JP2008270699A - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易かつ効率的なフッ素化合物の処理方法及びこの方法により実現する磁石の構成を提供する。
【解決手段】鉄及び希土類元素を含む磁性体で構成された磁石であり、前記磁性体の内部には複数のフッ素化合物層又は酸フッ素化合物層が形成され、前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、前記磁性体の結晶粒の平均粒径よりも大きな長軸を有する磁石の構成をとる。
【選択図】図1

Description

本発明は希土類磁石及びその製造方法に関し、特に重希土類元素の使用量を低減し高エネルギー積あるいは高耐熱性を有する磁石及びその製造方法に関するものである。
近年、磁石の特性向上のため、フッ素化合物又は酸フッ素化合物を含有した希土類磁石の構造について開発が進んでいる。例えば、下記特許文献1−5には、粉末状のフッ素化合物、又は粉末状のフッ素化合物と溶媒との混合物を用い、磁石表面にフッ素を含む相を形成する技術が開示されている。
特開2003−282312号公報 特開2006−303436号公報 特開2006−303435号公報 特開2006−303434号公報 特開2006−303433号公報
従来技術では、NdFeB磁粉に層状にフッ素を含んだ相を形成するために、フッ素化合物などの粉砕粉を原料にしており、溶液の状態に対する記載がない。そのため、拡散に必要な熱処理温度が高く焼結磁石よりも低温で磁気特性が劣化する磁粉において磁気特性向上あるいは希土類元素の低濃度化を達成させることは困難である。
上記特許文献1−5では、処理に使用するフッ素化合物は粉末状あるいは粉末と溶媒の混合物であるため、磁石粉表面に沿って効率よくフッ素を含む相を形成することは困難である。また、上記従来手法では、磁粉表面に処理に使用するフッ素化合物が点接触しており、容易にフッ素を含む相が磁粉に面接触しないため、必要以上の処理原料と高温での熱処理を要する。また、フッ素化合物内の鉄に関して説明されておらず、フッ素化合物内の鉄の含有に関する記載はない。
本発明は、このような課題をもととしたものであり、従来よりも簡易かつ効率的なフッ素化合物の処理手法、及びこの方法により実現する磁石の構成を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明では粉砕粉を含まず光透過性のあるフッ素化合物系溶液を使用する。このような溶液を使用することで、粒界あるいは粒内に板状あるいは層状のフッ素化合物を形成し、これらのフッ素化合物系層状物の粒径が母相の平均粒径よりも大きく成長させて保磁力増加と残留磁束密度確保を両立することが可能である。
溶液の特徴として光透過性があること、マイクロクラック内の表面に溶液のフッ素化合物が接触可能であること、不定形などの磁石粉末表面に表面形状に沿って均一に被覆可能であること、バルク表面にはスピンナーなどによってコート可能であることが挙げられる。また、溶液が含んでいるフッ素化合物の一部はバルクフッ素化合物とは異なる結晶構造を有しており、X線回折パターンのピークがもつ半値幅が広い。
フッ素化合物を層状に形成させる手法として、上記溶液を使用した表面処理を利用できる。表面処理はアルカリ金属元素,アルカリ土類元素あるいは希土類元素を1種類以上含むフッ素化合物または酸素を一部含むフッ素酸素化合物(以下フッ酸化合物)を磁粉表面に塗布する手法である。
この磁石の処理工程では、磁性体にフッ素化合物系溶液を塗布する第一の工程と、この第一の工程後に磁性体を加熱し溶媒を除去する第二の工程と、を有する。この際、フッ素化合物系溶液としては、ゲル状フッ素化合物をアルコール溶媒中に分散させた溶液を用いる。この溶液を磁粉表面に塗布後、200℃から400℃の熱処理で溶媒を除去し、500℃から800℃の熱処理でフッ素化合物と磁粉間に酸素,希土類元素及びフッ素化合物構成元素が拡散する。
磁粉には酸素が10から5000ppm 含有し、他の不純物元素としてH,C,P,Si,Al等の軽元素あるいはMo,Cr,Ti,Nb,Cu,Snなどの遷移金属元素が含まれる。磁粉に含まれる酸素は、希土類酸化物やSi,Alなどの軽元素の酸化物としてばかりでなく、母相中や粒界に化学量論組成からずれた組成の酸素を含む相としても存在する。このような酸素を含んだ相は、磁粉の磁化を減少させ、磁化曲線の形にも影響する。すなわち、残留磁束密度の値の低下,異方性磁界の減少,減磁曲線の角型性の低下,保磁力の減少,不可逆減磁率の増加,熱減磁の増加,着磁特性の変動,耐食性劣化,機械特性低下などにつながり、磁石の信頼性が低下する。酸素はこのように多くの特性に影響するので、磁粉中に残留させないような工程が考えられてきた。
希土類フッ素化合物を磁粉表面に形成する場合には、REF3をあるいはREF2を400℃以下の熱処理で成長させ(REは希土類元素)、真空度1×10-4Torr以下で500から800℃で加熱保持する。保持時間は30分である。この熱処理で磁粉の鉄原子や希土類元素,酸素がフッ素化合物に拡散し、REF3,REF2あるいはRE(OF)中あるいはこれらの粒界付近にみられるようになる。
上記処理液を使用することにより、200から800℃の比較的低温度でフッ素化合物を磁性体内部に拡散させることが可能であり、このことで以下のような利点が得られる。
1)処理に必要なフッ素化合物量を低減できる。2)粒界に薄いフッ素化合物層と厚い板状のフッ素化合物系層状物を形成可能である。3)母相の結晶粒が細かい場合、母相の結晶粒径よりも大きな層状あるいは板状フッ素化合物を形成できる。4)板状フッ素化合物を不連続に形成できる。5)粉末を使用しないため、クリーン度を要求される部品に対する信頼性が向上する。6)粉末やそれを使用したスラリーよりも重希土類使用量を低減でき、拡散長を制御しやすく、拡散長が長い。これらの特徴より、残留磁束密度の増加,保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,熱減磁特性向上,着磁性向上,異方性向上,耐食性向上,低損失化,機械強度向上などの効果が顕著になる。
フッ素化合物処理後の磁石の特徴としては、上記2)〜4)がある。本発明にかかる磁石では、磁石を構成する磁性体の内部に複数の(不連続の)フッ素化合物層(又は酸フッ素化合物層)が形成される。そして、このフッ素化合物(又は酸フッ素化合物)は、磁性体の結晶粒の平均粒径よりも大きな長軸を有する点に特徴がある。
具体的には、磁性体の結晶粒の平均粒径が10nm以上50nm以下である場合、フッ素化合物層(又は酸フッ素化合物層)の長軸は50nm以上500nm以下と母相よりも大きいサイズとなる。また、フッ素化合物層(又は酸フッ素化合物層)は板状の細長い形状をとり、長軸/短軸の比が2〜20程度となる。
尚、ここでいう磁性体が磁粉である場合、フッ素化合物層(又は酸フッ素化合物層)は各磁粉の内部に析出し、このような磁粉を圧縮成形し、磁石が構成される。
また、磁性体が焼結磁石である場合、結晶粒の平均粒径はより大きくなるが、このような場合であっても、焼結磁石の内部にまでフッ素化合物層(又は酸フッ素化合物層)が析出することとなる。
磁粉がNdFeB系の場合、Nd,Fe,Bあるいは添加元素,不純物元素が200℃以上の加熱温度でフッ素化合物内に拡散する。一部のフッ素は200℃以下の温度でも拡散し始める。上記温度でフッ素化合物層内のフッ素濃度は場所により異なり、REF2 ,REF3 (REは希土類元素)、あるいはこれらの酸フッ素化合物画層状あるいは板状に不連続に形成される。
またこの板状フッ素化合物の周辺の母相粒界にはフッ素化合物は厚み1/10以下あるいは2nm以下のフッ素原子の偏析が電子線エネルギーロス分析から認められるが、必ずしも連続してすべての粒界に偏析しているわけではなく、このような形態から板状フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物またはフッ素及び希土類元素を含む層は不連続に見える。
フッ素原子の一部は母相のホウ素あるいは鉄原子と置換している可能性もある。拡散の駆動力は、温度,応力(歪),濃度差,欠陥などであり電子顕微鏡などにより拡散した結果を確認できるがフッ素化合物粉砕粉を使用しない溶液を使用することにより低温度で拡散させることが可能なため、フッ素化合物の厚さは上記のように不連続に成り易く、フッ素化合物の使用量を少なくでき、特に高温にすると磁気特性が劣化するNdFeB磁石粉の場合有効である。フッ素化合物中のNdやBなどの元素はフッ素化合物の磁気特性を大きく変える元素ではないが、鉄原子はその濃度によりフッ素化合物の磁気特性を変えるため、その濃度を制限することで磁石としての磁気特性を一定値にすることができる。B以外の元素を合計した値を100%として鉄の濃度は50原子%以下にすることでフッ素化合物の構造が保持できるが、50%を超えると非晶質あるいは鉄を母体とする相が現れ保磁力の小さい相が混合する。したがって、フッ素化合物中の鉄濃度は50%以下にする必要がある。上記NdFeB系磁粉には、主相にNd2Fe14B の結晶構造と同等の相を含む磁粉を含んでおり、Al,Co,Cu,Tiなどの遷移金属が上記主相に含有してもよい。また、Bの一部をCとしてもよい。また主相以外にFe3BやNd2Fe233 などの化合物あるいは酸化物が含まれてもよい。フッ素化合物層は800℃以下の温度でNdFeB系磁粉よりも高い抵抗を示すため、フッ素化合物層の形成によりNdFeB焼結磁石の抵抗を増加させることができ、その結果損失を低減することが可能である。
フッ素化合物層中にはフッ素化合物以外に磁気特性に影響が小さい室温付近で強磁性を示さない元素であれば不純物として含んでいても問題はない。高抵抗とする目的で窒素化合物や炭化物などの微粒子がフッ素化合物中に混合されていても良い。上記のように溶液処理と熱処理によりNdFeB系焼結磁石の磁気特性も改善できるため、HDDに使用する電子部品用磁石に適用でき、特にボイスコイルモータやスピンドルモータの永久磁石に適している。また、溶液処理のため、種々のパターニングプロセスやエッチングプロセスに対応でき、10nm幅の部分処理も可能であり、磁石の表面からの拡散距離も制御でき、表面から10nmから100mmまでの深さ方向磁気特性制御も可能である。これらのことから、スピーカ,ヘッドホン,CD光ピックアップ,カメラの巻上げモータ,フォーカスアクチュエータ,ステッピングモータ,プリンタ用アクチュエータ,加速器,放射光用アンジュレータ,偏光磁石,自動車用電装機器,MRI等の医療機器,マイクロマシーン用などに適用できる。
本発明を用いることにより、高比抵抗,低保磁力,高磁束密度を実現した磁石を実現することができる。そして、この磁石を回転機に適用することにより、低鉄損,高誘起電圧を可能とし、種々の回転機を含む低鉄損を特徴とする磁気回路に適用できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
<実施例1>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。DyF3 を急冷粉表面に形成する場合、原料としてDy(CH3COO)3 をH2Oで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のDyF3・XH2OあるいはDyF3・X(CH3COO)(Xは正数)が形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去し、光透過性のある溶液とし上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させる。このようにして形成した被膜についてXRDにより調べた。その結果、加熱温度が200℃より低温では、X線回折ピークの半値幅がその後の熱処理後のピーク幅の2倍以上であり、ブロードなピークが含まれている。このブロードなピークの半値幅は1度以上である。200℃より高温側の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造は変化し、DyF3,DyF2,DyOFなどから構成されていることが判明した。NdFeB系磁粉の粒径1から300μmの粉末を磁気特性が低下する熱処理温度である800℃未満の温度で酸化を防止しながら加熱することにより、表面に高抵抗層が形成された残留磁束密度0.8T 以上の磁粉が得られる。粒径1μm未満では酸化し易く磁気特性が劣化し易い。また300μmよりも大きい場合、高抵抗化あるいは他の効果であるフッ素化合物形成による磁気特性改善効果が小さくなる。磁粉の磁気特性のうち、保磁力は600から800℃の熱処理により約10から20%増加し、減磁しにくくなる。得られた磁粉の磁気特性は、残留磁束密度0.8−1.0T,保磁力10−20kOeであり、磁粉の抵抗は被覆するフッ素化合物の膜厚により異なるが、50nm以上の膜厚であればM(メガ)Ωに達する。
<実施例2>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14Bを主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。DyF3を急冷粉表面に形成する場合、原料としてDy(CH3COO)3 をH2Oで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のDyF3・XH2Oが形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去する。ゾル状態の希土類フッ化物濃度が10g/dm3以上で該処理液の700nmの波長において光路長が1cmの透過率は5%以上である。このような光透過性のある溶液と上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させる。500℃の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造はNdF3構造、NdF2構造などから構成されていることが判明した。
熱処理後の磁粉断面を透過電子顕微鏡で観察した。明視野像を図1に示す。母相の結晶粒径は50nm以下でありその結晶方位はほぼランダムであった。母相結晶粒よりも大きな板状の結晶が確認でき、図1の(1),(2)の矢印で示すように母相とは形態が異なる。(1)の板状体の長軸は長さ約250nmであり(2)の板状体の長軸で約150nmと母相の粒子(50nm以下)よりも大きい。板状体の中にもコントラストが見られ、板状体も方位が異なるか、結晶粒に分かれているかあるいは歪が入っているためのコントラストと思われる。(1),(2)の板状体は図1に示すように母相の結晶粒によって隔てられ、連続しておらず、母相の結晶粒界すべてに成長していない。
板状体の短軸の長さは約20−50nmであり、母相の結晶粒と同等かそれ以下の厚みとなっている。板状体の長軸/短軸の軸比は2から20であり、磁粉中央にも存在し、母相結晶粒界あるいは母相結晶粒内に成長している。板状体を囲むようにしてコントラストが見られ、板状体と母相の間に格子歪が存在していることを示唆している。この板状体は磁粉の外側に塗布されたフッ素化合物が熱処理により母相の結晶粒界を拡散したフッ素,希土類元素などが一部母相と反応して形成したものである。
このように、本実施例では、NdFeB系磁粉の内部にまでフッ素化合物層の板状体が形成され、かつその板状体が母相の結晶粒の平均粒径よりも大きなサイズであることを特徴とする。
図1の(1)の場所(径10nm)について測定したEDXプロファイルを図2に示す。
EDXのピークとしてフッ素(F),ネオジム(Nd),鉄(Fe)、及びモリブデン(Mo)がみられる。Moは電子顕微鏡の試料メッシュに使用しており、磁粉と関係ない。試料からのピークはF,Nd,Feの3元素である。このうち、母相にコートプロセスの前から存在していた元素はNd及びFeである。Fe:Nd:Fの比は14:15:71である。希土類元素:フッ素の比は種々評価した結果、1:1から1:7の範囲であった。
また、酸素や炭素のピークがフッ素を含むEDXプロファイルに認められる場合もあり、(1)や(2)の板状体はF,Nd,Dy,Fe,C,Oから構成されているものと考えられる。尚、BはEDXで検出できず不明であるが一部が拡散してフッ素とともに存在していても不思議ではない。(1)や(2)の板状体はフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物,酸フッ素炭素化合物のいずれかであるが、主は酸素が一部含まれるフッ素化合物あるいはフッ素が一部含まれる酸フッ素化合物である。上記板状体は、DyよりもNdを多く含んでいるが、板状体を形成するための拡散経路の一部はDyが板状体よりも多く含んでいる。このような結果から、板状体あるいは板状体の拡散経路の希土類元素,酸素及びフッ素の濃度分布が保磁力増加に寄与していると推定できる。すなわち、板状体が形成された拡散経路へのDyやNdの偏析,板状体のNdやDy及びフッ素の偏析により、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元が磁気特性向上,粒界近傍のNd2Fe14B あるいは粒界の磁気モーメントゆらぎ低減に寄与しているものと考えている。
<実施例3>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は、酢酸希土類あるいは酢酸アルカリ土類金属を水に溶解後、希釈したフッ化水素酸を徐々に添加させた。ゲル状沈殿のフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物または酸フッ素炭化物が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて攪拌し、遠心分離後、メタノールを添加し、ゲル状のメタノール溶液を攪拌後、陰イオンを除去し透明化した。処理液は可視光において透過率が5%以上になるまで陰イオンを除去している。この溶液を磁粉にコートし、溶媒を除去した。NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主構造とする急冷粉を作成し、これらの表面にDyフッ素化合物を形成する。上記のように光透過性のある溶液と上記NdFeB粉と混合後、混合物の溶媒を蒸発させる。200〜700℃の熱処理及び熱処理後の急冷によりフッ素化合物膜の結晶構造はNdF3構造,NdF2構造などになる。熱処理後の磁粉断面を透過電子顕微鏡で観察した。明視野像を図3に示す。明視野像に白い板状あるいは層状体がみられる。母相の結晶粒径は50nm以下であり、板状体の長軸は母相結晶粒よりも長いものが多く、短軸長は母相結晶粒と同等以下の長さである。また、板状体は複数の母相結晶粒に接触して成長し、長軸方向はほぼランダムであった。明視野像の下にF(フッ素)及びNd(ネオジム)分析像を示す。観察場所は明視野,F,Ndの分析像ともに同一場所である。明視野像で白く見えた板状体は、下のF,Nd分析像からわかるように、F及びNdの濃度が高い場所である。このことから、板状体は希土類元素とフッ素を含有していることがわかる。板状体の制限視野電子線回折像を観察した結果、希土類フッ素化合物の基本構造を有していた。その構造はNdF2,NdF3を基本構造としているが、部分的に酸素を含有しており、酸フッ素化合物になっている可能性もある。処理液のみを熱処理した結果、その構造はNdF3構造であり、板状体のフッ素濃度は処理液のみから作製したフッ素化合物よりもそのフッ素濃度は低い。これは表面処理後の熱処理過程で磁粉外周のフッ素化合物と磁粉が反応し、外周のフッ素原子が希土類原子とともに移動することを示している。上記結果から、板状体あるいは板状体の拡散経路の希土類元素,酸素及びフッ素の濃度分布が保磁力増加に寄与していると推定できる。すなわち、板状体が形成された拡散経路へのDyやNdの偏析,板状体のNdやDy及びフッ素の偏析により、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元が磁気特性向上に寄与しているものと考えている。このような保磁力の向上,角型性向上,成形後の抵抗増加,保磁力の温度依存性低減,残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,機械的強度増加,熱伝導性向上,磁石の接着性向上のいずれかの効果が得られるフッ素化合物はDyF3以外にLiF,MgF2,CaF2,ScF3,VF2,VF3,CrF2,CrF3,MnF2,MnF3,FeF2,FeF3,CoF2,CoF3,CuF2,CuF3,NiF2,ZnF2,AlF3,GaF3,SrF2,YF3,ZrF3,NbF5,AgF,InF3,SnF2,SnF4,BaF2,LaF2,LaF3,CeF2,CeF3,PrF2,PrF3,NdF2,SmF2,SmF3,EuF2,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4,DyF2,NdF3,HoF2,HoF3,ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3,YbF2,LuF2,LuF3,PbF2,BiF3あるいはこれらのフッ素化合物に酸素や炭素を含んだ化合物であり、可視光線の透過性のある溶液あるいはCH基とフッ素の一部が結合した溶液を使用した表面処理によって形成することができ、粒界や粒内に板状のフッ素化合物や酸フッ素化合物が認められた。これらの中で磁気特性向上を確認したフッ素化合物について表1にその構造をまとめて示す。
