾性変形可能なその他の任意の弾性体でもよい。
図33に示した位置合わせ機構において、全てのエミッタ3−5とウェーネルト電極5−5の全ての穴すなわち開口7−5とは、ウェーネルト電極5−5に関するカソード2−5の回転方向(図33の軸線0−0を中心とする回転方向)、X軸方向(図33で紙面の左右方向)、Y軸方向(図33で紙面の垂直方向)、及び傾きを合わせることにより、同時に位置合わせがされるように、予めウェーネルト及びカソードの加工が行われている。回転方向の位置合わせについて考えると、ウェーネルト電極5−5に関するカソード2−5の相対回転ができないように製造すれば、加工時の精度で決まる範囲内に誤差を押さえることができる。
X軸方向の調整は、X軸線上に配置された一対の調整ねじ12a−5及び12b−5で行い、Y軸方向の調整は、Y軸線(図33では、軸線0−0に交差し、かつ紙面に直交する軸線)上に配置された一対の調整ねじ(図示せず)で行う。平面P1−P1(図32)と、開口のある平面(ここでは、端壁の上面が位置する面)平面P2−P2(図32)との傾きが狂うと、カソードとウェーネルトとのZ軸方向(図33の紙面で上下方向)距離が変わるので、調整ねじ12a−5、12b−5、及び図示しない二つの調整ねじ(紙面に垂直方向に配置された二つの調整ねじ)によって、調整される。
このような電子銃によれば、マルチエミッタの各エミッタとウェーネルトの開口との相対位置をシングルビームの場合と同じにできるので、マルチビームの各ビームの強度をシングルビームの場合とほぼ同様にすることができる。
図34〜図38は、本発明に係る電子線装置の電子光学系70に適用可能な電子銃のさらに別の実施形態を説明するための図である。この実施形態の電子銃もまた、先に説明した電子光学系70の実施形態の他、以下に説明する電子光学系の実施形態の電子銃として適用可能である。この実施形態の電子銃は、時間的変動が小さい比較的大きいビーム電流のマルチビームを放出できる。
図34の[A]及び図35は、電子銃に使用するカソード1−6の前端部の平面図及び側面図を示している。カソード1−6は、単結晶LaBの(100)面を端面とする外径d1のLaBの円柱体10−6を加工して形成される。この円柱体の端面を鏡面状に研磨すると共に、該端面と直角な面であってカーボンで押さえる二つの面も平行平面に研磨する。このLaBの円柱体10−6をカソードとして加工する場合、ジグボーラを使用するが、そのジグボーラにドリルの代わりに図36に示す構造を有する砥石で作った工具a−6を取り付け、この工具a−6により、所定数(この実施形態では、6個)の円錐形の突起すなわちエミッタ12−6が光軸を中心とした円15−6上に形成されるように、削り取る。このエミッタ12−6の先端13−6は、図34の[B]に示すように、強い電子ビームを放出できる放出領域を形成している。また、この先端13−6には、図36に示しかつ後述する工具a−6の構造からわかるように、工具で切削されずに円筒体の研磨した端面で構成される極小さな平坦面(10〜50μmφ)が残されていて、ここから電子ビームが放出される。エミッタ12−6の数は、この実施形態では6本の電子ビームを発生できるように6個であり、また、エミッタ12−6の位置は、各エミッタ12−6の中心すなわち先端13−6の位置をX軸上に投影した点の、隣接する点間の間隔Lxが全て等しくなるように決められている。これは、図9の[A]に関連して説明した場合と同様である。このエミッタの位置は、ジグボーラの精度を上限として正確に決めることができる。X軸と一つのエミッタ12−6aの先端13−6及びカソードの軸線0−0(図35)を通る線の成す角度θを最適化することにより、電子ピーム間の間隔の最大値L1と最良値L2との比を1.0に近づけるようにした。これは、光軸を中心とする円の直径を種々に変え、間隔Lxの値を固定して作図を行うことにより、最適化することができる。
図36に示した工具a−6は、円柱状の砥石の一端側(図36の[B]において下端側)にジグボーラに取り付けるための小径の取り付け部d−6を形成すると共に、他端側の端面b−6には円錐形の穴c−6が形成されている。端面b−6及び円錐形の穴c−6を形成する円錐面は、LaBの円柱体10−6の端面を切削する切削面を構成している。工具a−6には、更に、円錐形の穴c−6の先端から工具の軸方向に貫通する軸方向孔e−6が形成されている。この孔は、光を通して正しい位置にエミッタを構成する円錐状の突起が形成されているかを確認するためのものである。また、この孔から冷却剤や研磨剤を流入してもよい。この工具a−6で切削した場合、前述のように、円錐の先端は軸方向孔の存在により切削されずに小さな研磨された平面が残る。また、砥石の代わりに、金属にダイヤモンド粒子を埋め込んだ切削工具でもよい
図37及び図38は、図34及び図35に示したカソード1−6とウェーネルト2−6とを組み合わせた構造を示している。ウェーネルト2−6は、カソード1−6の円周を囲む円筒部21−6と端面を囲む端壁22−6とを備えている。端壁22−6には、カソードのエミッタの先端13−6の位置に整合された複数(この実施形態では6個)の貫通する穴23−6が形成されている。ウェーネルト2−6の穴23−6近傍の等電位面は、点線Evで示したように、穴23−6の位置でエミッタ側に凹んでいるので、エミッタから放出された電子ビームが引き出される。カソード1−6の端部(エミッタの先端領域を除いて)をウェーネルト2−6の端壁22−6で囲んでいるので、円筒体10−6の端面に削り残し部分16−6が存在していても、その位置に対応するウェーネルトの端壁に穴がないので、電子ビームが外に放出されることはなく、したがって、穴23−6に面する以外の位置におけるカソードの形状は、どのようになっていてもかまわない。
要するに、エミッタとして円錐形のLaBが精度良く残り、そして、エミッタの先端に前述の極小さな研磨された平坦面(10〜50μmφ)が残されていればよい。また、エミッタの円錐の斜面には、切削跡が残っていてもよい。さらに、各エミッタの先端の平坦面の面積にはバラツキがあってもよく、全て(この実施形態では6個)の平坦面の総面積が、100μm以下であればよい。
なお、電子銃の上記実施形態では、エミッタの形状を円錐形にした場合について説明したが、円錐形に限られず角錐(例えば四角錐)形にしてもよい。
上記した電子銃においては、目が細かい砥石で研磨して加工するので、LaB6のような硬くてもろい結晶体であっても、加工が可能である。また、エミッタの位置精度はジグボーラの精度で決定されるので、50μm程度の精度を得ることができる。さらに、エミッタ先端の平坦面は、最初の鏡面加工時に加工されるのみであるから、光軸方向の位置及び面粗度が高精度に保たれる。さらにまた、ウェーネルトの開口に面する部分以外のカソード部分は、どのような形状でもよいので、カソードを製造しやすい。
図39〜図42は、本発明に具備される電子光学系70に適用可能な電子銃のさらに別の実施形態を示している。この実施形態の電子銃もまた、本発明に係る電子線装置の電子光学系70の電子銃として用いることができる。また、この電子銃の実施形態は、マルチビームを放出するカソードの製造が容易となり、かつ、強度バラツキがないマルチビームを放出できるものである。
図39は、この実施形態の電子銃のカソードの先端形状を示したものであり、[A]はその上面図、[B]は[A]における線B−Bの断面図、[C]は[A]における線C−Cの断面図である。図39に示したカソードの製造方法について説明する。まず、端面の結晶方位が<310>のTa(タンタル)単結晶を用い、その一面を鏡面研磨して鏡面2−7(図39の[B]及び[C])を形成する。そして、鏡面2−7と直交度のよい2つの面1−7(図40)を形成し、該面1−7をグラファイトで挟んで加熱する。その後、鏡面2−7に、カソード用の突起を形成する位置に、放射方向(半径方向)に10μmの巾を有する円周を残して、鏡面2−7に対して約45°の角度で両側を削り取る。これにより、図39の[B]に示すように、半径方向幅が10μmの鏡面円周を有し、相対角度すなわち頂角が約90°の対抗する2つの傾斜面3−7を有する畝状体が形成される。
次に、直交するX軸及びY軸を決め、これら2つの軸と角度φをなす方向X’及びY’を定める。X軸は電子ビームの走査方向であり、Y軸はそれと直交する方向である。φは、例えば約5°である。そして、畝状体の円周上に、X’及びY’方向と交わる4つの点P1〜P4をマーキングし、かつ、さらに別の4つの点P5〜P8をマーキングする。このとき、これら8つの点P1〜P8をX軸上への投影した場合に等間隔となるように(図9の[A]に示した場合と同様)、角度φの値及び点P5〜P8を位置決めする。そして、点P1〜P8を頂点とし、底面がほぼ矩形の4角錐台形状の突起を8個、畝状体(図39の[A])を研削することにより形成する。このとき、形成される突起は、図39の[C]に示すように、頂面は方位方向(円周方向)の幅が50μmであり、新たな研削により形成される2つの傾斜面4−7は、鏡面2−7に対して約45°の角度を有し、したがって、2つの傾斜面の相対角度すなわち頂角は約90°に設定されている。
以上のようにして、頂面が10μmx50μmの矩形形状を有する4角錐台形状の8個の突起であって、X軸上に投影した場合に、図40に示すように、等間隔に配列された8個の突起が形成される。
Taは、単結晶が比較的安価に入手できしかも加工が容易であるので、カソードの製造が容易である。また、仕事関数が4.1eVと比較的高いが、カソード温度を高くすれば、使用可能である。
図41は、図39及び図40に示したカソードを備えた電子銃の主要部を示しており、24−7はグラファイト、25−7は支持電極、26−7はウエーネルト電極である。カソードは、グラファイト24−7で挟み込まれ、支持電極25−7で支持されている。カソード全面をカバーするウエーネルト電極26−7には、カソードの突起に対応して8個の穴26a−7〜26h−7が開けられ、支持電極25−7をX及びY軸方向に調整することにより、各穴の中心に突起の中心が来るように位置合わせされる。
さらに、ウエーネルト電極26−7の面とカソード先端を結んだ面との平行度は精度が必要であり、すなわち、ウエーネルト電極26−7の穴の面とカソードの光軸方向の距離が8個の突起すべてについてほぼ同一である必要があるので、支持電極25−7には、カソードの傾斜を調整する装置(不図示)を設けている。また、光軸方向の距離の絶対値を合わせるために、ウエーネルト電極26−7を光軸方向に移動させる装置(不図示)を設けている。
図42は、本発明に係る電子線装置の電子光学系70に適用可能な電子銃のさらに別の実施形態を説明するための図である。この実施形態の電子銃もまた、本発明に係る電子線装置の電子光学系70の電子銃として用いることができる。また、この実施形態は、マルチビームを放出するカソードの製造が容易となり、かつ、強度バラツキがないマルチビームを放出できるものである。図42は、この実施形態の電子銃のカソードのみを示しており、図42において、[A]はカソードの平面図、[B]は[A]の線B−Bの断面図である。図42の[A]において、21−7は単結晶Hf(ハフニウム)の円柱であり、端面の結晶方位が<100>のものを用意し、4mm直径の円周上に、図39の場合と同様に、8個の突起22−7を残すように表面を加工した。ただし、この場合、各突起22−7は、その頂上に図42の[B]に示すように、約30μm直径の平坦部を残し、また、約90°の頂角の円錐台形とした。平坦部は、突起の加工を行う前に端を鏡面研磨しておき、これにより、8個の平坦部はすべて同一平面形状に保たれている。なお、Hfの仕事関数は3.4eVと低いので、Taより低い温度で電子放出が可能である。
図42に示した構造のカソードを、図41に示した電子銃に組み入れ、支持電極25−7をX及びY軸方向に調整することにより、各穴の中心に突起の中心が来るように位置合わせされる。また、図41に関連して説明したように、支持電極25−7によりカソードの傾斜を調整し、また、光軸方向の距離の絶対値を合わせるために、ウエーネルト電極26−7を光軸方向に移動調整させる。
図39〜図42を参照して説明した2つの電子銃の実施形態においては、カソードに8個の突起を設けて8個の電子ビームを放出できるように構成されているが、8個に限らず任意数の突起を設けることが可能であることは言うまでもない。また、突起の先端の平面の大きさを上記した例に限定することなく、適宜の大きさに設定することができるが、直径が50μm以下、又は放射方向の幅が10μm以下で方位方向の幅が100μm以下に設定することが好ましい。
上記した電子銃においては、マルチビーム放出用カソードを加工が容易な単結晶のTaで形成した場合は、カソードの製造が容易となり、また単結晶のHfで形成した場合は、カソードの仕事関数を低くすることができ、単結晶を用いているので、材質のバラツキがなく、よってマルチビームの強度にバラツキが少ない。
