JP2013135542A - 焼結磁石モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術においては、Nd2Fe14B焼結磁石の最大エネルギー積を増加させ、かつ残留磁束密度を可変とする例はなく、一種の焼結磁石を用いた磁束可変モータを提供することは困難であった。
【解決手段】本発明の焼結磁石モータは、回転子、固定子及びコイルから構成され、回転子には焼結磁石が配置されている。この焼結磁石モータは、コイル電流により生じる磁界により焼結磁石の残留磁束密度を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高飽和残留磁束密度を示すFe系合金とNdFeB系化合物の複合材料を焼結させた磁石を適用したモータに関する。
特許文献1には高保磁力磁石と低保磁力磁石の材料組成の異なる永久磁石を適用したモータの例が開示されている。高保磁力磁石がNdFeB磁石であり、低保磁力磁石はアルニコ磁石、あるいはFeCrCo磁石の例に関する記載があるが、一種類の焼結磁石を用いて、焼結磁石の残留磁束密度を制御させることによる磁束可変については記載がない。
特許文献2には、フッ化物を使用して硬磁性材料と軟磁性材料を成形させた材料の記載があるが、軟磁性材料による磁石特性の向上や軟磁性材料と硬磁性材料の磁気的な結合による残留磁束密度の制御とこれらを実現する工程に関する記載はない。
特許文献3にはフッ化物や酸フッ化物を層状に成長させた高抵抗磁石適用モータに関する記載があり、フッ化物を形成した軟磁性材料と硬磁性材料を用いた回転機に関する記載があるが、高飽和残留磁束密度材料と硬磁性材料の複合磁石材料とその磁石特性向上及び磁束可変による効果に関する記載がない。
特許文献4には軟磁性粉末とボンド磁石の組み合わせを利用した回転子の記載があるが、軟磁性材料が硬磁性材料に分散して焼結された複合磁石に関する記載がない。
特開2010−45068号公報 特開2006−66870号公報 特開2006−238604号公報 特開2006−180677号公報
特許文献1〜4の技術においては、Nd2Fe14B焼結磁石の最大エネルギー積を増加させ、かつ残留磁束密度を可変とする例はなく、一種の焼結磁石を用いた磁束可変モータを提供することは困難であった。
本発明の焼結磁石モータは、回転子、固定子及びコイルから構成され、回転子には焼結磁石が配置されている。この焼結磁石モータは、コイル電流により生じる磁界により焼結磁石の残留磁束密度を制御する。
本発明によれば、希土類永久磁石の希土類元素使用量低減、保磁力増加、最大エネルギー積増加を満足することが可能であり、磁石使用量を低減できる。これにより様々な磁石応用製品の小型軽量化に貢献する。
本発明に係る焼結磁石モータの模式図。 本発明に係る磁束制御のための構成図。 本発明に係る焼結磁石の減磁曲線。
Nd2Fe14B系焼結磁石に代表される希土類鉄ホウ素系などの希土類元素を使用した永久磁石は、種々の磁気回路に使用されている。高温あるいは大きな減磁界環境で使用される永久磁石には、軽希土類元素以外に重希土類元素の添加が必須である。重希土類元素を含めた希土類元素の使用量を削減することは、地球資源保護の観点から極めて重要な課題である。従来技術では、希土類元素使用量を小さくすると、最大エネルギー積、保磁力のいずれかが低下し、応用することが困難であった。磁石材料において、希土類元素使用量の低減、保磁力増加、最大エネルギー積増加を満足させることが課題である。
モータの効率を高めるために、磁石トルク及びリラクタンストルクを利用した埋め込み磁石回転子を適用したモータが製品化されている。永久磁石から漏洩する磁束が高いほど磁石トルクが大きくなるが、磁石の漏洩磁束が高いために固定子の鉄損が大きくなり、モータ効率が低下する。この効率低下を抑制するために、NdFeB系焼結磁石の磁束が可変制御可能な焼結磁石を適用する。本発明で使用するNdFeB系焼結磁石材料は、希土類元素含有量が低減でき、かつ残留磁束密度が印加磁界により可変であり、モータの効率増加に繋がる。
本発明においては、飽和残留磁束密度が高いFeCo系などFeM系粉(Mは遷移元素であって、鉄及び希土類元素を除く)とNdFeB系粉の複合体を焼結させる。FeM系粉の飽和磁化は、NdFeB系粉の飽和磁化よりも大きい。また焼結後のFeM系結晶は単体では磁化反転し易いためNdFeB系結晶との磁気的な結合により反転を抑制する。磁気的な結合を得るために、FeM系結晶と粒界を介して接触するNdFeB系結晶の結晶磁気異方性エネルギーを増加させ、かつ粒界近傍のFeM系結晶とNdFeB系結晶が磁気的に結合している必要がある。
本発明において、Nd2Fe14Bよりも高い飽和磁化を有するFeM系結晶は飽和残留磁束密度1.5T以上2.8T未満の合金である。この飽和残留磁束密度の範囲であればその組成に制限はなく、希土類元素や半金属元素、種々の金属元素を含有して良い。飽和残留磁束密度がNd2Fe14Bよりも高いため、Nd2Fe14Bの結晶粒と磁気的に結合することにより残留磁束密度を増加させることが可能となる。FeM系結晶とNd2Fe14B結晶は重希土類元素偏在相を介して接触している。この重希土類偏在相にはフッ素や酸素、炭素が含まれている。
また、焼結助材は、焼結温度において液相の量を十分にし、液相とFeCo系結晶の結晶粒やNd2Fe14Bの結晶粒との濡れ性を高め、焼結後の密度を高くするために使用する。フッ素含有相は希土類元素濃度が高い相と容易に反応するため液相の量が減少する。このため焼結後の密度が低下し、保磁力も低下する。このような密度及び保磁力減少を抑制するために焼結助材としてFe−70%Nd合金粉などを添加している。
さらに、焼結前の仮成形工程において、Nd2Fe14Bのキュリー点近傍の温度以上で磁場印加することにより、FeM系粉の磁化がNd2Fe14Bの磁化よりも大きくなる温度範囲で磁場印加効果を実現でき、FeCo系粉に選択的に異方性を付加し、フッ化物による脱酸とFeCo規則相の成長を促進させる。規則相の一部は焼結後、格子歪が導入され界面近傍で格子が変形し異方性エネルギーが増大する。
製造手法として重希土類元素を偏在化させるためにフッ化物溶液処理を使用する。フッ化物溶液処理に使用する溶液には100ppmオーダー以下の陰イオン成分が含有するため、希土類元素を多く含有する材料への処理において、被処理材料の表面の一部が腐食または酸化する。本発明では焼結磁石にNdFeB系とFeM系粉の少なくとも二種類の強磁性合金粉を使用し、フッ化物溶液処理を施す材料を耐食性の良いFeM系粉とし、フッ化物溶液処理による腐食や酸化を防止する。またFeM系結晶は単独で一般に保磁力が小さいので、粒界近傍に希土類元素、特に重希土類元素を偏在化させることが保磁力増加と希土類元素使用量低減に貢献する。
