JP6519300B2 - 希土類永久磁石および希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents

希土類永久磁石および希土類永久磁石の製造方法

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Description

本発明は、ネオジム、鉄、ホウ素を含有する希土類永久磁石に関する。
ネオジムNd、鉄Fe、ホウ素Bを含有する希土類永久磁石の磁気特性向上に関し、Fe原子を他の原子で置換させることが提案される。特許文献1では、FeをCoで置換させる(特許文献1)。特許文献1では、Feを他原子で置換させた永久磁石の保磁力Hc、残留磁束密度Br、最大エネルギー積BHmax等が網羅的に測定され、上記永久磁石の磁気特性の向上が示される。
特許文献2には、28〜35重量%のネオジムNd、プラセオジムPr、ジスプロシウムDy、テルビウムTbおよびホルミウムHoよりなる群から選択された1種以上の希土類元素、0.9〜1.3重量%のB、0.25〜3重量%のリンP、鉄Feおよび不可避の不純物からなる希土類永久磁石材料が開示される。しかしそのような希土類永久磁石材料は、Pを添加することで粗大粒界を形成し、粗大粒界を起点にした粒界割れのため、焼結磁石の機械強度が低下する可能性がある。
希土類永久磁石の磁気特性を向上させる他の提案として、Nd、Fe、Bからなるナノ粒子の硬磁性相をコアとし、所定のナノ粒子の軟磁性相をシェルとする2相複合構造を備えるナノコンポジット磁石がある。上記のナノコンポジット磁石は、特に軟磁性体の粒径を5nm以下の極微細粒からなる粒界で覆ってシェルとする場合に、コア/シェルの硬軟磁性相間に良好な交換相互作用が起き、飽和磁化を向上させることができる。
特許文献3には、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく;yは0〜約25である)であり、少なくとも1種の磁気的にソフトな相が、Fe、Co、またはNiを含有する少なくとも1種の軟磁性材料を含む、異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石が開示される。
しかし特許文献3に開示されるナノコンポジット希土類永久磁石は冶金学的な手法でソフトな相が形成される。そのため該ソフトな相を形成する粒子の粒径が大きく、交換相互作用を十分に得られない可能性がある。また合金ナノ粒子においては還元力が弱いと単層ナノ粒子の単なる集合体になりやすく、所望のナノコンポジット構造を得られない。したがって上記のナノコンポジット希土類永久磁石の磁気特性は、効果的な向上が見られない場合があると推察される。
また従来、希土類永久磁石に炭素Cを含有させ、BをCで置換させたものが知られている。しかし非特許文献1ないし非特許文献4によれば、BをCで置換させた希土類永久磁石は、キュリー温度が低下することや、飽和磁化、残留磁束密度Brが著しく低下することが知られる。また、第一原理計算による解析では、C原子やN原子をB原子の置換原子として導入すると、C原子やN原子は、それらの周囲に存在する原子と共有結合を形成する。そのような希土類永久磁石は、磁性体に不可欠な不対電子が顕著に減少するため、磁気特性、特に残留磁束密度Brが低い。
米国特許第5645651号公報 国際公開2002-103719号公報 特表2008-505500号公報
F. Leccabue, J. L. Sanchez, L. Pareti, F. Bolzoni and R. Panizzieri,Phys Status Solidi A 91 (1985) K63 F. Bolzoni, F. Leccabue, L. Pareti, and J. L. Sanchez, J. Phys(Paris), 46 (1985) C6-305 M. Sagawa, S. Hirosawa, H. Yamamoto, S. Fujimura and Y. Matsuura,Jpn. J. Appl. Phys. 26(1987)785 X.C. Kou, X. K. Sun, Chuang R. Groessinger and H. R. Kirchmayr, J. Magn MagnMater., 80 (1989) 31
本発明の課題は、Nd、Fe、Bを含有する化合物を主相とする希土類永久磁石の磁気特性を向上させることである。