これまで記載したマルチビーム放出用カソードの材料とその先端形状は、単一ビーム放出用のカソードにも適用可能である。
図43は、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系70の他の実施形態を、その制御装置であるCPU15−8とともに示している。この実施例においては、電子銃1−8のショットキーシールド1a−8内に、Zr−Wの熱電界放出カソード2−8が配置される。このカソード2−8は、先端をショットキーシールド1a−8から少し突出させることにより、先端から光軸に平行の電子線を放出する。本発明においては、カソード2−8をショットキーシールド1a−8からより多く下方へ出すことにより、カソード上部の<100>の4つの面からの電子線が放出されやすいようにする。
カソード上部の4つの面から放出される電子線は、加熱部に近いため、その輝度は、カソード先端から放出される電子線より大きい(強い)特徴を有する。カソード上部の4つの面びカソード先端から放出される5本の電子線をコンデンサレンズ3−8で集束させ、開口板5−8の開口5a−8においてクロスオーバーを結ばせる。コンデンサレンズ3−8の下方に隣接して、第1のマルチ開口板4−8を配置する。第1のマルチ開口板4−8は、図44に示すように、光軸を中心とする円周を4等分した位置に5μmφの小穴4a−8を有する。小穴4a−8は、カソード上部の4つの面から放出される4つの強い電子線をそれぞれ通過させる。第1のマルチ開口板4−8は、光軸上を進む電子線を遮断する。
第1のマルチ開口板4−8上の4個の小穴4a−8は、図44に示すように、隣接する小穴4a−8の間隔Dが等しく、X軸方向へ投影すると隣接する小穴4a−8の3つの間隔Lxは、同一であるように設定されている(図9の[A]の場合と同様)。4個の小穴4a−8を通過した電子線は、縮小レンズ6−8及び対物レンズ8−8で縮小される。それにより、例えば1/50の縮小率の場合は、100nmφの電子線がウエハWの表面で得られる。またウエハの表面上で100μmの間隔の電子線にしたい場合は、開口4−8の小穴4a−8のX軸方向への投影した小穴間隔Lxを5mmにすればよい。
この1/50の縮小率は、縮小レンズ6−8及び対物レンズ8−8の励起を僅かに変化させることにより、大きく変えることが可能である。一次電子線の照射によって発生した二次電子は、対物レンズ8−8で加速され、拡大レンズ10−8及び11−8により、検出用の第2マルチ開口板12−8の小穴に拡大結像される。
第2マルチ開口板12−8の近くへ来た二次電子は、検出器13−8に印加された高電圧が小穴から漏れることによる凸レンズ作用により、ほとんど全て小穴を通過し、4個の検出器13−8で検出され、画像形成装置14−8で画像化される。異なるチップの対応する場所の画像を比較することにより、欠陥検出等を行うことができる。
図43に示した電子線装置において、4つの一次電子の照射により発生される二次電子がクロストークしないためには、一次電子線の間隔D(図44)を、二次光学系のウエハ位置換算でのビームボケPと一次電子線の後方散乱電子の拡がりQの和(P+Q)より大きく取れば良い。和(P+Q)は、一次電子線のエネルギに依存して変化するから、高エネルギの一次電子線を入射させる場合は、一次電子線の間隔Dを大きくすることが必要である。このための調整は、CPU15−8の指令により、縮小レンズ6−8の励起を焦点距離が長くなる方へ調整して、縮小率を1に近づける方向へ調整すればよい。これらの調整パラメーターは、CPU15−8に付属するメモリに記憶させ、指示のため必要に応じて取出して使用される。
なお、縮小レンズの調整によりクロストークを防止することは、図43に示した電子線装置にかぎらず、本明細書において開示した他の実施形態の電子線装置の電子光学系及びそれらの変形例においても、適用可能である。
図45及び図46は、本発明に係る電子線装置を用いてウエハの画像情報を得る場合に、ウエハWの表面23−8より深い場所の情報が得られる原理を説明する図である。図45の右方部分に示すように、一次電子線24−8は、ウエハWの表面23−8の下方にタングステン等の異なる材質のパターン25−8がある場所を走査するときは、表面23−8への入射点から二次電子27−8を放出させると共に、パターン25−8により後方散乱された一次電子の反射電子27−8がウエハの表面へ出るときに二次電子26−8を発生させる。図45の左方部分に示すように、一次電子線21−8は、表面23−8の下方にパターン等のない位置を走査するときは、表面23−8から二次電子22−8を放出させる。
図46は、横軸に一次電子のエネルギを取り、縦軸に二次電子の発生量を示すグラフである。二次電子22−8又は27−8は、図46のグラフの左方部分にピーク値を有する強度分布を示し、一方、二次電子26−8は、右方部分にピーク値を有する強度分布を示す。したがって、二次電子22−8、27−8をオフセットとして除去すると、二次電子26−8、即ちウエハWの表面より下層の情報のみが得られる。
なお、ウエハの深部から放出される二次電子26−8は、一次電子線のエネルギがある程度以上でないと発生しないため、一次電子線のエネルギは、100kV程度に大きくすることが必要である。100kV程度のエネルギは、一次電子線がウエハの深部のパターンで反射し表面に戻ったときにまだエネルギを持っている値に相当する。深くない位置のパターン情報を得たい場合は、一次電子線のエネルギは、より小さいもので良い。またウエハの表面の評価を行う場合は、0.5keV程度が良い。即ち、表面からの深さに依存して一次電子のエネルギを0.5keVから100keVの範囲で適宜変えればよい。
図43〜図46を参照して説明した電子線装置においては、高スループットを実現することができるとともに、一次電子線のエネルギを目的に応じて設定することができるので、試料すなわちウエハの損傷を最小限とすることができる。
ところで、マルチビームを使用した従来の電子線装置の電子光学系では、マルチビームは、ウエハWに対して斜め方向から入射されてしまうため、各ビームにより生成されるビーム・スポットは、ビームの入射方向すなわちビームをウエハ上に投影した方向に長い楕円形状となり、したがって、長手方向の分解能が劣化してしまうという問題があった。また、ステージを連続移動させる電子線装置においては、ステージを定速度で移動しようとしても、速度にムラが生じてしまう。ステージ速度にムラが生じると、ウエハ面の位置に適切に対応する画素データを得ることができないため、適切な評価を行うことができなかった。さらに、ステージは金属部品等を通常含んでいるが、このようなステージが移動する際、電子光学系の偏向器が作る磁場との相互作用により、金属部品内に渦電流が生成され、その渦電流が磁場を発生するため、電子ビームの偏向方向を変化させてしまうという問題があった。
図47は、上記した従来例の問題点を解決することができる、本発明に係る電子線装置の実施形態を示している。この実施形態は、図8に示した電子線装置の電子光学系70に、レーザミラー20−9、レーザ干渉系21−9、偏向量補正回路22−9、及び二次電子偏向器23−9を付加し、二次光学系の拡大レンズ742を取り除いたものである。したがって、図8の電子線装置と同一の構成要素及び動作については説明を省略し、新たに追加された構成要素に関連する動作について説明する。
図47において、ウエハWを載置したステージ装置50のYテーブルがY軸方向に連続移動されると、該移動速度及び現在位置は、レーザミラー20−9及びレーザ干渉計21−9によって検出される。ステージ装置50は、その大部分がセラミックス等の絶縁材料で形成されるが、ベアリング等の金属部品や表面のコーティング等には金属材料が使われている。
一方、電磁偏向器を含むE×B偏向器725は、比較的大きい静磁場を発生させる。この静磁場はステージ装置50上まで広がっているので、Yテーブルが高速で移動すると渦電流が発生する。そして、その渦電流により磁場が生成され、その結果、一次電子線及び二次電子線が不所望に偏向されてしまう。一次電子線が不所望に偏向されると、該電子線が目的とした位置から外れた位置に照射されてしまい、また、二次電子線が不所望に偏向されると、二次電子線が第2のマルチ開口板743の小開口から効率的に引き抜かれなくなってしまうか、あるいは、隣の開口へ混入してしまう。
上記した渦電流によって生じる磁場による一次電子ビーム及び二次電子ビームの偏向を補正するために、ステージの移動速度と一次電子ビーム及び二次電子ビームそれぞれの偏向量との関係を、実機テストにより予め測定し、それらの関係を偏向量補正回路22−9中の補正偏向量テーブルに予め記憶している。偏向量補正回路22−9は、制御装置2(図1)の一部として設けられ、レーザ干渉計21−9で得られたYテーブルの移動速度に基づいて、補正偏向量テーブルから一次電子線及び二次電子線の補正すべき偏向量を検索し、これに対応して、静電偏向器725及び23−9を制御して、一次電子線及び二次電子線の偏向量を補正する。これにより、一次電子線及び二次電子線が本来の偏向値となるので、目的の照射位置及び検出位置に到達可能となる。
また、ステージ装置50のYテーブルが連続移動中で画像データを作成中に、偏向量補正回路22−9がステージ速度にムラがあることを検出すると、該回路は、それを位置変動に換算し、かつ位置変動を補正する。位置変動は、速度ムラを時間で積分することによって得られる。また、位置変動の補正は、位置変動量を偏向感度で割り算することによって得られた電圧を、その符号を反転させて、一次光学系中の静電偏向器(E×B偏向器725中及び727)、及び静電偏向器23−9に供給することによって、実行される。
なお、一次電子線の偏向量の補正のための静電偏向器は、縮小レンズ724より後方に位置するため、偏向量を変化させても縮小レンズ724迄の光路は変化せず、したがって、補正によって一次電子線の強度が変化することはない。同様に、二次電子線の偏向量の補正のための静電偏向器23−9は、二次光学系の拡大レンズ741より後方に位置するので、補正を行っても、二次電子線のボケが増加することはない。
図47に示した電子線装置においては、ステージの移動に伴う過電流による一次及び二次電子線の不所望の偏向を補正することができ、よって、試料の適切な位置に対応した画像データを得ることができる。また、ステージ速度にムラが生じても、補正を行うことができる。さらに、試料上に照射された一次電子線の間隔を、二次光学系の分解能よりも大きくなるように設定することにより、マルチビームを用いても、クロストークの発生を低減することができる。
図48は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示している。この実施形態は、図8に示した電子光学系70に、標準マーク49−10を用いてビーム径の調整を行う装置を追加したものである。したがって、図8の実施形態と同様な構成要素及び動作については、詳細な説明を省略する。
すなわち、従来例の電子線装置は、細かいパターンを検査したり、粗いパターンを検査したり、検査対象のパターン寸法が変化してもピクセル寸法を変えることがないため、検査対象によってはピクセル寸法が小さ過ぎて検査に長時間を要したり、逆にピクセル寸法が大き過ぎて解像度が十分得られないという欠点があった。さらに、従来例の電子線装置は、ビーム径を大きくする場合、ビームをわざとぼかしてビーム径を拡大していたため、ビーム径を大きくした際のビーム電流が大きくなる利点を全く利用しておらず、ビーム径を大きくした時のS/N比の損失が大きいという欠点があった。図48に示した電子線装置は、これらの問題点を解決することができるものである。
図48に示した電子線装置においては、検出器761で検出された信号は、画像処理部763で処理され、制御装置2(図1)内のCPU41−10の制御の下で画像記憶装置43−10に記憶される。そして、モニタ45−10に表示され、標準パターンあるいは異なるウエハの同じダイの画像データと比較することによって、欠陥検出等の評価がおこなわれる。
図8に示した電子線装置の電子光学系70に関連して述べたように、第1のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子線をウエハWの面上に合焦させ、該ウエハから放出された二次電子線を検出器761に結像させる際、一次光学系および二次光学系で生じる歪みや像面湾曲による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。また、複数の一次電子線の間隔と二次光学系との関係については、上記したように、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
