JP2007184283A - 荷電粒子線装置及び方法 - Google Patents

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Toru Satake
徹 佐竹
Kenji Watanabe
賢治 渡辺
Takeshi Murakami
武司 村上
Shinji Nomichi
伸治 野路
Takuji Sofugawa
拓司 曽布川
Tsutomu Karimata
努 狩俣
Seiji Yoshikawa
省二 吉川
Toshifumi Kaneuma
利文 金馬
Shin Owada
伸 大和田
Mutsumi Nishifuji
睦 西藤
Muneki Hamashima
宗樹 浜島
Toru Takagi
徹 高木
Naoto Kihara
直人 木原
Hiroshi Nishimura
宏 西村
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Abstract

【課題】検査処理のスループットを向上させるとともに、検出精度を向上させることができる電子線装置を提供する。
【解決手段】一次荷電粒子を試料Wの被測定領域に照射し、試料から放出される二次荷電粒子を検出する装置において、一次荷電粒子を試料Wの被測定領域を分割した小領域単位に照射する際、1つの小領域R11を照射後、該小領域に隣接する少なくとも1つ以上の小領域R12をスキップし、そして、未照射の小領域R13を照射するよう制御する。この場合、各小領域の照射は、次に照射を行うべき小領域に近い側から開始され、遠い側へ進められる。例えば、小領域R11の場合、次に照射される小領域R13に近い点P11から開始され、遠い点P12に到達すると、小領域R13の照射を点P13から開始する。
【選択図】図32

Description

発明の技術分野
本発明は、ウエハ等の試料の表面の性状を検査する技術に関する。より詳細には、本発明は、半導体製造工程におけるウエハの欠陥検出及び線幅測定等のように、電子ビームを試料に照射し、その表面の性状に応じて変化する二次電子を捕捉して画像データを形成し、該画像データに基づいて試料表面に形成されたパターン等を高スループットで評価するための電子線装置、並びに、該装置を用いた半導体デバイスの評価システム及び半導体デバイス製造方法に関する。なお、本明細書において、試料の「評価」とは、試料の欠陥検出及び線幅測定等の任意の「検査」を含むものとする。
半導体プロセスにおいて、デザインルールは100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。
そして、半導体デバイスの高集積化及びパターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウエハの欠陥を調べるためには、100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及び、コンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって電子ビームを用いた欠陥検査装置が、今後、主流になると予想される。但し、電子ビーム方式の欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。このため、高分解能、高スループット、且つ電気的欠陥検出が可能な電子ビーム方式の検査装置の開発が要求されている。
光方式での分解能は、使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では、0.2μm程度である。一方電子ビームを使用する方式では、通常、走査型電子ビーム方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(20cmウエハ)である。電子ビーム方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴である。しかし、上記したように、検査時間が非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。また、電子ビーム方式の検査装置は、高価でありまたスループットも他のプロセス装置に比べて低いことから、一般に、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜(銅メッキを含む)、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は、電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)これを走査してライン状にウエハを照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は、一般に数100μmである。細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)の照射により発生したウエハからの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度として得られる)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、あるいはCRT(ブラウン管)等のモニタ上に画像を出力する。以上がSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から、工程途中の半導体(通常はSi)ウエハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は、一次電子線の量(電流値)、ビーム径、検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)、一次電子線の電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが、現在の最高値であり、この場合で検査速度は、20cm径のウエハ1枚あたり約8時間と言われている。このように、検査速度が光に比べてきわめて遅い(1/20以下)ことが、大きな問題点(欠点)となっている。
また、高スループットにするためにビーム電流を大きくすると、絶縁膜が表面にあるウエハでは、帯電して良好なSEM画像が得られないという問題があった。
SEM方式の欠点である検査速度を向上する別の方法として、複数の電子線を用いたSEM(マルチビームSEM)方式及び装置が開示されている。この従来例の方式及び装置では、複数の電子線の本数分だけ検査速度を向上できるが、複数の一次電子線を斜め入射し、ウエハからの複数の二次電子線を斜め方向に取り出すため、ウエハから放出される二次電子も、斜めの方向に放出されたもののみを検出器が拾うことになる。また、画像に影ができてしまったり、さらに、複数の電子線からのそれぞれの二次電子を分離することが困難であって、二次電子が互いに混入してしまうという問題が生じている。
さらに、マルチビーム方式の電子線装置を用いた評価システムにおいて、電子線装置と他のサブシステムとの間の相互作用等については、今までほとんど提案されておらず、結局、高スループットの評価システムの完成された全体システムが提案されていない。更に、検査すべきウエハ等の大型化が図られてきており、サブシステムもウエハの大型化に対処できるようにする必要があるが、この点についても、提案されていない。
本発明は、このような従来例の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査処理のスループットを向上させるとともに、検出精度を向上させることができる電子線装置を提供することである。
上記した目的を達成するために、本発明は、一次荷電粒子を試料の被測定領域に照射し、試料から放出される二次荷電粒子を検出する方法であって、
前記一次荷電粒子を試料の被測定領域を分割した小領域単位に照射するステップであって、1つの小領域を照射後、該小領域に隣接する少なくとも1つ以上の小領域をスキップして、未照射の小領域を照射するステップ
を備えていることを特徴とする方法を提供する。
上記した本発明の方法において、前記1つの小領域の照射は、次に照射を行うべき小領域に近い側から開始され、遠い側へ進められることが好ましい。
上記した目的を達成するために、本発明はまた、一次荷電粒子を試料の被測定領域に照射し、試料から放出される二次荷電粒子を検出する荷電粒子線装置であって、
前記一次荷電粒子を試料の被測定領域を分割した小領域単位にラスタ走査して照射する手段であって、該ラスタ走査を、1つの小領域中の1つのラスタを走査後に1つ以上のラスタをスキップし、かつ、当該小領域の端まで走査後に、該スキップされたラスタを走査する、照射手段
を備えていることを特徴とする荷電粒子線装置を提供する。
上記した本発明の荷電粒子線装置において、該装置は、
前記照射手段を含み、複数の一次荷電粒子を試料に照射する少なくとも1以上の一次光学系と、
前記二次荷電粒子線を少なくとも1以上の検出器に導く少なくとも1以上の二次光学系と
を備え、前記一次光学系は、前記複数の一次荷電粒子を互いに、前記二次光学系の距離分解能より離れた位置に照射するよう構成されているが好ましい。
すなわち、荷電電荷は時間とともに減少するが、試料から発生される二次電子を検出後ウエハを移動させて次の小領域を照射する際、該次の領域は、隣接する小領域を少なくとも1以上スキップした未照射の小領域とするので、照射済の小領域の帯電による影響が十分に小さく時間の経過後に、スキップした小領域を照射することになる。よって、効率的に試料上を照射することができるので、スループットを向上させることができるとともに、検出精度を向上させることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る評価システムの実施形態について、検査試料として表面にパターンが形成された半導体基板すなわちウエハを評価する場合について、説明する。なお、ウエハ以外の試料の評価に適用可能であることは、勿論である。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る評価システム1の主要な構成要素を示す立面図及び平面図である。評価システム1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダ60と、主ハウジング30内に配置され、ウエハであるウエハWを載置して移動させるステージ装置50と、主ハウジング30に取り付けられた電子光学系70とを備え、それらは、図1及び図2に示したような位置関係で配置されている。評価システム1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図11に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図12に図示)と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
以下に、評価システム1の主要な要素(サブシステム)それぞれの構成について、詳細に説明する。
カセットホルダ10
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個のカセット)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送して自動的にカセットホルダ10に装填する場合には、それに適した構造のものを、また人手により装填する場合には、それに適したオープンカセット構造のものを、それぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備えている。カセットcは、昇降テーブル上に図2において鎖線で示した状態に自動的に装填可能であり、装填後、図2において実線で示した状態に自動的に回転され、ミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は、図1において鎖線で示した状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダは、いずれも既知の構造のものを適宜選択して使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は、ここでは省略する。
別の実施形態では、図3に示すように、複数の300mmウエハWを箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(不図示)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬送出入り口ドアの自動開閉装置とに連結されて、箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬送出入りドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、ウエハWを保持するための溝型ポケット507とから構成されている。この実施形態では、ローダ60のロボット式の搬送ユニット61により、ウエハを出し入れする。
なお、カセットc内に収納されるウエハは、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けたウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、検査のためにカセットc内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは、多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されており、カセット中の任意の位置のウエハを、後述する第1の搬送ユニットで保持できるようにするために、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
ミニエンバイロメント装置20
図4は、ミニエンバイロメント装置20を図1とは異なる方向から見た立面図である。この図4並びに先の図1及び図2に示したように、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気等の気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて試料であるウエハの粗位置決めを行うプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間21を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図4に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に下向きに取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。
この実施形態では、気体供給ユニット231は、供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて、ミニエンバイロメント空間21の雰囲気を清浄にするよう構成されている。しかしながら、この外部から取り入れられる気体の割合は、任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための既知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、これにより、搬送ユニットにより発生する恐れのある塵埃がウエハに付着するのを防止する。したがって、ダウンフローの噴出口は、必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって、清浄度を向上させることができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに、装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうち、カセットホルダ10に隣接する部分には、出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3〜0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニット231は、ミニエンバイロメント空間21内でなく、その外側に設けてもよい。
排出装置24は、後に説明する搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出し、それに基づいて、ウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を、約±1度の精度で予め位置決めする。プリアライナ25は、ウエハであるウエハの座標を決める機構の一部を構成し、ウエハの粗位置決めを担当する。このプリアライナ自体は既知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は、ここでは省略する。なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
主ハウジング30
図1及び図2に示したように、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32は、フレーム構造体331上に配設固定されており、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備え、ワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みが発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の適宜の構造にしてもよい。この実施形態においては、ハウジング32本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを、防振装置37で阻止している。ハウジング32の周壁323の内、ローダハウジング40に隣接する周壁には、ウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のものでもよい。いずれも汎用の構造のものでよいので、その構造及び機能の説明を省略する。ワーキングチャンバ31は、汎用の真空装置(図示せず)により、真空雰囲気に保たれる。台フレーム36の下には、評価システム1全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
なお、評価システム1においては、主ハウジング30を含めて、種々のハウジングを真空排気しているが、そのための真空排気系は、真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、ウエハ室、ロードロック室等を、所定のシーケンスに従って真空排気を行う。各部においては、必要な真空度を達成するように、真空バルブが制御される。そして、常時、真空度の監視を行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブ等によるチャンバ間又はチャンバと排気系との間の遮断緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保をする。真空ポンプとしては、主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は、10−3〜10−5Pa、好ましくは、その1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
ローダハウジング40
図5は、図1とは別の方向から見たローダハウジング40の立面図を示している。図5並びに図1及び図2に示すように、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は、底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有しており、2つのローディングチャンバを外部から隔離している。仕切壁434には、2つのローディングチャンバ間でウエハWの受け渡しを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置20及び主ハウジング30に隣接した部分には、出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されて支持されている。したがって、このローダハウジング40にも、床の振動が伝達されない。
ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されているが、これら出入り口436、226の間には、ミニエンバイロメント空間21とローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271と、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。同様に、ローダハウジング40の出入り口437と主ハウジング30のハウジング本体32の出入り口325とは整合されているが、これら出入り口436、325の間には、ローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触し、それら側壁に固定されたシール材451、シール材451と協働して、出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461により開口を閉じて、第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき、各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は汎用のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。
なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジング40の支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40及び主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22とローダハウジング40との間に、出入り口の周囲を気密に囲む防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数枚(この実施形態では2枚)のウエハWを上下に隔てて水平に支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図6に示すように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472には、それぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上に、ウエハWの周縁を載せて保持する。このようにウエハWを載置下状態で、後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハWに接近させ、該アームによりウエハを把持させ、そしてウエハを搬送させる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、真空ポンプを含む汎用の真空排気装置(図示せず)によって、高真空状態(真空度としては、10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御される。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保つことにより、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような2つのローディングチャンバを備えたローディングハウジング構造を採用することによって、ウエハWをローディングチャンバからワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ構造を採用することによって、マルチビーム型の電子光学系と協働して欠陥等の検査のスループットを向上させ、更に、保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を、可能な限り高真空状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42にはそれぞれ、真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態において、不活性ガスベント(不活性ガスを注入して、不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)が達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は汎用の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
なお、電子線を使用する本発明の主ハウジング30において、後述する電子光学系70の電子源すなわち電子銃として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は、一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要である。本発明においては、主ハウジング30の電子光学系70が配置されているワーキングチャンバにウエハWを搬入する前段階で、上記のような雰囲気制御を行うことにより、酸素に接触する可能性が低減されるため、電子源の寿命を縮めてしまう可能性が低くなる。
ステージ装置50
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。該ホルダ55のウエハ載置面551上にウエハWを解放可能に保持する。ホルダ55は、ウエハWを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる汎用の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記した複数のテーブル52〜54を動作させることにより、載置面551上でホルダ55に保持されたウエハWを電子光学系70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更には、ウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に、高い精度で位置決めすることができる。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ55上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置をフィードバック回路(不図示)によって制御したり、それと共に或いはそれに代えて、ウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定して、ウエハの電子ビームに対する平面位置及び回転位置を検知し、回転テーブル54を微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ホルダ55を設けずに、回転テーブル54上にウエハWを直接載置してもよい。ワーキングチャンバ31内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている汎用構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記したレーザ干渉測距装置も汎用構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハWの回転位置やX−Y座標位置を、後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することによって、信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダ55に設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に印加するよう構成され、ウエハWの外周部の3点(好ましくは、周方向に等隔に隔てられた3点)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるよう構成され、かつ電圧印加用の導通部を構成している。
なお、この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダ60
ローダ60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとして任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた汎用構造の駆動機構(図示せず)により、回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動可能であると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能である。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、汎用構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハ把持用の把持装置616が設けられている。駆動部611は、汎用構造の昇降機構615により上下方向に移動可能である。
この第1の搬送ユニット61において、カセットホルダ10中に保持された二つのカセットcの内のいずれか一方の方向M1又はM2(図2)に向かって、アーム612が伸び、そして、カセットc内に収容されたウエハWをアームの上に載せるか又はアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後、アームが縮み(図2に示した状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転して、その位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハWをプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にしてウエハを受け取った後、アームは更に回転し、第1のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第1のローディングチャンバ41内のウエハ受け47に、ウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合には、ウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これは、ウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、周縁部以外の部分を把持すると、デバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も、第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハWの搬送を、ウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送を、ウエハをほぼ水平状態に保ったままで行う。そして、搬送ユニット61、63のアームが上下動するのは、単に、カセットcからのウエハの取り出し及びそれへの挿入、ウエハラックへのウエハの載置及びそこからの取り出し、並びに、ステージ装置50へのウエハの載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、例えば直径30cm等の大型のウエハであっても、その移動をスムースに行うことができる。
ここで、上記構成を有する評価システム1において、カセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下され、カセットcが出入り口225に整合される。カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(不図示)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメント装置20の出入り口225との間には、筒状の覆いが配置されて、カセット及びミニエンバイロメント空間21を、外部から遮断する。これらの構造は汎用のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合には、そのシャッタ装置が動作して、出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は、方向M1又はM2ののいずれかに向いた状態(この説明では、M1の方向)で停止しており、出入り口225が開くと、アームが伸びてその先端でカセットcに収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では、第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブルの上下動によって行っても、或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、該アームは縮み、シャッタ装置が動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次に、アーム612は軸線O1−O1の回りで回動し、方向M3に向けて伸長できる状態となる。そして、アームが伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、該プリアライナによって、ウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を、所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると、第1の搬送ユニット61は、アーム612の先端にプリアライナ25からウエハを受け取った後にアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。すると、シャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、シャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435は、シャッタ装置46の扉461により気密状態に閉じられている。
上記した第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング本体22に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では、供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は、排出装置24の吸入ダクト241から吸引されて、ハウジング外に排出される。残りの空気は、ハウジング本体22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され、再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41を密閉する。すると、該ローディングチャンバ41内には空気が追い出されて不活性ガスが充填された後、その不活性ガスも排出されて、ローディングチャンバ41内は真空雰囲気となる。ローディングチャンバ41の真空雰囲気は、低真空度でよい。ローディングチャンバ41の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して、扉461で密閉していた出入り口434を開き、次いで、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461により出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前に、アーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のように、シャッタ装置46が開く前に、シャッタ装置45の扉452により出入り口437、325を閉じて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を阻止しており、かつ、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームは、ワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53が図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びて、ウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そして、ステージ装置50の載置面551上にウエハWを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハWをステージ装置50の載置面551上に搬送載置するまでの動作に付いて説明した。検査処理が完了したウエハWをステージ装置50からカセットcに戻すには、前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しているため、第2の搬送ユニット63がウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行っている間に、第1の搬送ユニットがカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができる。したがって、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、既に処理済みのウエハAと未処理のウエハBとがある場合、まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。そして、この処理中に、処理済みウエハAを、アームによりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理の別のウエハCを同じくアームによりウエハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。このようにすることにより、ウエハラック47の中では、ウエハBの処理中に、処理済みのウエハAを未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、各ステージ装置に1つのウエハラック47からウエハを移動することにより、複数枚のウエハを同じに処理することができる。
図7の[A]及び[B]は、主ハウジング30の支持方法の変形例を示している。図7[A]に示した変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、図1の実施形態の底壁に比較して、薄い構造になっている。図7[B]に示した変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊下状態で支持している。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持している。そして、防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40も、フレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。図7[B]に示した変形例では、吊り下げ式に支えているので、主ハウジング30b及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。主ハウジング及びローダハウジングをつり下げて支持する方法によれば、床からの振動がこれらに伝わらないため、好適である。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがハウジング支持装置によって下から支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で、床上に配置される。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置される。
電子光学系70
電子線装置に具備される電子光学系70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、該鏡筒中には、一次電子光学系(以下、「一次光学系」)及び二次電子光学系(以下、「二次光学系」)と検出系とが配置されている。
図8は、このような電子光学系70の実施形態を示した概略図であり、図において、72は一次光学系、74は二次光学系、76は検出系である。なお、図8においては、ウエハWを載置した状態のステージ装置50、及び制御装置の一部である走査信号発生回路764も示している。一次光学系72は、電子線を試料であるウエハWの表面に照射する光学系であり、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズすなわちコンデンサレンズ722と、該コンデンサレンズ722の下方に配置されかつ複数の開口が形成されていて、一次電子線を複数の一次電子ビームすなわちマルチビームに形成するマルチ開口板723と、一次電子ビームを縮小する静電レンズである縮小レンズ724と、ウィーンフィルタすなわちE×B分離器725と、対物レンズ726とを備えている。それらは、図8に示すように、電子銃721を最上部にして順に配置され、しかも、電子銃から放出される一次電子線の光軸がウエハWの表面に直交して照射されるように設定される。
縮小レンズ724及び対物レンズ726の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板723に形成される複数(この実施形態では9個)の開口723aが、図9の[A]に示されるように、光軸を中心とした円の円周上に形成され、しかも、その開口のX軸上への投影像のX方向の間隔Lxが同一となるように配置されている。
二次光学系74は、E×B分離器725により一次光学系から分離された二次電子を通す2段の静電レンズである拡大レンズ741及び742と、マルチ開口検出板743とを備えている。マルチ開口検出板743に形成される開口743aは、図9の[A]に示すように、一次光学系のマルチ開口板723に形成されている開口723aと一対一に対応するように配置されている。
検出系76は、二次光学系74のマルチ開口検出板743の複数の開口743aに対応し、かつこれらに近接して配置された複数(この実施形態では9個)の検出器761と、各検出器761にA/D変換器762を介して電気的に接続された画像処理部763とを備えている。画像処理部763は、電子光学系70内に物理的に位置する必要がない。
次に、上記構成の電子光学系70の動作を説明する。電子銃721から放出された一次電子線は、一次光学系72のコンデンサレンズ722によって集束されて点P1においてクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ722によって集束された一次電子線がマルチ開口板723の複数の開口723aを通過することにより、複数の一次電子線が形成され、これらの一次電子線は、縮小レンズ724によって縮小されて、位置P2に投影される。位置P2で合焦した後、更に対物レンズ726によってウエハWの表面上に合焦される。このとき、一次電子線は、縮小レンズ724と対物レンズ726との間に配置された偏向器727によって、ウエハWの表面上を走査するように偏向される。偏向器727には、走査信号が印加され、該信号に基づいて、一次電子線の偏向走査が実行される。