上記焼結磁石の残留磁束密度の変化は残留磁束密度と磁場の関係を示す減磁曲線の第一象限(磁場と磁束が正)、第二象限(磁場が負、磁束が正)において可逆的であり、焼結磁石の磁束がRE2Fe14B(REは希土類元素)の着磁磁場よりも小さな磁場で可変であることを意味している。このような焼結磁石の磁束可変現象を回転機に使用することで、モータ効率を増加させることが可能である。なお、減磁曲線の詳細については図3を用いて後述する。
本実施例の焼結磁石を埋め込み磁石型回転子に挿入し、巻線着磁後、誘起電圧を測定しながら固定子巻線に流す電流値をインバータで制御し、適切な電流波形により回転子を回転させる。
高トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を強めるため、減磁曲線の第一象限に磁界を印加可能な電流を通電し、焼結磁石の残留磁束密度を大きくする。低トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を弱めるため、減磁曲線の第二象限に磁界を印加可能な電流を通電し、焼結磁石の残留磁束密度を小さくする。
上記可変磁束モータでは、複合磁石を構成する高磁化相であるFeM合金の磁化の傾きを制御して焼結磁石の磁束を増減できる。使用する焼結磁石は複合磁石の一種で、FeM合金の使用割合が増加するほど希土類元素使用量が低減でき、焼結磁石であるためボンド磁石のような耐熱性の問題や磁束不足はない、などの特徴がある。
Fe−10%Co粉は水アトマイズ法で作成し、平均粒径が10μmである。表面近傍に酸素を含有する。酸素量が500ppm以上であればFe−10%Co粉の表面にフッ化物を形成後、酸フッ化物が成長する。このような酸フッ化物はRExOyFz(REは希土類元素、Oは酸素、Fはフッ素、x、y、zは正の整数)で表記され、不純物として炭素、窒素などの不可避元素を含有する。酸フッ化物は水アトマイズ粉の表面にフッ化物と酸素を含有するアルコール溶液を塗布し350〜900℃に加熱後10℃/秒急の速度で冷却することで形成される。
酸フッ化物塗布アトマイズ粉とNdFeB系粉を2:8の混合比で混合後、室温で磁場成形後(0.5t/cm2、10kOe)、さらにNdFeB系粉のキュリー点以上で磁場中仮成形する。350℃の温度で磁場中仮成形(0.5t/cm2、20kOe)することで、フッ化物塗布アトマイズ粉のみが磁場印加方向に平行に揃うようになり、フッ化物塗布アトマイズ粉の容易磁化方向とNdFeB系粉の困難磁化方向がほぼ平行になる。仮成形後、静水圧プレスを実施してもよい。フッ化物塗布アトマイズ粉の飽和残留磁束密度は20℃で2.1Tであり、フッ化物あるいは酸フッ化物との界面にはFeCo規則相が成長している。
仮成形工程を経た仮成形体を不活性ガス中で1050℃に3時間加熱し、焼結させる。焼結後、500℃、1時間加熱後急冷し、焼結磁石を作成した。焼結磁石の残留磁束密度は1.65T、最大エネルギー積64MGOeであった。
本実施例の焼結磁石の特徴を以下に示す。
1)磁石を構成する強磁性相はRE2Fe14B系相とFeM合金系相(REは希土類元素、Mは遷移元素であって、鉄及び希土類元素を除く遷移元素である)であり、これらの強磁性相間には磁気的な結合がみられる。磁気的結合の例として、減磁曲線が上記複数の個々の強磁性相の和ではなく、磁気的な結合による曲線の形の変化が認められる。
2)焼結磁石全体におけるFeM合金(希土類元素を含有しない強磁性相)の体積率は0.1〜50%である。0.1%未満ではFeM合金を複合化させる顕著な効果が認められない。50%を超えると磁気的結合が弱くなり、保磁力が減少する。なお、保磁力減少を抑制するためには、RE2Fe14B(REは希土類元素、Feは鉄、Bはホウ素)以外のフェリ磁性を示す酸化物やMn系化合物を粒界近傍に形成すること、及びFeM合金の結晶粒外周側に規則相を形成することが有効である。
3)減磁曲線の第二象限において、磁化が不可逆に変化する。
4)保磁力が10kOe以上である。
上述の特徴の中で、焼結磁石の磁化が磁場に対して不可逆変化することは、一部の強磁性相の磁化が着磁方向から傾くことに対応している。着磁方向から傾いた磁化を有するFeM系合金は、RE2Fe14Bと磁気的に結合することで磁化反転しにくい状態になっているが、温度上昇や減磁界の強度、磁界の方向などによって所定の条件を満たすと、容易に磁化が傾き、焼結磁石の磁束が保磁力よりも小さい磁場で減少する。
減少した残留磁束密度は、FeM系合金の磁化回転に相当しており、第一象限で着磁方向に平行な磁場を印加することでRE2Fe14Bの着磁磁界よりも小さな磁界で復帰する。即ち、FeM系合金の磁化がRE2Fe14Bの磁化とほぼ平行であれば残留磁束密度が高く、その角度差が1度以上180度以下の範囲で傾斜するため残留磁束密度が増減する。局所的にFeM系合金の磁化がRE2Fe14Bの磁化と反対方向となっても、FeM系合金の結晶粒と隣接しているRE2Fe14Bの保磁力が重希土類元素偏在により上昇しているため、主相であるRE2Fe14Bの磁化反転は起こらず、着磁方向成分の磁界によってFeM系合金の磁化は容易にRE2Fe14Bの磁化とほぼ平行になる。焼結磁石の保磁力が10kOe未満の場合、不可逆減磁が生じ易くなり磁束を制御することは困難となる。そこで焼結磁石の保磁力は10kOe以上であることが必要になる。
なお、「FeM系合金の磁化回転に相当」とは以下の通りの意味である。FeM系合金はRE2Fe14Bと磁気的に結合しているが、その結合磁界はRE2Fe14Bの保磁力よりも小さく、RE2Fe14Bの着磁方向と逆向きの成分の磁界に対してRE2Fe14Bよりも容易に磁化の向きが変化する。FeM系合金の磁化とRE2Fe14Bの磁化の間には着磁方向に揃おうとする静磁気的な作用が働いており、着磁方向と逆向きの磁界が印加された時に、RE2Fe14Bよりも先にFeM系合金の磁化が逆向きの磁界の方向に回転する。この磁化回転は焼結磁石の残留磁束密度を減少させる。
上記のような残留磁束密度の変化は第一、第二象限において可逆的であり、焼結磁石の磁束がRE2Fe14Bの着磁磁場よりも小さな磁場で可変であることを意味している。このような焼結磁石の磁束可変現象を回転機に使用することで、その効率を増加させることが可能である。
本実施例の焼結磁石を埋め込み磁石型回転子に挿入し、巻線着磁後、誘起電圧を測定しながら固定子巻線に流す電流値をインバータで制御し、適切な電流波形により回転子を回転させる。高トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を強めるため、減磁曲線の第一象限に磁界を印加可能な電流を通電し、焼結磁石の残留磁束密度を大きくする。低トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を弱めるため、減磁曲線の第二象限に磁界を印加可能な電流を通電し、焼結磁石の残留磁束密度を小さくする。