図49は、ステージ装置50上に搭載された複数のパターンサイズの標準マーク49−10のレイアウトを示している。図において49−10aは0.05μmのL&Sパターン(line and space パターン)であり、449−10bは0.1μmのL&Sパターンである。このように被評価パターンの線幅に対応する標準マークがXYステージ上に何種類か設置されている。図49では、代表的に二種類の標準マークのみを示している。
検査等を行う前に、ステージ装置50のXYステージを移動させて、ウエハWの被検出パターンのサイズに合致する標準マーク49−10を選択して一次光学系の光軸に合わせ、そして、以下の手法によりビーム径を変更して、被検出パターンの寸法に応じた最適のビーム径またはビーム電流を選択する。
すなわち、電子銃721のウェーネルトに与えるバイアス電圧を変えることにより電子銃からのビーム輝度を変えることによって、ビーム径を変えることができる。ウェーネルトのバイアスを浅くすれば、電子銃の電流が増えて輝度が大きくなり、マルチビームの電流が大きくなる。マルチビームのビーム電流が大きくなると、空間電荷効果のためにビーム径は大きくなる。
また、ビーム径を変える他の方法として、ビーム縮小率を縮小レンズ724と対物レンズ726とをズームレンズとして動作させ、ビーム寸法を変化させることができる。この場合にも、ビーム電流を大きくするには縮小率を1に近づける方向に調整するため、ビーム径も大きくなる。しかし、この場合は、マルチビームのビーム間隔も同じ割合で変化するので、ビーム間隔を変えたくない場合は、ウェーネルトのバイアスを変える方法を採用するのが良い。
図50は、標準マーク49−10a、49−10bをマルチビームで走査した時の一つの検出器で検出される信号をモニタ45−10で観測した波形を示す。[a−1]〜[a−3]は、標準マーク49−10aをビーム寸法を種々変えて走査した時の信号を示し、[b−1]〜[b−3]は、標準マーク49−10bをビーム寸法を変えて走査した時の信号を示す。
[a−1]は、ビーム径を線幅よりも大きくした場合の信号であり、この場合はビーム電流が大きいにも拘わらず、線幅よりも大きい寸法のビームで走査しているため、信号のコントラストSはあまり大きくなく、しかも、ビーム電流が大きいために雑音Nは大きい値になっており、S/N比はほぼ3.4である。
[a−3]は、ビーム径が小さ過ぎる場合の信号であり、この場合は忠実な波形(矩形波に近い)が出ているが、ビーム電流が小さいため信号のコントラストSは大きくない。また、雑音Nはビーム電流が小さいことに対応して小さく、S/N比はほぼ6.25である。
[a−2]は、ビーム径が丁度良い場合で、この場合はビームのボケが妥当な値であリビーム電流も比較的大きく、また、大きいコントラストSの信号が得られおり、S/N比はほぼ12.3である。
[a−2]と[a−3]のどちらが良いかは、(コントラスト/雑音)比の大きい方を選べばよい。図示の例では、49−10aのマークの場合は、[a−2]のパターンが得られたビーム径を選択すればよい。
49−10bのマークでも同様の校正をおこない、この線幅に適したビーム寸法またはビーム径を選択する。図示の例では、[b−2]のパターンが得られたビーム径を選択すればよい。
このようにして、評価すべきパターン寸法に応じて、検出器で検出した二次電子信号のS/N比が最大となるようにビーム径またはビーム電流を選択すればよい。より具体的には、ピッチが異なる規則的な標準パターンがXYステージ上に配置されており、その規則的な標準パターンを走査した時の信号波形を記憶する装置を有し、その信号波形から信号の振幅(S)を算出する装置と、雑音の振幅(N)を算出する装置と、S/N比を算出する装置とを有し、ビーム径を複数種類設定し、それらのビーム径で評価すべきパターンの最小線幅の2倍のピッチを有する規則的なパターンを走査し、S/N比を算出してS/N比が最大となるビーム径を選択すれば、評価すべきパターンの全てに対して高S/N比の評価をおこなうことができる。
なお、規則的な標準パターンとして、XYステージ上のものを用いる代わりに、検査すべきウエハから標準的なパターンを探して用い、、それについて同様に(信号/雑音)比を調べてもよい。なお、上記本発明による方法はビームが必ずしもマルチビームである必要はなく、単一ビームを使用して走査する場合のパターン評価にも適用可能である。
図48〜図50を参照して説明した電子線装置においては、走査速度を大きくしても必要なS/N比を得ることができ、また、平均化処理を行わなくても、高いS/N比を得ることができる。また、被評価パターンに応じてS/N比が最大となるようにビーム径又はビーム電流を選択することができるので、被評価パターンの大きさに拘わらず、高分解能で高スループットを実現することができる。
図51は、本発明に係る電子線装置のさらに別の実施形態を示している。この電子線装置は、図8に示した実施形態の電子光学系を用い、そして、過多の電子線照射を防止するための装置を付加したものである。したがって、図8の実施形態と同一の構成要素及び動作については説明を省略し、新たに付加した装置についてのみ詳細に説明する。
図51において、26−11は、円周上の一次電子線の照射点から放出された二次電子のうち、直径上の2点のもので、ウエハW面に垂直方向に放出された二次電子の軌道を示す。これらの軌道が光軸と交わる位置に絞り28−11を設け、収差がウエハ面換算で一次電子線のビーム間隔の最小値より小さくなるようにした。また、図51において、730は、ウエハW上のパターンの電位を測定すための軸対称電極である。
一次電子線の照射量の制御について説明する。走査のフライバック時に偏向器35−11でマルチビームを偏向し、ブランキング用のナイフエッジ37−11でビームを遮断すると同時に、このナイフエッジに吸収される電流を電流計39−11で測定し、照射量算出回路41−11で単位面積当りの照射量を算出する。この値は、CPU43−11を通じて記憶装置45−11に記憶される。照射量算出回路41−11、CPU43−11、及び記憶装置45−11は、制御装置2(図1)に含まれている。
さらに、得られた単位面積当りの照射量があらかじめ決められた値、例えば2μc/cm以上になった場合、CPU43−11からの指令により、電子銃制御電源47−11を制御して、ウェーネルト電極721bに印加する電圧を下げ、これにより、ビーム電流を小さくして照射量を低下させる。また、制御が追いつかず、単位面積当りの照射量が、例えば3μc/cmを超えてしまった場合には、該当する照射領域に関する照射量データを出力装置49−11から出力するのみで、評価は続行する。この場合、図52の上方に示すように、ウエハ全面をCRTに表示し、照射量が過多の領域を色付けし、オペレータに対して表示する。さらに、単位面積当りの照射量がより大きい値、例えば5μc/cmを超えた場合は、評価を一旦停止する。
図52は、ウエハWへの照射量の測定を説明した図である。ウエハWは多数のチップ53−11に分割され、各チップは、ステージ連続移動方向(図示例ではY軸方向)に平行なストライプと呼ばれる領域55−11に分割され、ストライプ幅で移動しながら画像データを得る。ストライプの拡大図が図52の下方に示されている。ストライプ55−11内には、一次光学系で形成された9個のマルチビーム56−11がX軸方向に、例えば100μmで等間隔で配置されており、これらのビームをX軸方向に102μm幅の走査を行う(図中、58−11で示した範囲)。100μm両側の各1μm幅は、隣のビームあるいは隣のストライプとの重複する走査領域である。
画像データの取得中のある時間でみると、9本のマルチビーム56−11は、57−11で示された900μm×900μm角の領域にすべて入っている。この領域を単位面積とし、画像データの取得中に、単位面積当りのビーム電流が異常に大きくなったとき、57−11で示した900μm×900μmの単位面積当りのビーム電流が通常の大きさの何倍に大きくなったかを、出力装置49−11で出力する。
ビーム電流は、上述したように、走査のフライバッグ時にナイフエッジ37−11に吸収される電流を測定することによって実行される。該測定は、例えば、10μsの間ビームを走査して画像データを得た後、1μsの間電流を測定し、再び10μsの間画像データを得た後、1μsの間電流を測定するという具合に、周期的に画像データ取得と電流測定とを繰り返す。そして、測定した電流があらかじめ決めた値より高くなった時間のみ、これを異常電流として出力する。例えば、図52中、59−11で示したチップの黒く塗りつぶした領域の画像データを取得中に、ビーム電流が規定値を超えていれば、該当領域を色付けしてモニタに表示する。
上記したビーム電流の規定値は、実際の集積回路あるいはTEG(Test Element Group)において、照射量とゲート酸化膜の破壊との実験データに基づき、かつ十分な安全係数をかけた値として決定することができる。
また、単位面積当りのビーム電流が、規定値よりは低く設定される通常値から増加し始めた場合、図51の電子銃ウェーネルト電極721bに印加する電圧を増大し電子銃電流を小さくして、ビーム電流を下げるようにする。
上記した第7の実施形態の電子線装置においては、一次光学系のレンズ条件とは独立して二次光学系の合焦条件や拡大率を調整することができる。また、試料目への単位面積当たりの照射量に上限を設けているので、試料の性能や信頼性に影響を及ぼすことがない。さらに、簡単な操作でビーム電流を調整することができる。
図53は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示している。この電子線装置においては、図8に示した電子線装置において、対物レンズとウエハとの間に減速電界を印加する装置を付加するとともに、ウエハの放電を防止する装置を付加したものである。したがって、図8の電子線装置と同様な構成要素及び動作についてはその説明は省略し、追加した装置について、詳細に説明する。
なお、一般に、対物レンズとウエハとの間に減速電界を印加して一次電子線の色収差、球面収差を小さくすることを利用し、また二次電子を加速することにより、二次電子の検出効率を上げることが知られている。しかしながら、試料がウエハであり、かつ、ウエハにビアが形成されている場合には、注意を要する。すなわち、対物レンズとウエハとの間に大きな減速電界を印加し、且つ、一次電子線をある一定値以上流すと、ビアと対物レンズの間で放電が生じてしまい、ウエハに形成されたデバイスパターンを破損してしまう恐れがある。このような放電を起こしやすいウエハと起こしにくいウエハとがあり、それぞれのウエハにおける放電が生じる条件(減速電界電圧値および一次電子線量)は異なっている。
図53に示した電子線装置の電子光学系70においては、対物レンズ726は静電レンズとして構成され、該レンズののいずれかの電極には正の高電圧が印加されている。一方、ウエハWには負の高電圧が電圧源20−12によって印加されている。これにより、対物レンズ726とウエハウエハWとの間には、減速電界が形成される。
ウエハWがビア付きである場合、ビアに一次電子線が入射すると、ビアはタングステン等の高原子番号金属でできているので、多量の二次電子を放出することになる。また、ビアの近傍は、サブミクロン径の尖った金属パターンであるため、減速電界により局部的にさらに大きい電界が生じている。これらの理由で、ビア付きのウエハは放電が非常に起こりやすい状況にある。
しかしながら、このような条件がそろっても、直ちに放電が起こるわけではない。まず、電界の大きい部分の残留気体が局所的に発光する、コロナ放電が起こり、次いで火花放電という過渡状態を経て、アーク放電に移行する。本明細書では、このコロナ放電の時期から火花放電の始めにかけてを「放電の前駆現象」と呼ぶ。この放電の前駆現象の時期で、ビーム電流を下げて一次電子線を一定量以下にするか、または、対物レンズ726とウエハWとの間の減速電界電圧を下げることにより、あるいは、これら双方の処置を行うことにより、アーク放電に至ることは避けられ、ウエハの破壊も防止できることが判明した。
また、放電を起こしやすいウエハと起こしにくいウエハとでは、どの程度の減速電界電圧および一次電子線量の場合に放電を起こさないかが異なるため、これらの値を低レベルに固定することなく、ウエハそれぞれについて、放電を起こさないための限界値を知ることが望ましい。
図53に示した電子線装置においては、ウエハWと対物レンズ726との間の放電あるいは放電の前駆現象を検出して信号を発生するための検出器として、光電子増倍管(PMT)19−12およびウエハ電流計21−12が設けられている。PMT19−12はコロナ放電およびアーク放電の発光を検出し、ウエハ電流計21−12はコロナ放電時およびアーク放電時の異常な電流を検出することができる。
放電前駆現象時に、PMT19−12がコロナ放電の発光を検出するか、ウエハ電流計21−12が異常な電流を検出すると、これらの情報は、制御装置2(図1)中のCPU22−12に入力される。このときの減速電界の電圧および電子銃1のビーム電流値(一次電子線量に対応)が、放電を起こさない条件を判断する基礎データとなる。CPU22−12は、発光または異常電流あるいはこれらの双方を示す入力に応答して、放電が生じないよう、減速電界の電圧20−12を下げるか、電子銃721にフィードバック信号を送ることにより、ビーム電流を下げて一次電子線を一定量以下にするなどの制御を行う。CPU22−21は、これらの制御の双方を行ってもよい。