本発明は、主相と、主相間に形成される粒界相とを備え、主相が、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層と、Fe層とを周期的に有し、Bの一部が、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群からいずれか一種以上選択される元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部が、粒界相に含有される元素と共通する一種以上の元素Mで置換される希土類永久磁石である。
本発明において元素Mは、CuとAlとからなる群からいずれか一種以上選択される元素であることが好ましい。主相に含有されるFeの一部が元素Mで置換されることが好ましい。本発明は、希土類永久磁石の総重量に対し、元素Rの含有量が28〜65重量%であり、Bの含有量が0.80〜0.99重量%であり、元素Lと元素Mとの含有量の合計が0.5〜3.0重量%であることが好ましい。
本発明は、上記の希土類永久磁石の原料合金であって、元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から一種以上選択される元素と、Feと、Bとを含み、粉末粒径のD50が2〜18μmである合金粒子を包含する。
本発明は、希土類永久磁石の製造方法を包含する。本発明は、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群から一種以上選択される元素Lと、AlとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素と、Feと、Bとを含有する原料化合物を、第一の処理温度で保持した後、第二の処理温度まで低下させ、さらに第二の処理温度で保持する熱処理工程を含み、元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層とFe層とを周期的に有し、Bの一部が元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部がCuとAlとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素Mで置換されてなる主相と、主相間の粒界相とを形成する希土類永久磁石の製造方法である。
本発明は、Nd、Fe、Bを含有する化合物を主相とする希土類永久磁石の磁気特性を向上させることができる。
本発明の希土類永久磁石の主相の結晶構造モデルの例である。 本発明の実施例の微細組織の模式図である。 本発明の実施例の原料合金の金属組織写真である。 本発明の実施例の磁気特性の測定結果である。 本発明の実施例の磁気特性の測定結果である。 本発明の実施例のリートベルト法による解析結果である。
[希土類永久磁石]
本発明の希土類永久磁石は、主相と、主相間に形成される粒界相とを備え、主相が、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層と、Fe層とを周期的に有し、Bの一部が、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群からいずれか一種以上選択される元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部が、粒界相に含有される元素と共通する一種以上の元素Mで置換される希土類永久磁石である。
本発明においては、希土類永久磁石の主相が所定の周期的構造を有する。本発明は、該周期的構造を形成する元素の一部を、従来、粒界相成分となる元素で置換させた構造である。図1は、本発明の希土類永久磁石の主相の結晶構造モデルの例である。図2は、本発明の実施例の微細組織の模式図である。図2において、200は主相、300は粒界相である。図1において、100は希土類永久磁石の主相の結晶構造モデル、101はFe層、102はR-Fe-B層である。符号a、b、cはそれぞれ結晶の軸方向を示す。図1に例示される周期的構造では、本発明の主相は、Fe層101とR-Fe-B層102とがc軸方向に沿って交互に存在する。
本発明は、Bの含有量を低減することで元素Rの磁気モーメントの減少を抑制できる。またBの含有量の低減により上記の基本骨格が不安定化し、他の元素が基本骨格や基本骨格内の空隙に入り込みやすくなる。他の元素としてCを含有する希土類永久磁石においては、基本骨格が不安定になるとBがCと置換しやすい。
