JP6481324B2 - 電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
近年の有機感光体は、導電性支持体上に感光層として電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を順次積層した機能分離積層型感光体が主流となっている。中でも有機顔料を電荷発生物質として蒸着層または樹脂中に分散させた層を電荷発生層とし、有機低分子化合物を電荷輸送物質として樹脂中に分散させた層を電荷輸送層として用いる負帯電型感光体が数多く提案されている。また、導電性支持体からの電荷の注入を抑制する等の目的で、導電性支持体と感光層の間に中間層(下引き層と称される場合もある)を設ける技術が提案されている。
特に、有機感光体の変質による帯電性低下は、出力画像の画質への影響が大きく、画像濃度の低下、地汚れ(一般に地肌汚れ、かぶり、黒ポチということもあるが、本明細書では地汚れと表現する。)、連続出力時の画像の均質性など重大な問題を引き起こすことが知られている。
中間層に前述の機能を持たせる方法として、アミノ基を含有するシランカップリング剤を用いて電荷注入阻止機能を向上させる手段(例えば、特許文献1、2参照)や、中間層に電子輸送性物質やアクセプター性化合物などの添加剤を含有させる手法(例えば、特許文献3、4)などが提案されている。
しかし、ヒドロキシアントラキノン系化合物やアミノヒドロキシアントラキノン系化合物は結晶性が高いため、これらを金属酸化物微粒子に付着させた場合、金属酸化物微粒子同士が凝集しやすい。そのため、中間層中での分散状態が不均一化し易いので、長期的な使用における電気特性の安定性は十分とはいえない。
しかしながら電子写真感光体としての電気的な要求特性、すなわち暗所での帯電性と露光時における速やかな電位減衰特性を長期間維持することが電子写真感光体の寿命を決定する因子となってきている。
中間層に関しては前述のように、導電性支持体から感光層への『電荷注入阻止機能』と、感光層で発生した電荷の導電性支持体側への『電荷輸送機能』との二つの機能の両立および維持が求められるが、長期間の繰り返し使用により層中に電荷の流れを阻害するトラップが増加し、露光部電位が上昇してしまい、その結果非露光部との間で十分な静電コントラストを得ることができずに出力画像の濃度低下を生じるなどの問題が生じてしまい電子写真感光体としての寿命を迎えてしまう。
摩耗が許容範囲以上に進むと露光部電位が上昇してしまい、やはり電子写真感光体としての寿命を迎えてしまうことから、摩耗を少なくして露光部電位の上昇を抑制する必要がある。
加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を挙げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇とが余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地汚れ等の異常画像の原因となる。
また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
現状ではこの摩耗や傷も感光体の寿命を決める主な要因となっている。
これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。
また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。また、高分子型電荷輸送物質は材料の重合、精製が難しく高純度なものが得にくいため材料間の電気的特性が安定しにくい。更に塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を起こす場合もある。
(3)の無機フィラーを分散させたものは、通常の低分子電荷輸送物質を不活性高分子に分散させた感光体に比べ高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在する電荷トラップサイトにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。また、感光体表面の無機フィラー部域とバインター樹脂部域と間の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることがある。
これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
この感光体は繰り返し使用による残留電位の上昇は抑えられるものの、保護層の電気抵抗が低くなることから高湿環境での解像度低下や画像流れが発生しやすいという傾向がある。
これらに換わる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材、及びバインダー樹脂を含有させて硬化させた電荷輸送層を設けることが知られており(例えば、特許文献9参照。)、このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送剤に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。
この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送剤との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、架橋表面層中で相分離が生じ、局部的に耐摩耗性の低い部分ができ、これが感光体表面の傷やトナー外添剤及び紙粉の固着が発生する原因となる場合がある。この固着がさらに進行するとトナーフィルミングをもたらし、光透過の不均一性から画像部の白抜けが発生する恐れがある。
また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、前記モノマーおよび前記したバインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とはいえないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(例えば、特許文献10参照。)。
この感光層は架橋結合密度を高められるため、高い硬度を有するが、嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため、硬化物中歪みが生じ硬化反応が不均一になりやすい。このため外部応力に対する復元力が局部的に低下し、長期間の繰り返し使用にあたりキャリア付着などの応力によりクラックや傷が発生しやすい場合がある。
[1]導電性支持体上感光層との間に中間層を設けた電子写真感光体において、前記中間層が少なくとも酸化亜鉛粒子と樹脂を含有し、前記酸化亜鉛粒子中に少なくともナトリウムを10〜200ppm、硫黄を50〜500ppm、カルシウムを10〜200ppm含有することを特徴する電子写真感光体。
[2]前記酸化亜鉛粒子がシランカップリング剤で処理されていることを特徴とする前記[1]に記載の電子写真感光体。
[3]前記シランカップリング剤がアミノ基を有することを特徴とする前記[2]に記載の電子写真感光体。
[4]前記中間層の膜厚が10μm以上50μm未満であることを特徴とする前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[5]前記酸化亜鉛粒子の平均粒子径が20nm以上200nm以下である前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[6]前記感光層の表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋層からなり、該架橋表面層の弾性変位率τeが35%以上であり、且つ、該弾性変位率τeの標準偏差が2%以内であることを特徴とする前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[7]前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の電子写真用感光体を用いることを特徴とする電子写真方法。