一次光学系72による一次電子線の照射方法を、図9の[B]を用いて説明する。なお、この図の例では、説明を簡単にするために、4本の一次電子線101、102、103、104を用いる例について説明する。それぞれの電子線は、50μm幅をスキャンするものとする。電子線101を例にとると、まず、電子線101は左端から右方向にスキャンし、右端に到着後、すみやかに左端にもどり、改めて、右方向にスキャンする。このように、4つの電子線により、同時にウエハ表面を走査しているので、スループットが向上する。
合焦された複数(図8の実施形態では9本)の一次電子線によってウエハW上の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から二次電子が放出される。この二次電子は、対物レンズ726の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器725によって偏向されて、二次光学系74に投入される。二次電子による像は、E×B分離器725からみて、位置P2より近い位置P3において焦点を結ぶ。これは、一次電子ビームがウエハ面上で500eV程度のエネルギを有しているのに対して、二次電子が数ev程度のエネルギしか有していないためである。
ここで、図10を参照してE×B分離器725について説明する。図10[A]は、本発明の電子光学系70に使用可能なE×B分離器の一例を示している。この分離器は、静電偏向器と電磁偏向器とにより構成されており、図10においては、光軸OA(図面に垂直な軸)に直交するX−Y平面上の断面として示されている。X軸方向及びY軸方向は互いに直交している。
静電偏向器は、真空容器中に設けられた一対の電極(静電偏向電極)7251を備え、X軸方向に電界を生成する。これら静電偏向電極7251は、絶縁スペーサ7252を介して真空容器の真空壁7253に取り付けられており、これらの電極間距離Dpは、静電偏向電極7251のY軸方向の長さ2Lpよりも小さく設定されている。このような設定により、Z軸すなわち光軸OAの回りの形成される電界強度が一様な範囲を比較的大きくすることができるが、理想的には、Dp<Lpであれば、電界強度が一様な範囲をより大きくすることができる。
すなわち、電極の端部からDp/2の範囲は、電界強度が一様でないため、電界強度がほぼ一様な領域は、一様でない端部領域を除いた中心部の2Lp−Dpの領域となる。このため、電界強度が一様な領域が存在するためには、2Lp>Dpとする必要があり、更に、Lp>Dpと設定することにより、電界強度が一様な領域がより大きくなる。
真空壁7253の外側には、Y軸方向に磁界を生成するための電磁偏向器が設けられている。この電磁偏向器は、電磁コイル7254及び電磁コイル7255を備え、これらコイルはそれぞれ、X軸方向及びY軸方向に磁界を生成する。なお、コイル7255だけでもY軸方向の磁界を生成できるが、電界と磁界との直交度を向上させるために、X軸方向に磁界を生成するコイル7254を設けている。すなわち、コイル7254によって生成された−X軸方向の磁界成分によって、コイル7255によって生成された+X軸方向を打ち消すことによって、電界と磁界との直交度を良好にすることができる。
これら磁界生成用のコイル7254及び7255は、真空容器の外に設けるため、それぞれを二分割して構成し、真空壁7253の両側から取り付け、部分7257においてねじ止め等によって締め付けて一体化すればよい。
E×B分離器の最外層7256は、パーマロイ或いはフェライト製のヨークとして構成する。この最外層7256は、コイル7254及び7255と同様に、2分割して両側からコイル7255の外周に取り付けて、部分7257においてねじ止め等により一体化してもよい。
図10の[B]は、本発明の電子光学系70に適用可能なE×B分離器の他の例を、光軸に直交する断面図として示している。このE×B分離器においては、静電偏向電極7251は6極設けられている点が、図10の[A]に示した形態と異なっている。図10の[B]において、図10[A]に示されたE×B分離器の構成要素に対応する構成要素は同じ参照番号に「′」(ダッシュ)を付して示し、それらの説明は省略する。これらの静電偏向電極7251′には、それぞれの電極の中央と光軸とを結んだ線と、電界の方向(X軸方向)との角度θ(i=0、1、2、3、4、5)としたときに、cosθに比例する電圧k・cosθ(kは定数)が供給される。ただし、θは、任意の角度である。
図10の[B]に示したE×B分離器においても、[A]のE×B分離器と同様に、X軸方向の電界しか作れないので、X軸及びY軸方向の磁界を生成するコイル7254′及び7255′を設け、直交度の修正を行う。
図10の[B]に示したE×B分離器によれば、図10の[A]に示したE×B分離器に比べて、電界強度が一様な領域を更に大きくすることができる。
なお、図10の[A]及び[B]に示したE×B分離器において、磁界を生成するためのコイルはサドル型に形成しているが、トロイダル型のコイルを用いてもよい。また、図10に示したE×B分離器の構成は、図8に示した電子線装置の電子光学系70だけでなく、以降で説明する他の実施形態の電子線装置の電子光学系に適用可能である。
位置P3で合焦された二次電子の像は、2段の拡大レンズ741、742でマルチ開口検出板743の対応する開口743aに合焦され、各開口743aに対応して配置された検出器761で検出する。検出器761は、検出した電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。各検出器761から出力された電気信号は、A/D変換器762でデジタル信号に変換された後、画像処理部763に入力される。検出器761として、例えば電子線強度を直接検出するPN接合ダイオード、或いは、電子により発光する蛍光板を介して発光強度を検出するPMT(光電子増倍管)などを用いることができる。
画像処理部763は、入力されたデジタル信号を画像データに変換する。画像処理部763には、一次電子線を偏向させるための走査信号が制御装置2(図1)から供給されており、したがって、画像処理部は、ウエハ表面上を走査される一次電子ビームの照射点の画像に対応する電気信号を受け取ることになり、よって、ウエハ表面を表すを表す画像を得ることができる。このようにして得られた画像を、予め設定された標準パターンと比較することによって、ウエハWの被評価パターンの良否を判定することができる。
更に、レジストレーションによりウエハWの被評価パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハの表面に形成されたパターンの線幅を測定することができる。
なお、従来の電子線装置では、一次電子線をウエハに照射した時発生する二次電子を一次電子と共通の二段のレンズで集束させ、この集束位置にE×B分離器を設けて二次電子を一次電子より分離し、その後はレンズ無しでマルチ検出器に結像させる方式が用いられている。このため、一次及び二次光学系に共通の二段のレンズは、一次光学系のレンズ条件を優先して調節される必要があるので、二次光学系の合焦条件や拡大率の調整を行うことができないことから、これらの合焦条件や拡大率が設計値からズレた場合に、調整できないという欠点があった。
しかしながら、二次電子をE×B分離器725で分離後、これを二次光学系のレンズで拡大するようにしたので、一次光学系のレンズ条件とは独立して、二次光学系の合焦条件や拡大率を調整することができる。
また、一次光学系のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子ビームをウエハWの表面に合焦させ、ウエハから放出される二次電子を検出器761に結像させる際に、一次光学系で生じる歪み、軸上色収差及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。
特に、一次電子線と二次電子線が光路を共有する場合、共通の光路に一次電子流と二次電子流が流れるので、ほぼ2倍のビーム電流が流れ、その結果、空間電荷効果による一次電子線のボケや合焦条件の狂いがほぼ2倍になる。また、共通の光路では、一次電子線と二次電子線の軸合わせが困難である。一次電子線の軸合わせを行うと、二次電子線の軸が狂い易く、逆に二次電子線の軸合わせを行うと、一次電子線の軸が狂い易い。また、共通の光路では、レンズを一次電子線の合焦条件に合わせると、二次電子線の合焦条件が外れ易く、逆に二次電子線の合焦条件に合わせると、一次電子線の合焦条件が外れ易い。
したがって、共通の光路はできるだけ短くする必要があるが、そのために対物レンズ726の下方にE×B分離器725を設けると、対物レンズの像面距離が長くなり、収差が大きくなる問題を生ずる。そこで、本発明においては、対物レンズ726から見て電子銃721側にE×B分離器725を設けており、その結果、一次光学系と二次光学系とは、一つのレンズのみを共有する構成となっている。
また、複数の一次電子ビーム間の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子ビーム間の間隔を二次光学系の収差(この場合は、対物レンズの二次電子に対する収差)よりも大きい距離だけ離すことにより、複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
さらに、静電偏向器727の偏向角度を、E×B分離器725のうち電磁偏向器による電磁偏向角度の−1/2倍に近い値にすることが好ましく、これによって、偏向の色収差を小さくできるので、E×B分離器を通してもビーム径があまり大きくならないようにすることができる。
プレチャージユニット81
プレチャージユニット81は、図1に示したように、ワーキングチャンバ31内で電子光学系70の鏡筒71に隣接して配設されている。本発明の評価システム1では、ウエハに電子線を走査して照射することによってウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるため、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によって、ウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。そして、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報としているが、ウエハ表面の帯電量にむらがあると、二次電子の情報もむらを含み、正確な画像を得ることができない。そこで、この実施形態では、帯電むらを防止するために、プレチャージユニット81が設けられている。該プレチャージユニット81は荷電粒子照射部811を含み、ウエハ上に検査のために一次電子を照射する前に、荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射することにより、帯電むらを無くす。なお、ウエハ表面の帯電状態は、電子光学系70を用いて予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出することができ、そして、検出された帯電状態に基づいて、荷電粒子照射部811からの荷電粒子の照射を制御する。プレチャージユニット81では、一次電子線をぼかして照射してもよい。
また、ウエハの電気的欠陥を検査する方法としては、本来電気的に絶縁されている部分とその部分が通電状態にある場合では、その部分の電圧が異なることを利用することもできる。それは、まず、ウエハに事前に電荷を付与することで、本来電気的に絶縁されている部分の電圧と、本来電気的に絶縁されている部分ではあるが、何らかの原因で通電状態にある部分の電圧とに電圧差を生じさせ、その後、電子ビームを照射することにより、電圧差のデータを取得し、この取得データを解析して、通電状態となっていることを検出することができる。
このような電気的欠陥の検出方法において、予めウエハに事前に電荷をチャージさせるために、プレチャージユニット81を用いることもできる。
電圧印加機構83
図11は、電圧印加機構83の構成を示すブロック図である。電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子発生率が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより、二次電子の発生が最適化するよう制御するものである。また、この電位印加機構83は、照射される一次電子が当初有しているエネルギを減速し、ウエハ上の電子エネルギを100〜500eV程度に制御するためにも用いられる。
電位印加機構83は、図11に示されるように、ステージ装置50の載置面551と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下、「調査及び決定システム」)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学系70の検出系76の画像処理部763に電気的に接続されたモニタ833と、モニタ833に接続されたオペレーション入力部834と、該オペレーション入力部834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、制御装置2(図1)に含まれ、電圧印加装置831に電圧調整信号を供給する。なお、CPU835はさらに、電子光学系70の偏向器727(図8)に走査信号を供給する等、種々構成要素に制御信号を供給する。電位印加機構83は、画像処理部763によって形成された画像をモニタ833に表示し、オペレーション入力部834及びCPU835によって、ウエハが帯電し難い電位を探し、得られた電位を、電圧印加装置831からステージ装置50のホルダ55に印加する。
電子ビームキャリブレーション機構85
電子ビームキャリブレーション機構85は、図12の[A]及び[B]に示すように、回転テーブル54上でウエハ載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用の複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(φ=約2μm)で、ファラデーカップ852は太いビーム用(φ=約30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では、回転テーブル54をステップS送りすることにより、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852では、ビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベルになるように配置される。このようにして、電子銃から放出される一次電子線を常時監視し、ウエハ表面に照射される電子線の強度がほぼ一定となるように、電子銃への電力供給を制御する。電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、経年変化等によりその放出量が変化するため、このような機構により、電子線強度を較正する。
アライメント制御装置87
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学系70に対して位置決めさせる装置である。アライメント制御装置87は、光学顕微鏡871(図1)を用いた広視野観察によるウエハの概略位置合わせである低倍率合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い位置合わせ)、電子光学系70の電子光学系を用いたウエハの高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。なお、このように低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うためには、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハアライメントを行うときに、電子線によるアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
光学顕微鏡871は、主ハウジング30内に設けられているが、主ハウジング30内で移動可能に設けられていてもよい。光学顕微鏡871を動作させるための光源(不図示)も主ハウジング30内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は、電子光学系70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。
アライメント制御装置87の構成を概略図示すれば、図13に示すようになる。ウエハW上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ又はYステージを動かすことによって、ウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871を用いて広視野でウエハを視認し、そのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置すなわち被観察点の位置を、おおよそ決定する。この場合、光学顕微鏡871の倍率を低倍率から高倍率に徐々に変化させていってもよい。
次に、ステージ装置50を電子光学系70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させることにより、光学顕微鏡871を用いて予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学系70の視野位置に移動させる。この場合、電子光学系70の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施形態では、X軸方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているので、その値δxだけ移動させれば、被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学系70の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
このようにして、電子光学系によって高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法により、ステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれ、すなわち電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学系70に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そして、その検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ、或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいて、ステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
制御装置2
制御装置2の制御系は、主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
メインコントローラには、マンーマシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作は、ここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時等の必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハの搬送、位置合わせの制御、制御コントローラやステージコントローラヘのコマンドの伝達や情報の受け取り等も、メインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、ウエハ観察位置のZ軸方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系ヘフィードバツクし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージ装置からの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
制御コントローラは、主に電子光学系の制御、すなわち、電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルタ用等の高精度電源の制御等を担う。具体的には、照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるように電源を制御すること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへ自動的に電圧を設定すること等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
ステージコントローラは、主にステージの移動に関する制御を行い、精密なX軸方向およびY軸方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の許容誤差)を可能にしている。また、ステージの移動制御では、誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
上記した本発明に係るこのような評価システムによれば、マルチビームを用いた電子線装置を評価システムの各構成機器を機能的に組み合わせることができたため、高いスループットで検査対象を処理することができる。また、エンバイロメント空間内に清浄度を観察するセンサを設けることにより、その空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。さらに、プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