しかし本発明は、そのような希土類永久磁石と異なり、Cを含有しない、またはCの含有量が極めて微量である。その結果、Bは元素Lと置換され、Cとは置換しない。これにより残留磁束密度Brを向上できる。またCとの置換が認められる場合でも、Cと置換される部分は、元素Lと置換される部分と比較して少ない。
本発明においては、Bを元素Lで置換させる結晶構造を得るため、本発明はBの含有量を抑制し、またCが主相の結晶構造に入り込まないようにCの量を制御する。例えば製造工程で、C源となる紙、プラスチック、油などと、原料合金との接触を極力排除することで、本発明の所定の結晶構造を得られる。
上記に例示する方法でCの量の制御した場合の本発明の原料合金を元素分析した例として、原料合金中Bが0.94%、Cが0.03%であり、この原料合金を焼結させて得られる本発明の希土類永久磁石中、Bが0.94%、Cが0.074%である場合がある。他の例として、原料合金中、Bが0.86%、Cが0.009%であり、この原料合金を焼結させて得られる本発明の希土類永久磁石中、Bが0.86%、Cが0.059%である場合がある。なお上記の元素分析では、島津製作所製ICP発光分析装置(ICP Emission Spectroscopy)ICPS-8100を用いた。上記の単位(%)は、重量%を意味する。
また、上記に例示する2つの希土類永久磁石の粒界部分を除き、粒内中央すなわち主相部分を3次元アトムプローブ(3DAP)により分析した。分析には、AMETEK社製LEAP3000XSi を用い、測定条件をレーザパルスモード(レーザ波長=532nm)、レーザパワー=0.5nJ、試料温度=50Kとした。2つの例はいずれも、主相におけるCの含有量が検出限界値の0.02%以下であった。これにより、本発明においてはCが含有される場合であっても、Cの大部分は粒界相に存在し、主相には不可避の不純物程度の量しか含有されないと確認できる。上記の例ではCについて分析したが、NやOについてもCと同じ態様になりうる。
元素Rは、ネオジムNdとプラセオジムPrとからなる群から一種以上選択され、少なくともNdが選択され、好ましくは、Ndに加えてPrが選択される。本発明はPrを含有することにより、低コストで優れた磁気特性を備える希土類永久磁石になる。元素RとしてNdとPrとを含有させる場合、NdとPrとの原子数比は、80:20〜70:30が好ましい。低コスト化の観点からは、Prの割合が大きくNdの割合が小さいほど好ましい。しかし、上記の原子数比におけるNdの値が70より小さくなると、保磁力Hcjが低下する。
Bは、その一部が元素Lで置換される。元素Lは、コバルトCoとベリリウムBeとリチウムLiとアルミニウムAlとケイ素Siとからなる群から一種以上選択され、Coが選択されることが好ましい。Bの一部を元素Lで置換させることにより、B分極の影響による元素Rの磁気モーメントの減少を抑制できる。これにより本発明は磁気特性を向上できる。
加えて本発明は、元素RとFeとBとの一部が、粒界相に含有される元素と共通する一種以上の元素Mで置換される。これにより本発明は、室温での残留磁束密度Brが良好である。元素Mとして好ましいと推定される元素は、公知の希土類永久磁石の粒界相を形成する元素群のうち、その原子半径が、所定の元素群から選択された元素Rと、Feと、Bとのいずれかの原子半径より小さな元素が好ましい。また、その波動関数が、当該元素Rと、Feと、Bとのいずれかの波動関数と良く重なり合う元素も好ましい。
そのような条件を満たす元素として、元素Mは、銅CuとAlとからなる群からいずれか一種以上選択されることが好ましい。元素Mの種類等により、元素Mが元素RとFeとBとのいずれと置換するかは異なるが、元素Mが、Cu等からなる上記の好ましい群から選択される場合、Feと置換されやすい。したがって本発明の好ましい態様の一つとして、主相に含有されるFeの一部が元素Mで置換される場合が挙げられる。
本発明は、主相と粒界相との交換相互作用に加え、主相の元素の一部を粒界相の元素で置換することで、希土類永久磁石の磁気特性を向上できる。すなわち本発明は、添加元素の種類を増加させずに希土類永久磁石の磁気特性を向上できる。
主相の粒子は、元素RとFeとBと元素Lと元素Mとの総原子数が、粒子全体の原子数の90〜98at%を占める。ただし本発明は、上記の成分以外の不可避の不純物を含みうる。本発明の周期的構造の基本骨格を形成する元素RとFeとBとの原子数比は、2:14:1である。ただし本発明は、元素Mと元素Lとにより元素RやFeやBが置換されるため、置換の態様に従って各元素の原子数比が変わる。例えばFeの一部が元素Mで置換され、かつBの一部が元素Lで置換される場合、各元素の原子数比は、R:Fe:M:B:L=2:(14-x):x:(1-y):yである。なお本発明に含有される元素のうち、主相の結晶構造の基本骨格を構成しなかった元素は、結晶構造内の他の領域に分散しうる。