[8]前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の電子写真用感光体を有することを特徴とする電子写真用カートリッジ。
[9]前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の電子写真用感光体を有することを特徴とする電子写真装置。
図3は、本発明の電子写真感光体の構成を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、本発明の中間層32を設け、その上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33が設けられている。
図4は、本発明の電子写真感光体の他の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、本発明の中間層32を設け、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。
図5は、本発明の更に別の構成を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、本発明の中間層32を設け、さらに電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33が設けられ、更に感光層表面に保護層39が設けられてなる。
図6は、本発明の更に別の構成を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、本発明の中間層32を設け、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に保護層39が設けられてなる。
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
中間層32は、特定の元素を特定の割合で含有する酸化亜鉛粒子をバインダー樹脂と共に適当な溶剤中に分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
本発明に記載している電子写真感光体の中間層32としては、導電性支持体から感光層への不要な電荷(感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の注入を抑制する機能と、感光層で形成された電荷のうち、感光体の帯電極性と同極性の電荷を輸送する機能とを兼ね備えていることが好ましい。たとえば、電子写真プロセスとして感光体を負帯電させる必要がある場合には、中間層としては導電性支持体から感光層への正孔注入阻止機能(ホールブロッキング性)と、感光層から導電性支持体への電子輸送機能(エレクトロン輸送性)とを兼ね備える必要がある。また、長期にわたって安定な感光体を得るためにはこれらの特性が繰り返しの静電負荷によっても変化しないことが重要となる。
これらの金属元素が酸化亜鉛中に適度に含有されることにより、いわゆるドーパント効果と称される効果が得られ、通常の高純度の酸化亜鉛粒子にはみられない優れた電子輸送特性を安定して示す。そして、このことにより電子写真感光体の中間層として必要とされる前述の感光層への正孔注入阻止機能(ホールブロッキング性)と、感光層から導電性支持体への電子輸送機能(エレクトロン輸送性)とを極めて高いレベルで両立させることが可能となる。
ナトリウムの含有量としては10〜200ppm含有することを必須とするが、好ましくは30〜150ppm、更に好ましくは50〜100ppm、最も好ましくは60〜90ppm含有する。
硫黄については50ppm未満になると電子輸送性を安定的に得ることができず、感光体とした場合に露光部電位が上昇してしまう。また500ppmを超えた場合、電子輸送性に対しては問題がないものの、感光体の帯電特性が繰り返し使用時において劣化する傾向がある。
硫黄の含有量としては50〜500ppm含有することを必須とするが、好ましくは100〜400ppm、更に好ましくは150〜300ppm、最も好ましくは170〜280ppm含有する。
カルシウムについては10ppm未満になると電子輸送性を安定的に得ることが出来ず、感光体とした場合に露光部電位が上昇する傾向がみられ、繰り返しの使用時においてはその傾向が顕著になってしまう。200ppmを超えた場合、電子輸送性に対しては問題がないものの、感光体の帯電特性が繰り返し使用時において劣化する傾向がある。
カルシウムの含有量としては10〜200ppm含有することを必須とするが、好ましくは20〜150ppm、更に好ましくは30〜90ppm、最も好ましくは50〜70ppm含有する。
なおこれらナトリウム、硫黄、カルシウムは酸化亜鉛粒子中にほぼ均一に含有されていればよく、それぞれの形態、存在状態に特に制限はない。
これら湿式法で作製された酸化亜鉛の場合、原材料の選定、製造条件により意図的に特定元素の量を変えて含有させることが可能となり本件発明に用いる酸化亜鉛を容易に得ることができる。
以下に湿式法の詳細を述べる。
湿式法は具体的には、亜鉛含有水溶液とアルカリ性水溶液とから沈殿物を生成させ、これを熟成かつ洗浄し、当該沈殿物をアルコールで湿潤させて乾燥を開始し酸化亜鉛微粒子前駆体を得た後、当該酸化亜鉛微粒子前駆体を焼成して酸化亜鉛微粒子とするものである。
ここで、亜鉛含有水溶液を調製するための亜鉛化合物は特に限定されるものでなく、例えば硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられるが、本件発明で用いられる酸化亜鉛においては硫酸由来の硫黄が含有されるようにするため硫酸亜鉛が好ましい。
一方、アルカリ性水溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア等の水溶液が挙げられるが、本発明に用いられる酸化亜鉛を得る方法としては水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び水酸化カルシウム混合系が特に好ましい。
当該アルカリ性水溶液中における水酸化ナトリウムの濃度は、亜鉛化合物が水酸化物となるのに必要な化学当量の1.0〜1.5倍過剰量とするのが好ましく、水酸化カルシウムの量は、酸化亜鉛粒子における所要の「ナトリウム濃度;カルシウム濃度」を達成できるような濃度であることが好ましい。
化学当量以上のアルカリとすれば、投入した亜鉛化合物が反応できるため、1.5倍過剰量以下であれば、残留アルカリの除去の洗浄時間が短時間で済むためである。
沈殿物の生成は、連続的に攪拌されているアルカリ性水溶液へ、亜鉛化合物の水溶液を滴下することで行なう。
アルカリ性水溶液へ、亜鉛化合物の水溶液を滴下することにより、瞬時に過飽和度に到達して沈殿が生成することから、均一な粒径の炭酸亜鉛および水酸化炭酸亜鉛の微粒子の沈殿物が得られる。
亜鉛化合物の水溶液へ、アルカリ性溶液を滴下しても、亜鉛化合物の溶液とアルカリ性溶液とを並行滴下しても、上述のような粒子サイズが揃った炭酸亜鉛および水酸化炭酸亜鉛の微粒子の沈殿物を得ることは困難である。
沈殿物の生成時におけるアルカリ性水溶液温度は特に限定されないが、50℃以下、好ましくは室温である。
アルカリ性水溶液の温度の下限は定められないが、低過ぎると新たに加温装置等が必要になってくることからそのような装置を要しない温度とすることが好ましい。
アルカリ性水溶液への亜鉛化合物水溶液の滴下時間は、生産性の観点から30分間未満、好ましくは20分間以下、更に好ましくは10分間以下とする。
滴下完了後、系内の均一化を図るために、継続的に攪拌して熟成を行なう。
熟成の温度は沈殿生成時の温度と同温とする。
また、継続的に撹拌する時間は特に限定されないが、生産性の観点から30分間以下、好ましくは15分間以下である。
上記熟成後に得られた沈澱物は、デカンテーションによって洗浄するが、洗浄液の導電率を調整することで微粒子中に残留する硫酸イオンの量を調整することが可能となり、最終的に得られる酸化亜鉛中のナトリウム、カルシウム、硫黄の含有量を制御できる。
当該湿潤処理を行なうことで、乾燥後の酸化亜鉛微粒子前駆体の凝集を回避できる。
当該アルコール溶液のアルコール濃度は、50質量%以上であることが好ましい。
アルコール濃度が50質量%以上であれば、酸化亜鉛微粒子が強凝集体となることを回避でき、優れた分散性を発揮するからである。