次に、本発明に係る評価システム1に具備される電子線装置のステージ装置50と電子光学系70との組合せについて、種々の実施形態を説明する。
半導体ウエハ等のように、超精密加工が施された試料を検査する場合には、ウエハを真空のワーキングチャンバ31中で精度良く位置決め可能なステージ装置50を使用する必要がある。このように非常に高精度な位置決めが要求される場合のステージ装置として、XYステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが直接真空チャンバすなわちワーキングチャンバ31に排出されないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成することによって、ワーキングチャンバ31の真空度を維持している。なお、本明細書において、「真空」とは、等技術分野において呼ばれる真空状態であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
このようなステージ装置50と電子光学系70の荷電ビーム照射部72との組合せの従来例を、図14に示している。図14において、[A]は正面図、[B]は側面図である。この従来例において、真空チャンバ31を構成する主ハウジング30に、荷電ビームを発生しウエハWに照射する電子光学系装置の鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72が取り付けられている。鏡筒71の内部は、真空配管10−1によって真空排気されており、真空チャンバ31は真空配管11−1aによって真空排気されている。そして、荷電ビームは、鏡筒71の先端部7から、その下に置かれたウエハW等のウエハに対して照射される。
ウエハWは、ウエハ載置台すなわちホルダ55に公知の方法により取り外し可能に保持されており、ホルダ55は、XYステージを構成するYテーブル52の上面に取り付けられている。Yテーブル52には、Xテーブル53のガイド面53a−1と向かい合う面(図14の[A]において、左右両面及び下面)に、静圧軸受け9−1が複数取り付けられており、この静圧軸受け9−1の作用により、ガイド面との間に微小隙間を維持しながら、Y方向(図12の[B]において、左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受け9−1の周りには、静圧軸受け9−1に供給される高圧ガスが真空チャンバ31の内部にリークしないように、差動排気機構が設けられている。この様子を図15に示す。
図15に示すように、静圧軸受け9−1の周囲には、二重に溝18−1と17−1とが構成されており、これらの溝は、図示していない真空配管と真空ポンプにより、常時真空排気されている。このような構造により、Yテーブル52は、真空中を非接触状態で支持され、Y方向に自在に移動することが可能である。二重の溝18−1と17−1は、Yテーブル52の静圧軸受け9−1が設けられている面に、その静圧軸受けを囲むように形成される。なお、静圧軸受け9−1の構造は公知のもので良いので、その詳細な説明は省略する。
Yテーブル52を搭載しているXテーブル53は、図14に示すように、上方に開口している凹形の形状を有し、そして、Xテーブル53にも、上記と同様の静圧軸受け及び溝が設けられている。これにより、ステージ台すなわち固定テーブル51に対して、非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
これらのYテーブル52及びYテーブル53の移動を組み合わせることによって、ウエハWを鏡筒71の先端部72すなわち荷電ビーム照射部に関して水平方向任意の位置に移動させ、ウエハWの所望の位置に荷電ビームを照射することができる。
図14に示したステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せも、本発明の評価システム1に用いることができるものの、以下の問題点がある。
上記した静圧軸受け9−1と差動排気機構を組み合わせた従来例では、XYステージが移動する際に、静圧軸受け9−1に対向するガイド面53a及び51aは、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とワーキングチャンバ31内の真空環境の間を往復運動することになる。この時、これらガイド面には、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、その後真空環境に露出されると吸着していたガスが放出される、という状態が繰り返される。このため、XYステージが移動する度に、ワーキングチャンバ31内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した荷電ビームによる露光や検査や加工等の処理を安定して行うことができなかったり、ウエハが汚染されてしまうという問題がある。
したがって、真空度の低下を防止し、かつ荷電ビームによる検査や加工の処理を安定して行うことができる装置が必要となる。図16は、このような作用効果を奏することができるステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の実施形態を示している。なお、図16において、[A]は正面図、[B]は側面図である。
図16に示すように、この実施形態でのステージ装置50は、Yテーブル52の上面に、±Y軸方向(図16の[B]で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板14−1が取り付けられ、Xテーブル53の上面との間に、コンダクタンスが常時小さい絞り部50−1が生じるよう構成されている。また、Xテーブル53の上面にも、同様の仕切り板12−1が±X軸方向(図14の[A]で左右方向)に張り出すよう取り付けられており、固定テーブル51の上面との間に常に絞り部51−1が形成されるよう構成されている。固定テーブル51は、主ハウジング30内において、底壁の上に公知の方法で固定されている。
これにより、ウエハ台すなわちホルダ55がどの位置に移動しても、常に絞り部50−1及び51−1が形成されるので、Yテーブル52及びXテーブル53の移動時にガイド面53a及び51aからガスが放出されても、絞り部50−1及び51−1によって放出ガスの移動が妨げられる。したがって、荷電ビームが照射されるウエハ近傍の空間24−1の圧力上昇も、極めて低く押さえることができる。
ステージ装置50の可動部であるYテーブル52の側面及び下面、並びにXテーブル53の下面には、静圧軸受け9−1の周囲に、図15に示した差動排気用の溝が形成され、この溝によって真空排気されるため、絞り部50−1、51−1が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ装置50内部の空間13−1及び15−1の圧力は、ワーキングチャンバ31内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間13−1及び15−1を差動排気溝17−1や18−1で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設けることにより、これら空間の圧力を下げることができ、ウエハWの近傍24−1の圧力上昇を、更に小さくすることができる。このための排気通路11−1b及び11−1cが設けられている。排気通路11−1bは、固定テーブル51及び主ハウジング30を貫通し、主ハウジング30の外部に通じている。また、排気通路11−1cは、Xテーブル53に形成され、該Xテーブルの下面に開口している。
また、仕切り板12−1及び14−1を設置すると、ワーキングチャンバ31とこれら仕切り板が干渉しないように、ワーキングチャンバ31を大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによって、この点を改善することが可能である。この改善例として、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状に構成し、その移動方向の端部を、仕切り板14−1の場合はXテーブル53に固定し、仕切り板12−1の場合はハウジング8の内壁に固定することが好適である。
図17は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の別の実施形態を示している。この実施態様では、鏡筒71の先端部すなわち荷電ビーム照射部72の周囲に、試料であるウエハWの上面との間に絞り部ができるように、円筒状の仕切り16−1が構成されている。この構成によれば、XYステージからガスが放出されてワーキングチャンバ31内の圧力が上昇しても、仕切りの内部24−1は仕切り16−1で仕切られておりかつ真空配管10−1により排気されているので、ワーキングチャンバ31内と仕切りの内部24−1との間に圧力差が生じ、仕切り内部24−1の圧力上昇を低く抑えることができる。仕切り16−1とウエハW面との隙間は、ワーキングチャンバ31内とビーム照射部72周辺の圧力をどの程度に維持するかによって調整すべきであるが、数十μm〜数mm程度が適当である。なお、仕切り16−1内と真空配管10−1とは公知の方法により連通されている。
また、電子光学系70においては、ウエハWに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料をウエハの近傍に設置すると、放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り16−1の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、ウエハWと仕切り16−1との間で放電を起こすことがない。
なお、ウエハWの周囲に配置したリング部材4−1は、ウエハ台すなわちホルダ55に固定された板状の調整部品である。このリング部材4−1は、仕切り16−1の先端部全周に亘って微小隙間52−1が形成されるように、ウエハWと同一の高さに設定されている。これによって、ウエハの端部を含む任意の位置に荷電ビームを照射しても、仕切り16−1の先端部には常に一定の微小隙間52−1が形成され、鏡筒71の先端部周囲の仕切り内部空間24−1の圧力を、安定に保つことができる。
図18は、ステージ装置50及び電子線装置の荷電ビーム照射部72の組合せの他の実施態様を示している。この実施形態においては、鏡筒71の荷電ビーム照射部2の周囲に、差動排気構造を内蔵した仕切り19−1が設けられている。仕切り19−1は円筒形状をしており、その内部に円周溝20−1が形成され、その円周溝から上方に排気通路21−1が延びている。該排気通路は、内部空間22−1を経由して、真空配管23−1に繋がれている。仕切り19−1は、その下端とウエハWの上面との間に数10μm〜数mm程度の微小隙間を形成するよう配置される。
図18の構成によれば、XYステージの移動に伴ってステージ装置50からガスが放出され、ワーキングチャンバ31内の圧力が上昇して荷電ビーム照射部72にガスが流入しようとしても、仕切り19−1がウエハWとの隙間を絞ってコンダクタンスを極めて小さくしているため、ガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝20−1から真空配管23−1へ排気されるため、荷電ビーム照射部72の周囲の空間24−1へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部72の圧力を、所望の高真空のまま維持することができる。
図19は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72のさらに別の実施態様を示している。この実施形態においては、ワーキングチャンバ31内の荷電ビーム照射部72の周囲には仕切り26−1が設けられ、これにより、荷電ビーム照射部72をワーキングチャンバ31から隔てている。仕切り26−1は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材29−1を介して冷凍機30−1に連結されており、−100℃〜−200℃程度に冷却される。部材27−1は、冷却されている仕切り26−1と鏡筒71との間の熱伝導を遮断するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料で形成されている。また、部材28−1は、セラミックス等の非絶縁体からなり、仕切り26−1の下端に形成され、ウエハWと仕切り26−1との間で放電が生じることを防止するためのものである。
図19の構成によれば、ワーキングチャンバ31内から荷電ビーム照射部72に流入しようとするガス分子は、仕切り26−1で流入を阻害されるとともに、流入しても仕切り26−1の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部72の圧力を低く保つことができる。
なお、冷凍機30−1として、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様々な冷凍機を使用することができる。
図20は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せのさらに他の実施態様を示している。XYステージの両可動部すなわちYテーブル52及びXテーブル53には、図16の構成と同様に、仕切り板12−1、14−1が設けられており、ウエハ台すなわちホルダ55が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによって、ステージ装置内の空間13−1とワーキングチャンバ31内とが絞り50−1、51−1を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部72の周りには、図17の構成と同様に仕切り16−1が形成されており、ワーキングチャンバ31内と荷電ビーム照射部72のある空間24−1とが絞り52−1を介して仕切られている。このため、XYステージの移動時に、該ステージに吸着しているガスが空間13−1に放出されて該空間の圧力を上昇させたとしても、ワーキングチャンバ31の圧力上昇は低く抑えられ、空間24−1の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射部72の空間24−1の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り16−1を、差動排気機構を内蔵した仕切り19−1としたり、図18に示したように冷凍機で冷却された仕切り26−1とすることによって、空間24−1を更に低い圧力で安定に維持することができる。
上記した荷電ビーム照射部の構造によれば、ステージ装置を真空のワーキングチャンバ内で高精度に位置決めすることができ、また、照射部の圧力が上昇しにくいため、高精度の画像データを得ることができる。
図21は、ステージ装置50及び電子光学系70の荷電ビーム照射部72の組合せの他の実施形態を示している。この実施形態においては、電子光学系70の先端部すなわち荷電ビーム照射部72がワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30に取り付けられている。ステージ装置50におけるXYステージの台座すなわち固定テーブル51は、主ハウジング30の底壁に固定され、Yテーブル52が固定テーブル51の上に載っている。Yテーブル52の両側面(図19において左右側面)には、固定テーブル51に載置された一対のY方向ガイド7a−2及び7b−2のYテーブル52に面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝は、Y方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向(図面と直交する方向)に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には、公知の構造の静圧軸受け11a−2、9a−2、11b−2、9b−2がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル52は、Y方向ガイド7a−2、7b−2に対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、固定テーブル51とYテーブル52との間には、Y方向の駆動を行うための公知の構造のリニアモータ12−2が配置されている。Yテーブル52には、高圧ガス供給用のフレキシブル配管22−2によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて、静圧軸受け9a−2〜11a−2及び9b−2〜11b−2に対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出して、Yテーブル52を案内面に対してX方向及びZ方向(図21において、図面の上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
Yテーブル52上にはXテーブル53がX方向(図21において、図面の左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル52上には、Yテーブル用のY方向ガイド7a−2、7b−2と同じ構造の一対のX方向ガイド8a−2、8b−2(8a−2のみ図示)が、Xテーブル53を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブル53に面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には、該凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝は、X方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル53の突部の上、下面及び側面には、先に説明した静圧軸受け11a−2、9a−2、10a−2、11b−2、9b−2、10b−2と同様の静圧軸受け(図示せず)が、同様の配置で設けられている。Yテーブル52とXテーブル53との間には、Xテーブル53の駆動を行うための公知の構造のリニアモータ13−2が配置されている。Xテーブル53にはフレキシブル配管21−2によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給する。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル53がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空のワーキングチャンバ31は、公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管19−2、20a−2、20b−2によって排気される。配管20a−2、20b−2の入口側(ワーキングチャンバ内側)は、固定テーブル51を貫通してその上面において、XYステージから高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、ワーキングチャンバ31内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
荷電ビーム照射部72の周囲には、差動排気機構25−2が設けられ、ワーキングチャンバ31内の圧力が高くても、荷電ビーム照射空間30−2の圧力が十分低くなるように構成されている。すなわち、荷電ビーム照射部72の周囲に取り付けられた差動排気機構25−2の環状部材26−2は、その下面(ウエハW側の面)とウエハとの間で微少隙間(数ミクロン〜数百ミクロン)40−2が形成されるように、主ハウジング30に対して位置決めされており、その下面には、環状溝27−2が形成されている。環状溝27−2は排気管28−2により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間40−2は、環状溝27−2及び排気口28−2を介して排気され、ワーキングチャンバ31から環状部材26−2によって囲まれた荷電ビーム照射空間30−2内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、空間30内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。
環状溝27−2は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間30内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般に、ドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が主ハウジング30の内面やステージ装置50の構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、ウエハ表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまうからである。
なお、試料であるウエハWは、通常、Xテーブル53上に直接載置されるのでなく、ウエハを取り外し可能に保持したりXYステージに対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせたウエハ台すなわちホルダの上に載置されているが、ホルダの有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、上記説明においては、説明を簡素化するために省略している。