上記可変磁束回転機の特徴は以下の通りである。1)複合磁石を構成する高磁化相であるFeM系合金の磁化の方向をRE2Fe14Bの磁化と1度から180度の範囲で制御して焼結磁石の磁束を増減させる。2)使用する焼結磁石は複合磁石の一種のみである。3)FeM合金の使用割合が増加するほど希土類元素使用量が低減できる。4)焼結磁石であるためボンド磁石のような耐熱性の問題や磁束不足はない。
本実施例においてFeM系合金の元素Mは、鉄及び希土類元素以外の遷移元素であり、特に3dあるいは4d遷移元素が望ましい。焼結磁石ではFeM系合金の結晶粒中心から外側に向かって、FeM系合金不規則相、FeM系合金規則相、酸フッ化物、重希土類偏在NdFeB系合金相、NdFeB系合金相という多層構造が形成される。
本実施例の焼結磁石は、飽和残留磁束密度がNd2Fe14B系結晶の値よりも大きい値を示すFe系結晶が内部に形成され、かつFe系結晶粒の配列に異方性が認められる。この焼結磁石は、主相がNd2Fe14B系結晶のみの焼結磁石と比較して残留磁束密度が大きく、希土類元素使用量が少ない特徴をもっている。その典型的な減磁曲線の一部を図3に示す。図3の横軸は磁場H(Oe)、縦軸は残留磁束密度(T)である。
[1]がNd2Fe14B焼結磁石、[2]がFeCo(飽和残留磁束密度1.9T)を3%添加したNd2Fe14B/FeCo複合焼結磁石、[3]がFeCo(飽和残留磁束密度2.0T)を5%添加したNd2Fe14B/FeCo複合焼結磁石の減磁曲線である。[2]の焼結磁石及び[3]の焼結磁石のFeCoとNd2Fe14B界面近傍にはTbが偏在しており、保磁力は[1]の焼結磁石よりも大きい。
[1]の焼結磁石では減磁曲線において、磁界が正から負となる減磁界の磁束と負から正となる磁界(増磁界)における磁束の値がほぼ一致する。これに対し[2]の焼結磁石及び[3]の焼結磁石では減磁界と増磁界とでは磁束の値が一致せず、磁束に差がみられる磁界領域が認められる。
着磁された焼結磁石の磁束は、減磁界により減少し、[2]の焼結磁石や[3]の焼結磁石では一部の磁化が傾き、磁界を正側に印加しても磁化が傾いたままで低磁束となる。また、負から正への磁界印加の場合と、正から負への磁界印加の場合とでは残留磁束密度の値が異なる。磁化が傾いたために低残留磁束密度となった場合、正側に3〜5kOeの磁界を印加することで残留磁束密度はほぼ復帰する(残留磁束密度の値が減少する前の値に戻る)。復帰した残留磁束密度は、負側に付加される減磁界により減少し、正側に磁界を印加するまでは低残留磁束密度であるが、正側に十分な磁界を印加することで磁束が復帰するため、正側磁界により残留磁束密度は可逆制御が可能となる。
[2]の焼結磁石や[3]の焼結磁石は、負磁界あるいは正磁界により残留磁束密度の値を制御可能であり、Fe系結晶の体積率が大きくなるほど、制御可能な残留磁束密度の幅を大きくすることが可能である。[2]の焼結磁石や[3]の焼結磁石では残留磁束密度が0.1〜0.15Tの幅で可変である。FeCo添加量を増やすことで残留磁束密度の可変幅を増加させることが可能であり、例えばFeCoを20%添加した場合、0.3Tの残留磁束密度幅で制御可能である。
図2に本実施例で磁束可変の制御をするための制御系構成を示す。回転機の誘起電圧波形を検出し、誘起電圧波形を解析することにより、焼結磁石の磁化状態がわかる。磁化状態とコイル電流磁界との関係がデータベース化されているため、磁界を正側にして第一象限を経るか、負側の減磁界で磁束を減少させるか、必要なトルクや効率、回転数などのパラメータを加えて判断される。減磁あるいは増磁に磁界制御することで、回転子中の焼結磁石に印加する磁界をコイル電流により生みだすため、電流解析により電流波形を分析し、インバータによって固定子のコイルに通電する電流を制御する。
50kOe以上の磁界を印加した時の残留磁束密度あるいは磁石表面磁界の値を基準の一つとし、この値がFeCo合金の磁化がNd2Fe14Bの磁化と平行であると仮定して、磁石表面磁界が減少する値とFeCo合金の磁化の傾斜角度の関係が解析でき、この解析を使用して誘起電圧波形を分析し、その結果から投入電流波形のパラメータを決定する。このような制御により高効率を維持しながら、さまざまな運転状態に対応させて焼結磁石の磁束を変化させる。
上記、焼結磁石の磁束制御のために、回転機には誘起電圧検出、誘起電圧解析、減磁制御、増磁制御、電流解析、インバータが適切に組み上げられた構成が必要となる。
Fe−30%Co合金は溶湯急冷法により作製した箔体状の粉末である。不活性ガス雰囲気で高周波溶解されたFe−30%Co合金、銅製ロールの表面に噴射され、厚さ10μm、長軸の平均粒径100μmの板状または箔体状の粉末が得られる。磁気特性確保のために種々のFeやCo以外の金属元素や半金属元素を含有していても、その含有量が20原子%以内であればNd2Fe14B系結晶の飽和磁化よりも高くすることが可能であり、焼結後の最大エネルギー積はFeCo系合金を使用しない場合よりも大きくすることができる。
飽和残留磁束密度2.1TのFe−30%Co合金粉と飽和残留磁束密度1.5TのNd2Fe14B系粉を1:9の混合比率で混合し、室温仮成形後400℃で仮成形しFeCo合金粉の配向に異方性を付加する。FeCo合金粉は磁場方向にその長軸が平行になるように配向し、磁場印加方向と直交方向とではFeCo合金粉の磁化曲線が異なる。仮成形体にDyF系アルコール溶液を含浸し加熱乾燥後、1100℃に加熱焼結し、500℃に最加熱し急冷して焼結磁石を作製した。残留磁束密度は1.65T、保磁力は25kOeである。
このようにして作製したNd2Fe14B及びFeCo合金を主相とするNdFeB−FeCo系焼結磁石を積層電磁鋼板、積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を適切な位置に挿入しておく。
図1にモータ1の軸方向に垂直な断面の模式図を示す。モータ1は回転子100と固定子2から構成され、固定子2はコアバック5とティース4からなり、隣り合う2つのティース4の間にあるコイル挿入位置7には、コイル8(3相巻線のU相巻線8a、V相巻線8b、W相巻線8c)で構成するコイル群が挿入されている。ティースの先端部9よりシャフト中心には回転子が入る回転子挿入部10が確保され、この位置に回転子100が挿入される。回転子100の外周側には焼結磁石101が挿入されている。焼結磁石に重なるようにして示される矢印は焼結磁石の着磁方向201である。
着磁された焼結磁石の磁束は、減磁界により減少し、FeCo合金の一部の磁化が傾き、磁界を正側に印加しても磁化が傾いたままで低磁束となり、負から正への磁界印加の場合と、正から負への磁界印加の場合とでは残留磁束密度の値が異なる。磁化が傾いたために低残留磁束密度となった場合、正側に3〜5kOeの磁界を印加することで残留磁束密度はほぼ復帰する。復帰した残留磁束密度は、負側に付加される減磁界により減少し、正側に磁界を印加するまでは低残留磁束密度であるが、正側に十分な磁界を印加することで磁束が復帰するため、正側磁界により残留磁束密度は可逆制御が可能となる。