PMT19−12およびウエハ電流計21−12は、双方が使用されることが好ましいが、その一方を省略することもできる。
図54は、一枚のウエハW上におけるデバイスの配置を示す。円形のウエハWから複数の長方形チップ31−12を取るのであるが、符号32−12、33−12で示すように、完全な1チップ分に満たない欠損チップが周辺の領域に存在する。これらの欠損チップ領域についてもまた、通常のリソグラフィを行い、各種プロセスも完全チップ31−12の領域と同様の処理が行われる。一方、これらの欠損チップは、製品として用いられることはないので、この領域が破壊されても問題はない。そこで、これらの欠損チップ32−12、33−12の領域を用いて、放電の前駆現象を検出するだけにとどまらず、破壊をおそれずに放電現象の検出まで行うようにすれば、放電を起さない条件をより正確に判断することができる。この場合、PMT19−12はアーク放電の発光を検出し、ウエハ電流計21−12はアーク放電時の異常電流を検出してCPU22−12に信号を送ることになる。これにより、CPU22−12は、放電を生じない限界値としての減速電界の電圧値およびビーム電流値(一次電子線量に対応)を正確に指示することができる。
図53及び図54を参照して説明した電子線装置においては、試料の放電特性に応じて放電を起こさない限界条件を設定することができるので、試料を破損から防止することができる。
図55は、本発明に係る電子線装置のさらに他の実施形態を示している。この実施形態においては、図43に示した電子線装置に、エネルギフィルタ装置を付加したものである。したがって、図43の装置と同様の構成要素及び動作については、その説明を省略し、追加の装置に関連する事項ついてのみ、詳細に説明する。
図55に示した電子線装置の電子光学系70において、4本の一次電子線で照射されたウエハWの表面の4個所から放出された二次電子は、対物レンズ8−8を構成する1つの電極17−8に印加される正電圧によって引き出される。電極17−8のウエハW側に軸対称に配置された電極18−8にはウエハWより低い電圧が印加され、引き出される二次電子にフィルタがかけられる。即ち、二次電子は、エネルギフィルタとして動作する電極18−8が作る軸上のポテンシャルの障壁を越えられるか否かにより、対物レンズ8−8を通過するかウエハW側へ戻されるかが決まる。
ウエハWの表面から放出される二次電子は、低電圧を持つパターンから放出されるものは、電極18−8の作る障壁を通過するが、高電圧を持つパターンから放出されるものは、電極18−8を通過できない。この違いにより、一次電子ビームが照射するウエハ上のパターンの電位が測定できる。
また、電子線照射によって電荷を付与する代わりに、電源19−8によってコネクタ20−8を通じてウエハWに所定の電圧を印加し、ウエハWの配線パターンの電圧又は電流を測定することにより、配線パターンの断線、短絡を判定することができる。この場合は、電荷を付与する時間を省略することができるので、高スループットを得ることができる。
図55に示した電子線装置においては、試料であるウエハの配線パターンに対する電位を、コネクタから与えるか電子線から与えるかを選択することができるので、測定の自由度が増大する。また、エネルギーフィルタ(すなわち電極18−8)が軸対称電極であり、光軸付近に大きい穴があるので、一次電子ビームを走査したとき、メッシュ電極を用いた場合の如き歪やボケの収差が生じない。
図56は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示している。この実施形態においては、図8に示した電子線装置に、二次光学系の2つの拡大レンズ741、742の間に、静電偏向器21−14を設け、かつ該静電偏向器21−14により、該拡大レンズ742での軸合わせを行うことができるようにしたものである。
この図56に示した電子線装置に関連して、ウエハWの欠陥検査の処理について説明する。なお、以下に説明する本発明に係る欠陥検査処理は、本発明に係る任意の実施形態の電子光学系を用いた電子線装置においても適用可能であることは、言うまでもない。
まず、本発明にかかる欠陥検査処理を説明する前に、従来の欠陥検査処理を説明する。従来は、以下の方法が主流であった。
設計上同じダイが多数形成されたウエハにおいて、ダイ同士の二次電子画像を比較する。例えば、1番目に検出されたダイの二次電子画像及び2番目に検出された他のダイの二次電子画像が類似していない場合(即ち、二次電子画像同士の差分が基準値より大きい)、3番目に検出された別のダイの画像が1番目の画像と同じか又は類似(即ち、二次電子画像同士の差分が基準値より小さい)と判断されれば、2番目のダイが欠陥を有すると判定される。
同様の方法を、2以上のチップが形成されたマスク又はウエハにも適用することができる。この場合、これらチップで対応する同一箇所同士の二次電子画像を比較する。一方のチップと他方のチップとを比較して、同一箇所同士に差があれば、のいずれか一方に欠陥があると判定できる。また、残りのチップの同一箇所との比較で、最終的に、いずれのチップに欠陥があるかを高い確率で判定できる。
しかしながら、上記従来の欠陥検査装置では対応できない被検査対象が以下の通りに幾つか存在する。
(i) マスクを検査対象とする場合、同一基板に2以上のチップが形成されたマスクでないと、欠陥の検査ができない。その一方で、そのような2個取りマスクは今後減少する傾向にある。
(ii) マスクからウエハへの転写時の近接効果の補正状況が適切であったか否かを検査したいとき、欠陥を検出することが困難となる。近接するダイ同士では、不適切な補正効果の場合でも同様な歪が再現性良く出てしまい、ダイ対ダイの相対比較では、欠陥の有無を判定できないからである。
(iii) マスクからウエハへの転写装置に固有の問題点の有無、例えば、ストライプつなぎが常にオーバーラップするとか、主視野間のつなぎに回転誤差が残っているとかの再現性のある問題点の有無を除去したいとき、このような欠陥を検出することが困難となる。(ii)の問題点と同様の理由からである。
本発明に係る欠陥検査所においては、以下に説明するように、理論上同一形態の異なる箇所同士の相対比較による欠陥検査を実行可能な欠陥検査方法及び装置において、このような相対比較では欠陥検査が不可能若しくは困難となるような被検査領域対象も欠陥検査できる。
図56において、画像処理部763は、先に説明したように、検出器761からの電気信号に基づいて、ウエハW表面のパターン画像を生成するが、生成されたパターン画像は、欠陥検出部50−14に供給される。欠陥検出部50−14の機能ブロックを図57に示す。図57に示すように、欠陥検出部50−14は、各構成要素を制御・管理して、ウエハWの欠陥を判定する制御回路51−14と、二次電子パターン画像に基づく比較処理を実行するパターン画像比較回路52−14と、二次電子パターン画像を記憶するパターン画像メモリ53−14と、ウエハWに形成されたパターンの理論的データであるパターンデータを記憶するパターンデータメモリ54−14と、このパターンデータに基づいて、実際の二次電子パターン画像と比較されるべき理論的パターン画像を形成する理論的パターン画像形成回路55−14とを含む。
パターン画像比較回路52−14は、ウエハWにおいて設計上同一である箇所(例えば、ウエハの場合のダイ)の二次電子パターン画像同士を比較する第1のモード、並びに、ウエハWの特定箇所の実際の二次電子パターン画像と、当該箇所に相当する理論的パターン画像とを比較する第2のモードを有する。パターン画像比較回路52−14は、比較した両画像の差異を表す差分データ59−14を制御回路51−14に出力する。この差分データ59−14の値が小さいほど、比較した両画像が類似していることになるので、制御回路51−14は、この差分データ59−14によって両画像の一致、不一致を判定することができる。なお、パターン画像比較回路52−14が用いる二次電子パターン画像は、画像処理部14−14から直接送られてきたものでも、パターン画像メモリ53−14に記憶されているもののいずれでもよく、任意好適に切り替えることができる。
制御回路51−14には、比較判定結果等を表示するための表示部57−14が接続されている。表示部57−14は、CRTや液晶ディスプレイ等で構成することができ、欠陥パターン58−14、二次電子パターン画像、欠陥箇所の数などを表示することができる。
パターンデータメモリ54−14に記憶されたパターンデータは、例えばマスクパターン情報等であり、外部に設置された入力部56−14から得られる。この入力部56−14は、オペレータの指令を欠陥検出部50−14に入力したり、パターンデータを作成可能なソフトがインストールされたコンピュータ等で実現することができる。
次に、欠陥検出の処理の流れを図58のフローチャートに従って説明する。最初に、ウエハWのある被検査箇所の二次電子画像パターンが取得される(ステップS300)。この工程の詳細は後述する。次に、ウエハWがウエハ及びマスクのいずれであるかが判定される(ステップS302)。ウエハである場合、当該被検査箇所が、マスクからウエハへの転写時に転写光学系の歪、或いは、パターン形成時のチャージアップに起因して(第1の要因)パターン形成の歪が発生する可能性の高い箇所であるか否かが判定される(ステップS304)。このような箇所は、制御回路51−14のメモリに予めマップされているか、或いは入力部56−14からの情報から得られる。
当該被検査箇所が、上記第1の要因でパターン形成の歪が発生する可能性の高い箇所である場合(ステップS304の肯定判定)、パターン画像比較回路52において、当該被検査箇所の二次電子画像パターンと、当該箇所に相当する理論的パターンとの比較演算(第2モード)が実行される(ステップS310)。比較演算後、両パターンの差分データ59−14が制御回路51−14に出力される。
当該被検査箇所が、上記第1の要因でパターン形成の歪が発生する可能性の高い箇所でない場合(ステップS304否定判定)、次の判定ステップS306に移行する。この工程では、当該被検査箇所が、マスクからウエハへの転写時の近接効果若しくは近接効果の補正が正しくないことに因るパターン形成の歪、或いは、ストライプつなぎ不良若しくは視野つなぎ不良(第2の要因)が発生する可能性の高い箇所であるか否かが判定される(ステップS306)。
当該被検査箇所が、上記第2の要因でパターン形成の歪が発生する可能性の高い箇所である場合(ステップS306肯定判定)、同様にして、パターン画像比較回路52−14において、当該被検査箇所の二次電子画像パターンと、当該箇所に相当する理論的パターンとの比較演算(第2モード)が実行される(ステップS310)。
当該被検査箇所が、上記第1及び第2の要因のいずれによるパターン形成の歪も発生する可能性が高くない箇所である場合(ステップS306否定判定)、理論上同一箇所同士の比較演算(第1モード)が実行される(ステップS312)。これは、前述したように、当該被検査箇所の二次電子画像パターンと、該箇所とは異なる領域であるが、理論上同じパターンが形成された箇所の二次電子画像パターンとを比較し、両者の差分データを出力する工程である。ウエハの場合、主としてダイ対ダイの比較となる場合が多い。
一方、ステップS302でウエハWがマスクであると判定された場合、このマスクが、2個以上の同一チップが形成された2個取りマスクであるか否かが判定される(ステップS308)。2個取りマスクの場合(ステップS308での肯定判定)、2個以上の同形式チップに亘って理論上同一箇所同士の比較が行われる(ステップS312)。2個取りマスクでない場合(ステップS308での否定判定)、理論的パターン画像との比較が実行される(ステップS310)。
以上のような比較演算の後、制御回路51−14が、演算された差分データ59−14に基づいて欠陥の有無を判定する(ステップS314)。理論的パターン画像との比較の場合、差分データ59−14の値が所定の閾値以内に収まっている場合、「欠陥無し」と判定し、閾値を超えている場合、「欠陥有り」と判定する。
理論上同一箇所同士の比較の場合の判定方法は、以下の通りとなる。例えば、図59も[A]には、1番目に検出されたダイの画像31−14及び2番目に検出された他のダイの画像32−14が示されている。ダイ画像31−14とダイ画像32−14と非類似であり(即ち差分データ値が閾値を超える)、3番目に検出された別のダイの画像が1番目の画像31−14と同じか又は類似と判断されれば(即ち差分データ値が閾値以下)、2番目のダイ画像32−14が欠陥を有すると判定される。更に詳細な比較照合アルゴリズムを用いれば、2番目のダイ画像32−14の欠陥部分33−14を検出することも可能である。