元素Lの原子数は、Bの原子数に対し1〜25at%が好ましく、3〜25at%がより好ましい。元素Lの原子数が1at%未満の場合、Bとの置換量が十分でない。そのため、元素Rの磁気モーメントの減少を効果的に抑制できない。25at%を超えると、上記の所定の結晶構造を維持できなくなる。
元素Mの原子数は、元素RとFeとBとの総原子数に対し、0.01〜1at%が好ましく、0.1〜0.7at%がより好ましい。原子Mの原子数比が0.01at%未満の場合、粒界相の形成が促進されなくなる。1at%を超えると異常な粒界相を形成する。本発明の原子数比は、Bの原子数に対する元素Lの所定の比の範囲と、元素RとFeとBとの総原子数に対する元素Mの所定の比の範囲とを満たす限り、上記の例、R:Fe:M:B:L=2:(14-x):x:(1-y):yに限定されない。
本発明の各成分の含有量は、希土類永久磁石の総重量に対し、元素Rの含有量が28〜65重量%であり、Bの含有量が0.80〜0.99重量%であり、元素Lと元素Mとの含有量の合計が0.5〜3.0重量%であることが好ましい。上記の各元素の含有量を除いた残部は、Feと微量の不可避の不純物とである。希土類永久磁石の総重量とは、主相と粒界相との重量の合計である。元素Rのより好ましい含有量は、29〜40重量%である。Bのより好ましい含有量は、0.82〜0.98重量%である。元素Lと元素Mとの含有量の合計は、より好ましくは0.9〜3重量%である。
用いる元素Mと元素Lとが重複しない場合は、さらに詳細な含有量として、元素Mの含有量は0.01〜2.0重量%が好ましく、0.02〜1.8重量%がより好ましい。元素Mの含有量が0.01重量%未満の場合、残留磁束密度Brや保磁力Hcjの有意な向上が認められない。元素Lの含有量は0.01〜1.6重量%が好ましく、0.02〜1.5重量%がより好ましい。元素Lは、主相に含有される他、一部は粒界相に含有される。主相に含有される元素Mは、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部と置換しうる。元素Mの含有量が0.01重量%未満の場合、元素RやFeやBとの置換量が少なく、残留磁束密度Brの向上が不十分である。2.0重量%を超える場合、粒界に粗大粒が観察され良好な磁気特性が得られない。
本発明は、主相間に粒界相を備える。そのため本発明の希土類永久磁石に磁場をかけると、粒界相成分のスピン電子が主相成分のスピン電子をピン止めして、主相成分のスピンの反転が抑制される。本発明は粒界相が主相の磁気交換結合を切断する結果、保磁力Hcjを向上させることができる。
本発明の粒界相は、AlとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群からいずれか一種以上選択される元素を含有する。上記の元素群には、少なくとも、元素RとFeとBとのいずれか一種以上と置換しうる元素Mが含まれる。元素Mは、その原子半径が所定の元素RとFeとBとのいずれかの原子半径より小さい元素が好ましい。また、その波動関数が、当該元素Rと、Feと、Bとのいずれかの波動関数と良く重なり合う元素も好ましい。元素Mの例としては、Cu、Alが挙げられ、好ましくはCuが選択される。
本発明の希土類永久磁石は、希土類永久磁石の原料合金の粉末を熱処理して得られる焼結粒子を用いて製造できる。そのような原料合金は、元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から一種以上選択される元素と、Feと、Bとを含み、粉末粒径のD50が2〜18μmであり、好ましくは2〜13μmであり、より好ましくは2〜9μmである。そのような合金粒子を用いて製造することで、本発明の希土類永久磁石を得られる。なお、本発明の希土類永久磁石の焼結粒径は、粉末粒径の110〜300%である。
本発明において粉末粒径とは、熱処理工程前の粉末状または粒子状の原料合金の粒径を意味する。粉末粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて公知の方法で測定できる。また焼結粒径とは、熱処理工程後の上記の粉末状または粒子状の原料合金の粒径を意味する。本発明においてD50とは、体積基準での合金微粒子群の累積分布におけるメディアン径である。