負磁界あるいは正磁界により残留磁束密度の値を制御可能であり、FeCo系合金の体積率が大きくなるほど、制御可能な残留磁束密度の幅を大きくすることが可能である。本実施例では残留磁束密度が0.2Tの幅で可変である。FeCo添加量を増やすことで残留磁束密度の可変幅を増加させることが可能であり、FeCoを20%添加した場合、0.3〜0.4Tの残留磁束密度幅で制御可能である。残留磁束密度の可変幅が0.01T未満ではモータの効率向上効果を確認することは困難である。モータの高効率化のためには残留磁束密度の可変幅が0.01T以上0.5T以下が望ましい。0.5Tを超えると減磁曲線の勾配が大きくなり、コイル電流による磁束の制御が困難になる。
高トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を強めるため、コイル8に電流を通電し、コイル電流による磁界を焼結磁石の着磁方向と逆方向に印加し、焼結磁石の残留磁束密度を大きくする。低トルクが必要な場合は焼結磁石の磁束を弱めるため、コイル8に電流を通電し、コイル電流による磁界を焼結磁石の着磁方向と同方向に印加し、焼結磁石の残留磁束密度を小さくする。
鉄及びコバルトイオンが導入されたアルカリ性鉱油を200℃に加熱し、フッ素を含有する鉱油を注入、攪拌後5〜20℃/秒の冷却速度で急速冷却する。冷却後洗浄することで平均粒径1〜1000nmのFe−Co−F系粉末が得られる。粉末の主な結晶構造はbccとbct構造の混合であり、急冷した粉末を200℃から500℃の範囲で加熱することで、一部の結晶が規則化し、結晶磁気異方性が増加する。
作成した粉末の磁気特性は、飽和磁化230emu/g、異方性磁界50kOe、キュリー点720℃である。粉末を分級し、粒径20〜50nmの粉末を使用して磁場中圧縮成形し、最大エネルギー積が15〜70MGOeの永久磁石を得た。最大エネルギー積は使用するバインダの体積、粉末の配向性、粉末の粒径などに依存する。
本実施例のFe−Co−F粉末には炭素、酸素、水素、窒素、ホウ素、塩素が不可避的に含有していることが認められ、これらの元素の一部がbccあるいはbctの結晶に含有している。上記磁気特性を実現するための組成は、Fe−1〜50%Co−1〜35%Fの範囲であり、500〜900℃の温度範囲で準安定相から安定相に相変態する。フッ素の一部が炭素、酸素、水素、窒素、ホウ素、塩素であっても良いが、これらの元素の中でフッ素が高濃度であることが望ましい。保磁力が10kOe以上であるためには準安定相が安定相に相変化しない温度範囲で使用することが望ましい。
FeCoF系永久磁石の減磁曲線は、±10kOeの範囲の磁界において磁界印加の履歴に依存して残留磁束密度が0.1〜0.5T変化する。この残留磁束密度の変化を利用してモータの磁束可変を実現できる。
Fe−90wt%Co合金の粒子を、DyF系溶液を使用して表面処理し、Nd2Fe14B系粉末及びCuナノ粒子分散アルコール系溶液と混合する。Fe−90wt%Co合金の粒子の平均粒子径は50nmである。また、DyF系溶液を使用して表面処理したフッ化物膜厚は1nmであり、Nd2Fe14B系粉末の平均粉末径は4μm、Cuナノ粒子の粒子径は30nmである。Fe−90wt%Co合金の粒子が10体積%、Nd2Fe14B系粉末85体積%及びCuナノ粒子4体積%になるように混合して磁場配向後、1000℃で焼結させ、Cu及びDyを粒界近傍に偏在させる。Cuの偏在により、保磁力が増加する。Cuナノ粒子表面にDyF系溶液を塗布し乾燥させることでDyF系膜を形成するとさらに保磁力が増加する。
本実施例で作成した磁石の特徴は、Cuの粒界被覆率が20〜90%であり、DyがFeCo系合金とNd2Fe14B系結晶粒の界面近傍に偏在し、フッ素が結晶粒界に認められることである。Cuの粒界被覆率が5%未満の場合、保磁力が低下し、最大エネルギー積が減少する。Dy使用量2wt%で保磁力20kOeを実現するためにはCuの粒界被覆率が20〜90%のフッ素含有粒界相及びDy偏在層を形成することが必要である。粒界被覆しているCuはCu−Nd合金やCu−Nd−Dy合金、Cu−Nd−Dy−O合金またはCu−Nd−Dy−O−F合金である。
最大エネルギー積はFe−90%Co合金を混合させることで、飽和磁化増大による効果により増加する。最大エネルギー積が40MGOe以上、保磁力20kOe以上でDy使用量2wt%未満とするためには、DyF系膜で被覆されたFeCo系合金あるいはCo系合金の粉末を2〜30体積%以上混合し、かつCuのような粒界被覆材料を添加することが必要となる。
FeCo系粉末を10体積%含有する本実施例の磁石材料の減磁曲線は、±10kOeの範囲の磁界において磁界印加の履歴に依存して残留磁束密度が0.01〜0.2T変化する。この残留磁束密度の変化を利用してモータの磁束可変を実現できる。
(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石をAr雰囲気中で150℃に加熱し、XeF2の解離ガスに曝すことで粒界の希土類リッチ相が主にフッ化する。フッ化時間と温度、ガス圧力により生成物が異なるが、150℃で10分間フッ化することにより粒界に沿ってフッ素が拡散する。フッ素の導入により焼結磁石に添加されている種々の金属元素や酸素などの各元素の粒界近傍の組成分布が変化する。フッ素の導入により、粒界にはNdOF、NdF2、NdF3などのフッ化物や酸フッ化物が成長し、Dyは粒界中心よりも主相結晶粒の粒界側に偏在する。CuやAlなどの添加元素もフッ素の多い粒界中心部よりも主相結晶粒との界面近傍に偏在化する。このようなフッ素導入に伴う組成分布の変化により保磁力が2〜15kOe増加する。
さらにフッ化時間を長くして20〜30分間、XeF2分解生成ガスに150℃で曝すことで、主相の(Nd、Dy)2Fe14Bの一部が希土類フッ化物とbccあるいはbct構造のFeリッチ相が成長する。このFeリッチ相は(Nd、Dy)2Fe14Bの飽和磁化よりも高く、残留磁束密度が増加する。Feリッチ相や(Nd、Dy)2Fe14Bには種々の添加元素や不可避不純物が含有しており、Feリッチ相と(Nd、Dy)2Fe14Bの間には磁気的な結合が認められる。Feリッチ相は希土類元素とフッ素との結合により成長するために、Feリッチ相の界面の一部に希土類フッ化物または希土類酸フッ化物が認められる。さらにフッ化時間が長くなると、bctあるいはbccのFeリッチ相の体積率が増加し、残留磁束密度は増加するが保磁力が減少する傾向を示す。
フッ素導入により最大エネルギー積が増加するのは、粒界組成の分布が変わることに加えて希土類元素とFeの比率が2:14よりもFe濃度比が高いFeリッチ相のような磁化160emu/g以上の高磁化相が形成するためであり、焼結磁石におけるフッ素導入量は0.01〜10原子%である。0.01原子%未満のフッ素量では表面近傍の組成分布を変えることは可能であるが厚さ0.1〜10mmの磁石全体の粒界組成を変えるために必要な量に達しない。また10原子%を超えるフッ素量ではFeリッチ相の結晶粒が粗大化し、保磁力が減少する。