欠陥判定の結果、欠陥有りと判定された場合(ステップS316肯定判定)、表示部57−14に、欠陥に関する情報を表示する(ステップS318)。例えば、欠陥の有無、欠陥数及び欠陥箇所に関する情報(位置)などがある。また、例えば図59の[A]の2番目のダイ画像32−14などの欠陥パターン画像を表示してもよい。この場合、欠陥部分をマーキング表示してもよい。
次に、ウエハWの全被検査領域について検査終了したか否かが判定される(ステップS320)。検査が終了していない場合(ステップS320否定判定)、ステップS300に戻り、残りの被検査領域について同様の処理を繰り返す。検査が終了した場合(ステップS320肯定判定)、本欠陥検査処理を終了する。
以上のように、本実施形態では、ウエハの欠陥検査を行う場合、先ず、ダイ対ダイで比較検査を行い(ステップS312)、このような比較検査ではダイ間で同様に欠陥が発生することに起因して欠陥が検出できないような箇所を、理論的パターン画像と比較する(ステップS310)。このような欠陥は、当該歪領域における全てのダイで再現性良く発生するので、ステップS310において、当該歪領域について1ダイ分、欠陥検出するだけで十分である。図58のフローチャートでは、このように再現性のある欠陥が発生する箇所をステップS304及び306で判定している。
更に、本実施形態では、マスクに関しても、2個取りマスクであるか否かに関わりなく欠陥検出を実現することができる。
図58のステップS300の二次電子取得プロセスは、図8の第1の実施形態に関連して説明した通りであるので、説明を省略する。
欠陥検出部50−14は、以下のような欠陥検査を行うこともできる。
図59の[B]には、ウエハ上に形成されたパターンの線幅を測定する例が示されている。ウエハ上の実際のパターン34−14を35−14の方向に走査したときの実際の二次電子の強度信号が36−14であり、この信号が予め較正して定められたスレッシホールドレベル(しきい値)37−14を連続的に超える部分の幅38−14をパターン34−14の線幅として測定することができる。このように測定された線幅が所定の範囲内にない場合、当該パターンが欠陥を有すると判定することができる。
図59の[C]の線幅測定法は、ウエハWが複数の層から形成されているときの各層間の合わせ精度の測定にも応用することができる。例えば、一層目のリソグラフィで形成される第1のアライメント用パターンの近傍に、2層目のリソグラフィで形成される第2のアライメント用パターンを予め形成しておく。これらの2本のパターン間隔を図59の[B]の方法を応用して測定し、その測定値を設計値と比較することにより、2層間の合わせ精度を決定することができる。勿論、3層以上の場合にも適用することができる。この場合、第1及び第2のアライメント用パターンの間隔を、電子光学系70の複数の一次電子線の隣接するビーム間間隔とほぼ等しい間隔に取っておけば、最小の走査量で合わせ精度を測定できる。
図59の[C]には、ウエハ上に形成されたパターンの電位コントラストを測定する例が示されている。図56に示した電子光学系70において、対物レンズ726とウエハWとの間に軸対称の電極430を設け、例えばウエハの電位0Vに対して電極730に−10Vの電位を印加しておく。このときの−2Vの等電位面は、図59の(c)の40−14で示されるような形状とする。ここで、ウエハに形成されたパターン41−14及び42−14は、夫々−4Vと0Vの電位であるとする。この場合、パターン41−14から放出された二次電子は−2V等電位面40−14で2eVの運動エネルギーに相当する上向きの速度を持っているので、このポテンシャル障壁40−14を越え、軌道43−14に示すように電極730から脱出し、検出器761で検出される。一方、パターン42−14から放出された二次電子は−2Vの電位障壁を越えられず、軌道44−14に示すようにウエハ面に追い戻されるので、検出されない。従って、パターン41−14の検出画像は明るく、パターン42−14の検出画像は暗くなる。かくして、ウエハWの被検査領域の電位コントラストが得られる。検出画像の明るさと電位とを予め較正しておけば、検出画像からパターンの電位を測定することができる。そして、この電位分布を評価することにより、パターンの欠陥部分を検出することができる。
図56において、ブランキング偏向器17−14を設け、この偏向器によって一次電子線をクロスオーバーP1近傍に設けられたナイフエッジ状ビームストッパー(図示せず)に所定周期で偏向させ、当該ビームを短時間のみ通して他の時間は遮断することを繰り返すことによって、短いパルス幅のビーム束を作ることが可能となる。このような短パルス幅ビームを用いて上記したようなウエハ上の電位測定等を行えば、高時間分解能でデバイス動作を解析可能となる。即ち、本欠陥検査を、いわゆるEBテスタとして使用することができる。
上記したように、試料における理論上同一形態の異なる箇所同士の画像を交互に比較するか、または、論理的な標準の画像と実施に得られた画像とを比較するかののいずれかを実行することができるので、再現性のある欠陥か否かに拘わらず、高精度及び高スループットで検査することができる。また、再現性のある欠陥と無い欠陥とを同一の装置で検査することができるので、クリーンルームのフットプリントを小さくすることができる。
図60〜図66を参照して、欠陥検査処理時に、一次電子線をウエハ表面の被検査領城を走査して取得した二次電子線の画像と、予め用意された基準画像との間に位置ずれが発生した場合でも、欠陥検出の精度の低下を防止するための処理について説明する。なお、このような位置ずれは、一次電子線の照射領域がウエハWに対してずれ、検査パターンの一部が二次電子線の検出画像内から欠落するとき、特に大きな問題となり、単にマッチング領域を検出画像内で最適化する技術だけでは、対処できない。そして、これは、特に、高精細パターンの検査では致命的欠点となる。
図60において、図8に示した電子線装置におけるマルチビーム型の電子光学系70を用いた場合の欠陥検出装置について示している。この欠陥検査装置は、一次電子線を放出する電子銃1−15、放出された一次電子線を偏向、成形させる静電レンズ2−15、成形された一次電子線を電場E及び磁場Bの直交する場を通しウエハWに略垂直に当たるようさせるE×B偏向器3−15、一次電子線をウエハW上に結像させる対物レンズ10−15、ウエハWを載置した状態で水平面内を移動可能なステージ装置50、一次電子線の照射によりウエハWから放出された二次電子線を拡大する静電レンズ6−15、拡大された像をウエハWの二次電子画像として検出する検出器7−15、及び、装置全体を制御すると共に、検出器7により検出された二次電子信号から画像を形成し、該画像に基づいてウエハWの欠陥を検出する処理を実行する制御部16−15を含んで構成される。制御部16−15は、制御装置2(図1)に含まれている。上記電子画像には、二次電子だけでなく散乱電子や反射電子による画像も取得できるが、ここでは二次電子画像を選択した場合を述べている。
また、対物レンズ10−15とウエハWとの間には、軸対象電極12−15が介在されている。この軸対象電極12−15には、二次電子のフィルタ作用を制御する制御電源が接続されている。
検出器7−15は、静電レンズ6−15によって拡大された二次電子線を後処理可能な信号に変換することができる限り、任意の構成とすることができる。
制御部6−15は、図60に示したように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体14−15と、本体14−15の処理結果を表示するモニタ15−15と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部18−15とを備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどによって制御部16−15を構成してもよい。
制御部本体14−15は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器7−15から受信した電気信号即ちウエハWの二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域8−15が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウエハWの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部13−15が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域8−15から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウエハWの欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム9−15が格納されている。この欠陥検出プログラム9−15は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部13−15から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、モニタ15−15に二次電子画像17−15を表示することにより警報してもよい。
欠陥検査処理において、先ず、図61のメインルーチンの流れに示すように、検査対象となるウエハWをステージ装置50の上にセットする(ステップS400)。これは、図1に示したように、ローダに多数格納されたウエハWを、一枚毎に自動的にステージ装置50にセットする形態であってもよい。
次に、ウエハW表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップS404)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図62に示すように、例えばウエハWの検査表面34−15上に、参照番号32−15a、32−15b、...32−15k、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウエハの検査パターン30−15の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図63に示されたように、25個の被検査領域の画像32−15(被検査画像)が取得されたとする。図63に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウエハ上のパターンの画像部分に相当する。このステップS404の詳細は、図64のフローチャートで後述する。
次に、ステップS404で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部13−15に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図61のステップS408)、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハWの検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図65のフローチャートで後述する。
ステップS408の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハの検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップS412の肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップS418)。警告の方法として、例えば、モニタ15−15に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像17−15を表示してもよい。このような欠陥ウエハを直ちにウエハ室から取り出し、欠陥の無いウエハWとは別の保管場所に格納してもよい(ステップS419)。
ステップS408の比較処理の結果、ウエハWに欠陥が無いと判定された場合(ステップS412での否定判定)、現在検査対象となっているウエハWについて、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップS414)。検査すべき領域が残っている場合(ステップS414肯定判定)、ステージ50駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウエハWを移動させる(ステップS416)。その後、ステップS404に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