湿潤処理で用いられるアルコール溶液について説明する。
当該アルコール溶液に用いられるアルコールは特に限定されないが、水に溶解し、沸点100℃以下のアルコールが好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。
当該湿潤処理は、濾過洗浄された沈殿物をアルコール溶液中へ投入して攪拌すればよく、このときの時間や攪拌速度は処理量に応じて適宜選択すればよい。
当該沈殿物をアルコール溶液中に投入する際のアルコール溶液量は、当該沈殿物が容易に攪拌できて流動性を確保できる液量があれば良い。
攪拌時間や攪拌速度は、上述した濾過洗浄時に一部凝集した部分を含む沈殿物が、アルコール溶液中において、当該凝集部分が解消するまで均一に混合されることを条件に適宜選択される。
また、湿潤処理の際、温度は通常室温下で行なえば良いが、必要に応じて、アルコールが蒸発して失われない程度に加温しながら行なうことも可能である。
好ましくは、アルコールの沸点以下の温度で加熱することで、湿潤処理中におけるアルコールの消失を回避でき、湿潤処理の効果がなくなることを回避できる。
湿潤処理中にアルコールの存在が保たれることで、湿潤処理の効果が得られ、乾燥後には沈殿物が強凝集体とならないので好ましい。
乾燥温度や時間の乾燥条件は、特に限定されるものではなく、湿潤処理物がアルコールに湿潤した状態で加熱乾燥を開始すればよい。
当該湿潤処理後であれば、加熱乾燥を行なっても、沈殿物が強凝集体となることはないので、湿潤処理物の処理量や処理装置等により乾燥条件を適宜選択すれば良い。
当該乾燥処理により、湿潤処理を受けた酸化亜鉛微粒子前駆体を得ることができるが、当該前駆体は焼成されて酸化亜鉛微粒子となる。
乾燥処理された酸化亜鉛前駆体には、焼成を施すが、当該焼成は、大気中、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中、上記不活性ガスと水素等の還元性ガスとの混合ガス中、のいずれかの雰囲気下で行なう。
このときの処理温度は、所望とする紫外線吸収(遮蔽)特性の観点から下限は400℃前後が好ましい。
このときの処理時間は、酸化亜鉛前駆体の処理量や焼成温度に応じて適宜選択する。
具体的にはテフロン(登録商標)容器に試料、酸を入れ、マイクロ波を照射して加圧酸分散後、超純粋で定容して検液とし、これをICP−MS、ICP−AESによる分析をおこなうことで定量が可能となる。
なお酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、中間層中に観察される粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて任意に100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒子径を求め、それを平均粒子径として求めることができる。
表面処理剤としては公知の材料から選択することができる。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため好ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は中間層32に良好な電荷ブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなるものでも用いることができるが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
乾式法にて表面処理を施す場合には酸化亜鉛粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒に溶解させたシランカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行なわれることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があり、好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行なうことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法としては、酸化亜鉛粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行なうことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては表面処理剤を添加する前に酸化亜鉛粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。
金属酸化物の中間層塗工液中における分散方法としては、一般に工業的に用いられている方法を適宜用いれば良く、例えばボールミル、サンドミル、振動ミル、KDミル、3本ロールミル、アトライター、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等を用いることができる。
中間層形成の際に用いる塗工方法としては、一般に用いられている塗工方法であれば特に限定されず、塗工液の粘性、所望とする中間層の膜厚などによって適宜塗工方法を選択すると良い。例えば、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いることができる。
中間層は前記塗工液を用いて塗工した後に、必要に応じてオーブン等で加熱乾燥させてもよい。中間層の乾燥温度は、中間層用塗工液に含有される溶剤の種類によって異なるが、80〜200℃であることが好ましく、100〜150℃がさらに好ましい。乾燥温度が低すぎると残留溶媒などが生じ、高すぎると有機材料などの劣化が生じ、良好な中間層の機能を発現できない。
本発明で用いる中間層の膜厚としては、獲得したい電子写真感光体の電気特性や寿命によって適宜選択することができるが、10μm以上50μm未満が良く、さらに好ましくは15μm以上、30μm以下である。中間層が薄い場合には電子写真感光体表面の帯電極性と逆極性の電荷が導電性支持体から感光層中に流れ込むことによって、帯電性不良に起因する字汚れ状の画像欠陥が生じやすい。また、中間層が厚すぎる場合には残留電位の上昇などにより光減衰機能が低下したり、繰り返し安定性が低下したりするなどの問題が生じやすいため好ましくない場合がみられる。
添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層35には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられる。これら電荷発生物質は単独で用いても2種以上混合して用いても構わない。
電荷発生層35は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂と共に適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。
用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン、アセトン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等が用いられる。これらは、単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
本発明において、電荷輸送層の乾燥温度は、このように電荷輸送層の塗工液に含有される溶剤の種類によって異なるが、80〜150℃であることが好ましく、100〜140℃がさらに好ましい。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般的に使われている樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
感光層33は、電荷発生物質、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
単層型の感光層33においても、前述の積層構成の感光層(電荷発生層、電荷輸送層)に用いられる材料(電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂)を同様に用いることができる。