以上に説明した荷電ビーム装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージとして実現できる。
以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータであるならば、任意のものを適用可能である。
図22は、差動排気機構の環状部材26−2及び該部材に形成される環状溝27−2の大きさの数値例を示している。この例では、環状溝は、2つの環状溝27−2a及び27−2bの二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常、約20L/min(大気圧換算)程度である。ワーキングチャンバ31を、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、該チャンバ31内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材26−2及び環状溝等の寸法を、図22に示したように設定することにより、荷電ビーム照射空間30−2内の圧力を10-4Pa(10-6Torr)にすることができる。
図23は、図21に示した実施形態におけるワーキングチャンバ31に対する排気機構を示している。ワーキングチャンバ31には、真空配管74−2、75−2を介して、ドライ真空ポンプ53−2が接続されている。また、差動排気機構25−2の環状溝27−2は、排気口28−2に接続された真空配管70−2を介して、超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ51−2に接続されている。更に、鏡筒71の内部は、排気口18−2に接続された真空配管71−2を介して、ターボ分子ポンプ52−2に接続されている。これらのターボ分子ポンプ51−2、52−2は、真空配管72−2、73−2によって、ドライ真空ポンプ53−2に接続されている。(図23では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合もある。)
XYステージの静圧軸受けには、フレキシブル配管21−2、22−2を通して、高純度の不活性ガス(Nガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は、ワーキングチャンバ31内に拡散し、排気口19−2、20a−2、20b−2を通して、ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は、環状溝27−2或いは鏡筒71の先端部から吸引され、排気口28−2、18−2を通って、ターボ分子ポンプ51−2、52−2によって排気され、そしてその後、ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。このようにして、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスは、ドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ53−2の排気口は、配管76−2を介して圧縮機54−2に接続され、圧縮機54−2の排気口は、配管77−2、78−2、79−2及びレギュレータ61−2、62−2を介して、フレキシブル配管21−2、22−2に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ53−2から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機54−2によって再び加圧され、レギュレータ61−2、62−2で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
なお、静圧軸受けに供給されるガスは、上述したように、できるだけ高純度でかつ水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管77−2の途中にコールドトラップやフィルタ等(60−2)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして、静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
循環配管系には高純度不活性ガス供給系63−2が接続されており、該不活性ガス供給系は、ガスの循環を始める際に、ワーキングチャンバ31や真空配管70−2〜75−2及び加圧側配管76−2〜80−2を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
また、ドライ真空ポンプ53−2に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ53−2と圧縮機54−2を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。更に、鏡筒72の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
上記した荷電ビーム照射部の構造及び排気機構によれば、ステージ装置を真空のワーキングチャンバ内で高精度に位置決めすることができ、また、照射部の圧力が上昇しにくいため、高精度の画像データを得ることができる。また、これらの構造は、図8に示した電子線装置の実施形態だけではなく、以下に説明する実施形態及びそれらの変形にも適用できることは勿論である。
次に、本発明に係る電子線装置の電子光学系70とウエハWとの検査開始時の位置合わせについて、図24を参照して説明する。ウエハ上には、通常、1又は複数のアライメントマークが形成されており、検査開始時に一次電子線を走査することによりアライメントマークを検出して、ウエハと電子線装置との位置決めを行っている。図24は、位置合わせ時のアライメントマークと一次電子線による走査領域との関係を模式的に表しており、図24において、M1〜M3はウエハ上のアライメントマーク、BS1〜BS9は9つの一次電子線によってウエハWの表面上にそれぞれ形成されるビームスポット、R1〜R9はこれら一次電子線によって検査開始時に走査される領域、Zは電子線装置の一次光学系の光軸を示している。
図24において、アライメントマークM1〜M3のいずれかが光軸Zの近傍、すなわち領域R1〜R9のいずれにも含まれていない場合は、該アライメントマークの位置を検出することができない。また、アラインメントマークM3のように、2つの領域R7及びR8の両方に存在する場合には、1つのアライメントマークが2回検出されることになり、間違ったマーク検出が行われる可能性がある。
一方、アライメントマークM1及びM2のように、1つの領域のみに存在する場合には、正確なマーク検出を行うことができる。すなわち、1つのアライメントマークを単一の一次電子線のみが走査している場合にのみ、それにより検出された信号をアライメント信号として利用する。また、図の例では、領域R1及びR6を走査する一次電子線が最も相互に離れており、また重複領域も少ないので、これらの一方の電子線をマーク検出用に利用するように、XYステージを移動させることが好適である。このように設定することにより、最も広い領域を位置合わせ時に走査した場合でも、単一の電子ビームのみでアライメントマークを走査する場合と同じ条件を満足することができる。
上記した位置合わせは、図8に示した実施形態の電子線装置の他、以降で説明する他の実施形態及びそれらの変形においても適用可能である。
次に、本発明の電子線装置において採用可能な、S/N比を向上させるための方法について説明する。以下の説明においては、電子線のビーム径Dは、電子線のウエハ表面上の像の径寸法(直径又は対角線長)を意味するものとし、電子線の間隔は、隣接する電子線のウエハ表面上における隣接する像の中心間の距離を意味するものとする。また変調伝達関数MTF(Modulation Transfer Function)は、正弦波応答関数、コントラスト伝達関数とも呼ばれる光学系の性能評価法の1つであり、光学系を通した時の物体コントラストに対する像コントラストの比を意味するものとする。電子線装置によりパターンの欠陥を検出する場合においては、最小線幅は、検出すべき欠陥の最小寸法に相当する。
なお、従来は、検出すべきパターンの最小線幅dと検査用電子線のビーム径Dとの比の最適値を明かにすることなく、経験的に、0.1μmの最小線幅dを検出するには、0.1μmφより十分小さいビーム径Dを使用し、最小線幅dが0.05μmのパターンを評価するには、0.05μmφより十分小さいビーム径Dのビームを用いていた。
しかしながら、評価すべきパターンの最小線幅dに対して、電子線のビーム径Dが小さいと、解像度は上がるが、ビーム電流Iが小さくピクセル当りの二次電子数が少ないため、S/N比(信号/雑音比)が小さくなり、評価のスループットすなわち単位時間当り処理量が向上しないという問題があった。逆に、ビーム径Dが大きいと、パターン像がボケる、即ちMTFが小さく、パターンのコントラストが低く高精度の検査を行うことができないという問題、及びS/N比が小さいため、評価の精度及びスループットを向上させることができないという問題があった。
本発明者は、評価すべきパターンの最小線幅(又は欠陥サイズ)dに対する電子線のビーム径Dの比D/dと、S/N比との関係を明かにし、S/N比を最大にできるD/d、及び高S/N比を与えることのできるD/dを求めることにより、高精度、高スループットで線幅の検出及び欠陥検出等ができるようにした。以下に、ビーム径の設定について、詳細に説明する。
図25は、S/N比が最大値又は最大値付近になるビーム径D/最小線幅dの値を求めるために使用されるグラフであり、本発明者によるシミュレーションの結果得られたものである。図25において、グラフG11はビーム径Dとビーム電流Iとの関係(I∝D)を表し、グラフG12はD/dとMTFとの関係を表し、グラフG13はD/dと(MTF)2との関係を表し、グラフG14はD/dと(MTF)2Iとの関係を表している。これらのグラフG11〜G14は、以下のようにして生成された。
まず、細く絞った一次電子線でウエハ表面を走査しウエハから発生される二次電子を検出する際に得られる信号のS/N比は、次の式で表すことができる。
S/N
={信号/(オフセット値+信号)}(MTF)(N*/2)1/2 (1)
ここで、MTFは、有限寸法のビームで有限寸法の一次元パターンを横断する方向に走査する際に得られる信号のコントラストの低下であり、ビーム径/最小線幅=D/dの関数となる。N*は、走査の1ピクセル当りに検出される二次電子の数であり、ビーム電流Iと二次電子透過率の積に比例する。即ち、
*∝(ビーム電流I)・(二次電子透過率) (2)
S/N比を最大にするには、(S/N)2を最大にすれば良いことから、式(1)及び式(2)から、式(3)が得られる。
(S/N)2∝(MTF)2I (3)
MTFは、次の計算式により求めた。
MTF=Max(f1,f2のたたみ込み関数) (4)
1=1 NP/2≦x<(N+1)P/2のとき
1=0 (N+1)P/2≦x<(NP/2)のとき (5)
2=1/σ√(2π)exp{−x2/2σ2} (6)
ただし、N:整数
P=2.34σ(D/d)
σ:ガウス関数の定数で分散値
例えば、図25のグラフの横軸の比D/dが1.0の時のMTFの値は、P=2.34σとして、関数f1を決め、関数f2とのたたみ込み関数を求め、得られた関数の振幅(最小値は0だから最大値)を求めると、図25の横軸の1.0に対するMTFの値が求まる。
同様にして上記の比D/dを0.5、1.5、2.0、・・・・・等としてMTFの値を求め、その値をプロットすると、MTFとD/dとの関係を示すグラフG12が得られる。
このグラフG12から(MTF)を求めてグラフG13を作成し、そして、Iを表すグラフG11と(MTF)を表すグラフG13との積(MTF)2Iとして計算することにより、式(3)の右辺を表すグラフG14が得られる。
図25から明らかなように、グラフG14は、D/d≒1.1で(MTF)2Iが最大値を取り、したがって、(S/N)2すなわちS/N比が最大となる。このときのMTFは、ほぼ0.35である。また、グラフG14は、D/dが0.8〜1.4の範囲で、(MTF)2I(すなわちS/N比)が最大値に近い値であることを示している。このときのMTFは、0.2〜0.6である。更に、グラフG4によれば、D/dが0.95〜1.25の範囲であれば、S/N比がさらに良好であることを示している。このときのMTFは、0.25〜0.45である。
従って、D/dを1.1に極めて近似させることにより、最大のS/N比を得ることができ、D/dを0.95〜1.25の範囲に選択することにより、最大値に近いS/N比を得ることができ、D/dを0.8〜1.4の範囲に選択することにより、比較的高いS/N比を得ることができる。よって、どの程度のS/N比を得る必要があるかに応じて、D/dの値を設定すればよい。例えば、D/d比を0.66〜1.5の範囲にあるようにしてもよい。
これをMTFの範囲に換算して示すと、MTFが0.35のとき、最大のS/N比を得ることができ、MTFが0.25〜0.45の範囲にあるとき、ほぼ最大値に近いS/N比を得ることができ、MTFが0.2〜0.6の範囲にあるとき、比較的高いS/N比を得ることができる。
また、1台の電子線装置を用いて、評価すべきパターンの最小線幅d1であって検査時間をTにしたい場合と、例えば最小線幅d2が2倍(d2=2d1)で検査時間をT/4に短縮したい場合との、両方の要求がある場合等のように、2つ以上の検出モードを実行することが必要な場合がある。このように2つ以上の検出モードがある場合であって、ビーム径Dを変化させる時間を十分小さくできる場合には、それぞれの最小線幅d1、d2に対して使用するビーム径D1、D2を以下の2つの条件
0.8≦D1/d1≦1.4
0.8≦D2/d2≦1.4
を同時に満足するように、ビーム径D1、D2を変化させれば、それぞれの最小線幅に対して最も適した電子線を使用することができる。この場合、ビーム径の変化は、レンズを2段以上設け、ズーム作用で焦点面を変えずに、縮小率のみを可変にすることで実行することができる。この場合には、図8に示した電子線装置の電子光学系70において、一次光学系のマルチ開口板723の開口723aの縮小像位置をZ軸(光軸)方向へ変化させることによって、開口723aからウエハWまでに関する縮小率を変化させ、D/dの値を例えば0.8〜1.4の範囲に入るようにビーム径Dを変化させる。これにより、S/N比をほぼ最大値に近い値にすることができる。
上記したS/N比を向上させるためのビーム径Dの設定については、図8に示した実施形態の電子線装置の他、以降で説明する他の実施形態の電子線装置及びそれらの変形においても適用可能である。
次に、図8に示した電子線装置を用いて、ウエハW上の配線パターンの短絡を検出する方法について説明する。上記したように、ウエハ面の欠陥検査、試料面に形成されたパターンの評価を行うには、ウエハをステージ装置50上にセットし、ウエハ表面への複数の電子線の照射による電荷注入によって付与される電位に応じて変動する二次電子の放出量を、複数の検出器761で観測する。したがって、例えばLSIを電子線により走査して電荷注入を行う場合、LSIの短絡配線部分は、電位の初期値が正常な配線部と異なり、これを利用することにより、短絡配線部分を検出することができる。
なお、軸対称電極730にウエハWよりも低い電圧を与えると、軸対称電極730は一定の電位障壁を形成する。二次電子は、ウエハWのパターンが持っている電位によって、この電位障壁を越えたり又は電位障壁により阻止される。従って、一定の電位障壁を越えた二次電子のみが対応する各々の検出器761により検出され、パターンが持っている電位に依存して二次電子の検出量が増減することとなる。一方、ウエハのパターンには、電子ビームの照射によって電荷が注入され、それらの電荷の持つ静電容量に依存して決まる電位が発生する。従って、例えば、異なったチップであってもパターンが同一であれば、同じ静電容量を有し、電荷注入量が同じであれば、同じ電位を有すると想定することができる。このような論理に基づいて二次電子を観測し、同じ電位になることが予想されるパターンに関して、その予想値より低い電位が観測された場合には、パターンの短絡が存在していると判定することができる。
以上の短絡の検出も、図8に示した実施形態の電子線装置に限らず、以降で説明する他の実施形態およびそれらの変形に適用可能である。
次に、本発明に係る電子線装置において実行されるチャージアップによる影響の低減方法について説明する。従来、マルチビームすなわち複数の一次電子線をウエハ上に照射する方式の電子線装置においては、様々な技術的な課題が未解決のまま残されており、その課題の1つとして、ウエハ面に生じるチャージアップの問題がある。チャージアップ即ち帯電は、絶縁体や浮遊導体などが存在する被観察体すなわち試料において、入射する電子数と二次電子あるいは反射電子として放出される電子数とが同一でない場合に、照射部分が正又は負に帯電してしまう現象である。チャージアップは、絶縁体や浮遊導体などが存在する半導体ウエハにおいては避けられない現象であり、これが発生すると、ウエハ面を等電位にできないばかりか、局所的な帯電により視野内で電位が大きく異なる現象が発生してしまう。
一方、二次電子等の低エネルギ電子を加速し、静電レンズで高倍率に拡大投影する場合、マルチビームは、軸上色収差のため結像できるエネルギ幅が狭く、視野全体でのエネルギの均一性に敏感である。よって、ウエハ面上の電位分布が大きく異なると、その近傍で像が歪んだり、結像できなかったりして、まともな観察ができなくなってしまうという問題がある。これに加えて、ウエハが帯電しすぎると、放電や絶縁破壊を起こして試料そのものを損傷させることもある。
チャージアップの発生は、二次電子発生効率によって決定される。二次電子発生効率とは、発生する二次電子と反射電子の数を、ウエハに照射される電子で割った値であり、二次電子発生効率が1より大きい場合は、ウエハは正に帯電し、二次電子発生効率が1よりも小さい場合は、ウエハは負に帯電する。したがって、絶縁体や浮遊導体に対しては、極力二次電子の発生効率が1に近くなるように一次電子線を照射すれば、前記のような問題点は低減できることがわかるはずであるが、実際はそれ程単純ではない。
その結果、半導体ウエハ上には、二次電子発生効率の異なる複数種の絶縁体や浮遊導体が混在する場合が多いので、これらをチャージアップさせずに画像を得ることが非常に困難であった。また、電位コントラスト像など、わざとある程度チャージアップさせないと観察できない像もあり、このような場合に、チャージアップの程度を制御することが困難であった。
例えば、絶縁体を含む半導体ウエハの実際の例として、図26に示すような断面構造を有するものについて検討する。図26において、Suはシリコン基板であって半導体であり、m1、m2は別種の絶縁体であり、半導体ウエハの表面は、CMP等のプロセスで平坦化されているため、光学顕微鏡観察ではもちろんのこと、通常のエッジ強調型のSEM観察でも、像コントラストが低く、良好な観察像を得ることができない。
このウエハをランディングエネルギ(入射エネルギ)がV1の電子Ebで照射すると、チャージアップが起こってランディングエネルギがシフトする。リーク電流がない限り、そのシフト量は、絶縁体m1及びm2の二次電子発生効率を表す図27の「A」及び[b]のグラフのa、bまで達し、そこで平衡状態になる。その結果、チャージアップ電位はそれぞれ、Us/A(=a−V1)及びUs/B(=b−V1)だけ上昇する。
この場合、
min<Us/A<Umax (7)
min<Us/B<Umax (8)
の2つの不等式を同時に満足すればよいが、図27のグラフにおいて、ランディングエネルギV1の位置を変えても、一般的には達成できない場合が多い。
そこで、本発明に係る電子線装置70においては、図28に示すように、ランディングエネルギV1の電子に加えて、ランディングエネルギV2の電子Eb’でも照射する。ここで、ランディングエネルギV1及びV2は、図29に示すように、絶縁体m1及びm2の平衡点a及びbを挟んで両側に位置するように設定する。
二つの異なるエネルギを持つ電子で照明されたそれぞれの絶縁体m1及びm2のチャージアップ電位は、次のようにして検出する。照射電子のエネルギVに対する絶縁体m1及びm2の二次電子効率曲線をそれぞれFA(V)及びFB(V)とする。また、ウエハ上のランディングエネルギV1及びV2の照射電子密度をそれぞれI1及びI2とする。これら二つのエネルギ照射により、絶縁体m1及びm2の表面から放出される二次電子量密度Q1及びQ2はそれぞれ、以下のように表すことができる。
Q1=I1・FA(V1) + I2・FA(V2)
Q2=I1・FB(V1) + I2・FB(V2)
一般に、Q1及びQ2の値は、照射電子密度I1及びI2と同じでない。その結果、チャージアップが起こり、それぞれの絶縁体Us/A及びUs/B だけ表面電位の変化が生じた後に、平衡状態に達する。平衡状態は、以下のように表すことができる。
I1+I2 = I1*FA(V1+Us/A)+I2*FA(V2+Us/A) (9)
I1+I2 = I1*FB(V1+Us/B)+I2*FB(V2+Us/B) (10)
これらの2つの式(9)及び(10)は、I1/(I1+I2)=αとおいて変形すると、以下のように書き換えることができる。
1=α*FA(V1+Us/A)+(1−α)*FA(V2+Us/A) (11)
1=α*FB(V1+Us/B)+(1−α)*FB(V2+Us/B) (12)
s/A及びUs/Bを、不等式(7)及び(8)を満たす特定の値に決め、V1、V2及び照射総電流密度に対するI1の比αの内の一つを規定値として、式(11)及び(12)が同時に成立するように残りの二つを演算して設定すれば、絶縁体を含んだウエハを良好なる結像状態で観察することができる。そして、その上で、照射総電流密度を調整することにより、最も好ましい照射条件で照明を行うことができる。