検査すべき領域が残っていない場合(ステップS414での否定判定)、或いは、欠陥ウエハの抜き取り工程(ステップS419)の後、現在検査対象となっているウエハWが、最終のウエハであるか否か、即ちローダに未検査のウエハが残っていないか否かが判定される(ステップS420)。最終のウエハでない場合(ステップS420での否定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウエハをステージ装置50にセットする(ステップS422)。その後、ステップS404に戻って当該ウエハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウエハであった場合(ステップS420肯定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
次に、ステップS404の処理の流れを、図64のフローチャートに従って説明する。図64では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップS430)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(X,Y)を決定する(ステップS432)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X,Y)となり、これは例えば図62に示された被検査領域32aの中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部16−15のハードディスク上に記憶され、ステップS432で読み出される。
次に、図60の偏向電極13−15を通過する一次電子線がステップS432で決定された画像位置(X,Y)の被検査画像領域に照射されるように、制御器16−15が偏向電極19−15及び3−15に電位を加える(図64のステップS434)。そして、電子銃1−15から一次電子線を放出し、静電レンズ2−15、E×B偏向器3−15、対物レンズ10−15を通して、セットされたウエハWの表面に照射する(ステップS436)。このとき、一次電子線は、偏向電極19−15及び3−15の作り出す電場によって偏向され、ウエハWの検査表面34−15(図62)上の画像位置(X,Y)の被検査画像領域全体に亘って照射される。画像番号i=1の場合、被検査領域は32a−15となる。
一次電子線が照射された被検査領域からは二次電子及び/又は反射電子(以下、「二次電子」のみ称する)が放出される。そこで、発生した二次電子線を拡大投影系の静電レンズ6−15により所定の倍率で検出器7−15に結像させる。検出器7−15は、結像された二次電子線を検出し、検出素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換出力する(ステップS438)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域8−15に転送する(ステップS440)。
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップS442)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップS444)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図63の上述した例では、「25」である。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップS444での否定判定)、再びステップS332に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(X,Y)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔX,ΔY)だけ移動させた位置である。図62の例では、被検査領域は、(X,Y)からY方向にのみ移動した位置(X,Y)となり、破線で示した矩形領域32b−15となる。なお、(ΔX,ΔY)(i=1,2,... MAX)の値は、ウエハWの検査面34−15のパターン30−15が検出器7−15の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
そして、ステップS432〜442の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図62に示すように、k回移動した画像位置(X,Y)では被検査画像領域32k−15となるように、検査面34−15上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図63に例示した25個の被検査画像データが画像記憶領域8−15に取得される。取得した複数の被検査領域の画像32−15(被検査画像)は、図63に例示したように、ウエハWの検査面34−15上のパターン30−15の画像30a−15を部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップS444の肯定判定)、このサブルーチンからリターンして図61のメインルーチンの比較工程(ステップS408)に移行する。
なお、ステップS440でメモリ転送された画像データは、検出器7−15により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図61のステップS408)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域8−15に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なベタデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる二次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施形態でいう画像データとは、単なるベタデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
次に、ステップS408の処理の流れを、図65のフローチャートに従って説明する。先ず、制御部16−15のCPUは、基準画像記憶部13−15から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップS450)。この基準画像は、図63では参照番号36−15で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップS452)、記憶領域8−15から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップS454)。
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Dを算出する(ステップS456)。この距離値Dは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Dとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
次に、算出した距離値Dが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップS458)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。距離値Dが所定の閾値Thより小さい場合(ステップS458での肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−15には「欠陥無し」と判定し(ステップS460)、本サブルーチンからリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図63の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
距離値Dが所定の閾値Th以上の場合(ステップS458での否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップS462)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップS464)。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップS464否定判定)、再びステップS354に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。一方、画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップS464肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−15には「欠陥有り」と判定し(ステップS466)、本サブルーチンからリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
図60においては、第1の実施形態の電子光学系を用いて欠陥検査を行う例を示しているが、走査型の第1の実施形態のみならず、写像型の他の実施形態の電子線装置も利用可能であることは言うまでもない。この場合、図64のステップS432の画像位置(X,Y)は、マルチビームを走査して得られる複数のライン画像を合成した二次元画像の中心位置に対応する。この画像位置(X,Y)は、後の工程で順次変更されるが、これは、例えば偏向器727(図8)のオフセット電圧を変更することによって行う。偏向器727は、設定されたオフセット電圧の回りに電圧を変化させることによって、通常のライン走査を行う。勿論、偏向器727とは別体の偏向装置を設け、これにより画像位置(X,Y)の変更を行ってもよい。
上記したように、試料上で部分的に重なり合いながら相互に変位された複数の検査領域の画像を取得し、これらの画像を基準の画像と比較することによって欠陥を検出するので、被検査画像と基準画像との位置による検査精度の低下を防止することができる。
検査されるウエハは、図1に関連して説明したように、大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密のXYステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、図66の手順に従って欠陥検査等が行われる。図66に示すように、まず、光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や各場所の高さ検出が行われ、データが記憶される。光学顕微鏡は、この他に欠陥等を監視したい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次にウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行ないながら、リアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じて、検査結果をCRT等に出力したり、又は記憶装置に格納する。欠陥には、パーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を、自動的にリアルタイムで行うこともできる。電気的欠陥の検出は、コントラスト異状を検出することで達成される。例えば、導通不良の場所に電子線照射(500eV程度)すると、通常正に帯電し、コントラストが低下するので、正常な場所と区別ができる。この場合の電子照射装置とは、通常、検査用の電子線照射装置以外に、電位差によるコントラストを際立たせるために別途設けた、低電位のエネルギの電子線発生装置(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位エネルギの電子線を発生し照射している。検査用の電子線を照射すること自体で正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、使用によっては、低電位の電子線発生装置を別途設ける必要はない場合もある。また、ウエハに、基準電位に対して正又は負の電位を印加すること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから、欠陥検出ができる。線幅測定装置及び合わせ制度装置にも利用できる。