本発明は、室温での残留磁束密度Brが良好である。そのため本発明は、室温で使用する機器に搭載されるモータに好適である。
[希土類永久磁石の製造方法]
本発明の希土類永久磁石の製造方法は、本発明の作用効果を得られる限りにおいて特に制限されない。好ましい本発明の製造方法としては、微粒子化工程、着磁工程、脱脂工程、熱処理工程とを含む製造方法が挙げられる。上記の各工程により得られた生成物を冷却工程で室温になるまで冷却させて、本発明の希土類永久磁石を製造できる。
[微粒子化工程]
微粒子化工程では、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群から一種以上選択される元素Lと、AlとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素と、Feと、Bとを上記に説明する化学量論比で溶解させ、原料合金を得る。なお上記に例示した元素と異なる元素を含有させる場合も、上記の原材料と共に配合させる。なお、この原料合金はアモルファス合金ではないことが好ましい。
溶解前の化学量論比は、最終生成物である本発明の主相となる化合物における組成とほぼ変わらない。したがって、所望の希土類永久磁石の組成に応じて原材料を配合させればよい。得られた原料合金はボールミル、ジェットミル等を用いて粗粉砕する。
粗粉砕した原料合金粒子を有機溶媒に分散させ、還元剤を添加する。還元処理により原料合金粒子は微粒子化され、粉末粒径2〜18μmの微粒子となり、好ましくは2〜13μmになり、より好ましくは2〜9μmになる。なお本発明においては粉末粒径を、レーザー回折式粒子径分布測定装置によって求めた粒度分布における積算値50%の値D50と定義する。
[着磁工程]
着磁工程では、得られた原料微粒子を配向磁場下で圧縮成型する。さらに熱処理工程で、得られた成形体を真空下で加熱後、焼結物を室温まで急冷する。続いて不活性ガス雰囲気中で熱処理を行い室温まで冷却する。
本発明は、熱処理工程の前に脱脂工程を設けることも好ましい。脱脂工程を行うことで、原料合金が微量のCを含有する場合でも、BがCと置換することを抑制しうる。
[熱処理工程]
熱処理工程では、所定の温度管理と時間管理とにより主相や粒界相が形成される。本発明は、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群から一種以上選択される元素Lと、AlとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素と、Feと、Bとを含有する原料化合物を、第一の処理温度で保持した後、第二の処理温度まで低下させ、さらに第二の処理温度で保持する熱処理工程を含み、元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層とFe層とを周期的に有し、Bの一部が元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部がCuとAlとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素Mで置換されてなる主相と、主相間に粒界相とを形成する希土類永久磁石の製造方法を包含する。
熱処理工程では、まず原料合金粒子を第一の処理温度まで昇温させて、全ての含有成分を溶解するまで当該温度で保持する。熱処理工程におけるこの段階は本発明の焼結工程であり、第一の処理温度は、焼結温度と言い換えてもよい。第一の処理温度は、原料合金粒子に含有される元素RとFeとBと元素Lと元素Mとの融点のうち、最も高い融点より高温になるように設定する。
第一の処理温度の例としては、1000〜1200℃が好ましく、1010〜1090℃がより好ましい。より詳細な例として、元素RとしてNdとPrを、元素LとしてCoを、元素MとしてCuを選択する場合、第一の処理温度を、1030〜1080℃に設定できる。
その後、焼結工程後、該熱処理工程は時効工程に移行する。時効工程では、第一の処理温度から第二の処理温度まで温度を低下させる過程で、少なくとも元素RとFeとBと元素Lとの主相成分が固相を形成し、粒界相成分が固相表面に析出し始める。本発明において一種以上の元素Mは、一部が他の主相成分と共に固相を形成し、他の一部は固相表面に析出して粒界相を形成する。第二の処理温度で保持することにより、粒界相と粒界相成分と共通する元素を含有する主相とを形成できる。