また単層構成の感光層33の場合には、高感度化のために電荷輸送物質として、下記の電子輸送物質を併用することが好ましい。
電荷輸送物質の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30〜200重量部とすることが好ましい。また電子輸送物質の含有量は結着樹脂100重量部に対し、30〜200重量部とすることが好ましい。
感光層の膜厚は50μm以下が好ましく、解像度・応答性の点から25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
さらには前記表面層の塗工液に含有される電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましい。
さらには前記表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることがより好ましい。
また前記の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であることがより好ましく、さらには1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送構造が、トリアリールアミン構造であることがより好ましい。
この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。
また、80重量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。
使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。
このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4‘−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
かかる塗工液は、ラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。
これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。
溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。
塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。
170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。
硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。
1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。
これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
本発明の弾性変位率τeは、ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計の負荷−除荷試験により測定される。
このとき、得られる押し込み深さと荷重の曲線が図2のように記録され、最大変位(b)と塑性変位(c)弾性変位率τeは以下の式で算出される。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
かかる弾性変位率測定は、一定温湿度下で行われ、本発明で弾性変位率とは、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。
弾性変位率τeの標準偏差はサンプル上の任意の10箇所について弾性変位率τeを測定し、この10個の値より算出した。
測定においては本発明の架橋表面層を有する感光体をアルミニウムシリンダー上に作製し、これを適宜切断して用いた。
弾性変位率τeは基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としては剛直な金属版、スライドガラスなどが適当である。
架橋表面層のみを単独で基板上に作製すると、下層成分の混入、下層との接着性が変わり、必ずしも感光体の表面架橋層を正確に再現できないため、好ましくない。
先に述べたように、架橋表面層の弾性変化率τeが35%未満では耐摩耗性が低く、その標準偏差が2%より大きいと、架橋表面層の局部的に弱い部分に、トナー外添剤や紙粉が固着しトナーフィルミングの原因となることが見出された。
しかし、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有すると、架橋結合密度を高められるため弾性変位率τeは比較的大きな値を有するが、嵩高い正孔輸送性化合物が多数の結合で絡み合うため、硬化反応が不均一となり、架橋表面層に歪みが生じる。
このため外部応力に対する回復力が局部的に低下し、弾性変位率τeの標準偏差が大きくなる。
更に、このような高分子材料を多量に含有させると、硬化反応が低下し架橋結合密度が希薄となり、弾性変位率τeの値が35%に達しない。
したがって、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、あるいはバインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
逆に、下層を全く溶解しない溶媒を使用した場合、架橋表面層と下層の接着性が低下し、硬化反応時の体積収縮から架橋表面層にクレーター状のはじきが現れ、低い弾性変位率の下層が部分的に露出する。
これらの対策としては、混合溶媒を使用し下層の溶解性をコントロールする、液組成や塗工法により塗工表面層に含有される溶媒量を低減する、下層に高分子電荷輸送物質などを用い下層成分の混入を抑える、下層と架橋表面層の間に溶解性の低い中間層や良好な接着性の中間層を設ける、などが挙げられる。
この様な表面層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し、弾性変位率τeの標準偏差が大きくなる。
このため加温条件、光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な熱や光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
例えば、架橋表面層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し2倍量〜8倍量である。
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。
その後、比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、例えば500mW/cm2のUV光を照射する場合、多方向から均一に20秒程度照射すればよい。
このときドラム温度は50℃を超えないように制御する。
熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば加熱手段としてを送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。
硬化終了後は、残留溶媒低減のため100〜150℃で10〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えばフェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明に係る電子写真装置は、上述した電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電せしめる帯電手段と、前記電子写真感光体表面に静電潜像を形成する画像露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を記録材に転写する転写手段と、を具備するものであり、さらに必要に応じて適宜選択したその他の手段を具備してなる。その他の手段としては、例えばクリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等が挙げられる。