Figure 2008270699
NdF2構造及びNdF3構造の他に、希土類酸フッ素化合物と各処理液の構成成分からなる酸フッ素化合物が確認された。オージェ分析により、フッ素以外の軽元素が材料内にみられる場合があるが減磁曲線にはほとんど影響しない。また一部の結晶粒界に遷移金属元素が偏析していても上記磁気特性の向上効果を確認できた。
<実施例4>
NdFeB系焼結磁石の表面にゲルあるいはゾル状の光透過性のある希土類フッ素化合物溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の膜厚は1〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石はNd2Fe14B を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工研磨あるいは酸化にともなう磁気特性の劣化がみられる。このような磁気特性劣化を改善するために、可視光線を透過する希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布乾燥後、500℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。ゲルあるいはゾル状希土類フッ素化合物溶液からは塗布乾燥直後50nm以下1nm以上の粒子に成長し溶液中のフッ素原子周囲の構造が変化しランダム構造から周期的な構造になり、さらに加熱することで、焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後500℃以上の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。上記希土類フッ素化合物の中でもDyフッ素化合物あるいはTb,Hoフッ素化合物は、これらの構成元素であるDy,Tb,Hoなどが結晶粒界に沿って拡散し、磁気特性の劣化が改善され、減磁曲線の角型性が向上する。熱処理温度が800℃以上になると、フッ素化合物と焼結磁石の相互拡散はさらに進行し、フッ素化合物層に10ppm 以上の濃度でFeがみられる。熱処理温度が高温になるほど、フッ素化合物層中への母相構成元素の濃度は増加する傾向になる。焼結磁石を積層して接着する場合、拡散させて磁気特性を向上させたフッ素化合物と同一または別の接着層となるフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を、上記熱処理後に塗布し、積層させてミリ波照射することで、接着層付近のみ加熱させて焼結磁石を接着することができる。接着層とするフッ素化合物はNdフッ素化合物など(NdF2-3,Nd(OF)1-3)であり、ミリ波の照射条件を選択することにより焼結磁石中心部の温度上昇を抑えながら接着層付近のみ選択的に加熱することが可能であり、接着にともなう焼結磁石の磁気特性劣化や寸法変化を抑えることが可能である。またミリ波を使用することで選択加熱の熱処理時間は従来の熱処理時間の半分以下にすることができ、接着工程と同時に磁気特性向上が可能な量産に適している。ミリ波は焼結磁石の接着だけでなく、塗布材料の拡散による磁気特性改善にも使用でき、接着層としての機能はフッ素化合物以外にも酸化物や窒素化合物,炭化物など誘電損失が母相のNdFeBと異なる材料を使用することで達成できる。ミリ波を使用しなくても加熱で拡散させることが可能であるが、このようにミリ波を利用することでフッ素化合部が選択的に加熱され、磁性材料及び種々の金属材料や酸化物材料の接着,接合に使用できる。ミリ波の条件の例としては、28GHz,1−10kW,Ar,N2 雰囲気中あるいは真空中または他の不活性ガス雰囲気で1−30分照射する。ミリ波を使用することにより、フッ素化合物あるいは酸素を含む酸フッ素化合物が選択的に加熱されるため、焼結体そのものの組織をほとんど変えずに、フッ素化合物のみ粒界に沿って拡散させることが可能であり、結晶粒内部へのフッ素化合物構成元素の拡散が防止でき、単純に加熱する場合よりも高い磁気特性(高残留磁束密度,角型性向上,高保磁力,高キュリー温度,低熱減磁,高耐食性,高抵抗化,高強度,低熱膨張などのいずれか)が得られ、ミリ波条件とフッ素化合物の選択により通常の熱処理よりも焼結磁石の表面からより深い部分にもフッ素化合物の構成元素を拡散させることが可能であり、10×10×10cmの磁石中心部へも拡散させることが可能である。このような手法によって得られる結晶粒径1〜30μmからなる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くできる。また、焼結磁石表面に1〜100nmのアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素を少なくとも1種含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が残留していれば、焼結磁石表面の抵抗は高くなり、積層接着しても渦電流損失を低減し、高周波磁界中での損失低減が図れる。このような損失低減により、磁石の発熱が低減できるため、重希土類元素の使用量を低減できる。このようにフッ素化合物系溶液処理とそれに続く熱処理により焼結磁石の特性を向上でき、重希土類元素の使用量も少なくできるため、焼結磁石の応用製品すべてに適用できる。処理に使用している溶液は、焼結磁石のリサイクルの過程からその一部を確保したり、Ndの精錬の過程から抽出することも可能である。フッ素や重希土類元素の拡散を進行させるために、溶液の粘度の低下,活性なフッ素原子の増加,フッ素原子周囲の構造最適化,イオン結合の制御,イオン性成分の濃度管理,処理雰囲気制御,不純物成分低減を進め、全自動処理液製造,処理,膜厚管理,熱処理,磁気特性評価を連続プロセスが可能である。熱処理により溶液中の構成元素が焼結磁石内に拡散することで、焼結磁石の加工劣化は改善され、再度加工した場合でも加工劣化は熱処理前よりも低減され、わずかに加工などで劣化した場合でも、表面処理なしの局所加熱などの熱処理のみで磁気特性を回復させることも可能である。このような溶液を使用する拡散処理は、溶液を構成するフッ素と他の元素を適当に選択することで、NdFeB系焼結磁石,SmCo系焼結磁石あるいは他の磁石のみならず、Fe系,FeCo系,酸化物系などの粒界を有する磁性材料すべてに適用することが可能であり、目的が磁気特性向上ではなく、電気抵抗増加,強度向上,耐食性向上,光学的性質改善などの目的の場合には粒界や界面を有するバルク,薄膜,微粒子材料すべてに適用できる。上記希土類フッ素化合物は粉状ではなく、低粘度のため、1nmから100nmの微小な穴の中にも塗布可能であるので、微小磁石部品の磁気特性向上に適用でき、この磁石は整流子型あるいはブラシレス型の永久磁石モータ,ディスク型電気子直流モータ,フラットモータ,ボイスコイルモータ,ステッパーモータ,キャンスタックモータ,磁気センサ,アクチュエータ,磁気軸受などに適用できる。また、フッ素化合物処理に使用した処理溶液は、磁性粒子と混合させることで塗布媒体あるいは任意形状の塗布磁石に適用でき、各種磁性流体としても使用できる。尚、フッ素が粒界付近に偏析している本磁石は用途に応じて表面に樹脂,金属などの保護膜を形成し、信頼性をさらに高めることができる。
<実施例5>
可視光で透過性のあるフッ素化合物溶液に1原子%以上のFeを添加し、FeイオンあるいはFeのクラスタが混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。このときFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類,Cr,Mn,Vあるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このようなゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、Feフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Feイオンの一部あるいは代替として他の遷移金属元素イオンを添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解、粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、Cr,Mn,Vあるいは希土類元素をMとすると、Fe−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石がゲルあるいはゾル状、または溶液状フッ素化合物を用いてゲルあるいはゾル状態の高保磁力磁石を得ることができ、ミリ波照射により溶解しにくい種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。これらの材料の保磁力にはフッ素原子やM原子の構造及び組成が関連し、ゲルあるいはゾルを使用して加熱することで、ナノ粒子状態の磁性粒子を作成できナノ粒子内のフッ素あるいはM原子の偏析が高保磁力に関係する。保磁力は5kOe以上,残留磁束密度0.5T 以上の特性が得られるものもある。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素,ホウ素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。このような材料系で発光特性を示す材料を得ることも可能であり、磁気光学材料として光磁気応用素子などに応用でき、フッ素を0.1% から80%含有した高保磁力材料では可視光透過性のある永久磁石が作成でき、光素子などに適用できる。特にフッ素を10%以上含有した磁石は特定波長で透過性を示す材料であり、可視光の透過性のある磁石としてフッ素を15%から80%含んだ材料が製造可能である。
<実施例6>
粒径0.1 〜100μmのSmFeN系磁粉の表面に可視光を透過するフッ素化合物溶液を塗布する。フッ素化合物はアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素を少なくとも1種以上含む化合物である。塗布されたSmFeN系磁粉を金型に挿入し、3−20kOeの磁界で磁粉を磁界方向に配向させながら圧縮成形し、仮成形体を作製する。異方性を有する仮成形体をミリ波照射により加熱し、フッ素化合物に選択加熱を施す。加熱中のSmFeN系磁粉の構造変化などに伴う磁気特性劣化を抑制させ、フッ素化合物がバインダとなって、異方性磁石が作製でき、SmFeN磁粉がフッ素化合物で結着された磁石を得ることができる。フッ素化合物の占める体積を0.1 −3%にすることで、残留磁束密度1.0T 以上のSmFeN異方性磁石が得られる。仮成形体形成後にフッ素化合物液を含浸させその後熱処理することで磁気特性を向上させることも可能である。局所的にSm−Fe−N−FあるいはSm−Fe−N−Oが形成されるが、フッ素化合物との反応により保磁力増加,角型性向上,残留磁束密度増加のいずれかの効果が確認される。SmFeN系などの窒素系磁粉の場合には、SmFe粉にミリ波照射してSmFeN系磁粉を作製することで、従来のアンモニア窒化などの場合よりも窒化による保磁力の増加が著しく、20kOe以上の保磁力が得られる。ミリ波を使用してフッ素化合物で結着させることは、他の鉄系材料であるSmFeCo系,Fe−Si系,Fe−C系,FeNi系,FeCo系,Fe−Si−B系あるいはCo系磁性材料であるSmCo系,CoFeSiB系,CoNiFe系,AlCoNi系にも適用でき、軟磁性粉,軟磁性薄帯,軟磁性成形体,硬磁性粉,硬磁性薄帯,硬磁性成形体にも磁気特性を損なうことなく適用でき、他の金属系材料の接着も可能である。
<実施例7>
可視光を透過するフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子添加し、Fe系微粒子が混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子を含むゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、Feフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波あるいはマイクロ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素をMとすると、Fe−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石がゲルあるいはゾル状、または溶液状フッ素化合物に微粒子を添加する手法を用いて高保磁力磁石を得ることができ、種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。レジスト等を用いてパターニングされた形状に上記光透過性のあるフッ素化合物を挿入し乾燥後レジストの耐熱温度以下で熱処理する。さらにレジストを除去後加熱すれば保磁力が増加する。レジスト間隔10nm以上,磁石部厚さ1nm以上のスペースに上記ゾル状あるいはゲル状フッ素化合物を注入あるいは塗布することができ、3次元形状の磁石を機械加工なしでかつ蒸着、スパッタリング等の物理的手法を使用せずに小型磁石を作製することができる。このようなFe−M−F系磁石はFの濃度を調整することで、特定の波長の光のみ吸収することができる。したがってこのようなフッ素化合物は光学部品や光記録装置などの部品あるいはその部品の表面処理材として使用できる。
<実施例8>
可視光の透過性のあるフッ素化合物に粒径10〜10000nmの希土類元素を少なくとも1種以上含む粒子を添加する。粒子の一例としてNd2Fe14B の構造を主相とする粒子を使用し、フッ素化合物が前記粒子表面に塗布される。フッ素化合物溶液と粒子の混合比あるいは塗布条件をパラメータとすることにより、粒子表面の被覆率を変えることができ、被覆率1〜10%でフッ素化合物による保磁力増加効果が確認でき、10〜50%で保磁力増加効果に加えて減磁曲線の角形性改善あるいはHk(90%残留磁束密度のときの減磁曲線上の磁界)増加(磁界値の絶対値が増加)が見られ、さらに被覆率50〜100%で成形後の抵抗増加が確認できる。ここで被覆率とは粒子の表面積に対して塗布した材料の覆っている面積である。被覆率1〜10%の粒子を使用して磁場中仮成形後800℃以上の温度で加熱成形することにより焼結磁石が得られる。被覆するフッ素化合物は、希土類元素を少なくとも1種以上含んだフッ素化合物である。溶液フッ素化合物を使用するため、粒子の界面に沿って層状あるいは板状にフッ素化合物が塗布でき、粒子に凹凸があってもその表面の形状に沿って層状に塗布される。被覆率1〜10%の粒子は磁場中仮成形後の熱処理により層状フッ素化合物の一部である希土類元素が結晶粒界に沿って拡散し、保磁力が被覆無しの場合と比較して増加する。なお、フッ素化合物をFe系粒子に塗布すると、塗布材料がない粒子表面の一部がフッ化する。したがって被覆率1〜10%の粒子においても、フッ素化合物が形成されている部分の面積が1〜10%であっても、90%の粒子表面が粒子の組成や表面状態に依存するがフッ化し、界面の磁気特性が変化するとともに、粒子表面の抵抗が増加する。希土類元素はフッ化されやすいため、粒子表面の希土類濃度が高いものほど粒子表面がゲルあるいはゾル状フッ素化合物に塗布された時に一部がフッ化し、粒子表面の抵抗が高くなる。このような高抵抗の粒子を焼結すると粒内の希土類元素が粒子表面のフッ素と結合し、粒界付近に希土類元素が偏析した構造となり、保磁力が増加する。すなわち、フッ素が希土類原子のトラップ効果を発揮し、希土類元素の粒内拡散を抑制することで希土類元素が粒界に偏析し、保磁力が増加し粒内希土類元素濃度が低減され高残留磁束密度が得られる。
<実施例9>
可視光を透過可能なフッ素化合物溶液に粒径10〜10000nmの希土類元素を少なくとも1種以上含む粒子を添加する。粒子の一例としてNd2Fe14B の構造を主相とする粒子あるいは微小磁石あるいは熱処理後微小磁石となる粉を使用し、フッ素化合物が前記粒子あるいは粉の表面と接触し、表面に付着したフッ素化合物塗布溶液を溶媒などにより除去する。粒子表面には凝集したフッ素化合物はできるだけ残留しないようにし、塗布材料の残留量を平均被覆率10%以下にする。したがって平均90%以上の粒子面積が塗布材料の形成されていない面(走査電子顕微鏡1万倍で塗布された明瞭なフッ素化合物が認められない)となるが、この面の一部は粒子を構成している希土類元素の一部がフッ化し、フッ素の多い層となる。このように粒子表面の一部がフッ化するのは希土類元素がフッ素原子と結合し易いためであり、希土類元素がない場合、表面のフッ化は起こりにくい。希土類元素の一部がフッ化する場合、酸素原子とも結合しやすいため、酸フッ素化合物となる場合もあるが粒子表面にフッ素と結合している希土類元素からなる相が形成される。このようなフッ化した粒子を用いて磁場中圧縮成形し、その後焼結させて異方性焼結磁石を作製した。磁場中圧縮成形後の密度50〜90%の範囲の仮成形体に上記フッ素化合物溶液を含浸させ、粒子表面及粒子クラック部表面をフッ素化合物の前駆体でその一部を被覆することも可能であり、このような含浸処理によって1〜100nmのフッ素化合物をクラック部の一部も含めて被覆することができ、保磁力増加,角型性向上,高抵抗化,残留磁束密度低減,希土類使用量低減,強度向上,磁粉の異方性付加などのいずれかの効果に寄与する。焼結時にはフッ素及び希土類元素の拡散を伴う。フッ化しない場合と比較して、重希土類元素の添加量が多いほどフッ化による保磁力増加が顕著になる。同一保磁力の焼結磁石を得るために必要な重希土類元素の濃度はフッ化により低減できる。これはフッ化によりフッ化相近傍に重希土類元素が偏析しやすくなるため粒界近傍に重希土類元素が偏析した構造が生まれるため、高保磁力となると考えられる。このような重希土類元素の偏析する幅は粒界から約1〜100nmである。
<実施例10>
可視光の透過性があるフッ素化合物溶液を用いて希土類元素を少なくとも1種以上含む粒径1〜10000nmの酸化物粒子に塗布し、800〜1200℃の温度範囲で加熱するかあるいはミリ波照射による加熱を施す。加熱により酸フッ素化合物が部分的に形成される。フッ素化合物溶液として希土類元素を少なくとも1種類以上含む溶液を使用することで酸フッ素化合物あるいはフッ素化合物の形成により、酸化物であるバリウムフェライトあるいはストロンチウムフェライト粒子の磁気特性が改善され、保磁力向上,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度向上が確認できる。特に鉄を1%以上含むフッ素化合物溶液を使用することで、残留磁束密度の増加効果が大きい。上記酸フッ素化合物の酸化物粒子をゾルゲルプロセスを用いて作製しても良い。
<実施例11>