第二の処理温度は、粒界相形成温度に基づいて設定する。時効工程では、温度管理が一段階以上で行われる。したがってn段階の温度管理を行う場合、第二の処理温度は、第一の時効温度から第nの時効温度までで段階的に温度を変化させて保持する。
少なくとも上記の各工程を経ることにより、本発明の希土類永久磁石を製造できる。当該希土類永久磁石は、元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層とFe層とを周期的に有し、Bの一部が元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部がCuとAlとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素Mで置換されてなる主相と、主相間に粒界相とを備える。
また、熱処理工程により得られた希土類永久磁石の結晶の焼結粒径は、熱処理工程間前の原料合金微粒子の粉末粒径の110〜300%になり、110〜180%になり得る。したがって、当該結晶の焼結粒径のD50は、2.2〜20μmになり、好ましくは2.2〜15μmになり、より好ましくは2.2〜10μmになる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ただし本発明は下記の実施例に限定されない。
[実施例1ないし実施例5]
表1に示す組成で各元素を含有する原料合金を粉砕し、合金粒子を得た。表1下段の分析値は、ICP発光分光分析法により得た。図3は、光学顕微鏡による合金粒子の金属組織写真である。図3により、該合金粒子のデンドライト成長状況が良好であり、デンドライト寸法が正常であることを確認した。
その後、合金粒子を溶媒に分散させた。分散溶液に添加剤を導入し撹拌して還元反応を行い、合金粒子を微粒子化した。得られた合金微粉末の粒径は3〜11μmであった。粒径は、島津製作所製 レーザー回折式粒子径分布測定装置 SALD-2300相当品で測定した。
得られた合金微粉末500gを、成型キャビティに充填し、それぞれ成型圧力2 t/cm2、19kOeの磁場をかけて圧縮成型と着磁を行った。得られた各成形体を2×101TorrのArガス雰囲気中、図4と図5とに示す各条件でサンプルを熱処理した。熱処理終了後、室温になるまで冷却した。その後キャビティから取り出し、実施例1ないし実施例5の希土類永久磁石を得た。
[残留磁束密度Br、保磁力Hcj、最大エネルギー積BHmaxの測定方法]
実施例1ないし実施例5の磁気特性を室温で測定した。測定結果を図4と図5とに記載する。図4と図5とにおいて、実施例番号の枝番は、サンプル番号である。測定装置は、東英工業株式会社製試料温度可変装置付TPM-2-08Sパルス励磁型磁石測定装置相当品を使用した。
[リートベルト法による結晶構造解析]
実施例1-2の結晶構造を、リートベルト法で解析した。分析条件と解析条件は下記の通りである。
[分析条件]
分析装置:理学電機株式会社製X線回折装置RAD-RRU300
ターゲット:Co
単色化:モノクロメータ使用(Kα)
ターゲット出力:40kV-200mA
(連続測定)θ/2θ走査
スリット:発散1°、散乱1°、受光0.3mm
モノクロメータ受光スリット:0.6mm
走査速度:0.5°/min
サンプリング幅:0.02°
測定角度(2θ):10°-110°
[解析条件]
リートベルト法により解析した。解析ソフトはRIETAN-FPを用い、F. Izumi and K. Momma, "Three-dimantional visualization in powder diffraction" Solid State Phenom.、 130, 15-20 (2007)を参照した。座標はD.Givord、H.-S.Li and J.M.Moreau、 “Magnetic properties and crystal structure of Nd2Fe14B” Solid State Communications、 50、 497-499 (1984)を参照した。
実施例1-2の解析結果を図6に示した。図6に示すように、主相にCu原子が存在しないとして解析した場合はS値が2.3434になり、主相にCu原子が存在するとして解析した場合はS値が2.3349となった。この結果から主相にCu原子が置換原子として存在すると評価した。Cu原子が存在する場合、Cu原子は、置換原子として主相中のFe3、8jサイトは9.2%、Fe4、8jサイトでは9.5%、Fe5、16kサイトでは2.8%、それぞれ導入されると解析された。またCu原子の存在の有無に関わらず、B、4fサイトはCo原子7.4%で置換されている。解析結果に基づき、実施例1-2の結晶構造モデルを作成した。本発明の実施例1-2の結晶構造モデルを図1に示した。なお、図1においてc軸方向における2つのR-Fe-B層の層間距離は0.59〜0.62nmと推定できる。