次に、図面を用いて本発明に係る電子写真装置および電子写真方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。
図7は、本発明の電子写真装置及び電子写真方法を説明するための概略図であり、本発明に係る電子写真装置の第1の実施の形態における構成を示す概略図である。
図7において、感光体1は上述した本発明に係る電子写真感光体である。感光体1はドラム状の形状をしているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
図7に示す態様においては、ドラム状の感光体1が不図示の駆動手段により図中反時計周りに回転させられ、感光体1周辺に設けられた各手段により電子写真方法で画像が形成される。以下、電子写真方法の各工程の順に従い説明する。
先ず、帯電手段としての帯電チャージャ3により、感光体1表面が一様に帯電させられる。帯電チャージャ3は、感光体1や現像用のトナーの特性に応じて従来公知のものの中から適宜採用すればよく、感光体1表面を所定の極性(正帯電もしくは負帯電)に所定の電位に帯電せしめるものであればいずれも適用可能である。帯電チャージャ3としては例えば、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等が挙げられる。
次に、一様に帯電した感光体1の表面には、画像露光手段としての画像露光部5により静電潜像が形成される。画像露光部5としては例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができ、発光ダイオードまたは半導体レーザを用いることが好ましい。そして、画像露光の際には所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを感光体1と画像露光部5との間に配置することができる。
感光体1の表面に形成された静電潜像は、トナーを用いて、現像手段としての現像ユニット6により現像される。即ち、現像ユニット6により静電潜像が現像されて可視像であるトナー画像が形成される。現像ユニット6は、使用するトナーに応じて従来公知のものの中から適宜採用すればよい。現像ユニット6としては例えば、一成分現像方式、二成分現像方式等が挙げられ、さらに夫々において磁性トナー用、非磁性トナー用のものがある。
さらに、感光体1上に担持されたトナー画像は、感光体1の回転に伴い転写手段としての転写チャージャ10まで搬送される。転写チャージャ10としては、前述の帯電チャージャ3と同様のものを適用することができるが、図7に示されるように転写チャージャ10と分離チャージャ11を併用したものが効果的である。さらに、転写効率を向上させるために、転写チャージャ10よりも(感光体1の回転方向に対して)上流側に転写前チャージャ7を設け、トナー画像にプレチャージすることが好ましい。転写前チャージャ7としては、前述の帯電チャージャ3と同様のものを適用することができる。
一方、感光体1と転写チャージャ10とが対向する位置には、記録材としての転写紙9がレジストローラ8等により、当該転写紙9の所望の位置にトナー画像が転写されるように搬送される。
そして、感光体1上のトナー画像と転写紙9とが対向した位置において、転写チャージャ10によりトナー画像が転写紙9に転写される。
尚、トナー画像が転写された転写紙9は、感光体1に伴って回転することで分離爪12に到達し、この分離爪12により感光体1の表面から分離され、さらに説明を省略する搬送、定着の工程を経て電子写真装置外に排出される。
ここで、転写チャージャ10による転写および分離爪12による転写紙9の分離の後の感光体1の表面には、転写紙9に転写しきれなかったトナー画像、所謂転写残トナーや紙粉などの付着物が存在する。このため、クリーニング手段であるファーブラシ14及びクリーニングブレード15により感光体1表面から付着物を除去する。クリーニング手段としては、上記ファーブラシ14及びクリーニングブレード15の他、マグファーブラシなど従来公知のものを用いることができ、さらにはファーブラシのみ或いはクリーニングブレードのみを用いることもできる。尚、クリーニング効率を向上させるために、クリーニング手段に供する前にクリーニング前チャージャ13によりプレチャージすることが好ましい。クリーニング前チャージャ13としては、前述の帯電チャージャ3と同様のものを適用することができる。
クリーニング手段により表面から付着物が取り除かれた感光体1は、さらに除電手段である除電ランプ2の光照射により表面が除電されることで一連の電子写真方法による電子写真プロセスを終える。この一連の電子写真方法による電子写真プロセスを繰り返すことで複数の記録材に電子写真することが可能である。
除電手段としては従来公知のものを適用可能であり、例えば除電ランプ2として、前述の画像露光部5と同様のものを適用することができる。
以上説明した一連の電子写真方法による電子写真プロセスは、電子写真感光体1に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体1表面上には正(負)の静電潜像が形成されるものである。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。電子写真感光体1の帯電極性や現像に用いられるトナーの極性は任意であり、いずれのものであってもよい。
また、画像露光部5に用いた各種の光源は、図7に示される形態に用いられることに限定されるものではなく、他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、或いは前露光などの工程に用いることができる。
図8は、本発明に係る電子写真装置の第2の実施の形態における構成を示す概略図である。
感光体21は少なくとも感光層(表示せず)を有しており、駆動ローラ22a,22bにより駆動され、帯電手段である帯電器23による帯電、画像露光手段である光源24による画像露光、現像手段である現像(図示せず)、転写手段である転写チャージャ25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、クリーニング手段であるクリーニングブラシ27によるクリーニング、除電手段である光源28による除電が繰返し行なわれる。
図8においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に導電性支持体(表示せず)側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
以上の図8に示される電子写真装置を用いて行なわれる電子写真方法による電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、他の実施形態も可能であることは言うまでもない。例えば、図8において導電性支持体(表示せず)側よりクリーニング前露光を行なっているが、これは感光層(表示せず)側から行なってもよいし、また、画像露光、除電光の照射を導電性支持体側から行なってもよい。
一方、光を照射する工程としては、画像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に、転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光を照射する工程を設けて、感光体21に光照射を行なうこともできる。
更に、本発明を適用したフルカラー電子写真装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
図9は本発明に係る電子写真装置の第3の実施の形態における構成を示す概略図である。