光透過性のあるフッ素化合物溶液に1原子%以上のCoあるいはNiを添加し、Co,NiイオンあるいはCo,Niのクラスタが混合したゲルあるいはゾル状CoあるいはNi−フッ素化合物溶液を作製する。このときCoあるいはNi原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような光透過性のあるフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射乾燥することで、フッ素原子とCoあるいはNi原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、CoあるいはNiフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。CoあるいはNiイオンの一部あるいは代替として他の遷移金属元素イオンを添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解、粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素をMとすると、Co−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石が光透過性のある溶液状フッ素化合物を用いて高保磁力磁石あるいは磁石粉末を得ることができ、ミリ波照射により溶解しにくい種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。
<実施例12>
可視光で透過性を示すフッ素化合物系溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したFe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスタを含む低粘度かつ光透過性のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になる。また一部のFe原子の磁化は反強磁性的な結合をとる。ミリ波あるいはマイクロ波照射により強磁性結合に有利となる構造が生じ、保磁力10kOe以上のFeを含むフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。すなわち、Co,Ni以外のCr,Mn,Vなどの遷移金属元素においてもこのような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで永久磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。
<実施例13>
光透過性のフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したFe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスタを含む低粘度のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)とFeが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素20〜75%)が形成されることで、Feの多い層が磁化を担い、フッ素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。また一部のFe原子の磁化は反強磁性的な結合をとる。ミリ波あるいはマイクロ波照射により強磁性結合に有利となる構造が生じ、保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解、粉砕プロセス無しで永久磁石材料を得ることが可能であり、フェライト磁石粉の表面フッ素化合物溶液処理と熱処理による高エネルギー積化も可能であり種々の磁気回路に適用できる。
<実施例14>
Nd2Fe14B を主相とするNdFeB系焼結磁石の表面に光透過性のある希土類フッ素化合物を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の平均膜厚は1〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石は結晶粒径が平均1−20μmでありNd2Fe14B を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工あるいは研磨にともなう磁気特性の劣化が減磁曲線上にみられる。このような磁気特性劣化を改善すること、粒界近傍の希土類元素偏析による保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,磁石表面あるいは粒界付近の高抵抗化,フッ素化合物による高キュリー点化,高強度化,高耐食性化,希土類使用量低減,着磁磁界低減などを目的に、希土類フッ素化合物溶液を焼結磁石表面に塗布乾燥後、500℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。希土類フッ素化合物溶液から成長するクラスタは塗布乾燥直後100nm以下1nm以上の粒子に成長し、さらに加熱することで、焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。塗布乾燥後のフッ素化合物クラスタは、粉砕プロセスを経ていないため、突起や鋭角のある表面になっておらず、粒子を透過電子顕微鏡で観察すると丸みを帯びた、卵形あるいは円形に近くクラックは見られない。加熱によりこれらの粒子は焼結磁石表面で合体成長すると同時に、焼結磁石の粒界に沿って拡散あるいは焼結磁石の構成元素と相互拡散を起こす。また、これらのクラスタ状の希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布するため、焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後200℃以上焼結温度以下の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。このフッ化相,酸素を含むフッ化相は母相と部分的に整合性を保ちながら成長し、このようなフッ化相あるいは酸フッ化相の母相からみて外側にフッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相が整合的に成長し、このフッ化相,フッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相近傍に重希土類元素が偏析することで保磁力が増加する。粒界に沿って重希土類元素が濃縮された帯状の部分は幅1〜500nmの範囲が望ましく、この範囲であれば高残留磁束密度と高保磁力が満足できる。このような手法によってDyを粒界に沿って濃縮させた場合、得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも10%から80%低くできる。上記焼結磁石表面のフッ素化合物中のFe濃度は、熱処理温度により異なり、1000℃以上で加熱すると10ppm 以上5%以下のFeがフッ素化合物中に拡散する。フッ素化合物の粒界付近でFe濃度が50%となるが、平均濃度が1%以上5%以下であれば焼結磁石全体の磁気特性にはほとんど影響しない。
<実施例15>
ゲルあるいはゾル状のフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスタを含むゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体に窒素を含む雰囲気でミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子や窒素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子及び窒素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子,窒素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)窒素が多い相(窒素3〜20%)とFeが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素10〜75%)が形成されることで、Feの多い層が磁化を担い、フッ素や窒素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。このようなFe−M−F−Nの4元系(Mは希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素)で保磁力10kOe以上の磁気特性を有する磁石が得られる。上記希土類フッ素化合物溶液に、希土類元素を含む微粉を一部混合した溶液でも同様の効果が得られる。
<実施例16>
可視光透過性を示すフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe−B微粒子が混合したFe−フッ素化合物クラスタを作製する。
微粒子径が100nmを超えると内部に軟磁性成分のFe本来の特性がその後のプロセスを経て残留し、1nmより小さくなるとFeに対する酸素の濃度が高くなるので磁気特性の向上が困難となるため1〜100nmの粒径が望ましい。このときFe−B微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスタを含むゲルあるいはゾル状のFe−Bを含むフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子やホウ素(B)原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及びホウ素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子,ホウ素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)ホウ素が多い相(ホウ素5〜20%)とFeが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素10〜75%)が形成されることで、Feの多い層が磁化を担い、フッ素やホウ素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。このようなFe−M−B−Fの4元系(Mは希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素)で保磁力10kOe以上の磁気特性を有する磁石が得られ、Mを重希土類元素にすることで、キュリー温度を400〜600℃にすることができる。
<実施例17>
Nd2Fe14B を主相とするNdFeB系焼結磁石の表面に、100℃以上の温度で希土類フッ素化合物に成長可能なフッ素化合物クラスタ溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物クラスタの平均膜厚は1〜10000nmである。このようなクラスタはバルクフッ素化合物の結晶構造をもたず、フッ素と希土類元素がある周期構造をもって結合している。NdFeB系焼結磁石は結晶粒径が平均1−20μmでありNd2Fe14B を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工あるいは研磨にともなう磁気特性の劣化が減磁曲線上にみられる。このような磁気特性劣化を改善すること、粒界近傍の希土類元素偏析による保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,磁石表面あるいは粒界付近の高抵抗化,フッ素化合物による高キュリー点化,高強度化,高耐食性化,希土類使用量低減,着磁磁界低減などを目的に、ゲルあるいはゾル状の希土類フッ素化合物前駆体を焼結磁石表面に塗布乾燥後、300℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。希土類フッ素化合物クラスタは塗布乾燥過程で100nm以下1nm以上の粒子状に成長し、さらに加熱することで、前駆体あるいは一部のフッ素化合物クラスタが焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。塗布乾燥加熱後のフッ素化合物粒子は、粒子同士が合体しない温度範囲であれば、粉砕プロセスを経ていないため、突起や鋭角のある表面になっておらず、粒子を透過電子顕微鏡で観察すると丸みを帯びた、卵形あるいは円形に近く、粒子内あるいは粒子表面にはクラックや、外形に不連続な凹凸は見られない。加熱によりこれらの粒子は焼結磁石表面で合体成長すると同時に、焼結磁石の粒界に沿って拡散あるいは焼結磁石の構成元素と相互拡散を起こす。また、これらのクラスタ状の希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布するため、焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が被覆され、塗布乾燥後焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。このフッ化相あるいは酸素を含むフッ化相は母相と部分的に整合性を保ちながら成長し、このようなフッ化相あるいは酸フッ化相の母相からみて外側にフッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相が整合的に成長し、このフッ化相,フッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相に重希土類元素が偏析することで保磁力が増加する。粒界に沿って重希土類元素が濃縮された帯状の部分は幅0.1〜100nm の範囲が望ましく、この範囲であれば高残留磁束密度と高保磁力が満足できる。DyF2-3 の前駆体を用い上記手法によってDyを粒界に沿って濃縮させた場合、得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くでき、粒界3重点にはNdを含むフッ素化合物や酸フッ素化合物が成長し、1mm〜10mm厚さの焼結磁石の中心位置においても粒界3重点の一部にフッ素化合物や酸フッ素化合物が成長する。このようなフッ素化合物や酸フッ素化合物の成長時に10kOe以上の磁界を印加することで重希土類元素,フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の磁化方向を揃えたり磁気的な結合を強めたりすることで保磁力を増加させることも可能である。上記焼結磁石表面のフッ素化合物中のFe濃度は、熱処理温度により異なり、1000℃以上で加熱すると1ppm 以上5%以下のFeがフッ素化合物中に拡散する。フッ素化合物の粒界付近でFe濃度が50%となるが、平均濃度が5%以下であれば焼結磁石全体の磁気特性にはほとんど影響しない。
<実施例18>
SmCo合金を高周波溶解などで溶解し、不活性ガス中で粉砕する。粉砕した粉末径は1−10μmである。粉砕粉の表面にフッ素化合物前駆体(SmF3 前駆体)を塗布乾燥し、磁界中プレス装置により塗布粉末を配向させ、圧粉体を作製する。圧粉体の粉末には多数のクラックが導入され、圧粉体の外部からフッ素化合物前駆体をさせることで、クラック面の一部もフッ素化合物前駆体で被覆される。これを焼結し、急冷する。焼結体は少なくとも二相から構成され、SmCo5及びSm2Co17相が形成している。フッ素化合物は焼結時に分解し始め、二相のどちらにも分布するが、SmCo5 の方に多くのフッ素原子が存在し、保磁力がフッ素化合物前駆体を添加しない場合に比べて増加する。また、フッ素化合物前駆体の塗布効果として、高抵抗化,角型性向上,減磁耐力向上,機械強度向上のいずれかが確認できた。上記のような圧粉体はFe系構造体で高密度に形成され、この高密度圧粉成形体にフッ素を含む溶液を塗布,熱処理することで構造体の損失を低減できる。したがって、焼結磁石と圧粉成形体から構成される製品では、同時に溶液処理後200℃以上に加熱することで、フッ素あるいは溶液を構成する他の金属元素の拡散により、焼結磁石の磁気特性向上と圧粉成形体の損失低減を実現できる。
<実施例19>
Nd2Fe14B の組成近傍を主相とする粒径1から20μmの粒子を使用し、磁界中プレス成形した仮成形体を不活性ガス中あるいは真空中で200℃から1000℃の温度範囲に加熱後、フッ素化合物クラスタ溶液を含浸あるいは塗布する。この処理によりフッ素化合物前駆体溶液が成形体の内部の磁粉界面に沿って浸入し、その界面の一部がフッ素化合物前駆体で被覆される。次にこの含浸あるいは塗布された成形体を上記加熱温度よりも高い温度で焼結させ、さらに保磁力向上のため焼結温度よりも低い温度で熱処理し、フッ素及び前駆体構成元素である希土類元素,アルカリあるいはアルカリ土類元素を含有した焼結体を得る。このプロセスの特徴は、焼結前に磁粉表面の一部あるいは全てに希土類リッチ相を形成し、完全に焼結させずに磁粉と磁粉の接触部以外に1nm以上の隙間を確保して、その隙間にフッ素化合物前駆体を含浸あるいは塗布により浸入被覆させ、成形体最表面以外の成形体内部にある磁粉の表面の一部にフッ素化合物前駆体を被覆させるものである。このプロセスにより100mmの焼結体中心部においてもフッ素化合物クラスタを磁粉表面に被覆させることが可能であり、フッ素化合物クラスタの構成元素にDy,Tb,Hoなどの重希土類元素を選択することで、焼結体の結晶粒界付近に重希土類元素を偏析させ、保磁力増加,角型性向上,残留磁束密度増加,保磁力温度係数や残留磁束密度の温度係数低減,加工変質による磁気特性劣化の低減のいずれかが可能である。上記重希土類元素の偏析は結晶粒界から1〜100nmであり、熱処理温度に依存して変化し、粒界三重点のような特異点では広がる傾向がある。重希土類元素の粒界偏析を助長させるためと、粒界のフッ素を含む相の構造的な乱れを防止するなどのためにCu,Zr,Ni,Mo,Sn,Al,Zn,Ti,Nb,Coなどの遷移金属元素を3原子%以下の濃度で添加しても良い。
<実施例20>
Feフッ素化合物のクラスタ溶液をアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素の中の少なくとも1種を含むフッ素化合物の前駆体と混合させ、乾燥熱処理することでFe−M−F(Mはアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素の中の少なくとも1種類の元素)化合物が形成できる。前駆体を混合させているため、乾燥熱処理過程で成長する粒子は1−30nmと小さく、これらのナノ粒子の中にフッ素化合物が成長する。高保磁力のフッ素化合物材料は、Feが10原子%以上、フッ素が1%以上の組成で粒界にMリッチ相を形成することにより作製可能であるが、特にFe濃度が50原子%以上、Mが5〜30%、フッ素が1〜20%でフッ素リッチ相,Feリッチ相及びMリッチ相を成長させ、粒界にフッ素リッチ相あるいはMリッチ相を成長させることにより、強磁性を示しかつ保磁力が10kOe以上の粉末が得られる。異方性を付加するために磁場中でフッ素化合物を成長させることで、Feリッチ相が磁場方向に沿って成長する。成長プロセスにおいて水素,酸素,炭素,窒素,ホウ素が混入しても上記相の骨格が壊れなければ特に問題はない。また、Fe−M−F(M原子がCr,Mnなどの遷移金属元素の1種以上)でM原子が5原子%以上、F原子が5原子%以上を、クラスタ状フッ素化合物などを含む溶液からせ成長させ、高保磁力(保磁力5kOe以上)が得られる。これらの化合物の中にはフッ素原子に異方的な配列を持っていることで高い異方性が見られる。このような3元系磁石は上記のように溶液を用いて形成させるため、加工研磨工程は必要ないことから、複雑形状の磁石が容易に作製でき、1個の磁石内で異方性の方向を連続的に変えることも可能であり、各種回転機,磁気センサ,ハードディスク用磁石部品、磁気媒体に使用可能である。また、M原子の濃度を5原子%未満とすることで、Fe−M−F3元系合金は高飽和磁束密度軟磁性材料となり、各種磁気回路のコア材料に適用できる。またフェライト粒子とフッ素系処理液との反応を利用した酸フッ素化合物の形成によりフェライトの磁気特性や温度特性,高周波特性などの向上が可能である。さらにフッ素系処理液を使用して各種磁性材料の磁気光学効果を向上でき、アイソレータ回路,光道波路など、磁気光学応用機器に適用できる。
<実施例21>