なお、電子光学系70が作動すると、近接相互作用(表面近くでの粒子の帯電)により、標的物質が浮遊して高圧領域に引きつけられるので、電子ビームの形成や偏向に使用される様々幅極には有機物質が堆積する。このように表面の帯電により徐々に堆積していく絶縁体は、電子ビームの形成や偏向機構に悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁体の周期的な除去は、絶縁体の堆積する領域の近傍の電極を利用して、真空中で水素や酸素あるいはフッ素、及びそれらを含む化合物HF、O、HO、Cなどのプラズマを作り出し、空間内のプラズマ電位を電極面にスパッタが生じる電位(数kV、例えば20V〜5kV)に維持することにより、有機物質のみを酸化、水素化、フッ素化により除去することができる。
次に、本発明の電子線装置用いてプロセス途中又はプロセス後に半導体ウエハを評価する工程を含んだ半導体デバイスの製造方法について説明する。
図67に示すように、半導体デバイス製造方法は、概略的に分けると、ウエハを製造するウエハ製造工程S501、ウエハに必要な加工処理を行うウエハ・プロセッシング工程S502、露光に必要なマスクを製造するマスク製造工程S503、ウエハ上に形成されたチップを1個づつに切り出し、動作可能な状態にするチップ組立工程S504、及び完成したチップを検査するチップ検査工程S505によって構成されている。各工程はそれぞれ、幾つかのサブ工程を含んでいる。
上記各工程の中で、半導体デバイスの製造に決定的な影響を及ぼす工程は、ウエハ・プロセッシング工程S502である。なぜなら、この工程において、ウエハ上に設計された回路パターンが形成され、かつ、メモリやMPUとして動作するチップが多数形成されるからである。
このように半導体デバイスの製造に影響を及ぼすウエハ・プロセッシング工程のサブ工程において実行されたウエハの加工状態を評価することが重要であり、該サブ工程について、以下に説明する。
まず、絶縁層となる誘電体薄膜を形成するとともに、配線部及び電極部を形成する金属薄膜を形成する。薄膜は、CVDやスパッタリング等により形成される。次いで、形成された誘電体薄膜及び金属薄膜、並びにウエハ基板を酸化し、かつ、マスク製造工程S503によって作成されたマスク又はレチクルを用いて、リソグラフィ工程において、レジスト・パターンを形成する。そして、ドライ・エッチング技術等により、レジスト・パターンに従って基板を加工し、イオン及び不純物を注入する。その後、レジスト層を剥離し、ウエハを検査する。
このようなウエハ・プロセッシング工程は、必要な層数だけ繰り返し行われ、チップ組立工程S504においてチップ毎に分離される前のウエハが形成される。
図68は、図67のウエハ・プロセッシング工程のサブ工程であるリソグラフィ工程を示すフローチャートである。図69に示したように、リソグラフィ工程は、レジスト塗布工程S521、露光工程S522、現像工程S523、及びアニール工程S524を含んでいる。
レジスト塗布工程S521において、CVDやスパッタリングを用いて回路パターンが形成されたウエハ上にレジストを塗布し、露光工程S522において、塗布されたレジストを露光する。そして、現像工程S523において、露光されたレジストを現像してレジスト・パターンを得、アニール工程S524において、現像されたレジスト・パターンをアニールして安定化させる。これら工程S521〜S524は、必要な層数だけ繰り返し実行される。
このような半導体デバイスの製造工程において、検査が必要な処理工程後に欠陥等の検査を行うが、一般に、電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えば、エッチング、成膜(銅メッキを含む)、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用することが好適である。
このように、本発明による処理が高スループットであるマルチビームの電子線装置を用いて、検査が必要な各工程が終了後に欠陥等の検査を行いつつ半導体デバイスを製造するので、半導体デバイスそのものの製造も、高スループットで行うことができる。したがって、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る評価システムの主要構成要素を示す立面図である。
図2は、図1に示した評価システムの主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。
図3は、ウエハ搬送箱とローダーとの関係を示す図である。
図4は、図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、図1の線C−Cに沿って見た図である。
図5は、図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。
図6は、ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図であり、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。
図7の[A]及び[B]はそれぞれ、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
図8は、図1に示した評価システムに適用可能な本発明に係る電子線装置の一実施形態を示す概略図である。
図9の[A]及び[B]はそれぞれ、図8に示した電子線装置の一次光学系及び二次光学系に使用されているマルチ開口板の開口の位置関係、及び一次電子線の走査方式を示す図である。
図10の[A]及び[B]はそれぞれ、本発明に係る電子線装置に適用可能なE×B分離器の実施形態を示す図である。
図11は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電位印加機構を示す図である。
図12は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子ビームキャリブレーション機構を説明する図であって、[A]は側面図であり、[B]は平面図である。
図13は、本発明に係る電子線装置に適用可能なウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。
図14は、従来例の電子線装置におけるXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図15は、図14に示したXYステージの底部の状態を示す図である。
図16は、本発明に係る電子線装置に適用可能な一実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図17は、本発明に係る電子線装置に適用可能な別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図18は、本発明に係る電子線装置に適用可能なさらに別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図19は、本発明に係る電子線装置に適用可能な他の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図20は、本発明に係る電子線装置に適用可能なさらに他の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図21は、本発明に係る電子線装置に適用可能な別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。
図22は、図21に示した実施形態に設けられる作動排出機構を示す図である。
図23は、図21に示した実施形態に設けられるガスの循環配管機構を示す図である。
図24は、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系の一実施形態を示す概略図である。
図25は、本発明に係る電子線装置の電子光学系において用いられる電子銃を構成するエミッタチップの配置例を示す図である。
図26は、本発明に係る電子線装置の電子光学系において用いられる電子銃を構成するエミッタチップの他の配置例を示す図である。
図27は、本発明に係る電子線装置の電子光学系において用いられる電子銃を構成するエミッタチップの他の配置例を示す図である。
図28は、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系の別の実施形態を示す概略図である。
図29は、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系に適用可能な電子銃のカソード先端部(エミッタ)の平面図である。
図30は、図29に示したカソードの側面図である。
図31は、本発明の電子線装置に具備される電子光学系に適用可能な電子銃のカソード先端部の平面図である。
図32は、図31に示したカソードのエミッタとウェーネルトとの関係を示した側面図である。
図33は、図32に示したカソードのエミッタとウェーネルトの開口との位置合わせ機構を説明する断面図である。
図34の[A]及び[B]はそれぞれ、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系に適用可能な電子銃のカソード先端部の平面図及びエミッタの側面図である。
図35は、図34に示したカソードの側面図である。
図36の[A]及び[B]はそれぞれ、図34及び図35に示したカソードのエミッタを加工する工具の平面図及び側面図である。
図37は、図34に示したカソードとともに電子銃を構成するウェーネルトの平面図である。
図38は、図34に示したカソードと図37に示したウェーネルトとを組み合わせた状態を示す断面図である。
図39の[A]−[C]はそれぞれ、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系に適用可能な電子銃のカソード先端部の平面図及びエミッタの側面図である。
図40は、図41に示した複数の突起からなるエミッタをX軸上へ投影した場合に等間隔になることを示す説明図である。
図41は、図39に示したカソードを組み込んだ電子銃の側面図である。
図42の[A]及び[B]はそれぞれ、本発明に係る電子線装置に具備される電子光学系に適用可能な電子銃のカソード先端部の平面図及びエミッタの側面図である。
図43は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示す概略図である。
図44は、図43に示した電子線装置に具備される電子光学系の電子銃から放出されるマルチビームを、光軸に直交するX−Y平面における断面で示す断面図である。
図45は、本発明に係る、ウエハ等の試料の表面より深い位置の情報を得るための原理を説明するための説明図である。
図46は、一次電子エネルギとそれにより発生する二次電子エネルギとの関係を示すグラフである。
図47は、本発明に係る電子線装置のさらに他の実施形態を示す概略図である。
図48は、本発明に係る電子線装置の別の実施形態を示す概略図である。
図49は、図48に示した電子線装置のXYステージに載置された標準マークのレイアウトを示す説明図である。
図50は、図48に示した電子線装置を用いて標準マークを種々のビーム径で走査した場合の信号コントラストを示す波形図である。
図51は、本発明に係る電子線装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。
図52は、本発明に係る電子線装置による照射量の測定を説明するための説明図である。
図53は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示す概略図である。
図54は、1枚のウエハ上におけるデバイスの配置を示す平面図である。
図55は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示す概略図である。
図56は、本発明に係る電子線装置のさらに他の実施形態を示す概略図である。
図57は、図56に示した電子線装置の欠陥検出部(評価部)の機能ブロック図である。
図58は、本発明に係る電子線装置において実行される欠陥検出処理のフローチャートである。
図59の[A]−[C]はそれぞれ、図58に示した欠陥検出処理における、ダイ対ダイの比較による欠陥検出、線幅測定、及び電位コントラスト測定を説明するための説明図である。
図60は、本発明に係る電子線装置の別の実施形態を示す概略図である。
図61は、図60に示した電子線装置を用いてウエハ検査を行う場合のメインルーチンを示すフローチャートである。
図62は、ウエハ表面上で部分的に重なり合いながら総合に位置がずらされた複数の被検査領域を概念的に示す説明図である。
図63は、図60に示した電子線装置により取得される複数の被検査画像及び基準画像を例示する説明図である。
図64は、図61に示したメインルーチンのサブルーチンである被検査画像データ取得工程を示すフローチャートである。
図65は、図61に示したメインルーチンのサブルーチンである比較工程を示すフローチャートである。
図66は、本発明に係る検査(評価)処理を示すフローチャートである。