図9において、潜像担持体であるドラム状の感光体56は、図中反時計回りに回転駆動されながら、その表面がコロトロンやスコロトロンなどを用いる帯電手段である帯電チャージャ53によって一様帯電させられた後、図示しない画像露光手段であるレーザ光学装置から発せられるレーザ光Lの走査を受けて静電潜像を担持する。この走査はフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報に基づいてなされるため、感光体ドラム56上にはイエロー、マゼンタ、シアン又はブラックという単色用の静電潜像が形成される。感光体ドラム56の図中左側には、リボルバ現像ユニット50が配設されている。これは、回転するドラム状の筺体の中に現像手段であるイエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器を有しており、回転によって各現像器を感光体ドラム56に対向する現像位置に順次移動させる。なお、イエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器は、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを付着せしめて静電潜像を現像するものである。感光体ドラム56上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の静電潜像が順次形成され、これらはリボルバ現像ユニット50の各現像器によって順次現像されてイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像となる。
感光体ドラム56上で現像されたイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像は、感光体ドラム56と中間転写ベルト58とが接触する中間転写ニップに進入する。そして中間転写バイアスローラ57からのバイアスの影響を受けながら、中間転写ベルト58上に重ね合わせて中間転写(一次転写)されて4色重ね合わせトナー像となる。
回転に伴って中間転写ニップを通過した感光体ドラム56表面は、クリーニング手段であるドラムクリーニングユニット55によって転写残トナーがクリーニングされる。ドラムクリーニングユニット55は、クリーニングバイアスが印加されるクリーニングローラによって転写残トナーをクリーニングするものであるが、ファーブラシ、マグファーブラシ等からなるクリーニングブラシや、クリーニングブレードなどを用いるものであってもよい。
転写残トナーがクリーニングされた感光体ドラム56表面は、除電手段である除電ランプ54によって除電される。除電ランプ54には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などが用いられている。また、上記レーザ光学装置の光源には半導体レーザが用いられている。これら発せられる光については、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターにより、所望の波長域だけを用いるようにしてもよい。
ここで、前記記録材上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録材上に一括で二次転写する構成とすることができる。
図10は、本発明に係る電子写真装置の第4の実施の形態における構成を示す概略図である。本実施の形態は、中間転写ベルト87を有するタンデム方式の電子写真装置であり、感光体ドラム80を各色で共有させるのではなく、各色用の感光体ドラム80Y、80M、80C、80Bkを備えている。また、現像ユニット(現像手段)82、ドラムクリーニングユニット(クリーニング手段)85、除電ランプ(除電手段)83、ドラムを一様帯電せしめる帯電ローラ(帯電手段)84、バイアスローラ(二次転写手段)86も、各色用のものを備えている。なお、図9に示したプリンタではドラム一様帯電手段として帯電チャージャ53を設けていたが、この装置では帯電ローラ84を設けている。また、中間転写ベルト87をクリーニングするためのベルトクリーニングユニットとして、ファーブラシ94が配設されている。
この他、レジストローラ対88、記録材としての紙89、二次転写手段である紙転写バイアスローラ90、転写ベルト91、搬送ベルト92及び定着ユニット93が配設されているが、上述した第3の実施の形態と重複するため説明を省略する。
タンデム方式では、各色の潜像形成(画像露光工程)や現像を並行して行なうことができるため、リボルバ式よりも電子写真速度を遙かに高速化させることができる。
以上に示すような電子写真装置は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込んでもよいが、プロセスカートリッジの形でそれらの装置内に組み込んでもよい。プロセスカートリッジとは、感光体21を内蔵し、この他に帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選ばれる少なくとも1つの手段を含んだ1つの装置(部品)である。
プロセスカートリッジの形状等は多種多様であるが、一般的な例として、図11に示すものが挙げられる。
図11は、本発明に係るプロセスカートリッジの一実施の形態の構成を示す概略図である。
本実施の形態では、電子写真感光体16と、帯電手段としての帯電チャージャ17と、画像露光手段としての画像露光部19と、現像手段としての現像ローラ20と、クリーニング手段としてのクリーニングブラシ18とを具備するものである。
以下の方法を用いて、中間層用塗布液Aを調製した。
まず表面処理酸化亜鉛粒子を以下の方法で作製した。
下記材料を混合して2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、130℃で4時間)焼き付けを行ない、表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
酸化亜鉛粒子:前述の湿式法により作製した、ICP−MSで求めたナトリウム、及びカルシウムの含有量がそれぞれ54ppm、47ppmで、ICP−AESで求めた硫黄の含有量が250ppmである酸化亜鉛:1000部
表面処理剤:シランカップリング剤(KBE903 信越化学社製):10部
溶媒:テトラヒドロフラン:5000部
次に、下記材料を混合し、φ0.4mmのガラスビーズと振動ミルを用いて10時間攪拌し、中間層用塗布液Aを調整した。
前述の表面処理酸化亜鉛粒子:300部
バインダー樹脂:ブロック化イソシアネート(固形分75wt%、スミジュールBL3175、住化バイエルウレタン社製):60部
ブチラール樹脂(BM−S、積水化学社製)を2−ブタノンで溶解させた20wt%希釈液:225部
溶媒:2−ブタノン:105部
この表面処理酸化亜鉛粒子について透過型電子顕微鏡(TEM)にて任意に100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒子径を求めそれを平均粒子径として求めたところ95nmであった。
下記材料を混合し、φ1のガラスビーズとビーズミルを用いて8時間攪拌し、電荷発生層用塗布液Bを調製した。
電荷発生物質:Y型チタニルフタロシアニン(※):8部
バインダー樹脂:ポリビニルブチラール(エスレックBX−1 積水化学工業社製):5部
溶媒:2−ブタノン:400部
※図12に、用いたY型チタニルフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示す。
下記材料を混合し、材料が全て溶解するまで攪拌することで電荷輸送層用塗布液Cを調製した。
電荷輸送物質:構造式(1)に示す電荷輸送物質:7部
バインダー樹脂:ポリカーボネート(TS−2050 帝人化成社製):10部
レベリング剤:シリコーンオイル(KF−50 信越化学社製):0.0005部
溶媒:テトラヒドロフラン:100部
次に、電荷発生層用塗布液Bを浸漬塗工法により塗布した後、90℃で30分の乾燥を行ない、厚さが0.2μmの電荷発生層を積層した。
さらに、電荷輸送層用塗布液Cを浸漬塗工法により塗布した後、150℃で30分の乾燥を行ない、厚さが29μmの電荷輸送層を積層し、電子写真感光体を得た。
このようにして作製した電子写真感光体ついて、以下のようにして、諸特性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
参考例1の電子写真感光体を適当な大きさに切り出し、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)、三角すい圧子(115゜)を用い、負荷−静止−除荷サイクルで変位−加重曲線を測定した。
このとき、最大変位を架橋表面層の1/10になるように設定加重を決定し、負荷、除荷速度を0.0145gf/sec、最大変位の静止時間を5秒とした。