Nd2Fe14B 構造を主相とするNdFeB系焼結磁石を加工研磨し積層電磁鋼板,積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄が金型などにより加工されている。磁石挿入位置に焼結磁石を挿入する場合、焼結磁石と積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄の間に0.01 〜0.5mm の隙間を設けている。このような隙間を含めた磁石位置に矩形,リング形、あるいはかまぼこ形状など湾曲した形状を含む種々の焼結磁石を挿入し、その隙間にゲルあるいはゾル状またはクラスタ状のフッ素化合物溶液を注入し、100℃以上の温度で加熱し、焼結磁石と積層電磁鋼板,積層アモルファスあるいは圧粉鉄を接着させる。このとき、さらに200℃以上の温度で熱処理をすることで、焼結磁石表面に希土類元素あるいはフッ素を拡散させ、積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄の表面にもフッ素化合物の構成元素を拡散させ、焼結磁石の磁気特性を向上(保磁力増加,角形性向上,減磁耐力向上,キュリー温度上昇など)させかつ接着を強固にすることができる。焼結磁石の湾曲した加工変質層の磁気特性改善が可能であり、各磁性材料の表面及び粒界におけるフッ素あるいは希土類元素を主成分とする拡散層には、酸素や炭素などの軽元素が含まれてもよい。粒界近傍において粒界にはフッ素や酸素が存在し、重希土類元素は平均0.1 から10nmの粒界幅の2倍から1000倍の範囲で偏析することで保磁力が増加する。粒界3重点付近ではフッ素を含む粒界幅が広くなり、粒界3重点から粒界を通してフッ素及び重希土類元素が拡散する。母相のNd濃度はNd2Fe14B の組成よりも0から10原子%少ない希土類元素濃度にすることで、フッ素化合物処理により重希土類元素が補えるため、1.5T 以上の高残留磁束密度が得られる。フッ素が存在する粒界幅が1nm以上でかつ粒界全体のフッ素を含む層状粒界相の被覆率が10%以上で焼結磁石の比抵抗が0.2mΩcm 以上となる。粒界に存在するフッ素原子の一部はNdや酸素原子と結合しており、粒界における原子のスピン間相互作用と粒界面での母相内原子スピンとの間のスピン間相互作用に影響し、重希土類元素の偏析による磁気異方性エネルギーの増加とともに、フッ素や酸素,Nd原子の粒界相中の原子がもつスピンが粒界面に接触している母相格子のスピンや軌道に影響し、かつフッ素,酸素,Ndなどの粒界相は粒界面の原子レベルでの凹凸を低減し、逆磁化の発生を抑制することで保磁力あるいは角型性が増大する。焼結磁石の磁気特性改善には上記フッ素化合物に希土類元素を含有させるが、磁石磁気特性改善以外の接着効果や軟磁性の歪取りあるいは損失低減には、希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素を含むフッ素化合物を使用することができる。
<実施例22>
NdFeB系焼結磁石の表面にゲルあるいはゾル状の光透過性のある希土類フッ素化合物溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の膜厚は1〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石はNd2Fe14B を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工研磨あるいは酸化にともなう磁気特性の劣化がみられる。このような磁気特性劣化を改善するために、焼結磁石表面を酸処理,洗浄後、可視光線を透過する希土類フッ素化合物系溶液を焼結磁石表面に塗布乾燥させ、200℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。溶液塗布前の洗浄工程は、酸処理以外にもスパッタリング,反応性エッチングや超音波洗浄など種々の溶液や手法が使用でき、厚い酸化層は除去しておくことが望ましい。ミリ波など高周波の使用により局所加熱を利用すれば、熱処理温度は通常の熱処理温度よりも100℃以上低下させることができ、熱処理時間も短縮できる。ゲルあるいはゾル状希土類フッ素化合物溶液からは塗布乾燥直後50nm以下1nm以上の粒子に成長しフッ素原子周囲の構造変化がみられ、さらに加熱することで、焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。粒子あるいは粉ではなく、溶液を使用するため均一にコート膜厚及び膜厚分布を制御することが可能であり、クリーン度の要求される材料あるいは工程で上記溶液を使用でき、溶液塗布前後にマスキングすることで塗布したい部分にのみ塗布することが容易である。このような塗布工程はボイスコイルモータなど精密電子機器に使用する磁石の処理として溶液を使用するため有利である。溶液には各種CH基やOH基を含んでいる場合もあり、溶液の状態あるいは塗布直後の状態は、加熱後の結晶構造と異なる主構造になっている。すなわち溶液の構造はフッ素化合物粉の結晶構造と全く異なる主構造となっており、電子線やX線回折パターンで明確な差として検出でき、ブロードなか回折パターンが検出される。これは完全なフッ素化合物より周期構造が一部乱れていることを示している。上記溶液塗布後溶媒を加熱により除去し焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後500℃以上の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。上記希土類フッ素化合物の中でもDyフッ素化合物あるいはTb,Hoフッ素化合物またはこれらの酸フッ素化合物は、これらの構成元素であるDy,Tb,Hoなどが結晶粒界に沿って拡散し、磁気特性の劣化が改善される。熱処理温度が800℃以上になると、フッ素化合物と焼結磁石の相互拡散はさらに進行し、フッ素化合物層に1ppm 以上の濃度でFeがみられる場合がある。熱処理温度が高温になるほど、フッ素化合物層中への母相構成元素の濃度は増加する傾向になる。焼結磁石を積層して接着する場合、拡散させて磁気特性を向上させたフッ素化合物と同一または別の接着層となるフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を、上記熱処理後に塗布し、積層させてミリ波照射することで、接着層付近のみ加熱させて焼結磁石を接着することができる。接着層とするフッ素化合物はNdフッ素化合物など (NdF2-3,Nd(OF)1-3)であり、ミリ波の照射条件を選択することにより焼結磁石中心部の温度上昇を抑えながら接着層付近のみ選択的に加熱することが可能であり、接着にともなう焼結磁石の磁気特性劣化や寸法変化を抑えることが可能である。またミリ波を使用することで選択加熱の熱処理時間は従来の熱処理時間の半分以下にすることができ、接着工程と同時に磁気特性向上が可能な量産に適している。ミリ波は焼結磁石の接着だけでなく、塗布材料の拡散による磁気特性改善にも使用でき、接着層としての機能はフッ素化合物以外にも酸化物や窒素化合物,炭化物など誘電損失が母相のNdFeBと異なる材料を使用することで達成できる。ミリ波を使用しなくても加熱で拡散させることが可能であるが、このようにミリ波を利用することでフッ素化合部が選択的に加熱され、磁性材料及び種々の金属材料や酸化物材料の接着、接合に使用できる。ミリ波の条件の例としては、28GHz,1−10kW,Ar雰囲気中あるいは真空中または他の不活性ガス雰囲気で1−30分照射する。ミリ波を使用することにより、フッ素化合物あるいは酸素を含む酸フッ素化合物が選択的に加熱されるため、焼結体そのものの組織をほとんど変えずに、フッ素化合物のみ粒界に沿って拡散させることが可能であり、結晶粒内部へのフッ素化合物構成元素の拡散が防止でき、単純に加熱する場合よりも高い磁気特性(高残留磁束密度,角型性向上,高保磁力,高キュリー温度,低熱減磁,高耐食性,高抵抗化などのいずれか)が得られ、ミリ波条件とフッ素化合物の選択により通常の熱処理よりも焼結磁石の表面からより深い部分にもフッ素化合物の構成元素を拡散させることが可能であり、10×10×10cmの磁石中心部へも拡散させることが可能である。このような手法によって得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くできる。また、焼結磁石表面に1〜100nmのアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素を少なくとも1種含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が残留していれば、焼結磁石表面の抵抗は高くなり、積層接着しても渦電流損失を低減し、高周波磁界中での損失低減が図れる。このような損失低減により、磁石の発熱が低減できるため、重希土類元素の使用量を低減できる。上記希土類フッ素化合物は粉状ではなく、低粘度のため、1nmから100nmの微小な穴の中にも塗布可能であるので、微小磁石部品の磁気特性向上に適用でき、この磁石は整流子型あるいはブラシレス型の永久磁石モータ,ディスク型電気子直流モータ,フラットモータ,ボイスコイルモータ,ステッパーモータ,磁気センサ,アクチュエータ,磁気軸受,磁気共鳴画像診断装置,電子管,スピーカなどに適用できる。また、フッ素化合物処理に使用した処理溶液は、磁性粒子と混合させることで塗布媒体あるいは任意形状の塗布磁石に適用でき、各種磁性流体,磁気遮蔽材料としても使用できる。
<実施例23>
RE2Fe14-18(B,F)1-3,RE2Fe14-191-3,RE2Fe14-19(F,N)1-3,RE2Fe14-19(F,C)0.1-2などのRE(希土類元素)及び鉄ならびにフッ素を含み、フッ素を含む溶液を利用してミリ波照射(出力1kW,200から1,000℃ )により作製された粒径1−10000nmの粒子は、磁気異方性を持った磁性材料であり、各種磁気回路に利用できる。これらの粒子はフッ素の濃度勾配を持ち、粒子内で異方性エネルギーに差が見られ、高い異方性エネルギーの相が磁区を安定化させており、フッ素や希土類元素を含むゾルあるいはゲルなどの部分ランダム構造をもった相との反応から形成されるものであり、希土類の含有量を低減した磁性材料が得られる。このようなフッ素を含む磁性材料は希土類−フッ素原子間距離及びフッ素の濃度勾配に関係し、X線回折において1.0−4.0オングストロームの範囲で複数の回折ピークが見られ、反応前の回折パターンには半値幅1度以上のブロードなピークがみられ、このピークが熱処理により変化し、半値幅が狭くなる過程で形成される。このようなゾルあるいはゲル,コロイド溶液の反応を利用して種々の磁性材料である、RE−Fe−F系,RE−Fe−F−B系,RE−Co−F系,M−Fe−F系,M−Co−F系,RE−Mn−F系,RE−V−F系,RE−Cr−F系、及びこれらと酸化物フェライト系材料が反応した材料(Mは遷移金属元素)を形成でき、金属元素を含まない基本構造としてフッ素同士またはフッ素−炭素,フッ素−酸素などの結合角度を変えたナノチューブを上記フッ素含有溶液のミリ波照射から形成でき、カーボンナノチューブと同等以上の諸特性を得ることが可能である。上記溶液を原料の一部に使用して作製した磁性材料は、薄膜からバルクまで形状自由度に優れ加工工程を必要としないため種々の磁性材料応用製品の量産に適している。このような溶液を使用して形成できる磁性材料はフッ素化合物系以外にもハロゲン元素を含むRE−M系で可能であり、基板の上に溶液から成長させ局所加熱などの熱処理により磁気特性を変えることができる。またこれらの溶液を利用して作製した磁性材料の中には、磁気光学特性,磁気抵抗効果,圧電効果,熱起電力,光学磁気抵抗効果,蛍光特性,磁気ひずみ効果,磁場依存性蛍光特性,磁気冷却効果を示す材料系があり、それぞれの特徴を利用した素子に適用でき、光磁気記録,磁気ヘッド,磁気媒体,エネルギー変換部品,光学素子,光ファイバー,着色剤,ガラス材料などに使用できる。
<実施例24>
RE2Fe14-18(B,F)1-3,RE2Fe14-191-3,RE2Fe14-19(F,N)1-3,RE2Fe14-19(F,C)0.1-2 などのRE(希土類元素)及び鉄ならびにフッ素を含み、フッ素を含む溶液を利用し、フッ素を含む溶液を基板上にスピンナーなどを使用して均一に塗布する。その膜厚は1−10000nmである。希土類元素を含む溶液とフッ素を含む溶液を交互に塗布乾燥させることで、ある周期をもった積層体が形成され、この積層体にミリ波照射(出力1kW,200から1,000℃ )し、界面の反応を生じさせることにより作製された粒径1−10000nmの粒子は、磁気異方性を持った磁性材料であり、各種磁気回路に利用できる。これらの粒子はフッ素の濃度勾配を持ち、粒子内で異方性エネルギーに差が見られ、高い異方性エネルギーの相が磁区を安定化させており、フッ素や希土類元素を含むゾルあるいはゲルなどの部分ランダム構造をもった相との反応から形成されるものであり、希土類の含有量を低減できる。このようなフッ素を含む磁性材料は希土類−フッ素原子間距離及びフッ素の濃度勾配に関係し、X線回折において面間隔が1.0 −10オングストロームの範囲で複数の回折ピークが見られ、反応前の回折パターンには半値幅1度以上のブロードなピークがみられ、このピークが熱処理により変化し、半値幅が狭くなる過程で形成される。このようなゾルあるいはゲルまたはコロイド溶液の積層化及び積層膜の反応を利用して種々の磁性材料が作製でき、RE−Fe−F系,RE−Co−F系,M−Fe−F系,M−Co−F系,M−Ni−F系,RE−Fe−(B,F)系,RE−Mn−F系,RE−V−F系,RE−Cr−F系、及びこれらと酸化物フェライト系材料が反応した材料(Mは遷移金属元素)を形成でき、他の材料系のめっき膜との積層,熱処理による材料作製も可能である。このような溶液を原料の一部に使用して作製し、熱処理により結晶構造の変化を利用した磁性材料、あるいは溶液から形成した積層体をミリ波などの局所加熱,電場効果,磁場効果を利用して反応させた材料は、薄膜からバルクまで形状自由度に優れ加工工程を必要としないため種々の磁性材料応用製品の量産に適しており、磁気媒体の磁性相間にフッ素含有層を形成することで磁気記録のSNを向上させることが可能である。またこれらの溶液を利用して作製した磁性材料の中には、磁気光学特性,磁気抵抗効果,圧電効果,熱起電力,光学磁気抵抗効果,磁場依存性蛍光特性,磁気冷却効果を示す材料系があり、それぞれの特徴を利用した素子に適用でき、光磁気記録,磁気ヘッド,磁気媒体,エネルギー変換部品,光学素子などに使用できる。上記積層プロセスの代わりに積層膜厚よりも径の小さな粒子を利用して溶液中に各種粒子を分散させた後、熱処理することでも同等の効果が実現できる。これらの材料の中には、フッ素とフッ素の隣接原子間の距離と角度による隣接原子の磁気モーメントの大きさと磁気的結合の変化を示し、上記種々の特性に反映されるものもあり、これらの特性は溶液の構造に近い部分ランダム構造と完全結晶構造との界面の構造に強く依存する。上記フッ素化合物形成溶液を用いてM−F(Mは金属元素、Fはフッ素)結合あるいはM−F−O結合,M−F−C結合、あるいはM−F−B結合を有する材料において、結合の周期性,結合角度,M元素の選択などによりフッ素原子の電子親和力の大きいことに起因する超伝導効果を得ることができ、高温超伝導を実現でき、高磁場発生用磁石に使用できる。
<実施例25>
NdFeB系焼結磁石の表面にゲルあるいはゾル状の光透過性のある希土類フッ素化合物溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の膜厚は0.1 〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石はNd2Fe14B の基本結晶構造を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工研磨あるいは酸化にともなう磁気特性の劣化がみられる。このような磁気特性劣化を改善するために、可視光線を透過する希土類フッ素化合物溶液を焼結磁石表面に塗布乾燥後、500℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。ゲルあるいはゾル状希土類フッ素化合物溶液またはコロイド溶液からは塗布乾燥直後1nm以上の粒子がみられ、200℃以下の低温で一部は焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。粒子あるいは粉ではなく、溶液を使用するため均一にコート膜厚及び膜厚分布を制御することが可能であり、クリーン度の要求される材料あるいは工程で上記溶液を使用でき、溶液塗布前後にマスキングすることで塗布したい部分にのみ塗布することが容易である。このような塗布工程はボイスコイルモータなど精密電子機器に使用する磁石の処理として溶液を使用するため有利である。図4にボイスコイルモータの適用構造を示す。溶液処理して磁気特性を向上させた焼結磁石12の磁束がヨーク11に流れる。アームにつながっている可動コイル13と銅管14から構成されている。二つの焼結磁石12が空間を通して中央部のヨーク11に磁束を流す。磁束密度の維持には高保磁力,高残留磁束密度、及び高い角型特性が要求される。これらの特性はフッ素系溶液塗布と熱処理により焼結磁石内の結晶粒界付近にフッ素偏析および金属元素の偏析を形成すると同時に磁石表面の還元作用により溶液を使用しない焼結磁石と比較して大幅に磁気特性改善が確認され、ボイスコイルモータの焼結磁石12に適用することで、位置決め精度あるいは位置決め速度の向上を実現でき、高周波あるいは高速、高記録密度のハードディスク装置を実現できる。
<実施例26>
RE2Fe14-18(B,F,O)1-3,RE2Fe14-19(F,O)1-3,RE2Fe14-19(F,N,O)1-3,RE2Fe14-19(F,C,O)0.1-2 などのRE(希土類元素)及び鉄ならびにフッ素を含み、フッ素を含む溶液を利用し、フッ素を含む溶液を基板上にスピンナーなどを使用して均一に塗布する。その膜厚は1−10000nmである。希土類元素を含む溶液とフッ素を含む溶液を交互に塗布乾燥させることで、ある周期をもった積層体が形成され、この積層体にマイクロ波あるいはミリ波照射(出力1kW,200から1,000℃)し、界面の反応を生じさせることにより作製された粒径1−10000nmの粒子は、強磁性あるいは強磁性と反強磁性の混合体を持った磁性材料であり、各種磁気回路に利用できる。これらの粒子はフッ素あるいは酸素または炭素の濃度勾配を持ち、粒子内で異方性エネルギーあるいは磁化に差が見られ、高い異方性エネルギーの相が磁区を安定化させており、フッ素や希土類元素を含むゾルあるいはゲルなどの部分ランダム構造をもった相との反応から形成されるものである。このようなフッ素を含む磁性材料は希土類−フッ素原子間距離及びフッ素の濃度勾配に関係し、X線回折において面間隔が1.0 −10オングストロームの範囲で複数の回折ピークが見られ、反応前の回折パターンには半値幅1度以上のブロードなピークがみられ、このピークが熱処理により変化し、半値幅が狭くなる過程で形成される。このようなゾルあるいはゲルまたはコロイド溶液の積層化及び積層膜の反応を利用して種々の磁性材料が作製でき、RE−Fe−F−O系,RE−Co−F−O系,M−Fe−F−O系,M−Co−F−O系,M−Ni−F−O系,RE−Fe−(B,F,O)系,RE−Mn−F−O系,RE−V−F−O系,RE−Cr−F−O系、及びこれらと酸化物フェライト系材料が反応した材料(Mは遷移金属元素)を形成でき、他の材料系のめっき膜との積層、熱処理による材料作製も可能である。またPtを含む規則合金への表面処理などによるフッ素原子の添加により保磁力を高めたり、規則化温度を低下させたりすることが可能である。このような溶液を原料の一部に使用して作製し、熱処理により結晶構造の変化を利用した磁性材料、あるいは溶液から形成した積層体をミリ波などの局所加熱,電場効果,磁場効果を利用して反応させた材料は、薄膜からバルクまで形状自由度に優れ加工工程を必要としないため種々の磁性材料応用製品の量産に適している。またこれらの溶液を利用して作製した磁性材料の中には、磁気光学特性,磁気抵抗効果,圧電効果,熱起電力,光学磁気抵抗効果,磁場依存性蛍光特性,磁気冷却効果を示す材料系があり、それぞれの特徴を利用した素子に適用でき、光磁気記録,磁気ヘッド,磁気媒体,エネルギー変換部品,光学素子などに使用できる。上記積層プロセスの代わりに積層膜厚よりも径の小さな粒子を利用して溶液中に各種粒子を分散させた後、熱処理することでも同等の効果が実現できる。これらの材料の中には、フッ素とフッ素の隣接原子間の距離と角度による隣接原子の磁気モーメントの大きさと磁気的結合の変化を示し、上記種々の特性に反映されるものもあり、これらの特性は溶液の構造に近い部分ランダム構造と完全結晶構造との界面の構造に強く依存する。上記フッ素化合物形成溶液を用いてRE−F(REは希土類元素、Fはフッ素)結合あるいはRE−F−O結合,RE−F−C結合,RE−B−F結合を有する材料において、結合の周期性,結合角度,RE元素の選択,遷移金属元素やアルカリ元素の添加などによりフッ素原子の電子親和力の大きいことに起因する超伝導効果を得ることができ、高温超伝導を実現でき、高磁場発生用磁石に使用できる。またフッ素原子の電子親和力が大きいことを利用して、フッ素原子周辺の電子状態密度分布を変えるため、隣接元素の磁気モーメント増加や交換結合の変化とそれに起因する磁気特性向上や各物性(光学定数,電気抵抗,熱膨張係数,光磁気効果,磁気冷凍効果,半導体特性,蛍光特性など)の変化が確認できる。フッ素を含む上記材料の蛍光特性などの光学特性が磁界に依存することを利用し、着磁状態について光学特性を利用して判定することや、磁極の種類と位置を光学特性あるいは電気特性で検出することが可能であり、回転機など磁気回路中で磁極位置の検出及び制御回路に応用できる。