なお、式(11)、(12)中のV1、V2及び照射総電流密度に対する比αの全てを変数として求めれば、3種類の絶縁体にまで対応できる。更に照射電子エネルギを1種増す毎に、新たなVとIの二つの変数が増すので、対応できる絶縁体は2種づつ増えていく。
以上説明したように、複数の電子線によりウエハを同時に照射でき、各電子源からの電流量と入射エネルギを独立に制御できるので、各絶縁体又は浮遊導体のチャージアップによる表面電位の変化を、それぞれ目標値にするように電流量と入射エネルギを設定することができる。よって、各絶縁体又は浮遊導体のチャージアップによる表面電位の変化(Us)を、像観察に必要な最低量(Umin)と、ウエハ自身を損傷させることなくかつ歪みの少ない観察画像を得られる最大量(Umax)との間になるように制御することができ、明瞭で歪みの無い画像を得ることができる。なお、視野内を均一な照射条件で照明することが好ましく、これにより、部分的なチャージアップや、視野内での照射むらに基づく画像の明暗がなくなり、より明瞭な画像を得ることができる。
チャージアップによる表面電位の変化を目標値に制御するための上記方法は、図8に示した実施形態の電子線装置に適用可能であるだけでなく、以下に説明する他の実施形態及びそれらの変形に適用可能である。
なお、少なくとも1つの電子銃の電流量とウエハへの入射エネルギとを時分割的に制御可能にすることにより、あたかも電流量と入射エネルギが異なる複数の電子銃を具備しているかのような効果を持たせることが好適である。チャージアップにおいては、時間的、空間的な重ね合わせが成り立つので、このようにしても、チャージアップの問題を低減することができる。
この場合、二次電子を受光して電気信号に変える検出器は、二次電子−光変換器とPMT等の光電変換器を組み合わせて使用し、時分割的に切り換えて照射される照明の1周期分の電荷をCCDに貯えた上で取り出すことにより、全ての異なる照明光に対する出力を加え合わせたものを出力することができる。この場合でも、視野内を均一な照明条件で照明することが好ましい。
次に図8に示した電子線装置を用いて、ウエハWを走査する方法について、図30〜図32を参照して説明する。
1つの走査方法においては、図30に示すように、ウエハWは、分割された小領域200単位で一次電子線が走査される。電子線装置では、一次電子線の視野が、小領域200より少し大きい領域300となるように、小領域200が設定される。小領域200は、一次電子線を電気的に偏向できる領域に対応している。ウエハから発生される二次電子を検出後、ウエハを移動させて次の小領域200を照射するが、該次の領域は、隣接する小領域を少なくとも1以上スキップした未照射の小領域とする。荷電電荷は、時間とともに減少するので、照射済の小領域の帯電による影響が十分に小さく時間の経過後に、スキップした小領域を照射する。照射順序の選択方法の一例として、図30に示したように、64に分割した小領域を、「1」、「2」、「3」、……の順序で照射すると、1つの小領域を照射後の該小領域に隣接する小領域の照射まで、十分な時間をおくことができる。なお、ウエハWを移動中に、照射済みの小領域から検出した二次電子に基づく検査を実行することが好適である。
このような小領域の照射順序の選択は、1つの一次電子線を用いる電子線装置にも適用できる。
図31は、別の走査方法を示しており、この例では、ウエハWをストライプ状の小領域R1、R2、R3、……に分割している。そして、一次電子線を小領域の短軸方向(X軸方向)に走査しながら、小領域の長軸方向(Y軸方向)に移動させる。小領域を1つスキップさせる場合、走査しながら+Y軸方向にウエハを移動させ、小領域R1の照射を行い、次いで、ウエハをX軸方向へ移動させた後、−Y軸方向にウエハを移動させながら小領域R3の照射を行う。順次、1つおきに照射を行い、小領域Riの照射後、小領域R(i+1)(i=1,2,…,n−1)の照射を行う。
図32は、さらに別の走査方法を示している。この方法においては、小領域を走査により照射するに際して、走査を行う小領域に近い側から走査を開始し、遠い側へ進めるものである。すなわち、一列毎に走査を進める場合、小領域R11を走査した後、小領域R12をスキップして、小領域R13走査するが、その場合、小領域R1の走査は、小領域R13に近い点P11から開始し、最も遠い点P12で終了する。小領域R11の走査が終了すると、ウエハWをステップ移動させて、小領域R13の走査を点P13から開始し、点P14まで行う。その後、小領域R13に隣接するR14をスキップして、小領域R15をおこなう。その行が終了すると次の行に移動して、小領域毎に同様に走査を行う。このような走査方法によれば、帯電による影響を少なくすることができる。なお、直前に走査した小領域Rijの走査終了点と離れている小領域の点から走査を開始すると言う前提で、小領域Rijの終了後、隣接する小領域Ri(j+1)をスキップせずに、該小領域Ri(j+1)を走査してもよい。
また、図32の各小領域の走査において、例えば、小領域R22に示すように、点P15から走査を開始し、点P16に到達した時点で点P17に戻り、そして、点P18まで走査する用にしてもよい。なお、小領域R22内の破線は、帰線を示している。このように、各小領域内において、1つおきにラスタスキャンすることにより、直前の走査による影響を小さくすることができる。スキップする線を1本ではなく、任意の複数本とすることができる。
図30〜図32に示した走査方法においては、小領域のスキップは、電気的に制御することができるので、時間的なロスはほとんどなく、しかも帯電による影響を少なくすることができる。
以下に、本発明に係る電子線装置の図8に示した実施形態以外の種々の実施形態について説明する。
図33は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70の一実施形態を示している。この実施形態は、放出された電子をマルチビームに生成するためのマルチ開口板の複数の開口を、光軸の周りに回転させて調整する機能を持たせたものである。
図33に示すように、この実施形態の電子光学系70は、電子線17−3を発生する電子銃1−3と、電子線を照射されたウエハW表面からの二次電子をマルチ開口板14−3の開口に結像させる二次光学系(写像投影部)25−3を備えている。電子銃1−3は、ZrOの熱電界放出電子銃であり、<001>方位のタングステンの針状カソードにZrを溶接し、針の先端にZrを拡散させ、酸素雰囲気中で活性化させたものである。このように形成された電子銃1−3は、図34のX−Y平面上のビーム断面として示すように、光軸(すなわち図33において紙面の上下方向であり、図34において紙面と直交する方向であるZ軸)の方向に強い電子線20−3を放出するが、それよりさらに強い電子線17−3を側面の4つの<001>方位の方向へ放出することが知られている。この強い電子線17−3は、図34に示すように、光軸の周囲の4つの方向に放出される。
図34に示す5つの強い電子線17−3、20−3をコンデンサレンズ2−3により収束してクロスオーバ像5−3を形成する。コンデンサレンズ2−3とクロスオーバ像5−3との間に開口4−3aを有するマルチ開口板4−3を光軸に垂直に配置する。マルチ開口板4−3は、光軸方向の電子線20−3を捨て、光軸のまわりの4つの方向の強い電子線17−3を通す4個の小さい開口4−3aを有する。4個の開口4−3aを通過した電子線は、縮小レンズ6−3、8−3で縮小され、ステージ装置50上のウエハW上に、4個の直径100nmのマルチビームを結像させる。
電子線17−3の強度が最大の場所の中央部と開口4−3aの位置は、一般に、光軸(Z軸)を中心として所定角度ずれているので、回転レンズ3−3を設け、強い電子線17−3を図33において時計まわり方向へ回転させ、電子線17−3の強度が最大の場所の中央部と開口4−3aの位置を一致させる。また、ステージ装置50によりウエハWをY軸方向へ連続移動させながら、開口4−3aを通過した4つの強い電子線17−3をX軸方向へ走査させる。ウエハの評価を行うために、電子線17−3のX軸方向へ投影した間隔は、いずれのビーム間においても等しいことが好ましい。これは、図9の[A]を参照して説明した電子線装置の電子光学系70の場合と同様である。
回転レンズ3−3は、コンデンサレンズ2−3と同じZ軸方向位置に配置される。回転レンズ3−3は、断面がコの字型の軸対象の強磁性体のコアと、その内部に光軸の周りに巻いたコイルとから構成されており、コイルに流す電流の強さで回転料を制御できる。されにコンデンサレンズ2−3は、上極及び下極が接地され、中央電極に負の高圧を与えたユニポテンシャルレンズとして構成されている。従って、各電子線は、中央電極位置でエネルギが小さく、回転レンズの小さい磁場で回転することができる。
図34は、走査方向(X軸方向)に平行の、光軸を通るX−Y平面上の4つの強い電子線17’−3を、Y軸からの角度φ変位した位置に示している。図35に示すように、X軸方向の間隔e、f、gが互いに等しいためには、
e=cosφ−sinφ、f=2sinφ、及びg=cosφ−sinφであるから、
2sinφ=cosφ−sinφ
を満たすように、角度φを設定すれば、4つの電子線17’−3のX軸方向間隔e、f、gを等しくすることができる。
4つの電子線17’−3の角度φを調整する工程は、回転レンズ18−3により行う。回転レンズ18−3は、電子線17’−3のクロスオーバ位置に一致させて配置し、回転レンズ18−3の強度を変化させても、クロスオーバ像の倍率が変化しないようにする。
ウエハWから放出された二次電子は、対物レンズ40−3で拡大され、ウィーンフィルタ(E×Bフィルタ)23−3の手前で約4倍の拡大像を作り、E×Bフィルタで図28の右方へ偏向され、拡大レンズ12−3、13−3により、二次光学系側のマルチ開口板14−3に結像される。マルチ開口板14−3は4つの開口14−3a(開口4−3aよりも大きい)を備え、これらの近くへきた電子はすべて、その開口を通過して、検出器15−3により検出される。しかしながら、4つの一次電子線17’−3のそれぞれによりウエハ表面から発生された電子が対応する開口14−3aに入らず、隣接する開口へ入ることのないように、各開口14−3aの回転角度が各電子線17’−3の回転角度に合っている必要がある。この回転角度を合わせる工程は、拡大レンズ12−3、13−3とマルチ開口板14−3との間に配置した回転レンズ19−3により実行される。
図33に示した電子光学系70の分解能は、対物レンズ40−3の収差により決定される。この収差を小さくするため、対物レンズ40−3の近傍に磁気レンズ21−3が配置される。磁気レンズ21−3は、レンズ電界とレンズ磁界を重畳させ、収差を低減する。回転レンズ3−3のZ軸(光軸)方向位置は、静電レンズ2−3の各電極に付与される電圧を考慮し、最も低い電圧を付与される電極位置に磁場の最大値が一致するような位置として設定される。図33において、電子銃1−3から光軸方向へ放出される電子線20−3は、対応する開口がマルチ開口板4−3に設けられておらず、したがって利用されていない。
図33に示した電子光学系70において、ウエハ表面の欠陥検出は、得られた画像信号により生成される画像を標準のパターンデータと比較するか、又はダイ同士の検出画像間を比較することにより行われ、ウエハ表面の欠陥レビューは、ウエハ表面上における一次電子線の走査と同期させたモニタ上のビームの走査により得られる画像観察により行われる。また、パターン線幅測定は、ウエハ表面上における一次電子線の走査をパターンの短辺方向に行ってそのときに得られた画像に基づいて行われ、パターン電位測定は、ウエハ表面に最も近い電極に負の電位を与え、ウエハ表面の高い電位を持つパターンから放出される二次電子を選択的にウエハ側へ追い戻すことにより行われる。
上記したように、図33に示した電子光学系70は、電子銃の近傍に回転レンズを設け、電子線を光軸のまわりに回転させ、電子線強度が最大の場所の中央部と穴すなわち開口の位置のずれを解消する。これにより、電子線強度が最大の場所の中央部と穴の位置が精度良く一致される。また、4つの強い電子線をウエハ上でX軸方向へ走査する工程において、回転レンズを設けて4つの電子線を回転させることにより、4つの電子線のX軸方向へ投影した間隔をいずれのビーム間においても等しくするように調整することができる。この回転レンズを、電子線のクロスオーバ位置に一致させて配置することにより、回転レンズの強度を変化させても、クロスオーバ像の倍率及び結像条件に影響を与えないようにすることが可能である。
さらに、対物レンズの近傍に磁気レンズを備え、このレンズを調整することにより、光学系の分解能を決定する対物レンズの収差を小さくすることができる。この磁気レンズは、ウエハ上の開口像の近傍に配置されるため、クロスオーバ像の結像条件又は開口像の結像条件に影響を与えることなく、電子線の回転を制御できる。そして、レンズ電界とレンズ磁界を重畳させることにより、対物レンズの収差を低減することができる。さらにまた、二次光学系のマルチ開口板の検出用の開口の回転角度と二次電子線の回転角度を、拡大レンズ12−3、13−3と検出用の開口の間に配置した回転レンズ19−3により、調整して一致させることができるので、二次電子線による像と検出開口の回転方向を一致させることができ、クロストークを小さくすることができる。
なお、マルチビームの数が4個に限定されないことは、言うまでもない。
図36は、本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示している。この実施形態は、特に、一次光学系におけるマルチビームを生成するためのマルチ開口板の構成、電子線の強度の時間変動を実時間で補正可能である点、並びに、マルチ開口板のバラツキや二次電子の透過率を増幅器の利得を調整することにより補正可能である点に特徴を有している。
図36に示した電子線装置は、一次光学系10−4と、二次光学系20−4と、検査部30−4とを備えている。一次光学系10−4は、電子線を放出する電子銃11−4と、電子銃11−4から放出された電子線を集束する静電レンズ12−4と、複数の小開口が形成されたマルチ開口板(この実施形態では、電極として機能するので、開口板電極と称する)13−4と、電子線を集束する静電中間レンズ14−4と、静電偏向器15−4と、E×B分離器兼偏向器16−4と、静電偏向器17−4と、静電対物レンズ18−4とを備え、それらは、図36に示したように、電子銃11−4を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される電子線の光軸OがウエハWの表面(試料面)に鉛直になるように、配置されている。
電子銃11−4は、この実施形態では、熱電界放出が可能なように、先端を尖らせたタングステンの針にZrをコーティングした単一のカソードを有する熱電界放出電子銃である。なお、カソードのZrのコーティングは、その後、酸素雰囲気中で処理されてZrOに変化し、仕事関数が下がる。この電子銃11−4から放出される電子線の強度分布は、図37にグラフCLで示したように、中央(光軸位置)が最大で、光軸から離れるにしたがって軸対称に減少する形状を有している。
光軸から遠く離れても強度があまり減少しない電子銃として、LaB6カソードを持った電子銃を用いた方が良い場合もあるが、この場合は、電子銃のエミッタンスが大きく取れるため、多くのビームを作れる。また、この電子銃は、空間電荷制限領域で使う方が、がショット雑音が小さくて有利である。
開口板電極13−4は、一次光学系10−4の像面湾曲を補正するために、図36及び図38の「A」に示したように、中央部分131−4が周囲の他の部分132−4よりも電子銃11−1側に突出し、かつ四隅の部分134−4が反電子銃側に突出した3段の段付き構造になっている。開口板電極13は、例えば、Ta、Pt等の高融点金属でつくられており、この例では、図38に示したように、3行3列で合計9個の開口すなわち小孔133−4a〜133−4iが形成されている。中央部分131−4には孔133−4aが形成され、周囲の部分132−4には孔133−4(133−4b、133−4c、133−4d及び133−4g)が、更に四隅の部分134−4には孔133−4(133−4e、133−4f、133−4h及び133−4i)が形成され、図38の[A]に示したように配置されている。これらの孔の数は、9個に限定されるものではない。これらの孔は、例えば、2μmφの円形で、隣接する孔の間のピッチは1000μmであるが、大きさ及びピッチは任意に選択できる。ただし、孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gは、光軸を中心とした同一の円周上に配置され、孔133−4e、133−4f、133−4h及び133−4iは同一の円周上にされている。そして、この段付き構造のずれ量λは、一次光学系の像面湾曲に相当する値であり、光軸O上にある孔133−4aが、他の孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gより像面湾曲に相当する値λで電子銃側に接近しており、かつ孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gが孔133−4e、133−4f、133−4h及び133−4iより像面湾曲に相当する値λで電子銃側に接近している。なお、図38の[A]に示す開口板電極13−4では、中央部分131−4が円形に突出させているが、方形に突出させてもよく、また中央部分131−4、部分132−4を部分134−4に対して円形に突出させてもよい。更に、開口板電極は、図38の[B]において13’−4で示したように、中央部が中高になる曲面形状にしてもよい。この場合、図38の[A]の開口板電極と同様に、孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gは光軸を中心とした同一の円周上に配置され、孔133−4e、133−4f、133−4h及び133−4iは同一の円周上にされている。そして、光軸Oにある孔133−4aが他の孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gより像面湾曲に相当する値λで電子銃側に接近しており、かつ孔133−4b、133−4c、133−4d及び133−4gが孔133−4e、133−4f、133−4h及び133−4iより像面湾曲に相当する値λで電子銃側に接近している。
静電偏向器15−4及び17−4は、この実施形態では、8極静電偏向器である。8極静電偏向器15−4及び17−4、静電レンズ12−4、14−4及び18−4自体は公知の構造のものであるから、それらの詳細な説明は省略する。E×B分離器すなわちE×B型偏向器16−4については、図10に示した。また、開口板電極に形成される小孔は、3行3列に限定されるものではなく、図39に開口板電極13”−4として示したように、孔135−4a〜135−4dの4個の円形の小孔とするか、或いは、136−4a及び136−4bの2個の円形の小孔とすると、各小孔を通過する電子線のビーム強度をほぼ同じにできる。また、光軸からの距離がそれぞれ等しいため、像面湾曲も補正する必要がない。
図36に戻って、二次光学系20−4は、一次光学系のE×B型偏向器16−4近くの焦点面FP近傍で光軸Oに対して所定の角度で傾斜している光軸O’に沿って配置された偏向レンズ21−4及び22−4と、マルチ開口板23−4とを備えている。マルチ開口板23−4には、開口(図36では、3つの開口のみを図示)が、一次光学系のマルチ開口板13−4の孔に対応して、3行3列で9個形成されている。電子光学系70は、マルチ開口板23−4の開口毎に、検出器31−4(図36では、31−4a、31−4b、31−4cのみ図示)を有している。それぞれの検出器31−4にはそれぞれ増幅器32−4(図36では32−4a、32−4b、32−4cのみを図示)を介して、信号処理部33−4(図36では33−4a、33−4b、33−4cのみを図示)が接続されている。各増幅器には、利得調整器34−4(図36では34−4a、34−4b、34−4cのみを図示)がそれぞれ設けられ、その増幅器の利得或いはオフセット値を調整する。利得調整器34−4は、共通の増幅器35−4を介して開口板電極13−4に電気的に接続され、該開口板電極を流れる電流の変化の信号を、利得調整器34−4に送る。これは、熱電界放出電子銃11−4から放出される電子線のビーム強度が時間的に変動するので、開口板電極13−4をアースから絶縁しておき、ビーム電流を測定してビーム電流変動の測定値を二次電子信号の増幅率すなわち利得或いはオフセット値に実時間でフィードバックし、ビーム電流の変動が信号に影響を与えないようにするためである。なお、開口板電極に形成される孔の数は9個に限定されるものではないことは、上記した通りである。この場合、当然ながら、マルチ開口板23−4に形成される開口、検出器、増幅器等の数も、それに合わせた数及び配置となる。また、開口の大きさは、2μmφの円形で、隣接する開口間のピッチは1200μmである。開口板電極の孔及び開口板の開口は、円形だけでなく、方形に形成してもよい。
次に、図36に示した電子線装置の動作について説明する。単一のカソードを有する電子銃11−4から放出された電子線は、コンデンサレンズすなわち静電レンズ12−4により集束され、開口板電極13−4を照射する。電子線は開口板電極13−4に形成された複数の小孔133−4を通過して試料に向かって進み、途中に設けられた静電中間レンズ14−4及び静電対物レンズ18−4により縮小されてウエハWの表面(試料面)に結像する。ウエハ面からは一次電子の照射により二次電子が放出され、その二次電子は、静電対物レンズ18−4とウエハWとの間に印加された、二次電子に対する加速電界で加速、収束され、比較的小さな口径のビームとなって静電対物レンズ18−4を通過し、一次ビームの焦点面FPの手前でほぼ焦点を結ぶ。二次電子は、焦点面FPの位置において、E×B型偏向器16−4により光軸O’に沿って移動するように偏向される。偏向された二次電子は、静電レンズ21−4に入射する。静電レンズ21−4は、ウエハ面で2eVの電子に対してレンズ21−4の手前に結像するように励磁されている。二次電子は、更に静電レンズ22−4で拡大されて検出用のマルチ開口板23−4において結像する。なお、開口板電極13−4の各孔133−4を通ったビームによりウエハ面から放出された二次電子は、開口板23−4の対応する開口を通して、対応する検出器に導かれる。