本実施例の磁石材料の特徴は、フッ素以外の元素の深さ方向の平均的な濃度分布(結晶粒100個とその粒界を含む濃度)は最表面を除いてフッ素導入前と変化しないことである。フッ素導入により、粒界の希土類リッチ相がフッ化し、フッ化後のフッ化処理温度よりも高温側での時効熱処理あるいは遷移金属の拡散熱処理により、フッ素が導入された粒界近傍の組成分布や結晶構造、相構成、偏在幅などが変化する。
他の特徴としてFeリッチ相の形成している主相体積に対する割合が焼結磁石表面ほど大きく、焼結磁石の表面から内部にFeリッチ相体積率の勾配が認められる。またフッ化物は焼結磁石表面に多く成長し、重希土類元素の偏在も焼結磁石の表面側で顕著である。また、主相であるNd2Fe14B系結晶粒内にフッ素が拡散し、一部の主相にはNd2Fe14Bの化学量論組成よりもFeリッチ側の金属間化合物やbccまたはbct構造のFeリッチ相が成長する。bccまたはbct構造のFeリッチ相と主相の界面の一部では格子整合が認められる。このFeリッチ相の体積率は磁石表面から100μm以内の部分で0.01〜50%の範囲が望ましい。Feリッチ相の体積率が0.01%未満ではフッ化による保磁力増加効果が0.5kOe未満となる。Feリッチ相の体積率が50%を超えると保磁力の減少が顕著となり、熱減磁し易いため応用が困難となる。
本実施例の手法を採用することにより、XeF2ガスなどフッ素を含有するガスまたは溶液を使用してフッ素を焼結磁石の希土類リッチ相に選択的に拡散させ、時効急冷熱処理によりNdFeB系焼結磁石に添加されている種々の元素を粒界近傍に偏在化させることが可能である。主相であるNd2Fe14Bと粒界相である希土類リッチ相とではフッ素が反応する量が異なり、反応比は主相:粒界相で1:2〜1:10000となる。粒界相への反応比率が小さくなると焼結磁石表面に安定なフッ化物あるいは酸フッ化物が形成され、フッ素の反応や拡散は進行しない。
本実施例ではXeF2を使用しているが、XeF2以外のフッ素含有ガスを発生させるフッ化物あるいはラジカルフッ素やフッ素イオンなどのフッ素プラズマを使用することで、同様の効果が確認できる。フッ化剤と鉱油またはアルコールを混合した溶液を使用することでフッ化反応を安定化できる。またフッ化アンモニウム(NH4F)や酸性フッ化アンモニウム(NH4F・HF)も使用でき、これらのフッ化剤とXeF2との混合フッ化剤を使用しても良い。これらのフッ化剤に塩素や臭素、リン、酸素、ホウ素などが混合しても同様の効果が得られる。
焼結磁石は(Nd、Dy)2Fe14B系や(Nd、Pr、Dy)2Fe14B系などのNd2Fe14B系以外にSm2Co17系、FeCo系とNd2Fe14B系の複合焼結磁石、重希土類元素が偏在化した焼結磁石の他、Nd2Fe14B系薄膜やNd2Fe14B系熱間成形磁石、MnAl系、MnBi系、フェライト系、AlNiCo系、FeCo系磁石などにおいても保磁力増加、残留磁束密度増加、最大エネルギー積増加が確認できる。これらの材料については、フッ化処理を施す工程の前後で各種元素の粒界拡散処理を実施し、さらに保磁力を増加させることが可能であり、レアメタルの削減に寄与する。
XeF2の粉末径は1000μm以下0.1μm以上が望ましい。粉末径が1000μmを超えるとフッ素濃度の濃淡が生じ易く、磁石表面や内部の粒界組成や構造が不均一になり磁石特性が安定しない。粉末径が0.1μm未満ではXeF2の分解が起こり易く処理時間や温度の制御が困難になる。
Nd2Fe14B系粉末とFe系粉末を体積比で8:2の割合で混合後磁場中成形しフッ素ガス処理によりフッ素を導入する。Fe系粉末の一部はフッ素導入によりフッ素が0.1〜15原子%含有するbct構造の鉄フッ素(Fe−F)合金となる。Nd2Fe14B系粉末のc軸方向とFe−F合金のc軸方向が平均して平行となるように再度磁場印加し、焼結助剤を添加して600〜900℃で焼結した。900℃よりも高温側で焼結するとFe−F合金のフッ素が脱離するため、低温側で焼結する必要がある。フッ素はNd2Fe14Bの結晶内にも認められ、一部のホウ素がフッ素で置換されても磁気特性は向上可能である。
フッ素の脱離を抑制するために、フッ素と二元化合物を形成し易いCoやAl、Crなどフッ化物一モル当りの自由エネルギーが−500kJ/mol以下である元素を磁性粉に0.01〜5原子%添加することが望ましい。5原子%を超えると保磁力が低下し、0.01原子%未満ではフッ素脱離効果が認められない。フッ素ガス処理にはF2ガスを使用することが可能であり、希土類リッチ相にもフッ素が導入され、一部の粒界にはNdOFx(1<X<5)及び(Nd、Fe)OFx(1<X<5)が形成され、高フッ素含有酸フッ化物の成長によりフッ素と結合する傾向をもったAl、Zr、Crなどの元素の一部は前記酸フッ化物近傍に重希土類元素とともに偏在し、保磁力が増大する。このような焼結磁石に添加された元素の偏在は、フッ化物の生成自由エネルギーがCuよりも負側である元素に関して顕著に認められる。従って、フッ化物の生成自由エネルギーがCuよりも負側の元素を0.001〜5.0原子%の範囲で焼結磁石に添加することが磁石性能向上のために必要となる。NdOFxのフッ素濃度(X)が1未満では酸フッ化物近傍への偏在が顕著ではない。また5以上ではFが他のフッ化物を形成し易く、粒界の酸フッ化物の粒径が大きくなり、残留磁束密度が低下する傾向を示す。
本実施例のFe−F合金は飽和残留磁束密度が1.6〜2.5Tの範囲であり、フッ素の原子位置は侵入位置あるいは置換位置であり、フッ素原子の固定化のために鉄原子位置に前記のようなCoやAl、Crなどあるいは希土類元素を配置させる。フッ素原子と共に炭素、水素、窒素、塩素、ホウ素などの侵入型元素がフッ素よりも低濃度で共存できる。フッ素含有結晶は900℃まで安定であり、900℃より高温側では安定なフッ化物や酸フッ化物に変化する。
Fe−50%Co粒子表面からフッ素ガス処理によりフッ素を導入する。Fe−50原子%Co粒子の平均粒径は20nmである。フッ素ガスにXeF2の加熱分解ガスを使用することで、フッ素がFeCo系合金相内に導入される。150℃でフッ素導入後10kOe以上の一方向磁場中において600℃で10時間熱処理することにより導入フッ素の一部及びFe、Co原子が規則化する。FeCoF系規則相は、フッ素濃度が0.1〜25原子%であり、磁場印加方向に格子が伸びることにより結晶磁気異方性が増加する。この粒子を磁場中成形し有機物のバインダ剤を使用したボンド磁石が得られる。
また、上記粒子をフッ化処理前に仮成形後、フッ化処理を施し、さらに磁場中圧縮成形することで圧縮成形磁石が得られる。5kOe以上の保磁力を得るためには、FeCoFの規則配列したフッ素原子の濃度を5〜15原子%にすると共に、第四添加元素としてFe及びCo以外の遷移元素を0.1〜20原子%添加させ、添加元素を規則配列させることが必要となる。