<実施例27>
Mnを1から50%含有するフッ素化合物処理液を使用し、希土類元素を少なくとも1種含む粉の表面に塗布する。塗布後のMn及びフッ素を含む膜の結晶構造はバルクマンガンフッ素化合物のような周期構造を持たず、原子間距離がある範囲をもっており、X線回折ピークは半値幅0.5 度以上10度以下である。粉の平均直径は10nmから100μmである。表面処理した粉にミリ波を照射することでMnを含む層が発熱し粉と一部反応する。粉とMnフッ素化合物及び反応層が形成され、Mnを含む化合物が形成される。このMnを含む化合物は反強磁性あるいは強磁性を示し、粉と磁気的に結合し粉の磁気特性を変えることが可能である。M−Mn−F(MはMn以外の金属元素)ではMn及びFの含有量,結晶構造を変えることで強磁性でかつ残留磁束密度が1.0T以上 ,100℃以上のキュリー温度を持った材料を得ることが可能である。F原子によりMnの状態密度が変化することで強磁性あるいは反強磁性を示し、M0.01-80Mn1-101-20 (原子比率)で特に硬質磁性材料に適した特性を有する。強磁性と反強磁性が同じ合金系で共存させることが可能であり、粒界付近の逆磁区発生を抑止することで保磁力の増加を可能とする。粉末内部よりも粉末外周部付近でMn及びFの濃度を高くすることが表面処理の採用により容易であり、外周部に反強磁性の特性を有する層を形成し、内部の磁化と磁気的に結合させることにより保磁力を増大させることもできる。フッ素化合物は表面が部分酸化している酸素を除去する還元効果をもっており、種々の表面酸化粉,バルク,膜などで表面にフッ素含有膜を形成後熱処理することで還元させることが可能である。この時ミリ波を使用することでフッ素含有膜のみ局所加熱が可能であるため、粉,バルク,膜内部の熱影響を最小限にして還元することができ、種々の還元プロセスに適用でき、還元することで材料の諸特性を飛躍的に向上させることが可能である。
<実施例28>
平均粒径0.5 から20μmのNdFeB系合金粉を異方性を付加するために磁界中で仮成形する。磁界は5kOe以上、プレス圧力は0.5 から3Ton/cm2である。プレス方向は磁界方向に平行あるいは直角のいずれでも良い。仮成形体を型から取り出し、X線回折ピーク幅が1度以上20度以下の回折パターンを示すフッ素及び希土類元素を含む溶液を仮成形体の外周側から浸透させる。この含浸処理により仮成形体の中の磁粉表面の一部が上記溶液で被覆される。この被覆している溶液の溶媒を蒸発させ溶液からフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の核が形成され、この核がさらに加熱することで成長すると同時にNdFeB系合金と一部反応する。このような反応は希土類元素の移動を伴い200から300℃ですでに進行する。溶液がNdFeB系粉末に接触した時にその界面近傍では反応が進行する場合もある。このような希土類原子の移動が伴う反応はNdFeB粉表面の酸化層が少ないほど進行する。溶液から成長したフッ素化合物層あるいは酸フッ素化合物層の厚さは0.1nm から100nmであり、最適な層厚は平均1から20nmである。このような含浸処理により仮成形体の大きさによらず、フッ素化合物層を仮成形体の中心部に形成することが容易である。この仮成形体の中の溶媒などの成分を除去した後、真空炉などで900から1,200℃ の温度範囲で加熱焼結する。焼結性を高めるために仮成形体の溶媒除去後さらに圧力を付加し、粉末の一部が動くことでフッ素化合物に被覆されていない面が現れることで焼結が進行する。フッ素化合物の層厚が平均20nmを超えると焼結性が低下し、焼結磁石の強度不足に繋がる。焼結中にNdFeB系粉とフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が反応し希土類元素の拡散が進行することにより、重希土類元素を使用した場合には重希土類元素の偏析がみられ保磁力が増加する。重希土類元素の粒界付近への偏析,フッ素の粒界への偏析,酸素のフッ素化合物への偏析,遷移金属元素のフッ素偏析位置への偏析,炭素のフッ素偏析位置への偏析,もともと粉中に含有していた重希土類元素,酸素,炭素の粒界近傍への偏析のいずれかの偏析が確認でき、保磁力増加以外にも、保磁力や残留磁束密度の温度係数低減,減磁曲線の角型性向上,磁石損失低減,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,熱減磁率低減,着磁磁界低減,容易軸への配向率向上,付可逆熱減磁率低減,キュリー点上昇,加工劣化層の磁気特性回復、耐食性向上,機械強度向上のいずれかの効果が確認できた。本実施例で作製した10×10×10cmの焼結磁石は、切断,加工により磁気特性が劣化しにくく、劣化した場合でも200から1,000℃ の熱処理により磁気特性が容易に回復できる。信頼性確保のためこの焼結磁石表面には金属めっきあるいは樹脂コートなどの保護膜を形成しても良い。上記含浸処理はNdFeB系粉以外にもFe系,Fe−Si系,SmCo系,Fe−Si−B系,FeCoNi系,FeMn系,CrMn系などの合金系粉にも適用可能であり、磁気特性向上や損失低減が実現できる。
<実施例29>
酸素濃度が2000ppm 以下でかつ平均粒径0.5 から20μmのNdFeB合金粉に異方性を付加するために磁界中で仮成形する。磁界は3から15kOe、プレス圧力は0.5から3Ton/cm2 である。プレス方向は磁界方向に平行あるいは直角のいずれでも良い。仮成形体を型から取り出し、光透過性を示すフッ素及び希土類元素を含む溶液を仮成形体の外周側から浸透させる。この含浸処理により仮成形体の中の磁粉表面の一部が上記溶液で被覆される。この被覆している溶液の溶媒を蒸発させ溶液からフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の核が形成され、この核がさらに加熱することで成長すると同時にNdFeB合金と一部反応しフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が成長する。このような反応は希土類元素の移動(拡散)を伴い200から300℃ですでに進行する。溶液がNdFeB粉末に接触した時にその界面近傍では反応が進行する場合もある。このような希土類原子の移動が伴う反応はNdFeB粉表面の酸化層が少ないほど進行する。溶液から成長したフッ素化合物層あるいは酸フッ素化合物層の厚さは0.1nm から100nmであり、最適な層厚は平均1から20nmである。このような含浸処理により仮成形体の大きさによらず、フッ素化合物層を仮成形体の中心部に形成することが容易である。この仮成形体の中の溶媒などの成分を除去した後、真空炉などで900から1,200℃ の温度範囲で加熱焼結する。焼結性を高めるために仮成形体の溶媒除去後さらに圧力を付加し、粉末の一部が動くことでフッ素化合物に被覆されていない面が現れることで焼結が進行する。フッ素化合物の層厚が平均20nmを超えると焼結性が低下し、焼結磁石の強度不足に繋がる。焼結中にNdFeB粉とフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が反応し希土類元素、特にDy,Ho,Tbなどの重希土類元素の拡散が進行することにより、重希土類元素が粒界近傍で偏析すること及び粒界構造の変化により保磁力が増加する。重希土類元素の偏析はNdFeB粉表面に含浸によって被覆されたフッ素及び重希土類元素を含む溶液から形成したフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物層によって生じるものであり、これらのフッ素を含む層とNdFeB粉との希土類元素の拡散が一部起こり粉の中にも重希土類元素あるいはフッ素が拡散する。一部の重希土類元素及びフッ素原子はNdFeB粒内部に拡散し粒内析出物のような粒を形成する。フッ素が偏析している粒界は0.1 から10nmの幅でフッ素を含まない粒界よりも粒界界面の凹凸が少なく粒界部の酸素濃度は粒内の酸素濃度よりも高い傾向を示す。また1nmから5nm幅の粒界には粒界中心部にフッ素が偏析し、希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物と類似の構造をもった相が一部に成長している。この粒界と粒内の境界面は凹凸が少なく透過電子顕微鏡で観察すると粒内の格子と粒界の格子に一部整合性が認められある方位関係も確認できており、このような粒界構造が保磁力増加に繋がっているものと考えている。すなわち、重希土類元素の粒界付近への偏析,フッ素の粒界への偏析,酸素のフッ素化合物への偏析,遷移金属元素のフッ素偏析位置への偏析,炭素のフッ素偏析位置への偏析,もともと粉中に含有していた重希土類元素,酸素,炭素の粒界近傍への偏析,粒界へのフッ素及び遷移金属元素の偏析,軽希土類元素の粒界中心部への偏析あるいは、粒界の凹凸低減,粒界フッ素含有相と粒内相との反応により形成される重希土類濃度分布,粒界フッ素含有相と粒内の格子整合性あるいは方位関係、粒内フッ素含有層の形成,粒界三重点でのフッ素含有相の形成,粒界三重点フッ素含有相と粒内相との格子整合性あるいは方位関係のいずれかが確認でき、保磁力増加以外にも、保磁力や残留磁束密度の温度係数低減,減磁曲線の角型性向上,磁石損失低減,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,熱減磁率低減,着磁磁界低減,容易軸への配向率向上,不可逆熱減磁率低減,キュリー点上昇,加工劣化層の磁気特性回復,耐食性向上,機械強度向上,リコイル透磁率低減,結晶配向性向上,交換結合増加,逆磁区発生抑制のいずれかの効果が確認できた。
<実施例30>
酸素濃度が2000ppm以下でかつ平均粒径0.5から20μmのNdFeB合金粉に焼結工程で異方性を付加するために焼結前に磁界中で仮成形する。磁界は3から15kOe、プレス圧力は0.5 から3Ton/cm2である。プレス方向は磁界方向に平行あるいは直角のいずれでも良い。仮成形体を型から取り出し、光透過性を示すフッ素及び希土類元素を含む溶液を仮成形体の外周側から浸透させる。この含浸処理により仮成形体の中の磁粉表面の一部が上記溶液で被覆される。この仮成形体にミリ波などの電磁波を照射することにより被覆された膜が発熱する。これはフッ素を含む層とNdFeB系材料とで誘電損失に違いがあるためであり、NdFeB自身の発熱は抑えながらフッ素を含む層のみ発熱させることが可能であり、NdFeBの劣化を防止しながらフッ素を含む層のみ構造変化を起こさせることができる。照射により、被覆している溶液の溶媒を蒸発させ溶液からフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の核が形成され、照射をさらに続けると核成長がみられ同時にNdFeB合金と一部反応しフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が成長する。このような反応は希土類元素の移動(拡散)を伴い50から300℃で進行する。イオン性成分を含む溶液がNdFeB粉末に接触した時にその界面近傍では反応が進行する場合もある。このような希土類原子の移動が伴う反応は電磁波照射においてもNdFeB粉表面の酸化層が少ないほど進行する。溶液から成長したフッ素化合物層あるいは酸フッ素化合物層の厚さは0.1nmから100nmであり、1.0 から1.6Tの高残留磁束密度を得るための最適な層厚は平均1から20nmである。このような含浸処理により仮成形体の大きさによらず、フッ素化合物層を仮成形体の中心部に形成することが容易である。この仮成形体の中の溶媒などの成分を除去した後、真空炉や電磁波照射などで900から1,200℃の温度範囲で加熱焼結する。焼結性を高めるために仮成形体の溶媒除去後さらに圧力を付加し、粉末の一部が動くことでフッ素化合物に被覆されていない面が現れることで焼結を進行させることもできる。フッ素化合物の層厚が平均50nmを超えると焼結性が低下し、焼結磁石の強度不足に繋がる。焼結中にNdFeB粉とフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が反応し希土類元素、特にDy,Ho,Tbなどの重希土類元素の拡散が進行することにより、重希土類元素が粒界近傍で偏析すること及び粒界構造の変化により保磁力が増加する。重希土類元素の偏析はNdFeB粉表面に含浸によって被覆されたフッ素及び重希土類元素を含む溶液から形成したフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物層によって生じるものであり、これらのフッ素を含む層とNdFeB粉との希土類元素の拡散が一部起こり粉の中にも重希土類元素あるいはフッ素が拡散する。一部の重希土類元素及びフッ素原子はNdFeB粒内部に拡散し粒内析出物のような粒を形成する。フッ素原子が10ppm 以上の濃度で偏析している粒界は0.1 から10nmの幅でフッ素原子が10ppm 未満の濃度の粒界よりも粒界界面の凹凸が少なく粒界部の酸素濃度は粒内の酸素濃度よりも高い傾向を示す。また1nmから5nm幅の粒界には粒界中心部にフッ素原子が粒内の2倍以上の濃度で偏析し、希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物あるいは炭素を含む酸フッ素化合物と類似の構造をもった相が一部に成長している。この粒界と粒内の境界面はフッ素原子の偏析が認められた部分で凹凸が少なく、透過電子顕微鏡で観察すると粒内の格子と粒界の格子に一部整合性が認められる方位関係も確認できており、このような粒界構造が保磁力増加に繋がっているものと考えている。すなわち、重希土類元素の粒界付近への偏析,フッ素の粒界への偏析,酸素のフッ素化合物への偏析,遷移金属元素のフッ素偏析位置への偏析,炭素のフッ素偏析位置への偏析,もともと粉中に含有していた重希土類元素,酸素,炭素の粒界近傍への偏析,粒界へのフッ素及び遷移金属元素の偏析,軽希土類元素の粒界中心部への偏析あるいは、粒界の凹凸低減,粒界フッ素含有相と粒内相との反応により形成される重希土類濃度分布、粒界フッ素含有相と粒内の格子整合性あるいは方位関係、粒内フッ素含有層の形成、粒界三重点でのフッ素含有相の形成、粒界三重点フッ素含有相と粒内相との格子整合性あるいは方位関係、フッ素原子置換によるNdFeBの異方性エネルギー増加のいずれかが確認でき、保磁力増加以外にも、保磁力や残留磁束密度の温度係数低減,減磁曲線の角型性向上,磁石損失低減,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,熱減磁率低減,着磁磁界低減,容易軸への配向率向上,付可逆熱減磁率低減,キュリー点上昇,加工劣化層の磁気特性回復、耐食性向上,機械強度向上のいずれかの効果が確認できた。このようなフッ素原子あるいは希土類元素の関係する構造変化を利用して、バルク焼結NdFeB系合金の表面処理,バルク焼結SmCo系合金などの希土類焼結磁石の高磁気特性を実現でき、フェライト磁石の希土類元素間拡散による磁気特性向上,Fe系軟磁性材料の高抵抗化が達成できる。ミリ波などの周波数10から200GHzの電磁波照射はフッ素化合物溶液処理をしないNdFeB焼結体において表面部のみ発熱させることが可能であり、加熱による粒界付近の希土類原子の拡散などにより磁気特性を回復させることやフッ素化合物など誘電損失の異なる材料を接着層としてバルクNdFeBを加工変質層の磁気特性回復効果を兼ねて接着することも可能である。
<実施例31>
Co2MSi (M=Fe,Mn,CrなどのCo以外の遷移金属元素)の結晶粒界にフッ素化合物溶液の塗布・熱処理によりフッ素を含む化合物を成長させ、粒界部に高抵抗層を形成する。高抵抗層の厚さは0.1 から10nmであり、粒界付近にCo,MあるいはSiの一部の元素を含む反応層が形成されてもよい。このような粒界に高抵抗層を溶液処理と熱処理によりフッ素を含む層を形成することで磁気抵抗効果が出現し、電極から電流を流すことで磁界に依存した抵抗変化を検出できた。このような粒界部にフッ素化合物を形成し磁気抵抗効果を出現させるためには母相となるCo系材料他Fe系,Ni系あるいはNiFe系,PtMn系,FePt系材料の磁気特性を劣化させないことが重要であり、このためフッ素化合物とその反応生成相が最適であり、粒界拡散を利用して容易に粒界部に高抵抗層を形成でき、磁気抵抗効果を確認できる。形成されるフッ素を含む層はMxFy(Mはアルカリ,アルカリ土類、希土類及び遷移金属元素であり、Fはフッ素、xおよびyは整数)であるか、NxFyOz(Mはアルカリ,アルカリ土類、希土類及び遷移金属元素であり、Fはフッ素、Oは酸素でありx,yおよびzは整数)である。これらのフッ素を含む化合物はゾル,ゲル,コロイド溶液などの溶液を用いて処理及び熱処理により形成できる。必要であればフッ素を含む粉末を混合しても良いがバルクとほぼ同様の結晶構造を有する粉を混合させることは、0.1 から100nmの膜厚範囲で膜厚の分布を10から50%以内に制御させることが平滑基板上でも困難である。これに対し、溶液処理の場合にはバルクと同じ結晶構造を持たず粘度も低いためスピンナーなどを用いて容易に膜厚分布を制御して塗布することが可能であり、各種パターニング工程やリソ工程で使用することが可能である。粒界以外に積層材の界面にも粒界と同様にフッ素化合物溶液処理を利用して高抵抗層を形成でき、強磁性トンネル接合を作製できる。フッ素化合物は光照射によりその電気的性質が変化するため、磁界以外に磁気光学特性を有する素子が作製できる。すなわち、磁界以外に特定波長の光照射によりトンネル電流が異なる素子を製作でき、磁気記録装置,光磁気記録装置のヘッドあるいは媒体に適用可能である。フッ素系化合物の誘電損失が高いことを利用して電磁波照射による発熱でCo系,Fe系,Ni系あるいはNiFe系,PtMn系,FePt系材料と界面にフッ素化合物,酸フッ素化合物を含む層を形成した界面付近を選択的に加熱することができ、規則相の成長促進,加熱着磁による磁区構造制御やバイアス磁界制御,選択相変態による局所磁気特性変化,選択拡散層形成による局所磁気異方性制御などが実現できる。このような局所変化は面積が0.5×0.5nmで確認でき必要なフッ素含有層の厚さは0.1nm以上である。このようなフッ素含有層の誘電損失を利用した局所加熱プロセスは、磁気記録媒体,磁気ヘッド,光磁気記録媒体,光学素子,X線検出器のほか半導体の拡散工程を含む加熱プロセス,液晶やプラズマ表示の工程,電池材料,光波長変換素子,ナノ粒子の接合を含む異種材料接合プロセス,ナノパターニングプロセス,研磨工程などに適用できる。
<実施例32>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は、酢酸希土類あるいは酢酸アルカリ土類金属を水に溶解後、希釈したフッ化水素酸を徐々に添加させた。