上記のようにしてマルチ開口板23−4で形成された像は、該開口板の各開口を介して、該開口板の背面に開口毎に配置された検出器31−4により検出され、これらの検出器31−4によって、電気信号に変換される。検出器からの信号は増幅器32−4によって増幅され、それぞれ対応する信号処理回路33−4に送られ、それらの信号処理回路により、ウエハ面の欠陥検査、形成されたパターンの線幅の測定、欠陥のレビュー等が行われる。そして、8極静電偏向器15−4及び17−4により、一次光学系10−4を進む複数の電子線のビームでウエハ面の所定の区域を走査させて、その区域に付いての検査等を行なう。この場合、8極静電偏向器の偏向感度比を公知の方法により最適化することにより、偏向軌道が光軸上のZ軸方向位置を静電対物レンズ18−4の主面近傍のどの位置にするかによって、大きく偏向した時のビームボケを最小にすることができる。ウエハ面全体に付いてビームで走査するには、上記区域内でのビームの走査とウエハ面のX−Y方向の移動とを組み合わせて行う。
増幅器34−4により信号を増幅する際には、開口板電極13−4の小孔を通過した電子線量の不均一を補正するため、利得調整器により個々の増幅器毎に利得或いはオフセット値を調整する。この場合、電子線の照射により開口板電極を流れる電流の時間変動を測定し、その測定結果を利得調整器に入力させて利得或いはオフセット値の調整に使用することが可能である。なお、段付き形状の開口板電極13−4と、利得或いはオフセット値を調整可能な増幅器とを組み合わせて使用した例について説明したが、平坦の開口板電極と利得を調整可能な増幅器とを組み合わせて使用してもよい。
図36に示した電子線装置を使用してウエハ面の欠陥検査、パターンの線幅の測定、欠陥のレビュー等を行うには、まず、開口板でビームを形成する小孔の大小、及び二次電子透過率の大小を予め補正するため、パターンが形成されていないウエハを所定の位置にセットして電子線装置を動作させる。そして、各増幅器32−4の出力が同じになるように、各利得調整器34−4により、それぞれの増幅器の利得とオフセット値を補正する。次に、検査すべきウエハをセットし、電子線装置を上述のように動作させて、ウエハ面から放出された二次電子を検出器により検出し、増幅器により増幅された電気信号を信号処理回路33−4で処理する。この信号処理回路を、処理した信号を例えば図示しない比較回路で記憶部に記憶されている設計通りのパターンに関する参照データと比較することによって、ウエハに形成されたパターンの欠陥の有無や欠陥位置を検出する欠陥検出回路に置き代えることによって、欠陥検査を行うことができる。また、信号処理回路を線幅測定装置に置き代えれば、ウエハ面に形成されたパターンの線幅を測定できる。更に、信号処理回路に更にCRT等のモニタを接続すれば、欠陥のレビューが可能になる。更にまた、一次光学系のどこかにビームをブランキングする機能を持たせれば、EBテスタとして使用することもできる。
図36に示した電子線装置によれば、電子銃からの電子線の強度の時間変動を実時間で補正することができるので、検査を正確に行うことができる。また、マルチ開口板のバラツキや二次電子の透過率を、増幅器の利得を調整することにより補正することができるので、各検出器からの出力にバラツキがない。
図40は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70を示している。この実施形態においては、図40に示すように、電子銃1−5から放出された電子線を3段のコンデンサレンズ3−5、5−5、6−5で光源像を拡大させて最終レンズ8−5の入射瞳上に結像させる(図面中では、実線16−5で示す)。コンデンサレンズ3−5のウエハW側には、光軸を中心にした同一円周上に等間隔で4つの穴を設けたマルチ開口板4−5が設けられ、それらの穴を通過した電子線は、2つのコンデンサレンズ5−5、6−5と対物レンズ8−5で縮小されて、ウエハW上に結像される(破線14−5で示す)。対物レンズ8−5の電子銃側にはE×B分離器7−5が設けられており、一次電子ビームを進行方向の右へ10°、二次電子ビームを進行方向の右に30°偏向させる。すなわち、一次電子線のE×B分離器7−5の電界による偏向量は磁界による偏向量の半分に設定されている。電界による偏向色収差は、磁界による偏向色収差の半分であるから、電界による偏向色収差と磁界による偏向色収差は互いに打ち消し合い、偏向色収差をほぼ0にすることができる。さて、ウエハW上の4つの一次電子ビーム照射点から放出される二次電子は、拡大レンズ10−5の手前に4つの拡大像を形成し、さらに該拡大レンズ10−5で拡大され、4つの穴を有するマルチ開口板11−5に像を結ぶ(一点鎖線12−5で示す)。マルチ開口板の各穴の背後には検出器13−5が配置され、結像された二次電子像を検出し、電子信号として出力する。
E×B分離器7−5の偏向中心が一次電子ビームの結像点ではないので、一次電子ビームに偏向色収差が大きくなる恐れがあり、このため、磁界での偏向量を電界での偏向量の2倍にすることにより、偏向色収差を小さくしている。具体的には、電界で10°左へ偏向し、磁界で右へ20°偏向し、差し引き10°右へ偏向する様にしている。これに対応し、ウエハWは、入射する一次電子ビームを垂直に受けるために、10°傾けて配置してある。もちろん、ウエハを水平にして一次光学系を10°傾けてもよい。
電子銃内部のカソード2−5は、熱電界放出電子銃のカソードで、光軸方向は<100>方位で、<310>又は側面の<100>方位の4つの方向に光軸方向より強いビーム放出があるので、<100>方位の放出(emission)は捨て、<310>または側面の<100>方位の放出のみ下へ通すようにする。<310>または側面の<100>方位の放射は十分広い方向に放出されるので、コンデンサレンズ3−5の励起を変え、対物レンズ8−5上のクロスオーバ寸法を大きく変えても、マルチ開口板4−5の各穴を照射するビーム電流はほとんど変らず、ビーム電流を不変にすることができる。
コンデンサレンズ5−5、6−5をズームレンズ動作させ、即ち、クロスオーバ結像条件及び開口像結像条件を変えないで、クロスオーバの拡大率を可変としてビーム寸法やビーム電流を調整してもよい。また、2つのレンズをズームレンズにすることにより、ビーム間隔を調整するようにしてもよい。
図40に示した電子光学系70によれば、一次光学系を4つのレンズで構成し、二次光学系を1つのレンズで構成しているので、構造が簡単であり、その制御、すなわち、ビーム間隔、ビーム寸法(径)、ビーム電流の制御が容易になる。クロスオーバは、すべてのレンズによる拡大により形成され、開口像は総てのレンズによる縮小により形成されるので、光学系が簡単になる。また、二次光学系において、対物レンズとE×B分離器後の1つのレンズで十分な拡大率が得られる。
マルチ開口板4−5及び11−5の開口は、対応して配置される必要があるが、4個に限定されず任意の複数個に設定可能であることは、勿論である。
図41は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70のさらに別の実施形態を示している。この実施形態は、レンズ段数を極力減少させ、簡単化したものである。レンズ段数が少ないため、一次電子線と二次電子線の合焦及び軸合わせを容易に行うことができ、しかも、電子線間のクロストークを低減することができるものである。
図41に示した電子光学系70において、電子銃1−6の内部には、単結晶LaB6カソードが、円周上に突起が並んだ形状に加工され配置されている。電子銃から放出される電子線は、コンデンサレンズ3−6により集束され、マルチ開口板4−6に照射される。マルチ開口板4−6は、同一円上に設けられた9個の開口を有しているおり、X軸上に投影した場合の開口の相互の間隔が等しくなるように設定されている。これは、図8に示した電子線装置の電子光学系70に関連して図9の[A]に示した場合と同様である。また、後述する二次光学系のマルチ開口板14−6の開口及び複数の検出器15−6の配置関係も、図9の[A]に示した場合と同様である。
電子銃1−6から放出された電子線は、マルチ開口板4−6の開口を通過してマルチビーム化され、縮小レンズ5−6により点7−6に結像され、さらに、対物レンズ10−6を介してウエハW上に結像される。対物レンズ10−6は、中央電極に正の高電圧が印加されるユニポテンシャルで、これにより、複数の一次電子線すなわちマルチビームは、ウエハWに射照されるときに減速される。
一方、マルチビームの照射によりウエハから放出される二次電子は、対物レンズ10−6が作る電界で加速され、静電偏向器8−6及び電磁偏向器9−9からなるE×Bフィルタにより二次光学系側へ偏向され、拡大レンズ13−6を介して二次光学系用のマルチ開口板14−6に合焦される。点線18−6は、マルチビームの照射により放出された二次電子のうち、ウエハから垂直に出た二次電子の軌道であり、この二次電子がクロスオーバを作る位置に、二次電子の開口を決めるアパーチャ板20−6を設けている。これにより、大きい収差のビーム取り除くことができる。
図41の電子光学系70において、一次電子線と二次電子線の両方に共通する光路は、E×BフィルタとウエハWの間で、レンズは対物レンズ10−6しか存在しない。従って、一次電子線及び二次電子線に関するレンズの合焦やレンズの軸合せは簡単である。この点は、図8等に示した電子光学系においても同様である。即ち、図41の電子光学系70に関して言えば、対物レンズ10−6は、一次電子線の合焦条件のみ満たせばよく、二次電子線の合焦は、例えば、マルチ開口板14−6、開口アパーチャ板20−6の位置を機械的に移動させることにより、行うことができる。
対物レンズ10−6への軸合せは、軸合せ装置19−6により行えば二次電子の軸を狂わせないで行うことでき、拡大レンズ13−6への軸合せは、E×BフィルタすなわちE×B分離器を、一次電子線のウィーン条件を満たしながら偏向量を調整すれば、一次電子線の軸に影響を与えないで、レンズ13−6への軸合せが可能である。
ウエハW上のマルチビーム照射点から放出された二次電子が合焦されるマルチ開口板14−6でのボケは、市販のソフトウェアでシミュレーションを行えば容易に計算できる。また、ウエハ上でのマルチビームのビーム間隔が決まっている場合には、マルチ開口板14−6でのボケ量を、ウエハWから該開口板14−6迄の拡大率で割算することにより、ウエハ上でのボケが算出できる。このボケ量がビーム間隔より小さくなるように、開口アパーチャ板20−6の口径を決めてもよい。他の方法としては、開口アパーチャ板20−6の口径を一定の値とし、ウエハ上での値に換算した二次電子像のボケよりもマルチビーム間隔を大きくしてもよい。
図41に示した電子光学系70においては、他の実施形態の電子光学系と同様に、一次電子線を減速するので収差が小さくなり、細く絞ることができる。また、二次電子を対物レンズで加速するので、光軸に対して大きい角度で放出された二次電子も対物レンズで細いビーム束に絞られ、よって、二次光学系の開口を小さくすることができる。
図42は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70の別の実施形態を示している。この実施形態においては、電子線をウエハWの表面に照射する一次光学系10−7と、ウエハWから放出された二次電子を検出面に結像する電子線結像光学系としての二次光学系20−7と、二次電子を検出する検出系30−7とを備えている。同図において、電子銃11−7から放出された電子線(一次電子線)は、静電レンズからなるコンデンサレンズ12−7により集束されて、点COにおいてクロスオーバを形成する。このクロスオーバ点COに、NAを決める開口141−7を有する絞り14−7が配置されている。
コンデンサレンズ12−7の下方には、複数の開口を有するマルチ開口板13−7が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。マルチ開口板13−7によって形成された一次電子線のそれぞれは、静電レンズからなる縮小レンズ15によって縮小されて、E×BフィルタすなわちE×B分離器16−7の偏向主面DSに合焦される。そして、点DSで合焦した後、静電レンズからなる対物レンズ17−7によってウエハWに合焦される。マルチ開口板13−7から出た複数の一次電子ビームは、縮小レンズ15−7と対物レンズ17−7との間に配置された偏向器により、同時にウエハWの表面上を走査するよう偏向される。
縮小レンズ15−7及び対物レンズ17−7の像面湾曲収差を補正するため、図42に示したように、マルチ開口板13−7は、中央部から周辺部に向かうにしたがってコンデンサレンズ12からの距離が大きくなるように、段が付けられた構造を有している。
合焦された複数の一次電子線によって、ウエハW上の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から、二次電子が放出される。放出された二次電子は、対物レンズ17−7の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器16−7の手前の点FPにおいて焦点を結ぶ。これは、各一次電子線がウエハWの表面上で500eVのエネルギを持っているのに対して、二次電子線は数eVのエネルギしか有していないためである。ウエハWから放出された複数の二次電子線は、E×B分離器14−7により、一次光学系10−7の光軸の外方向に偏向されて一次電子線から分離され、二次光学系20−7に入射する。
二次光学系20−7は、静電レンズからなる拡大レンズ21−7、22−7を備えており、これらの拡大レンズ21−7、22−7を通過した二次電子線は、二次光学系のマルチ開口板23−7の複数の開口を通って複数の検出器31−7に結像する。なお、検出器31−7の前に配置されたマルチ開口板23−7に形成された複数の開口と、一次光学系のマルチ開口板13−7に形成された複数の開口とは1対1に対応し、また、複数の検出器31−7もこれらに1対1に対応する。
それぞれの検出器31−7は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。こうして各検出器から出力された電気信号は増幅器32−7によってそれぞれ増幅された後、画像処理部33−7によって受信され、画像データに変換される。画像処理部33−7には、一次電子線を偏向させるための走査信号が供給され、該走査信号に基づいて電気信号を処理することにより、画像処理部33−7は、ウエハWの表面を表す画像データを形成することができる。このようにして得られたウエハの画像を標準パターンと比較することにより、ウエハの欠陥を検出することができる。
また、レジストレーションによりウエハを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、そしてラインスキャンすることによって、線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、ウエハ上のパターンの線幅を測定することができる。
一次光学系のマルチ開口板13−7の開口を通過した一次電子線をウエハの表面上に合焦させ、ウエハから放出された二次電子を検出器31−7に結像させる際に、一次光学系及び二次光学系で生じるコマ収差、像面湾曲、及び視野非点という三つの収差による影響を最小にするように特に配慮する必要がある。また、複数の一次電子線の照射点の間隔と二次光学系との関係については、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば、複数の電子線の間のクロスストロークをなくすことができる。
図43は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70のさらに別の実施形態を示している。この実施形態においては、E×B分離器による偏向色収差を無くすことができるようにしたものである。
すなわち、E×B分離器を用いた電子光学装置においては、E×B分離器が一次光学系に対して収差を持つことが避けられず、特に偏向色収差が大きい等の問題がある。この偏向色収差により、ウエハ表面で所定のビーム径となるように一次電子線を絞ることができない。
図43に示した電子光学系70は、一次光学系20−8、二次光学系30−8、及び検出器15−8を含む。一次光学系20−8は、複数の一次電子線をウエハWの表面(試料面)に照射する照射光学系であり、一次電子線を放出する電子銃1−8、二次元的に配列された複数の小孔4aを有するマルチ開口板4−8、電子銃1−8から放出された一次電子線を集束する静電レンズ3−8、5−8、7−8、静電偏向器16−8、E×B分離器9−8、開口絞り17−8、静電レンズである対物レンズ10−8を備えている。
E×B分離器は、電磁偏向器による偏向角が静電偏向器の2倍に設計されている。したがって、E×B分離器9−8により、一次電子は図の左へαだけ偏向され、二次電子は右へ3αだけ偏向される。一次光学系をα(例えば、5°)傾けて設置する問題点があるが、一次電子線と二次電子線との分離は4α(例えば、20°)となって容易に分離可能であり、E×B分離器による偏向色収差が一次電子線で発生しない利点がある。
一次光学系20−8は、図43に示すように、電子銃1−8を最上部にして、該電子銃から放出された一次電子線の光軸PがウエハWの表面に垂直になるように配置される。E×B分離器9−8で一次電子線に偏向色収差が発生しないため、一次電子線を細く絞ることができる。
二次光学系30−8は、一次光学系20−8のE×B分離器の近傍で光軸Pに対し傾斜する光軸Qに沿って配置される静電レンズからなる拡大レンズ12、及び二次元的に配列される複数の開口すなわち小孔14−8aを有するマルチ開口板14−8を備える。検出器15−8は、小孔14−8a毎に検出要素15−8aを備える。マルチ開口板14−8の小孔14−8aは、一次光学系のマルチ開口板4−8の小孔4−8aの数及び配列に合わせた数及び配列にされる。複数の一次電子線の間のクロストークを無くするため、複数の一次電子線のウエハ表面の照射位置の間隔を、二次光学系の収差(対物レンズの二次電子に対する収差)より大きい距離とする。
図44〜図46は、E×B分離器の図43の電子光学系70での作用原理を説明する斜視図であり、図44は全体概略図、図45は一次電子線に作用する力を示す概略図、図46は二次電子線に作用する力を示す概略図である。図44に示すように、磁界をかける磁極31Bと電界をかける電極31Eを90°ずらして配置すると、一次電子線20−8aに対しては、図45に示すように、磁界による力FBと電界による力FEとが逆方向に働いて、両者の差の分だけビーム軌道は曲げられる。すなわち、静電偏向器による偏向角をα、電磁偏向器による偏向角を2αとすると、αだけ偏向される。一方、二次電子線30−8aに対しては、図46に示すように、磁界による力FBと電界による力FEとが同一方向に働いて、互いに強調されるので、二次電子線30−8aは、大きく曲げられ、上記の場合では、3αだけ偏向される。この構成は、荷電粒子ビームを加速電圧により偏向させるウィーンフィルタと同じであるが、本実施形態では、電磁プリズム(ビームスプリッタ)として機能させている。
図43に戻り、E×B分離器9−8を通過した一次電子線は、開口絞り17−8に達し、この開口絞り17−8の位置で、クロスオーバ像を形成する。開口絞り17−8を通過した一次電子線は、対物レンズ10−8によるレンズ作用を受けて、ウエハWに達し、細く集束された状態でウエハ表面を照射する。
一次電子線が照射されたウエハからは、二次電子線30−8として、ウエハの表面形状、材質分布、電位の変化などに応じた分布の二次荷電粒子すなわち二次電子、錯乱電子、及び反射荷電粒子(反射電子)が放出され、いずれも仕様によっては利用できるが、ここでは、二次電子を選択した場合について述べる。
放出された二次電子は、対物レンズ10−8の作用を受け、対物レンズ10−8の焦点位置に配置される開口絞り17−8を通過し、E×B分離器9−8に達する。E×B分離器9−8によって形成される互いに直交した磁界Bと電界Eとは、ウエハWからの二次電子がウィーン条件を満たすようには設定されていない。これにより、開口絞り17−8を通過した二次電子は、このE×B分離器9−8により偏向され、複数段のレンズ12−8、13−8へ向う。
図43に示した電子光学系70では、一次電子線及び二次電子線の両方の軌道を曲げるE×B分離器を用いたが、それに限定されずに、例えば、一次電子線の軌道を直進させ、二次電子線の軌道を曲げる電磁プリズムを用いてもよい。二次光学系のマルチ開口板14−8には、多数の開口14−8aが設けられる。開口14−8aは、対物レンズ10−8及びレンズ12−8、13−8に関してウエハWと共役である。E×B分離器により偏向された二次電子は、更に、複数のレンズ12−8、13−8、及び開口14−8aを経て、検出器15−8へ到達し、到達した二次電子の強度に対応する電気信号に変換される。
図47は、本発明に係る電子線装置を示している。この実施形態においては、電子銃1−9のカソード2−9から放出された電子線は、コンデンサレンズ3−9によって集束されて点5−9にクロスオーバを形成する。コンデンサレンズ3−9の下方には、複数の開口4−9aを有するマルチ開口板4−9が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。マルチ開口板4−9によって形成された一次電子線の各々は、縮小レンズ6−9によって縮小され、対物レンズ8−9によってウエハWに合焦される。マルチ開口板4−9から出た複数の一次電子線は、縮小レンズ6−9と対物レンズ8−9との間に配置された偏向器19−9、20−9により、同時にウエハWの面上を走査するように偏向される。