図67は、本発明に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図68は、図67に示した工程のうちのリソグラフィ工程の詳細を示すフローチャートである。

Claims (29)

  1. 一次電子線を試料に照射し、該照射によって試料面から発生する二次電子線を検出して試料面の評価を行うための電子線装置において、
    一次電子線を放出する電子銃のカソードは、一次電子電子光学系の光軸を中心とする1つの円上に間隔をあけて配置された、一次電子線を放出する複数のエミッタを備え、
    これら複数のエミッタは、一次電子線の走査方向と平行な直線上に投影した点が等間隔となるよう配置されている
    ことを特徴とする電子線装置。
  2. 請求項1記載の電子線装置において、各エミッタは、複数のエミッタチップを備え、その中の1つのエミッタチップから選択的に一次電子線を放出するよう構成されていることを特徴とする電子線装置。
  3. 請求項1又は2記載の電子線装置において、該装置はさらに、E×B分離器を備え、試料面から放出された二次電子を対物レンズで加速し、かつE×B分離器によって一次電子光学系から分離して二次電子光学系に入射させるよう構成されていることを特徴とする電子線装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の電子線装置において、電子銃は、
    カソードの端面に形成された、先端が同一平面複数のエミッタと、
    同一平面に形成された複数の開口を有する制御電極と、
    これら2つの平面の相対的な傾き、間隔、及び、カソードの複数のエミッタと制御電極の複数の開口との水平方向の位置合わせののいずれかを実行する機構と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の電子線装置において、各エミッタの先端近傍は、円錐状に形成されていることを特徴とする電子線装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子線装置において、カソードの材料がLaB6、Ta、又はHfであることを特徴とする電子線装置。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子線装置において、カソードは、表面の結晶方位が<310>の単結晶タンタルの表面を削って複数のエミッタを形成したことを特徴とする電子線装置。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子線装置において、カソードは、表面の結晶方位が<100>の単結晶ハフニウムの表面を削って複数のエミッタを形成したことを特徴とする電子線装置。
  9. 請求項7又は8記載の電子線装置において、各エミッタの先端部には、直径50μm以下の平面、あるいは、光軸を中心とする円の半径方向の幅が10μm以下で、半径方向と直交する方向の幅が100μm以下の平面が残されていることを特徴とする電子線装置。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の電子線装置において、該装置はさらに、
    試料を載置するステージの移動速度を検出する速度検出器と、
    一次電子光学系及び二次電子光学系の少なくとも一方に含まれ、速度検出器からのステージの移動速度に応じて、一次電子線及び二次電子線の少なくとも一方の偏向量を補正する偏向量補正装置と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  11. 請求項1〜10記載の電子線装置において、該装置は、電子線のエネルギを0.5eV以上の範囲で任意に設定する装置を備えていることを特徴とする電子線装置。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の電子線装置において、該装置は、
    試料表面から放出される低エネルギの電子を加速する対物レンズと、
    対物レンズを通過した電子を二次電子光学系の方向に偏向するE×B分離器と、
    二次電子光学系を介して収集された電子の強度を検出して、電気信号に変換する複数の検出器と
    を含み、
    複数の一次電子線の照射点の間隔は、試料上における後方錯乱電子の拡がり直径と二次電子光学系の試料における等価ボケ量の和より大きく設定されている
    ことを特徴とする電子線装置。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の電子線装置において、一次電子線の間隔は、複数の電子線の発生部から試料までの電子光学系の倍率を変化させることにより、調整されるよう構成されていることを特徴とする電子線装置。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の電子線装置において、試料は半導体ウエハであり、電子線装置はさらに、
    半導体ウエハの配線パターンから放出される二次電子のうち、特定のエネルギを超える電子のみを選択的に通過させる電極で構成され、特定のエネルギ以上の電子のみを二次電子光学系に導くエネルギフィルタと、
    複数の検出器からの電気信号の変動状態を、正規の配線パターンの接続関係から期待される電気信号の変動状態と対比して、配線パターンの断線及び短絡等の欠陥を判定する判定装置と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  15. 請求項14記載の電子線装置において、該装置はさらに、半導体ウエハの外部電極と接続されたコネクタに接地電圧と所定の電圧とを切り替えて印加する装置を備えていることを特徴とする電子線装置。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の電子線装置において、該装置はさらに、
    試料と対物レンズとの間における放電又はその前駆現象を検出する放電現象検出装置と、
    放電現象検出装置からの出力に基づいて、放電が生じないように条件設定を行う条件設定装置と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  17. 請求項16記載の電子線装置において、放電現象検出装置は、放電又は前駆現象時に発生する光を検出するPMT、又は放電又は前駆現象時に試料に発生する異常電流を検出する試料電流計であることを特徴とする電子線装置。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の電子線装置において、該装置はさらに、
    二次電子光学系を介して収集された電子の強度を検出して電気信号に変換する複数の検出器と、
    複数の検出器からの電気信号を画像データに処理する画像処理部と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  19. 請求項請求項18記載の電子線装置において、該装置はさらに、
    画像処理部によって得られた、試料における異なるチップの同一箇所同士の画像を比較する第1の比較装置と、
    試料の標準パターンの画像と、画像処理部によって得られた試料の実際の画像とを比較する第2の比較装置と、
    第1の比較装置と第2の比較装置の少なくとものいずれかを実行させる装置と、
    第1及び第2の比較装置の少なくとも一方の比較結果に基づいて、試料の欠陥を判定する装置と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  20. 請求項1〜19のいずれかに記載の電子線装置において、該装置はさらに、
    試料上で部分的に互いに重なりあいながら変位された複数の被検査領域の画像をそれぞれ取得する画像取得装置と、
    基準の画像を記憶する記憶装置と、
    画像取得装置により取得された複数の被検査領域の画像と、記憶装置に記憶された基準の画像とを比較することによって、試料の欠陥を判定する欠陥判定装置と
    を備えていることを特徴とする電子線装置。
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の電子線装置において、
    試料を載置するステージ装置は、静圧軸受けによる非接触支持機構と差動排気による真空シール機構とを備え、
    該試料面上の一次電子線が照射される箇所と、ステージ装置の静圧軸受け支持部との間にコンダクタンスが小さくなる仕切りを設け、
    電子線照射領域と静圧軸受け支持部との間に圧力差が生じるようにした
    ことを特徴とする電子線装置。
  22. 請求項1〜21のいずれかに記載の電子線装置において、
    試料を載置するステージ装置は、ハウジング内に収容されかつ静圧軸受けによりハウジングに対して非接触で支持されており、
    ステージ装置が収容されたハウジングは、真空排気され、
    電子線装置の試料面上に一次電子線を照射する部分の周囲には、試料面上の該照射領域を排気する差動排気機構が設けられている
    ことを特徴とする電子線装置。
  23. 請求項22記載の電子線装置において、ステージ装置の静圧軸受けに供給されるガスはドライ窒素もしくは高純度の不活性ガスであり、該ドライ窒素もしくは高純度不活性ガスは、該ステージ装置を収納するハウジングから排気された後加圧され、再び静圧軸受けに供給されることを特徴とする電子線装置。
  24. 試料を評価するための評価システムにおいて、
    請求項1〜23のいずれかに記載の電子線装置と、
    電子線装置のステージ装置と一次電子線の照射部とを収容しておりかつ真空雰囲気に制御可能になっているワーキングチャンバと、
    ワーキングチャンバ内のステージ装置上に試料を供給するローダーと、
    ワーキングチャンバ内に配置され、試料に電位を印加する電位印加機構と、
    電子線装置の電子光学系に対する試料の位置決めのために、試料の表面を観察してアライメントを制御するアライメント制御装置と
    を備え、
    真空のワーキングチャンバは、床からの振動を遮断する振動遮断装置を介して支持されている
    ことを特徴とする評価システム。
  25. 請求項24記載の評価システムにおいて、
    ローダーが、それぞれが独立して雰囲気制御可能になっている第1のローディングチャンバ及び第2のローディングチャンバと、試料を第1のローディングチャンバ内とその外部との間で搬送する第1の搬送ユニットと、第2のローディングチャンバに設けられていて試料を第1のローディングチャンバ内とステージ装置上との間で搬送する第2の搬送ユニットとを備え、
    評価システムはさらに、ローダーに試料を供給するための仕切られたミニエンバイロメント空間を備えている
    ことを特徴とする評価システム。
  26. 請求項24又は25記載の評価システムにおいて、該システムはさらに、ステージ装置上の検査対象の座標を検出するレーザ干渉測距装置を備え、アライメント制御装置により、試料に存在するパターンを利用して検査対象の座標を決めることを特徴とする評価システム。
  27. 試料の評価を行う方法において、一次電子線を試料に照射する一次電子光学系と、電子の強度を検出して電気信号に変換する検出系と、一次電子線の照射によって試料面から放出される二次電子線を検出系に指向させる二次電子光学系とを備えた電子線装置であって、一次電子光学系に具備される電子銃のカソードが、一次電子線を放出する複数のエミッタを備え、これらエミッタが、一次電子光学系の光軸を中心とする1つの円上に間隔をあけて配置され、かつ、一次電子線の走査方向と平行な直線上に投影した点が等間隔となるよう配置されている電子線装置を用いて、試料の評価を行うことを特徴とする試料評価方法。
  28. 請求項27に記載の試料評価方法において、該方法はさらに、
    試料を載置するステージの移動速度を検出する速度検出ステップと、
    速度検出ステップにおいて検出されたステージの移動速度に応じて、一次電子線及び二次電子線の少なくとも一方の偏向量を補正する偏向量補正ステップと
    を備えていることを特徴とする試料評価方法。
  29. 請求項27又は28に記載の試料評価方法において、該方法はさらに、
    試料上で部分的に互いに重なりあいながら変位された複数の被検査領域の画像をそれぞれ取得する画像取得ステップと、
    基準の画像を記憶する記憶ステップと、
    画像取得ステップにおいて取得された複数の被検査領域の画像と、記憶ステップにおいて記憶された基準の画像とを比較することによって、試料の欠陥を判定するステップと
    を備えていることを特徴とする試料評価方法。
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