ゲル状沈殿のフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物または酸フッ素炭化物が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて攪拌し、遠心分離後、メタノールを添加し、ゲル状のメタノール溶液を攪拌後、陰イオンを除去し透明化した。処理液は可視光において透過率が10%以上になるまで陰イオンを除去している。この溶液を磁粉にコートし、溶媒を除去した。NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主構造とする急冷粉を作成し、これらの表面にDyフッ素化合物を上記溶液の使用によって形成する。光透過性のある溶液と上記NdFeB粉と混合後、混合物の溶媒を蒸発させる。NdFeB粉には遷移金属元素や軽元素が含有されていても良い。200〜700℃の熱処理及び熱処理後の急冷によりフッ素化合物膜の結晶構造はNdF3あるいはNdF2構造または酸フッ素化合物などになる。母相の結晶粒径は10から1000nmであり、板状体の長軸は母相結晶粒よりも長いものが多く、短軸長は母相結晶粒と同等以下の長さである。また、板状体は複数の母相結晶粒に接触して成長し、長軸方向に異方性があり、板状体は希土類元素とフッ素を含有していた。板状体の異方性は、磁界中冷却による磁界方向への成長、加熱時に応力を加え特定方向に板状体を形成させること、あるいはミリ波の電磁波を特定方向にのみ照射することで付加させることが可能である。表面処理後の熱処理過程で磁粉外周のフッ素化合物と磁粉が反応し、外周のフッ素原子が希土類原子とともに移動し、異方性のある板状体が形成する。板状体あるいは板状体の拡散経路の希土類元素,酸素及びフッ素の濃度分布が保磁力増加に寄与しており、異方性が付加された結果、異方性磁石を作製することができる。異方性が付加され、かつ保磁力の向上,角型性向上,成形後の抵抗増加,保磁力の温度依存性低減,残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,機械的強度増加,熱伝導性向上,磁石の接着性向上のいずれかの効果が得られるフッ素化合物はDyF3 以あるいはDyF2以外にLiF,MgF2,CaF2,ScF3,VF2,VF3,CrF2,CrF3,MnF2,MnF3,FeF2,FeF3,CoF2,CoF3,CuF2,CuF3,NiF2,ZnF2,AlF3,GaF3,SrF2,YF3,ZrF3,NbF5,AgF,InF3,SnF2,SnF4,BaF2,LaF2,LaF3,CeF2,CeF3,PrF2,PrF3,NdF2,SmF2,SmF3,EuF2,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4,DyF2,NdF3,HoF2,HoF3,ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3,YbF2,LuF2,LuF3,PbF2,BiF3あるいはこれらのフッ素化合物に酸素や炭素を含んだ酸フッ素化合物または炭酸フッ素化合物であり、可視光線の透過性のある溶液あるいはCH基とフッ素の一部が結合した溶液を使用した表面処理によって形成することができる。このような異方性をもった磁粉を使用することで残留磁束密度が1.0から1.5T,保磁力10から35kOeのボンド磁石あるいは圧縮成形無機バインダ磁石が作製でき、20から200℃の環境温度で使用できる。
<実施例33>
FeSiBあるいはFeCuSiB,FeCuNbSiB系急冷粉に遷移金属元素を1種以上含有しフッ素を含む溶液を用いて粉表面の一部にフッ素を含む層を形成する。フッ素を含む層の溶媒を熱処理によって除去する。溶媒の除去前は、溶液はX線回折で0.5度以上20度以下の半値幅を持っており熱処理によりこの回折ピーク幅あるいは半値幅は次第に狭くなる。熱処理温度300℃以上で粉表面のフッ素原子の一部が粉内部に拡散する。このフッ素の拡散により、フッ素が拡散しない場合よりも熱処理による結晶成長を抑制し平均結晶粒を1から100nmにすることが可能であり、透磁率の増加,保磁力低減,高抵抗化、あるいは磁場を利用した熱処理によるフッ素の偏析に異方性を持たせることで結晶粒の形状にも異方性が付与された異方性向上,フッ素による還元効果による飽和磁束密度増加などいずれかの効果が確認できる。このような軟磁性材料は、初透磁率が10000から300000であり、10kHz(0.1T)における損失が0.1から5W/kgであり、トランス,回転機,リアクトルなどに適用できる。
<実施例34>
バルクNdFeB系焼結磁石の表面にゲルあるいはゾル状の光透過性のある希土類フッ素化合物溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の膜厚は10〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石はNd2Fe14B の構造を含磁石であって、焼結磁石の表面の一部は加工研磨あるいは酸化にともなう磁気特性の劣化がみられる。このような磁気特性劣化を改善するために、可視光線を透過する希土類フッ素化合物系溶液を焼結磁石表面に塗布乾燥させ、200℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。ミリ波などの局所加熱を利用すれば、フッ素化合物付近を選択加熱でき、熱処理温度は通常の熱処理温度よりも100℃以上低下させることができ、熱処理時間も短縮できる。ゲルあるいはゾル状希土類フッ素化合物溶液からは塗布乾燥直後100nm以下1nm以上の粒子に成長しフッ素原子周囲の構造変化がみられ、構造変化とともに焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。粒子あるいは粉ではなく、溶液を使用するため均一にコート膜厚及び膜厚分布を制御することが可能であり、クリーン度の要求される材料あるいは工程で上記溶液を使用でき、溶液塗布前後にマスキングすることで塗布したい部分にのみ塗布することが容易である。このような塗布工程はボイスコイルモータなど精密電子機器に使用する磁石の処理として溶液を使用するため有利である。溶液には各種CH基やOH基を含んでいる場合もあり、溶液の状態あるいは塗布直後の状態は、加熱後の結晶構造と異なる主構造になっている。すなわち溶液の主構造はフッ素化合物粉の結晶構造と全く異なる主構造となっており、電子線やX線回折パターンで明確な差として検出でき、ブロードなか回折パターンが検出される。これは完全なフッ素化合物より周期構造が一部乱れていることを示している。上記溶液塗布後溶媒を加熱により除去し焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後300℃以上の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。上記希土類フッ素化合物の中でもDyフッ素化合物あるいはTb,Hoフッ素化合物またはこれらの酸フッ素化合物は、これらの構成元素であるDy,Tb,Hoなどが結晶粒界に沿って拡散し、磁気特性の劣化が改善される。熱処理温度が800℃以上になると、フッ素化合物と焼結磁石の相互拡散はさらに進行し、フッ素化合物層に1ppm 以上の濃度でFeがみられる場合がある。熱処理温度が高温になるほど、フッ素化合物層中への母相構成元素の濃度は増加する傾向になる。焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.4から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くできる。典型的な粒界付近の透過電子顕微鏡(TEM)像を図5に示す。フッ素化合物溶液としてTbF系溶液を使用し、10×10×5mmの焼結NdFeB磁石表面に塗布熱処理後の焼結体断面部について、粒界付近の像を(a)に示す。比較のためフッ素化合物溶液で処理していない焼結NdFeB磁石の断面部を(b)に示す。(a),(b)ともに粒界3重点付近の像であり、右下側が粒界3重点である。(a)は(b)よりも粒界の幅が広く、粒界部にはフッ素およびネオジム,酸素が検出された。(b)は粒界の幅が狭く、粒界部にはネオジム、酸素が検出された。
(a)では粒界とNd2Fe14B 母相との界面はシャープであるが、(b)では粒界3重点付近で粒界部と界面は(a)ほどシャープではなく、矢印で示す部分では明らかに粒界に乱れがみられ、界面の整合性が悪い。このような粒界のシャープさは、他の場所でもフッ素化合物処理をした磁石の方が鮮明で粒界の乱れが少なかった。粒界3重点でも同様に母相と酸フッ素化合物あるいはフッ素化合物の界面の方が、母相とネオジム酸化物との界面よりもシャープである。これは、フッ素が希土類元素や酸素を粒界に固定(トラップ)しているためと考えられ、母相を還元している効果があることと関連している。このような粒界の乱れを少なくするフッ素系処理は粒界から発生する逆磁区の発生を防止できるため、磁石の保磁力向上,角型性向上,エネルギー積向上,減磁率改善,加工変質層による磁気特性劣化改善,重希土類元素使用量削減,損失低減のいずれかの効果が確認できる。
<実施例35>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばLaの場合は酢酸La、または硝酸La4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をLaFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のLaFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のLaFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、 超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)LaF系の場合、ほぼ透明なゾル状のLaFxとなった。処理液としてはLaFxが 1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の回折ピークを含む複数のピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が配置しているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素も溶液中で長周期構造を持っていないと考えられる。このREnFmの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪く均一に塗布するのは困難である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をLaF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った 。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合Dy,Nd,La及びMgフッ化物あるいはフッ酸化物が偏析した焼結磁石でそれぞれ30%,25%,15%及び10%保磁力が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力をさらに増加させるために表2のような添加元素を各フッ化物溶液中に有機金属化合物を用いて添加した。無添加溶液の場合の保磁力を基準にすると、表2に示す溶液中添加元素により、焼結磁石の保磁力はさらに増加し、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることが判明した。保磁力増加率の結果を表2に示す。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。従って表2に示した添加元素はフッ素,酸素及び炭素の少なくとも1種の元素を伴って焼結磁石中に拡散し、粒界付近に留まる。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含み短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配が認められる。焼結磁石ブロック最表面には表2の元素を含む酸フッ化物あるいは表2の元素及び炭素を含む酸フッ化物、あるいは表2の元素の少なくとも1種類の元素と焼結磁石の構成成分を少なくとも1種含む酸フッ素化物が形成される。このような最表面層は耐食性確保以外にも焼結磁石の磁気特性向上のために必要な層であり、電気抵抗も焼結磁石の主相よりは高い。表2の添加元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能であり、保磁力を増加させることも可能であり、スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに表2で示す元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。添加元素濃度を表2の100倍以上にした場合、溶液を構成するフッ化物の構造が変化し、溶液中で添加元素の分布が不均一となり他の元素の拡散を阻害する傾向がみられ、添加元素が粒界に沿って磁石ブロック内部まで偏析させることが困難となるが局所的に保磁力の増加は認められる。表2で示す添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物あるいは酸フッ化物との界面を平滑化する。これらの結果、表2の添加元素を使用した溶液の塗布,拡散熱処理により保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また表2に示す添加元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広い傾向がある。表2で示す添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。上記磁石の磁気特性向上を確認できた溶液中添加物は、表2のMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Pb,Biや全ての遷移金属元素を含む原子番号18から86の中から選択された元素であり、これらの中の少なくとも1種の元素とフッ素について焼結磁石において濃度勾配が認められる。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界付近(粒界中心から平均1000nm以内の距離)ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の濃度勾配または平均的濃度差が焼結磁石の最表面から内部に向かってみられる。2)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられる部分が多い。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に表2の元素あるいは原子番号18から86の元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)溶液を塗布された焼結磁石ブロックあるいは磁石粉または強磁性粉の最外周でフッ素及び添加元素の濃度が最も高く、磁性体部の中の外側から内部に向かって添加元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。5)表2の添加元素あるいは原子番号18から86の元素を含む溶液を構成する元素のうち少なくとも1種は表面から内部に向かって濃度勾配をもち、溶液から成長した磁石とフッ素含有膜との界面付近あるいは界面より磁石からみて外側でフッ素濃度が最大であり、界面付近のフッ化物が酸素あるいは炭素を含有し、高耐腐食性,高電気抵抗、あるいは高磁気特性のいずれかに寄与している。このフッ素含有膜には表2で示す添加元素や原子番号18から86の元素の少なくとも1種または2種以上が検出され、磁石内部のフッ素の拡散路付近に上記添加元素が多く含まれ、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。上記添加元素の濃度差は透過電子顕微鏡のEDX(エネルギー分散X線)プロファイル、あるいはEPMA分析,ICP分析などで焼結ブロックを表面側から内部に切断した試料について分析することで確認できる。フッ素原子の近傍(フッ素原子の偏析位置から2000nm以内、好ましくは1000nm以内)に溶液中に添加された原子番号18から86の元素が偏析していることが透過電子顕微鏡のEDXやEELSにより分析できる。フッ素原子の近傍に偏析している添加元素とフッ素原子の偏析位置から2000nm以上離れた位置に存在する添加元素との比率は磁石表面から100μm以上内部の位置で1.1から1000であり好ましくは2以上である。磁石表面では前期比率は2以上である。前記添加元素は粒界に沿って連続的に偏析している部分と不連続に偏析している部分のどちらの状態も存在し、必ずしも粒界全体に偏析しているわけではないが、磁石の中心側では不連続になり易い。また添加元素の一部は偏析せずに母相に平均的に混入する。原子番号18から86の添加元素は焼結磁石の表面から内部にかけてフッ素偏析位置近傍に偏析している濃度が減少する傾向があり、この濃度分布のために磁石内部よりも表面に近い方で保磁力が高い傾向を示す。前記磁気特性改善効果は、焼結磁石ブロックだけでなくNdFeB系磁性粉表面に表2で示す溶液を用いてフッ素及び添加元素を含む膜を形成しても、拡散熱処理により同様の効果が得られる。したがって、NdFeB粉を磁場中仮成形後の仮成形体に表2の溶液を含浸後焼結したり、表2の溶液を使用して表面処理したNdFeB系粉と未処理NdFeB系粉を混合後磁場中仮成形と焼結させることで焼結磁石を作製することが可能である。このような焼結磁石ではフッ素や溶液中添加元素などの溶液構成成分の濃度分布は平均的に均一であるが、フッ素原子の拡散経路の近傍で表2の添加元素の濃度が平均的に高いことで、磁気特性が向上する。
Figure 2008270699
<実施例36>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15,0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦15,0.01≦e≦4,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び遷移金属元素の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも10μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物,フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、遷移金属元素の濃度勾配が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
遷移金属元素を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメ タノールを加えた。
(5)ゲル状のDyFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、 超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のDyFxとなった。処理液としてはDyFxが 1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素も溶液中で長周期構造を持っていない。このREnFmの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪くなるが保磁力の増加は認められる。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をDyF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った 。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合の焼結磁石よりも遷移金属元素の添加処理液を使用することでさら保磁力が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配が認められる。表2の添加元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能である。スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに原子番号18から86の元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また表2に示す添加元素を含む遷移金属元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広く高濃度になる傾向がある。遷移金属添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいは希土類元素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)遷移金属元素の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられる。2)遷移金属元素の粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられる。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に遷移金属元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には遷移金属元素,フッ素及び炭素を含むフッ化物層あるいは酸フッ化物層が成長する。