測定された最大変位と塑性変位から下記式により弾性変位率τeを算出した。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
また、弾性変位率τeはサンプル上の任意の10箇所について測定を行ない、この平均をその値とし、弾性変位率の標準偏差はこの10個の弾性変化率より算出した。
上述のようにして作製した電子写真感光体を温度23℃、湿度50%RHの環境下で、スコロトロン方式で前記の感光体を帯電させ表面電位であるV0が−700±10Vになるように放電電流を調節し、波長780nmの半導体レーザで1.0μJ/cm2の露光エネルギーを照射した時の感光体表面電位をVLとし、初期と50,000サイクル繰返し後にV0とVLを測定した。
〔評価指標〕
・V0は、初期及び50,000サイクルの繰返し疲労試験後ともに700V±50Vが良好である。この範囲外になると目視で判定が可能となる画像濃度変化が見られる。
・VLはおよそ150V以上になると画像濃度低下が生じる。
・繰返し後のVL上昇(△VL)は50V以上になると画像ノイズが発生する。
作製した実施例及び比較例の電子写真感光体を搭載したカラーレーザープリンタ(株式会社リコー製、IPSiO SP C241)を用いて、5%濃度のテストパターンで50,000枚印刷を行ない、感光体の膜厚減少量、及び50,000枚後の画像において、地肌汚れと画像濃度について評価した。
感光体の膜厚減少量は渦電流式膜厚計を用いて印刷を行なう前と、50,000枚印刷後の膜厚の差から求めた。
50,000枚後の画像においては、地肌汚れは黒ベタ部、白部を含むテストチャートの画像における白部(地肌部)での黒点状欠陥の有無を評価し、画像濃度は黒ベタ部における濃度について下記基準により画像の品質を評価した。
なお評価時の環境は23℃、55%RHで行なった。
〔画像品質の評価基準〕
・地肌汚れ
○:画像の白部に明らかな黒点がみられない。
×:画像の白部に黒点状の欠陥が存在する
・画像濃度
○:画像の黒ベタ部の濃度が十分で出ている。
×:画像の黒ベタ部の濃度の低下がみられる。
なお画像濃度の低下の有無は、初期画像と50,000枚印刷後の黒ベタ部の画像濃度差(マクベス濃度計で測定)である下記に示す△ID(IMAGE DENSITY)が0.05以上となる場合を指す。
△ID=初期画像ID−50,000枚印刷後画像ID
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ94ppm、46ppm、160ppmであり、一次粒子の平均粒径が86nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を
行ない参考例2とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ87ppm、140ppm、86ppmであり、一次粒子の平均粒径が105nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例3とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ15ppm、55ppm、216ppmであり、一次粒子の平均粒径が80nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例4とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ90ppm、14ppm、130ppmであり、一次粒子の平均粒径が65nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例5とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ62ppm、51ppm、54ppmであり、一次粒子の平均粒径が80nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例6とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ189ppm、120ppm、290ppmであり、一次粒子の平均粒径が69nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例7とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ53ppm、194ppm、168ppmであり、一次粒子の平均粒径が77nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例8とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ98ppm、110ppm、489ppmであり、一次粒子の平均粒径が69nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例9とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ65ppm、49ppm、184ppmであり、一次粒子の平均粒径が98nmである酸化亜鉛粒子を用い、さらにシランカップリング剤による表面処理を行なわなかった以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例10とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ68ppm、46ppm、290ppmであり、一次粒子の平均粒径が88nmである酸化亜鉛粒子を用い、さらにシランカップリング剤の種類をKBE502(信越化学工業社製)に変更した以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例11とした。
参考例1において中間層の膜厚を22μmから12μmに変更した以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例12とした。
参考例1において中間層の膜厚を22μmから9μmに変更した以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例13とした。
参考例1において中間層の膜厚を22μmから51μmに変更した以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例14とした。
参考例1において中間層の膜厚を22μmから48μmに変更した以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例15とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ89ppm、55ppm、310ppmであり、一次粒子の平均粒径が21nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例16とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ66ppm、47ppm、198ppmであり、一次粒子の平均粒径が18nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例17とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ77ppm、97ppm、106ppmであり、一次粒子の平均粒径が192nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例18とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ52ppm、44ppm、227ppmであり、一次粒子の平均粒径が209nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない参考例19とした。