FeCo粒子の飽和残留磁束密度は2.0Tであるため反磁界が大きく、一般的な用途ではさらに大きな保磁力(10kOe以上)が必要になる。このような保磁力にするためにはFeCoF系相の結晶磁気異方性を大きくすることが有効であり、フッ素の原子位置が重要になる。フッ素の再隣接原子がCoよりもFe原子が多くなるように配列させることにより、フッ素原子によるFe原子の電子状態密度分布に偏りが生じ、結晶磁気異方性エネルギーを増加させ、20kOeの保磁力が20℃で得られる。このような原子配置を実現するために、窒素や炭素などの侵入元素をXeF2分解ガスと共に反応させることでフッ素原子の規則度を増加させることが有効である。
フッ素やFe、Coの規則度を一体の磁石内部で変えることにより、保磁力の値が異なるFeCoF系合金相からなる磁石材料が得られる。完全規則状態の規則度を1とすると規則度が0から1の範囲の合金相を平均規則度0.2〜0.8の範囲で成長させることにより、回転機などで残留磁束密度を印加磁場により変化できる磁石が得られる。
本実施例において残留磁束密度が1.0〜1.7Tの範囲である場合にはFe、Co、F以外の遷移元素を1種類以上添加して規則相の耐熱性を向上させることができ、特にV、Cr、Mnや希土類元素を0.01〜10原子%添加し、添加元素の一部を規則位置に配列させることで200〜300℃の耐熱性が得られる。
XeF2の加熱分解ガスは本実施例以外にも強磁性材料または反強磁性、フェリ磁性などの磁性材料の磁気特性向上(磁化増加、磁気変態点制御、保磁力制御、磁気抵抗効果の増加、磁気冷却効果の増加、超伝導臨界温度上昇、磁気歪増加など)に使用できる。XeF2の加熱分解ガスの代わりにMF2やMF3(MはXe、F以外の13族から18族の元素)の分解ガスやラジカル、イオンを使用でき、このようなフッ化剤に炭素や窒素など他の侵入型元素を含有させても良い。
(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石には、焼結前の原料粉にCu、Ga、Alがそれぞれ0.01〜1原子%の濃度範囲で混合されており、(Nd、Dy)2Fe14Bよりも希土類元素の濃度が高い粉末とともに混合され、磁場中仮成形後1050℃で液相焼結する。この焼結体をXeF2が分散したスラリーまたはコロイド液に浸漬し、100℃から150℃の温度範囲でXeF2が分解したフッ素ラジカルによりフッ素を導入する。この温度範囲でフッ素は粒界に堆積し、フッ素導入後の時効熱処理によりフッ素は希土類元素濃度が高い粒界を拡散する。XeF2の平均粒子径は0.1μmから1000μmの範囲である。フッ素が粒界を拡散すると、粒界及び粒界近傍の組成や構造、界面構造、偏在元素などが大きく変化し、焼結磁石の磁気特性が向上する。フッ素導入前の一部の粒界相は(Nd、Dy)23-x(0<X<3)から(Nd、Dy)xyz(X、Y、Zは正数)で(Nd、Dy)xyzのDy濃度は(Nd、Dy)23-x(0<X<3)中のDy濃度よりも小さく、(Nd、Dy)xyzにおいてNdの濃度はDy濃度よりも大きい。これは粒界相のDyが主相の外周側に偏在化することを意味している。また、フッ素導入により、粒界相と主相の界面近傍にはCu以外にGaやAlなどの添加元素の偏在が助長されると共に、主相の酸素濃度が減少する。さらに主相結晶粒中心部のDyの一部が粒界周辺に拡散して偏在化する。
フッ素導入直後の減磁曲線には保磁力が小さい成分が階段状の減磁曲線として認められるが、400〜800℃の時効熱処理により減磁曲線には保磁力の小さい成分は消失する。フッ素導入後の飽和残留磁束密度はフッ素導入前よりも0.2〜10%の範囲で増加する。飽和残留磁束密度の増加は残留磁束密度の増加につながり、最大エネルギー積がフッ素導入前よりも増加する。400〜800℃の時効熱処理により、焼結磁石から放出する未反応フッ素なども除去することが可能である。
フッ素導入後の粒界には上記のようにフッ素が偏在し、粒界の大部分はフッ化物または酸フッ化物となっており、その結晶構造は立方晶、斜方晶、六方晶、菱面体晶または非晶質である。フッ素は粒界以外の主相結晶粒中に一部拡散し、一部の主相からbccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金が成長する。ここでMは焼結前の原料粉に添加した元素または焼結後磁石表面からフッ素導入前に拡散させた元素であり、x、y、h、i、jは正数である。主相結晶粒に拡散するフッ素は焼結磁石の表面近傍で多いため、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金も焼結磁石中心部よりも表面近傍で多くなる。
前記bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の単体の保磁力は0.1〜10kOeであり、飽和残留磁束密度は1.6〜2.1Tの範囲であり、(Nd、Dy)2Fe14Bのみの保磁力よりも小さく、飽和残留磁束密度は大きいので、(Nd、Dy)2Fe14Bと磁気的に結合することで磁化反転が抑制され、ステップのない減磁界に対して単調な減磁曲線となる。減磁界の値に依存して残留磁束密度を0.01〜0.5T可変とするには、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の焼結磁石全体に占める体積率を10%から70%にする。また、(Nd、Dy)2Fe14BのB(ホウ素)の一部がF(フッ素)によって置換され、(Nd、Dy)2Fe14(B、F)が形成される。(Nd、Dy)2Fe14(B、F)は(Nd、Dy)2Fe14Bよりも飽和残留磁束密度が高いため、残留磁束密度も高くすることが可能であり、フッ素の原子位置を制御することで結晶磁気異方性エネルギーやキュリー温度の上昇も可能である。
導入したフッ素は粒界、FeM系合金、(Nd、Dy)2Fe14Bの3相で確認でき、その存在割合は粒界で80−90%、FeM合金1−20%、(Nd、Dy)2Fe14B0.1〜5%であり、粒界が最も多く次いでFeM合金、主相(Nd、Dy)2Fe14Bの順である。
残留磁束密度の外部磁界による変化を抑制するためには、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の体積率を10%未満にする必要がある。10%以上で残留磁束密度は5kOe以下の外部磁界により可逆的に変動することができ、70%を超えると残留磁束密度が著しく低下する。このため、残留磁束密度可変磁石では、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の体積率を10%以上70%以下の範囲にするために、フッ素導入処理条件を適正化する。bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の合計体積率が70%以下であれば保磁力がフッ素導入前よりも1〜10kOe増加し、重希土類元素使用量を大幅に削減できる。