<実施例37>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15,0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦15,0.01≦e≦10,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び半金属元素や遷移金属元素の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部あるいは焼結磁石最表面において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも1μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物,フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、遷移金属元素の濃度勾配が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
遷移金属元素を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当量 分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメ タノールを加えた。
(5)ゲル状のDyF系あるいはDyFC系,DyFO系クラスタを含むメタノール溶液 を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のCやOを含むDyFxとなった。処理液とし てはDyFxが1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、Dy,Nd,La,Mgなどの希土類元素あるいはアルカリ土類元素を含むフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。これらの溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークを主ピークとするX線回折パターンが観測された。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークを含む回折パターンから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFm,REn(F,C,O)m(F,C,Oの比は任意)あるいはREn(F,O)m(F,Oの比は任意)の回折パターンの一部がみられるようになる。これらの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)、NdFeB仮成形体ある いはNdFeB系磁粉をDyF系コート膜形成処理中に浸漬し、そのブロックを2〜 5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した焼結磁石あるいはNdFeB系磁粉の異方性 方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
この着磁試料を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁試料に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合の焼結磁石よりも遷移金属元素の添加処理液を使用することでさら保磁力あるいは減磁曲線の角型性が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力や角型性がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した原子位置の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す遷移金属元素あるいは半金属元素の添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに遷移金属元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できるが、透明性の溶液に遷移金属元素や半金属元素を添加した場合の方が保磁力増大効果など磁気特性改善効果が顕著である。希土類元素やアルカリ土類元素を使用しない場合でも、表2に示すような添加元素を含むフッ化物溶液を作成し、磁性体に塗布することで磁気特性改善効果が認められる。添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。10)粒界に偏析する他の元素と結合して粒界の電子構造を変える。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。溶液に添加して拡散させた遷移金属添加元素あるいは半金属元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいはフッ化物溶液の主成分の偏析している粒界近傍で高濃度になる傾向を示し、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れるが、フッ素の偏析場所とは無関係に添加元素が偏析していても磁気特性を向上することもできる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、磁石ブロックを切断した試料を分析比較して濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)フッ化物を主成分とする溶液に遷移金属元素あるいは半金属元素など原子番号18から86の元素を少なくとも1種の元素の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられ、磁石部表面から内部にかけて濃度が減少する傾向がある。2)溶液に添加した遷移金属元素あるいは半金属元素の磁石部粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられ、フッ素濃度の濃度分布と添加元素の濃度プロファイルが近い場合とフッ素を伴わず添加元素が偏析する場合がある。一部の添加元素は偏析せずに母相内に混入する。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に遷移金属元素など添加元素の偏析が見られる場合があり、磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には遷移金属元素,フッ素及び炭素を含む層、あるいは原子番号18から86の元素を含む酸フッ素化合物やフッ化物が1から10000nmの厚さで成長する。この原子番号18から86の元素は最表面から内部に向かう深さ方向で濃度差10ppm以上の濃度差がみられる。このフッ素を含む層は一部焼結磁石の構成元素を含有しており、最終製品でこれらの表面層は研磨等で除去することも可能であるが耐食性のための保護膜として残したままでよい。5)溶液処理前にあらかじめ添加された添加元素の濃度勾配と、溶液処理で添加した元素の濃度勾配は異なり、前者はフッ素などフッ化物溶液の主成分の平均的濃度勾配に依存しないが、後者の濃度プロファイルはフッ化物溶液の構成元素の少なくとも1種の元素と濃度プロファイルにおいて依存性が見られる。
<実施例38>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14Bを主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。DyF3を急冷粉表面に形成する場合、原料としてDy(CH3COO)3をH2Oで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のDyF3・XH2Oが形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去する。ゾル状態の希土類フッ化物濃度が10g/dm3以上で該処理液の700nmの波長において光路長が1cmの透過率は5%以上である。このような光透過性のある溶液に遷移金属元素や半金属元素をすくなくとも1種含む化合物あるいは溶液を添加する。添加後の溶液のX線回折ピークはブロードであり、回折ピークの半値幅は1から10度であり流動性がある。この溶液と上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させる。500〜800℃の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造は添加元素を含むNdF3構造,NdF2構造あるいは酸フッ化物などから構成されていることが判明した。磁粉中の拡散経路へのDyやNdの偏析,板状体のNdやDy及びフッ素の偏析以外に添加元素の偏析が認められ、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元,フッ化物中への鉄の拡散による強磁性結合向上などにより磁気特性が向上する。重希土類元素の使用量を低減するため、半金属元素や遷移金属元素を添加したフッ化物溶液による表面処理とその後の拡散により半金属元素や遷移金属元素の少なくとも1種を粒界近傍に編析させることで、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果がNdFeB系磁粉で認められ、ボンド磁石用磁粉,熱間成形異方性磁粉及び熱間成形異方性焼結磁石の上記磁気特性改善を可能にする。
<実施例39>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素から少なくとも1種類)と希土類元素1種以上から選択された元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15,0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦17,0.01≦e≦10,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも1μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物,フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の濃度勾配や濃度差が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy1−10gを 100mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜10000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ 同量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のDyF系あるいはDyFC系,DyFO系クラスタを含むメタノール溶液 を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のCやOを含むDyFxとなった。処理液とし てはDyFxが1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、 12族から16族のCとBを除く元素)の少なくとも1種の元素を含む有機金属化合
物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物,アルカリ土類金属フッ化物または2族金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、Dy,Nd,La,Mgなどの希土類元素あるいはアルカリ土類元素、2族金属元素を含むフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類元素、2族金属元素あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類元素、2族金属元素あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。これらの溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上のピークを主ピークとするX線回折パターンが観測された。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFm,REn(F,C,O)mあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。これらの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに0.5度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(100×100×100mm3)、NdFeB仮成形 体あるいはNdFeB系磁粉をDyF系コート膜形成処理中に浸漬し、そのブロック を2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した焼結磁石あるいはNdFeB系磁粉の異方性 方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
この着磁試料を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁試料に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し添加物含有溶液を使用しない重希土類フッ化物処理液のみの塗布拡散後の場合の焼結磁石よりも金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)添加処理液を使用することでさら保磁力あるいは減磁曲線の角型性が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力や角型性がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が一部に見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)の一部は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。フッ化物の粉砕粉から成るスラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに遷移金属元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できるが、透明性の溶液に遷移金属元素や半金属元素を添加した場合の方が保磁力増大効果など磁気特性改善効果が顕著である。また、Dyなどの重希土類元素を含む膜を蒸着やスパッタリングにより形成する場合、蒸着源に遷移金属元素や希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を混合して蒸着あるいはスパッタすることによっても重希土類元素のみよりも磁気特性が改善させるが、溶液処理の方が効果が顕著である。これは遷移金属元素や半金属元素がフッ化物溶液で均一に原子レベルで分散しており、フッ化物膜中の遷移金属元素あるいは半金属元素が短範囲構造をもって均一に分散されており、低温でこれらの元素がフッ素など溶液構成元素の拡散とともに粒界に沿って拡散できるためである。金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。10)希土類元素の使用量を低減できる。すなわち添加元素の使用により同一保磁力で比較すると重希土類元素使用量を1から50%低減できる。11)焼結磁石ブロック表面に添加元素を含有する酸フッ化物あるいはフッ化物が1から10000nmの厚さで形成され、耐蝕性向上あるいは高抵抗化に寄与する。12)あらかじめ焼結磁石に添加されている元素の偏析を助長する。13)母相の酸素を粒界に拡散させ還元作用を示すか、添加元素が酸素と結合し母相を還元する。14)粒界相の規則化を助長する。一部の添加元素は粒界相に留まる。15)粒界3重点のフッ素を含有する相の成長を抑制する。16)粒界と母相界面での重希土類元素あるいはフッ素原子の濃度分布を急峻にする。17)フッ素や炭素あるいは酸素と添加元素の拡散により粒界付近の液相形成温度が低下する。18)フッ素や添加元素の粒界偏析により母相の磁気モーメントが増加する。19)重希土類元素の低温粒界拡散を助長し、母相以外の希土類高含有相や硼化物などの残留磁束密度を低減する相の成長を抑制できる。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減,耐蝕性向上のいずれかの効果が認められる。溶液に添加して拡散させた金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)、磁石表面のフッ化物との界面付近のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいはフッ化物溶液の主成分の偏析している粒界近傍で高濃度になる傾向を示し、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配あるいは濃度差となって現れる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた添加元素拡散焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられ、磁石部表面から内部にかけて濃度が減少する傾向がある。2)溶液に添加した金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の磁石部粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられ、フッ素濃度の濃度分布と添加元素の濃度分布に関連性あるいは相関性がみられる。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)、フッ素及び炭素を含む層が成長する。5)溶液処理前にあらかじめ添加された添加元素の濃度勾配と、溶液処理で添加した元素の濃度勾配は異なり、前者はフッ素などフッ化物溶液の主成分の濃度勾配に依存しないが、後者はフッ化物溶液の構成元素の少なくとも1種の元素と濃度プロファイルが強い相関関係あるいは相関性がみられる。
<実施例40>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばNdの場合は酢酸Nd、または硝酸Nd4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をNdFxy(x,yは正数)が生成する化学反応 の当量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のNdFxy(x,yは正数)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を 用いて1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のNdFC系クラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした 後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)NdFC系の場合、ほぼ透明なゾル状のNdFxy(x,yは正数)となった。処 理液としてはNdFxy(x,yは正数)が1g/5mLのメタノール溶液を用いた