参考例1において電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層用塗工液をスプレー塗工し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:25秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で20分乾燥を加え5μmの表面架橋層を設けた以外は全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない実施例20とした。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:10部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有する下記ラジカル重合性化合物A:10部
実施例20の架橋表面層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに換えた以外は全て実施例20と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない実施例21とした。
下記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:10部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR−355、化薬サートマー製)分子量:466、官能基数:4官能、分子量/官能基数=117
実施例20の架橋表面層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記の2種混合モノマーに換えた以外は全て実施例20と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない実施例22とした。
下記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:6部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬製)
分子量:536、官能基数:5.5官能、分子量/官能基数=97
下記電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:4部
アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート(KAYARAD D−330、日本化薬製)分子量:584、官能基数:3官能、分子量/官能基数=195
実施例20の架橋表面層用塗工液に含有される1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記ラジカル重合性化合物B、10部に換えた以外は全て実施例20と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない実施例23とした。
実施例20の架橋表面層用塗工液に含有される1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記ラジカル重合性化合物C、10部に換えた以外は全て実施例20と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない実施例24とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ2.9ppm、0.79ppm、50ppm未満であり、一次粒子の平均粒径が101nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例1とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ1.8ppm、11ppm、75ppm未満であり、一次粒子の平均粒径が71nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例2とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ16ppm、3.6ppm、65ppmであり、一次粒子の平均粒径が111nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例3とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ36ppm、28ppm、50ppm未満であり、一次粒子の平均粒径が87nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例4とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ280ppm、226ppm、518ppmであり、一次粒子の平均粒径が96nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例5とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ220ppm、66ppm、180ppmであり、一次粒子の平均粒径が68nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例6とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ180ppm、235ppm、140ppmであり、一次粒子の平均粒径が68nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例7とした。
参考例1においてナトリウム、カルシウム及び硫黄の含有量がそれぞれ110ppm、196ppm、550ppmであり、一次粒子の平均粒径が68nmである酸化亜鉛粒子を用いた以外全て参考例1と同様にして電子写真感光体を作製し、参考例1と同様の評価を行ない比較例8とした。
31 導電性支持体
32 中間層
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層
(図7について)
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
(図8について)
21 感光体
22a 駆動ローラ
22b 駆動ローラ
23 帯電器
24 光源
25 転写チャージャ
26 光源
27 クリーニングブラシ
28 光源
(図11について)
16 電子写真感光体
17 帯電チャージャ
18 クリーニングブラシ
19 画像露光部
20 現像ローラ
Claims (9)
- 導電性支持体上感光層との間に中間層を設け、前記感光層の上に架橋表面層を設けた電子写真感光体において、前記中間層が少なくとも酸化亜鉛粒子と樹脂を含有し、前記酸化亜鉛粒子中に少なくともナトリウムを10〜200ppm、硫黄を50〜500ppm、カルシウムを10〜200ppmを含有し、
前記架橋表面層の弾性変位率τeが35%以上であり、且つ、該弾性変位率τeの標準偏差が2%以内であることを特徴する電子写真感光体。 - 前記酸化亜鉛粒子がシランカップリング剤で処理されていることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記シランカップリング剤がアミノ基を有することを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
- 前記中間層の膜厚が10μm以上50μm未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記酸化亜鉛粒子の平均粒子径が20nm以上200nm以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記架橋表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真用感光体を用いることを特徴とする電子写真方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真用感光体を有することを特徴とする電子写真用カートリッジ。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真用感光体を有することを特徴とする電子写真装置。
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