縮小レンズ6−9及び対物レンズ8−9の像面湾曲収差の影響を無くすために、マルチ開口板4−9の小開口4−9aは、円周上に配置され、それら開口のX軸方向へ投影した点が等間隔に設定されている。これは、第1の実施形態の電子線装置70について図9の「A」を参照して説明した場合と同様である。合焦された複数の一次電子線によって、ウエハの複数の点が照射され、照射されるこれらの複数の点から放出される二次電子線は、対物レンズ8−9の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器7−9で偏向され、二次光学系を経て複数の検出器13−9により検出される。
二次光学系は、拡大レンズ10−9、11−9を有する。これらの拡大レンズ10−9、11−9を通過した二次電子線は、マルチ開口板12−9の複数の開口12−9aに結像する。二次光学系のマルチ開口板12−9の複数の開口12aと一次光学系のマルチ開口板4−9の複数の開口4−9aは、1対1に対応する。各検出器13−9は、検出した二次電子線をその強度を表す電気信号へ変換し、該電気信号は、増幅器14−9により各々増幅されA/D変換された後、画像処理部15−9に伝達されて、画像データへ変換される。画像処理部15−9は、更に一次電子線を偏向させるための走査信号を供給され、ウエハの表面を表す画像を形成する。
画像処理部15−9において形成された試料表面を表す画像を標準パターンと比較することにより、ウエハの欠陥を検出することができる。またレジストレーションによりウエハの被評価パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取出しこれを適宜に校正することにより、パターンの線幅を測定することができる。
一次電子線をウエハWの表面上へ合焦させ、ウエハから放出される二次電子線を検出系12−9、13−9に結像させる際は、一次光学系で生じる歪、軸上色収差、及び視野非点という3つの収差による影響を最小にすることが望ましい。複数の電子線の間隔と二次光学系の関係において、一次電子線の間隔の最小値を二次光学系の収差よりも大きくすることにより、検出される複数の電子線の間のクロストークを低減することができる。
さらに、図47の電子線装置においては、二次電子の検出器13−9及び増幅器14−9からなる信号経路の後段に、信号経路毎に、スイッチ(単極双投スイッチ)16−9、2つのメモリ(メモリ0及びメモリ1)17−9、及びスイッチ(双極単投スイッチ)18−9が接続され、これらを介してデジタル信号がCPU15−9に供給される。複数のスイッチ16−9は同時に切り替えられ、また、複数のスイッチ18−9も同時に切り替えられ、さらに、これら2組のスイッチは図示の状態から同時に切り替えられる。したがって、図示の状態で、i回のラスタ走査に対応しているデジタル信号をメモリ0に記憶している間に、i−1回のラスタ走査時に得られてメモリ1に記憶されているデジタル信号を該メモリ1からCPU15−9に転送し、i回のラスタ走査が終了した時点で2組のスイッチを切り替え、i回のラスタ走査で得られてメモリ0に記憶されている信号をCPU15−9に供給して処理すると同時に、i+1回のラスタ走査で得られる信号をメモリ1に記憶する。そしてまた、i+1回のラスタ走査が終了すると、2組のスイッチを反転させる。この結果、クロック周波数500MHz〜1GHzの高速走査を行っても、二次電子線の強度に対応する信号を忠実に転送することができる。
図48は、本発明に係る電子線装置に適用可能な電子光学系70の他の実施形態を示している。この実施形態では、カソード31−9、ウエーネルト32−9、アノード33−9の電極を備える電子銃30−9、電子銃30−9から放出される一次電子線をウエハWへ結像させる一次光学系、及びウエハから発生される二次電子を検出器38−9へ案内する二次光学系を含む。一次光学系において、電子銃30−9から放出される一次電子線は、軸合せ偏向器34−9、35−9でコンデンサレンズ36−9に軸合せされ、コンデンサレンズ36−9で集束され、対物レンズ41−9でウエハに合焦され、静電偏向器37−9及び電磁偏向器29−9で2段偏向され、ウエハ上を走査する。
ウエハ上の一次電子線の走査点から発生する二次電子は、対物レンズ41−9の中央電極49−9の正の高電圧で加速され、細く集束され対物レンズを通過する。対物レンズ41−9を通過した二次電子は、E×B分離器29−9、40−9で、図51の右方へ偏向され、検出器38−9で検出される。この場合、コンデンサレンズ36−9及び対物レンズ41−9が光学系の外径寸法を決める部品となるが、これらのレンズ36−9、41−9の外径寸法を小さくすることにより、この電子線装置の電子光学系70の鏡筒を小外径とすることができる。
鏡筒の外径が小さい場合、そのような鏡筒を1枚のウエハ上に複数個配置することができるので、複数の鏡筒により複数の電子線で同時に1枚のウエハに画像形成し評価することにより、高スループットでウエハの評価を行うことができる。
図49〜51は、本発明に係る電子線装置の、電子光学系を複数配置した場合の実施形態を説明するための説明図である。
図49に示した実施形態においては、単体の電子光学系の鏡筒71を4筒×2列に配置している。これは、コンデサレンズ及び対物レンズ等のサイズを小さくして鏡筒の外形サイズを小さくすることによって実現することができるが、これを、図48に示した電子光学系を一例として説明する。
図48に示した電子光学系70において、コンデンサレンズ36−9及び対物レンズ41−9を軸対称レンズとして構成し、これらのレンズの外径寸法を小さくするために、コンデンサレンズ36−9を、一体のセラミックスの円柱43−9から上部電極44−9、中央電極45−9、下部電極46−9を削出し、削出されたセラミックス表面に金属をコーティングして製造する。対物レンズ41−9も同様に、一体のセラミックスの円柱47−9から上部電極48−9、中央電極49−9、下部電極50−9を削出し、削出されたセラミックス表面に金属をコーティングして製造する。
上記の製造方法により、各レンズの外径寸法を40mmφ以下にすることができ、8インチのウエハ表面に、図49に示すように、鏡筒71を4筒×2列に配置することができる。セラミックス表面にコーティングする金属材料は、仕事関数の大きい白金とすることによって電極間の小さい間隔に高い電圧を印加できることがわかった。この結果、軸上色収差を小さくでき小寸法のビームで大電流をうることができた。なお、図48において、26−9で示す部分は、コンデンサレンズ36−9の中央電極45−9に電圧を与えるための電圧導入端子である。また、図49において、38−9は、図48に示した検出器を示している。
図48に示した電子光学系だけでなく、先に説明した任意の実施形態の電子光学系においても、コンデンサレンズ及び対物レンズを図48に示した構造にすることにより、複数の鏡筒を同時にウエハ上に配置し検査することができる。
図50に示した実施形態は、4個の単体の電子光学系の鏡筒71を一列に配置した例であり、この例では、各鏡筒71の電子光学系において、一列の7個のマルチビームによりウエハWを照射する形態を示している。したがって、28個の電子線によりウエハを走査することができる。ウエハ全体を走査するために、ステージ装置(不図示)により、ウエハはX軸方向に連続移動され、Y軸方向にステップ移動される。
図51に示した実施形態は、6個の単体の電子光学系の鏡筒71を2行3列に配置して例である。この例では、各鏡筒71の電子光学系において、3行3列のマルチビームによりウエハWを照射する例を示している。したがって、同時に54個の電子線でウエハを走査できる。
このように、電子光学系を複数個配置し、各光学系において、ウエハ表面を照射するマルチビーム及び対応する複数の検出器を設けることにより、検査工程のスループット(単位時間当たりの検査量)を大幅に高めることがきる。
図1に関連して先に説明したように、検査されるウエハは、大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密のXYステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、図52の手順に従って欠陥検査等が行われる。図52に示すように、まず、光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や各場所の高さ検出が行われ、データが記憶される。光学顕微鏡は、この他に欠陥等を監視したい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次にウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは20cmか30cmか、等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行った後、画像取得を行いながら、リアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じて、検査結果をCRT等に出力したり、又は記憶装置に格納する。欠陥には、パーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を、自動的にリアルタイムで行うこともできる。電気的欠陥の検出は、コントラスト異状を検出することで達成される。例えば、導通不良の場所に電子線照射(500eV程度)すると、通常正に帯電し、コントラストが低下するので、正常な場所と区別ができる。この場合の電子照射装置とは、通常、検査用の電子線照射装置以外に、電位差によるコントラストを際立たせるために別途設けた、低電位のエネルギの電子線発生装置(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位エネルギの電子線を発生し照射している。検査用の電子線を照射すること自体で正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、使用によっては、低電位の電子線発生装置を別途設ける必要はない。また、ウエハに、基準電位に対して正又は負の電位を印加すること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから、欠陥検出ができる。線幅測定装置及び合わせ制度装置にも利用できる。
なお、電子線装置が作動すると、電子ビームの形成や偏向に使用される様々電極には有機物質が堆積する。このように表面に徐々に堆積していく絶縁体は、電子ビームの形成や偏向機構に悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁体の周期的な除去は、絶縁体の堆積する領域の近傍の電極を利用して、真空中で水素や酸素あるいはフッ素、及びそれらを含む化合物HF、O、HO、Cなどのプラズマを作り出し、有機物質のみを酸化、水素化、フッ素化により除去することができる。
次に、本発明の電子線装置用いてプロセス途中又はプロセス後に半導体ウエハを評価する工程を含んだ半導体デバイスの製造方法について説明する。
図56に示すように、半導体デバイス製造方法は、概略的に分けると、ウエハを製造するウエハ製造工程S501、ウエハに必要な加工処理を行うウエハ・プロセッシング工程S502、露光に必要なマスクを製造するマスク製造工程S503、ウエハ上に形成されたチップを1個づつに切り出し、動作可能な状態にするチップ組立工程S504、及び完成したチップを検査するチップ検査工程S505によって構成されている。各工程はそれぞれ、幾つかのサブ工程を含んでいる。
上記各工程の中で、半導体デバイスの製造に決定的な影響を及ぼす工程は、ウエハ・プロセッシング工程S502である。なぜなら、この工程において、ウエハ上に設計された回路パターンが形成され、かつ、メモリやMPUとして動作するチップが多数形成されるからである。
このように半導体デバイスの製造に影響を及ぼすウエハ・プロセッシング工程のサブ工程において実行されたウエハの加工状態を評価することが重要であり、該サブ工程について、以下に説明する。
まず、絶縁層となる誘電体薄膜を形成するとともに、配線部及び電極部を形成する金属薄膜を形成する。薄膜は、CVDやスパッタリング等により形成される。次いで、形成された誘電体薄膜及び金属薄膜、並びにウエハ基板を酸化し、かつ、マスク製造工程S503によって作成されたマスク又はレチクルを用いて、リソグラフィ工程において、レジスト・パターンを形成する。そして、ドライ・エッチング技術等により、レジスト・パターンに従って基板を加工し、イオン及び不純物を注入する。その後、レジスト層を剥離し、ウエハを検査する。
このようなウエハ・プロセッシング工程は、必要な層数だけ繰り返し行われ、チップ組立工程S504においてチップ毎に分離される前のウエハが形成される。
図57は、図56のウエハ・プロセッシング工程のサブ工程であるリソグラフィ工程を示すフローチャートである。図57に示したように、リソグラフィ工程は、レジスト塗布工程S521、露光工程S522、現像工程S523、及びアニール工程S524を含んでいる。
レジスト塗布工程S521において、CVDやスパッタリングを用いて回路パターンが形成されたウエハ上にレジストを塗布し、露光工程S522において、塗布されたレジストを露光する。そして、現像工程S523において、露光されたレジストを現像してレジスト・パターンを得、アニール工程S524において、現像されたレジスト・パターンをアニールして安定化させる。これら工程S521〜S524は、必要な層数だけ繰り返し実行される。
このような半導体デバイスの製造工程において、検査が必要な処理工程後に欠陥等の検査を行うが、一般に、電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えば、エッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用することが好適である。
このように、本発明による検査処理が高スループットであるマルチビームの電子線装置を用いて、検査が必要な各工程が終了後に欠陥等の検査を行いつつ半導体デバイスを製造するので、半導体デバイスそのものの製造も高スループットで行うことができる。したがって、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷の防止を図ることができる。
本発明に係る評価システムの主要構成要素を示す立面図である。 図1に示した評価システムの主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。 ウエハ搬送箱とローダとの関係を示す図である。 図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、図1の線C−Cに沿って見た図である。 図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。 ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図であり、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。 、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。 図1に示した評価システムに適用可能な本発明に係る電子線装置の一実施形態を示す概略図である。 図8に示した電子線装置の一次光学系及び二次光学系に使用されているマルチ開口板の開口の位置関係、及び一次電子線の走査方式を示す図である。 [A]及び[B]はそれぞれ、本発明に係る電子線装置に適用可能なE×B分離器の実施形態を示す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な電位印加機構を示す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な電子ビームキャリブレーション機構を説明する図であって、[A]は側面図であり、[B]は平面図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能なウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。 従来例の電子線装置におけるXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 図14に示したXYステージの底部の状態を示す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な一実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能なさらに別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な他の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能なさらに他の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 本発明に係る電子線装置に適用可能な別の実施形態のXYステージと電子光学系の荷電ビーム照射部との関係を表す図である。 図21に示した実施形態に設けられる作動排出機構を示す図である。 図21に示した実施形態に設けられるガスの循環配管機構を示す図である。 ウエハ上のアラインメントマークとマルチビームの走査領域との関係を示す説明図である。 最適なビーム径設定のための、ビーム電流I、MTF、MTF、MTFIとビーム径D/最小線幅dとの関係を示すグラフである。 試料であるウエハの断面構造を例示する図である。 電子のランディングエネルギと二次電子発生効率の関係を示すグラフである。 本発明に係る、ウエハに対する電子線調整を説明するための図である。 2つの絶縁体それぞれに対するランディングエネルギと二次電子発生効率の関係を示すグラフである。 本発明に係るウエハ上の電子線の走査方法を説明するための図である。 本発明に係るウエハ上の電子線の他の走査方法を説明するための図である。 本発明に係るウエハ上の電子線のさらに他の走査方法を説明するための図である。 本発明に係る電子線装置の別の実施形態を示す概略図である。 図33に示した電子線装置における電子銃から放出される電子線を光軸に直交するX−Y平面上で示した断面図である。 走査方向に平行の4つの電子線の位置を設計するための説明図である。 本発明に係る電子線装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。 電子銃から放射される電子の強度分布を示すグラフである。 図36に示した電子線装置における開口板電極の2つの例を示す斜視図である。 図36に示した電子線装置における開口電極の他の例を示す平面図である。 本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示す概略図である。 本発明に係る電子線装置のさらに他の実施形態を示す概略図である。 本発明に係る電子線装置の別の実施形態を示す概略図である。 本発明に係る電子線装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。 E×B分離器の作用を説明するための説明図である。 E×B分離器の一次電子線に作用する力を示す説明図である。 E×B分離器の二次電子線に対する力を示す説明図である。 本発明に係る電子線装置の他の実施形態を示す概略図である。 本発明に係る電子線装置のさらに他の実施形態を示す概略図である。 本発明に係る、電子線装置を複数配置した場合の実施形態を説明するための図である。 本発明に係る、電子線装置を複数配置した場合の実施形態を説明するための図である。 本発明に係る、電子線装置を複数配置した場合の実施形態を説明するための図である。 本発明に係る評価方法を示すフローチャートである。 本発明に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。 図53に示した工程のうちのリソグラフィ工程の詳細を示すフローチャートである。

Claims (4)

  1. 一次荷電粒子を試料の被測定領域に照射し、試料から放出される二次荷電粒子を検出する方法であって、
    前記一次荷電粒子を試料の被測定領域を分割した小領域単位に照射するステップであって、1つの小領域を照射後、該小領域に隣接する少なくとも1つ以上の小領域をスキップして、未照射の小領域を照射するステップ
    を備えていることを特徴とする方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記1つの小領域の照射は、次に照射を行うべき小領域に近い側から開始され、遠い側へ進められることを特徴とする方法。
  3. 一次荷電粒子を試料の被測定領域に照射し、試料から放出される二次荷電粒子を検出する荷電粒子線装置であって、
    前記一次荷電粒子を試料の被測定領域を分割した小領域単位にラスタ走査して照射する手段であって、該ラスタ走査を、1つの小領域中の1つのラスタを走査後に1つ以上のラスタをスキップし、かつ、当該小領域の端まで走査後に、該スキップされたラスタを走査する、照射手段
    を備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項3に記載の荷電粒子線装置において、該装置は、
    前記照射手段を含み、複数の一次荷電粒子を試料に照射する少なくとも1以上の一次光学系と、
    前記二次荷電粒子線を少なくとも1以上の検出器に導く少なくとも1以上の二次光学系と
    を備え、前記一次光学系は、前記複数の一次荷電粒子を互いに、前記二次光学系の距離分解能より離れた位置に照射するよう構成されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
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