[実施例6、実施例7]
本発明は、Bの含有量を抑制しCoで置換させることで残留磁束密度Brを向上できる。残留磁束密度Brは飽和磁化と比例するため、本発明の飽和磁化を測定し、その測定結果から本発明の残留磁束密度Brの向上効果を確認した。
実験では、まず、表2に示すようにBの含有量を異ならせた2種類の原料合金を準備した。原料合金を本発明所定の製造方法に基づいて熱処理、急冷凝固させ、実施例6と実施例7との希土類永久磁石を得た。実施例7は、実施例6よりBの含有量を減少させており、その結果Co置換量が増加する。
Lake Shore Cryotronics 7400 Series VSMを用いて、実施例6と実施例7との磁場―磁化曲線の測定を行った。表2に示すように、実施例6の飽和磁化は40.1557(emu/g)であった。実施例7の飽和磁化は41.0184(emu/g)であった。すなわち、実施例6よりCo置換量が多い実施例7の方が、飽和磁化が大きく残留磁束密度Brが大きいことが示される。
本発明の希土類永久磁石は、磁気モーメントが高く、良好な磁気特性を備える。希土類永久磁石は、電動機、海上風力発電機、産業用モータ等の小型化、軽量化、低コスト化に寄与する。
100 希土類永久磁石の主相の結晶構造モデル
101 Fe層
102 R-Fe-B層
200 主相
300 粒界相

Claims (6)

  1. 主相と、主相間に形成される粒界相とを備え、
    主相が、NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層と、Fe層とを周期的に有し、Bの一部が、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群からいずれか一種以上選択される元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部が、粒界相に含有される元素と共通する一種以上の元素Mで置換され
    Cを含まないか、または、Cが0.059重量%以下である希土類永久磁石。
  2. 元素Mが、CuとAlとからなる群からいずれか一種以上選択される元素である請求項1に記載の希土類永久磁石。
  3. 主相に含有されるFeの一部が元素Mで置換される請求項1または請求項2に記載の希土類永久磁石。
  4. 希土類永久磁石の総重量に対し、元素Rの含有量が28〜65重量%であり、Bの含有量が0.80〜0.99重量%であり、元素Lと元素Mとの含有量の合計が0.5〜3.0重量%である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の希土類永久磁石。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載される希土類永久磁石の原料合金であって、元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から一種以上選択される元素と、Feと、Bとを含み、粉末粒径のD50が2〜18μmである合金粒子。
  6. NdとPrとからなる群から一種以上選択される元素Rと、CoとBeとLiとAlとSiとからなる群から一種以上選択される元素Lと、AlとCuとNbとZrとTiとGaとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素と、Feと、Bとを含有する原料化合物を、第一の処理温度で保持した後、第二の処理温度まで低下させ、さらに第二の処理温度で保持する熱処理工程を含み、
    元素RとFeとBとを含むR-Fe-B層とFe層とを周期的に有し、Bの一部が元素Lで置換され、元素RとFeとBとのうちいずれか一種以上の元素の一部がCuとAlとからなる群から選択されるいずれか一種以上の元素Mで置換されてなる主相と、主相間の粒界相とを形成する希土類永久磁石の製造方法であって、
    前記希土類永久磁石はCを含まないか、または、Cが0.059重量%以下であるになるようにする希土類永久磁石の製造方法。
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