本実施例の焼結磁石ではフッ素導入とフッ素導入後の時効熱処理により主に粒界にフッ素が拡散し、一部の主相から主相よりも飽和磁化が大きくかつ希土類元素濃度が高い結晶(この相をFeリッチ相と呼ぶ)が成長する。Feリッチ相は前記のようなbccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金以外に、希土類元素(Re)を含有するFeRe系、FeReM系、FeReMF系、FeReMC系合金相で希土類元素濃度が0.1〜10原子%である強磁性相も認められる。このようなFeリッチ相の周辺には希土類元素濃度が12原子%を超える相が認められ、Feリッチ相と隣接する主相結晶粒の外周部には重希土類元素の偏在が顕著であるために、Feリッチ相と主相は磁気的な結合によって磁化反転が抑制されている。
したがって、本実施例の作成条件下で作成した磁石において、最大エネルギー積40MGOe以上70MGOe以下で残留磁束密度が外部磁場によって可変となる焼結磁石は、主相がNd2Fe14B系相とFe系相であり、これらの主相周辺に主相よりも低希土類元素濃度のFeRe系合金相及び主相よりも高希土類元素濃度の複数の相(FeRe系相、フッ化物、酸フッ化物、ホウ化物、炭化物、酸化物など)から構成され、主相結晶の外周側に希土類元素の偏在が認められ、主相の一つであるFe系相は焼結磁石の中心から表面に近づくに従って割合が多くなる傾向を示す。
本実施例のようなフッ素導入手法は、(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石以外にも(Nd、Pr、Dy)2Fe14B焼結磁石などの希土類鉄ホウ素系焼結磁石や希土類鉄ホウ素系仮成形体または希土類鉄ホウ素系磁性粉、希土類鉄系磁性粉、鉄系磁性粉、アルニコ磁石、フェライト系磁石マンガン系磁石、コバルト白金系薄膜磁石、鉄白金系薄膜磁石、希土類鉄ホウ素系薄膜磁石などの各種磁性体にも採用でき、保磁力増加や飽和残留磁束密度増加、希少元素使用量低減、電気抵抗増加、磁気冷凍効果増加、磁気熱電効果増加、磁気変態点上昇、光磁気効果増加、磁気抵抗効果増加のいずれかの効果が認められる。特に希土類鉄ホウ素系焼結磁石では、本実施例のフッ素導入処理は、二合金法や粒界拡散法で作成した磁石や熱間成形磁石、衝撃圧縮法やスパッタリング法で作成された磁石、湿式処理により作成した磁石及びその途中工程で適用可能である。
本実施例のようにフッ素を導入する被処理材料は、主相と粒界相とで希土類元素の濃度がそれぞれ12%、30−90%と大きな差があるため、フッ素は粒界相に選択的に拡散する。20から600℃の低温域でラジカルフッ素を含む分解生成フッ素を使用してフッ素を選択的に導入するためには被処理材料の複数構成相の元素濃度差が10%以上である必要がある。10%未満の場合はフッ素が選択的に導入あるいは反応、拡散せず、全体に導入される。したがって被処理材料の複数構成相の元素濃度差は10%以上100%以下となる。100%の場合は構成元素が主相とは異なる相が形成されている材料となる。前記被処理材料の複数構成相の元素濃度差の対象となる元素は、フッ素と結合して化合物となり易い元素(Tで表す)であり、TxFy(xとyは正数、Fはフッ素)で示される化合物を形成可能な元素である。
本実施例の(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石は表面磁石モータ、埋め込み磁石モータ、プレーナー型磁石モータに適用でき、レアメタル使用量削減とモータ性能向上を両立できる。
平均粒径20μmのアトマイズFeCo粉をSmF3のコロイド溶液に浸漬し、平均膜厚1nmのSmF3膜をFeCo粉表面に平均被覆率70%で形成する。この粉末をヘキサン(C614)に浸漬後ヘキサンとフッ化キセノンの混合スラリーと混合し、Arガスで置換した加熱炉に挿入し、100℃に加熱する。フッ化キセノンの量はFeCo粉末に対して1/5〜1/1000の範囲であり、1/1000未満ではフッ素導入量が少なく、磁石特性が低い。1/5よりもフッ化キセノンの量が多くなるとFeCo粉末表面に安定なフッ化物が堆積するため磁石特性が低下する。100℃でフッ化キセノンは分解し、フッ素がFeCo粉末に導入される。FeCo粉の表面はSmF3によって脱酸され清浄化されており、フッ素が酸フッ化物とならずにFeCo格子内に侵入し易い。フッ素導入後、さらに200℃で時効してFeCo粉の結晶内の原子配列を規則化し、フッ素原子の一部も規則化する。
上記のようにFeCo粉にフッ素が導入され、規則格子が成長した粉末には、フッ素が5〜50原子%のFeCo規則相が認められ、異方性磁界が10〜100kOeとなる。この粉末をバインダと混合して射出または圧縮成形することによりボンド磁石が得られる。また、前記粉末を圧縮成形後、無機材料となる溶液を含浸させた磁石も作成可能であり、磁場中成形により異方性ボンド磁石が作成可能である。このようなボンド磁石はSmが0.1〜5原子%のため希土類元素の使用料は少なく、フッ素を導入しないFeCo粉とフッ素導入されたFeCo粉を混合して成形することにより、残留磁束密度が0.8〜1.4Tの範囲で可変である磁石が得られる。
(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石には、焼結前の原料粉にCu、Zr、Al、Coがそれぞれ0.1〜2原子%の濃度範囲で混合されており、(Nd、Dy)2Fe14Bよりも希土類元素の濃度が高い粉末とともに混合され、磁場中仮成形後1000℃で液相焼結する。この焼結体をXeF2及びCo錯体が分散したスラリーまたはコロイド液に浸漬し、30℃から100℃の温度範囲でXeF2が分解したフッ素ラジカルによりフッ素を導入する。この温度範囲でフッ素は粒界に堆積し、フッ素導入後の時効熱処理によりフッ素及びCoは希土類元素濃度が高い粒界を拡散する。XeF2の平均粒子径は0.1μmから1000μmの範囲である。フッ素が粒界を拡散すると、粒界及び粒界近傍の組成や構造、界面構造、偏在元素などが大きく変化し、焼結磁石の磁気特性が向上する。フッ素導入前の一部の粒界相は(Nd、Dy)23-x(0<X<3)から(Nd、Dy)xyz(X、Y、Zは正数)で(Nd、Dy)xyzのDy濃度は(Nd、Dy)23-x(0<X<3)中のDy濃度よりも小さく、(Nd、Dy)xyzにおいてNdの濃度はDy濃度よりも大きい。これは粒界相のDyが主相の外周側に偏在化することを意味している。また、フッ素導入により、粒界相及び主相内にフッ素が拡散し、界面近傍にはCu以外にCoやAl、Zrなどの添加元素の偏在が助長されると共に、主相の酸素濃度が減少する。さらに主相結晶粒中心部のDyの一部が粒界周辺および粒内の一部に拡散して偏在化する。