(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物を主成分とするコート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液,アルカリ土類元素あるいは2族の元素に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFmCp(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,m,pは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmCpと異なり、結晶構造もREnFmCpと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が配置しているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmCpあるいはREn(F,O,C)m(ここでF,O,Cの比率は任意)の回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素もその大部分が溶液中で長周期構造を持っていないと考えられる。このREnFmCpの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmCpの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmCpあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪く均一に塗布するのは困難である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をNdF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った 。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成し熱処理したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合Dy,Nd,La及びMg炭フッ化物あるいは炭フッ酸化物が偏析した焼結磁石でそれぞれ40%,30%,25%及び20%保磁力が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力をさらに増加させるために表2のような添加元素を各フッ化物溶液中に有機金属化合物を用いて添加した。無添加溶液の場合の保磁力を基準にすると、焼結磁石の保磁力はさらに増加し、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることが判明した。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界あるいは種々の欠陥に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。表2に示した添加元素はフッ素,酸素及び炭素の少なくとも1種の元素を伴って焼結磁石中に拡散し、その一部が粒界付近に留まる。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部で炭フッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含む炭フッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含んだ短範囲構造を有するフッ化物,炭酸フッ化物,炭フッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界,クラック部あるいは欠陥付近に沿って拡散が進行するためである。焼結磁石の表面から内部にかけての濃度分布を図5から図8に示す。図5は遷移金属元素をフッ化物溶液に混合しない場合であり、表面はDyよりもフッ素が多く焼結磁石内部でフッ素含有量がDyよりも少なくなる。これは最表面付近にNdやDyを含むフッ化物や酸フッ化物が成長するためである。炭素の濃度勾配もみられ、焼結磁石表面付近には炭フッ化物あるいは炭酸フッ化物が一部に成長している。遷移金属元素をMとして濃度分布を測定した結果を図6から10図に示す。遷移金属元素あるいは希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素Mは焼結磁石表面から内部に向かって減少する傾向を示し、炭素やフッ素と同様な傾向を示している。重希土類元素のDyとフッ素の比率は内部と表面で異なり、表面でフッ素が多い傾向を示している。図7は表面のフッ素とDyの濃度がほぼ等しくフッ素は内部でDyよりも濃度勾配が大きい焼結磁石である。炭素や表2の元素を含む遷移金属元素の濃度分布は外周から内部にかけて濃度減少がみられる。図8の濃度分布はDy濃度分布に極小がみられフッ化物と母相との間に反応層が形成される場合である。Dy濃度の極小部ではNdが多く検出されNdとDyの交換反応が生じたために図8のような濃度分布になる。フッ素,炭素,遷移金属元素は外周から内部にかけて濃度減少がみられるが、反応層の影響により極小あるいは極大となる濃度分布となる場合もある。図5から図8のような濃度分布の傾向は焼結磁石だけではなくNdFeB系磁粉や希土類元素を含む粉で認められ磁気特性の向上が確認できる。焼結磁石ブロックには外周側から内部にかけて、フッ素及び表2で示す添加元素を含む3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族の元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。これらの元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能であり、保磁力を増加させることも可能であり、スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物,炭フッ化物,炭酸フッ化物あるいは酸フッ化物のいずれかに3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。図9や図10ではDyの濃度分布に内部になるに従って増加する領域が認められるが、焼結磁石中心部では低濃度となるか0.1μmよりも深い領域ではほぼ一定となる。添加元素濃度を表2の1000倍以上にした場合、溶液を構成するフッ化物の構造が変化し、溶液中で添加元素の分布が不均一となり他の元素の拡散を阻害する傾向がみられ、添加元素が粒界に沿って磁石ブロック内部まで偏析させることが困難となるが局所的に保磁力の増加は認められる。3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物あるいは酸フッ化物との界面を平滑化する。7)最表面に耐食性の優れた上記添加元素を含有しフッ素濃度勾配を有する相が成長し、鉄と酸素を含むことにより保護膜としての安定性(密着性)が高まる。この最表面層の一部には双晶がみられる。これらの結果、添加元素を使用した溶液の塗布,拡散熱処理により保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部や最表面で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広く、平均の粒界幅は0.1から20nmであり、粒界幅の1倍から1000倍の距離内に添加元素の一部が偏析し、その偏析している添加元素の濃度が磁石表面から内部にかけて平均的に減少する傾向を示し、粒界相の一部にフッ素が存在している。また添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。上記磁石の磁気特性向上を確認できた溶液中添加物は、表2のMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Pb,Biや全ての遷移金属元素を含む原子番号18から86の中から選択された元素であり、これらの中の少なくとも1種の元素とフッ素について焼結磁石において磁石の外周から内部にかけて及び粒界から粒内にかけて平均的に濃度勾配が認められる。粒界付近と粒内の3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の濃度勾配または濃度差は、磁石外周から中央部にかけて平均的に変化し、磁石中心に近づくと小さくなる傾向を示すが、拡散が十分であれば、フッ素を含む粒界近傍で添加元素の偏析にともなう添加元素の濃度差が見られる。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界付近ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合でも、磁石最表面と磁石中心部とでは濃度差がみられ、濃度勾配あるいは粒界と粒内の濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時の焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の濃度勾配または平均的濃度差が焼結磁石のフッ素を含む層との反応層を含んだ最表面から内部に向かってみられる。2)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の粒界付近の偏析がフッ素あるいは炭素,酸素を伴ってみられる部分が多い。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側(結晶粒外周部)でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる粒界幅の1000倍以内に表2の元素あるいは原子番号18から86の元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)溶液を塗布された焼結磁石ブロックあるいは磁石粉または強磁性粉の最外周でフッ素及び添加元素の濃度が最も高く、磁性体部の中の外側から内部に向かって添加元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。5)最表面にはフッ素,炭素,酸素,鉄、および表2の元素あるいは原子番号18から86の元素を含有する厚さ1から10000nmの層が被覆率10%以上好ましくは50%以上で形成され耐蝕性向上と加工変質層の磁気特性回復などに寄与している。6))表2の添加元素あるいは原子番号18から86の元素を含む溶液を構成する元素のうち少なくとも1種は表面から内部に向かって濃度勾配をもち、溶液から成長した磁石とフッ素含有膜との界面付近あるいは界面より磁石からみて外側でフッ素濃度が最大であり、界面付近のフッ化物が酸素あるいは炭素あるいは原子番号18から86の元素を含有し、高耐腐食性,高電気抵抗、あるいは高磁気特性のいずれかに寄与している。このフッ素含有膜には表2で示す添加元素や原子番号18から86の元素の少なくとも1種または2種以上が検出され、磁石内部のフッ素の拡散路付近に上記添加元素が多く含まれ、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減,拡散温度低減,粒界幅の成長抑制,粒界部の非磁性層の成長抑制のいずれかの効果が認められる。上記添加元素の濃度差は透過電子顕微鏡のEDX(エネルギー分散X線)プロファイル、あるいはEPMA分析,オージェ分析などで焼結ブロックを表面側から内部に切断した試料について分析することで確認できる。フッ素原子の近傍(フッ素原子の偏析位置から5000nm以内、好ましくは1000nm以内)に溶液中に添加された原子番号18から86の元素が偏析していることが透過電子顕微鏡のEDXやEELSにより分析できる。フッ素原子の近傍に偏析している添加元素とフッ素原子の偏析位置から2000nm以上離れた位置に存在する添加元素との比率は磁石表面から100μm以上内部の位置で1.01から1000であり好ましくは2以上である。磁石表面では前期比率は2以上である。前記添加元素は粒界に沿って連続的に偏析している部分と不連続に偏析している部分のどちらの状態も存在し、必ずしも粒界全体に偏析しているわけではないが、磁石の中心側では不連続になり易い。また添加元素の一部は偏析せずに母相に平均的に混入する。原子番号18から86の添加元素は焼結磁石の表面から内部にかけて母相内に拡散した割合あるいはフッ素偏析位置近傍に偏析している濃度が減少する傾向があり、この濃度分布のために磁石内部よりも表面に近い方で保磁力が高い傾向を示す。前記磁気特性改善効果は、焼結磁石ブロックだけでなくNdFeB系磁性粉やSmCo系磁粉あるいはFe系磁粉表面に表2で示す溶液を用いてフッ素及び添加元素を含む膜を形成しても、拡散熱処理により硬磁気特性の改善や磁粉電気抵抗の増加などの効果が得られる。また、NdFeB粉を磁場中仮成形後の仮成形体に3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含有する溶液を含浸して磁粉表面の一部に添加物及びフッ素を含む膜を形成後焼結したり、3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含む溶液を使用して表面処理したNdFeB系粉と未処理NdFeB系粉を混合後磁場中仮成形後、焼結させることで焼結磁石を作製することが可能である。このような焼結磁石ではフッ素や溶液中添加元素などの溶液構成成分の濃度分布は平均的に均一であるが、フッ素原子の拡散経路の近傍で3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素の濃度が平均的に高いことにより、磁気特性が向上する。このような3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含む溶液から形成
したフッ素を含む粒界相は、フッ素が平均で0.1から60原子%好ましくは1から20原子%偏析部で含有しており、添加元素の濃度により非磁性,強磁性あるいは反強磁性的に振舞うことができ、強磁性粒と粒の磁気的な結合を強めたり弱めたりすることにより磁気特性を制御することが可能である。有機金属化合物を添加したフッ化物溶液を用いて溶液から硬質磁性材料を作成することが可能であり、組成として1〜20原子%の希土類元素、50〜95原子%のFe,Co,Ni,Mn,Crの少なくとも1元素、0.5〜15原子%のフッ素からなる20℃の保磁力0.5MA/mの磁性材料が得られる。上記組成の磁性材料に炭素や酸素及び3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素が一部含有しても0.5MA/mは満足でき、各種磁気回路に適用でき溶液を使用するため加工工程は必ずしも必要ではない。
本発明はR−Fe(Rは希土類元素)系を含むFe系磁石の耐熱性を高めるために、Fe系磁石材料に板状のフッ素を含む相を粒界あるいは粒内の一部に形成する。前記フッ素を含む相は、Fe系磁石の磁気特性向上に寄与する。フッ素を含む相を有する磁石は各種磁気回路に合った特性の磁石及び上記磁石を適用した磁石モータなどに利用される。このような磁石モータには、ハイブリッド自動車の駆動用,スタータ用,電動パワステ用が含まれる。
本発明の磁粉断面で観測した透過電子顕微鏡の明視野像を示す。 図1で観測されたフッ素化合物層(1)において測定したEDXプロファイルを示す。 本発明の磁粉断面で観測した透過電子顕微鏡の明視野像を示す。 本発明にかかる磁石を適用したボイスコイルモータの構造を示す。 磁石断面の粒界付近の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す((a);本発明にかかる磁石、(b)従来の磁石)。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。 焼結磁石断面の濃度分布の一例。
符号の説明
11 ヨーク
12 焼結磁石
13 可動コイル
14 銅管

Claims (17)

  1. 鉄及び希土類元素を含む磁性体で構成された磁石であり、
    前記磁性体の内部には複数のフッ素化合物層又は酸フッ素化合物層が形成され、
    前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、前記磁性体の結晶粒の平均粒径よりも大
    きな長軸を有する磁石。
  2. 前記磁性体の結晶粒の平均粒径は10nm以上50nm以下であり、
    前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層の長軸は50nm以上500nm以下である
    請求項1に記載の磁石。
  3. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層における長軸は、
    短軸の2倍以上20倍以下の大きさである
    請求項1に記載の磁石。
  4. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、
    アルカリ元素,アルカリ土類元素,希土類元素の少なくとも1種を含む
    請求項1に記載の磁石。
  5. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、鉄及び前記磁性体を構成する希土類元素
    を含む
    請求項1に記載の磁石。
  6. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、酸素及び炭素を含む
    請求項1に記載の磁石。
  7. 前記磁性体はNdFeBを主成分とする
    請求項1に記載の磁石。
  8. 鉄及び希土類元素を含む焼結磁石であり、
    前記焼結磁石の内部には複数のフッ素化合物層又は酸フッ素化合物層が形成され、
    前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層の長軸は50nm以上500nm以下である
    焼結磁石。
  9. 鉄及び希土類元素を含む磁粉を圧縮成形して構成した磁石であり、
    前記磁粉の内部にはフッ素化合物層又は酸フッ素化合物層が複数形成され、
    前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、前記磁粉の結晶粒の平均粒径よりも大き
    な長軸を有する磁石。
  10. 前記磁粉の結晶粒の平均粒径は10nm以上50nm以下であり、
    前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層の長軸は50nm以上500nm以下である
    請求項9に記載の磁石。
  11. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層における長軸は、
    短軸の2倍以上20倍以下の大きさである
    請求項9に記載の磁石。
  12. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、
    アルカリ元素,アルカリ土類元素,希土類元素の少なくとも1種を含む
    請求項9に記載の磁石。
  13. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、鉄及び前記磁粉を構成する希土類元素を
    含む
    請求項9に記載の磁石。
  14. 前記フッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、酸素及び炭素を含む
    請求項9に記載の磁石。
  15. 前記磁粉はNdFeBを主成分とする
    請求項9に記載の磁石。
  16. 前記複数析出したフッ素化合物層又は酸フッ素化合物層は、それぞれ異なる方向に長軸
    を有する
    請求項9に記載の磁石。
  17. 磁性体にフッ素化合物系溶液を塗布する第一の工程と、
    第一の工程後に磁性体を加熱し前記フッ素化合物系溶液の溶媒を除去する第二の工程と
    、を有する磁石の処理方法であり、
    前記磁性体は鉄及び希土類元素を含み、
    前記フッ素化合物系溶液は、アルコール溶媒中にゲル状のフッ素化合物を分散して構成
    されたものである
    磁石の処理方法。
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