フッ素導入直後の減磁曲線には保磁力に分布がある階段状の減磁曲線と測定されるが、400〜800℃の時効熱処理によりフッ素及び主相構成元素が拡散し、減磁曲線には保磁力の小さい成分は消失する。フッ素導入後の飽和磁束密度はフッ素導入前よりも0.2〜20%の範囲で増加する。飽和磁束密度の増加は残留磁束密度の増加につながり、最大エネルギー積がフッ素導入前よりも増加する。400〜800℃の時効熱処理により、焼結磁石から放出する未反応フッ素なども除去することが可能である。
フッ素導入後の粒界には上記のようにフッ素が偏在し、粒界の5から90%はフッ化物または酸フッ化物となっており、その結晶構造は立方晶、斜方晶、六方晶、菱面体晶または非晶質である。フッ素は粒界以外の主相結晶粒や粒界三重点に一部拡散し、一部の主相からbccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金が成長する。ここでMは焼結前の原料粉に添加した元素または焼結後磁石表面からフッ素導入と共に拡散させた少なくとも1種の元素であり、x、y、h、i、jは正数である。主相結晶粒に拡散するフッ素は焼結磁石の表面近傍で多いため、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金も焼結磁石中心部よりも表面近傍で多くなる。一部のフッ素含有Fe系合金は格子定数がFe(0.2866nm)よりも0.01〜10%短く、フッ素含有相の一部は主相結晶粒内部にも認められる。
前記bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の単体の保磁力は0.1〜10kOeであり、飽和磁束密度は1.6〜2.4Tの範囲であり、(Nd、Dy)2Fe14Bのみの保磁力よりも小さく、飽和磁束密度は大きいので、(Nd、Dy)2Fe14Bと磁気的に結合することで磁化反転が抑制され、フッ素導入直後に減磁曲線の第二象限において保磁力の80%以下の磁界で編曲点が認められる減磁曲線であったのに対して単調な減磁曲線となる。減磁界の値に依存して残留磁束密度を0.01〜0.5T可変とするには、bccまたはbct構造のFeあるいはFexy合金、またはFehij合金の焼結磁石全体に占める体積率を0.1%から70%にする。
残留磁束密度の外部磁界による変化を抑制するためには、フッ素が侵入したhcp構造やL10構造のFexy合金、またはFehij合金の体積率を0.1から50%の範囲で成長させる必要がある。特にフッ素が侵入した規則合金は、磁場中フッ化処理あるいはフッ化後の磁場中熱処理またはフッ化後の塑性変形により形成できる。
本実施例の作成条件下で作成した磁石において、最大エネルギー積40MGOe以上70MGOe以下で残留磁束密度が外部磁場によって可変となる焼結磁石は、主相がNd2Fe14B系相とFeCo系相であり、これらの主相結晶粒界及び主相内部にフッ素含有相が認められ、主相結晶の外周側及び内部に希土類元素や添加元素の偏在が認められ、主相の一つであるFeCo系相や主相内部のフッ素含有相は焼結磁石の中心から表面に近づくに従って割合が多くなる傾向を示す。
本実施例のようなフッ素導入手法は、(Nd、Dy)2Fe14B焼結磁石以外にも、Mn系磁性材料、Cr系磁性材料、Ni系磁性材料、Cu系磁性材料に適用され、フッ素導入前に強磁性を示していない合金相がフッ素導入とフッ素原子位置の規則化、あるいはフッ素と他の軽元素との原子対の規則化により、電気陰制度の高いフッ素原子が隣接する金属元素の電子状態を大きく変化させることで電子状態密度の分布に異方性が生じ、強磁性化あるいは硬磁性化する。
実施例1〜11に記載のように本発明によれば、希土類永久磁石の希土類元素使用量低減、保磁力増加、最大エネルギー積増加を満足することが可能であり、磁石使用量を低減できる。これにより様々な磁石応用製品の小型軽量化に貢献する。
1 モータ
2 固定子
4 ティース
5 コアバック
7 コイル挿入位置
8 コイル
8a 3相巻線のU相巻線
8b 3相巻線のV相巻線
8c 3相巻線のW相巻線
9 ティースの先端部
10 回転子挿入部
100 回転子
101 焼結磁石
201 焼結磁石の着磁方向

Claims (10)

  1. 回転子、固定子及びコイルから構成され、前記回転子に焼結磁石が配置された焼結磁石モータであって、
    前記焼結磁石は、NdFeB系結晶を含むNdFeB系相と、FeM系結晶(Mは遷移元素であって、鉄及び希土類元素を除く)を含むFeM系相と、重希土類元素を含む重希土類元素含有相とを有し、
    前記重希土類元素含有相は、前記NdFeB系相と前記FeM系相の間に位置し、
    コイル電流により生じる磁界により前記焼結磁石の残留磁束密度を制御することを特徴とする焼結磁石モータ。
  2. 請求項1に記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記焼結磁石の着磁方向に、コイル電流による磁界を印加して、前記焼結磁石の残留磁束密度が小さくなるように制御することを特徴とする焼結磁石モータ。
  3. 請求項1または2に記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記焼結磁石の着磁方向と逆方向に、コイル電流による磁界を印加して、前記焼結磁石の残留磁束密度が大きくなるように制御することを特徴とする焼結磁石モータ。
  4. 請求項2または3に記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記コイル電流による磁界の印加に基づき、前記FeM系相の磁化の傾きが変化することを特徴とする焼結磁石モータ。
  5. 請求項2乃至4のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    印加するコイル電流による磁界は3kOe以上であることを特徴とする焼結磁石モータ。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記残留磁束密度の変化の幅は0.01〜0.5Tであることを特徴とする焼結磁石モータ。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記焼結磁石の保磁力は10kOe以上であることを特徴とする焼結磁石モータ。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記焼結磁石における前記FeM系相の体積率が0.1〜50%であることを特徴とする焼結磁石モータ。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記FeM系相は磁気異方性を有することを特徴とする焼結磁石モータ。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の焼結磁石モータにおいて、
    前記FeM系相の飽和磁化は、前記NdFeB系相の飽和磁化よりも大きいことを特徴とする焼結磁石モータ。
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